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1957-04-01 第26回国会 衆議院 運輸委員会海運に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員昭和三十二年二月二十六日(火曜日) 委員長指名で次の通り選任された。       木村 俊夫君    佐伯 宗義君       關谷 勝利君    松山 義雄君       山本 友一君  早稻田柳右エ門君       池田 禎治君    小山  亮君       森本  靖君    山口丈太郎君 同日  小山亮君が委員長指名で小委員長に選任され  た。     —————————————    会 議 昭和三十二年四月一日(月曜日)     午前十一時二十四分開議  出席小委員    小委員長 小山  亮君       木村 俊夫君    池田 禎治君       森本  靖君    山口丈太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 朝田 静夫君         運輸事務官         (海運局長)  粟澤 一男君         運 輸 技 官         (船舶局長)  山下 正雄君         運輸事務官         (船員局長)  森  巖夫君  小委員外出席者         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    辻  章男君         運 輸 技 官         (港湾局計画課         長)      坂本 信雄君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 三月八日  小山亮君同月四日委員辞任につき、委員長の指  名で小委員補欠選任された。 同日  池田禎治君同月五日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員補欠選任された。 同日  關谷勝利君同月六日委員辞任につき、委員長の  指名で小委員補欠選任された。 同日  小山亮君が委員長指名で小委員長補欠選任  された。 同月二十七日  池田禎治君及び小山亮君同月十九日委員辞任に  つき、委員長指名で小委員補欠選任された。 同日  小山亮君が委員長指名で小委員長補欠選任  された。 四月一日  森本靖君三月二十八日委員辞任につき、委員長  の指名で小委員補欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  海運政策に関する件     —————————————
  2. 小山亮

    小山委員長 ただいまから運輸委員会海運に関する小委員会を開会いたします。  海運政策に関しての調査を進めることにいたしたいと思います。   〔小委員長退席山口(丈)小委員長代理着席
  3. 山口丈太郎

    山口(丈)小委員長代理 これより質疑を行います。小山亮君。
  4. 小山亮

    小山(亮)小委員 きょうは非常に数が少いから、懇談的にお話を伺いたいと思いますが、まず海運局長に伺いたいのですが、第十三次計画造船適格船主選考基準について、新聞紙上によりますとオペレーターを優先的に取り扱って、オーナーというのを第二次的に見るとか、何かそこに段階をつけて許可、認可の基準をおきめになるようなことを伺っておりますが、どういうような選考基準当局は持っておいでになるか、簡単に率直に承わりたい。
  5. 粟澤一男

    粟澤政府委員 選考基準について御説明申し上げます。選考基準につきましては、一般共通のものと、それから定期船不定期船タンカーそれぞれ区別があるものと両方ありまして、一般共通のもので申し上げますと、海運業者としての実歴経営力あるいはその業種が専業の業者であるか、あるいは海運業を兼業に行なっているかというようなことが一般共通基準であります。またそのほかにも当該の申請する船が、船価がどの程度であるかというようなことも、一般的に基準として見るつもりでございます。そのほか定期船に特有のものといたしましては、定期航路のために使う船でございますので、当該定期航路整備状況、あるいは一般的に海運の調整上あるいは定期航路整備上の当該航路緊要度と申しますか、そういう点も基準に勘案するつもりでございます。それから不定期船につきましては大型と四千五百トン未満によって違いますが、大型の場合にはただいまお話のございましたようにオペレーターを優先するという基準をとるつもりでございます。それから中型につきましては四千五百トン未満二千トンまでの船でございまして、これは過去において財政資金によって四千五百トン以上の船舶建造をし得たものは一応除外いたしまして、それ以外の新しい船主から選考したい、こういうふうに考えております。なお当該船主の船が、近海沿岸のいわゆる中型船定期船として使われる航路に実績を持っておるものという基準もとりたいと思っております。それからタンカーにつきましてはスーパータンカーを優先的に見るという基準をとりたいと思っております。なおタンカーにつきましてもオペレーターが優先するという基準は、不定期船と同様にとりたいと考えております。大体以上が過去の経緯から考えております基準であります。
  6. 小山亮

    小山(亮)小委員 お話を伺いますと、現在ありますいわゆる古いのれんの船主経済力等がきわめて強力であるというような人が、大体その選に入るということは考えられますが、当局の御方針としては、海運経営に意欲を持って新たに台頭していこうというよりな会社、あるいはそういう船主がありました場合に、これを育成するというような面については何にもお考えはないのですか、伺いたい。
  7. 粟澤一男

    粟澤政府委員 先ほどちょっと漏らしましたが、運輸省といたしましては、今お話のございましたように、資産内容がよくて非常に有力なところというふうな考え方は、選考上そうきつく考えておりません。資産信用力の点につきましては開発銀行選考してもらう、こういうつもりでおります。従いまして運輸省選考理由を見ますと、資産内容が非常によろしいからというふうなために特に優位に行く、あるいは特にそういうことのために運輸省で優先的に選考を合格させるというふうな考えは今のところとっておりません。もちろん会社実歴経営力という内容に該当する分については、そういう点も考慮されると考えるのでございますが、この点ちょっと補足いたしておきます。  それから今の御質問の趣旨でございますが、ただいま申し上げましたように海運業者としての実歴経営力というものの優秀なものからとるという基準でございますので、ほんとうに新しく海運というものを始めるという場合には、どうしても比較いたしますとそういう点で劣るということは考えられるのでありまして、新たに海運業を志望するものを育成する、どうしてこの選考によって取り上げるかという点につきましては、仰せ通り現在の選考基準では、そういうものは実歴経営力というような点から見て後順位になるのじゃないかと私ども考えております。
  8. 小山亮

    小山(亮)小委員 この問題は、今皆さんから御答弁を要求することは無理かと思いますが、最近の顕著なる海運界の情勢を見ておりますと、タンカーにしましてもスーパータンカーからジャイアント型に移り、それがマンモス型に移る。すでにもう五万トン、六万トン、八万トンといったような、過去二、三年前においてはわれわれが想像だにしなかったような大型の船がどんどんとできてくる。ことに製鉄業の将来なんか考えますと、どうしても専用鉱石輸送船、これもすばらしい大きな船ができてこなければならない。またこういう船ができることによって低廉な原料資材が手に入るということになりますから、各国とも競争大型の船に移ろうとしております。日本もおそらくごたぶんに漏れず、やはりこの線に沿って諸外国に負けないように施策を進めると思うのですが、それについては広く万般の海運の問題を見まして——この間も港湾局長にこの話をしたのですけれども、一体日本港湾で三万五千トン、四万トンの船が楽に入港して荷役のできる港が幾つあるのだ。率直に言うと、タンカーなどで今の三万五千トン、四万トンという船が入る港は和歌山県の下津港一港しかない。これは港湾局長がはっきり言っておられる。ほかの港はどうかというと、これは今十二メートルを基準にして港を掘ろうとしておる。その掘るのも三カ年計画で完成しよう、三年後に十二メートルの水深の港を、政府予定では大体十港ばかりですが、かりに十港ばかりのところを掘さく浚渫したとしましても、それではもう間に合わないような船があとからあとからどんどんとできてくるのじゃないか、こう思うのです。そうしますと、こんなこうやくばりの仕事をしないで、抜本塞源的な大きなスケールで思い切った施策をしなければもう間に合わないのじゃないか、海運国である日本が、海運においては世界のどこの国にも戦って戦い得ざる劣弱な海運国となるのじゃないかということを私は心配するのです。これは造船の状態を見ましても、船は大きくなる傾向にどんどん進んでおる。貨物船にしても、タンカーにしても、その他の船全部が大型に移ろうとしていますし、速力もだんだんにふえてくる。そういうことを考えますると、船員の養成にしましても、今後の港湾設備にしましても、それから造船所施策——造船所が大小いろいろまぜまして大体八十かそこらあるようですけれども、それでは一体実際に大型の船をどこの造船所が作り得るかということになると、それもまたきわめて少いのじゃないか、こう考えると、あらゆる面で思い切った施策をしなければならない、こう考えます。それには総合的な新しい海運政策というものを——どうせ一分一厘、ものさしではかれば間違いないというようなものはできっこないのですが、大筋だけはこの方法でやらなければならぬという海運政策というものが、あなた方の手によってでき上らなければならぬ、また考えていただかなければならぬ。その面に沿うて予算を要求する。われわれも協力して大蔵省に向って予算を要求する。そういうふうにいかないと日本は立ちおくれてしまうように思うのです。この点に対しては官房長あたりの御意見も伺っておきたいと思いますが、代表してといってはちょっと悪いかもしれないが、総合したような、しっかりした——大臣でなければこうする、ああするということもできないかと思うが——大臣もできないだろうと思いますが、要するにあなた方全部寄って衆知を集めなければできないことですが、新しいこういうような問題に対して検討するような御用意があるかどうか、ちょっと伺いたい。
  9. 朝田静夫

    朝田政府委員 お答えいたします。ただいまの小山先生の御質問の点は、われわれのつとに頭を悩まして考えておるところでありますけれども、実際に現われました予算の面から申しますと、今お述べになりましたような思い切った措置がとれていないのでございまして、今度も港湾法の一部改正法律案によりまして、国と事業者と府県、港湾管理者、こういうものの負担割合を変えて、スーパータンカー関連をいたします港湾の浚渫その他の港湾施設整備努力をいたしておるのであります。今言われましたようなマンモスタンカー、あるいはそれよりも小型になっても、ジャイアント型といったようなものまでも一挙に処理ができないのであります。この点不十分でありますけれども、この関係の工費につきましても相当膨大な経費が要るわけであります。しかも三年間でこれをやろうということでありまして、従来の公共事業費予算の使い方をむしろ早めて——これでも不満ではありますけれども、三年間で仕上げる、こういうような形で手をつけ始めたのであります。  二番目の、非常に大型船舶がなって参りますこういう世界的な傾向というものは、仰せ通りであります。この船舶建造する造船所というものがないじゃないか、ごく数えるほどしかないじゃないか、こういうことでありますが、まさにその通りであります。この点につきましては相当技術的にも問題があるというふうにわれわれは聞いておるのであります。非常に大型になって参りますと、抗張力の問題その他につきましても技術的な審議を十分しなければ、果してそれが国際競争裏において有利であるかどうかという点にも、相当問題があるというふうに考えております。従いまして技術審議会のようなものを設けまして、運輸省におきましてはそういった方面の勉強もいたしておるわけであります。これはむしろ船舶局長からお答えいたした方がいいかと思いますが、そういう方面におきまして、そういう方向に向って努力は続けておりますけれども、実際現われました予算その他の措置において十分とは言えない。従いましてその方向に向って運輸省努力いたしていきたい、こういうふうに考えております。
  10. 小山亮

    小山(亮)小委員 この問題は恒久的に日本港湾をどうするかということは、理想から言うなら、どの港でもどんな大船でも荷役のできるようにすることが理想ですか、たといそれだけの金があったにしても、日本ですぐに手をつけて、完全にこれを整備するということには間に合わないと思うのです。そうしますと応急の対策として別に方法考えられるのじゃないか。これは官房長も御存じかもしれませんが、最近の新聞によると「三ッ子島輸入基地」という見出しで、広島県下の音戸の三ッ子島専用鉱石運搬船輸入基地計画されている。これはナショナル・バルク・キャリアーズの計画で、私はこの話をずいぶん前から聞いておったのですけれども、それが具体的にこういうふうに出てきたので、運輸省がこれに対してどういう考えを持っておいでになるか伺いたいと思っておったのですが、これは非常にいい考えだと私は思う。日本のような国が大型の船を各港に直ちに着岸できるようにすることは困難であるけれども、これは私の記憶に間違いがなければ、元海軍の呉造船所建造しました軍艦を、そのすぐそばにある三ッ子島に持っていって、水深の深いそこの島で完全な艤装をした、それに使ったあとだろうと思うのです。これなんかは、一応そこに鉱石陸揚げ設備をちゃんと完全にしておいて、それからあとで適宜に引き舟か何かに積み上げて瀬戸内海の各地に運んでいくというようなやり方は、非常に頭のいいやり方だと私は思うのです。これに匹敵するような島がほかにあるのかどうか、私はまだ知りませんが、こういうことは日本考えなくちゃならぬことであって、こういうことをアメリカがかりに要求した場合には、日本は果してこれを許可しなければならぬかどうか、またこれを許可しなければならぬような事態が起きた場合には、これと拮抗するだけの適当な土地をほかに研究しておいでになるのか、この点を伺いたいと思うのです。
  11. 朝田静夫

    朝田政府委員 呉の三ッ子島の積みかえ施設の問題でありますが、これはおっしゃる通り非常にいいアイデアで考えられているために、今の段階ではわれわれも考えているわけでありますが、しかし影響するところが非常に深刻であり大きいものがあると思いますので、ただいま事務的にはその当該会社から農林省にあてて、開墾農地買収に関する許可を申請いたしておるのであります。それに関連いたしまして農林省にも事務的にはわれわれの方から申し出をいたしまして、通産省等にも外資に関する法律等関連もいたしますので、各省とよく協議をして処理をしてもらいたいということを申し入れているのであります。それは今の事務的な段階処理の問題でありますが、一体運輸省はこの問題に対してどう考えるのかということでありますけれども、これはなお詳細事業計画なり今後における会社の運営なりをよく検討いたしてみませんと、にわかに態度を今きめるわけには参りません。しかし大きな方向といたしましては、当然鉄鋼業合理化あるいは油とオアと両方やり得るような大型の船でありますから、そういったものについて一体どう考えておるのかという問題になるのであります。そういった合理化の面、あるいは輸送の大きな世界的な傾向というようなものを否定するわけには参りませんので、これを日本側においてデスクリミネーションをもとにして、NBCがお使いになるということで果していいのかどうか、あるいはまたNBCの船が着いた場合に日本船の使用が可能であるのかどうか、あるいは優先的に扱われるのかどうか、あるいはその会社資本金の、NBC日本側関係出資者との割合がどうなるのか、また鉱石のある程度のコントロールがそのことによって行われたりしないかどうか、また鉱石海上運賃に大きな変革をもたらすものではないか、トランシップしたときの費用がその運賃の中に含まれて非常なダンピングになりはしないかというような、いろいろの点を検討しなければならないと考えておりますので、詳細な会社の意図する計画十分調査を進めまして、慎重に態度を決したいと考えおります。
  12. 小山亮

    小山(亮)小委員 三ッ子島というのは現在はNBCが使っているのですか、どうなっておりますか。現在全然使用許可してないのですか、あるいは許可しているのですか。
  13. 朝田静夫

    朝田政府委員 私の承知いたしておりますのではまだ使っていない。しかしその三ッ子島積みかえ会社ですか、正式の名前でないかもしれませんが、その会社はすでに設立をされております。資本金は四千万円でありまして、一千万円が払い込まれているように聞いております。現在は開墾農地がそのままになっておりますので、県その他のあっせんによりまして農地あるいは漁業権買収といった点について、大体話し合いが終ったというふうに報告を受けているようなわけでありまして、現在三ッ子島というのは現実には使っていないと承知しております。
  14. 小山亮

    小山(亮)小委員 NBCは呉の造船所をいつまで使用する権利を持っておるわけですか。
  15. 山下正雄

    山下政府委員 ただいま詳細な資料を持っておりませんので、私の記憶しているところで申し上げたいと思いますが、昭和二十六年に施設の一部売却及び貸与契約日本政府NBCの間でできました。その契約によりますと、十年間この施設貸与について規定をいたしております。それから会社側の希望によりましてさらに五カ年間を延長し得るというような契約になっております。
  16. 小山亮

    小山(亮)小委員 これも新聞の報ずるところでありますが、この十年間貸与期間中にアメリカ側がいわゆるマンモス型のタンカーを相当数建造する計画を発表しておりますが、どのくらいの数量を向うは作る予定なんでしょうか。御承知ですか。
  17. 山下正雄

    山下政府委員 まことに恐縮ですが、今資料を持っておりませんので、的確な数字は申し上げられませんが、年間建造能力は大体十万総トン程度でございます。今までに四万五千トン・クラスのもの、それから御承知のように八万トン・クラスのものの建造をいたしております。竣工しました八万トンのものはすでに一隻ございまして、さらに最近八万トン・クラスのものが進水したかするかというような状況にあると思います。今後の契約につきましても、やはり年間十万トンというのを目標にして計画を進めておるようであります。詳細な資料がございますけれども、ただいま持参しておりませんので、まことにずさんなお返事で申しわけございません。
  18. 小山亮

    小山(亮)小委員 それに関連してなお御質問したいと思いますが、先ほど朝田官房長お話によりますと、日本船大型のいわゆるマンモス型の船をどんどん建造したいけれども、現在の造船技術においてはまだ完全にそういうものができるかどうか非常に疑問があるというようなお話がありました。しかし呉の造船所NBCがやっておりますのは、先般八万トンの船が進水し、近く八万六千トンの船が進水しようとしておる。引き続いて八万トン、十万トンの船がどんどんできるという計画を立てておるとすれば、この技術がちゃんとあるのに、日本造船所はこれに技術が及ばないのですか。あるいは及ばないとすればどういうところなんですか。溶接の方の技術がおくれておるのですか。おくれているところはどの面がおくれておるのですか、それを伺いたい。
  19. 山下正雄

    山下政府委員 先ほど官房長からこういう大きな船の建造につきましてのお話がございまして、ただいま先生からの御質問があるわけでありますが、日本造船所でも、現在NBCでやっておりますような構造法をとりました場合には、建造は可能でございます。ただしそういう船の建造につきまして、さらに経済的に、さらに自信のある船を作ろうというためには、いろいろの検討すべき事項が残っておるわけであります。その事項等は、先般造船技術審議会におきまして大臣の御諮問がございました。それに対して各専門家が集まりましていろいろ検討いたしております。この問題点の詳細につきまして申し上げる時間もないと思いますが、ごく簡単に申し上げますと、こういう特殊な船につきまして主要寸法をどういうふうにしたらいいか。結局船の寸法が従来の船と相当相違いたしております。たとえばドラフトは若干減る、船の幅がふえる、長さが少し短かくなるというように、従来の船とは若干趣きを異にいたしております。しかしそれは必ずしもそれでいいというような結論に基いてはおりません。従いましてそういう点につきまして十分調査をいたしまして、大型船にはどういう船型が最も経済的であるかという調査を第一番にしなければなりません。それからまたこの推進機につきましても、シングル・スクリューがいいか、ツワイン・スクリューがいいかというような問題につきましても、先ほどの船型の問題と関連いたしまして十分調査をしなければなりません。またプロペラ等につきましても、五枚羽がいいかあるいは四枚羽がいいか、その辺のところもやはり検討しなければなりません。それからその次には船体の構造でありますが、従来船の設計と申しますのは、船の長さの波に——波長を持っております波に船が乗るということを、強度上の一応の計算の基準にいたしております。ところが船が非常に大きくなりました場合に、こういうふうな大きな波はあり得ない。どうしても二つまたは三つの波に乗る。従いまして強度上につきましても、こういう見地から新しい十分な検討をしませんと、無用に船の材料の寸法が大きくなりましたり、従って重量が多くなるというようなこともございます。従いましてそういう構造の点につきましても、十分に検討しなければならぬ。それから構造をいたします場合に、NBCの船では、厚い板を重ねまして、それをリベットでつないで強度にいたしております。しかしそういたしますると、重量が相当多くなるわけでございます。と申しますのは、結局リベットを当てます場所が船の板の強度を弱めるわけでございます。従いまして、そういうような二重に重ねてリベットでとじ合せるという構造ではなくて、溶接技術等を利用いたしまして、二重に重ねるという方式を避ける別の構造法があるのではないか。それからまた全体の構造といたしまして、普通の船の構造と違いまして、たとえば二重に外板を作るというふうに建造しました場合に、船の重量が軽くなるのではなかろうか、またそういうような構造法で船の強度が十分持つかというようなことだとか、そのほか実際の厚板溶接につきまして、どの程度まで現場において信頼のできるような溶接がやれるかやれぬか、またそういうような厚板にきまして溶接をしたときに、どのくらいの残留応力というものがあって、それはどういうふうにしたら除去することができるだろうかというようなこととか、そのほかにもいろいろございますが、たとえばエンジンの関係とか、それからその補機関係とか、それからまたその建造する設備問題等につきまして、十分検討をしなければならぬわけでございます。現在のところ、先ほどもちょっと御質問がありましたが、日本造船所でこういう大きな船の建造をし得るところは、NBCのほかにたとえば長崎の造船所または神戸の川崎の造船所、または日立の造船所等においては、現にやろうと思うならば建造をやり得るわけでございます。また播磨造船におきましても可能であると思います。しかしこれらの船を建造しますためには、最も有効に最も信頼すべき船を作るということでなければ、将来日本造船技術に大きな名折れができるような事態が起きても困ると思いますので、先ほど申しましたように、あらゆる点から十分検討を加えて、作りました船が十分経済的でもあり、また安全であるというふうに今後考えていきたいと、今いろいろの準備を進めております。
  20. 小山亮

    小山(亮)小委員 そうすると、NBCでこの間作りました八万トンの船は、重量トンと総トン数との割合というものはどのくらいの程度になっておりますか。それからより経済的に、より自信のあるというお話は、今のことで大体わかりましたが、このトン当りの船価というものは、日本タンカーと比較しましてどのくらいについていますか。それからこのプロペラ、推進機はシングルですか。それで羽は五枚ですか、四枚ですか、それを伺いたい。
  21. 山下正雄

    山下政府委員 今的確な数字を持っておりませんのでお答えできませんが、多分総トン数が五万五千トンで重量トンが八万トンでなかったかと思います。ちょっと自信がございませんが、詳細なことはあとから御報告申し上げたいと思います。それからシングル・スクリュウで五枚の羽を持っております。それから船価は、これも今的確な数字を持っておりませんが、さっそく電話で調査をいたしまして、後刻申し上げたいと思います。
  22. 小山亮

    小山(亮)小委員 これは今の三ッ子島関係関連してお伺いしただけでありますが、私はひとり三ッ子島ばかりでなくして、こういう問題は、たとえば三ッ子島の問題は政府許可をしない、やらせたくないといろいろ考えられましても、過去のいろいろなわれわれの苦いいやな経験から、結局は押し切られてしまうのじゃないかというような、非常な不安の念があるのです。従ってもし三ッ子島NBCに借りられてしまって、それから契約期間が十カ年であって、さらに延長五カ年できるということになっておるが、しかしその後は果してどうなるかこれはわからぬ。今世界的な海運の好況の時分に、アメリカがあそこに非常に地の利を占めてどんどん仕事をやっていく。そしてどんどん船を作っておる。あとは永久に日本ではどうしようもないような三ッ子島積みかえ埠頭株式会社というようなものができてしまって、日本に輸入するところの鉄も石油も一手で全部そこで押え込んでしまう。ほかではこれに太刀打ちできないということになると、石油事業それ自体が——日本に石油会社がありますが、およその石油会社というものは大体アメリカ資本なんですから、ほとんど九割がアメリカ資本で経営されておるような石油会社ばかりです。そしておまけに今度新たに外国から輸入するところの鉱石が、全部アメリカの会社でこれを握られてしまうということになりますと、一番日本に大事な外国から輸入しなければならぬものは、全部アメリカに首根っこを押えられてしまうということを考えますと、日本の将来に対してわれわれは深憂にたえないような事態が起ると思うのです。独立国々々々といいますけれども、これは経済的に完全にアメリカに首根っこを押えられた国ということになりますから、将来の日本というものを考えた場合に、これに対する対策をすみやかに樹立しなければならぬと思うのです。それで、たとえばこの島がかりにアメリカの会社によって占められた場合には、他にこれにまさるところの立地条件のいいところの島が日本において考えられ、さらにそれ以上の設備をして、これに対抗できるようなものを作るということも考えておかなくちゃならぬと思うのですが、そういう点についてはまだ何も御研究になっておいでになりませんか。官房長にこんなことを聞くのは無理かもしれないが、もしそういうことに対してのお考えがあったら伺いたいのです。なかったら何か一つこれに対する対策を考えていただきたいと思うが、どうでしょうか。
  23. 朝田静夫

    朝田政府委員 ただいまのところ三ッ子島以外にそういう島があって、それに政府側も相当の投資をして施設をするという考えはありません。ただ小山先生の言われる将来の鉄鋼需給の面において、われわれといたしましては長期計画を立てていきたい、こういうふうに考えています。といいますことは、これはベネズエラから鉱石を持って参るわけでありますから、品位は相当いいようであります。しかしそういうことは、いわゆる商取引上の実力によってきまってくるわけであります。東南アジア方面のオアの開発その他について、買付市場を一定をいたさねば、将来の鉄鋼需給の上において安定性を欠くと私は思っておりますので、まず第一に鉄鋼需給の買付市場その他につきましても長期計画を立てて、それの受け入れ態勢を進めていくということが先決問題であろうと私は考えております。
  24. 小山亮

    小山(亮)小委員 この点については、私は富士製鉄の永野氏なんかともいろいろ話したことがありますが、やはり日本としては、日本の近くにあるところのフィリピン、そから海南島の鉄、あるいは中共の鉄というようなものを全く考えないで、ただ南米であるとかアフリカであるとかいうことだけを考えて対策を立てては間違いであって、やはり近くにあるところのものを取り入れるということを重点的に考えなきゃなるまいということを結論的に言っておられましたが、私もその点については意見が同じで、やはり周囲のアジアにあるところの材料というものを全く考えないで、いきなり南米であるとか、アフリカであるとかということだけ考えたのでは間違いである。従って、アメリカ側のこういうような会社がある一カ所にできた場合、アジア関係の貨物も持ってくる場所が他にあってもいいのではないか、また考えてもいいのではないか、こういうふうにも思うのです。それで一応あなた方にそういう質問をしたのです。これは重大な問題ですから、私どもは、真の独立国として立っていくには、どうにかして政治的にも、経済的にも、あらゆる面でほんとうに諸外国の制肘を受けない国にしていかなければならないと考えますので、これは小さな問題のように思いますが、また業者としては、ときにこれが一番自分たちは仕事をしやいから、これを非常に支持されるか知りませんけれども、政府がこういう問題に対しては、もっとほんとうに国策として強く打ち出して考えていくべきだと思うのですが、こういう点に対して、運輸省内でも一応こういう問題をよく考え直していただきたいと思うのです。これは希望だけにしておきます。  それから今参議院の方で審議されております法案の中に、租税特別措置法というものがありますが、その租税特別措置法の内容、ことにそれが海運の方に関係しておる面がありましたなら、それについての説明をちょっとお聞かせを願いたい。
  25. 朝田静夫

    朝田政府委員 租税特別措置法に関連をいたしますものにつきましては、造船所のドック等につきまして、特別償却の措置関連をいたすことになっております。その他運輸省関連におきましては、車両についても同じ問題がございます。そこで問題になりますのは、新しく改造をいたした部分について特別償却ができるという点につきまして、大蔵事務当局——これは政令の段階になるのでありますが、そういう点が参議院で御審議願っておる法律との関連であります。そのほかにもあるかもしれませんが、あればあとで調べましてお知らせをいたしたいと思います。
  26. 小山亮

    小山(亮)小委員 この問題は造船関係船舶局長が来てから伺うことにして、あとにします。  最近問題になっておるとん税の問題すが、これは調整部長関係かしれませんけれども、とん税の今度の新しい法律によりますと、最も多く港に出入りする近海航路の船が一番多くのとん税の負担をする、言いかえますと、大型船は港にあまり入らない、数が少いからとん税の負担は少いけれども、小型船、ことに経済的な負担力の少い船主の所有船が、最も多くとん税の負担をするというような結論になりはしないかということを非常に心配するのです。これに対するいろいろな意見が自民党の中からも出ておるように聞いておりますが、これは一体大蔵省との間はどういうふうな折衝になっておりますか、伺いたいのです。
  27. 辻章男

    ○辻説明員 ただいまの御質問の点でありますが、それにつきまして大蔵省の主税局の方へお願いしておるのでございますが、主税局の方といたしましては、そういう特例を設けることにつきましてはあまり賛成できないということで、なお話し合いがつかずに、折衝いたしておる段階でございます。
  28. 小山亮

    小山(亮)小委員 海運局長に伺いたのですが、今の海運局の従来までの政策というものは、一貫して、日本が戦前に持っておったところの航権をあくまで確保しなければならぬ、それがためにはどんな犠牲を払っても援助していくというふうな方針に立っておいでになるように思うのです。これは一面において、あるいは戦前に所有したものを失わないようにするという見方は正しいかもしれない。しかし私はこの日本海運の振興ということから考えますと、定期船を偏重すべきか、不定期船に重点を置くべきものかということは、なかなかむずかしい問題だと思うのです。大体英国の今日まで伸びてきました過去の歴史を見ましても、不定期船をあくまで伸ばしたために、それが結局世界の海を征覇し、やがて定期航路を開くことができた。戦後の状態を見ますと、最近ギリシャの船主が非常な勢いで伸びておる。おそらく優秀船は一千万トンぐらいになっておるのではないかと思うのです。それも主として不定期船を中心にして伸びているように見える。これを考えて、日本があくまで定期船ばかりに頭を突っ込んでいって、不定期船を伸ばすことを忘れたら、世界の競争におくれるのじゃないかと思うのです。これは別に定期船に対する援助を打ち切れという意味じゃないので、これを盛り立てていくということも必要であるが、同時に、ともすれば運輸省から出るいろいろな発表は、運輸当局の意思に沿った形で出ているのかどうか知りませんが、とにかく定期船さえやればいいのだ、不定期船は勝手に自分で伸びたらいいじゃないかという意味にとれる発表がしばしばあるのです。私はそれは非常に残念に思うのです。今まではそうであっても、これからはそうであってはならないと思うが、海運局長のお考えはどうでしょう。
  29. 粟澤一男

    粟澤政府委員 ただいまのお話定期船助成偏重というふうな声が間々あるということは、私どもも事実だと思うのでありますが、これはしかし実際問題としましてお考えいただきたいのは、過去においてもまた今後においても、定期船だけ取り上げて非常に強い助成をして、これを中心にして伸ばしていくというふうな考え方はとっておらないのでございます。現在の実情を見ましても、日本は大体定期船と同じくらいに不定期船を外航船として持っております。ただ助成の内容として申し上げます場合に、定期船にあるいは財政資金の比率が多いというふうな事実はございますが、これも決して定期船を偏重するという気持ではなくて、要するに大体高速、大型定期船を相当建造しなければならぬ、しかもそれがそのときの市況によっては、非常に大きな収益を上げ得ないというふうなこともあるのでございまして、従いましてそのときどきによりまして比率その他に変化があるのでございますが、私どもは決して定期船を重視し、不定期船を軽視するというようなことは、政策として考えておらないのであります。ただ具体的に申し上げますと、たとえば十三次船の場合に、定期船の方がトン数も多い。不定期船の方がそれが少い。あるいは財政比率も少いというような現実問題が出て参っておるわけでありますが、これも日本では不定期船建造しなくてもいいのだというふうな政策から出ておるのではございませんで、やはり先ほど申し上げましたような関係から、定期船は相当見てやらなければ、日本として必要な定期航路整備に間に合う程度建造がしていけないという判断に基いて、そういう方針をとったわけでございます。不定期船も、今年度は昨年度以上に建造されることを期待しておるわけでございます。
  30. 山口丈太郎

    山口(丈)小委員長代理 先ほどの小山委員質問に対しまして、ただいま山下船舶局長から、保留の分を答弁いたしたいとの申し出がありますから、それを伺います。
  31. 山下正雄

    山下政府委員 先ほどはっきりしておりませんでした事項につきまして、御報告申し上げます。  総トン数が五万二千五百トンでございます。それから重量トンが、実測の結果、八万四千七百三十トン、それから船の大きさもちょっと申し上げますと、長さが八百十五尺、幅が百二十五尺、深さが六十一尺、ドラフトが四十六尺、それから機関はタービンで一万九千二百五十馬力、速力が十四ノット半、船価が七百六十四万二千ドル、重量トン当り九十一ドルでございます。それから第一船の船主は、ユニバーサル・タンクシップ・イン・コーポレートという会社でございます。第一船の着工が三十一年六月、進水が三十一年の十一月、竣工が三十一年十二月、第二船は起工が三十一年の十一月、進水が三十二年の三月、竣工予定が三十二年の六月でございます。それから年間建造能力でございますが、先ほどの発言に少し誤まりがございますので訂正いたします。最近能力がだいぶふえております。従いまして昭和三十一年では起工が十一万九千トン、竣工が十四万三千トン、三十二年度の計画では起工が二十八万トン、竣工が十九万トンという予定でございます。
  32. 小山亮

    小山(亮)小委員 それから先ほど留守中にちょっと質問して、あなたがおいでになるまで待っておったのですが、租税特別措置法中、海運関係のものはどの程度のものになるか、その内容の説明と、政令の発動の時期というようなものを伺いたい。
  33. 山下正雄

    山下政府委員 お答え申し上げます。造船関係につきまして実は基本的に申し上げますと、最近設備の投資が相当大きく行われております。将来日本造船が世界の造船と太刀打ちして日本に船を持ってくるというためには、どうしても造船のコストが安く、また技術が優秀であるということが一番大きな前提になると思いますが、このコストの引き下げのために、そういうような大きな設備投資が負担になってはいけないというので、先般来この設備投資につきましては特別償却をぜひ認めるようにということで、いろいろ政府部内で検討いたしております。しかし現在の租税特別措置法のうちで設備を償却するにつきましては、やはりそれが企業の合理化にもなり、近代化にもなり、設備合理化にもなるということが一つの条件になっておるわけでございまして、ただ資本コストを引き下げるために特別償却をやるというような建前になっておりません。従いまして私どもとしましては、この造船の船台の拡張またはドックの拡張というものが、従来から認められておりました新設のクレーンの特別償却、そういうものと一体になりまして、いわゆる合理化にもなり、コストの引き下げにもなるのだというような見解を立てまして、いろいろ折衝いたしております。しかしこの法律の上でそれをはっきり書くというわけにはいかない。従って政令の段階において考慮しようじゃないかというような話し合いになりまして、実は大蔵省ともいろいろ打ち合せをいたしております。ただいま最後的な案はまだ決定しておりませんが、大体船が大きくなりますために造船の船台が大きくなった、その大きくなった分に、償却を従来認められておりましたものよりも有利な条件で進める、またドックにつきましても、その増加分につきまして新規に所得したものと同様に有利な償却が行われるというような線で、一応話し合いがついております。まだ政令がはっきりこうだという段階まで行っておりませんので、この点一つ御了承願いたいと思います。
  34. 小山亮

    小山(亮)小委員 そうしますと造船所設備について、従来小型船を作っておったものが大型船を作るために伸ばした面についての特別償却を認めろ、こういう意味ですか。——そうしますと、従来何トンまでやっておったは今までのレートで、それから何トン以上になったらどうということになるのでしょうか。具体的にはきまらないのだからわからなくても、あなたの方の原案としてはどういうところをねらっておいでになるか伺いたい。
  35. 山下正雄

    山下政府委員 設備の増加が三〇%以上だったと思います。その増加の分につきまして、新規の所得とみなして特別償却をふやす。それからその限度につきましては、私どもの希望としましては中小企業の対策もあり、なるべく低く持っていきたい。それでこれは決定はいたしておりませんが、私どもの希望としましては大体重量トン三千トン以上の船台またはドックということで、大蔵省といろいろ話し合いをいたしております。それにつきましては大蔵省も若干まだお考えがきまっていないようでございますが、私どもとしましては三千トン以上の重量トンの船を作り得る船台またドックというものから、償却の有利な条件を行なっていただきたいと考えております。
  36. 小山亮

    小山(亮)小委員 船の方は関係はありませんね。
  37. 山下正雄

    山下政府委員 はい。
  38. 粟澤一男

    粟澤政府委員 船の方というお話がありましたから念のために申し上げますが、租税特別措置法による特別償却制度というものは、海運業の持っておる船舶についても現在ございます。これは新造が三年間、ただし繰り越しを認めまして五カ年間は五割の特別償却を認めます。ただし現行で認めておるのであって、今度改正になるのではなくて、そのままということで改正には関係ございません。
  39. 小山亮

    小山(亮)小委員 現在認められておるところの償却、それには全然関係はなのいですね。
  40. 辻章男

    ○辻説明員 補足的に申しますと、特別償却が認められます船舶は、これは省令その他によりまして、現在は総トンで三百トン以上の船舶について適用するということに相なっております。これが臨時税制調査会の御答申でございますが、できるだけ臨時措置関係の租税の特別的な制度というものは整備しろという御答申が出ておるようでございまして、それで船舶の特別償却のことにつきましては、法律の問題ではございませんが、現在大蔵当局の方では三千総トン以上というものを二千総トン以上に範囲を狭めてもらいたいという申し入れを受けております。それに対しまして私どもの方といたしましては、そういうふうに現在の制度よりも中小船舶に対して不利にすることは絶対に反対するということで話がつかずに、折衝しておるということでございます。
  41. 小山亮

    小山(亮)小委員 私は聞き方が悪かったかもしれませんが、最初から伺いたかったのはこの点なんです。当局が反対しておいでになるというならば、私どもは何も言うことはないのですが、私ども当局と同じように、小さな船をこういうふうに三百トンから二千トンというふうにまでトン数を上げて、そうしてこういう小船を持っている人に不利な償却をさせるというような考え方、これは絶対反対していただきたい。海運局の今の方針は、いわゆる財閥的な、きわめて強大な資本力を持った方の海運業者あるいは造船業者というものに対して、あくまでも保護するような方針をとっておいでになっているとわれわれは見るのです。しかしこの小さな方の海運業者やあるいは造船業者に対しての保護施設というものは、ほとんど皆無と言ってもいいくらいだ、われわれはこう極言をしたいくらいなんです。従ってこういう問題までもとらえて、今まであった恩典を取り上げてしまうというようなことは間違いで、むしろ三百トンというのをさらに百トンくらいに低下させるとかという、特別償却をもっと広く認めていくという方針なら私はけっこうだと思いますけれども、逆行することに対しては絶対反対で、この点は運輸当局が反対であるということを言われたので、非常に私も同感でありますから、これ以上御質問申し上げません。  それから粟澤局長に伺いたいのは、よく新聞や何かにオペレーター、オーナーというふうに出てくる。オペレーター、オーナーというふうに一言に言ってしまうと二つに分れてしまうことになるのですが、一体オーナーというものはどういうものがオーナーであるか、どういうものがオペレーターであるかということについて、運輸省の御見解を一応伺いたいのです。
  42. 粟澤一男

    粟澤政府委員 運輸省の見解をお聞きになるというのはどうも私よくわからないのですが、実は海上運送法にも、船舶の運航によって人または物を輸送するものを運航業者として規定されております。またオーナーにつきましてはたしか貸船業者という表現だったと思いますが、こういうふうに法律上明定されておりますので、私どもは特に運輸省の見解という気持はございません。ただ今先生の御質問の御趣旨が、選考基準にこれがアプライするときにどういうふうに考えるのか、あるいはオペレーターにもピンからキリまであるだろうというふうなお話であればその通りであります。一ぱい運航しておってもオペレーター、あるいは十万トン運航しておってもオペレーターこれは上から下まで相当あると思います。従いましてオペレーター優先といっても、ほんとうに極端なことを申し上げますれば、今度作る船を自分はオペレートするのだということで、海上運送法上定めるところの気持を持っておる人もあります。従ってそういう段階もおのずからあると思いますが、事業者としては法律上運航業者と貸船業者という点ははっきりしていると思います。
  43. 小山亮

    小山(亮)小委員 その点が私は伺いたいところだったのです。結局貸船業であるから作った船を自分の会社で運航しないでよその会社に扱わせるとか、貸してしまう、こういうものは全部貸船業だ、こういうような見解になると思いますが、日本ではあまりありませんが、よく外国に例があるのは、金持の後家さんなんかが船を持っておる。それは自分の会社の中には事務を扱う者が一人か二人、金庫の番をしておる者が一人か二人おるだけで、船員やシッピング関係の事務関係の人は一人も持っていないで、裸で全部船をよそへ貸してしまって、何も船のことをしないで、ただ船を貸しておるというのも私はいわゆる貸船業者、こういうふうに思うのです。しかし自分の会社船員も持っており、船員行政もやっており、それから支店その他も持っている。ただし船は自分のところで扱わないでよそに扱わせる。なぜよそに扱わせるか。一ぱいや二はいの船があったのではオペレートできないのです。相当数船がなければ自分で運航するということは、かえって不利なんです。相当数船ができるようになるまではやろうとしたってできないのです。そういうような会社は、これをオーナーとして片づけてしまって、たとえば船を建造したくてもその会社には船を割り当てない、こういうことになれば先ほど言ったように、新しく起き上ろうとする会社というものは、今の運輸省の方針がそうである限り、絶対頭を上げることができないという結論になるので、そこが伺いたい。貸船業という解釈は裁判官が一片の法律上の規定に基いて認定するのでなくて、船を扱っており、また海運を育成していくところの海運局の、現実に仕事をやっているお役人、現実に自分が手を出してやっておいでになる人がお考えになる貸船業者という考え方と、警察官や検事が考えるような考え方と、おのずからそこに違っていはしないかと思ったのでそこを伺ったのですが、法文にそう書いてあるからその通りだと言われれば、裁判所の考え方とあなた方の考え方とは同じだということになる。それでは私はいかぬと思うのです。そういうように全然船員も何も持っていないで、ただ船を作って人に貸している、そういう人たちは船主という名前でありましても船のことは何もしていない。ただ事務所みたいなところに二、三人の人がおって、貸船料をもらって、船主船主という名前だけで碁を打ったり将棋を差したりして遊んでおればいい、そういうものと、船員や支店も持っていろいろなことをやっているものと混同して全部オーナーだということは、私は少し無理だと思うのです。その貸船業者というものに対する考え方を再検討される御意思はございませんか。
  44. 粟澤一男

    粟澤政府委員 あるいは私の御説明が悪かったのかもしれませんが、区別という点でお聞きになられますと、やはり私どもとしてはオペレーターとオーナーの区別は先ほど申し上げた通りに思っておるのでありますが、これの実際の内容については非常にいろいろなものがございます。ただいま御指摘のように外国のオーナーと日本のオーナーとは、歴史的に見ましても現在の果している使命を見ましても非常に違うことはよくわかります。従いまして日本のオーナーを考える場合に、それが今まで日本海運の振興なり、あるいは戦後におきましては再建なりに、どのくらいの使命を果し寄与したかという点も、私どもは十分存じておるわけであります。今後におきましても日本のオーナーというものが日本海運業の発展のために占める位置あるいはその使命は、相当大きなものであるということは私ども十分考えております。従いましてただいまのお話が、日本のオーナーというものを運輸省海運政策上ないがしろにしているじゃないかというふうなことでありますれば、これは私どもの方針といたしましてもノーと申し上げざるを得ないのでありまして、決してそういうことはございませんで、オーナーの存在意義も十分考えております。従ってこの施策におきましても考慮していきたいと考えるのであります。ただ先ほどもちょっと申し上げましたが、十三次の選考の場合にオペレーターをまず優先するという考え方は、やはり実際に荷物の集荷なりあるいは船の運航なりに努力して、現在日本の伸びようとする海運をまず伸ばしていくというには、財政資金をつけてこれを助成していくのは、オペレーターよりもオーナーの方が比較すれば先の方であろうという考え方から出たものでありまして、決してオーナーは全然考慮すべきでないというふうな観点から出たわけでは、ございません。一応の基準としまして、比較した場合にはそういう考え方をとるというわけでございます。その点は御了承願いたいと思います。
  45. 小山亮

    小山(亮)小委員 この問題は、先般運輸省が適格船主選考基準新聞紙上に発表した場合に、オーナーを二次的にしてオペレーターを優先的に考えるという声明がありましたのに対して、神戸方面船主は非常に憤激をして、けしからぬということで、だいぶん船主協会あたりでも問題になったように聞いております。これに対して海運振興審議会ですか、船主協会の山県会長がオーナーというものの存在するところの必要性というものを強調されて、そしてオーナーを特別扱いにして次善的に取り扱ってはならないということを強く主張されたということを聞いております。私は従来、海運振興審議会とかなんとかいうふうなああいう会合に、一度も船を持ったこともなければ、自分で船を操縦したこともなければ、何にもやったことがない。ただ書物の上で船とか船に関する法案なりというものを見たくらいの程度の学者をやたらに連れてきて、重要な委員にどんどんと置いて、それもやはり一票ずつの決定を持たせていろいろな審議をさせるということに対しては、非常に不満に思っているのです。日本くらい学者というものばかりをむやみやたらに尊重するところはちょっと少いと思う。学者でも、戦争時分の学者をごらんになればわかりますが、満州事変から大東亜戦にかけて、いよいよ熾烈に戦わなければならぬというふうな状態になるまで、日本の学者ではっきりこういうものに対して反対なら反対ということを言った学者が一体幾人ありますか。学者というものは、そのときの権力に追従して、カメレオンみたいに、その時その時の波に乗ってうまく言いくるめて、いつでも世評の中心になって評判のいい顔をしていればいいというようなことがきわめて多いのですよ。私は先般来、船員問題についても、あるいは労働争議の仲裁の問題につきましても、あらゆる審議内容を私ども伺いまして、学者くらい役に立たないものはないし、学者くらい迷惑するものはないと私は思うのですよ。ほんとうに実情に通じた人がおるならいざ知らず、いいかげんな学者がたくさん出てきて、勝手気ままなことを言われるのは、これはかえって迷惑じゃないか、混迷させるもとじゃないかと私は思うのです。今のオーナーの問題にしましても、オペレーターの問題にしても、私は名前をあげたくないが、学者連中が一番わけのわからぬことを言っているのですよ。その人は船なんか操縦したこともなければ、自分のリスク、自分の負担で何もしたことがない連中だ。それがただ勝手なことを言っている。たまたま船主協会の会長の山県さんに反駁されて、それで黙ったという程度です。私はそれだから、ただ審議会でこうきめた、ああきめたからというのでなくて、運輸省はやはり実際に船を操縦しておるところの実情を一番よく知っておられる役所なんだから、うまくマッチするような、ほんとうにぴたっと適合するような方法考えていただきたいと思うのです。私は今のオーナーといういうなものの解釈も、後家さんなんかが自分のへそくりで船を作って、それを利回りがいいからといって人に預けておくという意味のオーナーでなくて、ほんとうにオペレーターにならんと努力しつつあるところのオーナーは、これは私はオペレーターの卵としてあなた方は特別に考えていいのじゃないかと思うので、これははっきり区別していただかなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  46. 粟澤一男

    粟澤政府委員 前段の審議会の問題につきましては、先般来再々御注意もありまして、いろいろと考慮してやっておるわけでございます。私どもお言葉ではございますが、やはりいろいろの人の御意見も聞いて、施策の上にも考えていきたいという気持があるものでございますので、できるだけ広く委員さんにお願いしているわけであります。ただその結論として、非常に海運界のためにならぬという結論が出ますれば非常に遺憾なことでございますが、私どもはそういうことのないように今後とも努力したい、こういうように考えております。それからオーナーの問題につきましては、御指摘の通り私どもも内容をいろいろ検討もし審査もいたしております。すべてのオーナーを、御説明にありますような、外国の未亡人が単に投資の対象としてばかり船を持っておるというようなもののように、一律に見ておることは決してございません。十分実情を検討し審査いたしまして考えたい、こういうふうに考えております。
  47. 小山亮

    小山(亮)小委員 船舶局長に伺いますが、最近どんどん激増しております五百トン未満の小型鋼船、それの性能、これについてもし何らか資料がありましたら伺いたい。
  48. 山下正雄

    山下政府委員 資料の御要求が、ございましたが、今格別資料を持っておりませんけれども、戦前にいわゆる海上トラックの建造が非常に多く行われましたと同じような性能のものではなかろうか、こういうように存じております。
  49. 小山亮

    小山(亮)小委員 これは保険協会の方からの話を私どもは聞いておるのですが、保険協会の方の報告によると、最近できる五百トン未満の船は非常に粗製であって、航海するにすら危険を感ずるものがきわめて多い。保険をつけてくれと言っても保険の対象にはほとんどなりかねる。新しいエンジンということになっておりながら古いエンジンを使っておるとか、鋼材、船材等も、いろいろな補機その他も、みな古いものを持ってきてつけて、一応それが新船ということになっておる。それから張力試験もしないでどんどん溶接をやるというようなことで、非常に危険きわまりないものだということを私どもは聞いておる。もしこれが果して事実であるとするならば、これは人命に関する問題であり、ひいてこれが海上において事故でもあった場合には、荷主に対して非常に損害を与えるものでありますから、大いに今からこれに対して厳重に検査をしなければならぬと思います。しかしあなたの方はこれについて何にもお聞きになりませんか。私どもはこれをずっと前からひんぱんに聞いておるのですが、あなたはお耳になさることはないでしょうか、伺います。
  50. 山下正雄

    山下政府委員 戦前の海上トラックにおきまして相当いろいろの事故が発生したことは、私どもも記憶いたしております。と申しまするのは、積荷の関係上ハッチを相当大きくいたしまして、そうしてデッキすれすれにまで荷物を積む。遠海航路の点になると、フリー・ボードの制限がございませんので、積荷につきましては船長の判断で積むということになるわけであります。従いまして積荷も重いしハッチも大きいし、しかも荒天のときに無理をして出るということが海難の大きな原因になっておりまして、当時そのために船体の保険料または積荷の保険料等が相当に割高になりまして、それでも保険会社としてはそういう船の保険をつけるのに渋ったという事実を耳にいたしております。戦後それらの小さい船の建造は比較的少なかったと思います。最近におきまして沿岸の荷物の輸送が若干増加したことと、それから機帆船の代替としてそういう小型鋼船の建造が行われるような機運になってきておることも承知しておりますが、まだ私どもは、それらの船の建造が非常に危険であるから、これをどうかしてくれというような具体的な話は聞いておりません。しかし先ほど申しましたように、これらの船の建造につきましては、私ども戦前の例がございますので、検査の面または構造の面で従来のあやまちを繰り返すことのないように極力努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  51. 小山亮

    小山(亮)小委員 私どもの方の調べによりますと、今の五百トン未満の、最近できた非常に粗製の船は約八十数隻です。そのうち三十数隻が、保険会社で非常に疑問があって、これは新しい船と認められない、これは非常に悩まされるというので問題になっているわけであります。船主協会にこの資料がありますから、これは一つ船主協会の方にお聞きになっていただきたい。今できた船を沈めてしまうというわけにもいきませんが、鉄板の厚さであるとか船の規格が、みな規格通りにいっていないのです。それから五百トン未満の船を作るといって船台に乗せておいて、いきなり広げてしまって、でき上ったら六百五十トンだったというようないいかげんなものを作っておるのです。そういうようなところも、私どもはただ荒唐無稽にそういうことを言っているのではなくて、事実あるので、それではどの船とどの船がそうだということを調べてこいというなら、私調べてきます。あなたの方に船名を出して差しつかえありませんが、船舶局の方も、これは海上における危険を防止するという見地から、どうしてもやってもらわなければならぬと思っていることですから、もしありましたならば、補強を命ずるとかなんとか善後措置考えておいてもらいたいと思います。これは御返事は要りません。  それから、未組織の中小鋼造船業者ですか、その組織化運動というのが始まっているということを聞いておりますが、それはどういうふうにやっておいでになるのか、またそれは具体的に実現の可能性があるかどうか、それを伺いたい。
  52. 山下正雄

    山下政府委員 私ども中小鋼造船所対策といたしまして昨年の初めからいろいろ考えておったわけでありますが、御承知のように現在鋼材の点または資金の点または労務の点、それらの点につきまして中小企業が非常に苦しい立場にございます。と申しまするのは、御承知のように中小企業は規模がそれぞれ小さくて、自分たちのほんとうに必要と思うことを公けの場でなかなか言い得ない立場にあります。どうしても大きな造船所の下積みとなりまして、それらの声が十分に通らない。私ども事情はわかっておりますが、かりに鋼材を持ち出すにしましても、中小企業の需要が幾らあるのか、またどの程度充足されておるのかという的確な資料に基いてしかるべきところに強硬な交渉をしませんと、あやふやな数字ではなかなか折衝がしにくいというような事情があったわけでございます。従いまして私ども昨年からこの中小企業の組織化の問題につきましていろいろ研究を進めておったのでございますが、第一番に考えましたことは、中小企業だけで一つの組合を作らせるということで、そうしてその組合が積極的に動くということも一つの方法であったかと思います。しかし中小企業が一つにまとまるということは、お互いの業者がそれぞれ規模が小さいし、それにリーダー・シップをとってやろうという人がなかなかない、またそれらの経費をはじき出すのにもそれぞれの立場がございまして、なかなか困難であったのでございます。従いまして私どもとしましては、中小企業をレベル・アップするためには、やはり大きな企業がこれに手を貸すべきだと思います。たとえば船の設計をいたしまするのにも、中小企業だけ集まっていろいろ相談したのではなかなかいい設計はできません。しかしこれに大企業が知恵を貸しました場合には、設計その他建造等につきましても十分な援助ができるのではなかろうか、ことに賠償関係等の小さい船の注文がありました場合に、中小企業だけでいろいろ設計してかりに誤まりができましたときには、やはりこれは日本造船所の名誉にも関することでありまして、従いまして中小企業だけの問題ではなくて、日本全般の問題にもこれは関係があるというので、やはり大きな企業があらゆる面において力を貸していくというのが一番妥当ではなかろうか、こういうふうに考えたわけであります。従いましてこの中小企業の取りまとめにつきましては、地区別に一つの組合を作りまして、その組合が中央の公益法人であります日本造船工業会に加入をする、そうして日本造船工業会の中にいわゆる中小企業対策部というものを作りまして、その対策部におきまして中小企業の直面しておりますいろいろな案件につきまして真剣に取り上げて解決をはかる、また役所といたしましてもそれに極力協力をする、こういうような形をとるのが適当であるというような結論に達したわけでございます。現在のところ、海運局の行政の管轄の範囲に各地区に大体一つ——地区によりましてはそういう組合の結成のできないところもございますが、それは他の地区に参加を願うということで、各地区に組合が結成されまして、それが中央の造船工業会に団体加入をするというようになっております。中小企業のことでございますから、多くの会費を納めるというわけにもいきませんので一つの企業体が負担します額として、年間の数字はちょっと忘れましたが、一・四半期に二万円程度の会費で参加することに予定いたしております。大体近くその組織ができると思っております。
  53. 小山亮

    小山(亮)小委員 モーターボートに関するところの法律案というのが今度出るように聞いておりますが、元来モーターボートで上ったところの金というものは、年間一億数千万円ないし二億円近くあったということを聞いています。その後それが関連産業の援助資金に支出されたという話ですが、そういうような金は、海難救済とか、非常に行き詰まっている中小造船所なんかの技術指導とか、そのような社会政策的なあるいは公共的な意味を持った方にもっと使われるべきものだと私は思います。関連産業というけれども、結局は限られた営利企業だけに融資してやるというようなものであってはならぬと思いますが、今のお話のように、未組織の造船業者が組織化されるということは非常にいいことであります。いいことであるが、ただ負担を増したというだけであって、ほんとうに大企業のものがそれを援助してやるというようなことは、それは非常にもうかる場合に別ですけれども、ややともすると、不景気になりますと、中小造船所がすべき仕事を大造船所が横取りしてしまうことになる。要するに大きなお医者さんが小児科のことをみんなやってしまうというので、かえって中小造船所の仕事を大企業に食われてしまったというのが今までの行き方なんです。むしろ中小造船所からいうと、大企業家を恨んでおるのです。その大企業家がこれを助けてやるということは、これはよほど役所に統制力でもあって、処罰でもする規定を作ればいざ知らず、なかなか言うべくして行われがたいことだろうと思うのです。そうなりますと、これは費用の問題ですから、そういう金も出せないような造船所をさらによりよく指導してやるということのためには、別な角度からの金があって、それを補助してやって、それで何とか技術指導とかなんとかいうことができるようにしてやるということも考えていいことじゃないかと思うのですが、これはそうしてくれというわけじゃないので、御参考までにあなたに申し上げておきます。  それから規格鋼材等の輸入税が今度撤廃された、それで鉄が非常に安く日本に輸入されるようなことが新聞に報道されておるのでありますが、現在日本の鉄の市価と、輸入税が撤廃された場合に海外から入ってくる鋼材との比較はどんなものですか。なお外国のが高いかどうか、簡単でよろしゅうございますから、ちょっと伺いたい。
  54. 山下正雄

    山下政府委員 前段の中小企業の点につきましては、私ども従来中小企業の企業診断をやりまして、設備の改善を要するところ等にモーターボートの納入金を資金として供給いたし、合理化をはかっております。また今後とも今のような趣旨で、このモーターボートの納入金を活用していきたいと思っております。  それから鋼材の点につきましては、先般輸入税の免税が実施されたのであります。ただし期限を一応六カ月に限っております。私どもいろいろ従来の例によりますと、打ち合せをして現実に入るまでにやはり相当な日付を要しますので、六カ月の期間の延長だけではまだ不十分ではなかろうか、もちろんそのときに必要があればさらに延ばすという措置が当然考えられますが、商売をします上にもう六カ月で切れるのだということでは、なかなか、実際やりにくい点が相当あるのじゃないかと思います。そこで現在の鉄鋼の価格でございますが、イギリスにおきましては造船用の厚板は最近少し割高となりまして、トン当り三万四、五千円見当、ドイツにおきましては五万五千円見当、それからアメリカにおきましては百ドルを少し切っておるというふうな状況でございます。日本におきましては、御承知のように五万九千五百円という、世界でも一番高い鉄鋼価格でございます。それで先年度に造船用鋼材の輸入をいろいろ計画いたしまして、契約できておりますのは約三万五千トンではなかろうかと思いますが、それが一部は入り、今後もぼちぼち入ってくると思います。それらのものにつきましては大体新しい輸入税の免除の適用を受けるわけでありますが、しかし契約それ自体が相当高くなりまして、現実に入りますものは、税金を抜きましても、やはり八万円を少し上回るというような額になっております。従いまして現在の建値の五万九千五百円を加えますと、約二万円またはそれ以上の差があるというような現状でございまして、今後鉄鋼需要が世界的にどういうふうになるかによりまして——値段についてはよくわかりませんが、しかしやはり建値よりも相当程度高いということは当然予想いたしております。
  55. 小山亮

    小山(亮)小委員 英国の鋼材は非常に安いのじゃないですか、またイギリスの鋼材は輸入が可能ですかどうですか。
  56. 山下正雄

    山下政府委員 イギリスの鋼材の安いのは、国内で使いますときに、それくらいの値段で国内の造船所に渡しておるわけであります。御承知のようにイギリスの造船所が盛んに悲鳴を上げておりますのは、造船工がうまく働かぬこと、それから鋼材の不足を唱えておること、年間百四十万総トン程度建造しか行われぬのは、先ほど申しましたような二つの原因によってやれないのだというておりますから、イギリスから材料を輸入するということはとうてい困難じゃないかと思います。
  57. 小山亮

    小山(亮)小委員 三万五千トンはどこからですか。
  58. 山下正雄

    山下政府委員 これはおもに豪州からです。
  59. 小山亮

    小山(亮)小委員 外国からの船舶建造日本契約する場合、今まではしようがないといたしましても、今後の建造の場合には、建造する船舶に必要とする規格鋼材の何%というものはオーナー・サプライでやるというふうなことをきめる方法はありませんか。そうすれば鋼材は緩和しましようが、全部日本で規格鋼材のサプライをするということになりますと、日本の国内船の建造というものは非常に圧迫されてしまうと思うのですが、これについての御意見はどうでしょうか。何かその方法はできないものでしょうかね。
  60. 山下正雄

    山下政府委員 御承知のように船の値段が高くなり鋼材の需要が逼迫するということは、やはり船の建造が世界的に非常に盛んに行われておるということでございまして、そういう時期にやはり鋼材を持ってこなければ船を作ってやらないということは、結局船を作らぬということではなかろうかと思います。しかし日本におきましても鋼材の生産が徐々に上ってきておるようでございますし、また世界における鋼材の需要というものも、造般以外の他産業の需要という関係から若干緩みもくるやに観測されます。従いましてそれらの日本の国内の生産と外国の需要等をにらみ合せまして、船主に材料を持ってこいということも今後は可能ではなかろうかと思います。しかし契約をやりますときにそういう条件がつくということは、やはり契約の上に相当程度支障を与えるものではなかろうか、こういうふうに予想いたしております。
  61. 小山亮

    小山(亮)小委員 この間多賀日本造船工業会の会長ですかに伺った場合には、今でも鋼材のオーナー・サプライを条件にして契約をしても向うはするそうです。一向かまわず契約をやる。しかしそれは今やったものが四年後——すでに今日本の注文を除いて三百二、三十万トンの注文を向うは持っておりますから、造船所がフルにやっても三年半か四年後でなければこれからの注文というものは仕事にかかれない。それでも向うでは、オーナー・サプライでどうだというと、鋼材オーナー・サプライでもよろしいという船主があるそうであります。あなたの言われるように、そうすると断もってしまって全然向うから逃げてしまう、そうでもないらしいですが、四年後、五年後でありますから、現在の状態において、そのときになって日本に鉄がよそにたくさん出すほどにあるとも考えられない。ですからこれはやはり日本より外国の方が鉄を間に合すことを先にやるだろうと思う。そうするとやはりオーナー・サプライという条件があった方がいいのではないかと思うのですが、この点は意見の相違になりますからやめます。  それから五百トン未満の船が遭難率が非常に多い、そういう場合にこれに対する対策としては、何とか無線電信の機械を装備するというようなことも一応考えていい問題ではないかと思うのです。オート・アラームというようなものが外国の船では条件になってきているようですけれども、一体この価格はどのくらいでできるものですか。またそれをつけさせることが今の船主に非常な重荷になるのでしょうか、お見込みを伺いたいのです。
  62. 山下正雄

    山下政府委員 オート・アラームが外国で幾らくらいでサプライされているか、実はよく存じませんけれども、えらく費用のかかるものではないと思います。この小型船の海難の防止につきましては、実は運輸省でも海上航行安全審議会という船の安全を取り上げる審議会をもちましていろいろ検討をいたしております。従いまして先生お話のような、そういう無線によって気象その他航海に必要なデータを船長が的確に得るということもございましょうし、また積荷等につきましてもやはり相当検討を加えませんと、現在御承知のように満載喫水線というものがございますが、これは沿海の船は適用を受けておりません。従いましてオーバー・ロードという問題も海難の大きな原因ではなかろうかと思っております。いろいろな問題があると思いますが、海上航行安全審議会でそれらの問題をお取り上げいただきまして、その線でわれわれも危険防止のために十分対策を講じていきたいと思います。
  63. 山口丈太郎

    山口(丈)小委員長代理 それでは本日はこの程度で散会いたします。次会は公報でお知らせすることといたします。    午後一時十八分散会