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1957-03-26 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十六日(火曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長代理 理事 大橋 武夫君    理事 大坪 保雄君 理事 亀山 孝一君    理事 野澤 清人君 理事 八木 一男君    理事 古川 兼光君       愛知 揆一君    植村 武一君       越智  茂君    大倉 三郎君       草野一郎平君    小島 徹三君       小林  郁君    田子 一民君       田中 正巳君    高瀬  傳君       中村三之丞君    西村 直己君       八田 貞義君    古川 丈吉君       山下 春江君    亘  四郎君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       中原 健次君    山口シヅエ君       山花 秀雄君  出席政府委員         労働政務次官  伊能 芳雄君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         労働事務官         (職業安定局失         業保険課長)  阿部 泰治君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二十六日  委員松村謙三君及び小川半次辞任につき、そ  の補欠として大倉三郎君及び愛知揆君議長の  指名委員に選任された。 同 日  委員愛知揆一君及び大倉三郎辞任につき、そ  の補欠として小川半次君及び松村謙三君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第三一号)     —————————————
  2. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職務を行います。  これより会議を開きます。  失業保険法の一部を改正する法律案議題とし審査を進めます。本案についての質疑はすでに終了いたしております。ただいま委員長の手元に八木一男君外十三名提出修正案提出されております。まず提出者より趣旨説明を聴取いたします。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木一男委員 失業保険法の一部を改正する法律案に対する、社会党修正案内容並びに理由を御説明申し上げます。  まず最初に案文を朗読いたします。   失業保険法の一部を改正する法律  案の一部を次のように修正する。   第十七条の三の改正規定に関する  部分を削る。   第三十五条第四項の改正規定の前  に次のように加える。   第二十八条第二項に次のただし書  を加える。    但し、第五章の規定による保険   給付については、これに要する費   用の二分の一を負担する。   第三十八条の三の改正規定を削る。   第三十八条の八の改正規定の次に  次のように加える。   第三十八条の九条五項及び第六項  中「六日」を「五日」に改める。   第三十八条の十一第一項の改正規  定中「二百八十円」を「二百二十円」に  改める。   附則第二項及び附則第三項を削  り、附則第四項中「新法第三十八条  の六」を「改正後の失業保険法(以下  「新法」という。)第三十八条の六」に  改め、同項を附則第二項とし、附則  第五項を附則第三項とする。  案文は右のごとくでありますが、内容を簡単に御説明申し上げますと、まず修正案の第一点は、第十七条の三にかかわるものでございまして、いわゆる失業保険金額自動的変更スライド制に関する点でございます。これを改正案におきましては、現行スライド制を変えまして、幾分そのスライド実情に合せるという部分もございますけれどもスライドが大幅に適用されないように変えておられるわけでございますが、これを削りまして、現行法通りこのスライド効果を発揮するようにいたす修正案でございます。  その理由といたしましては、インフレ及びデフレ両方を考えまするとき、政府側改正案は、観念的に非常に筋が通ったという説明も成り立つわけでございまするが、現在の経済事情から、デフレということが予想せられないでインフレのみが予想されるという状態を考えますときに、この改正インフレの最中において失業した労働者を保護する程度が低くなるというわけでございまして、それをなくするために、この点を削除いたそうとするわけでございます。  次に第三十八条の三の改正規定を削除する部分でございまするが、これは、いわゆる市町村合併が進行いたしておりまして、現在適用区域でないものが自動的に適用区域になってくる状態でございます。そういたしますと、離島とか僻地におきまして、それの適用を見ることに現在のままでなるわけでございますが、政府側においては、それが実情に適さないというわけで、除外できるような規定改正案に盛り込んでおられるわけでございます。私どもの考え方では、これはすべての地域において適用されるのがしかるべきであって、それについて実際上できない場合には、支所を増設するとか人員を増員するとかあるいはその他の便宜的方法を考え出すとかいうことで、全地域にこの失業保険法の中の日雇い失業保険制度適用されるようにやるべきであるという見地から、現行法通り置いておき、改正案のこの部分を削除したいと考えるわけでございます。  次に第三点は、三十八条の八の改正規定に条文を加えまして、現在存期間が通第六日でございますのを五日にしようというわけでございます。この待期間の点は一番私どもは重要に考えているわけでございまして、現在この失業保険法の中の日雇い失業保険制度が職を得なかった日雇い失業労働者諸君に非常に役には立っておりまするけれども待期という制度があるために実効が非常に少い状態にございます。日雇いで一日職を失ってから継続並びに通算待期があるために、すぐ失業保険金をもらえないような状態では、このような日雇い状態にあって非常に貧困人たちに対する保護は非常に少いものといわなければなりませんので、せめて現在通算の六日を五日に改め、しかもその中で保険財政がよくなった場合には、この次にございます自動的に上げ下げする規定を活用いたしまして、さらに四日に三日にと下げられるようにすべきであると考えましてこの修正主張するものでございます。次に第三十八条の十一の第一項の改正規定中の問題でございまするが、この二百八十円を二百二十円にする点でございます。今度の政府改正案日雇い失業保険制度の第一級の保険金額を百四十円から二百円にされましたことは前進であると論ずるわけでございまするが、その二百円の失業保険金額をもらう要件として、二百八十円の賃金額を定めておられまするので、その点は非常に実効を伴わないわけでございます。特にいなかでございまするとか中小都市では、その賃金の実態からして、第一級二百円の失業保険金をもらえる人はごくわずかでございまして、労働省側説明によりますると、数にして六割とか七割という数は言っておられまするけれども、それは人員でございまして、地域的に見ると半数以上もっと多くの土地の人々が今度の改正案によって第一級の二百円をもらえない状態にございます。それをもらえる状態にするために二百二十円にいたしたいと考えているわけでございます。現行法の第一級が失業保険金百四十円をもらいます要件として、賃金が百六十円でございますので、その差額は二十円でございます。それと同様の算術計算によりまして、二百円の失業保険金をもらう場合には二百二十円以上の者がもらえるというふうにするのが妥当であろうと考えるわけでございます。  次にこれらの処置をするために財政支出が必要でございますので、その点で労働者負担によるあるいは雇用主負担による保険料値上げという方法をとりませんで、国庫がこういう問題について金を出してこの問題を処理すべきであると考えるわけでございます。と申しまするのは、特に失業者諸君緊急失対事業というのはこういう公的機関でやっているものでございます。そこで就労を完全に与えないで失業状態になるということは、大いに国家責任があると思うわけでございます。そういう就労を十分に上げ得なかった責任国家負担するという意味から、失業保険内容をよくするという点についても当然国庫負担増額してこれに当るべきだと考えるわけでございます。その意味におきまして第二十八条一項のあとに修正を加えまして、日雇い失業保険制度につきましてのみ、現在三分の一の国庫負担を二分の一に引き上げようという修正案でございます。  このことによりまして、この修正を全部実施するために三十二年度におきましては年間約三億二千万円の国庫支出が必要になります。その三億二千万円の金は、今の三分の一の国庫負担を二分の一にする点、並びに現在日雇い失業保険制度に想定されております黒字の約二千万円、並びに日雇い一般もまぜました莫大な予備金、そういうものでまかないましてこれをやって参りたいと思うわけでございます。なお三分の一を二分の一にするにつきましては予算その他の関係がございますが、この点につきましては補正予算においてこれを組んでやっていくようにいたすべきであると考えているわけでございます。  非常に貧困状態で十分な就労日数をもらえずに失業いたしましてその失業保険金が少い、しかも今度高くなったと思って非常に喜んでおる諸君賃金が少いためにそれがもらえないという悲惨な状態を考えていただきまして、同じ国民であるこの人たちがせめてわずかながらも最低限度生活が維持できるように、この日雇い失業保険制度改正案プラスの点もございますが、プラスの少い点をさらによくしようという修正条でございますので、どうか満場一致御賛成下さいますよう心からお願いする次第でございます。
  4. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 以上で説明は終りました。  なお本修正案予算を伴うものでありますので、この際国会法第五十七条の三により、内閣において発言があればこれを許します。
  5. 伊能芳雄

    伊能政府委員 ただいまの社会党から出されました修正案に関しましては、前々から聞いておったことでありましたので、政府といたしましては慎重に検討して参ったのでありますが、御提案の各点につきましていずれもまことに残念でありますけれども賛成いたしがたい次第でございます。  まず第一は、十七条の三の改正規定を削除するということでありますが、現行規定の不合理、不均衡を是正したいということがこの改正趣旨でございますので、その意味からぜひこの規定は削除いたしたくないという考えでございます。  第二に、日雇い失業保険適用区域の問題でありますが、この問題は御承知のように町村合併によりまして非常にへんぴなところがこの区域に入るようになりますので、お言葉のように職業安定機関を増置することにつきましては、私どもといたしましても努力いたすのでございますが、ただ何といたしましても非常にへんぴな土地を無理に入れていくということはとうていできない余地が残ると思いますので、この規定は存置いたしたいと考えるのでございます。  次に待期日数の問題でございますが、六日を五日に減ずる点につきまして、直ちにこれを施行するということは多額の保険給付を生じまして、そのために大幅な保険料値上げをしなければならない、同時に国庫負担増額も伴いますので、待期日数の短縮を直ちに実行するということは非常に不可能でございまして、保険経済の情勢を見、好転いたしました場合に現行規定のもとにおいて実施いたしたい、かように考える次第であります。  次に第四番目に、給付区分の二百八十円を二百二十円に引き下げるという点につきましては、改正案の二百八十円の区分に置きますれば、第一級二百円の保険金の支払いを受ける者は全体の七割にも相当するのでありまして、これを引き下げるということは非常に給付増額を来たしましてとうてい困難なことになるのであります。また均衡上もいかがかと考える次第でございます。  次に日雇い失業保険制度に関する国庫負担現行の三分の一から二分の一に引き上げるという問題でありますが、他の社会保険との関係等を考慮いたしましてにわかにこの負担を二分の一に引き上げるということは困難な事情にあるということでございまして、まことに遺憾でございますが、以上の御趣旨は今後十分考慮いたすとして、さしあたりの問題といたしましてはぜひ原案によってやっていただきたい、こう考えておる次第であります。
  6. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 次に修正案についての御発言はありませんか。——御発言もないようでございますから、これより原案及び修正案を一括して討論に付します。通告がありますので、順次これを許します。五島虎雄君。
  7. 五島虎雄

    五島委員 ただいま議題となりました失業保険法の一部を改正する法律案につきまして原案反対日本社会党から提出されました修正案に賛成をいたす立場において、日本社会党を代表いたしまして討論をいたします。  すでに言い古された言葉ではありますが、政府は神武以来の景気を謳歌しておるのであります。日本経済新聞の発表した大手各産業昭和三十二年の三月決算の業績予想によりましても、鉄鋼界は三十五社平均利益が四億二千六百万円、利益率は七割七分を示して、配当は一割二分七厘となっております。八幡製鉄は二十五億も莫大な利益を上げております。思い起しますと、昭和二十九年ごろにそのドックには一隻の船影すら見なかった造船界が、今や四、五年先の注文量を持つに至っております。その上げる利益は一社平均で四億九千万円、利益率は五割四分も上げております。特に一般食品工業に目を通しますと、台湾製糖のごときは四割五分の高配当を示しているような状況であり、その他各産業業種別にわたって見ましてもいずれも空前の伸びを示しております。一方鉱工業の生産指数はどうかというと、昭和九年から十一年を一〇〇として昭和三十年度は一二六・六%に伸びました。ところが三十一年度には二一・四%も伸びて一四八%を示したのであります。  これに対しまして、労働者実質賃金指数昭和三十年から三十一年度にわずか一一%の伸びしか示しておりません。いかに賃金伸びが少いかということを物語るものであります。また雇用量伸びは大企業には見るべきものが少い。そうしてその多くは中小企業に吸収されているのでありまして、比較的低賃金の部面に就労していることを物語るものであります。しかも六十五万人に達する完全失業者がおり、一千万人以上に及ぶところの潜在失業者を忘れてはならないと思います。岸内閣石橋内閣同様完全雇用の実現を公約いたしたのでありますが、宇田企画庁長官の言う年八十九万人の雇用では、年々新たに加わる稼働人口を百万としてもこれではとんとんどころではありません。これにもなお不足するというようなことで、依然として潜在失業者完全失業者就職機会から取り残されるということになるのでありまして、政府のいわゆる完全雇用は百年河清を待つにひとしくその公約は全く国民を欺瞞するものであるといわねばなりません。  今ここに注目を要する点は政府失業対策であります。まずその賃金昭和二十九年からここ三カ年も二百八十二円に据え置いてきたのであり、そしてやっと今回わずかに二十円を引き上げて三百二円としました。しかし引き上げないよりも引き上げる方がいいとしましても、その就労日数はどうかというと、相も変らず一カ月二十一日にとどめたのであります。おまけに一日の吸収人員を昨年度の二十四万八千人からわざわざ二十二万五千人と、二万三千人も減少さしてしまいました。今全国平均三百二円といたしまして、算術計算で二十一日を掛けると六千三百四十二円となるのであります。これを一日に直すと二百十二円となって、全国家族構成を四、五人としますと、これまた算術的に計算いたしまして、一人当り四十七円で生活しなければならない勘定になります。全国市町村で月二十五日の就労があるのは東京だけでありますけれども東京にいたしましても、賃金を二十円プラスされて三百五十円として計即いたしますると、八千七百五十円となって、一日当り二百九十二円となるのであります。一人六十五円にしかなりません。五大市で最も就労日数の悪いと言われるのは京都市であります。これは十六、七日しか就労日がありません。その賃金を三百三十五円として五千三百六十円になります。一日一人当り四十円に満たない勘定になります。静岡市、宇部市、大牟田市その他中小都市においてはわずかに二百七十円、二百五十円しか達せないというような現状でありまして、その生活がいかにみじめであるかということをわれわれは痛感するのであります。いつも例に引っぱり出されるのでありますけれども野犬狩でつかまったのら犬の食事及び保管料は五十円くらいとられております。こういう計算になりますと、のら犬以下の生活であるということを証明するものであります。  昭和二十七年八月に、これは特に労働省、厚生省から委託して労働科学研究所東京都内三百八世帯を対象に経済、医学及び心理の三点から最低生活費研究をしたのであります。皆さんも御承知でありましょうが、この研究の発表によりますると、経済的には一人三千円以下では目立って体力が落ちる。また医学的には三千円以下では血液のヘモグロビンの量が目立って減少するということであります。また四千円以下では、親の知能がどんなにすぐれていても、子供知能は確実に悪くなるということを発表しました。もしそれこの証明が正しいとするならば、日雇い労働者や低賃金労働者子供たちの健康、知能に重大なる影響を与えるものと言わねばなりません。これは政治的問題であり、社会的問題であります。しかも一たび彼らが日雇い労働の世界に入ってきたとするならば、半永久的に就職機会はありません。好むと好まざるとにかかわらず日雇い労働という名の職業に陥っていくことは、これは労働大臣の言ばかりでないのでございます。  なお官公庁に雇用される臨時職員鉄鋼造船その他の産業における臨時工社外工も脆弱な雇用関係にあります。一たび景気の変動が来るや直ちに失業の運命を背負って立っていると言わなければなりません。  憲法第二十五条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度生活を営む権利を有する。」と規定しております。また二十七条は「すべて国民は、勤労権利を有し、義務を負ふ。」と規定しております。これは最低生活保障であり、完全雇用規定でありまして、すべての国民は動労を喜びとし、かつ最低限度生活保障を希望するものであります。それにもかかわらず生活するにも足らない低賃金労働者潜在失業者あるいは完全失業者があることはまさに政府責任であるといわなければなりません。  以上の観点から、わが党は社会労働常任委員会におきまして、ただいま失業保険法の一部を改正する政府原案に対して修正案提出いたしたのでありますが、その目的は、できる限り日雇い保険制度の充実をはかり、もって生活にあえぐみじめな日雇い労働者諸君生活を救済するにあるのであります。その過程においては自民党の委員諸君ともよく相談いたしまして、話し合いの場を作ってもらい、そうしてお互いに譲歩し合うことによって一部の共同修正案でこの委員会を通過させるという努力をしたのであります。しかしながらこの問題についても努力されたのではありますけれども、ついにこれが妥結に至らなかったということは、一部の委員諸君に対し感謝するとともに、これを否決されたということはまことに残念の至りであります。  まずこの政府原案改正の第一点は、日雇い失業保険制度における適用区域の整備という名目をもちまして、市町村合併によって市町村区域が拡大された結果、山間、僻地離島等適用区域から除外しようとするものであります。これは全く政府親心のなさを物語る証左であります。市町村合併によって同一行政地区となった以上、あらゆる施策を講じ、親心を発揮してこれらの問題を解決することが当然であろうと思います。もちろんこの人員は五千名に足りない人員であるということでありますけれども、人が少いからこういう問題を切り離してわれ関せず焉でおるというようなことではいけないと思います。従って社会党修正案通りこれを従前に据え置くことが最も妥当であろうと思います。  第二点は、失業保険金日額について二百円の日額を新たに設けました。そうしてこれを第一級とし、第二級は百四十円としそれぞれ上昇させたのであります。この点については時宜に適した問題であろうと思いますけれども、ここに問題なのは、この第一級、第二級の保険金給付されるためにはその賃金が二百八十円以上の者でなければ第一級を得られないし、それ以下であれば二級になってしまいます。二百八十円以上が七〇%該当するというような説明ではありますけれども、なおその陰には三〇%、すなわち該当被保険者を五十二万人とすれば十五万六千人は第二級に甘んじなければならない労働者が低賃金で苦しむということを物語るわけであります。またこれを算術的に計算しましても、百四十円から二百円に引き上げたのは四四%にすぎない。ところがこれを百六十円の賃金区分から二百八十円に引き上げたのは七五%の上昇率でありまして、これは全く不合理といわなければなりません。従ってわれわれは生活のみじめな失業者日雇い労働者諸君生活をこの保険制度によって一部でも引き上げるためには、保険給付制度をできるだけ増大してやらなければならない。これがすなわち政府責任でもあり、われわれの任務であろうと思います。従いましてこの二百八十円を二百二十円に引き下げることがすなわち妥当な主張であろうと思うのであります。  第三点は待期の問題であります。改正案にはこれに全然触れておりません。ところがこの保険制度効果を拡大するために待期通算六日を一日減らして五日にいたしますると、さいぜん申しましたように東京においてさえも二十五日の就労があっても、その賞金は非常に低いのでありますから、東京のように二十四、五日の就労日数のところでも給付を受けられる。全国日雇い労働者の受ける恩恵はまた大きいものであるといわなければなりません。従いましてこれはわが党の、主張は全く妥当であると思うのであります。  第四点は、失業保険金額自動的変更、いわゆるスライド制改正であります。現行法におきましては、毎月勤労統計における工場労働者平均給与額上昇または低下比率が二〇%をこえるときは失業保険金額表改正することとして、その改正前に離職して改正時に現に受給しておる者に対しましては、当該平均給与額上昇または低下比率が二〇%をこえるに至った期間の長短に関係なくすべての場合にその比率に応じて増額または減額した失業保険金を支給することになっておるのでありますが、改正案はこの不合理を是正するためと称しまして、改正の基礎となった月の前の十二カ月間における平均給与額上昇または低下比率が二〇%をこえる場合にのみ行うことに改正しようとしたのであります。これはまことに筋が通っていて合理的なように思われますけれども、実は現行失業保険金支給額を圧縮いたしまして消滅をねらったまことに巧妙なやり方であるといっても差しつかえないと思います。従いましてこの改正点には絶対に反対をいたしまして、わが党主張通り現行にとどめ置くことが妥当であろうと思います。  第五点といたしまして、日雇い失業保険制度は、その特殊性から一般失業保険と切り離して考えることが妥当であろうと思います。ことにその制度の拡充が必要であります。そこで三分の一の国庫負担を二分の一に拡大いたしまして諸施策を講ずることが適切であります。ただいまわが党から修正されましたもろもろの修正の要点におきましても、この国庫負担を拡大しつつこれを実施していかなければなりません。特に失業者に対するところの施策は国の責任においてこれを援護する、救済することは国民的な大きな責任でもありましょう。そこでわが党の案通りにこれを二分の一までに拡大強化することが最も適切な措置であろうと思います。なお一般失業保険の被保険者は五人以上の事業場の労働者適用されておりますが、五人未満の工場、事業場の労働者には適用されていないのであります。政府国民保険を打ち出し、着々その準備に当っているのでありますが、この際失業保険に関しましてもすみやかに五人未満の工業、事業場の労働者にも適用するように努力しなければならないと思うのであります。  以上の観点に立ちまして、それぞれわが党の修正案に強く賛成をいたし、政府原案に対してはさらに強く反対をいたしたいと思います。さいぜん申し上げました通り、この問題についての共同修正案について自民党の諸氏の努力は見たのでありますけれども、これが成功しなかったのは返す返すも残念であり、全国日雇い労働者諸君はこの問題についてほんとうに残念だろうと思うのであります。以上の趣旨を述べまして、私の討論を終りたいと思います。(拍手)
  8. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 田中正巳君。
  9. 田中正巳

    ○田中(正)委員 私は自由民主党を代表してただいま議題となりました失業保険法の一部を改正する法律案につき賛成の意を表明せんとするものであります。  失業保険法は、昭和二十二年十二月一日公布実施されてから八年余を経過し、その間数次の改正が行われ、わが国戦後の困難な失業問題に対処し、その機能を発揮して今日に至っていることは周知の通りであります。このたびの改正は、従来の制度に対し、これまでの施行経験に徴し、不合理を是正せんとするものであり、また特に改正
  10. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 起立少数。よって八木一男君外十三名提出修正案は否決せられました。  次に、本案を原案通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  11. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 起立多数。よって本案は原案通り可決すべきものと決しました。  次にただいま議決いたしました失業保険法の一部を改正する法律案に関しまして発言を求められておりますので、これを許します。大坪保雄君。
  12. 大坪保雄

    ○大坪委員 私はただいま可決されました失業保険法の一部を改正する法律案についてこの際附帯決議を付する動議を提出いたします。その動議は、印刷にして各委員のお手元に配付いたしてあるものであります。   〔参照〕     附帯決議  一、政府は、社会保障制度の拡大という見地から、従業員五人未満の事業所についても、失業保険適用し得るよう速かに実態調査を進められたい。  二、失業保険法第三十八条の十一第一項に規定する二百八十円の額については、政府改正法律の施行後における日雇失業保険制度の運営の実態を勘案して、これを引下げるよう努められたい。
  13. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 ただいま大坪君より失業保険法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されました。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  14. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 起立総員。よって本動議は可決せられ、失業保険法の一部を改正する法律案は附帯決議を付することに決しました。  この際、伊能労働政務次官より発言を求められておりますのでこれを許可いたします。伊能政務次官。
  15. 伊能芳雄

    伊能政府委員 失業保険法の一部を改正する法律案につきまして、慎重な御審議の結果、ただいま多数をもって可決されましたことに対しまして、心から感謝の意を表する次第でございます。  この法律案を可決するに当りまして決議されましたただいまの二点につきましては、政府といたしましてはその実現につきまして十分努力をいたす所存でございます。  第一の雇用労働者五人未満の事業所に対する失業保険法適用拡大の問題につきましては、この法案審議の過程におきましてしばしば政府側からも言明いたしましたように、昭和三十二年度におきまして所要の調査費を予算に計上しておりますので、十分これらの事業所の実態把握に努めまして、できる限り早くこれらの事業所に失業保険法適用の実現を期する所存であります。  第二の日雇い失業保険賃金区分二百八十円につきましては、今後も検討を加え、善処することにいたしまして、御趣旨通り日雇い労働者生活擁護の見地に立ち、改正法律の施行状況に即しまして今後も検討を怠らず、十分に考慮を払い、日雇い労働者の実態に即するよう措置することに万全を期する所存であります。
  16. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 御異議なしと認め、そのように決しました。  次会は明後二十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時三十二分散会      ————◇—————   〔参照〕  失業保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出)に関する報告書   〔別冊附録に掲載〕