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松本(七)
委員 私はただいま議題になっております四件について社会党を代表して賛成するのでございますけれ
ども、ただその中の
一つ、すなはち
国際原子力機関憲章の批准について
承認を求めるの件については非常に重要な点がございますので、簡単に賛成の趣旨を申し上げておきたいと思います。
提案理由の説明にもありましたように、今度の
国際原子力機関憲章ができる過程を見ますと、結局アイゼンハワー大統領の
提案がきっかけになっておる、こういうふうにいわれておるのですけれ
ども、私
どもが今までの経過を見るところによりますと、アイク
提案というものは一体どういうところをねらってきたものだろうか、このことはすでに質疑応答でも問題になったところですけれ
ども、どうも
アメリカ以外の諸国が
世界の原子力市川にだんだんと進出してくる前に、
アメリカの指導すと原子力
世界カルテルとでも申しますか、特に原子燃料カルテルといったようなものを早く設立しようというこが、私はアイク
提案のほんとうのねらいではなかったかと思うのです。そのアイク
提案以後、米ソ間で続けられてきました原子力交渉に際して、米国の
提案した原子力機関の規約草案を見ますと、今言うような
アメリカのねらっておる
意図というものが、相当私は露骨に出てきておったのではないかと思うのです。しかしその後一九五四年八月に、発起八ヵ国によってまとめられた草案では、この点はだいぶん
アメリカは譲歩しておるように見受けられるのです。さらにその規約に関する討議のための
国際会議に出された草案は、たとえば
国際機関と
国連総会及び安全保障理市会との
関係だとか、それから表決方式その他かなり重要な点についても、
アメリカ側の相当な譲歩が見られるわけです。それなら
アメリカがどうしてそう譲歩したかということになれば、これはいろいろ観測もあるでしょう。だんだん
世界における
アメリカの原子力の地位というものが弱くなって、あんまり勝手なことばかり言っておれないというようなところから、力
関係の
変化によって譲歩したのだろうと思いますけれ
ども、それはともかくとして、相当な譲歩が見えるわけでございます。そういうわけで結局ソ連も
アメリカも、この二大国がこの懸章を
承認するところまでこぎつけたということは、いずれにしても私は大きな進歩だと思うのです。そこにこそ、この原子力機関憲章の積極的な意義を認めるのでございます。ただ問題は、この機関が原子兵器の問題には全然触れておらない。もっぱら平和利用のワクの中にその活動が限定されておるというところに、やっぱり一番の問題があるだろうと思います。それともう
一つは、原子力援助の供与国が、この機関の査察なり監視を全然受けない。受恵国だけが受けることになっておる。この点は
会議の開催品前にいわゆる後進国から、こういうことでは、結局後進国の主権侵害になるおそれはないかといって、ずいぶん批判された点なのです。規約草案を起草した十二カ国の
委員会でインド、ソ連、オーストラリアそれからチエツコスロヴアキアといった国が、この草案に対する部分的留保を表明した事実によってみましても、いかにこういう点が不満足なものであったかということは、今までの経過がよく証明しておるのです。結局米国を初め、いわゆる大国の
意思を代表するような機関になるおそれは十分まだ含んでおると思うわけでございます。
それからこれも
委員会の審議では問題になったのですが、
政府の答弁では、中華人民共和国
政府が入っていないということについて、宮崎
協力局長は、
国際連合のクラブ負がまず
お互いの中できめたことだからというような
お話だったのですけれ
ども、この協議を始めた当時は、まだ
日本も
国連に加盟する前で、まだ
日本は入っておらない。その当時に
日本を含めて八十一カ国がその
会議に参加して、
日本もちゃんと招請されたにかかわらず、
中国はオミツトされておる。このことについてもソ連や東欧諸国それからインド、シリアその他の
アジアアラブ諸国か攻撃しつつ、
中国を含めろということを強く要望しておる事実があるわけです。こういう点を
考えても、不満足の点はたくさんあります。
それから規約討議の
国際会議では、核燃料の軍事目的への転用を防ぐための査察の問題ということが、最大の問題、
中心点に置かれたようでありますけれ
ども、これは結局は原子兵器禁止の問題と不可分に結びついておるわけでありますから、この
国際原子力機関の権限内で解決するということはできないと思います。結局は早く大国間で原子兵器の製造使用禁止、そういう
協定が結ばれる、そうしてまた半面においては、この
国際機関においても一方的な査察でなしに、大国も小国も平等に査察を受けるというようなところまで持っていかなければならぬ。それにはやはり原子力の軍事利用という一面が許されておる限りは、なかなかそこまではいかないと思います。ですからどうしても、こういう平和利用を一歩前進させ、また
日本が
理事国になろうという
情勢になればなるほど、片一方の軍事的利用を禁止するという面にも、今までのような消極的でなしに、最近は松下特使まで派遣して世論に訴えながら、攻撃的なものでなければ核兵器もいいのだといいうようなことをすでに言って、
総理大臣みずからがそういう答弁をして、松下特使の行動というものにもう根底からくつがえすような発言さえ出ているのですから、こういうことで、せっかく米ソの
対立している
世界に、両大国が含まった
国際機関というものができて、平和利用を大いにこれから活用しようというときに、非常に私は憂慮すべき事態であろうと思います。
そういういろいろな欠陥があるにもかかわらず、私
どもがこの憲章に賛成するゆえんは、やはり何といっても、そういった平和利用をどんどん推し進めることによって、やはり軍事的利用を禁止しなければならないという
世界の世論も強くなってくるだろう、そういうところに一歩前進の姿を期待して、これに賛成するわけでございますから、どうか軍事的な利用の禁止の面にも一段の
努力を
政府がしていただくことを特に強く要望いたしまして、賛成討論といたします。