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1957-03-09 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月九日(土曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 八木 一男君 理事 吉川 兼光君       阿左美廣治君    植村 武一君       小川 半次君    越智  茂君       大石 武一君    加藤鐐五郎君       倉石 忠雄君    田子 一民君       田中 正巳君    高瀬  傳君       中山 マサ君    永山 忠則君       古川 丈吉君    山下 春江君       亘  四郎君    赤松  勇君       井堀 繁雄君    岡  良一君       岡本 隆一君    栗原 俊夫君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       中村 英男君    山口シヅエ君       山花 秀雄君    中原 健次君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         厚 生 大 臣 神田  博君         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 村上  一君         厚生政務次官  中垣 國男君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         労働政務次官  伊能 芳雄君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         厚生事務官         (保険局厚生年         金保険課長)  栃本 重雄君         厚生事務官         (保険局船員保         険課長)    鈴村 信吾君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宜夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月九日  委員竹山祐太郎君、松村謙三君、岡良一君及び  山崎始男辞任につき、その補欠として永山忠  則君、阿左美廣治君、多賀谷真稔君及び中村英  男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  岡良一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月八日  衛生検査技師身分法制定に関する請願(内田  常雄君紹介)(第一九四四号)  同(亀山孝一紹介)(第一九四五号)  同(石山權作君紹介)(第一九八八号)  同(小林信一紹介)(第一九八九号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  制定請願首藤新八紹介)(第一九四六  号)  同(濱野清吾紹介)(第一九四七号)  同外二件(高瀬傳紹介)(第一九九〇号)  同(臼井莊一君紹介)(第二〇一三号)  戦傷病者援護単独法制定に関する請願原健  三郎君紹介)(第一九八三号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る請願原健三郎紹介)(第一九八四号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対に関  する請願赤路友藏紹介)(第一九八五号)  同(原健三郎紹介)(第一九八六号)  同(床次徳二君外七名紹介)(第二〇一四号)  同(大坪保雄紹介)(第二〇一五号)  同(鈴木直人紹介)(第二〇一六号)  同(高木松吉紹介)(第二〇一七号)  同(保利茂紹介)(第二〇一八号)  同(眞崎勝次紹介)(第二〇一九号)  国立病院等准看護婦進学コース設置に関す  る請願田中稔男紹介)(第一九八七号)  戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願(  原健三郎紹介)(第二〇〇〇号)  戦傷病者の更生及び援護に関する請願山崎巖  君紹介)(第二〇一一号)  戦没者遺族処遇改善に関する請願外四件(池  田清志紹介)(第二〇一二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第二十五回国会閣法第四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出、  第二十五回国会閣法第五号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出、第二十五回国会閣法第六号)  健康保険法の一部を改正する法律案滝井義高  君外十二名提出衆法第八号)  船員保険法の一部を改正する法律案滝井義高  君外十二名提出衆法第九号)  美容師法案野澤清人君外三十九名提出衆法  第一〇号)  労使関係に関する件     —————————————
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  野澤清人君外三十九名提出美容師法案議題とし、審査を進めます。まず提案者より趣旨説明を聴取いたします。野澤清人君。
  3. 野澤清人

    野澤委員 ただいま議題となりました美容師法案提案理由を御説明申し上げます。  近代人文化生活は異常な発達をとげ、あらゆる面において科学的な知識や操作が取り入れられつつありますが、美容業界実態もまた国民保健衛生とともに、その技術的な分野もいよいよ高度な理論と知識とを必要とするに至りました。  現行理容師美容師法において美容業理容業とともに一括処理することは、最近の実態からかんがみて斯業の発展を妨げるのみならず、保健衛生上の立場からも幾多の不便が生ずる憂いなしとしないのであります。ことに美容技術の範囲も、パーマネントを主体とした頭髪調整の段階から、全身美容にまで進歩発展いたし、幾多の高級複雑な成分を有する薬物の使用がひんぱんになりまして、旧来の整髪美容がその質的にも大きな転換が行われつつあるのであります。よって理容業とは別に新たに美容師法制定して、美容業発展をはかろうとするものであります。  なお、本案単独立法化に伴い、美容師養成施設に関し、従来政令で定められていたものを、本法に明文化することといたしました。また美容師または美容所開設者組織する会またはその連合会が、美容師養成に関する事業を行い得ることといたしたのであります。  なお、本法案の附則において現行法単独理容師法とすることに関する改正を行なったのでありますが、本法案現行法と特に相違する点について美容師の場合と同様の改正を行なったものであって、結局、理容師法案としての部分は、内容的には本美容師法案とほぼ同様といたしたのであります。  以上が本案趣旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決せられるようお願い申し上げます。
  4. 藤本捨助

    藤本委員長 以上で説明は終了いたしました。  次に質疑に入ります。通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  5. 滝井義高

    滝井委員 二十四国会にわが党が美容師法案提出して以来、両党の間にまた美容師の作る諸団体の間に、いろいろ意見統一を欠く点があったのでありますが、今国会に入りましてから、美容の三団体並びに自民党、社会党の間における意見調整が完全になって、ここに単独美容師法案ができたことは、非常にわが国美容界にとっても喜ばしいことだと思うのでございます。  しかし美容理容と分つことによって、なお問題として今後解決を急速に要する点があると思います。その一、二の点について政府の御所見を承わっておきたいと思います。  それは現行法の第一条においては、理容美容技術分野規定をしておるのでございますが、業界の現状から見ると、技術的に非常に二つ業種の間に交差点というものがあるわけであります。たとえばパーマネントとかコールドというような技術は、これは美容技術として規定をされておるのですが、こういうことを理容師の方でやる場合がある。またカッティング、あるいはひげをそるというようなそりの方は、これは主として理容の方でやるところなんですが、これは美容の方もやることがある。こういうように二つ職業の間にいわば技術の交叉しておる点があるわけなんです。こういう二つ身分法ができて参りますと、そこらの調整というか、トラブルを今後どういう工合政府は御指導していく考えであるか、これはぜひ一つうまく指導してもらわなければならぬと思いますが、その辺に対する政府所見をお伺いしておきたい。
  6. 藤本捨助

    藤本委員長 ちょっと申し上げますが、答弁は簡潔にして要を尽されんことを望みます。
  7. 楠本正康

    楠本政府委員 ただいまの御意見ごもっともでございます。今後十分注意をいたしますが、大体かような見解を持っております。美容の方におきましては、ひげそり、刈り込み等が主たる仕事でございます。またパーマネント美容の方におきまする主たる技術だと存じます。従いまして付随的に、たとえば理容の方におきましてくせ直し的にパーマを行うとか、あるいは美容の方におきましてパーマをかける場合のやむを得ない措置としてカッティングを行うというようなことは美容の領域と、大体主たる目的で分けて参りたい、かように考えております。
  8. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそういうように政府の御指導をお願いしたいと思います。  次にお尋ねしたいことは、理容業及び美容業ともに、地域的にまたはそれぞれ技術系統に応じて組合を結成をしておる傾向があるようでございます。将来これらはいずれも国民保健衛生上に関係をしておる団体でございますので、こういうふうにそれぞれ技術系統、地域という工合に錯綜をする会ができておるのでは、今後の行政指導の上においても困難であろうし、また業界保健衛生向上の見地からいっても、やはりいろいろ問題ができてくると思いますが、こういう団体の今後の御指導の仕方をどういう工合指導していくのか、この点を一つ説明願いたい。
  9. 楠本正康

    楠本政府委員 御指摘のように団体統一されておりますことは、行政実施上の便宜の点が多いわけであります。また業界発展もおのずからもたらせるものと考えます。従いまして、私どもといたしましては、今後もできるだけ業界が大所高所から一つにまとまって、お互いに切礎琢磨し、りっぱな業界を作っていくことを熱望いたしております。しかしながらこの場合あまり政府がとやかく言うこともどうかと思います。やはり業界の自粛、良識によってものを判断されるように今後も指導して参りたいと存じております。
  10. 滝井義高

    滝井委員 こういうように、今回美容師法ができますと、環境衛生関係の七つの業種法律的な根拠と申しますか、そういうものが一応曲りなりにも整備をしたという形が出てくるわけです。現在の業界にこれらの環境衛生の七業種を何らかの形で営業適正化と申しますか、そういうものをやってくれという要望が非常に強い、現在自民党の方から議員立法として環境衛生業種営業適正化に関する法律が出ておるわけなのですが、基本的な法律整備とそれらの七業種を規制する法律との関係について政府は一体どういうようなお考えを持っておるのか。今後の政府考え方を要領よく御説明願いたい。
  11. 楠本正康

    楠本政府委員 目下継続審議に相なっておりまする環境衛生関係営業運営適正化に関する法律は、それぞれの母法基本法に基くものを別な観点から統一いたしたものでございます。従いまして今回美容師法単独にできますことによって、かえって基本法とこれを総括いたしました適正化法との関係が明らかになりまして、かえってこの辺は御指摘通り便宜になるもの、かように考えます。
  12. 滝井義高

    滝井委員 政府の方においてできるだけ、七業種環境衛生適正化をはかって技術向上をはかるような状態になるようにぜひ御推進願いたいと思います。  最後に一つ、問題はこういう環境衛生関係事業に従事する従業員健康診断の結果公衆衛生上不適当と認められたときにはある期間を定めてその業務を停止することは、こういう職業については共通的に一応立法規定をいたしておるところでございます。こういうものに対する保健衛生上の事業をストップせしめるからには、何らかそこには適当の処置が講ぜられなければならぬと思うのでございます。そういう点担当部長としてどうお考えになっておるのかお答え願いたい。
  13. 楠本正康

    楠本政府委員 これは必ずしも美容師の場合だけに限らずあらゆる場合に共通する問題でございまして、この解決は行政的にはなかなか困難な面が多いのでございまして、現在は結核その他等につきましては、特に組織労働者その他におきましては社会保険の制度がございますのでさしたる問題はございませんが、これらの問題は何と申しましても共済的な何らかの組織がない場合にきわめて困難でございます。率直に申し上げまして美容師の場合にはかような共済的なあるいは保険的な恩恵にいまだ浴しておりませんので、これらの点は実施がきわめて困難な点であろうかと存じますが、しかし私どもといたしましてはできるだけ組合を強化することによりまして、組合組織化することによりまして、お互いに共済的な事業を振興いたしまして、それによってこの点をカバーしていくように指導をいたして参りたい、かように考えております。
  14. 藤本捨助

    藤本委員長 他に御質疑はございませんか。——なければ本案についての質疑は終了したものと認めます。  次に討論に入るのでありますが、通告もありませんので直ちに採決いたします。  本案原案通り可決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認め、原案通り可決すべきものと決しました。(拍手)  なおただいま議決いたしました本案についての委員会報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認め、さように決しました。  暫時休憩いたします。    午前十一時二十八分休憩      ————◇—————    午後零時二分開議
  17. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  労使関係に関する件について調査を進めます。発言通告があります。これを許します。山花秀雄君。
  18. 山花秀雄

    山花委員 労働大臣に御出席を願いまして、労働行政の一端として、ただいま御承知のように総評という大きな労働組合を中心とする、俗に一般的に春闘と言っておりますが、春闘に関連いたしまして、本日労働大臣は国鉄、全逓、電通、日教組、これらの組合責任者を呼んで何か警告を発したということを聞いておるのでありますが、この間の事情をお伺いしたいと思うのでありま。
  19. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 総評労働組合ではありませんけれども総評傘下における各労働組合が、新聞その他にも発表されておりますし、われわれの情報に入っておりますが、相当なスケジュールを組みまして、各団体ともそれぞれ第三波というものを三月十一日を期して一斉に行うようなスケジュールがあるのであります。それぞれ当ってみるとやはりわれわれが傍受いたしました内容にあまり狂いのない計画のもとに各団体が進んでおります。ところが今御指摘になりましたような団体は、御承知のように公共企業体でありまして、その計画しておるところの職場大会であるとかその他相当大規模な休暇というようなものは当然とめられておるはずなんでありますけれども、それをあえて行わんといたしております。これと同時に企業体の方にも早く自主的に解決するように、前もっていろいろ話はしてありますが、きょうは、御指摘になりましたような勤労団体方々を呼びまして、次のようなことを申し上げたのであります。一々こまかく読み上げますといいのでありますが、簡単に申し上げますと、公労委員に対して調停を申請して目下調停手続が進行中であります。しかしそれにもかかわらずこの画一的なスケジュールに従って、勤務時間中における職場大会等の名のもとにおいて、公労法によって厳に禁止されておるところの争議行為に該当する違法行為実施するようになっておる。このような行為運輸通信等の機能を混乱麻痺せしめ、国民経済及び国民日常生活に対して甚大なる障害を与える、民主的な紛争解決のルールを逸脱し無視するものである、特にこれらの各事業公共性にそむき、公共の福祉に反することはなはだしい行為であるから、行為に対しては組合員みずからが、法の定めるところによって処断されることを免れない、のみならず社会生活を破壊し、社会秩序を混乱させるものとして、国民の強い指弾を受けることになるでありましょう。政府といたしましても別に声明を発表しておりますが、特に労働大臣といたしましては憂慮にたえないところであるから、公労協傘下の各組合がいわゆる実力行使を中止して、健全な良識によって法の定める紛争解決手続に従い、事態の合法的かつ平和的な解決をはかられるよう要望するという意味のことを懇談的に申し上げたのでございます。私は労働大臣をお受けいたしまして、この今度の春季闘争にあいましてほんとうに憂慮いたしますことは、このスケジュールにありますようなことが行われましたならば、せっかく日本産業経済がここまで盛り上ってきておるものが、政府が二十八億の輸出をしようとしておりましても、このつまずきによってどういうように経済界が展開して逆の結果が起きて、そのために国民経済全体が非常な影響を受けるということを心から心配しておるのであります。でありますからお集まりの、御指摘になりました団体指導者諸君に特にそのことをお願いいたしまして、早く平和裏解決つけてもらいたい、どうか一つ法を犯すようなことのないようにしてもらいたいということをくれぐれもお願いした次第でございます。
  20. 山花秀雄

    山花委員 ただいま労働大臣の御答弁の中で、総評労働団体でないという御発言がございましたが、これは多分、私の推測するところによりますと、労働組合法保護によらざる労働団体という意味で言われたと思うのでありますが、それは私の理解の通りでございましょうか。
  21. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 御指摘のようで、団体ではありますけれども労働組合でないと申し上げたつもりであります。
  22. 山花秀雄

    山花委員 その労働組合でないと認識をされておる政府当局は、しばしば総評相手に、一個の労働組合としてその話を今までなすっておるのですが、都合のよいときには労働組合であり、都合が悪ければ労働組合でない、あれは単なる労働団体だ、こういう、私から考えれば手前勝手な解釈をしておられると思いますが、解釈について統一性がないという点でございますが、その点どうでございましょうか。
  23. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 私は統一があると思っておるのです。組合労働組合法によってできるものであって、この労働組合法によってできた各労働組合中央中央団体として取り扱いなすっておられると思いますから、私は労働組合として交渉する場合には各公企労労働組合方々と直接にお話しする方がいいと思ってやったのであります。
  24. 山花秀雄

    山花委員 各単産を相手労組法に基く労働組合としてお話をなされたということ、これを私は別にどうこう言っておるわけではございませんが、政府はしばしば総評——これは労組法保護によるかよらざるかは別問題として、私はやはり労働組合だと思うのです。労働組合一つ全国的組織、いわゆる連合体というふうに考えておりますが、この総評に対して労働組合でないというこの認識であります。これは労働大臣認識としては間違っておるんじゃないか、かように考えますが、いかがでございましょうか。
  25. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 先ほど申し上げましたように、労働組合法規定されておるところの労働組合ではなくて、任意にお作りになった労働団体であることは私は認めております。このことは統一されておると思うのです。
  26. 山花秀雄

    山花委員 何かものにこだわって、特に語を強めて労働団体というような表現を用いられておりますが、もう時間もございませんので、それを別にどうこう申してみようとは思いませんが、労働大臣労働組合に対しての認識の問題が、これからしばしば起きる紛争議の対策上私は重要な影響を及ぼすと思います。せんだって本委員会において同僚委員五島君が労働大臣に質問いたしましたときに、総評に結集しておる三百有余の組合員大衆はなかなかいい労働者だ、勤勉にしてかつ生産能率を上げるいい労働者だが、そのうちのごく一部であるけれども赤い、こういう表現をなすったんです。そこで赤問答を若干続けられていたようでございますが、私はその赤いという意味労働大臣のもっと的確なる、だれが聞いてもよく納得のできるような標準語でその赤いということに対する認識一つはっきりしていただきたいと思います。なぜ私はかようなことを聞くかと申しますと、日本においては、労組法で認めておるか認めていないかは別個の問題といたしまして、最大の指導性のある労働組合であることは間違いないのであります。その総評の一部が赤い。その一部は指導部労働大臣は指さしておると思いますが、この点、労働大臣のこの認識からあらゆる労働行政が打ち立てられたとすると、私は重要な影響労働運動全体に及ぼして参ると思いますので、この際特に明確に御答弁願いたいと思うのであります。
  27. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 総評は今まで共産党との問題について共闘はしないという考え方のもとに立っておったのですが、今度は共闘しないということを放棄したのです。そうすると、共産党と一緒にやるということになると思います。それから赤い、黒いの問題は、私は字のごとく赤は赤だと思うのです。私はそういう考え方を持っているのです。
  28. 山花秀雄

    山花議員 共産党は御承知のようにこれは政党であります。日本憲法下において認められておる合法政党であります。総評考えておることと、合法政党共産党考えておることがたまたま合致する問題は私はあると思うのです。共産党が非合法の政党で、日本憲法法律で許されておらない組織団体であれば、あるいはこれと共闘を組むというようなことをきめることは、これは政府当局立場からとれば不合理だということは言えると私は思うのですが、共産党のどこが悪いのですか。
  29. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 いや、共産党が悪いとは申し上げません。ただ共産党共闘をしなかった総評共産党共闘するということになったんですから、そうすると、共産党と同じ方向におやりになる。そうすれば、私はこの点が違うと思うんです。共産党はあくまでも階級政党です。階級的な立場の上に立っております。私は階級的な考え方では日本産業は成り立たないと思うのです。でありますから私は全体的に考えておる。いわゆる日本国民一つ考えのもとに行けるということが最も望ましいことであって、階級的にものを考えるのでは特に労使関係解決がつかない、かように思っております。
  30. 山花秀雄

    山花委員 労働大臣の頭が少し混乱をしておるんじゃないかと思うのです。総評の発生は共産党指導を排除して民主的労働組合として成立をしたということは、労働大臣のおっしゃる通りであります。共闘をやるということと指導を受けるということとはこれは明確に違うんですよ。この点はもっとはっきりしてもらわないと、そういう頭で今の総評を見て、今の総評の行う春闘を見ると私はおのずから影響するところが違うから、もう少し理論的に体系をはっきりして労働組合認識というものを——とにかくあなたは日本労働行政の一番頂点に立って行政運営をする責任者なんですよ。その責任者の頭がそういう混濁したことでやられると、迷惑をこうむるのは日本労働運動全体なんです。それが今回の春闘に対して労働大臣発言権によって政府声明なんかが出ておると私は思うのですが、もう少しその点をはっきりしていただきたいと思うのです。一体赤というのはあなたは共産党を指さしておると思うのです。そうすると、総評共産党とが同じだからおれは赤いのだと思う、こういうようにわれわれは聞き取れるのです。どこが一緒かということです。
  31. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 その赤の言葉の発端は、私が言ったのじゃありません。それは速記録をお調べになればわかりますけれども、予算委員会において上林山君がそういう言葉を使ったんです。私はそれは全体はそういうふうに考えないものですから、ただそういうふうに言われるならば、共産党との間に共闘をしないという総評が、今度は共闘をするという意味声明をしたから、その意味に御解釈願いたい、こういうふうに言ったんです。そのときに赤は向うが言われたのです。そこで今度赤とお前は言ったんじゃないかということでありましたから、それは赤は赤だ、こう言っただけの話であって、あれは僕の方から言ったのではありません。速記録をお調べになればその点はわかります。けれども、私は今御指摘になりしたように、総評が発生したのは、二・一ゼネスト当時におけるああいう共産党指導では日本労働運動は健全な発達をしないという意味において総評が生れたことは当然であります。でありますから、共産党との共闘はしないとしておったものを、そんならばなぜ今度は共産党との共闘をするということになったかということなんです。でありますから、私はやはり従来と同じように、共産党指導者と一緒にやったことが悪かった、これは日本労働運動の健全たる発達にはならなかったということで総評が生まれたのであるならば、やはり共産党共闘はしないということをそのままにやっていっていただく方がいいと思っておったのです。けれども私は、赤とおっしゃったものだから、赤は赤だと言っただけであって、その語源の出発は予算委員会から出てきているわけなんです。
  32. 山花秀雄

    山花委員 予算委員会でそういう議論があったかどうか——責任を何か予算委員会の議論になすりつけるようなことを労働大臣は言っておられる。私は大へん卑怯だと思うのです。予算委員会でどういう議論があろうが、それは何も今ここで弁明の具に供する必要はないと私は思う。しばしば言っておりますように、総評の成立過程は、共産党労働組合指導を排除するという意味総評ができた、これは私は大臣と同じ見解を持っておるのです。ところが、今までは共産党共闘しないと言っていたのが、今度は場合によればあえて共闘もするというように運動方針が変ったから、その一部がいわゆる赤になったと、こう大臣は言っておられるのです。しかし総評立場は、たとえば米の値上げ反対、国鉄運賃値上げ反対、こういうことをもし自民党なら自民党が決定すれば、自民党とも共同闘争を行いますよ。そうすると総評は今度は白になったとかなんとかいうような表現が成り立つかどうか。労働組合労働組合の自主的判断によって、労働組合考えと合致するあらゆる団体共闘を行なって、自分の意思を広範囲に世論化するのは当りまえの話じゃありませんか。どこにこれが赤として——あなたの赤というのは、やはり共産党を指しておられると私は考えるのです。そうじゃないのですか、あなたの赤というのは。ただ赤は赤だというような表現ではわれわれは納得できません。  そこで今あなたは、おれが赤と言うのは、あれは階級的な組織だから赤だ、こういうようにちょっと表現されましたが、そうなんですか、この点は抽象論でなくして、おれが赤と言うのはこういうことだから赤と言うのだという説明をはっきりしてもらわないと、私どもは納得ができないのです。
  33. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 なかなかむずかしい御質問でございますが、赤と言えばやはり共産党のことになるでございましょう。それで私の一番おそれるのは階級闘争なんです。階級闘争は暴力革命に一致するのです。暴力革命に行く芽ばえがあるのです。でありますから、私はやはり国家の秩序を守り民族の発展考えるためには、どらも暴力革命の芽ばえのあるような行き方はふさわしくない、こういう考えのもとに考えております。
  34. 山花秀雄

    山花委員 労働大臣は非常に重大なる発言をされたと思うのです。階級闘争は暴力革命に移行する一つの芽ばえである、こういう発言をされた。この発言について私はいろいろ意見がありますが、もう時間がございませんので意見は申し上げませんが、われわれ社会党といたしましても暴力革命を喜んでおりません。従ってそういうように移行するような懸念のある原因はお互いに民主主義を守るために排除していきたいと考える。ところが政府の今までやっておられた労働行政においては排除に力を尽したかどうかということが、私は問題の焦点になると思うのです。公企労法の関係は仲裁委員会があるとか、あるいは調停委員会があるとかいうようなことを政府は言われております。現に今も労働大臣はそう言われておりますが、それならば仲裁委員会調停委員会から出た結論を政府が尊重して行なったかどうか、ここに大きな問題点があると私は思う。どうなんですか。従来政府はそれを行なったか、そして階級闘争が激化することを阻止する努力を払われたかどうかという点は。
  35. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今までいろいろ経過をしてきておりますから、版で押したようにきぱっといかぬけれども、その方向にはいっていると思うのですよ。今回も人事院の勧告はやはり政府はある程度尊重してのんでおります。一一%とおっしゃるけれども、人事院の勧告は六%なんですから、その六%にいっているのです。今度もまた公企労に対しまして仲裁裁定がきまりましたら、やはりこれも、財政経済の関係がありますから、きぱっとその通りにいかぬかもしらぬが、その方向に向って尊重してきめたいということは私は約束していいと思うのです。私はそれを約束します。
  36. 山花秀雄

    山花委員 従来のことは別といたしまして、今後は仲裁委員会あるいは調停委員会の結論を労働大臣としては責任を持って尊重してやる意思だ、こう私は聞き取りました。今度の問題につきましては、関係各省の所管大臣と労働大臣とは私はしばしば連絡をされて、いろいろ対策を立てていると思うのでありますが、郵政省の関係で特別指令が役所の方から出ております。これは郵政大臣に聞けば一番いいと思いますが、やはり各省間における関係労働行政の一環として労働大臣の方でまとめられておられると思う。こういう項目がその指令に出ているのです。たとえば休暇をとっている。その休暇をやめて就労するよう慫慂してがえんじない場合には実力行使に出るべしという通牒が出ているのです。この実力行使というのはどういう意味のものでありましょうか。
  37. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 この間政府声明をやる前に懇談会をやりましたが、懇談会の前に各次官が集まりまして、私がその議長になっていろいろな点を相談いたしました。その結果閣議において各大臣に、公企労関係する方々、官公労に関する方々みなありますから、それぞれに願いましたことは、違法行為があったらば処分すべきであるということをはっきり基本的にきめました。それが声明として発表せられております。そこで実力行使という言葉をお使いになったのか、処断という言葉をお使いになったのか、それはわかりませんけれども、とにかく違法行為があったら許しちゃならぬ、去年の二月十一日に発したあの通牒に基いて断固としてやるべきであるということを懇談会できめました。
  38. 山花秀雄

    山花委員 この通牒は文書で明らかになっていると思う。ちょっと読んでみますと、管理者が現場に臨んで就労せしめるようあっせんに努力を行うこと、また状況によっては実力行使もやむを得ないと考える。この場合の実力行使は一体どういうことを指さしているか。これは関係各省で連絡会議を開いておられるのだから、労働大臣もよく御存じのはずだろうと思うのです。
  39. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 山花さんが読まれたものでありますが、文書を一々各省からとっておりません。今御指摘になった点をさらによく調べろということであるならば、とって調べますが、先ほど申しましたように、閣僚懇談会では、違法があったならばやはりこれは取り締るべきである、処分すべきであるということをきめて、それで政府声明を発表いたしました。その政府声明の範囲内において各省において行われているものと思っておりますが、その政府声明と非常に違った文章がありましたならば、われわれの方も善処いたしたいと思っております。
  40. 山花秀雄

    山花委員 時間もございませんので、私は最後に一言だけ労働大臣に要望しておきたいと思うのであります。私が私なりにこの文章を解しますと、この実力行使というのは、やはり権力で弾圧するということを意味していると思うのであります。今度の春闘に際しましては、社会のあらゆる情勢をも政府は検討されておられると思いますし、ただいま労働大臣の御発言の中にも、仲裁委員会やあるいは調停委員会の結論は、もう政府としては十分尊重して階級闘争に進まないように、話し合いの場で民主的に解決をする決心を持っておられる、こう労働大臣は言い切っておられるのであります。私はその信念を中心に労働行政をやっていただきたい。いたずらに権力を発動して労働紛争議がおさまるとお考えになるような、そういう権力主義の考え方は、今の労働大臣の最後の御発言ではないと考えておりますが、ややもすると、同僚閣僚の間においては、やはり事を、権力ですべてがおさまるというふうにお考えになっておられる方も私はあるやに聞いておるのであります。それが自然に威圧を加えるような政府声明なり、あるいは労働大臣はそういう意図でなくても、四組合委員長をお招きになって、そこで労働大臣が話し合いをするつもりでおられても、一般的に受ける感じは、政府は今度のこの問題にいたずらに介入するというような感じをやはり多くの労働団体に私は与えていると思うのです。これは労働行政としては拙の拙なるやり方だと思うのであります。労働省にはこういう問題について非常に経験の深い次官、局長連中もたくさんおいでになると思いますので、よく相談をなさって、さような不祥事態の起きないように春闘を上手に民主的に解決できるよう労働大臣の行政的手腕をこの際りっぱに発揮していただきたいということをお願いいたしまして、いたずらなる弾圧で問題が解決するというような従来の考え方がもし労働大臣の心の中にその片鱗でもありましたならば、それは一つ払拭していただきたいということを望みまして私の質問を終りたいと思うのであります。
  41. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 山花さんから今回の問題解決に対する指針をお与えいただきまして非常に感激いたしております。私は自分のことを申し上げて恐縮でありますが、昨晩も一昨晩も、方々で交渉しておりますニュースをとるために、けさ六時まで起きておりました。いろいろなニュースをとっております。しかし十一日以後のスケジュールを行わずには済まない情勢であります。特に私鉄の問題については、子供が試験が受けられないようなことになりまして非常に心配いたしております。これについてもそれぞれ経営者にも会い、いろいろいたしておりますが、今なお解決いたしません。国鉄の問題に対しましても、今までの私がキャッチした内容では、私どもの努力が足りないのでありますが、十一日の日は一応あのスケジュールが行われるであろう、こう思うのです。そうすると、輸送上にも非常な影響があります。現在二百八十万トンくらいの滞貨がありますが、一日おかしくなるならばこれは大へんなことになるのです。それで弾圧どころではなくて、心では祈っているのです。実は何とか解決したいと祈っているのです。しかし多数の者の中には私どもの気持の通じない面もあるのです。私はこの間五島君に申し上げた、ほんとうは、マホメットのまねをするわけではありませんけれども、コーランと剣を兼ね備えていくべきものである、それが行政だ、こういうふうに思うのです。だから右に愛を持つとともに、左に剣を持つという行き方よりほかにないじゃないか、愛のみで解決がつかない、それは愛のみで解決がつく日本にしたい、けれども今はその愛のみで解決がつかないところにきているのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、その問題についてもこれは自主的にきめてもらいたいということを前提にいたしております。けれどもどうしてもそれがきまらぬ場合にはいろいろなことも考えなければなりませんが、今はあくまでも自主的にきめてもらいたい、そして事をなすためには勤労者に対して愛を持って臨みたい、また経営にも同様でありますが、どうしても違法な場合にはやむを得ないと思うのであります。
  42. 山花秀雄

    山花委員 私は最後に労働行政を民主的にうまくやるためには、弾圧というようなことを考えずにやってもらいたい、こう要望しておいたのです。ところが労働大臣は、何か剣だとか愛だとかいうような言葉を使って、一方においてはやはり場合によれば弾圧はやむを得ないというような意思表示に受け取られるのであります。  そこで重ねて申し上げたい。労働行政を誤まりますと、大へんな不祥事になる。この不祥事は労働大臣労働行政のやり方いかんによって起るべき不祥事だと思う。私はこの不祥事が起きた場合には労働大臣は責任を持つ、また持ってもらいたい。そうならざるを得ないという一言だけを最後に申し上げて私の発言を終りたいと思います。
  43. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今のお話は、私は事のないのに弾圧はいたしません。もとより違法があって、法律を犯してやるという場合は、それはやっぱり法律によって処置しなければならないということを申し上げております。それが私の今申し上げました一方に剣を持つということでございますから、御了承願いたいと思います。
  44. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働行政をあずかる大臣が剣だということを言われるのは、私は労働行政の本質をわきまえないものだと思うのです。大体国鉄の滞貨の問題でも、二百八十万トンというのは政府の政策が悪いからこういうことになったのです。炭労の争議だってストライキを持たないうちから炭がない。しかもふろ屋に炭がないというが、ふろ屋の方はストライキをしておる炭じゃない。今ストライキをしておるのは大手十八社がしておるので、その炭にいたしましても、これは常磐炭鉱その他の小さな炭鉱から来ておる炭です。それで石炭行政にしましてもわれわれが注意したのですよ。私は十二月に通産政務次官に対して、とにかく五千三百万トン要るぞと言った。火力炭だけで三五%の増だから、五千三百万トンどうしても要る、こう言ったら、いや、そんなには要りません。多賀谷委員のそれは計算間違いでしょう、四千九百五十万トンから五千万トンあればいいんだ、こう言った。その後まだ二ヵ月たたないうちに、五千三百万トン要って、そうしてこういう事態になった。これは全く政府の政策の欠除であってみずからの責任を何か、剣を持って労働者に転嫁するなんていうことは、もってのほかだと思いますが、労働大臣の御所見を伺いたい。
  45. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 多賀谷君の剣の問題の論争でありますが、それは私は引例としてマホメットの例ということを言っております。そのマホメットの例のコーランと剣というのは、もうすでにあらゆる場合に翻訳済みでございますから、今あらためてあなたのような頭のいい方がそれを聞かなくてもおわかりだと思う。剣は何を意味しておるかということは、切る剣のことを言っておるのじゃない。コーランと剣はもうマホメットの言葉に古いことでありますから、御存じだと思います。
  46. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は言葉じりをとらえて言っておるのじゃないのです。まだ今から争議をしようかというようなものに対して、呼び出して警告じみたことを言うこと自体に問題があると思う。石炭行政にしても政府の無定見がそういう状態になっておるのです。しかも政府の政策が悪いから、電気ばかり石炭を持っておるのです。
  47. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それはきょうやりましたことは、違法な行為をやろうというスケジュールが出ておるものですから、そういう違法な行為一つやめてもらいたいということを申し上げたのであって、これは当りまえのことをおやりになって、労働基準法の中の許された範囲においてやっておることをやめろとは言わないのです。
  48. 中原健次

    ○中原委員 大臣に一つ質問します。先ほどの山花委員の質問に対してあなたは重大なことを言われた。全部尋ねたのでは時間が足りないそうですから、一つだけ申し上げます。労使問題について階級性のあることはいけないと言われたのですが、それはどういうことなのですか。重大にもほどがあります。もう一ぺんはっきりしておいていただきたい。
  49. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それは赤の論争の中でそういう言葉が出たのですが、共産党が階級闘争であり、共産主義と資本主義は階級的な闘争になるし、それをやることは日本産業発展にならないという意味のことであって、そういうふうに芽ばえることはよくないじゃないかということを言ったのです。
  50. 中原健次

    ○中原委員 階級というのは、あなたがどういう言葉をお使いになられても現存しておるのです。片や資本家階級があり、労働者階級があるのですよ。その労働者階級がいろいろな企業等々で結集したものが労働組合なのです。これは階級性がありますよ。階級性がないというのはとんでもないことです。そのことがすぐそのまま直訳でイコール共産主義というのはおかしいです。また日本共産党合法政党なのです。われわれ自身は共産党のことについて今あなたと論議する必要はありませんが、これは合法政党なのです。それをあなたは拒否するような言い方をされたこと自体が行き過ぎだ。しかも労働大臣としてそういうことを平気で言われていいのかどうか。労働団体の闘争については階級闘争をやりますよ。労働階級と資本家階級との争いになる場合になれば、闘争という言葉で表現されてもよろしい。そんなことを悪いというそういう概念がおかしい。そのことをお尋ねしたい。それをそのままあなたはお通しになるのですか。
  51. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 階級闘争それ自体は労働者と資本家との話し合いの問題でありましょうが、それについても闘争よりも協力していく方がいいと思います。闘争よりも協力していく。暴力革命になるような行動はおもしろくないと言ったのであって、労働者全体が共産党だと言ったわけではない。暴力革命になることはおもしろくないと言っているわけです。
  52. 藤本捨助

    藤本委員長 本会議散会まで休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ————◇—————    午後三時十四分開議
  53. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案滝井義高君外十二名提出健康保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の五法案を一括して議題とし、審査を進めます。質疑を続行いたします。滝井義高君。
  54. 滝井義高

    滝井委員 私は、総理にはこの前やったことがありますのでいいのですが、健康保険法審議が最後の段階に到達いたしましたので、大蔵大臣に一つ明快に御答弁をいただきたいと思います。  政府は昭和三十一年度において健康保険のために一般会計から三十億円を繰り入れ、三十二年度においても三十億円を繰り入れておりますが、現在この法律が通らないために三十一年度の三十億というものは凍結されて使えない状態になっておるわけです。この昭和三十一年度の三十億と、昭和三十二年度の三十億は同じものか違うものかということを一つ説明願いたいと思います。
  55. 池田勇人

    ○池田国務大臣 同じものと私は考えておるのであり、同一趣旨によりまして同様の方法をとっておるのであります。
  56. 滝井義高

    滝井委員 実は、同じものだという説明は厚生省もいたしてくれました。ところが三十一年度の予算の説明書には——この小さな説明書でもそうなっておるのですが、大きい方の特別会計の説明書を見ますと、三十一年度の三十億というのはどういう趣旨になっておるかというと、財政再建のための補給金になっておるのです。ところが三十二年度の三十億に健康保険の健全なる発達をはかるための国庫補助金になっております。違うんですね。
  57. 池田勇人

    ○池田国務大臣 言葉は違いますが、趣旨は私は同じだと考えております。
  58. 滝井義高

    滝井委員 言葉は違うというが、言葉を違えていることがおかしいのです。三十二年度の三十億は法律上の根拠を明示している。健康保険法の七十条ノ三の規定に基いて国庫補助金を出す、こうなっている。ところが三十一年度の三十億というものは、これは法律上の明示もなく、財政再建のための補給金、いわゆる赤字補給金として出ているのです。
  59. 池田勇人

    ○池田国務大臣 三十一年度に初めてそういう措置をいたしましたので法律の根拠を明示したのであります。三十二年度は二度目でございますから、同じ趣旨でも、やはりその説明を書く人の気持で明示しなかったのかと思いますが、趣旨としては同じでございます。
  60. 滝井義高

    滝井委員 では大蔵大臣も、三十一年度の三十億、三十二年度の三十億はともに健全なる健康保険の発達をはかるために出した国の補助金である、こういうことに——同じだ、こう了解いたします。そうしますと、昭和三十年度に出した十億というものは三十億とどう違うかというのです。
  61. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御承知通り、三十年度におきましては、過去の赤字が七十億円ございます。従いまして、この七十億円を、毎年十億円ずつ入れて過去の赤字を消していこうと計画いたしたのでございます。しかるところ、三十一年度予算編成に当って、十億円ずつ入れたのではとうてい健全化がはかれない。健康保険法自体についても十分な見通しを持つ改正を加えることにいたしましたので、七十億円の過去の赤字を埋めることとは別に三十億円を新たに組んで健康保険制度の健全化をはかり、特別会計の赤字が将来に向って新たに起らないようにしよう、こういう趣旨でございますから、十億円と三十億円とはその建前が変ってきていると御了承願います。
  62. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十年度の十億と三十一年度、三十二年度の三十億は建前が違う、ということは、性質が違うわけです。入れる目的が違うわけです。そうしますと、一体なぜ三十一年度に十億を入れることをやめたかということです。これは理論の筋が通らなくなるのです。
  63. 池田勇人

    ○池田国務大臣 十億円を入れるというのは過去の赤字でございます。三十億円は、今後は赤字を起さないようにしていこうということでございます。従いまして、残りの六十億円をどうするかという問題でございまして、三十億円と直接に結びつかないのであります。そうしてこの残りの六十億円というものは今後どうやっていこうかということは、三十一年度において健康保険法改正し、健全な運営を将来にはかってその経過を見てから考えよう、こういう気持でおるのであります。
  64. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、十億円というものを出すか出さぬかということは、三十億を一応入れてその経過を見て、十億円のことは後に考える、こういうことですか。
  65. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体そういうように考えております。しかし私は過去の六十億円をこれから健康保険の運営において全部これを埋めていこうというふうな気持でおるのではございません。健康保険法実施の状況を見て、とくと考慮いたしたい。従いまして資金運用部から借りておりまする六十億円につきましては、やはり借りたままここしばらく様子を見よう、こういうふうに考えております。
  66. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣の答弁は、厚生当局の答弁と違います。厚生当局はそういう答弁をしない。それは大蔵大臣の答弁の方が間違っておる。厚生保険特別会計というのを大臣御存じだと思う。厚生保険特別会計は様子を見ることにはなっていない。繰り延べは三十一年度と三十二年度だけ十億円を入れることをやめて、三十三年から入れることになっておる。従って厚生当局、神田厚生大臣は、三十三年度から必ずこれは入れますという答弁をやっている。そうしますと、大蔵大臣の意向と厚生大臣の意向とは違うことになる。これは政府部内話し合って明確にしなければいかぬ。それは違うんです。
  67. 池田勇人

    ○池田国務大臣 厚生大臣がどうお答えになりましたか、打ち合せいたしておりませんが、もし違うところがあるならば、打ち合せてお答えいたしたいと思います。
  68. 滝井義高

    滝井委員 この法律は与党がすぐに通してくれという現段階になって、そしてあなたの方は厚生保険特別会計というものをお出しになっている。その法律が二重な法律になっている。まず第一段階として出たものは、昭和三十一年度だけ十億を延べますという段階で出ている。ところが今度の国会になったら再び三十三年度へ延ばしますという。この同じ国会内閣の意思は二つになって出てきているのです。ところが今の大蔵大臣の意思は、今度はさらにその上、それは三十三年度からやるかどうかもわかりません、様子を見てから考えます。これでは内閣の意思は三つある。どれがほんとうかわからない。
  69. 神田博

    ○神田国務大臣 今の滝井委員のお尋ねでございますが、私が先般お答えしたことと大蔵大臣が今お答えしておることとは違ってないと思います。違っているとおっしゃることは、おそらく手続をそのときにとる。そのとる場合に、とるかとらないかはそのときの事態で考えるということを私はお答え申し上げたわけで、大蔵大臣がそのときに考えるということと結局結論は同じことを申し上げていると思います。その時期が到来しないから、そのときにそういう処置をそのときの情勢に応じたのをとる、こういう意味で私もお答えしているし、大蔵大臣がお答えしているのもそういう答弁だと思います。
  70. 滝井義高

    滝井委員 法治国家の厚生大臣としてそんな答弁はありませんよ。国会に出ておる内閣の意思は、三十三年度から十億は出しますという意思しか出ていない。内閣法律を出しているじゃありませんか。そんなばかな答弁はありませんよ。全然話にならない。見てごらんなさい。法律は三十三年度とちゃんと出ている。
  71. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 行きがかりのある問題でございますから、私からまずお答え申し上げたいと思います。  十億円ずつ入れることになっておりましたのを、三十一年、三十二年この二年は入れないことにして、三十三年度以降にこれを送っておる。法律的にはまず三十三年度以降に送っておるというそこまでであります。この三十一年、三十二年になぜ入れなかったかというその気持と申しますか理由として、健康保険法改正その他もございまして、健康保険の会計の状況がまだ安定をいたしていないことでございますから、三十一年、三十二年はこれを見合せた。そして法律的な制度としては三十一年、三十二年を見合せただけだということでございまして、三十三年度以降は入れるという問題になっておりますが、三十三年度以降さらにまた健康保険の状態が改善されて自力で返せる状態が起るかどうかという将来の問題はあるわけでございますけれども法律的には三十三年度以降は入れるということに相なっておるわけでございます。
  72. 滝井義高

    滝井委員 それは森永さん違いますよ。いいですか、厚生保険特別会計法ができて、あの法律制定するときに、毎年十億ずつ入れることについては、毎年必ず十億入れるかという念を押している。ところが当時の正示君、保険局長の久下さんから、間違いございません、必ず十億ずつは入れますという言質をもらっておる。わざわざ大蔵委員会がわが党の横路君をしてやらしておる。そうしてそれをはっきり明言しておる。ところが明言しておるにもかかわらず、二年間休んでおる。二年間休んで、今のあなたの御答弁のように、今度は三年目の三十三年になっても健康保険の財政を見なければわからぬというなら、厚生当局の答弁と全く違う。今までの厚生当局の答はわれわれをペテンにかけたことになる。大へんですよ。
  73. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 当初六十億の赤字をどうするか、それは毎年十億ずつ入れるということで法律をお出ししたわけでございまして、まさにその法律通り十億ずつ入れるということであったわけでございます。しかるにその後さらに健保の財政内容が悪化いたしまして、この過去の赤字を解決するだけでは健保の根本的な建て直しはできない。そこでただいまお願いいたしておりまするような根本的な改善案を盛り込んだ案が出ますと同時に、過去の赤字ではなくして、当年度の赤字を埋める一助といたしまして、三十億円を入れる必要が起り、それを規定した法律案を本年度お出ししたわけでございます。そのときに過去の十億をどうするかということがございました。その点につきましては、政府部内においていろいろ検討いたしましたが、財政上の都合もございましたし、またこの健康保険の改正がいかなる影響を及ぼすか、これにつきましては多少実施の状況等も見定める必要があるということで、とりあえず三十一年と引き続いて三十二年はこの十億を入れるということを延期していただく法案をお出ししたというわけでございます。  そこで三十三年度以降はどうするかということでございますが、現在の法律のもとにおきましては、もちろん十億ずつ毎年あと五年間ですか、六年間ですか、入れるという建前になっておるわけでございます。先ほど私が健保の財政状態が云々ということを申し上げましたのは、これはこの法律規定よりもちろん優先するものではございませんし、現行法のままでございますれば、もちろん来年度以降十億円ずつ入れなくちゃならぬ性質のものでございます。ただいかに健保の財政状態が移り変っても法律法律として十億ずつ入れるかどうかということになって参りますれば、これはまたそのときの事情もあるわけでございますが、法律的な制度としても、また私どもの意向としても、この十億ずつを今から入れないということを申し上げるつもりはございません。法律規定に従って、現行法のままで参りますれば、十億ずつ入れなくちゃならぬ制度、建前にたっておるわけでございます。
  74. 滝井義高

    滝井委員 るる言っておりますが、今までの発言とは全然違うんです。厚生当局は大臣以下保険局長も必ず三十三年度から十億ずつ入れるということを言明している。それからあなたのところの正示君も言っている。ところが今のあなたなり村上さんの答弁は今のそれと同じようなことを最近になって言い始めた。十億円はそのときの情勢を見なければわかりません、入れることを得と書いてあるので、入れるか入れないかということは、財政当局がそのときの情勢を見て判断すると言う。この法律を作るときに、入れることを得と書いてあるのはいかぬから、入れなければならぬというように書かなければいかぬと言ったら、正示君は、そうなっておるけれども、必ずこれは入れます、こういうことなんです。そういう言明まで得ているものを、今になると百八十度転回している。  それならば大蔵大臣にお尋ねしますが、健康保険財政が黒字になっても、三十億入れますか。
  75. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは健康保険の状態とその後の見通しを見てきめなければいけません。黒字の原因が、三十億円で黒字になっておるかあるいは三十億円を下積みにして、そうして健康保険が標準報酬その他の理由によりまして黒字になった場合、いろいろな点がございますので、三十億をどうするという問題は、その黒字になった原因を考究してから判断すべきものであると考えます。
  76. 滝井義高

    滝井委員 これも違って参りました。黒字であってもこの補助金というものは恒久的に入れるものである、すなわち負担と同じであるということを、この委員会で厚生大臣以下再三にわたって言明している。これも違ってきた。これは重大ですよ。だから私がこういう問題になるから、午前中に、予算が通らない前にやってくれと言ったのはそこなんです。社会党の食い逃げじゃない、大蔵当局の食い逃げですよ。これは前の一萬田大蔵大臣も黒字になっても必ず出しますという言明をしている。大臣がかわったら、それは黒字の原因を探究して出すか出さないかきめるということならば、われわれ全くペテンにかかってきている。
  77. 池田勇人

    ○池田国務大臣 三十億円というもので将来十分であると言えるかどうかわかりません。あるいは四十億、五十億入れなければならぬかもわかりません。ただ建前といたしましては健康保険を補助するという建前になっておりまするから、私らは将来の社会保障、特に医療保障につきましては非常に重点的に考えておりますので、将来においても入れる気持でございまするが、何も三十億円にくぎづけられておるものとは私は考えておりません。
  78. 滝井義高

    滝井委員 私は今一応去年もことしも三十億だから三十億ということを言ったのであって、問題は、健康保険が黒字になって国は恒久的に補助金を出していくということを言明している。なぜ私はそういう質問をしたかというと、七十条ノ三をごらんになると二つの書き方になっております。まず七十条の事務費の方は負担をすると書いてある。ところが今度の方の補助金というものは補助するとなっておる。だから負担金なら、負担するのは義務です。補助するということは、財政当局が出しても出さなくてもいいものになるのですよ、条文の書き方が。従って私は毎年恒久的に補助するならば、負担すると書かなければいかぬと主張しましたが、いや事務費を負担すると書いておっても、こちらの方の財源的なものはこれは補助すると書いておっても、黒字になっても必ず恒久的に入れますということを、前の小林厚生大臣以下代々の大臣がみんな言明している。川崎君も言明している。これが通ったら毎年やりますということは三代にわたる厚生大臣が言明している。それを池田大蔵大臣になったら一挙にひっくり返るのでは、全く閣内不統一です。私は三十億と額は言いません。黒字になっても年々歳々恒久的に補助金というものは出すものであるという言明を得てわれわれは今法案審議に当っておるが、今の大蔵大臣の答弁ではそういうことにならないですよ。
  79. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ならないとおきめにならずに出すものだとお考え願いたい。それは先ほど申し上げましたように黒字の原因等も考えなければなりません。常に政府の重大方針として医療につきましては熱意を持っておるのであります。御承知通り健康保険につきましては、多分昭和二十五年くらいから事務費を一部負担するようになったと思います。しかし今では事務費は全額負担するようになった。政治の方向といたしまして、今さら健康保険については何もしないのだというふうなことはもう言わずもがなで、そういうことはできるものじゃないと私は考えております。どちらかといえば、三十億円を云々するよりも、将来は黒字が出たらまず標準報酬を下げるとか、あるいは医療費をどうするとか、あるいは医療の拡充強化をはかる方に向うべきである。今大蔵大臣として、こういうものは出さないのだというふうな時代錯誤の考えは持っておりません。
  80. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣、この場になって時間が惜しいですから、そう歯に衣を着せずに、黒字の原因を考えるとかなんとかいうことでなくて、——この前予算委員会で最後に私はありがとうございましたと言っておりますがね、やはりこの段階で少くとも政府管掌の健康保険については、それの健全な発達をはかるために国は毎年少くとも相当の責任を持っていくのだという、これくらいな言明は、今のそのお気持があるならば言えるはずだと思うのですがね。これは岸大臣おられますから、今お聞きの通りですがね、どうですか、一つ出せますか。
  81. 岸信介

    ○岸国務大臣 わが岸内閣の施政方針としまして、私ども申し述べておることの一つの大きな何としましては、この健康保険の健全な発展をはかり、国民皆保険に持っていかなければならぬという意味で、この医療保険の全体についての所信を考えております。従って健康保険の健全な発達をはかるために、政府としては当然相当の程度において予算的にも考えなければならぬと考えるということを、明確に申し上げます。
  82. 藤本捨助

    藤本委員長 滝井さん、ちょっとお諮りしたいのですが、お約束の時間を厳守願います。
  83. 滝井義高

    滝井委員 一番大事なポイントでありますから、もうちょっと待って下さい、今の岸総理大臣の言明を、深く敬意を表して了承いたしました。  次にもう一つ大蔵大臣に——これは私はおととしから大蔵当局に警告しておる問題ですが、この厚生保険特別会計の中の六十億の金はどこから借りてきたかということです。
  84. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど資金運用部と答えたと思うのでありますが、資金運用部から借りますと、六分五厘程度の利子がつきますので、中間を国庫余裕金で泳いで、期末に資金運用部の方に切りかえておるという話でございます。従って特別会計には金利負担はできるだけしてもらわない、負担をかけないような配慮をしておるのでございます。
  85. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、この三十年度の資金運用部の実績が予算の説明書に出ております。これには厚生保険特別会計に運用部から六十億を貸した実績は出ておりません。三十一年度ももちろん出ていない。三十一年度の当初には、予算の当初から、資金運用部に借りるという説明が出ておった。私はそれが出ていないので注意をいたしました。ところが、三十一年度の運用計画の実施の見込みも見てみましたが、やっぱり出ていません。「国の予算」という、大蔵省が監修しておる本がありますが、これにも出ていない。私は、少くともこれは資金運用部の運用計画の中にはっきりしておかなければいかぬということを、再三にわたって予算委員会で注意をしておる。ところがやっぱりことしも出ていないのです。これは一体どういうことになるのですか。
  86. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 その問題につきましては予算委員会でも、去年でございましたか、御説明申し上げたことと思いますが、ただいま大臣からのお答えにもございましたように、金利負担を軽減するために途中はできるだけ国庫余裕金で泳ぎまして、期末の三月の末になりまして——これはもうそれ以上年度末を越えて国庫余裕金では泳げませんから、三月の末になりまして預金部から長期資金を借り入れて年度を越す。年度を越しました後におきましては、やはり金利負担を軽減する意味で国庫余裕金を借りまして預金部に返しまして、また年度末までいって同じ操作を繰り返す。さような、預金部としては普通の長期資金とは多少違った形の資金運用に属するわけでございますので、予算の説明に出ておりまするような何年にもわたる財政投融資計画の中に入れるのはむしろおかしいんじゃないかというようなことで、この財政投融資計画の中からは除いております。ただしこれはもちろん長期資金でございますから法律規定するところに従いまして、内閣に置いてございます資金運用に関する審議会にかけまして、資金運用に関する御決議をいただいた上で実行いたしておりますので、その点御了承いただきたいと思います。
  87. 滝井義高

    滝井委員 今の六十億というのは二年間も繰り延べていく長期の借入金です。これは保険経済自身からいえばそういう処置をとっていただくことはありがたいことなんです。ありがたいことではありますけれども、それが年度末になって金を返してまたすぐ借りかえていくということは、保険経済の長期の見通しからいえば、やはり困ることがあるわけなんです。どうしてかというと、今言ったようにそういう形をとるから十億入れることも繰り延べていく。そうすると保険経済というものはいつも赤字をしょっておる、重荷をしょって坂を上っていくような状態になってくるのです。これは借金がいつもぶら下っているという形になる。ですから、これは堂々とこの中に、やはりぴちっと計画に乗せてもらってやるべきだと私は思うのです。それが正常の財政の運営の仕方だと思うのです。それから今利子は六分五厘だと言ったけれども、利子は三千万円しか計上していない。これは六分五厘では三千万円をこえるのです。これは六分でなくちゃならぬ。今の答弁では多分六分ということだった、今は六分五厘ということで去年より五厘上っちゃった。これは一体どういうことです。
  88. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 私どもが利子として計上いたしておりますのは一カ年に三千万円でございます。しかし実際のあれとしましては年末に借りまして、できるだけ早く国庫余裕金を借りてすぐ返す、こういうふうな操作をいたしておりますので、実際に使用いたします利子は三千万円よりむしろ少くなる場合が相当予想されるわけであります。
  89. 滝井義高

    滝井委員 それはそういうことに一応了承しておきましょう。そうしますと、大体この健康保険法というものは一月一日実施法律なんです。ところが現在もうすでに三月になってもまだ法律は通っておりません。従って昭和三十一年度については、政府は財政の見込みとして、大体この法律は一月一日実施の見込みとして立てて、われわれにくれた資料によれば、この法律が通ることによって約三億二千万円、それから国の補助金が三十億入ってくる、こういうことなんですね。ところがこの法律はもはや年度内に通っても財政効果というものは三十億以外にはなくて、三億二、三千万円の穴があくという情勢ができて参りました。これが一つ。いま一つは、この法律がすぐ通っても、この法律実施するためには最低一カ月かかるということが大体はっきりしてきた。そうしますと三月三十一日までにこの法律が通っても、実際に国民生活を規制して動いていくためには五月一日でなくてはなりません。そうしますと、ここに一カ月約三億から五億の赤字が出る。一月から五月までの間に約六億から八億程度の赤字が出ることになるのです。一体大蔵当局はその点をどう考えておるかということです。
  90. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 一月一日からの施行を予定いたしまして財政効果を期待しておったわけでございますが、すでに二カ月たちまして、その点では私どもの期待も破れたことはまことに残念に思っております。今後できるだけ早くこの法律を通していただきまして、一日も早くこの財政効果が期待できるようにということを切にお願い申し上げたい、そういう気持でございます。
  91. 滝井義高

    滝井委員 これが早く通っても、今言ったようにこの法律は少くとも準備のためには一カ月を要するので、実際に動くのは最短距離を行っても五月一日の実施になるというのです。これは事務的にはっきりしておるのです。そうしますと一体その約八億程度の赤字はどう考えるかということなんです。これはもうすでに三十億入れなければどうにもならぬ。五十四億の赤字が三十二年度において出る、三十一年度には三十六億の赤字が出る、こういうことははっきりしている。これは法律が通って三十六億出るのですから、そうしますとそこで赤字がふえるが、その場合には大蔵省としては、大蔵大臣が言われるように十億というものは健康保険の財政状態を見て考える、こういう御意見もあった、そうしますとこれは十億入れてもらわなければ三十億だけでは健康保険の健全化はできない、理論的にこういう結果になるわけなのです。だからそこでどう考えるかということなんです。
  92. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 毎年十億ずつ埋める方の系統の話は、これはやはり過去の赤字をどう処理するかという計画の話でございまして、ただいまのお話は法律の施行がおくれたために、三十一年度ないしは三十二年度に政府考えておったよりも赤字がふえる、いや赤字でないことを期待しておったのが赤字になる、それについてどう考えるかという問題になるわけであります。その点は一般会計と特別会計の原則から考えますと、赤字が出たからといって、それをすぐに一般会計で穴埋めをする、そういう建前のものではないことは、これは財政法上の原則として御承認いただけると存じます。しかし一方健康保険会計の健全化をどうするかということは、これは重大問題でございますので、赤字のままこれを放置するわけにも参らぬわけでございまして、私どもといたしましては先ほどお話の十億の問題とは別個の問題として、この赤字をどう処理するかということにつきましては厚生省当局とも十分相談の上、至急検討いたさなければならぬ問題ではないかと存じます。その前にむろん赤字は極力少くなるようにという意味での行政的な努力はできる限りのことはいたさなければならぬと存じますが、その上でもなおかつ赤字が出たという場合には、それの処置につきましては厚生省と十分相談をいたしまして、別途の対策を検討いたしたいと存じます。
  93. 滝井義高

    滝井委員 最後に、今の客観的な情勢はこの法律が年度内に必ずしも通るという確たる見通しというものは立たないのが現状だと思います。そうするとその場合に厚生保険特別会計も当然これは並行でなければならぬというのが厚生省なり大蔵省なりの主張でございます。健康保険法と厚生保険特別会計は表裏一体のもので、すなわちピッチャーとキャッチャーの役割を演ずるもので、この二つがなければだめだというのが今まで主張されてきたところなのでございます。そうしますと両方が一ぺんに通らないというような場合に問題になってくるのは、どういうことが問題になってくるかというと、現在の厚生保険特別会計法というものが生きておるわけなんです。そうしますとこれは昭和三十一年度から十億ずつを入れることになっておるわけです。今度国会に出しておる厚生保険特別会計法の改正案で三十一年度と三十二年度は十億入れることを延ばしておるわけですから、現在の十億入れるという法律が年度内においては生きることになるわけです。その場合に政府は今予算に計上をしておる三十一年度の三十億の中から、その生きておる法律のために十億を使うことができるかできないかという点です。これは少しこまかくなるから大蔵大臣わからなければ主計局長でけっこうです。
  94. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 私どもといたしましてはぜひ年度内にお通しいただきたいのですが、もし通らなかった場合にどうなるかという仮定の場合のお答えになるわけでございます。三十億はこれは健康保険事業の施行に要する経費の一部を補助する、いわば補助ということで、当年度の健康保険事業の一部の補助ということになっておるわけでございます。この十億の方を埋めるのは過去の借金になっておりますものの返済資金を埋める、そういう趣旨の金でございまして、当然にこの三十億が十億より大きいわけですから金額的にはカバーできますけれども、性質までも含めて十億の方をカバーするか、その点はちょっと疑問があるかと存じます。当然この三十億の中から十億の借金の繰り上げ償還、年賦償還のための金を予算として支出できるかどうか、その点につきましては、財政法、会計法の建前から申しましてちょっと疑問があるかと存じます。
  95. 滝井義高

    滝井委員 いいですか、まず第一に三十億と十億の入っていく袋が同じであるということです。一般会計から厚生保険特別会計に入っていくというのは、金は同じですよ。すなわち目が同じところに入っていくということです。目が同じなら、これは財政法上流用ができるということです。だから、そういうことで私は使えるだろうと思うのです。ところが今あなたは疑問があるとおっしゃる。そうしますと、疑問があって使えないとするならば、現在生きておる法律というものをなぜ実施しないかということです。これは改正案が通らない限りは生きておるわけです。だからこれは、財政当局がその計上を怠ったということになる。
  96. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 法律は生きておりますが、それは三十億入れることに別の法律改正案をお出しいたしました機会に、その十億の方を殺していただく法律案政府は現に出しておるわけでございまして、その間のことは何ら矛盾がないのじゃないかと思います。
  97. 滝井義高

    滝井委員 だから、その出しておる法律案が現実にペンディングで通っていないのです。通っていないのに、昭和三十二年三月三十一日は目睫に迫っておる。そうすると、四月一日になったら、これは当然今生きておる法律によって、十億は何らかの処置をせざるを得ないことになる。処置をなさらずにほっておけば、これは法治国家として国会の意思、国民の意思というものを無視することになるわけです。
  98. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 一般会計と特別会計の関係は財政法にも、特別会計を設ける場合には法律によって設けなければならぬということになっておりまして、みだりに一般会計と特別会計の関係を混淆してはならぬ。そのために、特別会計に一般会計からあらゆる意味でいろんな種類の繰入金をいたします場合には、そのつど法律案が要るわけでございます。また法律案だけでは繰り入れられないわけでございまして、必ずそれとうらはらの予算があり、この両方で繰り入れをいたしておるわけでございます。そこで今度も、三十億の法律案と三十億の予算と、これがうらはらになっておるわけでございます。そうして一方、十億の方を殺す法律案を出しておるわけでございますが、それが殺せない、しかも一方予算の方はないということになりますと、法律と予算とがうらはらでなくては入れられないという会計法の建前から申しまして、ちょっとおかしいことになるわけでございまして、会計法、財政法の建前から申しますと、私は十億もちょっと入れられないのじゃないかという感じがいたします。そういうこともございますので、私どもといたしましては、予算はもうすでに通っておるわけでございますから、予算と法律がうらはらになりますように、どうぞぜひ年度内にこの法律をお通しいただきたいということでお願いしているわけでございます。
  99. 滝井義高

    滝井委員 これでやめますが、もう少しわれわれの納得のいくように一つ研究をして、いずれ機会をあらためて御答弁をお願いすることとして、私はこれで終ります。
  100. 藤本捨助

    藤本委員長 八木一男君。
  101. 八木一男

    ○八木(一男)委員 岸内閣総理大臣に御質問をいたしたいと存じます。  まず第一に、先般の本会議におきまして同僚の受田新吉君の質問がございました。その質問の内容は、総理大臣にとっては耳の痛い内容でございますのでここで重ねて申しませんけれども、戦時中のいろいろの間違いにつきまして十分に反省をしてやっていきたいというお答えであったと思うわけでございまするが、その戦時中の問題は、軍部がいろいろの間違いの原動力であったことは間違いございませんけれども、それに呼応して協力した官僚組織の間違いもあったことは疑いのない事実でございます。先般の本会議で御答弁になった趣旨において、そういうようなことを今後の日本の行政上に残さないという御努力をかたく心に誓っておられるのだろうと思いますが、それにつきまして……。
  102. 岸信介

    ○岸国務大臣 つとに本会議及び予算委員会等におきましてもその問題に関して私の信念を申し述べておりますが、私は当時のことを考えましていろいろな意味において深く反省をいたしまして——あれがああいう事態になりましたことの問題については必ずしも原因は一ではないと思います。軍部の問題もありましょうしあるいは御指摘の官僚制度の問題もありましょう、あるいはいろいろ世論指導の問題もありましょうしまた国際情勢も関連しておったと思います。いろいろな問題が関連しておると思いますが、いずれにいたしましても私は深く反省いたしまして、これらの事態を再び繰り返さないようにするためには民主政治を完成することであり、私も祖国再建のために民主政治家としてそういう過去の誤まりを再びしないような覚悟を持っておりますとともに、政治もそういうことを繰り返さないようにあらゆる面において考えていきたい、かように考えております。
  103. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の総理の御決心をその通り実行されるかわれわれは十分に注視していかなければならないわけでございますが、その意味で、たとえば各省の非常に実権を持っておる公務員の人が、現在この国会制定された法律を自分の考え方で曲解して持っていこうとしたりするようなときには、今の総理大臣のお考え——これはお考えはそうじゃなくたって法律の建前で、これを断じて取り締っていかれなければなりません。また世論を無視して一方的な判断でそれがいいということをいろいろと貫こうとする、そういう運動を公務員がしようとする、そういうことについては規制をしていかれるお考えがあるかどうか、はっきりとお答え願たいと思います。
  104. 岸信介

    ○岸国務大臣 一般公務員の執務につきまして、法治国家として法律を正当に解釈し正当に施行することは、これは当然の義務でございます。従って一方的な解釈であるとか不当な施行ということは、政治の責任を持っております内閣総理大臣としてはそういう事態を生じないように、一切の責任をとってそれを徹底するようにしたいと思います。
  105. 八木一男

    ○八木(一男)委員 法律問題についてはそのお答えで満足でございますが、法律問題以外でも一般の行政で、多くの広い範囲の国民階層の世論と反対の意見——それはいろいろ解釈はございましょうが、ほんとうに世論と反対の意見、それと違う方向を無理やりにいろいろな関係、いろいろな勢力を利用して押し通そうというようなことを公務員諸君がやりました場合には、これは民主政治の立場から——もちろんそういうことは政党政治だからやらないはずなんでありますが、そういうことを実質上やろうとした場合には、これは内閣総理大臣として、また今の多数党の総裁として、そういうことを断固として押えるという御決心があるかどうか。
  106. 岸信介

    ○岸国務大臣 民主政治は言うまでもなく世論の政治でありまして、国民世論の動向というものに対しては常にこれを謙虚な気持で受け入れていくということでなければ、民主政治は発展しないと思います。政党はその意味において存在しており、また公務員は当然——この民主政治、政党政治下におきまして政党がそういう世論を重視して政治を行なっていくという趣旨から申しまして、公務員もまたこの世論に謙虚な何でもって従っていくことは当然であると存じます。
  107. 八木一男

    ○八木(一男)委員 総理大臣にこれから健康保険の実際の問題をお伺いしたいと思うのでございますが、総理大臣は、政府提出の現在の健康保険法改正案の内容とかこの背景とかいろいろの状態について、こまかい詳しい御知識は、聡明な総理大臣でございまするけれどもあまりおありにならないと思うのでございますが、それについて全部精通しておられるという御返答があればけっこうでございますけれども、それについてどうでございますか。
  108. 岸信介

    ○岸国務大臣 もちろん改正案の趣旨であるとか、あるいはわれわれがなぜこれを改正したいと考えておるかというような点につきましては十分承知いたしておりますけれども、その内容の技術的な関係やあるいは法律関係等につきましては、今御指摘のように私自身がこれに精通しておるという自信は実は持っておりません。
  109. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そこでお伺いしたいのでございますが、実はこの健康保険法改正案、われわれの言う改悪案の内容はほんとうにとんでもないものなのである。時間がないから申しませんけれども、ほんとうにとんでもないものである。それをとんでもあるもののように言っておるのは厚生省のそこにおる保険局長保険局長に総理大臣外振り回されておる状態にあるとわれわれは考えている。そうでないと怒る人がいるかもしれませんが、そういう状態なのである。世論が御承知通り、たとえば医師の団体、歯科医師の団体労働組合、被保険者の団体あるいは患者の団体が非常な大運動をしてこれに反対をしている。またその個々の当事者が血を吐くような思いで——私は総理大臣と同席したこともございますが、この改悪をしてもらわないで下さいということを陳情しておられることは、総理大臣も御承知通りであります、一緒に立ち会ったことがございます。そういう世論の背景におきまして、総理大臣は内容をこまかく御存じない、その御存じないのに乗じて、そこにいる厚生省の保険局の連中が、これは断じていいのだというように振り回している。今の日本の政治は政党政治であるべきなんです。ところが実質上まだ官僚政治の方が強い、それを直さなければ日本の政治は立ち直らない、日本の将来は直らないのです。ところがこの一件で今振り回されている自民党は二百九十九名の大政党になって、御存じの政党の状態で右顧左眄する必要もない状態にある。そのときにその大自民党が厚生省の幹部の一部の官僚に振り回されている、そういうことではいけない。総理大臣はこまかく御存じない、これは正直で、御存じなくとも仕方がないと思います。御存じあった方がいいけれども、だけれどもこれだけ世論が問題化したら、その世論の中身を分析して、厚生省の考え方原案がいかぬのじゃ、ないかというふうに総理大臣は考えていただきたい。そこで既定方針で厚生省が出したから、政府が閣議できめたから、だからこれを何でも多数で押し通すというような面子にとらわれた間違った政治ではなしに、自民党が間違ったものであったならばいさぎよく変えて、国民の要望にこたえるのだという大政党としての、また岸内閣のりっぱな民主政治としての立場を示していただきたい。ところが現在幾らしゃべってもだめだ、厚生省ががんばっていけません。それよりも頭はよくても、研究はすぐれていても、その問題に対する技術的な知識が劣る人が議員の大部分でございますから、彼らががんばっちゃうと、いけないかしらんということで牽制される、総理大臣自体がそうであろうかと思うのです。ですからこの段階において総理大臣が断固としてこの問題を考えられて、その反対の世論を分析されて、大乗的な見地からこの改悪案を撤回する気持を固めていただきたいと思うのです。その問題について総理大臣の明確なる御答弁を願いたい。
  110. 岸信介

    ○岸国務大臣 この健康保険法改正の問題は、御承知通り過去数回の国会におきましても審議せられまして今日に至っているものでございます。私の属しております自由民主党におきましても、この問題を取り上げて長い間研究をいたしております。世論の動向、医師その他の意見も十分にこれを取り入れて、そうして自民党としての考え方をきめております。決して厚生省の官僚の一部が立てた案をうのみにいたしておるというわけではございません。私は今日までこれを扱ってきており、これを研究して参りましたわが党のなにといたしましては、十分に世論の動向につきましても考えて、そうして政党政治の本義に基いて、政党の研究によるところの結論を出して審議に臨んでおると私は信じております。今この案にはいろいろな批評はあります。またいろいろな立場から批評し意見を立てれば私はこれもあると思いますが、われわれが念願しておるところは、わが党といたしましてはすでに公約しているように、健康管理の問題については将来国民皆保険を目ざしてこれを考えていくという基本方針をきめておりまして、その大きな支柱である健康保険の内容、実質を健全ならしめるということがその考え方の基礎をなしておるわけです。その立場に立って、あるいは先ほど来お話のある国庫からのこれに対する交付金の問題も考えなければならない、あるいは一部患者の負担の増額ということもやむを得ないのじゃないかというような点もあるのでありますが、これらの点につきましては十分各般の事情をしんしゃくして、世論の動向も察して、党として十分な研究の上に立って私は結論を出しておるのでありまして、政府において厚生省の一部の専門家の意見だけに動かされておるものではない、かように考えております。
  111. 八木一男

    ○八木(一男)委員 簡単にお答え願いたいのですが……   〔「簡単に質問してもらいたい。」と呼び、その他発言する者多し〕
  112. 藤本捨助

    藤本委員長 静粛に願います。
  113. 八木一男

    ○八木(一男)委員 いや、今度の質問については簡単でけっこうです。去年の一月に法律を出されたときに、三十一年の赤字の推定金額は六十七億でございます。本年は現在赤字が減っているのですけれども、その数字を総理大臣御存じかどうか、御存じでなければ御存じないでけっこうです。
  114. 岸信介

    ○岸国務大臣 正確には承知していませんが、相当に減額したということは聞いております。
  115. 八木一男

    ○八木(一男)委員 相当というのはどのくらいと思いますか。
  116. 岸信介

    ○岸国務大臣 数字は今申します通り正確に存じておりません。
  117. 八木一男

    ○八木(一男)委員 わかりませんか、総理大臣御存じなくても仕方がありませんが、その相当ということで、非常にそういうところが間違いがあるのです。去年健康保険改正案を保守党の方が出されて、そこで非常に赤字があるからしようがないということでいろいろ説明された。ところが去年よりことしは、現在すでに三十六億が推定されておりまして三十一億円減っている。去年のいろいろ赤字だからしょうがないから、一部負担とかいろいろなものをこう変えなければいけないのだと言われたことが大体それに見合っているのです。その見合っている去年よりも健康保険を悪くして、医療担当者や被保険者をぎゅっと締めてやろうというお考えを持っておられないのなら、去年と同じ状態で、たとえば一部負担とかほかのものを全部やめることができるのです。それを総理大臣はおそらく御存じないと思うのです。それをできないというのがこの連中なのです。それでごまかされている。そういうことをしない方が国民のためにもいいし、われわれも苦労しないし、自民党も信望が増すのです。それをあの人たちができないとがちゃがちゃ言っているのです。それを御存じないかと今聞いたのです。御存じなくてもいいですから、今申し上げたのですから、去年と事情が変ってそういう改悪案を出さなくてもいけるのだという状態になっておる、去年の三十億とそのほかのもので、去年は六十何億のものがありましたけれども、そういうものをはずしてもいける状態になっている。それを総理大臣は御存じなかった。なくてもいいのです、申し上げたのですから、これからそういう状態に立って、与党もりっぱに審議をされたのでございましょうけれども、そういう状態にあるから、もう一回考え直そうじゃないかと与党の方に言われる、厚生省には、そういうことを正確に報告しないでいけないじゃないかというので、しかりつけられるというような態度でこの問題を考えていただきたいのです。攻撃のためじゃないのです。これは国民のためなんです。今度の一部負担案で来年一年間の財政効果が平年度において十二億なのです。十二億の問題で大ぜいの患者、大ぜいの被保険者がほんとうに悲痛な状態になる。二千億も財政余裕があって、予算は今衆議院は通ったかもしれないけれども、やろうと思えば、やり方で幾らでもできるのです。岸総理大臣がやろうと決意してそれをできないはずはない。だからそのくらいの問題で国民を苦しめたり、世の中を騒がせるようなことをしないという態度で、内閣総理大臣としての主体性でがんばっていただきたいと考える。その点について、一つ答弁を願いたい。
  118. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、われわれは政府責任者といたしまして、国民の医療保険の問題については非常な関心を持っており、その内容を健全、充実していくことをわが党の重要な政策と考えております。もちろんそのやり方につきましては専門的な見地から、いろいろな検討をすべきものであろうと思います。また過去においての赤字が本年度において相当程度減額されており、また今お話のような数字であるということでありますが、その原因がどういうところにあるか、あるいは将来の見通しがどうなるかというようなあらゆる点を考えて、そうして健全な健康保険制度というものを樹立するということが必要なのでありまして、わが党にもその点に関しましては、従来からお医者さん時代の経験を長い間持っており、その方面の意見を持っておる方、あるいは医療に実際従事したことから国民の意向等につきましても十分な経験を持っておる人もおりまして、それが多数寄って研究した結論が出ておりますので、私は決して今八木君の御指摘になりますような一部の官僚に動かされない、また専門家のあまりに技術にとらわれた結論でなしに、適当な結論がわが党として作り上げられるということを信じておりますので、今八木君から、この案が違っているからこれを撤回しろというふうな御意思がありましたけれども、そういう意図は持っておらないわけであります。
  119. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そういうことで与党の同僚各位が熱心に御検討になっておられると思うのですけれども、たとえばそこに池田大蔵大臣もおられますが、予算の総ワクとか、それから今まで出した体面とかいろいろのことに制約されておる。与党の中でこの改悪案に反対の方がたくさんおられるのですから、そういうことをはずして検討して、よいということになれば見解の違いですからいいのです。そういう予算があるから、池田さんがうんと言わないからだめなんだということでなしに、それから前に出した面子があるから、厚生省がぶうぶう言うからだめなんだということでなしに、与党の熱心な先生方が十分に考えていただけるように、そして政府自体としても閣議でも考えていただけるように、そういう場を総理大臣として、総裁代理として作っていただきたい。その結論がわれわれの考え方と違ったら仕方がありません。しかしそういうワクがはまって反対の人も反対が言えない。われわれは与党の中にも反対の序をたくさん聞いているのです。だからそれからのことはしょうがないですけれども、総理大臣として総裁代理として、内閣の中においても、与党の中においても、早急にそういう場を作っていただきたい。  もう一つは、総理大臣の御意見の中に医療担当者その他から御意見を聞いたという言葉がありました。その言葉だけで、党とは言われましたけれども、裏を返せば被保険者の意見をあまり聞いておられないということが推定できるのです。またそう思います。医師団体とはいろいろ打ち合せをしておられることはわれわれ仄聞いたしております。しかしながらこの一部負担その他の問題で重大な抑圧を受けるのは医師団体であるとともに被保険者なんです。患者なんだ。そういう人たちの意見は与党の方々は、聞いてはおられると思いますが十分には聞いておられないと思う。そのときに被保険者なり患者なり、医者以外のそういう打撃を受ける人たちの意見も十分に参酌していただきたい。政党関係で、私たちには関連が少いかもしれないけれども、熱心に私たちに陳情しておられる方のあることは御承知通り。それでそういう関係自民党が信頼を得られて、その人たちの投票が自民党に移っても、日本の政治がよくなればかまいません。だからそういう被保険者や患者の人たちの意見を十分に聞いて、政策を作る場を至急に作っていただきたいということを切にお願いしておきます。  最後にもう一つ、最初の法律違反の件でございまするが、これは明らかに事実でございます。というのはここに社会保障制度審議会設置法という法律がございます。これの第二条の第二項に、「内閣総理大臣及び関係各大臣は、社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関しては、あらかじめ、審議会の意見を求めなければならない。」という条項がございます。これは総理大臣に関係のある条文でございます。それからそれに似た法律健康保険法第二十四条ノ二に「厚生大臣ハ政府ノ管掌スル健康保険事業運営ニ関スル事項ニシテ、企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ予メ社会保険審議会ニ諮問スルモノトス」この二つ法律で明記されております。ところが政府の出された今回の改正案は、諮問をしておりません。法律違反をしておるわけでございます。この点でいかに政策に自信がおありになっても法律は守るという立場で一回撤回されて、それから諮問をされて出し直さなければ、先ほど総理大臣の言われた法律を順守すべきだという立場と合わないわけでございます。ですから即時これを撤回されて、即時諮問されて、そうして諮問でいいということになったら出していただきたい。それについて御答弁願います。
  120. 岸信介

    ○岸国務大臣 厚生省の話を聞きますと、大綱はこれを審議会に諮問をしておるということでございます。
  121. 八木一男

    ○八木(一男)委員 諮問しておりません。諮問ということは一つもしておりません。保険局長、何をうそを言うのですか。厚生大臣、いつ諮問したのですか。でたらめなことを言うもんじゃないです。諮問をしていないのだ。言ってごらんなさい。
  122. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 事実のことに関連をいたしますようでございますから、私からお答えさしていただきます。この法律案を出しまする場合には、二十四国会に提案をいたします際に、諮問をいたしております。(「その通り」と呼ぶ者あり)その諮問の範囲につきまして、答申をいただいております。今回二十四国会に提案をしましたものと、若干の変更をして出しましたけれども、そを当時の諮問の範囲の中であり、また答申の範囲の中であります。従いましてただいまも仰せのありましたように、大綱とありまするし、前例等も調べてみまして、これは前例もたくさんあることである、かようなことで、われわれは諮問という形式はとりませんでした。ただ審議会を開いて御懇談をいたした次第でございます。
  123. 八木一男

    ○八木(一男)委員 先ほどなぜそういううそを言った。諮問をしていないのに、懇談を諮問とすりかえた。そういうところにさっき言ったように間違いのもとがある。でたらめなことを返事するもんじゃない。厚生大臣も保険局長の言うことは、このように懇談が諮問にすりかえられるということがあるということを銘記しておいて下さい。ですからわれわれの言うことを先に聞け、そうでなければ間違いが起るのだ。それで諮問していないものを、懇談を諮問にすりかえて(発言する者あり)黙っていろ。大綱は二十四国会のときに諮問した。そして二十四国会に出したのだからよいと言うようなことに、重大な日本の政治の官僚化するもとがある。法律が違うのだ。(「内閣が違うし法律も違う」と呼ぶ者あり)法律が違うじゃないか。勝手にすりかえている。法律の勝手な解釈はいけないということは今総理大臣が言われた通りなんだ。してしまったことはしようがないから間違いましたと答えなさい。そうしてわれわれも総理大臣にお願いして撤回すると言いなさい。そうでなければいけない。そういうことをすりかえるのは明らかに法律違反なんだ。それでそういうふうにとにかく懇談を諮問と言われたようなそういうことですから、(「政府法律も違う」「内閣が違うし大臣が違う」と呼びその他発言する者あり)そういうことなんです。ですから総理大臣、社会保障制度審議会に諮問しなかったのは総理大臣の責任です。それからもう一つの方は厚生大臣の方の重大責任です。ですから即時責任をとられるつもりならば、ほんとうに法律一つでも間違えたら責任をとるというなら、すぐおやめになるのがほんとうです。おやめになることがあまり重大であれば、即時今これを撤回するということを明言しなさい。即時撤回して諮問し直して出し直しなさい。
  124. 神田博

    ○神田国務大臣 私からお答えいたします。この法案はなるほど形式的にはお話のように社会保障制度審議会の諮問はしないことは事実でありますが、しかし鳩山内閣の際諮問をして、そうして国会に提案した、それが流れて、流れたあとを受けて、大綱はもういじっておらない。ある部分だけ修正してやった。だから、これは大綱を諮問するということならば、個々の問題は、大綱は変っておらぬということが一つ。それから内閣が変っておるという問題は、石橋内閣は鳩山内閣のあとを受けて、その石橋内閣のあとを岸内閣が受けておるのですから、これは自民党としても、継続性を持っているという意味で私どもはこの案を御審議願う、こういうことにきめておるわけです。
  125. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実にけしからぬ話で、間違ったと認められて撤回すれば問題はないですよ。総理大臣はまだ御答弁されていないからいい。厚生大臣は間違っているのに強弁されて、それでいいのだ。法律を厚生大臣は無視することを平気で言うようなことはいかぬです。間違ったら間違ったと言って撤回して、諮問してやり直しても間に合います。総理大臣はそういうばかなことは答えておられない。厚生大臣は聞かぬのですか。
  126. 神田博

    ○神田国務大臣 決して八木委員の言われるような強弁をしておるわけではございません。淡々として私は答えておるのです。それは見解の相違だろうと思います。   〔「法制局長官を呼んで聞け」「内閣も違っているじゃないか」「休憩しろ」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
  127. 藤本捨助

    藤本委員長 八木委員、質問を御続行願います。
  128. 八木一男

    ○八木(一男)委員 これは内閣の重大責任です。内閣の命とかえっこなさるのでしたらいいです。総辞職していただけるのでしたらかまいません。
  129. 藤本捨助

    藤本委員長 八木君に申し上げます。
  130. 八木一男

    ○八木(一男)委員 法制局長官を呼んで下さい。   〔発言する者多し〕
  131. 藤本捨助

    藤本委員長 御静粛に願います。八木君、今、総理大臣に対する御質疑答弁は後に保留いたしまして、後にお答えすることにして、ただいまから質問を御続行願います。——その問題以外の質問を願います。(「休憩中だ」「再開しろ」と呼び、その他発言する者多し)開会中です。休憩しておりません。——高田保険局長。(「だれも局長に答弁を要求していない、大臣に質問しておる」「法制局長官を呼べ」と呼び、その他発言する者多し)今連絡しております。
  132. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 お答えをいたしたいと思います。結論は法律違反ではございません。法律案を提案いたします際に諮問せよと書いてありますれば、これは法律違反になるかもしれません。しかし法律立法の大綱について諮問しろ、こういうことが書いてあるわけでございます。ところが今回の事案におきましては、二十四国会に提案をいたします前に諮問をいたしております。しかも第二十五国会に提案をいたします際には、二十四国会に諮問をいたしましたものと内容はほとんど同じであります。(「違う」と呼ぶ者あり)ただ一点変っておるところがあります。しかしその点につきましては、さきに諮問をいたしました際に、三つの案を諮問をいたしております。そうして答申もその三つの案についていろいろ御論議の上で御答申をいただいておる。考え方としては三つあるが、そのうちの一つに変ったというだけであります。従って今回提案いたしておりますような一部負担のやり方につきましても、すでに諮問をいたし、答申を得ておるものと私ども考えておるわけであります。結論といたしまして違法ではないと存じます。(「違法だ」と呼ぶ者あり)
  133. 藤本捨助

    藤本委員長 亘君。
  134. 亘四郎

    ○亘委員 ただいまの改正案の問題でございますが、本案提出する際にわが党といたしましては、委員長は当時みずから社会部の部長をされておりまして、この法案を出すに当りまして相談の結果、もしこの法案を二十五国会に出す場合、この法案社会保険審議会に再び答申を求めなければならないということであるならば、時間的に大きな問題がある。そこで社会保険審議会あるいは中央社会保険医療協議会にその答申を新たに求めなくても出せるものであるかということについて、十分検討をしたはずであります。その検討の結果、法律案自体でなく、大綱について問題であるが、それらのものはすでに社会保険審議会並びに中央社会保険医療協議会の答申を得たるもので変りがないから、内容について幾分の変化があっても、法律案自体について、これを審議会にかける必要がない、こういう結論を得て、党議として決定したものであって、断じて間違った処置をとっておらない、かように解釈すべきである。その党の立場においてはっきりしてもらいたい、こう思うのであります。   〔「自民党政府とは違う」と呼び、その他発言する者多し〕
  135. 藤本捨助

    藤本委員長 御静粛に願います。今法制局長官出席を要求しております。(「休憩しろ」と呼び、その他発言する者あり)休憩いたしません。いたしません。——八木君。
  136. 八木一男

    ○八木(一男)委員 では法制局長官に質問いたします。社会保障制度審議会設置法第二条の第二項「内閣総理大臣及び関係各大臣は、社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関しては、あらかじめ、審議会の意見を求めなければならない。」という条項がございます。もう一つ健康保険法第二十四条の二におきましては「厚生大臣ハ政府ノ管掌スル健康保険事業運営ニ関スル事項ニシテ、企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ予メ社会保険審議会ニ諮問スルモノトス」という条件がございます。ところが今回、この前の臨時国会提出になりました今審議中の政府提出健康保険法の一部改正案につきましては、諮問が行われておらない。それで明らかに法律違反であるとわれわれは考えているわけでございますが、それについて法制局長官としての御見解を承わりたいと思います。
  137. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの御質問の点につきましては、おそらく厚生省当局からも御答弁もいたしたことと思いますけれども、私ども提案いたします際に検討いたしまして、この健康保険法等の一部を改正する法律案につきましては、すでに実は昨年の春でございますか、社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会の方に諮問があったわけであります。先般の臨時国会に提案いたしました案は、それと実質的には同一なのであります。その間事情の変更もないので諮問は必要でない、そういう考え方で、この際またあらためて諮問をしなくても法律違反ではない、さように考えておるわけであります。
  138. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実費的にというようなことを言われますけれども、それについては大いに考え方が、みんな違うわけです。法律解釈は正確にやらないと、とんでもないことになる。それを実質的にというような言葉は、法律を守る立場にある法制局長官としては、そういう問題には耳をかしてはいけない。厚生省が頼むからやってくれと言っても、耳をかしてはいけない。文字通りにやらなければならない。実質的にという言葉を使ったら、何でもできますよ。一般の国民に対しては、いろいろな法律違反をちょっとしても厳重に縛っておる。政府みずからが勝手に解釈して、実質的に同じだ——法律的に同じじゃない、実質的に同じだというような、法律条項に違反するようなことを政府自体がやってはいけない。そういう問題について、岸内閣総理大臣は、いわゆる公務員諸君が戦時中にいろいろと間違いを犯した、この問題からうかがいまして、そういう問題にはしないようにしたい、今後そういうところを一方的な解釈で、法律を曲げて解釈したりすることは断じてさせないということを明確に御答弁になった。その問題から発展してきた。保険局ではそういうことを言っても、これは明らかに、法律的に言ったら違法であるということは間違いない。それを法律解釈を担当しておられる法制局長官が、いろいろな事務に当っている厚生省の便宜的な条件に耳を傾けて、実質的に同じだという御答弁をなさることは、法制局長官の責任を果さないことだと思いますが……。
  139. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまお答えした通りでございまして、実はこの社会保障制度審議会設置法をごらんいただきましても、法律案そのものをかけることにはなっておらないのであります。社会保障に関する企画、立法運営に対する大綱についてかけることになっております。従いましてこの大綱につきましては、すでに一回かけております。その後数年たって、事情が変更したということがあれば私どもはまた別だと思いますが、変更がないという事情のもとにおいては、もう一回諮問しなくても違法ではない、こういう考えのもとに成案を得まして、そういう手続をとったのであります。
  140. 滝井義高

    滝井委員 関連。あなたは今事情の変更と申しました。実は事情は変ったのです。大へんな変り方をしました。それは鳩山内閣のときに小林厚生大臣が諮問をしたのです。当時これは赤字対策であった。そして百億の赤字が累積しておった。ところが現在は経済情勢もがらり変って、赤字がなくなってしまった。三十六億になってしまった。しかも小林厚生大臣の提案理由と沖田厚生大臣の提案理由と、全く違っちゃった。事情は大いに変化しちゃった。違っておる。しかも当時においては赤字対策として、——うしろに当時諮問をした委員が来ております。赤字対策としてわれわれは諮問を受けた。今度は赤字対策ではない、健康保険の健全なる発達をはかるために出しておる。全く違う。事情が違っている。大体事情の違うというその変化の範囲というものは、あなたはどういう工合にものさしを当てますか。
  141. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは私ども知っている範囲におきましては、昨年の初めの問題も、もちろん赤字対策だけではなかったと思います。健康保険の健全なる運営ということでこの法案は出ておると私は考えております。従いましてその間、その趣旨も違っておらないと思います。今の事情の変更でございますが、これは結局健全な社会常識で判断するほかございません。ございませんが、数年もたって社会情勢が全く違ったというふうな場合はおのずから別で、もう一ぺん判断を仰ぐことは必要だと思います。
  142. 滝井義高

    滝井委員 法制局長官、昭和二十五年に社会保障制度審議会がやはり社会保障に関する勧告案を出しております。それは非常に膨大なものです。日本の社会保障のすべてのものの大綱を含んでおります。その大綱があれば、一切の諮問はやらなくてもいいということになるのかどうですか。
  143. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは具体的な法案の内容によるわけでございます。従来の慣行から申しましても、これは個々の法案をお出しする際に、その法案の大綱について諮問をしておるわけであります。これはもちろん、そういう方針でいくものだと私は考えております。社会保障制度審議会の答申、この大綱の解釈の問題であります。あの大綱はきわめて包括的な大綱であります。やはりこれは、各法案についての大綱でございます。こういうふうに解釈するのが妥当だと思います。
  144. 滝井義高

    滝井委員 諮問案をたとえば一案から十案まで諮問します。そうしますとこれはあらゆる場合を考えるわけです。一案から十案までの諮問をしておけば、同じ政党内閣が続く限り、やらなくてもいいということですか。
  145. 林修三

    ○林(修)政府委員 抽象的には私はなかなかお答えしかねます。具体的な問題についてなら判断できると思いますが、抽象的にばくとしたことでは、ちょっとお答えいたしかねるわけであります。具体的な事情によって判断されると思います。
  146. 滝井義高

    滝井委員 今度も案を三つ出しておるのです。そしてその中の一つを一ぺん出したのです。ところが、それが国会で流産をしてしまった。国会の意思は、いわばこの法律を認めなかったのです。認めなくて、今度は内閣が石橋さんから岸さんにかわった。鳩山内閣から岸内閣にいっておるならば、話はわかる。ところが、岸さんは鳩山内閣の政策を受け継ぐとは一回も言っておりません。石橋内閣法律案と施策は受け継ぎます、こう言った。ところが、この大綱というものは、鳩山内閣が小林厚生大臣当時に諮問をしたものです。従って、岸さんというものは鳩山内閣の政策と予算とを受け継いでおるものではない、石橋内閣のものを受け継いできておる。
  147. 林修三

    ○林(修)政府委員 今御質問の政治的な継続性性……。   〔発言する者多し〕
  148. 藤本捨助

    藤本委員長 静粛に願います。
  149. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは政治的な問題でございまして、私は法律的なお答えをいたしますが、ここでいっております内閣総理大臣及び関係各大臣ということは、行政機関としての地位でございまして、必ずしもある大臣、ある内閣という意味ではございません。ある内閣総理大臣あるいは関係各大臣が諮問をしたかどうかという問題であります。もちろん内閣が違った場合に、政策が違って、別なものを出したいという場合には、当然内容は違いますから、別なものを御諮問になる必要があれば、御諮問になると思います。しかし同じものであれば、法律的にはすでに諮問はしてあるということがいえると思うわけでございます。
  150. 滝井義高

    滝井委員 では、同じという範囲をどの程度に限るかということです。たとえば今度の健康保険法で具体的に言ってみて下さい。一部負担というものの範囲を、どの程度のものならば同じになるのか、大体何円までが同じで、何円なら違うということになるのか。これはきわめて具体的です。あなたは具体的にというから、具体的に言っておる。具体的に答弁して下さい。いいですか。法律の書き方も全部違ってきたのですから、もとの案と同じであればいいというのは、一部負担ということで、その言葉が同じであるから、一部負担がどう変ろうとよろしいというならば、これはあなたの言う通りです。どうですか、具体的に。
  151. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは二条二項でごらんいただきますように大綱でございます。大綱ということは、結局そこの社会常識の判断になると私は思いますけれども、従来から申しましても、大綱をかけておられるわけです。今の一部負担の原則ということは、私は一種の大綱だ、かように考えられるのであります。
  152. 八木一男

    ○八木(一男)委員 立法についてあらかじめ諮問するものとする、とか、あらかじめ聞かなければならないという条文ですね。これを勝手に解釈しておいでになりまするけれども、それはそのつどつどするのが当然な道だと思います。めんどうくさいから勝手にやめるという厚生省の態度は別として、法律を守る立場にある法制局長官立場としては、そんな、都合がいいから悪いからということではありません。立法のことについては、そのつどつどやる立場にあるのが当然だと思いますが、それについてはどうですか。
  153. 林修三

    ○林(修)政府委員 私の方の立場といたしましては、違法か違法でないかという問題になります。違法でないと私は考えられるのであります。具体的に妥当性の問題になれば、それは別問題であります。妥当性の問題については、すでに厚生省からお答えしたことかと思います。
  154. 八木一男

    ○八木(一男)委員 違法でないというのは、どうして言われるのですか。違法であるかどうか今論議しているわけですが、勝手に独断的に言っておられるけれども、諮問しなければならないとなっておるのを、それをしないで勝手に法律を出していかれるのは、違法じゃないですか。
  155. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはこの条文をごらんいただきましてもわかります通り、具体的に各場合に国会に提案する前に諮問せよとは書いてないわけでございます。こういう大綱について諮問をせよということでございます。従いまして、その大綱は一回諮問してあるわけでございます。その内容を実質的に変更しなければ、再び諮問する必要はない、かように考えるわけでございます。
  156. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の林法制局長官答弁の中で、結局字句の問題は諮問しなければならない、ただ大綱かどうかということに解釈が分れる、そう解釈していいのですか。
  157. 林修三

    ○林(修)政府委員 いやそういう意味ではございませんで、この二条二項は、御承知のように各国会ごとに、あるいは法案を同じものを再び出す場合に、そのたびごとに諮問しなければならないということには書いてないわけでございます。従いまして、ある法案立法いたします際、あるいはある制度を企画いたします際に、そういうものについての大綱を諮問しろということです。従いまして、その大綱についてはすでに諮問があるわけでございますから、再び実質的に同じものを諮問する必要はない、こういうことでございます。
  158. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実質的に同じものだというようなことは、言っていただかなくてもいいのです。それはまたあとに審議してもかまわないと思う。とにかく法律を出してここで審議するということが立法だ。その法律を出していることに対して、大綱という解釈は、またあとで御意見を伺ってもいいのです。大綱であるということになれば、法律を出すときに立法するように出してくるわけでしょう。その前に諮問しなければならないということは、この法律上明らかであると思うのです。大綱がどうであるかということは、それがきまってから論議したらいい。
  159. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはもうお答えしたことと思いますが、法律案を出すたびに諮問しろということにはなっておらないわけであります。同じ内容のものであれば、一回諮問すれば再び同じものを出す場合には諮問をしなくてもよい、こういうことであります。
  160. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そういう前提のことを言っておるのではない。同じ内容ではないのです。同じ内容であるというなら、あとで論議しましょう。同じ内容ではなくて、別の法律が出てくるときにこれを諮問しなければならないということは、条文の正しい解釈だと思うのです。その大綱がどうであるかということは、あとで論議してもよろしい。それから同じと違うということも論議してもよろしい。だけれども、違っている大綱であったら、その法律を出すときに諮問しなければならないということは正確な解釈であって、それが違うということになれば、これはゆゆしき問題になりますから、はっきり確認しておきたい。
  161. 林修三

    ○林(修)政府委員 結局先刻のお答えを繰り返すことになるわけでありますが、同じか違うかということできまることになると思います。
  162. 八木一男

    ○八木(一男)委員 同じか、違うかはあとで言うから、違ったら出さなければならないかということです。
  163. 林修三

    ○林(修)政府委員 前に出したものと違うものを立法したい、出したいという場合であれば、これはもちろん諮問しなければならないと思います。
  164. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今法制局長官の御答弁で明らかになったことは、とにかく違った場合には諮問しなければならないということですので、はっきり確認しておきます。ですから、今度は違っていれば出さなければならない。これは法制局長官は大体同じというようなことじゃなしに、ほんとうに比べてごらんなさい。法律案三案出してあるけれども、全部どれも違っております。これを違っていないとは言えないはずだ。違っているなら出さなければならない。  その次には、大綱の問題です。大綱の問題で逃げようとしても逃がしませんよ。健康保険の問題で、一部負担が大綱でなければ、ほかに何が大綱があるかということになる。法律は明らかに違っている。違っているときには出さなければいけないということを法制局長官は言った、これは明らかなんだ。そうすると、あと大綱の問題だけなんだ。健康保険の問題で、一部負担の問題が大綱でなくて、何が大綱がありますか。明らかに違法であります。ですから、即時これを撤回して、諮問をし直して出すというのが当りまえなんです。厚生大臣どう思いますか。
  165. 神田博

    ○神田国務大臣 大綱が同じでございます。ですから、撤回いたしません。
  166. 八木一男

    ○八木(一男)委員 法律違反ときまっても撤回しないのですか。法律違反ときまっても撤回しないのですね。それではとにかく岸内閣の厚生大臣は、厚生省が法律違反をしても権力をもって押し通すということになるわけですよ。   〔「論理の飛躍だよ」と呼ぶ者あり〕
  167. 神田博

    ○神田国務大臣 どうも八木委員のお尋ねは、非常な飛躍をなさっておられるのではないかと思います。私ども法律違反をしよう、あるいは法律違反をしておるものを強行しよう、そういうことは毛頭考えたことはございません。過去においても、現在においても、将来も、そういうことは誓って考えないつもりでございます。この御審議を願っております法律案は、そういうものでないという前提でお願いしておるわけでございます。
  168. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そうすると、法律違反だったら撤回するんですね。その言葉の通りですね。
  169. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。法律違反のものは出しておりません。
  170. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それは独断ですよ。法律違反であったら撤回するんですね。あったらといっておるではないか、あるといっておるのではない。(発言する者多し)雑音はやめなさい。法律違反であったら、撤回しますね。
  171. 神田博

    ○神田国務大臣 法律違反のものが出ておったら、今日の国会運営は、もう国会みずからがそういうものを御処理なさる権能をお持ちになっているのですから、積極的に、撤回といいましょうか、否決といいましょうか、それは適当な御処置をなさることが適当だと思います。
  172. 八木一男

    ○八木(一男)委員 けしからぬ話だ。国会のことではない。行政府の長官としての、厚生大臣としての責任を問うているのです。法律違反だったら厚生大臣は即時撤回なさるのですね。はっきりとそれだけ返事をすればいいのだ。法律違反だったら撤回するのかしないのか、しなければ厚生大臣やめてもらわなければ大へんなことになる。
  173. 神田博

    ○神田国務大臣 私が申し上げておりますことは、厚生省の出しております法律案は、法律違反のようなものは出しておりませんと、こういうことを申し上げているのでございます。そこで今八木委員が言われました、もしそれが法律違反であったなら、何か手落ちがあって違反ということがはっきり明瞭で、そういうものならば、撤回するかということは、将来そういうことが起きたら、もうこれは当然なことで、お問いになるまでもないことだと思います。要するに、そういうものは現在出しておらぬという建前で、私は申し上げておるわけであります。
  174. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今法律違反かどうかをここで論議しているわけです。ただ結果はわからない。法律違反ということになれば、それでも撤回するという言葉を言わないのなら、厚生大臣は日本法律問題、特に厚生省に最も関係の深い健康保険法でしょう。それに違反しても平気で居すわるという覚悟だということになるわけです。そのくらいのことが言えないのですか。言えないなら、法律違反でも押し切る、何でもかんでもごまかして、やはり法律は無視するのだ、そういうことの裏返しになるじゃありませんか。そんなことがはっきり言えないような大臣が世の中にありますか。
  175. 神田博

    ○神田国務大臣 どうも何といいましょうか、非常に飛躍した過程でお問いになるものですから……。私は冷静にお答え申し上げておるわけであります。要するに法律違反のような法案は出していません。そこで……。
  176. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それは聞いていないのだ。法律違反だったらどうするかというのだ。
  177. 神田博

    ○神田国務大臣 もちろん法律違反のようなものがございますれば、八木さんのおっしゃる通り、そういうことは御審議願う意思は持っておりません。
  178. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そうなりますと、法制局長官のお話で、とにかく内容が違っておれば諮問しなければならないということは明確になりました。それで、内容の違うことは明確です。まさか保険局長も違っていないとは言えないはずだ。調べればすぐわかる。その次に大綱の問題、きまっていない問題は大綱だけなのだ。この大綱の問題について、健康保険法で一部負担だとか、今出しているものは大綱でないといっておる。それは厚生省のお役人は全部頭を切りかえてもらわなければならぬ。大綱であることは明らかなのだ。ですから即時御撤回になるか、それとも厚生大臣をおやめになるか、そういうことになるわけです。それについてどうですか。
  179. 神田博

    ○神田国務大臣 非常に御親切といいますか、どうも飛躍をなすっておるのではないかと思うのですが、今の段階におきまして、私は法律違反をしておるとは考えておりませんので、今の法案を御審議願いたい、こう考えております。お願いいたします。
  180. 八木一男

    ○八木(一男)委員 法制局長官に、先ほどのことで……。とにかく出さなければいけない。内容が違っていることは明らかです。黙して諮らず、保険局長は……(笑声)それで大綱はそういうことですから、これは法律違反だと思うわけでありますけれども法制局長官のはっきりした御答弁を願いたいと思います。
  181. 林修三

    ○林(修)政府委員 この問題につきましては、昨年の暮れに健康保険法等の一部を改正する法律案国会に再度御提案する際にも、私ども御相談を受けております。それでいろいろ審議いたしましたところ、大綱においては実質的に同一であるというふうに考えまして、その手続は必要なかろう、こういう考えでやったわけでございます。
  182. 八木一男

    ○八木(一男)委員 保険局長にちょっと伺いますが、言ったことにだけ答えて下さい。それ以外のことは答えてもらわなくてよろしい。今度の法律とこの前に出した三案とぴったり同じものがあるかどうか。
  183. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 大綱においては同じものでございます。
  184. 八木一男

    ○八木(一男)委員 大綱ということは聞いていません。こっちの言うことにだけお答えになって下さい。ほかのことは答えないで下さい。大綱ということは聞いていないのです。この前出した三案といわれるものと、今度の健康保険法改正案と、内容のぴっちり同じものがあるかどうか。それだけに簡単に御返事を願いたい。
  185. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 もう少し事態を明らかにする意味におきまして御説明いたしますが、この二十四国会に提案するために、諮問をいたしました法律案要綱というものは、「一部負担金を指定医療機関に支払わなければならないものとすること。前項の政令を定めようとするときは、厚生大臣は、社会保険審議会の意見を聴くものとすること。」こういう政令に譲ったような法律案要綱で諮問をしておるわけであります。しからばこの政令で定めようとするものはどういうものか、こういうふうな審議会の御要求がございまして、われわれはこれから検討をいたそうとしておるけれども、大体この三つの考え方の範囲に属するでしょう、こういうことでA案、B案、C案というものを一応御参考に出して、御審議を願っておるわけであります。さような筋合いでございまして、二十四国会に提案いたしました政府原案は、そのときのA案の考え方によったものであります。二十五国会に提案いたしました一部負担のやり方は、そのうちのC案の考え方によったものであります。御答申の方はこの三つの案をいろいろあれこれ御研究を願いまして、さような細部について御答申はないのであって、抽象的な御答申をいただいております。賛成であるとか、反対であるとか、こういうふうな御答申をいただいております。さようなわけ合いでございまして、私どもといたしましては、二十四国会に提案をいたしました政府法律案と、二十五国会に提案いたしました政府法律案におきましては、大綱においては同じものと考えております。
  186. 八木一男

    ○八木(一男)委員 大綱々々で逃げようとしておられますから、法律案が違うということを明らかに裏書きしておるわけです。違うことは明らかです。これはわれわれも知っておりますし、保険局長も知っておられる。法律案は違うのです。それからまたいろいろと、同じような諮問に対する答申であるというようなことで、かってな解釈をしておられますけれども、そういうようなことを含んでおると思うわけでございまするが、あのときに政府の方で出されたこの前の法律案の根底ですね。赤字が出てくる、健康保険を建て直さなければならぬ。理由も、滝井委員が言われたように明らかに違うけれども、この前はとにかく赤字が主体だった。主体じゃないといわれても、赤字がおもなる主体であったことは明らかである。その赤字は昭和三十一年度において六十七億というものが見込まれておる。だからこれこれ、これこれで、明らかにその中に、一部負担には財政効果として二十三億その他幾ら幾らということを組み立って、そうして諮問をしておられるわけです。ところがその赤字の背景が違ってきておる。今三十六億ですけれども、十一月にこの法案を作られたときに、厚生省の説明で、四十八億というのは明言されておるわけです。根底が違っているわけです、根底が違っている、だから条文も違えば、その背景も違う。まだ言えば、委員の構成も違っているのですよ。社会保障制度審議会、社会保険審議会の委員の構成も全部違っておる。そういうすべての点から見て、そんなものを、大綱が同じだからというようなことで言いのがれは許すことはできないわけです。法律は明らかに違っておる。そうして一番変っている問題は大綱である。一部負担の問題である。おまけにその背景の、その一部負担を出した説明で、保険審議会でも、制度審議会でも、説明されたのは、赤字六十七億ということで、これこれの条文をやれば何億の財政効果がありますということを明らかに説明して、審議を求められておる。その根底が違っておる。違うのはこの法律を出されたときにわかっておる。厚生省が発表しており、それをすりかえて諮問する必要はない。法制局長官は、そんな内容は御存じないかもしれないけれども、とんでもないことだ。背景も違えば法律の内容も違えば、大綱も違う。条文も違う。法制局長官は違わないという説明で、それでいいだろうと言われたのかもしれないが、明らかに違うのです。だからこれは諮問しなければならないものです。その点で政府が違法を犯しているわけです。これについて、法制局長官の御答弁をもう一回承わりたい。
  187. 林修三

    ○林(修)政府委員 ずっと詳しいことに立ち入ってのことは私も存じませんけれども、一応の説明は受けております。従いまして、研究いたしました結果、実質的に同じものである、こういう考えのもとに、こういう措置をとればよかろうということを考えております。今保険局長説明を聞きましても、私は実質的に違っているものとは考えられません。
  188. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実質的というようなことで法律を扱ったら、何でもそうです。法律違反をやっても、自分は悪いことをした気持はないのだから刑罰を受ける覚えはないと言っても通ることになってしまう。政府みずから法律を設けるような要因を作ってはいけない。おまけに法制局長官が実質的というようなことで法律解釈を曲げるようなことはいけない。違わないということはとんでもないことだ。実質的に違うのです。あなたは詳しいことは知らないと言われたけれども、詳しいことを聞いたら、明らかに違っていることがわかります。ですから、法制局長官は厚生省のいろいろな巧妙なる説明にまどわされたのかもしれないけれども、その責任は特に追及はしませんけれども、違ってきているのだから、やらなかったことは違法であるということを法制局長官としては明らかに答弁される責任がある。
  189. 林修三

    ○林(修)政府委員 従来伺ったことから申しましても、今の答弁からいたしましても、私は大綱は同一のものと考えていいと思うわけでございます。従いまして、今までとった措置は違法なものとは考えないわけでございます。
  190. 井堀繁雄

    ○井堀委員 関連して……。法制局長官にちょっとお尋ねをいたしたいのでありますが、この社会保障制度審議会設置法の全体の精神の中で、第二条二項の問題をわれわれは判断いたしまして、社会保障制度審議会については少くとも社会保障制度に関する条文で言いますと、「企画、立法又は運営の大綱」というように、かなり具体的に明示しておるのであります。こういう、少くとも企画、この場合は「企画、」と切ってある。「企画立法」ではなく、「企画、立法又は運営の大綱に関して」、あらかじめこういう変化あるいは変更をしようとする場合には、この審議会を活用するということは、法律全体の面から言ってかなり大きな使命が付加されておるように思う。そういう点で社会保障制度に関する、ここで企画立法はわかりますが、「企画、」とこう点を打ってある。この点に対する法制局長官の御解釈はいかがでありますか。
  191. 林修三

    ○林(修)政府委員 企画というのは結局そういう社会保障に関するいろいろな計画を立てるということだと私は思うわけです。
  192. 井堀繁雄

    ○井堀委員 こういうことをお尋ねするのは御迷惑かもしれませんが、この場合は明らかにしておかないと論議が進められませんからお尋ねいたします。あなたも総理府においでになるから御存じだと思いますが、この内閣の政策の大綱の中に、社会保障制度を高くうたっておる。しかも具体的に国民皆保険を言っておられる。このことはこの委員会でも厚生大臣が大体四年間くらいの間に皆保険の目的を達したいという答弁を、私の質問に対してしております。でありますから、国民皆保険を施行するような社会保障制度の推進と申しますか、これはやはり企画に大きな変化を伴うものであるというふうにわれわれは理解して、いろいろ政府の施策に質疑をしてきておるわけであります。ここで言う企画ということは、こういう場合にはあなたの解釈には入らないものですか、入るものですか。
  193. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の御質問の趣旨ちょっと受けとりかねたわけでございまして、あるいはお答えが違っておるかもしれませんが、今の御趣旨自民党で立てた政策大綱というものは、国民皆保険ということをやった場合に、その企画を社会保障制度審議会にかけなければならないのじゃないか、こういう御趣旨じゃないかと思うのでありますが、それはやはり必要ないのじゃないかと思います。(「内閣としては……。」と呼ぶ者あり)内閣としては大体企画と立法というのはほとんど同じ段階になるものが私は多いと思います。社会保障制度としましては企画と立法を場合によっては分けて考えなくちゃならない場合もあるかと思いますが、大ていの場合は具体的に企画を実現するためには立法という形になってくると思うわけであります。従いまして普通はほとんど今は立法の形式で立法の大綱を諮問しておることと思います。結局はその案がどれだけ固まってきたか、固まってきた段階において政府の施策としてきまるわけでございます。その段階において審議会の諮問を得る、こういうことじゃないかと思うわけでございます。
  194. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねがよく徹底してなかったようでありますが、私の聞いておりますのは二条の二項の中で「社会保障に関する企画」とこう条文は明確に書いてある、ごらん下さい。一体この企画という意味は、法律的にどういう意味を持つかということについてただ漠然と聞いちゃいけませんから、私は今までの審議関係した事例を一つあげてお尋ねしたわけであります。そういう事例をあげなくてもあなたは専門家ですから、この企画に対する解釈は自由になさると思いますけれども「企画、」ここで句読点が打ってあるのです。
  195. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の御趣旨よくわかりましたが、「企画、立法又は運営の大綱」でございまして、この大綱はもちろん全部にかかっておるものと思います。企画の大綱であり立法の大綱でありあるいは運営の大綱である、そういうことと思いますが、企画と立法運営立法は比較的はっきっりしておりますが、企画と運営の大綱でございますが、これはおそらく立法の形式になる場合が多いと思います。企画と運営を切り離して一つ意味を持ったような大綱ができるような場合があるかどうか、これは私も今はっきりあるだろう、あるいはないだろうということはお答えしかねるのでありりますが、そういう場合があれば、おそらくあるだろうと思いますけれどもおそらく立法という形に構成される場合が多いのじゃないかと思います。
  196. 井堀繁雄

    ○井堀委員 法制局長官もちょっと頭をひねるだろうと思いますが、私もこの問題についてはいろいろ方々聞いておりますが、学説によりますと、これは立法だけでなく、企画というものを別に意味するという学説が多いようであります。これはここだけを読んだのでは理解できがたいので、やはり法全体をながめてこういう解釈はすべきだと思うのでありますが、言うまでもなく社会保障制度審議会というものはいたずらにエキスパートを皆集め、国会議員もこれに参加するかなり大がかりな徹底した委員会であることは申すまでもないわけであります。この使命は福祉国家を施行するためのかなり権威のある企画として法律は命じておるわけであります。でありますから何も社会保障制度というのは、立法だけによってワクがきめられるものではない、いろいろ政府の行政企画のうちにもあるでありましょう、あるいは運営の中においても行われるでありましょう、あるいは民間の運営に対して政府が援助助成するという政策上の企画も起り得る、こういう解釈が一方になされておるようにわれわれは考えておるのであります。今のあなたの御答弁ははっきりいたさないようであります。そこでこのことは御研究いただいて、また御回答いただいていいと思います。  そこで厚生大臣に今のことについてもう一言確かめておきたい。これが立法運営上の大綱についてなら今議論がございまして、この点はいろいろあるだろうと思います。しかし企画ということになりますと政府の重大政策で国民皆保険を施行するという、社会保障制度の重要な柱である医療保障制度に対する一つの変革だと思う、大変革だと思う、このことは初めて石橋内閣によって表明されたことですが、社会保障制度という抽象的なことは言われておりました。国民皆保険、しかもあなたはこれは四年くらいの間になしとげたい、こう国会答弁しておるのでありますが、これは社会保障制度の企画としては大変革なんです。これと健康保険と切り離して考えることができましょうか、どうでしょうか、あなたのお考え一つ承わりたい。
  197. 神田博

    ○神田国務大臣 今回政府国民皆保険を四年くらいで完成したい、こういう非常な意気込みで踏み切ったことは御承知通りであります。そこでそれが社会保障制度審議会のいわゆる企画に触れるかどうかというお尋ねのように伺ったのでございますが、私ども国民保険が施行されまして、その後これは段階を経て逐次拡張して参ったと考えております。この法律制定された当時は、やはり段階を経て、できるだけすみやかに国民皆保険が完全実施するようにという意図のもとでできた法律だと私は思うのです。今回この機が熟して参りまして、そこで四カ年というような一つのめどを立てて実施をやる、こういう段階に入ったと考えております。そこでこれが、今そこでいう企画として、審議会に一体諮問をしなければならぬかどうかという問題になろうかと思うのでございますが、私は今度の場合は、これは当然やるべきことになっていたものをやっておらぬのでありますから、これはそこまでは考えなくてやっていいんだというふうに考えて、実は進めて参ったわけでございます。
  198. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねしておりますのは、この国民皆保険を四カ年というかなり具体的な意思表示をあなたはなさった。これはもちろん政府の意向だとわれわれは受け取っておるわけであります。これは変更する御意思はないでしょう。そういうふうな画期的な一つの医療保障制度の案を政府が重要政策として公約され、さらに施政方針で明らかにされ、予算の中で、その説明が比較的稀薄ではありますけれども、かなり具体的に出て、その予算もきょう通ったようなわけであります。でありますから、もう事実は進行しておるわけであります。思うとか思わぬとかいうことではないと私は思うのです。そういう事実に対するあなたの見解をお尋ねしておるわけであります。ただそういうことは社会保障制度に対する企画的なものであるかないか。ないとあなたが言われるとするならば、先ほど法制局長官の言うように、まだ専門家もこの問題については検討を要するということで答弁を避けられておるような、解釈上まだ疑義があるとするならばそういう問題と関連がありますから、この点に対するあなたの——今関連して質問いたしておりますけれども、悪いことはやめたらいい。やり方は幾らもあります、まだ会期も相当あるのでありますから。私どもは健康保険の改正については反対ではありません。内容については議論がある。でありますからこういうときこそ私は二大政党の政策上の話し合いのいい機会だと思う。何も古い政府の遺産をかじりついてなくても、やはり国会の正常な運営のルールに政策を具体的に上そうというチャンスにもなると思いますから、ここで切りかえて、そして新しい道を選ぶということになると思うのです。あまりこだわらない御答弁をいただけると私の質問がはっきりしてくると思います。
  199. 神田博

    ○神田国務大臣 重ねてお答えいたします。国民皆保険に、四カ年計画で一つこれを目標として完全実施したい、こういうことで踏み切ったわけでございますが、その第一段階として本年度に所要の予算を計上したことは御承知通り、これが今の企画としての範疇に入るかどうかという意味のお尋ねのように承わったのでございます。私どもはもうすでに社会保障制度調査会からも実施をするようにという答申のあることは御承知通りで、法律がもう出て、相当長く施行されておって、しかも今日の日本の社会情勢は少くとも四年間ぐらいにこれをやらなかったならば、国民の待望に沿うのにはおそいのではないか、こういうような考えをもって実は取り上げたわけでございまして、むしろ国民保険法の実施の経過を見ますと、これをやることがその企画に沿っていることである、そういうふうに考えて実は進めた、こういうふうに考えております。
  200. 井堀繁雄

    ○井堀委員 意地悪くあなたの言質をとろうとは思いません。企画に沿うとか沿わぬとか、この文書にこだわらぬで、長官が言っているくらいでいいと思うのですが、確かにここで健康保険の問題でも、今の問題がはっきり四カ年ということを打ち出されることは、非常によいことです。私どもは今にでも実現してもらいたいと思うのですが、しかし四カ年の歳月を経れば皆保険が実現できるということは、非常に誠意のある政府の態度だと感心しているのです。今までの鳩山内閣の時代にはそういう答弁を聞くことはできませんでした。そういう点については今度は画期的な御答弁だと見ているのです。それだけに健康保険の改正は、国民皆保険への段階をたどるものであることは、ここにも言っているように健康保険の保険事業の健全な発達とその合理化という表明で言い尽されていると思うのです。こういう点に私どもは非常な変化を感じているわけです。それからもう一つ、これはあなたの、やはり私の質問に対する答弁ですが、年金制度を今度は一つ調査しよう、そうして老齢者の年金また母子家庭に対する母子年金の二本立ての厚生年金を一つ考えていきたい。その調査費として一千万円ほど三十二年度の予算に計上いたしました。こう言って、これはこの予算で原案が通っておりますから、このことはもう言うまでもありません。今までの厚生年金保険の論議をされている範囲から言いますと、画期的な一つの表明なんです。こういう点は、私はここにいう社会保障制度審議会の審議の対象になるような事柄ではないか、こう思うのですが、これは思いたくないとか思いたいとかいうようなことではない、しかしここで問題になるのは、法律的に言いますと、それが厚生年金保険法改正をどれだけ有機性があるかないかという点に、法律の専門家が逃げたいところだと思うのです。その議論はどこでするのが適当か、どこがそういう判断を下す場所であるかということは、この法律にはあいまいな点がある。こういう問題があると思う。ですから厚生大臣としては、かような、いわば社会保障制度の一つの変革を意味するような政策なり立法なりについては、当然これはこの委員会にかけられることが妥当である。かけることが行き過ぎである、あるいは何かよくない事情があるということであれば、別ですけれども、そういうことはない。それを避けられたいということ、やはり一つの失策だと考えなければならぬのじゃないかと思う。今からでもおそくないのですが、こういうものをこの審議会に諮問される御意思があるかないかを伺って、私は質問を打ち切っておきます。
  201. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいまお尋ねになりました今度の予算に調査費をとりました老齢年金あるいは母子年金等の問題は、わが国の社会保障としてはもちろん画期的な善政の問題だと思うのです。そこでこれを社会保障制度審議会にかけてからやってはどうかというような意味に受け取ったのでございますが、政府といたしましてはこれは非常に大きなしかも作業も相当な時間を要する問題でございますので、四人委員会ですかの専門家に委嘱しましてある程度の成案を得て、そしてその成案を審議会に諮問したい、こういうような考え方でございまして、いきなり審議に持っていってもなかなか審議会の方で大へんでございましょうから、専門委員会のいわゆる調査費をとって、そこで十分な調査をしてもらう。十分資料を集めた上で審議会の方に諮問したいという考えでございます。相当広範な資料にわたると思いますので時間的にも相当の時間を必要とすると考えております。そこでそれをやる前に審議会にかけるというよりも、そういう準備が一応できて、そして審議会の御判断をしていただくという考えで実は進めておるわけでございます。
  202. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これは私の質問の前段にかかっていると思うのです。ただ立法上の——ここにいう法律の条文から立法または運営の大綱に関してはというふうにくれば、あなたのおっしゃられるようにして差しつかえない。調査費をとっておやりになるのですから、立法上の措置ではないかもしれませんけれども、しかし今の日本国会法なり立法上の手続段階からいうと、予算もまた法律なんです。そこに疑義があるのです。しかしそれを百歩譲ったといたしましても、ここで長官に私がお尋ねしたように社会保障に関する企画の問題については触れるわけです。ですからここは問題が残っております。この答弁はいずれ法制局長官のあとの御検討を待って、この点については留保しておきます。これは理事会でもよく相談いたしまして、私の質問は保留しておきます。
  203. 八木一男

    ○八木(一男)委員 先ほど来御質問申し上げておりますが、この席に内閣総理大臣がおられたならば、前段の間違いは正す、そういう間違いはさせないという立場において、即時撤回を決意されるであろうと思うのでございます。その点で総理大臣がおられないことは非常に遺憾であります。総理大臣に対しまして月曜日にこの問題をお伺いいたしましてその決意を伺いたいと思うわけであります。またそれについて厚生大臣の御答弁は今までのところ非常に不満でございます。法律を守るという心がまえがないように思います。それから法制局長官の御答弁もそうです。厚生省当局はなおさらです。そういうことにつきましては、日本社会党においては、これから国会対策委員会を開きましてこの対策を立てるつもりでございますので、その点を御覚悟になって、皆さん方としては即時いさぎよく、間違いは正して、自民党なり岸内閣は、間違ったものは即時率直にやめる、変える、やり直すという大きな腹を見せていただけば、問題は紛糾いたしません。ですからその点私は慎重真剣にお考えになっていただくことを期待いたしまして質問を一応終ります。
  204. 藤本捨助

    藤本委員長 次会は明後十一日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会      ————◇—————