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1957-04-24 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十四日(水曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 亀山 孝一君 理事 野澤 清人君    理事 八木 一男君       植村 武一君    越智  茂君       加藤鐐五郎君    小島 徹三君       高瀬  傳君    中村三之丞君       中山 マサ君    八田 貞義君       古川 丈吉君    山下 春江君       亘  四郎君    有馬 輝武君       井堀 繁雄君    大西 正道君       五島 虎雄君    下平 正一君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       中原 健次君    森本  靖君       横山 利秋君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         労働政務次官  伊能 芳雄君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君  委員外出席者         郵政事務官         (大臣官房人事         部長)     大塚  茂君         参  考  人         (公共企業体等         労働委員会会         長)      藤林 敬三君         参  考  人         (公共企業体等         労働委員会委         員)      富樫 総一君         参  考  人         (日本国有鉄道         副総裁)    小倉 俊夫君         参  考  人         (国鉄労働組合         企画統制部長) 野々山一三君         参  考  人         (日本電信電話         公社総裁)  靱   勉君         参  考  人         (全電通労働組         合執行委員長) 山村 貞雄君         参  考  人         (全逓信従業員         組合書記長)  大出  俊君         参  考  人         (日本専売公社         副総裁)    船山 正吉君         参  考  人         (全専売労働組         合執行委員長) 佐藤新次郎君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 四月二十四日  委員赤松勇君、岡本隆一君、栗原俊夫君、西村  彰一君、山口シヅエ君及び山崎始男君辞任につ  き、その補欠として森本靖君、大西正道君、下  平正一君、井堀繁雄君、横山利秋君及び楯兼次  郎君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公共企業体等仲裁裁定に関する件     ―――――――――――――
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  公共企業体等仲裁裁定に関する件について、参考人より意見を聴取することといたします。本日午前中御出席参考人は、公共企業体等仲裁委員会委員長藤林敬三君、同じく委員富樫総一君であります。なお午後一時より出席予定参考人は、日本国有鉄道総裁小倉俊夫君、国鉄労働組合企画統制部長野々山一三君、日本電信電話公社総裁靱勉君全電通労働組合執行委員長山村貞雄君、全逓信従業員組合書記長大出俊君、日本専売公社総裁船山正吉君、全専売労働組合執行委員長佐藤新次郎君であります。  この際参考人に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、お忙しいところ出席下さいましてまことにありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べ願います。ただ議事の都合上、意見をお述べ願います時間は、十分以内といたしますから時間厳守をお願い申し上げます。  それでは、まず参考人にお願いいたします。公共企業体等仲裁委員会委員長藤林敬三君。
  3. 藤林敬三

    藤林参考人 委員長の御指名によりまして、最初参考人といたしまして、今回私たちの手元で出しました仲裁裁定書につきまして、一応あらましのことを御説明申し上げて御了承をお願いいたしたいと思います。  すでにこの案件につきましては、皆様御検討下すったことと存じますので、簡略にいたしたいと思いますが、今回私たちが三公社と全逓信従業員労働組合裁定を出しました場合の、基準内予算に対して千二百円増額すること、という主文第一項の内容に関しましては、裁定理由の第一に説明をいたしておきましたように、公務員並びに民間給与数字と照らし合せて、かくのごとき結論が必ずしも不当ではないということで、そのような金額を計算し、出したわけでございます。ただこの仲裁裁定に関係いたしまして、ここでぜひ申し上げなければなりませんことは、従来出されました仲裁裁定は多くは現行賃金幾らこれを増額するかということが裁定内容をなしていたわけでございますが、今回基準内予算単価に千二百円を増額するという裁定を出しましたのは、裁定理由書理由の中にも書いておきましたように、現在公社及び現業現行賃金幾らであるかということはなかなかはっきりつかみがたいという事情もございまして、従いまして、そうする方が実は問題がはっきりいたしたわけでございますけれども、そうし得なかったところに若干裁定の不十分さがあり、かつそれがわれわれが当然理由書の中の文句でもって認めておるところでもあるわけでありますが、そうしないで、というのはそういう点が必ずしも明確でございませんでしたので、予算単価に問題が起ったということ、かっこの問題に付帯いたしましては、理由の中に書いておきましたように、基準内予算単価実行ベースとの間に、公社によりましては若干の開きがありなどいたしておりまする問題は、常識的に申しましても少しおかしいのではないかというようなこともわれわれは考えましたので、こういう問題指摘をする意味におきましても、こういう予算単価増額をするという措置をとったのでございます。それがはからずもいろいろな不分明さを残したことによって、問題にされるようになりましたことは、はなはだ遺憾でございますが、どうも私たちといたしましては、現行公社及び現業賃金あり方につきまして、若干明瞭を欠いておる点もございますので、それらの問題を指摘することによって、今後はかくのごとき問題のないようにいたしたいという大筋をこの裁定の中で申し述べて、今後の処置をお願いするというのが、あわせて裁定の精神でございますので、この点をぜひ御了承おき願いたいと存じます。千二百円増額に関します理由についてはすでに理由の第一に述べてございますので、これは繰り返して御説明するまでもございませんので、付帯いたしましたそのようなことを申し上げて、裁定を全体として御了承して下さることを期待申し上げる次第でございます。
  4. 藤本捨助

    藤本委員長 以上で意見開陳は終りました。  次に質疑の通告がありますので、これを許します。大橋武夫君。
  5. 大橋武夫

    大橋(武)委員 他に同僚諸君質疑も多数ございますので、きわめて簡単に一般的なことを伺いたいと思います。今回の裁定に当りまして、委員長初め委員会皆さんが非常に御苦労になりましたことは深く敬意を表する次第でございます。ただ私が特に伺いたいと存じますことは、この仲裁裁定に入ります段階といたしまして、調停案の提示があったはずでございますが、この調停案の作成に当りましては、労働者側委員、それから使用者側委員公益委員、この合議によっておきめになったものと思うのでございます。しかるにその労働者側委員、また公社側委員がいずれも支持いたして、その結果としてでき上った調停案に対しまして、当事者の一方が受諾を拒否したということは、それが争議調停やり方であるのかもしれませんが、いわば公社側の代理人とも認められるべき公社側委員が積極的に支持した案を公社受諾しない、これはちょっとおかしい感じを受けるのでございますが、これは制度として、あるいは実際上の問題として委員長はどういうふうなお感じを持っておられますか、この機会に承わらせていただきたいと思います。
  6. 藤林敬三

    藤林参考人 お答えをいたします。私は労働問題は法律建前ももとよりでございますけれども、調停という制度が認められております以上は、一応問題は調停段階でも当然終結するもの、またそういうことがあって、やはりわれわれは調停なるものを極力努力をして、うまい工合に問題をまとめたい、こういう努力をいたしたわけでございまして、私自身といたしましてはこういう調停制度がある以上は、調停で問題がおさまるのは当然ではないかと考えております。ただ私のかつての経験もございますが、どうも民間企業の場合とは違いまして、給与の問題に関しましては若干予算上の問題その他を伴っておりますので、この調停だけでは問題がおさまり得ないようなことになるのははなはだ遺憾でございますが、しかしこれはどうも委員会といたしましてはいかんともいたしかねておる次第でございます。委員会として、また私個人といたしましては、今の御質問に対してお答えし得まずことは調停で問題がおさまるものはきれいにおさまるようになることが望ましいと考えております。
  7. 大橋武夫

    大橋(武)委員 実は私も現行制度調停というものの実績から見まして、果して調停制度仲裁制度という二重の手続が問題の解決に適切であるかどうかということについて疑問を持っておるわけなのでございます。その点についてのお考えを御経験上から承わらせていただきたいというのでございますが、ただいまのお答えで、できるだけ調停段階において解決したいという御意向はよくわかりましたが、調停仲裁という二つ手続を並行させて存続するということになると、現在の制度なりあるいは人的構成、そういうものが果してこれでいいのかどうか、いろいろ問題があるのじゃないかと思いますので、この点についての御意向を承わりたいと思います。
  8. 藤林敬三

    藤林参考人 現在の公労委というのは、申すまでもなく一つ委員会でございまして、調停もやれば仲裁もいたしております。しかしかつての制度は、調停委員会がありまた別人をもって仲裁委員会が構成されておりまして、おのおの別個の独立の機関になり制度になっておりますが、今日はこれが一本になっておるのでございます。ここにいろいろ問題があるようにお考えでありますが、私といたしましては経験上こういうことが言えるのではないかと思っております。たとい従来の制度のごとく分れております場合におきましても、今日私はかっての仲裁事案、それに先立つ調停案内容的に逐一検討して参っておりませんので、やや明確を欠いておるのでありますが、大体私が心得ております限りでは、かつて二本建の委員会がございました時分でも、出された調停案とその後に出されました仲裁裁定なるものは、内容的にはそれほど大きくかけ離れていなかったと思います。若干のかけ離れのあったことは事実でありまして、たとえば新給与実施月を四月からという調停案数カ月あとにずらしたというようなことはあったのでありますが、まるきり白が黒になるような内容変化はこの間になかったように思っております。と申しますのは、私もかつて二本建の調停委員会最初のときに国鉄調停委員長を二年半いたしまして、いろいろな意味においてとうとう固辞してやめましたが、その場合にも私の率直な印象では、もし私が出した調停案仲裁委員会によってまるきりひっくり返されてしまうとか、まるきり違った案が出されるということでは調停委員会を引き受けられない、引き受けたくないという気持でおりました。また仲裁委員は過去においてやった経験はございませんのでどういう気持かそれは私もわかりませんけれども、常識的に申しましておそらくはそういうことはあり得ない。それは気持の上のことでございますが、単に気持の上のことばかりではなしに、やはり機関は違っており人は違っておりましても、大体給与問題改善判断は、まず第一に公社の限度につきましては、公務員給与民間給与その他を考慮しようということになっておりますので、大体ものを考える場合のワクが一応きめられているとも言えるのでありまして、そのようなワク内でものを考えます場合に、仲裁委員会調停委員会が別でありましても、そんなとんでもない数字の違いを別の機関において判断することはないと思っております。従ってその意味からいいましても、おのずから違う判断が出されることも当然かと思います。そこで結論的に申しますと、これに対しましては今日一本でありかつては二本であったが、いずれがいいかという議論でありますが、これは制度が違い、人がかわっているだけに同一人がやる場合とはいききか隔たりがあるということは制度上当然言えるかと思います。隔たりがあることが仲裁裁定の場合に、主観的にも客観的にも調停から離れて冷静に判断し得るということになればその可能性は若干あろうかと思いますが、その幅なるものはきわめて少なうございます。それから今回の場合においても少し調停やり方について時間をとりましたのと、現業によりましては時間が短かかった場合もございますが、最初に参りました国鉄の場合も、いろいろな理由で時間がかなり伸びましたことと、それからしばらく私は公社現業調停から離れておりましたので、勘どころが非常に悪うございまして、調停が難航いたしましたりなどいたしまして、その点で若干今から振り返ってみますと、調停やり方等について私一身も考えなければならなかった点もあると思っておるのでございます。そういうことでございましたため、仲裁委員会の場合にはそれらの点を十分に今度は考慮し得た。同一人がやりましても、このように調停仲裁とに差は右手あり得るくらいですから、一がいに今日の段階で二本建の制度の方がはなはだよろしいんだという積極的な判断は、私は必ずしもなし得ないのではないか。そうかといって一本建でよろしいのだから二本建に変える必要は毛頭ないとも判断はできませんが、今わずかに経験を始めたところですから、もうしばらくこういう経験をやった上で判断すべきが妥当じゃないかと思います。
  9. 大橋武夫

    大橋(武)委員 きわめて実際的な御意見を承わりまして、ありがとうございました。  なお問題を少し変えまして、調停手続において労使側委員が積極的に交成して、そしてでき上ったところの調停案というものを、その当事者の一方が拒否するという事態は、ちょっとどうも私どもの常識から言うと何だかおかしいじゃないかと思うように応じられますのですが、その辺はいかにお考えでございましょうか。
  10. 藤林敬三

    藤林参考人 御意見の通りでございまして、私も実は先ほどお答えをいたしましたように、そのように思っております。これは民間の場合でございますと、秘中労委あたり経験は長年持っておりますが、結果的に見ますと、民間企業の場合でも、三者構成調停委員会で同意された調停案なるものが、一方によって拒否されることがございます。これは民間の場合でも必ずしもめずらしいのではございません。でございますから、どうも調停労使双方を直ちに拘束いたしませんので、そうなってもいたし方ございませんが、望むべくは、三者構成委員少数意見をうけたりなどしないで同意した場合には、当事者双方ともこれを了承して、問題がおさまるということが望ましいことは当然でありますし、私らそういう事案を扱います者から言うと、調停案を出したあとに若干いざこざがありましても、それで問題がおさまるようにという努力はできるだけすべきものかと思っております。   〔委員長退席大坪委員長代理着席
  11. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうしますと、公社側最初調停案を拒否されたということは、公社の幹部としては受諾したかった、しかしながら予算上の問題等があって、簡単に政府部内の調整ができなくて、それがために受諾ができなかったというふうな事情があったようにお認めになっておられましょうか。
  12. 藤林敬三

    藤林参考人 私はあまりこまかいことを聞いてもおりませんが、おそらくそのようなことではなかったのかと推測をいたしております。
  13. 大橋武夫

    大橋(武)委員 これは委員長に伺うことがいいか悪いかわかりませんが、そのことは結局いわゆる国鉄におけるアベック闘争調停段階にまで持ち込まれておるんだということを一面からいって感ぜざるを得ないような気がするのですが、一体そういうふうになった場合においても、調停という手続を前置手続としてやはりとっておくということがほんとうに問題の解決のためにいいかどうか、あるいは調停というものは場合によってはむしろ省略して、仲裁ということですぐ解決案を出すということがいいのかどうか。これについても制度の問題として非常に重大な問題かもしれませんが、もしお考えがありましたら伺わせていただきたいと思います。
  14. 藤林敬三

    藤林参考人 お答えをいたします。私は今の御質問に対しましてはこのように考えております。現状制度上、予算措置に関連をいたしまして、調停案経営者側が簡単にのめない。予算措置政府の行われるところである。そこで若干いわゆる新聞などに伝えられましたようなアベック闘争的傾向が全然ないわけでもないのでございますが、しかしそうかといって、そうだから調停委員会の存在は無意味ではないかという御質問のように受け取れますけれども、私はそれは、もしかくのごときものがありとすれば、制度の方に若干の考慮すべき余地があるのであって、法の建前から見ましても、賃金団体交渉対象になっておるということになりますと、やはりこれはあっせん調停仲裁というような段階あとにあるのが穏当な形ではないか。従ってこの法の温度はやはり存続すべきものであって、そしてこれに合せる現実がいささかこの制度にそぐわない点がもしありとすれば、制度そのものを考慮すべきだと私は思っております。
  15. 大橋武夫

    大橋(武)委員 今の御趣旨は、法律上の制度にうまくいかない点があれば、むしろそれは運用上の問題として考えるという意味でございましょうか。たとえば仲裁前の調停において労使が一致した結論が、しかも当事者の一方から拒絶されたという一つの結果があったわけでございますが、それは結局委員の人選なりあるいは委員公社との関係なり、そういう点をもっと合理化することによってより合理的な運営ができるだろう、こういうふうな御意見でございますか。
  16. 藤林敬三

    藤林参考人 私が申しましたのは、なるほど調停委員会というものは、現状がよかれあしかれ、現実かくのごとくであるという点に即して、公平冷静なる調停が行われるべきものであり、なかんずく公益委員なるものは絶えずそういう立場に立つべきものである。従いまして現実はどのようであろうが、そのいかんにかかわらず、そういう建前で私たち調停をいたしますから、現実いかんを問わないのですけれども、しかし御質問のような話が出ますように、いろいろ現実に問題がないわけでもありません。そういたしますと、私はそういう現実の方を改められることがよろしいのではないか、こう実は思っているのですが、究極のところ、そこまで言うことは仲裁委員としてどうかと思いますが、私個人としては、やはり何か公社制度というものに対する不徹底さがいろいろあるのではないか。企業体としての一種の独自性を持っておるとはいいながら、実は必ずしも独自性を持ってないというところにも禍根があるのです。だからほんとう独自性を持っておられたならば、御質問のようなことがあるいはなくなるかもしれないとも考えられる。これも一つ考え方だと思います。こういう問題になりますと非常に大問題でございますので、私たち個人としては意見はいろいろ申し述べますけれども、公けの機関としての仲裁裁定とか調停とかいうようなところでそういうことを言うべき筋ではございませんので、黙っておるような次第でございます。
  17. 大橋武夫

    大橋(武)委員 せっかく機会でございますので、いろいろ伺いたい点もございますが、他にたくさん同僚質疑がございますので、これで私は終ります。
  18. 大坪保雄

  19. 横山利秋

    横山委員 質問をいたします前に、藤林委員長を初め仲裁に当られた皆さんの非常な御労苦に対して、敬意を表する次第であります。この問題は、今私伺っておりまして、藤林さんのいろいろな見解で多くの示唆を受けたのでありますが、その中からまず一つ二つ質問をいたしたいのであります。今大橋委員の御質問に対して、本来何とか調停で成立をさせたい、こういうお考えのようであります。これは別に公共企業体だけの問題でなく、あらゆる労働問題について同じようであり、さらに藤林さんの御意見は、調停段階よりもさらに一歩前の団体交渉段階において解決するのがほんとうでないか、こういう御意見のように憶測するのでございますが、どうでございましょうか。
  20. 藤林敬三

    藤林参考人 私が先ほどお答えいたしましたのは、賃金その他の労働条件につきましては、団体交渉対象になっておることでございますので、団体交渉で穏やかに問題がおさまることができるならば、これが望ましいことは万人否、定できないことでございます。そのことを申し上げただけでございまして、必ずそうあるべきであるとは実は私も申し上げていない。そういうことが可能ならばそれは望ましいのは、これは当りまえではないか。団体交渉でおさまらなければ、その次の段階あっせんでおさまれば、これまた望ましいのである、調停でおさまるならば、これは当然望ましいのではないか、こういうことであります。
  21. 横山利秋

    横山委員 もっともであります。そこで、今おっしゃった、しかしながらそれがうまくいかないという点について、二点ばかり御指摘になりました。一つは何とか制度考えるべき点があるのではないか、また別の立場から、公社自主性といいますか、独自性から考えたらいいのではないか、こういう御意見開陳があったわけであります。そこに、今国会なり政府部内で問題になっております点と、藤林さんの御意見と、若干そごをいたしておる点があるわけであります。それはどういうことかといいますと、たとえば一例をあげますと、今度出て参りました補正の予算であります。予算の中で、先生御存じのように、今まで給与総額の中においては公社が自主的に賃金を決定し得る幅があったのでありますが、今回給与総額の中と外とに分け寂して、その移流用については大蔵大臣なり運輸大臣の承認なりあるいは協議を要する、こういうふうな予算総則の改正がこの国会に出されておるわけであります。この点については、今おっしゃったような独自性自主性は今でも非常に少い。従って団体交渉解決しない、調停解決しない、仲裁の問題がある、こういう方向を何とか除去したいというあなたの御意見とは背反する結果になるではないかとおそれるのでありますが、この点について御意見をお伺いしたいと思うのであります。
  22. 藤林敬三

    藤林参考人 私は先ほど大橋議員さんの御質問お答えをいたしました場合に、少しよけいなことまで実は申し上げた。それは実はそういうつもりで申し上げたのでございますが、公社制度上、もう少し企業体としての独自性があれば、賃金問題などは調停でも問題がおきまるようなことになるのではないか。従って調停で問題がおさまらない云々という問題については、そういうことも考えられるのではないか、こう申し上げたのですが、それは私の個人としての意見でそういうことを率直に申し上げましたが、私は実はそれに繰り返して申しましたように、これは実は公社あり方についての大問題でございまして、そういう工合考えるのも一つ考え方だと私は実は思っておりますが、あるいはもう少し知恵をしぼれば、別のいろいろな考え方もあり得るのかと思います。そういう意味で、私はほんの参考的に私の個人的な意見というものをよけいに申し上げただけにすぎないのであります。ただおっしゃるように、これは一応企業体なんですから、私の個人的な意見をまた繰り返すようで恐縮でございますが、常識的にいうと、やはり自主的に問題がおさまるような範囲がかなりあってもいいのじゃないかと思いますけれども、しかし現行制度そのものが、どうも私たち意見を申し上げる、手が届く範囲内ございませんので、ただ個人の見解としてはそういう意見を持っておりますということだけを申し上げる以上のことは、仲裁裁定委員会におきましての意見としては、申し上げる筋合いでは実はないわけであります。
  23. 横山利秋

    横山委員 まあ遠慮深くおっしゃっておるのでありますが、しかしながらこれから調停なりあるいは仲裁にお当りになるに当って、基準内の賃金と基準外の賃金との移流用については、今までのように公社独自性ではなくなるのであります。超過勤務の予算から基準内の予算へ流用をすることについては、今までは公社総裁の独自な立場で、それこそほんのちょっぴりの自主性として許しておったことですけれども、それが今回から、かりに大蔵大臣なり運輸大臣なり郵政大臣のそれぞれの承認を要するとしたならば、調停ということについて非常に問題が起ります。みんな仲裁へいくかもしれぬのであります。団体交渉では妥結しない。法律上は妥結をしても、実際上には多くの難関がそこに横たわってくる。結論的に言いますと、大蔵省の承認がなければ協定、協約も何もできない。こういう結果になると私は言うのです。その点について、あなたのきょうの御意見は、そういう立場ではないとおっしゃいますが、しかしずっと将来を見通してみますと、今後の調停、今後の仲裁に非常に大影響を及ぼす問題でありますから、その点について腹蔵のない御意見を承わっておいた方が、国会の審議としてはスムーズにいくのではないか、こう考えるわけでございます。
  24. 藤林敬三

    藤林参考人 問題は、すべて政府の承認を得なければ解決をしないというように、今日以上に今後もなされそうだということでの御質問でございますが、私は、調停が出ましても政府が御承認になればそれで問題が落ちるということなんですから、必ず仲裁にいかなければならぬとも限らないと思っております。しかし、政府が御承認なさるかなさらないかということは、私の関知しないことでございますので、もし承認をなさらなければ、私のような立場からいいますと、調停をやっておる者からいうと、調停で問題が落ちてもいいのに承認をなさらないから仲裁にいくということばかりが能でもなかろうと思いますので、でき得べくんばそういうところで仲裁へいかぬでもいいような工合政府が御対処されれば、それで問題が落ちる道がある、こういう工合考えます。
  25. 横山利秋

    横山委員 理屈を申し上げればあなたのおっしゃる通りであります。しかし私も先生には長らく、十年以上もいろいろと啓発していただきました。その過程から申しますと、何とか団体交渉で円満に解決をする。それには労使双方がその責任を持っていなければいかぬ。自主性を持っていなければいかぬ。その自主性と責任の度合いというものに、紛争が円満に解決し得るかいなかがかかる。労働組合にあっても、大会で承認を得ればいいが、一々大会に諮らなくても、中央執行委員会として責任を持って仲裁委員の前でものが言えるというふうでないと、話がつきません。公社総裁にいたしましたところで、なるほど大蔵大臣の承認を得ればそれは済みます。けれども、先生の前で、一ぺん大蔵大臣に承認を得てきまして、それでお返事をいたしますということでは、ほんとうに責任のある労使というものは生まれないのではないか。それでみんな組合の幹部はうしろの方ばかり向いている、公社もまたうしろの方ばかり向いている。紛争に当られる調停委員仲裁委員は、いつもくつの裏から足をかくがごとき態度で調停仲裁に当らなければならぬ。こういうことは抜きがたい問題として起ると私は思うのであります。そういう点について私は、運用上の問題が実は制度上の大きな欠陥に発展しはすまいか、これを心からおそれておるのでありまして、そういう意味合いにおいて、重ねてもし御意見が承われれば幸いだと思います。
  26. 藤林敬三

    藤林参考人 横山委員の御意見に対しまして私も反対する理由一つもないと思います。ただ調停を扱います者としては、先ほども申しましたように現状は、どのようであろうが、よかろうが悪しかろうがとにかく現実かくのごとき状態であるということで、私は今後この協定は――今後でなくて今でもそうですが、調停をやって、そしてそういう現実の中で問題がおきまるというような努力調停段階では極力する、先ほどもそのことは申し上げたのであります。御説のように今日調停では問題がおさまらなくていろいろ仲裁にいかざるを得ないとか、あるいは調停案が拒否されるとかいうような事態が発生して、理想からいうと若干遺憾であるということになっております根拠は、確かに御意見の点に関連している部分が多分にあるということは私も認め、かつそのような御意見の通りになることが望ましいというのは、個人的な意見としては十分持っております。
  27. 横山利秋

    横山委員 ありがとうでございました。  第二番目にお伺いしたいのは、少し問題がはずれますけれども、しかし仲裁理由書の中にあります格差の問題であります。言うなれば予算単価と実行単価の問題であります。こないだ私はこういう例を出しました。たとえば予算単価で石炭単価が五千円として大蔵省が組んだとする、その五千円の予算単価で郵政省なり専売公社なりが、あるいは国鉄なりが、石炭業者と交渉をして四千円で買ったとする、千円予算単価が余ったのです。この余ったということは非常に経営者としてはりっぱな手腕だと一応言い得ます。今度は経済事情が変動して石炭が上ったといたします。七千円で買った。これを称して不当なる支出というが、客観的に見れば石山灰が上ったのであるから、予算単価は六千円であるけれどもこれは七千円で買ったならばやむを得ないじゃないか、これが一般的な問題であります。それを今度は給与の問題に当てはめてみます。たとえば専売公社が五千人の予算定員を大蔵省から指示された、その五千人の予算定員で専売公社総裁が高能率高賃金をやろう、そして四千五百人で政府が指示し国会がきめた業務成績を上げたとする。そうすると五百人分の予算というものを、非常に働いた、労働強化もさしたのであるから、その賃金に加えたとする、これは違法であるかないか、おのずから明僚であります。私は今日の状況としては専売公社がそういうことをしたならば、これは理屈はあっても、政府のベースからいってもよくやったといってほめられこそすれ――五千人の人間でやるのを四千五百人で業務能率を上げたのでありますから、これはほめられこそすれしかられる覚えはないのではないか、また政府みずからも今日までそういうふうに指導しておったのではないだろうか、こう考えるわけであります。従って言うなれば予算単価と実行単価というのは違うのが当然であって、同一なのがおかしい。もし予算単価と実行単価が同一であるとするならば、それは経営者は国会のきめたそのままに何の責任、何の考え、何の理想もなく、ただきめられた通りにやっている事務官僚にすぎないのではないか、こういう感じがしてならないのであります。現に五千人ときめた予算定員がそのまま専売公社で実行されるということは、途中で死んだり生きたり採用したり何かしますからあり得べからざることでありましょう。この自然減自然増を抜いて、なおかつ経営者の努力として少くやる多くやるということは、これは経営者の自主的な問題である。また労使間で労働強化なりあるいは労働低減なりの問題として協定をしたそれによって生ずる問題である、こういうふうに理解をしておりますが、仲裁裁定予算単価との格差の問題を取り上げられたということは別の観点から取り上げられたと思っておるのでありますが、世間がそれを誤解いたしまして、何か予算単価と実行単価とは同一であらねばならぬというような錯覚に陥っておるのでありまして、その点が仲裁委員会でお取り上げになった気持と全く逆な立場になっているのであります。この辺を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  28. 藤林敬三

    藤林参考人 予算単価に千二百円を乗せるというので仲裁をいたしましたことは、先ほどちょっと申し上げましたように、実行ベース幾らであるかということが必ずしも最近のものでは明確にこれをきめがたいというのが一つの大きな理由であります。しかしわれわれ一般国民的な角度で、予算の問題についてはいろいろな技術的なことは知りませんが常識で考えても、基準内予算単価、基本給の予算単価等がある場合にはこれと現実があまり離れておるというのは少しおかしいというのは、これはわれわれの持ちました当然の常識だと考えておるのであります。てこでそういうことがありますためにいろいろ問題も、現に昨年末われわれ行公社調停をやっております場合の賃金問題に関連してあったわけでございます。というのは三十年度末の調停にからんでの第一項確定分なるものが電電公社国鉄公社等についていろいろな問題があった。これはやはり予算単価実行ベースの問題に関係する問題でございまして、こういういろいろは問題があり得ることは、どうもわれわれ調停を扱う者からいいますと今後ない方が望ましいという立場もございまして、先ほど申し上げました理由もあわせて予算単価なるものを出しましたので、予算単価実行ベースが開いていていいといってそう大きく――それはそれこそ一文一銭も開いていてはけしからぬというような意見はわれわれは持っておりません。仲裁の中に書きましたように著しく開いておるのはおかしいというのは、明確に仲裁委員会理由書の文言通りわれわれがとった立場であることを明確にしておきたいと思います。
  29. 横山利秋

    横山委員 そこでお伺いしたいのは、予算単価と実行単価を労使の問題としてはどちらを優先に取り上ぐべきかという問題であります。この間本委員会で法制局を招致いたしまして、三公社現業賃金はだれがきめるのかという昼間をいたしましたところ言下に、これは労使できめる、それからそれがまとまらなかったら仲裁できめる、これによって権利義務が発生するのだ、その義務が発生したところによって予算を編成をすることになるであろう、こういう見解があったわけです。私がお伺いしたいのは、仲裁委員会予算単価と実行単価を議論なさいましたときに、予算単価というものは牢固として抜くべからざる固定的な観念でおっしゃるのであるか、また実行単価というものが今言ったように法制局の見解ですね、この賃金労使によってきめる、協定によってきめられる、このものを動かすべからざる立場においてお考えになったのか。私は貸金問題の権威者である藤林先生に、愚かな質問でまことに恐縮ではございますけれども、世間はこんな感じを持っておるようであります。予算単価、これは国会できめたのではありません。国会予算をきめるのであって、予算単価は一参考にすぎないのであります。国会はこれを議決してはありません。予算単価は単に大蔵省と主管省の間で議論をきれる一つの基準になるにすぎないのであって、法的拘束力は何も持っていないのであります。ところが世間が何か承知をいたそうといたしておりますのは、予算単価というのは科学的にもうきっちりきまってしまっておって、これが基準になって実行単価が高いの安いのというような印象を受けておるのであります。ところが実行単価は政府調停なり仲裁によってでき上った民法上の契約事項でございまして、権利義務はそこに画然として発生しておるのであります。従ってこの国会もきめていない、基準も科学的であるかどうかについては議論がある、またその予算単価によって経営の自主性がゆがめられておる。こういう浮動性のあるものが、確固として動かざるような印象をもって、そこから実行単価を議論することに根本的な誤まりがあるのではないか、こう考えておるのでありますが、いかがでありましょうか。
  30. 藤林敬三

    藤林参考人 私たちは先ほど申しました第一の理由に従いまして予算単価を使ったわけでございますが、それはなるほど今のお言葉にもありましたように、われわれはこの基準を使うことの方がはっきりしているという意味でこれを使ったのでございます。予算上これが制度的にはっきりきめられて云云ということであるかどうかは私の関知しないことであって、賃金問題を考える場合の基準として、これが実行ベースを基準に考えるよりも明確であるから、この明確な基準にした、こういうことでございます。そしてその裁定は、この明確なる基準に千二百円を乗せたもの、増額したものの範囲内において賃金をきめるのだ、こういう工合にしておるのでありまして、裁定としては、この限りにおいてはこの点明瞭であると私は思っております。
  31. 横山利秋

    横山委員 何か誤解があるようでありますが、裁定予算単価をお使いになって、それを一つの基準としておやりになったことに、私は何らごうも疑問を差しはさんでいるのではないのです。それは誤解のないようにしていただきたい。私が質問をいたしましたのは、予算単価と実行単価の格差の問題を取り上げられた、そのことについても今議論をしようとしておるのではないのです。ただ世間が考えておることは、予算単価というものはもう科学的にきっちりなっておる。それから実行単価というのは何か権威のないようなものに考えておる。それがおかしいのではないか。弐行単価というものは協約、協定、公労法によって債権優勝の発生したものである。予算単価というものは国会で議決もしていないし、大蔵省が一つの訓令的なものとして各省に渡している一つの基準ではないか。従って債権債務が発生したものの方へ予算単価をさや寄せさせていくべきではないか、結論的に申せばこういうことを言いたいのであります。おわかりでございましょうか。
  32. 藤林敬三

    藤林参考人 まあ議論めいた発言をするのも時間をとってどうかと思いますので省略いたしますが、今の最後の横山議員の御意見はそれも私は一つの手だと思っております。予算単価と実行単価を埋めるというのは、これはいろいろなやり方があり得るのでありまして、そういうことも考えれば確かに一つの方法であることは間違いありません。
  33. 横山利秋

    横山委員 それも一つの手だと、こうおっしゃったのでありますが、非常にデリケートなお言葉でございますが、しかし先生、これは私はこういう席上でこれ以上追及するのはどうだろうという雰囲気のようなものが先生の方におありになるようでありますけれども、私は理論的に労働法の立場から、協約、協定というものはその締結によって債権債務が発生された、このことは法制局も認めておるわけでありますし、労働法学者としての先生も当然首肯されるべきものだと思うのであります。そうだとしたら、その実行単価の方が高い、その高いのをずり下げて、債権債務が発生したものを消滅をきせるというべきではなくて、この科学的根拠のない予算単価を債権債務のある方へさや寄せきせるべきがほんとうではないか、それ以外にどんな方法がありましょうか、それ以外に労働法と照らし合せてみて方法があるようでしたらお伺いしたいと思うのでありますが、労働法の立場からいって、これは予算単価を実行単価の方へさや寄せきせるべき方向こそ労働法上では残されている唯一の道ではないか、こう考えるわけでありますが、いかがでございましょうか。
  34. 藤林敬三

    藤林参考人 先ほどちょっと、もう少し申し上げようと思って、ど忘れしてひっ込みましたけれども、今お話を伺いながらまた思い出しましたから申し上げます。実は予算単価と実行単価の差というものに問題を指摘いたしましたが、政府予算措置につきましては、あまり詳しく私も聞いてはおりませんけれども、しかし今後これを何とか措置をしていくというような政府の御態度のようでございます。それはわれわれもまたこの差が著しく開いているものは合理的に縮小するようにという勧告をしたわけでございますが、その線に沿って、もし数年後にあまり大きな開きがないということになれば、私は実行単価の上に幾ら乗せるというような調停もできれば仲裁もできると思うのですが今のような段階ではそれをなしかねたというのが、今度の裁定がこういう形をとったゆえんであるということを二つ申し上げます。  それからもう一つ、今おっしゃいました今度の場合でも、その予算単価と実行単価の差なるものを、予算単価を実行単価に近づけることによって措置するのが妥当ではないかとおっしゃいますが、この点につきましては、そのものを縮める方法としては、それは確かに一つの方法であるということを、私は今申した。ただ残された今後の問題については、私も調停につきましてはいろいろ考えざるを得ないと思っておりますが、現在の問題につきましては、裁定書の千二百円というものがどういう計算で出てきたかということは予算単価を基準にして考えて、そうして公務員民間給与との比較上千二百円を乗せるんだ、こういう範囲内で賃金がきまることが妥当であるのだという、この主文第一項及び理由第一に従ってやっていることでございますので、その点を全然はずしてしまえば、横山議員のおっしゃるように、そういう措置をする方があるいは妥当であるということになろうかと思います。しかし今度の裁定につきましては、そういう趣旨がここにあることを、私どもはどうしても没却するわけにいかぬのではないかと思います。
  35. 横山利秋

    横山委員 少し私の質問と角度が違うのでありますが、お隣りにすわっていらっしゃる富樫さん、もし今の質問の中でお気づきの点がございましたら、お伺いしたいと思います。
  36. 富樫総一

    富樫参考人 ただいま委員長から、本裁定との関連において最後につけ加えられましたこと、その前段につきまして、一般論といたしまして、実行単価が労使の間で権利義務として確定している、それよりも予算単価が低い、その格差を圧縮する通常の方法は予算単価の方を上げていくというのが通常の考え方である。法律的にもそうだろうと思います。
  37. 横山利秋

    横山委員 よくわかりました。それではその次の問題でございますが、今回公労委の委員会から国鉄総裁十河氏に対して出されました回答書の内容についてお伺いしたいと思うのであります。第二次協定分五百二十円、この五百二十円については仲裁委員会からこういうような回答が出ています。「質問の(1)及び(2)の額は予算単価と実行単価の格差の一部を形成したものであり、かつ、理由二の第一に述べた趣旨に基き一応、やむを得ざるものと認められるものである。しかしてこれらに基く予算単価と実行単価との格差の問題は、理由三の後段に述べた趣旨に基き将来の問題として処置するべきものである。」こう書いてあるのであります。今私が御質問をしておりましたのは、将来の問題として処置するその処置の方法を仲裁委員会にお伺いしたのでありますが、先生並びに富樫委員から、明確に予算単価を実行単価にさや寄せきせる方が常識上正しいのだという御見解を承わりまして、第一の問題はこれによって私の質問は解消するのでありますが、第二の問題として、現実の問題として、今補正が出ておりますものは、この五百二十円のうちの三分の一を千二百円から引く、こういうのであります。私どもあなたの方からお出しになりました回答書をすなおにながめてみますと、将来の問題ということは今日ただいまではないということは常識上考えられるわけでありますが、いかがでございましょうか。
  38. 藤林敬三

    藤林参考人 仲裁委員会が将来の問題といたしましたことは、お説の通り常識的にいうと、今後はこういうことのないように合理的にやっていきたいしかし今後というのは今を含めて悪いかと言われると、それは措置をするのに今じゃいけない、今後というのはほんとうの今後だというようないろいろな言葉上のやり取りなんか生ずるおそれもあると思いますが、きわめて常識的には、仲裁委員会は今後というのは文字通り今後だということでわれわれは考えておったのは事実なんであります。
  39. 横山利秋

    横山委員 まことに先生明快な論旨で私も全く同感に思います。常識上今後というのを今を含めての今後なんというものは、理屈はどこへでもつけられますけれども、しかし常識上学校の先生に習う「将来」という言葉は今を含まないのはわかり切ったことです。これが実は今問題になっておるわけであります。おそらくこの文書をお出しになったゆえんのものは、また仲裁理由書にございました仲裁委員会の趣旨とするものは、実際千二百円、千二百円と言っておるけれども、第一次の確定分、第二次の確定分を含めますと、先生も御存じのように、全く微々たるものであります。四百円だとか五百円だとかいう数字が実際労働者の手取りになるに過ぎないのに、千二百円という言葉が表を歩いておることについて公労協関係の労働者としては実は心外にたえぬ、こういう気持らしいのであります。なるほど事情を知っておりますものについては、第一次分があるんだからとかなんとかいいますが、それは収入の一つの中に入ってしまっておるわけです。それを世間にいけば、お前の方は千二百円上るそうじゃないか、こういうことに対して、一々いや、そうじゃないのだ、手取りはほんの三百円か四百円だ、こういって説明せんならぬのであります。それからまた将来の問題が今も含むんだという議論をされれば何をか言わんやというのが今日の状況であります。この三分の一の額というものはそう大した額ではございません。先生御存じのように、百七、八十円くらいの額だと思うのであります。それを、今を含むというて、ここに労使の紛争を新しく激化きせるということは何としても忍びがたいところであると思うわけであります。仲裁委員会としては、将来ということは今を含まない、これこそ常識上の将来だというふうにお考えだとして私どもは了解をするわけでありますが、この点についていま少し仲裁委員会の態度を明確にされることによって今日の紛争の重要なる部分が解決をすると私は確信をするわけでありますが、いかがでございましょうか。
  40. 藤林敬三

    藤林参考人 今御指摘の問題点は、実は予算上の措置のことにつきましては詳しく聞いておりませんので明確に、おっしゃる三分の一というのが減るのかどうか――減るといいますか、千二百円のワクの中に入ってしまうのかどうかということについても計数的には私もはっきりいたきない面がございます。  それからもう一つ今おっしゃる問題は、将来われわれはこの実行ベース予算単価の差を合理的に縮小することという勧告を書き連ねたわけでありますが、しかし出てきた問題そのものは、むしろ別の角度から、私先ほどもちょっと付言いたしましたように、この仲裁の主文第一項並びに理由第一に従って政府が御処置なさったのではないかと想像いたしておるので、あります。従って問題は、今おっしゃるような角度からの問題ばかりでもないではないだろうか、こういう工合考えておるのでございます。
  41. 横山利秋

    横山委員 予算上の問題と実行上の問題と分けて考えたらどうか、こういう御意見のようであります。しかしそれは俗にいう第一次確定、第二次確定、いわゆる俗称やみ賃金がここまで議論されて参りますと、予算上の問題は別、実行上の問題は別ということはまた新しい問題を――違いましたか。ああそうですか。そういう話ではないならば、少くとも今国会で議論をされております問題の最も重要な部面の一つの五百二十円の三分の一、約百七、八十円――三公社現業それぞれ少しは違いますけれども、それが今日の重要な問題の一つであるとするならば、ここに仲裁委員会が、今日の問題はここであるということを明確にお答えを願うことによって、審議も非常にスムーズになりますし、労使にとってほんとうに本来解決しなれけばならぬ重要問題の一つがここにすっぱりと解決すると思うのであります。重ねてお伺いいたしますが、将来の問題ということは、今日を含まない常識上の将来である、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  42. 藤林敬三

    藤林参考人 私たち理由書の中に今後云々ということを申しましたのは、文字通り今後こういう措置が行われることという常識解釈の勧告をしたわけでございます。政府が今日三分の一云々という問題をお取り上げになっていらっしゃるのは先ほど申しましたように、その問題とは別の角度からやっていらっしゃるんじゃないかというように私は考えられるのではないか、こう実は申し上げておるのであって、その点では、しかもこれに加えて私先ほどもちょっとお答えをいたしましたように、三分の一というが、その金額については明確な計数が私にもわかっておりませんので、百七十何円になるかどうかということは私もちょっと判断しかねておる点であるということと、それから先ほどは申し上げませんでしたけれども、主文の第四に書きましたように、予算単価について千二百円を載せる、そのワクの中で本裁定実施に当って労使双方の協議をなさる部分は若干あると思いますので、協議をなさってそれによって問題が一致しない場合には仲裁委員会としては何かお世話をしなれけばならぬようなことになるかもしれないということを書いておきましたが、  〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 万一問題が起きました場合――われわれとしてはそういうところで労使双方やってみたが一致しなかったということがあるならば、われわれはその場合その問題として申請があれば取り上げるということであります。
  43. 横山利秋

    横山委員 藤林先生にもう一度重ねてえらい恐縮でございますけれども、この問題は別の角度で政府が取り上げていらっゃるのではないか、こうおっしやいます。けれども、ほんとういうならば、今ここで仲裁が出された、裁定書の主文第一項、第二項によって団体交渉が行われ、それによって幾らかかるかということがきまる、それについて資金上予算上不可能であるかどうかがきまる、それによって国会へ出てくるというのが当りまえの筋であります。ところが政治情勢はそれを許しておりません。すでに補正予算は出ておるのであります。補正予算が天下の話題になっておるのです。それは労使双方知っております。その補正予算の中で第二次確定分の三分の一はこれを引くんだ。政府の引く理由は何かというと、あなたの方へ質問書を出し、あなたの方から出された回答書に準拠しているんだ、こう言っておるのであります。従って別の理由ではございません。これは明らかに政府にお出しになった手紙に準拠しておるのであります。つまり仲裁委員会の意思だと言っておるのであります。そこのところがきわめて重要であります。ですから私は重ねてお伺いしたい。政府に出しました先生の方からの回答書は明確に言っておりません。相当部分の改善をしろとこう言っているにすぎないのであります。その相当部分ということを政府は自分で三分の一を引くんだ、こうきめておるわけです。ところが仲裁委員会は一方国鉄に対し将来の問題だとお答えになり、公労協の労働組合に対しても、きのうでありましたか、同じように将来の問題だとお答えになったわけであります。従ってこの際私が重ねて明らかにしていただきたいことは、組合と経営者の方は、これは自分たち意見ではない、仲裁委員会意見だ、こう言っているわけです。政府もまた仲裁委員会意見だと言っている。そこで先ほど私はどちらの御意見をおとりになるのでありましょうかと言ったところが、富樫委員は明確にこれは今日を含まない将来の問題であるとお答えになったわけであります。そこで先生に重ねて、えらい恐縮ですけれども、これが今日の重要な部面の話題であるから、一つお答えを願いたいと言ったわけであります。
  44. 藤林敬三

    藤林参考人 確かにどうも大問題のようでございますが、政府質問に対して、仲裁委員会として相当額云々という答えをいたしました。その問題にこれはかかわっておるわけでございますが、その点を横山君は今はっきりさせる、こういうことでございますが、そういう答えをいたしましたのは、主文第一項、理由第一に従って賃金の改訂を今度行うのだ、しかも予算単価実行ベースの差があるという問題は、今後合理的に措置をするのだ、この部分はわれわれは付帯的に勧告しておりまして、今後の問題としてはこういうことがあるのはあまり好ましくないではないか、実はこう申し上げたのであります。そこで主文第一項及び理由第一に従って措置をすれば、おっしゃる差額のまるまるは千二百円の中に入るんだという措置も可能だという考え方も出て参ります。しかしそのようにしていいのかと言われると、私たち現実の労働問題を扱っておりますので、その結果国鉄については、伝えられるところによりますと、八十円しか上らないとか、九十円しか上らないとか、現行ベースと変りないということになるような結果を予定して、こういう仲裁裁定を出したのではございませんので、そこに今後の問題というのが実はあり得るのです。従ってそういうような解釈、運営またはこの仲裁裁定の実行をされては困りますという意味で、相当額ということを申し上げたのです。ただ金額を明確に何百何十円ということを申しませんでしたのは、先ほど申しましたように予算措置政府でおやりになることで、あまり詳しく聞いてもおりませんし、その結果先ほど来申しましたように何百何十円というようなことがそこに出てくるのは、私には今日は明確にし得ない段階でありますので、そういう工合に相当額と申し上げたのでございます。
  45. 横山利秋

    横山委員 どうもくつの裏から足をかくような質疑応答になって、まことになんですけれども、やはりここのところが一番大事な問題だと思うわけであります。少くとも公労協の労働者に与えられました五百二十円――一つの基準として国鉄を材料にとるのでありますが、三公社現業すべてについて労使双方にお与えになった文書は、将来の問題として措置すべきだ。この将来というのはことしを含まない、こういうふうに常識上理解すべきだ、そこまではいいのでありますが、それ以後の問題として、同時に補正予算が出ておるのであって、予算の中から三分の一を、千二百円から引いておるのです。引いておるということは労使双方にお与えになった内容と違うということが今日の問題になっているわけであります。従って経営者及び労働者は、仲裁委員会の意思としてお与えになったこの文書をそのまま履行すればいいのか、まず第一にそれからお伺いいたします。
  46. 藤林敬三

    藤林参考人 一番最後の政府に対してわれわれが回答した回答文ですか。
  47. 横山利秋

    横山委員 いえ、そうではありません。十河総裁に与え、それからきのう与えられました公労協に対する書面によりまして、経営者は経営者、労働者は労働者、同じ文書が与えられました、この同じ文書は、将来の問題として措置せよといっているんだから、これは純粋の意味の将来だというふうに労使双方は理解している。つまり五百二十円はまるまる引かない、こういうふうな仲裁委員会の意思だと理解しているが、それでよろしいかということであります。
  48. 藤林敬三

    藤林参考人 引かないというのは、それは最初国鉄総裁からの慣用にわれわれが答えましたように、千二百円の中に含まれるのは、昨年の調停案第一項確定分及び定期昇給のための原資等、こういうものはその中に入っておるのだ、だからそれ以外のものは入ってないのだということを実は明確に答えているわけなんであります。それが五百二十円という問題であるわけであります。五百二十円というのは千二百円の中には入ってないのだということは、これは裁定の文章からいえば当然なことでありまして、ただその問題をいつどういう形で縮小をしていくのか、その切られた分をどう縮小していくかという問題につきましては、われわれとしても具体的に事実をこうしろということは言っておりませんが、実はそこに問題がある、こうおっしゃるのだがその問題というのは、先ほど来私が答えましたように、主文第一項及び理由第一に従えば、極端なところではそれがゼロになってしまうのだというような解釈もできないわけではないとおっしゃる可能性もあるから、それは裁定全体の趣旨から言うとそうではない、といって金額もはじきかねるという先ほどから申しました理由から相当額こう申し上げた。しかもその裁定実施に当って労使双方が御議論なすって、そしてその千二百円のワク内において実施の協議をなすって、もし折り合いがつかなれけば仲裁委員会としては何かの仲介の努力をせざるを得ないのではないか、こういう工合にわれわれの立場はとっておるわけでございます。
  49. 横山利秋

    横山委員 先生、一ついろいろなことを抜きにして最終的にお伺いをいたします。この文書は先生もちろんごらんになっていらっしゃると思うのでありますが、この文書は、労働委員会委員長藤林敬三氏から日本国有鉄道総裁十河信二あてに出された公式文書です。おそらくきのう出されたのも公式文書であろうと思うのです。(藤林参考人「そうです」と呼ぶ)公式文書によって予算単価と実行単価の格差の問題、しかもこの格差は、質問書で明確でありますように、昭和二十九年度の調停案に基いて二百八十円の給与是正を実施した額、第二番目は、昭和三十年度の調停案に基いて定期昇給を増額実施した額、この二つの額の合計額を一体引くのか引かないのかという質問に対して、公式文書は、将来の問題として措置するべきである、こう言っておる。従って将来の問題ということは、先ほどお答えになったように、ことしの問題を含まない、こういうふうに労使双方はこの文書を常識的に理解しておる。その理解で差しつかえないかということを私は最終的にこの問題でお伺いしたい。従ってイエスかノーかという点を、仲裁委員会の権威にかけて明確にしていただきたい。
  50. 藤林敬三

    藤林参考人 それはその通りなんです。今横山君がこれを僕が見ておるかなんて変なことを言われたが、私が見おるどころじゃない、私が相談をいたしまして、やっておるのでありまして、私が見てない回答なんというものはどこへも出しておりません。
  51. 横山利秋

    横山委員 失礼いたしました。  それでは本問題については完全に了解をいたしました。  最後にもう一つだけお伺いをいたします。それはもう今日まで幾たびも幾たびも論争を重ねてきたことでありますが、仲裁委員会としての立場を論理的にお伺いいたしたいのでありますが、仲裁裁定の実施ということはいかなる意味であるかということであります。この間労働委員会の調査室から出ました今日までの仲裁裁定の処理概要でありますが、これによりますと、実施期日をおくらして仲裁裁定を承認したものは十件ございます。それから金額を限定して承認したものが一件ございます。承認のなかったものが一件ございます。このように実施期日をおくらして承認をしたのが十件、金額を限定して承認をしたものが一件ございますが、これらはかつて第一次裁定に当られた末弘先生、今井先生、それから堀木先生等から、一連の仲裁委員会の見解として、仲裁裁定というものが、十月からなら十月から千円ふやせといったら、十月から千円ふやすのが、これが裁定実施なんだ。それを一月からにしたり、一万円を九千円にしたりすることは裁定実施ではない。これは別の角度からの給与改善である、こういう論理が仲裁委員会で一貫しておったと私は思うのであります。そのことは今日においても仲裁委員会の堅持せられております理論であるかどうか、お伺いいたします。
  52. 藤林敬三

    藤林参考人 最初に、今のお尋ねに対して先に明確にお答えいたしますと、その通りでございます。少くとも私は委員長とし、かつ公労委の会長としてはそういうつもりでおります。これはきわめて明瞭でございます。
  53. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、もしかりに政府及び国会が、仲裁裁定の時期をおくらしたり、金額を少くしたり、あるいは今度行われておりますように、その財源を、タコが足を食うように、自分の足を食って、口から入る分はまあこれは裁定実施になる。けれども、腹の中へ入ったら自分の足はないのです。からだの総量はそうじゃないということは、一体裁定実施になりますかどうか。これは笑い詰みたいなことでありますが、一つ率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  54. 藤林敬三

    藤林参考人 また問題が元へ返ったようでございますが(横山委員「同じじゃありません。」と呼ぶ)先ほどの御質問と同じじゃないかと思いますので、同じことを繰り返すのはどうかと思いますが、最初一つついでに、ちょっと立たしていただきましたので申し上げておきたいと思いますが、実は最初仲裁を出しました場合のごく概括的なことを申しましたが、その際に実は申し上げることを忘れましたが、御承知の通り、仲裁委員会は五人の合議制で仲裁裁定を出し、それから今までの間に国鉄公社労働組合、このたびは政府、いろいろ関係当事者質問があり、これに答えて参りました。そういう場合には、一々やはり五人の委員が集まって相談をして、これに答えて参りました。実はこれは非常に問題でもあり、微妙な問題だと今おっしゃるように実は問題でございますので、こういうところで私が申し上げることも、ほんとうはそういう合議旧制の建前からいうと実は、どうかと思うのですけれども、だからその点をお含みの上で、私個人としてはもちろん発言したことについて十分責任を持っておるわけでございますが、これは合議制の建前委員会ではあが、一々御質問を合議の形でやって答えているわけではございませんので、私が一人で責任を持って、一人での発言――仲裁委員長ではあるが、そういう合議制の建前でもあるにかかわらず、仲裁委員長が一人で発言をしているのだ、こういう工合におとり下さることを希望しておきます。
  55. 横山利秋

    横山委員 どういうことをおっしゃったのか私よくわからないのであります。先生のお気持はわからぬではありませんが、しかしここは国会でございまして、そうして私どもが御者心見をお尋ねしておりますのは、公共企業体仲裁委員会委員長である藤林敬三氏でありまして、個人藤林敬三氏ではございません。そのことは確かに藤林先生のおっしゃるように、すべてがすべて御相談していらっしゃったのではないとは思います。しかしながら先ほどからのこの文書は公式文書であります。なおかつ先生は仲裁委員長としての全体の判断と権威をもって私は御答弁に当っていらっしゃると信ずるのであります。従いまして、テニヲハにいたるまで各仲裁委員と御相談をされたのではないということは万々承知をいたしておりますが、決して先生、御遠慮なさらないように、委員長としての御発言をなさって私は何ら差しつかえないものであると思います。これはこれでけっこうでございますが、私がお伺いいたしました裁定の実施という点について、私は先ほどの値引きをしたり月をおくらしたりしたのでは裁定の実施にはならないという先生のお言葉を了承いたします。  最後に私が触れましたのは、給与総額基準内予算はかりにふえたとしても、基準外の予算が、超過勤務やその他の手当ががたんと減る。基準内の予算はこれによってふえるけれども、基準外の予算ががたんと減る。そういうことは、仲裁委員会として直接関連はありませんけれども、望ましいことであろうかいなかということが聞きたかったわけであります。つまり名目上基準内予算はふえる。ところがそれと逆に、基準外ががたんと減る。しかも今度はここに関所が置かれる。流用禁止になるわけです。そうすると、一ぱい食ったという感じが労働者の中にあるわけであります。関所がなければまだしも、関所があってなおかつ基準内予算は上るけれども基準外の予算ががたんと減る。そうすると、一体何のことだという議論が今横溢しているわけであります。こういうことは、仲裁委員会として直接関係はございませんが、しかし仲裁委員会の趣旨というものが、労働者の手取りをふやす、手取りをふやしてあげるという立場であるならば、給与総額全体がふえなければ意味がないのではないか、また仲裁委員会としても基準内をふやして、基準外を落すということを想定に入れていないのではないか、こういう私の、並びに労働者の見解をどういうふうにお考えになりましょうか。
  56. 藤林敬三

    藤林参考人 お答えをいたします。今の問題は仲裁委員会としてのお答えとしては、そういう基準外予算措置については何事も言っておりませんし、従ってこれは言う筋ではないと思います。これは政府予算編成をなさるのであって、そうして国会がおきめになるのですから、このことについては仲裁委員会はこの裁定を通して何も言っておりませんから、どのような措置が行われましても、仲裁委員会としてはどうこう言う筋はありません。ただし個人とし、今後の、問題の調整者として――仲裁委員長でなく、私個人といたしましては、この仲裁裁定の、先ほど来問題になっておりまする予算単価と実行単価が開いておるのは、著しく開いておるのはおかしいという問題を指摘しましたことは、もっと拡大して言うと、給与予算全体についても、もっと合理化というか、筋の通ったものになるのが好ましいと少くとも私は考えております。そこで、たとえば基準外予算がむやみやたらにふくれていくということがあれば、これは当然もっと実情に即して合理的に措置をなさる、これは当りまえではないがと私は思う。あるいはまた定員の査定が甘過ぎて、そこに給与予算がだぶついておるということがあれば、これもおかしいじゃないか。そういう意味の合理化をなさることは、個人としてはこれは当然あってしかるべきだと思う。そして最後にそういう給与予算全体の合理化が行われて、なおかつその中で基準内予算単価実行ベースの開きが何かの形で今後埋められるということになりますと、私はそういう実情の中で、おっしゃるように、従来はそれを移流用その他で割合に弾力的に措置をしてきたものが、今後はだんだんできなくなのではないか、今度の仲裁で一ぱい食ったじゃないか、こうおゃしゃるけれども、私はそういう工合に合理化されたあげくには、そういう合理化された給与予算の体系の中で調停をやり仲裁をやって、給与改善の余地があり、またすべきものがあるならばすべきであるという勧告をやって、問題を全体として筋の通った方向でやっていけるのではないか、こういう工合に実は思って、そういうことを私個人としては少くとも期待をしておるわけであります。
  57. 横山利秋

    横山委員 ごもっともであります。私は決して先生の今の御意見に対して申し上げる気持はありません。もしも定員が甘ければ査定すべきである、その点については全く同感であります。ただ先生にお伺いというか、私の意見のようなもので、えらい恐縮でございますが、こういうことなんです。それは国会予算が通過したばかりなのであります。この間、われわれは本予算に対して手をあげ、あるいは反対したばかりであります。国会は、あの予算定員、予算単価で正しいのだと、国会の権威にかけて決定をしたばかりであります。そのあと裁定が出ました。今度は裁定を正しく実施しなければならぬという立場で、われわれは裁定に必要な予算を今審議しておるのであります。従って私どもの立場でいうならば、この間政府が出した予算の中に含まれておる参考となった予算定員は、政府としては自信と確信を持って、われわれに審議を求めたはずであります。それをわずか半月しかたたないのに、から定員があるのだとか、あるいは甘かったとかということを、政府自体が言うことがおかしいのじゃないか。これが半年もたち一年もたってから、実行上こういう問題が生じましたというなら、まだしもであります。これは政府がわれわれをごまかしたか、われわれが甘かったか、どちらかでありましょう。しかし少くとも国会の権威にかけて通ったばかりの予算の中で裁定を実施するけれども、この裁定を実施するための財源花、あれは甘かったとかいって取り上げて、そうしておめおめとわれわれの前に出してくるということは、常識上でもおかしいではないか。これが半年、一年たって実行上これだけの財源が捻出できましたというならば、これはまだしもであります。従って私は先生の一般論としての定員査定とか、あるいは超過勤務の予算を食うとか食わぬとかいう点について、決して、ごうも反論をするものではありませんが、通ったばかりの予算のすぐ直後に、この間出しました予算は甘うございましたということは、国会を愚弄しておるという感じがしてならないのです。ですから、その点は、先生の御意見を求めようとは思いません。ただ、先生の御意見を私は了承するけれども、今日の時点としては、別のお考えを先生もしていただきたい、こういうふうに私の意見としては申し上げるわけであります。先生がそれについて御意見がございますれば、お伺いいたします。――それではけっこうであります。  以上、いろいろの角度から私は御質問をいたしまして、大体において先生の確たる確信に触れて了承をすることができました。そこでお願いをいたしたいのは、今の問題がそういうところにございますから、いろいろの角度から、今後も仲裁委員会としては、政府ないしは労使双方に対して指示をなさい、いろいろなことをあっせんなり仲裁なりもなさろうかと思いますが、どうか今おっしゃったような第二次の格差の問題につきましても、仲裁の実施という意味におきましても、当初おっしゃいました、何がゆえに調停でおさまらずに、仲裁へいくか、そういう観点について、何とか制度上の――僕は、制度上ということは、今の政府部内の運用上と言った方が正しいのじゃないかと思いますが、そういう運用上、あるいは公社自主性問題等について、一つ仲裁委員会として一そうの御努力を賜わりたい、こう要望いたしまして、私の質問を終ることにいたします。
  58. 藤本捨助

    藤本委員長 滝井義高君。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 今、同僚横山君から、仲裁裁定に関するほとんど全般にわたる重要な問題について御質疑が行われ、それに対して藤林先生の方から明快な御答弁をいただきましたので、実は私たちの前にかかっておった霧が晴れた感じがいたします。特に将来の問題として実行単価と予算単価との格差を合理的に縮少されるよう、制度上または実行上、関係当局において留意する必要があるというのを、政府は直ちにというように解釈をしてやっておったようでございますが、それは間違いであるということが、大体明白になって参りました。この点は、そこに労働大臣も来ておられますが、労働大臣もその耳で十分お聞きのことでございますので、先般私の質問に対する答弁で、この現実給与改善措置というものをやりさえすれば、それで政府はいいのだというような解釈をしておったが、それは間違いであるということがはっきりいたして参りましたので、私は霧が晴れたという感じがいたします。  そこでこの際一、二点だけ藤林先生にお尋ねをしておきたいのですが、現在公社労働組合との間で適法に協定をして支払った給与、こう私たち考えておるのですが、それが現在やみ給与だ、やみ給与だということが非常にいわれておるのです。これは一体、だれがそういうことを言ったのだといっても労働当局も言っていません、大蔵省でも言っていません、みんな言っていないというのです。そうすると、これは仲裁委員皆さん方が、出された仲裁というものが、非常に難解であったために、どうもあれから見ても、やみというものがあるのだというような寃罪が、仲裁委員の先生方にもかかっておるような状態に見受けられるのです。そこで私はこの際やはり霧が晴れたついでにお願いをしておきたい点は、現在公社当局なり現業当局というものが、給与規定上支払うべからさるものを支払い、また労働組合が受けてはならないものを受け取ったものであるかどうかということです。私はそうでないと思っておるのですが、仲裁委員の先生方は、この仲裁を出すについて、今まで受け取っておった給与というものは、一体どういう性質のものと認定されておるか、この際ここに明白にしておいていただきたいと思います。
  60. 藤林敬三

    藤林参考人 明確にお答えをいたします。実はいわゆるやみ給与といわれておりますものが、仲裁段階で問題でございましたので、大蔵省当局の方に、一体これはどういうことなのかといって伺いましたところが、これは違法ではない、こういう答えを得ております。だから、おっしゃるように、これは違法的な意味で、はなはだけしからぬのだという意味には仲裁委員会一つもとっておりません。従いまして、日にちを覚えておりませんけれども、仲裁委員会あたりでやっておりますあとで、労働省の新聞記者諸君が来られまして、局長あるいは私がときどき会って、その段階の話をしておりましたある日に、君らは、やみ、やみという言葉が方々にどこからとなくあるようだけれども、あまりやみ、やみというようなことを言わないでくれ、かえって変になるからということさえも、冗談半分に私が新聞記者に申し上げたくらいでありまして、どうも罪は仲裁委員会にあるかのごとき今御発言でございますが、それはやぶから棒のような御発言で、私はここで一々そういう弁解をしておることもどうかと思いますけれども、実は私にとってやぶから棒であるということだけを申し上げておきます。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、仲裁委員会も、あれは決してやみではない、適法に支払われ、また受け取られたものであると確認して差しつかえありませんね。
  62. 藤林敬三

    藤林参考人 そうです。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 さようでございますそうですから、一つ確認をいたしておきます。  そこで、そのように適法に支払い、受け取られたものを基礎にして、今度いろいろお考えいただいて裁定を出していただいたのですが、これは大ざっぱな先生の常識論でかまわぬと思う。こまかい計数等は、まだ先生よくお聞きになっていないということでございますから、大まかな先生の仲裁委員としての立場で言っていただければけっこうでございますが、現在政府のきめた仲裁裁定の実施方針というものは、先生御存じだと思います。新聞等にも十分発表されております。この実施の方針というものは、わが党の鈴木委員長と岸さんとが会談をいたしまして、先生方のお出しいただいた裁定というものを誠意をもって尊重をしてやっていくのだということを言われておるわけなのです。私たちはその誠意をもって尊重するというのを完全実施だとこういう言葉で言っておったのですが、労働大臣は、いや完全実施と言った覚えはない、誠意をもって尊重すると言ったんだというから、では誠意をもって尊重するという言葉でよろしいと私は思うのです。仲裁委員会の代表である先生といたしましては、政府の今回きめた仲裁裁定のあの実施の方針、そうして今回あの実施の方針に基いて出ておる具体的な予算というものは、先生方が企図したその裁定を誠意をもって実施しておるものと御認定になるかどうか、これを一つ簡単にお答え願いたい。
  64. 藤林敬三

    藤林参考人 私は、政府は相当誠意をもって善処されたものと思っております。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 誠意をもって尊重されたものと思われておる。しかし最善の、いわゆる将来の問題等もあるので、幾分誠意は持っておるけれども、そこに欠けたところがあることは、これはさいぜんの御答弁からお認めになることは確実だと思うのですが、そう理解して差しつかえないでしょうか。
  66. 藤林敬三

    藤林参考人 これはまた同じことを繰り返すことになりますが、外ほど申しましたように、国鉄について言えば、予算単価実行ベースの差の五百二十円というものは今後において措置をする、今後において合理的に縮小する。今後というのは仲裁委員会が出した裁定書の趣旨から言えば、文字通り常識的に今後のことである、こういうつもりで私どもは出しておる、これはもう間違いがない、従って国鉄労組を中心とする組合の質問にも、その通り明確に答えているわけです。それから五百二十円というものは、千二百円のワク内には入っておりません、ということも明確に答えておる。しかしこれらの問題と今後措置するという場合の問題と、それは私の場合にきわめて明瞭であるのですが、今回問題になっておりますものは、また繰り返してはなはだ恐縮でございますが、主文第一項と理由の第一に従って言えば、率直に言いますと、これは私個人の若干受けておる印象から言いまして、あるいはこういうこともちらほら聞いてもいるのでありますが、それはその方から言えば、第一、差そのものが今日残ることさえもおかしいのではないか、現業によっては従来世の中では、はなはだ不本意でありますし、遺憾千万でありますが、いわゆるやみ給与などという言葉が流行いたしまして、従ってそういう言葉をここで使うことはどうかと思うのですけれども、その差額なるものが生じておるというようなことを従来しでかした、でき上ったところは、かえって若干それを認められる方がいいので、そんなことはやってなかったところは損をしたのではないかという意思を持っておるかのごとく実は聞くのでありますが、これは裁定理由から言うと、今後合理化するのだからそういう不平が一部にあっても、これはしばらくごかんべんを願って、今後こういうことのないようにだんだんやっていく。それから主文の第一から言うと、先ほど来繰り返して申しましたように、極端なことを言えば、全部五百二十円が千二百円の中に入っているのだというように御承知願っても、われわれとしては、主文第一の中に単価を云々とありますが、その通りにしたのですから、こうおっしゃればどうも仲裁委員会としてはそれはいけませんということも言えない、言えない理由もここにあることは明確なのであります。ただし労働問題の解決ということはそれではいけませんから、相当額はこれで実際に上るべきだという措置はなさるべきだということで、実は申し上げておるわけであります。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 よくわかりました。公労協が先生の方に御質問を申し上げて、それに対する先生方の御回答を私見てみますと、団体交渉というものを非常に強調せられておるわけですね。決して一方的に団体交渉なんか無視してやれということを言っておられない。そうするとこの仲裁裁定の趣旨というものは、団体交渉で確定をした金額というものを政府予算上、資金上努力するということが建前でなければならぬと思うのです。ところが今の政府の行き方見をると、あらかじめ予算ワクというものを作って、その予算ワクの中で、公社にこれで団体交渉をやれ、これ以上まかりならぬぞという態度に見える。労使の間のものを何か政府公社当局に押しつけてしまおうという感じが非常に濃厚になってきておるということは事実なのです。そういう傾向が見えておるのです。そういう点は先生はそうお考えにならないのかどうか。
  68. 藤林敬三

    藤林参考人 私は主文第一項の予算単価に千二百円を乗せてくれろという裁定でございますので、そのような予算措置をおとりになっていらっしゃることについて、それでいいじゃないかと思っております。ただしいろいろなこまかい問題も付帯してあろうから、協議の上で、万一話がつかない部分があれば仲裁委員会としては中へ入ることを惜しまない、こういっておるのであります。だから千二百円乗せられるという予算措置というものが当然あってしかるべきものと私は思っております。しかもそのワク内で云々と仲裁は言っておるわけでありますから、それでいいじゃないかと思っております。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっとわきのものと話をしておって聞き落しました。相済みませんが、もう一回……。
  70. 藤林敬三

    藤林参考人 仲裁裁定の、基準内予算単価に千二百円を乗せるというのが主文第一項でございますので、その通りの予算措置政府がなすっていらっしゃるので、これはそれで当りまえではないか。こういう工合に私は考えます。しかもそのワク内で話し合いがなされて、ワク内のいろいろな問題で話がつかない場合には、仲裁委員会はその仲介の労を再びとることを惜しまない、こう言っておるのですから、政府予算措置につきましては、予算措置をなさる場合にどういう工合になさるとか、いつなさるとかいうことを、一一言っておりませんから、私は一応それでよろしいのではないかと思っております。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 だんだん聞いていきますと、どうも霧がまたかかる感じがいたしますので私はこれ以上言いません。  そこで先生の方の回答でもわかるように、労使双方が積極的に団体交渉を持ってそこでまとまる、まとまったものは、これは予算がどうあろうとやはり政府考え直してもらわなければならぬ、こういう考え方が出てくるだろうと思うので、そういう点で先生方は仲裁裁定の精神というものが没却をされないように、労使の間の団体交渉が行き詰まれば、積極的に出ていって打開をしてやるのだ、こういう御趣旨のように思いましたので、そう解釈をいたしまして、これで私の質問を終っておきます。
  72. 藤林敬三

    藤林参考人 今の御解釈の通りでけっこうでございます。私はいついかなる場合においても問題が出て参りますれば、その問題の仲介の労を決して惜しみません。  それからもう一つ、どうもかすみがかかるとかおっしゃいますが、中山さんだって読売新聞の夕刊の随筆のようなところで、先ほどのやみ給与でございますが、あそこでごらんの通り中山さんもやみやみと言われるけれども、やみ給与ではない。やみではない。明るい夜じゃないけれども、おぼろ月夜だというようなことで、やみではないことを中山さん自身も否定しておられるのです。仲裁委員会が寃罪をこうむるようなことがないように、一つ皆さんが御了解を願いたいと存じます。そうして最後に  最後かどうかわかりませんが、私は先ほど来の質疑で何かもやもやとしておるのじゃないかとおっしゃいますが、確かにもやもやとしております。もやもやとしておるのは、実は問題を今度の仲裁委員会が、当初私が申しましたように、裁定一つの大きな問題は私はいろいろな給与あり方響について、いろいろなところで筋の通らないような問題がある、若干もやもやとしておる、やみじゃないが、幾らかもやもやとしたものがある。このもやもやとしたものを今後残してはいけないではないかという趣旨をくんでいただきたいと実は思っておりまして、今後はこういうことのないようにというのですが、しかし現在はもやもやとしておるのですから、その中で出された裁定なのですから、若干もやもやとしておるのはやむを得ないのじゃないかと思います。
  73. 藤本捨助

    藤本委員長 楯君。
  74. 楯兼次郎

    ○楯委員 先生は最後だと言われたのですが、一言だけお聞きしたいと思います。各委員がすでに詳細にわれわれの疑念をはらしていただきましたので、一つお伺いいたしたいことは、先ほど横山委員の、基準内賃金の上に千二百円をプラスしたのはどうか、こういう質問に対しまして、先生は、どうも当時は実行ベースがわからなかったからそうしたのだ、こうおっしゃったように私は聞いております。そういたしますと、現在実行ベースがはっきりとわかって参りました今日の段階においては、おのずからこの裁定内容というものが変ってくるものであるかどうか、この点をお聞きしたいのです。
  75. 藤林敬三

    藤林参考人 先ほど説明しましたように、実行ペースというものをそこにとりませんでしたのは、それがはっきりしなかったからこういう工合にした、これが一つの大きな理由でございます。ただし、それが全部の理由でございませんでしたということと、それから今だんだんはっきりしてきたとおっしゃったのでありますが、私どもには決してはっきりしておりません。国鉄幾らの実行ペースになっておるのか、この四月で給与改善の行われる直前の状態がどうなのかということは決してはっきりしておりませんということと、それからもう一つ理由の第一をごらん下さるとわかりますように、私どもは公務員及び民間給与との比較をやっておるのですが、その比較は、二十九年一月の予算で組まれた基準内単価、それとの比較でやっております。ここにやはり予算単価をとりました、この基準がはっきりしておるということでとったわけでもでございますが、一つの大きな理由のあることも、これもお見のがしのないように裁定を御了解願いたいと思います。
  76. 楯兼次郎

    ○楯委員 いろいろの理屈はあると思いますが、われわれは単純に考えまして、当時調停が出、仲裁に移行の段階になりましたときに、一般の職員は、とにかく現在の給料袋の上へ千二百円加算をされる、こういう受け取り方をしておったと思います。ところが仲裁に移行になりまして、出されました内容をいろいろ審議をいたしますると、そうではない。なるほど、先ほど来長時間にわたるいろいろの御説明を問いておりますると、賛成、反対は別として、一応は筋の通ったことだと思います。しかし、それでは大衆運動であるこの労働組合の問題は解決しないと私は思いますので、この基準内賃金の上に千二百円をプラスをしたというのは、今の御答弁で、そうではないとおっしゃいますが、各公社実行ベースが明瞭になった今日では、幾分内容が変って出されるのではないか、こういう気がしたものですから、お聞きしたのです。  それから余分なことは言う必要がないと思いますが、先ほど今後の問題がいろいろ分析をされました。今政府の補正予算案が衆議院に提案をされております。おそらく来たる二十七日の土曜日には衆議院を通過するでしょう。参議院は五日ごろに通過の段階になると思います。一番問題になっておりますのは、いわゆる今後の問題であり、三分の一の項目です。この問題が解決をされないと、新たな紛争が現在の紛争の上に倍加される、こういう結果を年ずると思う。仲裁委員会の意思は十分わかりましたので、それを悪用と言っては語弊があるかもしれませんけれども、自己流に政府は解釈をしていると思いますので、この点、もう唯一の権威といいますか、この問題について頼りにしております仲裁委員会でありますので、一つはっきりした解釈を下して短時日のうちに解決をしていただきたい、このことをお願いいたしまして私の質問を終ります。
  77. 藤本捨助

    藤本委員長 八田君。
  78. 八田貞義

    ○八田委員 藤林委員長にちょっとお尋ねしたいのでありますが、先ほど横山委員からの質問に対しまして、将来という問題と今後という問題というような言葉が出てきております。そこで将来という解釈、今後という問題、将来ということになりますと、これは今の段階から先のことであります。今後というならば、今の時点をとらえて実施段階に入る、こういうように私は解釈したいのでありますがその点、お話を伺っておりますと、理由の三の末尾において、予算単価と実行単価の開きは、将来合理的に縮小されることが望ましいという文句がございます。この文句に対しまして、将来とは、一体どういうことを将来というのかという質問に対しまして、藤林委員長は今後という言葉を使っておられる。今後というのは、現段階を含んだものということになりますね。この点、委員長は、将来とか、あるいは今後という言葉を使っておられます。そこの間のはっきりした相違、今後とおっしゃれば、今の時点をとらえての今後になる。今とあとでございます。この点をはっきりしていただきたい。
  79. 藤林敬三

    藤林参考人 どうも私は法律家でございませんし、官庁用語その他につきましてはあまりなれておりませんので、将来とか今後とか言ったようでございますが、私が言いましたのは、仲裁の文句にございます将来という意味で今後も言っておりますので、きわめて平凡な言い方をしておりまして、その間に差があるわけじゃございません。今後と言いましてそういう誤解を生んだならば、将来と言い直しておきます。  それから先ほどの御意見の中で、調停段階で千二百円みなもらえると思っておったところが、仲裁が出てきたらそうでなかった。仲裁はごまかしたんじゃないかという印象を一般の従業員の方々、が持っておられると言いますが、実はそれははなはだ心外でありまして、私たちは電電公社国鉄の場合には、かつて昨年の調停の第一項確定分については、これは千二百円の中に入るのだということは申し上げてきているのでございまして、それから国鉄調停だけについてごらんになればわかりますように、その部分が一-三月の措置として調停案の中に出しているのでございまして、それは当然千二百円の中に入ってくることは説明を要しないところでありまして、決して仲裁はごまかしておりません。もう一つは、そういうごまかしをやることは、仲介者の役割を十分果してないじゃないかというような御発言でございますが、私らは国鉄と電電だけをやっているのではございません。この十の仲裁案件を扱いますので、いろいろな場合があり、そうして日本の労働組合の場合は、これはいいか悪いかは別問題といたしまして、いい悪いの判断よりも、横を見てものを言われ、態度を決せられる場合が非常に多いのです。これは民間もしかりです。そこでもう少い広い、もっと十の案件の全体にわたってやはりいろいろなことを考慮せざるを得ない、そういう意味現実労働問題に取っ組んでいるのだということを一つ御了承願っておきたいと存じます。
  80. 八田貞義

    ○八田委員 裁定の実施段階ということになりますと、これが完全実施か、完全実施でないかという問題が起ってくるわけです。段階のつかみ方によって、これは非常に問題を今後に残してくるので、委員長に重ねて申し上げたいのでありますが、実施段階を今後と将来とではやはり違って参ります。明らかに差があります。今後というならば、今の段階をとらえての今後であると私は解釈し、また政府委員長との間にかわされた文句の中にも、相当程度の現実給与改善を企図しておるということが書いてございますから、やはり現段階をとらえての相当程度ということが出てくるものと思います。そうしますと、やはり将来という言葉と今後という言葉によって、いろいろと問題が起ってくると思うのでありまするが、私はこの政府委員長の間に取りかわされた文句からしては、将来というふうには考えられない、どうしても今後ですね。今の段階を含む今後ということになるというふうに解釈されるのですが、どうも委員長の御答弁の中に、今後という言葉が非常に多い。ですから、今後というのは今の段階を含めての今後だ、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  81. 藤林敬三

    藤林参考人 先ほど取り消しましたように、仲裁裁定書の中に将来と書いてありまして、私はきわめて平凡に、今後というのも将来だという意味で申したので、今後と言ったか将来と言ったかはっきり記憶しておりませんが、これに将来と書いてあるのですから将来です。
  82. 藤本捨助

    藤本委員長 有馬君。
  83. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 藤林先生に一言だけお伺いいたしたいと存じます。このたびの裁定では、林野を除きまして全部、予算単価と実行単価は大きく開くべきではないから、将来合理的に縮小されることが望ましいということをうたっておられますが、林野の場合これがうたっていないのはどういう観点に立たれたのか、この点をお伺いいしたいと思うのであります。先ほども先年は実行単価は把握しがたいということを申されたのでありますが、少くともほかの現業につきましてはうたってあって、林野にうたってないのは、ある程度のものを把握されておって、林野の場合予算単価と実行単価の差が少いからうたわれなかったのか、ここら辺について明瞭にしておいていただきたいと存じます。
  84. 藤林敬三

    藤林参考人 林野の場合には金額を示しましたのは定員内職員について示しまして、定員内職員というのは一般の公務員給与と大体同じように措置をきれてきておられて、いわゆる予算単価実行ベースの差なんというものはほとんどない、だからこれは問題にならないということであります。
  85. 藤本捨助

    藤本委員長 参考人の方々には長時間御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時四分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十五分開議
  86. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  公共企業体等仲裁裁定に関する件について参考人より意見を聴取することといたします。  この際参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。本日はおせわしいところ御出店下さいまして、まことにありがとうございます。何とぞ御忌憚のない御意見のお述べをお願い申し上げます。ただ議事規則の定めるところによりまして、参考人の方々が御発言なさいます際には委員長の許可を得なければなりませんし、また参考人の方は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますから、以上お含みおきを願います。議事の都合上御意見をお述べ願う時間は十分以内といたしますから、何とぞ時間厳守をお願い申し上げます。なお、出席されました八人の方々の御意見開陳が済みました後、質疑を行うことにいたします。  委員の方々に申し上げますが、時間の都合上質疑の時間はお一人二十分以内に願います。  それではまず参考人にお願い申し上げます。国鉄労働組合企画統制部長野々山一三君。
  87. 野々山一三

    ○野々山参考人 私は国鉄労働組合の企画部長野々山一三であります。仲裁裁定につきまして意見を求められておるわけですが、特にいわゆるやみ給与と言われておる問題、それから予算総則に関する問題、国鉄などの労働生産性とその現状の問題、労働関係についての意見や申し上げたいと思います。  公労法ができました二十四年の六月当事は、つまり給与総額というものはございませんでした。ところが第一次裁定あとを受けて給与総額というものをきめ、その範囲内で準則に基いて団体交渉を許し給与をきめる、こういう格好になりました。その後法律の改正を二度にわたっていたしましたが、ごく最近の事例を申し上げるならば、給与総額の範囲内にわたる裁定、協約などは当然給与総額の中で実行する建前をとり、給与総額をこえる部分についても予算全体の中で流用が可能な裁定については、公労法の十六条の定めによる手続を経なくても実行するという格好になりました。つまりこの改正の際には私もその審議委員の一人として参加をいたしましたが、給与総額という壁が労働問題というものを非常にこんがらがらせるという観点から、仲裁裁定というものを基礎にして、給与総額にかかわらず総額予算の中で流用を認めるという建前をこの法律改正の際にとったのは御承知の通りであります。この法律は、それぞれ日本国有鉄道法なり専売公社法なり電電公社法の規定の中に入れられておることもまし御承知の通りであります。今日問題になっておりますやみ給与というものが、そういったものとの歴史的な関係や事実の関係でどうなっておるかということを申し上げておきます。  国鉄では五百二十円といわれるものがあります。これは二十九年の十一月にあっせん案が出され、このあっせん案は労使受諾をして、その後三十年の七月一日に、このあっせん案を処理する建前から労使あっせん案処理に関する協定を締結して生まれたものが一つであります。その内容は俗に言う三百十円というものであります。その次のものは、これはまた二十九年の十一月二十四日のあっせん案第二項に基いて昇給率の圧縮などによって生じた不合理を是正するというあっせん案が出され、労使受諾をし、同じように協定を締結して実行をいたしました。さらに三十年の賃金といわれる調停案に、三十一年二月の二十九日の調停案第四項によって、欠格者を除いて昇給するように所要の原資をつけて措置をしろ、こういわれ、これを労使受諾をして協定によって今日実行じているわけです。俗にこれが二百十円、合計して五百二十円であります。従って法律的にはこれがすべて給与総額の範囲内で行われたし、労使法律に基く手続を経て調停なりあっせんの結果それを受諾し協定を締結して紛争をおさめ、そして実行の段階に入る、この角度から見ますと、法規的にも手続的にも財政的にも、つまり団体交渉権を認めておる公共企業体などの労使の関係においてやみがない、やみなどという言葉は全くもって私ども労働組合や、労働者にとっては大へん迷惑な、法律が当然求めておるものを実行した、こういうものであって、そういう言葉はぜひ思想においてもなくしてもらわねばならぬと思います。当時この二つに問題があると思いますが、   〔藤本委員長退席、亀山委員長代理着席〕 一つは当該年度において給与総額の範囲内で実行できたけれども、その次の年度において実行できないというものがあったといたしましても、その際問題として言わねばならぬのは実行され、協定が締結されて適法に生きておるものでありまするから予算措置がされるべきなんです。もしその次年度においてできないということがありとすれば、法律に基く手続をとられるべきであると思います。とられないということは、言葉をかえていえば、その次年度においても適法かつ有効に給与総額の中で実行できる、こういう筋合いのものであったと思います。今年度の当初予算を見ましても、さようなものについては当然やり得るものとお考えになったのでありましょう、予算の中ではとやかくいっていないようであります。しかしふたをあけてみると、予算単価に上回った実行順というものであればそれはやみ給与というのでありまするから、当然予算を組むべきはずの責任者が予算を組まず、かつ適法な法律手続をすべきはずの責任者がそういうことをしなかった、こういうことのゆえをもって、それをやみ給与と称し、しかも事実上給与を減額するかのごとき予想をもって持ってくるならば、それは単に経済的な問題ではなくて、団体交渉権本来を否認するものであり、団体協約権本来を否認するものといわなれけばならぬ。そういうふうにやみ給与という言葉を置きかえて、むしろもしやみ給与という言葉でいわれるならば、これから団体協約権もあるいは団体交渉権も否認します、こういうふうにおっしゃることの方が筋が通っているかと私は思うのであります。そういうふうにはいわれないで、やみ給与だといって世論の名において労働者の賃金をたたく作用に使おうというのは、全くもって当を得ていないものだ、こういうふうに思います。この関係はしょせん公共企業体など三公社現業労働組合のほとんどの場合に適用する問題でありまするから、ぜひ委員会でも過去の経緯、法律の趣旨並びに労働関係のあり方という角度からやみという言い方は間違っているのだということを天下に明らかにしていただくことが法律を作られた議会の責務じゃないか、かように思うのであります。  第二番目は補正予算に関する問題であります。表面見ますと、仲裁裁定が言っております予算単価に千二百円を加えるということでありまするから、裁定が履行されたかのごとく見えるのであります。しかしたとえば国鉄予算を見てみますと、第一に確定分から、予算説明書をごらんになればおわかりになると思いますが、確定分という架空なものから二分の一の原資を捻出するというのであります。事実の上では基準外から二分の一の額、三百円を基準内に振りかえるというのであります。一体皆さんがこの間国会でお通しになった三十二年度当初予算に六百円というものの幾ばくかを予算にお組みになったでしょうか。一銭も組んでいないのであります。にもかかわらずそこから二分の一の額を基準外に組んでおるかのごとくして引くのでありますから、ゼロから三百円引くことになるのでありまして、一体何が残るでしょう。三百円減額ということになるわけです。また去年の実績においてある程度の額が出ておるからというのでありまするが、これはすべて労使の間にもあるいは財政諸手続の間でもすべて業績賞与というもので決算をしております。組合もそれを了承して協定を締結しておるのでありますから、業績賞与というところから出ておるのでありまして、つまり給与総額からあるいは予算に組んであって、それから減額すべき性質のものではないということがおわかりになっていただけるのじゃないかと思います。さらに第二番目に五百二十円の三分の一、つまり予算単価と実行額の三分の一を減額するというのであります。私どもが仲裁委員会から裁定に対する解釈を求めたものによりますれば、かようなものを直ちに減額するものでない。将来の問題として予算単価と実行額とを合せるように措置をするよう努力をしなさいということであって、今引けというのではありません。ところが予算において三分の一を引くということになりますれば、おのずから直ちに引かなれけばならぬことになるかのごとくに見えるのであります。私は仲裁委員会が私どもに下しました解釈並びに今朝仲裁委員長が言われた直ちに引くものでないという、こう言われた趣旨からすれば、三分の一を引くということは仲裁裁定を責任を持って実行しまずと内閣総理大臣が天下に言われたことと反することを予算手続でやっておるのじゃないか、かように思います。さらに予算単価を千二百円上げろというのでありますから、予算に関する限り定員と額の問題があると思います。国鉄では今予算定員と実際の人間とは七、八十名の違いしかないのであります。ところが昨年の十月ころの事実をつかまえて二千三百六十何人というものが、から定員があったのだからというわけで予算定員の四十四万七千七百二十五からその額を引いた額をもって予算増額手続をしておられるのです。今予算の定員にほとんど近い数字が実際におるのでありますから、このためには一体どうしてそういう理屈をとられるのか。根本的にいえば予算定員と単価というものは因果関係、当初予算においても当然同じ数字をお使いになるべき筋合いのものだ。それでなれけばこれまた裁定が言っておられるものと趣旨が変ってしまうことになるし、実際問題としてもそういうことはできない性質じゃないかと思います。そのほか基準外経費のはじき方にいたしましても、当初予算によりますれば、三割七分七厘というものを計算しておられるけれども、今度の補正予算によると、二割五分八厘しか計算してないのです。ですから基準外経費は非常に圧迫をせられる結果として、基準外賃金相当額総額が五百十四円も減額される。それをもって千二百円と振りかえるということになるような結果になるわけですから、この観点からも裁定の趣旨は曲げられておるというふうにいわなければなりません。従って予算の見方は、第一に組んでないものから組んであるかのごとく三百円を引き、さらに裁定では全額認めていきなさいといっているものから三分の一を引いて、つまり四百七十七円をあるものないものをひっくるめて引いて基準内に置きかえている。こういう格好で予算を組めば、実際の面は非常に圧迫をきれることは言うまでもなし、裁定の趣旨は死んでしまう、こういうことにいわなければならぬと思う。  次に予算総則の問題について申し上げます。この間法律を改正して、四月一日からこの法律は有効になるということになった。公共企業体など仲裁労働委員会裁定が出たときには、この裁定予算の範囲内において移流用をして処置をしていいということが、ついこの間四月一日から有効として発効したばかりです。それは経過的に言えば、給与総額の範囲内で始末をしなさいという規定では、私も参加してきめた法律改正のときには、労働問題をこんがらがすから、裁定である限りは特別のものとして、給与総額にかかわらず予算移流用を所管大臣の承認を得てやってよろしい、こういうように改正をしたわけです。これはもとより公益、労使委員が参加をしてきめたものであり、議会がきめた法律であります。この間法律を改正して、ついこの間四月一日から実行される瞬間――まだ瞬間と言った方がいいかと思うのでありますが、そのときに基準内外の移流用についても運輸大臣の承認を得なければならぬ、こういうふうにきめるのは、まさに公労法制定の精神よりももっと悪くしてしまっている、紛争がよりこんがらかるようになるということが第一です。  第二番目には、それによってかりに今政府が言っておられる五百二十円の三分の二の額は、本来やっていくとしても基準外予算から使わなければならないものと思います。ところが予算をきめるその瞬間から移流用の承認を求めなければならぬような予算をここでおきめになるというのは、私は全くもって変な話だと思うのです。  第三番目は、さようなことにすれば、団体交渉の余地というものは、一銭一厘違ってもやみだといわれ、一銭一厘違っても違法行為だといわれてしまって、非常な大きな問題が労使の間に発生する。それはただ単に抽象的に発生するというのではなくて、法律の趣旨をゆがめるような予算総則をきめて、このこと自身は私が聞いていろ範囲では、学者も無効だと言っておる人が大半です。しかしそういう予算総則をきめれば、そのときからもう団体交渉権をさらに制限をする。もとより団体協約権を制限する。そうして第二のやみを直ちに議会が許すことになってしまう。それは議会はやみをなくしようというお気持からなされることであっても、巽は本末転倒もはなはだしいものだというふうにいわなければならぬと思います。かような予算総則については、他の委員会でおやりになることでありましょうけれども、ぜひとっていただかなければ、仲裁委員会裁定の解釈としていっておられるもの、趣旨としていっておられるものを踏みにじられ、労使の関係はさらに混乱をする。さらに労働問題は複雑化し、激化する。こういうことは議会の皆さんのお気持にはおそらく反するものではないかと思います。  大へん時間が長くなって恐縮ですが、最後に……。
  88. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 野々山参考人に申し上げます。所定の時間がすでに経過しておりますから、結論をお急ぎ願います。
  89. 野々山一三

    ○野々山参考人 わかりました。簡単に申し上げます。  政府は高能率、高賃金ということをよくいろいろな機会に言われます。鉄道の労働生産性というものを十一年に比較をいたしますと、労働者の数は一九六、旅客の数は三四九、貨物の数は二六三という膨大なものになっているわけであります。労働者の数に比較をして非常に膨大な仕事量をやっておることがわかっていただけると思います。二十九年に比較すると、生産性は一〇七、一〇五という答えを出しています。さらに企業活動の数字から見れば、一一六という数を出しているのです。営業実数から見ますと、旅客、貨物はすべて二十九年に照らして一一七、一一五、膨大なものになっているのです。しかし賃金はしょせん一〇〇であるのです。しかもたとえば二千人くらいのものがときどき動いて、から定員があったとかやれ何だとかいえば、すぐそれはやみだといい、さらに給与総額の範囲内でなければ、有効かつ当然の手続をしたものを、それはいかぬといって減額をする。これでは予算というものは使った方が得だという思想を、もしそういうことを本気に考えられるとすれば、いわれることになるので、むしろ適当にやった方が得だぞ、こういう思想があおられることになる。これはおそらく政府の趣旨にも反するだろうし、おそらく世の中の常識にも反することになるのじゃなかろうか、そういう二つの面をぜひごらんになっていただきたいと思います。  最後に結論を申し上げますが、仲裁裁定に関して今政府のとられようとしている処置は、まさに表面的に千百円という単価の引き上げをなさるけれども、実行面では基準外賃金で五百幾らというものの減額をして、しかもありもしない予算から、あるかのごとくして引き、さらに裁定は今直ちに引かねばならぬとはいっていないのに、今直ちに三分の一を引いて、しかも団体行動権を否認するような、団体協約も無視されるような手続をされる。しかも裏を返していえば、そういうことは政府がもしできないならば、当然法律によって議会の承認を求める手続をさるべきものをサボって、その責任を一つも省みることなく、われわれ労働者の賃金を下げるということにのみ理屈や求められておるように思うのです。かようなことをやられれば、政府、総理があの春闘の最中に、われわれは裁定を実行するのだ、こう言われたことを議会が引っくり返してしまうようなことになり、内閣みずからが自分たちの言ったことをひっくり返してしまうことになる。これは将来国民の政治に対する信頼をほんとうに失墜きせるものであり、労働関係をいやが上にも激化させることを、政府は責任を負ってもらわなければならぬと私は思います。  さようなものでありますから、時間がありませんので、点だけを指摘いたしましたけれども、これからの審議に当ってぜひ解消していただいて、明朗な労使関係が生まれ、仲裁裁定が名実ともに実行されるような処置をされるように特に要望いたしまして終りたいと思います。失礼いたしました。
  90. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 次は参考人小倉日本国有鉄道総裁にお願いいたします。
  91. 小倉俊夫

    小倉参考人 私は日本国有鉄道総裁をいたしております小倉でございます。  今回の仲裁裁定につきましては非常にむずかしい点が多々ございましたので、私どもの非常に難渋いたしましたことを率直に申し上げます。その一、二を申し上げますと、今回の給与の改善は三十一年度を通じてのいろいろの懸案もございましたし、また裁定に出ました通り、予算単価と実行単価の差がある。これは公労委の御意見によりますと、こういうものは好ましくないのだというような御意見があったのであります。また国鉄としましては、機労の機関車労務員、動力車乗務員の給与格差の問題がございました。また国鉄では初任給が他より低いからこれを是正すべきではないかというふうな裁定もありましたので、それこれを勘案いたしまして、今回ほどむずかしい給与の改訂は私はまだ経験いたさなかったのでございますが、しかし裁定は最終の決定でございますから、これに基きまして補正予算が御審議せられた結果、成立いたしますれば、私どもはその線に沿うて誠実に事務を実施して参りたい、こう考えるのでございます。今回は国鉄ばかりでなく三公社現業全部につながる裁定でありますし、それに予算措置を伴うということで、これは国鉄のみの問題ではもちろんございません。従いまして補正予算の結果を待ちまして善処して参りたい、かように感じておるのでございます。  二、三感想めいたことを申し上げますと、ただいま野々山参考人からやみについてお話がございましたが、この点は私も同感でございまして、今回やみの給与または国鉄に関してはアベック闘争というふうなことを社会に流布せられまして、私どもは実に残念だと思っておるのでございます。これは先ほども話が出ましたように、調停をもととしました決定でございますので、私どもはやみとは決して考えておらないのでございます。ただしその五百二十円に関しまして、つまり実行単価と予算単価の差額の、国鉄で申しますれば五百二十円というものが、千二百円の予算単価増額とどういう関係になるかということは、これはまた全くの別問題だと考えております。  それからただいま野々山参考人からお話がありました三百円の問題、これは半年間に六百円支給したとして年間に引き直して三百円ということでございますが、裁定にはこの分は千二百円の中に吸収されるべきものだとはっきり書いてございますので、この点は今回のぺース・アップで当然吸収されるものだと私は考えるのでございます。  それから五百二十円につきましては、政府と公労委との間の質問書も、それから回答書もございますので、これにつきましては、政府の見解に従って私どもは善処して参りたい、こう考えるのでございます。  それから国鉄の経営につきましては、あるいは最もむずかしいと申しても差しつかえはないと思いますが、最も経営上むずかしいものはやはり労働問題、あるいは賃金問題でございますが、この賃金問題は全く複雑なものでございまして、理解するのに私も難渋いたしたのでございます。ただ私が率直に考えますと、国鉄のような大きな企業体の労務者賃金と申しますのは、やはりガラス張りの均衡のとれたはっきりしたものでいくべきである。しかしながらその場合に国鉄企業体でございますから、金縛りではいけないので、そこにある程度の弾力性は持っていかなければ企業の運営はうまくいかないのではないかというふうに考えるのでございます。しかしそれにしましても、公社賃金というものはさらに将来とも深く検討いたさるべきものではないかと考えるのでございます。  最後にこれは問題から離れるかもしれませんが、今回仲裁裁定がおりまして、それの実行の段階に入っておりますので、これはその解釈に多少の食い違いがあるかもしれませんが、とにかく法律できめられました最終の結審でございますから、労使双方ともこれは絶対に服従すべきものである。そういう場合には労組の方も自重せられて、実力行使というふうなことに出るべきではないと考えておりますので、そういう点は自重されることを私は望んでおる次第でございます。  いろいろ申し上げましたが、今度の仲裁裁定につきましては補正予算の成立を待ちまして善処いたしたいと考えております。
  92. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 次は参考人日本電信電話公社総裁にお願いいたします。
  93. 靱勉

    ○靱参考人 お許しを得まして仲裁裁定につきまして意見を申し述べさしていただきます。  御案内のように電電公社と全電通との賃金改善に関しまする紛争は昨年来からの問題でございまして、その間相当団体交渉も行われたのでございましたが、妥結に至りませんので、組合から調停の申請がなされ、その後仲裁ということになりまして、私どもといたしましてはできるだけ早くこの紛争の解決を望んでおったわけでございますから、今回の仲裁裁定につきましては、これが出されまして予算的な措置がその趣旨に従ってなされることを大きく期待しておったような次第でございます。ところが御案内のように仲裁裁定書の解釈につきまして、裁定がおりましてから十日間の間におきましていろいろと意見がありまして、これは各機関からそれぞれ文書が発せられまして、ようやくその解釈も定められ、当然電電公社の三十二年度の予算の範囲内におきましては裁定実施が困難でございますので、要するに補正予算その他の予算的の措置がとられなければ実施ができない、こういう状況であった次第でありますが、すでに国会でただいま御審議になっておるような次第になっておるわけでございます。そこでいろいろと裁定書の解釈につきまして問題になったことは、私ども非常に裁定を待っておった者といたしましては、遺憾な次第でございまして、何と申しましても裁定は最終的な、労使の紛争を解決する最後の手段でございましたので、午前の委員会におきましても、仲裁委員長からいろいろ御答弁があったような次第でございますが、少くとも裁定書に示された文句というものは、どういう立場からとってみましてもはっきりされておるべきものであったと思います。この点は私ども非常に遺憾に存じたのでありますが、これは質問等によって一応解釈が確定いたしまして、仲裁委員会等におきましても、この解釈において誤まりないような御意向のように承わっておりますので、私どもはこれに従って作られましたところの予算の範囲内におきまして、今後労使閥にすみやかに紛争の解決をいたしたい、こういうことを現在念願いたしておるような次第でございます。なおこの間におきまして、ただい京国鉄の両参考人の方からお話がありましたが、やみ給与とか、から定員という言葉が盛んに使われまして、いかにもずさんなことをやっておられるように、あるいは世間の誤解を招いたかもしれません。この点につきましては、この機会に一言申し述べさしていただきたいのであります。公社ができましたのは、電電公社におきましては、占領中においてできたのではないのでありまして、占領が終りまして、わが国の自主的判断に基きまして電電公社というものが作られた。それは何を目的としたかと申しますれば、申すまでもなく、多年の官庁的な、非能率な経常を、最も合理的な、能率的な、企業的な経営に改めるという意味合いで、公共企業体の形態に変えられた、こういうふうに私どもは理解いたしておるのであります。従いまして、能率の向上ということが非常に要求されたのでございまして、その際におきましては各職員の能率を上げていかなければいかぬ。それに従いまして公衆に対するサービスを改善していくということに目的一があったわけでございまして、その際給与総額制度自体についても、私ども若干の問題を持っておったのでございますが、給与総額制度というものがとられまして、予算によって確定され、その範囲内におきまして給与準則を定めまして、労使の間に給与をきめていくという形態がとられた。ここでいろいろと能率の向上あるいは業績向上という、実績というものはいろいろな見方があるかと思います。今回の三公社現業の組合が要求したのは、同じ時期に一斉に、一律に二千円アップを要求されたのでございます。しかして裁定は、一律に予算単価に千二百円足すというふうに裁定されたわけであります。これはどの公社現業におきましても、おれのところは能率が上ってないんだというところはないんで、みんな一生懸命やっておられる。従いまして電電公社だけがその特殊性があるといいましても、これは第三者的な判断というものは当然下さるべきものでありますが、私ども申し上げますれば、端的に現われてくるのは人の問題ではないかというふうに考えておるのであります。すなわち五千人の人を使ってやらなければならぬ予算能率に基きまして、増員が行われた。要するに予定された能率を上げましてやれば、それだけの人は要らぬ。そこに給与の残というものが出てくるのであります。給与総額というものは、あくまで平均的な、要するに予算単価といわれておるものに人員をかけて出るものでありますから、公社努力によりまして、能率向上はその点に私は端的に現われてくると思うのであります。定員の算定が甘いとか何とかいう問題は、予算能率の問題でありまして、与えられた予算の人員内におきまして、その年間非常な能率の向上をやり、それが平常化されておるものと考えますれば、これは賃金に繰り入れてもいいんじゃないかというような考え方に立てるわけであります。それを甘かったといって人を減らすということになれば、やはり能率が上っておるというようなお考えになった次第でありますから、それは予算単価というものを向上させる、どっちかの方法をとらなければならぬのは、自然の道理かと存じておるのでありまして、これをから定員とか、あるいはやみとか言われるのは、どうも遺憾に存じたのでありますが、今朝来もちろん関係機関全部やみはないというふうにおっしゃられておりますので、私どもまことに意を得た次第であります。あえてしつこく申し上げる必要はないわけでありますが、一応弁解させていただきます。  なお裁定につきまして私ども、実際の実行ベースに対する増額というものは、あるいは組合側から予想しておったものより少なかったかもしれませんが、もちろん調停案が出たときに、また裁定書を見ましても、実行ベースにそのまま千二百円足すというようなことは絶対に出てこない案文でございまして、これはどなたが見てもはっきりしてる点だろうと私は思うのであります。そこで予算総則におきまして基準内、基準外の流用が、今後は認可にかけられた。絶対禁止というわけではないのでありまして、これは主管大臣の認可を得ますればできるという形になっております。従いまして、今後労使間におきまして協定を結び、また政府筋においてもっともと思われるような流用につきましては、お許しを願えるものだと私どもは考えておるわけであります。なおまた一律に、あるいは基準内賃金と申しますか、ほんとうに正確に申しますれば基本給ベースというものは、公務員あるいは三公社現業というものがあまり差があってはいかぬ。公共企業体と申しましても独占企業であり、法律によって料金が定められておるものにつきまして、幾ら能率が上ったからといって直ちにベースを民間並みにどんどん変えるということは、これは許されないと考えております。そこでいわゆる賃金ベースというものがあまり隔っておるということは、こういう一連の企業間におきまして、ただ自分のところがよければいいというようなことは、私ども絶対考えてはいかぬと思いますが、そのかわりやはり業績に対しまして、業績賞与を適当に見てやる、こういう点はぜひ公社の企業性から考えまして、将来御考慮を願うということが当然考えてしかるべきものというふうに了解いたしておるわけであります。  以上、仲裁裁定につきまして以上のような感想を持ちましたので、時間の制限もありますので、ごく簡単に申し上げた次第であります。
  94. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 次は参考人全電通労働組合執行委員長山村貞雄君にお願いいたします。
  95. 山村貞雄

    山村参考人 全国電気通信労働組合中央執行委員長をやっております山村であります。私ども実は六日の日に仲裁裁定をいただきましたが、そのときの感じを率直に申し上げますと、従来のいきさつがございましたので、われわれの考えるところを相当しんしゃく願ったという気がいたしたわけであります。その後の相当長い日子の間に、この仲裁裁定をめぐりまして解釈問題が非常に混迷を続けておりました。私どもは労働者でありますので、こういう状態はまことに理解に苦しむところでございます。予算措置というような点から、もし仲裁裁定の本旨であるところの労使間の紛争を解決するためという、この目的を離れて横道にそれるような解釈がなされるならば、私ども労働者としては了解できない次第であります。率直な気持で、仲裁裁定を受けたとき以来、私どもはずっと本旨ということを考え仲裁裁定を何べん繰り返して見ましても、私どもの解釈は一つでございます。端的に申し上げますと、仲裁裁定の一項、二項等で明示されているところは、四月からわれわれの給与を平均一千二百円引き上げることが指示されている、こういうふうに理解するわけです。ただし裁定の中には、十二月の年末の確定分といわれている分が織り込んであるということも明示されておりますから、その確定分が労使間においてかりに六百円というようなことで確認されるならば、それが差し引かれるのは当然でありまして、それを差し引いた六百円なるものが、実際上のわれわれのベースの引き上げということになる単純な道理であるというふうにわれわれは理解しております。そういう理解に立って、今回の予算措置等についていろいろと伺ってみますと、私ども非常に理解に苦しむ点が出て参るのであります。私どもの今申し上げた見解によって予算措置をしていただくことになれば、基準内で二十六億という金額になるように考えるのであります。その理由としては、年末確定といわれている分は、実は三十二年度の予算の中に組み込まれておらぬわけでありますから、これを裁定の中に含めるということは、当然その予算考えるということでなければならぬのでありまして、そういう観点からいたしますと、二十六億という措置が単純に出てこなければならぬ、こういうふうに思うわけです。これに対して、いろいろ操作はいたしてありますが、結果的には、私ども電電公社の場合に十四億七千万というようなことでございまして、その間の数字だけ見ましても、十一億の不足分が出て参るわけであります。  先ほど野々山参考人等からいろいろと述べられておりますので、こまごましい数字は省略いたしますが、こういうふうなわれわれが考えるところと違った予算措置がなされている理由としては、端的に言えば、予算単価と実行単価の開きをこの際埋めるのだ、その第一歩をやるのだという意味合いで、私どもの場合に、その開きの三分の一の百九十円を差し引くのだということを言われておるわけでございますが、私どもとしては、これがまた少しも理解できないわけであります。仲裁裁定そのものを何回ながめてみましても、そういうことは結論として出てこないというふうに私どもは思うのでありまして、仲裁裁定主文第二項の中では、この予算単価と実行単価の開きにつきましては、現在の実行単価の水準が実現するに至ったところの経緯を十分勘案し、しかも公社の将来の運営をも考え合せて、慎重に決定せらるべき問題であるということがいわれておる。決して今回の予算措置の中へこれを含めるとか、あるいは予算単価の方へ現在の実行ベースの方を下げてつけるとか、近づけるとか、そういうふうな意味合いのことは言われておらぬのであります。  またこれは私が繰り返して申し上げるまでもございません。靱参考人、あるいはその他の参考人の方々からも別な角度から触れられておりますけれども、われわれ全電通と電電公社の間でいろいろやみとかなんとか一町言われましたが、そういうことに当る給与内容というのは、もう繰り返しませんが、公明正大なものであり、団交権に基いて労働協約によって行われたものであり、しかもその過程においては予算問題等についても、国会委員会の席上において若干触れられる質問があり、予算措置がなされなくても、弾力の中で行えるというような回答があったやに私ども承わっております。そういう中で第一回の給与の若干の是正について行われましたのは、昭和二十九年の九月三十日の日付で実施されました給与内容の是正でありますが、この給与体系の変更というものは従来の私どもの体系からいたしますると、非常に変革的な膨大な内容を持ったものであります。これを労使間でずいぶん苦労をして実施いたしましたが、その翌年にはやはり初めての実施で相当矛盾が出てくるということで、その是正を行わなければならぬ。その問題に関連して紛争が起って調停がでました。これは十一月調停二十号だったと記憶しておりますが、その調停に基きまして補正を実施して――公社側に言わせれは、われわれ常に聞くところでありますが、この二回の措置でわれわれの給与体系というものが一応一つの体をなしにというようなことが言われているわけであります。そういうような内容のものでありますし、これをさらに別な実態の方面から理論とか、筋道とかいうこととは別に、公社の運営と従業員の給与の面から考えてみますと、いわばはやり言葉の土産性ということになるかと思いますが、公社の一般的な生産性の問題を、公表されている数字からとってみますると、二十九を一〇〇とすれば、現在一二〇から一三〇の門というように向上をしておりまするし、われわれの主要局であるところの電報の受信速度というものを見ましても、昭和二十九年以前の一分間に二百六十八字というものを、現在では三百七十五字というような機械を使っておりまして、それに関連する前後は非常に質の高い労働が行われている。そのほかの問題についても昭和二十八年度と現在のことを比較しますと、二十八年当時を一〇〇といたしまして、要員においては一一四で一四%増ということになるかと思いますが、市外電話の回線というものを考えますと、やはり二十八年を一〇〇として二四二・三ということで一四二・三というように増加をしておりますし、電話加入者にいたしましても、一四五と四五も増加しております。市外電話の取扱い数をとって考えてみましても、一二六・九というようなことで二六・九の増ということにもなります。また別な面で事業収益ということを考えましても、その給与の是正が行われた時点等を一〇〇として考えてみまして、三十年度百五十二億というような目標額に対する増がある。三十一年度の推計――これはまだ第四・四半期の決済が済んでおりませんけれども、これも大体のめどとして目標を上回って八五・〇四%ということになると、約百二十億が増収ということにもなるのではないかと思います〇そういうような実態の中で、しかも適法であり、公明正大に行われたものである。それを予算措置上の都合から――われわれはそう感ずるのでありますが、三つに分けて、その一部分を今回の措置の中から引くということにつきましては、私どもとしては絶対了承しかねるのであります。  なお最後に簡単に付言したいと思いますけれども、率直に申しまして、私どもは昨年行われました公労法の改正に非常に期待をしておったのであります。従来の公労法は、私どもに対する争議権にかわるものということで仲裁裁定制度等が行われたいきさつがあるにもかかわらず、そのことはほとんど顧みられぬわけでありますが、そのために公労協の労働問題は非常にこじれて参っておりまして、それが昨年はそういう点についても十分に論議せられ、仲裁裁定の実施については、非常に権威づけられて参った経緯があると思うのであります。この問題についての今回の紛争――仲裁委員はわれわれが非常に尊敬をする諸先生であるし、非常に慎重にやられておるし、今までの経緯ということについても、私ども非常な期待、希望を持っておりましたところが、ただいま現実的に出て参っている姿というものはこういうような姿であります。団交権をあとから打ちこわされてしまうような形、そういうようなことや、公社の運営の幅というものもあとからくずされ、そのことがわれわれの約束をじゅうりんせられるということに対しましては、野々山参考人も申されましたが、公企体における労働問題をますます紛糾せしめ、法の権威を失墜せしめるという結果になることをわれわれはおそれるのであります。私どもは労働者でありますけれども、産業平和を願わないわけではないのであります。できるだけ平穏裡にわれわれは当然この状態が実現することを願っておるのでありまして、そういう点から今回の事案は非常に重大な意味を持っておると思いますので、予算措置の変更にいたしましても、仲裁裁定の完全実施の問題にいたしましても、そういう点からどうぞ慎重御論議を願いまして、万人の良識が納得するような結論が出ますように特にお願い申し上げる次第であります。
  96. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 次は参考人、全逓信従業員組合書記長大出俊君にお願いいたします。
  97. 大出俊

    大出参考人 全逓本部書記長の大出と申します。参考人として心見を本委員会から求められておりますので、二点にわたりまして簡単に私の意見を申し上げたいと思います。  まず第一点は、郵政の場合には、今回の裁定政府は、実施をすると表面言っておるわけでありますが、この中で今回の補正予算等を通じて、千百二十円ということで非常に他に比べていいような印象を与えるように表面上なつておりますが、実際は半分以下の内容しか持っておらないわけなんで、この点について触れたいということが一つであります。もう一つは、一般的に公労協という立場から私ども考えておりますが、政府の方々は、今回の春闘を通じていろいろ組合がやったので、厳重に処分をするということを言われておりますが、私どもはそういう処分はできないのだ、当りませんという考え方を強く持っておりますので、将来の問題もございますから、この点について意見を申し上げたい、このように思うわけであります。  まず第一点の郵政の裁定の問題ですが、先ほど来野々山参考人等もいろいろ言われておりますから、できるだけ簡単に要点をしばって申し上げたいと思います。まず千二百円という基準内についての裁定を八十円削るということ、これはさっき野々山参考人等が言われたことと同趣旨であります。ところがそのほかに郵政の場合には、午前中の本委員会横山委員等から言われておりましたように、かりに私が手足を私自身が食べてしまっても腹の中に入った目方は――現在私は十五貫四百でありますから、やっぱり十五貫四百であるということと同じように、郵政予算の中から二十九億二千五十万円はかりの金を差し繰って操作をしておるわけであります。総額五十億千百八十三万円になる今回の私どもの裁定実施について、今回の補正予算内容等を克明に検討いたしますと、そのうちの二十九債二千五十万五千円というのが郵政省の省内予算の差し繰りという格好になっておる。これはついこの間、この国会が三十二年度予算として認めたものの中からこれだけ差し繰るというのでありますから、一体それはなぜきめたのだということに一般国民の言い方からすればなる筋合いのものだと思います。そこでまず第一点は、私どもの超過勤務の予算の中から、五億五千六百万円というものを差し繰ってこれを頭はねをする。ところが実は郵政大臣が今国会の劈頭に逓信委員会にあてて一般情勢の報告をしております。この内容を見ますと、まさに戦後最高の郵便物数の増加である。いわく神武以来の郵便物の激増という意味ですが、大へんふえた。従って大へん郵政事業としても苦労しておる、こういう意味の報告が行われておるのです。そのくらい実は忙しい郵政事業ですから、定員も非常に少いというふうに考えておりますので、当然時間外労働の時間が長くなってきております。そして約五十億ばかりある予算の中で、ほんとうに時間外労働をするための予算は三十億です。そのほかは休みの日に出てきたり、あるいは夜勤務することについて手当を出したりする予算である。三十億の中から五億五千六百万円削るというのですから、そうなると私どもは仕事ができないというように考えておる。そこで削る理由を聞いてみますと、昨年の夏に私ども郵政当局といろいろと団体交渉をやりまして、〇・一一という比率の繁忙手当を出すことになって、もらったわけであります。それから昨年の暮れにO・二という手当をもらい、本年の二月に千五百円の手当をもらった。これはみな神武以来の繁忙だからという意味における繁忙手当である。ところがこの〇・一一というふうなものは、郵政省内に余裕があったのだ、さっきいろいろ言われた意味のやみと似たようなことを言っておるわけでありますが、だから削ったのだというのだけれども、実はさっき申し上げたように、夏というのは暑中見舞がたくさん出ます。国会議員の皆さん方は特にたくさんお出しになるわけでありますが、(「つまらぬことを言うな」と呼び、その他発言する者あり、笑声)これは事実を申し上げたわけでありまして、失礼なら取り消しますが、夏手当のときに、かくのごとく繁忙である関係で、実は私ども仕事をする面で超通勤狂手当が足りなくなりますので、この超過勤務について、私どもは何とかして一つ仕事をしなければならぬという建前から、私どもは実際に仕事をすると勤務時間が長くなってしまってそれに見合う原資が郵政省にないので、それで繁忙手当をもらって、そのかわりにただ働きの面が出てもはがきの配達等はやるのだということで手当が出ておるわけでありますから、決して余っておる原資ではないというふうに考えております。一例をあげると以上のようなことになるわけでありますが、そのような意味で総額二十九億二千五十万五千円というものだけが、差し繰られることになっておりますので、そうすると冒頭に私が申し上げたような意味裁定は千百二十円と言っておりますが、実際には半分以下の金額しか私どものふところに入らないのだということになりますので、裁定の実施ということにはなりません。政府の方は完全と言っておりますが、まことに不完全な実施にしかならないというふうに考えておりますので、やはり仲裁委員会が紛争の解決という意味で出されております裁定を完全に実施していかなければならぬということになるというふうに私どもは考てえおるわけであります。  次に、実は政府の方々は簡単に私どもを処分するというふうに言われておるわけでありますが、私どもどう考えてもこれは合理的ではない、不合理だという考え方を一持っておりますので、簡単に申し上げておきたいと思いますが、国鉄労働組合の方々が昨年暮れに調停申請をいたしまして、本年になりまして二月の初めにほかの各組合から調停申請をいたしました。この趣旨は、公労法の一条に書いてありますように、平和的に友好的に問題の解決をする、こういう精神にのっとってやっておるわけでありますが、この申請をしたあとにおける状況というものは、新聞紙上をいろいろとながめますと、当時人事院の勧告が出ておりましたから、一般の公務員の方々は賃金を引き上げるのだ、しかし三公社現業というものはベースが高いから賃金引き上げの必要はないという趣旨のことがいろいろと散見されるわけであります。そうなると予算上もそうでありますので、私ども組合員の立場に立って考えますと、これは一般公務員の方は上るが、三公社現業の者は上らない、こういうふうに非常に、心配をしたわけあります。そういうことになると、公労法上労働組合が認められているわけでありますから、何とか一つある程度の実力行使をやってその中で認めてもらうようにしたい、こういうふうに考えて参ったわけでありますが、たまたま三月の九日に労働大臣の松浦さんから私どもお呼び出しを受けまして労働省に参ったわけでありまして、実はその席上で大臣から言われますのは、諸君は違法行為をやるので厳重に処罰するぞ、従ってやめなさい、こういう話でありますが、私どもこれに対して、実は私どもは好んで違法行為を云々とか実力行使を云々とか考えておりません。従って政府からそういう警告を与えられるならば、政府としてもやはり何かそこで調停が出たらのむとか、あるいはどうするとかいう考え方をお示しをいただきたいということを話したわけであります。三月九日の午前中にその話をしたところが労働大臣の方からは、実はわれわれは当事者ではない、こういうわけです。当事者ではないので裁定でも出たら一つ考えるということです。そこで私は実は郵政省の場合はそのものずばり政府当事者だ、なぜならば郵政大臣の平井さんは兼国務大臣である限り当然これは政府なんだから、そういう意味でこれは関係がない、当事者ではないという言い方はおかしくはないかという点でいろいろやりましたところが、大臣は最終的に、実は政府の部内で私は努力をしているのだという話をされましたが、どうもこれは誠意がない。こういうふうに心配しながら私どもは調停の出るのを見守りましたが、その日の午後に調停案が出されました。その翌日私どもは論議をいたしまして、この調停案はまことに不満足ではあるけれども、紛争を平和的に友好的に解決をするという立場に立てばやむを得ないのじゃないか、こういう考え方でこれを受諾することに私どもはきめたわけであります。ところが政府の方は態度を明らかにいたされません。さらに聞くところによりますと、社会党との間では十二に仲裁申請をされるという政府考えであるというふうに伝えられましたけれども、十二日が過ぎましたところが十八日くらいまでに裁定申請をする。さらにいろいろ承わってみますとその十八日もわからない、こういうことになったのでこれは大へんなことになる、こういう考え方からいわく三・五波といわれる闘争を計画し、実力行使の計画を立てたわけであります。ところが急に政府の方が態度を変えられまして、十五日に裁定の申請手続を急におとりになる、こういう経過になってあの紛争が実は起ってしまったわけであります。そこで結果的に今度の裁定が出る四月五日でありますけれども、裁定が四月五日に出る汝での間に、十六日の未明にかけて鈴木さんと岸さんとの会談が行われ、各大臣を通じて私どもに話があり、郵政の場合も国鉄さんと同じように完全実施をするのだという話になったわけでありまして、そういう意味の協定等も結び終ったわけでありますが、完全に今度こそ実施してくれるだろう、過去何回も何回も出ておりますけれども、完全に実施したことはなかったのでありますから、そういうふうに思っておりました。ところが実は先ほど来各省に組合側の参考人から申し上げたように、実はまことに不完全な実施内容であったということになって、言葉は悪いかもしれませんけれども、またどうもだまされたのではないかという実感を組合員諸君は率直なところ持っておる段階であります。そこで私どもはやはりここで考えておりますのは、こういう経緯になりますと公労法の建前からして、平和的、友好的に関係両者がほんとうに誠意をもって話し合って解決宿していくというのが公労法の精神であって、従って争議行為が云々というふうにただし書きがあるわけでありまして、そこでほんとうに誠意をもって私どもはやってきたつもりでありますけれども、先ほど二、三点指摘を申しましたように、どうも相手方に誠意がなかったというふうに私どもは考えておりますし、公労法が労働組合の存在を認める限りやはり組合としての立場から実力行使をせざるを得ない、それを行なった結果政府の方は急に態度を変えてこられる、こういう現実でありますからやむを得なかったというふうに考えておりますので、もしも組合側に対して処分をされるというのならば、公労法の建前からして平和的に解決する責任は双方にあるわけでありますから、政府関係の方々も同様に処分を願わなければならぬ、少くとも両当事者は対等である。だとすると、やった行為の批判は国民一般がするはずだ、こういうふうに私どもは認識を持つわけであります。もしそれがいけないというなら、公労法に基く労働組合を認められないということを言われるなら話は別ですが、認めておられる限り、そのようになるというふうに私どもは考えております。もし労働大臣が私どもに言われるように、誠意をもって将来のよき慣行をこれから作ろうじゃないか、こう言っておられるのでありますが、ほんとうにそう考えられるとしたならば、今回は双方に責任があるわけでありますから、今回は政府はいわくノーカウントにしていただいて、誠意をもって両方努力する、こういうふうにあってしかるべきものではなかろうか、というのが私どもの考え方なんです。従って以上私が申し上げましたように、この処分をすると一方的に言われますけれども、私どもとしてはそういういわれはないのじゃないか。政府の労働大臣等が御苦労は願って、今回の問題がこのように紛糾いたしません前に、世上一般相場というものが大体ありまして、人事院勧告も出ているわけでありますから、公労協関係組合の諸君には千二百円ぐらい何とかしてやろうという態度を早く考えられて、何とかおれの方も考えるから公務員諸君は一つ国民一般へのサービス向上のために全力をあげて働けという、こういうわかった話が当初からあれば、今回の紛争は一切起らずに済んだものを、それが言いかえれば公労法の精神ではなかったろうかという点等も考えて、調停案のときにもおのみにならない政府の状況等もあわせ考えますと、私が今申し上げたようなことになるのではなかろうかというふうに私どもは考えております。以上参考人として出席を招請されましたので御意見を申し上げた次第であります。終ります。
  98. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 次は説明員大塚郵政省人事部長にお願いします。
  99. 大塚茂

    ○大塚説明員 仲裁裁定が出ましたけれども、必ずしもそれが明確でなかったという点は私も遺憾に考えている次第でございます。しかしながらとにかくその解釈が政府としては一応確定したのでございまして、予算案が提出をいたされましたので、私どもといたしましてはその線に沿って一日も早く紛争を解決したいというように考えている次第でございます。どうか国会におかれましても早く一つ紛争が解決いたしますように御配慮をお願いいたしたいと考えている次第でございます。その他につきましてはまた御質問等でもございましたらお答えを申し上げるということにいたしたいと思います。
  100. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 次は参考人船山日本専売公社総裁にお願いいたします。
  101. 船山正吉

    船山参考人 今日の賃金のきめ方の問題につきましては、なかなかむずかしい問題があるのでございまして、今さら申し上げる京でもございませんけれども、給与総額の範囲内におきまして団体交渉によってきめるということになっておりますが、またそれにはその水準といたしましては民間賃金考えなければならぬが、一般公務員賃金水準も考えなければならぬ、こういうようになっているのでございます。団体交渉をいたしてきめるのでありますけれども、予算的にはワクがある。そこで経営者といたしましてもいろいろの制約に囲まれましてその間苦心を払っているところでございます。そこで私は結局のところ賃金に関する紛争は調停段階を経まして公労委の仲裁裁定によってこれをはっきりきめてもらう、学識経験者のおられます公労委の良識によりましてこれを決定していただく。こうすることによりまして労使間の健全なる労働慣行というものを樹立して参りたいと思うのでございます。従って今回の賃金紛争の処理に当りましても、公労委の仲裁裁定はこれを忠実に守って参りたいと思っている次第でございます。しかし今回の公労委の仲裁裁定内容につきましては、皆様御承知の通り予算単価千二百円を増額した範囲内で団体交渉してきめるとありまする一面におきまして、なお現在存しておりますところの予算単価と実行単価との差額についても、仲裁裁定理由書におきまして言及されておるのであります。すなわち公共企業体といたしましては、こういうものが大幅に存在することは適当でないから、将来これを合理的に縮小するようにしなければならぬという趣旨がうたってあるのであります。こうなりますと今回実質上のベース・アップをどのくらいにするかということにつきましていろいろ疑義を生ずるのでありますけれども、他方政府から公労委に対しまして照会を発しましたその回答におきまして、今回の仲裁裁定は実行単価にそのまま千三百円を積み上げるという趣旨ではない、しかし相当程度の筆質的給与改善措置を期待しておるのだ、そういう趣旨のものであるということを明示されておるのでございます。これらを彼此勘案し、総合して考えまして、現在の予算単価と実行単価との差額の三分の一はこの際これを積み上げないというふうに政府は解釈されまして、補正予算が組まれておるのでございます。の相当程・度の実質的給与改善措置ということについていろいろ見解はあると思いますけれども、公社の職員の給与のきめ方という点から考えますると、さしあたりのところはこの程度でやむを得ないのではなかろうかという感じがいたすのでございます。従い摂して補正予算が通過いたしましたならば、それに基きましてさらにこれの実施について力を尽したい。なお公労委におきましては今後ともこの仲裁裁定に関しまする労使間の紛争につきましては解決に協力を惜しまないという趣旨もうたってございますので、公労委を中心としまして労使関係を円滑に処理して参りたいと思うのでございます。  その他所感もございますけれども、先ほど来公社側経営者の参考人の申されましたことと重複するおそれもございますので、この際はこれを省略させていただきます。
  102. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 次は参考人専売労働組合執行委員長佐藤新次郎君にお願いいたします。
  103. 佐藤新次郎

    ○佐藤参考人 専売の組合の委員長をやっております佐藤でございます。今回三公社現業に対して提示せられました仲裁裁定をめぐって今政府の処理方針が明らかにせられました。私どもは今回の仲裁裁定の取扱いをめぐる政府の処理方針並びにその取扱いの経過等に対しまして幾つかの批判すべき点もしくは問題となすべき点を持っていると思うのであります。しかし先ほど来の組合側の参考人の述べた点と重複を避ける意味におきまして、私はおもに日本専売公社法並びに公労法、今回改正を提案されております予算総則との関連について申し述べたいと思うのであります。もちろん公労法によれば仲裁裁定の性格は明らかに示されております。そしてこれは労使紛争を最終的に終結きせる任務を持っておることは私がここで申し述べるまでもないと思うのであります。しかし今回提示された仲裁裁定の実施細目をめぐっての三公社現業の各労使間における状態は、全く新しい紛争を提起されるような、そういう事態を招いておるということを私どもははなはだ遺憾といたしておる次第であります。そのよって来た原因、経過等は、いろいろの見方、見解はあろうと思いますけれども、私どもは次に述べるような私どもなりにその見解を明らかにいたしたいと思うのであります。  それはまず第一には、公労法第三十五条によってこの仲裁裁定には労使当事者は服従しなければならない、こういう労使当事者立場の問題について申し述べたいと思うのであります。  今度の仲裁裁定の中でその骨格ともなっておりますのは、私どものさいふの中に入れるべき賃金幾ら引き上げるのか、こういう問題が根本なのであります。そうしてこの具体的な細目を取りきめるものは、仲裁裁定に示された趣旨は、労使間の団体交渉の協議手続にゆだねられておる、労使間の団体交渉によって定めよと規定されておることは明らかなのでございます。従って私どもは裁定提示を受けますとともに三公社現業を通じまして、労使の各当事者はすみやかに団体交渉を成熟せしめるような、そうしてその団体交渉の成熟によって明らかな結論を得るように努力をいたすべきものであります。そうしてその団体交渉がまとまらない、意見が相違を来たしておる、こういう場合には、その時期において適宜仲裁委員会の協力を得て具体的な取りきめを行うべき原則を仲裁裁定の中で明らかに示しておるのであります。このような前段的な労使の協議の手続、こういう団体交渉手続を経た上において、政府は公労法の定めるところにより、予算上資金上に関する問題として、初めてその裁定実施の可否について具体的な取り扱いの方針を示すべきであろう、そういうふうに考えておるのであります。しかし今回の裁定が提示せられましてから今日までの経過は、裁定を受けた労使間における団体交渉は、政府裁定処理の最終方針がきまっていないから、実際上においては具体的な協議に入ることができなかった。そうして裁定の骨格ともなっておる幾ら賃金を引き上げるべきかという協議の手続が実際上において、進行を見せなかった。この裁定に示しておる前段的な作業としての両者の協議の手続すら軌道に乗っていないという実情に立たされておるのであります。もちろん三公社においても政府八開の一部でありますから、政府の方針や政府の統制を受けるという事実上の問題を私どもは否定する意思は持っておりません。しかし公労法の第八条の団体交渉権の問題は、これは少くとも憲法第二十八条によって保障された団体交渉権であると理解をいたしておるのであります。従って私どもといたしましては少くとも交渉を妨げるような要因、障害は除去されることが団体交渉権を法認した基本理念でなければならないと確信をいたしております。従って団体交渉労使間において自治的な法規範によって規律されるべきものであろう、こういう原則の上に立ったならば、団体交渉に対していささかの政治的な干渉や介入や、そういう事実の現われてくることを私どもは排さなければならないと思うのであります。特に今回の仲裁裁定の処理に当りましては、政府は、賃金ベースの策定に関して、先ほどから各参考人が前述いたしておりますように、予算単価と実行単価との格差が好ましいものではないということを指摘いたしまして、今回の裁定額から差し引くという問題を今政府は新たに提起して参ったのであります。しかしこの予算総則の中で予算単価と実行単価の開きの問題は、少くともその手続の過程においては労使間で正当な団体交渉手続を踏んだこと、そして正当な、適法な労働協約を締結したこと、こういう事実は、予算総則、並びに専売関係で申し上げれば、専売公社法第四十三条の定める給与総額ワクの中における措置である。そして予算総則の定めるところによれば、この予算の基礎となった給与準則、この予算の基礎となるべき給与準則の定めを実施するために必要を生じた場合は、かりに給与総額を越えた場合であっても、物件費の流用とかあるいは予備費の移流用というような、そういう条件のもとにあっても、公社総裁は、大蔵大臣の承認手続を経ればそういう手続をとることによって労働協約の実行を保証しておるのであります。ましてや今回問題になっておりますのは、給与総額ワク内における措置の問題であります。そしてこの取扱いの問題は、給与総額ワク内における問題である以上は、私どもの見解によれば、公社当局と大蔵省との手続を規定したものである。そして、それが労働組合側にその責めの一端が負荷されるというようなものではないと理解をいたしておるのであります。
  104. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 佐藤参考人に申し上げますが、所定の時間をちょっと経過しておりますので、どうか結論をお急ぎ願います。
  105. 佐藤新次郎

    ○佐藤参考人 さらに、専売関係について予算単価と実行単価の開きについて多少触れたいと思うのであります。特に私どもの場合に問題になりますのは、昭和三十一年の一月一日付で半号昇給という昇給期間の短縮措置をとりまして、一人当り平均二百四十円のふくらましをいたしました。この団体交渉では、組合の給与是正による改善提案とともに、公社側からも、経営の合理化、経営の能率化という名目で勤務評定制定の提案が行われてきました。さらに第二次案としては、業績向上運動の一環として表彰制度をしきたいという提案があったのであります。その他幾つかの経営合理化、能率化に関する公社側提案がなされまして、先ほど申し上げたように、二百四十円の半号昇給をやる代替の措置として、これらの提案は一括して処理されたのでありまして、両者の妥協が成立した経緯の上にこの二百四十円が出ております。これを総括して端的に申し上げれば、われわれは能率化という問題と二百四十円とをバーター取引において妥協が成立を見たわけであります。もし今回のように、このベースの格差問題、公社提案の幾つかの条件をのんだ代償としての反対給付であった給与改善の措置が、政府のいうように三カ年計画で整理される、調整されてゼロになるというような場合には、これのうらはらの関係にあったこれらの公社の経営の能率化のための諸条件、こういう取りきめは一体どういうことになるのか。これは、私どもからいけば、その効力をその時期において失うという理解に立たざるを得ないのでありまして、その段階においては、全く新しい紛争を新たに惹起することになることは明らかなのであります。  なお私どもがここであらためて指摘しなければならない問題点は、政府から今回提出せられております補正予算の中で、予算総則を改正するという問題と公労法、公社法との関連の問題であります。  第一の問題は予算総則と公労法第三十五条との関係であります。  予算総則を見ますと、給与に関する労働委員会裁定を取り扱う場合に、企業経営に及ぼす影響等を考慮した上で実施することが適当であると判断した場合ということが公社総裁の権限として付与されておるのであります。そういう場合は大蔵大臣の承認を経て経費の流用もしくは予備費の使用云々とうたわれております。しかし、一方、公労法の第三十五条によれば、裁定に対しては、当事者は、双方とも最終的な決定としてこれに服従しなれけばならない、また政府も、当該裁定が実施されるようにできるだけ努力をしなれけばならない、こういうように法に規定されておるのであります。この公労法三十五条によって、これに服従しなれけばならないという当事者である公社総裁立場、この立場は、今回の予算総則の中で、企業経営に及ぼす影響等を考慮した上で、実施することが適当であるか適当でないかというような判断をする余地がある、自由裁量の余地を与えている、こういううたい方について、私どもは、裁定に拘束される立場との間に実際上において法の趣旨を変更することになるのではないか、法律上矛盾しているのではないかと考えておるのであります。この予算総則にうたわれているところの、企業経営に及ぼす影響等を考慮した上で実施云々という字句がもしかりに修飾語なのだというような意味であるならば、当然予算総則の字句上からは削除されてしかるべきものだと考えております。  第二の問題点は、予算総則と専売公社法第四十三条との関係係であります。  今回示された予算補正総則によりますと、基準内外の相互間の流用措置大蔵大臣の承認手続を経ない限り禁止するという条項が新しく提起されておるのであります。日本専公売公社法の第四十三条では、給与の額として定められる額、これを言いかえれば、給与総額の中で給与準則を定めることになっておりますが、給与準則とは何ぞやということになれば、公社機構としての給与規定であり、その基盤としての労働協約であることは明らかであります。そうして事給与問題に関しては、給与総額制の建前をとっていることは明らかであります。しかし、今回の改正案の中に示されている基準内外の移流用禁止の措置というものは、この総額制の中にさらに新しく障害を設ける、そういう障壁を設けるということで、これは法の趣旨を実質的に変えることになると思うのであります。私どもは、このような問題点は、自主性を叫ばれている公共企業体経営論の根本に触れる問題だろうと思うのであります。そうして私どものように罷業権が与えられていない労働組合にとっては、労使が互いに自主的な立場で、そうして積極的に未然に紛争を防止するのだ、平和的な話し合いによってトラブルを防ぐのだという、こういう立場というものは公労法の趣旨において明らかなのであります。それだけに、罷業権の与えられていない労働組合としては、団体交渉が唯一の労使安定の基盤としての任務を持つべきものではないかと思います。そうして実際上の問題としても、団体交渉手続が公労法の理念からいって、より重要視されるべきことは私が申し上げるまでもないと思うのであります。  ところが、ただいままで述べましたように、実際上においては団体交渉の運用にはいろいろな制限が加えられてきた、そうしてこのことは、今日、団体交渉は全くその機動性を失っている実情にあります。そうして公労法に定められている法の趣旨とはまさに逆行しようとする傾向を深めようといたしております。私どもは、もしかりに基準内外の流用禁止というような新しい問題が確定を見る、こういう段階では、常に政府当局、大蔵省当局、大蔵大臣に対してわれわれの要求を持ちかけ、交渉を持ちかけていく、こういう傾向をたどるであろうということは、公労法ができましてからのここ数年間の公企体における労使間の団体交渉あり方からいって、明らかに指摘することができると思うのでありまして、しかもこの政府大蔵大臣に対して常に交渉を持ちかけなれけばならないという立場は、大きな政治問題としてとらえるべき性格を持っておると思うのであります。専売の場合を申し上げますならば、今回の成立を見た予算の中では、国庫納付金において昨年度予算より五十五億余りの増額を示されております。そうしてたばこの売上げ代金の面におきましても、約六十七億の増額を示されておるのであります。そうしてこれらの事業量の増が、実際にはそれに見合っていない定員との実情、こういうところからいけば、職員、労働者の労働量の密度の問題は、これからの労働問題の最も大きい問題にかかってくると思うのであります。  このような事情の上に立つならば、これからの労使間の安定を企図するこういう裁定の基盤として、基準内外給与移流用程度は団体交渉の決定する範囲内にゆだねる、そういうことによって団体交渉の余地を残す必要があろうかと考えておるのであります。  なお専売裁定に関する財源の問題、いわゆるベース格差といわれておる問題等につきましては、前述いたしております国鉄、電通、全逓の各組合側参考人の条件と専売も全く同じ条件にありますので、申し述べることを差し控えますが、どうか今日の事態の急速な収拾のために諸先生方の適切なる御指導をいただきたいことを最後にお願いいたしまし、陳述を終ります。
  106. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 以上で参考人意見開陳は終りました。質疑の通告がありますので順次これを許します。この際御注意を申し上げたいことは、質疑応答はお一人二十分以内にお願いを申し上げます。どうか質問者も参考人の方も簡明にお願いを申し上げます。大坪君。
  107. 大坪保雄

    大坪委員 本日は皆様御苦労様でございました。いろいろ各企業体及び労働組合のお立場からの今回の仲裁裁定に対する御意見、御意向というものを拝聴いたしたのでありますが、私は他にたくさんの質問者もおられるようでありますから、国鉄労働組合の野々山さんにちょっと一、二点お伺いしてみたいと思います。野々山さんも先刻るる国鉄労働組合立場からの御陳述をなすったのでありますが、私は公労法の建前といたしております国の経済と国民の福祉と公共企業体あり方、それの観点からお伺い申し上げたいと思います。先刻あなたの御陳述では、結論として、今回の仲裁裁定に対して政府予算措置を新たに講じようといたしておりれるわけでありますが、その予算措置を講じている補正予算が成立した場合には、それに服するかどうかということの御意向がはっきり承われなかった。小倉総裁は、補正予算がきまればそれに服する、こう言われ、そうしてそのお話の中に、一つ労働組合側も服してもらって、実力行使ということはしないようにしてもらいたい、こういり御希望の御開陳もあったのであります。今回の補正予算は近日中に成立するだろうと思うのでありますが、その場合には仲裁裁定を公労法が規定しておりますように、十分に了承していかれるかどうか、そういう御意図があるかどうか、その点をまずお伺いいたしたい。
  108. 野々山一三

    ○野々山参考人 私は仲裁裁定には従いたいと思います。従いたいというよりも従うべきものだ、かように考えます。しかし大坪委員指摘された、政府が組んでおる補正予算が成立をしたらそれに従うかという質問でありますが、その前に政府が組んでおる補正予算の性質は、仲裁委員会が出された裁定通りのものではないので、まず政府裁定通りのものを予算で組まれれば、これは私ども裁定を受けておるものの立場から当然それや受けていきたいと思います。受けていきたいというよりも当然受けねばらぬ立場だと思います。
  109. 大坪保雄

    大坪委員 政府の今回の補正予算裁定通りでないと言われるけれども、それはだれがきめるかということです。今回の仲裁裁定については非常に疑義があるということはあなた方も皆さん一政してお話になった。われわれも非常に疑問に思っております。先刻仲裁委員長の御意見の御開陳もあったのでありますけれども、それでもそのお話の中には、たとえば将来という言葉の意義についていろいろ論議がかわされたけれども、これは政府がこれをこうと見て、そういう措置をするならば委員会として別に異議はない、こういう発言をなすっておる、これは速記録で明らかであると私は思います。従ってこれは要するに仲裁裁定の解釈とでもいいましょうか、それは国会予算を決定したときにその裁定の解釈というものがはっきりする、こう見るよりほかに措置はないじゃないか。これを裁判所に持っていって裁判所の判決を請うというわけには参りませんから、そういうふうに思うのでありますが、そういう視点から、今度の補正予算が成立すればやはり国会の意思はそこにある。それは仲裁裁定の正当なる解釈である、こう解釈すべきであって、それに従うべきである、こう思うのですが、その点をもう一ぺんお伺いいたします。
  110. 野々山一三

    ○野々山参考人 仲裁裁定は余人が裁定の解釈をすべきものではないと思います。仲裁委員会が出されたものでありますから、仲裁裁定である限り仲裁裁定委員会裁定の解釈をさるべきで、それをいかように実行するかという実行論の問題は別であります。従って私は裁定の解釈に関する限りは仲裁委員会が下さるべきものであって、それを政府としては実行する、こう言われるのでありますから、仲裁委員会が言われる通りのものを予算措置をされるならば、私どもは当然それによって実行をする、こういうことしか申し上げられないのであります。
  111. 大坪保雄

    大坪委員 あなたのいわゆる仲裁委員会の解釈というものは、おそらく政府予算をきめて、それに基いて団体交渉が持たれるということになるのでありましょう。その過程においては仲裁委員会としてなお御協力申し上げてもよろしい、こう言っておるから、それをさされるのかもしれない、それはそれでいいです。仲裁委員会ももう一ぺん中に入って最後の団体交渉にはごあっせんするということを言っておられるから、それはそれでいい。  そこで私はちょっとお伺いしたいと思うのですが、昨日の夕刊及びきょうの二、三の朝刊を見ますると、たとえばきょうの読売の朝刊を見ますと「公労協、予定通り実力行使」という見出しで、何か――ちょっと読んでみましょう。「公労協は仲裁裁定の解釈をめぐって政府当局と組合が対立したため、さる二十円に質問書を提出して裁定役の公労委の見解をただしていたが二十三日の公労委の回答が相変らず具体的でなかったため既定方針に従って二十五、六の両日政府仲裁裁定の完全実施を要求、実力行使をする。国鉄は二十五、六両日に昼休みから勤務時間にくい込む二時間の職場大会、」をやる、こういうことが書いてある。これはこういうことはあり得ぬことだろうと私は思いますけれども、何かそういうことがございますか。
  112. 野々山一三

    ○野々山参考人 仲裁裁定が完全に実行されればいつでもさようなことはいたしたくないと思っております。
  113. 大坪保雄

    大坪委員 私は新聞の誤道だろうと思うのですが、予定のと書いてある。何か二十五日、六日には、そうしてその前提として仲裁委員会質問書を出した、それに対する回答がきた、不満足である、その回答も新聞には響いてある。そこで予定通り二十五日、六日には実力行使をする、こう書いてある。何かそういう意見を公労協できめられて、また「国鉄は」と特に書いてある。何か国鉄労働組合ではそういうことをきめられましたか。
  114. 野々山一三

    ○野々山参考人 問題はそのことを議論をしても私は問題の本質は解決しないんじゃないか、かように思います。仲裁委員会に公労協が質問をいたしました結果、実行額に千二百円を加えるべきだ、こういう解釈は政府が解釈を求められてなお解釈がこんがらかったあとで私どもがあらためて質問をいたしましたものが、実行額に千二百円を加えるという趣旨なんだ、かように回答が出たのにもかかわらず、そうではないという解釈通り政府裁定を実行する立場からという予算措置をそのまま続けられようとしておるわけです。私どもは本来紛争を好みません。本来実力行使などということは考えたくもないのですが、もう八回目、仲裁裁定がまた実行されない、こういうことになれば、だるまさんでも七ころび、八回目は起きるわけですから、私どもとしてももう一ぺん、内閣総理も仲裁裁定は実行する、こう言われたのですから、解釈は先ほど申し上げたように、仲裁委員会がすべきものであります。仲裁裁定というものは、こういうものだといわれたものを実行するというのはだれでもその関係者がやるべきものでありますから、そういう観点からみますれば、仲裁委員会の解釈以外のことを政府がおやりになるとすれば、私どもは仲裁裁定を守りたいのでありますから、守る立場から政府に反省を求めたいと思います。あるいはそれぞれの人たちにも反省を求めたいと思います。新聞のお話が出ましたから私も新聞のことを申し上げるのでありますが、仲裁裁定が出てから団体交渉をしてないうちに三分の一を減額するといったり、三分の一なんか減額しろとも仲裁委員会はいっていないのに、三分の一を減額するということは、これは政府も少し不当ではないかと新聞の論説に書いてあったことはあなたも御承知だろうと思います。さらにそういうことになれば、ひとり組合の行動だけ押えようというのも、これも不当ではないかと新聞に書いてありました。これは相対的なものではないかと私は思うのであります。
  115. 大坪保雄

    大坪委員 逃げちゃいかぬです。私はあなたに尋問みたいなことをするつもりはないから率直に私の問うたところに答えて下さい。二十五日、六日に実力行使をやるという決定を公労協や国鉄労組はやったかやらなかったかということを聞いているんです。はっきりそういう点だけ答えて下さい。
  116. 野々山一三

    ○野々山参考人 裁定通り実行されないとすれば私どもやるときめました。
  117. 大坪保雄

    大坪委員 その実力行使とはどういうことですか。
  118. 野々山一三

    ○野々山参考人 今まで数次にわたって皆さんも体験をされたかと思いますが、そういうことの内容のものをやります。つまり順法闘争と職場大会でみなの意思をきめ、さらにそれによって反省を求める、こういうことをきめたのであります。
  119. 大坪保雄

    大坪委員 そこでお伺いしたいのですが、大体今のお話ではやはり二十五、六日ごろいわゆる実力行使をやるような計画があるかに伺われる。その実力行使は職場大会ないしはいわゆる順法闘争というもので、過去のあなた方がやられたいわゆる順法闘争といい、職場大会と称するところの実力行使というものは、これは国鉄業務の正常なる運営を阻害していると私は思うのです。これは汽車がとまっている。客車もずいぶん運行を停止している。貨車もとまっている。また遅延もしている。利用者である国民が非常に迷惑をしていろ。迷惑をこうむっているのは国民なんです。それを繰り返してやろうとしているのです。ところが国鉄の業務の正常なる運行を阻害するということは公労法の十七条にはっきり禁止してあるのです。やっちゃいかぬと書いてある。そういうことを扇動、誘惑してもいかぬと書いてある。それをまた三月二十三日のいわゆる抜き打ちストというものによって国民が非常に迷惑をし、困窮して、憤激をして、それで国鉄の組合もまた自己反省されまして、二十六日後のいわゆる第五波をやめたということであるが、それをもう一ぺん繰り返そうというお考えでございますか。
  120. 野々山一三

    ○野々山参考人 過去数回にわたって仲裁裁定政府判断によって実行されないということのために、鉄道労働者のみならず公労協につながっておる労働者は大へん逃惑をこうむりました。私は組合の結成以来ずっと組合の仕事にタッチをしていますが、今日から以降も、今日までも少くとも法律できめられたことはそのまま実行されるならば順法闘争というような法律を守る闘争であろうと、そういうようなことはいたしたくないと思っております。どうぞ一つ議会で、国民の皆さんも、あるいは関係の労働者も迷惑をこうむることのないように、法律通りのことが実行されるような、政治に信頼できるようなおきめをいただきたいと思います。
  121. 大坪保雄

    大坪委員 これは顧みて他を言うようなことをあなたは言われるが、明らかに公労法上禁止してある違反行為なんです。そうしてその結果被害をこうむるのは、これは国民大衆なんです。私は公労法の建前から、すなわち国の経済と国民の福祉の立場からあなたに御質問を申し上げたい。こういったその気持一つ了解していただかなければならぬと思うのです。そういうあなたたちが自分たち意向を達したいために、主張を通したいために、何と申しますか、罪も何もないというべき本来第三者であるべき、第三者というよりは、これは国民全体の奉仕者としてという言葉が法律上使ってあるわけなんですが、奉仕すべき国民に対して迷惑を及ぼすようなことをあえてやる。そういうことでなしに、団体交渉という方法があるのだから、今度の問題の場合には、そうして諸君は先刻から、たとえば特に専売公社委員長も言われたように、団体交渉でもっていきたいという、そういう措置があるのだから、そして過去において二十九年にしても、三十年にしても、三十一年にしてもそういう実力行使をすることなしに、あなた方が奉仕すべき国風大衆に迷惑を及ぼすことなしにある程度そのつど必ず賃金は上っておる、ある程度の目的は達しておるのだから、そういうことにまず専念する、努力する、こういう公労法の建前を尊重するということでなしに、とにもかくにも気に食わないから、国民大衆が迷惑をこうむろうが、国の経済がどうなろうが、それはかまわぬ、やる、こういうことではこれは国民は納得せぬし、法律建前としても非常に困った問題であると思う。何とか将来この仲裁裁定の最後の解決団体交渉を持ちなさい、その場合に必要であれば私どもお手伝いしましょう、労働委員会の勧告は親切に出されておるのです。そういう措置をお考えにならないで、とにかく気に入らぬから二十五日、六日またやるのだ、これでは何としても国民は納得しない。どういうことをもってあなた方は国民に訴えられようとするのか。世の中では最近、昔軍閥今総評といってあなた方のやり方を、昔陸軍がやった非行と比べて言っておるのです。私どもこれは適切なる言葉であるというような感じさえ持っておる。陸軍は昔、秋季特別大演習というのを毎年繰り返したのだ。最近総評は春季特別大演習というのを繰り返しておる。それでも昔の陸軍は、それで民衆に損害を及ぼした場合には補償した。今の総評のやるこの春季特別大演習は、国民に非常なる被害を及ぼすけれども、何も補償しない。そういうことでなしに、団体交渉でおとなしく、何と申しますか、先刻皆さんもお話しになったように、産業の平和を維持しつつやる、こういうことでやっていけないものですか。
  122. 野々山一三

    ○野々山参考人 先ほど私公述の際に申し上げましたけれども、今日問題になっている五百二十円も、調停仲裁手続を経て団体交渉で妥結をして、そうして紛争脅しないで終ったんです。あなたの御指摘になっておる、二十三日のストライキといわれるそのものも、三十五億を二十三日に支払いますという協定をして、にもかかわらずいろいろの理屈はあったにしても、その日に支払わない。そういうことになれば、一体あなたの指摘される、団体交渉をやっても値打がないことになってしまうという思想を労働者にあおるのではないですか。そういうことをやらないように、きちっとされるならば――なぜ今度給与総則などでああいうものをおきめになったり、団体交渉をやろうにもやれぬようにしてしまったり、あるいは仲裁委員会で五百二十円は含まないのだという解釈をけさもされたようです。そういうふうにアドバイスしておってくれておることに私ども非常に敬意を表します。しかしそれをやらさないように、三分の一削る頭から言うのですから、今は総評どころではなくて、今は何とかということになってしまうではないでしょうか。ひとり私どもに責任を転嫁されても、これはやっぱり、あなたも他を見て何とかと言われましたけれども、やっぱりあなたのお考えも、もう少し私どもの言っている事実、やってきた事実を知っていただくならば――私どもは団体交渉でまとまるものならばいつでも団体交渉でやりたい、終始それは労働運動の理念として私どもは持っておる。実力行使なんというものは万々やりたくないというのが私どもの信念なんです。どうぞ一つ団体交渉でやったものを三分の一削るなんということは直ちにやめていただきたいと思います。あるいはまだきまっていない確定分というものを、きまったがごとく三百円予算で引いてしまうようなことをおやりになるようなことをやめていただけば、小倉やみ給与なんというものもなくなって、小倉やみ給与ではなくて、国鉄団体協約書が守られるということになるのではないでしょうか。そうすればこの春の大演習などというものはなかっただろうと思います。あなたの御指摘になる、大演習だなどというものは。私どもは少しも大演習などとは思っていないのです。私どもは、当然のことを当然にしてもらえればいつでもやめますということは、組合が闘争を組むとかあるいは年度の運動方針をきめる冒頭にそのことをきめているのです。ところがそれがやっていけなくなってくるのは、私どもの責任ではないと私は思うのです。しょせん労働者は受け身なんです。だれかが事を仕組む、だれかがそういうものを破棄する、だれかが仲裁裁定を実行しないというから、受け身な者でも守っていくということになるのは、これは常識じゃないでしょうか。かりに先生がある取引をされたときに、相手方が詐欺をやったとすれば、先生はきっと補償を求めて裁判をされるでしょう。私どもは、仲裁裁定が実行されるためにハンガー・ストライキをやって、ストライキをかけないで始末をしたこともあります。しかしその仲裁裁定は実行されないで、裁判所に訴えたら六年も七年もたってもなお裁判所は判定をしてくれない。そういうことがだんだん積み重なって、結局これでは私どもがいかに団体交渉できめても踏み破られる。仲裁裁定できめてもそれが実行されない。どうして守る道があるのでしょうか。先生が私ども労働者に対して、仲裁裁定を、政府が何と言おうがおれの金でやってやると言われるなら、私は先生のおっしゃる通りにここでストライキはやめます、こういうふうに申し上げます。
  123. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 時間が経過しますから、そのつもりでお願いいたします。
  124. 大坪保雄

    大坪委員 私はあなたとここで議論にわたってかれこれ言いたいのではありません。私は質問しているのです。時間もありませんし、たくさん質問もありますから、簡潔に申しますから、質問に簡潔に答えてもらいたい。私が今言っているのは、来たる二十五、六日にまたぞろ国民に迷惑をかけるような実力行使をやらぬで、せっかく仲裁委員会でも、団体交渉を最後に持てば、そうして必要であれば私どもやりますと言っているから、二十五、六日の実力行使をやるようなそういう考えはやめて、団体交渉で話をつけるということにやれませんか、こう言っておる。あなた方は団体交渉が持てないからとこう言うのだけれども、この間の実力行使だって、これは調停申請中であり、仲裁申請中なのです。一体労働争議の解決方法として調停を依頼した場合には、調停結論が出るまでは両当事者はそうこれに不当に圧力を与えるような、いろいろな実力行使をやるべきものではないのです。これは労働争議のルールです。エチケットです。仲裁をあなた方が申請しておいて、その仲裁最中に、まだ裁定が下らぬうちにその仲裁委員会に圧力、インフルーエンスをかけるような実力行使をやる、こういうことは私はアンフェアだと思うのです。そういうやり方でなしに、やはり仲裁裁定が下ったらその裁定に従う。仲裁裁定は従うべきものである。だから私は、今あまり多くを言うと時間がありませんからあれですが、問題は二十五、六日に実力行使をやると新聞が騒ぎたてておる。国民はおそらくみな不安でしょう。あの日は結婚の予定日だがどうしようとか、あるいは学校をどうしようとか、遠足の予定だがどうしようとか、国民は非常に不安に思っておると思います。あなたにも子供さんたくさんあるでしょう。そこをよく考えて、団体交渉のような平和的方法で解決する気持にならないかということなのです。これは次の回答のときにちょっと一言加えて下さればいい。  そこで私はもう一つお伺いしたいのです。それは、これからあともう一、二問ありますから、それをお尋ねするために尋ねたいと思うのでありますが、この間三月二十三日にいわゆる国鉄の抜き打ちストがあった。これは非常な被害が国家及び国民に及ぼされた。ところがその後四月十日に中央委員会をお開きになったですね、あなたの方で。その際にこの二十三日の争議をも含めて、これは正当な行為であったということ、そのことを闘争方針として記されておるということを私は伺った。特にその中央委員会の第一日でしたか第二日でしたかの午後には、枝村中央委員質問に対して、あなたが、二十三日の行動は正しかったと評価しているし、また自信を持っておる、これは今後のわれわれの行動々発展きせる一要素にもなっていると答弁をしたように私は伺っておるのです。そういう事実があったかどうか、そして今後の行動を発展きせる要素ということは、また今度のような実力行使をやるという意味なのかどうか、その点をお伺いしたい。
  125. 野々山一三

    ○野々山参考人 調停仲裁中に国民の皆さんの足を奪うようなことをやったとすれば、それは不当な圧力をかける、こういう御指摘でありまするが、調停仲裁中に国民の足を奪うというようなことをした事実はございません。  それから三月の九日に調停案が出ました。先ほど大出参考人から指摘をしましたように、私どもとしては二年分の賃金で、しかも千二百円でありますから、これはきわめて不満だ。しかし第三者の機関が判定をされたものでありますから、非常な不満があるけれども、これを受諾する用意あり、こういうふうに態度をきめて、即刻調停委員会にも回答いたしました。私は夜分でありましたけれども、藤林会長及び事務局次長のもとに飛んで、直ちにストライキをとめる気持はある。従って政府が、あるいは当局が、調停案に示す内容をもって直ちに調停を締結してくれるというならば、いつでもストライキをとめたいから、あっせんをしてほしいというあっせんの申し入れまでいたしました。しかし残念なことに、十日の夜分十一時ごろでありましたか、緊急閣僚懇談会だかのあとで、団体交渉をしても値打ちがない、することはできませんという回答が、国鉄の経営者から私の手元にありました。一体どういう事由かといえば、調停案がよくわからぬからだ。よくわからぬということだけの事由でもって、私どもは、わかっていようが、わかっていまいが、千二百円で、それこそ涙をのんで受諾をする。いつでもストライキをやめるのだ、こういう真剣な態度をもって、調停委員長にもあっせんを求めるというような処置までとったにもかかわらず、調停案がよくわからぬという一片の理由で、団体交渉をしても値打ちがない、こういうふうに言われるのは、一体社会的責任はどちらが重いのか、よく皆さんにお考えをいただきたいと思います。  さらに聞くところによりますれば、調停案に対する回答書の一言半句まで政府の許可を得なれけば、回答もしてはならない、回答書を出してはならないというほどにまで、とやかく言われたんでは、労働問題は解決しないと私は思うのですが、そういう圧力を加えしかも総理が十二日になったならば仲裁申請をしますと、社会党に約束をされたにもかかわらず、その日になったら、また一律千二百円だからわからぬということで、これまた仲裁申請を延ばされる。そういうことが重なったこと、それこそ数え切れない圧力を、政府という力でおかけになった。私どもは労働者ですから、権力も何もありません。ただストライキをやめるというか、とにかく話がつくなら、いつでもやめる、このことだけが終始つながっていろわけです。でありますから、十一、十二日のものにつきましては、残念ながら、そういう政府の態度がありましたから、やってしまいました。けれども、十六日のものについては、その時間寸前に賃金改訂の闘争にしてみれば、金額を幾ら、どういうふうに上げるかということも少しもわからないで、仲裁ができたから確実に実行します、こういう一札だけでストライキをやめるということは、私ども運動者としては耐えられない大きな負担なんです。しかし社会的な影響を考えれば、組合員諸君を納付させる以外にないというわけで中止をしたのです。その条件として、三十五億というものを出すということで調停ができたものを、二十三日にうっちゃられるということになってくれば、すべてが相手方の手によって、私どもの誠意は一片も受け入れられない、こういうことになれば、私はあえて申し上げたいと思いますが、このことが一回だけここで起ったなら、まだもう一つ考えようがあったかもしれませんということを思っています。昭和二十四年以来、仲裁裁定を受けること、それこそ五回、調停案を妥結すること二回、すべてが今日の瞬間においては、やみ給与だと言われ、減額をされ、しかも協定もほごにされる。こういうことがたびたび重なっておりますれば、いかに――今あなたがおっしゃるように、団体交渉でやればいいというルールはちゃんとあります。私も今日もなお団体交渉解決をつけたいという気持は、国鉄労働組合三十七万の戦術計画を担当している企画部長としては、しょっちゅう考えておることです。さらに公労協の戦術委員長として、私はひとり国鉄の企画部長としてではなく、公労協全体に及ぼす影響というものを考えて、終始そのことを言っているのです。けれども、そういう圧力で一つも話は進められないようにしてしまう。今日もなお私どもは仲裁裁定を実行するために団体交渉をやりたい、やることについてしょっちゅう要求をしているのです。しかし相手方も今こういうものでは自信が持てないということなんじゃないかと思うのでありますけれども、あるいは仲裁委員会が言っているように、仲裁裁定通りにうまい予算措置がされていないということがあるからかもしれませんが、団体交渉ができないのです。いかに私たちが執拗に団体交渉を要求してもできない。もし、あなたがおっしゃるように言われるならば、仲裁裁定は、しょせん両当事者に出されたものである。両当事者仲裁裁定に従うと私どもは言っているのです。でありますから、両当事者団体交渉で、これでいきましょうということにきまってから、予算措置なり何なりをしていただくということになっていただけるならば、今日ただいまからでも、私は、何でしたらこの場でも団体交渉をやってもよろしいというふうに思っております。そういうふうにぜひお考えをいただきたいと思います。
  126. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 参考人もおられますから、実は大体五時半ごろには済ませたいという気でおりますので……。
  127. 大坪保雄

    大坪委員 二点だけ団体交渉が持たれなかったという今の野々山さんのお話です。小倉さん、その点はどうなんですか。いかにもどうも国鉄当局は、団体交渉を避けてでもおるように聞かれたのですが、団体交渉が持たれなかったということなんですが、何かのやはり不誠意な態度が国鉄当局にあったのですか。
  128. 小倉俊夫

    小倉参考人 団体交渉は、この件ではございませんが、ずっと継続してやっております。この件につきまして、今晩でも団体交渉を持つということでありますれば、私は喜んでそれを持つつもりでおります。
  129. 大坪保雄

    大坪委員 野々山さんにもう一点伺いたいのですが、今あなたはストライキという言葉をお使いになった。とうとう十一、十二日はストライキをやってしまったと言われた。実力行使と新聞等には発表されておるけれども、やはりストライキをやっているという気持なんですね。
  130. 野々山一三

    ○野々山参考人 よくわかりやすい言葉を使った方が議論が残らぬからと思って私は申し上げておるのです。私どもは、全国職場大会というものは、組合の団結権をお認めになっておられる建前から、組合活動の中では職場大会は当然許されておると思います。順法闘争は、書いておる通り、法律を守る闘争でありますから、たとえば、少し長くなって恐縮でありますけれども、飛び乗り、見切り発車などということは、私どももやっちゃいけない、こう言いますれば、総裁もその通りだというわけで処置をされる、私どもは全くその通りのことをやっているのです。  それから先ほど御指摘の点で落しましたから、答えさせていただきます。二十三日の行動を含めて正当である、こういうふうに言ったと言われたのですが、言葉のあやをつかまえるわけではありませんが、労働運動としては二十三日の行動を含めて私どもは正しいと思っておるので、正当という言葉は私は使っていない。  それから自信を云々というお話は、私は労働、出動の長い段階の中ではこれから実力行使というようなことをやらなくても問題は解決するというようになる一つの大きな基点でもあるのじゃないか、これは私どもの考え方だけではなくて、相手のあることですから、あるいは政府がいろいろのちょっかいをかけたり、圧力をかけたりなさらなくても、自主的にいけば、かようなことはなくて済むのじゃないかという角度から、運動が前に進むという角度から、両面から組合員はそういう角度からの自信を持った、こういうふうに思っています。さような趣旨のことを私は企画部長として申し上げたので、労働運動としては、私はいろいろな議論はありとしても、正しかった、かように思っております。   〔亀山委員長代理退席、委員長着席〕
  131. 大坪保雄

    大坪委員 ストライキということは、わかりやすいつもりで言った、こう言われた。それはストライキのつもりでしょう。これは公労法第十七条で明らかに禁止してある。だから違法であるということは御了解ですね。
  132. 野々山一三

    ○野々山参考人 労働運動ですから、相対的な関係というものを度外視して問題をながめてはいけないのじゃないかと思う。もし一面だけとらまえるということをずっと先行するとすれば、労使の関係というものは非常に変則的なものになってしまうのではないか、かように思います。従ってぜひ、先生も自民党の労働部長をおやりになっているようでありますから、労働問題を見る目というものは、たとえば権力や力で押えつけるということだけでは済むものではない、両者がお互いに良識と当然の手続と当然なさねばならぬという認識、こういうもの密お互いに持って、初めて健全な労使関係が生まれるものだと私は確信をいたしておるのであります。
  133. 大坪保雄

    大坪委員 私は自民党に属しておりますが、私どもの考え方では、労使関係を正常なる良識ある慣行のものに作り上げたい、そうしてもらいたいという念願で一ぱいなのです。だからストライキを禁止してある公共企業体が、どんどんかまわないでストライキをやるというようなことでなしに、何かいい方法で話し合いがつく道はないか、そういう考えはないか、こういう気持で聞いているのです。それで十七条違反であることは明らかなのです。そうすると十八条で処分、解雇せられるものとすと書いてある、だから十七条の違反を敢行した以上は、少くもその責任者、計画をし実行の指令を出したような責任者は解雇せられるものとすという覚悟を持っておいでになったろうと私は思う。これは当然そういうことは責任が生じてこなければならぬ、先刻来大出さんでしたか、これは国鉄のために弁ぜられたのだろうと思うが、るるどうか違反処分はやらぬでもらいたいという御陳述がございました。私よく承わったが、しかしそのお話のお気持はよくわかるけれども、一向政府がいい返事をしないからやむを得ず違反行為をやったのだ、こういうお話だが、実際今度あなた方がおやりになったいわゆる総評の春季闘争というものは、昨年の八月の総評の大会ですでに方針を決定し、それから戦術会議、幹事会をたびたび開いて、そうして今年の一月の総決起大会でその方針をはっきり決定して、スケジュールを組んでやったことなんです。ちゃんといつ幾日には何時から何時までは職場大会をやる、どうこうやるということをはっきり書いてあるのです。それをあなた方がやっただけで、政府が応じようが応じまいが、そういうことはあなた方は考えておらなかったというふうに私は見ざるを得ない。だから政府やり方が悪かったからやむを得ず違法行為をやったのだからかんにんしてくれ、これでは話にならぬ。スケジュールを組んでやったのです。そこでスケジュールを組んでスケジュール通りにやっておって、そうして政府やり方が悪かったからやったのだ、かんにんしろ、相打ちだということは私は聞えない、それは聞えませんと言わなければならぬ。そこで野々山さんに伺いますが、責任はやはりとる、それが多衆を率い、そして多衆の行動を指令する者の私は当然の仕事だと思う。責任がなくして、何らの責任を感ぜずして、責任を負うこともせずして、特に一般大衆に迷惑を及ぼすような行動をやられるということは、これはもうとんでもないことだと思う。これは法治国家ということそれ自身を否定するようなことなのです。だからこれは当然、政府が処分をやるかどうか私は知りませんよ、知りませんけれども、私は当然やられるべきだと個人的には考えている。処分をなさるべきだと私は思うが、とにかくかりに処分があれば――やはり私は公労法十七条、十八条の関係では当然だと思うのであるが、新聞紙の伝うるところによりますと、処分をやればまた実力行使をもってこれにこたえるという意図が国鉄のあなた方のところにあるように書いているのです。そういうことは、まさかなかろう、責任を解する人のやることではないと私は思うのですが、何か処分があれば、またやはり今の実力行使かストライキでもやるというお考えであるか。
  134. 野々山一三

    ○野々山参考人 責任論でありまするが、私どもはもとより無責任なことをしておるつもりは一つもございません。終始社会的にあるいは部内的に責任を負っておるつもりであります。ただその処分問題について今言われたのでありまするが、たとえばかりに、二十三日のことをあなたは再三指摘されますから申し上げるのでありまするが、私どもが労使の間で協定をした通りに当日支払われれば、かようなことは絶対に起らなかったわけであります。にもかかわらず、支払ってはいけないかのごとく、あるいは支払ってはいけないというふうに言われたのはどなたでしょうか。私の聞くところ、政府筋だ、こういうふうに聞くのであります。で、そのために因果的に発生した社会的責任というものは、どういうふうにおとりになるのでしょうか。私は石田官房長官が新聞で、二十三日のことについてはおれもよくわからなかったけれども、この事情をよく聞いたら、なるほどおれも月給取りとして、約束された日に約束されたものがもらえなかったり、月給がもらえなかったりすれば、これはもう怒るのは当りまえだ。情状酌量する余地あり、こういうふうに言われたのですが、一体私はそれがどの程度であるかということは別として、お互いに社会的政治的な責任を担当している者は、事実に基いて、自分がこのときにこうすればよかったということをお気づきになるならば、そのことに対してもきちっと責任をとるように、あるいはもしそのときに、そういうとめるようなことをしなかったならば、ああいうことは起らなかった。とめたのは一体だれか、あるいは結果的にああいうことが起ったのは何かという角度からもごらんになる気持はないでしょうか。私はもしさようなことがありとすれば、将来にわたって平和的な関係というものができるのじゃないかというふうに思います。  それからスケジュールなんとかというお話をされるのでありまするが、そのスケジュール闘争というものがいけないという。だからスケジュールをきめないでやると、それは抜き打ちだという。全く言葉というものは便利なものだと思います。(発言する者あり)私はそこであなたの御指摘のように、社会的国家的な責任を十分感じながら、もっと考え気持はないかという気持については、再三申し上げておるように、実力行使などというようなことは、法律でストライキ権を認めているとかいないとかにかかわらず、やらないで済むようにというのが私どもの終始持っている気持なんです。やったことについても、私どもはあなたの御指摘の通り言うならば、最近の二十六日のストライキといわれている総評のもの、あるいは公労協の実力行使、あるいは十九日、二十日のすでに計画をされていたという角度からすれば、そういう実力行使というものも、まあまあという――非常に不満であっても、まあまあと思われる節があるならば、そういうものはいつでもとめる、そういう実証が十六日にやめたことじゃないでしょうか。何でもかんでも計画的にどうしてもやらなければならぬということを考えていないという証拠がそれじゃないでしょうか。追及するのあまり、先ほど私が申し上げたように、計画ストライキはいけない、だから急にやればそれもいけない、そういうふうに言ってしまえば、一体労働者は何によって救われるのでしょうか。新聞にあることが書いてありました。賃上げはしてはいけないというけれども、結局ああいう春闘という闘争が起ったら賃金を上げたじゃないか、もう少し経営者はストライキが起る前に考えるということが起らなければ、日本の労働関係というものは安定しない、こういうふうにいわれたのです。もし国鉄のこの闘争の問題を、私がそのものずばりと言うならば、政府がとやかく言わないで、あるいは自主的にやったものを、その当時の状況としてはやむを得ぬというふうにごらんになる気持があるならば、私は三月十日の夜分には、必ず実力行使は終っていたと確信しておるのであります。そういう事情をぜひよく知っていただかないと、これからの問題もやはりこじれていくのじゃないでしょうか。私は中央委員会でこう申し上げた。全国民八千万の皆さんは、二度と汽車がとまることを好んでいないと思う。なるほど過去のことについてはいろいろ議論があるが、また再び汽車がとまるようなことをされる、つまり首を切るなんという、責任を追及するのあまり、再び国民に迷惑をかけるようなことは、ぜひとも将来の問題として考える角度からすれば、今一考される必要があるのじゃないかと思う。全国の皆さんもよく考えてほしいとあえて中央委員会に私は申し上げたのです。もし御必要があるならば、その速記録は皆さんに全文お示しをしてもいいのです。私の真情は中央委員会に全部申し上げているつもりですから、ここでもうこれ以上議論をしてもしようがないと思いますから、私の意のあるところを御了解願いたいと思います。
  135. 大坪保雄

    大坪委員 私は先刻から言うように、あなたのお話を聞くと、どうも責任の問題についても顧みて他を言って、私を言う前にほかの者を責めるというような言い方ばかりをされるのだけれども、意思を決定してそれに基いて行動するにはやはりそれだけの責任を負わねばいかぬということを私は思っているのです。それから、スケジュールを組んでやるとしかられるし、それではスケジュールをやめて抜き打ちをやるとまたしかられると言う。しかしそれはあなた論弁というものです。抜き打ちストでないということは、きょうはこういう事情で午後何時からストをやりますということを利用者大衆に予告してやるということが抜き打ちストでないということです。利用者大衆に何も言わないでおいて、ぽんとストをやったことが抜き打ちなのです。スケジュールというものは、あなた方かすでに中野の総決起大会で決定されたように、国鉄は何日何時何分からする、全電通はする、全逓はする、日教組はするということをちゃんと書いてある。それによってその通りをやられた。ところが先刻大出さんは、とにかくそういうことは全然触れないで、政府の出方が悪かったからやむを得ずやっちゃったと言われるけれども、そうじゃなかったということを言っておる。だからそこに情状酌量の余地はないように私は思うのです。やはりそれだけそこに責任を感じろということなのです。しかしこれは答弁を要しません。あなた方の担当しておる仕事は大したえらい重要な仕事なのですよ。国家のためにも国の経済のためにもわれわれの日常のためにも非常に重要な仕事なのです。丸千万の国民が一日もあなた方なしには生きておられないのです。あなた方がやってくれるかやってくれないかによって、われわれの命をそこにかけていると思うのです。そこをお考え下さって、軽々に二十五日も二十六日もストライキでつぶすなどということでなしに、平和のうちに問題が解決するように、あなたは特に統制部長でありますから、お考えを願いたいと思うのであります。これで私の質問を終ります。
  136. 藤本捨助

    藤本委員長 有馬輝武君。
  137. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 私は野々山さん、大出さんのお述べになったことと関連して、小倉さんと人事部長にお伺いしたいと存じます。ただいまも大坪委員と野々山参考人の間でいろいろ質問に対する御見解が述べられまして、国鉄労組としては常に調停を申請する、仲裁実施を見守る過程において、紛争を平和的に解決したいという気持を貫き通しておったことはあまりにも明瞭でありました。これは他の公社現業についても同様でありまして、今度の仲裁の実施に当りましても、非常に政府が遷延させてきた。先ほど大坪委員の表現では春季大浪羽というようなお話でありましたが、もしそういったことまで政府がスケジュールをのみ込んでおって、その上でなお仲裁裁定の実施を遷延させたりなどしておるのであったならば、私は罪はもっと深いと思う、そういった観点から私は実行単価と予算単価の問題、こういった問題については午前中横山委員質問で、藤林参考人の御意見によりまして相当明らかになりましたので、簡単な諸点についてお伺いいたしたいと思います。  先ほど野々山参考人が、定員と実員の差はわずか五十数人にすぎないというようなお話でありましたが、小倉さん、これはその通りでございますか。
  138. 小倉俊夫

    小倉参考人 定員と実員との差は時期によっていろいろ違いますが、年度末に退職をしたような場合には、実員と定員との間に相当大きな差が出て参りますが、現在におきましては野々山参考人から言われましたように、きわめてわずかになっております。
  139. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 そうしますと、政府の方で二千数百名を見込んでおるということになりますと、非常に公社当局としてもお困りになるのじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  140. 小倉俊夫

    小倉参考人 国鉄は御承知の通りに四十五万の職員を持っておりますので、いろいろ自然退職がございますので、そういう点を勘案して、適当にできるだけ少い人員でできるだけ能率をあげていくようにと、こう心がけておりますので、この定員は、もちろん業務量の増加に従いまして実人員は充足して参らなければならぬと思いますが、現在のところではやっていける、こう確信いたしております。
  141. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 第二点といたしまして調停実施の過程で五百二十円が出てきた。それについては野々山参考人のおっしゃったことと全く同感であるという御見解が述べられましたあとで、その処置については政府の見解に従うというような御意見が述べられたようでありますが、この間に若干の食い違いを感ずるのでありますけれども、こういった御意見を述べられた意図について、今少しく詳しく御説明願いたいと存じます。
  142. 小倉俊夫

    小倉参考人 私は実行単価と予算単価の差額、これは各公社ともあるようでございますが、国鉄としましては五百二十円の問題でございますが、これはあっせんまたは調停に基きましてきめたものですから、これはやみではないと私自身は思っております。これは前段に申し上げました。しかし今回の裁定予算単価に千二百円を加えるということでございまして、この五百二十円の幾分かがそれに溶け込むのか溶け込まないのか、そういう点につきましてはこれは中労委の御意見にあるのでございまして、やみ給与とそれからやみ給与ではないということと、五百二十円の処置が千二百円の予算単価増額と関連をどう持つかということは、別の問題である、こういうふうに申し上げたのでございます。
  143. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 この点についてはいろいろ意見の存するところでありますが、しかし私どもといたしましてはやはり労使双方に託して実現してこられた国鉄当局としては、やはり当の予算実行単価というものに対する責任は十分持っていただいて、そういった立場からの御発言、こういったものがほしかったと思うのでありますが、この点についてはまた後日予算委員会等で明らかにして参りたいと存じます。  次に郵政の人事部長にお伺いいたしたいと存じます。それは大出参考人の方からもるる申し上げられましたが、予算措置の点で、たとえば郵政では財源措置の四としまして、超過勤務手当等六億七千八百万円、これを充当し、おられるようであります。この点について現在でさえも非常に繁忙をきわめておりまして、どうともならない。これは予算要求をされるときに、もっと多額の要求をされたのじゃないかと思います。それが大蔵省の査定にあって、国会に対する予算要求はこういった形で出て参ったと思うのでありますが、これをさらに六億七千八百万も充当するということで、ほんとう意味で郵政事業を推進していかれる自信があるのかどうか。最近ある新聞で平田大蔵次官が、予算の査定が甘過ぎたのだというようなことを言ったとか報じられておりますが、これは大蔵当局の責任者として、きわめて不謹慎な言辞だったろうと思います。そういったこともありますので、この大蔵次官の言辞というものは、国会に対してもまことに不謹慎な言葉だったろうと思います。またあなた方に対しても、査定に当った者としてきわめて不親切な、その場当りのことであったと思いますが、それにしても、今申し上げますように、ぎりぎりの査定をされて、しかもなお今度こういった多額のものをさいていかなければならない。そういった中でほんとうに郵政事業をまともに推進できるのかどうか、この点についての御見解を承わりたいと思います。
  144. 大塚茂

    ○大塚説明員 今度の補正予算の財源措置といたしまして、基準外の超過勤務手当から、おっしゃられるような数字、そのほかにも――その全部が超過勤務手当ではございません。大部分が超過勤務手当からの捻出でございますが、われわれ事業を担当いたしておりますものとしましては、できるだけそういう原資を豊富に持っておって、それを機動的に使いたいというのは、当然な話であろうと考えております。ただベース・アップというような、より重要なことを実現いたしますために財源を探すというようなことになりますと、これは大出書記長からの話にもあったと思うのでありますが、昨年お盆に、きめられた手当以上に〇・一一カ月分というものを超過勤務の原資から出しておることは、これは認めざるを得ないのでありまして、去年そういうものが出せたのならば、それと同じ算出根拠で出した今年の予算にもそれくらい出せる余地があるだろうと言われますと、なかなかこれまた理屈のあることだというふうにも考えられるのでありまして、とにかくわれわれとしては、きまりました予算の範囲内で一つ最善を尽していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  145. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 まだ少くともこれについてはきまっておりません。こんなときこそ、あなた方が毎年予算を要求されるのですから、ほんとうに自信を持って、ただ政府のいう通りになるというのじゃなくて、本委員会が皆様方においでを願ったのは、やはりそういった点について明確な御見解を承わりたいからお伺いしておるのでありますから、そういった点から御発言をいただきたいと存じます。  森本委員の方から関連質問があるそうでございますから……。
  146. 森本靖

    森本委員 今の郵政省の大塚説明員の話ですと、これだけ減らされても云云というようなお話でありますが、まずその前にちょっとお聞きしておきたいのですが、その〇・一一というのは、それを出した形式というものは超勤の形式ですか、それとも手当の形式ですか。
  147. 大塚茂

    ○大塚説明員 超勤の形式で出しております。
  148. 森本靖

    森本委員 これはいずれ予算委員会でこういう点についてはっきり追及していきたいと思いますが、ただ今問題が出ましたのでちょっとお尋ねいたしますが、あくまでも出しておるものは超勤の形式で出しておって、それが各人各人につけられる場合も、あくまでもそれが超勤時間としてつけられておるのであって、これは〇・一一とか、〇・五とか、〇・二とか、そういう性格のものではない。その点についてはあなたも十分すでに御承知のように、郵政省においては今でも保険募集において、延べ時間が何千時間というふうなから超勤というものがあるし、すでに御承知のように、その保険の強制募集によって自殺をしたというものもあるし、場合によっては川へずっこけて死んだというものもある。それでも手当は一銭も出ておらぬというのが今日の郵政省の保険募集の実感であろうと考えているわけです。そういう際においてこの超勤が削られるということについては、今後の事業の運営についてやはりあなたは自信が相当おありになりますか。
  149. 大塚茂

    ○大塚説明員 とにかくやっていかなれけばいかぬし、またやれるものというふうに考えておる次第でございます。
  150. 森本靖

    森本委員 関連ですからもう一つだけで終りますが、とにかく政府当局の今の御意見ですと、やれるかやれぬかわからぬけれども、とにかくやってみなければわからぬ、こういうのが、今日の政府の大体予算を組んでいる態度のように受け取れるわけです。しかしこういう問題については、いずれ予算委員会で正式に論争になろうと思いますので差し控えます。  そこで大出参考人にちょっと伺いますが、今大体郵政省において超勤としてから超勤というようなものをやっているのは、相当これは事業別にあろうと思いますが、それについて、もし組合側においてはこのくらい考えているということがおわかりであれば、ちょっとお示しを願いたい。
  151. 大出俊

    大出参考人 現在のところ、正確なデーターというものは、数字上何時間というようなものはございませんが、かつてから国会の答弁等の中でも、郵政当局の方々の方からは、まあ事業愛に燃えた諸君が自主的にやっておられるので、超勤の命令をしているんじゃございませんということを答弁されているわけです。このことはどういうことかと言いますと、実際にはただ働きをやっていても、これは仕事があるからやらざるをないわけですが、しかしそれは命令ではないのだ、こういう格好で苦しい答弁をされているというのが現在までの実情なんです。従って私どもの考え方からいきますと、数時間にわたるから超勤が常時ある、こういうように理解しております。そのために、〇・一一というのは十八時間ですけれども、この夏の手当のときに、十八時間ということで取りきめたのは、ただ働きがあるから実際にやればもっと出るかもしれないけれども、予算がないということになればやむを得ないので、仕事を残すわけに参りません、従って十八時間ということにしているので、実際勤務をしているのはそれ以上やっている、こういう実情でありますから、これを削られたのでは、組合の立場からすればやっていけないのだ、こういう認識になることは当然の理というふうに考えているわけです。
  152. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今お尋ねいたしますように、超勤予算にいたしましても、そのような膨大なものを流用しなければならない。総額にいたしまして、郵政だけでも二十九億二千万円というものを、先ごろきまったばかりの予算から流用しなれけばならないという政府の行き方に対しまして、自主性を持っているべき各公社が、それに対して、その過程において、政府の決定がなされる際に、閣議において担当大臣の意見というものがどのように発表されているのか、公社意見というものが十分に参酌された結果としてこういったものが出てきたのか、郵政関係だけでけっこうでございますから、お話をいただきたいと存じます。
  153. 大塚茂

    ○大塚説明員 補正予算がきまりますまでには、もちろん事務当局同士の数次にわたる話し合いが行われまして、それを基礎として話の妥結いたしました数字が、今度確定した補正予算案として国会に提出せられた次第でございます。従ってその過程においてわれわれの意見は十分述べてございますし、また相当取り入れられているというふうに考えておる次第でございます。
  154. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 私は現在の政府のやることですから、皆さん方の意見というものは全然無視して、こういうことをやられたのだろうというふうに理解いたしております。そうでない限り、少くとも責任を持って年度々々の予算を要求されるあなた方の立場というものはなくなるだろうと思うから、この点については再度予算委員会等で明らかにしたいと存じますので、私の質問は一応これにとどめまして、楯委員にかわります。
  155. 藤本捨助

    藤本委員長 楯君。
  156. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、先ほど来の参考人意見を聞いておりまして、三点ばかり疑義がありますので、お伺いいたしたいと思います。  これは国鉄でけっこうでありますが、先ほど小倉総裁が、大坪委員でありますか、直ちに団交をいたしましょう、こういうような御回答をしておられましたが、しかし現在の段階では、出されておる補正予算があるいは修正になる場合もあり得るのでありますが、現在における団交というものは無意味ではないか、こういうふうに私は考えますが、そうじゃないかどうかという点をまずお伺いしたいと思います。
  157. 小倉俊夫

    小倉参考人 まだ補正予算が成立しておりませんので、どういう決定になるか、そんたくの限りではございませんが、しかし政府の方針も立ったのでございまかすら、やはりこれは三公社現業に通ずる大きな問題でありまして、政府の見解に従うべきものだと考えますので、そういう大筋について団交するということにつきましては、あながち無意味ではない、こういうように考えます。
  158. 楯兼次郎

    ○楯委員 私のお伺いしておるのは――下回る団交の協定というものはないと思いますが、しかし団交で現在の政府が提出をした――修正になれば別ですが、予算を上回る協定をいたしましても、先ほど来の論議からいって、これが実行されないということになれば、現段階において補正予算が成立を見るまでは、団交の価値なし、こういうふうに受け取れるわけです。なぜ私がこういうことを言うかといいますると、あとで御質問したいと思いますが、あなた方大きな労働組合をかかえておられまする公社にとっては、労働対策――労働組合に対する仕事というものは一番困難な仕事である、こうおっしゃいますし、われわれもそう考えております。この困難な労働組合との協約、協定を今や政府はほごにした補正予算を出してきておる、こういうふうに私どもはとっておるわけです。これとの関連からいって、この点をお伺いしておるわけです。
  159. 小倉俊夫

    小倉参考人 今度の裁定は、実は私も非常にあいまいではないかと思っておる一人でございまするが、やはり政府からの質問書もあったように聞いております。それに対して回答もあったように聞いております。それからまたけさほどは、委員長もここへ見えてお話があったということでありまして、私どもといたしましては、いろいろな見方はあるかもしれませんが、結局政府の見解が権威のあるものと考えます。しかし予算審議においていかなる決定を見るか、これは私のそんたくの限りではありませんが、一応の方針はわかりましたので、これをもととして、団交で決定いたしますか、いたしませんかは別でありますが、もし開くべきだということで、労組の方からの申し込みでもありましたら、いつでも団交を開く用意はいたしておるわけであります。
  160. 楯兼次郎

    ○楯委員 この問題を私が質問すると、あなたの立場でそう答えざるを得ないだろう、それのみに終ると私は思いますので、あと委員質問するだろうと思いますので、やめておきますが、あなた方はアベック闘争だとか何とか言われて非常に縮こまっておるのじゃないかと思います。と言いますのは、午前中の委員会において、われわれ同僚委員質問に対して、仲裁委員長は、いわゆる時期の解釈について、はっきりと今を含まない将来において五百二十円云々ということを言っておるわけです。この労働委員会において藤林委員長のあの言明を聞きますと、思いつきではない。あの仲裁裁定を出す以前から委員長はそう考えておったと私は思うのです。だからそういう点についてなぜもっとよく確かめて、政府に対して先ほど来者委員が言っておりますような補正予算を組むように働きかけなかったか、こういう点がわれわれ非常に残念だと思っているわけです。こういう点についてはどうですか。
  161. 小倉俊夫

    小倉参考人 今回のベース・アップは、公務員に引き続きまして三公社現業にわたるものでありますから、国鉄国鉄だけで独走するわけには参らぬと思います。そういうふうな大きな取り上げ方を政府がされているのでありますから、縮こまったことではございませんけれども、三公社現業にわたる全部の責任と申しますれば、この補正予算を組む、その他の点について政府の責任でありますので、政府の指示する方向に三公社現業も進むのが当然だ、こういうふうに考えます。
  162. 楯兼次郎

    ○楯委員 これはなぜ私はそういうことを言うかというと、あなた方が協定をして判をついているのです。その証文を今や政府はほごにしようとしているのです。しかも国鉄の場合は五百二十円、いわゆる三分の二という解釈については、午前中の藤林委員長の言明によって、その余地があるのです。だから自分たちの約束したことをほごにされながら、なお努力する余地のあることをなぜほうっておかれるのか。これは安いとか高いとかいう問題じゃないと思います。今日までとってきた労働慣行あるいは公労法をあなた方が守るという立場から、私は言っているのです。これは国鉄ばかりでなくて、三公社現業に当てはまると思いますが、そういう余地が残っている。なぜ努力をしないのか、こういう点を言っているわけであります。これは今後努力していただきたいと思います。  それから次に私が疑問に思いますのは、協定、協約に基づいて、しかも調停委員会等から出た調停に基いて団交の結果協定をにしたものは、これは前の労働委員会においても論議をされたかと思いますが、なぜ三十二年度予算編成に当っては、予算単価、基準内賃金に入れる努力をしなかったか。これが私はどうも疑問でならないのです。もしあなた方はいわゆる本給、基準内賃金に入れることを主張したけれども、大蔵省その他の反対によってできなかったならできなかったと、われわれ理解に苦しむので、ここで一つ言明していただきたい。
  163. 小倉俊夫

    小倉参考人 予算の折衝の過程にはいろいろな問題がございますので、私が直接予算の折衝をいたすのでなく、原案はこちらで作りまして、予算の折衝を運輸省にお願いする次第であります。
  164. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは午前中にも私は藤林さんに質問をしました。といいますのは、裁定を出す当時実行ベースがわからなかったから、予算単価に千二百円をプラスした、こういうことをおっしゃっておるわけです。はからずもこの予算単価というのが、今日公労協と公社の紛争の中心になっておるわけです。われわれが常識的に考えますと、当然適法なる所定の措置をとって合法的に締結をされたものであるから、本年度の予算編成に当っては基準内賃金に、いわゆる今日いわれておる予算単価の中に、これは織り込まれなければならなかったものではないか、こういう疑義を持っております。あなたが政府と折衝したのではないとおっしゃればそれまでですが、最高責任者として、そういう点が当時大蔵省並びに政府と折衝をされておったかどうかという点をお聞かせを願いたいと思います。
  165. 小倉俊夫

    小倉参考人 先ほども申し上げましたが、この五百二十円につきましては、裁定の文章が、率直に申しますれば、どうもいろいろな解釈がつくようなあいまいな点がございました。それで今先生がおっしゃるような解釈もとれますし、それから別の解釈もとり得るような余地があったのでございまして、実は私ども裁定を見ました際に、いろいろたくさんの疑義が生じました。それでもし実行単価の上に幾ら幾らと確定額を示されて、それを継ぎ足すんだというような裁定でも出ますれば、これははっきりいたしておりましたのですが、いろいろな御事情もございましたでしょう。予算単価とそれから五百二十円の基準外から出しておるものとのかみ合せが、どうも裁定書で明確になっておりませんでしたので、いろいろな疑義が生じまして、国鉄といたしましても一度質問書を出しましたが、実のところを申しますと、実額で示していただきたかったのですが、それもいろいろな御事情ですか、それが明確になっておらなかったもので、ついこういうふうなあいまいなことになった次第であります。
  166. 楯兼次郎

    ○楯委員 私の聞いておるのは、そういうことじゃないです。金額でいえばなぜ五百二十円を予算単価、基準内賃金の中に本年度予算で織り込まなかったか、そういう努力はしなかったのか、当時無関心であったのかということを聞いておるのです。
  167. 小倉俊夫

    小倉参考人 いつも基準外の財源で基準外をまかないますのは、これは私どもが考えましてもおかしなことでありますので、それはできるだけ基準内の単価に合せていただきたいことは始終申しております。ただ先ほど申しましたように、この予算は現在の建前では、私の方から運輸当局にあげまして、運輸省が全体の予算として大蔵省と折衝いたしておりますので、それは政府の方に、どういうわけで予算単価に盛られなかったかということは、運輸省あるいは大蔵省の方にお聞き願いたいと思います。
  168. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは次にお聞きしたいと思いますが、先ほど参考人のどなたかから申されましたが、大体今日まで給与総額制を各公社はとっております。ところが今度の補正予算予算総則を見ますと、基準内と基準外に分けております。これが各公社法との関連はどうなるのか。どうも私が考えますると、こういうことを勝手に修正をするということは、自動的といいますか、必然的に各公社法の改正か修正かということになっていかなくちゃならぬと思うんですが、きょうは法制局は見えませんが、大体このくらいのことはわかると思いますので、一つ意見を聞かせていただきたい。たとえば国鉄なら日鉄法の四十四条、三十九条等は改正をする必要がないのかどうか。矛盾するんじゃないですか。その他どなたでもけっこうです。各公社の責任者からお伺いしたい。
  169. 小倉俊夫

    小倉参考人 おっしゃる通りに、今までより窮屈になったことは事実でございますが……。
  170. 楯兼次郎

    ○楯委員 違法ではないですか。
  171. 小倉俊夫

    小倉参考人 これは私には判断はちょっとつきにくいです。
  172. 楯兼次郎

    ○楯委員 どうもはっきりした答弁も得られませんので、私はやめます。  最後に、先ほど大坪委員質問に答えて、スケジュール闘争、抜き打ち闘争の問題が出たときに、大出参考人が発言をされたようでありましたが、一つ参一考に発言していただきたい。
  173. 大出俊

    大出参考人 先ほど言葉の端に私のことが出て参りましたので発言を求めたわけですが、私が先ほど申し上げましたのは、何もお願いを申し上げたわけでもなし、許してくれと申し上げたわけでもないので、対等の立場で相互責任があるのですから、その責任を政府当局がお果しにならなかったので、われわれだけの責任を追及するという片手落ちはなかろう。世間一般が許さぬだろう。なぜかというと、両方とも当事者なんですから。そういう建前で、もしも組合側だけを処分するなら、政府側にもそれだけの処分に該当する理由は十二分にあるんだ、だから処分は一方的にはできないはずだということを申し上げたんです。それからスケジュール闘争の問題についても、それから援用されておったわけですが、私が申し上げましたのは、私どもこれほどたくさん組合員を持っておりますから、そうその日になってからどうこう言われてみても、団体行動の自由は保障されているんですけれども、団体行動にならぬです。してみると、これは当初から計画を立てなければ、全部の人間が右向けと言ったら右向くという闘争が打てない。まして私ども昨年末全逓が単独でいろいろやりましたが、単独でやると、政府の方々がそっぽ向いて、勝手にやらしておけということになる。だからみんな一緒に計画を立ててやらなければ、政府の方々は相手にしないだろう。こういうことになるから、スケジュールを立ててみんな一緒にやろう、こういうことになるので、だから政府の方で一つずつでも解決いたしますと方針をお変えになれば、私どもは一向差しつかえない。そうでないから一緒にやっていこう、こういうことです。
  174. 八木一男

    ○八木(一男)委員 議事進行。先ほどから、午前午後と聞いているんですが、午後になって労働省関係の人は一人もおらない。これは非常にけしからぬ。労働大臣に出てもらうように要求してあったはずです。委員長も要求して何回か連絡しておられるけれども、非常に厳重に要求しておられる様子が見えない。中西労政局長もいなくなった――いるというけれども、さっき生理的要求で退出するといって、四十分もいなかった。それで労働省関係に文句を言ってから出てこられた。そういうふまじめなことで、重要な労働問題に関しては、労働省は請求されなくても来て問題を聞いておくべきであると思う。そしてこの重要な組合側あるいはまた経営者側のいろいろのお話を聞けば、労働省として考えなければならない、労働大臣として考えなければならない、さらに閣議に持ち込んで予算を変えなければならないというような結論にも達することがあり得るわけです。要求されなくても出てこなければいけないのに、要求されても大庭は出てこない。村長は途中で逃げて、言われてから四十分たって今いるというようなでたらめなことです。そういうことではけしからぬ。委員長は、野党がおとなしく要求しているときに、そのままちょいちょいと言うだけで済むというのではなしに、正当な要求に対しては断じて実現するように、労働大臣に厳重に申し込む責任があると思う。今からでも、労働大臣にすぐかけ足でやってくるように申し込んでもらいたい。それから今後こういうことがないように、委員会の権威はこれで非常に失墜するので、今後要求したときに労働大臣その他各大臣が来なかったときには、厳重な態度でやってもらうように要求します。
  175. 藤本捨助

    藤本委員長 労働大臣の出席を重ねて要求いたします。八田君。
  176. 八田貞義

    ○八田委員 だいぶ時間もたちましたので、簡単に質問をさせていただきます。先ほど電電公社総裁から、能率の向上によって予算単価と実行単価の開きは当然あってもいいというような御発言があったようでありまするが、そうだとすれば、一体何%が開いてもいいのか、その副総裁のお考え一つお知らせ願いたい。
  177. 靱勉

    ○靱参考人 何%ということを申し上げているのではありませんで、要するに予算単価と申しますのは、ある意味においては、予算能率と申しますか、それを中心として考えられたものが一つ予算単価であります。従いまして、実行上それが単に一時的現象でなく、能率が上ります、すなわちそれは予算能率が上ることになるわけでございますが、そういう場合におきましては、現在の制度のもとにおきましては、それだけ人が要らなくなる、端的にその面に現われてくるのではないだろうか。その場合におきましては、一時的現象でなければ、給与の方にそれを回していくということが許されておるというふうに札どもは解しておりますということを申し上げた次第であります。
  178. 八田貞義

    ○八田委員 現在問題になっている予算単価と実行単価の開きが一割もあるということで、国民はびっくりしておる。こういうことにつきまして、二十九年一月からわずか二、三年の間に、公社現業よりも給与予算単価と、実行単価と大きく用いておる、外部の第三者では実態がほとんどわからない、こういうことに国民は納得しがたい、こういうわけです。このように最も簡単なはずの給与予算さえこの状態では、その他の建設予算も一体どうなっているのだろうか、こういう疑問も出てくるわけです。そこで、今副総裁は現段階の実行単価と予算単価の開きは大したことはないのだ、こういうように見ておるのですが、これは私は非常に問題があると思うのです。特に朝日新聞の社説を見ましても、この点について非常にはっきりと適当な言葉をもって言い表わしております。それを読んでみますと、「現実にヤミ給与をどうするかという問題であるが、これはいうまでもなく予算単価と実行単価の差額である。給与の一割に近いヤミ金額があったことについては、国民として、ただあきれ返るほかないが、しかしその責任は、三公社当局ならびに監督官庁の負わねばならぬところである。その点については労組側のいうように、労使の正常な団体交渉に、よって獲得した金額であって、組合からすれば何らヤミではないという弁明は、一応静めねばならぬ。落度は、これを国民や国会の前に明らかにせず、こっそり処理しようとし、また予算のカラクリによってごまかしてきた当局側にある。しかしながら労組側もまた当局と歩調をあわせて、他組合にも国民にも隠そうとしてきた事実は、否定することはできないはずだ。」こういうふうに書いてある。これに対しまして副総裁のお考えは、今まで国民が納得できないようなこの開きについて当然であるかのような御発言があったことに対して、非常に私納得いたしかねるわけです。かつまた「たとえヤミ協定にしろ、それを結んだ組合は得をし、ヤミをしなかった組合は損をするという結果になっている。」こういうことについて、非常にあいまいもことして国民はまことに実態をつかめないというところに問題があると思うのです。これらのことにつきましては、時間がございませんからこれくらいにとどめますが、国民はどうも実態がつかめないというところに不安があると思う。  そこで先ほど国鉄労組の野々山さんから、争議権のない実力行使につきまして、これは順法闘争であるという御答弁があったようです。しからば順法闘争というのはどの法律に準拠して、争議行為、いわゆる実力行使が順法闘争になるのか、これを一つお知らせ願いたいと思うわけです。具体的に申し上げなければ御答弁が願えないと思いすが、たとえば今まで順法闘争としてやってこられた方法が大体三つくらいあるわけです。その三つの中で、一斎臨時休暇をとって仕事を休む休暇闘争というのがある。これは順法闘争といわれておりますが、一体どの法律によって順法闘争になるのか、一つお知らせ願いたいと思う。
  179. 靱勉

    ○靱参考人 先ほど申し上げました点は、いわゆるやみ給与という問題が、もしやみ給与であるならば世間一般にも非常な誤解を生ずる、私どもとしましても申しわけないということで、やみ給与の実態というものを御説明申し上げたのでありまして、午前中の委員長との質疑の際におきましてもやみの問題はないのだということが確定されましたから、その点はあえてまた特に申し上げる必要はなかったのでございますけれども、われわれとしましてはやはりやみといわれますといかにもずさんな経理をしているように思われますので、そういう点を釈明いたしたような次第でございます。
  180. 野々山一三

    ○野々山参考人 休暇闘争と一般的にいわれるものは、基準法三十九条の規定に基くものです。最低六労働日から二十労働日ですか、その範囲内で、労働者の請求する日に与えなければならない、もしそれが与えられないという場合には、事由を明白にして時期を定めて他に与えることができる。しかしこれは業務の正常な運営を阻害するおそれがあるという具体的かつ明白な事由がない限り拒否することはできないというのが法律建前であります。さらにそれには他に時期を定めて与えるという建前がなければならないというふうに思います。集団で休暇をとると個人でとるとを問わず私はその方針においては何ら変るべきものではないと思います。従ってそういうものがときに集団的に行われる。しかしそれが具体的にかつ明白にその事情が明らかになり、他に時期が指定をきれてとやかくということがやられた事実は一回もありません。少し長くなりますけれども、私はこの和の問題で民事事件及び刑事事件にかかっておる裁判に相当多く証人として実証していますが、過去において明白かつ具体的に他の時期に与えるという旨の処置がなされたことがないということから、この問題については私が知る限りにおいては、いろいろ意見はあるけれどもこの議論は有効に今日存在しておるものだ、かように思っております。
  181. 八田貞義

    ○八田委員 今の三十九条の休暇闘争ですが、これは請求する時季に与えなければならぬというふうになっていますね。届出をして許可を得なければならぬわけです。ところがこの時季というのが今あなたのおっしゃった時期というのとここに書いてある時季とは違うのですね。この時季は春夏秋冬の時季を書いておる。ですから私はこれは非常にあなた方の解釈と使用者側の解釈が分れる点だと思うのです。こういった点があるのですが、これについて御答弁を願っていますと時間をとってしまって御迷惑かけますから、ただ私はこの三十九条を読んでみまして春夏秋冬の時季を使ったということについて両方に勝手に解釈されるようなおそれを残しておる、こういう気持がいたすわけであります。  それからもう一つ超過勤務拒否闘争ですね。これも順法闘争になっておるのです。これは一体労働基準法の何条によってやっておられるか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  182. 野々山一三

    ○野々山参考人 この休暇の単位は一日であります。それをシーズンととらまえるというのはまさにこれは一方的な解釈であります。この時季というのは期日を単位にしている。休暇をシーズン何月何日といわないで春ごろにやればよろしい、こういう抽象的なもので労働基準法が法律として規定しておるものを読むとすれば、労働者はおよそわけのわからぬ休暇というものに期待を持って使われる、こういう関係になって基準法の本旨を全く曲げるものじゃないか、かように思っております。  それから超過勤務拒否といわれるのは、労働基準法に定める協定によってこれこれの条件による場合に限って超過勤務をすることを認めるのでありまして、本来指定労働時間以内で労働するのが建前である。ただし協定が締結されておるときに限って超過勤務をその条件に照らして命ずることができるのでありまして、私どもはその協定があるときに超過勤務をやらないというようなことを言った事実はございません。協定がなくなれば当然やる義務がないのであります。さらに経営者といえどもそれに就労きせる権益というのですか、そういうものもない。従ってこれは超過勤務拒否闘争、闘争なんて言葉を使うのはほんとうは適当でない、こう思っております。
  183. 八田貞義

    ○八田委員 この超過勤務拒否闘争というのは、今のお話の三十六条の時間外及び休日労働に関する協約に従っているわけですね。そこでこの解釈についていろいろお尋ねしたいのですが、時間がございませんからこれくらいにしますけれども、ただ問題は前にやられた抜き打ちストの問題です。これは勤務時間内の職場大会ですね。勤務時間内の職場大会を順法闘争というふうに解釈するのは一体どの法律に勤務時間内職場大会を合法化されているか、これを一つお聞かせ願いたい。
  184. 野々山一三

    ○野々山参考人 公労法の適用を受ける組合といえども団結権、団体行動権は保障されていると思います。職場大会は団体行動権の範疇である。団結権を確認する手段である。従って私は適法な行動だと思う。第二にいえることは、慣行としても実存しておるわけで、集団的に規模が大きくということにあなたが御指摘の点があるかと思うのですが、法律論としては私は団結権、団体行動権を認めておる法律において有効にこの種の活動はあり得る。職場大会あるいは中央委員会、大会といわれるものも、しょせん団結権の確認であり、団体行動権の象徴であり、団体行動権を認めて団結権を前進させる――前進させるというのは語弊がありますが、確認をする。そうして団結したものがその団結した趣旨に基いて諸般のことをきめる、こういうことは当然あり得ることであります。それから組合活動は要求をきめ、そしてそれを貫徹する、こういうことも一つの大きな任務になっている。団体交渉をする限り団体行動ができる背景になることは言うまでもない。意思を決定することもまた当然であります。それが職場大会という方法であったり、中央執行委員会という方法であったり、大会という方法であったりすることは、これは法律が許容している限りにおいて、組合が自由に団結権を行使する表徴として持っている。この規約が適法である場合においては、その範疇においてなされることについて干渉をすべきものではないというのが労働組合法の趣旨だ、私はかように考えております。そういう限りにおいて団結権というもの、あるいは団体行動というものは当然あり得るというふうに思っています。
  185. 八田貞義

    ○八田委員 問題は、今いろいろ御説明があったのでありまするが、勤務時間内に職場大会を開くということについては、私は法的解釈からいって疑義があるわけです。これははっきり言うならば公労法の十七条に抵触する問題です。団体交渉権といっても団体行動だ、こうおっしゃいますけれども、勤務時間内の職場大会というものに対しては、これは公労法の十七条に抵触する問題だと私は思うのです。勤務時間内におやりになるということは、私はどこからも法内解釈としては出てこない。この点私非常に疑問といたしておるわけでございます。  それから違反者の処罰方法につきましても、公労法の十八条は解雇を書いておりますね。ところがいろいろな公社の規定では、国有鉄道法では三十一条に免職、停職、減給、戒告というのを書いておる。この免職、停職、減給戒告というのは懲戒処分というふうに解釈されているわけですね。訓告というものがほかにあるわけです。ところで非現業の国家地方両公務員については、違反者の処罰につきましては三年以下の懲役または十万円以下の罰金を取るという刑事上の処罰があるのですね。ですからここに明らかに同じ公務員でありながら、非現業現業では実質的な左が出てきておる。この点について一体どういうふうなお考えを持っておられるか。私は非常にこれは差があると思うのです。片方は刑事上の罰、非現業の国家地方公務員に対しましては三年以下の懲役または十万円以下の用金、ところがこういった規定というのは現業員の場合にはないのですね。非常に差が出てきておる、こういうことに対してお気づきになっておられると思うのでありまするが、この実質的な差に対してどういうふうな御見解をお持ちか、お聞きいたしたい。
  186. 野々山一三

    ○野々山参考人 労働法上争議行為というのは、争議目的を達成するために行う行為です。職場大会というのは、争議目的花達するための行為ではない。従って公労法十七条を御指摘ならば、十七条に言う争議行為及び怠業というのは、争議目的を達成するための争議行為、つまり労調法にいっている争議行為を禁止しているものであって目的論的には、争議目的を達成するための職場大会ではなくして、団結権の確認と象徴のためにするものである、こういうものでありますから、目的論的には違います。  それから、公労法の十七条の違反行為というものを処するに、組織法をときどき利用されるようであります。公労法の本旨からすれば、解雇以外の処置を法律は許していない。つまり十七条に該当するような行為に対しては十八条で解雇ということだけをいっているので、組織法はむしろ他の労働関係以外の、もっと具体的に言えば、十七条に該当する事項以外の行為が、その職員の破廉恥的といいますか、懲戒に該当する。たとえば日本国有鉄道法では三十一条ですが、そういうもので処置すべきものであって、争議の責任を組織法でもって追及するというのは、私も公労法制定当事から審議委員として二回にわたって参加をしておる者として、この解釈はとっていない。従って、今までの懲戒に組織法を適用されたのは、あれは間違いだというふうに、法律を作ったときの審議会の委員の一人として申し上げておきたい。  それから先ほどの公務員の刑罰の問題でありまするが、公務員法にいう公務員の問題と公労法の適用を受けるものとは、法律と適用領域が公務員法においても違います。従って今御指摘の点は、何か公労法の適用外の公務員に対する問題のことについて取り違えをされて理解をされておるのじゃないかと思います。従って私は公労法の適用を受ける公務員ではありませんし、いわゆる五現業という部類のものではございませんから、詳しくは承知しませんけれども、もしそのことを言われるとすれば、適用除外の規定をあなたがこちらに使われようとしておるので、使われる前に一つ十分間違いを改めておいていただきたいと思います。
  187. 八田貞義

    ○八田委員 この問題は繰り返しませんが、ただ私先ほどの御答弁を伺っておりますと、紛争解決は実力行為しかないというような印象を受けるのですが、私は戦闘的な実力行使だけが解決の唯一の道であるというようには考えないわけです。私はかって蒙疆政権に参りまして、その主席の徳王と会ったことがございます。そのときに徳王と私と一問一答をやったのですが、徳王のうしろに等身大の肖像、があるのです。私はその肖像はだれですかと言った、するとこれはジンギスカンだ、これは偉い人だという、どうして偉いのですかという質問をすると、ヨーロッパを征服したからという。そうですが、ヨーロッパを征服するのは偉いのですか、一体ヨーロッパをどれくらい征服なすったかということを聞いたのです。ところがそれに対しては徳王は答弁できなかった。これは二カ月は征服していないわけです。こういう二カ月くらいしかヨーロッパに攻め入っていない状態をもって偉いということは私は当らぬと思う。そこで私は日本の言葉で言うなら、やくざ渡世の間で使われておるなぐり込みと同じだと思う。私はこういった戦闘的な行為というものは蒙古再建には通じない、こう言ったことがあります。今後いろいろ問題が起りましょうけれども、私は戦闘的な行為だけが問題を解決するものではないと考えているのです。  よくエレガントという言葉が言われておりますけれども、ニューヨークの紋章にエキセルシャーという言葉が書いてあります。私はこのエキセルシャーというのが今後の労使間の紛争を解決する唯一の道ではないかと思います。スケジュール闘争、あるいは抜き打ち闘争というようなことが言われておりますが、戦闘的な行為に対して国民はなかなか納得できないわけです。どうか実力行使だけが紛争解決の唯一の道ではないかというふうにお考え願いたいと思います。
  188. 野々山一三

    ○野々山参考人 前提に申された、何か私ども実力行使万能主義を唱えているかのごとくお聞き取りになったならば、私どもは平和的に団体交渉解決するものならばということを口をきわめて申し上げたつもりであります。その意味ではむずかしい外国の言葉が出ましたので、私理解に苦しむのでありますが、つまり団体交渉などは平和的に努力しなさいということをおっしゃったと思うのであります。その気持は私ども組合結成以来、その方針を全く変えていないし、私これから組合運動をどれだけするか知りませんけれども、その思想を一度だって曲げようとは思っておりません。しかし相手のあることです。従ってこれは私どもにだけそういうことをおっしゃるというのでなくて、お互いにその関係者にそういうことを思ってもらう、そしてそのために積極的に問題を解決するようにお互いに努力をする。こういう気持が通じ合わなかったならば結局うまくいかないのではないかということが、私どもの一番悩みであります。ぜひそういうように政府なり、あるいは関係経営者にもおっしゃっていただくということが、これからの労使関係を円満にするのではないかと思いますから、ぜひ先生からもそのように広く意見をお伝えいただきたいと思います。
  189. 八田貞義

    ○八田委員 実は私、ニューヨーク州の紋章のエキセルシャーという言葉を使ったのでありますが、その土台となるものは責任と平等である。ですから、私は、責任と平等の上に立ったエキセルシャー、いわゆるより前進したということでなれけばならぬと思います。どうか、責任と平等ということから出発していただきたい。そうして紛争解決に向っていただきたい。戦闘的な実力行使だけが唯一の道ではないということを申し上げておきます。  それから、公社側にお聞きいたしまが、公社理事は、職員から理事になるのですね。ですから、考えてみますと、労使団体交渉と申しましても、職員が理事になっていくのですから、この限りにおいて、団体交渉というものは民間における団体交渉というような形のものであるかどうかという問題が起ってくる。これはいろいろ疑問があると思います。さらにまた、国鉄のいろいろな経理の問題につきましても、財政法の第四十六条の適用を受けておらないわけです。これがいろいろと二、三年の間に実行単価と予算単価の間が一割も開いて、そうして国民がその実態をつかめないということにも私はなると思う。今後私はやはりバランス・シートを六カ月に一回くらいずつ国会に報告するなりあるいは公開するような方法をとらなければならぬ、こう考えておるのです。いろいろと公社の性格について御質問申し上げますと時間をとりますので、これで終ります。
  190. 藤本捨助

    藤本委員長 滝井君。
  191. 滝井義高

    ○滝井委員 私は最後になりましたから、簡単に一、二問だけお尋ねしておきたいのですが、先日労働大臣は、この委員会で、今回のような第一次確定給与、第二次確定給与ができたということは、これは全く第一次的な責任というものは公社にある、公社がぼやぼやしておるからこういうことになるのだ、第二次の責任というものは政府当局にあるのだ、こういう明確な御答弁が実はあったのです。そこで私は、今後こういう第一次の責任が公社にのるということを政府の労働大臣から言われるようなことのないように、さよう出ていらっしゃる三公社現業の当局側にお願いをする意味において一、二尋ねておきたいと思うのです。それは現在政府国会に補正予算を出しておりますが、公社当局は補正予算いかんにかかわらず、具体的な賃上げの額は団体交渉によってきまる、こう御確信を打っておられるだろうと思うが、そういう御確信を持っておるのかどうか、これをまず三公社を代表して小倉さん、それから靱さんにお答え願いたいと思います。お二人からお答え願えれば、大体公社を代表せられるような感がしますから、お二人から一つお答え願いたい。
  192. 小倉俊夫

    小倉参考人 団交できまるかどうか、こう言われますが、団交は相手があることでございまして、団交の結果を見なければきまるきまらないということは申し上げられないと思いますが、しかし先ほども申し上げましたように、今回は三公社現業に通じた問題でございまして政府の方で明確な補正予算を提出せられておりまするので、それが成立いたしましたらその線でまとめていかなければならぬ、私はこう考えております。
  193. 靱勉

    ○靱参考人 団体交渉によって公社の職員の給与がきまるという原則はお示しの通りでございますが、これには大きな制限がついております。すなわち給与総額ワク内においてでなければいかぬということがはっきりいたしておるのであります。今回三公社現業を通じまして一斉に調停あるいは仲裁という経過をたどりまして、電電公社を例にとりますれば、やはり資金的あるいは予算的にそれを実施できませんから、従いまして政府の方にお願いしてその措置をとっていただきたいということになっておりますから、どうしてもその範囲内において労使間で協議して賃金の協定を結ぶということにならざるを得ないのであります。この事実は現実の問題として当然そのことになると思います。従いまして、私どもといたしましては、やはり国会で御審議中のこの補正予算の結果によりまして最終的な労使間の協議というものがととのう、こういうふうに考えておる次第であります。
  194. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、小倉さんなり靱さんは仲裁には従わないのですか、政府意向には従うけれども、仲裁裁定の線には従わないということなんですか。
  195. 靱勉

    ○靱参考人 ちょっと言葉が足りなくて申しわけありませんでしたが、今回政府におきましては仲裁裁定を尊重して十分その実施について予算措置を講ずるという建前に立っておられますので、そういうふうな考え方を私どもいたしておるのであります。
  196. 滝井義高

    ○滝井委員 さいぜん小倉さんは今夜からでも団交をやってもよろしい、こういう御意見の表明があったのです。そうしますと、これは今夜からでもやっていいということになると、予算はいつきまるかわからない、参議院を通らなければあれですから、それまであなたの方はじんぜん日を過ごして待つということになる。予算がきめなければ団体交渉は具体的に決せられません、こういうことになれば、あなた方はまるっきり禁治産者じゃありませんか。公社の面目というものはありゃしない。そうしますとこれは、この公労法の三十五条の、仲裁裁定が出たらそれに従わなければならぬというこの法治国における法律をあなた方みずからが違反をしておることになる。昔軍閥、今総評と保守党のチャンピオンが言ったけれども、まるっきりこれは逆じゃありませんか。この点は、公労法の精神に従うというのならば、しかも今夜からでも団交をやるというのならば、何も政府の補正予算がきまるのを待つ必要はない。自主的にあなた方が組合と話し合いをやって、そこに公労法の精神に従った妥結をするならば、それによって補正予算より上回ってもやむを得ないのじゃないでしょうか。それを参議院で予算が通ってしまうまで待つということになれば、じんぜん労働組合を待たしておるということになり、そのことがひいてはさいぜん野々山さんから言われたように、また国民に迷惑を及ぼすということになれば、その責任というものは――労働大臣が言ったように、公社当局の無能力のために、決断がないために、自主性がないためにこういう事態が起きるということになるんですよ。そうしますと、一切の責任は公社当局が負うということをここに言明されるならばとにかく、そうでなければ補正予算にかかわらず、あなた方は自主的に団交をやることが公労法の精神にかなっておることになるのじゃありませんか。その点、ここで明確に御答弁願いたいと思います。
  197. 小倉俊夫

    小倉参考人 先ほどは団交をどうして開かぬかというふうなお話もございましたので、団交を開く用意はいつでもあると申し上げたのでありますが、私のところでは、先ほどもちょっと触れましたが、今労使の間でいろいろな問題が山積しておりますので、そういう点をずっと団交を重ねてきております。  それからこの問題につきましても、もちろん先生がおっしゃるように、最終段階のときには補正予算が確定いたさなければそれは決定はいたしませんが、それに至る前におきまして、最終的な金額をきちんときめる前にいろいろ団交する目的もございますので、そういうことで団交を開くのならいつでも開きましょう、こう申し上げた次第であります。
  198. 滝井義高

    ○滝井委員 小倉総裁、この仲裁裁定の精神というものをよく読んでもらわなければならぬと思う。この仲裁裁定に関係のある公労協が仲裁委員会質問書を出しておる。そしてその答えが昨日の夕刊あたりからけさの朝刊にかけてどこもみな載っております。それを見ますと、団体交渉というものは補正予算が参議院を通過してからおやりなさいとはどこにも書いてない。何と書いてあるかというと、可及的すみやかに団体交渉による円滑なる自主的妥結を期待すると書いてある。これは及ぶ限り早くやれということなんでしょう。そうすると、あなたの言うように、補正予算が通ってから、それが確定してからそれをきめたいというのならば、あなたの方はじんぜん日を引き延ばすことになってしまう。そういうことはどこにも出ていない。だから、こういうことになれば、法治国における代表的な政府関係機関というものが立法を無視するということになる。あなた方こそいわゆる日本の秩序を乱す者としてこれはひっくくられなければならぬ。(笑声)そうすると、組合は今度はあなた方が引っぱったためにいわゆる順法闘争をやった、われわれは裁定を守るんだ。ところが当局が守ってくれぬからわれわれは順法闘争をやらざるを得ない。だからこれはこの前労働大臣も言ったように第一の責任者たるあなた方が全く無能力だ、こう言われると思うのです。だからあしたから予算委員会が始まりますけれども、きょうわれわれはあなた方の御言明を得るために、わざわざ昨日は六時までかかって自民党の了承を得て、きょうこの委員会を開いたのです。従ってきょうはあなた方は一つぴしっとした言明をしてもらいたい。  補正予算いかんにかかわらずおやりなさいということが仲裁の精神ですよ。補正予算いかんにかかわらず賃上げの団体交渉がやれるということの御言明ができなければあなた方は無能力者ですよ。
  199. 小倉俊夫

    小倉参考人 無能力者だとか自主性がない、こういうようなおしかりでありますが、今回のことにつきましては、国鉄としましては補正予算が成立いたさなければ金の出しようがないのであります。そういう点から自主性がないと言われればそれまででございますが、それが一つでございます。  もう一つは、先ほど来申し上げておりますように公労委の裁定につきましていろいろの見方はあるかもしれませんが、とにかく公社現業花通じまして政府がはっきりした解釈を立てられまして、それが私どもとしては権威のある仲裁裁定に沿ったものと考えておりますので、それに従う、こう申し上げたのであります。
  200. 滝井義高

    ○滝井委員 いいですか、今回の補正予算が成立しなければ国鉄としては金は出せないかもしれません。しかし団体交渉は自主的にやれるはずです。金を出すということと団体交渉とは別なんですよ。団体交渉によってきまったものと今度の補正予算の額が違っても、その違いは、今度はあとで追加の補正をすればいいんです、そういう精神になっているのです。なぜならば団体交渉によってきまったものは、それは仲裁裁定に基く団体交渉なんですよ。政府が今度はあなた方のきめたものについて努力しなければならぬということを公労法に書いてある。だからあなた方が今度は政府の方を心配する必要は何もない。しかもそのために給与総額というものがあるんですよ。給与総額というものは、その中で団体交渉ができるようにしてあるからこそ給与総額というものがあるんです。団体交渉がないところに給与総額なんというものをつける必要はないですよ。団体交渉があるからこそ給与総額という一つワクを与えているのです。給与総額というものはあなた方が自由にやれぬということなら、公方法も何も無視してしまっておる。政府法律違反をやっておるんです。給与総額というものは何のためにあるか。団体交渉がある、団体交渉があれは何があるかといえば給与総額にはベース・アップをやってよろしいという精神があるんですよ。これははっきりと立法の精神がそうなっている。労働大臣に尋ねても労政局長に尋ねてもそうなんです。それは間違いない。ここでちゃんと昔その通りに言われている。それを今になって、あなた方が、予算がきまらなければ私の方は何ともできませんなどということは、それはあなたの解釈なんです。公労法の精神はそうなっていないんですよ。給与総額というものがあるならば、その給与総額ワクの中で団体交渉を認めてやる、団体交渉を認めてやるということは何かというと、それはベース・アップを認めているということなんです。その給与総額ワクの中ではベース・アップをやってもよろしいということなんです。それは間違いないんです。だからあなたが確定しなければわれわれはいかんともしがたいと言うのならば、一つここでそうはっきり言明して下さい。そしてその後に公労協が順法闘争その他をやって、国民に迷惑を及ぼしたときには、それは優柔不断な、法律を守らない国鉄当局なり、他の現業の当局の責任であったということを私はここで確認をしておきたいと思う。一つできないならできないということを御言明願いたい。
  201. 小倉俊夫

    小倉参考人 繰り返して申しますが、今回国鉄予算の範囲内では仲裁裁定の実施はできません。  それからまた団体交渉でも、これが私たちに与えられたワク内でなければ、いたずらにできないことを団体交渉で取りきめることは、これは不信のことになりますから、それはできないと思います。補正予算の成立したときに、その範囲内でベース・アップを取りきめるよりほか道がないと考えております。
  202. 滝井義高

    ○滝井委員 それで国鉄当局の意向は大体わかりました。そこで、そういうことのためにいろいろと不測の事態が国民に及んだ場合には、それは優柔不断な、公労法を守らなかったあなたの方の責任であると社会党としては認定いたしておきます。  いま一つお尋ねいたしたい点は、今回政府が出した予算を見ますと、実行単価と予算単価との格差の三分の一の相当額というものを、今度は千二百円の中から引くことになっております。そうしますと、専売は一億六千八百万円、国鉄は十二億一千万円、電電は五億二千五百万円、郵政は三億一千六百万円、これは予算書にはっきり出ております。けさ以来いろいろ問題になっているのはこの点なんです。けさの藤林さんの御発言で私の霧は晴れたのですから、きょうはあまり触れません。  そこであなた方に一つお尋ねしておきたいのは、現在補正予算が組まれた後の、専売なり国鉄なり電電なり郵政なりの所管の予算の中から、今申し上げました三分の一相当額というものは、これはすでに補正予算で幾分引かれました。給与総額外で財源調達された額は三公社現業で大体百二十億六千四百万円、それらのものが引かれているわけです。しかしまだいろいろ残りはあろうと思いますが、それらの三分の一に相当する額を、三公社現業予算の中から、補正予算とは一応関係なくやりくりができる見通しがあるかどうかということをお聞きしておきたいと思います。
  203. 小倉俊夫

    小倉参考人 あるいは御質問に的がはずれるかもしれませんが、その三分の一と申しますのは、今回の千二百円のベース・アップの中に含ませる、こういうことであります。基準内給与総額には関係はございますけれども、全体としては――どうもそこら辺は私、わかりませんから……。
  204. 靱勉

    ○靱参考人 それははっきり今申し上げられないのでございますが、性格としましては基準内賃金を、要するに三分の一引きまして、この程度ということで今補正予算が組表れている次第でございます。それで融通のつかないものは外部から差し繰るということで、公社におきましては資産充当その他の方法で入れているわけでございます。電電公社におきましては三分の一というのは百九十円ということになっておりますから、今度かりにそれをもとへ戻すということになれば、その財源をどこから持つかということがやはり必要になってくる、こう考えておりまして、今の御質問は、それではお前たち、現在作られている補正予算あるいは既定の給与総額内でまかなえるかどうかという御質問でございますが、それは今一直ちにお答えはできませんが、それだけのものは基準内としてプラスになりますから、どこかから財源を求めなければならぬということだけは確かだと思います。
  205. 滝井義高

    ○滝井委員 だからその財源は、たとえば具体的に尋ねてみれば一番よくわかると思いますが、あなたの方の予備費は、しからば今回のこの補正予算によってあと残り幾らになるかということをお聞きしてみれば、大体近い回答が出てくるだろうと思うのですが……。
  206. 靱勉

    ○靱参考人 私の方の予備費は十五億のうち五億を今度は使っておりますので、十億残っております。しかしながら今の御質問は、給与総額内で融通がきくかというような御質問のように承わりましたので、今にわかにお返事できませんと申し上げた次第であります。
  207. 滝井義高

    ○滝井委員 他の専売、国鉄、郵政等それぞれ全部に今のような予備費が今度の補正予算を組まれても相当残っておるだろうと思いますが、専売の予備費は幾らですか。国鉄の予備費は幾らですか。電電は今十億残っておることがわかりました。郵政の予備費は幾らですか。これは大ざっぱなところならおわかりになっておるはずだと思いますが、こまかい数は要りませんから、何十億ということでいいです。
  208. 小倉俊夫

    小倉参考人 国鉄では予備費は三十億組んでおりまして、そのうちの十億を流用するつもりでおります。
  209. 船山正吉

    船山参考人 ただいまの御質問でありますが、何かやりくりがつくかというようなお尋ねで、御質問のポイントをつかみかねるのでありますが、お尋ねの趣旨は、やりくりがつけば今度の補正予算が成立した場合の補正予算の範囲内で、さらに実行単価を上げることが可能じゃないかというようなお気持から質問しておられると思いますが、私はそれは別問題だと思います。今度の仲裁裁定を尊重いたします精神におきましては、何らの偽わりもないのでありますけれども、その仲裁裁定におきまして、相当程度の現実給与の改善をはかるということがうたってありますが、その相当程度ということが、人の見方により読み方によりまして程度が違うのでございます。私は先ほどの陳述にも申し上げました通り、結局実行単価に千二百円をそのまま積み上げませんで、その中から実行単価と予算単価との差額の三分の一程度を差し引いたもの、これによって新給与を決定いたしたい、それが仲裁裁定の趣旨であるというように考えておる次第でございます。予備費は当初十三億計上いたしまして、今度使いましたあと残りがございますが、それは直ちに給与に回せる性質のものでもありませんしまた回すべきものでもないと考えております。
  210. 大塚茂

    ○大塚説明員 郵政では当初八億計上いたしまして、今回三億流用されますので、五億の予備費が残ると思います。
  211. 滝井義高

    ○滝井委員 もうこれ以上質問はいたしません。今いろいろ参考人の方からお述べいただいた点によりまして、いろいろとニュアンス、見解等は幾分違いがありますけれども、私たち仲裁裁定委員のけさの発言は信頼いたしております。そして今の皆さんの御答弁から具体的にわかった点は、専売においては大体十三億程度当初予備費を計上して、その中で一億六千八百万円程度今度出して、あと十一億ちょっとあるということだけはわかりました。それから国鉄は三十億のうち十億回すので二十億残っておる。それから電電においては十五億あったものが五億使って十億残っておる。なお郵政は八億のうち三億出すので五億残っておる。こういうことだけは皆さんの御答弁で確認することができました。これで私の質問は終ります。
  212. 藤本捨助

    藤本委員長 参考人の方々におかれましては長時間御出席下さいましてまことにありがとうございました。  次会は明二十五日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十六分散会