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1957-03-19 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十九日(火曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 八木 一男君       植村 武一君    草野一郎平君       小林  郁君    田中 正巳君       高瀬  傳君    中村三之丞君       八田 貞義君    古川 丈吉君       赤松  勇君    岡本 隆一君       五島 虎雄君    滝井 義高君       堂森 芳夫君    山口シヅエ君       山花 秀雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         労働政務次官  伊能 芳雄君         労働事務官         (大臣官房総務         課長)     村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十九日  委員小島徹三君辞任につき、その補欠として大  石武一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月十八日  健康保険法の一部改正反対等に関する請願(横  銭重吉紹介)(第二一九四号)  同(高岡大輔紹介)(第二二二五号)  健康保険法の一部改正反対に関する請願伊藤  卯四郎紹介)(第二一九五号)  同(横錢重吉紹介)(第二一九六号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対に関  する請願風見章紹介)(第二一九七号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第二二八七号)  元満州開拓民処遇改善に関する請願吉川久  衛君紹介)(第二一九八号)  砂川町の簡易水道施設費国庫補助に関する請願  (山花秀雄紹介)(第二一九九号)  消費生活協同協合活動制限反対等に関する請  願(伊藤卯四郎紹介)(第二二〇〇号)  大工、左官及びこれに準ずる労働者社会保障  に関する請願田中彰治紹介)(第二二一五  号)  原子爆弾被爆者医療等に関する法律案に傷病  手当金追加に関する請願高橋禎一紹介)(  第二二二六号)  同(高橋等紹介)(第二二二七号)  同(松本瀧藏紹介)(第二二二八号)  同(高津正道紹介)(第二二四五号)  戦傷病者の更生及び援護に関する請願楢橋渡  君紹介)(第二二二九号)  戦傷病者雇用法制定に関する請願外一件(楢橋  渡君紹介)(第二二三〇号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第二二四六号)  健康保険法改正に関する請願高津正道君紹  介)(第二二四四号)  衛生検査技師身分法制定に関する請願外一件  (福田昌子紹介)(第二二四七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  失業保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第三一号)     —————————————
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  失業保険法の一部を改正する法律案を議題とし審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木一男委員 失業保険法の一部改正案につきまして労働大臣に御質問を申し上げたいと存じます。  今般政府の提出されました失業保険法の一部を改正する法律案提案理由を伺ったり、内容を拝見いたしますると、やや前進の形をとったところもございますが、その実効を伴わないとこりも多分に見受けられます。また改正の中であまり意味のない、場合によっては逆行するような部分もあると思うわけであります。それにつきましていりいろと分けて御質問したいと思いますが、まず第一に、政府改正の四行目に書いておいでになります一般失業保険制度における失業保険金額自動的変更の件でございます。これは時間もございませんので、私からは内容詳しくは申し上げませんが、今まで物価変動に基く賃金変動によりまして、失業保険金が上げ下げできるということが非常に広範に許されておりましたのを、今度はそれを時期的にいろいろと制限をしようということに相なっておるわけであります。おそらくは政府委員大臣の御説明でも、これは合理的であるという御答弁をなさると思うのでございまするが、形式的に合法的でございましても、実際に失業者失業した状態生活を助けるという失業保険法精神から見て、非常にその点に反したような状態になることが起ると思います。たとえばここは非常にバランスがとれているとか合理的であるという点は、インフレデフレもともに起るという想定に立っておるわけであります。ところが現在の経済情勢を見ますると、デフレということは当分の間考えられません。横ばいであるかインフレであるか、特に今度の政府予算の編成の方針をわれわれが検討してみますると、多分インフレ要因を持っておる。そういう状態においてこのような改正をなさいますと、これが改正ではなくて改悪になる。失業の前後において非常に物価が変っていく場合に、それだけの前ほどの恩恵失業者——恩恵というよりは失業時におけるごくわずかな生活保障が、前より薄くなるということになると思うのです。ですからこういうめんどうくさい、何と言いますか頭で考えて合理的であるかもしれないけれども、実際に即しては後退になるような改正は、考えられない方がよいのではないかと考えるわけですが、どうですか。
  4. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 八木さんの御質問でありますが、われわれはインフレにならないという前提の上に立っております。しかし今度の賃金闘争や運賃の問題、その他いろいろ要因がありますから、全然ならないと言い切れるかどうかわかりませんけれども、われわれ政府インフレにならないという方針のもとに立っておりますから、このスライド制のごときは廃した方がいいという説さえあったのです。けれども労働者擁護勤労者擁護の面からこういうことはあった方がいいということをわれわれは主張いたしまして、現在不合理であったものをさらに合理的に改善いたしたのがこのスライド制でございますから、御了承願いたいと思います。
  5. 八木一男

    八木一男委員 スライド制のようなものは廃した方がいいという説があったという。どの学者、どの事務官の説か知りませんが、そんなばかなことはない。スライド制というのは、賃金が安定し物価が安定していれば、別に発動しないのです。もし変動した場合に発動することになるわけです。そういうことを置いておくのは当然のことです。それをどういう人のどういう説があったか知りませんが、そんな人はとんでもない間違いでありまして、いささかも労働大臣とか労働省局長課長がそんな間違った、ただ観念論をとうとぶような人のそういう説に惑わされてはならないと思います。賃金変動していろいろなことがなかったらスライド制は発動しない。そういうことがもしあった場合に発動するためのもので、ある方が法律としていいことは明らかなんです。それを廃した方がいいという説は、これは労働大臣間違いであるとお考えになると思う。そういう間違いな説があったからということを援用して、この程度のことはいいだろうということは根底から間違っておる。その点労働大臣スライド制というものを全然いけないと考えておられるかどらか、はっきりとお伺いいたしたいと思います。
  6. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今のお話は、どうもそう激昂されるようなことを言った覚えはないのですけれどもインフレにならないという前提条件に立っている政府としては スライド式というものはおかしいじゃないかという説が起るのは当然だと思うのです。けれども、それはおっしゃるようにどういう世の中になるかわからぬものですから、われわれは労働者擁護のためにこれはつけた方がいいというので、労働省の方は皆さんの御協力を得て労働者擁護に回ったのでございますから、これは御了承願いたいと思うんです。  それから今の最後にお話しになった点も、われわれとしてはこれは合理的に改善したつもりでございます。
  7. 八木一男

    八木一男委員 スライド制でそういうふうになりましたけれども労働大臣がそれをはね飛ばされたのはいい。だけれども影響を受けられているのは前からの御答弁の中からうかがえる。スライド制を置いておく方がいいと思われながら、スライド制を置かなくてもいい、政府物価騰貴を来たさない政策をとっているのだから筋道が合わなくなるというような観念論で、ほんとう失業者のことを考えていない、労働者のことを考えていない、そのような論に対しては百分の一も影響されてはいけない。それ駁論して、そういう間違いは、閣僚であろうとほかの役人であろうと、そういう考え根底から変えさせるような努力をし、そうしてそういうものに労働大臣並びに労働省自体がいささかでも影響を受けるようなことでは、ほんとう労働行政を担当する任に当れないと思うわけでございます。しかし影響を受けられなかったという話ですから、それは一応そういたします。しかしこの案はいささか影響を受けているように私は思う。というのは——首を振られましたけれども政府物価騰貴を来たさない政策をとっているといっても、これは自面自讃であって、とにかく逆に少くとも物価が下るとか賃金が下るという条件は今のところ考えられない。政府の思う通りに行ったって横ばいからちょっと上る。それからわれわれの考え方や一般の危惧しているところではもっと上るといわれている。そういうことなんです。そういうふうになってくると、このスライド制内容が完全でなければ失業者が救われる度が少いということになるわけです。デフレの場合は逆ですが、現在デフレということは考えられておらない。インフレ考えられており、あるいは横ばいができるかもしれないというくらいしか考えられておらないときにおきましては、前にその状態において広範に失業者を救える制度があるのに、それをただバランスであるとかなんとか、そういうような法律上の——何と言いますか気持が悪いというような、そういうほんとう失業者の実態を知らない状態においてこういうものを変えようというのは間違いだ。失業保険法法律バランスだけではありません。失業保険法失業されて食えない失業者を助けるための制度です。その防げる程度が減ってくれば、この法律根本精神が減ってくるわけです。わざわざ前にそういう条文で広範な物価変動に備えるスライド制があるのに、これを今縮める必要はない。完全に物価が安定して、これからデフレインフレになるかどっちかわからないという状態であれば、デフレの場合を想定してこういうことを考えるのもあながち間違いではないでしょう。ですけれどもデフレとかそういうことが考えられないで、とまっているかインフレかということが大体において想定されているときに、そういうようなもしインフレであれば労働者が損するというような改正をする——われわれからいえば改悪、それをなさる必要はないと思う。それをなぜこういう厄介な条文をこういう時期に変えようとなさったか、非常に了解に苦しむわけです。労働大臣の私ども納得のいく御答弁をいただければそれで私どもも了承しなければなりませんけれども、どうも今までのところ納得がいきませんので、この点について、労働省みずからこれを直されるというようなお考えに立たれる御意思があるかどうか。
  8. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 先ほど来いろいろ述べましたが、さらにこまかい要点についての御質問でございますから、局長から答弁させます。
  9. 江下孝

    江下政府委員 スライド制は二十四年に、当時の非常に急カーブを描きましたインフレ情勢に対処をするという前提でできた規定でございます。しかもその規定ができた背景といたしまして、当時絶えずインフレが一刻の休みもなく続いて上っていくという状態を予想した規定でございます。従って昭和二十五、六年ごろからこの規定は実際問題としては、労働者保護の問題ということは別にして、実情に適さなくなったということは、私はっきり申し上げることができると思うのです。しかも昨年の十一月にこの法律規定によってスライドアップをしたのでございましたが、その際二八%の賃金上昇、すなわち二〇%以上の賃金上昇は、過去三カ年間において初めて二八%上ったという実情でございました。従ってその際にこの規定を発動することについて非常に不合理ではないか。と申しますのは、御承知通り、この規定によりますと、現に改訂の時期にまたがって受給しておる人について特別に改訂の日以後二八%のアップを認めた。といいますのは、結局過去数年間の上昇率を全部切りかえどきの被保険者だけに均霑させた、こういうことに相なったわけでございます。従って当時審議会でもこの問題をいろいろ議論した際に、どうもおかしい。この規定については政府において適当な早い機会において善処されたい、こういう審議会からの要望も当時つけられたわけでございます。そこで私どもとしましては、この要望に基いて関係方面と再々折衝いたしたのでございますが、結局今大臣からも申し上げましたように、今やインフレ時代ではない、この規定自体がおかしいじゃないかという有力な説もあったことは事実でございます。しかし労働省としましては、現在すでにある規定を今後なくする必要はない、むしろ合理的に改めるということの方が適当じゃないかということから、この一年間という期間に二〇%上ったという点で、実は了解点に到達した、これが偽わらざる実情でございます。
  10. 八木一男

    八木一男委員 労働大臣に伺いますが、一年ということになった、一%か二%一年ばかり前に上っておった。それから失業の前後において急にインフレが起って一九%上ったというときには、これは適用にならなくなるわけです。今平均して三年間七%ずつ上ったとか何とかいう例がありましたけれども、そういうことであればけっこうですけれども世の中経済状況はそうそう政府がいかに努力してもブレーキがきかないこともございます。従って前の規定の方が——それはこの規定で救われる人のケースは少いかもしれません、しかし救われる程度の多い規定を置いておいても別に間違いはないのだ。もしそういうことになったときには、これはデフレの場合は想定しておりません、インフレの場合だけ、その場合にはやはりそういう人たち規定を置いておくことによってすぐ救われる。そういう状態になったらまた考えるとおっしゃるかもしれないけれども法律制定の方がおくれる。ですから、その期間どうしても不利をこうむる人ができる。置いておいたって別にそういうような変動がなければ適用されないわけですから、それをわざわざ今から前もって締めておく必要はない。逆にデフレを想定する時代になったら、これは考える必要があると思うけれども、今のところ政府がいかに確信をお持ちになっても、今すぐ賃金が下ったり、いろいろな物価が下るということは常識から見て想定できない。上るか横ばいかという状態です。ですから、これは前の通り置いておいてしかるべきだと思う、それについてもう一回お考えになっていただきたいと思う。これは非常にややこしいのです。はっきり言って僕も不勉強でよくわからないのですが、労働大臣も非常に頭脳明晰であると思うけれども大臣になられてから日が浅いのでよく御検討になっておられないのじゃないかと思う。即刻、きょうでも慎重にお考えになって御答弁をいただきたいと思いますが、どうですか。
  11. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 八木さんのいろいろ労働者の前途を考えてのお話に対しましてはほんとうに感謝いたします。われわれは十分検討いたしました結果、ここに提案いたしましたものが最善のものだと思って出したのでございますから、御協賛を願いたいと思います。
  12. 八木一男

    八木一男委員 そう言われますと、もちろん労働大臣は十分御研さんいただいたことと思いますけれども、とにかく議会の審議で私どもからこういう意見が出た、今まで政府部内とか労働省内で出た意見と違う意見が出たということを頭に置いて、きょう半日お考えになっていただきたいと思います。  大臣は時間の関係がありますから、次の問題に移ります。日雇い労働者失業保険制度の問題でございます。まず小さな問題から先に申し上げます。  適用区域の問題ですが、市町村合併ができましたので、今まで適用区域でなかったものが、適用区域になった。それでここに書いてあるように、役所をたくさん作っておるけれども、手が回らない、だから実効が上らないから、離島とか僻地は省きたいということで、こういう改正案を出されたというのですけれども、これは間違いだと思いますが、どうでしょうか。
  13. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 従来安定所のある登録に行きやすいという所しか適用してなかったものが、今度は市町村合併がされたから、広い十里もある遠方までその区域に入ることになりました。従って保険金をもらいにくるのに、多くの汽車賃や旅費を払ったらなくなってしまうというような不合理ができてきましたから、できるだけ出張所とかそういうものでやっておりますけれども、私どもの選挙区にもありまして、礼文、利尻、天売、焼尻という離島などはどうにもならぬのでありますから、そういうところだけは省いていきたい、こういうふうに考えるのであります。
  14. 八木一男

    八木一男委員 政府としては何もしないつもりなら、こういうふうにしないと工合が悪い。適用区域内の失業者がうんと困ろうと、政府の方では役所が足りない、人が足りないと思ったら、こういう改正案を出さなければならない。それでは労働省の務めは勤まりませんよ。適用区域外があるというのが大体間違いで、僻地でも離島でも、失業者があったら、それが適用になるようにしなければならない。それが労働省の任務であって、それが今まで十分でなかったために、適用区域外があったということなら、それ自体労働省の大きな怠慢と言えるわけです。ところが市町村合併法律上そこが適用区域になって困るから、適用区域にしない、そんなことで労働省は行き詰まっておるが、役所が少いとか人員が少いということなら、なぜ大蔵省にもっと強く言わないのです。前と同じようなら労働省は眠っていると同じです。そういう点で労働省は非常に弱い、手ぬるい、不熱心だということがいえると思うのですが、それをはっきり熱心であると明言できますか。
  15. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 大へんおしかりを受けたのでありますが、できるだけ努力をいたしております。今申しますのは万やむを得ないところをさしているのであって、全体としてその区域内のものは必ずやるつもりなんです。ただ離島であるとか陸の孤島といったようなところもあります。十里も山の中にある、ぽつんとしたところがあって、行ったり来たりするのに交通機関もないというようなところをさしているのであって、全体としては区域内のものは全部行うという考えでありますが、万やむを得ない、主としてそういう離島だとお考え願えればいいと思います。
  16. 八木一男

    八木一男委員 そういう離島の方の失業者についてはどうしようと考えておられるか。ほっておくのですか。
  17. 江下孝

    江下政府委員 ただいま大臣から答弁申し上げましたように、私ども町村合併があったから漫然とただ除外するという考えではございませんので、当然できるだけ適用区域を広げていきたいと考えております。ただ率直に申し上げてなかなか今までのところ予算その他が十分整いませんので、一応こういう法律改正をやりまして、しかし現実は今後さらに適用区域を拡大してやるという方向でいきたいと思っております。  それから今の離島労働者の問題は従来からも実はあった問題でありまして、特に今回法律改正によって不便になるということではございませんで、これらの人たちに対しましては安定所等におきましてもできるだけ機会をとらえて出かけまして、そこで適切な職業指導なり失対事業というものについて十分地元協力を得てできるだけ就労日数方面考えていきたい、こういうことを講じていくということ以外に今のところちょっと考え当りません。
  18. 八木一男

    八木一男委員 そういうところで労働者の方もいろいろ適用を受けたい、失対事業の方もそうだし失業保険制度の方もそうだ。そこで労働者と話し合えば幾らも方法があると思う。たとえば失業保険の場合についてだけ言いますと、一括して認定をする、一括して支払いをする、代表が来てやるということを考えると具体的にいける。そういう方法をとればあえてこういうような除外をしなくてもやる道ができてくるのではないか。なかなかむずかしい問題もあるでしょうが、根本的には支所をふやし労働省人員をふやさなければなりませんけれども、それはどんどん進めていただくとして、それができるまでの間労働者自体もいろいろの失対事業適用を受けたいし、またそれに従って失業保険適用も受けたいということになるわけですから、労働者自体と話し合えばそれはできると思う。それを労働者を信用しないで、金を持っていって本人に渡さないでふところに入れてしまう者があるからできないという説明を伺ったと労働者代表が聞いておりますけれども、それについてもそういう人を信用しないことは間違いですから、それについて事故が起らない方法考えればできる。ただ手数がめんどうですが、ほんとう失業者を救う、労働者を救う立場に立ったならば労働組合とじっくりと話をし合ってそういうことをやっていく方法考える。基本的には全部適用する、支所が足りない分はそういうふうに組合と話し合ってやっていくという方策を立てられるべきであると考えるわけです。それについてどうですか。
  19. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 あなたの今御指摘になりましたような似寄ったことを局上長考えておるようでございますから説明いたさせます。
  20. 江下孝

    江下政府委員 適用区域外でございましても先生御承知通り法律規定任意適用という制度がございますので、そういう点については労働者話し合いをいたしまして、話し合いがつけばもちろん適用していくという方針で今後もやっていきたいと思います。
  21. 八木一男

    八木一男委員 一括認定一括支払いというようなことをどうか行政上でどんどんやっていただくようにお願いしたいと思いますが、それについてやっていくというはっきりしたお答えを願いたい。これは労働大臣からお願いしたい。
  22. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 これは検討は十分いたしますが、法規改正を伴う問題でございますから——わかりました。今のお話に対しまして、一人の泣く人もないように同情することがほんとうでございますから、研究いたしまして法規改正等が必要な場合には一つ御協賛願いたいと思います。
  23. 八木一男

    八木一男委員 時間の関係上、まだまだ不満足でございまして、また後ほど御質問するかもしれませんが、ほかのもっと大きな問題に移りたいと思います。  今度の改正の一番重要点でございますが、日雇い失業保険制度保険金額を変え、あるいは保険料を変えるという問題でございます。第一級百四十円のものが二百円になった。二百円の保険金を受ける要件を二百八十円の賃金をもらっておるというふうに定められたわけでございます。二百円に保険金を引き上げられたことは、保険料のことはあとで申しますとして、今の物価が上っておる点から見て妥当であると存じますが、それの用件が二百八十円でははなはだ過酷だと思うわけです。ほんとうに一日二百円の失業保険金をもらえる人がこれではごく少くなる。なぜこのような高い金額に定められたか。二百二十円以上の者が二百円の第一級の失業保険金をもらえるというふうに定めらるべきであったと思うわけでございますが、それについて労働大臣の御意見を伺います。
  24. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 大体今の保険状況を見ておりますと、二百円の第一級分が七〇%くらいでございます。前の九十円と百四十円の場合においても百四十円の方が七〇%くらいでございました。でありますから、これは妥当であると考えております。
  25. 八木一男

    八木一男委員 東京都の今の平均就労日数は何日になっておりますか。
  26. 江下孝

    江下政府委員 東京都の平均就労日数は最近では二十三、四日いっていると思います。
  27. 八木一男

    八木一男委員 最近と申されましたが、そのちょっと前はどのくらいですか。
  28. 江下孝

    江下政府委員 これは民間就労によって相当移動がございますので、一がいに申し上げられませんが、私の承知いたしておりますのは大体二十二、三日から四、五日程度は確保しておるように聞いております。
  29. 八木一男

    八木一男委員 労働大臣は七〇%と先ほど言われましたけれども、これは二百八十円以上の者が七〇%というふうに推定されるという意味であると思いますが、それについて労働大臣の方から……。
  30. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 大体二百八十円で保険が二百円の者が七〇%でございます。
  31. 八木一男

    八木一男委員 そこに重大な要件があると思う。賃金は二百八十円でも、そういう資格があっても二百円の失業保険金がもらえない人が出てくる。今東京都の例を伺いましたけれども二十二、三日あるいは二十四、五日、この失業保険金をもらうには待機という制度がございます。継続四日間、通算六日間を勘定いたしますと、二十五日の場合だったら三十一日オーバーしてしまう。二十四日の場合には三十日きっちりということになって、そういう資格があっても保険金がもらえないという場合が起る。ですから七〇%という数字は先ほども労働大臣が御答弁通り資格があるということだけでございまして、実際に第一級の失業保険金がもらえる人数ではないと思うわけでありまして、その点については上げたには上げたけれども、その恩恵を受ける人は少いということが言えると思います。大都会の東京都では保険料だけが上って失業保険金がもらえない。もらえなければ保険料が上っただけ損するわけです。全然もらえないという状態がある。その次に今度僻地へ参りますと、二百八十円というような基準賃金をもらっておる人はほとんどありません。そうなりますと、二百円になっても実効はない。少くと労働大臣のただ資格だけの勘定でも、三〇%は第一級はもらえない人が出てくる。資格だけの問題です。その人たちは新しい一級の保険金をもらえないわけです。労働省はばかにこれがいいように言っておられますけれども、いなかの方では基準に引っかかってもらえない。東京のような大都会では、待機に引っかかってもらえない。保険料だけ高くなって保険金が実際もらえない。中都市である程度恩恵を受ける人はございます。総体的に見て、非常にこの点で恩恵が行き渡らない。これを行き渡らそうとするならば、待機というものを根本的に考え直さなければいけないと思う。待機はもちろん通算六日、継続四日という待機がございました。それが保険財政で、一日ふやすという第二項がございます。あるけれども、そういうような手ぬるいものではなしに、根本的に基準を、われわれはもっと通算をなしにするとかということも言いたいわけでございますが、少くとも自民党の政府でも待機を今の六日、四日の線から一日か二日下げて、それを基準にして保険財政を考え、それをもとにして国庫負担を考えた基準において、そのうちに保険財政がよくなったときに一日ふやすという規定を活用する。今保険財政がよくなったから一日ふやすというようなことを御答弁になるでしょうけれども、それでは根本的な解決にならない。待機の基準自体を少くして、それに見合うだけの国庫負担その他財政措置をして、それから失業保険財政がその規定においてさらによくなったときには一日待機を減らすというような制度に変えなければ、ほんとうにこの失業保険法精神が生きてこないと考えるわけです。当然このような改正考えられるときに——この前の改正では、季節労働者について非常な圧迫を加えられた。今度は表面よさそうに見えても実効が伴わない。労働省失業保険法のような大事な法律改正考えられるときには、もっと根本的に待機を減らすとか、国庫負担をふやすとか、そういう点で考えなければ、非常に労働行政が停頓しておると言えると思う。これにつきまして非常に不満だ。なぜ待機を減らすことを考えられなかったか。なぜ三分の一という国庫負担に限定して、失業者の問題をもっと考えようという強い態度をとられなかったか。その点につきまして労働大臣の御答弁を承わりたい。
  32. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今、日雇い保険の問題については、三分の一ということは前から限定されておりますから、それを踏襲したのでありますが、今非常に強く御指摘になりました待機の問題に対しましては、やらないとは言わないのです。日本の産業経済がだんだん発展して好調の波に乗り、失業保険の方の経済状態にも余裕が生じていきますなら、現行法の規定に基きまして待機日数を減ずるようになっておるのです。今御指摘になりましたようになっておる、ところが生まれてまだ今日そう年限のたたないものですから、これを育成してこの保険の基盤が培養されて、それによって待機口数を短かくしていくということになるのでなければ、非常に不安定なものになる、その不安定なもののかわりに、三分の一を二分の一なりあるいは三分の二なり政府が出したらよいじゃないかという御趣旨だろうと思うのです。けれども、私は国家財政のことも考えなければならぬと同時に、保険はやはり相互扶助的な性格の上に考えることがほんとうであると思いまして、これを踏襲したのでございます。
  33. 八木一男

    八木一男委員 大体根本的に労働大臣考え方が労働者の立場に立っておらない。大体失業者が出たのは国家のいろいろの政策の失敗です。特に失業対策事業で十分な就労日数を与えられないのは、おもに特別に関係のある国家の責任だと言うことができる、そういう点で就労日数で十分なものを与えないで、そうして失業保険適用にほうり込んだ場合には、その失業保険だけでも十分にするということがなければ、ほんとう失業者のことを全然考えていない、労働者のことを考えていないということが言えると思う。国家全体の財政というようなことを考える前に、労働大臣労働者失業者のことを考えなければならない、それを強力に主張して最後に財政その他のほかの政策ともからみ合せて考える。初めから全体のバランスというような総理大臣のようなお考えを持たれることも別な意味ではよいですけれども、そういうことでワクをとられると、ほかのところでは自分の所管の仕事の重要性を極力主張いたします。あなたのところでは初めから国家財政、国家全体の政策などと総理大臣考えのような考えを出していかれたら、どうしたって労働省の方はあとになる、まず労働省の所管のことを主張なさって、最終的の調整のところにおいて国務大臣としてのそういう職責を果されるべきだ、ところがまず最初に私の質問に対して御答弁になったときに、国家財政総額ということが出る、そういうところに労働大臣としての任務をほんとうに自覚しておられない証拠が現われていると思うわけです。ほんとうにその職責を自覚しておられるならば、少くとももっと国庫負担を増額するという主張をなさっておられなければならないと思う。それをなさったような形跡は見えない。そういうことでは因る。今から労働大臣の決心を変えられてもけっこうです、その決心を聞きたいと思う。
  34. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 国務大臣のあり方についていろいろ御教示をいただきましたことは感謝いたします。やはり国務大臣である以上、国家総合的のことを考えることも忘れてはならないと思います。同時に私はふつつかな者ではございますが、勤労者の父であるという立場に立っていきたいと思う。それが今度の争議の考え方でありました。しかしそういう考え方がまた反面から非常に反撃を受けます。非常につらい立場に立っております。けれども私の信念は変らない、今いろいろ御指摘になりましたが、これは私は保険制度というものは相互扶助の面において成り立つものであると思うのです。これはあらゆる保険がそうです。それを国家からばかりやってしまえば保険じゃないのです。だからこれは保険制度の問題の考え方については、私は信念は動かない。勤労者をしいたげるという考えじゃない、保険制度というものは相互扶助の面の上に立つべきなんです。三分の一というものは他の方の国家補助から比べてそう低くありません。けれども失業者のために考えなければならぬということの場合は別途に考慮する必要がありますから、今後も努力はいたします。それから失業者ができたのは国の責任ではないかということでございますが、なるほど政策が貧困でありましょう。(「その通りだ」、「ノーノー」)けれどもよく考えて下さい。最近になってようやく日本経済というものは一本立ちになりかけておるのですよ。終戦後今日までの間の失業数ときょうの失業数を比べてみて下さい。それが減っているだけ国の政策がよくなっているといわなければならぬと思うのです。ところが昭和二十一年、二十二年ごろの状況と比べてきょうの状況は必ず違っているのです。でありますからそれだけ国が努力したという形跡があるといわなければならない。けれども何かどうも、八木さん一人ではありません、あなた方の方の党と、われわれの方は、何かこう、顔に筋を立ててものを言わぬと会議をしたような形が残らぬというような言い方はおもしろくないのです。よいことはよいと言ってもらいたい。悪いところは直していきますよ。どうか一つ御協力願いたいと思うのです。
  35. 八木一男

    八木一男委員 派生しまして雇用問題になりましたけれども、そこに政府の自尊心が強過ぎるところがあると思う。戦後あれだけ荒廃した日本経済が回復したのは、政府がよかったからではありません。国民全体が努力したからよくなってくるのは当りまえです。行き詰ったならば日本民族というものは生きる力がない、国民全体があらゆる点で努力したからあのような荒廃の状態から前進してくることは当然なんです。それを早くするかどうか。早くしなかったところに今までの保守党の政府の責任がある。それともう一つは国際情勢の転換によって変ってきた、これを自民党の政府が自分がよくやったことがよかったから景気がよくなったという、そういうようなうぬぼれでやっておるときには、もっとよくできる状態をとどめることになる。雇用状態においても産業の状態においても、そういううぬぼれは自民党の政府も断じてやめなければなりません。国民の努力と国際情勢が根本的な力でそれが大きく伸びた。それが政府の施策でもっと早く大きく伸びるところを縮めたということも言えるわけです。あなた方が伸ばしたと言うかもしれないが、そのはっきりした証拠はない。少くとも自分たちの政策で景気がよくなる、雇用が増大するというような自尊心、うぬぼれ、とんでもないうぬぼれを持たれたならば、日本の政治を担当する資格はありません。もっと謙虚にならなければなりません。自民党の諸君もそうだと思う。そういうことであって、今の数字の問題については時間の関係上触れませんが、雇用の問題については、失業者が減ってくるというような政府のいろいろの説明に対しまして私どもは決して納得しているものではございません。しかし問題が大臣の御答弁で少し横にそれましたので、その問題はきょうはとどめおきまして後に追及することにいたします。  保険の問題でありますが、保険というものは相互扶助の精神に立つべしということを言われております。それは一般の生命保険、火災保険その他では確かにそうでございます。ところが日本のような貧困な国では、たとえば病気というようなことがある場合においては、保険制度ではいけない、失業者やあるいは病人、これは健康保険にも関係がございますが、そういう人たちは自分で相互扶助の保険だけでその状態を用意するだけの力を十分に持っておらない。ただ保険学的な形式的な議論で、保険だから相互扶助でやるのが当りまえだということは、学者のたわごとでございます。日本の政治は生きている。苦しい人はそういう理論では助かりません。失業問題であるとか、あるいは病気の問題は、ほんとうは国家が全体に保険の問題でなしに片づけなければならない問題なんです。それを政府の政治が貧困であるために保険にしわ寄せしているわけです。そういう点で一応保険で原則的にやることを自民党の貧困な政策として納得したといたしましても、保険に公的扶助の国庫負担の大幅なものを持ってこなければ、今の失業者とか病人は助からないのです。保険学的な、そんな簡素な学者のから意地みたいな理屈で、保険だから相互扶助でやるというような考え失業者の問題を考えるとすれば大間違いであります。そういうような考えを根本的に直してもらいたい。
  36. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 いろいろ御意見を拝聴いたしましたが、日雇い失業保険制度におきましては、すでに国庫は事務費の全額及び給付に要する経費の三分の一を負担しております。それは他の社会保険に比して著しく高いものであります。でありますけれども、私は今これを答えたんだ。けれどもあなたの方はそんなことではいけないのだ、ほかの社会保険もうんと上げたらいいじゃないか、同時に失業保険も上げたらいいじゃないか、こういうお説であります。お説として拝聴しておきます。
  37. 八木一男

    八木一男委員 ほかのバランス考えられますけれども労働大臣労働行政を扱っておられますし、そして失業者のことを担当しておられます。その労働大臣がほかの保険バランスというようなことを考えたのでは、失業保険に対する対策が進行するはずはございません。国務大臣であられますけれども、そういうような自分が総理大臣になったような立場ばかりを強調して、労働大臣という任務を第二義的なものに考えておられるような御答弁は私どもにとっては非常に不満足でございます。少くとも現在ほかとのバランスはあるけれども失業者の問題が重大であるから、ほかの保険がそろいうように国庫の負担が少いのがいけないのであって、われわれは当然失業保険についての国庫負担を増額すべきだという積極的な意見を持っている、ことし大蔵省に交渉しなかったのは非常申しわけないが、来年は必ず上げてみせるというような積極的な答弁がなければ、労働大臣としては不適格だと思う。
  38. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 まあ、欠格条項が多いのですから、これから大いにそれを補正していきたいと思うのですが、今御指摘になりましたように、われわれは国務大臣としてこういう答弁をするよりしようがないのです。大蔵大臣といつけんかしたとか、大蔵大臣がこう言ったからこう言ったということを国会で言うのはどういうものでしょうか、私は自分としても、日雇いの方も三百二十円にしようとして努力したんだけれども、三百二円にしかならなかった。しかしこの方も相当努力はしているんですけれども、内輪のことをここで言う方がいいんでしょうか、私はそうではなくて、政府と一体になっていくという態度をとることが労働大臣としては当然だと思う。しかし勤労者の生活擁護ということは、先ほども申しておりますように、私は勤労者の父としての態度をとりたい。これは忘れておりません。これはあくまでも守っていきたいと思います。
  39. 八木一男

    八木一男委員 政府部内で大蔵省、大蔵大臣がどう言った、こう言ったということは言いにくいというお立場はわかります。しかしわれわれはなぜこれが前進しないかということについて追及をしなければならぬ。労働大臣が根本的にこれを前進させる考えがなければ、労働大臣にするどく追及しなければならぬし、労働大臣がその考えを持っておっても、大蔵行政の立場で押えられておるなら、これは大蔵大臣を追及しなければなりません。われわれはあくまでもそういう問題について追及していかなければならぬ。あなた方の立場はまた別かもしれません。で、そういう質問をしておる。わかりましたか。——それからそういうことでこの待機の問題を考えなければ、失業保険の根本の精神がうまくいきません。これを今度考えられなかった。言ったかもしれぬが、大蔵大臣に締められてだめだったというような話か、それとも全然言われなかったのか、これは今のお答えでは御答弁の限りじゃないと思います。そうならば、失業保険について労働大臣は非常に認識が浅く、不熱心だったということになるわけです。こういうことについて即時お考えを願いたい。  それから次に二百円の第一級の保険料を取れるものを二百八十円にした。これは待機の問題でも申しましたけれども、いなかの方は、これでは第一級の保険金は実際上もらえないことになる。基準賃金が二百八十円をこす人はいなかの方ではごく少い。ですからこれは当然二百二十円くらいにすべきだ。この前第一級の百四十円のものの資格が百六十円の賃金でございました。それから考えると、算術計算じゃなしに、比例計算ですべきだというような御答弁があるかもしれませんけれども、少くとも算術計算の立場に立つならば、二十円の差、二百円プラス二十円で、二百二十円以上を第一級の適格者にするといあのが当然であろうと思う。その点二百八十としたことは、表面失業者に対してこういうようによいように見せて、そうして実際は一つも役に立たない、そういうような実にけしからぬ法案である。二百二十円になぜしなかったか、これからされる意思があるか、はっきり御答弁願いたい。
  40. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 できるだけ御要求に応ずるように努力いたしたいと思うのでありますが、大体七割がその二百八十円あるいは二百円の保険金という方向にいっておる現状でありますからこういたしましたが、これにつきましては今後努力はいたします。  それからこまかしい内容については、さらに局長にも意見があるようですから局長意見を聞いていただきたいと思います。
  41. 江下孝

    江下政府委員 折衝の過程におきましては、これはいろいろ問題はございましたが、結論的に二百八十円ということになったわけでございます。そこでこの二百八十円は大臣も申しましたように、現在の被保険者賃金水準からいたしまして、失対事業賃金水準が今度三百二円に上りましたので、失対事業関係では六割程度が大体この第一級の被保険者になると思います。民間関係はこれよりもっと賃金が高いのでございますから、九割程度は大体第一級ということに相なると思います。  そこで御参考までに申し上げておきますが、実はこの日雇い失業保険を創設いたしました当時は、失対賃金は実は百六十三円でございました。今度は二百八十円で三百二円、その当時は百六十円の賃金区分で失対賃金は百六十三円、現在は数年たちましたので、第一級がほとんど全部になりましたけれども、施行当時はこういう事情でございました。従って私どもは二百八十円が低くなるということの望ましい点はよくわかりますけれども、従来の実績から見ましてもこの際の改正といたしましてはこの程度で了承をいたした次第でございます。
  42. 八木一男

    八木一男委員 そういうことではいけないので、少くとも労働大臣はそういう前に百六十円の賃金のものが百四十円取れたということであれば、それにバランスをとって二百二十円以上のものが二百円を取れるというふうになさるお考えにならなければならない。それからいろいろな関係があったと言われるけれども、それは労働省自体が一丸となって努力されれば解決がつく問題ではないかと思います。そういう点で、私どもはこれでは納得をいたしません。この二百八十円についてはこのくらいにして、時間もありませんからほかの問題に移ります。  保険料の計算が今度は五円五円の十円にされた、ところが計算したらこれは九円五十銭で済んだはずです。それをなぜ切り上げられたか。
  43. 江下孝

    江下政府委員 御承知通り一円未満の端数は現在ございませんので、九円五十銭を十円にした、こういうわけでございます。九円にしますと端数がつきますので、八円ということになります。そうなりますと保険経済上非常に赤字がふえますので十円に上げた、こういうことでございます。
  44. 八木一男

    八木一男委員 その端数の問題につきましても、技術的に考えれば解決がつくのではないかと私は思うのです。いろいろ計算上不便だというような点があっても、それ自体で、金は小さいとはあなたはお考えになるかもしれませんけれども、零細な生活をしている失業者の身になってみれば、また労働者の身になってみれば、そういった技術的な問題で少くとも切り上げられるということはおもしろくないと思います。それで九円五十銭を十円に切り上げるかわりに九円に切り捨てて端数で考えてもいいし、端数がいけないなら、なぜ、労働者の方は四円、それから雇用主の方は五円という制度——現在の第二級にはそういう差額のある制度がある、そういう考えをおとりにならなかったか。そういう考えでやっていかれるのが当然なのに、端数がうるさいからといって切り上げて、そして無理に労働者と雇用主と半々にする。三円と二円というふうに第二級の変った制度がある。四円と五円にしたらいい。そういう点で、労働大臣は非常に労働者の父だと言われますけれども、おやじでもこわいおやじであってやさしいお父さんとかお母さんの気持はないように思われる。やさしい母親の気持も持たなければいけない。そういうことは、変えようと思ったら変えられる。これからお考えになる気があるかどうか。
  45. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 五十銭違っても、ほんとうに零細な生活から見れば貴重なものです。それを端数を切り上げたという今の答弁でありましたが、できればやはり九円五十銭にした方がそれはいいと思います。これが計算上いろいろなことでやられたということですが、事務上の便利からでは私は答弁は通らないと思う。今後努力はしたいと思います。それから、今の御指摘になりました問題に対しましては、今年はこの程度で、やり直すということはなかなかむずかしいのですよ。これで一つ御承認を得たいと思うのです。それでなければ、これをまた直さなければ通さぬなんということだと今年通らぬことになりますから、ぜひ一つ御承認願いたいと思います。
  46. 藤本捨助

    藤本委員長 八木君にちょっと申し上げますが、参議院の内閣委員会労働省所管の法案が討論採決になりますので、大臣を待っておられますから、大臣への質疑は後に保留して下さい。
  47. 八木一男

    八木一男委員 ちょっともう一問だけ。九円五十銭の問題はそういうふうに保険料の方にお考えになってもいいし、その財源を二百八十円のものを下げる財源にも使える、いろいろな方法があると思う。それで、少くとも二百八十円を二百二十円に下げていく、これは五十銭では片づかないでしょうけれども、とにかく二百二十円に下げることを至急考えていただきたいとわれわれは考えるし、また二百八十円のままではわれわれはこの法案に賛成するわけには参らないと考えておる次第であります。その点について至急お考えをいただきたいと思います。質疑の途中でありますが、労働大臣の御都合がおありになりますので、私の質疑はこれで打ち切りまして他日に譲りたいと思います。
  48. 藤本捨助

    藤本委員長 了承いたしました。  暫時休憩いたします。    午前十一時三十七分休憩      ————◇—————    午後一時三十五分開議
  49. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  休憩前の質疑を続行いたします。滝井義高君。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣もお忙しいようでございますから、私簡単に二、三の点だけをお尋ねしておきたいと思います。  今度の失業保険法の一部を改正する法律案というのは、正直に見て相当進歩的ないいところがあるわけなのです。しかしこれをいよいよ実施する段階になると、やはりいろいろ問題点があるような感じがいたします。そこでそういう点を少し具体的に大臣の御意見を聞かしていただきたいと思うのですが、それは、たとえば私福岡県の例を一応とって具体的に質問してみたいのです。現在福岡県の日雇い関係状態を見ると、二万二千五百九十一人おります。これを地域別に分けますと、甲地区、乙地区、丙地区と、こういう工合になっておるのです。甲地区は二百八十円、乙地区は二百五十円、丙地区が二百三十五円となるわけです。甲地区の人員が一万一千百二十六人、乙地区が一万一千二十五名、丙地区が四百四十名です。そうしますと、今度の予算は今までの二百八十二円の全国的な平均の賃金が、六・五%引き上げられて三百二円になるわけです。これを今の甲、乙、丙地区に適用しますと、甲地区は三百二円くらいになる。乙地区は二百七十円くらい、丙地区は二百五十五円、こうなるのです。現在失業保険をもらえる賃金の基準というのは、百六十円が分水嶺になって、九十円になるか百円になるかですね。今度は二百八十円になったわけです。そうしますと、この二万二千五百九十一人のうちで、いわゆる二百円の保険金をもらえる者は、一万一千百二十六名しかない、結果的に見るとこういうことになるのです。そしてしかも格づけ賃金と応能賃金で女子はほとんどもらえなくなってしまう、こういうことになってしまうのです。もらえる人もあるが、格づけ賃金と、能力に応じていくわけですから、ほとんどもらえなくなってしまう。そうしますと、まあどういう結果になるかというと、結論を言うと、一応二百八十円というものを基礎にして二百円の失業保険金をもらえるということは、これは非常に進歩的な面で喜ばしいことです。ところが、これを具体的に福岡県のような労働県に適用しても、五割ぐらいの人しかこの恩典に浴さない、こういうことです。ここに一つの——実情がおわかりにならぬといかぬから、実情を申し上げれば一番よくわかるので、私は今具体的に申し上げた。八木先生は一応抽象的な議論を展開されたようであるので、私は各論で具体的に質問してみると、こういう実情なんですが、この点を大臣はどういう工合にお考えになるのか、一つ大臣の率直な御見解を承わっておきたい。
  51. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 滝井さんの御心配ですが、しかしまあ福岡県がこれだけの失業者をかかえているとすると、これは全国でも有数です。大体全国の一割ですからね。われわれの予算で組んだのは二十二万五千ですから、やはり相当な県だと思うのです。それで二百八十円の線に入っているのは五〇%ですね。全国平均はあなたのところよりもよくて、七〇%になっていると事務当局から聞いておるのです。だから七〇%だからいいんじゃないかとさっきから言っておるんだが、七〇%になれば全部が二百円ということもないことですから、そこそこじゃないかと思っておるわけですが、こまかしいことは、真剣な話ですから、事務当局から答えさせます。
  52. 江下孝

    江下政府委員 福岡県の例を今おあげになったのでありますが、全国平均は今二百八十二円です。今度は三百二円でございますから、先ほど申し上げましたように全国の失対労務者のうち、今度賃上げされました賃金によりますと、約六割が私どもは第一級の保険金をもらえる階級になると考えております。そこで先ほど八木先生の質問にお答えいたしましたように、前回日雇い失業保険を初めて施行しましたときには、百六十二円というのが失対の賃金であった。それと比べますと、今度は二百八十円で区分して、日雇いの失対賃金が三百二円ですから、その点から見ると、むしろその点は有利になっております。最近は御承知通り長い間制度を変えなかったために、ほとんど全部が一級である百四十円クラスになっておったのでありますが、当初においてはそういうことでございます。従って半分ちょっと出る程度、六割程度のものが私ども適用されるということでまあ満足すべきじゃないかと考えております。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 七〇%と言っておったけれども、第一級は六〇%くらいだということで、一〇%下ってきたことになるわけですが……。
  54. 江下孝

    江下政府委員 ちょっと、今申し上げましたのは失対労務者のことでございます。民間の被保険者を入れますと七〇%ということです。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 少し舌が足りなかったんでしょう。そうしますと、それはあなたの計算でそうなればけっこうですが、実は福岡県というのは賃金の水準が割合高いところです。それが私の数字では五〇%以下になっちゃうわけです。特にこれを地域的に見ますと、この第一級の保険金をもらえる地域というのは博多の地区と北九州だけになっちゃうのです。あとはもらえないんですよ。現実そうなるのです。しかもこの前個人的にいろいろお尋ねをしたように、実際には、何と申しますか賃金の形は甲地区ということになっておりますけれども、だんだんそれに格差が出てきておるわけです。そこでそういう実態であるので、私が大臣にお尋ねをいたしたい点は、大臣今度二百八十二円を三百二円と六・五%上げたんだが、一体その上っただけの二十円の配分というものは、このように甲、乙、丙とあるんだが、それらの地域にべたでやるのか、それともこれを何段階かに分けて、うんと地域差をつけて複雑な形にしていくのか、ここらあたりの基本的な大臣のお考え方を承わりたいと思います。
  56. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今予算審議中でございますので、予算が参議院を通過いたしましたら、格づけ、地域別の相談をしようと思っておりますから、その考え方については局長からお答えさせます。
  57. 江下孝

    江下政府委員 福岡県に限りませず、九州地方は一帯に従来から失対の賃金が県の実勢という点から見ますと、やや低いということじゃないかと思います。これは毎々申し上げておりますように、一般職種賃金を基礎にいたしまして、前回の失対賃金が出ました以上、かような次第に相なったのでございます。  そこで今回のこの二十円アップの措置でございますが、これは甲地区、乙地区、丙地区ごとにおのおの計算をいたすわけでございます。福岡、北九州地区は従来の二百八十二円を三百幾らかにする、こういうことに相なりまして、そうして私の方からはそれだけしか出さない、あとは県で今度は個人別にその基準に基いて格づけする、こういうことに相なるわけであります。
  58. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、今のようにべたに皆にやるということでなくて、それぞれ地域や何かに応じて格づけしていくというと、現在政府のとっております給与の体系は非常に複雑である。従ってこれを普通の事務職員については七級くらいにしていくんだ。すなわち下級の係員、上級の係員、係長、課長補佐、課長、それから局長、次官、こういう工合に七つになっていくわけですね。こういう形でなるべく簡素化し、単純化していこうという形が出てきておるわけです。そうしますと、同時にそれは地域給を廃止するという線で出てきておるわけです。そうしますと、国家公務員における地域給は廃止するという線が予算説明の中に明らかに出てきておる。最近自民党の中ではぐらついておりますが、聞くところによると、自民党においてもやはり四カ年計画くらいで廃止するという基本方針は変えてないようであります。そうすると、失対だけそういう格差をつけて地域的に作ることはいけないと思う。当然私は基本的な方針としては、国家公務員給与体系あるいは日雇いの給与の地域差というものも、やはり国家公務員にならってなくさなければならぬと思うのです。そういう点からいくと、今度上げました二十円、約七%程度のものは、やはりこれは不均衡を直しながらある程度べたに持っていく方が、地域給を直すという点から考えて合理的だと思う。それはやはり何か地域に応じて幾分かのつかみ金が二十円で行くのに、二十円の中から二十五円もらうところもあり、十三円ぐらいのところもあり、十八円のところもある。これではなかなか私は問題だと思う。そこらの基本的なものの考え方を大臣は一体どうするかということなんです。
  59. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今御指摘になりました当然そうならなければならないのが従来非常な格差があって困っておったというような地区は、今度の二十円で操作ができるかどうかわかりませんけれども、できるだけ従来の欠陥を補正することを重点に置きたいと思うのです。あとこまかしい問題については局長からお答えをいたさせます。
  60. 江下孝

    江下政府委員 御承知通り失業対策事業に働く者の賃金は、その地方々々におけるPWを基礎にすべきだということになっているわけでございます。そこで現在も私どもはその線でやっております。お話のようにこの点が国家公務員等の給与とは従来から違っているわけでございます。ただ最近の傾向といたしましては、地方もPWは相当上っておりますので、過去のようには開かないだろう、今度の賃金改正をやりまして若干差は縮まると私は思っております。しかし根本的な考え方は以上のような考え方でありますので、その点については若干地域差というものが出るのはやむを得ない、こう考えております。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 実は私はやはりそこに根本的な問題があると思うんです。現在職業安定所に働く失業対策の労働者の諸君というものは、もはやこれは次の新しい職を求めるために、失業保険が切れた後にそこを一つの立場としておって、次により高いものに飛躍していくという形は消えておる。もはや職安の失業対策の仕事につくためにも非常な競争が行われておる。もう今や職安における日々の仕事は一つの職業と化している、従って今までの地域の一般的な職種別の賃金の八〇%程度賃金をやればよろしいというような概念では、もはや失業対策というものは律してはいけない。これは私はこの前から、倉石さんが労働大臣のときからその主張をしている。今の日本の失業対策のあり方については、一つの職業になっている。失業対策じゃない、一つの職業化しておる。それは実態を調べてみれば、三年、五年と長い人が非常にふえてきたということなんです。これは普通の大産業における雇用状態を見るとそういうものじゃない。臨時工の形でむしろそういう形がとられてきておるということなんです。こういう実態をとらえてみると、大産業における臨時工と職業安定所を通じて職業を求める失業労働者の姿は全く同じでしょう。そういう点で考えてみると、もはやPWを基礎にしてものを考えて、そして今度はそれを基礎にしながら失業対策の賃金を組む、それで失業保険を組むというその根本のものの考え方というものを変えなければならぬと思うのです。従ってこれはやっぱりその地域のものの八割なんということではなくて、何かそこに適正なものを考えなければならぬ。たとえば生活保護の基準というものが大都市における勤労階級の平均標準の支出の四割を見ているのです。ところがこれはいかにも科学的なもののように見ておるけれども、これぐらい非科学的なものはないのです。だから今非常に問題になってくるのです。それと同じように、この失業対策の賃金というものも、やはり根本的にものの考え方、基準を変えなければならぬ段階にきていると思うのです。そういう点についてどうお考えになっているのか。
  62. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 これはわが党政策の重点に触れられたわけです。雇用の増大をする、完全雇用に持っていく、つまり日本経済に対して積極的な施策を行なって完全雇用に持っていくというのがわが内閣の一つの方針であります。それに向っていろいろな施策をやっております。まだ薬がききませんから、失業の面については今のお話のような問題になると思うのです。今年はパーというか八十九万と八十九万ですから、大体今年の予想はそれでいいのですが、潜在失業者並びに完全失業者を救うところにいかないのです。けれども来年以降この政策を続けていきましたならば、やはり企業が拡大されて貿易がふえて国土の総合開発が進んでいくということになれば、いやがおうでもふえてくる。新しい就職の希望者よりも仕事の方が多くなりますから、自然失業者の吸収がされていく。しかしそれは幾らされるかと今聞かれても、今はまだ計画が立っておらぬのです。鳩山内閣の五カ年計画というものは昨年の状況において御破算しなければならぬということで、今年の四月から九月ないし十月ごろまでかかって第二次五カ年計画を立てることになっておりますが、その結果を待たなければ申し上げることはできませんけれども、今年の減税といい、今年の財政投融資といい、あるいはその他の中小企業の対策といい、これはやっぱり失業者を吸収することのできる方向でありますから、それが自然に積極的に行われて参りましたならば、完全失業者というようなもの、この失業対策によって救済しなければならぬものは自然に減少すると思うのです。またそういうふうな政策を打たなければならぬと思うのです。わが党はそういう方針で進んでおります。職業がないというようなことは、今まではあまり施策が貧困であったものですからそういうことになるのでありますが、今後はだんだんその線は少くなって、御心配のような点はないようになるであろう。私はこの間このことを率直に五島代議士に申し上げましてしかられちゃったのです。失業対策を職業にしてもらっちゃ困るのだ、その場を一つのプールとして、プールから一日も早くのがれ出るように努力してもらわなければならぬと言ったのですが、それは少し言い過ぎであってあとでしかられたのです。しかしそうでなくて、逆にいえばプールから多くの人間を引っぱり出すだけの仕事ができなければいけないというのがわが党の方針であります。どうかまだ薬を飲んだばかりできいておりませんから、これから薬のきき目をごらんになって御批評を願いたいと思います。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、それなら私もちょっと言わしてもらわなければならぬのですが、自民党さんの方で完全雇用をやっていく、そしていろいろな施策を今やっている、すなわち投薬しておるからやがてこれが日本経済に非常にいい薬理的な効果を現わしていい結果が出てくるだろう、すなわち失対事業に出ておる諸君もそれを一つの足場にしてよりよき職業につくであろうということをおっしゃった。しかしこれはおっしゃることはできるのですが、われわれがその表現をはっきりさせていくためには何よりやはり日本の客観的な現状というものを見なければならぬ。投薬をすればそれが非常に速効的なものもあるし、それから非常にゆっくり現われてくるものもあるでしょう。しかしとにかく保守党の内閣も吉田内閣から鳩山内閣、鳩山内閣から石橋、岸とずいぶん続いておるのですから、岸内閣になったからといってそう投薬の方法まで変っておるはずはない。法律案予算案、全部受け継いでおる。そこで日本の実態を見てみると、大臣、二つの特徴が現われておるのですよ。日本の経済というものは非常に景気がよくなってきました。いわゆる生産の伸びというものは一割も二割も伸びてきている。三十年度に発足した五カ年計画というものはすでにもう三十と三十一年で三十五年までのものをほとんど達成してしまった。ただあなた方が経済計画を立てたもので合っておったものは何かというと、生産年令人口が正確であった、それから労働人口の増加がある程度正確であっただけで、あとはみな間違っておったのですよ。ところがよく調べてみますとその中でこういう特徴が現われておる。それは経済が非常に伸びたにもかかわらず、大産業の経営者が政府の施策に協力をしていないという一つの特徴が現われておる。具体的に見てみると、就業状態というものがたとえば三割くらい増加をしておるにもかかわらず、常用雇用者というものはふえていないのです。問題はここですよ。増加しているのは何かというと、私がこの前ここで申し上げましたように、労働時間が増加をして、しかも日雇い的な臨時的な雇用が増加しておるという形です。そうしますとこれはどういうことかというと、日本の大産業の経営者は現在の日本経済の非常な伸びというものについては一まつの危惧を持っておるということです。この景気は長く続かないかもしれない。続くという見通しならば何もそう臨時工とかあるいは社外工というものを持ってこないのですよ。これは続かないと見ておる。従って大産業におけるところの雇用というものは増加しておりません。たとえばわれわれが健康保険状態を見てみましても、いわゆる組合管掌の健康保険における被保険者の増加というものは昭和三十二年度予算においても六万人しか政府は見込んでいないのですよ。ところがそれは千人以上のものが健康保険組合を作っている。十人以上千人までの間はいわゆる政府管掌の健康保険の中に入っておる。この層は非常に増加するのですよ。これは大体六十万くらいの増加を政府は見込んでおるのです。こういう状態を見てくると、大企業の経営者は、今の保守党の政策が打ち出しておる景気について非常な危惧を持っておる。信頼感を持っていないということなんです。大臣が薬をきかそうとするならば、ここらあたりに、薬ではなくて、一つ速効的な注射を打ってもらいたいということなんです。これがまず第一に大事なんです。日本の経済が好況の波に乗っておるにかかわらず、大企業の経営者は自分の産業に常用的な労働者を入れていない、臨時的なものしか入れていないというところに日本経済の雇用問題に現われている一つの大きな特徴があるのです。いま一つの特徴は、非常に高水準な成長率にあるにかかわらず、就業がきわめて不完全であるということ、すなわち、日本の就業状態というものは、景気がいいにもかかわらず改善せられていないという点です。今、大臣は、失業対策事業を一つの足場にしてよりよきものを与えると言われましたけれども、こういうところから結局失業対策事業というものが臨時工と同じような形になってしまう。だから、臨時工に行くなら自由な失対の方がいいじゃないかという気持にならざるを得ない。日本の産業は神武以来の好景気だと言われておるけれども、こういうことが二つの特徴として浮きぼりされた形で現われていると思うのです。働きたくはないけれども、ほかに仕事がなくて仕方がないからしぶしぶ今の職業についておるのを学者は非自発的な雇用と言うのだけれども、そういう形ですよ。これを喜んでつく自発的な雇用にし、大産業の経営者にも協力せしめる形にしてもらえるならば、そこで初めて今大臣の言われるように失業対策事業というものが一つのプールになり、より堅実な事業場に就職するという形が出てくると思うのです。徐々にと言うけれども、保守党の内閣になってから出てきていないのです。こういう点、私は反駁するわけではありませんけれども、今の大臣答弁ではすぐに薬がきくとは言えません。一年か二年のうちにはきくだろうと思いますけれども……。八十九万の労働人口がふえて八十九万が就業いたしました。そして残っている六十万の完全失業者を来年からなしくずしに片づけていこうというきわめて万万歳のようなことをおっしゃいましたけれども、どうも納得がいかないのです。
  64. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 法案にあまり関係のないやりとりでございますけれども、おっしゃるのに、ここにおって言わずにおると何かおかしくもあるから言わなければならないのですが——一つ一つ答えていきます。  まず労働時間が増大したという問題、これは十分認めます。この一番大きな原因は、第二産業の発展による技術者の足らぬことなんです。熟練工がない。それから教育の問題です。閣内に雇用関係閣僚懇談会というものを作って文部大臣にも入ってもらっているのですが、日本の産業のあり方について教育を直していくことが必要です。実際には文科が八〇%、ほかの美術科その他もありますけれども、一応技術に関係するものが一八ないし二〇%、ところが雇用の問題は逆なんです。そこで週に六十時間働かしたり六十八時間働かしたりしているのです。そうしなければその企業の指導ができないのです。指導的立場に立っている技術者が労働時間を非常に長くしておりまして、私自身もこれについては悩んでおります。労働省としては、低い程度でありますが技能者の養成その他をやっておる。職業安定所もやっており、いろいろなことをやっておりますが、そんなことではこの問題は解決つかぬのです。これはやはりデンマークや西ドイツがやっているように、そこの円の産業をどう持っていくかということに基本を置いて、それに合うような教育方針を作り上げるのでなければだめなんです。この点も私御指摘に甘んじます。これは保守党の失敗といえば保守党の失敗だけれども、この問題はあなたの方だって片山内閣があったからそのとき直せばよかったので、同じことをやっているから、これは日本全体の責任です。だからこの点は考えていかなければならぬと思うのです。  それから第三産業が政府協力していない、政府協力していないというよりも——第三産業というものは、これは気の毒だと思うのです。   〔「大産業だよ」と呼ぶ者あり〕
  65. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 大産業、これは私は協力させなければならぬと思うし、現に協力していると思うのです。政府協力せずには成り立たないものでありますから、これは協力していると思うし、協力していなければ協力させなければならないと思うのです。それよりも、注射を打てとおっしゃるが、注射を打っているつもりなんです。その注射の量が足りないだけの話なんで、注射を打っているわけです。それはどういうことかというと、神武以来の好景気好景気と言うけれども、神武以来の好景気の存在場所は偏在しているのです。これを地ならしすることが石橋内閣の延長のこの内閣の使命であると思うのです。その地ならしの方法は何をやったかといえば、減税と一千億施策です。一応地ならしの形においてこれをやっておるのです。今後また中小企業に対する団体法、組織法その他を考えていく。中小企業の振興対策を考えるということも一つの注射でありますが、注射という問題について、薬の量は足りなかったかもしれぬれれども、その方向に向ってはやっていると思うのです。だから、先ほどから言っているように、これは今年だけで打ち切ってはだめなんで、これを計画的に積極的に毎年々々やっていかなければ完全雇用にはいかないということを言っているわけなんです。大体今御指摘になったことはそういう点で答弁になると思いますが、これはあまり法案に関係ないからそのやりとりはやめて、法案の問題を片づけてもらいたいと思いますが、どうでございますか。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 いや、実は私法案のことを言ったら、大臣が完全雇用に持っていって、そういう失業の問題を解決してしまうのだ、こうおっしゃるからです。しかし、やはり失業の問題にこれは重大な関連を持つのです。法案ばかりで世の中というものはいくものではない。やはり大局が片づくとこういう局部が片づいてくる。片づかないしわというものが局部に寄ってきているのです。日本の職業安定所を通じて働く労働者諸君に一切のしわが寄ってきている。ここが日本の政策の貧困と同時に日本経済の矛盾の縮図です。従って、この縮図を直していくためには、そういう局所を直すためには肉体の全部をやはり健全にしなければいけない。医学でもそうです。局部にとらわれて全局を誤まると診断を誤まるのです。大きな作戦でもそうでしょう。ですからそこが一番大事なところなんです。私が申し上げたいのは、大臣は労働時間がふえているのは熟練工がうんと働くからとおっしゃるけれども、そうではない。そこらあたりにも大きな間違いがある。昭和二十六年から三十年までに平均して就業者は年間百三十一万人増加している。これは有沢さんあたりもはっきり指摘している。そのうち一週間に一時間から十九時間しか働かない者が二三%、三十一万人です。それから一週間六十時間働く者が何ぼかというと四五%、約五十九万人くらいです。そうしますと、一週間に一時間から十九時間と六十時間働く者が百三十一万人のうち九十万、六割八分というものはそういう長時間働かなければ食えない、あるいは非自発的雇用、これは働きたくないけれども働かしてもらわなければ食えないのだから、一週間に一時間でも二時間でも、五時間でもよろしい、こういうふうにしぶしぶ働かされておる、食うためには働かなければならない、こういう層です。決してこれは熟練工の姿じゃない。しかも多くの熟練工を使って隆々と生産を上げておる大産業においては雇用というものは増加していないのです。これは何を意味するかというと、さいぜん私が言ったように——大臣は第三次産業と間違っておるんだ、大産業なんです。そこではやはり就業時間が増加をして結局臨時工的な、日雇い工的なものがふえているということなんです。こういう形なんです。だからここに私が言いたいのは、大臣は熟練工が働いたと言うけれども、熟練工が働いておるんじゃない。日本の経済は普遍的に、熟練工でなくて、一般労働者にも長時間あるいは非自発的な雇用がふえている。いわゆる就業の中身というものがちっとも改善せられていない。景気はいいけれども、改善せられていないということです。それから大産業においてはいわゆる日本の経営者たちが、この神武以来の好景気というものの一つの反動がくるということを非常におそれて常雇工にしないんだ、こういう点を私は指摘しておる。こういうところから、結局結論はどうなるかと申しますと、この法案に関係のある、いわゆる日雇いの諸君というものの仕事場というものが、足場にならずして、恒久的な一つの職業になっていく、こういうことなんです。これは絶対法案に関係がないことはない。結局そこにしわが寄ってきているんです。だから密接不可分のものなんだ。だからもとを直さずして、この末だけを問題にして法案を通せ、法案を通せと言ったって、だめだということです。だからあなたの薬のきき工合を見るためには、まず全局を見て、肉体の状態を見て、この薬が非常に効果的に最も早くきくような方向でやらなければだめなんですよ。そういう点を私の方は言っておる。
  67. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今お述べになった中で一番問題になるのは、六十時間が六十万とおっしゃったのですが、これは時間の延長はしているでしょうけれども、二五%の時間外勤務の賃金はとっておるだろうと思うのです。  もう一つは、御指摘のことについて甘んじます。これはなぜかというならば、中小企業は八時間労働をやってないのです。八時間労働をやったら食えないのです。そこで平均時間が延びるのはやむを得ないのです。だからわれわれの方としてはこれを十時間に縮め、九時間に縮め、八時間に指導していきたい。それにはその人たちが経営のできるようにしてやらなければ、今すぐ八時間にせいといったら、両方ともつぶれてしまうというところに、この問題は悩みがありますが、御指摘になった点については今後十分注意します。  それから反動景気がこわいから非協力だ、こういうことですが、これは見方がいろいろありますけれども、前の第一次欧州戦争直後にはだいぶ是正されましたが、その時分でもやはりそうでしたけれども、貿易というものはのこぎりの刃型みたいになっておって、需給関係というものがはっきり世界経済の上に現われておったんです。ところが第二次戦争によって世界の自由主義国家の指導者は自国の経済の長期安定のためにあらゆる手を打っております。日本ももちろん金融面においてやっておりますけれども、表面は自由経済のように見えておるけれども、ちゃんと横の線が一本入っている。そこで急激な変化がこない。しかし最近においては一番変化の色のよく現われているところはイギリスであります。スエズ運河の関係はありますけれども、イギリスの財政状態は昨年の六月ごろから非常によくありませんけれども、他の方はそう悪いと見るところがない。特にアメリカの問題が日本の貿易の一番大きな問題と思いますが、アメリカの方を見ましても、そう急激な変化のありそうな状況ではございません。特に最近において貿易予算は相当大きく組んでおりますから、今年はそういうようなのこぎりの刃型のような線を現わす状況にはならないという考え方を私は持っておりす。つまり世界景気が長期安定の施策に行っているということの見通しのもとにわが党政府政策を立てておりますから、御心配のような点はないと思います。大企業の人々もそこに目標を置いて資金工作、原料工作その他販路のことについていろいろおやりになっておるということで御相談を受けておりますが、御心配のような点はないと思いますから、日本の経済は長期安定のもとに伸びていく、またそうしなければならない、こういうふうに考えております。従って失業対策にしても、本年の好影響を受けて、失業方面に行く人が少いという見通しから、今年は二十四万八千であったが、そのうちの二十三万くらいは就業させることができておりますから、二十二万にしたのもそういう状況であります。そのほか失業対策としての公共事業費の方に三万くらい参ります。そのほか開発計画その他の方に五万くらい参りますから、われわれの考えておる失業対策というものは時代に合った考え方であると思っております。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 議論はやめますが、日本の失業対策と申しますか、雇用政策というものは、需給調整だけではだめなんです。欧米諸国なら私はそれでいいと思う。しかしさいぜんから指摘しているように、完全雇用政策といっても、欧米諸国のとる完全雇用政策と日本のとる完全雇用政策とやはり路線が違っておらなければならぬ。日本の雇用の中身を変えていかなければならぬことは当然なんです。賃金の格差でも、大企業と中企業とでは五〇%も違うし、零細な小企業になると、大企業の二、三制しか賃金をもらえない。こういう点でヨーロッパ諸国の路線とは違うので、政府も大いにそういう点を考えて、賃金の格差を直すようにしなければならぬ。そのためには、この前も言ったように、思い切って早く最低賃金制度をすぐしけないとすれば、それに近いような政策を打ち出してもらわなければならぬことになる。  議論はこのくらいにして、次にお尋ねしたい点は、いわゆる職種別賃金。これは今度失業対策の方の賃金の基準が二十円上っていく。こうなると、今まで公共事業等はおそらく予算を組むときには、一応現在の二百八十二円というものを基礎に組んでおると思いますが、職種別賃金を一体四月から上げるのか上げないのか、どうするかということです。
  69. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今その点について検討しているそうですから、詳しいことは局長から……。
  70. 滝井義高

    ○滝井委員 それは大事なことなんです。失対の諸君は上った。それと同じようなものの公共事業の単価その他が低く組まれておるとすれば、一体どういうことになるか。てんぷら工事ができてきますよ。これは確実です。たとえば鉄橋を作るときに百万円で請け負った。ところが質のいい労働者を集めるためには、今までのように、低い賃金ではいい人がこない。高くなるとすれば、請負師は損をしてまで作るわけにいかぬから、従って資材費を抜いて賃金に取り入れていくとかなんとかいうことになると、セメントとバラスと砂とをまぜるときに、セメントを少くする。いわゆるてんぷら工事ができてくる。これは四月から具体的にどういう工合に上げていくのですか。
  71. 江下孝

    江下政府委員 昨年の九月に調査を実施いたしまして、その後鋭意集計、整理をしておる段階でございます。若干上る見込みでございますが、四月一日に間に合うようにできるかどうかは、今検討中でございます。
  72. 藤本捨助

    藤本委員長 滝井さん、予鈴が鳴っておりますから、結論をお急ぎ下さい。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 これは大へんなことです。一体幾らぐらい上げるかということなんです。日雇いの諸君はきまったのですよ。四月から、予算通りまして、公共事業にいろいろ仕事を出しますよ。そうしますと、これは今までの低い賃金で単価を組まれておりますから、これは大へんなことになる。そこらあたりが一体どういう工合になっておるか、いま少し詳しく説明して下さい。
  74. 江下孝

    江下政府委員 職種別賃金は、各職種にわたって、相当めんどうな部門でございます。一般の失対賃金につきましては、この職種別賃金のうち重軽作業が中心になりますが、その重軽作業の分だけについて一応早目に計算をいたしまして、そうして一応二十円アップというのをきめたわけであります。従って公共事業等につきましても、絶えず大蔵省と労働省は連絡をいたしまして、大体PWが告示になってもおかしくないという見通しをつけて、予算を組んでおるわけであります。ただ、正式に告示ということになりますと、今申し上げたように、四月一日までに間に合うかどうかという点については、目下鋭意作業を急いでおる、こういうことで、今はっきりいたさないわけであります。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 これは重大なことになったのですが、もしPWが上っても大丈夫ということで予算を組んでいるということなら、大体PWが幾らくらい上るかという腰だめ的な数字がわかっておらなければ予算はできないはずなんです。参議院の方で予算をやっておりますよ。だからこれはこの段階で明白にしなければ、四月からすぐですから、およそどのくらいとするか、平均的なことくらいわかっておるはずですよ。
  76. 江下孝

    江下政府委員 実はPWの所管は労働基準局でございますので、私から答弁しますと間違うおそれもありますので、その点については基準局長に出席させまして、お答え申し上げることにしたいと思います。
  77. 滝井義高

    ○滝井委員 それでは基準局長に聞くことにいたします。  それから大臣に一言だけ伺いたいのですが、五人未満の事業所に来年度から失業保険をやられる、こういう御意思があったようですが、その構想を簡単にお述べいただきたいと思います。
  78. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 これは今年三十人未満の調査と毎月勤労調査をすることになっておりまして、五人未満の方にも、数字は覚えておりませんけれどもそういう数字が計上されております。それで五人未満の実態調査が行われますから、この実態調査に基きまして、十分内容を把握した上に、この五人未満のものも失業保険に参加させたい、こういう考えであります。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員長 これはとても重要ですから、あとでゆっくりやらせていただきます。
  80. 藤本捨助

    藤本委員長 次会は明二十日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十五分散会