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1957-03-08 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月八日(金曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 亀山 孝一君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 八木 一男君    理事 吉川 兼光君       安藤  覺君    植村 武一君       臼井 莊一君    越智  茂君       大石 武一君    加藤鐐五郎君       佐々木秀世君    園田  直君       田子 一民君    田中 正巳君       高瀬  傳君    中山 マサ君       八田 貞義君    古川 丈吉君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    井堀 繁雄君       岡  良一君    岡本 隆一君       栗原 俊夫君    五島 虎雄君       滝井 義高君    中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         厚生政務次官  中垣 國男君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君         労働政務次官  伊能 芳雄君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         厚生事務官         (保険局厚生年         金保険課長)  栃本 重雄君         厚生事務官         (保険局船員保         険課長)    鈴村 信吾君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月八日  委員小川半次君、加藤常太郎君、小林郁君、仲  川房次郎君、山下春江君及び西村彰一辞任に  つき、その補欠として臼井莊一君安藤覺君、  佐々木秀世君、園田直君、山口喜久一郎君及び  井堀繁雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員安藤覺君、臼井莊一君佐々木秀世君、園  田直君及び山口喜久一郎辞任につき、その補  欠として加藤常太郎君、小川半次君、小林郁君、  仲川房次郎君及び山下春江君が議長指名で委  員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第二十五回国会閣法第四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出、  第二十五回国会閣法第五号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出、第二十五回国会閣法第六号)  健康保険法の一部を改正する法律案滝井義高  君外十二名提出衆法第八号)  船員保険法の一部を改正する法律案滝井義高  君外十二名提出衆法第九号)     —————————————
  2. 大橋武夫

    大橋(武)委員長代理 これより会議を開きます。  都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職を勤めます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案滝井義高君外十二名提出健康保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の五法案を一括して議題とし、審査を進めます。質疑を続行いたします。岡良一君。
  3. 岡良一

    岡委員 最近厚生大臣の御意見として、医師に対する医療報酬について厚生省の方でも多少考えようというふうな意思が表示されておりますので、私はその問題についてこれまで医師に支払われておる医療報酬の内容、経過等について若干局長から御意見を求めたいと思います。  第一にしばしば本委員会で承わったことでありますが、現在の健康保険医療報酬の一点単価はどういう基礎で、いつ作られたものであるか、その点を一つはっきりさして下さい。
  4. 高田正巳

    高田(正)政府委員 時期は昭和二十六年の十二月一日から施行されているようでございます。  それからその基礎と申しますか、どういうことでそういうふうな単価が割り出されたかという御質問でございますが、それは御存じ中央医療協議会におきましていろいろ御論議がありまして、そのときに小委員会付託となりまして小委員の方でいろいろ御検討をいただいたわけでございます。小委員会は七回ほど開かれておりますが、なかなか意見がまとまりませんので、今井、五十嵐という当時の小委員のうちのお二人が試案というふうなものを作ることを付託をされたわけでございます。それでその方々が一次二次というふうに試案を作成されまして、最終的にきまりましたのが十一円七十七銭ということでございました。そしてこれを甲地十二円五十銭、乙地十一円五十銭というふうに地域差を加味してきめたわけでございます。それでそのときの計算方式というものは分子の力に医業支出言葉をかえて言いますれば医業に必要な経費と国師の世帯支出税金というようなものを分子にいたしまして、標準稼働点数分母にいたし、その算式から十一円七十七銭という金額が出て参っているのでございます。結局これを基礎にただいま申しあげましたように十二円五十銭、十一円五十銭の地域差をつけて決定されたというのがいきさつでございます。
  5. 岡良一

    岡委員 それでは医業支出、それからすべての世帯支出、公課、標準稼働点数数字はどういうことになっておりますか。
  6. 高田正巳

    高田(正)政府委員 お尋ね数字は当時の数字であろうと思いますが、医業支出が三万二千二百三十三円、医師世帯支出が一万八千九百十九円、税金が六千八百三十九円、分母標準稼働点数が四千九百二十五点、こういうふうに承知をいたしております。
  7. 岡良一

    岡委員 この医業支出の中に含まれているものは何と何ですか。そしてその内訳の数字を示して下さい。
  8. 高田正巳

    高田(正)政府委員 当時の詳細の資料をここに持ち合せておりませんが、人件費、これは看護婦とかその他そういうもののすべての人件費を含んでおると思います。それから衛生材料費、まかない材料費、それから一般的な経費、こういうものであると考えます。
  9. 岡良一

    岡委員 一般的な経費というのは何ですか。
  10. 高田正巳

    高田(正)政府委員 もう少し詳細に申し上げますと、人件費人件費でございますが……(岡委員人件費幾らでしょう」と呼ぶ)人件費が四千三十八円。それから維持費という項目でいろいろ分けられておりますが、家賃地代千二百六十五円、火災保険料二百二十三円、建物修理償却費千七百四十九円、それから大装置費四百五十八円、器具購入費千八百四十三円、事務用品費三百二十六円、通信費が四百九十三円、公衆衛生費が百七十二円、被服費が六百五十七円、こういうものがいわゆる維持費でございます。(岡委員一般経費ですか」と呼ぶ)維持費でございます。先ほど私が申し上げましたのは、ちょっと大分類が当時のこの分類と変っておったようでございますから……。今申し上げましたのが当時のあれでございます。もう一度誤解を避けますために繰り返して申しますと、人件費はそのまま、その次に維持費という大きな項目が参りまして、今私が家賃地代から被服費まで申し上げましたのがその中身になっております。(岡委員総額幾らですか」と呼ぶ)ここに総額がそれだけのものとしては出ておりませんが、それを足したものでございます。  それから衛生材料費という大きい区切りの中で、小分類といたしまして、医薬品費が一万二千二百三十一円、カルテ、薬包紙、薬袋、それから容器代、これは薬のびん等だと存じますが、そういうふうなものといたしまして九百六十円、それから衛生材料費——衛生材料費の中その他のものをこういう言葉で言ったのだろうと思いますが、衛生材料費が千四百七十九円、この三つがいわゆる大分類衛生材料費。それから光熱給水費——大きい区切りでございますが、光熱給水費が千八百四十三円。それから大きい区切りでまかない材料費、これが千七百六十一円。それから雑費という大きい区切りがございまして、そのうちの小分類で旅費、賞与その他給与金退職積立金というふうな種類のものが九百三十四円、それからもう一つの小分類は、図書費研究費、その他雑費というのでございまして千八百一円、以上が医業支出の計ということになるわけでございますが、三万二千二百三十三円。先ほど私が申し上げました金額に合うと思います。
  11. 岡良一

    岡委員 次には医師世帯支出一万八千九百十九円はどういう世帯構成でありますか。そして大づかみに分類をしてどういうことになっているのでしょう。
  12. 高田正巳

    高田(正)政府委員 当時の見込みといたしましては、CPSの二〇%増とし、今後の見込み三%を加えて世帯員数五・二人というのが計算基礎になっております。
  13. 岡良一

    岡委員 この分子の面だけで見て、たとえばこの中でも大分類の中での大きなものとして、衛生材料費にいたしまして、また世帯支出にいたしましても、これらは昭和二十六年の十二月一日から実施されたものですか。この算定されたときの時点は何年ですか。昭和二十四年の三月ごろじゃないですか。
  14. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この基礎昭和二十四年九月に全国百五十四カ所の私立診療所調査したのを伸ばしているようでございます。すなわち簡単に申せばスライドしているわけでございます。すなわち当時の最近の昭和二十六年九月までの消費者物価指数、いわゆるCPI、それから毎月勤労統計その他の資料によって各支出科目ごと物価上昇指数を見、さらに昭和二十七年一月までの上昇見込みをも加えてやった、こういうことでございます。
  15. 岡良一

    岡委員 そうすると、たとえば世帯支出の面でいきますと、当時の公務員ベースはどれだけで、今度予算で千二百余円上げるとどれだけになるわけでしょうか。
  16. 高田正巳

    高田(正)政府委員 当時の公務員ベースは後ほど調査をすればわかると思いますが、相当低かったと思います。後ほど調べてお答えいたします。(岡委員「すぐわかるでしょう」と呼ぶ)二十六年八月のものがございます。人事院の調べで九千五百円と書いてございます。
  17. 岡良一

    岡委員 当時の公務員ベースが九千五百円であった。今度予算が通過し、成立するということになると、一万五千二百余円に千二、三百円のプラスになって一万六千数百円になるわけですね。それはお認めになりますね。——予算が成立すると公務員ベースはどれだけになりますか。
  18. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私はその方の所管でございませんので、責任を持ってお答えするわけに参らないと思います。もし御必要であるならば、関係の方から……。
  19. 岡良一

    岡委員 いずれにいたしましても、とにかく九千五百円程度が一万七千円近くにはなると思うのです。まあ一万六千五百円には確実になるわけですね。そうしますと、どれだけになるか計算してみましょう。一万六千五百円に九千五百円だから、大体四捨五入すれば八割ほど上っておるわけです。ところが健康保険医療報酬についての医薬材料等の値上りというものは考えなくても、医師世帯支出が九千五百円ベースのときに抑えられておるというわけですね。この世帯支出というものが、すでに国家公務員ベースにおいては、当時九千五百円相当であったものが一万六千五百円程度に上っておる。率でいえば八〇%弱上っておる。もちろん計算としては、その当時のCPS等を勘案したものに〇・二三程度のもののプラスがあるとしても、二割くらいの余分を見てあるとしても、一方では公務員ベースはとにかく八割弱上っておる。非常に大きな不均衡がここにあるわけじゃないでしょうか。
  20. 高田正巳

    高田(正)政府委員 現行単価がきまりました時分の今の算式でございますね。これは確かに分子の方もみな上っておるはずでございます。それで、これは正確な検討ではございませんが、二十七年の三月と、三十年の三月というものを押えまして——大体二十七年の三月といいますと、現在の単価実施されますほとんど近くの時期でございます。それから三十年の三月というのは、御存じの新医療費体系検討いたします際に、ごく最近において相当広範な調査をいたしました。その両方を基礎にいたしまして分子分母との関係を調べてみますと、いろいろな計算の仕方があるわけでございますが、経営費増加率の方は四一・五%ぐらい増加している計算が出ております。それから下の分母の方の稼動点数増加率は、五一%という増加率が出ております。それでこれをこの前と同じような算式でやりますと、現行単価というものは、当時と比較をいたしまして、数字としてはむしろ小さい数字が出てくるというふうな……(「幾らと出ていますか」と呼ぶ者あり)これはあまり正確でない、一応のざっとしたあれでございますが、二十七年の三月では十二円三十一銭という数字が出ております。それから三十年の三月では十一円五十三銭というふうな数字が出ております。今の算式でそのままやってしまえば……。まあこういうふうなわけで、この算式自体が果して妥当であるかどうかというふうな点までも、単価問題に関連しては検討をしなければならないというようなことで、実は御存じの特別な協議会ができまして検討を願っているわけです。それで現行単価というものにつきましては、従来から算定ルール自体がきまっておらないのであります。一応現行単価につきましては、二十六年の秋に先ほど申し上げたようなルールをきめて、そういうルール計算をして、一応その実施をしているわけでございます。そのルール自体についても検討を要するということで、特別の協議会を設けて御検討願っているわけであります。なかなか問題が複雑でございます。まして、その算定ルール自体結論をもまだ生み出し得ないでいる、こういうふうな状況であるわけでございます。
  21. 岡良一

    岡委員 私の申し上げたいことは、そういう形で、一点単価というものがきわめて不安定である。いろいろな指数の変化に伴って動揺きわまりなきものである。そこで、昭和二十九年には十三円三十一銭になっている。昭和二十九年には十二円三十一銭になっておれば、医師としては、昭和二十九年のそのときまでに、十二円三十一銭引く十一円八十三銭ですか、約五十銭ばかりを一点について不当に安き支払いを受けておったことになるわけですね。そうかと思えば、三十年になれば十一円五十三銭で、今度はまた三十銭ばかり不当に高き支払いを受けたということになるわけですね。こういうことは、それはある程度やむを得ないといたしましても、問題は、こういう単価算定方式の中に、医療報酬としてやはりあるコンスタントのものが必要と思うのですが、これがされておらないというところに問題の一つがあると思うのです。現在の保険行政上の大きな問題点があると思うのです。ただ問題は、この単価——当時私は日本医師会常任理事をしておりまして、当時の橋本厚生大臣でしたかと深夜まで総理官邸で折衝したのです。そのときの条件としては、一時一つこれはのんでくれ、しかし必ずこれを変えるという言明があったわけで日本医師会はのんだわけです、ところが一向改まっておらないということです。これは公約違反なんだが、これはどうなんでしょう、厚生省の内部では……。
  22. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御指摘のようないきさつがあったことは私どもも十分承知いたしておるわけであります。先ほど申し上げました特別の機関というふうなものができたのも、そういうことに関連してそれをもう少し本質的に掘り下げて検討すべく設けられたものと承知をいたしております。またさようないきさつ関連をして、税制の方の特別措置というふうなものも実施されておるやに私ども承知いたしておるわけであります。従って確かにさようないきさつがあって施行されておりまする現行単価でございまするので、これはそれらのいきさつから考えましても、当然現在のものが不適正であるかどうかということについての検討はいたさなければならぬ筋合いのものでございます。厚生省といたしましては、だいぶ前の国会以来当委員会でもお答えいたしておりますように、今の特別の機関結論が出ることを実は期待をし、ずっと待って参ったわけでございます。ところがなかなかこれはそう簡単にも事柄の性質上参りませんようでございますので、私どもとしてはその機関の方は機関の方として御検討を続けていただきながら、われわれ事務当局の方としましても、一つ早急にこの問題と取り組んでみたい、こういう考え方に相なっておるわけでございます。
  23. 岡良一

    岡委員 しかしそれは局長考え違いじゃないかと思うのだ。臨時医療報酬調査会というものは、何もこの一点単価をどうするかという動機で出発したものではない。これは当時サムス准将の、医者は薬を売ってその利益で飯を食っておる、歯医者は金を売って飯を食っておる、こういうことは不合理であるから、技術というものとその対価の報酬というものははっきり区別をしなければいかぬという建前から出発しているものなんです。だからこれに出てくる結論は、現在の一点単価矛盾をしておるならば、これを是正するための参考にはなるかもしれませんが、動機としては全然別のところから出ているのではありませんか。
  24. 高田正巳

    高田(正)政府委員 臨時診療報酬調査会というのは今、岡先生指摘通りでございます。あれはもうすでになくなっておるわけでございますが、あれではございませんで、臨時医療保険審議会という別の機関でございます。これはまだ存続をいたしておるわけでございます。
  25. 岡良一

    岡委員 それはいつかできたことは聞いたことがあるのだが、——何回くらい会合を開いているのか。どういう顔ぶれでやっているのですか。
  26. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先ほど単価問題のいきさつがございましたから、それらの経緯に基きましてできたわけでございます。従いまして単価問題がきまったあとでございます。設置をされました手続といたしましては、たしか閣議決定か了解かでできておると思います。その時分には先ほど御指摘医薬分業関連をした臨時診療報酬調査会はもうすでになかった時代であります。それからメンバーの詳細は私今記憶しておりませんが、診療担当者代表が当然入っておられます。そうしてその審議会の長を勤めていただいておりますのは、川西実三先生であったと記憶しております。なお、小委員会が設置されまして、その小委員長今井一男先生がなっておると記憶いたしております。
  27. 岡良一

    岡委員 現行単価実施された昭和二十六年十二月一日当時日本医師会政府側との折衝の結果、このたびの単価は暫定的なものである、従ってより合理的な単価を決定するからというお約束に従ってこれはたしかできたのですね。それでその後これは何回か集まっておると思うのですが、何を相談しておりますか。
  28. 高田正巳

    高田(正)政府委員 古い当時のことは私承知をいたしておりませんが、最近の状況としては、全体の会議から小委員会に何か一つ試案というふうなものをまとめるべく付託されまして、それでその小委員会におきまして診療報酬算定ルールを何とかして見つけ出したいという方向でいろいろ御論議になっておりまして、皆さんの御論議経過というか、それを集約したようなものが、試案でなくてメモでございますが、第一次メモ、第二次メモというふうに出ておりまして、その第二次メモについてまたいろいろ小委員の方の御意見参考にしてさらにそのメモを練り面すというふうな作業をいたしておられるのであります。
  29. 岡良一

    岡委員 二十六年暮れの医療担当者団体との約束で、ともかくもっと本ぎまりなものを作ろうといいながら、足かけ七年足らずそのまま据え置いてほおかむりの格好になっておることはまことに遺憾だと思う。それからそのために作られた機関が五年越し、六年越し、一次のメモか二次のメモか知らないが、ともかくサボタージュしておることは、これは結果から見て明らかだと思う。こういう点も十分政府として考えてもらわなければならぬと思うので、それは医療担当者団体代表も出ておるのですから、いろいろ医療担当者意見もあろうし、被保険者の側の意見もありましょうが、見通しとしては、そういう単価の問題をめぐる解決はなかなか困難な問題だと思う。しかし、いずれにしても現在の単価算定方式は不合理であるということは言えると思う。そこでこの間も大臣の、医療報酬について善処する余地があるというお話もあることであるから、これは当委員会としても重要な問題でありますので、先ほど御発表の数字でも、局長ゆっくり言うていただいたけれども、私ども十分書き取れなかったので、現行単価計算のいろいろな基礎、それからその一次なり二次なりのメモども、もしお示しを願えるものなら見せていただけば、いろいろ私たちの参考になると思います。  それからこの機会にお尋ねをいたしておきたいのですが、おそらく単価決定に当って、やはりあの臨時診療報酬調査会、あの算定方式というふうなものは参考になっているのでしょうか。
  30. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今岡先生の御指摘の点は、例の分業関連をいたしまして設置されました臨時診療報酬調査会、この算定方式という御質問であろうかと存じます。ただいま申し上げましたように、臨時診療報酬調査会のあれとこの単価がきまりました場合の算式とは、これは違っております。それで私どもは、臨時診療報酬調査会答申にありまするような線に沿って診療支払い方式を変更いたすために、御存じのようにいわゆる新医療費体系というふうなことで作業を進めて参ったわけでございます。その結論は、御承知のようにそれをもとにいたしまして新しい保険点数の組み直しということを企画いたしまして、その案を一昨年の暮れに中央医療協議会にかけて、引き続き御審議をいただいておることは御存じ通りであります。それでこの方の御審議の模様は、一昨年の暮れからこれを御審議いただきまして、その間昨年の四月に医薬分業というふうな医薬制度改正がございまして、それに間に合せるために、いわゆる暫定案というふうなものが同じ医療協議会で御答申をいただきまして、とりあえずそれを実施いたし、さらに引き続いて根本的な点数改正案をただいま御検討をお願いいたしておるわけでございますが、この方は目下の状況といたしましては、一昨年の暮れから三十数回中央医療協議会を開きまして、そうして大体の荒筋につきましては、何と申しますか、審議経過を整理いたしまして、そうしてこの点と、この点と、この点というふうに事項をしぼりまして、さらに専門的な委員に御検討を願う必要があるということで、専門委員を設置いたしておるわけであります。たしか三十数名が問題によりまして四部門に分けられまして、そしてそれぞれ各部門とも、非常に御熱心に御検討をいただいておるわけでございます。専門委員会が始まりましたのが昨年の十一月の中旬でございます。自来各部会とも十数回会を重ねて御検討をいただいておる、さような経緯になっておりますことで御了承願います。
  31. 岡良一

    岡委員 今のその話は、例の昨年四月の法改正によるいわゆる医薬分業が出発したということで、それに伴い、単価の問題じゃなく点数の組みかえをやる必要があろうかということで、御検討になっておられるわけですね、   〔大橋(武)委員長代理退席委員長着席〕 そこで問題は、点数がどう組み合されましても、一点単価そのものに存在をしておるところのいろいろな矛盾は解決されるものじゃないと思う。それで解決しようと思うのは、それは非常に無理な話だと思うのですね。方法論としては、そこに問題が一つあるわけです。それからもう一つは、そういう形で、医薬分業実施に伴う点数改正をやろうという場合、医薬分業実施前提としては、いわゆる新医療費体系等厚生省でも非常な努力をして出しておられるわけですね。しかしその場合はやはり技術評価というものが前提になっておるわけですね。技術評価前提とした新しい、従って点数だけじゃなく、点数基礎に一点単価の中にもやはり技術評価というものが含まれてなければならぬ。そこに具体的な問題点一つあろうと思う。  そこで健康保険医療報酬に対する現在の政府の取扱い方の中に、現在未解決のままに残されている問題が二つあると思うのです。一つは、現在の一点単価というものはいろいろ不合理なものを持っておる、少くとも安定した保険財政という観点、所期する観点から見るときわめて不安定な要素を持っているということ、今一つは、一点単価には技術に対する評価というものが何らここにはないのです。ほんとうに技術に対する評価というものは出てきておらんじゃないですか。およそ必要なる経費診療行為点数で割っただけです。それはなるほど技術評価であるかもしれませんが、大きなファクターは衛生材料とか、あるいは医師の生計費といったようなもの、それも技術評価の大きなファクターではありますけれども、ところが一方では、医薬分業に伴う医療報酬調査会の出しておる技術評価方式というものがあるわけです。だから不可分ではないわけですね。妥当な医療報酬を算出しようとする場合には、もしあの方式をとる、そうして現在の一点単価計算基礎あるいは一点単価計算の方法というものと、そこに矛盾があるわけだと思いませんか、私はどうもそう感じられますがね。
  32. 高田正巳

    高田(正)政府委員 岡先生の仰せになりました最後の点は別といたしまして、確かにそういう問題があるわけです。それで非常に平たい言葉で表現をしてみますれば、現在の診療報酬というものは単価点数をかけて診療費を出す支払いの仕方です。従ってその点数のきめ方というものが、技術面とそれから物の——物というか材料費経営費という面、いわゆるほんとうの医師技術料というものが区別されておらないような関係がある。これを言葉をかえて言えば、一点単価の十二円五十銭なら十二円五十銭の中に、いわゆるコストに当る部分とそれから医者の技術に対する報酬の部分とが一緒に含まれておる、そういう格好になっておりまするので、この点はたとえば、公務員の給与がかりに三割なら三割上るという場合に医師技術料を三割上げようという場合には、単価を三割上げたんじゃ変なことになる。コストにかかる部分については、これはコストに関連をするいろいろな物の経費でありますとか、あるいは人件費でありますとか、あるいは看護婦なんかの人件費でありますとか、そういうものに合理的に言えばその部分はスライドして、技術に関することは別な観点から検討を加えるということが、物事から言えば妥当なわけです。今単価問題で論議されておりますことは、それを一緒に含まれていることをこうする、ああするということで論議をされている、その場合によくあげられることは公務員ベース幾ら上っておるじゃないか、だから単価を何倍に、それだけ上げなければならぬじゃないかということで論議されておるわけであります。しかし先生御指摘のように昭和二十四年でございましたか、五年でございましたか、臨時診療報酬調査会が示しておりまする診療報酬計算方式というものはそうではなくして、コストに当る部分と純粋の医師技術料に当る部分と分けてやれということを申しておるわけです。従いまして、その流れをくんで、その考え方に沿って合理化しようという意図が、今医療協議会で御検討を願っておりますところの先ほど私が申し上げました点数表の組み直しということになっておるわけでございます。従って今先生が御指摘のように、確かにこの点数表の組み直しの問題とそれから単価問題というものは非常に関係がある、私は先生の御指摘通りこういうふうに考えておるわけでございます。
  33. 岡良一

    岡委員 そこでそういうふうなことになってくると、実際あなたと私も同じ考えなんですが、実際問題として、今度いわば請求点数が多くなってきた、だから実入りは同じじゃないか、こういう説も出てくるわけです。しかし物価が高くなれば、今度それが押えられてくる。医師技術というものはコンスタントなもので、そのコンスタントなものに対する評価ができないから、物価でそのコンスタントであるべき医師技術評価が押えらる。それからまた診療件数が多くなって、請求点数が多くなればふえてくるから、総体としての収入は変らないのじゃないかという、これはコンスタントの技術評価がないから出てくるわけです。問題はやはりそこにあると思うのですよ。ただしかし今何とか医療協議会がやっておられるけれども、これは点数の組みかえをやってみたところでコンスタントの医師技術評価というものは出てこないと思う。出発点として診療報酬調査会のあの方式というものがやはり出てくるのでしょう。この中央医療協議会専門委員会なるものは診療報酬に対する評価としては技術評価をも立てなければならないということで、技術評価の面は診療報酬調査会のあの原則というものが重要な参考になっているのでしょう。——あれはどういう方式でしたかね。僕はあれにも少し文句があるのですが、医師技術料はG=(1±α)gtそういうのではないでしょうか。
  34. 高田正巳

    高田(正)政府委員 その資料は私今持ち合せておりませんが、簡単に言ってみれば、スモール・ジーというのは単位時間当りの医師技術料でございまして、それにその医療行為に要する時間というティーをかけますとそれで一応出るわけでございますが、それに技術差、たとえば脳手術と盲腸の手術とは脳手術の力がむずかしいのだというその技術差というものがアルファで、一プラス・アルファ、一マイナス・アルファというものがあるわけでございますが、そういう一プラス・アルファというようなものをかけていくということで出したらどうだという筋の御答申でございます。そういう考え方で今の中央医療協議会のあの点数表の改訂を御検討いただいておるわけであります。従って、いずれにいたしましても、私はそういう医師技術料というものをできるだけ抜き出すような診療報酬支払い体系にいたしませんと、今先生御指摘通り医師技術料についてのいろいろな問題が他のものと一緒になってごちゃごちゃに論じられるということになります。従ってどうしても医師技術料というものを的確に客観的に評価するシステムにいたしていくべきものと私どもも考えておるわけであります。ただその場合に、しからば技術料とそれからコストの部面とをどの程度に分けるかというと、もちろん程度問題はございますけれども、こまかい医療行為までについて一々分けていくということはできぬにいたしましても、大筋としては医師技術料というものとコストというものを分けて支払うような診療報酬の体系にいたしませせんと、医師の待遇問題も論じてやぶに入ってしまう、こういうふうな気が私自身もいたしておる次第でございます。
  35. 岡良一

    岡委員 そこで今の医師の当該技術に対する評価を、ラージ・ジーとすれば、イコール、カッコ一プラス・アルファ、カッコかけるスモール・ジー・ティーでしょう。それでアルファというのは技術評価のコンスタントな係数、これは盲腸炎とかそういうふうになってくる。一プラス、マイナス・アルファのこのアルファは専門的にきめてもらわなければなりません。その次はスモール・ジー、これは外科であろうが、内科であろうが、あらゆる診療行為の単位時間に必要とする諸経費を割ったスモール・ジーというものでしょう。診療報酬というか、必要経費でしょう。
  36. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これはあらゆる診療行為に対する報酬がスモール・ジーだというわけじゃないのでございまして、その中の医師技術料に当る分だけをスモール・ジーで表現しておるのであります。そういう意味におきましては、別に盲腸の手術のときの技術料というふうに限られておるわけじゃありません。先生も御指摘のように、あらゆる医療行為の技術料の総平均ということでございます。しかしあらゆる、医療行為の総診療収入というわけではございません。
  37. 岡良一

    岡委員 わかりました。そうすると、この医師技術評価においては、ラージ・ジーというものはコンスタントな係数、技術の難易さによるアルファによって可動であるということです。その次にスモール・ジーはコンスタント、ティーは可変的で、難易さによる可変的な要素は時間だということになる。そうすると、熱心なお医者さんが同じ子供のかぜ引きに長く時間をかけたということによってティーは動くわけです。もう一つは、下手なお医者さんが上手な外科のお医者さんよりも盲腸の手術に長く時間がかかったというときに技術評価が高くなってくるでしょう。こういう矛盾はどう解決されるのですか。
  38. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御指摘通り個人差を問題にいたしますとそういう問題が起ってくるわけであります。あの答申のスモール・ティーというのはいわゆる平均所要時間でございます。それで二十七年にストップ・ウォッチをもって医療行為の平均所要時間をはかって回ったようなことがありますが、それは平均の所要時間であります。従って今のラージ・ジー、すなわち医療行為の枝術料というもの、一プラス・アルファかけるスモール・ジー・ティーというこの答申の線というものは医師の個人差については触れておらないのであります。しかし診療報酬の問題として個人差の問題があることも、これは非常に重大な問題として御指摘通りであろうと私は考えます。
  39. 岡良一

    岡委員 一応また大臣が来られたときの予備知識として承わったわけですが、もう一つ保険局長に聞いておきたいのは、各国の健康保険制度をしいておるところにおける健康保険医に対する処遇はどういうふうにやっていますか。カーロッパ諸国が一番発達しておるんですが、英国、スイス、フランス、イタリア、西ドイツ、この五カ国でどういうふうにやっておりますか。
  40. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは診療報酬支払い方式がまちまちでございまして、私も具体的にただいま承知をいたしておるわけではございませんが、たとえば英国等におきましては、いわゆる一般医というものは、人頭請負という、われわれがとっております点数単価方式とは全然違う支払いの方式をとっております。またわが国のような点数単価方式もあるやに聞いておりますし、あるいはそのほかに件数定額という支払い方式もあるやに聞いております。人頭でなくて一件当り幾らというやり方です。そういうふうなものもあるわけでございまして、これは各国まちまちであるように私は承知いたしております。具体的にどこの国のものがどうなっておるかということをもし御要求でございますれば、私ども十分な資料が役所にあるかどうか疑問でございますけれども、可能な範囲において調査をいたしたいと存じております。
  41. 岡良一

    岡委員 技術評価がどういうふうに各国で行われているか、特に現在問題になっておる健康保険医に対する技術評価が各国の保険制度の中でどういうふうに評価されているかということは、これはやはり重要な資料だと思う。そこにやはり日本の今後あるべき医師に対する適正な医療報酬というものが出てくると思うのです。英国の方は御指摘のような人頭請負の格好ですが、私は一九五〇年にヨーロッパ諸国で調べたことがあるのです。その場合人頭請負で英国のいわゆる家庭医の年間収入は、一九五〇年で平均しますと大体千四百ポンドくらいです、百四十万円くらいになりますか。しかもおそらく完全な医薬分業の形における純粋の技術報酬と見ていいわけですね。それからドイツは、今もやっておるはずですが、初診料が二マルクです。今の相場が八十七円ならば大体百七十四円くらいですね。三診が一マルク半です。三診が一マルク、自後ずっと一マルクです。それからスイスは、当時は初診が四百五十フランです。二診が三百フランですか、二診はよくわかりませんが、それで三診とずっと通しております。それからフランスは、地域によって違うが、パリやマルセーユはやはり四百五十フラン、日本の四百五十円程度、へんぴないなかに入れば三百六十フランが初診料の大体の評価になっておるわけです。イタリアでは保険医に対して三万六千リラを保険医であるということで出しているわけです。そのほかに診療の頻度に応ずる報酬も別途出している。詳しい資料はうちにありますが、何かそういうようなやり方で、保険医の技術評価というものがその支払いの中で非常に大きくものを言う。だからお医者さんにしてみれば、何も薬局を持って、光熱費を払って、見習い看護婦を雇って処方しなくてもいいというところまですっきり、医師技術評価がいっているわけです。健康保険制度を今後発展させる意味において、やはりこういう先進国の医師に対する技術評価というものが十分学ばれていいのじゃないか。そういうようなことを、今後この問題を考えていくときには、重要な参考として、持っていっていただくということにしないと、やはりどうしても歯医者は金の利益をとろう、医者は薬の利益をとろうということになって、日本の医療体系の中にはいつもぎくしゃくしたマイナスの面が起ると思う。この支払いをだれが支払うかということは別個の問題として、やはりそういう点もっとすっきりした体系を打ち立てていくという努力の方向が望ましいと私は思う。  もう一つ、これは次官にお尋ねしますが、局長もおられますからどなたでもけっこうですが、国民の総医療費の変化はどういうことになっておりますか。
  42. 高田正巳

    高田(正)政府委員 前段の岡先生の御意見技術料をはっきりつかみ得るような診療報酬の体系にする、しかもその際には諸外国の医師技術料の評価と十分にらみ合せて、わが国の国民経済力というふうなものとつり合ったようなものを考えていくということにつきましては、私も全く同感に考えておるわけであります。  それから国民総医療費の推計につきましては、私の方の統計調査部で毎年推計を発表いたしておるわけでございますが、ただいまその資料を私持ち合せておりません。たしか二十九年度は全体が二千六百億程度ではなかったかというふうに私は記憶しておるのでございますが、その数字が御必要であるならば、また後刻御報告申し上げたいと思います。
  43. 岡良一

    岡委員 そう、これにありますね。昭和二十九年の国民総医療費は約二千二百八十二億円、国民所得の約三・七%を占めておる。そうして二十八年が二千七十億円というふうに、過去にさかのぼって二十七年、二十六年がどうこうというふうに書いてあるわけです。そこで正確な数時が二十九年どまりで二千二百八十二億円といたしまして、こういうことが書いてあるのですよ。英国では四%である。日本では三・七%、ニュージーランドが三・六%、そこでこの次が僕は問題だと思うのですが、わが国の国民医療費の割合はおおむね限度に近づきつつある、ニュージーランドや英国が三・六%であり、四%である。そこで昭和二十九年の日本の総医療費が二千二百八十二億円で、国民所得の三・七%だから限度に近づきつつある、これは一体何が限度なんですか。
  44. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは私がお答えをいたすのが適当であるかどうかわかりませんが、この気持は、おそらく国民所得が非常に高い場合には、ある程度総所得に対する医療費のパーセンテージが高くても、残りの部分が多いから、国民生活が非常に苦しくなるということはない。所得が総体的に小さい場合には、同じパーセンテージでも国民生活というものが非常に苦しくなる。こういう前提のもとに英国が四%であり、ニュージランドが三・六%でありますから、それより相当国民所得が低いわが国において三・七%ということであれば限度に近いところではあるまいかということを言い表わしておるのだろうと思うのでございます。しかし厳密な意味の限度というものはなかなか得がたいと考えております。
  45. 岡良一

    岡委員 問題は、この書物によると、英国が四%、ニュージーランドが三・六%で、日本も三・七%へきているから限度だ、こういうことなんですね。国民所得と健康保険制度の普及ということからすべてが同じだという前提の上に立っての限度ということならわかるのです。しかしこれは限度でも何でもない。日本は限度がないわけです。限度はこれから皆さんに作ってもらわなければいかんので、この限度という表現は一つぜひ訂正しておいてもらわなければならぬ。そこで、国民総所得を裏返したものは国民総生産なんですから、国民の健康が侵されるというのは国民の総生産力が侵されることなんです。だから国民の総医療費というものは国民総所得と不可分な関係にあるのです。こういう点から国民の総医療費というものを考えてもらわなければならぬ。もう一つは、国民の現実の状態です。国民総所得が八兆一千億あると見て、どの部面でどういう生産をされているかということは出てくるわけです。鉱工業生産がどのくらいあるか、それから大規模経営と小規模経営に分けてどれだけの生産が出ているかということがみな出ているのです。そこから政府管掌の対象になっておるような企業体における生産というものがある程度まで推定できるわけです。そしてそういうところにおける労働時間とか賃金とかいうもろもろの労働条件との関係において、この面における国民の医療費というものがどういうバランスをとるべきかという方針がある程度まで出てきやしないかと思うのです。政府管掌の健康保険というものはそういう観点からも検討すべき余地があるのではないか。いずれまた大臣でも来られたら話したいと思いますが、そういう点で、ただ政府管掌健康保険だけのワクの中で三十何億の赤字を出すとか出さないとか、負担をどうするとかこうするとかいうのではなく、——皆さんが五カ年計画で国保を普及させるというならば、この過程では一部ふくらむこともあるでしょう。また減ってくることもあるでしょう。そこには公衆衛生の活動もあるでしょう。そういうものの趨勢がこれまでの経験からある程度見られるのではないか。それをもっとこまかく分けて、国民総所得と国民総医療費との一つの分野としてどう持っていくかということになれば、政府管掌保険も包括されておるでありましょう。労働者の労働条件というものも問題になってくるでありましょう。そういういろんなファクターが、保険制度をいじくるときには究明される必要があるのではないか。この点が非常に足らぬように思うのですが、政務次官はどう思いますか。
  46. 中垣國男

    ○中垣政府委員 岡さんにお答えいたします。ただいま御指摘されました点は、先ほど来私も拝聴いたしておりまして全く同感であります。特に技術評価の問題とかいうようなことになりますと、ただいま御指摘されたような正確な統計に基いてこれを行うのでなければなかなかできにくいではないか、実はこういう考え方をいたしております。なおまた単価算定等もそうでありますが、昭和二十六年の単価算定当時の方法でこれがよいとか悪いとかいうことも、やはり今まで五年間行なって参りましたこういうものをすべて統計的に数字にとってみて行うのでなければほんとうのものは出ないのではないか、かように考えます、なおまた外国等の保険に関する制度、そういうものを十分調査して、日本でもそれを参考にして定めるべきではないか、全く同感であります。この問題は、当委員会におきまして、大臣から、単価の問題、点数の問題をどうして妥当な方法に持っていくかということについては責任を持って調査するという約束がされておるようであります。私も省議を開きましたとき特にその点を強調して、これには大いに共鳴したのでありますが、これを行いますについてはやはりあらゆる統計上の資料をとりまして、先ほど来の国民総所得のうちどの程度医療費が適当であるかという問題等を含めまして慎重な調査をして参りたいと考えております。そうして岡先生の御指摘通りに、やはりあらゆる資料をそろえるだけそろえて臨む、こういう態度で参りたいと思います。
  47. 岡良一

    岡委員 一つぜひ御奮発を願いたいと思うのです。一昨年でしたかのILOの社会保障の最低基準に関する条約、ああいうものも実際日本は即座にでも加盟し得るような資格を持っている。しかし個々の制度の内容になってくると、健康保険制度でもあるいは年金制度でも、形の上ではあるけれども、中へ入ってくると不安定な要素をたくさん持っているわけです。それにしても日本は、社会保障制度はアジアでは第一人者で経済協力だとか技術協力だとか言いますが、アジアの社会保障制度の会議もあるのですから、日本が範を示すという意味でも、また日本のそういう制度をアジア諸国に普及し得る手本を作る考えをもって——政府が何カ年計画ということで予算数字をいじくられるときに、全体の財政規模の中での国民医療費等の動き、資料幾らでもあるわけだと思うのです。どの程度に抑えながら具体的な分野ではどういうふうにやっていくかという財政配分計画なりを厚生省でももっと根本的に立てていただいて、そういう大きな線の上でいろいろな問題が論議されなければいかぬと思うのです。ただ小さく健康保険のワクの中でどうだこうだという論議をする以前の根本の問題として、こういう企画性を——厚生省厚生省なりに持っておられるようだけれども、どうもわれわれが見ていると、洗面器に浮いている金魚みたいに、あっちに行って突き当り、こっちに行って突き当り……。保険局長あたりなかなか俊才だから、もっと活眼を開いて一つ大きくやってもらいたいと思うのです。  この程度でやめます。
  48. 藤本捨助

    ○藤本委員長 午前はこの程度にとどめまして暫時休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時十一分開議
  49. 藤本捨助

    ○藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  質疑を続行いたします。井堀君。
  50. 井堀繁雄

    井堀委員 厚生年金保険法改正要点は、説明によりますとごく簡単なものだということでありますが、この機会に、厚生年金保険健康保険との本質的な違いについてただしておきたいと思っております。これはあとで厚生大臣の考え方を伺いたいと思っておることでありますけれども、私は、この機会に厚生年金保険法についてはもっと徹底した改正を行うべきものであるという考え方を持っておるわけであります。一体健康保険法船員保険法のように非常に問題の多い、しかも相当時間をかけて審議をしなければならぬ案件とあたかも抱き合せのような形で提案されてきておるところに問題が一つあると思うのです。これは提案者側の政府の意見をただすべきことだと思うのですが、これと関連して先に事務当局に伺っておきたいと思います。厚生年金保険法改正について、大臣の提案理由の説明によると、健康保険と歩調を合せる意味において女子被保険者の脱退手当金を給付したい、そのほかは条文の整理をしたいということでありますが、内容を見るとわれわれには必ずしもそうと思えません。元来、厚生年金保険法改正について、事務当局としてはいろいろな点で相当広範な改正を意図しておったのではないかと思いますが、その辺のいきさつについて詳しく説明を願いたいと思います。
  51. 高田正巳

    高田(正)政府委員 厚生年金保険法は、御存じのように、昭和二十九年でございましたか、比較的最近の機会に大改正をやったような次第でございます。これの大筋の改正、たとえば財政方式とか給与方式というようなものは非常に重大な問題であるかと存じます。昭和二十九年に大改正をやったあとでございますので、大筋の問題は今しばらく手をつけないということで私どもは考えたわけで、また今後もさような考えでおるのであります。しかし、御存じのように、保険料率の算定等につきまして五年ごとに検討をし直すということが法文の何条でございましたかに書いてあるのでございます。従いまして、それらの関係から、三十四年度ということに相なりますか、全般的な料率の問題について検討を加えなければならないのでございます。そういたしますと、料率に関連をしていろいろ基本的な問題につきまして検討を加えなければならないということになって参ると思いますが、私のただいまの見込みでは、次の次の通常国会でこれらの問題についての検討の結果を御審議をいただくことに相なるのであろう、かように考えておる次第でございます。今回は厚生年金保険の大筋の重要問題についての改正ではございませんで、本来ならば二十九年の改正をやりますときにやっておくべきことであって、いろいろ立法上の手落ちといいますか、そういう点とか、あるいは法をいろいろ実施いたしました際に疑義が生じて被保険者の利益の保護に欠くるところがあるのでそれを明らかにするというふうな技術的な改正が主で、今回はそういうもののみの改正に限った次第でございます。
  52. 井堀繁雄

    井堀委員 保険料率の改正は法律の規定に基いて五年目ごとにやるという考え方、その通りだと思うのであります。そうすると、二十九年から言うと、明後年になりますか、その予算ではその点で改正の要があるわけであります。そこで、これは政策上の問題であります、厚生年金の改正をする場合にはいろいろ客観的諸条件が整っていなければならぬ。二十九年の改正の際にも非常に問題になったと思います。今後日本の経済なり財政なりがどう発展するかという見通しの上に立っていろいろ判断が変ると思うのであります。一応日本経済も安定期に入ったと政府は言い、神武以来の好景気だと言っているのですが、こういう機会にこそ厚生年金のごときは改正すべきではないかと思う。この点については大臣との質疑応答の中で明らかにしていこうと思う。事務当局としてはこういう時期にこそ別途改正を計画して、明年度三十二年度ですから、次の予算関係してくるわけでありますが、こういうときに頭を出しておかなければ、三十二年度の改正には間に合わないのじゃないか。これから内容についてお尋ねしていきますが、たとえば健康保険や船員保険の場合と異なって、年金保険の本質からいきますと、かなり長期の計画と見通しの上に立たなければならぬ性質のものです。ですから五年目というのは、五年目になって考えればいいのではなくて、五年目にはすでにそういうことをあらかじめ予定しておらなければならぬという意味があの法律の精神であると思う。この点については内容でお尋ねすればすぐわかるのでありますが、一番大事なことは年金保険の問題について大臣にただすつもりで思いますが、この政府はかなり重要な事柄を公約いたしておる。福祉国家などといってもできっこありません。また国民皆保険を一方において言っておる。それから国民年金をやるようなことを漏らしたりしておる。やる能力のいかんは別として、そういう誠意があるとするならば、厚生年金保険が出てくるべきなんです。また事務当局はこの機会にこういうものを政府にやらせる用意をなさってしかるべきだと思う。そこでお尋ねをいたしますが、ほかの保険の場合の資格取得と異なりまして、長期の十五年なり二十年の被保険者の資格を取得していなければ、危害があっても年金保険の恩恵に浴することができないわけです。でありますから、健康保険や船員保険の場合に比較いたしますと、その他の保険の場合もあるでしょうが、たとえば被保険者の範囲を拡大するというようなことがあっても、一年おくれれば結果において大へんな開きを持つものなんです。こういう点でもっと改正に対するいろいろな事務当局の用意があってしかるべきである。こういう用意があっても採用されなかったのであるか、あるいはそういう時期でないと事務当局は考えたのであるか、この点について一つ承わっておきたい。
  53. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいま井堀先生御指摘のように、厚生年金保険法の大筋の改正ということに相なりますると、健康保険とか船員保険の疾病部門というふうな短期給付の問題の場合よりは、より複雑でより長期にわたったいろいろなものの見方をしていかなければならぬことはまさしくその通りでございます。従いまして、この時期にこそそういう検討を開始すべきではないかという仰せでございますが、私どもといたしましては、法律によりまして五年という期間が一応切ってございまして、そのときにはいずれどうしてもやらなければならないことでございますので、私どもがそれに間に合うように諸般の準備を進めていくべきであるというふうに考えておるのでございます。  国民年金の問題につきまして、予算の中にもそういうふうな問題についての学識経験者の方々をお願いする費用とか、あるいは調査費というものが計上してございます。これはもちろん厚生年金の問題だけに限ったものではございませんけれども、しかしながら国民年金というふうなものを考えます際には、その国民年金がどういう姿になりましょうとも——と申すのは、厚生年金とは別に、無醵出制の、ある階層をねらった年金というふうなものに、かりになりましょうとも、厚生年金との関連においていろいろ検討されていると私ども考えておりますので、それらの予算に計上されてあります費用は、もちろん厚生年金とも関連をいたしまして使われて参る経費であろう、私はかように考えておる次第でございます。事務当局といたしまして、来年度の予算編成に当りまして厚生年金の改正をもくろんで、それに要する経費を具体的に盛り込むというふうなことには、ただいまのところは相なっておらない次第でございます。
  54. 井堀繁雄

    井堀委員 それじゃ具体的にお尋ねしますが、たとえば四十二条の受給資格の取得の条件ですが、これはさっきもちょっと例を上げたのですが、老齢年金の受給資格というのは、多少法律の改正が行われるといたしましても、十五年で取得できるものがまさか二年、三年に圧縮されるというようなことは、にわかに考えられぬことで、こういうことは健康保険やその他の保険に見られない。かなり事前にその準備と具体的な成案というものが用意されなければならぬことなんです。提案理由で大臣が言っておられる健康保険と調整をとるという意味は、これはそういう意味はないと思いますけれども保険全体の行政を、しかも一番責任のある保険局長の立場からするならば、こういう点はあなたが説明されたように、五年ずつの改正ということはただに保険料率だけを変えろという意味ではないのであります。むしろ調整をとるというなら、社会保険の中における老齢保障のようなものと医療保障のようなものとの調整は、ここに問題を持ち込んでくるべきものだと思う。これは政府がそういう政策を遂行する意思がなければ、何ぼあなた方が用意されても意味がないのでありますが、先ほども言っておるように、政府は社会保障の問題についてはかなり大胆な公約をしておる。国民皆保険とか、要するに、福祉国家を口にしている政府なんです。こういうときに事務当局がそういうものを用意して突き出さなければ、出す時期がないと思うのです。この点に対してもう一ぺんはっきりした御答弁を願いたい。
  55. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先ほど申し上げましたように、現行厚生年金保険法は比較的最近の機会において根本的に改正を加えられたものでございます。その際に、今井堀先生御指摘のように長期保険でございますので、短期保険である疾病保険等と比較いたしますと非常に問題も広範に検討されなければならず、また深く検討されなければならぬ性格のものでございますので、二十九年当時におきましては十分に慎重にそれらの検討をいたしまして、現在の厚生年金保険法が施行されておるわけでございます。さような関連から、私どもといたしましては今日さらに再改正ということを考えるのは少しまだ早過ぎる。あれだけ慎重な検討を加えられてでき上りましたところの現行法を前提に運用して参りまして、さらにいずれ次の翌々年度には先生御指摘のように、保険料率のみならず諸般の問題について検討を加えなければならない時期が明記されておりますので、その機会にこれを検討いたすのが一番妥当なのではないか、こういう事務的な判断をいたしておるのでございます。政府は国民皆保険ということを申し、それが実現に向って第一歩を三十二年度に踏み出すということに相なっておりますけれども、これは医療保険の面における国民皆保険という構想なのでございまして、一応国民皆保険の問題と年金保険の問題とは区別をして考える。さような観点から私どもといたしましては、御指摘のように非常に広範な問題でございまするし、底の深い問題でございますから、事務的な検討は今後直ちに開始をいたしていくつもりでございますが、それにいたしましても、これが改正として出て参りますのは、法律に一応予定しておりまする三十三年度でございますから、翌々年度ということにちょうど時期的には相なって参るのではないかと考えております。
  56. 井堀繁雄

    井堀委員 何もあなたの言葉じりをとるわけではありませんが、厚生年金保険改正案をこの際用意することが早過ぎるというのはちょっと言い過ぎだというのはちょっと言い過ぎだと思う。そういう判断は私は重大なことだと思う。それから今私が皆保険というのを言ったのは、健康保険の問題と皆保険の問題が出てくるし、これは社会保障制度の一連のいき方でありますから、一方においては医療保険の問題を取り上げると同時に、他方においては年金のような養老保障のようなものが出てこなければ福祉国家にならぬのです。要するに社会保障の均衡を保つ意味でも——あなた方がここで説明しているのはそういう意味じゃないだろうけれども事務当局としては、もっと専門家としてそういう点で政府に対するいろいろな具体策を用意しておくべきだ。さっきも言ったように政府はやろうと言っているわけだ。それをあなた方が用意してないということはまことに不忠実なことなんです。それのみならずあなたが、本心じゃなく失言だろうと思うけれども、時期が云々と言うことはけしからぬ話なんです。社会保障制度審議会答申昭和二十五年の十月に行われている。その中における厚生年金保険について、被保険者の問題についてはこういう勧告がなされている。被保険者の範囲は被用者に対する医療保険の対象と一致せしめよと、とこういっているのです。この医療保険の方はどういっているかというと、五人未満の事業場の人に範囲を拡大せいと勧告している。だからなるほど健康保険法ではその点をやられませんから、悪くとればそれに均衡させるという意味だろう。しかしその意味をあなたはどう解釈なさっておるか。私は四十二条の点をあなたに申し上げた。私は一般の方ならこういう禅問答みたいな質問はいたしません。もっと懇切に説明を加えて答弁を求むべきでありますが、あなたはいやしくも社会保険については日本一の権威者でなければならぬ。またその責任の地位についておられるのであります。私の質問がどこにあるかを御判断できないような人でないと思う。あなたがそういう考え方なら大臣が何ができるものですか。あなたはいろいろなものを用意されて、政策にマッチするように——やり過ぎていっても、決してどうこう言れわることはない。あなた自身が早過ぎるなどという失言がぴょこぴょこ出てくるくらいなことですから、これは私よりも与党の諸君が怒るはずです。そんな保険局長がついておったのでは、大臣は厚生行政なんかやれっこありゃしません。この点について、大事なところですし、そういうことが記録に残っておってはまずかろうと思うから、もう一ぺん答えていただきたい。
  57. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私の言葉が足りなかったか、あるいは表現の仕方が違っておったか、物事の改正なり検討なりということは、これは早過ぎるということはないのでございます。厚生年金保険法が現在の社会情勢にそぐわない、改正すべきものであるといたしますならば、何も先生御指摘のように翌々年度を持たなくてもやるべきものでございます。従って検討をするには少し早過ぎるというふうに私が申したといたしますれば、これは訂正をいたしたいと思います。  それから第二点の厚生年金の問題も、社会保障の中の話であるから、政府が社会保障を大いにやるというふうに申しておるのであるから、それについて立案をし、その社会保障の中に、積極的に推進をしようとする政府の施策の中に盛り込んでいくべきであるという点でございますが、それもその問題の提起された方向においては私も同じように考えるわけでございます。政府は社会保障の面を大いに推進しよう、こういうことを申しておるのでありますから、従って厚生年金保険もその範囲に入ることは当然のことでございます。ただ、しかし全般的に社会保障を何もかも推進するということにつきましては、いろいろ国力の関係等もありまして、ものには順序というものがあるわけでございます。三十二年度の方策といたしましては、まず医療保険の面を取り上げて参った、こういうことに相なるかと存じます。  それから四十二条の被保険者の範囲の問題でございますが、社会保障制度審議会から今のような御勧告をいただいておりますことも私一応承知をいたしております。ただ五人未満の零細事業場の問題については、医療保険の場合にもしばしばお答えを申し上げておりますように、これを今直ちに健康保険のワクの中に取り入れるべきであるかどうかということにつきましては、実施上の問題その他をも含めまして、私どもまだその結論を得ておらないわけでございます。これにつきましては、いま少し実態を調査いたしまして、しかる後に結論を出したい、こういうことを考えておるわけでございます。かりにこれが健康保険の中に入ってくるということに結論づけられるということになりますると、当然年金保険の四十二条の問題も起って参るわけでございます。従いましてそういうふうな関係で、年金保険自体の問題といたしましても、今私ども医療保険と同じように四十二条を拡張いたしまして、これらの零細企業の従業者を全部現行厚生年金保険法の中に包括して参るということにつきましては、まだ結論を出しておらないわけでございます。いま少しの研究の期間を与えていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  58. 井堀繁雄

    井堀委員 あなたの今の御答弁の中で、ちょっとこれも出過ぎておるのではないかと思うのです。社会保障は何もかもというわけにはいかぬ、順序があるのだ、これは大臣の答弁でも私は許さぬ。さっきから言っているように、あなたの立場というものは、もっと積極的な意欲が燃えておれば、そういう失言はたびたび繰り返さぬと思う。少し考え直さぬといけないのじゃないか。それはどれをやったからといって決して早過ぎるものはないくらいのことは、あなたおわかりでしょう。ただ日本の国民経済なりあるいは国の財政なりというものがそういうものをまかない得るか得ないかということは、それは政府の政策の中において判断され、国会において討議される。政治家の任務なのです。そういうところに容喙してはいけませんよ。その判断はわれわれがやります。ただ事務がそういう政策に追っつけるか追っつけぬか、そういう主張ならけっこうです。どれから先にやるとかあるいは同時にやれるかやれぬかというお考えは、私は少し出過ぎておると思う。どうもあなたは一度や二度じゃなくてたびたびやるところを見ると——これからあと政府にただすつもりですけれども、やはりあれだけの公約をするからには決意が政府になければならぬと思って、この点をこの国会でわれわれは国民にかわって政府にたださなければならぬ立場にある。そういうときに関連してあなたに聞いておるわけでありますから、あなたの主観なら別ですけれどもも、保険局長の立場としてもっと言葉については注意してもらいたい。  私のお尋ねしているのは、厚生年金保険がどういうものであるか、私があなたに説明するのは釈迦に説法でしょう。日本の社会保障制度の中において、医療保険健康保険に依存しておるということの重要度と、年金制度特に老齢保障の問題を考える場合においては、厚生年金保険を考えないで決して論議はできないのです。厚生年金保険については関係者はよほど注意をして考えなければいけない。特にあなたは、時期があるならそれを具体化するための用意を整えて、あなたがお仕えしておる大臣を激励する立場におるのじゃありませんか。早過ぎるの、順序が違うの、何を言っているのですか。国民が今待ち焦がれている問題であります。そして私が四十二条の問題をあなたに冒頭に突きつけたのは、他の社会保障制度と異なって、その必要のときが迫ってすぐできるものじゃないからです。十五年ないし二十年前に受給資格を確保しておらなければ、老齢に達し当然国がめんどうを見たいと思っても、見ることができないという条件があるのです。こういう問題は他の社会保障制度よりは特にいろいろ準備をされて、機会あるごとに提案してくるべきだと思う。あなたが提案するあれはありますまいけれども、そういうことを大臣に建言したことがありますか、まずこのことを伺っておきたい。
  59. 高田正巳

    高田(正)政府委員 年金保険の問題は大へん所要な問題でございます。しかも先生御指摘のように、これが給付を受けようとすれば、たとえば老齢年金におきましては、十五年なり何十年なり先の問題である。従って年金保険検討の準備は、非常に長期にわたって行わなければならない。さような点につきましては、井堀先生の仰せの通りでございまして、私どももそのように考えております。ただ年金保険の問題につきましてはそういう性格のものである。従って非常に重大なものであるから、そういうふうな長期の検討を要するものであるということは申し上げておりますけれども、今この年金保険の大筋につきまして、たとえば老齢年金の給付の金額をどうするというようなことにつきましては、私はいまだ自分で研究の結果の結論を得ておりませんので、大臣には申し上げてございません。
  60. 井堀繁雄

    井堀委員 そのこと自体、私はあなたに対して責任を追及してもいいと思うのです。これは先ほども引例いたしましたが、昭和二十五年十月に出された社会保障制度審議会答申案の中で、きびしくいっておるのです。ただこのときにも説明が加えられておるように、昭和二十五年といえば、日本の経済はまだ特需に依存しなければやっていけないようなときだった。日本の財政においても、特に国際収支の不均衡は極端なものがあった、自立経済などとは思いもよらない、累卵の危うきといいますか、非常に危険な段階を漂うておるときの答申なんです。そのときにも切々たる要求が出ておるのであります。それが今日神武以来の好景気などといって、いやしくも安定期に入ったと政府は言っておるのです。そういうときにはこの答申案はぴったりくるわけです。何ものにも優先して、やってこなければならぬ。あなたにお伺いしたいのでありますけれども、今あなたは五人未満の事業場の人に対する範囲を拡大することは困難だということですが、これは健康保険の点で私も大臣にただしております。このことは答申案の中でこういっておるのです。これは大事なところですから、あなたは御存じだろうと思いますが、もう一ぺん読んで質問した方がいいと思います。この中の被保険者の項で「現行健康保険は原則として常時五人以上の従業員を使用している事業所で働いている者でないとその適用がなく、また、事業の種類によっては適用が除かれている。従って、これを拡張して規模の大小や事業の種類を問わないで、すべての被用者に均てんして適用されるようにしなければならぬ。もちろん、公務員にも同一の制度を適用して公平と機会均等の原則を貫くべきである。」というとどめを刺しておる。健康保険がどういうものであるか私があなたに話をすることは釈迦に説法だ。厚生年金がどんなものであるかを説くのはあまりにも白々しいと思うのです。雇用関係のもとに置かれているというワクの中で保険は育っているわけだ。それが大きな事業場に雇用されておるからということでその恩典に浴し、零細企業のもとに雇用されておるからということでその恩典からはずされるということは——もちろん企業の負担能力が問題にされましょう。私はこれを手放しに論議するのではない。日本の零細企業が、その少額の保険料の負担にも耐えかねるような脆弱な基盤の上に経営されておるものが多くあることを私は承知しておる。しかしこのことは産業政策なり、あるいは企業政策なり、財政政策なりの中で解決を迫られている問題なんです。これはあなたに言うことじゃなくて、大臣を責めて言うわけです。しかしその下に雇用されている労働者に一体何の罪があるか。日ごろから低額のために常日ごろから苦しい生活に、悪い環境で労働をしいられるのだから、保護の必要こそ緊急であれ、これを緩慢に許す理由は一体どこにありますか。社会保障制度の恩恵を一番早く受けなければならぬ、社会保障制度を一番先に徹底させなければならぬ階層じゃありませんか。その原則をここで言っておるのじゃありませんか。その原則が達せられぬということは、あなた方にとっては耐えがたい事柄じゃありませんか。事務当局としては、そういうものも次から次に出してやる。それをあなたが大臣ぶって、調査が行き届きませんと言う。どうもあなたのさっきからの答弁を聞いていますと、大臣以上だ。五人未満の零細事業場にこれを適用しなければならぬということは、この勧告書は、この一項だけで言っておるのじゃありません。その前段において何回も繰り返している。他の項において何回もこのことを繰り返しておる。これが入れられるか入れられぬかということは、私は私なりの結論大臣とあとでやるつもりでおりますが、調査が要するに困難なんということを言っちゃいけませんよ。調査ができなかったら、調査するように費用を要求したらいいじゃないですか。要求して断わられたのならいいけれども……。労働省はちゃんと今度の予算の中へその費用を申し込んでおる。これは殊勝だ。おくればせながら多少その誠意は認めていいと思う。あなたがそういう用意をなさってこういうことを言うのならまだしも——まあしかっても仕方がありませんが、昨年の十月から十一月にかけてそのための乏しい予算の中で調査なさったことに対して、私は多大の敬意を表しておる。よくやったとほめたいところであります。でありますから、できないわけはありません。調査に藉口すべきことではなくて、政治問題として零細事業場の雇い主がその保険料の負担に耐えるかどうか、ここに問題があるのです。事務当局、あなたがそういうところまで心配していたら、頭がはげてしまいますよ。だから早くこういう問題の解決のために、特に私は厚生年金の問題を出したことはそういう意味なのです。だからこれから一、二具体的なことをお尋ねいたしましょう。第一に、提案理由にあげられておる標準報酬の点ですね。厚生年金のところで、標準報酬を三千円から四千円に上げなければならぬというのは、一体どういう根拠がございますか、この点をお伺いいたします。
  61. 高田正巳

    高田(正)政府委員 全くこれは事務的な根拠でございまして、健康保険の仕事と年金保険の仕事は一緒にやっておるわけです。それで健康保険の方も四千円に最低を上げましたので、これにそろえて上げたという、純粋に事務的な問題でございます。それで年金保険の場合におきましては、健康保険と違いまして三千円を四千円に上げました場合には、給付の方もそれに応じて被保険者のために多くなりまするので、それらのこともあわせ考えまして、事務的にこれをそろえた方が非常に事務がやりいい、こういう観点から最低を四千円までに上げたわけでございます。
  62. 井堀繁雄

    井堀委員 全く事務上の理由に基くようでありますが、近ごろどうも役所は、安易につこうとする傾向があるという国民の批判が強い。特に健康保険の場合においては、政府管掌と組合経営の場合との引き合いのがよく出てくるわけです。私はあなた方に過重をしいようとするものではありませんが、しかしもっと保険の本筋をあなたはつかんでおいでになるはずです。先ほどのこの勧告の中にもあるように、零細事業場には、一体今三千円から四千円に一千円上げようとするだけですけれども、この一千円が実際にどれだけ響くと思っておりますか。その統計は、今ちゃんとほかの統計にありますか。先ほど来言っているように、五人未満の零細事業場にこれを拡大せいということは、これは機会均等ですよ。日本の憲法の建前です、法律の精神を貫くものなのです。法律の前に国民に差別があってはならぬことは言うまでもないでしょう。その原則を貫くべき今日、矛盾を犯しておっても、他の理由をあげて国民に申しわけするわけです。それが負担能力を問題にしているわけです。その配慮とこれとは逆じゃありませんか。いいですか、負担能力の低いところのものに三千円のものを四千円に上げるということは、わずか千円ですが、その千円の一番痛い負担をするのはだれです、どの階層です。それは保険料を上げるから反対給付がよくなるというのは全く事務的な判断で、その負担に耐えるか耐えぬかという生きた事実については、そういうことをやり得るなら五人未満の事業場を引き上げることが困難だという理由はなくなる。雇い主の負担能力が今問題なんですよ。それでもあなたは違った見解があるのかどうか、この点を伺いたい。
  63. 高田正巳

    高田(正)政府委員 標準報酬の最低を設けまする場合には、負担能力はもちろん問題であります。それは事業主の負担能力と被保険者の負担能力と、この両方が問題であるわけであります。それで私ども健康保険の場合に最低三千円を四千円に引き上げたい、こういう案を出して、それと厚生年金保険とを、従来事務上の観点から長年にわたって一緒に最低というものは取り扱ってきておりましたので、その事務上の簡素化という原則に従って、最低をそろえたわけであります。健康保険の力の最低を三千円から四千円に上げましたのは、健康保険法のときにたびたび当委員会で御説明を申し上げたような理由からでございます。  さらに零細企業を健康保険なり厚生年金保険なりに入れるべきであるという被用者という観点からいえば、何も小さいところに勤めているからといって本人の責任ではない。それらの人々が、かりに医療保障なり年金受給なりを必要とするという観点からいえば、むしろその人たちが不足じゃないか、こういう井堀先生のお説に対しましては、私も同感に思うのでございます。従いまして私どもといたしましては、それらの零細企業の従業員をこの両制度の中に取り込みたいという方向で、ものを考えているわけでございますが、それにつきましては、さらに実態を調査し、確かめてみませんと、まだその確信が持てないという段階でございまして、三十年度も本年度も調査をいたしまして目下それらについて集計をいたしておるような段階でございます。この零細企業を年金なり健康保険なりの中に入れていくかどうかという場合に考うべき問題といたしまして、井堀先生御指摘の事業主並びに被保険者の負担能力の問題ももちろん大きな問題でございますが、そのほかにも果して現在の保険のしかけでもってそれらを入れて参って現実問題としてやりおおせるかどうかという事務的な面から、案を立てます際には十分検討をいたして参らなければなりません。その要素の方も実は私どもといたしましては非常に大きな要素になっておるわけでございます。つけ加えてお答えをいたしておきます。
  64. 井堀繁雄

    井堀委員 今のあなたの御説明、私どももその程度のことは理解してお尋ねしているつもりであります。問題は今までの旧法でいきますと、一級は三千五百円未満の者は三千円の標準報酬にいくわけなんです。今度の場合は三千五百円未満の者が四千五百円未満に上げられる。そうすると今まで三千だった者も、また二千円だった者も一級に入れられるわけです。それがどういうことになるかということについては、あなたは統計が不十分だとおっしゃられたが、しかしこれは正確な、どれだけ信憑力があるかどうか問題ですけれども、総理府の労働力臨時調査による報告が出ております。これが一番新しいし、今までの資料の中では信憑力の高いものだと見ております。これによりますと、雇用労働者の数は一千七百二十万と押えております。その一千七百二十万のうち四千円未満の者が百二十一万人と発表しているのです。そうすると、五人未満のものははずされておりますから、この百二十一万人が全部被保険者であろうはずがありません。五人末満の事業場はこの統計の中に入っておらないのです。そういう点でこれはじかに論議の中心になるとは思いませんけれども、雇用労働者が全部被保険者になるということになれば問題はない。五人未満の事業場がどれだけ入っておるかということは、あなたの方の十一月の統計から——これを引くことが正しいかどうかわかりませんけれども、引いてもかなり大きな数字になるでしょう。それはおわかりでしょう。その人々は二千円の者もあるのですよ。それが四千円に計算されるのです。これはえらいことなんです。このことを厚生年金保険のところで取り上げているのは、厚生年金保険というのは今すぐもらうのじゃありません。十年も十五年もかけていかなければならぬ。二千円の価値しか発揮できない労働者が四千五百円に評価されて、その負担にたえて十五年なり二十年先に一体どうなるか。そういう長期保険を年々決済するものと同一に考えてはならないのです。あなたは事務的に調整をはかると言っておりますが、保険料というものとはこれは異質なものです。こういうものをごっちゃにした保険行政というものは私は信頼できなくなる。重大な問題ですから、この点に対するお考えをはっきりしておいていただきたい。  それからもう一つあなたは保険経済の中における公平の原則を説いております。そういう意味で言ったのかどうか知らぬけれども、私はそうだろうと思います。というのは二千円しか掛金をしないで一万円も二万円も掛金をしている者と同じ意味において反対給付を受けるということは、保険経営の中に問題がある。こういうことはわかるのです。しかしこの点は被保険者の間で了解されあるいはこの保険に関与しております雇い主側におい了解ができればいいことであって、私はその了解はできておると見ておる。また保険に対する理解はもっと高まっておる。相互扶助の精神はその程度のことを理解できる。被保険者においても雇い主においてもそういうことを問題にしておるところは今日ないと私は思う。でありますからそういう低い者に対しても低い保険料で反対給付を引き上げていく道が講ぜられないはずはないと思う。しかもこれは長期のものですから健康保険と一緒にしてはいけません。健康保険についても今のような問題が出てきますけれども、厚生年金保険においては特段とこの点を配慮しなければいけません。ただ事務上便利がいいからどっちも四千円にそろえていくという軽々しい判断を許す問題ではないのです。もしこれに対してあなたに抗弁があるならばはっきり言って下さい。私はなかろうと思う。大事な問題です。ただ千円上げるなんて、そう軽々に言える事柄ではありません。影響するところは甚大なんです。それはただ物質的にどうということではありません、保険全体を要するに健全なものに育てていこうという考え方からすれば、おそるべき後退になるのです。  それからついででありますからもう一つ伺っておきますが、今言うような低額所得者のためには国庫負担が出てきているでしょう。これは健康保険と厚生年金は違うでしょう。厚生年金では法律によって千分の三十を出す、あるいはあるものについは千分の三十五を負担することを明示されているのです。さらに長期保険ですから予算の許すということは、経済情勢あるいは国民経済の変化によってこういう問題が引き上げられていくことを約束されているのです。そういうものに、負担にたえがたいようなものを負担せしめるような保険料率の定め方というものはないはずです。この点に対するあなたの御所見を伺いたい。
  65. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今回最低が三千円から四千円に引き上げられますことによって影響を受ける人たちの統計は実は私どもの方でもあるわけでございますけれども、御参考までに簡単に申し上げておきますと、健康保険の方では一・七二%でございます。それから厚生年金保険の方におきましては、今の健康保険は政府管掌だけに限っておりますが、組合管掌も全部入れますと一・一一五%、それから厚生年金保険の方では一・八%ということになっているわけでございます。これらの統計は私どもの方にもこしらえているわけでございますが、この中で現在三千円の者が幾らおるか、二千八百円の者が幾らおるか、二千円の者が幾らおるかという統計は、実は私ども持ち合せていないのでございます。  それから厚生年金保険の最低を上げる際には、健康保険の最低を上げるのとはよほど区別して考えなければいかぬぞという御趣旨の御質問であろうと拝承いたしましたが、私も確かに先生のさような御意見に対しましては傾聴に値すべき御意見と考えております。ただ今回私どもが健保と合せまして最低を引き上げましたのは、一つには、先ほど申しましたように、健康保険の場合に引き上げるのよりは年金保険の場合に引き上げる方が、給付は健保の場合はいわばフラットでございますし、年金保険の場合は、もちろん先生御指摘のようにずっと先に出て参るわけでございますけれども、しかし給付がよくたる、こういう意味合いにおきまして、年金を上げることの方が健保を上げるよりはまだしんぼうをしていただきやすいという要素が一つ、それからいま一つは、先ほど来の先生のような御意見も確かに傾聴に値すべき御意見と私ども考えておるわけでございますが、片一方におきまして事務的にこれをそろえて行うということによりまして事務が半分になってしまうわけでございます。それでそれらの問題等を勘案いたしまして、しかもそろえて事務を簡素化するということは、過去の何回かの標準報酬の改訂のときにも踏襲をして参ったやり方でございますので、それらの方を優先さしてものごとを考えたらどうかということに相なるかと思います。従いまして、そういう考え方がどうであるかということにつきましては、御承知の社会保険審議会等にかけましていろいろ御意見を拝聴して、その御答申を得て、実は私どもとしてはそちらの事務的な方を優先して考えたいと思いますということで全体的には御了承をいただいてこの案を出したわけでございます。もちろん御反対もございましたけれども、多数意見に従ってこの案を提案いたした、かようなわけでございます。
  66. 井堀繁雄

    井堀委員 何もあなたと議論するわけじゃありませんが、厚生年金では三千円と四千円の開きについては一・八%の影響しかないという統計の御報告がありましたが、それはそうかもしれません。しかしそれにしても一・八%というものは耐えがたい打撃を受ける、しかもこれが平等の原則を破るんです、千円のものも二千円のものも三千五百円のものも一ぺんにやどれるのでありますからこれは物理的なことですからそれはやむを得ぬという考え方できめるには私は重大だと思うということをさっき申し上げた。それからもう一つそのことをやかましく言うのは、すでにこの国会において労働大臣は、失業保険においては零細事業場を適用範囲に拡大する、今年度は調査費で調査をして、来年度はやりたいという決意を述べられておる。大蔵大臣は財政上どうなるかわからぬからという立場上の相違から多少言葉は濁しておりますけれども、また総理大臣の抽象的な答弁ではありますけれども、当然やらなければならぬし、やるだろうとわれわれも善意に理解しておるくらいであります。これは失業保険がこうなれば他の保険も一貫したものですからこれと同じです。それからあなたも今ちょっと御答弁の中で言われたように、当然これは勧告の機会均等の精神に基いて、被用者側としては零細企業を入れなければならぬ、ですから、そういうことをあらかじめ見通してかからなければいかぬ。こういうことをやると、長期保険ですから、健康保険は年度々々で変っていきますから、ある意味において引き継がれるとしてもそれは多少その点に対してウエートは違うのです。それから二番目にあなたの述べられた料率引き上げの問題が健康保険よりはましだという理由——ましだという言葉は使われなかったのですが、上げられる根拠を問われて言うには、健康保険の場合はフラット、ところが厚生年金の場合はそれに応じて、また応じないものもあるが、大体掛金に見合うような給付の計算基礎というものがいろいろありますから、そういうことをあなたは解かれたようであります。このことはむしろそうなるならば逆なんですよ。しかしこれは議論にわたりますから申し上げませんけれども、ここのところはよく検討して考えておいて下さい。大事なことです。それからこれは社会保障制度審議会や社会保険審議会の権威ある答申に対してわれわれは無条件に賛意を表したいが、さりとて万能ではございません。この点では私は答申案の中に、特に七人委員会答申案の中の保険料率に対する答申は非常なあやまちを犯しておると私自身認めておるくらいです。これは議論にわたりますが、こういうように保険料率をあなたの方はただ事務的に考えたというのでありますけれども、これはそういう意味で非常に重大なことで、大臣に聞くつもりであります。  もう一つ次にお尋ねをしておきたいと思います。第二番目の改正の要点になっておりまする施行前に資格を喪失した女子被保険者に対する脱退給与金の問題ですが、これはかなり議論のあったところでありますが、私はこれを反対するとか否定するとかいう考えはごうもございません。これを出してあげることはけっこうだと思いますが、しかしこれを含めて脱退給与金という制度の問題についてしばしば論議がされておることは御案内の通りなんであります。この厚生年金保険の中で脱退給与金のことを考えるときに保険全体との関係が出てくると思うのです。こういう問題こそ、何もこの際出してこなくても二年先に大改正を必要とするような時期にこの問題を取り上げてくるべぎ問題じゃなかったでしょうか。この辺のお考えを一つ伺っておきましょう。むろん女子だけを男子と比べると、女子が勤続年数が短かいとかいうことについては私どもよく承知しておりますけれども、脱退給与金をこういうときに取り上げてくるということは適当な時期じゃないと私は思いますが、その辺の御判断はどうでしょうか。
  67. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今の井堀先生の御質問の御趣旨をもし取り違えておりましたら、私訂正をしていただきましてからお答えいたしたいと思いますが、今回女子の脱退手当金の問題についてこういう改正を出した、その際にあわせて脱退手当金の金額とかなんとかいうものについて検討を加えるべきではないか、こういうふうな御趣旨に拝承いたしましたが、さようでございましょうか。——この脱退手当金の金額その他のことにつきましても、これは老齢年金の金額その他とあわせてこれは当然検討されたければならぬ問題であるというふうに私ども考えておるのであります。ただ先ほど申し上げましたように、今回は私どもの研究が結論を得るまでに到達しておらない現状でございます。それでこの際男子と比べて非常に不均衡になっておりまして、むしろ二十九年度当時にそういう男子と何様な手当を法律的にいたしておくべきはずであったような部面だけをごく事務的に改正をする、そうして男子と均衡をとるということだけに実はとどめた次第でございます。
  68. 井堀繁雄

    井堀委員 この前当然やっておかなければならなかったが、やりそこなったから今度出したという意味のようですが、その点私はわからぬわけじゃありません。しかしこの問題はただそういう動機ならそれでいいんですが、この問題は取り残されたのにはわけがあるのです。そのわけがあるということは本質的な問題に触れているのです。だから私はこれを改正するということに対しては反対ではないのですよ。しかしあなた方は前に提案理由の中で、健康保険改正に伴って必要な部分だけを出す、こう言っておられるわけです。こういう本質的に問題のあるものをこの際出すくらいなら、なぜこの問題を出してこないかということになるわけでありまして、首尾一貫しないわけであります。ことに最低の保険料率を上げて、上の方も引き上げるのでしょうが、二十四級まで引き上げるのに、どうしてこっちを引き上げないか、それは上げると問題があるからよう上げませんよ。弱いところだけを引き上げていくというような結果になってしまう。そんな乱暴なことはしてはなりませんよ。だからあなたの方はどこにもこの厚生年金保険に対して手をつける理由が全くなくなってしまう。このどさくさまぎれにここを引き出して弱いところだけを三千円で済むものを四千円とってやろうというようなことにしかとれないことになってしまう。これはまことに乱暴きわまる提案の仕方で、これは僕は事務当局の責任に大半帰すべきものがあると思う。大臣がどう答弁しますか、見ものですよ。あと先になって恐縮ですが、要するにこういうやり方はいけません。厚生年金保険のような社会保障制度の重要な部分に手を染めようというんだから——またその必要に迫られていることは先ほど来申し上げている通りです。やるなら徹底的に内容を備えて——それは一ぺんにやらぬでいいですよ。それは来年やっても再来年やってもいいけれども、さっきからくどく言っているように来年やるならことし用意しておかなければ来年やれません。いな、この問題は、今いろいろ具体的に要請されており、そして政府の政策とどこで合せるかという準備をしておかなければならぬ事柄だということはたびたび言っているわけです。そういう点がどこにも現われていないということを局長みずから発言するような結果になってしまう。こういう意味で私は質問したわけではなかったのです。保険当局はこういう問題に対して真摯な、そして徹底した準備をお持ちになっている、それをよく発表していただいて、それを伺って大臣になぜやらないかという質問を私はいたしたいと思っておった。ところが大臣が答弁する前に事務当局がこれでは——厚生年金保険、ことに老齢保障、遺族保障のごときものは日本の社会保障制度の一番大切な部分ですよ。そういう長期にわたる社会保障制度を確固不動のものにしなければならぬということは、これは保守も革新もありません。いつまでも日本の政府は保守党の手によって運営されるものとは約束できないはずであります。二大政党を志向する場合は、保守、革新が交互に政権を持つということが常識的な判断であります。そういう場合に、革新政党がよし政権の座にすわったといたしましてもこういうものは急遽切りかえられるものではありません。またこういうものこそ保守、革新の共通の広場において論議され、協力して育てていくべき重要な政策だと思う。そのときに事務当局の立場がいかに重要であるかは今さら申し上げるまでもありますまい。まさか社会党が政権をとったからといって、全部入れかえても間に合うものでもありません。せっかく勉強してもらって、そのときに大いに役に立ってもらわなければならぬ人々が、まるで保守党に輪をかけるようでは、これは驚くべき日本の行政といわなければならぬ。そういう意味で私は非常に残念に思っているわけであります。しかし攻撃することが目的でありませんので、これを改めてもらって、一日も早く厚生年金保険の重大性を認識してもらいたい。  事のついでに、課長もおいでのようでありますから、二、三資料を提供していただく意味でお尋ねしておこうと思います。それは先ほど来私がお尋ねしておりまする、また私の意見も多少加えましたが、そういうものと関係を生ずるのでありますが、あなた方から出されております統計を見ていきますと、厚生年金と健康保険の調整をとるという事務的な点からゆきましても問題になると思いますから伺っておきます。厚生年金の場合は言うまでもなく政府の一本の姿でやっておるわけでありますが、健康保険の場合には政府管掌と組合経営というものが分れておりますが、健康保険のところで論議は当然されるのでありますが、私もこの点触れたいと思っております。事業場の数と、被保険者との関係を見ていきますと、実にはっきり出てきますね。適用事業場は健康保険も厚生年金もやや同じ条件で実施せられておるわけであります。被保険者も自然そういう傾向になるわけであります。ところが実際は非常に違ってきておるのですね。この点に対して政府管掌の場合は同じようにつかめるが、組合管掌の場合は、一体政府が把握するのとどっちが正確に統計の上で把握できると判断されましょうか。答えを先に申し上げますと、健康保険の被保険者の数がはるかに上回ってくるというのであればわかるのです。この辺の統計上の数字についてちょっと伺っておきたいと思います。
  69. 栃本重雄

    ○栃本説明員 お答えいたします。厚生年金保険の被保険者健康保険の政府管掌、組合管掌のものの被保険者の数と合せてみますると、大体はこの両保険につきましては符合するはずのものでございますが、実際はこれを昨年の三十一年十月現在の被保険者数によりまして比較してみますと、政府管掌健康保険の被保険者は五百七十万三百九十二人でございます。また組合管掌健康保険の被保険者は三百四十四万九千二百七十二人、この合計は九百十四万九千六百六十四人、こういうのが健康保険の被保険者でございます。  次に、厚生年金保険の被保険者を同じ十月現在の被保険者でみますと、八百八十一万二千五百六人、こういう数字になりまして、差引してみますと、三十三万七千百五十八人、これだけ厚生年金の被保険者の数が少い、こういうことになるわけでございます。一応は先ほど申し上げました通り符合するはずのものでございますが、どういった理由からこれが符合いたしませんか、こういう点でございます。その点は大よそ私どもの考えておりまする理由といたしましては市町村職員のうちにおきましては、長期保険につきましては市町村職員共済組合あるいは恩給条例の適用を受けまして短期給付につきましては健康保険の適用を受ける者が比較的多いんじゃないか、こういうように思われるわけでございます。さらにまた健康保険と厚生年金保険につきましては、御案内の通り任意包括被保険者の制度がございまして、そのうちには健康保険の適用だけを受ける、そうして厚生年金保険の適用を受けないというものもまた若干あります。このような理由からいたしまして、先ほど申し上げましたような三十三万何がしの札相違が出てくる、こういうように私どもは了解しているわけでございます。
  70. 井堀繁雄

    井堀委員 任意包括被保険者の数をちょっと示して下さい。それから厚生年金の方にも知事の認可でその道が開かれている、両方の数字を示して下さい。
  71. 栃本重雄

    ○栃本説明員 お答えいたします。任意包括被保険者の数は、年金保険が十一万一千百四人、健康保険が十二万一千三百十四人、それは十月、先ほど申し上げました同じ月の比較でございます。
  72. 井堀繁雄

    井堀委員 今あなたが自問自答されましたように、任意包括被保険者によって開きができるのではないかという点は、一万しか開きがないのですし、ここでは開きがでか過ぎるから、そういうものでないことはおのずから明瞭なんです。  そこで私はお尋ねをいたしたいと思うのですが、厚生年金保険の被保険者が、事業場を転々とするとか、あるいは継続すべき手続が繁雑のためとか、あるいは知識が足りないといったようなために権利を途中で放棄するといいますか、権利に眠るといったような被保険者がかなり多きに達していると見るべきだと私は思う。それがどういう方面に多いかというと、雇用の安定性の低い事業場に多いということは言うまでもない。これは保険経営の上に重大だと僕は思う。この点に対する局長の見解を承わりたい。課長でもけっこうです。
  73. 栃本重雄

    ○栃本説明員 お答えいたします。被保険若者が事業場を転々することによって、次の事業場で被保険者の資格を取得しないから権利に眠る者があるのじゃないだろうかというお話でありますが、そういったような権利に眠る者がないということは言えないのじゃないかと思います。しかもそれがどれくらいいるかということは、なかなか把握できないのじゃないかと思います。  なお厚生年金におきましては、先ほど来井堀先生のおっしゃいました通り、老齢年金といいますのが中心的な給付でございまして、その給付を受けるためには、受けるための資格期間が足りないためにやめたというような者につきましては、一定の条件を満たした者につきましては脱退手当金というものを出す制度もございます。そういった者以外につきましては、厚生年金保険としては、厚生年金保険の給付を受ける資格があって、しかも給付の請求をしないという者がそう多数あるようにも思われない、こういうふうに思います。
  74. 井堀繁雄

    井堀委員 今のあなたの御説明でわかりますような、脱退給付金の問題がそこで問題になるわけです。そういう意味で私は脱退給付金を存続さすべしという主張は首肯できる。それは長期保険に継続してついていけない人がたくさんおるわけなんです。女子の場合にはっきり例がありますが、そういう場合に脱退給付金の形においてその権利の一部を保障してあげようという考え方がここに出てきたと思うのです。しかしこれはこういう年金保険の性格から言うならば、邪道なんです。むしろ私はこの保険の大きな盲点だと思う。むしろそういう継続のできない者をも包括していけるような形にこの問題は置きかえていくべきものではないか。これは非常に抽象的な言い方ですが、もっと具体的な点で言うと、今数字の上で明らかになりましたように、健康保険と厚生年金の被保険者の把握の上において約二十万からの違いがあるというのは、先ほどのあれでわかりますので、こういうことで論議をするのは軽率です。統計はもっと適当な求め方があるし、また論議が正確にできるものと思いますけれども、時間を節約する意味で……。こういう被保険者自身が絶えず移動して、健康保険の場合よりは、片方は長期ですから、連続してかけていくことが非常に困難だという事態を私どもたくさん知っておるのです。しかしそれを脱退給付金でめんどうを見ていく、ちょうど生命保険を途中でかけ切れないでやめると契約を解除するのと同じで、それは非常に損失なんです。保険の目的からいうと当然年金を保障していくべきものから、はずされてくるわけであります。雇用関係がなくなってしまうならば別です。雇用関係はあるけれども、同一事業主でなくなる、そういう場合には、法律的手続をすればせっかく権利を継続する道が開けておっても、そういう手続をやるだけの知識がないのか、あるいはそれをめんどうだと思うのか、保険を軽視するのか、その辺にはいろいろ根拠があると思うが、こういう事実を私どもは零細事業場に多く見るのです。それが五人未満を包括する場合においては、こういうことをあらかじめ計画の中に入れていかなければならぬ。入れないということになれば別ですよ。しかし入れるということになれば、保険当局としてはこういう問題も心の中では考えておかなければならぬと思う。ほんとうは、こういう場合にはこういう工合にしてやるか、こういう工合にしてやりたいということを、私どもが聞いても、すぐ答弁ができるべきはずだと思うのですが、最初の答弁でくずれましたから、そういうことを聞く方が無理だと思って、私の方で御遠慮申し上げておきますが、厚生年金保険の場合においてこの形が出てくる。この形は健康保険とは異なります。健康保険だったら、資格の取得は割合容易にできるし、また手続も簡単に回復できるわけです。片一方は一ぺん切って脱退給付金をもらったら、今度まき直しになるでしょう。今まで十年あるいは十四年しんぼうして、脱退給付金をもらったら、たった一年のことで、あとは年金を受けられないことになる、まあ極端な例ですが。こういう性質の保険なんだから、この点で健康保険と一緒にしてはいけないのです、だからこの委員会に同時にかけて論議をさせよう——かなり冷静に勉強しておるつもりでも、同町にこういうものを審議させられたのでは、これ私委員長にも希望はしておきますが、現在までこれをやってきたのは惰性でやっておったのです。大体健康保険と厚生年金保険を同時に提案して一緒に審議するということは、委員長は聰明ですから今までの経過はよくおわかりだろうと思うのですが、審議の方法についてわれわれ自身も考えなければなりません。しかし提案した政府がけしからぬ、一緒に出したということは。これはどうですか、この際いい機会ですから、気がついたらさっそく改めるにしくはないのですから、健康保険と切り離して審議しましょう。これを大臣に献策しませんか。次官がおられますが、次官いかがですか。
  75. 中垣國男

    ○中垣政府委員 井堀さんにお答えいたします。実はそういう意思はございません。
  76. 井堀繁雄

    井堀委員 いや、あなたを責めるのはどうかと思うのですが、今お聞きのような性質のものですから、あなたが相談しないで単独に答弁することは無理かと思いますが、こういうやり方はいけませんよ。だから政府でも十分御協議なさって、適当な時期に分離するようにお進め願いたい。こういうことがおわかりになれば、あなたの言質を取ってどうこうということは考えておりません。ことに社会保障制度に対しては、政府は非常に熱心のようでありますが、うそかほんとうかということは、こういうところではっきりするが、どうもうそらしい。国民が心配しておるのはこういうところにも出てきておるわけです。  もう一つ事務当局——厚生大臣は来ませんか。
  77. 藤本捨助

    ○藤本委員長 井堀さん、大臣が来なければいけないのですか。
  78. 井堀繁雄

    井堀委員 大臣が来なければ困ります。
  79. 藤本捨助

    ○藤本委員長 では八田君に願います。
  80. 八田貞義

    ○八田委員 この健康保険改正案につきましては、今までいろいろと質問を申し上げておったわけでありますが、本日は一部負担の問題と国庫補助の問題にしぼりまして質問を申し上げたいと思うのです。  まずこの改正法案は、非常に三者三泣きの状態だからいろいろと法文改正をやっていくのだということを言われておるのです。この中で悪評を受けている法文条項はたくさんあるのでありますが、一口に改悪案と言われておるところのこの健康保険改正案にも、非常にいい点が二点ばかりあるわけでございます。きのうの参考人のいろいろな答弁の中にも、七十条ノ三の国庫補助の問題については非常にいい、あとは全部だめだと、こういうふうなことが言われておったのですが、私はこの七十条ノ三だけではなく、もう一ついい点があると思う。これは文句なしにみんながほめていいと思います。それは五十一条の分娩手当に関する問題です。今度の改正案の五十一条に、分娩手当に対する半額支給という問題がはっきりと法文化されて参ったわけであります。この二点が、一口に改悪案と言われておる法案の中で、文句なしにいい、そこで……(滝井委員「二つだけ賛成だ」と呼ぶ)今二つだけ賛成だというヤジが飛んでおりますが、全くこの二つだけは文句なしにいいのであります。そこで問題は七十条ノ三において、「政府ノ管掌スル健康保険事業ノ執行ニ要スル費用ノ一部ヲ補助ス」ということが書いてあるのであります。この制度は今後とも恒久的な制度であるということが言われているのでありますが、一体保険事業の執行に要する費用の一部という場合に、どこを起点としてこの費用の一部を補助されるかという問題です。というのは、これは支出に見合っての補助を意味する条文か、あるいは保険料に見合う、いわゆる収入に見合うところの補助か、こういうことなんです。この七十条ノ三は、一体支出に見合うところの補助を意味しているのか、あるいは収入に見合う補助を意味しているのか、この点一つお伺いいたしたいと思うのであります。
  81. 高田正巳

    高田(正)政府委員 この七十条ノ三の法文の意義は、どちらとも限定をいたしておりません。それからなお額も書いておりませんので、そのどちらにでも適用されるような条文でございます。
  82. 八田貞義

    ○八田委員 七十条ノ三の予算の範囲内というこの予算は、何を意味しているのでございますか。
  83. 高田正巳

    高田(正)政府委員 国の予算であります。
  84. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、滝井委員からも前の委員会で、三十一年度の三十億円と三十二年度の三十億円とは同じ性質のものか、こういう質問がありました。その際同じような性格のものであるという御答弁があったのですが、今度の三十億円は、同じ性格のものならば、やはり三十一年度と同じような客観情勢があって、そうして三十二年度にも同じような性格のものを三十億円出してきたのだ、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  85. 高田正巳

    高田(正)政府委員 質問の御趣旨は、客観情勢が同じかという御質問でございましたが、それは保険財政の見通し等が同じであろうかという御質問かと存じます。その点につきましては、三十一年度の見通しと三十二年度の見通しは若干異なっております。三十一年度は、結果的には非常に好転して参りましたけれども、当初見積っておりましたのは、今三十二年度のわれわれが持っておりまする見通しよりは悪うございました。言葉を逆に申せば、当初の三十一年度の見通しと三十二年度のただいまの見通しとでは、三十二年度の方が若干楽であるということになると思います。
  86. 八田貞義

    ○八田委員 そうすると、三十一年度のときには非常に悪い見込みであったのだけれども、三十二年度はむしろいい見込みである、こういうお考えでございますね。今後三十二年度においては保険財政の面において非常に好結果が期待される、従って赤字も三十一年度の場合とは違った格好において現われてくる、こういう意味でございますか。
  87. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十一年度の当初に見込みましたときよりは、三十二年度のただいまの見込みの方が楽である。三十一年度におきましては、現実はわれわれの見込みと非常に違って参りまして、好転をいたしております。従いまして、三十一年度の実際の結果と三十二年度の比較をする場合にはそういうことは申し上げられません。最初見込みました保険財政の見通しと、三十二年のただいまの見通しとでは、三十二年度の方が若干楽であるということでございます。
  88. 八田貞義

    ○八田委員 三十二年度の見込み赤字はどのくらいになっておりますか。
  89. 高田正巳

    高田(正)政府委員 資料を御提出いたしておりまするように、予備金をも含めまして五十四億程度と私どもは見込んでおるわけでございます。
  90. 八田貞義

    ○八田委員 今までの受診率の問題とか給付率の問題からいろいろ質問を申し上げればいいのでありますけれども、時間が制約されておりますからそれは省きます。そうすると、三十二年度の三十億円の国庫補助というのは基準点をどこに置かれたか。同じ国庫補助をやる場合でも、支出に見合っての補助をいたす場合と、収入に見合っての補助をいたす場合とあるわけです。私は、今後国庫補助をやっていく場合には収入に見合う国庫補助というものを出していかない限り、社会保険としての意義が達成できないだろうという考え方を持っているのでありますが、三十二年度の三十億円の支出はそのどっちでありますか。
  91. 高田正巳

    高田(正)政府委員 三十二年度の三十億円の国庫補助というのは収入、支出の面をにらみまして、言葉をかえて申せば、保険財政の全般をにらみまして、しかも法律改正でお願しておるよな諸対策をもにらみ合せて総合的に決定されたものでございます。元来保険に対して収入に基準を置いた国庫補助をいたすべきものであるか、あるいは支出に基準を置いた国庫補助をいたすべきものであるかは議論の分れるところであります。八田先生のおっしゃる保険料の収入を基準として、それに根拠を求めて国庫の補助金の額なり負担金の額なりをきめるという考え方も確かに一つの御意見だろうと思います。私ども今までとって参りました立場は、健康保険の場合におきましては医療関係の支出、これに基準を置いて幾らというふうな要求をいたしておるのでございます。かつて社会保障制度審議会とかあるいは社会保険審議会、それらの機関がすべてそういうふうに御意見を立てておられたところでございます。これも一つの考え方であろうと思います。両方それぞれ特徴があるわけでございまして、必ずしもどちらでなければならぬというふうに確定づけることは今日いたしておらない、かような段階でございます。
  92. 八田貞義

    ○八田委員 そうしますと、今度三十億円にきまったわけですが、川崎厚生大臣、小林厚生大臣、続いて今度の神田厚生大臣になっても、厚生省ではずっと一割の国庫補助が望ましい姿である、こういうふうに出しておられるのです。その場合一割の国庫補助を要求する根拠、それは今の保険財政の収支の面から考えて、その中で一番大きなウエートを持っている医療給付費の一割、こういうふうにしぼってこられたわけでありますか。
  93. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一割というのは、今先生の御指摘通り医療費の一割ということでございます。その一割にどういう数学的根拠がおるかというと、先般もお答えいたしましたように、厳密な意味の数学的な根拠はございません。ただ私どもがそれを考えましたのは、今日の保険財政の状況あるいはここ二、三年ないし四、五年先までの保険財政の見通しというようなものを一応頭に置きまして、それらを資料とし、一つには、今日国保に二割という制度が立てられております。それから日雇い労働者健康保険につきまして、本年まで医療費の一割でございましたが、来年度からは一割五分ということになっております。そういうふうな補助率というものを勘案いたしまして、その両方からまず一割見当と私どもは考えておるわけでございます。
  94. 八田貞義

    ○八田委員 せんじ詰めていきますと、国庫補助というものを保険財政の面から見て国家予算と見合って出してみた、こういうことになってくるわけです。そういたしますと、収入は支払い能力に応じ、給付は要求に応じてやるというこの制度、これが今後こういったことでやっていけるかどうか。そうしてその医療給付費がある額を示した場合、それに一割ということでやっていきますと私は非常に問題だと思うのです。というのは、支払い能力に応じて収入は出てくるわけです。ところが、政府管掌の健康保険というのは低所得階層を非常に含んでいるわけです。ですから、社会保障の中核をなしておる社会保険に対して国庫補助をやっていく場合に、医療給付費というようなものに対して、要求に応じてどんどんやっていかなければならぬものである。これに対して国庫補助の基点を置くということは非常に今後問題を残す。むしろ収入に見合う国庫補助というものを出していくのが本質ではないか。今日結果において三十億円しか国の予算関係から組まれなかったのですが、そのために。一部負担というのが出て参ったわけです。一部負担によって大体この予算を示させていただくと十二億円くらいが財政効果として現われてくるわけですが、ただ病気というものは何も所得の階層に比例して、収入に比例して出てくるわけには参りません。ですから保険料を上げることによってこの一部負担を解消できないかどうかという問題です。一部負担の問題になりますと、給付内か給付外かという問題になる。しかし結局は給付内ということで本人負担に間違いない。ただ給付がなかった問題としてこの一部負担の問題が言われてくるわけです。そこで今千分の六十五がもう保険料の最点高に達したのであるから、もうこれを直すわけにはいかないということが言われておるわけですが、しかし今日の保険財政の収入の面において保険料がいかに低いか、保険料収入が低いかということはきのうも大橋議員から指摘されたところであります。この保険料について本年度は間に合わないことなんですが、今後この保険料率を上げて一部負担を解消するような方法にいけないものかどうか。もちろんこれは中央社会保険審議会の議を経なければならぬわけでありますが、一体この保険料率の引き上げ問題について厚生省当局はどのような見解をお持ちであるか御説明願いたい。
  95. 高田正巳

    高田(正)政府委員 純粋の保険財政のつじつまを合せるという観点からいきますと、今先生御指摘の一部負担をやめて保険料率を引き上げてそれでつじつまを合せるということはできるわけでございます。ただ私どもその方法をとりませんでしたのは、一部負担というものにそういうふうな財政的な意味合いだけでなく制度的な意味合いを認めておるわけです。それが一つ。しかも片方において保険料率を今直ちに上げることは妥当でない、こういう判断をいたしまして御審議をいただいておるような格好にものを考えております。  それから将来保険料率を上げることを考えるかどうかという問題でございますが、今御審議を願っております一部負担をやめるために保険料率を上げるというふうなことはただいまのところ考えておりません。それは今御審議を願っております一部負担は、制度としてもこの程度のものはあっていい制度だというふうな観点に立っておりますので、もし財政的な余裕が出て参ればそれを医療担当者の待遇改善に向けるかあるいは保険料の引き下げをするか、そういうふうな方向でものを考えるべきであるというふうに今のところ考えております。しかし将来一部負担と離れて別個の観点から保険料率を上げることを全然考えないかという御質問に対しましては、これはいろいろな他の要素から保険料率を上げなければならぬという場合が出てくる可能性は十分にある。その際にはただいま満度まできておりますので、これ以上上げるということになりますればまた別に御審議を願う、こういう考えでございます。
  96. 八田貞義

    ○八田委員 大臣、今国庫補助の問題について一部負担とのかね合いで局長との間でいろいろ質疑をやっておるわけでありますが、一部負担という問題、これは前には赤字対策として強く考えられた時代があるのです。今度は厚生省の方の御意見を拝聴すると、赤字対策ではなくて、保険本来のあるべき姿として一部負担制度を出してきたのだ。しかもこれくらの限度ならばまあ一部負担は正しいであろう、こういうようなお話なのです。ところが、一部負担と国庫補助を結びつけて考えますと、保険事業の運営に関する補助を国年から出す、しかも国の予算内において出すのだ、こういうことが七十条ノ三に書いてある。その場合でも、国庫から補助を与えるよりどころが一体どっちなのか。保険事業をやる場合に、これは収入支出でもって運営されていくわけです。収入に見合っての国庫補助か、あるいは支出に見合っての国庫補助か、こういうような論点にしぼられてくるわけです。そこで、今局長との間にいろいろ質疑をやってみますと、医療給付費を基点として考えておる、それで一割を考えた、今度は三十億円というものが補助された、 こういうことになってきておるわけです。ところが医療給付費でありますと、これは支出に見合う国庫補助でございます。こういうことが果して社会保険本来のあるべき姿かどうか。私はむしろ収入に見合う国庫補助を打ち出すべきだ。いわゆる保険料という観点からやっていくべきだ。今日は支払い能力に応じて保険料は徴収いたします。ところが給付は全く要求に応じて給付していくのでありますから、そういった要求に応じてどんどん給付を高めていくというものに基点を置いたのでは、国庫補助はどれまでいったらよいかということが将来つかめない。しかし、保険財政というものを健全な形にするためには、やはり保険料を上げていかなければならない。今日保険料を上げるということになれば、収入に見合う国庫補助ということになれば、これは社会保障の根幹としての社会保険でございますから、低所得階層に対して国庫補助を打ち出していくべきだ。ただ全階層にすぽっと国庫補助を三十億円やるよりも、低所得層にしぼって国庫補助をやるのが、社会保障の根幹をなす社会保険に対する国庫補助の本来の姿ではないかということです。今はただ三十億円出しますけれども、これは全階層に三十億円というのが出されるわけです。ところが一部負担という問題になりますと、大臣も御承知のように決して収入に応じて病気の発生はございません。むしろ低所得階層の方にずっと多いわけです。そこで国庫補助をやるならば、保険料すなわち収入に見合うところの国庫補助を打ち出していかなければならぬ。しかも政府管掌の健康保険は低所得階層をたくさんかかえており、その階層に病気がたくさんに出てくるのであるから、それに対して一部負担を加えることは非常に過酷な仕打ちである。同じく国庫から補助を出すなら、そういった病気の発生しやすい低所得階層に重点的にしぼって国庫補助というものを有意義に使うべきだ、こう考えるのですが、大臣はどうお考えになりますか。
  97. 神田博

    ○神田国務大臣 政府の補助金のつけ方につきまして、理論的な保険料を対象としてこれをつけるか、あるいは給付の面でしぼってつけるか、一体政府はどういう考えでつけるかというようなお尋ねのように承わったのでございますが、これは何と言いましょうか学説からいえばいろいろ議論の分れるところがあるだろうと思うのです。しかし今度の政府が補助金を出したということは、社会事情が進んで参りまして国として社会保険というものを充実していきたい、そのために政府が何がしかの補助をいたしたい、その補助基準を保険料の収入の面でつかむか給付でつかむかということはそうこだわる必要はないのじゃないか。今の八田さんのお尋ねでございますが、できるだけ低所得者につけるようなことをしたらどうか、病気は低所得者の方が多いのじゃないかと言っておられますが、私もその点はそうだろうと思います。しかしそうだとすれば今の健康保険財政が貧弱だという建前からいえば、そういった方面に補助金が流れている、こう私は説明がつくと思うのです。ですから究極には八田委員のおっしゃっているような通りに流れていっているのじゃないか、こういうふうに思うのです。これはまだ入っていないのですから、流れていっているのじゃなくて流れていく、八田委員の御要望されたような方向に向いていくのだ、こう私は考えております。そこで今の補助金はどういう標準で今後これを明確にした方がいいかということは、これはまた別問題であります。私ども国民皆保険をやり、国民のすべてに社会保険実施するのだ、こういう立場から考えますと、政府の管掌の保険であろうとあるいは組合管掌の保険であろうとあるいはその他の保険であろうと国保であろうと、政府がこの際社会保障を大きくやろう、こういうことから考えますれば、国民経済の圧迫されておる面が医療の問題なんだから医療保障を社会保障の一番大きなねらいとして考えていく、財政の好転に伴って今後相当額明確にしていくということが当然なのじゃないか、そういう方向に向って努力いたして参りたい、今日の段階はその一部の現われだ、こういうふうに御了解願ってよろしいのじゃないか。こう考えております。
  98. 藤本捨助

    ○藤本委員長 本会議終了まで暫時休憩いたします。    午後四時十四分休憩      ————◇—————    午後七時二十一分開議
  99. 藤本捨助

    ○藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。  八田君。
  100. 八田貞義

    ○八田委員 国庫負担の問題について質問を続けさしていただきます。  先ほど七十条ノ三の国庫補助の点につきまして、今度の三十億円は一体どういう性格の国庫補助であるか、三十一年の三十億円と同じ性格のものであるかとこういう質問をいたしました。その際、同じ性格のものである。ところが厚生省におきましては、国原補助の率は、大体一割程度の国庫補助というものを今までずっと希望されて参ったわけでありますが、それが一割に満たない三十億円というような格好になってきてしまった。しかもその一割は医療費の一割ということでございます。そこで問題は、三十億円に対して、一部負担というこの制度に対しまして増額がされてきた。一部負担制度は今まであったわけであります。ところが国庫補助が三十億円になったがために、一部負担制度が増額されてきたのではないか、こういうふうに考える人もあるわけでありますが、一体今度の一部負担の増額は、決して国庫補助三十億円にとどまったがために増額したのではなくして、すなわち言葉をかえて言うならば赤字対策のためではなくて、保険本来の姿として一部負担制度をさらに強化した、こういうのですかどうか、大臣にお伺いいたしたいのであります。
  101. 神田博

    ○神田国務大臣 お説の通りであります。
  102. 八田貞義

    ○八田委員 そこで大臣に重ねてお尋ねいたしたいのですが、今後保険事業を運営していく場合に、支出に見合う補助をやっていくか、すなわち給付に見合う国庫補助をやっていくか、あるいは収入、保険料に見合う国庫補助をやっていくか、こういう問題があるのですが、それは別といたしまして、ただ一部負担を今まで五十円の初診料に相当する額を徴収して参ったのでありますが、これは法律の第何条によって窓口支払いを命じておるか、それを保険局長からまずお伺いいたしたいのであります。
  103. 高田正巳

    高田(正)政府委員 現行法の条文で申し上げますと、四十三条ノ二の第二項に「初診料ノ額ニ相当スル額ヲ一部負担金トシテ支払フベシ」こういう規定がございます。これによってさような御指摘のようなことがきめられておるわけでございます。
  104. 八田貞義

    ○八田委員 今度の一部負担の増額は、四十三条の七によって患者が支払うわけでございますね。
  105. 高田正巳

    高田(正)政府委員 四十三条の八でございます。
  106. 八田貞義

    ○八田委員 そうです。四十三条の八でした。この場合問題なのは、一部負担の打ち出し方についてはいろいろと議論をしなければならぬ問題をまだたくさん残しておるのですが、今お話のように、現行法に基いて初診料に相当する額を患者は現在負担しておるわけですが、一体これがどれくらい未収になっておるか、それらについての大体の数字でいいのでありますが、これを御調査になっておるかどうか。
  107. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは二十四国会のときの参議院におきまする御要求によりまして調査をいたしたのでございますが、医師会、歯科医師会等の御協力を得まして、現在までにまとまりました結果によりますと、保険医の側で調べました調査と、被保険者側で調べました調査と、若干数字の食い違いがあるのでございますが、保険医側で調べました調査におきましては、初診件数のうち三・六%が一部負担金を徴収しなかった、こういう数字になっております。それから被保険者側で調査したものの数字を申し上げてみますると、割合にいたしまして〇・一六%というきわめて少数の数字になっております。
  108. 八田貞義

    ○八田委員 ただいまのは外来でございますか、それとも入院についてなんですか、ちょっとはっきりしなかったのですが。
  109. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいまは初診料相当額の一部負担しかございませんので、それは初診料、現行制度の一部負担について調査をいたした結果でございます。
  110. 八田貞義

    ○八田委員 今の厚生省調査ではまだまだ調査が十分でないように印象づけられておるわけなんです。それできのうの参考人からも出された神奈川県病院協会で調査した数字とはだいぶ差があるのでございます。今厚生省の方でやられたものは外来についての点数のように伺ったのでありますが、それは一体どの地域を対象にしておやりになったか、その点が少しくはっきりしませんので、重ねてお知らせ願いたいと思います。
  111. 小沢辰男

    ○小沢説明員 これは保険医総数のうちの二十分の一を摘出いたしまして、全国で約四千五百名の保険医について個々に係員が面接をいたしまして、六月及び七月中における初診件数約十九万八千件を対象にして調査したものでございます。
  112. 八田貞義

    ○八田委員 そういうふうな調べ方をなさったのですが、その分類と申しますか、たとえば保険証を持参しないで診療を受けた、しかも初診料に相当する額を払わなかった、そういう例の場合、あるいは家族半額の点が、支払いがどうなっておるか、そういうふうな区分をした数字ではないのですね。
  113. 小沢辰男

    ○小沢説明員 実は一部負担金の調査をやります場合に、医師会側といろいろ相談をいたしたのでございます。医師会の方では家族の半額負担分についての調査をやりますと、いろいろと医療機関との関係でトラブルがあったり、あるいはまた困難な点も起ってくるから家族のものはこの際やめていただきたいという御希望がございました。従ってまた本来われわれの方がとにかく健康保険の制度として一部負担金を、初診料相当額を現行法で徴収いたしておりますので、それの徴収状況を調べたいというのが趣旨でございましたので、そういうような御希望もあり、また家族の負担分についての調査ということになりますと、相当私どもの方でも準備その他いろいろ手数がかかりますので、それではそれはやめましょうというようなことにいたしまして、初診料相当額の一部負担についてのみ、都道府県の医師会等にも御協力を得て実施をいたしたのでございます。私ども分類は被保険者証を持ってきたのかこないのかというようなことではなく、およそ現在初診料相当額を患者が一部負担することになっておるが、果してそれがどういうような徴収状況になっておるかという点を中心にして調べたのでございます。大体診療担当者がまあけっこうだ、負けてやるというようなことでとらなかったものがどのくらいあるか。それからまた被保険者が、支払い能力はないわけじゃないけれども、あとで持ってくるということで忘れたとか、その他いろいろなことでとれなかったものはどのくらいあるか。それから全く経済的にそのときに金がなかったから払わなかったというようなものがどのくらいあるかというようなことの大体の分類で調べたのでございます。
  114. 八田貞義

    ○八田委員 今支払い能力との関係を論及されておったのですが、私はそれが問題だと思うのです。標準報酬月額をきめられて、一体どの線から支払い能力が非常になくてそして払えないのか、あるいは支払い能力はあっても払わないというような患者はおりましょうけれども、私は支払い能力がなくてやむなく未収の分があると思うのです。支払うことのできない分が相当多いと思う。そういうような支払い能力がなくて全く悪意なくして払えない人々、階層、これを標準報酬月額から見てどの線に引いた方がいいかというようなことが今までの調査で考えられたことがあるかどうか。
  115. 小沢辰男

    ○小沢説明員 実は御承知通り現在の標準報酬の等級表が一級からずっと三千円のクラス、四千円のクラスいろいろございます、このクラス別に一部負担の支払い能力がどの程度あるかないかというようなことは私どもの今回の調査ではやってないのであります。むしろ一部負担の五十円を払うべきところで払わなかったという場合に、それがどういうような原因から払わなかったのかという点を調べたのでございます。この一部負担金の調査は、普通払わなかった人の生計調査までをいろいろやって、果してこれが経済的に能力がなかったかどうかということまであるいは突き詰めていけばいいのかもしれませんが、一部負担金の徴収状況調査をやりますと、どうしても被保険者側すなわち患者側にいろいろ調査をしてもらわなければいかぬわけであります。そういたしますと医療担当者と患者との微妙な関係がございますので、その辺のところを考慮しますとあまり突き詰めていろいろなことを調査に回るということも場合によると医療担当者に迷惑をかけることがあるわけです。というのは、あのお医者さんはおれが行ったときは負けてくれるような顔をしておったにもかかわらず、その後役人を使いによこしていろいろと督促みたいな形で調べにきたぞというような印象を持たれますと、その当該のお医者さんについて今後の患者との関係をいろいろまずくするような結果になってもいけませんので、われわれとしてはこのレセプトによりましてなるべくそうしたとことんまで追及するというような態度でなくて、いろいろと患者との間のトラブルを生じないように、できるだけ患者さんの記憶ということだけで、あまりそういうような点をやかましく追及するような態度をとらぬようにということを、特にこの調査に当っては保険課の職員に注意をいたしたのであります。ですから御要望のように払わなかった場合にその家計がどういう状況であり、どういう収入で何人の家族でどの程度の生活状態であったかというところまで突き詰めて調査をいたさなかったのでございます。
  116. 八田貞義

    ○八田委員 もう一点だけ。それで一部負担の十二億円ですが、これは積算の基礎が私よくわからぬものですから、きょうでなくてよろしゅうございます。この積算の基礎をお示し願いたいと思います。百十二億円になっておりますが、これは一〇〇%徴収できたとしての計算か、いわゆる「命令ヲ以テ定ムル初診ヲ除ク」初診の際にとった五十円とか、あるいは乙地の場合は四十六円ですか、そういった区別があるわけですから、それの積算の基礎をどういうふうにして——現在一部負担の徴収工合から見られて、そうしてこの十二億円の数字を出される場合に、どういうふうな徴収率をかけられて十二億円を出されたか。これはきょうでなくてもいいからあるいはあとでこまかい数字は伺うことにしまして、大体のことをお示し願いたい。
  117. 小沢辰男

    ○小沢説明員 三十二年度の一部負担は、先生のおっしゃるように総額十二億一千三百万円でございますが、初診の際の百円に関する一部負担のあれは、診療総件数を出しまして、それに初診の割合というものをかけるわけです。それに今度は甲弛、乙地の加重平均をとってみました平均の単価が現在ございますので、それに初診料現在の四点がすでに現行で一部負担でございますから、それを引きまして、そうしてその加重平均をされた単価にかけ、それに先ほど言いました初診料の割合というものをかけることによって出しておるわけでございますから、大体初診の関係では八億六千万円でございます。それから入院の一日三十円、三カ月分につきましては診療日数に三カ月以内の割合をかけまして、それに三十円をかけまして四億という数字を出して、それで十二億円という数字を出しておるわけであります。
  118. 八田貞義

    ○八田委員 徴収率は一〇〇%と見るわけですか。
  119. 小沢辰男

    ○小沢説明員 それは、徴収率は当然払うべき義務があるもので、払うものと考えておりますので、これは一応全部徴収率をかけるというようなことをしないで、そのままの金額を計上してあります。
  120. 八田貞義

    ○八田委員 これが問題になるんですが、というのは今日現行法に基いて初診料相当額を取っておって、未払い分があるわけなんです。それがまた増してくるのですから、私はやはり徴収率を考えたものを頭に入れておかなければならぬと思うんです。そうしませんと、その分だけは医師の方の未収分になってくるわけですね。そうでしょう、取れなかったら、お医者さんの全部負担なんですから、その負担がどれだけあるくらいのことは、やはりお考えになっておく必要があると思うんです。
  121. 高田正巳

    高田(正)政府委員 財政効果の方で徴収率を見なかったゆえんは、それだけ引いて払うのでございますから、確実にそれだけは財政効果として支出減になるわけです。従って徴収率を見ませんでした。それから、しからばそれが医師のしわ寄せになるのであるから、その辺のところを配慮すべきであるという御議論に対しましては、それは碓かにそうでございますが、先ほど申し上げましたように、その徴収未済というものは、われわれの調査の結果によりますれば、非常に少いパーセンテージでございましたので、その辺はこの一部負担の制度を提案をいたし御審議を願いますにつきましては、まず大勢としてはそれほど問題にいたす数字ではない、こういうふうな見方から、ただいまのようなことにいたしておるわけでございます。
  122. 藤本捨助

    ○藤本委員長 次会は明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十五分散会