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1957-05-17 第26回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十七日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 菅野和太郎君    理事 赤澤 正道君 理事 有田 喜一君    理事 齋藤 憲三君 理事 前田 正男君    理事 岡  良一君 理事 志村 茂治君       平野 三郎君    保科善四郎君       山口 好一君    石野 久男君       原   茂君    松前 重義君  出席政府委員         科学技術政務次         官       秋田 大助君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      山口 正義君         通商産業事務官         (鉱山局長)  森  誓夫君         郵政事務官         (電波監理局         長)      濱田 成徳君  委員外出席者         科学技術庁次長 篠原  登君         大蔵事務官         (主計官)   鳩山威一郎君         通商産業技官         (重工業局電気         通信機課長)  重見 通雄君         通商産業技官         (工業技術院地         質調査所長)  兼子  勝君         参  考  人         (日本電気株式         会社常務取締         役)      小林 正次君         参  考  人         (東北大学工学         部教授)    渡邊  寧君     ————————————— 五月十七日  原子力委員会設置法の一部を改正する法律案(  岡良一君外八名提出衆法第四七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査申出に関する件  原子力委員会設置法の一部を改正する法律案(  岡良一君外八名提出衆法第四七号)  科学技術振興対策に関する件(電子工業に関す  る問題、及び放射線障害の防止に関する問題)     —————————————
  2. 菅野和太郎

    菅野委員長 これより会議を開きます。本日、原子力委員会設置法の一部を改正する法律案が付託されましたので、本案を議題とし、まず提出者よりその提案理由説明を求めます。岡良一君。     —————————————
  3. 岡良一

    ○岡委員 原子力委員会の強化につきましては、かねてより当委員会といたしましても重大な関心を払い、なおかつ政府当局並びに原子力委員それ自身においてもその必要を痛感しておられる旨の御発言がしばしばありました。そこでで、いかにしてこれを強化すべきかということにつきましては、それぞれ党の立場から、また政府立場から研究すべき課題が多々あろうとは思いますが、とりあえず私どもは次のような内容改正試むべきではないかと存じまして、本日提案をいたしたわけであります。その内容は、まず第一に原子力委員人数を若干ふやすことが妥当ではなかろうかと存じまして、一応二名程度増員ということにいたしました。なおまた委員会が与えられた使命として、原子力行政万般について、その企画調査決定をなすためには、やはり少数なりとも精鋭なる調査官等の者をそろえまして、事務局を整備し、十分に調査企画の機能を全うし得るごごく措置すべきであると存じましてここに若干の事務局を設けて、若干の調査官等をここに付置するという建前にいたしたのでありますが、原子力局そのものとの行政上の競合を避ける意味からいたしまして、この際、その事務局長原子力局長をもってこれを兼ねることが至当ではなかろうかと存じたのであります。  なお、そのほか、あるいは参与会あるいは専門委員制度等がありますが、いずれも施行令にゆだねられておりますけれども、今後原子力委員会が、いよいよ原子力行政の具体的な事項について、具体的な決定を下さねばならい段階に入りますと、やはり関係行政機関等意見をも十分参考に供しつつ、責任ある決定を下すべきものと存じましてこの際参与会人数を若干ふやしまして、その間その増加した人数については、関係行政機関の、でき得べくんば事務次官級の者をもってこれを補充する措置が妥当と存じたのであります。専門委員につきましても同様の考えでありまして、やはり若干これを増員いたしまして、なおまた日本の専門的な権威の科学的な能力を動員し得る態勢をより充実すべきものと存じましてこのように四十名への増員ということを一応お諮りをいたしたいと存ずるのであります。これに要するところの定員は、約二十五名程度の増であります。  なおまた、この法律が七月一日より施行されるといたしますと、約一千万円程度予算措置を必要とするのであります。そのようなことはさておきましてこういうような設置法改正は、ひとしく自由民主党政府ともどもに大きく関心を寄せている問題でもありますので、本国会においてこれが成立を見ないといたしましても、十分にまた自由民主党各位と御相談を申し上げて、この趣旨のためにはわれわれも十分に御協力を申し上げるという気持をこの際披瀝いたしますとともに、与党各位の御協力をお願いいたしまして提案理由趣旨の弁明にかえたいと存じます。     —————————————
  4. 菅野和太郎

    菅野委員長 以上をもちまして、提案理由説明は終りました。
  5. 菅野和太郎

    菅野委員長 本案は、先般決定いたしました閉会中審査申出の件に追加し、継続して審査いたしたいと思いますがこれに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 菅野和太郎

    菅野委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 菅野和太郎

    菅野委員長 次に、科学技術振興対策に関する件について、調査を進めます。  本日はまず電子工業に関する問題について、参考人より意見を聴取することといたします。出席参考人は、日本電気株式会社常務取締役小林正次君、東北大学工学部教授渡邊寧君の両君であります。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ、本委員会調査のためわざわざ御出席を賜わりまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げる次第であります。電子工業は、最近において急速な発展を見つつある近代産業一つでありまして、国の基幹産業として、関連各産業への応用面はまことに無限の広がりを有していると申すべく、その将来性について最も期待を持たれている重要なる産業考えるのでありますが、科学技術振興目的とする本委員会におきましては、電子技術重要性わが国電子工業現況について重大なる関心を払って調査を続けて参り、本日参考人各位の御意見を承わる機会を持ちましたような次第であります。何とぞ参考人各位には、わが国電子工業現況並びに電子工業のもろもろの問題について、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。なお、御意見は約十五分ほどに取りまとめを願いまして、あと委員諸君の質疑によりまして、お答えを願いたいと思います。  それでは、小林参考人よりお願いいたします。
  8. 小林正次

    小林参考人 それでは電子工業に関する意見といたしまして、多少申し上げてみたいと思います。  まず第一に、電子工業といいますか、エレクトロニクスといいますか、そういうものの特性をまず先に申し上げなければならぬと思います。電子工業といいますのは、電子を利用した、たとえば真空管あるいはトランジスターというようなものを利用したいろいろな機械設備をこしらえるためにいろいろな勉強をしていく、あるいは工業が成り立つというようなことが電子工業になるだろうと思います。これはずっと昔から言いますと、真空管が発明されてから非常に盛んになってきたものでありますが、おもに通信方面で発達をして参りました。ところが最近、この真空管並びにトランジスターを利用する工業というものが、事柄が非常に広くなって参りまして、通信以外のほとんどあらゆるものに使われるようになって参りました。これをたとえて申しますと、ちょうど空気や水のように、至るところで利用されなければならぬ問題でありまして、ですから通信だけが、あるいはテレビジョンだとかラジオだけが発達してもだめなので、ほかのものも発達するようにならなければならない。それでその一例を申しますと、航空機に利用されておる電子機器を見ますと、値段において11これは私ある雑誌で見たのでありまして、実際に値段を計算したわけではありませんが、大型の爆撃機になりますと、建造費の約半分が電子機器である。目方にしますとまず三分の一くらいの目方になる。三分の一がエンジンで、三分の一が機体というような関係になるそうであります。それから飛行機研究に従事しておるエンジニアの数を見ますと、エンジニアの数もほとんど三分の一くらいの人員を占めておるといったように、非常にいろいろな場面に使われてくるようになっております。従ってこの電子工業振興するということは、そういうふうに広い意味電子工業を取り上げて振興をしてもらわなければならぬというふうに考えております。  ところで、この技術振興するためには、しからばいかにすればよろしいかということでありますが、この技術振興というものは、ひとめ電子工業ばかりではなくて、ほかの科学技術にも通用することでありますが、まず技術の流れを一つ考えてみますと、一番初めいろいろな着想があって、その着想を実現するために、その着想に従っていろいろな研究が行われる。それから研究が行われてそれを機械にまとめてみる、まとめてみてそれを試験する。試験をして、エヴアリュェーションをやって、それからそれがいいとなって第一次の何といいますか、プロダクション・モデルを作るというようなことになってきまして、その辺のところから工業の方に移っていく、工業といいますかインダストリーに移っていく。そして設計が行われ、製造技術が行われ、それから工場に出して物を作る、そしてそれが供給されて使われる、こういう段階になります。この研究段階、先ほど申し上げました研究段階に至るまでのところは、これはいわばどんなに騒いでみたところで、それをやっている人、企業体なら企業体の持ち出しになってしまう、マイナスになるのです。金がかかって、一つももうけがない。ところが、その第一次の試作ができ上って、これはよろしいということになったころから、そろそろ経済的に活動が始まって、やればもうかるようになってくる。従って、企業家はそれを対象にしまして、工場を建設するとか、あるいは販売活動が行われてあとはどんどん進んでいくわけであります。このもうからない段階研究時代、これを助成することが一番必要なのでありますが、この助成方法に至りましては、わが国助成方法は遺憾ながらあまり賛成できない状況になっておると思います。先ほど松前さんからも御要求がありましたが、外国状況を言ってみろということでございますので、外国でどういうふうにしてそれを助成しているかということの一例を申し上げたいと思います。  一昨々年だったと思いますが、航空に関する研究がいかになされておるかということの調査団ができまして、調査団一員としてそれに参加して出かけて参りました。各国を見たのでありますが、一番すっきりとやっておりますのがアメリカでございまして、アメリカ状況を見ますと、経済的にマイナスになる研究というものを国家が非常に上手に助成をしております。その助成方法を申し上げますと、先ほど申しましたまず第一段階着想研究といいますか、アカデミック・リサーチといいますか、そういうようなものは主として大学依存をして、大学研究費を出しておる。この研究費用の出し方は、かかった研究費は全部出す、こういう状態になっております。それで、そこからいろいろなものが出て参ります。そうすると、国家の大きな目的のために、たとえばジェット飛行機の非常に早いものを作るとかなんとかいうような問題が国家として取り上げられたならば、それに必要なアプライド・リサーチと称するリサーチが行われなければならない。このアプライド・リサーチというものは非常に大かがりになりまして、大半でちょこちょこやるような工合にいかない。大きな設備が要るものでありますから、これは国立研究所を作ってやっておりまして、そこからいろいろな資料が出て参りますと、いよいよものにまとめて試作研究が始まるわけであります。この試作研究になりますと、工作力を、要するというような関係もありまして、これをメーカー依存する。メーカー依存する場合に、依存の仕方がなかなかおもしろい仕方をしております。それはかかった費用は全部国家が払う。そして、しかも営業体でありますので、それに六%の利潤を見ております。従って、各民造会社というようなところは、できるだけその研究をやろうというふうに努力をしている。それで研究も非常に発展しておるというような状態でございます。そして、でき上ったものは、国家がそれを引き取りまして製造に移していく。製造に移す場合には、最も適当なところにその製造を委任するということになっております。こういう状態であります。  それで、いかにその助成の実があがっておるかといいますと、非常にいい例が二、三日前に発見できました。アメリカのある会社研究員がやって参りましたので、その話を聞きましたところが、その会社工場は大体六千人くらいの工場であります。研究所の方は、二千三百人の研究員がいる。これは工員も入れてでありましょうが、結局、工場の約半分弱の研究所を持っておるということは、驚異的なことであります。わが国の例をとれば、研究員研究費も非常に少いのでありますが、それだけ大きな陣容を使ってもやっていけるようになっておるのであります。しかも、上げる利潤利益率が、工場よりも研究所の方が少しいいのだということであります。こういうような状態になりますと、非常に工合がいいわけでありまして、わが国電子技術振興がそこまでいくようになりますと、大へん工合がいいんじゃないかと思います。それで、これを振興する場合には、どうしても今のような研究面を進展させること、そのためには日本にいるたくさんの技術者を刺激しまして、一路研究に向うように導くこと、それから出てきたものを早くまとめて工業に移す。工業に移す場合にも、工業としてのあり方もいろいろありましょうから、技術工業とが車の、両輪のごとくうまくいきますように、いろいろな法的な措置をされますと、われわれとしては大べん工合がいいんじゃないかと思います。  この辺のところで一応打ち切らしていただきまして、あとまた御質問がございましたら、お答えしたいと思います。
  9. 菅野和太郎

    菅野委員長 次に、渡邊参考人にお願いいたします。
  10. 渡邊寧

    渡邊参考人 私、現在電子工学というものの講義を担当いたしており、かつ自分みずから電子工学研究に携わっておるものであります。わが国電子工業を画期的に発展させることの必要なことをかねがね痛感しておりますけれども、わが衆議院におきましても、皆様方が非常なる御関心をお持ちであるということを承わりまして、電子工学に携わっておる一員として、まことに慶賀にたえないと存じておるのであります。ただいま小林参考人から、工場立場としてのいろいろの御意見の発表がございましたので、私は大学人の一人として、どういうふうなことを考えておるかという卑見を述べまして、委員各位の御参考に供したいと存ずるのであります。  まず第一に申し上げたいことは、技術者養成ということを考えなければいけないわけであります。従来、わが国においては、電気工学というものを分けて、強電、弱電というように通稼いたしておりまして、弱電は、いわゆる通信あるいは真空管を取り扱うようなものであるというふうに考えておったのでありまして、そういう狭いものをエレクトロニクスという言葉でばく然と呼んでいるのでありますけれども、現在のエレクトロニクスというものの取り扱う範囲というものは、通信方面で取り扱うものよりも、はるかに広い範囲にわたっているのであります。たとえば、テレビジョンであるとか、レーダーであるとか、あるいは先ほど小林参考人からお話のありましたエレトニクス、いわゆる航空機に用いるものであるとか、あるいは最近の問題であるところの半導体工学、代表的なものはトランジスターでありますけれども、情報、理論その他万般方面エレクトロニクスというもののフィールドが広がっているのであります。そういうことで、わが国の現在のエレクトロニクス工業隆昌をはかろうとした場合に問題となることは、技術者が非常に少いということであります。このことは特に皆様の御注意を喚起していただきたいと思うのであります。その次に大事なことは、日本電子工業を発達さすためには、どうしても研究の面を思い切って拡大しないと、世界の列強に伍して、日本の将来の工業隆昌ならしあることは、全く不可能と思わなければならぬかと思うのであります。その二つの面、すなわち技術者養成研究発展をはかるという二つの面についていささか卑見を述べさせていただきたいと思うのであります。そこで、この事情を申し上げますのに、日本全般のことについて私が申し上げますことは用意も不十分でありますので、私の勤めております大学における実情を申し上げれば、大体日本事情はどうかということの御認識がいただけるかと思いますので、自分大学のことについて申し上げたいと思うのであります。  日本通信というものがエレクトロニクスでないということを先ほども申し上げましたけれども、たとえば日本には通信学会というのがございますけれども、通信学会は、名前を変えないと、現在のエレクトロニクス関係の論文を掲載するのにふさわしくないという意見が出ております程度に、通信というものとエレクトロニクスというものは、フィールドが全然違う。ということよりも、エレクトロニクスが非常に広いフィールドを持っているということを、御認識願いたいのであります。その例として、私の勤めております大学においては、通信工学科というものがございますけれども、現在の工業界で要求するような技術者養成するためには、通信工学科学課月では不十分であります。それで、最近の、たとえば半単体工学たどを無理にカリキュラムの中に織り込んでおりまして、その織り込むということが現在の大学教育を非常に不徹底にしているということよりも、非常な無理がかかっておるのだということをまずお話し申し上げなければならぬか思うのであります。そこで、一つの例として申しますけれども、現在の工業界で新卒業生を要望する場合に、エレクトロニクス関係求人が圧倒的に多いということでありまして、たとえば、去る三月に卒業いたしました通信工学科の新卒業生のうちの三分の二がエレクトロニクス関係の方に職を得ておりまして、残りの三分の一がいわゆる通信工学関係の仕事に行っております。通信工学本来のものと申しますれば、たとえば電電公社とか、あるいはNHKであるとか、民間放送であるとか、そういうところに三分の一行っておるのでありまして実はそういう通信関係のところの求人がないというのではなしに、求人はあるのでありますけれども、エレクトロニクスの方の求人が断然多いために、通信事業の方に卒業生を分けることが不可能であるという現状であります。電気工学科の方も同じようでありまして、電気工学科卒業生のうちで、ことしの卒業生の三分の一がエレクトロニクスの方の会社研究に携わっているという現状であります。そのような現状でありますので、日本電子工学の将来を担当するところの技術者養成するためには、いやがおうでもいわゆる電子工学科というものを作って、この面に最もよく教育された技術者を送らなければならない、こう思っておるのであります。  そこで先ほど申しましたように、電子工学というもののフィールドが非常に広いのでありますので、従って、議員各位に御注意までに申し上げたいことは、電子工学科を作る場合に、四講座や五講座のものを作ってみても、これは全般的の電子工学というものをカバーできないということであります。そこで、たとえば私の理想として考えておりますのは、電子工学科と申しますと、どうしても約十講座くらいの講座を作らないと十分な教官が不可能だ、こういうふうに考えておるのであります。そこで、そういうふうな、ある意味で既存の工学科に比べて膨大な電子工学科を作った場合に、その講座を担当する優秀な教育わが国において容易に求められるかどうかということが、これまた一つの問題であるかと思うのです。そこで、私の勤めております大学においては、どうしても電子工学科を作らなければならぬというので、現在あります電気工学科通信工学科とあわせて電子工学科を並立させまして、それで各学科においていわゆるエレクトロニクスフィールドを分担するようなことにすれば、あるいは電子工学科講座というものも五つなり六つで間に合うのじゃないだろうかという企画を持っておるのであります。  ここで念を押したいことは、電子工学というものを振興させるためには、非常に広い面で優秀な教官をもって優秀な技術者養成しなければならぬという、そのことでございます。そこで今われわれの同僚が、将来電子工学科電気工学科並びに通信工学科と並立する場合にどのような講座内容にすべきかということについてしばしば相談いたしまして、案を持っておるのでございますけれども、皆さんもしも御必要があれば後ほどごらんに入れたいと思っております。  その次は、先ほど申しました第二番目の電子工学に対しての研究所をどうしても作らなければならぬということであります。小林参考人も先ほど申されましたように、会社においてもこのために莫大なる投資をして、研究を促進しておるというのでありますけれども、アメリカにおいても、将来のフロンティアの最も先の研究をするところは国立研究所でやっているというお話でございますので、その種の国立電子工学研究所というものを、わが国においてもどうしてもほしいものだということを年来考えておるのであります。それで、電子工学研究所を作るとすれば、どれくらいの規模になるだろうかということを大体考えてみますと、多ければ多いにこしたことはないという考えもあるかと思いますが、私の考えるところでは、大体研究所研究部門としては九つないし十くらいの研究部門が要るのじゃないだろうかと思っております。たとえば、その研究所でどういう研究をやるのかというと、電子管研究放電管研究半導体研究放射線計測電子計算電子応用電子制御、超音波、それから磁気記録というようなことを研究所としては研究すべき内容じゃないか、こういうふうに考えております。  大体こういうふうなお話をいたしますれば、渡邊参考人日本の将来の電子工学発展させようとして、自分電子工学に携わっておる技術者の一人として、どのような希望、どのような計画を持っておるのかということが皆様に御賢察願えるかと思いまして、卑見を申し述べたのでございます。  簡単でございますけれども、以上で私の話を終ります。
  11. 菅野和太郎

    菅野委員長 以上をもちまして、両参考人の陳述を終りました。  次に、本問題につきまして、郵政省濱田電波監理局長の御意見を、承わります。
  12. 濱田成徳

    濱田政府委員 今、渡邊参考人から、日本エレクトロニクス画期的振興についての方策いかんにつきましてのお話がございました。私も全く同感でございます。その中で、エレクトロニクスの分野における技術者養成が非常に大事であるということの力説がございました。全くその通りでありましてエレクトロニクス振興させるために最も大事なものは、まず人間であります。そういう意味におきまして、大半に電子工学科を置き、あるいはこれに関連する他の分野の施設を増すということにつきましては、全く私も同感でございます。しかしながら、日本の今日の現状は、たとい技術者がたくさんできましても、この技術者が能率よく元気に働くような仕事をやる場所が日本は足りない、それが現状でございまして、言いかえますれば、日本電子工業界あるいは電子、電波を扱います産業分野は非常に貧弱である、まるでなっておらぬ、そのことも遺憾ながらいなみがたい事実であります。日本電子工業をやっております会社のレベルは、ここに小林参考人電子工業会社の枢要な部門を担当しておられますけれども、残念ながら私の見るところでは、アメリカに比べますれば二流、三流くらいのレベルであると言わざるを得ないのであります。一々例をあげると切りがありませんけれども、今日日本電子、電波波界というものは、重要なところは大半外国の輸血によって辛うじて命をつないでいると言っても、これは極言ではないと思うのであります。何ゆえにこのようになったかと申しますのに、これは皆様御承知のごとく、他の工業がそうであったように、工業科学技術研究が別個に日本に輸入せられたという事実に基くのでございまして、日本人は、由来、電子や電波につきましては、卓越した才能を持っています。いろいろな優秀な発明発見等が電子、電波に関してなされたのでありますけれども、これを工業化し、あるいは産業化するという才能においてあるいはその才能の運営について、日本人には欠陥があったと思われるのであります。そういう意味におきまして、日本電子工業は、日本人みずからやるところの研究技術の基礎の上に立っておりません。そういう意味におきまして、最も基礎的な研究開発を必要とする電子工業の、日本独得の強固な基礎の上に立っての発展が見られなかった次第であります。  電子工業の分野におきまして、典型的なものは真空管であるわけであります。この真空管の例をとってみましても、小さい真空管の中に含まれておりますところの元素はたくさんあるのであります。しかも、純粋な形においてその性能を発揮しなければならないような使命を持っている元素が、一カ所にたくさん集まっている。そういうものを作り上げるのが、電子工業の作業であります。この純粋な理想的な形の要求を満たすようなものを作り上げる技術あるいは作業、これがたくさん集まって電子工業となるのでありますが、そういうことをやる基礎的な研究技術日本においては開発せられなかったのでありまして、今日でもまだその面において非常に欠陥があります。それでありますから、私の考えでは、日本エレクトロニクス画期的振興を行うために必要な対策といたしまして、次のようなことを考えます。ただいまお話しの技術者養成をさらにやることはもちろんであります。それから大学における研究を盛んにする、これももちろん必要でございます。大学研究現状につきましては、今日、日本大学研究所はだんだん拡張せられて参りましたけれども、まだまだ研究費においては微々たるものであります。アメリカに比べますれば、数十分の一以下にすぎない。しかも今申し上げましたように、日本における工業の基礎的研究が盛んでなく、電子工業技術レべルが低いために、大学において使おうとするところの資料あるいは材料等が潤沢でない、あるいは手に入らない。そのことがアップ・ツー・デートの、最も進歩した研究大学において行うことが困難である理由でありまして、研究費が少いのみならず、日本研究を行う環境が悪い、資料の供給が潤沢でないために、その研究ができない。優秀な才能を持っておりながら、むなしく研究者は才能を発揮せずに脾肉の嘆をかこっている場合が大へん多いのであります。  そういう意味において、私の考えといたしましては、先ほど渡邊教授も多少触れられたようでありますけれども、この際において、電子工業、あるいはもっと範囲を広げまして、電子、電波産業画期的振興をはかるためには、ここに国家的な研究所、特に工業の基礎的研究を推進し得るもととなるような研究所を作る必要があろうかと考えております。これは一つ考え方であります。  この理由につきましてもう少し詳しく申し上げてみますならば、日本人は、先ほど申し上げましたように、卓越した才能を持っておりまして、いろいろな発明発見をいたしましたし、今日でもいたしつつあるのでありますけれども、それをたくさん作る技術の開発を怠っている、あるいはかようなものを開発するためには、経営者、政府は力を使っていないと思うのであります。たとえば、真空管でありましても、その性能の優秀な設計をやる能力を日本人は持っています。けれども、真空管を数千個、数万個とそろえて、同じ性能を持ち、同じ規格を持ったものを安く作ることにつきましては、残念ながら日本人は才能を開発しておらぬというのが一つの例であります。最近に半導体の開発がなされつつあります。トランジスターでありますが、トランジスターの大量生産につきましては、日本は今後人なる努力を払う必要があります。また真空管あるいはトランジスターのかわりに使われるパラメトロンというものがあります。これは東京大学の若い学徒が発明したもので、画期的な発明だろうと思うのであります。こういうものにつきまして、日本は量産研究を非常に早くする必要がある。私の想像では、アメリカにおいては、日本で発明された。パラメトロンの量産研究をすでにやっている、しかも非常に小型な優秀な性能のものをやっているのじゃないだろうかと思うのであります。私は、かような意味におきまして、大童生産の研究日本が行えるような研究機関、開発機関を設けることが刻下の急務であると思うのであります。この真空管あるいは半導体、あるいはパラメトロンでありましても、それに使うところの材料が非常に少いのでありまして、しかもこれを純粋な形において得なければならぬと思うのであります。真空管の中に使います材料に、たとえば酸化アルミニウム、アルミナというものがあります。例をあげて申しますと、アルミナなんというものは、一本の真空管に使う宜はたかだか数ミリグラムにすぎない。これが非常な高い純度において得られなければなりません。かような少量の材料を方々の会社がやっているのでは、理想的なものが得られないのでありまして、そういうものは大量に作ることによって純粋なものが得られるのであります。そういうことを研究し、これを実現するためには、やはり今日のような分散した、勝手々々にやっているような工業ではいかぬ。しかも日本人は競争心が激しいために、むだな競争をいたしまして、おれがおれがということでやりますために、なかなかいいものができない。そういうことをやめて、そして一カ所において高い技術レベルを保持し得るように、専門技術の育成といいますか、研究、開発態勢あるいは生産態勢の改良にまでも持っていきませんと、ただいまおっしゃいました研究所を作りましても、意味がなくなる。あるいはそういう態勢の基礎に立って、さっき申し上げたような工業の基礎的研究を行う研究所、私は日本エレクトロニクスにおいては、かような性格を持った研究所の設立こそ最も急務であると思うのでありますけれども、そういうふうな研究所の実現は困難であろうと思うのであります。  いろいろございますが、今日の日本エレクトロニクスのレベルは、外国に比べますならば非常に低い。しかも先ほどお話がございましたように、このエレクトロニクスが、通信のみならず社会のあらゆる方面に浸透して使われつつある現状におきまして、私はこの際において、思い切って、原子力と同じ程度に、あるいは時間的には原子力よりも先にエレクトロニクスの全面的開発を行うにあらずんば、悔いを千載に残すこと必至であろうということを憂うるのであります。  いろいろ申し上げたいことがありますけれども、以上申し上げまして御参考といたす次第でございます。
  13. 菅野和太郎

    菅野委員長 それでは、次に参考人及び政府当局に対する質疑を行います。質疑は、通告によってこれを許します。松前重義君。
  14. 松前重義

    松前委員 渡邊先生に一つ。先ほど研究のテーマ、講座と申しますか、これを八つおあげになりましたが、電子管と放電管と半導体と放射線計測、その次は何ですか。
  15. 渡邊寧

    渡邊参考人 電子計算機、エレクトロニック・コンピューター、その次は電子応用、インダストリアル・エレクトロニクス、あるいは医学に使うメディカル・エレクトロニクス、その次が電子制御、いわゆるオートマティックコントロール、その次が超音波であります。
  16. 松前重義

    松前委員 それから講座内容をちょっと。
  17. 渡邊寧

    渡邊参考人 それでは講座の大体の内容の計画を御参考までに申し上げたいと思います。電気工学科は現在六講座に分れておりまして、その中で電磁気学、電気機械工学、電力工学、電力応用工学、高電圧及び電気材料、原子力工学、そのうち電磁気学、高電圧及び電気材料、原子力工学、この三つがほかの講座と共通になるわけです。それから、通信工学科は六講座ありまして、回路網学、有線通信工学、無線通信工学、計測工学、電気音響学、電波物理工学、この六講座の科目のうちで回路網学と計測工学はほかの学科と共通になる。それから電子工学科は、電子物理工学、電子管工学、放電工学、電子回路工学、制御工学、半導体工学、この六講座のうち、電子物理工学と電子管工学、放電工学、電子回路工学、この四つがほかのものと共通になります。従って、この電子工学科で六講座を置きましても、電気工学科の方から電磁気学、高電圧及び電気材料のものが入って参ります。それから、通信工学科からは、回路網学と計測工学が入りますので、大体十講座内容になるわけです。
  18. 松前重義

    松前委員 制御の次は何ですか。
  19. 渡邊寧

    渡邊参考人 制御工学、その次は半導体工学です。たとえば先ほど横田政府委員のお話しになりましたトランジスターであるとか、パラメトロンであるとか、そういうふうなものです。
  20. 菅野和太郎

    菅野委員長 次に、平野三郎君。
  21. 平野三郎

    ○平野委員 濱田政府委員にお尋ねいたしますが、先ほのどあなたの御意見の中で、電子技術振興一つの方策として、国立研究所を作ったらどうかということがございました。それも一つ考えだと思いますが、現在郵政省に電波研究所というものがあります。またその他政府関係の機関にも相当の研究所があると思いますが、そういう研究所とは別個にお作りになるというお考えなのか、また現在政府関係でやっておられる研究状態、そういうものを統合調整するというのであるか、その辺の関係につきまして、もう少し詳細に承わりたいと思います。
  22. 濱田成徳

    濱田政府委員 私先ほど意見を申し上げましたのは、政府を代表しての意見ではなかったのであります。今日は参考人としてというお話がありましたので、私は東北大学教授の関係で、そういう個人の意見として申し上げることが大部分でありますので、その点は御了承願います。  郵政省には、電波研究所というものがございます。これはおもに空間を伝わる電波の伝わり方の研究をやっております。それに関連して電波を発射したり受けたりする道具の研究も多少やっておりますが、そういう問題にはあまり力が入っておりません。私の考えでは、今後そういう方面にも少し力を入れさせなければならないと考えております。  さて、御質問のその研究所を作る構想はどういうものかということでありますが、日本現状では、日本には電子工業会社がたくさんございます。むしろ多過ぎるくらいあるのであります。これらの諸会社はそれぞれのよい意味の脈絡が少く、分散して、いたずらな競争に狂奔しておる感があるのであります。注文のとり合いをしておるとか、日本通信あるいはエレクトロニクスの社会的活動が弱いために注文が少い。そういうわけで、その経営形態は比較的貧弱でありまして、その本質的な基礎研究所を持つことが私の考えでは困難であろうと思います。電子工業に関しましては、他の工業に比べて私は膨大なる研究所が必要であろうと思うのであります。その基礎研究は、大学における研究と同程度のアカデミックな研究でなければならない。大学と同じ、あるいはそれ以上の基礎的な研究をやる、その基礎的研究が大量生産に直結するようなものでないと意味が少いというのが、電子工業研究についての特質でございます。これが他の種類の化学工業とか造船工業とか機械工業とか、そういうものとは非常に違うところであろうと田』います。そういう意味におきまして、私はスケールの大きな、しかも深い学問的根拠を持った研究所を作ることは、小林参考人はどういう御意見かわかりませんが、私は日本現状においては困難ではなかろうかと思うのであります。それで、一つ方法といたしまして、国家的性格を持った、必ずしも国立とは限りませんが、国家的なあるいは政府が力を入れてあと押しするような研究所でなければ、私は実現がおぼつかなかろうと思うのであります。アメリカのような国では、一会社の収支予算が国家予算にも匹敵するような会社がございますので、原子工業においても、たとえばゼネラル・エレクトリックとかRCAその他の諸会社が厖大なスケールを持っておりますので、大学よりももっと高いレベルあるいは規模を持ったような研究も可能であるけれども、日本の場合においては、当分の間困難ではなかろうか。でありますから、諸会社もそれぞれ研究開発機関を持っておられますけれども、それとその背景になるような、そういうあと押しになることができるような公的な性格を持った研究所を作るのがよかろう、そう思います。  これに関連しまして、この研究所でやったものはどうするかという問題が起って参ると思うのであります。その場合には、それを開発するような製造会社、半官半民かもしれません、あるいは民間かもしれませんが、かような開発会社のようなものを作るのも一種の方法かと思うのであります。これにはいろいろな御意見があろうかと思うのでありますが、今の御質問に対しまして、思い浮べるのは、そのようなことでございます。
  23. 平野三郎

    ○平野委員 今、濱田政府委員お話によりますれば、必ずしも国家的な機関というか、国立に限らず、国家的性格を持つ研究所が望ましいということでございますが、私もその点ば同感でありまして、原子力研究所のような何もなかったところに新しく打ち立てるという場合とはまたおのずから違うのでありまして、わが国においても、原子力に比較すれば、これは今までやっておったことでありますから、おのずからそこに性格が違ってくると思うのであります。そうしますと、アメリカのような場合などは、民間会社研究所国立研究所を凌駕するような場合もあるというようなお話があったのでありますが、その点について少し伺いたいと思うのであります。日本現状がどういうふうになっておるか、これは小林参考人にお尋ねいたしたいのでございますが、あなたは日本電気技術を担当しておられる方でありまして、日本電気においてもおそらく研究をやっておられると思うのでありますが、日本におけるその他のエレクトロニクス関係の民間会社においてどの程度の規模でどのような研究をやっておられるのか、実情を少し承わりたいと思います。
  24. 小林正次

    小林参考人 先ほど私の意見を申し上げましたときに、アメリカ状態の一端を申し上げました。それと比べて日本は微々たるものであるということを申し上げました。これはまさに微々たるものでありまして、会社によっていろいろ事情が違うと思いますが、私どもの会社でいきますと、原子力のメジャーによく。パーセンテージを言いますが、われわれの会社でありますと、その研究所が使う経費が、大体全部のプロダクションの中の一%内外であります。それから先ほど私申し上げました、製品にすぐに影響のあるような技術に使いますのが、やはり三%か四%でございまして、合計で四%内外となっております。これを先ほど外国の例に申し上げましたが、経費の上ではちょっとわかりかねるのでありますが、人数だけでいきますと、六千人の工場を持っておる会社が、そのほかに二千三百人の研究所を抱えておるということになると、人間のレイショだけでいいのかどうかわかりませんが、とにかく四〇%以上のものが研究所に使われておるというような状態であります。そうなりますと、今の四%と四〇%を比べますと、非常な違いがあるわけであります。  それから、研究というものは損失になるということを申し上げましたが、損失を補償するという制度がありますと、アメリカのような状態にだんだん近づいていくのじゃないかと思うのでありますが、日本状態からいきますと、研究内容には大して力がかかっていないということが言えるので、エレクトロニクス会社の例を申し上げたわけであります。それで御質問のお答えになったかどうかわかりません
  25. 菅野和太郎

    菅野委員長 参考人に対し他に御質疑はございませんか。
  26. 松前重義

    松前委員 ちょっとどなたでもよろしゅうございますけれども、伺いたいと思います。先ほど渡邊先生かお話しになりました中の、大学講座内容あるいはまた研究のテーマ等に対して承わったのでありますが、こういう点はどうでしょうか。今まで電気並びに電波あるいは電子工学等の関係においても、一番われわれが痛感しておったのは、材料の研究が足りない、あるいは金属あるいはまた半導体というものがありますけれども、絶縁とかそういうふうな面における研究が非常に足りないために、いわゆる製品の優秀なものができない。そういうところに口日本工業の非常な欠点があったのじゃないか。そういう点から見ますと、先ほど研究のテーマをお示しになりましたけれども、どうも応用の方に重点がいっておるようでありまして、基礎的な材料の研究が少し何か足りないような感じがしますけれども、その点はどういうふうにお考えか、お尋ねいたします。
  27. 渡邊寧

    渡邊参考人 ただいま松前議員からの御質問は、まことに至当な御意見だと思います。私たちの今考えております問題で、材料が重要であるということは当然考えておるのでありますけれども、材料の問題として、ただいま御指摘のありました金属関係の材料については、東北大学に金属材料研究所がございますので、おそらくあそこで今後のエレクトロニクス用の材料については、十全なる努力を払って下さる、そういう考えで私のこの計画には金属材料を抜いてございます。ただし、磁性材料の問題については、金属材料研究所が優秀な成績をあげておりますけれども、たとえば現在最も問題になっておりますフェライトの研究というものがございますけれども、これは現在東北大学電気通信研究所の方で、材料部門が取り上げております。そういう関係がございますので、将来の電子工学研究所としての研究項目から故意に省いておるのでありまして、決してその問題を等閑に付しておるというつもりでは毛頭ございません。それだけ御答弁いたします。
  28. 松前重義

    松前委員 現在他の部門において、金属材料研究所その他でいろいろ材料研究をやっておるからいいだろうとおっしゃるが、何も私今お示しになるこの内容についてのみ質問しておるわけじゃありませんで、将来の材料についての研究というものが、現在のようなばらばらでやっておってもいいのかどうか。これを何らかの方法で、もしも研究所でも作る場合においては、先ほど平野さんのお話がありましたように、国立でやるか、あるいはまた半官半民でやるか、研究所を作るときにはこの部門を非常に強化しなくちゃならないのじゃなかろうかというつもりで御質問しておるのでありますが、その点については、どういうふうにお考えでしょうか。
  29. 渡邊寧

    渡邊参考人 この材料の研究ということがおそらく今後のエレクトロニクスを進展させる上で非常な重大な問題であることは、皆さんのお考えになっておる通りでございまして、たとえば、現在問題になっておりまするトランジ・スターの材料にいたしましても、現在日本では全五部その材料のジャメニアルを輸入しておる状態でございます。そこで、世界各国に一番材料資源として多いシリコンを使うということの研究が、おそらく世界のすべてのメーカー並びに研究所で一番努力を払っておる問題だろうと思うのでありますけれども、たとえば、この例を見ましても、非常なむずかしい問題でありますけれども、しかしやってできないことはないだろうという意味で、選鉱製練の専門の方、金属材料の専門の方、それからわれわれ電気工学者、電子工学者というものがお互いに連携して、ただいまその問題を究明している最中でございまして小林参考人のおられる日本電気においても、この問題を非常に大きく取り上げられて研究しておる最中でございます。この一つの例を見ましても、一人や二人の人の努力ではとても解決できない問題でございますので、材料の研究については非常にたくさんの人の協力が要ることは当然でございますので、将来もしこの材料の問題、すなわち新しい材料の研究所を作るということが必要であるとすれば、一カ所に材料研究所を作るということよりも、工場あるいは大学、その他の人の研究者のスクラム、どうしてやれば一番よくスクラムが組めるかということの対策の方が至当じゃないだろうかと私個人では考えております。たとえば、私にお前材料研究所を作ってみろと言われても、おそらくこれは非常にむずかしい問題じゃないか、こういうふうに考えております。
  30. 松前重義

    松前委員 私は一昨年ベルニアレフォン・ラボラトリーを見に行ったのですが、テレフ才ン・ラボラトリーだから、何かいろいろ電話機やその他の研究をやつておるかと思われるのでありますが、その内容のほとんどすべては材料の研究でありました。もちろんトランジスターに使いますゲルマニウムの製練の問題、あるいはその結晶の問題、あるいはその結晶の問題、特に純化の問題、純度を高くする問題、こういうものと取っ組んでおったのと同時に、あるいはアクセラレーター等を使いまして、電子や中性子をぶっつけてどういうふうに変化するか、温度を変えて、そしてそれに対する物質の変化の状況を見るとかいうような本質的なことをやっておる。私はあの研究を見て、これではかなわぬと思ったのです。日本にはそれがどこにもありませんから、かなわぬなと思いました。やはり世界に対して挑戦しようというならば、私はこの材料の研究に本質的な問題として取り組まなければならないであろうと思うのであります。ベル電話研究所の努力が、ただ単なるアプリケーションだけでなくて、むしろその其礎的なところにあったというところにアメリカの実力の出る出場所かわかったような感じがしたのであります。この点についてはどうも広範なものではありましょうけれども、何とか今やっておるやつをまとめるというようなけちなことでなくて、もっと本質的な面における開発の態勢を整えるべきじゃないかという感じを実は強く持ちます。例のベル・テレフォン・ラボラトリーは、株式会社でありますから営利会社でありますが、にもかかわらず、こういうほんとに基礎的なことと取っ組んでおる。こういう姿を見て、非常に強く感じて帰ったのでありますが、御意見を承わりましたけれども、ベル・テレフォン・ラボラトリーその他の例を見れば、どうもこの材料研究というものは——材料研究というと、何かその辺にころがっておる材料のようでありまするが、やはり本質的な新しい物質の変化の姿を、あらゆる面、温度あるいはニュートロンやエレクトロン等の、そういう総合的な立場から研究するという必要があるんじゃないかと思うのです。これは多少意見が違うんじゃないかと思いますが、いかがでありましょうか。
  31. 渡邊寧

    渡邊参考人 松前議員のおっしゃっておることは、私も全くその通り痛感しておるのであります。そこで、どういう手を打てばよろしいのかということの御質問であるとすれば、これは相当計画を緻密に立てて打ち込まないと、いけないということなのです。そのためには、どうしても優秀なそういう基礎的な研究をやる多数の人が要るということだろうと思うのです。そういう材料の研究と申しますのは、昔からある学者は、パーセンテージ・フィジクスという悪い名前で——悪い名前でもないでしょうけれども、言っておるくらいで、非常に長い間非常にこまかく成分を変えながらやっていくというような研究が、今までの材料研究の常道ではないかと思いますので、一人の人や少人数の人でやったのでは、成果が上るまでに長年月を要するということになりますのでどうしても大きな計画で大ぜいの人で取り組まないと、成果がなかなか急速に上らぬかと思うのでありますので、膨大な研究所を作るとか、あるいは国家的のそういう一つのスクラムを作るというような、何かの機構を考えるというようなこと以外に、この材料研究の成果を上げることは道がないだろうということは、松前議員と全く同じでございます。ベルの研究所において非常な新しい材料をやっておられることは、われわれもよく伺っております。かつ刊行しておる雑誌においても、すばらしいものができつつあるということもよく存じておりまして、まことにうらやましいなと思うのでありますけれども、その意味で、将来の日本の材料の研究をどういう態勢でやれば一番効果的であるかというようなことについては、よく考えてみたいと思うのです。今ここで、私の従来考えておることは、日本国内のいろいろの材料の研究者のスクラムを組むのに、どういうふうな手を打てば一番協力的な研究態勢が盛り上ってくるだろうかということが、さしあたり考えられる大事なものじゃないだろうか、こう申し上げたのであります。
  32. 松前重義

    松前委員 よくわかりました。現在当面の研究として日本において取り上ぐべき問題がたくさんあると思います。まず第一には、真空管や、その他ブラウン管や、その他の問題があると思いますが、日本工業が争って海外の特許権を受け入れて、いわゆる技術協定をやっておる。しかもAの会社アメリカの某会社と提携する、Bの会社はオランダの某会社と提携する、Cの会社はまたアメリカの某会社と提携する。それが実に世界のライン・オーガニゼーションみたいな格好になって、それぞれ向うに特許料その他を吸収されておる。日本経済は必ずしもこういうことによって私は復興しないと思うのですけれども、一体どのくらい日本はいろいろな意味においてロイアルティを、特にラジオよりもテレビ関係——最近はラジオのトランジスター等もありますが、どのくらいの金額を毎年払っておるのか、これを一つ御存じであれば、監理局長、通産省がお見えになっておれば通産省からでも伺いたい。
  33. 濱田成徳

    濱田政府委員 この問題は、正確には今私存じておりませんが、昨年はおそらくラジオ、テレビジョンで八億円くらいだったと思います。RCAそれからイギリスのEMI等に対して八億円くらい。今年はテレビジョンの聴取者が増しましたから、おそらく十億円以上払うということになるだろうと思います。さらに来年はもっと増すだろう、このロイアルティの率が下らない限り、ますます増して参りましょう。私どもはかって研究のために金を惜んだことを、今になってへそをかんで悔いております。
  34. 松前重義

    松前委員 八億円も十億円もの多額が海外に支払われておるということでありますが、とにかくこの海外から受け入れておる技術を、いかにしてわが国においてその特許を使わなくてもできるかというような当面の研究が、さしむき至要な問題の一つとなってくると思うのであります。これに対してどういうふうな対策を政府はとっておられるか。これは電波監理局でなく、通産省か科学技術庁かどっちかでありますが、その辺のところを一つ向いたいと思います。
  35. 重見通雄

    ○重見説明員 技術援助が最近非常にふえておりますので、これに対しまして、同じ技術援助を結ぶにしましても、日本のオリジナルな一つ技術を持って提携するというようなことでも、少くとも非常に有利に提携できるのじゃないか。それから、さらにもし望み得られるとしますと、日本の個有の技術発展しまして、これが逆に外国にも出せるというようなことになるならまことに望ましいわけでございまして、通産省といたしましては、これに対して研究の基礎的な問題につきましては、工業技術院の電気試験所その他においてそれぞれの研究をいたすとともに、本年度はさらに新しく民間会社におきます新たな機器等の試作につきまして、特に補助金を認めていただくということになりましてこれによりまして、必ずしも商業的な採算が立ち得ないような機器も、少くとも予算の範囲内におきまして試作研究を続けてもらおう、こういうようなことで進めております。
  36. 松前重義

    松前委員 抽象的で、まだ私納得いきませんけれども、今二番当面の日本の国産化と申しますか、外国技術を受け入れなくてもできるようにするために、それによって特許料等の支払いをセーブすることのできるような、国産化しなければならない種類はどういうものだとお思いになりますか。これは電波監理局長から具体的に、あるいは渡邊先生、小林さんからでも……。
  37. 濱田成徳

    濱田政府委員 天然色テレビジョンは、テレビジョンの理想的な形態として、必ず私はそこにいくと思うのであります。これにつきましては、アメリカ技術開発が非常に進んでおりまして、私はまたアメリカ式が世界の標準となるのではなかろうかということを予想しているのであります。それにつきまして、今の方式を採用するとしますれば、またアメリカにロイアルティを払うということになることは必至であります。しかしながら、これを一日も早く日本はこの方面研究を強化して、先ほど通産省の方からも言われましたように、少しでも有利に日本立場を導くように努力しなければならぬということを考えております。しかし、それだけでなく、テレビジョンは、カラー・テレビジョンであっても何であっても、今後いかなる発展——これは特に材料方面の開発になると思うのでありますが、どういうふうな方式になるかわからないのでありまして私は今7こそ日本は各方面協力して将来のテレビジョン研究開発にカを入れるべきであろうと思っております。言いかえますと、幾らでも余地が残っている。エレクトロニクスの機能は、明日をはかれないような進歩の著しいものでありますから、決して悲観するに当らない。これはテレビジョンの問題でありますが、それ以外に、先ほど申し上げましたパラメトロンのようなものでありましても、これはまだ特許が下りてないそうでありますが、日本のオリジナリティでありましても、製造方式等においてアメリカに取られるおそれがある。私は優秀なパラメトロンがアメリカから日本に輸入されることをおそれるのでありまして、そういう意味におきましても、私は材料の開発あるいは量産の研究というものを進めるべきだと思います。その例は枚挙」いとまありません。すべての点において日本研究開発を早くやって、特に外国からの輸入あるいは技術依存という状況を脱却しなければならぬと強く考えております。
  38. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 関連質問。本委員会エレクトロニクスに対する質疑が本式にかわされましたのは、この国会で今回が初めてであったと思うので、まことにこの特別委員会といたしましてその機能の十分な発揮を見なかったことを残念に思うのであります。しかし、このエレクトロニクス重要性というものは、本特別委員会で取り上げるまでもなく、すでに心ある日本の人々は十分承知をいたしていることと思うのであります。すでに心ある日本行政面に照らし合せてみますと、まだまだ日本の政治的な力の押し方というものが非常に足りないと私は思っているのであります。科学技術庁はちょうど昨年の五月の十九品に出発いたしたのでございますが、科学技術庁が出発いたすとともに取り上げましたのは科学技術庁の中に電子技術課を置くということであります。と申しますのは先ほど来、参考人各位からもお話がございましたが、このエレクトロニクスは、実用化されている面よりは、私の考えといたしましては、今後の研究の部面というものが非常に大きいと思っております。私は、昭和二十年からフェライトの製造に取り組みまして今日もなお継続いたしておるのでありますが、その体験から推していって、フェライトであろうがトランジスター・ダイオードであろうが、まだまだ今後の研究によって開発され、人類社会の応用面の方が大きい。そういう点から考えますと、今7の行政体系というものは、一ぺン考え直す必要がある。通産省とか郵政省とかあるいは大学とかいうものに分散して、こっちでは電波の監理をやるし、こっちは製造部面をやるし、また文部省、大学関係ではその研究をやる。民間の研究というものも統合なくして、ばらばらに行われておる。そういうことでなく、この大きな、国家の死命を制するというようなエレクトロニクスのすべての問題に対しましては、第一にその研究に対するところの責任ある行政体系を作らなければならぬ。そういうことで、科学技術庁では電子技術課を新設することを考えたのでございますがこれはなかなか通らぬのです。それは課の整理をやっているのに、新しい課を設ける必要はないとか、人員をふやすことはできないとか、いろいろな制約がある。しかし、そういう制約というものは、不必要な課をふやし、不必要な人間をふやすことに対する制約であって、国家の運命を決するところの大きな研究体制の確立というものに対しては、課を幾つふやしたって、人聞を幾らふやしたって、それは私はいいと考えておるのです。そういう点で、われわれとしても非常に責任上欠くるところがあると考えておるのでございますが、先ほど来、参考人各位お話の中にも、研究体制の確立ということのお話がございましたが、ぜひとも一つこういう点に対しましても、御体験上からも研究というものをもっとはっきりさす。行政上の体系としては、科学技術庁がせっかくできたのですから、電子技術課というものをここへ設けて、そして民間、それから大学、その他国“試験場の試験というものに対しましても、総合、統一、連絡ある体制のもとに向うべく——ただいま濱田局長からも言われましたが、すでにパラメトロンが日本の青年のオリジナリティによって発明されておる。これがなかなか特許が取れない。特許を取りに行くと、もうすでにその特許が、外国の特許の範囲に入っておるかのごとき観がある。私はその問題を非常に心配しておるのでありまして先ほど局長はどういう考えでわれたかわからぬけれども、それは特許が外国の特許によって押えられて上まって、せっかく日本の青年の発明されたパラメトロンが、今度はアメリカ製品として日本へ入ってきて、特許料は向うべ払わなければらなぬことになりはせぬか、こういうことも危惧されておる。そういう十年、二十年先に実用化されるところの布石というものは、研究所から早く特許  となって出ていかなければ、今度おくればせながらいかに研究所に金をつぎ込んでも、研究を完成したときには、すでに特許は世界的にとられているという実情になっておる。そういう傾向が非常に多くなりつつあると私は思います。そういう点に対しましては、ぜひ一つ将来を見越した研究体制を強化して、そして特許を早く申請して、人類の発展していくべき方向に対しては、日本は特許を持っているという研究体制をとらなければ、幾らじだんだ踏んでやってみても、とにかく世界の契約における工業権の確立に対しては、刃向うわけにはいかぬのですから、こういう必要は私はたくさんあると思うのです。幸いここには科学技術庁の次長もおるようですが、参考人の御意見も拝聴いたしまして三十一年度の予算編成の際には、ぜひ科学技術庁に電子技術部というものを置いて、将来のエレクトロニクス発展に対する行政措置を万全にとるということをこの際やるべきではないか、私はこう考えておるのです。参考人のどなたでもけっこうでございますが、こういう点に対しても御意見を伺いたいと思います。
  39. 小林正次

    小林参考人 私は、まことにごもっともな御意見で、全面的に賛成いたします。先ほどから外国技術導入の話がありますが、これは濱田政府委員からもお話がありましたように、結局今まで、はなはだ恥かしいことでありますが、われわれの勉強が足りなかったからこういうことになったということが一応考えられる。導入も、もちろん今日の状況としてはしなければならぬでありましょうが、日本に古来の研究もありますし、将来ともに、日本独得の研究というものができ上りまして、新しい着想というものが非常に必要だと思うのであります。それができて、だんだん発展していくということが望ましい。これは齋藤委員のおっしゃいますように、とにかく着想があってから物ができるまで、それは一年や二年でできるものじゃないのですね、ほんとうにいいものは。やはりどうしても七年、八年、十年とかかる。その間持ちこたえて、絶えずそれが進んでいくということをやりませんと、どうにもならない。せっかくいい着想がありましても、技術発展の過程は、途中どこかで足踏みしますと、それだけおくれてしまう。日本で新しい着想があって、それが外国に行ってものになって、それを逆輸入してくるという例が、今まで多々あったと思うのでありますが、そういうことがないように、技術振興体制といいますか、そういうものが非常に望ましいと私は思います。
  40. 松前重義

    松前委員 これは小林さんに伺いますが、先ほど、将来のこのカラー・テレビその他の問題が非常に重要であって、今のうちに絶対に着手する必要があるというお話があったのですが、私は当面の問題がまだだいぶあるだろうと思う。これを日本で作るようになれば、特許料を多少払ったにしても、外国から輸入してくるものがあると思うのです。そういうものを国産化すれば、一応八億というのは減っていくというようなことになるものがあると思うのですけれども、テレビその他の通信機械をお作りになっておられますから、その辺のことは十分御承知だろうと思います。どういう品物が一体あるか、二、三例をあげてお示し願いたい。真空管その他、外国から輸入しなければ機械ができないというようなものがあれば……。
  41. 小林正次

    小林参考人 それはいろいろこまかいものはたくさんあると思います。あるいはこれは御質問に対する答弁にならぬかと思いますけれども、もちろん、今私が申し上げましたのは、理想的なことを言ったわけです。しかし、現実の問題としては、やはり日常のことでありますので、いろいろな手近な研究をしなければならない。それをやっておりますうちに、やはりいい考え方も出てくる。それで特許かできるということになりますと、だんだんとロイアルティが少くなるという方向にいくであろうと思います。  それから特に問題は、さっき松前さんからもお話のありましたような、材料の問題であります。材料につきましては、たとえば今ゲルマニウムがありますが、ゲルマニウムなどは、日本でも一応できることにはなっておりますが、日本のものは高くてどうにもならない。やはり輸入に待つよりほかしようがない。それからシリコンなどにしましても、やはり外国から輸入する方が手っ取り早いというような状態になっております。この材料の研究は、ぜひとも何か強化の方法をとるべきであろうと私は思うのであります。エレクトロニクスに使う材料は、非常に種類がたくさんありまして、しかも、それが一々高性能のものでなければならぬということになりますと、いわゆる材料をやっておるところでは大体相手にしてくれないものが多い。従って、材料関係には外国のものを買わなければならぬ状態に立ち至っておる部面が非常に多いと思います。これは先ほど渡邊参考人からもお話がありまし  て、私の会社も材料のことを大いにやっておると言われましたが、もちろん一生懸命やってはおりますが、同等のもので大したものではない。しかし、その必要性は感じておるからやっておるのでありますが、これは一会社がやるといいましても、やはりそう全般のものはやることができませんの  で、統合機関よりも一歩進んだ機関がほしいのではないかという気がいたし  ます。
  42. 松前重義

    松前委員 端的に質問いたしますが、今、外国への特許料の支払いは八億でありましょうが、もっと外国から高性能の真空管を買わなければ品物ができないという4のがあるだろうと思うのです。それはどういう種類のものであるか、承わりたいと思います。
  43. 小林正次

    小林参考人 それは全部輸入に依存しなければならぬというものは、あまりないのではないかと思います。たとえばマグネトロンのようなものはある程度日本でもできますが、外国から輸入するのが今の状態では多いのではないか。それからクライストロンのような関係のものもある。純粋に輸入によらなければならぬものはあまりないのではないかと思います。
  44. 松前重義

    松前委員 マイクロ・ウェーブなんかにもたくさんありますよ。テレビにもありますね。(笑声)
  45. 小林正次

    小林参考人 多少はできると思うのですけれども、純粋に申し上げております。
  46. 松前重義

    松前委員 これはたくさんあるように聞いておりますが、いずれまた現場に調査に参りまして、一つ教えていただきたいと思います。  そこで、先ほど、電波監理局長は参考人としての意見として開発会社を作る必要がある、こういうことも考えられるというお話でありますが、私はこれは非常におもしろい考え方だと思うのです。これは通産省の方に伺うのでありますが、こういう点が通産省の分野で、電子技術なんかでカラーが出なかったというようなけちなことはやめてもらって、一つ通産省は通産省としての大きな分野を開発してもらいたいと思うのです。それはどういうわけで申すかというと、合成ゴムの会社政府が十億、民間が十億、二十億で作って、そうして合成ゴムの研究ばかりでなく、それの製造もやる、そうしないと民間では育ちつこない、こういうふうな一つの国策的な考え方をもって、半官半民の会社を進めておる。その通産省の態度は、私は非常にいいと思うのです。これは通産省らしいと実は思っておるのであります。マイクロ・ウエーブあたり、日本電気でも作ってはおりますが、だいぶ真空管外国から買っておられるようであります。それからテレビにしてもイメージ・オルシコン・チューブのごときは、RCAから入れておられるようですが、そうういうものはやはり早く国産化しなければならぬと思う。そういう意味において、この開発会社のごときは、いわゆる日本の国際収支を改善する意味において、すみやかにやらなければならぬという感じがする。それをやるにも、会社だけに補助金でもって助成するというのも一つの手であります。当面はそれより方法がないようであります。しかし、もっと本質的に考えれば、やはり半官半民の開発会社のようなものを作って、そうして損をしてもかまわぬ、国があとで補償してやるという態勢をとるところに、私はいわゆる非常なたくましい政策の現われがあるのではないかというふうに考えております。この点について、これは通産大臣に伺うべきものであろうと思うのですけれども、通産省の方の御意見を伺いたいと思います。
  47. 重見通雄

    ○重見説明員 私が説明する範囲の外かと思いますが、電子工業振興につきまして当初いろいろ考え方がございまして、本年はとりあえず特に部品材料工業助成といいますか、振興といいますかを取り上げておるわけでございますが、民間におきましてこのような特別の国策会社が必要だという機運ができて参りました場合には、そのような措置もあるいは考え得るのではないかというふうに考えております。
  48. 松前重義

    松前委員 御答弁はこれは非常に政治的な問題ですから、その辺ではないかと思います。ただしかし問題は、開発会社の問題もありますが、当面マイクロ・ウェーブにしても、真空管外国から買わなければならないというようなことでは、これはいかぬ。八億円というのは特許料だけでありまして、そのほかに海外から入れておるその他のものを入れると、かつて通産省の方の御答弁によると、昨年は六十億でしたか、そんな大へんなものが入っておる。それをまずもって防遏するという態勢が、通産省の政策としては必要ではないかと思う。将来のカラー・テレビだとかあるいは将来のエクステンションというような夢を見た分野の開発は、科学技術庁が当然やるべきではないかと思っております。その辺があまりけんかのない科学技術庁としての態勢ではないかというように区画整理して差しつかえない境界線ではないかというふうな感じを持っております。そういう意味におきまして、海外から今いろんな品物を入れると日本で製品ができない、部品を入れるとできないというようなことについて、一体どういう手を打っておられるかということを、簡単に御説明願いたいと思います。
  49. 重見通雄

    ○重見説明員 現在海外から輸入しております最大のものは、今後の問題もございますが、工業用の制御機器と申しますか、新しい意味のインダストリアル・エレクトロニクスと言われております関係の製品が多いと思います。これは統計上は諸種の工場施設等の中に入っておりますので、ここにそれだけを分類いたしまして合計したものはございませんが、その金額が相当大きいこと、並びに電子計算機の最近の増加というようなことが考えられます。それからなお御指摘の一部の電子管等についてもあるわけでございますが、これらについては逐次国内の技術が上って参りまして、その輸入量も減っております。ブラウン管のごときもほとんど現在は国産の段階になっております。これに対しましてとりあえず本年考えておりますのは、特にその辺に重点を置きましてこれの研究試作助成をしていく。研究面におきましては、われわれの電気試験所あるいは機械試験所等でこの関係研究をいたしますとともに、民間に対しては、それぞれの試作助成をしていきたい、こういうふうなことで本年は進んでおるようなわけでございます。
  50. 松前重義

    松前委員 そこの境界線は、科学技術庁と、さっき齋藤さんのお話のように、多少馬力の強い齋藤さんが政務次官をやっておられてさえも、何か電子技術課を作ろうとしてもできなかったというような話でありますが、そんなことではいかぬので、やはりそこに境界線をある程度作ってそして手をつないで日本国家全体を守らなくちゃならぬと私は思うのです。これはもうだれも異存はないと思います。そういう見地から考えまして、今の研究助成その他に対する問題は、フューチャー・デヴェロプメントに対しては科学技術庁が持ち、当面どんどん海外から輸入しておるとかというようなものは、これを何とかして国産化する、多少特許料は海外に払っても品物を輸入するよりははるかに安くなる、こういうふうなものが相当にあると思うのです。そういう当面の問題に対して、これを具体的に解決していくような方向に向っての通産省の行政措置というものが、私は望ましいと思うのであります。研究の問題、これは当然ひっかかりますが、少しおくれた国ですから、ある程度技術も海外から学ぶのも必要でありますけれども、これはすみやかに国産化するという態勢をとる必要があると思う。こういうことに対して通産省のこれはなわ張りとしてやったらどうかという感じも持つのでありますが、この辺に対して、特に当局の通産省の力に、こういうなわ張りの境界線の作り方、考え方というものは一体御賛成かどうかお伺いしたいと思います。
  51. 重見通雄

    ○重見説明員 通産省といたしましては、別に関係官庁間のなわ張りというようなことは考えておりません。緊密に連絡しながら、密接にその仕事をやっていくということで進んでおりますので、先ほどお舌のありました、たとえばカラー・テレビを国内に持ってくるとすると、やはりこれの国産化態勢を固めることがまず前提となるというような御意見がありましてこれについては、たとえば郵政省と十分御相談をしながら、どの分は生産態勢を整えていくべきかというようなことを私どもの所管の範囲でやっていく、工業関係になりますと、われわれの方でこれを御意見を伺いながらやっていくというようなことをやっておりまする科学技術庁につきましても、計面その他について十分お打ち合せをしながらやっておるわけでありまして、特に所管というものについては、一応各省の分担がはっきりしておりますので、別にその点につきまして問題はないというふうに考えております。
  52. 松前重義

    松前委員 わかりました。そういうなわ張り争いはされなくとも、何か仕事の奪い合いのようなことにならぬように、一つお願いしたいと思います。  先ほど齋藤さんが言われたお話と現実とだいぶ違うようですから、齋藤さん、一つ間違っておったら御訂正をあなたからお願いしたいと思います。
  53. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 私の申し上げましたのは、電子技術というものの発展のためには、科学技術庁が中心となって行政の全般にわたる総合統一をはかる方がいいということで、科学技術庁の中に電子技術課を設くべしという考え方であったのであります。もちろん松前議員もその方のエキスパートとして御承知の通り、通産行政の内部における電子工業あるいは電子技術のあり方というものは、今百品までの態勢においては、ごく私は幼稚だと見ておる。ようやく電子工業というものに通産省が本式に手を染めたのは、わずか一、二年前じゃなかったかと思うのです。それまではほとんど通産省を探してもなかなか見つからなかったようなところにあった。それをようやく国会においてやかましくこれを論議し始めたから、通産省というものは電子工業というものに目覚めたのです。ですから、飛行機で走っているか、自動車で走っているか私は知らぬけれども、その態勢というものは世界の電子工業の全体から見ると、虫めがねでようやく探すくらいの行政的な力じゃないかと私は思う。そういうものに研究も生産も一切をゆだねておって、一体世界の大勢に追いつけるかといったら、これは物理学的に追いつけないと私は考える。あるいは飛躍的な考え方としてはいいが、そういうことにゆだねておったのでは、日本の態勢は近代的になっていかない。だから、これは見る人はセクショナリズムと見るかもしれませんが、そういうセクショナリズムだとかセクショナリズムじゃないとかいうことでなく、国家の運命を一つの生産力によってになっていこうという大局から考えれば、やはり大きな研究体制に対する行政の力というものをこの際思い切ってつぎ込んでいかなければ、先ほど申し上げた通りに、十年、二十年先の日本の運命なんというものは、全部外国の特許に押えられてしまう。そういうことを切り抜けるには、この際、研究と生産というものをある意味においてはっきり分けて、そして研究に対するところの行政科学技術庁が全責任を持ってやる。そのためには電子技術課を作って思う存分この研究所の統一をはかって、そこに将来日本の必要なところのすべての問題に対しての割り切り方をエレクトロニックにやるということでなければ、日本の運命、発展ということを予約できないと私は考える。電子工業ですから、電子の働きということになったならば、いわゆる原子力の世界にも飛び込んでいく、私は電子工業範囲というものは、今日考られているのは、電波通信の世界に大体の動きが置かれているようですけれども、私はそうじゃないと思う。原子力の世界だって七〇%、八〇%というものは、すべてエレクトロニクスの世界に包含されてしまう。結局放射線と電子というものの関係から、あらゆるマテリアリズムの考え方からいって、材料の検討までいきますと、結局エレクトロニクスの世界はすべての工業をおおうていくところのマネージメントの立場に立つのだと思う。トップ・レベルだと思う。そのトップ・レベルに対して、日本行政の面において大きな研究体制ができてないなんていう行政態勢というものは、抽象論政治であって現実の政治じゃないと私は思う。こう考え科学技術庁に電子技術課の新設ということをやったんですが、さっき申し上げたようなことで、新しく課を作っちゃいかぬとか人間をふやしてはいかぬとか、そういう消極論というものが、ある意味においては日本の進路を押えているという点がたくさんあると思う。こういうことは今後一つ打開していかなければならぬと考えているのです。でありますから、松前先輩はどうお聞きになったかわかりませんが、私の申し上げているのは、エレクトロニクスというものは、将来の日本、人類、世界を支配する大きな根本の問題であるから、これに取り組んで、日本の運命を打開するには、セクショナリズム的じゃなくして、必要に応じた大きな行政研究体制を確立する必要がある、こういうことを申し上げているのですから、御了察を願いたいと思います。
  54. 前田正男

    ○前田(正)委員 ちょっとこの問題について、私はおくれてきまして失礼でありますが、最近の経過については、私も関係しておりますので、御報告したいと思います。この問題については、この前電子工業振興法を通産省から提出されるに当りまして、われわれ与党の立場から、関係特別委員その他関係委員を招致いたしまして、連合会でいろいろと打ち合せました結果、先ほど松前君、齋藤君がお話をしたように、大体製造及び製造関係する研究、国産化の研究、こういうようなものは通歴省一省の権限の中に入ったものでありますから、これは大体通産省においてやっていただく。従って、その範囲において電子工業振興法を通産省から提出して通産大臣の所管のもとに、審議会を置いて、これを運営するということをわれわれは承認いたしたのであります。そのかわりに、そのときに明瞭にいたしたことは、この製造研究とか、そういうふうな研究のこととは違いまして、将来にわたるところの研究、これは各省にわたることでありますし、いわゆる事業者は各所にあるわけであります。この各省に関連したところの総合研究というものは、科学技術設置法にあります通り、科学技術庁が行うわけでありますから、将来事業者の意見等も聞いて、科学技術庁は総合研究していかなければならぬ。そして、その体制を整えるに必要な法律というものは、直ちにこれをこの国会に出すということでそのときは了承したのでありますけれども、その後いろいろと法案の要項等も作りましたが、各省いまだ意見が一致していないようでありまして、この国会にはどうやら間に合わなかったようであります。しかしながら、そういうふうな約束でやっていることでありますし、また同時に、今お話もありました通り、通産省が今後製造関係研究助成、あるいはまた開発会社というようなことも、新しい構想をもって大いにやってもらわなければなりませんけれども、電子工学の将来の研究の総合発展ということは非常に大事なことでありますから、この問題を等閑視するわけにいきませんので、三十三年度の予算編成に当りましては、当然総合的な研究をやるということについて、その必要な法案、必要な予算を整えてやっていかなければならぬ、こう考えておるのであります。  立ちましたついででありますから、それについて、行政的な面はわれわれも政府当局と相談いたしまして、将来の研究についてやっていこうと思っていますが、行政的な面をちょっと離れまして、一つ参考人の方にお聞きしたいと思いますのは、その総合的な研究をするに当りましてあるいは先ほど参考人から御意見があったかもわかりませんけれども、一部の意見に、電子工学というものは原子力と同じように重要なものであるから、今、原子力研究所がありますが、その原子力研究所と同じように、政府も出資し、また民間の方たちも出資して、その将来の各方面にわたるところの研究というものを総合した一本の大きな研究所を作るべきじゃないか。原子力研究所というものは生まれてきておるけれども、実際原子力というものが動いていくためには、原子力以上といいますか、あるいはそれ以上の力というものを電子工学が務めなければ、原子力というものは成り立たないのじゃないか。従って、原子力研究所と同時に、電子工学の総合技術研究所というものを設けるべきじゃないかというような意見が出ておるようでありまして、われわれも三十三年度の予算の編成に当って、非常に重要な問題として解決しなければならぬ問題であると考えておりますけれども、これについて小林参考人から、そういうふうな官民合体したような、しかもいわゆる国家的に非常に権威のある大きな総合研究所を設けて、将来の振興をはかるべきであるかどうかということについて、率直な御意見一つお聞かせ願えれば幸いだと思います。
  55. 小林正次

    小林参考人 趣旨としてはそうあるべきだと思いますが、先ほど私の意見を申し述べたときに、舵空の研究視察団に参加してアメリカを見ました際に、アプライド・リサーチということを申し上げましたけれども、アプライド・リサーチの面につきましては、流体力学とか機体関係とかいう問題でありますが、そういう面に対しての国立研究所というものは非常に大きくできております。ところがこれに使われるエレクトロニクス関係は、航空のものには及ばない、あまり大した国立研究所の拡充はされていないかに見受けられたのであります。それは先ほど松前議員からもお話がありましたが、ベル研究所とかRCAとか、そういうところは相当大きな企業体でありますので、これがみずから行なっておる研究が非常に多いのであります。ですから、今、御質問がありましたような国立研究所とか半官半民とかいうような大きな研究所エレクトロニクスについては、私には見当らなかったのであります。わが国にとりましてはどうかといいますと、もちろんわが国にはない、てんでんばらばらにやっておることになるのでありますが、何かやはりそういうようなものがあった方がいいような気もする。しかし、エレクトロニクスと申しましても非常に範囲が広いから、これを全部カバーするということはなかなかむずかしいのです。先ほどもちょっと申し上げましたが、材料の面などは、何かそういうものがあったら力強く進むのじゃないかしらんという気もするのであります。問題は、問題の取り上げ方だと思うのでありますが、これはよく研究をさせてみたらおもしろいのじゃないかと思います。
  56. 松前重義

    松前委員 先ほど齋藤さんの弁明ではっきりいたしました。どうも電子技術課が、どこかなわ張り争いでできそこなったように私は誤解してまことに悪かったのでありますが、そういうことはなかったそうであります。むしろ妨害したのは行政管理庁か、あるいはまた予算当局か、そういうところだったらしいので、これはまことにけっこうな話でありまして私の誤解をおわびします。  そこで、ただいままでいろいろお聞きいたしまして大体私の考えておりましたことがいろいろ裏づけられまして、しかも多くのデータを与えていただいて、私ども非常に参考になりました。そこで、ただいまの電子工学研究所なるものの構想は、これをどうすればよろしいかという問題につきまして、今ここで提案してすぐいろいろ御答弁を願いたいというわけではございませんけれども、しかし、これは絶対にやらなくちゃならないことでございます。原子力の問題は一応何とかかとか、よたよた今発足はいたしました。それに対しまして、一つ重要な問題として電子工学研究を取り上げなくちゃいかぬ、こういうふうな機運になっております。この点につきましては、今後においていろいろと御協力と御教授を願いたいと思います。これで私の質問を終ります。ありがとうございました。
  57. 菅野和太郎

    菅野委員長 参考人に対し、他に御質疑はございませんか——なければ、本問題につきましての質疑は、この程度にとどめます。  参考人には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して、私より厚く御礼を申し上げる次第であります。  次に、齋藤委員より発言を求められておりますので、これを許します。齋藤憲三君。
  58. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 簡潔に質問を申し上げますから、関係御当局の御答弁をお願いいたしたいと思います。実は、原子力研究所あるいは原子力燃料公社等の運営に関する問題でございますが、大蔵当局の御出席を要求いたしましたところ、鳩山主計官が御出席になりまして、私の方から言うとまことに相手の悪い政府当局であります。それは、鳩山主計官は、今まで原子力問題には始終好意的な態度をとって、われわれの希望を十分に参酌して予算の獲得に努力をしてくれたのであります。それでございますから、鳩山主計官に質問するということは、はなはだ当を得ないと思うのでございますけれども、過日、本委員会におきまして、原子力研究所当局の言葉の中に、どうも自分考えておるよりも弾力性のある経営ができない、いろいろな制約がある、こういう話がありました。非公式ではございますが、いろいろ事情を聞いてみますと、やはり大蔵当局が、決定したところの予算の使途に対して非常にシヴィアなチェック・マークをやる。言葉をかえて言うと、どんなことだというて私もいろいろ調べたのですが、適当な言葉は見当らないが、私の想像からいくと大蔵当局がわからないと金を出さないというのではないかと思う。もしそうだとすると、原子力研究所当局としては、これは非常にやりにくくなってくる。御承知の通り、原子力研究所法には、大蔵大臣と協議をしなければならない事項が四つか、五つきめられておる。しかし、その他においては、原子力研究所というものは、経営に自主性と弾力性のあるようにしなければいけないということと、広く優秀な人材を吸収しなければいけない、それから日本唯一の研究機関として、官民の効率的な共同研究を行わなければいけないというようなことで、あれは特に公社とかそういう形をとらないで、民間の出資も入れるということになった。もちろん大蔵当局が考えられたよりは大きな予算が政治的に生まれ出たということは、これは言うまでもないのであります。私は、今ここで鳩山主計官に、私の調べ上げたいろいろな事例を列挙して、詰問的なことをやろうというのではないのです。せっかく生まれて、今第三の火ですか第四の火ですかが初めて日本にともろうとしておる東海村の日本原子力研究所及び原子燃料公社というものは、どんなに失敗しても将来は成功するだろうと思う。それはもう世界の大勢がそうなっていくのですから、しかし、ここで日本のおくれというものを思い切って取り返すということになったら、多少の失敗というものは——お互いにお先まっ暗なんですから、やらせてみる。やらせてみていけなかったならば、理事者をかえるというくらいの思い切った処理を講じていかなければ、原子力平和利用の面において、せっかく金を出しながら追いついていけない、ますますおくれてくるだろうと私は思います。それですから、質問というよりは一つとくとお願い申し上げたいのですが、もっと思い切って、あまり大蔵省はやかましいことを言わないで、やってみろ、失敗したら、そのかわりお前の首を切るぞというくらいのところでやらせてみないと、百万円くらいの金を出すのでも、一々これは一体何に使うのだ、この建築費は高過ぎるぞ、もっと割引してこい、そんなことを一々やっておったら、原子力の世界というものは早いから、うち一軒建ててまごまごしている間に、何ぼかおくれてしまうということになるのではないか。どっちがいいかわかりませんよ。研究所の当局や燃料公社の言うていることにも、純粋な経理的な立場からいくと、私はたくさん欠陥かあると思う。しかし、そういうことを検討しておって、だれが今の大勢においてその正当な判決を下し得るかということは、これはなかなかむずかしいと思う。だれがやっても、私はできないと思う。ですから、そこを、原子力の平和利用というものの世界大勢と日本のおくれというものを考えて、一つ思い切ってやらせてみる、原子力委員会研究所、燃料公社の当事者に責任を負わせてやらせてみる。しかし、ちゃんと計画書が出ておるのでありますから、でたらめにやらせるというわけではない。もう一つ私が考えるのは、われわれもよくわかるのですが、予算を組んだ当時と今の、原子力平和利用の実態というものを見ると、非常に開きが出ている。だから、予算を組むときに、こんな計画を立てておったから、お前はこんな金の使途を言ってくるということはいけないじゃないかと言っても、世の中が原子力平和利用で進歩しちゃっておるのでありますから、計画してから半年たったら、もう違うのです。そういうことは大目に見て、よろしい、よろしいで許可して、思う存分やらしてみるというような態勢をとっていただけるものかいただけないものか、これは大して責任を感じないで、一つ鳩山主計官のお心持だけを伺っておきたい。
  59. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 実は、私ども、原子力研究所の事業計画の御協議を受けまして、決定しなければなりませんので、責任上、やはりその内容につきましてもいろいろ御説明を承わっておるのでありますが、いろいろ新聞等に出ましてはなはだ私の不徳のいたすところと思っておりますが、私どもといたしましては、研究自体の内容につきましてこまかくいろいろと申し上げることは、なるべくやらないようなつもりでやっております。しかし、総体の考え方といたしまして、やはり私どもには私どもなりの原研の経理に対する考え方がございまして、そういうものがときには原研当局の御要望とマッチしない面が若干出るのではないかと思います。そういうような点はごくつまらない点でございますけれども、そういうような点でやはり折衝等にいろいろ時間を費した点がございます。ただ、私どもといたしましては、実際の東海村におきます建設なり実際の研究なりに支障を生ずるようなことがあってはいけないというので、そういった既定の事業につきましてはどんどん進めていただいておったわけでありましてあらゆろものがストップをするというようなことが言われましたのは、私といたしましては、はなはだ心外に存ずる次第であります。特にこの際、原子力の研究を今後国としても莫大な資金を投じてやっていかなければならないものと、私どもとしてはもちろん思っておる次第でございますが、そういったものをどんどん伸展さしていきますためにも、むだのない堅実なやり方でやっていくというようなことがやはり必要ではないかと思います。特に新しくいろいろなことをやりますと、さきに防衛庁のいろいろな問題がありましたけれども、調達等につきましてもいろいろ問題が生ずることも考えられますので、そういうような経理面の統制というものは、やはりしっかり筋を通していただきたい。そのために、研究所内部でも、研究面の方とあるいは経理面の方との立場がいろいろあると思いますし、従って、原研のことであるから、自分がこういった費用が要るというとすぐ金が出るというようなことがなく、あるいは研究の方から見れば、つまらないところで時間を食うというようなことも出ておるかと思いますが、必要最小限度の経理的な統制というものが原研内部でもやはり必要ではないかと思っております。私どもといたしましては、原子力の研究がそういう経理面等からいろいろな批判を受けるということは、将来研究自体につきましてもおもしろくないことでございますので、そういうことが絶対ないように、ときにはおもしろくない手続だというふうにいろいろお感じになるかもしれませんけれども、その点はやはりしっかり経理をしていくべきじゃないかと思っております。  次に、事業計画の内容につきましては、こまかいことでございますけれども、やはり東海村におきます建設並びに実際のいろいろな諸設備の整備をやりまして、研究の素地を極力早く作るというのが、私どもの一番の重点だと考えております。予算積算時からいろいろ事情も変っておりますけれども、そういった主体的な目的のために、なるべくその予算が重点的に使われていくというふうにすべきではないか。そういう点から若干私どもの技術的な問題を離れまして、一般的な管理費は極力切り詰めていただき、そういうような金は建設並びに研究の方にお回し願う。その点については研究所の方に全部まかせるべきだという説もございますけれども、消極的な経費はなるべく質素にやっていったらいいんじゃないかというような考え方で、私どもは御相談したわけでございます。そういうような点で、予算としても、原子力の問題でございますから、年間を通じまして、予定されない研究が必要になるとか、いろいろな問題が生じますので、総体の中でそういった予備費的なものを設けて、そういったものにも対処できるような形にいたしたいというような諸点につきまして御意見を申し上げ、先ほど科学技術庁並びに原子力研究所当局との間でその内容もすっかり確定いたしましたので、これで実施して参りたいというふうに思っております。御了承願います。
  60. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 私の申し上げておりますのは、どちらにどういう理由があるか、私もよくわかりませんが、この予算を獲得いたしますときには、現大蔵大臣も、原子力の予算だけは自分としてはわからないから、これは原子力委員及びその他関係の人々の考えにゆだねる以外にないということで、あの予算がきまった。それですから、大蔵省は大蔵省の立場として十分その経理上の責任をおとりにならなければなりませんから、その点は、私としては、適当に一つあやまちのないようにお取り計らいを願うことはもちろんでございますけれども、そういうことをあまりに万般の問題に対して及ぼすために、原子力研究所のやらんとする意欲が減退したりして、かえって逆効果を及ぼすことのないようにお取り計らいを願いたいということを申し上げておきます。  それから地質調査所長がお見えになっておりますが、私の要求いたしましたウラニウム、トリウムの概査計画に対する御回答が出て参りましたので、特に鉱山局長及び鳩山主計官が御同席のところで聞いていただきたいと思うのであります。ウラニウム、トリウムの国内資源の有無というものは、ある意味において原子力の自主発展の根本を握るものでありまして、これに対しましてはわれわれも非常に注目品をしておるのであります。幸い、日本にはウラニウム、トリウムがないだろうと考えられておったのに、多少出てきた。そこで一つ徹底的に地質調査所に概査をやってもらわなければならないと考えております。ところが、御承知の通り、この概査は三カ年計画なんです。しかし三カ年で概査が終るかという質問に対しましては、日本全部にわたる概査というものは、なかなか三カ年では終らないということです。ところが、いろいろ地質調査所当局に質問してみますと、地質調査所としては、ウラニウム、トリウムの概査は三年ということに限っておるから、人員、設備も三年と考えておるらしいのです。それじゃとてもわれわれは心細くてだめだ。一体日本にウラニウム、トリウムがあるかないかという徹底的な調査をすることのためには、それ相当の人員及び気がまえというものがないと、やってもいいかげんなやり方になってしまうんじゃないかと思うのです。これを見ると、エア・ボーンをやるとか、カー・ボーンをやるとかいうことが書いてあるが、大体日本の山岳地帯において、エア・ボーンがどのくらいの効力を示すかということは、非常に疑問だと思います。私がパリに行ったときに、聞いたところによりますと、フランスの中央山脈にはエア・ボーンの力がないから、全部人でやったというのです。一体日本では口癖にエア・ボーン、エア・ボーンと言っておりますけれども、エア・ボーンが日本の山岳地帯においてどれだけの効力を示すかということは、今後検討してもらわなければならぬ。エア・ボーンを飛ばしてシンチレーション・カウンターに感じなかったから、ここにはないのだ、そんな簡単な調査をやったのでは、日本はかわいそうだと思うのであります。フランスでは、山岳地帯の峡谷の激しいところには、飛行機を入れるわけにいかないから、これに対しては青年隊を組織して、一メートルごとにガイガーの計数管を当てて調べて、とうとう欧州一のウラニウム産出国になったというのが偽わらざる告白であります。そういうことを考えてみますと、日本でまず三カ年間、五カ年間は、エア・ボーン、カー・ボーンで概査をやるのも必要でありましょうけれども、さて、それで満足かというと、その上の概査というものは、人間の足でもって、ガイガーの計数管を肩にかけさせてやって、花崗岩地帯とかこれとおぼしき地帯に人を入れて調査しなければならぬ。私は、この概査は十年や十五年はかかると思います。あるいはそれ以上かかるかもしれない。日本は狭いというけれども、人跡未踏の山岳地帯というものはまだまだある。そういうことを考えると、この際けちな考えはやめて、日本の運命を決するウラニウヘトリウムというものが、日本内地にあるかないかということを決定するために、地質調査所長としていかなる抱負、経綸をお持ちかということ、そのことはこれにちょっぴり出てきたのですが、見てみると、大したことはない。こんなことでやられたのでは、日本はかわいそうだと思う。しかし、従来よりは進歩した考え方だと思う。ですから、この際鉱山局長も、大蔵省もお考え直しを願いたい。今、電力事情というものは切迫しておる。きょうも私は重要産業特別委員会に出て参ったのでありますが、これによると、電気事業界においては、昭和四十年までには百万キロワットの電力を原子力発電によらなければ、電力界は責任を持てぬといっておる。そういうのに、一体日本にウラニウムがあるのか、トリウムがあるのか、地質調査ができてないということになると、非常に困ったことになると私は思うのであります。この際一つ三十三年度の予算措置においては、地質調査所でも、こんなことでなく、もっと徹底的な先の見通しがきいて、これならばよろしいと思われるような計画をお立てになって、それを省議におかけになって、そうして大蔵省も——私は大蔵省の考え方はどういうことかわかりませんが、そういう点に対して、予算をうんと盛ったって、国民はみなアッピールしますよ。だから、将来に向って国民の金を使うのだという建前においては、こういう予算はうんとつけてやって、徹底的に調査をさせるべきだということにしていただきたいと思うのであります。  もう一点、鉱山局長、地質調査所長及び鳩山主計官のおられるところで、御質問申し上げて、御回答を得ておきたいことは、天然ガスの問題であります。私、天然ガスの東北における調査資料というものを二、三日前にちょうだいいたしましたが、膨大な調査資料であります。しかも、相当埋蔵量があり、さらに天然ガスの開発のために調査をすべきところの個所がたくさんできておる。ところが、昭和三十二年度通産省から要求せられた天然ガス調査費というものは、大蔵省は一文もつけないで全部削ってある。一体どういう意図でこれを判られたのか、大蔵省の予算のつけ方というものは私はよくわかりませんが、一方石油開発株式会社には十五億出資をしておる。一体日本において天然ガスの開発が早いか石油の開発が早いかというと、私は天然ガスの開発が早いという主張者なんです、しかし石油も大切なので、それに十五億やって掘っている。天然ガスの基本的調査に対しては大蔵省は一銭もくれないで、全部予算から削ってしまった。そんなものの考え方をやるから、大蔵省の予算のつけ方は怪しいんだ、よけいな文句を言ってもらっては日本の進路が阻害されるんだという議論も出てくるのです。これは通産省に対しても不満なんです。通産省は予算の獲得に対して弱いのです通産省の興亡にかけて、予算を取るべきものなんです。大蔵省と決戦を交えるべきなんです。なぐり合いをやってくれとまでは言わぬけれども、通産省がそんな弱腰で、天然ガスの開発なんというものはできるわけはないのです。この二点に関して、なるべく時間を節約して、そこで相談してもいいでから、御回答を得ておきたいと思う。
  61. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 相談した上の返事をお求めいただきましたが、その相談はここでまとまるものでもないでしょうから、私の立場から御答弁さしていただきたいと思います。おっしゃる通り、天然ガスの開発は石油よりももっと即効的で、早く日本経済のプラスになる段階にいきやすいとわれわれも思っております。そういう意味で、特に東北、北海道を中心にした開発を促進するという意味からも、非常に重要な意味を持っておると思います。従来から探鉱の補助金は二千万円程度出ておるわけでございますが、われわれの見るところでは、探鉱の補助金だけではだめで、その前の段階であります地質調査を大々的にやる必要がある。それができて初めて探鉱の補助金の申請もたくさん出てくる、こういう段取りになると思いまして、実はそういう天然ガスの埋蔵地域の基礎調査という予算を要求いたしたのでありますが、われわれの説明が不十分であったごともございましょう、われわれとしては最後までいろいろお話し合いをいたしたのでありますが、それがついに日の目を見なかったということは、私としても大へん申しわけないことだと存じております。来たるべき機会には、また全力を尽してこの予算をいただくように、努力をいたしたいと考えております。
  62. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 鳩山主計官のウラニウム、トリウム、天然ガスに対する御構想を伺っておきたい。
  63. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 国内の原子力の資源につきましては、私どもといたしましても、地質調査所と燃料公社との方で最重点的に考えておるつもりでありますが、本年は一応地質調査所の経費もやはり科学技術庁原子力局の方に一括計上になりまして使うということになっております。その配分等につきましても、原子力局の方の御意向通りに考えております。ますます重要であるということは、齋藤委員のおっしゃる通りで、私どももやりたいと思っております。  なお天然ガスの埋蔵の調査につきまして、昨年度経済企画庁の方の予算で相当大がかりな調査が行われましたので、その成果を検討いたしまして、今後開発についてどういう手段を講ずるかということについてことし検討いたしまして、対策を講ずる。予算のときまでにはそういう資料がまだ間に合いませんでしたので、いろいろ研究いたしましたけれども、問題を先に譲ったようなことになりましたが、今後十分検討いたしまして、やって参りたいと思います
  64. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 地質調査所長、今後の抱負経論はどうですか。簡単に一つ
  65. 兼子勝

    ○兼子説明員 簡単にお答え申し上げます。ウラニウムにつきましては、やはりお命をいただきまして——本格的にいただきましたのは三十一年度でございますが、やってみますと、どんどんいろいろなものが見つかりまして、そうして今までの三カ年計画ではとても間に合わないという事態に立ち至っておることを痛感しておる次第であります。やはり、やればやるほどやっただけの価値はあるということが幸いにして認められるに至ったのでございまして、この点今後とも私ども十分努力もいたしますが、皆様方の御援助をお願いしたいと思っております。  それから天然ガスにつきましては、先般できました東北振興の資料は非常にりっぱなものでありまして実に部厚な、完全な資料でございまして、後世に残るような報告じゃないかと私は思っております。いろいろ自分勝手なことを申し上げてはなはだ失礼でありますが、りっぱな学術的資料であるし、あれだけの調査資料というものは非常に得がたいのではないかと私は考えておりまして、ああいうものを基にしてどんどんやっていったら、あるいはまた全国各地にああいうやり方をアプライしていさましたら、どんどん新しい天然ガス開発地帯が見つかって参るのではないかと思っております。たとえて申しますと、今まで全然考えれませんでした九州の日南万事血、宮崎県でございますが、この地区におきましても、今石炭会社の方で、新たな資源として、どんどん開発していくという、あの方の鉱業も考えるに至ったのでありまして、やはり調査というものをしっかりやって参りますれば、私ども一生懸命それに携わって、そうして日本の資源の増大をはかっていくことができるということの確信を持っておる次第であります。
  66. 菅野和太郎

    菅野委員長 これにて暫時休憩し、午後二時再開いたします。     午後一時十八分休憩      ————◇—————     午後四時十六分開議
  67. 菅野和太郎

    菅野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  放射線障害の防止に関する問題について、調査を進めます。  この際、お諮りいたします。すなわち、原水爆の実験による放射線障害の防止に関する問題につきましては、前回の委員会におきまして、参考人より意見を聴取するなど、調査を続けて参ったのでありますが、本問題につきましては、すでに問題点も明らかになりましたので、一応次のような決議を行いたいと思います。案文を朗読いたします。    放射能汚染の科学的調査の推進に関する決議案   政府はすみやかに大気、海洋その他におよぼす放射能の科学的調査につき、わが国の専門的科学能力を組織し、かつ必要なる予算措置を講じ、もつて原子力の平和利用を推進すべきである。   右決議する。     理由   今や大国は西に東に原水爆実験を競合し、その結果人類の環境におよぼす放射能汚染は誠に憂慮に堪えないものがある、殊に気象条件あるいは国民の食生活等に顧るとき、わが国こそこれが影響については、率先して、科学的調査に最大の努力を傾くべきものと信ずる。調査の結果は、これをあまねく全世界に公表し、原水爆の実験はもとより原子力の軍事的利用を禁絶せしめるための有力なる資料として活用し、世界の平和と人類の繁栄に貢献すべきである。このため政府はすみやかに積極的なる予算措置と組織的な法制の整備を講ずべきである。  以上を本委員会の決議といたしたいと思いますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  68. 菅野和太郎

    菅野委員長 起立総員。よって、十決議することに決議しました。  発言の通告がありますので、これも許します。齋藤憲三君。
  69. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 私はただいまの決議に全面的に賛成を表するものでございますが、この放射能の汚染の問題は、今や原水爆の実験を通じましてあらゆる政治問題を超越した大きな問題となってきておるのであります。しかし、二つの陣営が、この原水爆の力を持って平和を維持せんとする考え方を捨てざる限り、新しい原水爆の構想が生まれれば、必ずそれには原水爆の実験というものが伴ってくることは必然だと思います。もちろん、われわれは人類の平和のために、こういう原水爆の実験が禁止されることを念願いたしますが、二つの力の対立がこれによって立科を保とうというような考え方なの下ありますから、どうしてもそこに原水爆の実験が今後も行われるものであるということを考えざるを得ないのであります。そこで、問題になって参りますのは、この決議文でございますが、すみやかにわが国といたしましても、すべての科学陣営を動員してその実態を調査し、これが人類に及ぼすところの影響をよくきわめまして、世界にい表いたしまして、その点からも原水爆の実験をやめるように努力するということは当然のことだと思います。と同時に、さらにそういう態勢に即応するには、この決議によりますと、大気、海洋としてありますが、そうすると、これは原水爆の実験によるところの汗染以外に、自然にあるところのあらゆる放射能に対しても調査を進めたければならぬと私は思う。果してストロンチウム九〇、セシウム一三七というものは、原水爆の実験によって生まれたものか。今までそういうことが自然的にあったかないかということの調査をどこまでやったかということは、科学的にいって私は非常に疑問だと思う。なぜかというと、太陽は常に原水爆をやっておるのであります。そういう点に関しましても、政府当局は十分な科学陣営を動員して調査をしなければならない。  もう一つ、私は特に関係政府当局にお願いしておきたいことは、一体その放射能の汚染がたくさんあるからといってこれをおそれてそれに触れないように、触れないようにすることも、消極的な一つ方法でありますが、もし放射線に触れて放射能障害を起した人に対して積極的な対策を講じて、対症療法を講じていただくということの研究は、これは大いにやらなければならぬと思う、一体原子力の平和利用というものを考えまする場合には、原子力というものの実態、放射能の実態を把握すれば、これが流すところの害毒に対するところの対症療法というものが当然出てきていいと思う。それに対して政府が大いに熱意を傾けて、そうして原子放射能によって障害をこうむった者に対しても、積極的な手段によってこれをなおし得るというところまでいって初めて私は原子力の平和利用というものが人類社会に普遍的に行われるのだ、そう考えておるのであります。ところがこれは現実においては放射能をなくす以外に、放射能障害というものは防ぐ方法がたいのだというようなことを言っていますけれども、私はそんなことで満足せらるべきものではないと思います。でありますから、広くそういう点に思いをいたされまして、特に昭和三十三年度においては、そういう研究に対しましても、原子力局及び厚生省におかれては、予算措置も講じて、大々的に積極的な放射能障害に対するところの防止策というものを一つ考えていただきたい、研究体制を確立していただきたい、そう思うのでありまするこれに対して、一つ原子力局及び厚生省の御答弁をいただきたいと思います。
  70. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 放射能の調査に関しましては、前々も申し上げましたように、本年度は約三千三百万円で、関係各省が従来持っておりました費用と合せまして調査を進めますので、組織的な総合的な意味から申しましても、相当効果のある調査がなし得るのじゃなかろうかと考えます。ただ、それでは不十分だというそしりはあるいは当るのじゃないかという感じもいたしますので、本年度の実績等も考えなんがら、来年度の予算には十分御期待に沿うような措置をとってみたいというふうに考えております。  それから、もう一つの対症療法に対しての研究をこの際積極的にいたすべきではなかろうかという御意見に対しましては、私も全く同感でありまして、昨年度におきましては科研に一部補助金を渡しまして、研究を進めておるのでありますが、本年度はきのうからでございますか、補助金の査定に入ったわけでございますので、まだ結果は出ておりませんが、そういう点は十分注意して、できるだけその方面に力をいたしたいと考えております。
  71. 山口正義

    山口(正)政府委員 ただいま御決議になりました放射能汚染の科学的調査の推進ということについては、目下非常に重要な問題でございまして、私ども厚生省といたしまして、一般国民に対する障害防止という観点からも、この問題を特に最近重要視して参っているわけでございます。御承知のように、昭和二十九年にビキニ環礁におきまして実験が行われまして以来、この問題が非常に口を追うごとに大きくなって参りまして、ビキニの問題を契機といたしまして、厚生省に原爆被害対策調査研究連絡協議会というものを設けまして、各省関係の方々あるいは専門家の方に、いろいろな実験が行われますたびにお集まりいただきまして、各地で測定されました状況についく専門の立場からいろいろ批判をしていただいております。厚生省としてどういう道をとるべきかということをいろいろ御相談いたしてきたわけでございます。今後、ただいま齋藤先生から御指摘がございましたように、単に実験だけでなしに、自然放射能の問題は非常に大きな問題でございますので、これはただいま佐々木局長からも御答弁がありましたように、本年度から科学技術庁が中心になられて、自然放射能の全国的な調査というものを始められるようになりました。厚生省におきましても、その調査の一環を受け持ってやるということになっているわけでありまして、今後私どもこの問題につきましては、御指摘の点、十分御決議の線に沿って努力して参らなければならない、そういうふうに考えております。  なお、対症療法という問題につきましては、患者につきまして一番最初の問題は、やはり昭和二十年の長崎、広島の原爆問題でございますが、これは今国会で法律並びに予算を作っていただきまして田の費用でこの患者の治療に当るということになったわけでございます。その際に、やはり若干ではございますが、研究費も計上していただいております。治療をしながら、現在まだ不切な点が非常にたくさんございます。治療を国の費用でやるなら、どうすれば一番いいかということを同時に研究しながらやっていきたい、そういうふうに考えております。また、科学技術庁の御所管になっております放射線医学総合研究所等においても、そういう問題を取り上げていくというふうに承知いたしております。先ほど御決議の点を十分私ども体して、予算の面その他実施に向って努力して参りたい、そういうふうに考えます。
  72. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 厚生省としては、当然エックス線の障害に対しては、対症療法を考えなければならぬ。エックス線は、御承知の通り、ガンマ線と同じでございますから、科学技術庁のアイソトープ課としては、これに対する対症的な治療方法というものも今後確立していかなければならぬ。そうしますと、私としましても、この点に関しましては、厚生省と科学技術庁、原子力局というものは異体同心になって、問題の解決に当らなければならないと思っております。どうも今までは、放射能であるから、エックス線であるから、これに対してはうまい適確な療法はないのだということで、ギブ・アップをしておるような形がたくさんあるのじゃないか。これはやむを得ないのだ、あきらめろ——しかし、私はそうじゃない。なぜかというと、岡委員はその方の専門家でおられますが、私ゆうべ家に帰りましたところが、読売新聞でございましたか、造血作用に対するところの根本的な医学上の変革が発表されております。それはどちらが正しいかわかりませんけれども、従来、血というものは骨髄で作られるのだという骨髄造血説であったが、今度は腸の絨毛が血を作るのだという腸の絨毛造血説というのですか、そういうことで、それによって根本的に今までの人体の疾患に対する考え方が達ってくるわけです。そういうことが新聞に大きく発表された。もし腸の絨毛造血説が正しいということになりますと、今までの医学というものは、ほとんど根本からくつがえされるということになる。そういう点からいきますと、エックス線の院障害、放射線の障害に対してこれはどうもやりようがないからあきらめろというがごときは、医学界の恥辱であり、また科学陣営を侮辱しておる言葉たと思う。これはやったらやれると思う。ですから、ほんとうに原子力の心髄というものがわかれば、これはたとい受けたって、対症療法においてやれる。そこで初めて原子力というものを安心して使える平和境というものが出現する。それでなかったら、これは危なくて近寄れない品ですから、特に原子力の体制が築き上げられておるのでありますから、竿頭一歩を進めて、この点に対して厚生省及び科学技術庁は、こういう問題にセクショナリズムはないと私は思いますが、領分争いなどはやめて、手を携えて今後一つ解決に努力していただきたい。そういう希望をつけまして、私はこの決議案に全面的な賛成の意を表するものであります。
  73. 菅野和太郎

    菅野委員長 ほかに御質疑がなければ、本日はこの程度にとどめます。  今国会もいよいよ明日をもって終了することとなっております。諸君の委員会運営に対する絶大なる御協力に深く感謝を申し上げる次第であります。  これにて本日は散会いたします。     午後四時三十一分散会