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1957-04-20 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月二十日(土曜日)     午前十一時四十分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 亀山 孝一君 理事 八木 一男君       植村 武一君    越智  茂君       小島 徹三君    小林  郁君       田中 正巳君    中村三之丞君       西村 直己君    八田 貞義君       藤枝 泉介君    赤松  勇君       有馬 輝武君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       堂森 芳夫君    横山 利秋君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         法制局参事官         (第三部長)  西村健次郎君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      岸本  晋君         林野庁長官   石谷 憲男君         運輸事務官        (鉄道監督局長) 權田 良彦君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君         労働政務次官  伊能 芳雄君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君  委員外出席者         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    石黒 拓爾君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 四月二十日  委員草野一郎平君及び山花秀雄辞任につき、  その補欠として藤枝泉介君及び有馬輝武君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員藤枝泉介辞任につき、その補欠として草  野一郎平君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  案(藤本捨助君外二十二名提出、第二十四回国  会衆法第六〇号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(国鉄労働組  合関係)(内閣提出議決第二号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(日本国有鉄  道機関車労働組合関係)(内閣提出議決第三  号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(全国電気通  信労働組合関係)(内閣提出議決第四号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(全逓信従業  員組合関係)(内閣提出議決第五号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(全国特定局  従業員組合関係)(内閣提出議決第六号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(全専売労働  組合関係)(内閣提出議決第七号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(全印刷局労  働組合関係)(内閣提出議決第八号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(アルコール  専売労働組合関係)(内閣提出議決第九号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(全造幣労働  組合関係)(内閣提出議決第一〇号)  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基き、国会議決を求めるの件(全林野労働  組合関係)(内閣提出議決第一一号)     ―――――――――――――
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律案議題といたします。  本案はその審査を小委員会に託してありますので、この際小委員長より報告を聴取することといたします。植村委員長
  3. 植村武一

    植村委員 環境衛生関係営業に関する小委員会審議の経過を簡単に御報告申し上げます。  本小委員会は三月二十八日、四月四日、四月十七日、四月十九日に、そのほか打合会を四月十六日、四月十八日に開きまして、計七回にわたって終始きわめて慎重に審議を行なって参りました。  次に審議いたしましたおもな事項について申し上げますと、  一、本法案中小企業団体法との関   係について  一、本法案適用対象となる営業の   選定について  一、適正化審議会運営と構成につ   いて  一、適正化規程適正化基準につい   て  一、行政庁権限の配分について  一、本法案公正取引委員会との関   係について  一、環境衛生同業組合及び環境衛生   同業組合連合会租税金融関係   の特別措置について  等でございます。  なお四月十六日、四月十七日には逐条審議が行われまして、小委員会としては、次の諸点について修正を行うことに決定したのであります。  第一は、本法案において「都道府県知事」とありますものを「厚生大臣」と改め、新たに第六十四条において厚生大臣権限の一部を政令の定めるところにより、都道府県知事に委任することができることとすること。  第二は、本法案第二条第一項第一号の「食品衛生法規定により許可を受けて営む同法第二十条に規定する営業らち政令で定めるもの」とありますものを、政令でなく法律で規制いたすこととし、その営業種目としては、飲食店営業喫茶店営業食肉販売業及び氷雪販売業とすること。  第三は、本法案第二条第一項第四号の「興行場法規定する興行場営業らち映画に係るもの」とありますものを、「映画、演劇又は演芸に係るもの」と改めること。  第四は、第十条の独禁法の適用除外に関する規定中、ただし書き一号を削除すること。  第五は、環境衛生適正化審議会についてでありますが、第一の点で申し上げましたように、都道府県知事権限厚生大臣に引き上げたための所要の改正を行うほか、新たに中央環境衛生適正化審議会関係行政機関に、都道府県環境衛生適正化審議会関係行政機関及び中央環境衛生適正化審議会に建議することができることとすること。  第六は、利用者または消費者意見の具申をする道を講ずること。  第七は、環境衛生同業組合環境衛生同業組合連合会につきまして、租税の点、金融の点に関しまして所要特別措置をとること。  などでございます。  なお本法案の取扱いといたしまして、提案者の一部から一たん本法案撤回し、改めて自由民主党及び日本社会党共同提案とすることの申し出がございましたことを御報告申し上げます。  なお、第六十四条の規定に基く政令に関しては、次の通り規定するよう政府に勧告することを小委員会として決定いたした次第でございます。  すなわち、厚生大臣権限知事に委任する場合には、法第九条、第十一条、第二十四条、第五十七条及び第六十一条の事項については、知事処分五大市長意見を聞かなければならない。前項の場合に知事五大市長意見と異なる処分をしようとするときは、あらかじめ厚生大臣承認を受けなければならない。  以上であります。  つきましては政府は本法案成立後、国会意思を尊重してその趣旨に沿うよう指貫されんことを小委員会として強く要求するものでございます。
  4. 藤本捨助

    藤本委員長 以上で小委員長よりの報告は終りました。  なお、この際お諮りいたします。本案につきまして成規手続をもって撤回申し出がありますが、本案はすでに委員会議題といたしました関係上、衆議院規則第三十六条によりまして委員会許可を得なければなりませんが、これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認めます。よって本案撤回許可するに決しました。  暫時休憩いたします。   午前十一時四十六分休憩      ――――◇―――――   午後零時七分開議
  6. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)(議決第二号)、同じく(日本国有鉄道機関車労働組合関係)(議決第三号)、同じく(全国電気通信労働組合関係)(議決第四号)、同じく(全逓信従業員組合関係)(議決第五号)、同じく(全国特定局従業員組合関係)(議決第六号)、同じく(全専売労働組合関係)(議決第七号)、同じく(全印刷局労働組合関係)(議決第八号)、同じく(アルコール専売労働組合関係)(議決第九号)、同じく(全造幣労働組合関係)(議決第一〇号)及び、同じく(全林野労働組合関係)(議決弟一一号)、以上十件について、労働大臣より発言を求められておりますので、これを許可いたします。松浦労働大臣
  7. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今回の仲裁裁定につきましては、四月十六日の現況におきまして、予算上支出不可能であると認められましたので、公労法第十六条に定める手続に従い、仲裁裁定につき国会議決を求めるための議決案件提出いたし、御審議を願って参ったのでありますが、昨日に至りまして、閣議において実施のための財源を検討いたしました結果、印刷造幣、林野及びアルコール専売等の四現業につきましては、予算移流用によって実施し得ることが明らかとなり、この移流用措置によって実施することと、並びに、国鉄、電電、専売及び郵政の二公社現業につきましては、所要補正予算提出しこれを実施することを決定いたし、補正予算につきましては現在印刷中でありますから、月曜日中にもこれを国会提出する予定でありますので、この点、この際明らかにしておく次第でございます。
  8. 藤本捨助

    藤本委員長 午後一時まで休憩いたします。    午後零時九分休憩      ――――◇―――――    午後二時十一分開議
  9. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、国鉄労働組合関係議決第二号外九件について発言を求められておりますのでこれを許します。滝井義高君。
  10. 滝井義高

    滝井委員 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に華さ、国会議決を求めるの件につきまして、さいぜん労働大臣から休憩前に御発言がありましたが、その発言とも関連して一、二の点について政府見解をただしておきたいと思うのであります。  まず第一に今回出しましたところのこの国会議決を求める件は、憲法七十二条の議案に相当するものであるかどうか、これをまず第一に政府見解をお尋ねいたします。
  11. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 局長から答弁いたします。
  12. 中西實

    中西政府委員 これは内閣総理大臣内閣を代表して議案国会提出するその議案一つでございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 今回公労法の十六条二項に基いて国会議決を求めたこの件は、七十二条の議案であることがはっきりいたしました。そうしますと、同時に今回政府が三公社現業について補正予算を月曜日に国会提出するんだという御言明がございましたが、この補正予算は、憲法八十六条に基く予算であることは間違いないだろうと思いますが、その通りかどうか。
  14. 中西實

    中西政府委員 その通りと思います。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この出ておりまするところの国会議決を求める案件と、出て参ります予算とは可分であるか不可分であるか。
  16. 中西實

    中西政府委員 議案としては別のものでございます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 いや可分であるか不可分であるか。そうすると、これは出てくる予算議決とは全然別個のものと考えてよろしい、こういうことですか。
  18. 中西實

    中西政府委員 今出ております議決を求める件は、公労法第十六条第二項の規定に基いての議案でございまして別個のものでございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、出ておりまするこの議決を求める件は、月曜日に出るであろう予算とは全然無関係のものである、こういう了承をいたしました。
  20. 中西實

    中西政府委員 内容的に関連を持っておることはこれは申すまでもございません。ただ基礎といたしまして、公労法十六条第二項には現在の段階において予算上不可能なものについては十日以内に国会に出せということになっております。その条章に基きまして出てきましたのがこの議決案でございます。従ってこの議決案承認されるということと、それから後ほど出ます補正予算、これとは内容的には一体的なものでございますけれども、しかしながら案件としては別のものである、こういう趣旨で申し上げたのであります。
  21. 滝井義高

    滝井委員 案件としては片一方法律案であり、片一方手作案と同じような性格のものであるから、これは違うことは明らかなんです。私はこの案件がなければ予算というものは、これはないものだと思うのですがね。この議決を求める件と、出てくるであろう補正予算というものは全然別個のものではない。これらのものはやはり私は不可分のものである、こういうものなのか。あなたの今の考え方では、どうも別個であるか、非常に密接な関係があって、不可分のものであるかどうかということがわからないのです。私はそこをお尋ねしている。
  22. 中西實

    中西政府委員 案件としましては別ものでございます。すなわち公労法十六条二項に基いて出しまするものには、予算を一緒に出さなければならないということにはなっておりません。予算上不可能になった場合にはこの仲裁裁定国会に付議して、議決を求める、こうなっております。従って案件としましては別個でございます。ただ内容的に非常な関連を持つ、こういうことでございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 さいぜんの大臣の御答弁で一部は実施可能になったわけですね。移流用によって可能になった。そうしますと、可能になればこれは議決を求める必要はないわけですね。ところが不可能であるので求めた。そうしますと、可能になった分については一応論外にして、実施できない三公社と一現業である郵政についてはこれはどういうことになりますか。不可分ですか、可分ですか。
  24. 中西實

    中西政府委員 移流用によりまして実施可能になったといたしますると、その部分につきまして出しました議案自然消滅になります。そこでおっしゃいました三公社現業につきましては補正予算が出まして、この補正予算がもし通過いたしますると、予算上可能になりまするので、この議決を求むる件も自然消滅する、こういうことでございます。現段階においては予算上不可能であるからこの議決を求むる件が出ておる、こういう関係でございます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 もう少し問題を進めていきますが、昨日田中君の御質問で多分労働大臣であったと思いますが、予算が成立しないときにはこの決議を求める件はだめになる、こういう御答弁があったのです。(「それは聞き違いだよ」)それは聞き違いですか、予算が不成立になった場合には、この案件というものは一体どうなるのですか。
  26. 中西實

    中西政府委員 どういう場合でございましょうか、この議決承認するとなって、そうしてあと予算が通らなかった場合ですか。それともこの議決案はそのままになっておって予算が通らなかった場合でございましょうか。もし前の場合ですと、これはそういうことはあり得ないと思うのです。同じ国会片一方においては承認しておきながら、それを実行するのに必要な予算を否決するということは、これはおそらくそういうことはあり得ないというように考えます。もしこの議決を求める件については何ら結論を出さずにおきまして、予算がもし出されたものが否決になったという場合、それは結局予算上不可能という意味で出たものと思われますので、おそらくこの議決を求むる件についても不承認議決があるのじゃなかろうか。もしその議決もなくして国会が終れば、これは承認なかったものとして予算上不可能で、それは実行できない、こういうことでございます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 もう一つの場合ですね。裁定承認になったけれども、予算が出ていない、こういう場合には政府予算を組む義務を生ずるのかどうか。
  28. 中西實

    中西政府委員 私は生じると思います。
  29. 滝井義高

    滝井委員 これはうしろに多賀谷君がおりますが、かつて何か法制局では、債務発生という形はできると思うけれども、補正予算を必ずしも組まなくてもいいという見解を前に一ぺん答弁したことがあるらしいです。法制局うしろに来ておりますが、その場合どうですか。
  30. 西村健次郎

    西村政府委員 かつてそういう御質問があったように記憶しておりますが、正確なところは私今……。要するに国会承認があれば、それは裁定として全面的にそこから効力を生ずるわけであります。それと、その予算を出すということは、必ずしも法律上の責任はないということは申し上げたかもしれません。その場合にどういうことになるかと申しますと、裁定効力を生ずるので、債務は発生し、しかもそれを履行すべき裏づけとなる金がないという事態がありますので、そういうことはおそらく非常識なことで、政治的にはそういう予算を出さなくちゃいけない責任が生ずるのじゃないか、こういう意味のことを昔御答弁したと思います。今もその考えは変っておりません。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、実質的には、この議決を求めるの件と予算との関係は不可分じゃありませんか。これが認められれば政府は必然的に予算というものは出さなければならないことになる。不可分です。
  32. 中西實

    中西政府委員 法律的には今法制局からお話がありましたように、予算を出さなければならない義務はないのでありますが、政治責任としまして義務があるとさつき申したのでありますが、そういう関係でありますので、案件としましては別のものでございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 まあそこらあたり、債務が発生したと言ったのに、しかもそれが政治的な、道義的なものだということは、どうも私は解釈が成り立たぬと思う。債務が発生しておるなら、当然義務として政府はそれをやらなければならぬことになるのじゃないですか。政治的な、道義的な問題だということになれば、やってもやらなくてもいいことなんです。ところが現実に債務が発生したのだ、こういう確認をしたからには、この議決を求めるの件が承認をされれば、必然的に予算を組まなければならぬという義務が発生している。そうしますと、これは不可分ということになる。分つべからざるものなんです。そこはおかしいじゃないですか。
  34. 中西實

    中西政府委員 これは債務政府に発生するわけじゃないのでありまして、公社に発生する。従って公社予算がないからできないという関係になりますので、国会でこの議決を求めるの件について承認がありますれば、政治的に政府は当然やはり予算を出さなければならないとは思います。しかしながら法律的にはそういう義務は特にない、こういうことであります。
  35. 滝井義高

    滝井委員 国会国権最高機関であることはもう労政局長御存じ通りです。その国会議決をして、そうしてそれが政府を拘束しないなんという論理はどこからも出てこない。大臣、今の場合はどうですか。一つあなたの政治的な――憲法にのっとった国権の最北の機関議決したものを、公社は拘束するけれども政府を拘束しないということは許されませんよ。これは大臣どうです。そんなばかなことがあるか。
  36. 中西實

    中西政府委員 ……。
  37. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと、私はもうあなたの見解はわかった。だから大臣の、国権最高機関である国会承認を求めて、それを議決をした場合に、一体政府を拘束しないのかどうかということなんです。公社は拘束するが政府は拘束しない、そんなばかなことはないと私は思います。政府を拘束すると思う。大臣見解……。
  38. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 国会において決定し、債務が発生いたしました場合においては、政府はやはりそれに対する予算を提案する義務があると思います。
  39. 滝井義高

    滝井委員 その通りです。きわめて明快な答弁です。  そこで次に入ります。いよいよ国会はこの公共企業体労働関係法十六条二項の規定に基いて国会議決を求めるの件を議決をいたします。これはあり得ることです。議決をいたします。補正予算も大体議決をするとこういう形になります。その場合に、この承認を求める件と予算とが一致をしておるかどうかという認定仲裁裁定を完全に実施をいたしますという認定が一方においてはあるわけですね。そうすると、今政府が出そうとする予算というものは、これは完全実施であるかどうかということなんです。これは公労法を担当しておる大臣としては、当然これは補正予算完全実施であるかどうかという明快な見解を持っておらなければならぬと思うのです。従ってまず現在われわれのところにかかっておるのは、議決を求める件でございます。この議決を求めるの件の完全実施をするということは、岸総理大臣とわが党の鈴木委員長の間でこれはもう完全に意見一致をしておる。完全実施をいたしますということなんです。一体公労法所管大臣である労働大臣完全実施、この仲裁裁定が出たその精神における完全実施とはどういうものなのか、これをまず、公労法を所管する労働大臣見解一つまずお聞きいたしておきたいと思う。
  40. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 ただいまお話のあった点は、今度の問題の一番重要な点であると思います。従いまして、政府仲裁裁定誠意をもって尊重するということについては、従来意思は変っておりません。従って財務当局におきましても、誠意をもって尊重する意味における予算を提案されるものと信じております。
  41. 滝井義高

    滝井委員 誠意をもって尊重するということは抽象的です。もはやこの議決を求めるの件というものがかかったからには、これを完全実施をいたしますということを、あなたの党の総裁である内閣総理大臣が御一明になっておる。従って公労法所管労働大臣としては、こういう仲裁裁定が出た場合に、その完全実施とは大体どういうことか、これは大臣わかっておらなければならない。たとえばここに国鉄なら国鉄に例をとってみると、主文というものがはっきりあって、理由があります。ところがあなたのところで一番勉強家であるといわれている八田先生でも、読めば読むほどわからなくなる。私も読めば読むほどわからなくなる。そこで、完全実施とは大体どういうことなのか、政府完全実施をいたしますとこう言った。今大臣は尊重いたしますと言っている。一体この主文に基いてやる完全実施とは具体的にどういうことを意味するのか。これは何もこまかい計数をここで言ってもらう必要はありません。第一項はどういうことだ、第二項はどういうことだ、こういう見解、これは文章をそのまま平面的に読んでいけばわかるのですね。一つ大臣から完全実施とはどういうことだと――あとでもう少し具体的に伺います。大ざっぱなことしか尋ねません。
  42. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 細目にわたっては局長から申し上げるのですが、私は総理大臣完全実施をすると言明された機会はちょっと記憶いたしておりませんが、いつどこでお聞きになりましたか、その点をちょっとお尋ねしたい。
  43. 滝井義高

    滝井委員 わが党の鈴木委員長と岸さんとの会談でこれはもう明白になっておる。
  44. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 その場合には私も立ち会った一人であります。それは誠意をもって尊重するという以外には総理大臣言明されておりません。
  45. 滝井義高

    滝井委員 では誠意をもって尊重するということでもよろしいと思うのですが、しかしこれは完全実施をするということと、誠意をもって尊重をするということとは、そう私は大きな開きはないと思う。少くとも一国の総理大臣である与党の総裁と野党の委員長とがお互いに誠意をもって腹蔵なく話し合ったものが、誠意をもって尊重するというのが、完全実施と非常にかけ離れているとは思われません。従って、まあまあ完全実施とはどういうものなのかということを教えていただけば、それから誠意をもって尊重するということが出てくると思うのです。まず完全に実施するというところから、どういうことになるのか……。
  46. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 総理大臣言明をお問いになりますから――私は誠意をもって尊重するという方針で、今でも変りはないし、財務当局もそれによって予算を提案されるものと信じております。
  47. 滝井義高

    滝井委員 公労法所管大臣見解完全実施あるいは誠意を持って尊重するというのはどういうことなのか、あとで、今度は少し質問が進んでからもう一回あと返ってきたいと思います。  そこでまず法律上の見解をお聞きしておきたいと思いますが、公労法の第十六条の一項を見ますと「又国会によって所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」ということが書いてあります。国会によって所定の行為がなされるということは、この国会議決を求める件が国会で可決されることなのか、それとも予算国会を通過することなのか、どちらですか。
  48. 中西實

    中西政府委員 単に議決を求めるの件が承認されただけでは予算上可能になりません。そこで議決を求める件がもし承認されたといたしますれば、あるいは補正予算なりあるいは移流用の努力によって可能になるように予算措置をすることが、政府の政治的な義務になると思います。従ってその手続が済みましたときに実施が可能になる、かように考えております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 私が言うのは、だから議決を求める件とそれから補正予算国会を通過するのと両方なのか、それとも公労法の十六条の、国会によって所定の行為がなされるというこの所定の行為というのは、議決を求める件を承認しさえすればいいのか、そこらあたりのことを尋ねているのです。どっちなんですか。
  50. 中西實

    中西政府委員 だから議決を求める件だけで予算的に可能にならなければ、それは支出ができません。従って所定の行為が済むまでは議決を求める件が承認されましても実行できない。しかしながらそれは直ちに補正予算によって支出可能になるということじゃないので、場合によっては移流用でもできるということであります。
  51. 滝井義高

    滝井委員 予算国会を通ってしまった。そうして議決を求める件だけが残った、こういう場合には、これは十六条の所定の行為が終ったものと認められるかどうか。
  52. 中西實

    中西政府委員 予算通りまして予算上可能になれば、これは所定の手続が終った、こういうように考えます。
  53. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、これは法律案と同じだということになりましたね。そうするとこの議決を求める件が衆議院に現在かかっております。月曜日には予算が衆議院にかかってきますが、今度は予算が衆議院を通過いたして参議院へ行きます。議決を求める件は参議院は予備審査でございます。その予備審査の段階法案が通ってしまう、こういう形態というものは一体どういう形態になるのかということなんです。これが憲法の七十二条のいわゆる議案と同じだ、こういうことになってくる、そうしてしかもこの議決を求めることが承認をされると政府義務がある。債務義務が発生する、こういう形でしょう。そうしますと、予備審査の段階にある議決を求める件はまだ話がつかぬ、予算だけ通ってしまうということになれば、どうも公労法十六条の所定の行為の中に何か瑕疵があるような気がするのです。むしろ補正予算とこれが同時に通らなければならぬような感じもするのです。そういう見解はどうですか。今までの過去の見解を見ると、予算が通ってしまうと――鳩山内閣のときに多分アルコール専売か何かがあったと思うのですが、そのときには自然消滅ということになっておりますね。そういうところの法的な見解というものはどういうことなんですか。これは議案と同じだということになれば、それは自然消滅するものなのですか。
  54. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 御説明申し上げます。本議決案件に対する議決予算とが同時にされることが望ましいかどうか、これは国会でおきめいただくことでございますが、かりに予算が先に通りまして、議決案件議決がおくれました場合におきましては、予算上不可能という事態が消滅いたしますから、これはどうしても自然消滅ということにならざるを得ないということだけのことであります。
  55. 滝井義高

    滝井委員 そういうことになるだろうと推定はしておるのですが、しかしどうも普通の法律案とこれとは非常に違うということなんですね。しかもこれは憲法における普通の法律案と同じような性格を一方には非常に持っておるということ、なぜならば、これが議決をされれば少くとも義務が生じてくるということは、法律が通ればそれが予算を伴っておるのだから、政府予算を計上しなければならぬ義務が生じてくるのと同じです。一面そういうように非常に法律案と似ておりながら、今言ったように一面自然消滅するという面がある。そこらあたりは僕らのように頭の悪い者にはちょっとわかりかねるようであります。  そこで次に入りますが、労働省は現在――大蔵省なんかも言っておるようであります、あるいは新聞等にもやみ給与ということが非常にいわれております。まあ新聞なんかを見ると、やみでも、このやみはやみ夜のやみではないのだ、といって満月のもとにおけるやみとも違う、おぼろ月夜のやみだ、こういうことをいっておる。仲裁委員も何かそういうことを言っている。私はこれはけしからぬと思う。公労法の主管大臣である労働大臣は、一体現在の三公社現業にやみ給与があるとお考えになっておるのかどうか、一つ大臣見解をお尋ねしたい。
  56. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 どこからやみという言葉が出てきたのだか私はわかりませんが、新聞には相当やみがにぎわっているようであります。しかしながら労働省としてはやみ給与ということを先に言ったわけではありません。私はそういうことを言った覚えはない。
  57. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、言ったことがないということでございますが、現在三公社現業の給与の中にはやみというものはないという認定ですか。労働省の正式の見解はやみ給与というものはない、こういうことと了承して差しつかえないですか。
  58. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 そう簡単には表明できません。現在三公社現業が一般公務員と違った給与の支払い方をされておることは、私はやはり公労法関係を担当しておる大臣といえども遺憾にたえないと思います。これはやはり正常に復すことがほんとうだと思う。それはやみであるかどうかということはわかりません。けれども現在の給与の払い方というものが一般公務員と違った方法においていろいろな移用、流用が種々されておるということは、正常に復すべきものである、かように考えております。
  59. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、大臣はやみ給与がないということは簡単に表明ができない、一般公務員と違う、こういうことでございます。一般公務員と三公社現業とは給与の立て方が違っておる、公務員は現員現給制だし、それから公社等は給与の総額制をとっておるわけです。だからこれは建前が違う。建前が違うものを一緒になれといったって、これは言う方が無理なんです。だからその点は大臣はどう考えておるか知らぬが、普通の国家公務員と三公社現業の賃金の支払い方法が違うことは、国会も認め、同時に行政府最高責任者である内閣も認めておることだと思いますが、それは認めていませんか。
  60. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 いろいろの立て方が違うこともわかっております。しかしながら同じ公益、公共に働いておる者が格段の差が生ずることは、私はおもしろくない現象だと思うのです。立て方は違うけれども、社会通念として大体均衡のとれるようなことでなければ、片一方が非常に高くなる結果において、また国家公務員が安いからというので人事院の方から出ると、いたちごっこになってとどまるところを知らないといった結果になると思うのです。でありますから私は立て方も違うし業務も違う、しかし社会通念としては大体同じような仕事をやっておる者は同じような給与が、国家公務員及び公共企業体の者に払われるというところが望ましいと思うのです。そういう方法に今後順次改善したいということは財務当局もそういう意思でございますから、協力して私どもはやっていきたいと思います。
  61. 滝井義高

    滝井委員 将来の問題についてはよくわかります。しかし現在までに生じた国家公務員と三公社現業の賃金の差というようなものが、何か労働組合その他が、あたかもやみをやっておるかのごとき印象を与えるということは、これはおもしろくないと思うのです。従って大臣はどうも一般的に言うと簡単にやみがないということは言えないという御言明をされました。私は大臣に、簡単に表明できない点はどういう点とどういう点が簡単に表明できないのか、これは公労法の担当大臣として今後予算委員会なり、あるいはわれわれが一般の大衆に、三公社現業の賃金というものはこういう点に矛盾があるのだということを知らせる義務があると思うのです。国会議員としては、そのためには、やはりわれわれの見解もありますが、内閣自身、特に公労法担当の大臣としての公式の見解というものを知っておく必要があると思う。今巷間に伝えられておるような、やみやみというけれども、どうも私たちが見るとやみであるということは納得がいかない点がある。だから大臣として簡単にやみでないということは表明できないというなら、そのできない点はどういう点とどういう点が表明できないでやみ的な傾向があるのか、大臣としての公式の見解一つ御表明を願っておきたい。
  62. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それは私は給与をもらっている方々の立場を考えてみますと、自分だけで給与をもらうことはできないものですから、いろいろ払う方が承認して払っておるものでありますから、やみという言葉を使うということはおもしろくないと思うのです。しかしながらその払われている内容は、一般官公労とはよほど違った方法において払われておるということは――それは業績手当その他もいろいろございましょうけれども、予算単価と実行単価がああいうふうに開いているというふうなことは、これは予算単価と実行単価を近づけていくことにお互いに努力しなければならぬ、それは公務員の方にも協力してもらわなければならぬし、またこれを扱っている公企体の経営者も考えなければならぬと思うのです。私は新聞に、ああいうふうに、みんなせっかく働いているのに対してやみを取っている、やみを取っているということは、私は労働省の見方としてはおもしろくない、けれども今の現状は直さなければならぬ、こういう意味ではっきりそうでないと言い切れぬところを御了承願いたいと思います。
  63. 滝井義高

    滝井委員 大臣の立場はよくわかりました。労働者を愛する大臣としては、どうも世間でやみやみと言っているけれども、自分は必ずしも納得がいかぬところがあるということを大臣は言われました。その主張だけは堅持をしてもらわなければならぬ。将来のことについては、不合理な点、不備な点があれば是正することはこれはわれわれもやぶさかではありません。しかし過去にもらったところのいろいろの業績手当その他のものは、これは明らかにそうなるべき当然の因果関係というものがあった。それはどうしてかというと、昨日運輸大臣も御言明になったように、大蔵大臣と十分協議をして私はそれを許しました、 こうなっている。だからその一切の責任は――国家公務員と三公社現業の職員諸君との間に差が生じたこと、あるいは給与の立て方が国家公務員と三公社現業が違うということは、一にかかってそういう格差を生ぜしめた内閣自身がそういう状態に放置しておったことにあるのであって、その一切の責任はあげて内閣にあると私は思うのですが、この点労働大臣はお認めになりますか。
  64. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 まあいろいろ見方がありますけれども、私は直接の責任は、やはり公企体の経営者にあると思うのです。それは内閣承認したから内閣にあるということですが、それは間接的の責任であって、直接の責任はやはり経営者にあると思います。私も企業の経営の経験は十分持っておりますが、それはそんなことを言えば企業が失敗した責任は銀行にあるということになるのです。こんなものに金を貸したからああいう経営をしたということになる。けれども、私は、やはり第一次責任は企業体にある、第二次責任政府にある、こういう形だと思います。
  65. 滝井義高

    滝井委員 私は今の大臣の言葉で了承したいと思うのです。大臣は、責任はあげて公企体の執行部にある、経営首脳部にあるというようなことだったが、第二次的に政府にある、こういうことをお認めになった。従ってこれは監督の立場にある政府と公企体との連帯責任であるということが明白になった。ここで労働組合の方には、働いておる人には一応は責任はない、大臣はそれは言わなかったがそういうことが明白になった。  そこで今度お尋ねをしたいのは、公労法の八条です。八条を見ますと、明らかに団体交渉の範囲というものが書いてあります。そうして団体交渉の対象として、その範囲の中に入って労働協約を結ぶことができるのは、これは八条の一項の一号で「賃金その他の給与、労働時間、休憩、休日及び休暇に関する事項」、こうなっておる。そうしますと、明らかに公社当局とそれから労働組合とが団体交渉によって確立をしたところの給与というものは、当然これは三公社現業当局ものみ、そうして同時にその結果に基いて大蔵大臣なり運輸大臣なりというものが、あるいはその他の所管大臣というものがこれは認めてきておるわけです。まさか大臣は、今後公労法八条の団体交渉権というものは御否認にならないと思うのですが、これは今後とも御否認にならないでしょうね。
  66. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 認めます。
  67. 滝井義高

    滝井委員 お認めになった。ぜひ一つ団体交渉権だけは、これは確立をしてもらっておかぬと困る。  最近政府の中においては、――終戦の後国家公務員なり三公社現業から憲法に保障されておるところの団結権、団体交渉権、罷業権というものを剥奪した。そうして国家公務員には人事院というものを設け、そうして給与の勧告を行わしめ、同時に三公社現業の諸君に対しては調停あるいは仲裁の委員会というものを作ってくれた。ところが最近人事院というものを廃止するという動きが出ておる。しかも最近新聞の伝えるところによれば、公労法を改正するのだということが出ておりますが、一体こういう傾向に対する労働大臣としての見解はどういう見解を持っておるか。今公企労法の八条における団体交渉権というものは認めていくのだということを御言明になったが、一体人事院の廃止あるいは公労法の改正というものはどういう工合に大臣はわ考えになっておるのか。
  68. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 これは大久保国務大臣の担当しておる問題でありますが、政府の一員として今のお問いに対してお答えいたしたいのであります。が、それは政党内閣責任政治といたしまして人事の異動だとか、そういう人事というものは、これは政党内閣責任を持つべきであるという見解です。しかし団体交渉権、罷業権のない者の給与の問題その他の問題については、国家人事委員会というものを作りまして、従来よりも強化してそのことをやって参りますから、これに対する不安はないと思っております。
  69. 滝井義高

    滝井委員 国会内閣に対して勧告権を持っておる人事院を総理府の中の一人事局とし、これは内局ですか、それから外局の中に国家人事委員会というものを置くということは、これは国家機関に働く国家公務員にとっては非常に不安定なことです。しかも内閣が、政党政治のもとにおいては当然人事権を握るということになれば、昔のいわゆる民政党の時代になれば民政党の知事と、それから末端の駐在所に至るまで民政党の巡査ができる、政友会の内閣になれば政友会の知事と政友会の巡査ができるということでは困る、そういうことのないために人事院というものができ、あるいは公企業体のこの企業がきわめて公益性が高いというので、これは仲裁委員会ができておると思うのです。で、大臣公労法の方はどうですか、公企業体の方はやはりそういう形に持っていくのですか。
  70. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 公労法を直すか直さぬかということは、まだ意思の確定をいたしておりません。今後の推移によるものであります。
  71. 滝井義高

    滝井委員 今後の推移というのはどういう推移ですか。
  72. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それはこれから後に直すか直さぬかということを検討するわけですから、そのときに決定すべきものであって、今直すということを考えておりません。
  73. 滝井義高

    滝井委員 今直すということは考えていないそうです。それから人事院の問題については、どうも大臣は廃止に御賛成のようでございます。大臣が人事院の廃止に賛成をするということは、それは大阪城の外堀を埋められることを意味します。やがてそれは今度は公企業体の職員諸君に及ぶことは明らかなんです、そういうものの考え方は。これはなぜならば、大臣がさいぜんから御言明になったように、国家公務員の給料が人事院の勧告で上る、公企業体の給料というものが仲裁裁定で上っていく、イタチごっこでどんどん上っていけば切りがない。ということは、結局これは人事院の廃止はそのまま影響をして公企労法の改正になることは、火を見るよりも明らかなんです。私はここで御言明をいただきたいのは、大臣公労法というものの改正については、やらないという御言明ができないのですか。
  74. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 現在は考えておりません。
  75. 滝井義高

    滝井委員 現在は考えていないということでございます。まあ、将来とも一つ慎重に考えてもらわなければいかぬと思います。  そこで、やみ給与とは何かということをお下ねをいたして、人事院まで発展しましたが、現在のもとでは、やみ給与というものはないということを大臣は御言明になった。将来についてはこれは考えなければいかぬ、しかしそのやり方その他については幾分問題があるようだということでございました。  そこで次にお尋ねをしたいのは、昨日閣議で三時ごろに、公企業体関係仲裁裁定実施のためのいろいろ所要財源が百九十億七千万円くらいきまったようでございます。大蔵省は、今度の仲裁裁定実施に当って、やみ給与というようなものを考えておるようなニュアンスが新聞その他にあるのですが、現在三公社現業が国家公務員とどういう点が違っておるから、あなた方はやみ給与があるんだと、こういうことをおっしゃるのですか。やみ給与と言っていなければ違うところだけでけっこうです。
  76. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 大蔵省がやみ給与というようなことを言い出したというふうなお尋ねも先ほどございましたようですが、私どもは公けにやみ給与という言葉を使ったことはございません。世間で言っておりますやみ給与というものはどういうものであるかというお尋ねと解しまして、お答えをいたすことにいたしますが、結局基準外賃金またはこれに相応する一時金の、予算単価を上回って支給されておるものにつきまして、結局予算単価と実行単価のその格差のことを最近の新聞紙上では一次のやみとか二次のやみとか、そういうふうに言われておるようでございます。従いまして今私が申し上げましたような意味のものでございますれば、やみと言われておりましても、これは別に違法という意味でのやみではないわけでございまして、実行と予算とが食い違っておるという、その点をさしておるわけでございます。しかし裁定でも言っておりますように、公共企業体の性格から考えまして、その予算につきましては国会承認をいただいて給与総額がきまっておる、その中の基準内給与あるいは基準外給与につきましても、それぞれ項目がございますが、そういう点について国会の御承認をいただいて予算がきまっておるというようなことから考えまして、その経理は努めてやはり公正に処理せられなければならないわけでございますので、、そういった意味から申しまして、決して違法であるという意味のやみとは私どもは考えてはおりませんが、好ましい状態であるとも考えておりません。やはり予算単価と実行単価とは極力乖離がないように考えてやらなければならぬ性質のものであるわけでございまして、そういう意味で問題があると存じます。
  77. 滝井義高

    滝井委員 大蔵省も違法のやみではない、これは正当のものである――違法でなければ正当ですから、正当のものであるということは大体はっきりしてきた。  そうしますと、正当なものであるということがわかったのですが、それならばこの裁定実施する基本方針というものはきまっておるはずだと思います。これはどういう基本方針で実施をしていくのか。これは移流用によってやる四現業だけはいずれもうおろすことになる。そうするとあと公社現業、これに対してどういう方針で裁定実施するのか。その基本方針を、内閣を代表して労働大臣ですか、森永さんですか、どっちでもけっこうですがお教え願いたい。
  78. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 基本方針というのは仲裁実施のですか、予算編成方針ですか、どっちですか。
  79. 滝井義高

    滝井委員 要するに、あなた方はこの国会議決を求めるの件を出されておりますけれども、やはりこれはこの方針に基いて、そしてあなたがおっしゃったように少くとも誠意をもって尊重して実施をするのだという、その誠意をもって尊重するということが具体的に現われるのが予算でしょう。われわれが今やっておるのは花です、花よりだんご。そのだんごは結局大蔵省が握っている。だから花に基いただんごの方を示してくれ、こういうことなんです。どういう工合にしてだんごを作るのか。
  80. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 これは皆さんが聞きたいところをざっくばらんにおっしゃっていただいた方が答えやすい。結局今の予算編成は新聞に発表されておるのでありますから、御存じの上でお尋ねだと思う。だからこの点がいけないじゃないか、こういうふうにお聞き下さった方が私ども、答えやすい。今のように抽象的に言われると、たくさんの議決案件の内容を全部かためなければなりませんから、国鉄なら国鉄のこの点は不合理じゃないか、こういうふうにお尋ね願いたいと思います。
  81. 滝井義高

    滝井委員 実はここで、国鉄が何だというと、そんな各論にぼくらは入ろうとはまだ思わない。まず一般論として、政府誠意をもって裁定を尊重するということになれば、これはやはり一般的な――この裁定をお読みになってもわかるように主文というものは大して変りない。そうしますと、これらの十の案件に対する基本的な、不変的な方針というものがずっと内閣に立っておるはずなんです。立っておるからその方針に基いて具体的な予算が組まれていっておるんでしょう。だから、たとえばあなたの方で、やみ給与は正式にないけれどもあなた方から見て不合理だというようなものはこういう工合にするのだという方針が立っておるはずです。それが立っておらなければ、各公社にどういう方針で団体交渉しろという指令が今の段階では出せないというのです。将来に向っても是正をしようということができないはずです。そういうことを私は言っておるわけです。公社のどこが悪いということは、またいずれ専門家に聞きますから……。
  82. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 お問いの点に対しましては、午前中に発言いたしましたように三公社現業予算補正でいきたい、あとは移用流用でいきたい、これが方針でありますが、予算を提案いたします場合における内容あるいはその考え方については、大蔵省の方から御答弁いたします。
  83. 滝井義高

    滝井委員 予算補正の方針と申しますか、ほんとうは大蔵大臣に来てもらったらいいと思いますが、森永さんが見えておりますから、森永さんの方から一つ……。
  84. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。その前に先ほどのやみ問答でございますが、これはちょっと誤解があるといけませんと思いますので、もう一言つけ加えさせていただきたいと思います。違法という意味でのやみではもちろんございませんが、制度上好ましくないものという意味で、いろいろ合理化について考えなければならぬ点が多いわけでございます。ことにこの成立の由来を考えまして、たとえば当事者間でこれは極秘の秘密協定とかなんとかいうことで、監督官庁も予算編成当時も全然知らなかったというようなものもあるわけでございまして、これらの点につきましては、やはり合理化をしていかなければならぬ要素のものが相当ある。そういう意味で決して好ましい状態ではないということを申し上げましたことを、まず冒頭に補足させていただきたいと思います。  次に今回の裁定実施に伴う財源措置でございますが、どういう方針で財源措置に臨んだか、これは便宜補正としてお願いをいたしますものも、移流用で処理できますものもひっくるめまして、全部を通じました原則的な方針をまず申し上げたいと存じます。  財源措置として必要になります金額は、基準内給与につきまして千二百円、これは現業には若干違った金額になりますが、それぞれの金額に対しまして、実員に対しまして財源措置をしなければならぬわけでございます。これはもちろん基準外の給与の関係もはね返って参ります。その所要額を何でまかなうかという問題でございますが、これにつきましては私どもまず既定の給与総額内の財源を検討いたした次第でございます。この検討を主文第一項の予算単価に千二百円を足した金額ということできわめて厳密にいたしますと、結局いわゆるやみ給与の問題がふつ飛んでしまうわけでございまして、そこにいろいろ問題があったわけでございますが、私どもがこれを検討するにつきましてとりました大体の方針は、まず三公社につきましてはいわゆる第一項確定分六百円、これは郵政にも同じような問題がございますが、郵政につきましてはその財源が給与総額の中でなかったために、若干異なった問題がございます。少くとも三公社につきましては既定財源でまかなわれておったわけでございますので、それが半年分まかなわれておったわけでございますから、この分は既定財源内の振りかえによって処理せざるを得ないわけでございます。  次に、その他の要素による予算単価と、実行単価との乖離につきましては、先ほど申し上げましたように主文一項の解釈を、きわめて厳密な解釈をいたしますれば、全部ふつ飛んでしまう。それが財源に供せられるということになるわけでございますが、かくては相当程度の給与の実質的な増額を期待しておる、そのように配慮されたいという仲裁委員会の御回答の趣旨にも沿いませんので、そこで私どもが考えました、そして政府部内で一致を見ました方針といたしまして、三十一年の七月一日の実態調査がございます。その調査を基礎といたしまして、予算単価と実行単価の乖離がどの程度かということを検討いたしまして、これは大体三年間に解消するという目途のもとに、三分の一程度のものをこの際格差を縮小する。それを最高の限度として、既定財源からの振りかえを考える。このほかに既定給与総額内にいろいろゆとりがあるわけでございます。たとえば基準外給与の不用額、休職者給与であるとか、あるいは特殊勤務手当、宿日直手当予算でお組みいただいておりますが、昨年度はそれが相当不用になっておる。また基準外給与を、所定の基準を越えて支給せられておる例もあったわけでございまして、そういうものはこういうふうに裁定が出まして、この裁定実施する場合には、まずその裁定実施の財源に充当することが至当であるというような考え方をとりまして、ただいま申し上げましたようなものにつきましては、既定給与総額内に財源を求めまして、いわば振りかえによって処理をいたしたわけでございます。それだけではとうてい足りません。そこで給与総額外からの財源を捻出しなければならぬわけでございますが、これにつきましては三公社現業それぞれの実情に即しまして努めて経費節約に努力し、移流用等の可能なものにつきましてはこれを最大限に考慮し、また予備費からの充当等も考慮いたしまして給与総額外からの財源の捻出に努力をいたした次第でございます。  郵政会計につきましては、右のような問題のほかに人件費の負担区分がございまして、他の会計から受け入れる以外に捻出の方法はない、たとえば郵便貯金特別会計、簡易保険特別会計等からの、あるいは電電公社からの繰り入れを期待する以外に道がないのでございますが、それにつきましては、それぞれの会計に対しまして繰り入れを求めるほかに道がないわけでございます。そういうような財源措置を講じまして、給与総額として新たに増額をしなければならぬ金額を求めましてそれを今度補正ないしは予算実行上の措置によって実施し、今回の仲裁裁定実施しようといたしておるわけでございます。かかる検討の結果、三公社並びに郵政につきましては補正予算を必要といたします。その他の四現業につきましては、経費の移流用等によりまして所要額の充定がまかなえる見通しがつきましたので、四現業につきましては補正の手続を必要としないで実施ができる、そういう状態に相なっております。  以上一般的な財源措置の方針を申し上げた次第でございます。
  85. 滝井義高

    滝井委員 あと二問でございます。あとこまかい点は専門的に他の方に質問していただきます。私は今の主計局長の御説明の中で、結局給与総額内でやりくりしてまかなうものと、それから給与総額外で財源調達されるものと二つに分けることができると思うのです。そうすると問題は給与総額内で、新聞報道によれば七十億六百万円くらい出ることになっておりますが、一体こういう金がすでにきまった三十二年度の予算の中からやすやすと出せるものかどうかということです。この点は公社当局にも聞かなければならぬと思いますが、大蔵当局においてはこれらのものがやすやすと出せるかどうか。そういう点あなたの方の御見解だけ述べておいていただきたい。
  86. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 やすやすというのは主観の問題でございまして、公社当局あるいは企業当局がやすやすとというような気持でおられるかどうか、これはわかりませんが、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような三点、つまり第一点は、第一項確定分の関係、第二点は、格差を順次縮小していこうという点からの観点、第三には、基準外給与の不用額あるいは所定外支出額の実績、そういった三点から、給与総額内からの捻出に努力いたしたわけでございまして、結果におきましては、三公社、各企業会計当局とも完全に意見一致を見た上で補正の措置なり、あるいは移流用措置を講ずる、さようなことに相なっておる次第でございます。あるいは私どもの予算の組み方に対しまして甘かったのではないかという御批判もあり得るかと存じますが、今日の事態におきましては、かかる御批判は、私どもといたしましては甘受せざるを得ないような立場にあることを付言して申し上げます。
  87. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三公社現業当局も、大蔵当局のこの予算の組み方については、満足はしなくても、十分了承をし、協力をしておる。それから世間は甘かった、こういう見方をしている、そういうことなんですか。
  88. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 三公社現業各当局と、予算の折衝につきまして交渉いたしました結果、完全な意見一致を見て今回の措置を決定をいたしております。  第二点は、世間がそういっているかどうかということには触れませんでしたが、甘かったのではないかという御批判がもしありとするならば、それは私どもとしては甘受せざるを得ないという心境を申し上げたわけでございます。
  89. 滝井義高

    滝井委員 最後に、これは解釈上の問題ですが、結局第二次確定分、いわゆる三分の一だけ縮小する分、これはこの国会議決を求めるの件の理由のところを読んでも、将来はとにかくとして、今すぐに千二百円の中からその三分の一だけ解消しようということはどこにも書いていない。たとえば国鉄のものの六ページを見ると、「予算単価と実行単価との相違は、公社の公共事業としての性格並びに公社経理の本質からみて、本来大きく開くべきものではない。したがって、将来については両者の相違が合理的に縮小されるよう制度上また実行上関係当局において留意する必要がある。」こう書いております。けれども、将来ということは今すぐということではないんですね。ところが大蔵当局はすぐにそれまで手をつけておる。いわゆる世にいう第一次やみ、第二次やみといいますか、その第一次やみはすぐに解消していく、第二次やみは将来、こういう書き方になっておるのです。ところがその第二次までもすぐ手をつけていく、こういう形は、公労法担当の松浦労働大臣はこれをどういう工合に読むかということなんです。私はここだけ尋ねて私の質問を終ります。労働大臣はどういう工合に今の点をお考えになっておるか。
  90. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 その点はわれわれの方もずいぶん検討いたしましたが、まだ十分でなかったものですから、さらに文書をもって仲裁裁定責任者に質問いたしました。その聞き方は、あとで非常に問題になる重点ですから、ちょっと読んでみますと、裁定主文一による予算単価の増額については、その財源について裁定として何か触れておったかということを聞いたのです。また昭和三十年度賃金紛争に関する調停案に基くいわゆる第一項確定分以外に基く実行単価と予算単価との格差については、裁定においては具体的措置が明らかにされていないが、政府及び当事者の措置にゆだねられている趣旨と解されるが、どうであるか、こう聞いたのです。なお右に関連して裁定趣旨上特に考慮すべきところがあれば承わりたい。この三つを聞きました。それに対して文書をもって返答がありました。「質問一について、今次裁定は、千二百円が理由第二に述べたように、必ずしも実行単価にそのまま積み上げられるものではないが、しかし相当程度の現実的給与改善措置を企図しているものである。従って予算単価増額に関する財源措置及び実行単価と予算単価との格差縮少措置関連し、当面する給与改善措置が、結果的に右の趣旨を没却しないよう十分御配慮相成りたい。」こういう回答であります。でありますから、皆さんがお尋ねされんとしているところは、今主計局長がお答えいたしました、第三の予算単価と実行単価の格差というものを五百二十円前後と言われたのでありますが、その五百二十円というものを、相当程度給与の改善を企図している、こういつているのです。それで五百二十円というものを、森永さんの査定には四百二十円となっているわけです。そうすると、五百二十円というものの相当程度という解釈がこの問題になるわけです。この五百二十円は今度見なくてよいというのが相当であるか、あるいは五百二十円を四百二十円まで見ることが相当であるかということが、私どもの見解であります。従って政府にまかす、よろしく御配慮願いたい、こうなっておりますから、私は大蔵大臣と折衝いたしましたときに、五百二十円を四百二十円まで大蔵大臣が見てくれるというのであれば、それは相当程度であるという解釈を下したのであります。
  91. 滝井義高

    滝井委員 私はこの質問で終ります。それで大臣にはなはだ恐縮でございますが、今の政府から出しました質問書と向うから来た答えを後刻資料として、ごめんどうでしょうが、全委員に配付をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  92. 藤本捨助

  93. 八田貞義

    八田委員 私は労働大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、本年の三月九日公共企業体等労働委員会は調停案第二号を提示した。これに対しまして国鉄労組は調停案の実施を条件に受諾し、当局側は受諾しがたい旨を回答いたしております。ところで、この調停案には理由が示されておりませんでしたから、一体労組側は調停案の内容をどのような受け取り方で受諾し、国鉄当局はどのような受け取り方で反対したかはっきりしないわけであります。受諾しがたい旨の回答の根拠をどこに求めておったか。これは労働大臣にお尋ねしても無理かと思うのでありますが、この問題の専任担当大臣と了解いたしますので、受諾するとか受諾しがたいという根拠を、大臣は一体どういうふうにとっておられるか、お知らせ願いたいと思います。
  94. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 経過の問題でありますから、局長から詳細に説明いたさせます。
  95. 中西實

    中西政府委員 当事者がどういうふうに受け取りましたか、私もほんとうのところはわかりませんので、推測になりまするが、組合側はおそらく千二百円現在もらっておるものより積み重ねられるというような受け取り方をしたのではないかという感じがいたしております。これははっきりいたしておりません。それから公社側は、結局仲裁とお比べいただいてもわかりますように、単に千二百円予算単価を上げると申しましても、従来いろいろのいきさつで、現在の実行単価ができております。一体それがどのように積み重ねられるのか、あるいはまた公務員、それからその他の公社現業関係とのつり合いがどうなるか、民間給与とはどうなるのか、そこいらのところがよくわからないのであります。従って内容の不確かなものはどうにも受け取りがたい。もしも実行単価にまるまる千二百円ということなら、これは予算的にもできないし、当然受諾できない、こういうような気持であったかと思います。公式的には当時出ました調停案に対しての双方の回答文以外にはわからないわけでございます。
  96. 八田貞義

    八田委員 今の説明によりますと、労組側の方は現在とっておる賃金の上に千二百円というものが積み上げられるのだ、こういうような印象の受け取り方をしておった、こういうふうに御答弁があったように考えておりますが、一方また当事者の方は、どうも今までの実際に支払っておる賃金が納得がいかない、こういうような意味でその内容の問題について反対しておった、受諾しがたい、こういうふうに考えておった。こういつたことが経過過程から考えられるという御答弁のように伺ったわけです。そこでそのときに一体一般公務員との賃金の開きという問題についてはどういうふうに考えておったか。政府の方でも、公社の当事者が受諾しがたいと言ったときには、やはり内容がはっきりしないのでどうも受諾しがたい、こういう意味であったわけですね。従ってそのときには受諾しがたいというのは、一般公務員との賃金の開きを考えて受諾しがたいと言ったのか、あるいは全然内容がわからないと言って――やはり内容の基本となったものは一般公務員との開きだと思う。受諾しがたいと言ったときに、一般公務員との賃金の開きをどのように考えておったか、その経過ということになりますが、お知らせ願いたい。
  97. 中西實

    中西政府委員 その点も実は全然理由が示されておりませんでしたので、当事者としましてもよくわからなかったかと思いますが、しかし調停案に対しての公社側の回答文を見ますと、たとえば国鉄におきましては、日本国有鉄道法第二十八条に規定されている給与の原則との関係がわからない、こういうことを理由の中に書いております。この日本国有鉄道法二十八条に規定しておりますのは、給与というものは生計費、国家公務員の給与、民間給与、その他の諸条件を勘案して考えろという規定になっております。従って公務員との周係を一体どう考えるか、公務員との関係があるいはこれによって非常な開きになるのではないかということも、やはり受諾しがたかった理由の中にあったことと推測されます。
  98. 八田貞義

    八田委員 そうすると、三公社の職員の中には、職員の実際の取り分は、国家公務員と比べてそう開きのあるものではない。特に当時一般公務員の給与改訂案が国会提出されておった。そういったところがやはり問題になってくると思うのでありますが、その問題は時間がないのでこれくらいにいたします。ただ調停段階に入ったのはいつごろであって、何日目で調停案が出てきたか、お知らせ願いたいと思います。
  99. 中西實

    中西政府委員 この議案うしろ一つ一つ理由がついております。
  100. 八田貞義

    八田委員 調停段階に入ったのは、国会議決を求めるの件の中にははっきりと日が明示してないわけです。その日をお知らせ願いたい。
  101. 中西實

    中西政府委員 国鉄につきましては、一番早く調停申請をいたしまして、昨年の十二月の二十七日でございます。あとの経緯はこの理由の方に書いてあります。それからあとだんだんとございまして、一番おそかったのは林野で、たしかあれは三月四日に申請したと存じます。そのほかに九つございますが、機労は調停をやりませんで、いきなり仲裁に入った、こういうわけであります。
  102. 八田貞義

    八田委員 そうしますと国有鉄道の方は、調停の段階に入ったのは十二月二十七日で、三月九日に調停案が出たわけですね。この間においていろいろと風聞を聞くのでありますが、公企業調停委員会で、労使双方の委員がスクラムを組んで、公益委員の藤林会長に調停額のつり上げを迫ったということが伝えられておるのですが、これが果して真相かどうか。そのために藤林会長は席をけって立ったということも伝えられておるわけであります。これがほんとうとすれば、アベック闘争の有力な裏づけとなる証拠物件であろう、こういうふうにも考えるのです。一体こういうことがあったかどうか、一つ率直に隠さずにお知らせ願いたいと思います。
  103. 中西實

    中西政府委員 詳しい前後の事情は存じませんけれども、おっしゃるような事態があったように聞いております。果して完全に労使の代表委員意見一致しておったかどうか、そこまでは存じておりませんが、とにかく公益委員の意向と違った、内容的には公益委員が考えておられるよりは高い点において、労使がある程度意見一致しておった。そのために公益委員として非常に困った状況になられたようなことがあったようには聞いております。
  104. 八田貞義

    八田委員 公社のあり方の問題になってくるのですが、一般民間企業と違って、賃上げ財源は国の予算でやられて参りますから、使用者側の腹は痛まないわけであります。ですから、こういつた調停委員に対して、労使共同して――スクラムという言葉を使いましたけれども、共同して圧迫を加えるということが起つてきても、今までの成り行きから見れば、そういうことがあってもそう不思議じゃないのですね。そういうことがあってはほんとはならぬのですけれども、そういうことが行われるというところに、公社のあり方という制度問題について、われわれは検討していかなければならぬという必要を感ずるわけであります。  そこでもう一つお尋ねいたしますが、調停委員仲裁裁定委員とは同一人なんです。こういつたことにつきましては、さらに先のことといたしまして、ただ問題は、仲裁裁定の調査の資料あるいは検討材料あるいは基本資料として、大蔵省の資料についても十分検討されたかどうか。あるいはまた調停案は、聞くところによりますと、三公社現業の資料がもとになったというふうに言われておるわけであります。ですから仲裁裁定を出したときには、調停案が中心となったものであるかどうか。この点につきましては、ほんとうは仲裁裁定委員に聞くのが至当でありましょうけれども、ただ調停案を作ったときには、三公社現業の資料が中心になった。従って仲裁裁定を下す場合には、少くとも大蔵省の資料も十分に参酌すべき必要があるわけです。こういつたことにつきまして、三公社現業の資料ばかりでなくて、大蔵省の資料も十分に参酌きれてやられた仲裁裁定案であるかどうか。これは労働大臣はどういうふうにとっておられるか、ちょっとお知らせ願いたいと思います。
  105. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 ただいまのお尋ねの点は、政府側及び大蔵省側のこれに対する責任者を呼びまして、仲裁裁定を決定する前の資料としていろいろな面を調査されたことは、仄聞いたしております。
  106. 八田貞義

    八田委員 今度の仲裁裁定の特色というものは、予算単価にプラス千二百円ということであります。すなわち三十二年度基準内予算単価に千二百円増額する範囲内で労使の団体交渉で決定せよというように裁定してるだけであります。ただいまの滝井委員質問に対しまして、予算案が二十二日に国会提出されるということになっております。ところが裁定書の主文を見ますと、「昭和三十二年四月以降の基準内賃金は、昭和三十二年度基準内予算単価について千二百円を増額した金額の範囲内で、労使協議の上決定実施すること。」ということになっております。ですから、この裁定書の主文の一項には、政府があらかじめきめた予算の範囲内で、そうして団体交渉しろというふうに書いてないように私は解釈するんですが、一体この主文の第一項は、今度のように政府があらかじめきめた予算の範囲内で、そうして団体交渉をしてやれ、こういう意味に解釈されるかどうか。これは少くとも「増額した金額の範囲内で、労使協議の上決定実施する」というように書いてあるのですから、この間に政府がワクを持って押しつけるというようなことはなかったわけですね。この点労働大臣、どういうふうにお考えになっていましょうか。
  107. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 お問いの点は、先ほど読み上げました二つの資料が重点になるのでありますが、今の場合、あるいは政府の側といたしましては、先ほど森永主計局長答弁いたしましたように、主文第一項を見れば、予算単価の上に千二百円を盛るということがはっきりいたしておりますから、それに対して、六百円というものが業績手当であるものを本給に直す、あと六百円ですが、その六百円の中で五百二十円というものは俗にいう、新聞で言われておるやみ給与ということになって現われてきた。それをどれだけ見ればいいか。これは先ほど読み上げましたように、相当程度の現実的給与改善の措置を企図している、こういうことを回答されておりますから、その相当程度というところが、われわれの財源関係についての予算編成に対する考え方であります。でありますから先ほど申しましたように、五百二十円全額は相当程度とは私は言わないと思うのです。かりに五百二十円のうちで百円見るならば、これも相当程度とは言われないと思うのですが、そこで私どもは四百二十円、つまり三分の一はなしくずしする、あと三分の二は従来のように認めようじゃないか、それが相当程度だと私どもは考えて、この財源措置をとったのであります。これは予算の財源措置でありますから、さらに団交は今後この財源と見合って行われるものと私は思っております。決して労働組合を圧迫したものではございません。
  108. 八田貞義

    八田委員 私の質問を保留して次会に譲るようにということでございますから、ただ一点だけ質問させていただきたいと思います。いろいろ内容に立ち入ってお話をいたし、お答えをいただきたいのでありますが、今日の三公社現業、こういつたところにおきましては争議権はないわけです。ところが今日争議権のない争議が実力行使という名前で呼ばれておりますが、一体実力行使というのはどういうことを言うのか、どうもはっきり納得できないのです。争議権のない争議を実力行使という言葉で呼んでいいかどうか、実力行使というのは一体どういうことを言うのか。この点について政府はいつも厳重な処分ということを言っておられます。しかし厳重な処分がどの程度まで行われたか、わからない。といっておって結局実力行使実力行使ということでやられてきておるわけなんです。争議権のない争議を実力行使と言うのか、しからば実力行使とは一体どういうことを言うのか、(「合法的だ」と呼ぶ者あり)こういうことになってきますが、大臣の御見解をお伺いしたい。
  109. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 私は実力行使というのはあれほど凄惨をきわめたものじゃないと思っておったんです。ところがその実力行使が行われると国民は憤激いたしました。怒号の声をラジオで聞きました。私は実力行使という名前に隠れて争議をやったことについては、その責任者は法に照らしてその罪をあがなってもらいたいと思っております。
  110. 八田貞義

    八田委員 これの処分の方法は、公労法の十八条に解雇ということが書いてあります。この実力行使というのは争議とは違う、合法的だというような言葉が――大臣からじゃありません、委員の中からあったのですが、ところが合法的だという言葉が私にはわからない。実際において実力行使をしたために争議と同じような行為になっていることを合法的だと言うところに、私は問題があると思う。  こういつたことにつきましてなおいろいろとお尋ねしたいのでありますが、違反者の処分方法が公労法日本国有鉄道法とでは違うわけなんです。公労法では解雇一本です。あるいは一切の権利を失うということが書いてある。日本国有鉄道法によりますと解雇とか、停職とか、減給とか、戒告、訓告、こういった五種類に分れておる。これは現業に働いておる人々に対する処分方法であります。ところが非現業の国家、地方公務員に対しましては、もしもこういう実力行使みたいなことをやった場合には、三平以下の懲役または十万円以下の罰金という刑事上の処罰をやっている。この点の実質的な差はどこに求められるのか、どうも私には納得がいかない。この点大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  111. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 鉄道営業法並びに電気通信法、郵便法と、三つの現業に対する法律があるようでありますが、御指摘になりました鉄道営業法の問題は、明治三十三年に制定せられまして、今の時代とはあまり合わない内容を持っていると思いますから、近い機会にこの営業法というものは運輸省当局と相談いたしまして、総合的に改正する必要があると思っております。また一方は刑事罰であって一方は行政罰だという点――鉄道だけがああいうふうに軽くて行政罰にする、しかし電電と郵便の方は刑事罰にするような点の統一もやはりとらなければならぬ問題であると思っております。  現在処罰の問題に対しましては現行法によって処罰するより道がございませんから、その十八条に基いてやる以外に道はないと思っております。
  112. 八田貞義

    八田委員 一点だけ大蔵省の森永局長にお伺いしたいのですが、公社予算と申しますか、会計といったものにつきまして、公社は財政法第四十六条の適用を受けていないのですね。財政法の適用を受けているのはいろいろな役所ですが、この場合には、四半期ごとに予算使用の状況、国庫の状況、その他財政の状況について国会及び国民に報告しなければならないというふうに書いてあるのです。ところが財政法の適用を受けない公社は、全然こういつたことによって束縛を受けていないわけです。この点私は疑問を感じる。国民の利益を守る方法が、制度上において公社にあるのかどうかということを考えるのです。一般の民間企業団体は株主総会がありまして、株主を保護するようなことが行われている。ところが公社になりますと全然そういったことがない、財政法においてちっとも縛られていない。ここに私はアベック闘争というものが起ってくるのだろうと思う。アベック闘争とは一体何だということになる。勝手に使用者側と労働者側が自分に都合がいいようなことをお互いに話し合う、そうしてきたのが今日の状態だと思うのですが、一体こうしたことをこのままに意うっておいたのでは、たとえば基準内賃金でもって、今後操作していくのだといっても、基準外賃金の規定というものについて、さらに何か考えていかなければ問題が起ると思うのです。大蔵省から出される今度の補正予算につきましても、新聞紙上で見ますと、一体これでもって将来の賃金のふくらみをどうやって抑えていくのか、保障できるかというようなことも疑問に思ってくるわけであります。私は一体公社とは何ぞやという問題にまでも入っていかなければならぬと思うのです。そこで少くとも六カ月に一回くらいはバランス・シートを公社が公開するというようなことも当然必要になってくると思うのです。この点について森永局長のお考えを一つお漏らし願いたいと思うのです。
  113. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 現行の公社制度ができますときに――従来大蔵省が予算を編成いたしておりましたが、公社予算を作りまして、それを運輸大臣が調整される、大蔵大臣はその際に協議を受ける、そういう仕組みになったわけでございます。予算の編成がさようなことでございますので、他のいろいろな面におきまして、公社の自主性が非常に尊重せられた規定になっております。たとえば決算のような問題、ただいまお話がございましたような監査の問題、これらの問題につきましては大蔵大臣といたしましては全然関与できないような仕組みになっているわけでございます。この現状がいいか悪いかという問題につきましては、いろいろな見解があろうかと存じますが、私どもといたしましては公社はやはり全額政府出資金と申しますか、要するに国民から膨大な資産の信託を受けて事業の経常に当っておるわけでございますので、その業務運営につきまして、あえて大蔵省と申しませんが、やはり国民の代表であるところの国会なりないしは――常時いろいろな問題につきましては国会でこまかい点にわたる御監督をわずらわすわけにも参らぬと思いますが、常時の運営につきましては国民の利益を代表するような監督機構なり、運営機構なり、そういったものを将来考えていただく、さような余地が検討されなければならぬのじゃないか。ばく然とではございますが、そういったような方向で考えていかなければならぬのじゃないか。これは大きな問題でございますので、私大蔵省を代表して申し上げるわけには参りませんが、少くとも現在の気持といたしまして、私の私見といたしましては、ぜひそういうような方向で問題をお考えいただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  114. 八田貞義

    八田委員 それからもう一点でやめますが、われわれ国会といたしましては、国民の税金とか資産を守るような制度にこの公社を置くというふうにしなければならぬと思うのです。今日のような状態に野放しにしておったら国民の税金、国民の資産は守られません。一体公社の性格は何だというような私が疑問を持つほどに内容が非常にあいまいもことしたものです。ちっとも理論体系の上に立っていない。私は今後の公社のあり方につきましては、十分国民の税金とか国民の資産を守るような理論体系の上に立って公社制度を作り上げていかなければ、われわれは国民に対して済まぬ、こういうふうな気持を強く持つのでございます。なおいろいろとこの点につきましてもっと深く質問したいと思いまして用意して参ったのでありますが、時間が許されておりませんから、次にやらせていただくことにしまして、私の質問を保留しておきます。
  115. 藤本捨助

    藤本委員長 横山利秋君。
  116. 横山利秋

    ○横山委員 今の八田委員の続きになると思いますが、公社とは何ぞやということから始めたいと思います。公社とは何ぞや。公社とは国家機関ではない、公共企業体である。公共企業体と国家機関とはどこが違うか、これをまず大臣からお伺いいたします。
  117. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 私の観点は、公共企業体と国家機関はこまかく分析していけばいろいろあるけれども、やはり一つの国家機関の延長だと思っております。
  118. 横山利秋

    ○横山委員 いかなる法律見解から、何法によって国家機関の延長だとおっしゃるわけですか。
  119. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 私は今法律その他のことは考えておりません。ただ常識的にそう申し上げたのでありますが、しかしそれぞれの公共企業体の法規を見ても、私はやはり公共企業体というものは国家、公共のために尽すものでありますから、私的な利益を守るものではない。でありますから国家機関と同じである、その延長である、かように考えております。
  120. 横山利秋

    ○横山委員 大臣は企業をやっておいでになった方でありますから、私などよりは企業の豊富な経験を持っておられるわけでありますが、その企業のよさ、企業としての能率性というものを、公共性のある国鉄なり電通なりあるいは専売に能率性を付与せしめるという意味で公共企業体が生まれたのだと理解するのが正しいと思う。能率性を与えるためには、経営者にその才腕をふるわしめるということが必要であります。その意味において公共企業体には幾ばくかの自主性が与えられておるのでありますが、これをお認めになりますか。
  121. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 認めます。
  122. 横山利秋

    ○横山委員 そこで企業に与えられた自主性、その範囲はいろいろ法律上きめられておるわけであります。そこで問題は、公共企業体の賃金というものはいかにあるべきか、どういう形が望ましいか、大臣としての所見をお伺いしたい。
  123. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 お問いの趣旨がばく然といたしておりますから、具体的にお願いいたします。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 それでは具体的にお伺いいたします。三月十五日の社会労働委員会で、あなたは、営業しているのだから報奨的あるいは利潤配分的なことができるから、その方からまず改善したらどうかと思っているとおっしゃいました。この事実をお認めになりますか。
  125. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 認めます。
  126. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、この公共企業体の賃金が国家公務員の賃金のあり方と違うことを認めますか。
  127. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それは全部違うとは言いません。現業の事務的な面に携わっておる方は大体国家公務員と同じであります。それから現業員、乗務員というようなものでも、国家公務員の中にもそういうものがありましたならば、それは同じようなレベルにしたらよいと思います。ただ事務的なペンを持っている人と現業員とはおのずと違ってよいと思っております。
  128. 横山利秋

    ○横山委員 事務と、技術ないし労働度の強いものという意味においては、確かに電通や売専や国鉄のオフィスに働いておるデスクの職員と国家公務員のデスクに働いておる諸君とは同じ形態がしばしばあります。けれども、かりに全体として例をとってみますと、国鉄の機構の内容と、国家公務員の圧倒的な事務組織とは、賃金形態が違うことはあなたは認めますか。
  129. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 内容をもう少し御説明願いたいと思います。
  130. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは、営業をしておるのだから報奨的なあるいは利潤的な配分をすることができるから、こちらの方から賃金の改善をしたらどうかと考えておるとおっしゃった。このことは、仕事が国家公務員のあり方と違うのだから賃金も違うのだということをあなたは三月十五日におっしゃっておるのであります。従って賃金の体系、賃金の内容、賃金の額が総体的に言って公共企業体は違うということをあなたはお認めになるはずですが、いかがですか。
  131. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それは私は認めます。もう一つは、今あなたのお問いなさる最後の目標は、業績手当の問題だろうと思います。私は今日国鉄のやっておる業績手当はおもしろくないと思います。それは、ああいう全体の中からやる行き方ではいけない。ほんとうにその能率を上げるとするならば、それはやはりソ連のやっておるような考え方をやった方がよいと思います。その制度ができておらないからうまくいかない。私の考え方はそこに基本があるのです。この前言ったことの内容は、小さなノルマの中に働かせる、それはその人の能率を上げるのです。全体の業績手当というものは、お互いに依頼心が多くてほんとうのものにならない。予算の組み方において、業績のとれるような予算の組み方、そういう行き方ではいけないと私は言っておるのであって、私の報奨制度的な考え方は、これは小さなグループが働いて業績を上げるというところに重点があったのであります。
  132. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのおっしゃる小さなものの内容は、これは必然的に大きなものの内容になるわけですよ。あなたはそこで物事を限定しようとしていらっしゃるのですが、必然的に大きなものにもなるわけであります。ここで今私が言おうとしておるのは、国鉄とか専売とか電通とか政府法律をもって公共企業体として認めておるものと、国家公務員の賃金というものは――僕は高い安いを論じておるのではありませんよ。内容が違うというのです。  法制局に伺いますが、法律上、国家公務員の賃金はいかなる基準できめられるべきであるか、公共企業体の賃金はいかなる基準できめられるべきであるか、どこに違いがあるか、それを一つお答え願いたいと思います。
  133. 西村健次郎

    西村政府委員 公共企業体のうち、たとえば国鉄の職員につきましては、国鉄法の二十八条にあります。
  134. 横山利秋

    ○横山委員 読んで下さい。
  135. 西村健次郎

    西村政府委員 二十八条では、「職員の給与は、その職務の内容と責任に応ずるものでなければならない。」これが第一項でございます。第二項として、「職員の給与は、生計費並びに国家公務員及び民間事業の従事員における給与その他の条件を考慮して定めなければならない。」こういうことになっております。  国家公務員の方は、国家公務員法の六十二条によりますと、「職員の給与は、その官職の職務と責任に応じてこれをなす。」これが一項でございます。それから六十四条第二項におきましては、「俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、且つ、等級又は職級ごとに明確な俸給額の幅を定めていなければならない。」となっております。
  136. 横山利秋

    ○横山委員 今の二つは明らかにその意味合いが違うのであります。共通と見られる職務と責任というのは職階級の一つの理論であります。共通であります職務と責任についても、違った内容、違った業種については、おのずから違ってくるのは当りまえであります。従って私が言おうといたしておりますことは、大臣も大体想像がついたと思うのでありますが、大臣が三月十五日にここでおっしゃったことが、大体において正しい法律上の問題であります。私はあなたのことをそう否定しようとしてはいない。ところが現実に起ろうとしておることは、国家公務員の賃金と三公社の賃金をさや寄せさせるというところに問題が発展しようとしておることを私は今言おうとしておる。法律上がそうであるにかかわらず、また大臣がそう常識的に思っておられるにかかわらず、今起ろうとしておる事実は、そちらの方にいこうとしておる。それを大臣にお考え願いたかったのが私の質問の第一です。  第二番目は法制局にお伺いしますが、この三公社の賃金というものは、だれがきめるものでありますか。
  137. 西村健次郎

    西村政府委員 職員の給与は、かりに全電通の労働協約がないという場合におきましては、もちろん管理者がきめられるわけでございます。これは公労法によりまして団体交渉で認められておりますので、その賃金、労働条件これは協定によってきめられるということになっております。
  138. 横山利秋

    ○横山委員 三公社ばかりでなく、五現業についても、賃金は団体交渉及びその結果による労働協約並びに協定によってきめられる、こういうふうに理解してよろしいか。
  139. 西村健次郎

    西村政府委員 五現業もさようであろうと思います。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 三公社現業の労働者の賃金というものは、基本的に労働協約と協定によってきめられる。そうすると、労働協約、協定以下であった賃金規定法律というようなものは、その協約に対してどういう効果をもたらしますかわかりますか。協約が締結された場合それ以下の賃金規定というものはどういう状況になりますか。
  141. 西村健次郎

    西村政府委員 御質問趣旨が私ちょっとはっきりしないのでありますが、賃金規定あるいは内規みたいなものがありますれば、それと協定なり裁定との関係があります。これは協定なり裁定が優先するのじゃないかと思います。
  142. 横山利秋

    ○横山委員 ごもっともであります。私もそう考えておるのであります。協約、協定が三公社、五現業の賃金を決定する要素である、ないしは裁定というものが最も優先する効力を持つものであって、それ以下の賃金規定なりそれ以下のものというものは効力を結果的に失う。そこで失わさせるためにはどうしたらいいかということであります。協定がされたならば、労働者は賃金に対する権利を持つ、政府債務を持つ。債務を履行するために諸般の手続が必要である。これは政府内部の問題である。政府の内部に諸般の手続がとられないとしたところで、労働者の債権は牢固として動かすべからざるものである。こう理解してよろしいか。
  143. 西村健次郎

    西村政府委員 御質問趣旨がよくわからないので、私聞き違えておるのかもしれませんが、その場合において協定なりあるいは裁定というものが、どういう内容であるかということと関連しないと、一がいに抽象的なものでは御答弁しにくいと思います。
  144. 横山利秋

    ○横山委員 具体的な例を出してもいいのですが、私は別にあなたにかまをかけるつもりで聞いておるのでは毛頭ありません。一般的に立法的な見解を聞いておるのです。たとえば電通労働者と電通公社とが、賃金について協定をした。協定して調印したときから労働者はそれに対する債権を持つ。公社はそれに対する債務を持つ。公社の貸金規定がそれよりも以下であるならば、公社は賃金規定を改めなければならぬ。それからもし予算化したとするならば、予算措置政府部内の問題として講じなければならぬ。これは公社政府との関係であって、労働者は締結をし調印をした瞬間から動かすべからざる債権を持つ、こういうことであります。
  145. 西村健次郎

    西村政府委員 最後の点につきましては、予算上または資金上不可能なものにつきましては効力を発生いたしません。これはそれについて予算上可能となった部分についてのみであります。従ってその点については、今横山委員と私は見解を異にしますが、ともかく効力が発生したとしました場合に、たとえば予算措置がとられまして、不可能なものが可能になった後におきまして、それに応じた賃金規定というものがあれば、それを改訂することは当然必要だと思います。
  146. 横山利秋

    ○横山委員 私とあなたの見解一致しましたことは、協約、協定によって公共企業体三公社現業の質金は確定する。債務と債権がそこに生ずる。そして自余の問題は予算上資金上不可能な問題については別としても、あと政府部内――大臣のおっしゃる政府機関の延長としての、公社を含んでその内部の問題である。労働者は協約、協定を調印した瞬間から債権を持つ。ここまで確認をされました。  その次に生じた問題は、現に今第一次確定分だとか、第二次確定分とか、俗称やみ賃金の問題があるが、それは調印されて実行をされておるもの、しかもそれらは今やみだとか何とか言うけれども、経営者のそのときの立場を客観的に論ずるならば、これは資金上予算上不可能でないから支払ったのです。そういうことなんです。資金上予算上不可能でないから支払って、そして今日に至っておる。しかりとするならば、その確定賃金というものは将来にわたって労働者の債権として残っておる、こういう理解を私はいたしておるがどうかというのです。
  147. 西村健次郎

    西村政府委員 公社当局と組合とが協定をいたした場合におきまして、それが予算上可能であれば、これは協定として全く効力を発生するわけであります。それは、その地位を、組合といいますか、労働者が取得するわけであります。それがはっきり調印、はっきりした約束で締結されておるというものであれば、そのものはもちろんそのままずっと持続するものであると思います。ただ給与の性質によって違います。  それから今度の、これは私申し上げる筋でありませんけれども、その仲裁裁定の内容というものは、またおのずからこれは別の問題であると思います。
  148. 横山利秋

    ○横山委員 そこで大臣にお伺いいたしたいのですが、先ほど大臣が引用された公共企業体労働委員会委員長あての往復文書ですね。大臣はこれしか引用されぬのです。私はこれについてもあなたの解釈と見解の相違がある。しかしもう一つ国鉄の十河総裁から仲裁委員会委員長である藤林敬三氏にあてた文書というものをあなたが引用されぬのはどういうわけか不思議でならぬのであります。ここで言っておりますのは、まず第一に十河総裁は、「第2項については、千二百円をそのまま現行の実行単価の上に積み上げられるものではないとの主旨に解されるが、次の額は、この中から差し引かれるべきものかどうか。(1)昭和二十九年度調停案にもとづいて二百八十円の給与是正を実施した額、(2)昭和三十年度の調停案にもとづいて、定期昇給を増額実施した額」この二つは千二百円の中から差し引くかいなかという質問に対して、藤林委員長からその十河総裁あての返信によれば、「質問の(1)及び(2)の額は予算単価と実行単価の格差の一部を形成したものであり、かつ、理由二の第一に述べた趣旨に基き一応、やむを得ざるものと認められるものである。しかしてこれらに基く予算単価と実行単価との格差の問題は、理由三の後段に述べた趣旨に基き将来の問題として処置するべきものである。」と言っておるのであります。従ってこの二つの額、合計いたしますと五百二十円ですか、これは国鉄ばかりでなく全三公社現業にわたっての問題と同性質であります。これに対して藤林委員長は一応やむを得ざるものと認める、そうしてこれは「理由三の後段に述べた趣旨に基き将来の問題として処置するべきものである。」と言っておるのであります。私は今あなたにその御見解を聞く前に、これについてどう思うかという前に、一言あなたに私は申し上げたいことがある。それはどういうことかというと、今次春闘を通じての労働省のあり方であり立場であります。非常にあなたがむずかしい立場に立たれて、かつては予算のいまだ国会において審議をしておる最中に、あなたは勇敢に、もし裁定が出たら補正予算を出す、こういうことをおっしゃいました。あの問題は閣議で問題になりましたけれども、しかし率直に言って私どもはあなたに敬意を表したのであります。あなたの純粋な立場、労働大臣としての立場に敬意を払ったものであります。しかし今やもう一度問題がはね返ってきました。あなたは先ほど岸・鈴木会談については完全実施とは言わない、こうおっしゃった。裁定を尊重するとおっしゃった。それは言葉の魔術であります。もし言葉の魔術でなかったらあなたは完全実施ということとそれから尊重するということが今の補正予算の中で内容が違うとおっしゃるのでありましょうか。私は補正予算の内容について議論がありますけれども、少くともあなたは、尊重するということは完全実施だと確信をしておられると思うのであります。もしそうでなかったら御回答願いたいのでありますが、少くともそのような立場できておって、今この二つの往復文書をめぐって、閣内において、あるいは政府機関内において、論争をしておることも私は承知をしておるのであります。あなたの立場は、労働者のサービス省であり、あるいは仲裁委員会なり調停委員会の権威を守る立場であり、あるいは今日の政府部内における労働省の立場は、公労法を守るというのが立場であります。公労法こそ譲るべからざる一線である。どんなに大蔵省が言おうが、あるいは運輸省が言おうが、労働省というものは公労法を守る省である。それによって労働省を守る立場にある。こういった立場にあることをあなたはぜひともこの際堅持してもらいたい。この御答弁をなさるにあたって私がこういうことを言うゆえんのものは、なるほど政府に対する回答文、労働次官に対する回答文は、考え方の相違があるでありましょう。しかしその回答文であったとして、なおかつ国鉄に対して与えられた回答文と同文のものである、同内容であると解釈するにやぶさかではありませんではないか。ここで見解が分れて、しかもこちらに明確な文書があるとするならば、なぜ労働大臣としてきぜんたる立場をおとりにならぬか、私はそう思うのであります。この点について前段を申し上げましたが、そういう私の心境に対して御返事を願いたい。
  149. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 いろいろ労働大衆に対する真実のある御発言でありますから敬意を表して私はお聞きしたのでありますが、岸・鈴本会議の場合は、何であろうと、完全実施という言葉は使わなかったから使わなかったと言っただけでありまして、完全実施誠意のある尊重というのとの差はどうか、われわれは誠意を持ってそれを尊重するという立場を今まで堅持しました。今後も予算その他の問題に対しましても、政府の態度がそういうことでありますから、財務当局におきましても、予算編成に当っても誠意を持って措置をするという立場において編成されたものと思っております。  それから藤林さんと国鉄総裁との間の往復文書を私は見ておりません。ただ先ほど申し上げましたのは、そういうような文書の往復をされたということは聞きました。それでまだ不十分でありますから、さらにそのしに、われわれが関係各省の意向を体して仲裁委員会に正式に文書をもって聞きましたのが先ほどのものでありますから、それは一番最後に聞いたものでありますから、すべての従来各方面に回答せられたものを包含してのものであると確信いたしまして予算編成をしたのでございます。
  150. 横山利秋

    ○横山委員 少し私も声が高くなったかもしれません。これは私の気持に免じて許してもらいたいのです。大臣。あなたが今おっしゃった完全実施ということと、それから誠意を持って尊重するという違いが、今度の補正予算の中では同一であるかいなかという答弁を私は求めておるのであります。今度の補正予算は、裁定完全実施に該当するかいなかということです。これが第一。  それから第二番目に御答弁を求めたことは、なるほど政府の方があとから質問してあとから回答を受けた。しかしあなたがお読みになったように、この政府に対する回答というものは、非常に抽象的であります。相当程度の現実的給与改善措置を企図しているものであるから云々、右の趣旨を没却しないよう十分配慮願いたいと書いてある。しかもこの文章というものは、あなたの方が第二次確定分を質問したにかかわらず、一般的に千二百円から何を引くかについて御配慮願いたいと言っているのであります。千二百円から引く、引かぬという論議は、第一次確定分、第二次確定分、いろいろありますよ。あなたの方は第二次について求めておるのに、これは一次も二次も含んで御配慮願いたいと言っているところに注目されなければならぬ。そこで問題は、この政府に対する回答というものは、非常に抽象的だということは、あなたはお考えでありましょう。さればこそ、政府部内においてこれをめぐって論争が行われたのであります。片や五百二十円も引くべきだという議論と、片や引くべきでないという議論があった。今もなおかつ続けられておるじゃありませんか。そのときにここにもう一つ、かりに時日が前であっても、これがあとから出たから消えたものではありません。厳として存在しておる。しかも明確な文章であります。これは五百二十円は将来の問題として考えろ、今日としては予算編成をしろという立場にあるのです。そこで私は、大臣公労法を守り、労働者のサービス省としてのきぜんたる態度をとってもらいたいというゆえんがそこにあるわけであります。そういう意味でもう一回御答弁を願います。
  151. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 何べん答弁いたしましても同じことでありますが、私どもは誠意をもって尊重し、予算編成をいたしまして、月曜日に提案するつもりでおります。文書については、先ほど申しました通りであります。
  152. 横山利秋

    ○横山委員 まあ、むずかしい質問ではありましょうけれども、それでは法制局にもう一度お伺いいたしましょう。  裁定が出たとする。その出た裁定に必要な金額は幾らかということを判断をする機関はどこでありますか。
  153. 西村健次郎

    西村政府委員 問題は、それによって所要となる財源が本来すぐ明確にわかるのが好ましいだろうと思いますが、今度の場合につきましては、そこに多少もやもやしたものがあった。さればこそ、先ほど来労働大臣のおっしゃったように、その意思を聞いて、仲裁委員会意思をはっきりして、それに基いて、必要なものはこれだけである、こういうふうに政府としてきめたもの、こういうふうに考えております。
  154. 横山利秋

    ○横山委員 あなたに政府見解を聞いているのじゃない、法制局としての法律見解を聞いているんですよ。もう一ぺん申しますが、裁定に必要な金額は幾らかということを最終的にきめるのはだれかというのであります。あなたの答弁によれば、今回の裁定については、もやもやしているから、政府が聞いて、意見を確かめてやったんだとおっしゃるならば、裁定の金額を最終的にきめる機関というものは裁定した方の仲裁委員会である、こういうふうに判断してよろしいか。
  155. 西村健次郎

    西村政府委員 それは予算を作成する権限のあるもの、これは内閣であろうと思います。
  156. 横山利秋

    ○横山委員 そういうことを聞いているのじゃありませんよ。裁定が一人当り千二百円なら千二百円というものが出た。その総額は、たとえば単純に十二カ月かけて予算定員をかければ、自動的にはじき出される。けれども、そこに疑問があった場合に、これを法律上はだれが判断するかということであります。今の公労法なりその他の法律上、裁定の疑義なり裁定の必要金額をだれが一体判断するのが法律的に正しいかと言っているのです。
  157. 西村健次郎

    西村政府委員 裁定そのものによって、それは一がいに言えないだろうと思います。と申しますのは、本来裁定というのは、当事者間における権利義務を確定すべきものであり、それがはっきりしていないところに疑問があるわけでありますから、それについては第一義的にはおそらく当事者間であろうと思います。それは裁定のたしか四項あたりに書いてあると思います。
  158. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのおっしゃることも認めます。たとえば今度の裁定を例に引いて見ましょう。今度の裁定は千二百円という数字が出て、そうしてそこから両者協議の上決定せよ、こういうように言っている。だからほんとうならば、この裁定主文に基いて、両者協議をして、そうして算出をされた総額というものが裁定実施に必要な予算である、こうなりますね。両者の意見がまとまらない、わからない場合には、仲裁裁定はこの解決について協力を惜しまないと言っておるのでありますから、仲裁委員会に聞く。政府もわからなければ聞くし、みんな聞く。そうすると結局最終的にきめるのは、当事者か、あるいは仲裁委員会であるか、私の言っているのはこういうことなんです。私の言っていることに間違いがあるかと言って聞いているのです。
  159. 西村健次郎

    西村政府委員 裁定そのものと、その裁定実施するための予算の問題、これは観念的には別のものじゃないかと思います。と申しますのは、裁定で今度のように当事者で協議して幾ら要るかわからない、これがきまるといたします。しかし裁定実施する場合においてどれだけ予算措置として必要かということは、これは予算を編成する権限のあるところが持っておるわけです。政府としては予算提出する必要があります。それに対してその額をきめる必要がありますので、仲裁委員会の意向も聞いたわけであります。観念的には両者は違うものであります。実際問題としてその間にそごはないようにしなければならないことはもちろんであります。
  160. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのおっしゃるのはどうもはっきりしないのです。私はすなおに聞いておるんですから……。簡単な理論でいきますと、たとえば裁定が千二百円電通の労働者にやれと出た。あとはそれでもう疑義がなければ、千二百かける十二カ月、かける人員、かけるはね返りとすれば、すぐに自動的に出るわけですね。それが人数について疑問があったとするならば、これは仲裁委員会の問題ではない。公社が科学的にやっておるかどうかという問題です。しかしそれは自動的に出るはずです。そうすると、争いのあった場合に、最終的にこれはこうだといってきめる法律上の権限のあるものは仲裁委員会ではないか。出した本人でなければその真意はわからぬではないか。これをほかの者がおかしなことを言うのはおかしいではないか、こういうことですよ。
  161. 西村健次郎

    西村政府委員 私が先ほどから申しておる趣旨は、その裁定の内容自体を政府がきめるということを申しておるわけではありません。その裁定実施する場合に財源が幾ら要るかということ、それで予算をきめる必要がある。その部分を政府がきめるといっても、これは極端に申しますと、裁定が基準内賃金プラス千二百円の範囲内において両当事者が協議して定める――これは実際とそういうことはありませんけれども、かりにですね。政府が言った予算より当事者の協議の方が低くなるかもしれません。あるいは高くなるかもしれません。それは理論的の話です。その場合に低くなればその分が過剰な予算だということになります。そういうことがあってはおかしいので、先ほど労働大臣からもおっしゃいましたように、裁定委員会のこの裁定一項の意図するところを重ねて照会したということであると思います。
  162. 横山利秋

    ○横山委員 両者があわせて照会するゆえんのものは、出した者にして初めてどういうことであるかということがわかる。そういうことをあなたも言っておられる。従って私の言う裁定の疑義のある場合においては、これを最終的には仲裁委員会がきめるということは、あなたも逆説的に裏書きしていらっしゃると思う。そこで両者が質問した。その質問をした内容というものは、片一方にはきわめて明確な話である。片一方には、その明確なものを含む抽象的なものが出ているわけであります。そこで大臣、私の質疑応答の中でおわかりになったと思うのでありますが、この明確なものが出ておるのに、明確なものをけるといいますか、それは認めぬといいますか、こういうことは仲裁委員会見解に対してどう思いますか。仲裁委員会片一方の文書で、丑百二十円は引いてはならぬ、こう言っておるのでありますが、あなたは今その一部を引こうとしておることについてどう思いますか。
  163. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 先ほど申しましたように、仲裁委員会からわれわれに最終的に文書をもって回答せられましたものの中には、各所の問い合せに出したものを包含されて、最終的なものであると思いますから、われわれはそれに基いて予算措置をとったのであります。
  164. 横山利秋

    ○横山委員 あなたのおっしゃるように、これは包含されて、仲裁委員会一つの明確なる根拠として出ている。そこで私はあなたにさっきから言っておるのです。大蔵省の立場とあなたの立場とはおのずから違おうと言うのです。それから先ほど言ったように、労働者と公社とが協定をし、実行してきたものを、これは結果的に没却することになるのではないかということです。労使双方が団体交渉をし、そうして締結したものが、結果的に没却される格好になるのではないか。かりに今五百二十円の三分の一を認めるといたしましよう。しかし新聞によれば、来年はまた削る、再来年はまた削るといっているのです。三年かかって労使双方が妥結をした協定、協約を無視しようとしておるではありませんか。あなたは公労法の忠実な擁護者であります。公労法によって成立をした協定と協約が今ここで没却されようとしておるのに、あなたが平然としておられるのは、私は不思議でたまらないのですが、どうですか。
  165. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 私は労働者の立場を擁護しております。しかしながら間違ったものを直すことにはやぶさかでないと思う。同時に、仲裁裁定は、そういう不合理な予算――実行予算予算単価が違うようなことは順次直してもらいたいといっておる。それを何年間に直すということは明示してないが、しかしながらあとで問い合したものによると、われわれのやったことが正当な行為だと思っています。
  166. 横山利秋

    ○横山委員 正当な行為であるかいなかということは、法律上の立法的な立場から判断されなければなりません。常識ということも大事でありますが、今われわれがよって立っておるこの国会の社会労働委員会において、あなたとわれわれとが論争をしている間は、公労法という基盤、共通のべースによって議論をしておるのであります。その公労法の許された団体交渉によって生じた協定、協約というものが、三年間かかって予算上これを帳消しにするという格好になる。あなたはその事実をお認めになって御答弁なさっておるのでありましようか。  もう一ぺん言いますよ。五百二十円というものは千二百円から差し引いてはならぬのである。将来の問題として処置すべきだ。将来の問題としていかに処置すべきかについては、また見解の相違があるとは思いますが、さしあたり今日の問題としては、千二百円から差し引いてはならぬのであるといっておるのに、三分の一差し引いて、来年また三分の一差し引いて、再来年また三分の一差し引こうとしておるから、三年間かかってこの労使の協定、協約というものはじゅうりんされようとしているではないかと言っているのです。あなたは、それを、法律上認められた権限によって成立したものは違法だとはおっしゃりますまい。一歩譲って、これは違法ではないけれども、しかし好ましからざるものだという見解を持っていられるようであります。しかし好ましいか好ましくないかということは労使がきめたものであります。いわんや、それは労働者に責任を負わせるしかけにはなっておらぬ。これが締結されたからといって、労働者に対して責任を負わせるわけにいかぬのであります。もしも百歩譲って、責任を負わせるならば、経営者でありましょう。その経営者の責任を追及するならまだしも、労働者に責任を負わせて、三年間かかってこの協定をなくそうとする立場にあなたが同調されるということは、公労法の立場からいって私は考えられないというのです。そういう意味で、あなたの先ほどからの答弁によっても、私の言うことも大体わかって、なおかつあなたとしては言うに言えないところがあろうかと思うのですけれども、これはどうしても労働大臣に守ってもらわなければならぬところですよ。どうしてもこれはがんばってもらわなければならないところです。そこにいらっしゃる労働省の人でさえ、法律家ですから、大臣よりも先に気がついておられると思うのです。労働省が今これを守らずして、労働省の存在価値があるかと私は言いたいのです。わずか百九十円かそこらの問題ですよ。けれども、これによって公労法はじゅうりんされようとしているではありませんか。しかもこの問題は、労働者に責任を負わす問題ではないじゃありませんか。経営者に責任がある問題である。もしあるとするならば、その経営者に責任を負わせずに、労働者に五百二十円の責任を負わせて、三年間かかってそれを帳消しにしてしまうことに対して、あなたは矛盾をお考えにならないであろうか、どうでしょう。
  167. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 何べん言っても同じですよ。あなたの考え方がおかしいのですよ。
  168. 横山利秋

    ○横山委員 どうしてですか。
  169. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 おかしいではありませんか。仲裁がそうせよといっておるのだから、仲裁のいうことは守っておるのですよ。千二百円というものは予算単価を積み上げればよいというのです。そこで六百円をまず引いた残りのものも予算単価に近づけるといっておる。ですから仲裁のいう通りこっちもやっておるのですよ。あなたの今の話は仲裁委員会におっしゃったらよい。僕は仲裁を忠実に守っているのですよ。
  170. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは何を根拠でそういうことをおっしゃるのですか。あなたのさっきからたてにとっておられる仲裁委員会の文書をもう一ぺん熟読翫味してみましょう。この文書の中で、六百円をまるまる引け、それから五百二十円の三分の一引けということはいうておらぬ。かりに百歩譲っても、この際全部引かないでいいという解釈もとってとれぬことはない、六百円だけ引けという解釈もしてできぬことはない。そうでしょう、問題はそこですよ。あなたは千二百円まるまるではない、労働者の手取りの増加はまるまるではないぞということをたてにとっておられる。しかし千二百円から六百円引くか、さらに五百二十円の三分の一を引くか、全部引くか、これについては全部を包含しておるでしょう。三分の一を引くという妥当性、科学的根拠というものはこの文書の中にないではありませんか。そこでそれに対してもう一つ裏づけした文書がある。これは五百二十円引いてはならぬということをいっておるのですよ。そういう立場にあるとするならば、あなたはなぜこちらの方の文書を断固として主張できないか。あなたはこれはまだごらんになっておらぬとおっしゃるのか。まだごらんにならなければ、ここにありますから、どうか見て下さい。あなたは御存じないとは私は言わせませんよ。今労働大臣として、こちらの文書がいかようにも解釈されるならば、なぜこちらの文書があなたのよって立つ基盤にならぬかといっておるのです。政府に対して与えられた文書というものは、五百二十円の三分の一を引けと明確にいっておるなら、私はこうも主張しませんよ。けれども、これはいろいろな引き方があるから、配慮願いたいといっておる。こちらの方には五百二十円は引いてはならぬといっておる。だから、あなたの、五百二十円の三分の一を引くことが正しいということの論拠がわからぬ。これはわかる、わからぬの問題ではない。実はあなたは、私の言っておることは百も承知の上で一応そう言わざるを得ぬということだと、私は理解をしたい。しかしながら、あなたがしいてどうしても私の言うのが間違っておるとおっしゃるならば、いつまでもこの論争は続きます。断じて私は譲りませんが、いかがですか。
  171. 中西實

    中西政府委員 実はこの仲裁の主文から理由をお読みになりまして、いろいろと疑問があるでしょう、われわれもいろいろと疑問を持ったわけであります。そこで私は国鉄総裁から仲裁委員長に出されました質問書、それに対する答え、これは承知いたしております。この主文の一におきまして、ここに明らかに、基準内賃金は昭和三十二年度基準内予算単価について千二百円を増額した金額の範囲内で、労使協議してきめろ、こうあります。これにつきまして、国鉄総裁からも、第一項におきまして、昭和三十二年予算において一人平均千二百円増額し、その増額した金額の範囲内で労使協議の上決定実施する等の意味であるか、または別の意味であるか、こういう質問に対しまして、その通りだ、別段そのほかの意味はない、こういっておるのです。この点と、先ほど御主張になっております例の二十九年度調停案に基く二百八十円、それから三十年度調停案に基く定期昇給の完全実施、これはやむを得ないと認められるということ、この点とどう結びつけて考えるか、私らどうも質問一、四、これの答え、これが相矛盾しておるような感じがいたしまして、どうにも理解できなかったのであります。そこで問題は、あるいは二百八十円その他につきまして労使協定があったのかもしれません。私その事実は知りませんが、おそらくあったのでございましょう。そのことを否定しておるのではございません。しかしながら今回予算単価としまして千二百円増額したこの機会に、やはりなるたけ予算単価と実行単価の格差をなくすることが望ましい、これは理由の三にも書いてございます。そこで問題は将来という問題でございます。実はこの点につきまして、国鉄総裁と仲裁委員、長との往復文書でもよくわからないし、そもそも仲裁の主文一項、二項、それから理由一、二、三、この関係がはっきりしないというので、二週間ほど前の日曜日でございましたが、運輸、郵政、労働三次官が藤林委員長、中山委員、冨樫委員に対しましてじかに会いましてこの点を確かめたのであります。ところがその際に、将来というのはやはり現在も含めての将来だ、従って現在はそのままという意味ではないんだということははっきりとお答えがございました。そこで、そういうふうにしまして第一項をずっと読んでいきますと、現在の予算単価に千二百円加える、その中から、例の第一項確定分はこれは織り込み済みだ、これは異論のないところでございます。それから昇給のことも考えなければならない。それから例の国鉄でいいますれば五百二十円の格差分、これもまあ入ってしまう、ということになりますとなくなってしまうじゃないか、よく言われます八十円しか余らないじゃないか、そんなことでいいのですかと聞きましたところが、それはそうじゃないんだ。そこで、それならもう一ぺんお尋ねしようというので、先ほど来大臣が申されております文書になったわけでございます。そうしましたところが、それは先ほど文書でお読みになりましたように、やはりこの際に相当程度の現実的給与改善措置を企図しているものだ、従って実行単価と予算単価の格差縮小措置、さらにまた財源措置、そういう場合には相当の給与改善が結果として出されるように御配慮願いたい、こういうことなんです。従ってどの程度が相当額か、その点は当事者、当局にまかされたのかと聞きましたところが、そうだというのであります。仲裁自体の内容の最終的解釈、これは仲裁委員会でございます。しかしながら金額につきましては、今申し上げましたごとく相当額上るように配慮しろというだけでございます。従ってこの点は先ほど来大臣が言われておりますように、配慮した、こういう筋合いになるんじゃなかろうか、こう思っております。
  172. 横山利秋

    ○横山委員 日ごろ論理的な中西さんに似合わない穏やかな持って回ったような御意見であります。そういうところに私は中西さんもそこはかとなき、何か腹の中に持っておられるような気がしてなりません。要は大臣、この問題は失礼な言い方ですけれども、労働省にがんばってもらわなければならぬことだという私の言葉に尽きるのです。私は理屈の問題はありますが、今ここに中西さんのような言い方もあるけれども、はっきりした文書を仲裁委員から出している。あて先はそれは国鉄だ、けれども国鉄に出した手紙だからおれは知らぬとはあなたに言わせません。私は法律的な見解やあるいはイデオロギーの問題を抜き去って、あなたと共通のベースにすわって、労働省としては今がんばってもらわなければならぬところは何か、これは大きく言えば公労法である。この公労法によって生じた協約、協定が、仲裁委員会の文書で保障されているにかかわらず、三年間かかってこれが烏有に帰そうとしていることに対して、あなたにがんばってもらわなければならぬところである。これが私のあなたと共通のべースに立った立場における言い方でございます。そうでない立場というものはあります。ありますけれども、特にあなたに理解してもらわなければならぬ。今私の聞くところによればあなたも一応はがんばられたそうです。けれども納采としては補正予算はきまったそうです。けれどもまだ国会審議は終っていませんし、方法はいろいろあろうかと思います。そこで私が今までるる申し上げました点について最終的に大臣に御所見を伺いたいというのです。私の気持を十分にくんで一つお返事をお願いしたい。
  173. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 労働省のために非常な御心配になって叫んでおられる気持は私はよくわかります。またわれわれもできるだけよくしたいと思うのでありますけれども、法律上とおっしゃるけれども、法律仲裁裁定は千二百円の中にすべてを見れと言っておるのです。でありますから先ほどもおっしゃったように、あれも引きこれも引きずれば八十円しかない、八十円だけ上げたというのではこう大騒ぎしてもどうも困るじゃないかということが私の言い分なんです。そこでここまでひっぱってきたのです。これ以上金額五百二十円払えということは、この文書及び裁定の前に対して何ぼ心臓が強くても言いかねて、言ったけれどもできなかった。でありますから三分の一控除することについては一つ承認願ってわれわれに御協力願いたいと思っております。
  174. 横山利秋

    ○横山委員 三分の一の問題ではありませんよ。来年はさらにその三分の一が減りますよ。再来年はほうっておけばさらに三分の一が減りますよ。五百二十円まるまるなくなるということを私は心配しているのです。同時に公労法における団体交渉権がここでくずれるということを私は言っているのですよ。単に金額の問題ではありませんよ。あなたががんばられたことは、私は知らぬわけではありません。しかし譲るべからざる一線というものが労働省にあるはずだということを言いたいのです。金額の問題よりも法律によって保障された権利がここで剥奪をされるのにあなたは黙って見ているかというのです。この根拠となるものは、さっきから言ったように、この二つの往復文書というものをよく読んでからもう一ぺん考えてもらいたい。私の言うことがおわかりにならなければ何回でも申しますけれども、そこが問題ですよ。私はさしあたりは少くとも五百二十円をまるまる見るべきだ、見る論拠というものはここにある。厳として仲裁委員会が公式文書をもって出しているではないか。それをあなたががんばり切れないはずがない。労働省が総力をあげて――公労法による協定、協約というものはかりに好ましいものでないにしても、労働者としては債権として持っているものじゃないか。責任があるとすれば経営者じゃないか。それは百も承知しておりながら労働省がこれを守り切れぬというはずはないじゃないか。運輸省は公労法の立場がない、しかし労働省は公労法の守り番犬だ。そこでそれがなぜ主張し通せないか、その論理というものが私にはどうにもわからない。あなたが逆説的に八十円だから気の毒だ、こういう論拠はわかる。しかしその論拠の中でなぜこれが主張できないか、なぜこれで断固たる労働省としての態度がとれないか、それが私にはわからないのです。この点について私はきょうあなたに対して最終的なお返事を求めるのも無理かとも思います。だからもう一ぺん機会をあらためて、この点についてあなたに再度あらゆる角度から御質問をいたしますから、その間にぜひとももう一ぺんの御検討を願わなければならぬ、と思う。  次に今度は大蔵省の森永さんにお伺いいたしますけれども、予算単価というものはいかなる法律的な根拠を持っていますか。
  175. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 予算の積算の基礎でございます。
  176. 横山利秋

    ○横山委員 予算の積算の基礎というものは法律的な拘束力をだれかに負わしていますか。
  177. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 それ自身は予算の積算の基礎でございますが、たとえば公務員の場合には、公務員給与法が別にございまして、その予算単価で計算した総額の範囲内で給与予算が執行できるような法律的な制度がきめられておるわけです。予算の単価それ自身の拘束力を云々するつもりはございませんが、それに見合うような給与制度が確立されておるということが言えるだろうと思いますが、公社の場合にそれがどうか、これは公社法に、公社予算、給与準則をきめなければならぬ、その給与準則はこの給与総額の範囲内で執行できるものでなくちゃならぬという規定があるわけでございます。その意味で給与準則の内容は給与総額の拘束を受ける。従ってその積算の基礎である予算単価についても間接的にではございますがやはり拘束力で出てくる、拘束力というのは法律的な意味ではございません。今申し上げましたような意味での制約になるかと思います。
  178. 横山利秋

    ○横山委員 法律的な拘束はないけれども、抽象的な、何と申しますか一つの規範である、こう理解して差しつかえございませんか。
  179. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 予算というものは、大体その予算単価そのものの法的な拘束力はどの予算についてもございませんが、しかし政府がその予算を組みましたゆえんのものは、これこれの中にこれこれの数量をかけてこれだけの予算になる、こういうことでございますので、予算の拘束力と申しますと、これは決して法律上のものではありませんが、予算単価を著しく上回らないようにという要請はそこに含まれておると思います。
  180. 横山利秋

    ○横山委員 たとえば予算の単価で、何を例にとったらいいでありましょうか。たとえば石炭があります。石炭の予算単価を六千円とする。それによって予算が算出される。しかしその予算単価で国鉄なりあるいは通産省が石炭をそのままで買うということはばかげたことであります。何とかして六千円よりも安く買おうとする。だから四千円で買ったとする場合がある。あるいは高く買わざるを得ぬ、八千円で買ったとする、これに対する拘束はありますか。
  181. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 拘束とおっしゃる意味の問題ですが、予算というものはある単価と数量を基礎にして計算しておるわけでございます。それが実行上一銭一厘も違ってはいかぬということではありません。しかし六千円の単価で五万トンという場合に一万円も――そういうことはないかもしれませんが、一万円か、八千円とか九千円とかいうような石炭を買わされて、しかも数量が確保できなかったという場合にはその予算執行が当初の予算意味するところに対して適当か不適当かという問題はあり得ると思います。
  182. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると予算単価というものは一つの基準であって、それが実行される場合においてはそれぞれの出納責任者なりあるいは経営者なりの自主性がそこで認められておる、こう理解して差しつかえございませんか。
  183. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 先ほど来申し上げておりますように、予算そのものの趣旨にできるだけ忠実に予算を実行する義務を負っておると思いますが、これはしかし法律と違いまして石炭を買う場合には何円でなくちゃならぬ。もしそれに違反すれば会計違反の責任が生ずる、かような問題ではございません。予算趣旨ができるだけ忠実にそれに即するように実施しなければならぬという政治的と申しますか、経済的と申しますか、そういう一つのメルクマールにはなるわけでございます。なおお断わり申し上げますが、この予算はすべて国会から支出の限度を御承認いただいておるわけでございますから、安く買った場合には、これは会計検査院等からしかられるようなことはございません。むしろほめられるというような、そういった最高限度的な制約だけをお考えいただいたらいいかと思います。
  184. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますと、ここに予算単価というものは、きまっている予算単価通りに石炭を買うにしたところで、あるいは賃金を払うにしたところで、予算単価通りになるものではないということはもうしろうとの議論でありまして、明確であります。そこでたとえば三公社現業は先ほど法制局部長と話し合いをいたしましたように、賃金については協約、協定によって、そこで最終的な債権債務関係が生ずる。そこで債権債務関係が生じたとしたならば、これは大蔵省としてはその協約、協定を認めないということは予算編成上にあり得ることですか。
  185. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 当事者間において賃金協定を結ばれる場合は、先ほども申し上げました公社法にその規定がございまして、賃金規定ですか、あるいは給与準則というようなものにこれは成文化されていようがいまいが、そういう何らかの規定、規約で払われるわけでございますが、その規約には公社法の規定に従いまして、やはりあくまでも国会から承認を願った給与予算の範囲内で実行せられるという、そういう性質のものでなければならぬわけでございます。そういう現行の制度の上に立ちます場合に、私どもといたしましては今回のように予算上資金上不可能なりとして政府に財源措置を求められました場合以外は、やはり現在の予算総額に対しまして適正なる昇給原資を見ていく。それでその協定なり約束なりの問題はすべて実行せられるという、そういう前提に立って予算を編成いたしております。その場合に一々の公社現業につきましてはどういう約束であるか、これは私ども一々これを顧慮しているという権限もございませんし、また時間的余裕もございません。それを一々つき合って予算編成をしておりましたのでは、これは全く迷路に陥るわけでございます。私どもが予算編成に臨む態度としては、公社当局は賃金を払うに際しましては、あくまでもこの国会から承認をされた給与総額の範囲内で実行できるような協定をし、準則をきめて実行しておられる、そういう前提に立って予算の編成に臨んでおるわけでございます。
  186. 横山利秋

    ○横山委員 今のお話ですけれども、予算上資金上不可能かいなかという判断は、言うまでもなくその当該年度内においてですね。
  187. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 予算上資金上不可能であるかどうかというのは、むろん当該年度内でございますが、公社当局が翌年度に非常に予算の増額を及ぼして、非常に大きな金額の給与費の増加を来たすような給与準則を結ばれることは、それは完全に自由だ、そういう法律趣旨ではないと思っております。
  188. 横山利秋

    ○横山委員 それは大蔵省的見解です。法制局にお伺いしますが、予算上資金上不可能であるかいなかという議論は、少くとも法律上はその年度内に予算上資金上不可能であるかという議論であると思う。もしも森永さんのような言い方をすれば、十年後、二十年後予算上不可能になるからいかぬ、こういうことになるのであります。その辺を一つ法制局として明確に言ってもらいたい。
  189. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 まず先ほどの答弁を補足して申し上げた方がいいと存じます。予算上、資金上可能なりや不可能なりやということは、むろんその年度について考えらるべきものと思います。そこで私は少し先ほど御質問の先回りをしたわけでございますが、しからばまだ来年度の予算がきまっておらない場合に、来年度以降非常に大きな予算の増額を来たすような協約をお結びになる。それはこの日本国有鉄道法の第四十四条の規定の完全なるワク外かどうかということになりますと、つまり来年度以降いかに給与費が増額しても、それは差しつかえないのだ、そういう趣旨には読めない。ですから、この予算上資金上不可能であるかどうかというあの法律規定と離れた他の規定の精神から、実は御質問を先回りして申し上げた次第でございますので、その点補足しておきます。
  190. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの見解というのは、全くいわゆる大蔵省的見解です。森永さん、法律の何を根拠にしてそういうことを言われる。公労法によって示されておる資金上予算上不可能ということは公労法だけですよ。公労法以外に金資上予算上不可能という文章というものはどこにもないのですよ。その公労法の資金上予算上不可能かいなかという議論を、来年もいかぬ、再来年も赤字になるといかぬ、そういう議論をするならば、これはもう全部問題になる。その問題になるかならぬかという判断をだれがするか、大蔵省がする、そうするとみんな大蔵省の勝手ほうだい、こういうことになるじゃありませんか。あなたの御意見はわかりました。間違っておると思いますよ。  法制局いかがですか。法制局はそんなばかげた解釈をするはずはないと思うのだけれども……。
  191. 西村健次郎

    西村政府委員 公労法にいいます予算上可能か不可能かということは、当該年度の予算について判断すべきことであると思います。ところで問題は、これは極端な例と思いますが、ベース・アップで次年度以降に膨大なべース・アップがずっと続く――もちろんベース・アップなら続くわけでありますけれども、そういう裁定が出る、それが予算上不可能な場合、これは当然その不可能な部分については国会議決を求められるわけです。そこで国会がそういうものを認めて、承認していいかどうかということは財政的な見地から判断して、そうして承認されれば、それはもちろんずっとその後はそれがいわば事務費みたいなものになります。これは当然だと思います。要するにその点は国会が最終的な判断を下すというところで調和をはかっておる、こういうふうに考えていいのではないかと思います。
  192. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの後段は実体論です。前半は法理論。法理論としては、その年度内において予算上資金上不可能であるかいなかということを議論をすべきである、そのあなたの見解に私も賛成であります。後段の、審議に当って将来を見るという点については、これは実体論でありまして、法理論とはならない。  そこでもう一つお伺いしたいのは、かりに資金上予算上本年度内に可能であるか不可能であるかという議論があって、なおかつ締結をされてそれを国会に付議しなかった。公社と組合側との立場でやった。それは先ほどの理論ですけれども、労働者にしては債権が生じた。大蔵省としては締結をした公社なりあるいは郵政省がけしからぬと思っても、労働者にもう債権がそこで生じた。その場合に何をどう処理をされるのですか。森永さんにお伺いをいたします。
  193. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ある公社である協定をされる、それが予算上資金上可能か不可能かの問題の判定をだれがいつするかという問題はございますが、かりにこれは公社で何もそういう不可能であるとかなんとかいう申し出がなくて実行された場合には、私どもは、それはその年度の給与総額の中で当然実行できる範囲内のものであるというふうに考えざるを得ないわけでございます。それに対して来年度どういう予算措置を講ずるか、私どもとしては、本年度予算措置が可能であった状態を基礎にいたしまして、通例の場合においては、それに対して定期昇給の原資を見た予算を認める、そういう立場をずっととって参っておるわけでございます。
  194. 横山利秋

    ○横山委員 私の質問するのは、森永さん、簡単で、労使の間に協約、協定ができた、それは予算上資金上その年度において可能であるという判断がなされて、それを翌年度の予算編成のときに、大蔵省としてはそんなものは知らぬ、この前の年度はできたかもしれないけれども、翌年度におれのところに負債を持ってこられても困るといってけることが法律上正しいかいなか、大蔵省としてまたそういうことをおやりになるか。労働者には債権が残っておるのですよ。公社には債務が残っておるのです。そういう場合に、大蔵省としてはそれをそんなものは認めぬと言い得られるかどうかということです。
  195. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 それは普通の予算の要求と査定の問題になるわけでございます。私どもといたしましては、各公社現業を通じた方針によって予算の査定に臨むわけでございまして、その場合一々の公社にいかなる協定があるか、私どもこれはもう事実を示されもしておりませんし……。
  196. 横山利秋

    ○横山委員 こういう協定がありますといって示された場合です。
  197. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 示されました場合においても、それはあくまでも現年度の給与総額の範囲内で実行できた性質のものなのでございまして、そうすると、そこにそれを実行できたという基礎の上においてこれを来年度以降考える、そういう立場をとるわけであります。それに対して相手方は、それはそれでいいとか足りないとかいうことで予算折衝が行われるわけでありまして、最終的な決定は、閣議における調整を経て、国会にお出しして、国会がその予算議決するという段取りになるわけであります。国会議決いたしました場合におきましては、その給与予算の額をこえないような給与準則を実施していかなければならぬ、そういう、この公社法の規定の適用になるわけでございます。
  198. 横山利秋

    ○横山委員 時間がありませんから、この問題は、問題はずっとあるのですが、大臣もお聞きになっておると思うのです。私の森永さんとの質疑応答の中で、労働省としても考えてもらわなければならぬところを含んで私は言っておるわけです。結局、協約、協定を結んでも、大蔵省がそれを没にしてしまう。森永さんの今の話は、協約、協定を認めぬとは言わない。けれども財政的にそれを結果として認めないという場合があるのだということを言っておるのです。そうしますと、ここでもう労使の団体交渉及び団体協約というものは、事実政府の中で、大蔵省の予算編成なり何かで没にされてしまっておる、そういう結果が出てきておるわけです。  もう一つ、もう最後の問題ですから……。きょうの新聞によりますと、三公社の給与総額内の流用を新たに制限し、基準内給与と基準外給与の流用は大蔵大臣承認を必要とすることとし、公社が勝手にできないようにする、こういう文句があります。ここまできますと、まさにこれは国家公務員の賃金の予算の制約と全く同じになるわけです。一番最初にあなたに聞きましたが、公社の賃金はいかにあるべきかという余裕というものはここで完全に遮断される。今度の春闘を通じて私どもが痛感しましたことは、もはや――この問題は非常に重大な問題です。それを大臣にお考え願いたいのですが、今度の春闘を通じて痛感されたことは、世間一般が痛感していますことは、本来公社と労働組合の争議であるのに、まさに政府と労働組合の争議だ。公社はおいてきぼりを食っちゃったということが一般の常識になっています。なぜそうなるか。これは大蔵省が、調停案が出る前後を通じて、もうすでに新聞に情報を出して、あんな金額ではのめぬといい、アドバルーンを上げたことが第一でありましょう。それで、労働者は公社の方を向いたってあかぬぞ、政府の方を向かなければあかぬぞということになった。裁定が出始めると、政府部内で公務員との格差の問題が問題になる。一体その格差はだれが言い出したのか。国家公務員の賃金を議論するのは、一体今どこでしょう。失礼な活だが、労働省には給与審議室というものがおありになるようです。ところが、給与について問題を言い出すのは常に大蔵省であります。きょうは大蔵省の方にえらい悪いですけれども、一つがまんして聞いてもらわなければいかぬ。これは事実なんです。給与の問題について仲裁委員会がある、団体交渉の当事者がある、サービス省としての労働省があるのに、問題になることは常に大蔵省が言い出したことです。そこに労働省としてもう一ぺん考えてもらわなければならぬところがある。しかも今度、基準内給与と基準外給与の移流用は大蔵大臣承認を得なければならぬとなれば、団体交渉をして団体協約を締結しても、これによって全部が全部大蔵大臣承認を得なければならぬ、こういう結果になるのですよ。従って今後も、公労協の労働運動は全部が全部政府を相手にせざるを得ぬ。公社はこのワクを狭められて、もう私には予算移流用承認権限はありませんと、一々交渉の最中に運輸大臣の方を向く、あるいは大蔵省にお伺いを立ててやる。従って公社は全くロボットになるのではないか。たとえばあなたが先ほど申されたいわゆる格差の問題ですね。格差の問題は、仲裁委員会予算単価と実行単価の幅を詰めろといっている。これは私は今度仲裁委員が出られたら、その真意をよく聞いてみたいと思うんだが、これはどっちに詰める話ですか。実行単価の方に予算単価を詰めるのか、予算単価の方に実行単価を詰めるのか、どちらの話でありましょう。労働大臣はどちらの話と理解しておられるのですか。実行単価を予算単価の方に年々歳々詰めていくということは、今日生じておるあらゆる格差というものを認めない、三年間たって全部つぶしていくということですよ。そうでなくて、仲裁委員は、実行単価の方へ予算単価を詰めていくんだ。それは、公労法によって、協約、協定、団体交渉というものを尊重する立場ならば当然の話であります。債権が生まれ、債務が生まれたのでありますから、その債権と債務を履行するためには、債権の確定したところへ予算をさや寄せしていくのは当りまえの話であります。それができないくらいだったら、債権、債務を確定しない方がいいのです。一たん確定したものを、もう一ぺん何かいろいろな理由をこしらえて、予算を締めて、実質的手取りを落して予算単価にさや寄せするということは、一体公労法の立場からあり得ることであるかどうか。私のあなたに言いたい最後の結論は、今の公労協の労働運動を政治的だと非難される大臣は――この前あなたが答弁なさった速記録を私ずっと目を通しました。勉強しました。あなたの率直な見解も読んで知っております。知っておりますが、あなたは今、公労協を政治的に持っていかないようにするにはどうしたらいいかということに苦心をせられる立場であります。経済闘争は経済闘争としておさめなければならぬ、こういうふうにあなたは苦心をしておられる。ところが今や事態は刻々と、好むと好まざるとにかかわらず公社当局をロボットにしてしまって、一々大蔵大臣承認を得なければならぬようになるのであります。予算で三年間かかって、大蔵省ががんと控えて、その裁定をつぶしてしまおうという立場にある。こういう状況の中で公労協を経済闘争に持っていこうというところの意図というものは、全然できない。かえってますます政治的にならざるを得ない。そうでしょう。それについてあなたは一体どうお考えでありましょうか。これが私の最後の問題点です。
  199. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 ただいま御指摘になりました問題は、先ほどの使用者と労働者との間の協約ができておるにもかかわらず、それを三年間でなくしてしまう計画を持ているではないかという御指摘が終始一貫されているようでありますが、これに対しましては、中労委が千二百円のベース・アップをするのだ、そこの中で、従来払われておった不合理な因子は全部千二百円の中に入れて合理的にやるべきだ、こう指摘しておったのです。そのようにやれば八十円くらいしかいかないから、それじゃ困るというので、三百五十円以上大蔵省の方と折衝いたしましてこれをふやしてもらったわけです。そういう意味で、きょうはおほめにあずかると思っておったところが、頭からおしかりになるのはおかしいと思うのです。私どもの苦心もやはり聞いてもらわなければならぬ。  それからいま一つは、大蔵大臣承認を得なければ今後移用、流用、つまり基準内、基準外のもののできないという申し合せをしたのはけしからぬというお話であります。これは先ほども八田君の質問中にありましたように、私はそういうことを自分の口から言いたくないけれども、八田君の言葉をかりるならばアベック闘争だ、こういうことも相当非難の的なんです。だから大蔵大臣承認を得べきである、これは私の個人的な意見ですが、八田君の意見に共鳴します。資本主義の世の中ですから、資本家の代弁が経営の中にない労務の協定というものは、中心の議論から非常にゆがまされるのです。だから、そこに両方の議論が戦わされて中庸ができる。アベックというような言葉が世の中に流布されることは遺憾なことだと思うのでます。でありますから、そういうことをいわれておりますから、私は公共企業体というものの基本的なあり方は将来考える必要があると思うのです。けれども、きょうの問題はやはり仲裁裁定に忠実に従っていくべきだ、こういう考えでおります。けれども千二百円の中で全部を差し引いていけ、こういうように回答を出されておりますから、それじゃお気の毒だというので、三百五十円だけよけい大蔵省との間に折衝いたしたのであります。先ほど森永君が少し甘過ぎたかもしれぬなんという言葉を使っているのは、そこからきているのです。どうぞ御了承願いたいと思います。
  200. 横山利秋

    ○横山委員 お互いに渦の中へ入っていますと、自分が回っていることに気がつかない場合があります。あなたも閣僚としておやりになってその渦の中に入っておられて、自分が全体的立場から、公労法全般の立場からごらんになるのを少し忘れていやしないか。私もあなたの言葉に対してそのまま受けて議論をしましよう。そのことは何かというと、国鉄なり電電の公社専売公社が、経営者としての、資本家としての根性がない。全く同感です。問題はなぜないかということです。あなたのベースについて話をするのですよ。なぜ彼らが資本家としての根性を発揮して能率を上げ、そしてきびきびやらないかということです。そこのところが一番問題じゃありませんか。それを公社の当局たちが全く事務屋のような官僚のような仕事をしておって、どうして公共企業体があなたの言うようなことになるものですか。問題はなぜそうなるかということです。これは資本家としての権限がないからですよ。あなたが経営者であったそのいきさつからいうならば、経営者は自分の責任を持ってびしびしやるところはびしびしやる、ほめるところはほめる、こういうことを縦横無尽におやりになったでありましょう。それが国鉄や電通あるいは専売の経営者は、郵政省の経営者はどういう権限法律的に与えられていますか。言うなれば今議論になったようなことは、四十万人の人をかかえてやる国鉄の経営者としてみれば、かりにあなたが国鉄総裁であったならば、こんなものくらい何だということが当りまえのことですよ。膨大な国鉄の資産の運営をやっておって、百九十円くらいの話がつかぬようでどうしますか。この年になって、この一年間に資金上予算上できるかできないかという判断くらいは、国鉄経営者にまかさるべきですよ。一々大蔵省に聞かなければならぬような経営者で、あなたの言う資本家の根性が持てますか。そうでしょう。そこに問題がある。権限を詰めれば詰めるほど私にはできませんということでは官僚的になり、事務屋になる。事務屋になるからこういう結果が生まれるのです。あなたが言う資本家としての根性というものは、あなたも進歩的な経営者でありますから、労働者をいじめることばかりが芸でないということは十分御存じでありましょう。甘いものと辛いものと両方与える、これが一つの経営であるならば、こういうかえってさらに事務官僚的に陥らせるという方法を断じてとるべきではありませんよ。あなたが今論理を展開されるに当って私も同じべースの中で議論してみてもそうなる。あまり時間がないそうでありますから、私はあなたに、もうきょうは夜がふけてでも十分に議論をいたしたいと思うのでありますが、あとの方もおありになるようでありますから、私は割愛をいたします。割愛をいたしますが、先ほどから申し上げた点を十分に一つ、この仲裁裁定国会を通過するまでにもう一ぺんあなたと、本委員会か適当なところでお会いをいたしますから、その際にきょう申し上げたことについて十分御検討を願います。以上で私の質問を一応中断をいたします。
  201. 藤本捨助

  202. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は先ほどから滝井さん並びに横山君から質問された基本的問題を中心として労働大臣にお伺いいたしたいと存じます。それとあと森永さん並びに林野庁の方にお伺いいたしたいと存じますので、十分御用意をしておいていただきたいと存じます。  私はこの調停並びに仲裁の問題が進められておる際に、松浦さんも御記憶新たなように、予算委員会におきましてこの財政措置をどうするかという問題についてしつこくお伺いしたはずであります。その際に、結論的には池田大蔵大臣並びに松浦労働大臣の方から、裁定が出たならば財源的な措置は講ずるという御答弁があったと記憶いたしております。ただこの論議がかわされております過程で、私は政府の怠慢についても鋭く申し上げたはずであります。国鉄が調停を申請した、その他の諸君も申請したにもかかわらず、政府はそしらぬ顔をしておって、与党の篠田君あたりは岩井総評事務局長との放送寸論会で、あたかも争議行為を続けて国民に迷惑をかけているのは総評であるかのような発言をしておられる。これは不謹慎だからというので、岸総理にも私は話したはずなんです。で、そのとき私が申し上げたことは、少くとも調停委員会と仲裁委員会は人的にも同じ構成なんだから、出るべきものを予想して十分検討をしておくべきである、あんなに混乱に陥れたのは政府責任であるということを申し上げたはずであります。にもかかわらず今度もまたこのように遷延せしめて、きのうあたり社会労働委員会が開かれるものと待期して夜おそくまで待っておっても、臨時閣議だといって一向に開かない。その責任についてこの際最初に労働大臣の方からしっかりと国民におわびしてほしい、どうです、見解は。
  203. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 昨日委員会へ出席しようと思ったのでありますが、今御指摘になりましたように臨時閣議があり、閣議後において関係閣僚と相談をし、いろいろいたしまして、時間がなくて出席することができませんでしたが、その点がおしかりをいただいたわけですから、今後時間がありましたら努めて出席をいたしたいと思います。
  204. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 いや、僕の言っておるのは、――松浦さんは非常に努力していますよ。問題は政府責任を言っているのです。きのうあたりになってから臨時閣議を開かなければ結論が出ない、おかげで社会労働委員会も開かれない、そういった怠慢、その都度政策でどうして国民生活の安定がはかられますか。十分な準備を整えておくことが政府のやるべき仕事なんです。どたんばになってから開いて申しわけありませんと、僕は松浦さんにあやまってもらいたいとは思っておりません。国務大臣としての松浦さんに政府を代表してあやまってもらいたい、こういうことなんです。まああえてこれは追及いたしません。  次に、お伺いいたしたいのは、財源的な措置は講ずるという松浦労働大臣並びに池田大蔵大臣予算委員会における答弁と今度の臨時閣議の決定は大きく食い違っておると存じますので、その理由を明らかにし、そうしてその点について前の予算委員会答弁と、今この社会労働委員会では食い違った答弁をしなければならない、その根拠を明らかにしていただきたいと存じます。
  205. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 私どもは前の予算委員会で考えておった通り今日の現状におきましても決して変った考えは持っておりません。先ほど来いろいろ御質問がありましたけれども、岸総理大臣鈴木委員長との会見の場合に約束いたしました線は堅持いたしまして、また財政当局といたしましてもその線に沿って今日補正予算を組んでおられるものと確信をいたしております。
  206. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 日本語というものは非常に重宝なんでして、今松浦さんは、岸総理と鈴木委員長と約束したことを堅持しておる。また予算委員会答弁した大蔵大臣と自分の答弁は忠実に守っておる。そう答弁されるのですけれども、それほどきのう言ったことときょう言ったこととでは違うようじゃ大臣としての責務を果されないと思うのです。  それではお伺いいたしますけれども、この中で三公社郵政だけは補正予算を組んでほかのものは組まない。予備費の流用だ、人件費の節約だ、こういうことで前の御答弁通りだと言われるのかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  207. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 どこの委員会で言ったことかわかりませんが、私の今までの記憶では、誠意を持って尊重する、それに対する財源措置は将来講じなければなるまいということは申し上げておるのでありますが、予算編成上のいろいろな技術的な問題については財政当局から御答弁をいたさせます。
  208. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 松浦さん、いいかげんなことを言っちゃいけない。あなたも閣僚の一人なんですよ。予算的な措置を講ずるというのは、あなたの考えではそういうことを意味しておったのですか。もう一ぺん答弁して下さい。
  209. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 補正予算の数字が昨日の夕刊からきょうの朝刊に出ておるのでありますが、あの数字は私どもが誠意をもって尊重するという目一ぱいの数字であります。
  210. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 僕は数字の問題はまだ聞いておりません。三公社と、郵政とその他とを区別された理由その他については、どういうことなのかということをお伺いしておるのです。
  211. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 財政当局から……。
  212. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 いやいや森永さん、ちょっとお待ちなさい、あわ食いなさんな、大臣に聞いておるのです。
  213. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それじゃ申し上げますが、三公社現業――郵政ですね、三公社現業は、これは予算上資金上どうしても補正予算によらなければならないものでありますから、補正予算を組んで国会の御承認を得るつもりでございます。他の四現業は、移用流用によってこれはまかなうことができると確信いたしましたから、本日も午前中にここで議決案撤回いたした次第でございます。
  214. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 森永さんにはあとでお伺いしますからじっとすわっておって下さい。あなたは移用流用でできるというお話ですが、その一例ですが林野特別会計で移用流用できる状態にあるかどうか、それを具体的に御説明願いたいと思います。
  215. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 林野庁の長官から答弁させます。
  216. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 閣僚としてこの大事な結論を出すのに、そういう点を検討しないでなぜそういった結論を出すのです、大臣答弁なさい。
  217. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 せっかく林野庁の長官がおいでですから、林野庁の長官が答弁されてもいいと思うのでありますが、私は先ほども御通知申し上げましたように、移用流用でできると確信を持ちましたから、皆さんに御報告いたしました。
  218. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 その確信を持った理由を具体的に御説明願いたい。
  219. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それは林野庁の長官から答弁させます。
  220. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 松浦さん、すぐいたけだかになってあれするのですけれども、きょうは時間がないようですから、この次にいたけだかになる松浦さんの心境、予算に対するものの考え方についてはお伺いします。林野庁長官
  221. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 仲裁を実施いたしますためには新しく補正予算を組むか、あるいは既定予算内の移流用によるか、いずれかの方法によらなければならないことは当然でございますが、現在の状況をもっていたしますならば、林野事業特別会計におきましては、補正予算を組むために確実な財源が見当らないということが一点あるわけでございます。  ごく簡単に申し上げますと、この会計において補正予算を組むといたしました場合に第一番に考えられますことは増伐でございますけれども、現在の成立予算の中におきましても、もうすでに、調整年伐量と称しまして毎年の伐採を計画するその基準といたしております伐採量に対しまして、一一%増のほとんど六千万石に近い伐採計画を実はいたしておるという現状にあるわけでございます。これは主として昭和二十九年の秋に発生いたしました北海道地域内の風害による被害木の整理を急いでおるということから、やむを得ずこのようなことになっております。従いましてこれ以上伐採を急ぐということは当然問題があろうかと思うのであります。  それ以外の財源といたしましては、昭和三十二年度中に精算を完了いたしまして、その一部を昭和三十三年度に相なりましてから売り払う、こういうものがあるわけでありますが、これらのものの繰り上げ売り払いということを出すことを前提とする財源確保ということがあり得るわけでございますが、現状をもっていたしますと、これまた北海道の風害整理の影響があるわけでございまして、経常年度には大体一カ月半ないし二カ月分くらいなものを年度越しのランニング・ストックとしなければ経常運営ができないという状況にもかかわりませず、三十二年度から三十三年度のこれらのものについての見通しは約百四十万石でありまして、かれこれ一カ月分、非常に少い。  それからもう一つの方法といたしましては、当年度内に売り払いましたものの収入と来年度に期待をいたしますいわゆる延未納という問題があるわけで、この延未納額につきましては、経常年度においては約六十億というものを予定することが大体適切な規模であると考えておるわけでありまして、これに対しましては若干上回る程度の延納計画ができる、かように考えておるわけでありますが、先ほど申し上げました処分越し材というものの数量が非常に少くなっておるということから、かれこれ考えまして、来年度以降の事業運営にはどうしてもこれくらいのものが必要になってくる、こういうことに相なりますと、現在のところ正確に捕捉し得る財源をもちまして補正予算というものを組むための見当がなかなかつかないという問題が明らかに一つあるわけでございます。  ところが、一方におきまして既定予算内の移流用という問題でございますが、実は御承知のようにこの国有林野事業特別会計を維持して参ります場合の収入源の主たるものは木材の売り払い代金でございまして、これが立木をもって売り払うものと合計いたしまして、かれこれ九〇数%に達しておるというのが現状であります。従いまして木材価格の市況変動によりまして比較的気楽な予算も組めれば、逆に苦しい予算の内容になってくるということは御承知の通りでございます。  従いまして、一体昭和三十二年度はどのようなことであるかということでございますが、私どもといたしましては、非常に多数の職員を擁しておるものでございますし、やはり現在の経営規模を適切に維持して参りますためには、ぜひともこれだけの事業は継続して実施いたさなければならぬという基準があるわけでありまして、それを一応私どもは昭和三十二年度に、お答えいたしました程度のものはぜひともやらなければならぬ仕事の量というふうに考えまして――これはどの年におきましてもそれを維持し得るように予算計画にも含めてあることでありますが、それに対しまして昭和三十二年度は、現在の一般的な経済好況の反映といたしまして、木材価格もかなり上昇線にあるということに相なっておりますので、予算規模といたしましては比較的楽な予算でまかなえる、こういう状況でございます。  そこで、そういうときにはとかくおくれがちになりやすいという仕事を計画以上に繰り上げをいたしまして実施をする、こういうことを実はやっておるわけでございます。そこで、繰り上げ実施をすることにいたしております事業の中で――やはり繰り上げの必要があって繰り上げをやるのだということでありますが、その中でも将来の仕事に対しまして直接間接さまざまな影響を及ぼしてくるというような問題のある事業も実はなくはないのであります。それで、各種の事業の中でそういうふうな影響のほとんどないというものを実は拾い出しまして、確保すべきいわゆる経常年度における計画それから三十二年度という特殊の年度において少しでも繰り上げして実施いたしたいと考えました計画との差、これをむしろ今回の裁定実施いたしますための財源に引き当てるということの方がよりいいのではないか、こういうような判断に達したわけでありまして、これらのことについてなお御疑問があればしさいに御説明申し上げたい、かように思うわけであります。
  222. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今、国有林野事業特別会計についての御説明がありましたが、少くともこの予算流用その他でやる他の現業についての結論というものを持っておられたろうと思いますから、今度は大臣には求めません、森永さんから説明していただきたいと思います。
  223. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 四現業のうち国有林野につきましては、今林野局長官から御説明いたした通りでございます。造幣でございますが、物件費を極力節約いたしまして、所要額を捻出いたしたいと思っております。  それから印刷につきましても、物件費の節約あるいは退官退職手当等の不用見込額、これで極力努力をいたして所要額を捻出するつもりでございますが、場合によりましては年度末近くなりまして、予備費等の問題が出るかもしれませんが、これは極力節約に努力することによりまして実施いたしたいと思います。実施できる見込みでございます。  アルコール会計でございますが、これにつきましては国債整理基金への繰入額が若干不用になる見込みが生じて参りましたので、この国債整理基金への繰入額を今回の裁定実施の財源に移流用をいたすことによりまして、実施して参りたい、大体さような考えでございます。
  224. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今お伺いすれば林野庁長官は、林野庁長官として国有林野事業を推し進めるものとしてきわめて苦しい答弁をしておられる。松浦さんよくわかるでしょう、見てごらんなさい、増伐も考えられるけれども、少くとも現在においてさえ平常年度のいわゆる国有林野の整備、これを考えた上で基準を定めておるけれども、それを一一%も上回る、いわゆる六千五百万石も上回る増伐をやっておるような状況の中では、この増伐によるところの利益増ということは考えられない。あるいは三十三年度のを繰り上げて売り払う、あるいは平常年度六十億のこの延未納をさらに増額しなければならない。こういうことをやっておったならば、何のための国有林野事業かわからなくなる、これはあまりにもはっきりしております。  これはアルコール専売についても同じでありまして、造幣なり印刷なりもやはり同じであります。あなたは今澄ました顔で物件費の節約あるいは退官退職手当がある程度余るだろうから、あるいは国債整理基金の繰り入れの若干不用の分ができるだろうからというような答弁をしておられますが、この造幣なり印刷なりについても国有林野事業と全く同じ状態であることははっきりしております。印刷なり造幣なりがたとえば物件費の予算要求をする際にあなた方に説明したところをはっきり記憶しておられるはずです。それを大なたをふるっておきながら、今さら物件費の節約なんということを、よくもずうずうしく存えたものだと思う。国有林野事業についても同様であります。あなたは予備費の流用ということを言われた。それで林野庁長官にお伺いいたしますが、昨年度の予備費はどのように使用されておりますか。
  225. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 昨年度の予備費についての使用状況でございますが、十四億一千九百万円余が予算額でございます。その中で予備費として使用いたしましたものが三億六千八百万円、三十一年度の実績はそうでございます。
  226. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今林野庁長官から御説明がありましたが、予備費のその内容を、どこどこに使ったかを御説明願いたいと思います。
  227. 石谷憲男

    ○石谷政府委員 昨年三億六千八百万円、従いまして予備費総額に対する流用の実績の比率は二八・八%、多額なものが一応残ったということでございますが、これは御存じの通りほとんど災害らしい災害がなかったということに原因をいたしておるわけであります。この使いました主たる内容といたしましては、北海道の冷害救済事業を実施いたしますために、他地域の必要予算を一時引き当てまして事業を実施いたしたわけでございます。そういうことに対しまする計画通り実施をするような予備費の流用ということをいたしましたことと、それから主として長野、岐阜両県下に野ネズミの顕著な発生を見るような傾向が出て参りましたので、これに対する緊急防除のための経費を出した、こういうような次第でございます。
  228. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 約束の時間が参りましたのでこれで終りますが、今森永主計局長並びに長官から御答弁がありましたように、少くともこれは予算編成の常識として予備費の流用ということについてはおのずから方向があるはずであります。たとえば国有林野特別会計の昭和三十一年度の使用を見てみますと、必要不可欠なものだけであります。長官も御承知であろうと思いますが、林業振興費に二千二百三十九万円、それから今御説明があったような三十一年度と同じく災害復旧に二千二百万円、それから昭和三十年度発生の山林施設災害復旧事業費に四千四十七万円というものを使用いたしております。この使用状況からみても、少くとも国有林野事業を行なっていく上においてはどうしても必要不可欠なものであって、他に流用すべき性格のものでないことはあまりにもはっきりしておるのであります。これは他の造幣なり印刷なりアルコールなりにしても同じであります。このような状態であるにもかかわらず、松浦さんは大丈夫だ、臨時閣議で決定いたしましたと言って澄ましておられますか。それじゃ済みませんので、そういった点について十分な答弁の用意をされてこの次の委員会においで下さることを期待いたします。私の質問は一応保留いたしまして次に詳しくお伺いいたしたいと存じますから、委員長の方でよろしく善処を願いたいと思います。
  229. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど大臣が林野、印刷アルコール造幣議決については撤回をする、こういうお話でありましたが、撤回と承知してよろしいですか。
  230. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 御注意ありがとうございました。先ほどそう申しましたのですが、それは間違いでありまして訂正いたしておきます。  補正予算につきましては、現在印刷中であり、月曜中にもこれを国会提出する予定でありますので、この点この際明らかにいたしておきますと申し上げたのでありますが、撤回ではございませんから訂正いたします。
  231. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 非常に問題があるのは、たとえば今度の裁定の内容が客観的にだれでも明瞭でない。先ほどから横山君がいろいろ質問をしておりましたけれども、裁定の内容についてこれが完全実施であるか不完全実施であるかということについてもかなり異論がある。こういう問題を一方的に政府が判断をして予算を提案される場合には、これはまた予算委員会審議の対象になりますが、移流用でやれる場合、これは一方的判断において行われ、国会としてはこれが自然消滅をする、すなわち議決を求めるの件は自然消滅をするという形になりますと、審議をする場を失うわけです。一方的に判断をして、移流用でこれは完全実施なりと称してこの議案自然消滅をするということになりますと、われわれはどこでこの議論をしていいかわからない、こういうことになる。補正予算が出てくる分につきましては、この補正予算が果して完全実施であるかどうかという議論ができるのですが、これは議論ができないのです。これは私は決算なんて言っても、決算はいつになるかわかりやしない。これはやはり政府としては単に通知ではなくて、先ほど大臣は口をすべらされましたが、やはり成規手続議案撤回なら撤回という形が私は望ましいのではなかろうか。なるほど今まで慣行でやってはおりましたけれども、これは非常に私は問題があると思う。いい悪いは別として、われわれからいいますと、なるべくこの仲裁の実施というものにつきましては国会審議をすべきでないという考えを持っておる。ですから、われわれはなるべく国会にかけろということは言いたくないのです。しかし完全実施が客観的に見ていろいろな問題があるというような場合を考慮しますと、私はやはりこの国会における審議の場を失う、こういうように考えるわけですが、これに対してはどういうようにお考えでありますか、大臣でなくとも、ほかの方からでもけっこうです。
  232. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 従来の慣行によっていたしたのでございますが、法律的な解釈及び従来のやりきたりにつきましては、局長から答弁いたさせます。
  233. 中西實

    中西政府委員 なるほど今回の仲裁裁定につきましては、先ほど来御議論がありますように、客観的にはっきりしないところがある。しかしながら政府が一方的な解釈でやっておるのじゃございませんので、先ほど来往復文書も相当ございましたし、さらに直接面会して確かめた、大体仲裁委員会の真意はここにありというところの確信のもとに、その御意図のもとに措置をしておるということでございますので、完全実施の線に沿っておるということです。従って今回におきましては、やはり従来の例によりまして、移流用によって実行可能になったという場合には自然消滅する、こういうふうに考えております。
  234. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 裁定の内容というのは客観的にきまるというのが通常の形ですね。これは客観的にきまらなければならぬ性格のものです。これが解釈がいろいろあるなんということは、大体裁定として私は適当でないと思う。この裁定の内容についてはわれわれは言うわけじゃないのですが、事実問題としては、それは政府は慎重の上に慎重を期されたかもしれませんが、われわれとしては解釈上かなりの疑義がある、こういう問題が事実問題として起っておるわけです。補正予算を組まれる分につきましてはこれは議論ができるのですが、先ほど言いましたように、移流用の分につきましては、これはわれわれから言うならば、政府が一方的に判断をして完全実施なりとして、国会には何ら出てこない、こういうことになりますと、私は非常に問題があると思う。ですから、これらの問題は、補正予算を出される場合も含むのですが、これらの問題というのは、やはり議案撤回というシステムをとられることが妥当な処置ではないかと思うのです。これはわれわれといたしましては議運においてもこの問題をさらに提起いたしたいと思いますけれども、単なる一方的に通知をする、しかも国会において何とか審議をして下さいと言いながら、何らの意思表示もしないうちに、いや、われわれの方でできましたから、さようなら、こういうことでは――今までの扱い方というものは慣例ではありますけれども、これはいわば吉田自由党内閣が絶対多数を誇っておったときの産物であって、こういうことは許されないと思う。ですから、これについてどういうようにお考えですか、もう一回お聞かせ願いたい。
  235. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 一応御説明申し上げます。今回もし移流用によりまして裁定実施可能になり、政府見解によれば、それで自然消滅ということになったこの状態は、これは補正予算提出した状態ではない、補正予算がいわば通ったときと同じ状態になっているのでございまして、裁定はそこで完全に発効するわけです。そこで国会の御審議の機会が、御指摘のごとく、ないわけでございますが、しかし裁定そのものはそこで発効いたしまして、労働者の権利はそれで十分に担保されるわけでございます。裁定としての目的はそこで達し得るものである。それはやむを得ない処置ではなかろうかと思います。  もう一つ撤回の問題でございますが、撤回を院議にかけるということは、院議といっても、これはもとがなくなっておるのでございますから、かりに院議でそれは撤回するのはいやだとおっしゃったと仮定いたしましても、この場合、議会は承認するとももちろん言えない。これは出ちゃったのです。不承認とももちろん言えない。要するに基礎がなくなったのでありますから、やはり私どもとしては何としてもこれは自然消滅以外に方法がないというふうに考えます。
  236. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 基礎がなくなったのですから、私は撤回だと思うのです。これを承認しない場合を仮定したら、承認しなかったらどうするか、これこそ自然消滅で、承認しなくても異議がないというだけのことであって、手続としてはこれは撤回をされるのが至当である。承認、不承認法律上効果を伴わない場合は幾らでもある。国際連盟の脱退だってかつてやったのですが、あれは承認しないといっても、日本は脱退してしまったのだから――組合の脱退だって同じです。組合を脱退してしまったあと承認するかどうかいろいろ議論して、承認しない、こういいましても、脱退したものに対して効力が及ぶわけじゃない。こういうことは法律の体系の中には幾らでもあると思う。ですから、私はやはりこの問題は撤回をされるのが至当である、こういうように考えるわけです。それから移流用の問題だって、私は十日以内にあなたの方で態度をきめられて、そうして全然国会にお出しにならないで移流用できます、こういうことであれば、文句を言うわけじゃない。ところが、いやしくも国会政府として出しておいて、自分たちは態度をきめないで、一体われわれはどうするつもりか、何のために出したのだといっても、今研究中である、今検討中である、現況においてはできないのだ、こういう不誠意きわまる態度でやって、そうして自分の方で検討して、できた、はい、これは自然消滅ですという一片の通知では、今まで国会において何を議論しておったのか。アルコール専売の場合はまさしくそうなんです。何を議論しておったのかわからない。こういうことは私はやはり国会運営上許すことはできないものだと思う。これは一つ政府においても十分考えていただきたい、かように考えます。
  237. 藤本捨助

    藤本委員長 次会は来たる二十三日火曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十八分散会