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1957-02-12 第26回国会 衆議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月十二日(火曜日)    午後二時五十五分開議  出席委員    委員長 藤本 捨助君    理事 大坪 保雄君 理事 亀山 孝一君    理事 中川 俊思君 理事 野澤 清人君    理事 八木 一男君       植村 武一君    加藤鐐五郎君       草野一郎平君    田子 一民君       田中 正巳君    高瀬  傳君       中村三之丞君    八田 貞義君       古川 丈吉君    山下 春江君       亘  四郎君    赤松  勇君       岡本 隆一君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       堂森 芳夫君    西村 彰一君       山口シヅエ君    山花 秀雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         労働政務次官  伊能 芳雄君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     松永 正男君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         労働事務官         (労働基準局         長)      百田 正弘君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 堀  秀夫君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    石黒 拓爾君         労働事務官         (労働基準局労         災補償部長)  三治 重信君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  澁谷 直藏君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 二月十二日  委員八田貞義君、岡本隆一君、栗原俊夫君及び  滝井義高辞任につき、その補欠として山口喜  久一郎君、多賀谷真稔君、小平忠君及び島上善  五郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山口喜久一郎君、小平忠君及び島上善五郎  君辞任につき、その補欠として八田貞義君、栗  原俊夫君及び滝井義高君が議長指名委員に  選任された。     ――――――――――――― 二月十一日  横須賀市の社会保険診療報酬単価甲復活に関す  る請願小泉純也君紹介)(第六三七号)  衛生検査技師身分法制定に関する請願(薩摩  雄次君紹介)(第六三八号)  健康保険法の一部改正反対等に関する請願(楯  兼次郎紹介)(第六三九号)  国立療養所等賄費増額に関する請願楯兼次  郎君紹介)(第六四〇号)  健康保険法の一部改正反対に関する請願(楯兼  次郎紹介)(第六四一号)  国立病院等准看護婦進学コース設置に関す  る請願松本俊一紹介)(第六四二号)  国立病院等における看護婦の産休のための定員  確保に関する請願松本俊一紹介)(第六四  三号)  国立愛媛療養所軽快病床確保に関する請願(  中村時雄紹介)(第六四四号)  医療保障制度改善に関する請願保科善四郎君  紹介)(第六四五号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  制定請願加藤鐐五郎紹介)(第六四六  号)  同(椎名隆紹介)(第六四七号)  同(正力松太郎紹介)(第六四八号)  同(鈴木周次郎紹介)(第六四九号)  同(田中正巳紹介)(第六五〇号)  同外一件(松永東紹介)(第六五一号)  同(松本俊一紹介)(第六五二号)  同(淵上房太郎紹介)(第六五三号)  同(中川俊思君紹介)(第六五四号)  戦傷病者援護単独法制定に関する請願池田  禎治紹介)(第六五五号)  同(徳田與吉郎紹介)(第六五六号)  同(山本正一紹介)(第六五七号)  同(中村時雄紹介)(第六五八号)  戦傷病再発医療費全額国庫負担に関  する請願淺沼稻次郎紹介)(第六五九号)  同(今松治郎紹介)(第六六〇号)  同(神近市子紹介)(第六六一号)  同(田中武夫紹介)(第六六二号)  同(砂田重政紹介)(第六六三号)  同(木村俊夫紹介)(第六六四号)  同外二件(杉浦武雄紹介)(第六六五号)  同(細迫兼光紹介)(第六六六号)  同(中村時雄紹介)(第六六七号)  同(山本正一紹介)(第六六八号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る請願池田禎治紹介)(第六六九号)  同(井谷正吉紹介)(第六七〇号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十一日  満州開拓者遺族補償等に関する陳情書  (第一〇二号)  生活保護法扶助料級地引上げに関する陳情書  (第一〇四号)  水道公団設置に関する陳情書  (第一三六号)  水道金融公庫法制定に関する陳情書  (第一三七号)  水道金融公庫設置に関する陳情書  (第一三八号)  同(第一九七号)  下水道事業促進に関する陳情書  (第一三九号)  東京湾内汚物投棄による被害防止に関する陳情  書(第一四〇号)  老人福祉法制定に関する陳情書  (第一四一号)  同  (第一九一号)  公益質屋増設に関する陳情書  (第一六九号)  浴場営業に関する陳情書  (第一七四号)  動員学徒傷病者遺族等補償に関する陳情書  (第一八七号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  制定陳情書  (  第一九〇号)  薬事法改正に関する陳情書  (第一九二号)  国民健康保険事業強化に関する陳情書  (第一九三  号)  健康保険法の一部改正反対等に関する陳情書  (第一九四  号)  国民健康保険療養給付費三割国庫負担に関す  る陳情書外三件  (第一九五号)  健康診断及び予防接種費全額国庫負担に関する  陳情書(第一九六号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  労使関係労働基準及び失業対策に関する件     ―――――――――――――
  2. 藤本捨助

    藤本委員長 これより会議を開きます。  この際お諮り申し上げます。医療保障制度に関する勧告について社会保障制度審議会事務局長太宰博邦君に参考人として明十三日出頭を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤本捨助

    藤本委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。     ―――――――――――――
  4. 藤本捨助

    藤本委員長 次に労使関係労働基準及び失業対策に関する件について調査を進めます。先般の労働大臣説明  に対する質疑の通告がございますので、順次これを許します。五島虎雄君。
  5. 五島虎雄

    五島委員 先日新しく就任されました大臣施政方針説明が行われました。その方針をこまかに分析いたしますると、大体五つの柱からなった説明であると思うのです。その第一は完全雇用の問題であり、第二は失業対策の問題であり、第三は最低賃金に対するところの考え方を披瀝しておられます。そして労使関係の調整として労働次官通牒、いわゆる一月十四日に発せられたところの労働次官通牒による教育指針というものを大きく打ち出されました。そうして第五点として労使協調ということが、やはり生産性向上という問題から日本経済発展せしめ、労働力を増大して行くんだということが、新大臣施政方針の大きな柱であり、流れであると私たちは解釈するのです。従いましてこの五点の問題について順を追うて質問をしていきます。私の質問は従来社会労働委員会同僚諸君から歴代の労働大臣あるいはその他の担当者に対していろいろ今まで質問をされたことの蒸し返しになるかもしれませんけれども、昨年末新しく石橋内閣が生まれ、そのもとに労働大臣に就任されたわけですから、あらためてその新大臣の認識を質問して姿を明らかにしていきたいと思います。それで概括的な問題からあるいは微に入る場合もあるでしょう。そうして今申し上げましたように五つの点に関して質問をいたしますから、非常に時間が長引くかもしれません。しかしできるだけかいつまんで時間内で質問を集納いたしていきたいと思います。  まず第一点の完全雇用の問題でありますが、昨年石橋内閣が出現当時、国民に対していろいろの公約をされました。そうしてその大きな一つ公約としては完全雇用を打ち出されたのであります。従って、あるいは社会党の政策であるところの完全雇用が自民党の石橋内閣によって実現するのかという大きな期待を国民は持ったであろうと思うのであります。そうしてまた石橋さんが病気で休まれて、臨時首相の岸さんが二月四日の施政演説にこういうように述べております。「雇用問題につきましては、経済の活況により、就業者の数は増加し、一方離職者の数は減少するなど、相当好転してきたのでありますが、なお、多数の不完全就業者が存在し、一方において、年々新たに就職を必要とする労働力人口が増すなど、今後において解決を要する問題が多いのであります。しかし、この余った労働力こそは、わが国経済発展の余力を示すものであります」云々というような施政演説があったわけです。そこで完全雇用公約として大きく打ち出されたにもかかわらず、岸さんの施政方針はだんだんしりがつぼまってきたように思います。ところが先週の終りに予算委員会において、わが党の同僚である井手代議士から、この完全雇用の問題について、その年次計画はどうかという質問をしました。ところが経済企画庁長官はそれに答弁していわく、新聞にもありましたが、年々八十九万の人口を吸収するので完全雇用ができるというようなことを言われたわけであります。この八十九万あるいは九十万を吸収すれば完全雇用ができるというようなセンスを持って完全雇用公約を実現するのだというような表現をすることは、国民を欺瞞したことにほかならないと思います。これは経済企画庁長官宇田さんが考え違いをして八十九万という表現をされたのであろうかとも思いますけれども、完全雇用の問題について大臣はどういうように考えられておりますか。
  6. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 五島さんの御質問は、現下の労働問題といたしましては最も重要要な点でございまして、われわれもこれを重視いたしております。岸総理大臣の話を引用されましたが、労働力の多いということは、将来日本発展をする基であるというようなことを言われたということでありますが、私もそれはそう思います。それで完全雇用の問題とこれは関連する問題ですから、先にその方を申し上げたいと思いますが、資源を持たざる日本の国は、人間の多いということそれ自体が今後の生々発展していく道でなければならぬと思う。そこに政治がなければならぬと思う。ということは結局労力技術、科学というものを売りつけるということです。それは言いかえるならば加工貿易日本生命線でなければならぬ。自分の国に資源がありませんから、他の国から原料を持ってきてそれを精製加工して出す。それが良品廉価であって、世界のどの国よりも安いものを作る、よいものを作るということがほんとう政策として行われ、国家投資民間投資近代設備化に努め、中小企業その他のものも一致して参りましたならば、私はそれが一番日本を伸ばす完全雇用にいく道だと思うのです。今のところ完全雇用と申しましても、今年は予算の面におきましても、財政の投融資あるいは一般会計からそういう面に多少手心いたしておりますが、中小企業設備近代化生産向上、同時に量産、この問題ができ上らなければ完全雇用にならないと同時に、日本の国は発展しないと思うのです。国土が狭くて人間が多いということは一つの悩みでありますけれども、これが日本発展一つ基礎であるというふうに日本政治経済が動いていかなければならぬと思う。今申しました点に直ちにきき目のあることはできませんけれども、その方向に向って今年の財政経済もやっておると自負いたしております。完全雇用の問題についてはいろいろの面が必要であります。今申しましたように日本の国が加工貿易によって労力技術を売る。それが大きくなりまして全部雇用されるということも一つの行き方でありますが、社会保障の面がもっと考えられなければならないと思うのです。少年老人労働市場を圧迫するというような日本現状では、これはやはりいけませんから、養老年金あるいは少年保護というような方面の社会保障もこれに伴っていかなければならないと思うのであります。宇田君が八十九万かということを申しましたのは、八十九万という数字政府の統一した数字でありまして、三十二年度八十九万の雇用量を出します基礎は、経済が七・六%伸びるということにおいて八十九万になるのでありますが、供給側の方も大体百三十万人くらい十四才以上の人が来年度ふえる。けれどもそれの六八%が労働力になりますから、その画から見ても八十九万人くらいになって、供給力需要量が同じような数字になります。残る問題は潜在失業者の数であります。これにつきましてはいろいろな考え方があります。一週三十四時間以下働く人は一千万人おるといわれております。また月に三千円以下の収入というようなものを総括すると約七百万人おるといわれております。仕事ができたから直ちに吸収することができるという転用可能の数字はわれわれの方は大体三百万人と思っております。それから主婦であるとか病人とかいうようなものをとると、大体二百二十万というのが宇田君の方と打ち合せておる数字であります。この二百二十万の転用可能の不完全就業者をどう吸収していくかということが今後の経済計画に現われてこなければならないと思います。それには、先ほど申しましたような社会保障政策経済拡大経済拡大方向は、私は二つの線があると思う。国内の資源を開発するということが一点、もう一点は加工貿易を盛んにするということ、この二点が総合的に行われて参りましたならば、七、八年から十年の間には完全雇用が行われるものであるという確信の上に立っております。しかし、完全雇用の問題は労働省一省で考うべきものではありません。これは石橋内閣全体の各面から総合的に推し進めていかなければできないものでございますが、われわれの方といたしましてはさように考えておるのでございます。
  7. 五島虎雄

    五島委員 今の問題について宇田大臣の八十九万人におけるところの数字の根拠は労働大臣と同じだ、政府の集約だと言われました。そうしてまたその問題とするところは潜在失業者の問題である。これを数字的にとらえていくならば千万人おり、あるいは七百万人といい、あるいは三百万人という。そうして完全失業の数が政府の発表で、旨い古された言葉ではありますが、六十万あるという。そうするとそれらを大体八、九年で完全雇用が実現できるというように言われたわけですが、今年度が八十九万で大体完全雇用の線を歩み得るというように自信を持って言われるならば、三十三年度、三十四年度、累年の計画は一体どういうような伸びになるか、その傾向を聞きたいと価います。
  8. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 鳩山内閣におきまして経済五カ年計画を高碕長官のもとにおいて作ったのでありますが、そのときの状況は三十五年には四千五百万人の労働人口に対しまして四十五、万人が完全失業者になることになっておりました。そこでその計画を進めてきたのしすけれども、御存じのように幸いの方向に変ったのでありますけれども、これはもし悪い方向に変ったらどうなるのだという反問が出るのでありますりれども、一二%以上も伸びましてやりかえなければならぬことになったのです。今年は大体伸びを七六%に見ておりますが、来年度以降幾らの伸びに見るかということが一つの問題であります。そこでこの統計を示せということでございますが、きょうもこの問題につきましてお話が出ると思いましたから経済企画庁に行ってどうだといろいろ相談いたしました結果、改訂の問題については今準備中であって、四月から八月、九月ごろまでにこれを完成したい。だから今はっきりした数字を申し上げることはできないということを企画庁が言っておりますし、われわの方もわれわれ一省においてこれの数字をはっきり申し上げることができませんから、大体八月以降において完全な五カ年計画数字が現われるもの思っておりますが、今内容数字をもて表わすことができません。
  9. 五島虎雄

    五島委員 そうするとこの経済の将来の見通しということは労働大臣担当ではないと思います。ところが大臣施政方針の中にこういう文句が使わておるのです。「御承知のようにわが国経済状況はまことに好調な推移をたどっておりますが、政府はこの機会に多年の懸案である完全雇用の達成を経済政策目標に掲げ、」ただ単に目標に掲げと書いてある。そうしてその完全雇用の実施を行おうと思った動機は、経済が非常に好調になってきたからだ、だからこの際ということです。そうすると経済企画庁から発表されたところの国民生産経済拡大、その中からいって完全雇用は十年後にできるとうたってある。そうするとこの経済伸びも十年間伸びていかなければ完全雇用は速成できないとい理屈を、国民はその通りに解釈するだろうと思うのです。ところが石一内閣におけるところの経済企画丘一、十年間この七・六%程度のものがんどん伸びていくというようなことついてどういう自信があるのか、これは経済企画庁長官に聞くのが正しいと思いますけれども、同じ政府責任者であるところの労働大臣はこれをどういうふうに把握しながら、完全雇用国民に約束されるかということを聞いておきたい。
  10. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 ごもっともであります。閣議におきましても、この問題がますたびに、私は私なりの意見を述べてそれをいれさせて漸次いっておるのでありますが、十年先のことを今から考えたって、それはどんな事変が起るやら、どんな国際情勢になるやらわかりませんから、日本一国で立てましても、日本経済というものは国際経済に左右されることは当然でありますからわかりませんが、まず第一期五カ年計画一つ完成させていこう、それら日本の最近の好調はまあ一兆億のデフレ緊縮ができました上に、世界経済がよくなりまして、そこでその波に乗つたものですから、こうなりましたことは言うまでもありません。ところが今後世界経済が――これは私の方からこういうことを言うと逆襲されるかもしれませんが、単なる自由主義経済だけでいっていないと思うのです。ドイツを見ましても、イギリスを見ましても、アメリカを見ても、その経済中心はやはり国家が統制しております。あらゆる面において統制しております。でありますから自由経済のときのように貿易というものは浮き沈みがあってのこぎりの刃のようになるのがほんとうだというのが、横の線で大体いっておるのです。これは第一次欧州戦争、第二次世界戦争というのに十分訓練されて、各国の経済指導者がそういう考えになって、経済自由経済をしいておるけれども、その根幹をなすものは、一つ国家統制の上にありますから、そう急激な変化がないと私は思っておるのです。それに見ならって私の一番考えたいことは、先ほどの日本生産性向上に対する設備改善なんです。日本のような労働貸金の安いところはない。この安い労働貸金現状において、設備が他の国と競争のできるりっぱな品物ができる近代化設備になりましたならば、どんな国にでも売れるのです。と同時に今の勤労者の方々の賃金も上げることができるのです。同時にそれは資本家経営者勤労者だけで分けるのでなしに、国民全体にも安く商品を売ってってやることがきるのです。でありますから国の力の及ぶ範囲において現在の中小企業――大体日本貿易は大企業原料生産をやっておりまして中小企業加工をやっておりますから、この中小企業貿易に関係するものにまず優先して近代的な設備を入れかえることを、政府がやはりバックしてやるべきである。それが完全雇用の一番近道であって、永遠性のあるものだ。しかしもっと外を考えれば、そんなにやれば関税をかけられるじゃないかということになりますが、そこが今後の日本経済外交をやらなければならぬ中心であると思いますから、一面において生産の地盤を培養すると同時に、他面においてはやはり外交的には経済外交で、世界景気が激変しない間に日本経済完全復興をし、完全雇用に持っていきたい。これは私の一つの理想ですけれども、そういうふうに思っております。
  11. 五島虎雄

    五島委員 そうすると完全雇用の実現という考え方公約世界経済の好況のもとにおいて実現されるということにもとれるわけです。ところが世界経済好転日本経済好転から、非常に雇用が増大したと政府はうたっておるのですが、これはどういう産業部門にこの雇用が増大したかということを、大臣以外からでもいいですからちょっと伺いたい。
  12. 江下孝

    江下政府委員 昨年の一-十一月と一昨年の一-十一月の平均で比較いたしました数字が一応出ております。この数字によりますと、就業者総数におきまして八十万の増加でございますが、内容を見ますと、農林業就業数におきましては四十万の減でありますが、非農林業、つまり鉱工業関係では百二十二万の増加になっております。さらにこの内訳につきましては今手元に持ちませんが、要するに鉱工業関係で百二十二万、それから従業者地位別に分けまして自営業におきまして十万増、それから家族従業者におきまして六十一万の減でございます。雇用者が百三十四万、こういうことに相なっております。これは昨年一年だけの問題でございますが、一応この応用の形態という面から見ますと順調に進んでおるように見受けられます。
  13. 五島虎雄

    五島委員 今の説明に、非常に小さいことですが、敷衍して、それは大体生産部門であるか、あるいは流通部門において大きいのか、あるいは第一次産業部門において大きく吸収されたかという、その傾向を聞いておきたいと思います。
  14. 江下孝

    江下政府委員 第一次産業農林業は減っておるわけなんです。四十万減ということになっております。鉱工業あるいは第三次産業サービス部門合せまして百二十二万の増加、こういうことであります。
  15. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、生産部門サービス部門の仕訳がちょっとない。ところが私たちの知る限りにおいてはサービス流通部門に大きく吸収されていったのじゃないかと思います。そうすると、その雇用傾向としてサービス部門だけが増大していくことは、経済の構成上、経済機構上あまり喜ばしいことではない。やはり日本経済発展雇用力の増大の喜ばしい面は、方向はどうしてもやはり第二次産業部門に多くその雇用が吸収されなければ完全なる強固な雇用とは言えない。ただ単にサービス部門だけがふくらんで、そうして雇用量が増大した、従って完全雇用に近づきつつあるという宣伝は産業機構上非常に脆弱な面を持つのじゃないかと思います。先を急ぎますので、私この完全雇用の問題についてはなおいろいろ質問したいのですけれども、また他の委員にも譲らなければなりませんから、この程度で終って、次の第二の柱に人っていきます。  第二の柱は、すなわち失業対策の問題です。それで、今の完全雇用に関連して、雇用が増大したとうたい、そうして失業対策の問題については完全失業者が何万あるかということもあとで聞きますけれども、その完全失業者の費用としては一人二十円プラスした、そこで予算は増大したんだ、ところが今までの実績から見て、その就労人員は二万三千減らしたんだ、そうしてその内容稼働日数というのは去年並みにしたんだ、いわゆる二十一日にしたんだ、こういうように言っているわけです。従って完全失業者が果しておっしゃる通りに減ったかどうかという問題、これについて数字があれは基礎を示して御説明願いたいと思います。
  16. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 一応私が申し上げまして、こまかしい数字は局長からお願いしたいと思います。  御心配の点はごもっともだと思います。ところが三十一年度の取扱いは二十三万そこそこなんです。そこで予算編成に当りましてわれわれもずいぶん努力いたしました。おっしゃるように、二十円単価を増しまして、二十二万五f人にいたしました。これは三十一年度の分は場合によっては組んだ予算だけ三月三十一日までに使い切れないかもしれません。そういう現状でありますから、大蔵省とずいぶん折衝いたしましたが、われわれもおっしゃるようなことを心配いたしましてやったんですけれども、二十二万五千人になりました。というのは、やはり今の経済が反映していると思うのです。(一上市町村財政が悪いのだしと呼ぶ者あり)今の経済を反映いたしておりますから、やはり自然に民間の方面にも吸収され、他の方面にも吸収されて参りましたからそういう結果になったと思います。今町村財政の問題につきましてちょっとお話があったんですが、このことはあとから申し上げたいと思います。
  17. 五島虎雄

    五島委員 まあ説明数字では心配は要らないということになります。ところが私の手元にこんな手紙が来たんです。これは今度の予算内容が地方に流れていったんです。政府考え方はこうなんだ、そうして失業対策は二万三千人全国的に減っていくんだ、一体おれたちの就業はどうなるだろうというように心配した日雇い労務者の一部の手紙です。あまり気にかけないと言われればそれまでですけれども、これが現地の声なんです。心配なんです。これは最近日雇い就労規定強化が一うわさされておりますが、これは規定強化はしないんですか。御多忙中恐れ入りますが、病弱者、老年者、四年以上失業対策事業の就労者、同一家庭より二人以上の就労者がある場合は停止するというような事柄が強化されるということを聞きました。これからの生活が非常に心配になるというようなこと、その他いろいろありますけれども、ほかのことは読む必要はない。こういうような心配はこの二万三千人切ったというような方針等が全国に流れると、こういうふうに現地の失対事業で生活をしている労働者諸君は非常に心配している。そうして現地のその声は当局もよく知っておられる通り、二十一日の就労日ではやはり生活がしにくいんだ。それから二十円ばかり上げないよりも上った方がいいですが、しかしこれでは足りないんだ。就労日は二十五日くらいにしてもらいたい、それから賃金はあと五十円ばかりアップしてもらいたい、そういうような意見が非常に多い。従って政治というものはやはり国民の声を聞いてそれを実現しなければならない。大臣は二十円上げたことも、二十一日に据え置いたことも、これは国民の声の一部の実現であると言われるかもしれませんけれども、こういうような手紙の内容、こういうことはないのですか。
  18. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 今のお手紙をお出しになった方から言えばごもっともであると思って深く同情いたします。日本の社会情勢がそういう情勢になっていることも政治の貧困であるということを物語っているのでありまして、われわれの責任の重大なることを一そう痛感いたしますが、反面に失業を商売にしてもらいたくないということです。それは失業のプールから一日も早く抜けることのできるように国策もそうしなければならぬが、本人も努力してもらいたい。そして一般の生産なりその他の関係の仕事にありつけるような社会を作ることが必要なのです。こういう国柄ですからやむを得ませんけれども、あまり失業対策費の多い国家というものはほめたものではない。これはやはり政治の責任でもあると思います。われわれも努力いたしますが、どうか一つ今後大いに激励していただきたいと思います。
  19. 江下孝

    江下政府委員 ただいまの手紙の内容にあったことでございますが、病弱者につきましては、労働能力が全然なければ他の方法で救済することを考えなければならぬと思います。それから四年以上勤めたから首を切るということはございません。それから現在は一家族から一人筆頭者ということで実施いたしておりますが、この点につきましては来年度も一応同じ方針で参りたいと考えております。なお人数の減ったことで、取締りを強化するとかそういうようなことはございません。先ほど大臣が申し上げましたように、現在の一般失対の数は十八万台でございますから、年度当初におきましては相当減りましたけれども、現在では十八万台で推移いたしております。従って来年度大体私どもの計算では日雇い労務者もそう増加しないだろうという予想のもとに十八万台を組んでおり、これで私は絶対に心配は要らないと思います。
  20. 五島虎雄

    五島委員 今日雇い労務者が失業を商売にしているかのごとき表現労働大臣がされたことは、私はちょっとどうかと思います。そこで失業は十八万台で絶対に大丈夫であるというような説明がありましたが、この失業問題に関連するレア・ケースと申しましょうか、一つの問題について聞いていきたいと思います。それは駐留軍労務者の首切りの問題です。これは特に政府に責任のあるところの失業問題ですから聞いておきたいと思います。朝鮮ブーム時代は非常に駐留軍労務者の数がふえていきました。しかしそれ以来どんどん減っていきまして、昨年は広島県ですか、大量解雇、長崎、佐世保の大量解雇と全国至るところに首切りの旋風が巻き起ったわけであります。そうしてこれに引き続いてことしも兵庫県における三千数百名の首切りというような問題が現実に現われてきているわけです。駐留軍労務者の雇用年数というようなものは、性質が性質ですから、米軍が引き揚げていけばいくほどその失業は宿命的に訪れるわけです。従って失業反対と言うようなことは言いかねるわけです。それはなぜかというと、日本の独立につながるわけです。その裏づけとして自衛隊の増強することによってアメリカ軍が帰っていく。そのことによって日本の駐留軍労務者が首切られていく。そうしてこれが一部は失業者の群に入っていかなければならない運命に到達するのです。今私が知る限りにおける兵庫県の駐留軍労務者三千数百名は、次の仕事はどうやって見つけようかということでほんとうに心配をしております。兵庫県のみならず、全国至るところの駐留軍労務者は、間もなく訪れるであろうところの失業問題に非常に真剣に、取り組んでいるわけです。これらの失業問題を一体将来どう考えておられるかということを失業問題と関連があるから特に聞いておきたい。
  21. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 兵庫県の例をおあげになりましてのお話でありましたが、呉の問題も昨年起りまして、党もこの問題については苦労をいたしました。この問題に対しましては、労働省といたしましては、職安その他出先機関を動員し、また県知事あるいは市長等の協力を得て、配置転換にまず重点を置いて考えたいと思うのであります。配置転換その他の方法でどうしてもできない場合は、集団的な失業対策地としてこれを処理していきたい、かように考えております。
  22. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 関連して。先ほど大臣の答弁の中に、失業を職業としないようにしてもらいたいという御発言がありましたが、これはどういう意味なんでしょうか。
  23. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 少し不謹慎な言葉であったかもしれませんが、私の考え方は、失業のプールから抜け出ることに努力してもらいたいということです。  同時に国の政策もそうならなければならないと思うのですけれども、御本人も失業に甘んじておったのでは、今おっしゃったような賃金しかもらえない人生ですから、それから抜け出てもらいたいということを強調する意味においてそういう言葉を使いましたが、もしそれがお気にさわるようであったら簡単に取り消します。
  24. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はものの考え方、実態を十分把握してなくてこういう発言をされていると思う。今の失業者の年令構成を見てごらんなさい。長くいる失業者は失対のプールの中にいるわけですけれども、新しい失業者はどんどん次の再雇用になっている。それはどういうわけかといえば年令層がそうしている。呉においても、終戦当事は三十くらいの働き盛りがもう四十、四十五になっている。技術を持っておっても十年たって四十以上にもなりましたら、本人はいかにもがいてもなかなか使ってくれない。こういうことをよく実態を把握されずしてそういう発言をされるというのは不謹慎だと思う。とにかく最近の失業者の年令構成はだんだん上ってきている。本人の罪ではない。新しい失業者がどんどんきてどんどん早く再雇用されている。失業者自身の意識の問題ではないと思う。これは順番にいけない。ところてん式にいけない。後からきた方が先に雇用される。これは本人がいかにもがいても、残念ながらそのプールにとどまらざるを得ない実態だ。それを何か失業者自身の責任のようにお話しになるということは、もう少し勉強してからにしていただきたい。こういう問題についてはあまり追及いたしませんが、さように要望しておきます。
  25. 五島虎雄

    五島委員 多賀谷委員の言われたことは同感です。今後注意をしていただきたいと思います。そこで今県の世話とかなんとかいうようなことを説明されました。これに留意されているということは非常にいいと思いますが、果して留意だけで駐留軍労務者の今後の就職問題が解決するかどうかということです。たとえば駐留軍に直接自動車迎転手として雇用されたがこれが首になる。ところがある地方においてはもう自動車の運転手は飽和状態に達しておって、あたら惜しいところの技術がその地方にきて発揮できないというようなことで、そういう自動車の運転手が――これは運輸省の問題になるかもしれませんけれども、そういう人たち一つの会社を組織しよう、そして自動車の株式会社を組織してハイヤー、タクシーを経営しようというように考えて、運輸省にその許可を頼む。そうすると、飽和点に達した場合は絶対に許可しません。そういうような人たちの仕事を幾ら県知事がやろうとしたって、なかなかできるものじゃありません。こういう問題は大きく政治的にとられて、政府が責任を持って対策しなければ、とうてい解決はできない問題だろうと思います。ただ単に失業者が、昨年度は二十二万程度で終っていたから、ことしも十八万程度で大体心配はなかろう。その言葉を私は反駁するわけではないのですけれども、より多くの、より高度な考え方を持っていただきたい。従って今後駐留軍労務者の問題、レア・ケースの問題ですけれども、こういう問題には真剣に取っ組んでやっていただきたいと思います。  第三の柱に移ります。第三の柱は低賃金の問題です。さいぜん大臣は、日本の労働者ほど賃金の低い国柄はないと――私も同感です。労働大臣はよく調べておられると思います。(笑声)ところが、こういうような低賃金石橋内閣が取っ組むに当って、これはできるだけすみやかに最低賃金制を作っていかなければならないと述べておられます。ところが最低賃金制定するには、いろいろ複雑な問題が存在するんだとうたっておられます。最低賃金を作ろうという意思の陰には、問題が困難である、そして最後には労働問題懇談会なるものに逃げ込んだ格好をとっておられるわけです。ところが憲法が国民の最低生活を保障し、労働基準法の第二十八条から三十一条のくだりにおいては、すみやかに最低賃金法を制定するということが法にうたってあるわけです。これが施行以来既に足かけ十二年になります。その十二年目の石橋内閣ができて、神武以来であるところの好景気が訪ずれて、完全雇用国民公約されるというような際に、こういうように最低賃金に非常に消極的であるかのような印象を国民に与えるということは、一貫した労働問題として一体労働大臣、労働者はどういうように労働者を考えているかという疑惑を持つだろうと思うわけです。そしてその労働問題懇談会の結論は間もなくつくであろうから、その結論によって実効を上げるように努力するということが施政方針にはうたってあるわけですけれども、それが好ましいのは何かというと、最低賃金制は非常に問題があるから、地域別、職域別の最低賃金が好ましいだろうという方向だけは示されました。ところが昭和二十八年ですか、一九五二年の中央労働審議会ですか、中央賃金審査会ですかの答申によれば、四業種に対して最低賃金を実施するようにという答申があったわけです。それは吉田内閣から鳩山内関を通じ、そして現在に至っておるわけです。ところが職域別、業種別の最低賃金が好ましいとこの施政方針にはうたってありますけれども、四年間すでに四業種に対するところの最低賃金制の答申すらもまだ実現されていないわけです。そこで、どういうように最低賃金を心っておられるだろうか。そして現実は、世界文明諸国あるいは日本よりも後遊園と思われるようなそれらの労働者の賃金よりも、なお日本の労働賃金が、国柄とはいいながら一番低いということは、労働者が国民の中でその生活がどれだけ低いかということを、労働大臣みずから認められる問題ではなかろうかと思います。まあ前置きはこのくらいにいたしまして、最低賃金の問題について確固たる信念を示していただきたいと思います。
  26. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 重要な問題でありますが、勤労者の最低生活を保障することは、これは全く必要なことでありまして、高くなればなるほど生活が安定をし、文化生活を営むことができますから、その方向に一日も早く導いていきたいと思いますが、最低賃金を考える場合に、まあ大企業、基幹産業というようなものは、今世論で八千円とか六千円とかろいろ言われていることを考えれば、もう最高賃金制をしがなくても、大企業、基幹産業はいいと思うのです。問題になるのは中小企業なんです。中小企業に一律一体に法制的に最低賃金のようなものを作りましたら、日本の現実は片っ端から倒産するのです。より以上失業者を出してしまうのです。それは賃金が安いといったらまさに安いのです。この安い賃金が生活の基準になってきているから、不十分であるけれどもその安い生活になれている。それをオートメーションのような設備にやりかえたら、それは安くいいものができる。だから賃金も上げられるし、国内にも安く供給できるし、国外にも安く供給できるというのが私のねらいです。この中小企業に今それをやってやらずに、現在のような戦争前の老朽設備で、機械力といいましてもほとんど問題にならない機械を使ってやっているのです。それは一つ一つの工場を見ると、あるものは非常に進歩したものを入れており、あるものは戦前の老朽設備を使ってやっておる。そしてそこに働いている人は、その企業が成り立たなければ自分が失業者になるものですから、やはり経営者と自然の間に話し合いができて、安い賃金でやっているという姿なんです。だから、この日本最低賃金を一律一体にきめる前に、一体日本の労働調査というものが完全にできているかというと、私は今度労働省の責任を持ったのですが、現在は三十人以上の工場に働くところの統計しかできておらぬのです。今年は千六百万円ばかり予算をもらって、五人以上のところの統計をとることにいたしました。五人以下のところも今後とりたいと思うのですが、まだその統計も現われておらないのです。そこへ持ってきて今八千円なら八千円ということを法制的にやったら、全部つぶれてしまうのです。私は中小企業を自分が経営しておるからわかるのです。そうしたら、逆にまるで失業者が多くなってしまう。でありますから、この問題は、私任命を受けましてから労働省でもいろいろ相談している問題でありますが、この業種別、地域別――これは運賃その他地理的な関係がありますから地域別、そこで自主的に、幾らの賃金にしたらいいかということを相談し合って、それできめたらいい。それが実際的だと思います。それは、現に清水のマグロカン詰をやっている二十数工場が最低賃金をきめたのです。それで非常ないい成績を上げております。それが一番いいと私は思うのです。それでそのことを労働問題懇談会に諮っております。この懇談会の構成には、日本有数の労働組合の指導者もみな参加しておられます。そこで大体その答申ができましたら、基準局長その他われわれの手先に命じまして、これは法律でなくて、自発的に自治的にそういうふうにきめていったらどうか、これが私どもの考え方であります。
  27. 五島虎雄

    五島委員 やはり日本国民は国の経済発展と日常の生活の交流ということはバランスをとっていかなければならないわけですが、しかし今の説明によると、最低賃金は重大であるが、なかなかできないという結論になるわけです。そこで今まで政府はその労働調査において三十人以上のところしか統統計調査がない。そうして今度は千六百万円ばかりの金を投じて三十人以下五人以上のところを労働統計調査を行う。そうして五人未満のところは臨時調査を行なっていきたいとい。この臨時調査を行なって果してこの五人未満の労働者を把握することが、労働人口を把握することができるのですか。千六五万円に相当する部面は三十人以下から五人までの企業でしょうね。
  28. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 関係局長から答弁させます。
  29. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいま大臣からお答えがありました毎月勤労統計調査の件につきましては、従来は三十人以上の工場、事業場についてのみ賃金雇用、労働時間の調査を毎月行なっておったわけでありますが、幸い来年度からは千六百万円ばかりの予算の計上が認められました。それによりますると、毎月五人以上の事業場につきましては、毎月賃金、労働時間、雇用の実態の把握を行う。それから年に一回一人から四人までの工場、事業場の労働実態の把握を行う、こういう計画が慰められたわけでございます。これを行いますれば――大体方法は地域抽出という方法によって内閣統計審議会等にも御相談を申し上げまして、統計的にもまずほぼ完全な調査を実施し得るのではないか、かように思っておる次第でございます。
  30. 五島虎雄

    五島委員 時間がないが、まだあるんです。そこで今説明のように、五人から一人のところは毎年一回調査するというようなことですが、ところが五人から一人の職場における労働者の人口はそういうように把握できるかもしれませんけれども、もう一つ突っ込んで、この労働者の中に、労働力をもって生活を維持している、あるいは維持されなくても、その一部を収入によって暮して維持しているという国民が多数あるだたろうと思います。労働省もすでに手をつけられたやに聞いておるわけなんですけれども、これを称して家内労働者というのですが、こういうような階層に対して――階層といったら語弊があるかもしれませんけれども、そういうような仕事に従事しながら生活を維持していく国民の数がどれだけあるかというようなことについて調査を進めようとはされませんか。
  31. 堀秀夫

    ○堀説明員 家内労働の問題につきましては、これも非常に重要な問題でございまして、実はきわめてラフな調査は過去において実施したことがあるわけでございますが、これによりますと、大体全国で家内労働を実施している従事者の数が約四十万くらいあるのじゃないかというようなことをいっておりますが、これは相当粗雑な調査でございまして、これについてもいま少しくその実態の把握を行うことが必要である、かように感じておる次第でございます。そこで今度の毎月勤労統計調査の拡充を行いますれば、その一環としてもある程度一人から五人までの実態も把握できますが、それと並びまして、全国の必要地点の家内工業あるいは輸出産業等につきましては、特別の調査を随時地方の基準局等を通じて実施する予定になっております。これをやりますると、いま少しく実態が明確に把握されるのではないか、かように期待しております。
  32. 五島虎雄

    五島委員 さいぜん大臣が申されましたように、最低賃金法の問題は非常に重大であるが、近くその結論がある種の考え方方向においてつくと思います。ところが私は一歩進んで質問したら、家内労働者あるいに家庭で仕事をしている人たちが四十万人ある、われわれが承知する限りにおいても百万人はあるだろうと思います。これはしかしまだその確固たる信念はありません。しかしこういうような仕事をもって生活を維持している人たちをやはり法は救ってやなければならないと思います。この点について労働大臣の将来の考え方を聞いておきたいと思います。
  33. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 家内労働の問題についても日本は内職が相当行きわたっておりますから、重要な問題であります。東京、特に大阪の方が東京より多い比率を持っておりますし、名古屋はその上を回っております。そこで今直ちに家内労働法を作りましても、まず調査が必要であると思うのです。この調査を十分遂げて実情を把握しなければ、どういうふうに家内労働法を作っていくかということが問題になります。もう一つは、家内労働をやっておる人々の仕事の種類というものは、今千五百円からよくて二千十八百円くらい、もっと悪いのは千円くらいのものもあるようですが、そういう賃金でなければその仕事が成り立たないというような仕事がありましたときに、その賃金を急に上げれば、その仕事はなくなってしまうんです。そういうことがいろいろな面に現われておりますので、この家内労働法というものをどうしても作らなければならないと思っておりますが、これは相当綿密な調査をいたして、その完全な調査と資料の上に立って考慮すべきものだと考えております。
  34. 五島虎雄

    五島委員 その観点の深さには感心しました。そこで調弁はいつごろやられるんですか。
  35. 堀秀夫

    ○堀説明員 家内労働の問題につきましては、これは御承知のように、その内容、それから業態、非常に複雑でございまして、この完全な調査を行いまするのは、相当時間がかかるのでございますが、しかし抜き出して、たとえば特に今一番重要な問題になっておりまする輸出産業関係の家内労働、このような実態につきましては、これはただいま労働問題懇談会で御審議を仰いでおりまするが、この結論が出ました上で、さっそくその主要な実態の把握については調査を実施していきたい考えております。
  36. 五島虎雄

    五島委員 あと一点質問いたしたいと思います。それは今の低賃金の問題に関連して、特にこれまた駐留軍労務者と同じような一つの限定された問題があります。そうして労働問題としてはこれは忘れてはならない問題だと思います。そしてこれは運輸行政に大きい関連を持っておりますところの港湾労務者の雇用の問題であり、賃金の問題であり、そうして仕事の問題であります。それは港湾労務者の賃金が、港湾事業という特異的なスケールの中に、第一次請負から第二次請負、第三次請負あるいは第四次の請負業にまで労働者が配置されるわけです。そうしてその公示料金等々があるにもかかわらず、第一次から第二次になった場合には、その公示料金がだんだん減っていくという現実があります。第二次、第三次になると公示料金の五〇%程度しか入らないという賃金実態があるわけです。これを港湾関係ではどんぶり勘定と言いあるいは握り勘定と称しているようであります。そこで私たちのおりまする神戸の港の問題ですが、これは横浜もそうです。全国の港々の労働者の問題を今後どうしていくかということは非常に重要な問題であります。そこでこういうように旧態依然たる封建的な残滓を持つところの賃金形態に置かされている港湾労働者の賃金に対して、どういうようにこれを解明し解決していくかということについて、きょうは単にそれだけにとどめて質問をしておきたいと思います。時間がもう一時間にもなりますのでこれで終りまずすれども、一つこの点について中心的な説明をお願いしておきたいと思います。
  37. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 五島さんのただいまのお話は、私も貿易を少しやっておりますので身につまされてよくわかります。ああいう特殊な社会が今もあるということは、これはほんとうに労働行政としては考えなければならぬ重大な問題だと思います。私はこまかしくは申しません。今申されたことですでに尽きておりますから。そこで港湾労働対策協議会というものを作りまして、本問題を徹底的に検討いたしたい。そうして港湾労働も一般労働も同じ労働基準法の上に立った公正なものとしてわれわれは取り扱っていきたい。御指摘の点は全く共鳴いたします。
  38. 五島虎雄

    五島委員 まだ第四の柱、第九の柱、そうして小さい各論にわたって質問はありますけれども、ほかの委員に迷惑になりますし、ちょうど一時間ですからこれで終りますが、これからずいぶん長い間大臣の意見を聞き、われわれの意見もどうか一つそんたくされて、いろいろの行政の面にそれを実行、実現していただきたいということを最後に希望いたしまして終ります。
  39. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 よろしく御協力願います。
  40. 藤本捨助

  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は主としていわゆる労働次官通牒なるものについて質問いたしたいと思います。この労働次官通牒は法解釈の基準ですか。一体何ですか。まずそれを伺いいたしたい。
  42. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 労働教育の指針として、労使の間に出したものであります。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 教育の指針といいますと、これは法律の解釈とは違うわけですか。行政官庁としての法律の解釈ですか。
  44. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 これが起りました起りは、一年も前からの問題でありますが、大体今まで行なって参りました解釈を総合的にまとめて労使の教育の指針として出したものでありまして、さらに私どもはこの教育指針は広く国民にも知ってもらいたい、また知ってもらうように努力したい、かように思っております。
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 解釈を総合的にまとめたいということになりますと、これはやはり解釈ですか。
  46. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 それはいろいろのお考えがありましょうけれども、われわれは解釈の精神になるものであると思っております。
  47. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 解釈の精神といいましても、これは今までにない膨大なもので、かなり細部にわたっております。精神規定といっても、それは具体的にこうだと断定しておるところもあるし、故意に逃げておるところもある。いろいろありますが、単なる精神的な問題でなく、かなり具体的にお書きになっている。ですから先ほど大臣は従来のいろいろの解釈を総合的にまとめてここに教育指針として出した、こうおっしゃつておるのですから、これは解釈と考えていいのですか。解釈の基準になるのですか。少くとも行政官庁としては、こう解釈する、こういうように言っておるのですか。
  48. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 お答えいたします。本通牒は、わが国における労働組合運動と労使関係について、憲法及び労働組合法に定めるところにのっとり、その正しいあり方を体系的にとりまとめたものであります。その説明の一環として、いわゆる法解釈の部分もあるが、全体としては、要するに本通牒は、労働組合運動及び労使関係のあり力に対する基本的な指針として出したものであります。
  49. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、部分的には法解釈になることもあるわけですね。
  50. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 そのこまかい点につきましては、担当局長から答弁させます。
  51. 中西實

    ○中西政府委員 ただいま多賀谷委員のおっしゃった通りでございます。行政解釈という言葉は、これはきまった定義はないわけでございますけれども、普通そう言われておりますものは、白黒をはっきりする。つまり適法、違法ということについて、法の解釈を行政庁において行うというのを申すようでございますが、先ほど大臣から話されましたごとく、これはわれわれの方の労働教育の指針でございまして、従って単に違法、適法ということ以上に、自由民主社会国家においてこれの方が望ましい姿というものを描いておりますので、従ってこれはその意味におきまして、内容的に法の解釈も含まれておりますけれども、全体といたしましては、いわゆる教育の指針であるというふうに考えております。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では従来出ましたいろいろの次官通牒、たとえばピケットラインについてあるいは部分ストの賃金請求権について、こういう通牒とは性質は違うわけですね。
  53. 中西實

    ○中西政府委員 従来労政局が出しましたものにも、これに瀕するものがございます。たとえばかって出ました労働協約の通牒のごときは、やはり一つの労働教育指針でございまして、ピケ通牒も、これは一応適法、違法の限界をわれわれの方の行政官庁として一応こう考える、そうしてわれわれの方の取扱い官庁並びに労使の誤まりなきを期するということで出ましたので、見方によってはこれは行政解釈と言えるかと思います。労政局の出します解釈は、直按労政局が担当してこれを行政上やるというものは少いのであります。たとえば事業におきしては直接基準監督官が一応その解釈によりまして運用する、これはまさに行政解釈でございましょうが、労政局の法令に対するものは、労働大臣としまして権限のあるものは非常に少い。従ってその意味では厳格な意味のいわゆる行政解釈というものではないかもしれませんが、そのうちでも正当、不当ということをはっきり出しますピケ通牒の方はまあ行政解釈と言えば言える。しかしながら今回の通達は、これはいわゆるあるべき姿、望まほしいあり方というものについての教育指針でございます。その意味においてはかって出ました協約に関するものと性格が似ておると思います。
  54. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうしますと、かって二十四年ですか、労働協約締結促進についてとか、あるいはその別紙で協約締結上の問題点とか、その他労働協約についていろいろな指針が出されておりましたが、それと同様と解釈してよろしいですか。
  55. 中西實

    ○中西政府委員 今回のものは非常に網羅的でございますが、かつてのものは協約とかそういうふうに限られたものが多かったと思います。あの協約の通牒の方は、まさにやはり協約に関する指導指針というふうに考えております。
  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですからそれは性格は通牒として同じですかと聞いておるわけです。
  57. 中西實

    ○中西政府委員 同じというふうに考えております。
  58. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 従来いろいろな協定、通牒等が出ておるわけですが、私は今度のこの通牒は確かにおっしゃるように網羅的であるだけに、これは占領軍がおりました昭和二十三年の十二月二十二日に、二十四年の法律改正をやる地ならしとして出た通牒です。すなわち民主的労働組合による民主的労働関係の助成についてこういう通牒を出して、そして次に出てくる労働法改悪の地ならしにした。労働法規はその後二十四年に出ましたけれども、この通牒に書いてあるやつを法文化した、こういう例がある。これはまあ占領中ですから私は今さら言いませんけれども、どうしても今度の通牒はそういうにおいがしてならない、かように考えます。この通牒を土台にして今後労働法改正をする、こういうことはよもやないと思いますけれども、われわれは一応懸念しておりますので、大臣からこの点に対する答弁をお願いいたしたい。
  59. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 先刻来いろいろ申し上げておりますように労使間の教育の指針として出しただけのものであって、他意はないのでありますから、これを土台にして今後重要なる労働法規を変えるなんということは毛頭も考えておりませんことを確約いたします。
  60. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それじゃ私はかなり具体的に聞いてみたいと思います。そう申しますのはこの通牒をずっとながめてみますると、たとえば判例の場合にいたしましても、都合のいいところだけをとっておる。一つの判例でもその判例の根本的な趣旨というものをとらないで、派生的な自分の都合のいいものだけをピック・アップしている。これは判例だけでなくて外国の法令だって同じですが、外国の法令を引出する場合に、これまた奇妙に都合のいいところだけをとって、まるっきりその国の労働法規範から見ればちぐはぐな結果を招来するようなところもある。しかも全般的にながめてみますと、ピケの通牒であるとかその他の通牒はかなり吟味して書かれておるけれども、これはきわめてずさんといえばずさん、ラフな、言葉の熟さない新語的なものがときどき出て、指針としてはきわめて悪い指針であり、内容は偏向教育的なものである、こう言わざるを得ない。そこで私はその内容について質問いたしたい。  まず私たちがこの通牒をざっとながめて感じますことは四点ほどあるのです。その第一点は上部組織に対する考え方、それは上部組織と組合大衆の離間をねらっておること、こういう点がきわめて露骨に現われておる。第三は組合活動の分野を著しく制限をしておる。第三には、争議行為をかなり制限をしようとしておる。第四には、資本家の組合に対する支配介入を容易ならしめておる、こういう点がうかがわれます。そこでまず第一の点でありますが、上部団体に対してかなり露骨な非難並びに批判がしてあります。私はこれを今ここにあまり引用はいたしませんけれども、これはよく御存じの通りです。そこで上部団体をこれだけの言葉をもって批判をされるならば、なぜ上部団体に対する育成についてお考えにならないか。もう少し申し上げますと、この労働組合のところで企業別組合に対しても少し批判をされています。日本企業別組合というものはこれは御用組合のおそれがある、こういうことをいわれておる。そうして必ずしも企業別組合がいいとは書いていない。しかし現在の日本の実情に企業別組合だ、そうして企業別組合にもかなりの批判があるといって短所を言われておる。そうして現在日本の上部団体のあり方を見ると、結局労働関係について、一般労働条件については企業別組合がやってしまうから上部団体というものはもう仕事がない、そこで政治活動をやらざるを得ない、こういうようなことを書いて、それをこっぴどくやっておるわけであります。ところが日本の労働組合の課題は、企業別組合からいかにして脱皮するかというのが大きな課題であります。その課題に対して一体努力されたかどうか。これをまずお聞かせ願いたい。
  61. 松浦周太郎

    松浦国務大臣 責任局長からお答えいたします。
  62. 中西實

    ○中西政府委員 上部団体についていろいろと企業的なものがあるというお話でございますが、私どもは組合組織におきまして最も重要に考えておりますのが上部組織でございまして、社会的存在の意義、また使命の重大性、これは上部組合において大きくわれわれは感じておるのでございます。それだけに私どもは上部組合というものが、やはりわれわれの社会において一般の輿望にこたえるような動きがあってもらいたいということを望んでおるわけでございます。そのことにつきましてここにるる書いてあるのでありまして、たとえば上部組合というものは、結局個々の組合ではわからない大所高所から下部の組合を指導すべきだ、またいろいろと経理陣に対しましても上部組合というものは指導的にこれを教育し、あるいはまた福祉活動におきましてもこれを指導し、また上部の組織においてこれを実施するということによって組織を強化する、その他上部組合は下部組合に得られない高い視野からいろいろと行動をとるべきであるということを期待しておるのでございまして、そのことにつきましてはおそらく一般の社会といたしましても要望するところじゃなかろうか、この点を率直にここに表現した次第でございます。
  63. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 たとえば欧米に例を見ない企業賃金較差がだんだん形成されていく、こういうことをおっしゃっておる。要するに賃金としても企業によってますます拡大の一途をたどっておる、こういうことをよくいわれる。これは事、です。そして日経連なんかも、労働省の方でもそうですが、大組合が増加をするとますます賃金較差がひどくなる。政府の方は日経連ほど露骨にはおっしゃらないかもしれないけれども、そういうことがときどきうかがわれる。そこでむしろ上部組織というものがかなり強化すれば、あなたが書かれておるように賃金較差は少くなる。ところが実際はどうかというと、上部組織の方はいわば弾圧とまではいかないけれども、企業別組合が、企業別組合から脱皮して、そうして上部組織へ移行しよう、こういうような場合にはむしろ資本家政府はそれに対して反対の態度をとられておる、こういう事実はありませんか。
  64. 中西實

    ○中西政府委員 上部組合が対経営者との関係におきまして経済要求をする。われわれは、日本の組合組織が産業別がいいか、あるいは今の企業別がいいかということについては、ただいまのところ結論は申しておりません。  どうしようとしてもこれはできないわけであります。しかしながら、もしも産業別に上部組合というものが動く場合には、やはり相当今のままの考え方では円滑にいかないのではないか。わが国におきまする企業の較差――大企業のうちでも非常な較差がある、こういう特殊なわが国の一般産業企業の状態におきまして、今の労使の考え方をもちまして直ちに各国がやっておりますようなことはとうてい望めない。はっきり申しますと、とにかく各企業ごとでぎりぎり限度まで要求を出してとらなければやまない、これではとうてい上部団体が指導して、円滑に労使関係を確立していくというわけにはいかないというふうに考えておるのであります。
  65. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 日本の労働組合が、たとえばピケあたりにいたしましても、かなり激烈なピケ・ラインが事実しかれておることを私は承知しております。ところが、なぜそういうようになったかということを十分究明をされないで、そうして一方においては、この上部組織については分断作戦をとられておる。私はそういう事実はありませんかという質問をしたのですが、故意に迷う答弁をなされました。かって電気産業労働組合は一本の交渉をしておった。一つの統一労働協約を持っておった。ところが二十七年の十二月になぜ大きな争議が起きたかというと、これは統一交渉の拒否であり、統一労働協約の破棄であります。そのとき政府はどういう態度をとられたか。結局分断作戦をとられたわけです。今まで上部組織がまとめて統一交渉をしようとする際に、常に政府の方では、企業別組合の分断作戦をとられておるという事実をわれわれは忘れることはできないのです。そうしておきながら、上部織組の悪口だけを言う、これは一体どういうわけですか。私は電産のときの事情を当時の中労委の事務局長である中西さんからとくと承わりたい。
  66. 中西實

    ○中西政府委員 そのために先ほど裏から申し上げたのでありまして、あの共通な要求が出ました場合、やはり企業の実態とそぐわないものがある。つまり九電力会社におきましてもそれぞれ非常な較差がある。しかるにかかわらず、それに対して最高限の要求でそれを貫徹すべく努力しておった。それではやはり非常に実態との関係におきまして無理が生じます。従って分裂作戦というようなことはわれわれの毛頭考えていなかったところでありますが、勢いのおもむくところ無理があれば必ずそこに破綻が起る、これはもうやむを得ないことであります。当時御承知のように九電力会社のうちでも四国電力というのは非常に内容が悪かった。これがしかしながら統一であくまで押してこられた。それは勢いのおもむくところやはりそこに破綻が出てきた。従って私が先ほど申しましたのは、やはり統一的にやられるのならどこにも妥当する線でやられる。各国の例を見ますと、各産業ごとに交渉はいたしますけれども、それは各企業に可能なところで要求される。しかしながら外国におきましても企業の較差がある。そこである企業においてはそれ以上のものができるところがあるかもしれません。そういうところは別個企業の話し合いできめておるわけなんです。従って統一闘争といたしましてしゃにむに最高限のところで押してくるということになりますと、これはだれがたくらむでもなくおのずからそこに破綻が出てくる、これはやむを得なかった時期ではなかったかと思っておるのであります。
  67. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 中西さんはよく御存じで、特に中労委は電産の争議については常に調停をしているから内容はよく御存じであるにもかかわらず、そういう御答弁をなさる、現在東京電力からあるいは関西電力、四国電力と九つの電力会社がありますが、現在はかなり経営内容が違ってきておる、較差が出ておることは事実です。しかし株の配当は同じです。全部一側二分配当しておる、どういうようになっているかというと、電力会社はよそとは違って初めから株の配当は損金に入れてあるのです。一側二分というものをコストに入れてある。この点は普通の私企業とは違うのです。そうして統一的に株の配当をしておる、ですから株主に対しては統一的な配当をしながら企業較差がものすごいのですが、労働者たちには従来やった既得権を破棄して別々に賃金交渉をしよう。内容が違うといいますけれども、当時の四国電力そのものが今とはそれほど内容は違っておらなかった、将来は違うであろうことが予想された、こういうようによく御存じであるのに、そういう御答弁をなさるとはけしからぬ、私は電気産業の労働組合が一本になって交渉しても、当然同じ賃金にしても、料金の方が政策料金ですから、私はずいぶん企業較差が賃金についてはなくてもやっていけるというように考える、これについてはどういうようにお考えですか。
  68. 中西實

    ○中西政府委員 配当その他の問題はまた企業の別の角度から考えなければならぬと思います。特に私どもの承知するところによりますと非常な較差があり、ことにまた給与問題につきましてはその地方々々のやはりプレベリングといいますか、較差もあったというようなことで、われわれ当時中労委におりましたですが、そのときにはことさらにこれを分断するとか、そんな意図は全然なくておのずから自壊作用をしたというふうに考えております。
  69. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 自壊作用をしたのではなくて、自壊作用をするように資本家政府が行なったのです。私は現在全労という組合ができておりますから、あまり言いたくはありませんけれども、歴史的事実は残念ながらそうです。ですから政府は上部組織の強化というものについてはきわめて冷淡なんです。冷淡どころかむしろ分断作戦をとっておられる、あなたの方、統一交渉をしようと努力しておる上部単産に対して、一体どれだけ助言をしましたか。一回もしたことはないでしょう。その点どうですか。
  70. 中西實

    ○中西政府委員 どういう点助言ということになりますか知りませんが、私ども上部団体を否定しておることはもちろんございませんし、上部団体の任務の大きいこと、社会的に重大な意義を持っておること、これを思えばこそ、そのあるべき望ましい姿といたしまして、下部組織の狭い視野からは得られないような広範な展望と見識の上に立って、国民経済の実情に即した調整を考え、その見地から下部を指導するようにそういうことが望ましいのだ、こういうように申しておるのでありまして、これを分断しまた無視するという気持でこの内容ができておるものではございません。
  71. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 上部組織にその仕事の内応を与えるように努力せずして、そうして上部組織ばかりを批判したのでは教育になりません。ですから、上部組織の強化というのは一つの労働行政の中の大きなテーマであるとおっしゃるならば、この批判をしただけでは私は上部組織の教育にはならないと思うのです。上部組織の仕事はこういうもので、こういうようにすれば上部組織ば正常なる運営ができる、こういうようなことを書いて初めて教育になるでしょう。上部組織の仕事の内容、要するに労働協約の締結にいたしましても、賃金その他の労働条件の締結にいたしましても、上部組織がやれるような指導をせずして非難だけをしたんじゃ教育になりませんよ。これはどうですか。
  72. 中西實

    ○中西政府委員 望ましい使命につきましてここに書いてございます。従来特に運営についてとやかく申したことはございませんけれども、たとえば福祉事業、共済事業こういうようなことにつきましては常に相談に乗り、資料があればそれを提供するということをやっております。
  73. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はこの通牒を単に批判しておるのじゃないのですよ。上部組織と企業別組合との関係を十分労働行政としては考えてやるべきだ、私はかように思うんです。企業別組合の方はだんだんに強固な方向からはずそうとされておる、あるいは専従者のことなんかでもそういう点が如実に出ておる。だんだんに企業でしぼろうとされておる。ところが世界の労働組合の大勢はどうかというと、そういうような大勢ではない。これは日本の特殊事情であるということをこの通牒は認めておるけれども、特殊事情ならばなぜ脱皮をしないか、この点に何ら触れられておらないで、悪口だけを書いておる、批判だけをしておる。それじゃ教育にならないじゃないか、こう言っておるのです。私はピケのことを例にとりましたけれども、結局アメリカのように労働市場を独占をしておるならば、印刷工なら印刷工の労働組合がストライキをしても他から連れてくることはできないのです。だからプラカードを立てて、そうして今ストライキ中でありますから、こういうことで、いわば表現の自由といいますか、そういう程度で、第三者に対して自分たちのやっていることを宣伝をすればいい。ところが日本のは反対ですよ。企業別組合ですから幾らでも契約の要員がおるんです。ですから、そういう点をつかずして、単に上部組織だけを批判したのでは意味がないし、またピケッティング・ラインの問題のみを取り上げても意味がないと思う。この点に対して労政局長はどういうようにお考えですか。
  74. 中西實

    ○中西政府委員 この指針の中で、企業別組合を助長して、いわゆる産業別の組合はなるべく分断する趣旨のものが出ておるとおっしゃいますが、私はこれをすなおに読んでいただきますればそういう点はどこにもないと思うのであります。もしも上部団体にして指導よろしきを得ますれば、かえっていい組合は産業組織としてだんだんと固まっていくという方向にいくんじゃないかということを裏に予想しつつ書いてあるようにも読まれるんじゃないかと思います。われわれは上部団体の使命というものを非常に大きく考えまして、この中に、ずっと読んでいただきますれば、おのずから上部団体のあり方というものが出ておるんじゃないかと思うので、どうも読み方も、その前に何か先人観がおありじゃないかと思うのです。私の方としましてはそういった企業別組織にとどめるんだというような意図は全然持っておりません。しかし問題は組織問題でございますから、これはわれわれがとやかく言ったってどうにもなるもんじゃない、やはり労働者の自主的な決定によって漸次動いていくものであるというように考えております。
  75. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はどこを見ても今局長がお話になるような点は見受けられぬと思う。これは経済的あるいは歴史的必然性を書いてある。たとえば労働組合の第三、回顧と現状というところで「貸金その他の労働条件等の具体的な経済問題は企業別に決定されるため、その上に位する上部組織は、あえて全産業にわたるもののみならず、個々の産業別のものでさえも、具体的な経済問題について活躍する余地は比較的狭く、統制力も弱い。そこで上部組織が活発な活動を志し団結の強化を図ろうとすれば、得てして、具体的な経済問題とはかけはなれた分野にこれを求めがちになる。」こういうことでしょう。ですから、あなたの方で書いてあることは、日本の特殊事情で企業別組合ができていて、外国のとは違うのだ、企業別組合が具体的な賃金その他のことをやるから上部組織というものはえてして現実から離れていく、こういうことだけ書いてある。そして今度悪口を精一ぱい書いてある。どこにも教育はないですよ。これは私は重大問題だと思う。
  76. 中西實

    ○中西政府委員 前の方はこれは現実を書いているのでありまして――あるいは現実はそうじゃないと言われるかもしれませんが、われわれはそう見ている。私はおそらく異論のないところかと思います。そこであとの方に、上部連合体というものが非常に重要なものであればこそここにこうあるべきが望ましいということを書いているのであります。そうしてもし産業別に大きな統一交渉をやるという場合には今のような労使の考え方じゃやはり遺憾な点があるじゃないか。なぜならば労使双方ともきわめて企業エゴイズムが強い。これを除かなければやはり統一交渉というようなことは非常に摩擦ばかりが多いんじゃなかろうかという感じがするのであります。従って先ほども言いましたように、わが国の労働組合はとにかくその企業々々でぎりぎりの線までかちとるという面が出てきている。各国におきましては自由経済を認めて世間並みの要求をする、その上にもうけがあれば、それは経営人が処分するのはこれは自由だという考え方に立っているのであります。そこいらがどうもわが国におきましては、何か社会政策的なものとちゃんぽんになりまして、とことんまで獲得しなければ気が済まない。経営人もまたそれに符節を合せまするごとくに、その企業だけを守っている。自分のところだけ払えるから払っておけばいい、そうしておさまればそれでいいとうよいうな気持がある。そこで国民経済全般的な視野に立っての調整ということがどうも今の労使の考え方では、今直ちには非常に無理があるじゃないか。そこいらがだんだんと考え直されてきますれば、われわれとしましては自然といわゆる産業別の統一交渉というようなことも行えるようになるじゃないかというふうに考えます。
  77. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今日本の労働組合で最も大きな問題は企業別組合からの脱皮だということを申したのですが、窓口交渉という問題がきわめて大きな問題になっている。日本の上部組織は中西労政局長が理解されているよりもはるかに成長している。必ずしも同一賃金を要求してはいないのです。実態はどうかといいますと、合化労連のごときでも、ことにああいう化学工業というものは作る製品によって、また企業によって非常に違う。しかしながら統一的な闘争ができるのです。それは同じ賃金じゃない。鉄鋼というようなものは、規模は別ですけども、比較的統一賃金が出しやすい。あるいはメタル・マインの全鉱、これは同じようでありますけれども、あるいはすずであるとか、銅であるとか、これは違う。それを十分把握して賃金をきめている。単に大きいということからだけで同じように要求はしていない。実態を見ると、産業別の単産統一交渉をやっても十分やりこなせる素地があり、そこまで成長している。かように考えるんですが、一体どういうようにお考えですか。
  78. 中西實

    ○中西政府委員 現実の経済要求における妥結の結果を見ますと、これは各企業別にきまっているのであります。それだけに、現在なおいわゆる産業別の統一交渉ということには今の段階におきましては至っていない感じがするのであります。一応統一闘争とは言っておりますけれども、いわゆる欧米諸国における統一闘争ではない。一応の目標を与えて結局は個々の企業ごとに解決するというのが現実だと思うのであります。その点たとえばアメリカあたりの鉄鋼の争議なんかは、一律各社同じ要求、同じ額ということでいっております。そういったいわゆる産業別の統一交渉と日本のものとは違うということを言っているわけであります。
  79. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 教育指針であるから法解釈でないとおっしゃるが、教育指針なら教育指針らしくそういう点十分政府の態度を明らかにしなければならぬと思います。単に非難だけしておったのでは、教育でないのです。どうしたらいいかということを書かなければ教育じゃないでしょう。自分の都合のいいところばかりこうしなさい、こうしなさい、こういうのは偏向教育ですよ。こういう大きな問題を一体政府はどういうように考えているのか、望ましい姿はどうなんだということを出さずして、ここに長いこと書いてありますけれども、何も役に立ちませんよ。日本の今の大きな問題はこれなんですからね。ストライキの初っぱな大きく問題が起るのはこれですよ。この問題に対して労働省はどう考えるのか、こういう指針を出さずして何が団結権、団体交渉権、団体行動権の指針になりますか、一体どういうようにお考えになりますか。
  80. 中西實

    ○中西政府委員 おしかりでございますが、二十ページあたりにそのあるべき姿、好ましい姿を書いておるのでありまして、こうあつてほしいというように目標といいますか、あるべき姿、望ましい姿というものをこれにうたっているつもりでございます。
  81. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 二十ページにあるのは、「労働条件に関する具体的統一的な、地に足のついた行動をすることが極めて困難であるため、得てして労働条件とは恐ろしく縁の遠い政治的な目標を掲げてみたり、あるいは実情を無視するものであることを自身で百も承知の画一的闘争を呼号して、血気一点張りの争議をあおりやすい。傘下単組がこの指導にどの程度ついてゆくかは別として、かような指導は、労働組合運動にいたずらに政治的色彩を加え、あるいは、なくもがなの世間の反感を起させるにすぎない。」さらに「遺憾ながら、現状においては、上部組織には、鞭と拍車だけで手綱を忘れた騎手との誹りを免れぬものが少くない。」こう書いておって、上部組織に内容を与えないで、仕事は企業別組合でやれ、お前の方は仕事はないんだ、だからこういうことをして騒ぐのはけしからぬ、こう言ったのでは教育になりませんよ。
  82. 中西實

    ○中西政府委員 今お読みになりましたもので特に抜かされました四行ばかり、ここをお読みいただきたいと思います。(笑声)
  83. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 抜けている点を読みましようか。要するに抜けている点もこうしろ、そしてただ訓示的にこうやったらいい、こう言うだけで、やはりさっき批判があった、要するに企業別組合がやっておって、上部組織はほとんど仕事はないと言っている。しかも上部組織を全然否定していないで、ある姿としては上部組織もいいと言っているんですから、上部組織をいいようにするには、やはり統一労働協約締結の力があり、あるいはまた交渉権を持つような上部組織というものが望ましい、こういうふうにお書きになったらどうですか。
  84. 中西實

    ○中西政府委員 そのことはここにございますように、いきなり統一協約を持つ、これはできる産業もあるかもしれません。しかしながら現状を見ますと、一般的にはやはりまず傘下の単位労組の協約、これにつきまして上部団体が指導していく、それによって徐々に産業全体の労使の安定をはかっていくという過程を経るのじゃないかと思うのであります。従ってそれは上部団体も、われわれとしましても今後ここにございますような趣旨に沿って努力されることが望ましいというふうに考えております。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私が労働省を教育しても始まらぬですから次に進んでいきたいと思いますが、私が今申しましたように、根本に流れる思想が依然として企業別組合を温存したい、できれば御用化したい、こういうふうにしか受け取れない個所が間々あるのです。これだけ上部組織を非難しているのですから、やはり上部組織はこうあるのだということを書いてやることが必要である。それにはどういうように上部組織はしなければならぬ、こういうように書いてやることが必要だ。それが日本だけ特殊なら別ですよ。世界の大勢はそうなんですから、あれだけ外国の立法の権利争議だとか、あるいは利益争議というようなめったにない理論まで振りかざしてくるならば、私はもう少し世界の労働運動の大勢を見てもらいたい、かううに思います。
  86. 赤松勇

    ○赤松委員 関連して。労政局長にお尋ねしますが、これは非常に大事な問題だと思うのです。要するに労働省というものは何をやるところなんだ、こういうことになってくると思うのです。私は労働省が一般労働者を啓蒙するということは、これはやはり労働省設置法の上から申しましても当然あり得ていいし、やってしかるべきだと思うのです。問題はやはり労働省設置法の中で、その目的に明示したる線に沿うておやりになるということが大事であって、この中に書かれておる労働条件に関する画一的闘争云々からいたずらに政治的色彩を加えとか、強気一点張りの争議をあおりやすいとか、あるいは縁の遠い政治的な目標を掲げてみたり、あるいは実情を無視するものであることを自身で百も承知の画一的闘争を呼号して、こういうことは労働組動を侮辱するものだと思うのです。労働省としてこういうことが労働組合の教育になるかどうか、これは非常に大きな問題だと思う。一体あなたの考えておられる政治的色彩を加え、こういうのは具体的に言えばどういうことなんですか。画一闘争が政治的色彩を加えている実例をあげて説明してもらいたいと思う。
  87. 中西實

    ○中西政府委員 用語の使い方につきましてはいろいろとまたこれよりはこう言った方が妥当だという言い回しは多々あるかと存じますが、言わんとしておりまする内容といいますか、考え方につきまして御批判いただきたいと思うのであります。ここで政治的な色彩ということも出ておりまするが、これはやはりわれわれの考えております労働組合というのは経済目的のものである。従ってその中心は対経営者のものでなければならぬ。そこでもちろん経済政治というものは非常に密接な関係を持っております。その意味において経済闘争からそれに関連する政治的な闘争をするということも法律にも認められておりますように、やはりこれは従としては認められる。しかしながらその経済的な目標と相当かけ離れた問題につきましては、われわれとしましてはこれは穏健な組合とはいえない。従ってその例と言われますけれども、まあいろいろと平和運動に関連いたしましてこれはまあ関係があるといえば広い意味では関係はございましょうが、しかしながらやはり労働組合の本来の目的からいいますると、そういうものはやはり政治的な色彩のものだというふうに考えます。
  88. 赤松勇

    ○赤松委員 それではお尋ねしますが、たとえば労働基準法を労働省で変えたい。ところが労働者の方は基準法を変えてもらっては困る。あるいはストライキ規制法ができる、そういう法律を作ってもらっては困るということで職場大会を開き、あるいは全国的な画一的な統一闘争が起きます。その闘争はストライキという形態をとるかとらぬかは別としまして、要するに国会に陳情なり、あるいは広範な国民大会なり、そういう政府に対する要求、これは御承知の通りイギリスだって、フランスだってやっておるのです。経済的な要求とあなたはおっしゃるけれども、それは職場の中における便所を直せとか、労働賃金を上げろとか、そういうことだけではないのです。これは労働者にとっては最も大きな経済的な問題なんです。生活権の問題なんです。そういう全国的な統一闘争が起きた場合、あなたはこれを非難されますか。これは経済闘争ですか、政治闘争ですか。
  89. 中西實

    ○中西政府委員 この中にも何個所かにございますけれども、労働組合本来の目的は、先ほど申しましたように経済闘争であり、しかもこれは経営人に対するものである。しかしながらそうだといって政治活動をした場合、それが直ちに違法とかそういうことを言っておるのじゃないんで、労組法、労調法等で保護、保障されておるものの対象にはならない、こう言っておるのでございます。従って政治活動をしたからといって、それが直ちに違法だとか、そういうことではなくて、それはそれぞれの法規によって規律される、そういうことであります。
  90. 赤松勇

    ○赤松委員 今の答弁とここに書いていることとまるで違う。そのことは、私は質問を保留しておりますからまたあらためて質問いたしますけれども、ちょうどあなたの考えを今度は裏から言いますと、こういうことを言っておる。「使用者の正当な言論の自由の行使が、結果的に労働組合の結成運営について影響があったとしても、これをもって、不当労働行為とはいえない。」さらに進んで「使用者が労働組合の事情を調査し、あるいは労働組合もしくは組合員に対し自己の所信を述べ、労働組合の主張を反駁したり、その非を指摘したり批判することは、何らこれを禁止すべき理由がない。」こう言っておる。一方においては労働者に対しましては、今のようなきびしい批判を浴びせながら、他方におきましては、これは明らかに経営者の不当労働行為ですよ、こういうことを奨励されている。たとえば、あなたは大浜事件の判例を御存じですか。最高裁の判例ではそういう経営者の組合介入は、これは違法行為である、不当労働行為であるという判決を下したじゃありませんか。もしあなたが知らなければ、私は判決文を読んでもいいのですが、もう時間がないからそういう煩瑣なことは避けますけれども、すでに最高裁におきまして明瞭に判決を下して、そういうことをしてはいけない、それは不当労働行為であるということをちゃんと言っているのです。ところがあなたは資本家を奨励している。今までのような消極的な態度でなくて、「労働組合の結成運営について影響があったとしても、」とこう言っておる。これは非常に重大ですよ。「労働組合の結成に影響があったとしても、これをもって、不当労働行為とはいえない。」かってないすばらしい見解をあなたは初めてここに明らかにしておる。これは一片の教育に関する指針だというふうには、私どもは受け取れません。もちろんこんなものは法律的には何ら拘束力はないけれども、今日新憲法下における労働法の行き方としましては、これは重大な反動的な問題である、こう思うのです。これにつきまして、大浜事件の最高裁の判決とあなたの書いたのと照合しながら一つ御答弁をいただきたい。なおこの点につきまして私は後日詳細に質問をいたします。
  91. 中西實

    ○中西政府委員 個々の問題に参ったのでありますが、言論の自由というものと、それから支配介入ということ、これは非常に限界のむずかしい問題でございます。それでここにもございますように、「正当な言論の自由の行使」とあるのでありまして、正当な言論の自由の行使はやはり許されるものである。従ってその調和が問題になるわけであります。大浜の裁判例は私もよく知っております。しかしながら、あの状況というものが不当労働行為になる、そういう状況すなわち明らかにやはり支配介入という場合には、たとい本人が意識しない、法に無知であったという場合でも、あるいは結果を予見しなかったという場合でも問題になろうかと思います。しかしながら、正当な言論の自由というものは経営人にもあっていいのではないかという趣旨でございまして、今まで往々にしますと、やれ組合のことは何を言ってもいけないのだ、ことに争議中におきまして、今会社の経理事情がこうなっておる、従ってこれが精一ぱいだとか、いろいろな会社の実情を話をする場合でも、そういうことを言うのが即組合に対しての不利益な言動だというように考えられておった。その行き過ぎといいますか、考え過ごしが相当あったというところで、ここに正当な言論の自由の行使は許されるのだというふうに言っておりますので、この点はどこがどうということは具体的な事例でないとはっきり申せませんけれども、その気持をここにうたったわけでございます。
  92. 赤松勇

    ○赤松委員 もう一点だけ。あなたはこの中で、たとい組合結成に不利益な影響を与えようとも、こう言っておられるのですね。ところが最高裁の判決によりますと「労働組合法第十一条または労働関係調整法第四十条にいわゆる不利益取扱とは、たとえば減俸、昇給停止等の経済的待遇に関して不利益な差別待遇を与えるのみでなく、」のみでなくですよ。「広く精神的待遇等について不利な差別的取扱をなすことをも含むものと解すべきである。」こういうことを言っておる。そうすると最高裁の判決とあなたの行政上の解釈は明らかに大きな相違を来たしておるのであります。この一点を指摘しておきまして私は次の――答弁はよろしい。(「それは答弁を聞かなければだめだ」と呼ぶ者あり)では答弁できるならしなさい。
  93. 中西實

    ○中西政府委員 そういうように明らかに不利益な処置をするというようなことを言っておるのではないので、正当な言論の自由の行使というものは、たとえば会社事情を十分に従業員に納得させるというようなこと、私ども地方へ行きますると、そういうことすらこれは組合組織に影響を与えるものだ、してはいけないのだということで、それが不当労働行為になるのだというような思い過ごしの面に多々ぶつかるのであります。そこで正当な言論の自由の行使、これは今言いますように、明らかに差別待遇する、精神的にもそういう影響を与えるようなこと、こういうことをさしておるのではございません。
  94. 赤松勇

    ○赤松委員 それなら私も一言言っておきます。「労働組合の結成運営について影響があったとしても」この「影響があったとしても」というのはどういう意味ですか。初めは前段において「使用者の正当な言論の自由の行使が、」こう言っておるのですね。その使用者の正当な言論の行使が労働組合の結成運営について影響を与える。その影響を与える正当な言論の行使とは一体何ですか。
  95. 中西實

    ○中西政府委員 具体的に申せば、今申しました、たとえばある目的のために争議を行なっておる、そうして組合がある主張をしておる。それに対して会社側が、実は会社の実情はこうだといって、個々の組合員に徹底するようにその実情を話した。そうするとそれによって個々の組合員は、なるほどそうかというようなことで、組合のきめました闘争の目標に対して若干批判的になって、スト継続というものももう一ぺん考え直そうじゃないかというようなことはあり得るのじゃないかと思うのです。そういうことはやはり正当な言論の行使ではありまするが、それが結果において、あるいは組合の運営に影響を与えるという場合があり得ると思うのでございます。そういうふうに正当な言論の自由の行使の場合にはいいということでございます。あなたの意見にと言われますけれども、これは私個人というわけではないので、労働省といたしましてこういう指針を出しているわけでございます。
  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私実は質問がまだほんの初っぱなに入ったばかりなんです。委員長はもう時間だということですが、まだ三十五点ほどある。その一つが済んだだけで困るのですが、今の点の使用者の言論の自由という点だけでも今日終っておきたいと思うのです。そこで通牒にも引用しております山岡内燃機関の判例にしましても、その判例というのは従業員の父兄を集めた場所で、社長が組合が連合会に加入したことを非難した、いわばあいさつをした。これが問題となって、その後さらに従業員を集めて行なっておるのですけれども、これが不当労働行為になった。また私自身が扱った事件でも、中央労働委員会に提訴して救済を受けた時件で、田中彰治さんの振興炭鉱の不当労働行為事件があるのです。これは組合役員選挙期間中に社長が現われて、そうして訓辞をしておる。そして労働問題に言及して投票に何らかの示唆を与えるようなことをした。そういうことで日本企業は非常に封建性が強い関係で、さらに企業別組合であるという実情から、使用者の不当労働行為というものはかなり慎重に扱わなければならぬと思うのです。言論はなるほど自由でありますけれども、私は日本の実情から見て、使用者の正当な言論の自由の行使は不当労働行為と言えないということをわざわざ書くほど、日本の労働組合の実情はなっていないのです。それほど近代的になっていないのです。私はこれを書いた労働省の頭を疑いたくなる。何のためにこれをわざわざ載せて使用者に自信をつけておるのか、一体どういうわけなんですか。教育の指針ともあろうものが、日本の労働組合なり企業の実態を見ずしてこういうものを書かれるということ自体が――これは法解釈でないというのだから、私はあえて聞きたいのだたが、教育なら教育になぜこれを書いておるか、これは要らぬことなんです。これは書いたことによってますます不当労働行為を誘発するおそれがある。これは一体どういうわけなんですか。
  97. 中西實

    ○中西政府委員 これは読み方によって便乗しょうと思えば幾らでも悪用できると思います。しかしながら私ども過去十年見ておりまして、不当労働行為制度というものに対しまして必要以上に遠慮があるといいますか、そのために当然言っていい正当な言論の自由まで制限されておる向きがある。従って正当の言論の自由の行使はいいということを申しておるのでございます。一段の、ことに地方に行きますと、終戦以来労働組合といいますと、何かなるべくこれにはさわらぬ方がいいということで、非常な思い過ごしがある。従って正当な言論の自由ならいいということを注意までに申しているわけです。
  98. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はこれを書いたことによって不幸な事態の方が多いと思うのです。労働省の通牒でこれを書かれておるから、これによって本人は正当の言論の自由であるとやってもそれが不当労働行為になる、こういうおそれの方がこの通牒は多いと私は思うのです。私は色めがねをもって見るのじゃない。日本の労働組合の実態に即しながら教育をしなければならないのに、これを取り分けて書いて、しかも言論による不当労働行為は事件としてはかなりあるのです。私が今言いましたように最高裁判所でもあるし、中労委でもかなりある、こういう実態の中でわざわざ使用者の言論について言及されておる。ここに私は組合の実態をよく御存じない、かように考えるが、どういうわけですか。
  99. 中西實

    ○中西政府委員 私どもはさようには考えておらないのでございまして、先ほど申しましたごとくこの不当労働行為制度に対しまして非常に思い過ごしの向きが多い。そこで念のために、正当な言論の自由の行使ならこれは差しつかえない、こう言ったのでございます。
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも労政局長は組合の実態を御存じないようです。片ほどは中小企業の労働組合のことをおっしゃいましたが、中小企業の労働組合で不当労働行為があった場合に地労委の証人に出てきませんよ。証人を探すのが大へんです。私は多くの事件を扱いましたが、証人が出てこないのです。そうしてわれわれには言うのですよ。では、一つ出て下さいといったら、出てこない。もうこういうことは、これは中労委におられてあるいは御存じないかもしれませんが、地労委の事務局長なんか非常に苦労しておる。組合に有利な証言をする証人を連れてきておりましたら、いよいよその委員会が開催となるときにはいないのです。それで、そのうちには赤い顔をして帰ってきて、まるっきり反対の、会社側に有利な証言をしたというのが、私がいろいろ関係しただけでも二、三件あるのです。こういう実態なんです。ですから、ことに不当労働行為が昭和二十四年前のように刑事罰でなくて、いわゆる民事的な救済によって行われ、いわば犯罪ではない、こういう状態のもとにおいては、私はこの不当労働行為というのは中小企業では絶えないと思うのです。これは労働者の方ががまんをしておりますから、事件として起らないのですけれども、これは大へんですよ。こういうことを書かれれば、とにかく証人がこないくらいの実態なんです。これをどういうふうに把握されておるのか、お聞かせ願いたい。
  101. 中西實

    ○中西政府委員 今の問題は、結局個個の労働者の意識の問題ということになると思います。従ってそれはやはり労働者の教育といいますか、その方が問題になるわけでございます。しかしながら、個々に扱っております問題は労使ともにフェアでなければならない。従って使用者といえども正当な言論の自由の行使はいいんだということでありまして、使用者をおそれて証人に出てこないというようなことは、これは結局労働者個々人の意識の問題じゃないか。その点につきましてはさらに、労働組合はもちろんでございますが、われわれとしましても教育していく必要があるというように考えております。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はこの使用者の正当な言論の自由の行使のあとに、たとえば「労働組合の主張を反駁したり、その非を指摘したり批判することは、何らこれを禁止すべき理由がない。」こうおっしゃつておる。これは私は厳密に言いますと、かって労働省が指針としてあるいはいろいろなものに書かれた面と若干違っておる。この若干違っておるところに非常に大きな問題があるのですよ。これは簡単なようですけれども、読み方いかんによっては非常に大きな問題になる。かつて不当労働行為論というものを書かれておりましたけれども、それに書かれておりますのはこれとまた若干違っておる。すなわち「組合の結成、加入、脱退等はもちろんのこと、組合幹部の選挙あるいは組織のあり方、大会の運営等純粋に組合内部運営に関する事項は、一般に使用者が容喙すべき筋合いのものではなく、たとえば組合結成を難詰したり上部団体への加入を非難してこれを妨害、阻害をし、組合幹部の進退等について干渉することは、これは支配介入になるおそれが多い。」これはさらっと読んでみたのですけれども、この面と「労働組合の主張を反駁したり、その非を指摘する」と同じとは言えない。私は事実問題としては大きく違う。表現としてはそれほど違わないかもしれませんが、事実問題としてはかなり大きな問題になる。こういう非常に誤解されやすいようなことを書いて、一体教育になるかどうか。使用者が若干言論を遠慮しても、何も労働組合の運動には支障はないでしょう。これが逆用された場合には、従大な支障がある、かように考えますがどうですか。
  103. 中西實

    ○中西政府委員 明らかに非とすべきことも、使用者側は黙っていなければならないということはおかしいのでありまして、非は非とし、やはりそこに使用者としましての立場から自由に批判できるのじゃなかろうか。従ってこれを、たとえば組合を分裂させるとかいう意図のもとに、あるいは利益でそれを促進するようなことをいたしますれば、これはもう不当労働行為でございますけれども、単に行き過ぎ、悪いところを悪いと言うことは、別に不当労働行為とはならない、こういうことだと思います。   〔「散会、散会」と呼ぶ者あり〕
  104. 藤本捨助

    藤本委員長 多賀谷君テーマが変りますか。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうです。
  106. 藤本捨助

    藤本委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会