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中村(三)
委員 その変えることも、これをどういうふうにしてエスカレーターしていくかというような問題が起ってきますが、これは
あとにいたしまして、
最低賃金はべ−シック・ウェージである。これは将来上げなければならぬという私の質問に対して、大体その
意図だということを言われた。また私は
日本の
経済が
発展をしていけば、上っていいと思います。
一体人間というものは、御
同様自己の
個人の収入の増加への努力をするものだ。これは
人間のいいところですから、私はそういうふうになることを希望しますが、今日の問題から出発すると、ここに四千円がいいか六千円がいいか、八千円がいいか、これは議論の分れるところ、また見方の違うところでございましょう。そこでこの
最低賃金がいかに
経済に
影響を与えるかということです。すなわち
最低賃金法定によるところの
経済的影響というものを私は
一つ考えてみた。これは先輩のいろいろの文献を見て、
アメリカあたりの人の書いたのを見て私はここに皆さんに質問しているのですが、
最低賃金による
経済的影響は六つの
段階があるというのが私の
結論です。第一の
段階は、
最低賃金以上を現に払っているところの
工場は、何ら
刺激的影響を受けない。たとえば
日本あたりでも、日の当る
産業、これは
最低賃金制が今法定化されたって、何らの刺激的な
——刺激的なと申します、刺激的な
影響は受けない。ところが第二
段階の場合、あなた方の八千円の
最低賃金すれすれの七千五百円程度のところの
工場はどうするかというと、これはおそらくレート以下であって、ほかの
工場に変化のない間に
最低賃金に上げていく。そうでなければ
競争ができない、
労働者を吸収することができない。この第一次、第二次の
段階まではいいのですよ。第三、第四の
段階に私
どもも疑問を持つし、これはお互い
一つ研究していかなければならぬ。第三の
段階は、あなたの立てられた八千円ではどうも
工場は回っていけぬという場合には工員を整理するだろう、工員を整理して、むしろ
能率の高いいわゆる熟練工を雇ってくる。これはいいことなんですよ。いいことと思いますが、たとえば今五千円で十人使っておるとしますと、
最低賃金が行われるというので、今度はそれを五人くらいにして、あなた方の八千円で
一つカバーしていく、しかもその五人は相当な熟練工である、それの方が
能率が上るという。これはある
意味において
企業の進歩かもしれないですよ。
最低賃金法制下における
企業の進歩かもしれぬが、遺憾ながらその熟練工というものはそう容易に得られないのです。これはもち
世界各国、今熟練工の不足を
感じている。しかしそれは将来理想として大いに
技術者を養成し、熟練工をして多量に
工場に送るという政策は立てられなければなりませんよ。政策は立てられなければなりませんが、今日ただいまそういう現象が起る。第四は、これはちょっとここに書いてきたものをそのまま読み上げます。そうしませんと、間違ったりするといけませんから……。第四は、法定
最低賃金の程度いかんによっては生産費の増加を招き、物価を騰貴せしめ、
企業の
利潤限界は切り下げられるということです。これは私の
考えですが、第四
段階です。それから第五
段階が一番悪い
経済的影響を受けるのでありまして、法定
最低賃金による最悪の
影響は、経営困難となり、事業を廃止するのやむなきに至り、これらによる失業の発生することである。
もとよりこの場合の失業は大規模じゃござりますまいが、とにかく失業を発生する。私はこの五つの
段階を定めております。これを皆さんもお
考え願いたい。
私が今申しましたように一、二は大体問題ない。
最低賃金以上を払っておる、日の当る
産業です。ところが
資本主義経済におきましては、日の当る
産業もありますけれ
ども、同時にだんだんと衰えてくる
産業もある。またその間の、いわゆる日の当ると当らないとの中間の
産業もある。こういうふうに区別してみますると、三、四、五というものが問題になる。これをどうして救済するか、
最低賃金というものを実行せられる場合に、どういうふうにしてその調整をしていくか、ここが私
どもの問題であると思う。三、四、五に一番まっこうから降りかかってくるものはまず中小
企業でございましょうね。大
産業は、あなた方がおやりになっても平気なものです。ところが
日本の中小
企業はどういう状態か、しからば中小
企業とは何ぞやなんといってくると、これまた時間がかかりますが、この間の本
会議における永井君の御説明によると、従業員三百人以下、資本金一千万、これがあなた方の中小
企業の定義なんです。
政府の中小
企業団体
法案は従業員だけにしておりますが、私はある
意味において所得を
考えなければいかぬと思います。
政府の
考えるよりも、あなた方が資本金をお
出しになったところは、あなた方の意見がいいんです。通商
産業官僚よりもあなた方の方がなかなか進歩した頭がある。しかしここにもう
一つ私は所得ということを
考えてもらわなければいかぬと思う。これは別に
法律で定義づける必要はない。今の
日本の法人税などを見てみますと、四二%の法人税に対して今度は百万円程度の所得のものは三五%ということをやっておるのですね。以前は五十万円。私
どもはこれを百五十万円程度にして、それは法人税三五%にするというくらいに
考えるのでありますが、まずこの百万円とか百五十万円くらいの所得のものを中小
企業として線を引いてみましょう。そうなってくるとこの
最低賃金制というものが、さっき申しました
賃金は、
利潤の適当なバランスを維持しなければならないという点から見て、果して今日ただいま耐えられ得るかという問題が出てくると私は思うのです。中小
企業というもののいろいろの弱点はありますが、たとえば商店街などを見ましても、一番の弱点は何かといえば、中小
企業というものは寿命が短かい、転々として廃業していく、これは果して確実な数字かどうか知りませんが、いつかの中小
企業庁の調べによると、平均十年の寿命を持っている
日本の中小
企業は全体の一八%しかない、ことにサービス業のごときは一六%しか
存在していないというのです。これは私昨年あたりちょっと読んだのですが、
アメリカでも戦前はそういう状態だったそうですが、中小
企業は開業一年間にして二割五分倒れてしまう。それから二年、三年ずっとやってきて七年目に残っているものはわずかに三割にならない。つまり中小
企業というものは寿命が短かい。しかし同時にまた新しいものが出てくる。ことに
日本のような過剰人口の場合は商業に向ってどんどん出てくるから、これも何かの統計によると、商業の中小
企業は年々一割ぐらい増加をしていく。こういうふうなところに、私は
国家が中小
企業というものを保護育成しなければならないという政策にくると思うのですが、この間ここにおられる赤松さんが本
会議で、池尻の商店街で
最低賃金をやった
——私もそういうことを聞いているが、こういう商店街ほど歴史の言葉で言えば興亡盛衰常ならざるものなしといわなければならない。池尻の商店街で今四千円なり五千円で
最低賃金みたいなものをやったとしても、これが寿命が短かくて一年で倒れてしまえば、そこに従業している従業災は路頭に迷わなければならぬ。また新しくそれを買ってやってきた人はまたそれを継続するかもしれないけれ
ども、その間にギャップが出てくる。これはあなた方も学者も摩擦的失業というらしいですね。むずかしい言葉ですが、これは摩擦的失業なんだ。これは完全
雇用の場合において認められているのですから、別に議論はありませんが、どうも私
どもは、この
日本の中小
企業というものをかりに今言う三百人以下、一千万円以下の資本金、百万なら百万の所得のものとするならば、これらの中小
企業というものは非常に継続力がない。これを継続力があるように
日本の
経済を
発展させ、また
政府がそういうふうに保護することが必要だと思うのですよ。しかしそれを今直ちに八千円で実施した場合に、この三、四、五の悪
影響がどっと起ってきはせぬかというのが私のお尋ねをいたしたいところなんですが、どう見られますか。