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1957-03-27 第26回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月二十七日(水曜日)     午後一時五十五分開議  出席委員    委員長 廣瀬 正雄君    理事 木村 文男君 理事 中馬 辰猪君    理事 山下 春江君 理事 櫻井 奎夫君    理事 戸叶 里子君       逢澤  寛君    臼井 莊一君       田中 龍夫君    原 健三郎君       保科善四郎君    眞崎 勝次君       受田 新吉君    小林 信一君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  八巻淳之輔君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      田邊 繁雄君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局審議         官)      青谷 和夫君         大蔵事務官         (主計官)   小熊 孝次君     ――――――――――――― 三月二十日  未帰還問題の完全解決に関する請願松前重義  君紹介)(第二三四一号)  同(白浜仁吉紹介)(第二四二四号) 同月二十六日  未帰還問題の完全解決に関する請願原健三郎  君紹介)(第二四五二号) の審査を本委員会に付託された。 三月二十二日  未帰還同胞帰還促進等に関する陳情書  (第六七八号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  海外胞引揚に関する件  留守家族及び遺家族援護に関する件     ―――――――――――――
  2. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。引揚者給付金等支給法案社会労働委員会に付託されて審議されておりますが、本委員会といたしましては、この法案は引揚者援護問題として密接な関連を有しますので、引揚者給付金等支給法案について、社会労働委員会連合審査会開会を申し入れることといたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 御異議なきものと認め、社会労働委員会連合審査会開会を申し入れることといたします。なお、開会日時等につきましては、当該委員長と協議いたしますから、委員長に御一任願います。暫時休憩いたします。   午後一時五十六分休憩      ————◇—————   午後二時十二分開議
  4. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。海外胞引揚及び遺家族援護に関する件について調査を進めます。直ちに本件についての質疑を行います。山下春江君。
  5. 山下春江

    山下(春)委員 長い間問題にしながら、これが未解決のままでありました問題の中に、未帰還公務員恩給法上の取扱いについての問題がございます。この問題について、恩給局長及び援護局長の御意見を承わりまして、この問題の解決をはかりたいと思います。  未帰還公務員は、恩給法上、死亡判明の日から公務扶助料支給されることになっておるのでありますが、それまでの間は留守家族援護法により援護しておるのが現状であります。ところが、留守家族援護法では、家族の年令が六十歳以上あるいは十八歳未満という条件や、生計依存関係がないと支給されないことになっておりますので、留守家族手当を受けられぬ家族はこの恩給法上の取扱いによってのみ処遇されることになりますので、死亡処理事務がおくれればおくれるだけ不利益をこうむるというのが、私どもが耐えられない点であります。未帰還公務員がこのように恩給法死亡判明の日から処遇されるので、死亡判明の日までこれに俸給支給するということになりまして、この未帰還公務員俸給制度を復活するということが可能でございますれば援護されるわけでございますが、留守家族援護法によって、階級による俸給支給にかえて、留守家族援護への社会立法的な考え方で踏み切っておりますので、それもできない今日でございますので、どうしてもこの恩給法上の扱い方修正いたしまして、これらの人々に援護の手を差し伸べなければならないと思っております。と申しますことは、恩給法若年停止規定を未帰還公務員については適用しないということによって、申し上げました欠陥が救われるのであります。もう一つは、未帰還公務員死亡判明したときに支給する扶助料は、判明のときからでなく、実際の死亡のときにさかのぼって支給する、こういうことは、修正を必要として、われわれ当委員会は長い間問題にして参ったのでありますが、この問題について、恩給局長は、修正をして、政府提案で、この際こういう問題を解決しようという御決心に立たれましたかどうか、承わりたいと思います。
  6. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、前々からも私どもの一立場を申し上げております通り、この恩給法におきまして未帰還公務員というものをどういうふうに処遇しておるかと申しますと、死亡判明するまでは生きておる、こういう建前で扱っております。すなわち、ずっと在職して、最短恩給年限に逃しない場合におきましては、在職しておるものとして扱っておる。最短恩給年限に逃しますれば、そのときに退職があったものとして、そこに普通恩給権を発生させるという建前であります。そしてまた、死亡公報が入りまして死亡判明すれば、そこから初めて死んだという扱いにして扶助料支給されるという立て方で、ずっとやってきているわけであります。従いまして、法律百五十五号でそうした立て方をいたしましたものを全然御破算にして、現実の、死亡時期にさかのぼらせるというようなもの、あるいはまた百五十五号自体ではありませんけれども恩給法上の原則であるところの若年停止規定というものは、やはりこの場合にも当てはまるということでやって参りませんと、全体の体系がくずれるという考え方でずっと参ったわけであります。  問題の焦点は、留守家族手当がもらえない方々がある、こういう方々につきましては、留守家族手当留守家族援護法の方からも何らかの救済の道がないだろうか、また恩給法の方からも何らかの処遇の改善が行われないだろうか、こういうふうな方々に対していかなる処遇をするかということの問題であろうかと思うのでありますが、私どもの、恩給法方法によってこれを救済するということは、そうした面でなかなかむずかしいのではないかという立場を私どもとっておったわけであります。片一方留任家族全般立場からお立てになるところの対策といたしましては、また別な見方があるというようなことで、それは立場々々によりまして必ずしも一致しませんでしょうけれども、私ども立場としては、そういうふうな考え方で参ったわけであります。この点につきましては、なお大蔵省の方におきまして調整をとっていただくということで、十分御検討をいただくということになっておりますので、これは立場の相違でいたし方ございませんが、それがまたさらに調整されてこういうふうな方向に持っていくということによってこの問題を処理するということになりますれば、またそのときにおいてそれに決定しようとするということになるのではないだろうか、こういうふうに思っております。
  7. 山下春江

    山下(春)委員 恩給局長の本日までの恩給法建前のものの考え方が非常に間違っておったので、こういう問題が起ったのであります。ちょっと問題をそらしまして、しからば伺いますけれども傷痍軍人に対する若年停止廃止しておられるのはどういう御意向でありますか。
  8. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 若年停止というものは、元来本人稼動能力ということを考えまして、四十五才未満においては全面停止、五十才までは半額停止、五十五才までは七割支給というふうな立て方をとっております。ただし、在職傷痍を受けて傷病のために退職された、こういう方々につきましては、傷病恩給該当——公務のためでなくても、在職中の傷病のためにやむなく退職されたという方々につきましては、個人につきまして若年停止排除するという特例を開いておるのでございます。これは唯一の特例でありまして、その在職中の傷病というふうなことに着目したものと考えております。
  9. 山下春江

    山下(春)委員 在職中の傷病ということでございますことは了承いたしますけれども、その在職申傷病を受けたことによって、若年停止廃止されたその理由です。——焦点がよくわからなければ、在職中に受けられた傷病であることは御説明でわかりましたが、傷を受けて、これは特例だとおっしゃるけれども、その特例をなぜ設けたかということの原因を明らかにしていただきたい。
  10. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 傷病者につきましては、もちろん一般的にその人の稼働能力がないということを前提にするわけですけれども、さらに、退職後において、しからば傷痍疾病を受けて稼働能力を失った、そういう点までに及ぼすかどうかということになりますと、範囲が広がり過ぎるというので、それをさらに在職中の傷痍疾病にしぼった、こういうことでございます。
  11. 山下春江

    山下(春)委員 そういたしますと、恩給局長若年停止廃止をする特例を設けたゆえんは、在職中の傷病によって稼働能力を減殺されておるということ、であるようでございますが、しからば在職中に自己の責めによらない抑留をされまして、そして稼働能力が皆無の人に対して、これが適用できないという理由を明らかにしていただきたい。
  12. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 これは、こういうふうに問題をだんだん突き詰めて参りまして、ドライに申し上げると、非常に御不満を買うかもしれませんけれども海外抑留中の方という、その一身専属と申しましょうか、その方御本人につきまして、それは生存していらっしゃるという立場においては、その特殊な環境であるということを抜きにして考えるというと、その方が外地におられるということと何ら変らないわけなんで、そういう意味においては一身専属権として考えられる場合においては、稼働能力がないということの断定はつかないわけなんです。問題は、留守家族の方を保護しようという建前においてお考えになるから、そういう問題も若年停止排除すべし云々という問題が出てくるのじゃなかろうかと思うのであります。恩給法では、あくまでも一身専属権であるという建前から、本人についての属性と申しますか、本人についての問題を考慮しての措置がとられる、こういうふうに考えております。
  13. 山下春江

    山下(春)委員 そういたしますと、外地にいるという立場の人、とにかく家族の中の一員が外国に住まっているということと何ら変らない。これが大へんな変り方でございまして、たとえばソ連でそれ相当の労働をいたしまして、その労働の対価はむろん受けておると思いますが、それを家族に仕送りする等の自由を一切持たないで外地にいることと、ただ単に自由人外国に居住しておるということとは、きわめて大きな違い方であるということが一点と、それからもう一つは、むろん家族援護するという立場で私どもはこれを強調しておるのでありますが、まあ生計依存という問題が出てくると思いますけれども、それは二年か三年でございますれば、助け合って何とかやっていけるということもありますが、すでに自由を失って十二年たっております今日では、それが免許依存の線が多少ははずれておりましたところで、その家族の受ける打撃というものは容易ならざるものだと思うのであります。そこで、ただ恩給法建前からこの問題を論ぜられる恩給局長というものは、その法律をお守りになることが一番大切な仕事ではありましょうけれども、戦後、旧軍人恩給にいたしましても、非常に社会立法的な要素が加味された恩給法でございますし、特に援護法に至りましては最も範囲の広いものであるし、それから傷病恩給に対して恩給局特例を開いたということの考え方の中にも、今、恩給局長のおっしゃるような氷のような冷たい考えでなく、十分に社会立法的なお考えが含まれたから、あの措置が講ぜられたと思うのであります。そういたしますれば、法の番人であらせられる恩給局長の一面を今うかがったわけでありますが、他の一面には、やはり非常に大きな予算上の措置を伴うとかなんとかいうことならば、これはまた、私どもとしても、いかにその身分がお気の毒といえども、これは慎重に検討しなければならないと思いますが、今おっしゃるようなことになりますと、日本の国家公務員でありながら、俸給制度を捨てております扱い方からいうと、国家公務員でありながら、どうしても若年停止廃止ができないのだと仰せられるならば、その間の俸給を払ってもらいたい、こういうことになるのでございますが、その点はまことに法の不備だとはお考えになりませんか。
  14. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 私は、恩給法を所管しておるものとして、恩給法の狭い分野でいろいろ申し上げておるので、非常にドライに物を割り切ってと申しますか、全般的な問題の解決にならない、こうおっしゃる意味は多分にあると思うのでございます。しかしながら、われわれの立場としての考え方というものは、あくまで恩給法というものをドライに突き進んでいって、それによって足らないところの社会政策的な諸部門というものは、ほかのそれぞれの担当の社会政策立法において補充さるべきものである、こういうふうに考えておるわけでございまして、御指摘の、しからば俸給制度を復活すべきではないかというふうな問題につきましては、これはまた別な考え方がそこに入ってくるわけでありまして、すでに、法律第百五十五号なり、あるいは留守家族援護法なりというものが昭和二十八年にできましたときに、いろいろないきさつからそういうふうなことになって、現在の状態になってきておるわけでありまして、その問題をここでまた考えるということになりますと、現在の法体系の上にさらに混乱を来たすということになって、全体の考え直しということになれば、問題になると思うのでありし致すけれども、今直ちにそれについてどうこうということは、私からお答えするのは、僭越と申しますか、所管外でもございますので、十分お答えできない次第であります。
  15. 山下春江

    山下(春)委員 きょうは恩給の方の所管大臣に承わりたいと思っておったのでありますから、局長にそれ以上言わせることは僭越だと仰せられるが、僭越でもけっこうです。あらためて大臣に言明していただきますから、一つぜひお答えを願いたいのであります。ちっとも御遠慮は要りませんからお答えを願いたいのであります。が、抑留者公務員になっております。未帰還公務員という名前恩給法上の名前であって、援護法上の名称ではないと思うのであります。そうすると、公務員が全く稼働力をなくしているのに恩給法上では考えられぬというのは、一体どういうことでございましょうか。ちっとも御遠慮は要りませんから……。いろいろとだんだんに追い詰めまして、やっぱり若年停止廃止をしたいという議論に到達することを希望しながらやっているのですが、質問が下手なものですから、局長は逃げをはられる。この際、私どもは、抑留者公務員だ、恩給法上の公務員になっているから、恩給法上の公務員である未帰還者を扱うのに、他の援護法やいろんなもので考えてみたらどうかという議論は全然当てはまらぬと思う。ほかの法律では扱えないから、何としても恩給法上の不備を直さなければならぬと思っているのでございますが、公務員が全く稼働力をなくしている者に対して、若年停止廃止することがおかしいというあなたのお考えの根拠を、もう一度聞かしていただきたいのであります。
  16. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 これは割り切って申し上げましてもなかなか御納得のいかない点もあると思いますけれども、問、題の出発が本人稼働能力いかんということではなくて、結果的に考えますと、留守家族がお気の毒である、留守家族に何らの手当もない、こういうところから出発しているわけでございまして、結局留守家族対策なんでございます。従って、広く言いますと、社会政策的な立場に立って若年停止原則を配慮していったらどうかということに問題は発展していくのだろうと思うのであります。そこで、こういう例を引きますと、それとこれは別だということになって論争になるかと思いますが、たとえば退職後結核で長く寝ておられる。そうすると稼働能力はないわけでございます。従って、そういう方についても若年停止を配慮してもらわなければ困るということになる。あるいはまた、その方が好んでおられるわけじゃないが、失業しているという状態が長く続くという場合も若年停止をしていくのじゃないか。こういういろいろな社会政策的な面から補充しなければならない部面を、恩給法上の原則をいじることによって恩給しわ寄せをするということにだんだん発展するおそれもあります。その間の違いは確かにあることはあると思うのでありますが、そういうふうにだんだん恩給法上の原則がくずれる。逆に、一般からいうと、若年停止制度をむしろ強化すべしという声が強いので、そういう間に立って、私どもは、なるべく現在の制度でも例外を作りたくないというような気持であります。問題は、留守家族手当を何にももらえない人をどうするか、恩給法上の原則を少しでもゆがめて救済するのがいいのか、あるいは留守家族援護法部面範囲を広げるという方法でやるのがいいのか、いろいろな点があろうと思うのでありますが、そういうものを比較考量しまして、何らかの対策を立てることが必要だと思っております。
  17. 山下春江

    山下(春)委員 局長言葉ですけれども留守家族を何とか救済してやろうということのために恩給法しわ寄せをするなどということは、とんでもない話でありまして、言葉は非常に不適当でありますけれども、私どもは、恩給法上これを改正することが絶対に不可能だというならば、そのために家族がどんなに困ろうとも私どもは決して迫らないのでありますが、これを改正しないことの方がおかしいのであります。恩給法原則を破れぬとおっしゃるけれども恩給法なんていうものは、天の声でもなければ、金科玉条でどうすることもできないものでもなく、また日本国憲法よりも大事な基本法律でも何でもないのでありまして、それは、留守家族援護するということならば——抑留たち恩給法上の公務員でなければ、私どもはどんな法律でも直してすぐ救済することができるのでありますけれども恩給法上の考え方をそこまで波及するとか、あるいは非難を受けているとかそれは非難を受ける個所が恩給法それ自体にたくさんあるのであって、この問題はむしろしわ寄せじゃなくて、もし恩給法しわがあるならしわを伸ばそうというのであって、こういうものの考え方恩給法それ自体のものの考え方が非常に根本から間違っているということを指摘するのであります。留守家族援護するために恩給法しわ寄せなんというお考えは、それこそ僭越な考えでありまして、私どもは決してさような考えは持っておらないのであります。恩給法建前を正しくしていただければ、ひとりでに留守家族援護されることになるのであります。そこで、この問題について非常に長い間これでいいとはお思いにならなかったと思われる田邊援護局長の御意見を承わらして下さい。
  18. 田邊繁雄

    田邊政府委員 政府立場から申しますと、いろいろ理屈があろうと思うのであります。かりに家族立場に、立って現在の法律制度をながめて見た場合にどういう感じを持つか、あるいは主張を持つかということを考えてみますと、死亡判明したとき以降公務扶助料を出す、これは一つ建前としてそういう立場もあろうと思います。そういう場合には、それまでは現実に生きておったと擬制するわけでございますから、給与はそのときまで続けるのが本則であろうと思います。従って、留守家族援護法それ自体に問題があるということになってくるわけであります。軍人一般邦人も一緒にいたしまして、援護という観点から留守家族処遇するということだけでは、不十分な面が出てくるわけであります。従って、私ども留守家族援護法をそういう立場で一貫して作ったこと自体を反省させられるのであります。ただ、この点につきましては、当時の客観的な事情といたしましては、まことにやむを得ない事情があったと思うのでございます。当時御承知の通りに未復員者給与法というものが終戦後ずっとできておりまして、戦時中は公務員ことに陸海軍軍人さんたちはちゃんと俸給をもらっておったわけでありますが、憲法改正になりまして軍人という制度がなくなったときに、いまだ海外抑留されておった未復員者がたくさんおったわけでございますので、さような俸給廃止するわけに参りませんので、未復員者給与法というものを作って、階級別廃止してフラットな俸給を作って、その俸給家族に渡すことによって家族援護もはかっておった。ところが軍人恩給復活の段階に参りましたときに、一体俸給をどうするかということが理論的にも実際的にも当然問題になったわけであります。理論的に申しますれば、軍人恩給が復活して、帰還者の中の公務員に対しましては、死亡判明した場合と普通恩給の場合と階級別処遇されるわけでございます。当然、この方々俸給を存置される以上は、階級別俸給支給するということにならざるを得ないわけでございます。しかし、そのことが従来フラットできておりました事実、並びに当時の家族の感情からいたしまして、必ずしも実情に沿わないという点がございましたので、私の方では留守家族援護法一本に踏み切ったわけでございます。当時、大蔵当局におかれまして、こういった未復員者俸給ということをあらゆる角度から検討されました結果、思い切って廃止なすったわけでありますが、実はそこに問題は胚胎しておったわけであります。しかし、これはもうできたことでございまして、これを過去にさかのぼって俸給制度を復活するということもいろいろ困難な事情がございますので、これをどういうふうに埋めていくかということが、現実与えられた問題であろうと思います。そこで、この問題は、恩給法建前あるいはどこどこの立場ということにこだわっておったのでは解決が非常に困難ではなかろうか、そこで、当時の俸給を所管しておられ、また予算全体を持っておられます大蔵当局恩給局、また私ども集まりまして、どういうふうに処遇することが一番円滑なやり力であるか、また実際の簡便なやり方であるかということを、十分検討してみる必要があるのではなかろうかと思っておるわけでございます。現在死亡判明した場合における未帰還公務員処遇につきましては、私ども非常に不合理があると思っております。これはどうしても是正を要する問題であろうと思いますが、この恩給年限に到達した未帰還公務員に対する普通の恩給若年停止排除して家族に与えるという問題は、理論上必然的に必ずしも出てくる問題じゃございませんので、これは公務扶助料遡及支給という問題ほど理論上必然のものではないと考えられます。ただし、これについては、ただいま恩給局長の言われましたような恩給法立場がありますと同時に、一方俸給廃止したというギャップがございます。そこのところに問題があるわけでございまして、何と申しますか、国の恩典優遇として若年停止排除ということを考えていただくわけにいかぬだろうか、こういう問題だろうと思います。その恩典優越という裏には、俸給廃止したという問題がからまっております。それらを総合いたしまして、いずれこの問題は根本的に死亡処理をしなければならぬ時期がだんだんと近づいておるわけであります。死亡処理をすればどうなるかという問題が一つございます。これはおのずから別個の問題でございますが、これを解決するとかりにいたした場合、若年停止排除をして、その普通恩給の前払いをするということがどれだけの意味を持つか、財政的に国にどれだけ負担をかけるかと考えてみますと、あれやこれや考え合せますると、そうむずかしい問題でもないのじゃないかという感じがするのです。いずれにいたしましても、俸給制度を復活するというところまで大げさな手を講じなくても、解決する方法があれば、簡単な方法によって過去の政府側の行なった立法上のこのきずと申しますか、瑕疵を埋めていきたい、こう私ども念願いたしまして、恩給局にも御相談申し上げ、また大蔵当局にもいろいろお願いしておるわけなのであります。話の筋道といたしましては、おおむね御両者ともに大体おわかりになっていただいておると思いますが、最後の決定にまでいっていないわけであります。ただ、その場合でも、公務扶助料の遡及という問題と、それから普通恩給若年停止という問題は、理論的基礎においてはおのずから若干違う点が、ございます。むしろ、公務扶助料の遡及という問題は恩給法の本質にもとった議論であるし、若年停止の問題はむしろ恩給法の本則からいえば例外的な問題であり、むしろ恩典優遇的な感じの強い面でございます。いずれにいたしましても、大蔵省、厚生省、恩給局三者集まりまして、十分協議検討して、最も妥当な措置をすみやかに発見したい、こう考えておる次第でございます。
  19. 山下春江

    山下(春)委員 さすがに専門家で、これで問題が非常に余すところなく解明されたのでございますが、そこで、恩給法制定の際に俸給制度廃止されました大蔵省の立場として、何かこの問題に対するお考えがあろうかと思いますが、それを一つ聞かしていただきたい。
  20. 小熊孝次

    ○小熊説明員 お答えいたします。私もその当時その間の事情をつまびらかにしておるとは必ずしも考えておらないのでございますが、先ほど援護局長からお話がございましたように、終戦当初、階級別俸給というものが支払われておりました。それが一本の単価で支払われ、この段階におきましては、すでに俸給という名前がついておるわけでございますが、すでに援護的な色彩があるというようなこともいえるような段階になっておったと思うのであります。それにつきまして、それが未帰還者援護法、未復員者特別給与法があわせられまして、留守家族援護法と変ってきたわけでありまして、留守家族援護法によりまして、さらに援護的な色彩が強くなったということは申すまでもないわけでございます。しかし、その際におきまして、従来の未復員者給与法等によりまして既得権を持っておった者が、留守家族援護法によって権利を失うようなことのないように、それは既得権の擁護ということをしておるわけでありますが、われわれの立場としましては、すでにそういうような体系になりましたところの留守家族援護法というものを、さらにもとに返すというようなことはちょっと考えておらない次第でございます。  なお、この際、ただいま問題になっておりますところの遺族扶助料、すなわち、二十年の九月二日以降死亡処理された者の、その死亡時が九月二日以降の未帰還者公務員につきまして、恩給を遡及するかどうかという問題でございますが、われわれ財政当局といたしましては、まず財政負担がどういう格好になるのか、ふえるのかどうかという問題につきまして、厚生省当局の方から話を十分に伺いまして、その点につきましては財政負担がふえるということはない。かりに厚生省の言う通りであったとすれば、ふえることはないということになっておるわけでございますが、その点から申しますと、われわれとしては、遡及問題につきましては特に反対するという意図はないのでございます。ただ、その点につきましては、恩給局の方の計算として果して厚生省の計算とぴったり合うものであるかどうかということにつきましては、まだ実は恩給担当の主計官の方から報告を受けておりません。その点この際何とも申し上げられないわけであります。なお、この問題につきましては、恩給制度が復活いたしましてから、死亡判明の日の属する月の翌月から支給ということでずっとやっておりますので、これをこの際遡及支給するということにいたしまして、恩給制度そのものにつきましてどういうような問題が出てくるか、これはいわば法技術的な問題ということもあるかと思いますが、これは一身専属的な権利の設定ということが中心になっておりますから、法技術的にどういう格好になってくるかという問題、これは恩給局当局としては当然お考えになる問題だと思いますが、そういう点について恩給局がどう考えておられるかという点、それからさらに、先ほど来問題になっておりますところの若年停止の問題でありますが、これにつきましては、やはり恩給局考えておられるような一つの線、それから厚生省の考えておられるような線、あるいは先ほど先生からお話のありましたような線、いろいろな線が考え得ると思っております。それにつきまして、やはり関係者が十分納得したところでないと、こういう権利義務を設定するところの法規でございますので、はっきりした線を出さないと、大蔵当局としても最終的にこれでいいんだというような意見がまとまらないわけでありまして、そういう点につきましては、今後ともますます厚生省あるいは恩給当局の御意見の幅を縮めていかれるということが大切ではないか、このように考えております。この間も上司と御相談いたしましたが、大蔵省の現在の段階における態度といたしましては、財政負担がふえないという点、これにつきましては、恩給局の方としても、さらにその点を、立証するというと語弊がございますが、確かめていただく、それから、恩給制度そのものとしても、これは一つの権利義務を中心といたしました非常に具体的な権利関係を設定するものでありますから、その辺のところの無理がないようにそれが解決できるかどうかということにつきまして、さらに恩給局に御研究を願う、こういうふうな態度で進みたいと考えておる次第でございます。
  21. 山下春江

    山下(春)委員 今三者の方々の御意見を伺いましたが、田邊援護局長の御説明にありました扶助料遡及支給ということは、本来の恩給法建前に何らそごするものがなくて、むしろこれは当然と考えられる、ただ、若年停止廃止の問題については、やや恩恵的な要素をも含めて考えられる問題だという御意見でありました。大蔵省も、前段については財政的な負担を非常に膨張しないということを前提にして同意できる、決定されたわけではないようでありますが、そういうような御意見がある。ただ、若年停止廃止については、いろいろ波及する範囲がありはしないかとか、いろいろな点で御心配で御協議中だということでございましたので、問題が非常にしぼられて参りました。扶助料死亡の日にさかのぼって支給するということについては、もはや異論のないところではないかと思いますので、そこで、この若年停止廃止の問題がまだございますが、それも、恩恵的と申しましょうか、恩給法上の建前としてはやや考慮すべき余地がないこともないが、しかしながら、大体これをも含めて政府側のお考えがだいぶまとまってきたように考えられることは、私ども非常にありがたいと思います。  そこで、恩給局長にもう一度伺うのでありますが、今の第一点の扶助料死亡の日にさかのぼって支払うということの線だけは、ここで大蔵省、厚生省の意見が一致したようでございますので、恩給局の方もそういったような線で御回答をいただけるものでございましょうか。
  22. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 扶助料死亡の日に遡及する、こういう問題は、財政負担の問題ももちろんありましょうが、もう一つは、技術的な問題としては、こういうことも考えなければならぬと思うのであります。すなわち、普通恩給支給しておる方について、それを取り消して公務扶助料支給するということになると、むしろ公務扶助料よりも多額のものがいっておるという形のものにつきましては、逆に返納をしなければならぬ、こういうことが出てくる。これは、階級の高い、割合に少い人数の方についての問題でありますから、そういう問題についてはいたし方ないということで割り切ればそれまでですけれども、こういうふうな問題が若干あるということも考えなければならぬわけです。公務扶助料遡及の問題につきましては、恩給法本来のベースに戻るのだから、それによって留守家族対策が完全になるということであれは、その一翼をになうということにつきましては、私どもといたしましても、大蔵省における御調整の段階において十分考えていかなくちゃならない問題だと思うのでございます。ただ、しかし、若年停止排除して普通恩給を払っておいて、今度はまた逆に扶助料を遡及して払うということになると、二つの問題が違った立場から二重になるというようなことになってしまうので、これは、二つの問題をどちらか一つの問題に整理さるべきものではなかろうかというようなことを考えておるのであります。いずれにせよ、公務扶助料遡及の問題につきましては、大蔵当局もそういう御意見であるということを伺っておりますので、今後の調整におきましては私どもとしても十分考えて参りたいと思っております。
  23. 山下春江

    山下(春)委員 従来支払っておった普通恩給の額と、今後死亡した日にさかのぼって払う扶助料の額とに多少差ができてくるので、それを返還をせしめる等のことも起るというお話でございましたが、幾ら窮屈な役所でも、その点の調整をはかるくらいのことは、いわばきょうまであやまちを犯してきたのでございますから、ぜひ一つごめんどうでもしていただきたい。返還をせしめるというようなことは非常にかどが立つことでございますが、調整ができると思うのでありますから、ぜひそれは一つ御努力を願いたい。  若年停止の問題につきましてのいろいろな御説もありますが、これは未帰還者である間のことで、抑留中のことでございまして、一たびこの人が生存して国内に帰ってくるか、もしくはもうすでに死亡されたということが判明すれば、この若年停止廃止というものはもちろん法律上終ることでございますから、御心配のような非常な、広範囲のいろいろな問題がこれに波及して起ってくるとは考えられませんが、三者のお話を伺ってみますると、何とか努力して、三者がよく調整をして改正をしようということにもうだんだん御決定になりつつあるような様子を伺いました。長い間この問題が未解決のままあった。私どもといたしましては何とかしたいと考えましたが、どうやら今国会でこれは改正の日の目を見るように考えられますことを、非常にありがたく思います。援護局長恩給局長、それから小熊主計官のお話を総合いたしまして、不日大臣から確約を得まして、ぜひ今国会で改正を行いまして、法の不備から全然援護を受けられなかった人たち援護の手を差し伸べることのできることを期待いたしまして、この問題に関しては私の質問を終ります。
  24. 受田新吉

    ○受田委員 両局長を迎えて、多年のわれわれの要望に対する明るい見通しを得ることができたことを喜ぶものの一人でございます。私は、ここで、過去のあやまちをえぐり出して取り上げるほどの気持は別にないのでございますが、法の建前をはっきりしておかないと納得できない節もございますので、まず恩給局長さんに、恩給法建前から見たいろいろな例外を指摘して、恩給法をどういうように守られようとするのか、御所見を伺いたいのであります。この恩給法の五十八条の三に例の若年停止規定が設けられたのでございますが、この若年停止規定というものは、そもそも恩給法の体系の上からは例外規定であるとお認めになりますかいなやを、お答え願いたいと思います。
  25. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 この若年停止規定というものは昭和八年の恩給法の改正の際初めてできた規定でございまして、当時恩給費がだんだんとかさみまして、これをいかに抑制するかというような方法一つとして、若年停止制度というものが設けられたわけであります。自来幾たびかの改正を経まして、漸次若年停止制度というものが強化されて今日に至っておる。こういうようなことで、現在の段階におきましては、すでに恩給法上の原則的なものになってしまっておる、こういうふうにいえると思うのであります。
  26. 受田新吉

    ○受田委員 現在の段階においてはこれが原則になったということになりますと、この規定そのものは、いわば社会保障的な性格を帯びてきているものではないかと思うのであります。何となれば、若くて働ける人には国家から給付金を支給することに手心を加えるのだという一つの例となると思うのであります。一定の年令に達して初めて恩給受給権が発生する、直接お金を受ける権利が発生する、それまでは潜在的な権利として内在しているのだということになると思うのであります。ところが、これが原則ということになりますと、私が今申し上げた生活的な要素を含めた規定原則とお認めになったと断定をせざるを得ないと思うのでありますが、さよう心得てよろしゅうございますか。
  27. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 恩給原則と申しましても、現在ある制度というものにおいて、すでに、そうした生活の要素的なものと申しましょうか、本人稼働能力などについての考慮が払われて恩給の額が決定される、こういうふうなものの考え方が入ってきたということか、例外的なものであるか本質的なものであるかという議論でございますけれども、本来の趣旨としては、その人の環境にかかわりなく、一定の年限を勤務し、そうして一定の条件を満たすことによって恩給権が発生するという趣旨のものであろうと思うのでありますけれども、これがいろいろな財政的な制約その他の観点から、年令の制限を加える、あるいは多額所得者については一定の制限を加える、こういうふりなことが起ってきたわけでございまして、生まれた当時のものからは相当いろいろな条件が付加されてきた、こういうことがいえると思うのであります。それを、原則なりや例外なりやということで、今ここであらためて勘案し直すということは、なかなかむずかしい問題であると思います。
  28. 受田新吉

    ○受田委員 原則局長は仰せられたのですから、原則には間違いないと思うのですが、その五十八条の三の二項に、「普通恩給二増加恩給又ハ」云々として、この若年停止規定を除外している規定がまた生まれているわけです。これはまた例外の例外ということになるのでございますか、いかがでございましょう。
  29. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 五十八条の三の第二項に、増加恩給あるいは傷病賜金を給する場合には停止しない、それから第二項に、公務に起因しない疾病いわゆる私傷病退職した、それが大体増加恩給なり傷病賜金を給する程度の私傷病退職した、こういう場合には五年間は停止しないという規定がございます。これは若年停止規定に対する唯一の例外をなしておるわけでありますが、お説の通り唯一の例外と言うことができましょう。
  30. 受田新吉

    ○受田委員 この規定は例外規定であるということになるという御説明でございますが、こうした不平な立場になった——特に恩給を受ける権利を有する人で増加恩給傷病年金をもらうような身体の傷害を受けた不幸な人に対する、一つの社会政策的な要素であるとも私は考えるのでございます。さよう心得てよろしゅうございましょうか。
  31. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 社会政策的というとあまり幅が広いと思うのでありますけれども、少くとも、恩給法による公務員で、増加恩給なり傷病賜金を受けるという方について、あるいは私傷病退職されたという方についで、普通恩給停止するということが、小適当であると考えましたゆえんは、やはりこの方々については稼働能力があるということを前提にしてやった若年停止というものに対する一つのそういう条件が欠けておるということの認定に立った規定だろうと思っております。
  32. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、大体私の見解に近い御意見だというのでございますが、さらに二十八年の附則の三十条に、未帰還公務員規定が掲げてあるわけです。この規定は以下五号にわたって書いてある、これはやはり恩給法建前からいうと例外規定であると言うことができましょうか。
  33. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 これも、恩給法原則から申しますと、未帰還公務員という特殊事情にかんがみまして、海外にあって帰国しない間少くとも在職しているような形で恩給年限を通算しておる、またその力が抑留期間を通じて十七年に到達しておる、こういう場合には普通恩給年限に逃したものと見るというような見方、それからまたそこに達するなり退職したというふうな見方、そういうものに、一連の関係におきましては、確かに恩給法に対する例外と申しましょうか、そうした未帰還公務員処遇というものが、すでに公務員としての処遇そのものにおいて新しい問題でありまするから、そうした規制をせざるを得ない、こういうことになったと思うのであります。
  34. 受田新吉

    ○受田委員 未帰還公務員は、これは国家公務員である、国家公務員に対する恩給支給恩給法規定してあるということになりますと、ただその支払いの手続上の問題が例外であって、未帰還公務員恩給支給するということは、これは国家公務員に対して恩給支給するということであって、その恩給そのものを支給することにおいては例外ではない、みなすというところに例外があるというふうに了解してよろしゅうございましょうか。
  35. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 このところで一番端的に例外と考えられる点は、普通恩給年限に到達して、その普通恩給支給留守家族支給するという点は、これは、恩給法上の支給原則からいっても、本人支給すべきものを留守家族に対してこの普通恩給を給付するという点におきましては、例外になる、そう考えます。
  36. 受田新吉

    ○受田委員 私が例外として聞きたいことは、この三十条の第一項にあるところの「それぞれ当該各号に掲げる日に退職したものとみなして恩給を給する。」というところに要素があるのではないかと私は思うのです。その点はいかがでしょうか。
  37. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 先ほど先生が支給のこととおっしゃったから、第二項のことを申し上げたのでありますが、前段に申し上げましたように、十七年に到達すれば、普通恩給年限に到達すれば、そのときに退職したものとみて、そのときから恩給法上の給与が始まるということにした、みなすことそのことが例外だ、そういう点はその通りであります。
  38. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、この恩給法には、例外が最初の若年停止規定のところにも一つと、それから二十八年の附則の三十条にも一つと生まれてきているわけです。恩給法の体系を厳守する立場で、その法の実施をなさる執行部の局長とされまして、こうして一角に例外が生まれたということは、新しい時の流れとお感じになりましょうか、いかがでありましょうか。
  39. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 時の流れと申しましょうか、その未帰還公務員という特殊の事態において給与制度廃止される、留守家族援護法に切りかえられるというようなことで、それとタイアップして、恩給法というものをこういう形に持っていかないと給与制度というものがはずれるということから、こういう例外を作った、こういうことでございます。
  40. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、その例外を作ることはもう道が開けておる、従って、今後当然考えらるべき例外をこれでつけ加えることにおいては、何らやぶさかであるべきではないとお考えでございましょうか。
  41. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 これはやはり限界があるので、問題は若年停止原則をこの場合に破っていいかどうかということだろうと思うのでありますけれども恩給法というものはあくまで退職後の給与制度としてそれ自体の性格を持っておるので、それがその他の分野であるところの社会政策的な諸立法というものの分野を侵すというところまで行くべきかどうか、その限界というものはおのずからあると思う。その限界を越えてむやみに例外を作るということは、また全体の法体系からいって考えなくちゃならぬだろうと思っております。
  42. 受田新吉

    ○受田委員 この未帰還公務員という規定が挿入された特殊の事情局長はお認めになっておられるし、また若年停止規定の例外があることもお認めになっておられるとすれば、未帰還公務員の特殊事情からくる若年停止規定の適用ということが当然容認せらるべき筋合いのものであると思うのでございざいましょうか、あるいは法体系の上からの理由でございましょうか。
  43. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 これは問題の起りというものが、未帰還公務員留守家族留守家族手当がいかない、あるいは恩給法処遇もなされない、そういう穴をどうして埋めるかというところから出発しておるので、その穴を埋める技術として、この恩給法のあれを手段に使ってやるのがいいかどうかということになると思うのでございます。従いまして、私ども今まで考えて参りましたのも、その手段として、恩給法原則というものがあまりゆがめられるということに対しては、あまり賛成できない。ゆがめないでいいほかの方法があるならば、それでもってやってほしいということが私どもの希望だったわけです。そういう意味で、今までできなかったということは、何も恩給法のこれができないからできないということではなくて、今までいろいろ各方面の間において折衝してどうすべきかということを検討してきたわけであります。
  44. 受田新吉

    ○受田委員 恩給局としては、政府としては、この恩給法規定の中に当然改正すべき要素が存在していると認められたならば、ちゅうちょなく進んでこれが改正案をお出しになるというのが建前ではございますまいか。消極的でなく、積極的にです。
  45. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 積極的にと申しましょうか、これは、未帰還公務員に関する恩給制度そのものが、広い留守家族対策と申しましょうか、あるいは未帰還公務員対策と申しましょうか、そういうような対策の一環と申しましょうか、そういう一つの手段として受け持っているのでございまして、その手段を受け持っている方の側から全体の政策をリードするというようなことはなかなかできにくい、こういう点も御了承願いたいと思います。
  46. 受田新吉

    ○受田委員 局長お答えいただく問題が一つあるわけですが、その前に大蔵省の主計官にお伺い申し上げたいのです。大蔵省は公務員の給与の支払いの担当をされるお役所です。従って、その給与に関する基準等も大蔵省が関係しておられるわけでございますが、未帰還公務員という国家公務員の中で、今日まで全然給与をもらわれなかった人々が相当数に上っておる、こういう現実をいかがお考えでございましょうか。未帰還公務員の中で次、三男とかあるいは両親が六十に満たない人とかいう方は、未帰還者留守家族援護法の方でも手当をもらっていない。また国家から国家公務員としての一般職の給与法の適用も受けておらない。国家の公務に従事しながら、どこからも金をもらわないような公務員がおるという現実が長期にわたって続いたわけですが、これはいかがお考えでありますか。
  47. 小熊孝次

    ○小熊説明員 確かに、先生のおっしゃるように、未帰還公務員の中には、現実に、給与と申しますか、そういうものをもらってない者があるということは事実でございますが、これは未帰還公務員という概念は恩給法上の概念だろうと思います。それで、これを国家公務員給与法なりその他の給与法で国家公務員として考えるかどうかということにつきましては、また別途の給与制度なら給与制度の面から検討すべき問題だろうと思うのでありますが、恩給法上特別な取扱いをする範疇として、未帰還公務員という概念を付したものだろうと思います。従いまして、その未帰還公務員であるものが、あらゆる法規において公務員として、何と申しますか、国家公務員法上の公務員として、あるいは給与法上の公務員として、必ず全部同じ扱いを受けるかどうかということについては、これはまた別問題ではないだろうか、それはやはり切り離して考えてしかるべきじゃないか、このように考えています。
  48. 受田新吉

    ○受田委員 未帰還公務員国家公務員であるかいなかということで、御意見を伺いたいと思います。
  49. 小熊孝次

    ○小熊説明員 今その点十分研究しておりませんので、ただ未帰還公務員という概念そのものは恩給法上に出ておるわけでございますので、これを直ちに、そういう概念が、他の法律においても、未帰還という名前がついておって下に公務員とついておるから、あらゆる面において公務員と同じであると断定することは必ずしも必然性がないのではないか、このように考えるわけです。
  50. 受田新吉

    ○受田委員 恩給法には各所に特別の名称をつけられた公務員が出てきているわけです。警察監獄職員とか、教育職員とか、幾つも公務員の名称が出てきておるわけですが、それは恩給法の第二章の公務員の第一節通則のところに出ているわけです。一般職の給与法にも、未帰還公務員についてはなお従前の例によるという規定が前にあったのを、未帰還者留守家族援護法ができたときに削除したのです。従って、ここに掲げてありますように、外務公務員とかあるいは未帰還公務員とかいうものは、国家公務員の概念の中に当然入るべきものであって、その対象から、国家公務員であるところの範疇からはずす筋合いのものではないとわれわれは考えているのです。従って、恩給法そのものが、国家の公務に従事した公務員に対して恩給支給することに規定されているのでございますから、この恩給法によるところの恩給受給権者というものは全部国家公務員である、かように解釈していいと思うのです。それは局長さんいかがでしょう。よろしいですね。
  51. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 その通りでございます。
  52. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、国家公務員であることに対して恩給支給されるということになると、国家公務員の中に大蔵省から金を払わない公務員が今まであったわけです。これは重大なミスであって、前後を通じて国家の公務に従事している公務員に対して、国家が俸給を払わないで放置していたという事態は、これは日本国政府としては千載青史の上に汚点を印したものとして、痛恨事と私は思うのでございますが、いかがでございましょう。
  53. 小熊孝次

    ○小熊説明員 われわれが普通考えている国家公務員というものは、やはり現実に国に対しましてそれだけのサービスは、あるいは国民の公僕としてサービスをする、こういう現実の給付がありまして、それに対価として給付が支払われる、このようなのが具体的なほんとうの意味公務員だろうと思います。その公務員に対する給与として扱うのが妥当だろうと思いますが、ただ、恩給法上におきまして、そういう特殊な観念で、ここにも現実に「みなす」と書いてございますように、本来は国家公務員として勤務しておらないのだけれども恩給の最短年限に達するまでは在職年を通算していく、こういう考え方を取り入れているために、これが現実のものであれば「みなす」という必要はないわけでありますか、特に「みなす」と書いてあるのはそういう趣旨ではないか、このように考えております。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 そうした意味ではないと私は思うのです。現に、未帰還公務員の中で、向うに生存しておることがはっきりしている、手紙もくる、その人に対して、現実には国家の公務に従事していないとは、言えないわけです。ちゃんと従事しておる。つまり日本国の防衛のために海外に派遣せられた。そして今日なお祖国に帰ることができないで、日本国の国家のために犠牲となって、現地にとどまっておる公務員、かように解釈をすべきものだと思うのでございます。いかがでありましょうか。
  55. 小熊孝次

    ○小熊説明員 その点は、法律は、おのおのその分野におきまして、いろいろな概念を構成しておるわでございますから、恩給法上は未帰還公務員でございましても、国家公務員法上公務員でないというものがありましても、それは必ずしも矛盾ではないのじゃないか。もちろん、現在外国において抑留されておる方々が、これが公務に従事しておるという、ふうに考えるかどうか、これは非常に特殊な状態であると思うのでございますが、それは普通いわれるところの国家公務員と完全にあらゆる面において同じである、従って給与も支給すべきであるというふうに一がいに断定するということはどうか、このように考えております。
  56. 受田新吉

    ○受田委員 公務員の中にも休職公務員があるわけですね。これは休職期間中に俸給の一部を減額する措置もとられておるわけです。しかし、それが公務員であるのは間違いない。そうしてこの未帰還公務員の中にも一般政府職員である公務骨貝もおる。まだ帰ってこない公務員の中にいるわけです。その人は、こちらに戻れば、また元の古巣に返り咲くことができる。その期間中は全部公務の継続とみなされることになるわけです。だから、国家の公務に従卒して、海外に派遣せられ、いろいろな事由のために祖国へ帰る時期がおくれたという方々は、当然海外で日本国のために公務に従事しておるとみなすべきもので、国家公務員たるの概念にはちっとも間違いない、私はかように思うのです。その公務員に対して俸給支給しないということの弁解として、特別の扱いをすべき公務員であるものもあるのだというふうな印象を主計官のお言葉の中に受けざるを得ないのでございます。いかがでございましょうか。
  57. 小熊孝次

    ○小熊説明員 なかなかむずかしい問題で、私は給与なりあるいは公務員の直接の担当をいたしておりませんので、その辺のところを十分に申し上げて、御納得のいくような申し上げ方はできないかと思うのでございますが、これは間違っておるかもしれませんか、先ほど申し上げましたように、公務員にも、公務員という概念そのものと、それから具体的な現実公務員について、どれだけの給与であるか、あるいは具体的な人に対して、概念的には公務員という名前を使っておりますか、そういうものに対して給与をやらないかどうかという問題につきましては、これは給与なら給与法の建前とし、当然やるべきであるというふうに、一がいに断定することはどうであろうかということを、先ほどから申し上げ、おるわけでございます。その辺のところを、休職者に対してもある程度はやっておるじゃないかという、先生のおっしゃる議論も十分わかるわけでございますが、それでは、休職者あるいは悪いことをやって休職しておる者には、これに全然やらぬという制度が全然考えられないだろうかという問題もあり得るわけです。だから、そういういろいろな公務員に対する給与のやり方、あるいは支給、不支給、あるいは減額というような問題につきましては、いろいろなその公務員の置かれておるところの特別の事情のもとにおきましてどうするかという、公務員の給与制度の政策の問題ではないか。これは私の個人的な見解でございますが、以上お答えをいたします。
  58. 受田新吉

    ○受田委員 未帰還公務員の中には、従来未帰還者給与法という法律の適用を受けて、未帰還者留守家族援護法ができる前に国家から給与を受けていたわけなんです。従って、それが今度未帰還者留守家族援護法にかわって、援護的な性格として留守家族に年金が支給されてきたということになっているので、生計の主体であった人は引き続き給与を受けておる。それから、生計の主体でなかった次男、三男などは給与を受けないということは、大蔵省としては大へんな手落ちをされてきたと思うのです。つまり未帰還者の中に給与を受ける人と受けない人がおる。生計の主体であったものだけ受けて、後にはこれは援護法の方のお金になってくるわけですが、その方は受けておる。それから、次男、三男で生計の主体でなかったものは何ら支給を受けない。同じ未帰還公務員の中で、ただ援護的性格から、給与を受けるものと受けないものがおるというような形になっているのですが、これは非常に大きな矛盾があったと思うのです。そういうところは大蔵省としてむずかしいことだろうと思いますので、この次の委員会までに、この未帰還公務員に対する給与の解釈をしていただいて、国家の公務に従事している未帰還公務員にして、国家から何らの報酬を受けない職員がおるということをいかに解釈するかの御説明を、次の委員会までに、省議を開いてでもいいですから、お答えをいただきたいのです。これはこの法律を改正するに当ってもきわめて大事な問題だと思いまするし、後世の史家をして、先輩である皆さま方がそしりを受けないように、またわれわれ国会議員も手落ちをしたというそしりを受けないように、きちっとしておかぬといかぬと思いまするので、明瞭な解釈を次の委員会において私のお尋ねする前に御説明いただくように、御用意をいただいたらと思います。  そこで、恩給局長に結論をお伺いするのでございますが、温厚篤実なお方として、みんな認めておる局長さんとして、恩給法を守りたいという熱願は十分私たちにはくみ取れます。しかし、同時に、この恩給法には幾つか例外ができてきた。去年の末にできた恩給特例法のごときにいたしましても、また例の旧文官の不均衡是正のため六十才以上の者に支給するという特殊な若年停止規定がありますが、そういうものを見ましても、幾多の恩給法の例外ができておる。このできた例外の要素を見ると、明らかに社会保障的な要素を含んでおる。たとえば、年とった人に恩給支給するので、若い人には恩給支給しない。六十才という去年の改正規定のごときは、特例ではございますが、恩給法上の一つの例外です。従って、もう古い観念で恩給法を守る時期でなくして、とうとうと流れる新時代の感覚を引き受けた恩給局としては、勇敢に恩給法の本流を時の流れにさおさすごとくに持っていかないと、孤影しょう然と残月を追うがごとく、時代おくれの形に追い込まれると思うのです。だから、こうした場合には、筋の通った改正要点だとお認めになられたならば、積極的にここをどうしたらいいか、財政上の理由は抜きにして何とかやれるという場合もあるし、あるいは財政上の考慮をしなきゃならぬ場合もあると思うのですが、今回は財政上の考慮も大してしなくてもいいという御意見田邊援護局長さんの方からも示されておるようでございますし、大蔵省も歩み寄った見解を持っておられるようでございまするので、恩給局長は、とうとうとして新時代の息吹きを受けた、歴史的な恩給局長の栄職にあるお方として、この際援護局長田遇さんとも十分相談をせられて、世評を受け批判をされておるところのこの未帰還公務員の待遇に関して、恩給法の未帰還公務員規定を十分有利に改正するように、十分御相談の末、努力をせられる用意があるかないか、明言をいただきたいと思うのです。
  59. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 いろいろ御激励を受けたのでありますけれども、未帰還公務員につきまして、田邊援護局長並びに大蔵省当局とも十分話し合いまして、何も恩給法の今まであるものだけを固執してこうも譲らないというわけじゃありませんので、総合的に考えてこうするのが一番いいんだというところの結論が出ますれば、私はそれに従うということは別にやぶさかでないわけであります。ただ、しかし、ここで一言申し上げておきたいのは、実は若年停止制度の問題にいたしましても、問題は端的には留守家族手当を受けられない方々処遇の問題に役立つ方便なんでありますが、これをやることによって恩給法上の公務員の方の留守家族は救われるけれども、そうでない留守家族の方は一向に救われぬじゃないか。そういうふうな恩給法という方便を使うことによって、留守家族対策一つの部分は何とか救済されたけれども、片方には穴があいているということで、果して留守家族対策として十分なものかどうか。こんなことをわれわれ恩給法の分野から申し上げるのはかえって潜越かもしれませんけれども、それによって、逆に、恩給法上の公務員だけが一般的な処遇の面で厚くされるということによって、非常に恩給に対する非難がまた高まってくるというようなことも、われわれは考えなくちゃならぬと考えているわけであります。そういうようなことはもう先刻御検討の上で、総合的にお考えになって、この部面についてはこうした方がいいんだという御意見であろうかと思うのでありまして、十分皆様方の御意見なりまた関係当局の御意見を伺いまして、今後検討して、その意見に従っていく、こういうことにいたしたいと思っております。
  60. 受田新吉

    ○受田委員 非常な誠意のある御回答でありますから、これを了承して御努力をいただくことにしたいのでございますが、今お話の一端にございました一点を拾い上げて、お導ねを重ねたい点が一つある。それは、未帰還公務員若年停止規定排除することによって救われる未帰還公務員と、しからざる者があるということでございましたが、しからざる者というのは、一般邦人ということになって、公務員でない。従って、国家の公務に従事した立場の人でなくして、純粋な援護的な対象として考えらるべき方々であると思いますが、両局長の御見解をお聞きしたいと思うのでございます。
  61. 田邊繁雄

    田邊政府委員 恩給局長が御心配になっている点は、先ほど受田委員も言われたように、単なる恩給ということでなしに、広い留守家族全体をながめての御心配で、ごもっともだと思います。その点については、今受田委員からお話のありました通り公務員とそうでないものという一つの出発点があるわけであります。この点は遺族問題その他におきまして常に出てくる問題であります。つまり、出が違うということのために現実の収入が違っているということが、至るところに出てきているわけであります。その点はある程度覚悟をして出発せざるを得ない点であります。お話の通り、あとは一般援護の問題として解決していく。片方は単なる援護の問題でなくして処遇の問題である。この点は明確に腹をきめて出発しませんと、あとで片一方やったから均衡上片方もやらなければならぬということで責め立てられたのでは、国としても恩給局としてもわれわれとしても困る問題が出てきますので、恩給局長が指摘されました点は、この問題の解決に当り出発点として大事なことでございますから、私どもも今お話がありましたような一般邦人の問題は援護の問題として考えていきたい、未帰還の公務員の問題は、公務員に対する処遇の問題として考えていきたい、その点あたりがこの問題の出発に当って銘記しなければならぬ問題だと考えます。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 明確なお答えが出ましたので納得をします。  一言尋ね残しておった点がありますので、これを明らかにいたしますが、これは恩給局長さんにお答えを願いたい。死亡の日にさかのぼって扶助料支給するという問題ですが、これは実際は死亡の日にさかのぼって支給するのが建前ではございますまいか。恩給法の本質的な建前はそうではないのですか。
  63. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 恩給法建前はその通りでございます。
  64. 受田新吉

    ○受田委員 従って、事情判明がおくれるような特殊事情にある未帰還公務員の場合において、その例外が恩給法の附則三十条に出てきている。その例外を削除することは潜在的権利の復活である。とにかく、当然もらうべき権利が、その期間中、判明がおくれたためにおくれたと見ていいのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  65. 田邊繁雄

    田邊政府委員 実は、未帰還公務員制度の創設並びにその死亡判明した場合の処遇の問題につきましては、恩給局におきましてこういった新しい制度をお作りになったのであります。これは二十八年に軍人恩給が復活されたのであります。その際、まことに私どもの手落ちと申しますか、注意が十分行き届きませんために、留守家族援護法——当時八巻さんは恩給局の責任者でございませんでしたけれども、当時の恩給局の責任者とわれわれの連絡が十分でなかったために、死亡判明の日から支給する、あと死亡判明する以前の問題は従来通り処遇方法考えたい、こういうお考えであったと思うのです。恩給局の方で死亡判明の日からするというのは、恩給法上の主として技術的な点から非常に明確でございますので、これも恩給局としては無理のない立法であったと思うのです。しかし、それには一つ前提があったわけです。と申しますのは、死亡判明するまでは現実に生きておったものと擬制する、こういった考え方に割り切っておられるのであります。生きておったという観点に立ってどこまでも進むならば、それに即応した処遇をしなければならないはずだったわけであります。その点のところが、当時軍人恩給全体の復活の問題もあり、遣家族援護法の大改正もあり、また、私どもの方では、従来からの懸案でありました留守家族援護法というものも作らなければならなくてやっておる際に、援護立法と給与等の延長であるところの恩給法との連係がぴったりしない点が出てきてしまったわけであります。これは国会でも御審議いただいたわけでございますが、留守家族援護法におきましても、三年の間には何とかこの未帰還者の問題は解決したいという当時意気込みで出発したのでございますが、それが時間がずれてきたために、そうしたギャップが、時間のたつごとに、だんだん幅を大きく、また幅広く現われてきたということでございます。また、半面におきまして、恩給法考え方にも、留守家族のためにいろいろ有利に御解釈になったという面もございますし、かえってそれが逆に未帰還公務員処遇の出題において幅をますます大きくする結果にもなっておりますので、先般来、事務当局においても、大蔵省にそうした不均衡を是正していただくようにいろいろお願いを申し上げている次第であります。この点につきましては、先ほど、恩給局長からも、また大蔵省当局からも、御悦明があった通りでございます。私も法律の直接の一責任者ではございませんが、こうした制度ができます過程においての非常に大きな役割、責任のある立場にあった者でございますから、何とかしてその点は調整したいということで一生懸命努力中でございます。大蔵当局恩給局とも三者十分御相談申し上げまして、善処したいと考えております。
  66. 受田新吉

    ○受田委員 死亡の問題ですけれども、なくなられた方に対して、高級軍人のような場合には普通恩給の方の額が高くて、扶助料がごく少差でが低い。この少差のお返しをしなければならない。お返しをするとかりにして、対象になる人はごく少数である。従って、法律規定で従来支給したものを返せということはむずかしい話なんですが、その分は法律の施行のときにおいて善処されればいいのであって、すでに公務扶助料よりも高く普通恩給支給したものを返せなどということをかりにもお考えになられるとしたならば、これは大へんなことをお考えだと思います。だから、少数の方に対して——今局長さんのお言葉は、おそらく、法律の厳正なる建前からいうならば、不当利得をするような形になる人に対して返還を要求しなければならないという立場考えての御発言だと思いますけれども、温情を持って法を規定すべきお立場にあられるので、恩給の恩という言葉に準じて、この法の改正を決定された暁に、すでにもらわれた人に対して、すでにお使いになってお返しする金のない立場の人に対しては返還を要せずと、びしっと一項をお掲げあそばされることを希望いたしまして私の質問は終ります。
  67. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 それじゃ私から一つお尋ねしたいと思うのであります。いろいろ御意見を承わったのであります。が、今度の国会に政府提案で先刻来の恩給法の改正を御提出になる御意思があるかどうか、そのことを恩給局長にお尋ねいたしたいと思うのであります。
  68. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 先ほど申し上げましたように、この問題は、三省で十分協議の上、結論を出したいということでございまして、またそれがどういう形に相なりますか、恩給法の改正でいくか、どういうことになりますか、いずれにいたしましても予算措置の見通し等もございましょうから、そういうものの裏づけなくて法律案を出すということにもならぬと思うのであります。そういうような次第でございますので、すぐ今国会会ということになるかどうか、ここで御確約申し上げることはできかねると思っております。
  69. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 私ども考えといたしましては、もし今度の国会に多年の懸案でありました未帰還公務員の問題を政府が進んでお出しにならないということでありますれば、議員の提案でも出さなくちゃならぬと考えておるわけです。先日来、与党の自民党内におきましても、例の軍人戦没者の遺家族公務扶助料の倍率の引き上げの問題、あるいはまたベースの引き上げの問題というようなことにからんで、この未帰者留守家族の問題が取り上げられたのであります。ところが考えてみますれば、この問題は、ただいま申しましたような問題とは切り離して政府の方から提案さるべき性質の問題ではなかろうか、かように考えまして、党内の促進はいささかも手をゆるめておりませんが、どうしてもあなたの方で踏み切ってお出しにならないということになりますれば、私どもの方におきまして決意を新たにいたしまして、何とか方法を講じなければならぬ、かように考えておるわけでありまして、非常に熱意に燃えておりますので、ぜひ、この機会に、この国会におきまして政府提案をお願い申し上げたいと考えておるけわでございます。ただ、大臣等の御意見もありましょうけれども事務当局の局長としまして、さような決意を持たれることがきわめて肝要ではないかと思うのであります。田邊引揚援護局長はさような考えを持っていらっしゃるようでございままして、先刻来、恩給局あるいは大蔵省と一緒に何か協議をされたような御説明をされておりましたけれども、果してさような協議が進んでおるかどうか、私は非常に疑っております。何回さような協議をなさいましたか。田邊さんに一つお尋ねしたいと思います。
  70. 田邊繁雄

    田邊政府委員 この問題はずいぶん長い間の問題でございまして、協議は十分いたしております。ただ、恩給局長とは比較的お会いする便宜もあるのでございますが、大蔵省の方では、小熊主計官以外の方につきましては、いろいろ予算の審議の問題にからみまして、なかなか主計局の首脳部の方と時間をとってお会いいただくことが困難でありますので、断片的にいろいろお話し申し上げておりまして、あるいは部下の方を通じて御説明申し上げるということでございます。ことに小熊主計官は厚生省担当の主計官でございまして、恩給の方の担当官は別になっております。こういう機構の関係も手伝いまして、最後の詰めるところにまで至っていないわけでございます。先ほど恩給局からお話がありましたように、できるだけ早く三者間で話を進めていくようにしたい、そういうように私としても努力をしていきたい、こう思っております。
  71. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 先日来何度か督促をいたしますと、できるだけ早くまとめたい、協議を遂げて成案を得たいというようなお話でございますけれども、なかなかまとまらない。会期はだんだん末期に切迫して、時日が少くなって参りまして、引揚特別委員会というのは次の国会まで存続するかどうかわかりませんような委員会でございますので、すべての問題はこの機会に解決したいという、委員各位、超党派的に、ほんとうに熱意に燃えているわけなんでございます。さような熱意をくまれまして、八巻さんは非常に消極的のようでありますが、何とかこの国会にお出しになるようなお考えを持っていただきたいと思うのでございますが、八省さん、重ねていかがでありましょうか。
  72. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 いずれにせよ、先ほど申し上げましたようなわけで、まだ結論には達しておらないわけなのでありますが、田邊援護局長のイニシアチブで、いろいろ大蔵省、われわれ一緒になって勉強をして、何らかの対策を立てたい、こういうわけであります。ただ、しかし問題がやはり予算措置にからむものでございますから、おそらく、大蔵当局としても、予算措置ができるという段階に至ってみなければ、法律化するということはできないだろう、こう思います。
  73. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 それでは、新しい財政負担を必要としない、多額な国家資金を必要としないというようなことでありますれば、あなたの方としましては、きん然恩給法の改正に応じて、この国会に提案をするというお考えだと解釈して差しつかえございませんか。
  74. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 先ほど来申し上げましたように、どういうふうに申しましょうか、大蔵省を裁判官といたしまして、それぞれ原告、被告というようないろいろな立場に立って論争して、そうして最後のものを固める。先ほど来私どものプロパーの立場を申し上げたわけでありますが、それは必ずしも固執するというわけでもないということも申し上げたわけであります。であるからといって、恩給法を今直ちに改正するということを私から申し上げるということは、まだむずかしい。この程度で御了承願いたいと思います。
  75. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 それではどうも私納得できないのでありますが、協議を重ねなければならない、こうおっしゃるわけですね。ところが、援護局長の御説明では、もう何度か協議をした。ところが、全然進まないということは、私は協議をやっていないんじゃないかと思うのです。恩給法の改正に恩給局長が全く熱意がないんじゃないかと思うのですよ。さようなことでは、今まで何度となく委員会を開いて政府意見をただしましても、ちっとも進まないということになってくるわけであります。そこで、もうこういう段階になりました以上は、今度の国会に出すか出さないか——政府提案で出さないという考えでありますれば、私は議員提案で出さなくちゃならないと思う。私どもは、与党という立場から考えまして、やはりかような問題は政府提案で出すべきだという考えを持っておりますけれども、それまで踏み切りができなければ、議員提案で出さなくちゃならぬ、かような決意をしなければならない段階になっております。私どもの苦衷をお察し願いたいと思うわけなんであります。それで、繰り返してしつこいようでありますけれども、未帰還公務員の今の二、三点の恩給法の改正では、何ら新しい財政負担は伴わないということははっきりしております。ですから、さようなことであれば、恩給局が軸となりまして、政府提案法律の改正をするという意思を固めていただきたいと思いますが、さような御決意を恩給局長に特に促して、もう一回御答弁願いたいと思います。
  76. 八卷淳之輔

    ○八巻政府委員 委員長の御趣旨の点はよくわかりましたが、今直ちにこの国会で出すか出さないかということをここで確約申し上げることは、現在の段階としては、大蔵当局との折衝もございますので、いたしかねるわけでございます。
  77. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 それではまた重ねてお伺いしなければならぬことになりますが、これは大体だれが軸を握って進むことなんですか。大蔵省当局にも相談しなくちゃならない。——いかにも大蔵当局におぶさっておるような感じがするのですが、私は、恩給法の改正なんというものは、事務的には恩給局長が軸を握って、中心になって推進しなければならないものだと思っておる。幸いなことに、この未帰還公務員の関係の恩給法の改正は財政負担を伴わないという事実がわかっておりますし、一方、遺家族の問題という大きな国家財政負担を伴います問題が目の前に横たわっておりますので、これとからめますと、なかなかできないことになるのじゃないかと心配しておるわけです。しかも、先刻来各委員から御発言がありましたように、この問題はこの委員会多年の懸案でありまして、この機会に解決しなければ、する時期がないという決意をいたしておるわけでございますから、恩給局長が中心になりまして、大臣あたりも説得され——この次の委員会大臣の答弁を得たいと思いますが、それまでに一つ大臣とも御協議下さいまして、はっきりとした御答弁をいただきたいと思います。政府がどうしても今度の国会に出さないということになれば、議員提案で出さなくちゃならないということになって参りますから、さような点をお含みの上で、十分御協議をお願い申し上げたいと思います。
  78. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 私は援護局長にちょっとお伺いいたします。恩給法とちょっと違うわけであります。  実は、先般の文教委員会で、ある委員から、国家総動員法に基いて動員された学徒が出先においてなくなった場合、その遺族は弔慰金をもらっておるようでありますが、傷害を受けた者の遺族は何ら援護の対象になっていない、そのままの状態に放置されておる、これははなはだ不合理であるから、文部省としても何とか善処するようにという強い要望があったわけであります。なおまた、本委員会においても、この問題は、受田委員がしばしば取り上げて政府の善処方を要望してこられたものであります。なお、この委員会に設けられておりますところの小委員会の中においても、戦傷病者戦没者遺族等援護法の関係の問題として、三十四条の適用の拡大を取り上げております。この問題は、このようにいろいろの角度から論じられて、今や大きな世論となりつつあると言っても過言でないわけであります。この取り残された犠牲者に対する処遇の点について、これは事新しく出た問題じゃないのでありますから、援護局としてはどのようにお考えになっておりますか、お伺いいたします。
  79. 田邊繁雄

    田邊政府委員 御指摘の通り援護法の三十四条によりまして、学徒、満蒙青少年義勇隊、特別未帰還者——これは準軍属と総称いたしておりますが、死亡した方々に対しましては、少額ではございますが、三万円の弔慰金を差し上げております。同時に、こういった身分の方々で、戦時災害あるいは戦闘参加等によって身体に傷害を受けておる方も、少数ではありますが、あることは承知いたしております。本日までこれらの方に何ら援護の手が差し伸べられなかったことも、私どもは承知をいたしております。適当な機会に何らかの見舞の意を表したいと考えて、機会あらば実現したいといろいろ努力をいたしておるのでございます。本日まで、まことに申しわけない次第でありますが、実現していないような状態であります。現在、軍人恩給、ことに公務扶助料ないしは傷病恩給の問題が国会方面で審議されておるようでございますので、これとの関連において、私どもただいまお述べになりましたような問題も取り上げまして、同時的にあわせて解決するように計らいたいと考えております。
  80. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 大体私ども考えておることと一致するわけでありますが、援護局としては、この傷害を受けた動員学徒の数はつかんでおられますか。全国で大よそどのくらいの人員でありますか。
  81. 田邊繁雄

    田邊政府委員 死亡した人の数は調べたことがあるのでございますが、傷痍者の数につきましては正確な調査はございません。ただ、ざっとした見当では、傷の重い人、いわゆる重度傷痍者といっておりますが、重度傷痍者と申しますのは、手の指が一本なくなったとか、軽い方は別といたしまして、大体二、三百人程度であろうと承わっております。
  82. 櫻井奎夫

    ○櫻井委員 大体考え方がわかりましたので、私の質問はこれで終りますが、ぜひ一つ、こういう取り残された犠牲者に対して、この機会に大幅に援護の手を差し伸べられるように、特に文教委員会でそういう発言がございましたので、私はこの際この特別委員会に御要望を申し上げておく次第であります。
  83. 山下春江

    山下(春)委員 過般ソ連からの引揚者名簿が発表されました件についてお伺いをいたしたいのでございますが、この発表がはからずもこれで終りなんだというようなこと、あるいはソ連全土の名簿があの中に含まれているかに聞えるような風評が流布されておる点で、これは大へんな間違ったうわさが飛んでおると思いますので、その点について局長からあの名簿についての概略をちょっと先に承わりたいと思います。
  84. 田邊繁雄

    田邊政府委員 先般ソ連側から発表されました数字、並びにその中で帰国を希望しておるといわれる方々の数字、及びその名前につきましては、当委員会におきまして法眼参事官からおよそのところを申し上げたのであります。今日まで帰国志望者の氏名を検討いたしておりましたところ、二百二十五名の中で百名以上どうしてもわからないのがあります。わかった範囲内では全部終戦当時在籍樺太であります。これからいたしますと、おそらく全員樺太在住者ではないかと推測されるわけであります。樺太には、御承知の通り、私の方で名前をつかんでおらない未帰還者が相当多数あるということは以前からわかっております。その点から申しますれば、さして奇異に感じないわけであります。ただ、問題は、ソ連本土に昭和二十五年以降少くとも二百名以上の人が残存しておるようでありますので、こういった方々の中にはやはり帰国を希望しておる人が相当数あることは確実でありますので、その方々につきましては、ソ連当局に対し、調査をし、でき得れば今回の人々と同時に帰ってもらいたいという希望を持っております。いずれにいたしましても、私の方で提出いたしました名簿一万一千百七十七名の大部分につきましては、まだ回答がないわけであります。これにつきましては、今回発表されました方々が帰還いたしますれば、樺太の実情も大よそ判明してくるだろうと思います。そういった新しい資料も加えまして、さらに従来持っておる資料を集めてみまして整備した上、さらに先方の回答を要求していきたいと思っております。なお、先般発表しました数字の中でまだ具体的な通告のない者が相当おりますので、そういった問題も回答を要求していきたいと考えております。
  85. 山下春江

    山下(春)委員 局長の方でそういうふうに調査が進んでおることが明らかにされますことは、大へんけっこうなことで、私どもも大部分が樺太であるように考えておりましたけれども、とかくあれがソ連に抑留されておる人の全体のような感じを与えられておる点で、これらの調査を進めていく上に非常にまずいと思いましたので、その点をお尋ねしたのでありますが、これはぜひ、そういう点を、機会がありましたならば、よく発表していただきまして、一般ではこれを発表された名簿が樺太ということをよくわからない人が、あれだけ帰るといえば大体全部帰ってしまうことを意味するのではないかというふうな、シベリア全土のことが連想されますので、これは樺太のケースであるということを明らかにされるように、何か心がけていただきたいと思います。ということは、現にソ連本土に抑留されている者の中で、この間の名簿にありました三百七十一番吉田晴雄という人などが、この前の委員会でも申し上げたと思いますが、非常に帰国を切望しておりました。現在これがマリンスクにいて、肺浸潤で病院に入って寝ているようでありますが、最近だけでも母親から六回も嘆願書を出しております。本人もまたこういう手紙をよこしておるのでございます。その中の一節を読んでみますと、「長らくの間おたよりがありませんが、からだでも悪いのですか、また仕事でも忙しいのですか、それとも手紙はつかないのですか、それとも僕を悪く思っているのですか、僕は一日も早く帰りたいと思って、願書をモスクワの一番の大臣のところに書いて出しましたら、さっそく返事がありまして、国の母親の呼び出しがあれば帰すということになっております。」そして、まあ中を略しまして、「僕は一日も早く会いたいと思っておりますが、きょう死ぬかあす死ぬかわからない、おそらく国へ帰っても死にに帰るだけであろうと思われる……」ということは、もう命旦夕に迫っていても、なお祖国に帰って死にたいという、これはまあ非常なじっとしていられない気持のケースであろうと思うのでありますが、その他切々の情を訴えた母親からの帰してくれという嘆願書、あるいはまた、それにこたえて、本人が、十二月十五日に、これは私どもこの字を見ましても、今読みました手紙のときよりもあるいは病状が悪くなっておられるのではあるまいかと思われるような筆跡でございますが、こういうケース。あるいは、やはり今度の名簿の中の三百七十六番、カンスクに現在おりまして、しかもこの人はソ連の婦人と同棲をいたしまして、現状は子供が二人あるということであります。これは北海道でございますが、国にちゃんと妻がおりまして、この妻から二月以降だけでも六通の嘆願書を出しておりますが、この吉原俊雄という人は、今の生活その他の事情からやむなくソ連人と同棲はいたしておりますけれども、しかしながら、本人もぜひ帰してもらいたいということを、カンスクの警察外事課あてに帰国を切望しておる嘆願書を出しておる事実がございます。その北海道の妻から最近手紙が参りまして、「今度の名簿が発表されて非常な喜びを持ってずっと探してみたところが、夫の名前は発表されておらない、非常に大きく落胆した、とめどもなく流れ落ちますこの涙をどうすることもできません。なぜこんなにたった一人のために大ぜいの皆様に御迷惑をかけなければならないか自分でもわかりません。夫が結婚してソ連に籍でも入れたために帰国できないのではないでしょうか。この間厚生省の未帰還調査室長様から調査書が来ましたので、重ねてソ連に嘆願書を出しました。」云々の手紙は、やはりこの妻から訴えられておるのであります。そのほかに、長野県の人で、武居重幸という、これはナンバー二百四十三でございますが、これは今本人留守家族から数回にわたって帰国の嘆願書がソ連に出されております。こういうことでございまして、全部ソ連の方では帰国を希望しないあるいは希望残留をしておるような表現をいたすことがありましても、本人たちはこのように帰国を切望いたしておるのであります。そこで切望しておる者ばかりかと申しますと、そうでないケースもあるのでございます。ということは、たとえば現在カンスクにおります宮沢一平、これは今アルコール工場におって石炭おろしをしておるというのが現状のようでありますが、それは自分が帰国をあまり希望しない、残留を希望しておるような表現を今日までしておったようでありますが、それは手紙等があまりひんぱんに受け取ることのできなかったところにおりましたために、父親がもうすでに死亡してしまった、帰っても仕方がないということから、ソ連にしばらく落ちつくつもりで、ソ連の婦人と結婚した、子供が二人できた、ところが、最近になって父親が健在でいることがわかったために、最近ではもう非常に帰国を切望しておる、こういうことが明らかになっておるのであります。そういうことでございますから、ソ連本土におります私が、前にも申し上げました人の名簿、ソ連の大使があげておりました山城太郎、黒田正雄、佐藤光雄、有田カツエ、この四人も今度の名簿に載っていない。この人たちも、帰国を希望しているたくさんの手紙や、帰国を切望しておるという資料があるのでございますが、それにもかかわらず一向に帰国の手続が進められないということは、この病人の今の吉田晴雄という人のたどたどしい手紙の中には、国交が回復して以来どうも日本人を隠しておるのではないかというような気持さえする。これは非常にはばかりながら書いている文句でありますが、そういうことであったのでは、私ども国内で引き揚げを促進しようと一生懸命になりましても、なかなかこの問題が進まないと思うのであります。こういう問題に対して、政府は、今後具体的にどのような方法をもってこれらの帰国を希望する人を帰国させるような運動をおやりになろうとするのでありましょうか。
  86. 田邊繁雄

    田邊政府委員 国交が回復しておるのでございますので、正式の外交交渉におきまして解決することが一番いい方法だろうと思います。そのためには、私の方から帰国を希望しているという現実の氏名をあげまして、外務省を通じてソ連側に強く調査並びに送還方の要望をする、これ以外に方法はなかろうと思っております。その手続を今とっている次第であります。
  87. 山下春江

    山下(春)委員 私の今の発言中ナンバーを申しましたのは、これは日本政府昭和二十五年以降生存確実として調査を要求した名簿の番号でございますから、今回発表された番号と申し上げた点を訂正いたしたいと思います。  それはその通りでございますが、しかし、ソ連のやり口というのは、現にこの間起りました、外務省としてもはなはだおもしろくないことになったと思うのですが、畑中さんに名簿が渡された。そのいきさつは私ども明確にはわかりませんけれども、ああいうこともなかなか正式のルートに乗せてやらないくせのある国のようでございますので、それで外交も開かれておりますから、門脇大使を通じてというようなことで、これがうまくいくかどうかということが非常に心細いのでありますけれども、しかし、引揚援護局長としてそれ以上のことをどうするということもできないと思いますが、ただ、その程度の、大使館を督促するということだけでは、なかなか容易でないだろうと思われることの一つの例が、先年私が国連へ参りましたときに、イタリアの名簿が、非常に膨大な、六万二名か国連に出ておりますので、イタリアのこういう問題の責任者に、どうしてこう調査がはかどらないのか、イタリアはすでに五年も前から国交を回復しておって、大使がモスクワに駐在しておるのに、こういうふうな状態であるのは、どうしたわけかと言ったところが、本国からは一年に三十回くらい厳重な催促をするけれども、それに対する回答は何もないんだ、まれに帰ってきた人から情報を得て、国連の名簿を一年に一、二名差しかえる程度以外のことは進まない、こういうことを言っておりましたが、日本もまたそういうことになったんでは大へんだと思うのであります。大使を督励すると言いますが、これらの国内に帰国を切望しておる人の名簿をあらかじめ引き抜いて送って、それの調査をさせるというようなことでもお考えになってみたらいかがでございましょうか。
  88. 田邊繁雄

    田邊政府委員 お説の通りやろうと思います。
  89. 山下春江

    山下(春)委員 そこで、名簿が発表されましたので引き取ることになるのでございましょうが、これらの問題をもう少し究明しないと、向うからさっと名簿がきたから、あわてて船を出して迎えに行くということでは、私は不十分じゃないかと思うのでございますか、その点はどういうふうになさろうとなさいますか。
  90. 田邊繁雄

    田邊政府委員 そういうふうに、欲を申しますれば一挙に全部というふうに思いたいのです。私らもそう思いますけれども、しかし、今回ソ連側がああいう全体の数を発表し、またそのうらで帰国を希望する者は帰すという処置をとっただけでも、この前の共同宣言第何条かの約束の一部をぼつぼつながら果しているというふうにも解釈できると思います。かえって希望的にもとれるのじゃないかと思います。  そこで、もちろん残っている問題につきましては、約束してある事項でございますので、今後どこまでも調査を強く要望していかなければならぬ、そのためにできるだけの措置をとらなければならぬと思いますが、今回帰国を希望されている二百二十五名の日本人とその家族、朝鮮人の引き取りにつきましては、これだけ片方ほってあるのだから、それと一緒にほっておけということには、私どもどうしてもならないと思います。もしもソ連本土にある人で、今回帰りたいという人の帰国と一緒に間に合うなら、同時に帰してもらいたい。もしどうしても間に合わないという場合におきましては、ソ連側の都合もございますので、適当な機会、来月中には引き取りに行かなければならないと思っております。また、これによって樺太残留者の全貌が明らかになるということだけでも、プラスになる面が相当あるわけであります。一挙に全部を解決することは望ましいことでありますが、従来の経緯から見まして、これは逐次できるところから解決していくという従来のやり方を、しんぼう強く続けていくほかはないのではないかと思います。もちろん、お説の通り、ソ連本土に残留している方々の問題について、今回何ら反応がなかったということはまことに遺憾に存じます。三百八十五名という名簿を出しましてよりもう一年半も経過しておるのでございますから、何ら反応がないということはまことに遺憾なことでございますが、これにつきましては、機会あるごとにこちらから資料も提供するし、また資料を提供しなくても、向うの回答を催促するということを、私の方からも外務省に連絡し、外務省からも出先機関を通じ、また直接こちらのソ連大使館の方にも連絡し、努力していただくようにお願いをしたいと思います。
  91. 山下春江

    山下(春)委員 もちろんそれでけっこうでございまして、全貌がわからないから帰りたいという人をほうっておけということではもちろんございません。ただ、今回のものは、かつて日本から要望しておった一万一千百七十七という数字とは違いますけれども、しかし、帰国を希望しておる人はこれだけだというようなことでのけられたのか、あの名簿を渡されたときの理由書といいますか、頭書がよくわからないものですから、そこでこういう危惧を持つのでありますが、何かこれでおしまいだというふうに言われるのを、そばから引き取りしますと、非常にずるい国ですからあとが大へんだと思うももですから、そこで、少くとも船を出すまでに多少の折衡がまだあろうと思いますが、その点がどういうふうになっておるか知りませんが、これらのものに対してはどうなっておるのだということの一応の回答をとっておかないと、渡したので全部だというような顔をされるおそれはないかということを、その名簿の渡し方がわからぬから、私はこういうよけいなことを心配するわけなのです。そういう点で、帰国を希望してさんざソ連政府に嘆願書を出しておる人たちのことに一切触れないでのけたのを、そばから、ということが私は非常に心細いような心配をするのであります。その点については、これは帰りたいという人の一部だという何か足跡を残す方法はないかどうかということが、私の今度出された名簿に対するこちらの受け取り方の一つの心配なのですが、その点はどういうふうになさいますか。
  92. 田邊繁雄

    田邊政府委員 先ほども申しましたように、私の方から現在帰国を希望しているという明瞭な証拠のある者の名前を列挙いたしまして、ソ連側にその調査促進を要望するつもりでおります。その他の残留者につきましても、相当あるのだから、中には帰国を希望する者もあるはずだから、それを調査して回答してもらいたい、でき得れば今度の船と一緒に帰してもらいたいという要望を外務省に出す段取りにしておりまして、もう今明日中にその名簿は外務省に届くはずでありまして、そこは抜かりなくこちらとしては手を尽していくつもりであります。
  93. 山下春江

    山下(春)委員 抜かりなくやるという局長の言明でございます。もちろんこの問題について十年苦労してきた局長でありますから、われわれの心配以上の心が配られていると思いますが、はたから見ましても、それから留守家族から見ましても、今の手紙にもありますように、その他資料もたくさんありますが、何か取り残される家族にとってはたまらない気持があるようでございますので、どうかその点ぜひとも、まだあるんだという足跡を残して、今の処理をしていただくようにお手配を願いたいということを要望いたしまして、この名簿についての質問を終ります。
  94. 廣瀬正雄

    廣瀬委員長 ほかに御質疑がなければ、本日はこの程度にいたしたいと思います。  次会は公報をもってお知らせすることといたし、これにて散会いたします。   午後四時三十分散会