○八田
委員 私がこんな
質問をするのは、行政上では
国民健康保険を社会
保険の中に数えてやっておられる。というのは、私はお伺いしたのですが、私は、社会
保険の理念を大蔵省の役人が果して正しくつかんでいるかということを非常に疑問に
感じておったのです。社会保障という理念についても、前の予算
委員会で
質問しましたが、非常に社会
保険のつかみ方についても間違いがある。厚生省と大蔵省とで見解の違いがあっては予算を調整される場合において非常にお困りになるという
意味において、今厚生省の方において、行政上は
国民健康保険というものは
保険的要素は少いのだけれども社会
保険として考えていくのだ、こういうふうな行政区分についてのお話でございます。というのは、この
国民健康保険による人員というのは全人口の三三%、そうして
医療費は
国民総
医療費のわずか一一%しか占めていないのです。その
保険財政負担分というものが四〇%です。
自己負担分が四〇%、国庫負担は二〇%でありまするから、
保険的要素はきわめて少いわけなんです、私をして一言わしめれば。こういう点をはっきりと区分してみますると、社会
保険というのは健康管理から職域
保険としてだんだん進歩してきた。しかも
国民健康保険は世界にもあまり類のない
日本独自の制度といってもいいくらいのものであります。しかも、今もこまかく申し上げてみますると、
保険的要素は少い。こういうことを申し上げまして先の
質問をいたして参りまするが、
健康保険制度は
大臣の提案理由の中にもありますように、わが国の社会保障制度の大支柱をなす制度として、労働者の生活にはなくてはならぬ重要な
意味を持っている、こういうふうに提案理由の中に示されております。すると、こういう問題が起ってくるわけです。わが国の社会保障制度は憲法第二十五条の明文から判断しますると、アメリカの社会保障法にその基準概念を求めることができるわけであります。しからばアメリカの社会保障法の内容は一体どんなふうなことになっておるかと申しますと、アメリカの社会保障制度は一九三五年に樹立されたのでありますが、老齢
保険と失業
保険を含む社会
保険、公的扶助、児童福祉並びに信用組合の四部門からなっておるわけです。そうして疾病
保険としてはないわけですね。ブリュー・グループみたいになって信用組合の経営にゆだねられているようです。こういうアメリカの社会保障法の内容を見ますると、その中心は社会
保険と公的扶助に置いております。これによって
国民の生活を窮乏から守ることを
目的としておるのでありまするから、わが国の社会保障制度の根幹をなすものは、当然公的扶助と社会
保険であるというふうになってくるわけであります。それを今日拡大解釈が行われまして、英国の社会保障制度がそのまま
日本の憲法に
規定された社会保障と同じだというふうなことになって、ゆりかごから墓場へということがわが国の社会保障制度だ……。もちろんそういったふうに発展していくことはかまわないのです。ただ憲法の第二十五条には、社会福祉という問題も書いてありますし、公衆衛生という問題も書いてあるのです。ですから私は憲法の中にうたわれている社会保障というのは、アメリカでいっておるところの社会保障制度というものが根幹となるものでなければならぬと思う。そういうことを明文化しているものと解釈していいわけです。ところで
医療扶助は、
生活保護法による生活扶助とともに、
保険のような醵出によるものではなくて、租税によってまかなわれるというもので、全く納税者の負担によって運営されるものでございます。ところでこの
医療保険はどうかと申しますと、これはもともと自尊心の強いイギリスに発達しましたのは、
保険料の名で醵出したものを、
給付することによって、権利として与えられるという形をとってきたものでございます。これが収支償わないで国庫補助を増すことは、実はそれだけ
保険よりも扶助に近くなってくる。公的扶助も社会
保険も、ともに
特定個人に対する処置でありまするが、社会
保険に扶助的要素をつぎ込むことが社会
保険制度の前進だろうか、あるいは後退だろうかという疑問も起ってくるわけであります。社会
保険の理念という見地に立ってこの問題を考えますると、扶助的要素にも一定の限界がある、私はそういうふうに考えるのですが、この
医療保険について扶助的要素をつぎ込んでいくことが、一体今後の社会
保険制度の充実として考えられるかどうか。むしろ社会
保険ならば、扶助的要素にも一定の限界を画していかなければならぬ、こういう問題が起ってくるわけであります。この点について
局長の率直な御意見をお伺いしたいのであります。というのは、今わが国は社会
保険から社会保障へという
言葉が言われておるのです。しからば社会
保険の充実というものを一体どういうふうにしていくのがよろしいか、こういう点について掘り下げた考えを持って、今後の社会
保険の健全化というものを考えていかなければならぬと思う。この点について
一つ局長の御見解を承わりたい。