○
堂森委員 局長の
答弁、それから
大臣の先ほどの御
答弁を聞いておりますと、何のことかわかりません。とにかくやるならやれ
——まあおそらくやらぬということでしょう。局長の
答弁の中に、
国民皆
保険をやって参りますためには、
医療担当者である
医師の協力を得なければ
国民皆
保険は円滑にいかない、こういう
答弁がございました。全くその
通りでございます。ただいま
滝井君から、この
法案を撤回しなければ
医師側の協力が得られない、こういうヤジが入っておりました。私ももちろんその
通りだと思うわけであります。たとえば私がきのう日曜日で、きょうこの法律について質問を少ししようかと思って、朝早くから起きて書斎で机に向っておりました。ある
東京都内の何も知らぬ老人の
医師が来まして、るる私に三時間ほど訴えられまして実は閉口したわけであります。この人の話を聞いておりますると、
——これは率直にその
通りに言うわけでありますが、私たちは一部
負担が行われるということは確かに受診者が減ります、そしてこれも経済的に影響を受けることは事実でございます、それを第二にしまして、今度の
法案の
改正によって、私たちはもう
健康保険に協力するという熱意をなくしてしまいました、こう言っておる。それはなぜかというと、私たちは
健康保険に三十年協力してきました、大学を出て一開業医として感心に診療に従事して、個人
生活というものもほとんど時間がない、まじめに医者をやってきた、しかるに今度の法律を見ると私たちは被告みたいな姿にやられてしまって、いつ家宅捜索を受けるかわからぬというようなことにもなるし、また厚生当局あるいは県庁の役
人たちからいろいろな指示を受ける、まあ指示を受けるのもいいでしょうが、しかしその指示をする役
人たちの言葉を聞いておってもばからしくって、そんな講習会に行く気にならないよう
気持ちになる、とにかく何と申しますか、われわれは
健康保険制度の発達のために全く協力してきたという自信を持っている、そうした誇りを持ってきた、ところが何か
政府の今度の法律の
提出というものによって追い打ちをかけられたような、非常にいやな
気持といいますか、そういうものを心から感ずる、従ってわれわれは今度の法律に対しては、もう
生活権の要求とかそういうことよりも、もっともっと近江絹糸の人権闘争みたいな姿でこの法律に対しては徹底的に戦っていきたい、こういうことを六十幾つになった老人の
医師が私に訴えておったのであります。これは私は
厚生省の役人の方々、あるいは
大臣が
考えなければいかぬことだと思う。
ほんとうにそういう姿である。たとえば監査の問題にしましても、確かに
医師の中には不正の請求をする人がおるかもしれません。これはあったでしょう。しかしながらそういうふうな
医師たちは、きわめて少いのであります。
〔
中川委員長代理退席、八木(一男)
委員長代理着席〕
大部分の
医師というのは、きわめてまじめに
健康保険に協力をしてきた、こういう姿であるにかかわらず今度の
法案というものがきわめて厳重な、きわめて過酷な、そして
健康保険に協力してきた
医師に対してフライドを傷つけるといいますか、そういう精神的な大きな影響を与えていることを、厚生当局は看過してはならぬと私は思う。そこで
大臣にお尋ねいたしますが、一体今度の
政府与党の修正は再修正ですか、前
国会に提案されてきて、
継続審議になっておる。この法律によって一体どれくらいの
財政的の余裕が出るか。それは
数字ですから
大臣から御
答弁にならなくてもいいですが、私も知っております。そこで
入院が一日につき三十円、そして初診日には百円、こういうところの一部
負担によって一年間を通じておよそ十二億くらいだと、こう
厚生省当局は
答弁しておられます。一体その十二億くらいのそうした財源をとるためになぜこういうふうな法律をまた性こりもなく、しかも二十五回
国会ももう終
ろうとする時分にそっと盗人ネコみたいに出してくるのか、どういうわけで私はこういうような法律を性こりもなく出してきたかということを実際疑わざるを得ないわけであります。二十四
国会において衆議院で修正案が与党の諸君によって作られまして、衆議院を
通りました。この
法案が通る前に新聞に、当時私覚えておるのですが、
厚生省当局は、断じてこのような修正案に応ずることはできない、これは
保険財政の立て直しのために作ったものでもあり、また
健康保険制度そのものの進歩発展のために提案したのが、第二十四
国会の
健康保険の
改正案の
政府案である、しかるに与党が一部
負担について修正をし、また他のいろんな内容、条項についても修正をするような与党案に対しては、
厚生省事務当局は断固これは賛成することはできぬというようなことが、木村事務次官の談話で書いてあったことがありました。それは
厚生大臣御
承知でないかもしれませんが、私は読んで覚えております。このように当時
政府が出した案によりますれば二十三億ですか一年間に財源が生まれてくる。ところが今後は十二億、半分、まるでこれは党のなぶりものになっておるような法律で、バナナのたたき売りみたいな態度であると私は思う。こんな法律を出して
医療担当者であるところの
医師側を
反対に押しやり、しかも協力してきた
医師に精神的な影響を強く与える。
医師側が
健康保険そのものに協力しないという大きな影響、これは無形の影響です。しかしこれは実際は有形の影響になるわけですが、いっそそういうふうな悪い法律を撤回してしまって、いさぎよくやったらいいと思うのです。私も実は世界中のいろんな国でどんな
健康保険制度について
医師側と
政府との間にいざこざがあるかということを調べてみた。そうするとどこでもやっておる。たとえばベルギーでは一九五五年に
政府提案の
社会保険法を
医師が猛烈に
反対して、ストライキをやっておる。そして
政府案はとうとう撤回してしまった。恥じゃないと思うのです。それからまたイスラエル
——イスラエルのことはいいでしょう。オーストリアは一九五五年に
社会保険の
医療費値上げで
医師と歯科
医師が二日間ストライキを断行しておる。フランスでは
社会保険の経費が不足のために、
政府と
医師が目下係争中である。これは現在世界のどうも波のようですね。西ドイツでもそういう係争があって、五五年とうとうアデナウアーの
政府がこれを承認したそうであります。それからまた、イギリスでももちろんそうです。今やっております。またオランダもそうです。というふうに各国とも
健康保険の財源問題というものは、
医師側とあるいはまたこれの被
保険者であるところの
労働者の諸君との大きな係争になっておるのは事実であります。そこで
日本においてもこれは何年来かの大きな問題でありますが、いっそ
神田厚生大臣はこの
法案を思い切って撤回してしまって、新しく出直し、もう十二億くらいは何もがんばらなくてもいいのです。十二億ですよ。そんなことくらいならどんな
方法でもあると思う。そしてこの三十億をもらうためにはどうしてもこの
法案を通さなければならぬ、私はそういう意見を与党の諸君から聞くのです。全く私は
健康保険を愚弄しておる話だと思う。もう今日は
全国の
労働者の諸君だって三十億ぐらい要らぬと言っておる。医者も要らぬと言っておる。こんな法律を通されてそして一部
負担というものを拡充していく、あるいはまた
医師を侮辱するようなこんな法律を通してもらうくらいなら、われわれは三十億くらい要らぬと言っております。
厚生大臣、今からでもおそくはないわけですが、
一つこれを撤回するというような勇猛心を発揮する意思はありせんか、御
答弁願います。