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山口(シ)
委員 よくわかりました。私よくこういうことを
考えるのですけれ
ども、拝見きせていただきますと、より以上私も納得する点が出てくると思うのですが、やはり彼女らがつまずきます一番大きな原因となりますのは、今の
日本では女が独立して
社会生活を営んでいくというような経済的な
基盤がなかなかないということが、やはり原因になっていると思います。それでこの点をカバーするために更生
施設に入れる。そして職業補導をしてやる、こういう
考え方の
もとに、どうしても今までのような旧態依然たる職業補導——私も幾つか見て覚えがあるのですが、封筒張りだとか紙ふうせん張り、造花作りだとか、ああいうようなものの域から補導の範囲が脱しませんと、今
社会に出ていってもやはりなかなか生きていかれません。そこでその職業補導の点もできるだけ科学的な
指導の仕方をいたしまして、彼女らが世の中に出ていきましたらさっそく経済的に独立していけるように、やはりそういうような親切さがありませんと、なかなかこういう方は自発的に立ち上っていかないと思います。これは私の希望でございますけれ
ども、申し上げておきます。
それから皆様方の方がより以上にいろいろデーターをお持ちのことと思いますけれ
ども、私も別に自分が赤線地区に入っていったり、青線に入っていったりして
調査したものでは決してございませんが、いろいろ
調査資料を集めてみまして非常に感じましたことでございますが、これは東京女子連、赤線の従業員
組合でございます。この
調査の結果出ました数字の上で非常に強く教えられることがありました。この
調査によりますと、最近赤線をやめた売春婦八百二十七名について
調査されておりますが、そのうちの五十名が結婚をして
家庭生活を営むようになっております。それからお父さんお母さんの
もとに帰られた方が二十名という数字が出ております。それからキャバレー、料亭などに転業していった者が百五十名、それから街娼化してしまった者が八十名、青線へ転落していった者が三百五十名、それから白線その他類似の商売に流れ込んでいってしまった者が百二十名、いまだにはっきりしていない者が五十七名、こういう数字を示しております。それでキャバレー、バー、料亭などに流れ込んでいった人たちは、もういわゆる正業についたものとこの
組合では
考えているようでございますが、私は必ずしもこの仕事は正業に転じていったものだとは
考えないものでございます。そうしてこれを見ますると、約一割、大ざっぱに八百人のうち七十人が更生したと申せば更生したということになるでしょう。こういう数字を示しておりますから、こういう
調査資料を見ても、
厚生省としてもなかなかむずかしい問題であろうということを痛感するわけです。それからこれはやはり赤線地区での
調査によって出た資料でございますが、これは
調査人員が三千四百五十名、非常に多くを
調査の
対象としております。それでこれで調べました結果、どういう事情でこういうような商売をしておるのか、いわゆる売春婦などをしておるのかという
調査でございましたが、経済的な
理由でこういう商売をしている人というのが七二%だったそうでございます。それで七二%のうちの内訳が、夫のある人並びにひ
もと申しますから、これはおそらくやむを得ずにあやつられて働いている人だと思います。これが三二%、それからだんな様以外、いわゆる夫以外にどうしても見なくちゃならない両親あるいは子供、こういうどうしても扶養しなければならないような事情の者が身の回りにいるという方が四〇%、こういう数字を示しておりましたそうでございます。これはあくまでも経済的な
理由がその原因となっておりまして、これは政治の貧困であると申せばおそらく一口で言い切れるものだと思います。これはともかくといたしまして、私はこの三二%を占めます夫やあるいは内縁の夫も含まれるひもでございますが、これが大きな問題だと思うのでございます。この三二%のうちから風俗研究家の中村三郎氏が
調査いたしましたところによりますと、いわゆる病身の夫を持ってどうしても自分がかせがなければならないという事情の以外の女性に対する
調査でございましたが、内縁の夫、悪質なひも、こういうものにあやつられて働いてどうしてもそこから足を抜くことができないが、自身は何とかしてこのひものつながりを断ち切って更生したい、こういう希望を持っております者が七十二人のうちの二〇%を占めたということでございます。そういたしますと、自主的に更生したい、相談に乗ってやりさえすれば自分は更生したい、こう
考えている者は売春婦の総数の二割、こう見なければならぬのではないか、これは私の勝手な計算でございますが、こういう
考え方の
もとに今回の
厚生省の
婦人保護
対策というものが行われていかなければならないのではないか、こう
考えるものでございます。そしてこの七二%以外の二八%の
婦人を
調査いたしましたところが、浪費癖のひも、これにつながれていたという非常におもしろい数字も出ております。これは何とも救いがたい人たちでございまして、最もむずかしいケースだと思いますが、精神的訓練によって救っていかなければならぬ、こういうことを
考えますときに、十五万人の二割すなわち三万人に対する
対策といたしまして、今回とられました
予算面から割り出しますと、わずか千九百三十五名の方を収容するのみでとどまっているということは、まことに非積極的な
考え方ではないか、こう
考えるのでございますが、局長の御意見を伺いたいと思います。