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1957-03-05 第26回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第10号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月五日(火曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 菅野和太郎君    理事 有田 喜一君 理事 齋藤 憲三君    理事 前田 正男君 理事 岡  良一君    理事 志村 茂治君       小平 久雄君    須磨彌吉郎君       保科善四郎君    山口 好一君       岡本 隆一君    佐々木良作君       滝井 義高君    松前 重義君  出席政府委員         科学技術政務次         官       秋田 大助君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   原田  久君         総理府技官         (科学技術庁調         査普及局長)  三輪 大作君         文部政務次官  稻葉  修君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君  委員外出席者         科学技術庁次長 篠原  登君         参  考  人         (科学技術審議         会教育部会長) 丹羽 周夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(科学技術教育に  関する問題)     ―――――――――――――
  2. 菅野委員長(菅野和太郎)

    菅野委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関し調査を進めますが、本日は、科学技術教育に関する問題につきまして、参考人より意見を聴取いたします。本日出席参考人は、科学技術審議会教育部会長丹羽国夫君であります。  この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中にもかかわらず、当委員会調査のためわざわざ御出席を賜わり、厚く御礼申し上げる次第でございます。申し上げるまでもなく、科学技術振興は、現下のわが国の急務であると考えますが、国民一般科学技術知識の向上はもちろん、技術者教育養成は、これが根幹をなすものと考えます。当委員会といたしましても、設置以来、科学技術教育に関しまして重大な関心を持って、先国会におきましても、参考人より意見を聴取するなど、調査を進めて参り、本日はまた丹羽参考人の御出席を願ったような次第であります。どうか科学技術教育に関しまして、腹蔵のない御意見を願えれば幸いと存じます。なお、御意見の陳述は二十分程度にとどめまして、あとは委員諸君の御質疑によりお答えを願いたいと思いますので、さよう御了承を願います。  それでは、丹羽周夫君。
  3. 丹羽参考人(丹羽周夫)

    丹羽参考人 ただいま御紹介を受けました丹羽でございます。私ごとき者が、事、教育に関する意見を申し上げるのは、はなはだおこがましいと存じまするが、私自身、科学技術教育を受けた人間でもございますし、また現在私のやっておりまする業務が、科学技術を応用する方面でもございますし、また工業教育協会などにも関係いたしておりまするし、また最近科学技術庁設置とともに、科学技術審議会が持たれまして、ただいま御紹介いただきましたように、その審議会科学技術教育部会部会長を仰せつかっておりまして、いろいろやって参りましたので、それらの委員方々の御意見などを総合してここに述べきしていただきたいと思います。  この科学技術教育強化普及が、科学技術庁の単なるお題目としてでなくて、政府の重要なる施策の一つとして取り上げられまして、毎回熱心な討議が行われておりまするし、かつ、国会内にも科学技術振興特別委員会が設けられておることは、われわれにとりましても、この問題に関係のある者といたしましては、まことに喜ばしいことであると存じます。  科学技術部会は、審議会のメンー及び専門員、合計二十四名でもって構成放しておりまするが、実業界から十二名の委員方々も加わっていただいております。この部会は、昨年の九月初めから開きまして、今日までいろいろやってきたのでありまするが、教育の問題は、きわめて広範にわたりまするし、かつ重大な仕事でありますので、委員各位から自由討議を行なっていただきましたし、また引き続いて小委員会を開催いたしまして、問題を集約整理いたしまして、いろいろやってきたのであります。この小委員会の結果、われわれの方の事務局で取りまとめました問題点は、結局、とりあえずは、次の大体四点にただいまのところは集約いたしております。  その四点は、A、B、C、Dでありまして、Aは学校における科学技術教育充実という問題であります。第二のBは実務に従事している研究者技術者養成ということであります。第三のCは学校教育法によらない養成機関に関する問題であります。Dはその他一般の問題、このABCDにとりあえずは集約していろいろ論議して参ったのであります。  それでまず第一番にA、すなわち大挙における教育ということでありますが、そのうちの第一は原子力電子工学あるいはオートメーシヨン、生産管理その他新技術及び経営管理に必要な学科増設とその科目充実、こういうことを論議いたしました。  その次は、大学入学試験に際して、基礎学科必須制ということを論議したのであります。御承知だろうと存じますが、大学における専門学科の修得の年限が事実上は三年から二年に短縮されておる。そういう状態でありますが、これはまことに私は遺憾な点であろうと思っておりますが、たとえば東京大学に入学するためには、例の教養学部に入るのでありますが、高等学校を出て教養学部に入る。そうして、最後理工科系に進みたいという志望のあるものでも、教養学部に入るための入学試験には、数学物理化学といったようなものの試験を受ける必要がないのであります。極端な例から言いますと、植物学で入学することもできるのであります。従って、東京大学においては、あの教養学部において二ヵ年間初めから数学物理化学という、科学技術に絶対必要科目を教え直しておるというのが事実でありまして、本郷で教育を受けるのはたった二年間、こういう状態であります。これなどはまことに私残念なことでありまして、単科大学であるところの東京工業大学のごときは、初めから入学試験物理化学数学というものを必須科目として受験科目の中に入れておるのであります。こんな不合理なことは私はないと存じております。従って、大学入学試験に関する基礎学科必須制ということを論じたのであります。  その次が中堅的技術者養成に必要な学制改革が必要じゃいかということでございます。ただいま新制大学、これは旧帝大を除いたいわゆる、われわれ俗界では悪い言葉を使っておりますが、駅弁大学と称しておりますが、その画一制の排除、すなわち特徴ある性格の付与ということが必要じゃないか。あるいはまた旧制の専門学校化、それから職場との関連というようなことも一つ考えたらどうかということであります。皆さん御承知だろうと思いますが、現在国立大学は七十二ございます。その中で、戦前からの大学はたった十六しかないのでありまして、七十二中五十六がわれわれの悪い言葉で一言っております駅弁大学であります。これらを少し考えたらどうかという問題も取り上げております。その中堅的技術者養成の問題の中のもう一つは、短期大学の運営の方針の再検討を必要とするであろうということでありまして、ただいま全国に短期大学が二百七十ございます。このうちで、技術系のものは国立、公立でわずかに十二校でありまして、ほかに私立が若干ございます。そうして、この二百七十のものは大部分が女子短大であります。別に女子が悪いとかいいとかいう問題でありませんが、技術系短大の卒業生はまことに中途はんぱでありまして、業界としてはあんまり役に立たないというふうにいわれております。先般短期大学についての調査が行われたやに伺っておりますが、文部省への答申では、現行制度はよろしい、これを是認するという結論であったように承わっております。技術系短大については、数がきわめて少いためか、問題にされていなかったというふうに私は想像いたします。少くとも技術系のものを分離して、再検討を必要とするのではないかというふうに考えます。現にその通弊を感じられたせいか知りませんが、東京都立工業短大におきましては、本年四月からその付属高等工業学校一貫教授をするというふうになったと聞いております。これは都知事の英断であると同時に、清家校長方針がきわめて妥当であるというふうに私どもは考えております。  その他講座研究費教官研究費教官留学費などの増額あるいは教官の資質の改善なども取り上げましたし、施設改善ももちろんわれわれは取り上げて研究いたしました。  次に高等学校教育でありますが、基礎科目充実必須制ということは、ここにおいては特に必要でなかろうかと思うのであります。理科系講座を確立して、数学物理化学及び外国語というふうな科目を確実に理解させることが必要であるとともに、それを必須制にするということが、必要であると存じます。特に、以上の実施につきまして、文部省当局は、今日までのところ、単なる指導助言的にとどまっておられるようでありまして、確実に実施せる態勢ということが多少不十分じゃないかと私は存じます。三十一年度から実施の運びであったところのいろいろの問題も、あるいはこれは教員の不足ということも原因しているかと存じますが、まだ的確には把握して行われていないじゃないかというふうにも私は考えます。  次に中学校における理科教育の問題及び外国語教育の問題であります。現行制では、上級学校に進学する者にとってきわめて不適当な内容であるように思われますので、進学者と分離したらどうかというふうにも考えます。中学校完成教育であるということも考えなければならぬかもしれませんが、中学校三年間の時間の浪費が、上級学校へ行く者にとっては非常にしわ寄せされており、それがひいてはわが国科学技術教育の欠点にもなっておるということも争われない事実であろうと存じます。  以上が学校教育における問題であります。  次に、第二のBの問題、実務に従事しておる技術者研究者の育成の問題でありますが、新技術に対する必要な技術者養成ということも申し上げましたが、これらはすでに大学その他でもっていろいろ講座を設けられたりしておりますので、項目だけを申し上げておきます。  その次に、民間官庁研究機関における協力態勢の問題であります。これもわれわれ科学技術審議会でも取り上げかかっておりますが、研究グループあるいは研究センターといったような問題をもう少し考えてみなければならぬというふうに思います。と申し上げますのは、あの持てるアメリカにおいてすら、大学関係研究は、東部、中部、西部というふうに分れて、重復した研究をしないようにし、かつ費用もいたずらに使わないようにし、そしてお互いに研究連絡をとっておるということであります。この点は、今日までは、わが国のような貧乏な国におきましても、支離滅裂であるというのは少し言い過ぎであるかもしれませんが、少くとも連絡がとれていない。従って、重複したりあるいは貧しい脚費用でもって不完全な研究をしておるというのが実情であろうと存じます。それからもう一つの問題は、いわゆる夜間高校に関する問題でありまするが、現状では、職業教育が非常に不十分であります。職員の配置の適正化充実と、なおまた通信教授あたりも、もう少し考えたらどうかというふうに考えられますが、これはこの程度にしておきます。  それから、技術者の視野の拡張と待遇の改善というようなことも、民間官庁大学研究機関に関する問題としてはあわせ考えられる点だろうと考えます。  以上が学校教育でない問題であります。  それから、Cの問題、学校教育法によらない養成機関に関する問題としましては、まず第一番が技術者養成の推進でありまして、現在の技術者養成は、徒弟制度廃止を目標として、労働基準法などによって始められたものでありまするが、中小企業熟練工養成について、特に欧州諸国では、数十年以前からそれぞれ養成法に基いて義務制を設けて実施しております。現在、中小企業においては、この点の要望がきわめて高いのでありまするが、現行制度では非常に不徹底であります。これは早急に改正すべき点の一つであろうと考えます。  次に、研究機関に付属しておる養成機関による教育はもとより、一般の公務員の研究もきわめて消極的であります。研究制度の確立、研修施設の拡充をはかって、この点も実施を強化しなければならぬと思うのであります。これらがCの問題、学校教育法によらない養成機関の問題であります。  それから、第四番目のD、一般的な事項としましては、教育行政刷新強化ということは、むろん科学技術教育においてもあわせて考えられることでありまして、高等学校教育の際にも申し述べました通り、新教育制度では、教育行政当局学校の通常について指導助言するにとどまっておられまするが、教育実施方法並びに教育者については、もう少し監督を強化すべきであるというふうに私はつくづく考えるのであります。  それから、大学における法文系偏重の急速なる是正が必要であるというふうに考えまするが、理工科系法文系に対する比率は、これは学生の数でありまするが、戦前では理工科系が大体最低三五%、法文系が六五%でありましたが、戦後現在ではこれがもっと悪化しまして、悪化というのはおかしいかもしれませんが、二七対七三くらいに低下いたしております。これは戦後私立大学においては法文系が非常に定員を超過しておるということがおもな原因であろうと存じます。このようなことは、いたずらに法女系失業者増加ということにもなりまして、はなはだおもしろくないと存じます。また世界の趨勢はもとより、わが国実情からしまして、この狭い国に九千万人もおるというような国におきましては、工業立国がやはりほんとうの国是でなければというふうにわれわれ考えますので、理工科系教育充実を優先しなければならぬというふうに考えております。  次に、一般科学技術思想の普及でありまするが、欧米先進国は、御承知のように、科学博物館などの施設がきわめて充実しておりまして、小学校時代から自然に科学技術に関する知識が正しく注入されております。この点わが国施設はいわゆるおざなりであるように思われまして、比較にならないのであります。従って、科学技術博物館などに対する根本的な改革が早急に行われなければならぬと思うのであります。これらは、せっかくできました科学技術庁所管というふうにしていたださましたら、いま少しく徹底するのではないかとさえ私は考えます。  なお、一般的には、科学技術教育とともに、戦後の道義心の涵養をはかるということは、科学技術に対してももちろん当然なことであろうと存じますが、これは少しきょうの問題外と存じまするので、私は述べることを省略いたします。  以上が今日までに科学技術教育部会が取りまとめました問題点であります。いずれもきわめて重要な問題ばかりでありまして、これらを同時に実行に移すことは、国家の予算の問題その他の都合上きわめて至難なことでありますので、適宜順位を付して、問題点の解決に着手したいと存じまして、さように手続をしたのであります。ところが、昭和三十二年度予算折衝期に当りましたので、昨年末に開きました部会で、事務局案に基きまして、当面の問題点について予算実施方要望関係大臣にいたすことをはかって、結局次の四項目実施方要望する決議案をもちまして、文部、大蔵両大臣に申し出たのであります。その四点と申しまするのは、最も緊急を要する電子工学原子力工学などの新技術に関する技術者養成に必要な講座増設及び内容充実、これが第一であります。第二点は、講座研究費教官研究費在外研究員経費増額及び補助員充実という点であります。第三は、国立公私立大学及び研究所の諸施設更新整備であります。第四が教授用諸器材の充実、とりあえずはこの四点が一番重点的であろうと思いまして、文部大蔵大臣等に具申したのであります。昭和三十二年度予算は目下御審議中でありまするが、大蔵当局の御査定案によりますると、ある程度の成果を得られたと考えられるのであります。しかしながら、科学技術教育強化の面から見ますれば、本年度の予算措置に見られた程度のものは、数多い問題点から見ますると、ほんの氷山の一角のようにも考えられます。昨年度は部会の発足も大へんおそかったので、いろいろの都合によりまして、私といたしましては、不本意な点が非常に多かったのでありまするが、予算面はもとより、その他学制改革の点につきまして徹底的な革新を行われるよう、今後の部会を推進していきたいと存じまするが、国会初め関係各位におかれましても、何とぞこの点を御考慮いただいたら、幸甚に存ずる次第であります。  大へん簡単でありましたが、この程度でとりあえず終らしていただきます。
  4. 菅野委員長(菅野和太郎)

    菅野委員長 以上をもちまして、参考人意見の開陳を終りました。  質疑に入ります前に、この際、本問題に関しまして、文部省より提出いたしました資料につきまして、緒方大学学術局長説明を求めたいと思います。緒方局長
  5. 緒方政府委員(緒方信一)

    緒方政府委員 お手元にお配り申し上げました一枚ずりの予算関係資料の御説明を申し上げたいと思います。  三十一年度と三十二年度と比較して、その増減を表わしまして資料を作ったのでございますが、第一に、国立大学におきまする学生増募の数であります。これは両年度比較いたしまして八百五十六人の増ということに相なっております。これはもちろん自然科学系統だけを抜き出しましてここに掲げたのでございまして、このほかに若干のものがございますけれども、特に自然科学につきまして申し上げる次第でございます。  この内訳でありまするが、理工科系七百二十九人、医科、歯科、薬科系学生が五十七人、それから農学関係、家政の系統学生が七十人、合計いたしまして八百五十六人の学生増を考えております。  それから、第二は、国立学校におきます教職員の増加関係でございますが、自然科学系統百十二人増加を要求いたしております。この内訳は、理工系が八十九人、医歯薬系が二十三人、それから農業関係はございませんでゼロであります。ここでちょっとお断わり申し上げておかなければなりませんのは、百十二人のうち、教官は七十八人でございまして、三十四人は事務系統職一員であります。  それから、三番目は、科学技術振興関係予算でございますが、三十一年度の九十二億円に対しまして、三十二年度は百六億円、差し引き十四億五千万円の増加を要求いたしております。そのうち、本省費国立学校経費と両方ございますけれども、これを分けて掲示いたしますと、本省関係増額四千五百九十万円でございますが、そのうち産業教育施設設備補助金理科教育設備補助金、これは高等学校以下でございますが、四千七百五十四万二千円の増額を要求いたしております。それから、次は科学研究費でございますが、七千万円増額を要求いたしております。これは、御承知のように、特別の大学その他の研究機関研究者に対しまして、大学の経常的な研究費のほかに特別な課題をとらえまして、それに対しまして配分いたしまする科学研究費でございます。それから、国際地球観測年経費は、三十二年度八億五千万円計上いたしておりまして、三十一年度に比べますと一億五千五百万円減額に相なっております。この八億五千万円のうち、四億七千七百万が南極地域観測の事業の経費でございまして、この減額になりましたのは、主として、三十一年度におきましては、宗谷の船の改装費が五億円ほどございましたのが、今年はございませんので、減額に相なっております。それから、在外研究員経費でございます。これは三千万円増額になりまして、三十二年度は一億円を計上しております。それから、次は私立大学関係でありますが、私立大学研究設備補助、それから理科教育助成費、これを合せまして一億三千八百万円要求いたしております。昨年度に比べまして五千万円の増額を見ております。それから、次は民間学術研究機関助成でありますが、これは民法に基きまする財団法人社団法人として存在いたします民間研究機関運営費に対する補助金でございます。三十二年度は一億円余を計上いたしまして、三百四十万円の増額を見ております。  次は、国立学校経費でありますが、三十一年度の五十七億円に対しまして、三十二年度は七十一億円計上いたしました。差引十四億円の増額を要求いたしております。このうち、教官研究費が三億六千六百万円、学生経費が一億八千七百万円の増額であります。それから、その次の設備更新実習施設費でございますが、これは大学におきます諸研究設備等更新をはかっていきたい、それからあるいは実習設備経費でございまして、三十一年度に比べまして一億三千一百万円の増額を要求いたしております。次は、原子力関係経費でございますけれども、これは新規といたしまして三億一千九百万円でございます。この中には、大学院の研究所設置、それから研究所原子力部門整備あるいは増設あるいは原子炉施設費用も含まっております。それから、次は学科並びに講座増設等経費でありますが、自然科学関係学科講座増設いたすわけでございますけれども、これが三千五百万円でございます。この内容は、教授人件費あるいは教官人件費学生経費等が入っております。それから、学生増募に伴います主として学生経費でありますが、千四肩五十二万円でございます。次一の研究所の創設は、東大に共同利用研究所として設置を計画しております物性研究所ができます。最後研究所部門増設等でございますが、現在大学に付置されております研究所研究部門増設いたしましたり、あるいはまたその整備をはかるというような関係経費であります。二億七千百万円を計上いたしております。合計いたしまして、国立学校経費として十四億円の増加でございます。この国立学校経費につきましては、たとえば教官研究費学生経費等は全体と入り組んでおりますので、取り出しますのに非常に困難であります。あるいは設備関係も同様でございますが、従いまして、必ずしもこれで全一部ということは、非常に計算が困難でございます。一応おもなものをここに掲げたというふうに御了承願います。  以上、簡単でありますが、一通り説明申し上げました。
  6. 菅野委員長(菅野和太郎)

    菅野委員長 緒方局長説明は終りました。  参考人並び文部省当局に対し質疑を行います。質疑は通告に従いましてこれを許します。前田正男君。
  7. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 まず参考人にお聞きいたしたいのでありますが、先ほどのお話では、科学技術審議会教育部会で、三十二年度予算の編成に対しまして注文をつけましたところ、大体それを了承されたようなお話でありました。三十=年度は、先ほどのお話通り審議会ができましてからも時間的にもそう余裕がなかったと思うのでありますが、三十三年度予算は、御承知通り、事務的には八月の末に大体各省でまとめることになっております。従いまして、これから早急に部会の案をまとめていただきまして、三十三年度の事務的な案を作るまでに部会意見を出していただきたいと思うのですが、そういうような点について、部会長としてはどうお考えになっておられるか、お聞かせ願いたいと思います。
  8. 丹羽参考人(丹羽周夫)

    丹羽参考人 今おっしゃいましたようなことがもし必要だとすれば、極力それに沿うように部会を進めてみたいというふうに考えております。とりあえずそう思います。
  9. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 部会で御検討願う前に、われわれが日本経営者団体連盟の方から陳情を受けて、この前も話を聞いたのでありますけれども、実は現行教育制度全般に対しまして再検討して、専門大学短大制度、それから現在の実業高等学校制度というものを専門大学実業高等学校の年限を中学から含めた実業高等学校にしようという案を出しております。われわれこの話を実は文部関係の諸君と一緒に聞きましたのですが、おりました議員の諸君が、これは相当検討してみる価値のある案ではないか、必ずしも賛成とは言いませんけれども、検討してみる価値のある案ではないか、こういう意見であったのであります。従いまして、この科学技術審議会は、御承知通り、各省の次官が参加した政府の唯一の機関であります。しかもまた科学技術庁の専管のみでなく、各省が共同で入っておるものでありますから、ここでせっかく検討すべき案と思われるものがあるわけでありますから、教育部会として御検討をお願いしたらどうかと思うのでありますけれども、部会長の御意見一つ伺いたいと思います。
  10. 丹羽参考人(丹羽周夫)

    丹羽参考人 先ほどもちょっと簡単に触れました通り、すでに部会におきましても、委員諸氏の中には、今、前田さんのおっしやいましたような御意見すら出ております。ただ、学制改革の問題は相当根本的な問題でありまして、果して簡単にわれわれが討議し得るかどうか知りませんが、すでにそういう意見が出ております。私自身としましてもある意見を持っておりますので、また皆さんにお諮りしまして、それも再び審議したいというふうに考えております。少くとも、先ほどおわかりになったかどうか知りませんが、簡単に触れたのでどうだったかと存じますけれども、中堅層的技術者養成ということは、今ほとんど欠けておるという点がありますので、今おっしやいました点は相当問題であると存じますが、ぜひこれももう一ぺん論議してみたいと考えております。
  11. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 ぜひ一つ、こういう非常にいい意見が出まして、もっともこれは必ずしも賛成できるかどうかは検討しなければならぬことでありますけれども、こういうものを検討するというのは、実は今の行政の組織からみますと、丹羽さんが部会長をやっておられる科学技術審議会においてやっていただかないと、各省集まってやることはないことになっております。科学技術庁科学技術庁文部省文部省、別々にやっておりますが、審議会だけは御承知通り各省がみな共同で参加してやっております。そういう意味におきまして、丹羽さんの部会で取り上げて御検討を願いたいと思うのでありますが、どうぞ一つよろしくお願いいたします。  これにつきまして、文部政務次官一つお聞きしたいと思うのですけれども、科学技術審議会というものは、実は科学技術庁を設立いたしますときに、科学技術庁から大学関係研究は除くということにいたしております。しかし、そのかわりに、科学技術の問題について連絡する機関がないと困るというので、審議会は、大学関係も学術会議関係もみなやるということで、実は審議会の方はすべてやる。そのかわりに、各省の次官の方が委員に入ってもらうというふうな組織になっておるのであります。そこで、科学技術審議会教育部会には、文部省の方も部会を開くたびに御協力を願っておると思うのでありますけれども、一つ政務次官の御意見を伺いたいのは、実はそういったことであります。この部会できめられた意見というものは、極力文部省の人も参加してきめておられると思いますので、新しく予算を作るときには、極力文部省の政策に盛っていただかなければならぬと思うのであります。それに対しまして、原則的に、政務次官としてはこの部会意見を尊重して、今後の政策であるとか、あるいは三十三年度予算の編成とか、そういったことに部会意見をまとめることに協力されると同時に、その意見を尊重されるかどうかということを、一つ政務次官にお聞きしたいのであります。
  12. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 科学技術教育審議会の御意見を尊重すべきことはもちろんでございまして、三十二年度予算文部省としての要求の中にも、昨年御要望になった電子工学原子力関係予算の増であるとか、大学研究員の増であるとか、補助金の増であるとか、あるいは研究所設備整備関係費であるとか、そういう点につきましては、先ほど大学学術局長から御説明申し上げました中にもあります通り、不満足ながらも昨年度よりは相当増額をいたしましたのは、文部省といたしまして、科学技術教育審議会の御意見を尊重する御趣旨にのっとったものでございます。なお、今後も、三十三年度予算の要求に際しましては、極力連絡を緊密にするとともに、その結論として出されました御要望については十分尊重して、御趣旨に沿いたいと存ずる次第であります。
  13. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 ぜひ一つ今の政務次官のお話のように、この審議会というものは文部省の方も委員になっておるのでございますから、どうぞ文部省意見も出してまとめて、いい意見を出していただきますように御尽力願いたいと思うのであります。  そこで、根本的な問題についてお話を進めていきたいと思うのでありますが、実は今年の卒業生の就職状態を見てみますと、理工系の人は非常な、何倍というような求人の状況でございます。それに対しまして、一般の政経関係の方は就職にも困るというような現状になってきておるわけであります。これについては、いろいろと文部当局の方で、従来の予算の問題とか需要とか、そういったものを考えておられたであろうと思うのでありますけれども、そういうことに対する今までの理工系学生の増ということにつきましては、実はたびたび前から話されておりました。先ほども参考人からもお話がありましたように、日本の比率は現在二七%であるというような状態であります。ところが、共産圏は特にこれが盛んでありまして、ちょうど逆のような状態になっております。またアメリカ等におきましても、大体理工系の方が多いような現状になっておるのであります。しかも、アメリカで、大統領が中心になって一番心配しておりますことは、ソビエトとの間の比率の開いておる、特に理工系の絶対数がだんだんと開いていくということについて、これではソビエトに対して追いついていけないのではないかというので、非常に大統領も大問題にしておるような状況であります。そこで、これは根本的に、何といっても国立の方は相当努力していただいておるようでありますけれども、この際、私立の方の助成その他も加えて、根本的に、比率を少くとも半々くらいの比率まで持っていくのでなければ、世界の情勢に合わないと思うのです。世界の情勢だけでなしに、現在の日本の求人状況から見ても、これは全然合わないと思うのであります。それに対して、どういうふうにして文部省はこれを解決していこうとされるか、ほんとうからいえば理工系の方がふえなければならぬと思うが、少くともこの比率を変えなければならぬと思うのでありますが、どういうお考えであるか、それについて政務次官のお考えを伺いたい。
  14. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 大へんむずかしい問題であります。自然科学系統学生と文科系統学生との比率につきましては、御指摘のような、また参考人が申し述べられたような状態でありますが、ここで一つちょっと申し上げておきたいのは、新制大学になりましてから、教員養成学科がすべて大学になっております。こういうのを除きまして、ほんとうの自然科学系統学生、文科系統学生という比率を出しますと、必ずしも先ほど御指摘になったような数とはまた違ってくるかと思います。しかし、それでも御指摘のように文科系統学生が非常に多うございまして、国立学校におきましては、先ほど学術局長から申し上げましたように八百五十六人増、文科系統は据え置きということで、次第々々にその比率を理科系統の方に重点がかかるように直していきたい、こう考えた次第であります。この方針は、将来ともに強力に推し進めていきたい、こう思っております。ただ、私立大学関係は、文部省のそういう監督権がありませんので、非常に困るのであります。しかも私立大学は経営等のことも考えますので、どうしても金のかからない、授業料の多く上る文科系統に重点がかかっているようでございます。この点は私一個の考えになるかもしれませんが、私立大学に対しては定員を厳守せしめる。今の入学試験状態を見ましても、定員の何倍もとっておるというような状態がありますから、これは定員を厳守せしめると同時に、やはり私学に対して相当私学振興費というものを助成いたしまして、御趣旨に沿うような、自然科学、文科系統学生数の比率を次第々々に直していきたいということを考えております。
  15. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 これは一つ教育部会におきましても御尽力願わなければならぬことでございますが、文部省におきましても、画期的にやり方を変えていただかなければならぬではないだろうか。私先ほどいただきました資料を見てみますと、なるほど御努力された跡はよくわかりますけれども、こういうやり方でいきましたならば、とても現在の日本の求人状況、世界の情勢に追いつかないと思うのであります。これはやはり先ほどの案がありました学制改革の問題を含めて、根本的に、三十三年度においてはやり方の再検討をお願いしなければ、とても世界の情勢に追いつかない。こういう漸増式でやっていかれたのでは、需要の方がどんどん伸びるばかりで、とても追いついていかないのではないかと思うのであります。  そこで、この際、一つ政務次官とかあるいは大臣は、一大決心をもって、漸増方針から根本的な改正の方にお願いいたしたいと思うのであります。それがためにはどうしても学制改革という問題について相当御研究願わなければならぬと同時に、私立の方についての監督権とか、いろいろ指示ができないようなことを言っておられましたけれども、実は私立大学の方の意見を聞きますと、経営上どうしても理工系の方はやりにくいのだ、やはり補助をしてもらえば、自分たちも私立大学の立場から、ぜひ私学振興の立場をやっていかなければならぬ、皆さんがこう言っておるわけです。ところが、今いただいた資料にもあげられております通り文部省のいろいろな研究費関係補助費とかいろいろなものの中で、この私立大学にはわずかに一億三千万円で、この数字を見ていただいても、これはこの数字の中でも一番少い方の数字じゃないかと思うのです。これは一けたくらい違っておるのじゃないかと私は思うのです。そういうようなやり方では、私立大学をふやせといっても、ちょっとふえないのじゃないかと思う。ですから、やはりこの際私立大学の方の理工系をふやしてもらいたいというなら、思い切ってつける。しかもそれは何百億円つけろというわけではない、現在の一億三千万円を十億円にするとか、それも金額にしましたら、日本全体の予算の比較から見れば大した費用でもないと私は思うのです。そういうことでも私立大学としては非常に感激して、この方面の生徒数をふやすと私は思う。ただわずかに五千万円ふえるというような程度では、あまり努力がないと思います。従来の何倍というふうに補助がふえるということなら、やはり相当私大の諸君も感激してやられると思うのです。そういったことを一つぜひお考え願いたいと思うのであります。  そこで、この生徒数の比率の問題について、これは私の意見でありますけれども、お話をして御意見を聞きたいと思うことは、実は理工系教育をすることは、非常に金のかかる教育であることは事実であります。ところが、理工系を出てきまして、実は工科方面とかその他において設計をやったり、あるいは計算をしたりというむずかしい金をかけた教育をして出てきた人が、現在どういうところに使われているかというと、もちろんそういう専門知識を大いに利用するところにも使われておりますけれども、最近、技術者、科学者の利用されている方面で、相当求人のふえてきました方面には、やはり何といっても技術関係の行政官というのが非常にふえてきた。それから工場の方におきましては、御承知通り、企画とか経営の関係とか、こういつた関係の人が相当ふえてきました。それから、一般の経済界におきましては、原価計算であるとかあるいはセールス・エンジニアだとか、こういったような関係の人がみんなふえてきたわけです。これらの人は今どういうふうにして教育を受けているかというと、やはり一般科学技術者と同じように、非常に多額の金を使った教育をしていると私は思うのです。ところが、私はアメリカの学校を見て回ったのですが、その他の国の話を聞きましても、特にアメリカ等は、どこへ行きましても経営学科のない工科大学はないのです。工業の総合大学におきましても、すべて経営学科というものがどこにもある。ところが日本は、御承知だと思いますけれども、早稲田かどこかにあった。東大にやっと生産工学科を作るといっておるくらいで、逆に日本は一橋とか商大にある。そういうことでは全然話にならないのです。この教育を受けた人たちの話をわれわれ聞いておりますと、大体アメリカなんかで見ていますと、一年、二年は普通の工科と同じように基礎的な教育を受け、実習をやっておるのです。三年、四年になってくると、経営学科の人は労働問題とか、あるいは経営問題とか、おもに見学を主にしていろいろな方面を回っておる。私は、工科の生徒をふやすについて、皆さんで非常に問題になる予算とか設備とかいうものを増大するのはなかなか一挙にやりにくいと思うのですけれども、一挙にやりにくいならば、日本の工科の学部のあるところは、経営学部あるいは生産工学科あるいは経営工学科というか、そういう学科を全部置くようにされたら、一挙にそんなに費用もかさまないで、しかも現在要望しておる人を相当出せるのじゃないか。御承知通り、現在実業界においても、今、参考人丹羽さんも述べられましたが、経営の中心はだんだん技術出身が多くなっておる。御承知通り、現場においても企画の実務とか原価計算の実務は非常に多くなって参りまして、みな工科出の人でないとやれないようになっております。そういう点におきまして、日本の大学に経営工学部というものをまず国立大学を中心にして設けていただく、そういう点をぜひお考え願ったらどうかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。御意見をお聞かせ願いたい。
  16. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 国立大学の理工学部に経営工学科を設けろというお説については十分尊重いたしまして、今後そういう方向に検討を進めて参りたいと考えます。
  17. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 ぜひこの問題は各方面の御意見一つ参考にしていただいて――私の見ておるところでは非常に必要であり、求人の相当数はその方に現在使われておるんじやないかということを私は考えるのであります。  それから、この際、画期的に理工系の卒業生の比率をふやす問題については、先ほど申した学制改革とか、私立補助とかいろいろな問題がありますけれども、そういうものを画期的にやっていきますについて一つお考え願いたいことは、そういう具体的な問題は、部会とか文部省等で具体的にお考え願いたいと思いますけれども、ともすればそういう表面のことをやりますと、せっかく画期的に増大しても、今度は肝心の内容が伴ってこないという問題があるのです。そこで私は、そのことでまだいろいろな問題があると思いますけれども、そのうちで特に二つばかり非常に重要だと思います問題は、画期的にこの理工系の卒業生をふやすようなことを政策としておやりになった場合に、まず第一の問題は、日本の小学校から始まる教育基本要領というものについて、実は数学関係、理工関係の時間数というものが、戦後ずっと減っておるわけです。これでは幾ら画期的な増大をやっても、あるいは生徒数の募集数をふやしましても、今度は理工系に行こうという人間がいなくなってくる、学生がそういうところへ行きたがらない、せっかく講座をふやしても行きたがらない、あるいは無理をして入っても、入った人間が全然知識がなくて、理工系の卒業生としては実は内容が乏しいというようなことになるのじゃないか、これは先ほど参考人も言っておられた通り、その必須科目理工系科目がないという問題も非常にあるし、また入学試験のときにそういうものが落ちておるということも、私は非常に関係しておると思うのです。だから、小学校教育基本要領の時間数の問題から始めて、入学試験科目とか理工系必須科目とか、こういう小中学校から高等学校にかけての一連の教育において、根本的にもう少し数学、理工的な教科をふやす、それから入学試験必須科目にする、こういうふうな点を文部省としては改めていかなければ、私はできないと思うのですが、これについてどうお考えになっておりますか。
  18. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 高等学校以下の理科教育振興につきましては、当然今日再検討の必要の段階にきましたので、科目の編成等について、画期的な理科系統科目増加ということを考えつつ、今日その改革の準備に着手しておるような次第であります。いずれ御調に沿うようないい改革ができると思いますから、御期待を賜わりたと思います。
  19. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 それでは、一つ理工系教育の問題についてぜひお願いすると同時に、試験にも必ず必須科目にしてもらいたい。  もう一つの問題は、さっきちょっと触れましたが、今の小学校の教科書は全部これを検定をし直されまして、その教育基本要綱というものが今改訂されておるが、これについては、実は日本の中心になっておる数学の時間と、また日本の文化的な方面の一番の中心になっておる国語の時間、この一番基本的な時間を、両方とも占領軍の政策によって減らされておるわけです。これはやはり国民として今後基本的な教育をふやしていくためには――常識をふやすということは別ですけれども、常識をふやすのは今の占領軍の考え方でいいでしょうけれども、しかし、国民としての基本的な考えをふやすためには、この国語と数学という、占領軍によって減らされた時間をもとに戻さなければ、日本のほんとの力というものは出てこないと思うのです。それについては、今ちょうどやっておられる最中でありますから、政務次官はどうお考えになるか、この点を特にお聞かせ願いたいと思います。
  20. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 義務教育学校における基礎教育の弱体化については、私も前田さんと同じように痛感しておりますので、この点は今後の科目の改訂とか指導要領の改正とか、そういう際に必ず基礎教育充実するようにやりたい、こう存じております。
  21. 齋藤委員(齋藤憲三)

    ○齋藤委員 関連して。ただいまの前田委員のお説でございますが、私は数学を徹底的に基礎教育の中にたたき込むということは賛成であります。しかし問題は国語の範囲であります。国民としての常識を涵養し、国際人として一つの行動に支障のないように国語を覚えるということはいいのですけれども、その国語の範囲が、現代において不必要な国語の範囲まで及んでおる。たとえば理工科系統を望まんとする者が、「増鏡」とか「徒然草」とか、そういうものに対して非常な時間を費さなければ、理工科の大学に入れないような組織になっておる。一体「徒然草」とか「増鏡」とかは、これは歴史を習えば、そういう文章の解釈まで能力を費す必要はない。ですから、国語というものの充実をはかる点においても、はっきり現代的な意識をもって国語というものを考えていただかないと、青春の血をいたずらに、習って一ぺんも一生のうちで使わないようなことに費すなんということは、はなはだ時代逆行だと私は考えておる。現実の問題として、私はそういうことは不必要だと思う。それは、文章家をもって身を立てようと思うならば、「増鏡」も「徒然草」も必要だろうけれども、そうでない者が、たとえば東大の入学試験を志す者で、理工科系統で身を立てようと思う者が、漢文や国語に非常なウエートをかけられておるためにこれをやる。そして、先ほど参考人の申し述べられた通りに、東大では二年間は一般的な教育をして、文科系統を受けようとするような顔をして入っておって、今度は理科系統に行けるのでしょう。そのために、今年は一般から新しく東大に入学せんとする者の数が理工科では減っておる。何となれば、文科系統に入ろうとして二年間やった者が、逆に理工科系統に志願せんとするいわゆるたくさんの浪人が東大内にいるということです。だから、そういうことでなく、ほんとうに理科系統をやらんとする者に対しては、高等学校の時代から懇望をきめておいて、「徒然草」や「増鏡」で青春の血を浪費させないように、あくまでも現代のオートメーションならばオートメーション、原子力平和利用ならば平和利用に専心青春を打ち込んで、りっぱな理工科系統を修得し得るような国語体系に改めていただきたいと思うのでありますが、政務次官はどうお考えになりますか。
  22. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 これは、なかなかそう簡単にはいかない問題もありますようですね。学校制度全般に対する改革については、今日私どもも考えておりますけれども、たとえば高等学校大学の一年をよこせ、そうして大学に三年にして、一年から専門科目をしっかりやれ、今のように二年は一般教養科目、あとの二年を専門科目ということではだめだというような意見もありますし、また、高等学校はやはり六・三・三までで、大学を一年延ばして五年にして、前二年は一般教養課程にして、あとの三年を専門科目にするとか、いろいろな意見がありますので、そういうことを勘案しつつよく検討いたしまして、御説のように、むだをしないようにしたいと思います。私どもも、今考えてみるに、民事訴訟法だの刑事訴訟法だのずいぶんやりましたが、全部忘れて、そうして使いませんね。そういう選択科目を広範囲にふやして、今言いましたような「徒然草」「増鏡」等もやはり選択でやれるようにして、そうして理工科系統へ行く人はそういう選択をとらないというような制度高等学校でもやれるようにすべきかどうか、そういう点については、非常にむずかしい問題が残っているようであります。しかし、どうも今の中小学校の生徒を見ますと、国語についても数学についても、基礎教育が非常に弱いと思うのです。理科系統に進むならば、そういう国語の力は要らないとおっしゃるかもしれぬけれども、私の子供なども高等学校へ今度入るのですけれども、「おせん泣かすな馬肥やせ」というのがあるが、これを「おせん泣かすなバヒやせ、」それから「急がば回れ」というのを「キュガがば回れ」と言うのです。また、この間、内閣の名簿を見て、これは昔麦を食えと今つた「クラショウじやないか」と言うのです。蔵相のことをそう言うのです。そういうことでは私は非常に困ると思います。一体学校の先生は国語というものはどういうことを教えているのかと思うのですが、私は、これは科目の編成がよくないと思う。やはり読み書きそろばんといいますから、その最低の、どうしても必要なもの、基礎教育にもう少し重点がかかるような学科の編成をやっていきたいというのが私の今の考え方であり、文部省全体もそういう考え方で進んでおります。
  23. 齋藤委員(齋藤憲三)

    ○齋藤委員 私の申し上げているのは、先ほども前田委員の申されましたように、教育方針は世界の情勢に即応した教育を徹底的にやらなければいかぬということなんです。今日の世界の情勢というものは、申すまでもなく、ソ連の情勢を見ても、アメリカの情勢を見ても、ソ連は、五ヵ年計画を立てて九十万人の科学技術系統教育者を出すということを言っており、アメリカもそれに負けざる教育の大改革をやらんとしている。それに対して日本は、今、世界の態勢からさらに十年、二十年科学技術においておくれているという現実を見て、ここで非常な勢いをもって科学技術振興をはからなければ、日本の態勢が世界の態勢に追いついていけないということは何人も考えている。そういうときには、ある一つの非常手段的な改革をやらなければ、日本の教育態勢というものは現代的にならないじゃないかというのが、私は前田委員の質問だと考えておる。それを、国語というものをすべて「増鏡」や「徒然草」まで入れて、習ったのは一生のうちに一ぺんも使わないような教育をする必要はない。もちろん「おせん泣かすな馬肥やせ」が読めないような国語の教育であれば、これは一人前になれないのだから、こういうことを私は言うておるのじゃない。だから不必要な国語というものは省けということなんです。清新な血潮に燃える優秀な頭脳の若人には、科学的な勉強のできる時間を与えろ、こういうことを言っている。先ほど丹羽参考人が、大岡山の工業大学は初めから専門的な教育をする、東大はどうもそうじゃないらしい、いずれがいいかということは、それはわれわれも論議の対象として今後も考えなければいかぬと思いますけれども、理工科系統で身を立てようとする者には、「増鏡」や漢文なんて不必要だ。政務次官のように法律家をもって大いに立とうとして勉強された方は、不必要でも民事、刑事訴訟法はやらなければならなかったかもしれぬ。しかしこれは全然違う。ですから、そういう点に思いをいたされて、文部当局というものは根本的に教育の体系を変更される決意ありゃいなやということです。ここでその決意を伺ってもどうかとも思いますけれども、そういう意味なんです。だから、私たちからいたしますと、ほんとうに科学技術教育を徹底的にせんとするならば、いかなる具体策をひっさげて今立っておられるかということです。私は与党ですからあまり追及しませんが、私からいたしますならば、一体教育の大本というものは、時代的に最も有効適切な働きをなし得る人間を作るということが、私は大本だろうと思う。その時代々々的に国家の要請にかなうところの人間を作り上げるということが、教育の大本でなければならない。だから、私から言わせると、小学校の一年生に入ってきたときに、その大勢に順応するような教育を上手に仕組み上げるということが、私は教育の基本だと思っている。そういうふうにおやり下さることができるならば、われわれも非常に同慶にたえない。ぜひ一つそういう方向に教育を持っていっていただきたいと思いますが、これに対する政務次官の抱負経綸をお述べ願いたい。
  24. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 抱負経綸というほどのことではありませんけれども、現在の学校制度が、第一に教員の養成施設からして御要望になるような方向に今すぐ切りかえられる情勢ではないのです。従いまして、六・三・三・四制の新しい学校制度の根本的な再検討と相待ちまして、その御趣旨に沿うような完成は将来に期さなければなりませんけれども、今ここで手をこまぬいて拱手傍観しているわけにはいかない。従って、指導要領の改正だとか、それから大学制度一般教養課程と専門課程と二年、二年に分けていく、比率をあるいは一年、三年というふうに直すとか、そういう局部的な改正をやることはできるのでありますから、文部省といたしましては、理科教育振興科学技術振興という国家の要請、世界の大勢に即応するように、敏速な改正の行動に移りたい、こう存じます。
  25. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 そこで、今ちょっと政務次官がおっしゃいましたけれども、これから理科教育というものを画期的にふやそうということについてはいろいろ問題点がありますが、今のそういう新して具体的な方策と伴ってやらなければならない問題として、先ほど申し上げました基礎的な学力をつけるということは、ぜひ必要だと思います。もう一つは、今触れられたことでありますけれども、教員の養成という問題は、これを根本的にやらないと、理科教育学科をふやすとか設備をふやすとかされても、実はできないのじゃないかと思うのであります。基礎教育を十分にやらないと、第一そういう学生の志願者が少いということが一つありますけれども、もう一つは、志願者があっても教員がいなければできない。ところが現在の教養学部の中の時間割とかいろいろな問題を見てみますと、理工関係というものは非常に少いのじゃないか。しかもまた、その教員の数自身も、理工関係の人は少い。この際まず画期的に、私がさっき申しましを通り、経営二学部みたいなものをふやすということは簡単にできるし、この方面の先生は、教員とかいわゆる大学教授とか教育学部を出てない方でもすぐできる。これは現場に、実業界にたくさんおられますから、そういう方に来ていただきましたらすぐできるから、私は実は経営工学部をやれというようなお話を申し上げたのです。この方面はそう急がなくても、教員養成はなくてもすぐ実現できると思いますけれども、その他のほんとうに設計をやり、ほんとうに現場に取り組むというような人、あるいは研究をするという人たちについては、どうしても理科関係の教員を養成していただかないと、これはなかなか一挙にはふえないのです。そこで、まず第一に、今年からでも来年からでも、根本的におやりになるのは、まず教養学部、これから根本的に直していただいて、そうして最近ちょっと見ておりますと、ずいぶん学校の先生が就職難で困っておるらしい。卒業しても就職できない、こんなばかなことはないのです。実は、今申しました通り、理工関係の方は人が足りない、卒業生が足りないのですから、実は教員がもっと要るわけなんです。要るわけなんだけれども、はなはだ残念ながら、出てくる諸君は理工関係の教員としては不十分な人が多いから、実は教養学部を出てきた人が就職難なんです。そういうようなことでは、これは話にならぬと思うのです。この際教員の数を減らすという問題よりは、理科系の教育をできる人をふやして、同時に工業高等学校とかそういった方面から、さらに短大新制大学という方面にかけて、もっと理科関係の学部の数をふやしていくというふうにしてやれば、私はこの問題は解決していくのではないかと思うのです。先生が就職できないという問題についていろいろと各方面の問題になっておるようですけれども、私はそう問題にすることはないのではないか、もっと理工関係教育者をふやす、それから学部をふやしていくということにすれば、この問題も解決できるのではないかと思っておるのです。そういう点で一つ根本的に理科関係の教員養成に御尽力願いたいと思うのでありますが、どういうふうにお考えになっているか、伺いたいと思います。
  26. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 理工関係の教員養成につきましては、大学学術局長から、本年すでに着手している面もあるそうですから、説明させます。
  27. 緒方政府委員(緒方信一)

    緒方政府委員 教員養成の問題に問題点がいろいろたくさんあることは、御指摘の通りでございます。今後、全般的に検討いたしたいと存じております。  それからただいまお話しのうちにございましたけれども、確かに教員養成学部を出ましても、その者が就職できないという状況がだんだん深刻になって参りました。従来だと、六体教員養成学部を出ました者は、みんな先生になれたのでありますけれども、昨年度出ました者が、昨年の十月でございましたか、まだ八三%くらいしか就職できていない状況でございます。これはどういうことかと申しますと、ちょっと話はそれますけれども、御承知のように、教員養成学部では、主として小中学校の先生を養成しておるわけであります。その小中学校の教員合せまして概数五十万でございますが、従来は相当新陳代謝がありました。六%、七%くらい古い人がやめて、新しい者が教員になる、こういう状況でございましたけれども、それがだんだんやめる者が少くなりまして――これはいろいろな原因がございますけれども、やめる者が少くなりましたために、今のような状況になっているわけでございます。これは現在の大学制度から申しますと、教員養成学部といいながら、必ず教員を作るのはその学部だということではございません。御承知のように、これは開放主義と申しておりますが、各大学私立大学、ほかの大学におきましても、これは課程の認定はいたしますけれども、そこを出ましたならば教員になれる資格をとれるわけであります。そこで、こういうことではありますけれども、しかしいやしくも国立大学で教員を養成しているわけでありますから、そういう建前から申しますと、どうしてもその就職が十分にいかぬということになれば、学生の数も減らさざるを得ないということで、来年度は四千百人くらいを削減いたしました。そういう事情が一つあることを御了承願いたいと思います。  なお、理科系の教員の資質の充実ということにつきましては、十分これは考えなければならぬことと思います。小学校の教員は、御承知のように、全学担任になりますので、これは各教科まんべんなく勉強するという建前でございますけれども、特に中学校高等学校になりますと、各教科ごとの免許状が出るわけであります。その免許状をとるについての条件等につきましても、十分検討を加えまして、御趣旨のような方向に持っていきたい、かように考えております。なおまた現職の教員の再教育ということも考えなければならぬ重大なことだと思います。さような点につきまして、今努力しておるのであります。
  28. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 今お話になりました通り、また私がちょっと申しましたように、今は実業学校の工業方面を出た人も非常に求人が多くて、卒業生が足りなくて困っているような状況でございますから、実業学校理工科系の方を、もう少し生徒数をふやす、その方面に今余っている人を回すとか、あるいは中学校の方でもそういう特殊教育をする先生は十分ではなく、完全な免許状を持っている人が無理して忙しくやっているというような状況のように思うのです。従って、今もし卒業された方を再教育できるというなら、もう少し臨時にでも再教育されて、理工系の方の免状を持つようにされて、そして中学校の欠員のところも相当あるようでありますから、そういうところも埋めるとか、あるいはまた実業学校の方面ももっと理工関係をふやして、その方面に使われるとかする。私は、せっかく国で教育されたところの教員の方が失業しているという、こんなもったいないことはないと思うのです。ところが、今後理工関係の仕事をふやしていくについては、どうしても教員が足りなくなってくると思いますから、できたらせっかく教育された方を再教育して、同時にそういう人たちの職場をふやすことに努力されて、卒業生をふやすことに努力されれば、実業界要望にも私は合うと思います。その点一つ、もう少し、単に放置しないで、理工系教育をふやすという問題で、私は解決する道が相当あるのではないかと思いますので、御研究をお願いしたいと思っているわけです。
  29. 菅野委員長(菅野和太郎)

    菅野委員長 この際、参考人より、先ほどの発言につけ加え発言いたしたい旨の申し出がありますので、これを許可いたします。丹羽参考人
  30. 丹羽参考人(丹羽周夫)

    丹羽参考人 政府部内のいろいろな御関係もありましょうし、従って、私の申し上げたいと思いますことは、あるいは当を得ていないかと存じますけれども、科学技術審議会を通じましていろいろお話を承わっておりますと、科学技術関係予算の編成に当りましては、文部省科学技術庁との間には、文部省御直轄の研究所予算については相当の御相談があるようであります。また、しかしながら、文部省学校関係の、科学技術教育関係予算というものは、全体の文部省予算については、こんな御要望が出るであろうということは、あるいは御相談があるやに考えさせられますけれども、その内容実施状況などにつきましては、ほとんどノー・タッチであろうと思います。教授が、あるいは先生が科学技術教育をするための一般施設というものは、これはもう文部省の御所管であってしかるべきであろうと思いますけれども、科学技術に関するいろいろな内容なり、その実施状況といったものは、場合によりましては、科学技術庁関係研究所なりあるいはその他の研究所なりというものと重複してみたり、研究内容の重複もあるであろうし、予算の重複もあるかもしれないと思われますので、これは非常にむずかしいことかと存じますけれども、せっかく科学技術庁というものができたのでありますからして、いま少しく全般的に通覧し、統制――という言葉は悪いかもしれませんが、できるように、もう少ししていただいたらどうかというのが、私しょっちゅう審議会に出まして感じる点であります。たださえ貧乏なわが国が、何とかして科学技術振興したいというのでありますので、科学技術に関する点は今少しく詳しく両庁が御相談あるいは御連絡いただきたいというふうに考えます。特に、文部省主体の、たくさんできました各大学、各方面の研究などももう少し先ほど申し上げました点もあわせ考え、研究センターとか何とかいうものを考え合せれば、もう少し効果的によくできるのじゃないかというふうにも考えられまするししますので、私はそういうふうにお願いしたいということを申し上げるつもりでございましたのに、忘れましたので、この際申し上げます。  それからもう一つは、先ほどもちょっと簡単に触れましたけれども、科学技術教育に向って進学したいと思う中学生高等学校の生徒が修めなければならぬ科目の整理整頓ということは、すでに論議されておりまするが、入学試験に当っても、何とかこれを分けるとかどうかして、もう少し有効なようにしていただきたい。先ほど来のお話のように、大学入学試験で、実際理工科系に進む者自身が数学化学物理を受けなくてもいいなんということは、根本的に間違いだと思いますけれども、たとえば、高等学校入学試験でも、高等学校教育一般教育完成教育だとすればしようがありませんが、今年の入学試験内容を見ましても、音楽とか体育とか家庭とか何とかいうような問題がずいぶん出ております。これも高等学校教育というものの一般性を考えるとやむを得ぬ点も多々あると存じまするけれども、そこに科学技術教育振興ということを考え合せますと、もう少し考える余地がありはせぬかというふうに考えます。この二つを申し忘れましたので、追加申し上げさしていただきます。
  31. 前田(正)委員(前田正男)

    前田(正)委員 ちょっと今の参考人の発言に伴って、私も質問というか、意見を追加して申し上げたいと思うのであります。丹羽参考人の第一の御意見につきましては、実は科学技術庁設置するときにもその問題がありました。そこで、いろいろと調整をした結果、科学技術庁としては、大学関係を除くことにしてあるわけでありますけれども、これについては、今の現状のままでは十分でないというので、われわれの方ももう一つ別の考え方、科学技術振興の基本的な考え方を、今案は練っておりますけれども、しかし、その根本的な考え方の案は別といたしまして、科学技術庁設置するとき、大学関係を除く、この文部省関係のことを除くけれども、そういう今のお話のような調整はそれではどこでやるかということになりまして、そういう問題は、実は参考人が今部会長をやっておられる科学技術審議会教育部会でやるということにして、科学技術審議会でやることにしてあるわけでございます。そこで一つ、今お気づきのようなことは、科学技術審議会において、文部省予算内容はどうなっておるかということを資料として求めていただいて、そうして、予算は大体重複しておるところはないかとか、科学技術庁の方の予算はどうなっておるかということも資料として出させて、この審議会においてそういう重複の問題とか、そういったものを調整をしていただく。これは実は科学技術審議会というのは、そういう文部省関係科学技術庁は一応やらないということにして設置したので、それでは私たち科学技術のほんとうの振興というものに困るじゃないかと思う。そこで、この審議会というものを設けて、審議会には各省の次官が委員として入っていただく、文部省の方も委員として入っていただいておるというふうにして、各省がまとめることになっておるわけです。そこへ民間の方にお入り願って、りっぱな意見を出していただくというふうにしてあるわけであります。今、御心配の第一点のことは、科学技術審議会、特に教育部会の皆さんの方において、文部省の方から実際にどういうふうにして予算がついたか、あるいはどういうふうにして現在文部省教育はしておるか。あるいは科学技術庁、通産省といったところの国立研究所は、どういう研究題目を今研究しておるか、こういう実際のことを資料として提出を求められて、そうして、こういうところは重復しておるから、これはむだじゃないか、こういうことはだめじゃないかということがおわかりになり、御意見がまとまったら、それを科学技術審議会意見として決定をしていただきましたならば、科学技術審議会としては各省が参加しておるのでありますから、その意見を各省とも尊重いたします。もしどうしても尊重しないときは、科学技術庁の長官が会長でありますので、科学技術庁として省議できめて、そうして科学技術庁設置法においては各省の大臣にそれを勧告できることになっております。たとえば、文部省のやり方がこの際タブっておるからやめてくれということなら、科学技術庁の長官の名前で文部大臣に勧告することができることになっております。そこまでやらなくても、科学技術審議会委員には文部省の方も出ておられるわけですから、そこで御意見を述べられて検討されたら、先ほど政務次官が言われる通り審議会意見文部省も尊重されると思います。そこで、科学技術審議会というのはもう少し遠慮をされないで、どうぞ両省とか関係各省の調整もぜひやっていただきたい、こういうふうにわれわれとしては希望いたしたいと思うのであります。
  32. 佐々木(良)委員(佐々木良作)

    ○佐々木(良)委員 ちょっと関連してお伺いいたしたいと思います。今ちょうど私もそのことを言おうと思っておったら、あとで補足説明をされ、前田さんから話が出たわけですけれども、今のお話の中で、科学技術庁関係研究所と、それから文部省学校研究所とのお話がありました。その問題につきましては、今未解決のままでそのような状態にあることでありますし、前田さんのお話によりますと、そのこと自身も審議会で考えてもらいたいというようなお話のようでありますが、先ほどの丹羽さんのお話にもありましたように、省と省との関係のそこへいく前に、文部省の中の学校学校との関係――御承知のように人間というものは独立を要求するものでありますから、従って、学校一つできれば、同じような研究所をみなくれというようなことになるのだろうと思います。しかし、科学技術振興がだんだんと最近のような状態になって参りまして、技術が進歩するに従って、小さい学校別では持てない。あるいは総合的に共同利用研究するという部面がもっともっと出てこなければならぬと思います。御承知のように、私ども非常に混乱させられたのは、例の宇治の原子炉の問題で、最も学問をしておって、えらい人で、一番知っておるだろうと思う人が、よく聞いてみると、川上と川下のけんかみたいなことで、どうもわれわれとしては判断に苦しむ。その場合に、あのときもお話が出ましたように、京大関係、阪大関係がもっとすっきりして話し合えるような格好の研究所ができ得るならば、私ども善良なる人民を迷わせるような話はもっと少かったのだろうと思うわけであります。ほんとうに科学技術振興文部省等の関係の中でやられる場合には、この辺の研究設備機関の問題は、これまであったやつはあったやっとして、もう少し総合的な、共同的な研究方法を持たざるを得ないのではないかと思います。特に科学技術振興が議題となりました昨今におきまして、文部省でそういうことが相当強く方針として打ち出されつつありますかどうか。それから端的に今の丹羽さんの御意見に対する文部省のお考えにつきましても、お伺いをいたしたいと思います。
  33. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 御説のように、自然科学の方面において、近時共同研究が非常に進んで、研究者が協力して研究を行う必要がありまして、研究組織は非常に増大化する傾向にはございますので、御質問のような点につきましては、文部省としても今度の科学研究助成補助金の出し方等につきまして、十分重複しないように心がけて進みつつございます。なお、具体的な内容等につきましては、大学学術局長から答弁をいたさせます。
  34. 緒方政府委員(緒方信一)

    緒方政府委員 ただいまお話のございました共同研究施設につきましては、最近そういう方向に進めつつあるものもございます。特に来年度予算に要求しております物性研究所でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、これは東大に付置いたしますけれども、全国の大学研究者共同利用研究施設として設置する計画でございます。それから、先ほどもちょっと御指摘がございましたように、現在また設置場所につきましていろいろ論議がございます。関西に一基設置したいと思います研究原子炉につきましても、これは実は設置されました暁におきましては、全国の大学の共同の研究施設の機関という建前でございます。ただ、今その設置場所につきましてまだ論議が残っておりますけれども、いずれにいたしましても、最近の研究施設につきましては、相当大規模な施設を一ヵ所にしなければならぬ、あるいはまたいろんな研究実験装置等を一ヵ所に集めて、そこで系統的に研究しなければならぬという要請がだんだんふえて参りますので、来年度におきましては物性研究所を計画いたしておりますし、また御承知のように東大にございます原子核研究所等につきましても、これは共同利用研究所ということで運営しておるような次第でございます。
  35. 佐々木(良)委員(佐々木良作)

    ○佐々木(良)委員 おそらくそういう方向に向うのは向うとしても、おのおのセクトが強くて、なかなかやりにくいということだろうと思います。しかし、本気で科学技術振興というものを文部省自身も音頭をとってやろうという場合には、その部面は相当積極的にやられないと、今次官が言われたような格好で、予算を重複しないようにというような程度ではいけませんよ。今の宇治の問題でも、それはできたら共同研究だということになっているけれども、あの辺になれば、片一方のやつが完全な支配力を持つに違いないというようなところに問題があったような気がいたします。従いまして、この問題は科学技術庁研究所との関連を含めての問題ではありますが、文部省内部の問題でもありますから、むしろ文部省の御健闘を祈りたいと思うわけであります。  関連いたしまして、私はまた同じような感じを持つわけでありますが、南極探検の宗谷丸の問題がありましたね。あれを見ておりますと、私どもは知らなかったから、正直なところ宗谷丸が行くときには、これは国際的にも相当な格好のものだろうと思った。ところが氷に閉じ込められてみると、よその方から行くやつはもっと堂々たる設備のものが行っている。何だかつまらぬところに負け悔しみをするような気がして、ちょうど独立々々といってわけのわからないような自衛隊が日本の国を守るみたいなもので、あのくらいで世界の学術の本舞台に出て堂々とやれるような錯覚を国民に与えたような気がするわけであります。別に悪口を言うわけじゃありませんけれども、やはり実力というものは仕方がないわけであります。実力相応に、やることはやっても、あの場合ならばあれをやった方がいいのか、あるいはアメリカならアメリカの研究団体の中に乗り込ましてもらって、いっそのこと国際的な共同研究で行った方がいいのか、実はどっちがいいのかさえも私どもは迷わされるような気かするのであります。今の文部省内のセクト的な問題は、同様な意味で、こういう学術研究の世界的なヒノキ舞台の場合にも何だか島国根性みたいな感じを持つわけであります。なお、そのことは文部省だけの問題ではなくて、あるいはわれわれも含めた政治の問題でもあるかもしれませんけれども、率直に、私は今度の宗谷丸の問題を見まして、その感を強くするわけであります。特に、御承知のように、日本のこれまでの教育というものは、本質的な心理の探求みたいなものが昔から中心になっており、アメリカその他のものはあくまでも実用が中心になっておった。それが特に科学技術の問題になってくれば、私は実用面がぐっと大幅に出てこなければならぬと思う。にもかかわらず、何だか針の穴から天井をのぞくような形の研究が続けられるのが、一番オーソドックスみたいなことになっておるのじゃなかろうか。その辺にも何か、科学技術の本格的な振興教育を考える上についても、どうもすっきりしないような気がするわけでありますが、この辺に対する御見解はいかがでございましょうか。
  36. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 佐々木さんの述べられた御意見は非常に示唆に富みまして、私どもも同様痛感をいたします。なかんずく今度の宗谷の問題につきましても、帰ってさましたら、この経験にかんがみまして、これを生かして、将来の本観測等につきましては万全の策を講じたいと思います。文部省大学関係についての科学技術研究科学技術庁設置法の中で除いておりますのは、決してセクト主義によるものではないのでございます。科学技術庁科学技術審議会の中には文部次官も入っておりますし、教育部会には大学学術局長も入っておるわけですから、十分その意見を尊重しまして、大局的には緊密な連絡をとりつつ、わが国全般の科学技術研究に寄与したい、こう考えておる次第でございます。
  37. 佐々木(良)委員(佐々木良作)

    ○佐々木(良)委員 これは意見になるかと思いまするが、今の問題の続きみたいな意味におきまして、丹羽さんにお願いするといいますか、あるいは都合によったら御意見を承わるという意味で申し上げておきたいと思います。  先ほど来お話がありまして、特に齋藤さんと政務次官との間にも激論が戦わされたようなわけです。大体われわれが見ておりましても、現在の大学教育というのが中途はんぱというか、混乱期にあると思うのです。一番中心的な目標は、法律にはどう書いてあるのか知りませんけれども、何を目標にして教育しているのかということに少くとも困惑があるだろうと思います。早い話が、子供を学校に出している親に聞いてごらんなさい。昔と同じように、社会に出れば少数の幹部候補生になれるということを前提にして学校にやっておる。それから教授の大部分の人々も昔と同じような感じで、頭のいいやつならば、これは真理の探求をしてもらうような学徒の幹部候補生、普通のでも、社会に出れば社会の幹部候補生にということをはっきりと前提としたような教育を先生方は中心にしておられる。親もそう思っている。しかしながら、現実に学制改革のありました後の大学教育の目標は、そういう幹部候補生だとかなんとかいうことじゃなしに、もっと善良にして良識ある市民を養成するというところにあるはずでありまして、少しその辺の困惑がある。そしてまた同時に、今度は迎え入れようとするところの社会側の方は、そういう常識だとかなんとか、あるいはまた出世をしてもらいたいとかいう親の希望とは別に、もっと役に立つような実用向きの人間を作ってもらいたいというのが一般要望だろうと思います。このように、大学教育に対する要望といいますか見方が、よほど役に立つ者を作ってくれというのと、役に立つ立たぬじゃなくて、もっと善良なる市民として、常識人として出させようというつもりと、それから親や先生のようになるべく偉い人になってくれ、偉い人になるための教育というのとで、非常に違ってくる。それが法文科系になりますと、その教育の仕方につきましてはそれほどでないかもしれませんが、具体的に科学技術の問題になってきますと、その三者のやり方は非常に違ってくる。従いまして、その三つを合せるような格好で今の方針検討されておるのでありましょうし、審議会におきましても、いろいろな部門で研究されておるのだろうと思いますが、日本人は形式的に物を考えがちでありまして、ほんとうはこうしてほしいんだけれども、そう言うと教育の品がなくなるから、こういうふうに言っておかなければならぬというような場合がよくあると思います。先ほど丹羽さんがお話になったような方針は、どうも聞いておりますと、ほんとうに実用人を作るというところに中心があるような気がしますが、丹羽さんのところでは、そういうことが一番重点的に考えられておるのでありましょうかどうか。もし、そうでありますならば、今の文部省の考え方とちょっとズレがあるのじゃなかろうかと思うわけでありますけれども、最後にその点だけをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  38. 丹羽参考人(丹羽周夫)

    丹羽参考人 私、科学技術に関しては常々こう考えております。科学技術を大別いたしますと――大別の仕方も間違っておるかもしれませんが、大体理科と工科と、農科、医科というようなものがあると存じます。これははなはだラフな分け方で、もっとこまかくいえば薬学等々もあるのであります。そのうち工科というのは、これはあくまでアプライド・サイエンスの難問でありまして、ほんとうの学問はやはり理科にあると思います。現在は少し違っておるかもしれませんが、われわれが習いました四十年前の教育の状況と、今でも多分間違いないと思います。そう言っては学者にはなはだ失礼でありますけれども、工科の学問は、数学を応用し、物理を応用し、化学を応用して、そうして実際の産業に役立つ、これが工科であろうと思います。従って、ほんとうの基礎学問の知識というものは、教授にありましても、理科の先生の方がはるかに上であろうと私は考えます。従って、工科の教育及び卒業生は、あくまで産業に役立ってもらうものでなければならぬと考えます。私、かつて東大の工学部長をしておりました某君に、こういう暴言をはいたことがあります。国家としては、大学教育とかなんとかいうものは、りっぱな、それぞれの専門知識のうんのうをきわめた人を養成するのがいい、そういう人が日本の国民の中に少しでもふえれば、日本のレベルが上るであろうと思う。しかし、われわれのような人間から見ると、少くとも工学部は人間養成株式会社であると思う。従って、マーケットなしにいたずらに人間を養成して何になるか、一体その点は何と考えておるかといったようなことを言ったことがあるのであります。従って私は、その点はやはり実際に産業に役立つ人がほしい、こういうふうに考えます。
  39. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 文部省として学校教育というものの目的を非常に混乱し、迷っておるように御推察のようでありましたが、迷ってはおりません。学問の分野にもよって違いはあろうかと存じますが、まず第一に、善良な国家資源を養成するということと、国の産難、経済、文化等に役立つ知識を付与するということでございまして、科学技術教育の目標という点につきましては、今、丹羽参考人から申されましたような次代の産業界に役立つということももちろん目的ですし、同時に、やはり教育の目的の一つである善良なる国家資源を養成する、この二つを調和していくというのが目的であります。今、幹部候補生という言葉をお使いになりましたが、そういう目的は持っておりませんし、迷っておるのではございませんことを申し上げておきます。
  40. 佐々木(良)委員(佐々木良作)

    ○佐々木(良)委員 これは追及してもどうしようもないことでありますので、これでやめますけれども、確かに調和した人間を作るということが目的でしょう。しかし、現実に、先ほど前田さんの方からもお話がありましたけれども、たとえば、中国の教育、特に科学技術関係というのはすぐ役に立つ者を作るために、さあっと物を生産するのと同じような格好でやっております。従って、中国はあれだけ広いから、まず一番先に調べるのは地質だというので、地質を研究する学生の数が一番多い。日本では三人か五人くらいしかおらぬから、ずいぶん話が違う。しかしながら、ああいう共産圏でなくても、アメリカでも、同じ意味で、丹羽さんの話にもありましたように、特に工科の関係ではほとんど実用オンリーのような格好で教育がなされておる。先ほどの齋藤さんの質問の意味も、科学技術については、人格の陶冶、ハーモニーも必要だけれども、実用化の方をもう少しぐんとやったらどうだろうかということだろうと思います。根本的な問題となれば、とにかく日本の教育というのは、もともとむずかしい立場で特にドイツあたりの影響を受けてできたわけでありますから、なかなか思想的な問題を含んでおるようであります。しかし、今科学技術振興という面から見た場合には、確かにハーモニーもハーモニーでしょうけれども、相当思い切った実用化方策がとらるべきではないかと私は思います。先ほど齋藤さんからお話もありましたけれども、特にこの点を希望して質問を終りたいと思います。
  41. 齋藤委員(齋藤憲三)

    ○齋藤委員 関連質問でちょっと簡単に伺いますが、科学技術庁設置国会の問題になりましたときに、科学技術という観点から、特に人文科学を除外するとか、大学における研究にかかるものを除外するかしないかということが、非常に論争の的になったのであります。時の趨勢といたしましては、どうしても人文科学を除外しなければならぬ、大学関係研究はこれを除外しなければならぬというのが大勢を占めまして、この科学技術庁設置法第三条には、それが明記されることになったのであります。現在においては、この科学技術庁のあり方に対して、さらに根本的な検討を加える必要があると私も考えておるのでありますが、これは特に科学技術庁当局に後目質問をいたしたいと思っておるので、きょうはその予備行為として丹羽参考人の御意見を承わっておきたいと思うのであります。  人文科学を自然科学から除くというその考え方でありますが、こういうことは、現実の自然科学の進歩過程において可能であるか不可能であるかということです。私は、人文科学の分類分野というものが那辺に存するか、的確には知りませんが、いやしくもすべての科学という大きな範疇、すなわち社会科学をも入れて、自然科学を根底とせずして、今の社会科学というものは一体考えられるかどうかということです。特にオートメーションの世界のごとく、もう自動回路を基調として、選択、記憶、その他の能力を持つところの産業態勢が確立され、また新しい言葉で言えば、サイバネティックスの理論というものが生まれておる今日、人文科学を分類して、自然科学の範疇を明確に線を引くということができるかどうかということであります。これは、考えようによってはできないので、やはりこういう人文科学を除くというようなことは無用なことであるのではないかというふうに私は考えるのであります。それともう一つは、大学研究というものとはいろいろな角度から関連性があるといいますけれども、果してこういうふうに大学研究はこれを除くというような体系において、科学技術庁の行政というものが万全を期し得られるかどうか。これは科学技術というものの行政という面から大学研究というものをよく考究をして、そこに相関連したところの責任体制のもとにおいて進まなければ、大学研究というものは、ある意味において、実社会の効果的な面では非常に薄れていくのじゃないかというふうにも一つは考えられるのであります。こういう点に対しまして、もし何か御意見がございましたら、この際承わっておきたいと思うのであります。
  42. 丹羽参考人(丹羽周夫)

    丹羽参考人 大へんむずかしい問題ですが、私、人文科学というものは常識的にしか存じません。東京大学は総合大学の一番最たるものであって、あすこでは社会のあらゆる問題を取り上げて教授し、研究しておると思います。従って、あすこに例をとるのが一番いいと思いますが、東大の人文科学は、すなわち、法科、文科、経済学科、この三つだろうと思います。それといわゆる自然科学との関連性はもちろんあるのでありますけれども、もしこれを総合して、何とか省とか何とか庁とかいうものを作って、そこでそれの進歩発展を期するような政策をやるということになりますと、これはもう政府全体のようなことになってしまいはしないかとさえ考えます。とりあえず目前のいわゆるナチュラル・サイエンスと申しますか、いわゆる科学技術振興ということをどんどんやっていこうというためには、常識的に考えまして、そういう観念のもとにおけるそれら人文科学というものは一応忘れるというか、サイドに置きまして、われわれのいわゆる科学技術振興のための施策上、科学技術庁というものがそれたけをお取り上げになるということは、実際上はやむを得ないのじゃないかというふうに考えます。現に学術会議は人文科学と一緒に取り上げてやっております。あんなようなことになってしまうわけがありまして、目的が那辺にあるかということでありますが、日本の学問、学術全体の向上のために一つの省が要るということになればまた別でありますけれども、私、眼界が狭いかもしれませんが、とりあえずナチュラル・サイエンスの向上ということをまず心がけるということならば、科学技術庁というものがいわゆるナチュラル・サイエソスを扱われるということだけは、やむを得ないのじゃないかと私は考えるのであります。もっと大きな国家行政的な観点から取り上げられるかもしれませんけれども、私はとりあえずはそういうふうに安易に考えております。  それから、大学関係科学技術的問題を科学技術庁の所管から除く、これは私いろいろ考えましたが、先ほどもちょっと妙なことを申し上げましたけれども、学校というものはやはり科学技術教育をしなければならぬ、としますと、学者は常に研究をしなければならぬ。勉強をしなければならぬ。従って、ふだんの学生教授を目的としたことは、教育をつかさどられる行政機関がやられるのが一番いい。しかし、その学者自身も、ふだんの学生教育のためならば、それほどまでしなくてもいいけれども、しかし、学者自身は研究費をもらったりなんかしまして、特別の研究をやることがあるのであります。その研究それ自身は、いわゆる科学技術振興上、科学技術庁にも大へん関係のあることが多々ある。しかも、それが、ややもすれば予算的にも内容的にも重複が多々ある。従って、というのは先ほどちょっと委員長に御許可を得まして追加して申し上げた意見になったのでありますが、そういうことにおきましては関連性が多々あるので、いま少しく御連絡、御協議を願ったらというのが私の意見であります。
  43. 齋藤委員(齋藤憲三)

    ○齋藤委員 私の申し上げましたのは、この第三条に「科学技術庁は、科学技術振興を図り、国民経済の発展に寄与するため、科学技術(人文科学のみに係るもの及び大学における研究に係るものを除く。」と書いてあります。ですから、これを読みますと、科学技術というものの範疇は、この法体系からいいますと、非常に一般的に取り扱っている。そして、科学技術振興によって国民経済に寄与する、そういうような考え方からいって、人文科学というものを除いて、そういうことが一体考えられるかと、こういうのです。ただいまのお話のように、法律とか、それから国民経済とかいうものが、人文科学の中へ入るといたしますれば、やはり法律は別といたしましても、国民経済というものの推進をはかるために、科学技術振興を考えるのであって、それが人文科学に関するものは一切除いて、経済というものは、これの範疇に入らないのだということになりますると、一体この行政というものが、根本的の観念からいって、万全を期せられるかどうか、こういうところから、この科学技術庁設置法の根本にまた疑義が私には生まれてくるのであります。ですから、こういうことは書く必要はなくて、主として自然科学を必要とするとかなんとかいう文章ならばいいですけれども、はっきり人文科学を除く、こういう書き方で、実際第三条に書いてありますところの任務というものが果されるとお考えになりますか。これがやはり法律の条文として適当な書き方であるかということを、ちょっとお伺いしているわけであります。
  44. 丹羽参考人(丹羽周夫)

    丹羽参考人 その法律の筆者の御趣旨は、ほんとうはどうであったかは存じませんが、今ちょっと齋藤さんから伺ったところによりましても、おそらくこの法律をお書きになった、あるいは論議なすったお方々は、技術という字もついておりますし、これは実は科学技術審議会でも一応問題になったのでございますが、科学という字だけだったならば、もちろん人文科学も包含すると考えられますが、科学技術とありますので、結局ナチュラル・サイエンスという意味でお書きになったんであろうというふうに私は想像したのであります。それよりももっと、先ほどの齋藤さんの御意見のように、人間、国家、社会の進歩発展をはかるために、人文科学を除いていいかということになりますと、これはたちまちノーというアンサーが出るだろうと思います。じゃ、それはどうするかといいますと、あるいは文部省だけではいけませんし、科学技術庁だけでもいけませんし、現在の学術会議のあり方でも、もちろんなっていない。従って、ほんとうに人文科学もまぜた、いわゆる科学の振興をはかるということならば、完全に別の行政機関ができて、もっともっと内容の全然変ったものにならなければならないというふうに私は考えます。
  45. 菅野委員長(菅野和太郎)

    菅野委員長 松前君。
  46. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 私は丹羽先生のお話は承わっておりませんでしたから、質問はいたしません。文部省の方がおいでになりますから、文部省の方にお尋ねしておきます。  まず第一に、理科教育振興法がせんだって国会を通過しました。文部省がこれに対して非常に理解を持って進められたことを感謝をしております。ただし、非常に片手落ちがあると私は思うのです。何となれば、理科教育をやっておる学校で、官立や公立の学校は一応国家や地方公共団体から予算が参りまするが、私学は全部自分でやっておる。ところが、その私学をお除きになったというのは一体どういうわけか、私学の方が困っておるのに官立、公立だけをかわいがるというような概念が、どうも文部省に流れておる。これに対して一体私学の方を取り残してあるのですけれども、これはどういうふうにお考えになっておるか、まず伺いたいと思います。
  47. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 本国会理科教育振興法の一部改正法歓案を出しまして理科教育振興については、官公私立を同等に取り扱うための改正をいたすことにいたしました。
  48. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 同等に取り扱うという意味においてお出しになったんですか。
  49. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 はい。
  50. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 第二の問題は、やはり私学に関する問題でありますが、ここに予算が出ております。一億三千八百万円で私学の理科教育振興ができるそうでありますが、これでできるとお考えになっておりますか。
  51. 緒方政府委員(緒方信一)

    緒方政府委員 資料を差し上げました中に、私立大学研究設備補助金理科教育助成金とを合せまして一億三千八百万円の予算を計上いたしております。これは事項といたしまして二つあるのでございまして、一つ大学の基礎的な研究設備につきまして、予算の範囲内で二分の一を補助をしていくということが一つ、それから理科教育のための実験、実習等に要しまする経費補助、この両者でございます。御指摘のように、金額はあるいは少いかもわかりませんけれども、本年度四千万円の増額を、これは研究設備助成金の方に計上いたしました。そうして、こっちの方は今年立法いたしまして、はっきりとした法律的な根拠を持たせてやっていきたい、かように考えておる次第であります。今後文部省といたしましては、この方面の拡充につきましては、十分努力をいたしたい、かように考えております。
  52. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 実業教育助成金が文部省にございますね。ところが、私学における科学技術振興等と実業教育振興との関係理科教育振興との関係はどういうふうになりますか。相関関係を持って処理されるのか、それともそれぞれ独立にお考えになるのか、これを伺いたい。
  53. 緒方政府委員(緒方信一)

    緒方政府委員 ただいま御指摘の産業教育振興法に基きまする補助金でございますけれども、これは主として高等学校段階を中心に進めて絞ります。理科教育振興につきましては、小中高等学校等も含めておりますけれども、産業教育につきましては特に高等学校の職業課程の施設設備充実ということとをまず当面の目標としてやっております。漸次、中学校の方に及ぼそうということでございますけれども、今日までは重点は高等学校に置いて参りました。両者の関連は、これはおのおの別にやっております。実施は別個に運営してやっておりますが、地方の教育委員会におきまして、これは文部省に申請をしておりますので、そこでおのずから調整をはかっていくと存じますけれども、一応別の建前になっておりますから、別個にやっておる次第であります。
  54. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 ある学校の例でありますが、私学の科学技術振興費の助成を申請したところが、産業教育の方で、別な高等学校の方でもらっているから、大学の方は出せない、こう言ってけられた学校があるのです。そういうことをおやりになるならば、これはみなごちゃごちゃの取扱いをしておられるのであって、名前こそ違え、同じように取り扱っておられる。こういうように考えることができるのです。今の別々に取り扱っておられるというのは、現実においては別々に取り扱っておられない、これではほんとうに大学教育振興もできなければ、実業教育振興もできない。ある学校法人がいろいろなものを経営しておるときに、そうごちゃごちゃに取り扱われたのでは、目的を達することはできないと一思います。これに対して今後どういうようになさるか、伺いたいと思います。
  55. 緒方政府委員(緒方信一)

    緒方政府委員 実は産業教育振興経費の方は、初中局でやっておりますし、それから理科教育振興の方は、これも初中局でございます。それから今御指摘になりましたのは、おそらく私立大学理科教育設備補助金であると思うのであります。この関係は局も違いますが、これは実は管理局で実施いたしております。その間、なるべく総合的にやっていくという努力はいたすと思いますけれども、しかし、おのおの目的は別でありまして、建前としましては、先ほど私が申しますように、別な観点からこれは実施しておると存じます。今後の問題といたしましては、なお各局間の連絡はとらなければなりませんが、しかし、目的が別でありますから、これは私担当ではございませんので、はっきりは申し上げられませんけれども、別個な観点から実施していくことに相なると存じます。
  56. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 これは一つ別にやっていただきたいと思いますが、もしもまたそういう混同されるような現象が起りましたら、そのときにまた質問いたしたいと思います。政務次官から、別々にするということをはっきり言ってもらった方がいいと思います。
  57. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 同一学校法人が小中学校高等学校大学と経営している場合に、科学技術教育について、理科教育振興法、産業教育振興法及び今度出ます私立大学助成法、そういうものは全部建前が別でありますから、今まで文部省内で、高等学校の方の産業教育助成金を出しているから、大学の方には出せないというように、もし取扱いをごっちゃにして、混同してやったといたしますれば、大きな間違いでありますから、よく調べまして、注意をして、今後そういうことがないように気をつけます。
  58. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 今の政務次官の御答弁で満足します。  そこで、産業教育の問題ですけれども、大学の問題がだいぶ論議されましたが、産業教育については、高等学校程度教育が非常に大事だと思います。今、地方において要望されているものは、大体産業教育であります。ところが、この産業教育のあり方がだいぶ変ってきておる。文部省でお考えになっておられる従来の産業教育のやり方というものに対して、社会の要望というものは、相当な変化をしてきておるということなんです。一例を申し上げますと、農家が工業学校に自分の子供を出して、そして、農業に従事させようという傾向が非常に顕著に見えてきておる。言いかえると、農業の機械化、科学化を通じて、今までの農業教育じゃもうだめだ、ただくわを持って一生懸命やるような、植物だけを相手にしたような考え方じゃだめだ、問題は能率だ、こういうふうな考え方から、むしろ自分の長男を農民に育てるために工業高等学校に入れたい、こういう傾向が今顕著に見えてきた。これらに対して、文部省は根本的に今の産業教育の体系を打ち変えるようなことをお考えになっていらっしゃるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  59. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 御指摘のような点は十分考慮に入れまして、学校制度の全面的な改正をはかりたいということで、準備を進めております。
  60. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 何か具体的な調査会か、審議会かお持ちになっておやりになるのですか。
  61. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 文部省で成案を作りましたならば、中央教育審議会の議を経て、そういう御趣旨に沿うた改革の方へ持っていきたい、こういう考えでおります。
  62. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 今年の大学卒業生の動向を見てみますと、科学技術系統の理科系統は非常に売れ行き――というと語弊がありますが、就職工合がよろしい。私ども履歴書を預かって一番頭を悩ますのは、やはり中央大学や法政その他から出て参りまする多量生産の法学士、経済学士であります。結局、この現象は、文部省教育計画というものが、日本の産業形態あるいは国家建設計画の基本方針に沿ってない。また国家の経営に関する必要なる人材というものがどのくらい要るかということに対する計画性も、政府にはないかもしれないけれども、しかし、大体のところはつかむことができるのであります。いずれにしても、本年度予算をここに政府が提案されるならば、大体において、年々歳々ネコの目が変るように、こうしょっちゅう変っては困りまするけれども、しかし、大体において、年々を通じての基礎的な部分というものは変らないと思うのです。言いかえると、理科系、文科系の比率は大体つかめるものだと思う。だから、予算を提案されるときに、それに即応した一応の人材養成計画というものがなければならないと思います。ところが、今日はまるでそれが逆転しておって、国家のやらんとすることと人材を養成するのとはまるで別々に、ちぐはぐにいっておる。言いかえると、教育に国家建設に関する計画性がない、即応性がない、こういうことになるのであります。理科方面をふやせとか、ふやすなとかいうことは別問題として、減らすなら減らしてもかまいませんけれども、必要なものを何ゆえにふやさないかという根本問題がここにあると思うのであります。要は、教育の計画性、このことに対して、一体文部省教育計画をお持ちになっておるかどうか、これを伺いたい。
  63. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 おいでになる前に、諸委員から同様な御質疑があったわけでありますが、正確な意味における教育計画というほどのものはないかもしれませんが、文部省といたしましては、今日の国家の人材養成要求、世界の趨勢の変革等も勘案いたしまして、予算の許す限り、理科系の教育に重点を置くという建前から、大学におきましては、学生増もいたしましたし、教官、職員の増加もいたしましたし、それに伴うて相当程度予算の増も行なったわけであります。まだ不十分でありますので、今後さらにこの点についての増加の傾斜を急激にしたい、こういう考えでおります。私立大学の方は、御承知のように、学校経営という問題がからんで参りまして、理科系の学生は金が多くかかるものですから、なかなかふやすという趨勢になっておりませんで、相変らず文科系統学生が多いようでございます。私の関係しております中央大学等におきましても、入学のときには、あそこは法科の方へ優秀な学生が入りまして、歴史の浅い工学部もありますが、ここへはあまり優秀な学生は入りません。しかし、卒業の場合には、この優秀でなかった学生の方がどんどん就職して、優秀であった法科の卒業生は就職できないというようなことを痛感いたしておるような次第でございますから、今後文部省といたしまして、私立大学の理科系の学生数の増加ということについてどうしたらいいか、検討中でございます。省としての計画を今申し上げる段階ではありませんけれども、私自身といたしましては、私立大学の文科系統の定員というものをもう少し厳守せしめる必要がある、そのかわり経営の成り立たないところは、私立学校振興法という法律に基く予算を増大いたしまして、経営の困難な点の助成を同時に行いつつ、御要望にあるような科学技術教育に漸次ふりかえていきたい、こういう考えでおります。
  64. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 非常にたのもしい御答弁で、どうか一つ稻葉さんの所信を御在任中に実行していただくようににお願いいたします。  そこで、大学設置基準というものがありますが、委員会があって、いろいろ大学の認可みたいなことをおやりになっておるようであります。ところが、大学はこれだけの科目教授すべしという内容がずっと書いてあります。その内容を見てみると、先ほど齋藤委員から質問をしておられましたが、どうも内容が多少ちんばではないか。言いかえると、自然科学偏重ではないか、多少その中に人文科学的なものを織り込んで、そっちの常識を持ったエンジニアを育てなくちゃいかぬじゃないか、こういうことを私どもは考えておるのです。あまりああいうふうにぎちぎち何もかも規定してしまうと、教育というものは、一つの私学なら私学の理想に向って進もうとしても、なかなか困難になる。多少そこにアカデミッシェ・フライハイトというものをそういうところに応用しまして、そしてもう少し大学教授科目に弾力性を持たせるような方向に向って今後やっていくべきじゃないかと思うのです。もちろん、その辺でごまかして、科目を減らしたりなどするようなことは断じて許すべきではありませんけれども、少くともここに弾力性を持たして、それぞれの特徴のある教育をやるべきじゃないかというふうに私は思うのです。そういうふうに変えるお考えがあるかどうか、伺いたいと思うのです。
  65. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 大学の各学部の教科目に弾力性をつけろという御趣旨の御質疑のようであります。弾力性をつけるためには、必須科目と選択科目とその分界を、もう少し選択科目をふやして必須科目を少くするという考え方もあろうかと思いますが、大学設置審議会で今示しておるところの、この学部にはこういう科目というのは、最低の基準を示したものでありまして、これをさらに基準を下げまして科目を減らすというふうな考えは、ただいまのところは持っておりません。
  66. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 科目を減らせということを私は言っているのじゃありません。そこに多少のブレキシピリティを持たせる、科目の総数のほかにまだ必要なものが私はあると思うのです。あれに書いてあるものが必要にして全部ではない、あれ以外にあると思うのです。そういうものをやってみたって、学士たる条件にはならない。その辺にもう少し弾力性を持たす。文部省の考えておられるのはどうも万全ではないと思うのです。しかし、これはベースはよろしい。ベースはよろしいが、枝葉においては相当な自由を認めてもいいんじゃなかろうか。やってみても何も効果のない、学位をもらうのに不必要なものをやっても、学生は聞こうともしないし、その辺に弾力性を持たしてもらいたいという意味があるのです。
  67. 稻葉政府委員(稻葉修)

    ○稻葉政府委員 大学学術局長から、補足して御答弁申し上げたいと言っておりますから……。
  68. 緒方政府委員(緒方信一)

    緒方政府委員 ただいま御指摘のことは、大学設置につきましては、現在大学設置審議会に諮問をいたしまして、文部大臣が認可をすることになっております。文部大臣が認可をします場合の基準といたしまして、基本は省令できめておりますけれども、そこに最低の基準をきめておるわけでございます。これは最低の基準でございまして、今お話しの、ペースはきまっておるわけでございます。その範囲におきまして、なおその基準を高めることを実は要望いたしたいのでございまするが、一応の基準を設けておる、こういう考え方でございます。その中におきまして、大学におきましては相当今の大学の特殊性を生かしてやっていただくということが可能ではないかと私どもは考えます。ただ、その大学の分野分野に応じまして、いろいろ基準を考えております。その際、なおよく一つ検討いたしますけれども、現在の建前はそういうふうになっておることを申し上げます。なお、今後十分一つ検討していきたいと思います。
  69. 松前委員(松前重義)

    ○松前委員 今の問題は、どういう学生を出すかということについて非常に大事な問題でありまして、教育の基礎になりますので、ぜひ一つ真剣に、今までやられた経験に基きまして、お考えを願いたいと思います。  そこで、学位の問題について一言、ちょっと科学技術振興と離れるかもしれませんが、大体関連をしておりますので、お尋ねをしたいと思います。学位というものは、従来は論文でやっておりましたが、占領軍が来てから、大学院を出なければならぬ、大学院を出るのを中心として学位を出す、こういうことになったようであります。文部省は、一体論文による学位の授与か、それからまた大学院のコースをたどった、大学院まで家庭が学費にたえられるような金持のむすこにだけ学位をやるつもりであるか、そこのところを文部省の基本方針を承わりたい。
  70. 緒方政府委員(緒方信一)

    緒方政府委員 学位を授与しますにつきまして、実は現在はこれは少し詳しく申し上げなければなりませんけれども、学校教育法ができまして、これによりまして旧学位令は廃止になりました。しかしまだ旧制の大学が経過措置として残っておりますから、現在学位を審査して出しておりますのは、旧制の大学が経過措置として旧学位令で出しておるわけでございます。これは、御承知のように、従来大学院を卒業し、そうして論文を出すという方法が一つと、もう一つは、大学院を出ませんでも論文を提出いたしまして、それが教授会にかけられて審査を受けて、学位を出す、この二つがございます。今はそれでやっておるわけでございます。なおこの旧制大学の存続期間はきまっておりまして、一番おそいのが昭和三十七年にはすっかりなくなってしまう。新制に切りかえられるわけでございます。新制度になりました場合には、大学院を置く大学が学位を出すことになります。その際、出す方法といたしましては、これはやはり省令できめておりますけれども、前の方法と大体相違ございません。一つの種類の大学院の課程を出まして、そして所定の単位をとり、さらに論文を出して最終試験を受ける、こういうのが一つであります。それからなおそれにつけ加えまして、さらに、大学を出ませんでも、論文を提出いたしまして教授会の審査を受けて、大学院を出たと同等以上の学力があると認められました者には学位を出す、こういう方針になっておりますから、旧制度も新制度も、今仰せになりました観点から申しますと、変りはないわけであります。
  71. 菅野委員長(菅野和太郎)

    菅野委員長 本問題につきましての質疑は、この程度にとどめます。  参考人には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重なる御意見を賜わり、まことにありがとうございました。当委員会調査に資するところきわめて大なるものがありましたと考えます。委員会を代表して、私より厚く御礼を申し上げる次第であります。  午前の会議はこれにて終了いたします。午後は一時三十分より再開し、科学技術庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、参考人より意見を聴取いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ――――◇―――――   〔休憩後は開会に至らなかった〕