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井堀委員 そのこと自体、私はあなたに対して責任を追及してもいいと思うのです。これは先ほ
ども引例いたしましたが、
昭和二十五年十月に出された社会保障制度
審議会の
答申案の中で、きびしくいっておるのです。ただこのときにも説明が加えられておるように、
昭和二十五年といえば、日本の経済はまだ特需に依存しなければやっていけないようなときだった。日本の財政においても、特に国際収支の不均衡は極端なものがあった、自立経済などとは思いもよらない、累卵の危うきといいますか、非常に危険な段階を漂うておるときの
答申なんです。そのときにも切々たる要求が出ておるのであります。それが今日神武以来の好景気などといって、いやしくも安定期に入ったと政府は言っておるのです。そういうときにはこの
答申案はぴったりくるわけです。何ものにも優先して、やってこなければならぬ。あなたにお伺いしたいのでありますけれ
ども、今あなたは五人未満の事業場の人に対する範囲を拡大することは困難だということですが、これは
健康保険の点で私も
大臣にただしております。このことは
答申案の中でこういっておるのです。これは大事なところですから、あなたは
御存じだろうと思いますが、もう一ぺん読んで
質問した方がいいと思います。この中の被
保険者の項で「
現行の
健康保険は原則として常時五人以上の従業員を使用している事業所で働いている者でないとその適用がなく、また、事業の種類によっては適用が除かれている。従って、これを拡張して規模の大小や事業の種類を問わないで、すべての被用者に均てんして適用されるようにしなければならぬ。もちろん、
公務員にも同一の制度を適用して公平と機会均等の原則を貫くべきである。」というとどめを刺しておる。
健康保険がどういうものであるか私があなたに話をすることは釈迦に説法だ。厚生年金がどんなものであるかを説くのはあまりにも白々しいと思うのです。雇用
関係のもとに置かれているというワクの中で
保険は育っているわけだ。それが大きな事業場に雇用されておるからということでその恩典に浴し、零細企業のもとに雇用されておるからということでその恩典からはずされるということは
——もちろん企業の負担能力が問題にされましょう。私はこれを手放しに
論議するのではない。日本の零細企業が、その少額の
保険料の負担にも耐えかねるような脆弱な基盤の上に経営されておるものが多くあることを私は
承知しておる。しかしこのことは産業政策なり、あるいは企業政策なり、財政政策なりの中で解決を迫られている問題なんです。これはあなたに言うことじゃなくて、
大臣を責めて言うわけです。しかしその下に雇用されている労働者に一体何の罪があるか。日ごろから低額のために常日ごろから苦しい生活に、悪い環境で労働をしいられるのだから、保護の必要こそ緊急であれ、これを緩慢に許す理由は一体どこにありますか。社会保障制度の恩恵を一番早く受けなければならぬ、社会保障制度を一番先に徹底させなければならぬ階層じゃありませんか。その原則をここで言っておるのじゃありませんか。その原則が達せられぬということは、あなた方にとっては耐えがたい事柄じゃありませんか。
事務当局としては、そういうものも次から次に出してやる。それをあなたが
大臣ぶって、
調査が行き届きませんと言う。どうもあなたのさっきからの答弁を聞いていますと、
大臣以上だ。五人未満の零細事業場にこれを適用しなければならぬということは、この勧告書は、この一項だけで言っておるのじゃありません。その前段において何回も繰り返している。他の項において何回もこのことを繰り返しておる。これが入れられるか入れられぬかということは、私は私なりの
結論を
大臣とあとでやるつもりでおりますが、
調査が要するに困難なんということを言っちゃいけませんよ。
調査ができなかったら、
調査するように費用を要求したらいいじゃないですか。要求して断わられたのならいいけれ
ども……。労働省はちゃんと今度の
予算の中へその費用を申し込んでおる。これは殊勝だ。おくればせながら多少その誠意は認めていいと思う。あなたがそういう用意をなさってこういうことを言うのならまだしも
——まあしかっても仕方がありませんが、昨年の十月から十一月にかけてそのための乏しい
予算の中で
調査なさったことに対して、私は多大の敬意を表しておる。よくやったとほめたいところであります。でありますから、できないわけはありません。
調査に藉口すべきことではなくて、政治問題として零細事業場の雇い主がその
保険料の負担に耐えるかどうか、ここに問題があるのです。
事務当局、あなたがそういうところまで心配していたら、頭がはげてしまいますよ。だから早くこういう問題の解決のために、特に私は厚生年金の問題を出したことはそういう意味なのです。だからこれから一、二具体的なことを
お尋ねいたしましょう。第一に、提案理由にあげられておる標準
報酬の点ですね。厚生年金のところで、標準
報酬を三千円から四千円に上げなければならぬというのは、一体どういう根拠がございますか、この点をお伺いいたします。