○岡松政府
委員 吉田委員からのお尋ねに対しまして、今の決算
委員会に特に
関係あると思われる事項に重点をおきまして簡単に御
説明申し上げたいと思います。
行政管理庁といたしましては、
運輸省の
国鉄の監督
状況を監察いたしますことに関連いたしまして、
日本国有鉄道を調査いたしておるのでございますが、今お話のように二十八年から大体三次にわたって調査をいたしております。
第一は、
日本国有鉄道の
財産管理状況について調査いたしたのでございますが、これはただいまいろいろと論議されております部外貸付という点につきまして、重点的に調査したのでございます。ただお断わりいたしておきますことは、これは実は
鉄道会館問題等が世論の問題になりました当時、
行政管理庁といたしまして、
国鉄のいわゆる
財産の貸付
状況がどうであるかという
状態を全国的に把握するという意味でやったのでございまして、現在におきましてそのままの
状態であるということを申し上げるのではございません。
資料といたしましては二十八年のことでございますので、さよう御
承知おき願いたいと思います。その結果につきましては、今問題になりますような未
承認のまま
使用しているとか、あるいは
契約条項に違反して目的外に
使用せられておる、あるいは
転貸も同様なことでございますが、他の者に
転貸されておるといったようなことを全国的に
資料調査いたしまして、
運輸省に勧告いたしたのでございます。その際、先ほど来問題になっておりますその
転貸の中に、いわゆる
外郭団体、
外郭団体にもいろいろ定義もございますが、一応通俗の意味における
国鉄の外郭的団体と
認められるものが、多数不適当に貸付を受け、またこれを
転貸しているという事実も含めて勧告したのでございますが、その点につきましては、ただいまもありましたように、その中には貸付の価格が市場価格に比して非常に低いというような事実もあるのでございますが、ただいま
国鉄当局からもお話のように、その後収入を増加する意味におきまして、二倍あるいは三倍にこれを改定されまして、増収に努めておられるようであります。今もお話のように不払い同盟その他の
関係で、あるいは十分に目的が達せられていない面があるのではないかというように思われるのでありますが、われわれの勧告に従いまして相当
努力をいたしておられる点は
認められるわけでございます。
もう
一つは、
国鉄の資材の
管理状況につきまして調査いたしましたが、これは
関係がないこともございませんけれ
ども、調達のことではございませんで、調達した資材の運用
状況につきまして、いわゆる回転率とかあるいは資材が長期にわたって使われずにおって不経済である、これを効率的に
使用すれば経費の上におきましても非常に節約になるというような見地から監察いたしたのでございます。
その次は、
国鉄の工事経費というものが非常に膨大なのでありまして、その工事を外部に請負に出す場合におきまして、その価額等におきまして相当節減の余地があるんじゃないかというような意味から、これを監察いたしたのでありますが、たまたま三十年に至りまして、従来の監察とあわせまして
国鉄の経営につきまして総合調査的な監察をいたしましたので、その中にこの工事経費の面も含めまして勧告をいたしておりますので、最後に三十年に監察いたしました国有
鉄道の経営調査に関する結果につきまして御
説明申し上げたいと思います。
われわれが三十年に
国鉄の総合的な経営調査をいたしました動機と申しますのは、先刻来もこの
委員会で論議されたところでありますが、
日本国有鉄道がいわゆる公共
企業体として発足いたしまして相当の年月を経ておるわけであり、ます。そこで日本で新しく発足した公共
企業体として
国鉄がどういう
あり方にあるかという点に重点を置いたわけであります。御
承知のように公共
企業体というものは公益性というものを一面持っておりますと同時にいわゆる企業性と申しますか、能率的に運用されるという面を兼ね備えておるわけでありまして、これがどういうふうに融和して行われるか、行われなければならぬかという点につきましては、いろいろ議論があると思いますけれ
ども、いわゆる
現状における運営が、われわれの
考え方からして、これに改善を加える余地がないかどうかということを主たる目的として調査いたしたのであります。その結果大分けにいたしまして、大体三つの
考え方が勧告をいたしておるのでございまして、第一は、
国鉄がいわゆる
企業体の一面である能率的に運営せられておるかというような面につきまして勧告をいたしたのであります。
簡単に申し上げますと、経営
委員会というものが当時あったわけでございますが、それが現在の運営におきましては、主体性ある経営指導が期待できないというようなことが
一つになっています。この点につきましてはすでに
国鉄も
機構を改正せられまして、現在これを廃止されまして、新たに
理事会というものが運営の主体になっておられるようであります。
また
役員の構成におきましても、いわゆる政府の関与する面が、他の電電公社あるいは専売公社あるいはその他の公団に比して、
国鉄が公益が非常に強いにもかかわらず、非常に薄いように思われるというような面から勧告いたしたのでありますが、その結果副
総裁及び
理事の任免が
運輸大臣の認可事項に改正になりました。また
理事の任期がなかったのでありますが、三年にされる、あるは監査
委員会というものが特に設けられまして、
運輸大臣の任免する監査
委員というような制度が設けられたというような改正になっておるわけであります。また人材の登用について自主性が
認められたけれ
ども、民間からの人材というようなものの登用がないといった
趣旨の勧告に対しましては、
理事も外部から選任せられておるようでありますし、あるいは監査
委員等も外部から選任せられまして、
国鉄の運営が民主的に行われるというふうな改正になったわけであります。
次は事業の
施設の機能維持というものにつきまして勧告いたしたのであります。当時
国鉄といたしまして、はたまたま運賃の値上げというような問題が起っておったのでありまして、われわれは運賃の値上げ云々ということを監察目的としておらないのでありますけれ
ども、やはりその主たる理由といたしまして、当時
国鉄の
施設が非常に荒廃しておるために、いつ不測の
損害が起るかわからない、それはやはり償却費が非常に不足である、
施設が非常に荒廃しておるから、それを復旧するために非常に金が要るためだということが言われておったわけであります。それに関連いたしまして、われわれいわゆる
施設の
状況あるいは問題になります減価償却費の
使用状況等につきまして監察をいたしたのであります。
われわれの
考え方を簡単に申し上げますと、
国鉄は
施設が非常に荒廃しておる、従って緊急に取りかえなければならぬ工事は重点的に取りかえるような
状態にならなければならぬにもかかわらず、中には不急不要と
認められるような
施設に金が流れておって、そして緊急に取りかえなければならぬような
施設が、金がないというような理由で取り残されているような一面も見えるというようなこと。また減価償却費の問題でございますが、
国鉄は私企業とは違って公
企業体であるので、償却費というものはどこまでも一切の取りかえに必要な費用、その取りかえに必要な費用というものは資産の実体を維持するに必要な費用にとどめて、私企業のごとき過剰償却というような形になることは避けなければならぬではないかという
考え方から、現在
国鉄が採用しておられる同定資産の耐用年数というものが、民間私企業に
認められている税法上の耐用年数を多少延長した耐用年数で計算されておる。これはわれわれの
考え方から申しますと、実体資産の維持に必要な耐用年数ということからいえば、もう少し耐用年数を延長することが必要なんじゃないかということ、また償却資産の中には車両とか隧道あるいは土工というようなものがやはり償却資産の対象になっておるのでありますけれ
ども、車両等はこれは今の
国鉄の修繕の経過から見ますると、非常に部分的に修繕が行われておって、われわれの
考え方としては、その結果車両というものが実際上修繕によって耐用年数が延びておるのでございまして、そういう
関係からこれを取りかえ資産にする方がいいのではないかというような示唆を与えたのであります。また隧道、土工等当時耐用年数はたしか四十年となっておったのでありますが、こういうものは自然的
条件によって左右せられるのであって、むしろこれを永久資産として、そして必要のある場合には修繕費でまかなう方がいいのではないかという
考え方もその中に含めて勧告したのであります。
当時
運輸省の中に経営調査
委員会というものが設けられまして、やはり独自の
考えで
国鉄の経営改善を審議されておったのでありますが、たまたま私たちがやりました監察と同時期になりましたので、経営調査
委員会にもわれわれの
考え方をお話し申し上げまして、相当
考え方を取り入れていただいたというふうに私は感じておるのでありますが、この点につきましては、そのほか予算上多額の修繕費が業務費に流用せられたというような形が現われておったのであります。そういうような取りかえが必要な場合に、修繕費が業務費の方に流用されるというような矛盾の形はおもしろくないというようなことも加えまして勧告いたしたのであります。その結果もちろん修繕費の流用という面は三十一年度の
国会の予算から正常化されたように
承知しております。それから減価償却費につきましては、耐用年数が相当大幅に延長せられるような結果に改正せられたのでございます。
それから次は経営の刷新合理化というような面でございます。これは
国鉄が同定資産が非常に膨大でありまして、また人件費等も占める割合が非常に高いわけでありまして、これが
国鉄の企業の非常な重圧になっておるというような
考え方から、事業に接直必要な資産以外はできる限りこれを切り離して、身軽になることが必要じゃないかというような
考えから勧告いたしたのでございます。その
一つは先刻申し上げました修繕費等におきまする請負、
関係の調査と関連いたしまして、請負工事につきましては非常に積算がずさんであって、不経済な
契約をしているというような傾向が見られたのであります。これはこの点を改正することによりまして、相当工事費が節約になる。これに関連いたしまして、いわゆる
外郭団体の請負工事の中に占める
地位が非常に高い。また一括請けておりまして、その一部あるいは全部を下話に回しておるといったようなことから、中間利益を得ておるような
状態が非常に多い。こういうようなものを非常に改善すれば、経費の節約が相当できるはずであるというような
趣旨の勧告をいたしたわけでございます。
この点につきましても、
外郭団体につきましては、先日も工藤
委員長がお見えになったのでありますが、
国鉄部外団体等公正
委員会というものを設置されまして、
外郭団体につきましてのいろいろな改善について
努力をされているようでございます。また請負工事の合理化という点につきましては、請負業者の資格及び指名審議会あるいは請負業者指名
委員会、請負工事予定価格積算基準
委員会というようなものを作られまして、その答申に基きまして鋭意改善に
努力せられている
状態と
承知いたしております。
それからこれは
一つのわれわれの試案として、
国鉄には相当完備せられました車両の修繕工場があるわけでございます。戦後相当この車両がいたんでおりましたので、大規模な更新、修繕その他の修繕工事を実施して、車両の改造が十分行われておるわけでございますが、なおこの
施設を利用して、全部とは申しませんが、ある程度の車両の新造をしたら有利じゃないか、外注するよりも自分の車両工場で作る方が非常に安上りであるという計算を出しまして、勧告いたしたのであります。現在
国鉄におかれましても、一部新造の車両を製作しておられるように聞いております。
なお被服工場とか、製材工場とか、志免炭鉱というようなものを付帯工場として経営されておったのでありますが、これも終戦後のいろいろと物資の不足、物資統制というような環境下におきまして、
国鉄自身でこういう工場を持つことも必要であり、また有利であったようでありますけれ
ども、
現状におきしましてはその経費等が必ずしも有利ではなく、また民間に外注する方が有利であるというような
状態も
認められまして、これらの工場を将来におきましてなるべく
国鉄から切り離すように
考えられたらどうかというふうな勧告をいたしたわけでございます。現在たしか製材工場では三十一年の四月から直営をやめられたように聞いております、また被服工場は二つございますけれ
ども、これを合理化するというふうに
考えておられるような回答を得ておるわけでございます。それから志免炭鉱につきましても、これは今すぐにというわけには参らぬと思いますが、やはり経営の合理化をして、将来事情が許せば
国鉄から離すことも
考えておるというふうに聞いておるわけでございます。
なお、こまかいことになりますけれ
ども、やはり経費の節約といいますか、そういう意味から申しまして、当時
国鉄の共済組合の物資部というものに四千数人の人員を擁しておったわけであります。そのうちの二千三百名ばかりが
国鉄の専従職員で、それに従事しておったのでありますが、共済組合というものに
国鉄の専従職員を使うということは形においておもしろくないのではないか、それからその取り扱う物資を、運賃八割引きで安く仕入れて、それを共済組合員に配給するというような形は、ほかの公社等には見られない非常に有利な
条件である、しかしそれは
国鉄の
経理を食ってやっておるというような結果にはなるわけでありまして、こういうようなものは検討する余地があるということを申し上げたわけであります。これも今直ちに二千何百人をはずすわけには参らぬと思いますが、漸減する
方針で三十一年度に二百人ばかり減員して
努力しておられるようであります。
なお、
鉄道公安官というようなものも、やはり戦後の混乱したいわゆる
鉄道犯罪と申しますか、そういうような必要からできたのでありますが、
現状におきましては
——もちろん必要ないということは申し上げません、現在二千七百人おりますが、全部が全部いわゆる公安的な仕事にどうしてもなければならぬような人員にも
考えられません。また多少ほかの仕事に従事しておるというような
現状を調査いたしまして、漸減する
方針を勧告いたしたのであります。これも三十一年から約百名減員というふうに
努力されておるようであります。
大体非常に簡単でございますが、いわゆる
国鉄が公共
企業体として公益性を維持するとともに、また企業的能率的に、経費を有効に使うというような意味において、新しい公共
企業体としての
一つの
あり方を示す意味におきまして勧告をいたしたのであります。公共
企業体というものは何と申しますか、理論的にはなかなか
説明がむずかしいのでございますけれ
ども、新しい
企業体としての
国鉄が正常な運営になるその形が、日本における
企業体のほんとの形を示すのでありまして、そういう意味におきまして、われわれとしましては側面から
国鉄の業務の改善に寄与してきたわけでありますが、本年度におきましても、ただ制度ができたというだけではいけないのでありまして、この制度を運営してほんとに改善の実を上げるということが必要であり、またわれわれの勧告もその改善が実現されなければ意味がないと私は
考えております。本年度におきましても、その意味におきまして、われわれ従来勧告した改善事項がなおよく実行されるような推進的な監察もいたしたいというふうに
考えておる次第でございます。