○佐々木
政府委員 それでは、経緯を申し上げます。初めはスタックの方で二年ばかり
中泉さんが
委員長になってこの問題を取り扱っておったのでありますが、どうしてもこの問題の解決がつかなかったので、法案を国会に提出する運びにならなかったようであります。そこで、昨年
科学技術庁ができまして以来、この問題の重要性を痛感いたしまして、自後引き続いて立案に取りかかったわけでありますが、
取締りの対象を所持、
使用その他云々といろいろございますが、そういうものに対しましては、各省ではあまり異論がございませんでした。それから
取締り基準をどうするかという問題に対しましても、あまり問題ございません。しかしながら、問題はむしろ
基準等を作りました際に、それを
中泉先生も先ほど来申されましたように、
実施の確保をどうするか、実効を上げるためにはどうするかというところで、各省間に非常に問題が起きたわけでございます。そこで
実施を確保するというのはどういうことかと申しますと、ただいま端的に例をあげられましたように、まず
検査官
制度その他をどうするか。それは三つの範疇に分れておりまして、
一つは労働のサイドから、言いかえますれば労働
基準法的なサイドからこれを推進するという行き方も
考えられます。また、事実各国ではそういうサイドからこれを扱っておるところもございます。それから
衛生のサイドからこの問題を取り締ろうではないかということもございます。もう
一つは、事業を監督しているそれぞれの官庁が、事業を監督する立場からそれぞれの
検査官を置いてそうしてこういう
取締りをやっていけばそれでできるのじゃないかというふうな
考え方も成り立ちます。そこで、その全部の官庁の言い分はそれぞれの立場がございますから、おのがじし
法律も持ち
規則もできるようになっておりますので、そう言っては行き過ぎるかもしれませんが、それぞれの官庁がそれぞれのことをやりますと、そういう
検査官
制度ができておるわけでありますから、
検査の
実施に関しまして、あるいは許可等の行政処分に関しましては、各省がそれぞれやればいいじゃないかという議論が非常に強うございまして、それに対しまして私
どもとしては、まず
一つは国際的な義務、これは国連憲章並びに双務協定上どうしてもこういう保健的なものを十分に取り締らなければならぬという国際的な義務が
一つ、それからもう
一つは、何と申しましても、こういうものは一本にして、責任の所在を明確にしてしかも一番問題の現世並びに後代の民族の厚生のところまで
考えて、その危険性を十分認識するところが責任を一本にして取り締るのが、国際的な意義から申しましても、あるいは現世、後代の
日本民族に対する義務からいたしましても、一番妥当じゃなかろうかというので、あくまでも少数ではありますが、
科学技術庁の
原子力局が中心になって、責任を持ってこの問題に取り組んでいこうということにして、許可並びに
検査官その他を一本にしようというふうに
考えたわけであります。ところがただいま申しあげましたごとく、問題がなかなか広範でありますので、いろいろ法規等調べてみますと、
エックス線に関しては医療
関係がほとんど大部分でございまして、それはすでに
医療法その他で
規則もできておりますし、あるいは
検査官
制度その他も、不十分ではありましょうけれ
ども一応できておる。
工業その他に関しましては、そのようなものはないのでありますから、通産省、文部省等でそれぞれこれに準じて作ってもらいたい。そうすれば、少くとも
放射線同位元素関係から生ずる
障害に関しましてはまだ件数も少うございますし、これから発展していく問題でございますから、十分取り締れるのではないか。ただ
エックス線といたしましては、この前申し上げましたように、一万数千件もはや件数がございましてわれわれこれを一本で取り締りたいのでありますけれ
ども、理論はわかるのでございますが、とても少数で、実行面で不可能であるというふうに
考えたのでございます。
放射線同位元素の方は各省でそれぞれ分散して、許可、
取締り等をやりたいというのを一本に取りまとめましてこれでも大
へん苦労したのでありますが、各省も納得なさいまして、この方はまとめたのであります。残る
エックス線につきましては、理論から申しますとまさしく岡
先生のおっしゃいました
通りでありますが、むしろ先ほど
中泉先生もるる申されましたように、この問題の本質は、
基準その他の問題もありますけれ
ども、
実施の面においていかに所期の目的を確保するかというところに根本の問題がございまして、その
実施の面を確保するという点からいきますと、遺憾ながら理論はそうでありますけれ
ども、
科学技術庁一本でやるということはなかなかできかねることでございます。しかも一これは過去何十来
厚生省で手がけておりますので、その方を改善していただくというのが最も効果を上げる道じゃないか。ただ、ただいま申されたような
エックス線に関しての
工業その他の
取締りがないのでございまして、
取締り法規はわずかに労働
基準法でこれを取り締っておるというような状況でございますので、それに関しましてはむしろ通産省その他でこれに準じた新しい法規を作っていただいて取り締っていく、こういうふうに
考えておるわけでございます。