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1957-05-15 第26回国会 衆議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十五日(水曜日)     午後零時十四分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 菊池 義郎君 理事 須磨彌吉郎君    理事 高岡 大輔君 理事 森下 國雄君    理事 山本 利壽君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    伊東 隆治君       植原悦二郎君    前尾繁三郎君       町村 金五君    松本 俊一君       松本 瀧藏君    大西 正道君       岡  良一君    岡田 春夫君       田中 稔男君    戸叶 里子君       森島 守人君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣外         務大臣     岸  信介君         法 務 大 臣 中村 梅吉君         国 務 大 臣 宇田 耕一君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         総理府事務官         (南方連絡事務         局長)     石井 通則君         公安調査庁長官 藤井五一郎君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         外務政務次官  井上 清一君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧亜局長)  金山 政英君         外務事務官         (経済局長心         得)      佐藤 健輔君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      宮崎  章君  委員外出席者         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    松井佐七郎君         農林事務官         (食糧庁食品課         長)      田中  勉君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 五月十四日  委員田中稔男君及び福田昌子辞任につき、そ  の補欠として伊藤卯四郎君及び岡良一君が議長  の指名で委員に選任された。 同月十五日  委員伊藤卯四郎及大西正道辞任につき、そ  の補欠として田中稔男及木下哲君が議長の指  名で委員に選任された。 五月十四日  沖繩軍用土地代一括払い阻止に関する請願(池  田清志君紹介)(第三一五七号)  原水爆実験禁止に関する請願池田清志君紹  介)(第三一六五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際原子力機関憲章の批准について承認を求め  るの件(条約第一〇号)  千九百五十三年十月一日にロンドンで署名のた  め開放された国際砂糖協定を改正する議定書の  受諾について承認を求めるの件(条約第一七  号)  特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメ  リカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子  力委員会との間の第二次協定締結について承  認を求めるの件(条約第一九号)  特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメ  リカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子  力委員会との間の協定第一条の特例に関する公  文の交換について承認を求めるの件(条約第二  〇号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について、外務大臣に対し質疑を許します。穗積七郎君。  あらかじめ申し上げておきますが、外務大臣出席の時間も相当窮屈でございますから、質問者の方はなるべく二十分程度にお願いしたいと思います。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 総理東南アジアにお立ちになる前に、アジアに共通した問題について、この際二、三お尋ねしておきたいと思うのです。実は私ども与党の御了解も得て、この間中国へ参りました。帰りました翌日、総理には御報告いたしましたが、実は日本中国国交回復するに当って、日本側で考うべき点がおもに私は三つあると思ったのです。まず第一は、国交回復に関する中国側条件は何であるか。アメリカ安保条約締結条件とし、イロア、ガリオアを債務とすることを条件とし、東南アジアの諸国は賠償問題解決条件とされんわけですが、中国においては果していかなる条件考えておられるか。中国の国民党の指導者もそうであったし、今日の中国共産党の指導者も同様な態度をとっておられるが、われわれとしては非常に驚くべきほどの寛大な態度を持っておられる。そこで、できるならば無条件、無賠償方針をもって国交回復態度とすることができるかどうかということを打診したいと実は思ったのが第一点。それから第二点は、中国との国交回復は、政治的または思想的問題を乗り越えて、言うまでもなく経済的、文化的な切っても切れない関係にありますから、国交回復基本方針というものは、両国ともに、経済文化にわたる総合かつ長期にわたる協力体制を作り上げることが必要だと思う。それに対する中国側考えはとうであるか、これが第二。第三は、日本側としては——実は私どもはその点は、与党といささか認識を異にいたしておりますが、アメリカ日本との国交回復条件といたしました軍事条約である安保条約、これを解消したいという考え方を持っておる。この解消をすることと見合って、中国側が結んでおるところの中ソ友好同盟条約を、符にその軍事条項についてはこれを解消してもらいたい。それで、お互いに刀による対立または仮想敵国祝し合うような関係を取り除くことが、アジアの平和とお互い友好のためにいいことだという、この三つでございましに。結論を申しますと、御報告いたしましたように、三つとも実は問題を残さず了解する見通しについて、われわれは確信を持って参りました。  そこで総理にまずお伺いいたしたい。国交回復の時期、方法等については別でございますが、中国との関係において、今私が第三にあげました、お互いに軍事的な、仮想敵国祝したようは対立関係を取り除くということ——これは実は私も、立ちます前の判断では、中国側自分国だけの問題ではなく、ソビエトとの条約の問題ですから、日本中国の二カ国の話し合いでそう簡単に、日本側解消提案に応ずることは困難ではないかという判断をしたわけです。腹の中では賛成しても……。ところがこれに対しては、報道されましたように、向う側は即座に、これは解消いたしましょうということを明言いたしました。さらに続いて周総理提案されましたのは、それだけで終らぬで、もっと積極的に平和を確保するために、たとえばまず出発としては、アメリカ日本中国、ソ連、これらの国を中心とした太平洋または極東における平和保障体制をやろうではありませんかという提案があった。これに対しましては、実はソビエトアメリカの問題がありますから、中二カ国間だけで話をいたしまして、なかなか簡単に参りません。ところ最後毛主席との会談の席上で、安条約解消するならば、それを条件して日中二カ国間だけでこの平和保障体制考ようじゃないかという提案があった。そこで私は語を継いで、その提案に対してもう一つ考え直してもらいたい、すなわち安保条約解消条件とするということでなく、お互い安保条約も中ソ友好同盟条約もそのままの態勢で、解消前の態勢においても二国間の平和保障アジア平和確保について協力し合うという話し合いまたは取りきめをするということをお互い考えようじゃないかと言ったら、安保条約解消条件とせずそれ以前においても二国間においてそういう話をすることが可能である、こういう態度でございました。これに対して岸総理は、日本中国との関係は、ただ貿易をやった方が得だからということじゃなくて、過去の戦争反省、それ以前の歴史の回顧の中において、日本中国との関係は今申しました通り長期の総合的な協力を建前として、しかもその関係友好関係というふうにしぼって参りまして、今の毛沢東主席提案条約解消を前提としないで両国間における平和保障話し合いを一ぺんしてみようじゃないかということに対して、一体どういうお考えを持っておられますか、まずその点からお尋ねいたしたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 根本において中共に対する認識といいますか考え方というものが、社会党の皆さんのお考えと私ども考えとの間に相違がございまして、今日のところにおいては私がしばしば申し上げておるように、日本中共との間において国交を正常化し外交関係を開くという段階ではないという見解を私はとっております。従いまして今いろいろとお話しになりました点について、中共首脳部日本政府話し合いをして何か進めるというような考えは持っておりません。従いまして、今いろいろと議論はございますけれども、私ども貿易関係を増進することについては、一そうその経済的の関係を深めていくということにつきまして、できるだけの努力を払っていく。また国際的に見ましても、いろいろと国際的の事情も頭に置いて考えていかないというと、日本だけでもって中共との間にそういうことをしていくということは、私は国際情勢からいって適当でないという考えに立っておるものですから、二面においては今言ったように貿易関係を増進するという従来の方針はこれを持続していく、また同時に国際的のいろいろな変化なりあるいは国際的の環境というものを、将来中共との間において外交関係を開く場合において、これに都合のいいような国際環境を作っていくということにも努力をしなければならぬと思いますが、現在のところにおいて直ちに今御提案になったようなことを話し合っていくという考えは持っておりません。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 関連してお尋ねいたしますが、それでは今はそういう話をする時期ではないし、その考えも持っていない、これはわかりました。そこで今度は問題は、現在は東西両陣営またはその他の地域を見ましても、力による平和の確保考え方を持っておるわけです。いわば軍事同盟体制を作って、そこで力のバランスの中で平和を守る、こういう考え方を持っておるわけですが、これは私はもうすでに時代おくれだし、また平和を確保する基本的な政治機構ではない、従ってわれわれはむしろそういうものを解消して、そして進んで積極的に、お互いに侵略し合わないという消極的なものではなくて、積極的に平和を保障することに責任を持ち合う、いわば集団的な平和保障機構というようなものへ前進をすべきというか乗りかえるべきだと思うのです。私が今申しましたのは、いついかなる形で話し合いをされるおつもりであるか、現在そういうお考えを持っておるかという質問ではなくて、そういう構想について、向う側も中ソ友好同盟条約なりワルシャワ軍事条約というものの解消中心にして平和のことを考えておる、この考え方は古いじゃありませんかという提案に対して、基本的には賛成いたしますということを実は率直に認めておるわけです。そこで私があなたにお尋ねしたいのは、そういうものの考え方——時期、方法は別ですよ、すぐおやりになる、ならぬは別ですけれども国際平和を確保するものの考え方として岸総理は一体どういうふうにお考えになっておられるか。あなたはこの下旬から東南アジアをお回りになる、しかもそれはアメリカへ行く前だということである。そこに私は非常に意味があると思うのです。アジア地域は、共産主義の諸君も認めたように二つ世界だけじゃない、第五の、民族主義的な平和主義的なAA地区というものがあるのだ、それが世界平和確保のために非常に有効なる力を発揮しておる、これに敬意を表すべきである、こういう態度をとっておる。その地域にあなたはお行きになるわけですから、そこで今申しましたような平和保障に対するあなたの考え方をこの際表明されることが——過去の戦争反省の中から生まれた新しい指導者である岸総理としては、その点を表明することが、特にあなたの平和保障に対する考え方は、アジアにおいて共通する問題としてアジアの多くの人民が聞きたい焦点であると私は思うので、それに対してあなたはどういう御構想を持っておられるか、こういうことをお尋ねするわけですから、いつやるか、今すぐやるかということだけに局限して、私の質問をそらさないで率直に所信を明らかにしておいていただたきたいと思うのです。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 私はしばしば今国会においても私の考えを申し述べたのでありますが、私はやはり日本国連に加盟しました今日、国連中心として集団安全保障体制というものができていくことが一番望ましい、私の外交方針基本国連中心主義に置くということを申しておりました。そういう意味において、国連憲章による国連全体としての集団安全保障体制というものは現在はまだきわめて薄弱でございます。それからこれに基いての地域的な安全保障体制というものも行われておりますが、これまた決して世界の真の平和を作り上げるのに十分な安全保障体制ができておるとは申せられないと思うのです。先ほどのお考えのうちにもありました、日米中ソというような両陣営にわたるようなものが一緒になって安全保障体制を作ることは非常に有効じゃないかというお話でございましたが、私は確かにそういうものができ得るならば、これは非常に有効な安全保障体制一つになると思っておる。しかし国際現実は実はそういうことがとうていできない現実であるということも、穗積委員よく御承知であろうと思うのです。従いまして、私は政府に立って責任を持って外交政策を行なっていくという立場に立ちますと、やはり一つ理想は持たなければならないが、あらゆる政治外交には理想が必要でありますが、同時に現実というものに即して現実情勢判断をし、また現実に即して考えていかなければならない、またいろいろ方策を立てていかなければならない。この二つの問題が現実の政権を担当しておる政府の者としては私は当然であろうと思うのです。この意味におきまして、今の四カ国の問題というものは現実に私はとうていそういうことが実現できない。それはそういう一つの願い、世界が全部平和になるとか、あるいは武力でもって力で対峙はいかぬ、全部が力を放棄して、そうして世界の平和をなにしよう、これは私ども理想としてはまさにそうなければならぬと思うが、しかし同時に現実はそうなっていないというところに、現実に政局を担当する者としては考えなければならないものがある。こういうふうに考えておるわけでありまして、今穗積委員お話の点というもの、考え方というものを、やはり現実に照らして批判し、考えていく、検討する必要がある、こう思っております。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 ほかにちょっと質問がありますし、時間を限られておるから、最後にこの問題について一点だけでもう終りますが、今の御答弁はちょっと誠意を私は疑うのです。それで関連してちょっとお尋ねしておきたいと思うのは、あなたは国連憲章精神に従って平和に努力していきたい、こういうことです。それじゃあなたのお考えでは、国連憲章精神というものは、軍事同盟方式による平和保障考え方が、国連憲章精神に沿っておるか、またはそうではなくて、逆にいわゆる集団的な平和保障体制国連憲章精神に沿っておるか、国連憲章に対する、あなたの沿っていくというその精神は、どういうふうに御理解になっておられるのか、この際お伺いしてお寺たいと思う。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 国連憲章精神は、言うまでもなく集団的な安全保障体制ということをその根本の理念としておると私は思います。それがどういうふうに現実に合わして、その集団安全保障ができるかという点において、国際的の、世界加盟国の全部を集団的にしたものが可能であるか、あるいは地域的なものが可能であるか、いろいろな現実とにらみ合して、集団安全保障体制というものは基礎となっておる、かように考えております。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 非常に不満足ですけれども、他の問題もありますから、この続きは次の機会にいたしたいと思います。  次にお尋ねしたいのは、先ほど言われた中国との関係については、私が提案しました第二の問題、すなわち経済発展相互経済交流発展、これは現在の段階においても、政府の政策毒して、政府責任においてやっていきたいと思う、こういうお考えのようです。そこで実は私どもは個人としてでなくて、日本国民をある意味で代表する者として行って、日本の善意を伝えたつもりですが、それに対して向う責任者は、長期経済協力または長期貿易契約については賛成をいたしますと言っておる。特に問題になりますのは、日中貿易は御承知通り昨年から一つの新しい段階に入りました。それは石炭というような重要物資取引が始まったこと、すなわち日本基幹産業市場転換も始まったということでございます。やがて鉄鉱石についても同様のことが考えられるわけですが、そのときにこの長期の、特に重要物資に限りませんが、少くともそれについてはわが経済資本主義経済であっても、鉄鋼その他につきましては長期生産計画を持っていかなければならない実情にあるわけですから、そうなると安定した取引を増大せしめるためには、一定の予定した質の一定の量の一定の安定した価格取引をやる必要がある。そのためには長期契約というものが必要になると思う。それについて政府は、こういう向う側意思に対してこれを歓迎し、これを促進する御意思があるかどうか、この際伺っておきたいと思います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 貿易を増進するということは、できるだけやりたいという考えを持っておりますし、従って今お話のように、重要産業資源とかあるいは両国の間における貿易関係を安定せしむる意味等から申しまして、長期契約をするというふうな傾向なり、あるいはそういうふうな話し合いができることは私も望ましいと考えております。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 さらにもう一点お尋ねいたしますが、実は向う側重要地下資源開発です。これに対しては貿易部責任者等とも話しましたときに、こちらから提案をいたしまして、失礼ながら地下資源開発については日本の方が技術並びに開発施設について一日の長があると思う。そこで技術並びに施設を通じて地下資源開発協力体制を作ろうじゃないかという提案をしたならば、貴国はこれを歓迎して受け入れる用意がありますかということを尋ねましたら、これについては歓迎をいたします。それは地下資源問題だけでなくて、技術交流については、農業、工業を問わず広範な技術交流一つ考えたい、あわせてそういうことも向う意思として明瞭になりました。  特にこの際申し上げておきたいのは、実は鉄鉱石について、海南島ですが——日本に輸出する場合には、質といい、輸送関係といい海南島がいいと思う。海南島の鉄鉱石開発についても協力体制を歓迎するということですが、こういうような個々の物資を頭に入れながら、総理のお考えとして、地下資源開発についての技術施設を通じての協力体制を進めるお考えが当然あるべきだと思いますが、いかがでございますか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 従来そういう具体的な話が多少民間の間におきましてもあったと思いますが、私は方向としてはそういうことはけっこうなことだと思います。ただその設備等につきまして、御承知のような、今のチンコム制限等にどういうふうにかかるかという具体的な問題はありましょう。ありましょうが 方向としては私はけっこうなことだと思います。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、時間もございますことですから、あと二問だけ、ちょっと質問しておきたいことがあるのです。  実は中国との貿易拡大とおっしゃっていますが、具体的な事実をあげて政府考え方を伺いたいのです。今まで鉄鉱石石炭等が出る前に重要物資一つでありましたのは、米、塩、大豆でございました。その大豆につきまして、実は昨年度グローバル方式政府の命令で転換をしました。元来は日中関係は御承知通りあの協定にもあります通りに、バーター方式品目分類による同類バーター方式でございました。ところが昨年は、通産省の全く一方的な、貿易三団体に相談も何もなしに、グローバル方式でいきたい、こういうことで、安いところから買った方が得じゃないかという論理です。この論理は、実は私どもは、資本主義経済貿易方式日本の現状としてとられている以上は、それも一理あると思うのです。そういうことで、中国側とはバーター方式になっているから、中国側承認するならばそれでもというので実はやっておった。そうしたら、ことしになって、今度は突如グローバル方式をやめてまたバーター方式にするといわれる。それはどういうわけでこういうことをなさっておるのか。私どもがあえて政治的意図をあれすれば、去年は中国大豆の方がアメリカ大豆よりは国際価格はやや高かったのです。だからそのときにバーター方式中国大豆輸入について一定のワクを与えるということにれば、これはアメリカに対して義理が立たない。そこで中国のものを買わないで、バーターにしないでグローバル方式でどこからでも買うのだ、現金決済で買うのだということは、どこからでも安いものを買う。だからアメリカに限らない。現在はアメリカが安いが、アメリカに限らない。中国のものがアメリカより安くならったら、日本の必要とする全部の量を全部中国から買ってもいいのだという論理が盛んに用いられて、やった。そうしたら、くしくも今年度は中国大豆価格の方がアメリカ大豆より安くなった。昨年度の政府方針でいけば、今年度は、論理的にいば、向うが出すならば日本の需要の全部をグローバル方式でいけば、中国大豆を買った方が日本のために得である。そうするとアメリカ大豆は入ってこない。そこで今度はそういう情勢変化を裏からながめますと、今までバーター方式であったものを昨年はグローバルに一変して強行させたものを、ことしはまた納得のいかない理由でもってバーターに変えてきた。こういう考え方は、明らかにアメリカ大豆輸入に対する非常な政治的な意図というか、逆に言えば、中国貿易に対する悪意があるとわれわれは言わざるを得ない。その点については一体どういう考え方——論理一貫しないのです。その点をはっきりしておいていただきたい。そして同時に、将来のお考えを伺っておきたいのです。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと今御指摘になりました事実、私承知いたしません。今ここに外務省の関係のものがおりますけれども、事実がはっきりといたしませんので、通産省の意見を聞いてみないとお答えできません。あしからず。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 実は前もって、こういう具体的なことですから、通産省局長に通告して、政府方針を事前によく打ち合せてもらいたいと申し上げておいたのです。
  16. 野田武夫

    野田委員長 だれか経済局の方で……。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 それでは総理にお尋ねしますが、私の言いたいことは、いわば差別待遇なのです。論理一貫しないのですよ。非常な差別待遇なのです。そういうことで今後は一体——それでは過去のことは別として、将来のことはあなたの方針によってきまるわけですから、どういうふうにお考えになっておるのか、公平にお取扱いになるべきだと思いますが、その点についてのあなたの今後の御方針を伺っておきたいと思います。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 具体的に大豆の問題でありますから、大豆についてのいろいろな今までの沿革なり、将来の方針なりというものにつきまして、研究をいたしておりませんので、この問題についてどうだと言われることにつきましては、ちょっとお答えしかねるのですが、私は中共との貿易を増進する場合におきまして、特に中共に対して差別待遇をするとか、あるいは特別な不利の条件のもとに、事実上これを押えていこうというような考えを持って、いっているのではございませんからやはり日本立場——言うまでもなく、経済的な貿易関係になりますれば、日本立場といいますか、日本経済的事情から、日本に最も好都合なように、世界貿易政策全体をながめていかなければならぬのでありまして、従いまして、特に中共であるから、これに対して特別の何か不利な条件のもとにおいていくという考えはございません。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 貿易に関連いたしまして、総理のお考えをこの際伺っておきたいのは、貿易三団体は御水知のように、第三次協定の期限も、この五月三日で切れましたので、近く再交渉に入るように努力しておるわけです。しかしながら、この問題は、単に民間で協定を結びましても、それの実行に当っては、政府協力がなければできないことが多いので、そこで寄り寄り政府に理解と支持を惜しまないことを要請しておることは御承知通りです。  そこで、この際総理に伺いたいのは、今度の第四次協定を改訂する場合には、第三次協定になかった技術交流の条項を一つ加えたいという考え方を持っておるわけです。そして東南アジアヘこれからいらっしゃっても、技術開発協力の問題はあるわけでございますが、中国経済交流の場合も、農業、工業にわたります技術交流の積極的な道を開くということが、貿易に関連して非常に必要だと思う。その考え方に対して総理は賛成なさいますかどうか、この際伺っておきたいと思うのです。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 原則的に申しまして、技術交流ということは、私は差しつかえないのみならず、貿易を増進するに非常に役立つ場合が多いと思います。たとえば東南アジア諸国なんかでも、日本の機械であるとか、あるいは日本のいろいろな物資を購入する前提として、日本技術が入っており、日本技術向うが修得しておるということになると、日本の機械なりあるいは日本のいろいろな物資を購入する上において非常に役立っておる。従いまして、先ほどもちょっと技術交流の点について具体的なお話がありましたが、全体としまして原則的には私はけっこうなことだと、こう考えております。
  21. 野田武夫

    野田委員長 穗積君、時間の関係で簡単に願います。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 簡単に申します。今度は代表部の問題です。代表部の問題は指紋と警察権の問題にしぼられてきております。これは、きょうは触れません。そこでこれはあらためてまた政府に強くわれわれ議連の関係者として要請をしたいと思っておりますが、この際伺っておきたいのは、支払協定のことです。これは、主体は銀行間になると思いますが、その場合に、これは許可事項になっていると思いますから、政府の意向を伺っておかなければならない。最近の貿易につきましては、特に今言ったように、技術を伴う輸入受け入れというものが増大して参りました。従ってプラント輸入ということについて、今度われわれが参りましても、数種のものについて向うから具体的な提案があったくらいです。これは今後どんどんふえると思う。そうしますと、日本側の利益から考えましても、やはり支払協定にはクレジットまたはオーバー・ローンを認める形式をとっておいた方が、両国貿易拡大のためにいいと思う。これは重要な問題ですから、原則だけでけっこうですが、それについて総理のお考えを伺っておきたい。
  23. 岸信介

    岸国務大臣 貿易を増進するという意味におきましては、やはり支払協定等が銀行間においてやられるということは、私当然じゃないかと思います。従いましてそういうものに対して、その内容につきましては、これは銀行間の話し合いでありますから、私ここでどういう内容がいいとか、いかぬとかいうことは申しません。
  24. 穗積七郎

    穗積委員 政府があれしなければ、できないのです。銀行間で自由にできるのじゃないのです。だから、関連があるから、政府の意向を聞いておるのです。銀行間で勝手に何でもやっていいという御発言なら、それでもいいですよ。政府がそれを認めるというなら……。
  25. 岸信介

    岸国務大臣 私はやはり何か支払いを増進する方法をとることは、原則としてはいいと思います。ただ私まだ具体的な法規の点等がわかりませんが、御指摘のように政府が介入するということになりますと……。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 許可事項です。だから、政府は民間銀行間がやったことを何でも認めるから勝手にやってくれという御答弁なら、それでもいいのですが、そうではあるまいと思うから、政府の御方針を伺っておかぬと、関連があるからということなんです。それだから伺っているわけです。あなたは貿易の専門家で経済外交の首唱者だから、人に相談する必要はありはしない。(「そういうことは事務当局だ」と呼ぶ者あり)事務当局ではない。あなたは専門家だから……。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 貿易技術につきましては、なかなかそうもいかないのです。それはもう少し……。(穗積委員「常識的に一体どうですか。政策として、いやいややるのではない。政府意思でやろうとする中共貿易の拡大だから……。この間、イギリス、フランスの銀行と結んだのも、オーバー・ローンがついております。西ヨーロッパに負けますよ。事務官僚の言うことを聞く必要はない。あなたの経済の識見をもっておっしゃって下さい。」と呼ぶ)そう申しましても、民主主義だか法規を守らぬとあれですから。
  28. 野田武夫

    野田委員長 穗積君、発言を求めてやって下さい。混乱しますから……。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 御質問の点については、貿易を促進する以上は、その支払いについて、原則としてその支払いを円滑にやるような方法考えていかなければならぬことは言うを待ちません。ただ、今の法規と、現実にやろうとする支払協定の内容等を検討しないと、これを直ちに全部いいのだという結論を出すわけには、私いかないと思っております。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 ですから、オーバー・ローンをつけてはいかぬ、クレジットをつけてはいかぬという法律があるわりじゃなくて、私の仄聞するところでは、大蔵省の許可事項にもなっておるようですが、どうせこの問題は通産省と共管でしょう。そういうことについてはあなたは専門ですから、支払協定と結ぶ場合には、それは政府が主体ではない、銀行の意思が第一ですけれども政府の意向としては、この際はブランド輸入その他を伴ってきておる貿易拡大の時期であるから、オーバー・ローンまたはクレジットを認めることは、経済の常識として望ましいことだとわれわれは思うのです。そういうふうにお考えになりませんかどうかということを伺っておるのです。こまかい法律のことなど言ってませんよ、一つ自由にお答え下さい。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 その問題は十分に一つ検討してみます。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 最後に一点お尋ねしておきたいのは、沖縄問題です。あなたは今度アメリカに行って沖縄問題について話をするようですが、台湾なんかに寄らないでもいいのを、沖縄を忘れて今度寄らぬのは残念だと思うのです。一ぺんくらいお行きになったらいいんですよ。今起きている問題は、この月初めにわれわれ国会でも超党派で反対をし、それから現地の島民全部があげて一致して反対をしておりました一括払いの指定があった。これは布令によりますと一ヵ月ですから、来月の六月上旬で時期がくるわけです。強制力を発揮するわけです。そういう深刻な問題、差し迫った重要な問題があるのですが、これに対してはどういうふうにお考えになっておられるのか。あなたは施政権の一部返還の話をされる、多少の見込みがあるというようなお気持を狩っておられるようですが、それよりもっと生活に即した現実問題として、火急の問題が同時に。きておるのです。期限は六月三日ごろだと記憶いたしますが、そういうことですから、アメリカへ行かれる前に、どういう方針でこれに臨まれるか、対米交渉の問題ですから、この際アメリカへ行くまでもなく、対米交渉の中へ沖縄問題を入れておられる以上は、この身近かな緊急な問題から一つ解決をしていただきたいと思うのだが、沖縄問題全体と関連をして、どういうふうな方針であるのか、一括して伺っておきたいと思うのです。
  33. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりました問題につきましては、アメリカ大使館の方に、とにかく自分はワシトンに行って沖縄問題全体について両国首脳部の間に隔意なく一つ話し合おうという考えであるから、それまでに急激な処置をとることは差し控えてもらいたいということを要望して、今現地の事情を、いろいろな情報を収集しておるわけでありますが、私としてはそういう見地に立ってアメリカと協議をいたしております。
  34. 野田武夫

    野田委員長 関連質問を許します。川上貫一君。
  35. 川上貫一

    ○川上委員 これは質問というよりか、希望なのですが、今穂積君の質問された中国との貿易問題について、決済に関して政府がどういうような態度をとるかという問題ですが、御承知のように、中国との第三次協定というのが五月四日に切れておる。これがいましばらく待ってくれという格好になっておって日本の業界あるいは中日貿易の首脳団体の方でも、次の第四次の協定を結ばなければならぬということになって、近い将来にこの問題について中国側と打ち合せをしなければならぬことになっておるはずなのです。そういう問題の中で重要なのは、やっぱり通商代表部の問題と決済の方法の問題、これが重要なのです。ここのところが解決しなければ、中国貿易を進め、協定を結んでも、どうしてもスムーズにいかないということに、現実になっておる。これは理屈の問題とか、政党政派などの問題ではないのです。ところがそれが非常に差し迫っておる。総理は近々アメリカにおいでになる。ところがアメリカに行かれて帰られてからやったのでは、この協定問題というものはおくれてしまうので、近い将来にすぐ何とかしなければならぬ問題です。ところが今御答弁を聞いておるというと、この問題について、どうも総理の方じゃまだ頭の中になさそうな感じを受けた。緊急差し迫っておるこの大きな問題、ことに業界をあげてこの問題がどうなるかということを注視しておる問題について、まだ討議を十分なさっておらぬのじゃないか、あるいは腹も何もきまっておらぬのじゃないかという点を非常に危惧するのです。しかしこれは大事な問題ですから、どういうようにという意見は私は今言いませんけれども、この問題について政府態度一つ明らかにするように、ぜひこれはアメリカにお行きになる前にきめておいていただかぬというと、実際上日本中国との貿易、第三次協定が今とまっておるのですから、非常に心配だと思うので、特に一つこれは御研究と御考慮をお願いしたい。差し迫った問題です。あなたの方の、与党の方の議員の方々も、実はきょうもその問題で会議で寄られると思うのですが、その時分に出るのはその問題なのです。今の問題なのですから、これは一つ、注意がましいことになりますけれども、国民にとって大事な問題ですから、ちょっと心配になってきたので、私の意見を申し上げておきたいと思います。
  36. 野田武夫

    野田委員長 大西正道君。
  37. 大西正道

    ○大西委員 岸総理渡米を前にしていろいろと御準備ができておると思うのですが、そのうちでわが国の防衛問題の一環として安保条約をどうするかという問題、この問題については、これまでの委員会などにおきましても、いろいろと答弁がされておりますので、大体わかりますが、かいつまんで一つ簡単に御所見を聞かしてもらいたいと思います。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 私はしばしば答弁いたしておりますように、安保条約を廃棄するということは適当でない。現在においてはこれを再検討して、合理的な基礎に置くように考えていきたい、こういう考えであります。
  39. 大西正道

    ○大西委員 再検討をやるということは、これは私も同感でありまして、この条約案が国会で審議されたときも、私の記憶に間違いないならば、わずか六回くらいしかやっていない、十分な内容の検討をやっておりませんので、内容自体が果して安全保障条約の名に値するものかどうかという問題もございます。またその後の情勢の推移ということも、あなたも見ておられるのでございますけれども、今言われる合理的ということは、どういう内容のものですか。私の判断から申しますれば、たびたびあなたが言っておられるような国連中心主義国連の趣旨に従ったところのものにこれを改めていく、こういうふうな御趣旨と見てよろしいですか。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 これができました当時は、日本国連に加盟しておりません関係上、国連憲章との関係から見まして、日本としては、まだこの条約として、国連憲章精神にのっとって、そうしていろいろな手続等につきましても、国連との連絡を十分にしなければならぬ点があるわけです。これらの点を考えていかなければならないことは当然だと思います。
  41. 大西正道

    ○大西委員 そういたしますと、国連の安全保障の方法といたしましては、国連自体によるもの、それから地域的な取りきめによるもの、それからもう一つ、五十一条によるところの集団的な自衛、こういうことがきめられておるのですが、この点は今の穂積君の質問にも関連するのでありますけれども地域的な、取りきめ、すなわち米ソ日中の間におけるところの安全保障体制というものに対して、時期尚早だと言われるのですか。——そういたしますと、あなたは今の日米間の安全保障条約を、これは国連懸賞の趣旨にのっとったものだとお考えでございましょうか。私はそうではないと思うのですが、いかがでしょうか。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 私はやはり国連の憲章の地域的な一つ安全保障体制だ、こう思っております。
  43. 大西正道

    ○大西委員 これはそうではないということは、時間が短かいからこの次によくあなたにお伺いしたいと思うのですが、それではその検討の結果どういうところをこの際改めるべきか、この点についてあなたのお考えを聞きたい。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 それは具体的に申し上げることは適当でないと私は考えておりますので、いかなる場合にも実はお答えを差し控えておるわけであります。今日も差し控えたいと存じます。
  45. 大西正道

    ○大西委員 それはもし渡米される際におけるいろいろな外交折衝上適当でないと言われるのならば、安保条約に対するあなたの見解を私はそういう面からお聞きしたと思うのです。具体的にお伺いしてみたいと思いますが、この安保条約は、効力終了の問題につきましては、この種の取りきめの一般的な通念から離れまして、非常に変った形であります。すなわち日米両方の合意がなければ、これが解消できないことになっております。この点について、安全保障条約の前文にもありますごとく、日本は米国にお願いをして米軍の駐留を認めている、こういうふう  な建前をとっておるのでありますけれども、そういう建前から申しますれば、今のわが国の国民の意思は、必ずしも制定当時とは同じではないと思う。そういうふうな状況を勘案してみますと、この効力終了の場合は、日本の自発的な意思において、たとえばほかのこの種の条約にあるようにわが国がこれを廃棄を通告した後に、一定の期限を置いてこの効力が終る、こういうふうなことが私は当然考えられると思うのでありますが、こういう見解についてあなたの御見解を聞きたいと思う。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 大西委員の御意見として私は承わっておきます。この内容につきまして私が意見を申し上げますことは、先ほど申しました私の考えにもとることでございますから、どうかあしからずご了承願います。
  47. 大西正道

    ○大西委員 その程度のことをここで  表明されることは、私は外交上何ら差しつかえがないと思うのですけれども……。それではもう一つ伺います。この第一条に駐留軍の使用目的というところがございますが、この中に米軍は「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し」こういうふうなことが書いてあるのです。この「極東」というのは、総理の見解ではどこをさすとお考えでしょうか。これは政策の問題ではなしに、条文の解釈の問題になると思うのですが、どの程度の範囲のことを極東と考えておられますか。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 これは条約の解釈の問題でありまして、従来極東ということについて具体的の範囲をきめるような解釈上の根拠になるものは何もないようであります。従って普通にわれわれが常識で考えておる極東というものをさしておると考えるほかはなかろうと思います。
  49. 大西正道

    ○大西委員 一つ総理のその常識というものを聞かしていただきたいと思う。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 日本中心としてその周囲を含めたものではないのでしょうか。
  51. 大西正道

    ○大西委員 ないのでしょうかと言って私に聞かれても困る。あなたの常識を聞かしてもらいたい。私は片々たる条文の一節をとらえて総理にそういうことを聞こうとしているのではない。安保条約はたった四条です。しかもこれが問題の焦点になっておりますから、明確な御判断を示していただかなければならぬと思うのです。  それでは私から聞きますが、あなたの常識では、韓国あるいは朝鮮、台湾というようなものはこの概念の中に入っておりますか。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 大体その辺が日本中心としての極東という地域ではないのでしょうか。私そういうふうに思います。
  53. 大西正道

    ○大西委員 そうすると極東の安全と平和のために米軍を使うということになると、この前の朝鮮戦争のような場合には、米軍が出動するということは当然なことになりますね。——これはうなずいておられるから、そうだと言われるのだと思いますが、その場合に、これは戦術的な問題になりますが、今の時代の戦争の様態を見ますと、当然日本を基地として米軍の航空機が相手を爆撃する。そうすると報復爆撃を受けることが予想されます。そうしますと、この条文があるがゆえに日本は、日本と何ら関係のないところの戦争の中に巻き込まれるということになって、この日米安保条約日本を守るどころではなく、日本戦争の中に追い込むところの条件をここに規定していると思うのですが、いかがでしょう。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 私ども安保条約全体を再検討するという考えに到達していることは、今おあげになりましたことも——一つの何といいますか、われわれとしては好ましくない事態が発生するわけであります。そういうものを合理的な基礎における体制にしたいということは、全面的に今お話のような点も含めて考えてみたいという意味でございます。
  55. 大西正道

    ○大西委員 そういう点を初めからおっしゃればいいのであって、どういうふうにこれを変えるかということについては結論がまだ出ていない、検討するというのならわかります。しかしこれは不合理である、よろしくない。極東における安全と平和のために米軍を使うというこの規定は、今の日本の現状においては困るというこの事実だけは、あなたはお認めになるのでしょう。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 全然日本意思でもなく、そういうふうになることは、これはいうまでもなく望ましくない。また日本意思としてもそういうものに巻き込まれるということは好ましくない、こう思っております。
  57. 大西正道

    ○大西委員 ところがこの条文を見ますと、日本意思いかんにかかわらず、米軍の一方的な判断において米軍の使用ができるようになっているのです。これはおわかりでしょう。そういたしますと、この条文もそのように変えなくてはならぬということは御納得がいくと思いますが、いかがでしょうか。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 私としては先ほど申し上げましたように、全体を検討して合理的な基礎におきたい、こういう私の考えでございまして、それ以上は一つ御推察にまかせます。また御意見の点は御意見として十分承わっておきます。
  59. 大西正道

    ○大西委員 御推察にまかされても困るのであって、あなたはこの問題を中心として米国に行って交渉なさるのでしょう、そういうことを言えぬと言われるけれども。これは話は別になりますが、わが党の中共使節団が行ったときでも、これは困るとかなんとか言っておられるけれども、むしろあなた方ででき得ないことを社会党が話をしてくるのだから、一つやってくれ、こういうふうに社会党のあの中共の使節団なんかをうまく利用と言っては悪いけれども、そういうふうにやられることが外交の責任者の私は手腕だと思う。超党派外交でもそうだと思う。ですからこの国会において、国民の意思が明らかにこの条文に対してもうマッチしない、非常に危険を含むものである、こういうことが明らかになれば、その根拠において、あなたは声を大にしてワシントンにおいて話をされるということがむしろ有利ではないかと私は思う。だから何でもかんでも御推察にまかせます、言えませんと言うよりも、とるべきものがあったらとり、助け舟というか、同感だくらい言われてもいいと思う。まだほかにもどんどん聞きますが、その中で一つ三つその通りだということをおっしゃる方がいいと思います。だから誠意を持ってお答えを願いたいと思うのです。この条文を、日本政府意思でなければ米軍の出動はできないのだというような方向に向ってこの条約を改めるべきが合理的な行き方だろう。こういうふうにお考えですかどうですか。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来申し上げておる通り、私は十分御意見は承わっておきます。そうして大いに声を大きくして、そういう御議論をなさることを歓迎いたします。
  61. 大西正道

    ○大西委員 総理、多少不届きだと思う。大いにそういう議論をなさることはけっこうだというのは、私の意見に対して賛成だとおっしゃるのですか。同感の意を表明されますか。それならそれでわかる。
  62. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来申し上げておるように、具体的な問題について私が同感であるとかあるいは反対であるとか言うことになりますれば、私が最初に申し上げた意見と矛盾するわけでありまして、私としては具体的内容について、個々の問題についてこれをどうするとかこうするとか、賛成であるとか反対であるとかいうことを申し上げることは適当でない、こう考えておるわけであります。
  63. 大西正道

    ○大西委員 まさにこれは秘密外交だ。それではもう一つお聞きしますが、この一条の中に、大規模な内乱や騒擾のために米軍を使用する、こういうことをいっておるのですが、これは事情が変ったとあなたはよく言われるか、この条約を結んだ当時は、自衛隊も十分なものでなかった。今は何といっても陸上自衛隊だけでも十六万や十八万あるのです。これだけの力を持って、予想される内乱や騒擾に対して鎮圧するだけの力がありませんでしょうか。米軍の力をかりなければできませんか。私はそうとは思わないのでありますが、政策的な問題は別にして、あなたの御判断一つお聞かせ願いたい。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 この条約ができました当時は、日本に自衛の実力というものが全然なかったわけであります。従いまして、いわゆる直接侵略に対しても間接侵略に対しても全然無防備であったのでありますが、しかし現在の事情はそれが異なってきております。私がこれを全面的に再検討したいと言う意味の前提になるものは、少くとも今御指摘になりましたように、これが結ばれた当時とは違って、とにかく日本が不十分であってもある程度の自衛力を持っておるということでありますし、また国連に加盟したという事実もございますし、こういうものを前提として全体を再検討したい、こういう考えでございます。従いまして今おあげになりましたような点に対しましては、十分再検討の対象になる点であると思っております。
  65. 大西正道

    ○大西委員 これは再検討して結論はほぼ出ておるのだが言えないというのか、まだこれから再検討をやるというのか、私が言ったことを動機に再検討をやるというのか、これはどうですか。あなたの御答弁を聞くと、大体腹はきまっておるが、これは外交上言えないということが常識だと言われるのでありますが、これはいかがですか。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 その点は先ほども申し上げましたように、私どもとしては、具体的に各種の点について意見を申し上げることは差し控えたい、こういう考えでございます。
  67. 大西正道

    ○大西委員 それではついでだからもう一つ申し上げておきますが、第二条ですが、これは一方的に排他的に米軍の駐留を認めておるので、これは非常な主権の制限だと思うのです。不平等条約だとかいわれる根拠は私はここに端的に現われておると思うのですが、一体こういう攻守同盟的な条約の例は多々ありましょうが、これほどまでに、外国の軍艦が来ることも通過することも許さないというような、これほど極端な事例が他のこの種の条約にございますか。どうですか。これは他の事務官僚にお聞きになって御答弁をなさってもよろしいです。
  68. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 法律的な技術的な点でありますので、私からかわってお答えさせていただきますが、普通の相互援助条約と申しますか、条約にはいろいろな型の条約がございます。でありますから、普通のいわば純粋な基地協定という協定がございますが、そういう協定にはこういうふうな条文があることは通例でございます。
  69. 大西正道

    ○大西委員 基地協定の中では通例だと言うが、この種の攻守同盟的なものには私どもの見解ではこういうものはごくまれです。非常に主権を制限したものだと思っておる。こういうことも  一つ十分にいわゆる御検討の対象にしていただきたいと思います。そういうふうなことは、私はいろいろとここで指摘をして渡米に際して岸総理の見解を聞きたいと思うが、これ以上この問題については触れません。  そこで、今の合理化するということですが、この点について岸総理は、国連はまだ十分の力を持たない、地域的な取りきめは、今の米ソ日中を含めたような地域的な安全保障の取りきめは、まだまだ時期尚早だと言われる。そうして日米安保条約はこれを再検討しなければならぬ、こう言われる。それでは、この前の委員会でもそうですが、SEATOのようなものに加盟するかと言ったら、それはやらないとおっしゃる。一体岸総理は、将来あるべきわが国の自衛の方式というものについて、どういう構想を描いておられるのですか。あれもいかぬ、これもいかぬと言われるなら、それじゃどういうものを考えておられるのか、これを  一つお開かせ願いたい。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 私は究極においては国連の全体としての集団安全保障体制を完備して、これによって日本のみならず、世界の安全保障ができるということが、一番望ましいと思っております。しかし現在の状態からいってそれにはまだまだほど遠い。そこで私の考えるのでは、この日米安全保障体制というものを合理化して、これによってその間をつないでいかなければならぬ。そうして二面においては日本の自衛力というものを増強して、そうしてこれによりアメリカ軍の駐留というものを漸次減していって、それが先にできるか、あるいは国連集団安全保障体制というものができていくということになれば、私はこの日米安全保障体制というものは確立する、かように考えているわけでございます。
  71. 大西正道

    ○大西委員 まだそれでは不明確ですけれども、私は国連の安全保障の機能というものは、この条約を結んだ当時よりは、非常に力ができておると思うのです。特にわが国は日ソ間の国交も回復し、そしてまた国連にも加盟いたしました。また国連の平和維持の機能も、安保理事会はああいう拒否権によって麻痺状態になったにもかかわらず、この間平和の結集決議のような方法でもって、そして一応の勧告ではございますけれども、力を持ってきているのですね。だからこういうことは国連の力というものをかなり高く評価されることが私は必要だと思いますね。そういうふうな観点に立ちますと、これは日本のある学者が言っておりますが——どもはそういう見解はとりませんよ。けれども保守党のあなた方の立場として、日米安保条約はこのまま認めるとして、そしてこの米軍の使用、出動というような場合には国連の決議によってこれをする。こういうあなた方にとってもこれは御納得のいくような意見が学界にも出ておりますし、そういう意見もかなり高まりつつあるのです。私はこのくらいなところは、国連中心主義考えられ、日米安保条約の不平等性を強く言われるあなたとしては、一つ踏み切って研究されていくべき問題ではないか。むしろその緒につくべき段階じゃないかと思うのですが、これもだめだというならもうあとは何をか言わんやということになるので、一つ真剣な意見を聞かしてもらいたい。
  72. 岸信介

    岸国務大臣 私が国連中心主義に立ち、またこの安保条約を検討するに際して、国連に加盟したという新しい事実を前提とするということを申しております趣旨は、少くとも今御指摘になるようなものを国連の決議によるというふうにすることは、きわめて望ましいことである、こう思います。
  73. 大西正道

    ○大西委員 もうあと一問だけで終えますが、実は原爆の実験禁止の問題でありますけれども、あなたは非常な努力をされましてある程度の効果を上げておるのですが、あなたの原爆実験禁止の主張の根拠というものは、これはきょうも私は参議院の本会議であなたの答弁を聞いておったのですけれども、人道的な立場なんだ、こう言っておれられる。これはその通りだと私は思う。人道的な立場ということになれば、これはイデオロギーを越えて、あるいはその他のいろいろな政治的な立場を越えて、私ども措置されるべきだと思うのです。その基本的な見解を言われるのはよろしいですが、現実にとられておる政策というものは、この人道的な立場を貫いておらぬと思うのですがね。たとえば昨年の暮れ、国連において登録制の提案をいたしたときに、あなたの主張する登録制は、実験禁止ができるその一段階だ、こう言われるのですけれども、われわれの考えからすれば、人道的な立場に立てば、実験即時禁止というようなこういう手か打てれば一番いい。その提案を実はソ連がしておる。ところがそのソ連の提案に対しては賛成しない。また新しく向うから共同提案しようというふうな提案が出てきた。これにも参加しない。それでお前の方でまずやめてこい、こういうふうに言っているのですね。これは理屈は理屈として立ちますけれども、私はそれはやはりソ連だから、いわゆる自由主義陣営ではない反対側の主張であるからという一つの政治的判断が加わっていると思うのです。そうじゃないと言われるけれども、そうなんです。これは世界のいろいろのジャーナリストが言っております。私はだからあなたに私は間違っておると言わせようとは思いませんけれども、いま少しこの問題は、人道的な立場からというのならば、これはもうちょっとお考え願わなければならぬ。登録制というような政治的な妥協は、人道的な立場から私は結論できないと思うのですよ。もっと極端なことを言えば、オール・オア・ナッシングでいいのです。私はそうだと思うのですよ。ですから岸総理はいろいろと原爆禁止の問題については努力されたけれども、何がなんだかわからなくなつた、こう言っておる。イギリスの議会はどうですか、良心の負担が軽くなったと言っている。これはあなたの真意じゃないでしょう。核兵器の所有は違憲じゃないと言われることも、これは憲法論として言ったんだと言われる。それもわかるけれども、ことほどさように政治的に大きな波絞を及ぼしているのですよ。この際私はもう少し人道的な立場ならやはり人道的な立場を貫いてもらいたいと思う。そういう意味でもう一回ソ連の申し入れに対して、今のようなお前の方がまずやめてこいというような方法じゃなしに、もっとこちらから歩み寄ったような主張をなさるような準備がないかということが一つ。もう一つは、やはり今度ネヴァダでの実験で、これは日本政府に対してでしょうが招請状が来ていると思いますが、これに対して日本政府あるいは政府が推薦するところの代表を送られるつもりでありますか、いかがですか。これは私の見解からいたしますれば、送るということは認めたことになると思う。理屈はそうじゃないと言われてもそういうふうな政治的な判断をやはり諸外国に私は与えると思うのです。そうでしょう。今ネヴアダの実験に対して諸外国を招請しているでしょう。これはわが国が主張しているところの登録制と同じことなのです。登録制をやればこういうことになるのです。私はそういう意味でこの代表の派遣あるいは民間の者ならばそれの許可というものに対しては、よほど慎重でなければならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  74. 岸信介

    岸国務大臣 原水爆の実験禁止に対する私の信念は、あくまでも人道的な立場に立ってこれを強く主張しているわけであります。ただ同時に私は、これは言葉が適当であるかどうか知りませんが、宗教家がその信念を訴えるというだけでなしに、政局を担当している政治家として考えなければならぬことは、理論としてわれわれの主張というものは、あくまでも今私が信念として持っているなにを訴えますけれども、いろいろの国際情勢を見て、ただ表面に現われている言葉だけでこれと一緒にどうするとか、反対するとかしないとかいうようなことが生む影響というものを考えないというとならぬと思うのです。私はソ連の主張がただ一がいにこれを不誠意だと断ずることは早いと思います。しかし従来の原水爆問題に対してのソ連のとってきている態度というものは、ほんとうに人道的立場からわれわれがこの原水爆の禁止を呼びかけていると同じ気持かどうかにつきましても、私は直ちに同じだということも言いかねる。なお私自身のたまたま憲法上の解釈が、先ほど御指摘になりましたように、各地に非常な政治的な波紋を描いているじゃないかというお話もございます。私はやはり現実の政治家としてものを処理していく上におきましては、それが及ぼすところの政治的影響というものを考えなければならぬということも見のがすことはできない。ただ人道的ななにであるから、それがどういう波紋を描こうともあるいはどういう結果になろうとも、ただそれを主張していけばいいじゃないかというわけに私は参らないと思います。従ってこれも御議論があることでありますけれども、登録制やあるいは監察制度の強化とか、いろいろな監視機関の制度とかいうような問題等も、これは私は現実の問題として、人道的な正しい主張であるけれども、それを一挙に実現することはなかなかむずかしい国際情勢である現状から見まして、それに近づく実際的の問題を研究していくという意味でわれわれは提案いたしておるわけであります。  なお今のネヴァダの実験の件につきましては私事実をよく承知いたしておりませんので、事務当局から聞きましたらそういうような招請もあるようでありますから、十分検討して、今まだ結論を出すわけに行かぬと思うのです。いろいろ防衛庁の関係もありましょうし、いろいろな点から検討してこれの結論をきめたい、こう思っております。
  75. 大西正道

    ○大西委員 これで最後ですが、原爆の実験禁止の問題について国際司法裁判所に提訴するとかということも言われたやに聞きますが、これの提訴の準備は進んでおりますかどうですか。提訴する場合には普通の形式ですと相手国の応訴がなければならぬと思うのですが、この問題について相手が応訴しなくても効果をあらしめるためには、あの規定の三十六条の選択条項の宣言をやらなければなりませんが、提訴するというならば、わが国はまだ選択条項の宣言をやっておりませんから、すべからくやらなければならぬ。やったらその以前に発生した問題について果して効果があるかどうかという問題もありましょうが、引き続いて起る問題について、この選択条項の宣言を私は至急やるべきだというふうに考える。  それからもう一つ、これをやりましても公海自由の原則という慣習法にもとるという点で問題になるでしょう。ところが私どもはこの原爆の実験の禁止は、公海自由の原則を阻害したからその損害を補償せよというような問題じゃなしに、この大量殺戮兵器の実験そのものが違法である、こういうふうな主張をしておる。これが国民の声だろうと思うのです。ところがこれに対しましては、国際法上実定法がはっきりないからこういう回りくどいことをやったり、勧告なり意見を求めるというようなことをやらざるを得ないのですが、この点について、十分ではないのですけれども、たとえばこういうふうなものはどうでしょうか。大量殺戮の禁止に関するジェノサイド条約、さらに陸戦における無制限なる爆撃等について制限、禁止をしているハーグ条約、こういう問題は事、軸心に関する問題であるし、あるいはまた片一方はその意思があるかどうかという問題ですけれども、やはり前文の趣旨を敷衍一して考えますと、こういう大量殺戮の武器を実験することも、これは明らかに国際法上の慣例から見まして違法なりということが、私は日本立場から言えると思うのですが、この点は冷めたい、言える、言えないというような第三者の立場ではなしに、日本としてよるべき一つの根拠を探すとすれば、これらの考えは研究いかんによっては大いに役立ち得るものであると思うがその見解、これに対する準備いかんという積極的な意見を聞かしていただいて、私の質問を終ります。
  76. 岸信介

    岸国務大臣 国際司法裁判所に提訴する問題につきましては、松下特使の意見もございますし、また国会においての御意見なり質問もありまして、私の方ではこれが研究を命じて検討さしております。今お話しになりました大量殺戮兵器を禁止する条約にはまだ日本は加盟しておりませんけれども、これの問題もあわせて今研究をいたしております。(大西委員「ジェノサイド条約には加盟していない。ハーグの条約には加盟している。」と呼ぶ)そういうような点につきましても、十分提訴する以上は、われわれとしては最も有利なわれわれの主張が通る根拠をはっきりしてやらなければならないという意味において、これに関連しているあらゆる条約その他法規の研究を命じまして今検討しておる最中であります。積極的に私はこの問題を考えております。
  77. 大西正道

    ○大西委員 今の段階においてはどういう結論ですか。
  78. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 まず第一は選択条項の宣言でございますが、これも何とか近いうちにやろうという方向で研究中でございます。研究中と申しますのは、いろいろと各国が留保をつけておりますから、この原爆問題自身のみならず、一般的の問題としても大いに研究しなければならないと思います。それから条約につきましても現在検討しております。学者の意見を徴し、われわれ事務当局としても研究しております。(大西委員「もう爆発が起りますよ。」と、呼ぶ)ただそれが実定法であるかどうかということは非常にむずかしい問題だと思います。また裁判をいたす以上は、何とがこれはわれわれ事務当局としても勝たなければならないと思っておるわけですから、もう少し余裕をいただきたいと思っております。
  79. 野田武夫

    野田委員長 岡良一君。約十分間の予定でありますからきわめて簡単に願います。
  80. 岡良一

    ○岡委員 私は委員会に御提案国際原子力機関憲章について、総理並びに外務大臣からこの運営に関する御所信を承わりたいと思います。  昨年の十月にこの憲章が採択される際の会議において、日本が総会召集の準備委員に選ばれました。従って必然に九月以降に招集される総会においては、理事国に当選をする可能性も強く出て参ったのであります。このことは私は外務当局の御努力対しては、重々多いといたすのでありますが、しかしわが国といたしましては、原水爆禁止についてはいわば世界の世論の先頭に立っておりますので、従ってこの憲章に現われておるように平和利用を掲げて発足しようとする機関運営の術に当る理事国としての日本責任も、またきわめて重大であろうと存じます。そのような立場において、政府はこの原子力機関運営において、日本理事国として選ばれました場合における基本的な御所信、具体的な御抱負をまず承わりたいと存じます。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 この機関の憲章の規定によりますと、機関から核物質の提供を受ける被援助国は、大国たると小国たるとを問わず、平等に同一の保障のもとに置かれなければならないという考えであり。またこの原子力の平和利用及び加盟国との協力につきましては、この機関を通じて日本としてはできるだけの努力をする、こういう考えを持っております。
  82. 岡良一

    ○岡委員 それはこの機関の憲章に忠実であらねばならないということに対してのきわめて技術的な御答弁にすぎません。  それでは私は具体的にお尋ねをいたしますが、この機関憲章には、第四条のC項におきまして、加盟国の主権平  等の原則というものがうたわれております。ところが事実上この機関を拝見をいたしますと、大国は軍事利用することは自由放任である。軍事利用をしながら、なおかつ余剰の核分裂物質等あるいはまた軍事機密に差しつかえのない情報等を機関に提供する。これを受けるところの受益国は、機関によって施設に対する立ち入りあるいはまた定期的な報告、軍事利用の絶対禁止等、きわめて不平等な制約を受けることになっております。従いましてこの機関憲章に忠実であるということは、いわば国連の大国優先主義と申しましょうか、今懸章改正の場合にも一番大きな問題となっておる大国の拒否権等が、如実にこの機関憲章の運用の上に現われておるわけであります。そこで真にこの第二条にうたわれておるように、原子力が全世界における平和と繁栄のために貢献をせしめるという立場に立つならば、日本も当然将来の目標としては、機関憲章にうたわれておるような大国優先主義というものは、克服する方向努力すべき必要があると思いますが、この点についての大臣の御所信はいかがでありましょうか。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 現在の建前から申しますと、御指摘のように、実際の力の上において大国と小国との問に不平等な実態が現実に存しておると思います。しかし理想はあくまでもこの憲章に掲げているように、平等な立場に持っていくということを考えるべきものであると思います。提供国と被提供国との間の憲章の交渉で争われた結果がこの現憲章の規定となったわけでありまして、将来のわれわれの目標としましては、御意見のような方向努力すべきものである。
  84. 岡良一

    ○岡委員 次にお尋ねをいたしたい点は、第二条の目的にうたわれている点であります。「機関は、全世界における平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進し、及び増大するように努力しなければならない。」とありますが、ところが現実国際的な原子力の問題の取扱い方は、原子力に関するきわめて緊要な一切の情報なり資材というものは全く機密のうちに葬られております。従いまして原子力先進国は軍事利用を目途として、必要な発明、発見はこれを機密の中に、いわば自己の国内のワクの中にとどめて、外国に輸出しあるいは発表いたしません。そのことが国際的な原子力の平和への貢献あるいは繁栄への貢献を大きく阻害しておることは、これまた衆目の一致す、るところでありますが、そういう意味において、日本もこの機関の運営に当っては、平和のためにはあくまでも原子力の軍事利用というものは、終局的にはこれを禁止すべきであるという方向に向って努力すべきだろうと思いますが、総理の御所信を承わりたいと思います。
  85. 岸信介

    岸国務大臣 この原子力の問題につきましては、あくまでも原子力の利用というものが人類の福祉の増進に貢献するように用いられなければならぬし、これが人類の破滅の方向であるとか破壊の方向に用いられるということは、あくまでも抑制して、そうして人類の福祉と繁栄に資するようにこのエネルギーを用いなければならぬという考えを持っております。この国際原子力機関憲章の趣旨もまた私がかねて考えておるのと同じような方向にこの機関の使命があることを明示しておると思います。従いましてそういう二条に明らかにされておるところの目的に向ってわれわれとしては努力するというのは当然であると考えております。
  86. 岡良一

    ○岡委員 そういたしますと、軍事的利用を禁絶しようという総理の御所見に対して、機関憲章は制限を越えておるわけであります。その制限は第三条B項1でありますが、平和及び国際協力を助長する国際連合の目的、及び原則に従い、ここまではけっこうですが、「並びに保障された世界的軍備縮小の確立を促進する国際連合の政策」云々、こうなっております。この言葉は結局現在たとえばロンドンの軍縮小委員会等において核、実験については、一般的軍縮と核、兵器の禁絶は分離すべきものであるか、不可分のものであるかということが論争戦となって、これは年来の国際的な宿題になっておるわけであります。従いまして国際原子力機関というものの、この平和目的というものをあくまでも追及しようとする立場からは、当然、不可分の立場ではなくて可分の立場に立って、原子兵器はこれを一般的軍縮から切り離すという方向にわが方としては所信を明らかにし、あるいは努力をすべきものと思うのでありますが、総理の御所信はいかがですか。
  87. 岸信介

    岸国務大臣 日本としては従来これを不可分という考えのもとに、そういう提案なり、国連における発言をそういう見地に立っていたしておりますので、今の御意見は御意見でありますが、われわれは一応不可分として考えるのが適当じゃないかと思います。
  88. 岡良一

    ○岡委員 不可分としてお考えなるということになれば、結局大国優先主義という憲章の現在のこの内容を改正して、大国であろうと小国であろうと原子力の恩典と人類なり世界各国の福祉に貢献せしめようというあなたの御抱負と食い違いが起ってくるではありませんか。ただしかし私は時間もありませんので議論はいたしません。その次には、問題は原子力機関がかりに実質的な活動を開始するといたしましても、なお相当な期間が必要であろうと存じます。従いましてその期間の間、日本とすればやはり日本の立ちおくれを克服する意味で、いわば二国間の協定というものが必要になって参り、現に本国会においても濃縮ウラン増量の細目協定の第二次改訂が提案されておるわけであります。しかしながらこれらの双務協定は、あくまでも国際原子力機関の運営に妨げがあってはならない。日本は一般的な外交の方針として国連外交に重点を置くように、原子力の平和利用の問題においても原子力外交の路線においても、原子力機関憲章を尊重する、これを優先するという建前でいくべきものであろうと思いますが、この点の根本的な御所信を承わりたい。
  89. 岸信介

    岸国務大臣 御意見の通りに私も考えております。
  90. 野田武夫

    野田委員長 もう時間が参りました。
  91. 岡良一

    ○岡委員 もう二点だけお伺いをさせていただきます。  次は原子力、特に核兵器の問題について先般来いろいろ論議されておるのでありますが、本日の新聞を見ると、日本の著名なる原子物理学の権威者が二十五名、ゲッチンゲン宣言というものを支持することを発表いたしております。ゲッチンゲン宣言は、言うまでもなくノーベル賞を受賞された四名の原子力の専門的な権威を含む十八名の西ドイツの科学者が、原子兵計というものは、小型の戦術兵器であろうとも、それはかつて日本の広島に投下されたもの以上の破壊力を持っておる。従ってこれらの生産には協同できないという、ドイツの科学者の良心にかけた決意を表明したものであります。日本の科学者もこれを支持するという声明をいたしております。政府は、特に総理は、先般も、自衛権のワク内においては、科学兵器の発明に伴う核兵器の採用も、憲法解釈上は許され得ると言っておる。ところが、西ドイツの科学者は、いわゆる戦術兵器としての実用化された原子兵器は、広島に落されて爆発をしたあの原子爆弾以上の破壊力を持っておると言っておる。現にネヴァダにおいて実験をされようとする  一連のアメリカの実験にいたしましても、ノミナルは二万TNT、二万トン級であるといっております。二万トン級といえば、広島で爆発をした原子爆弾の約一倍半の威力を持っておるものであります。現在の科学者の知見によれば、このように原子兵器、核兵器というものは、広島にかつて落されたもの以上の威力を打っておるということを実証しておるわけであります。日本の科学者もこれに同調すると申しておる。総理は、このような科学者の認識に対しても、なおかつ憲法解釈上自衛権の名においては核兵器の保有も認められ得るという御見解をお持ちでありましょうか。
  92. 岸信介

    岸国務大臣 私は、憲法の解釈上、自衛権の名においてなら核兵器が打てるというような意見を述べたわけではございません。私の言っておるのは、われわれは自衛権は憲法で認められておるという見解をとっており、そうしてそれを裏づけるところの実力というものは、あくまでも自衛の範囲に限られておるので、その自衛の範囲に限られておる実力というものは、それが技術の発進から見ますと、いろいろな今後の発達もありましょうが、それにおくれないような実力も持たなければならない。しこうしてその場合において、将来の核兵器の発達によりましたら、どういうものが出るかもわからないが、核兵器と名がつけばことごとくいかぬという解釈をすることは行き過ぎであろう、こういうことを申したわけであります。従いまして、今おあげになりますように、広島に投ぜられた原爆は、われわれが憲法上持てないことは当然でありますし、あるいはその破壊力の一倍半にもなっておるような核兵器を、自衛の名においてなら持てるというようなことは、私は絶対に考えておりません。将来の技術的、科学的の発達に応じ、常に自衛権を裏づけるところの内容たる実力は持たなければならないが、それはあくまでも自衛権の範囲ということを逸脱してはならない、その範囲である限りにおいては、将来の核兵器の発達によっていろいろなものが出てくることを予想しておかなければならない。その場合に核兵器と名がつけばことごとくいかぬということは行き過ぎじゃないか。しかし原水爆やあるいはこれに類似したような力を持っておる、破壊力を持っておるものは、憲法上われわれの自衛権の内容を裏づける実力として適当なものではないということは、私も信念としてそう思っております。
  93. 岡良一

    ○岡委員 核兵器というものとあるいは旧来の兵器というものとの質的な差異についての認識が足りないのじゃないかと私は思うのです。核兵器というものは、いわばTNT爆弾というふうな爆発の瞬間における機械的、物理的な破壊力というものではないのです。核兵器というものは、いかにそれを防御しょうとしても、二十八年の間、骨に沈着をすればあるいは慢性の、しかも治療不可能な白血症を起すストロンチウム九〇を出すか、あるいは突然変異の率を一千倍化するセシウム一三七を出すかという、何ら戦闘に参加しないあるいはその胎内にいる、あるいは生まれ出るところの子供たちにこのような大きな障害を与えるものである、こういうような核兵器が自衛という名に値するのでありましょうか。私はその点についてもう少し合理的な御見解を承わりたい。
  94. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりましたような性能を持っておるそういうものを、自衛権の内容としてそれを裏ずけるものであるとは、私は考えておりません。ただそれが現状であるといたしましても、それが将来のなにをすべてきめてしまって、そういうものだと言うことはあまりに行き過ぎじゃないかというのが、私の見解でございます。
  95. 岡良一

    ○岡委員 それでは、先ほども申しましたように、現在世界の信用すべき科学者が一致して、核兵器というものの現実の姿というものを指摘いたしておるわけです。今日世界の科学者があるいは日本の科学者が指摘しておる核兵器というものについては、総理としては、これは絶対に持つべきものではない、憲法上も明らかに違反であるという認識を確実にお持ちでございますかという点。なお第二点としてお尋ねいたしたいのは、憲章運営の問題でありますが、御存じのように、三年前にアメリカ大統領がこの平和機関を設置すべきであるという旨を国連総会で提唱をされました。その後アメリカもすでに四十カ国に近い国々との間に双務協定を開きました。ソビエトも、これを中心とする十一カ国との間に協力協定を結びました。ヨーロッパにおいてはユートラムができました。このような杉で国際原子力機関がいよいよこの秋発足をいたしましても、事実上機関の憲章第二条にうたわれておるような、大国、小国を伺わず、とにかく国際民主主義の立場において、原子力のあらゆゆる貢献というものを人類に役立たしめようという機能というものが、妨げられるような情勢が実は出てきておるわけです。こういう段階において、日わけとすれば、理事国としていかなる方針を持って現在のこの割拠的な原子力問題の情勢というものを打開すべきであるか、この点についての総理の御所信、二点をお伺いしたいと思います。
  96. 岸信介

    岸国務大臣 私は、かねてから原水爆及びこれに類似するような核兵器は、憲法上禁止されておるという見解を述べております。その考え方につきましては少しも変更はないのであります。従いまして、今お話しになりましたような実際上の性能を持っておる核兵器というものは持てないという意味におきましては、全然今の岡委員のお考えと同じように考えます。それから第二の点は、日本がこの原子力機関に加盟し、その理事国となって参ります以上は、この運営につきましては、この機関を通じて、加盟国に対して全般的に協力するということを方針とすべきものでございまして、そこおけるそれを妨げるような対立であるとかあるいは割拠的ななにに対しましては、そういうことをなくするように、そうして真に民主的な形に運営されるように、日本としてはあくまでも努力していかなければならぬ、かように考えております。
  97. 岡良一

    ○岡委員 具体的な方法は。
  98. 岸信介

    岸国務大臣 具体的にと言われまししも、これは今言った心持でもってすべての運営に臨むということでありまして、現実にいろいろな支障を来たすような場合におきましてそのつどこれに対する具体的の措置を考えていかなければならぬ、こう思っております。
  99. 岡良一

    ○岡委員 私が申し上げたいことは、とにかくインドはトロンベイに総合原子力研究所を作りました。そして世界各国の協力についてやぶさかではないと申しております。中共でも来年はもうすでに一万キロワット出力の原子炉が建設をされます。そういう形で、日本の科学者は二十名、しかも原子力の権威が中共へ行っておるという状況です。私は、アジアアメリカの諸国の原子力の立ちおくれを克服するというこのイニシアチブをとるという形において、この政策を国際原子力機構の民主化のために進めていく、こういう方向日本政府としてもぜび進めを願いたい、こういうことを一言申しまして、私の質問を終えます。
  100. 野田武夫

    野田委員長 次に田中稔男君。
  101. 田中稔男

    田中(稔)委員 四月十九日の外務委員会において、公安調査庁長官藤井政府委員の答弁が問題になったのであります。これはすでに御承知のように、アメリカ大使官が、日本の共産党やあるいは日中友好協会その他の団体の経理の内容につきましてある発表をした。そのジャパン・タイムスに載った新聞記事について、菊池委員から質問がありまして、その際に行われた長官の答弁で、藤井長官は、日中友好協会、日ソ親善協会、及び日本平和委員会、こういう団体は共産主義団体であるかのごとく述べられて、そしてその経理の内容を調査する正当な権限があるように述べられたのであります。これが新聞に発表されました結果、それらの団体にとっても非常に迷惑でありましたけれども、国民一般が何かそういう三団体がいわゆる赤化政治資金によって運営されておるような誤まった印象を与えられた。これはきわめて重大であります。時にこの日中友好協会なり、日ソ親善協会は、中国やソ連を対象とする国際親善団体で、その性格においては、日米協会、あるいは目印協会というようなものと同一であります。そういうふうな長官の発言の結果、国際親善団体であるこういう団体の活動に重大な支障を来たす。日ソの間にはすでに国交が回復されております。最近ソ連からいろいろな文化使節も来る。特にモスクワのボリショイ劇場のバレーの一座が参りますが、これについて閣議決定もって政府としてもその興行を後援するというふうなことにまでなっている今日、特に重大な問題だと考えるであります。実は長官の答弁をこの会議録によって読んでみますと、前後撞着する御答弁がずいぶんありますが、その中にこの団体は共産党団体とは申しませんとも述べておられる。それからまた、日中友好協会については、それ自身を破防法の対象として調査してはおりませんとも述べておられる。逆な御答弁もありますが、こういうふうな御答弁もあります。政府の真意がこういうことであるならば、私はこの際法務大臣から、一つこの点をもっとはっきり答弁していただいて、不必要な誤解を国民に与えることがないようにしていただきたい、こういうふうに考えるのでありますが、法務大臣にこの際一つ先日の藤井言明に関連して、親切なしかも詳細な御答弁を御披瀝願いたいと思います。
  102. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 田中委員からのせっかくの御質疑でございますし、去る四月十九日当委員会における藤井長官の発言が言葉が足らなくて徹底を欠いた点があり、あるいは一問一答の結果、誤解を生じておる向きもあるようでございますから、この機会に私から一応私ども考え方を釈明申し上げておきたいと思います。  ちょうどその日は菊池委員から、今年の三月ごろ、ジャパン・タイムスに、ソ連や中共からの赤化工作がだんだんひどくなって、昨年、赤化工作のために日本に入った金が七百二十億にもなっておるということである、こういうことがアメリカ大使館から発表されたということになっておるが、こういうことについて調べたことがあるか、こういう御質問があったのに対しまして、藤井長官から、二月二十八日のジャパン・タイムスに、共産党は昨年日本で宣伝に二千万ドルほど使っておるという記事が載っておる。お尋ねの七百二十億というのは七十二億の間違いではないかと思う。そうして右ジャパン・タイムスの記事は、これはアメリカの新聞記者が三十三名ほど極東地域の旅行に来られた際に、東京に立ち寄りまして、そのときにアメリカ大使館のスポークスマンが記者会見をいたしました際、スポークスマンから聞いた話であるというジャパン・タイムスの記事であって、これについて自分の方で調べたところでは、日本の共産党初めその他若干の団体の昨年一年間の経費を全部通算したもので、その金がすべてソ連の赤化工作資金という意味ではないのであります。なおアメリカ大使館が経費を合算した団体の中には、日本共産党のほかに、日ソ親善協会、日本平和委員会、日中友好協会等も含んでおるようでございます。その程度のことしかわかっておりません、ということをお答えをいたしたのでありますが、一時は何か日本政府自体が、平和委員会や日ソ親善協会、日中友好協会等を共産党と同様に見ておるのではないかという誤解を生んだ模様でありまして、その結果岡田委員から、この点についていろいろと御追及があったのでありますが、速記録をよく見ますと、この点は藤井長官も、アメリカ側がそのような計算方法をとったらしいということを言っておるので、自分の方がそのような集計をしたのではないということを明確に申しております。またその計算方法は正確であると思うかという御質問に対しまして、正確とは思っておりませんと、こういうように前段ではっきり申しておるのでありますから、この点は速記録を御精読いただきますならば、御理解を願うことができると思うのでありますが、なお政府当局といたしましては、これらの三団体の財政が、ジャパン・タイムスに記載されておりますように、赤化資金によってまかなわれておるものであるとは見ておりません。  さらに速記録を見ますと、話が発展をいたしまして、岡田委員から、しからば公安調査庁としては、平和委員会あるいは日中友好協会等を共産党関係団体として判断をされておるのかどうか、こういう御質問があったのに対して、藤井長官からは、共産党に近い団体というように見ております、こう考えたところに問題があると思うのであります。これは御質問する方が、共産党関係団体と判断しておるのかという質問でありましたので、そうではないと表現すればよかったのでありましょうが、そうではないという表現のかわりに、共産党に近い団体というように見ておる、こういう表現をしたところに問題があったと思うのであります。しかし私どもといたしましては、平和委員会や日ソ親善協会、日中友好協会、これらの団体を共産党と同様には決して見ておりません。この点は藤井長官もその日の速記録をだんだん読んで参りますと、二ページの一段目の終りごろのところでは、「共産党団体とは申しません。」こう申しておりますので、私どもとその概念におきましては全く同一であると思うのであります。ただ共産党に近い団体だと言った動機といいますか、根拠は、多分共産党員もこれらの団体の構成メンバーの中におる、こういう趣旨からかような表現をしたのだと思いますが、この点は確かに表現があまり端的に過ぎまして、適切ではなかったように考えるのであります。  右のような次第で、三団体を共産団体とは見ておりません。もちろんこの点につきまして、今田中委員からも御発言がありましたが、三団体それ自体を破防法の対象として調査する意図は持っておりません。また現にいたしてもおりません。この点を明確に申し上げておきます。
  103. 野田武夫

    野田委員長 田中君にちょっとお諮りいたしますが、外務大臣がほかの重要な事項がありますから、あまりあと時間もないようですから、できますれば外務大臣に御質問がありましたら先にしていただけばいいと思います。なお次の発言順の岡田委員にも同様のことを希望いたします。
  104. 田中稔男

    田中(稔)委員 すぐ外務大臣質問に移りますが、その前にちょっと……ただいまの法務大臣の答弁は、百パーセント満足するわけには参りませんけれども、八〇%程度満足したことで、その点についてのご質問はいたしません。  そこで今度は藤井長官に伺いたいのでありますが、公安調査庁という存在は、どうも不思議な存在であります。歴代の法務大臣も、この政府機関の活動については、あまり深くタッチすることができないというような事情にあると聞いておる。しかもこの機関の活動は、アメリカの特務工作というようなものとも内面において連関があるというふうに私どもは聞いておるのであります。現に藤井長官も先日の外務委員会において御答弁をしておられます中に、自分の方でも大体ジャパン・タイムスに載った記事の内容と同じようなことをアメリカ側から聞いておる、しかし具体的なことは申しかねます、こういうふうに言っておられまして、ここにアメリカ側から聞いておるというようなこと、そのままの言葉ではありませんが、そういう趣旨のことがある。なるほど今日日本アメリカに政治的にあるいは軍事的に深く結びついておる。われわれはこれを非常に遺憾にしておるのでありますが、何か治安関係においても、そういう結びつきがあるのじゃないか。われわれ国民はみなその点は不安に考えておる、藤井長官に対しまして、その点についての御説明を求めたいと思います。
  105. 藤井五一郎

    ○藤井(五)政府委員 別にアメリカ側から、わが庁の職務を遂行する上において、何ら指示を受けておりません。  それからこの間問題になりましたジャパン・タイムスの記事については、あの記事はどういうところから出たかということで問い合してはみたのです。
  106. 田中稔男

    田中(稔)委員 外務大臣がお急ぎのようでありますから、外務大臣の方に移りますが、今藤井長官は治安対策において、公安調査庁の活動がアメリカとは全然関連がないと言われました。こういう席で、関係があるという御答弁があろうとはおよそ想像ができないことだ。あってもそうは言われないと思う。そこで私は今後のために、総理大臣臣兼外務大臣としてはっきり御答弁願いたい点は、なるほどいろいろ経済的、政治的、軍事的に、アメリカとの関係は現に非常に深い。深いけれども、少くともこういう国内の治安対策というふうなことにおいて、アメリカと何か結びつきができるるというようなことでは私は人へんなことだと思いますから、公安調査庁の活動が、アメリカの何かそれに該当する政府機関との間に、あるいは日本に参っておりますアメリカ大使館との間に、今後、行われるようなことがあってはいけないと思いますが、その点について御答弁を願いたい。
  107. 岸信介

    岸国務大臣 治安問題は言うまでもなく日本の国内の問題でございまして、従って日本政府としていろいろな治安の維持に必要な調査だとかあるいは措置だとかいうことをとっていくことも、これも当然なことだと思います。しかしアメリカとこの点について現在までも私ども関係があったとは考えておりませんし、将来もそういうことについてアメリカとの間に何らかの関係を持つということは適当でない、こう思っております。
  108. 田中稔男

    田中(稔)委員 次に今度のことでありますが、アメリカ大使館が極東旅行のためにやってきたアメリカのジャーナリストに対して、日本共産党並びにそういう日中友好協会その他の日本国際友好団体の経理の内容についていろいろ発表をする、そしていかにもこれが中ソ両国からきた赤化資金によってまかなわれているような印象を与えているわけであります。そしてそれがまた外務委員会で問題になると、今度は日本の国内の新聞に載る、こういうことは非常に遺憾だと思います。鳩山さんが日ソの国交をやられましたが、岸総理もやはり日ソの国交は今後はさらに深めていくというお考えだろうと思います。だからこそボリショイ劇場のバレー団の公演を政府が後援するということもおきめになったようであります。中国との関係は、政府国交回復は当分できないとおっしゃっておる。しかしこれも究極においては人口六億を有する隣国のことでありますから、何とかやはり国交回復をしなければならぬ、こういうことはたびたび述べておられる。そしてそういうことのために、今一種の国民外交として努力しているのが日中友好協会です。こういう団体が今後赤化資金でまかなわれておるというふうなデマのために活動がだんだんできなくなるということは、私は広く高い国民的な立場からいいことじゃないと思います。そしてまたこういう団体には、実は岸さんの属しておられる自由民主党の政治家の諸君も相当関係されておるのです。日中友好協会には山口喜久一郎君が関係しておりますし、また日ソ親善協会は今後これを非常に幅の広い団体にしようというので、今改組中であります。聞くところによれば、河野一郎氏もいよいよこれに復員として名前を連ねるということを承諾されたということであります。こういう際でありますから、こういう国際友好団体をできるだけほんとうに幅の広い、大きな有力なものにして、そして日米協会、日印協会と同様に活発に活動させるということが、私は日本外交の立場から必要じゃないかと思う。そういう見地からしますと、いろいろな誤解に基いても、こういうふうないろいろな迷惑をこういう一体がこうむっておるこの際でありますから、一つ外務大臣としましてはこれをどうお考えになるか、御所見を聞いておきたいと思います。
  109. 岸信介

    岸国務大臣 今おあげになりました団体の本質につきましては、先ほど法務大臣も申し述べておる通りであります。私ども外務省の立場から見ますと、それぞれ友好国との間に親善友好関係を強めていき、相互の理解を深める意味において、それぞれの団体がたくさんできております。そうしてそれらの団体の活動か、友好関係を持っておる国々との間の友好親善を進める上に役立っている事実を私ども考えておるわけであります。従いましてこれらの団体につきましても、私は今日までのいろいろな調査や何かから見て、これが特に赤化資金においてまかなわれておるとかなんとかいうことはもちろん考えておりません。しかし同時に将来の問題につきましては、そういうふうな誤解を招かないように、これらの団体におきましても十分に注意をしてもらいたい、そして本来の目的を逃するように努めてもらいたいと思っております。
  110. 田中稔男

    田中(稔)委員 大体その御答弁に満足でありますが、この際特にお願いをしておきます。政府がこれらの団体に補助金まで出して援助していただきたいとは思いませんけれども、これらの団体の活動を圧迫するようなことがないように、特に強く要望しておきます。  次に、また関連しますが、アメリカ大使館は日中友好場協会と日ソ親善協会は共産主義団体、赤の団体である、しかもその運営には赤の資金が流れ込んでいるという一方的な認定をして、そういう発表をしたわけであります。そういうわけでありますから、アメリカに対しまして政府はその誤解を解くとか、あるいはまたそういうデマに類する発表に対して抗議をするという御意向はないか、一つお尋ねしておきたいと思います。
  111. 岸信介

    岸国務大臣 日本も各地にいろいろ在外公館を持っておりましてその国におけるいろいろな事情を調査しまして、われわれは世界各地から情報を得ております。また東京にいる各国の在外機関につきましても、おそらくそういう意味においていろいろな情報を集めていることも事実であろうと思います。しかし特にそういうものが発表されたことによって、その国のいろいろな関係において波紋を描くということはお互いに慎むべきことであって、そういう意味おいて、私どもはその事実がどういう経路をたどって、責任ある形ででたものかどうかということにつきまして、まだあまり事情がはっきりいたしておりませんが、適当な方法において注意を促すことはなすべきことであると思います。
  112. 田中稔男

    田中(稔)委員 ぜひそういうふりにお願いします。  次にせっかくおいでになっておりますから、インドネシア賠償問題ついて一、二お伺いしたいと思います。せんだって来、私もその他の同僚議員もたびたびインドネシア賠償問題について質問申し上げたのでありますが、その際に外務外臣は、インドネシア賠償問題に非常に熱心でありまして、倭島公使も帰っていろいろ報告をきいておるし、この際なるべく早く話をまとめたい、大体話も大詰めにきているので解決は時期の問題であろう、こういう趣旨の御答弁に接したのであります。私も昨年インドネシアに参りしまして帰りましてから、インドネシア賠償問題を早急に解決しなければならぬということを提唱して参りました責任もありますから、非常に喜んでおりましたが、最近新聞の伝えるところによりますと、インドネシア賠償問題は当分見送りになった、倭島公使もベルギー大使に転出することになり、岸さんも東南アジアを歴訪される中に、インドネシアだけは欠けているということで、どうも情勢が悲観的であります。政府態度がこういうふうに変りましたことは、一体どういう事情に基くものであるか、その間の事情をできるだけ詳細に御答弁願いたい思います。
  113. 岸信介

    岸国務大臣 政府としては別に態度変えていけるわけでございません。目下関係省の間におきまして、鋭意具体的の問題に関して研究をさせ、意見の統一をはかっております。私どもはやはり依然としてできるだけ早くこれを解決するという従来の方針に違いございません。それから倭島君の転任の問題でありますが、いろいろな外務省の人事の関係でそういう転任をすることになっておりますけれども、これがためにこの賠償問題を停頓せしめ、しばらくの間見送ろうという考えは毛頭持っておりません。
  114. 田中稔男

    田中(稔)委員 たいへんけっこうな御答弁ですが、もう一つお尋ねしておきたいのは、現在インドネシアの政局が不安であるという事情、これは事実でありますが、最近成立いしましたジュアンダ内閣は相当安定性を持っている。またジュアンダ首相その人が、日本に賠償使節として来たこともあるし、また彼の政治家としての経歴から見ても、賠償問題しついて話し合いをするいい相手だ、こういうお話もあり、また政局の不安定という問題は賠償問題解決に支障がないのだというお答えがあったようでありますが、その点についての現在のお考えと、それから日本においていろいろそれを危惧する向きが民間にもあるようでありますが、それらについて政府はどうお考えになっているかお伺いいたします。
  115. 岸信介

    岸国務大臣 この一、二月以来インドネシアの政情が不安な状態にあることは御承知通りであります。ジュアンダ内閣ができましても、これをもって従来のすべての不安な問題が一掃されたということは、まだできない状態でありますけれども、しかしスカルノ大統領も非常に力を入れて、このジュアンダ内閣の成立並びに今後の施策につきましても強力に支持し、その意を受けてやっているという事情でございまして、ジュアンダ首相自身が、今お話がありましたように、賠償問題を解決する相手方としてはきわめて適当な人であると、われわれが考えている従来の考え方と全然何様に考えております。  またインドネシアの問題に関しましては、御承知のように相当長い沿革を持っておりますので、この問題に関心を持つ人々がいろいろな角度から研究をして、いろいろな意見も民間にはございます。私どももその意見は聞いております、しかし政府として賠償問題につきましては、これまたインドネシア政府との間に、政権はかわった形になっておりますけれども、やはりずうっと一貫して相当長いいきさつを経てだんだん歩み寄ってきたわけでございますので、大体われわれが従来考えてきた線をさらに押し進めてこの問題を解決したいという考えのもとに、実は政府部内の意見も統一し、また研究すべきこともいろいろな点において多少ありますから、そういう研究も至急に命じているわけでありまして、われわれとしては先ほど申し上げたように、従来の方針のようになるべく早く解決する方向になお正そう努力したいと思っております。
  116. 田中稔男

    田中(稔)委員 最後に、今度はアメリカ関係でありますがジュアンダ内閣が成立して、スカルノ大統領の統率のもとに政局の安定は今後ますます強くなると思います。ところがマシュミ党を中心とする親米派の勢力がありまして、しかもこれが軍の二部と結びついてどうも破壊工作を行なっているような情報も附いておる。下手すると第二のヨルダンになるかもわからぬ、こういうふうな情報がしばしば伝えられております。私も向うに参りまして現地でそういうふうな事情も少し感じ取ったのでありますが、私は賠償問題について政府態度は変らぬとおっしゃるけれども、どうも少し消極的になっているのじゃないか。つまり早期に解決するということが少し困難になったようでありますが、その背後の事情にあるいはアメリカ側の何か意向でもあって、しかもそれがインドネシアにおける新米派の勢力なんかとも結びつき、この問題が停滞しているというようなことがありはしないかと、これは邪推のようなことでありますけれども、心配するのであります。このことにつきまして一つお答えを願いたいと思います。何時に、今度総理アメリカにおいでになるのでありますから、もしアメリカ側がインドネシアの政情について悲観的な見解を持ち、むしろ日本側にこの問題はもう少し待てなんというような妙な干渉がましいおせっかいをするようであれば、むしろ総理は、いやそうじゃないのだ、日本としては特にまたインドネシアの将来の友好なり経済協力貿易というようなものを考えても、すでにおそきに失したこの賠償品題は、早期に解決しなければならぬという事情を率直に訴えていただいて、アメリカ側から牽制されるのでなく、アメリカがもしそういう牽制をするなら一つそれを打ち砕いていただく。あるいはまたアメリカがインドネシアの政情の判断について誤まっておるならば、むしろこれを是正するくらいの積極的な態度で臨んでいただきたいと思います。その両点につきまして総理の御所見を伺いたい。
  117. 岸信介

    岸国務大臣 インドネシアの賠償問題解決につきまして、アメリカ側から何らのサゼスチョンやあるいはインフルエンスを受けたことは全然ございません、そうして今申しますように、私どもとしてはさらに一歩進めて、ほんとうに現実的に解決しようという段階になりましたから、さらに各省との関係におきましても少し研究を要し、意見の統一を要する点が出てきておりますので、つれは至急にやらしています。それから私がアメリカを訪問いたしました場合における心がまえについて田中委員お話は私も全然同感であります。決してアメリカ側から制約を受けるというようなことはありません、のみならずむしろ日本側からこういう問題に関する意見をよく述べるつもりでおります。
  118. 野田武夫

    野田委員長 岡田春夫君。
  119. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣は大へんお急ぎのようですから簡単に伺いますが、実はきょうどうしても伺っておかなければならなかったことは、先ほど中村法務大臣の御答弁になりましたことに関連して、実はこれは私の質問に答えての問題であったわけです。その基本の問題だけ簡単に伺って総理大臣に御退出をいただく、こういうふうにして進めたいと思います。やはりここで問題になりますことは、日ソ関係基本問題という点が一番重要な問題ではないかと思います。こういう点については前に私が岸総理大臣にお伺いしたのでありますが、岸内閣の外交政策と鳩山内閣の外交政策とはどういうように違うのかという点を伺いましたところが、そういう点では基本的に全然変りはない、同じものであるというように御答弁になったことを私ははっきり記憶をいたしております。ところがここで伺いたいことは、鳩山総理の場合に、これは日ソ共同宣言特別委員会の場合に私が鳩山総理に伺った点は、たとえばソビエトは事があれば日本に侵略しようというような考えを持っている国であると鳩山さんはお考えになりますか、こういうような点を聞きましたのですが、それについては、そういう感じは持っておりません。現在日ソの関係というものはあくまでも友好関係を貴重として進まなければならぬ、こういう意味の御答弁があったわけであります。そこで日本の国内のソビエトに対する態度、これについて続いて鳩山総理に、日本の国内において少くとも政府が反ソ的な態度をとったり、反ソ的な感情をあおるようなそういう言動を行うというようなことは、慎しむべきではないだろうかということを私が伺ったわけであります。ところがこれに対して鳩山総理は、いたずらに他国の真意を疑って、それによって災いを招くようなことをやってはいかぬ、そういうことをはっきり御答弁になっているのであります。こういう点についてもいろいろ実は私伺いたかったのでありますが、いわゆる日本政府としてソビエトに対して反ソ的な態度をあくまでもとらないように少くとも政府としては——国民の中においてはいろいろな意見があるかもしれません。これはやむを得ないと思う。しかし政府が反ソ的な態度をとるということは慎しまなければならないと私は考えるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  120. 岸信介

    岸国務大臣 私は今岡田委員お話のように、政府として友好関係のでき上っているソ連に対して、反ソ的態度をとるということは絶対考えておりません。
  121. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで総理大臣がはっきりそこまで御答弁になったとするならば、政府の機関の中で反ソ的な態度をとっているような事実があったとするならば、これをどういうようにお取り締りになるわけでございますか。
  122. 岸信介

    岸国務大臣 具体的に事実が私に明瞭いたしませんので、どういう事態をつかまえて反ソ的であると論定されるのか。今政府方針として私は友好関係の間においてどの国に対しましても、たとえば反ソとか反米とか反英とか、こういう態度はとるべきものでないと思っておりますから、それは政府機関はみな一致してその方針で進むべきものだと思います。従って具体的の問題がありますればそれに対して適当な処置を論じていかなければならぬと思います。
  123. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは共同宣言委員会でも前にも私は問題にしたのでありますが、公安調査庁で出しております「月刊国際情報展望」という正式のこれは印刷物で発行しているものでありますが、これを見ますと、四月号ですがこういうことが書かれております。時間がありませんから簡単に問題点だけ申しますが、たとえばソビエト側、共産陣営が盛んに自由陣営側の弱点をねらってくさびを打ち込もうとして焦慮しているように見える、その中で日本がかなり重要な共産側の攻略目標となっている、こういうことを書いたり、それから先ほど田中稔男君から御質問のあった今度ボリショイ劇場から舞踊が来るということについて、日本政府がそれに対する後援をやるというような点もあるのですが、これの準備をやったステパーノフという人が来たわけです。このステパーノフが来たことについて、やはりこれは四十四ページに、いわゆる文化攻勢を日本に対して盛んにやっている、そして経済と文化を通じて日本を攻略しようとしている、その中の一つの現われとしてステパーノフが来たんだ、そしてその中には、読んでみますと、三月三日のダニーロフ文化次官による日ソ文化交流計画の発表を初めにせきを切ったように打ち出された、対日文化攻勢を始めた。こういうような形で少くとも友好関係とは関係のないようなことが、盛んに「月刊国際情報展望」という政府機関誌に正式に実は発表されている。しかもぜひお聞きしなければならないことは何もこれは初めてではないのであります。これは鳩山総理のころに私が伺って、当時の鳩山総理大臣並びに牧野法務大臣は、はっきりこれは行き過ぎであると言われたのでありますが、この「月刊国際情報展望」の中にはチフヴィンスキー当時の公使が日本の赤化工作のために九千万円の金をばらまいたと伝えられるということまで書いておる。これははっきり書いている。こういうようなことを政府の機関誌が発表していいものであろうかどうか。こういう点は再三にわたるのでありますから、ぜひとも総理大臣としての見解を伺っておかなければならないと思います。この点はいかがですか。
  124. 岸信介

    岸国務大臣 これは国際情勢を分析し、全体の公安調査庁でまとめたものを発表しているのだろうと思いますが、今お読みになりましたようななににつきましては、字句の用い方等については、私も行き過ぎておるのじゃないか。ただ国際情勢そのものの分析、判断というものにつきましては、これは私も外交方針においても、今は国際情勢は大体において雪解けの方向になにしているけれども、しかし常に十分注意して、あらゆる面を慎重に検討していかなければならない、注意を怠ってはならないということは申しております。いろいろな点から国際情勢を分析し、そうしてその資料に基いて一つ判断をするというようなことは、公安調査庁としてはある程度しなければならぬところであろうと思います。ただ今私は「月刊国際情報展望」という雑誌は読んでおりませんけれども、今おあげになりましたようなところについては、穏当を欠くような印象を私も持ちます。
  125. 岡田春夫

    ○岡田委員 実はそれのみではないので、先月、四月二十三、四日に公安調査庁の八地方局の合同会議がありました。このときに、ここにおられる藤井調査庁長官も言っておられますし、それから甲谷という前の参謀本部の陸軍大佐だそうでありますが、甲谷課長がこういう発表をいたしております。これは東京新聞に出ておるのですが、「ソ連の武力を背景とする威迫政策は、小国の国民に対して意外な衝撃を与える可能性がある。こうした威迫政策がやがて日本に対しても向けられる可能性があることを予期して警戒する必要があろう。」このように、総理大臣は雪解けの段階に来つつあるというのに、今や公安調査庁の中においては、威迫政策が日本に向けられつつあるというような印象のことを実は説明いたしておる。藤井長官もそれと同じように、「威迫政策に訴えることのあるのは、大いに注意しなければならない。」と言っている。こういうことになって参りますと、いわゆる政府基本方針と、公安調査庁の対ソ態度、対ソ基本方針とが違うのじゃないか、こういう印象がどうも感じられてしょうがないのでありますが、こういう点が誤まりであるとするならば、私はあえてこれを委員会でどうこう言うのではありませんが、公安調査庁の方針を改めさせるように総理大臣がやはり方針をお出しになることが私は適当じゃないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  126. 岸信介

    岸国務大臣 ただ私も、この新聞、雑誌等に出ておるなにでありますけれども日本の北の方を取り巻いている武力配置等が——いろいろな雑誌等に出ておるものを散見してみましても、とかくある種の武力の配置が日本の外においてやられておるという事実はあるわけでありまして、さらに公安調査庁等におきましては、そういう事実も、私が新聞、雑誌等で見ておるよりもより詳しい情報も持っておるのではないかと思います。従ってそういうような判断が出たのだろうと思いますけれども、しかし私自身は、先はど申しまたように、やはり国と国との間に友好関係を結んでおる以上は、政府としてはこの友好関係を進めていく方向政府機関もともに努力すべきことは当然であります。また友好国の相手方においても、そういう意味においてすべての施設をしてもらわなければならないということは当然だと思います。従いまして、政府機関等における今の言動や発表等につきましては、そういう点について十分に注意を促すようにいたしたいと思います。
  127. 岡田春夫

    ○岡田委員 それで岸総理大臣が公安調査庁の問題について十分注意を払っていただくために、私は御参考までにもう一点だけ申し上げて総理に対する質問は終りたいと思いますが、公安調査庁というものについては、国民は非常な疑惑を持っているのです。今言ったような反ソ宣伝の機関誌を出すとか、あるいは総理大臣が行過ぎであるとか言うようなことを言うとか、そればかりじゃなく、経理の面においても実は非常に問題がある。総理大臣は綱紀粛正の問題を取り上げておられますけれども、この公安調査庁こそが最も経理の面において不可解な役所なのです。三億一千万円の調査費というものが今度予算が増額になって出ている。これをどういうふうに配賦しているかというと、地方の八公安調査局に総額で全部割当をしてしまう。それを全部局長に割当してしまって、そのあとの使い道は全然わからない。その会計検査院でさえわからないという証拠をここに申し上げますが、四月十五日の参議院の決算委員会今で会計検査院の第二局長の保岡という人がはっきり答弁しておる。これを読んでみます。「今、経理部長がおっしゃいましたように、内容の点について非常に疑義がある、変なことに使ったと思われるときには追及いたしますけれども、調査活動費として、実際は借金のために出したとか、そういうところ、どういう内容について金を出したかということについては、われわれの方では伺ってもあまり話していただけない」と言っているのです。「またそういうものは秘密的なものであるから聞かないことにする」ということになっている。ですから三億円の金を割り当てて、八つの公安調査局に割り当てる。そのあとは調査局の中にリストを作ってあるというのだが、それを一体どういうように使ってあるのかということは、会計検査院でさえわからない状態になっている。公安調査庁も役所であり、われわれの税金を使っているのですが、一体こういうことでいいかどうか。こういう面から司総理大臣は、先ほどの問題ともからんで、一つ公安調査庁について抜本的な方針をおきめになって改革をされることが必要だろうと思いますが、御参考までに申し上げると同時に、御意見があれば御意見を伺っておきたいと思う。
  128. 岸信介

    岸国務大臣 全体として一つ十分検討してみます。
  129. 松本七郎

    松本(七)委員 今の両君の賛同に関連して総理に、これは中村法相も藤井長官もおられてちょうどいい機会ですから、勧告かたがたぜひ一つ質問したい。それは公安調査庁がいろいろな疑いの目で見られているが、今後いろいろな面から検討しなければならぬ問題はたくさんあるのです。一つ私がここ百で指摘したいのは、その公安調査庁と政党との関係なのです。公安調査庁がただでさえ非常に困難な仕事をされておるそのときに、公安調査庁から法務省、それから最高の責任総理というように筋を一通した行政が行われればまだ問題はいいと思う。具体的な例を申し上げますと、ソ連や中国に渡航申請をする。これは窓口である外務省がやりますが、今御承知のように公安秩序その他の面から調査するわけです。それは公安調査庁が当っているわけです。公安調査庁としてはそれについての資料を作ります。これは職務上当然です。そしてその資料に趣いて、これは渡航を許すべきか許すべからざるかは、公安調査庁としても意見は持つだろうと思う。これは持ってもいいと思う。ところが、かりに公安調査庁がこの程度ならよかろうという結論が出ても——それは法務省を通じ、それから外務省を通じ、最高責任外務大臣総理ということで最後の決定がなされれば、私どももそのはっきりした筋がわかるわけです。どうしてこれが拒否されたか、行くことができたかわかるわけです。ところが実情はそうでない。公安調査庁もなるほどその材料が間違っているか、正しいかは一つの問題ですけれども、とにかく材料だけ提供する。ところが与党なら与党の、行政府には関与しておらない人が、公安調査庁に圧力を加える事実が今までずいぶんたくさんあった。そのために、公安調査庁としては許してもいいと思いながら、あるいは外務省も渡航を許可してもいいと考えながら、実は政党からの圧力によってこれができないでいるという事実がたくさんあるのです。政党はもちろんそういう意見を持つことは必要です。けれどもそれは国会において論議すべきである。かつ政党から出された大臣を通じてそれは国民の前に明らかにさるべだと思うのです。それをなされておらないために、国民から見れば疑惑を打ち、公安調査庁が痛くもない腹をまた探られるというのなら、公安調査庁としてもずいぶん迷惑千万な話だと思う。そういうことで一番迷惑をこうむるのは、渡航申をしていつまでも待たされておる国民の側にあるわけですから、こういう点を岸総理大臣なり外務大臣はこれから大いに改革をしていただきたいと思う。ちょうど法務大臣もおられるので、勧告意見として私から申し上げ、御見解を総理からも法務大臣からもお伺いしたいと思います。
  130. 岸信介

    岸国務大臣 そのことに関しましてはいろいろな方面から御注意もございまして、最近はよほど改まっておるはずでございますが、なお十分気をつけます。
  131. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 総理大臣と一様に考えます。
  132. 岡田春夫

    ○岡田委員 先ほどの問題に関連して、私は非常に、重要だと思っているので法務大臣にお残りをいただいたのですが、まず基本問題として破防法の問題について一、二伺っておきたいのです。ここに破防法を打っておりますけれども、破防法の第三条、第五条、第二十七条、こういうところには相当きつい制限を出している。そのきつい制限というのは、ほかならぬ憲法によって規定されている基本的な人権、思想、集会、信教の自由についてもこれを侵害させないように、こういう形で、そういう点の厳格な制限既定を設けているのですが、破防法に対して、そういう点から見るとやはり拡張解釈を許さないというのがいわゆる法務省の基本方針でなければならないと思うのですが、この点はいかがでありますか。
  133. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 ただいま岡田委員御指摘のように、破防法では、思想、信教、集会、それから結社、学問の自由等、それを侵してはならないということが明確に規定されております。従いまして、これらの限界は常に十分注意をいたしまして、厳に戒めていかなければならぬ、かように考えております。
  134. 岡田春夫

    ○岡田委員 それで、先ほど法務大臣田中委員に対する御答弁の中で、日中、日ソ、平和のこれらの三団体は、破防法の対象とは考えておらない、こういうお話だったのですが、それではその対象とは考えておらないという法律的な根拠といいますか、それはどういう点にありますか。破防法のどういう点から見てこういう団体が対象にははらないという御見解をおとりになっておるのか。いわゆる共産党団体ではないからその対象ではないという意味では、破防法の解釈からいって私は正確ではないと考えます。この点はいかがですか。
  135. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 結局暴力主義的破壊活動を行う団体とは見ていない、こういう趣旨であります。
  136. 岡田春夫

    ○岡田委員 それからもう一点は、私の質問に答える藤井政府委員の答弁は、どうもこの三団体を現実に調査しているような印象を実は相当与えているわけです。それをあげると長くなりますかう省略をいたしますが、しかし現実にはこの三団体を公安調査庁とししは調査した事実はないのでありますか、あるのでありますか、これはどうなのです。
  137. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 過去にも団体それ自体調査した事例はないと思います。
  138. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう一点だけ伺いますと、七十二億円は正確だとは思わない、こういうことを先ほどお話のように藤井長官は答えております。正確だとは思わないということは、何か公安調査庁が調査していなければ、正確であるかごうかの判断ができないのではないかと私は思う。何か別な集計方法でも独自におとりになっておるのか、正確であるかないかというのは、公安調査庁が独自の見解を持っており、そのもとの調査があったからこそ正確でないという判断が出たの、ではないですか、どうですか。
  139. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 これは私も速記録を読みまして、長官その他にも確かめてみたのであります。ジャパン・タイムスにああいうような記事が掲載をされましたので、一応アメリカ大使官側にどういうところからああいう談話が出たものかということを確かめたところが、いろいろな団体の昨年一年間における活動賞金の集計をしたものであるということであった。調査庁側としてはどういう計算でやったのだろうということでやってみましても、どうもつじつまが合わない。従ってそういう趣旨から、いろいろな団体の昨年一年間における活動資金であるという意味においても、七十二億という数字がなかなかこららに——調査庁側で、そういう評だからそういう趣旨において計算をしてみても、いろいろな団体には公式に発表された会計報告とかいろいろなものがありますから、そういうものを集計してみましても、どうも一致するような数字が出てこないというようなことであったそうであります、そういう趣旨から、七十二億というのが一体正確な集計だと思うかという御質疑に対して、長官は正確であるとは考えられないと思っていない、こういうお答えをしたいきさつのように私は承知いたしております。
  140. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではこれは委員会の速記録の中で重要な点の取扱いだけを法務大臣に伺っておきたいと思います。  たとえば田中織之進君の質問に答えて——田中織之進君は「日中友好協会の活動のどの部分が破防法に触れるという解釈なのですか。これはきわめて重大な問題ですから、長官はっきりと御答弁願いたい。」そうしたら「日中友好協会と国際共産主義国であるソ連、中共との関係は、公然資料にも出ております。」いわゆる日中友好協会とソ連との関係は公然資料にも出ておる。「一般情勢判断としてわれわれはすべての自項を調査しておりますが、公然資料にも出ておるのでありますから、それに基いて調査しておる。」これは日中友好協会を調査しておるという。それから私が「共産党の関係団体であるということを、あなた自身が勝手に判断をして調査できるというのは、法律に違反しているじゃありませんか。」とこう開いたら、これに対して藤井長官は、「共産党の活動の調査の一端として調査しておるのであります。」と答えられている。このように日中友好協会を調査しておる。あるいは田中織之進君の質問に答えて、破防法に基いて日中友好協会を調査しておる、このようにはっきり言っておる。そういう事実がなくて間違いであるならば、この際法務大臣からこの速記録についての取扱いについてもはっきり御言明をいただかなければならぬと思うのですが、この点はいかがですか。
  141. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 私もこの速記録を読んでみますと、答弁が非常に端的で、断片的で、明確を欠いておる点が、また読んでおって自然疑問の生じてくるような部分があるように考えます。  そこでお答えをいたしますが、公然の資料というのは一体どういうことか、私も当該の藤井長官等に確かめてみましたが、これは要するに公安調査庁として破壊活動防止法に基いていろいろな調査をいたします。共本的にはやはり品内国外にわたる一般情勢というものを基礎として集約した調査をしなければなりませんので、そういう一般情勢の調査をしておる。その一般情勢の調査はしからば何でやるかといいますと、関内国外で発行されます刊行物、こういうものに出ておるいわゆる公然資料、これを公然の資料というのですが、そういう刊行物に出ておる資料に基いていろいろ基礎的な一般情勢の調査をしておる、こういう趣旨のようであります。従いましてここに藤井長官が答えております、一般情勢判断としても事項を調査しておる。その公然の資料に基いてやっておるというのは、今私が申し上げたような趣旨のようでございます。  なお先ほど来御指摘のありました三団体に関する関係におきましては、その団体自体は、先ほども申し上げましたように、暴力主義的破壊活動を行う団体とは見ておりませんので、その団体の経理とか、活動状態とか、そういうものを特別に調査の対象として調査しておる事実はないのでありますが、この団体構成員の中には共産党もおりますので、若干そういうような動きについて調査しておることはあるようでありますが、団体自体をあるいは団体自体の活動等を調査対象として調査しておる事実はない、こういう趣旨でございます。
  142. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで私の伺いたい点が出てきたわけでありますが、実は共産党員であるからといって、全部破防法で調査できるのだという解釈には、先ほどの拡張解釈をしないという法務大臣の御解釈から言うと、私は問題があると思う。そういう点は中村法務大臣がことしの三月十八日の予算委員会で島上君の質問に答えてはっきりと答弁をされております。それは島上君が「それじゃもしそれが共産党の会合だったらどうですか、内偵する必要がありますか。」こう質問をした。そしたらあなたが「問題は破壊活動防止法に触れるような暴力主義的なものであるかどうかということによって、具体的に判断がきまってくるのでありまして、一がいには申しかねると思います。」このようにはっきり答えられておる。問題はこの点にあると私は思う。共産党具であるから全部調査できるのではなくて、破壊活動防止法のいわゆる拡張解釈をしない三条、九条、二十七条の規定に基いて、共産党員の中でその危険性があった場合に、初めて破壊活動防止法の対象になるということが問題になるのであって、共産党であるからだれでもいいのだ、日中友好協会の中に共産党がいるから共産党員は調べていいのだ、こういうことにはならないと私は考えるのですが、この点はいかがですか。
  143. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 その点は御指摘の通りであると思います。問題は、予算委員会で私がお答えをいたしました速記録を御朗読いただきましたが、その通りに私ども考えております。たといどなたが、どういう思想を持っておろうとも、思想を持っておるということだけで破壊活動を行う人間であり、あるいは団体である、こういうように即断をすることは慎しむべきでありまして、ただ問題は過去の歴史あるいは出版物、日本共産党にいたしましても過去の出版物やあるいは動き、これらから判断をして、先ほど申し上げましたように、暴力主義的破壊活動と疑われるものについては、この破防法の第四条以下におきまして公安調査庁はいろいろな権限を与えられております。この権限を行使して、たとえば公安審査委員会に提訴をする権限もございます。提訴をいたしますのには、その提訴の証拠、となるべき資料を常に整えておく必要とかありますから、そういう破防法に明定をされました目的に向って川、要の調査をするということが調査庁の本来の使命である、かように考えております。
  144. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこでもう一点伺わなければならない。それは破防法の解釈の問題ですが、破防法第五条に「公安審査委委員は、団体の活動として暴力主我的破壊活動を行った団体に対して、当夜団体が継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときは、云々と書いてある。共産党が過去において破壊活動をやった事実、客観的な証拠がある。それだけではなくて将来継続して、反覆して破壊活動を行うという明らかな客観的証拠がなければならない。こうでなければ破防法の対象にはならないという点が明確に実は規定をしてあるわけであります。そういう点からいって、過去に、そういう事実があったからといって、何でも調査できるのだ、そういうことだと憲法のいわゆる基本的人権を侵害する危険性が出てくると思うのであります。中村法務大臣は在野法曹として長い間活躍されておられましただけに、こういう点は厳格に行なっていただかないと、そういう口実のもとにどんどん調査するということで、やがてはこれは共産党ばかりでなくて、あらゆる団体に及んでくるという危険性がありますので、ここの点は一つはっきりしていただかなければならぬ。しかも注目すべきことは団体の活動として、共産党員の個人の活動ということではなくて、共産党して意思決定をしたということにおいて初めてこれが問題になるのだと思うのです。そこでその点についての解釈上の問題が一点です。  第二の点は、それでは共産党の意思決定は現在はどうであるか。たとえば  過去においてそういう問題があったとしても、最近の問題としてわれわれが新聞その他で読んでおる限りにおいては、党の六全協の決定以来、議会を通じて政権を握るという方式に改めた、こういうことになってくると、これは破壊活動という第四条に規定する刑法上のあのような破壊活動ということには該当しないということが、団体の活動とし明らかになってきているのじゃないか。そうすると、共産党であるからといって全部が全部それを適用するということは、明らかに行き過ぎである、拡張解釈になると思うのですが、こういう具体的な事実と関連をさした上で一つ伺いたいのであります。第五条の解釈並びにその具体的な事実関係、この点をもう一ぺん伺っておきたいと思います。
  145. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 第五条に今御指摘になりましたように「継続又は反覆して」云々とこうございますが、要するに公安審査委員会が公安調査庁の提訴に基きまして、団体の活動を制限するという決定をいたしますのには、「継続文は反覆して」云々とこれに当らなければならないという規定を設けたのが、第五条の趣旨であると思うのであります。そこで問題は調査庁といたしましては、こうした事実があるかないかを常時調査をいたしておりまして、もしそういう事実が明確になりました場合においては、公安審査委員会に提訴をして、第五条に該当するものは該当するという団体の活動の規制の決定を受けなければならぬ、こういうことになりますので、調査をいたします対象といたしましては、問題は暴力主義的な破壊活動を継続または反覆して行うかどうかを調査するのではなくて、そういう結論が明確に出れば、これは問題なく公安審査委員会に提訴すべき事項であります。また提訴をした場合に公安審査委員会が決定すれば該当することになりますが、問題は公安調査庁としては第二の問題に対するお答えともあわせて申し上げますが、そういう暴力主義的な破壊活動が継続または反復されるかどうか、そういう事実があるかどうか、動きがあるかどうかということを調査するのが、調査庁の本来の使命であると私は思います。いずれにいたしましても、破壊活動防止法には相当厳重な、いろいろな制限や制約がございますので、御指摘になりましたように調査庁の活動について行き過ぎのないように、本来の法律によって与えられた使命から逸脱をいたしませんように、私どもとしては厳に戒めて参りたいと考えております。
  146. 野田武夫

    野田委員長 岡田君、時間もだいぶ経過しておりますから簡潔に願います。
  147. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣お急ぎのようですからこれで終りますが、問題は先ほどの御答弁の中で重要な点は、共産党員だからといって全部調べるわけではないのだ。いわゆるこの破防法第三条、第四条、第五条の規定に基くものとして危険があるときに、初めて問題になるのだ、こういう点は重要な点だと思うのです。これを再確認しておきたいと思うのです。そうでなければ共産党員であれば何でも調べるということになると、これは共産党はやはり合法的な団体なのであるますから、非合法な団体であるならそれはそういうことは言えるでしょうけれども、合法的な団体である限りにおいては、共産党であるから何でも調べるのだということでは、これは破防法の精神を間違っていると私は考えますが、この点が一点。  それからもう一点は、もしそういうような事実が調査員の中でもしあったとするならば、これに対してどういう処分をおやりになりますか、こういう点についても伺っておきたいと思います。
  148. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 この点は問題はいろいろな角度から関連をして参りますから、関連をして内偵をする。しかしその内偵をすることや何かによって相手方の基本的な人権を傷つけあるいは自由を束縛する制限するということがあってはならないのでありまして、この点は厳に慎しむべきことでありますが、問題はそのものずばりで常に調査できるものではありませんから、それに関連をいたしまして内偵をする。その人の人格を傷つけたりあるいは活動を妨げたりしないことに万全を期しまして、そういうことのないようにしていくことが非常に大事な点ではないか、かように考えております。
  149. 岡田春夫

    ○岡田委員 もうこれで希望を述べて私は終りにしますが、その点はやはり共産党員貝であるからといって全部調査するということでは、内偵にしても——内偵というのはやはりある意味での自由の制限ということを意味すると思うのです。内偵にしても、そういうような内偵を許すということであるならば、予算委員会であなたが御答弁になった意味とはこれは違ってくるわけです。共産党の会合でも、あなたの御答弁によると、暴力主義活動をやっているかどうかによって違うのだ、会合で内偵する場合と内偵しない場合があるのだ、はっきりお話しになっておるのですから、やはりその精神に基いて、少くともこれは進んでいただかなけなければならない。私は大体共産党でさえ、合法団体である限りにおいて、内偵をするということさえこれは誤まりだ、もし内偵をしたり調査をするというなら、これは非合法団体なら別ですが、内偵をするという限りにおいては、これは調査をするというところに問題があると思うのですが、こういう点について私の希望としては、破防法の拡張解釈でないような、一つの厳格な適用をぜひやっていただきたいし、それから相当調査員では問題を起している連中がおります。たとえば私はここでは時間がありませんから言いませんが、ある調査員などはめかけをかこって、これは大宮のどっかに百万円近いめかけのうちを買ってやった。これはさっきの三億一千万円の使い方の問題です。こういう問題なんかも、いずれ私は具体的な事例をあげて法務大臣に伺って参りたいと思いますが、やはり調査員の活動についてはもっと厳格に、行き過ぎの拡張解釈の問題のみならず、こういう点からもぜひ一つ厳格にやってもらいたい。しかも破防法四十五条においては、拡張解釈をやった調査員は三年以下の懲役または禁固に処することができるわけですから、そこまで一つ在野法曹として活躍された法務大臣としては、公安調査庁については目を横に向けているのじゃなくて、この際思い切ってやっていただきたいことを希望いたしまして、私の質問を終りといたします。
  150. 野田武夫

    野田委員長 関連事項について発言を求めておられます。これを許します。川上貫一君。
  151. 川上貫一

    ○川上委員 この問題は私の党にだいぶ関係があるのでひれはゆっくり聞かなければならぬのですが、これは外務委員会です。国際関係の問題です。ですから他の機会に法務委員会でゆっくり実は聞きたいと考えておる。  それできょうは一つだけお伺いしておきたいと思うのは、今法務大臣が言われた、共産党員であるからというだけの理由で調査することは間違いであるという意味合いです。ところが実際には調査庁はやっておるのです。共産党員なるがゆえに、というだけでやっておるのです。しかしきょうはこれを論争するつもりはありません。これは法務委員会でやる問題ですが、事実はやっておるのです。そこで、ここで聞いておきたいのは、たくさんそういう事実はあります。データはたくさん出しますが、そういうことは法務大臣としては、公安調査庁が行き過ぎである、こう解釈してよいかどうかということをはっきり一つお聞かせ願いたい。  第二点は、調査しておるということを藤井長官は本委員会で言うておる。それどころじゃない。国会議員を調査すると言っておるのです。これは破壊活動をしそうだから調査するというのじゃない。共産党だから調査するという意味のことをたくさん言うておるのです。これもまた一々私はあげませんが、それを全部藤井さんは取り消すのかどうか。それが生きるのかどうか。これは間違いなのかどうか。もしそれが間違いだとすれば、私の今聞きおるのはこの点だけですから、この際に藤井さんがそれは間違いだったということを取り消されるのが適当だと思う。読んでみたって、調査するという意味のことは言うてあるのですから。  第三点としては、事実共産党員なるがゆえにというだけのことで調査しておる事実が、私たちが法務大臣に提出した時分に、実際に、調査の上で事実公安調査庁がそれをやっておる場合には、法務大臣はどういう御処置をおとりになるのであるか。この三つの点について、簡単でけっこうですからお答えをいただきたい。
  152. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 第一点と第三点は関連があるようでございますから、一緒にお答えをいたしたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、もちろん何人にせよ、その所持しておる思想のいかんによってのみ公安調査庁が調査対象にするということはよろしくないことだと思いますが、問題は先ほども申し上げましたように、破壊活動防止法に該当する団体あるいはその構成員であるかどうか、こういうことを調査いたしますのには、すべて何事にかかわらず調査というものは、そのものずばりの結論は出ませんので、いろいろ関連した一般情勢その他人の動き等も実際上はある程度調査をいたさなければ結論が得られませんので、そういう趣旨からの調査であるならば、これはやむを得ない範囲と思うのであります。しかし共産党員であって、共産党に籍を置いておるからということだけで、その人が、先ほど来申し上げたように、破壊活動防止法の活動をする人間あるいはその団体に該当するという関連も何もないのに、その人の迷惑になるような調査をするということは、これは慎しむべきであり、行き過ぎであろうと、私どもはかように考えております。従いましてこれはいろいろな場合に具体的な事実に関連をいたしませんと、抽象的に共産党員を調査することはすべていかぬ、党員なるがゆえに調査してはいかぬ、こうも簡単に言い切れませんし、いいとも言い切れない、こういう非常にデリケートな関係にあるように私は考えるのであります。  それから先般の藤井長官の発言のうち、私もこの速記録をいろいろ読みましたら、国会議員であっても調べる場合がある、あるいは調べるというようなことを言うておるようでございます。これはもちろん国会議員としての、共産党の国会議員であるからというので、国会活動や国会議員としての活動を調査するということは絶対にあり得べからざることでありまして、そういう趣旨ではないと思います。ただ議員としての政治活動や、議員としての活動ではなしに、その人が公安調査庁の調査対象に該当する団体に属しておったり、あるいはそういう行動をとられた場合には、たとい国会議員の地位を持っておられても調査する場合がある、こういう趣旨を述べたことだと思うのでありますが、その日の藤井長官の答弁を見ますと、非常に長い質問に対して、答えることが一行か二行で、あまり前後の含みのない答弁をしておるところに、いろいろ誤解を生じた点もあろうかと思いますから、その点の一つ御理解を願いたいと思います。
  153. 野田武夫

    野田委員長 これをもって国際情勢等に関する質疑を終ります。
  154. 野田武夫

    野田委員長 次に、国際原子力機関憲章の批准について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の第二次協定締結について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の協定第一条の特例に関する公文の交換について承認を求めるの件及び千九百五十三年十月一日にロンドンで署名のため開放された国際砂糖協定を改正する議定書の受諾について承認を求めるの件を一括議題といたします。  質疑を許します。岡良一君。
  155. 岡良一

    ○岡委員 先ほどの核兵器の保有に対する総理の御答弁には若干疑義を残しました。そこで、本会議の時間が切迫いたしておりますので、私簡単に所見をただしたいと思います。従ってまた率直に簡潔に御答弁を願いたいと思います。  そこで、まず宇田国務大臣にお尋ねをいたしますが、先ほど核兵器の保有に対して述べられた総理大臣の見解に対して、宇田国務大臣としてもこれに同調せられるのでありますか。
  156. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 さようでございます。
  157. 岡良一

    ○岡委員 総理の御答弁は、このように答弁をされました。まず第一点としては、西ドイツのゲッチンゲン宣言にうたわれているように、またそれに同調している日本の科学者が声明を発しておるように、いわゆる広島級以上の、またそれに近いような大きな破壊力を持っておるところの原水爆の利用というものは、もちろん政府としてはこれに賛意を表しがたい、しかし、憲法解釈上、科学技術発展に伴って小型の原子兵器というものが出現するかもしれない、このときには自衛権の範囲内においてそれが保有は許され得る、こう答弁をされました。この御見にあなたは同調されるのでありますか。
  158. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 憲法解釈としてそういうことは成り立ち得ると考えております。
  159. 岡良一

    ○岡委員 それでは、原子力基本法第二条には、御存じのようにわが国における原子力の開発並びに利用というものは平和の目的に限る、はっきり平和の目的ということに限定をされております。ところが、小型の原子弾頭が日本の自衛隊によって装備されるということも、自衛の範囲においては認められる、事実上あなたはそれを認める、こういう立場にお立ちでございますか。     〔委員長退席、須磨委員長代理着席〕
  160. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 原子力幕本法の第二条によるところの内容と、憲法九条の解釈とは、必ずしも私は一致しないものと考えております。すなわち憲法第九条の場合は、ただいま申されたような解釈が成り立つと思うのでございます。しかし、先般法制局長官が言われたように、憲法の解釈の範囲の中において、原子力の基本法によるところの制限はある。すなわち軍事的目的を助長する方法でこれを利用、開発、研究することはできない、こう考えております。
  161. 岡良一

    ○岡委員 私ども考えによれば、憲法はわが国の基本法である。従って国の万般の政治のあり方を示す根本的な方針を示しておる。それを具体化されたものとして、原子力はいかにあるべきかということを規定したのが原子力基本法であろうと思います。その第二条には明らかに原子力の利用は平和の目的に限る、こう限定をしてあるわけです。そうなりますれば、日本の自衛隊が原子弾頭を装備として持つということは、明らかに憲法上からも、また基本法上からも事実問題としては認められない。こうあるべきではないでしょうか。
  162. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 法律上の解釈のことですから法制局長官……。
  163. 岡良一

    ○岡委員 いや、待って下さい。これは憲法七十三条にもはっきり書いてあるのです。法律の執行については内閣は忠誠忠実でなければならない。しかもあなたは原子力基本法を執行する担当の責任者ですよ。あなたがこの重大な問題について法制局長官にお譲りになるということは、責任を回避するものといわなければならぬ。だからあなた御自身の率直な御見解を私はお聞きしたい。
  164. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 憲法九条のワクの範囲内における基本法のワクでありまして、これは憲法のワクの中において平和目的に利用するということ、そしてそれは軍事的目的を助長するような方向に利用されない、こういう内容と考えておりまして、それは憲法と違う法律の基本の上に立っておると私は考えております。憲法のワクの中におけるところの原子力の平和利用に関する特殊立法とわれわれは解釈いたしております。
  165. 岡良一

    ○岡委員 原子力の利用は平和利用か軍事利用しかないはずです。従って特に平和利用と限定したのではありませんか。そこで私は端的に黒か白かのお答えを願いたい。あなたの御解釈によれば、あなたの御方針によれば、日本の自衛隊は原子兵器の装備を持つことが認められるのですか、認められないのですか、あなたの方針を聞かしていただきたい。
  166. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 平和目的と書いてありますが、平和目的という中で、原子兵器に関するワクをこの中にどういうふうに織り込んでくるかということについては、たとえば機関車とかあるいは商船であるとかそういうものに原子物質が使われた場合に、それが究極において目的が軍事的目的を助長するような方法でありましたならば、それは適当でないと考えますが、ただ原子力基本法二条にいうところのいわゆる平和目的にそれが果して抵触するかどうかということについては、原子兵器という言葉の概念の内容を明確にする必要がある、こう考えます。
  167. 岡良一

    ○岡委員 だから私ははっきり質問しておるのです。原子弾頭の装備を持つことが許されるかどうか、こう言っている。
  168. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 原子弾頭の装備の問題というよりも、私は研究、開発、利用を範囲とするところの平和目的の中においてはそれは認められないものであると考えております。
  169. 岡良一

    ○岡委員 日本の自衛隊は、いかなる事由があろうとも原子弾頭の装備を持つことは認められない、こう政府としてはその方針を確立しておられるのですか。
  170. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 原爆とか水爆に類するような殺傷効力を持つような場合においては、そういうものは、これより当然除外されるものであると考えております。
  171. 岡良一

    ○岡委員 それではそれよりさらに小型のものであれば、原子弾頭を装備することは認められる、そうおっしゃるのでしょうか。
  172. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 憲法の解釈論としては、理論的にはそういう自衛そのものの内容にはそれはあり得ると考えております。しかし基本法の内容にそれが抵触するかせぬかということは、兵器ということの概念をもう少し明確にいたさなければならぬというのが法制局の見解であります。
  173. 岡良一

    ○岡委員 私は何も法制局の見解を聞いているのではない。だから原子弾頭を自衛隊が持つことが認められるかどうかということです。それは何も憲法上自衛云々という問題ではない。原子力の利用は平和か、軍事かしかない。だから平和目的に限ると限定されている以上、人を殺傷し得るそういう原子弾頭を持つことは、当然許されないという見地に立って、はっきりしたことを私は聞いているのですよ。
  174. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 原子兵器を現在持つという考えがありませんから、そういうことについての具体的な立法措置をどうするかということは、将来の問題として残ることだと思います。しかしそういう場合におきましては、この原子力基本法をもってあらゆる解釈を拡張していくということは適当でないと私は考えます。従ってそういう場合におきましては、別の立法措置をとるのが適当である、こういうふうに思っております。
  175. 岡良一

    ○岡委員 そうすると、将来はいわゆる自衛にふさわしき原子弾頭を持ち得る可能性もある。従ってその場合のことを予想して、政府としては、原子力基本法にうたわれた原子力の利用は平和の目的に限るというこの条章を改正する意図もある、こう解釈していいのですか。
  176. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 原子爆頭を持ってどうこうするという意図は、われわれはただいまのところは全然持っておりませんから、そういう意味において、そういうことを前提にしての立法措置をどうするかという問題は、今後の問題として残して差しつかえない、こういうふうに思います。
  177. 岡良一

    ○岡委員 いろいろ行ったり来たりいたしますが、結論といたしましては、現在政府日本の自衛隊が原子弾頭を装備として持つという意図はないし、また原子力基本法によっても、それは現に禁止されておるということを承認されますか。
  178. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 総理との御質問の場合に話が出ましたように、広島の場合、あるいは長崎の場合、あるいは原爆、水爆に類するような殺傷効力を持つ兵器であります場合には、われわれは当然これを排除すべきものと考えておりますが、ただ兵器の進歩する過程においてどういうものが現われてくるのか、あるいはそれが非常に危険性の少いものであるのか、われわれには原子兵器というものについての概念がよくわかりませんので、ここで原子兵器という言葉の内容を明確にいたしません限りは、それについて平和目的というものの法律上の概念の範囲がそれと抵触するかしないかということは、現在持ってはおりませんし、また持つ意思もない、ただいまといたしましては、その平和目的というものの言葉の内容について、これと抵触するかせぬかという点は、将来に待ちたいと思います。
  179. 岡良一

    ○岡委員 もう少しはっきり御答弁願えれば、時間がきわめて能率的に運ぶのですが、自衛隊は、現在基本法が厳としてある限り、いかなる小規模のものであろうとも——人を殺傷する目的でなければ、弾丸というものは考えられないでしょう。これは常識的にいったら平和目的ではないでしょう。このようなものは、大規模であろうと、小規模であろうと、自衛の目的であろうと、侵略の目的であろうと、絶対に持てない、こう私どもは解釈をしておるのであるが、あなた方はそうじゃなくて、小型のものが将来できてくれば、原子力基本法を改正してでも持とうというような御意図をお示しになるので、話が行ったり来たりしておるのです。もう一ぺん、はっきり言いますが、現在は基本法の命ずるところは、大型であろうと小型であろうと、侵略の目的であろうと防衛の目的であろうと、原子力を軍事的な利用——平たく言えば、人を殺傷する目的に使うような装備は、日本の自衛隊はこれを持つことが許されない、こういう解釈をあなたはお持ちになるのかどうか、イエスかノーか、はっきり言っていただきたいと思うのです。
  180. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 兵器の進歩の段階において、どういうものが現われるのか、私たちは的確な資料を持ちませんから、それはよくわかりません。従って原爆、水爆等の非常に破壊力の大きいものの場合には、私たちは当然これは考慮すべきものと考えておりますが、それが兵器の進歩の状況によって、どういうものが現われてくるかわからぬただいまといたしましては、平和目的という範囲内に、それが抵触するかしないかということは即断をすべきものではない、そういう解釈をとっております。従って抵触するような場合がありました場合には、当然これに対しては別途の立法措置をとって、それを明確にいたすべきである、こういうふうに考えます。
  181. 岡良一

    ○岡委員 どうもわかりません。それでは、たとえば小規模な原子弾頭が発明され、実用化されるとして、これが平和目的に使用されるというのは、具体的に一体どういうことなのですか。
  182. 宇田耕一

    ○宇田国務大臣 それは憲法節九条に基くところの自衛権の当然の範囲の内容の中において、平和目的ということはあり得ると考えております。従ってそういう意味において、われわれは殺傷力の大きいようなものが、もしあるとしました場合には、基本法第二条の解釈上の疑義がありました場合には、そういうことによって別の立法措置、あるいは必要によって法律上の制限措置等を加えることは必要であろうと考えております。
  183. 岡良一

    ○岡委員 そうすると、要するに、あなたのおっしゃることは、憲法第九条によって自衛権が認められておる。そこで科学技術の進歩に伴って小型の原子兵器なるものが将来出現するかもしれない。このときには、原子力基本法等を改正するか、あるいは別の法律措置を講じて、自衛隊をして自衛隊の装備にこれを保有せしめる、こういう意図であるとおっしゃるのですか、はっきりと端的なところを言っていただきたいのです。
  184. 林修三

    ○林(修)政府委員 実は先ほどから御質問とお答えを伺っておりますと、宇田長官は決して持とうというような意思を持っておられるのでも何でもない、結局客観的なことを言っておられるにすぎないわけです。従いまして、今、最後におっしゃいました、将来そういうものができた場合に改正するのかというお話でございますが、改正するつもりも何もない。別にそれはそのときのことでございましょうし、今の政府としては、そういう改正をしてでも持とうというような意図を持っておらないことは、これは総理からも宇田長官からも何回もお話しておることだと私は思います。そう伺っておるわけでございます。これは多少要らないかもわかりませんが……。
  185. 岡良一

    ○岡委員 要らぬです。それでいい。  現在原子力基本法が現存する限りは、自衛隊は、たとい大型であろうと、小型であろうと、防衛の目的であろうと、侵略の目的であろうと、原子爆弾というものを持つ意思はないのである、こう了解していいわけでございますね。
  186. 林修三

    ○林(修)政府委員 現在において政府がそういうものを持つ意思がないことは、はっきりしておると私は思います。
  187. 岡良一

    ○岡委員 もし持とうとすれば、原子力基本法というものを改正するという手続を踏まなければならないわけですか。
  188. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は、先ほどからも御質問がございまして、平和の目的とは何だというような御質問がございました。平和的利用と平和の目的というものは少し違うのじゃないかというような御質問がございました。私ども実は立案に参加したわけではございませんので、立案の御意図はよくわからないのですが、ただ言葉だけを解釈しますと、平和の目的を究極の目的と解釈すれば、これは相当解釈が広くなってくる余地もあり得る規定であります。しかしこの規定の趣旨は、今、岡先生のおっしゃったように、殺傷力の大きいものを持たせることを奨励する趣旨でないことは当然であろう、私はこういうふうに考えております。そういう点から申しまして、将来そういう必要性が起るかどうか私は存じませんけれども、かりにそういう問題が起った場合には、疑義をなくす意味で法律の措置を講ずるのが適当であろうと思います。
  189. 岡良一

    ○岡委員 それでは法制局長官にちょっとお知恵を拝借しておきたいのですが、日本安保条約とか行政協定その他アメリカとの諸条約、諸協定を見ましても、アメリカ側が原子兵器を供与したときに、これを受領してはならないという規定は法律的にはありませんですね。
  190. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は、昨年来、重光外務大臣あるいは岸総理からお答えされておる通りでございます。明文上は安保条約にはそういう規定はございません。ただこれは重光・アリソンの間の話とか、あるいは最近におけるアメリカの国防省当局あるいは国務省当局の話で、要するに日本側の承諾なしには持ち込まないといっておる。その問題の基礎としてそういうものがある。いわゆるオーラルな話し合いがあるというにとどまる、さように私たちは考えております。
  191. 岡良一

    ○岡委員 これはくどくどしく申しませんが、先般のボンのNATOの理事会の共同コミュニケを見ても、一般的軍縮との均衡の名において、核兵器の装備をさらに充実しようという傾向にあるわけですね。アメリカのニュールック政策のもとにおいて……。そういう情勢の中では、日本に原子力基本法があり、かつまたこれを改正することなくしては、自衛隊に原子弾頭の装備は認めない方針である、政府は当然やはり原子兵器の供与を受けてもこれは受領しないのであるという法律的な保証を取りつける必要があるのではないですか。
  192. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、私の立場で申し上げた方がいいかどうかわかりません。むしろ政策的な問題になると思いますが、これは私岸総理のそれぞれの委員会における答弁を伺っておりますと、現在の安保条約あるいは行政協定には、そういう文書上のあれはない。従って安保条約の、再検討の場合においては、そういうことも一つの問題になるであろう、そういうことをおっしゃっておられるわけであります。確かに一つの問題点であろう、かように考えるわけであります。
  193. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 松本七郎君。
  194. 松本七郎

    松本(七)委員 国際原子力機関憲章はまだだいぶ問題があるのではないかと思いますが、一わたり、時間もだいぶとりましたから、細目協定の方をちょっとお伺いしておきたいと思います。  この特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との岡の協定第一条の特例に関する公文の交換、この方は非常に急がなければならぬと思うのですが、ある一部の意見では、第二次協定の方は必ずしもそう急がないでもいいのではないかという意見がだいぶあるのです。それに関連して、最初にちょっと条文の方からはっきりさしておきたいと思いますので、その力からお伺いしますが、第一条のA、一ページの一番おしまいから二行目「この物質の四キログラムの最大限の活用を可能にすることが賃貸者の意図するところであるので、」云々と書いてありますが、この第二号炉に対して四キロというものは、同時に使用されなければならないものか、あるいはこのうちの一部を使用するだけで、一応小きざみに使用していけば第二号炉というものは動かしていけるものか、その点を最初に伺いたい。
  195. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 その四キロは全部一ぺんに入れます。一万キロ稼働には、どうしてもこの四キロというものが必要であるということになっております。なおだんだん燃えて参りますと、追加量その他で注入していくということになります。
  196. 松本七郎

    松本(七)委員 それに引き続いて、今の規定にすぐずっと続いているわけですが、「賃貸者の意図するところであるので、取り出された燃料要素の放射能が日本国内において減衰している間若しくは」これこれ、これこれの場合にも、「原子炉の効果的かつ継続的な操作を可能にするため必要であると賃貸者が認める追加量を、賃借者の要請に基き、これに加えるものとする。」こういう規定があるのですが、これはこの協定が有効である限りは、補充が自動的になされるという意味ですか、それとも万一——次々に補充していけば、永久に、ずっと維持できるわけですね。そうするともう自動的に永続的に、これはこの協定が有効な限りは続くと、こう解釈していいのでしょうか。
  197. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 その通りでございます。
  198. 松本七郎

    松本(七)委員 それからその中の「燃料要素がたまたま喪失され若しくは破壊された場合」というのはどういう場合ですか。
  199. 松井佐七郎

    ○松井説明員 これは現実的には起る可能性はほとんどありませんが、万一何かの理由で破壊された場合、その結果燃料がなくなって、炉が動かなくなるというような場合が理論的にあり得ることを想定しまして、その場合にも追加量というものを考えて、炉を不断に運転さしてやろう、しようというのが意図であります。それは全く現実的には可能性があるとは考えておりません。
  200. 松本七郎

    松本(七)委員 今の自動的に補充されるということは、第一号炉についても、この二キロ分についても同じことが言えますか。
  201. 松井佐七郎

    ○松井説明員 さようでございます。
  202. 松本七郎

    松本(七)委員 そこでさっきの問題ですが、第二号炉は来年の四月からですか、運転開始の予定が——その予定も果してそううまくいくかどうか何ともわからない状態のようなのですが、この第二号炉分は必ずしもそう急がなくても——輸送に相当時間を要するといっても、国会の審議でいえば、臨時国会かあるいはこの次の通常国会でも十分間に合うのではないかというような意見が相当あるのですが、政府の見解はどうでしょうか。少し実情を御説明願いたい。
  203. 宮崎章

    ○宮崎政府委員 この協定が発効いたしますのを本年の五月の二十日と仮定いたしますと、それからあとに燃料の委託加工の細目の契約締結しなければならないのでありまして、この契約締結いたしますのに三カ月ぐらいかかるというふうに考えております。さらにそれからその契約が成立いたしますと、加工に着手するわけでありますが、この加工を完了いたしますまでに五ヵ月かかると見込まれておるのであります。それでありますから、合せまして八ヵ月になりまして、これは輸送は飛行機によりますから、それを除外して考えましても、八ヵ月であります。そういたしますと、来年の二月ごろになるわけでございます。それでありますから、炉が据え付けられるのは大体五月という予定でありますから、少し早く燃料が着き過ぎるわけでありますけれども、その期間はわずか二、三カ月のことであります。これを延ばしまして次の通常国会にいたしますと、順繰りに今申しましたような経過をたどりまして、結局炉ができてからも四、五ヵ月の間は燃料がないという状況が起るわけであります。それで今会期のうちにこの協定を御承認願いたいと思っておる次第であります。
  204. 松本七郎

    松本(七)委員 これはほかのも一緒ですか。砂糖も……。
  205. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 ええ、そうです。
  206. 松本七郎

    松本(七)委員 ではなめちらかしますかな。(笑声)  本来ならこの砂糖の資料の提供をお願いしたいのですけれども、しかし審議の前に前提にすると時間の関係もありますから、あとでいいですから出していただきたいと思うのであります。それは各国の砂糖の需要、生産国の作付面積と収穫高、ここ数年間の統計をお願いいたします。  それでさしあたり世界の砂糖需要の概略は今御説明お願いできるでしょうか。
  207. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 ただいま御要求の資料は早急にできるそうでございますから、お手元に配付いたしたいと思います。  それから砂糖の生産ないし消費状況について、ごく簡単に御説明申し上げますと、一九五一年の世界の生産が約三千六百万トン、消費が三千三百万トン程度で生産の方が大体二百八十万トン——少し切り上げて申しますので数字がおかしくなるかもしれませんが、二百八十万トン程度生産が多かった。また五三年では生産が三千五百万トン、消費が同じく三千五百万トンで、大体生産と消費が合っておったわけでございます。五四年は生産が三千六百万トン、消費が三千五百万トン、差引百万トン程度の生産が余ったわけでございます。五五年に至りますと、生産が三千八百五十万トン、これに対しまして消費が三千七百五十万トン、約百万トンの余剰ができておったわけでございます。昨年に至りまして生産は約三千九百六十万トンでございましたが、消費が非常に上りまして四千万トンを上回った。その結果約九十万トンの生産不足、こういう状態になったわけでございます。今年の生産状況につきましては、まだ正確な数字はもちろんわからないわけでございますが、大体最近キューバの生産状況もいいようでございますので、今年は多少生産の方が消費よりも上回るのではないか、こういう見通しでございます。以上簡単でありますが、お答え申し上げます。
  208. 松本七郎

    松本(七)委員 スエズ問題が起って以後砂糖の値段が暴騰したといわれているのですが、その理由はどこにあるのですか。スエズ問題が起ってから一般物費も値段が相当上っておりますが、それと同じ理由だけでしょうか、それとも何か砂糖に特殊の事情があったのでしょうか。
  209. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 お答え申し上げます。昨年スエズ運河問題が起ります前は、大体砂糖は一ポンド三セント二五くらいのところを上下しておったわけでございますが、それがスエズ問題が起りますと、時を同じゅうして非常に砂糖の値段が上ってきた。これは御指摘の通り事実でございます。当初におきましては、これはスエズ運河問題をもとにいたします。いろいろなスペキュレーションからこういうふうになったのではないかと考えておったのでございますが、その後いろいろ研究いたしました結果は、一つは、欧州のテンサイ等の作柄が冷害のために約四十万トン減少いたしたということが一つと、またキューバにおきましても生産の状況が芳ばしくなく、結局五五年末にキューバとしては百六十万トンありました在庫が、昨年末には六十万トンに減った。こういう生産状況からする場面と、それから世界の消費が約百三十五万トン増加した。こういうような関係から需給状況にアンバランスを来たしたために、非常に暴騰してきたのでございます。ただごく最近キューバにおいては大体砂糖の生産の見通しがいいということが予想されましたので、先月末だったと思いますが、一ポンド約六セント八〇程度していたものが、ここ二、三日来五セント八〇という工合に急激におりてきておりますし、また来年三月の先物は約四セントちょっとで売られておる。こういう関係から今後は相当砂糖の値段は落ちついていくのではないか、こう予想しておる次第でございます。
  210. 松本七郎

    松本(七)委員 スエズ運河問題が起った当時、キューバのは主としてアメリカ資本だと思いますが、その買いだめ、売り惜しみというようなあれはなかったのですか。
  211. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 砂糖協定がございます関係上、日本に関する限りは、他我の問題はございますが、そういうことはなかったと思います。
  212. 松本七郎

    松本(七)委員 昨年何百本万トンの消費がふえた何か特別の原因があるのでしょうか。
  213. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 主として世界の景気がよくなったということが原因だと承知しております。
  214. 松本七郎

    松本(七)委員 この協定による標準価格はどうなんですか。
  215. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 この協定では御承知通り、標準価格という一つの線は出ておりませんが、第二十条だったと記憶いたしますが、最高の値段は一ポンド四セント、それから最低は三セント一五、こういう二つの線と、その間に三セント四五と三セント二五という別の線を引きまして、それより上下いたしますと、砂糖理事会が自由市場に対しまする輸出国からの砂糖の輸出を制限ないし増加することによって、大体四セントと三セント一五の間に、砂糖の値段を落ちつけようというのがこの協定の趣旨でございます。
  216. 松本七郎

    松本(七)委員 現協定の二十条では、合衆国の通貨による三セント二五から四セント三五ということになっておりますね。改正議定書では、この二十条が除外されているわけです。それはどういうわけでしょうか。
  217. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 旧協定では、今御指摘のように、最高が四セント三五、最低が三セント二五になっておりますが、新協定によりまして、先ほど御説明申し上げましたように二十一条にそれは規定されてあるわけでございます。
  218. 松本七郎

    松本(七)委員 その二十一条の三項でもって相場が四セント以上になった場合には、この協定に基く輸出の割当及び制限は停止されるという規定があるのですね。そうすると、これは本来の考え方は、価格相場が不安定でそれによって輸出入国の利益が害されるのを防ごう、その需給関係を調整しようというところにこの目的があるだろうと思うのですが、そうすると相場が高くなって四セント以上になったからこの規制は解除する、それじゃ各自自由にやれというのでは、協定意味がなくなるだろうと思うのですが、どうでしょうか。
  219. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 この協定はほかの規定によりまして、輸出国は原則として自分の基本輸出割当量、十四条でございますが、この基本割当量の一〇%に相当した在庫量を輸出してはいかぬという条項もございますし、それからいろいろむずかしい計算はございますが、一定の限度において在庫量を持つことはできる、こういう規定もございますので、もし諸種の制限がはずれるならば、その在庫量を外に出すということで供給が増加すると、こういうことになって、そこで需給が調整される、また一応生産制限という規定もございますが、これもその制限がなくなりまして生産はできる、こういう関係になりまして、その方面から供給が増加し、価格が先ほど申し上げました四セント以下、それからあまり安くなってもいけませんので、三セント一五、  この間に落ちつけよう、これがこの協定の趣旨でございます。
  220. 松本七郎

    松本(七)委員 今の規定から言うと、四セント以上になったら自由にやる、規制を解除するということになると、たとえば国際小麦協定の場合の需給調整とはちょっと内容が違ってくると思うのです。最高最低価格というもので押えているのではないのですから。そうするとこの砂糖協定の主目的はどこにあるか、需給関係の調整ということが主目的ならば、やはり最高最低価格で押えて小麦協定のようなやり方の方がその趣旨に合うのではないか、それを四セント以上になったら野放しだというのでは、果して主目的がどこにあるかということがはっきりしなくなると思うのです。
  221. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 御指摘のような御懸念もあると思いますが、たまたま昨今のようにいろいろな気候の関係上生産が非常に低いために、異常な価格騰貴をした。ただ砂糖理事会といたしましては大体毎歴年の初めに砂糖の需要と供給というものをよく計算いたしまして、各国の生産量をきめ、また輸出量をきめるわけでございますので、御指摘のように小麦のやり方とは違っておるのでございますが、もしそういう天候上の関係で、今回みたいなことが起らない限りにおきましては、この四セントと三セント一五の間におさまり得る、事実砂糖協定が始まりましてからここ三年、大体先ほど申し上げましたように三セント二五を上回るか下回るかの安定をずっと続けておった。それが初めてスエズ運河の問題から、また先ほど申し上げました供給不足から、こういう格好になったもので、これはどうも砂糖協定のせいではなくてほかの原因によるものでいたし方ないことだ、こう考えております。
  222. 松本七郎

    松本(七)委員 原因は砂糖協定でなくても、価格調整をやることを主目的にしておるならば、もう少し別なやり方もあるのではないか。こういう調整の仕方を規定したために、目的というものがあいまいになっておるように私は感じたわけですけれども、やはり依然としてこの砂糖協定の主目的も価格調整にあるのかというところをもう一度確認したい。
  223. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 輸入国の方といたしますれば、確かに価格の安定も一つの問題でございますが、もう一つこの協定の趣旨といたしましては、輸出国に安定した市場を与える、また反面輸入国は安心して必要な砂糖を買える、こういう点にございますので、この目的といたしましては輸出国に安定した砂糖の市場を、また輸入国には需要を確保する、第三点といたしまして価格の安定をはかる、こういう趣旨にこの協定はなっております。
  224. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると小麦の場合と違って高最最低の価格のワクをつけずに、相場によって自由に上下できる建前はとる、その中で割当量を調整しよう、こういうふうに解していいですか。
  225. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 御説の通りでございます。
  226. 松本七郎

    松本(七)委員 ところで砂糖協定の第一条には「一般目的」が掲げられておるわけですが、今佐藤さんの御説明で輸入国にはこういう利益がある、輸出国にはこういうことというお話があったのですが、輸入国の利益の方は一体どこにあるかというと、この協定文によれば、「公正な且つ安定した価格輸入国に対しては砂糖の供給を」確保する、こういうふうに書いてある。ところが一方輸出国の方にはどうかというと、これはまたずいぶん、輸入国とは比較にならないほどたくさんここに、長々とあげてあるわけです。「砂糖の山場を確保すること、世界の砂糖の消費を増加させること並びに、生産者に過当な報酬を与え、且つ、労働条件及び賃金の公正な標準の維持を可能にすることにより、経済が砂糖の生産又は輸出に大いに依存している口又は地域世界市場における購買力を維持すること」こういうふうにしてさも輸出国ご輸入国と両方のためにできたというふうに一応はいわれておるけれども、内容を読んでみると、これはまったく生産国の保護を目的にしておるのじゃはいかと見られる節があるのです。こり協定ができたころは、砂糖の生産が非常に余剰だったころですから、生産出国をこうやって保護するということもわかるわけです。その証拠には、あの当時、ざらめの配給が主食のかわりにのったくらいですから、あれ一つ見てもいかに供給過剰であったかということがわかるのです。当時生産者の方を保護するということは当然なことでしょうけれども、現在のように売手市場になった場合に、果してそのままの内容でいいかどうか問題だと思うのです。むしろ輸入国の利益をもっと保護するような協定に今日は変えるべきじゃないかと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  227. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 これは御承知通り三年前にできた協定で、協定の存続期限が五年をなって、たまたま三年の後に改訂されたものでして、御説のようなことはあと二年たちまして新しい協定のときに真剣に論議されるべき問題ではないか、こう考えております。ただわれわれといたしましては、御指摘の輸入国の方として非常な関心を持つ次第でありますが、他方台湾、インドネシア、フィリピンというようは生産国、しかも砂糖に相当依存している生産国をかかえておりますので、この三国の経済状態というものも多少考える必要があると思いますので、その辺のことをよく考えて新しい協定でまた主張すべきことは主張する、こういうふうに考えておるわけでございます。
  228. 松本七郎

    松本(七)委員 この提案理由の説明によると、この議定書の改正によって、このわが国の受ける利点として、輸出割当量を調整する価格点の水準が引き下げられるごとにある、こういう点をあげられておるのですが、具体的に旧協定と比較してどういうところに点があるか。
  229. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 これは非常に入組んでおりますので、簡単に申し上げますが、旧協定では最高が四セント三五、最低が三セント二五になっております。たとえば旧協定では五セント二五を下りました場合には、直ちに輸出量を各国別に二〇%切る。そうする供給が減って参りますので、学術的言えば今度は値段が上ってくる。とろが三セント二五以上に達しましても二〇%は切りっぱなしで、四セント三五に至りましたときに初めて復元する、こういう格好になっておったわけでございます。従いまして一度切ると、上から下の限界に行くまでは切りっぱなし、またふやすと最低の価格に行くまではふやしっぱなし、こういうことになっておったわけでございますが、新協定では四セントと三セント一五の間にさらに三セント四五と三セント二五という線を設けて、たとえば三セント一五を下回った場合には、輸出量を二〇%切るけれども、三セント二五から三セント一五の間では一〇%しか切れない。それから四セントと三セント二五の間では一〇〇%に据え置かなければならない、こういうふうに段階三つは分けまして、そこで需給の調整をしていく、こういうふうなのが違っておりまして、これは日本としてはこの新協定を作ります場合に、この設け方につきましては強く会議で発言いたしまして、こういうふうな形をとってもらったわけでございます。
  230. 松本七郎

    松本(七)委員 この議定書はことしの一月一日から効力を発生することになっておるようですが、批准されるまでの期間はどうなるのでしょう。旧協定に加盟している国とこの協定との関係はどうなるのですか。
  231. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 これはことしの一月一日までに承認書を出すことに一応なっておりますが、ただその期間が非常に短こうございましたために、七月一日までに承認の手続をしてそれを提出するという約束をした政府に対しましては、一月一日に承認したと同じ効力を生ずるということになっておりますので、御指摘の通り日本はまだ承認しておりませんが、十二月二十四日に七月一日までには承認ができるであろうということを申し伝えましたので、そのことによりまして一月一日からこの新協定によって事実上は拘束される、こういうことになるわけでございます。この点は昨年御審議をいただきました小麦の場合と同様だと考えております。
  232. 松本七郎

    松本(七)委員 主たる砂糖の輸出入国で、この元の協定に加盟しておる国のいずれかが、この新しい議定書の批准をしないというような国の生ずるおそれはありませんか。
  233. 佐藤健輔

    佐藤(健)政府委員 ございません。全部今のところは承認をする、こういうことでございます。
  234. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 他に質疑はございませんか。——質疑がなければ、これにてただいまの四件に関する質疑は終了いたしました。  これより四件を一括して討論に付します。討論の通告があります。これを許します。松本七郎君。
  235. 松本七郎

    松本(七)委員 私はただいま議題になっております四件について社会党を代表して賛成するのでございますけれども、ただその中の一つ、すなはち国際原子力機関憲章の批准について承認を求めるの件については非常に重要な点がございますので、簡単に賛成の趣旨を申し上げておきたいと思います。  提案理由の説明にもありましたように、今度の国際原子力機関憲章ができる過程を見ますと、結局アイゼンハワー大統領の提案がきっかけになっておる、こういうふうにいわれておるのですけれども、私どもが今までの経過を見るところによりますと、アイク提案というものは一体どういうところをねらってきたものだろうか、このことはすでに質疑応答でも問題になったところですけれども、どうもアメリカ以外の諸国が世界の原子力市川にだんだんと進出してくる前に、アメリカの指導すと原子力世界カルテルとでも申しますか、特に原子燃料カルテルといったようなものを早く設立しようというこが、私はアイク提案のほんとうのねらいではなかったかと思うのです。そのアイク提案以後、米ソ間で続けられてきました原子力交渉に際して、米国の提案した原子力機関の規約草案を見ますと、今言うようなアメリカのねらっておる意図というものが、相当私は露骨に出てきておったのではないかと思うのです。しかしその後一九五四年八月に、発起八ヵ国によってまとめられた草案では、この点はだいぶんアメリカは譲歩しておるように見受けられるのです。さらにその規約に関する討議のための国際会議に出された草案は、たとえば国際機関と国連総会及び安全保障理市会との関係だとか、それから表決方式その他かなり重要な点についても、アメリカ側の相当な譲歩が見られるわけです。それならアメリカがどうしてそう譲歩したかということになれば、これはいろいろ観測もあるでしょう。だんだん世界におけるアメリカの原子力の地位というものが弱くなって、あんまり勝手なことばかり言っておれないというようなところから、力関係変化によって譲歩したのだろうと思いますけれども、それはともかくとして、相当な譲歩が見えるわけでございます。そういうわけで結局ソ連もアメリカも、この二大国がこの懸章を承認するところまでこぎつけたということは、いずれにしても私は大きな進歩だと思うのです。そこにこそ、この原子力機関憲章の積極的な意義を認めるのでございます。ただ問題は、この機関が原子兵器の問題には全然触れておらない。もっぱら平和利用のワクの中にその活動が限定されておるというところに、やっぱり一番の問題があるだろうと思います。それともう一つは、原子力援助の供与国が、この機関の査察なり監視を全然受けない。受恵国だけが受けることになっておる。この点は会議の開催品前にいわゆる後進国から、こういうことでは、結局後進国の主権侵害になるおそれはないかといって、ずいぶん批判された点なのです。規約草案を起草した十二カ国の委員会でインド、ソ連、オーストラリアそれからチエツコスロヴアキアといった国が、この草案に対する部分的留保を表明した事実によってみましても、いかにこういう点が不満足なものであったかということは、今までの経過がよく証明しておるのです。結局米国を初め、いわゆる大国の意思を代表するような機関になるおそれは十分まだ含んでおると思うわけでございます。  それからこれも委員会の審議では問題になったのですが、政府の答弁では、中華人民共和国政府が入っていないということについて、宮崎協力局長は、国際連合のクラブ負がまずお互いの中できめたことだからというようなお話だったのですけれども、この協議を始めた当時は、まだ日本国連に加盟する前で、まだ日本は入っておらない。その当時に日本を含めて八十一カ国がその会議に参加して、日本もちゃんと招請されたにかかわらず、中国はオミツトされておる。このことについてもソ連や東欧諸国それからインド、シリアその他のアジアアラブ諸国か攻撃しつつ、中国を含めろということを強く要望しておる事実があるわけです。こういう点を考えても、不満足の点はたくさんあります。  それから規約討議の国際会議では、核燃料の軍事目的への転用を防ぐための査察の問題ということが、最大の問題、中心点に置かれたようでありますけれども、これは結局は原子兵器禁止の問題と不可分に結びついておるわけでありますから、この国際原子力機関の権限内で解決するということはできないと思います。結局は早く大国間で原子兵器の製造使用禁止、そういう協定が結ばれる、そうしてまた半面においては、この国際機関においても一方的な査察でなしに、大国も小国も平等に査察を受けるというようなところまで持っていかなければならぬ。それにはやはり原子力の軍事利用という一面が許されておる限りは、なかなかそこまではいかないと思います。ですからどうしても、こういう平和利用を一歩前進させ、また日本理事国になろうという情勢になればなるほど、片一方の軍事的利用を禁止するという面にも、今までのような消極的でなしに、最近は松下特使まで派遣して世論に訴えながら、攻撃的なものでなければ核兵器もいいのだといいうようなことをすでに言って、総理大臣みずからがそういう答弁をして、松下特使の行動というものにもう根底からくつがえすような発言さえ出ているのですから、こういうことで、せっかく米ソの対立している世界に、両大国が含まった国際機関というものができて、平和利用を大いにこれから活用しようというときに、非常に私は憂慮すべき事態であろうと思います。  そういういろいろな欠陥があるにもかかわらず、私どもがこの憲章に賛成するゆえんは、やはり何といっても、そういった平和利用をどんどん推し進めることによって、やはり軍事的利用を禁止しなければならないという世界の世論も強くなってくるだろう、そういうところに一歩前進の姿を期待して、これに賛成するわけでございますから、どうか軍事的な利用の禁止の面にも一段の努力政府がしていただくことを特に強く要望いたしまして、賛成討論といたします。
  236. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。国際原子力機関憲章の批准について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の第二次協定締結について承認を求めるの件、特殊核物質賃貸借に関する日本国政府アメリカ合衆国政府を代表として行動する合衆国原子力委員会との間の協定第一条の特例に関する公文の交換について承認を求めるの件、千九百五十三年十月一日にロンドンで署名のため開放された国際砂糖協定を改正する議定書の受諾について承認を求めるの件を、それぞれ承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 御異議なしと認めます。よってただいまの四件は承認するに決しました。  なおただいま採決いたしました四件に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  238. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員長代理 御異議がなければ、さよう決定いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十九分散会      ————◇—————