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1957-03-02 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二日(土曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理時 亀山 孝一君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 八木 一男君       越智  茂君    加藤鐐五郎君       木村 文男君    草野一郎平君       小林  郁君    田子 一民君       田中 正巳君    高瀬  傳君       中村三之丞君    中山 マサ君       八田 貞義君    山下 春江君       亘  四郎君    岡  良一君       岡本 隆一君    五島 虎雄君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       中原 健次君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    小沢 辰男君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 三月二日  委員草野一郎平君、松村謙三君及び滝井義高君辞  任につき、その補欠として加藤常太郎君、木村  文男君及び今澄勇君が議長指名委員に選任  された。 同日  委員木村文男君辞任につき、その補欠として松  村謙三君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月一日  未帰還者留守家族等援護法による療養者入院費一部負担撤廃請願栗原俊夫紹介)(第二五三二号)  国立療養所施設費増額に関する請願栗原俊夫紹介)(第一五三三号)  未帰還者留守家族等援護法による療養者生活費支給請願栗原俊夫紹介)(第一五三四号)  身体障害手帳交付基準拡大に関する請願栗原俊夫紹介)(第一五三六号)  健康保険法及び生活保護法の一部改正等に関する請願塚原俊郎紹介)(第一五三七号)  健康保険赤字国庫負担等に関する請願帆足計紹介)(第一五三八号)  健康保険法の一部改正及び生活保護法の引締め反対に関する請願帆足計紹介)(第一五三九号)  同(山花秀雄紹介)(第一五四〇号)  生活保護法最低生活基準額引上げ請願茜ケ久保重光紹介)(第一五四一号)  同外一件(栗原俊夫紹介)(第一五四二号)  同(帆足計紹介)(第一五四三号)  健康保険赤字全額国庫負担に関する請願茜ケ久保重光紹介)(第一五四四号)  国立療養所賄費増額に関する請願茜ケ久保重光紹介)(第一五四五号)  同外一件(栗原俊夫紹介)(第一五四六号)  健康保険法の一部改正反対に関する請願外一件(栗原俊夫紹介)(第一五四七号)  同(岡崎英城紹介)(第一五四八号)  同(神近市子紹介)(第一五四九号)  同(島上善五郎紹介)(第一五五〇号)  同(山花秀雄紹介)(第一五五一号)  同(門司亮紹介)(第一六三七号)  社会保険費増額に関する請願茜ケ久保重光紹介)(第一五五四号)  国立療養所等における看護婦定員増加に関す  る請願茜ケ久保重光紹介)(第一五五五号)  帰還患者生活保障に関する請願茜ケ久保重光紹介)(第一五五六号)  結核回復者に対する職及び住宅確保に関する請願茜ケ久保重光紹介)(第一五五七号)  同外一件(栗原俊夫紹介)(第一五五八号)  同(島上善五郎紹介)(第一五五九号)  同(門司亮紹介)(第一六三九号)  国立病院等付添制限緩和に関する請願島上善五郎紹介)(第一五六〇号)  生活保護法等の一部改正に関する請願島上善五郎紹介)(第一五六一号)  同(帆足計紹介)(第一五六二号)  健康保険法の一部改正反対及び医療給付費二割国庫負担等に関する請願帆足計紹介)(第一五六三号)  国立療養所等における医師定員増加及び待遇改善に関する請願茜ケ久保重光紹介)(第一五六四号)  結核回復者に対する後保護立法化等に関する請願茜ケ久保重光紹介)(第一五六五号)  結核予防予算増額及び治療費全額国庫負担に関  する請願茜ケ久保重光紹介)(第一五六六号)  同外一件(栗原俊夫紹介)(第一五六七号)  結核療養所等医師及び従業員待遇改善に関する請願栗原俊夫紹介)(第一五六八号)  国立療養所における作業療法拡充等に関する請願茜ケ久保重光紹介)(第一五六九号)  同外一件(栗原俊夫紹介)(第一五七〇号)  同(山花秀堆君紹介)(第一五七一号)  生活保護法による生活基準額増額に関する請願山花秀雄紹介)(第一五七二号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対に関する請願森本靖紹介)(第一五七三号)  生活保護基準引上げ等に関する請願神近市子紹介)(第一五七四号)  同(原彪紹介)(第一五七五号)  同外一件(帆足計紹介)(第一五七六号)  国立病院等准看護婦進学コース設置に関する請願横錢重吉紹介)(第一五七七号)  国立病院等における看護婦の産休のための定員  確保に関する請願辻原弘市君紹介)(第一五七八号)  同(床次徳二紹介)(第一五七九号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律制定請願五島虎雄紹介)(第一五八〇号)  同(高瀬傳紹介)(第二五八一号)  同(松井政吉紹介)(第一五八二号)  同(松岡松平紹介)(第一五八三号)  同(小坂善太郎紹介)(第一六二九号)  同外四件(五島虎雄紹介)(第一六三〇号)  同(平田ヒデ紹介)(第一六三一号)  衛生検査技師身分法制定に関する請願阿左美廣治紹介)(第一五八四号)  同(小川半次紹介)(第一五八五号)  同(大石武一紹介)(第一五八六号)  同(白浜仁吉紹介)(第一五八七号)  同外一件(高村坂彦君紹介)(第一六三二号)  駐留軍撤退等に伴う駐留軍労務者失業対策に関する請願足鹿覺紹介)(第一六三三号)  生活保護法による医療扶助の引締め反対に関する請願門司亮紹介)(第一六三八号)  戦傷病再発医療費全額国庫負担に関する請願小澤佐重喜紹介)(第一六三四号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対に関する請願西村彰一紹介)(第一六三五号)  健康保険法の一部改正反対等に関する請願外二件(西村彰一紹介)(第一六三六号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した、案件  美容師法案長谷川保君外一名提出、第二十四回国会衆法第五三号)の撤回許可に関する件  健康保険法等の一部を改正する法律案滝井義高君外十一名提出、第二十五回国会衆法第一号)の撤回許可に関する件  健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提出、第二十五回国会閣法第四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出、第二十五回国会閣法第五号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣提出、第二十五回国会閣法第六号)     ―――――――――――――
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案煙生年金保険法の一部を改正する法律案及び滝井義高君外十一名提出健康保険法等の一部を改正する法律案の四案を一括して議題とし、審査を進めます。  この際お潜りいたします。第二十五回国会より継続審査となっております滝井義高君外十一名提出健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、成規の手続をもって撤回の申し出がありますが、本案はすでに委員会議題といたしました関係上、衆議院規則第三十六条によりまして委員会許可を符なければなりませんが、これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認めます。よって本案撤回許可するに決しました。  次に、質疑を続行いたします。滝井義高君。
  4. 滝井義高

    滝井委員 きょうは健康保険法改正に対する私が見たところで一番重要だと思われる点について、率直に大臣の御意見をお聞きしてみたいと思います。これはすべて常識的な問題でございますから、局長でなくて一つ大臣から御答弁をお願いいたしたいと思います。  先日の岡本君の質問に対して、大臣医療制度は公私二本立でいくということをおっしゃいました。これは御確認できると思いますが、そういうように確認して差しつかえありませんか。
  5. 神田博

    神田国務大臣 医療制度国立あるいは公立二木立でずっとやっていく方針をとっていくのか、私企業としての医者を認めるのか、認めないかというお尋ねが先般ございまして、私は両建でいく、こういうお答えを申し上げたのでございます。ただいまもそういう意味の御質問かと考えます。といたしますれば、先般お答えした通りでございます。
  6. 滝井義高

    滝井委員 二本立でいかれるそうでございます。そうしますと、よく聞いておいていただきたいと思いますが、まず第一に、保険診療に従出するすべての病院診療所、薬局は、法のもとにおいて平等に取り扱うべきだと思うか、そのようにやっていく所存でございますか。
  7. 高田正巳

    高田(正)政府委員 特別な目的を持って設立されております、言葉をかえて申せば特別な者だけを見るという建前で設立されております病院を除きまして、一般国民を対象として設立されておる病院診療所につきましては、一本の取扱いにしていく改正をお願いを申し上げておるわけでございます。
  8. 滝井義高

    滝井委員 特別なもの以外は全部一本でいくそうでございますが、それはいずれあとに譲ります。これはなるべく大臣から答えてもらいたいのです。きわめて常識的な一般論でございますから、そういうところ大臣の御答弁をいただけないとすれば、医療行政に対する神田厚生行政というものの性格が僕らつかみにくくなるのです。保険局長はまた保険局長で別に尋ねます。だから私はできるだけ常識的な表現を用いておるのです。  次には、保険診療に従事する医師歯科医師薬剤師は、すべて法のもとに平等に取り扱うべきだと思うが、大臣はその通りいたす所存でございますか。
  9. 神田博

    神田国務大臣 その通りでございます。
  10. 滝井義高

    滝井委員 今の高田保険局長の御答弁大臣答弁と考えて質問をいたしておるわけでございますが、特別なものについては別に取り扱うものがあったわけです。局長は、特別なものは別、だとおっしゃったのですが、そうしますと、医師歯科医師薬剤師は、法のもとにすべて平等だ、こういうことになったのですが、その勤務する場所によっては違う形が出てくるのじゃないかという感じがするのです。病院診療所のうち特別なものは別だ、こうなりますと、そこの特別なものの中にも薬剤師がおるし、医師がおるし、歯科医師がおるのです。この点今の答弁と食い違ってくる感じがするのですが、どうでしょう。
  11. 高田正巳

    高田(正)政府委員 非常に専門的な御質問でございますので、私からお答えをいたしますが、改正法の意図しておりまするところは……。(滝井委員改正法のことを言っておるのではない」と呼ぶ)現状におきましては、保険者指定するものという医療機関がたくさんございますので、先ほど大臣お答えになりましたように、保険との関係においては、全部同じ立場で医師歯科医師薬剤師があるという状態にはなっておりません。
  12. 滝井義高

    滝井委員 それでけっこうです。従って、同じ免許を持っておる医師歯科医師薬剤師でも、勤務場所によって違った法の規制を受ける者がこれで出てきたわけですね。これは大臣おわかりになったと思います。従って、日本国民の中におき、しても、同じ法律のもとで、まず第一に医療機関においても違った待遇を受けるものが一つ出てきた。それから同時に同じ免許を持った医師歯科医師薬剤師でも法のもとで別な者が出てきた、こういうことがはっきりしてきたわけです。  そこで今度具体的に入ります。健康保険法のもとにおいて、公的な医療機関であろうと、私的な医療機関であろうと、あるいは政府管掌であろうと、組合管掌であろうと、あるいはその公的医療機関私的医療機関に働いておるすべての者、あるいは保険者、被保険者、これらのものは健康保険法のもとにおいては一体平年であるのか平等でないのか、健康保険法のもとにおいてすべて平等に取り扱うのか、平等に取り扱わないのかということなんです。もし平等に取り扱わないものがあれば、まず医療機関ではどういうものが平等に取り扱い、あるいは取り扱わないか。それから、そこに働いておる者については、これは医師歯科医師薬剤師がありますが、どういう工合に平等に取り扱うか、取り扱わないか、それから保険者と被保険者については健康保険法のもとにおいてはどういう工合に平等に取り扱うか取り扱わないか、これは非常に込み入りましたから事務当局でけっこうでございます、こういう点を一つ明白にしていただきたい。
  13. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御質問の御趣旨現行法でどうなっておるかということでありますか、あるいは改正法でどうなっておるか……。(滝井委員改正法です。」と呼ぶ)改正法の方でお答えをいたしますと、原則といたしまして先ほどお答えをいたしましたように、一般国民に開放するということを目的としております病院あるいは診療所は全部一本に取り扱う方針でございます。これは現行法律のもとにおきましては国立でありますとか公立でござ いますとかは一般保険医とはいろいろ別個な取扱い、すなわち保険者指定するものという建前になっておるものが相当あるのでございますが、改正法では原則といたしまして今申し上げたように同じ取扱いをしていくという趣旨でございます。それで別の取扱いをいたしていきますものは改正法の第四十三条の三項の二号、三号、これが別の取扱いということに相なります。これはどういうものであるかと申しますと、ある特定のものを見るために設けられた病院診療所医療機関という性格のものばかり、従いまして現行法と比べますと改正法では特別扱いをいたしますものの範囲が非常に狭くなって参るわけでございます。従ってここに勤務いたします医師もそれら特別扱いをいたします医療機関勤務する場合におきましては法律上別個の取扱いということに相なって参ります。
  14. 滝井義高

    滝井委員 大臣、今の御説明があったように、この法律の中には特権階級みたような二号、三号の特別なものがあるということ、しかもそこに勤務をする医師はまた特別の待遇を受けて法律規制々受けないということになっておるという御説明が今ございました。そこで大臣にお尋ねしたいのは、大臣はこの法律保険医療機関というのは一体どういうものをいうのか、保険医療機関という言葉がここにたくさんあります。保険医療機関というのは一体何なのか、これを二つ私にお教え願いたいと思います。
  15. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。一般的に社会保険診療を行うものであって、この指定を受けたものが診療機関だ、こういうふうに私考えております。
  16. 滝井義高

    滝井委員 一般的に社会保険診療を行うものすべてを保険医療機関と言う、こう認識して差しつかえないですか。その通りですか。
  17. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一般に開放されておりまして一般的に保険診療を扱う機関であって指定を受けたものというふうに大臣は申し上げられたのでございます。  なお私の先ほどのお答えについて、滝井先生特権階級があり、それらは法の規制を受けない、こういう仰せでございますが、そうじゃございません。法の規制は受けるのでございます。しかし、その病院性格が違うので、法の規制の仕方が違うというだけでありまして、たとえば保険診療やり方等につきましては、指定医療機関規定が準用されるとか何とかいうことになりまして、ただ法規制の仕方が違うだけで法の規制を受けないというのではありません。その点は明確にいたしておきたいと存じます。
  18. 滝井義高

    滝井委員 保険医療機関に帰りますが、保険医療機関というのは、これは知事指定するものだけでしょう。
  19. 高田正巳

    高田(正)政府委員 改正法案の四十三条の三で、都道府県知事がこの指定を行うことに相なっております。
  20. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、全国の保険診療を行う診療所の数の中で、知事指定をするいわゆるこの法案保険医療機関の数と、それからあなたが今おっしゃった私が特権的な医療機関だといった二号、三号の診療所の数を一つお示し願いたい。
  21. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいま申し上げましたような改正法ではこういう扱いになるといって御説明をいたしましたが、しからばそれの数を示せという仰せでございますけれども、改正法は施行されておりませんので、その数はただいまはまだわかっておりません。ただ申し上げられることは現行法保険者指定するものということで逆用をいたしておりまする医療機関範囲改正法よりは非常に広うございますので、従って、現行法保険者指定するものという医療機関の数と、改正法が実施されました暁におきまする四十三条の二号、三号の医療機関というものとの範囲は、改正法の方が非常に狭くなるはずでございます。
  22. 滝井義高

    滝井委員 局長さん、経過規定があるということはあなたはこの立法の当事者として御存じだと思う。八条ですか、保険者指定するものに関する経過規定があって三十二年三月三十一日までは現在四十三条の二のいわゆる保険者指定するものの中の特に二月については、これは帰還があるわけです。これは修正すれば別ですが、ある。従ってこの数がわからないということは言えないと思うのです。従ってまず、それならば二号、三号と分ける必要はありませんから、保険者指定するものの数を一つ明白にしてもらいたい。
  23. 高田正巳

    高田(正)政府委員 滝井先生の御質問は、現行法保険者指定するものということになっておるものの数でございますね。(滝井委員「そうです」と呼ぶ)それは後刻調べましてお答えいたしたいと思います。
  24. 滝井義高

    滝井委員 問題の。ポイントはここから始まるのです。この一器大平なところを御答弁いただかないと非常に困るのです。保険者指定するものの数がおよそどのくらいあるかということがわからぬはずはないでしょう。これは少くともこの法案の眼ですよ。この法案がほんとうに日本医療であると思うならばここをもう少しはっきりしなければいかぬのです。四十三条のこれはこの法案の眼です。この法案はここに一切のからくりがあるのです。局長さんはけげんな顔をされておるけれども、ここにある。今からだんだん実態を究明していきますけれども、全日本医療機関のどの程度のものが、一体今まで保険者指定するものの中に入っておったか、およそこのくらいのことはわかるはずですよ。幾らですか。これは課長さんでけっこうです。
  25. 小沢辰男

    小沢説明員 お答えいたします。ただいま健康保険関係しまして、いわゆる保険医として請求をいたしておりますものの実数は、三十一年の三月現在で七万ございます。そのほかに先生の御指摘の、保険者指定するものの請求実数は四千二百件でございます。ただし先生のおっしゃる意味は、おそらく保険者指定を受けた病院並びに診療所の数を言われているのだと思いますが、保険者指定する施設請求は、大体これとほぼ合うものと考えておりますけれども、病院実数は、なお今調査をいたしまして、早急にお答えをいたしたいと思います。
  26. 滝井義高

    滝井委員 保険医の数は、すなわち知事指定をした者が七万、それから保険者指定するものが四千百で、大体これと同じ診療所あるいは病院の数がある、こういうことでございますね。
  27. 小沢辰男

    小沢説明員 そういう意味でございます。
  28. 滝井義高

    滝井委員 そういたしますと、現在共生から支払われておる診療所報酬支払い総額の中で七万の保険医――これはおそらくほとんど全部が開業医だろうと思いますが、七万のその人たちに基金から支払われておる金額の総額と、それから今あなたの方から御説明いただいた約四千百前後の保険者指定するものの支払いを受けておる額の割合は、およそどの程度になっておりますか、これを一つ明確にしてもらいたい。わからなければパーセントでけっこうです。
  29. 高田正巳

    高田(正)政府委員 今調べておりますから、わかりましたらお答えさしていただきますが、時間つなぎの意味で、先ほど私が申し上げましたように、現行官公立病院等はすべて保険者指定するものということになっておるので、非常に広いのでございます。改正法では、それを非常に狭めていくのだ、そういう趣旨改正法はでき上っており、いわゆる官公立病院というようなものは、普遍のものは全部一月で一般指定医療機関になるのであるということをお話し申し上げましたが、従って二号、三月になりますものは非常に限られた病院診療所ということになります。それを滝井先生に申し上げて、御審議の御参考に資したいと思います。
  30. 滝井義高

    滝井委員 局長さん、あなたは一行政官なのです。そのあなたが幾ら狭めていきますと言ったって、法律に書いていない。狭めていくということは、法律のどこからそういうことが出てきますか。法律の何条のどこから出てくるか、それを一つお示し願いたい。
  31. 高田正巳

    高田(正)政府委員 それは四十三条の二号、三号から出てくるわけでございます。四十三条の一号は、一般指定医療機関でございまして、二号、三号は、そこに書いてございますように、非常に狭い範囲医療機関のことを書いてございます。従って、この二号、三号の条文からそれが出てくるわけであります。これに当りますものは、二号で申しますれば事業主の医局、事業主病院、そういうふうなもの、それから三号は健康保険組合の直営営病院、こういうものでございます。たとえば健康保険組合自分病院を経併しております場合には、診療報酬問題等は起ってこないわけであります。自分自身療養給付をするわけでございますので、非常に法律上の性格が変って参ります。二号、三号をお読みいただけば、そういうふうなものだけにしぼってあるわけでございます。
  32. 滝井義高

    滝井委員 あなたはそういう解釈をされておりますが、この文章からそういことは絶対読めない。私はこの前の二十四国会で、これをあなたに質問した。そのときあなたは御答弁できなかったでしょう。速記を以てごらんなさい。これはあなたもわからなかった。私も当時はやはり研究不足で、これは十分のみ込めませんでした。これを今しろうとに見せて、これがわかる人はありません。この条文法律専門家が見てもよくわからない。いいですか、「第一項第一号乃至第四号ノ給付受ケントスル者ハ命令ノ定ムル所二依リ左掲グルモノノ自己選定スルモノニ就キヲ受クルモノトス」こうなっている。被保険者は、この三つのどこへ行ってもいいという格好になっている。そうしますと、あなたは事業主病院に限られていると、こうおっしゃったが、事業主病院に普通の人が行って見てもらうことが多い。保健所でやはり見てもらうことがある。何々のためのというのは、これは法律的な用語からいえば、もっぱら何々のためにと、こういう意味だろうと思う。もっぱらということは、それは主としてそこの事業主従業員にやるかもしれないけれども、ほかの者も見てもいいということになるでしょう。そうしますと、前の選択権は、自己の選択するものについて、三つのうちのどこでもいいということになれば、どこでも行けるということになる。これはあなた方、専門家が読めばそうなるかもしれないが、しろうとから読めばそうならない。絶対にならない。そうして、あなたは特定事業主病院と言うけれども、特定保険者というのは一体何かということです。政府特定保険者になりますよ。保険者がABCDとあれば、そのAに当る者は、何もこれは三井鉱山株式会社における健康保険組合保険者だけじゃない。政府も対等なんです。政府特定保険者になる。そうしますと、政府特定保険者になるようなものを、ここに狭めた事業主病院でございますと、そういうようなことは通らぬです。そうしますと、特定保険者のものが指定をしたものということになれば、たとえば私が医者であるとするなら、私も特定保険者を代表するところの、その知事指定してくれたら特定指定者になっちゃうのです。読み方によったらそういうことになる。特定保険者というのは政府が入る。そうしますと、政府特定保険者に入れば、一号は都道府県知事指定を受けたものというのはだれかとなると、結局知事政府の代行機関なんです。知事保険者でも何でもない。そうしますと、都道府県知事指定ということは特定保険者指定と結論的に言えば同じことです。すべての人は厚生大臣から指定を、受けるわけじゃない。いずれまたほかの場合にもそういうことが出てきますので質問しますが、政府特定保険者に入ることは間違いないのです。そうしますと、政府特定保険者に入るとするならば、知事というものは大体保険者ではないんだから、保険者でない者が指定したものというものはあり得ないので、それは明らかに厚生大臣がいわば政府管掌では保険者の代表なんですね。形式的に言えば、その人が委託をしている形なんですよ。だからこの条文というものは読めば読むほどわからなくなっちゃうのです。この前二十四国会のときに、私はこれをやった。そして高田さんは、どうも私はわかりませんという答弁をしている。そのときには小沢さんが何か答えたけれども、これはわからぬずくに実はなっている。とにかくそこらの問題はいずれ逐条的にやるときにもっとやります。しかし今の根本的なところが大事なところです。根本的なところの答弁をまだ受けていないので、数字を先に一つ説明してみて下さい。
  33. 小沢辰男

    小沢説明員 先ほど申しましたように、保険医請求が約七万、それから保険者指定する施設請求が四千百でございます。従ってこれがほぼその指定された数と合うと思います。その総額でございますが、大体五十五と四十五の比率になろうかと思います。五十五がいわゆる保険医としての請求、四十五が保険者指定するものとしての請求に金額ではなろうかと思います。それから五十五の保険医関係のうちで、全く個人の病院、全く個人の診療所というようなものの数は、そのうち四十三ということになるかと思います。これはそれぞれ五五%、四五%、四三%という意味で申し上げたので、御了承願います。  それからただいまいろいろお話がありました四十三条の規定意味でございますが、私ども先生がおっしゃるように、まず被保険者の選定の医療機関の分類として三つの分類をあげたわけでございまして、第一番目は都道府県知事指定をいたしましたいわゆる保険医療機関でございます。それから第二の分数が、たとえばある健康保険組合という特定保険者自己の被保険者のための診療に役立たせるために作りました病院または診療所というものを、その組合すなわち特定保険者というものが指定した場合の病院または診療所というのが第二の分類。第三の分数は健康保険組合が現物給付をみずからやるために、組合自身が直接に設けました病院または診療所でございます。この三つの分類があって、その分類を一号、二号、三号とあげたのでございます。被保険者がこのうちから自由に選定できるというふうに書いてあって、選定できないじゃないかというのが前国会における議論であったわけでございます。ところが例をあげて申しますと、私が政府管掌の被保険者だといたしますと、その政府管掌の被保険者たる私が、次の三つのうち自己の選定するものについてこれを受ける、こういうふうになるわけでございます。その場合におそらく先生は、私が政府管掌の被保険者として、第三の非開放性健康保険組合が開設した直接現物納付をやろうとして作った病院にはお前はかかれぬじゃないか、従ってこの三つの中から自由選択できるというのはおかしいじゃないか、こういう御疑問でおっしゃっておるのだろうと思うのでございますが、ところが次の三つの分数がたとい法律上ありましても、私にとりましては、一の保険医療機関か、二の政府管掌で特に私のために作った病院か、それしか現実には、実在しないわけでございますので、そういう意味で少しも法律上の規定で矛盾しないことになります。  それから先ほど先生の最も強調しておられますのは、おそらく二号の特定保険者病院、たとえば政府政府管掌という保険をやっておるから、政府があらゆるものを指定をすれば、どんどんその指定される病院が拡充されるのじゃないかということをおそれられての御質問だろうと思います。たとえば岡本先生病院政府保険者として推定するという場合に、それは保険医療機関でなくともいいのだから、二号でいけることになるのだから、そうすると自由に、いわゆる保険法の規制を受けないで岡本先生病院は何でもできてるのだということになるのじゃないか、ということをおそらく考えられあるいは心配されてのお話だろうと思いますが、しかしこの規定の解釈から言いまして、私どもそれはできないというふうに思っているものでございます。すなわち特定保険者の管堂する被保険者のための病院または診療所といいますのは、ある保険者自分の被保険者のために作るということがまず第一番、従ってその病院診療所というものは、作られた性格自身がまず問題になってくるわけでございまして、そうした性格病院において初めて保険者がこの二月で指定するということになる。岡本先生病院が、もしもその設備資金その他一切が今やっております政府管掌の費用その他でもって全部作られまして、政府管掌の被保険者のために、その診療だけの目的で作った病院でありましたならば、当然この二号に該当いたしますけれども、そうでないような場合にはすべて一号でいかなければいかぬわけでございます。それからまた、たといそういうような目的で作られましても、一般のそのほかの被保険者をおよそ少しでも見るというような場合、先ほど滝井先生の例としておあげになりましたように、事業主医局であってもほかの者を見ているじゃないか、そういうものを自由に二号なり三号にするのはおかしいじゃないかというお話でございますが、そういうようにいやしくも不特定の多数人を見るというような性格になりましたら、直ちに一月になるわけでございますので、従って今度は、先ほど局長が申し上げましたように、現行法よりも保険者指定する施設というものの幅はうんと狭まってくるもの、大部分が一の保険医療機関になるもの、かように考えて、むしろ現在よりはその面では先生の御心配が解消されると同時に、むしろ合理化されているのじゃないか、かように思っているわけでございます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 そんなら特定保険者というのは政府は入るのですね。政府の入ることは間違いないですね。
  35. 小沢辰男

    小沢説明員 もちろん政府管掌の場合の保険者政府でございますので、政府も入ります。従って、つけ加えて申し上げますと、政府管掌の被保険者保険施設として作っておりますような病院は、この二号に該当するようになりますが、しかしながら現在の社会保険病院というのはその他の組合のものもありますし、また一般の私診療もいたしております。非開放性ではないのでございます。従ってそういう場合にはすべて一号でいいことになるわけでございます。
  36. 滝井義高

    滝井委員 まず第一にそういうわかりにくい説明をしなければ納得のいかないような法律の書き方がいけないのです。少くとも保険診療に当るものは全部保険医療機関という網をかぶせたらどうですか。絹をかぶせて、その上に今度は除外例を設けたらいいのです。たといそれが事業主病院であろうと組合管掌病院であろうと組合員というものは被保険者であることは間違いないのです、健康保険法上の概念からいえば……。その被保険者の診療に当っておる者が保険医療機関ではないのだからおかしいのですよ。だからまずみんな保険医療機関という網をかぶせてしまって、そして保険医療機関の中からそういう特殊なものをのけていったらいい。あなた方はそういうものを保険医療機関と言っていない。そうでしょう。
  37. 小沢辰男

    小沢説明員 今お尋ねの、たとえば第三月の健康保険組合保険者の開設する病院または診療所とありますが、これは健康保険組合病院を作りまして――組合というものはみずから保険者でございます。従って保険者がその療養の現物給付をみずから実施いたします場合には、それをわざわざ保険医療機関ということにする必要がちっともないわけであります。もしもみずから現物給付をやる以外のことをやろうというような場合、従って先生が今御説明のように、他のものを見ているというような場合には、もちろん一号の保険医療機関に全部なるわけでございますので、先生の御疑念はないものと考えております。
  38. 滝井義高

    滝井委員 私はそれは疑念はありません。ありませんがあなた方の政策は国民保険ですぞ。すべての国民に平等に、教育と同じように機会均等に医療を与えるというのがあなた方の建前でしょう。それが今あなたの数字で御説明いただいたように、全国の社会保険支払いのうちで四五%を占めておるものが――これを大きく拡大していったならば、日本の総医療費の四割五分というものを保険医療機関でない、全然別個のものがほっと取ってしまっておるということなんでしょう、簡単に言えば……。全国の国民医療を機会均等に与えるときには、法律の基礎というものを同じにした出発点でなければならぬ。そういう特権的なものを別に設けて、これは治外法権でございますという思想を、皆保険をやろう、社会保障をやろうというあなた方が持っておること自体が間違いでしょう。しかもそれが一割程度ならば私は文句は言いません。ところが基金から支払う額の少くとも四割五分というものは、現行法でいえば保険者指定するものがとっているわけです。これは一指も触れることのできないものという形になっておる。そういう形態のものなんです。七万の零細な開業医とは違った待遇を受けている。それはいずれあとで私は具体的に示しますが、違った形になっている。皆保険をやろうとするならばみな同じ出発点に並べなければなりません。そして全部が同じ保険医療機関、こういう形をとって、そしてそこで働いておる医師薬剤師歯科医師もみんなまず本法律のワクをかぶせて、そしてそれからのけてくればいいのです。ところがまず保険医療機関というものを知事指定するものだけに限ったために、この法律ではどういうことが規定されておるかというと、現行法でいえば七万の開業医を対象にしておって、あとは対象にしていない形が、極端に言えば出てきているのです。現在の形が出てきている。従ってたとえばこの法律でいえば、特定の一医療機関指定をされた医師がインチキをやっても、それはこの保険法の保険医の取り消しを何にも受けないのです。保険医じゃないのだから………。同じ医者で、同じ健康保険法に基いて診療に従事しておる者が、片一方はたまたま指定を受けたがために冷酷無情な法律規制を受けるけれども、片一方は悪いことをして水増し請求をやろうと何をしようとそれは何にもないのです。少くとも二号、三号の思想のものについては何にもないということなんです。こういうことはおかしい。しかも保険局長の方では最近健康保険組合に対して通達を出している、保険料というものはなるべく均等にやりなさいというような加速を事業主に出しておきながら、この治療面についてはこういう工合にやはり特権的なものを認めていこう、こういうことはいけないですよ。従ってこの法律というものはこんなにたくさん膨大に書かれておるけれども、規定されているのは一切保険医療機関についてだけなんです。従って日本の社会保障制度というものは、社会保障の形はできているけれども、二号、三号で特殊なグループができる、そういうことはいけないです。もしあなた方がこういうことを認めるならば、先般鉄道病院とか逓信病院というものはいけないということをあなた方は指摘されたが、その論議と矛盾するのですよ。鉄道病院というものが運賃でもうけた金を鉄道病院の経理につぎ込むことはけしからぬということを先般言った。そうすると、こういうところも何も言われぬということになれば、そういうことは言う必要はない。そういうところについてはあなた方はメスを加えておるが、自分の所管のものについてはこれはノー・タッチだ、ほかのものには触れさせない、こういう形ではいけないですよ。その点どうですか。
  39. 高田正巳

    高田(正)政府委員 どうも滝井先生非常に誤解していただいておるようでございますが、先ほどお話がございましたように、現在診療報酬の四五%も受けておる医療機関というものが保険者指定するものということになっておるのは非常にけしからぬじゃないか、――けしかるかけしからぬかは別といたしまして、そういうことでないようにしようというのが今度の改正法のねらいなんでございます。現在は国立病院国立療養所もそれからたくさんありまする公立病院というものも全部保険者の推定するものというものに入っておりますので、それで四五%というものが保険者指定するものの方に支払われておるわけです。それを直そうということが今回のねらいなんです。なぜ現在法律建前ではそういうふうになっておるかと申しますと、御存じのように、個人の医師をつかまえて、保険の診療担当をしてください、よろしいという契約をしているから、――そうするとそういう国立病院公立病院に勤めております人は身分が公務員であります。それで公務員が保険者と個人的にそういう契約をするということはいろいろ問題がございますので、それらの点も含めまして、現在は保険者指定するものという場合には医療機関というものをつかまえているわけです。一般保険医の場合には個人をつかまえておるわけであります。そういうふうに現在の個人をつかまえた建前というものが存在いたしますと羽状のようなことになる、それではいろいろおもしろくないというような意味から今回のように改正をいたしたい、こういうのでございます。従いまして今回の改正、かかりに実施いたされました場合には、保険指定医療機関というのが非常に多くなりまして、現在の保険者指定するものというものはほとんどが指定医療機関になるわけでございます。従って今先生が御指摘のようなことが改正法によって変っていくわけでございます、解消されていくわけなんです。しからばなぜ二号、三号を残したか、保険診療を担当するのだからすべて保険医療機関ということにしたらいいじゃないかというお説でございます。もし保険医療機関というものの言葉意味保険診療関係がある、あるいは担当する医療機関ということでお使いになるならば、二号、三号も保険医療機関でございます。ただ法律上の用語といたしましては、一号の病院診療所と二月、三号の病院診療所法律上の立場が違うわけでございます。従いましてわれわれはこの法律の書き方といたしまして、一号のものに指定医療機関という言葉を使ったわけであります。しからば二号、三号は治外法権か、これはほとんど保険医療機関規定ばかりであって、二号、三号について縛る規定はないじゃないかという仰せでございますが、四十三条ノ十六で、保険医療機関に適用される条文が準用されることになっておるわけなんです。従って二号、三号といえども決して治外法権ではございません。一号と同じように保険診療をやっていただくわけでございます。ただ、医療機関性格から、組合の直営病院で、みずからが現物給付をしておるということになりますれば、これは診療報酬支払い問題が起らないのでございます。法律上それだけの相違かあるわけなんです。その病院を維持経営して現物で給付をすれ、ば、保険支払いをする者と給付をする者が同一人でございますから、法律診療報酬支払いという問題が起らないわけです。従って、そういう医療機関だけを一般医療機関と区別しただけでございます。今大体説明を申し上げましたように、先生が御指摘のようなことが現状になっておりますので、むしろそれを改めていきたいというのが改正法のねらいでございます。それには医療機関そのものをつかまえて契約していきませんと、個人をつかまえてやっておったのでは現状のようなことになるわけです。その辺を法律的に整理して、実情を先生の御希望になっておりますような方向に改めたいというのが、今回の法律改正趣旨でございます。
  40. 滝井義高

    滝井委員 あなたは口ではそうしたいとおっしゃっております。しかし、法律が出てすぐそういう実情にいくかと言えば、もしそういう形になると大学病院はつぶれますよ。今実例を出してみますが、この前要求しておいたビキニの思考の診療報酬請求書を、だれか一枚でいいから出してみて下さい。久保山さん以下だれか一人でよろしいが、一カ月一件当りの請求は幾らになっておりますか。
  41. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ビキニの資料の御要求がございましたが、先般も申し上げたようにこれはいろいろデリケートな関係もございますので、それらを研究してから御提出いたしたいと考えておるわけでございます。ビキニの問題は非常に特殊な事例であり、病気としても今までなかったようなものでございますので、一件当りの点数は非常に高くなっておるだろうと思います。ただ、これはああいう国際間の問題にもなりましたので、私の聞いておりますところでは、どういう名目でございましたか、約三千万円の金を米国から船員保険が受け入れまして、その治療は船員保険の運用としてやったわけでございます。ただいままで使用しております金額はまだ二千万円程度と聞いております。
  42. 滝井義高

    滝井委員 健康保険保険医療養担当規程というものがございます。その十条に、「中央社会保険医療協議会において認められない特殊療法又は新療法等は、行ってはならない。」と書いてございます。ここに速記録を持ってきておりますが、私はビキニの事件が起ったときに、船員保険でやってはいけないということを主張したのです。なぜならば、健康保険というものはこういう規程をちゃんと作っておる。ところがそれをやられた。もしこれを開業医がやっておってごらんなさい、どうなりますか。この一号の病院でやってごらんなさい、これは大へんなことです。東京第一病院のようなところでやったからこそやれている。しかも健康保険で認められない療法をやっている。健康保険は研究的なことを認めていない。たとい米国から金が入ったにしても、やることができないことになっている。あれは別個の建前でやらなければならない。ところがそれをやった。ああいうことを東京第一病院あたりが特に許されている。今後いわゆる都道府県知事指定する医療機関となって一般の開業医と同じ形になったときにそういうことができるかというと、これはおそらくできないと思う。もしそういうところでできれば私的の医療機関もどんどんやってよいでしょう。今度のクリスマス島における実験のようなことがだんだん行われてくれば、ビキニの被災者と同じような状態がいろいろ出てくると思う。そうすると、これは重大なことでございますから今後われわれの方でやりますと言い、被保険者がやってくれと言ったならば許すのですか。その当時草葉厚生大臣は、被保険者がやってくれと言ったからやったという答弁をしている。そうすると、現実に具体的な問題になって、すべて東京第一病院のように指定する病院になった場合、あなたは今そういう言明をされましたが、すべて政府管掌のもので取り扱っていくということになれば、これは日本医療に重大な変革をもたらすことになる。あくまでもそういう方針でいくのかどうか。とにかく健康保険でやったことは明らかである。しかもこれは療養担当規程に違反をしている。そこらあたりを明白にして下さい。
  43. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ビキニは健康保険でなく船員保険で治療いたしたことは事実でございます。その当時滝井先生が、それは船員保険でやるべきではない、別個の措置でやるべきであるという御主張をなすったことは聞き及んで承知をいたしております。ただ、政府といたしましては、いろいろ研究の結果、船員保険の運用として、これを非常に例外的な事例として、まず船員保険でとり行うということに方針がきまりましてさような措置をいたしたわけでございます。しからば中央医療協議会云々という、そういうことが保険医療として果して妥当かどうかという問題が起って参ると思いますが、実際問題といたしましてこれは非常に特異な例でございますし、また若干理屈をこねてみますれば、ああいう病気は医療協議会で治療指針とかなんとかいうことはまだ作っていない新しいものでございまして、たとえば結核治療指針というようなものに即さない保険医療が行われました場合にはそれはいかぬということになりますけれども、治療指針というものもああいう新しいものでございますので別になかったわけでございます。従いまして、日本の医学をあげてこれをどうするかということで行われました医療でございまして、その辺のところは、あの事柄が非常に特異であるということと、それからそういう新しい病気があって、それに対して日本の医学が万般の知能を傾けてやったということのこの三つから、私どもとしては例外的な考え方といたしまして、これを船員保険医療でやったといたしましても、特にそれがはなはだしくけしからぬ運用であったというふうには考えないのでございます。しかしながら非常に特異な例でございますから、若干の問題点はあろうかと存じますけれども まずあのときの措置といたしましてやむを得ざる措置ではなかったか、かように考えておる次第であります。
  44. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、医学の進歩のために研究的にやることも特別の場合は健康保険においても認める、こういう了承を得て差しつかえありませんか。
  45. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一般的に研究を健康保険の費用でやっていただくということは、これは一般的な問題としてはとてもさようなことを認めるわけには参りません。
  46. 滝井義高

    滝井委員 ビキニの場合にはお認めになった。それを審査の場合、幾らかでも削りましたか。
  47. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは削りましたかどうか、その点私承知しておりませんが、研究したと同時に、あれは治療であったわけで、日本でまだなかった事態なので、日本の医学が寄ってたかって最高の知能を傾けてとにかくこういう措置をいたしたものでございます。しかも先ほども申し上げましたように、その費用としては船員保険の財政以外からとにかく財源も入ってくる、こういう非常に特異な一つの事柄でございまして、これをもって一般の開業医あるいは一般病院診療所自己の研究をやるために健康保険の金を使ってやってよろしいか、そこまで特異な事例を一般に推し進めるということはいかがかと私は考えるわけでございます。
  48. 滝井義高

    滝井委員 私はいわば問題の所在を浮き彫りするためにビキニの患者の例を実は出した。私は実はこの法文の内容をわかって質問しているのです。きのうおそらくあなたの方は全部のものを一号に入れますと答弁をしてくるだろうと推定をして質問をしたら、その通り一号に入れますとあなたは言った。特定のもの以外はほとんど全部一号に入れてしまう。大学病院や何かも一号に入ることにたる。そうすると、日本の医学の進展というものはあり得るかということなんだ。今度大学病院健康保険でやってごらんなさい。絶対に医学の進歩はありません。今大学病院がもてるのは、健康保険でもビキニの患者のような取扱いをされておるところに大学の進歩がある。それを今度は大学病院も全部一緒に医療機関にし、しかもそこに働く医者を全部講習を受けさせて保険医にしてしまうわけなんです、講習を受けなければ保険医になれないんだから……。そうすると、これは大問題が起ってくる。あなた方が今そういう言明をされたけれども、そういう形でいくと将来が心配だから、浮き彫りをする意味において私は言っている。あなた方はこの法律を通すために、何でもここをのがれればいいと思って、大学病院でも何でも指定をいたします。いたしますならば、大学に働く医者は全部保険医になって、その登録をしなければならぬ。大学では必ず過剰診療です。過剰診療は研究的な治療が行われるから、それは審査会に出さなければならない。そうすると、これは全部削られますよ。そうなると、これは大へんな混乱です。この一つの例をあげてみても、この四十三条の一号、二号、三号というものに含む意義というものがいかに重大かということがはっきりしてくる。この点大学も今後やるという御答弁ですが、大体医学の進歩についてはどう考えるか、大学の臨床的な研究というものはどうなるかということです。
  49. 高田正巳

    高田(正)政府委員 大学の病院につきましていろいろ問題があることは先生御指摘の通りでございますが、私どもといたしましてば、大学病院国立病院公立病院も全部一号で一般的な医療機関と同じような取扱いにいたしていくことでこの法律を書いておるわけでございます。  それで日本の医学、医術の進歩をどうするかという仰せでございますが、先生の御意見では、大学病院とか国立病院というものは一般的な扱いをしないで、むしろ二号、三号のように特例にしたらいいという御意見やに拝承をいたしましたが、そういうふうな御意見も確かにあり得ると思います。あり得ると思いますけれども、私どもといたしましては、大学の研究というものはまたそれぞれ研究費なり、いわゆる施療忠君というものもあるわけでございまして、やはり研究はそちらの方で行われるのが筋である。研究を保険の費用で行うという建前を容認するような制度の立て方はやはり不適当ではあるまいか。世間で大学病院に対するいろいろな保険取扱い上の御批判というようなものも聞いておりまするので、あれこれ勘案をいたしまして、一号で参るという予定で法律を書いたわけでございます。  なお現在の大学病院におきましても五十のうち約十ばかりがこの保険者の特別な契約をいたしておるのでございまして、その他の四十程度は契約の内容は一般の診療と同じ診療をやっていただくという契約になっております。現状もこの程度まで参っておりまするし、それらのことをもあわせ考えまして、この辺は私どもとしても立案をいたします際に相当迷った点でございますけれども、かように一応制度としては筋を通して判り切ってものを考えておる次第でございます。なお運用等につきましては十分許される範囲で実態に即して参りたい、かように考えておるわけでございます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 現在十ばかりやっておるものは保険者指定するものになっておるわけですね。そうしますと、その保険者指定するものという形になっておる場合に、それは全部基金に審査請求書を一々出してやっておるものか、あるいは特別の取扱いとしてノー監査で全部やっておるのか、その点はどうですか。
  51. 高田正巳

    高田(正)政府委員 十だけが保険者指定するものというわけではございません。大学病院のようなものは、現行制度におきましては、先ほど御説明をいたしましたように、全部保険者指定するものということになっておるわけでございますが、その保険者指定するものという場合には、御存じのように、保険者とその医療機関とが、こういうふうな保険診療をいたします、報酬はこういうふうにして払いますという契約をいたすわけでございます。その契約の内容が、大体そのうちの七、八割程度は普通の保険診療と同じ内容で契約をしておる。十ばかりのものが若干変った契約の内容を持っておるということでございます。  それから、基金につきましては、全部保険診療をやっていただいておりますので、これはその意味で全部基金に請求をしていただいております。
  52. 滝井義高

    滝井委員 十ばかりは全部基金に請求しておるそうでございますから、それでいいと思います。とにかく、原則を立てたならば、それはやはり貫いていかなければならぬと思う。問題は、おそらくあと残っておる四十ばかりというのは、いわゆる昔の帝国大学というところは、おそらくやっていないだろうと思うのです。たとえば、東京大学、九州大学、京都大学、東北大学、こういうところはやっていないのじゃないかと思いますが、そういう点はどうですか。
  53. 高田正巳

    高田(正)政府委員 どうも私の申し上げ方が足りなくて恐縮なんでございますが、今先生仰せにたったようなことじゃないのでございます。大学病院が大体五十ぐらい、保険者指定するものとして、今契約をしておるわけでございます。そのうちの十ばかりが、その契約の内容が、一般保険診療とは変った契約の内容を持っておる。あとの四十ばかりは、これは普通の保険診療をやり、普通の報酬を支払うというような内容々持った契約をしておるということでございます。しかも、これらの約五十ばかりの契約を結んでおります大学病院請求をいたされますのは、この十の場合も四十の場合も、全部基金を通じておる、こういう実態でございます。
  54. 滝井義高

    滝井委員 大体その実態はわかりましたが、そうすると、いわゆる昔の帝国大学ですね、今の総合大学全部がこの五十の中に入っておりますか。――入っておるそうですから、そうしますと、問題は、いよいよこの法律が実施された場合、そこに働いておる保険医保険薬剤師歯科医師の問題が出てくるわけです。この取扱いを一体どうするかということです。これに対する構想を承りたい。
  55. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これは御希望によりまして、登録を願い出られれば、医師である限り、保険医の登録をいたす所存でございます。ちょうど今日日赤病院なんかがそういう形になっておりますが、これは保険者指定するものという現行法扱いになっております。中にも幾らでも保険次がおいでになるような格好でございますが、大学病院におきましても、御希望によりまして登録をいたす、かような取扱いにいたす所存であります。――一つ申し上げることを間違えました。現行の日赤病院と同じになるというのは、間違いでございます。日赤病院なんかも改正法の上におきましては、一号の保険医療機関ということになりまして、その中に勤務されまする医師につきましては、今大学のことについて申し上げましたように、御希望によって保険医の登録をする、こういうことになっております。
  56. 滝井義高

    滝井委員 これから少しむずかしくなりますが、その場合に、総合病院の中の、あるいは大学病院の中の一つの科、たとえば内科なら内科が――この法律建前でいくと内科も一つ医療機関になっていると思うのです。そうしますと、内科が取り消された場合に、一体他の科にどういう影響が出てくるか、伺いたい。
  57. 高田正巳

    高田(正)政府委員 指定の取り消し、すなわち契約の解除ということになりますが、指定を取り消すような場合には、内科だけ機関指定を取り消すというふうなことには法律上なりません。指定を取り消すといたしますれば医療機関の一本で取り消す、契約をする場合にも一本でいくということに相なります。
  58. 滝井義高

    滝井委員 これはあとで一部負担にも触れてきますが、初診料は一つ医療機関について初めて一部負担という百円なら百円があるわけです。従って私がきょう内科にいって、その午後今度は耳鼻科にいけば、これは初診料を払うのですよ。医療機関としての取扱いを各科独自に受けてきている。内科か悪いことをした場合、全部取り消すことが、私は筋だと思う。ところが法律の建て方はそうなっていない。法律はそれぞれの機関別に取ることになっている。これは一体どういうことになるのです。
  59. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一部負担の関係では、現行の制度で初診料を取り得るところとして扱っておりますところは一医療機関というふうにみなしております。これは一部負担の方だけでそういう規定を置いておるわけであります。そういたしませんと現行制度との非常な混乱が怒りますので、さような取扱いにいたしたわけであります。しかし機関指定とか取り消しとかいう場合におきましては、先ほど私が申し上げましたように、その科だけを取り消すというふうな扱いには相なりません。一部負担のやり力につきまして現行制度との混乱を防ぐというふうな意味合いにおきまして、一部負担の場合だけについて、法律上そういう書き分けをいたしておるわけでございます。
  60. 滝井義高

    滝井委員 まず今指摘したような点に思想の混乱が出てきておるということが一つと、それから大学病院というのは文部省所管の、いわば国が開いておる病院なんですね。そうしてその国が開いておる病院に使われておる国家公務員である保険医が、あなた方の出頭命令で出頭しなかったら、その医療機関というものは取り消されますよ。法律の建て前としてそういうことができますか。厚生省がやれますか。小さな私的医療機関ならそれもできると思うが、堂々たる東京大学病院の一事務員が不正請求をやって、それがわかったというときに、これは取り消すでしょう、大体そういうことができますか。これは大臣一つお尋ねしたいの一ですがね。
  61. 高田正巳

    高田(正)政府委員 そういう問題は大学病院のみならず一般病院でもあり得るわけでございます。その地方に医療機関がけかにはないといったふうな場合に、その医療機関を取り消してしまったならば非常に困るというふうなことがあり得るので、私どもといたしましては、機関の取り消しというものと、保険医の登録の取り消しと、二つ置いておるわけでございます。さような場合におきましては、かりにある個人の力が責任を負っておられるような場合におきましては、その個人の方だけを、保険の契約の相手方として、保険診療に従事されることだけを排除いたしまして、機関はそのまま残していくということもできるように運用ができますような法律上の組み立てにいたしたわけでございます。
  62. 滝井義高

    滝井委員 そういうお役人方の自由裁量によって、ある場合には――だから私は言うのです。ある特権的な大きなところには運用によって、それはその地区に医療機関がないから許します、しかし小さなざこみたいなところは切って切って切りまくって切り捨てていく、こういう法律の立て方はないと思う。上は昔の東京帝国大学であろうと、一いなかの、いわゆるとうふ屋に三里何とかに十里のようないなかの機関であろうとこれは同じなんです。もし山奥のいなかで一軒しか医療機関がないのに、たまたま不正請求があってそれを切られた場合にはそこの住民は大へんです。だから、法律の立て方というのはやはり一本でなくてはいかぬ。私が問題の根本というものはこの匹十三条のここから出発しているというのはここです。この法案の立て方は四十三条が基礎ですよ。これによって一切のものが組み立てられていっている。だから私は、おそらくあなた方はこれは大学病院や何かは二号に入れていくであろうという考え方で一応一言ってみた。私はやはり筋としては全部一号に入れる。だから二号、三号は要らぬというのが私の主張なんです。一本にしていくべきだというのが私の主張なんです。そうして特別の場合には特別の例外を法律で作っていこうという考え方で私たちはいた。ところがあなた方の立て方はそうじゃない。大学病院も今までは特別のものに扱っておったけれども、今度はこっちへ全部入れてしまうという御趣旨でございます。その通り私賛成いたしますからやっていただきますが、しかし賛成するにしても、今言ったような取扱いの不公平は許されぬということなんです。とにかく病院がそこにできたということは、自然発生的に必要だからできた。どんなに病院が軒を並べてあっても、どの一つを取ってもそこに何人かの患者が、大衆の何人かが御迷惑をこうむることは確実なんだ。それは東京大学が何千かの学生を養い、何万かの患者を見ているが、これはただ比重が大きいか小さいかの違いだ。しかしその大きいか小さいかの違いは、法律の前には平等なんです。だから私が冒頭に、一切の保険医療機関というようなもの、そこに従事する者、これらのものが法のもとに平等であるかどうかという質問をしたのはそこなんです。そうすると、あなた方の四十三条の十二の指定取り消しの条件を見てごらんなさい。これは大学病院でもなんでも一挙にやられてしまう。そうすると実際に国立病院というものが、あなた方厚生省の所管のものが、今度は一保険局によって取り消される形になる。これは大臣の首を切るのと同じです。責任者は大臣なんですから。だから極端な言い方をすれば、一監査をやる事務官の筆先一つによって大臣の首が飛ぶということになる。これはそういう法的の矛盾がある。だからその点大学病院も今後やる。やらないならば四十三条の十二はみな削っていただしたいと思う。
  63. 高田正巳

    高田(正)政府委員 法は平等に私どもは書いてあるつもりでございます。今滝井先生がおあげになりましたように、たとい一人の診療所といたしましも、非常に山間僻地であってそこに他の医療機関がないというふうな場合におきしましては、その医療機関が少々のことがありましても、これはなかなか取り消せません。そういう意味合いを私は先ほど申し上げたつもりでございます。大機関でありましても小機関でありましても同じことでございます。従いまして、指定の取り消しとか何とかいうふうなことは、さようなことをも考慮に入れてやらなければならぬことでございます。従って四十三条の十二に指定の取り消し得る場合がいろいろ書いてあるわけでございます。しかも、これらを行うには知事だけでやりますと、あやまちがなきにしもあらずということで、医療協議会を経てやることに相なっておるわけでございます。私どもは大病院、大学病院といえども、小さい診療所といえども、あるいは公的のものといえども私的のものといえども、その間に区別をつけるような規定もいたしておりませんし、またさような運用をいたす所存でもございません。
  64. 滝井義高

    滝井委員 局長さん、指定取り消しは中央社会医療協議会の議を経ますか、経ませんでしょう。
  65. 高田正巳

    高田(正)政府委員 諮問をいたすわけでございますから、議を経るわけでございます。先生は、議によるという例の再指定を拒否する場合の条文のことを頭にお置きだと思いますが、これは議によるでございます。その他の場合には諮問をいたすわけでございますから、必ず議を経るわけでございます。
  66. 滝井義高

    滝井委員 四十三条の十二に違反した場合の、中央社会医療協議会の諮問事項は、どこにありますか。
  67. 高田正巳

    高田(正)政府委員 四十三条の十四の第二項に明記してございます。
  68. 滝井義高

    滝井委員 これは諮問事項でしょうが、諮問事項というものはしてもしなくてもいいことなのです。たとえばあなた方がこの法律を出すときに、中央社会医療協議会に諮問しましたか。諮問しないじゃないですか。中央社会医療協議会と社会保険審議会と二つ並んでおる。その社会保険審議会に諮問しようといったときに、諮問しなかったじゃないですか。この法律を出すときでさえもしないものが、自分でやるときにするはずがない。諮問事項というものは、してもしなくてもいいのです。あなた方は都合が悪ければやらないし、都合がよければします。この法律を出すときに、現実に私たちはこれを諮問しなきさいと言った、社会保険審議会にやりなさいと言ったけれども、あなた方はやらなかった。もうあれは報告だけすればそれでよいのだ。八木君などもずいぶんこれをすることを主張したが、しなかった。下問事項というのは、諮問してもしなくてもよい、必須の条件ではない。活殺自在の剣はあなた方が握っておる。
  69. 高田正巳

    高田(正)政府委員 四十三条の十四を読んでいただきますと、「都道府県知事保険医療機関若ハ保険業局ヲ指定シ若ハ共ノ指定ヲ取消シ」云々の場合には「地方社会保険医療協議会二諮問スルモノトス」ということになっております。従って法律でかように書いてございます場合に、諮問の手続を省略いたすということは違法でございます。諮問をいたさないということは絶対にあり得ないわけであります。現行法律におきましては、四十三条の五に「保険医保険薬剤師指定指定ノ取消及保険診療ノ指導二関スル大綱ヲ定メントスルトキハ」というふうに書いてございますが、今回のものにおいては大綱というふうな言葉も削ってございまして、はっきりと、指定を取り消す場合には必ず諮問をしなければならぬというふうな条文になっておるわけでございます。現在の実際の逆用におきましても、滝井先生よく御存じのように、指定取り消しの場合には必ず地方医療協議会に諮問をいたしております。
  70. 滝井義高

    滝井委員 あなた方は都合のいいときにはしますとおっしゃるけれども、同じ法律の二十四条の二に「厚生大臣政府ノ管掌スル健康保険事業ノ運営二関スル事項ニシテ、企画、立法又ハ実施ノ大綱二関スルモノハ予メ社会保険審議会ニ諮問スルモノトス」こうなっておる。同じなのです。諮問しなかった。報告だけだった。この法律を出すときに政府自身が違反をしておきながら、今になったらそれは諮問をしますと言ったって、私たちは受け取れません。殷鑑遠からずで、もうすでにあなた方がそれを実践してみせた。諮問しなかった。だからそれはもう答弁をもらう必要はない。この法律を出すときには実際やらなかったのだから。やらなければならぬのなら、これはもっと明白に――実際にできもせぬことをこう詳しく水も漏らさぬように書く必要はない。相手は大半な患者を治療するゼントルマンの医者なんです。だからそういう場合情勢によってあれならば、これはそのときそのとき確聞機関を開いて協議をしてみたらいいのです。そうこまかく何もかも手かせ足かせをはめる必要はない。この条文を見てごらんなさい。一体こんな法律がありますか。一つあなた方の国家公務員法にこんな条文を入れてごらんなさいよ。役人はみんな反対しますよ。局長国会でうその答弁をしたら首だということを書いてごらんなさい。一体どうします。大体そういうことが許されるのですか。出頭して答弁しなかったら、これは指定を取り消すのだ、あなた方は国会に出てその答弁が間違っておったら首だという条文を国家公務員法に入れてごらんなさい。あなた方みんな大反対ですよ。これはそれと同じなのです。その場合に、ただし大臣だけはこれは政党人だから別である、こういうことなんです。大学病院だけは情勢によっては別にいたします、こういうことなのです。やはり法律というものは一視同仁、平等でなくちゃならぬ。とにかく二十四条の法律、もとの法律々出すときに諮問をしなかった張本人が、今度いよいよ自分の番になったら、諮問をすることになっておりますから御心配要りません、こう言ったってだれも信用しません。それは私は信用いたさないことにいたしております。その点何か御答弁があれば一つ……。
  71. 高田正巳

    高田(正)政府委員 答弁は要らぬとおっしゃいましたが、事態を明らかにしておきませんと誤解を起しますので、申し上げておきます。今回の法律案を提案をいたしまする際に、あらためて諮問という形を社会保険審議会にとりませなんだことにつきまして、それをそういうふうにしたから、今度の指定の取り消しのとき、四十三条の十四の場合にもやらぬかもしれない、やると言うけれども信用できたいという仰せでございますが、条文をごらんいただきますと、社会保険審議会の場合におきましては「企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ」と書いてございます。それで指定の取り消しのときには、現行法は先ほど申し上げましたように別の条文でございますがやはり「大綱」ということが書いてございます。今回の改正案ではその「大綱」が削ってございます。そのものずばり、指定を取り消す場合には個々の問題について諮問をいたすという改正にたっております。この意味におきまして、現行法よりは改正法の方が先生の御希望になっております方向に改正がいたしてあるということが一つ。  それからもう一つ、私どもが法律の提案をいたしまする際に諮問をいたさなかったのは、前回諮問をいたしました大臣の諮問事項と今回の諮問事項につきましては、諮問いたすとしますればその諮問の内容はほとんど変っておらない。大綱については前回に諮問をいたしそのときに答申をいただきましたその範囲である、こういうふうに私どもは考えたのでございます。例をあげますれば、一部負担の点が前回とは変っておりましたけれども、前回社会保険審議会には私ども一は三つの考え方を提示して質問をいたしております。社会保審議会におきましてもその三つの考え方についていろいろと論議があって、そうして答申をいただいておるわけであります。今回前回の案と変えた一部負担の形式を出しておりますけれども、考え方はその三つの考え方の中の一番最初のものから三番口の考え方に移ったというだけでございまして、すでに前回のときに今回のような形式の一部負担につきましても、御論評をいただき、御答申をいただいておるのでございます。従いましてさようなわけで法律には「大綱」と書いてございますし、必ず立法のときには諮問しなければならぬというわけのものではないということが法律上の条文から一つ、それから実質的な内容といたしましては今のようなことと、それからさらに行政上の先例等も、かような場合にはあらためて再諮問という形式はとらないという先例の方が多いのでございます。従ってそれらからいたしまして、私どもは諮問と言う形式をとらなかったのでございます。しかしながら社会保険審議会を開きまして、そうして、事の内容は十分御報告をいたし、御懇談をいたしたのであります。さようなわけ合いでございまして、今回の法律案の提案の手続がかようなことであったから、四十三条の十四に地方医療協議会に保険医の、医療機関指定取り消しというふうなものを一諮問すると書いてあるけれども諮問しないかもしれない、それは信用できぬというふうな仰せは、今私が御説明をいたしましたような法律条文等からいたしまして、決してさようなことには相ならない。もしさようなことで市を処理いたしましたならば、その行政処分は違法な行政処分ということに相なります。従ってそれらは瑕疵ある行政処分としてその取り消しをされたり何かする可能性のある違法な行政処分だ、従いましてさようなことは行われるはずのものではございません。
  72. 八木一男

    ○八木(一男)委員 関連して……。ただいまの保険局長の御答弁の中で、健康保険法等改正案を社会保険審議会に諮問されなかったことで、今滝井委員の御質問に対して御説明がございましたけれども、今の保険局長の御答弁は、非常にあるべきことでない御答弁であると私は思います。大綱ということで逃げておられますけれども、一部負担というものは村立扶助を精神とする健康保険法の中の最も中核で、最も大事なところでおる。一部負担の案がこの前の諮問された案より違っておることは明らかでございます。違っているものをすりかえて、大同小異だからといああなた方の判断でやっておるだけだ。大綱という意味は、とにかく健康保険法の中の一番大きなところを変えるということは当然大綱の中に入る。その前の案と違っておる以上は出さなければならぬ。そういうことと、もう一つ、その前の答申のときに社会保険審議会でいろいろ審議された実質上のそのときの状態は、六十七億の赤字があるから、そういうことで政府側が質問し、そして一部負担が二十三億の財政効果があるからという説明によって審議されたわけであります。それが三十一年度の赤字の推定の見積りであったはずです。ところが社会保険審議会に去年の十一月に諮問じゃなしにいろいろ説明をしようとされたときには、厚生省の発表では四十八億に赤字の見積りが減った、現在は三十六億に減っておる。そういうふうに根底に重大なる変化がある。だから全然同じ法律内応でも、そういう根底が違っておれば、社会保険審議会の意見が違うことも十分あり得る。おまけに社会保険審議会のメンバーが変っておることも、厚生省自体は十分御承知のはずだ。そういうことを知りながら、ただ自分たちの固持する法律を早く出したいために、そういう簡便な方法をとられた。そのようなことをする政府がほんとうに法律条文通りきちんと事務的に、ちゃんと諮問をされるということは疑わしい。この前の諮問をしなかったことが間違いであるという御答弁であれば、これから諮問をするときに間違いなくやるということは信頼を受けるのですよ。あれは大綱であるとか、状態が変らないとか、ちょっとの相違であるといって、諮問しなかったことが正しいよいことであるというようなお考えを打っておられる厚生省であれば、断じてそのような運用に対しては将来信用ができないのであります。その点につきまして大臣の御答弁を願いたいと思うのです。
  73. 神田博

    神田国務大臣 ただいま御審議願っております法律案提出に当りまして審議会の議を経なかったということにつきましては、政府委員から答弁された事情によって明らかだと思っております。それからこの改正案の中に盛られておりますが、今度に諮問をするとはっきり条件をつけておりますから、今度の場合は個々の具体的な保険医として指定する場合も、あるいはまた機関もその通りでありますが、同時に取り消す場合も必ず諮問をする。これは明らかにそういうふうに考えております。
  74. 八木一男

    ○八木(一男)委員 関連でございますから、まあ御答弁によってはもう一問ぐらいでやめますけれども、大臣が、この法律を社会保険審議会に昨年の十一月に諮問をされなかったことについてよいと思っておられるのだったら、重大な問題でございます。よいと思っておられるのかおられないのか、それによっては関連質問を続けるか、後の機会に追求をいたしますが、その点はっきりお答えを願いたいと思います。局長の御答弁に制約されずに、大臣として一部負担が健康保険の中の大網であるかどうか、それから状態が違っているのに諮問をしなくていいかどうか、この点についてはっきりと御答弁を伺いたい。
  75. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。私は提出の際の事情は、担当でございませんからつまびらかにしておりませんが、担当いたしまして巨細に調査をいたしました結果、ただいま政府委員答弁されておることで了承いたしております。それから一部負担の点につきましてどういう考えを持っておるかというお尋ねのように承ったのでございますが、この改正案に盛られておりますことを御審議をお願いしておる事情からお考え願いまして、今の改正案を支持しておる、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  76. 八木一男

    ○八木(一男)委員 大臣はちょっと取り違えておられます。一部負担自体についてお伺いしたのではないのです。一部負担というものは健康保険の大事なものである、それを変えるということは健康保険の大綱に関する立法の条件である、だから諮問をしなければいけないということを伺っているのであって、一部負担自体については後の機会に大臣に十分に長時間をかけて伺いますから、その点はいいですけれども、重要なことであるから諮問をしなければならないという考え方を申し上げている。ところがそれをちょっとぐらい変ったのだからいいと局長が言われている。大臣はその当時そういうことに関係しておらなかったけれども、その前の事情は、どうでもいいのです。間違っておれば政府がもう一度出し直して諮問しれされればいい。大臣は一部負担というものが変わったときにそれを大綱じゃないというような局長のような逃げ言葉の御答弁をされるかどうかという問題なんです。もし御答弁によっては後の機会に十分にまたご質問をさしていただきます。
  77. 神田博

    神田国務大臣 前回の諮問とそれからその後の諮問に対する答申とそう変っておらないという感じを持っております。政府委員の答えた通りの考えを持っております。
  78. 滝井義高

    滝井委員 私はまだ四十三条の一番大事なところをやっておるわけですが、この第二号に「特定保険者ノ管掌スル被保険者ノ為ノ診療又ハ調剤ヲ行フ病院若ハ診療所又ハ薬局」とあるわけです。現在保険者指定するものの中で薬局があるかどうか。
  79. 高田正巳

    高田(正)政府委員 現在は院内薬局は別といたしまして、薬局として独立したものはないと思います。ただ法律上の制度といたしましてば将来出てくる可能性のあるものでございますので書いたわけでございます。
  80. 滝井義高

    滝井委員 昭和十八年の二月三十七日保発第四三六号、保険局長より、北海道長官、警視総監、府県知事通牒が出ております。「薬剤師保険者指定する者としては指定せざる方針を採ること」となっておる。一体どうして薬剤師だけを差別持遇しなければならぬか、その理論的な根拠を一つ承わりたい。
  81. 高田正巳

    高田(正)政府委員 その当時の事情を私はつまびらかにいたしておりませんが、私の想像では、おそらくその当時はさような必要性がなかったからという意味だろうと思います。
  82. 滝井義高

    滝井委員 薬剤師が保健医療を担当してからもうずいぶん長い。すでに薬剤師自身に対してこういう差別待遇をやっている。今度の法律の中で二号にはそういうものがない、実際にないにもかかわらず考えて入れている、しかし方針指定したい方針だ、こういうことなのです。一体これはどういうことかというのです。薬剤師指定しない方針にずっときておるはずです。ところが今度はここでは文章の上だけで、文章のあやを合わせるために薬剤師を入れたのだといえばそうですかというのですけれども、そういう重大なこともあやでは済まされない。もはや療養担当者としては薬剤師というものは対等なのです。
  83. 高田正巳

    高田(正)政府委員 通牒が当時と今日とでは、先生もよく御承知のように医薬制度が変っておりまして、今日は医薬分業という建前になっておるわけであります。従いまして当然ここに薬局というものも考えなければならないという建前にすでに変っているわけでございます。そのことが一つ。それからこれは指定しない方針だといいましても当該保険者指定をすればいいわけでありまして、たとえば健康保険組合でございましても保険者はたくさんあるわけでございます。それらのものが薬局を指定したいというふうな場合におきましては、それを拒否したり何かするような権限も何もない、指定がされいればそれで二号のものに該当するわけでございます。
  84. 滝井義高

    滝井委員 あなたはそうおっしゃるけれども、行政の当局が最高方針として薬剤師というものは指定しない方針だ、こういう通牒をお出しになっておって、そうして保険者指定をすれば自由でございますというそういう答弁ができるのがおかしいですよ。それではこの通牒は撤回なさい。これはまだ生きている。撤回したらいい。
  85. 高田正巳

    高田(正)政府委員 政府保険者の立場で、自分政府官庁のものとしては指定しないとか何とかいう方針であるということと、保険者の立場に立つ場合には平等でございますので保険者として指定しないという場合には、他の保険者指定をしても、別に政府一般行政官庁としてそういう方針を打ち出しているわけではあるまいと思います。従いましてその場合におきましても、政府保険者としては指定しないけれども他の保険者指定をすれば一向かまわないということはあり得るわけでございます。そのことが一つと、それからもう一つは、この法律が成立をいたしますれば当然従来の、何と申しますか通牒その他のものにつきまして、いろいろ検討を加えなければならぬものもたくさんあると思うのです。それらのものにつきましては、今御指摘のようなものにつきましては私ども、当然その通牒ば改廃さるべきものだと考えております。
  86. 滝井義高

    滝井委員 これで終ります。どうも政府保険者の立場に立ったときにそういう方針を出したので、他の健康保険組合等の保険者は自由だとおっしゃいますが、大体大臣の提案理由の冒頭にもございましたように、政府官掌の健康保険というものは日本の社会保障[の一大支柱なんだと、こう大きく出た。政府が今度いざ自分が困ると、いや私も小さな一保険者でございますからと言う。そういう謙虚な態度をとってもらったのでは、審議はこっちの方が対等にできません。それならば、政府管掌健康保険は社会保障の一大支柱なんて言わないで下さいよ。そう大きく出ておる政府がいよいよ困ってくると、いや私も一保険者でございますからと言う。その一保険者はわかっておる。しかし少くとも日本の社会保障の一大支柱としての矜恃を持っておる政府当局がやはり一つ方針を出したら、それに右へならえすることは確実なんです。だからこそわれわれは政府官掌の健康保険を中心にしてこれだけ熱心にやっている、それを認めて下さい。そこらあたり、局長さん矜恃を持って答弁して下さい。
  87. 高田正巳

    高田(正)政府委員 読んでみていただきたいのですが、政府管掌健康保険制度とは申しておりません。「健康保険制度は、」と、こういうふうに提案理由にはたっておりますから、どうぞ御了承願います。
  88. 滝井義高

    滝井委員 もう一つ確認だけしておきましょう。健康保険制度ですけれども、われわれが今言っているのは政府官掌のことを審議しているのであって、組合のことをやっているのじゃない。組合のものは三号になって、ほとんどわれわれの審議の対象外に置かれているようへものなのです、九条の関係はありますが……。そこで最後に確認しておきたいのは、今までの通牒では保険者指定をするもの、こうなったときには保険医として指定しないことになっている。保険者指定するものとなったときは保険医として指定しない、こうなっている。今後も二号と三号についてはその方針を踏襲していく、こういうことを確認しておいて差しつかえありませんか。
  89. 高田正巳

    高田(正)政府委員 二号、三号だけの医療機関である。二号、三号、でも、先ほど御説明いたしましたように一般の診療をいたす場合には、これは一号になりますけれども、そうでなく、二号、三号だけのものについては保険医として登録をする必要性がございませんので、これはする予定ではございません。
  90. 滝井義高

    滝井委員 どうも局長さん、言葉を濁しちゃいけません。しっかり尋ねておきます。二号、三号というのはいわゆる一般国民を診療することができない、こういうことと解して差しつかえありませんね。もし一般国民を対象としてやるのならば、それは一般国民を対象とするなら二人でも、三人でもやれば一号になる、こう解して差しつかえありませんね。ここが一番大事なところですから、はっきり念を押しておきます。
  91. 高田正巳

    高田(正)政府委員 不特定多数人を同時に対象にいたすということになりますれば、それは一号になります。
  92. 滝井義高

    滝井委員 不特定多数人と、こうむずかしくなりましたが、その限界というものはむずかしいのですよ。だからいいですか、私さいぜん言ったように二号というものは、何々「ノ為ノ」ということばこの解釈によって違ってくるのです。もっぱらということになると、やはり何人か来てももっぱらになるのですよ。「ノ為ノ」ということは、われわれは普通「もっぱら」と言う。法律の解釈では、何々のためにもっぱらということなんです。もっぱらやるということは、百人のうち九十人ぐらいやればもっぱらになる。しかし二十人の一般の人が来たら二号も不特定多数と言える。二十人も多数と、ある場合には言える。だからそこらあたりの区別を、あなたは概念が混乱しておる。だから二号というものは他のいわゆる特定保険者のもの以外は全部見ることができないのだ、こういう形をはっきり答弁してもらっておかぬと、一号と二号は同じになってしまうのです。だからそこらあたりはもうちょっと――わからなければ研究してからでもいいです。
  93. 高田正巳

    高田(正)政府委員 滝井先生仰せ通りでございます。二号だけの性格のものは、それ以外のものは見るわけに参りません。一号の指定も受けたいと一人でも、二人でも、三人でも見ては困るという法の建前でございます。
  94. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと保険医療機関というものの中には一号のものと、それから二号のものと、一号と二号と両方持っているものと、三号と、四つあるわけですね。
  95. 高田正巳

    高田(正)政府委員 保険医療機関はいろいろな、たとえば大学病院ならば教育のためとか、あるいは国立病院ならば国立病院の設立目的とか、公立病院はその目的、それぞれたとえば二号の医療機関であれば二号の目的を持ったものがあるし、三号の目的を持ったものがある、いろいろなものがあるわけです。その保険医療機関一般保険診療をやろう、こういう場合には必ず一号の指定も受けなければならぬということでございます。従ってダブる場合がございます。
  96. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。ダブる場合がある、こういうことをはっきりさせてもらっておきます。その場合ダブれば、たといそれが健康保険組合の医局に勤めている医者であっても保険医に登録しなければならぬ、こういうことになりますよ。そうなりますね、それでわかりました。
  97. 藤本捨助

    藤本委員長 午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十四分開議
  98. 藤本捨助

    藤本委員長 休憩前に引き続き、会議を再開いたします。  この際お諮りいたします。第二十四国会より継続審査となっております長谷川保君外一名提出美容師法案につきまして、正規の手続をもって撤回の申し出がありますが、本案はすでに委員会議題といたしました関係上、衆議院規則第三十六条によりまして委員会許可を得なければなりませんが、これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認め、撤回許可するに決しました。     ―――――――――――――
  100. 藤本捨助

    藤本委員長 内閣提出健康保険法等の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険法の一部を改正する法律案の三案を一括議題とし、質疑を続行いたします。八田君。
  101. 八田貞義

    ○八田委員 健康保険問題につきましてまず総論的な問題から質問いたしたいと思うのであります。健康保険法案の問題につきまして、政府当局は医療担当者の方に種々な誤解があるので、今後とも話し合いの場を持って、十分に納得協力の得られるような線を出していきたい、そういう御答弁をいただいておるのでありまするが、私は納得協力を得るような線を出すためには、今までの経過につきまして十分ここで質疑を繰り返しまして、互いの認識の欠ける点を国会の広場において互いに開陳し合うということは必要であろう、こういう観点から、まず今度の改正法案につきまして質問をいたしていくわけでございますが、ただこの法案を審議していく場合に三度目の法案提出である、三度目であるからどうしても政府の面目にかけても通すのではないか、またあるいは医療担当者の側にしてみるならば、二度も流産したようなものを三度目にも提出する、しかも大した修正もなくて出してきたこの悪法を繰り返し繰り返し出してくる、政府当局はわれわれの熱意というものを知らない、あくまでわれわれは熱意を持ってこの法案を粉砕しなければならぬ、こういうような意見が出ておるわけなんですが、私はこれを第三者的な冷静な立場から考えてみますると、感情に走る面が出てきやせぬか、この問題はもちろん感情によって解決さるべき問題ではございません。従ってわれわれは、どうして三回目にこの法案を出さなければならなかったか、そういったことにつきまして大臣にお尋ねするわけなんであります。この法案は、大臣の提案理由の説明によりますと、赤字の問題ではなくて国民保険の樹立のための一環としての法案、そういう国民保険というような大きな見地に立って法案提出されたということになっておるわけであります。この法案は二十五臨時国会提出されたわけであります。これは二十五臨時国会がもう終りに近づかんとするときに出して参ったのであります。それがすぐに通常国会に持ち込まれて継続審議の形をとったのでありますが、どうしてそのような拙速を選ばなければならなかったかという理由、これは大臣事務当局の方から十分にその点については説明されて御了解なすっておると思うのでありますが、せっぱ詰まった、私に言わせれば拙速を選んだというような格好になったわけなんでございますが、そういった追い込まれた情勢になったのはどのような客観情勢からそういうふうになったか、大臣のお話を率直に聞かしていただきたいと思います。
  102. 神田博

    神田国務大臣 お説のように、この法案は鳩山内閣の際臨時国会に提案されたわけでございまして、石橋内閣はその延長というように言われておることはこれは世間公知の通りであります。そこで政府といたしましては、この健康保険法一部改正法案は数年にわたる懸案でございまして、この通常国会にはどうしても解決いたしたい。そこでそういう前提で検討を加えました結果、継続審議のまま御審議をお願いしよう、そうして成案を得たい、こういうことに一致したわけでございます。健康保険財政の赤字だけを対象としたのではなく、石橋内閣におきましては国民保険という大きな医療保障を前提として、そして諸般の情勢を考慮した結果御審議をお願いいたしたわけでございます。そこで今度は岸内閣になったわけでございますが、岸内閣におきましても政府一体といたしまして本法案は至急一つ御審議をお願いいたしたい、こういう経路でございます。
  103. 八田貞義

    ○八田委員 ただいま大臣から割合に平らなお話を伺ったのですが、二十五臨時国会に出すときにはもっと迫られた事情があったはずでございます。今のような国民保険という大きな目的を実現するために健康保険法案を提出したんだ、こういう御答弁でございまするが、この点がなかなか医療担当者の側に納得がいかないというようなことになっているわけなんです。それで私は重ねて大臣にお尋ねいたしますが、もっと切迫した事情からこの法案提出しなければならなかったという状態があったはずでございます。それを一つお知らせ願いたいのです。
  104. 神田博

    神田国務大臣 御承知のようにこの健康保険の実施に伴いまして、最近の経済状態――これは好転したとはいうもののやはり予断を許さない状態なんです。ずっと赤字が続いてきておりますので、この赤字の対策というものをやっぱり立てていかなければならない。そういたしますと政府の一部負担ということも考えなければならないし、それからまた健康保険自体が一種の労務管理として発足してきたわけでございまして、今度政府といたしまして国民保険に踏み切るということになりますれば、やはりそれだけの幅を持った考え方をしなくちゃならぬだろうと思うのです。そこで一部負担というような問題も、受益者負担からいって当然考える。これは程度の問題でございますが、今のようなごく軽い程度のものを負担していただくことは公平な処置じゃないかという問題。それからさらにもう一つ重大な問題は、政府医師会あるいは歯科医師会等の非常に強力な反対を承知しながらこの案の御審議を願っておるということ、私どもの考えから率直に申し上げれば、これはここ数年来医師側においていろいろと御不満を持っている問題がある、たとえば一点単価等の問題にいたしましても、この改正を非常に要望されておる、にもかかわらずその要望されている問題については、政府は考慮するとか研究する、あるいは改正するといって、それはおやりにならない、好まない、健康保険法改正をすることについては医師側としては絶対に承服できないというお考えだろうと私は伺っております。そこで今度は、この健保は、今御審議願っている通りにお願いしているわけでございまするが、そうした長年にわたる御不満と申しましょうか、納得のいかないようなもとに置かれておりまする制度を一つこの際改正いたしたい、健保の通過とともに新しいそうした問題を解決いたしたい、こういう決意を実は持ちまして、今せっかくその成案を急がせておるような実情なんです。そこではっきり申し上げれば、従来医師対厚生省といいましょうか、厚生省対診療側においての紛争とかあるいは意志の疏通を欠いておったというような問題を、これを契機として一つ根本的に打開いたしたい、そうして両者一体となって国民保険医療保障の実をあげていきたい、こういう大きな決意のもとにお願い申し上げている次第でございます。
  105. 八田貞義

    ○八田委員 実は大臣にこの点を御答弁願いたいという私の注文があるのです。今日改悪案だと言われている理由の中にはもちろん誤解も多々あるのですが、しかしこの改悪案というふうに一口にきめつけられてしまうような案をどうしても出さなければならなかったのは、私をして言わしめていただくならば、昨年十月分の診療報酬支払いを年間にどうしても完了しなければならぬ、こういう客観情勢に置かれておったわけです。するとそのような客観情勢のもとにあって、社会党の方からは厚生保険特別会計の一部改正によって三十億円の国庫補助をとろう、それを支払いの方に回そうじゃないか、こういうような提案がされたわけです。ところがこの問題については、自民党の中にありましていろいろと意見があったわけです。というのは、悪い表現になりますけれども、社会党は厚生保険特別会計の一部改正の案を出した、金庫の中に金が入っていることは、だれでもわかっている、予算に組まれた三十億円であるから金剛の中に三十億円は入っている、しかしそれをあけるかぎは正しいかぎでなければならぬ、社会党の案は合かぎで金庫をあけるものだというわけで、自民党としてはどうしても正しいかぎをもってあけなければならぬ、そのためにはどうしても親法案なるものを出さなければならぬ、こういうような状態で、そのときの客観情勢としては、十月分の診療費をどうしても支払いをしなければならぬ、そのためには親法案を出して厄生保険特別会計をはっきりとしようじゃないか、こういうようなことで出して参ったというふうに私は了解いたしておるのであります。ですから結局十月分の診療支払いを三十一年の年末に完了するためには、大蔵省から国庫余裕金の一時借り入れをしなければならぬ、ただしこういう場合でも年度内に返済の見込みがなければ借りることができないのだ、こういう一つの理由と、それからもしも臨時国会にこの法案提出して流れた場合にどうする、あるいはまた流れる場合は別として、継続審議になった場合どうする、――継続審議になった場合にはさしあたって年末に大蔵省から国庫余裕金を三、四十億借り入れまして、そうして危機を回避しよう、こういう考えからこの法案か臨時国会に提案された、こういうふうに私は了解いたしているのですが、大臣はこの点につきまして、私の考えていることが門違いであるかどうかを御答弁願いたいのであります。
  106. 神田博

    神田国務大臣 政府の三十億円を健保財政に入れようということは、今八田委員がお述べになりましたような財政的事情があることが理由にたっていることはお説の通りであります。  それから社会党が、今お述べになりましたような事情で法案をお出しになられたというようなことは、私もお聞きいたしておりますが、しかし社会党の方の提案の理由を私詳細にお聞きいたしておりませんので、どこまでその通りであるかはお答え申し上げられない次第でございます。
  107. 高田正巳

    高田(正)政府委員 去る二十五国会にただいま御審議を願っております保険三法の改正案の提案をいたしました理由は、大臣もお述べになりました通り、二十四国会法案が流れまして、しかも健康保険というものは一日も早く制度の健全化、財政の立て直しをしなければならぬ事情であることは同じような状態でございます。従いまして政府といたしましては、一円も早くやる義務かある意味におきましてはあったわけでございます。さような意味合いで直近の国会、すなわち臨時国会に御提案を申し上げたような次第でございます。なお三十億円の国庫補助金を受け入れるということが相当大きな目的一つであったことも今大臣が、お答えになられました通りでございます。
  108. 八田貞義

    ○八田委員 その点なかなか政治的な含みのある御答弁をいただきまして、そういう御答弁ですと、やはり私は誤解があると思うのです。訳解がどうしても医療担当者の方におっかぶさってくる、そういうような気持がいたすわけでございます。大臣並びに局長から言われているように、表面的な提案理由というものはよく了解できるのですけれども、ただしかし、なぜそういうものを二十五国会に出さなければならなかったかという理由は、あけすけに言うならば、私が今申し上げましたように十月分の診療費を年内にどうしても払わなければならぬ、こういうことが一番大きな原因ではなかったかと私は思うのです。というのは、大臣は御承知のことと思いますが、大体医師というものは、患者を見ましてから診療報酬の明細書を出して請求をいたします。大がい手に入ってくるのは二カ月後であります。ところが医師が開業する場合には二、三百万円くらいの開業資金がどうしても要るわけであります。ところが自分が見た患者の診療報酬費は二カ月おくれて手に入ってくる、そういう場合に現在の医師が一体どうしているかと申しますと、銀行から、社会保険の診療点数を示しまして、それを抵当として金を借りてくるわけです。借金してようやく二カ月間の診療費と生活費に回す、こういう状態になっております。自分の見た患者からすぐに報酬費がもらえない。仕方なしに、二カ月おくれるから銀行から金を借りて生活費に回すのだ、まことに医師としては問題になる点をかかえているわけであります。特に医療機関の整備ということが今日のいろいろな情勢からしまして緊急な問題になっております。そこでレソトゲンやら心電図の設備やらを購入するとそれに税金がかかってくるというようなことで、医師の生活が脅かされているわけであります。さらにまた病院を経営しておるなら人件費を払わなければならぬ。こういうような状態で、十月分の診療費はどうしても年内に払わなければならなかったということが大きな理由であったのです。ですから私は率直に言わしていただくならば、これが大きな原因で、そうして二回も流産した法案提出しなければならなかった、こういうことであります。  そこで大臣に重ねて御質問いたしたいのは、この法案は一月一日に施行されることになっておったわけです。もう一月一日は過ぎてしまいました。今日になってみれば、このような状態に追い込まれるならば、むしろ今日問題になっておる点をもう少し検討して出せばよかった、こういうふうなお考えをお持ちにならないかどうか。
  109. 神田博

    神田国務大臣 健康保険法案の施行を一月一日を目途として御審議願っておったわけでございまして、臨時国会のときには、おそらくこれはその通りの気持であったと思っております。私ども石橋内閣の成立が暮れの十二月二十三日でございまして、継続審議をお願いしようということをきめましたのは、年内迫ってからでございまして、この法案が一月一日から通るというようなことは、そのときには考えておらなかったことでございます。そこで今こういうことでもあるし、抵抗も強いと申しましょうか、内閣もかわったと申しましょうか、何か一つ考えて出すような意見はなかったかという含みのある八田委員のお尋ねだと思います。当時この扱い方につきましても、閣内においても議論がございました。しかし内閣成立早々の際でもございますし、前内閣以来、政府、党が十分御研究の上で御提案になっておったと承知いたしておりまして、国会も召集になっておるわけでございますから、政府としては謙虚な気持で、一つ国会の御審議に際して、政府の意のあるところを十分御説明申し上げて、成立をさせていただきたい、こういうような考えをもちまして、継続審議のまま御審議を願おう、こういうような結果において決定を見たわけでございます。
  110. 八田貞義

    ○八田委員 先ほどから申しておりますように、十月分の医療報酬支払いを年内にやらなければならぬという、客観情勢ですし、それから二回流産したこの法案につきまして、社会保障制度審議会とか社会保険審議会等においても相当の批判を加えておる人が多かったのであります。そこでもしもこれを通常国会に出した場合にどうなるかということについてはおよそ判断がついておったのです。一方においてどうしても金融処置を講じなければ年末の支払いができない。これは医療機関に対して非常な迷惑をかけるから、どうしても臨時国会に出して金融措置をつけなければならぬ。それをやらずして通常国会に持ち込むと、これはどういうことが起るかというと、時期的に見まして三十二年度の予算が終了したあと、あらためて社会保険審議会に諮問しなければならぬ。その結果どうしても法案は大幅に修正される必要が起ってくる。結局国会提出は本年の三月ごろとなるんだ。とても三十一年度赤字対策、金融措置はつけられない、こういう状態になったのでございます。ございますと断定してははなだ申しわけないのでございますが、そういうような客観情勢にあったわけでございます。  そこで、大臣時間がおありにならないようですから、これは事務当局質問させていただきますが、もしも臨時国会でこの法案が成立した場合にどのような財政的な処置が講ぜられたか、その点について数字的に局長からお知らせ願いたいと思います。
  111. 高田正巳

    高田(正)政府委員 臨時国会で成立をいたしておりますと、まず財政的な影響としましては、予算に計上されております三十億の国庫補助金が入ります。それから臨時国会で、施行期日が一月一日ということで成立をいたしておると仮定をいたしますと、標準報酬の引き上げ、それから一部負担、それから継続給付の資格期間の延長、それらの財政効果といたしまして約三億円程度の支出減、収入増があったはずでございます。
  112. 八田貞義

    ○八田委員 今の局長からの御答弁にありましたように大体予算に計上してある国庫補助三十億円が入ってくる。それから標準報酬の等級区分改訂による保険料の増収が一億二千三百万円、患者の一部負担の増によって一億五千万円、継続給付の受給資格要件の改正によって四千五百万円、総計いたしますと三十三億一千九百万円、これくらいの収入増になって現われてくるのだ。その当時は大体四十七億円の収入減が見込まれておったものですから、残りは予備費などによってやり繰りすれば十分に保険財政というものをやっていける、こういうことだった。これが一月一日に施行された場合です。ところが今日になってみるとこれらの問題は全部だめになったわけでありますが、今日保険四十七億円と見込まれたいわゆる赤字の金額は、きのう局長からお聞きすると三十六億に減って参ったわけであります。こういうようなことを考えてみますと、臨時国会に提案したときには医療担当者に迷惑をかけないという、言うなれば非常な親心からこの法案が出されてきて、大いに医療担当者から感謝を受けようという気持でやったのが、保険財政の好転によってかえって逆に恨みを買うような法案になってしまった。この問題を取り上げてみまして、私非常に遺憾な点が多いと思うわけであります。そこで事務的な問題は先に延ばしますが、大臣にさらにお尋ねするのは、先ほどの大臣のお話にもありましたように今度の提案の要旨は、健艇保険財政の根本的立て直しの意味ばかりではなく、全国民を対象とする医療保障制度実施の前提として保険事業運営の恒久的健全化をはかるため必要な改正を行う、こういうふうに言われておるのでありますが、医療担当者側はこういうふうに言っておるわけです。社会保険の完遂のためには、保険医とともに相協力すべき厚生省は、保険医の実情を無視してその自由を奪い、保険医を奴隷化し、その生活権をはぎ、一方的に保険医の犠牲において国民医療保険を実施しようとしている、こう言って、この法案に対して反対をいたしておるのであります。この意見に対しまして大臣一つ見解をお述べ願いたい。
  113. 高田正巳

    高田(正)政府委員 私からお答え申し上げます。健康保険制度の運営につきましてはもちろんのこと、国民保険というふうなことを実施いたします際に、医療担当者の方々の御協力なくしては医療保険の運営がうまく参るはずはないのでございます。従いましてその点につきましては、私どもといたしましても、十分さような方向でものを考えているわけであります。しかるに今回の改正法案に対して、非常に脅迫的だといいますか、おもしろくないような改正であるというふうなお気持が医療担当者側にあるという仰せでございますが、この点は二十四国会以来、また今国会でもるる御説明を申し上げておりますように、私どもは今回の改正法律案を立案いたします際には、決してさような趣旨で立案をいたしたものでもございませんし、また今後の運用におきましても、さような趣旨で運用をいたすつもりでもございません。法律条文無が詳しくいろいろなっておりますことは、これは現行法律が非常に古い法律でございまして、ばく然とした規定が多かったのであります。そこへまた法律的に見ましても、いろいろと今日の保険医療組織の実際に当てはめまして運用上むしろ支障が生ずるというふうな点が実際問題としてもありますので、今日の医療組織というものをすなおにながめまして、しかもそれを法律構成上無理なく構成ができますような方向で物事を考えて規定をいたしているわけでございます。具体的にたとえば役所の権限とかあるいは違反の場合の罰則とかいうふうなものにつきましては、むしろ罰則の面では  より軽くなっておりましても決して重くはなっておりませんし、また役所の行政権の逆用等につきましても、午前中もお答えをいたしましたように、現行法よりはむしろ役所側が縛られるような規定改正になっているわけであります。規定の中身をよく御理解いただきますれば、さような御不安は解いていただけるのではないだろうかというふうに私どもは考えているわけでございます。
  114. 八田貞義

    ○八田委員 局長の御答弁を拝聴いたしまして、厚生省の考えがどこにあるかということはよく了承できるのでありまするが、しからば国民医療保険をどのように具体化していくか、その基本計液というものがあればお示し願いたい。
  115. 高田正巳

    高田(正)政府委員 国民医療保険というふうなことを実現いたしまする基本的な考え方といたしましては、職域の保険と地域を主にしました国民健康保険と、大きくはこの二本立で進めたいという考え方でございます。また職域の保険におきましては、八田先生御存じのように今日いろいろの形態のものがございます。これを直ちに一本に統合をいたしまするとかなんとかいうことは、これはなかなか言うべくして行われがたいところでございます。これらは現在の保険のいろいろな体系を尊重いたしながら伸ばして参るという考え方でございます。それから地域の保険の方につきましては、先般もお話を申し上げましたように、大体昭和三十五年度を目途にいたしまして、三十二年度から四カ年計画で全地域にこれを普及さして参りたい。その際に一番大きな山となりますのは、東京都を初め六大都市の問題でございますので、私どもの今後の仕事の進め方といたしましては、そこいらに非常な精力を費して重点を置いて、これが一口も早くできまするような方向でものを考えて参りたい、こういう考え方でございます。  大筋はさようなことでございまするが、ここに一つ問題のありまするのは、先般来たびたび御指摘になりました五人未満の零細企業の被用者の問題であります。この問題は、一体どういうふうに扱うべきかということにつきましては、いろいろと関係者の間に意見が分れておるところでございます。ある意見は現在の政府管掌健康保険にこれを包括していくべきであるという意見、それから被用者保険の体系として、もう一つ第二種健保とでもいったようなものを作ったらどうかという意見、それからもう一つは、さようなことをいっても実施上非常にむずかしい問題がたくさん包蔵されておるので、地域保険であります国保にこれらを包括していった力がむしろ実現が早いという御意見と、いろいろあるわけであります。しかしそれらの御意見の共通するところは、五人未満の零細事業の実態と、さらにそこに被用されておりまする人たちの雇用の実態というふうなものが、まだ十分につかめておりません。従ってまず第一に、それらの実態を把握すべきである。それをきわめてから方法論を考えるべきであるというのが、共通的な一つの御意見になっております。  従いまして、私どもといたしましては、過去においても一応の実態調査をいたしたのでございまして、その一部につきましてはすでに当委員会で申し上げておるわけでございますが、さらにこの実態を詳細につかむ努力をいたしまして、本年度でもさような調査をさらにもう一度やりつつあるわけでございます。そうして三十二年度中くらいには、一体どちらの方向でこれらの人を保険の網の目の中に入れていくべきかということについての考え方の整理をいたしまして、三十三年度以降において、その整理された考え方の上に立ちましてものを処理して参りたい。かような考え方を今日いたしておるような次第でございます。
  116. 八田貞義

    ○八田委員 国民保険の具体化という問題からいたしましても、もちろん形式の問題と内容の問題と二つあるわけなんですが、ただいまの御答弁によりますると、四カ年計画で国民保険を二本立で進めていくのだという、そういった国民保険を進めていく形については御説明があったわけです。そこで内容の面については、いろいろ複雑な状態が現状においてある。それを三十二年度中によく調査の上具体的な策を進めていきたい、こういう御答弁でございまするが、三十二年度中に実態調査が終って、どのような内容でいったらいいかという結論が出た場合に、強制設立というような形でいかれるかどうか。今の御答弁では、勧奨的に進めていくというようなお話であったのですが、強制設立というようなことでいかれるかどうか。あくまで勧奨的な方法によって四カ年でもって皆保険を実施していくのだ、あるいはそうでなくて強制設立に持っていかなければならぬ、こういうお考えか、その点一つおっしゃっていただきたい。
  117. 高田正巳

    高田(正)政府委員 二十二年度中に実態を把握して考え方の整理をいたしたいと申し上げましたのは、主として零細企業の五人未満の問題について申し上げたのでありまして、御質問の点は、国民健康保険を普及さしていく上において、勧奨の措置でいくか、法律的な強制ということでいくかという御質問でございますが、先般の委員会でも大臣からお答えを申し上げましたように、強制をいたすためには、まず強制をしても成り立ち得るような前提条件をいろいろ整えていくことが、法文の上で強制をするとかしないとかいうことよりは、実体関係から見ますとむしろ重要な問題でございます。従いまして、そういう法律上強制をするかしないかということよりは、私どもとしましては、その実態の上に立って国保が成り立っていくような前提条件を整えるということにまず第一の主眼を置いてものを考えておるわけでございます。しかしながら、法文の上の強制というものも、その前提条件が大事ではございまするけれども、これ決して簡単にこんなものはどうでもいいのだという考えに立っておるわけではございません。私どもの考えといたしましては、前提条件の成熟の段階と相待って、法文の上でも強制に持って参りたい、こういうふうな意図を持って事に当ってておるわけでございます。
  118. 八田貞義

    ○八田委員 同じ前提条件と申しましても、私は勧奨でいくか強制でいくかということはやはり前提となるべき問題だと思うのです。もちろんその前に予備的な前提と申しますか予備的な調査として実態調査を正しく進めていかなければならぬのですけれども、しかし四年間に国民医療保険というものを実施していくという大きな旗じるしを立てる以上は、これはやはり強制でいかなければいけないというような今日の状態に追い込まれておるのじゃないだろうか、私はこう考えるわけです。もちろん今日の国保の伸びの状態、それから健康保険の伸びの状態というものを地域的にずっと洗っていけば、もう伸びないところは、これは何か国庫負担というような大きな制度をもって法文化して強制していかなければどうしても伸びていかないのです。ですから、私はこのこまかい点はまた別の機会に譲りますが、とても勧奨では国民医療保険というものは四年間では実現できない。どうか一つ実態調査を十分つかまれまして、そうしてそれを実現するために一体どのような条件を具備すれば強制設立というような形に持っていった場合に決して無理なく進めていけるかということをよくお考え、御調査願いたいと思うのです。  それから今度少し原則論に入って参りますが、職域保険を健康管理の社会保険と見るかどうか、簡単でよろしゅうございますから、この点を一つ……。
  119. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御質問趣旨はよくくみ取りかねておりますが、恐縮でございますが、もう少し御趣旨をよく……。
  120. 八田貞義

    ○八田委員 非常に簡単で御答弁に苦しむかと思いますが、私がお尋ねしている理由は、国民健康保険を社会保険と見るかどうか、また健康保険を社会保険と見るならば、一体どこに理論づけを行なって健康保険を社会保険と見ているか、あるいはまた国民健康保険を社会保険と見ているか。というのは、大蔵省の「日本の財政」という本がございます。それには社会保険の中に国民健康保険も入っている、そこで国民健康保険と見るかどうかということです。これを一つお伺いしたい。
  121. 高田正巳

    高田(正)政府委員 おそらくこういう御趣旨の御質問であろうと思いますが、従来社会保険という言葉は、被用者保険としていわゆる社会保険がずっと発達をして参りましたので、被用者保険のことを称して他の商業保険と区別をいたしまして社会保険という言葉を使っておりました。その後国民健康保険というものができまして、これは私の聞いておりますところでは諸外国にあまり例のない制度でございます。従いまして、従来からありました被用者保険のことを一社会保険と称して、そして国民健康保険はそれとは別なものなんだというふうな言葉の使い方ををいたしておりましたことは、これは事実でございます。また最近におきましてもそういうふうな言葉を使われる方もございます。しかし、これは別に学問的な根拠を云々ということでお答えする力は私はとてもないのでございますが、今日私どもが一般的に申しておりまする場合には社会保険の中に国民健康保険をも含めまして使っておるのが普通であろうかと存じます。もっぱら用語の用い方の問題でありますが、しからば社会保険の定義いかんというふうに先生から問い詰められてきますと、学か足りませんので行き詰まるかと思いますけれども、一応、ごく常識的に、私はさように理解ををいたしておるのであります。
  122. 八田貞義

    ○八田委員 私がこんな質問をするのは、行政上では国民健康保険を社会保険の中に数えてやっておられる。というのは、私はお伺いしたのですが、私は、社会保険の理念を大蔵省の役人が果して正しくつかんでいるかということを非常に疑問に感じておったのです。社会保障という理念についても、前の予算委員会質問しましたが、非常に社会保険のつかみ方についても間違いがある。厚生省と大蔵省とで見解の違いがあっては予算を調整される場合において非常にお困りになるという意味において、今厚生省の方において、行政上は国民健康保険というものは保険的要素は少いのだけれども社会保険として考えていくのだ、こういうふうな行政区分についてのお話でございます。というのは、この国民健康保険による人員というのは全人口の三三%、そうして医療費は国民医療費のわずか一一%しか占めていないのです。その保険財政負担分というものが四〇%です。自己負担分が四〇%、国庫負担は二〇%でありまするから、保険的要素はきわめて少いわけなんです、私をして一言わしめれば。こういう点をはっきりと区分してみますると、社会保険というのは健康管理から職域保険としてだんだん進歩してきた。しかも国民健康保険は世界にもあまり類のない日本独自の制度といってもいいくらいのものであります。しかも、今もこまかく申し上げてみますると、保険的要素は少い。こういうことを申し上げまして先の質問をいたして参りまするが、健康保険制度は大臣の提案理由の中にもありますように、わが国の社会保障制度の大支柱をなす制度として、労働者の生活にはなくてはならぬ重要な意味を持っている、こういうふうに提案理由の中に示されております。すると、こういう問題が起ってくるわけです。わが国の社会保障制度は憲法第二十五条の明文から判断しますると、アメリカの社会保障法にその基準概念を求めることができるわけであります。しからばアメリカの社会保障法の内容は一体どんなふうなことになっておるかと申しますと、アメリカの社会保障制度は一九三五年に樹立されたのでありますが、老齢保険と失業保険を含む社会保険、公的扶助、児童福祉並びに信用組合の四部門からなっておるわけです。そうして疾病保険としてはないわけですね。ブリュー・グループみたいになって信用組合の経営にゆだねられているようです。こういうアメリカの社会保障法の内容を見ますると、その中心は社会保険と公的扶助に置いております。これによって国民の生活を窮乏から守ることを目的としておるのでありまするから、わが国の社会保障制度の根幹をなすものは、当然公的扶助と社会保険であるというふうになってくるわけであります。それを今日拡大解釈が行われまして、英国の社会保障制度がそのまま日本の憲法に規定された社会保障と同じだというふうなことになって、ゆりかごから墓場へということがわが国の社会保障制度だ……。もちろんそういったふうに発展していくことはかまわないのです。ただ憲法の第二十五条には、社会福祉という問題も書いてありますし、公衆衛生という問題も書いてあるのです。ですから私は憲法の中にうたわれている社会保障というのは、アメリカでいっておるところの社会保障制度というものが根幹となるものでなければならぬと思う。そういうことを明文化しているものと解釈していいわけです。ところで医療扶助は、生活保護法による生活扶助とともに、保険のような醵出によるものではなくて、租税によってまかなわれるというもので、全く納税者の負担によって運営されるものでございます。ところでこの医療保険はどうかと申しますと、これはもともと自尊心の強いイギリスに発達しましたのは、保険料の名で醵出したものを、給付することによって、権利として与えられるという形をとってきたものでございます。これが収支償わないで国庫補助を増すことは、実はそれだけ保険よりも扶助に近くなってくる。公的扶助も社会保険も、ともに特定個人に対する処置でありまするが、社会保険に扶助的要素をつぎ込むことが社会保険制度の前進だろうか、あるいは後退だろうかという疑問も起ってくるわけであります。社会保険の理念という見地に立ってこの問題を考えますると、扶助的要素にも一定の限界がある、私はそういうふうに考えるのですが、この医療保険について扶助的要素をつぎ込んでいくことが、一体今後の社会保険制度の充実として考えられるかどうか。むしろ社会保険ならば、扶助的要素にも一定の限界を画していかなければならぬ、こういう問題が起ってくるわけであります。この点について局長の率直な御意見をお伺いしたいのであります。というのは、今わが国は社会保険から社会保障へという言葉が言われておるのです。しからば社会保険の充実というものを一体どういうふうにしていくのがよろしいか、こういう点について掘り下げた考えを持って、今後の社会保険の健全化というものを考えていかなければならぬと思う。この点について一つ局長の御見解を承わりたい。
  123. 高田正巳

    高田(正)政府委員 扶助的性格仰せになりましたのは、もう少し言葉をかえて申せば、税金がそれに出ているか出ていないかということであろうかと思うのであります。その意味にとりますと、先生御引例の、いわゆる今日の失業保険にいたしましても、アメリカの社会保障法でございますか、その中に入っております失業保険にいたしましても、これは三分の一の国庫の一般会計の負担になっております。それから年金にいたしましても、一般の陸上の勤労者につきましては一割五分、それから坑内夫につきましては二割という国庫の負担がございます。従いまして、社会保険に税金をつぎ込んでいるものは社会保険ではないのだ、あるいはその性格が非常に薄いのだということにはならないかと、一応私は考えるわけでございますが、さような点は別といたしまして、今先生の御質問の要点である医療保険につきまして、一体どういう考え方を持っているかということでございますが、今日の医療保険というものは、被用者保険におきましては、先生仰せのように労働者の勤労管理――労務管理といいますか、そういうものとうらはらになって発達をいたして参ったことは歴史的な事実でございます。ところが、そういうことで発達をして参りました今日のいわゆる被用者の医療保険というものが、だんだんと時勢の進運に伴いまして、その果す社会的役割というものは、だんだんと変って参っているように私どもは考えているのでございます。言葉の非常に厳密な意味ではございませんが、俗に言っております社会保障的な――先生がイギリスで発達したと仰せになりましたが、そういう意味の社会保障的な役割を今日の社会の上で演じつつある。一工場なり一事業主の労務管理とうらはらに発達して参りましたこの制度が、だんだんと発展をいたしまして、今日の姿においては、そういうふうな社会的な役割をすでに演じつつあるその色彩が、今後ますます強くなっていくであろうというふうな観察を私はいたしております。そこで、そういう医療保険について、国か税金を投入することについての考え方でございますが、私はさような社会的へ役割を果しつつある今日の医療保険に対して、国が税金を投じてはならない、税金を投ずれば、もう社会保険的な性格か非常に短くなって、扶助的にものに非常に近くなるというふうには考えておりません。先ほど申し上げましたように、失業にも年金にも今日までに税金を投じているわけでございます。これも社会保険であることは間違いのない宇美でございます。従って一般会計からの援助というものがあっては望ましくないものだとは考えておりません。むしろあるべきだと考えております。ただその反対の立場といいますか、考え方といいますか、保険はやはり保険でございますので、保険料を出して、そしてそれによって、いわゆる保険のしかけによって給付をしていくということは、これは失われてはならないものと私は考えております。従って今日の保険料以上には出さない、それから保険から受ける給付も今日以下に切り下げられることはいやである、つじつまが合わぬ場合には一切国の税金でこれを埋めなさいというふうな考え方も私は不適当ではないか。従ってその中間にありまする考え方、すなわち今八田先生が御質問の中に申されておりましたような、国が税金を投入いたしまする場合には、一定の限界というものがあるはずではないか。その考え方、ちょうど八田先生がおっしゃったような考え方が私どもも今日の段階において一番妥当な考え方ではあるまいかというふうに思っておるのでございます。すなわちこれだけは国が税金で援助をしてやる、しかしあとのところは保険自身の保険料なり何なりでまかなっていけという一定の限界をきちっときめた国の援助の仕方というものが、今日の社会保険の果しておりまする役割から申して一乗妥当な取扱いの仕方ではあるまいか、こういう考え方をいたしております。しかもその限界はそのときの国の財政事情なり、あるいはこれは大きくは国力ということになると思いますが、そういうふうなものによって決定さるべきてものである、左右さるべきものである、考え方といたしまして、系統立てて申し上げてみますれば、さような考え方をいたしておるわけであります。
  124. 八田貞義

    ○八田委員 扶助的性格をたくさんにつっ込んでいくということが正しいかどうかということは、もちろん社会情勢と結びつけて考えていかなければならぬ、問題ですが、イギリスの社会保障制度というものは、保険の形式で充実をはかり、次いで租税による扶助的要素を拡大していったというのがイギリスの社会保障でございます。これから考えますると、今後の社会保険を進めていく場合に、扶助的要素としての性格を帯びておるのは何かということになってくるわけです。そうしますと、私らは国民保険を進めていく場合に、社会保険というものに対して扶助的要素をつぎ込んでいく、そしてイギリスのような社会保障制度というものを打ち立てていくのだ、こういうことで、財政面から切り離して、その理想へということでまっしぐらに理論を展開していく。一般大衆もその理論の方かずっといいということで、それにくっついてくるということが見られてきております。そこで、私は今後国民保険を実現していく場合でも、一体健康保険でいくか、あるいは国民健康保険でいかという問題にしても、どちらが財政負担に影響するかどうかということですね。この点に関する議論が非常に少い。もちろんこれは国保の方が国庫負担が増加することは当然はっきりわかっておるわけなんです。ところが今は社会保険に対するところの国庫の責任がまだ理論的に明らかにされていない。いつでも赤字補てん的な国庫補助の要求という形をとって現われて参ります。それが究極においては政治的にその緊急性が納得せしめられるというような格好をとってきておるわけです。そこでもちろん財政とにらみ合しての限界点というものは、これは移動していくものであります。今年度は国庫補助として三十億円を予算に計上されておるんですが、三十二年度以降一体どのような基準によってこの国庫補助を進めていかれるか。今の局長のお話によると、今後の社会保険というものについてはイギリスと同じようにその充実をはかっていく、そして租税によるところの扶助的要素というものを同家財政とにらみ合せながらふやしていかなければならない、それが医療保障であり社会保障だ、こういうような英国の発展と同じようなお考えを述べられたように了解しておるのですが、しからば三十二年度以降の国庫補助という問題をどのような基準において進められていくか。今後は国庫補助を恒久的な制度として持っていくというのですが、本年度三十二年度を三十億円の国庫補助とされた基準、さらにまたその基準が三十三年度においても守られていくのかどうか、またあるいは三十億円というものは少い、もっと三十三年度においてはふやさなければならない、従って厚生省の考えておる基準というものは財政とにらみ合せての基準だ、こういうお考えかどうか、これをちょっとお知らせ願いたい。
  125. 高田正巳

    高田(正)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、今日の社会保険――もう少ししぼって申しますれば政府管掌健康保険の果しておりまする社会的な役割からいたしまして、今日のところは、その給付費の財源につきましては、国が税金から金を投入するということが制度としては成り立っておりません。それと私が先ほどお話を申し上げましたような方向で金を投入すべきであるというふうなことを私どもは考えておりまするので、それで今日全然投入するという制度が打ち立てられておらないところへ、今回改正案で御審議を願っておりますような、予算の範囲内において補助するという制度を打ち立てたいということでただいま御審議を願っておるわけでございます。従いまして、今日御審議を願っておりまする法律で設けられる制度といたしましては、私が先ほど申し上げました一定の限界を示して、これだけは国が見る、しかしそれ以上は保険でやれというふうにはっきりした制度になっておりません。従いまして今日御審議を願っておるところの、すなわち三十億というものは、私どもが考えておりまする考え方の方向に向ってはおりまするけれども、また現状よりは前進でございまするけれども、まだ私が先ほど申し上げたような形にはなっておらない、その途中のものであるというわけでございます。しからばその途中の制度であるところの三十億というものは一体、どういう基準で割り出したかという御質問でございますが、これはいつかもお答えをいたしましたよ’に、さような途中の、いってみれば中途半端な制度の上の三十億でございまするので、保険の収支というふうなもの、諸般の関係をにらみ合せて、またその他の制度の改正をもにらみ合せて、一応三十億ということにきまったわけでございます。三十二年度の三十億も同様でございます。なお三十三年度以降は、どうするつもりであるかという御質問でございますが、これは私どもといたしましては、法律の制度といたしましてはただいま御審議を願っているように予算の範囲内でということでございましても、予算の金額といたしましてば、かねがね私ども一が考えておりまする医療給付費の一割程度の金額を獲得いたしたい、その方向に向って努力をいたす所存でございます。そのことは別にその年度の保険収支の見通しがどうであるとかこうであるとかいうことと離れまして、私どもは先ほど申し上げましたような気持から一定の限界を示して、それは国が援助をしてやる、あとは保険でまかなっていけ、料率を上げるなりあるいは給付を切り下げるなり、あるいは財政が好転いたしますれば料率を下げたり給付を引き上げたり、また医療担当者の単価を上げるとかいろいろあると思うのでございますが、そういうふうなまかないは保険自体で考えていけ、こういうふうな建前にものと考えて、そういうふうになりたいと考えております。従ってその年度々々の財政収支というものとは別に、今のような一割程度のものを国から補助をしていくというようなことが実現いたしまするように努力をいたす所存でございます。
  126. 八田貞義

    ○八田委員 その点ですが、一割という定率を打ち出すのが今後の政府管掌健康保険を充実していくために正しいかどうかという問題もいろいろと考えてみなければならぬと思うのであります。第七十条ノ三に保険事業の執行となっておるわけですね。そうしますとやはり赤字に対してどうするか、こういうことがいつでも考えられる問題点にたってくると思うのです。もちろん今のように保険料を上げるとか標準報酬の改訂を行うという問題もありましょうけれども、しかし今日の健康保険の健全なる発展、また社会保険として健全なる運営ということになって参りますと、健全というのは社会保険の中に給付のアンバランスがあってはならぬ。内部に保険給付のアンバランスがあって社会保険の健全という言葉があるかという問題が起ってくるわけです。そこで赤字が一体どうして出るか、これは医療保障勧告には運営の問、題について解説されておりまするけれども、私は運営かりじゃない、それよりも機構の問題だ、こういうふうに強く考えておるものです。もちろん需要供給の面から考える赤字発生という、ことも理論の一つであります。しかしもう一つ大切なことは、医療給付の水準の問題であります。厚生省はこれから健康保険の充実強化ということを考えていかなければならぬのですが、一体どのような構想を持って医療給付水準の問題を考えているか、というのは、先ほど申しましたように、赤字の一つの原因は、医療給付水準を明確にしていないからです。明確にしないで不確実な病気の発生に対応するということにある、私はこう考えているのですが、この医療給付水準についてどういうふうにお考えになっているか、一つ局長の御見解をお聞きしたい。
  127. 高田正巳

    高田(正)政府委員 給付水準という御質問でございまして、給付率の御質問ではないと一応承わりましたが、現在の医療給付水準を維持して参りたい、かように考えておるわけでございます。なお将来科学の進歩、医学の進歩等がございますればもちろんそれも取り入れて参りたい、かような考え方をいたしておるわけでございます。
  128. 八田貞義

    ○八田委員 局長は私の質問がはっきりしなかったと思うのですが、医療保障勧告にも医療給付水準の問題について説明がしてあるのです。ところがこれはあまりにも抽象的であって問題の核心をつかんでいないのです。もちろん医療給付水準としての中身については私は意義ありません。一体その中身として医療保障勧告はどいうことを述べているかと申しますと、医療給付水準の中身としては「医療の内容、医療給付範囲医療給付の期間および医療給付給付率を含んでいる。」こういうふうに中身をあげております。今局長は現在の医療給付水準を保っていきたい、こういうふうなことをおっしゃいましたけれども、今私が質問いたしておる医療給付水準の中身というのは医療保障勧告にある問題でございます。というのは、この医療保障勧告にしても医療給付水準というものが非常に大切だと思っていながら、中身としてこういうものをあげてあるだけであって、どうあるべきかということについては具体的なものをつかんでいない、説明していない。これを明確にしておらぬということが一番大きな赤字発生の原因をなしておる。というのは健康保険医療保険とかあるいは医療保障というふうに言いかえて、ただ給付が厚ければいいように考えるのは保険財政を否定するものであります。一体収入は支払いの能力に応じ、給付は必要に応ずるというような仕組みが可能かどうかということを考えてみる必要があります。それは事故の起らぬ者の保険料を事故の起った者へ給付する以外に方法はない。この再分配機構は相互扶助の精神に貫かれていなければ成立いたしません。もともと保険というのはこの精神があってのことであります。そこに当然給付の限界というものがあっていいのです。医療適正化とかあるいは効率的な給付ということが医療保障勧告にも書いてございまするけれども、給付の吸音限界が明示されておらなければ、これはただのうたい文句です。そこで重ねて、今の給付水準の規定をどのようにお考えになっているか、お尋ねしたいと思うのです。
  129. 高田正巳

    高田(正)政府委員 社会保障制度審議会の勧告の中に使っておられる医療給付水準と申しますのは、今八田先生仰せになりましたように、医療内容の問題でございますとか、医療範囲の問題でございますとか、給付の期間の問題でございますとか、あるいは給付の率の問題でございますとか、いろいろなものを含んでおると思います。それで政府管掌健康保険についての、総合的な意味医療給付水準というのは、それぞれきまっておるわけでございます。たとえば療養給付期間は三年であるとか、給付率は、被保険者本人の場合、一部負担の問題はあっても大体十割であるとか、家族の場合は五割であるとかきまっております。それから医療内容についてはそれぞれ治療指針というようなものがあって、それによってきまっておる。それから看護をどうするとか、寝具をどうするとか、いすをどうするとかいう給付範囲というものもきまっておるわけでございます。従って現在の制度でこれが不明確であるというわけではございません。ただ社会保障制度審議会の申しておられますのは、それぞれの保険ではそういうふうにきまっておるけれども、各保険によって、あるいは公的扶助との間においていろいろなアンバランスがある、ことに国民健康保険の場合等においてはばらつきが非常にひどい、それらのものをできるだけ調整していったらどうであろうかということであります。それから給付の率直につきましては、具体的に、たとえば健保の被保険者が現在五割というのを逐次七割程度京で引き上げていったらどうかとか、国保の問題については、現在非常にたくさんあるぱらつきをできるだけ調整して、七割程度に統一していったらどうかというような御意見があの中に書かれてあったと私は記憶しております。     〔委員長退席、亀山委員長代理着席〕 さような意味合いにおきまして、私どもも、個々のこまかい点は別といたしまして、全般的に申せば、大体社会保障制度審議会の勧告の線に従って物事を考えていったらどうであろうかというふうに今のところ考えておるわけでございます。その際に、先生のお話は、一定のものをきめたらそれは保険料でまかなえるようなことにしていったらどうかという趣旨が入っておるように私は拝察をいたしたのであります。逆に申せば、保険料でまかなえる程度のものを医療給付の水準にしたらどうかということであるわけであります。そういう御意見も確かに一つの御意見でございますけれども、すでに国保等におきましては、二割の国庫補助をしてもなかなか七割には到達いたさないという状況で、今日の実情からいたしますと、理論は別として、保険料の範囲内に給付水準を抑えるべきだとということの実現は、実体的には相当困難ではあるまいか、かように考えておるわけであります。
  130. 八田貞義

    ○八田委員 私の質問のやり方のまずい点もあるのです。というのは、今日診療指針によって一つのものがきめられております。ただし、そのきめられたものが、私に言わせれば非常に不満足なんです。今日は社会保険医療と自由診療というふうに分けて考えておるわけです。一般大衆には、自由診療は医療の代行であるというふうに考える人もある。社会保険はそうではないと考える。私は、社会保険というものは医療給付の最高限界を示しているものか、こう言っておるのです。医療給付の最高限界は、保険財政の面もありましょうけれども、やはり示しておかなければならぬと思うのです。そうしませんと、患者一部負担とか差額徴収という言葉は出てこないわけです。最高限界を示しておかない一部負担とは一体何を言うのだ、給付内か給付外かという疑問が出てくるわけです。規格診療とか差額徴収とか一部負担という言葉医療給付の最高限界が明確にされてから出てこなければならない。今日はそういう最高限界が全然示されていない。そうしておいて医療適正化とか医療の効率化ということが言われている。そこに私の質問の混乱がある。そこで局長に重ねてお聞きしますが、一体一部負担金というのはどのような概念に解釈するのが正しいのですか。
  131. 高田正巳

    高田(正)政府委員 一部負担というのは給付の中でございます。先生の今御質問のお言葉を拝借すれば、医療の水準というものが示されておりまして、その水準からこれだけのものを給付する。先ほどお答えしましたように、今日ではこの水準というのが一応きまっておるわけでございます。その水準がよいか悪いかということについてはいろいろ論議があるわけでありますけれども、一応きまっているわけであります。その中のこれから下の医療を受けて、このうちの一部の費用を本人に負担していただくということになります。それから差額徴収ということになりますと、この水準より外の医療をやって、その差額を本人から徴収をするというのが差額徴収の概念である。それで今日では、先生給付の限界というものがはっきりしてないじゃないかという仰せでありますが、それは先ほど私がお答えをいたしましたように、一応はっきりしておる。もちろん細部の具体的な問題になりましたら、いろいろ論争があるように、疑義がありますることはもちろんでございまするが、大筋としては給付の水準というものははっきりしておる。従って一部負担というのは、その中の費用の一部を御本人が負担をしていく、こういう制度でございます。
  132. 八田貞義

    ○八田委員 そこで一部負担の問題ですね。医療水準というものが社会保険の場合にははっきりと示されておるんだ、こうおっしゃいますけれども、私は水準の問題になると、今日自由診療というのがあるのですから、医療担当者としては、いわゆる医療の本質という面から考えて、人命尊重ということを非常に念頭に入れているわけです。そうすると、自由診療でやっているものが医療の最高限を示しておるものだ、こういうふうに信じておる。また実際にそうあるべきだ。ところが社会保険の場合にはそうはいかない。保険財政というものがある。今日の段階ではこういうふうに扶助的要素を赤字のためにどんどん入れていくというわけにはいかない。いろいろあるのですが、そこできのう滝井委員質問をしておった。ところが今日のわが日本医療最高限の問題にしても、すべて保険給付というのは物的給付ですね。これは理想的形態として考えているわけなんです。ここに私はいろいろと滝井君のような、きのうの財政法第十五条に照らして債務の発生期限はどうだとか何とかいう問題が起ってくる。保険、インシュアランスという言葉でいくならば、物的給付というものが理想的形態であるかどうかという問題も起ってくるはずです。金銭給付ということが考えられないかどうかということです。そこで物的給付を今後の医療保障制度の理想的形態としていく場合には、滝井委員の心配するようないろいろな問題も起ることは当然考えられることなんですが、物的給付を進めていく場合にただ一つ大切な点は、物的給付を行う医療担当者を信用するということなんです。ところが今日いろいろな法改正を拝見いたしますると、医療担当者が叫びとしてあげているような物的給付を社会保険の形態として進めていく場合に信用ということが一番大切なのに、医師を信用しないというような前提に立って法改正が行われてきた、こういうことがいわれてきておるのです。特に四十三条の十の問題にいたしましても、一方的な保険者の要求によって医療機関の監査もできるし、保険医の監査もできるようになっておるわけです。これはきのうの局長の御答弁では、監査要綱に従って今後もやっていくつもりだ、ただこれを法文に盛り込んだのは、近代的な形にして盛り込んだということでありますが、近代化ということは、医療担当者が言うような簡略化を意味するのかどうか、そういうような疑問を持ってくるわけです。監査要綱というものは、すでに局長も御承知のように、保険医に対する監査の場合には、現行法規では、こまかい文句は省きますが、「命令の定ムル所二依リ」というふうに、ちゃんとうたってある。そうして診療録とかそういうものを監査するんだ。実際に行う場合には監査要綱に基いてやる、こういうふうになっておる。ところが四十三条の十においては「厚生大臣又ハ都道府県知事ハ必要アリト認ムルトキハ」となっておりまして、監査上要綱に示された、たえとば不正不当のおそれあるものの中で、半面、事後において関係医師会に連絡し、その協力を求め、また立ち会いを求め、立会者にはその意見を述べる機会を与える、監査は努めて診療に支障のない日時を選び、監査実地の日時、場所などをあらかじめ被監査医療担当者に通知することになっておるわけです。ところが四十三条の十においてはそういうことは書いてなく、必要ありと認めるときは手術中であろうと、婦人科医では内診中であろうとかまわない。これが監査要綱の行政措置を近代化したんだというふうには私は受け取れないのです。この点局長の御見解をお聞かせ下さい。
  133. 高田正巳

    高田(正)政府委員 現行の九条の二に「必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所二依り」云々と書いてございまして、今回の四十三条の十にはその「命令」が書いてないという仰せでございますが、この命令ということはこういうことでございます。現行の「命令」は、法第九条の規定による質問または検査をなす場合には当該官吏吏員は様式第二号による証書を携帯すべしというようなことが書いてある。そういうことは命令に書くよりは、むしろ新しい法律技術では法律自体に書き込んでしまうということで、現行の命令で定めておりますことは法律に書き込んでしまったわけです。これは改正法の九条の第二項に書いてございます。これをあとの方で準用をいたしております。この規定を方々で準用いたしております。従って、いわゆる命令というものは、行政権の命令でございますから、そういう行政権の制定にゆだねておるところを今度は法律自体に書き込んだということで、この命令の必要はなくなったわけでございます。そういうふうな意味におきまして、古い法外は、法で大ワクをきめまして、そして小さい事柄は命令に映っておった習慣があるのでございますが、そういうことでは非民主的であるからというので、その命令の内容をも法律自体に書き込みまして、そして国会の御審議を経た上で実施をいたすということになるわけでございます。従いまして、私が申し上げたように、さような立法のやり方の力がより近代的であり、より民主的になるという意味でございます。
  134. 八田貞義

    ○八田委員 現行法では、命令の定むるところによって、いろいろ保険医の検査をするわけですね。そして実際やる場合には、監査要綱に基いてやるわけです。監査要綱には、今読み上げましたように、いろいろと被監査医療担当者に対して通知をしておるのですね。そして支障のないように検査を進めていくということがやられておるわけなんです。ところが、今度は、先ほど局長が言われましたけれども、九条の二は、これは一般医師に対する保険給付監査規定というものをここで明文化しておるのです。ところが四十三条の十は、これは保険医療機関、あるいは保険医に対する、あるいは従業員に対するところの監査規定なんですね。しかも現在は、命令の定むるところによって、監査要綱に基いて監査しておるわけなんです。ところが、今度は一方的に、必要ありと認むるときには何でも、やれるようになってしまったのですね。この点ですよ、私が不安を持っておるのは。  それからもう一つは、前には四十三条の十に立ち入り検査の文句があったのですね。これを前の衆議院の修正で省いてしまったのです。ところが、この四十三条の十には、設備という文句が入っておる。設備の検査をする場合に、これは立ち入ってやらなければならぬのです。これは明らかに、設備を見る場合に、部屋の中に入ってみなければ見れないです。立ち入らなければ全然見ることはできません。ここに問題がある。しかも設備の問題については、これは医療法にちゃんとはっきりと規定してあるわけですね。こういう点について私は疑問を持つのですが、いかがでしょうか。
  135. 高田正巳

    高田(正)政府委員 言葉が足りませんで、先生の御不安を招いたようでございますが、現在の九条の二の規定の命令の定むるところによりというのは、これは今申し上げましたように、法律に全部この命令を書き込んだのでございます。それで監査要綱というのは、別にこの命令を受けてできておるわけではないのです。それで改正法におきましては、命令の内容というのは全部法律に書きましたから、命令の定むるところによるというようなことは要らない。それで削った。しかしながら監査要綱は、やはり従来の通りに監査要綱に従って監査をやるということは動かない事実でございます。そういうわけでございまして、特に命令が削られたことによる現行法との差というものはないわけであります。むしろ、先ほどお答えをいたしましたように、命令の中身を法律に書き込んだということで、明らかにより民主的な立法ということに相なるかと思います。それから立ち入る云々ということでございますが、二十四国会に提案をいたしました私どもの原案では、立ち入り云々というはっきりした言葉がございまして、立ち入り権というものをはっきり法律上に書いておったわけでございます。従って立ち入りを拒んだ場合のいろいろな法律効果、すなわち罰則等も書いてあったわけでございます。ところが御存じのようないきさつで、前国会で衆議院の御修正がございまして、これこれにつきといった言葉に直ったわけでございます。そして立ち入りということは独立の権限として法律上から抹殺をされたわけでございます。その修正案と同じものを、私ども今回提案をいたしておるわけでございます。この改正案が通りました場合に立ち入ることかできるかという御質問であろうかと思いますが、それはたとえば診療所につきこれこれの物件を検査をなさしめることを得というふうに書いてあります場合には、その検査のための立ち入りはできるという解釈に相なるわけでございます。
  136. 八田貞義

    ○八田委員 私が問題にしたいのはその点です。ちゃんと設備を書いてある以上は立ち入り検査をしなければならぬです。今、監査要綱に述べられたものをより民主的に近代化したのが今度の法文だ、こういうように言われるのですけれども、現在現行法においてどういう不都合な点があって、より強化したような印象を与えるような文句に置きかえられたかどうか、この点を一つもう少し納得いくように説明いただかない限り、われわれは医療担当者に説明をする場合に非常に困惑を感ずるわけです。この点一つもう一回御説明願いたい。
  137. 高田正巳

    高田(正)政府委員 現行法でも、たとえば帳簿書類を検査するための立ち入りということはできるわけであります。これはできる解釈になっております。ところが現行法では非常に不明確でございますので、これが異議があります場合には訴訟になり得るのでございます。それでこの行政権の行為というものが適当であったかどうであったかということは裁判所が決定するというふうなことに、究極的には相なる。現実にそれは非常に限られた医療機関でございますが、特殊の医療機関の場合におきましては、さようなことが問題になりまして、いろいろそういうトラブルが起ったことがございます。一般医療機関の場合にはございませんけれども。それでさようなトラブルが起るということは、結局法律規定が明確を欠くからであるということでございまして、むしろこの際行政官庁の権限というものは明確にいたしておきまして、さようなトラブルを避けたいということが一つのねらいでございますし、また同時に最近の立法例におきましては、人権尊重というような立場から行政官庁のいわゆる権限というふうなものは詳細に書くのがむしろ乱用を戒めるという意味におきましてふわっとしておりますとかえって乱用が起り得るわけでございます。詳細に書いて行政官庁の権限というものをそれ以上に乱用されることを防ぐというふうなのが最近の立法例の傾向でございます。かようなことからもこういうふうに規定を書き変えた次第でございます。
  138. 八田貞義

    ○八田委員 保険局長のお話を聞いていると何の心配もないのですよ。そうあるのが当然だと思うのです。ところがそういった保険局長の理想的形態は、地方にはそういうふうに流れていないのです。今までの監査要綱をはさんでも、いろいろとトラブルが起ってきているのです。今度はすっかり言葉が変えられてしまって、改正案では監査要綱にいろいろと書いてあるような文句がすっかりなくなって、役人が必要であると思えば一方的にいつでもやれる。必要あるときはというような強い文句になって現われてくるために、何の予告もなくして保険医療機関に侵入しても文句が言えない。こういうところに私は医療担当者のいろいろと心配の点があると思うのです。きょうは時間がございませんから、私はその点の質問を一応次に譲ることにいたしまして、保留させていただきます。
  139. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ごもっともな御不安だと思いますので、この際明確にいたしておきたいと思いますが、現行法でも必要ありと認めるときはということになっておるわけであります。その意味では改正法も同じでございます。  それから、ただいま八田先生は監査要綱にいろいろ言葉が書いてある、その言葉がなくなったじゃないかというお話でございますが、その監査要綱はそのまま生きて今後も運用されるのでございまして、この監査要綱はそのまま生きるということをこの際明確にお答えを申し上げておきます。
  140. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 木村文男君。
  141. 木村文男

    木村(文)委員 今回の健康保険法の一部を改正する法律案は、先ほど八田委員からも重々お話かあったようでございますが、前の第二十四国会、第二十五国会、この二国会において二回とも流産のうき目を見た法案であるわけでありまして、その法案を今また重ねて提出されたということは、厚生大臣の提案理由の中に、また昭和三十二年度の厚生省所管の一般会計及び特別会計予算案についての説明の中に見られるのでありますが、国民保険への道を目途といたしまして、つまり昭和三十五年度までの間にこれを国民保険に持っていこうということで、私はその一環であると考えるのでありますが、もしかりにその通りだとするならば、これは八田委員からも専門家でありますだけに相当突っ込んだ御質問が繰り返されておるようでございますが、私はその趣旨からしたら、今回のこの改正は、率直に申し上げて八田委員と同様もっと検討を加えなければならぬじゃないかと考える。私はしろうとでありますのできわめて率直に、しかも項目的にその所管の局長に伺いたいのでありますが、その第一点は、まさにあげられた改正要点々見ますると、ほとんどがみな逆行しておるように思う、国民保険を阻害する、そういう法律案のように私どもは考えさせられてならない。ことに今第一点として私が指摘したいのは、今八田委員が言った立ち入りの問題あるいはまた監査の問題です。これはもう大きな問題でありまして、診療をしておるときでさえも監査のためにその診療室にまで入ることができるような、そういう法案のように私どもは解されてならない。もしかりにそうだとするならば、これこそ一つ医師の診療の侵害であり、一つは診療を受けるその思考に対する精神的な影響がきわめて大きいと思う。この点についての保険局長の見解を第一にただしておきたい。
  142. 高田正巳

    高田(正)政府委員 手術をいたしておる最中に監査のために手術室に入るとか何とかいうこともできるような規定である、そういう誤解も招くじゃないかという仰せでございますが、さようなことは検査権の立場から申しまして、いわゆる権利の乱用、むしろ違法なというか、さようなことまで適法な行為として規定いたしておらないというのが今日のかような検査規定一般的な解釈にはなっております。
  143. 木村文男

    木村(文)委員 今の局長の御答弁によりますと、一般的な解釈だと言いますけれども、法的な面において現われていない。もしそこに帳簿書類等を置いておったと仮定して、そういう点があったとするならば、法文によると、それは監査することができることになる。ですから、もしかりにそういうような解釈を持つ法律であるとするならば、そこに附則か政令か何かによってこれを明確化しなければいけないと思う。事きわめて慎重を要する問題と考えますので、この点を一つ明らかにしてもらいたいと思う。
  144. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ごもっともな御懸念でございます。これらの規定の実際的な効果といたしましては、ゆえなく断わった場合にいろいろな問題が起るわけでございます。入ってもらっては困るといって断わった場合にいろいろ問題が起るわけでございますが、さような場合には、もちろん、ただいま手術中であるから入ってもらっては困るというふうに仰せになりまして、それは当然正当な理由で、ゆえなく断わったのではないということになりますから、決してさようなことば実際上の問題になるべきはずがございません。それでなお今回の原案には立ち入りという権限は独立しては削除をされておりますが、かりにこれが規定してあったといたしましても、これは断わったのを押しのけて入る権限はないのでございます。従ってそのことを明確にいたしまするために九条の場合にも、四十三条の十の場合にも、九条の二の場合にもあると思いまするが、このこれこれの「権限ハ犯罪操作ノ為認メラレタルモノト解スルコトヲ得ズ」という法律的な表現をいたしておりまして、これは決して断わったのを押しのけ、入ってもよろしいということではないぞよということを法律的に明らかにいたしました規定でございます。
  145. 木村文男

    木村(文)委員 実は私は専門家でないからそこまで突っ込んで法的に戦おうといったような気持はなかったのでありますが、局長がそこまで突っ込んでお話なさるとすれば、私はさらにもっと申し上げなければならなくなってくる。というのは、法においてはあなたが今お答えになった押しのけて入るのじゃなくても、かりに今手術をしている場合に、ノックされただけで一体治療に影響ないかどうかという問題です。承わりますとあなたば医師でないからそれは言える言葉であって、もしかりに医師であったとするならば、ノックされたそれ自身、かりに聴診器一つかけておっても、どういう影響を持つかということをあなた考えなければならない。少くとも保健衛生行政に携わっている局長の立場としては、法を作る上においてこれは非常に考えなければいけない。私も役人上りでありますからあえて申し上げたい。原案を作ったこともございます。ですから、ことさらに慎重に法的な何らかの処置を初めからとっておくことが、あなたの末端におるところの監査に入る行政官に対する指示が徹底するゆえんではないかと私は考えるが、その点に対する御意見を伺いたい。
  146. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ノックをしただけでも非常に影響をするということは、先生仰せ通りに私どもも考えております。従いまして十分この規定の上に配慮がなさるべきであるという御意見でございますが、それも私ども同じように考えております。現在の私どもが御提案申し上げておる規定で十分さようなことが配慮されておる、今までの普通の立法例と比較いたしまして、決してその域を脱しておるものではないというふうに私は考えておるわけでございます。
  147. 木村文男

    木村(文)委員 配属されておる、そういうことですが、条文の中には表われていない。今あなたがおっしゃることは、拒んだときには入るわけじゃないのだということなんでしょう。ところが拒むまでの間にノックもしなければならぬし、交渉もしなければならなくなる。ここにあなたの今のお話とは違う点が生まれてくるわけです。ですからそこまでの広い解釈を持つことができるならば、初めから手術のときは入ってはいけないという何らかのこれに対する法的な措置を講じておくのが行政的な処置としてとるべきものだと考える。あなたがさきに御答弁なすったこととただいま私に答えたこととは、非常に大きな矛盾をそこに出している。私はその矛盾がないような御答弁衣川願いたいと思う。
  148. 高田正巳

    高田(正)政府委員 さような場合は手術のときとかいろいろたくさんあると存じます。従いましてそれを一々列挙をいたすということは、これはなかなか――そうしますと、列挙してない分については、逆解釈も成り立つようなことに太るかもしれません。従いまして正当な理由で監査を断わったというふうな場合には、別にそれが何も影響はないのだというふうなことにいたしておきますることによって、先生のごもっともな御心配は除去できるものと私どもは考えておるわけでございます。
  149. 木村文男

    木村(文)委員 あなたの御趣旨はよくわかります。しかし私は安心して治療することができる、安心して治療を受けることができる、この両者を完全なところに置きたいという気持ちから、率直に申し上げて、少くとも診療の場合、手術の場合、いわゆる大きく言って治療の場合には、そういう監査は控えられるべきものであるということを私は主張したいからであります。その点を一つの法の上において明確にしたらどうか、こういう意味であります。
  150. 高田正巳

    高田(正)政府委員 手術だけではなくて、診療中に――診療中でございますからということ監査に応じないということは一向差しつかえないのでございます。それで現行法規定におきましても、先生仰せのように、そういうふうな場合にはいいんだとかいうふうなことは別に書いてはいないわけでございます。それはかような行政権の発動についての規定の仕方といたしまして、さようなところまでも踏み込んでいくというようなことは、これは権利の乱用というか、なすべからざることであるということは、法の一般的なあれといたしまして、今日成立いたしております一つの通念でございます。今御指摘のように、むしろ手術ということに限られたことでなくて、ただいま診察中である、それで監査には応じられない、ちょっと待ってくれというようなことは当然のことでございます。  それから現在この監査につきましては、一般的なやり方といたしまして、先ほど八田先生が御指摘になりましたように、監査要綱というものがございまして、この監査要綱に従って監査をいたしておるわけでございます。なお今後もこの要綱に従いまして監査をいたすつもりでございますが、その要綱に従いますと、いろいろ詳細なことが書いてございしますが、要は監査というふうなことをいたします際には、医療担当者の団体と連絡をとりまして、大体役員の方等のお立ち会いを願いまして、非常に多くの場合、ほとんど全部と申しても差しつかえない程度だと存じますが、ある一定の場所に診療録を携行しておいでを願いまして、そこで医師会の役員の方お立ち会いのもとにいろいろ監査を実地するというのが筋でございます。それで現実に保険の監査のために医療機関について直接調べるというようなことをやる場合でも、今の医師会の方々のお立ち会いのもとにやるというのが建前でございますし、また実際問題といたしましては、今申し上げましたように、ある一定の場所においでを願いまして、そこで突如をいたしておるような実情でございます。これらのことは詳細に監査要綱に書いてございます。この監査要綱に従って今後の監査も実地いたしていくわけでございます。
  151. 木村文男

    木村(文)委員 大体この問題に対する局長の御答弁は了承いたしますが、しかし私としては、なお監査というものそれ自体が医師というものの信用の面からいったら、国民保険といったような制度の円満な運営まで達せさせるためには、はなはだ賛成しかれる点でありますから、なお機会を見ましてお尋ねするところはお尋ねすることにいたしまして、一応この問題については打ち切りたいと思いますが、今監査要綱があるのだというお話かございましたので、その監査要綱は全国の各医師に配られているかどうかということ。もし配られていなかったら、民主的な意味においてもそれを一応配っておいたらどうか、そしてあらかじめよく納得せしめておくことが必要でないか、これが一つ。もう一つは、私どもに参考資料として、委員長から正式にそれを要求していただきまして、各委員全員にその監査要綱を、一応配付してもらうことを要求いたしておきたいと思います。  次に、実はこれは最初にお尋ねするつもりじゃなかったのでありますが、八田委員質問をしておりました項目の中に入っておりましたから先に取り上げて申し上げたわけでございますが、私は先ほど申し上げた通り専門家ではありませんので、私の勉強しておる範囲内において大まかなことを保険行政を担当しておる局長としてのあなたにこの際尋ねておきたいと思う。それは一体今回の改正医療機関というものと保険医関係、この関係については、今の問題に関連するのでありますけれども、先ほど申し上げたようにはなはだ医師の人権を無視した制度ではないかと私は思う。なぜこういうことをしなければならぬかということそれ自体私は非常に考えさせられる。決して普通の人がからだを見られるものじゃない、れっきとした国家試験というものがあって、前は学校を出るとすぐ学校の免許状によって開業もでき、診断もでき、治療もできたけれども、今度はさらに学校を卒業したほかに、イーンターンという制度があり、さらにその上に最高の権威を持っている医師の国家的な試験に合格しなければ医師として開業はできない、そして治療、手術に当ることはできないという、厳然たる国家の制度のもとにやっている医師である。それをなぜここまでにして縛らなければならないか。これは人権の侵害であり、むしろ憲法に反する問題であるとまで私は極言したいほどであります。どうしてこういうことをしてまでもそれをやらなければならないかというその点を私にむしろ教えていただきたいと思う。まずこれに第一点として申し上げたい。
  152. 高田正巳

    高田(正)政府委員 現在かくのごとくしなければならぬかという御質問につきましては、現在保険医指定という制度をとっておるのは医療機関指定保険医の登録という二つにいたしたいということについての御質問であろうかと拝承いたしまして、お答えを申し上げたいと思いますが、今日一般保険診療を見ておりますと、ある個々のお医者様が医療行為をなさる、これはまさしくそうでございますが、必要によってお医者様も違ったり、あるいはまた入院というふうなことになりますと、医師だけでなくしていろいろなほかの方々も一緒になってその医療サービスが給付されるというふうな実態でございます。さような実態をすなおに見まして、私どもといたしましては、個々の医師指定ということよりは、医療機関指定ということにいたしまして、その実態に合わせて参りたい、こういうつもりで、医療機関指定ということにいたしたわけでございます。この指定という事柄の意味は、申請によりまして、すなわち保険の診療を扱って下さい、よろしゅうございますということで、いわゆる保険診療を担当していただくという約束をなすということが指定意味でございます。かように医療機関を相手方としてとらえて指定をいたしておりまするのは、他の法律におきましても、医師個人をつかまえないで、医療機関をつかまえてさような約束の相手方としておるという場合が非常に多うございます。それらの例をも考えまして、医療機関をつかまえて、保険の診療をやって下さい、よろしいという約束の関係に置きたいと考えておるわけでございます。しからば医師個人は全然必要がないではないかという議論にもなって参ります。もちろん保険の担当機関としての契約の相手方は機関でございますので、その意味で個人を契約の相手方にいたすという必要はございません。従って従来のような個人の指定というものは、やめることにいたしました。ところが個人というものを全然何らの関係づけもいたしておかないということになりますと、実際問題としていろいろな不都合が出て参ります。たとえば医療というものは、医療法の規定におきましても、個々の医師がおやりになることを機関の管理者なりが医療内容についての指揮命令はできないというふうな解釈になっております。従って個々の医師が、特定医療行為につきましては、自分で責任を負ってやっておるわけでございます。その意味におきまして、保険が現物給付建前をとっておりまする以上は、個々の医療につきましても保険のルールに従って医療をしていただかなければなりませんので、そこで個人をも何らかの関係づけを考えるという必要が出て参ります。その際に、従来の保険医指定というようなむずかしいことにしておく必要は今回はないわけでございまするので、従って登録という制度にいたしまして、これは医師免許状を持っておられる方が登録の申請をされれば、だれでも登録をするという建前の制度を一つ作りました。そこに個人との関係づけというものを求めたわけでございます。しかし保険医療をするという、――して下さい、しましょうという約束の相手方はあくまでも機関である、医療機関である。従って従来の個人の指定という制度が機関指定に変ったということになるわけでございます。そうして機関指定だけでは不十分なところを個人の登録ということで補っていった、こういうことに相なっておるわけでございます。説明が非常に不手ぎわでございましたけれども、そういうふうな趣旨で今回の立案をいたしておるのでございます。
  153. 木村文男

    木村(文)委員 説明は不手ぎわでなくて、きわめて巧妙であります。よくわかりますが、ただしかし私はこういう点を伺っておきたいのです。今局長は、医師免許状があればみなどなたでも登録をするのだ、それだけの話だ、こういう意味に解されるわけでありますが、私はたとえば具体的に申し上げますると、医師が登録した、しかしその医師が開設しておりまする診療所、これもまた登録されていることになるわけであります。登録ということはないのですが出ているということになるわけであります。結局同じような意味になるわけですね。私はそこまでするならばどっちかにして、もしかりに医師指定ということに従来通りにするならば、特定機関特定医療施設、こういうものならばこれはある一定の特別立法でもして、あるいは何らかの改正案をもって設けることはいい、私は納得します。けれども、一様にみな登録、そしてその医師の開業している診療所もこれもまた指定、こういったようなことは二重指定であり、要らざる煩項な、何といいますか、官僚化といいますか、それを意味するものである。そして結果としては何らの効果をおさめ得ずして、結局は同じ効果をねらっているのですから同じことが現われてくるだけだ。事務的な煩項をとるだけであって、一面においては医師、あらゆるこういう団体の反対を受けて国民保険を目途とすることに非協力的な態勢をとられることになったら、私は政府の意図するところではないのじゃないかと思う。私、与党の議員であるから特にそれを心配してならたい、そういう意味で、私はこれはほんとうに改正、再提出すべき問題だと考えさせられるのですが、この点についての局長の見解をただしておきたい。
  154. 高田正巳

    高田(正)政府委員 木村先生の御心配のようになりましては、ほんとうに私ども、改正趣旨でもございませんから、大へんなことになるわけであります。さような御不安があるとすれば、これはぜひとも改善をいたしておかなければならぬものであると考えております。今先生がいろいろ仰せになりましたのですが、そのお言葉の中から、おそらくこういうことを仰せになっておるのではないかという私のくみ取り方をいたしたわけであります。機関指定もよかろう、しかし個人で開業している場合には、機関指定と個人の登録というものが二重になるじゃないかという仰せだろうと思います。なるほどそういうことになります。ところがそれは一般医療の行政における保険医療ではございませんで、一般医療建前におきましても、個々の医師というものは医師免許状がなければ医療を開業することはできない。ところがそれがやはり病院、個人の場合にも何々診療所というものを開設いたしまして、それで医療をやるという建前になっております。従いましてその病院診療所というものは、たとい天下の大病院も、一人が開業しておられまする診療所も、病院診療所ということで医療法はその機関を抑える、そういう法の建前を持っておるわけでございます。それでそのほかに個人には医師免許状というものがくっついているわけでありますが、ここでその意味ではもう二重になっているわけであります。それで私どもといたしましても、ちょうど医療法が病院診療所というものをつかまえて医療の行政の一つの基本にいたしておりますると同様に、医療機関――病院診療所というものを相手方として保険というものとの関係づけをしようということを原則といたしております。そのほかに個人の登録ということを考えましたのは、さようなわけ合いで医療法でも病院診療所というものを一本に取り扱っておりますので、私どもといたしましても、いやしくも医療機関であればたとい個人開業であっても、医療法と同じような建前で一本の医療機関指定ということにいたしたわけでございます。かりにこれを別にするということになりますと、個人の開業の場合には、個人指定保険との関係づけができるわけであります。二人以上の病院診療所におきましては、機関指定という建前をとるということになるわけであります。そういたしますか、現行法と同じようにすべての医療機関について個人だけと関係づけをしていくか、このいずれかになるわけであります。それで現行法が個人だけをつかまえておりまして、いろいろ不都合が実はあるのでございます。これはずっと並べ立てて参りますと、いろいろな不都合が現実の問題の上にあるわけであります。むしろお医者様の御迷惑になるような性格の不都合もあるわけであります。それで個人だけを一本でつかまえて相手方にしていくということは、そういうふうな観点から申しましても、また今日の二人以上おられる医療機関の実際の医療の状態からいきましてもむしろ不自然であるから、先ほど申し上げましたようにすなおに医療機関というものをつかまえるということにいたしたわけであります。それでその際に、さすれば二人以上は機関指定で、一人の場合は個人指定にしたらよかろうというようなことも出てくるわけでございますが、そういたしますと今度はその病院でもう一人お医者様をお雇いになりましたときには、今度は個人指定機関指定に切りかわるということになる。ところが私どもの今のやり方でいきますと、一応機関指定は全部しておきまして、個人の方は一ぺん登録をしておいていただけば、その先生がどこへ行って開業をされ、あるいはどこの病院勤務をされましても、これはずっとついて回るわけであります。従ってその意味で申しますれば、むしろ煩項になるということにおきましても、個人の場合を特別扱いいたした方がことによると煩項にもなりますし、それから法律上の観念の整理といたしましても、医療法がとっておりますように、病院診療所というものを一本に考えて、医療機関としてものを考えて整理をいたしました方が、法律上の整理も非常に容易でございます。さような意味合いからいたしまして、私どもは改正案のようなことに立案をいたした次第でございます。
  155. 亀山孝一

    ○亀山委員長代理 ちょっとお願い申し上げますが、だいぶ時間もたっておりますし、まだもう少し時間がおかかりになるようでありますれば明後日にやっていただくことにしたらいかがでございましょうか。
  156. 木村文男

    木村(文)委員 それではもう一つだけ。この問題は留保しておきまして、私は今の局長答弁には不満足であり、かつ見解を異にしますから、私もまたこのあと研究しまして、さらにもう一ぺん機会を見ましてお尋ねすることにいたしたいと思います。  そこで第三点として、一つだけ、これも大きな問題であるのでありますので、お尋ねしたいと思いますが、今回は一日診療費の問題、言葉をかえて申しますと、一部負担といったような問題が出てきておるのでございますが、これは私はこれこそ全く国民保険への逆コースのものであると申し上げたいのであります。これは先ほどから八田委員もいろいろなこまかい、むしろ局長法律の突き合いをしているような、実に微に入り細にわたっての御質問であったようでございますが、私はその点は八田委員に譲りまして、大まかに申し上げますが、要は今回の改正趣旨は、医療制度の確立、即、それは社会保障制度の一環としてのすべてが改正である、こう私はとりたい。まさにそうであろうと思います。そうすると、私はこれこそ社会保障制度のむしろ破壊への道をたどっているといっていいと思う。これは、私は与党であるけれども、やむを得ない、ほんとうは私はこれは改正してもらいたい一人であります。なぜかというと、私は二十数年間社会事業の方に関係しておりまして、今日までその道を歩いてきている者でありますために、それだけに私はそれを申し上げたい。     〔亀山委員長代理退席、委員長着席〕 いろいろ具体的に申し上げることはございますが、今委員長から、時間もおそいから次回にしてくれという話がございましたので、はなはだ残念でありますけれども、この点、ただばくとした抽象的なことを一応申し上げておくわけでありますが、これをもう一ぺん再検討してみる必要があると思いますので、その意思がないかということ、二回流産したところにも、この保険制度の改正の疑義があると思う。ですからいま一ぺん勇敢にひっ込めて、考え直して、もう一ぺん検討を加えてからほんとうに国民保険への道に円滑に入っていくことができるような法案に切りかえて出す御意思がないかどうか、一部負担の問題は特にそういうことを一つお聞きしておきたいと思います。
  157. 高田正巳

    高田(正)政府委員 政府といたしましては、ここ二、三年来研究に研究を重ねまして、その間特別な諮問機関等までも設置をいたしまして、それらの御意見をも参照いたしまして、実は今日の成案を得ているわけでございます。なおまたこれらを提案いたします際には、与党とも十分に御連絡を申し、その御審議をもわずらわして今日の運びになっておるのでございますから、ただいまこの提案を取り下げて撤回をいたすというようなことは考えておりません。
  158. 藤本捨助

    藤本委員長 次会は明後四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後、五時十七分散会