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竹谷委員 好むと好まざるとにかかわらず、
国民はあげて、もっと高度の教育を受けよう、父兄もそのつもりで、子供の教育には非常に熱心になっております。従って最近では、就職したいという者は、高等学校の生徒が非常に多くなってきておる。昔高等学校といえば、高等の教育を受けたような感じを持って、労働者あるいは店員になるというようなことをあまり好まなかったのでございますが、最近では、高等学校卒業者といえ
ども、純然たる筋肉労働者として、あるいは使い走りの店員としても、喜んで働くような気風になって参りました。そのうちに、大学卒業者も、現在の中学校や高等学校を出た者と同じように、青年諸君が筋肉労働で人生を切り開こうという決意を持って、世の中に、就職戦線に飛び出てくるであろうと思うのです。私は五、六年前から、工場の労働者あるいは員店に、
東北地方から高等学校卒業の青年諸君をお世話をしてきましたが、初めはなかなか落ちつきませんでした。高等学校を出た者が、純然たる筋肉労働者で、菜っぱ服で朝から晩おそくまで働く、将来いつまでも職工だろうかということで、なかなか落ちつきませんでしたが、最近は時勢のしからしむるところもありましょうし、だんだん認識も高まってきたのでございましょう、高等学校卒業くらいの諸君は、喜んで一労働者として、一生懸命働くいい気風が樹立されてきたと思う。よく青年は堕落しているというようなことを言いますが、私は逆だと思っております。とにかく何はともあれ、百万人前後も就職戦線におどり出てくる若い労働力の人々は、今後ますます高度の教育を受けた人になるだろうと思う。これを遇するに十分の道をもってしなければならないことは当然であり、こういう人
たちは、短期間に優秀な技術を習得するであろうし、どんどんその技術もよくなってくる。そうすれば、
日本の生産品はますますよくなるということになるのでありますから、この労働者の待遇という問題は、これは
日本経済の
発展のためには、最大の
関心を持って努力を払って、
政府も資本家も
考えなければならぬ点であると思うのでありますが、ことに今この
委員会において問題にしております
北海道、あるいは
東北開発というようなことにつきましても、この
地方は自然に
増加する
人口のほんの一部分しか地元にとどまらない、そして東京なり大阪なり、それぞれの非常に進んだ
地帯へ出ていくという
現状でございます。そうして一方、どんどん若い諸君は学校へ入ります。こういうのでございますから、
経済施策を
考えます場合に、この点をぜひ頭に置いて
経済企画をしていただきたい、こう思うのであります。
そこで、これらの労働者の
所得を
増加しますためには、従事している産業の
発展をはからなければならぬ。
日本は非常に中小企業が多いのであって、この施策はなかなかむずかしい問題であり、今後も長くこの問題の解決のためには、政治家は頭を砕かなければならないと思うのでありますが、そういう点を
考えるにつけましても、やはり国土の
開発は緊急の問題である、こういうふうに思うのであります。ことに第一次産業あるいは第二次産業にたくさんの人を吸収するようにしなければならない。ところが、
東北の現在の鉱工業の貧弱な状態は御案内の
通りである。
人口は全国の一三、四%を占めており、面積は二〇%以上でありながら、工業生産は五%くらいであろうと思う。そしてその
地方民の
所得は、全国
平均の六、七割にすぎないであろう、こういう状況でございますが、幸いに山岳
地帯や高原、あるいは原野
地帯、たくさん土地がそのままに、またその資源は放置されたままになっておるので、急速にこれを
開発しなければならぬ。そうしますと、第一次産業にたくさん人を使うことができますし、また
機械工業や、その他製造工業方面の
発展もそれから引き出されてくる、こう思うのでありますが、今、
経済企画庁で
考えられている
東北開発のやり方は、ただいまここに出てきております法案は、
北海道開発公庫法を改めて、
北海道東北開発公庫法とする、そうして
北海道東北開発公庫を作って、そこから資金の融通をして、主として工業の
発展をはかろうという案があるようであります。まだ出てきませんが、聞くところによると、
東北興業株式会社を改組拡充して、
東北開発会社にするという案がおもであって、
東北開発促進法というような
一般的の法律も用意されているような話でありますけれ
ども、先般企画庁長官の御
答弁では、
東北開発促進法は提出しないということでありますので、結局この
開発公庫、そうして
東北開発会社、この二本建で
東北の
開発をはかろうという
構想のようでございます。これはいずれも主として工業を
東北に誘致しよう、工場を新設しよう、こういう案のようである。これはむろん
東北各県とも工場誘致のためには県民が多大の犠牲を払い、また県当局や県議会が一生懸命になって、そのために企画室というような機関を置き、あるいはいろいろな
委員会を作り、あるいは補助金を出し、税金を負けてやる、土地をただ提供するというようなことまでして、工場の誘致をやっているのでありますが、今までのところはあまり実績が上っておりません。今回のこのような
東北開発の
構想では、私は多大の疑問なきを得ない。
東北地方に工場進出をやろうというような資本家には、多少の利便を与えるということにはなりましょうけれ
ども、就職戦線に出てくる若い青年諸君を大幅に収容する、あるいは雇細な
農地で、水飲み百姓の
生活に甘んじなければならぬ農民諸君のために、あるいはことに農家の次三男の
対策にもならない、こういうようなことでは、
東北全般の
国土開発、そうして地域住民の福祉増進ということとは、およそほど遠いものになってしまうんじゃないか、こういうことを心配されるのである。
この点、
経済企画庁として、
東北開発につきましては毎年一千万円ずつかけて、二、三年この方
研究をしてきた「
東北地方総合
開発調査中間報告」とか、あるいは「
東北開発の推移と現況」等、印刷物はちょうだいしておりますけれ
ども、どうも基本的
条件をそろえ、そうして奨励して誘致した工場が、その後も繁栄を続けて、特別な補助なく、あるいは特殊な待遇を受けなくとも自立できるような、そういう
条件を整備する方面は完全に忘れられておる。それで
東北興業株式会社という、現在赤字に悩んで
——昭和の初めごろ、発足当初は百幾十かの、
東北地方にとっては非常に有益な事業を始めたのですが、戦争がおっ始まったために、この
東北興業株式会社というものが、
東北開発のためにならぬ
——とまで極言できませんが、あまり役立たない戦争目的の方向にこれを全部使われてしまったので、戦時中あるいは戦後にほとんど大方つぶれて、今残っている事業というものは、まことにりょうりょうたるものであり、成功しているものはごくわずかで、幾つかしかない。大部分はつぶれるか、なくなるか、雲散霧消しているという形なんでありますが、これはいきなり砂上に楼閣を作るような
東北開発の施策をやった結果であると思う。今度あらためて
東北開発を
国家的問題としてここに取り上げる以上は、一ぺん工場を作ってみたが、援助の手を引くと、すぐつぶれて、壊滅してしまうというようなことでは、国土と
国民の努力をむだにするものと言わなければならぬ。これはもっと基本的に問題を
考えていただかなければならぬ、こう思うのですが、こうした問題に対する
大臣の御
意見を承わりたいと思います。