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1957-02-05 第26回国会 衆議院 議院運営委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月五日(火曜日)     午後零時十七分開議  出席委員    委員長 保利  茂君    理事 荒舩清十郎君 理事 佐々木秀世君    理事 園田  直君 理事 福永 健司君    理事 池田 禎治君 理事 野原  覺君       臼井 莊一君    岡崎 英城君       椎熊 三郎君    井上 良二君       小牧 次生君    佐々木良作君       渡辺 惣蔵君  出席政府委員         内閣官房長官  石田 博英君         法制局長官   林  修三君  委員外出席者         議     長 益谷 秀次君         副  議  長 杉山元治郎君         事 務 総 長 鈴木 隆夫君     ————————————— 二月五日  委員吉川兼光辞任につき、その補欠として井  上良二君が議長の指名委員選任された。 同日  理事松岡松平理事辞任につき、その補欠とし  て山中貞則君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  国務大臣演説に対する質疑に関する件  本院予備金支出に関し承諾を求めるの件  人事官任命につき同意を求めるの件  公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの  件  内閣総理大臣臨時代理職務権限について、  内閣官房長官及び法制局長官質疑  本日の本会議議事等に関する件     —————————————
  2. 保利茂

    保利委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。理事松岡松平君より、理事辞任の申し出がありますので、これを許可することといたし、その補欠選任は、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 保利茂

    保利委員長 御異議なければ、その通り決定いたします。それでは山中貞則君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 保利茂

    保利委員長 次に、国務大臣演説に対する質疑に関しましては、昨日の委員会決定通りに進行いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  5. 池田禎治

    池田(禎)委員 むろん私も昨日の決定通り異論ありませんが、時間等に多少の狂い等のありました場合は、場内交渉でいたしたいというつもりでもございますから、その場合は、一つ場内交渉にしていただきたい、こう思っております。
  6. 園田直

    園田委員 了承いたしました。従って、そういう場合は両党で場内で話し合って、進行及び順序等は御相談をいたします。
  7. 保利茂

    保利委員長 それでは、昨日の決定通りといたし、議場の都合によりまして、場内交渉において変更することあるべしということで、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 保利茂

    保利委員長 それでは、さよう決定いたします。     —————————————
  9. 保利茂

    保利委員長 それから、先日お願いいたしておきました人事官神田五雄任命につき同意を求めるの件について、この際御協議を願いたいと存じます。前会留保になっておりますが、念のため申しますと、本日参議院では同意を与えるということでありますから、本院においても、本日決定をいたしたいと思います。
  10. 池田禎治

    池田(禎)委員 社会党の方が留保になっておったのでございますが、私の方も、国会対策委員会において正式に同意を得ましたので、異議ございません。
  11. 保利茂

    保利委員長 それでは人事官任命につき同意を求めるの件につきましては、神田五雄君を任命せられることに同意をいたすことに決定いたします。     —————————————
  12. 保利茂

    保利委員長 次に、同様公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件が、面会相談をいたしまして、これも留保になっておりますが、中村清君を任命せられることにつき、同意を与えることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 保利茂

    保利委員長 同意をいたすことに決定いたしました。     —————————————
  14. 保利茂

    保利委員長 次に、昭和三十年度及び三十一年度の衆議院予備金支出の件についてお諮りいたします。国会予備金に関する法律第三条によりまして「各議院予備金支出については、これを議院運営委員会委員長が、次の常会の会期の初めにおいて、その院に報告して承諾を求めなければならない。」ことになっております。予備金支出の内訳は、お手元の配付の通りであります。本件は、これを他日の本会議において報告し、承諾を求めることにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 保利茂

    保利委員長 御異議なしと認めます。その通り決定いたします。     —————————————
  16. 井上良二

    井上委員 この際、内閣総理大臣臨時代理の問題につきまして、官房長官及び法制局長官にお伺いしておきたいのであります。先般政府から、内閣総理大臣石橋湛山君が、風邪のために療養を要するという医者の診断によりまして、三週間の長期療養のために、内閣総理大臣臨時代理任命をしたいという申し入れがあり、われわれ野党、社会党といたしましても、事、病気のことでありますので、すなおに内閣総理大臣臨時代理国会に臨むことに了承を与えたのでありますが、そのとき、われわれが石田官房長官等にお会いをいたしまして、いろいろ確かめたところによりますと、この臨時代理は、内閣法第九条によって置くものなりという解釈をとり、その場合、内閣総理大臣臨時代理内閣総理大臣職務を行う、こういう解釈をとったのであります。ところが、その後石田官房長官は、新聞記者会見において、あるいは参議院における議院運営委員会の発言において、内閣総理大臣権限内閣総理大臣臨時代理に全部移行されておるのではない、内閣総理大臣の持っております権限中、国会解散をする権限、または各省庁の大臣及び長官等任命権、こういうものは内閣総理大臣にあって、内閣総理大臣臨時代理にはない、かよう解釈をされておるようであります。このことは、国会審議の上に、また国政運営していく上に、非常に重大な問題を投げかけておりますので、この際、この点を明確にする必要がございますから、特にお忙しいところ出席をいただいたのでありますが、私ども内閣総理大臣がやむなくその職務が行えない事態になりましたときに、臨時内閣総理大臣が置かれるという解釈を、第九条によっていたしおるのであります。その場合、臨時内閣総理大臣は、内閣総理大臣の持っております権限の一切を代行すると、こう解釈しておったのでありますが、さよう解釈は間違いでありましようか。この点、まず法制局長官から明確に御答弁を願いたい。
  17. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの御質問の点、お答えいたしますが、御承知よう内閣法第九条は「内閣総理大臣事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣職務を行なう。」こういう規定でございます。今回の岸外務大臣内閣総理大臣臨時代理をせられておるのは、この規定に基いてなされておるものと考えます。そこで内閣総理大臣臨時代理内閣総理大臣職務を行う範囲でございますが、この点につきましては、私ども考えておりますところは—学説等も参照いたしまして考えておりますところは、内閣総理大臣職務をいろいろ分析して考えてみますと、まず第一としては、内閣首班としての総理大臣職務、それから総理府の首長としての総理大臣職務、この二つがございます。それは当然第九条によって臨時代理が行わるべき職務に入ると思います。最後に残りますのは、内閣総理大臣個人的な地位と申しますか、要するに、内閣を組織すべき者として国会において指名を受けた内閣総理大臣地位、これは、やはり本来国会において、だれだれという方を内閣総理大臣として指名されております。その指名された方が内閣を組織する、その国務大臣を任免する。この権限だけは、これは一身専属的なものであろう。これは宮澤教授等説等もそういうことになっております。私どもはさように考えております。その部分だけはやはり一身専属として残る。これは本来の総理大臣がそれを行使し得る状態にあるかないか、これによってきまることである。かように考えるわけであります。
  18. 井上良二

    井上委員 石田官房長官も、さよう見解をお持ちになっておるのですか。
  19. 石田博英

    石田(博)政府委員 私も、法制局長官と同様の見解を持っておるわけであります。
  20. 井上良二

    井上委員 先般内閣は、小瀧防衛庁長官を、岸内閣総理大臣臨時代理任命後において選任をいたしておりますが、この小瀧防衛庁長官は、岸内閣総理大臣臨時代理任命したのではなしに、石橋内閣総理大臣任命をいたしましたか、その点はどうなっておりますか。
  21. 林修三

    ○林(修)政府委員 私の承知いたしました範囲では、小滝彬氏を国務大臣任命いたしますについては、石橋総理大臣任命せられたと聞いております。これは先ほど申し上げました理屈に基いてやられたものだと考えております。
  22. 井上良二

    井上委員 そうなりますと、国会としては、非常に重要な解釈上の問題が起って参りまして、今後の国会運営にも、社会党としても重大に考えなければなりません。私ども総理病気のために、総理としての職務が行えないということから、臨時代理を置かれて、総理の持っておる一切の権限臨時代理が行うということで了承いたしまして、石橋総理大臣代理としての質問をやっております。ところが、今お話によると、総理大臣個人的な権限といいますか、そういうものが別にある。内閣首班者としての権限、あるいは総理府を統括する権限、このほかに内閣総理大臣個人としての権限が別にある。そういう解釈をされますと、大へんな問題になってきやせぬかと思います。かりに、あなたの説が、憲法上あるいは法学上、法理上、正しいということであったといたしました場合、総理大臣が、かりに非常に高熱に冒される、あるいはまた病気のために全然判断がつき得ないような情勢が長く続いた。そういうときに内閣事故あった場合、その内閣総理大臣がその欠員者任命をするということが、実際行い得るかといえば、これは行い得ないのであります。だれが判断をしても、行い得ないのであります。それを行い得るといたしますならば、国政は非常な方向にあやまつのであります。また、いかなる事態国会解散しなければならぬ事態が起らないとは、だれも断言はできません。ことに長期にわたって欠席届を出されておる現状において、政治は毎日動いておりますから、いかなる事態において国会解散しなければならぬ事態になるかもわかりません。そういう重大な事態に立ち至った場合、内閣総理大臣がその病気のために事態判断ができないという事態に立ち至ったときに、一体だれがそれを行い得るかというよう事態が、ここに起ってくるのであります。そういう事態を予想したらこそ、ここに内閣総理大臣政治的な一切の権限を行い得る臨時代理を置いたのではないか。その規定を設けたのは、そこにありゃせぬかと思う。あなたの今の御解釈によると、かりに高熱に冒されて判断を誤まろうが、それは個人的な内閣総理大臣権限に属することであるから、どういう判断のもとに、どういう決定がせられようが、それはやむを得ないのだと、こういう解釈になり得るのであります。そういうべらぼうなことは、一般国民の常識から判断はできません。私どもは、さようなつもりで総理大臣臨時代理を相手にして、国政を審議しておるのではないのであります。これは非常に重大な問題と私は考えますから、それらに対して一体政府はどうお考えになっておりますか。官房長官及び法制局長官の御意見をお伺いいたします。
  23. 石田博英

    石田(博)政府委員 総理大臣が持っております一身専属権限というのは、人事権であります。そう私ども解釈いたしております。解散権の問題については、これは天皇内閣助言承認を得て行うことでありましてその場合、総理大臣臨時代理が、内閣統括者として助言承認を与えることは、法律的には可能であると思いますが、政治論としては、現在総理大臣がいるのですから、異見がある。こういうふうに私どもは考えております。それから総理大臣が、今石橋総理大臣が、小瀧防衛庁長官をそういう見地から任命をいたしまして、それを両院に通告をする行政事務、それから、あるいは認証式に立ち合うこと等を臨時代理が行なったのは、任命権だけが総理にあるという、人事権だけが一身専属権限として残っておるという解釈に基いたわけでありますが、そのときの状態が、それではその権限を行使するのに不可能な状態であったかと申しますと、これは医師の判断にもある通り、十分その人事権は行い得る状態にございます。ただ継続してずっと総理大臣としての職務を行えないので、臨時代理任命して御承認を得た、こういう形でございます。
  24. 井上良二

    井上委員 そこの解釈が非常に大事でありまして、つまりその人事権は、首相という特別な権限任命ができて、その後の任命権臨時代理にはないのだ、こういうことになってきますと、私は非常に問題が起ってきょうと思う。今、お話しの通り、小瀧さんを任命する判断はあった。ところが、今度は認証式あるいは国会への通達の手続等は、これは総理としてはやれぬから、臨時代理にやらした。片一方任命する判断能力を持つ御病状ならば、片一方、それを手続する能力もあり得るという解釈は当然起ってきます。そうなりますと、同じ人間が—例を引いてはなはだ失礼でありますけれども、鳩山さんのように、からだの一部がしびれておって、これは全然能力を欠いてしまっておる。ところが片一方は生きておる、能力も十分発揮できる、こういうことになってしまう。そんなべらぼうな権限使い分けなんてあるものではありません。それは何としてもやはり統一をしていただきませんと、非常な問題を起してきよると思います。私どもはまた、内閣がそういう解釈でおりますならば、これは党としては国会に臨む態度を根本的に変えなければなりませんから、その点は一応もっと御検討を願いたいと思います。
  25. 石田博英

    石田(博)政府委員 国会に通告する行為、それから認証式に立ち会う行為というものは、能力の有無によって岸内閣総理大臣代理が行なったのではないのでありまして、そのときすでに岸内閣総理大臣代理任命せられておりまして、従って、一身専属権限以外のものは岸内閣総理大臣代理が代行することになっておりましたので、岸内閣総理大臣代理によって行なったわけであります。
  26. 井上良二

    井上委員 今の御解釈になりますと、それは、まるきり宗教的なと申しますか、石橋さんは日蓮宗の権大僧正とかなんとかいうむずかしい位をもらわれたのでありますから、それが乗り移っておるかもわかりませんけれども、そういう宗教的な、個人の神聖化された権限というものが別に隠されておる。表へ現われてくるのは、内閣首班としての権限、また総理府を統括する権限だけが表へ出てきておって、表へ出てきておるものだけは代理である、本尊の権限は別にちゃんとしまってあるのだから、何人にも侵されない神聖な権限というものは別にあるのだ、こういうことになりますと、これは非常に問題があります。私がさいぜん具体的に質問をいたしました通り、非常な高熱に浮かされ、あるいは判断能力を欠いておるのに、なおかつ、この神聖的上な個人権限を持ち出されて、それでもって内閣任命権が行われるのだ、人事権が発動するのだ、こうなりますと、それは全く内閣総理大臣という看板のもとに、いわゆる側近政治の行われることが具体的に現われてくるのでありますから、これはゆゆしき問題になってきます。さようなことは許されません。少くとも内閣総理大臣職務を代行するといいますならば、その一切の権限が代行されなければならぬのであります。特別なものだけが残っておって、あと代行者にやらすのだというなら、もっと法文上も具体的に、これとこれとの権限臨時代理にやらすが、これとこれとの権限は依然として残っておるということを明記しなければなりません。ちょうど天皇認証を行い、また天皇として国事に携わります場合の規定がそれぞれございますが、ああいう工合に明確に規定されておりません今日、非常な誤解を生ずるのであります。そうして今後はこれが非常な悪例にもなり、大きな問題になってきょうと思いますから、その点を明確にされたい。  それから、私が特にそういうことを慎重に聞いておりますのは、われわれの耳に入っております内閣総理大臣病状というものに対して、私は非常な心配をいたしております。といいますのは、何か側近の者だけは盛んにお会いになっておるようでございます。たとえば岸外務大臣面会に行った、あるいは大野氏が面会に行ったが、これは全然面会をしていない、こういうことが盛んにいわれておる。われわれが伺うところによれば、また新聞に発表されておる主治医の言う石橋氏の容態というものは、熱が三十六度八分あるいは三十七度、あるいは脈拍が九十から百何十、そこへもってきて右肺に多少のラッセルが聞えるというよう程度である。その程度なら、何も面会を拒絶するほどの—しかも重要な閣僚が政治上の打ち合せや、見舞に行かれた場合、面会を拒否せられるということになりますと、相当石橋さんは重態でないか、こういうようなこともわれわれは一応考えられる点もありますから、そういう事態において任命権がどんどん発動される、しかもその任命したことについては、臨時内閣総理大臣が何ら責任を負わぬ、何らそれは知らない、こういうことになってきたのでは、一体、臨時首相代理と、ほんとうの総理大臣というものとの、政治的な権限責任というものはどうなるか、こういう事態が起ってきやしませんか。これは重大な問題ですよ。
  27. 石田博英

    石田(博)政府委員 前段法律上の解釈は、あと法制局長官お答えいたしますが、後段の問題についてお答えをいたしておきます。面会を拒否するというよう態度に出ているわけではございません。岸内閣総理大臣代理はただごあいさつに来たのだからといって、別に面会を求められたわけではないのであります。それから、内閣職務岸総理大臣代理に移っておるわけでありますが、しかし、実際上の連絡はもちろん必要なんでありますから、それは私がやって、直接二人きりで話をしなければならぬときは自分が行くことにしよう、という話し合いになっております。  それからもう一つ面会をさせたらどうかというお話でありますが、それは別に面会させたらいいとか悪いとかいう話ではないのでありまして、御承知ように、約五分置きくらいにお見舞に来るのであります。そのときに、どなたにお目にかかって、どなたにお目にかからないというわけには参らないのであります。そうして、三分置きなり五分置きなりにお目にかかっておりますと、一口に常時何人にもお会いしなければならぬことになりますので、これは皆様方にまず御遠慮を願って、ゆつくり静養させていただくということが、静養の目的に合うものだ、またお見舞の方もそういうおつもりであろうと私どもは思っておるわけでございます。  それから、巷間いろいろなことをいわれておる。話の内容は知っておりますけれども、そんなことは時日がたてば明瞭になることでありますから、わざわざそういうデマに対して、私どもは一々特別の処置を考える必要も何ら感じでおりません。  それからもう一つは、それでは任命行為を行なったときに、意識不明であったり、高熱に浮かされておったりしていたのではないか。いわば、使いに行った私が勝手に判断をして、勝手にやっておったのではないかというようお話でありましたが、ちゃんと署名をとってきております。この点は御心配はいりません。以上お答えをしておきます。
  28. 林修三

    ○林(修)政府委員 前段法律問題についてお答えいたします。先ほどお答えいたしました通りに、内閣総理大臣地位を考えますと、まず第一に、内閣首班としての総理大臣地位、それから総理府の長としての総理大臣地位、それから国会において指名を受け、これから内閣を組織構成すべき者としての総理大臣地位、こういうものに分けて考えることができると思うのでございます。そのうちの、内閣ができまして、いわゆる内閣というものの首班地位、それから総理府の長としての地位、これはともに総理大臣職務代行として臨時代理がされるべきもの、代理ということに親しむ行為だと私は思います。しかし一番初めの、国会において内閣総理大臣として指名されたその総理大臣が、内閣を構成する、あるいは組織する、つまり国務大臣任免権になりますが、これはその国会において指名せられた個人の方に与えられた地位だ、これは代理に親しまない行為だ、さように考えるわけであります。これは宮澤俊義氏等の説にもはっきり書いてあるところでありまして、私どもとしては、さよう解釈するのが妥当ではないかと考える次第であります。
  29. 井上良二

    井上委員 あなたはそういう勝手な解釈をしておるけれども、問題は、この第九条の「職務を行う」という、この「職務」というものが、あなたのようにそういう使い分けをしてやらなければならぬものなら、これはもっと明文化しておくべきですよ。そうして国会承認を得べきですよ。承認を得ずに、勝手に、職務権限はこれとこれとに分れるのだ、これとこれとは、御都合のいいよう解釈で盛んにやって、職務権限の方だけは断じて移行はしないのだ、そういう使い分けがありようはずはないじゃありませんか。
  30. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまは理論的な点から申し上げたわけでありますが、もう一つ、今、法律の上ではっきりしないではないかと仰せられますけれども、御承知よう内閣法第九条には—内閣法には内閣権限が書いてあるわけであります。今申しました総理大臣任免権の問題は、内閣構成以前の問題であります。従いまして、内閣法の直接関するところではございません。憲法の六十何条でございましたか、国会において指名された総理大臣任命する、この規定から出てくるものであろうと思うのであります。この意味からして、直ちにその性賢からいたしまして、代理権に親しまない行為だと、かように考えるわけでございます。
  31. 井上良二

    井上委員 第十条をごらん下さい。この第十条も、やはり内閣が構成されて、各「主任国務大臣事故のあるとき、又は主任国務大臣が欠けたときは、内閣総理大臣又はその指定する国務大臣が、臨時に、その主任国務大臣職務を行う。」、こういうことになっておるのです。だから、あなたがそういう勝手な解釈をしてはいかんですよ。やはりそれは内閣が構成されて初めて内閣職務を行う臨時代理というものが置かれるのです。
  32. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま内閣法第十条をおあげになりましたが、内閣法第十条は、お説のように、これは内閣を構成した内閣総理大臣職務だと思います。これは、主任大臣を新しく任免するものではございません。国務大臣であるある人に故障が起った場合に、他の人を臨時代理させるのでありまして、これは内閣首班としての職務だと思いますが、いわゆる国務大臣内閣の外から入れる、あるいは内閣の外に出すという行為は、これは内閣総理大臣として指名された方の一身専属的な権限だ、かように考えるのであります。
  33. 井上良二

    井上委員 あなたのおっしゃるのは、内閣が組織される以前の内閣総理大臣権限と、それから内閣が組織された後の内閣総理大臣権限と、二通りあるという御解釈ようですけれども、この内閣総理大臣臨時代理を置くというのは、これは内閣が組織された後の行為ですね。
  34. 林修三

    ○林(修)政府委員 私は時間的な意味を申しておるのではありませんで、結局その性質から申しておるのであります。内閣は、十六人の国務大臣をもって組織することになっておりまして、その十六人の国務大臣をもって組織し、あるいはそのうちからある人を排除するという行為は、これは内閣としての権限ではなくて、内閣構成者としての総理大臣権限だ、かように申しておるわけであります。
  35. 井上良二

    井上委員 そうすると、あなたにはっきりさせていただきたいのは、さきに私が言っておりますように、あなたの御解釈によると、かりに総理大臣が、あなたの言っておる特有の権限が行われない、総理大臣特有の個人権限と申しますか、そういうものが行えないよう事態が起った場合には、一体だれがどうしてそれを解決しますか。
  36. 林修三

    ○林(修)政府委員 結局そういう状態は、一時的に起る場合もありますし、継続的に起る場合もありましょう。一時的な場合は、高熱というものが一時的に出て、意識がないというよう状態があるわけでございます。その場合は、その間そういうことはなすべきでないと私は思います。それから継続的に行い得ない状態になった場合、この一番代表的な例は、総理大臣がなくなられた場合、その場合には、憲法でも当然首班任命されるということになっております。
  37. 井上良二

    井上委員 それは、あなた個人の勝手な御解釈で、臨時内閣総理大臣が置かれるという意味は、少くとも総理大臣としての権限が十分発揮できないという事態に立ってやられることでしょう。
  38. 石田博英

    石田(博)政府委員 今、法律上のめんどうな言葉でなく、私の理解しておることを申し上げれば、国会において内閣総理大臣指名を受けまして、その指名を受けた者が内閣を構成する行為、つまり国務大臣任命する行為、それは国会において指名を受けた者のみにある一身専属行為だ、任命する行為も、それから、やめさせる行為も、一身専属行為だ。ところが、その国務大臣の中から欠けた人があるときに、新しい人に仕事を付与する行為、それは内閣の権能でありますから、臨時代理がやられてもやり得ることである、こういう解釈です。  それから判断をする、つまり人事権を行使する判断をする行為、それがなし得られない場合、それは、いつまでも長くそれがなし得られない状態にある場合、今、法制局長官がおっしゃった通り、死んだ場合とか、あるいは非常に能力が低下した状態が、ずっと継続的に続くという場合においては、これは当然総辞職をすべき問題でしょう。しかし、一時的に起ってきた状態のもとにおいては、その行為をその状態の間だけなさなければいいことではないかと私どもは思います。それから小瀧君を任命したときには、そういう状態ではございませんでした。明瞭に総理に署名ももらい、それから総理指名ももらってやった行為でございます。
  39. 井上良二

    井上委員 最後に一点。そうしますと、法制局長官にもう一度はっきり伺っておきますが、総理の持っております固有の権限といいますか、それはどういうものですか、お答え願いたい。
  40. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは先ほども申し上げましたが、結局内閣首班としての地位でもなければ、総理府の長としての地位でもない。つまり内閣総理大臣として国会指名された総理大臣の持っておる権限、そういうことになります。従いまして、それは任免権、あるいは任免にきわめて密接に関連いたします憲法第七十五条の国務大臣の訴追の同意、こういうのが、その例だと考えます。
  41. 池田禎治

    池田(禎)委員 これは法制局長官でも、官房長官でも、どちらでもよろしいのですが、どうもあなた方、法律論を振り回されてわからぬのです。憲法第六十八条による「内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。」、この行為は、今もし国務大臣を罷免するとするならば、石橋総理大臣がおやりになるか、それとも岸首相代理が行い得るのでありますか。
  42. 石田博英

    石田(博)政府委員 それは、先ほど法制局長官から御説明の通り石橋内閣総理大臣が行うのであります。
  43. 池田禎治

    池田(禎)委員 そうしますと、憲法第三条にありますところの、天皇は、国事については、内閣助言承認を得なければならない、しかして、その責任内閣が負う、この内閣という場合につきましては、内閣構成の全体をさしていうのでありますが、その中には、石橋総理大臣としての固有の権能がそこに出されるものでありますか、いかがでありますか。
  44. 林修三

    ○林(修)政府委員 内閣職務は、その首班たる総理大臣が主宰して、統括しておるわけでございますから、その内閣首班としての事務は、ただいま総理大臣臨時代理が代行いたしておる、かようなわけでございます。
  45. 池田禎治

    池田(禎)委員 そういたしますと、結論すれば、現内閣には、石橋総理大臣としての固有の権能と、それから臨時総理大臣としての岸信介氏に与えられた権能と、二つある。いわば露骨なことを申しますならば、そういうふうな使い分けが行われておる、かように事実上においては、あなた方の説明において立証されると思いますが、いかがですか。
  46. 林修三

    ○林(修)政府委員 決して使い分けではございませんで、先ほども申し上げました通りに、性質的に分解して説朗いたしたわけでございまして、総理大臣として国会で御指名がありましたのは、石橋湛山氏であります。この石橋湛山氏が内閣を構成すべき者として指名されております。この権限は、ほかの者に与えられたものではない、かように考えております。
  47. 池田禎治

    池田(禎)委員 そうしますと、ただいまの官房長官法制局長官の御見解と、私ども社会党がこの国会に臨んでおる態度とは、根本的に違っておる。私どもはさように考えておらない。私どもの考えるところでは、石橋総理大臣が三週間の病気静養の届出をなされた、その間におきましては、岸臨時首相代理が一切の権能を代理する、さよう見解を持っておった。あなた方は立法上の精神からいって、いろいろな使い分けをなされる。この場合においてはこうだ、この場合においてはこうだとおっしゃるが、そういうことになると、総理大臣に対する質問にいたしましても、答弁を求める大臣にいたしましても、これは大へん違ってくる。こういうことであるならば、私どもとしては十分考えなければならぬ。この事態にやむを得ず当面すると、私は申しておきます。
  48. 石田博英

    石田(博)政府委員 内閣を代表しての職務は、岸内閣総理大臣臨時代理自体が全部行うのであります。従って使い分けをしておるわけではございません。国会指名を受けた石橋湛山のみが行い得る権限だけが、総理大臣に残っておるわけであります。
  49. 野原覺

    ○野原委員 官房長官にお尋ねしますが、あなたは新聞記者との会談で、臨時総理権限、性格等について、臨時総理人事権解散権がない、こういうことを言われたという報道を私ども耳にしておりますが、事実ですか。
  50. 石田博英

    石田(博)政府委員 人事権という意味は、先ほど申し上げたよう意味で、閣僚の任免権をさしております。それは言うた覚えがあります。それから解散権については、これは詳しく説明はいたしませんでした。私ども政治的にこれは行うべきものでないという意味のことは—しかし新聞記者に言うた覚えはありませんが、参議院の議運の理事会で、いろいろな話が出ましたときには、解散権というものは、これはやはり政治的には行うべきものでないでしょう、というような話を私はいたした覚えはあります。しかし新聞記者には、解散権まで及んだ覚えはありません。
  51. 野原覺

    ○野原委員 それは、参議院理事会の話を新聞記者が報道しておるのかもしれません。その点はおきたいと思いますけれども、一体解散権について、できるとか、できぬとか、理事会で、そういう発言をするという根拠はどこにあるのですか。政治的にはできるとか、できぬとか、何を根拠にしてそういうことをおっしゃるのですか。
  52. 石田博英

    石田(博)政府委員 見解を聞かれたから、私はそういうふうに、解散権についてはそう解釈すべきものだと思っております、と申し上げた次第であります。
  53. 野原覺

    ○野原委員 法制局長官質問したい。御承知通り憲法上、解散権というものは天皇権限になっておる。解散する場合は、内閣助言承認によるということになっておるわけですね。その場合に、内閣解散についての助言承認—たとえば、この二十六国会において、内閣不信任案がかりに可決されたという事態にきた場合には、臨時総理大臣岸信介氏は、憲法上、天皇に対して助言承認を与える義務が生ずると思う。その場合の助言承認内閣の意思表示というものは、岸臨時総理でできるか、それとも石橋総理がやるのか。
  54. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、先ほど官房長官からもお答えがあったと思います。解散天皇の国事行為であり、その天皇の国事行為は、内閣助言承認に基く。内閣首班としての職務は、岸臨時代理者が代行いたしております。法律的にはそれで足りると思います。
  55. 野原覺

    ○野原委員 そうなりますと、その場合の助言承認は岸臨時総理でできる、こういうことになると思いますが、その通りですね。そこでお尋ねしますが、防衛庁長官を任命されたのは、石橋総理であって、岸臨時総理ではありません、こういうことは、あなたの答弁としては一応筋を通しておる。ところが、小瀧防衛庁長官任命については、われわれ野党としては質問があるわけです。その質問に対して、一体岸信介氏がそれについて答弁できるか。臨時総理任命していない。しかも総理国会を休んでおる。われわれは小瀧防衛庁長官任命については異議があるというので質問した場合、答弁は議会でだれが責任をもってやるか、お尋ねをしたい。
  56. 石田博英

    石田(博)政府委員 任命について野党が異議があるということは、私はあり得ないと思います。というのは、任命というものは総理大臣一身専属権限でありますから、総理大臣がこれを任命することによって事が足りる、完全な行為となり得るものだと思います。
  57. 野原覺

    ○野原委員 任命について野党が質問することはあり得ないというが、あなたはとんでもない答弁をする。
  58. 石田博英

    石田(博)政府委員 質問ではない、異議があるということだから……。
  59. 野原覺

    ○野原委員 異議でも質問でもいい。かりに小瀧氏について質問がある、こういう事実があった場合、これは、小瀧防衛庁長官がかつて武官であったと仮定しましょう。そうすると、文民の規定に違反するということで、質問が生ずる場合もあり得る。これはあり得ないということではなくして、あり得る前提において、この種の問題は論議しておかなければならぬ。その場合、任命についての質問があった場合の答弁は、岸臨時総理でできるのか、できないのか、お尋ねをいたします。
  60. 石田博英

    石田(博)政府委員 それは十分できるわけであります。法律上の議論に限らず、それは内閣の、任命したあとに生じました政務でありますから、それは岸臨時総理大臣代理が十分できると思います。
  61. 野原覺

    ○野原委員 任命についての責任は、岸臨時総理大臣代理が負うわけですか、お尋ねします。
  62. 石田博英

    石田(博)政府委員 それは石橋総理大臣が負うわけであります。
  63. 野原覺

    ○野原委員 責任を負うことのできない者が、責任をもって答弁することはできないじゃないですか。この任命について私は関知しない、これは石橋総理個人の、いわゆる一身専属権限によって発令されたものであって、私としては関知しない。法制局長官によれば、首班としての職務総理府の長としての職務、この範囲内の代行しか私は委任されていないのだから、従って、質問があっても私は答弁することはできない、こう岸臨時総理が出られた場合、何をもって救済するか。病床に休んでおられる石橋総理質問に行けというのですか、どうですか、その場合。
  64. 石田博英

    石田(博)政府委員 それは質問の性質にもよると思います。たとえば法律解釈上の問題とか、内閣の政務を代理しておる者でできる問題とか……。どうもそれで満足できない質問というのは、これは今私の場合、ちょっと想定できませんが、そういう場合には、適当な他の方法、たとえば、書面をもってお答えする方法とか、あるいはまた、その他の方法もあり得るでありましょうし、たって御要求なら、出てこなければならぬ場合もあり得るかもしれないと思います。
  65. 野原覺

    ○野原委員 そうなると、いよいよあなたの方はボロを出してこられた。任命石橋総理がやる、従って、任命に対する責任石橋総理が負うのである、岸臨時総理には、少くとも防衛庁長官任命責任というものはない、こうなりますと、岸臨時総理責任をもって答弁させるということは不可能だから、そういう事態が起った場合、書面とか、あるいは無理にでも出てくる、こういうとんでもないことになってきますが、そうなりますと、これは総理には事故がないと私ども判断せざるを得ない。岸臨時総理が一応政務を代行することになりましたけれども石橋総理は、なおかつ今日、その防衛庁長官の任命ができる状態にあるわけです。防衛庁長官を任命しておる。そうなれば、総理事故はないじゃないか。総理事故がないのに、臨時代理を置くというのは、もってのほかです。私ども質問した場合、万やむを得なければ出てこなければならぬということなら、総理事故はない。こうなると、われわれは一応岸臨時総理承認したけれども、これは重大な事態です。石橋総理事故がないのに、事故があるということで休ましておる。とんでもない話だ。そういうのを認めるわけにはいかぬということになります。これは、どういうことですか。
  66. 石田博英

    石田(博)政府委員 事故と申しましても、任命をすることにたえ得られるかどうかという状態と、それ以後の、国会に出たり、他の職務をし得られる状態とは、おのずから健康上に与える差があります。私ども任命行為をするにたえられない健康状態であるとは思いませんけれども、しかし国会に出たり、あるいは他の職務をするのには、たえ得られない健康状態であると、医師の診断に基いて判断をしておるわけであります。
  67. 野原覺

    ○野原委員 一身専属権限は行使できるけれども、その他の権限は行使できないと、あなたは明確におっしゃるのですか、お伺いします。
  68. 石田博英

    石田(博)政府委員 権限の行使、あるいは政務の執行等にたえられるような健康状態ではない、従って、十分に政務を執行できませんから、そこで臨時代理を置いてやっておるのであります。しかし、一身専属権限は行使できる状態にあるのであります。
  69. 野原覺

    ○野原委員 そうなると、非常に重大な答弁だと私は理解いたします。一身専属の権利は行使できると、あなたは明言された。その他の雑務は、いわゆる重要でないその他の雑務は、臨時総理である岸信介氏にやらせるのであって、一身専属の、国会から指名をされた総理大臣の最も重大な人事権というものは、明らかに行使できるのでございます、こういうことになれば、私ども内閣法第九条の、総理事故があるとは判断できません。私どもはそうは思わなかった。これは新たな事態ですから、私はここで休憩を要求して、私ども議運の委員としては相談しなければなりません。
  70. 石田博英

    石田(博)政府委員 一身専属国務大臣任命する行為は、しょっちゅう起ってくる行為ではございません。また継続して起る行為でもございません。しょっちゅう起る政務と、継続して起る政務にはたえられない健康でございますが、今、一身専属職務任命権を行うことには、十分支障のない判断力を持っておるわけであります。
  71. 井上良二

    井上委員 非常に大事な発言をされておりますので、私からちょっと確かめておきたいのですが、今、官房長官は、閣僚を任命する等の一身専属権限は、そう繁雑にあとからあとから起るものではない、だから、そういう権限行使を、総理大臣独自の権限行使として保有しておって一向差しつかえないのだ、こういう御解釈ようであります。私どもはそうは解釈していない。というのは、これは大事な問題ですから、議論を尽しておいてもらいたいと思いますけれども、たとえば石橋内閣が組閣されます場合、その場合は内閣総理大臣国会任命をされて、内閣総理大臣としての職務権限を与えられた。その場合、石橋内閣総理大臣として十分の職務権限が行い得ない事態が起ったというときに、御承知通り閣僚選考で、健康なときでさえ非常な難航をきわめたのです。そうして、やっといろいろの御努力の結果、組閣が完了したことは御存じの通りであります。あなたみずから、もう、青息吐息の状態でおったことは、新聞が伝えておる通りです。そういうふうに人事権の行使というのは、諸般の諸情勢なり、いろいろな角度から検討を要する、非常に重大なこれは任命権であります。そう簡単に扱い得る権限ではない。しかも国政を担当し得る主務大臣任命しあるいは指名する権限でありますから、そう簡単に行い得るものとは考えられないのであります。そういう大事なものが、病中でも平気で行われるのだ、こう解釈することは、これはやはり、あなたはそんなことはたびたび起るものじゃないのだと言うけれども職務権限を代行さす行為というものをわれわれが解釈する、その根本的な考え方は、少くとも総理としては、そういう一切の権限が行い得ないから代理を置くのじゃないか、こうなるのです。しかも、この重大な国政を審議する場合、そういう人事任命権行為は病中でも平気で行われて、他の行為は行い得ないから病気で休むのだ、こういうことになってくると、国民に与える影響というものは、どう一体理解していいかということになってくるのです。ですから、これは政治的に非常に問題を起す問題でありまして、私どもえらい議論をするようでございますけれども、これは法文上あなたが今御説明され、法制局長官から御説明されますように、はっきり閣僚を任命する内閣総理大臣の専属権限というものはあるのだ、その規定が明確にされて、それが国会承認を得ており、しかも法文上、慣例上、そういうことがたびたび続けられておるということでありますならば、これはここで問題にする必要もありません。しかし法文上は、総理大臣権限一切は臨時代理が行うということになっておって、その権限範囲をあなた方で勝手に解釈して、これとこれとは臨時総理がやっていいが、この権限だけは不動のものである、だから、いかなる事態が立ち至っても、これだけは総理大臣がやるのだ、こういうことになってきますと、これは非常に私は問題が起ってこようと思いますから、この点については、いま一応もう少し私ども検討さしてもらいませんと、国民もまたこの点に対する解釈の問題が非常にやかましくなってきますし、同時にまた、そういう重大な権限を行い得る状態ならば、何も内閣首班としての権限の全部が行えないことではないじゃないかという事態も起って参りますので、それらの権限については、いま少し私ども時をかして、十分一つ意見をまとめてみませんと、私どもなかなかこれは容易ならぬ事態がこようと思いますから、しばらく時をかしていただきたい、こう思います。暫時休憩を願いたい。
  72. 保利茂

    保利委員長 井上さんに伺いますが、しばらく時をかしてくれというのは、どういう意味ですか。
  73. 井上良二

    井上委員 ちょっと一ぺん私ども党に帰りまして、国会対策を開きまして、一応検討いたしまして、すぐ返事をいたします。一応これはやはり野党としましては、内閣総理大臣を相手としての質問をやらなければならぬ関係から、そういう二通り解釈をされたのでは、私どもとしてはちょっと困る。
  74. 野原覺

    ○野原委員 今、官房長官の答弁を聞いたのですが、この事態というものは、私どもが今日まで考えておった事態とは違う。変った事態を、はっきり内閣責任者から、官房長官地位にある者からお聞きしたのですから、これを党に帰って報告する義務を生じてきたわけです。直ちに総理に対する質問があるわけですが、この質問内容、あるいは質問するかどうかということについても、検討しなければなりません。私どもこういう事態がはっきりした以上、どうしても帰らなくちゃならぬ、だからしばらく休憩を願います。大した時間はかけませんから、一つその通りお願いいたします。
  75. 小牧次生

    ○小牧委員 参考までにお尋ねしておきたい。先ほどからいろいろ質問がありましたが、総辞職する場合、これはどなたに権限がありますか。
  76. 林修三

    ○林(修)政府委員 総辞職は、結局国会で御指名を受けました方の代表する内閣の総辞職でございますから、これはやはり国会指名された方のみが行い得る権限だと思います。
  77. 小牧次生

    ○小牧委員 そうしますと、総辞職をするとか、あるいは国務大臣の任免、こういったことは、今のお話では、石橋首相一身専属権限だ、こういうことになるわけですが、かりに病状が悪くて、そういった人事の問題とか、あるいは政治的な判断、そういったものが不可能に陥った場合、そういうこともあり得る場合もありますけれども、その場合はどういうことになりますか。
  78. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと先ほどのを補足いたしますが、総辞職する場合、これはいろいろございます。いわゆる継続的に、たとえば極端な言葉で申せば、不具廃疾的な状態になった、あるいは死亡された、こういう場合には、もちろん臨時代理者がするより方法がございません。これは臨時代理者の名前でやるわけでございますが、そうでなくて、いわゆる自由意思に基いての総辞職は、もちろん国会指名をされた方がやるのが建前だと、こう考えております。
  79. 小牧次生

    ○小牧委員 ですから、そういった場合の状態判断をすることが—もちろん死亡ということは別問題です。病状によって不可能な場合もあり得ると思う。意識こんとんとして、できないという場合も一応想定できるわけですが、そういう場合はどちらに権限があるのですか。
  80. 石田博英

    石田(博)政府委員 意思表示ができなくなれば、これは当然そういう代理者が判断をする以外にありません。
  81. 小牧次生

    ○小牧委員 もう一つ関連してお伺いいたしますが、これは例が少し違うかもしれませんけれども、たとえば沖縄の問題なんかではよく出てくるのですが、施政権の問題とか、あるいは潜在主権の問題とかあります。私どもの考えでは、今、日本は、沖縄には潜在主権はあるが施政権はないとか、こういったことになっておりますが、実際そういったものとは幾らか違っても、そういう意味の潜在的な権限はあっても、実際にこれを判断し行使するのは臨時代理であると、こういう考え方は成り立たないわけですか。
  82. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど申しました通りに、内閣首班としての地位及び総理府の長としての地位は、今おっしゃった通りだと私は思います。しかし、いわゆる国会において指名された総理大臣地位、これは代理に親しまない地位である。代理を許さない地位だと、かように考えるわけであります。
  83. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 繰り返して聞くようでありますけれども、常識的な法律解釈で、今のような、たとえば総辞職したいと考えた場合に、自分で総辞職するのか、臨時代理が総辞職をするのかという判断をするのは、そうするとお医者さんということになりますか。
  84. 石田博英

    石田(博)政府委員 これは自分が意思表示ができない状態になれば、それは当然代理がやることでありますし、その客観的状態判断は、医師の診断というようなことも一つの重要な要素になりましょうが、自分の意思表示ができないという状態になれば、当然代理者が行うのであります。
  85. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 今の解釈は、そういう理屈も成り立つかもしれませんが、法制局長官に、はっきりとほんとうの常識的な解釈を伺ってみたいのだけれども、ほんとうは、そういう総理大臣権限は、二つにも三つにも分けられるものではなくて、総理大臣がまだ意識が十分あり、判断能力を持っておる場合には、その判断能力臨時代理者に助言したり、あるいはそういうことによって臨時代理にうまく間違えないようにやらせるということで、権限というものは全部移るものじゃありませんか。そう解釈せぬと、具体的に仕事ができぬ場合ができてきますよ。
  86. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから申し上げました通りに、いわゆる国政を処理する権限は、代理権の行使によって行われるわけであります。国政については、そこで支障は起らないと思います。内閣法第九条はその場合を規定したものと考えるわけであります。しかし、その国務大臣を任免する権限は、やはり本来国会で御指名を受けた方の権限である、かように考えるのであります。これは、むしろ常識的な見解でもあると思うのであります。御承知ように、宮澤教授の憲法の解説等もこの説によっております。そういうことをわれわれは参考にしておるわけであります。
  87. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 社会党で、いろいろ解釈の関係からはっきりしておきたいというならば、それはやむを得ないと思いますが、きょうは本会議もあることですから、休憩するにいたしましても、大体の時間をきめていただいて……。
  88. 井上良二

    井上委員 二時ごろまでお待ち下さい。今まだ参議院もやっておりますから。
  89. 保利茂

    保利委員長 それでは、こういうことにお願いしたらどうでしょうか。三十分後に理事会を開きまして、そうして委員会を開く。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 保利茂

    保利委員長 それでは暫時休憩いたします。     午後一時二十三分休憩      ————◇—————     午後二時三十二分開議
  91. 保利茂

    保利委員長 それでは再開いたします。井上君。
  92. 井上良二

    井上委員 休憩前に御討議を願いました内閣総理大臣臨時代理職務権限の問題につきまして、一応社会党としていろいろ党内の意見をまとめて検討いたしておりましたが、御存じの通りわれわれは、臨時首相代理内閣総理大臣権限を全部代行するものということで国会に臨んでおりましたところ、休憩前の政府側の答弁によりますと、内閣総理大臣権限のうち、国務大臣を任免します権限が、総理大臣の固有の権限として保有されておる。なお他にも多少何か権限が残っておるような口ぶりが、うかがわれるのであります。このことは、国政審議の上にいろいろ問題を残すことになるのでありまして、私どもといたしましては、あらかじめ副総理等を置きまして、総理大臣と一心同体のような形でその職務権限が代行される場合は、それほどにも考えません。けれども、今度のように期間を定めまして、単に内閣総理大臣臨時代理としての職務を行わすということになりますと、問題の解釈が非常に変って参りますし、またわれわれ国会の審議の上に、臨時総理大臣を相手にして、いろいろ職務権限の内容に立ち至って議論をする上においても、問題が起るのであります。ですから、この際政府においても、先ほど御説明をされましたように、内閣総理大臣に閣僚の任免等の固有の権限が残っておるという一つの信念的な解釈がありますならば、少くとも内閣法の一部を改正して、内閣首班たるの行為を行う権限、あるいは総理府統括者としての行為を行う権限というもののほかに、これだけは委任はできない、代行はできないということを一つ明記しておく必要がありはせぬか、そうしておけば、いろいろ紛糾を生じないであろうしいたしますので、そういう一つの御検討を願えるか、願えないか。それから私ども国会といたしましても、この解釈のいかんが、政治上いろいろ問題を投げかけて参りますので、一応国会といたしましても、今後再びかようなことを繰り返さないためにも、それ相当の機関におきまして、それぞれの専門家を集めてもらいまして、そこで十分議論を戦わし、討論を重ねて最も妥当とし得る結論を得ていただくようにお願いいたしたいと思います。今日直ちに内閣の閣僚を任免しなければならぬ事態が迫っておるわけではあるまいと思いますから、今問題になっておりまする内閣総理大臣の固有の権限として主張されます閣僚の任免権の議論を、これ以上ここで繰り返しておりましては、せっかくの本会議もおくれることになりますので、一応この問題は、政府側においても、また国会のわれわれ自身においても、それぞれ懸案の問題として、今後権威のある結論が出ますように努力をしてもらうということに、党内は意見が一致しました。よって、委員長お計らいの上で、事務当局の御配慮を願うとともに、また内閣委員会その他で一つ十分御検討を願って、適当な結論をお出し下さるようにお願いしたい。それから政府側においても、どうも宮澤教授の意見だけを証拠みたいに出して説明しておられますけれども、それだけでは、はなはだ私どもは納得しかねまするから、政府側においても一つ十分御検討下さって、近い将来にさような議論の起らないよう一つ結論を出されて、法規の改正等、所要の手続をおとり下さるようにお願いいたしておきます。この際林法制局長官の御意見をお伺いいたします。
  93. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど私からお答えいたしましたことは、憲法等の理論的解釈お答えしたわけでありますが、ただいま井上先生からのお話もございましたので、私の方でも十分にその措置については研究いたしたい、かように考えます。
  94. 園田直

    園田委員 この重大な問題で、しかも意見が分れることはどうかと思いますし、さらに、念には念を入れて検討するにやぶさかではありませんから、私どもも了承いたします。
  95. 保利茂

    保利委員長 それでは、ただいま井上委員の御要望の点につきましては、政府側からも意見が出ましたように、また園田君の御意見もありましたように、井上君の御発言のよう委員会としては了承することにいたしたいと思います。   [「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  96. 保利茂

    保利委員長 それでは、本日の本会議の開会時刻ですが、参議院の方も終ったようですから、先ほどのお話通り、三時本鈴ということで間に合いましょうか。
  97. 池田禎治

    池田(禎)委員 三時ではちょっと間に合いかねますから……。
  98. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 三時に予鈴を鳴らして、三時十分から始めたらどうですか。
  99. 保利茂

    保利委員長 それでは、そういうことにいたします。     —————————————
  100. 保利茂

    保利委員長 なお今朝、衆議院の常任委員長、特別委員長の会合を持ちまして、国会審議の正常化について、両党の首脳部の間で今日までしばしば会合が持たれましたその趣意に沿いまして、各常任委員長におきましても、審議の正常化をはかって参りますために努力をいたすという趣意によって、申し合せを行いました。委員長からそれぞれの委員会にこれを御報告することになっておりますから、申し合せ事項をこの際御報告申し上げて、委員各位の御協力をいただきたいと存じます。    申 合 せ  国会の審議は委員会が中心であるので、その正常化については、まず、委員会の審議の能率を高めるために、各委員長は、左記事項は特に励行すること。   一、ニュース、カメラの撮影は、原則として開会の前後にこれを許可すること。   二、傍聴人の整理を図って、その議事が妨害されることのないようにすること。   三、理事会は、これを非公開とすること。以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。     —————————————
  101. 保利茂

    保利委員長 議事の順序を事務総長から……。
  102. 鈴木隆夫

    ○鈴木事務総長 本日の議事の順序について申し上げます。先ほど当委員会において御承認に相なりました人事官任命と、それから公正取引委員会委員任命について、まず劈頭お諮りをいたしまして、その次に質疑の継続を順次やることにいたしたいと思います。
  103. 保利茂

    保利委員長 それでは、明日は午前十一時から開会することにいたしまして、本日はこれをもって散会いたします。     午後二時四十三分散会