○滝井
委員 大臣、それなら私もちょっと言わしてもらわなければならぬのですが、自民党さんの方で完全雇用をやっていく、そしていろいろな施策を今やっている、すなわち投薬しておるからやがてこれが日本経済に非常にいい薬理的な効果を現わしていい結果が出てくるだろう、すなわち失対
事業に出ておる諸君もそれを一つの足場にしてよりよき職業につくであろうということをおっしゃった。しかしこれはおっしゃることはできるのですが、われわれがその表現をはっきりさせていくためには何よりやはり日本の客観的な現状というものを見なければならぬ。投薬をすればそれが非常に速効的なものもあるし、それから非常にゆっくり現われてくるものもあるでしょう。しかしとにかく保守党の内閣も吉田内閣から鳩山内閣、鳩山内閣から石橋、岸とずいぶん続いておるのですから、岸内閣になったからといってそう投薬の
方法まで変っておるはずはない。
法律案、
予算案、全部受け継いでおる。そこで日本の実態を見てみると、
大臣、二つの特徴が現われておるのですよ。日本の経済というものは非常に景気がよくなってきました。いわゆる生産の伸びというものは一割も二割も伸びてきている。三十年度に発足した五カ年計画というものはすでにもう三十と三十一年で三十五年までのものをほとんど達成してしまった。ただあなた方が経済計画を立てたもので合っておったものは何かというと、生産年令人口が正確であった、それから労働人口の増加がある
程度正確であっただけで、あとはみな間違っておったのですよ。ところがよく調べてみますとその中でこういう特徴が現われておる。それは経済が非常に伸びたにもかかわらず、大産業の経営者が
政府の施策に
協力をしていないという一つの特徴が現われておる。具体的に見てみると、就業
状態というものがたとえば三割くらい増加をしておるにもかかわらず、常用雇用者というものはふえていないのです。問題はここですよ。増加しているのは何かというと、私がこの前ここで申し上げましたように、労働時間が増加をして、しかも日雇い的な臨時的な雇用が増加しておるという形です。そうしますとこれはどういうことかというと、日本の大産業の経営者は現在の日本経済の非常な伸びというものについては一まつの危惧を持っておるということです。この景気は長く続かないかもしれない。続くという見通しならば何もそう臨時工とかあるいは社外工というものを持ってこないのですよ。これは続かないと見ておる。従って大産業におけるところの雇用というものは増加しておりません。たとえばわれわれが健康
保険の
状態を見てみましても、いわゆる
組合管掌の健康
保険における被
保険者の増加というものは
昭和三十二年度
予算においても六万人しか
政府は見込んでいないのですよ。ところがそれは千人以上のものが健康
保険組合を作っている。十人以上千人までの間はいわゆる
政府管掌の健康
保険の中に入っておる。この層は非常に増加するのですよ。これは大体六十万くらいの増加を
政府は見込んでおるのです。こういう
状態を見てくると、大企業の経営者は、今の保守党の
政策が打ち出しておる景気について非常な危惧を持っておる。信頼感を持っていないということなんです。
大臣が薬をきかそうとするならば、ここらあたりに、薬ではなくて、一つ速効的な注射を打ってもらいたいということなんです。これがまず第一に大事なんです。日本の経済が好況の波に乗っておるにかかわらず、大企業の経営者は自分の産業に常用的な
労働者を入れていない、臨時的なものしか入れていないというところに日本経済の雇用問題に現われている一つの大きな特徴があるのです。いま一つの特徴は、非常に高水準な成長率にあるにかかわらず、就業がきわめて不完全であるということ、すなわち、日本の就業
状態というものは、景気がいいにもかかわらず改善せられていないという点です。今、
大臣は、
失業対策
事業を一つの足場にしてよりよきものを与えると言われましたけれ
ども、こういうところから結局
失業対策
事業というものが臨時工と同じような形になってしまう。だから、臨時工に行くなら自由な失対の方がいいじゃないかという気持にならざるを得ない。日本の産業は神武以来の好景気だと言われておるけれ
ども、こういうことが二つの特徴として浮きぼりされた形で現われていると思うのです。働きたくはないけれ
ども、ほかに仕事がなくて仕方がないからしぶしぶ今の職業についておるのを学者は非自発的な雇用と言うのだけれ
ども、そういう形ですよ。これを喜んでつく自発的な雇用にし、大産業の経営者にも
協力せしめる形にしてもらえるならば、そこで初めて今
大臣の言われるように
失業対策
事業というものが一つのプールになり、より堅実な
事業場に就職するという形が出てくると思うのです。徐々にと言うけれ
ども、保守党の内閣になってから出てきていないのです。こういう点、私は反駁するわけではありませんけれ
ども、今の
大臣の
答弁ではすぐに薬がきくとは言えません。一年か二年のうちにはきくだろうと思いますけれ
ども……。八十九万の労働人口がふえて八十九万が就業いたしました。そして残っている六十万の完全
失業者を来年からなしくずしに片づけていこうというきわめて万万歳のようなことをおっしゃいましたけれ
ども、どうも
納得がいかないのです。