運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-03-28 第26回国会 衆議院 建設委員会農林水産委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十八日(木曜日)     午前九時三十五分開議  出席委員   建設委員会    委員長 薩摩 雄次君    理事 内海 安吉君 理事 大島 秀一君    理事 荻野 豊平君 理事 瀬戸山三男君    理事 二階堂 進君 理事 前田榮之助君    理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    生田 宏一君       伊東 隆治君    大高  康君       高木 松吉君    徳安 實藏君       堀川 恭平君    松澤 雄藏君       山口 好一君    足鹿  覺君       井谷 正吉君    佐々木良作君       多賀谷真稔君    中島  巖君   農林水産委員会    委員長 小枝 一雄君    理事 吉川 久衛君 理事 笹山茂太郎君    理事 白浜 仁吉君 理事 助川 良平君    理事 田口長治郎君 理事 芳賀  貢君       石坂  繁君    川村善八郎君       木村 文男君    草野一郎平君       椎名  隆君    中馬 辰猪君       永山 忠則君    原  捨思君       松浦 東介君    松野 頼三君       阿部 五郎君    伊瀬幸太郎君       石山 權作君    久保田 豊君       佐竹 新市君    楯 兼次郎君       中村 英男君    細田 綱吉君       山田 長司君  出席国務大臣         建 設 大 臣 南條 徳男君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 宮川新一郎君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         建設政務次官  小沢久太郎君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      中尾 博之君         農林事務官         (農地局管理部         長)      立川 宗保君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         建設事務官         (河川局次長) 美馬 郁夫君         建設事務官         (河川局水政課         長)      国宗 正義君         建 設 技 官         (河川局開発課         長)      小林  泰君         建設委員会専門         員       山口 乾治君         農林水産委員会         専門員     岩隈  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定多目的ダム法案内閣提出第九〇号)     —————————————   〔薩摩建設委員長委員長席に着く〕
  2. 薩摩雄次

    薩摩委員長 これより建設委員会農林水産委員会連合審査会を開きます。  なお、案件を所管している委員会委員長であります私が委員長の職務を行います。  特定多目的ダム法案を議題とし、審査を進めます。
  3. 薩摩雄次

    薩摩委員長 質疑の通告がありますから、これをお許しいたします。芳賀貢君。
  4. 芳賀貢

    芳賀委員 私は本法案の中で、特に農業関係に関連を有する部面について、重点的に御質問いたします。  まず建設大臣お尋ねいたしますが、この法案による特定多目的ダムですね、特定を冠した特定多目的ダム定義の具体的な説明をお願いします。
  5. 南條徳男

    南條国務大臣 お問いのことにつきましては、法案の第二条にその定義規定されてありまして、建設大臣河川法八条一項の規定によって新設するダムで、これによる流水の貯留を利用して流水が発電、水道または工業用水道の用に供されるものを多目的ダムということになっておるのでありまして、このほかに余水路、副ダムその他ダムと一体となってその効用を全うする施設または工作物を一緒に含むものだというような規定になっておるのでありますが、この定義においてどういう点が御不審でありますか、承わりましてお答え申し上げます。
  6. 芳賀貢

    芳賀委員 通念上にいうところの多目的ダムというのは、今大臣の言われたよりもっと幅が広いわけですね。たとえば電源とか洪水調節、あるいは灌漑用水等のそういう目的を持ったものの特定用途が明らかになったものが、二つ以上あるというのが多目的ダムなんです。ところが今度の法律に明記された特定多目的ダムというものは、この法律内容を見ると、灌漑用水目的としたそういう特定用途が、この多目的ダムからは落ちているような感が非常に強いわけです。法律全体をながめてもそういう点が非常に強いわけです。ですからその農業上の灌漑用水目的としたダム効用というものは、この法律定義から言うと、これは規定外のものになるかどうかという点なのです。
  7. 南條徳男

    南條国務大臣 その点につきましては、昨日も建設委員会においていろいろ委員の方から御質疑のあった点でありますが、河川法によりまして灌漑用水のことにつきましては、当然多目的ダムに入るという解釈であるのであります。従ってこの二条に灌漑用水のことの文字はございませんけれども、これは当然含むという解釈であります。ただ農林省関係多目的ダム建設省関係多目的ダムとの間に異なっている点は、農林省関係の方は灌漑用水を主としてこれを施設するという点でありますし、それから建設省関係多目的ダムの方は治水を主として行うという点に異なった点がありまして、その内容の分野の割合が違っているというところに、農林省関係多目的ダム建設省関係多目的ダムとの差があると思います。たとえば割合から申しますれば、この法律でいう建設省関係多目的ダムの場合は、治水関係が五〇%以上の割合を占めておる。灌漑用水が二〇%ぐらいなものなのです。電力関係が二〇%ぐらい、こういうように割合が異なっておるので、農林省関係においては土地改良等関係から、灌漑用の方が五〇%以上を含むというところにこのことの違いがあると思うのでありますが、灌漑用水についてはもちろんこの中に含んでおるということは申し上げてよろしいのであります。
  8. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの答弁によると、農業水利を主とした治水が従となったような多目的ダムは、この法律の対象にならないというのですか。
  9. 南條徳男

    南條国務大臣 この定義によると、建設関係多目的ダムの方は、治水が主であって、割合が大体五〇%以上含まれておるものがこの法案多目的ダム解釈しておるのであります。農林省関係の方は、その点が灌漑用の方が五〇%、そういう比率で、農林省関係多目的ダムと、建設省関係多目的ダムとの限界を、建設省農林省とで、この多目的ダムを設定するときに、これを農林省関係多目的ダムにするか、あるいは建設省関係多目的ダムにするかということを協議いたしまして設定するということになっております。
  10. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、この法律の示すところの多目的ダムというものの中に、農業水利特定用途というものがことさら落ちておるのですが、それはいかなるわけかということを聞いておるのです。あるいはそれが入らないのかということです。
  11. 山本三郎

    山本政府委員 この法律では先ほど大臣が御説明申し上げましたように、特定用途という項目としては、灌漑事業はあげておりませんけれども、しかしダムそのもの目的といたしましては灌漑も含んでおる。しかも河川工事を行いまして洪水を調節し、下流の渇水をふやしてやるということは河川法上におきまして、建設大臣が当然やらなければならぬことであるから、特定用途としてはあがっておりませんけれども、当然やることである、こういうことになるわけでございます。
  12. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは特定用途の中には明記していないけれども、これは当然のことだからことさら明記する必要はないという意味なんですね。特記する以上にこれは厳然たるものであるから、それ以上のものであるという意味ですか。
  13. 山本三郎

    山本政府委員 そういうことでございます。
  14. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでお尋ねしますが、この法律によると、ダムに対する建設大臣権限というものは非常に強化されておるわけです。そういう権限強化というものをある程度緩和するために基本計画策定等に対しては、関係機関の長と協議をする、協議をととのわしめなければならぬというような規定がありますけれども、協議をととのえるというこの意味は、どの程度内容を持っておるかお尋ねいたします。
  15. 山本三郎

    山本政府委員 建設大臣権限強化されたという点でございますが、その点につきましては、法律基本計画を作ったり、あるいは操作規制を作ることは建設大臣がすることに今度は明定しておるのでございますが、従来におきましても、各省と連絡をいたしまして、計画を作り、実施して参ったのでございます。今回それを明定した次第でございまして、建設大臣基本計画なり操作規則を作ることにいたしましたので、従来もやっておりました協議もこの法律に明定したわけでございます。
  16. 芳賀貢

    芳賀委員 お尋ねしておるのは協議をととのえなければならぬというその意味内容ですね。どの程度のことを言うておるかということです。
  17. 山本三郎

    山本政府委員 ここに協議と書いてありますが、協議をととのえて計画を立て、それからまた操作規則決定することにしております。
  18. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから協議をととのえるということが前提になって、協議がととのわなければ基本計画成立はあり得ないという意味ですか。
  19. 山本三郎

    山本政府委員 協議をととのえまして計画を立て、それから操作規則をきめる、こういうことでございます。
  20. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから関係機関の長との間において協議を必ずととのえなければならぬ、ととのわない場合は基本計画策定というものは成り立たぬということですね。
  21. 南條徳男

    南條国務大臣 ちょっとその点で芳賀委員に私からも申し上げておきます。この法案を作るときに、さような点で農林省との間にもいろいろ懇談いたしまして、相当時間をかけたのでありますが、今申すようなことで、従来河川法については、いわば建設大臣が、勝手と申してはいけませんけれども、専管でやってよろしいというようなことでありますけれども、特にここに協議という文字を入れまして、その内容協議のととのうまで十分懇談をして、そうして利害関係者各省間も、調整をとって、満足するところでやろうというふうな話し合いをつけまして、さような内部的ないろいろな折衝の結果ここに至っておるのでありまして、ただいまのお申し出のように、しからば協議がととのわなければやらぬのかということは、極端にいえば協議がととのわなければやれないことになるのであります。しかしながら実際問題としては、ダム使用権者の方からいろいろな申し出もある場合においては、それらについてのある程度の見通しがついて、こういう意見を立てるのでありますから、そういうときは、十分協議をととのえた場合においては、その最後の目的が達するものと考えているようなわけであります。極端に理論的にいうと、ととのわなければできないかといえば、それはやむを得ない、やめるほかない、こういうことになると思いますけれども、実際問題としては、私はととのうものと考えて、かようなことにしたわけであります。
  22. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は、この法律が通った後の運用上非常に大事な点だと思います。権限建設大臣専管になっているということからいった場合、それを調和させるために、やはり従来の農林であるとかあるいは通産各機関の長と協議しなければならぬということは、やはりそういうところで建設大臣があまり権限を持ち過ぎるのを調節するための点だと思います。だから協議をととのえるということは非常に大事なことだと思う。ですから協議がととのわない場合は、善意の努力はお互いにしなければなりませんが、協議がととのわない場合は、これは基本計画策定成立が不可能であるというような明確な理解の上に立たなければ、行政機関の長との協議をととのえなければならぬということを法律が明記する必要はないと思う。この点は非常に大事ですから、大臣、特に明確にお答え願いたい。
  23. 南條徳男

    南條国務大臣 先ほど申し上げた通り、関係各省あるいはダム使用権者申請者等意見も聞いてやるわけでありますが、昨日も意見を聞くというだけでは不都合ではないか、建設省意見を聞いただけで勝手なことをされたのでは、非常に相手方が不利な立場になるからというようなお説もありましたけれども、実際問題としては、ダム使用権者というものは大体特定な人でありますから、これらの人がこのダムをやってもらうことが自分らにも都合がよろしいというような基本計画の案があるわけであります。その案に基いて協議するのでありますから、どうしてもととのわない、採算がとれないという場合は、これはやめるほかない。別段建設省がこれによって無理押ししなければならぬという理由はないのであります。十分利害関係者、あるいは各省間の調整をとって、そうしてやっていきたいという意味でありますので、決しで無理押しをして建設省が独断専行するようなふるまいをするようなことはないということを、ここに約束しておきます。
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 実は農林大臣が御出席になっておれば、こういう点もお尋ねしたいのですが、農地局長が見えておりますので、ただいまの関係機関の問において協議をととのえるという点について、この法律が出されるまでの了解の点に対して農林当局から御説明を願いたいと思います。
  25. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 この法案多目的ダムとは何かということを申し上げますと、法案にありますように建設大臣の所管される特定多目的ダムであって、灌漑排水の用に供せられる分も含みますが、主として洪水調節治水用ダムである、こういう了解であります。第二の点としましてはその基本計画作成及び決定建設大臣がいたされますが、建設大臣農林大臣協議をととのえるものとして、万一意見が不一致である場合は決定を見ない。操作規則においても同じである、こういう了解でございます。しかし計画作成決定するのでありますから、両者に良識と実態とがありますれば、必ず具体的に双方意見調整して決定し得る、こういう建前であります。
  26. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの答弁でありますが、たとえば建設農林両省間においてこれらの予見されないいろいろな事態があるわけなんですが、そういう場合にはこれをどういうふうに処理するかという基本的な話し合い——話し合いといってもばく然とした話し合いでは何にもなりませんが、何か根拠のある話し合いとか、将来に残るような寄りどころというようなものができておるかどうか、その点はいかがですか。
  27. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 法の運用に当りまして建設農林次官の間に覚書を交換することにいたしておりまして、ただいま申し上げましたことをきめて約束するつもりであります。その他についても約束事項があります。
  28. 芳賀貢

    芳賀委員 この際その覚書あるいは細目的協定等があるとすれば、当然これは法案審議に伴って明らかにされる必要があると思うのです。建設大臣その点どうですか。
  29. 南條徳男

    南條国務大臣 それはただいま農地局長からの説明に、事務当局においてさような覚書と申しますか協定をしておるようでありますが、農地局長の方から御答弁させたいと思います。
  30. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 第一は法第四条の基本計画作成、変更及び法第三十一条の操作規則決定にあたっては、建設大臣は、農林大臣協議をし、協議をととのえた上でこれを行うものとすること。第二は法第三十四条の規定による許可その他の処分にあたっては、建設大臣は、農林大臣協議をし、協議をととのえた上でこれを行うものとすること。第三点は河川法第十七条から第二十一条までの規定による水利権協議は左の各号の原則にのっとりこれを行うものとすること。そのイ、ロですが、農業水利その他農林水産業に影響を及ぼし、または及ぼすおそれがある場合は、利害関係者具体的意見を十分尊重すること。ロとしまして建設大臣農林大臣と、地方建設局長農地事務局長と、都道府県土木部局長農林部局長と別に定める要領に基きそれぞれ相互に密接に協議すること。というところまで内容を打ち合せして了しておりますが、その他多目的ダムというのは、ただいま申し上げました運用上の定義である、こういうこと等を入れまして成文化を近くするつもりであります。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 なお別に定めるという、これば細目か何かだと思いますが、この際あわせて内容を示して下さい。
  32. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 その点を目下成案を得、成文化するつもりでおります。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 それは変じゃないですか。両省間における基本的な覚書ができて別に定める要領に基いてということを今局長は言われたのですが、その別に定める具体的な要領なるものが非常に大事だと思うのです。これは法案審議の上においても非常に大事な点だと思うのです。ですからあるとか、ないとか、考えておるとかいうことではないと思う。これはやはりそういう具体的な用意があると思うので、あわせてこの際内容を示してもらいたい。
  34. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 別に定める要領といっておりますのは、大臣大臣地方局長地方局長都道府県都道府県、こういうふうによく打ち合せることを言っているわけでございますので、建設省系統本省から地方まで、農林省系統本省から地方までの打ち合せの手続をとる心がまえをおもに言うつもりでございまして、その内容は先ほど申し上げましたそれ以前の二項、三項の内容を砕いて言っているだけであります。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 法案が出されるまでに河川局長農地局長との間において具体的な話し合いというものは当然あったと思う。ですから今後危惧されるような問題とか、運用の面に対しては、当然何か具体的なものがあると思う。そういうものを示されないで、この法案を急いで審議するといったってできないと思うのです。
  36. 山本三郎

    山本政府委員 先ほど農地局長から御説明がありましたように、今の多目的ダムに対しまして基本計画並びに操作規則等につきまして先生のお尋ねがございました。その点につきましては先ほど農地局長細目覚書で十分果されているわけでございます。お尋ねの、別に定める要領というのは具体的に月に何回やるとか、あるいはどういうふうなうやり方をやるとかいうようなことでございまして、ほんとうに事務的のものでございます。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 その事務的のものがあるでしょう。たとえば細目協定とか局長了解事項とか、そういうものは全然ないのですか。たとえば多目的ダムというものはこの場合どういうものをいうかというふうな問題ですね。先ほど建設大臣は、灌漑を主とするダムはこの法律規定外である、たとえば灌漑を五〇%以上目的とするダムの場合には、この法案規定によるところの多目的ダムにならぬと思う。そういう具体的な規制とか規定というものは当然尺度が出てくると思う。それらのものはやはり細目協定とか、そういうものによって尺度をきめておかなければ、いろんな問題が出ると思うので私は聞いているわけです。
  38. 山本三郎

    山本政府委員 先ほど農地局長からお話がございましたように、灌漑を主とするものは多目的ダムではないという点も覚書になっております。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 灌漑を主とするという場合は、灌漑用水だけのダムであれば問題はないのですが、たとえば治水とか灌漑とか電源とか、そういうものが多目的ダムになるんでしょう。二以上の目的を持ったダム多目的ダムなんですから。たとえば洪水調節灌漑が何十%といっても、なかなか明確な区分はできないと思うのです。そういう場合にはどういうところで判断をされるか。この法律に該当するかしないかという判定の根拠ですね。
  40. 山本三郎

    山本政府委員 覚書といたしましてはそういうふうにしておきまして、その実際の決定話し合いでやっていくつもりでございます。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 そのほかにはないのですか。たとえば使用権とか水利権の問題とか、この法律にはそういうものが出てきているのですか。
  42. 山本三郎

    山本政府委員 水利権の問題につきましては、先ほど農地局長が御説明申し上げました第三番目の項目に入っておるわけでございます。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 だから私が一々聞かなくても、細目協定か何かがあれば——きょうは時間が非常に制約されているのです。いつまでやってもいいのなら一々聞いておりますが、そういうものはあらかじめ用意されておるとすれば率直にお出しになって審議を進める方がいいと思うのですが、いかがですか。
  44. 山本三郎

    山本政府委員 その点につきましては、先ほど農地局長が読み上げました中に全部入っておるわけでございます。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 あれは覚書なんですよ。ですから別に定める要綱というのがあるでしょう。たとえば河川局長農地局長間における細目協定とか、そういうものはあるのですから今お示しになったらどうかということを言っているわけなんです。
  46. 山本三郎

    山本政府委員 その点につきましては、別に定める要領というのはそういうふうな大きな点には触れておらないのでありまして、先ほど申し上げましたように、事務的の会合をどういうふうに開くとかいうような点をきめるつもりでございまして、そのほかの点につきましての覚書は先ほど農地局長がお話し申し上げた点でございまして、その中には今申し上げましたような基本計画作成操作規則の問題、多目的ダムに伴います水利権処分の問題、河川法上の一般の水利権処分の問題、それから農林省でやりまする多目的ダム建設省多目的ダム区分の問題、それが覚書内容となっておるわけであります。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 覚書はさっき聞いたからわかっているのです。別に定める細目協定とか、局長了解事項というのは、やはり具体的に法何条の規定はどういうふうにしてこれを適用するとか、その場合はどう取り扱うとかとうたってあると思うのです。あなたは先ほど、灌漑を主とするものはこの多目的ダムから除外するというようなことが了解事項の一つであるということを言っておるではありませんか。ですから、それだけしかないならばそれでもいいですけれども、それ以外にもあれば了解事項内容というものを明らかにする必要があると思います。
  48. 美馬郁夫

    美馬説明員 それでは私から申し上げますが、ただいま農地局長から御説明になりましたのは、次官名でやる予定にしております了解事項でございまして、そのほかに細目の事務的な問題につきましては、農地局長河川局長の名前でやる予定になっております。目下両事務当局問でいろいろ折衝いたしておりますが、大体の骨子といたしましては、先ほど問題になりましたこの多目的ダム定義の問題でございます。今問題になりました灌漑を主とするものはどうするかという問題、それからダム使用権を具体的に設定する場合に、この法律案には協議の問題はございませんが、実質上これは農林省との間で事前の打ち合せをよくする、こういう問題であるとか、あるいは政令の問題がこの法律にいろいろありますが、そういう政令解釈の問題とか、そういう具体的な問題につきまして、目下両当事者間で成案を急いでおる次第であります。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 この法律特殊性は、法律の条文から見ると具体的な大事な点がことごとく政令にまかせられたりあるいは関係行政機関との協議ということになって、法律の表面は建設大臣権限強化ということだけにしておるのです。ですからこの法律の今後の運用に対してはやはり覚書は完全なる協定とか了解事項とかいうものが事前に整っておらなければ今後のこの法の運用は非常に困難に逢着する場合が多いわけです。だから当然事前にそういうものは了解が成り立っておって、これでいけばやれるのだというところまでいっていなければ、これからいろいろ研究してやりますというようなことではこれは非常に不備な法律になると思うのですが、そうお思いになりませんか。
  50. 美馬郁夫

    美馬説明員 ただいまの表現が多少あいまいでございましたが、根本的には次官覚書局長覚書両者の間に意見は一致いたしております。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 その点はそのくらいにして、そういう覚書とか細目協定ができた場合には、当然なことと思いますがこれは資料として御提出を願いたい。  その次に大臣お尋ねしたい点は、この法案と関連を持った特定ダムの特別会計法というものは大蔵委員会で今審議されておるのですが、この会計法によりますと特に特定の地域は除外するような規定が中には載っておるわけです。たとえば北海道の地域を除くというようなことになっておりますが、本法案によりますとそういう特定地域を除外するかどうかそういう地域に関する規定は全然載っておりませんけれども、この法案から見た場合そういう特別の措置は何か考えてあるかどうかという点を御説明願いたい。
  52. 南條徳男

    南條国務大臣 政府委員から御説明いたします。
  53. 山本三郎

    山本政府委員 特別会計には北海道は入れておりませんが特定多目的ダムの方は北海道のダムに関しましても将来でき上った後の資材管理の問題等がございますので、それにつきましてはこの法律規制していった方がよろしいという点を考えまして、北海道にもこの法律は適用したいというふうに考えております。
  54. 芳賀貢

    芳賀委員 これは建設大臣に特にお尋ねしますが、北海道の地域にも適用するということは、たとえば北海道の総合開発はやはり北海道開発庁というものがあって、それが主管者になっておるわけなのです。そうなりますとこれはやはり同じ公共土木にいたしましても建設大臣と北海道開発長官というものが並んだ立場にあると思うのです。ですから今後の問題として、北海道における多目的ダムをこの法律規定によって管理するということになると非常に問題があると思うのですが、その点は建設大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  55. 南條徳男

    南條国務大臣 ただいまの北海道の場合でございますが、なるほど北海道開発長官はございますが、この多目的ダムの管理は一応一元的に建設大臣が管理するということでその運用を重複しないようにしたいと思っております。
  56. 芳賀貢

    芳賀委員 もう少し具体的にやっていただかないとあまり簡単過ぎてわからないですよ。
  57. 南條徳男

    南條国務大臣 北海道に対して今後の多目的ダムの管理を建設大臣がやるのか開発庁長官がやるのかという御質疑のように思います。なるほど北海道には開発庁長官がありますから、開発庁長官がその管理をするということが一般的には実際に適合するように考えられますけれども、今日の法の建前では建設大臣がこの管理をするということに相なっておりますので、その実際の運営につきまして管理の面で長官の権限建設大臣権限とが重複しないように調整していきたい、こう考えております。
  58. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣の今の答弁によると、今後北海道に建設される多目的ダムに対しては、この法律規定に該当するようなものに対しては、これはこの法律によって管理する。それからダムの特別会計法からいうと、北海道は除外するということになったのです。そうするとただ管理面だけを建設大臣が掌握するというのですか。すでに建設され、完成されておる多目的ダムというものは管理の対象にしないというのですか。
  59. 山本三郎

    山本政府委員 北海道を特別会計に入れなかったという理由は、大蔵省からも何か御説明があると思いますけれども、河川工事を行う場合に、北海道の国費河川は全額国費でございまして、内地方面で行なっておりますのは都道府県に負担金をかけております。その負担金を今度は前借りをしておきまして、ダムの工事の促進をはかろうということでございまして、その点が北海道にはできませんので、特別会計にする利点がないわけでございまして、入れなかった、こういうふうに御解釈願いたと思います。
  60. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると北海道の関係は全額国庫負担だ、そういうことが建前になって、そうして特別会計に入れておかぬというわけですね。将来たとえば北海道に負担を持たせるという場合には特別会計の方の対象にもなるというのですか。
  61. 山本三郎

    山本政府委員 ただいま北海道の国の事業につきましては負担金を従来も取っておりません。それから来年度におきましても取る予定にしておりませんので、特別会計にいたしましても、たとえば北海道を特別会計の区域に入れましても設定する利益がございません。そのために入れなかったわけであります。
  62. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことであれば何も管理だけをこの法案の対象にしなくてもいいじゃないですか。
  63. 山本三郎

    山本政府委員 管理の面につきましても、いろいろと法律で定めた方が、たとえばダムの水を放流する場合に下流に被害を及ぼしたというような例もございますので、そういうときに下流の人々にダムから水を流すというようなことを十分予知させるというような方法をとらなければ、十全なダムの管理ができません。そういうふうな下流に水を放水するというようなことにつきましても、十分そういう措置をとるということをこの法律の中に規定したいというふうなことを考えまして、そういう重要な事項がございますので、北海道のものにつきましてもそういう措置はぜひとらなければいかぬという建前から、このダム法は北海道にも適用したいということでございます。
  64. 芳賀貢

    芳賀委員 しかしこの法律の外に置かれる多目的ダムがあるのでしょう、そうじゃないですか。たとえば灌漑用水が主である場合にはこの法律の中に入れないのでしょう。同じ多目的ダムであっても——そういう場合放流の問題とか、災害のときの最善の措置というものは、この法律の対象にならないダムにおいてもやはり管理しなければならぬと思うのですよ。そうしたらこの法律規定を用いて、国内にある全体のダムの管理権を建設大臣専管にするという意思なんですか。
  65. 山本三郎

    山本政府委員 この特定多目的ダム法によりまして、この法律の適用を受けるものにつきましては、そういう管理をやろうということでございまして、従来府県等におきまして作りましたダムにつきましても、府県で条例などを作りまして、それぞれ取締りをやっておるところがあるわけでございます。特にこれで作りまするダムは規模も大きいし、利害関係も非常に大きいのでございまして、その他の府県営のダム等につきましても、もちろんそういうことも考えられるのでありますけれども、今回の処置といたしましては大規模でありまして、利害関係が非常に大きいということで、とりあえずこういう問題につきましてそういう規定を作りたいということから、ただいま申し上げましたような規定を作りまして、大きなダムにつきましては特別にやっていきたい、こういう趣旨からやっておるのであります。
  66. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは具体的にお尋ねいたしますが、北海道におけるどのダムが管理の対象になるのです。
  67. 山本三郎

    山本政府委員 北海道につきましては、現在におきましてはまだないわけでございまして、将来そういうものが出てきましたときにはぜひそういうふうにやりたい、こう存じます。
  68. 芳賀貢

    芳賀委員 今はないというのですね。将来いつかこの法律の適用になるようなそういう形のダムができたときには、それは管理だけをこの法律に基いて建設大臣が行う、そういうことなんですね。
  69. 山本三郎

    山本政府委員 そういうふうに考えております。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、この法律の中には特に使用権者というものが明記されておって、それが民法上の物権としての取扱いを受けるわけですね。その場合にこれは当然河川法との関係もありますけれども、使用権水利権との関係ですね。これは非常に大事な点であると思いますが、この点に対する明確な説明を願いたいのであります。
  71. 国宗正義

    国宗説明員 水利権——本法におきましては流水占用権、こういうふうに規定いたしておりますが、それとダム使用権との関係ということでございます。流水特定用途に供せられる場合におきましては、流水占用権、つまり水利権ダム使用権は表裏一体となって働くのでございまして、ダム使用権によって確保された一定量の貯留された流水は、流水占用権に基き初めて特定用途に供せられることとなるのであります。従って多目的ダムによる流水の貯留を利用して、流水特定用途に供するには、流水占用権のほかダム使用権を有するものでなければならないのであります。さようにこの法律の三条にも規定いたしておるわけでございます。ただダム使用権を独立の物権として扱いましたために、流水占用権を伴わずしてダム使用権のみを有する場合を認めてありますが、この場合におきましても、他の者に新たに流水の占用を認めるため必要があるときは、この法律案の第二十五条の規定によりまして、その他の者に譲渡すべきことを命ずることができるのでありまして、常にダム使用権流水占用権、つまり水利権とが一体となって作用するように取り扱っておるわけでございます。
  72. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、使用権者の資格は、流水占用権が前提になって初めて使用権は生ずるわけですね。流水占用権を持たないものが使用権者になるということは通常あり得ないわけですね。
  73. 国宗正義

    国宗説明員 御指摘のように流水占用権なくしてダム使用権を持ちましても、その目的を果しませんから、常に流水占用権とダム使用権者とは一致するように取り計らっておるわけでございます。特別に離れます場合は、さきに申し上場げましたようにあるわけでございますが、そのような場合におきましても、その二つの権利が一つのものに帰属するような措置をこの法律も講じておるわけでございます。
  74. 芳賀貢

    芳賀委員 そこでお尋ねしますが、そうすると農業用水関係で、たとえば土地改良区であるとか、そういう流水占用権を持った農業関係の一つの既得権者が、これは当然ダム使用権者としての資格はあるわけですね。いかがですか。
  75. 国宗正義

    国宗説明員 御指摘のように資格があるわけでございまして、従来のこの法律が施行される前の現在を考えましても、水利権を持っておる人——今御引例のように農業用の水利権を持つておる方は、その目的を果すためには、自分でダムを作るなりあるいは今回の場合のようにダム使用権の設定を受けるなり、いずれかのさような財産的な工作物を作らなければ目的を果せないのでございまして、御指摘のような農業用の水利権を持っておる方、流水占用権を持っておる方は、ダム使用権者になり得る最も適格な人の一人ということになるわけでございます。
  76. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことになると、この法律農業水利流水占用権を持っておる者がどうして使用権者になれないのですか、なれないというよりも、しないのですか。
  77. 国宗正義

    国宗説明員 農業水利権を持っておる人が、法律上の処分も、契約も、あるいは自分の工事を施行するという行為も、何らの行為なくして直ちにダム使用権者になるという建前はとっておらないのであります。実際経済上も、農業水利権を持っておる方は、ダムを作るなり取り入れ堤を作るなりいたさなくちゃ実際の経済目的を果せないことは、今回の例と同じであろうと考えるわけでございます。
  78. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことを聞いておるわけじゃない。農業水利水利権を持っておる者は使用権者の資格を具備しておるかどうかということをまず聞いたわけですね。あなたはちゃんと具備しておるというのでしょう。その場合に、ことさらにこの法律規定の中で、農業水利関係流水占用権者が使用権者になれないという規定ができているじゃないですか。どうしてそういう区別をするのか。
  79. 山本三郎

    山本政府委員 その点は第二条のところで御説明申し上げましたように、当然そういうダム使用権と申しますか、それに該当するものを持っておるわけでございまして、河川工事を行う以上は、その内容といたしましてそういうものも入っておるし、また基本計画操作規則等におきましても、そういう灌漑川水に必要なものにつきましては優先的に確保するということにしておりまして、運用もそういうようになりますので、当然認められる、特定用途としなくとも当然入っておる、こういうように考えております。
  80. 芳賀貢

    芳賀委員 どうも変ですね。特定用途に入れなくても当然なことであるから差しつかえない、使用権者に入れないのも当然なことだからこれはうたってないのだ、そういう解釈はちょっと変じゃないですか。やはり法律は懇切丁寧でなければいけないですからね。国民のすべてにわかるように明記すべきじゃないですか。言わぬでもわかっておるから書かぬでもいいということになれば、法は三章で足りるということになると思う。
  81. 山本三郎

    山本政府委員 入れないのが当然ということではなくて、当然入っておるのだということでございまして、そういうふうな特定用途にしなくてもこれは入っておるのだ、こういうことでございます。
  82. 芳賀貢

    芳賀委員 では特定用途には農業水利関係は入っておるから、従って使用権者にならぬでも使用権もあるということですね。
  83. 美馬郁夫

    美馬説明員 その点でございますが、第二条に「建設大臣河川法第八条第一項の規定により」という言葉がありますが、これは私ども河川法第八条第一項というものは治水灌漑は含んでおる、本来の目的として含んでおるというふうに、解釈しておりますから、あとにありますような発電とか水道、工業用水と別扱いをやっておるのでありまして、そういうふうにするとダム使用権が設定されないから非常に弱いじゃないかという御不審だろうと思いますが、その点は本来の当然の任務でありますから、これは非常に強いのでありまして、決して弱いようなことはないと思います。ただこの場合には、水利権という権利が灌漑については与えられますので、水利権河川法本来のことで十分やれるではないか、御心配の点はないのではないかと考えておりますが……。
  84. 芳賀貢

    芳賀委員 まだ心配だとかなんとかいうことは聞いておらないのですよ。流水占用権者はなぜ使用権者から除外されているかということを聞いているのですよ。
  85. 美馬郁夫

    美馬説明員 それは先ほど御説明いたしました河川法第八条の一項ということが当然含んでいるから、二重の表現を避けたという意味でございます。
  86. 芳賀貢

    芳賀委員 そうしますと、この使用権者の資格は、まず前提としては水利権を持っている者ということであって、第二は、やはりダム建設に対する費用を負担した者ということも使用権者の一つの資格条件になると思うが、それはならぬですか。
  87. 美馬郁夫

    美馬説明員 なると思います。
  88. 芳賀貢

    芳賀委員 思いますじゃなくて、その建設費の負担をしなければ使用権者になれないのじゃないですか。
  89. 美馬郁夫

    美馬説明員 その通りでございます。
  90. 芳賀貢

    芳賀委員 ですからその場合に、農業水利関係特定用途の中にはうたわなくても、既得権として明らかであるからして、使用権者の場合においてもやはりそれが根拠になっているから、使用権者になれなくても使用権者と同じ立場に置かれるというような説明だったと思うのですが、その点は間違いありませんか。
  91. 山本三郎

    山本政府委員 使用権を持たなくても同様な扱いを受ける、こういうことでございまして、第三条に、発電や水道や、工業用水に使う者は水利権ダム使用権を持っていなければならぬけれども、灌漑用水のものにつきましては、水利権だけ持っておれば当然ダムの水を使い得るということでございます。
  92. 芳賀貢

    芳賀委員 そんなことは言うまでもないでしょう。流水占用権を持っている者、それをダムが阻害するなんということはできないのですからね。そういうことではないのですよ。使用権者は、流水占用権を持っていると同時に、ダム建設規定された費用を負担しない者はこの使用権者になれないのかということを聞いているわけです。  第一点は先ほど繰り返して言った通り、農業水利水利権を持った者は何がために使用権者としての条項から除かれているのか、それが第一点の質問だったのですが、今度の第二点はその建設の費用の負担をしない者は使用権者になれぬというような規定も出ているわけです。その点はもう少し明らかな説明が必要だと思います。
  93. 山本三郎

    山本政府委員 ダム使用権の設定を受ける者は当然負担をしなければいかぬということでございます。
  94. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合使用権を物権というふうに規定しているわけです。不動産と同じ扱いをするわけでしょう。ですからそういう場合流水占用者がこの建設費の負担をする場合も、これは多目的ダムだからやはり共有の占用になると思うのです。特定の者、一個の者だけがこれを占用するというわけにはいかないでしょう。ですからそういう場合、たとえば負担区分というものはおのずから明らかになってくるわけです。発電の方でどれだけ持つとかあるいは洪水調節でどれだけ持つとかいうような負担区分に従って費用の負担をするということになると思うのです。その場合問題は、第十条にも示されておりますけれども、農業用水関係灌漑施設を利用する者に対しても、負担をしなければならぬということが明記されているわけです。これはやはり灌漑用水のいわゆる流水占用権者がダム建設に対する負担を命じられているわけですね。ですから建設に対する費用負担をした者は、当然その負担区分が幾ら少くても、これは当然それによって使用権者となれるし、使用権が獲得できるというふうに解釈すべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  95. 山本三郎

    山本政府委員 第十条に掲げます農業の負担金は受益者負担金となっております。それからダム使用権者の分は、七条によりまして建設費の負担ということになりまして、この方は全額持つのでございまして、第十条の受益者負担は利益の限度におきまして割り振りされましたアロケーションの十分の一を負担するということで、負担の内容におきましても変っておりますし、名目にいたしましても農業負担は受益者の負担だ、受益者負担金ということにして区別しております。
  96. 芳賀貢

    芳賀委員 農業用水の方は水利権を持っている者がそれによって利益を受けるということは当然なことです。しかも第十条を特にここへ規定した根拠は、第九条で目的が達せられているにもかかわらず、ことさらに第十条をここに持ち出したということは——灌漑用水関係の、たといそれは受益者であってもダム建設の費用を負担するのですからね、そうでしょう。これらの施設もダム建設の中に包括されるのでしょう。そういう場合には費用負担をしたということによって使用権者としての地位は当然与えらるべきだと思いますが、それはいかがです。そういう負担をさせておいて、農業関係だけは使用権者にしないということは変じゃないですか。そういう権利を与えない場合には第十条というものを何も持ち出す必要はないと思う。
  97. 山本三郎

    山本政府委員 それが先ほどからの問題の点でございまして、農業の負担をわずかお願いいたしているわけでありますが、それに対しましては当然水が取れることになっているから、特定用途にしなくてもいいのだ、こういうことに御了承いただきたいと思います。
  98. 芳賀貢

    芳賀委員 農業用水の水利権に対しては、ダムから必要な水は、当然既得権に対しては、流水させなければいけないんでしょう。これはそういうものに対して使用権者としての地位も与えないで、必ず負担金を坂らなければならぬということをいっているのですよ。強制権まで持って受益者から負担させるなんということは、どこに根拠があるのですか。第九条に当然尽きている問題をわざわざ第十条に持ち出して、しかもこの負担をした場合においても農業関係の者に対しては使用権者としての地位を与えない、そういう片手落ちなやり方がこの法律の中に現われているわけです。建設大臣はこれが当然、だと思うのですか。   〔「いや、これは農林大臣だ」「農林   大臣はどこへ行っておるか」と呼   び、その他発言する者多し〕
  99. 薩摩雄次

    薩摩委員長 きのうは農林大臣の要求がなかったものですから、それで呼んでないのです。農林大臣はほかの委員会に行っているのですが。
  100. 芳賀貢

    芳賀委員 ちょっと呼んできて下さいよ、長い時間じゃないですから。
  101. 薩摩雄次

    薩摩委員長 それではそういたします。
  102. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 その間関連して。今のお話の中に出ておりましたけれども、ちょっと関連してお伺いいたしたいと思います。今の第二条の関係で、この法律による特定多目的ダムというのがここに規定してあるわけですけれども、あれはどういう関係になっているか知りませんが、たとえば愛知用水ダムのような農林省所管のダムみたいなもの、事実上はダム意味を持っているもの、これは前のやつには遡及しないのですから、新しいやつにこれから該当するわけですが、これにはこの法律の適用はないわけですか。今度農林省がああいうものをやろうとした場合はこの法律の適用はないことになるのですか。
  103. 山本三郎

    山本政府委員 その点につきましては、先ほども御説明申し上げましたが、灌漑を主としてやるものは適用しないというつもりでおります。
  104. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、現にああいう式のダムは、愛知用水の例を見ても、あの愛知用水ダムの中から工業用水を取ること並びに発電用水を取ることも並行的になし得る可能性はあるわけですね。そういうダムになる可能性は十分にあるわけですね。そうすると、そのようなダムはこの多目的ダム法律の適用がないから、従って工業用水権者、あるいは発電用水を取ろうとする権者は前のと同じような意味で共同施設としての持ち分権がそこに発生するという形になりますか、承知用水ダムのようなものについては。
  105. 山本三郎

    山本政府委員 そういう形になると思います。
  106. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、極端にいえば、農林省所管のダムについては従来と同じような共同施設という概念によって発電事業者が権利を持つときには、持ち分権、所有権、従ってダムのある程度の管理権というものが存在する。それからこの特定多目的ダムの法規の適用を受ける建設省関係については、そういう所有権なりあるいは管理権なりが発生せずに、新しい概念であるダム使用権が発生するということになると思います。そうしますと、これを監督する立場はいいかしらないけれども、使う方の、工業用水を使おうとするもの、発電用水として使おうとするものの身になってみると、同じ目的でやろうとする場合に、ある場合には前と同じような持ち分権が発生するし、ある場合には何だかわけのわからぬダム使用権というものが発生するし、私は何だかその辺はすっきりしないと思いますけれども、その辺はどういう話し合いがあってなされたことですか。
  107. 山本三郎

    山本政府委員 その点につきましては、お説のような場合も生じてくると思いますが、先ほど申し上げましたように、私の方で作りまするダム——これは直轄ダムに適用しようということでございまして、その直轄ダムは非常に利害も広範でございますし、特に建設も促進しなければならぬし、しかも将来の管理の問題におきましても、特に重要と認めまして、それらにつきましてはこういうふうな促進の立場あるいは管理の立場からこういう処置が必要であるということで割り切っておるわけでございます。
  108. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 ほかのあれがありましたら、すぐやめますから……。建設省の方では建設の一元化で、同時に仕事の促進のために必要であるといわれる。そのことが建設省ダムに必要であるならば、農林省ダムの仕事でもやっぱり責任を持って一元化しながら速度を早めるかっこうでやりたいということは同じことじゃないのですか。同じような目的ダムが作られる場合に、少しぐらい農業用水的なウエートが多い、少しぐらい治水的な用途が多い、少しぐらい発電の用途が多いに従って、その管理方式なり建設方式なりというものが根本的に建前が違い得るという理解にはならぬと思いますがね。  それからもう一つ、提案理由を見ますと、責任を一元化して工事を促進するというふうになっておりましょう。従来の多目的ダムにおいても、大体ダムは、建設省が現実に工事は施行されておった。その建設工事をやる前の形が、持ち分権を持つ場合の委託、受託の関係にあるかないかということだけの問題の場合には、そこは委託、受託の関係で、工事促進は建設省が大体において一貫してやられる。今度の場合も、委託、受託の関係が発生しないだけでありまして、やられるのは、やっぱり建設省自身がやられる。従来工事が一元化しなくて、つまり工事が二元化して多目的ダム効用を発生し得ないような状態が起きた例は、それはダムに対する持ち分権があったことによって工事がいろいろになったのじゃないのです。ダムの施設と、そのダムから出てくる水を使って発電をしようという発電施設、それから、そのダムから出てくる水を農業用水に使って灌漑をしようという仕事、あるいはそのダムから工業用水を引っぱって、そうして工業用の水に供しようという施設、このダム建設する仕事と、発電所を建設する仕事と、工業用水路を建設する仕事と、それから農業用水路を建設する仕事と、このおのおのがばらばらになる危険性があったわけです。たとえば西吉野なら西吉野の例をもってすれば、発電所は、最初の予定通りに、二年なら二年のうちに、三年なら三年のうちにダム建設を完了する、少くともそのダムから発電用水がとれるという最初の予定に従って、その担当者であるところの電源開発会社は発電所を作っていった。ダムは予算の都合によって三年の計画が五年になり、六年になった。従って、発電所はできたけれども、まだ発電所に引くべき水がこない。従ってこの発電所の効用を一〇〇%期待することができない。つまり、工事の一元化ができなかった。そのおかしくなった理由は、ダムに対する持ち分権や所有権があったからではなくて、ダムの工事と発電所の工事とがそういうふうにちぐはぐになったことにある。そのことは、今度のこの法律でも救済されないでしょう。この多目的ダム法案によっても救済されないと思いますが、それは救済されるようになっておりますか。
  109. 山本三郎

    山本政府委員 ただいまのようなお話の場合がありまして、たとえば相関連する事業が同時にできなかったというような場合におきまして、その総合効果が上らなかった場合もありますが、ダム自体におきましても、従来資金が並行して出なかったというような点におきまして検査院から批難されたようなこともございます。そういうふうな点で資金が両方から出るべきものがそろって出ないというような点もあったのでございます。また建設の途中におきまして二つの経理になりまして非常に煩瑣な手続になって参ったという点もございます。それからこの間もお話がございましたように、一つのダムができましたのを河川付属物にするのに共有物になっておりますので非常に不都合があったというような点がございまして、今申し上げます三つぐらいのおもなる点につきましては、こういうやり方によりますと非常に改善されると私は考えております。
  110. 薩摩雄次

    薩摩委員長 先ほどの芳賀さんの質問に対して農地局長から御答弁願います。
  111. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 芳賀委員の御質問は、農業用の、言いかえれば灌漑用の用途につきまして専用施設を設ける場合は使用者負担をしなければならぬと書いてあるのに使用権を持たないのはおかしいではないかという御質問であったと思いますが、そうでございますか。——提案になっております法律案に関する私の了解は、この法律案によりましては、特定用途、すなわち発電でありますとか、水道等の事業者はまずその用途に割り振られました建設費の負担すべき費用部分を建設当初から負担をいたしまして、それによりまして使用権を設定してもらいまして使用料も払うという建前にできておりますので、従来建設省が行なっておられました多目的ダムの実際にかんがみまして、と申しますのは、農業用には費用負担をせられておらなかったということにかんがみまして、あわせて受益者負担も取ることができるが取ってはおられなかったということにかんがみまして、建設費の費用負担をすることは農業は適当ではない。従いまして農業用は建設費に関してはいかに見るかということにつきましては、原則といたしましては河川治水の部分に相当する費用と同様にこれと含めまして、公共事業分としての事業費分だと了解をいたしております。これは国と府県とが負担すべきものだ。そういう建前を貫く上におきまして建設費用を建設機関において負担することをしないから、使用権が設定せられなくても、河川法によりまして水利権を確保すればいいのではないか。使用権は権利でありましていわば財産権と見るべきでありますが、あわせてこれには使用料を払う義務が付されている考え方でありますので、農業には適当ではない。従来も受益者に負担をかけることができるという態勢でありましたが、かけることができるという従来の態勢を一応是認いたしますならば、受益が明確なときだけ負担を一部負うのはやむを得ない。それもごく僅少であって計算上他用途のように建設費を割り振るような割り振り方では農業は困る。こういうことから出た法案の条章であると了解をいたします。
  112. 芳賀貢

    芳賀委員 今の局長答弁を要約すると、第十条は必要ない、こういうものは当を得ない、という意味ですね。
  113. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 政府として提案されておりまするから、当を得ないとまではよう申し兼ねますが、他の用途のように、すぐ建設費を最初から負担して、受益者が、あたかも一個の水を幾らで買うというように負担すべきものではない、そういう考えでございます。
  114. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 関連。この場合においてダムを物権と見なすと、民法上の制約を受けることになるのですね。そういうことになりますと、ダムを作った者は当然水利権はあるけれども、それを使わせないという場合において、そういう問題が直接起きる場合があると考えたときはどうなるのですか。
  115. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 建設省と打ち合せましたところでは、そういうことはしないということです。それならばよく協議して操作規則等で十分研究し、基本計画上の問題はこれを十分打ち合せして、意見を合致せしめた上でなければ、これらを着工してもらっては困るし、操作規則をきめてもらっては困る、こういうことにしております。
  116. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 さっきの御答弁によりますると、いわゆるダム建設の費用を負担しない者は水を使う権利はない、というように解釈してよろしいかという芳賀君の質問に対して、その通りであるというふうに私は聞いたのです。そうでないのですか。(「使えるのだ」と呼ぶ者あり)使えるのですか。私の言うのは、いわゆる一定のダムを作ることは、特定の用途のために作るのである。そうすると、農業用水なら農業用水で、今まで流れておったのが、そこへダムを作ったために水温が上昇して稲作に非常に適当になって、そこで利益を受けるというようなこともあるのじゃないですか。そういうようなときに、ダムの費用を負担していなければ使わせないということを、物権として民法上の制約を受けますと、もしそういうことを当事者からやられてきたら、農民は直接使えないという問題が起きやしないか、こういうことを言っているのですが、どうですか。
  117. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 建設省からまずお答え願いたいと思います。
  118. 美馬郁夫

    美馬説明員 この法律で掲げまする特定農業と申しますのは、今言いましたように、ダムを作るときにすでにある施設は含まないのでありまして、ダムを作ってそれ以後、新たに施設を作っていくという農業でございまして、御心配の点とはちょっと別じゃないかと思います。
  119. 芳賀貢

    芳賀委員 農地局長の今の御答弁は、農林大臣の見解を代表しているとして差しつかえないのですか。
  120. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 私の申し上げた限りにおきましては、代表していると私は思います。
  121. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、やはりことさらに第十条を規定して、灌漑用水関係の、いわゆる流水占用者に対して建設の費用のみを負担さして使用権を与えないというような法律規定に対しては、やはり問題があるということを、今農地局長を通じて、農林大臣のこの法律に対しての意向が明らかになったわけですが、建設大臣はどこへ行ったのですか。
  122. 薩摩雄次

    薩摩委員長 今参議院の縦貫自動車道路法案の採決があるので行っておりますが、呼びに行きましたから……。すぐ来ます。
  123. 芳賀貢

    芳賀委員 質問者に対して一応断わらぬで勝手に飛び出すのはけしからぬですよ。それじゃ河川局長でもいいです。
  124. 山本三郎

    山本政府委員 今の点につきましては、農林省と十分打ち合せたわけでございまして、ダム基本計画それから操作規則等につきましても、農林省十分協議をととのえて計画をやるわけでございまして、ダムの操作あるいは基本計画におきまして、灌漑用水の貯留分ははっきりそれに規定するわけでございます。従いまして電気等の使用権も、そういうものを前提とした使用権になるわけでございますから、特定用途灌漑がなっておらなくても、十分目的は達せられるわけでございます。
  125. 芳賀貢

    芳賀委員 いやそうじゃないのです。この第十条は、これは特定者に対してダム建設の費用の負担を命じているのでしょう。そうじゃないですか。(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)負担させなければならぬとか、負担金を負担しなければならぬということは、これは一種の命令ですよ。ですから流水占用者に対して建設費の一部を負担させることを命じた場合、これはやはり建設費を区分してその一部を負担させるのですから、当然それによって使用権者としての地位が与えられてしかるべきなんですよ。それを与えないというのはどういうわけです。
  126. 山本三郎

    山本政府委員 受益者負担を規定したというのは、専用施設を新しく作ったりあるいは拡張いたしまして、従来の水よりもよけいにとる場合におきましては、特に利益がはっきりして参りますので、その分に対しては負担をしていただこうということを考えたわけでございまして、そういう負担をさせていただくのに水がこなければ困るという御心配でございますが、それについては基本計画におきましても操作規則におきましても、十分そういう点を考慮いたしまして、建設大臣の責任としてそういう権利を確保してやる、こういうことになるわけであります。
  127. 芳賀貢

    芳賀委員 そうじゃないですよ。受益者負担ということは、これは第九条に明らかになっているでしょう。「多目的ダム建設によって著しく利益を受ける者がある場合において、その者が」云々ということを書いてあって、そうして「多目的ダム建設に要する費用の一部を負担させることができる。」ということは、受益者負担金の中でうたっておるのじゃないですか。それにもかかわらず第十条で、今度は経費の一部を、しかも算定した額を負担させなければならぬということは、これは建設費に対する負担区分を命じて、やはりそれを負担しなければならぬということを規定している以上、この第十条の規定によって経費を負担した者に対しては、当然これは使用権者としての地位を与うべきじゃないか、与えるのが当然じゃないかと私は質問しているわけです。
  128. 山本三郎

    山本政府委員 先ほどから御説明申し上げましたように、使用権者の位地を与えなくても、そういう与えられたと同じように用水が確保できる、従来よりもよけいに用水が確保できるというのであります。
  129. 芳賀貢

    芳賀委員 そうじゃないですよ。使用権の設定をした場合、使用権というものはどういう権利をそこから生ずるかということは、この法律にうたってあるじゃないですか。使用権が設定されて、使用権は物権としての権限を持って、それが不動産と同列の財産権をそれによって発生するわけですよ。それではこの第十条の規定による経費負担をした者は、使用権者としての地位を明らかに獲得することができなくても、この使用権というものは、民法の規定によるところの財産権としての権利が生まれるというのですか。
  130. 山本三郎

    山本政府委員 今のダム使用権内容とかあるいは貯水池の使い方等につきましては、開発課長から御説明いたします。
  131. 小林泰

    ○小林説明員 ダム使用権は、この法律規定してございますように、流水の貯留を確保する権利でございまして、その貯留された水を使う方の権利はいわゆる流水占用権で規定されるわけでございまして、たとえば一つのダムについて水を貯留する場合に、その計画に当りましては、まず土砂の堆積に備えまして死に水をとるわけでございます。その死に水の上に灌漑用水等必要な貯留量をとりまして、その上に洪水調節に必要な貯水容量をとる、こういうふうに重なりましてダムの規模を決定するわけでございます。従いましてこの両者の容量を発電に全体を使うという関係になりまして、その関係から申し上げますが、この灌漑用水の必要な貯水量の最高水面が、発電の方で使って参りましてその以下に食い込むような場合が実際問題といたしまして出てくるわけであります。そうしますとそこに灌漑ダム使用権というものはございませんが、そのダムに登録しました発電所のいわゆる水の使い方の流水占用権は、灌漑に支障を与えないような規定によりまして縛られておるわけでございます。それでその灌漑用水の貯水の水量の以下に入って参りました場合には、灌漑の必要量に制約された発電の運転になるわけでございます。そういう内容使用権流水占用権と両者の組み合せで流水の放流、貯流が規制されるわけでございます。その関係からおわかりになると思いますが、灌漑用水については、ダム使用権がなくても、そのダムから水を放流する際の流水占用権の規制で十分な満足がされるわけでございます。
  132. 芳賀貢

    芳賀委員 私はそういうことを心配して聞いておるのではないのです。使用権が物権としての価値を生じてくるということが規定されておるのです。その場合、発電とかあるいは水道の事業者は建設費用を負担したことによって使用権者となれる。しかもその使用権というものは、民法上の規定を準用してそれが今度は一つの財産権を持つということになるのです。しかし農業水利関係のものは建設費用の一部を負担した場合においても何ら使用権者にもならぬし、そういう公平な権限というものが与えられないというのは、これは非常に不公平な扱いになるのではないかということを聞いておるわけです。何でそういう公平を欠いた扱いをするために第十条をわざわざここに規定したのか。単に受益者に対して一部の負担をかけてもいいということであれば、第九条の規定でその目的はすでに達せられておる。この関係が非常に大事なわけです。しかも農林当局としてはこの第十条の規定に対しては了承しがたいものがあるということを——あなたが首をひねったって、農地局長はそう言っているじゃありませんか。この法律運用についても関係各省の間において完全なる意見の調節がとられなければならぬとまで言っておるのですから、法律を作る場合に、この条文の中のそういう幾分でも疑義のあるような十条の点に対しては、建設農林両当局においても十分熟議されたと思うのです。ところが一方農林省としてはこの点に対してはやはり問題があるというようなことを表明されておるわけです。建設省の方はしからばどういう考えをもってこれを進められたかということをお尋ねしたい。
  133. 山本三郎

    山本政府委員 十条の問題につきましては、私は農林省におきましても異議はないと考えております。それから使用権を設定しなくても、水は十分その計画通りに与えられるかという点につきましては、先ほどから御説明申し上げていますように、基本計画操作等の問題につきましてその方法を定めまして、管理者が当然の義務として水を確保してやるように、しかも先ほどからの物権に支障のないようにして、その間の調整を保てるような物権を与えてやろうということにしておるわけでございます。
  134. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 議事進行に関して、建設省にちょっと申し上げておきますが、今各委員からお尋ねになっておる点は、おわかりになっておると思いますが、何か答えがぴんとこないような気がいたします。というのは、たとえば発電、水道、工業用水、こういうものを使用する人については物権ということでダム使用権を認めておるが、同じ多目的ダムを作って、そして貯留した水を利用する——第十条に関連があるわけでありますが、いわゆる灌漑用水に使う、これは水利権というふうにいっておりますが、そういう人たちに対してなぜダム使用権を設定しなかったか、その差をつけたのはどういうわけか。しかも第九条においては、ダムを作ってそのために水の貯留ができてそれによって下流で著しい利益を受ける場合の規定があるわけであります。それは昨日の委員会で資料等を出されたのでありますが、その区別をどうしてやっているかということを御説明願わないと、基本計画をどうやってこうだ、それはわれわれには話がわかっております。しかしなぜ前の三者については特に物権たるダム使用権を認めたか、しかもこれは当然のことであるからという御説明ですが、それならなぜ灌漑用水についてはダム使用権を認めないか、あるいはそれについてはどういう権利があるか、何かこれはないがしろにしたのではないか。当初私がこの委員会において、失礼でありますが、御注意的にこの問題を提起しておる、そこの点なんですから、その区別をもう少し明確にお答えなさらぬと、この話はいつまでたっても尽きません。
  135. 山本三郎

    山本政府委員 それでは御説明申し上げます。従来多目的ダムを作る場合で、灌漑の効果が生じる場合におきましても、その費用は国と県とで負担しておりました。しかしほかの事業におきましてそういうふうな灌漑効果のある場合におきましては受益者の負担金も取っておる例もございましたので、それとの均衡もございまして、農業の利益が顕著なることがはっきりわかる場合には、受益者の負担金を出してもらおうということにしたわけでございます。そういう関係でございまして、第九条の場合におきましてはそういうふうな特定のものは規定しないで、一般の受益の問題を第九条に掲げまして、第十条におきましては、特に専用の施設を新築したりまたは拡張いたしましてはっきり利益が出てくる場合におきましては、ほかの事業の関連もございますので、受益者負担金を取ろう、こういうことに規定した、こういうことでございます。それから、それでは金を出したのに水がとれないという点が心配になるわけでございますが、それは従来におきましても、多目的ダムを作った場合におきまして、灌漑の問題も確保するように扱っておったわけでございますから、従来のやり方と同じように灌漑用水を確保しておる方法をとっておるから心配ないということでございまして、この点はたびたび御説明申し上げておりますけれども、発電であるとか水道についてはダム使用権を与えておりますけれども、それらは灌漑用水との関連において制限されたダム使用権になっておるわけでございまして、その間の相剋はないわけでございます。ダム使用権を与えたものが、使用権があるために、他のそういうものを圧迫しないようにダム使用権内容規定いたしまして、そういう使用権を与える、こういうことでございます。
  136. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 十条のいわゆる灌漑用水のものについて、なぜ工業用水、水道、電気のようにダム使用権という物権を設定しなかったということを聞いておるわけです。その点を一つ……。
  137. 山本三郎

    山本政府委員 前に、二条に規定しておる発電、水道、工業用水等は、この建設のときに、利益によって按分されました全額を負担していただくわけであります。  それから十条の農業の場合の受益者負担は、なるほど受益者負担をいただくわけでございますが、この分は借入金によって工事をやっておきまして、工事が完成後その負担金を出していただく、こういうことになっておりまして、おのずからそういう点において発電、水道等々と農業用水とは違っておるのでございます。
  138. 足鹿覺

    足鹿委員 具体的に今の問題からどういうことが起きてくるかということを関連して申し上げて御意見を聞きたいのですが、要するに、第三条において特定用途灌漑が入らない。従ってダム使用権というものは認めないのです。ところがこの点を特定用途に入れると、一応使用権が生ずる。今あなた方がおっしゃった通り、法律にもあるように、アロケートした金額を負担しなければならぬということになるのです。そうすると、このまま使用権というものがないということになってきますと、次のようなことが問題になってくるのです。たとえば第四条によって基本計画作成をやる、そのときにダム使用権者からは意見を徴するということになっておる。ところがこの場合農民は、使用権者であるが、使用権がないので、意見を述べることができないのです。だれを通じて言うかというと、大臣か知事かにあらかじめ意見を述べておくという程度なんですよ。きわめて間接的な立場に置かれる。そこで、たとえば洪水があったというときに、この法に規定しておるようなダムの操作あるいは放水量の調節の問題等が起きてくる。これは操作規則を定めて処理する、こういうことになっている。ところが洪水の場合なんかは急に判断しなければならぬ。そうした場合に農民が一番影響を受ける。ところが使用権者の利益により、その発言力に左右されてしまう。たとえば電力業者なら電力業者だけの発言力に影響されてしまう、そういう結果が起きてくる。従ってもしそういう場合に、被害が起きるような重大な問題が起きたときに、一体どうするのですか。本法には何らそういった問題は規定されてない。また今度は逆に洪水とは別に渇水が起きる。そうした場合に、一番影響を受けるのはこれまた農民です。その点でも農民には使用権がこの法律によって保障されておらないから、何ら発言権はない。そういうふうに、負担はさせるけれども、洪水期というようなとき、渇水期というようなとき、何ら農民は発言権がないのです。その点はどういうふうに調整されるのですか。農林省と両方御意見を聞きたい。
  139. 山本三郎

    山本政府委員 その問題についてお答えいたします。建設大臣基本計画作成する場合、関係行政機関の長、関係都道府県知事それからダム使用権の設定予定者の意見を聞くなりあるいは協議をして作るだけでは非常に不十分ではないかというお問いでございますが、この関係都道府県知事は河川法に申しておる河川の管理者でもございます。その管理者としての立場から河川に対する認識は十分持っておりますし、灌漑用水あるいはその他の河川の問題についても十分認識を持っておりますし、しかも都道府県知事は議会の議決を経て意見を申し述べろということになっております関係上、意見は十分反映されるものと私どもは解釈しております。  従来ダムを作りましたときに、その操作は都道府県知事が行なっておりましたが、都道府県知事は河川管理者であると同時に、県内の総合行政を行なっておりますので、そういう点からそういう意見を十分反映させて意見を述べて参ります。しかも建設大臣が作るときにその意見が反映されないということをお考えのようでございますけれども、それらの意見を十分反映さして基本計画を作っていくというふうに考えておりますので、その点は御心配ないと考えております。
  140. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 農林省協議調整を得なければ、基本計画、水の操作規則決定してもらってはいけないという建前でありまして、農林省意見は、本法によって都道府県知事が都道府県議会の議決を経てきめてくる意見及び土地改良区を通じての農民の意見を確かめた上でないと、意見を言わないのであります。
  141. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 関連。問題がはっきりしないようですが、要するに、農業用の水利権を持っている人は固有のダム使用権を持っているわけです。ただ経費を出さないから、現実のダム使用権を認めない、もとの規定はこういうことですね。それならば固有の水利権を持っており、固有のダム使用権を本来持つべき者が、自分の水利を有利にするために金を出した場合に、認めるのか認めないのか、こういうことです。その金は農民だけが出すかあるいはいろいろの土地改良その他の関係から県なり国がそれに援助する、これは別として、そういう経費を持ったあるいは持つということがはっきりした場合には、認めるのか認めないのかということです。同じように電気業者あるいはその他の業者も認めるのか認めないのか。その場合にどういうような権利なり、今のいろいろな計画なり操作なりにおいて農民の立場をどういうふうに具体的にするかということが一点。  なおそういう場合には当然ある程度の費用の負担をするということが第九条において明らかである。それにもかかわらず、第十条において特別土地改良区に受益者負担の規定がある。この二つはどういうふうになるかという点がわれわれにはわからない。その点はっきり説明願いたい。
  142. 美馬郁夫

    美馬説明員 第一の御質問でございますが、この法律の建前では、特定灌漑については経費をどういうふうに持ちましょうとも、これは先ほども繰り返し御説明申しておりますように、河川法本来の目的で十分やれて、しかも保護は水利権なり他の処置が十分ありますから、特定使用権を設定しなくても十分同じような方法でやれるという建前をとっております。  それから第二の点でございます。第九条と第十条の関係が問題になっておりますが、第十条は特別に専用の施設を新築し、または拡張して新しくやるはっきりした場合を想定しておりまして、第九条はここにありますように、著しく利益を受ける者がある場合において「その者が流水政令で定める用途に供するものであるときば建設大臣」、この政令で定める場合と申しますのは、これは灌漑の場合ではございませんで、発電の場合でありまして、そのダムを作ることによりまして下流の発電所が利益した場合に、その下流の発電所に対して特別の利益がある分をかけるという建前になっております。その後段に「その他の者であるときは」というのがございますが、これは現在の法律にもこういう規定はございますが、万一の場合をおもんぱかって、もし十条以外の何らかの意味において、発電でない場合の受益する場合が特にあっだ場合の、万一の場合の規定というような意味規定しております。
  143. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点を聞いているわけじゃないのですよ。話がみな食い違っているのだが、なるほど第九条で本来農業水利権を持っている、それがダムができるという場合に特にそのダムを利用した方が水利権が実際の運営上いいという場合、そういう場合に農民の方が金を出すという場合には、どうしてこれを今の電気あるいは工業、そういうものと区別して扱うかということです。その場合に当然、こういう基本をはっきりしなければしようがないではないか。そうでなければ水利権だけ持っておっても、要するにダム使用権河川法では当然保障されておるけれども、それは金を取らないからいわゆるダム使用権だけは認めない、こういうわけですか。そのかわり一切金は取らない、こういうわけですか。取ることになっているのでしょう。
  144. 国宗正義

    国宗説明員 今の御質問の第一点でございますが、全額農業負担に相当する分を出したらダム使用権が設定されるのかどうかという点でございますが、それは設定いたさない建前に考えておるわけでございます。なぜ全額を出しても設定いたさないかという点でございますが、農業につきましては発電、工業用水よりもさらに河川法上公益の高いものと考えておりますから、この場合におきまして、国なり県なりがその農業効果に対して負担をいたしておるわけでございまして、そういう高い公益のものは、洪水の調節自身にもダム使用権は設定いたしておらぬのであります。洪水の調節と農業の渇水の補給、この場合に問題になっております専用施設を設けての流水を引用する場合の施設の利用権を、洪水の調節と同程度ダム使用権を設定いたしておらぬわけでございます。なお先ほど私の説明で不明確な点は局長の修正で正しく改められたわけでありますが、第十条の費用の負担といいますのは、たまたま建設費の何十分の一、農業効果の十分の一となっておりまして、建設費から割り出しているようでございますが、実はこれは農業効果としてはじき出された分の十分の一、こういうことでございまして、第九条の受益の場合でございましたならば、先ほどの次長の御説明のように利益の限度まで理論上は全額までは取り上げる、徴収するというのが建前になっておりますが、十条におきましてはその利益の十分の一を徴収する、残りの分は国と県において負担する、こういう考え方は国営土地改良とその軌を一にしておるわけでございます。さようにいたしまして金を、実際は一割でございますが、十割持たれましても、ダム使用権がなくてもむしろ洪水と同じように高い立場から、河川管理者はこれを保護しなくちゃならない、しかもそれが河川法目的になっている、こういう趣旨でございます。
  145. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほどから私の質問に対して、建設省農林省もあまり明確な答弁が行われていないのです。そこでお尋ねしたいのは、ちょうど大蔵省の宮川主計局次長が来ておりますから、その第十条の規定に対しては大蔵省の御意思が入っているものかどうか、この点はいかがですか。
  146. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 第十条の点につきましては、先ほど来、るる建設あるいは農林当局から御説明がありましたが、御承知のように農林省で行いまするダム工事につきまして、土地改良区等で国営につきましては二割、県営につきましては二割五分の受益者負担をとっておるわけであります。それのバランスを考えまして、今回の特定ダムの設置に当りまして第九条に規定する受益者負担を課することは、バランスを失しない適当なものである。大蔵省としてもこの提案には賛成しております。
  147. 芳賀貢

    芳賀委員 第九条はいいのですが、第十条を特に設けたということに対しまして、大蔵当局の何らかの意思がここに反映しているのかどうかということを聞いておるのです。
  148. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 私は御説明申し上げましたが、間違いました。十条の点について御説明申し上げたわけであります。九条は従来一般的に既設のものにつきまして利益あるものに対して負担を課する、この規定は当然適用するものと考えまして、別に大蔵省として特に賛成する、反対するということでなくて、当然のものと考えております。
  149. 芳賀貢

    芳賀委員 これをお聞きするのは、やはりこの法案に対しては大蔵省も協議されたと思うのです。ですから単に建設省とか、農林省意見に賛成したか反対したかということでなくて、第十条というのはどうしても筋が通らないのですね。建設費の一部を負担させておきながら、発電とか水道等の事業者が建設費を負担した場合には使用権が設定される、農業用水関係のものが負担した場合には、何らそれにかわる権利というものが生じないという公平を欠いた規定がここに出ておるのです。ですからこれは、ただ農業関係者から経費だけを権力的に取ればいいという規定にしかなっていないのですよ。これを大蔵当局としても、金だけ取ればいいというような思想があることは否定できないですけれども、しかし公平の原則を欠いてまでも、こういうような条文をわざわざここへ作らなければならぬ必要さというものは、すなおに考えた場合には理解ができないのです。それで特別この十条に対しては、大蔵当局の意見が単に賛成しましたということでなくて、十分反映しておるのかどうかということを聞いているわけです。
  150. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 芳賀委員の御指摘の点は、先ほど来問題になっておりまするように十条で受益者負担を取りながら、一方においてダム使用権を認めない、このアンバランスがあるじゃないかという点の関係だと思います。御指摘の点は確かにあると思います。大蔵省の方といたしましては、この十条に規定しておりまする受益者負担というのは当然である、かように考えております。ただ使用権を認めるかどうかにつきましては、御指摘のように非常に問題があると思いますが、大蔵省といたしましてもこのダムを作りました水の調節等につきまして、電力会社あるいは治水関係、あるいは農林灌漑、排水の関係におきまして、どういうふうに水を調節するが非常に重要問題であります。この点、私どもも非常に考慮を払ったところでございます。先ほど建設当局から御説明がありましたように、むしろ治水でありますとか、あるいは農業関係灌漑につきましては発電関係よりウエートを置いて十分考慮していく、運営については十分注意してやっていく、こういう御説明でありました。それから先ほども御説明がありましたように、発電関係等につきましてはアロケーションの金額をそのまま即金で納める。こちらの方はその分の十分の一以内でやる。金額上のバランスもある、かように考えまして、現在規定されておりまするやり方は、大蔵省としても適当であると考えておる次第であります。
  151. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもますます奇々怪々になるじゃないですか。とにかく建設費の負担を区分して、その区分された経費の一部を十条で命令で命じて負担させるでしょう。そういう場合には当然他の事業者と同じように、使用権を与えることにするのが建前じゃないですか。しかもその使用権が単なる使用権でなくて、物件としての価値が生じて、その物件が譲渡権であろうと、あるいは担保権であろうと、そういうものは不動産として随伴してくるのですよ。ですから、農業関係以外が負担したものに対しては、財産権がそこに生まれてくる。農業関係者に対しては何らそういう権利というものは生じない形のもとにおいて、そうして権力的に負担金を出させる、経費負担をさせるということは何としても不平等だと思います。これでいいのだという理由はどこからも出てこないのではないですか。
  152. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 この点は先ほども御答弁申し上げましたように、本来農業関係の権利を確保いたしますためには、使用権を設定した方が権利関係が非常にはっきりするわけであります。しかしその点につきましては、特に民法上の権利を設定いたさなくても、このダム運用につきましては建設当局におきまして十分配慮して参るということでありますし、負担の割合のバランスから申しましても、必ずしも使用権を設定するというところまでいかなくてもいいのではないか、かように考えた次第であります。
  153. 芳賀貢

    芳賀委員 どうも了解できないのです。使用権というものは財産権でしょう。それがたとえば二つ以上の事業者がこれに負担をする場合においては共有の持ち分になるのです。その場合に農業関係は、経費を負担しても持ち分にあずからないのですよ。共有する使用権に対する持ち分にあずかれないという点はどうしても理解ができないのです。ですからこういう十条を無理に入れる場合においては、やはり使用権者して公平に設定してやるとか、そういうことをする必要がないとすれば、十条の規定は不必要であって、九条の規定による政令とかなにかを十分に運用できるようにすれば当を得た負担というものを受益者から取ることも可能になると思うわけです。ですからこの十条というものは、どうも法律の精神からいっても当を得ないと思うのです。この点に対しては、大蔵省としてもやはり相当の意見をここに加えていると思う。端的に言えば、建設省農林省は、こういうものは十条がなくても九条の規定運用できるという判断を持っておったかもしれませんけれども、大蔵省が強い意思表示をすることによって、あるいは十条が生まれたかもしれないと、われわれは推測しておるわけです。そういう経緯はないですか。
  154. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 使用権設定の点につきましては、正直に申し上げまして大蔵省として特にこうしなければならぬというほどの積極的な感じを持って法文の協議に当ったわけではないのであります。大蔵省といたしましては、御指摘のありました九条の規定はございますけれども、今回特別会計を作りまして工事の促進をはかる。ただ一方従来間接使用ということで、今まで灌漑関係に対して受益者負担を取っていなかったのでありますけれども、先ほど御説明いたしましたように、農林省で行なっておりまするダム工事とのバランスを考えまして、この際十条の規定を入れることが適当ではないか、かように考えた次第であります。
  155. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は結局建設大臣農林大臣出席を願わないとけじめがつかないと思うのです。ですから最終的には農林建設大臣出席を得てそうして明快な納得のいくような答弁を願うということにして、この点に対する十条関係の問題点に対しては一応私の質問を保留しておきたいと思います。  次にお尋ねしたい点は、結局この法律規定によりますと、農業者はダム使用権者としての資格を全く持つことができないということになりますと、建設大臣水利権に対する処分規定とか、そのほかいろいろな規定の場合においても、先ほど同僚の足鹿委員が言われたように、直接灌漑用水関係の立場にある水利権者の発言の場所というものは非常に抑圧されて、直接発言する機会というものは全然与えられていないわけなんです。ですからその水利権が既得権として現存しておる以上、このダムの操作の場合においても、建設大臣権限である水利権処分のような場合においても、やはり農民の意思というものは十分反映できる機会を与えておく必要があると思いますが、その規定が明確でないわけで、そういう点に対しては建設当局としてはどういうお考えを持っておりますか。
  156. 山本三郎

    山本政府委員 このダム水利権処分につきましては、従来はなかったのでございますけれども、関係行政機関の長に協議をいたしまして、その機会に十分そういう点の意見を反映させるように、協議をととのえてやるということは先般御説明申し上げた通りでございまして、それで十分反映させ得るというふうに考えております。
  157. 芳賀貢

    芳賀委員 これは今後の善意な運営によって遺憾なきを期せられるというそういう確信があるわけですね。
  158. 山本三郎

    山本政府委員 そういうことでございます。
  159. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、これは結局灌漑用水関係建設費の一部を負担させられた、しかしこのダムの特別用途がたとえば発電等に用いられている場合に、発電に流水することによってその下流における用水の水温が非常に低下することが現実の問題として起きている。水温の低下というものは結局水稲等の農作物の成育とか収穫に大きな影響を持つわけです。せっかくこの法律規定によって命令で建設費の一部を負担させられて、流水がいろいろな目的に供せられることによって、水温が低下して収穫に損失あるいは悪い影響が生じたという場合のよって来たる損失というものは当然補償しなければならぬと思うわけなんです。この場合はそういうことはすでにもう予測されることなんですから、たとえば当初の基本計画等の策定の場合においても、そういうことは一つの問題として計画の中へ取り入れられることになると思うのです。そういう影響に対する解決の方途というものは、この法律の中にはあまり明記されておらないのですが、そういう事態が生じた場合においては、どういうような処理をするか、その点はいかがですか。
  160. 山本三郎

    山本政府委員 水温の問題でございますが、この点は非常に重要な問題でございます。従いまして、それに対する方策といたしましては、従来施設によりましてできるだけ暖かい水を下流に放流してやるというような方法をとることを考えまして、相当のダムにつきましてそういう施設を作っております。うわ水を取るような施設をやっております。それからそれによってもどうしても被害を生ずるような場合には、これは一般の補償の問題といたしまして解決しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  161. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、このダム使用によって生ずる水温の低下等の場合、水温を流水以前に復元させるための、元の温度に直す場合の施設はやはりダム建設の付属的な工事として同時に行うという意味ですか。
  162. 山本三郎

    山本政府委員 それが発電のためにどうしてもやらなければならぬということになりますと、発電の施設としてやります。どういう金でやるかという問題は別でございますけれども、ダムを作ったために必要であるならばダムの付属施設としてやるわけであります。
  163. 芳賀貢

    芳賀委員 そういう点はこの法律の中にも何ら明記されていないのですが、それは何を根拠にしてそういうことを行われるわけなんですか。
  164. 山本三郎

    山本政府委員 基本計画の際にそういう点が必要とある場合も生じてくるわけでありますが、そういう点につきましては各省とも十分協議いたしまして従来におきましてもそういう施設を入れている例がたくさんあるのでございますので、そういう例にもならいまして必要な施設は入れていきたい、こういうふうに考えております。
  165. 芳賀貢

    芳賀委員 考えておると言っても、この第四条の第二項には、こういうような事項をきめなければならぬということが列挙されているでしょう。これはやはり重要な一つの項目だと思うのですよ。一から八まで見てもこれは何もないじゃないですか。もう少し法律の上に立った明確な根拠というものがなければ、補償しますとか、何とかしますとか、あるいは付属施設としてそれを建設しますということを言っても、これはそう思ったけれども、できなかったというようなことにもなる場合があるのです。ですからその点は法律上の不備であるかどうか、その点についても意見を承わっておきたいのであります。
  166. 美馬郁夫

    美馬説明員 それでは法律的に申しますが、まず基本計画の場合でございますが、第四条に基本計画内容に具体的な問題があります。この内容の場合にいろいろ問題になりまして、そういう代替施設をやるとかいうような点はここのところでもチェックできますし、これは計画自体がそうでありますと同時に、関係各省協議して意見を聞くという建前になっておりますから、この計画の段階においてまずチェックできると思います。それから第三十四条がございますが、建設大臣権限、これはダム使用権を与える場合に並行してうらはらの水利権を与える場合でありますが、たとえばこれは発電の水利権を仮定するといたしますと、そういう場合に電力会社に対して、下流のそういう既得の灌漑に被害を与えないように代替施設をするなり補償をやれということを水利権の条件処分としてはっきり付することになっております。従来もそういう処分をやっているわけでございますが、この三十四条によりまして十分保護できるのじゃないかというふうに考えております。
  167. 薩摩雄次

    薩摩委員長 ちょっとお諮りいたしますが、昨日農林水産委員長と私と相談いたしまして、本日の連合審査会は午前九時から十時半まで、こういう約束で開会したのでございますが、もうすでに十一時四十五分になっておりますし、今度は建設委員会がそのあとで十時半から十二時までやる、そういう話になっておるのですが、非常に時間もたちまするし、連合審査会はきょうの分はこれでやめたいと思いますが……。
  168. 芳賀貢

    芳賀委員 たとい一時間半という制約が委員長同士であっても、私の質問に対して明確に納得のいくような答弁が行われれば、三十分でも終るのですよ。たとえば第十条関係の問題についても幾ら私が問題点を指摘して政府委員答弁を求めても、その線からはずれた答弁を繰り返しておるにすぎないことは委員長も御承知の通りなんです。そういう迂遠な答弁をする場合においては、時間が制約してあるとしても、時間を全部政府当局の拙劣な答弁に食われてしまって、こっちの方の質問者の必要な質問ができないということになるわけです。これはやはり委員長の善良なる御判断に基いて、どっちが時間を食っておるかということを適切に御判断下されば、無理に私は時間つぶしに質問を続けておるわけじゃない。  なお、この法案に関連して、今後この法律に基くダム建設の場合の水没地の補償等の問題も、やはり基本計画策定の場合の重要な前提の問題になると思うのです。そういう点は先ほどの水温上昇の施設以上に大きな問題であると思いますが、これらの点に対しましても今日までダム建設の問題とからんで、いつも水没地の補償問題等はやかましく取り扱われてきたわけですが、この機会に、この法案に基くダム建設に伴う水没地補償等の問題に対しては、明確な根拠を持って、自信のあるような態度で臨むことができるかどうか、その点を具体的にお伺いしたいと思います。
  169. 薩摩雄次

    薩摩委員長 委員長の善良な見解と言いますが、善良か不善良か知りませんが、委員長の見たところでは見解の相違だという感じがしておるのです。(「いや、違います」と呼び、その他発言する者あり)これは私の感じです。それで連合審査会は一応これでやめまして、あとは両委員会理事の間で……(芳賀委員「今の私の質問に答えて下さい。」と呼ぶ)先に委員長が諮っておるときに芳賀さんが御発言になったのですから、質問と認めません。  それで両方の理事の間でこれからよく相談いたしまして、この連合審査会を続行するか、あるいはどうするかということは……(芳賀委員「今の水没地の補償問題は大事だと思うのですが、政府の答弁を求めます」と呼ぶ)ちょっと待っておって下さい。——質疑を続行いたします。芳賀君。
  170. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、本法案に基くところのダム建設をやる場合の水没地の補償問題は、これは重要な問題となるのであります。これらの水没地の補償関係の点も、この法案を見るとあまり明確になっていないわけですね。ですから、これはこの機会に建設当局から明らかにしてもらいたいわけです。
  171. 小沢久太郎

    ○小沢政府委員 この補償の問題につきましては、基本計画を作る際に私よく連絡してやっております。それから代替地をつける場合も、相談してどうするかということをきめたいと思います。それから各地のいろいろな補償につきましては、相談の上基準を作って、その基準に従ってやりたいというふうに考えております。
  172. 芳賀貢

    芳賀委員 この補償問題は、御承知と思いますけれども、今までも農林、通産、建設各省においてもこの補償に対する態度等については必ずしも意見の一致を見ておらないわけですね。見解の差というかまだ一致を見ていないと思うのです。ですから今度の場合にはやはり関係機関の長の協議を経てということになっておりますので、補償問題に対する態度の統一というものは非常に重要な点だと思う。ですからこれはやはり先ほどの覚書とかそういうものにも内容は取り上げられてあるかもしれませんが、そういう取扱い上の関係機関相互における統一された見解とか基本的なものがあればこの機会に明らかにしてもらいたいわけです。
  173. 山本三郎

    山本政府委員 ただいまの点につきましては確かに事業別によりまして補償の基準などがまだ非常に変っておる段階でございまして、これらにつきましてできるだけ早く調整をとらなければならぬような段階であると思います。建設省の内部につきましては、一応建設省の直轄工事につきまして補償基準を作って、この基準によりて実施しておるわけでございますが、それにいたしましてもなお今後各省意見も聞きまして改訂しなければならぬような点もございます。従いましてこの多目的ダム法によります多目的ダムばかりでなく、河川工事にいたしましても、砂防工事にいたしましても、あるいは私の所管ではございませんが、道路にいたしましても、補償問題は全般的にあるわけでございますから、それらの問題につきまして総合的にその基準をよく調査研究いたしまして、改訂を要するような点もございますので、それを研究し早く立案いたしまして、その線によってやっていきたいというふうに考えておるわけです。
  174. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで現実の問題として、たとえば農林建設両当局の間において問題となるような点はどういう点ですか。これは農林建設両当局からお聞きしたい。
  175. 山本三郎

    山本政府委員 たとえば農地を取り上げられた人がほかに行きましてそれだけの同じような農地が得られない、従いまして、農家の方がすぐ商売をやるわけにいきませんし、結局代替地を得ないと生活が直ちにはできないというような問題が一番大きな問題のように考えております。
  176. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 そこにおる農家につきまして、公益上の見地と水没する農家、農地との関係でどうしてもそこでなければならぬかどうか、場所が適正であるかどうか、それから補償の基準が、農地法の関係、また農業者の諸君の関係もある、その場所を離れられた場合の生活保障等の点もありまして、いろいろ考えまして妥当であるかどうか、また農家である場合には、金銭補償ばかりでなしに、かえ地を与えて、俗称でいいますと現物賠償ですが、農家が土地をかわっても農家として経営が続けられることが望ましいという見地で措置ができるかどうか、そういう点が非常に重要な問題であると思います。
  177. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私が質問を予定しておりました重要な事項の大部分は同僚の芳賀委員から質問が出ましたので、あと残りました二、三の点について御質問申し上げます。  さっきから問題になりましたダム農業に対しまする被害のうちで、下流の用水が低温になってそのために稲作等に被害がある、これについては具体的には結論は出ないがある程度は考えておるということですが、農業に対する被害の程度をどの程度にごらんになっておるかという点であります。特に私が指摘いたしたいのは、ダムができます場合にはよほど施設その他について考えませんと、下流の水温の低下が相当にひどいものがある。その結果例年にわたって水稲等に大きな被害がくる場合もなきにしもあらず、これが一つです。それと同時に特にこういう多目的ダムで貯留水を工業用水もしくは水道用水等に多量に使いまするような場合は、どうしてもそれだけ下流の水量が少くなるわけです。従って下流にありまする農業用の施設というものが非常に大きな被害を受ける。これは平面流量が少くなると河床や川の姿が相当にひどく変ってくる。そういう場合に農業関係の、特に用水の施設が大きな支障をこうむる場合が多い、こういう点も十分考えておられるかどうか。もう一つ上流についてもあるわけです。これはまだ科学的にはっきりしたデータが出たわけじゃありませんけれども、たとえば吉岡農学博士の調査等によりますと、大体において上流に大きな貯水池ができた場合においてはそこに霧が起る、あるいは空気における湿気がよけいになる、そういうことから、樹種によりましては森林の樹木の成長に大きな影響がある。あるいは湿度が増すことによって例年にわたって作物に非常に大きな被害をこうむる。さらに上流の水位がずっと上りまする関係で、排水が非常に大きな支障を受けるという場合が相当ある。きょう私はその資料を持ってくるのを忘れてきたので具体的に質問ができないのですが、こういう問題についても十分考える必要があるのではないか、こう思うのです。そういう点をいろいろ考えた場合においては、どうしても第四条の基本計画のうちに、これらについての補償なりあるいは施設補償なりについてはっきりした法文の根拠を置くことが非常に大事だと思う。それでないと結局水かけ論になって、力の強い官庁なり何なりに押しまくられて、農民の泣き寝入りに終っておる場合が多い。この点についてさっき御答弁がありましたけれども、われわれはまだあれでは納得できない。こういう点についてどういうふうに考えており、今後どういうふうにこれに対処しようと考えておるか、特に基本計画等についてこういう点をはっきり規定する必要があると思うが、この点についてもう一回あらためてお伺いします。
  178. 山本三郎

    山本政府委員 ただいまの御質問でございますが、水温の問題につきましては先ほど本御答弁申し上げましたが、それらの点につきましてはいろいろと施設をやっておる例もございます。それからこれは非常にむずかしい問題でありますので、関係各省と学識経験者並びに電力会社等から委員が出まして、水温調査会というのができておりまして研究中でございます。農林省におきましてはある程度の資料はあるようでありますが、この委員会がありましてこれで目下研究中でございますので、その結論も非常に参考になることと思っております。それらを参考にいたしまして、こういうふうな基本計画に入れなければならぬものは当然入れるべきものであると私は考えております。  それから上流で水をとったために下流の水利権を侵害するというような問題でございますが、これは河川法処分で最も重点を置いている点でございまして、それにいたしましてもなおいろいろ条件をつけ河川管理者といたしましてはそれらを監督しておるわけでございますが、それにいたしましてもあとで出て参りまするダムの上流の排水問題等におきましても同じように方々で問題は生じておるわけでございます。しかも私どもといたしましてもお互いの水利権調整につきましては河川法でいろいろ条件をつけまして、それでもってなおできない場合には、現地の知事を指導してその調整に努力しておるわけでございます。また上流の排水問題等につきましても、県がいろいろその処分方法を考えるわけでございます。施設をやってそれを防げる場合あるいは実際の被害が生じた場合に金銭の補償をする場合等がございますが、県にいろいろと調査をさせますし、またどうしてもいかぬ場合には建設省が直接それらの資料をもとにいたしまして解決に努力しておるというような状態でございまして、なお今後におきましてもまだ問題が残っておる分がたくさんございますので、それらにつきまして速急に何らかの解決をしたいというふうに考えております。
  179. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その次に第十条についてもう少しお聞きいたしますが、この十条を読みますと、さっきから基本的な問題についてはいろいろあったのですが、「専用の施設を新設し、又は拡張し」というのは、基本的なダム施設以外にこういう専用の施設を新設または拡張する、この経費は農民が負担するのですか、あるいはダム自体が負担をするのですか、この点が一点です。これとその次の「多目的ダム建設に要する襲用につき」という条文の両方を負担するのか。「専用の施設を新設し、又は拡張し」この費用は農民が負担をして、しかもこれから新しくもし水路を引くというような場合にはもちろん農民の負担になるでしょう。しかしダムができた場合に新しく水路を新設しなければ従来の水利権の確保ができない、あるいはさらに従来の水利権の水利に多少のプラスになろうとも、ダムができたために特別にそういう施設をしなければならぬ場合、いろいろあると思う。そういう場合のこの経費の負担はどちらがするのですか、この点をまず第一に明らかにしてもらいたい。
  180. 山本三郎

    山本政府委員 ここに書いてありますように、十条の「専用の施設を新設し、又は拡張して、」という文は、この多目的ダムの費用には入らぬわけでございまして、土地改良区が取り入れ口の改良をやったりあるいはその増強をやったりするのをさしておるわけでございます。
  181. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうしますとなお問題が具体的になると複雑になってくる。専用施設や何かを直接ダムに結びつけてやる場合もあるでしょう。しかし下流とか上流においてこういう場合が出てくる。さっき言ったような平常流量が少くなるとか河床が変るとかあるいは川のなりが変ってくるというようなことから、どうしても下流ではこういう施設を新設もしくは拡張しなければならぬような事態が多くの場合に起ってくる。その経費は農民が負担して、しかもそれに対しての補償については何ら根拠はない。そうした上に持ってきて、今度はダム建設については負担金を出せ。しかもそれでダム使用権というものは認めないということになると、ますます農民は踏んだりけられたりということにならざるを得ない。この点についてはどういうふうに考えておるか。
  182. 小林泰

    ○小林説明員 ダムの総体の費用につきまして第七条による費用配分をいたします。つまり全体のダムの工事費のうち、何分の一を農業関係が負担するか、農業関係としてアロケーションをするかという作業を第七条に基いてやるわけでございますが、その際専用の施設を含んでおります場合に、基本計画の際に、そのダムに関連しましてそういう専用の施設を設けて、ある特定の地域に特定灌漑用水を補給する。そのためにダムに幾ら水をためなければならないというような基本計画がきまっております場合には、全体の専用施設とダムの水による経済効果と両方合せまして費用配分を算定するわけでありますが、結局全体としてのダムの分担及び専用施設の費用と両方合せまして、農業の効果と十分見合った規模で計画が定められるわけであります。従ってダムの負担をいたしましても、農業の方が特に経済的に成り立たないというような問題はないわけでございます。それから下流の河床の変化その他で頭首工あるいは取入口というようなものを改修する必要があるような場合、そういったようなものは機能障害を排除する意味のものでございますから、ここにいう新築、改築とは考えておらないわけでございます。
  183. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうしますと十分の一というのは農業関係の専用施設、そうして多目的ダム建設に要する経費というものを合算したものを基準にしてやるのですか。さっきの局長の御答弁ではそうではなくて、専用施設だけは農民が別個に負担をするのだ、そうしてダム建設費だけはアロケーションによってやるのだ、こういう御答弁だった。あなたの御答弁とはまるで違う。
  184. 小林泰

    ○小林説明員 私の申し上げましたのは、ダムの全体の費用のうち、どれだけが農業関係の負担となるかということを算定する際の一つの方法として、下流の専用施設の費用もあわせて考慮し、全体の効果も合せて算定するわけでございます。その関係で下流の専用施設とダムの持ち分との関係がついて参るわけであります。それで局長の御答弁のように、専用施設については関係の土地改良区の仕事あるいは土地改良専業による仕事でございまして、ここにいう多目的ダムの仕事とは直接関係はないわけでございますが、費用の配分に際して間接的関係がついて参るわけでございます。それで専用施設については、土地改良事業による地元負担が農林省関係としてやられるわけでございますが、その方でかかって参る。それからダムの方につきましては、たとえば全体のダム建設費を一〇〇%といたしまして、そのうち治水の分担が五〇%と仮定いたしまして、灌漑用水関係が三〇%と仮定いたします。専用の施設に関係のあるものが三〇%のうち二〇%である、全体の二〇%であるとしますと、その二〇%についての一割、つまり全体についての二%が受益者の負担ということになる。そういう関係でその三〇%を求めるときに専用施設を含んだ全体の投資可能限度というものを求めまして、それから専用施設に要する費用を差し引いてダムに経済的に幾ら持てるということで今の三〇%がきまって参る、そういう関係になっておりますので、局長説明とは別に食い違いはないわけであります。
  185. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 どうもその点がはっきりしない。そうするとかりにたとえば占用の水なら水、農業関係に二〇%なら二〇%、こう見て、そうして費用区分のアロケーションをきめる。その場合に専用の施設に使った、農民が出した経費はどういうふうな比重でやるのですか。どういう面においてアロケーションの修正をするのか。この点を聞いておるわけです。
  186. 小林泰

    ○小林説明員 これは実例について御説明申し上げた方があるいはおわかりになるかと思いますので、ダム費の負担割合算定表について申し上げたいと思います。ここに治水農業、発電と三つに区分してございますが、初めのaの身がわり建設費と申しますのは治水農業、発電がそれぞれ単独の目的を持って、この事業と同じ効果をもたらすような施設をした場合の費用でございまして、次の妥当投資額というのはそれぞれの年間の経済効果を資本還元して求めた、いわゆる経済的な投資可能限度と申しますか、そういった性質のものでございます。それからCは上の身がわり費か妥当費のどっちか少い方をとりまして、それをあげてございますが、これがそれぞれの目的に対して投資し得る最小限度の金額であるということでございます。それから専用の施設費というのがdにございますが、農業関係に五億円と書いてございますが、これはいわゆる下流の水路、十条にいう専用の施設でございます。水路等の仕事でございます。それから発電の方に書いてある専用の施設は取入口からトンネル、発電所、放水路等に至ります、いわゆる発電専用の施設でございます。それでただいまのCの投資可能限度から専用施設を差し引いて、それで求められたcマイナスdというもので合計四十九億九千万という数字が出まして、この中のそれぞれの割合、つまり治水については六二・一%、農業については一五・〇%、発電が二二・九%というような持ち分の費用の所要経費の区分割合が出て参るわけであります。それで次のダム費は四十五億五千万円、つまり四十九億九千万かけていいものが、多目的ダムであることによって四十五億五千万で安上りにできるわけでございます。それに今の計数をかけまして、四十五億五千万のうち、持つ費用の配分をしますと治水関係では二十八億何がし、農業関係では六億八千万、発電関係では十億四千万というようなふうに区分が出て参る。それでここにいいます第十条の受益者負担は、この六億八千万の一割になるわけでございまして、灌漑の負担金は、この一番下に書いてございますように六千八百万円ということになる。それから専用の施設の合計につきましては、これは一般の農林省で所等しておいでになる土地改良事業によって、この事業が県営であるかあるいけ国営であるかによって違うと存じますが、それに応じて土地改良法による地元負担が別にかかって参る。以上でございます。
  187. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そこで今の専用施設について、なおしつこいようですが聞きますが、そうするとこれは下流等においてこういう専用施設を、この例ですれば五億何がしのものをしなければならぬ。それはこの施設をしなければならぬ原因というものは、上にダムができれば、どうしてもさっき言ったように流量が少くなる。多目的ダムの場合に特にそうです。あるいは河床が変るとか、あるいは河心の状況が変ってくるというようなことで、ある程度の施政をしなければならぬ場合があるわけですね。それを農民が負担しなければならぬ。それには農林省の方としては、この点についての補償をはっきりする必要がどうしてもあると思うのです。補償の原則というもの、この点はどうかということを建設省の方にお聞きをいたしますが、同時に農林省に対しては、そういう場合においてはかりにダム、従つてこれは具体的には建設省だろうと思いますが、建設省から補償が取れない場合においては、必要な施設に対しては国営、県営あるいは団体営等によって、いわゆる普通の場合と同じようにこれは補助金をつけるのかどうか、この点をお聞きしておきます。
  188. 山本三郎

    山本政府委員 ただいまの問題は、ダムを作ったために水量が減るというお話でございましたけれども、もと通りの水量はそのまま確保しておりまして、ダムに貯留した水がそれ以上にいった場合についての負担金でございます。それからダムを作ったために下流に河床が低下したり、あるいは水が取れなくなったというような場合には、それは一般の補償とほとんど同じでありまして、工事をやる場合には付帯工事ということでやりますし、それから一般的の補償の問題には、ほかの場合と同じように補償で解決しなければならぬ問題だ、こういうふうに考えております。
  189. 安田善一郎

    安田(善)政府委員 先ほど建設省から御説明がありました農業用の負担すべき費用という点につきましては、建設省ダムの新築によりまするところの水量増を前提にしてお話しいたしております。またそれが目的で作られることが大部分と思います。その場合は先ほどの御説明の通りであると思います。久保田委員の御質問は、ダム建設に伴って水量の減があるとか、水温の低下があるとか、あるいはそれを維持するために新しい施設の工事をする必要がある、その費用の負担が要る、こういう場合の両極端のことをおっしゃっておるわけだと思いますが、建設省の御説明は、原則として取りまして、その負担すべき費用として計算をいたす。これはその計算そのものは負担させるわけじゃございませんから、計算をする際にも、被害を受けたとして新設工事をする必要もあるが、損害を受けるという場合は差し引きまして、差し引いたものが受益である、受益の範囲内において受益者の負担がある。これは九条でも十条でも、同様に解釈すべきものと思っておるのであります。その際にどういう補償をすべきかは、第一段は補償すべき被害が明確である限りは、また相当因果関係にありと認定できる場合は、地元の意見を尊重しまして企業者に負担をしてもらうべきものと思います。しかし多目的ダムのこの法律に基く建設大臣の新設を行う工事は建設大臣というわけでありますが、政府でございますから、政府が補償する際に適当と思う相談が成り立ちますれば、農林省の工事あるいは国営の工事あるいは団体、補助事業の工事、こういうものにおいて補助をする、こういうことになると思います。なお、農林委員会からすぐ来るようにという委員長のあれですけれども、実は出席させていただきたいと思いますが、農業用は河川の調節用の用途とともに、多目的ダムの施設につきましては建設大臣ダム施設は所有して、従来のように各用途のものが共有するものでないことにこの法案はなっておりますので、特定用途である発電、水道等の用途の使用権が設定せられるけれども、これは施設の共有権はない。施設の所有権は国が持っておる。そこで使用権農業が持たないという考えは、河川とともに政府がいわば特定用途の場合の使用権よりもっと強い所有権を持っておる、こういう考えで私どもはおるのであります。費用分担については、九条、十条等がその冒頭にカッコして見出しがついてあって、「受益者負担」と書いてある項目の中の条章ですから、条章の文体の書き方等については見解の相違が政府と御発言になった委員の方にあるかと思いますが、水利権を確保すれば農業のために政府がダムの所有権を持って、他用途の使用権に当るものより強く保護している、こういうふうに農林省は理解しております。それに照応しまして小林開発課長からも説明がありましたが、死に水の上に灌漑用の水量を予定しておって、それをまず確保してその上に使用させるために貯留する水の使用権を他の用途に与える、与えるかわりに費用を最初から負担させる、農業はそうしない、こういう関係もありまして、使用権の条文にも一定の地域に一定の量を——水というのは死に水ばかりではありませんで、河川調節及び農業用の分量を確保したほかのものの分量だ、こういうものに工費負担をしてもらう、こういうように考えております。
  190. 薩摩雄次

    薩摩委員長 久保田君にお諮りいたしますが、今農林水産委員会が開かれまして自治庁の長官が来ているので、農地局長にすぐ来てもらいたいという要求があるのですが……。
  191. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 よろしゅうございます。
  192. 薩摩雄次

    薩摩委員長 それからさっき、ここで両党の理事の諸君とお話ししたのですが、零時三十分までということでしたから……。
  193. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もうあと一問です。時間がなくて今のところまだはっきりいたしませんけれども、この次の機会もあろうと思いますから、今の点については一応保留いたします。  もう一点だけお聞きいたしますが、やはりこの第十条の十分の一という基礎ですね、これをどこから出してきたかということであります。これは経済効果、もう一つは費用の点と、それからもう一つはこれの効果を得る地域の負担能力というような点もある程度勘案されて作ったものかと思いますが、その根拠の御説明をいただきたいと思います。
  194. 山本三郎

    山本政府委員 一割といたしましたのは、先ほど申し上げましたように、農業効果から出て参ります負担金を出しまして、それの一割に該当するわけでありますので、もちろん受益の範囲でございまして、そのうちの一部分になっておるわけでございます。それからそれじゃなぜ一割にしたかという点でございますが、先ほども御説明いたしましたように、土地改良事業等におきましては、二割程度の負担をさせておるという点がございます。それじゃそれより低いじゃないかというお話もあると思いますけれども、このダム多目的ダムでございまして、先ほどもお話もございましたように、異常の渇水があったような場合には自分だけで、灌漑用水だけで持っておるようなダムとは違いまして、多少の調整を要するような場合も考えられないことはないのでございます。そういう点から、ほかの事業との関連もありますけれども、それより低い、半分くらいのところが適当ではないかという点から一割というのをきめたわけでございます。
  195. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 十分の一というのは一応の説明でわかりましたが、もっと問題が具体的になってきますと、反当どのくらいになるかということが一番問題です。これの決定によっては、こんなものをやってもらっては迷惑だということが農家の場合出てくる。そこで問題はその調整のために以内という言葉が入れてあるのだろうと思う。この反当負担額はダムの大きさや経費のかかり方によっても違うし、受益面積によっても相当違ってくるからどこかに基準がなければならぬということです。この反当の負担額はどのくらいのものを予定をしておるのか、従来の実例から見てどういうふうにこの点がなっておるのかという点を明らかにしてもらいたい。
  196. 山本三郎

    山本政府委員 今お手元に差し上げてあります資料がございますが、先ほど御説明申し上げましたもう一枚の資料でございます。これはそれに書いておりますように、美和ダムというのと市房ダムという二つのダムでございますが、これに対しましてこれだけの負担金を直ちに取るということではございませんが、このダムにつきまして考えられておるのがございますので、これによって御説明申し上げまして御承知いただきたいと思います。開発課長からこまかい点を御説明申し上げます。
  197. 小林泰

    ○小林説明員 それではお手元の表を簡単に御説明申し上げます。両ダムは特別会計になってこの法律が適用になるわけでございますが、その最初に書いてございますのはダムの総体の費用でございます。美和ダムは二十七億五千万、それからこれのうち灌漑の地元負担が三百三十万でございます。それから建設期間中の利息、これはダムの工事が完成いたしましてから五年間は灌漑の施設がまだ未完成であると仮定した場合の金利として工事期間中の利息を考えますと、六分五厘としまして百八十万になるわけであります。従いまして三百三十万と両方合せますと五百十万、これが年賦償還を十カ年でするとしますと、毎年七十万二千円になります。灌漑面積が二千五百十二町歩でございますので、反当の年賦償還額は二十八円ということになります。それから市房の場合には四百四十円、この両者についてこういうような開きがございますが、それはそれぞれの水の補給によります経済効果が著しく違う関係からこういうふうに出てくるわけでございます。すなわち、美和ダムにおきましてはその効果が反当百三円、それから市房におきましては反当千六百九十六円という関係がございますので、それに応じた反当の負担になって参るわけであります。これは一例でございますが、こういうことでございます。それから先ほどの表でちょっと訂正を申し上げますが……。
  198. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今のは実例ですが、こういう場合の基礎の原則はどうかということを聞いておるのです。この表はもらったんだからわかっているんです。原則はどうするかということを聞いておるわけです。
  199. 山本三郎

    山本政府委員 先ほどから御説明申し上げたのでございますが、下流で施設を作ったり新設したりして農業用水を多く取ろうということで水利権を与えようとする場合には、基本計画で、そのために河水量をふやしてやり貯水量を確保してやる場合におきましては、農業で持つべき分の費用配分のうち十分の一は地元で持ってもらいたい、こういうことであります。しかもその分は立てかえで工事をやっておきまして、工事を促進して、できるだけ効果を早く上らせるように処置いたしまして、負担金は効果が発生してから年賦償還をお願いしたい。しかも今十二ダムについて考えますと、年賦償還の額は、その毎年々々上る額の二〇%くらいに該当しております。
  200. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点がはっきりしない。これはいろいろあります。大体土地には水の入り方や利用の仕方によっていろいろ違いますけれども、大体今の状況で、農家の場合においては負担の限度、負担能力というものがあるわけです。そういうものとにらみ合せてどの辺に目安を置いていくかということを考えるべきだと思うのです。それと、これは十年間の年賦なら十年払えばあとはもう払わないのでいいのかどうか、一切の経費はかからぬのかどうか。この点を明確にしてもらいたい。
  201. 山本三郎

    山本政府委員 十年間で年賦償還いたしますと、将来の維持管理費等はかからないのでございます。
  202. 薩摩雄次

    薩摩委員長 佐竹新市君、簡単に。
  203. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 時間の関係上私は簡単にお聞きします。  きょう法案内容については皆さんから十分言われましたから申し上げません。しかしこの多目的ダムにしろ一般のダムでありますのに、それによって受ける灌漑用水関係につきましてはきわめて重要視しておいでにならないのです。ダムを作り、これを管理するということはそういうことだけであって、これから受ける農業灌漑用水に対する考え方というものが、建設省農林省とは違いますからあまり重要視されておらない。たとえば学者が言うところによりますと、ダムを作っても、ダムが土砂くずれや何かでつぶれてしまったらそれが農業灌漑に対する影響はどういうふうになるか、ダムにたまった水——雪解けの水あるいは雨水等がたまったダムの水の水温、上層の水温がどうで、湖底の水温がどうで、それが灌漑用水になってきて、それがわれわれが毎日食べておる米の稲作にどういう関係をするか、こういうことにまでやはり考えを及ぼしてもらわなければならぬ、すなわちダムを作ることも農業政策と一貫されて考えなければならぬ。こういうことは建設省のお役人の諸君は一つも考えておいでにならない。たとえば春夏秋冬のそのダムにたまった水が流れてきて、その水の温度が下流におけるところの農業川水にどういう影響をするか、あなた方は農業用水がどのくらいな水温を保っておったら稲作に適当であり、どのくらいな水温を越したならば稲作に適当でないか、どのくらい水温が冷却して流れていったならば稲作は非常に悪くなるか、こういうことを専門的に考えておいでになりますか。おいでにならぬのでしょう。考えておられるならば、そういうことを御答弁願いたい。
  204. 山本三郎

    山本政府委員 ダムを作りまして、それが埋没してしまって効用を果さなくなるのじゃないかというような点が第一点だったと思いますが、その点につきましては、従来のダムにおきまして、作って、埋まったという例もございます。しかし、この私どもの計画しておるダムにおきましては、従来の統計からいたしましてダムにたまる量を想定いたしまして、それは除外した貯水量を利用しようということで、洪水調節なりあるいは利水に使おうということで計画しております。  それから、水温につきまして、農業関係に影響するということは、私どもといたしましては専門家でないのでございまして、自分ではなかなか判定できない問題でございますので、従来におきましても、農林省の方からいろいろと資料をいただいたり、あるいは先ほども申し上げましたような水温の調査会というようなものを設置いたしまして、学識経験者なりあるいは関係各省が入りまして、その方途を研究するということになっておりますし、また今回の処置におきましても、基本計画なり作る際に、農林省の御意見も十分聞きまして、その点につきましても協議をととのえましてやっていきたいということでございます。なるほど建設省が全部知っているわけじゃございませんか、この点につきましては、十分農林省の御意見も拝聴いたしまして、計画に取り入れていきたいというふうに考えておるわけであります。
  205. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 だから私は言うのですよ。そういうことをよく考えていただかなければならぬ。ダムをこしらえて、ダムの湖底の水をとる場合には稲作にどういう影響を与えるか、取水口か上層部にあってどのくらい、中層部にあってどのくらいの温度になるか、そういうことは常識なんです。そういうことはやはり多分に関連性があるわけです。今日まで電気事業者は電気をとるために電気の水のことばかり考えて、下流で影響する農業の稲作のことを一つも考えていない。これが日本の官僚の悪いくせなんです。だから百姓の騒動する水のことに対してはあまり触れぬ方がいい、こういうことでもって、取水口でも下の方に置いて、ずっとそのまま流すということになると、これは非常に冷却された水が流れるということになる。そうなればわが国の米の収穫はどのくらい違うかということです。農民は、水は昔からやるものだから、そんなことは研究しておらぬです。しかし、今日工業用水が必要になってダム建設される、電気が必要になってダムが作られるということになって参りますと、だんだんそういうことが必要になってくる。わが国の稲作に大へん影響するということは、高い米を外国から買わなければならぬということになるわけです。だから、水をとって流す口をどこにつけるか、どのようにするか。百姓が一番水の必要な夏のときにはどの辺からとることが一番適当か。あまり高い温度をとると、あまり熱い水に当ると稲のできが悪い。あまり底のつめたい水をとると稲が枯死してしまう。こういうことが非常に影響するわけです。こういうことで、ダムを作るにつきましても、取水口の関係農業灌漑用水に重大な影響をするわけであります。そういうことを十分に研究してやっていただかなければならぬ。これは補償を求めるというけれども、農民は補償の持っていきどころがないのです。そういうことを言ったならば農民は大きな騒動をすることになるわけですが、農民には御承知のように労働組合なんかないのですから、やはり農民はただ水を使うものだという概念だけでなしに、やはり国家の方からそういうような親心を持って、ダムの管理をしてもらいたい。ダムは防災ということだけではない。もちろん防災も必要でありますが、そういうよって来たるところの影響を今後十分に考えていただきたい。このことを特に申し上げまして、質問したい点はまだありますが、大体内容については質問されましたので、私の質問はこれで終ります。
  206. 薩摩雄次

    薩摩委員長 連合審査会はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会