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1957-05-06 第26回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月六日(月曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 菅野和太郎君    理事 赤澤 正道岩 理事 有田 喜一君    理事 齋藤 憲三君 理事 中曽根康弘君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       保科善四郎君    山口 好一君       石野 久男君    田中 武夫君       滝井 義高君    松前 重義君  出席政府委員         科学技術政務次         官       秋田 大助君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   佐々木義武君  委員外出席者         原子力委員会委         員       有澤 廣巳君         原子力委員会委         員       石川 一郎君         科学技術庁次長 篠原  登君         参  考  人         (東京大学原子         核研究所所長) 菊池 正士君         参  考  人         (立教大学教         授)      武谷 三男君         参  考  人         (電気事業連合         会専務理事)  松根 宗一君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事長)  安川五郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律案内閣提出第一四九号)     ―――――――――――――
  2. 菅野和太郎

    菅野委員長 これより会議を開きます。  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律案を議題といたします。  この際、参考人決定につきましてお諮りいたします。すなわち、本案に関しまして、東京大学原子核研究所所長菊池正士君、立教大学教授武谷三男君、電気事業連合会専務理事松根宗一君、日本原子力研究所理事長安川第五郎君、以上の四名の方々参考人として決定し、本日これよりその意見を聴取いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 菅野和太郎

    菅野委員長 御異議なければ、さよう決定いたしました。
  4. 菅野和太郎

    菅野委員長 それでは、これより本案に関しまして、参考人より意見を聴取することといたしますが、この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、当委員会法律案審査のためわざわざ御出席を賜わりまして、まことにありがとう存じます。厚く御礼を申し上げる次第であります。本案は、原子力基本法の精神にのっとり、核原料物質核燃料物質及び原子炉利用が、平和の目的に限られ、かつこれらの利用が計画的に行われることを確保し、あわせてこれらによる災害防止して公共の安全をはかるために、製錬加工及び再処理事業並びに原子炉設置及び運転等に関して、必要な規制を行うことを目的として、政府より提出されたのであります、当委員会といたしましては、本案審査に当りまして、日ごろよりこれらの問題に携わり、研究し、造詣の深い参考人の御意見を承わり、もって本案審査に万全を期したいと考えまして、ここに御出席を願った次第であります、何とぞそれぞれのお立場より、本案につきまして忌憚のない御意見をお述べ願えれば幸いに存じます。なお、御意見十分程度に取りまとめを願いまして、あと委員諸君の御質疑によりまして、お答えを願いたいと思います。  それでは、菊池正士参考人よりお願いいたします、
  5. 菊池正士

    菊池参考人 この規制立法は、ぜひ必要なものと存じております。こまかい立法のことにつきましては、私の専門とはかなり違いまして、正直に申しまして私にはあまりよくわからないのでありますが、大体拝見いたしましたところで、妥当なものであろうと思っております、私どもの直接の専門に関しますことでは、専門的な研究上でこういうものをいろいろ取扱いますが、それについてもやはりこの規制を受けることになります。それは多少の手続上のめんどうが新しく起るとは思いますが、これは当然受けるべきことだろうと思っております。大体そういうわけでありまして、何か私の専門立場で申すべきことがございましたら、後ほど何でも私、お尋ねによりお答え申し上げます。
  6. 菅野和太郎

    菅野委員長 次に、安川第五郎参考人にお願いいたします。
  7. 安川第五郎

    安川参考人 私は、わが国においてこれから原子力平和利用開発が大いに促進される際に当りまして、これを取り締るいろいろの必要な法規の制定は、絶対に必要であると存じております。この意味において、この法案が一日も早く国会の協賛を得まして、実施に移されんことを希望してやまない次第であります。  さて、この法案制定に当りましては、目下のところでは、原子炉の据付、逆転に関する限りにおいて、私が担当している原子力研究所が最も直接にこの法の適用を受ける対象になるわけでありますから、これに関しまして多大の関心を待たざるを得ない。従って、この制定に当っては、相当内部に意見は持っている次第でありましたが、幸いに原案を作成される当局におかれましては、しばしば原子力研究所の方の担当者に御相談がありまして、十分実施上についての打ち合せを遂げた次第でありまして、この点に対しまして、私としては当局に厚くお礼を申し上げる次第であります。この原案についてしいて申し上げれば、多少の意見なりまた希望なりがないではないのであります、しかしながら、何しろ原子炉一品も逆転したことのない、経験の乏しいわが国において、安全無欠法律制定することは、不可能であることは十分承知をいたしております、おそらく原子力研究所の第一次原子炉運転を始めて、いろいろ実際的な問題にぶつかって、それによってまたこの法案を将来完璧なものにすることが実際的だと考えているのであります。ことに保安その他障害補償に対する法文のごときものは必ずしもただいまの原案で完全とは申し上げられないのであります、これらについては研究所もこの法案制定のために一つ実験台となって、今後完全な法案成立を見ることを希望してやまない次第であります、  ただ最後に、これは法案ではありませんが、この中にはずいぶん所管大臣認可を必要とする点が多々あるのであります、これは、当分の間、法律としてやむを得ぬものとは思うのでありますが、とかくこの許可認可に時制をとりますと、この原子力開発の促進に非常な障害になるのであります。でき得る限り特別なお計らいによって、この許可認可が迅速に運びますように、これは運用の方について、しいて申し上げれば希望しておく次第であります、私のこの法案についてのゼネラルな意見としては、以上であります、  なお、御質問によってお答えを申し上げることにいたしたいと思いますが、私は法律のディテールについてはあまりよく知りませんが、さらにその方を担当した者が随行しておりますので、御質問によったら、ある程度まで詳細にお答えができると思います。私の意見は以上で終らせていただきたいと思います。
  8. 菅野和太郎

  9. 松根宗一

    松根参考人 今、お二人の参考人からお話がありました御趣旨と大体似ておりますが、今日までの原子力平和利用につきましての日本のいろいろの体制がだんだん整備されて参りまして、原子力委員会設置、それから原子力研究所及び原子燃料公社設立というようなことがだんだんでき上って参ったのでありますが、さて実質的にこれを運営いたしますについての核燃料物質使用であるとか、原子炉設置というような実質的なものについての基準が今日までできておらなかった。これがきょうここでわれわれが意見を徴されておる法律の一番のねらいだと思うのですが、今日の私ども関係いたしております電力需給という方面から申しますと、非常に最近電力の需要がふえまして、これを供給する水力であるとか、石炭とかいうような問題が枯渇して参りまして、さてそれが外国から持ってくる石油というようなことになるわけでありますが、これまた外国から持ってきますだけに、いろいろ問題が多い。従って、この電力のもとといたしましては、どうしても原子力発電早期開発しなければいけないという情勢に追い込まれておるわけであります。従いまして、原子力の、特に発電という立場から考えまして、こういう実施面法律が今度のこの国会で審議されますことは、まことに時宜を得たといいますか、この早期開発が非常に促進されることになりますので、大局的に賛成し、すみやかなる成立を希望いたす次第であります。  ただ、これに関しまして、一、二私ども意見を申し上げてみたいと存じます。私もこまかいことはよく研究しておりませんが、大体拝見しまして、実際のこの法案基準になります事項が、政令とかあるいは総理府令というようなことにゆだねられている点がたくさんあるように思うのであります。しかも、その内容が非常に重要とありますだけに、これが実際法律ができまして運用されるに当って、民間と将来原子力開発を大いにやろうということに、あまりそういうことが阻害されないように考慮していただきたい。  それから、さっき安川さんからもお話がありましたように、原子力技術的な進歩は御承知のように非常に速度が早い。従いまして、この法律管理規制内容も、やはりそれらの事情の変化に適応して、だんだん改正されていかなければいけない、そういう非常に弾力性を持った内容のものが望ましいという感じがいたします。たとえば、この法律にもありますように、使用済み燃料の再処理というようなことにつきましても、一応ここでは燃料公社に限定しておるけれども、あるいは将来均質炉等が発達をいたしますと、必ずしもこれにより得ないような場合も生じてくるのじゃないかというような問題もあるように存ぜられます。  それから最後に、もう一つ申し上げたいのは、最近国際的にも非常に水爆影響ということが問題になっております。まことにこれは重大なことであると思います。それだけに、この原子力平和利用に関しましても、十分な管理をして、一般に安心を与えるということが非常に必要であると思うのでありますと、同時に、これはこの法律には直接関原がございませんが、一面にそういう非常に新しい産業であり、またその開発が一本の産業土非常に重要なウェートを持っておると考えられますだけに、一方に十分な規制をやりますと同時に、他方において、こういう産業保護助成策を、これは別の法律の問題になると思いますが、やはり車の両輪のように考えていただきたいということをお願いしたいと思います。原則といたしまして、早急にこの法律成立いたしますことを希望してやまない次第であります、
  10. 菅野和太郎

  11. 武谷三男

    武谷参考人 この法案を拝見いたしましたけれども、今おっしゃられましたように、われわれが一言いたいことは、何かあとの話になっておるみたいな感じです。一番重要なことは、どういうふうにこれを規制したりいろいろするのかということをわれわれは一番問題にしておるので、政府が責任を持っておるという観点はこの法案割合によく出ておりますが、しかし同時に、どういうふうにやるかという点でわれわれの心配せざるを得ない面が大いにあると思います。保安のために必要な措置を講ずるよう命令するとかいろいろありますが、それでは必要な措置というものは一体どういうものであるか。その場合にいろいろと今後研究しなければならぬ問題も大いにありますが、その点を一番われわれは心配しております。特に今の力がおっしゃいましたように、電力が足りないということで電力を急がれるあまり、危険性を顧みないで、もっぱら電力を作ることを無謀にやりますと、電力はできるかもしれないが、しかしそれもあまりはっとしないと思いますが、国民体質はだめになるし、遺伝的にも非常な障害を来たしてくるということになりよすと、取り返しがつかない。この問題は、この法案といたしましては、第一に英米ソなどというものが先進国として原子力の発展をさせておりますが、日本と非常に違う点は、軍事的のものが優先しておる。ですから、外国原子力法を見る場合には、軍事的の面とのかね合いが日本ではないのだということです。しかし、他面またノルウエ一、フランスなどとの違いというものは、ノルウエーフランスは軍事的な面はまだあまり大きくなっておりません。これはノルウエーは、特に軍事的なものはありませんが、しかしまだ原子炉放射線危険性が十分認識されていない時代から始めていたという点がだいぶ違う、そう思います。それからもう一つは、商業的な目的がまだはっきりしないという時代に始めていたということであります。それから、インドとの違いは、インドは大体日本と似たような面がありますが、しかし、国土の広さとか、工業水準というような面で違う。そういう点をよく考えあわして、法律お作りになるという必要もあると思います。  それから、この放射線というものは、よく質問されまして、どこまでが安全かということを聞かれますが、これは学問的に言いますと、安全というか、要するにどんなに微量でもそれなりのがある。もちろん微量ですぐ死ぬということはありませんけれども微量でもそれなりの害があるということは、学問的にそうであります。ところが、何か有利な面がありますと、それとのバランスにおいて許容量というものが考えられる。つまり許容量というものは、政治的な妥協の量であって、学問的な量ではない。従って、電力国民体質という場合に、国民寿命が何年か知かくなったり、それからあと何人か何万人か何十万人かのかたわができても、電力の方が重要であるというような、電力国民の保健や体質というものとのバランスの上に許容量というものが考えられるわけです。従って、電力業者電力をあせられて、国民体質を犠牲にするというようなのは、何か戦時中の至上命令というようなものであるならば、それはやむを得ないかもしれませんが、そういうわけではないと思います。  それから、許容量以下でどの程度の害があるかという問題で、たとえば、アメリカで去年発表しました科学アカデミー報告書の中に、これは何度も私引用するのですが、放射線に特に関係を持たないお医者さんの寿命が六十五・七年で、放射線に幾らか関係のある泌尿器科皮膚科のお医者さんの寿命はそれより二・五年短かくなっております。これはもちろん許容量以内が当っていると思います。それから放射線技術者、これはアメリカのことですから、許容量を越えてそんなには当っていないと思いますが、それがまた五年短くて、六十・五年という平均年令になる。こういうふうに許容量以下でもかなり寿命影響があるということは、統計的に見えております。それで放射線で非常に困るのは、お医者記は、その放射線障害でも、よほど大量の放射線に当った人でないと、興味がないということであります。で、お医者さんは、病気になって目の前に現われてくれなければ、興味がないわけです。ところが、微量放射線というものは、何らかの悪影響があるにもかかわらず、それがすぐ病気になって現われたり、それから直ちに検出できない。その点、何か原子力のこれでも、もちろん職業人一般人に対する基準は違っていいはずですが、職業人に対してでも、現場で働いている人がおそらくある許容量以下のある量に対して寿命が何年か実際短かくなっておると思いますが、それにもかかわらずちょっとお医者さんが調べてみても、熱が出るわけでもないし、白血球が減るわけでもないということだと、全然無害だといって突っ放されるおそれがある。それから、一般人に対してもそうです。何か原子力発電所の近くの放射線水準がふえているというようなことで、検出したというような場合にでも、その検出したときに文句を言っても、まわりの人の実際からだを調べてみて、害がないではないかと言って突っ放される。害がわかったときには、もうこれは取り返しのつかないことになっているわけです。よほどその点を考えて、ただ害があると思ったらどうするというようなふうな形のものであっていいかどうか。どういうふうな措置を講ずるべきかということは、なかなかむずかしい問題かもしれませんが、よほどモニター、管理というようなことが厳重になされないと、ただ、いいかげんに今までの工業に対する――今まででも重要な問題はたくさんあります。ありますけれども、それにも増してよほど根本的な措置を講じなければならぬ。たとえば、放射能発見者である英国ソディ先生が書いておられるのに、英国原子力発電所は非常に慎重にやっているという話で、安全だろうかという質問ソディ先生質問したところが、ソディ先生は、そんなのを安全だと思っているやつは気違いざたである。そういう連中は、原子力発電所の煙突の上にフィルターがあると言うのが、あの上に住まわしてみるがよろしいというようなことを書いておられるのであります。そういうふうに、よほど慎重に物を考え、かつ根本的な何か管理方式お作りにならないと、取り返しのつかないことになる。外国でも水爆実験のことをごまかすという目的一つはありますが、こういういろいろの報告書には、水爆実験よりも平和利用の方がはるかに危険であるということすら言っておる。これはもちろん片方片方よりもより危険であるというような問題ではありませんけれども平和利用の心配ということを非常に深刻に外国でしているということを、念頭に置いていただきたいと思います。
  12. 菅野和太郎

    菅野委員長 以上をもちまして、参考人意見の開陳は終りました。  これより、参考人及び政府当局に対しまして、質疑を行います。政府当局よりは、石川原子力委員及び有澤原子力委員出席されておりますので、念のため申し添えます。  それでは、通告に従いまして、質疑を許します。岡良一君。
  13. 岡良一

    岡委員 政府方々に対し、あるいは原子力委員方々に対しては、また委員長出席の上で私はお尋ねをいたしたいと思いますが、今日御出席参考人方々の御意見を拝聴いたしまして、若干お尋ねをいたしたいと存じます。  そこで、安川参考人の御意見である特にこの規制法の中の障害防止障害防止と申しますよりは、むしろ事故による、災害による人あるいは物に与えられた障害、あるいは損得に対する補償措置というものが、明確になっておらないようであります。そういう点は、いずれ法案内容に立ち至って私ども政府の方の御見解も尋ねたいと思いまするし、また御指摘の、あるいは船舶川の原子炉運輸大臣、あるいはまた発電原子炉については通産大臣にというふうに、許可権についても多元的な取扱いが行われておりまするので、こういうことからして、原子力平和利用手続等の面で複雑になり、従って、いわば非能率的になろうではなかろうかという御懸念、これも法案運用に関する内容にわたって、私ども政府当局にいろいろまた見解をただしたいと存じます。それから、武谷先生に、関連をいたしまして、放射能障害ということについての私見を拝聴いたしましたが、それらの問題は、先般放射性同位元素等による障害防止に関する法律案の審議の際、当委員会でも、重大視いたしまして、いろいろ論議を尽した点でありまして、まことにごもっともでありまするので、そういう点は安川参考人の御意見とも関連して、法案内容においては、私どもまだ意に満たないものがあるわけであります。ただここでお尋ねをいたし、またあわせて、かねてこの方面経験もあり、造詣の深い参考人の方から、教えていただきたいとも思っておる点でありますが、この法律案がいよいよ成立をし、また施行に至るということに相なりますると、結局法律に規定された手続を経、またその基準に合致したものであれば、松根参考人が出ておられまするが、民間電力会社でも、発電原子炉を導入し、運転することができるという道が開かれるわけであります。そこで、先般も九電力社長会議とかいうような会議でも、やはりそれぞれ共同に出資をして、原子力発電のために具体的な事業を興したいというふうな御決定があったやに新聞が伝えておるのであります。こういうことで、とにかく日本では原子力平和利用といえば、まあ何をおいても原子力発電というふうな格好になっております。そこで、これも昨年の一月の初めに、当時の正力原子力委員長アメリカ動力協定を結ぶ、そうして日本エネルギー需給の危機を乗り越えねばならぬ、あるいはまた、アメリカに比して日本国民一人当りのエネルギー消費量はきわめて低いのであるが、これを高めて、国民生活水準を向上させる必要がある、こういうようなことを言われて、当時非常な物議をかもし、湯川原子力委員のごときは辞意を表明されたというような、原子力委員会発足当初において非常に大きな衝動的な事件もあったわけであります。そこで私は、電力専門松根さんにお尋ねをいたしたいのでありますが、一体電力業界から見て、日本エネルギー需給の将来に予想される逼迫を緩和されるためには、現在のような電力業界動きを見ておりますと、その動きのような形で何が何でも原子力発電を急がねばならないのであるかという点であります。その点が、私どもどうもこの委員会においても、あまり納得のいく御答弁を政府当局からも得ておりません。そこで、この点を納得のいくように教えていただきたい。それから、この点ではかねて専門的な権威と私ども承知しておりますが、有澤先生日本エネルギー需給の将来の見通しのし上に立って、今日電力業界が盛んに原子力発電を急いでおられますが、それほどに急がねばならないものであるのか、もっと他に打つべき手があるのではないか、このような点について一つお教えを願いたい、こう思うわけであります。
  14. 松根宗一

    松根参考人 ただいまの御質問は、なぜ電力業者原子力発電を急ぐか、そういうふうに日本エネルギー事情は詰まっておるのか、ほかに方法はないのかという御質問と存じますが、今お手元に簡単な電力事業者が見ましたエネルギー事情の数字を差し上げてございますが、大体申し上げますと、日本電気事業というものは、水力火力でまかなわれておるわけであります。水力の方は、日本包蔵水力は約二千三百万キロありまして、これが順次開発されておるのでありますが、これも今日のような需用の増大が非常に急速でありますと、昭和四十年ごろは、有利な経済的に引き合うものは、かれこれ開発されてしまうという情勢でごいます。一方、それでは火力発電の力はどうかと申しますと、これは戦後非常に火力発電機械が進歩いたしまして、いわゆる新鋭火力というようなものが外国でできまして、これを輸入し、またその技術日本に導入して、日本でも優秀な新鋭火力ができるようになりました。これは非常に燃料消費量が低いということから、特に従来水力二、火力一くらいで開発されておりましたのが、最近では逆に水力一、火力二というような開発割合になって参っております。これは一に火力発電が非常に水力より進歩したということから来ているわけなのであります。機械の力はそういうふうに外国からも入って来、またその技術日本で導入いたしまして、りっぱな機械日本できるようになったのでありまするか、それに食べさせる燃料が非常にむずかしくなって参った。実は私も最近そういう問題で九州を一回りして参りましたのですが、御承知のように、日本火力石炭を全部使っておりますので、この石炭産出が、昨年の経済伸張の六カ年計画では、今日から数えて五年後には六千二百万トンぐらいというのが最大限度と抑えたわけであります。これは九州だけでなく、全国の石炭産出量の予想でございます。昨三十一年度はどのくらいかと申しますと、約四千八百万トンでございます、そこで、かりに日本石炭産出量が六千万トンとしました場合に、そのうち電力に向けられるのは千五百万トンというのが大体の見通しであります。そういたしますと、今後電力の供給が、火力を重点に行なっていくということになりますと、どうしても多量の石炭が要る。この供給が非常に日本石炭ではむずかしい。たとえば、今年度はどうかと申しますと、すでに千四百万トン石炭が要る。ところが実際は、石炭として供給し得るものは、まず一千万トン内外である。そこで、やむを得ませんので、重油を使って、今年はそれを切り抜けよう。それで、重油に換算いたしまして、約二百万キロリッターくらいのものを使わざるを得ない。これをぜひ輸入さしてもらいたいということをお役所の方にお願いしている状態であります。今後毎年ふえていきます設備の方は、大体百万キロないし百五十万キロくらいは火力設備をふやしませんと、供給に間に合わぬ、需用に追いつかない。大体三十四、五年ごろには、需給バランスがとれるようなふうに開発の方を促進いたしております。その計画によりますと、毎年百万キロないし百五十万キロの電力開発をしなければならない。そのうちの約三分の二は火力、こういうふうに非常に火力のウエートがふえて参りますと、今申し上げたように、燃料消費量が非常に累増する。大体先刻申し上げたように、日本電力向けの石炭のワクは年間千五百万トン、よく行って千六百万トンじゃないか。すでに今年千四百万トン使うという状況でありますので、ふえていきますものは、今後当分どうしても重油によらざるを得ない。ところが、この重油は、御承知のように、全部外国から持ってくる。これは第一外貨の非常な消費をいたしますということと同時にこれ運びますタンカーの量、またその港湾設備というようなものを入れますと、なかなかお金がかかるわけであります。と同時に、先般もありましたように、スエズ運河のような問題で国際上の紛争が起りますと、必ずしも安定した供給が期待できないような事態も起ってくるのじゃないか。こういう基本産業が、そういう不安定なものに永久に依存していくということは、とうてい日本としてできないのではなかろうか。もちろんその間に外国炭、つまり中共あるいは台湾、樺太というような国の外国炭の輸入も企図いたしておりますが、これもそうたくさんのものは期待できないという状況であります。そういう状況から考えますと、この表に書いてありますように、大体日本電力向けに使い得る油というものは、年間千万キロリットルくらいじゃなかろうか。その場合に、日本で使う重油の量は、ほぼ四千万キロリットルか五千万キロリットル、その程度日本としての輸入し得る油の限度じゃなかろうかというようなおよその想定をつけまして、それじゃいつから原子力発電が必要かということになってくるわけであります。ただいまの御質問に対する御返事といたしましては、大体そういうようなエネルギー市価にありますために、将来は必ずこの原子力発電に依存せざるを得ないということは、大体電力業者のみならず、一般もそういうふうに考えておりますわけであります。ただ、この原子力発電は、御承知のように、先般私どもイギリスに行ってコールダーホールを見て参りましたが、何分にもまだ外国でも初期のものであります。これを日本でこなし、また日本でこれを作っていくということになりますには、相当の年月がかかります。従いましてかりに今年発注いたしましても、これを日本に建設して動かすまでに約五年、それからあと運転その他をいたしますと、どうしても六、七年の年月が、今日から注文してもかかるというような状態を考えますと、一方油にもその程度の限度を考えますと、また十分日本で研究もし、日本での原子炉の製作を十分やっていくということを考えますと、なるべく早くこれは輸入して、日本原子力一般の技術水準の向上をはからなければいけない、こういうふうに考えます。大体そういうことを勘案して、われわれの方としては、昭和四十年に大体百万キロぐらいの原子力発電をやったら、ちょうどいいんじゃなかろうか、大体三十万キロくらいのものといたしますと三台か四台、そういうふうなおよその見当をつけております。四十年以降、五十年あるいはさらにその先になりますと、ちょうど今の水力から火力に切りかえられたように、原子力発電割合が非常にふえて参る勘定になるわけであります。そういう意味におきましても、なるべく早くこれを輸入して、実用化に移る段階を急ぐ必要があるのじゃないか、こういうふうに考えます。
  15. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 ただいまの御質問お答えいたします。エネルギーの需要は、日本の経済の発展とともにだんだん逓増する割合でふえていく、これは日本産業が重化学工業化すればするほどエネルギーの需要が、今までの需要増加率よりももっと大きな増加率でふえていくということは、これは当然のことだと思います。そこで、このエネルギーをどういふうにまかなっていくかということにつきましては、今松根さんからもお話がありましたように、水力火力――火力といいましても石炭と重油でございますが、それでまかなっていくということになります。特に電力でございますが、電力となりますと、水力の方もだんだん枯渇してきましょうし、火力について申しますと、輸入の電力資源に依存する割合がだんだん大きくなってくるわけであります。私たちの方でも、このエネルギー需給バランスがどういうふうに変化してくるか、今後十年なり二十年の間にどういうふうに変化していくかということにつきましては、鋭意研究中でございまして、まだ十分の結論を得ておりませんけれども、御質問がありましたから中間的に申し上げますと、私の考えでは、大体昭和四十年から四十五年の時期になりますと、輸入のエネルギー源が非常に大きくなってくる、別の言葉で申しますと、重油または原油の輸入が著しく大きくなってくるということでございます。従って、これを全部輸入のエネルギー源でまかなっていくということになりますれば、それはそれでもやつていけると思いますけれども、しかし、その時分になりますと、おそらくエネルギーの輸入のために必要とする外貨は、五億ドルから七億ドルに及ぶことと考えられます。五億ドルないし七億ドルの輸入エネルギー源ということになりますと、このエネルギー源の輸入は、食糧とやや似た関係がありまして、非弾力的でございます。つまり外貨の事情が困るからこれを少し節約しようというふうに、簡単に節約できる需用ではないのであります。その点ではちょうど食糧と似た関係にあると思います。でありますから、外貨の事情を考慮いたしますと、この輸入エネルギー源が外貨所要量の割合としてあまり大きい割合を占めるということは、避けなければならぬと思います。それがどの程度であるかということになりますが、諸外国の例で見ましても、大体十数パーセント、まあ一五%程度、それ以上になりますと、外貨事情に対して、このエネルギー源輸入ということが、大きく圧迫を加えてくるようになると考えます。それでありますから、一五%といたしまして七億ドルといたしますと、四十何億ドルの輸出というか、外貨の獲得がなければならぬことになります。ですから、現在の輸出が二十五、六億ドルだとすれば、大体倍近い輸出規模がなければ、これだけのものを十分にまかなっていくことはできない、こういうことになろうかと思うのであります。それから後もその勢いで輸入のエネルギー源というものがふえて参るのでありますから、おそらくその時分になりましたならば、ほかのもっと外貨を食わない、外貨をあまり使わなくて済むようなエネルギーに置きかえなければならない時期がくると思います。その時期を、私は、大体今申しましたように、昭和四十年から四十五年の時期であろうと考えております。でありますから、その昭和四十年から四十五年の間には、少くとも日本におきましては、原子力による発電が行い得るように、そういう事態に持っていかなければならないのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。その原子力による発電の可能な状態に持っていくという意味は、今のような考え方でございますから、そのときには、毎年々々原子力による発電割合が――水力もむろんやりましょうし、火力、重油による発電もむろん行われましょうけれども、その開発される電力源の中に占める原子力発電の比重が、だんだん大きくなっていくことができるような状態に持っていかなければならないということでございます。別な言葉で申しますならば、昭和四十年から四十五年ごろにかけまして、日本におきまして、日本技術原子力による発電可能なるような状態に持っていかなければならない、こういうふうに実は考えておるわけであります。
  16. 岡良一

    岡委員 大へん私ども啓発されました。ただ、問題は、ただいまの松根さんと有澤委員の御見解の中に、計数的なものではなく、発電のあり方について多少差異があったかと思いますが、一応私ども原子力発電をまっこうから否定するわけでも何でもありませんし、むしろ原子力発電日本がどんどん取り入れていくべきだという見解においては、一致しておるわけであります。ただ、今いただきました。パンフレットのようなもの、今いただいたばかりなので、まだその内容はよく読んでおりませんが、特に今、御指摘になったように、石炭、重油というふうなものが、有澤先生のお考えにもあったように、非常に外貨を食うという場合は、それはある程度抑制しなければならないという御意見、またそれは電力会社とすれば、おそらく利益採算の立場からも、そういう法外に高いものを輸入するわけにはいかぬというような御意見もありましょう。それではもし万一日本原子力発電をやるといたしました場合、今アメリカ動力協定の交渉に入った、あるいはコールダーホールの改良型というようなものが入るようになっている、ところがかりに改良型を入れましても、改良型では炭酸ガスがカドミウム・ガスになって、多少熱効率は上っておるようでありますが、しかし天然ウランの消費量そのものは、電気出力において増加はするが、あまり変りはないのではないかと思うのです。最初二百トン入れて、年々の詰めかえが五十八トンばかり必要ではないかといわれておるわけですそれからアメリカから、問題になっておるヤンキー・タイプですか、PWRのあのリアクターを入れると、これも機密資料の通報を含まない協定では四十キロしか濃縮ウランをくれない。これはフランスとの協定の中に書いてある。フランスは濃縮ウランが作れるからということで受け入れているわけです。機密資料を含めば五百キロまでは濃縮ウランをくれるそれで問題は、なるほど高い安いの問題はありますが、日本は御存じの通り天然ウランも何も、ない。将来も日本原子力発電をどんどんやるとしても、そのための原料である天然ウランなり濃縮ウランというものは、日本では国内に求められない。そうなると、日本の経済構造の根幹であるエネルギーの最も重要な原料として、鉄、石炭日本にはないが、一方また原子力発電をやっても、その原料は外国に依存しなければならないというような事態になるわけです。しかもこれは政府間の協定等によって、かなり厳重な拘束なり制限を受けながら原料の輸入をはかっていかなければならないというような状態になる。こういうような事情をお考えの上で、なお今おっしゃったように早く発注して、少くとも四十年近くには、この原子力発電に持っていかなければならないというような結論になるのでございましょうか。こういう関係をやはりよく御検討の上でそういう結論におなりになったとすれば、その点私どもいささか問題が残っているように思うのでございますが、私どもの蒙を開いていただきたい こう思うのです。
  17. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 その燃料の問題は、わが国にとりましても、最も大切な問題だと思います。それで今お話がありましたように、わが国といたしましては、礎に置くべきかという問題が、根本的に考えられなければならないと思います。それで、燃料の中に天然ウランと濃縮ウランとあるわけでありますが、おそらく濃縮ウランは国際原子力機関等を通じて得られると思いますけれども、これは発足して間もないことでございますし、かりにもう二、三年待たないとはっきりしないと思います。これに反しまして天然ウランの方は、これは今の趨勢から申しますと、外国から輸入するにいたしましても、鉱石ならばこれを輸入することは比較的楽になるような世界情勢になるのではなかろうか、こういうふうに実は考えております。ここ数年たちますと、おそらくウラン鉱石は相当各方面に多量に産出をされまして、国と国との間に協約は必要といたすかもしれませんが、鉱石を輸入することは比較的容易になるのではないか、こういうふうに考えております。それからまた東南アジア地方におきましても、燃料としましてのたように、わが国といたしましては、原子力発電燃料の基礎をどういう基トリウムとかウランをできるだけ開発して、日本として入手できるような道を開くべきであるというふうに考えております。ですから、天然ウランを燃料とするような開発方式をとっていきますならば、日本として考えた場合に、比較的燃料の問題はその道が聞けるのではないか、こういうふうに考えております。むろん国内におきまして、天然ウランの探査をもっと厳重にやらなくちゃならぬと思います。これをやりますと、案外日本にもまだかなりのものを発足することもできないことはないと思います。これは一種の奇跡とでもいうべきものでございましょうが、フランスの事例もあることでございますから、日本におきましても、全国にわたってもっともっと徹底的な探査を行うということが必要だ、こういうふうに考えております。
  18. 岡良一

    岡委員 私も十分調べたわけでもありませんが、この天然ウランの入手についても、もう昨年の暮れにカナダと日本政府との間に、天然ウランについての協定を結び得る情勢が見えたようですが、これがまたすっかり影を隠してきているような便じがしているのです。これというのも、やはり米英の動力炉売り込み競争とからんで、いろいろ外交的な問題が起っているのじゃないかと思う。あるいはベルギー領コンゴのアフリカの天然ウラン鉱にいたしましても、御存じのように、まだここ数カ年間はアメリカ及び英国に七五%まで出すという協定が現に守られておるわけです。それからアジアの方を見ましても、ただ、あるであろうという話だけで、的確な見通しというものは、日本としてまだ持てないような状況なんです。こういうような条件の中で原子力発電を急ぐ、いわば燃料についての手当をするといっても、安心のできる保障を持たないで原子力発地をするというやり方は高くつくから、安いものでやりたいというのがあなた方の屈曲かもしれないが、日本においても全く基本的、自主的に原子力開発をしていこうという立場からいうと、そろばん勘定から、原子力開発というものはゆがめられてくるんじゃないかという懸念を持つわけです。これは率直に申し上げておるのですが、あなた方の立場としては、利益採算で言われるのかもしれませんが、そういう点を御考慮になった上でのお話なんですか、特に燃料の見通しについて、十分御検討の上で御計画なんですか、そういう点も一つはっきりとお答え願いたいと思います。
  19. 石川一郎

    石川説明員 この問題については、多少調べて参りましたから、御報告申し上げたいと思います。  まず第一に、われわれとしては、現在の石油の事情をいろいろ考えてみますと、非常に残念なように思いますので、ああいうことにならないように、日本核原料物質については手当をしていかなければならぬと存じますので、日本におけるウランあるいはトリウム鉱等の探査並びに開発は、全力をあげてやりたいと思っております。  なお、そのほかに、アメリカでありますが、アメリカは、もし一般協定をやりまして、日本が炉を買うような場合におきましては、十年でも二十年でも保障するということを申しております。ところが、たとえばここで一般協定を来年度もいたしまして、十年とか十五年とか契約をいたしましても、その炉ができるまでには二、三年かかるのでございます。それですから、十年契約をしても、炉を作るまでに二、三年かかってしいますから、炉を作ってから七年しか燃料がもらえないということになります。そういうことじゃ困るじゃないかという話をしましたところが、それはその炉ができてから十年ということにしてよろしいと言っておりました。なおまた、来年あつらえればいい炉を、二、三年先にあつらえるということになりますと、今度は濃縮ウランなら濃縮ウランをもらう時期が非常に短かくなる、それでは困るという話をしましたら、それは保障するということを言っておりました。これはまだ文書でなにしたんじゃございませんけれども、話し合いはしました。それから今アメリカは、世界各国に対して濃縮ウランを出すということを公言しております。これは外国に二万キロ出す、その二万キロの中で五千キロは今後国際原子力会議を通じて出す、こういうことを言っておる。あなた方はそう言っていらっしゃるけれども、今はまだそういう炉があまりできておらぬからそういうことは言えるだろうが、これから十年、二十年たった場合に、各国で原子力発電をやるという場合において、あなた方の方で、今までの炉を動かす分量にプラスして、今度は新しくスタートする分が非常にふえて参りますから、引き続いてできますか、こういう質問を向うの最高幹部と会ったときにしたところが、それは保障する――もちろん契約をしておりませんので、口だけの問題ですから、これはもう少し一般協定でもやるときは、その点を念を押す必要があるかもしれませんが、そう言っておりました。  それから、カナダでありますが、カナダは一九六二年の三月三十一日までアメリカに供給する約束をしておるのでございますが、最近御承知の通りに、カナダではウラニウムの鉱区が非常によけいに発見されまして、今までウラニウムの採鉱、開発につきましては相当の補助をしておったのでございますが、あまりよけい出されては困るということで、打ち切りました。しかし、一九六三年の三月までアメリカに供給する契約をしておりまして、わずかのものならばこれまでのように供給ができるだろうが、一九六二年以後になりましたならば、相当できる。こういうことをカナダではいっております。しかしながら、カナダのウラニウムの開発はごく最近でありますので、まだ見当がよくついておらない。昨年私が向うの総理その他に会いましたのが十一月でありましたが、そのときに実はまだ開発しかかって、よけい出てくる見通しがついておるけれども、見込みだけであって、しっかりわからないから、大体将来のウラニウムの鉱石あるいはイエロー・ケーキとして供給する点について今考えておるから、今年中に何とか政府の方針をきめよう、それで政府の方針がきまりましたならば、それを下部の機関に移しまして、炉をやるかということをきめる、こういう話をしました。なお、カナダによけいウラニウムが出るということがわかりまして、他の国から相当申し込みが多いようでありますから、相当早くこの問題は申し込みをして、交渉をやっておかなければいかぬじゃないか、そう考えております。  それから東南アジアの方面でありますが、ここではまだ申し上げかねるような状況になっておりますけれども、ある一私会社でありますが、ある鉱区をある方面でとったという報告を、二、三日前に受けました。なお日本がそれをやろうとした前に、他の国からじゃまが入って、非常に困ったことがあります。それが復活いたしまして、今、交渉中のところもあります。そういうこともあります。これはトリウム鉱でありますが、原料を将来確保する道を講じつつあるところであります。  なお、イギリスは、自分の国ではウラニウムは出ませんけれども、君の方はそういうものを日本に売ってもいいという話をしておるが、一体ウラニウムは将来どうなるかという話をしましたところが、君の方に売っておいて、それがもし供給ができないようなときは、英国がつぶれるときだ、こういうような話をしておりました。いずれもし買うということにきまりますならば、その前に一般協定の問題も進めて参らなければならぬと思いますが、そのときに今までの活をチェックする必要があると思います。
  20. 岡良一

    岡委員 石川さんは英米等をずっと回られて、それぞれ要路の方、責任ある地位の方と会って、話し合いをしておられます。しかし、いずれもほとんど口約束なんです。ところが、ここに私は問題があると思うのです。去年正力さんが原子力発電だと言ううたのも、コンモンウエルス・エジソン社がとにかく〇・六ペンス・キロワットでもいける、七ミルでもいけるといった。コンモンウエルス・エジソン社のあの七ミルなるものはほんの紙上計画です、やってもいないものを、やっていけるんだとこれに飛びつかれて、そして原子力発電ということを大いに言われたわけです。特に原子力問題が世界の外交のいわば中軸に据えられてきておるわけです。それだけに、単なる口約束で大体見通しがつくだろうというわけにはいかないと私思うのです。国の施策として取り上げるためには、一般協定なら一般協定の交渉に入ってよろしいが、その過程でほんとうに国際信義上動かないというものをつかまなければ、私どもは、ただいたずらに、それ以前に原子力発電だ、原子力発電だというようなかけ声を上げることは、私は責任ある態度だとは思わないのです。特に今アメリカにしたって、マッキニーの報告などを見れば、金にして十兆ばかりです、原子力産業を引き取る潜在能力が海外にはあるというようなことをいっておる。英国においても今後における英国の輸出産業原子力産業だといい切っておる。こういう形で後進国に対する動力炉の売り込みに西ドイツと日本はねらわれておる。だから日本にすれば、いいお得意様なんだから、その辺のところを考えて、私ども商売をやったことはないが、やはり特に経済関係の方は腰を据えて取っ組んでいただかなければ困ると思うのです。こちらから手の内を見すかされるように、やれコールダーホールの改良型だ、やれシッピングボートだなんということで飛びついていかれるような行き方というものは、決して日本原子力発電を健全に発展させていくためにも、私はとるべき態度じゃないと思うのです。まあ国際原子力機関の問題にいたしましても、アメリカは二万キロ放出すると言いましたが、国外には五千キロしか国際原子力機関に出しておりません。ここに私はやはり問題があると思うのです。要するにアメリカは、国際原子力機関を作れということを一九五三年の十二月にアイゼンハワーが国連総会でみえを切りましたけれども、その後三十八の国と双務協定を結び、八つの国と動力協定を結ぶというような形で、二万キロ国外に出すと言ったけれども、五千キロしか自分の青い出した国際機関に出しておらない。ここに私は、アメリカ原子力による海外協力というものの一つの限界があると思うのです。こういう点もやはり見通しを立てて、見定めた上で乗りかかっていただかなければならぬと思うのです。  それはそれといたしまして、それでは、これは松根さんにしろうとのようなことをお尋ねするようで恐縮ですが、先ほどのお話にありました原子力発電の前に何かすることはないのかとということを実はお尋ねしたいのですが、この間私は、只見川、佐久間ダム等に参りまして、現地の技術屋の方にいろいろと意見を聞かしていただいて勉強して参ったのです。そのときに、たまたま火力の話も出まして、さっきのお説のように、ここ両三年来新鋭火力発電所ができて、熱効率が非常に高まってきたというようなことから、出力も倍近いものだ、だから現在では古いものをもっともっと新しいものに切りかえていく必要があるのじゃないか、やはりこれで相当新しい電力を確保できるのじゃないか。それから佐久間ダムの建設所長でしたか、超高圧送電をやれ、従来のロスを二割くらいにとどめられる、そうすれば莫大な建設資金を投じて、三百六十億も投じて佐久間をやるよりも、木曽川水系をそれだけやるよりも、とにかく非常にわずかな金でやれるのだ、こういうことをやらないで、原子力発電原子力発電といって原子力発電を花形呼ばわりしているのは、日本電力事情に実に暗いものだということで、あなた方の方が非常に批判されておったことがあるのです。そういうふうに聞けば、私はしろうとですから、なるほどそうかなと実は思うわけですが、そういう点に少し手抜かりがあるのじゃないですか。もう少しがんばらなければならぬ面があるのじゃないでしょうか。内を固めながら、さらにその外に手を出していくという着実な方法で、もう少し努力をする必要があるのじゃないかという感を実は深くしたわけです。そういう点、いかがでしょうか。
  21. 松根宗一

    松根参考人 今の岡さんのお話、非常にごもっともなことなんで、実はまだ原子力発電というものがはっきりしないうちに、もっとやることがあるのじゃないか、たとえば火力の新鋭化をもっと進めたらどうだろう、あるいは超高圧その他によって電力のロスを減らしたらいいじゃないかということ、これは実はすでに相当の金をつぎ込みまして、現実にロスの方はこの四、五年来数パーセント――二四%くらいありましたものが、今はもう一八%くらいになりました。おそらくこれは将来は一二、三%に下っていくと思います。その計算が実はお手元に差し上げました需給バランスの中にもう勘定に入っておったわけであります。それから、火力の新鋭化の問題は、当初の計画といたしましては、古い火力を置きかえ、これによる燃料の節約をはかるためにここ数年やって参ったのでありますが、たまたま需用が急にふえまして、従って、やむを得ず、今古い火力を動かさざるを得ないという状況でございます。そういう意味で、古い火力の置きかえと同時に、需給バランスをとっていくという意味において、昨年の暮れから火力の増設計画をテンポを早めまして、今やっております。従いまして、おそらく毎年古い火力の廃棄が五十万キロくらいずつ出てくる勘定だと思います。それだけを新しい火力に置きかえていく、つまり能率のいい火力に置きかえていくわけであります。大体三十四、五年になりますと、古い火力はよほどの渇水であるとか事故とかに動かすが、あとは大体新鋭火力でやっていくというような状態になり得ると思います。そのほか配電線の電圧を上げますとか、あらゆる施策を講じて、ロスの軽減には毎年膨大な金をつぎ込みまして、やっておるわけであります。それによる出力の増加、電力の増加は、全部計算に入れまして、なお今のような原子力発電をやらぬと間に合わぬというデータになっておるわけであまりす。
  22. 岡良一

    岡委員 それからこれは有澤先生お尋ねしたいと思うのですが、私ちょうど一九五〇年ごろにロンドンに約一カ年おりました。当時ロンドン・タイムスなりマンチェスター・ガーディアンでも、エネルギーの危機というようなことが非常に取り上げられておったわけなんです。それで、私ども専門的なことはよく知りませんが、泥炭を燃焼してガスタービンを動かす、あるいは石炭の地下ガス化の問題というようなことが技術的な問題として取り上げられておった。私、一昨年ロンドンに行きましたときに、その後の経過を見ると、それが非常に実用化されておる。そういう形でやはり現在国内にあるもののエネルギー化というものに対して、非常に努力を払っておる。ところが日本は、何でもエカフェが日本石炭の地下ガス化について六億ばかり金を出そうということで、当初予算として八千万円を通算省が要求したけれども、大蔵省の査定で削られた、こういう形で、政府自身がエネルギー問題と真剣に取っ組んでいこうという努力が私は足らないのじゃないかと思うのです。そういうことがまたしても原子力発電へという流れに通ずる大きな原因になっておるのじゃないか、そういう点、先生いろいろ専門的に御研究なんですが、いかがでしょうか。
  23. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 石炭のたとえば低品位炭の利用とか、それから炭坑の地下ガスの利用とか、それからさらに進んでは地下の石炭のガス化といいますか、そういうこともむろん私はやらなければいかぬと思います。エネルギーの問題というのは、国全体の問題でございますから、原子力発電というのはその中の一つだと私は考えております。ですから、何も原子力エネルギーの問題が全部解決できるというわけにはいかないと思います。ですから、特に日本にある唯一といってもいい水力とそれから石炭利用の問題につきましては、国としてもっと十分取っ組まなくてはならない問題だと考えております。イギリスの方も、最近の向うのニュースを見てみますと、御承知のように最初の十カ年計画を変更いたしまして、原子力による発電を、たしか六百万ないし七百万キロだったと思いますが、それだけふやす。最初の十カ年計画は、二百万から二百五十万だったと思いますが、それを倍以上にふやす十カ年計画を新しく立てておりますけれども、しかし、その場合におきましても、なおイギリスは、やはり石炭による発電火力発電をもっとやるんだ。それだけで実は足りないので、それで原子力発電でだんだん置きかえてはいきますけれども、十年くらいの間はとても原子力発電だけでは間に合わないのですから、石炭による火力発電もふやす、従って石炭の増産もやる、こういうふうに報道されております。エネルギーの問題はそういう意味から申しまして、もう原子力発電になればほかのエネルギー源の問題はどうでもいいんだということは、私はないと思います。従って、日本の場合におきましても、やはり石炭のもっと高度の利用水力につきましても、おそらくそういう問題がまだ残されておるのではないかと思いますが、その点は私はまだよく調べておりませんからわかりませんが、石炭につきましては、おそらくもっと地下ガスの問題、低品位炭の問題とか、石炭の完全ガス化の問題とか、そういった問題について、もっと真剣に取り組まなければならないことは申すまでもなく確かなことだ、こういうふうに考えております。
  24. 岡良一

    岡委員 いずれにしても、原子力委員会としても、やはり原子力の問題というけれども日本エネルギーの問題に取り組んでいただかなければならぬ段階に来ている。これはもちろん電力会社の皆さんもそうやっているわけです。ところが、日本人というのは悪い癖があって、めずらしいもの好きというのか、すぐそれに飛びついて足が宙に浮く、脚下照顧ということ、足もとを固めるというか、ここにやはり努力しなければならぬ。そうして、模倣模倣で引きずられてしまうというような格好になったのでは、原子力の問題は、そうあっては断じてならぬと私は思うので、しろうとながら、いささか申し上げたわけです。  そこで、有澤先生お尋ねいたしますが、実はこの間予算委員会で私は総理と大蔵大臣に質問いたしました。原子力発電ということになれば、相当な金がかかる。コールダーホールの改良型を入れるといっても、四百八十億かかるので、その維持費ということになれば、やはり五十八トンの天然ウランの入れかえなど入れると、ざっと十年間で、相当――これは石川先生よく御存じだと思いますが、一体そんな金があるのかということを率直に聞いたのです。そんな金はない。だから、日本とすればせいぜい実験程度で、いわば国に潜在しておる科学的技術開発するというところに政府としては力こぶを入れたい、こう言われた。そうなれば、この法律案が通れば、当然電力会社の社長会議が御決定になったような線で、民間発電動力炉というものが生れてくる道がここで開かれてくるわけです。そこで私は有澤先生の率直な御見解を聞きたいのですが、一九五〇年当時エネルギーの危機が叫ばれる前に。国のエネルギーの問題というものは、国全体が、先生が言われるように取り組まなければならぬ問題だ、国の経済と国民生活の根幹だという考え方で、労働党は石炭の国営をやった。現に原子力発電は、これは英国原子力公社が建設したものでも、受け取ってこれを流しておるのは中央電力公社あるいはスコットランド電力公社だ、こというコーボラティヴな形態で、やはり公共性の事業は公共性の経理の基礎に立った運営をやっておるわけです。ところが、この法律案が出てくれば、これはもう民間会社のある程度まで自由競争にまかせてくるということになる。国のエネルギー問題、国にエネルギーが逼迫しておるから、国が国の責任において解決しなければならない問題、しかも今後大きく期待されておる原子力開発計画の中心である発電の問題が、この法律案によって民間の資本にゆだねられる、民間の利潤追求といっちゃ悪いですが、そういうものにゆだねられてくるというようなことは、私どもの党としては、公社形態でいくべきだという主張を持っております。先生の率直な御見解を伺っておきたい。
  25. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 この法律はかなり遠い将来まで一応見通して作った法律だと思います。それですから、現在の事情から申しますと、まだわからないような問題が予想されて、取り入れられている点がだいぶあると考えます。従って、おそらくこの法律の施行後ずっと遠い将来におきましては、原子力発電がいわば自由競争、自由企業によって行われるものというふうに予想していると思いますが、しかしまだそれまでに達する期間というものは、かなり将来のことだと思うのです。それまでの期間が、日本の場合におきましては、むろん私はそう民間の企業がやりたいから許可をする、こういうふうには第一ならないのじゃないかと考えております。それから、さしあたっての輸入する炉につきましては、輸入するというふうな問題になっておる炉でございますが、この炉のあり方、受け入れ態勢というふうなものにつきましては、私はやはりまだ日本技術を確立していく。日本において原子力発電の炉が製作できるような技術基盤を作り出すための実験炉として輸入するのがいいというふうに考えております。やはりそういう炉は実験用の炉でございますから、最初のものは少くとも原子力研究所に置くべきである、原子力研究所を中心としてこれを開発していくべきだ、こういうふうに考えております。それで、今、岡さんの御質問燃料エネルギー全体の、国のエネルギー政策といいますか、あるいはエネルギー経済のあり方という問題につきましては、むろんこれは私個人でございますが、私個人の考えとしては、これは国の経済とかいうものの基盤でございますから、公社の形になっていった方がいいとは考えております。しかし、これは私個人の考え方でございますから、さように御承知願います。
  26. 岡良一

    岡委員 そこで安川参考人にお伺いいたしますが、今、有澤先生からも当初日本に輸入するところの動力、実験炉であるか、あるいは実験用動力炉であるか、これは原子力研究所設置すべきだ、こういう御意見であった。私どももそう思うのです。ところが、政府機関にはまかせない、松根さんのグループはそうおっしゃっている。そこで、これはやはり大きな政治問題になる可能性のある問題だと私は思いますが、原子力研究所の主管者としての安川さんは、これはいかにあるべきだと思われますか。
  27. 安川第五郎

    安川参考人 ただいまの御質問お答えいたしますが、私も原則として今、有澤原子力委員の御意見通りで、いささかも違ったところはございません。私がこの原子力研究所理事長を担当いたしますときの私の意中は、全くこの動力炉を試験的に運営するということを前提として、私は日本原子力研究所に就任したのでありまして、もしこの原子力研究所が単に基本研究にとどまる、実際の利用実施の研究が除外されるということであれば、私はもう明日からでも、この原子力研究所の役員は御辞退申し上げるべきだとすら考えておるのであります。そういう意味において、かりにこの第一動力炉が研究用として設置されるということでありますならば、これはどこまでも原子力研究所が中心となって実施すべきだというこの意向は、私は今後も変らないつもりであります。ただ、実際問題として、現在の原子力研究所の組織、機構、法律でもって、果してこの動力炉の研究が理想通りに行えるかどうか、ここまで考えると、私はわずか一年足らずですが、現在の原子力研究所の研究というものにはほとんど手は染めておりませんので、ほとんど建設と準備にこれまでの時日を費したのでありますが、そのわずかの間の経験から徴しても、これはとても動力炉を今のままで、今の研究所の組織等によって実施しても、十分な効果は上り得ない、だからこれを何とか実際に照らして効果の上るようなふうにしなければ、これはうっかりただ私の理想をもとにして、自分の方で引き受けさえすればよろしいというわけにいかぬのであります。で、今の原子力研究所の動力炉を別にして、比較的基礎研究に近いものをやる上においても、今のままではなかなか思うように実際私の微力では行えないのです。これにはどうしても法律の変更を必要とするんじゃないか、こう私は思うのでありまして、でき得べくんば、今の原子力研究所法というものをもう少し実際に即して、率直に言えば自由に理事長に、ある程度まで委任をされて、弾力性のある運営ができるような組織にしていただかぬと、現在の研究所はなかなか動きがとれぬのが実情であります。ましていわんやこのままで動力炉をこの中に編入しただけでは、私は、もう一日二日のうちに、どこかの壁にぶつかるような状態になるということを非常におそれて、実は何とかしてこの現在の法規をもう少し弾力性のあるものに変えていただきたいという希望に満ちておるのです。これはまあここでお願い申しては相済みませんが、実はそのような考えで、今動力炉の受け入れを、いかなる方法で受け入れたらいいかということをしきりに研究もし、考慮しておる最中であります。どうかその点を御了察の上、何分の御援助をお願いしたいと存ずる次第であります。
  28. 岡良一

    岡委員 全く御主張の通りで、これから真剣に日本の重大な原子力開発ということになりますと、現在の原子力委員会設置法あるいは原子力研究所に関する法律は、刻々に私は改正しなければならぬと思っております。もちろんこれはわれわれ立法府にある者の責任でありますので、御趣旨は私どもも十分共鳴をいたしております。努力の至らないところとして、おわびをいたさなければならぬと思います。  そこで、いろいろお尋ねをしたいこともありますが、時間もなんでありますので――先般二月九日に原子力委員会が米英のいわゆる一般協定草案を検討の上、すみやかに一般協定の交渉に入るという御決定をなされました。そのとき一般協定を締結をして、動力炉を入れるとすれば、それは日本の自主的な原子力の研究開発とどういう調整をとるべきかという問題がまず起り得ると私は思うのであります。また、それがなくてはならないと思うわけです。そこでこの間閣議でもいよいよ関係各省庁とも協議の上、可及的すみやかに米英と動力協定の締結の交渉に入るということを決定になった。そうすれば、原子力委員会としては、当然具体的にいかなる炉を入れるか、いかなる規模を入れるかというようなこと、それと日本原子力開発のための三十三年度、三十四年度の――今、注文をしたって五年後にならなければ運転をしないのですから、もう五年後に来るのだ、それは日本原子力開発の自主的なテンポとマッチしたものでなければならぬと私は思うのです。どういう体系構想で調和をはからんとしておられるか、具体的なものを持っておられるのかどうかという点をちょっとお聞きしたい。それについて、特にこの問題にいろいろと日夜御奔命を願っておる武谷先生からも、一体原子力発電日本の学界のいわば潜在しておる原子力に関する科学的能力の開発と具体的に結びつけていくには、いかにすべきであるか。まあこれはとっさのお尋ねでありますので、きわめて根本的なお心組みでけっこうでありますが、承わりたいと思うのです。
  29. 佐々木義武

    ○佐々木政府委員 それでは私から今まで考えておる委員会の方向を申し上げます。今まで考えておりましたのは、ウオーター・ボイラーあるいは、CP5、その次の段階におきまして国産一号炉等を作りまして、国内技術の育成あるいは関連産業の成果を集大成いたしまして、そうしてまず第一期を経て、次にその成果を基礎にいたしまして、動力炉、これは初期においては実験炉の段階になるかと思いますが、これを輸入いたしまして、そうして第一期の国産で鍛え上げました技術と輸入いたしました動力炉との調整を考慮しながら、さらにもう一段高いその後におきましての動力炉の国産化という問題を目ざしていきたい、これが第二期の考えであります。しこうして後の段階では、将来の燃料対策等も考えて、増殖炉の研究あるいは国産化をはかっていきたいというのが、今までの一応考えておったコースでございます。ところが、その基本的な考え方に対しまして、御承知のように、エネルギー事情が非常に緊迫いたして参りましたので、反面そういう基本的な線に、日本の与えられたエネルギーの緊迫した事情から、どうしてこれを調和していくかという面が強く出て参りましたので、その調和点を、動力炉の面、あるいは動力炉の国産化の面で時期的に、あるいは国産化の方向を見出しながら、どういうふうに調整をしていくかという点が、ただいま一番問題の焦点になっている点ではなかろうかと考えております。
  30. 岡良一

    岡委員 それでは、しかし御答弁にならないと思うんですがね。エネルギー需給度の逼迫とおっしゃいますけれども電力会社の方でもここ五年、六年後に運転をするということですね。そうすれば、今日原子力科学の応用の日進月歩の実積を見れば、実際問題として、六年後になれば、増殖炉のポータブルくらいできるかもしれませんよ。それはあり得ないことじゃないかと思うんです。あるいは融合反応の制御の、実験段階に入ってきている。そういうことだから、エネルギー需給が逼迫しているからという、そういう今おっしゃったようなばく然たる方針では困ると思うんです。基本計画は内定とは言うけれども、三十六年には増殖炉を国産化するというなら、その方向に向って三十四年に天然ウランの国産化をやる、三十六年には増殖炉の実験炉の国産をやるというくらいにちゃんとめどは一応あるわけでしょう。それに対して、どういう具体的な年次計画を持っているかということは、原子力委員会の私は重大な使命だと思うんですよ。三十二年度のものは私ども拝見しましたが、三十三年度、三十四年度は何もない。一方では三十七、八年後を予定して、今度は原子力発電炉の発注があり得るような条件がこの法律でできてくるということになると、それに引きずられてくるんじゃありませんか。少くとも日本の自主的な原子力開発というものは、歪曲をされる危険が私はないとは言えないと思う。だから、原子力委員会とすれば、こういう情勢の中でやはりもっと具体的なものを作っておかなければならぬ。二月九日に一般協定云々の御決定になったときでも、とにかく日本の受け入れ態勢は作らねばなるまいという御発言は、議事録を見ればありましたが、具体的に何をするんだということは何もない。こういうことでは私は困ると思うんですよ。こういうことを申し上げては失礼なんですけれども、こういうところに原子力委員会に有能なスタッフをつけて強化が必要になると私は思うんです。一般協定には入る、受け入れ態勢は何とかする必要があると湯川さんも武谷さんも言っておられる。何を具体的にやるかということは、何ら決定されておらないということは、これは原子力発電をやれという電力会社の御意見原子力委員会がただ歩調を合しているにすぎない。これでは日本の計画的な、総合的な、自主的な原子力開発をやる、その企画と調査と決定をする原子力委員会の態度、任務としては、妥当ではないと私は思うんです。もうここで佐々木さんを責めても仕方がありませんが、武谷先生は、この点いかがお考えですか。
  31. 武谷三男

    武谷参考人 私はお金が国にふんだんにあって、そうしてそれをうんと使うということならば、輸入も何もかもみんなおやりになるのも大へんけっこうだと思うんですけれども、どうやらあまり完全に何でもやる金がないらしいので、それなら一番有効にお金を使うにはどうしたらよろしいかという問題ではないかと思います。それからまた、どれだけの意味があってやっているかということになるだろうと思うのです。どうもわれわれ国内でいろいろおっしゃっていられるのを拝見しても、あまりよく意味がわかるようには書いてありません。たとえば、動力炉を今から注文するといって、五、六年後になるというような問題ですが、これは動力実験炉を買って一体何をするのかということが私にはよくわからない。向うから買ってきて、こっちで組み立てる、それをこっちで見ていたら何か勉強できるだろうというような勉強ならば、得る知識は少くて、金ばかりかかる大へんぜいたくな勉強ではないか。同じようなことが、ほかの方法で、科学者ならもっと早くわかることが幾らでもある。それから溶接とか何とかが早くわかるというけれども、ニインチの鉄の容器を溶接するようなことは、ほかの方法で研究すればよろしい。何もそれを買ってきてやらなければ、わからないというような問題ではない。動力炉につきましては、たとえばコールダーホールの発電所を作った経過を最近伏見君が訳したのが岩波新書で出ていましたが、大へんわかりやすく書いてあるので、お読みになってもわかりますが、あれはあらゆる問題を綱渡りして、克服してきている。あれを見ますと、普通の方ですと、存外容易にできたという印象を受けるかもしれませんが、われわれとしては、綱渡りをやってやっとできたという印象を受けるのであります。それにしても、あそこでやるのは神秘的な原子力ではなくて、一個々々の技術は平凡な技術である、その中のきわめて少い部分が原子炉を使って試験をする必要のあるものである。従って、あれを作ったということに何も神秘的な顧慮は必要はない、買ってくるということはかり頭から考える必要はないだろう。しかし、日本ですぐできるとは考えられません。ああいうものを買ってくるのにわれわれは反対はしませんけれども、しかしあれだけの技術の基盤は、日本で、ほかの方法で十分得ることかできる。日本くらいの工業国であれは、それだけのことはできるでしょう。それだけの基盤を十分考え、いろいろと手に入れた上で、ああいうものを買ってくるならば、非常に意味があるだろうと思うのですが、買ってきて逆転さえすればそれでいいという考え方、それで技術者の訓練ができ、発電ができるというイージーな考え方では困る。第一、注文して買ってきて、五、六年で技術者を訓練するのでは、大へんおくれるのではないかと思います。急ぐならばもっとほかの方法で、今日から技術者の訓練を十分する方法があるということを申し上げておきたいと思います。  それから、これだけの金は、研究の方に使われた方がよほどいいのではないかという問題であります。向うがやったような研究というものをやっていって、実物を作るのはもう少し先に延ばした方がいい。もちろん向うから買ってくるのも、先に延ばした方がいいと思います。第一、今日発注すれば、五、六年あるいは六、七年かかるという場合でも、今から三年後に注文すれば、あるいは二年でできるというようなことになる。それから、技術の発達というものは、おっしゃいましたように、もちろん今、日進月歩でありまして、コールダーホール型はすでに古いと言えば古いということになりますから、エネルギーとの兼ね合いとおっしゃいましたけれども、要するにエネルギーとの兼ね合いで、向うから原子力発電というものをどう輸入するかという場合、一年先に回せば回すほど、有利になることは確かです。何年でも先に回せるだけ回すということです。こういう点は、今までいろいろお話を伺っておりましても、われわれの言葉でいうと、どうも考え方がリニアーな、単に比例的直線的な考え方といいますか、われわれ物理学者はそういうふうに言いますが、もう少しフアンクショナルな考え方が必要ではないか。何か一本調子の考え方で、こうだからこうだという流儀では参らぬのだ、いろいろなファクターを入れて、もう少し曲線的な考え方が必要ではないか。こういう場合に、経済学者はどの程度まで曲線をおやりになっているかわかりませんが、われわれが読んだところでは、あまり曲線的ではない。このごろ、はやっておりますオペレーションズ・リサーチというものがありますが、もう少しいろいろなファクターを考慮に入れられて、たとえばコールダーホールは今注文したら五年後になるだろうということは、三年後に注文したらおそらく二年くらいでできるだろうということでもありますから、そういう兼ね合いをいろいろ考えておやりになる。それから日本原子力発電は、日本の研究がどの程度の研究であり、技術者の能力がどの程度あったときにどうであり、現状で入れたらどうであるというようないろいろな兼ね合いがすべての問題について必要であります。それから、外国との協定が原子力委員会で発表されたのは、最初にいろいろりっぱなことが書かれております。それはウラニウムの入手も、すべて先に行くほど有利であるということが確認されております。ところがそこからあとの問題でいきますと、一つもそれが生きていないので、われわれも実は不満に思っているのでありますが、そういういろいろなことの兼ね合いが何よりも必要であるにかかわらず、そうでない。たとえば外国から燃料を買うというような経済方面の方のいろいろ御検討がありましたけれども原子力発電を買ったって、それは結局外貨を費しているわけですから、それとの差引はあまりおっしゃらないで、これだけ金がかかるから原子力発電をする、まるで原子力発電だと金が一切要らないかのごときおっしゃり方ではないかと思います。原子力発電だってけっこう、先ほどおっしゃいましたようにお金が要るわけです。ですから、その金をどう使って、どれだけの手持の技術があったときに入れたときが一番いいのかというような検討が、どうもわれわれに納得のいくように一つもなされておりませんし、われわれは何としてでも、学問が圧迫されるような状態を欲しませんので、できるだけ自由にやり、また学問は日進月歩でありますから、その学問の日進月歩と即応できる態勢がどういうものか、現在まで検討されていらっしゃるのを拝見いたしましても、一つもわれわれ学者には納得されるような形のものが、残念ながらないのであります。その点をもう少し十分に、われわれ学者を納得さすようなことが必要であります。炉の問題でも、たとえばコールダーホール型についての調査をおやりになった方がここにおいでですが、あの調査報告書を拝見いたしましても、たとえば耐用年数などというのも、二十年なら二十年ということを前提して計算しておやりになる、それも目安とおっしゃるならばそれもそうでしょうが、しかし、目安ならば一年しか耐用年数がない場合もあり得るし、五年の場合もあるし、十年の場合もあるし、士五年の場合もあるというふうなことで、計算をなさって、それをずらっとお並べになるのがよろしいので、今日コールダーホール型の耐用年数何年だということを知っておる人は、世の中にだれもいないはずですから、そういう点もわれわれ学問的に見ると、はなはだ一方的なデータばかりしかお考えに入れていないと思います。学問というものは、いろいろの可能性をいろいろと考えて、その兼ね合いを考えていらっゃることが、学問的な観点から必要であろうと思うのであります。
  32. 岡良一

    岡委員 最後に、きょうお忙しいところを参考人方々に来ていただいて、いろいろ御意見を伺って日本原子力開発の現在、並びに近い将来が、いわば一つのイバラの道にあるという感がするわけです。一つはやはり原子力平和利用ということで発電を急ごうという大きな主張があり、一つは学問の自主性を守ろう、何とか自分たちの力で原子力開発に貢献をしたいという学界の良識がある。これをいかに調整していくかということに原子力委員会の今後の大きな仕事があると思う。これはなかなか困難なことではありますが、しかし、そういう点は、いずれまたこの規制法法案内容についていろいろお尋ねしたいと思います。  この際、松根さんにお尋ねしたいのですが、実は、原子力発電をやるために動力炉を輸入するという場合、重油も石炭も将来ますます高くなる。ことろが原子力発にの場合のコストはどれだけになるのかということについて、私どもまだ寡聞にしてはっきりしたものを知らないわけです。売り込みのためのえさのような数字はよく承知をしますけれども、どれだけにつくのかということは、これは単に電力会社のそろばんの問題じゃない。やはり国民経済、国民生活の利害に直結する問題ですね。これはどういう計算をしておられるのですか。
  33. 松根宗一

    松根参考人 今のお話は、お前たち原子力発電をやるやるといって、えらい一生懸命にやっているが、一体引き合うのかというお話だと思うのです。これは今、岡さんのお話のように、どこもやっているわけではないのて、現実の数字が出ておるわけではないのですが、大体われわれ仕事をしていきます上に、およその見当というものは、今度調査団も行かれたし、またわれわれも現地に参りまして、いろいろの面から調べてみました。人体現状かへ申しまして、火力発電の原価は東京と九州では違いますが、まず今度のコールダーホールの改良型というものは、三十万キロ・ユニット、つまり二台のセットにいたしますと、ほぼこれの高い方の地区の新鋭火力に近いものではないか。現実にすぐそれになるかどうかは知らぬが、少くとも近い将来には、そういうふうになり得る可能性が非常にある、こういうふうに考えております。しかもそれが建設費の面におきましても、燃料の面においても、またその熱効率の面においても、私は非常に進むと思うのです。たとえばコールダーホールにはまだそういうものはありませんが、これにある極度の重油を使った再熱式のものをつけるというようなことは、アメリカのヤンキー・タイプのものも考えております。実際上において、このコストを下げるという方法はいろいろあると思います。従いまして、今、現実にそれがどうだといわれますと、それでは、日本石炭が今年は五百五十円も上った、今後上っていく日本火力原価と、下っていく可能性のある原子力発電の原価からいいますと、どうも原子力発電に歩があるというのが大体電力界の見ている見方でございます。従いまして、そういう一つの可能性の非常に多いものを、多少そういう犠牲を払っても何とか電力会社がやっていきたい、そうしなければ、実際に供給責任を持っている電力業者としては相済まぬわけである、こういうような気持で、初めはなかなかそこまでいかなかったのですが、だんだんこういうふうに見て参りますと、大体そういう決心がついたわけであります。従いまして、さっき岡さんのお話に、将来のこの企業形態の問題もちょっと出ましたが、実はこれは火力発電の仕事も同じものだろう、特別にお金が要るものじゃない、初めは別としまして、将来は現在火力発電所を内地で作っておるのと同じであって、別に新しい資金も要らなければ、従来の建設資金の一部で水火力を作ると同じようにやっていけるものだ、こういうふうに考えております。
  34. 岡良一

    岡委員 私も、やはり松根さんのように、大いに国民にサービスをしてやろうというけなげなお心持の会社であればけっこうなんですが、なかなかそうはいくまいと思うので、気に病んでおるわけです。そこで、こういう文献を見ますと、ずいぶん無礼なことを言ったり、ずいぶん先の見通しの暗いとを言っておる人がありますので、この機会にちょっと御報告申し上げておきたいと思うのですが、日本へ去年の百五月に来られた英国原子力公社の工業部長のサー・クリストファー・ヒントンさんの話では、とにかく英国はコールダーホールに、自由世界外最初の原子力発電所を建設した。これらの資本費、運転費などの諸要因を総合すると、発電コストは一キロワット、一ペンスより安くなるということである。将来は〇・六ペンスまでになる。そうすると科学技術庁が試算された日本の九電力会社新鋭火力の単価よりはかなり安くなり得るような見込みになっておるようです。ところがこれは、結局プルトニウムの常用原子炉の計算なんですよ。そしてプルトニウムというものの価格が下ろうとしておるということなんです。しかもプルトニウムの価格というものは、その国の政府の政治的な価格である。厳密に原価計算した価格ではない。これを考えてみた場合に、こういう数字が望めるか望めないかというところに問題があると私は思う。不安定だ。去年の三月ですか、四月ですか、日本へ来られたアメリカ原子炉開発部次長グットマンは、アメリカのPWR型一号発電所の発電コストは、一キロワット・アワー、五十ミルくらいだが、次に建設するものは、建設史が安くなるから、今、日本に建設しても、一キロワット・アワー、四十あるいは五十ミルくらいになる。しかし一九六〇年くらいになると、燃料の加工費や化学処理費が確実に瞬くなるから、一キロワット・アワー当り十三ないし十七ミル、大体四円五、六十銭程度にコストが下ることは楽観できるから、日本産業人がアメリカのPWR輸入でばくちをやってみる気になったらいい、こういうことを言っているわけなのです。非常なリスクがある。これはこう言うことはきわめて失礼な旨い方でありますが、とにかく非常に売り込み競争で安い安いと言いますけれども、実際その諸君の性根を聞くと、こういうようなことで、案外コストについて不安定だ。そこで、あなた方だって公益事業とはいうものの、損をしてまでもなかなかやるわけにもいきますまいと思うので、十分研究してもらわなければいかぬと思う。ただ石炭や重油の輸入価格に比べて安くなるだろうとは言われますけれども、しかしこれはこういう事情もやはりよく御検討願いたいと思うのです。  一昨年八月八日からジュネーヴで原子力平和利用会議があったときに、発電の問題で一群の権威というような顔をして出ておられたオークリッジのジェームズ・A・レーン教授なんかは、とにかく自分が平和利用会議原子力発電について発言をすると、各国、特におくれた…々の人たちは、何かえさに飛びついた魚のような形で原子力発電を急がれる、しかしこれは非常に危険なことであるということを私は警告しておきたいということを言っていますよ。ですから、あまり飛びつかないで、慎重に委員会としても、安川先生もぜひ一つこれは実験動力炉を入れて、あなたの長い経験と達識で、これを中心に一つ日本原子力の具体的な計画を進めていただく御決意を、もう一つ若返って、変らずやっていただきたいということを心から希望しまして、終ります。
  35. 菅野和太郎

    菅野委員長 齋藤憲三君。
  36. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 私は参考人の御意見を拝聴いたしまして、法案の審議の参考に供するというにとどめて、御質問は申し上げないことにいたします。ただ、ただいま岡委員との質疑応答の中から感得せられましたことは、現実の原子力発電のコストというものは、なるほど高い安いの論議はありましょう。また危険であるとか安全であるとかいう論議もあると思うのです。しかし、世界の物理学の大家が証明しておる通り、新しく解明せられた原子力平和利用の世界は、将来重力の世界や化学反応の世界よりはもっと進歩した人類社会を作り得るということだけは明白なんです。それに抗すべく、すべての努力をわれわれがやっておるのであって、現実が高いからどうの、現実が不安定だからこれは避けるなんというようなことであっては、わが国原子力平和利用というものは推進しない。学者の中にもいろいろな意見がありましょう。産業界の中にもいろいろな意見がありましょう。意見はその人の頭の能力の程度によって出すのでありますから、種々雑多でありましょう。物理学の原則が新しく打ち立てられた以上は、その原則を解明して、新しい人類社会を打ち立てていくことは、何人も疑わざるところであって、そのために原子力発電が重油、石炭を使う発電よりも他日安くなるのは当りまえの話で、これを疑っている経済人や学者があるとしたならば、私はこの新しい物理学の原則を疑うということになるだろうと思う。そういうことであれば、われわれは何も苦労することはない、そういう見通しがついておるから、われわれも立法措置を講じ、原子力研究所も作り、日本の総力をあげて、この問題の解決に当ろうとしておるのです。日本が一番安い電力のコストを生み出せば、世界的には原子力平和利用の一部において制覇したということになるだろうと思う。それを私は原子力研究所にお願いしてあるのでありますが、先ほど原子力研究所の理市長安川先生お話を承わると、研究用、動力用というものを前提として自分は理事長になった、これが行われないようならなる必要はなかったのだというお話、私もそう思うのでありますが、何か原子力研究所法が窮屈であって、もう少し弾力のある法律に変えてもらいたいというようなお話があったので、私今これを読み返してみたのですが、これは非常に弾力のある法律のように思うのであります。どこに自由に研究を行えない障害があるか、今ここで申し述べていただく必要はございませんが、何かそういうことをわれわれがはっきりわかるように、文書にでもしてお示し下されば、その障害を取り除くためにわれわれは努力をいたしたいと思います。私たちがこの法律を読んでおりますと、どこにも障害がない。この通りやればどんなことでもやれるように思うのでありますけれども、これを実行するにどこに障害があるか、それを私たちに示していただきたい。立法府としては、この法律制定いたしますときに、われわれも審議に当ったのでございますが、ちっともこれは障害がない、原子力研究所は掲げられた目的、に向ってその研究の遂行ができるという建前の立法指置を講じたのであります。これが障害があるということになると、立法府の責任にもなりますので、その点をきょうここでお示し下されなくてもよろしゅうございますから、あと一つ十分に文書をもってお示し下さるようにお願いをしておきます。
  37. 安川第五郎

    安川参考人 ちょっと誤解がおありになるのじゃないかと思いますが、法律というのは、私の申し上げたのは、日本原子力研究所法のことなのであります。組織の問題であります。あとでディテールは申し上げることにしますが、何しろ今の制度では、人間一人ふやすのでも、非常な干渉という言葉を使っていいかどうかわからぬですが、なかなか理事長の思うようにとにかく運営ができないことは確かです。これは私の微力のせいもあります。それから研究所の統一の問題もあります。しかし、できたばかりのものがそう一糸乱れぬようにいくということは、私のような者の力じゃできないので、これは時をかしていただかなければならぬと思うのですが、とにかく金を百万円使うのでも、なかなか自由にいかないところに悩みがあるのです。だから、ゼネラルに言って、もう少し理事長に一任してもらって、結果が悪ければ理事長の首のすげかえをするくらいの態度でやっていただかぬと、こういう事業はなかなかうまくやれない。ディテールはまた後に詳しく申し上げます。
  38. 齋藤憲三

    ○齋藤委員 私たちは、原子力関係の予算をとりますときには、事務折衝の過程においてはいろいろな障害がございましたけれども、政治的に解決をいたしまして、一般会計三十二年度六十億、予算外川原負担契約三十億という、九十億の範囲内においては、原子力関係の研究は十分に行なえる、また研究所長は研究所長の権限内において定められた予算の範囲内の金は縦横無尽に使える、こういう建前で予算をとっておる。こういう予算を百万円使うのに、けちなおやじをせびるような形になって、思うようなものも買えないということになれば、これは立法府の責任にあらずして、行政の責任であると思う。だから、行政の責任を立法府において是正するということは、国家最高の機関であるところの責任でありますから、そういう点に支障があるならば、われわれは大いに努力を傾けて、支障のないような予算の使い方の実現をはからないと、せっかく予算をとって、国民の膏血が、目的に反して死に金を使うような形になったのでは、われわれも責任がありますから、その点は詳細にお示しを願いたい。そのお示しのあったことが事実だとすれば、その障害を取り除くために、われわれもその努力をいたしたい、そう考えておるわけでございます。
  39. 安川第五郎

    安川参考人 私ども法律一点張りに法律改訂の方ばかりを申し上げたのは、あるいは見当違いかもしれません。法律でも変えていただければ、もう少しできるのじゃないか、今の法律ではどうにも動きがとれぬのじゃないか、これは私のしろうと考えから申し上げたので、その方法は御一任しますが、せっかくあれだけ政治力でとっていただいたわれわれの研究所に対する五十八億の予算が、なかなか理想通りに使えないようじゃ、せっかく皆さんの御尽力であれだけ、私らから見れば十分なる予算をとっていただいたのが、効果的に使えないようじゃ、はなはだ申しわけない。そこにわれわれとしては御想像以上の悩みがあることだけをここに訴えておきます。
  40. 石川一郎

    石川説明員 外国から動力炉を輸入するという問題につきまして、いろいろ御論議があったのでございますが、実は私はあちらへ参りまして、特にイギリスの炉は日本に適すると思いまして、これを入れたらいいだろうということは言いましたが、もう一ぺん調べてくれということを言っておるのでございまして、これでもって今きめちまおう、こういうわけではございませんのと、いま一つは、それと同時並行的に、あるいはその前に一般協定をやらなければならぬという議論でございます。この点を御了解願いたいと思います。  なお、先ほど岡さんのお話のプルトニウムの問題でございますが、あれは英国炉については計算をしないで、ゼロに考えておりますから、その点は御安心願いたいと思います。  いま一つは、日本の科学技術の問題でございますが、日本の科学技術は非常におくれています。それは日本全体がそういう情勢に置かれていたのであって、学者とか技術者が悪かったということじゃないと思いますけれども、非常におくれておる。イギリスは少くとも終戦後直ちにコールダーホール炉、あの型の炉を製造せしむることにきめまして、そして七年間ウインズケールその他で実験をしまして、その結果に基いてコールダーホールの炉を作ったものでございます。しかも、ハウエルには約五十人、リズレーの工業化本部にも約五千人の人がおりまして、そのうちの何十パーセントというものは物理学者、化学者等が集まっておるわけであります。それで七年かかってやった仕事であります。今の日本の現状の学界、あるいは技術から見ますと、それだけの仕事は日本のみでやろうとすれば、とても七年では私はできないと思うことは、人は足りませんし、また金も要ります。現に今年当りは英国では八百億円使う予算になっておるということであります。それだけの金と技術、科学を積み上げて参ったものでございますから、これを入れれば、日本の学者にも、あるいは技術者にも非常にいい結果を与えるんじゃないか。これをファウンデーションにして、われわれは躍進を遂げることができるのではないか、こういうふうに考えているわけであります。われわれ原子力研究所の国産炉等についても相談にあずかっておりますが、あれは実験炉でございまして、動力炉じゃございません。これには非常に年月がかかる。そうすると、先ほど松根さんのお話の時期に間に合わぬようになりはせぬかと思います。武谷さんはもっと早くできるようになりはせぬかというお話でございましたが、この点についても向うで議論をかわしました。実は私も三年半、四年かかるというのは長過ぎると思った。それでいろいろ向うのAECの方とも機械業者とも議論したのでありますが、現在普通の発電所を作る場合においてもそれくらいかかる。特に原子炉を作るばかりではない。他の火力発電所を作るにもそれくらいの忙しさであるらしい。将来とも製造期間が短かくなるとは考えられないようなお話でございました。  それからイギリスは、今度、先ほど有澤さんのお話のように、六百万キロを十年間にやることにきめて進むことにいたしたのであります。その間に、日本にイギリスから輸出するものが手間取りはせぬか、こういう心配もして、この点についても問い合せているのでありますが、とにかくイギリスは先ほどお話のように、原子炉関係のものを輸出の第一項にあげて熱心にやっているような格好でありますので、非常におくれるようなことはないと言ってきております。そういうふうな状況でございますから、この点は一つ御了解を願っておきたい。要するに、日本の科学技術をもってしては、四年やそこらではあれだけ大きな原子炉ができるとはわれわれは考えられませんということを、はっきり申し上げておきます。
  41. 岡良一

    岡委員 御発言がありましたので関連して申し上げたいのですが、たとえばプルトニウムの価格は零と見る、けっこうな話だと思いますね。しかし、かりに二百トン当初装置したとして、年々五十八・五トンの天然ウランを詰めかえなければならない。大体コールダーホールの改良型は炭酸ガスをカドミウムの形にしただけの話で、熱出力は増大しておりましても、プルトニウムの生産はやはり生産として相当出ると思います。現在のコールダーホールでは転換率は六五%ですから、年々六十トンのものをやれば四十トンに近いプルトニウムが出るわけです。プルトニウムが現在水爆の起爆薬になっていることは御存じの通りであります。そういうものを、ただであろうが何であろうが、日本の方で作る。日本平和利用だっておそらく条件の中で今後あることでしょうが、ある程度平和利用のためには残されても、大半は向うへ持っていく。日本だってそういうものは持ち扱いに困るじゃないかと思うので、持っていかれれば水爆実験に使う、日本で反対だということにならないように、平和利用の旗を掲げたら、日本においてもそういう点十分お調べを願いたいと思う。私どもの知恵もあさはかなものですから。  それから今、実験というお話が出たが、物は足りなければ当然作らなければなりませんが、物を作ると同時に人を作ることです。実験というなら、実験動力炉を入れられて、四百八十億の金で、実験動力炉で日本の国で人を作り、そうして残った金で日本の若い科学者を外国へやるとか文献を取り寄せるとか、あらゆる形で人を作る努力をする。現に英国だってアメリカだって人が足りないので、お手上げですから、せっかくの金を有効に将来性のある使い方をするように、もう少しそういう努力を願いたい。もちろん予算にし、よしても、今年アメリカは大体十八億七千万ドル、しかし、その中で平和利用の予算は五千三百万ドル、英国にいたしましても予算上ほとんど一〇%を上回る程度平和利用に上げられておるということじゃないかと思うのです。原子力炉もやっておりますから、かなり使っておるのじゃないかと思いますけれども、とにかく外国技術、知識を導入することもさることながら、委員会としても、人を作るという努力についても十分お願いしなければならぬと思うわけです。
  42. 菅野和太郎

    菅野委員長 石野君。
  43. 石野久男

    ○石野委員 私は石川さんに一つお尋ねしたいのですが、日本の科学技術が非常におくれおって、そのおくれを取り戻すためにいろいろな形で今度炉の輸入や付かされ、それによって各国との足並みをそろえるようにしていこうという考え方でやられる今の原子力委員会の構想の中で、大体の見当として、輸入炉を日本の国産動力炉に切りかえていく時期の問題、そういうものに対する見通しをどういうふうに弾いておられるのかということを、一つお聞かせ願いたいと思うのです。  それからもう一つは、松根さんにお尋ねしたいのですが、おおよその見当でものを見るわですけれども、そのおおよその見当で見て、皆さんが、今、炉を入れて、これを実際に発電などに持っていって、当分は輸入炉でやろうとしているのだろうと思いますが、あれを国産のものに切りかえる時期などは、大体財界の方などでどういうふうに見ておられるか。そういうようなことを、まず委員の方からお伺いいたします。
  44. 石川一郎

    石川説明員 動力炉を作る見通しでございますが、日本全部で作るということにつきましては、わかりません。と申しますのは、炉の形が非常に違って、今アメリカで研究しているのは約十一種類と称されております。そういうことをやるといって、まだ実験に入っていないものもございますけれども、十一種類ある。どの炉がどういうふうにスタートを切って、どれを先に輸出するかということはわかりません。それからコールダーホール炉も、先ほどお話がありましたように、もし三十万キロのものを買えは、四百億ドルくらいの金が要るのでございますけれども、その中でどのくらい日本でできるかという問題、向うから新しいノー・ハウを買わずして今までの日本技術、あるいは工場能力等からどのくらいできるかという問題でございます。イギリス人の見方は、あるグループは、日本では全然できないという見方をしている会社もございます。それは日本工業水準等をよく知らない会社は、そういうことを言っております。しかし、日本事情をよく知っている、たえばバブコックのごときものは、日本に独立会社があるくらい古くやっているものですから、よく知っておる。そういう人の言うところでは、約三分の二くらいは新しい技術を買わないで日本でもできるだろう、こういうことを申しております。現在できておるコールダーホールの炉でさえも、どのくらい日本でできるかということは、われわれも向うのふところをすっかりあけてみたわけではありませんので、よくたとえて言うのですが、見合いをした程度で、今度向うに行ってすっかりもう一ぺん調べれば、どのくらいのものが日本でできるかということがわかるだろうと思います。その程度でございます。それから火力の問題にいたしましても、今、松根さんがいらっしゃいますが、ある部分のマテリアルは日本でできなくて、向うから輸入しなければならぬというとになっておりますが、炉の形がざまってこなければ、どのくらいの炉になるかということはわかりません。今のコールダーホールの炉で申しますと、英国のある社では日本の今までの技術では三分の二くらいはできるだろう、ある社ではゼロだろうというふうな見方をしております、これはもし向うから買うということになりますれば、どの程度のものができるかということがはっきりわかるだろうと思います。
  45. 石野久男

    ○石野委員 今のところは見通しはわからないというのですが、今、委員会原子力研究所などに与えておるテーマ、そしてまたそこがやろうとしている大体の仕事というものは、そういう暗中模索の中で、どういうところまでどういうような研究をしようということを大づかみに考えておられるのですか。
  46. 石川一郎

    石川説明員 これは前からきまっておりまして、原子力委員会の方に引き継いだ事項になっておりますが、原子力研究所では、全部国産で炉を作ってみたらどうか、デザインもし、できるだけ材料も自分のものと使う、そういうことで、それは三十四年度の終りごろに大体組み立てが終る予定で進んでおります。
  47. 石野久男

    ○石野委員 そのように私ども理解しておるわけです。それで、その国産原子炉を作るために原子力研究所が仕事をしているわけですが、委員会としては、大体のスケジュールを全然持たないのですか、私はそのスケジュールを聞きたかったわけなんですが、もう一度伺いたい。
  48. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 おそらくこういう、ふうに申し上げたら御了承願えるかと思いますが、委員会といたしましては、先ほど申しましたように、大体昭和四十年から四十五年の間に、日本において、日本技術で動力炉が製作できるようなところに持っていこう、こういうふう考えております。ですから、そのためには今、原研でいろいろ研究を進めておりますが、この研究をもう少しスピード・アップしなくてはならないのではなかろうかとわれわれは考えておるのです、そのスピード・アップするための一つの方法として、実験用の動力炉を入れたならば、それを促進することに大いに役立つのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけです。
  49. 石野久男

    ○石野委員 その点についてですが、スピード・アップしようとするときには炉を入れるのですけれども、その炉を入れるときに、今度はわが国におけるところのいろんな研究の問題が出てくると思うのです。その研究の中で、いわゆる研究の自由という問題、そしてそれと関連する協定の問題などが出てくるわけでございますね。そういう観点からする外国との輸入協定、原子力あるいは原子炉に関する輸入の場合にする一般協定と特別細目協定というような問題についての原子力委員会の考え方は、どの程度まで日本の自主的な研究の場を確保しようという考え方であるか、こういう点について簡単に伺いたい。
  50. 有澤廣巳

    ○有澤説明員 その点につきましては、一つは今申し上げましたように、大体のめどが四十年から四十五年の間に日本の自主的な技術で動力炉が作れるようにしなければならない。このためには、日本の科学技術の研究を大いに促進しなければ、なかなかその時期までにそういう目的を達することができないのじゃないか、こういうふうに実は考えております。それできょう御列席の武谷さんにも特にお願い申し上げるのは、そういう意味において、日本の物理学ばかりでなく、物理学はもちろんのことですが、冶金、電気、化学というふうな各方面技術家が一つ大きな協力体制を作られて、その技術の自主的な開発を促進されるような方途を、私たちも考えるのですが、日本の科学者たちもお考え願いたいとわれわれは考えております。それからもう一つの一般協定と申しますか、この協定を結ぶにつきましては、むろん今申しましたような日生的な日本技術開発を促進するということが根本でございますから、それを阻害するような内容のある協定はできるだけわれわれは排除したいと考えております。その見地から、いろんな協定のドラフトを検討しております。それで、今までのところは、先方にいろいろ聞き合せてみなければ、言葉の意味がはっきりしないような点も若干問題点として出てきておりますが、今の検討の御点は、今申しましたように、日本技術を科学者たちの力によって促進する、そして目標といたしまして四十年から四十五年ごろには、それができ上るように作れるような状態に持っていきたい、こういうふうな考えが大体のねらいどころになっておることを申し上げておきます。
  51. 石野久男

    ○石野委員 松根さん、どうですか。
  52. 松根宗一

    松根参考人 大体今のお話で私のお答えするところはあまりないと思うのでありますが、ただ、研究者として、今まで経験したところから申しますと、さっきお話に出ました新鋭火力の問題でありますが、これはたとえば七万キロ、十二万五千キロ、二十六万キロというふうにだんだん大きいものができ上っております。これは最初から大部分向うから輸入しまして、そうして二台目もしくは三台目から向うの技術を導入いたしまして、それで日本でどんどんできるようにやる、もっとも、一部分は、大体のところは向うから輸入するというものもありますが、大体私はそういう経過を、原子力についてもたどるのではなかろうかと思う。現にコールダーホールのごときは、会社によっては五〇%あるいは三分の二は日本でできると言っておるくらいでありますから、割合日本で作るのは早いのじゃなかろうか。ただ、それには現物に近いものを一早く輸入して、これで大いに勉強するということが必要じゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  53. 菅野和太郎

    菅野委員長 参考人に対し、ほかに御質疑はありませんか。――なければ、参考人に対する質疑は、この程度にとどめます。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり、しかも貴重なる御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、私より厚くお礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる八日、水曜日、午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。    午後一応十二分散会