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田中国務大臣 本件問題の
調査をいたしております結果は、今お言葉をいただきましたような根本問題に触れて解決をしなければ役に立たぬ、それに資するための
調査である、こういう建前をとって、私の考えとしましては二十八日のお説も伺いまして、根本的な腹のきまった検討をやりたいという考えで
文書の要求をまずしておるわけであります。
そこで今お尋ねをいただきました、
一体中央政府は、今の場合は都道府でございますが、府県、市町村に対する財政の
監督ができるのかどうか、どうもできるようなできないような、はっきりしない規定なのであります。まず第一できないように見えるのは——二百十条というものが、こういう
事件が起ってみると、どうも妙な規定でございます。二百四十条はきわめて簡単な規定でございますが、出納の
検査を毎月例日にやれ、毎月何日と日をきめてそれで
検査をやれ、こういうことになって、その
都道府県にそれぞれございます
監査委員をして
検査をなさしめておる。このほかに抜き打ち
検査というものを一
会計年度二回やれということが書いてあります。これは臨時
検査という言葉を使っておりますが、例日でなしに、日をきめないで抜き打ちに、思ったときに臨時にやれ、ただしその場合注目すべき規定は、当該地方議会の選出された二人以上の議員を立ち会わしめよ、こういうふうに規定をくどく書いておるわけです。そういう
検査をいたしました結果の
報告はどうするのかというと、これは何らここに規定はない。さらに一歩進んで
決算に関する規定を見ると、その
決算については
知事が
監査委員の
意見を付して
決算の
報告をする。この場合においては議会に
報告するだけでなしに、
自治庁長官に対して事後
報告をせよということが書いてある。ですから府県の出納に関連をする
関係だけに局限をしてみますと、毎月々々やっておる
検査も自主的にやれ、臨時
検査も自主的にやれ、ただ議会の代表者二名を立ち会わせる。
決算もその土地で
決算をやれ、結果については事後——これは事後と書いてありませんが、事後でございますが、事後
自治庁長官に
報告を行うべし。事後の
報告を
決算について行えということ以外に、出納に関しては何も規定がないということが、これは考えようによっては
一つの法の欠陥といいますか、どうも消極的である。
自治庁には
監督権なんかないぞという意味の規定にも見えるわけです。ところが二百四十六条という条文を読んでみると、地方
自治庁の
長官は財務
関係の事務について
報告を求める権利がある、まさに今回起っておる
事件でありまして、
報告を命じたわけでございます。
報告を求める
権限があって
報告で得心がいかなかったら帳簿を提出をせよということも言える。今回は帳簿は押えられているから、もし
報告があってそれで得心がいかないと、実地を視察して出納の検閲ができる、ということが二百四十六条の末尾の規定であります。この二百四十六条の規定を見ますると「出納を検閲することができる。」、こういうのですから、これはいつ行かねばならぬというのでなくて、一年のうちいつ行ってもいいのです。そういう規定がございますから、どうもこの規定の体裁から見ますと、
決算の事後
報告などということは異なって、進行中の出納について検閲ができる、こういうことを規定しておるところから見ますと、どうも
自治庁長官はこれに対して
監督権があるやに一応の規定が見えるわけでございます。ただこの前に述べました二百四十条の規定は、やや理屈になりますが第九章の規定である。第九章とは地方自治体独自で行う制度について書いてある規定であります。それから二百四十六条の、後に述べました規定は、国と
地方公共団体との関連の規定であります。どういう
関係を持っているかという規定でございます。そういうような点から考えてみますと、私は国全体の
組織、国全体の
立場から見て、
地方公共団体の
組織運営に関して必要がありと政府が認めますときにおいてはその技術的な面で助言、勧告ができる、という規定が二百四十五条の三の条文の規定でございます。そこで技術的な面ということをずいぶん遠慮をして書いておるわけでございますが、その技術的な助言、勧告を地方自治体の
組織運営に関して行うことができる、それを全体としてやろうと思うとどうしても出納についても検閲をするようなことが起ってくる。そして出納の実態というものをよく知っておらなければ
組織運営に関する全般的検討ができないからだというふうに解釈をしてみますと、何としてもこのたびの
事件を徹底的に真相を究明いたしまして、同様の事柄が同じ府県の間において行われておるようなことがありはしないかということについても、全国的にこれを
検査して、検閲を行う必要が起ってくるのではなかろうか。そうすることによりまして出納
決算につきましては地方自治体の自治にまかしてあることであろうけれども、こういう事柄を
一つの動機といたしまして、これをとらえて、この実態を明らかにいたしました上でこれを有力なる
資料として二百四十五条に基くところの内閣総理
大臣の助言、勧告を行なって、自後この種の事案の根絶を期することが必要である。そういう行き方は二百四十六条に基く出納検閲を行なったり、帳簿を提出せしめたり、事務の
報告をなさしめたりすることによりまして、これを
資料として二百四十五条の三に基く内閣総理
大臣の助言、勧告が行える。これによって、その運用よろしきを得て、今後再びかような事態の起らないように処理をすることができるのではないか、こういうふうに考えますので、私は二百四十六条を基礎として、二百四十五条の三の規定に基くところの内閣総理
大臣の助言、勧告、こういう具体的な行政措置によりまして、この事案は
一つ災いを転じて福となし得るように根絶をしていくことに努力をしなければならない、こういう意味においてお説を傾聴した次第でございます。