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濱田政府委員 今、
渡邊参考人から、
日本の
エレクトロニクスの
画期的振興についての
方策いかんにつきましての
お話がございました。私も全く同感でございます。その中で、
エレクトロニクスの分野における
技術者の
養成が非常に大事であるということの力説がございました。全くその通りでありまして
エレクトロニクスを
振興させるために最も大事なものは、まず人間であります。そういう
意味におきまして、大半に
電子工学科を置き、あるいはこれに関連する他の分野の施設を増すということにつきましては、全く私も同感でございます。しかしながら、
日本の今日の
現状は、たとい
技術者がたくさんできましても、この
技術者が能率よく元気に働くような仕事をやる場所が
日本は足りない、それが
現状でございまして、言いかえますれば、
日本の
電子工業界あるいは
電子、電波を扱います
産業分野は非常に貧弱である、まるでなっておらぬ、そのことも遺憾ながらいなみがたい事実であります。
日本の
電子工業をやっております
会社のレベルは、ここに
小林参考人も
電子工業会社の枢要な部門を担当しておられますけれども、残念ながら私の見るところでは、
アメリカに比べますれば二流、三流くらいのレベルであると言わざるを得ないのであります。一々例をあげると切りがありませんけれども、今日
日本の
電子、電波波界というものは、重要なところは大半
外国の輸血によって辛うじて命をつないでいると言っても、これは極言ではないと思うのであります。何ゆえにこのようになったかと申しますのに、これは
皆様御承知のごとく、他の
工業がそうであったように、
工業と
科学技術の
研究が別個に
日本に輸入せられたという事実に基くのでございまして、
日本人は、由来、
電子や電波につきましては、卓越した才能を持っています。いろいろな優秀な発明発見等が
電子、電波に関してなされたのでありますけれども、これを
工業化し、あるいは
産業化するという才能においてあるいはその才能の運営について、
日本人には欠陥があったと思われるのであります。そういう
意味におきまして、
日本の
電子工業は、
日本人みずからやるところの
研究や
技術の基礎の上に立っておりません。そういう
意味におきまして、最も基礎的な
研究開発を必要とする
電子工業の、
日本独得の強固な基礎の上に立っての
発展が見られなかった次第であります。
電子工業の分野におきまして、典型的なものは
真空管であるわけであります。この
真空管の例をとってみましても、小さい
真空管の中に含まれておりますところの元素はたくさんあるのであります。しかも、純粋な形においてその性能を発揮しなければならないような使命を持っている元素が、一カ所にたくさん集まっている。そういうものを作り上げるのが、
電子工業の作業であります。この純粋な理想的な形の要求を満たすようなものを作り上げる
技術あるいは作業、これがたくさん集まって
電子工業となるのでありますが、そういうことをやる基礎的な
研究技術が
日本においては開発せられなかったのでありまして、今日でもまだその面において非常に欠陥があります。それでありますから、私の
考えでは、
日本に
エレクトロニクスの
画期的振興を行うために必要な対策といたしまして、次のようなことを
考えます。ただいま
お話しの
技術者の
養成をさらにやることはもちろんであります。それから
大学における
研究を盛んにする、これももちろん必要でございます。
大学の
研究の
現状につきましては、今日、
日本の
大学の
研究所はだんだん拡張せられて参りましたけれども、まだまだ
研究費においては微々たるものであります。
アメリカに比べますれば、数十分の一以下にすぎない。しかも今申し上げましたように、
日本における
工業の基礎的
研究が盛んでなく、
電子工業の
技術レべルが低いために、
大学において使おうとするところの資料あるいは材料等が潤沢でない、あるいは手に入らない。そのことがアップ・ツー・デートの、最も進歩した
研究を
大学において行うことが困難である理由でありまして、
研究費が少いのみならず、
日本の
研究を行う環境が悪い、資料の供給が潤沢でないために、その
研究ができない。優秀な才能を持っておりながら、むなしく
研究者は才能を発揮せずに脾肉の嘆をかこっている場合が大へん多いのであります。
そういう
意味において、私の
考えといたしましては、先ほど
渡邊教授も多少触れられたようでありますけれども、この際において、
電子工業、あるいはもっと
範囲を広げまして、
電子、電波
産業の
画期的振興をはかるためには、ここに
国家的な
研究所、特に
工業の基礎的
研究を推進し得るもととなるような
研究所を作る必要があろうかと
考えております。これは
一つの
考え方であります。
この理由につきましてもう少し詳しく申し上げてみますならば、
日本人は、先ほど申し上げましたように、卓越した才能を持っておりまして、いろいろな発明発見をいたしましたし、今日でもいたしつつあるのでありますけれども、それをたくさん作る
技術の開発を怠っている、あるいはかようなものを開発するためには、経営者、
政府は力を使っていないと思うのであります。たとえば、
真空管でありましても、その性能の優秀な設計をやる能力を
日本人は持っています。けれども、
真空管を数千個、数万個とそろえて、同じ性能を持ち、同じ規格を持ったものを安く作ることにつきましては、残念ながら
日本人は才能を開発しておらぬというのが
一つの例であります。最近に半導体の開発がなされつつあります。
トランジスターでありますが、
トランジスターの大量生産につきましては、
日本は今後人なる努力を払う必要があります。また
真空管あるいは
トランジスターのかわりに使われるパラメトロンというものがあります。これは東京
大学の若い学徒が発明したもので、画期的な発明だろうと思うのであります。こういうものにつきまして、
日本は量産
研究を非常に早くする必要がある。私の想像では、
アメリカにおいては、
日本で発明された。パラメトロンの量産
研究をすでにやっている、しかも非常に小型な優秀な性能のものをやっているのじゃないだろうかと思うのであります。私は、かような
意味におきまして、大童生産の
研究を
日本が行えるような
研究機関、開発機関を設けることが刻下の急務であると思うのであります。この
真空管あるいは半導体、あるいはパラメトロンでありましても、それに使うところの材料が非常に少いのでありまして、しかもこれを純粋な形において得なければならぬと思うのであります。
真空管の中に使います材料に、たとえば酸化アルミニウム、アルミナというものがあります。例をあげて申しますと、アルミナなんというものは、一本の
真空管に使う宜はたかだか数ミリグラムにすぎない。これが非常な高い純度において得られなければなりません。かような少量の材料を方々の
会社がやっているのでは、理想的なものが得られないのでありまして、そういうものは大量に作ることによって純粋なものが得られるのであります。そういうことを
研究し、これを実現するためには、やはり今日のような分散した、勝手々々にやっているような
工業ではいかぬ。しかも
日本人は競争心が激しいために、むだな競争をいたしまして、おれがおれがということでやりますために、なかなかいいものができない。そういうことをやめて、そして一カ所において高い
技術レベルを保持し得るように、専門
技術の育成といいますか、
研究、開発態勢あるいは生産態勢の改良にまでも持っていきませんと、ただいまおっしゃいました
研究所を作りましても、
意味がなくなる。あるいはそういう態勢の基礎に立って、さっき申し上げたような
工業の基礎的
研究を行う
研究所、私は
日本の
エレクトロニクスにおいては、かような性格を持った
研究所の設立こそ最も急務であると思うのでありますけれども、そういうふうな
研究所の実現は困難であろうと思うのであります。
いろいろございますが、今日の
日本の
エレクトロニクスのレベルは、
外国に比べますならば非常に低い。しかも先ほど
お話がございましたように、この
エレクトロニクスが、
通信のみならず社会のあらゆる
方面に浸透して使われつつある
現状におきまして、私はこの際において、思い切って、原子力と同じ
程度に、あるいは時間的には原子力よりも先に
エレクトロニクスの全面的開発を行うにあらずんば、悔いを千載に残すこと必至であろうということを憂うるのであります。
いろいろ申し上げたいことがありますけれども、以上申し上げまして御
参考といたす次第でございます。