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1957-05-07 第26回国会 衆議院 建設委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月七日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 薩摩 雄次君    理事 瀬戸山三男君 理事 前田榮之助君    理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    荒舩清十郎君       久野 忠治君    志賀健次郎君       徳安 實藏君    二階堂 進君       山口 好一君    井谷 正吉君       田中幾三郎君    中島  巖君       山下 榮二君  出席政府委員         法制局参事官         (第一部長)  龜岡 康夫君         法務事務官         (訟務局長)  濱本 一夫君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君  委員外出席者         建設事務官         (河川局水政課         長)      国宗 正義君         建 設 技 官         (中部地方建設         局長)     中島  武君         参  考  人         (長野県知事) 林  虎雄君         参  考  人         (土木部長)  紙谷 斉治君         参  考  人         (中部電力常務         取締役)    三田 民雄君         参  考  人         (竜江村長)  木下  仙君         参  考  人         (川路村長)  今村 正業君         参  考  人         (喬木村長)  湯沢二三男君         参  考  人         (駒ヶ根市長代         理)      小出 良作君         参  考  人         (駒ヶ根下平         区長)     松崎 政嘉君         参  考  人 平沢 泰寿君         専  門  員 山口 乾治君     ――――――――――――― 四月二十七日  委員逢澤寛君、二階堂進君及び松澤雄藏辞任  につき、その補欠として仲川房次郎君、大橋忠  一君及び阿左美廣治君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員阿左美廣治君、大橋忠一君及び仲川房次郎  君辞任につき、その補欠として松澤雄藏君、二  階堂進君及び逢澤寛君が議長指名委員に選  任された。 五月七日  委員上林與市郎辞任につき、その補欠として  田中幾三郎君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 四月二十七日  建築士法の一部を改正する法律案田中一君外  二名提出参法第五号)(予) 同月三十日  県道本庄、富岡、野沢線国道編入に関する請願  (植原悦二郎紹介)(第二九二四号)  同(松平忠久紹介)(第二九四二号)  同(吉川久衛紹介)(第二九七八号)  同(原茂紹介)(第三〇一五号)  同(下平正一紹介)(第三〇一六号)  一級国道十九号線松本、長野間舗装改修促進に  関する請願植原悦二郎紹介)(第二九二五  号)  同(松平忠久紹介)(第二九四三号)  同(吉川久衛紹介)(第二九七七号)  同(下平正一紹介)(第三〇一七号)  同(原茂紹介)(第三〇一八号)  二級国道二百二十八号線白神岬石崎間整備に  関する請願平塚常次郎紹介)(第二九二六  号)  利根川の治水対策に関する請願山本勝市君紹  介)(第二九二七号)  県道秩父吉田線改修促進に関する請願阿左美  廣治紹介)(第二九七五号)  同(荒舩清十郎紹介)(第三〇一九号)  新北上川下流導流突堤設置促進に関する請願  (内海安吉紹介)(第二九七六号)  横利根川ひ門の開閉に関する請願山村新治郎  君紹介)(第三〇二〇号)  東京、成田間観光道路舗装促進に関する請願(  山村新治郎君外六名紹介)(第三〇二一号) の審査を本委員会に付託された。 五月六日  建築基準法の一部改正に関する陳情書  (第八六一号)  建設業法の一部改正に関する陳情書  (第八六二号)  県道橋梁に対する国庫補助基準の引下げに関す  る陳情書  (第八六四号)  二級国道舗装整備促進に関する陳情書  (第八六六  号)  過年度災害復旧工事に対する国庫負担金早期交  付に関する陳情書(  第九二一号) を本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  天竜川水域ダム建設による災害問題に関する  件     ―――――――――――――
  2. 薩摩雄次

    薩摩委員長 これより会議を開きます。  天竜川水域ダム建設による災害問題につきまして調査を進めます。  本日はお手元に配付してあります通り九名の参考人並びに法務省、建設省法制局等より御出席を願っております。  これよりまず参考人の方により本問題につきまして御意見なり実情説明等をお聞きし、その後質疑を行うことといたします。  なお御意見を承わりまする前に、一言参考人の方々にごあいさつ申し上げます。本日は御多忙中のところ遠路わざわざ当委員会ため出席をいただきましてありがとうございました。委員一同にかわりまして厚くお礼を申し上げます。どうか御遠慮のない御意見の開陳をお願いいたします。  なお念のため申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところによりまして、参考人が発言なさろうとするときは必ず委員長許可を得ることになっており、委員参考人質疑をすることができるが、参考人委員に対し質疑をすることができないことになっておりますから、あらかじめ御了承をお願いしておきます。  それでは天竜川水域ダム建設による災害問題につきまして順次御意見、御説明を承わります。なお時間の関係上、一人五分ないし十分程度お願いいたします。竜江村長木下仙君。
  3. 木下仙

    木下参考人 私は、門島ダム堰堤から上流七・六キロから十二キロに至る間の天竜川に沿っております下伊那竜江村村長であります。ただし私申し上げますのは、私の村に関係したことだけでなく、門島ダム被害を受けております、——ただいま町村合併によりまして一市六カ村でございますが、その関係についても申し上げたいと思っております。門島ダムができましても、私の村の最下流部に約五寸程度河床上昇がある程度だといわれておったのでありますが、竣工いたしてみますと、直後の昭和十三年以来十五年、二十年、続いて二十五年、二十八年と漸増的な未曽有の水禍に見舞われておるのであります。そしてそのつど河床上昇を来たしまして、ただいまにおきましては大体堰堤築造場所であります門島から上流約八キロに及びます地点においては河床上昇二十メートル、お手元に差し上げてございます参考写真のその一をごらん下さいますとよくわかるのであります。三つの比較写真になっておりますが、この地域におきます河床上昇を私どもは約二十メートル考えております。続いてそこから五百メートル上流の姑射橋において十六メートル堰堤より約九キロの地域であります天伯岩地籍において十二メートル、さらに十一キロ上流場所であります天竜橋においては六メートル、次いで南原橋において四メートル水神橋において三メートル、弁天橋において二メートル、座光寺・喬木村間の土曽川と小川の支流でございます合流点付近においては一・五メートル豊丘村、市田村の間にかかっております明神橋付近において約一メートル河床上昇を来たしております。これが各水害時におきましての洪水被害はますます漸増して参っております。それらの被害額等はお手元に差し上げてございます泰阜発電所水利使用期限伸長に対する訴願の中の参考文書でございます門島ダム上流沿岸被害調査書下伊那地方事務所工事課調査、これの被害総額十八億九千六百八十七万七千円という数字を出しておるわけであります。これらの被害関係いたしまして昭和二十一年に長野県知事川路村・竜江村間の——泰阜発電所水利使用期限伸長に対する訴願の五でございます。天竜川筋泰阜調整池内埋没土砂措置、このような厳達命令を出されたわけなんでございます。しかるにこの厳達命令の結論といたしましては一千三百万円というものが会社側から出されまして、これが一千万円は川路村の水制工事として使用され、残りの三百万円が天竜峡下流岩盤掘さくに使用されておる。私どもの村の立場から申しますと、この事柄のためにさらに竜江村は二十五年六月におきまして異常な災害を受けておりまして、何らの河床上昇に対しまする措置になっておらぬように思うわけなんでございます。続いて昭和三十二年に及びまして私ども関係村が何ら承知をしておりません間に、門島ダム水利使用期限伸長許可長野県知事によって出されておるわけでございます。以上申し上げました諸般の水害を漸次受け続けて参っております。私ども関係十カ村といたしましては、この水利使用期限伸長を何ら私ども地元への打ち合せもなく、さらに県としては非常に大きな災害の存在していることをよく御承知の上でありながら、何らの条件も付さず水利使用期限伸長を御許可になったということについては、私ども関係一市六カ村非常な不満を持っている次第であります。以上概略でございますが、申し上げます。
  4. 薩摩雄次

  5. 今村正業

    今村参考人 ただいま竜江村長さんの御説明によりまして、門島ダム災害状況とわれわれが訴願をせざるを得なくなったという立場につきましてはおわかりのことと思うのであります。先ほど申されましたように順次被害が増大して参りまして、私どもといたしましては死活問題になっているわけであります。ことに耕地浸水が五百町歩あるいは人家の浸水等二百十戸というような大きい災害をうけますので、訴願というところに入ってきたわけでございます。一、二回県当局とお話してみたのでありますが、そういうような河川法第十八条に基く許可が不当の行為でないというような御見解のようでございます。しかしながらそういうような河川法に基きまして許可されることは確かに違法ではないと思いますし、違法だという明文もない。河川法の十九条とか二十条というものに記されておりますところは県当局自由裁量のことなんでありまして、おっしゃる通りだと思いますが、しかしその自由裁量の裏面には公益上の判断から発電許可されてもその災害を防がねばならぬという義務が当然私はあると考えるのであります。従いましてその義務を怠られたということにつきましては、私はこれは不当の行為だといわざるを得ぬのであります。しかも現在の法解釈社会通念とかあるいは条理を尽してというふうになっております段階におきましては、不当であるばかりでなしにさらに私は違法性を多分に持っているのではないか、そう考えます。しかも三十年という長い間を許可されたこと、しかも林知事さんはすでに三期も連続知事をやっておられるのでありまして、われわれの災害についてはもう百も御承知のはずなのであります。いよいよそれを認可されるときにどうして門島ダム災害のあることを思い出して下さらなんだか、許可されるときになぜその対策をお考え下さらなんだか、そういうようなことも私どもは非常に不満であります。それからまた私の村の前村長であります安藤さんと林知事さんとはじっこんの間柄でありまして、安藤さんの顔を知事さんがごらんになれば、天竜の鬼だというふうにお考えになったと思うのでありますが、それらのこともない。それからまたこの対策を立てます上に調査、研究が一朝一夕ではできぬと思うのであります。たとえば三年かかるとしたら、再許可される三年前から着手されまして、許可のときにその条件が付されなければならぬはずだと思うのであります。そういうような自由裁量でありますけれども、処分を適正に行使すべき義務に違反するということをわれわれは考えるのでありますから、その義務違反というものは不当ばかりでなしに違法ではないかと考えます。どうぞ地元民の悲痛な叫びをお取り上げ下さいまして、地元民の救済につきまして万全の御処置お願いいたしたいと思うのであります。  以上簡単でありますが、これで終ります。
  6. 薩摩雄次

  7. 湯沢二三男

    湯沢参考人 今被害の最もひどい竜江川路村長さんからその実情について御説明がございましたが、私は方面を変えまして、実際上流における被害状況等を御参考までに申し上げまして、これに対する御処置をいただきたいと思うわけでありますが、現実の問題は計算やすべてで解決すべきものではないのでありまして、会社の方で当初計画されたのは、もちろん上流喬木村とか豊丘村、市田村等には影響がないということであったようでございますが、現実の問題としては門島ダム建設されまして非常に河床上昇して参りまして、それがため下伊那の穀倉であるというあの天竜沿岸の美田が、増水の場合には冠水をいたしまして、せっかく植付をいたしました苗も枯れてしまうとか、収穫をまぎわに控えての出水のため収穫が皆無になるというような現実洪水たびごとに繰り返されるようになったわけでございます。それのみならず河床上昇とともに非常に地下水上昇いたしまして、それがために年々歳々これの被害を受けまして、相当な被害を受けておりますが、それはこの参考書ごらん下さればよくおわかりになると思います。特に戦争中に暗渠排水を各地区とも施行いたしたわけでありますが、河床上昇とともにその暗渠排水の効果がさらになくなりまして、その据え込みました土管を通じまして天竜の水が逆に耕地影響があるというような現状でございます。特にその実例といたしまして申し上げたいことは、私の喬木村の地籍伊久間地籍の改良区があるわけですが、天竜川に沿いましてわずか開さくいたしましたところ、写真の三枚目にあると思いますが、昭和十四年に暗渠排水を施行いたしましたものがすでに一メートル以上も川の底に埋まっておるような現状でありまして、それを掘り出してみて初めてその堆積された土砂がいかに多いかということが現実にわかったわけです。そういうわけで何とかいたしましてそれの対策をいたしていただきたいということと、もう一つは県や国の力で堤防等建設されておりますが、年々建設省の御心配によりまして堤防かさ上げ等をいたしておりますが、なかなか堤防かさ上げ等工事も容易でなく、だんだんと危険に瀕して参っておるということでございます。そういうようなことで、ただ単に川路竜江というような現場に近いところだけが被害をこうむっておるのではなくて、二十キロも上流豊丘とか市田村とかいうようなところでも、先ほど申しましたように河床が一メートル上昇しておるというのが現状であるわけであります。これにつきましてはぜひとも何らかの方法を講じていただきまして、われわれ農民がほんとうに真剣に取っ組んでおります米作あるいは二毛作の関係につきましての御心配を特にいただきたいというふうに考えるわけであります。簡単でございますが、以上でございます。
  8. 薩摩雄次

  9. 小出良作

    小出参考人 私はこの図面の中央にあります南向ダム、俗に吉瀬ダムと言っておりますが、そのダム関係につきまして申し上げます。この吉瀬ダムができましたのは大正十五年であります。当時天竜川電力株式会社工事をいたしたのですが、その際に私は会社と折衝いたしまして、いろいろと工事についてのお話をいたしたわけであります。一番論点になりましたのは、計画の個所がはなはだわれわれの考えと違うということで一番問題になったのであります。しかし会社の方では、その当時天竜水電常務をやっておられました山県要助という人は、学理上これ以上は絶対に砂礫は沈渣しないのだというので砂礫終点を示しまして、これ以上は絶対に延長しない、平水位においてもこの地点より上らない、さらに洪水の際においてもこの地点以上は被害がないというようなことであったのですが、しかし私の地区上流には三峯川があり、さらに大久保ダムの下には太田切川があるという特異性があるのであります。その近所は普通の川の状態とは違うのであるから、土砂堆積する区域はもっと広いのではないかということを言ったわけです。最後に常務の後藤という人が来まして、会社誠意をもってもし河床が上れば絶対に迷惑をかけない、耕地には迷惑をかけないと申しましたので同意をいたしたのであります。由来年とともに河床が上りまして、お手元参考に青写真でその当時の——これは天竜川の第三水力ということになっております。今の南向発電所は当時は天竜川の第三水力発電所ということになっておりますが、ダム堰堤築造平面図を差し上げておりますが、その平面図によりますと、ダム築造上流九百六十間、今のメートルに直しまして千七百二十七メートル地点で、ただいま申し上げた土砂の沈渣は終るのでありまして、これが終点であるというように示されております。これは昭和二十九年に調査をいたしたのでありますが、それによりますと、計画河床を上回りまして四・一三メートル上昇をいたしております。さらに洪水の場合に従前の洪水位に一致するという洪水位一致点、これは間数で約千二百九十間の地点でありますが、メートルに直しまして二千三百四十五メートルになります。そこで二・三二メートル上昇をいたしております。この点が一つ狭窄部になっておりまして、これから北が峡谷をなしておるのであります。それから上は約四百町歩もあります非常に肥えた米作地帯でありますが、そのうちの二百三十六町歩が非常な災害を受けることになったのであります。その前の計画のときの河床と二十九年に調査をいたしました河床との関係は、前に表で差上げてあるのでごらんを願いたいと思うのであります。  なお、参考になりますように、ちょうどその洪水位付近に、堰堤から二千二百三十メートルのところに、大正十一年に内務省が天竜川調査をするために作りました量水標が現在まだあります。これは目盛りが尺でございますが、写真の二というのにありますが、それをごらん下さるとおわかりのように、これが埋没いたしまして、大体三・六〇メートルくらいここで土砂を盛っておるわけであります。  なお、これも写真ごらんを願いたいのでありますが、写真の三でございます。これは私の方の名所一つになっておりました浮島という島があったわけであります。お手元へ提出してあります平面図浮島の位置が示されてありますが、これは数百年前からあった島であります。下が岩盤でありますために、どういう洪水でも流されずにおったわけであります。二かかえ以上もあるような大きな松が五本ありまして、それが非常な名所になっておったわけでありますが、だんだん河床が上ってきまして、ついに枯れてしまいましたので、これを伐採いたしました。さらにその上に土砂堆積をいたしまして、現在では跡形もないという状態であります。これを試みに掘ってみましたところが、一メートル以上掘ってみましてもまだ岩盤に達しないので、おそらくこの付近では四メートルくらい土砂堆積しておるのではないか、かようになっておるわけであります。この平地に集まってきます水が、この地点天竜川自然排水の形で流れておったのでありますが、その肝心な地点が二メートルあるいは三メートルと上りましたために、それから上流の二百三十何町歩というものが非常な水害を受け、あるいは地下水上昇し、あるいはまた湧出する水が非常に多くなりまして、農作物減収を年々来たしておるわけであります。減収を来たすばかりでなしに、すでに降雨期が来て収穫皆無あるいは田にアシがはえてしまって、全く荒蕪地に化してしまっておるというような事情が出てきたのであります。これが農作上の非常な損害でございます。なおただいまの堰堤上流約五キロというところに県道粟沢赤穂線という道路がありますが、その道路昭和十年に木橋をコンクリートの橋にかけかえた橋梁がございます。これはかけかえ当時におきましては橋梁のけた下は当然四メートル以上の高さを持っておったのでありますが、現在写真の四にございますように、ほとんど一メートルくらいというような非常な土砂堆積をいたしておるのであります。この辺では、これはことしの二月にはかったのでありますが、天竜川の渇水時の水面より沿岸の水田の田面の方が低いというような現状になってきております。もちろん農作物の上に大きな被害があることは申すまでもなく、水防上非常な危険な状態に置かれておるわけでありまして、一朝ここへますます土砂が流れてあるいはほかのものが流れてくるというような事態が起りますと、このコンクリート一つ堰堤のような形になって、両岸へ濁流を流すというような非常な危険な状態になりまして、関係住民——住家が非常に多いのであります、三百戸くらいの戸数を持っておりますが、そういうような人たちが戦々きょうきょうとしておるというような現状であります。最初会社と話し合うときには河床がそこまで絶対に上らないといわれておったのがかようになって参りました。われわれはしろうとであったが、しろうとの方がこの土砂が上ることを予見をいたしたようなわけで、まことに不幸ともいうべきでありますが、かような事態に立ち至っておるわけであります。どうか会社はその建設当時の誠意をもってこれを解決していただきたい。また県当局あるいは県議会等にもしばしばお願いをいたしており、陳情をいたしておるのであります。また建設省にも参ってこの事情をお話ししておるのであります。これらの点も御賢察願いまして、この災害を排除するために万全の方途を講ぜられたい、かように存じております。私どもダム撤去していただくことが解決としては一番よろしいと思いますので、その点を今まで各方面お願いをしておるわけであります。どうかさような意味で十分御調査下さいまして、災害を起さないようにお願いをいたします。  以上大体の被害状況並びに私の申さんとすることの概略を申し上げた次第であります。
  10. 薩摩雄次

  11. 松崎政嘉

    松崎参考人 ただいま小出参考人より申し上げた中部電力株式会社南発電所用水取り入れ口吉瀬ダム撤去を要請いたします。天竜川沿岸土地はきわめて肥沃な米作地帯でありましたが、中部電力株式会社が南向発電所用水取り入れ口吉瀬ダム設置後、その影響によりまして近年著しく天竜川河床上昇を見まして、そのため農耕地の大半は湿田化し、年々湿田は増加の一途をたどって、生産量はますます減退を加えて、洪水期の脅威は年とともに拡大され、地区住民の不安はその極に達しつつある現状であります。最近六カ年間の被害状況を申し上げますと、その減収損害が二億四千百九十余万円になっております。これは農作物減収でありまして、その他土地の流失、荒地、構築物等はまだその計算に入っておらないわけであります。なお洪水時においては狭窄部上流より逆流し、二十数町歩浸水、その被害もまた甚大であるわけでございます。特に河床上昇率を推測すれば、近く天竜大橋堰堤化し、沿岸三百有余の民家と四百町歩に上る地域は水没するの重大なる事態を生ずるをもって、民心不安はその極に達しておる状況であります。昭和二十五年の大水害の後関係地区及び消防団の協力を得まして、春秋にわたりまして数日間河川より礫を採取いたしまして、水防の完遂をいたしたような次第であります。この被害を解消をするためには、どうしても吉瀬ダム撤去の実施を本委員会においてぜひとも中部電力会社勧告方お願いいたす次第であります。
  12. 薩摩雄次

  13. 平沢泰寿

    平沢参考人 私は宮田の一部と東春近、西春近の区民の代表としてこの問題を申し上げる次第でありますが、どういうわけでそういうことを受けたかといいますと、大正十五年の水害が非常なものでありまして、訴願書にもあります通り損害が二億何千万円という一気の損害を受けて、やむを得ないから、そのとき私は村会の議長を勤めておった関係上、この責任を負うことになって、いろいろ研究いたしたのであります。それにつきましてまずどういう契約があるかということを研究いたしますと、訴願書の中に書いてありますが、ごく短文でありますけれども、重要な点は、もしこのダムによって上流損害を与えた場合は、損害も弁償するし防除施設もするという字があります。その当時契約をしたところの老衰した方がおいでになるので聞いたときに、この契約をかたく信じて、われわれは一銭の補償金もとらなんでこれを承諾した、しかしこれは満足ではなかった、五年間反対をしたけれどもやむを得ずこういうことで契約をした、これを信じて契約をとったわけでありますということを聞きましたから、まず中部電力に向ってこの損害現状調査していただきたい。また時の県議会へ請願いたしましたところが、これはもっともであるといって、これはやはりこの訴願書にも書いてありまするが、採択なされまして、今の林知事さんにそれを通告したという回答が私のところに来てあります。それからなお地方事務所の所長が対策本部となって非常にお骨折りをしたために、中部電力から調査がありまして、一カ月以上の調査をいたしましたけれども、悲しいかな、先の設計はこれ以上水が上らぬという、いわゆる基準を打ってあるところはダムから二キロ半くらいのところしか設計の基礎がありませんでした。なおその上非常に長い日をかけて調査した上交渉いたしましたところが、ダムから千メートル強の岸石のところまでは埋まっているけれども、それ以上は埋まらぬという御回答で、いかにも押し問答でどうしても法がつきません。それでやむを得ず日本発送電株式会社本社に行って直談判をいたしましたところが、どうもこれはダムが原因でないから、見舞金ならば今でも少しくらいなら上げるということで、ここにも書いてありまするが、今の第三ダムと第一ダムの四カ村に対して三百万円の見舞金をいただいたわけであります。そのときは見舞金ということで話がついて、名古屋で調印しろといって、私はそのとき肺炎を起して参上しませんでしたけれども、町村長会及びその関係者がお伺いしたときに、文句には、今までの損害を請求しないということの承諾をこの文面に入れられて、見舞金をいただかなければ法がつかないというところで、やむを得ずこの問題は引き上げましたわけであります。その後この河床上昇しているということにつきましては、どうしても県の調査を依頼しなければならぬからして、時の土木委員長お願いして、この予算をとって調査していただきたいということを要求いたしましたら、これは必ず調査して下さる、こういう文面を受けましたけれども、今日に至るまでまだ調査の結果の通知がさっぱりありません。ところがこれを継続してくるうちにぼつぼつ年期が来ました。つまり本村との、東西春近との契約には、大正十五年五月二十五日と思いますが、だから三十カ年というと四月を過ぎては済まないと思いまして、中部電力及び長野県知事林さんに対して、ダムの問題が解決しないうちはどうか延長許可はしなんでいただきたいという通告を、内容証明でお送りしておきましたのであります。これに対して何の御回答もないからして、多分これは了承して下さったことと安心しておりましたところが、たまたま川路村長さんにお伺いしましたところが、どうも黙って認可をしたようだとかするようだとか——そんなことはあるまいと私は信じておりましたところが、どうも安心がいかないということで、昨年三十一年の十一月長野県庁の土木課へ伺いまして、いろいろの書類を拝見いたしましたところが、二十九年の二月七日に認可になっておりました。これではどうもやむを得ないということで、訴願書を提出する次第になりましたのであります。その訴願の理由は、今まで継承者の中部電力会社が契約をさらに履行しない、解除の方法もとらない、損害の賠償もしないで、解決がつかないうちに認可をするということははなはだ不穏当じゃないか、こういう事情で、ただいま申す通り訴願をやらねばならない事情に至りましたので、ここに書いてある通り長野県知事に向って、どうかその伸長許可を取り消していただきたいというのが理由であります。  実際の現場の事情はどうであるかというと、この被害地が、四百坪のうち三百何十坪というところが被害をこうむるところでありますが、どうも浸水していけないという事由で西春近では九十二町歩を国家の補助と民間の労力で、何千万円という借金をして完成いたしましたが、これが何年で無効になるかということを考えなければならないのです。それは三峯川が決壊いたしまして、殿島橋から上六十町歩というものが全部川原に化したのですが、昭和十八年にようやく水田に完成いたしまして、今日ならばぼつぼつ耕土もふえて米が多くならなければならぬというときに排水道がとまって、わき水が順次ふえていくようなことになりまして、もうこの六十町歩も排水しなければ効力がないというような立場であります。  それから東春近は殿島橋から上をやはり耕地整理いたしましたが、その下の大よそ九十町歩は今開墾しても見込みが立たない、こういう状態であります。さらに西春近の下牧、宮田地区大よそ五十町歩でありますが、これも浸水と冠水両面からきまして、まず農地改良の見込みなしという、非常に嘆かわしい状態であります。そういうような状態でありますからして、一応県の議会の方に対しては何とかしていただきたい、こういう陳情をいたしてあります。  さらにそのところにおきまして、長野県県営の春近発電所というものの新設を嘆願せられたのでありますが、これも工事のかげんのせいか、経済事情でありましたせいか知りませんけれども、その橋の合流点いわゆる北ノ城という一番狭いところに十九トンの水を放水するとかいうようなお話でありますが、こういう問題を解決しないでなおそこへ水を放流されるということは、まことにわれわれは遺憾であるのでありますからして、西春近では村会にこれを提案しまして、必要ならばいつでも議決して知事のところに陳情するという順序になっております。  さらに申し上げたいことは、三峯川のはけ口に非常に土砂がたまっております。これは写真はわずかしかあらませんからお配りすることができませんが、川幅が大よそ天竜のそれから上流と比べると四倍以上あります。そこに一丈以上の土砂堆積しておりますから、今総合開発で高遠ダムが完成いたしましても、その土砂の捨て場がありません。殿島橋から北ノ城という、水田の中央に流出させて堆積するよりわれわれは見込みがつかないと思います。  それから御参考願いたいと思いますことは、殿島橋が二百十五メートル余、北ノ城が百二、三十メートル、そのまん中の一番広いところは三百五十メートルくらいのはらんだようになっております。都合よく解釈しますと、三峯川の土砂の捨て場をここに建設してあるように私には見えます。  それから考えていただきたいのは、中部電力の第一ダム発電力はごくわずかであります。非常に経済上は利益のない発電所でありますけれども、これを固着して持っておるということは、この下に佐久間ダムまで大きいダムが五つありますが、そのダム堰堤の擁護にこれを保存しておくのではないか、われわれは自分の解釈でありますけれどもこういうような解釈をしております。  こういうような状態でありますからして、参考書類が必要ならば即時には間に合いませんけれども、いろいろ書類をお届けいたしますから、この点を一つ御留意願いたい。  なおいま一つは、上ったとか上らぬとかいう議論について非常にむずかしい点がありますけれども、殿島橋というのはやはり木橋でありまして、これは流失しましたけれども、今から二十年前昭和十一年完成いたしました。これは来る前に建設省の支所を方々調べましたけれども書類がありませんから、来る前の日に私は自身で橋を調べましたところが、ただいま議員さんのところへお配りしてありますけれども、一番少いのは一メートル二十センチ、一番多いところは二メートル十二センチ、平均が一メートル七十センチであります。それでこれを建設したときには河床が上ったために一メートル強橋を上げて作ったわけであります。それは今現場の地を見るとそっくりその跡が残っておりますから、これを見ていただけばはっきりした証拠になると思います。  こういうような状態でありまして、その三十年前の河床というものの基礎が悲しいかな何にもありませんのでここで何メートルというかたいお答えのできないのはまことに遺憾なわけでございますが、どうぞこういう点を一つ御了承下さいまして、何とぞ農民のために公平なる御判断になることをお願いしてやまない次第であります。
  14. 薩摩雄次

    薩摩委員長 長野県知事林虎雄君。
  15. 林虎雄

    ○林参考人 長野県内の河川に築造されております発電ダム上流の堆砂の影響につきましては、ただいままでもそれぞれ関係者からお話がありましたように予想外に著しいのでありまして、このため関係住民は常に堤防耕地の流失、決壊あるいは湿地化等のために苦しんでおる状態であります。  この問題は県政上まことに重大な事柄でありまして、県議会のたびごとに問題となっております。このようなことは今回全く新しくしかも突然に起ったものではなくして、既往のことにつきましてはそのつど局部的にいろいろ苦心した解決方法がとられてきたところでありますが、その解決も地元民を満足させることができず、また湿地化等に対する措置も未解決の事柄もありますので、堆砂による河床上昇という現象を食いとめる対策につきましては、この際抜本的なものを立てなければならないということを深く痛感しておりまして、この実現について特に力を尽したいと考えておる次第であります。  たまたま本県が位する地勢から発電ダムは至るところにたくさんあるのでありまして、これらの及ぼす影響の大小は別といたしまして、問題となる事柄の本質については全く共通のものがあるわけであります。たとえば犀川筋の水内ダム等も今問題となっておる許可年限が満了に近く迫っておるもので、この許可年限伸長の願いが出されておりますが、これをどう処分するかについても考えなければなりませんし、現存する影響をどうするか、また将来の治水をどうするか等、問題は山積をしておりまして、防災的な河川工事、治山事業の実施はまことに緊急の重要事であるわけであります。ダムの堆砂問題について関係住民が物心両面において非常に苦しんでおりますことは、私も深く承知しておりますので、これをいたずらに放置しておるということではなくして、特に天竜川筋におきましては、乏しい財政の中から県営で多目的ダムを築造するとか、砂防工事に力を入れるとか、あるいはまた河床の浚渫、ゲート操作の改善等、及ぶ限りの努力は続けておるわけでありますが、何分にもこのような問題は県だけでとうていその目的を十分に果すわけには参りませんので、そこで公益性の高い発電ダムが築造されておる河川またはその流域の治山等については特別に国が考えるとか、県にその財源を与えるとか、大所高所に立った見地から法的なあるいは財政的な措置を講ずるなど、政府の理解を得ることによりまして初めて根本解決ができるものと確信をいたしておるわけであります。国としてもこのことを大きく取り上げて根本的な解決という方向へ進んでもらいますことを大いに期待をしておるわけであります。  次に天竜川筋泰阜、大久保——先ほど門島と言いましたが、泰阜も同じであります。両発電所許可年限伸長の処分につきまして関係住民から建設大臣に訴願が提起されておりますが、全部がダムがあるために起る影響であるか、またそのうちの一部が自然現象であるかの論は当然あると思われますが、このような原因のいかんはともかくといたしまして、河床上昇という事実は確かに見られるところでありまして、論議の余地はないのであります。この現実の問題を何らかの方法で解決しなければならないということは、国でも従来から積極的に努力をなさっておられますことは深く感謝するところでありますが、今後一そうの御努力をお願いしなければならないと思います。  天竜川筋の泰阜、南向、大久保の三つのダムにつきまして県が調査を続けておりますので、その事態関係住民の要望及びその対策案について概要を申し上げたいと思います。  まず泰阜ダム関係から申し上げますが、この水利使用は当初大正十四年三月二十八日付で許可をし、その後昭和三十年二月十九日に昭和六十年三月二十七日までの伸長許可をしたのであります。ダムは長野県下伊那郡泰阜村門島地籍に築造されており、昭和七年十二月に着工し、同十年十二月に竣工したものであります。その高さは、コンクリートの部分が約四十メートル、ゲートの部分が七メートルでありまして、このような規模のものは当時国内においては最初のものであると聞いております。  次にダム上流の堆砂の実態を申し上げます。ダム地点から上流十三・五キロの南原橋までの区間の河床は相当に上昇しておりまして、それから上流五・五キロの小川川付近までの区間の河床は平均して一メートル内外の上昇が認められますが、その付近より上流河床につきましては、現在までの調査によれば昭和十三年以降一部上昇しているところもあり、また低下しているところもあります。  このように河床上昇して沿岸への影響が大きいということで関係地元はダム撤去を強く要求して参ったのでありますが、その後ダム撤去にかわる根本対策として、ダム・クレストの低下、上流小渋川他支川の土砂扞止及び天竜川直轄改修工事の促進を共通の要求として、また個々の地域につきましては護岸、築堤あるいは排水路の新設、改良等切実の問題についての要求をなしておるのであります。  県におきましては現地調査その他種種検討を進める一方、河床をこれ以上上昇せしめないためとりあえずゲート方式の改善及び既設排砂隧道の高度利用化をはかり、これを実施しましたところ、その効果が次第に現われて参っております。このほかに県が現在樹立し、その具体化をはかっております対策は次のようなものであります。それは天竜川直轄改修工事の促進、小渋川他支川の土砂扞止、阿知川の土砂扞止、阿知川合流点付近の浚渫、天竜峡吐口下流の突出岩取り除き及びダム・クレストの低下等であります。なお個々の地域につきましては河川及び耕地両面にわたっての対策を検討しております。  次に南向ダムについて申し上げます。この水利使用は当初大正十四年三月二十八日付で許可をし、その後昭和三十年二月十九日に昭和六十年三月二十七日まで伸長許可をしたのであります。ダムは長野県上伊那郡駒ケ根市吉瀬地籍に築造されておりまして、昭和二年二月に着工し、同四年五月に竣工したのであります。このダムの高さはコンクリートの部分が約七・六メートル、ゲートの部分が約三メートルであります。  まずダム上流の堆砂の実態を申し上げますと、ダム付近河床は四・五メートル程度、それから上流約二・四キロの田沢川合流点付近河床は一・七メートル程度上昇しておりまして、それから上流天竜大橋付近までは総じて一メートルないし一・五メートル程度上昇が認められます。このように河床上昇して、沿岸地域水害耕地湿地化等の問題が深刻な問題として起って参りましたので、地元は昨年この種被害の問題解決を強く要求してきたのであります。県におきましては現地調査その他種々検討を進める一方、河床をこれ以上上昇せしめないためにとりあえずゲート操作方式の改善をはかり、これを実施しましたところ、その効果も若干現われて参っておるようであります。その他に県が現在計画し、その具体化をはかっております対策は次のようなものであります。それは堤防のかさ上げ、河道の浚渫及び耕地改良等であります。  最後に大久保ダムについて申し上げます。この水利使用は当初大正十四年三月二十八日付で許可をして、後昭和二十九年二月十九日付で昭和五十九年三月三十一日まで伸長許可をいたしたのであります。ダムは長野県上伊那郡駒ケ根市大久保地籍に築造されておりまして、昭和二年七月に着工して二年九月に竣工しております。その高さは、コンクリートの部分が約三・七メートルで、ゲートの部分が約三メートルあります。  次にダム上流の堆砂の実態を申し上げます。ダム付近河床は一・四メートル程度上昇し、それから上流約一キロの北城橋付近河床は一・五メートル程度上昇しております。さらにその上の大沢川合流点付近では一メートル程度上昇を見ておりますが、それより上流につきましては、現在までの調査によれば昭和十三年以降一部上昇しているところもあり、また低下をしているところもあります。関係地元は昨年河床上昇や変動に伴う過去及び現在の被害についての問題解決を強く要求して参っておるのであります。県におきましては現地調査その他種々検討を進める一方、河床をこれ以上上昇せしめないためにとりあえずゲート操作方式の改善をはかり、これを実施したのであります。なお対策につきましては調査を続行中であり、ここで申し上げるまでに至っておりません。  さて、ダム企業者についてはどうかと申しますと、従来ややもするとダム建設後において起るこれらの補償問題等の解決に当っての態度が消極的でありますことはまことに遺憾に思っております。このため交渉も短時日にまとまらないので、民生安定の上から見ましても重大な不都合を生じておる次第であります。先ほどから申し上げますように、発電ダムが築造されております河川の上下流沿岸は、有形無形に幾多の災害を起しておりますので、ダムに基因する損害については、補償額の内容はともかく、その解決について一段と積極的な努力を傾けるとともに、今後の対策についても十分考究の上、地元に迷惑を及ぼさないように特段の考慮を払い、責任ある企業の運営をされてこそ初めて公益事業の使命が果せるものであるというふうに考えますので、この際特に強調いたしたいと存じます。  以上申し上げましたが、なお御質問等がありました際は、さらにお答えをいたしたいと存じます。なお詳細な技術的、法律的手続上等の問題につきましては、私の県の土木部長参考人としてお呼ばれされて参っておりますので、その方からも御回答申し上げたいと思いますので、御了承をお願いいたしたいと存じます。以上であります。
  16. 薩摩雄次

    薩摩委員長 長野県土木部長紙谷斉治君。
  17. 紙谷斉治

    ○紙谷参考人 今知事から申し上げた通りでございます。
  18. 薩摩雄次

    薩摩委員長 中部電力常務取締役三田民雄君。
  19. 三田民雄

    ○三田参考人 私、中部電力株式会社常務取締役三田民雄でございます。  私の方の中部電力といたしましては、天竜川の本流を利用しまして、上流の方から申し上げますと、大久保発電所、南向発電所、泰阜発電所及び平岡発電所を持っておりますが、大久保発電所は、出力が千五百キロワットございまして、堰堤式の発電所であります。昭和二年に完成しております。南向発電所の方は、出力が二万四千キロワットの堰堤式の水路式発電所でありまして、昭和四年に完成いたしております。この両発電所は、ともに当時天竜川電力株式会社の手によって建設されたものであります。泰阜発電所の方は、出力が五万二千五百キロワットの堰堤水路式発電所でございまして、昭和十一年に矢作水力株式会社の手によって建設されたものでございます。これらの三発電所は、いずれも地元各位の御協力を得まして建設工事を終了したのでありますが、その後日本発送電株式会社の所属となりました。さらに昭和二十六年、電力再編成に伴いまして中部電力に帰属いたしまして、今日に及んでおります。  当社に帰属する以前におきまして、三発電所それぞれに、堰堤湛水池上流の隣接部におきまして水害問題が起きたことがございまして、関係地元村と協定した記録が残っております。  今回お呼び出しを受けました件に入るに先立ちまして、過去におきますこれら発電所の問題のいきさつをごく簡単に御説明申し上げたいと存じます。  大久保発電所関係につきましては、昭和十年、同二十五年の二回、南向発電所関係におきましては昭和二十五年、泰阜発電所関係におきましては、昭和十三年、十七年、二十一年、二十五年の四回にわたって、旧電力会社におきまして、水害問題に対しまして地元の方々と御協議の上、見舞金を差し上げて解決を見ております記録がございます。  以上申し述べました通り、それぞれ建設後数年もしくは十数年を経まして、昭和二十五年ころまでの間に相当いろいろの問題が発生しております。もちろん水害問題でありますので、そのつど、不可抗力であるか、あるいは人為的災害であるかの論争は起ったものでありましょうが、とにかく電力会社側は、その原因が明らかでないといって傍観者的態度をとって、放置してきたわけではありません。水害問題については、被害実情に応じて見舞金を差し上げて参っておるような次第であります。なかんずく、昭和二十三年には、泰阜上流川治、竜江地区につきましては、政府並びに長野県の御方針に基きまして、天竜川上流改修工事計画を政府の手によって実現するという裏づけをいただきまして、当時の日本発送電株式会社もその一部の工事費を負担して、解決を見ております。  これらの経緯を振り返ってみますと、当時の電力会社のとって参りました考え方は、特に天竜川は、その地形、地質上一貫した治水計画が伴わない限りは、水害に対する有効適切な対策はできないのではないか、また河床上昇は、戦時中の山林乱伐が大きく影響していると思われるといったふうな考え方であったと思われます。しかし、現実災害に対しましては、不可抗力といってのみ済まされない問題でありますので、実情に応じましてお見舞金をお贈りし、地元の方々にも御納得を願う方針をとったものと考える次第であります。  当中部電力になりましてからも、泰阜発電所関係におきまして、昭和二十八年に若干問題が起りましたが、従来と同様な趣旨でお話し合いをして御了解を得ております。また昨年来長野県御当局から、特に泰阜発電所関係につきましていろいろ御相談を受けてきておりまして、当社といたしましても、県の御計画河川工事につきましては種々御協力を申し上げている次第でございます。  なおまた、湛水池内の排砂を極力励行することが、ひいては上流隣接部にも好影響を与えるであろうとの県の御見解に従いまして、泰阜ばかりでなしに、南向、大久保ダムとも、出水時に電力を犠牲にして排砂に努めるようなダムのゲート操作を、昨年来実施いたしてきております。  以上、当社の基本的な考えは、過去におきまして電力会社がとって参りました方針と同様でありまして、当社といたしましても、利水関係者の立場から御協力を申し上げて参りましたが、従来のいきさつにかんがみまして、公共事業による天竜川改修工事の実施を切望しておる次第でございます。  簡単でありますが、経過を申し上げまして、御参考に供する次第でございます。
  20. 薩摩雄次

    薩摩委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。中島巖君。
  21. 中島巖

    中島(巖)委員 質問に入るに先立ちまして、中部電力の常務さんにお伺いいたします。私の方で最初参考人を申請したのは中部電力の井上社長であったのでありますが、途中で常任委員室から電話がかかりまして、井上社長が都合が悪いからあなたが御出席になる、こういうお話なので、いろいろな御都合もあると思って私了承したわけであります。長野県といたしましても、また建設省といたしましても、この問題は大きな問題として取り上げ、また地元民からもただいま公述のありましたような、非常な出水期を控えて重要な問題なのでありますが、どういう理由で井上社長は御出席されないのか、その点をお伺いいたしたい。
  22. 三田民雄

    ○三田参考人 今回の問題につきまして私の方の社長が呼び出しを受けたわけでありますが、社長はかなり前から本日いろいろな会合の約束をいたしておりまして、そのためにあらかじめお許しを得まして、私、この関係の責任者といたしまして出席した次第であります。
  23. 中島巖

    中島(巖)委員 ちょっとしつこいようでありますが、最初からいろいろな約束をしておったというお話でありますけれども、どんな緊急の用事で出られなかったか、具体的にどういう約束だったかお伺いしたい。
  24. 三田民雄

    ○三田参考人 私の方の社長は、実は原子力会議委員長などをやっておりますので、名古屋の方でそういう会合があるということで、私、かわりに出たような次第であります。
  25. 中島巖

    中島(巖)委員 あまりはっきりもいたしませんが、これ以上申し上げるのは失礼かと思いますのでやめることにいたします。  そこで、本日は、三発電所にわたって非常に広範な調査をせねばならぬことになっておりますが、被害状況からいたしまして、一番広範な地域被害を受けておりますのは、門島発電所、すなわち泰阜発電所関係の門島堰堤であります。それから局部的ではあるが、上の方の大久保、南向が相当顕著な被害状況になっておるわけであります。従いまして、最初に、局部的な被害状況の大久保並びに南向両発電所関係について総括的な御質問をいたしまして、あとからさらに具体的な質問に入りたいと思います。そして三発電所とも被害状況はそれぞれ異なっておりますけれども、これに対するところの法的処置はみな同一でありますので、この点につきまして河川局長並びに地方長官、それから法務省訟務局などの御意見をお伺いいたしたい、かように考えるわけであります。  大体南向発電所につきましては小出参考人より陳述がありましたけれども、最近私が現地を視察したところによりますと、土地改良事業を大幅にもくろんでおるようであります。と申しますのは、先ほど小出参考人からもお話がありましたように、ダムため河床上昇によりまして、河床よりは水田地帯の方が低くなってしまう、従って二毛作地帯が地下浸水ために一毛作となり、その一毛作も全然とれぬ場所もあり、あるいは半分しかとれぬ場所もある、こういうような状態であります。  それから先ほどもお話しになりましたように、五キロ上流県道粟沢赤穂線天竜大橋というのがあります。この下流地帯が特に両岸ともただいま申し上げたような状態になっておる。それで、この天竜大橋が今後の非常に大きな問題じゃないかと思うので、上伊那の建設事務所長に対しまして私の方から、天竜大橋の位置でどれだけ河床上昇したかという照会をいたしました。ここに手紙で返事も来ております。かつての南向発電所建設当時の旧河床の図面がないから、はっきりしたことは申されないけれども、この天竜大橋の下をトラックが土砂の運搬に通っておったのが、現在は一メートルないし一メートル二十センチ程度である、こういうような状態であります。従ってもし今後洪水ため天竜大橋に木材でもひっかかれば、これが堰堤みたいな格好になって両岸の数百町歩にわたるところの耕地が流失するのみならず、人家も流失するというような非常な危険は状態になっておるわけであります。  そこで小出参考人にお尋ねすることは、土地改良事業をあすこにもくろんでおられるようでありますが、この改良事業の規模、工事費、それからこれの事業資金の関係なんかはどうでありますかという点についてお伺いをいたしたいのであります。
  26. 小出良作

    小出参考人 ただいま御質問ございました点について私からお答えをいたしたいと思います。  初めに、土地改良事業の関係について申し上げます。先ほど申し上げましたように、河床が上って参りましてはけ口がなくなりました。湧水並びに地下水上昇が増大をいたしておりますので、一方ダム撤去ということを申し入れておりますが、それだけでなしに、われわれの力でこういうことに対するできるだけの努力をいたさねばならぬというので土地改良事業の計画をいたしました。県当局のいろいろの御援助のもとにそれぞれ計画をいたしておるわけであります。しかし肝心の天竜川の両岸は、先ほど申し上げたように、川の方が田面より高いというような現状でございますので、最後の水のはけ口というものがないような状態であるわけであります。それでとりあえず今年はその比較的高いところ——これは最後の水は天竜川の方に入るのでありますが、それでも多少でもいたしたいというので、県の助成を得まして十七町歩だけ改良事業をいたしまして、これは今年でき上ったわけであります。しかしその最後の水を流すという段になりますと非常にむずかしい。そこで両岸の関係について——右岸の方でありますが、右岸の方は先ほど申し上げた田沢川の合流点で、つまり峡谷になっておるところの狭窄部でありますが、その地点から、小鍛冶という台地があります。その台地の下をトンネルによって四百三十メートルばかり流末を延長いたしますれば、洪水時においても十分落差がとれる。そうして主要幹線の排水路を建設する、こういうことになりますれば大体右岸の方の排水は可能であるという技術者の御説明を受けたわけであります。なお左岸の方、東伊那、中沢という関係地区の中央に幹線の排水路を作りまして——地図を持っておりませんからわかりませんが、下間川という小さな川がありますが、その辺から暗渠で流して、さらに隧道で流末を延長する、これもやはり洪水時にも落差がありますから、排水可能であります。流末は既成ダムより約千七百メートルくらい上流になりますが、その地点に流末をトンネルによって延長することができますれば、両岸の排水が可能であるという見通しがついておるのであります。しかしそれには相当多額な経費を要するのでありまして、右岸左岸あわせて事業費二億三千三百四十万円という額が要りますので、とうてい私ども関係者だけではできませんので、幸いに県当局あるいは建設省、農林省等各方面のお力、さらに会社等がこの点に御考慮を下さいますれば、この排水の事業はでき得るという見通しはついておるわけでございます。さような状況であります。  なお大橋の危険の状態につきましては先ほど申し上げた通りで、非常に危険で、一刻も猶予することのできない状態であります。これは一時的には大橋の下の土砂を排除するような方法をおとり下さればよろしいのではないか。県の施策ではたまった土砂を非常なめんどうの手続で払い下げます、しかも有料でやる。こちらは困っておるものを金をとってむずかしい手続でやる。これはいろいろな御政策でありますから、やむを得ないかもしれませんが、こういう点にもっと建設的なお考えをいたしますれば、全部の土砂はともかくとしても少しでも土砂がとれるのではないか、こういうことも考えております。  なお先ほど知事さんのお話がありましたように、護岸堤防の補強、かさ上げその他の事業を急速に実施していただきますれば、ある程度安全が保てるのではないか、こういうことも考えております。  以上であります。
  27. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで中部電力にお尋ねいたしますが、ただいま小出参考人からお答えがあったような次第で、私どもしろうとの目では南向発電所ダムため河床上昇によって、そうした土地改良事業をせねばならぬことになった、こういうように考えるのであります。しかしこれについてはいろいろと御議論があるだろうと思います。そういうことは別といたしまして、仮定の問題になりますけれども、もしこれが南向発電所ため土砂堆積河床上昇ためであるということがはっきりとおわかりになりますれば、この土地改良事業は全額中部電力で御負担願えるのですか、どうでしょうか。
  28. 三田民雄

    ○三田参考人 私どもといたしましては南向発電所関係といたしまして、ダムの湛水地の末端あたりのところに非常な狭窄部があるという問題と、それから太田切川の荒廃が非常にひどい、これは最初考えておった以上に太田切川影響というものがあるという点から、会社だけで全額補償するというものではないのじゃないかと考えております。
  29. 中島巖

    中島(巖)委員 そういたしますとただいまの御答弁では、かりにダムため河床上昇して、それがために出水したのであるということがはっきりわかったといたしましても、あるいは水源地帯の河川の管理とかあるいは戦時中の乱伐とかいうようなことによって土砂が異常に多く流れ出たという原因もあるから、会社だけで負担するということはできない、こういうように了承してよろしいのですか。
  30. 三田民雄

    ○三田参考人 はい。
  31. 中島巖

    中島(巖)委員 次に中部地方建設局の中島局長に、現在あの地帯におきまして建設省の直轄河川の改修工事をされておるようでありますけれども、これはダムによる河床上昇ためになされておるのか、あるいはそれも含めてほかの目的でなされておるのか、またかさ上げその他の工事もされておりますが、これに対すお考え一つ伺い、そして工事内容などについてもお伺いしたいと思います。
  32. 中島武

    中島説明員 説明申し上げます。天竜川の改修工事昭和二十年の災害がありました大洪水を基準といたしまして二十二年から着手したのでありますが、この改修工事ダムによる河床上昇に対する対策を施すためだけに始まったものではございません。河川全体といたしまして相当急勾配の河川でありまして、流出する土砂量も三峰川、太田切川あるいは小渋川等非常な土砂量が流されて参ります。またそればかりではなく所々に狭窄部がありまして、またその狭窄部の間に広いところがあり、河床は全般にわたってきわめて不安定な状況になっておるのです。従って河川改修工事も河道の改修だけでは解決できないのであります。砂防工事とか洪水調節工事ども同時に実施する総合的な治水計画の上に立って考える必要がある。それで改修工事の基本的な考え方といたしましては、定水路を固定して河床を安定させるということが第一だと思うのであります。予算の関係上まだ定水路を固定するところまで工事が進んでおりませんが、考え方としては大体そういう考え方で進んでおるつもりであります。ダム堆砂の諸対策といたしましても、この改修工事が基礎となって初めて効果を現わすものでありますから、対策の一環として考えることは論を待たないのでありますが、天竜川上流改修工事は、先ほど申し上げましたようにダムによる堆砂に対する対策だけでなく、川全般として改修を始めたわけであります。この改修延長は約五十六キロにわたっておりますが、現在は掘さく、築堤、護岸、水制などの工事をやっておりまして、昭和二十二年の六月に着手しまして今日までに主として川路竜江地区、それから上郷、座光寺村地区及び春近村地区、こういったつまり必然的にこの中にはダムによる河床上昇地区が入っておるわけであります。こういう地区の築堤、護岸、掘さくなどを施工してきたのであります。これらの工事に支出した費用は、現在までにわずか三億五千万円でありまして、価格にして全体の工事量の約九%に当っておりますが、この三億五千万円というのは現在の物価に換算してございません。これを工事量で述べますと、全工事量に対して築堤が八%、護岸が一四%、掘さくが一五%、水制が三九%といったことになっております。先ほど申しましたように、現在の額に換算してございませんので、ちょっと工事量のパーセントと費用の上における。パーセントとは合わないようになっておりますが、パーセントで申しますと、大体そんな程度に現在なっております。  なお、三十二年度は改修工費費が五千五百万円のほかに、維持補修費が百万円、それから三十一年度災害の復旧費が一千一百万円でございまして、おもな工事は駒ケ根市下平地区の築堤護岸、それから神郷村地区の護岸、それから川路竜江地区の導流堤、それから飯田市座光寺地区の護岸水制などをことしやる予定にしております。建設省といたしましては、天竜川改修工事はようやく緒についたというところでございまして、今後とも予算をできるだけ増額していただいて、工事を促進していく予定でおります。
  33. 中島巖

    中島(巖)委員 ただいま地建の局長から、本年度の予算関係なんかの御説明もありましたが、これは河川局長によく聞いておいていただきたいと思いますが、私もその内容は大体知っておるのですが、お説のように竜江川路、それから神郷、飯田市の座光寺、それから今の下平、これらの地籍はこのダム影響によるところの地籍ばかりでありまして、この国費のほとんど八、九〇%が、ダムばかりではないとおっしゃるけれどもダムの補修に全部使っておる。これは実際国の会計法の立場から見て非常に問題があると思います。天竜川の改修といっても、根本的の改修はできない、ダムの補修によってあとを追っかけておるというのが現在の実情なんです。それから長野県も、これは林知事に聞いておいていただきたいのですが、わずか十六億の赤字で八カ年間の再建法の適用を受けるようになっておる。ところが門島ダム上流河床上昇地区だけに、現在までに九億何千万円投じて、県が三億数千万円投じて発電所を作っている、こういう現状だから、赤字県になるのは当然だと思う。これから個々の論議のうちにおいて、そういうことは数字をもってはっきりお話いたしますけれども、これは単に三発電所という問題だけではなしに、長野県の財政の赤字の原因の大半はここにあるというようなこともおわかりだと思うのです。  それは別といたしまして、現在の南向発電所によりまして河床上昇はどの辺まで上昇しておるか。先ほど県の方からは御説明がありましたが、直轄河川の出先の責任者としての中部建設局では、何メートル上流まで河床上昇しておるか、この点について御見解を承わりたい。
  34. 中島武

    中島説明員 先ほどから地元の方あるいは長野県知事さんから、河床上昇につきまして数字をあげて説明がございました。ほぼその通りだと思われますが、私の手元におきまして調べております数字をあらためて申し上げたいと思います。泰阜ダム上流の堆砂からまず申し上げますが、ダム上流約十三キロの南原橋、この付近までは堆砂が非常に顕著でありまして、もちろんダムのきわのところにおきましては何十メートルというような高さになるわけでありますが、この地区耕地などに影響ありと思われるような場所、つまり川路竜江村地区、この付近におきましては、一番深いところで五メートル程度河床上昇が見られるようであります。さらに南原橋付近からダム上流十九キロ付近の小川川の合流点、つまり弁天橋から二キロほど上になります、この付近までは堆砂の傾向が認められまして、最深部の河床上昇が平均一メートル程度考えられます。それから小川川合流点付近から上流につきましては、年々河床の変動がありますが、これは高くなったり低くなったりという状態でありまして、河床上昇の傾向があるとはっきりは申し上げられない程度だと思います。  次に南向ダムにつきまして申し上げますが、ダム上流約二キロ四百メートルくらいのところに田沢川という川が合流しておりますが、この付近までは平均しまして約一・七メートル程度上昇があるようであります。この区間は狭窄部でありますので、このくらい上っておりましても比較的その影響は少いのでありますが、さらに田沢川の合流点附近からダム上流約四・三キロ付近の、先ほどお話ありました天竜大橋、この付近までは一メートルから一メートル五十くらい、場所によってでこぼこでありますので、はっきりした数字はつかめませんが、一メートルから一・五メートルくらいの堆砂が認められるようであります。ダム上流約五千七百メートル太田切川合流点付近から上流大久保ダムまでの間、この間につきましては堆砂が認められないようであります。むしろ場所によっては大久保ダムのすぐ下流などは、上からのをダムでとめております関係から、河床土砂が流れて、むしろ低くなっておるようなところが見受けられるのであります。  次に大久保ダムについてでありますが、ダム上流千二百メートルのところに小沢川というのが合流しておりますが、この付近までは、場所によりまして非常に不同でありますけれども、平均しますと五、六十センチ程度ではないかと認められます。それから上流殿島橋付近までの区間につきましては、年々の河床変動に関して、河床上昇のはっきりした傾向が認められないようであります。ただいま申し上げましたのは、今まで数次にわたって河床の変動の状態を測量いたしました結果、年々場所によっては上ったり下ったりというようなところがございますが、ごく最近における平均の状態をかいつまんで申し上げたわけでございます。
  35. 中島巖

    中島(巖)委員 長野県知事にお伺いいしたますが、もし知事でおわかりにならなければ、土木部長参考人として出席しておられるようでありますから、土木部長でもけっこうだと思います。南向発電所ダム関係によりますと、これは堰堤規則によりまして、計画堆砂面と申しますか計画河床というものが出ておるわけであります。この地元の同意書を得る場合に、こういうようなものを示してあるのかないのか、この点をお伺いしたいと思います。
  36. 紙谷斉治

    ○紙谷参考人 計画堆砂面を地元に示してあると思います。
  37. 中島巖

    中島(巖)委員 計画堆砂面を示してあるといたしますと、この計画堆砂面は約千七百五十メートル、つまり小鍛冶川付近までは土砂がたまるが、それ以上には土砂堆積せぬというのが、堰堤規則によって提出した書類であります。しかも現在問題になって質疑を重ねておる地点は、四千メートルないし四千五百メートル地点なのであります。そこでこういうように状況が変り、災害が発生していて、向う三十カ年間の水利使用期限伸長しておる、すなわち昭和二十九年二月十九日より昭和五十九年三月二十七日までの水利期限の伸長許可しておる。これは私の考えとすれば、不当の行為である、あるいは違法の行為である、こう考えるのですが、これはいかなる法令に準拠して許可したのであるか、その点ちょっとお伺いしたい。
  38. 紙谷斉治

    ○紙谷参考人 許可につきましては、これはこの間の公益判断をいたしまして、施設に変化がありませんので、その通り許可した次第であります。
  39. 中島巖

    中島(巖)委員 判断ではなくして、いかなる法令に基いて許可したか、この点をお伺いしたい。
  40. 紙谷斉治

    ○紙谷参考人 河川法によってやっておるわけでありますが、法令は十七、八条でございます。
  41. 中島巖

    中島(巖)委員 おそらくこれは河川法関係になるのだろうと思うのです。そこでこれはむしろ土木部長にお尋ねするより河川局長にお尋ねした方が手っ取り早いと思うのです。第一、ただいまの期限延長の許可でありますが、これは新しく発電所をこしらえるときの水利使用許可と、水利使用伸長許可とは法的にどういうように違うのであるか、この点をお伺いしたいと思います。
  42. 山本三郎

    山本政府委員 ただいまの期限伸長の問題も河川法の十八条でございまして、「河川ノ敷地若ハ流水ヲ占用セムトスル者ハ地方行政庁ノ許可ヲ受クヘシ」という規定がございますが、これによりまして伸長をいたしておると考えております。
  43. 中島巖

    中島(巖)委員 重ねてお尋ねしますが、河川法の第六条は「河川ハ地方行政庁ニ於テ其ノ管内ニ係ル部分ヲ管理スヘシ」こうはっきりと根本的な河川管理の方針を第二章の第六条にうたってあるわけです。さらにこれを受けて第三章の「河川ノ使用ニ関スル制限並警察」の規定の第二十条において「地方行政庁ハ許可ヲ取消シ若ハ其ノ効力ヲ停止シ若ハ其ノ条件ヲ変更シ又ハ既ニ施設シタル工作物ヲ改築若ハ除去セシメ又ハ原形ノ回復ヲ命シ又ハ許可セラレタル事項ニ因リテ生スル危害ヲ予防スル為ニ必要ナル設備ヲナサシムルコトヲ得一、工事施行ノ方法若ハ施行後ニ於ケル管理ノ方法公安ヲ害スルノ虞アルトキ二、河川状況ノ変更其ノ他許可ノ後ニ起リタル事実ニ因リ必要ヲ生スルトキ」三、四、五は省きます。「六、公益ノ為必要アルトキ」こういうように河川管理に対するときの基本的の規定がこの第二十条にされておる。しかしここに問題になるのは「設備ヲ為サシムルコトヲ得」とあるによって、ただいま土木部長のようなあいまいな答弁になると思いますが、これはすなわち第六条の「河川ハ地方行政庁ニ於テ其ノ管内ニ係ル部分ヲ管理スヘシ」はっきりとすべしと規定がございまして、しかる後に得という言葉を使ってあるのであります。従いましてこの第二十条に著しく抵触するような場合においては水利使用伸長許可をしないのが当りまえだ、こういうように私は解釈するのでありますが、河川局長の見解はどうでありますか。
  44. 山本三郎

    山本政府委員 河川法の第二十条におっしゃる通りの規定がございます。もちろん地方行政庁がこういう場合におきましては、その判断に基きましてここに掲げてある処置をなすわけでございまして、河川を管理いたします地方行政庁にこういう権限が与えられておるわけでございます。しかしその判断は管理者であります知事さんがおやりになるわけでございまして、その判断によりましてこういう処置をとられたというふうに考えております。
  45. 中島巖

    中島(巖)委員 そうしますと河川局長考えは判断による。つまり裁量による。裁量は野放しでどんなことでもできる、こういうような法的の解釈ですか。
  46. 山本三郎

    山本政府委員 それはそういうふうな、何でもできるという考えではございませんで、法律にもちろん抵触するようなことはできないわけでございます。その精神は公益の判断を基礎といたしまして、しかもここに掲げておるようなことを考慮しつつ処分するというのが建前でございます。
  47. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで河川法にのっとって河川行政監督令が出ておるわけです。従って河川行政監督令の第一条においては、「河川法又ハ之ニ基キテ発スル命令ニ依リ市町村、市町村組合、町村組合又ハ水利組合ノ行政庁ニ於テ執行スル河川行政及府県知事ノ命ジ又ハ許可シタル事項ニ関シテハ第一次ニ於テ府県知事之ヲ監督シ第二次ニ於テ建設大臣之ヲ監督ス」こういうことにはっきりなっておりますので、知事の裁量によって許可するといって、知事だけの責任ではなくして、この河川行政監督令第一条によって第一次は知事、第二次は建設大臣、こうはっきりしている以上、建設大臣、知事同じ責任であると思うが、この点に対する御見解はどうですか。
  48. 国宗正義

    国宗説明員 御指摘のように、第一次の監督者は、下級行政庁、つまり市町村長がこの事務をやります場合の監督者は府県知事でございます。先ほど御指摘の六条の河川管理等を監督いたしますのは建設大臣でございます。
  49. 中島巖

    中島(巖)委員 その通りだと思います。従って天竜川は国の直轄河川であり、建設大臣も同じ責任を負わねばならぬと解釈いたしておるわけであります。そこで先ほど土木部長も、また河川局長も、水利伸長許可の問題を非常に簡単に考えておる。こういう大問題を起した源を作った、許可した土木部長がどういう法規であるかということを知らずにおる。また河川局長も判断によってというようなことを言っておる。しかも第六条においてはっきりと河川は地方行政庁においてその管内にかかる部分を管理すべしと規定し、そしてそれについては第三章の二十条によって、こういうような規定を設けてある。従いまして、この規定に著しい阻害を感じとるような現在のこのダム許可に対して、こうした簡単な伸長許可をすることによってこうした問題が起るのです。そこでこれは河川局長よりも法制局にお伺いいたしますが、ただいま私が質問いたした点でありますが、第二十条の問題はいわゆる行政庁の裁量の問題になると思うんです。そこでこの行政庁の裁量は、法規裁量と自由裁量とあると思います。しかしこの場合におきましては、この法規において何々すべきというようなことがないから、自由裁量のようにも見受けられますけれども、こうした幾つかの制限規定があるので、また自由裁量に準ずべき法規裁量でもある、こういうように考えるのですが、法制局の御見解はどうであるか。
  50. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 お答え申し上げます。まず問題を二つに分けまして、第一点は、この河川法の十七条ないし二十条にございます地方行政庁の許可処分が、裁量処分であるか覊束処分であるか——今のお言葉で申しますと、自由裁量であるか法規裁量であるかという点でございます。まず第一と申しましたのは、新規の場合のことでございますが、その場合につきましては、今の条文はまさに裁量処分、自由裁量の行政処分であると考えるわけであります。  次は第二の問題といたしまして、すでに許可をいたしている場合に期限がきた、その期限を更新いたします場合に、その十七条ないし二十条の許可処分、これは自由裁量処分であるか法規裁量処分であるか、この点になるわけでございますが、これにつきましては、覊束処分であるというふうに考えております。
  51. 薩摩雄次

    薩摩委員長 午前の委員会はこの程度にとどめ、午後は二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  52. 薩摩雄次

    薩摩委員長 それでは休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。委員中島巖君。
  53. 中島巖

    中島(巖)委員 林知事が三時から、のっぴきならぬ会議があるそうでありますので、質問の順序が違いますが、知事に最も関係の深い部分をお尋ねいたしまして、あとは土木部長にかわっていただくことにいたします。  それでただいま南向関係でありますが、先ほど南向関係の方々よりのお話で、中部電力が河床上昇対策措置として相当協力しておるという話があったが、中部電力が南向発電所吉瀬ダム関係でどういう協力費を出して、どこに使ったかというようなことがおわかりならお答えを願いたい。これは土木部長からの答弁でもよろしゅうございます。  それから第二点は、先ほどお話いたしましたように、天竜大橋つまりあの河床上昇の最もひどい地帯の少し上にかかっておるコンクリ橋、これが当時トラックが自由に通れたものが、河床上昇して、今橋との間が一メートルぐらいしかない。もしあすにも降雨の際に木材がひっかかると、数百町歩に上る水田と家屋が流失する危険があるのですが、これについてどのようにお考えになっておるか、この二点をお伺いいたしたいと思います。
  54. 紙谷斉治

    ○紙谷参考人 順序は違いますけれども天竜大橋の方から先に申し上げます。  天竜大橋は、今おっしゃいました通りに、非常に河床が上って参りまして、コンクリート橋梁でありますから、非常に危ない橋でございます。私どもといたしましては、まずさしあたりこれのゲート操作をいたしまして、なるべく土砂を流下させたい、かように思って、南向につきましては、今まで千三百トンの洪水がありましたときにはゲートをあけるということになっておりましたのを、昨年から二百七十トンの洪水があればゲートを全開するというように変えて、それを中電に実施させておる次第でございます。そのためにかなりの土砂が流下したのでありますけれども、なおこういうことではまだまだ足りませんので、今後河道の浚渫した土でもって堤防をこしらえるということを直轄事業の方でやってもらうように計画しておるのであります。  それから南向ダムに対して中電が協力したというのは、見舞金といたしまして、中電から地元の方へ二十五年に百三十万円、それから大正十五年に一万二千円、それから中沢に対しまして一万一千円、これは大正十五年でございます。それから昭和二十五年に高遠に対して七十八万円、赤穂に対して五十二万円、かように出ておるようになっております。その使途はいかようになっておりますか、私今ちょっとはっきりしておりません。  以上お答えいたします。
  55. 中島巖

    中島(巖)委員 この天竜大橋は、先ほどからのお話にある通り、非常に危険な状態になっておるわけでありますから、これは直轄河川の方と十分お打ち合せして最善の処置をとっていただきたいことを希望しておきます。  それから、ただいまの見舞金といいますけれども、これはあとで詳しく中部電力よりお聞きしたいと思いますけれども災害のあったときに、災害の何分の一かの金を、災害があって半年も一年もたってさんざん折衝した結果、ただいま部長からお話のありましたような、百三十万円、一万二千円、七十八万円、一万一千円、五十二万円というような金が出ておりますけれども、これは災害に対する関係の金であって、何らいわゆる治水費に協力しておるという金ではないように思うのですが、これが県に入って治水関係——築堤なり防災工事なりをしておるのですか、どうなんですか、この点をお伺いします。
  56. 紙谷斉治

    ○紙谷参考人 それが県に入って治水関係に使っておるということはございません。
  57. 中島巖

    中島(巖)委員 その通りだと思います。  それでは門島ダム関係について質問いたしますが、これは最初県の方に質問し、さらに関連いたしまして河川局長にお尋ねしたいと思うのです。  昭和二十一年の七月四日に、当時の長野県知事物部薫郎は、日本発送電株式会社総裁新井章治あてに厳達命令というものを出しておるのでありますが、その厳達命令はこういうことを書いてあります。「管内天竜川下伊那川路村並竜江村地籍及び犀川筋上水内郡水内地籍は就れも発電施設たる堰堤影響に因り河筋の土砂沈積夥敷く計画当初仮定せる堆積量をも既に相当超過し延ては上流部広範の地域に亘りて極度の河床隆起を生ぜしめたる結果出水時に於ては屡々異状の高水位を誘発し且つ甚だしき長期湛水となる傾向ある為に異例の水害を頻発し捨て措き難い事態に立ち至りたるを以て河川治水計画確定の重要性に鑑み堰堤に固る堆積土砂の除去を計る等、右両地籍に対する水害予防の根本対策を樹立し之が実行方取計われたし。猶、差し懸って左記の応急措置については再び出水期を控えたる此際夫々格別の工夫を集中して急速にその対策の実現に格段の努力を致されたし。」「記」といたしまして、「天竜川筋泰阜調整池内埋没土砂措置」として、「先ず阿智川口上流のものより処理し而して天竜峡口の疎通能力を旧態に復することに努め同時に川路竜江両村地先河床の埋没土砂を二米以上浚渫すること。」こういう厳達命令を、昭和二十一年の七月に長野県知事物部薫郎は日本発送電総裁にあてて出しておるのであります。そこでお伺いいたしたいことは、この厳達命令にある「沈積夥敷く計画当初仮定せる堆積量をも既に相当超過し」この点はおそらく計画河床のことだと思うのであります、これが一点。  それから第二点といたしましては、この厳達命令を出すについて、その当時の状況というものは非常に差し迫った状態になっておったということを推定するのでありますが、現在はこれより以上に河床上昇しておるのですけれども、これに対する土木部長のお考えはどうであるか。
  58. 紙谷斉治

    ○紙谷参考人 厳達命令を出した当時の河床と比べまして、確かに上昇しておるところがあるのであります。特に狭窄部の入口のようなところ、それは非常に上っております。現在これに対して私どもは、やはりさき申し上げましたように、一番手っとり早いゲート操作から始めまして、そうしてこれは千二百トンの洪水に対してゲートを全開することになっておりましたが、これを六百トンの洪水に当って全開するということにいたしまして、去年一年操作いたしました結果、この泰阜の地籍におきまして七十二万立米の土砂を下へ下したのであります。厳密に申しますと、もっと土砂が下って、そのかわりにまた上流から入ってきて、差し引き七十二万立米減ったということになっておるわけであります。かようにいたしておる次第でございますが、なお直轄の方においても、特にこの付近が一番大事でありますから、この点やっていただくように、かように考えておる次第であります。
  59. 中島巖

    中島(巖)委員 先ほど竜江村村長からお話がございましたが、このことと関連することでありますが、建設省は県及び地元並びに会社を招いて、そうしてこの根本対策である知事厳達命令を怪しげなるものに変えてしまっておる。この問題につきましては二十四国会におきまして、当時の米田河川局長に質問いたしましたけれども、調べて後刻答弁すると言ったまま、現在そのままになっておりますので、ここに重ねて質問をいたすわけであります。これは当時の状況からいたしまして、この厳達命令なる案はとうてい人力においてはできない案だ。なぜかと申しますと川路竜江地籍堆積土砂を二メートル以上浚渫するということは、あの辺は川幅が数百メートル以上ある。そうしてその地籍は長さが三千メートルにも及んでおる。ここの砂を七尺なり八尺なりとるということは、とうてい人力ではできないことでありまして、これを命令するということは、よくよくその河床上昇による被害に対しまして、県といたしましては思い切った命令を出したのだと思います。しかるに建設省はただいま申し上げたように県、会社を呼びまして、そうして怪しげなる代案措置でこの厳達命令を取り消してしまった。  そこで河川局長にお尋ねすることは、この関係村を呼ぶべきものを、ただ一川路村長だけを呼んで関係村を呼ばなかった。そうしてこの会議におきまして、代案といたしましては川路地籍へ一千万円を投じて水制を入れる、三百万円で天竜と姑射橋下の狭窄部岩盤をとる、この二つであります。この二つの案を出しておるのでありますが、これに対しまして日発の土本補償係長は「川路村はこの工事により河川を対岸竜江へ移さんとするのが念願である。従って工事の結果期待に反したときは契約の更改どころか新たなる施設の要求があるかもしれぬ。」こういうことを言っております。また穂積河川課長は「御意見通り、しかしこの工事をしても堰堤影響が解消するとは言えぬ。補償問題はなお残る」こういうことを言っておるにもかかわらず、この厳達命令を取り消したのであって、従って現在のこの被害の根本をなすところの責任は建設省側にあるのではないか、こういうように考えるわけでありますが、なぜこの打ち合せをするについて川路村だけを呼んでほかを呼ばなんだか、この点について河川局長にお伺いいたします。
  60. 山本三郎

    山本政府委員 ただいま中島先生のおっしゃいました通り、二十一年の七月四日に「天竜川通り泰阜並に犀川通水内堰堤上流地籍水害予防対策に関する件」という名前によりまして厳達命令が出ております。それからその結果二十三年の八月十四日に長野県の知事さんと日本発送電株式会社の総裁との間に協定書ができまして、ただいまお説の通り工事が直轄工事の一部として行われるということに決定せられたわけでございまして、その工事もその後におきまして終っておるわけでございます。このときになぜ竜江村長さんを呼ばなかったかというお話でございますが、この厳達命令知事さんから出ておるものでございまして、その出た相手が日本発送電株式会社の総裁であったということで、正式の問題といたしましては、知事さんと日本発送電株式会社の総裁との話し合いで結着がつくわけでございます。そういう関係で、正式にいいますれば、その二人の方のお話し合いで協定書ができたわけでございますが、その際地元の方々といたしましては、おそらく知事さんの判断によられまして、地元の代表として川路関係の方を呼ばれたのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。
  61. 中島巖

    中島(巖)委員 ただいま河川局長から御答弁があって、なるほど八月七日に知事と日発との契約書ができておりますけれども、六月十五日に建設省へ地元と県と会社を呼んで、そうして建設省の圧力でもってこの怪しげなる代案にすりかえてしまった。冒頭岩沢技官は「川路村は建設省は技術的に最善をこらした計画に不足がましいことを言わないことにする」こういうことを言って、その結果川路だけ水制を入れて、そうしてこの結果になったわけであります。結局この会議建設省の圧力で話をまとめて、形式は知事と発送電との八月の契約になった、こういうようにこの打合事項から見てはっきりとわかるのです。  そこで林知事にお尋ねいたしますけれども、確かに昭和二十三年にこの厳達命令にかわる処置といたしまして協定書が結ばれて、そして立会人が建設省河川局と商工省の電力局になっておるのでありますが、根本的な対策をこういうようなことにかえてしまっておるわけです。これらのいきさつについて、御承知ならばお話願いたいと思う。
  62. 林虎雄

    ○林参考人 昭和二十一年七月のいわゆる厳達命令でありますが、これは中島代議士も御指摘になりましたように、河床の埋没土砂を二メートル以上掘さくするということは実際問題としてはできない。これがなぜこういうふうな非常に不可能に近い命令が出たかと申しますと、そのときに私おりませんのでよく知りませんが、想像するに、二十年九月の大水害があった、たまたま終戦の直後であったわけですが、その翌年の七月ごろはやはり社会情勢が非常に先鋭化しておったというか、むずかしい時代であったわけでございます。おそらくそういうようなことで、前の知事がこういうような非常に不可能に近いものを出さざるを得なかった客観的な情勢も原因しておるのではないかというふうにも考えるわけであります。そこで新たにこういう協定を結んだ、緩和したような協定を結んだことにつきましては、現実的に解決したいという考え方もあったと思うのであります。実は知事の仕事がいろいろ広範にわたっておりますので、この点の具体的ないきさつについては記憶が薄いのでありまして、その点はまた土木部長の方からもお答えを申し上げたいと思いますが、結局本省の方から厳達命令を出されて、それに対しまして日発は商工省の方に依頼をして、商工省の方から建設省にも話し合いがあり、そこで建設省からは昭和二十二年度から直轄で天竜川上流改修工事を進める、根本対策をこれで進めるということで、県としてもこれを了解いたしまして、そして緩和といいますか現実的に解決する方法を打ち出すために協定を結んだのではなかろうかというふうに、これは記憶をたどって申し上げるわけであります。  なお、地元の川路だけを呼んで竜江の方を呼ばなかったということについて先ほど河川局長にお尋ねになったのでありますが、当時地元代表として多分安藤という県会議員が川路の出身でございましたが、地元を代表する意味でいろいろ折衝に当ってくれたというふうに記憶しておりますので、私どもとしては地元代表だというふうに解釈して、従って建設省も同じような考え方で扱ったのではなかろうかと推測をいたすわけであります。
  63. 中島巖

    中島(巖)委員 知事としても多方面の仕事があるからそう詳しいことはお知りにならないだろうと思いますけれども、いかにしても一カ村だけを呼んでその方面水制工事をして、そしてこの厳達命令を取り消したということは非常に遺憾な点があると思うのです。  そこで対岸の竜江村長にお伺いをいたしますが、この厳達命令を取り消してこういう代案にしたということは、県または建設省が招集したこの会議出席した安藤村長よりそのとき話があったかどうか、その話があってその協議に賛成したのであるかどうか、この点をお伺いしたい。
  64. 木下仙

    木下参考人 お答え申し上げます。この当時私の前任者でございます一ノ瀬善作氏というのが竜江村長であります。前村長は故人になっておられますけれども、お尋ねの事情につきましては、私も後任者といたしましてできる限り事情を調べたのでありまして、その調べました事情を申し上げたいと思います。  お話のございました川路側にできました水制の影響と私どもは解釈しておるのでありますが、二十五年六月に至りまして大洪水を発しまして、その影響によりまして私どもの村の沿岸三十町歩を一夜にして決壊流失したのであります。耕作民はこの惨禍にぼう然自失いたしまして、濁流に身を投じて自殺しようとする農民の細君もあったほどであります。当時のこの惨害に対する私の村の村民の考え方は、ダム影響はもちろんであるが、それに加うるに建設省の不公平な一方的な工事施工がこの結果を生ぜしめたのだという考え方であります。ただしそれはばく然とした推測でございまして、当時の厳達命令の結論としての協定あるいは覚書のできました会議に全然参画せず、同時にこれを承知していないわけでありますから、ばく然とした推測をしておったわけであります。そのために当時の村長であります一ノ瀬善作氏はこれが善後策に東奔西走いたしまして、その心痛と疲労のために、建設省への陳情の帰途中央線の車中で倒れまして、諏訪駅におろされまして入院いたして、以後経過不良でついに死亡されたのであります。また当時の村会議長であります内藤義正氏は、惨状を視察に来られました時の建設大臣である増田甲子七氏の自動車に外部からすがりつきまして、泣いて復旧を嘆願し、現場から大臣の宿所の天竜峡ホテルまで護衛の者の制止にもかかわらず約半里ほどの道をぶら下って参ったという、当時の新聞記事等によって知られるのであります。その当時の竜江村考え方は、だれ言うとなく何らかの政治工作あるいは陰謀によるものである、建設省の赤穂天竜川工事事務所長に詰問せよという声がありまして、一ノ瀬村長が何度か出かけまして質問したそうでありますが、あれは建設省の直轄工事である、じきに竜江村の方の護岸も構築してやるからという答えであったそうであります。  以上のようにこの大水害につきましては、竜江村民は単に天災によるものだ、運命だというようなあきらめた気持にはなることができずにダム災害、加うるに特殊な政治工作と一方的な措置による人為的な災害であるとの気持はどこまでも去りがたいものでありまして、村長の死に方、議長の悲憤、村民の当時の激高の様子等が強くそれを裏づげておるわけであります。ところが悲しいことにその心中の疑問を表立って訴えるだけの確かな証拠を持たなかったのであります。  しかるに昭和三十一年二月十四日の衆議院建設委員会議事録第六号を拝見いたしますと、建設委員である中島代議士が本問題について質問しておられる。そして関係文書として昭和二十一年七月四日付長野県知事厳達命令と、日発と川路村との間に締結されました覚書、並びに協定書と天竜川川路浸水予防対策に対する打合会議録、この四つをあげておられるのであります。私はこれを初めて拝見いたしまして直ちに関係文書をさらに調査したのでありますが、想像以上に奇怪をきわめているのでむしろあぜんとしてしまったわけであります。と申しますのは最初知事の発しました厳達命令は、川路竜江両村地先河床の埋没土砂を二メートル以上浚渫することを最も主要の問題点としているのでございますが、その覚書、協定書、打合会議録に至りますと、全く最初の竜江村関係する問題は放棄されまして、厳達命令にかわる措置として会社は千三百万円を出して、そのうち一千万円が河床低下のためには全く無意味な水制工事の一方的な構築に費消されておるのであります。そしてわずかに三百万円が河床岩盤掘さくに使われておる。特に私ども残念に思うのは、その会議出席者がはっきりと——先ほど御発言がございましたが、川路村はこの工事によって河心を対岸へ移そうとするのが念願であると言っておるのであります。対岸というのは私の村をさしておるものと解釈をいたします。そして建設省もそれを認めていられることであります。さらに附則としてございます砂利採取工事川路村一カ村の受益事業として会社側に協力、助力を要望してやっておるのであります。こういう奇々怪々な結論の出し方は、単に竜江村が当時政治力として劣勢であり、川路村長が長野県会議員を兼職していたということの理由からくるものでありましょうか。そうしてこういうことが政治であるとすれば、私どもは政治というものを全く信頼ができなくなるのであります。まことに暗たんたる気持であります。重ねて申しますが、私の前任者は二十五年災害の直後に死んでおるのであります。そうしてこの事実を今日の関係一市六カ村は、川路村以外には全く知らなかったのであります。そのような根本をはずれた秘密協定などでダム災禍の問題を糊塗してこられた結果、さらに大きな今日の河床上昇災害を来たしまして、あすにも惨禍を起そうとしておるのであります。どうか事態を正確に御認識下さいまして、県も建設省も為政者としての誠意のこもった公平な解決を与えていただきたいと思うのであります。
  65. 中島巖

    中島(巖)委員 ただいま竜江村長から御答弁がありましたように、こうした大きな問題に最も関係の深い竜江村が二十三年八月に県が発送電と協定をしたのを三十一年まで知らずにおった。その間二十五年に大水害が起きた、これが実情なんです。従いまして河川局長も当時これに参画し、また林知事も協定者として相当の責任があるわけです。ことにこのときは災害救助法まで発動しておる、こういう状況であります。これ以上責任を追及するのもどうかと思いますのでやめます。  そこで訟務局に対してお伺いいたしますが、ただいま参考人よりお話のありましたように、片方竜江村は無防備であった。その対岸であるところの川路村へコンクリートの九メートルの水制を四、五本入れた、従ってこの水制によって川の方向が変ってその変った先が決壊して三十数町歩のいわゆる日本三大桑園と言われる美田を流失してしまったわけです。そこで国家賠償法の第二条に「道路河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」かようにありますけれども、もしただいま私並びに木下参考人の言ったような事態が立証できるとすれば、国がこの賠償の責任に当らねばならぬとこう思うのでありますが、御所見はいかがでありますか。
  66. 濱本一夫

    ○濱本政府委員 詳細な事実関係をなお調査した上またお聞きした上でありませんと、おっしゃったような関係だけから直ちに設置に瑕疵があると言えるかどうか、まだ疑問の余地があると思いますけれども、大体おっしゃるようなダム設置ためにのみそういった災害が起きたということでありますれば、設置に瑕疵があるということになって、遺憾ながら賠償の義務があると言わざるを得ないのではないかと思います。
  67. 中島巖

    中島(巖)委員 ただいま訟務局長は、そのためにのみということを言われましたけれども、これが現実のはっきりした原因であるということはわかっておる。しかしながらその他にもあるいは豪雨のために水が増したあるいは水源地帯の山を伐採したために意外に水が出たとかいうような原因は理屈づければあるだろうと思う。しかしながらそれがために、この水源を設置したのが大きな原因であるという一事があれば、他のいろいろな問題はあっても無過失責任としてこの第二条の国家賠償は適用できるというように考えるのでありますが、その点をもう少し明確に御答弁を願いたい。
  68. 濱本一夫

    ○濱本政府委員 それのみが唯一の原因——ちょっと言葉を間違えたかもしれませんが、結局瑕疵と災害との間に因果関係があればいいことになりますので、それが唯一の原因という意味で申し上げたつもりではなかったのであります。因果関係があればというつもりで申し上げたのであります。
  69. 中島巖

    中島(巖)委員 電力会社にお伺いをいたしますが、その後においてもたびたび災害があるのですが、これは先ほど問題になりました南向ダムあるいは大久保ダム関係においてもあるのですが、これらはいつも水害災害に対する補償ということは全然うたわずに、常に見舞金となっておる。従って会社には全然水害に対して責任のないことになっておるのですが、現在竜江川路地籍天竜峡の上部橋梁において数十尺の土砂堆積しており、その当時も十四メートルというような数字が出て、五十尺近い土砂堆積されておって、これが大きな原因だと思うのですが、会社ではこの影響でないということで、こういうような見舞金という言葉を使ってあるのだ、実際会社ダム河床上昇ためではないという考えで、見舞金という言葉を使ってあるのだか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  70. 三田民雄

    ○三田参考人 会社としましては見舞金を出した理由は当時水害の発生の原因につきまして、天候とかあるいは地形とか、そういうふうなものからくる不可抗力で水害が起った、あるいはダム影響ということになるのかという点がいろいろ論議されたと思うのでありますが、結局のところダムの理由であるというはっきりした理由もつきかねたというふうなことから、補償という意味じゃなくてダムの断水地域のすぐ近くのところで災害が起ったために、お見舞という形で出したのじゃないかと考える次第であります。
  71. 中島巖

    中島(巖)委員 それでたしか昭和二十三年の水害だと思ったのですが、これは川路竜江関係ですが、七月の水害に対して見舞金という言葉でもって会社は金を出しているわけです。しかも不審なことには、翌年のたしか十二月だかにやっとこれが妥結しておるというふうに思えるのですが、これに対して私の方で今資料をなくしているのでちょっとわかりませんが、この間のいきさつについて竜江村長さんにお伺いいたしたいと思うのであります。つまりどういうわけで、あなたたちの主張は、河床上昇によってこの災害が起きたというにもかかわらず、見舞金となっておるか、それからさらにその災害があってから一年以上もたってやっと会社との話し合いができた日時になっておるが、この間の事情を御説明願いたいと思います。
  72. 木下仙

    木下参考人 お答えを申し上げます。日時が非常にずれておるということでありますが、今御指摘のものだけでなく、いずれもそうなんであります。その理由は結局私ども災害によりまする被害額というものを主張いたしましても、とうていこれを受け入れてくれないのであります。なお折衝を続けておりますうちに、私ども代表者は要求額の何分の一かのわずかな金額ではありますが、地元民がさらに困窮に耐えかねてもうその程度で早く話を打ち切って、もらえるだけのものをもらってくれ、こういうふうなことになりますので、不満ではあるけれども、そのうちの一部であるがもらったのだから判こを押すのだ、そういうような結果にいつもなってしまうのであります。なおつけ加えて申し上げたいことは、今日ここに参考人として見えておる被害村の村長さん方と先ほども話し合いをしたことでありますが、県が会社に対しまして許可を与えておる。その許可書の各内容でありますが、内容というものをほとんど私どもは知らされておらなかった。その内容を拝見いたしますと、許可はするけれども、最後の条項のところにこの建設物が与えた被害があるならば、その賠償をせしめる、それの裁定は県知事が行うのだ、こういうことがあるのであります。そういうことをちっとも私どもは知らされておらず、知らないために非常に弱体な各村それぞれの代表者の形で会社と個々折衝をいたしまして、早く片方の甲が解決がつけば乙の方はあわてて解決をつけざるを得なくなるというような各個撃破の形をいつもとられるわけでありまして、なぜこのことを県が最初から知らしてくれてなかったのだろうかと私どもは不思議に思うわけであります。これは県知事に裁定を依頼すればそこで県が代表になって交渉をしてくれるということがちゃんと明瞭になっておるのであります。この許可書を私どもが知りましたのは、実は訴願を提起いたしました後にこのような許可条項になっておるのだということを知ったわけでありまして、大へん遺憾に思って、おるわけであります。以上でございます。
  73. 中島巖

    中島(巖)委員 それでさらに重ねて木下参考人にお尋ねをいたしますが、かりにそれを知らぬといたしましても、民法の七百十七条でも請求ができるし、国家賠償法の第二条でも請求ができると思うのです。どうしてそういう処置をとられなかったのか。この点をお伺いいたします。
  74. 木下仙

    木下参考人 そういう方法があるということを私どもしろうとの悲しさに知らずにおったわけでございまして、従来の代表者が漸次そういうような習慣で事を処理して参りましたものですから、そういう処理方法よりないのじゃないか、こういうことでやって参ったわけであります。私だけでなくて、ほかの代表者もそうではなかったかと思うのであります。
  75. 中島巖

    中島(巖)委員 それで法制局にお尋ねしますが、今の質疑応答からもおわかりだと思うのですが、結局地元といたしましては民法の七百十七条も知らない、国家賠償法も知らない。ダム関係によって水害が起きたのだということで会社に折衝すると、会社ダム災害じゃないのだ、これは戦時中水源地方を乱伐したためにこういう結果になった、豪雨のための天然災害である、こう主張いたしまして、話が折り合いがつかない、しかしながら今言ったような法律的の知識はない、そこでやむを得ませんから、半年、一年ずらされた後に、ほんの何十分の一かの金でもって好意見舞金をいただいてありがたかった、今後村で苦情があっても、一切村で責任を負って、会社へは御迷惑をかけません。見舞金であればそんなことを書かせる必要がないのですが、そういうことを書かして一札ずつとられておるというのが現状です。そこで、法律のことを知らずにそういうことを妥結し、しかも見舞金となっておるのですが、これは民法九十五条の「意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス但表意者ニ重大ナル過失アリタルトキハ表意者自ラ其無効ヲ主張スルコトヲ得ス」こういうことになっておりますが、こういうことは適用できぬものかどうか、この点お伺いしたいと思います。
  76. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 民法九十五条の錯誤の問題でございますが、ただいまお話をお聞きいたしました範囲では、具体的にもう少し問題が明らかにならないと、九十五条の錯誤であったかどうかという判断をこの際いたしかねると考える次第でございます。   〔委員長退席、瀬戸山委員長代理着席〕
  77. 中島巖

    中島(巖)委員 林知事は他の会合の御予定も三時というお話でありましたので、知事にお帰りになっていただきますが、ただいま申し上げたようなわけで、知事といたしましては県政全般にわたっての統轄をされておって、こういう事情をお知りでないと思いますけれども、ただいま申し上げたような事情であります。それからさらに長野県といたしましては、河川行政に非常に重大な関心を持っていただかねばならぬと思うわけでありまして、しかもこの河川行政は、河川課の一人の、わずか水利の係長であるとか、河川課の次席であるというものが、こういうものの折衝に一切当っておるわけであります。そして二十七、八年ごろの折衝に当っておったのは河川課次席の斎藤勝太郎君が当っておった。その斎藤勝太郎君はこういうような電力会社との折衝をほとんど一手にやっておって、県をやめると同時に電力会社へ奉職しておる、こういうような実情である。従いまして河川行政上においていろいろな手落ちがあると思いますので、どうか今後河川行政につきましては、ことに全国の六分の一ないし七分の一の水力発電発電県といたしましては、一つ特段の御注意をお願いいたしたいことを切に望みまして、自後の問題につきましては土木部長の方に質問いたすことにいたします。
  78. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 ちょっと関連して。知事がお帰りになるということですから、この際本件に関する、われわれの将来の見通しについて参考までに御意見を伺っておきたいと思うのです。私は各関係町村の方の発言は不幸にして聞いておりませんが、中部電力の三田常務、それから林知事の御意見を聞いておりますと、お二方の意見の中に、われわれ聞いていて非常に理解に苦しむ点があるのでございます。従って、知事は三田常務の本委員会で言われたことが正しいとお考えになっておるかどうか。私が今木下竜江村長のお話を聞いても、会社処置に非常に不満があるようであります。知事といたしましては、本件については重大な責任があると思うのであります。水利権の使用の問題、その後における水利使用期間の延長の問題等々についても、そういう機会に会社と根本的な将来の問題を解決づける非常によい時期ではなかったかと思うのにかかわらず、それを長期にわたってやすやすと延期しておるというようなこと等は、この問題に熱意のある解決の仕方ではないとわれわれは想像ができるのであります。従ってこのことは林現知事の直接の責任ではなかったかと思いまするけれども、現在の知事として、この問題をただ単に訴願等の問題に解決づけることなく、実際の問題に即して行政的に、県下のことでありますから解決づけねばならぬことだと思うのであります。しかしながら、ここで聞いておりますと、会社側意見関係町村の意見等には相当な食い違いや不満があるようであります。おそらく知事は県民のため知事として町村側の意見に非常な理解のある処置をとられ、そういうお考えだと思うのでありますが、会社側のここで陳述された意見をどういうように——それは正しいことで、そういうことであったろうというようにお考えになっておるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  79. 林虎雄

    ○林参考人 前田代議士からの御質問でございますが、もちろん行政の責任者として、責任そのものを回避するつもりは毛頭ございません。地元と発電会社の発言のうちにかなり食い違いがある、これを行政的に知事手元において円満に妥結することが一番望ましいのでございますが、努力が足りないで訴願という形になったのであります。御承知だと思いますが、天竜川は非常に荒れる川でありまして、それがダムために、さらに水の出るたびに大きな災害が引き起されるという点が大きな点だと思います。そこでダムのこの期限伸長に対しましてやすやすと許可したということは軽率ではないかという点でありますが、先ほど訟務局の方からも解釈があったようでありますが、この裁量については、いわゆる覇束裁量といいますか、法規裁量といいますか、そういうものの解釈も成り立つようでありまして、すでに許可してありまして、ダムが作られて発電しておる。それが期限がきたため許可しないということになると、一体どういうことになるか。現実の行政の上において、もし許可しないということになっていけば、一日たりとも発電を許せないことになり、水利権を取り消したことになるわけであります。そういうことはまたもっと広い社会的な意味で、重大な問題を惹起するということになると思います。しかし地元の要望を、こういう機会になぜ積極的にやらなかったかというのでありますが、すでに許可条項の中においては、十分にほとんど意を尽して、条件を、許可する場合に、会社側には提示してあります。ただそれをいつ発動するかという点が残されておるのでありまして、もし会社側誠意がなくて、地元の要望がもだしがたいという場合には、知事といたしまして、その条項の必要の部分の発動は、いつでもできる態勢になっておるわけでありますから、従って期限伸長について許可いたしましても、しかしその間にいつでも発動できるだけのものは、留保してあるということで、地元の権利というものは、守れるつもりであるわけであります。知事といたしましては、もちろん公選知事でありますから、地元の要望を大いにくまなければならない。同時にまた治水の責任と同時に、利水に対しましても公益的な立場から、これも考えなければならないという立場にあるわけでありますので、そういうものを勘案いたしまして、許可をいたしたわけであります。なお許可するについては、すでに河川管理は御承知通り知事に対しましては大臣の機関委任でありますので、本省とももちろん打ち合せをした上で、それぞれの手続をとったのであります。  なお今後の問題として訴願といたしまして、知事知事立場におきまして、必要があれば会社側と地元との中に立ちまして、妥結に努めることにはやぶさかでないつもりであります。簡単でございますが……。
  80. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 知事が熱意を持って、いろいろあっせん等を努められる御意思のようでありますから、それらの点を要望いたしまして、知事に対する御質問は打ち切りますが、ついでに建設省として——中島委員から発言があるそうですから、それではあとにいたします。
  81. 中島巖

    中島(巖)委員 大へん前田先輩には失礼だけれども知事もお帰りになりますので、知事に、ただいまのどうも聞き捨てならぬところの御答弁に対して、一応御質問いたしたいと思います。  と申しますのは、泰阜発電所ダム関係は、災害救助法まで発動しておるような災害が何回かあった。こういうような状態であって、県は根本的の対策も何も立てずにおきまして、向う三十カ年というような権利伸長許可をして、そうしていつでも知事として強権が発動できるからそのつもりだ、こういうような御答弁でありますけれども、これはすでに物部知事時代においては、昭和二十二年に先ほど申し上げました厳達命令を出しておる。もう時期が非常におくれておる。ことにまた、最近降雨量が非常に少いのでありますが、あすにも相当な降雨量があって、河心の方向が変れば、川岸の二百戸近いものは流されてしまう。また南向発電所吉瀬ダムの先ほど言った天竜大橋は、ただいま申し上げたような危険な状態になっておる。こういうような状態において、ただいまのような御答弁は私としてははなはだ了解に苦しむわけであります。従いましてここで過去のことを申し上げても、お忙しいし、仕方ありませんけれども、どうか急速に根本対策を立てて、今おっしゃった通り河川行政監督令なんかで若干は制限されますけれども知事権限でもって発動できる余地が十分あるのだから、この際、この機会に根本的対策を樹立せられんことを希望いたしまして、答弁は要りませんけれども、希望いたしておくわけであります。
  82. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 それでは林参考人に私からちょっとお尋ねいたします。この天竜川、特に上流の問題は長い間の係争になっておる。そこで先ほど来各参考人からいろいろな事情を御陳述があったのでありますが、これについて河川管理の直接の責任者である知事さんの方で、当事者の主張が非常に行き違いを生じておりますから、これはどこでもあることなんですが、ダムに関するやら、あるいはその他の自然現象に関するものやら、常に争いがあるのですが、その間に立って何か特別の調査とかあるいはその間に立って話し合いをつけようとか、こういうことを今日までやられたことがあるのですか。
  83. 林虎雄

    ○林参考人 お答えいたします。今までこれに類似した問題はたくさんございます。長野県にはダムがおそらく全国で一番数が多いと思いますので、紛争も絶え間がございませんので、常に県が中に入って折衡し、曲りなりにもおおむね妥結いたしております。従ってこれらの問題につきましても、双方から依頼があれば、いつでも熱意をもって解決に当るつもりでございます。
  84. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 今、双方から依頼があればというお話でしたが、先ほども中島委員や前田委員からもお話がありましたが、知事さんとしては当然こういう問題があれば、依頼があろうが、なかろうが、河川に関するダム被害との問題ですから、ダム関係があるということであれば、ダムを使用しておる電力会社に対して法律上の特別の処置も講ぜられるし、従って被害については、どこまで電力会社が責任を持たなくちゃならないかという裁定——というと失礼でありますが、そういうことも下せる、あるいはその他の自然現象によるものは、河川の行政として国と相談して特別の方法を講ずるということは積極的にやられるのがほんとうじゃないかと思うのですが、それでは今まで双方依頼がないからということで終られておったのですか。
  85. 林虎雄

    ○林参考人 いろいろのケースがたくさんありまして、県が中に入るべき必要のない場合もあります。従ってその取捨選択いろいろありますが、御説のように、この問題については当然の責任者として積極的に解決に当りたいと思っております。実は天竜水系の全体の被害状況調査、たとえば自然的な条件であるとか、人為的な結果であるとかいうような点は目下調査を進めておりますので、結論は遠からず出ると思います。それによりまして発電会社との折衝も犬馬の労をとって進めたいと思います。
  86. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 林参考人は非常にお忙しいようですから、これでよろしゅうございますね。それでは大へんお忙しいところを御苦労様でした。
  87. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 ついでに河川局の方にちょっとお伺いを申し上げておきます。この問題は、私が現地を視察いたしたのは昭和二十五、六年ごろではなかったか、今村忠助君が存命中、今村君の案内で現地をつぶさに見たときにも地元から強い要求があったことを記憶いたしております。今もってこれが何らの解決らしいものがとられておらないということはまことに残念千万なことでありますが、今林知事の答弁の中にもありましたが、こういう複雑な問題が起っている地域に三十カ年という長期の水利使用期間の延長ということは、法律には何カ年以内ということはないから法律違反でないと思いますけれども、行政処置としてはあまり利口な処置では私はないと思うのですが、全国の慣例として水利使用期間の延長は普通どのくらいをやっておるものでしょうか。
  88. 山本三郎

    山本政府委員 初めに水利使用許可する場合、あるいは伸長の場合には、通常三十年を期間としております。
  89. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 そう大して問題のない、問題がそう複雑になかろうと思うところについては、こういう天然資源の使用でありますから、五カ年や十カ年ずつに区切ることもいかがかと思いますけれども、こういう問題があればあるほど、期間は十カ年程度に切って、そうして使用者の反省を求めさす一つの機会を作るということも行政官庁としてはよい処置ではないかと思うのですが、こういうことについて今後そういうことにしたらどうかと私は思うのであります。河川局長の御意見はいかがですか。
  90. 山本三郎

    山本政府委員 お説の点もまことにごもっともな点もございまして、その点につきましても私どももいろいろと研究しなければならぬと思っております。しかし対策等につきましては、期限伸長をいたしても、あるいは期限の中におきましても、先ほど知事さんが申し上げましたように、当然やらなければならぬことはやらなければならぬことでありますし、また河川管理者といたしましてもそれを原因者にやらせるように処置することはできるわけでございますから、期限の伸長の際でなくても当然そういうことはできるわけでございますので、その点は期限の伸長をする際でなくても、私どもは当然できることである、また当然やらなければならぬことであるというふうに考えております。
  91. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 期間の長短の差異によってやることができたりできなかったりしないから、それは問題ではないとおっしゃるのでありますが、それはその通りに違いはないようでありますが、この天竜川は実際現実にできていないのでありまして、問題はそこにあると思うのであります。これはなぜかようになったかという問題は、日本の経済制度が資本主義、自由主義のもとに立てられておるために、強大な資本を持っておるものがかかる事業を行う際においては十分にこれらを使用させる日本の経済の慣習があって、そのために弱小農民等が非常に不幸な立場に置かれておるところができてき、そういうものが行政の上でまま子扱いのような結果に相なるのでありますが、近代的なこういう施設については土砂の流出あるいは水温の云々等は非常に研究されて、だんだんそういうことについても実際のでき上ったものに、関係町村民に被害を及ぼさないような程度のことが行われておるのが現実ではないかと私は思うのです。古い施行については電力オンリーの施設であるために電力に十分に水利を利用しさえすればよろしいという立場に立つためにそういう点が軽視されておるということが、割合多かったといわなければならぬのであります。従ってこの天竜川については根本的にそれらを含めた一つ対策を樹立するときがきておると思うのですが、それはどういうようにお考えになっておるのです。
  92. 山本三郎

    山本政府委員 お説の通りこういうふうな工作物を作りまして、そのために地方の方々に被害を及ぼすということはできるだけ避けなければならぬと考えておりますし、またそのため被害が起きた場合につきましては、正当な補償もやらなければならぬということを考えておるわけでございます。  さて天竜川につきましては何もやらなかったじゃないかという仰せでございますが、先ほど来中島先生からお話がございまして、不完全な解決ではございましたが、二十三年に当時といたしましては建設省として客観的にあの川をどういうふうに持っていこうかという観点から、先ほど対岸問題でいろいろあったようでございますが、私どもといたしましてはどちらの側に利益を得させようということを考えたわけではございませんで、この川のこの部分を処理するにはどういうようにしたらいいかという観点から計画を立てまして、その一部を電力会社の負担におきましてやってもらったということでございまして、決してどちらの側に不利益を及ぼすようなことを考えたというふうなつもりでやったわけではありません。そんなようなわけでございまして、いろいろと現在までにおきましてもそういうふうな交渉を持ち、またこの川に必要でありまする治水工事なりあるいは砂防工事等も極力推進はして参っておるわけでございます。  さて今後におきましてそれではどうするかということでございますが、これにつきまして先ほど来知事さんや土木部長さんからお話がございましたように、県におきまして天竜川の全体の問題をどうするか、この被害も含め、あるいは治山治水の立場からどうするかという具体案を非常に熱心に今回は作っておられます。そうして本省ともすでに三、四回下打ち合せはしております。そういうふうな状況でございますので、この川をどういうふうに持っていこうかというような全体の計画につきましては、概略的には近い機会にできると思います。ただ御承知のことと存じますが、そのうちどれが天然現象であって、どれがダムためであるかという点の判定が非常にむずかしいのでございます。その点につきましては、いろいろ資料的にも検討いたしますし、またお話し合いということも、その事情の内部においては必要だということになってくるわけでございますが、そういう点を万事了しまして、おのおの分担に従いまして、この天竜川対策を実行に移していくというふうに努力をいたしたいということでございまして、具体的にも、すでに先ほど申し上げましたように、事務的に進めておるわけでございますので、近く結論が期待できるというふうに考えております。
  93. 中島巖

    中島(巖)委員 先ほどの続きの法制局の関係を質問したいのですが、知事の都合で泰阜、門島ダム関係に入りましたので、もう少し門島ダム関係参考人にお聞きしたいのですが、この門島ダム計画個所なるものは堰堤より七千五百メーターの地点であるのでありますが、それよりずっと上流の一万九千メーター付近においても非常に河床上昇がはなはだしく、地下水の浸透で、先ほど湯沢喬木村長よりお話のありましたように、現在非常に被害があるわけです。かつて戦争当時の排水路が、河床上昇等のために逆流して、現在また土地改良事業をせねばならぬというような状態でおるわけです。そこでその一万九千メーター上流付近河床上昇がどんなふうであるか。それからさらに、その地点はかさ上げ工事を一回やり、二回目を行わんとしておる。それから土地改良事業なんかについて、地元の湯沢喬木村長よりお話を願いたいと思うのです。
  94. 湯沢二三男

    湯沢参考人 先ほど申し上げましたが、河床がだんだん上昇して参ったのでありますので、米作者としての農民は、何とかしてこれを改良してもとの美田にいたしたいというような計画を立てておるわけでございますが、何にいたしましても、工事をいたしますにつきましては相当な工事費を要するわけでございます。一つの例といたしまして、喬木村の伊久間地区が、改良区を設定いたしまして、幸いにいたしまして県の耕地課の方の御支援を得まして、ようやく三十一年度から継続事業としてこの湿田を排水をいたしまして美田にするという計画を立てておるわけでございますが、今年もわずかばかりの施行をしていただいたわけでありますが、いずれにいたしましても相当な面積でございますので、これを完全に排水路をあけまして工事をいたしますと、大体一千万ぐらいかかるのじゃないかというようなことを申されておるわけでございます。なお、排水の工事をいたしましても、河床が上床しておりますので、ただ単に現在の天竜川河床の上に出しただけでは効果がないわけでございますから、いたし方ないので、排水路の流末延長工事というのを、耕地課の方でもやったらどうかという御計画があるようであります。これは天竜川の底をあるいは近くの壁を穴をあけて、相当下流にその排水路の口を持っていくわけでありますが、この工事が大体一千万ないし一千五百万を要するのではないかというのが耕地課の見方でございます。こんなようなことで、この一地区計画は立てられるわけでございますけれども、しかしこれが実行されるかどうかということにつきましては、村民あげてぜひ実行できるように、それぞれの方面に向って運動を、御支援をいただきつつ、いたしておるわけでございます。これは単なる一地区事情でございますけれども、先ほど申し上げましたように、河床上昇は、大体喬木村の小川から上郷の土曽川尻までというような御見解のようでありますが、私ども見てみますと、そうではなくて、先ほども申し上げましたように、市田村、豊丘村までその影響があるわけでありまして、こうした河床上昇によりまして湿田化されたという地域は、他に数カ所あるわけであります。それを施行いたすということになりますと、先ほど申し上げましたようにとうてい自力ではできないのでありまして、それぞれの地区におきまして県の方にお願いをいたしているような現状であります。ただいま申し上げましたのは、喬木村一地区の施行をいたしますにつきます大体の予算のあらましでございますが、こうした地区がこの関係の各村に数多くあるということをぜひとも御承知いただきまして、何とか早く農民の希望に沿いましてもとの美田にされることを農民は日夜念願いたしているような状況でございます。なおまた堤防等につきましては県や国の御心配をいただいておりますが、無堤地の個所もあるわけであります。堤防があるところすらも、洪水の場合にはそこからあふれ込むというような危険性もあるわけでありますが、無堤地のところは実に惨たんたるものでございまして、そこから洪水が流入いたしまして、そうして何町歩かの大きな淵ができるというようなことでありまして、それがために、先ほども申し上げましたような、せっかく植えました稲が実らずして収穫皆無というような現状にある地域もあるわけであります。その点もぜひ御承知をいただきまして、何とかこれに対する県なり建設省なりの計画をぜひお願いいたしたいと思うのであります。以上でございます。
  95. 中島巖

    中島(巖)委員 この天竜川関係は、堰堤より下は河床がどんどん下る、それから二十数キロ上の山吹の万年橋地籍においては、やはり竜東一貫水路の取入口が、河床が年々下って取り入れができぬために、上に上っている。その下流から門島ダムの二十数キロの間、河床上昇している。この点より見て、これは明らかに門島ダムによる被害であるということは断定できるわけです。これについてはいろいろな理屈もつくでありましょうが、大体ただいま私の申し上げたようなわけです。それでこの門島ダム許可条項におきましては、その被害のあった場合においては申し出て、県知事がこれを裁定する、こういうことになっているのですが、それらの耕地事業に対しては約四割近い地元負担があると思うのですが、どういう処置をとられているか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  96. 湯沢二三男

    湯沢参考人 お答えいたしますが、その関係についてはいつも被害を受けておりますので、県の方に向いまして何とかこの善後策を講じていただきたいということをお願いしているわけですが、特に昭和二十五年の災害でありましたが、これは喬木村の堤防が決壊いたしまして、それがために二十何町歩地域が流失いたしたわけでありますが、このときの洪水は非常に大きくありまして、喬木村ではそうした大きな災害をこうむりましたけれども、他の関係の村におきましても相当な被害をこうむりまして、会社の方にもそのときに折衝いたしたわけでありましたが、つい会社の方でも、それは泰阜ダム影響でないというようなことによりまして、何らの補償もされなかったというようなことを伺っておるわけでありますが、それでもちろん河床上昇いたしておりまするけれども、現在河床は、二十八年以来災害がございませんので、御承知のように川幅が非常に広いために、現在河水が流れておる現場だけは、幾分河床が下りつつあるように思いますけれども、一たん洪水が出ましたときにははんらんいたしまして、だんだん流水が通らないところが高めになっておる、そういうのが現状でありまして、なかなかこの施策につきましても、地元民の要望にこたえられるような施策はしていただけないような現状であるわけでございます。以上でございます。
  97. 中島巖

    中島(巖)委員 その他お伺いしたいこともたいぶありますが、先ほどの続きを法制局にお伺いしたいと思います。先ほどのお話によりますと、水利使用伸長許可に新規の許可の場合には自由裁量であるけれども伸長許可の場合は規制許可と申しますか、法規裁量である、こういうように承わったように思いますけれども、そういうように了解してよろしいのですか。
  98. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 先ほど私から、新規の許可の場合は裁量処分であり、更新いたします場合の処分は覊束処分であるというふうに申し上げたわけでございます。ところでこの場合に、裁量処分というのはどういうことであるか、それから覊束処分であるというのはどういうことであるかということを御説明いたさなければならないと考える次第であります。裁量処分と申しますのは、新規の場合について申しますと、許可申請者がありました場合に、これを許可する河川の管理者、これがその許可申請者の資力、使用の目的、事業の成功の見込み、その公益に及ぼす影響等、いろいろの事情を審査いたしまして、これを許可すべきかいなかをきめることができるというのが、裁量処分のことでございます。それから覊束処分ということはどういうことかということを御説明いたしますと、更新の場合について申し上げますと、すでに権利がありまして、その権利を継続することを承認するかどうかということになるわけであります。この場合には、最初に申しましたようないろいろな状況を判断して処分するかどうかということを決定するというわけのものではなくて、その権利があります。その権利を消滅させるということについて正当な事由があるという場合のほかは、これを許可しなければならないという拘束を受ける、こういう意味で覊束処分である。こういうつもりで、先ほど裁量処分と覊束処分と分けて御説明いたしたわけでございます。  なお先ほど私若干条文の引き方につきまして、十七条ないし二十条と申し上げましたが、御質問の点は十七条と十八条でありますので、この際改めまして、十七条と十八条に限ってお答え申し上げたというふうに訂正さしていただきたいと思います。
  99. 中島巖

    中島(巖)委員 覊束処分ということの意味が、どうもよくわからないのですがね。覊束処分ということは、法規裁量とは違うわけですか。ある一定の規則にのっとって処分することを覊束処分というのですか。その辺を詳しく御説明願いたい。
  100. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 行政処分が裁量処分であるか覊束処分であるか、また自由裁量処分であるか法規裁量処分であるか、これは人によりまして、学者、またわれわれにおきましても、いろいろ意味の使い分けによりましていろいろな言葉を使っておるわけであります。正確には、法規裁量処分と覊束処分というものが一致し、また自由裁量処分というものと裁量処分というものが一致すると言えるかどうか、若干疑問を持つわけでございますが、大体その両者につきましては、おのおのそのように御了解いただいてけっこうじゃないかと考えます。
  101. 中島巖

    中島(巖)委員 そうしますと、ただいまの御答弁によりますと、大体において法規裁量と覊束処分とは同じというような解釈でよろしい、こういうように解釈してよろしいわけですか。そこで法規裁量とすれば、いかなる法規に、ただいま問題になっておる水利使用伸長許可は、いかなる法規によるべきか、この点をお伺いしたいと思います。
  102. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 法規裁量という意味でございますが、どの法規によって制約されるかということではないのでありまして、その行政処分をいたします場合に、処分の建前として、その処分が行政庁の自由な判断で処分ができるか、それとも自由な判断ではなくて、何らかの制約を受けて処分しなければならないものであるかどうかという違いによって、法規裁量という言葉が使われておるというふうに了解するわけであります。
  103. 中島巖

    中島(巖)委員 それで、何らかの制約を受けてという今お話だったが、何らかの制約とはどういうことであるか。ただいま問題になっておる水利使用伸長許可に対する何らかの制約ということは、どういうものをさしてそう言うのであるか。
  104. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 ただいま問題になっておりますケースについて申し上げますと、この場合は期限を更新するかどうかという点でありますので、すでにこの権利を更新するかどうかということは、既存の権利がそこに存在しておるわけでございます。この場合にその権利を、もし期限を更新しないとなれば、その権利を消滅させる、こういう結果をもたらしますので、その権利を消滅させるには、それ相応の正当な理由がなければならない、こういう意味において制約がある、こういうつもりで申し上げたわけでございます。
  105. 中島巖

    中島(巖)委員 どうもお話がよくわからないです。つまり法規裁量ということは、先ほどもお話しになったようなある程度の規制を受けることによって、そういうことが生じておる、こういうように考えるわけであります。そこでただいま具体的な問題といたしまして、水利使用伸長許可の問題がここで論議されておるわけであります。従って法規裁量、つまりある程度規制されておるという点は、これは消極面にも積極面にもあるだろうと思うけれども、どういうところに規制されるべきところの法令があるか、この点をお伺いしておるわけであります。具体的にどういう法令があるから規制しなければならぬ、こういうようにお答え願いたいと思います。
  106. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 その期限を更新する場合に、その処分をいたすのに法規上何らかの制約があるかどうか、こういうことでございますが、法規裁量ということの意味は、その法規があるということそれ自身ではないのでありまして、法律の用語で申しますと条理上と申ましすか、条理による制約を受ける、こういう意味であります。従いまして法規による制約ということになりますと、十七条、十八条がもとになりますので、その制約は受けざるを得ないということになると思います。
  107. 中島巖

    中島(巖)委員 ただいまのお話だと、それは全く自由裁量と同じように考えるのですが、覊束処分と自由裁量とはよほどそこに違いがあると思うのですが……。
  108. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 この場合について申し上げますと、覊束裁量であるか自由裁量であるかということの違いによってもたらす結果はどういうことになるかと申し上げますと、すでに権利を持っておる人、その人の権利をそこで消滅さして別の人に許可をする、これはまさにおっしゃるように自由裁量であると思います。ところがそうではなくて、すでにその権利を持っている人がある場合に、正当な理由がなくて別の人に権利を賦与するということは、これは法規裁量でありますれば許されないという結果になると思います。
  109. 中島巖

    中島(巖)委員 それで先ほどの河川局長の答弁で、法的に見て新しく許可する場合も、水利使用伸長許可の場合も、同じ取扱いをせねばならぬ、ただそこに実際問題として違うことは、すでに権利を持っておるということは確かに違うのでありますけれども、この河川法の趣旨からいきまして、水利使用伸長許可が法規裁量であればもちろんのこと、自由裁量といたしましても、野放しの自由裁量ということは許されるべきものではない。従って六条の「河川ハ地方行政庁ニ於テ其ノ管内ニ係ル部分ヲ管理スヘシ」という河川法河川管理の基本的の問題がここに打ち出されて、それに対しては、これこれすることができるというよりは、せねばならぬということを十六条から二十三条までにうたい、ことに第二十条でもって具体的にうたってある。従ってこれらの条項に大きく違反しておるものに対しては、やはりこの法の精神にのっとって何らかの規制を加えるべきものだ、こういうように考えるのですが、この点について法制局の御意見はどうであるか。
  110. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 もちろん自由裁量と申しましても、当該行政庁といたしまして完全な意味において自由であるという意味ではないのでありまして、公益上の判断、公益上許可すべきことが行政処分でございますから妥当であるということでなければならないということは当然言えると思います。
  111. 中島巖

    中島(巖)委員 この自由裁量に対する判例が幾つかあるのですが、その中のおもだったものを一つ二つ拾ってみると、東京地裁の昭和二十五年十一月十四日の判例に、「自由裁量処分といえども法の目的に従ってなさるべきであり、行政庁の恣意によって法の目的に反する処分をすることは許されないのであるから、その裁量の範囲には自ら限界がある。かかる裁量の限界を超え、法の目的に反することの顕著な処分は当、不当の問題を出でて違法の問題となると解すべきである。」こういうなよう判例があるのですが、法制局の御見解はこれに対してどうでございますか。
  112. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 ただいまお読み上げになりました判例につきましては、まさにその判例のいっている通りに了解いたすわけでございます。
  113. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで河川局長にお尋ねいたしますが、先ほどからたびたび申し上げますけれども、第六条にこうした一貫した大きな河川管理の筋を通してあり、さらにこの手足といたしまして二十条がある。そしてただいま質疑の問題となっておりますところの三つの発電所は、第一の「工事施行ノ方法若ハ施行後ニ於ケル管理ノ方法公安ヲ害スルノ虞アルトキ」まさにこれに適合しておる。二の「河川状況ノ変更其ノ他許可ノ後ニ起リタル事実ニ因リ必要ヲ生スルトキ」まさにこれに該当しておる。六の「公益ノ為必要アルトキ」まさにこれに該当しておる。こういうように顕著な事実で該当するところの幾つかの法規があるにもかかわらず、水利伸長許可を向う三十カ年間とする、これはまさに不当ではなくして違法行為だというふうに考えるのでありますが、局長の御所見はいかがでありますか。
  114. 山本三郎

    山本政府委員 ただいまいろいろ御論議がありましたように、河川法に基く水利権の処分につきましては、当初の処分におきましては公益上の判断に基きましてその工作物を認可し、あるいは水を使うことによりまして公益上非常に大きい、あるいはそれを建設する資力があり、将来維持していく能力があるというような判断に達しまして、公益上の判断からこれを許可しておるわけでございます。また期限伸長の場合におきましても、当初の場合と違いましてすでに権利があるわけでございますので、その場合におきましては多少当初の場合とは違った判断に基いて先ほど議論がありましたようにやるわけでございますが、その際におきましても第二十条の一から六までに書いてあるような条項に該当するかどうかというような点と、それからその権利の消滅した場合とを比較いたしまして、そういう観点に立ちまして水利使用伸長の問題も考えているわけでありまして、そういう立場に立ちまして河川管理者は処理していくものと私は考えております。
  115. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで問題になるのは、河川局長の言われるのは、ただいま私が朗読した二十条のこういうような問題に該当するということは、つまりこの河床上昇ため災害によって災害救助法まで何度も発動しているような災害が起きておる、しかも河床が四十尺、五十尺と上昇しておるというような事実によって、これははっきりわかっておると思う。しかしそれ以上に発電ということが比較してみて公益上必要だから許可したのだ、こういうように解していいのですか。
  116. 山本三郎

    山本政府委員 期限の伸長の場合におきましては、権利を消滅させる理由があるということ、それから二十条の問題とを勘案いたしましてやっておるわけでございまして、そのために起りました被害を除去させるような方法につきましては別途考えなければならぬというふうに考えております。
  117. 中島巖

    中島(巖)委員 そこでこれは訟務局の方へお尋ねした方がいいのじゃないかと思う。ただいまの質疑応答によりまして大体のケースはおわかりだと思うのです。そこで国家賠償法の関係になるのですが、憲法第十七条に「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。」この十七条を受けて国家賠償法が成立いたしておるのであります。そこでただいまの河川局長の答弁は、かりにこういうような被害があっても、やはり発電という公益上の見地から水利使用伸長許可をしたのだ、こういうことを言っておられるわけです。それでこれには幾多の公務員の過失と申しますか、違法と申しますか、そういうことが累積いたしておるわけです。たとえば三つの発電所について見ましても、堰堤規則によって、門島発電所ならば土砂堆積は七千五百メートルだ、そこでとまるというのがその付近で四十尺もたまって、上流二十数キロまで河床上昇して被害が起きる、すなわちこのダムの築造の許可は公権力の行使なんです。これによってこういうような災害が起きておる。これはまさに第一条に該当するのじゃないかと思うし、それからまたただいまの河川局長の答弁から見ても、そういうようなことがあっても公益上の必要で比較検討して伸長許可をしたのだということになれば、これもまさにこの条項に当てはまると思うのですが、この点について訟務局のお考えはどうでありますか。
  118. 濱本一夫

    ○濱本政府委員 お答えいたします。きわめて事柄を抽象的に理解しました限度では、一応国家賠償法の一条に当る場合だと思いますが、ダム設置する際の許可には、それをあらかじめ予防するような付款も付してありますので、直ちにそういう許可したということ自体が国家賠償法にいう違法な公権力の行使であるということにはならないように考えます。
  119. 中島巖

    中島(巖)委員 ただいまの訟務局長の答弁は、ダム許可した場合にはいろいろな条件を付してあるから直ちに違法にはならないと思う、こういうことですか。条件がかりに付せられてあっても、実際において被害を受けておる農民がある。いわゆる条件が付してあろうと、あるいはどんな予防措置を講じようと、国家賠償法は無過失責任の立場でもって、これは違法であるとすれば、国家が賠償しなければならぬ、こういうように私は解しておるのですが、訟務局長のお考えをもう一度伺いたい。
  120. 濱本一夫

    ○濱本政府委員 お答えいたします。国家賠償法一条の責任は無過失責任ではございませんので、公権力の行使が違法でなければ国家には責任が生じたいという建前をとっておりますから、あらかじめそういった場合をも予想して付款を付しておるのでありまして、法律上の観点のみからしますと、その処分は違法な処分とはいえないというふうに考えております。
  121. 中島巖

    中島(巖)委員 それでは違法であるか違法でないかということに焦点がかかる、こういう御答弁ですね。そこでこの第二条に「道路河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」こうなっております。そこで公権力の行使によってダムの営造を許可した、それがため——因果関係になりますけれども河床が非常に、ただいま申しましたように三十尺も四十尺も上昇して、それに伴うところの堤防を築造しなかったために異常な水害が起きて、無過失な地方民が損害を受ける、こういう場合にはこの河川管理の瑕疵に当る、こういうように解釈しますが、訟務局の御所見はいかがでありましょうか。
  122. 濱本一夫

    ○濱本政府委員 あらかじめ予想される災害についてその防止策を講じなければならぬという国家の責任は一種の政治責任でありまして、国家賠償法二条とは法律的には関係がない。国家賠償法二条の国家の責任は、その際に何らかの護岸工事であるとか、堤防とかいうものを作った、その設置並びに設置した後の管理に瑕疵がある、保存に瑕疵があるという場合に賠償法二条の国家の責任ができるのでありまして、言葉は悪いのでありますが、極端な場合を考えますと、手をこまぬいて何もしないというのではそれは政治上の責任でありまして、国家賠償法二条の賠償責任とは関係がないと一応理論的には言えるのではないかと思います。
  123. 中島巖

    中島(巖)委員 訟務局長にお尋ねしますが、訟務局長のおっしゃることは、このダムの工作物がなくて普通の状態にあったときにはあなたのおっしゃる通りでしょう。しかしダムというものを公権力の行使によって設置させて、それがため河床上昇して、こういうような水害をこうむったのだから、ただいまあなたのおっしゃるような状態の場合とは違うのだから、もう一度一つ御研究願って御答弁願いたい。
  124. 濱本一夫

    ○濱本政府委員 今中島委員のおっしゃるところを私流に理解した上でお答えいたしますと、第一条の責任と第二条の責任とは違うのでありまして、ダム設置許可したという行政処分に関する国家賠償の責任は第一条からきますので、その行政処分が違法であるかどうかということが問題になるわけであります。一たん国家が設置した何らかの工作物の設置並びに保存に瑕疵があるというのが二条の責任でありまして、これを分けて理解する以外に私ども考えられないのであります。
  125. 中島巖

    中島(巖)委員 私はそうじゃないと思う。つまり第二条には「公の営造物」とありますけれども、その上が「道路河川その他の公の営造物」となっておるによって、道路河川の管理に瑕疵がある場合には、これに該当するわけであります。今私の質問しておりますのは、確かに第一条の公権力行使の問題とも関連するけれども、その公権力行便によって河床上昇してきた。つまりそういうことを許可せねば河床上昇しない。それに、河床上昇に伴うところの堤防を築造しなかった。その原因を作ったのは国家である。従ってこれは河川管理の瑕疵であるというように私は解釈するのですが、もう一度お考えを伺いたい。
  126. 濱本一夫

    ○濱本政府委員 おっしゃるような場合を考えてみましても、やはり原因は公権力行使としての行政処分でございまして、国家に何らかの責任が発生するとすれば、第一条の責任だと思います。そうしますと、やはり当初の行政処分に瑕疵があるかどうかということが唯一の問題点となるわけであります。
  127. 中島巖

    中島(巖)委員 どうも私の考えとだいぶ違うのですが、私は、この場合は第一条も適用されるが、第二条も適用される、こういうふうに解釈しておるわけであります。これは見解の相違でありますので、これ以上議論してもしょうがないと思います。  そこで法制局にお尋ねいたしますが、例の民法七百十七条であります。先ほど議論が戦わされたわけでありますが、結局、ダムため河床上昇によってこの被害が起きたとすれば、この立証ができさえすれば、七百十七条の「土地ノ工作物ノ設置又ハ保存ニ瑕疵アルニ因リテ他人ニ損害ヲ生シタルトキハ其工作物ノ占有者ハ被害者ニ対シテ損害賠償ノ責ニ任ス但占有者カ損害ノ発生ヲ防止スルニ必要ナル注意ヲ為シタルトキハ其損害ハ所有者之ヲ賠償スルコトヲ要ス」、すなわちただいまの問題は占有者も所有者も同じでありますので、このダムによって損害を受けたということさえ立証できるとすれば、ダムの所有者が一切の責任を負って賠償せねばならぬ、こういうように考えるのですが、御所見はいかがでありますか。
  128. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 民法七百十七条の解釈の問題でございますが、ただいまの問題につきましてダム設置または保存に瑕疵がある、その瑕疵によりまして他人に損害を与えたということが立証されまして明らかになりますと、そのダム設置または保存をした者、これが損害賠償の責めに任ずる、こういうことになると思います。
  129. 中島巖

    中島(巖)委員 それでさらにお尋ねいたしますが、このダムの瑕疵ということが問題になるわけでありますが、つまりダム設置したため河床が非常に上昇して、それがため水害をこうむった、こういうことが明らかになった場合には、その場合も瑕疵ということが言えるかどうか、この点の御所見を承わりたい。
  130. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 ただいまのお話でございますが、直ちにそれがダムの瑕疵であるかどうかということはにわかに言えないのじゃないかと考えるわけでございます。ここで瑕疵と申しておりますのは、その工作物が通常備うべき安全度を欠いておるという状態をさして瑕疵と申しておるのでありまして、そういう状態があるかどうかということによって判断すべきじゃないかと考えておるわけであります。
  131. 中島巖

    中島(巖)委員 そこでこれは消極的と積極的と両方の面から考えなければならぬのですが、ダムため河床上昇土砂堆積した、それが理由で災害が起きた、こういうことがはっきりわかった場合に、これは瑕疵であるかどうかということは問題だけれどもダムため災害が発生したということをこれははっきり立証できるわけでありますが、その場合にこの七百十七条は適用できるかどうか、適用できないとすればその理由はどういう理由で適用できないか。
  132. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 民事の問題でありますので私からあまり申し上げるのもどうかと思うのでありますが、結局問題はこの工作物の瑕疵、その瑕疵があったかどうかということについて、損害を受けた者が立証できるかどうかという点に帰着するのじゃないかというふうに考えるわけであります。
  133. 中島巖

    中島(巖)委員 くどいようですが、これによって河床上昇したことを瑕疵ということが言えるか言えぬか、これが問題点なんですが、もしそうでないとすればやはりダムの築造を許可したところの公権力の行使、国家賠償法の第一条にいくと思うのです。
  134. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 ダム設置によって河床上昇したということそれ自身につきまして、それが直ちに工作物の、すなわちダムの瑕疵であるかどうかということは断言できないのじゃないかと考えるわけであります。
  135. 中島巖

    中島(巖)委員 その断言できない理由を一つお聞かせ願いたい。
  136. 龜岡康夫

    龜岡政府委員 繰り返して何回も申し上げるわけでございますが、結局瑕疵であるかどうかということは非常に法律技術的に、先ほど申しましたような標準に該当するかどうかということに帰着いたしますので、その点について私がこの席上で、それが該当する、また該当しないということを申し上げる立場にはないと思いまして、非常にお答えになっていないかとも存じますが、この辺で一つお許しを願いたいと思います。(笑声)
  137. 中島巖

    中島(巖)委員 いろいろほかの問題に入りましたので、この大久保発電所関係についてつい質問をする機会がなかったのでありますが、先ほどの公述によると、農地関係自体に非常な損害があって、土地改良事業なんかもやっておられるようでありますので、ごく簡単にその全貌をお話し願いたいと思います。  さらにこの当時、大正十四年三月二十八日に長野県知事梅谷光貞が出した許可指令書、命令書には、第二条において、「本事業ノ為直接ノ影響ヲ受ケ損害ヲ蒙ル者アル時ハ許可ヲ受ケタル者ハ其損害ノ限度ニ依リ相当補償スヘシ」こういう条項があるのでありますから、この条項に基いて、知事に対しましてそれらの損害の救済を求められる方法があると思いますが、そういうことをしたことがあるかどうか。  第三点は水利事業の浚渫の許可を取り消す、つまりダム撤去せよというお話でありますが、あくまでそうであるか、これにかわるべき次善の案をお持ちであるか、この三つの点をごく簡単に平沢参考人より御意見を承りたいと思います。
  138. 平沢泰寿

    平沢参考人 お答えいたします。二十五年の災害のときには、地方事務所の所長を代理としまして損害賠償の要求をいたしました。そのとき地方事務所と協力して調査した損害は約二億に近い金でありますが、これを中部電力ではダム被害でない、上昇の原因は、ただ北ノ城以下がダムため河床上昇しているが、それ以上は上らぬという御答弁でありましたから、やむを得ず見舞金ということで解決をつけて、なお県に調査を依頼したわけであります。  それから今回訴願いたしました浚渫の許可の取り消しをお願いするのは、二つしかありません。今河床上昇しているために三百有余町歩の田が順次浸水して、作が生産減になるのでありますから、今の天竜川河床上昇したところの土砂撤去する方法があれば、ダムはそのままでも差しつかえないのでありますが、それを撤去する方法がないとしたらばダム撤去していただきたいというのがお願いの主眼でございます。  そのほか現在耕地整理をいたしていますが、一反歩について国家の補助のほかに五万円以上の金を費してやっております。これも六十町歩のいわゆる殿島橋上は、たった十五、六年間で排水の効力を失っておりまして、それがために今百四十何町歩の東西春近の耕地整理をしなければならない土地が、土地改良をしても見込みがないという状態になっております。
  139. 中島巖

    中島(巖)委員 そこで河川局長にお伺いしますが、ただいままでいろいろ参考人の陳述、それに伴うところの質疑応答などで、この被害状況も大体アウトラインをつかみ得たと考えるのです。そこで局長のお考えとしては、どういう処置をとられるお考えか、それを一つ承わりたい。
  140. 山本三郎

    山本政府委員 先ほども前田先生の御質問に対しましてお答えいたしましたように、これらのダム対策並びに天竜川全体といたしましての治山治水の対策、あるいは付近沿岸地域対策につきまして、すでに長年の問題になっていることでもありますし、途中におきましてもいろいろの処置は講じておったのでございますが、いずれもまだ先ほどお話がありましたように不十分というような仰せでございます。そういう観点もございまして、県におきましてはすでに県会においてもしばしば問題になっております。それから知事さんも先ほどおっしゃいましたように、早急に一つ根本対策を作って順次できる卑近のものからやっていかなければならぬというお考えでございます。そうでございますので、私どもとしましては、すでに事務的には二、三回は県の河川課当局と私の方の計画課におきまして計画を検討しております。従いましてそれらの全体の計画が近くできると期待しております。ただ先ほどもお話し申し上げましたように、そのうちにだれがどういうふうな仕事をやるかというような問題につきましては、やはりいろいろ資料を集めまして分担をきめなければならぬ、あるいはその上に立って話し合いをしなければならぬというような点が残ってくるわけであります。それらにつきましてもよく打ち合せをいたしまして、私どもといたしましては砂防工事なりあるいは河川の改修工事なり、あるいは現在調査中の多目的のダム工事なりの全体の計画を立てました上において、それらの工事をできるだけ推進いたしますし、また電力会社におきましてもそれ相応のことをやっていただく、県におきましてもそれにおわせて施設なり諸般の事業を計画していただくというような方策をとりまして、この問題につきましてできるだけ早く解決をいたしたいと考えております。
  141. 中島巖

    中島(巖)委員 先ほどからの質疑応答の中からうかがえることは、浚渫許可に対して第二十条でいろいろの制限規定があるにもかかわらず、電力という公益の立場から許可したというのが県の土木部長また河川局長の一貫した趣旨なんです。  そこで申し上げたいことは、憲法第二十九条は「財産権は、これを侵してはならない。」こういうようにはっきりと規定いたしております。その最後に「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」すなわち正当な補償という絶対条件を前提としてのみできる、こういうことになっております。原則は二十九条の憲法に示す通り、財産権は、これを侵してはならない、しかもこの財産権を各ダムとも非常に侵されている。あなたたちはいわゆる公益の立場という裁量でもって浚渫許可をされたのであるから、やはり憲法に示す通り二十九条にのっとって急速に根本的対策を立てていただきたいと考えるわけであります。  次に会社は、ただいまの質疑応答によりまして大体アウトラインはつかめたと思いますが、これに対してどんなお考えを持っておるか、お伺いしたいと思います。
  142. 三田民雄

    ○三田参考人 会社といたしましては、先ほど申し上げましたように、河床上昇という問題につきましては、ダムがあるという理由だけでそうなっているのではないという見解を持っているわけでございます。しかしダム上流におきましては、河床上昇が現にあるという事実は私たちといたしましても認めている次第でございまして、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、国なりあるいは県なりで、公共事業としてこれの対策を講じていただくことを切望しておる次第でございます。これに対して会社といたしましても、応分の負担をするというふうなことは考えております。
  143. 中島巖

    中島(巖)委員 重ねて会社にお尋ねしますが、問題は旧河床まであなたの方で土砂を浚渫してしまえば一番解決が早いのだが、そういう命令が出た場合にあなたの方でおやりになる御意思があるかどうか。
  144. 三田民雄

    ○三田参考人 これは技術的にちょっと不可能に近いのではないかというふうに考えております。
  145. 中島巖

    中島(巖)委員 それで県の土木部長にお伺いいたしますが、大体ただいまの質疑応答でおわかりだと思いますけれども、かつて物部知事は、さっき申しましたようなああいう厳達命令を出しておる。それで建設省とあなたの方で話し合って、こういう措置に対して会社が応じないという場合には、やはり憲法二十九条でも示す通り、住民の財産権を擁護するために強権力を発動すべきだと思うが、どういうお考えであるかお伺いしたいと思います。
  146. 紙谷斉治

    ○紙谷参考人 お答えいたします。私どもはこの措置考えまして、そしてこれが最良であり、実際にも可能であるという案を出して、それにも会社が応じてくれないというような場合においては、それはやむを得ませんから厳達するというような命令を下さなければならぬと思うのであります。しかしこれは私ども全知全能を尽して考えた上で善処して参りたい、かように思っておる次第であります。
  147. 中島巖

    中島(巖)委員 私が要求して何もここへ各参考人に来ていただかなくても、これは建設省なり県なりが中間に入って解決すべき問題だと思うのです。解決せねばならぬ義務河川法でもはっきり明記されておると思うのです。しかるに各ダム関係の資料をとって見ますと、ここ二、三年のうちに県議会に対して陳情を出し、そして国に対しても陳情を出し、知事に対しても陳情書を各発電所とも五回も六回も出しておるにもかかわらず、何らこれが解決の糸口を得ておらぬ。その事情はどういう事情であるかということは別問題として、結果的に解決の糸口が出ておらぬ。従いましてこういうことを取り上げて究明し、そして解決すべきが国会議員の任務である、こういうような考えのもとに、委員長、他の委員の諸君にお諮りいたしまして、本日の参考人を招致する、かような段取りになったわけであります。従いまして、ただいま申し上げましたような事情で従来のやり口から見て、河川局長よりも土木部長よりも、また先ほど長野県林知事よりも、いろいろと工合のいいような話がありましたけれども、どうもなかなか信じられない——と言うとどうかと思いますけれども、そういう懸念が非常にあるわけです。そこで委員長お願いすることは、十八日に国会も終了いたしますので、終了直後において当委員会におきまして、現地視察を一つしていただくように理事会に諮っていただくことを要望いたします。なるべく一日も早く、われわれの方に回ってきた法案の審議が終了すれば、直ちに現地を視察することにしていただきたいということを要望いたします。  なお大へん失礼なことを申し上げて、河川局長その他政府委員参考人の方に大へん失礼でありましたけれども河川局長並びに県においては、急速にこの具体策を打ち出すようにお願いいたしまして、私の質問はこれをもって終ることといたします。
  148. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 今中島委員からお話のありました現地視察の件は、後日理事会等で御相談の上決定をすることにいたします。  それから、私からちょっと参考人あるいは河川局長にただしておきたいことがあるのであります。先ほど来中島委員を中心としていろいろ質疑応答ありまして、ほとんど問題は論じ尽された格好になっております。そこで私からただすことはないと思いますが、念のため建設省河川局長に伺っておきたい。というのは、建設省河川局長は、この問題の三つのダムがある関係から、そのダムによって河床上昇があり、従ってそれが原因となり、その地方に災害を及ぼしておる事実は認められるかどうか、この点はどうですか。
  149. 山本三郎

    山本政府委員 ただいまのお話の状況を伺いますと、三つのダムにおきまして、ことに泰阜のダムにつきまして非常に堆積があるということは、私も委員会出席する前からずっと関係しておりましたので、十分存じております。ただ上流の方につきましては、最近になりまして県からもいろいろ詳しい事情を聞いたわけでありまして、多少の数字の違い等があるようなことも考えられましたけれども、しかし上昇いたしまして、その結果沿岸被害が起きておるということは認めたわけであります。
  150. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 先ほど来中島委員からも御質疑がありましたが、そういう場合には、知事は先ほど帰られましたが、知事なりあるいは建設省河川に関する行政の責任者は、そういう場合にはダムに基因する——全部ダムに基因するかどうかは問題がありましょうが、自然の状況によって土砂が流下してくるということはどこでもあることです。しかしながら付近ダムがあることによってそこに堆積をするということがあるのですから、そういう事実を認めておられたならば、それに対して処置をとるのは当然のことじゃないかと思うのです。先ほど来伺っておると、土砂堆積をして従って災害が起る、それを防ぐために、あるいは堤防を作ったり砂防をする、あるいは植林をする、これも当然のことですが、一面にはダムを築造してあるいは発電をする、それによって電力会社は利益を得る、そのために一面においては関係地元民は非常な苦しみをしておる。その苦しみを防ぐために、国家なり県なりは費用を出してそれを防ぐ工事をする、こういうことが合理的だと思われますか。
  151. 山本三郎

    山本政府委員 その点につきましても、いろいろと先ほど来お答え申したわけでありますが、特に工作物を設置いたしまして、そのために起った被害がはっきりいたしましたものにつきましては、当然原因者がやるべきではないかと思いまして、公共事業がそういうはっきり原因があるものについてやるということについては当を得たものではないと考えております。
  152. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 そこで最初に私は念を押したのですが、これは程度の問題は科学的に専門家が調査決定されなければわからないと思うのであります。常識的に考えダムため災害が起っておることは事実だと私は断定してよいと思います。その程度の問題はこれはいろいろ議論がありましょう。しかしそれがわかっておりながら、これはもう長い間の係争事件だと思うのですが、これは怠慢だというとえらい失礼ですけれども、こういうことはもう少し急速に解決すべく十分努力をしなければならぬと思うのですが、どうですか。
  153. 山本三郎

    山本政府委員 その点につきましてはいろいろとおしかりをいただいたわけでございますが、終戦後特に天竜川におきまして災害のひどかった直後におきましては、不満足ということをおっしゃられておるわけでございますが、建設省もあっせんいたしまして、一応の処置はしたわけでございますが、その後におきましても砂利の採取等につきましても県が企画いたしましたものにつきまして電力会社も協力いいしております。全体的のプランに基いたものは今回企画するような大規模のものはなかったのでございますが、そういうふうな処置は逐次講じて参ったわけでございます。また河川改修や砂防につきましても、そういうふうなことも現実にあることは考えまして、それに応ずる処置をとっておるわけでございまして、全然何もやらなかったという点につきましては、私ども不満足ではございますが、やってきては参っておるわけでございます。ただ非常に計画の立案もめんどうでございますし、また費用の分担あるいは原因の究明等におきまして非常にむずかしい問題が含まれておりますので、その折衝等になかなか時間もかかるわけでございます。今回におきましても具体案はある程度進んでおりまして、その部分的の問題につきましてはすでに県から電力会社の方に試案を提示しておるわけでございまして、逐次やっておるわけでございます。私どもといたしましては、県もこの問題を決して放置しておるというふうには考えておらないのでございますが、さらに一そう県と連絡を密接にいたしまして、具体的に進めるように努力をしたい、こういうふうに考えております。
  154. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 私の考えではこの問題を解決するのには、ダムを取ってしまえば一番簡単だと思います。しかしながら一面におきまして先ほど来問題になっておりますように、電力を起してこれを利用するということもこれは国あるいは社会公共のためになるのです。社会公共のためになる設備であるから、従ってそれに基いて損害を受ける他人はそれでがまんしろということはできないと思うのです。先ほど中島委員は憲法まで引き出して言われましたが、国家社会のために必要であれば必要であるほど、そのために犠牲を受ける者に国家なり県なりあるいは電力会社は完全に補償しなければならない。これが私は建前だと思っております。  そこで三田参考人にお伺いしておきますが、これも先ほど来出ておりましたけれども、あなたの方ではこの三つのダムのあることによって、ただいま河川局長にお尋ねしましたが、土砂堆積がある。従ってそのために他人に迷惑を及ぼしておる、災害をこうむらしておるという事実は認められますか。
  155. 三田民雄

    ○三田参考人 先ほど申し上げましたように、私たちは湛水地内あるいは湛水地のごく近くにおきましては、ダムため河床上昇しているというふうに考えておるのでありますが、それよりもずっと上流の方にもそのダム影響があるというふうには考えていないわけであります。
  156. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 こういう問題はどこでもあるのですが、電力会社はみんなそうおっしゃるのです。湛水地域というと、ところによって、一キロか二キロあるいは三キロくらいのところ、そうおっしゃるのですが、しかしそれを取ってしまったらそんなことはないのじゃないかということは考えられませんか。ああいう急流なところはとってしまったら砂がたまらぬで——下流はどうかしれませんけれども、そこはどうです。
  157. 三田民雄

    ○三田参考人 御承知のように天竜川の泰阜発電所におきましても、天竜峡という狭窄部がございますし、南向発電所におきましても、すぐそばに狭窄部がございます。そこのところにさらに最近荒廃した川が流れ込んでおる、こういうふうな状態でございまして、その狭窄部よりずっと上流の方の部分までがダムため河床上昇しておるというふうには私たちは考えていない次第であります。
  158. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 狭窄部ため土砂堆積するということは、これはあり得ることです。そのため災害が起ったときには、それこそ県なり建設省なりが責任を持って国民のため狭窄部を広げるとかあるいは堤防を作る。これは政府なり県の責任だと思います。しかしああいう狭窄部の非常に多い峡谷地帯がところどころにあるところにダムがあるということが、よけい土砂堆積を来たすということは、これは認められますか。今あなたがおっしゃったように、狭窄部がちょいちょいありますから、その中にさらにダムを作ってせきとめるというと、よけい狭窄部でも何でも土砂堆積する結果になるということは認められませんか。
  159. 三田民雄

    ○三田参考人 その点は実は私の方も建設省並びに県御当局ともいろいろ調査もいたしておりますし、御検討も願っておるわけでございますが、現在のところ果してダムがなくなってしまえばそこのところが下るかどうかというふうなところまではまだはっきりいたしておりません。
  160. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長代理 結局それではやってみたらどうかということになるのですが、そこでもう質疑をするのじゃありません。お願いいたしておきたいことがあるのです。それを取ってしまうということはなかなか会社にとって重大問題というばかりでなく——会社がつぶれてもそんなことかまいませんけれども、これはやっぱり電力というものは国家のものといいますか、国民全体になくてはならないものですから、そういうこともなかなかできないが、会社はあまり湛水地域だとか何とか理屈を言われないで、——正直のところ会社は非常に強い立場におられる。これは知事さんにさっき簡単に申し上げたのですけれども、失礼だけれども、農村と会社の折衝はだめなのです。いつどこに行っても、これはどこでも同じです。そこで県や建設省——直接ではありませんけれども、住民の世話をしておる知事は主力を尽してやるのが当然だと思う。従ってそういうときには会社の方も、とにかく電力で幾らかもうけておられるのですし、一面相手は食うや食わずで苦しんでおる人たちがたくさんあるのです。そういうときにはもう少し愛情を持って、あまり理屈ばらないで解決していただきたいということを私はお願いしておきます。  ほかにありませんか。——それでは本件に関する調査はこれで終ることにいたします。  参考人各位には早朝から長時間にわたってお忙しいところをいろいろ御意見を承わりまして、まことにありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会