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1957-04-10 第26回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十日(水曜日)     午後二時五分開議  出席委員    委員長 廣瀬 正雄君    理事 木村 文男君 理事 中馬 辰猪君    理事 中山 マサ君 理事 櫻井 奎夫君    理事 戸叶 里子君       臼井 莊一君    大倉 三郎君       原 健三郎君    藤枝 泉介君       保科善四郎君    眞崎 勝次君       受田 新吉君    小林 信一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岸  信介君         厚 生 大 臣 神田  博君         労 働 大 臣 松浦周太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  八巻淳之輔君         警  視  監         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         法務事務官         (公安調査庁次         長)      高橋 一郎君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局審議         官)      青谷 和夫君         厚生事務官         (引揚援護局引揚         課長)     石塚 冨雄君         厚生事務官         (引揚援護局援         護課長)    小池 欣一君         厚生事務官   田島 俊康君     ――――――――――――― 四月三日  委員仲川房次郎辞任につき、その補欠として  床次徳二君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員床次徳二辞任につき、その補欠として仲  川房次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員大橋忠一君及び仲川房次郎辞任につき、  その補欠として大倉三郎君及び藤枝泉介君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月八日  海外抑留同胞救出等に関する陳情書  (第七九一号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  海外胞引揚に関する件(中共地区帰還者調  査団派遣に関する問題等)  留守家族及び遺家族援護に関する件(未帰還公  務員の処遇に関する問題)     ―――――――――――――
  2. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 これより会議を開きます。  海外胞引揚に関する件並びに留守家族及び遺家族援護に関する件について、調査を進めることといたします。  直ちに両件について質疑を行います。木村文男君。
  3. 木村文男

    木村(文)委員 私は、岸外務大臣に対し、この際、未帰還者引き揚げ促進に関してお伺いいたしたいのであります。この問題につきましては、終戦以来、わが日本民族の世論を背景にいたしまして、人道上の問題として、超党派的に、国会においても、その方途対策について論議せられまして、政府をも積極的に鞭撻し、また当局もこれに全力を傾注して参ったところであります。しかし、戦いが終りましてすでに十二年、敗戦後の痛手から立ち直ったとはいえ、国内においては、だれしもがみな、もはや戦後ではないとまで考えておるところでありまするものの、日本民族として忘れてはならないことは、なお完全解決のできないままになっている五万有余名の未帰還者のあることで、これらの留守家族方々は、そのつえとも頼むところの父、あるいは夫、子、兄弟等の一日も早く帰ることを念じながら、どんな生活をして毎日を過ごしておるかということであると思うのであります。しかも、その過半数は、その生死すらも判然としていないということなのであります。そこで私は、この際特に引き揚げ問題に平素深い関心を寄せられておられる岸外務大臣に対しまして今後この問題の処理解決について、どのような方途を持っておられるか、当委員会を通じまして、この際率直に、かつ具体的に国民に明示していただきたいのであります。順を追いまして、次の諸点についてお伺いいたします。  その第一点といたしましてソ連地区の未帰還者についてでありますが、ソ連側からの連絡による今後の帰国希望者は二百三十五名でありますが、私の調査いたしましたところによりますると、この全部が樺太在住方々であるようであります。これが事実といたしまするならば、従来のようにナホトカ等に一たん集結させませんで、一日千秋の思い帰国を待ちわびておる留守家族や本人の心情考えられまして、一日も早く直接に樺太から故国引き揚げができるように、ソ連側に強力なる手を尽すべきであると思うのでありますが、政府においてはその交渉をしておられるかどうか、お伺いいたしたいのであります。また、今度帰国されるところのこれらの方々以外に、九千七百余名が残っておるわけでありまして、しかもこれらのうちには政府当局にはもちろん、われわれ議員あてにまでもその帰国希望の切々たる嘆願書が届けられておるわけでございます。これらの促進につきましては、政府においては今後ソ連駐在のわが大使館交渉促進せられることと思いますけれども、それにいたしましても、これらの切々たる心情をくむにつけても、この際、その促進のためにも、事務的に明るい専門係官出先機関大使館に駐在せしめまして、帰還促進交渉に当らしめるところの御意思がないかどうか、外務大臣の御所信を承わっておきたいのであります。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 未帰還者の問題に関しましては、ただいま木村委員お話通り政府といたしましても、一日も早く実情が明確になり、そうして一日も早く故国に迎えることのできるようにしたいというのが、これは日本国民の全部の気持であり、政府もまたその気持を体しましてあらゆる面からこれを促進しなければならぬと考えております。ソ連における消息不明者、未帰還者の問題に関しましてこの実情を明瞭ならしめることにつきましては、日ソ共同宣言のうちに、ソ連政府日本側に十分協力するということを明らかにいたしておりますし、すでにその一部につきましては、先般、その実情日本側に報告をいたして参っておることも御承知通りであります。またそのうち帰国希望される方々に対してこれが帰国について、向うの方で適当な措置をとるということも明瞭にされております。しかしそれは、私どもが、なおソ連において、早期に帰ってこられない方々としてわれわれが考えておる全体の数からいうと、ごく一部でございます。従いまして、それをさらに有効に、適切に、できるだけ早く事情を明瞭ならしめるという意味において、ソ連における日本大使館に、その方の専用家、今までずっとその方の仕事をしており、その方について特別に知識経験を持ち、かつ熱意を持っておる係官ソ連に駐在せしめまして、ソ連政府との協力のもとに、実情をできるだけ早く明瞭ならしめ、またそのうち祖国に帰りたい人は、できるだけ早く帰るようにいたしたいと思っております。なお、御指摘の、ソ連の過般こちらへ知らして参りました二百数十名の人々が、どこから帰ってくるかというような問題につきましては、具体的にソ連側意向がまだ明瞭にされておりません。私どもとしては、できるだけ便宜に、できるだけ早く帰せるように、ソ連側とも折衝をいたしていくことが適当だと、かように考えております。
  5. 木村文男

    木村(文)委員 第二点といたしまして、この際お伺いいたしたいのは、北鮮を含むところの中共地区の未帰還者についてでございます。これは四万に近いといわれておる。中共における未帰還者については、政府は、一昨年のジュネーヴにおける交渉以来、いろいろとこれが帰還促進につきましての方途を講じておられたことは、私どももよく存じておるのであります。私は、戦いが終りまして十二年もたっている今日、政府は、従来のように、民間の団体にだけ、このことをまかせておくべきではなく、非常な困難な問題ではありますけれども、この際一歩前進しまして、たとい国交の回復していない中共であろうとも、人道上の大きな問題として、政府自体の手によって処理解決すべきときがきておると考えるのであります。この点につきまして、われわれといたしましては、当委員会におきましても、しばしば論議提唱されたところでございまして、かつまた、そのつど政府当局に、そのことを進言をいたしてきたのであります。政府は、この際超党派的に国会協力を求められまして、消息不明の夫婦還者の調査究明をどうするかというそのこと、また、そのほかのことにつきましても、積極的に政府代表を派遣するという御意思があるかないかということを、私はお伺い申し上げたいのでございます。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 中共における未帰還者の問題に関しましては、数から申しましても、ソ連よりもずっと多数の者がございますし、私ども、その留守家族人々気持を察するというと、これをできるだけ早く、有効な方法で明瞭にするということをしなければならぬ、こう考えておるわけであります。御承知通り中共日本との間におきましては、国交正常化ができておりませんし、また各種の事情から見まして、政府は、今日国交正常化をする段階とは考えておらないのであります。ソ連とは幸いに国交正常化されましたから、先ほど申したような措置がとられてきておりますけれども中共におきましては、その点が、事情が異なっておるわけであります。しかし問題は、国交正常化されておるかどうかということによって、今申すように取扱いが変ってくることは当然でありますけれども、事は人道上の問題でありますし、私は国交正常化をすべき段階ではないと信じておりますけれども、この未帰還者の問題を明瞭にするためには、人道上の見地から、あらゆる手段方法をとりたい、かように考えておるわけであります。しかし、同時に、これは日本政府が、権利として中共へ行っておれの方の未帰還者があるから調べるのだぞ、君の方は協力せよというふうなことのできる性質のものでないということも、言うを待たないところであります。従いまして、一応従来のように、正式なルートとしては、ジュネーヴにおける両国の総領事を通じまして、この日本政府の持っております調査資料等中共の方に送りまして、そうして中共側協力によって事情を明らかにされることを頼むということは、これは筋として、そういう道が一応表面的にはとられてこなければならぬ、こう思います。しかし、同時に、それだけでそれでは事足りるかと申しますと、私は足りないと思います。そこで今、木村委員お話では、この際政府代表して、政府代表という意味において、有力な人を向うに派することはどうかというお尋ねだと思いますが、私は、今日の段階において、政府代表というようなものを送るという形式は、実は適当でないと考えておるのであります。特にこの問題は、中共政府においてかりに好意ある協力をして、明らかにしようということに努めるということになりましても、事の性質上、相当長きにわたって、かつまた非常に複雑な仕事であろうと思うのです。従って、政府代表を出して、向う交渉して、それで事が片づくという問題ではないのであります。むしろこの際は、中共側において、日本側におけるそういう、かりに専門家という言葉で申しますか、その方の練達の人が来てそうしていろいろこれからの調査をするというようなことに対して好意ある受け入れ態勢ができるかどうかというようなことも、実はまだ疑問なんです。そういう下工作を進めていく段階であって、表面には政府政府ジュネーヴを通じて交渉する段階であって、同時にまた、あらゆる面からこれを援助する意味において、いろいろな手段考える。その意味において私は国会議員等一つお力添えも願うということがふさわしいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  7. 木村文男

    木村(文)委員 ただいまの外務大臣の御答弁によりますると、政府代表では、国交未回復であるから、今の段階では瀬当ではない、こういうようなお考えのようであります。そこでその調査究明のために国会協力を求めてそうして何らかの対策を講ずるというようなお考えのようでありまするが、そういたしますると、国会議員国会代表といったような名において、調査究明の道を開くための土台を作る意味において派遣したい、こういうようなお考えでございまするか。もう一ぺんお伺いいたします。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども申し上げましたように、この仕事自体がきわめてじみな、そうして複雑であり、相当な時日を要する問題でありますので、そういう意味においてその方の専門家なり、あるいは経験者なり、従来そういうことに携わっておる人を駐在せしめてでも、あるいは事情を明らかにするということが、将来私は必要であろうと思うのです。しかし、それについては、十分中共政府側における好意ある受け入れ態勢というものができないというと、こちらから是が非でもこれは派遣するのだというようなわけにはいかぬと思う。幸い私はこの国会におきましても、引き揚げの問題についてこうした特別委員会が設けられ、そうして長きにわたってこの問題をあらゆる意味から検討され、また留守家族人々気持も最もよく理解をされ、同情され、そうして今日まであらゆる面で政府を鞭撻し、努力されてきておるのでありますから、そういう方々国会代表し、同時にそれは国民代表でありますから、この留守家族人々気持も体して、そういう将来この問題を事務的に一そう地について明らかにするという、この困難な仕事がスムーズにいく、その土台ができるような意味において、国会議員が超党派的に向うに行かれて、そうしてこっちの実情を話され、また日本国民気持を十分に向うへ伝達をし、またそういう人々が過去において、多年この問題に携わって知り、また持っておられる資料というものを提供してそうして中国政府側協力を求め、必要によっては、今日本の方と国交をかりに正常化しなくても、人道的な見地から、この問題について政府の役人なりその他の専門家をよこして、この困難な事業に当らしてもよい、また当らしてこれを早く解決したいというような意向を伝えて、そうしてそれを中共政府側も十分理解し、それではぜひそうしようというような機運ができてくることが、この問題の解決促進する上に、私は非常に有効かつ適切であろう、こう考えておるのであります。
  9. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 外務大臣の御在席は三時までということになっておりますので、質問の通告が多うございますから、簡明にお願いいたします。
  10. 木村文男

    木村(文)委員 それでは、大体その御熱意のほどだけは了承いたしました。そこで、それまでの間、政府政府交渉といったようなことになるまでには相当の時を要すると思いまするので、その間におきまして私が特にお願い申し上げたいのは、せめて中共における戦犯釈放だけを特に促進させてもらいたいと思うのでありますが、この点について外務大臣としてどういうようなお考えを持っておられるか、伺っておきたいのであります。
  11. 岸信介

    岸国務大臣 従来ジュネーヴ交渉におきましても、われわれは、戦犯として抑留されておる人々釈放につきましては、日本側意向を申し伝え、中共側においてもその趣旨をくんで、相当従来多数戦犯者として抑留されておったところの者も釈放いたしまして、あとに残っておるのはたしか四、五十名の程度になっておると思います。しかし、この人々をやはり早く釈放してもらうということは、これは日本国民のひとしく望んでおるところでありますから、やはり日本政府としては、これが釈放につきましても、あらゆる面から努力をしたいと思います。従いまして、もしも議員団等向うに行かれるというような場合があるとすれば、さらにその機会をもとらえてこういう問題について中共側政府釈放についての特別の考慮を払うように努めてもらいたい、かように考えております。
  12. 木村文男

    木村(文)委員 なお、この際お伺いしておきたいのでありますが、それは、帰還をしてくるまでの間に、未帰還者の中で消息が判明しておる者、これらの生活状態というものを非常に私は案ずるわけであります。その生活状態調査につきましては、どういうような方途を講じておるかということを伺っておきたいのであります。  いま一つは、あわせてこの中共における戦犯方々に、ソ連に私どもかつて提唱いたしまして、政府から送っていただきましたあの慰問品の送付も、何らかの形でお手配を願えないものかどうか、その御意思がないかということについても、一つ伺っておきたいのであります。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 この中共における撫順に抑留されている人々状態等につきましては、過去においてもいろんな機会にその実情もある程度明らかになっておりますが、ソ連の場合のように、慰問品の、特にこれこれ送ったというような扱いはいたしておりません。  なお、未帰還者のかの地における生活状態等についての調査の問題でありますが、実は未帰還者のほとんど全部といいますか、大部分というものは、まだ今から消息を明瞭ならしめようという調査すら実はできておらないのでありまして、従いまして明らかに抑留されておる人々生活状態なり環境というものは、ある程度明瞭になっておりますけれども、その他の人々のことは実は明瞭になっておりませんし、明瞭にする方法も現在のところはないというのが実情であると思います。
  14. 木村文男

    木村(文)委員 時間がないので、最後にお伺いしておきますが、それは遺骨収集の問題であります。ビルマを初めといたしまする東南アジア等における遺骨収集については、ある程度できたわけでありますけれどもソ連地区はもちろん、まだ国交の回復していない中共地区においては、全くこの遺骨収集に手を染められていないわけでありましてこのことに思いを寄せますると、ことに旧満州だけでも、戦後に、十八万人以上の開拓民や居留民が非命に倒れて、故国に帰りつくことができなかったというわけで、ほんとうにその後弔われることもなく、全く無縁仏と化して、そのみたまは今なおあの広い野に果てているような状態であります。これを思いますると、やがて間もなく十一回忌を迎えようとしておりまする今日、こうした多数の戦争犠牲者のみたまを現地においてお弔いするとともに、その遺骨の一片でも故山にお迎えいたしまして、丁重にお弔いして成仏願うということ、これが関係遺族悲願でもありまするし、また九千万日本民族としてひとしく切望するところであろうと私は思うのであります。この中共帰還者処理解決と合せまして、外務大臣としてのお考えをお伺いしておきたいのでございます。
  15. 岸信介

    岸国務大臣 遺骨収集の問題につきましては、お話のように、これはわれわれの宗教的な気持から申しましても、ぜひできるだけ手を尽して収集して、故山に葬るということは、遺族方々だけではなしに、われわれ日本国民のひとしく願っているところでございますから、従いましてこの未帰還者調査促進すると並行して、これとともに、遺骨収集につきましては、あらゆる面から当該国協力も得、日本政府としてもできるだけの一つ努力を払ってこの悲願を達成するように努力したいと思います。
  16. 廣瀬正雄

  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 昨日の夕刊で、中国におる残留邦人調査戦犯釈放のために、日本政府から人を派遣することについては、国交が回復されていないから政府代表ということはまずい、一応は議員団を派遣して、中共側の出方を見た上で、必要があれば政府係官を出してもよい、こういうように岸外務大臣が発言せられておりますのを私は新聞で読んだわけでございます。そこで私が疑問を抱きましたのは、一体議員団を派遣する場合に、議員団を別個の形で派遣するか、政府代表も入れるかということでございましたが、ただいまの木村委員からの質問ではっきりしたことは、政府代表はまだまずいから、議員団だけ側面的にそういう問題を解決するために派遣するというふうなお考えであるように了承いたしたわけでございます。そこで、私が問題にしたいと思いますことは、すでにこの問題はジュネーヴ日本中国との大使等関係解決しようとしても、なかなか進展を見なかったために、何らかの解決をしなければいけないということで、何らかの方法考えようとされて、今回そうお考えになったと思うのでございますが、今回もしも議員団だけ中共へ出すということになりますと、何ら前進は見ない、何ら政府考えるような効果というものは別にない、これはあくまでも民間同士民間から中共へ行くという形であって、むしろ中共の望んでおることは、政府代表お話をし合うということであろうと私は思いますが、この点について、もう一度伺いたいと思います。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 政府代表しては、お互にジュネーヴの何でもって話をしておるのが今の中共品木との関係で、ことにこの問題に関しての扱いはそういう関係になっておると思うのです。しかし、それでは十分でない。どうしてもこの問題をやるためには、いわゆる政府代表とか何とかというような意味ではなしに、むしろほんとう引き揚げの問題を従来から扱っておる、またそれについて深い同情を持ち、また実情のわかっておる専門家が行って、腰を落ちつけて、中共側もそれに対してできるだけの調査上の便宜を与えてくれて、協力するという形において、相当の時日をかけて調査しなければ、私はわからぬと思うのです。従いまして、ほかの外交交渉みたように、政府代表が行ってどう言うたからどうなるという問題じゃないと思うのです。そう考えますと、一番大事なことは、中共政府がこの問題に関して同情を持ち、ほんとうにそういう日本側専門家を入れて、国内におけるあらゆる調査便宜を与え、これに協力するというふうな受け入れ態勢といいますか、向う側態勢ができておるかどうかということ、またそれをこれから作るということが私は必要だと思うのです。そこで、この議員団の方が行かれるという問題については、私は、この国会において引き掲げの問題を専門的に数年取り扱ってきておって、そうして留守家族人々の非常に突きつめた気持もよくわかっており、その気持代表して、国民代表として行って、この意向を言い、また政府も、今言ったように係官といいますか、その専門家を派遣することもしたいという希望を持っておる。そういう場合には、向う政府としても、好意をもって迎え入れる用意があるというように、また用意がなければそういう用意をしてもらうような話を十分にすることが必要じゃないか。まだその段階だと思う。今、政府代表を出して、かりに議員団の人が行かれるのに、政府代表だという名称をつけて行ったら、それでものが解決するという意味ではなしに、むしろこれはあくまでも人道的であり、また中国日本との長い歴史的の密接な関係から、向う側で、これに対しての心から同情ある措置をするという、この受け入れ態勢を作ることが実際においては必要じゃないか。それにはむしろ国民代表する国会、それもただそういう形式的の意味だけではなしに、長年この問題と取り組んで、理解とそうしてその問題についての十分な知識を持っておる方々が行って、向うに訴えるということが、私は、政府が今考えていることに側面的に協力をし、そして留守家族人々の期待されておるこの未帰還者事情を一日も早く明らかにしてそのうち多数の人が帰ってこれるといえことになる道としては一番いいのじゃないか、かように考えておるわけであります。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまの御答弁の中で、専門家を入れて、そうして中共側の方で、政府代表が行けるような受け入れ態勢を作るということが大事であるというお話でございましたが、この専門家とおっしゃる意味は、この国会で長らくこの問題に取っ組んでいた人たちだけのことでございましょうか。それとも、官庁関係でも、そういう問題と取り組んでいた人たち、こういうふうな、つまり政府の機関で働いていた人たち、こういう代表も入れるのかどうかを承わりたいと思います。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと私の申し上げ方が足りなかったかと思いますが、私は今回は議員の方々が行ってもらって、将来政府代表としてこっちから人を出すというのではなしに、実際政府の一員である厚生省で従来引き揚げの問題を扱っておる専門の人、こういう人だとか、あるいは外務省においてそういうものを扱っておる専門の役人が向うに駐在して調査するということが一番いいので、それが政府代表として行くとかなんとかいうことではなしに、そういう専門家——それを私は専門家と言っておるのですが、そういうのを将来向うに出して調べる必要があるだろう、それの下ごしらえに行くという意味でありますから、従来この委員会のうちにもそういう御議論があったように私も間接に承わっておるのでありますが、この特別委員会から適当な方を代表として向うへやられて、さっき言ったような趣旨において十分説明をしてもらい、また中国への協力を求めるという素地を作ってもらうなら、そして日本が、今申すような専門家、それは役人でありますが、そういうものを向うにしばらく駐在せしめて、この問題を明瞭こするということに対して中国側で好意ある受け入れをしてもらって、協力ができるということが明瞭にされてくれば、そういうことを取り計らって参りたい、こういう考えでございます。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまの岸大臣のおっしゃることはよくわかるのでございます。この問題は一朝一夕に片づく問題でないから、専門家に駐在していてもらって、じっくりと話し合う、こういうところはよくわかるのでございますが、先ほどからの御答弁を伺っておりますと、もしも中共政府の方で理解をして、そういうふうな駐在すべき人を受け入れる機運ができるならば、その人をやる。そしてその機運を作るために、今回国会議員の人に行ってもらいたい、こういうことでございますから、それならば国会議員の人が直接行ってそういう機運を作るまでもない、何らかの形で日本の方から国会議員並びにそうした専門家の人を政府の一員として加えてやるというふうなことで一応問い合せてみればわかることであって、議員だけを何ら公式な資格もなく、ただ親善というふうな形で、あるいは話し合うという形でやることは無意味ではないか、こう考えるのでございますが、この点についての大臣のお考えをもう一度伺いたい。と同時に、厚生大臣のお考えも伺っておきたいと思います。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 これはいろいろな見方はあると思います。見方はあると思いますが、たとえば、私どもが過去において日ソの間に国交正常化せられなかった時代におきましても、訪ソ議員団人々が抑留者を釈放する問題に関してモスクワでいろいろと向う側と話されたということは、決してこれは無意味であったとは思わない。むしろああいう国柄から言えば、政府代表という形よりも、形から言えば国民代表であり、国会代表しておる、そうして国民意思代表してわれわれは来ているといって訴えることの方が、決してそれが無力であるとか、それが意味がないというようなものではないのであります。なお、事情からいきましても、役人は、従来これは政府が形式的に承認をしておりませんから、そういう問題についても非常にくつを隔ててかゆきをかくような——ジュネーヴまで行って、ジュネーヴの領事を通じてお互いに話をするというようなことは、非常に形式的なことであるようでありますが、そういう形になっておるわけであります。そうすると、それの間のやりとり、応答というものは、いかにも形式的になり、表面的に流れるきらいがある。しかし議員団の方が行かれて、向うの首脳部の方や、実際そのものにタッチしておられる人々に、よく国民の衷情なり留守家族実情というものを訴える、またそれに向う気持なり向う考え方というものを聞いて、広い見地からこの問題の処理方法として、こうしたらいいというような考えを作られる、またその人人が帰ってこられて、そういう方々が行かれて明らかになったことを留守家族人々国民代表として伝えられるということは、この問題は神経が非常にいらいらする問題であると思うので、私は留守家族人々気持から言うと、そういうことに対してもある程度の安心感というか、一つ希望感というものを作り上げる上からいっても、議員団として行かれるということが非常な意義があることではないか、かように考えております。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今、私、意味がないというまでではないのですけれども、日ソの場合ですと、ソ連へは日本国会議員団は正式に何だびも行っておりません。正式というわけじゃなくても、何度も行っておりませんけれども中国の場合は、何度か貿易の代表とかいう形で多くの議員が行っておりますし、また民間代表も参りまして、そのつど同じようなことを発言しておるわけでございます。さらにまたジュネーヴにおいての交渉も続けられているわけで、日ソの場合とは多少事情が違うと思いますが、しかし全然意味がないということはないにいたしましても、早く前進させるという意味でも、やはり今回は政府のどなたかがこちらにある名簿なり何なり持っていって、その問題を討議する方が早く問題が解決されるのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。その点をもう一度伺いたいのと、時間がありませんからさらにもう一点伺いたいことは、先ほどから言われておりますたとえばもしも中国側でそういう機運さえ与えるならば、あるいは受け入れ態勢さえできるならば、政府に働いている人を、駐在の人を派遣してもいいというお話でございます。そのことは、すなわち国交が回復されなくても、そうしてまたごく近い機会にでも、そういう機運ができればすぐにでもやり得るというふうに解釈してよろしゅうございましょうか。いかがでしょうか。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 なるほどソ連中共との間はいろいろ事情も違っておることは、戸叶さんのおっしゃる通りであります。ただ私は、これは普通の議員団として行かれるというのであればそういうなにがあるかもしれませんけれども、この国会が特に引き揚げについての特別委員会を作っておって、そうしてこの問題と数年真剣に取り組み、そうしてあらゆる面から検討し、またこの問題の解決にあらゆる面から努力しておられるいわば国会内における——言葉はどうかしれませんが、その方面の専門家であり、その方について特に重大な関心とそうして知識とを持っておる人々だという方が行くのですから、ほかの意味で行くところの議員団と私は混同される意味はないし、またそれに主眼を置いて向うと話し合われるならば、私は十分になにができる、こう思っておるわけであります。  それから政府の役人を向うに駐在せしめて、専門家を駐在せしめて、そうしてこの問題の処置に当るという問題につきましては、実は国交が回復しておらなくても、私はこれは純粋の人道上の問題であるから、従来からそういうことを申しておるのですが、国交の問題とは離れてわれわれはできるだけのことはする、従って、それをやったら直ちに国交正常化すとかあるいは国を承認するとかいう問題じゃないのです。こういうことを私自身としては明瞭にいたしておるのでありまして、また将来向うへ送る場合にもそれは明瞭にしてやる、そういう理屈にとらわれて、この人道的な問題の解決を延ばすなどということは、政府としてはすべきものでないという考えでおります。従って、十分その機運ができますれば、時期的に当分だめなんだというようなことを私は申すつもりはございません。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではっきりいたしました。そうなって参りますと、やはりこの引揚委員会委員たちが非常に専門的に取っ組んできたのでありますから、その方々を、政府のそうしたことに携わっておられた人たちと一緒に、政府代表でなくても、公けの使いというふうな形で行く方がもっと効果がある、こういうふうに私は考えるのでございますけれども、この点についてあとから厚生大臣等にも御意見を伺いたいと思います。いろいろ質問がございますけれども、こちらの方にもたくさんお待ちのようでございますから、私はあとからその問題について厚生大臣に伺いたいと思います。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと簡単にお答えしておきますが、私は決して、その議員団に役人をつけていくことは絶対に反対だということを申しておるわけではないのであります。しかし、このなには、ほんとうにお互いに有効適切な方法、またわれわれが知っておる中共側事情等も頭に置いて、最もいい方法考えていくということで、私はこだわって考えているわけじゃございません。
  27. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 櫻井奎夫君。
  28. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 外務大臣考えておられることもだんだんわかって参りましたけれども、どうも政府としては、今ジュネーヴを通じて交渉しているのが政府としての正常な道であって、そのほかのことはできないのだから、国会議員団が行って、向うの好意ある受け入れ態勢を作ってもらいたいということで、国会議員団は国民代表として、政府とは別個にそのような受け入れ態勢を作るために派遣されるような感じがするわけであります。しかし、今日中共から四万九千の者が未帰還であるということは実にゆゆしい問題で、この解決の責任は、国会ではなくて実は政府にあると思うのです。政府は誠心誠意この解決に乗り出さなければならぬので、従来のごとく民間団体にまかしておく、あるいはジュネーヴ交渉のあの実に遅々として進行せざる状況、そういうことではいけない。この際その道を開くについては、政府が大いに前面に立ってやっていただかなければならぬと思う。国交が回復しておらないから、そのようなことは非常にやりにくいというお話でございますが、国交回復とは別に、これは外相もしばしば言われるように、実に人道上の大きな問題であって、通商協定なども結ばれておるのでありますから、政府代表が行かれるのが至当だと思う。なおまた国会議員団が出る場合にも、ただこういう機運であるというような日本人の要望を向うに伝達するだけでなくて、国会議員団そのものに何らかの権限を持たせるという意味からも、政府代表というような形が私は当然であると思います。その点については、どういうふうにお考えでございましょうか。
  29. 岸信介

    岸国務大臣 従来の中共日本との関係は御承知だと思いますけれども、貿易協定をするにしましても、これは民間の団体同士の間で話をしておりますし、従来引き揚げ問題等につきましても、直接に当っておるのは赤十字社、あるいはまた日本の内地における中国人の遺骨を集めて返すのも、慰霊会というような民間団体がやっておりまして、政府代表というような肩書きのもとに中共との間にいろいろな交渉をしている段階はないと私は思います。まだそれは適当でない。これは社会党の立場からいえば、むしろ早く承認しろというような見地から、代表をやったらいいじゃないかという議論になるかもしれませんけれども、私ども政府考えている、まだ国交正常化したり、あるいはこれを承認をする段階ではないという立場を堅持している上からいうと、政府代表としての者を送るということは、たとい人道上の問題であるからといっても、それは適当でない。従って、将来役人をやる場合におきましても、それは政府代表というような意味じゃないと思うのです。たとえば、これは別の問題でありますが、気象の情報を交換するというようなことは、気象台長が向うの気象台長と話をして、協定をしてりっぱにやっておるというような場合におきましても、役人がそうするということもいいのですけれども、こういうような性質のものはそれでけっこうだと思います。この引き揚げの問題は人道上の見地に立っての問題でありますから、国交正常化の問題とは別だということを私は絶えず申しております。国交正常化しない限りは、たとい政府代表でなくても、政府の役人である者を役人の資格で派遣することは、適当でないのじゃないかという議論も従来あったと思います。しかし私は、この問題の解決のためには、役人でそれに携わっておって、十分な知識経験を持ち、また同情と熱を持っている人が行って、この仕事に当らなければなかなか解決しないと思うのです。従ってそういう専門家政府の役人の身分において出しても、人道上の問題を解決するためには、国の承認をしないという外交方針とは決して矛盾しないという見地に立っているのであります。ただ、今言っているように、国の代表、あるいは政府代表というような肩書きをつけて出すことは適当でない、こういう考えであります。
  30. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 私はこの問題を契機として承認しろというようなことを言っているわけではないのです。しかし、さらにはっきりしておきたい点があるのですが、かりに国会から議員が行くとしても、それはあくまで国会のやることで、政府は何ら関知しない、国会で勝手に行くんだというような見解をとっておられるのですか。その点をお伺いいたしたい。
  31. 岸信介

    岸国務大臣 これは実際問題として政府は関知しない、それは国会が勝手にやるのだ、そんな事実に反することは私は言うつもりはありません。ただ、それがいわゆる資格問題として、政府代表して来たというのではなしに、国会議員として国会から派遣されたのだ、国会にはこういう特殊の委員会があって、それを代表して来たのだということを私は言うだけであって、政府が反対であるとか、政府が何も知らないのだということを考えているわけではありません。政府熱意を持って、国会議員方々、またこの委員会方々が十分目的を達成せられることを念願しております。またそれが政府の方針にもちゃんとかない、政府協力してこの問題を解決しようという国会の熱情の現われの一つである、こういう意味であります。
  32. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 受田君。
  33. 受田新吉

    ○受田委員 外務大臣のお気持は非常によくわかるのでございますが、未帰還者留守家族等援護法第二十九条に、国は未帰還者の状況について調査究明をする責任があるということが明瞭に書いてあるわけです。従って、政府はあらゆる努力をして、未帰還者調査究明に当っていただかなければならない。ところが、この第二十九条の精神をくんで、政府は今まで十分に努力をしていたかというと、私たちはこれに対してある程度の疑義があるのです。たとえば、すでに国交を回復しているソ連にまだ一万有余名消息不明者がおられるわけですが、この方々調査究明について、厚生省の専門家を派遣されるとしばしば言われているのであるが、厚生省の専門家を現に派遣しているかどうかということもお尋ねしてみたいわけです。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 実は、これは実情を申し上げますと、厚生省でその専門に当って、このことに非常に詳しい人が、かつて職業軍人としてある階級におった人なんです。ところが、仕事性質上、ソ連に行って、ソ連同情をもってこの専門家の行動を助けるためには、実はいろいろな旅行もしなければなりませんし、それがかつて軍人であったというようなことのために、誤解を受けて、あるいは軍事スパイだというようなことで、仕事ができないというようなことがあっても困る。しからばというので、その人をおいて非常に——もちろん役人のことですから、これをやれとか、それに関係しているなにはありますけれども、最も有能であり、最も効果的にその仕事ができるだろうと考えた人がそういう身分の人でありますので、実はそれについて十分向うへ行っても誤解なく仕事ができるようにといういろいろな工作もいたしたので、人選が多少おくれておったのであります。しかし、その人選もいよいよきまりましたから、近く出します。
  35. 受田新吉

    ○受田委員 厚生省の専門家を派遣することについて、いろいろな事情があっておくれたが、近く正式に派遣したいという、今、総理兼外務大臣のお言葉でありますので、ようやく私たちもこれに対しては期待にこたえてくれていることを喜ぶものですが、しかしこれもおそきに過ぎたわけです。国交を回復したら、直ちにそういうことをなさるべきであったと思うのです。同時に、この第二十九条で、未帰還者の状況については調査究明する責任が国にあると法律にうたってある。この問題の解決のためには、なお国交の回復されていない中共政府に対しても、できればこの際積極的にこの法律の趣旨を尊重して、政府が動く段階に来ておると私は思う。ことに外務大臣は今までの外務省のはえ抜きのお役人ではなくて、非常に幅のある外交をされる立場にあられる有能なお方でありますので、この際に一つ従来の外務省のセクト主義を離れた、離れわざのうまい外交も一つやっていただいて、幅のある総理大臣兼外務大臣というきわめていい条件に立たれている岸さんとされては、勇敢なる措置をとられて中共に残っておられる未帰還者調査究明に当らしめる。従って、今回のこの問題の解決について、外務大臣として非常に積極的な御努力をされていることは、従来の外務大臣に見られなかったいいところだと思うのですが、先ほど各委員から言われたように、国民使節のような形であるならば、すでに中共政府の招待を受けた形でたくさん行っておられる人もあるのだし、また社会党の立場からも、今晩淺沼書記長以下が国民使節的な性格で向うへ行かれることになるのでありますから、国会議員国民使節的な性格での懇請とか、交渉とかいうものは、今までの行き方で十分私は尽きておると思うのです。従って、社会党もここに第二十九条に掲げた未帰還者調査究明に関する政府の責任ある仕事に進んで御協力をしてあげよう、非常に寛大な気持政府のお手伝いをしたいというくらいのむしろ幅を持っておるくらいでありますから、政府としては、一つこの法律の趣旨に基いて、積極的解決のために、むしろ思い切った措置をとると言ったくらいの方が、私は政府の誠意を示す上においてはいいのじゃないかと思うのでございます。外務大臣、御見解いかがでございましょうか。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 この問題は、言うまでもなく、超党派的な問題でありまして、われわれがこの問題を処理するのに、政府国会も一体となってこれを解決していかなければならぬと思います。私はその意味においてあらゆる努力を払い、特にこの問題のできるだけ急速に結果が判明するように、また期待しておるところの事実が現われてくるように努力をしなければならぬと思います。ただ、言うまでもなく、中共をわれわれは承認いたしておりませんし、また中共との間に国交が回復されておりません。事は中共の支配しておるところに行って、その中においてあらゆる調査をし、あらゆるなにをしていかなければならぬ。従って、中共政府が、その問題に関して、日本側の役人というようなものを受け入れて、十分に仕事をさせ、それに協力するという一つ状態ができなければいかぬと思うのです。幾らあせっても、われわれの方で押しかけて行って、何でも調べるというわけにいかないことです。それからいろいろ中共との間におきまして、そういうことができることのためには、やはり全体として親善関係の何も必要でありますから、いろいろな親善使節が行かれることもいいし、また社会党の有力な人々が行って、両方の関係の親善の気持をなにすることも非常に有効だと思うのです。ただ、引き揚げの問題というものは非常に専門的であり、またある意味からいったら非常に事務的であり、じみな困難な仕事でありますので、それで特に国会内においてもこうした特別委員会ができて、長年あなた方が熱心になにされておる、こういう性質のものでありますから、他の一般の親善使節がたびたび行ったからいいんだというふうに私は簡単に言えないと思うのです。今言うように専門家を派して、それで専門家が相当な期間おって、そして中共のあらゆる機関とも協力して、この事実を明らかにしなければならない。いろいろな旅行もしていって、事実を調べなければならぬというふうなことの性質でありますから、これを扱ってこられた皆さんの代表の方が、超党派的な気持から、そしてこの問題を政府国会一体になって、人道的の立場から解決しようというう熱烈なる気持を表明されて、そういう将来の調査なり何なりの基礎ができるということは、私は非常に望ましいことであり、またそれはむしろ政府代表であるとかあるいは政府ジュネーヴの機関を通じてそういうことをさせたいから、それを承認しろというようなことよりは、国会のその方を扱ってこられたあなた方のうちの適当な方がおいでになって、お話しになることの方が有力だと思う。この問題を推進することに役立つ、かように考えておるのであります。
  37. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 外務大臣のお約束の時間も参りましたから、ごく簡単にお願いします。
  38. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 関連して、外務大臣にお尋ねを申し上げますが、平和の話し合いが済んで、即時に専門家ソ連へ出すはずであったが、いろいろな点があったために、今度その次のエキスパートを出すというお話でございました。私ここで伺いたいことは、かつて何かで読んだと記憶をいたしておりますが、わが外交官は、向うに行っても、その旅行の範囲が制限をされておるということで、これが事実であるかどうか、私その点を確かめたいと思うのでございます。もしそうであるといたしますれば、今度この未帰還者ソ連における調査に関しまして、自由なるところの調査ができるかどうかということが私の心配の点でございます。この点につきまして、外務省のお考えとしては、こういう問題を究明するためには、自由なる行動がソ連において許されるかどうかということを伺っておきたいと思います。
  39. 岸信介

    岸国務大臣 未帰還者の問題の調査につきましては、実はソ連政府も非常に好意ある態度で協力するということをかねて言っておりますし、それからとにかく国交正常化の後におきまして、向う側だけで何百人かを調査してこちらに報告したということから見ましても、この問題に対するソ連側の好意なり誠意というものは、十分認めてよろしいと思う。従って、さらにこちらから専門家をやって、そして調査するということにつきましては、実は大使館人々国内の旅行等につきましてもやはり向う側に話して、向う側の許可を得なければならぬので、勝手に何することはできない。しかし、実際具体的にやってみなければわかりませんけれども、私は今までのソ連の態度からいうと、ちゃんと理由さえ明らかになれば許可してくれるもの、調査については支障がないものと思います。しかし、現実にやって何か支障が生ずるようであれば、そのつど外交交渉によってそれを妥決していきたい、かうに思います。
  40. 受田新吉

    ○受田委員 総理兼外務大臣の先ほどからの御発言で、私はあなたの誠意のあるところをある程度認めておるのですが、今度国会議員を派遣するとかあるいは政府の職員を派遣するとかいう場合に、たとえば、国会議員に対しては、従来の形式とは違って、準政府代表的な形で、政府代表と同じ実効を上げ得るような形にでも持っていきたいというような気持があるのかどうか、そういうような気持があるように私ちょっと伺ったのですが、総理のお気持はどうですか。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来、質疑応答で明らかにしたことは、要するに一つの建前の問題を私は申しておるだけであります。具体的に、いよいよそういう建前で国会なりこの委員会で人を出そうという場合に、その人々考えによって、こういうことが非常に都合がいいとか、あるいはこうすることが政府の側からいってもいいから、これはぜひお願いしたいとか、いろいろ事務的なこと等につきましては、私は、そういう建前のもとに方針がきまれば、十分関係の方面とお話を申し上げて、行っていただく以上は最も効果的にやっていただかなければならぬし、その上において政府としてすべきことがあるなら、私はできるだけのことをして参りたいというつもりでおります。だから、先ほど来のなには、建前として、政府代表で行くか、国会から出すかということが明瞭になれば、その上でいろいろな事柄のお話し合いをもちろんしてその仕事ができやすいように、また差しつかえない限りにおいて、われわれもいろいろなことをお願いするということにいたしたい、かように考えております。
  42. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 中馬辰猪君。
  43. 中馬辰猪

    ○中馬委員 私は恩給法改正の問題で、両大臣にお伺いをいたします。  実は、松浦労働大臣、神田厚生大臣も御承知通り遺族方々の恩給是正の問題あるいは傷痍軍人の方々の倍率の問題等、いろいろこの国会の最初から問題がございまして、国民的な一つの運動とまでなったということは皆様が御承知通りであります。ところが、いろいろこの問題が進展するにつれまして、こそく的な手段ではなくて、この際思い切って一ぺんに解決をしようではないかというような議論が、政府の部内におきましても、また私どもの自民党の内部におきましても出て参りましたために、臨時恩給等調査会というものをこの国会中に作りたい、そうして来たる十一月五日を目途として一つの結論を出そうではないか、かようなことに相なっておるわけでございますけれども、それらの恩給法改正の問題の中で、臨時恩給等調査会とは別に、この問題だけは一つこの国会政府の方から誠意ある回答を願いたいという問題が実は二つございますので、その点についてお二方の誠意あるお答えを願いたいのであります。  第一は、恩給法改正のうちで、未帰還公務員若年停止の規定の問題でございますが、これは御承知通り、傷痍軍人の場合におきましては、若年といえども恩給を支給しようという建前から、若年停止の規定が排除に相なっております。しかるに未帰還公務員の場合におきましては、若年停止の規定がございますために、その留守家族方々は非常な困難を来たしております。従って、政府は、この機会に若年停止の規定を未帰還公務員の場合も傷痍軍人と同様に廃止する意思はないか、まずこの点をお伺いをいたします。
  44. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 ただいまの若年停止の規定を排除する考えはないかという問題でございますが、ただいまのお尋ねの要望の点につきましては、かねてから大蔵省、厚生省、恩給局の三者において検討いたしておったところでございますが、公務員扶助料の遡及支給の点につきましては、十分要望の趣旨を尊重していきたいと考えております。若年停止の排除につきましては、なお困難な問題があるという意見が相当ありますから、ただいま直ちにこれを停止するということを申し上げることはできないのでございます。
  45. 中馬辰猪

    ○中馬委員 ただいまの労働大臣のお答えの中で言葉がはっきりしないところがあったし、非常に簡単でございましたからもう一ぺんお尋ねをいたしますけれども、未帰還公務員が死亡した場合についてであります。現在の恩給法におきましては、死亡の翌月から扶助料が支給されておりますが、しかるに未帰還公務員の場合におきましては、死亡が判明した翌月から支給するということに相なっておりますけれども、この死亡が判明するということが実は非常な問題でございまして、終戦後もう十三年目でございます。従って、だんだんおくれればおくれるほど、翌月から支給すると申しましても、実は支給しないというのと同様でございまして、その点で、大蔵省、内閣等におきまして、これを遡及して支給するという意味であったように思いますけれども、もしそうであるならば、私どももかねてこの問題は超党派的に解決をしなければならないということで非常な熱意をもって政府当局に申しておったわけでございまするが、ただいまおっしゃったことの中で、遡及するというのはそういう意味でございますか。
  46. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 言葉が少し足りなかったのでございますが、公務員扶助料の遡及支給についての恩給法の改正についてやるかどうかというお問いであると思います。この未帰還公務員の扶助料の遡及支給の問題につきましては・要望の御趣旨に沿い、その実現をいたしたい、こういうふうに考えております。今後ともこれができますように検討していきたいと思っております。
  47. 中馬辰猪

    ○中馬委員 ただいまの労働大臣のお答えは、この国会中に解決するとおっしゃるのか、それともただ何となく話が一致したから、若年停止よりも若干話が進んでいるという意味でございますか、いずれでございましょうか。
  48. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 若年停止の問題は、先ほど申し上げましたようにいろいろな問題もありますので、大蔵省、厚生省、恩給同等の意見がまだ一致いたしておりません。しかしながら、ただいまお話の遡及支払いの問題に対しては、これはいろいろとお話になりましたようなまことにお気の毒な状況でございますから、ぜひ一つやりたい、こういう考えを持っておりますが、その改正の時期は、諸般の情勢を考慮いたしまして、適当な時期にいたしたいと思っております。
  49. 中馬辰猪

    ○中馬委員 その諸般の事情を考慮してなんということは、われわれはもうこの委員会で何十回となく聞いており答弁はわれわれ納得できないのでありまして、この国会中に、政府提案においてこの問題を解決される意思はございませんか。
  50. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 この問題については、大蔵省の方ともいろいろ相談いたしております。そこで、先ほど仰せになりました臨時恩給等調査会設置法というものが今後出されるであろうという予測をいたしております。これには昨年来非常に問題になっておりました重要な問題をかけることにして、これと切り離してやってもいいという情勢が見られるならば今国会に出してもいいと思いますが、それが混乱しまして、非常に工合が悪いということになれば、自然出しかねるという状況でございます。
  51. 中馬辰猪

    ○中馬委員 諸般の事情が許すならばこれらの大きな問題と切り離してやりたいということですが、その諸般の事情というのは、主として財政当局考え方でありますか。それともこれらの引揚者の団体やあるいは戦死者の遺族の団体あるいは傷痍軍人の団体等がこれだけを切り離してやってもらっては困る、あくまでも臨時恩給等調査会で一括して審議をした結果を次の国会等において財政的裏づけをする、裏づけをしてもらわなければ困るというふうな事情でありますか。私ども考えでは、与党内部においても、この問題だけは、これらの大きな問題、しかもきわめて多額な財政負担を伴うような問題とは切り離してもよろしいというふうに内閣部会においても意見が一致いたしておりますし、またそれらの遺族やあるいは傷痍軍人等の団体も、この問題とは別に考えておりますから、そういう意味の諸般の事情であったら御心配は要らないと思います。この点についての大臣の御意見をお伺いいたします。
  52. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 今のお話は、党の方の空気もまだはっきりきまったようには聞いておりません。しかし、大蔵省の方は、そう財源に影響しないような考えを持っておりますから、これは財政上の問題ではなくて、この恩給法の改正というものが問題になれば、自然従来の大問題に波及していくということをおそれておりますから、これは今の臨時恩給等調査会の方で結論を見出すということで御了承ができるならば、大蔵省及び政府なりにおいて相談してもいいと思いますけれども、ざっくばらんな話なんですが、それができないと困るものでありますから、諸般の状況と申し上げておるのでありますので、この諸般の状況を一つおくみとり願いたいと思います。
  53. 中馬辰猪

    ○中馬委員 その諸般の状況は御心配は要りません。党の内閣部会や政調会等におきましても、これはきわめて金額も小さいし、他に波及すべき問題でないということになっておりますから、御安心を願いたいと思います。もし党内のそういういろいろな情勢等についての御懸念があるならば、委員長が政調会長あるいはその他の方々といろいろ折衝されておりますから、切り離してもよろしいという委員長からの御言明を一つ御信頼願いたいと思います。
  54. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 内閣部会では切り離してやってもよろしいということをはっきり書明いたしまして、そういう方針で進んでおると私は確信いたしております。
  55. 中馬辰猪

    ○中馬委員 ただいま委員長からも御言明がございました通りに、内閣部会におきましては切り離してもよろしいというふうに相なっておりますから、一つ早急に法案を準備提案されるように願いたいと思います。  もう一つの未帰還公務員の若年停止の問題でございますけれども、なぜこの問題は切り離しておられるのか、今の扶助料遡及支給の問題と全く同様な内容のものであると私ども思いますが、これだけを取り残して遡及の方だけは先にやるという意味がよくわかりませんけれども一つ御説明が願いたい。
  56. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 前段の問題でありますが、ただいま委員長からも御発言があったのでございますけれども、私といたしましては、直接に政府内部において党との連絡をとりまして、それで支障がないようであれば、これは大蔵省と折衝いたしまして善処いたしたいと思います。  その他の問題は、技術的な問題でございますから、局長から御説明申し上げます。
  57. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいまお尋ねになりました未帰還公務員に対する普通恩給につきまして若年停止の規定を排除したらどうかということであります。これは前々から申し上げておりますように、普通恩給というものは、退職公務員の本人の一身に専属する権利として支給される性質のものでありまして、その周囲の事情によって若年停止を排除するかどうかということをきめることは、建前上困難であります。むしろこの問題は、本来、留守家族対策の分野で検討されるべき問題ではなかろうかというふうに考えてきたわけであります。結局、未帰還者留守家族援護という立場におきましては、留守家族援護法という公務員、法人を問わず広範な一般的な留守家族援護対策の法律があるわけであります。従いまして、未帰還者が公務員であるというために、その使用者である国がそれに対して退職後も給与を支給するに当って、留守家族援護という立場まで踏み出してこれを拡充していくということになりますと、どうしても留守家族援護の体系をじゃますることになる、そういうような見地からいたしまして、退職後の給与制度というものの体系を、やはり本来あるべき自分のペースでもって、それ以上に踏み出さないというところに一つの限界を置くべきではなかろうか、こう考えておるわけであります。このような意味におきまして、普通恩給の若年停止制度というものをこの際排除することにつきましては、同意できないという見解を持つものであります。
  58. 中馬辰猪

    ○中馬委員 あなたの方からは再々さような御説明がございますけれども、本人の一身上の問題によって云々とおっしゃいます。これはちょうど傷痍軍人の場合に、本人の一身上の支障がある、たとえば手がないとか足がないとかいうことを言っておりますけれども、未帰還公務員の場合におきましても、抑留されておるということは、やはりできるならば早く内地に帰って公務員としての仕事をしたい、そうして労働力を発揮したいということでありますけれども、抑留という公務によって——私はいわば公務だと思います。抑留という公務によって日本に帰ってこれない、そのために自分の持っておる十分なる労働力を発揮できないということでありますから、これはやはり傷痍軍人等の手がない、足がないというのと同様に解釈すべきものであると思います。その点について、もう少し局長も一つ幅の広い御解釈はできないものでありますか。
  59. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいま申し上げましたように、普通恩給の若年停止の排除という規定は、ただいまのところ在職中死傷病等によりまして退職したというような方の場合におきまして、その除外例として若年停止の排除ということをやっております。この例をとりまして、未帰還者の場合においてもどうか、こういうことでございますけれども、この事情はやはりあくまで未帰還者留守家族というものを対象にしてのものの考え方であるということにおいては、やはり性質が違うのではなかろうかと思っております。それから、また、もう一つは、先ほど大臣から申し上げましたように、もしも公務扶助料を遡及して支給するということになりますと、それまでの間の普通恩給の支給ということは、結局完全に公務扶助料が現実の死亡にさかのぼって支給されるというまでの一種の仮払いと申しますか、つなぎの資金、こういうふうな性質を帯びたものになって参ります。そういたしますれば、なおさら留守家族援護という色彩が濃くなって参りますので、恩給法の上からそこまで手が伸ばすということがいいかどうかということに対しては、なかなか踏み切れない問題がある、こう思っております。
  60. 中馬辰猪

    ○中馬委員 ただいま遡及の問題と関連してお答えがあったし、またお考えがあったわけでございますけれども、それならば、前からずっと問題になっておりましたところの昭和二十年九月二日以前に死亡した人は、今おっしゃった意味では二重に支給を受けているわけであります。これはいわゆる調整分と称しておりますけれども、この調整分に対するあなたのお考えはどうなっておりますか。
  61. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 現在恩給法の規定の上では、未帰還公務員というものを、九日二日以後海外にあっていまだ帰還せざる者というふうに定義いたしております。従って、九月二日以前すでになくなっている方というものは、未帰還公務員の概念に入らぬというわけで、当然これに対しましてはさかのぼって公務扶助料が支給される、こういうことになるわけであります。そして、この人たちにもしも普通恩給が支給されておるとしまするならば、これは未帰還公務員でない者に対しまして普通恩給が支給されておったのでありますから、それは当然取り消さなければならぬ、従って、その取り消された普通恩給と、さかのぼって支給される公務扶助料との間に調整関係が起る、こういうことになっております。
  62. 中馬辰猪

    ○中馬委員 その調整の関係については、現に二重所得というような関係で、会計検査院等におきましてもいろいろ議論があるようでございますけれども、あなたの方においてもお認めになるのであるならば、早急に一つこれが解決を願いたいと思います。一方においては全然支給を受けていないという人もあるし、一方においては二重に受けているという人もあるわけでございますから、そういう点については、最もすみやかな機会一つ御調整が願いたいと思います。
  63. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいまお尋ねの通り、公務扶助料の遡及支給の問題がありますことは、当然それまでに留守家族の手当が支給されたという問題に対しまして二重払いとなりますから、その間の、現在まで支給された留守家族手当とそれから遡及して支給される公務扶助料との間の調整関係というものは、当然うらはらとして規定が設けられなければならぬ、こういうふうに考えます。
  64. 受田新吉

    ○受田委員 松浦給与担当恩給担当国務大臣殿に御質問申し上げます。恩給局長、御答弁願わなくてもけっこうです。今、中馬さんから大臣にお尋ねをされたわけですが、その中に恩給法の附則、すなわち昭和二十八年の法律百五十五号、この法律によって夫帰還者である公務員に対する特例が書かれてある。その未帰還公務員に対して、死亡の判明の日においてということでなく、死亡の目にさかのぼってというこの規定の改正は、非常に重大な意義があるわけなんです。大臣は、その点は今何とかして考慮したい、こういうことでございましたが、死亡の日にさかのぼって支給しても、従来の留守家族手当というものが出ておるのですから、差引したら、政府は大した負担にはならぬ。だから予算的には大した問題にならないというので、その方を取り入れられた。ところが、もう一つの若年停止の規定の方はどうかというと、これは恩給法の体系をくずすという御心配があるようでございますが、これは中馬議員のお説のごとく、傷痍者のすなわち傷病年金あるいは増加恩給を支給される人の場合には、若年停止の規定がない。だから、そういう人と同じ不幸な立場に立っておる人だから、これを若年停止の規定を削除しようということになるのです。従って、この問題は非常に人道的にも意義のある規定であるし、こういう規定を設けることによって、政府にあたたかい心があるということにもなるのでありますし、しかも、予算上の問題は大したことはないのでありますから、勇敢にこの際死亡の日にさかのぼる規定を作るとともに、若年停止規定を削除する御措置を勇断をもってなさる御決意がないか。幅の広い御決意をお願いしたいと思います。
  65. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 受田さんの同情のある御発言に対しましては、心より敬意を表します。御趣旨の点はほんとうにごもっともでございますから、今後この実現を期するよう極力努力をいたしたいと思います。
  66. 受田新吉

    ○受田委員 実現を期するように、今国会において努力するという意味に解釈してよろしゅうございましょうか。
  67. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 今国会の問題については、先ほど中馬議員との間に申し上げましたように、諸般の事情を考慮しなければならないような情勢がうしろにくっついておりますから、その点がすっきりしないと、ここでどうも責任大臣から今国会に出しますと確約のできない悩みを御了察を願いたいと思います。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 私はここで一つ不思議な給与上の取扱いがされておることをあなたに御報告しなければならぬのですが、若年停止の規定を削除していただけば、その不思議な現象を取り去ることができるという問題が一つあるわけなんです。それは、未帰還公務員の中で、六十才以下の父母のある人とか、あるいは次男、三男で生計上の主体になっていない人とか、こういう未帰還公務員がたくさんあるわけなんです。その人は、今、留守家族手当も、戻るまでもらえないのです。何ら一文ももらえない。国家の公務に従事しておって、一文も給与をもらわないという公務員日本におるわけなんです。それがこの法律改正をやることによって救われることになるのです。政府が、今、国家の公務に従事しておる公務員に対して一文も給与を渡さぬという、こういう公務員を置いておるということは、非常に片手落ちだと思うのです。あなたは給与担当の国務大臣としても重責を持っておられるので、この際、もしこの方で若年停止の規定が削除されないとするならば、給与法を改正して、夫帰還公務員に関する給与規定をお作りになる御用意がないか、お答えを願います。
  69. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 お説いろいろございますが、われわれの方でもいろいろ検討いたしておりますから、検討いたしまして、御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  70. 受田新吉

    ○受田委員 これは多年の懸案事項なんです。検討を重ねる上においては、検討々々で長期にわたる検討の結果は、ついに検討倒れになるのです。私はそこを悲しむのです。そのうちにこの問題の解決する時期が来る、ずるい考えを持っておられると判定しても、あなた方は言いのがれが私どもはできないと思う。なぜかというと、まだ帰らざる国家の公務に従事しておる未帰還公務員というものは、純然として国家公務員です。この国家公務員に対して、生計上の主体でない次男、三男とかあるいは親が六十才未満の人であるとかいう方には一文も手当を出していないということは、国家にただ奉公をさせておるのです。これは重大な問題になってくると思うのです。検討の段階は過ぎているのです。だから、給与法を改正する御用意があるかどうか、つまり未復員者給与法を廃止して、夫帰還者留守家族援護法の中にみな入れられた。ところが次男、三男とか、あるいは親が六十才未満という方には、留守家族手当を支給しないことになっているから、結局びた一文ももらえないことになる。
  71. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 非常に複雑な内容があるようですから、責任局長に答弁いたさせます。
  72. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 この給与問題に相なりますと、大蔵省の所管と思いますけれども、当時、昭和二十八年、法律百五十五号あるいは未帰還者留守家族援護法というふうな一連の法律ができたわけであります。その立法当時のことは、私なんかよりも受田先生の方がお詳しいわけですが、その法律ができました際に、そういうような問題は一応割り切ったふうに見える、私ども少くともそう解釈しておるわけです。すなわち夫帰還者給与につきましては、一応そこでもってピリオドを打って、そして、あとは留守家族対策あるいは退職者の給与制度なりというものに持ち越すということで、一応割り切っておるわけです。そこで留守家族手当の対象にならない人を、退職者給与制度の方でもう少しカバーする方法はないだろうかということで、いろいろな若年停止の規定を排除するという問題になってきていると思うのです。しかしながら、退職者給与制度を運用する面におきましては、あくまで給与制度というものの本来のステップを踏みはずさないという意味におきまして、私たちは考えておるわけなんです。そのほかを補充する面におきましては、やはりあくまでも留守家族対策という面で補充されるべきである、もしも留守家族対策の対象にならない人は、やはりそれはそれで置くよりいたし方がない、こういうふうに一応その当時割り切って立法されたものと、こう承知しております。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 これは大へんなことなんです。つまりもう対象にならぬ、手当を一文ももらわぬような人は仕方がないのだ、つまり国家の公務に従事しているけれども留守家族手当の対象にならぬ者はもうだめなんだ、あきらめてくれという、この考え方は、当時法律が出たのであなた方も賛成されたからいいじゃないかというお言葉であるが、法律は改むるにはばかるなかれです。当時、法律が出たときは、われわれはごまかされたのです。しかし、よく考えてみると、結局国家の公務に従事している人で手当をもらえないということが法律の内容に出てきたということが発見できたのです。そういうときには、思い切って国家の公務に従事している未帰還公務員に対して、一文ももらってない人に対して、戻ってからというんじゃなくて、今、毎月々々留守家族の待っている方に、御本人の俸給に当る分を差し上げるということは、そういう法律措置をとるということは、善政をしかれる意味で大事だと思うのです。そこで私はお尋ねしておるのですが、大臣、私の今お尋ねしたところは、筋が通っておると思えるでしょう。であれば、検討の期間をある程度区切って、何とかしたいという御発言をいただければ、私は質問はすぐやめます。
  74. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 いろいろ同情あるお問いでございますが、政府の方といたしましても、やはり従来やって参りました沿革もありますし、それぞれの調査、検討をいたしておりますから——検討々々というと、検討でのがれるんじゃないかと言われるかもしれないが、そういう大それた考えは持っておりません。あなたと同じ考え方のもとに立って同情はいたしておりますが、今、局長の申し上げましたような内容のものでありますから、いましばらく一つ御了承願いたいと思います。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 これで発言は終りますが、いましばらくという期間は、今国会中という意味か、あるいはそれより延びるという意味か、それを一つ……。
  76. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 先ほど中馬君にお答え申し上げたのをもう一ぺん申し上げますと、政府より党にその後の変化について十分に打ち合せたい、その上で大蔵省及び厚生省と協議いたしまして、委員長の申しましたようなことが真相であれば今国会に諮りたい、こういうように考えるのです。けれども、これは若年停止の問題ではなくて遡及支払いの問題であります。若年停止の問題については、これと同様にやることは、われわれの方から言うならば調査が不十分であって、時期尚早であるとお答え申し上げます。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 私は初めの方の問題を今お尋ねしているのではない、おしまいの方の問題をお尋ねしておる。時期尚早であるからと言って逃げておられるようだが、検討ではなくして逃げているような御発言じゃないですか、結局検討になっておらぬ。
  78. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 今後できると予想される臨時恩給等調査会が設置されましたならば、そこにおいても十分検討されますから、その結果、少くとも来国会には提案できるだろうと思っております。
  79. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は次の国会に回しては手おくれなんです。本国会のうちに片づけなければならないような宿命的な課題なんです。それを四年間長期にわたる検討を加えられた、そしてこの問題はもう少し時を待って、消息不明者処理をするときに片づけられるという逃げを考えられておるのではないか。そのときを待てない。一文も手当をもらっていない未帰還公務員に対して、国家の公務に従事している人たちに対して、何らかの形で国家はお手当を差し上げるという原則をこの際確立してもらいたい。これは給与法を改正してもよければ、あるいは昔あった未復員者給与法のような形でもいいから、何らかの形で恩給局長の手をわずらわさないで、給与担当国務大臣としての決意を示してもらいたい。予算はわずかです。
  80. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 以前答弁いたしました通りでございます。
  81. 受田新吉

    ○受田委員 松浦先生、これは簡単に片づくのです。あなたもおわかりと思うのですが、国家の公務に従事している国家公務員で、外地におって多年御苦労しておられる方に一文も手当を出さないというようなやり方は、国政運営上の大きな欠陥であるとお考えではないですか。そのことを一つ……。
  82. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 事情は十分にわかっております。でありますから、十分に検討して、その上で成案ができたらばいたしたい、かように思っておるのであります。国の財政をかりに一億でも出すという場合には、十分検討することは当然のことだと思います。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 ずいぶんえらいお答えでしたが、たといわずかでもということだが、一億とか二億とか金額はわずかであっても、一文も手当をもらっていない国家公務員がある、しかもその国家公務員は長期にわたって消息不明で御苦労されておる方である。いや、消息がはっきりわかっておって手紙も来ておるけれども、その人が次男、三男であれば、お手当はもらえない運命になっている。だから給与法の改正をやるとか、あるいは恩給法の改正のみでなく、他にも考慮の余地があるわけです。恩給法を担当される国務大臣であり、給与法を担当される国務大臣であるあなたは、ちょうどいい位置におられる。あなたが解決されなければ、だれがいつの日に解決されるか。非常にいい位置にあなたはいらっしゃるのです。
  84. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 この問題は、先ほど局長が今までの沿革を十分述べられまして、政府も今後検討するという答弁をされたのです七その上に、給与担当の大臣として、恩給法でいけなかったら給与関係でやったらいいだろう、こういうのですが、やはり道は道で立てなければなりませんから、早急にとおっしゃるが、われわれの方としても国民の血税を使うのには、筋が通らなければいけないのです。だから、そのために検討すると言っておるのであります。払わないという意味ではないのですから、どうぞ一つ御了承願いたいと思います。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 筋は通っていますよ。このくらい筋が通っているものはない。国家の公務に従事している未帰還公務員である、その人たちに対して一文も金を払わない、その人たちに何らかの形で給与を上げようというのだから、このくらい筋の通ったものはない。
  86. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 先ほど局長が沿革を述べているのです。そういう事情なんでありますから、これは十分検討してやるべきであるという結論しか出ないのです。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 これでおきます。
  88. 廣瀬正雄

  89. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほど岸外務大臣質問いたしましたときに、厚生大臣にも御答弁をお願いいたしましたが、岸外務大臣お急ぎのようでしたので、そのままになっておりましたが、時間の関係で繰り返しませんから、どうぞ御答弁願いたいと思います。
  90. 神田博

    ○神田国務大臣 先ほど岸外務大臣、並びに厚生大臣としての私に答弁するようにという戸叶委員からのお尋ねでございましたが、岸外務大臣から詳細にわたりましてお答えがありまして、私も政府の一員といたしまして、ただいまあの通り考えでございますから、お答え申し上げなかったのですが、さよう御了承願いたいと思います。
  91. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういたしますと、今度は国会議員団だけを派遣して、そうしてあとから専門的な役人を派遣する下準備をしてきてもらうんだ、こういうことなのでございますが、そうすると、国会議員方々と一緒にもしも厚生省なり何なりの専門的な人が来た方がいいというような向うからの返事なり何なりがあれば、そういうふうに一緒にやるというお考えがおありになるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  92. 神田博

    ○神田国務大臣 その通りでございます。調査団と申しましょうか、議会でどなたかおいでになられると思います。おいでになられる際に、政府側も一つ出してもらえぬかというような御交渉があり、それが同時に中国側においてもその方が便利だ、これは議員団でございますから、大所高所からの御折衝をなさると思いますが、しかしやはり事柄が具体的な問題でございますので、そういう方が便利だということで意見が御一致になれば、そういうことは政府としても十分考慮いたしたい、こういう考えであります。
  93. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、その政府の役人の人が一緒に行った場合に、その人が残ってあとの調査なり何なりをしてくるということも考えられるわけですね。そしてまた、今回一緒に行けるということも考えられるわけでございますね。
  94. 神田博

    ○神田国務大臣 相手のあることでございまするし、交渉段階の都合もございましょう。そこで、今仮定したことで戸叶委員からのお尋ねでございますが、私はそういうことは当然予想されるのじゃないかというふうに考えております。  そこで、もう少し申し上げたいことは、きのうの閣議の際の了承事項でございますが、先ほど岸外務大臣も非常に詳細にわたってお答えしておったようでございますが、政府といたしましては、議員団がおいでになられるのだから、できるだけ一つ大まかな地ならしといいましょうか、友好関係、そういった人道的な、調査の基本的なことをちらと了承事項として解決していただきますれば、あとは事務的にどんどん十分な調査ができるようにしたい。これは御承知のように中国の地底も非常に広大でございまして、しかも日本の未帰還者状態も、これはずいぶん移動もあったようでございます。戦線自体が広かったのでございますから、これは大へんだろうと思うのでございまして、一回、二回、数回等の調査で十分だというふうにはちょっと考えられないのじゃないだろうか。そこでとりあえず議員団方々で、大きなワクといいましょうか、基本的なことについて一つ了解事項を作っていただければ非常にいいんじゃないか。あちらへおいでになるにしても、手足といいましょうか、いろいろ具体的な参考が要るとすれば、情勢によって政府側からも適当なものを何らかの形で随員として派遣してもいいのじゃないか、こういうことが想像できるのじゃないか、それが今戸叶委員の言われるように、交渉で置いてきてもいいかどうか、あるいは私が申し上げておりますように、一応お引き返しになっていただいて、十分政府と打ち合せていただいて、その後専門的な調査団というものを——一つ調査団が全土を回るか、あるいは急速にやるために何カ班か編成して、満州、蒙疆、あるいは中南支というふうに分けた方がいいか、そういったいろいろなこともあろうかと思います。もちろん、そういうふうに参りますと、相手国に対してもお世話になることが大へんだろうと思うのでありまして、一時的にたくさんなことになりますから、相手国が、一つ調査団で長く調査する方を便宜とするか、あるいはもうこういうことは早く片づけた方がいいから、何カ班かの調査団を出してもらいたい、そうすればその各班を自分の方で案内しようというようなことになろうか、相手のあることでありまして、いろいろのことが想像できるんじゃないかと思うのでありますが、要するに、政府といたしましては、だいぶ長いことでございますから、国交回復は待ちきれない、未帰還者留守家族方々あるいは遺家族の方々に一日も早く御納得をしていただきたい、国民ひとしくまたこれは心配していることでありますから、そういう御心配を解きたい、こういう意味で先ほど来、外務大臣がお答え申し上げているわけでございまして、これは一外務大臣というよりも、総理兼外務大臣としてお答えしている、こういうように私承知いたしております。
  95. 戸叶里子

    ○戸叶委員 厚生大臣のお考え外務大臣のお考えも同じわけなんですが、そこでお伺いしたいことは、それでは外務大臣のおっしゃったような形の調査なり、あるいは使節団が行くといたしますと、向うで当然これからお互い話し合って調査を進めていく上に必要な資料などは持っていけるものでし、うか、それとも持って行かないのでしょうか。たとえば行方不明者のこちらにある名簿というようなものを持っていけるものでしょうか、どうでしょうか。
  96. 神田博

    ○神田国務大臣 今、総理も申し上げておりましたが、正式ルートとしては、ジュネーヴを通しまして、両方の領事同士がこれは交渉を開始いたしますので、皆さんのお立ちになる時期にもよろうかと思いますが、おいでのときは、厚生大臣といたしましては、未帰還者名簿をぜひお持ちになっていただいて、お打ち合せをしていただきたい、こういうふうに私は一応考えております。
  97. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 関連して——私は思い出すのでございますが、かつて李徳全女史、これは向うの厚生大臣だと私は覚えておりますが、そのお方を日本にお迎えをいたしましたときに、帰すというお約束があったのでございます。それで、向うからお帰りになった方々を出迎えますと、結局病気の人とか、あるいはお年をとった御婦人とか、そういう方に限られておったのでございますが、私は調査団がいらっしゃることに反対をするものではありませんけれども向うの厚生大臣が日本に来て、りっぱに帰しますと言うて言明して下さっておっても、この調子でございます。今の大臣が約束してくれたことすらもこの調子でございますが、政府代表でないところの調査団が行って、どれだけの効果を上げ得ると大臣はお考えになるか、それが一点でございます。  もう一つ、私はここでもしお時間があればお尋ねをしたいと思っておったことでございますが、これはあちこちで聞く問題でございますが、いわゆる留置されておった人たちもこれを言うております。われわれを帰さないのは、結局人質だ。早く日中間の平和条約というものに持っていくために、人質としてわれわれは置かれているのだ。もし日本に不利なことであるならば、われわれのことを心配しないで、急ぐなという手紙すらもらったことがございますが、中共のいわゆるものの考え方、こういう人はやはり日中の平和条約をするための人質的の存在であるかどうか、大臣はどうお考えになっていらっしゃるか。外務大臣に尋ねたいと思いましたけれども、お帰りになりましたから、やむを得ませんが、その点が第二点でございます。今晩社会党の方々向うにおいでになって、日中の平和条約のきっかけを作るのだということを、これは私新聞で拝見いたしたのでございますが、ソ連中共もそのイデオロギーが同じでございますから、ここでつうつうなものがあるだろうと思います。いわゆる中共のえらい人がよくソ連においでになります。何かこういう問題でも話し合いがあるかもしれぬとひがんで考えるのでございますが、そういう点があるとお考えになるかどうか。これは自分は外務大臣じゃないから知らぬとおっしゃられれば、それはそれきりの話でございますが、やはり引き揚げの担当大臣としてそういう憂いがあるとおぼしめしになっていらっしゃるか。それから向うの厚生大臣が約束しても帰してくれないというのに、単なる国家の代表でなしに行って、もし外交的にそういうふうな意図があるとすれば、話が進展するかどうかということを、私は老婆心から心配いたしておるのでございますが、大臣はどうお考えになりますか。
  98. 神田博

    ○神田国務大臣 中山委員が今お尋ねになられまして、いろいろ例をおあげになられましたが、これは外交上の機微に触れたことでございまして、いろいろ相手国の国民感情といいますか、そういう、そのときそのときによって、いろいろの考え方をお持ちになることはあり得ることと思います。そこで今、具体的な問題として、ソ連においてはそういうように考えられたこともあったやに記憶いたしておりますが、今日これが解消したことは、両国のために慶賀にたえないと思います。中共の場合におきまして、そういうような考えで残っておるかどうかということにつきましては、私は必ずしもそういうふうに考えておらないのでございまして、あるいは甘いというようなことをおっしゃられればそれまでのことでございますが、私もたびたび中国に渡ったこともございますけれども、何しろ広い土地でございます。新政権ができて、非常に有利なことがいろいろわが国に伝えられておるのでございますが、私のかつて数回渡った経験によってみると、これは為政者にえらい人がいても、あの大国、しかも近代国家としてようやく踏み出した程度の国ですから、日本で私どもが外国人を見ているようなふうに、そう徹底した調査といいましょうか、そういうことがむずかしいのじゃないだろうか。むしろ中国は、自分の国の建設に追われているのじゃないか。新政権下、しかもああいう広大な全領域にわたって大きな息吹きをさせ、新興国家を作ろうというのでございますから、わが国にとってみれば、今の未帰還者引き揚げの問題、あるいは遺骨収集の問題というのは非常に大きな問題でございますが、中田側では、わが国の国民感情として全国民考えているのと比べた場合、むしろそういった相違があるんじゃないか、これは私の考え方でございますが、そういう気がいたすのであります。そこで、国交回復ができておらない、これは今日の国際情勢からいって、岸外相が述べておられるように、正式代表を出すということについても困難のある点は御了解願えると思う。そういう状態にあるとすれば、この際新憲法下のわが国の国会並びに国会議員あるいは委員会等は、三権分立の上からいっても、最高の機関なんですから、その方々国会代表して行くということになれば、やはり政府代表と何ら遜色ないということを、私の良心から言えば確信しているわけでございまして、むしろ国民外交といいましょうか、国民全体が視野を広く、国のために共同の成果を上げるように努力するのだという意味からいえば、非常に御苦労し、また御研究されておるこの引揚委員会方々があちらへおいでになられ、全く人道問題として日本国民感情というものも虚飾なくぶちまけておやりになっていただくことこそ、むしろ私は日中外交、日中親善の展開されていく大きなくきびになるのじゃないか、こんなふうに考えている一人でございます。政府国会からおいでになられる方々に全権を与えることができなかったとか、そういう問題をどうこうという以上に、国会の自主性をもって、そして委員会の権威をもって、国民外交をしていただく、それによって大道が開ける、政府が次の手を打てるというようなことになれば、今後の日本と外国との関係について私はむしろ明るい希望を持てるのじゃないかという気がいたすのでございます。そういう意味において、先般来、委員長及び当委員会方々から引揚委員会意向というものを了承いたしまして、私も一つできるだけ進んでお願いいたしたい、厚生大臣としてできるだけ協力をいたそうというようなかたい気持をもちまして、閣議等におきましても実はしばしば御披露いたしておるようなわけでございまして、特に昨日の閣議でようやく政府側も考えがまとまったわけでございます。
  99. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今、厚生大臣のお考えは大体わかったのですけれども、その中で二、三伺いたいのですが、時間がないですからそれはその程度にいたしまして、ごく簡単にあと二点ほど伺いたいと思います。まずその一点は、遺骨収集の問題なんですけれども日本の方から向うに行って遺骨を掘ってくるというふうことを交渉する、それと同時に、日本にある中国関係の方の遺骨の方をどうするかということがやはり問題になると思うのです。こういうふうなことに対して、どういうお考えを持っていらっしゃるか。  もう一つは、私いなかの方へ参りましたところが、満州の方から帰ってこられたという人が出てきまして、自分の知っている人たち遺骨をある場所に埋めてきたところがある、しかもそれも相当数埋めてあるという。そういうふうな方が私は日本の全国にあちこちあるのじゃないかと思います。そういう方の話を一応集めて聞いておきますと、もっと早くそういう問題の解決ができるのじゃないか、そういうことを帰ってこられた人についてもう一度調査される方法がいいのではないかと思いますが、これに対してどうお考えになるか。  もう一つ、ついでに伺ってしまいますが、一時帰国者の問題です。今度代表者が行きますと、おそらくあちこちで一時帰国を望む方たちが出てこられると思います。しかも私この前は政務次官に伺ったのですが、きょうは厚生大臣の御意見を伺いたいと思いますけれども、この一時帰国者の方々は、今、中国の方の政府で、行きの汽車賃も出してやる、おみやげ代も出してやるというふうな誠意を示しているわけですから、せめて日本の方でしっかりとした受け入れ機関を考えて上げるというだけの親心を持っていいのじゃないかと思います。こういうふうな問題についてもぜひ一つのはっきりとした態度を持っていく必要があるのじゃないかと思いますので、この点のお考えを承わりたいと思います。
  100. 神田博

    ○神田国務大臣 遺骨収集につきましては、当方もさることながら、中国側においても希望しているのじゃないかという意味に承わったのでございますが、これはもうその通りでございまして、日本におきましてもできるだけすみやかに収集いたしたい。それからまた、中国側においても、まだ約四千近くの遺骨が埋骨のままとか、あるいは適当に保存しておくというような形になっておりますので、こういった問題は両方ともすみやかに一つ解決していただくということが大切なことであると考えております。今度のそういった機会には、一つ十分お打ち合せを願いたい。そらして、すみやかに両方から引き取れるようにお骨折りを願いたい、こういうように考えております。  それから今の帰国者が、あちらこちらに埋骨の事情の話をされておりますことも、私も承知いたしております。何しろああいった混乱時でございますので、いろいろの姿になって、木の陰、岩の下というふうに埋骨されておるのだと思います。そういった情報を的確に収集して、できるだけ一つも漏れなく収集するよらな処置を講じたい、これはお説の通りでございますので、何か適当な方法でそういう情報を収集いたしたい、こういうふうに考えております。  それからもう一つ、今の一時帰国者の問題でございますが、これは中国側の方で片道をというようなお話がありますので、ことに引揚船で来た例がございまして、今までは帰る旅費等をやった例もございます。これは昨日も話題になったのでございますが、この一時帰国者の帰りの旅費を見るということは、一体どうであろうかというような議論がだいぶ前から出ておりまして、日本の将来の移民問題等もございまして、他のケース等も考え合せなければならぬ事情もありますので、長きにわたって一時帰国者の帰りのそういったことをやることについては、もら一ぺん根本的な再検討を加える必要があるのじゃないだろうか、こういうようなことに相なっております。今のところ、一時帰国者に——お迎えする親類縁者のやることは当然でございますが、政府なり公共団体としてそういうことをすべきかどうかということについては、十分検討の必要がある、現在ではむしろ消極的に考えておる、こういうようなふうでございます。
  101. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の問題でございますけれども、今度の代表の人が行けば、当然問題になってくると思うのですが、その場合に何とかはっきりとした——今、大臣は消極的とおっしゃったのですが、できるだけ、それこそ再検討を早くしていただきまして、人数は限っておることでございますから、何万もいるということでございませんので、その点もう一度お考え直しをいただきたいということを私は要望いたします。
  102. 神田博

    ○神田国務大臣 御要望でございますが、そのお気持は私もよくわかります。こういったケースは、いよいよ国会から派遣されてどなたかおいでになる場合に、そういった事務、渉外等にわたる部分は、適当な機会一つ項目をそろえてお打ち合せをいたしたいと思います。
  103. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 櫻井君。
  104. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 警察庁の警備部長さんあたり、早くから来て、大へん長くお待たせして申しわけありません。だいぶ時間が経過いたしまして申しわけないのですが、私は中共及びソ連地区から引き揚げてこられた方の思想調査の問題について、関係当局の御所信をただしたいと思うのでございます。中共及びソ連地区から引き揚げて帰られた人は、就職等の問題に非常に困難があります。これはしかし幸いにして、労働省の職業安定局あるいは民間団体等の努力によって、就職をぼつぼつやっておられるわけでありますが、そういうところに行って、公安調査庁でありますかあるいは法務省の名において、そういう勤務先に出向いて、いろいろ当人の思想、動向、そういうものを調査しておる事実が全国的にあるわけであります。この点について、担当当局の方では、そのような方針を一体とっておられるのかどうか。私は具体的な事例はあとで申し上げますが、根本的な問題としてお伺いをいたしたいと思います。
  105. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 ソ連中共からの引揚者に対します私どもの方の調査に際しての心構え、考え方をお答えいたします。私どもは、一般に共産圏からの引揚者であるということから、直ちに色目をもって見るというようなことは、絶対にいたさない方針でおります。それから、引揚者に対しては、じゃ全然調べないかといいますと、やはりいろいろな関係でもって調べる必要のあることも中にはございます。そのような場合も、ただいまおっしゃいましたように、非常に、それでなくても就職その他でお困りの場合でもありますし、御本人に迷惑のかからないような方法で調べるような方針でやっております。  それから、引揚者の中には、進んで私どもにいろいろ情報を提供して下さる方もございますが、しかしこれは、ただいまの御質問の場合とはおのずから性質が別であると考えるのであります。私どもは、引揚者に対しまして一般的にはそんなふうに考えております。
  106. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 警察の方はいかがですか。
  107. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 私どもといたしましては、中共あるいはソ連からの引揚者について、一般的にそれを全部調べる、そういう方針は全然とっておりません。ただ具体的に何か特殊の問題についてお尋ねしたい場合に、あるいはお伺いをしておる例があるかと思います。それから、お帰りになって地方などに落ちつかれた場合には、これは受け持ちの警察官がお伺いをすることはあるかとも思いますが、これは普通にほかの地方から移ってこられた方のところには、お伺いするようになっておりますから、それはあると思います。特殊のそういう調査という問題については、ただいまお話ししましたような次第であります。
  108. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 公安調査庁次長のおっしゃった通り、共産圏より引き揚げた者に対して、いるいろ色めがねをもって見るということは当然あるべきではないのであって、それは当然のことであります。ところが最近、これは身元がはっきりしていないのです。法務省の横山博と称して、職掌柄身分は明らかにできない、こういうことを言って、これは一つの具体的実例ですが、場所は中央区銀座東二丁目、大同洋紙店、ここに勤務しておる高橋哲郎というものを二回にわたって調査をしておる。この法務省の横山某なる者がいかなる身柄の者であるか、これはそちらでわかっておりますか。公安調査庁に属しておる者か、あるいは警察の者であるか。
  109. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 先ほど御質問の中に、そういう具体的事実があがっておるということで、さっそく調べてみたのでありますけれども、こういう氏名の者はおりませんし、そういう氏名以外の者にも、どうもこちらの方でその該当の心当りがないのでございます。
  110. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 もしそういう人間がいない、横山某というような者はあなた方の関係者じゃないということになると、なお問題は重大になる。そういうことをかたって、白昼公然と人の迷惑になるようなことを調査して歩いておるという事実があるとすれば、これは警察当局及び公安調査庁あたりでは、そういう者の取締りについて十分に留意していただかねばならない。私が申したいのは、調査しておる内容がしろうととは思えないのです。どういうことを聞いておるかというと、この高橋哲郎というものに対して、中国におる間にどのようなグループに属しておったか、どのような教育を受けておったか、こういうことを調査しておる。また中国帰還者の連絡会議がございますが、これは一体どのような活動をしておるか、その内容はどのようなものであるか、こういうことを聞いておる。また連絡会議の責任者は国友というのですが、この人間の思想的バックはどうであるか、こういう点を聞いておる。なおまた西陵友の会、これは第七次、第八次の帰還者の組織しておる連絡会でありますが、これとの関連は一体どうであるか、及びそういうものの組織の内容について聞いておる。それから帰還者の発行しておる機関誌、これが定期的に発行されておるか、あるいは内容はどうであるか、こういうことを聞いておる。なおこの高橋哲郎という者も政治的活動をしておるのではないか、こういうことを聞いておる。その内容から見ると、これは職業的な者であるというふうにしか考えられない。このために本人が非常に重大なショックを受けておると同時に、ここの雇い主である大同洋紙店においても、そういう者がしばしば来られては困る、こういうことで、雇い主も本人も非常な影響を受けておる。こういう事実があるわけであります。これはつい四月の六日と四月八日の両日にわたって行われておる。こういう事実があることを、あなた方はこれは一向わからない、法務省関係者ではない、こういうふうな答弁であるとするならば、こういう者は一体何者であるか、法務省の名前をかたってこういうことをしておるとは思えないのでありますが、あなたの方でこういう調査をしておる事実はないのですか。
  111. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 私の方で調べましたのは、公安調査庁及び関東公安調査局でどうであったかということをさっそく調べましたのでありますが、その限りにおきましては、どうも該当がございませんでした。法務省職員とすれば、ほかにもいろいろございますが、そちらの方でどうであったかというところまでは、実は調べがまだ行き届いておりませんのでございます。
  112. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 これは、関係官庁として、こういうことを初めてお聞きになったということであれば、今後これは十分注意してもらわなければならない。こういう事態は、今、銀座二丁目に起きた一つの事例を申しておるのでありますが、二月下旬から三月上旬の間において、大阪市の北区旅籠町四、柴田修蔵という、これは引揚者でございます。この人に対しても、公安局員と称する者が来訪いたしまして、同じ内容の質問をしておる事実がある。その他大阪府寝屋川市上神田、府の住宅二十号に住んでおる遠山哲夫という引揚者、この人に対しても、公安調査局員と称する者が行って同様の内容の調べをしておる。この大阪府の遠山哲夫という者は、こういう調査があったために、周囲の者がおそれて、復職ができないという事態に立ち至っておる。これは明らかに、こういうことによって本人の基本的人権を侵害しておる。本人が何か犯罪の容疑をやったということであるならば別でありますけれども、なされた内容はそういうものではない。思想的動向あるいは本人の属しておる組織の内容、こういうことを聞いておる。そこで今の職を失い、復職ができないということになると、これは明らかに重大な問題であると思う。なおまた、北海道の札幌市南十二条西十一丁に住んでおる河島武俊、この人に対しても同様な調査が行われ、和歌山市の和歌浦町に住んでおる太田尋久、この引揚者に対しても、大体大同小異の尋問によって調査が行われておる。こういうことが全国的に行われておるということを、公安の任に当る公安調査庁で全然知らぬ存ぞぬということはあり得ないと思う。一体こういう事態はどこから生ずるのですか。あなた方の本庁でも、そういう指令は出した覚えはないが、下部の調査官が勝手に行って調査しておるというふうに考えられるのかどうか、その点の御見解を承わりたい。
  113. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 先ほども申し上げましたように、引揚者だということで直ちに色目をもって御本人を疑って調査するというような方針は、絶対とっておりませんのであります。ただ、いろいろな関係からして、たとえばいわゆる破壊団体との関連といったようなことからして、いろいろ引揚者の中にも調べなければならない場合がございます。そのような場合にも、先ほど申し上げた通り、御本人になるべく迷惑のかからないような方法でやってもらっておるわけであります。で、全国の公安調査官が、個々具体的にどういうふうに、いつだれと接触したかというようなことまでは、全部本庁でもちろん把握できませんけれども、ただいまのお話しの問題につきましては、先ほどあらかじめお知らせいただいたのはさっそく電話で照会してみたのでありますが、この大阪の柴田修蔵君と遠山哲夫君につきましては、地元の公安調査局で接触した事実があるようでございます。ただその場合の方法だとか、あるいは、たとえば特に遠山君の場合に、そのことのために就職がうまくいかなかったというような点については、どうもそういうふうな事情ではなかったのではないかというふうに私ども実は考えております。
  114. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 それは調べた方ではそうおっしゃるのです。しかし、この本人たちは、引き揚げてきておるという普通の状態においても、共産圏である中国ソ連から来ておるというふうに一般の人は色目をもって見ておる。そういうときに、あなた方が公安調査庁から来ましたと言って調べたら、どういう事態になるか。本人になるたけ迷惑のかからぬようにとおっしゃるのですが、こういう調査があれば、迷惑がかかるのは当然じゃないですか。私はこういう調査をやることは、明らかに本人の生活権を脅かしておると思うが、人権擁護局長はどういうふうに考えられるか、その御見解を承わりたい。
  115. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 今のような事例によりまして、もしも本人がその公安調査庁の係員の訪問を受け、そうして今御指摘になりましたようなそういう調査を受けた、そのために、その人がその職域において、あるいは一般の社会生活において非常な不利をこうむったということであれば、これは人権上相当注意すべきことだと考えております。
  116. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 この問題を私が特に取り上げるのは、全国的に同じケースが大体時を同じくして起きておるという事実なんです。こういうことで、やはりこれは調査庁が警察が一つの計画を持って、そういう者の調査をなさっておるのではないかという疑いが出るわけです。私は、引揚者であるがために、どんな悪いことをしても調べてはならないというようなことを言っているのではない。ただ、こういう思想を調査したり、本人の所属しておる組織の背後関係を洗うということは、よほどの何か犯罪容疑者でない限りは許されないはずだ。そういう点について、私は公安調査庁の今後の自重を要望したい。この点については十分留意していただきたい。岸総理大臣がおられるうちにはっきりしておきたかったのでありますが、時間の関係上そういうことにも参らなかったわけでありますけれども、同じ政府の中で、引揚者に対しては非常にあたたかい気持を持ってあらゆる就職面のあっせんをしておる。労働省の職業安定局あたりでは非常な力を入れて就職のあっせんをやり、事実上相当の成果を上げておる。ところが、一方こういう警察とか公安調査庁という機関が、せっかく就職した本人の就職妨害をやっておるというような形になると、片一方では援護し、片一方ではこわしているということになり、これは引き揚げてきた人たちに対して申しわけない。こういう点は特に、警察権を持ち、公安の任に当っておられるところの当局が十分な御自重をなさるよう私は警告をいたします。そうして、そういう人たちについて不利な取扱いがないように、万一そういうことがあったら、私どもこれは十分問題にしなければならぬ、こういうふうに考えるわけでありますが、警察当局及び公安調査庁の御見解をはっきりと承わっておきたいと思うのであります。
  117. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 先ほど申されました事実を断定されることについては、私どもどうもまだ承わりかねるのでありますけれども、しかし、一般的にただいま御心配になっております点につきましては、私どもも全く同様に考えておりますので、今後ともその点は十分に注意いたしたいと思っております。
  118. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 公安調査庁からお答えいたしましたように、われわれの方も十分注意いたします。私の方も御指摘の例は調べてみましたが、これはどうも全然心当りはございません。
  119. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 もしも法務省に関係のないような者が偽わってこういう調査をしたという場合は、どうなさいますか。あなた方に全然関係のない者がそういう調査をしているということがあるとすれば、これはさらに問題は重大だと思いますが、そういうことを探知なさった場合は、どういう御処置をとられるのですか。
  120. 高橋一郎

    ○高橋(一)政府委員 それは私どもの方の信用ということから申しましても、大へん問題なのでありますから、そういう事実がわかりましたら、直ちに本人の反省を求めるということにいたします。
  121. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 ほかに御質疑はありませんか——ほかに御質疑がなければ、本日はこの程度にいたし、次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会