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1957-03-15 第26回国会 衆議院 国土総合開発特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十五日(金曜日)     午後二時二十四分開議  出席委員    委員長 五十嵐吉藏君    理事 川村善八郎君 理事 鈴木周次郎君    理事 竹谷源太郎君 理事 渡辺 惣蔵君       愛知 揆一君    伊藤 郷一君       田中 正巳君    林  唯義君       井谷 正吉君    北山 愛郎君       小平  忠君    中島  巖君  出席国務大臣         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         北海道開発政務         次官      中山 榮一君         総理府事務官         (経済企画庁調         整部長)    小出 榮一君         総理府事務官         (経済企画庁開         発部長)    植田 俊雄君         大蔵事務官         (主計局次長) 宮川新一郎君     ————————————— 三月十五日  委員永井勝次郎君辞任につき、その補欠として  小平忠君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月六日  中信地区総合開発促進に関する請願(下平正一  君紹介)(第一九三一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国土総合開発に関する件     —————————————
  2. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員長 これより会議を開きます。  議事に入るに先だちまして、この際御報告申し上げます。先日の理事会におきまして協議の結果、今後の委員会開会の日時を、一応、火、水、金曜日といたし、それぞれ午後一時より開会いたすことにいたしました。さよう御了承を願います。  これより国土総合開発に関する件を議題とし、前会に引き続き質疑を続行いたします。林唯義君。
  3. 林唯義

    ○林(唯)委員 経企長官にお尋ねをいたしたいのでありますが、これは私の実験談一つ先にお聞きを願いたい。私はこの冬に、雪の中の北海道の村々を歩いておると、私の生まれました当麻村という村に参ったところが、積雪道路開発の中から機械を購入する補助を受けて、村でもって機械を購入した。その機械を購入して、国道は今まででもブルドーザーでやったりしておりますが、市町村道を開いた。開いてみたところが、その結果、ただいままで駅出しにしておった材木を、ことごとく山元からじかにトラックで送る。そうして、今まで冬季間トラックが非常にひまであるのに、本年はさような積雪道路の打開をいたしたために、トラック業の一台についての運賃が、鉄道運賃に比較して、同じ容量のものが二千円安い、こういう実例が、私の生まれました当麻村にあるのであります。これは北海道における各村々における共通現象だと思うのです。従って、これをさらに推進して参りますならば、北海道の今日の物価高原因の大きな要因を占めておるのは、冬季間の交通が打開されておらぬことである。従って、これを打開すれば、先ほど申した例のごとく、たちまちさような結果が出て参る。従って、私は北海道開発の上においては、またこれは東北も同じ関係に置かれると思うのでありますが、この経済安定のために、住みやすい北海道を作るために、冬季積雪道路というものを開通いたすということが、喫緊なことだと私は考えたのであります。現在国の行なっておりますることは、主として国道の間において行われておるのであって、まだ市町村道等に対しては、それらの措置が行われておりません。従って、今後北海道経済問題を考える場合には、この国の措置をひとしく道道並びに市町村道の上にも適用いたすようにいたすということが、私はきわめて必要であろうと思う。と同時に、北海道物価高の主要な原因は、燃料その他もありましょうが、ただいま申し上げる交通事情が大きな要因をなし、かつ冬季間の積雪一つの難関になっておると同様に、今日の青函連絡というものが非常なコスト高要因に相なっておる。従って、目下懸案になっておりまする青函トンネル開通をいたすならば、この積雪道路開通と相待って、北海道物価を安定せしめる上に非常に大きな好影響を及ぼすということを私は考える。一つ、かような私の実際に即した見解に対する大臣の御意見、また同感でありまするならば、今後いかよう政府は取り扱われるか、これを一つお伺いしたいと思うのであります。
  4. 宇田耕一

    宇田国務大臣 積雪道路についての実際の現場に当られた御意見というものは、これは理屈はないと思います。その点につきましては、私はできましたら、それの実際の計数を私の役所にもいただいて、そうして自分たちの新しい年度計画を立てるときの、これは重要な資料の一つだと思いますから、ぜひ一つ拝見いたしたいと思います。また、そういうことによって、物価が今のお話によりますと、トラック一台について二千円も違うということになると、これは非常に大きな影響のあることだと思います。特に東北北海道のように国有林の非常に多い、石数の非常に多い、そして労働吸収力の強いところでは、これが非常に影響の大きいことと思われますから、ぜひ基礎の数字を拝見さしていただきたいと思います。  それから青函トンネルにつきましては、主管大臣その他と話はいたしておりますが、荒見当六百億という予算規模において、これは実現し得るということを聞いております。ただその数字内容の詳細について、私はまだ検討する機会がありませんけれども——お説の通り四つの島の中で、関門トンネル連絡がつきましたから、あとは、何といっても北海道本土との連絡ということになるはずでございます。四国との関係も今検討中でありますけれども、ただいまの日本の国情から申しますると、東北北海道をつなぐということを緊急に日程に上せなくてはならぬ、こういうのが一般世論じゃないかと思っております。それについては、当然東北地方複線化ということ、これがないと、トンネルの効率が上らない。ですから、おそらくそこにいくんじゃないかと思います。運輸大臣意見を求めてみましても、やはり現在は貨車繰りが非常に悪い。そして構内の配線その他操車設備に金を入れなければならぬということを申されております。北海道本土とが直通して複線が完成しますると、そういう面についての能率が上るし、北海道ないし東北地方の物資の特殊性から見ましても、国の経済の上には非常な好影響がある、こう思われます。ただ六百億の金をどういうふうに求めて、これをうまく軌道に乗せるかということにつきましては、この間松田先生から御注意がありましたから、軽率に取り扱わないように、関係閣僚にはそのことをお伝えして、積極的にこの問題に取り組もうじゃないかということになっております。
  5. 林唯義

    ○林(唯)委員 大へん御理解のある御答弁なので、満足いたします。  そこでもう一つ、これは農林関係のことにもなりますので、いかがかと思うのでありますが、あなたの御所管としても大事なことでございますから、戦後の緊急開拓のために——緊急開拓と申せば、御存じのように戦後の人口を無理やりあそこで食わせるという建前のために、弱小規模のもとで開拓営農が行われてきた。そしてそれは今日離農その他の現象を起し、かつ昨年度においては、冷害によって非常な被害になっておる。そこで今日北海道一般世論としましては、すでにかような小団地のいわゆる零細な開拓営農というものは、もう行き詰まっておる。営農自体が成り立たぬ。従って、これはおやめ願いたい。大規模営農でもって入植するというのなら別だが、さようなものはおやめを願いたい。それよりは、今までに入植しておる者に対して、非常に大きな国家庇護を加えて、この営農を持続させるようにされるということが大事だと思う。こういうことが北海道世論になっており、また私ども現地を見て、それを痛感いたす次第であります。従って、政府としては、ただいままでの余った人口を、北海道は地域が広いから、どこにでも入れられるという考え方——必ずしもそういう考え方じゃないが、特に戦後の緊急開拓においては、さようなことがしばしば見える。かような考え方をやめて、新たに今までの既存開拓者に対する庇護というものを、重点的にすべきでなかろうかと私ども思うのであります。その点に関する大臣の御答弁を……。
  6. 宇田耕一

    宇田国務大臣 当然そうでなければならぬと思います。すでに入っておる人の今までの苦労とか忍耐とか、困難を打開してきた経験というものが、次の世代べ伸びるための基本のたっとい経験ですから、それをいかに伸ばすかということに関して、これの後退を来たさないような配慮を積極的に講ずる、これはどうしてもそうなくてはならぬと思います。そして大規模でなければいかぬ、あるいは小規模営農対策ではだめであるということ、そういうことは、最近は特に北海道に関しては非常に世論がやかましい。しかし論議がやかましくなることは、私は非常にいいことだと思われます。この委員会でしかられるのがいい。そういうことが続けば、それは結局天下の世論になって、やがて国の政策の転向を求める原因になると思います。十分政府政策のけしからぬという点を叱責していただいた方がいい、こう思うのであります。ただいまの御意見既入植者に対する配慮というものは、どうしても今後入られる方のためにも、軽々に見のがすことはできないと思います。
  7. 林唯義

    ○林(唯)委員 なお一つお伺いをいたしたいのでありますが、昨年秋でありましたか、新聞紙上に載せられたいわゆる松永構想というものがあったのです。その松永構想は、御存じのようにその要約点は、北海道水田営農をいたすということは無理だ、従って、高度の酪農主体にして北海道開拓をやるべきだという御議論であります。北海道のある部面に関しては、まことに適切な意見だと思うのであります。しかし、北海道の農業を大臣みずから足を踏み入れられてごらんになればわかるように、およそこれを二つに大別できる。いわゆる酪農地帯上川空知水田営農地帯、たとえば反収八俵平均に相なっているところの水田営農地帯、こういうものとに大別できると私は思う。松永構想が一たん北海道新聞に出ましてから、水田営農をしている多くの人々が、今後政府水田営農の点は軽視をいたして、酪農の点だけ重視するのではないかという印象を与えられて、それに対する大いな不安な言葉を私はしばしば聞くのであります。私は北海道実態から見て、これは適しないし、農家の採算から見ても、水田営農を抹殺することはできぬと思う。また食糧政策の根本からいっても、それはなるほど共通ではありますが、やはり自給政策というものが大根の柱になるのでありますから、松永構想の与える影響——必ずしもそれがその真意を伝えたのではないでありましょうが、水田営農を軽視するという印象を与えたとすれば、北海道開発のために決していいことではない。そこで一つ国家の施策として、この水田営農に対する考えをここではっきりきめられて、この不安を一掃することが私は大事だと思うのであります。さらに特に不安を覚えておりますのは、河野農政時代から、米というものは外国から入るんで、必ずしもそろばんをはずしてやる必要はないという意見であるかのごとく——それは真相をうがっておらぬかもしれぬけれども河野農相万般のやり方から、そういうことが推察されるようなものが、われわれすらも感ぜられる。従って、末端におきましては、そういう危惧を与えられているので、この両者の危惧が、北海道水田営農の上におおいかぶさっている点から見て、一つこの辺のお考えを伺ってみたいと思うのであります。
  8. 宇田耕一

    宇田国務大臣 それは、ほんとう日本全部の悩みでありまして、われわれは新しい五カ年計画をこの四月から今年の九月ころまでに立てたいと思っておりますが、その五カ年計画の中で最も重要な点は、そこにあると思っております。要するに、経済自立体制の中で、食糧自給政策というものを簡単に捨て去ることができないのが日本環境でありまして、特に労働力人口全体から見渡してみました場合に、都市集中を助長するような政策をわれわれはなるべく抑制をいたしまして、農村人口都会における人口増加傾向に拍車を加えるというふうな農政は避けなければならぬ。そういたしませんと、日本人口配分というものは非常なアンバランスになって、とてもこれをまかない切れるような経済構造にならない、こういう結果がくると思っております。従って御説のように、水田営農等については、特に北海道はもちろんでありますけれども、全国的に、軽々にこれを採算ベースだけで、あるいは外国食糧が安いから輸入するというような考えで、これを左右することのできない深刻な内容が含まれていると私たち考えております。従って、新しい五カ年計画を組みます場合には、この点につきましては慎重に考慮いたさなくちやならない。また北海道の気候あるいは環境から見ますと、農村冷害による被害影響というものは、われわれが南の方で暴風雨を受けると同じような傾向にありますから、その点については、平面的な農政でなくて、どうしても立体的な農政を必要とすると思われます。松永構想というものも私はあっていいと思います。要するに、北海道に対する関心の高い、それで北海道に対して合理的な研究をする者が一人でもふえてくれるようにというときに、それに対して皆さんが、おれたち体験はこうだぞ、ということが言えるチャンスがたくさん持てるということは、われわれが国全部の経済構造考える場合に、非常に新しい分野を与えてくれますから、現実地方論議とがうまく組み合うことのできる機会をわれわれはたくさん持つように考えて、来たるべき計画を立てる場合には、それにはずれないように配慮いたしたいと思います。
  9. 林唯義

    ○林(唯)委員 もとより松永構想その他の北海道に対する関心を持たれることは、しごくけっこうなことでありますが、ただ関心が、局部にわたって大局にわたらざる場合には、多くの弊害を生むことが多いのであります。一つの例といたしまして、最近北海道冷害対策として、つまり一年間を通算した温度が二千四百度、もしくは二千五百度の地帯冷害対策ということがしきりにいわれております。また農林省においても、それからの構想をいろいろ進められておるのでありますが、先ほど申した北海道条件を大別しますと、いわゆる北見、十勝その他の寒冷地帯、また上川空知などの積温二千六百度にわたる地帯、これは酪農地帯一般地帯とに分けられるのでありますが、最近冷寒対策がしきりに叫ばれるに及んで、しばしば前者の酪農地帯のみが対象としていわれておる。しかしながら昨年の冷害は、積温二千五百度地帯においては、ハッカその他いろいろ耐冷作物ができておるが、二千六百度に近いところの今の水田地帯には、ひ弱い作物をかかえておるために、非常に温度に弱い。それで昨年の冷害では、この地帯が一番大きな被害を受けておる実情なんです。しかるに単なる表面の温度だけが計算されて、そこに作付されておる作物実態に触れずしていろいろな対策が生まれておる。そのために、先ほど申したように局部だけの構想が生まれて、大局全般を支配する構想が出ないということがしばしばあるのであります。そこで私が指摘いたしたいのは、もとより積温二千四百度の対策も必要であるが、北海道全般開発のために、かつ恒久的冷害対策のためには、さらに他の大きな積温の高い水田地帯の一面と、この両方をやるのでなければ、北海道開発の完璧は期せられないと思うのですけれども一つこの点に対する大臣の所見を伺いたいと思います。
  10. 宇田耕一

    宇田国務大臣 その点は、技術的に仰せられるように、われわれが机上で案を立てて、とやかく申し上げることのできない現実の問題と思います。それで、こういうふうな冷害対策等は、一部分の役所局部的に取り扱うことはとてもできない。むしろ北海道開発庁あたり責任最高グループが、現地において皆さんと一緒に合理的な解決をはかっていかなければならぬ。それをもとにして、われわれは長期経済計画を立てなければならぬ、こういうふうに思われます。従って、北海道開発庁の設置されました意義は、そういうところに生命を見出していくものでないか。東北についても私はそういうふうに思っております。それで、北海道よりも東北の方が暖かいはずでありますけれども冷害による被害は非常に大きい。ましてや北海道はもっとひどいことになるはずであります。東北地方も、やはりそういうふうに何県かがグループを組みたいというのは、同じ傾向であって、ほんとう現地体験の強い人が最高責任者になって、長期にわたってこの対策を講じていくことが好ましいのではないかというふうに思われます。
  11. 林唯義

    ○林(唯)委員 私はこの次の質問を終って、主計局関係の方の来られるまで質問を留保して、次の方に移りたいと思います。  そこで今大臣お話を伺って、私はまことに適切だと思うのですが、しからば冷害対策を行政的に扱うということになれば、大臣承知通り、これは農林省主体になって扱っておるのです。そこで東北も寒い地帯だし、稲を作る、北海道も稲を作るのだから、かまわないじゃないかという御議論もあるかもしれないけれども東北北海道の稲は品種が違う。育成の条件が違う。管理の条件が違う。そういうふうにして、北海道には北海道一つ特殊性というものが産業全般の上にあるわけです。その大きな冷害対策、特に長きにわたって大きな問題である今後の北海道恒久冷害対策をやるのには、私は農林省主管というよりは、大臣の言われるように、むしろ北海道開発庁のようなものが主体になってやるということの方が、実態に即応すると思う。ただいまの北海道開発庁は、いわば中二階のようなものです。従って、あなたの御議論によれば、私どもの所論の、どうしても北海道開発庁実施官庁にして、北海道開発主管たらしめようという気持は、私は大臣のお気持に近いと思う。一つ私の意見に御同感を賜わりたいと思います。
  12. 宇田耕一

    宇田国務大臣 個人の意見を述べて、関係所管官庁影響を及ぼすようなことは、どうもあまり適切でないでしょうが、経済企画庁経済計画を立てる場合には、やはり長期にわたって現地体験を生かしながら、国の予算運営等を適切に講じるのがよろしいというふうに考えます。現地の態様がわからずして、私たちみたような土佐の暑いところで、年に二回も米がとれるようなところの者が見て、北海道のことを批判したって、とてもとんちんかんになるということは十分心得ておりますから、その点ではお説の通りでありますが、ただいま具体的に行政機構の改革の問題に触れてくると、これはまた所管がこんがらかりますから、いずれ別の機会にお教え願います。
  13. 五十嵐吉藏

  14. 竹谷源太郎

    竹谷委員 宇田経済企画庁長官に、国土開発に対する大臣の基本的な考え方を承わりたい。  そういう意味で、その前に、総論的に一つ伺っておきたいのは、わが国は戦争には敗れ、産業施設は破壊せられ、領土は半分にもなってしまい、ただ人口だけが激増した。こういう国の事情でありながら、現在神武以来の好景気だといわれておるのでありますが、このように日本経済が復興をし、好景気とまでいわれるようになったのは、どういうところにその条件があり、またその原因があったとお考えになるか、それをまずお伺いいたしたいと思います。
  15. 宇田耕一

    宇田国務大臣 今回のこの二年間の非常な経済の拡大の原因は、国際関係において非常に貿易が活発に行われたということが一つと、それからもう一つは、何といっても食糧の増産、特に豊作が続いた、その内外の大きな事情によって、そういうことが起ったと考えられます。
  16. 竹谷源太郎

    竹谷委員 大臣はそれだけの原因からこのような景気が起った、そう考えられるのではなくて、その他諸般の条件もあろうけれど、特に最近二カ年に関しましては、貿易と農産物の豊作、こういうことであるとおっしやる。確かに貿易発展し、また豊作も続いたわけでありますが、しかし貿易に関する統計調べてみると、昭和九年から十一年に至る三カ年の標準とせられる戦前貿易の数量に比べまして、あなたの方の経済企画庁のお調べによりますと、輸出は最近非常に伸びた三十一年末の十二月で八七・七、これは三十一年度全体としてはもう少し率が下るのではないかと思いますが、戦前一〇〇に対して、一〇〇に達しておらない、九〇以下である。こういうふうな輸出現状から見ると、別に戦前に比べてそう発展したとは言えないわけです。戦後非常に衰えた時代に比べれば、むろん膨張しておりますけれども戦前、ことに昭和九年から十一年の統計に対しましても、まだ九〇%に達しておらない。だから、貿易は伸展して参りましたけれども、これはどうも戦前ほどになっていないのに、一方、やはりあなたの方でお調べになった「経済計画の大綱」というここに印刷物がございますが、これの一番しまいを見ると、これは昭和三十一年度の見通しになりますけれども、三十一年の四月からことしの三月までの一年度全体としては、戦前一〇〇に対して二三五・五というような数字になるであろうという見通しを、経済企画庁は持っておるようであります。このように、戦前に比べて二倍半近くも各種産業活動発展をいたしておる。製造業のごときは、それ以上である。こういうふうにたくさん物が国内において生産せられておるのであるが、輸出はまだ戦前の八、九〇%にしか達しておらぬ。こうなりますと、ずいぶんと物があり余って、売れなくて、景気は無く、困るのではないか、こう思われますが、なお景気がよくて、どんどん物を作っても売れていく、こういう事情でありまするところから見ると、国内における消費が相当大きくなっていることは事実であると思う。国内消費増大は、むろん人口が非常にふえてきておる。この人口が、昭和九年から十一年の平均に比べますると、三〇%くらい増大をしている、すなわち六千五百万くらいであったものが、現在九千万くらいにふえておるのでありますから、人口増加による消費増。それで輸出戦前の九〇以下であるが、生産せられるものは二倍半にも達しながら、なおかつ過剰にはならない、こういう現状にあるのだと思う。だから、輸出増大ということは、今、日本好景気というものの現実原因としては、まだ大した部面を占めておらない。むしろ、人口が多くなって、この消費増大したこと、なおまた、一般国民生活の必要に基く商品はもちろんのこと、進んで文化的方面にも、かなり国民生活発展をしているのではないか、こう思われるのであります。都会消費水準は、まだ戦前に比べて一〇四・四というのでありまするから、戦前より少しよくなっている程度にすぎないけれども農村は一二七・九というふうに、戦前に比べて三割も消費水準が高くなっている。都市農村を通じて、全体としては一一四ぐらいに消費水準が高まっているようでございます。  これにつきましては、むろん農村豊作ということは、最近での非常に大きな農村景気のよい原因にはなっておりましょうけれども、しかし、その根底を私は考えてみなければならないと思う。戦前生産物の半分近くも地主に小作米として納入をしなければならない、それが農地解放によって、自分の耕す農地自己所有自作地となって、そうして全収益を自分所得にすることができる。むろん、そのために公租公課はあろうけれども、何といっても、耕作農民のふところに入る所得は倍加したといわなければならないと思う。こういうことが、農村消費水準の高騰した最大の原因であり、これに基いて、肥料もよいものをたくさんやり、農機具もいいものを入れて、畜産も導入をする。それからいろいろと農事について研究を進めて、一そういい生産技術を修得をする。こういうような諸条件が備わりまして、反当収量も非常にふえて参った。その上に、むろん米麦等は一定の価格を保証せられておりますから、豊作といえども、下落をしないで収入をあげることができる。こういうようなことになっておりまするけれども、私は何といっても、農民が農地解放によって非常に生産意欲が増大し、所得がふえたので、それらの所得を再生産に回すことによって、農村食糧の非常な増産と、そうして農村の改善を見てきたのだ。こういうことは、同時に労働者の権利が保障せられまして、労働組合も認められ、労働者の賃金待遇もだんだん向上してくる。こういうことのために、国民の大部分を占める農民と労働者の生活程度が高くなる。健康もよくなるし、生産力も旺盛になる。こういう働く人々の生活程度の向上というものが、新たな優秀なる生産力を作り、また生産となって現われる。私はそういうところに、今日の日本の、とにかく神武以来の景気といわれる産業活動の発展を見るに至った基本的原因があるのではないか、こうつくづく思わざるを得ません。  私、宮城県選出でありまするが、宮城県は大体二百万石から、多いときで二百二十数万石の米の生産であったものが、ことしは三百万石をこえております。五〇%もこえた。これは、天候に恵まれた豊作による部分も相当多いのではあるが、大部分のたんぼが小作地であった。それが大部分自作地となり、農民の所得がふえ、それによって、肥料や生産施設や栽培法が改善をせられまして、増産を見た。これがますます農村の産業活動を発展をさしていく、こういうことを如実に私はこの目で見ておるのでございます。  今、賃金のベース・アップあるいは農産物の価格の支持等によりまして——かりに賃金値上げで、月に二千円労働者の賃金がアップする、また農村においてわれわれ社会党が主張するがごとく、一万円の米が一万一千五百円なり一万二千円になる、こういうことになりますれば、かりに働く農民、労働者の数を四千万人と押え、月にこの人々の収入を二千円ずつ上げれば、年に二万四千円所得がふえるわけです。そうすると、一兆円くらいの金が、これらの働く人たちの収入増加を来たし、これがいろいろな購買力となって現われる。そうしますと、外国への輸出戦前よりも少いけれども、資本家の作った品物もどんどん売られていく。たくさん売れるから、工場等においてマス・プロダクションをやる。そうしますれば、安いコストでいい品物が出ていきまするし、労働者の賃金を高く払ってもいい、その他の面で非常なコストの低下を来たして、安い商品ができる。こういうことになっていくんじゃないか、こういうふうに考えますときに、この国土開発——国土開発ばかりではありません。日本経済を拡大して、経済発展、繁栄をはかるという点から申しますると、これら労働者の賃金は高くする、農産物は可能な限り高く売れるようにするという政策がとられれば、積極的に日本経済発展せしめ、国民の福祉が増進をされる、こういうことになるんじゃないか、そういうことが今の日本好景気というものの原因——認識している、していないは別として、なっておるのじゃないか、こういうように最近私は痛切に感じるのでありまするが、日本経済企画という非常に重要な仕事を担当をせられる宇田大臣といたしまして、こういう点についてどのようにお考えになるか、御意見を拝聴したい、こう思うのであります。
  17. 宇田耕一

    宇田国務大臣 まず景気の出てくる原因が、国際貿易国内需要との二面にあるというのは、お説の通りと思われます。貿易戦前よりも伸びていないんじゃないかとおっしゃいますけれども、それは逆だと思います。戦後において非常に伸びておると思っております。昭和九年から十一年までの統計を見てみますると、日本輸出はアジアでは六億ドル、それが昭和三十年をとりますと八億四千万ドル、こまかい数字はやめまして八億ドル、六億ドルが八億ドルになっております。それからヨーロッパ向けでも、七千万ドルが一億ドルにふえております。北米が一億六千万ドルであったものが、五億三千万ドルになっておる。南米が千九百万ドルであったものが一億四千万ドル、アフリカ向けは五千万ドルであったものが、一億ドルになっておる。大洋州におきましては一億八千万ドルであったものが、七億六千万ドルになった。比率から見ると、驚異すべき飛躍と思われます。昭和九年ごろの日本貿易輸出の合計は、約九億ドルであったものが、ただいま約二十億ドルを突破する。こういうわけでありまして、非常な飛躍の貿易内容になっておる。ただ量が少くなったと申しまするのは、たとえば紡績その他のようなものは、ほとんど化学繊維に置きかえられまして、輸入のトン数は、ただいまはっきりした数字はありませんけれども日本に入ってくるところの貿易輸入量は、年間まず四千万トン前後じゃないかと思います。ところが、出ていきますところのトン数は、原料を輸入して高度加工をはかる関係で、ただいまのところ月に六十万トン、年に七百万トンぐらいじゃないかというふうに私は思っております。月六十万トンばかりのものが日本から出ていくが、なるべくかさばらないように、すなわち科学的、技術的な加工を施します場合には、国の科学が進むに従って、輸出のトン数はどんどん低くなる傾向にあることは、御承知の通りであります。輸出の数量が少くなったということは、むしろ国の経済内容が非常に冊代的になったものであって、しかも、その金額というものは非常に莫大なものに——九億ドルが二十億ドルを突破するというような輸出をするようになったわけでありますから、その点におきましては、私は日本貿易というものは、非常に強度さを増してきた。少くとも戦後の日本の対外貿易政策というものは誤まっていなかった、こう結論づけられると思います。  しかし国内消費水準は、ただいま仰せられたように、農地の解放、農家収入の増加、それに伴うところの農機具あるいは家畜、再生産条件が非常に強まってきた。従って、農家を中心としての国内における需要傾向というものは、非常に強力になってきた。従って、産業を育成する面は強くなってきた。これはおっしゃる通りと思います。日本の農家が本格的に強くなりませんと、日本の産業は弾力が強くなりません。これはお説の通りであります。その弾力が主として農家によって養われて参って、それがはね返っていって、海外への輸出力の非常に強い原因になるというのは、これは御意見通りと思います。  それから、宮城県で二百万石から約三百万石というような驚異に値するような増産になりましたのは、天候というよりも、農家が農地解放に伴って、みずから増産意欲を沸かしてきて、技術的なレベルが上ったことに基くものが多いだろうと思います。それで、先ほども林さんからお話があったように、東北とか北海道とかいうところは、われわれが適正なる農政を加えました場合には、まだまだ国内における需要力は高まるものである。従って、国の貿易に必要な産業を養う基本の実力は、そこからわいてくるだろう、こういうように思っております。従って、東北とか、あるいは北海道に対する開発というものは、その土地々々の体験の深い人を中心として、平面的でなくて、もっと底の深い政策を立てなければならぬ、それが日本ほんとう輸出力の根本原因になる、こういうふうに考えております。
  18. 竹谷源太郎

    竹谷委員 貿易の問題は、私は数量を指数によってお話をし、あなたは金額でおっしゃったので、この点食い違いがあり、また、それがあなたのおっしゃるように、数量が少くなって、値打が非常に高いものに変ったかどうか、これは一々具体的に調べ統計がありませんので、水かけ論になりますが、何といっても大臣もお認めのように、国内における消費水準の高騰、それに人口増加、こういうことで非常に増大しておることは間違いないし、ことに農民の所得がふえることによって、農業が飛躍的増産を見たということも御承認になっている。なおこの点については、労働者においても私は同様であると考える。戦前のように資本家が低賃金と、下手な技術と設備で、すべての犠牲を労働者に払わして、外国からは労働者搾取のダンピングをやるんだという非難を受けながら、日本の資本の蓄積をやり、そうして経済発展を見てきたのでありますが、今後の日本の資本家の考え方は、労働者にできるだけの精神的、物質的のいい条件を備えるように努力をし、その旺盛なる優秀なる生産力によって、日本の産業活動をますます旺盛にすべきであると思うけれども、その点について経済企画庁長官は、日本経済企画をせられるに当って、どういう根本理念で経済の企画に当られるか、これをお尋ねしたいのであります。
  19. 宇田耕一

    宇田国務大臣 日本の労働条件の中で、非常に顕著な点は、年々生産年令人口が百三十万ばかりできております。しかも、その中で学校卒業者大学、高等学校、中学校を出た者で、就職を希望する者が、九十何万ないし百万、今年度は約九十五万、こういうふうに思っておりますが、そういうふうな新しい労働力、われわれが吸収し、整理しなければならないものが出て参っております。従って、そういうものを適切に、どういうふうに日本経済拡大に役立つようにこれを配慮し、工夫していくかということが、今後の経済計画の重要な点の一つと、こう思っております。それにつきましては、何といいましても、日本貿易というものは質が非常に変りつつあります。繊維にいたしましても、綿花を買ってきて、それを出すというよりも、やはり化学繊維を中心といたしまして、綿製品をまぜ織をして、そうして日本の頭脳、日本の技術によって割り出されてくるところの繊維と、外国から輸入する綿花を組み合せて、ただいま世界的に日本は売り出しをして、そうして経済条件貿易条件がよくなりつつある。ところが、それを扱うために、学校の教育制度を見てみますと、理化学方面の教育設備が非常におくれておりまして、従って、卒業者は年に九十万ないし百万ありますけれども、それが失業の中へ行かなければならない。  ところが、一方科学技術方面の工場を見ておりますと、労働時間が、ひどいのになると六十時間も働かなければならぬものがあります。ということは、要するに技術者、熟練工が足らない、経済拡大に応じるところの労働者の技術が足りない。従って、それは教育制度が悪い、教育制度がその経済拡大に合うような教育制度になっておりませんから、需要がありながら、しかも学校卒業生がありながら、両方がうまく平仄が合わない、こういうことになっておりますから、これは根本的に教育制度を直さなければならない。それを直すねらいは、やはり科学技術を教える。そうして日本の需要とそれから貿易実情に合うように工夫いたさなければならぬ、それが一点であります。  もう一つは、中小企業者であります。日本の中小企業者というものは、全産業の約九八・九%を背負っております。そうして日本経済構造は、何と申しましても、自分が営業主でありながら、そうして自分が働きながら、何人かの労働者をかかえている。営業主というものが、労働しながら経営しておるという、これが、非常なたくさんの分量のものが中小企業の経済の中におります。これをどうしても先進国のように、営業主は少いが、完全な雇用で、賃金のもとで、安心して自分が食っていけるという労働態勢にいたさなければならない。アメリカとかイギリスとか、フランスとかドイツは、そうなっておりますが、日本はまだそこに追いつきません。要するに、非常な東南アジアのように農家だけのような雇用状態の後進国ではありませんが、また欧米のような先進国でもない、中間の中進国という特殊な現象であります。それですから、私たちは中小企業者に対して、どういうふうに国の経済の中でこれを安定さす方法をとるか、これがまた非常に重要な問題であります。従って、それには金融その他の税金の減免措置を講ずるということもありますが、何といいましても、やはり貿易ないし国民の需要する方向は、科学的なもの、技術的なもの、こういうことになりますから、中小企業者につきましても、組合を作ってそれ自身を強化すると一緒に、新しい技術をこれに与えていく、少くとも技術情報を的確に早く渡す、そういうために、技術研究組合といいますか、技術組合を作って、技術的に非常に大企業に押されないようにしなければならない、こういうことが必要と思っております。  その次にもう一点は、オートメーションその他によって、非常に生産能率は上っておりますが、生産能率が上ることによって、大企業からたくさんの原料、物量が出て参ります。それを中小企業が受けて、そして中小企業の仕事の面が非常に大きくなって、広くなって参っておりますから、その点について、最近は系列化ということをしきりに申しますけれども、その系列化をする場合に、搾取される系列化にならないように、自立態勢を持ちながら、自分自身に必要な原材料をこなす技術というもので、中小企業がうまくしわ寄せをはずしながら、自立していけるように考えなければならない。  そういうふうな新しい経済計画を立てます場合に、いろいろ考えなければならぬことはありますけれども、まず労働情勢その他から勘案いたまして、ただいま申し上げましたような三つの点が、私たちは重要なものの中の特に重要な部分ではないか、こういうふうに思っております。  それから労働者の待遇の問題につきましては、一番問題は、やはり最低賃金制度を確立する方法はどういうことか、というところにいかざるを得ないことになるのではないかと思っております。最低賃金制度の確立ということは、大企業におきましては私は案は立ちやすいと思いますけれども、問題は、やはり零細中小企業者の雇用条件をどういうふうに持っていくかということだと思います。その点につきましては、それを中央から一律の、一本の命令を出します場合には、日本の産業構造から見ますと、ただいま申し上げましたように、営業主であって労働者である、というような条件の企業が非常に多い、そういうものが何人かを使って、しかもそれが半農でやる、片手間でやっているという形の労働条件のものがかなり多く入ってきておるところから見ますと、うっかり最低賃金制度を押しつけるということもできないのではないか。それよりか、やはりわれわれは地方別、業種別にその実情に応じて、みずからの手でそういう条件を工夫さすように、行政指導をしていかなければならない、そして混乱を防ぎながら、逐次最低賃金制度の確立に向うということにならざるを得ない、こういうふうに思っております。
  20. 竹谷源太郎

    竹谷委員 好むと好まざるとにかかわらず、国民はあげて、もっと高度の教育を受けよう、父兄もそのつもりで、子供の教育には非常に熱心になっております。従って最近では、就職したいという者は、高等学校の生徒が非常に多くなってきておる。昔高等学校といえば、高等の教育を受けたような感じを持って、労働者あるいは店員になるというようなことをあまり好まなかったのでございますが、最近では、高等学校卒業者といえども、純然たる筋肉労働者として、あるいは使い走りの店員としても、喜んで働くような気風になって参りました。そのうちに、大学卒業者も、現在の中学校や高等学校を出た者と同じように、青年諸君が筋肉労働で人生を切り開こうという決意を持って、世の中に、就職戦線に飛び出てくるであろうと思うのです。私は五、六年前から、工場の労働者あるいは員店に、東北地方から高等学校卒業の青年諸君をお世話をしてきましたが、初めはなかなか落ちつきませんでした。高等学校を出た者が、純然たる筋肉労働者で、菜っぱ服で朝から晩おそくまで働く、将来いつまでも職工だろうかということで、なかなか落ちつきませんでしたが、最近は時勢のしからしむるところもありましょうし、だんだん認識も高まってきたのでございましょう、高等学校卒業くらいの諸君は、喜んで一労働者として、一生懸命働くいい気風が樹立されてきたと思う。よく青年は堕落しているというようなことを言いますが、私は逆だと思っております。とにかく何はともあれ、百万人前後も就職戦線におどり出てくる若い労働力の人々は、今後ますます高度の教育を受けた人になるだろうと思う。これを遇するに十分の道をもってしなければならないことは当然であり、こういう人たちは、短期間に優秀な技術を習得するであろうし、どんどんその技術もよくなってくる。そうすれば、日本の生産品はますますよくなるということになるのでありますから、この労働者の待遇という問題は、これは日本経済発展のためには、最大の関心を持って努力を払って、政府も資本家も考えなければならぬ点であると思うのでありますが、ことに今この委員会において問題にしております北海道、あるいは東北開発というようなことにつきましても、この地方は自然に増加する人口のほんの一部分しか地元にとどまらない、そして東京なり大阪なり、それぞれの非常に進んだ地帯へ出ていくという現状でございます。そうして一方、どんどん若い諸君は学校へ入ります。こういうのでございますから、経済施策を考えます場合に、この点をぜひ頭に置いて経済企画をしていただきたい、こう思うのであります。  そこで、これらの労働者の所得増加しますためには、従事している産業の発展をはからなければならぬ。日本は非常に中小企業が多いのであって、この施策はなかなかむずかしい問題であり、今後も長くこの問題の解決のためには、政治家は頭を砕かなければならないと思うのでありますが、そういう点を考えるにつけましても、やはり国土の開発は緊急の問題である、こういうふうに思うのであります。ことに第一次産業あるいは第二次産業にたくさんの人を吸収するようにしなければならない。ところが、東北の現在の鉱工業の貧弱な状態は御案内の通りである。人口は全国の一三、四%を占めており、面積は二〇%以上でありながら、工業生産は五%くらいであろうと思う。そしてその地方民の所得は、全国平均の六、七割にすぎないであろう、こういう状況でございますが、幸いに山岳地帯や高原、あるいは原野地帯、たくさん土地がそのままに、またその資源は放置されたままになっておるので、急速にこれを開発しなければならぬ。そうしますと、第一次産業にたくさん人を使うことができますし、また機械工業や、その他製造工業方面の発展もそれから引き出されてくる、こう思うのでありますが、今、経済企画庁考えられている東北開発のやり方は、ただいまここに出てきております法案は、北海道開発公庫法を改めて、北海道東北開発公庫法とする、そうして北海道東北開発公庫を作って、そこから資金の融通をして、主として工業の発展をはかろうという案があるようであります。まだ出てきませんが、聞くところによると、東北興業株式会社を改組拡充して、東北開発会社にするという案がおもであって、東北開発促進法というような一般的の法律も用意されているような話でありますけれども、先般企画庁長官の御答弁では、東北開発促進法は提出しないということでありますので、結局この開発公庫、そうして東北開発会社、この二本建で東北開発をはかろうという構想のようでございます。これはいずれも主として工業を東北に誘致しよう、工場を新設しよう、こういう案のようである。これはむろん東北各県とも工場誘致のためには県民が多大の犠牲を払い、また県当局や県議会が一生懸命になって、そのために企画室というような機関を置き、あるいはいろいろな委員会を作り、あるいは補助金を出し、税金を負けてやる、土地をただ提供するというようなことまでして、工場の誘致をやっているのでありますが、今までのところはあまり実績が上っておりません。今回のこのような東北開発構想では、私は多大の疑問なきを得ない。東北地方に工場進出をやろうというような資本家には、多少の利便を与えるということにはなりましょうけれども、就職戦線に出てくる若い青年諸君を大幅に収容する、あるいは雇細な農地で、水飲み百姓の生活に甘んじなければならぬ農民諸君のために、あるいはことに農家の次三男の対策にもならない、こういうようなことでは、東北全般の国土開発、そうして地域住民の福祉増進ということとは、およそほど遠いものになってしまうんじゃないか、こういうことを心配されるのである。  この点、経済企画庁として、東北開発につきましては毎年一千万円ずつかけて、二、三年この方研究をしてきた「東北地方総合開発調査中間報告」とか、あるいは「東北開発の推移と現況」等、印刷物はちょうだいしておりますけれども、どうも基本的条件をそろえ、そうして奨励して誘致した工場が、その後も繁栄を続けて、特別な補助なく、あるいは特殊な待遇を受けなくとも自立できるような、そういう条件を整備する方面は完全に忘れられておる。それで東北興業株式会社という、現在赤字に悩んで——昭和の初めごろ、発足当初は百幾十かの、東北地方にとっては非常に有益な事業を始めたのですが、戦争がおっ始まったために、この東北興業株式会社というものが、東北開発のためにならぬ——とまで極言できませんが、あまり役立たない戦争目的の方向にこれを全部使われてしまったので、戦時中あるいは戦後にほとんど大方つぶれて、今残っている事業というものは、まことにりょうりょうたるものであり、成功しているものはごくわずかで、幾つかしかない。大部分はつぶれるか、なくなるか、雲散霧消しているという形なんでありますが、これはいきなり砂上に楼閣を作るような東北開発の施策をやった結果であると思う。今度あらためて東北開発国家的問題としてここに取り上げる以上は、一ぺん工場を作ってみたが、援助の手を引くと、すぐつぶれて、壊滅してしまうというようなことでは、国土と国民の努力をむだにするものと言わなければならぬ。これはもっと基本的に問題を考えていただかなければならぬ、こう思うのですが、こうした問題に対する大臣の御意見を承わりたいと思います。
  21. 宇田耕一

    宇田国務大臣 東北地方開発が、北海道もそうでありますが、非常におくれた、またこれが歪曲された原因は、やはり日本経済発展の過程が、むしろ繊維工業を中心とする軽工業から、だんだんと最近、重工業、化学工業に移っていった過程から見ますると、東北の気候とか環境条件が、たとえば工場にいたしましても、繊維工場でも、横浜とかあるいは神戸の港へ綿花が入ってくる、それよりも遠隔の土地にある。しかも気候が冬は寒いのでありますから、ただいまでしたらエア・コンディション等の対策がありますので、むしろ人的条件のいいところへ工場を持っていくのでありましょうけれども、初期の工場を建設する場合には、なるべく暖かいところ、湿気の少いところを選んで持っていくというような工業条件考え、技術の水準の低いところの工業条件というものは、みな近所に持っていかれるというわけでありまして、東北地方の港湾その他を見てみますると、それにふさわしくないような環境にある。それの犠牲になった。むしろ満州その他へ投じた資金を、東北ないし北海道へ注入をして、そうしてこれの近代化を急ぐべきであったのでありましょうけれども、そういうふうな国土開発計画のない過去の日本の国策というものは、今日の東北ないしは北海道にしわ寄せがきておるものと、こういうように思われます。従いまして、われわれはどうしてもここに計画を持たなければならない、国土総合開発についての計画を持たなければならない、こういうように考えます。  それで計画は、要するに新しい人口の配分計画に基きまして、やはりその土地の資源に合せる産業開発計画を立てなければならない、こう思われます。東北地方は何といいましても、農林水産それぞれ非常に莫大な資源を持っておりますから、そういう面におけるところの対策というものは、これはもう目の前へすぐに、従来の計画に再検討を加えていき得ると思います。ただ地下資源につきましては、非常に調査が未熟な点が多いように思われます。従ってわれわれは、地質調査所その他を通じまして、東北には特殊な資源がありますから、あれをもう少し採算ベースに合うような企業にして、この開発をはかって、人口の吸収も新しい面を持たなければならない。特に顕著に目につきます点では、地下資源の中には、何といっても砂鉄あるいは新しいウラン等がありますが、そういうものにつきましては、もう少し基本的な調査にもっと金を入れて、そうしてそれの確実な基本線のもとに、本格的に開発計画を立てていかなければならぬのじゃないかと思っております。それには、ただいまの東北開発株式会社のような程度のものでは、とうてい一つの事業だけでも追いついていけるものではないように思われます。砂鉄だけ一つ押えてみても、とてもそれくらいの会社の規模では、技術者ないしはそれの基礎の開発でも、もう資金が足りなくなるのではないかと思われる点もあります。それで、東北開発会社の運営を今後どういうふうにはかるかということは、四月以後においては検討いたさなければならぬとは思いますが、とりあえずは農林水産関係の物資を、合理的な、経済的な、経済活動のできるようなベースにこれを取り上げて処理をしていくこと、そうして、あわせて東北独特の、日本の国策上開発しなければならぬ資源につきましては、なお東北開発だけの実力でいけない場合には、別途の対策を講じてでも、これを開発するということをはからなければならない。そうして農村の次男、三男に対する離職対策というものとしては、そういうふうな資源を現地において加工度の高いものに持っていくということにいたさなければならぬ、こういうふうに思われます。それがためには、ただいま金融公庫で計画しておる金融政策では、とても間に合わないでしょうから、おそらく将来はもっと、金融の政策にいたしましても、違った、内容の充実したものをそこに勘案しなければならぬところにいく、だろうと思われます。いずれにいたしましても、行政指導によってこれを開発していくという面の力は非常に弱い点がありますから、やはり何といっても、東北各県の大衆の中から自分たちの希望によって生まれてくるものに、経済採算ベースの合う問題をあわせて配慮していくという開発でなければ、長続きがしないし、また二年前の北海道の失敗を繰り返すのではないか、それをわれわれはおそれるわけでございます。  それで、東北開発に関する促進法につきましては、準備がはなはだ不十分でありましたので、私は見合せた方がよかろう、こう考えておりましたが、党の方とも話し合いをいたしましたところが、準備ができそうな点もありますから、場合によっては皆さんにそれの御審議を、私の方から——政府の方からお願いをするようになるかもしれない、こう思っております。いずれにいたしましても、行政指導の面では、東北につきましては、経済企画庁で新しい五カ年計画を作らなければならないと思っております。そうして審議会等を通じて、なるべく現地の実情に合う開発を行わなければならない。それから東北開発会社の運営につきましては、ただいま申し上げましたように、足の地につかぬ、そうして乱費に陥らないような会社の運営計画を立てたい、こういうふうに思っております。
  22. 竹谷源太郎

    竹谷委員 東北地方における企業が採算的に償うかどうかということが、おっしゃるように問題であると私も思うのでありますが、ところで、あなたの方の企画庁で出された国民経済計算、これを見ると、昭和三十一年度の実績の見込みといたしまして、国民の総生産並びに総支出は九兆一千五百十億円であります。それに対しまして、国内の総資本形成が二兆六千九百億円でありますから、二七%、国民総支出の二七%が資本形成に充てられておる。三十二年度の見通しといたしましては、九兆八千五百億円の総支出でありまして、そのうち国内総資本形成は二兆九千億円、これはまた約二九%に躍進をする。このように国内総資本の形成が行われる。これは民間と政府と分けてありますが、これらの中には、在庫品の増加とか、個人の住宅等がありましょうけれども、産業方面の耐久施設として使われるものは、これにはありませんが、他の統計によりますと約六〇%、この国内総資本形成のうち六〇%くらいが生産者の耐久施設として使われる、こういうことになっており、いわばこれは設備投資でありまして、三十一年度は現に設備の投資が非常に行われており、三十二年度もこれがもっと増大をするというお見通しのようでございます。これは生産の合理的な設備をする、あるいはオートメーション化をする、また機械を取りかえるというようなことで、生産力が増大することは間違いないのでありますが、これが現在のような無統制な自由主義経済にありましては、うっかりすると、二重投資になったり、過剰投資、あるいは投機的な投資が行われるということで、非常に最近不健全なものもあるように思われる。一方においては、三十二年度はむしろ景気は悪くなるんじゃないかという警戒心から、そういうものを押えるような気分も出ておる。この見通しは、人の見方によってデフレ論あり、インフレ論あり、両面ございますが、いずれにいたしましても、このように多額の設備投資が自由放漫に行われるということは、経済の貧弱な日本として、むだが非常に多いのではないか。経済企画庁は、こうした設備投資につきましてある規制を加える、そして二重投資や、むだな投資、危険なる投機的投資というようなものに対しては、ある抑制を加えることによって、むしろ、こういう投機的な気分の強い現在の投資の金というものを、有効な方面にのみ使うように制約して、そしてこの投資を、資本形成を、国土開発の見地に立った、日本の恒久的産業活動のりっぱな基盤を整備するという方向に持っていく方が、健全であり、また日本ほんとうの将来の経済発展の基礎を作るものではないか、こう思われる。今度は北海道開発並びに東北開発のために、多少のお金を政府は予算に見たようでありますが、この三兆円にも及ぶ膨大なる資本形成のごく一部の哀れなものにすぎない。これのかなりの部分を、北海道なり東北開発のために、あるいは水力なり火力なりの設備、あるいは農地の造成、あるいは道路の整備、港湾の修築というような——東北の産業発展の隘路は、もう輸送力の問題、それから電力の不足、この二つに要約されていると言って過言でないほど、大体世論の一致するところである。これは将来長く日本経済発展の基盤を作るものでございます。こういう方面に資本投下を思い切ってやる、こうしなければ、日本の健全なる経済の拡大発展はあり得ないように思うのであります。  しかるに今度の東北開発北海道開発の予算は貧弱であり、ことに従来、東北地方に対して、この東北のあらゆる企業、産業活動の基本となるべき公共事業、こういうものが、面積は日本の二十何%を占めておる、人口も一三、四%もあるにかかわらず、東北地方の公共事業費というものは一一%か二%、人口の比例よりも少いし、まして面積に対すれば非常に哀れな、その半分くらいしか出しておらない。これでは、東北地方で企業をやりましても、ベースに合うような工業というものは、とうていあり得ないことになる。事業というものはあり得ないことになる。これが東北地方が今まで発展のおくれた基本的原因であろうと思う。それで、一つ経済企画庁長官は、設備投資に対してある規制を加え——合理的ないい仕事を押えるべきではありませんが、不要不急の二重投資、あるいは危険なる投機的投資を抑制する。そして三十二年度は、この三兆円にも及ぼうとする資本形成のこの費用を、未来永劫日本経済発展の基盤となる国土開発に思い切ってやるというのでなければ、ベースの合わない、立地条件の整備されてないところへ幾ら企業を持ってきたところで、援助の手を引けば、必ずぶつつぶれてしまう。これは東北興業の百何十に及ぶ企業の実績を見ればよろしい。むろん戦争のためにぶちこわされた工場も多いのでありますが、しかし立地条件のない、工場を運営していくに適当な整備がなされてないところへ持っていったという欠陥が、ここに暴露しておる。そこで多大の国費を、あるいは民間から金を集めて、東北地方に、東北開発は大事だということで、看板だけ大きくして工場を持ってくる、何をやるというような、そういう枝葉末節なことをしておったのでは、これは何らの効果を上げ得ないし、そのような施設は、追って無用の、あるいは採算のとれないものになってしまう。だから、東北地方において、事業をやりましても、京浜地方や阪神地方において事業をやるのと劣らないような立地条件の整備をはかること、これが基本問題ではないか、そういうところに思いをはすべきではないかと思うのでありますが、御所見を承わりたい。
  23. 宇田耕一

    宇田国務大臣 私は基本の方針は御説の通りだと思います。それで政府の資金計画としては、やはり財政投融資計画等の中で、今年は原資は約三千二百億ばかりを計画いたしておるし、その程度の金額のものでありますから、東北地方にそれを分配いたします場合には、たとえば、開発会社に二十五億持っていくとか、あるいは金融公庫へ四十億持っていくとか、配分計画は、どうしても住宅公団、道路公団等の労働力人口の吸収が非常に幅の広い方面に使われることが多くなりまして、従って、東北地方を目的とするという事業にそれがたくさんとられるということが少くなるおそれがあります。従って、自分たちは、東北に関する限りは、特別に組織的に、計画的に、そういうしわ寄せの犠牲にならないように、各省の中における予算について特別な配慮をして、まとめてわれわれが政府に要求をして、そしてこの犠牲を少くするように努力いたして参っております。  ただいまお話がありましたように、二重投資、過当投資、あるいは投機的投資等につきましては、当然財政投融資計画等につきましては、今年は削除すべきものは削除してあります。従って、重点的に東北開発とか北海道開発について増す面もあります。しかし財政規模の面から見ますると、はなはだわれわれの希望に遠いものがある。従って、道路とか港湾等につきましては、総花的にばらばらにやらずに、やはり重点的に年間をきめて、相当まとまった大きな事業計画でやって、一挙に解決をするという方法をとらざるを得ないんじゃないかと思われるのであります。しかし、それに対する資金計画等をどういうふうに考えるかということになりますが、少くとも、ただいまお説にありました道路の開発等につきましては、今までのような態度でもって、いつ仕上るものかわからぬ、仕上る時分には、初めの方の鋪装はこわれつつあるというふうな道路建設計画でなくて、一挙に全部を短期間に仕上げるという対策をとらなきゃならない、そういうことを新五カ年計画のときには織り込んでいくべきである、そういうふうに考えております。申された中で、資本が非常に不必要な、また、かえって国の経済を歪曲するような方面に乱用されるおそれがあるから、そういう点については特に注意をして、そういうことのないように規制を加えるべきである。こういうお話がありましたが、政府の財政投融資計画におきましては、そういうことは今後ともに注意を払っていきたいと思います。それから民間資金の需給についてのわれわれの規制態度というものは、これは政府でもって無理に押しつけるということではなくて、自然に、そういうようにいろいろ民間自身の民主的な組織の中で、自律的に規制ができるような行政指導をいたしたい、こういうように考えております。
  24. 竹谷源太郎

    竹谷委員 まあ自由経済の本家である自民党の政府として、設備投資の規制委員会のようなものを設けて、合理的な投融資をしていくというようなことは、それはまだお考えにならぬかも知れぬが、しかし経済企画という観点からいくと、どうもそこまでいかなければ、ほんとうじゃないのじゃないかというふうに私は思うのです。  今も、なお道路の問題等も大いに精力的にやらなければならぬというお話がありましたが、そこで東北開発が出おくれているという根本的な問題は、寒い、雪が少し多いといったところで、これは決して欧米諸国よりも特に寒くて、不便で悪いわけでもないのであって、立地条件を整備さえすれば、何も関東、関西と比べて、特に企業条件が悪いというようなほどではないと思うのであります。一にかかって交通、輸送の問題からきているんじゃないか、こう思うのです。いつか前々国会で、この国土開発特別委員会で各界の人たちを呼んで、いろいろ意見を聴取しました。そのときにも話があり、またその他の機会にもわれわれは聞いておるのですが、東京市民の毎朝飲む牛乳は、東北の方としては福島からは運んでくるが、宮城県から運ぶと、遠くて牛乳が腐るので、運べない。結局福島県の酪農家までは、市乳としての値段で牛乳販売ができるが、それより遠いところは、原料乳、あるいは地元の市乳に応ずるより道がない、こういうのであります。ところが御承知の、先般衆議院を通過しました国土開発縦貫自動車道、ある東北道というようなものが東京から青森まで貫通いたしますならば、今、東京から福島まで行くその時間で、その高速自動車道に乗りますると、青森まで同じ時間で到達ができる。そうしますと、青森県の酪農家の生産した牛乳が、東京市民の市乳としてそのまま飲用に供せられる。こういうことになるのでありまするから、このような交通のスピード・アップが達成されれば、青森県は福島県にあると同じ企業条件を、また経済的価値を持つことになる。こういうふうな一点から見ましても、まず東北地方開発というものは、交通の完備ということが先決の条件であり、またこのようなことになれば、土地そのものの値段も、今、青森県で坪五百円しかしない土地も、それが福島県にまで移転してしまえば、十倍の五千円なりあるいは五万円にもなるかもしれない。こういうふうな、そのこと自体は、そういう土地価格の騰貴ということは、その土地を使えば、それだけ価値を生むというのでございまするから、それだけ日本全国の経済価値が高まって、非常な国富の増大を来たす。こういう点から見ましても、この交通の問題は、東北にとってまず最前提となる開発条件であります。  なおまた、縦貫自動車道は主として未開発地を通るのでございまするから、東北は関西方面、中部地方などと違いまして、あまり高い山はないし、傾斜度も低い、従って道路は非常に安いコストで建設できまするし、またその地帯は、あるいは畑として、あるいは牧草の草地として、小麦あるいは牛乳の生産に好適の地帯である。今東北六県では、たしか九十六万町歩しか田畑がありません。日本における大農業地帯でありまする東北地方に、九十六万町歩の農地しかない。これはもう百万町歩くらいふやして、二百万町歩にすることは可能であるということを農林省も言っております。東北における農地の面積が今の倍にもなるということになれば、農家の次三男対策は、これは一挙に解決をしまするし、日本食糧自給も完全にできるようになるのではないか。また斧鉞を入れざる大森林がたくさんあり、これは多く国有地でありますが、鉱物資源は日本で一番多い。ことに金属関係の鉱物資源、そういう点から見まして、いろいろとこまごました、つけ焼き匁の、吹けば飛ぶような施設をするよりも、そういう基本的な太い線を一本引いて、そうして開発の前提条件、基礎的整備、施設をすれば、ほかのことは黙っておっても、ひとりでに便利になりますから、資本家は工場を持ってくる。産業活動が盛んになる。こういうことに私はなるのじゃやないかと思う。  これは、北海道北海道開発公庫をやったから、同じようなものを東北でもやる。東北興業株式会社をもう少し大きくして、東北開発をになう仕事をさせようということは、むしろ枝葉末節で、基本的な問題を考えなければならぬのではないか。こういう国土開発の縦貫自動車道を作れば、今コストが高くて、とても割に合わない水力電気の開発現状でありまするが、そういう不便な地帯へ、平坦地と同じような材料、資源も持ってくるし、人も行きますから、非常に安いコストで、安い電力を豊富に供給できる。これが地方住民の生活程度を高めまするし、また工業の非常な発展の基盤になる。こういうような観点から、まあ、むろん当面の問題をやることも必要ではありまするが、もっと根本的な基本的な面を考えて、国土開発をやるべきではないか。そうすれば、農民はますます豊かになり、労働者も待遇がよくなる、どんどん物が売れる、資本家は高い労銀を出しても、非常にマス・プロをして優秀なものをたくさん作りますから、どんどん経済を拡大していくし、そういう安い優秀な商品はどしどし外国輸出ができるということになって、経済的に日本は非常に優秀な国家になれる。そういうもっと本質的な、根本的な問題を一つ経済企画庁考えて、そうして政府を動かして、もっとりっぱな案を提案してもらいたいと思う。当面の問題を糊塗するだけでは、経済企画庁というりっぱな名前が泣くのじゃないかと思うのですが、一つ長官のこれらの問題に対する御意見を承わりたいと思います。
  25. 宇田耕一

    宇田国務大臣 東北開発の基本が、やはりこの輸送ないし道路の開発にあるということは、われわれの政府部内でも、ほとんど意見は一致しておるように思われます。そこで、先ほども申し上げましたように、一部分に小規模のことを実施いたしましても、それは結局、産業に、あるいは東北経済に、非常な画期的な寄与をする効果を現わさないであろう。従って、やるなら短期間にこれを仕上げる方法を考えなければならない。それには、ただいまお話がありましたような、弾丸道路のようなものを早急に取り上げて、それを早急に解決をはかる、そういうことでなければならぬというのが、一致した意見のように思います。ただ、それに必要な資金をどういうようにして作るのか。ちょっと計算だけを見てみましても、相当莫大な——年間どうしても四千億とか五千億の金を、それだけに投じていかなければならない数字が出てくるように思います。従って、そういうふうな非常に画期的な、まとまった資金を投じて、そうして労働力人口を思い切って吸収をしていきながら、仕上げていくということは、それに付随するところのいろいろの困難な、国家の、たとえばインフレを防ぎながら、そういうものを軌道に乗せていくという背景も必要でありますから、そういうことを、どういうふうにするのが一番適当であるか、新しい経済計画の中には、当然それは考慮に入れなければならぬところにくると私たち考えております。従って、そういうことについての作業は、これから今年の八・九月ごろまでには一応見通しをつけて、それに必要なところの資金量をどういうふうに獲得するかという点をも、あわせて研究していきたいと思っております。
  26. 竹谷源太郎

    竹谷委員 大臣は、まだ国土開発縦貫自動車道の計画の全体を御存じないようでありますが、四国の方やそのほかの支線は別として、その他の稚内から鹿児島まで三千キロメートルある。一キロ当り大体二億円の計算で、六千五百億円という設計になっております。従って東京—神戸間は四百五十キロばかりありまして、これが一番金を食うので、一千億くらいかかるでございましょう。しかし東北は六百キロくらいありますけれども、これは二億円かからないで、一億円くらいでできるかもしれぬ、そうすると六百億。だから、これを三、四年でやろうと思えば、一年ただの二百億でいい。国民所得九千億のうち、ほんの一部分を使えばよろしい。これは経済的、財政的にも十分国費でまかなえる。でありますから、これはそんなに大金ではございません。アメリカのアイゼンハワーの計画によれば、自動車道を建設するために、一カ年一兆五千億も使う。そういうような計画をしておるようですが、あの計画は二十年間で日本全部に通す、そうして一年に三、四百億くらい、こういう計画でございまして、金は大したことはない。ただやろうという意思があるかどうか。これをやらないで、いろいろこまかい仕事にたくさん金をつぎ込んでも、これは焼け石に水になると考えられるのですが、これさえやれば、工場誘致のためにいろいろ手段を尽したり何かしなくても、ひとりでに、みなどんどんやるように私は必ずなるだろうと思うのです。これは国土開発縦貫自動車道建設法という法律でありまして、大臣一番関係が深いのでございますから、十分一つ御検討の上、東北開発は、これはやることが、ほかの何もやらぬでも、一番有効適切な施策であるということをお考え下されるだろうと思うのです。ぜひこれは御研究願いたい。  なお一つお尋ねしておきたいのは、イギリスのように非常に工業の発達した国でありながら、狭い国であって、しかも未開発区域が非常に多い。人口の集中するところ、産業活動の旺盛なところにみな集まってしまう。これではいかぬというので、工業配置法という法律を作って、そうして発展した地帯の面の工業の増大を防止しつつ、未開発地帯には工場を誘致し得るような各種の施設や投資をいたしまして、整備をして、そうして工場を持ってくる。持ってくるのには、いろいろ財政的な援助を与えたり、あるいは土地を提供する土地会社に対しては、政府が援助をするというような方式でもって、この未開発地帯開発をはかっており、過度に集中した工場地帯の、それ以上の集中を防止するというような方策を講じておるようである。日本でも、どうしてもこういうことをやらなければ、東京から神戸までの東海道地帯のみにあらゆる富と設備と人口が集まってしまって——これは脳溢血症状でございます、この脳溢血症状を解消するために、われわれは例の国土開発縦貫自動車道というものを未開発地帯に貫くことによって、そこに人を引きつける、そして、そっちへ持っていくことによって、脳溢血症状を改める、こういう構想であり、これにほとんど全部の議員が賛成をして提案がなされ、そして今や参議院を通過すれば、法律になろうとしておる。そのねらいはそこにあった。こう思うのであります。  そうした未開発地帯の尤たるものは北海道であり、東北地方でございまして、むろん東京—神戸間に最初にこうした道路を作るということは、もうすでに鉄道は複々線にもしなければならぬ、東海道の国道をもう一本作らなければならぬという交通の要請が迫っておるものですから、まず最初に、山梨県から長野県、岐阜県を通じて最短距離を走るところの東京と大阪をつなぐ中間道を作ろうという計画になっておるのでございますが、ほんとうの解釈からいえば、もっと東北なり、北海道なり、九州なり、四国なり、そういう方面にやらなければならぬと考えるのです。その財政も、一応二十年という計画でございまして、一年に三百億くらいずつでいいのでございますが、これを五百億ずつ投ずれば、もっと早くできる。これはあらゆる経済企画の基本的な条件として考えなければなりませんが、と同時に、今の工業配置法というような——これはまた資本家の自由に仕事をやろうというのを束縛する結果になっていやだ、というようなこともおっしゃっている時代ではないだろうと思うのです。これはどうしてもある程度の規制を加えざるを得ない現状になっておるし、また未開発地の開発のためには、そのような手段によって、高度に集中することを防止して、別なところに持っていかせる、そして、その未開発地は、産業その他の立地条件を整備することによって、そっちへ引きつける、こういう二面作戦でいく必要があるのではないかと思う。工業配置法のような、そういう法制を作って、未開発地の開発と、あわせて日本の正常なる経済の情勢を作ろうというお考えがあるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  27. 宇田耕一

    宇田国務大臣 国土開発縦貫自動車道建設法によりますと、二十年ということになっておりますが、それでは非常に時間的にずれがきて、開発の基本線がなかなか解決され得ない、こう思われますから、お説の御意見通り実施することは、もちろん政府は第一に着手してやらなければならぬと思いますけれども、もう少し、少くともこれは十年以内、八年くらいで仕上げる方法はないか、そして、もう少し規模の大きいものでなかったならば、結局経済の伸びに合わないのではないか、こう思われる点があります。従って、そういう面から経済の伸びに比べて、少し計画が小さいのではないか、こういうように思われる点も出てきましたので、あの法律はあの法律で、あの法律の持っておるところの規模でこれを進めていくということについては、こっちはもう当然それを主にするのでありますけれども、それ以上にもし資金獲得方法の見通しがつくのでしたら、もう少し規模の大きい、そして、もっと短期間に仕上げる方法を考えておかなければならないのではないか、こういうふうな考えは持っております。そういたしますと、所要資金が少し違ってくるということを申し上げたわけであります。  それで、ただいまお話がありましたような工業配置法を作るというところまでは、私は考えておりませんけれども、お説のように人口の過度集中を避けて、そして再配分計画に基く工業配置計画というものは当然なくてはならない。人口配分計画と一緒に持たなくてはならない。これはもう御意見通りだと思います。それでそういう点について、どういうふうな具体案を立てるがいいかということは、なお十分研究いたしたいと思いますが、その前提をなすものとして、やはりただいまお話の循環道路は、計画を立てるについての非常に基本の問題で、全くお説の通りと私は思います。
  28. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員長 次会は十九日午後一時に開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時十一分散会