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1957-10-15 第26回国会 衆議院 外務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年十月十五日(火曜日)    午後二時十一分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 菊池 義郎君 理事 須磨彌吉郎君    理事 高岡 大輔君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       大橋 忠一君    町村 金五君       松田竹千代君    石野 久男君       大西 正道君    田中織之進君       田中 稔男君    西尾 末廣君       西村 力弥君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  委員外出席者         外務政務次官  松本 瀧藏君         外務事務官         (大臣官房長) 田付 景一君         外務参事官   三宅喜次郎君         外務事務官         (アメリカ局          長)     千葉  皓君         外務参事官   佐藤 健輔君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務参事官   森  治樹君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君         通商産業事務官 中山 賀博君         (通商局次長)         通商産業事務官         (企業局次長) 樋詰 誠明君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 十月四日  委員大西正道辞任につき、その補欠として竹  谷源太郎君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員竹谷源太郎辞任につき、その補欠として  大西正道君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員田中織之進君辞任につき、その補欠として  菊地養之輔君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員岡田春夫君、戸叶里子君及び森島守人君辞  任につき、その補欠として田中織之進君、西村  力弥君及び石野久男君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  本日は国際情勢等に関し、特に最近の外交関係諸問題について調査を進めて参りたいと思います。  まず最初委員長よりお尋ねいたしたいと思いますが、外務大臣は過般の国連総会出席せられ、さらに米英両国首脳とも外交関係諸問題について会談せられて帰国せられましたが、その問題の経過について簡単に御説明を願いたいと思います。藤山外務大臣
  3. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それではただいま委員長からお話がありましたので、私より先般行って参りました概要を申し述べたいと存じます。  九月の十六日にニューヨークに到着いたしました。翌日から国連会議出席をいたすことにいたしたわけであります。二十二回目までニューヨークに滞在いたしまして、国連諸般の問題につきまして、また国連会議に出まして、日本代表団としての行動をいたしたわけであります。十九日にかねて申し込んであります。冒頭演説をすることになったのであります。ちょうど第一日目の第四番目に当ったわけであります。冒頭演説につきましては、すでに御承知のように、新聞紙上に出ておりますような冒頭演説をやったわけであります。  それからなお日本核実験禁止に関します提案を国民の要望によっていたすかいなかを考慮いたしたのであります。またその提出の時期等につきましても考えたわけでありますが、ソ連冒頭演説におきましてすでに提案をいたしております。またインドが何らかの形で提案をするというようなことを承知いたしましたので、われわれも日本提案をいたすべき時期を早急に決定しなければならなかったのであります。諸般情勢を見ました結果、二十二日の午後三時半に国連事務局に対しまして、日本提案を提出いたしたわけであります。  なお安全保証理事会に立候補いたしておりますので、それぞれ各国代表方々に接触を続けたのであります。御承知のように八十二カ国が冒頭演説をいたしますとすると、大体今月の八日くらいまで継続するわけであります。事実また先般の状況を見ますと八日まで継続したのであります。だいぶんに形勢が日本に有利でありましたので、できるだけ早く投票をしてもらいたい希望日本代表団としては持ちまして、それぞれ各ブロック別に話をいたしたわけであります。幸いにしてその希望がいれられまして、十月一日に冒頭演説の中間において投票日が決定されました。御承知のように五十五票を獲得して第一回の選挙で当選いたしましたことはまことに喜びにたえない次第であります。  なお各国代表団とは短時日ではありましたけれども、できるだけ交歓をいたしましたし、またそれぞれの各国代表団も快くわれわれの午餐会等には出席していただきました。なおそれのみならず、ハマーショルド中心にしまして、国連首脳者方々にも来ていただいたのであります。ロイド外相グロムイコ外務大臣、ロッジ・アメリカ代表等を初め、副議長団全部が出席されまして、ハマーショルド中心にして歓談を続け得られたことも幸いであったと存じております。今後の問題のいろいろな打合せをいたしまして、それから二十二日にワシントンに参ったのであります。  翌二十三日の午後三時からダレス長官会見をいたしたわけであります。今回のワシントンに参ります私の目的といたしましては、特別に折衝を続けていく問題を特に取り上げて限定して参らなかったのでありまして、従って岸総理大臣訪米以後における諸般の問題について、それの将来の発展を期しますように、日本側考え方また向う側の考え方を開くことにいたしたわけであります。会談は約二時間余にわたりまして、なお時間の足りない感もありましたが、相当広範に種々の問題について論議をいたしたのであります。今申し上げましたように、今回の会談では特に結論を得るつもりで参らなかったのでありまして、十分な意見交換をいたしたことによって目的が達成されたと思っております。なお同日以後、ウィルソン国防長官ブンソン農務長官ウイークス商務長官等に面会をいたしたのであります。特にウイークス商務長官に対しましては、日米貿易の改善に関しまして日本側要望を強く申し述べ、そうしてアメリカ政府の善処を希望して参ったわけであります。なおそのほか、正式会談以外に、ダレス国務長官等食事に来ていただきまして、その間談笑のうちにいろいろ話をいたしたのであります。それを終りまして、再びニューヨークに二十五日の晩に帰って参りまして、代表団と今後の問題等につきましていろいろ話をした後、二十六日にイギリスに渡ったわけであります。  イギリスに参りましたのは、イギリス政府が招待をするからということで、先方の要請によって参ったわけでございます。ロイド外相とは、従いまして私が二十七日の十時半にロンドン・エア・ポートに着いたわけでありますが、そのとき迎えに来てくれまして、その後その日は食事をともにしながら話をし、翌日は午前十一時から午後二時近くまで話をしたのでありますが、そのほかさらに、短時間ではありますけれども三回ほど話をいたしたわけであります。なおマクミラン総理からは特に昼食に呼ばれまして、そうして食後ロイド外相マクミラン首相と私と三人でもって約二十四、五分話をしましていろいろな意味においての意見交換をいたしたわけであります。イギリス考えていますようないろいろの点について大体知ることができましたことは、非常に幸いであったと思います。なおその間動力大臣でありますロード・ミルズあるいは商務大臣でありますポール・モーガン国務大臣、それからなおソーニークロフト大蔵大臣アメリカのIMFに出席しておられて後カナダに向って帰られましたので、跡を受けておられます大蔵担当国務大臣バーチ等に会ったわけであります。特に原子力の平和利用として日本イギリスのものに対して相当着目している点等については十分話をして、今後そういう場合がありますときには十分な援助希望して参ったわけであります。そういう会見を終りまして、立ちますときにはロイド外相と私との間で会談の結果を共同コミュニケにとりまとめたわけであります。その上でロンドンを立ったのでございます。  このワシントンロンドンとにおきますアメリカ並びイギリス政府首脳者との会談は、世界情勢、特にソ連及び中共の問題また中近東の問題等にわたってそれぞれの立場なり見解も伺いましたし、また核実験禁止に対します英国米国立場並びに日本立場についても論議をいたしたわけであります。なお経済問題としましては、イギリスにおいては、ヨーロッパ共同市場に対するイギリス考え方等にも触れたわけであります。それから貿易関係につきましては、アメリカは申すまでもなく、日本品について十分な考慮を要望したわけ、であります。イギリスに対してもなお同じような点につきまして要望をいたしたのみならず、ガット三十五条の問題についても触れて、申し述べておいたわけであります。  以上のような話し合いをして一日に帰って参ったわけでありますが、御質問等がありますればお答えをいたしたいと思います。
  4. 野田武夫

    野田委員長 これより質疑を許します。菊池義郎君。
  5. 菊池義郎

    菊池委員 ただいま大臣の御報告を承わりまして、まことに欣快にたえません。日本国連安保理事国に当選いたしましたのは、大臣御一行の並々ならぬ御努力と卓越せる政治力のたまものでございまして、われわれ深甚なる敬意と謝意とを表するものでありますが、さて国連安保理事国に加盟いたしました今後のわが日本の責任は重大でございまして、一体今後の国連を通じての活動をどこに重点を置くべきかということをわれわれは考えなければならぬと思うのでございます。西欧諸国はわが日本が大国といわゆる中立諸国との間のあっせん役を勤めるであろう、かけ橋を勤めるであろうと期待しておる国も多々ありますし、またAAグループの中においても決して意見は一致しておらない、AAグループ諸国の中には互いに係争中の国すらもあるようなわけでございまして、日本立場はすこぶる複雑多岐にならなければならぬわけでございます。しかしながら決してわれわれはいわゆる八方美人であってはならない、やはり外交には牢固たる信念と一貫せるところの方針がなければならぬと思うのでございますが、そういう複雑な立場に立って日本外交は一体どこに重点を貫くべきであるか、国連を通じてどういう点に最も主力を傾注すべきであるか、こういう点について大臣のお考えを承わりたいと思うのであります。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は日本外交を貫きます主軸の精神としては、世界平和を庶幾する、再び戦争の惨禍の中に日本は入らない、入りたくない、また戦争が起ってはならない、そのためには後進国の経済的安定も必要でありますし、あるいは核兵器禁止の問題も必要であります。わが国の外交精神としてはその線を貫いていくべきだと考えます。なお立場といたしましてはわれわれは自由主義陣営の中にいるわけであります。その中においてそれぞれの国と手を握って参りますが、ことに自由主義陣営の中で一番力強い国はアメリカでありますから、アメリカと十分な協調を保っていくことは当然であります。ただ日本は地理的にも歴史的にも東南アジアから抜け出ることはできないのでありまして、その立場はやはり日本の持っております立場と存じております、従いましてその意味においてその立場にも立っていることは当然だと思います。  以上申し述べましたような方針並びに立場を堅持しながら外交を進めて参りたいと思います。
  7. 菊池義郎

    菊池委員 大臣がオーストラリアの白豪主義を打破して日本の移民を入れたいというお考えから、国連を通じてこの問題について発言せられた、あるいは工作せられたというような話を聞いておりますが、列国の反響はどうでございましたでしょうか、お伺いしたいと思います。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が冒頭演説におきまして人口問題に触れましたことは御承知通りであります。世界の平和を庶幾する上において、経済的な問題と同時に、人口が非常に過剰で悩んでいる国と、非常に人口が過少なために開発がおくれている国と、その間何らかの調整ができないものだろうか、国連を通じてそういう問題を調整する必要が将来ともにあるのではないかということを訴えたのでありますが、特定白豪主義でありますとか、あるいはアメリカにおける人種問題とか、そういう問題に触れたのでないことを御了承願います。
  9. 菊池義郎

    菊池委員 われわれ有色人種といたしましては世界十六億の有色人種のためにも、この時代錯識のホワイト・オーストラリズムは打破していかなければならぬと考えておるのであります。まず第一にこれを今後取り上げて、国連の力をかりて打破するという考え方をとっていただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私はいかなるところにおいても人種の差別があるべきでないと考えております。そういう特定の問題につきましては、それぞれ問題を将来にわたって提起する場合もありましょうし、あるいは提起された問題について、ただいま申し上げたような考え方から善処していきたいと考えております。
  11. 菊池義郎

    菊池委員 最近マラヤが独立いたしましたが、マラヤ東南アジア諸国のうちで一番親日的でございますので、このマラヤを育成して、その資源を開発するということが非常に日本経済外交の推進のためにも必要であると思うのでございますが、日本外務省といたしましては今後どういう政策をとられるおつもりでありましょうか、お伺いいたします。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本にとりまして、東南アジアのそれぞれの国はいずれもまことに重要であり、かつ友好関係を深めて参らなければならぬ。今回マラヤが独立をいたしましたことは、われわれとしてまことに喜びにたえない次第であります。従いまして、マラヤ連邦に対しましても、われわれはできるだけ好意ある助力をして、同国の発展をこいねがっていきたい、こう考えております。
  13. 菊池義郎

    菊池委員 社会党訪ソ議員団の諸君が向う首脳いろいろ話をしておりますが、その中で平和条約を早く締結したいということを言っております。その話し合い内容は漏らされておりませんが、われわれといたしましても正式な平和条約を早く締結して、領土問題をこの際解決しておいた方が日本のために有利であると考えておるのであります。といいますのは、フルシチョフらの政権が確立しております間はよろしいのでありますが、もし彼が失脚して、他の政権がとってかわったとなりますと、南千島はおろか歯舞、色丹までも向うにとられてしまうという危険性があるのであります。それでありますから、この際日本といたしましては、すべからく平和条約の締結を急ぐべきであると考えますが、いかがでございましょうか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私もソ連との平和条約ができるだけ早い機会に締結されれば好ましいことだと存じておるわけでありますが、フルシチョフの死ぬ前にやれというようなことはいかがといたしまして、できるだけ早い機会にそういうことを考えていきたいと思っております。
  15. 菊池義郎

    菊池委員 さらにインドネシアその他の賠償でありますが、日本主張向うの要求とが大へんな開きがございます。最初南方諸国全体で対日賠償の額は約十億ドルという見通しであったのです。サンフランシスコ条約が締結せられましたあの当時です。ところがその後フィリピンだけで何だかんだ合せて八億ドルという膨大なものになってしまった。インドネシアもこれにならう、さらにまたビルマも承知しない、また増額を要求するかもしれないというようなわけで、これを言う通りに払っておったら日本の財政はどうなるかということをわれわれは心配するのでございます。ところでお伺いしたいのは、岸総理が、自分が向うを訪問する前に賠慣問題を片づけたいということを言っておられますが、そういうことを前もって漏らすというと、向うを増長せしめて、賠償の額はさらに増大しなければならぬというような結果になって、こういう切り札最初から出すということは、外交交渉の上に非常な不利であって、百害あって一利ないやり方であろうと思うのであります。いかなる事情があろうとも、最初から切り札を出すべきではないと思うのでありますが、外務省はこれについてどういうお考えを持っておられますか。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 賠償をできるだけ早く片づけまして、友好関係に入りたいということは、念願いたしておるところであります。お説のように交渉のことでありますから、総理が回られる前に片づけるとか、回られたあとになっては困るとかというような考え方外務省として持っておりません。妥結いたしまして将来両国友好に進んで参るために障害にならぬような形で片づけていきたい、こう考えております。
  17. 菊池義郎

    菊池委員 私がお伺いいたしますのは、そういうことを前もって漏らすということは非常に不利益ではないか、その点でございます。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特に総理が回られる前に片づけるということを総理が言われたとは私了解いたしておりませんし、また私も回られる前に必ず片づけなければならぬということを考えておるわけではないわけであります。
  19. 菊池義郎

    菊池委員 ソ連日本漁船に対する拿捕、これが共同宣言が出されて平和が回復した今日においても、なおかつ拿捕の手がゆるんでおらぬのでございます。社会党訪ソ議員団に対してソ連首脳は捕獲した一本の漁船九十三隻と抑留船漁夫数十名の釈放を拒否しておるのでございます。終戦後百十七隻、九十五名、捕獲され、さらに復交後もこれは少しも減少しないで、今年の上半期だけ、で五十六隻、五百七十五名を算しておるのでございます。戦前日本カムチャッカ沿岸三海軍でサケ・マスをとっておりました。英国も同じく三海里でもって漁をしておったのであります。それなのにソ連は十二海里をもって領海主張しておる。はなはだこれは理に合わない主張であって、断じて認めることはできぬと思うのでございます。政府はただいまこういうことについてどういう折衝をしておられますか。ちっと切り込んで徹底的に論議すべきであると思うのでありますが、どうでございましょうか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ソ連日本との間に見解相違がありまして、そうして日本漁船拿捕が起りますことは非常に遺憾だと思いますが事実問題として漁業の問題については、ただいまモスクワにおいて門脇大使を通じていろいろな交渉をやっておりますので、この問題が解決点に到達いたしますとある程度の問題の解決はできるのではないか、こう考えております。なお領海の問題につきましては国連海洋法委員会をやっておりまして、明年それらの問題について国連でも種々決定をいたすのではないか、そういう情勢にあると思います。
  21. 菊池義郎

    菊池委員 核実験停止について日印両国の間に首脳会談が行われて、幸いに意見の一致を見ておるのであります。しかしながら提案内容を見ますると、両方違っておるのでございます。これをどういうふうに調整するか、その調整見通しはついておりますでしょうか。どうでしょうか。簡単に一つ……。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連内においてインド日本とができるだけ両代表団緊密な連絡をとりまして、この問題に対処していこうという話し合いはいたしております。しかしながらただいまお話のようにインド日本との案においても相違がございます。どの程度にこれらの相違が縮められるかというような問題につきましては今後の問題だと思うのでありまして、今後われわれとしてはインド代表団とできるだけ緊密な連絡をとって相談をしながら参りたい、こう思っております。
  23. 菊池義郎

    菊池委員 今回は軍縮にからんでこの停止案を出したのでありますが、むしろわれわれの考えでは、寄りあっていけるかどうかわかりませんが、インド案に同調して、両方別々に単独でもって出すようにしたらどういうものか。その方が目的を貫徹する可能性があるのではないかというふうに考えられますが、どんなものでしょうか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれ、ネール首相いろいろ話をしましたときに、国連という場において、実際的に一日も早く問題が歩み寄られることが解決を促進するゆえんである。従ってインド側においても、できるだけ字句等その他にとらわれないという立場と態度を表明しておられるのでありまして、今インド案に同調するとか、あるいは日本案に同調してもらうというようなことでなく、一日も早く英米ソ連との間に話し合いがついて、そうして核実験禁止ができますように両国努力していく、こういうことに御承知願いたいと思います。
  25. 菊池義郎

    菊池委員 インド案に同調するとかせぬとかは別にいたしまして、軍縮にからんで出すよりも、単独に別々に出した方が有利じゃないかというふうに考えられますが、この点どうでございましょうか。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げました通り、一日も早く核実験をやめる。また核兵器による戦争をやめる。そうして終局においては平常兵器による戦争も、軍備の縮減をやってその危険からのがれるということにお互いに協力していくためには、やはり英米ソ連との間の諸般の問題を考えていく必要があろうと思うのでありまして、そういう問題について今後ともインド代表団十分話し合いをして参りますが、果して分けた方が有利か、分けない方が有利かということは、今後の一般的動き等によって決定さるべき問題だと考えております。
  27. 菊池義郎

    菊池委員 大臣英国においでになりましたときに、日本業者の商品の意匠盗用問題で御迷惑を受けたようでありますが、外務省のこれに対する弁明は不良の外人バイヤーの言うことを日本業者がそのままに受け取って作るために、そういったような誤解を受けるという弁明でありました。これはいいといたしまして、対内的に日本業者を大いに啓発しなければならぬと私は考えます。そういう外人に利用される場合もありますが、日本業者が意識的に外国の意匠を悪いと知りながら、まねてやる人も少くないのであります。外務省といたしましては、これに対して厳重な警告をしてそういうことのないようにしていただきたいと思うのでございます。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 意匠の盗用問題につきましては、数年前から問題になっておりまして、現在織物及び陶器に関しては、すでに日本意匠センターがありまして、十分有効に働いておりますので、イギリス政府首脳者及び有力者は、大体日本がそういう努力を続けておることに対して誠意を認めておるわけ、であります。しかしながら、むろんなお一そう注意することは必要だと思いますので、私はその問題につきまして所管大臣であります通産大臣状況報告をいたしておいた次第であります。
  29. 菊池義郎

    菊池委員 小笠原の問題が最近むずかしくなってきたと伝えられておりますが、今までの日本折衝が、沖縄とからんで沖縄と一括して折衝したために、向うの軍部の理解を得ることが困難であったのではないかと考えられる。沖縄はああいったような軍事基地で、米国はどうしても離さない。ところが小笠原は全然軍事施設も何もないところであります。そこには何の機密もないのでありますから、今後は沖縄と切り離して小笠原の帰還問題を折衝していただきたとい思うのでありますが、この点いかがでございましょうか。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ダレス長官との話し合いは、同じ話し合いのときに話をしているのでありますけれども、話そのものは全然切り離した立場で話しておりますので、その点お説の通りであります。
  31. 菊池義郎

    菊池委員 それから日本インド鉄鉱開発の協議をしたようでございますが、これはまことにけっこうな話で、将来目印合弁の事業でも興したらどんなものかと思われるのですが、どういう構想ですか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この点につきましては、日本としては民間ベースにおいて話し合いをいたしているのでありまして、今回の話し合いにおきましても、両国政府がこれに対してできるだけの援助をするということで、政府みずからがどういう形態にするかということをきめるのではなく、業者がきめることになっております。
  33. 菊池義郎

    菊池委員 移動大使は今後ともこれを活用なさるつもりでございますか。ずっと継続するつもりでございますか。その成績はどうでございますか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 移動大使につきましては、小林、澁澤、堀田、伊藤四大使を御足労願ったわけであります。小林、澁澤両大使は数日前相前後して帰って来られました。また堀田大使は明日帰られる。その報告を聞きまして、私は非常に有益だったと考えておりますので、例年こういう制度を活用したらいかがかと考えております。
  35. 菊池義郎

    菊池委員 それから世界各国みな招待外交がはやりまして、日本も招待外交を盛んにやろうとしておりますが、ただ漫然と招待しても、国費を乱費して何にもならぬので、何かそこには重点を置かなければならぬと思うのでございますが、招待外交重点は一体どこに置かれるつもりでございましょうか。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 できるだけ広く外国の方に日本を見ていただきますことは、また日本に来て日本の人と話し合ってもらいますことは、非常に必要なんでありますが、ただいまお話のように多額の国費を要することでもありますので、できるだけ重点的に扱って参りたいと思っております。経済関係としましては、やはり東南アジアからAAグループの関係並びにラテン・アメリカ方面の関係というものをおのずから重点にしてわれわれは考えている次第であります。
  37. 菊池義郎

    菊池委員 目印通商航海条約の締結の話をされたようでありますが、最恵国待避の問題はどういうようにお考えになられますか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般の話し合いで、できるだけ通商貿易関係の協定を促進していこうということでありまして、これは今後話し合いの結果をもう少し進めてみないとわかりません。
  39. 野田武夫

    野田委員長 田中稔男君。
  40. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 米英及び国連を訪問された御報告がありました。その御報告の中になかったことでありますが、これは目下北京において交渉中の日中貿易協定のこととも関連いたしますから、ややエピソードに類することですけれども、ちょっとお尋ねしておきたい。藤山外相は、日本が中国貿易をやることは何かネセサリー・イーブルだというようなことをおっしゃった。それが事実であるなら、これは非常に重大だと思います。しかしながらあれは外務大臣がみずから言ったのではなく、アメリカの新聞記者が日本にとって中国貿易は必要悪ですか、こういうふうな問いを発したときに、そうだとは言わないけれども、聞き流した、それが誤解された、こういうふうにも書いてあります。そうであれば、これは誤解を解くことが必要だ。しかも岸総理が、先般台湾において蒋介石に対しまして、何か大陸反抗を激励するような話をされた。非常にこれは大きな問題だ。周恩来総理のああいう言説にもなって現われたわけであります。それに藤山外相が中国貿易は必要な悪だ、したくないけれどもやむを得ずやっているのだというようなことじゃ、中国貿易を促進しようという御意思と全く反すると思うのです。一つのエピソードのようには思いますけれども、これは一つこの機会にはっきり御意向を確かめておきたい。
  41. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御心配をかけたのですが、あの問題は、サンフランシスコの飛行場に着きますと、とたんに新聞記者に風の吹いている外で取り巻かれて、わっという間の話に出たわけであります。私も別にそれに特に答弁をしたわけではないのですが、向うの人は二回か三回そういう言葉を使ったように思います。私は大して気にしないでニューヨークに行ったのでありますが、その後日本の新聞が社説等でもって書かれたということを聞きまして、私は驚きまして、そしてワシントンの記者会見のときにこれを取り消しておるのであります。取り消すというより、言ったわけではないのですから、説明をしておるわけであります。私がほうっておきましたのは、私の過去のいろいろな言説を知っておられる日本の方は、そういうことではないのだということを御承知だろうと思って、しいて釈明をする必要もないのではないかと思ったのですが、新聞等の社説にそういうことが出たというので、実は驚いてそういう処置をとったのであります。
  42. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 日中貿易協定の交渉の件等につきましては、あとから同僚石野君が詳細にお尋ねいたしますから、私は今度は私の本論に入りたいと思います。  この間ネール首相が見えまして、滞在十日の間に、何回が岸総理、藤山外相などと会談があったようであります。発表されました共同コミュニケを見ますと、きわめて抽象的にしてあいまいな表現——まあ、話の種もなかったのかわかりませんけれども、これでは一体何のことやらよくわからない。そこで行間を読みまして、あるいは眼光紙背に徹するということで少しお尋ねしてみたいと思います。ネール首相は御承知通り、大へんな理想的な政治家で、やはり非常に調子の高い言論を吐く方でありますが、外相なんかとの会談の際も出たと思いますが、そのほかあるいは国際文化会館の講演において、都の体育館の演説において、いろいろ言われた中に、平和的な共存ということを非常に強調された。それで岸総理だったか、ネール首相の話を聞いて、完全に意見が一致したわけではないが、いろいろ教えられるところが多かったというようなことを言っておられます。私は双方についてそういうことは言えるのではないかと思います。そこで、外務大臣にお尋ねするのでありますが、この平和的な共存、つまり社会体制は違い、政治形態は違い、イデオロギーは違っても、それだから今日戦争して、違った相手国をつぶすなんということはできはしません。ことに大陸間誘導弾ができ、人工衛星ができて軍事的にも利用される、こういうことになりますと、もう軍事力で自分の気にいらない相手国を打倒するということはできない。また経済力において他の国を圧倒することもできないと思います。御承知のように今日アメリカ世界最大の工業国であります。最大の経済力を持っておりますが、またソ連ソ連流に何回かの五カ年計画を重ねました今日、それはアメリカと並ぶ大きな工業国になってしまっておる。これを経済封鎖して、たとえば中国の場合、中国に対する貿易を禁止して、それで経済封鎖して中国を倒すということだってもうできはしません。そういうわけでありますから、世界の国々はお互いに家風は違っても、やはり隣近所とはつき合あわなければならぬというわれわれ個人の場合と同じように、やはり好むと好まざるとにかかわらず、お互いに戦争しないで、とにかく平和的に一緒に生きていこうではないかということ。私は平和的共存という言葉は、それ以上を意味しない、またそれ以下も意味しない、それだけだと思うのです。フルシチョフも前にそういうことがある。最近フルシチョフアメリカのレストンという記者ですか、会見しました中におきましても、フルシチョフとしては、アメリカと一つ手を握ろう、つまりアメリカと共存をしたい、だからできるなら両国首脳者会談でもやりたい、こういうことさえ言っておる今日なんです。しかし今日の岸内閣の外交政策の基調をなす考え方とはこれは違うのです。違いますけれども、そして違っているから、ネール首相がそういうことを説きましても、そうだ、とこういうふうにはお考えにならぬかもしれませんが、こういう考え方も確かに私は一つの考えであるというようなことをお考えになる、これはあり得るのじゃないかと思う。このネール首相の平和的共存という考え方、こういう外交政策の基調をなすものの考え方、これについて藤山外相なら、そういうことについての御理解もあろうと思いますので、少し御批評というか、御意見を伺いたい。
  43. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 平和的に世界が共存していこうということは、今後の平和を願っております日本としては当然だと思うのでありまして、私は岸総理の心の中にもそれがあるのだ、また政策にもそれが出ておると思うわけでありまして、決してそれに反対をしておるわけではなく、またそれと違っているとは思いません。ただそれにいきますのに、まだ世界には非常に不信が多いのであります。お互いに不信を持ちながらやっていく、この誤解が解けることが一番大事なことだ。お互いに不信を持ち合うということをなくしていくことが、個人の場合でもそうであると同じように、国家の場合でも必要であろうと思います。現在まだアメリカソ連との間にお互いに不信を持っているという現実は、やはり私は現実として見ていかなければならぬことだと思うのであります。平和的に人類が共存できることをわれわれも反対をいたしておりませんし、むしろ念願しておるわけであります。
  44. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 アメリカはまだソ連に対して不信の念を持っていると思います。従って平和的共存なんということにはなかなか応じないと思います。しかしアメリカ日本とは違う。そうしていつだか藤山外相も、アメリカに対して遠慮なくものが言いたいというようなことをある機会に言われておりました。そうだとするならば、アメリカの意向はいかようにあれ、日本日本として外交政策の独立という立場から、一つ平和的共存の世界を実現するために日本としてやはり努力すべきじゃないか。その具体的な一つの行動として、先ほど菊池君からも御質問がありましたが、日ソの間が今はまだ共同宣言を発表して国交が回復しただけ、講和はできたがこれは冷たい講和なのです。しかし私どもはこの冷たい講和をあたたかい講和にやはり持っていかなければならぬ。社会党の使節団はそういう使命を帯びてソ連を訪問したのであります。そこで社会党の使節団とソ連首脳部との会談において、日ソ平和条約の締結の促進ということが話し合われたのであります。これはもうすでに日本政府がその方向には向っておるのでありますから、これを促進するだけの問題なのです。どうでしょうか、一つ藤山外相、アメリカイギリスにだけおいでにならずに、今中国に行けということはちょっと無理でしょうが、国交がすでに結ばれているわけですから、ソ連にお出かけになる御意向はないか。あるいはソ連から外相に付か招請でもあったか、これに応じる御用意があるかどうか一つお尋ねしておきます。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の御質問のように、日本ソ連との間に平和条約を作るということについては、われわれも極力そういうふうに進めて参りたいと考えております。個々のいろいろな問題を解決しながら、最終的に平和条約の締結を目標にして進んでおるわけであります。そういうことができ得るような段階を一日も早く庶幾しておるわけであります。私自身は別にソ連に行くことを嫌悪しておるわけでもありませんし、またソ連へ打ったからどうということもないわけでありますから、その点は適当な機会に行く場合があるかもしれないと思います。何も別に遠慮はしておりません。
  46. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 中国の方においでになることを今外務大臣にお勤めしてもちょっとこれは無理だと思う。ただ、今池田正之輔君が行っておりまして貿易協定の交渉をやっておられるが、昨晩池田・雷首脳会談をやっておりまして、その結果を知りませんが、非常に難航しておる。それで一応この交渉をたな上げして帰ってきた場合、これにかわる何かもっと政府の意向を受けた自民党のだれか大幹部を、首相もしくは外相の特使として中国に派遣なさるお考えはないか。また池田正之輔君の使命が成功して帰ってきましても、これは貿易協定だけですから、さらに国交調整というもっと高い話、こういうことについて政府か自民党の特使というような形で一つ打診に行くということは、私は日中両国にとって必要だと思う。そういうふうな何かお考えはないか一つお尋ねいたします。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在北京におきます貿易関係交渉については、できるだけその円満に妥結することを希望いたしております。万一できません場合に、政府もしくは党の代表が行くかどうか、現在私は政府の代表を出すという考え方を持っておりません。党の問題については私の関与する限りでないと思います
  48. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 ネール首相は、アジアにおいて日本インドと中国、この三国が提携することが必要だ、そうしたならば、アジアのことを決することができるというようなお話でありました。まあこれは少し私の表現も悪いので、大国主義を私はここで言っているのではない。実際にアジアで最も進んだ工業国である日本、この日本の技術、それから中国は最近めざましく復興しつつある、あるいは人口が六億あり、歴史も古い。インドも同様であります。何と言ったってアジアでは、人口の点その他から見ましても、この三つの国が——別に大国主義じゃありませんよ、しかしいい意味で指導的な国だと私は思うわけであります。ネール首相の言葉は、日本の国民には非常にアッピールするのですね。ところが政府としましては、例によって台湾と平和条約を結んでおる、大陸中国とは今つき合いができぬというようなことになって、御答弁もきわめて冷淡な、熱意のない御答弁に私は思うのでありますが、考え方として、また将来における日本外交の方向としては、私はそうなければならぬと思うのです。そしてこの中国は、繰り返して申しますがもちろん蒋介石の中国ではない、大陸の中国であります。北京にある中華人民共和国なんでありますが、こういう日印中三国の共同というようなこと、こういうアイデアについてどうお考えですか。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ネール首相は、日本インドと中国というのはアジアにおける大国であるといいますか、ただ面積が広いという意味の大国でない、力のある国だということを言っておるわけであります。その点は事実でありまして、われわれも日本ネール首相の言われたように、自分自身の力を卑下してはいかぬと思うのでありまして、卑屈になってはならぬと思うのであります。やはり相当実力を持っている国だという自信を持たなければいかぬと思います。ただしかし、あまり自信を強めまして、他の東南アジア諸国に対してまた悪い影響を与えるような態度になってはいかぬと思います。その辺は十分日本人として、自信を持ちながら謙虚な気持でいく、こういう立場をとっていかなければならぬと思います。そういう意味においてわれわれも今後努力して参らなければならぬと思うのであります。中国に関しましては、現在国連の侵略者という決議もありますし、現状において日本が直ちにこれを承認するというようなことを考えるわけに参らないわけであります。しかし将来にわたって、中国大陸が六億の民を持っておるという現実の問題はわれわれも十分認識していかなければならぬ、こう考えております。
  50. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 中国が朝鮮戦争における侵略者の烙印を押されておるというのでありますが、御承知のように、イギリス国連の有力な加盟国であるにもかかわらず、やはり中国を今日承認しております。中華人民共和国を承認しております。そうすると、これはどうもおもしろくないとお考えになりますか。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その点は、先般ネール首相が私どもに、インドが中共を承認する前後のいきさつを話されたのでありますが、イギリスが結果として承認し、自分のところが承認し、豪州も承認した、その後に朝鮮事変が起って、その一連の動きがそこでストップしたと、こういうことを言われております。ですから、この連邦関係の国においても朝鮮事変が起ったのを一つの境として、一種の考え方の停滞というものはあると考えてしかるべきだと思います。
  52. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 東南アジア開発基金の構想が、ネール首相とうまく話が合わなかったというので、コミュニケの中にも載っていないようであります。私もこの構想の詳細は、どうも新聞などいろいろ見ましても、たとえば組織の点とか、資金の出どころとか、どんな仕事をやるのかよくわからないので、教えていただきたいと思いますが、これはちょっと時間もとりますから、一つお聞きしたいのは、国連の経済開発特別基金、SUNFEDですね、あれと、この日本政府考えている東南アジア開発基金、これとの関係はどういうふうにお考えになっておりますか。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私としましては東南アジア開発に対する援助的な機関というものは、いろいろあってもいいのじゃないかと思います。たとえばイギリスロイド外相に話しましたときにも、ロイド外相イギリスはコロンボ・プランを持つようにしたいと話しておられました。各国いろいろそういう考え方をして現実に実行もしておられると思います。今度のSUNFEDもずいぶんいろいろな経過を経たのですが、成立することになった。これは多々ますます弁ずるといってはおかしいのですが、やはりある程度似たような点が出てきましても、全部似た機関ができ上るものでもないわけでありますから、適当な機関ができれば、その機関同士協力し合ってもよろしゅうございます。あるいは上部的、下部的な立場で既存の機関と協力していってもいいわけであります。特に私などの考えておりますのは、東南アジアの経済開発において大きなプロジェクトは、二国間で当然やることになりましょうし、また進められるべきものでありますけれども、アジアの現在の経済建設で一番必要な日常生活必需品を作ります中小規模の工業の育成ということに資金を回しますことは、これはたとえば世界銀行などにおいても非常に困難だと思います。そういう意味で、日本は地理的にも近い立場にあります。また人種的に東南アジアの人と同じような気持で働けるのでありますから、そういう意味日本の持っておる、そういう種類の技術というものを提供しながら、そういう日常生活に直接必要な、そう大きな工業ではないが、またそういうものが発達することによって大きな産業の基礎ができるというようなものに対する援助が、こういうアジア開発基金のような関係においてできれば非常に幸いじゃないかということを考えておるのであります。ただコロンボ・プラン等の運用におきましても若干そういう点に触れておられるところもありますが、しかし協力して行き得る点もあるわけです。そういう意味において日本としてはこういう問題を取り上げて引き続きやって参りたい。ネール首相は、これに対していろいろな質問をされました。私もいろいろな説明を加え、特にこういう機関ができたときに組織上の問題について、あれの構想にはまだ触れておりませんので、日本が決して独占的に組織全体を動かすわけではなく、各加盟国になった国がそれぞれ理事公等を構成して、公平にその理事会等で決定してやっていくんだという話をして、ネール首相も大体了解されまして、今後それでは一つなお検討してみようということで別れたわけであります。
  54. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 原水爆禁止に関する日本提案があります。同僚の菊池君から先ほど日本インド案に同調したらどうかという意見があった。自民党と社会党とは立場は違いますけれども、その一点においては私は菊池君の意見に賛成なんです。この日本案というものはきわめて不徹底です。つまり両またかけているあいまいなものだ、こういうふうなのが国連方面、あるいは国連だけじゃない日本でもですが、これが大体一致した批評のようであります。つまりアメリカが完全なる軍縮協定の一部としてしかこういうことは考えられないという主張をしておるそれにもゼスチュアを示して、つまり一般的な軍縮協定の達成ということをうたいながら、しかも日本国民の熾烈なる要望、これはやはり無視できないために、とにかく核実験の禁止だけは先にやろうじゃないか。だからその面から見ますと、これはインド案にも似ておるし、ソ連案にも似ている、ですから提案当時は日本案ソ連案が七分、アメリカ案が三分、そのくらいの関係で似ておる、こういうことを言われたのであります。そこで御承知のようにアメリカ核実験の禁止なんということは絶対に考えておりません。イギリスもこのごろ来ました回答によれば絶対に考えておりません。つまりこういう実験を今後続けて、そうして、核兵器における優位によってソ連陣営を圧倒しよう、こういう基本的な考えを捨てていないわけでありますから、そのためには大小またさまざまのいろいろの核兵器を保有しておきたいというので、いろいろな実験をしておる。だからこのことにつきまして西欧案と同調するという可能性は全然ないと思う。ないにもかかわらず何か日本国連に行っておる代表は、もし日本案が葬られたならば西欧案に同調するのだと言っておる。そういうことを言うから、どうも日本代表とアメリカイギリス代表との間に国連の舞台裏で何かやみ取引をしておるのではないかというような不必要な誤解を受けておる。ところが私が非常にうれしかったのは、今度のネール首相とのコミュニケを見ましても、この問題につきましては日本政府インド政府がそれぞれ国連における両国の代表に対して一つ一緒になってなるべくやれ、こういうふうな訓令を発したということですから、こうなりますと、西欧案に同調するというようなことはできない。私はそこに一つ保障があると思って非常に喜んでおる。そこで私も結論は菊池君と同様でありますが、インド案に同調するというような——完全に同調するというとおかしいが、ともかく話し合ってそこに現実に核兵器の実験禁止がすべてのことに優先して、これが行われますように、これは国民の悲願だと思う。また人類の悲願だと思う。一つ外務大臣努力なさる御意思があるかどうか、お尋ねいたします。
  55. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 核実験の禁止が一日も早くできますことは、お話のように国民の悲願でもありますし、日本の総意だと思うのであります。従ってわれわれとしてはその線に沿って最大の努力を払っていくことは当然だと思います。ただ私が考えまして善処していかなければならない点は、一日も早くとにかく核実験停止されるということでありまして、一日も早く停止される方法がつきますならば、いろいろな意味において若干の妥協はあっても、これは政治的にしかるべきだ、こう考えておるわけであります。ただ理想論一本やりでもって国連の場で実験を禁止するということだけを絶叫しておりますのは非常に愉快なことではありますけれども、それだけではなかなか一日もすみやかに案ができないのではないかということを考えますと、一日もすみやかに案ができる方が国民の要略に沿うのではないかということを考えるのでありまして、今後インドの代表その他と十分打ち合せもいたしますし、まだ国連内の空気を見ながらとにかく一日も早く核実験停止されるという処置がとられるように努力していきたい、こう考えております。
  56. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そのお気持においては私も同じなんです。そこで日本案はこうなっているのですね。管理及び査察制度について原則的な合意が成立したときから核実験の禁止をやるのだ、こういうことですね。ところがこの表現はきわめて抽象的なんですね。具体的に方法を明示していない。だからこれはどんなにでも逃げ道があるわけです。私の心配しておるのはそこです。国民の心配しているのもそこです。そこでインド案のごとく、米英ソ三国の関係国の推薦した、つまりそういうことのできる科学技術委員会ができて、その科学技術委員会が管理の責任をとれといってはっきり委員会の構成まで明示しているのですね。これはだれにもわかる。それができてそれが監視というか査察によって実験禁止をやるということをきめて、監視や査察の方法はあとで技術的に相談しようということなんです。その具体的な方法もちゃんとここに明示してある。ソ連の力はどうなっているかというと、ソ連の方も国際委員会で実験停止を監視し、国連総会及び安保理事会に報告するとなっている。しかもその委員会は米英ソ三国の国内に監視所を設けるとちゃんとここにはっきり明示してあるのですね。このソ連提案する国際委員会、もちろんこれは国連の中にできるのではないかと思いますが、そういうふうにちゃんと方法を明示してあれば解決する道があるのに、日本の場合は何か介意が成立したときからでは、合意が成立しないというといつまでも無限に引きずっていく。そこにアメリカイギリスが実験禁止を言い出してこないで、そういう気持から日本提案を利用するというおそるべき結果が生まれてくる。だから私はこれはソ連案でもインド案でもどっちでもいいと思う。この方法が若干悪いならこの方法についていろいろ研究してもよろしいと思いますが、何か具体的な方法まで明示してあるこういう国々の提案との間に、ほんとうにリアルな交渉をしてもらって、ほんとうに日本が先頭に立って誠意を持って原水爆の実験禁止をやるのだ、こういう一つ態度をとっていただきたい。これは今の外務大臣のお気持がよくわかりましたから御異議はなかろうと思います。そういう趣旨で一つインド案との間に調整をいたしますように御努力願いたいと思います。  もう一つ、原水爆使用禁止協定というものを日本側提案するお考えはないでしょうか、お尋ねいたします。というのはさっきも菊池君の質問に対して外務大臣のお答えにこういうのがあった。核兵器による戦争をやめるというようなお話が答弁の中にありましたが、そういうことはこれを裏返しに表現すれば、要するに原水爆を使用しないと約束することでしょう。今日製造を禁止せよとか貯蔵を禁止せよといってもなかなかむずかしいですが、実験の禁止とそれからこれは使用しないのだということは、要するに核兵器を使う戦争はしないのだということですね。それだけのことを世界に約束するということは、私はこれは人道の名においてどの国だって反対はできない。だから核実験禁止提案をしている日本は、同時に核兵器つまり原水爆は使用しないのだというだけの国際的な協定をする、そういうことを一つ日本が率先して提案するということはどうでしょうか。
  57. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本は、核兵器を生産しよう保有しようというものについて全面的に禁止を要望しておるわけなんです。今の国際間の不信の状態において、生産は続けるけれども使用だけはしないのだということは、ますます不信を人ならしめるゆえんではないかと思う。従いまして日本としては、終局において生産、保有、使用の禁止を一括して考えるべきが適当ではないか、こういうふうに考えております。
  58. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 沖縄問題について一つお尋ねしたいのですが、施政権の全面的な変換ということはなかなかむずかしいというお話ですが、せめて教育権ですね。次の世代をりっぱに日本国民として教育するという教育権だけは日本で持っておりませんと、もう沖縄の人は祖国日本をすっかり忘れるというようなことになる。これはわれわれとして忍びがたいことでありますので、この教育権の返還について何かワシントンお話があったかどうか、またそういうことを望むことはむずかしいのかどうか、これを一つお尋ねいたしたいと思います。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ダレス長官話し合いをいたしましたときには、日本としては沖縄の施政権の返還を要望するが、それが困難でまだ時期が到来しないというような状況であっても、少くとも教育に関する権限というものは日本にまかせてもらいたいのだということは申し入れをいたしたわけであります。なお一気に全面的に教育権の返還ができなければ、部分的にでも教育権の返還に到達するような内容を逐次進めていただくことを強く要望してあります。
  60. 野田武夫

    野田委員長 田中君、時間の関係がありますから……。
  61. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 もう一問です。御承知のように現在中国から中国人の妻になっておる日本婦人が約八百名ほど帰っております。夏支度で帰ってきてもう秋も少し深くなっておりますので早く帰りたい。ところが便船がないために帰れないでおるのでありますが、このことにつきまして私ども厚生大臣にたびたびお目にかかって陳情もしておるのですが、なかなか解決しません。詳しいことを申し上げると大へん時間がかかりますから、私どもの希望を一まとめにして申し上げて御答弁をお願いしたいと思います。  とにかく今八百名の人が残っております。それからまた華僑の妻となって、そして一ぺん帰った人があります。それは少し事由が違いますが、そういう人々のために、政府の責任において一つ配船をしていただきたい。またちょうど天津には日本に帰ります日本の戦犯が八名ほど船を待っております。そのほか一般帰国者もありますし、第二陣の里帰りの日本婦人もおるわけであります。だからそういう人々を迎えにいく船で千名近くの里帰りの日本婦人を、一つあまり寒くならないうちに中国に返り届けていただきたい。実は一般の男の日本人で単身帰る人はもちろん、家族を持っている人でもちゃんと厚生省のお世話でどんどん帰っておるわけであります。ただ、たまたま中国人と結婚をしたということ、これはあの終戦後の困難な事情のもとにおいて、いろいろな事情でそういうことになった方々が故国を十数年ぶりで訪れたいという気持、これには私どもは同情しなければならぬと思います。これは日本人である。その人たちが中国人と結婚しておらなければ当然引揚者として政府の世話になって帰ってくる人です。だからそういう里帰りの婦人もやはり一般引揚者と同じ扱い、あるいはまたこれに準じた扱いをやっていただくのは当然のことだと思います。これを要求する権利は私は当人たちにあると思います。ところが政府の方では、中国人の妻になっておるというのでもう全然われわれの同胞として扱わないようなきわめて不親切な態度をとっておる。厚生大臣だけではどうもらちがあかないのであります。実は厚生大臣にここに来てもらいたいと言いましたけれども、何かほかに用事があるということです。これは外務省関係のことでありますから、一つ外務大臣がお考え願って、今言ったように天津に集結している戦犯と一般帰国者と里帰り日本婦人、これをこっちに連れてこられるように船を派遣するのですから、その船に今日本におる里帰り婦人を乗せていただきたい。政府の方では何でも五十名しか乗れぬような練習みたいなものをそのうちに天津に送ろう、そして戦犯だけはそれで連れてくる、あとのことはあとのことで、また外国船を何とか世話するとかなんとかしたい、実にけちなことを言っているのです。だからこういうことはもう少し高い政治的な立場考えていただきませんと、事が国際関係であり、中国に対していかに日本のやり方が悪いかという感じ、またそういうことを離れて人道上の問題でもありますから、あるいは外務大臣として従来の経緯を十分御存じないかもしれませんが、ここでちょっと外務大臣の御答弁を願いたい。  なお関連しますけれども、中国の紅十字会の会長の李徳全女史に日本政府も早くおいでになることを期待するというようなことをいつか御意向を示されたのでありますが、実はこの間からの岸首相のいろいろな失言等がありまして、そして岸内閣の中国に対する態度がどうも少し冷淡である、非友好的であるというので、李徳全女史の来訪も実はおくれておったのです。ところが今度日中友好協会と日中国交回復国民代表会議の代表が参りまして、そしてお目にかかったところが、こういう電報が参った。李徳全女史は日本国民の要望にこたえて今年中には訪日する見込みであること、しかしその際日本政府には接触する意向を持たないことが中国側から代表団に十一日伝達された、こういうのが両団体の代表から電報が参りました。私はこれは非常に遺憾だと思うのです。日本政府がおいでなさいというのに、日本政府には接触する意向を持たぬと言っておる。日本国民の関係なら受けようと言っておる。こういうことは何だか非常にまずいのです。まずいのですが、事がこういうようにねじけてしまったというのはもとをただしますと、日本が台湾と平和条約を結び、張群なんかを特使として歓迎しながら、そうして台湾に行っては大陸反攻を激励するような、そういうことを言われる岸さんの責任問題であると私は思いますが、そういうわけでなかなか根は深いのです。こういうことになったのは遺憾でありますが、とにかくこういうふうないろいろなことでごたごたしております。この際において一つこの里帰り婦人の帰国問題は従来の懸案を一挙に解決して、そうしてこのことについては御承知通り政府の役割を大体代行して、日本赤十字社、日中友好協会と平和連絡協議会とこの三団体が政府のいわば委任を受けて今まで作業をやってきたものですから、その団体が一九五三年に結んだ北京協定、一九五六年に結んだ天津協定、この二つの協定に基いてずっと実施して参りました慣行というようなものを十分一つ御勘案を願って、一拳に問題を解決していっていただきたいと思います。御要望を兼ねて御質問を申し上げます。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 里帰り婦人の船の問題は、里帰り婦人が戦犯その他の帰国者と若干立場が違うということが理由だと思いますが、なお今の御質問の点は主管大臣であります厚生大臣によくお伝えをいたしたいと思います。
  63. 野田武夫

    野田委員長 大橋忠一君。
  64. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 岸総理、藤山外相が日米親善と協力のために非常な御努力をなさっておるにかかわらず、抽象的にはとにかく、具体的には経済問題については借款その他多少ありますが、政治問題等にいては具体的には何一つ解決ができていないように思うのであります。これはわれわれ日米協力、親善を必要とするものにとっては非常に大きな失望であります。ことに戦犯問題ぐらいは、これは行政府でどうでもできる問題であり、こういう第二次世界大戦の憎悪の表徴ともいうべき戦犯の釈放、このくらいなことはどうしてできないか、われわれには意味がわからないのであります。ソ連や中共さえもすでにほとんど釈放いたしておる。豪州も釈放しておる。アメリカだけがまだいろいろがんばっておる。これはおそらく私のみならず日本全国民が思っておることですが、こういう簡単な、しかも釈放しても何らアメリカの利害というものに関係のない問題でありますのに、まだ一つ一つ審議するとかなんとかといって遷延をさしておる。これは一体どういう事情ですか。この点を一つお伺いしたいと思います。
  65. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 戦犯の釈放問題につきましては、日本としてもアメリカ政府に対して強く要望をいたしておるわけであります。A級戦犯につきましては各国と協議をしておるようであります。その結論を待っているというところだと思います。BC級戦犯につきましては特殊の形をもって審議することができるならば、その問題をそういう形において解決をつけよう、今回行きましたときにもそういう意味話し合いをいたしたのでありまして、それらについてわれわれが国内的にとるべき方途をただいま考えております。
  66. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 それから岸総理の訪米のくくりをつける意味でできました日米委員会、これもどうもその後新聞を見ますと一向進展していない。われわれはこれができたときには、結局われわれの祈願であるところの占領体制の継続である安保条約体制というものを変える契機になるものとして非常な期待を持ったのでありますが、これまたできただけで一向進展する模様がないのでありまして、日本国民は、これについても非常な失望を感じておると私は思うのでありますが、現在どういうふうな実情になっておるのか、それをどういうふうに今後進めていこうと思うのか、最後にはやはり安保条約体制の改訂まで持っていくという牢固たる決心を持って今研究しておられるのかどうか、この点を一つお伺いしたいと思いします。
  67. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日米委員会につきましては、すでに八月の発足以来会合を開きまして、安保条約に伴います諸般の問題について話し合いをいたしておるのであります。たまたま私が九月十四日に国連に参りまして、帰って参りましてネール総理とも会談をやりました。その後の会合をまだ開いておりません。逐次その会合を開いていきたい、こう考えております。お話のように、両国民の願望に沿ったように問題を処理していくという考え方でこの委員会の運営を進めていきたい、こう思っております。
  68. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 せんだってネール首相アメリカ軍が日本に駐留するのは、ソ連軍がハンガリアに駐留するのと変りはないというような言明をしたというので、アメリカ政府当局は非常に憤慨をして、インドに対する借款問題も打ち切りを考える必要があるのではないかというようなことが新聞に出ておったのでありますが、この安保条約なるものを日本に押しつけた当時から、インドはこの安保条約というものに対しては非常に反対をしておった。こういう言明がネール首相によってなされたということは、これは私は当然だろうと思うのであります。私もやはりこの押しつけられたる安保条約体制、その体制のもとにアメリカ軍が駐留するということは、日本のほんとうの独立ということは言えない。こういう占領当時に日本に押しつけたようなものは一ぺん御破算にして、それから新たに日本国民のフルの同意のもとに駐留するというならよろしいが、占領から引き続いてずっとそのままアメリカ軍が駐留するというような形を続けては、日本独立の折り目というものをただすことはできないのであります。従って日米親善にあまり好意を持ってないような連中の攻撃というものが、こういう弱点から今後も継続されて、これは日米の親善を永遠化するものではないと思います。従って、せっかく日米委員会というものができたのでありますから、ただ単にダレスが言うような安保条約の円満なる運営とかなんとかいう、そういうテクニカルの問題にとどまらず、この根本問題を一つ御研究になって、そうして御推進を願いたい。これさえできれば、私は藤山外相が御就任になったところのほんとうの意義が出ると思うのであります。これに対する御決意を一つお伺いしたいと思います。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約を両国民の願望に沿うようにしていくということは、とりもなおさずただいまお話のあったような点だと思うのであります。われわれとしては最善の努力をいたすつもりでおります。
  70. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 アメリカは陸上兵力に関する限りは撤退を声明して、現に着々進行中でありますが、空軍勢力、空軍基地というものは今日まで撤退しないし、将来もまだ撤退するような気配が見えないのであります。ところが一たん緩急ある場合に、われわれが一番危なく思うのは、目標になる空軍基地というものであります。今後のICBMなどの発達によりまして、フルシチョフが言うように、ジェット飛行機のごときものは博物館に入れてしまうことができるというような——そこまで私は無用になったとは考えませんが、いわゆる空軍基地というようなものも実は非常に重要性を減じたと思う。そこで私はこういうようなものもやはり撤退するように御交渉になったかならぬか、これに対してアメリカはどういう回答を寄せたか、この将来の見通しについてお伺いいたします。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 陸上兵力を撤退するとともに、空軍の基地について若干撤退をする意向であるやに考えております。またわれわれもできるだけ基地を少くしてもらいたいということを申しておるわけであります。
  72. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 かくのごとく岸内閣成立以来の努力の結果、抽象的にはいろいろ日米親善あるいは協力ということが強調せられておるのでありますが、具体的には、借款その他の問題を除いてはほとんど具体的の成果はあがっていない。そこで日本国民の間には、アメリカという国は口でいろいろ言うけれども、やはり第二次世界大戦当時の憎しみというものをまだ捨てていないのではないか、少くともまだ日本を非常に疑っておる、信頼できない、だから沖縄はむろんのこと、小笠原においても混血児を百数十人だけは帰ることを許したが、その他の七千名の者はほとんど不明の理由で帰還を拒否しているのではないか、また日本をやはり信頼するよりも、監視しそうして警戒しておるのではないか、こういうような疑いが出てくるのであります。大体アメリカ外交というものは、私は七年間アメリカにおったのでありますが、非常に原則論ばかりやる外交であります、また掘り下げ方が非常に浅い、かつ非常にエモーショナルである。だから少くとも極東問題については常に間違った判断をしておって、ついにあれだけ力を入れた中共さえも失ってしまうというような、ほとんど歴史上未曽有というべき大失敗を演じたのであります。かくのごとくアメリカ日本に対する政策を、いわゆる半呑半吐の政策を続けていきますと、私は結局日本までも失ってしまうという結果になりはせぬか、これはアメリカにとって非常に不幸なことであるばかりでなく、われわれ日本人としても非常に困るのであります。そこで少くとも極東問題についてはわれわれがアメリカを進んで指導する、アメリカの極東外交というものを指導する。これに追随するというような考えは私は持っていただきたくないと思います。そういう誤まった観測を持った、伝統的に認識不足のアメリカを、日本の力で一つたたき直すというだけの決心を持って一つ外交を推進していただきたいと私は思います。  第二に御質問申し上げたいのは、先日外相が英国の当局と会われ、中共に対する認識については、アメリカ英国ではだいぶ違っておるということを新聞両者に話してわられたのでありますが、どういうような点で違っておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカと親しくなっていく、また緊密に協力していくということは、アメリカに全部追随していくということではないのでありまして、やはりアメリカの将来のことを考えましても、アメリカが正しい認識を対東羊あるいは対アジア政策に持ってくれることが必要であることは、日本のためばかりでなく、アメリカのことを考えましても必要だと考えます。従いまして、親しければ親しいほど私は率直な意見を申し述べてしかるべきだと思っておるのでありまして、その意味において、私としましてはできるだけ率直な意見を今回も吐いてきておるつもりでありますし、また今後もアメリカ当局にはいろいろ話し合いをしていきたい、こう考えます。  なおイギリスのシナ観という問題でありますが、御承知のようにイギリスは長い間東洋に出ておりまして、東洋人の気質なりあるいは雰囲気なりというものを十分了承いたしておるわけであります。従ってアメリカよりもシナ人を知っているのではないかという予感を私は持っておる。またその意味において、シナ人に対する考え方も違うのじゃないか。いろいろ話をしてみましても、やはり長い間シナの問題について苦労いたしておる点が多いと思います。従いましてアメリカの人々が持っておるよりももう少し日本に近い、あるいは日本のいわゆるシナに長い間経験をされたラオ・ポンユーの方々と同じような見方を中国人に対してしているように私は考えております。
  74. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 その点はあまり突っ込むことは不適当でありますから申しませんが、要するに私は中共というものの承認ということは、アメリカといえども早晩やらざるを得ない時代が必ず来る。朝鮮戦争の恨みというものが解消され、かつ中共がどんどん貿易を始めるに従って、私はアメリカにおいてもそういう世論が高まって、現にチャイナ・トレードを非常に重要視するところの四部海岸地方においては、だいぶそういう機運が向いておるというような報道が出ておるのであります。早晩私はそこまで行くのだろうと思います。従って日本の対中共外交も、私はその含みをもってアメリカに引きずられて中共を承認するということでは、永遠に日本とシナ大陸というものの親善ははかれないのではないかと思います。そこで私はアメリカに数歩先んじて中共をどうこうするということは、少くともこれを今の内閣に求めることはツー・マッチであります。そこまでは主張いたしませんが、しかしながら、少くともアメリカ以上に中共を認識するところの日本は、アメリカに引っぱられるよりもアメリカを引っぱるというような方向をもって進むべきものではないかと思うのであります。そういたしますと、現在新聞紙上で報道される中共貿易の交渉におきましても、代表部の名称がどうとか、その人数がどうとか、そういうような末節的な問題にこだわるべきではない、私は代表部を置いてもちっとも差しつかえないのではないか、人数のごときは百人でも二百人でも来てかまわぬじゃないか、なぜああいうようなくだらない属僚的なこまかい問題にこだわって、新聞を騒がせておるのか私にはわからぬのであります。一つこの対中共問題については、もし御要求があれば私はいくらでも述べますが、さらに御検討を進められて、もう少し事務的でなく、テクニカルではなく、大きな政治的の含みをもって私は御処理願いたい。ネール首相ともいろいろ話されたでありましょうが、私はその希望を述べて、中共問題に関する質問を終ります。  さらに最後に一つ、エジプトのナセル氏がシリアに今度軍隊を送って、そうしてアメリカはアイゼンハワー・ドクトリンでもって適用するといっておる。フルシチョフは、もしシリアがトルコを攻撃すれば、トルコのごときは一日で片づけてしまう、そういう激しい言葉を発しておるのであります。しかもナセルという人は、かつての満州における関東軍の青年将校のような人であって、思い切ったことをやる人でありまして、しかもそのそばに火のつきやすい膨大な石油がある。従ってこれは両方の国とも大戦争に導こうとは考えない、極力避けるべく努力はしておるのでありますが、戦争は勢いでありまして、かつよろめいて断崖に落ちるということは大がいの戦争の場合あるのでありまして、一部の日本国民の間には相当懸念しておる人がある。この点について、一つ外相の明快なる見通しを述べいただきたいと思うのであります。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日の国際情勢というものは日々変転をいたしておりまするし、平和でそのまま行くのか、あるいは今のシリアの情勢中心にして何か非常な危険な状態に陥るのであるかという見通しを申し上げることは非常に困難だと思います。ことに今お話のように、平和を希望していながら、よろめいた結果、断崖に落ちるということもあるわけでありますから、従って見通しを申し述べることは非常に困難だと思っております。
  76. 野田武夫

  77. 大西正道

    大西委員 きょうは与党の方もなかなか愉快な質問があったようでありますが、この間ソ連がICBMの完成を発表いたしまして、いろいろな話題を提供したのでありますが、またごく最近には、人工衛星を打ち上げて世界をあっと言わせたのであります。さらに追っかけるように、新型の水爆の完成も発表いたしました。この一連の新しい発表によりまして、世界じゅうは沸き返っておると私は思います。新聞その他の報道によりますと、米国におきましては、非常なる恐怖と、政府のこの立ちおくれに対する責任の追及が行われておるやに開くのであります。これだけ大きな反響を呼んだところのICBM、人工衛星と並びに新型の水爆の完成ということは、これは私は軍事的にもかつまた政治的にも、非常に大きな意義があると思うのであります。こういう新しい事実に対して外務大臣はどのように評価をされますか。もういろいろと御検討のことであろうと思いますので、一つ見解を聞かせていただきたいと思います。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 人類が科学を追求して人工衛星を作るというようなところまで到達したということは、これは驚くべきことだと思うのであります。これが現実にすぐの問題でなくとも、そういうことができてきたということが起因になりまして、長い将来にわたってはやはり世界が平和を希求する人類の一つの反省の資料になるのじゃないか、またそうしなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えておるのであります。科学の進歩がお互いに競争し合いまして、殺人的ないろいろな兵器の進歩を競争して参りますことは、これは人類の破滅なんでありまして、その意味において歴史的な大きな事実だ、こういうふうに判断しております。
  79. 大西正道

    大西委員 私が特にお伺いしたいのは、この新しい発見が米ソの世界的な対立の中においてどのような影響をもたらすか、こういう問題です。今日まで米国が広島に投下いたしました原爆のあの成功が自由国家郡の共産主義群に対する優位を保っておる。すべてここから出ておると思うのでありますが、今日のこの人工衛星、ICBMの出現は、完全に米ソの世界的な軍事的な対立について従来の均衡を破った。もっと極端に申しますれば、米国の敗北である、ソ連が優位を保った、こういうことを言って差しつかえないのではないかと思うのであります。このことは私どもの単なる独断ではなくして、米国の有力なる新聞の論調並びに米国におけるところのかなり責任のある軍事評論家その他がこういうことを明確に言っておるのであります。そういうことにつきましてどのようにお考えになりますかということの質問でございます。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 少くもソ連が人工衛星を打ち上げ得たということは、そのことに関しては、私はソ連の科学技術がいかなる形においてかは知りませんけれども、アメリカより一歩先に打ち上げただけやっぱり進んでいたのだ、それは科学技術そのものか、あるいはそういう技術陣の協力態勢の形が進んでいたのか、その辺のところまではわかりませんけれども、しかしそういう意味で進んでいたということは考えられるのではないかと思うのであります。その意味において米ソの間にそれでは軍事上の優位がどちらにあるかということ自体は、やはり今後の問題にかかってくるのでありまして、ソ連が打ち上げたということだけで、すぐにソ連の軍事力が優勢であるという結論は出ないだろうと思いますけれども、少くもアメリカがあれだけ驚き、あれだけ脅威を感じ、またアメリカの国民がソ連のそういう面における優位を認めております事実から見ますと、やはり相当ソ連が優勢な地位を確保したのではないかというふうに考えております。
  81. 大西正道

    大西委員 そういうふうな御判断のもとに私は日米間の安保条約を一つ検討してみたいと思うのでありますが、私どもは、今ある安保条約はまことに不平等なものであるし、真に日本の平和を招来するものではない、こういう観点から、すみやかにこの安保条約の改廃、でき得べくんば廃止という主張をしておるのでありまして、そういう主張のもとにおきまして、新しく米ソ間の軍事的なバランスが破れたということは、安保条約が少くとも今のままではよろしくないのである、こういう新しい事態に際して安保条約をどういうふうにすべきか、安保条約の改廃に対する態度などを真剣にお考えになるべきはずだと私は思うのでありますが、この点についていかがでございましょう、
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日ソ連が急に兵力が優勢になった、アメリカがそれよりも劣ったということだけの事実から、安保条約改訂の理由はあまり出てこないのではないかと私は思います。しかし日本国民がアメリカに対して、われわれはどういうふうに安全保障をお互いに協議するかという意味から、安保条約の問題は深く検討していく必要があるんだということを考えております。
  83. 大西正道

    大西委員 まことにこれは新しい事実に対する認識不足と申しますか、鈍感と申しますか、そういうふうな反応の仕方では、日本の将来について私は危惧の念を待つのであります。私どもはこの新しい兵器の出現ということに対しまして、かなりこれを率直に評価すべきであって、政治的な何か宣伝の面を重視してこれを黙殺したり、あるいは過小評価することは、将来のために私はよろしくないと思う。こういう意味で当然一つ安保条約の改廃の線について、さらに一歩を進めて検討されるべきであると思う。すでに社会党の使節団がソビエトへ参っております。そうして私どもがかねてから主張いたしておりますところの日中米ソを含めた地域的な安全保障体制について打診をいたしました。この構想につきましては、私もたびたび外務大臣にお伺いしておるわけです。しかし外務大臣といたしましても、まだその時期は熟さない、こういうふうなお話でありますけれども、少くともソ連は団長の提案に対しまして、双手をあげて賛成をいたしております。もう残るところは米国の賛成さえあればよろしい、こういうふうな段階にきていると思うのでありまして、当然こういう一つの地域的な安全保障体制というものをおいてほかにないと私は確信をするのでありますが、さらにこの点について、一つ思いを新たにして考えていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、御見解を承わりたい。
  84. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在までの国際情報の上からいって、私は必ずしもそういう体制が有効にでき得るとは考えておらぬのであります。しかしただいまお話のように人工衛星もでき上り、大陸間弾道弾というようなものもできてくる、それによって今後のものの考え方というようなものがどういうふうに変化していくか、それらのものは今後の問題として、われわれも十分慎重に勉強をいたしまして対処していくつもりでおります。
  85. 大西正道

    大西委員 次に、今も大橋委員から御発言になりましたところの問題と関連するのでありますが、私はこの前この問題について質問をいたしました。その翌日であったと思うのでありますが、日米安保条約に対する交換公文の構想が発表されました。その発表はたしかに一週間ほどおくれたのでありますが、あの交換公文につきまして外務大臣はこれを非常に高く評価されて、これは条約の実質的な改正だ、こういうふうな非常に御満足の意を表されておるのであります。私どもはどうもそのようにとれないのであります。あのときも申しましたように、これは単なる規定の実事をことさらに何か新しい取りきめができたような、そういうふうな擬装をしておるだけのことであって、安保条約を国連憲章のワクの中に入れたと申しましても、ただ憲章の二条とか五十一条とか百三条の確認にすぎない、わが国は平和条約においてすでにこの国連憲章の精神、原則にのっとるということをはっきりと言っておるのであって、こういうことを、ことさら交換公文を取りきめたということだけで、私ども国民がこの安保条約に抱いておる危惧の念は決して払拭されないと私は思うのであります。外務大臣はこれを非常に高く評価して、安保条約の一部改正だ、大きな声では言えないが、大きな声で聞えると悪いがというようなことを言っておるが、まあ小さい声でもよろしいから、それほどの実質的な改正だと言われるならば、どの点がそうなのか、国民の危惧をこういうふうな点で解消したのだ、安保条約の不合理な点はこの点で解消したのだということを私は一つここでお伺いしたい、こういうふうに思うのであります。
  86. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約に対します批評というのはむろんいろいろあるわけでありまして、先般の国連憲章にのっとって処置する交換公文の問題につきまして、あれが全部の不安を解消したものだというようなことを私は言ったつもりはないのであります。しかし少くも他の各国とのいろいろな条約の中にそういう条文がはっきり入っておるのに、日米安全保障条約においてはそういうものが入ってない、むろん国連精神にのっとって運営さるべきは当然でありましょうけれども、しかし他に入っているものが入ってないということは、国民からいえばやはり非常に大きな不便だと思います。それをあらためて条文は追加いたしませんけれども、相互に交換公文で確認し行ったということは、私はやはり相当大きなプラスになったと考えております。
  87. 大西正道

    大西委員 他の例にあったものをここに入れただけだというようなことですと、それだけでは私どもはそう言われるような大きな価値を認めるわけには参らぬと思うのです。あなたは盛んにそう言われますけれども、向うの新聞の発表なんかを見ますと、これは何も変ったことはないのだ、前と同じだ、ただ日本総理、藤山さんの顔を立てたのだ、こういうふうな意味のことを言っているのであって、そういうことから見ましてもこれはそう大きな価値があるとは私は思えないのです。しかし特に私が開いてみたいのはいつもこの点なのでありますけれども、やはり第一条の米軍の使用目的の中にあるところの極東の安全と平和のために米軍を使用することができるという、ここに私どもは危惧を持っておるのであります。日本の安全と平和でない極東の安全と平和のために米軍が出動をする、しかもその出動する意思決定は日本の意思が何ら加わらないのでありますから、五十一条によってそういう安保理事会に諮るその過渡的な段階として認めるのだ、こう言われても、やはりその間が大事なのでありますから、日本は求めざる戦争にみずから介入することになる、この点は安保条約に対する国民の一番の危惧なのでありますが、これがどのように交換公文によって解消されておりますか私にはわからないのであります。また内乱騒擾の問題にいたしましてもその通りであります。今どき米軍を頼んで鎮圧してもらわなければならぬ内乱、騒擾というようなものが起るということを考えることは、日本国民の常識のある頭ではおそらく私は考えられないと思う。これは私が総理大臣しお伺いしたときには、こういう点は当然改めるべきだといってアメリカに行った。ところがこれは交換公文においても何にも触れられていない。あなたの方の政党はソ連のハンガリーに対する干渉を非常に非難しているのだけれども、同じようなことをやらせる根拠をまだここにそのままに大事に大事にして置いておるのです。それからもう一つの問題は、米軍を使用することができるという、できるのであるから守る義務がない、私どもは守ってもらわなくていいと思いますが、あなた方の立場からいいましても守る責務は何もないのであります。こういうものは少しも交換公文で解消されていないじゃないですか。ただばく然とほかにもあるものをここに入れたのだということならば、あなたの言われるような実質的な一部の改正だということは僣越もはなはだしいと私は思うのであります。何か隠れた意味があるなれば、どうぞこの際国民に向って明らかにしていただいて、あの交換公文で国民も安心をしたい、私も安心をしたいと思うのです、教えていただきたい。
  88. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 交換公文が全部をカバーしておるとは申し上げないのでありまして、今後日米委員会においていろいろな点からいろいろな角度で話し合いをしながら、両国国民の願望に沿うように安全保障条約を検討していくという過程にあるのでありまして、今お話のように、二回ほど開いてすぐ結論に達し得るというふうには私ども考えておらぬわけです。従ってあれに対して、これだけでもう全部解消したのだと言ったつもりはないのでありますけれども、そういう点がやはり決して軽いものではないことは事実です。
  89. 大西正道

    大西委員 私は全部を解消せよとか、そんなことを言っておりません。一部だって私の申し上げたおもな危惧は解消されていないということを申し上げているのです。この問題はあまり言いましてもなんですが、この前もこれについてはあまり要領を得た答えをいただかなかったのです。これについては私だけではありませんから、一つ十分決意のほどを示されて安心を与えていただきたいということを私はお願いしておきます。  この交換公文で私のもう一つ心配をすることは、これは実質的な一部の改正だと言われておる言葉にも関連をいたすのでありますけれども、外務大臣はこれでもって安保条約の改廃ということはもう断念をされたのですか。私どもあの取りきめの内容やその後のあなたの発言を聞きますと、どうもあれ以上突き進んで、あれを先にしてさらに条約自体を改廃していくという気がまえが見えぬのでありますが、もしそういうことであれば、アイク・岸会談で結論が出されました共同声明の中の両国民の願望に沿ってこれを検討するということは偽わりであったということになりますが、この点はいかがなのでしょうか。
  90. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほどからたびたび申し上げておりますように、両国国民の願望に沿って安全保障条約を改訂する問題について検討もし、それをあれしていくという点については私は決して捨てておるわけじゃないのです。ただ私の話し方が卓をたたいてお話しするような感じでないから非常に弱くお感じになるかもしれませんけれども、私自身としてはそんなに捨てたというような観念をもって申し上げておるつもはないのであります。
  91. 大西正道

    大西委員 どうも私は納得できないのであります。それではさらに今後安保条約の改廃の問題について一つ強く主張したいという用意があるというお考えであろうと推察いたしますが、こういうふうな一応の交換公文を作り上げますと、さらにその上に米国に対してこの条約の改廃を積極的に今後進めていくという理由が私は非常に薄弱になると思うのです。一応安保条約の改廃ということは国民の要望であるというので、岸総理がアイクといろいろ話された。ところがあの共同宣言を見ると、どうもその結果はうまくいっていない、そこでこういうところへ落ちつけたのです。これで一つ満足した、こういうふうな結論しか私は出ないのであって、これからさらに一歩進めて、それではこれを改廃しなければならぬという積極的な主張の根拠はどこにあります。これを聞かしていただかなければ、どうも私どもは単なる御答弁だけのように思うのであります。それから、でき得べくんば私が今二、三あげましたようなこういうだれが見ても非常に不合理なものは、この点、この点、この点については少くともこれは一つ問題点であるというようなことの具体的な点までの御指摘を願わなければ、どうも今後続けてやるといわれましても理解に苦しむのです。一つでもよろしいから、一つ元気を出して言って下さい。
  92. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 こういう問題を進めていきまするには、むろん御承知のように時間もかかりますし、十分研究をいたして根拠ある立場から、また当然日本主張通りますようにやっていかなければならぬ、そういう意味においでわれわれは決して力強くやらないという考え方で、もう何かこのままうやむやにしておくのだというような考え方でおるわけではないのであります。そういう意味において、今御説のような点も非常に参考になったと思います。
  93. 大西正道

    大西委員 次に沖縄の返還の問題が一向政府の方では熱心にやっておられないように私どもは見受けるのであります。きょうのある方の質問でも、沖縄小笠原と切り離して話をしてはどうかというような、沖縄としてはまことに見捨てられた立場のような感じを私はするのでありますけれども、岸・アイク共同宣言の線に従って、さらに具体的な話を進めるとこう言われる外務大臣は、この間の会談沖縄の返還の問題について触れられましたか。触れられたらその様子、さらにまた今度国連に出られますが、その際にもこの問題について積極的な主張をなさるおつもりでございますか、いかがでしょう。
  94. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 沖縄の問題につきましては、私は機会あるごとに必ず返還ということを申し、またそれを前提としてすべての議論をいたしておるわけでございます。ただ返還が即時できないならば、これこれこういう措置はとるというふうに言っておるのであって、沖縄の返還という言葉をアメリカ側に言うことを捨てておるわけではないのであります。もう一ぺん国連出席いたしますけれども、今回は時間もありませんことで、あるいはワシントンまで行ってアメリカ首脳部と話す機会があるかないかについては今予断できないのであります。
  95. 大西正道

    大西委員 今まで話をされてらちがあかなかったというのは、これは向うの言い分はどういうふうなのですか。なぜ返さないのですか。これは私は私なりに理解はいたしておりますが、外務大臣から一つはっきりと聞かしていただきたいと思います。
  96. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 沖縄につきましては、おそらくアメリカ考え方としては今日のような国際不信のある場合、特にソ連に対して東アの防衛の上からいって必要である、こう考えております。
  97. 大西正道

    大西委員 それに対するあなたのお考えを一つ聞きたいのでありますが、米国の言い分は日米共同声明の中にもあるように、極東における緊張が続く限り沖縄を手離すわけには参らぬ、こういうことを言っておるのですね。ところが私は極東における緊張は何によって起きておるかと申しますと、やはりこれはこの交換公文の中にも明らかに出ておるように、共産主義の勢力だ、こういうふうに見ておる。そうしますと現実にソ連、中国のあの勢力が何らかの形で壊滅するか衰退するかしなければ、この極東におけるところの緊張は緩和しない、こういうふうな論理的な結論になると思うのです。そういうことになりますれば、そういうときにまで沖縄を返すことができぬというような、こういう米国考え方をそのまま肯定するなれば、これは私は近い将来にソ連や中国のあの政治体制がくずれてしまうということはだれも考えるものはない、増大こそすれ私はあれがくずれてしまうというようなことは考えません。そうしますと沖縄の返還というものは、半永久的だということになる、そういうことに対して岸総理大臣は何ら反発もしていない。黙認を与えたような形になっておる。米国考え方ははっきりしておる。どんなときには沖縄を返すかということははっきりしておる。藤山外務大臣はこの点につきまして、沖縄の返還についてどうしても極東における米ソの対立を緩和させるという、このことなくして沖縄返還はあり得ないということをお考えになりませんか、米国のこのはっきりした言明から……。いかがです。
  98. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お説のようにソ連や中共は壊滅しなければならぬということは私はアメリカ考えていないと思うのでありまして、平和共存ができて東アにおける緊張が緩和するということを望んでおるのじゃないかと思うのであります。でありますからソ連がつぶれ中共がつぶれるということであれば、お説のように百年かかるかもしれぬし、あるいは百年以上かかるかもしれぬけれども、そうでない限り、緊張が緩和するということは、場合によって、そんなにかからないでもできるのではないか、そういう意味において緊張の緩和するためには、日本はやはりアメリカに対しても東アの情勢について、またアメリカの東洋人の扱いについて十分アメリカの方では教えて、日本人の考え方をいれていくということも必要だと私は考えます。
  99. 野田武夫

    野田委員長 大西君にちょっと御注意いたします。時間の関係で、あなたは経過しております。あとの社会党委員の時間が制限されますから、その点御注意願います。
  100. 大西正道

    大西委員 緊張の緩和の方向にそれでは日本政府が歩んでおるかというとそうじゃないのであります。米は中ソの仮想敵国として安保体制を強化していくという。緊張の緩和の方向の政策をとっていないじやありませんか。だから私から言わせれば、沖縄の返還をおくらしているのは、日米の安保体制を強化して、極東における緊張を緩和するどころではなくして、これを推し進めているところの日本政府の政策にある、こういうことを言い得るのじゃないかと思うのです。この点についてはもう少し意見も聞き、私の意見も述べたいのでありますが、時間も参りましたから、最後に一つ聞いて終りにしたいと思うのであります。  今田中君が聞きましたけれども、沖縄の返還の問題が実現困難である場合には、教育権だけの返還でも、そういう話をされたそうであります。しかもその教育権の返還も全部でやなければ部分的なものからでも、こういうお話があったようであります。一体部分的なものということはどういうことか、こういうことも実はお伺いもしたいが、その点についてあなたがこの間帰って参りまして、新聞記者会見をやられまして、どうも沖縄の教育権を返すということについては、ダレスは日本の教育のあり方については疑問を持っておる。日教組のようなものがああいうふうな動きをしておる一本に対してどうも困るのだ、こういうふうなことを言ったということを、あなたは新聞記者会見で発表されたのでありますが、私は間違いではないかと思いまして各新聞ともあさってみましたが、みな同じような趣旨でございます。おそらくそういうことがあったのであろうと思うのでありますが、この点、そういう話があったのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
  101. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本の教育権につきまして私が話をしたわけであります。ダレスはもちろん、この段階において教育権全体をすぐに返せるか返せないか、それらのものは今後十分研究してみるということを言ったのでありますけれども、私は少くも部分的でもいいから全体の教育権を一つずつ返すように持っていってもらいたいという話を強く要望したので、そういう点について今後研究してみようということを申したのであります。  日教組につきましては特にダレスは触れておらないのでありますが、私の感じではそういう感じがあったということです。
  102. 大西正道

    大西委員 感じであのようなことをおっしゃったのですか。私はあなたのあの明確なる発表は、よもやあなたがダレスの感じをああいうことでもって感じとられて発表なさったとは思いません。この点を明らかに願います。感じで自分は発表したんだ、こう言われるならば、私はそれ以上申しませんけれども、ああいうことをダレスが行うはずはないと思う。ああいうことを言えば、まさにこれは内政干渉です。日教組を弾圧すれば、沖縄を返してやるということが裏に目に見えているのです。そういう内政干渉的なことを私はダレスが言うはずはないと思う。それをあなたが感じたと言われるのであれば、ダレスの真意をあなたは誤まって発表されておるのかもしれぬ。そうなってきますと、問題はまた別にある。ダレスの言わないことをそう感じたとあなたが言われるならば、これはあなたはまことに潜越なことを言われたと思う。非常に問題は大きくなると私は思うのでありますが、私は最後にその点だけは明確にしていただきたいと思う。
  103. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今私が申し上げた通りであります。
  104. 野田武夫

    野田委員長 高岡大輔君。
  105. 高岡大輔

    ○高岡委員 私の時間は約束によりますと十七分でございますので、いろいろお伺いしたいのでありますけれども、時間を守る意味において二、三具体的の問題だけをお伺いいたします。  これはまだ大臣が就任にならないときの問題でありますが、日本とカンボジアとは友好条約を結んでおります。そしてこれは御承知だとは思いますが、昭和二十九年十一月には対日賠償請求権を放棄するということを声明し、また昭和三十年十一月にはサンフランシスコ条約第十六条に基く連合捕虜に対する戦争損害補償金の同国取得分を日本赤十字社に寄付した。こういうことから、日本とカンボジアの間には非常に友好的な空気がかもし出されまして、昭和三十年十二月九日でありますか、そのときに友好条約は調印されました。そしてその後、すなわち昨年の十一月十七日の閣僚懇談会におきまして、カンボジアに十五億円の援助をしよう。援助というか、お礼を申し上げるという話がまとまったのであります。ところがこの問題はその後は何か立ち消えになっているふうな気がいたします。先ほど菊池委員が、賠償問題等についてはそう期限を切るといったような切り札は言うべきものではないという意味のことをおっしゃったのでありますが、臨時国会後には、総理がカンボジアにも行かれますし、同じくヴェトナムないしはラオス等もお回りになるのでありますから、できればそのときに何かの結論に到達することは最も好ましいことだと思うのであります。しかもこのときの話は、とにかく向うは大体二千万ドル近い要求をしようという空気であったのをゼロにしたのでありますから、せめて一千万ドルくらいのものはこちらからしなければいけないのじゃないか、こういうような考え方で一応キリロムの開発に十五億円、それから農業センターに四億円、医療センター施設に二億円、これを三カ所作ることにして十八億円、合計三十一億円というものを日本からカンボジアにお礼の意味で一つ差し上げよう、こういう話があったのでありますけれども、たびたび調査に行かれた結果、どうも移民問題はうまく行きそうもないからというので、いつの間にやら農業センターのことが消えてしまって、キリロムの開発だけが残ったのであります。ところがキリロムの高原都市というものについては、何かぜいたくなものを作るような考え方日本ではいろいろ批判をしたのでありますが、これは大臣も御承知でありましょうけれども、仏領インドシナといっておったころに、いわゆる夏季の暑いときに事務をとりますために、今は南ヴェトナムの地域にあるダラットがその地域であります。インドにおいてはシムラがございますし、インドネシアにおいてはバンドンがあるように、それぞれのいわゆる高原都市なるものがあります。それをキリロムに作ろうというのでありまして、日本の箱根を作ろう、軽井沢を作ろうというのとはこれは全然違うのです。しかもプノンペンから海岸までの道路三百キロというものはアメリカの費用によってこれを建設しつつあります。しかもその港湾構築は今フランスの援助によってこれをやっておる。ちょうど三分の二ほどプノンペンから海洋の方に来たところからわずか二十キロばかり入ったキリロムのところに高原都市を作ろう、こういう問題なのです。だからこれは大臣東南アジアをお回りになった方ですからおわかりでありましょうが、こういう都市を作ることは必ずしもぜいたくではございません。しかもこの道路と港湾はアメリカとフランスがせっかく投資をしてカンボジアを援助しているのでありますから、それと見合って日本がここに高原都市を作るということは決してむだなことでないと私は思うのでありますが、最近聞きますと、何かこれがまた消えて、プノンペンの町の下水工事に金を出すのだというようないろいろなことを言われるのでありますが、この点はどの程度になっておりますか、一つお伺いしたいのであります。  時間の関係上なお続いて申し上げますが、南ヴェトナムに対しましては、小長谷大使が一億五千万ドルという金額を向うから言われて、今日本にお帰りだということをわきから聞いております。しかしこれは大臣よく一つお考え願いたいのでありますが、賠償というものは戦争に対する賠償であります。しかも北ヴェトナムに対しては、御承知のように日本があそこに強行突破をして行ったのでありますから、ここでは調達もしました。損害も相当与えております。しかし現在南ヴェトナムと言われるようなところには、何ら日本戦争中は被害を与えておりません。むしろサイゴンの近くにありますショロンという町に、どれほど日本の兵隊さんが金を落したかは御承知のはずであります。そういうように、何ら戦争によって損害を与えていないのにかかわらず、一億五千万ドルの賠償を要求されたからといって、そんな数字を持ってきて、これを基本にして外務省がお考えになりますと、その数字はやがて、カンボジアからも非常に日本を疑って参ることになります。続いてラオスもそれに相当したことも考えてきましょうし、それはすべて、今度はタイの特別円にも響いてきましょう。あらゆる面で東南アジア全体にこれは響いてくる問題だ、こう思います。そこで私が思いますのには、外務委員をしております社会党の岡田君が、先日旅行の途次、北ヴェトナムのホー・チミンに会いましたときに、私は日本と国交が回復されたような場合でも決して賠償は要求しませんということは、個人的ではございましょうけれども、いやしくも北ヴェトナムの最高責任者であるホー・チミンは、岡田代議士にそのことを言っておるのであります。何もそれを言質にして将来云々ということは別にいたしましても、一応そういう気持になっておる。その北ヴェトナムまで含めた賠償を南ヴェトナムのゴ・ディン・ディエムが要求するということは、ちょっと筋が違っているのではないか。思うに私は、ゴ・ディン・ディエムの言い分は決して戦争だけを考えていない、むしろ近年アメリカ援助資金の中に割り込んでいった日本の商社のあまりにもひどい金もうけといいましょうか、そういうことの日本に対する憎しみというか、そういう感情を害しているところにこの数字が出てきていると思いますので、どうか戦争中と戦後のあらゆるものを外務省としては十分に分析されましても、もしも向うがそれほど困っているならば、それは賠償でなくして経済協力だということにして、賠償はあくまでも戦争を対象としたところの数字によってきめていただきたいと思うのであります。ラオスにしてもしかりであります。今そういういろいろの問題が派生しておりますし、またこの臨時国会が終了しますと総理向うを回られるのでありますから、外務省としては何とかこの辺で一つ真剣に南ヴェトナムの賠償問題あるいはカンボジアの今のお礼の問題、そういうものを一つ真剣にお考えを願いたいと思うのでありますが、外務大臣は今どのような構想を考えていらっしゃいますか、お伺いをしたいと思います。なおインドネシアについては、明日ハッタさんが見えるのでありますから、これは今のところちょっと遠慮してこの点には触れずに、ただこの面の問題についての御構想をお伺いしたいと思います。
  106. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 カンボジアが賠償を放棄したことに対して、経済協力その他で日本としてはできるだけカンボジアを援助しようということで、現在十五億円くらいの金額を支出するという手段をとっておるわけであります。ただ御承知のようにキリロム高原都市については、私もアジア協会の会長をしておりました時代に、岩田君が団長として行ったものですからよく存じておるのでありますが、われわれとしてもあの高原開発が、今のお話のようにぜいたくなものだとは考えておらぬのであります。ところがその後向う側からいろいろ要望がありまして、必ずしもキリロム高原都市を優先的にやってもらいたいということよりも、向う側とすれば、現実の問題として、下水道工事その他衛生諸般の工事をやってもらいたい、あるいは農事研究所なり農事試験場なり、その他そういう必要なる施設をやってもらいたいということにだんだん意見が変ってきておるのでありまして、この点は向う希望を十分聞きました上で、有効に経済協力の方途をつけて参りたいということで、ただいま交渉いたしておるわけでざごいます。  それから南ヴェトナムにつきましては、何らかの形で若干の賠償をするということは、今日まで既定の方針として折衝が続けられておるわけでありまして、私どももいろいろな事情を加味しまして、ただいまお話のように向う側の言い分だけを聞いて問題の決定を急いでおるわけではないのでありまして、できるだけ慎重に、向うの意向も聞きながら、こちらの考え向うにも十分徹底するように話しながら、交渉を引き続き継続しておるわけでございまして、いずれ何らかの形で結論が得られることを希望いたしておるわけであります。
  107. 高岡大輔

    ○高岡委員 もう一つ、言い落したから申し上げますけれども、南ヴェトナムは最初二、三千万ドル程度の様子であったのが急に金額がふえたという理由はどこにあるかということはさっきも触れましたけれども、ゴ・ディン・ディエムの気持というものを一つ十分に分析といいましょうか、検討なさいませんと——せっかく今植村氏が行っておりますから、その植村さんとも一つ御連絡を願いまして、ゴ・ディン・ディエムが一体何を考えているかということを十分御検討願いたいと思うのであります。  時間がございませんのであとでもう一点だけお伺いしますが、問題は、先日の十二日の晩には最後の会議をなさって十三日に御発表になりました日印両国首相の共同コミュニケについてであります。ネールさんとはたびたびお会いになりましたから、ネールさんの人となりといいましょうか、考え方は十分に御理解願ったことと思っておるのでありますが、まことに複雑な方であります。しかもインド政府というものは、御承知のように今の大蔵大臣は、傾向から言いますと親米一辺倒の人であります。それから国防大臣は反米一辺倒の人であります。ところがネールさんはどういう人かといえば、これは何といっても親英的な人であります。そうしたネール内閣自体にもいろいろな問題がありますし、ネールさんの政権というものも、いろいろの意味からいって、日本人がちやほやするほど、それほどそう完全にしっかりしたものではございません。そういうことがありますけれども、ネールさんがいわゆる平和を唱えられる腹の中とでもいいましょうか、脳裏を私がそんたくしますと、世界の平和をこいねがうということはもちろん人類だれしもが希求するところでありますが、しかしネールさんのこの平和論にはインドの長い宗教的な根拠があります。すなわちオヒムサの精神であります。これはガンジーさんがそのままオヒムサの精神を説き、それによるところのノン・ヴァイオレンスた説かれております。しからばネールさんはそのまま政治の一切にガンジー・イズムを使っておられるか、信奉しておられるかというと、必ずしもそうではございません。そこでネールさんの頭の中にどういうことが去来するかといいますと、世界がもしもほんとうに平和になって、経済的にも、軍事的にも、政治的にも、どんな面からも侵略がないという世の中が生まれたとすれば、一番栄える国はアメリカソ連と中共とインドだ、大きな国土と人口を持ち、そうしてそこに理蔵資源のあるこれらの四つの国が一番栄える、ということはネールさん御自身がおっしゃっております。そうしますと、ネールさんの気持の中には、今言ったような宗教的、精神的、哲学的な平和な気持もありますと同時に、もう一つは、インドが経済的に繁栄する未来像を心の中に描いて平和を非常に強く希求しておられることは、私らの想像するに決してかたくはないと思うのであります。この観点からネールさんが平和論を説き——そうして同時に現実問題としては第二次五カ年計画であります。これにネールさんが失敗しますことは、ネールさんの政治生命にも非常に大きく響いてくる問題であります。しかしネールさんという人は、のどから手が出るほど金がほしくてもそれを言わない性格の人です。こういうことは大臣はお会いになっていろいろとおわかりになったことと思うのでありますが、そこで最後にお聞きしますことは、十二日の晩、ネールさんと藤山外務大臣が会った際、何か話によりますと、あなたがビルマとインドは行ったことがないと言ったら、ぜひインドに来ていただきたいということをネールさんがおっしゃった。また岸総理には、もう一度来ていただきたいということをおっしゃったそうであります。これは決してせんだっての岸総理の待遇があまりに粗末だったからやり直しをしようという意味ではなくして、ぜひ皆さんからおいでを願って、あるいはカルカッタのビルラにしろ、タタにしろ、あるいはボンベイのタカルグスにしろ、そうした財界の実力者並びにインドの政界財界、あらゆる方面の経済的実力者と御懇談を願って、日印の経済提携の速度を早めたい、こういうお気持がそのおいでをいただきたいという言葉の中に含まれていると思うのであります。時間もありませんから簡単に言いますが、外務大臣はぜひインドに近い将来においでを願いたい、そう思うのでありますが、そういう御意向がございますかどうか、お伺いしたいと思います。
  108. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 できるだけ適当な機会インドに行くことは希望しております。
  109. 野田武夫

    野田委員長 田中織之進君。
  110. 田中織之進

    ○田中(織)委員 時間もだんだん迫っておるようでございますから、簡潔に二、三の点について御質問を申し上げたいと思います。  最初に、八月の十七日から私ら小泉純也君を団長といたしまする本院から東南アジア視察に派遣されました五名のものが、東南アジアの十数カ国を訪れたのでございます。その際は外務省の在外公館の皆さんからいろいろ視察、調査等について便宜を与えていただいたことにつきまして、この機会大臣よりよろしく感謝の意をわれわれが表しておることをお伝え願いたいと思うのでございます。ただこの旅行を通じまして、在外公館のあり方の問題、また外務省の在外公館充実に関する現地の声等については、われわれも国会議員の立場から十分見て参りましたので、それはいずれ機会を改めて大臣とも御相談を申し上げたいと思うのであります。  私が大臣にお尋ねをいたしたい問題は、先ほど同僚の大西正道君から触れられましたミサイル並びに人工衛星の出現によりまして、世界の軍事防衛体制はもとより、政治、経済体側も大きく変革せられるような時期が近づいてきておることに対しまする日本外務大臣としての所見を伺いたいと思います。この点につきましては、大西君に対する答弁では私らは実は満足するわけには参らないのであります。と申しまするのは、東南アジアに参りました機会に、ロンドンで催された列国議会同明の総会に出席をいたすことになりまして、九月十一日にロンドン日本大使館の大使公邸、、われわれ衆参両院からロンドンに当月参っておりました十五名の者が西大使から懇談の機会を作っていただいたのであります。そのときにたまたま私から原水爆の禁止に関する問題について、やがて開かれる国連総会日本からも新たなる提案をするわけであるが、先般首相特使として松下立教大学総長が来られたときの関係もあり、さらにロンドンでは国連軍縮委員会が開かれておる関係があるから、これらのことについてロンドンでは直接各国の原子力の研究に対する問題等について相当的確なる情報を集められておると思うが、そういうようなことについて、やはりわれわれも国連日本が新たなる提案をすることになるわけだし、聞かしてもらいたいということで、いろいろ話を伺ったのであります。ところがそのときの大使館側の説明によりますと、どうも原子力の研究、ことに原子兵器の研究、あるいは製造というような点につきましては、米英とソ連との間には相当の開きがある。それはつまり米英の方が進んでおるのだという意味において開きがあるということであります。その意味で、単に日本で原水爆禁止大会等で打ち出している、またソ連提案をしている原水爆の実験禁止ということだけでは、結局その実験禁止の間にソ連英米よりおくれているのを取り返す時間をかせがすようなものだ、その意味で原水爆の実験禁止は突き進んで製造禁止までいかなければならぬということが一つの問題でございます。それと同時に日本人が三たび経験した原水爆の被害関係からいたしまして、それが今日全世界にかなり徹底をいたして参りますとともに、全面的な原子戦争はあり得ないという科学者の言を僕は信じたいという点を申し上げた。その点についてはあえて否定はいたしませんが、しかし全面的な原子戦争がなければないだけに、局地的な戦争が起り得る。その意味で、日本の自衛隊もその一つでありましょうけれども、やはり軍備はやらなければならぬのだという意味見解を大使館側からわれわれは説明を受けたのであります。これは偶然私がバンコックへ参りましたときに、バンコックの渋沢大使であったと思いますが、懇談をいたしました折にも、外務省側からそういうように述べられてきている。こういうときに、私は原子力についての専門家でもまた特殊に情報を集めているものでもありませんけれども、そんなものでは自分はないと思う、そういう見方は甘いということを申し上げたのであります。そういたしますと、翌々日でありますか、ミサイルの実験に成功したという報道がなされ、今月四日の人工衛生の放出に成功したという事実になって現われて参ったのであります。十月二十七日号の週間サンケイによりますと、「宇宙は誰のもの」という「週間レーダー」に「甘かった米情報機関」という見出しの一項目がございますが、私は日本外務省のこの点について持っている情報も、米英よりもソ連の方が原子力の研究あるいは核兵器の研究においてはおくれているんだ、こういうような判断の上に立っておったのではないかということを、バンコック並びにロンドンの大使館におけるかなり突っ込んだ話し合いの過程からお伺いするのでありますが、先ほど大西君に対する答弁では、大臣はこれは世界の絶対的な平和をたもらす一つのモメントであるという見通しを持っておられるような点も述べられたのでありますけれども、この点はさしあたり問題になる二国間の軍事同盟の問題であるとか、あるいは局地戦争は必至であるということでばかげた自衛隊の強化をやるとかいうようなことは、これは当面の問題ではないにいたしましても、すぐあすに続く問題としてわれわれは考えなければならぬ問題であります。また外務大臣は今月末には再び国連総会出席をせられるために渡米せられると伺っております。そこで取り上げる問題はやはり日本提案をしておりますところの原水爆の実験禁止に関する決議案をどう実現させるかということについて、外務大臣が特にみずから国連総会に再び出席をせられようという意図のように伺っておるのであります。そういう意味におきましてこのミサイル並びに人工衛生の問題が、今後どういう影響を世界の政治、経済軍事、外交の上に及ぼすかということについて、外務大臣はどういうように考えているか、またこういう新たなる事実の上に立ちまして再び渡米されて、国連総会出席せられたときに、日本の原水爆禁止に関する決議案について何らか新たなる構想とつけ加えなければならないと思うのでありますが、その点について外務大臣はどうお考えになっているかということを同時にお答えを願いたいと思うのでございます。
  111. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ミサイルあるいは人工衛星が打ち上げられたという事実は、これは非常に大きな今日の事実だと思うのであります。従いましてこれによって人心にも大きな影響を与えましたし、また国際間の政治の上にもいろいろな大きな影響をこれから与えていくことになろうと思います。従って人心の上に与えた影響というものは、やはり将来の平和に対する希求の一つの出発点といいますか、あるいは一里塚といいますか、そういうものに長い目で見れば必ずなるのじゃないかと思います。国際間の問題につきましては、ただいますぐにその問題がどういうふうに影響していくかということを乏しい材料をもって判断することは非常に困難だと思うのであります。ある場合には一時的にかえって激しい競争が起るとも考えられるし、あるいはその逆な想定もできるわけでありますけれども、そこいらについては今後とも慎重な判断をしながらわれわれは問題を考えていかなければならぬ、日本としては当然原水爆による兵器の生産初め使用の禁止を提唱しておるのであるます。その前提としてお互いに実験の競争をやっていたのでは禁止にも影響を及ぼすわけである、また日本国民が実験によるフォールアウトによって絶えず脅かされているということも否定することはできないのであります。これらの点から見て、できるだけ日本考え方を一日も早く具現するようにわれわれは努力をしていかなければならない。それには他国の考えも十分聞く必要もありましょうし、また他国と協調していく必要もありましょうし、あるいは同じような案をまとめ上げるということも必要でありましょう。それらの問題について十分国連におきまして状況を見ながらやっていきたい、こう考えております。
  112. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点については従来の原子力等に関する情報等の収集につきましても、やはり在外公館等が真剣に取り組まなければならぬことだと思いますので、その点については十分今後も留意をしていただきたいと思います。  私の時間が参ったようでありますが、もう一点、これは別の問題でお伺いをいたしたいのであります。それはただいま高岡委員からもインドネシア賠償問題については明日ハッタ前副大統領が日本に見えられて、当然外相を中心といたしましてその点についての話し合いも始まることと思うので控えられましたので、私も内容に至っての点については差し控えたいと思うのであります。ただインドネシアへ参りましてちょうど倭島公使が赴任せられた直後でございます。そこでわれわれ国会議員団の代表が参ったわけであります。さらにそれに加えまして臨時国会が終った後に岸総理が二度目の東南アジアを回るについてはインドネシアに寄られる、こういう三つの問題をインドネシア側が結びつけまして賠償についての早期解決についての大きな期待を実は持っておるわけであります。さらに一昨日ですか、帰朝せられた小林移動大使もこれは早急にやはり交渉を進めたい、どういう報告が外務大運になされているかはわかりませんけれども、いずれにいたしましても十一月に総用がインドネシアを訪問したときは、いやがおうでもインドネシア賠償について何らかの解決の少くとも具体的な一歩を踏み出さなければならない時期に、たまたま国の責任者である総理が行かれることに相なると思うのであります。われわれが見たところによりますと、インドネシア側はフィリピン賠償というものを前例といたしまして、あの賠償のときにもビルマ側は留保条項にありましたところの他の国との間の賠償額の決定いかんによればビルマ賠償を改訂するというところの条項を主張しなかったのじゃないか、そういう意味で少くともインドネシアについてはフィリピン並みの賠償をもらいたいというような素朴な意見をわれわれにもわれわれが面接をいたした官界、政界の代表者は表明をいたしてきておるのであります。しかし先ほどの。南ヴェトナムの賠償要求というものは根拠がないのだという高岡委員意見もありましたけれども、インドネシアにつきましても、これはフィリピンであるとか、あるいはビルマであるとか、またその他の国々との関係とは私はおのずから違うと思うのであります。そういう意味におきまして十分この点については日本側の真意を先方に理解させるとともに、インドネシアの国内情勢から申しますと、やはり対日賠償を早期に解決するこによって、現在の経済的な危機、従ってあの政局の不安というようなものを解消しようという非常な願望、ある意味からいえば、あせりが感じられるのでありますから、そういう点も十分一つ看取せられまして、少くとも総理が参られる時期までには、何らかの具体的な交渉が踏み出せるようなことでなければ、総理インドネシア訪問というものが意味をなさないように私は思うので、十分その点について留意をしていただきたいという点を、これは質問というよりも具体的な内容には触れませんので、私の要望を申し上げておきます。
  113. 野田武夫

  114. 石野久男

    石野委員 私はもう非常に時間が迫られているようでございますから、簡単にしかし要点だけをお尋ねしますから、はっきりお答えを願いたいと思います。  先ほど外相は、日中の貿易協定の問題が今北京で行われておるが、それが円満に解決するように希望すると話されました。それについて、今政府には、現地に行っております代表団から何らかの中間的な経過報告があるとか、あるいはまた情報が入っておりますのでしょうか。そしてまたそれについての見通しはどういうふうになっておられますか、お答えを願いたいと思います。
  115. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今川の交渉は、民間の方々交渉でありまして、直接行っておられる代表の方々から、政府情勢についての御戒告はいただいておりません。従いまして、われわれも間接に伺う情報を承知しておる程度でございます。
  116. 石野久男

    石野委員 見通しをどういうふうに持っておられましょうか。
  117. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今われわれの持っております材料では、見通しというのは、こういう交渉ごとでございますから、すぐにこの席でつけて申し上げるような結論には達しておりませんが、せっかく努力をしてやっておられることでありますので、私はそう最悪の事態にならないのではないかというふうに考えております。
  118. 石野久男

    石野委員 最近新聞の情報等を見ても、必ずしも情報はそんなに明るい見通しじゃないと思います。ことに私はつい最近に北京から帰ってきました。交渉団の諸君の今一番行き悩んでおる点は、新聞などにも出ておりますように、代表部の設置問題に関連する人員の問題であるとか、保障の問題等であることは、もう皆さんもよくわかっておると思うのです。この問題の解決ができ得ないと、最悪の事態には決裂するかもしれないというような事態になっておると大体現地では見られております。そういう問題について、政府当局はもちろん民間のものだからそれはおれは知ったことじゃない、こういう態度でおられるとすると、非常にわれわれとしても遺憾だと思うのです。そういう問題、非常に甘く見ておられるようですが、しかしそれではいけないと思います。そこで私は池田氏がこちらから行きまするときに、政府との間に取りつけていった了解というものは、会談に入る前に大体代表部の設置の問題と指紋の問題については、政府との間に了解の取りつけができたということをはっきり言っておるわけです。これはこちらの新聞にも出ておったから、私はそうだと思います。それからもう一つは、会談に入るについては、第三次の協定を前提にして、それを解決した上で進んでいこうということも話し合いが進んでおる、こういうふうに私は聞いてておりますので、その政府が池田氏に与えた了解というものは、特に代表部設置についてどういうものであったのかという点について、一応藤山さんの御意見を承わりたい。そしてまた私はもう一つの問題について、特に通商代表部で一番問題になるのは人員の問題だ、こういうふうに考えます。もちろん安全保障の問題もありますが、人員の問題については雷任民氏の方からは、仕事のできる人、仕事に必要な、仕事のできる人というのが条件になっているわけなんです。これはわれわれがやはり通商代表部を持とうとする以上は無理のないことじゃないかと思いますが、それについて外務大臣はどういうふうに考えておられるか、その点についても一つ御意見を承りたいと思います。
  119. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 池田さんが行かれるときに来られまして話をかわしたことは事実であります。私はかねて申し上げておりますように、貿易の実務を取り扱う何らかの機関を東京に置くということならば、それは政治的問題を離れておるのであって、けっこうなことである。従ってその事務所の構成員というものは、実際の実務を扱う人でなければならない。従ってそれらについての人数等もそう大ぜいでなく、そういう人に対しては準公務員的な取扱いをするということを考慮してもよろしいという程度の私の考えは申したのでありますが、それ以上深く何人でなければいけないとか、あるいはどういうあれでなければいけないという話をしたことはございません。
  120. 石野久男

    石野委員 この問題は雷任民氏も言っておるように、仕事に必要な数からいって別に百人も八十人もという人ではないのだ、ほんとうに実務に必要な人ということを、やはりお互いに了解すべきではないかということを言っておりました。私が雷任民氏と会いましたときにも、どうも日本側の言い分では五名で、家族も含めてでは、子供が四人あったらとても行くことはできないじゃないか、こういうような笑い話ですけれども、人民民主主義の国では坊さんの生活はできませんよというような笑い話も実はあるほど、この人員の問題では向う考えております。それで私は、やはりこの際民間代表でありましても、日中貿易協定はすでに三次にわたっておりますし、昨年、本年というように二年にわたって延期して参ったことであります。実際に商社筋あるいは業界の方からは、この協定の締結についての非常に大きな希望があることも外相はすでに御承知のことだと思います。現に北京を取り巻いているところの外交陣営は、イギリスからは商務次官も来しておりますし、西ドイツは小さいながらも四千五百万ポンドの契約を結んで、しかもそれについては政府の保証までも取りつけておるというように、各国の状態は非常に進んでおる状態でありますから、やはり私は外務大臣は人員の問題について、もっと中国側の言っておることについて何か考慮する用意がなければならないんじゃなかろうかというように考えておりますので、その点について外務大臣はどういうようにお考えになりますか。
  121. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 具体的な人数のことは私は何もあれしないわけでありますが、むろんできるだけ少いことを希望するわけでありまして、事務を円滑に遂行するためには、できるだけ少い人数で最初はスタートしてもらって、逐次その状況を見てふえることはいつでもよろしいのでありますから、そういう意味でできるだけ最少の人数ということを言っておるわけであります。今お話のように、家族が四人いるのを連れてきたら一人になるのではないかというような、それほどリミデッドな考えで私はいるわけではないのであります。
  122. 石野久男

    石野委員 この通商代表部に含まれるところの人数の問題と、それから安全保障の問題は、おそらく今度の交渉にもやはり一歩大きな問題だろうと思います。そしてまた現在の実情では、きょうの新聞でももうすでに共同通信の報道によりますと、昨日行われた雷・池田会談は、やはり対立のままで結論は出ていないわけであります。現地ではおそらくもう決裂するのではないかという状態を予想しております。そういう情勢の中で、私たちがただこの問題を等閑視することはできないような気がいたします。この問題は政府並びに自民党の諸君の方でも、問題の見方について、もっとシビアな見方をすべきだと思うのであります。私どもの聞くところでは、むしろ政府の中においてさえも、この問題を通じて、どうも中国では国内の矛盾問題が非常に高まっておって、この問題のためになかなか事が運ばないぞ、むしろこのために第二次五カ年計画などはとてもできないので、日本に対してはその援助をどうしても必要とする事態がくるから、もっと高飛車でいくべきだという考え方があるやにさえ私どもの方では仄聞しておりますが、こういうような考え外務省の中にあるとすれば、とてもこの問題の解決はできないと思うのであります。外務大臣は自分の部内にそういう考え方がもしあるなら、これは直してもらいたいと思うので、そういう点に対して外務大臣考え方はどうでしょうか。
  123. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 部内にそういう考えの人があろうとは思っておりません。
  124. 石野久男

    石野委員 私は人員の問題についてはあとで一つもっと政府考えてもらいたいと思うのです。ことに人員の問題について、一つこの機会外務大臣にお考え願いたいことは、今日本政府並びに与党の側の考え方は、私も先般来この人員問題はずいぶん相談に乗りましたが、商務官程度でいいのではないか、こういう考え方を持っておられます。商務官程度なら確かに三名か二名でもいいかもわかりません。けれども実際に商務官を置くような国柄というのは、大体国交回復ができておって、しかも自由主義諸国でそれぞれ商社の代表が各国に配置されておるときに商務官というものがおるわけです。しかし東西貿易の問題を通じての社会主義陣営というものは、そういう民間商社というものはいないのです。従って今度のこの会談の中で代表部がはっきりしたことは、通商代表部についてはただ橋頭堡を設けるという考えでは甘い、中国側では日本に置かれる通商代表部は実務を実践するような状態に置かれなければならぬというような考え方を持っておる、こういうふうに言われておるので、この問題について、今やはり公司が十二も十三もあるという実情はぜひ一つ考慮に入れなくちゃいけない、このことを一つ外務省でもしっかり考えていただきたいと思います。  それからなおこの機会に決済の問題について、日中両国間の為替銀行間によるところのコルレス契約でこちらは大体決済問題を解決しようというような考え方でいったように聞いております。われわれの聞くところでは、これについては通産省とか外務省の方で大体LCの署名人を登録するということと、それから暗号の交換をするということだけは認める、こういうようなことだったというふうに聞いておるのですが、それではとてもできないので、政府はむしろそれよりも相互の預金勘定でも開設してオーバー・ローンを認めるというような点までいかなければ、この決済問題は解決しないのじゃないか、むしろ中国側では第三次協定を中心にしまして、両国政府間の協定を軸にした解決をしようとしているのでありますから、こちらがコルレス勘定を中心にしていく場合にはとても話は進まないのじゃないかと思うので、特にこの両国間におけるところの預金勘定を開設して、オーバー・ローンの線までこの問題を発展さしていくというような考え方をお持ちになることが大事だと思いますけれども、外務大臣はそういう点についてどういうふうにお考えになりますか。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 支払いの方法については、先般行かれますときに伺ったのでは、ある程度向う側の意向も受け入れたコルレス関係の案を持って行かれたのではないかと思います。その程度で当面そう大きな問題があるようには第一歩としてはないように、出発の前には伺っておったのであります。
  126. 野田武夫

    野田委員長 石野君に申し上げます。時間が参りましたからあと一点ぐらいで……。
  127. 石野久男

    石野委員 ただいまのコルレス問題について行くときには非常に安易な考え方のようでございましたけれども、私が雷任民と会いましたときにこう言っております。決済問題についての基本点が全然違っておるというのです。日本の方では今のような考え方をしているがわれわれの方では第三次協定を軸にして懸案解決の上で解決していきたいという考え方をしているのだ、こういうふうに考えておりますから——もちろん交渉ですから両者の接近はできると思いますけれども、考え方の基準にだいぶん違いがあるということから見ていかなくちゃいかぬと思うのです。その点は一つ御配慮願いたいと思う。  それからこの協定の中でトレード・プランが当然問題になってくると思います。そのとき一番問題になるのはそのトレード・プランの中に当然ココム禁輸品が入ってくると思う。われわれは二分類でいくということになって、向うが三分類ということでなかなかうまくいきませんが、そのほかにココム禁輸品がもし入ってくるということになりますと、その輸出に対して政府はどれだけの保証をするかという問題が一つあるということ、それからそれに関連する輸入についてやはり政府の方ではどれだけ輸入物資に対して外貨の割当を考慮するかという問題がここに一つあると思います。この点をぜひ一つお聞かせ願いたい。  それからもう一つは鉄鉱石とか石炭等の輸入については、中国側は非常に大量になりますから長期契約を希望しておるわけです。だからその長期保証のついておる契約を向う希望しておりますから、これについて政府はどういうようなお考えであるかということを、この際ぜひ一つ私は聞かしていただきたい。先ほど外務大臣は田中君の質問に対して、こういう答えをされました。もし今度の協定が決裂するというような場合に政府はどの程度の関心を持つかということについては、特使の派遣というようなことは考えていないということを言いましたが、それはまた同時に無関心でほうっておいてよいという考え方であるのかどうか、この点はわれわれにとって非常に重要でありますので、もし決裂した場合には政府としてはどういうふうに考えるのか、もうほうっておくという気持でああ言ったのかどうか、これも一つ御意見を聞かしていただきたいと思います。  それからなお時間がもう迫っておりますからもう一つだけそれにつけ加えてお聞きしますが、今度の広州と漢口での見本市でありますが、この見本市に先ほど申しました禁輸品の問題で出品したいという考え方があるわけです。これは中国からも約二十五種類にわたるところの品目を要求しておるし、日本の方では七十一種類のものを待ち込みたいという考えを持っておる。これは向うにいって持ち返りのもので、品物を出品して、見せて帰りたい、こういう考え方なんです。これについて外務省の方では、ぜひそういうことを配慮して、めんどうを見てやっていただきたいと私は思います。それらについてどういう考え方であるか、この機会にお聞かせを願いたい。
  128. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 貿易の協定が決裂したならばどうするかという御質問のように考えますが、私どもは民間の方々交渉を信頼しておるわけでありまして、従って民間の交渉が決裂したからといって、すぐにだれかを政府から出して交渉を続けるということは考えておらぬ。ただ民間の方がお帰りになって、その実情を伺った上で、政府として考える必要のある問題は考えたい。重ねてやはり民間の方にやっていただくのが適当ではないか、こういうことを考えております。  それからココムの線の禁輸品の問題ですが、チンコムの線が解消されまして、ココム一本になったわけです。先般パリで会議がありましたときに、大体決定をいたした線以上は何ともいたし方がないことじゃないかというふうに考えております。  それから見本市につきましては、実際売れるものを持っていって見せるということが一番適当なことだと思うのでありまして、持ち返ってくるものをわざわざ持っていきますよりも、向うで商売になり得る品物をよけいに持っていくということの方が、私どもは適当だと考えております。
  129. 中山賀博

    ○中山説明員 決済の問題につきましては、池田団長以下がおいでになりますときも、いろいろわれわれの見解お話しいたしましたが、さしあたってこれが非常な大きな問題になるという見通しではなかったので、一応現行の制度を実際的に、また運用しやすいようにする、そういう意味かと申しまして銀行の専門家も連れて参りまして、目下コルレズの問題も話し合い中であると聞いておりますので、そのラインで将来ともいけるのではないかと思っております。  それから輸出について、われわれはどういうようにその実現について努力するか、また輸入の問題等について御質問がございましたが、輸出につきましては最近のココムないしはチンコムの大幅な解除によりまして、禁輸品とそうでないものがはっきりして参りまして、輸出については非常に大きな問題が大部分は解決したように思います。むしろ問題は輸入面だと思うのでありますが、もちろんわれわれといたしましては、本年の下期の外貨予算を策定するに当りまして、中共からの相当数量の輸入、たとえば大豆につきましても、米につきましても、その他の品目につきましても、予算を組んでおりますので、協定が成立すれは、当然そのワクの中で自由に泳いでもらえるものだ、こう考えております。  それから見本市の問題につきましては、今外務大臣からお話があった通りでありまして、禁輸品とそれから非禁輸品の間がはっきりしておりますので、禁輸品は持っていかないという原則で行きたいと思います。
  130. 石野久男

    石野委員 まだほかに問題がありますけれども、もう新しく聞きません。聞かずに、ただいまの御答弁の中で、見本市について禁輸品と禁輸品でないものとはっきりしてるから、もう売れないものは出さないのだ、こういうお考えは非常に判り切った考え方でよくわかるようですが、しかし事実はココムの線はいつまでも永久にそうあるものではないと私は思います。しかも今日中国を取り巻いておるところのいろいろな問題は、もう各方面からそれらのものが出ているわけですから、私はこういう問題は将来を期して、しかもまた最近では西独、フランス、イタリアなどは来年になるとすぐ九月には商品展を向うでやるわけです。それからまたドイツの方ではプラスチック展を向うでやっております。こういう意味からいえば、待ち帰りという形で禁輸品を輸出して、日本の現在の産業力、輸出力というものを将来にわたって十分中国に知らしておくということは、日本の経済を将来アジアの経済の中で位置づけるということにおいて非常に大事なことだと私は思う。こういう問題を今現在の禁輸品の限界だけでとめておくということでは、政治の妙味というものはなくなってしまう。先に対する見通しを岸内閣は全然持たないということになるのではないか。政治は動いておる。経済も動いておる。現実にどんどん諸外国はやっておるときに、そういう考え方では、私はまずいのではないかと思う。この点は外務大臣考えてもらいたい。われわれは禁輸品だから売らない。売らないけれども、一たん見てもらっておいて、将来その禁輸が解けたとき——あすにでも解けるかもしれない、そのときの用意に、この商品展というものを意義あら、しめなくちやならないというときに、そういう考え方にとまっておるということは、これは財界出身の藤山さんとして非常に目先が暗いような気がするのですが、どうも解せない。もう少しはっきりした御返事を開かしてもらいたい。
  131. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日禁輸品になっておりますものは、相当軍需品と定義されるものが多いのでありまして、わが国工業の水準を示すためにも、まだ高い高度の平和的なものを出し得るのでありますから、そういうものを出した上で、将来の問題として考えるならば、考え得ると思います。
  132. 野田武夫

    野田委員長 次会は公報をもってお知らせすることにして、本日はこれをもって散会いたします。    午後五時三十四分散会