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1957-02-13 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十三日(水曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君    理事 亀山 孝一君 理事 中川 俊思君    理事 野澤 清人君 理事 八木 一男君    理事 吉川 兼光君       植村 武夫君    越智  茂君       加藤鐐五郎君    草野一郎平君       小林  郁君    田中 正巳君       高瀬  傳君    中村三之丞君       中山 マサ君    八田 貞義君       古川 丈吉君    山下 春江君       亘  四郎君    岡  良一君       岡本 隆一君    五島 虎雄君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       山花 秀雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣臨         時代理     岸  信介君         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     堀岡 吉次君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         厚生事務官         (医務局長)  小澤  龍君         厚生事務官         (薬務局長)  森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (保険局長)  高田 正巳君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房企画         室長)     黒木 利克君         参  考  人         (社会保障制度         審議会事務局         長)      太宰 博邦君         専  門  員 川井 章知君     —————————————  二月十三日  委員栗原俊夫君、多賀谷真稔君及び山崎始男君  辞任につき、その補欠として小平忠君、岡本隆  一君及び櫻井奎夫君議長指名委員に選任  された。 同日  委員岡本隆一辞任につき、その補欠として森  三樹二君が議長指名委員に選任された。 同日  委員森三樹二君辞任につき、その補欠として岡  本隆一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会保障制度医療保障制度に関する勧告)に  関する件     —————————————
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  社会保障制度に関する問題について調査を進めます。医療保障制度に関する勧告について、社会保障制度審議会事務局長太宰博邦君が参考人として出席されておりますので、まず説明を聴取いたします。太宰君。
  3. 太宰博邦

    太宰参考人 社会保障制度審議会が、昨年の十一月に内閣総理大臣に対していたしました医療保障制度に関する勧告について若干御説明申し上げます。この審議会は、政府の諮問に答えるという任務のほかに、審議会独自の立場におきまして社会保障制度につきまして内閣総理大臣勧告する任務及び権限を持っておるというのが特色でございまして、今回の勧告もその立場からなされたもでございます。その勧告をなすに至りました経過は、すでに御承知通りここ数年来健康保険政府管掌について財政的危機に陥っているという問題がございますし、また生活保護法医療扶助の部門におきまして非常に急速度に伸びてきておるというような問題もございます。また結核対策などにつきましても、なかなか思うような効果を上げるまでに至ってないというような、いろいろな医療保障に関する問題がここ数年錯綜してきているように感じたのでありまして、これらに対しましてこの審議会といたしましては、去る昭和二十五年の十月に社会保障制度全般に関しまして勧告を行なったのでありまするが、それからすでに五、六年を経過しておりますので、この際もう一ぺん医療保障の諸問題について広い立場から検討をし勧告する必要があるということになって、この審議開始したわけでございます。  でき上りました勧告は前文と本文とに分れておりますが、ここでは詳細を御説明する時間もございませんのでごく大事なポイントだけを申し上げますると、第一は国民保険体制確立ということでございますして、御承知通り現在国民のうち約三分の一に当りまする国民医療保障に関する何らの社会保険の恩典に浴していない。またそういう人たちと、それから社会保険に加わっておりまする人たちとの間の、医療を受ける水準というものに非常に較差がある、かようなことからいたしましてこの国民保険体制確立ということが今日において何よりも急務である。そのために勧告といたしましては三つ施策をすみやかに実現することを要請しておるのであります。その第一は、五人未満の零細企業に従事しておりまする従業者に対しまして何らかの健康保険実現をはかるようにということであります。それから第二は、国民健康保険制度を全国民に適用するようにとの要望が非常に強まってきておりまして、この際社会保険体制を樹立するために、国民健康保険制度を三年ないし五年の年次計画によってこれを全国民の該当する層に適用するようにということが第二でございます。それから第三にこの社会保険体制というものは、ただに法律を制定いたしまして未適用の層に適用するだけでは真にその実が上がらないのでありまして、社会保険体制の実を上げるために、現在健康保険の家族とそれから国民健康保険の被保険者に対する給付率扶養者の五割見当になっておりますが、これではその実が上りませんので、少くとも七割程度までにはこれを引き上げなければいけない、こういうことが第三でございます。この三つ施策をすみやかに実現することによって、とにもかくにも国民保険体制確立するということがこの勧告一つの大きな柱となっておるのであります。  その次の第二の大きな柱は結核問題でございまして、御承知通り結核問題もここ数年非常にやかましくなっております。政府施策も漸次進んできておりまして、その結果結核死亡率が激減して参っておることは御承知通りでありまするが、しかし詳細に検討してみますると、死亡率こそ激減いたしておりまするけれども患者の数もあまり減っていないし、医療費負担関係はかえってむしろ増大しているとすらも言えるのであります。そのために結核医療費問題が非常にガンとなりまして、健康保険財政危機を強めておるその一因子にもなっておる。また生活保護医療扶助財政を非常に苦しめておる大きな原因ともなっておるのでございます。そこでこの際結核対策についてもう一ぺん抜本的な対策の樹立を要請しておるのであります。予防あるいは医療を通じまして、制度的にもまた資金的にも行政的にも一貫した施策を集中的に押し進めるような体制確立がこの際最も緊要である、こういうことを勧告は申しておるのであります。もちろんこれに相当巨額資金を必要とすると思うのでありまするが、勧告はたとい巨額資金を必要とするといたしましても、この際一時的に国費を集中的に投ずることによってかえって将来にわたっての国民結核医療費負担を軽減することにもなると考えるので、政府勇断を要望しておる次第であります。  この国民保険体制確立結核対策確立が今回の勧告の二つの大きな眼目、柱ともいうべきものであろうかと存ずるのでありまして、そのほかに当面の医療保障制度におきまするいろいろな問題につきまして、本文の方でさらに詳細に述べておる次第であります。  それから最後勧告は、これらの対策を実施いたすにつきまして国の財政負担について若干申しておるのであります。国の財政負担がこういう対策を進めることによりまして非常にふえてくるということは言うまでもないところでありまするが、今後の財政計画の中にこれをぜひ盛り込んでもらいたいということを言っておるのであります。特にこれらの支出は、結局は国民生活の基本に直結する問題であり、すでに具体的な効果を上げておりまするから、他の経費を差し繰っても優先的にこれを取り上げてもらいたい、こういうことでございまして、政府勇断を要請しておる次第であります。  最後勧告は、終戦後ちょうど十一年になりますが、ようやく戦後の復興経済段階を脱却したといわれておりまする今日、わが国の進む方向は、新憲法の掲げる福祉国家の目標に向って進むべきである。そういう時期にこの社会保障の問題を考えてみますると、今までの十年間はいろいろ戦災の復旧とか生産の回復とかというようなことに力を注がざるを得なかったために、社会保障という面が不十分であったということもあるいはやむを得なかったと言えるかもしれないけれども、もはやその段階が過ぎたのでありますから、でき得ればこれ以降の国民所得の増加、あるいは国家財政の拡大のうちの相当数字に達する割合は、従来の所得分配を補正する意味において、この社会保障の面に投ずるというような長期国策確立政府に強く勧告しておる次第でございます。  簡単でございまするが、一応この勧告をなすに至りました経過及びその眼目だけについて申し上げた次第であります。
  4. 藤本捨助

    藤本委員長 以上で説明は終了いたしました。質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡良一君。
  5. 岡良一

    岡委員 ただいま事務局長から社会保障制度審議会の最近の勧告について、その討議の内容についてるる御説明がありました。そこで私は厚生大臣に若干これに関連して御所信を承わりたいと思うのでありますが、社会保障制度審議会が発足したのは今から約七年前であります。第一回の勧告は、わが国における社会保障制度のきわめて精緻な体系としてこれを内閣総理大臣勧告をしております。その後も数次にわたって審議会は熱心な研さんの結果をその都度国民福祉のために勧告を発しておるのでありますが、しかしながらこれにこたえる政府努力というものは非常に遺憾であったと私は言わざるを得ないのであります。遺憾であるというよりもむしろ逆行の傾向さえある。現に今重要な問題として国民医療保障と同時に重要な岡問題として、国民年金制の問題のごときは、年金制度の整備、統一に関する勧告がすでに一昨々年発せられておる。ところがその後に至って他の分野における複雑な年金制度が現出いたしまして、かえって制度複雑多岐にわたるという傾向きえあるわけであります。結核の問題にしても、国民医療保障の問題にしても、やはり勧告を得てやっと七年にしてどうやら多少の実績が示されようというようなことであっては、制度審議会というものの権威にも関するし、社会保障制度審議会勧告というものについては、その実現国民が非常に多く期待をしておるにもかかわらず、国民期待にこたえる立場からも政府の従来の熱意は非常に不足であって、遺憾であったと思います。この点について厚生大臣としては社会保障制度審議会勧告に対してこれを忠実に実施しようという誠意とを決意持っておられるかどうか。社会保障制度審議会権威を十分に尊重しようという誠意を持っておられるかどうか、この点の御所信をまず承わりたいと思います。
  6. 神田博

    神田国務大臣 岡委員お尋ねにお答え申し上げます。ただいま岡委員から社会保障制度審議会ができてもうすでに八年の歳月が流れており、この審議会からしばしば重要な答申が出ておるが、政府はその答申を尊重しない、はなはだしきに至っては逆行するようなこともやったような例があるようだ、はなはだ遺憾に思う。今日政府はこの社会保障制度審議会答申についてどういうような考えを持っておるか、こういう意味お尋ねのように承わったのであります。実はこれはぶちまけたお話でございますが、ついせんだって社会保障制度審議会の五十六回目の総会が総理大臣官邸でございました。私ごあいさつに伺いましたところが、会長大内兵衛さんから同じようなことを前段に述べておられたのでございます。前のことを言われますと私も実はあまり詳しくないのでありまして、お答えしかねるのでございますが、今岡委員の御質問といい、先般の社会保障制度審議会における大内会長お話を聞きましても、どうもさようなことがあったのではないかと考えておるのであります。これはまことに遺憾なことでありまして、今事務局長からも御説明がありましたように、戦後の復興戦争の跡始末に政府は追われて、おそらく余裕がなかったというのが実際じゃないかと考えております。そこで今度の石橋内閣といたしましては、御承知のように内閣発足に当りまして社会保障制度を十分充実いたしたい、進んで福祉国家の建設をしたい、そのためには特に社会保障制度審議会から答申を寄せられております医療保障制度の問題について最初に取っ組んで真剣にやろう、こういう計画を立てまして国民保険を打ち出し、また一番国民病といわれておる結核撲滅対策に強力に手を打とうという方針をきめまして、早期診断早期治療という計画のもとに今回の予算等も計上いたしたわけでございまして、今まではいろいろの事情があって、この社会保障制度審議会答申については御満足のいくような線には出てこなかったのでありますが、今後は一つ勇断をもってやりとげよう、こういう決心でございます。先般の社会保障制度審議会におきましては私もごあいさつにおいてその意味のことを申し上げましたところ、大内兵衛会長は、先ほど述べたようなことを述べられたあとで、この審議会からいろいろ答申しておって今まではたよりなきを感じたのたが、石橋内閣成立に当って社会保障を取り上げられた、これは非常な英断であって、実は自分たちとしてもこれほど大胆率直に真意を吐露して社会保障と取り組むという気概を起したことは敬服に値する、その成果を期待する、というふうなごあいさつもあったわけでありまして、政府といたしましては、またこれを担当いたしております厚生省といたしましては、この三十二年度を出発点として今後年を重ねるごとに十分答申案を尊重いたしました線によりまして社会保証制度充実をいたして参りたい、かような所信でございます。
  7. 岡良一

    岡委員 大臣の御答弁はまことにいささかわれわれの愁眉を開かすに足ると思うのでありますが、しかし今もお言葉の片鱗にもありましたが、戦後のもろもろの復興のことにかまけて、ついつい社会保障制度に手が伸びなかったという考え方に私は本間のあやまちがあると思うのです。社会保障制度というものの各国における歴史を見ましても、第二次大戦後どの国も、勝った国も負けた国もいち早く福祉国家という旗じるしのもとに非常な法制的予算的努力を傾けておることは御存じ通り戦いに破れた、戦いに勝った、いずれにしても戦争の犠牲の果てに平和を念願するという国民の気持と、国民生活を守ろうという政府努力というものは、不離一体なものとして、福祉国家という大きな政治原理が生まれてきておることは御存じ通りだ。ところがこれがとにかく日本においては非常な立ちおくれを示している。今大臣の御言明のように、ぜひ一つやっていただきたいと思うのであります。  そこで問題は、これまで審議会勧告が尊重されず、実施されない。これは政府部内においても、この取扱いにおいていろいろ問題があったと思うのであります。大臣が真に審議会勧告を尊重してその実現誠意を示そうと思われるならば——勧告御存じ通り社会保障全般でありまするが、政府部内では、あるいは労働省所管のものも社会保障制度の中に含まれる、年金のごときは大蔵省所管のものもあれば総理府所管のものもあるというようなわけで、制度が非常に複雑多岐であり、政府諸官庁にまたがっておるわけであります。従って制度審議会勧告を受け入れて、政府が責任を持ってその実現に当ろうとするならば、まず厚生大臣が提唱せられまして、政府部内にやはり関係閣僚をもってする恒常的な機関お作りになって、これが政府を動かし、そうして社会保障制度実現に向って着実な歩一歩をお進めいただくという御工夫があってしかるべきと思うのであります。このように厚生大臣としては関係閣僚等をもってする新しい社会保障制度審議会の受け入れ並びにその実現ということについての機関お作りになるという御所信があるかどうか、この点をもう一度承わりたいと思います。
  8. 神田博

    神田国務大臣 社会保障充実をはかるため、政府部内の幾多の、多岐にわたっている行政担当を一本にまとめて強力なものにすることの可否については、これはもう審議会答申もありまするし、その方がまた当然考えられることであろうことは、これはもう今お述べの通りだろうと思います。ただしかし審議会の述べておられまする幾多歴史を経て今日懸案になっているわけでございまして、これを早急にやるということにつきましてはいろいろまだ問題があろうかと思うのであります。しこうしてまたこの社会保障充実をはかるということは、制度も大事でございますが、まだ私は今のところ一つ提案として大受け取りいたしておきたいと思っております。しかも厚生省自身において解決すべき幾多の問題が山積しているように考えております。私のただいまの考えといたしましては、岡委員の述べられたようなことも考えないではないのでございます。これは十分考えてはおるわけでございますが、それよりも厚生省自体の山積している問題を先に解決して、そうしてその後に手をつけることもおそくはないのではないか、こういうような考えを持っております。しかしせっかく今岡委員社会保障充実のための積極的な御意見を示されたわけでございますから、この点につきましてはなお一つ十分考えてみたい。研究いたしまして早急にそういう閣僚会議を設けることがなお一そうこの充実の実をあげることになってよろしいということになりますならば、これを設けるに決してやぶさかではないのでございます。今直ちにどうという結論は持っておりませんが、せっかく岡委員の御意見もございますから、さらに考えてみたい、かように考えております。
  9. 岡良一

    岡委員 別にこの考えは私が申し上げた新しい考えというわけではありません。数年前に林譲治氏が厚生大臣のときに、社会保障関係する関係閣僚懇談会というものが持たれた。そうして政府部内の関係閣僚がいわば協力態勢のもとに社会保障実現へという気配を見せられたのでありますが、これが立ち消えになってしまいました。私は当時この関係閣僚懇談会閣議等においてもやはり相当協力態勢のもとに社会保障制度実現に大きな役割を果すものと期待いたしておったのでありますが、立ち消えになったという事情があるのでありまして、ぜひ大臣といたしましては、今後大きな決意を持って社会保障制度実現のために御努力を願うということであれば、この経験を十分一つ翫味いただきまして、できたら政府部内において関係閣僚の何らかの協議協力態勢お作りいただくということが非常に妥当なる方法ではないかということを申し上げたい。  そこで今度の勧告内容について若干お尋ねをいたします。勧告内容に対する政府の御所信についてごく若干の原則的な問題をお尋ねいたしたいと思うのでありますが、そこで今大臣国民医療保障ということについて御言明がありました。また新聞等を通じてもこのことが広く一般国民世論に流れ、世論もこれを待望しているのでありますが、この法律案一体厚生省としてはいつお出しになるよう御用意になっておりましようか。
  10. 高田正巳

    高田(正)政府委員 御質問の点は国民健康保険法改正というふうな関係を主点としての御質問だと存じます。実は私ども国民健康保険法改正法律案を目下検討をいたしております。できますならば今国会で御審議をお願いするようにしたいと思いますけれども、ただいまのところではこれが間に合うかどうか、この点について若干の危惧の念を持っております。それはいろいろ政府部内におきましても関係する省が相当ございまして、これらの間におきましていろいろ調整をいたさなければならない点がだいぶ残っております。さような関係もございますし、その時日につきまして今明確に予測をし得ないような状態にございますことを御了承願います。
  11. 岡良一

    岡委員 しかし今国会会期中には御提出という確信を持っておられましようね。
  12. 高田正巳

    高田(正)政府委員 本国会会期中に提案審議をお願いしたいと存じまして、努力をいたしております。
  13. 岡良一

    岡委員 そこですでにその御用意のもとに今度の厚生省予算の中にも多少の数字が上せられていると私は思うのでございますが、それに関連して保険局長にお伺いいたしましよう。新聞紙等ではすでにどの地域どの地域は何年度にやるというので市の名前別も幾つか上っているわけです。そこでみんなもできるものと思って非常に待望しているので、まだ努力中であるというようなうらさびしい御答弁では、事の意外に国民はあきれるのじゃないかと思うのですが、一体八百十七万人を入れよう、これが初年度の計画であるというようなことが、新聞に発表になっておりますが、厚生省のお考えとしてはそういうような御方針でございますか。
  14. 高田正巳

    高田(正)政府委員 法律改正いたしまするといなとにかかわらず、年次計画を立てまして、国民健康保険普及促進というものをはかりたい、かように考えておるわけでございます。  それでただいまおあげになりましたように、私どもといたしましては各市町村につきまして、三十二年度以降どこそこの市町村は何年度から開始をするというふうな一応の計画を策定いたしております。その計画によりますると、三十二年度におきましては八百二十七万程度の被保険者の資格を有する市町村開始予定をいたしておるわけでございますが、これは一応そこに実施をいたしたい、またその意思もあるというところで、さような市町村の数といたしまして四百三ほど予定をいたしておるわけでございます。しかしこれは相手のあることでもありまするので、それら対象市町村の中で、三十二年度に開始いたしたいと努力をいたしておりましても、繰り述べされるものがあるだろう、落後をしていくものがあるだろう、その比率を、これは大見当でございますけれども押えまして、そうして年間伸びを五百六十万程度ということに考えておるわけでございます。その予算を、ただいま御審議をいただいております予算の中に盛り込んである、こういうふうな関係に相なっております。
  15. 岡良一

    岡委員 これまでの例で見れば、大体年間二百万人くらいの伸びがあったように私承知しているのですか、これを一挙に五百六十万は何とか確保したいという御意見であります。ところが予算で見れば、国民健康保険については普及促進補助費として二千三百万円が計上されているという程度でありますが、五百六十万人という厚生省計画が、この程度予算をもって果してできるのかどうか。やはりもっと特別な助成の措置なり、あるいは何らかの事務機構の拡充とかいうような具体的な裏づけがなくて、ただ数字だけを掲げてやってみたいということでは、政府としては誠意もないし、またやる気がないのじゃないかとさえ私は言いたい。その辺のところはいかがでしょうか。
  16. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ごもっともな御趣旨の御質問と拝承いたします。仰せのように最近の過去の年度におきましては、さきほど被保険者伸びがございません。しかしその一番大きな原因となりまするところは、すでに御承知でございまするように、国保事業開始いたしますると、保険の収支がアンバランスになって、うっかりすると赤字になるぞということが一番大きな障害になっておったのでございます。しかもその障害のさようなことに相なりまする一番大きな原因一つといたしまして、事務費補助金におきまして、実際に市町村が使いまする事務費だけ補助金が参らない、こういうことがその一番大きな原因一つであったように私ども考えておるのでございます。従いまして来年度におきましては、この事務費の補助単価というものを相当大幅に引き上げて参りまして、従来六十八円程度でございましたものを八十五円というところまで引き上げまして、予算に計上をいたしてあるのでございます。これによりまして、この問題も決して十分とは申せませんけれども、ある程度障害の解消に相なる、かように考えておるわけでございます。  なおその他新たに国保事業開始を準備いたしまする市町村に対しまして、あるいはこれを指導いたしまする府県に対しまして、少額ではございますが、普及促進費というふうなものの補助をも考えて計上をいたしております。なお各府県に普及促進協議会というふうな機関をも設置していただきまして、いろいろ関係のある方々の御参加をいただきまして、この普及計画というものに御協力をいただくということを考えているわけでございます。従いまして、ここ最近の新しい国保開始の状況は、決して来年度の予算に計上いたしたほどの伸びがないことは事実でございますが、以上申し上げましたような措置があれこれと一緒になりまして、なお私ども関係の者の努力国民各位の御理解とによりまして、この予算に計上されておりまする年間平均五百万人の新しい伸び実現して参りたい、かように考えておるわけでございます。
  17. 岡良一

    岡委員 事務費の単価にいたしましても、私ども新聞等で拝見をすれば、大体百七円程度である。昨年度は六十七、八円であった。そこで折衝の結果八十五、六円というところに押えられたということで、これでは、百七円という数字が正しいものであれば、事務費においても決して親切だとはいえないと私は思うのです。そこでこのような形で年次的な計画をもって全国民を国保に包括しようというならば、問題点はやはり従来の国保の給付内容にあると思うのです。私から申し上げるまでもなく、きわめて不均衡な給付内容を統一する、社会保障制度審議会では少くとも七割というような線も出しておるはずでございますが、この給付内容の統一、そうして給付内容の向上——なるほどおたくの白書などを見ると、逐年国保の給付内容も改善は見ておるようでございますが、この機会に給付内容を引き上げる、同時に統一をするというような努力が、この国民医療保険の大前提として必要じゃないかと私は考えておる。この点については何か御考慮があるかどうか、この点を一つ承わりたい。
  18. 高田正巳

    高田(正)政府委員 仰せのごとく、現在の国保の給付内容におきましては、大体市町村の条例にこれをゆだねておりまするので、非常にばらつきがございます。従いまして、私ども法律改正案を考えます際には、このばらつき、特に給付制限というふうなものは最低基準等を設けまして、ばらつきを調整して参りたいというふうに考えております。  なお給付率の引き上げの問題でございますが、これは先生御指摘のように、最近七割給付程度をやっておる保険者もある程度数がふえております。従いまして現在の態勢のままでも保険者によりましてはさようなことも可能であるわけでございまするが、全般的に申しますると、給付率を七割に引き上げるということはなかなかそう簡単なことではないと存じます。私どもといたしましては、一応給付率の引き上げということももちろん考慮いたしながら、まず第一には国保の網に入っておらない、全然保険の網に入っておらない方々を保険の網に入れていく、広げていくということをまず第一番と考えまして、これを強力に推し進めますと同時に、給付率の改善の方をも配慮をいたして参りたい。しかしものの順序といたしましては、やはり全然加入しておらない人を加入させていくということの方がまず第一ではあるまいか、かような考え方をいたしておるわけでございます。
  19. 岡良一

    岡委員 それから現在でもそうでありますが、特に五百六十万というふうな広い範囲に年次的に適用の範囲を広げて国民の加入を求めていこうという場合、現在の国保でもそうでありまするが、いわゆる五人未満の事業場の従業員とその家族は国保に包括されることになっておるわけですね。これは果して妥当な方法なんでしょうか。あなた方の御見解で、これも便宜的にあるいは機会主義的に、ともあれやむを得ないからかかえようという考え方でこれを包括していくということは、これは波に押された機会主義的な方法だと思いますが、筋とすれば、むしろ健保を拡大して健保を改正して、五人未満も被用者である限りは被用者保険の中に包括する、被用者険と自営者保険である国保を並行的にそういう方針で全国民を対象とする医療保障制度を設ける。これが私は今後の日本の医療保障制度の基本的な原則じゃないかと思うのです。ところが今のままでいけば、ずるずるに五人未満の事業場の従業員とその家族は国保に入ってしまう。そうすれば被用者保険というもののあり方、また現在ある被用者保険というものとの関連がきわめて不明朗になってくるわけです。これは制度そのものの根本にかかわる私は重大な問題だと思いますが、この点については皆さんの御意見はいかがですか。
  20. 高田正巳

    高田(正)政府委員 五人未満の零細事業場に働いております人たちの問題につきましては、昨日もいろいろと他の席で御論議があったわけでございますが、これらをいかにいたしていくかということにつきましては、今日いろいろ意見があるところでございます。現在の政府管掌健康保険の中にこれを包含していったらどうかという考え方も一つでございます。また社会保障制度審議会が御提案になっておりますように、第二種健保というふうな、いわば新しい被用者保険の体系を作っていったらどうかというふうな考え方もありますし、またそれらの企業の実態から考えまして、むしろ国民健康保険の中に包含をしていった方がいい、その方が実現性がある、こういうふうな御意見、いろいろあるわけでございます。実は私どもといたしましても、今仰せのように被用者でありますから、被用者保険ということがすぐ理屈の上では考えられてくるわけです。その線でことに社会保障制度審議会の御勧告の第二種健保というような考え方もございまするし、その辺のところが果して実施可能であるかどうか、実施いたすとすればどういうふうな障害があるであろうかということについて、実は相当真剣に検討を加えております。なお御存じ厚生省に設置されておりまする医療保障委員の方々におかれましても、この問題を目下一番大きなテーマとして御検討をいただいておるような次第でございます。まだ私どもといたしましては、いずれにいたすかという結論を確定的に出しておらないような次第であります。と申しまするのは、御存じのように、これらの事業場の実態あるいは雇用契約の実態というものにつきまして、まだまだ実態を明らかにいたすという必要もございます。一応先生方にも御報告を申し上げましたように、昨年調査をいたしまして一応の数字はつかんでおります。しかしさらに本年もう一度調査をいたしてみたい、かようなことも考えておりまするので、それらの実態をより正確に把握いたしまする努力を重ねますると同時に、今の基本的な行き方についての考え方につきましても、医療保障委員の御検討等を待ちまして私どもといたしましても態度をきめたい、かように考えておる次第であります。
  21. 岡良一

    岡委員 最近の労働省あたりの統計におきましても、生産者年令人口以上の就業人口というような状態で、一見きわめて超完全雇用とでも言いたいような数字を示しておりますが、内容を見ると、逐次ふえてきておるものは長時間労働、もう一つは賃金較差です。いわんや大経営と中小企業というより五人未満の零細企業における低賃金の実態、同時にそこにおける長い過酷な労働時間というものは問題にならない状態になってきておる。数字が示しておるんです。六十時間以内一週間働いておるというようなものが最近格段にふえてきております。そういうような状態の中で彼らこそ健康が彼らの生活と生産の元手ですから、これを一つまずかかえ込んでやる。むしろ被用者保険としての健康保険はここへぐっと力を入れて、これらの諸君をかかえ込んでいくというところに私は今後のわが国社会保障医療保険、被用者保険の使命があるのだと思う。これがとにかく国保ということでかかえ込まれるというようなことになると、そこに私は原則的な大きな問題があると思う。第二種健康保険などというものは、私個人としては反対です。被用者保険に入れていくべきです。この混乱は私はぜひ被用者保険一本で行くべきだと思っております。いずれまた作業中の国保の普及に関する法律案等が出ましたときに十分論議を尽したいと思います。  次に、山口さんもおられますが、制度審議会でも力説しておりますが、結核の問題について二、三点お聞きしたいと思うんです。言うまでもなく結核は最近は最近頭打ちの傾向にあると一般に厚生省の諸君も考えておられるようです。なるほど頭打ちの状態にはありますけれども、しかし現実にはやはり生活保護法医療給付の約六割近い、あるいは健康保険の給付費の約三割四分であるとか、国保の一八%であるとか、日本の社会保障制度医療関係における財源というものを相当食い荒しておる。その結果これらの諸制度結核に食い荒らされて、財政的にきわめて不安定な状態になっておるということは、これはいなめない現実の事実なんです。そこで結核について今年の予算を拝見いたしまするとこれは非常に御努力を多としたいのですが、健康診断、予防接種などは全額を国庫負担にしようという建前になっておる。ところが問題は、建前としては全額国庫負担で健康診断、予防接種を全国民を対象としてやろうというような御計画であっても、実際の健康診断というものは、従来見ても、この施行率は約三〇%にとどまるということを私聞いておるのです。この点はもちろん一部は自己負担にあった点もありましょうが、もっと根本的には、現在の健康診断のやり方などについても問題があるのじゃないかと思うのです。第一、せっかく健康診断を受けて、そこでもって要療養者と判定を受けた、あるいは安静を要する者としての判定を受けても、そのあとの治療対策というものは何ら伴っておらない。いくら病気を発見してみても、その跡始末をしないということでは実際結核対策というものは十分な成果をあげ得ないと思うのです。これは専門の山口さんも御存じ通り、予防と治療というものは、結核では不可分なものですから、そこを何らかわれわれの納得のいくような治療対策というふうなものが具体的にあるのかどうか、この点の御見解、御所信を承わりたいと思います。
  22. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 結核の受診率のお話が出ました。受信率を高めるようないろいろな施策考えなければなりませんが、その一つとして、やはり跡始末のことを十分考えてやらなければいけないではないかということ、御指摘の通りだと存じます。受信率を高めますための施策は、ほかには、いろいな施設あるいは人員の整備、あるいは現在保健所が中心でやっておりますが、保健所を中心としての協力態勢を高めていくというようなことが必要だと存じます。先ほど三〇%という数字をあげての御質問でございましたが、三十年の四月から三十一年の三月までの実績は、従来非常に受診率の低かった一般市町村民が年度途中から入って参りましたために、三十年度の実施率は、三〇%ちょっとこえたという程度でございました。その後だんだん各方面で非常に努力が続けられておりまして、三十一年の四月から本年の三月までの状況は私どもの現在のごく大ざっぱな推定では、四四、五%まで上っているのではないかというふうに考えております。地区によりましては、九〇%以上を示している地区も相当出てきております。その際には、やはりいろいろな検診の人的、物的の整備のほかに、ただいま御指摘のような医療費の問題に相当手当がよく行われているということも一つの大きな突つかい棒にならているというふうに考えられるのでございまして、ただいまの御指摘の点、まことにごもっともだと思うのでございます。結核医療につきましては、先生も御案内の通りに、従来たびたび一本化をとなえられておりますけれども、現在結核予防法による医療は、公費負掛制度によって一部の医療に対して公費負担をやって、適正医療を普及していくという方法、その制度、それから各種の社会保険各法による相互扶助制度、それから生活保護法による扶助制度というようなものが、総合的に現在運営されているわけでございまして、結核予防法だけを申しますれば、社会保障審議会勧告にもありますように、もっとこの対象範囲を広げて結核医療費の突つかい棒をするようにというような勧告を受けているのでございまして、私どもその点につきましては、国民健康保険を伸ばしていくということとにらみ合せて今後考えていかなければならないというふうに考えているわけでございますが、結核予防法におきましては、とりあえず三十二年度におきましては、先般も御説明申し上げましたように、内容充実をはかって、健康診断の普及によって早期発見しました患者が早期に治療できるように、回復できるように、一歩前進していきたいこいう考えでございます。結核予防法以外の問題として、国民健康保険の普及によって、現在何ら社会保険あるいは公費扶助の恩恵を受けていない人たちに対して、医療費の突つかい棒ができるようにということで、これは保険局長からも説明がありましたように、国民健康保険を普及させていきたい。あるいはまた健康保険財政の方を健全に運営して、そうして健康保険保険者については健康保険の方の財政医療費のまかないをしてもらおうというようなことで総合的に考えているわけでございます。社会保障制度審議会の御勧告の線については、今後非常に大きなドラスティックな問題になりますので、十分将来も検討していかなければならない、そういうふうに考えております。
  23. 岡良一

    岡委員 とにかく国民医療費の二五%と言われ、特に社会保険の療養費の三〇%をこえているという結核療養の問題について、国がどの程度一体責任を持っているかと言えば、結核予防法の療養費はことしの予算で十七億八千万円ということです。結核予防法というものがせっかくあって、ことしは予算的に、皆さんの御努力で、集団検診もやり、予防後極もやるというふうに進められる。そこで集団検診で発見されたものに、お前は入院しろ、仕事を休め、医者にかかれと言いっぱなしなんです。これを結核予防法の療養で一つ今度受けとめてやるという態勢でなくては、結局結核に対して振り上げたこぶしを振り上げただけでそのままおろししてきたと同じことになりはしないかと私は思うのですよ。今結核が頭打ちのときだからこそ、三年なり四年なり相当予算をさいて予防法を強化して、国なり地方団体なりのやはり公費負担にするとか、あるいは国と地方団体の負担の比率も、国の方はやはり八にして一方は二にするとか、思い切った措置を講じなければ、せっかくの山口局長の理想も結局はファンタジーに終るのではないかと私は思うのですがね。この点はどうですか。そこまでいかなければ結核というものはつぶせないのではないかと私は思うのだが。
  24. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 御指摘の通り結核予防法による医療費公費負担制度を広げて参りますためには、地方財政との関係もございまして、国の支出を相当大幅に増額しなければならないということでございます。現在の結核予防法による公費負担制度のまかなっております医療の範囲というものが、現在わが国で行われております結核医療のうちのきわめてわずかな部分であるという事実からかんがみましても、これで広くまかなって参りますためには、かなり思い切った財政支出をしなければならぬというように考えられるのでございまして、私どもの方でもそういう観点に立って、制度審議会勧告もございますので、いろいろ財政的な計算もしてみているのでございますが、これらの点御指摘の通りでございます。今後どういう形で、発見された患者の始末をするかということが一番大きな問題になって参りままので関係方面と十分検討してその実を上げるように努力しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  25. 岡良一

    岡委員 とにかく申し上げたいことは幾つもありますが、いずれまたあとの機会に譲ります。どうも国民保障について、政府やまた担当局長のお考えを聞いても、非常にはっきりしない気がしてしようがないのです。それから結核対策にしてもまだ非常に不徹底であると思うのですね。社会保障制度というものは——特に内閣が拡大均衡、積極、健全なんという政策を掲げておるが、何といったって輸出市場の確保と国内市場の安定というものはやはり一番大事な前提ですよ。してみれば最低賃金制なり社会保障制というものは、国内市場の安定と確保のために重要なてこ入れなのです。社会保障というものは決して国民生活を守るというものじゃない。均衡拡大、積極健全なる財政金融政策という国の経済施策の裏づけであるという認識に立って、皆さんも大蔵省を動かすなり総理を動かすなりして、格段の御努力を願いたいと思うのです。いずれ大臣が来られましたら重ねて若干質問したいと思いまするか、私の質問はこの程度で終ります。
  26. 藤本捨助

    藤本委員長 八田貞義君。
  27. 八田貞義

    ○八田委員 社会保障制度審議会事務局長である太宰さんにお伺いしたいのですが、昨日の予算分科会におきましても話をいたして参ったのですが、社会保障という言葉でございますが、一体社会保障ということをどういう内容においてとらえて、制度の前進を考えておられるか。まず基本的な問題から質問を始めていきたいと思うのでありますが、一体社会保障という内容をどういう点にとらえて制度の前進をお考えになっておるか、お聞きいたしたいと思います。
  28. 太宰博邦

    太宰参考人 社会保障と申します場合に、その概念の範囲がどこかということは、常識的には今さら申し上げるまでもなく言えると思いますが、さて正確にどこからどこまでが社会保障であり、どこからはそれらの外になるかということは実はわが国においても意見が一致していないように存じます。また諸外国の例を見ましても、やはりその国々の実情に応じて、若干の差がそこにあるようでございます。従いまして今私といたしまして明瞭にここからここまでが当審議会考え社会保障の範囲であるというようなことについては申し上げかねるのでございまして、ただ私どもといたしましてはいろいろな資料を出します際に、社会保険とか公的扶助それから医療及び公衆衛生それから社会福祉というようなところまでは、どなたがお考えになっても、これは社会保障といって保障の一番中心をなすものというふうに考えているのではなかろうか。さらにこれを一歩踏み出しまして、たとえば引揚者の援護、あるいは恩給というようなことになつて参りますると、その中には社会保障的な考え方もあるように存じまするが、しかし同時にそうでない国家保障的なものもあるように存じます。従いましてこの辺までが、先ほど申し上げたものをかりに狭義の社会保障というように言いますると、それよりも一段広い範囲になるのではなかろうかというふうに考えております。さらにもう一歩拡げて参りまして、たとえば失業対策あるいは住宅問題の中にも、貧困者層を対象とした住宅ということになりますると、これもやはり社会保障に関連のあるように考えております。というようなことで、はっきりどこからどこまでと確実にいたしておりませんので、私どもの方といたしましても、資料には二段がまえ、三段がまえで出しておるような状況であります。
  29. 八田貞義

    ○八田委員 今のお話でありますが、そうしますと私こういう疑問が起ってくるのです。憲法第二十五条には社会福祉社会保障、公衆衛生、この拡充向上に努めなければならぬということが書いてあるわけです。憲法で規定しておる概念と、今おっしゃった社会保障の概念とは違うようでございますね。憲法では社会保障の概念とは違うようでございますね。憲法では社会、福祉をはっきりと分けております。社会保障も分けております。公衆衛生も分けております。そうしますと今のお話は憲法の規定しておるところの社会保障の概念とは違うように私は考えるのです。だから結局社会保障という問題を考えていく場合には、やはり憲法を基本として、そして体系を作っていかなければならぬと私は思うのです。そうしませんと今の話のように非常に憲法とはもう離れてしまった社会保障というものが出てきているのです。いろいろな学者が社会保障の問題について説いておりますが、非常に矛盾が多い、混乱が多いのです。しかもまた私が特に言いたいことは社会保障というのはもちろんアメリカの社会保障法というものを訳した言葉なのですけれども、アメリカの社会保障法の内容とは、今日本でみなが言っておるところの社会保障の概念とは違うのです。全然違うのです。さらにまた保障という訳し方がいいか悪いかという問題も起ってくるのです。というのはわれわれは保障という言葉は耳から入ってきます。そうしますとインシュアランスの保障とごつちやにして考えてくる。そこに問題が起ってくるわけなのです。そこで一つ太宰さんにもう一つお伺いしたいのは、社会保障という言葉はだれが訳されたか、お教え願いたいのでございます。
  30. 太宰博邦

    太宰参考人 憲法の点に関連して参りますので、私からこの場で御答弁申し上げることもいささか差しつかえがあろうかと存じます。  なおその翻訳の関係は私どもで調べましてわかりましたらお答え申し上げます。
  31. 八田貞義

    ○八田委員 そこで社会保障からすぐに医療保障という名前が出て参りましたが、この医療保障というのが一体どういうことを意味するのだろうかというような疑問も起ってくるわけなのです。そして今度社会保障制度審議会からいろいろと答申が出ておりますが、その中で医療保障に関するいろいろなことが誓いてありますけれども、この医療保障という言葉が新しい言なのです。そこで医療保障の根幹となるものについて、一体どういうことをお考えになって、この医療保障という言葉をお作りになったのか、これについてお知らせ願いたい。
  32. 太宰博邦

    太宰参考人 医療保障という言集は、今回の勧告で私どもが発明した言葉ではないのであります。前々から概念は若干ニュアンスの差はありましても、いろいろなところで、社会保障制度の中で医療に関する分野のものを一まとめにいたした場合に、医療保障というふうな言葉が便宜的に使われておりました。今回の勧告におきましても、その従来使われておりまする概念を、一応そのまま受けて使っておるわけでございます。内容といたしましては、やはり医療の合理的な処理の方法でありまするところの医療に関する社会保険、それからわが国のそういう保険におきます医療給付の内容の問題、あるいはこれを担当しております医療機関そういうような問題、そういうようなものをひっくるめておるわけであります。
  33. 八田貞義

    ○八田委員 今のお話を大体自分らの方にはこういうふうに了解してよろしいかどうかをお尋ねしますが、そうしますと、医療保障というのは公的扶助とそれから社会保険医療機関を含めた公衆衛生、この三つが根幹をなすものである、こういうふうな御答弁と了解してよろしゅうございますね。そうしますと、ここで私今の医療保障の根幹となるものの三つについて自分の考えを申し上げてみたいと思うのでありますが、公的扶助としての医療費扶助でございますが、これはあくまで租税によるところの扶助でございます。また社会保険というのは一体どういうことか、この問題でございますが、社会保険というのは、これは保険料を納めておいて、そうして給付の形において権利として与えられるというのが社会保険制度、こういうふうに私了解いたしておるのでございます。そこでこの公的扶助にいたしましても、社会保険にいたしましても、特定の個人を相手とした給付でございます。従って社会保険に収支が償わない、赤字が出てきたからどんどん国庫補助をふやすべきだ、こういう理論に対しまして、社会保障制度審議会においてはこの問題についてどのようなお考があったかどうか、お知らせ願いたいと思うのです。
  34. 太宰博邦

    太宰参考人 医療保険財政にアンバランスを生じて赤字が出たというような場合に、国が負担する点に関しての御質問のように思いますが、この問題も勧告審議いたします際、大きな問題として取り上げられたのでありますが、結局勧告といたしましては、当面の問題といたしました場合には、国庫負担というものはその対象を緊急度の最も高いものに重点を置かなければならないことになるだろう。従いましてそういう点から考えて参りますと、被用者保険につきましては、さしあたり低額所得のためにその十分な保険給付に匹敵するだけの保険料を支払う能力がない、それはそのグループ全体をつかまえての話でございますが、そういうような場合においては、国庫負担をするということは是認せられてよろしかろう。それから国民健康保険の分野につきましては、今日の国保の実情、さらに将来国民の残された層にこれを拡大していくというために、この給付率の引き上げというために国庫負担というものが考えられてよかろう。それから第三番目には、結核医療費に対しましては、これはたとい保険で給付する場合であろうと、その他一般の場合であろうとを問わず、結核という疾病の特殊性にかんがみまして、これの結核医療費に対してそこばくの国庫負担をするということも、これは是認されていいだろう、こういうのが今回の勧告の中で当面の問題として取り上げられておる点でございます。
  35. 八田貞義

    ○八田委員 今のお話によりますと結局国民保険の進め方について、範囲を拡大していく、このような点に重点が置かれたようでありますが、もちろん制度の前進には範囲の拡大、内容充実が並行して進んでいかなければならぬのでありますが、日本の財政の現状からすれば範囲の拡大が先か、あるいは内容充実が先かという問題が、一番大きな問題になってくると思うのであります。ただ単に範囲の拡大をあせるあまりに給付のアン・バランスを招いたのでは社会保険の健全性ということは貫かれません。そこで、私が一番問題点としてとらえていきたいのは結核の問題でございますが、先ほど岡委員からも結核の問題がいろいろと検討されておりましたが、ただ日本の社会保険制度が問題となっておりますところの政府管掌健康保険、これは短期給付の保険なんです。ところが結核は三年間の療養期間が与えられておる。そうしますと長期と短期の限界点はどこに設けられて保険制度が立てられたのかという問題が起って参ります。これは体系がなくて結果的に長期とか短期というふうに分けられてきておるようであります。ところが短期の性格を持った健康保険がすっかり長期保険の性格も入れてきてしまった。結核においてそうであります。これが赤字の大きな原因をなしてきておる。さらにまたもう一つ社会保障制度審議会から出た答申の中でも、医療水準の規定問題についてははなはだ不明確でございます。医療の均一性とか均等性といったようないろいろな言葉を使っておられますけれども、給付水準の最高を押えないで適正とか妥当な給付というふうなことは出てこないはずなんです。そこでこの結核問題を社会保険の中で三年給付にしておいていいかどうかという問題なんです。この問題についても、社会保障制度審議会においては、文面には載っておらぬようでございますけれども相当突っ込んだ審議がやられたものと了解いたしますが、その点につきまして、短期保険であるべき性格の健康保険の中に三年給付としておる結核問題についてどのような討議があったかお知らせ願いたいのであります。
  36. 太宰博邦

    太宰参考人 結核を含めまして現在医療保険の給付が三年が妥当かどうかということにつきましては、率直に申しまして、今回の勧告においては大きく取り上げられたことはなかったように記憶いたしております。その問題も、御指摘のように掘り下げて参りますとなかなか大きな問題になってくると存じますが、今回の勧告の趣旨が、先ほど申し上げたような趣旨で議論をされておりました関係で、その問題については格別大きな何にはならなかったように思います。
  37. 八田貞義

    ○八田委員 結核の問題に関連いたしまして社会保障制度審議会では保健所の充実をうたっておるようでございます。ところが保健所の充実ができたら結核の予防、治療が完全に行われるかどうかという問題でございます。現在の早期発見、早期治療という形態からいたしまして、保健所を第一線としていろいろの診断をやっておるのでありますが、一体今日の日本の保健所——七百八十八ヵ所でございますね、その保健所において健康診断をやる場合に、過去において一体どれだけの能力を発揮したか、また今後五千万人の健康診断を三十二年度予算において実施するというわけでありますが、果して現在の保健所の内容においてやれるかどうかという問題が起ってくるわけであります。そこで公衆衛生局長の方から、今までの保健所の機能においてどれくらい結核の診断ができたか、数字的にちょっとお知らせ願いたい。
  38. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 結核の健康診断の実施状況は、先ほど岡委員の御質問にもございましたように、昭和三十年度におきましては大体予定されました人員の三〇%程度しかできなかったのでございます。これは保健所の、その中心になるべき能力が十分でなかったという点、これは御指摘の通りでございます。保健所で健康診断を実施いたします際に、一応私ども建前としましては、健康診断を実施するうちの七側は保健所みずからがやるという方針で従来はやって参りました。しかしながら今回のように範囲が非常に広くなって参ります場合には、保健所にそう重荷を負わせてやるということはなかなかむずかしい問題であると思いますので、むしろ保健所が中心になって他の医療機関あるいは医師会あるいは予防会というような、諸団体の協力を得てやっていかなければならない、そういうふうに考えておるわけでございます。  それで、従来の保健所の実施状況でございますが、結核の健康診断にはたとえばツベルクリン反応、間接撮影、直接撮影、それから予防接種、いろいろございますが、保健所みずからが取り扱いましたのは、ツベルクリン反応は保健所みずからがやるよりもむしろ一般の開業医の方々、医師会の方方にお願いしてやっておる方が多いのでございます。むしろ間接撮影に重点を置いてやっておったという状況でございます。昭和三十年度の実績によりますと、一カ所一カ月の間に約二千件やっておるという状況でございます。昭和三十年度の健康診断の実施状況は、間接撮影が大体二千数百万になると思いますが、そのうちで従来ごく大ざっぱに申し上げまして六割ないし七割を保健所でやっておるというような状況でございます。
  39. 八田貞義

    ○八田委員 私の質問の仕方がうまくなかったせいもあるのですが、大臣にもお聞き願いたいのですが、今日結核の診断が、学生は八九%くらいの診断率をあげてきているのです。ところが事業所なんかは三七%くらいじゃなかったでしょうか。一般の国民になりますと七%から最近は一〇%くらいになったかと思っておりますが、それくらいの状態なんです。そこへもってきて、これから二千万の人間を対象にして健康診断をやっていく場合、一保健所が全能力をあげてみましても、一年間に二万人がせい一ぱいです。そうしますと、現在保健所が七百八十八カ所ありますけれども、二千万人の健康診断をやっていくためには、全く労働条件を無視したような状態でやっていかなければ、二千万人の健康診断はやっていけないのです。そこに今日、早期発見と口では簡単に言いますけれども、なかなかこれが実施しにくいという問題があるのです。あくまで結核の行政は第一線の機関であるところの保健所がこれに当るべきだ。ところが保健所の今日の内容充実というものは七一%ぐらいの充当率しか持っていないのです。それにおいて今日の予算が組まれてきているのですが、このようにしておきますと——保健所の機能というのはあくまでサービス機関であります。決して収入を上げる機関ではございません。今日のような三分の一の補助率ではとても保健所の機能を上げて結核撲滅への国策に沿っていけないような状態にあるわけであります。そこで私はこの結核問題につきまして今後いかがにして保健所を強化されていくか、もちろん今度医療費を交付する制度もできてきましたけれども、それよりも今日保健所の機能というものは、たとえば受胎調節の指導とかあるいは在宅結核患者の療養指導とか、そういった大きなサービスをしなければならぬ責務がある。ところが今日のような状態ですと、結局収入を上げなければならぬということで、保健指導の方は手を抜いてしまうという状態が起ってくるわけです。大臣は今後保健所を拡大していくのだというお考えを強くお持ちのようでございますが、保健所がサービス機関の性格を失うようなことはあくまで排除しなければならぬというお考えのもとに、一そう御努力をお願いいたしたいのであります。  そこで私もう一つお伺いしたいのでありますが、この社会保障制度審議会答申の中で、赤字の問題について論じられておりますが、その結論的なものは、運営の面において改善が加えられていかなければいかぬというような結論に到着しているようであります。しからば運営だけによってこの赤字が克服されるか、赤字解消ができるかという問題点をよく考えてみなければならぬと思ううであります。ところがただ単に今日の社会保険の運営というものが、厚生省保険局によって監督と経営が一本化されている、これは間違いであるからこの運営の方法を変えるべきだというような結論が出されているようでございます。私はむしろ社会保険の赤字という問題は、運営ももちろんありましょうけれども、もっと重点的なのは機構問題——オルガニゼーションの問題になってきておると思います。これらのオルガニゼーションの問題について、どのような検討がなされましたかお知らせ願いたい。
  40. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。政府国民保険の第一策といたしまして、結核撲滅を一つはかろうという際に、保健所の現状ではなかなか成果を上げることは至難ではないか、ことにこの結核早期診断等については、従来の実績から勘案して、容易にこの問題が成果を上げるということは困難であろう、これに対してどういうふうに考えているかというのが第一点だと思います。保健所が十分充足されておらないことは、この国会でもしばしば御指摘にもなり、また答弁も申し上げている通りでございますが、保健所の充実につきますては、なおさらに検討を加えまして充実するような方向に進みたいと思います。その一つといたしましては貸費生制度も設けたわけでありますが、これだけで解決するとは考えておりません。国庫負担の三分の一を引き上げることも一つの方法であろうかと考えますが、しかし何しろ今年度は社会保障一つ大担に打ち立てて、国民保険を四年間でやろう、そこであれもこれもということになりますので、保健所の方は大体昨年に比べまして約二億円程度の経費を増額いたしまして、健康診断等に要する経費については、特に配意している次第もあるわけでございまして、逐次段を追うて充足して参りたい、かように考えております。  それから第二の点は、健康保険政府管掌保険については、機構の問題を一つ検討して十分改善をはからなければ、赤字解消の根本的の施策にならないのではないかというようなお尋ねのように承わりました。この機構の問題につきましては、審議会答申もあることは御指摘の通りでございます。私どももこれは十分検討いたしたい、さらに検討いたす所存でございますが、健康保険の赤字がそれによって解消するというようには実は考えておりませんので、政府管掌健康保険のよってくる赤字対策は、これはいずれまた御審議を近々お願いしなければならない。お願いしておりまする健康保険法の一部改正案に出ておるようなあの考え方をもちまして、そして皆保険と並行して二本建で保健行政を推進して参りたい。今の改正法律案が、赤字解消だけにやっているわけではないと思います。しかし結果においては赤字解消ということに大きな関連はあることにもなろうかと思いますが、政府考えておりますることは、単なる赤字解消ということだけではないということを、この機会に申し上げて御答弁にかえる次第でございます。
  41. 八田貞義

    ○八田委員 その問題はまた健康保険のときにでも質問をやるといたしまして、ただ大臣にも知っていただきたいことは、もう御存じのことと思いますけれども結核の療養給付の問題なんですが、三年間給付を受けているわけです。政府管掌健康保険では、入院しておる者が六割の給付を受けておるわけでありますね。ところが共済組合なんかの場合、特に東京都の共済組合の場合なんかを見ますと、八割の給付を受けている。これですと、結核で三年間の療養を受けている間に八割の給付ですと、金がたまりまして、死なない限り、今は死なないのでありますから、テレビを買ったり、ラジオを買うような財源もたまってくるということで、今日結核療養給付を受けるような恵まれた階級にある人には、結核貴族という名前が出てくるような状態になっている。一方においては全然給付の対象とならないような国民階層があるという状態になっているわけですが、今度出してこられました結核対策予算の中で、百三十七万の要入院患者があるということが、厚生省の行政調査によってわかっておるわけでありますが、その後の推移につき決しては私はっきり伺っておらないわけなんです。そこで問題は百三十七万の要人院患者がある、結核患者が二百九十二万もある、こういうふうに言われておりますが、三十年度において結核患者のために食われた金が六百億円というふうに概算されておるわけなんです。その中で保険の方で納めた金、結核予防法によって納めた金、それから自己負担の金、こういうふうに分けてみますると、この点についてはこまかい数字は事務当局の方からお伺いいたしたいのでありますが、非常に問題点があるわけなんです。そうしますと、結核予防法とか、結核の治療を受けられるような保険に入っておる人、こういつた人人を集めてみますと、一体患者の何割が六百億円の金を使っておるということになってくるわけですか、その点について数字的に事務当局の方からお知らせ願いたいのです。
  42. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 結核医療費は約六百億と推定されるわけでございますが、ただいま八田委員の御質問昭和三十年度の結核医療費、これは厚生省の統計調査部で一応推算をいたしたが、なお補正すべき点がございますので、現在補正をやっておりますが、ただいまここでその数字を申し上げる段階になっておりません。二十九年度分はすでに発表されておりますので、それで申し上げますと、総額が、これはラウンド・ナンバーで申し上げますと、約五百九十二億円、その中で生活保護法による支出が百三十七億円、総額を一〇〇%といたしますと、生活保護法に上るものが二三%、結核予防法によるものは、これは地方と国と半々になりますから三十二億円、これが全体の約五%、遺家族援護法などによるものが四億円で約二%、それから社会保険各法によるもの二百八十七億円、総額の四八%、その社会保険の内訳で被用者保険が二百六十一億円、四四%、国民健康保険が二十六億円、四%、それから患者負担、これはいろんな形で患者みずからが負担しておるものを総計いたしまして、その総計が百三十二億円、全体の二二%というような数字になっております。
  43. 八田貞義

    ○八田委員 今数字を知らしていただいたのでありますが、大臣、この数字をごらんになりまして——百三十七万という要入院患者、二百九十二万という全結核患者の中で、何%がこれだけの医療費の恩典に浴したか。
  44. 山口正義

    ○山口(正)政府委員 これは非常にむずかしい問題でございまして、二十八年に実施いたしました実態調査の結果、二百九十二万人という全国的に推定される患者があるわけでございますが、その際に現に医療を受けておったという者が大体二割というふうにいわれております。大きく考えますと約六十万人というような数字になると思うのであります。
  45. 八田貞義

    ○八田委員 この問題は時間がございませんから次の機会に譲りますが、このような非常に大きな数字が出て、しかもまだまだ結核の治療の恩典に浴さない人々が多数にあるということを大臣よく御認識願いたいと思うのであります。  そこで最後にもう一つだけお伺いしたいのでありますが、今度結核撲滅対策ということがいわれてきておるのですが、私はやはりある年次計画を持って重点的にこれをやっていかなければならぬと思うのであります。今度出された予算は、一体年次計画に基いた予算であるのかどうか、あるいはつかみ予算と申しますか、その程度のものであるか、つまり年次計画に基いた予算請求であるのか、それとも大蔵省から、いろんな財政上の問題から削られて、結局年次計画がつぶれて、つかみ金程度の性格になってしまったかどうか、その点ちょっと大臣にお答え願いたいと思います。
  46. 神田博

    神田国務大臣 大へん大事なことを八田委員お尋ねになったと思っております。私ども予算を折衝いたしましたその経過、その結果についての考え方を申しますと、結核対策といたしましては、厚生省といたしまして十カ年計画というような一つの構想を抱いておりまして、その初年度が三十二年度の予算になっておるのです。今後十年計画でもって結核と真剣に取っ組んで撲滅をいたしたい、こういう意気込みで、実は初年度ああいったような方向の成案密得たわけでございます。
  47. 滝井義高

    ○滝井委員 少しこまかくなるかもしれませんが、鳩山内閣の時代に三十一年度の経済計画大綱というものを出したわけですが、この鳩山内閣の三十一年度の経済計画大綱で当ったものは、人口の伸びと労働力人口、生産年令人口ここまでは大体合っておったのです。ところがそれ以外のものは全部違っておった非常に大きな見通しの誤まりであったことは、大臣初め御存じ通りです。御多聞に漏れず国民所得等も間違っておったのですが、そういう間違ったものを基礎にしていろいろの計画が立てられてきたのです。この医療保障勧告に対する計画も、やっぱりそういうものを基礎にしてできてきておるわけなんです。そこで医療保障勧告数字の基礎になった、たとえば三十一年度の国民所得をみてみますと、勧告を作るときに基礎にした分配国民所得というものは六兆九千七百千億、これが三十一年度の基礎だったのです。ところが、実際に三十一年度の実績というものは七兆六千百億になってしまった。国民所得においてすでに七千億違ったのです。それから三十二年度の見通しに至っては、七兆二千五百三億の分配所得と勧告を作るときに見ておった。ところが現在は八兆一千八百億で一兆違ったのです。こういうように国民所得伸びというものががらりと違ってきた。同時に就業の状態が違って参りました。従って当然医療費伸びというものも、あなたが考えておった伸びは間違っておるということは確実なんです。これは太鼓判を押してもいいと思う。国民所得が一兆も伸びが間違っておるものを、そのまま医療費伸びの推計を正しいと見ていくことはナンセンス、だと思うのです。  そこで私お尋ねしたいのは、これはいろいろ医療費伸びについては見方があると思いますが、現在厚生省なりあるいは制度審議会なりでは——まず私二十九年ころから一つ数えていただきたいと思いますが二十九年度の総医療費は、あなた方の計算のベースでよろしいと思いますが、新聞発表されたときは二千二百八十億、こうわれわれは聞いております。それから三十年度は二千二百三十億で五十億減っている。私はもうすでにここに一つの大きな問題があると思う。総医療費が減るということは考えられないが、減っている。そうしますと、一体三十一年度は幾らになり、三十二年度は幾らの推計をしているかということです。制度審議会の方は三十六年まで推計している。いずれあとでお尋ねしますが、われわれが国民保険をやる場合には、当然こういう推計を出すべきである。ことしも政府は三十二年度の経済計画の大綱を作って、重要政策として社会保障というものをぴしっと経済計画の大綱の中に入れたからには、当然それに見合うところの計画というものを立てて、厚生省もやはり数字を持っていなければならぬ。従って、これは持っておられると私は確信をしている。持っておられなければそれが出てこないはずです。経済計画の大綱なんというようなものの中に、重要政策として出てこないはずです。しかも分配所得の方は、これは経済企画庁の方で出しているわけですから、少くともその分配所得に見合う医療費伸びというものも、三十年、三十一年度の実績というものははっきりしてきているわけですから、われわれはこういうものをここに明白にしていただきたい、こう思うのです。
  48. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいま二十九年度の医療費についてお話がございましたけれども、これは年々厚生省の統計調査部で調査しておりますが、二千二百八十一億六千九百万円というのは御指摘の通りであります。ところで三十年度につきましては、統計調査部で調査をやりましたが、その結果についてなお補正すべき点がある。これは先ほど山口公衆衛生局長が申し上げた通りでありまして、従ってまだ公式の発表もございません。私どもはその数字を得ましてから、今後の推計をいたすことにしておりまして、暫時作業をやめている次第でございます。   〔委員長退席、野灘委員長代理着席〕
  49. 滝井義高

    ○滝井委員 私はそれはおかしいと思います。少くとも私たちは、厚生省医療保障は五カ年でやる、こう思っておった。ところがわざわざ閣議で一年縮めて四カ年として、三十二年から三十五年には完成すると、こういうことを出してできている。今までの常識では、五カ年やるということを期待しておったものを、わざわざ一年縮めてやるからには、四年間にやるだけの自信と確信と科学的な計数の基礎があったからこそ、四カ年に縮めてきていると私は思う。ところが、今はすでに三十一年度が終らんとしている。そういう段階で、厚生省が総医療費さえ把握できないとするならば、国民経済の中における、国民一体どの程度医療負担ができるかということは、これはかいもく見当がつかぬ。ということなら計画が立ちませんよ。そうだとするならば、一体太宰さんの方はどういうことを基礎にして昭和三十一年度の総医療費というものを二千二百七十一億三千二百万円、三十二年度が二千三百九十四億七千百万円と、こういう工合に数字がぴしっと出てきているか。これは一体どこから出てきたかということを、まずあなたの方から答えていただきたい。
  50. 小澤龍

    ○小澤政府委員 私がただいま申し上げましたのは、社会保険あるいは公的扶助による医療費ではございません。それらのものについては、三十年度の決算に明らかと存じます。そういう社会保険なり公的扶助によらざる一般大衆の医療費についての推計分を申し上げたのでございます。
  51. 滝井義高

    ○滝井委員 それにしても結果は同じですよ。少くとも三十年度は医療は完了してしまっている。完了して、ことしはもう三十二年だから、一年以上たっている。少くとも健康保険には月報が出てきているわけですから、従ってその月報と同時に他の医療費というものも、統計調査部があるのだから推計しているわけです。内閣の統計なんかはもうすぐ出てきておるじやありませんか。だから厚地省でも専門家の統計調査部まであってやっているのだから、これは出てこなければ……。そういうことで、厚生行政というものは数字の基礎がないから大蔵省にやられてしまう。たとえば、実質的に国民健康保険事務費は百七円要っているということの確たる自信を持った数字がないところに、大蔵省が共同調査を一つ三十三年度からやろうというので、大蔵省からびしゃっとやられてしまう。これは私は大臣の怠慢と言いたいところだが、大臣は就任早々だから、怠慢と言って大きな声でどなるわけにはいきません。これはやはり大臣を補佐する局長が、そういうところは正確につかんで、もう三十一年度の推計がここに確実に出ているということでなければ……。今までわれわれは総医療費というものをずいぶん問題にしてきました。だからこれが出てこない限りにおいては、われわれは今後の論議を進められませんよ。
  52. 小澤龍

    ○小澤政府委員 公的扶助なり社会保険なりの医療費につきましては、決算として全体の金額が出ております。ただ、一般民衆の医療費につきましては、御承知のごとくその調査は非常に困難でございます。従って、統計調査部におきましては、一年に一回特定の月に一カ月間、サンプル調査の方法によって調査員を用いて調査するのでございます。その調査結果に基いて全国民の一般の医療費を推計するのでございます。ところが、先ほど申し上げました通り昭和三十年の調査においてなお吟味すべき点がありますために、今日公式に発表できる全国の医療費の推計値が出ていない、かよう申し上げたのでございます おそらくは近々出るのではないかと期待しておりますが、かような次第であることを御了承願いたいと思います。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、一体厚生省は、総医療費もつかめず皆保険というものの財政上の基礎はどうするのですか。まるきりやみくもじゃありませんか。経済計画というものは全く違ってしまった。その上に日本の財政基礎が、池田さんの言うように一割二分も一割三分も伸びたとすれば、全く厚生省の皆保険というものはでたらめです。数字の基礎がなければ皆保険などというものは絶対にできない。  それでは少し問題を掘り下げますが、日本の経済というものが戦後の復興経済段階を脱却した今、国民の所得を再分配するに当っては、当然相当国民所得伸びなりあるいは財政伸びというものを社会保障につぎ込まなければならないということを勧告案ではうたっておる。われわれの常識も当然そうなんです。国民経済が伸びればその成長に応じて社会保障もやるんだということは、池田さんも言うし、神田厚生大臣予算委員会等で明言されておるわけなんです。そうすると、現在の基礎が全然わからずに、一体どの程度伸び社会保障に再分配として持ってくるのですか。どの程度持ってくれば適正妥当な国民保険の姿ができるというのですか。
  54. 黒木利克

    ○黒木説明員 私からお答えいたします。お説のように、五カ年計画が経済企画庁にございまして、それに対応して厚生省でも社会保障の五カ年計画を作ったのでございます。ところが、御指摘のように、経済の規模が予想外に伸びましたために国民所得にも相当な予測の変動がございましたので、その辺を再検討して作り直したいと考えまして、目下厚生省から企画庁に人を一人派遣して作業中でございます。しばらく御猶予を願いたいと思います。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 実は私は、時間があれば予算委員会に行って、日本の経済計画と雇用情勢、それに見合う皆保険関係を尋ねたい。そのためには、厚生省の基本的なものの考え方を時間を節約する意味においてここで聞いておく必要がある。そういう意味で、きょうは幸い医療保障勧告案という基本的なものが出てきておるのでお尋ねしているわけなんです。これではあなた方の皆保険の前提条件がまるっきり質問できません。厚生大臣今お聞きの通りなんです。健康保険を柱にして将来どういう工合に皆保険を実施していくかという数字的な基礎がない。いつごろになったらできるのですか。
  56. 黒木利克

    ○黒木説明員 実は今までの実績から医療費伸びを見るということは、作業はしているのでありますが、三十二年度の予算との関連で、たとえば結核対策を実施するために三十二年度の予算からどの程度医療費伸びていくか、あるいは国民保険にいたしましても、今度の予算との関連でだいぶ数字が違ってきますから、三十二年度の予算との関連で医療費がどういうふうになるか、その三十二年度を基礎にいたしましていろいろ計画を立てる必要がまた起きてさましたら、そこで再検討をしなくてはならぬ時期に達しまして、目下その意味で再検討をいたしてるおわけでございます。
  57. 神田博

    神田国務大臣 滝井委員の御質問につきまして、私が答弁申し上げる方が早く納得いただけるではないかと思いましてお答え申し上げます。  滝井委員が今お述べになられました鳩山内閣の経済五カ年計画が非常に狂ったということは、お説の通りであります。しかし、その狂い方は悪い方へ狂ったのではなくして、非常によい方へ狂ったのであります。狂ったという言葉はおかしいかも存じませんが、国民経済の膨張率を鳩山内閣においては相当下回る計算、慎重に、辛く見ただろうと思うのです。ところが実際は、内外の情勢も手伝って、大幅に日本経済が発展し、膨張した。そこで、五カ年計画が狂った、こう言われている。石橋内閣成立後はこの五カ年計画を直ちに改訂いたしまして、国民政府考えておる産業規模、経済計画を早く知らせたいということで、各省間に資料の取りまとめを急がせましてその計画を立案しておることを他の機会に担当大臣から答弁がありましたことは、御了承の通りであります。その計画なり諸般の準備が整わないうちに国民保険を打ち出したことは少し乱暴ではないかという御注意というかお尋ねであったように伺ったのでありますが、私はそこが政治ではないかと思います。今度の厚生予算は政治先行して事務があとからついてきた。すなわち、国民保険を四カ年でやる、こういうことを内閣の大方針できめて、きめたところに事務が右へならえしてくる。その事務の方の諸般の準備が整うところまで待っておりますと国民保険なり社会保障全体にわたる計画が樹立できない。ことに十二月二十三日の夜に立ってできた内閣でございまして、予算の編成が焦眉の急で——今度は政変という一つの異例と申しましょうか、それで今お尋ねになりましたような準備が熟しておらなかった。しかし、政府のきめるべき政策をきめて大胆に打ち出した、このやり方がほんとうの政治のあり方だ、政党政治としてかくすることが——今後は何でもかんでもそうしてやるという意味ではございませんが、従来の考え方に大きなメスを入れて、そうして国力の発展に伴なって大きな施策を打ち立てていこうこいう場合には、やはり政治が先にいき、事務が右へならえするということがあってしかるべきだ。私どもも実際よく御調査なさっておられる点については敬服しておりますが、この間の事情を御了承願えれば、お互いに政治家同士でございますから、また変った御批判をちょうだいできるのじゃないか。これはよくやったというようなことに相なるのではないかと考えた次第でざごいます。(「名答弁」と呼ぶ者あり)
  58. 滝井義高

    ○滝井委員 実は名答弁じゃないのです。戦争中にそれでやりそこなったのです。かつて荒木陸軍大臣が、ソ連何ものぞ、われわれは竹やりを持って突っ込めと言ったのです。いわば必勝の信念というものが一切を解決すると考えておった。ところが信念というものは、科学的な根拠によって導かれ、理性のともしびによって導かれる信念ならよろしい。しかし信念、キャッチ・フレーズだけではものが解決できない。医療保障をやるのだぞといっても、科学的な基礎の上に立った医療保障五カ年をやるというスローガンならわれわれはついていける。私どもは大東亜戦争でもうこりている。だから政治家が物事をスローガンとして掲げる場合には、やはり掲げるだけの準備と科学的な根拠と理性によって導かれる謙虚さと寛容の精神がなくてはならない。何もなくてやるのだ、事務当局はついてこいといってもついていけません。私はやはりそこだと思う。それで日本は大東亜戦争をやりそこなった。アメリカの経済力を見そこない、アメリカの科学的な精神というものを見そこなつて、必勝の信念だけでいったところに問題があったと思う。政治が先行することはいいが、その先行する政治は理性のともしびによって導かれるものでなくてはならぬし、科学的な精神によって裏づけられる政治でなくてはならぬと思う。そういう意味で今のを聞いていると、この大事な国民の運命を決するような政策がまだからっきし数字がない。今からやるのだというのでは国民は泣いても泣けぬと思う。しかも三十二年度から発足するのですから、心から数字をやるというのでは大へんなことになる。私はそういうこまかいことはいずれまた機会をあらためてやります。  そこで大ざっぱなことをお聞きしたいが、一体医療費というものは、去年発表された二十九年店二千二百八十億よりか今後飛躍的に伸びていくのか。それとも高原景気じゃないけれども、横ばいをしていくのか。すなわちプラトウの状態をとるのか。これは専門家の皆さんだからおわかりだと思うのですが、大臣にお答え願うことは無理だと思いますので、一つどなたでもけっこうですから述べてもらいたい。
  59. 小澤龍

    ○小澤政府委員 これまでの実績から申しますと、国民医療費は、国民総所得に対して年々伸びて参っております。たとえば昭和二十六年度においては二・六%であったものが二十七年度においては二・九%、二十八年度においては三・五%、二十九年度においては三・七%でございます。この傾向をもって推定いたしますれば、今後とも大体この速度で伸びていくのではなかろうかと考えております。
  60. 滝井義高

    ○滝井委員 これは社会局長にも関係しますが、医療扶助はすでに減る傾向が出てき初めておるわけです。それから健康保険医療費を見てみても、そう伸びていないというのが現状です。するとこれは一体どういう関係になるかということです。たとえば今の数字でいくと、私も握っておりますが、大体こういう形なんです。そうしますとこれは国民所得の三%にしても八兆ですから二千四百億、二十九年度が三・七だから四%にしたらことしは三千二百億です。ここらあたりのかね合いというのが今後の国民保険を実施する場合に非常に重要なポイントになってくるのです。局長の方もそういうような見方ですね。
  61. 小澤龍

    ○小澤政府委員 ただいま私の説明の言葉が足りなかったと思いますが、国民総所得が飛躍的に何らかの経済事情によって伸びたというような場合においては、相対的には国民医療費の割合は減ることはあり得ると存じます。
  62. 滝井義高

    ○滝井委員 過去の実績を見ますと、医療費だけをとってみると三割から四割伸びてきた。ところが、その伸びが二十九年度から急激にとまってき始めた。今まで三割、四割伸びておった医療費伸びが一割くらいしか伸びなくなってしまった。その当時のわれわれのものの見方は、国民所得伸びよりも医療費伸びの方がカーブが激しい、こういう見方だった。だから、医療費伸びは大へんな伸びだ。ここに何らか医療費を規制する政策なり対策を出さなければ、それが反映して健康保険が赤字になってくるというのが当時の一般論だった。この委員会においても、世論もそうだった。ところが二十九年度を契機として医療費伸びはだんだんとまり始めて、カーブがゆるやかになってきた。そして、三十年度のあなたの方の大ざっぱな推計では、むしろ逆に減る形が出てきておる。たとえば、これは腰だめ的なものであるにしても、昭和三十年度の推計は二千二百三十億となって減ってきておる。今度は医療費が減り始めたところが、国民所得は逆に飛躍的に神武以来の伸びを示した。こういう状態が出てきたときに、医療質の伸びは今後どういう推移をしていくか。国民所得がもし高原の状態でいくならば、医療費もその高原の状態をとるのか。これはやはり日本の就業の状態、経済構造の状態から緻密に検討してくる段階がきたのでしょう。これはきておると思う。だから厚生省としては、こまかい数字は次のときでよろしい。しかし今後われわれが政策を論議していく、重要な法案を審議するときには、国民経済のワクの中で日本の医療のあり方を考えていかないと、井の中で物事を見ておると、井の中のカエルのようにやりそこなってしまう。世界の大きな景気の中において日本の経済を見なかったところに鳩山内閣の三十一年度の経済大綱の誤まりがあった。当時においては、アメリカ経済、世界の経済は伸びないだろう、むしろ鈍化の傾向を示してくるだろうという見方をしておったところに間違いがあった。日本の医療費というものが国民所得の三%、 四%といっても三一千億、四千億という莫大な金になる。一%違っても何億ですよ。従ってこれはきわめて重要なことになってくる。そういう事柄がはっきりしてくれば、昨年よりも千二十五億増加しておることしの財政伸びの中で、医療費なり社会保障社会保険の経費かどういうあり方をしなければならぬかという結論が出てくる。ただ腰だめ的に、去年百六十億の社会保険がことしは二百一億と四十億ふえたから、それで日本の社会保障は増加しておりますという単純な議論は出てこない。もっと国民経済全体のあり方の中から日本の医療のあり方、国民負担考えるということをしていかなければ、皆保険というものはできない。そういう点で、医務局長さん伸びておるというが、それでは来年度どうか、確信があるかというと、答弁がうやむやになってわからぬことになるのですが、そこらあたり確信のほどを一つ述べてもらいたい。
  63. 小澤龍

    ○小澤政府委員 国民医療費の実額で申しますと、昭和二十六年度は千百六十三億、昭和二十七年度は千五日四十億、昭和二十八年度は二千七十億、昭和二十九年度は二千二百八十二億でございます。昭和三十年度につきましては、先ほど申し上げたような事情によりまして、まだ推計値を得ていないのでございます。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 三十、三十一と、もう三十二年度ですから、それはのむのかのまないのか、こういうことです。実は前の医務局長さんの曽田さんは、私の質問に対して、昭和三十年度の総医療費は二千八百億ないし二千九百億という答弁をしておるのです。私は、この見方は正しいと思っておる。ところが最近厚生省から出てきた推計を見ると二千二百三十億という。曽田さんは統計の大家なのです。私どものはるかに及ばない、尊敬しておる大家です。その大家が、長年の体験を通じて二千八百億ないし九百億と言われた。それと七百億も開きがある。ことしそれだけの開きがあるというなら問題はないのです。ところがそれが三十年なんです。やったあとなのですから、そこらあたり、あなたの確信は大体それをのむのか、のまぬのか。昭和三十年、三十一年、三十二年はやはり今までのような状態で二・二、二十七年度が三・五、こうなりますと〇・六%伸びてきている。〇・六%というと、八兆の〇二八%ですから相当な額になって、ちっとやそっとではない。四百億、五百億の金があったら社会保障の母子年金ができます。それだけ大きな金ですから、零点何パーセントといったってばかにならない。だからその推計を一つ——ここで言明をしたからといって、この次一向伸びていなかったからといってお前はうそを言ったとは申しません。そこらあたりの見通しを伺いたい。
  65. 小澤龍

    ○小澤政府委員 将来の見通しは非常にむずかしいことでございまするが、従来のこの数字の推移から申しまして、やはり総医療費の実額は伸びていくと考えております。ただ国民総所得に対する割合は、先ほど申し上げましたように何かの事情によりまして総所得が飛躍的にふえるような場合には、相対的には総医療費の減る場合はあり得ると考えております。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、大体経済が異常に成長をしておるというようなときではなくして、経済の安定期における国民所得と総医界費との関係ですね。イギリスとかフランスとか——アメリカなんか非常に景気が違ってきましたが、諸外国でも国民所得に対する総医療費の割合というものは、大体計数が出ているのです。多分私は三・五くらいが適正だということが出ていると思うのです。それはお認めになりますね。そういうことはどうなのですか。
  67. 小澤龍

    ○小澤政府委員 御承知通りに日本の今日の医療状態と英米における医療状態とは、規模においてもまた中身においても、相当違うのではないかと思います。現在日本におきましては、病院で増床等が盛んに行われております。従いまして日本の場合におきましては、今後ある程度実額は伸びていくと存じまするが、ある程度日本の医療施設なり医療制度なりが完備いたしますならば、大体あるコンスタントな値を生むのではなかろうか。まだそこの段階には達していない途中の段階ではなかろうか、こんなふうに考えております。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、現在の日本の段階では欧米諸国とは非常に経済的な条件も違うし、国民生活も不安定な状態にある。従って医療費伸びていくが、一つのコンスタントな状態、たとえば国民所得の三・五%程度だというような諸外国の状態に達するまでには、まだ相当伸びながら期間が要るという一応の認定をしておいて差しつかえありませんか。
  69. 小澤龍

    ○小澤政府委員 実額においては大体今申し上げましたように伸びが続くのではないか、ある程度医療が普及いたしますならば、あるコンスタントな程度にとどまるのではなかろうか、こんなふうに考えております。
  70. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ある程度のコンスタントな額の推計というものを厚生当局でやったことはございませんか。日本の人口の増加の状態その他から考えまして、大体どの程度のものが適正妥当な総医療費であろうというような検討をされたことはありませんか。実はこれが国民保険を立てる場合の財政基礎として、非常に重要なポイントになってくるのですよ。それは今まで池田大蔵大臣予算委員会で説明するときに、インフレになるかならぬかというときに国民所得の何パーセントだ、財政国民所得との関係を理論的な根拠にされた。従ってそういう大蔵当局に対抗していくためには、厚生当局としても、日本の適正妥当な医療費というものは、国民所得においてどの程度のものが確信があるものだというやはり理論的な根拠は武装していかないと、これはなかなか太刀打ちがむずかしい。経済企画庁に行ってやるにしても、厚生省に何かはっきりした基礎を持たずして行ったところで、それは企画庁にまるめられちやゃって企画庁の言う通り社会保障計画になったら、専門家がらち外に置かれることになる。だから専門家は専門家としての体験を通じたものの見方なり、ものさしというものを持っていなければならぬと思います。そこらあたりは、わからなければわからないと言っていただけばけっこうですが、どの程度を見ておるかということです。
  71. 小澤龍

    ○小澤政府委員 日本の国力が今後どれくらいのスピードでもって増進するかということが、はっきりまだ遠い将来のものはつかめてございませんので、従って医療機関の整備も日本の国力によりまして左右されることでございますので、どの程度に日本の医療機関が普及充実したならば適正であるかという終点を見定めることは困難でございます関係からいたしまして、その方面の研究はまだいたしておりません。
  72. 滝井義高

    ○滝井委員 実は健康保険が実施されてから三十年、来たる二十六日は三十周年記念をやろうとしている。それから昭和十三年に国民健康保険が農村更正差動の一環として、農村をよりよきものにしようということで起って参りました。そうしますと日本の医療費伸び医療費の把握の仕方というものの統計上の一つの重要な基礎になるものは、何といっても健康保険国民健康保険、そして政府みずからが握っている生活扶助、この三本はやはり今後の日本の医療をやる場合、いろいろの統計を作る場合に非常に重要な問題になってくると思う。そこらあたりに、何かそういう糸口というものは見出せないものでしょうか。それは保険局長なり社会局長さんなり、どちらからでもいいですが、そこらあたりの糸口というものがなくちゃならぬと思うのですがね。ただ保険行政を毎日のんきに担当しているだけで、将来の見通しは何もないというのじゃ、これはやはり相済まぬと思うのですよ。だからやはり三十年間歴史を持っておる——三十になれば生まれた子供も一人前です。一人前になれば一人前の理性と、ものの見方というものがあるはずです。従ってそういうものの中から——もちろんこれは日本の人口の伸びと、それから労働力の伸びと、それから雇用の伸びというものはわかっておる。それはいずれ私は質問しますが、大企業なんというものは、去年とことしの予算を比べてみても七万しか組合員はふえておりません。ところがあなたの方の政府管掌というものは九十万ぐらいふえておる。こういう状態というものは、かって過去になかったことなんですからなかなかなんですが、しかし過去三十年間歴史というものは、やはり健康保険伸びというものは一歩一歩築いて伸びてきておるのですから、現在の健保における家族が五割、本人の初診料四十六円から五十円というものの負担のもとにおける今後の医療費伸びを推計する場合、国民所得との関係を見る場合に一つの大きなポイントになってくると思う。これはただ小さな縮図として、しかもそこに低額所得層の医療の問題を把握する場合には、生活保護が有力な資料になってくると思うのです。そういう点、何かそういう糸口を、これは私の方から辞を低うしてお教えを願いたいと思うのです。
  73. 安田巌

    ○安田(巌)政府委員 簡単な方からお答えします。国民所得伸びますと今度は生活保護医療扶助が減るだろう、こう簡単にいかないのです。むしろ今おっしやるように、他の医療保障制度充実いたします度合いによりまして減ってくるというのが正しい見方だと思うのでありまして、それは医療扶助一つ社会保障制度といたしましては補完的な制度であることから当然だろうと思うのです。大体そういうふうな見方をしております。
  74. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいま滝井先生の御指摘になりましたように、総医療費という観点からいきますと、二十八年までは非常に著増をいたしておりまして、二十九年にはふえ方が鈍化しております。ところがこの保険の方では、ことに政府管掌が中心でございますが、若干総医療費事情が変っているように私は思います。と申しますのは、一定のワクがございまして、そのワクの中の医療費の問題でございますので、総医療費保険のそれぞれの管掌の医療費との動きというものは必ずしも一致しない。例をあげて申せば、二十九年には総医療費はこの統計によりますと比較的伸び方が少くなっておりますが、保険の方では、二十九年は著増をいたした年でございます。そういうふうなわけで、必ずしもその関係は一致しないと思うのでございます。従いまして私どもといたしましては、たとえば政府管掌健康保険の将来の医療費の推計がどういうふうになっていくか、あるいは国保ならば国保の場合の医療費がどういうふうになっていくかというふうなことを、当然仕事をやりまする上におきましては、一定の目安を置きましていろいろものを考えておるわけであります。国保のことに国民保険関係からいきまして、国保の医療費がどういうふうになっているかという推計をいたします際には、実は先日申し上げましたわれわれが今考えておる国庫負担伸びというふうな金額を一応はじき出します際にも、それらのことを念頭に置いて考えておりませんと、その金額は実は出てこないのであります。結局受診率がどういうふうに伸びていくだろうか、あるいは一点当りの点数がどういうふうになっていくだろうかというようなことから、そういうふうな推計をいたしたわけでありまして、一応私どもといたしましては、仕事を進めていく上におきましてさような目安を置いておるわけでございます。しかしながらこれは滝井先生も御存じのように、保険医療費におきましては、一定の目安を置きましても非常に捕捉しがたいものでございます。現に各年度の政府管掌健康保険医療費につきましても、過去においていろいろ見込み違いをやっておるようなわけでございまして、そういう意味におきましては、保険医療費も一種の生き物であるというふうに私ども考えておるわけでございます。従いましてこの医療費伸びというものを的確に今から金額的に予測することは非常に困難ではなかろうか、しかし一応の目安を置きながら仕事を進めていっておる、こういうふうにお答え申し上げるよりほかに方法がないと思います。
  75. 藤本捨助

    藤本委員長 ただいま岸内閣総理大臣臨時代理がお見えになりましたが、時間の御都合がありますので、滝井委員の質疑は後に保留をいたし、直ちに岸内閣総理大臣臨時代理に対する質疑を行います。八木一男君。
  76. 八木一男

    ○八木(一男)委員 岸内閣総理大臣臨時代理にお伺いをいたしたいと思います。お時間が非常に少いらしいので、一問一答の形式を残念ながらあきらめまして、私相当しゃべりましてから、明確に一つ答弁を願いたいと思います。  まず社会保障制度審議会勧告が昨年の十一月八日に出たわけでございます。医療保障勧告でございますが、その勧告政府として尊重される気持を持っておられるかどうかをお伺いしたいのでございます。今の民主的な政治のあり方におきまして、各審議会意見を尊重していくということは、当然なきらなければならぬことだと思うわけでございますが、特に社会保障制度審議会が非常に権威のある審議会だということは、総理大臣も御承知通りでございます。この医療保障勧告は、一昨年の七月から始まりまして昨年の十一月まで、一年半という長期間をかけまして、非常に慎重に熱心に審議された結論が勧告として出されておるわけでございます。この勧告に対しまして、ほんとうに尊重されるお気持があるかどうか。まずお伺いをいたしたいと思います。
  77. 岸信介

    ○岸国務大臣 医療保障制度に関する審議会勧告は非常に広範なものでありますが、今八木委員お話しの通り、非常な権威のある、そうしてまた十分審議を尽されたものでありまして、政府としては全面的にこれを尊重して、これの実現に努めたいと思っております。
  78. 八木一男

    ○八木(一男)委員 ただいまの御答弁は、そのお言葉通りでございましたら非常にけっこうだと思うのでございますが、本年度の政府予算なり、それから提出されておる法律なり、あるいは予算内容にある諸施策を拝見いたしますと、制度審議会勧告を決して尊重しているとはどうしても考えられないわけでございます。制度審議会勧告内容は非常に細部にわたっておりますけれども、そのうちの骨子はおのずから明らかでございます。その骨子は国民保険の件と結核撲滅対策を樹立すべしということが二つの骨子でございます。国民保険の中には国民健康保険を全国的に広げろという点と、もう一つ健康保険を五人未満の事業所の従業員に適用しろという問題、この二つの問題があるわけでございます。そこで国民健康保険の方では、はっきり簡単に申し上げますると、非常に給付が悪くてそうして財政状態が悪いから、それをよくするために少くとも即時三割以上の国庫負担にしなければはいけない。それだけでは足りないので、後ほどの結核撲滅対策で公費による撲滅対策確立して、そのお金を健康保険財政に流入しまして、それでさらにその財政をよくしろということが一つ内容でございます。それで特にそれを急速に広めるために強制化しなければならぬということが入っておるわけでございます。ところが政府の方では、国民保険を非常に宣伝しておられまするけれども、そこに強制化もうたっていない、三割国庫負担もやっていない、重大な関連のある結核撲滅対策もほとんど何もやっていないという状態でございますから、今岸さんの言われましたような尊重するというお言葉はよいのですけれども、全然事実がそこに現われておりません。  それからもう一つ五人未満の事業所、この人たちに対して健康保険を適用すべしということについては、何もことしの施策には現われておらない、結核撲滅対策数字を申し上げますると、最小限少くとも初年度で四百億円は要る、それで各社会保険に対する国庫負担を差し引いても、差額として三百億円は要るということが明らかに出されておる。ところがその撲滅対策でことし政府の方で盛られたものは予防費に約二億、治療費の増額に約二億、合わせて四億にしかすぎない、百分の一です。これでは尊重すると言われても尊重したことにならないと思うわけですが、その点について岸さんから明確な御答弁を願いたいと思います。
  79. 岸信介

    ○岸国務大臣 政府がこの勧告の趣旨を尊重して、その実現に努めると申しておりますのは、全く言葉だけのなにではなしに、真にその考えておるのであります。ただ財政上その他のいろいろな点も考えなければなりませんので、従って医療保障制度勧告しているものを、来年度だけでこれをすべて実現するということは、これは相当な困難があると思うのです。しかし今御指摘になりました国民保険制度の達成と結核対策というものの二本の柱に対しましては、いろいろな御批判はあろうと思います。不十分だとか、あるいはこれでは足りないというようないろいろ御批判はあると思いますけれども、今度の予算にその一部なり、あるいは方向というものを示した予算を盛っておりまして、なおこれらに関連しての法制の整備等についても厚生省において研究し、準備をしておりまして、準備ができ次第国会にも提出することになっております。
  80. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の御答弁非常に不満足でございます。この社会保障制度審議会勧告を作るに当りまして、この勧告政府が本腰になればできる、財政的な配慮も加えまして、できるというものを作ろうということで作られたものでございます。しかもこの勧告審議しました委員内容は、御承知通り与党の議員がたくさんおられます。それからもう一つは各省の次官、次長、そういう人たち委員の中に入っております。しかも医療保障特別委員会の委員長は与党の山本さんでございます。それから各種団体の人がおられまして、そこで全部いろいろの立場から十分に検討されております。こういう状態でございますから、財政その他の関係があってできないということは、ほんとうにこの勧告を尊重したことにならないわけでございます。しかもこの勧告のときにはまだ神武景気という話が出ませんで、それから自然増収が千億、千五百億、二千億と今推算が上っておりますけれども、これもごくわずかしかないという頭で考えておった当時の材料でできた勧告でございます。ですから今の自然増収を頭に置いたならば、もっと強烈な勧告ができたはずでございまして、かような財政余裕があって——しかもその前の余裕の少い時代にこれは最小限保守党の内閣、今の内閣としても当然やらなければならないという勧告をやったわけでございます。その点で今の御答弁は決して勧告を十分尊重したと言うことはできないと思います。岸さんは外務大臣でおられますし、こういうこまかいことをお伺いするのはお気の毒でございますから申しませんけれども、今の政府施策勧告を十分に尊重したということは全然言えない。ちっとも尊重したと言えない内容です。これはいかに厚生省の事務担当者が言われましてもそうではないのです。ですからお読みになって確信があって御答弁願えればけっこうですけれども、全部お読みになっておられないと私は思いますので——いかに保険局長が何と言われても、厚生省の事務次官が何と言われても、勧告を尊重したことにならない。社会保障制度を推進したことに今の政府施策はならないということをはっきりと今御認識いただいて、政府が今までの考え方を改めて政策を変えていただきたいのです。今までの厚生行政が、大蔵省に押されてぐっと下積みになっておったときよりちょっとふえているが、こんなものは社会保障の前進ではない。当りまえのことが半分ほど回復しただけです。前進というのは、もっと大きくやらなければならぬ。公約を果そうと思ったら、もっと覚悟をきめなければならぬということを総理大臣としてはほんとうに心にたたき込んでいただきたい。だから事務官僚がこのくらいでいいでしょうというようなことでなしに、大蔵省の事務官僚が何と言っても、政府としては社会保障制度拡充の公約を掲げて断固としてやるつもりなんだから、そういう姑息な手段ではいかぬ、四百億円出せというような腹を固めていただきたいと思いますが、そういうことに対する御所信を伺いたいと思います。
  81. 岸信介

    ○岸国務大臣 施政方針におきましても、われわれはわが内閣として社会保障制度の拡充については特に力を入れるということを公約いたしております。またその中におきまして医療保障制度充実するということは重要な項目であることもよく承知いたしております。また医療保障制度委員その他この審議につきまして与党のわれわれの同僚がたくさん入ってこれを研究したことも知っております。従って今度の予算につきましても、与党におきましても十分これは審議したことでございます。ただいろいろの観点から考えまして、今八木委員は現在の出ている予算その他においては、政府施策では足りない、足りないのみならず、これはほとんどこの勧告を尊重する意思がないのじゃないかとまで強い御批判でありましたけれども、私どもはやはりこれの勧告実現するのには、誠意を持って実現し、これを何するということは一貫して考えておりますが、やはり相当な年度も要するので、一年の間にすべてのものを完成するということは、ただ単に予算の金額だけじゃなしに、いろいろな諸般の準備その他のことも考えまして、この勧告の趣旨は十分尊重して今後われわれとしてこれを実現するということを誠意を持って政府を代表してお答えだけしておきます。
  82. 八木一男

    ○八木(一男)委員 この前の本会議で私の質問したことに対する政府答弁の中で、厚生大臣は五人未満の事業所の健康保険をやると言われた。大蔵大臣はそういうことは考えてないということを言われました。答弁が食い違っております。こういうことがありまするので、本日特に岸さんにおいで願ったのです。厚生大臣はやると言われても、大蔵大臣はやると言わない、金を出さないということで、せっかく厚生大臣がやろうとすることがとまってしまう。そこは内閣総理大臣が非常に大きな心をもって、大蔵大臣が何と言おうとも断じて押えつけて、そうして社会保障を推進させるということでなければ、公約を実施したことにならないと思う。制度審議会勧告は内閣に対する勧告でございますから、内閣自体として尊重なさることが当然でございまして、大蔵大臣財政的な配慮と言われまして、今の予算規模から、四百億というのは大きな金ではございますけれども、絶対に不可能な命じゃございません。ですから財政当局に対しまして内閣の力をもってこれを説得し、即時完全な状態で実現させるように願いたいと思うわけでございます。  もう一つは、厚生大臣にあとでお伺いしますけれども医療保障委員会というものにかけて、それで考えると言われましたけれども医療保障委員会というものは厚生省の法的にきまった委員会じゃありません。それに相談してからやりたいと言われる。そういう委員会もあってもいいと思うのですけれども、完全に法制化された社会保障制度審議会というものがあるのです。そこでは、各界の代表がおり、学識経験者がおり、すべての人が網羅されて、こんなに熱心にやっておられる。その会保障制度審議会勧告なり答申と、それから厚生省の私的の機関のようなものである何とか委員会というものの比重を間違えて考えてもらったら困ると思う。そういう厚生省の五人委員とか七人委員会というものは、厚生省側の今の状態で都合のいい人を集めてやったようなふうに私どもには考えられる。そういう法制上の根拠のないものじゃなしに、りっぱな社会保障制度審議会というものがあるので、そこの勧告とか答申を基本として内閣としては政策を進めていただかなければ困ると思う。その点につきまして岸さんの明確なる御答弁を願いたい。
  83. 神田博

    神田国務大臣 私ちょっと引き合いに出ましたので、私から先にお答え申し上げた方が、総理の代理、岸さんの御答弁が楽になるだろうと思いまして、一言申し上げます。  本会議におきまして八木委員からお尋ねになり出した今お引き合いになった点は、五人未満の事業所に対する健康保険の適用をどうするかというお尋ねだったじゃないかと思います、第一点は。これは私の記憶によりますると、池田大蔵大臣は、これは国民保険でやった方が自分はいいと思う、自分の私見だという答弁をされたように聞いております——国民健康保険に入るというような答弁のようでありました。私はそのあとで、五人未満の事業所の健康保険については、現在の政府管掌健康保険に入れるか、あるいは国民保険の方に入ってもらうか、あるいは他の方法でいくか、これは少し研究してみたい、こういう意味のお答えを申し上げたと思っております。でありますから、大蔵大臣にしましても私にしましても、やらないというお答えを申し上げたのではないのでありまして、池田君の答弁も、自分の私見だということでむしろ積極的に自分の考え方をお答えした、こう思っております。しかしこれは国民保険政府が四年間に完遂しようというときに当りまして、早急に解決しなければならない問題であることは申し上げるまでもないと思います。一つ十分検討を加えまして最善の方途を講じたい、かように考えおります。
  84. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど来申し上げました通り社会保障制度審議会というものはきわめて権威ある審議会でございまして、私どもはその勧告に対しては誠意を持ってこれを尊重していくという考えでございます。  なおこれを具体化する上において、厚生省でどういう委員会を作っておられるか知りませんけれども、言うまでもなく社会保障制度審議会というものはあくまでも権威のある審議会として、その勧告に盛られておることはこれを尊重して実現する。むしろそれを実現していく方法なりいろいろな手段というようなものについて、厚生省においてさらにまた研究されるということは、これはあるだろうと思いますけれども、この趣旨そのものを変更するということを考えていくことは適当でない、こう思っております。
  85. 八木一男

    ○八木(一男)委員 お忙しいようですからもうこれでやめますが、最後に御要望に近いことを申し上げたいと思うわけでございます。この勧告の中で一番財政的な点で重点は結核撲滅対策であろうかと思います。四百億という金が初年度出ております。財政当局はこれに非常に抵抗をする、だろうと思いますけれども、今結核をなおすことができるところまで医学は発達した。これをなおさなければ、そういう苦しみがずっと最後まで、未来永劫まで続くわけです。いつかどっかでやらなければならない。医療が完成したときにこれに大いに金をつぎ込んでやって撲滅すれば、あと感染する患者もなくなるし、それから労働力の非常な損もなくなるし、経済的な負担もなくなる。ですからどんな不況のときでも、どんな内閣でも、こういう医療が完成したときに思い切って金をつぎ込んで、五年くらいで全部これをなくしてしまうということをすべきである。ところで今神武以来の景気といわれて財政的にも余裕がある、そのときにかからなければほんとうに時期を失するわけです。ことしの施策にもっと盛られているかと思ったところが、ほとんどない。非常に残念であり、また石橋内閣の公約違反であろうと私ども思うわけでございますけれども、その点を十分に考えていただいて、即座にこのことを組かえていただきたい。予算の組みかえを出すとか、それから結核予防法を強化する法律を出すとか、即座にこの問題に取りかかっていただきたい。その点要望申し上げまして、それについての御所信を一言承わりたい。
  86. 岸信介

    ○岸国務大臣 結核予防及び結核撲滅ということに関しましては、今非常に強調されましたが、私もこれは非常に重大な問題であると思って、従来からもそういうことを主張して参っておったのであります。今出ております予算その他がはなはだ不十分であるという御批判に対しましては、十分に将来考えて参りたい、こう思います。
  87. 藤本捨助

    藤本委員長 岸内閣総理大臣臨時代理に対する質疑は、本日はこれにて終了いたしました。  厚生大臣に対する質疑を簡単に続行いたします。
  88. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生大臣に伺いたいと思います。時間もないですから、大綱だけお伺いしたいと思う。  国民保険につきましては、前に滝井委員からも、岡委員からも御質問ございましたけれども岡委員のときには大臣がおられませんでしたので、ごく大綱についての御所信を伺いたい。国民健康保険を皆保険にするためにどんどんやっていくというお考えはよろしいのですけれども、今のようなやり方では十分によくいくはずはないのです。国民健康保険はなぜうまくいかないかといえば、給付が少いために、国民健康保険の被保険者が病気になった場合に、半額の自分の負担金を出すことができない。そのためにかけ捨てになってしまって、被保険者が非常に困るというような問題、それからもの一つは、そういうことがございましても、医療が進歩しまして非常に支出がふえておりますので国民健康保険財政が非常に苦しいということで、経営がうまくいかなかったり、ときにはできたものでつぶれるものがあるということです。今までそういうふうに国民健康保険に対する意欲が盛り上っておらない、また財政的に苦しいとか、いろいろな国民健康保険が普及するに不適な状態の多いところに、これから広めるわけですから、これは一朝一夕によくいくはずはない。そこで今度の政府のやり方は、こういう状態に対しまして、国民健康保険全体に対して最小限三割国庫負担をするというようなことをやって、給付がよくなるとか、制限診療がなくなるとか、あるいはまた保険財政がよくなるという条件を作らなければ伸びないのです。ところがそういう条件を一つも作らないで国民保険をやろうとなさっておられるわけです。それで神田大臣は非常に御熱心でございますけれども厚生大臣になられたのは最近です。おそらく高田さんなりそういう方の御説明でやっておられると思います。高田さんも御熱心な方ではございまするけれども、今までのマンネリズムがあるし、また大蔵省の圧迫がある。それでそういう実際にうまくいかないのをうまくいくようにやっていられると思うのですが、ほんとうは少くもと三割国庫負担をやらなければ前進しません。それを一つもしないでやろうということでは、から宣伝で、聞いた人は一応喜びますが、内容検討すれば憤慨する。実際にできないとますます憤慨するという状態になるわけです。それについてどうお考えでありましようか。
  89. 神田博

    神田国務大臣 ただいまの八木委員お尋ねでございますが、私どもも皆保険を四カ年間に完遂いたしたいというこの問題をきめるに際しましては、実は非常に議論いたしまして、その議論の結果、今御指摘になられましたような幾多の困難は了承いたしたのでありまするが、それをもあえて踏み切った。これは時間もないので簡単に申し上げましてその意を十分尽せないのが遺憾でございますが、国民のうち三千万近い方々が無保険の状態に置かれておる。そこでこれを一日も早く皆保険に持っていきたい。その皆保険に持っていくということと、皆保険に持っていった場合、最初から十分今お述べになられたような三割の国庫負担をするということ、これは理想であり、当然でありまするが、それを両面から参りますると、皆保険がどうしても財政上の理由によっておくれる。そこで私どもは同時作戦できればこれに越したことはないのでありまするが、医療保障を受けていない無保険の方々を一応そのワクの中に入れて、とにかく三十二年度は二割、五百数十万の方々を恩恵に浴さしめるようにしたい。三割国庫補助は決して放棄したわけではないのでありまして、財政がこれを許すならばあえて三割に限らないわけでございます。この問題は、十分努力いたしまして解決いたしまするが、それを解決をして皆保険を進めるということになりますると、皆保険の方が進まなくなってくる。この問題につきましては大蔵大臣とも直接しばしば相談しております。また事務的にも十分話し合ったのでございます。その結果政府といたしまして、両面からやっていくと、地域的にだんだんおくれてしまって保険地区が満足しない。いろいろ切実に困難の当面する問題は御指摘の通りでございまするが、とにかく六千万の国民は加入しておるのだから、残されたのは御指摘のようになかなかむずかしいところが残っているわけであります。しかし、むずかしいのでありますが、この際一つ、この普及費も二千四百万円でございますか、予算に計上いたしまして、あえて政府が勇気をもってこの皆保険を推進をするということになったのでありまして、八木委員のお述べになりましたことは私どもも同感でございます。しかしそれを同時にできなかったということは、今私が申しましたように、もう今度は幅を広くやっていこうじやないか、中身を盛ることは逐次やっていこう、この四カ年間にみんな解決しよう。  それから今の補助率の問題は、四カ年といいましても四カ年の最終の際にやるのではないのでありまして、この四カ年のうちに、三十二年度は今申し上げたような事情でございますが、後年度一つ一日も早くこの問題を取り上げて解決しよう、こういう相談が一致いたしまして、そうして今出ておるような案になって御審議を願っているわけなのでございまして、さように一つ御了承願いたいと思います。
  90. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今、神田大臣も言われましたけれども、今度国民保険をやると言われて非常に宣伝しておられますけれども、別に今までだって、今のことだったらできるわけだ。別に制限条項はないわけだ。ただ言われるのは、大蔵省がふえた場合の二割国庫負担予算用意したということ、それから事務費をちょっと上げたということだけですね。条件は変っていない。今までもどんどん国民健康保険ができたら、やはり二割国庫負担は出さなければならぬ。新しいやり方ではないと思う。それで新しいやり方としては二千三百万円の普及補助費——二千三百万ぼっちの普及補助費で今までなかなか難関の、特にこれからの国民健康保険の推進のやりにくいところにそんなことができるはずはないと思う。できるという意気は壮なんですけれども、ほんとにできるためには、もう重ねて申し上げませんけれども、さっき言ったようなことをやらなければならない。ですから宣伝はなさらずに、ほんとに地道に皆保険をなさるようにしていただきたい。国民がだまされます。皆保険をやってくれるのかと思うと、実際を見ると何もない。そういうことでしたら、一時的にはよくても、自民党のためにはよくない。石橋内閣のためにも——から宣伝ばかりで何もやらないのだということをこの一例で全部はかられますから、宣伝はなさらずに実質的にどんどんやるということで、さらに国庫負担をやっていくというふうにやっていただきたい。  それともう一つは、五人未満の事業所の件ですけれども、先ほどの問題に触れますけれども、五人委員ですか医療保障委員にはかってということは、これは筋道が違うと思う。この前七人委員会でもそうですけれども、再生省ではいろいろ委員会を勝手に作られる。それは勉強するために作られるのはけっこうです。しかし本末転倒してはいけない。社会保障制度審議会という法にきまった非常に権威のあるものがあるのに、そっちの方を待たないで、あるいはそこと違ったことを医療保障委員なり七人委員会で出して、それでパック・アップをさして、厚生省の思う通りにやっていく、厚生省がいろいろ説明して、極端にいえば厚生省考え方に片寄った意見をそこで出さして、そしてそれを民主的に学者に出さしたような裏づけにしてやっていく、そういうことは実にけしからぬと思う。審議会をどんどん作るのはいいのですけれども、今の審議会はずいぶんそういうことに利用されている。悪用されている。社会保障制度審議会はそうでない。法にきまった、しかも内閣に対する審議会です。その社会保障制度審議会勧告なり答申でいけば、これは大蔵省も道義的に縛ることができる。それをもとにして進めるのが当りまえなんです。そういうことにつきまして神田大臣は、今まで厚生省のやり方が間違っておりましたのでこれを逐次変えられて、そして社会保障制度審議会勧告なり答申をもとにどんどん積極的な施策を急速に進める。医療保障委員というものはあってもいいけれども、そんなものよりも、制度審議会の方でやるというふうにしていただかなければならないと存じておるのでございますが、これについての御所信を司いたい。
  91. 神田博

    神田国務大臣 八木委員の最初の第一点のお尋ねでございますが、国民保険を四カ年で全部完遂いたしたい、このことにつきまして所要の補助費なりあるいは事務費は、それは金額からいえば一人当り六十七円が八十五円になったのでございますから、六十七円と八十五円じゃないかといえばわずかな金額といえるかもしれませんが、しかし、六十七円から十八円もふえたのは少くとも三割弱という大幅な事務費の補助が上ったわけでございまして、これはそう少い額ではないと私は思う。これはあえてお言葉を返すわけではございませんが。  それから、従来国民保険についても厚生省当局においてはもっと地域を広めたいという熱意を持っておったのですが、その二割補助するのもなかなか予算化することは至難であった。それをとにかく四カ年間で現行制度でやろうという熱意が、内閣一致、大蔵省も厚生省の要望にこたえたわけでございますから、先ほど滝井委員からも、五年くらいかかるのかと思ったら四年でやるのかという、そこだけとって申し上げますと滝井委員、御不満かもしれませんが、ちょっと例をあげると、やり方が乱暴だというくらいなこともありました。とにかく四カ年でやろうということに政府もすべて一致したということは、国民医療制度に対する大きな進歩じゃないか、これは大きな一つ考え方を徹底して踏み出したことじゃないかと思うのです。さらに、それは今広げるようなことを一つ考えたのだが、今度はいろいろ至難なところにぶつつかるわけでありますから、それにつきましてはさらに掘り下げたいろいろの措置考えていこう、こういうことなんです。  もう一つは、国民健康保険法も施行されて相当の年月がたっております。最近特にこういった経済界、社会状態から皆保険をやりたいという熱意も市町村間に強力に出てきておることもまた一面事実なんです。そこで、これらの現象を一つ把握いたしまして、そしてここで大きく皆保険をやろう、ほんとうにやろうということでございまして、これは決して石橋内閣なり自民党がから宣伝をしておるというふうにおとりになられてははなはだこれは残念なことでございまして、私どもは今申し上げたような事実をそのまま世論に訴えておる。今日言論機関は自主独往されておりまして、政府の言うことや一政党の言うことを宣伝するような、そんな言論機関はもうないと思う。そういう言論機関が貴重な紙面をさかれて、政府がいよいよ皆保険に踏み切ったと書かれるのですから、この事実はやはりから宣伝ではなくて、言論機関までがそういうふうにお考えになって国民に周知せしめておるということは、石橋内閣一つの大きな施策が時流にマッチしたといいましょうか、適切なことであったのじゃないか。これは御意見の分れるところかもしれませんが、私はさように考えておるわけでございまして、いろいろまたこの施行等につきましては、もう社会保障は一政党の看板ではございません、国民すべてのための奉仕でございますから、当委員会等におかれましては特別に何かと御献策、御意見を賜わってこの施行に完全を期したい、こういう考えでございます。  もう一つ、五人未満の事業所の問題につきまして、医療保障委員の方に相談するのは不都合じゃないかというような意味に私聞き取れたのでございますが、これは私が先般お答えを申し上げたのは、この社会保障制度審議会答申されました医療保障制度に関する勧告を一日もすみやかに、しかもスムーズにやりたい、やるについては、官庁だけでこれを考えて、博識有為の方方をもって組織されておる審議会の案に対して独善になっては困る、そこでなお一そう実際に対する最善を期したい、こういう意味でできておる委員会のように私は承わっております。こちらの方になおかねて最善を期したということでございますので、今御心配になるようなことがもしあるようでございましたら今御指摘の通り、私もこれはそうならぬことを期しますし、またそうならぬと考えておりますから、この点また一つよく今後の事態をごらんいただきまして、そういう点があれば御注意いただきたいと思います。とにかく社会保障制度審議会答申につきましては、もちろん財政上その他のことがございますので、そのままその通りいくということは、いろいろむずかしい面もあろうかと思います。しかしその貫く精神は、この審議会答申一つ金看板として、そうして福祉同家を作りたいということは、もうほんとうにそのままの気持でございますことをもつけ加えて申し上げまして、答弁にかえる次第であります。
  92. 藤本捨助

    藤本委員長 八木委員、簡潔に願います。
  93. 八木一男

    ○八木(一男)委員 時間がございませんので後の機会に続けさしていただくとして、きょうはこれでもうやめます。しかし先ほど滝井委員が言われましたように、科学的根拠に基いていろんなものを進めなければならないということを、もう一回繰り返して覚えておいていただきたい。そういう根拠がなくて宣伝をされるのはいけない。勇敢なことはいいんです。勇敢に四年で計画をやるということはいいんですが、勇敢にやるときには、それができるように、やはり三割国庫負担をしてやるということでなければいけないと思います。新聞や何かで皆保険の論議がかわされることは喜ばしいところです。ところが今いかに言われても、政府がやるやると言っておることが宣伝されて、やってくれるように思われておる。これだと国民も安心をするし、大蔵省も安心してしまう。厚生省もやりたいんだけれども、大蔵省がぐずぐず言ってできないのだということを宣伝されなければいけないのです。三割やらなければうまくいかない。七割給付にしたってうまくいかない。結核の給付をほうり込んで十割までいかなければならないということを、厚生省みずから言わなければならぬ。皆保険をやるのです。四年でできるのです。と言っても、ほんとうの皆保険の推進にはならない。ですからほんとうに政党の宣伝をするという気持じゃなしに、社会保障制度を推進しよう、国民保険を推進しようというお気持なら、厚生大臣みずから、今度の予算は非常にいかぬのだ、三割でなければ足りないのだと、そういうことを堂々とおっしやるべきだ。それをおっしゃらないでやっていると言うのは、内閣のから宣伝です。ほんとうにやるならそういうことを率直におっしゃって、非常に乏しい、こういうことじゃうまくいかぬということを明確に打ち出していただかなければいかぬと思います。そういう点について簡単に御返答いただきまして、あとの質問は後の機会に留保いたします。
  94. 神田博

    神田国務大臣 これは程度の問題になろうかと思いますが、政府といたしましては、今年度の関係予算に計上した額でやれる。しかし四カ年の計画の途上においては、今八木委員の言われたようなことは実施するという腹でやっておりますことを御了承願いたいと思います。
  95. 藤本捨助

    藤本委員長 午後三時まで休憩いたします。    午後一時三十四分休憩      ————◇—————   〔休憩後は開会に至らなかった。〕