○渡辺(惣)
委員 実は南條建設大臣と宮澤運輸大臣においでを願っておりますが、南條大臣が時間を急がれておりますので、南條大臣及び宮澤さんに質問を申し上げたいと思います。実はこれはかつて一度質問をいたした問題でありますけれども、問題の焦点がきわめて重要でありますので、あらためて再確認をいたしたいと存じまして、宮澤さんにもおいでを願ったわけであります。問題は一点であります。
北海道開発計画において、非常に重要な課題を投げかけております苫小牧港の問題であります。これは実を申しますと、この計画について私が申し上げますよりも、各般の
方面から非常に手きびしい批判が実は出て参っておりますので、それをこの間は、批判を具体的に取り上げずに、ただ南條大臣と
質疑応答をいたしたのでありますが、この際国会を通じまして、これらの問題につきまして明らかに解明をしておき、その対策について、同時に
政府といたしましても統一された方針を樹立されてもらった方がむしろ正しいのではないか、こう
考えますので、もう一ぺん正確にこの問題を申し上げたいと思うわけであります。それは御存じのこの苫小牧港の問題につきましては、
産業計画
会議がこれを取り上げ、さらに
公共事業調査特別
委員会が取り上げ、
北海道開発庁がこれに対する駁論を出しておる。こういうにぎやかな課題になっておるわけでありますが、ここでは時間の節約上、要点のみを抜いて簡単に申し上げます。
産業計画
会議が言っておりますのは、
なお、ふたたび商業港の問題にかえってとくに一言すべきものに「苫小牧の工業港造成計画」がある。この計画は、現在の函館、小樽、室蘭等の港がいずれも適当なヒンターランド(背後地)をもたないため新らしく背後に工業地を持つ港を造ろうという雄大な構想に基いて
考えられたものであるがここに三つの問題がある。
第一は、適当なヒンターランドと密着した商業港は、はたして
北海道の
経済性を発揮させる上に不可欠の要請であるかどうか。いいかえれば、どこまでの費用をかけても、そのような港の築造の合理性を主張できるのか。
第二に、苫小牧は果してその目的からみた最適地かどうか。
第三に、現在の苫小牧計画は技術的にみて適当か、またその実施の
方法を是認されるかである。
右のうち第一、第二は、のちに詳論すべき大問題であるが、とりあえず第三点について一言しておかねばならない。
この計画は、外港そのものを造る部分と、工業都市のための内港を造る部分とに分れているが、前者に要する
資金は一二億円と算定され、後者のそれは一六〇億円と計算されている。(苫小牧工業地帯造成のための用水計画、電力計画、交通計画を合せると九二八億円となる)ところが現在の年間投融量は約一億円であって、外港部分だけをとってみても、あと十八カ年を必要とすることになる。かりに工業都市そのものの建設は別として、工業都市のための内港部分の建設だけを
考えるとしても現在の進行速度では百数十年を要することになる。これではまったく無
意味な
投資が、国費をもって行われているといわざるを得ないのであって、看過することを許されない。これが
産業計画
会議の
所見であります。もう
一つ、別の資料。行政管理庁の諮問
機関であります
公共事業特別調査
委員の答申が、この問題にまた具体的に触れておるのであります。
苫小牧工業港の計画は、苫小牧市東部に臨海工業地帯を造るもので、掘込式の工業港を新設上、一万噸級の船舶数隻の碇泊を可能ならしめようとするものである。海岸線と平行した内湾をつくり、その主航路の有効幅員二〇〇米とし、内湾の周囲に約四〇〇万坪の工業地を造成せんとするものである。
とりあえず、三十一
年度より五箇年計画をもって外湾の築設及び正面掘さくを行い、その工事費は一九億円であるが、将来掘込式内湾を完成するときには、更に約一六〇億円を必要とする見込である。
本港は、石炭産出地の至近距離にあって、石炭化学工業その他近代工業を誘致し、
北海道の発展を図るとともに、わが国過剰人口の処置対策に資し、兼ねて漁港の役をも果さしめんとするものである。
しかしながら、わずか六〇粁の地点に天然の良港たる室蘭港を有するのに、太平洋に全面をばく露し、天然の庇へい物の全くない、当地に築港することは、判断に苦しむところである。この
地方は漂砂の現象が著しく、水深九米以下の
地域はその
影響を受けるので、内湾側が常に埋没するおそれがある。
また、工事に当っては
予想外の事態、又は災害等によって
事業費が相当増額される危険もある。築港が完成しても、台風時には船舶の避難には困難を来すことが
考えられ、また、将来の工業港としては、三万噸以上の船舶の出入を
考慮すべきであろう。
工場誘致の問題については、工業にはそれぞれの
立地条件の必要があり、港がありさえすれば工業が興るという安易な構想は危険であって、更に十分なる調査研究の必要が認められる。
というのがこの
委員会の答申であります。
もう一点、済みませんが、能率上読ましていただきたい。今度はこの両
意見に対します
北海道開発庁の
意見書であります。田上次長を助けるために、かわってこれを読むことにいたします。
苫小牧工業港の技術的問題と
立地条件の調査研究について
苫小牧工業港築設に対して「漂砂による内湾の埋没」「災害に対する危険」「三万トン以上の船舶の入港を
考慮すべきこと」等技術的な点についての指摘であるが、
これについては十分検討し考究の上計画しているものであり、その結果、比較的多額の
事業費となっているが、工業港築設による
効果が大きいから、決して過大な
投資でなく、最近における内地の臨海工業地帯の造成費に比較して遥かに割安である。また「工業誘致については工業にはそれぞれの
立地条件の必要があり、港がありさえすれば工業が興るという安易な構想は危険である」との指摘であるが、
この点については相当調査を実施して来たところであって、工業地帯としての一般的な
立地条件即ち用地、用水、電力、陸上交通、資源その他については極めて恵まれており、港湾施設のないことが隘道となっているのであるから、これの
整備を図るならば石炭利用工業を始めとする諸種の適地工業は大いに誘致できるものと
考えている。というのが
開発庁の見解であります。
以上、それぞれ非常に立場の異なった
機関で発表しております三つの
意見が、それぞれ食い違っておるものがあるのであります。にもかかわりませず、現地におきましては、この港の工事がすでに
昭和二十五年から始まっております。最初は苫小牧市が独立で三百四十八万二千円を投じ、累年継続いたしまして、三十一
年度まで苫小牧市が単独で市費として投じておりまする金額は九千四百五十九万二千円という金額であります。これは
一つの市であります。ところが国費の方は二十六年から始まりまして、三十二年の一億一千万円を加えますと三億七千七百二万九千円、合計いたしますと、今日に至りますまでに、この七年間に四億七千百六十二万一千円という
経費がここに投入されておるわけであります。そこで、すでに五億円近いこういう国費及び市費が投ぜられまして建設が進められておりますのに、今この段階におきまして、以上指摘いたしましたような三つの大きな問題がそれぞれ出ておるのであります。この問題は、ただいま
地方でも、こういう
政府関係の文書、
産業計画
会議の文書等によりまして、現地ではどういうことになるのか、将来ともこの計画が継続されるのかどうか。今年は幸い地元南條建設大臣の
努力で一億一千万円ついたが、南條大臣がいつまでも建設大臣におるわけでもございませんから、そういたしますと、非常に現地の諸君の不安も多いわけであります。
そこで、私はどれがよいという
意見を申し述べておるのではないのでありまして、こういう
関係の、それぞれ社会的、政治的
影響を持つところの文書が、しかも非常に内容を含んだ文書が、何か意図的に論じられておるのか——でなければ、公正な立場で論じておるとすれば、もっとわれわれも真剣にこの問題を取り上げて、誤まりない方策を樹立しなければならない、こう
考えるのであります。そこで、この問題につきましては、すでにこういう
状態で進行の
過程にありますので、国といたしまして、もう一度、
ほんとうにこれを推進するためには——今のような継続
事業にもなっていない、毎年その年その年の風の吹き回しで
予算がついて、その先はどうなるかわからぬという不安定な条件で、しかもこういう大がかりな
仕事が進められるということは、きわめて重大なのであります。すでに
仕事は七年間も継続しておるのでありますから、これをやるとすれば、どうするのか。もっと国自身の責任においてこの真実を調査研究し、これに対するところの基本的な方策の樹立をすることこそが急務である、こう
考えるわけでございます。そういう
意味におきまして、建設大臣からはもちろん
所見を承わっておりまするが、あらためて建設大臣にお伺いいたしますとともに、同時に港湾を所管いたしまする宮澤運輸大臣といたしましても、港湾行政の一環といたしまして、この苫小牧港の建設につきましては、今後継続
事業としてはっきりと
政府の責任においてやられる用意があるのかないのか。いつまでもこういう論議を抱きながら、ずるずるべったりすっきりしないでいくのか、それともこの際、こういうような各般の問題が出ておりまする時期に、その誤解を一掃して明確なる線を出すのかどうか、この点につきまして、
関係両大臣の明確なる
答弁を期待するわけであります。