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1957-02-20 第26回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年二月二十日(水曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 森下 國雄君 理事 山本 利壽君    理事 穗積 七郎君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    植原悦二郎君       菊池 義郎君    並木 芳雄君       前尾繁三郎君    町村 金五君       松田竹千代君    松本 俊一君       大西 正道君    田中織之進君       田中 稔男君    戸叶 里子君       森島 守人君    八百板 正君       岡田 春夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岸  信介君  出席政府委員         外務政務次官  井上 清一君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  晧君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         外務事務官         (移住局長心         得)      石井  喬君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月十八日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国スウェーデンとの  間の条約批准について承認を求めるの件(条  約第一号)  航空業務に関する日本国スイスとの間の協定  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)(予)  日本国ブラジル合衆国との間の航空運送協定  の批准について承認を求めるの件(条約第三  号)(予) 同月十六日  クリスマス島における英国の核兵器実験反対に  関する請願(野田武夫君紹介)(第一〇四四  号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国スウェーデンとの  間の条約批准について承認を求めるの件(条  約第一号)  航空業務に関する日本国スイスとの間の協定  の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)(予)  日本国ブラジル合衆国との間の航空運送協定  の批准について承認を求めるの件(条約第三  号)(予)  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約批准について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国スイスとの間の協定締結について承認を求めるの件及び日本国ブラジル合衆国との間の航空運送協定批准について承認を求めるの件、右各件を議題といたします。  政府側より提案理由説明を求めます。井上外務政務次官
  3. 井上清一

    井上(清)政府委員 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する重課税回避及び脱税防止のための日本国スウェーデンとの間の条約批准について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明申し上げます。  御承知のようにわが国は去る昭和三十年四日にアメリカとの間に最初の二重課税防止条約締結し、引き続きイギリス、スウェーデンとも同種の条約締結すべく交渉を重ねて参りましたところ、まずスウェーデンとの間に交渉が妥結いたしまして、昨年十二月十二日に本条約に署名調印した次第でございます。もちろん、わが国スウェーデンとの間の経済的人的交流日米間のそれほど緊密であるとは申せませんが、今後ますます緊密化すると考えられる両国間の経済関係に対して現在の両国国内税法をそのまま適用いたしますと、両国間に二重課税事態を生じて円滑な経済的通商的の協力関係に対して大きな支障を生ずることと思われますので、これらの事態の発生を避けるため、ここに本条約締結し、これにより両国間の二重課税及び脱税等の問題を有効適切に処理し、両国国民が安心して経済上、文化上の活動に従事できるようにし、両国間の経済関係緊密化をはかりたいと考えている次第でございます。  よってここに本条約批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に航空業務に関する日本国スイスとの間の協定締結について承認を求めるの件及び日本国ブラジル合衆国との間の航空運送協定批准について承認を求めるの件に関して提案理由を一括説明いたします。  昨年国会の御承認をいただいて日印日仏日濠の三航空協定締結した次第でありますがその後引き続き各国航空協定締結交渉を行なって参りましたところ、このたびスイス及びブラジルに関しましては幸い意見の一致を見ましたので、昨年、五月二十四日にスイスとの航空協定、同年十二月十四日にブラジルとの航空協定にそれぞれ署名をいたしました。  これらの協定は、さきに国会の御承認を得て締結いたしました日米日英日加日仏等航空協定と同一の目的及び異議を有しておりまして、その内容にも大差ございません。これらの協定締結されますと、わが国航空企業相手国と双務的かつ平等の条件でこれらの国に乗り入れる権利を有することとなるわけでございます。  よって、これらの協定を慎重御審議の上、何とぞすみやかに御承認あらんことをお願いいたす次第でございます。
  4. 野田武夫

    野田委員長 これにて提案理由説明け終りました。ただいまの三件に関する質疑次会に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  5. 野田武夫

    野田委員長 この際外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。岸外務大臣
  6. 岸信介

    岸国務大臣 北海道凶作に対する見舞としてビルマ政府から米の寄贈がございました。これについて御報告申し上げます。  今般ビルマ政府は、ビルマ米二十トンを北海道凶作に対する見舞として寄贈することとなり、近く本邦向け発送する旨太田駐ビルマ大使を通じて申し越しがありました。  右に対し、政府は直ちに、ビルマ政府に対し深甚な謝意を表明するとともに、右受領に必要な手配を行いました。寄贈の米は近く日本に向って送られるはずでありますが、先般タイ国政府から三十トンの救援米寄贈されたのに続き、今回、ビルマ政府からこの申し出のありましたことは、東南アジア諸国わが国民に対して抱いているあたたかい友情の発露として私の深く感謝するところであります。  右御報告申し上げます。(拍手)     ――――――――――――― 野田委員長 次に国際情勢等に関する件について政府当局質疑を行うことといたします。質疑を許します。伊東隆治君。
  7. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 二、三の問題につきまして外務大臣及び関係局長にお尋ねいたしたいと思うのでございます。  ただいま日ソ漁業協定によりまする会議が開かれておりまして、クータレフ漁業次官を首席とするソ連代表団が参っておることは御承知通りでございますが、けさのラジオを聞きますと、けさぐらいから漁獲量の問題に入るというようなことでございます。今、年間六万五千トンと記憶いたしておるのでございますが、これだけの量では実際足りないのであって、あのブルガーニン・ラインをあれだけに広げておりまする今日におきましては、少くともこの倍量ぐらいは必要のように思われるのであります。また漁業専門家の方の意見を聞きましてもそういうふうに言っておるのでございますが、今この会議におきまして漁獲量の点につきましてどのような方針でおられるのか、この点を大臣にお伺いいたしたいと存じます。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 サケマス漁獲量の問題は、今度の日ソ漁業委員会における交渉の最も重要なる問題でございまして、今までのいろいろな情勢から申しますと、彼我の主張がなかなか一致することが困難ではないかといわれておる問題であります。わが方のこの委員会に臨む態度といたしましては、過去における実績、それからサケマスの資源の確保に必要な、科学的な見地からする漁獲量というようなものを、すべて正確なる資料に基いてわが方の主張を裏づけるべき科学的な研究及び調査を今までずっとして参っております。この科学的な調査研究に基くところの結論としてわれわれの得た数字というものはございます。ただ交渉の段階でございますので、まだ数字を幾らであるということを発表はできませんけれども、そういう見地からわれわれは準備をいたしまして、過去の実績サケマスの魚族の保存に必要な数量というものを科学的に研究して、一切の資料をもって裏づけてわが方の主張をする、こういう考えでおります。
  9. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 過失の実績並びに科学的調査に基く量ということによって決定されるということは、条文にもございますし、適当と存ずるのでありますが、その科学的調査というのは海上における科学的調査のみに限られておるように思うのですが、陸上における科学的調査、たとえば鉱山から流す、かりにそういう液体があるとすれば、その液体による問題、あるいは材木を流す、その材木から流れ出る物質によって受けるサケマスの状況とか、そういうような陸上における調査はこの科学的調査の中に入っておるのでしょうか、いないのでしょうか。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 われわれの入手し得る一切の資料を整えてやっております。海上だけではなしに、陸上の問題につきましても、われわれが入手し得る一切の資料に基いて科学的な結論を出しております。
  11. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 海上並びに陸上科学的調査ということで、両方の調査を基礎とせられることは当然かと思うのでございますが、陸上における調査と申しましても、わが方からは陸上調査はできない。先方だけができる調査であって、すなわち一方的な調査に基くというような結果になるかと思いますが、やはりそういうような陸上における調査に基く資料の提出もあったのでございましょうか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 陸上のいろいろな資料につきましては、ソ連側が正確なものを持っておりまして、われわれとして海上におけるがごとき十分なる資料の入手は困難でありますけれども、すでにソ連側から発表されておるものもございますし、われわれとしてはできるだけの手段を尽しております。
  13. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 そういう次第でございますから、一つ今度の会議においては、この科学的調査なるものはやはり海上にとどまらず、陸上における調査――そしてその調査のためにはわが方の調査員調査に便宜を与えるというようなことも必要かと存ぜられますので、一つこの点に留意されて御交渉相なるように希望をいたしておく次第であります。  次に国連に関する問題でございますが、このたび日本国連に入ったということは、何と申しましてもわが国外交の上に画期的な大きな事実であることは申すまでもありません。今までは、わが国外交は、やはり自由主義国家群の一員としての立場において米国を中心としての考え方であったのでありますが、今後は、国連に入った以上は、やはり国連中心にした考え方ですべての外交を推し進める、たとえば岸外務大臣経済外交にいたしましても、またその他いわゆる外交活動なるものは、すべて国連を通じてやるというふうにこの際切りかえていくというようなやり方でなければならぬと存ずるわけでございますが、この見地に立ちまして私はまず国連経済援助実情につきまして、国際協力局長の簡単な御説明をお願いいたしたいと思います。
  14. 河崎一郎

    河崎政府委員 お答えいたします。国連を通じて行います経済援助でございますが、このうちで一番大きいものは、国連技術援助計画でございます。これは国連加盟国が毎年分担金を出しまして、年間三千万ドルぐらいの費用をもちまして、主として後進国技師を派遣したりしておるのでございますが、日本加盟前からこの後進国技術援助計画に参加いたしておりまして、日本技師が、たとえば米作専門家イランに派遣せられたり、日本の地震の学者がトルコに派遣せられて、非常な好評を博しておるのでございます。後進国開発援助は、国連を通じて行われますときには、政治的のひもつきがないということで、受入国でも非常に受け入れやすい、その点で非常な歓迎をされておるのであります。このたび日本国連加盟いたしますと、この後進国開発援助計画にさらに積極的に参加することができるわけでございまして、この計画を通じてさらに多くの日本技術者、優秀な専門家後進国に派遣いたしまして、日本経済外交を推進したいと思っております。  それからそれ以外にも、国連世界銀行とか、ガットとか、それから国際農業食糧機関とか、そういう機関には従来日本加盟いたしておったのでございますが、これまでは何といたしましても未加盟国でございまして、これらの専門機関に対します指導権発言権が非常に少かったわけであります。今回加盟になりまして、これらの方面におきましても、日本は積極的な発言権を持つようになるわけでございます。さらに国連には人口問題の委員会がございますが、国連を通じまして人口問題の解決にもぜひ日本は乗り出したいと思いまして、実は今度の人口問題の委員会に、日本から専門家委員として立候補する予定になっております。  これを要しまするに、国連を通じて行われる技術援助その他の経済活動は、不幸にして日本にはあまり知られていないのでありますが、実際は非常に大きな働きをいたしておるわけであります。今後これらの国連機関を通じまして、経済外交を推進いたしたいと思っております。
  15. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 そういたしますと、技術援助の面において日本が派遣しておる国は、イラン米作とそれからトルコ、ただこの二カ国に対して技術援助をやっておるだけでありますか。
  16. 河崎一郎

    河崎政府委員 ただいま申し上げましたのはほんの一例でございまして、過去数年間に約三十名の技師専門家後進国に派遣されております。派遣国はアフリカの諸国とか、中南米の諸国にまでわたっておりますが、何分にもこの計画に対しまして日本はわずかな醵出金しか出しておりません。デンマークとかオランダというような国すら、数十万ドルの金を出しておりますが、日本はわずか九万ドルであります。それからまた日本もこの計画を通じて技術を供与すると同時に、外国の専門家技術指導を受けておるのでございます。たとえば北海道泥炭地の開発問題とか、東京の小河内ダムダム建設であるとか、そういう計画に対しまして国連から専門家が派遣されておるのでございます。そうして実際におきましては、日本年間十五万ドルにわたる援助を受けておるのでありますが、今後日本醵出金をさらに増して積極的にこの後進国技術援助計画を活用いたしたいと思っております。
  17. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 今のお話しにもありましたが、日本分担金はわずかに九万ドル、しかるに西ドイツなんかでも二十万ドルくらいの分担金を持っておるように思っております。なお、オランダのごときは小国ながら三十数万ドルの分担金を分担して、国連技術援助に協力しておる。わが国が今度国連に入った以上は、こういう面に十分の力を尽してやるべきであると思うのであります。時の重光全権は、東西かけ橋をかけるのだ、こういう演説をなさって非常に世界の注目を引いたのでありますが、こういうことこそいわゆる東西かけ橋となることであり、また経済外交の根幹ともなり得ることと思いますので、今後国連のこういう方面に対して、岸外務大臣はどういうような抱負を持っておられるか、お尋ねいたしたいと思います。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 今後わが国外交を推し進めていく上におきまして、全面的に国連の力を活用するということはきわめて必要なことだと思います。国連活動のうちにおきましても、今お話しになっております技術援助のごときは最も政治的の色がなく、しかもそれが十分に推進せられるということは、世界人類の幸福の増進、平和の増進に非常に役立つことと考えております。従って今後日本国としましても、積極的にできるだけこの活動を促進するという意味において、日本の分担すべき部分につきましても、分担金のみならず、日本技術力その他科学上のエキスパートネスというようなもので、できるだけ国連を通じて世界の発展のために尽していく、こういうことにしたいと思っております。
  19. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 次に河崎局長にお尋ねいたしますが、余剰農産物、これは非常に不評である。すなわち、アメリカの余り腐った農産物をいかにも日本に押しつけて売っているような感じを与えておる――事実はそうではない点もあったのでありますけれども、これは悪かった。これをことしやめたことは、何といっても国民感情にミートした点だと思うのであります。そこでお伺いいたしますことは、ワールド・フッド・レザーブ、国連の中のこの機構を通じて、今後もし必要があるならば出すというようなことにしたらどうかと思っておるのであります。何といたしましても、わが国食糧において足りない。特に最近北海道において飢饉があった。ただいま外務大臣の感謝の辞の中にもありました通りビルマからの援助を受けた、こういうようなことで、食糧において何といってもわが国は不足いたしておるのでございますので、今後もしそういうような食糧の補給を必要とするような場合には、アメリカ合衆国からというのでなくて、国連の中のこの機構から一つ支給してもらうようなことになると非常にいいと思うのであります。すなわち、今までの外交アメリカ一辺倒といわれるようにバイラテラルなものであった。しかしながら、今後は一つ多角形外交、すなわち、国連を通じてやるというようなことになりますならば、非常にその点は、またわれわれ国民感情にミートするのじゃなかろうかというふうに思いますので、この国連の中の食糧機関実情について河崎局長の簡単な説明をお願いいたします。
  20. 河崎一郎

    河崎政府委員 お答えいたします。今度の総会で世界食糧備蓄計画というものが論議されましたことは、新聞等においても報道されている通りであります。これは国連中心となって各国余剰農産物をプールして飢饉とか水害のある国に優先的に与えるというアイデアでございまして、これが審議されますに当って各国から非常な支持を受けたわけであります。こういう国連を通じての食糧供給計画は、二国間での食糧供給計画よりもはるかに望ましいものであるという意見が、各国代表によって述べられたわけであります。わが代表世界食糧備蓄計画は、ぜひ実現を望むということで、強くこの計画を支持いたしておるのであります。今後だんだんとこういう計画が具体化すると思いますが、日本も積極的にこういう多角的な計画に参加して、そして二国間ではうまくいかない、困難だというような点は、この国連の公論のバツクによって是正していくということが可能になろうと思われるのであります。
  21. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 その点それでわかりました。  次にガットの問題ですが、もう数日前の新聞アイゼンハワー大統領は、日本ガットに入っているのだから、日中貿易中共との貿易は必要ないじゃないか、だんだんその点を推進していけばいいじゃないか、こういうことをわざわざ新聞記者会見で言っておられる。しかしガットの第三十五条による最恵国待遇中止の国は相当あるわけである。今そういうことをアイクが言う以上は、ガットの三十五条の除外をしておる国々に対して、アイクは何か工作をしておるのか、またその見通しがいいのであるか、その点に関しましてお尋ねいたします。
  22. 河崎一郎

    河崎政府委員 お答えいたします。  アメリカはただいま伊東先生の御指摘の通りガットITU国際貿易機関早期設置各国要望いたしております。もちろんガット協定には、三十五条のいわゆるエスケープクローズがあるのでございますが、これは各国をできるだけガットに引き入れるためのやむを得ない手段として三十五条が認められているわけでございます。三十五条の条項にもかかわらず、できるだけ多くの国がガットに協力することは望ましいことでございます。日本といたしましても、ガット中心といたします国際貿易機関早期設置には賛成いたしておる次第であります。
  23. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 いわゆるエスケープクローズを援用する国がだんだん少くなりましても、中共との貿易ということは、日本の地理的な存在にかんがみましても必要なことと思うのでありますが、この点につきましては各方面において論議されておるのでございますが、外務大臣日中貿易に対しまする将来のお考えを伺いたい。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 わが国としては、わが国産業経済見地から、あらゆる面において日本貿易を伸張さしていかなければならぬことは言うを待たないのであります。ガットの問題も、その点においてわれわれは考えて、かなければならぬし、また中共との貿易の問題に関しましては、そういう日本の根本的な考えももちろん根底になりますし、また中共日本との関係を見ますると、歴史的にも地理的にも、また経済的にもきわめて深い関係にあるわけでありまして、従ってこの間の貿易が伸ばされていくことを国民も強く期待いたしておりますし、私ども政府としましても、従来もそういう観点ですが、なお石橋内閣においても、この中共貿易増進拡大ということについては、できるだけの努力をしたい考えでおります。
  25. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 この日中貿易こそは各方面において論議される問題でありまして、かつて吉田内閣時代は、日支貿易は全貿易額の一割何分にしか当らなかったような額であるから、これを復活しても大したことはないという一点張りであったのでございますけれども、それはボイコットやいろいろな日貨排斥によりまする結果であって、何と申しましても、これがわが国貿易の一番大きな相手国であることは当然でございますので、一つ外務大臣の今の抱負をぜひ実現さしていただきたいと思うのであります。  最後に、沖縄の問題につきまして、簡単に一点だけお尋ねしたいと思います。沖縄の問題につきましては実にたくさんあるのでありまして、この問題は国民的に注視しておるのであり、また国民感情は今非常な高潮に達しておる。私はその中で、きわめて事務的なことでございますが、かつてこの委員会でも一応話はあったことですが、平和条約の第三条と、国連憲章の七十八条の関係でございます。なるほどこれは国連日本が入りましても、日本の一部分であるから、これはやはりあの形でよろしい、すなわち信託統治をやる建前を持してもよろしいのだというようなことも言えましょう。しかしながらそれは強者の解釈であって、少くともここに対等な立場になった今日、その胴体の一部をやはりああいう状態に置くということは、何と申しましても不平等であるのであります。ですからこの機会に、やはりこの条文を援用して、一応わが国外交立場といたしましては、岸外務大臣は、この点を一つ強調して、アメリカに申し入れる気持はございませんかどうか、この点をお伺いいたします。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄の問題につきましては、すでに国民の意思が国会の決議を通じてはっきりしておりますが、施政権日本にできるだけ早い機会に返してもらうというのが国民の一致した要望であり意見であると私は思います。今の平和条約三条とそれから七十八条ですかを援用するまでもなく、この解釈のいかんにかかわらず、私は今申したことが日本国民の一致した要望であり、またこれを実現せしめることに努めることが政府の義務であると思います。平和条約三条と七十八条の解釈問題につきましては、これはおのずから国際法学者その他の解釈がございまして、私はこの解釈は、せんだって国会においても述べました通り、七十八条と三条というものが当然矛盾するものではないと思っております。しかし解釈がそうだから、それではアメリカ信託統治にするということをわれわれが希望し、もしくはそれにまかしておるということではないのであります。おのずからもしもそれが適当でないということであり、平和条約の規定が国民の意思と一致しないということがはっきりとなったとき、政府の間においてサンフランシスコ条約そのものを変えるということも一つの何でありましょうけれども、そういう手段をとらずしてわれわれはあくまでも国民要望であり、希望であることを実現することに努めたいとこう考えております。
  27. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 施政権の返還ということはもう幾たびか国会において決議もいたしておることではございますが、なかなかその実現にはいろいろの困難がある。そこで私は奄美大島の場合に顧みて考えますことは、まずなしくずし返還、さしあたり行政権の返還でもしてもらうというような実際的な面について、一つ実際的な交渉をそこに開始したらいかがかというふうに思うのでありますが、この点に関しまする……(「そんな弱気じゃだめだ」と呼ぶ者あり)弱気かもしれませんが、実際的な方法として、外務大臣はどういうようにお考えになりますか。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 私は外交演説においても述べておるごとく、日米の協調を必要とするという根本原則はこれを堅持しておりますけれども、しかし現在の日米間の状態が、そのまま是認されるということではないのでありまして、私はこの日米の間の関係を調整しなければいかぬということを申しております。沖縄の問題のごとき、まさにその一つであろうと思います。従いましてこれについて国民要望している方向に向って現実に即しつつこれを実現していくということが必要であると思います。今すぐ行政権を日本に返還を求めることが適当であるか、すぐ交渉する意思があるかというようなことはここで申し上げられませんけれども、方向と今言ったような考え考えております。
  29. 伊東隆治

    伊東(隆)委員 時間がありませんから、そして私の質問も大体終りましたが、どうか一つ沖縄問題につきましては外務大臣は特に認識が深いのでございます。一つこの上ともこの問題の解決に特に御留意あらんことを希望いたしまして、私の質問を終りたいと存じます。
  30. 野田武夫

    野田委員長 田中稔男君。
  31. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 岸外務大臣に対して質問いたしたいと思いますが、先般の委員会で、国会でも済んだら東南アジア方面を訪問したい、こういうふうな御意向の表明がありました。その訪問の御予定なり、あるいは特に目的についてお尋ねしたいと思います。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 まだ具体的の日程その他をはっきりきめておるわけではございませんが、目的としてはこれは第一には東南アジア諸国との友好関係を深め、親善を増進するためにやはり外交の衝に当っておる責任者がこれを訪問して、これらの国の首脳者と隔意のない話をしたいということが一つであります。また東南アジア諸国につきましては御承知のように各国にそれぞれの懸案事項を持っております。これらの解決をできるだけ促進しなければならぬと考えておりますので、これらの点を、これは各国々によってそれぞれ違った問題を持っておりますので、それぞれの国においてできるだけ解決を促進するに資したい、こう思っております。
  33. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 訪問先の国々の大体のあらましを……。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 私としては東南アジア諸国を余すとこるなく実は参りたいと思います。と申しますのは、いろいろ一国に行って一国に行かないような場合は、かえって行かなかった国々に逆のなにがありますので、これは時間の許す限り、また一回で全部が済まなかったらさらに二回というふうに全部の国を訪問したい、こういう考えでおります。
  35. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私はこれは非常なけっこうな企てだと思うのです。ダレスもそうでありますが、周恩来でも、最近盛んに外国に行って首脳者と会談をしております。今日は飛行機の時代ですから、昔と違って、一つ外務大臣でも総理大臣でも必要に応じてどんどん出かけていただきたいと思う。その岸外相のよき意図は私どもは大いに支持するのでありますが、ただおいでになりましても岸外務大臣の方で御用意がなければ私は失敗すると思う。その御用意と申しますのは何といったってやはり岸外交の構想と方向、これが重要だと思う。これは先年岡崎外相がインドネシアに参りました。何か追い立てられるようにしてジャカルタの飛行場を立ってよそに向った、これは失敗した。また昨年でありましたか賀屋元蔵相がジャカルタに参りましてアリ・サストロアミジョヨ首相に会見を申し込んでおる、ところがこれは断われた、なるほど大東亜戦争、太平洋戦争の最高責任者の一人であり、戦犯であった人、しかもそれが賠償問題も解決しない、国交も回復してない今日、サストロアミジョヨ首相が会うわけがない、これを簡単に会えると思った賀屋元蔵相が私は非常に考え間違いだと思うが、これはやはり頭の切りかえができていなかったためじゃないか。何だインドネシア、このごろ独立をしたあの小さな弱い国、何といったって日本世界の一等国、一等国となろうとしておる、賀屋さんとしては、おそらく一等国という観点だろうと思う。その元大蔵大臣が来る、すぐ会うかと思ったところが会わなかった。こういう悪い前例もあるわけでありますから、岸外相がおいでになりましてその御使命を成功的に達成させるためには、御出発に当ってよほどはっきりした心がまえをきめていただかなければならぬと思う、これは私は岸さんのためでなく、国のためにあえて言うのであります。  そこで関連してお尋ねいたしたいが、実は岸外相御自身も太平洋戦争開戦の詔勅に連署された重大なる責任を持っておる。またがっては巣鴨において囹圄の身となられた、戦犯のゆえであります。それが今般外務大臣の栄職につかれておる、また内閣総理大臣臨時代理の地位にある。いやしくも一国の外相であります。いやしくも一国の内閣総理大臣臨時代理でありますから――私は何も意地悪をするというような気持で実はここで申し上げるのではない。むしろ私は岸さんのその非常に豊かな才能、政治家的な素質、政治家としては敬意を表しておる。(「ひやかすな」と呼ぶ者あり)ひやかしているのじゃない、何言っておる。だから私は敬意を表してお尋ねするのですが、岸さんが今日日本が企てた太平洋戦争についてどういうふうな自己批判をしておられるか、あれはあれでよかったのだ、ただやり方がまずかったから失敗しただけで、つまり勝てば官軍、負ければ賊軍というような考えなのか。それともああいう戦争は再びやってはいかぬのだ、なるほど大東亜共栄圏というような言葉は消えた、しかしながら、あの大束亜共栄圏なるものの実体は、日本がアジアの近隣の諸民族を支配し、搾取して、日本ひとり栄えようとする計画にすぎなかったのだ、これは私どもそう思う。だからああいうふうな大束亜共栄圏、つまりあの当時いわれた広域アウタルキー経済圏というようなものを日本の利己的な立場で建設しようとした、ああいう太平洋戦争は間違っておったのだ、ほんとうの意味におけるアジアの共存共栄は必要です。そういうことを今日は考えなければならぬというふうにお考えになっておるかどうか。これは非常に大事なことです。この考え方がはっきりしておりませんと、ネールだって、会っても快くは応待しない。腹を割って話さぬ。サストロアミジョヨに私もこの間インドネシアに行って一時間ばかり話しましたが、私は社会党だから彼も快く話したのだ。岸さんに対しても、儀礼的に会うかもしれぬけれども、ほんとうに腹を割って話さぬかもしれぬ。心を打ちあけ、腹を割って話させるようにしたいと思う。一つそれについての御信念をはっきり聞きたいと思う。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん私が、東南アジア諸国を訪問したいという意思を表明しており、先ほど来の御質問のあるように、私の気持は親善関係増進と、各国における懸案の解決を主にして行きたい、こう申しておるのでありますが、これにはもちろん準備が必要でございます。相手方の国々において、私を受け入れてくれ、また快くこれらの問題について話し合いをするという準備をやっていかなければならぬということは、言うを待ちません。  大東亜戦争のことについてお話がございましたが、私はその当時の内閣の閣僚でございました。当時のことを私自身としても、その後の十年余の間にわたりまして、あるいは巣鴨におきましてまた追放解除の期間を通じまして十分に反省をし、また将来アジア民族、日本民族がいかにして発展し栄えていくべきかという点を考えまして、今後のわれわれの進んでいく道は、言うまでもなく民主的な道を堅持して進むごとであり、世界平和を念願してこれを実現することである。おのおのの民族がそれぞれ所を得て栄えていくようにわれわれが協力することであります。あらゆる面において、そういう考えにおいて祖国の再建と、世界各民族の繁栄とを考えて私も政治に志して、この信念を国民に訴えて国民の批判を受けつつ国会に席を持って参ったのであります。そういう反省と、私自身の信念に基いて今後の外交、さらに大きく政治の全般に当りたい所存でおります。こういう考えに基いて東南アジア諸国に向って、私自身の外交の方針である親善並びに経済協力、またこれらの民族が独立して、その独立を裏づけるべき経済的繁栄をわれわれの力で協力して増進していこうという謙虚な気持で参りたい、こう思っております。
  37. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 古い言葉にも、あやまちて改むるにはばかることなかれという言葉がありますが、今のお言葉は、私は岸外相の衷心からのお言葉だろうと思います。やや抽象的で私必ずしも満足はいたしませんけれども、心がまえとしてなら一応けっこうだと思います。もう少し具体的に私お尋ねしたいのだが、先ほど申しましたように、太平洋戦争をやったということは、要するに日本日本人を中心として広域アウタルキー経済圏を作りたいという考えだった。ところがそういうことは大体無理なんですね。日本は非常に資源の乏しい国です。しかし九千万の勤勉にして怜悧な国民がおる。技術も技能も持っておる。アジアでは何といっても最高度の工業国家です。だからこの国が今後国際間に伍して、国を立て経済を栄えさせ、国民の生活を向上させるの道は、やはり世界のどの国とも自由に通商することだと思うのです。日本ほど国民経済なり生活が貿易に依存する度合いの高い国はないのです。アメリカソ連と違います。だから日本は一国の存立の上からも、世界のすべての国と貿易しなくてはならぬ。それには世界のすべての国と平和のうちに共存しなくてはならぬ。これが国是であると思う。これは自民党とか社会党とかいうことを越えた、その前の問題です。ところがそういうことをやろうとすれば、アメリカに一方的に依存することはいかぬし、また逆にソ連に一方的に依存するということも、もちろん悪いのです。ところが今日の日本外交の実態は、御承知通り、何といっても対米依存です。ところが岸外相が、これは私はいいことだと思いますが、この間何かの機会に、将来は日米安全保障条約日米行政協定もなくしたい、将来の目標としてはそれを掲げたいとおっしゃった。目標に関する限りわが社会党と全く同じだ。いいことだと思う。そこで私はこれらと関連して、きょうの読売に載っておりましたが、周恩来と会った東大の宗像教授が、周恩来の談話として伝えているところは、日本で問題になっている中ソ友好同盟条約、特にあの第一条、これは何も日本を対象としたのではないのだ、むしろこれはアメリカを対象としたのだとはっきり言っている。またこの条約の結ばれた当時と今日とは情勢が変っている。だから、これは私の想像を幾らか加えますけれども、日本アメリカ隷属の今日の状態を根本的に改めて、つまり具体的には日米安全保障条約、その第三条に基く日米行政協定、こういうものを破棄してしまったならば、中ソ友好同盟条約というものも破棄しようというような私は考え方だと思う。私はこれが平和のために必要だと思う。そうして将来日本中心として、極東の関係諸国――これはソ連も入ればアメリカも入る、中国はもちろん入る、あるいはオーストラリアあたりまで入れていいでしょう。こういう極東における関係諸国が全般的な一つの集団的安全保障条約でも作るということになれば、日本としては品非常に都合がいいわけですね。そうすると、原水爆の危険もない。また世界の国々とすべて自由に貿易ができる。ココムという問題もなくなる。しかもちょうどいいことには、中ソ友好同盟条約第一条の第三項の規定はどうなっているかというと、「締約国は、全世界を通じて平和及び安全を確保することを目的とするすべての国際的行動に誠実な協力の精神をもって参加する用意があることを宣言し、」となっているわけですから、中ソ友好同盟条約の第一条第三項の規定から申しましても、中国には私はそういう意向があると思う。だから日本がそのつもりになりまして、岸外交の目標は、それを実現するために努力する。その努力がいよいよ実現したということになれば、私はそういう全般的な地域的集団安全保障体制を作って、日本の平和と安全を守る。これが一番望ましいと思う。これに対してあらためてお聞きします。特に周恩来の言明とも関連いたします。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 日本のわれわれとしては、祖国の安全保障を第一段に考え、さらに世界の平和、また繁栄ということを考えていくというのが、根本的の考え方であることは、言うをまたないのでありますが、現在の状況として、日米共同防衛によって日本の安全保障が確保されている。これが私はいつまでも望ましい形ではないということをせんだっても申し上げたのでありますが、しかし今日の世界情勢を見ますと、今田中君の言われることも一つの理想であり、一つの目標として私は十分考究すべきものがあると思います。また国連自身がそういう目標のもとにあらゆる国々がこれに参加して、地域的じゃなしに全世界における平和と安全保障のために協力するという精神でできておるのであります。しかし現実から見ますと、国連憲章は実にりっぱな憲章としてできておるけれども、内部においてはやはり大国が対立しており、原水爆の実験についても、これを禁止しようというわれわれの悲願すら取り上げてくれないというような状況でございます。今直ちに太平洋を中心としてのこれらの国々のそういう集団安全保障機構ができるかというと、私は現実から言うと遠い夢である、従って日米共同防衛の形でもって日本の祖国の安全を保障しなければならないのが現実であると思っております。
  39. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 どうも的のはずれた御答弁ですが……。  次に、ついきのうの新聞に、グリーンというアメリカ上院外交委員長がこういうことを放送したという記事が出ているのです。米国は早晩中共承認すべきであると私は考える。われわれは中共のような形態の政府を好まないが、中共は巨大なしかも組織された国家である。私自身は米国がなぜ他の共産主義諸国を認めながら、一方では中共承認を留保しなければならないのか理由がわからないと言っている。岸さんがもちろん中共的な形態の政府を好まれないことは事実だと思う。しかしこれは好む好まぬの問題じゃない、事実の問題です。そうしてアメリカの上院外交委員長と言えば、こちらの野田さん以上にえらい地位にある。こういうアメリカの国策を左右する人がそういう言明をしているときに、岸外務大臣、今のような答弁では困ると思うのだが、この言明についてどうお考えになりますか。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 今田中君が指摘されましたグリーン上院外交委員長の放送につきましては、私の方でもある程度それに関連した影響、反響等についての情報を得ておりますが、グリーン外交委員長発言しておることは、グリーン外交委員長発言通りに聞かなければならぬと思っております。またそれが相当な影響、反響をアメリカに及ぼしておるということも考えなければなりませんが、しかしその後におけるダレス国務長官の発言で見ましても、アメリカ政府及びアメリカにおいて今まで現われた意見によりますと、一部においてはグリーンの意見を支持する者がありますけれども、アメリカ全体としては今直ちにグリーンの発言によって方針が変るものとは即断することはできないと思います。しかしアメリカがどう考えておろうとも、日本はまた日本としての立場から考えなければならないという点を私は十分考えなければならぬと思います。  私自身が中共承認の問題などにつきまして従来印しておりますことは、この点については国連との関係、さらに国際的な一般の情勢等も十分にらみ合せて考えなければならぬ。ただそういう情勢なりそういう考え方に追随するだけという意味ではありませんが、今の日本の実力、国際的立場から申しますと、やはり国際的な情勢を相当に判断して、われわれとしては方針を立てていかないといけない。われわれ自身が現実と離れた理想を掲げて、これが日本の国策だからなどと言っても、それが一向実現できないような情勢にあるときは、私はそれを現実の外交方針として打ち出すわけにいかぬと思う。しかしいろいろな情勢、また中国大陸において毛沢東政府が長きにわたって相当に建設的な事業を着々と行われつつある形において統治がされておるという現実を、私は全然無視することは適当でないと思います。しかしそうだから直ちにこれと外交関係をするとか、承認をするとかいうことについては、この間を処置していくのに十分現実をにらみ合せつついかなければならぬ。アメリカの上院外交委員長がこういうことをとにかく発言するということは、アメリカにおいても相当一部無視することのできない勢力の間にこういう意見のあることは、われわれが国際情勢を判断する上において一つの重要な事実として頭に置かなければならぬと思っております。
  41. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 グリーン外交委員長のそういうラジオ放送だけじゃないと思う。アメリカ外交にはもっと現実的な動きがある。御承知通りジュネーヴにおいては、中米の大使級の会談がすでに六十何回行われている。これは米人の抑留者の問題が話題だそうでありますが、それだけで六十何回もえんえんと続くわけじゃない。これは台湾問題その他いろいろな話し合いが行われているが、日本の外務省はよく情報をとっていないらしい。  そこで非常に耳寄りなことがあるのは、この間新聞で読んで記憶が少し違っているか知りませんが、岸外相が邦人の帰国問題に関して何か北京に調査官を派遣しようというようなことを言われたようです。しかもそれに大物を持っていくというようなことだと、今記憶している。私はこれは非常にいいことだと思う。帰国問題については、かつてジュネーヴにおいて、日本の総領事と中国の総領事が話し合いをした。それは一ぺんきりだった。私はその当時、当時の外務大臣に対して質問をして、あの総領事級の会談を一クラス上げて、大使級の会談にしたらどうだと言ったことがある。アメリカさえやっている、しかも日本アメリカのまねをするのが当時の流行ですから、アメリカさえやっていることならば、日本だって大使級の会談をやっていいのじゃないか。アメリカのおじさんにしかられるわけもなかろうと私は言った。ところが岸さんは、今度は調査官というか、これは要するに政府の官吏でしょうね。そういう人を北京にやって、帰国問題について折衝させると言われる。しかも大物という、非常にけっこうだと思う。どうかこの場合大物に少くとも大使級の人を充てて北京に行かす。アメリカと同じように、なるほど帰国問題であることにしても、そのほかのことは何も言わぬというわけにはいきませんし、そこは融通の問題、機転の問題ですから、そこからいろいろ糸口をつけてやはり今後の中国との国交の回復の予備的な打診とか、あるいは貿易、漁業、文化交流、技術交流等いろいろな問題がありますが、こういう全般の問題についても、非公式でもいいから、予備的な打診をするというような話し合いをなさったらどうか。あなたはやはり行く行くは中国は承認すべきだというお考えが腹の中にあるのだろうと思う。そうおっしゃらなかったけれども、私はそう読みとった。グリーン外交委員長が言っていることは、あなたもやはり大体において賛成されていると思う。だとすれば――今はっきり中国を承認せよなんといったって、岸外務大臣が賛成だと言われるわけのものではない。しかし外交というものは、成るの日に成るというのではなく、やっぱり一年、二年、五年、十年前からずっといろいろ手を打っておいて、最後に外交はできる、事は成るのです。だから岸外務大臣就任の当初から一つ手だけは打ったらどうでしょう。碁だって布石というものがあるのだから、布石くらい一つ置いたらよかろう。その意味で帰国問題に関連して中国に政府から大使級の人をやるというお考えはどうでしょう。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 中国に抑留され、または消息不明な人々等についての引き揚げの時日を一刻を早く明瞭にしなければならぬということは、これは留守家族の人々のみならず、日本国民がひとしく考えておることであり、またこの問題は人道的の見地から解決をしなければならないと思う。私は外交関係が正式に開かれておるからとか開かれてないとか、あるいは承認するとか承認しないとかという問題とは離れても、この問題をできるだけ早い機会に、非常な困難なことでありますが、明らかにするということに努めなければならぬ、こう考えておるのであります。新聞に伝えられておるところの、当時書かれたことは私の申したこととは多少食い違いもありますけれども、私はすぐそれを実現するつもりだとかなんとか申したわけではもちろんございませんが、そういう方向でものを考えたい。この問題は御承知のようにソ連との間には国交が回復されて、そうして大使館も設置され、大使またその下に引き揚げの専門家がついてモスクワに今度行くわけです。そうしてなおわれわれの方の調査によると、一万名をこえるソ連に在留しておると思われる、もしくは消息不明になっておる人々の実態を明らかにしよう、また帰れる人は一人も早く帰せるような方法を講じたい、こういう手段を講じておりますが、中国との間には外交関係が開けておりませんために、大使館をどうするということはできないけれども、しかし今申したように人道的見地からその国と外交上の正式の関係ができるとかできないとか、承認するとかしないとかにかかわらず、少くともこの問題だけは取り上げて解決したい。その意味からいえば、やはりこちらの権限を持っておる、もしくは官吏その他資料を持っておる者をやる必要がある。またそれも単純な事務的だけの話し合いでは、なかなかはかどらない点もあるから、相当な人もそうなればやって、この問題を解決していきたい。それはもちろんこの問題だけを解決するというのが目的であります。しかしこうした人道的な立場から特に歴史的にも文化的にも思想――今の政治思想は別ですけれども、本来の民族の考え方として共通のものを持っておる中国との間に、こういう問題を取り上げて話をするならば、私は十分これは共鳴を得、また協力を得ることができる問題である、こういう考え方からそういうことを申しておるわけなのであります。今田中君の言われるように、ここで大使級のどういう人をやるということを具体的に申し上げるわけにはいきませんけれども、質問されておるお気持は私も同感であります。
  43. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私も岸外相のよき意図は大いに支持するつもりですし、わが党としても支持するつもりです。しっかりやってもらいたい。  次に時間もありませんがインドネシア賠償問題について若干お尋ねする。私はこの間インドネシアに参りました。首相と会いました。それから総裁、委員長級に全部会い、結局会議でいろいろ問題になるのは賠償問題です。非常に重要な問題です。政府もこれは何とか早急に解決するための施策を掲げておられる。わが党も政府と協力してやりたいと思う。フィリピンのときのように政府と反対の立場に立つというのはまずいですから、今度は社会党も政府と協力し、自民党とも協力して国論を統一してかかりたい。これは一問一答的にお尋ねしたい。  まず第一にインドネシア交渉について倭島公使が何か新しい提案をした、しかもそれはビルマ並みに二億五千万ドルとかいう。これは何かそういうはっきりしたお話があるのですか。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 せんだって倭島公使が公館長会議で東京に参りました。そのときにインドネシアの政治情勢等についても詳しく検討いたしました。またこの賠償問題もできるだけ早く解決しなければならない、長い間の懸案だからということで……。それについてはインドネシア側の最近の意向を、まだごく固まらない問題でありますけれども、アリ首相、ジュアンダ蔵相等とも会って、最近インドネシアにおいてもぜひ解決を急いでやりたいという気持が、相当積極的に動いている、従来の態度よりやや緩和した形が出ている、ということを十分察知できるような情勢であったのであります。もちろん当方側の主張を具体的に出すというわけの段階ではないけれども、さらに前よりも少し広い権限を与え、向うと折衝してみてくれという訓令を与えております。ただその後の情勢を見ますと、ずいぶん政局その他の不安もまだ除かれないようであります。今後の政局の見通しもまだはっきりつかないようでありまして、急に進展するということは考えられておりません。今御質問のような二億五千万ドルとか二億ドルとかなんとかいう具体的の数字をはっきり明示しているわけではまだございませんが、従来ビルマ並みということを堅持しておったのでありますけれども、少し幅を持たして向うの意向を打診せしめるということにしております。
  45. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 政局の不安定は確かにインドネシアにあるのですが、しかし私は思うに、日本だって明治維新から西南戦争までの十年間は絶えず政局は不安定だった。インドネシアが国を建てて国連で認められてからまだ十年にならない。こういう際に政局の不安定があるのは私はむしろ自然の姿だと思う。私の見るところは、いろいろ意見もありましょうけれども、やはり現在のサストロアミジョヨ内閣をささえている基盤なるものは大体そう変らぬと思う。やはり国民党を中心とするものとマシュミ党を中心とするものが一つの政治勢力だと思う。そこでこの内閣がどうも倒れそうだということで賠償問題の解決を見送るということでなくして、むしろこの内閣を交渉の相手として話し合いを進める。あるいは政変があれば次に来る内閣、それでいいのです、向うの事情だから。しかもこれは全体としてインドネシアが、国民党が政権をとろうがマシュミ党が政権をとろうが、どれが政権をとろうが、賠償問題についての大体の向うの国論はおのずから私はきまっていると思うのだ。だからこれはぜひさっそくこのサストロアミジョヨ内閣を相手にしてやってもらいたいと思う。ただ日本側が倭島公使に広い権限を持たせるといっても、この倭島公使についてはいろいろな批評がある。まあ毀誉褒貶あるのは当りまえですが、どうも倭島公使に広い権限を与えてやるというようなことでは、私は打開のあれにならぬのじゃないか、むしろだれかもっとこれこそ大物をやるか、向うから来てもらうかどうかして、もう少し局面を変えた政治的な折衝を始めるということが必要ではないかと思いますが、どうですか。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げました通り、もう少し向う側の意向というものを打診した上で、あなたのお話のように政治的な見地からこれを最後の決定をしなければならないということを私も考えております。倭島公使は公使として全力を尽して主として事務的な見地で、何といっても公使でありますからそういうものでありますが、さらに政治的な意味からもう少し高いクラスといったら何ですけれども、見地から最後の結論を出さなければならぬ。それにはもう少し向う側の意向を打診して事態を煮詰めておいてそういう政治的な折衝に移したい、こう思っております。
  47. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 最後に一つお尋ねしたいのですが、賠償問題については先ほども言ったように、社会党はやはり政府なり自由民主党とも協力して、早期に解決したいと思っておるのであります。ところで一体政府はこのインドネシアの賠償問題解決に当って、社会党に対して協力を求めるお考えがあるかどうか、お伺いしたい。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 ぜひ社会もこれに協力してもらいたいと思います。協力を得るために、私は適当な時期には十分腹を打ちあけてお話をする考えでおります。
  49. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それから岸外相はインドネシアにおいでになられると思いますが、その場合友好親善のほかに、懸案の解決促進のために、賠償問題についても十分奮闘していただくお考えがあるかどうか、一つ確かめておきたい。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 インドネシアに行く場合におきましては、私は賠償問題を少くとも政治的に解決する見通しをつけていきたいと思っております。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 インドネシアに関連して一言だけ伺いたいのですが、今の幅のあるお考えはけっこうなんだが、そこである段階に至ったときに、様子を見て交渉地を東京に移すようなことを考える余裕はございませんか。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 今のところ交渉地を東京に移すという考えは持っておりませんけれども、しかし事態いかんによってはそういうことも考えておかなければならぬと思います。
  53. 野田武夫

  54. 植原悦二郎

    ○植原委員 私は質問というよりは、外務大臣並びに外務省の幹部の方おそろいのところで、聞いておいていただきたいと思いまして特にこの席を選んだわけです。外務省のことしの機構改革を見ましても、ただ欧亜局を作るとかなんとかいうことですが、私は岸外務大臣が内政と外交とは不可分だと言われたことには全然同感です。それから将来の外交はやはり経済問題を一番の基調としなければならぬということも全然同感です。それについては今田中君もちょっと触れられたようですけれども、人の触れたことを、私はだれから事実が出てもちっとも差しつかえないので、あえて繰り返そうとは思わないが、どうしても通商貿易経済問題を中心とするならば、今の外務省の機構は根本的に改めなければいけない。特に領事館制度であります。今のように領事館制度を外交官の昇進のステップにしておくような状態ではいけな。領事館制度というものは根本的に通商貿易の制度にして、領事が多年そこでそこの国と交わって、しかもそこの財政、経済、産業状態をよく理解して、いつでも商売人に橋渡しをするような役目を勤めてやるくらいの立場に立たなければいけないのに、今のように領事館では立身出世することができないからどこかへかえてやらなければいけないという制度は、少くとも改めなければいけない。領事館であっても有能な人は大使的な待遇ができるようにして、ほんとうにここに通商官というものを打ち立てなければ、経済外交の根本はできない。英国などは、今はそうでもないですけれども、もとは商務官を貫いて二十年も三十年もおった。サー・アーネスト・サトウも商務官であります。男爵を受けたジョージ・サンムも商務官であります。二十年も三十年もそこにおって、そうして語学にも通じ、経済状態にも、産業状態にもよく通じて、そうしてそこの実業家と話をして、もし商売人が来たならばその手引きをしてやるくらいの領事館制度を作らなければ、日本のように領事館の者が、もとならば三井や三菱に行って材料をもらってきて、それを政府に報告するというようなことではいかぬ。これを根本的に立て直して外務省の機構をいじることは、これは外務大臣ではいけないから、外務省の方がみんなおるところで聞いておいていただきたいから特にこの質問をしたのですが、どうかその点を御考慮願いたい。御返事があればけっこうです。それが第一の質問であります。
  55. 岸信介

    岸国務大臣 御意見ごもっともだと思います。実は経済外交を推進することを私は強力に主張していきたいと思っておりますが、これには機構の問題、人事の問題を合せて考えないとならぬと思っております。今の領事館制度の御意見につきましては、十分に考慮いたします。
  56. 植原悦二郎

    ○植原委員 十分御研究をなさって外務省を構成している幹部の方にも、ほんとうにまじめに考えていただきたい。今の制度では、これはほんとうの通商官の意味をなしません。  さらにもう一つ質問を申し上げて御意見を伺っておきたいと思いますことは、大使館であります。私は専門の外交官の方には深甚なる敬意を表します。多年外務省に勤められて、専門の道に明るい方を私は排撃する意味ではありませんが、少くとも日本外交のキー・ポイント、言いかえるならば米国とか英国、インド、ソ連とかいうようなところには、かなり政治的な感覚の鋭い、哲学的な、政治的に透徹した、世界情勢がすわっていてもわかるくらいの大人物を据える覚悟でなければ、外務省育ちの人では私はだめだと思う。外務省育ちの人を排撃するわけではありませんが、これは事務的にトレーニングされておるから、事務的なことになってしまう。なぜ私がそういうことを考えるようになったかといいますならば、昨年私は英国に行ってましたが、英国の国論は変っております。英国の方からみずからインドの問題でもシナの問題でもソ連の問題でも、日本と腹を割って話したいという気分が英国の政界に満ちておりますけれども、事務的の外交官ではその日その日に追われております。だからして英国がアジアに、極東に、ソ連に、米国にどういう考えを持っておるかということまで、ほんとうに目は届きません。だからしてここにはかなり政治的の感覚の鋭い、大きな人間を持って行く必要があるのではないか。そうしてその下に商務官を置く。日常のマンチェスター問題がどうなったとか、スエズ・キャナルの問題がどうなったとかいう事務は、商務官的な外交官のりっぱな人にやらす。また米国について申してもそうだと思う。何もジョージア州とかノースカロライナにおける日本の繊維の問題にしても、大使が出かけてどうこうするというのではなくて、そんなことは商務官か事務官にまかせてやらせる。沖縄の処置をどうするとか、台湾の処置をどうするとか、中共の処置をどうするとか、今世界の問題になっておるところのソ連と米国との極東における考えはどうかというようなことまで透徹するには、世界情勢に通ずるような政治感覚の鋭い人間を持ってこなければならない。そういうことに対しては事務的な人間ではいかぬ。そういう考えで、少くともアメリカとかインドとかソ連のような日本外交上のキー・ポイントにはそういう人間を置く。もし大使館として置くことができなかったならば、遊動隊で置いてもよろしい。ただ外交的の事務をとって、ジョージアの繊維の問題が行き詰まったから、そこに大使が行って相談する。そんなことを考えているようなことでは、ほんとうの今日の世界外交はできない。そういう人間を配置しておいて、そうしてその下に英国で置くような、二十年、三十年語学に通じたような人間を置いて、商務官制度を作って、経済問題はそれらにハンドルさせるようなことをしてはどうか。そういう人ならば、米国の大学を出たような人間にいい人間があるでしょう。外務省で門戸を閉ざさないでそういう人間を特別に任用して用いてもいいが、もう少し外務省全体が旧套を打破して、この世界のラジオ、飛行機、テレビ等、こういう世の中に処するような状態に外交陣営を考え直されてはどうか、こういうことであります。これは一つぜひお考えを願いたいが、お考えがあるならば、この際伺っておきたい。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 今の植原さんの御意見も、私はしごく傾聴すべき御意見であると思います。私も実は外務大臣に就任いたしましてから、外務省の人事につきましても広く人材を登用するつもりでいろいろと考えておるわけであります。今の新しい時代における、また今日の国際情勢のきわめて機微であり激動しておる際における重要国における大使の地位というものは、お話の通りきわめて重要でありますから、これらの人事につきましては、私も十分意を用いてやっていきたい、こう思っております。
  58. 植原悦二郎

    ○植原委員 次にお尋ねしたいことは、だれが何と言おうとも、鳩山内閣が、日本が極東の平和を維持する立場に立つ以上は、東の窓だけあけておいてはだめだ、西の窓もあけなければならないといって、世論が区々であったにもかかわらず、英断をもってソ連と国交を正常化されたことは、僕は、将来のために非常な正しい行く道であり、一つの卓見であったと思います。そこで、政治上の国家の根本的なイデオロギーは違うが、ソ連とも国交を正常化した。次にどうしてもしなければならないのは、同じ自由国家であり、もっと近い朝鮮の問題だと思う。この問題は、ほんとうに一つ岸外務大臣の手で解決するように、私は御尽力を願いたいのであります。抑留者の交換とか久保田の声明を取り消すとか取り消さないとかいうことは、私からいえば、そう大した問題じゃない。日本の土手っ腹に入っている朝鮮半島、しかもこれが自由国家である。この国と日本が最善を尽して国交を回復する方法を考えなければならない。それにはすぐ岸外務大臣がおいでになるわけにもいくまいが、かなり信頼できる人が李承晩とひざ詰め談判することを、今すぐではないけれども、現実にお考えになってはどうか。李承晩は、日韓の紛争の当時、また日本があそこを占領した当時、非常にこれをきらって亡命した人でありますが、徹底的の自由主義者です。徹底的のデモクラットです。同じ自由国家が極東において今のような状態ではいかぬじゃないかといって、李承晩に面と向って腹を割ってひざ詰め談判すれば、李承晩はわかる人間だという観測を私は持っております。そういう定評もあります。どうかこういう道をお開きになることを御考慮願いたい。お答えがあるならば、これに対してお答えを伺えればけっこうだと思います。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 日韓の間の関係を正常化する、この間の懸案を解決するということは、日韓両国にとってきわめて重大であるのみならず、極東の平和の増進の上からいってもこれは非常に重大な問題であります。実はサンフランシスコ条約ができる前からこの問題が取り上げられて、両国の間になされておりましたが、これは世俗な言葉で言うといわば兄弟げんかみたいなものであり、あるいは一家内のけんかみたいなものであって、なかなか複雑な、また感情的な部分がありますし、また実際にある期間同じ一国でやっておったという関係上、いろいろ権利義務の関係が錯綜しているという関係がありまして、幾多の困難な問題がございます。しかしこれを解決するのには、とにかく今留守家族の人の問題もありますし、その他国民的な感情からいっても、釜山に抑留されている人、またこれと関連して韓国側が言っている大村に収容されている人、そういうようなものを両方が釈放し合って、そうして両国が冷静にこの日韓の間の幾多の懸案問題を解決しようということに取り組まないというと、そういう人々を押えておいて、その人々が人道的見地から上げるところの要求なり気持というものを刺激さしておいて日韓の根本問題を解決するということはとうていできることではない、こう私は考えまして、釜山の漁夫を即時釈放してもらうように、またこの問題を大村の収容所の韓国人の釈放と関連さして、この問題だけをまず解決する。そうして今お話のありました久保田発言とかあるいは財産権の問題とかいうようなものについては、われわれは従来の主張にこだわらないで、公正かつ現実にものを処していく、こういう考えのもとに韓国側と折衝して参りました。韓国側もその原則については大体了承しまして、今話が進行中にあるわけでありますが、しかしこれから正式の日韓会談が開かれ、各種の問題が取り上げられてこれを解決するということにつきましては、これは非常にむずかしいのでありまして従って、今の植原さんのお話のように、その具体的な問題以外にさらに腹を打ちあけて両国の間で話し合う、李承晩と話し合うということも非常に重要なことだと私は思っております。従いまして、そういう点におきましても一つ十分考慮をいたしたいと思っております。
  60. 植原悦二郎

    ○植原委員 私は、双方の抑留者の問題をそのままにすっぽかしておいて日韓両国関係が正常化されるとは思いません。こういうこまかい点にこだわるな、そういうことは互いに相当譲歩しても、もっと大きな日韓の国交回復という問題がある、これを考えてくれよということであるのでありまして、これをすっぽかして一足飛びに行けというわけではありません。それは御同様にかなり話し合いで譲歩してもいいじゃないか、そんなことにいつまでもこだわるな。それどころじゃない、外務省あたりでは久保田声明などかれこれ言っておるようだけれども、そんなことにいろいろこだわる必要はない、そういうことをあまり重要視しないで早く片づけろ、そうして李承晩の腹の中に飛び込んでいけ、李承晩は、かなり感情的ではあるけれども、理知の男で徹底的なデモクラットだから、腹に飛び込めば感情を抜きにした両国立場の話はよくわかる、こういう意味であります。  次に、しばしば問題になりますことで、今、田中君もちょっと触れたようでありますけれども、日中両国関係ももう少し深く掘り下げて考えるべきではないか。ただいまのような二つの中国が存在するようになっては、現実の問題としてこれはなかなかむずかしいが、台湾の問題と中共の問題はだれが一番片づけていいかといえば、私は日本国が一番片づけいい立場におる。ほんとうに腹を割って話をすることができる。この問題は日本国でもずいぶん困っておるでしょう。またこの問題が根本的に解決できない間は、日中両国の問題は解決できない。そこでこういう問題ももう少し深く踏み込んで考えてみたらどうだろうか。インドも――かつてはパキスタンも、インドであった、これが今二つの国になっているばかりではない、カシミールの問題もある。こういうようなことを考えて、中共と台湾を一つにしようとしても現実の問題を考えるときにはなかなかむずかしい。またアメリカの問題を考えても、簡単にこれはできる問題ではない。といって日ソ国交を正常化しておいて、中共をこのままいつまでも日本がながめておるというわけにはいかない。この問題に対して、一番利害関係の深い国は日本なのです。中共も今日のような、まさかソ連の衛星国家ではあるまいけれども、何かといえばソ連の鼻息をうかがっているような立場であり、ことに中共ソ連との間に軍事同盟があるというような立場日本は無防備の国です。今日の日本の安全は何といっても、それはなくても守れるかもしれませんけれども、日米関係によって日本国民はまくらを高くして眠れるという姿も出ておると考えればそう考えられないこともないのだから、そういう立場にあれば、御承知通り、にわかにアメリカの駐留軍をどうせよとかあるいは行政協定をどうせよとかいったって、岸外務大臣の言われる通り、現実の問題として顧れば日本の安全は守り得ることはできない。そうなればやはり日ソ両国関係を考慮し、日中両国関係を考慮し、そこに台湾の存在のあることを考える場合に、かつてのインドを考えても一つの手本にならないことはないのだ。こういう問題を外交上の高い見地から考えて、あらゆる面にサウンドし得るような外交官をお作りになってはどうか。こういうことを簡単に直接交渉をせよと私は申さない。こういう問題は、これに関係ある英米でもソ連でも十分サウンドするだけの外交官でなければ、極東の平和を維持する根本の問題は解決できません。そういう問題についても、私は岸外務大臣は深く考慮をお払いになって、中共ソ連関係が今日のごとくでも困る、中共と台湾との関係が今日のごとくでも困る、この問題を上手に取り扱って――極東の平和を維持する一番いい立場におるのは日本国である。この日本国立場を、ソ連、とも国交回復ができたのだから、どうか日常の問題ではなく国家永遠のために、外交の根本を一つここまで掘り下げて岸外務大臣にお考えを願いたいがどうかということであります。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 中国に対する問題は、日本にとって非常に重大な問題で、また日本が今お話の通り日本の自主的な立場からこの問題解決のために今後相当努力をしていかなければならぬということも私は考えております。しかし同時にこの問題は極東における問題の解決として、一番むずかしい問題であり、従って各般の情勢の十分の判断と、それから同時にわれわれの一つ考えをきめたならば、その考えを実現するに必要な各種の環境を作っていかなければならぬ。先ほどもお話がありましたように、なかなか一足飛びに結論の出る問題でもありませんし、またそれを実現しようとしてもできないことであります。従って日本外交としては、この問題は非常に重要な問題でございますから、それに対して十分事態を掘り下げて一つ考えを持つ、またそういう接触のできるような外交官ができることは非常に望ましいことであります。そういうふうにしていかなければならぬ、こう思います。
  62. 植原悦二郎

    ○植原委員 次に今田中君も触れましたインドネシアの問題でありますが、日本が東南アジアの発展を考えるなれば、インドネシアより重要な国はないと思います。フィリピンもさることながら、インドネシアはさらに日本にとって重要なパートだと思います。この国との賠償問題を早く片づける――倭島公使が非常によくやっていられることは、私はバンドン会議に行った当時からよく知っておりますけれども、これだけの手では私は迅速な解決の道がないと思う。今の外交はやはりほんとうに両方の国がよく外国の事情を知って、腹を割って話して、そうして一切の過去のわだかまりを捨てて、新しい道に行くという立場をとるよりほかに方法はない。それだからこそアメリカでは英国の総理大臣がかわればマクミランに来てもらうとか、こういう直接談判をしてもらうことも、結局腹を割ってその国の立場をよく理解して、互いに話し合うということだと思います。ついてはもしインドネシアの賠償問題を早く片づけてほんとうに国交回復をしようとするならば、ここでも貿易じりの一億七千万ドルの問題に対して、これはやがて長い間には取れるのだから、そういう問題にあまりこだわらず、インドネシアの今の首相のサストロアミジョヨのような人間に腹を割って、お互いにこうしたらいいじゃないかというふうに提案のできるような、あそこ向きの実業家をお使いになってはいかがです。私は倭島公使のやっておられることを軽く見るわけではありません。これもよくやってくれますけれども、迅速にものを解決する上において、そういう方法をお考えになってはどうか、こういうことであります。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども申し上げました通り、現在のインドネシアとの賠償問題につきましては、私としてはもう少し事務的に、ある点の問題の要点を彼我の主張を煮詰めまして、そしてそれの最後の解決は政治的な見地からこれを解決しなければならない、あるいはそういう政治的な考慮を払う意味において、財界人がいいかあるいは政治家がいいか、十分考慮して最後のなにをきめたい。せっかくある程度まで煮詰まりつつある彼我両国主張というものをあるところまで持っていきまして、そうして最後の決断には最も適当な人を持っていきたい、こう考えております。
  64. 植原悦二郎

    ○植原委員 もう時間だそうですが、まだ三、四ありますけれども、もう一つ二つでやめておきます。  私はスエズ運河の問題は、日本が海運国として非常に重大だと思っております。これに対してアジア・アフリカ会議、バンドン会議の仲間だけの感情、利得だけをお考えにならないで、日本は海運国としてこの問題を考えなければならぬ。それのみならず、私はどうもスエズ運河とハンガリーの問題を最初において米国では同等に見たところに、アメリカの判断の間違いがあったのじゃないか、その結果がやがては大統領の非常権力まで議会に要求するような羽目になったのではないかと思う。とにかくあそこは石油資源として世界一番の宝庫ですから、またアジア、アフリカ人の巣でもあるから、どうかあそこに対して一つ特別にあの状態を見守るような人を、ただ中東の関係の外務省官吏を集めただけでなく、もう少し現地に臨んで徹底的に研究することを一つ考え願いたい。これが一つであります。  もう一つは、今度のバンド会議のときに翌年またどこかで開きたかった。ネールはいつのバンドン会議でも中心でおりたかった。そのおりたいと思う希望が実現できなくなったので、翌年カイロで開こうということにネールが反対した。そのバンドン会議の光景を実際に目撃している私一人であります。こういうわけでアジア・アフリカ会議の継続しての会議が開かれることがおくれていますが、それだけの準備ができるかできないか知らぬが、日本で第二のアジア・アフリカ会議を開いてみるくらいな御計画を、一つ考えになってみてはどうだということであります。  まだいろいろ質問の点がありますけれども、時間が長くなりますのでこれだけを申し上げておきます。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 アジア・アフリカ会議、バンドン会議が一回で、その後のなにができておりません、それについてむしろ日本が主唱して日本にその会議を招請したらどうだという御意見であります。いつぞやもそういうような趣旨の御意見がありました。しかしこれについてはいろいろな準備も要りますし、またAAグループの国々の考えもありましょうが、しかし一つのお考えとして、私としても考えることにいたします。
  66. 植原悦二郎

    ○植原委員 中東問題についても深甚なる御考慮を願いたいと思います。
  67. 野田武夫

    野田委員長 戸叶里子君。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 私は岸外務大臣に二、三の点を伺いたいと思います。     〔委員長退席、山本(利)委員長代   理着席〕  一月の十六日に沢田国連大使が、国連総会の政治委員会におきまして、原水爆実験禁止の問題に対して、現段階として実験の国連への届出制度及び国連による実験後の調査制度を申し合せてはどうかということを、日本とカナダとノルウエー三国の共同提案として、これを決議案として提出されたと聞いております。しかもそれが採決されずそのままになったということも報道されているわけでございます。私どもは日本の参議院におきましても衆議院におきましても両国会で、あるいはまた国民の悲願として、どこまでも原水爆実験の禁止ということを各国要望しているわけでございます。ところがこの沢田さんが、実験の登録制と監察制度ということを打ち出しておられますけれども、この発言に対して前もって岸外務大臣に通告が、といいますかお打ち合せがあったかどうか、そしてこういような発言というものは、国内の統一された意見と違うように思いますけれども、この点についていかがお考えになりますか。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 沢田国連大使が国連に参りましたのは前内閣のときでございまして、国連における大使の行動についての訓令はもちろん前内閣において出しております。この国連における沢田大使の発言につきましては今戸叶さんのお話の通り国会においても、原水爆の実験を禁止するという国民の意思が表示されております。これを各国にわれわれも要望をいたしております。ところが事案は、これを持っておる強大な国はなかなか実験をやめておりませんし、しかも事前に関係国その他に通告をしておる国もあるし、全然通告をせずして行なっておる国もあるというのが現実の姿であります。そこでこの問題は、われわれはあくまでも禁止ということは国民の悲願であり、国民の一致しているところの強い要望でもございますので、あらゆる機会を通じて国際的の世論を喚起して、これを実現するように努力をすることは当然であります。ところが今言ったような現実の情勢を見ますと、まず禁止に至る第一歩として、どうしてもやるという場合には、少くとも国連に登録して、これから生ずるところの損害なり被害というものをできるだけ最小限度に少くし、また各種の科学的調査をして、将来の問題に対処するということが、少くとも現状から言うたら必要の最小限度じゃないか、こういう考えのもとに、これが提案されたのでありまして、実験を当然是認し、そういうことはいいのだという見地に立ってやっておるわけではないのであります。なお沢田国連大使がこれを提案するに当りまして、国連総会におきまして同大使がやっておる演説をごらん下さいましても、われわれの念願なり真の意義がどこにあるかということははっきり言ってその第一歩としてせめてこのくらいのことは実現しなければならぬということを言っておるわけでございまして、われわれとしてはあくまでも原水爆の実験の禁止の方向に向って、今度のクリスマス島におけるイギリスの実験に対しましても、その考え方で、われわれの意思を明らかにしておるということでありまして、この点におきましては矛盾はないと思います。
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 今外務大臣の言われる通り、それでは私どもが一歩譲りまして、原水爆実験禁止への一つの前進であるという意味から、ああいうふうな登録制の発言をされたと解釈いたしましても、その決議案が出されておりながら、それが採決されなかった。それほど自信のないものであったならば、やはりそういう発言をしないで、むしろ禁止の線で強く押し出していくべきでなかったかと思いますけれども、この点はいかがお考えですか、伺いたいと思います。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 この決議は、総会において採決にはならなかったのでありますが、しかし軍縮小委員会にあれを一般の軍縮問題と一緒に付議する。そうしてその軍縮小委員会においては、この問題を優先的に第一の議案として取り上げて、審議するということになっておるわけであります。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 今のことがちょっとよくわからなかったのですが、これからこの決議案を審議するということなんでしょうか
  73. 岸信介

    岸国務大臣 総会ではこれの議決をいたしませんで、軍縮委員会に付託するという総会の決議がありまして、それで軍縮委員会の方これが付託されておるわけであります。軍縮委員会においてはこれを優先的にこれから審議しよう、こういうことになっております。
  74. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうな態度ですと、どうしても私はぼやけてくると思うのです。幸いにいたしましてアジア・アフリカ・グループは、いずれもこの原水爆実験に対して反対をしております。日本はそういう国々と協力をして、そして国連において積極的にこれらの国々と原水爆川禁止ということをもう一度提案し直すべきだと思いますけれども、この点についてお考えを承わりたいと思います。つけ足しますが、たとえば具体的にはこの関係大国の間での会議を持つようにするととか、そういった禁止のための会議を持つというようなことを促進させていくべきだと思いますが、これに対しての岸外務大臣のお考えを承わりたいと思います。
  75. 岸信介

    岸国務大臣 私はやはり日本としてはあくまでも禁止を実現するように努力をしなければならぬと思います。従いましてこの沢田大使の提案に対する国連内の論議なり、あるいはさらに軍縮委員会における論議なりというものを通じて、われわれの国民的な要望であり念願を表明をし、そういう空気を作ることは必要であると思います。その結果としてさらに今お話のような、これは第一歩でありましてさらに進んだ方向に持っていくということは、これは適当なことであります。今としては一応ああいうことを提案したのでありますし、それが軍縮委員会審議されることになっておりますから、その審議の模様を見てさらに第二段なり第三段なりのことをやりたい、こういうふうに思います。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 アジア・アフリカ・グループと協力をして実験禁止の方向へ持っていくということに対して御賛成をいただいたわけですが、そういうふうなことを近い機会にやっていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 この問題は私がしばしば申し上げている通り、あらゆる機会をとらえて、そうして国連における技術的といいますか、現実のなにから言いますと、AAグループの人と話し合ってなにするということも必要でありましょうし、さらにあらゆる国々に対して――AAグループもそうでありますし、中南米のラテン・アメリカの国々も、さらに説明をすれば大体同じような意向になし得る国々だと私は思います。そういうような国々に働きかけまして、あらゆる機会を通じてこの国民的な悲願を達成するように真剣な努力をしなければならないと思います。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 私がこのことを非常に強く申し上げます理由は、日本から英国への再度のクリスマス鳥における原水爆実験禁止に対する要望にもかかわらず、好意を示しておらない。ところが英国の政府はそうでありましょうとも、英国の国内の世論というものはだいぶんに変ってきているということを聞いております。たとえば英国のある新聞などは、日本は今までそれほど強硬でなかった――私たちは強硬であったのですけれども、そういうふうな表現を使って、それほど強硬でなかったけれども、今回は非常に広くこの線を打ち出しているのは、漁業関係にも非常な影響があるからであり、そしてまた国民もその被害を非常に心配するからであろうというようなことも、言っておりますし、それからまたマンチェスター・ガーディアン、クロニクルでさえも、原水爆実験は海の豊庫に非常な脅威であり、世界破滅への口実にもなりかねない、こういうふうなことさえ書いておりますし、そしてまたイギリスの労働党も反対し、婦人団体も反対しております。そこでこの再度の申し入れで、イギリスからいい返事がこなかったということでひるまないで、私はあくまでもこの実験禁止をしてほしいということをイギリスに向って申し入れていただきたい、こう思うのですが、伺うところによりますと、もしだめの場合にはこの補償の方をどうするとかというようなことを言われた、こういうことを聞いておりますけれども、それでは線が弱くなるのであって、あくまでも実験を禁止してほしい、こういう線でいって二度だめなら三度、三度だめなら四度と、どこまでも日本の国から申し入れてほしいと思います。そうしてむしろどうしてもだめの場合には、よその国に影響を及ぼすというようなところでなくして、自国の国内でやるべきだということの線を出していくべきで、補償の点などをこちらの方から言うということは、実験禁止に対する国民の強い熱望というものが私はぼけるように思いますので、この点をお考えいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 イギリスの今回の実験に対してわれわれが再度の抗議を申し入れ、そうしてこれを公表いたしたのでありますが、最近イギリス内におきましても相当な反響を呼んでおることは今戸叶さんのおっしゃる通りであります。さらに私は、今持っておる国は、世界の強国の二、三のものに限られておりまして、これが実験をするという角度に出ておるわけでありまして、実際上いかにわれわれの主張が正しく、われわれの熱望がいかに強くとも、これがやめないという意思をもってやる以上は、これをとめるというのは、国際的な制裁を加えるとか、実力をもってやめさすということ以外にはなくなってしまうのですが、われわれがそれをあくまでもわれわれの力でとめ得ないとするならば、世界の世論、人類の平和と安全と幸福を願うところの世界の人類の声として、世論として、結局これらの大国にも反省せしめるような方法以外にない、こういう考えでわれわれの主張もこれを公表し、その後のなにとしてもやっておるわけであります。ただ第一回のなにに対しましては、われわれは全然損害補償のことは言うておりません。ところがまた一方から言うと、これは第二回も第三回もやってほしい、やるべきだという戸叶さんの御説もごもっともでありますが、現実として、それを結局イギリスが聞かないという――今の情勢から申しますと、非常に残念でありますけれども、英国内でそういう声があっても、英国政府はやるのではないかと私は思う。われわれが三度、四度やってもやるのではないかと思う。そうすれば、少くともわれわれは、もしわれわれの言うことを聞かず、そうして損害を与えた場合においては、われわれとしては損害についての責任は、一切英国政府にあるということを十分銘記してもらいたいということだけは、つけ加えて言っておく必要があるという考えでやったのであります。しかしお話の通り、見方によってはそういうことをつければ、何かやることを承認してなにしたのではないか、弱いじゃないか、それからさっきの沢田大使の提案にしても、そういうことを登録にしろということは弱いじゃないか、何でもかんでもやめろやめろといっておれ、こういうお話もごもっともな点はありますけれども、やはり現実の外交としては、現実の見通しをやはり持って、これに対するできるだけの最善を尽すという見地に立って、そういう点についても今度はわれわれの意見を述べたわけであります
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 現実の外交という面からお考えになっていられるようで、そういう面から考えるならば、むしろ他国に影響を及ぼさない自国内でやるべきだ、こういうふうな意見日本から出してもいいのじゃないかと思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 この原水爆の実験禁止ということは、その根本は、どこでやられようともこの地球上でやられることは、人類のために反対であります。それを現実に言い得る、もしくは最も切実に強く言い得るのは、これの被害をこうむり、これの実際の実験にあっている日本人が言うことによってなんであるというところで、私は、日本人の発言というものが世界の人々の胸を打っておるのは、この主張そのものが正しいのみならず、また日本人が言うところにあると思うのです。     〔山本(利)委員長代理退席、委員   長着席〕 従いまして今お話のように、やるのに公海上でやるとかあるいはいろいろな影響を持っておるところでやることは望ましくないことは当然でありますが、同時に国内でやれと言ったって、ことにイギリスのごとき人口の稠密なところでは事実上やり得ないと思うのです。そうするとイギリスが支配しておるクリスマス島、それを中心としての公海が比較的被害の少いものとして選ばれたであろうと思うのです。しかしその被害がどうであろうとも、これはまだ科学的によくわからないのですけれども、一体われわれの気のつかないところでやられても、それが空気を汚染してそれがどういうふうに人類に影響を及ぼすかという問題もありましょうし、われわれとしては今戸叶さんのおっしゃる通り、あらゆる機会にわれわれのこの主張世界の人々の胸に訴えて、実現するように今後とも努力をすることが必要であると思います。
  82. 野田武夫

    野田委員長 この際委員長より申し上げますが、先ほどの植原委員発言の中で、戸叶委員より御注意のありました点につきましては、植原委員よりこれを取り消していただきたいとの申し出がありましたので、これを速記録より取り消すことといたしますから、さよう御了承願います。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 今外務大臣がおっしゃいましたように、これはどこで実験をやっても悪いことで、あくまでも実験禁止という強い線を出していかなければならないと思います。従ってあらゆる方面で実験禁止の効果が上るようにしていかなければならないと思います。先ほど私が提案したのもその一つでありますけれども、この間イギリスのロイド外相は英下院で、長期にわたる航海制限は違法でないというような英国政府の見解を述べているのを見まして私は全く驚きました。しかしこれに対する国際法筆者の意見はまちまちでありまして、私どもは当然長期にわたる航海制限は国際法上違反であるという考えを持っておりましても、現実にそうでないというような意見を言ったり、非常にまちまちであります。しかし現実に精神的、物質的に受ける私どもの被害というものは非常に重大でありますから、一つ手段として国際司法裁判所にこれを持ち出して、そこへ提訴するというようなものでなく、そこからこの長期の航海制限に対しての勧告的な意見を出してもらうというふうにしたらどうかと思いますが、これに対する御所信はいかがでございましょうか。
  84. 岸信介

    岸国務大臣 この実験禁止をあくまでも実現したいという念願から、あらゆる有効なる手段をとるということは最も必要なことだと思います。しかし今御提案になりましたようなことを司法裁判所ができるかどうか、私ちょっとここでお答えしかねるのですけれども、御趣旨は、われわれがあらゆる機会、あらゆる国際的の機構を通じ、また権威ある機関を通じてこういう事態をなくする、なかなか強国は、一国がいかに切実な要求を出しても、それを聞かないというわがままをするのがとにかく国際の現状であるから、それを国際連合なりあるいは司法裁判所なりあらゆる機構を通じて、有効にそれに反省を与えるようなことをしなければならぬじゃないかというお趣旨なら私は賛成です。司法裁判所がすぐできるかできないか、このお答えはしかねますから、それを研究してみます。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 今の岸外務大臣の御答弁には熱意があふれておりましたが、この問題は、やはり非常に大事なことで、私は国際司法裁判所に提訴はできないにしても、そこから勧告的な意見を求めるということはできないことはないと思うのですけれども、この点もしあれでしたら、条約局長にでもお伺いいたします。
  86. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 司法裁判所の勧告的意見を求めるということになりますと、それは国際連合の中でその問題が審議されまして国際連合の中のいろいろな、総会または安全保障理事会等や、そういう機関から国際司法裁判所の勧告的意見を求めるということになるかと思います。各国家や個人が直接に勧告的意見を求めるということはできないのじゃないかと思います。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 個人ができないのでしたら、できるような方法をとって、ぜひやっていただきたい、こういうふうに考えます。  これに関連いたしまして先ごろ久保山さんと磯野さんがこの原水爆実験禁止に対して非常な熱情を持って、ぜひやめてもらいたいということを訴えに行くことになりました。これは私はこういう問題が持ち上っているときで非常に結果がいいだろう、こう期待していたわけでございますけれども、どういうわけか、アメリカ側でヴィザがおりなかったわけでございます。これに対して日本政府は、そのヴィザのおりなかった理由を知っているかということがまず一点。その次は、このヴィザをもらうために、どの程度に骨を折られたかということが第二点。第三点は、今後こういうふうな問題が起きましたときに、一体どういうふうな処置を講じられるか。この三点を外務大臣に伺いたいと思います。  私がそれをお伺いいたしますのは、たまたま国際連合というのは、アメリカにあるわけです。そうすると日本国連加盟をいたしまして、国連でいろいろ発言をしたいことがございますけれども、アメリカからヴィザがおりない、アメリカの政治の動向によってヴィザがおりないということになりますと、日本国連で言いたいことも十分に言い尽せないというような制約を受けはしないか、この点を非常に心配をいたしますので、このケースをあげて、今申しましたような三点についての答弁を承わりたいと思います。
  88. 岸信介

    岸国務大臣 この件につきましては、最初久保山さんを招待しておる向う側の団体についていろいろ議論がありまして、その後正式に国際連合に加盟しておる団体からの招待ということになりまして、外務省としてはこれに旅券を交付したのであります。ところがアメリカがどういう理由でありますか、これにヴィザをくれることをちゅうちょいたしまして、せっかくの国連総会の期日がなにするまで拒否はしないし、しかもヴィザを与えないということでこれを過ぎたというのが実情でございます。御承知通りであります。各国がヴィザを与えるか与えないかというのは、これは現在のところを見ますと、各国がそれぞれの国の考えで、国内の問題としてこれをやっておるわけでありまして、われわれとしては当然行くべきものであるという意味で旅券を出しておりますけれども、アメリカアメリカの国内の問題――これはどういう問題であったか私は承知いたしませんけれども、それをちゅうちょしたことのためにこれが実現しなかったということは、私どもとしては非常に遺憾と思います。しかし結果はそういうことになるわけであります。ただヴィザをもらうことについて、それじゃ外務省がどれだけの骨を折り、どれだけアメリカになにしたかという問題になりますと、これは従来とも各国に対してヴィザの何に対しては、その国の自由にまかしておるというのが国際的慣行でありまして特別にわれわれの方からヴィザを与えるように骨折りをしたという事実はございません。しかし結果として、今申しますように、これは大へん遺憾なことであると思います。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 ヴィザの発行に対してはその国にまかしてあるから、外務省は骨を折らなかったというふうにおっしゃいましたが、私はこの問題が非常に重大な問題であるだけに、ぜひとも外務省としても骨を折っていただきたかったと思います。これは過ぎたことで仕方がないのですが、今後の問題があるわけで、もしも今後もヴィザはその国の自由にまかすことが慣行だからということをもって、今後国連へ行って何らかの発言をしよう、しかもそれが日本の国にとって非常に重大な、かつ有益なことであるにもかかわらず、そういうことができないというようなことは、まことに残念なことで、何とかこういう問題は解決すべきではないか、こう思います。ことに国連アメリカにあるのですから、アメリカとそういう問題はよく話し合って、今後そういうことがないようにしていただきたいと思いますが、これはいかがお考えになりますか。
  90. 岸信介

    岸国務大臣 実は私どもとしては、久保山さんだけにヴィザを与えなかったものであるか、それからあの問題に関しては、世界各国から国連をたずねたと思うのです、そういうものに対するアメリカ側の取扱いがどういうふうになっておるか、事情を今調べております。そして具体的の問題をとらえてどうするということでなしに、一般的に日米の間の友好関係から見ても、日本政府が正当に渡航すべきものであると認めて旅券を出した者を、さらにヴィザを与えないということは、友好関係の意味からいうと私は決して望ましい状態じゃないと思います。従ってそういう問題に関しては、十分アメリカとの間にも事前によく話をして――具体的な問題になりますと、何かこれに出せということは内政に干渉するというふうに、従来の慣行からいうとなるのですけれども、一般的の問題としてこういうことの起らないように十分話し合いをしておく必要があるのではないか、こう思っております。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 幸いにマッカーサー大使が来られたようですから、今度の実例をあげて、日本の国でパスポートを出しながら、向うがヴィザを与えないということの理由をやはり一応お聞きになって、そうして今後こういうことのないように話し合いをしておいていただきたい、こう思うわけでございます。
  92. 岡田春夫

    ○岡田委員 関連して。今の問題、私は旅券のヴィザの問題は、国内的な問題という一般的な解釈からだけでは、これは解釈すべきでないと思う。というのは、そういう解釈をすると、内政干渉になる心配があるということを心配することになるけれども、今度久保山さん自身が行こうというのは、国連に行こうというので、アメリカに行こうというのじゃないのですよ。それはたまたま国連の事務局がアメリカにあるからだけれども、しかしアメリカに置いてあるということは、アメリカの一方的な意思でアメリカに置いてあるのではなくて国際連合に加盟している諸国の同意に基いてニューヨークにあるのだから、国連に行くという目的のためには、これに対してアメリカの国内法を適用することは、むしろ逆に言えばアメリカが国際連合に加盟している諸国に対するそういう順調なる活動を干渉している結果になるので、むしろあなたのお話のように、一般的に取り扱わなかったということで、そういうことをやると内政干渉になるのじゃないかということをお考えになっているのは、むしろ卑屈な考えなので、国連に行くならばどんどん政府がそういうことをやっていくのが当りまえだし、特に先ほどから外務大臣は、政府としても原爆の禁止のためにあらゆる努力をするというまでおっしゃっておるならば、そういう措置をとらなかったということは政府の怠慢だと私は思うのです。そういうことが国民の中から意見として出ているならば、どんどん政府としてヴィザのとれるようなあっせんをすべきが現在の政府のとるべき態度だと思うのですが、そういう態度をおとりにならなかったということは、そういう態度をとるならば内政干渉になる心配がある、こういうことは私ははき違えていると思うのですが、その点はいかがですか。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 この久保山さんの場合は、今お話の通り、実は国連に陳情といいますか訴えに行くということなのですが、それはたまたまアメリカの国内にあるためになので、何もアメリカへ本来行こうというなにではないのですから、その点はわれわれも今後の問題としては考えなければならぬ問題であると思います。  ただ、私が申し上げているのは、別に卑屈だとかなんとかいう意味ではなしに、従来の慣行によると、具体的にヴィザを出すとかあるいは旅券を交付するとかいうことは、その国が責任を持って国の立場からやる内政的の問題である。従ってあっせんをするとか、なるべくやってくれとかいうような――個人的にいえば、そういうことをすることは差しつかえないことでしょうけれども、やはり国としてこれにはぜひやれとかなんとかいうことは、アメリカでなくても、どこの国であっても、具体的な場合は従来そういうことをしない慣行が各国の間にできておる。というのはやはり内政干渉というような点をおもんばかるのではないか。しかしアメリカ日本との関係を言い、またさっきからお話のように、国連という特殊の機構がたまたまアメリカにあるという事実から、これに行くということに対するアメリカの扱い方については、一般的に十分話し合って、将来こういうことのないようにしておくことが必要であろう、こう思っておるわけであります。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 将来こういうことがないようにして下さるというお言葉を信じまして、ぜひそうあっていただきたいと思います。  次に、岡崎・ラスク交換公文について二、三点お伺いしたいと思います。岡崎・ラスク交換公文に基いて、演習場が今日日本の国内にたしか千葉と群馬と兵庫と岡山と、四つあると思います。これが今日まで正式に合同委員会で決定されなくて、そしてただ交換公文によって演習場になっていた、その理由は一体どういうわけでございましょうか。
  95. 千葉晧

    ○千葉政府委員 お答え申し上げます。岡崎・ラスク交換書簡によりまして、米軍に引き続き使用を許しております演習地は実は二十三カ所、大きな演習地というものは今お話の三カ所ではありますけれども、あときわめて小さいものでありますが、全体といたしまして二十三カ所で、これはいずれも当時その使用条件その他につきまして交渉いたしたのでありますけれども、米軍側の希望と私どもの方の立場と相いれませんために話がつかずにおるわけでありますが、しかしわが方といたしましては、なるべくならばこれらのものを解除してもらいたい、全部は解除できなくても部分的な解除をぜひしてもらいたいということで折衝しておったわけです。その点がいれられないために今日まで話がつかずにおる、こういうことでございます。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 そうなってくるといろいろ問題があると思うのです。  そこでお伺いしたいのは、日米合同委員会によってきめられた演習地と、それから岡崎・ラスク交換公文によってきめられた今の二十三カ所の演習地というものの間に、法の適用に違いがあるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  97. 千葉晧

    ○千葉政府委員 お答え申し上げます。私どもは岡崎・ラスク交換書簡は行政協定と一環のものであると考えておりまして、行政協定の諸規定は、これらの演習地施設等にも同様の適用があると考えております。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 そうなって参りますと、やはり相馬ケ原の問題と関連して、いろいろこまかい問題が出てくるわけです。このこまかい問題についてお伺いしたいのですが、外務大臣の御都合もおありでしょうから、この点はあとからいろいろと技術的な条約の問題で伺いたいと思います。一つ岸外務大臣にお伺いしたいのは、相馬ケ原の演習場で日本の農婦が殺されたというあの事件で、日本の方から日米合同委員会を早く開いてほしい、こういうことを言っておりますけれども、これはお開きになったのかどうかということが第一点。それからアメリカ側の方はあくまでも裁判権がアメリカにあるということを主張し、日本側の方はそうでないということを主張していくと思いますが、そうなって、もしも合同委員会ではとうていまとまらない、こういう見通しがつきましたときに、やはり岸外務大臣アメリカの相当高いレベルの一人とお話し合いになって、どこまでも日本主張を通すようにしていただきたいと思いますが、これに対するお考えを承わりたいと思います。
  99. 岸信介

    岸国務大臣 月曜日に合同委員会へかけることの手続をしたそうであります。その時日は向うがなにしなかったというので、手続がおくれておったわけでございますが、月曜日に正式の手続をした、まだ審議はしていないそうであります。そうしてもしもまとまらなかった場合においては、外交交渉によってわが方の主張をさらに貫徹するように努めたい、こういう考えであります。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 これは委員長にお願いしたいのですけれども、外務省の方に資料を求めて、今まで日米合同委員会にどの程度の問題が持ち込まれていて、そしてどのくらい日本側の意見が通ったかというような資料を出していただくようにしていただきたいと思います。
  101. 野田武夫

    野田委員長 承知いたしました。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 時間が参りましたので一点だけ伺いたいのですが、それは日本で画期的な法案であると売春防止法が通りまして、いよいよ四月から発効するわけでございますこれに関係のある条約で、レーク・サクセスにおきまして、いろいろな国がすでに加盟をしておる条約がございます。当然日本もこの条約加盟をし、それから国会批准をすべきだというふうに思うわけであり、そうしてまた全国の婦人団体もこれをぜひ国会批准してほしいということを希望しているわけです。その名前は人身売買及び売春により利益を得る行為の禁止に関する条約、こういううようなものでございますが、ぜひこの国会に出していただきたいと思いますが、お考えを承わりたいと思います。
  103. 岸信介

    岸国務大臣 御希望の点は御意見を承っておきますが、外務省においては今研究中でございまして、各国批准状況等も見て研究中だそうでございます。
  104. 戸叶里子

    戸叶委員 研究中というお話でございましたけれども、すでに日本ではこの条約の内容と同じような法律が通っているわけです。ですから、この条約に入ることに別に差しつかえはないと思うのですけれども大臣のお考えでどうにでもきまるのじゃないかと思うのでございます。いかがでございますか。
  105. 岸信介

    岸国務大臣 実は私自身まだその問題についての従来の外務省内の研究また意見がどういうふうになっておるか確かめておりません。しかし今の御趣旨のような点であるならば、加盟することは適当であろうと思いますが、もう少し私自身が研究をしたいと思います。
  106. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは大へんお忙しいでございましょうが、なるべく早い期間に御研究下さいまして、本国会に間に合うように要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  107. 野田武夫

    野田委員長 次会は明二十一日午前十時より開会し、日ソ漁業条約に関し沿岸漁業に関する問題について参考人より意見を聴取することにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時二十五分散会