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1957-09-30 第26回国会 衆議院 運輸委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年九月三十日(月曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 淵上房太郎君    理事 山本 友一君 理事 井岡 大治君       有田 喜一君    生田 宏一君       中嶋 太郎君    永山 忠則君       濱野 清吾君    眞鍋 儀十君       池田 禎治君    小山  亮君       下平 正一君    正木  清君       松岡 駒吉君    山口丈太郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 中村三之丞君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鹿野 義夫君         大蔵事務官         (理財局次長) 賀屋 正雄君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      鈴木 秀雄君         運輸政務次官  木村 俊夫君         運輸事務官         (大臣官房長) 朝田 靜夫君         運輸事務官         (大臣官房文書         課長)     木村 睦男君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     小林 重國君         日本国有鉄道常         務理事     石井 昭正君         日本国有鉄道参         与         (総裁室審議室         長)      瀧山  養君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 七月四日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として岡  崎英城君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員原健三郎辞任につき、その補欠として木  崎茂男君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員岡崎英城君、木崎茂男君、木村俊夫君、堀  内一雄君及び米田吉盛辞任につき、その補欠  として塚原俊郎君、原健三郎君、宮澤胤勇君、  小泉純也君及び村上勇君が議長指名委員に  選任された。 八月二日  委員小泉純也君辞任につき、その補欠として平  野三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員平野三郎辞任につき、その補欠として小  泉純也君議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員小山亮辞任につき、その補欠として楯兼  次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員村上勇辞任につき、その補欠として丹羽  兵助君が議長指名委員に選任された。 同日  委員丹羽兵助辞任につき、その補欠として村  上勇君が議長指名委員に選任された。 九月十六日  委員楯次郎辞任につき、その補欠として小  山亮君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員池田禎治辞任につき、その補欠として上  林與市郎君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員宮澤胤勇辞任につき、その補欠として永  山忠則君が議長指名委員に選任された。 同日  委員上林與市郎辞任につき、その補欠として  池田禎治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国鉄の経営等に関する件     —————————————
  2. 淵上房太郎

    淵上委員長 ただいまより運輸委員会を開会いたします。  運輸大臣から発言を求められております。これを許します。
  3. 中村三之丞

    中村国務大臣 一言ごあいさつを申し上げます。私が運輸行政を担当いたしますことは今回が初めてでございまして、委員皆様の格別の御指導によりまして遺憾なきを期したいと存じておる次第でございます。  運輸交通文化産業経済発展の動脈でございまして、交通の健全なる発達なくしては文化産業経済発展は望み得ないのであります。運輸省といたしましては、この重要使命にかんがみまして今日まで種々の重要施策を策定いたしまして、これを推進して参ったのでありますが、情勢の推移によりまして次々と多くの問題を生じ、その解決に努力を続けておる次第であります。特に最近の国際収支悪化の実情にかんがみまして、これが対策といたしまして政府は、緊急総合政策実施努力いたしておるのであります。当省におきましてもこの方針に従って具体策を講じておりまするが、さらに積極的改善策として外貨獲得のため、外航船腹拡充国際航空路整備充実観光事業振興等により、貿易外収支増大、また船舶及び鉄道車両輸出振興努力いたす方針でございます。  次に国内輸送力整備強化には常に最大の努力を続けて参っておるのでありますが、その根幹をなしております国有鉄道につきましては、鉄道五カ年計画推進して重要幹線増強及び近代化促進し、輸送力飛躍的増加をはかりたいと考えております。国内輸送力強化につきましては、高速自動車道整備、その他国内航空路線拡充強化及び飛行場整備海上輸送力増強に努めて参っておりますほか、国内国際交通重要使命を持つ港湾の整備を急速に実施いたしたいと考えております。また当省の所管であります海上治安確保、海難の救助など海上保安業務、及び海陸空を通じまして、交通安全の点からはもちろん、農業、漁業などに重大な関係のあります気象業務充実し、予報制度の向上をはかりたいと考えておりますが、以上いずれも皆様の深い御理解と御協力なくしてはとうていよい成績を上げることはできないのでございまして、何とぞ皆様方のより一そうの御指導、御援助を重ねてお願いする次第であります。
  4. 淵上房太郎

  5. 木村俊夫

    木村(俊)説明員 長らく運輸委員といたしまして皆様にお世話になっておりましたととろ、先般運輸省の方へ政務次官として出向いたすことになりました。今大臣より御説明のありました重要諸政策推進のために、特に運輸委員会における従来の経験を十分生かしまして、最善の努力を払うつもりであります。今後とも一そうの御指導と御鞭撻とをお願いいたます。     —————————————
  6. 淵上房太郎

    淵上委員長 これより陸運に関しまして調査を進めますが、それに先立ちまして、官房長から昭和三十三年度運輸省重要施策要綱につきまして説明を求めます。
  7. 木村俊夫

    木村(俊)説明員 私から概括的に明昭和三十三年度の運輸省重要施策について御説明いたしたいと思います。お手元にただいま配付いたしました印刷物がございますが、これによってごらんを願いたいと思います。  まず第一ページ目に大体重要施策八つ項目に分けまして、「わが国経済均衡的成長確保と国力の増進に資するため、昭和三十三年度における運輸省所管行政について次の重要施策を確立し、これを強力に遂行するものとする。」こういう前書きのもとに、まず第一国際収支改善第一に輸送力増強、第三に交通安全と災害防止、第四に原子力商船建造促進、第五に科学技術振興、第六に中小企業振興、これは船舶鉄道車両のことでございます。七には雇用労働関係改善、八には海上治安体制強化、こういう八つの大きな柱を立てて今後重要施策推進に当る考えでございます。  ただいまより官房長からとの内容の詳細にわたって御説明を申し上げることでございまするが、非常に項目が専門的にわたっておりまするので、官房長からはできるだけ概括的に重点のみを御説明申し上げたいと思います。
  8. 朝田靜夫

    朝田説明員 それではこれから私から昭和三十三年度運輸省重要施策要綱の概要につきまして御説明を申し上げます。お手元に差し上げてございまする重要施策要綱の刷りものの順を追って、御説明申し上げたいと思います。ただ最初にお断わり申し上げておきたいことは、この重要施策要綱運輸省といたしまして、さしあたりこうした形でただいま政務次官が申し上げましたような八つの柱を立てて立案いたしたのでございますが、この要綱それ自体につきましても、あるいはこの施策実施につきましても、諸先生方の御高説を拝聴いたしまして、その御指示に従ってわれわれも実施の万全を期して参りたい、こう考えておるような次第でございます。  まず第一に国際収支改善でございまするが、外航海運整備拡充ということと、その次に国際航空整備強化、第三に観光事業振興、こういう問題を取り上げておるのでございまして、これがわが運輸省所管いたしておりまする貿易外収支に大きく貢献をいたしておりまするインヴィジブル部分でございます。四の船舶及び鉄道車両輸出振興につきましては、これはむしろ商品貿易に属することでありますけれども、わが運輸省所管に属する問題といたしまして、ヴィジブルにかかわる輸出振興の問題であります。第五番目に、貿易外とあわせて、それに続いてヴィジブル車両輸出あるいは船舶輸出に関連を持ちまするところの、最近起って参りました新しい技術輸出促進、こういう問題も取り上げておるのでございます。  まず第一の外航海運整備拡充でございますが、御承知のように最近の国際収支状況が非常に悪くなって参りまして、その中で海運関係だけを考えてみますと、いわゆる為替収支バランスでなしに、実質国際収支、われわれがIMF方式と称しておりまするところの実質国際収支バランス海運関係についてながめてみますと、三十一年度において二億五千万ドルの支払い超過になっておる。こういう現状からいたしまして、依然として日本海運サービスにおきまする外国からの輸入国になっておる。こういう状態でありますので、最近の国際収支状況とも考え合せまして、引き続き外航船舶計画的に拡充して参らなければならぬ、こういうふうに考えるのでございます。そこで積み取り比率につきましても、三十一年度におきましては、輸出日本船で積み取りましたものが四九・七%、輸入が四七%、こういうことで依然として五〇%以下にあるというような状況でありますので、貿易規模均衡のとれた船腹拡充を継続しなければならぬというふうに考えるのでございます。そこでこういった海運収支実質バランスをできるだけ早く改善いたしますために、われわれは大体年間五十万トンずつ作っていかなければならぬというふうに考えておるのでありまして、そのうち計画造船を幾らにするか、こういったことにつきましては、現在海運合理化推進審議会に諮問をいたしまして、その答申を求めておるような次第であります。そこで船腹拡充計画に引き続きまして、この場合に財政資金を中心といたしまする計画造船は根本でありまするが、自主的に企業充実を基礎といたしまして、自己資金によりまする建造促進をして参らなければならぬということを後段に書いておるのでございます。とのために低利長期融資を可能にいたしまするような資金源を得る態勢をどうしても恒久的に築き上げなければならぬということで、私どもは西独におきまして経済再建の住宅と商船隊建造にとられましたような所得税法のいわゆる七D条、こういう一つの制度がございますので、そういったものにつきましても今検討を進めておるような次第でございます。  その次の「海運企業国際競争力強化」でございますが、そこにありますように「海運企業の基盤の確立による国際競争力強化を図るため、企業内部蓄積増大し、あわせて長期低利造船融資確保する目的をもって税制上の措置その他所要措置を講ずる。」こういうことで、先ほど申し上げましたような西独経済再建の一方策につきましても、わが国においてこれが適用できるかどうかということを、ただいま検討いたしておるようなわけでございます。企業内部蓄積増大につきましては、種々方法もございましょうけれども、建造留保金制度、こういったものにつきましても検討を進めておるわけであります。その次に「造船用鋼材価格国際水準に近ずけるため、材質寸法等に対する特殊規格料の引下げに必要な特別の措置を講ずる等新造船船価合理的低減を図る。」こういうことを書いておりまするが、この問題はきわめて重要でございまして、最近におきまする造船界輸出船に対する努力は実を結びまして、非常に大きな実績を上げておるのでございます。三十一年度におきまして、三億一千一百万ドルという大きな外貨獲得しておるという状況でありまするが、なぜ日本造船界が、終戦後壊滅の状態から脱却いたしまして、世界一の造船国実績を築き上げたか、こういうことを考えてみますると、内部におきまする企業努力、あるいは技術の革新、こういったものがパラレルに調子よく今日まで参ったということも事実であります。ただその際に、そういった船価の非常に大きな部分を占めておりまする鋼材というものが、今後の造船受注の必ずしも楽観を許さない状況考え合せてみますと、なおざりにできない大きな問題を含んでおるのでございます。その点につきましては、今まで建造コスト低減をいろいろな方法でやって参りましたけれども、国際的に見て割高であり、しかもわれわれから考えますと非常に不合理だと考えられまする造船用特殊規格割増料といった制度をなくす。国際水準から見て非常に高い割増料というものを取り払って、従来からの殷盛をきわめました造船界状態をさらに向上させたい、こういうふうに考えるのでありまして、英国と比べてみますと、べース価格において一万九千二百円ばかりすでに高いのであります。なおその上に造船用として特殊の割増料を取られる。あるいは材質割増料あるいは寸法割増料、こういったものを平均いたしてみますと、トン当り八千四百円ばかり高くなる。べース価格一万九千二百円プラス八千四百円高くなっておる、こういう状態でありまするので、こういったべース価格の問題につきましては鋼材価格一般の問題でありまするけれども、今申し上げましたような造船だけが特に割増料を取られておるといったような不合理制度を排除したい。その方法といたしまして、ここにあげておりまするような特別な措置、ということは具体的に申し上げますと、今申し上げた割増価格国際価格の差を補助するという形でいきたいということで、予算にも要求をいたしておるようなわけであります。  その次の「日本船舶効率的利用確保するため、貿易海運との緊密な連絡調整を図るとともに、三国間輸送促進のために税制上の措置その他所要措置を講ずる。」こういうことを書いておりまするが、最近マーケットもだいぶ悪くなって参りました。その際に日本船舶の全幅的な活用をはかることは申すまでもないのでありますが、ここに特に取り上げておりますることは、米国輸出入銀行からの借款あるいはその他の問題で米国船による積み取り条項、こういったものもございまするので、日本船をできるだけ活用ができるような折衝をその際にもすべきである。また三国間輸送も積極的な外貨獲得になりまするので、そういった意味におきまする現在の水揚げの三%の輸出特別補助率の引き上げを、三国間輸送について特に強調いたしたいというふうに考えておるのであります。  その次の「公正な競争確保」でありますが、「運賃の安定を図り、日本海運の健全な発展を期するため、航路調整その他公正な競争確保に必要な措置を講ずる。」ということをあげておりまするが、これは最近ただいま申し上げましたような海運事情でもありまするので、不定期船から定期航路の中に割り込んできて、定期航路の秩序の安定が乱されるというような事態も起って参りまするので、その際に国際的な協調ということと、日本船同士の過当な競争というものをどうしても排除して参らなければならぬということで、ここで万全の行政指導を行なっていきたいという意味であります。  その次に「移民船及び外航客船建造促進」であります。移民船につきましては、御承知のように現在四隻あるのでありまして、十三次計画造船におきましてさらに一隻建造をすることにいたしておりまするが、来年度あたりの移民輸送力につきましては、大体今申し上げました五隻の船で七千四百五十人ばかり年間輸送できるということになっておるのであります。そのほかにオランダのロイヤル・インター・オーションというものが、やはり五隻ばかりの船で二千七百人の輸送力を持っております。従いまして日本側輸送力オランダ移民船輸送力と合せまして一万百五十人の輸送力があるわけであります。ところが来年度の移民の見通しは、まだ最終的に確定はいたしておりませんが、大体一万三千三百人ぐらい輸送しなければならぬというようなことに聞いておるのでありまするが、これはまだ確定はいたしておりません数字であります。しかしこうなって参りますと、移住国策というものが、相当推進されて参りますると、それに即応しての輸送力というものにつきまして、やはり。パラレル増強して参らなければならぬ。ところが現在のような状態で参りますと、貨物が、南米その他からそれに対応するだけの荷動きがない。またどんどん作って参りますと、私企業においてすでに限界に来ておるというようなことで、建造補助運航補助をこの際取り上げて、移民におきまする隘路を打開しなければならぬとここで考えておるのであります。その次の「外航客船建造及び運航に対して特別の助成措置を講ずる」ということにつきましては、移民といささかその事情が違うのでありますけれども、国際収支改善に寄与いたしますると同時に、太平洋におきまする客船輸送航権の維持あるいは確保といった点から、こういった客船建造を始めなければならぬというような考え方をここでとっておるわけであります。  その次の「国際航空整備強化」でありますが、最初の「航空路線拡充強化」は、現在の既存の路線強化いたしますとともに、新しい有望な国際路線を開拓していく、またたとえば現在のバンコック線をシンガポールに延ばすとか、あるいは北太平洋の今就航いたしております日本航空路線線数をふやして参りますとか、そういったようなことをやりまして、すでに日本航空が発注いたしておりますDC7Cが四機、あるいはDC8Cが四機、こういった新型機購入計画に即応して、幹線、新路線拡充のためには膨大な資金があわせて要るわけでございます。こういうことのためにすでに政府は過去数年間において、毎年十億円ずつ日本航空会社に出資して参っておるのでありますが、今後も今申し上げましたような事情から、膨大な資金を必要といたしますために、政府出資を継続していく、こういうことの考えをここで明らかにしておるのであります。  そとでその次の「航空従事者養成強化」でありますが、これにつきまして、今いろいろ申し上げたような新型機購入パラレルにどうしても要員を確保していかなければならない。ところが御承知のように外人パイロット給与は、日本人の給与に比較いたしますと五倍以上もかかる。すみやかにこういったことを脱却いたしまして、自主的な態勢に持っていかなければならぬ。そういうことのために航空大学校の養成規模を拡大いたしまして、現在木科生十人ばかりでやっておりますが、これを五十人ばかりに拡大していく、こういうような計画をもって当面の需要に対処していきますとともに、民間航空会社においても一人前のパイロットに仕上げるためにいろいろな養成計画実施しておりますが、そういった方面においても養成強化いたしまして、これをあわせて航空従事者確保をはかっていきたいということであります。  三番目の「国際空港整備」でありますが、こういった新型機出現、特にジェットの出現と、外国の航空機が非常に多くなって参りますので、羽田の国際空港を昨年に引き続きまして整備拡充すると同時に、伊丹の飛行場がことしの十一月一日から返還になりますので、この施設日本側で自主的に運営して参らなければならぬという事態に即応いたしまして、関西経済界と緊密な連絡を持っております東南アジア、あるいは中共方面等に関連いたします国際空港としての整備を急速に実施しなければならぬ。そこで現在の滑走路に並行いたしまして、新設の一万フィートの滑走路をここで整備して参りたい、こういうことであります。  その次の「観光事業振興」でございますが、「海外観光宣伝滲透強化」ということであります。この問題につきましては、まず第一に宣伝資料充実するということ、あるいは海外宣伝事務所の増設、あるいは海外博覧会への参加、あるいはまた国際観光機関との提携をはかっていくということがこの内容になっておるのでございますが、米人がおもな観光客大宗を占めておりますので、従来はここに主眼を置いてやって参ったのでありますが、来年度は一応欧州東南アジア——欧州はパリ、東南アジアはバンコック海外宣伝事務所を新設いたしたいということを考えておるのでございます。国際観光協会に対する毎年度の補助も続けて参りますけれども、今年度補助金が御承知のように一億四千五百万円であります。これに民間の醵出の六千万円を合せて約二億円の予算実施してきておるのでありますが、そういった意味におきまして、さらにこの方面助成措置推進いたしますとともに、近隣諸邦との協力態勢促進する。先ほど申し上げましたように、宣伝資料相互交換をやりますとか、あるいは国際機関との連携を強化いたしまして、宣伝浸透強化をはかっていきたいということであります。  その次の「観光施設整備拡充」ということでありますが、「主要観光地域における外客宿泊施設、ユース・ホステルその他の観光施設整備拡充を図るため、資金確保に努めるとともに、法的措置その他所要助成措置を講ずる。」ということを書いてございますが、これは具体的に何を言っているのかといいますと、現在の国際観光ホテル整備法を改正いたしまして、宿泊施設の新築あるいは増築といったものに対しまする税の減免措置をもって助成をしていきたいということを言っておるのであります。  その次の「新観光資源開発紹介」であります。「外客滞在期間の延長を目途とし、未開発観光地観光資源開発紹介推進するとともに、わが国固有産業代表的近代産業の諸施設を広く観光外客に開放し、その製作工程等を視察せしめる等の便宜供与体制整備し、産業観光テクニカル・ツーリズム)の促進を図る。」というのであります。このテクニカル・ツーリズムは御承知のように欧州諸国で非常に成功をおさめているのであります。産業観光とが直結したような形で行われているのでありまして、わが国におきましても、非常な魅力のある観光地、たとえば真珠のごときものにつきましても、そういった製作工程もあわせて視察させて、産業といいますか、あるいは貿易観光との直結をはかっていきたい、あるいは観光宣伝方法というものをここで実施していきたいということで、今具体的な実施計画も寄り寄り進めているような次第であります。  最後に「外客接遇充実改善」でありますが、毎回われわれが主張しておることに外国人出入国手続簡素化、それから通貨管理合理化というようなことがありますが、すでに現在では十三カ国との間におきまして相互主義によっていわゆる査証、ビザを廃止しておるのでありますが、先ほど申し上げましたように、観光客大宗でありまする米国人あるいはカナダ人といったものにつきましては、なかなかそう簡単に参らないのでありますけれども、欧州ですでにやっておりまするように、もう一方的にこの査証を免除するという措置に出るべきだということであります。通貨管理合理化につきましては、外客が一度日本国内に入って参りますと、再び出国の際に外貨の再交換につきまして制限があるのであります。その際現在の百ドルという制限額を撤廃あるいは緩和するというようなことであります。旅行あっせん案内充実あるいは観光教育普及徹底といったようなものにつきましても、業者の育成指導あるいは旅行あっせん事業の監督を強化することによってもぐり営業を根絶する、こういうことをはかって参りまして、旅行経費の引き下げをするというような諸般の助成指導推進しようというのであります。
  9. 正木清

    ○正木委員 議事進行に関して。運輸当局の発言中でございますが、議会の中でも財政通の第一人者をもって任じておられる運輸大臣であり、海運行政についてもかつて運輸省の中でその方の専門を担当した新政務次官を迎えた当委員会でありますから、私は本日のこの運輸委員会に対しては大きな期待を持っておりました。従って大臣から、大臣としての運輸省所管について一二十三年度の行うべき新しい事業計画についての御発表があったわけです。それに基いて一から八までのこの重要施策要綱の書類が配付になったわけですが、お伺いしておると、運輸当局は一から八まで詳細にこの重要案件についての御説明を始めたわけです。御説明を始めた限りにおいては、私どもも一から八まで各項目についてこれは御質問を申し上げるということは、議会運営上の慣例なんです。その点については、私どもは当委員会の理事会においてさような決定を見たというようなことは承わっておらないわけです。本日、私どもは承わっておりませんが、委員長と当局との間で話し合いをつけて、さような議事運営の仕方をするとするならば、あらかじめ委員長からその旨をわれわれに明らかにしていただかなければならない、これが一点。  第二点については、一から八までの要綱については当局から詳細のお話がある限りにおいては、この一から八までの中に、大臣としての新しい構想に基いた事業計画はあるけれども、大半は戦後十二カ年間当委員会において、毎年々々繰り返された重要案件が非常に関連して多い。だとするならば、当然一から八までの具体的な事業計画、それに伴う予算処置、そういう参考資料を配付すべきことはこれは当然なんです。それに対して、その上に立って、日数はどのようにかかろうとも、当局がそういうような処置で臨むのであるならば、われわれは一から八まで各項目に基いてその具体的な事業計画予算の裏づけ、資金の裏づけ等について、これまた質問するのは当然の義務であり、また権利でなければならぬ。そういう点について委員長と事務当局の間に話し合いがついているのかついていないのか。つかないでただ単にこの要綱に基いて事務当局の方から御説明を承わっておったのでは、これだけできよう一日かかると思うのです。けさの委員長からの話では、でき得るならばきょう一日で当委員会は打ち切ってもらいたいということであった。私どもは一日では少いのではないか、少くともあすくらいはやるべきではないか、こういう意見の調整がついてこの委員会が開かれた。その点についてどういう一体打ち合せになっており、運輸当局としてはどのような書類上の準備があるのか、その点をあらかじめ私どもははっきり承わった上に立って、あなたのその具体的な説明を聞くことにしたいと思うのです。それでなければ、私どもはただこうして聞いておるだけでは、まあ失礼ですが大した意味がないような感じがするのです。説明をするのであるならばするように、詳細な事業計画及び資金の裏づけ、予算の処置、大蔵省との折衝の内容等も、場合によっては秘密会にしても聞かしてもらいたい、こういう感じを受けるのですから、その点どういうふうになっているか、委員長並びに運輸当局から一つお答えを願いたい。
  10. 淵上房太郎

    淵上委員長 お答えいたします。三十三年度の重要施策要綱につきましては、参議院の委員会において説明がありましたそうです。そこで当委員会におきましても理事の方にいろいろ相談しまして、一応概要だけ聞こうじゃないかということで、一応説明を求めた次第であります。
  11. 中村三之丞

    中村国務大臣 この重要施策は、当然予算措置の裏づけ、また資金措置がなければ意味をなしません。これはもう正木君のおっしゃった通り。そこで、たとえば国鉄の五カ年計画、そういう書類ほお出しいたします。あるいはまた予算書の内容につきましても、私は皆様に公開いたします。ただ今大蔵省との交渉は事務当局がやっておりまして、説明の程度でございます。いずれこれは大蔵大臣が帰りまして、各省の予算の査定が終りましたら、これは閣議におきましても最終の責任をもっ決定する、こういう順序でございます。そこで運輸省関係のものにつきましては、御要求がなくともできるだけこちらから進んで差し出します。これは私は最初ごあいさつ申し上げました通りでございます。
  12. 正木清

    ○正木委員 大臣からただいまさようなごあいさつを兼ねた答弁があったわけですから、私どもは承わることについては一向差しつかえございませんから、運輸省所管の事業計画等についても、事務当局でできた成案を当委員会に御配付を願って、その上に基いて十分御説明を承わりたい、こういうようにしたいと思うので、委員長の方で適当に処置願いたいと思います。
  13. 淵上房太郎

    淵上委員長 それではお諮りいたします。重要施策要綱につきましては、これに基く事業計画を提出願って、その機会に説明をさらに継続していただくということにして、きょうはこれで一応中止ということにして、事業計画を出し、そうしてそれに基いて説明を一緒にしてもらうということにしたらどうかということです。——それではさように取り計らうことにいたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。正木君。
  14. 正木清

    ○正木委員 私はこの機会に国鉄にお伺いしたいのでございますが、今年度の国会で日本産業の伸展、国民生活のもろもろの向上をはかるための一番隘路となっておった国鉄の輸送計画について、国鉄並びに政府は一三%に上る旅客、貨物の運賃の値上げを実施して、そしてこれらの大きな根本的な問題を解決するために、五カ年計画を今年度から実施することになって、三十二年度を第一年度としてその実施に入ったわけでございますが、そこで私のお伺いしたいのは、初年度である三十二年度におけるこの五カ年計画の進め方は、具体的に言うと、当面貨物輸送力の不足の緩和に重点を置いて諸般の処置を講ずる、一口に言うとこういうことになろうと思うのですが、この三十二年度の初年度における五カ年計画の進め方について、国鉄からまずお伺いしたいと思います。
  15. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 お答え申し上げます。運賃値上げをいたして、その際に輸送力増強についてお約束いたしましたことは、私どもの責任と思いまして極力努力をして今日に至っております。ただ国鉄の輸送力を生み出すものは施設でございまして、施設はなかなか短日月では思う通りに参りませんので、これは長期の計画の五カ年計画によりまして、その線でいたしていきたい、こう考えておりまするが、運賃値上げを国民の各位に御了承願った以上、できるだけすみやかにその成果を一部でもお示ししたいということが私どもの念願でございまして、工事費が従来五百億でありましたのを一千億のべースに乗りましたので、設計、調査等に遺漏があって工事がおくれるということがありましては、まことに相済まないということで、例年になく設計陣の強化、あるいは調査の進行ということを年初に特に一般に命令いたしまして、遺憾なきを期した次第でございます。実績から申し上げますと、実はそういういろいろな数字は、この九月一ぱいで上半期が終りまして、一応のめどがつきますので、その集計を待って一般に御披露申し上げたい、かようには考えておりましたが、手元の数字で、七月までの分で申し上げますると、乗車人員としてお運びしました数子を申し上げますると、乗車人員では対前年度累計といたしまして五・八%増でございます。それから発送トン数で申しますと、対前年度七・七%ふえております。このほかに明日時刻改正をいたしまして、輸送力をつけたいと思っております。御承知の通りに国鉄の輸送力は主として時刻改正によってつくのでございまして、それを目当てに諸工事をいたして参りました。たとえて申しますると、裏縦貫の輸送力を割強いたしますのに、線増は一部かしか間に合いませんでしたが、各駅の有効長の延伸でありますとか、あるいは信号の改善でありますとか、さような割合に簡単にできる工事をいたしまして、このために約三、四十億の投下資本を使ったと思っておりますが、それと同時に米原−敦賀間の電化を完成いたしまして、明日それを機会に全国的に時刻改正をいたします。この時刻改正によりまして、年初よりも旅客列車といたしましては一・三%の増発をいたしております。八千キロでございまして、一・三%。それから電車列車といたしましては六千キロを増発いたしまして二・八%の増加になります。貨物列車は特に力を入れまして二万五千キロを増発して、年初に対しまして七・二%増強いたすことになっております。そのような点につきましては、最初に申し上げましたように長大隧道といったようなものは間に合いません。あるいは長い区間の線増も間に合いませんでしたが、でき得る限り早く輸送力が上る手段といたしまして、本年度は特に車両に力を入れまして、貨車あたりも今までに約四千両近くができておりまして、年度内には六千両近くが竣工いたすと思います。それからまた電化も比較的に工事の進捗率がよろしゅうございますので、ずいぶん無理な工事ではございましたが、予定通り米原−敦賀間の交流電化を完成いたしましたし、ただいまお約束の岡山までの電化、宇都宮までの電化を極力努力中でございます。かようにいたしまして、輸送力増強には、お約束した点を特に責任を感じまして努力いたしておる次第でございます。
  16. 正木清

    ○正木委員 重ねて国鉄にお尋ねをするのですが、私のお尋ねせんとする中心は、議会に提出された五カ年計画の中で、初年度は緊急的な応急処置を講じて、滞貨に悩む輸送を緊急措置として解決したい、それから第二年目以降は国の五カ年計画と相待って、国鉄としても根本的な輸送のための諸般の改善をする、大きく分けてこういう二つに分けることができると思うのです。そこで三十二年度の初年度におけるこれらの問題が、議会に提出した五カ年計画の事業計画通りに順調に進んでいるのかどうかということを私は聞きたいのです。進んでおるのであればけっこうです。その点を明らかにして下さい。
  17. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 それは先ほど申し上げましたように順調に進んでおります。数字で申し上げますれば、年初の経済企画庁の国力の成長率、これは対前年度七%の増加率でございまして、そのときに企画庁とのお打ち合せで私の方で組みました輸送力増強が、対前年度四・五%で組みました。ただいま申し上げましたように、貨物では現在すでに前年度に比較いたしまして、発送トン数で七・七%の増送をいたしております。そのほかに、さらに今回の時刻改正によりまして、貨物列車キロを七・二形ふやすという計画でございます。それでただいまのところ滞貨はやはり百二十万トンくらいございまするが、これが昨年の同期に比較いたしますと、八〇%ないし八五%くらいでございます。これはどういう関係かはっきりはつかめませんですが、出荷は依然として相当旺盛であります。年初の異常なる景気に比較いたしまして多少の縮みはございましょうが、やはり相当地方々々におきましては、出荷はそう落ちてはおりませんですが、しかし前年に比較いたしまして、現在の滞貨が八〇%あるいは九〇%くらいに落ちたということは、やはり手前勝手かもしれませんが、当方の、国鉄としての貨車回りがよくなった、あるいは貨物列車キロがふえたということで、消化いたしたのではないかと考えております。ただこれから秋冬繁忙期になりますので、滞貨はだんだんふえてくることと存じまするが、これにつきましては、この時刻改正の列車増発キロもございまするし、貨車もおいおい増して参りますので、これによってできるだけ御迷惑をかけないように考えております。結論的に申し上げますれば、ただいまのところは、五カ年計画でお約束しました計画通りに行っております。ただ何分にも五カ年計画は長うございますし、ただいまのところその初年度のまだ半分にしかなっておりませんので、私どもの責任は今後重大だろう、こう感じて努力いたすつもりでおります。
  18. 正木清

    ○正木委員 私の方から国鉄に希望申し上げますが、私の質問は簡潔に要点の質問をしたいと思いますから、答弁もそう願いたいと思います。  そこで初年度の計画は順調に進んでおるのだ、こういう御説明でございますが、そこでお伺いしたいのは、初年度における資金手当は、私の承知しておる範囲では、本年度はすべてのものを含めて一千六十九億であったとしておるのですが、これで間違いないかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  19. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 間違いございません。
  20. 正木清

    ○正木委員 そこで重ねてお伺いしたいのですが、この一千六十九億は完全に確保できる、その上に立って初年度の事業計画を強力に推進するのだ、こう承知してよろしゅうございますか。
  21. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 必ずしもそうは参りません。
  22. 正木清

    ○正木委員 そこで重ねて私はお伺いしたいのですが、今年の議会の当委員会においては、この一千六十九億という大きな資金源確保について、非常に熱心な、活発な議論がかわされ、予算委員会等でもかわされました。当時の所管大臣並びに政府全体からは、必ず確保していっときも早く国民の御期待に沿うためには、いろいろの事情はあるであろうけれども、どうしても旅客、貨物の一〇%の値上げが絶対必要である、こういうことであったわけです。そこで私は国鉄に重ねてお伺いするのでございますが、まず第一に、との一千六十九億の財源の内訳です。たとえば財政投融資、それから鉄道債券、それから運賃値上げによる収入、それらの内訳をここで御説明を願いたい。
  23. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 先ほど資金計画は年初の通り必ずしもぴったりいかないと申し上げましたのは、収入の点につきましては、大体見込み通りにいっております。それの数字を申し上げますと、これも七月分まででございます。七月分におきまして、旅客収入は前年度に対しまして、一六・三%の増収になっております。と申しまするのは、一三%のほかに増収を今年度見込みましたので、運賃値上げのときにお約束した数字に大体マッチいたします。それから貨物収入は対前年度一八・九%になっております。これも大体増収と割引の方と差し引きまして、そのほかに運賃値上げをお願いしたときの予想に大体合っております。ただどうして資金状態が年初通りにいかなくなったかと申しますと、年初には下世話に神武以来の景気ということでございましたのですが、その後いろいろな事情で、必ずしも成長率がそうは伸びなかったということで、国家的に投融資の繰り延べということが行われまして、鉄道に対しましても、約百億くらいの投融資の繰り延べという話が大蔵省からございました。しかしこれにつきましては、まだ確定はしておりませんで、目下折衝中でございまするが、しかし私ども、もし国力としての関係で投資を繰り延べなければならぬということでありますれば、それだけの工事の方の繰り延べもいたしていかなければなりない、こういうふうに考えております。
  24. 正木清

    ○正木委員 私は今のあなたの発言は与えようによっては重大だと思うのです。ということは、ぎりぎり一ぱいの資金計画を立てた。本年度のこの全体としての事業計画の中で、いまだ大蔵官との間に事務折衝中ではあるけれども百億を繰り延べるということは、これは国鉄としては重大ではありませんか。あなたは、五カ年計画の初年度の事業は議会に提出した通り順調に進んでおります、こう言っておきながら、この百億の結果に基いては工事量を繰り延べなければならない、こう言っておられるわけですね。どなたが総裁なり副総裁になろうとも、年間百億の工事量の資金が繰り延べになれば、それだけ各支社の現実に事業を担当しておる事業量について、大きな支障がくることは当然ではありませんか。その百億の繰り延べになる見通しというものについての大蔵省との折衝について、国鉄当局は一体どう考えておるのか。これからが責任を持つのに大へんだ、こう言いますけれども、もうあなた、十月の声を聞かんとするではありませんか。その点についてもう少し具体的に御説明が願いたい。それでないとわれわれ議会としては国民に大きな約束をしておるのですから……。
  25. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 率直に申し上げれば、私ども計画を立てましてお約束した以上、工事の繰り延べはまことに残念でたまりません。やはり工事量は工事費に見合うものでございまして、ぜいたくな予算を組んでおるわけではございませんから、投融資が繰り延べになりますれば、それに相応して工事に響くということは当然でございます。ただそれが国家的な要請でございますれば、私どもいかんともいたしがたい。しかし繰り返して申し上げまするが、輸送力は現在各所において非常に詰まっております。今回企画庁において成長率を多少加減せられたやには聞いておりますが、それにいたしましても国有鉄道は従来から非常に詰まっておりましたので、現在におきましても各方面で輸送の隘路が生じておりますので、私どもは何とかして——忌憚なく言わしていただきますれば、他産業に優先してでも資金をいただきたい、こう思っておりますが、しかしこれは大きな国家的な投融資でございますから、国家的な投融資のワクが狭められて、国鉄に対してもこの程度しか回せぬということでありますれば、私どもいかんともする方法がございません。しかし監督官庁あるいは大蔵省に対しましては、国鉄の輸送が非常に詰まっているということを申し上げまして、投融資の繰り延べがあるといたしましてもできるだけ少くしていただきたいと、私自身はこう思い、こう努力いたしたいと存じております。
  26. 正木清

    ○正木委員 国鉄の担当者にお尋ねするわけですが、財政投融資は国鉄の本年度の予算では私は二百十五億と記憶しておるのです。それから債券の方ですね、これが新線建設という、考えようによってはひもつきと見られるわけですが、八十億であったか七十億であったか正確な数字は記憶いたしませんが、大体そんなものだと思う。両方合せて二百九十五億であったか、こんなような記憶があるのですが、これに間違いがないかどうか、数字を明らかにしてもらいたい。
  27. 小林重國

    ○小林説明員 国鉄の外部資金といたしましては、鉄道債券の公募債の分でございますが、それの発行額が二百十五億でございます。それから利用債と申しまして特定の者が負担いたします債券、これが二十億、それから資金運用部資金からの借入金が八十億、従いまして総額といたしまして三百十五億という資金計画になっております。
  28. 正木清

    ○正木委員 かりにその三百十五億のうちで、百億を大蔵省は繰り延べるというが、一体その三百十五億の中のどれを切ろうとしておるのだか、今までの大蔵省との事務折衝の経過を一つ簡潔に御報告願いたい。
  29. 小林重國

    ○小林説明員 今まで大蔵省といたしましては、鉄道債券の発行を押える方向で参っております。大体預金部資金につきましては毎年の例といたしまして第四・四半期に借り入れるのが実例でございます。と申しますのは、いろいろな工事が完成いたしますのは大体第四一四半期にかかってきまして、第四・四半期に支払い資金も非常にふえて参りますので、確実な預金部資金は年度末ごろに借りる、第四・四半期に借りる、こういうような考え方でございまして、鉄道債券の方はどちらかと申しますと一・四半期ほぼ平均額で発行する、こういうような考え方をとっておるわけでございます。本年度といたしましては第一・四半期に五十億発行いたしたわけでございます。二百十五億でございますから四分の一にいたしますと約五十億になるわけでございますが、これもわれわれといたしましてはこれよりも多少多くという希望を持っておりましたが、いろいろな事情から第一・四半期は五十億にとどまったわけでございます。ところが第二・四半期に入りまして、例の財政投融資の繰り延べの問題が強く出て参りまして、公社債、公団債の発行を毎月二十億程度に押えろ、こういうようなワクがきまってきたような実情になっております。そういたしますと鉄道債券といたしましてはそのうちの十億程度を各月に発行する、こういうような程度しか見込みがない、総ワクがそういうふうに押えられますと、ほかの債券との振り合いから見まして、鉄道債券としましては各月十億程度の規模にならざるを得ないのではないか。第二・四半期におきましてはわれわれといたしましては先ほども申し上げましたように、やはり五十億のピッチは維持いたしたいので、これで相当折衝いたしましたけれども、結局七月に十億、八月に十億、二十億しか発行できなかったという実情になっております。第三・四半期以降も二十億程度のピッチで発行するということになりますと、やはり第二・四半期と同じ程度の債券しか消化できないのではないかという心配が非常に大きいわけでございます。それで先ほども申し上げましたように、資金運用部の資金といたしましては第四・四半期に借りる予定でございますが、これを何とか第三・四半期に借り入れできますようにただいま折衝もいたしておりますが、それにいたしましても鉄道債券の発行のピッチが第二・四半期からこの程度に落ちますと、本年度中に予定の債券を発行し得るかどうか、相当危惧の念に襲われるわけでございます。この点につきましては国鉄の資金繰りは非常に窮屈になっておりまして、いろいろ折衝いたしております。一時借入金等につきましても非常に困難なきわめておりまして、この点も強力に折衝はいたしておりますが、大蔵省といたしましては現在の資金事情からなかなか認めてもらえないというような実情でございまして、工事は進めておりますが、資金繰りの方がそれに伴っていけないというような現在の実情になっております。それから利用債の方でございますが、これは非常に順調に進んでおりまして、本年度二十億の計画になっておりますが、今までに約十二億程度発行が終っております。あと六カ月の間に残りの八億程度でございますか、この程度なら消化は不可能ではないと考えております。
  30. 正木清

    ○正木委員 そこで私は大臣にお伺いしたいと思うのですが、今大臣もお聞きのように一三%の国鉄運賃の値上げをやって、政府は国鉄の五ヵ年計画を立案して、三十二年度の初年度に入ったわけですが、その全体の事業資金の中で、すでに政府としての方針が、国鉄だけで百億の繰り延べ、こういうことが本日の当委員会でやや明瞭になったわけです。実は閣議決定を見ましたあと、だれ言うとなく国鉄に対しても百億の事業繰り延べが、大蔵当局を通じて非常に強く要請されておるのだということが入りましたので、七月三日に委員会を開いていただいて、当時の大臣である宮澤君や、今日出席されておる權田監督局長に、私どもの心配の点を詳細に実は質問をした。当時大臣であった宮澤さんも權田監督局長も、その点については一口に言うと心配するな、そういうことは何らわれわれの方では具体的には話し合いになっておらないのだ、こういうことで委員会は終った。しかし終ったけれども、現実にはその百億繰り延べということは、われわれは何としてもそのようであるということの疑いというものは晴れなかった。本日やや具体的にそのことが明らかになった。経済企画庁と違って直接事業を担当しておる国鉄としては、百億の事業資金が繰り延べになるかならないかは、現実に事業を遂行する上において大きな支障になることはもう議論の余地はないのであります。そこで私が大臣にお尋ねしたいと思うことは、前任者である宮澤運輸大臣からこの点が一体正確に事務引き継ぎが行われたのかどうか、これをまず第一点として聞きたい。そして運輸大臣政府の一員として一体どういう方針でこの問題を処理しようとするのか、それをお伺いしたい。そうでないとせっかくあなたが大臣になられて、新しい構想のもとに三十三年度の運輸省所管重要施策を本日ここに御提出になったけれども、もう初年度からつまづく。来年度になると一体われわれはどうなるかわからぬ、こういう心配も勢い出てくるので、この点私は大臣としてのはっきりした所信をこの際明らかにしておいてもらいたい。
  31. 中村三之丞

    中村国務大臣 私は先般国鉄経営の内容を国鉄当局から詳しく聞きました。そこで私も今の投融資のスロー・ダウンということを聞きまして一番問題にしておるのです。またあなたの御質問もそこへくるだろうと私も思っておった。またこれはだれが見たって運輸行政を御観察なさる方は、この国鉄の投融資の問題はどうしても重要な問題である。私は宮澤運輸大臣からそのことについては引き継ぎも何も受けておりませんが、私は率直に申しますと実は心配しておるのです。この投融資のスロー・ダウンのいかんによっては、国鉄の五カ年計画というものについて深く考えなければなりません。私は実は心配をいたしております。これは率直に申し上げます。そこで今国鉄も大蔵省と交渉いたしております。まだ国鉄がやっておるのでございますから、国鉄に一切まかしておりまするが、ほかの公共事業と違いまして、ともかくも運賃の値上げというものが今自己資金になって、これで国鉄の経営をやっていくという特殊事情でございますから、この点は国鉄も大蔵省に向って力説しておると思います。私もこれは力説しなければならぬ、主張しなければならない。そこでこれは今一番おそくきまるようです。国鉄はなかなか頑強に話し合いをしておるので……。近くこれもきめなければなりません。と申しますことは、国鉄の三十三年度予算も、これを私の承認を得て大蔵省と協議をしなければならぬという時代でございますから、私は五カ年計画の大動脈にひびの入るようなことはしてはならない、これは私は努力いたしたいと思います。
  32. 正木清

    ○正木委員 大体大臣の最後の答弁のお言葉で、私は大臣を信頼するより仕方がないと思うのですが、重ねて大臣に私は強く要望したいことは、今大臣がおっしゃるように、国鉄の五カ年計画の中の大動脈にひびが入る危険性が十分あるのですよ。あればこそ私はこうして心配のあまり本日劈頭にこういう質問をするわけです。ですからこの点について大臣は十分に国鉄の初年度の事業計画、従って資金上のこの内容を詳細にお聞きになって、政治力を発揮して、この問題をすみやかに解決するように御努力を願いたい。  それからこれを權田監督局長にお尋ねしたいと思うのですが、七月三日の当委員会における同僚の質問に対するところの答弁を速記録を通じてみますと、いと簡単に問題を片づけておるのです。私どもは当時すでに大蔵省というよりか政府方針がきまったのだ、これは一大事だという考えで質問したのに対して、あなたの答弁は至って簡潔に事を片づけておるのだが、一体その後監督の立場にある運輸省の立場としては、大蔵省にどういう折衝をしたか、当の立場に立つあなたから責任ある答弁を聞きたい。
  33. 權田良彦

    ○權田説明員 あのときお答えいたしましたように、実はこの問題は閣議決定事項ではございません。閣議では要するに財政投融資の繰り延べという方針がきまったわけでありまして、前回もお答えいたしましたように国有鉄道特別会計の外部資金に対する百億問題は、大蔵省の一方的な申し出と申しますか、希望という線で打ち出されて参った。その問題を私どもとしては当時もお答えしたように、今正木先生もおっしゃるように、いろいろ重大な考える点があるので、まずこれについては十分折衝をしたい、当時の気持としてはそう簡単に向うの申し出に乗るわけには参らぬということをお答えしたわけであります。その後事務的には再三再四大蔵省の関係当局とは話し合いをしております。大蔵省も事務的には閣議決定すべき事項ではない、大蔵省の希望であるが何とかうんと言ってくれぬか、いやそれはできぬ、それは実際の今までの工事のやり方なり今後の資金の積み方なり、いろいろ影響するところもあるので、当方としてはその削減ということにはにわかに賛成しがたいということの、何と申しますか俗っぽく申せば押しくらまんじゅうをしておるわけであります。しかし一方債券の発行は御承知のように第一・四半期は予定通り参りましたけれども、第二・四半期は私どもも理財当局その他と相当談判をしておりますが、二十億にとまった。このピッチで参りますと結局ずるずるになるおそれもあるので、私どもは詰めるべき時期はもう近く来る、また来なければならないと思う。一つはタイミングの問題でもございまするが、現在の段階ではこれは近く最終的に話し合いをつけなければならぬ、大蔵事務当局も非常に微妙な立場におりまして、はっきり割り切ってしまうわけにも参らぬということで、種々それのよって起る影響その他は具体的に検討しております。従いまして事務的には最終的に詰める段階にも来ておりますので、当方としてはできるだけ主張を通して、どの点で話し合いができますかこれは大いに努力してみたいと思っておりますが、今までには最終的に両者で話し合いをきめたといういきさつはございません。
  34. 淵上房太郎

    淵上委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  35. 淵上房太郎

    淵上委員長 速記を始めて。  午前中はこれで休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      ————◇—————    午後一時四十七分開議
  36. 淵上房太郎

    淵上委員長 午前に引き続き陸運に関する調査を進めます。山口丈太郎君。
  37. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 午前の正木委員の質問に引き続いてさらにお尋ねをいたしたいと思いますが、きょう大臣の就任のごあいさつの中にも、文化の発達は健全なる交通機関発展にある、こう言い切られました。私は今さらこれを何も強調しなくても、今まで交通機関日本文化発展にあるいは経済開発、民生の安定に寄与してきたことは言うまでもないと思うのでありますが、そのように大臣も認識をさらに改める意味で強調せられたものだと考えております。私は長年この運輸委員会にお世話になっておりますけれども、通俗的に一般的に言われますことはその通りきわめて大言壮語りっぱであります。しかしその具体的な整備方法あるいはその運営機構の改善等に至りましては、これは運輸行政上から見てはなはだ遺憾な点が多いだけではなく、認識もきわめて浅いと思います。多少口が悪いかもわかりませんけれども、そういうふうなことで悪く言えば、地方におりましても地方の名士といわれるような人の交通機関に対する認識は、ただ無賃乗車券をもらって電車や汽車にただ乗る、こういうことだけが交通機関の認識であるかのような印象を私は受けてなりません。従って交通機関に対しまする資金その他改良施設工事の進行、あるいはまたその充実すべき具体的な方策ということになりますと、一向にこれは警視されて関心がない、こういうのが私は現状ではないかと思う。もちろん世間で通俗的にいうのは、もらう方は十円もらうよりも百円もらおうじゃないかと言えばすぐ賛成する、しかしながら出す方は、十円出してやらなければこれだけの施設ができない、自分が責任を持ってもそれだけのことができはいということはわかりつつも、出さはいということの方が受けがよいものですかか、無責任に迎合する、こういうような傾向が最近の社会一般の通例として強いのではないか、こういうふりに考えるわけです。そこで大臣に私はお尋ねをいたしたいと思いまするのは、そういう中にありまして、本年度一三%の国鉄運賃の値上げが決定されて、運賃の値上げ面につきましては遅滞なく実行せられました。しかしそれには前提条件がありまして、五カ年計画によって国鉄の施設拡充し、輸送力強化する、こういう前提をもってこの一三%の値上げは認められたのであります。そうなりますると、先ほどからの正木委員の質問応答にございました資金運用部資金からの投資にいたしましても、少くとも大衆から取り上げることは即日実行したのでありますから、これにこたうるに、その施設改善も約束通りこれが実行せられて、初めて忠実なる大衆への奉仕ということができるのではないかと思うのですけれども、それについて大臣のお言葉の中にもありましたが、国際収支の不均衡からやむを得ず投融資についても総合的な施策を講じつつある、そして外貨充実をはかりつつある、こういうようなことでございました。しかしその言葉の中に含まれるものは、従ってこの投融資分のいわゆる工事の繰り延べもやむを得ないというような、失礼な言い方であるかもしれませんけれども、大臣はどうもしり込みをしているような言葉がその中に精神的にうかがわれるのではないか。そうなれば、他のことと違って、大臣が冒頭に申されるように、産業、文北の発達は健全なる交通機関発展にある、その言葉と大へんな矛盾を来たすこととなるばかりでなく、運賃の値上げをして施設拡充強化するという公約にも全く反した結果になる。このことは、単に大蔵省の事務的措置として、百億の工事繰り延べを強要せられるということを運輸省所管大臣としてただ見ておる、あるいは国鉄当局にだけまかしておく、こういうようなことでは事責任は済まされぬのではないか、こういうように考えるのですけれども、大臣の御所見をはっきり承わりたい。
  38. 中村三之丞

    中村国務大臣 私は産業経済の成長は運輸行政推進によって行われる、こういう理想を持っております。それは先ほど申し上げました通りです。国鉄の運賃引き上げは行われました。この運賃収入は国鉄の自己資金に入るのでございまするから、これを通じて国鉄が輸送力増強に努めるということでなければ、運賃引き上げの意味はなさないと思います。従って私は、その運賃の引き上げによるそれの国民の負担がやがては転じて輸送力増強となり、いわゆるサービス行政が完全にできる、こういうふうにいたしたいと思っておるのであります。投融資の問題につきましては、これは国際収支の情勢にかんがみまして、総合施策の一端としてある程度のスロー・ダウンが行われておるのであります。しかしこれは今日一つのスロー・ダウンの行われることは、やがては将来伸びていくということでなければならないのでありまして、その点私はいわゆる縮小が今後継続されてやがては萎縮になる、こういう意味にとっておりません。今日の一つの緊縮がやがては将来の発展になる、こういうふうに持っていかなければ意味をなさないと思っておるのであります。大蔵省の要求にかかるところの投融資の削減につきましては、これはわれわれも総合的に見まして国鉄という公共企業体の特色にかんがみまして、強く要求をいたしておるのでありますが、国鉄当局がまず大蔵省と話し合いをする、それの後に私たちも協力していくということは申すまでもないことでございまして、最初から私ども監督官庁が出るというよりは、順序といたしましてまず国鉄当局が大蔵当局と話し合いをする、そうしてなかなか困難な事態になりまするならば監督官庁であるところの運輸省が、ことに責任者でありまする私が出ていく、こういうふうに考えておるのであります。
  39. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 今国鉄にまかしきりにするのではなしに、解決がつかない場合には運輸大臣も出るとのことでございますが、それはそうなさることが私は当面の運輸行政の責任者として当然の行為であると思うのですけれども、その際においても、少くとも今日そういう事務的に大蔵省が一方的にこの工事の削減を強要するということ、少くとも運輸大臣として就任せられて、そうして各省においてもあらゆるダウンを発表されておるのでありまするから、従ってその今までの運輸大臣の言明に従って、公式にこの委員会においてもこの工事繰り延べに対するすっきりとした態度を私は表明せられることが当然のことではないかと思うのですが、いかがですか。
  40. 中村三之丞

    中村国務大臣 午前中の正木委員の御質問にお答え申し上げましたごとく、今の投融資の国鉄に関する削減が、修正五カ年計画の大黒柱にきずがつかないようにしたい、これに努力するということは私の申し上げました通りで、またこれはあなたの言葉を借りて申しますならば、私として当然やらなければならないと思っておるのです。
  41. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 さらに私は質問を続けますが、それは国鉄の輸送力増強と並行をいたしまして、自動車、トラックの輸送の増強並びに地方鉄道、軌道におきまする施設改善とその整備増強の問題であります。これはこの国鉄と並行して、やはり地方鉄道、軌道におきましてもその施設増強等に必要なる措置を講じなければ、現在のように行き詰まった輸送状況を緩和して地方産業に寄与することは困難であります。そういう状況下にある今日の輸送状況大臣としてどう処理しようとされておるか。すでに各地におきましては運賃の値上げの要請があったといい、あるいはそれに対して反対であるといい、あるいは当分値上げはしないといい、いろいろの談話が発表されておるようであります。しかしながら交通機関の問題は他の産業とは少し性質が違うということも、あなたのごあいさつの中にあった通りであります。そういたしますと、その増強にこたえるべき融資なり何なり所要の手続がとられない限り、私は運輸行政に携わる責任者とは言えないと思う。まして常にこの事業計画というものは、国におきましても予算案がある通りでありまして、少くともその事業年度計画並びにその資金需要計画というものは、当然各事業においてもこれは立てるものであります。そしてその目標に向って進まなければ事業の運営はできないのでございます。しかるに今日の状態におきましては、もちろん値上げは反対である。反対であればそれにかわるべき政府融資ないしは資金あっせんあるいは補助等の措置がとられない限り、私はこの重要なる交通機関の責任者として、たとえそれが私企業であるにいたしましても、経営は困難である、あなた自身が経営を持たれましても、十分に責任はとり得ないと思う。これについてあなたはどういうお考えであるか聞きたいと思います。
  42. 中村三之丞

    中村国務大臣 国鉄は公共企業体でございますから、私どもは監督してその発展をはかるべきである。それから今お話の私企業でありますが、御指摘のことはおそらく私鉄の問題であろうと思います。私鉄と申しましても大私鉄と中小私鉄とがございまして、中小私鉄は非常に経営が困難でございます。従って申請せられました値上げ要求につきましては、今までほとんど許可になっております。宮澤前運輸大臣のときもそうでございますし、私のときも、先般ある経営困難の私鉄に対しまして、私が就任いたしました当時一つ許可したことがございます。また地方軌道につきましては、中には小さい鉄道では非常に経営の困難で損をしておるものもございます。こういうものに対しましては政府はそれぞれ補助金を出すということをやっております。また今後これも継続しなければなるまいと思います。それで問題は大私鉄十三社のことであります。これにつきましては今日のわれわれの低物価政策にかんがみまして、政府が何から何までこういうものを上げる競争はすべきものではない、こういう意味におきまして私は私鉄運賃値上げを一応ストップをいたしたのであります。そして将来適正価格考える、その適正価格考えるというのは、国際収支改善をせられまして、景気が回復して、こういう値上げについて家庭経済が吸収し得る時期、こういうふうに私は判断をいたしております。今日の大私鉄は事業そのもの、すなわち企業プロパーにつきましては、赤字を出しておるところが多うございます。これは私は認めるのです。ことに補修費を非常に切り詰めておる。これは私も認めるのです。しかしながら一方におきまして、あるいはデパート等の兼業収入をいたしておりまして、その方面における収入がございまするがゆえに、今ストップしたからといって、大私鉄そのものが経営が困難になり、彼らの企業が危機に瀕するとは私は考えておらないのでございます。しかしたとえば南海のごとく風水害があって大半困難になってきた、こういうものは、吉野前々大臣の時分に値上げが認められたということになっておるのでございまして、私たちは私鉄の企業が健全に発展するように、そして輸送力増強し、ことに通学通勤のラッシュ・アワーの混雑を改善してもらいたいという希望は持っておるのであります。
  43. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 改善の希望だけを持っても、それに対処する方策を講じなければこれは何もならぬと思います。今私鉄の十三社を画一的に言われました。しかし私は運賃の値上げをすべしというのではありません。けれどもすでにこの十三社も画一的に大臣の言われるようないわゆる原則論をもっては、解決し得ない事態にあることも私は明白であると思います。きわめて重要な段階に来ております。そうなれば私は交通機関というものは、やはり大衆に低廉な運賃で最高のサービスを持ってこたえるというのが、交通機関の使命でなければならぬと思う。しかしながらその最高のサービスをするために最低の運賃とは一体どういうものか、こういうことが私は論ぜられなければならないと思うのです。そういう場合にそれを原則として考えて、一三%国鉄が運賃の値上げをしてしまった。そうして大臣の今の原則で言われるなら、もっとしさいに検討して、工事その他施設改善に現在着手しておるものについては何らか国家の資金なり何なり、それをもってしてやらなければ、現在それに対応し得るような収入はあげられないではありませんか。現在あなたは鉄道、軌道については赤字であるということを認められておる。赤字であるということを認めていながら、そういうような論法をもってこれに対処するということは無責任きわまると思う。それでありますから、運賃の値上げをせよとは言わない。しかしながらそれならそれとして、いわゆる国の施策としては、たとい一キロの地方鉄道でありましても、それぞれ社会に貢献する大きな使命を持っておる。その認識に欠けていて運輸行政はできないと思う。あなたはどういう工合にこれに対処しようとしておられるのか、どうも私にはふに落ちない点が多い。もっと原則論でなしに具体的にどうするかということについて説明々願いたい。
  44. 中村三之丞

    中村国務大臣 数多い私鉄の中には、個々の経営内容検討いたしますならばいろいろ事情があります。しかし大体において先も申しましたごとく、今日の私鉄は兼業収入においてまかなっておる点もありますから、ただちに今ストップしたからといって経営が危機になるとは私は考えないということを申し上げておるのであります。しからばこれらの私鉄に対して国家が何かすべきか、私は私鉄が自己の信用において資金獲得せられ、自己の経営においてその輸送力増強せられるということを前提といたしております。現に十三社の私鉄は五カ年計画を立てまして一千二百倍円を投じて、これによって輸送力増強ができるという計画を立てておられるのでありますから、彼らの計画に対しまして私はその実行を要望いたしておるのであります。あなたの御趣旨は値上げはいかぬ、こういうことでございます。しかし値上げはいかぬけれども現実に経営が困難でやっておるから、国家が何か手を打ったらどうだ、こういうふうにお考えと思います。これも私は理想としてけっこうと思いますけれども、今日の私鉄といたしましては、自己資金においてある程度やってもらう、ことに兼業収入もあるのでございますから、この危機は乗り切ってもらいたい、こういうのでございます。
  45. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 それはきわめて無責任といいますか、責任のがれの言葉だと思います。あなたが地方鉄道の社長で、実際にその事業を経営されて、そして今日の状態になったら、一体あなたはどういう運営方法をしようとしておられるのですか。私はこういうものは、いかに労働組合の代表であっても、互いに経営経は労働者の立場になり、労働者は常に自分が経営に当ればという考えに立って行動しなければならぬものだと思うのです。その場合に、それはなるほど百貨店経営をやって、兼営をやって、そうして一割五分毛配当しているところがあります。そういうところと、あるいは兼営を解いて、そうして鉄道収入だけをもってその会社をまかなっているもの、あるいはその沿線の開発のために土地開発をやる、住宅経営をやる。しかしそれは付随事業として運賃収入を上げる手段で、それ自体で事業のプラスとはならない。そんなものは鉄道の経営の面に直接黒字となって現われるものではないのです。そんな認識をあなたは持っておられるということになれば、これは大へんな認識不足です。そういうような責任のがれのことをやるとか、あるいは陸運行政、海運行政等においても、均整のとれない運輸行政をやるということ自体を改めてもらわなければならぬと思っておるのです。昔は鉄道、軌道についてはみな国鉄の培養線なり補助線として、配当も制限せられておりました。もちろん私は配当を制限していいと思います。そのかわりちゃんとそれ相当の補助金を出して、そして国鉄培養線としての地方鉄道を奨励してきたものです。今日それは地方鉄道軌道整備法によって、大臣言われるように蚊の涙ほど、たった二千五十万円ぽろぽろっと出して、そんなもので私鉄企業が救われると思っていますか。今日そういうようなことでともかくも責任のがればかりをしているというのが、これは陸運行政に対する運輸省の態度と言っても差しつかえないのです。幸いに大臣経済界におきましても深い理解と識見を持っておられると聞き、私は隣ですから、常に大臣の人格には敬服しておる一人です。なるがゆえに、いま少しこの陸運行政については認識を変えていただく必要がある、このように考えるがゆえに私は質問をいたしておるのですけれども、遺憾ながら大臣はあまりにも原則論に堕していて、ちっとも具体的な解決方策を考えようとしておられない。これは私ははなはだ遺憾に思います。もう少しそういう点については一つ認識を改めてもらいたいと思います。  それからさらに、ここに鉄監局長もおりますからお伺いをいたしますが、昨年のこの動力車の免許の問題が出ましたときに、私は相当この問題の解決に当りましたが、そのときの約束としては、とにもかくにもこの免許というものは、実際問題として自動車の運転免許とは全然性質が違うのです。たとい動力車の免許を持っておるからといって、東急の運転手が京浜の運転手に肩がわりをして即日運転手に採用されるということはないのです。そういう運転手はむしろ雇わないという方向に行っているという私鉄の現状です。でありますから、こんなものをもらっても、そんなものは何にもならない、くその役にも立ちません。けれども役人の顔を立てるというのならば立ててもよろしい、いばるならばいばってもよろしいけれども、この運転免許の試験のあり方については、その会社の今まで行なってきた実績に基いてこの免許をおろす。そうしてその教習課程も今までの慣習に従って行う。また新しく教習所を設けようとするものについては、これは今までのその慣習を基礎にして、たとい専門的に専従しなくても、その養成機関の専従があればそれでいいじゃないですか、それじゃそういうことに了承しましょう、こういうことで約束しておって、そうして今実施されるとなると、どうも地方の陸運局なんて言ったってむちゃくちゃなんですよ。十人、十五人試験を受けにきて一人か二人しか受けられぬ。こんなことなら試験を受けるときにはみんな白紙で出そうか、こういうことで職場はてんやわんやの大騒ぎですが、一体どういうことでこれは指導しておられるのですか、これを明らかにしておいていただきたい。
  46. 權田良彦

    ○權田説明員 動力車の操縦者の運転免許の問題は、今お話の通りに現在施行しておりますが、この試験はその趣旨がすでに先生も御承知の通りに保安ということを主眼としておりまするので、一定の資格を持った方にハンドルを握っていただく。これには学科の試験なり実技の試験がございますが、これもそれぞれの社のしかるべき養成機関を持っておられるところはそれぞれこれを指定する。この指定の告示もすでにだいぶ出ておりまして、しかるべき機関はいずれも指定に相なりまして、試験が一部免除になっております。なお当時施行いたしました際も、現実に動力車操縦の資格ある方々に対しては、この試験を省略して在来の経歴を尊重して一斉に運転資格を付与いたしたわけでありまして、ただいまやっておりますのは、その後の年々新たに運転手になろうとされる方の試験だと思いますが、それにつきましてはただいま申し上げた公示されております養成機関をお出になった方々には試験が免除になっておりますし、それからまた実技試験につきましては、今お話の通りにそれぞれの線路においてこれは大事なことでありまして、その状態を知りつつ習熟することが必要でありますので、その現地の実情に応じての試験を施行いたしておるはずでございます。私どもあれを施行いたしますときにいろいろ申し上げ、また御高見を拝承した点を織り込んで現地陸運局で実施いたさしておりますので、御指摘のような無理と申しますか、実情に合わないようなことにはなっていないと信じておりますので、何とぞさよう御了承願いたいと思います。
  47. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 中央におられたらそうかもしれませんけれども、一ぺん地方に来て実情を調べていただきたいと思います。ああいうようなことをされたんでは、百人あるいは二百人とというような中小企業の私鉄では、これは全く運転手の免状をとらせにやれません。皆さんは免状々々といって、電車の運転手が免状を持っておれば事故は起らぬと思っているかもしれませんが、電車の運転手が免状を持ってもくそにもなりません。ネコに小判というが、こんなものはネコの小判にもなりません。私もおかげさんで免状をもらっておりますけれども、こんなものを持って阪急をやめて阪神に行ったってだれも雇ってくれませんよ。自動車運転手なら全国どこへ行っても腕次第で雇ってくれますよ。電車の運転手ばかりはこんなものを持っておってもくそにもならない。そんなことに頭を悩ましてむずかしいことを言って、官僚をいばらすことばかりやっていても何もならない。私は口が悪いから言ったのだけれども、運転手の免状をやるのに試験をしなければならぬならば、ルンペンにも試験をしなければルンペンにもさせやしないだろう、そう言ったのです。その通りなんです。ですから、ことさらああいうことをされたのでは、施設から何から中小施設ではやれませんよ。第一施設なんかできやしませんよ。そんなものに力を入れる一銭の金があるのだったら、今大臣に言っているように、一本でも犬くぎを新しい犬くぎに取りかえさせる、その方がよほど安全輸送の足しになるのです。あんなものに金を使って施設をしたってくその役にも立たない。あなたらはどんなふうに考えているかしらぬが、それが官僚根性なんで、ただ机の上で、こういうやつを試験をしたら列車はうまくいくだろう、そんなことを考えたら大きな間違いだ。免許制を全然廃止せよとは言いませんよ。やりたかったらやったらよろしいけれども、そういう事情にそぐわないことをやるのですから、従って今日のようなそういうやり方を改めて約束通りにしてもらいたいと思うのです。しかるに来年度になると、ちょっときょう説明の途中で中止になりましたからまたそのときに私は説明しようと思うのだけれども、ついでに言いますが、何か動力車運転手の免許制拡充強化、聞えはよろしいが、こんなものはほんとうにやるつもりですか。何を拡充強化するのです。こんなことをやってまた別に教習所を建てろとかなんとかいって、何百万円、何千万円の金を出させて、犬くぎを買わさぬようにするつもりですか。犬くぎを買わさぬようにするならば、レールがはずれてしまって汽車や電車は脱線するのですよ。その方が幾ら輸送力の減退になるかわかりやしません。こんなばかげたことを考えるひまがあったら、一銭でも節約して犬くぎの一本でもよけい買えと言いたい。その方がよほど足しになります。こんなことを真剣にまじめに考えても運輸行政になりませんよ。はっきり私は申し上げておきますけれども、考え直していただきたいと思います。現在実際に行なっていることは、中央で約束した通り、一つ行政指導を鉄監局長の腕前で指導してもらいたいと思います。悪口を言うようだけれども、大体今まで、私鉄の設備なんかは、見に行ったら酒を飲んでいるくらいのことが関の山なんです。ポイントとか何かを見にくるかしても、ただ酒を飲んで帰ってしまうだけなんだ、何もしない。酒飲んではったり散らしておるだけなんだ。これは私大臣にお尋ねしますが、岸内閣が三悪追放ということを一生懸命声を大にしておる実情はこういうわけですが、一体運輸行政監督の最高責任者である大臣として、この三悪をどういう工合に修正されようとしますか。一つこれを私は聞きたいと思います。
  48. 中村三之丞

    中村国務大臣 監督局長の申しましたことにつきましてお話がございましたが、こういうととはやはり仰せになりましたように、下の方に、ただ中央だけでながめておるのではなくて、現場にこれが浸透するようにしなければならぬことは私も今後注意します。
  49. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 注意だけではなしに、もろと見てやってもらわなければ困ると思うのです。大てい言いたいことを言いますけれども、大臣と顔が合うのは初めてですが、私は六年ばかり運輸行政をやっているのですけれども、実際陸運行政はもう少し現実の面からやってもらわなければ因ると思います。運賃の問題にしましても、施設改善の問題にしましても、あるいはこういう人間操縦の問題にしても、もう少し堅実に着実にやってもらいたい。ただ机上計画でやっておっても、それはその通りになっていないのです。そうしてその検査が規定されているのですけれども、検査も必要ですし、するなと言うのではありません。けれども、そこへ見に来て、サービスしてもらうと黙って帰るし、サービスしてもらわないとつけ上ってしまう。こんな行政官がいつの場合でもおる。国民に負託された行政官であるけれども、国民はそんなことを何も負託していません。ですから、その点は運輸大臣としてせっかく努力せられるのが当然である、こういうふうに私は思うのです。だから、これについては新大臣としてのもっとはっきりした所見を私は承わっておきたい、これが一点です。  その次にもう一つ承わりたいのは、事重要でありますが、新聞紙上の報ずるところによりますと、鉄道営業法を改正するのだ、国鉄の組合がどうも言うことを聞かないから、今度は一般法である鉄道営業法でふん縛るのだ、こういうような談話がしきりに出る。そうしてさらに同様に拍車をかけている。これは実に不可解千万なことで、労働組合に行き過ぎがあり不合理な点があれば、その労働組合を規制する法律があるのですから、正々堂々とその法律を改正して当るべきであって、憲法にも保障されている団体交渉権を有する労働組合を、一般刑法や鉄道営業法というようなわけのわからないもので規制しようという無理な考え方をするということは、非常な本末転倒だと思う。大臣は一体本気で正気でこれを考えられているのですか、一つ所見を承わりたい。この二点をはっきりしてもらいたい。
  50. 中村三之丞

    中村国務大臣 前段のことは今後私も注意をしますが、また最近地方の陸運局長を呼んで私の所見を申して伝えるはずでございます。今の御質問は私ども非常に参考にいたします。ありがたく存じます。第二は、何か新聞でそういうことが出ておったことを私は承知いたしております。鉄道営業法を改正するという意図は持っております。なぜかと申しますと、明治三十三年時代のずいぶん時代離れをした法律なんでございますから、これを近代化し——しかも国鉄というものはサービース行政でございますから、あの時代離れをした法律を直して、近代的なサービスができるように、鉄道営業法を改正するという考えを私は持っておりますけれども、二十五条を強化をしてやるというようなことは私は今考えておりません。これは一部分そういう議論があるかもしれませんけれども、もしそういうことをやるなら、あなたのおっしゃった公労法でも改正するならこれはわけがわかる。しかし私は公労法を改正して刑罰を加重するという考えは持っておりません。私は私の信念として警察国家的の取締りはしたくない、これは私はここに明言いたしておきます。
  51. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 大臣の今のお言葉は、私は大臣が府県におられて、その人格から見て当然そういうお答えが得られるものと期待をしておったわけです。けれども巷間伝えられるように、この違った目標をもって鉄道営業法を改正するということに対しては、これは大臣一つ今の言明通り考慮を願いたいと思います。けれども、今言われたように、明治三十三年に施行せられた鉄道営業法でありますから、これを近代的に、現状に合うように改正するということについては、その大綱的な原則については私は賛成します。けれども、その目標が今言ったようなことであっては断じていかぬ。これは一つ十分に監察を願いたいと思います。  それから今の動力車の問題でも、十七条によってやっているのです。けれども今日、今大臣の言われるように、官僚統制といいますか、官僚規制といいますか、はしのこけたことまでびしびし法律や規則でふん縛って、そうしてそこへ官吏がやってきてつつき歩く機会ばかりをふやしていく。これは十分に考えなければならぬ問題だと私は思うのです。ですから、そういうことのないようにぜひとも考慮を願いたいと思います。  それでは大蔵省の方が見えたようでありますから、これは正木先生の午前中からの質問でありますから、正木先生に譲ることにして、一応私はここで中断をしておきたいと思います。
  52. 正木清

    ○正木委員 大蔵省の事務当局の方が御出席だそうでございますから、簡潔に御質問を申し上げたいと思います。  ほかでもございませんが、あなたもよく御存じだろうと存じますが、この二十六国会で、国鉄運賃の一三%の値上げが議会を通りまして、現に実施をされておるわけであります。その一三%の国鉄運賃の値上げの前提となったものは、政府が議会に御提案をいたしましたその説明の骨子は、現在の日本の中で最もおくれておるものは、実はこの国鉄の輸送計画である、この国鉄の輸送計画を何としても緊急に健全なものに取り戻すためには、自己資金としての運賃値上げによる財源、それから鉄道債券による財源、それから資金運用部資金による財源、こういうものが必要だということであります。それでこの五カ年計画の第一年度が、実はことしでございます、三十二年度でございます。三十二年度のこれらに要する資金の総額は一千億をこえております。この一千億をこえて一おります工事勘定によって第一年度の事業を始めたわけでございますが、私ども承わりますと、政府方針として、財政投融資の大幅の緊縮をはかったようでありますが、そのしわ寄せが国鉄にも及んできたということで非常に心配をいたしまして、去る七月三日の日に当委員会において、このことの経過等についても当時の大臣並びに運輸省の事務当局にお尋ねをいたしたわけであります。大蔵省から事務的に一応の内示はあったけれども、具体的には大蔵省から明示がないのだということで、まあ一口に言うと、心配をして下さるな、こういうことであったわけであります。ですから私どもは、大蔵事務当局も、国鉄の五カ年計画の初年度に当って国鉄の現状をよくお考え下さって、事国鉄の事業等には支障のないような処置を考えていてくれる、こうばかり実は考えて安心をしておったわけです。ところが本日の委員会でだんだんお尋ねをして参りますと、いまだこれらの問題については、大蔵事務当局としては最後的な意思表示がないような答弁でございますので、あなたの方としては一体どう考えておられるか。もうすでに十月でございます。鉄道債券二百十五億の中で、かりに百億の債券発行をここで繰り延べるというような事態が起きますと、国鉄五カ年計画の初年度の事業上に非常に大きな支障を来たすわけでございます。一方で議会は、国民に向ってはこの行き詰まった国鉄を健全なものにして、そうして国民のあなた方に迷惑をかけないのだから、いろいろ苦しかろうけれども、この一三%の運賃値上げは認めてもらいたい、こういうかたい約束をしておるわけです。あなたの方の態度がはっきりしませんと、国鉄としての今後の事業の遂行に大きな影響を来たす、これがひいては来年度にまた大きな支障を来たす、そうすると当初の五カ年計画というものは大きな狂いが出る。こういうことになるわけで、あなたの承知しておる範囲でけっこうでございますから、ここで一つ明らかにしておいてもらいたい。
  53. 賀屋正雄

    賀屋説明員 お答え申し上げます。本年度を第一年度とする国鉄の五カ年計画を遂行いたします必要上、財政投融資の額をそのまま認めろという御意見でございますが、けさほどからお話があったことと思うのでございますが、本年初頭以来非常に外貨が減少いたしまして、その原因といたしましては、どうしても投資の行き過ぎがあるのではないかというととから、もちろん民間の設備投資につきましてもできるだけ繰り延べしていただくと同時に、民間にばかりこれを要求いたしましても酷でございますので、政府の事業といたしましても適当な額を繰り延べてしかるべきではないか、こういう考えに基きまして、御承知のように全体の政府の投融資からいたしますれば、金額的には一五%、約六百五十億という金額をはじき出した次第でございます。公庫でありますとか、公団でありますとか、あるいは開発銀行等、財政投融資の対象となっておりますいろいろな機関があるわけでございますが、とのすべてに例外なく適用する。今日よくいわれております鉄道はもちろんその一つでありますが、電力といったような隘路産業につきましても、ひとりまかり通るというような例外を認めない。こういう考えに基きまして、主として隘路産業等重要な産業に対する融資をいたしております開発銀行に対する融資につきましても、繰り延べを考慮いたしておるようなわけでございまして、そういった観点からいたしまして、国鉄の事業の重要性ということは十分認識はいたしておりますが、これにつきましても、他の機関との振り合い上、妥当と思われる百億程度のものは繰り延べていただきたい、こういう考え運輸省、国鉄の御当局にお願いいたしておる次第でございまして、これは先ほど申しましたように、全体の投融資につきましては六百五十億、約一五%になるわけでございますが、国鉄につきましては、百億という数字は事業量全体からいいますれば一〇%以下という数字でございまして、ほかとの振り合い上著しく酷であるというようなことは申せないと思うのでございます。それからその繰り延べの中身でございますが、これをどういう事業において繰り延べるかということにつきましては、大蔵省といたしましては、その中身に立ち至ってこの事業を繰り延べるべきであるというような干渉と申しますか、差し出がましいことは申し上げませんで、国鉄の方におまかせいたしておる次第でございます。従いましてただいま国鉄におきまして、この一〇%、百億の繰り延べをどういうふうな方法によって繰り延べるかということは、御検討をいただいておる最中でございます。私どもといたしましては、ただいまのところではこの百億の繰り延べは実行していただくという考えでおります。
  54. 正木清

    ○正木委員 きょうは次長のほかに運輸省所管主計官の方も御出席のようでございますね。私は国鉄のこの五カ年計画の初年度における事業計画等については、次長は深く立ち至って目を通したかどうかは別として、担当の事務官は私は相当詳しく目を通されて、この三十二年度の当初予算を議会に提出するまでの間の事務折衝というものは十分されたと思うのです。日本の隘路産業といえば、今あなたが御指摘になったように国鉄を筆頭にして鉄鋼、それから電力等もございますが、この国鉄の資金源の場合は、御承知のように運賃値上げが大半をなしておりまして、それから鉄道債券の二百十五億、運用部資金の八十億は、先ほど承りますと大蔵当局は手をつけない、こういうようなことだそうでございます。この二百十五億の中で百億実際に今あなたがおっしゃったように強制処置として繰り延べを実施されますと、国民に約束したことが現実の問題としてはなかなか困難な事情になってくるわけですね。そこであなた方としては、先ほど一言よけいなことだと思う点まで触れたのですが、大蔵当局としては国鉄に百億だけはしんぼうしなさい。この繰り延べられた事業の内容等については私の方はあずかり知らぬのだ、大蔵当局はこれでよいのかもしれないが、その責任の衝に当った国鉄としては、国民に何と言って一体申し開きをするかという現実の問題なんです。しかも国鉄は電力とか鉄鋼と違いまして、公けの機関でございます。政府みずから大きな責任を持たなくちゃならぬ。現実に国鉄当局としては百億が繰り延べられますと、この事業計画に大きな支障を来たしますと、新しい大臣御出席の当委員会で本日それを明らかにしておるわけです。そういう事情を大蔵当局は真剣に考えてしかるべきではないか、何もかも総花的に繰り延べをやるべきではないじゃないか、こう考えておるわけです。しかもこの鉄道債券等については、第一・四半期の五十億は発行済みでございます。これからのものをどうするか、そういう問題について僕は直接三十二年度のこの事業計画、従って三十二年度の予算計画、三十二年度の資金計画等に直接参加して、これを議会までに提出至らしめた大蔵省の主計官というか、事務官というか、その方からもこの際お聞きしておきたいと思うのです。
  55. 鹿野義夫

    ○鹿野説明員 今年の国鉄の運賃値上げを含めた予算編成に際しまして、大蔵省として協議にあずかった際の検討に従事いたしておるわけでございまして、先生の言われる通り、国鉄の現状が非常につらい状態におって、輸送の隘路という言葉も、ほとんど国鉄が代表しておりました状態で、自来内容のこまかい御説明の中から、国鉄が非常に重大な状態になっているということはよく理解しておるつもりでございます。ただ国鉄も一つの公社組織として国の施策の一環をになって、公共的な使命を果す役割を持っておる。そういう意味で、やはり国の全体の経済が危機に陥ってきた、このような場合には、確かに輸送の隘路は、その他の問題に比べましても相当優先すべき重大な問題であると思いますが、同様に電力の問題その他につきましても、全体として投資活動の引き締めという方向に持っていかなければ、どうにも国全体としての危機に陥っておるということであればやむを得ないのではないかというような気持から、実につらい思いであるわけでございますけれども、国鉄の方のお方には、主計の、予算編成に携わった立場からもぜひ一つお願いいたしたいということを、目下ひとえにお願いしておるわけでございまして、事実それだけ事業が繰り延べられれば、将来にわたっても相当の影響をなすことでございましょうけれども、五カ年計画の問題は、今後五カ年の長期にわたって全体の輸送量の増強をはかっていくという問題でございますから、おくれを取り返すという機会もないこともございませんでしょうし、この際の危機には、国家の一つの公共的な使命を果す機関として、一緒に協力していただきたいというような意味でお願いしているわけでございます。
  56. 正木清

    ○正木委員 私は大蔵事務当局に多くは申し上げませんが、監督の立場にある政府運輸大臣が御出席でございますから、当然この問題については、運輸大臣は誠意を持って善処していただけると思っております。思っておりますが、特に予算についての主管庁である大蔵省の皆様方に強く私は要請をしておきたいことは、国鉄としてはこの初年度が一番大切なのです。これは直接国鉄並びに運輸省と事務折衝される主計官が一番おわかりだと思うのですが、なぜ初年度が一番大切かというと、一口に言うと、国鉄というものは、年令的に見ると、ちょうど私くらいの年令になっておる。疲れ切っておる。ところがその国鉄に与える仕事の任務というものは、あまりにも多い任務を与えておるというのが国鉄の現状なのです。この初年度において一体何をしなければならぬかという問題ですね。あなた方は五カ年計画というと、たとえば東海道線の複々線であるとか、それから全国の主要支線の電化事業であるとか、それだけお考えになっておられますが、国鉄の事業はそんなものではないのです。全国の滞貨百数十万トンをどうしてこれを軌道に乗せるか、その乗せるためのいろいろの隘路というのも、一口に言うと老朽施設ですね。これはこの初年度で緊急な改善措置をまずやって、そして国全体の輸送計画から見た国民経済というものを軌道に乗せる。これが今年の国鉄としての一番大切な仕事なんですね。この一番大切な仕事に、あなた百億も繰り延べになってごらんなさい。あなたの口からは百億というが、幾ら大蔵当局といえども百億のまま切るとは私は考えておらぬ。ほんとうのところをいうとまあ大体三十億くらいだろうと思っています。それを全部百億削られたらえらいことです。私はそんなむちゃなことはあなた方はせぬとは思いますけれども、しかし国鉄として初年度に何を一体やるのだということを、主計官は国鉄と折衝しているだけによく事情はおわかりだと思うのです。現に全国では百二十万トンからの滞貨が今あるのですよ。よろしゅうございますか、百二十万トンです。ごらんなさい、去年の秋、東京の木炭が一体毎日毎日どうしてあんなに値上りをしたのか。完全に東北本線が詰まってしまって、東北各県にある木炭が東京に入ってこないのです。それほど国鉄の施設というものは年令的にももう老朽の域に達しておる。これを思い切って緊急な処置として手当をして、そして一応軌道に乗せて、それから漸次本物にやっていこうというのがこの五カ年計画です。その点をよく考えてもらいませんと、電力がこうだから、鉄鋼もこうだから、ほかの公団の資金手当もこうだから、国鉄も世間に近いようなことをしてもらわなければ困るというものの考え方は、私は大蔵当局の人々の考え方としては理屈としてはなっておらぬと思います。そういうものの分析の仕方は、頭の鋭い大蔵当局の諸君にしては私はあまりにだらしなさ過ぎると思う。そうではなくて、これは閣議決定ではないと聞いておる、行政処置と聞いておる。だから国鉄から十分にこの問題については——ぐずぐずしておられませんからね、次長、そうでしょう、もう十月ですよ。だから一時も早くこの問題の最終結論を出して、そして私は議会を通して国民に安心を与えるような処置をとってもらいたい。ぜひこれはそうしてもらわなければいけない。もしあなた方が百億を押えるのだ、五十億押えるのだ、あともり国鉄の資金繰りのいろいろな困難なものも、あなた方はあなた方一流でもってわしゃ知らぬというような処置もとられたのでは、こちらは困るので一。はなはだ迷惑なんです。そういう点も十分勘案してもらいたいと思います。もしあなた方がどうしても百億一瞬もまかりならぬというのであるならば、あなた方大蔵省として公式に声明なり談話を発表して、国民にこのことを明らかにしてもらいたい。そういうことはわれわれ議会のあずかり知らぬところです。われわれ議会はきちんとした政府提出の予算説明を求め、事業計画を求め、その上に立って議会を通しているのです。そういう点について十分お考え抜いて善処してもらいたいと思います。これで私の質問を終ります。
  57. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 簡単に質問したいと思いますが、大体聞きますと閣議の決定で投融資を押える、そうなりますとそういう原則をきめて、あとは行政措置でやっておられるようですが、ともかくも先ほどからも私大臣に言っておるのですけれども、総花式にちょんちょんちょんとやればいい、こういうやり方は改めてもらいたいと思うのです。鉄鋼がどうだ石炭がどうだといっても、交通機関を一日とめてみなさい、どういうことになります。それこそ日本は大へんなことになりますよ。今の場合には狭い日本でありましても、鉄道にたよる交通機関——これはもう鉄道以外にないということは、言わぬでも御認識があると思うのです。とかく交通機関に対しては、責任だけは原則論として公益性があるということで、そこまではいわれるのですけれども、しからばそれだけ社会全般の世論として、交通機関なるものは海上、陸上といわず公益性があるのだとおっしゃるならば、すべての施策についても、極端にいえば最優先的に私は取り扱われてしかるべきだと思うのです。責任だけはとそう言って、事業者にもあるいは労働者にも責任だけ負わすことは抜け日なしにやられます。けれども責任を負わすだけであって、ちっとも裏づけになる施策については考慮がない。これは私ははなはだ遺憾に思うのです。そういう意味からいってこんな総花的に一五%削ることになったから、国鉄は百億円を削るということは何も他の産業から見て無理なことじゃない、当りまえだ、こういうようにあなたは言うのですけれども、そこははなはだもって認識不足だと思うのです。たとえば大蔵省のあなたも、電車に乗ってはめったにお帰りにならぬと思いますけれども、しからば自動車でもよろしい。五時十分に来いといったものが二十分になったら腹が立つでしょう。それと同じことで八時に出勤したい、家を出て三十分あれば職場に到着する、だれでも時間ぎりぎりまで家におるというのは、勤め人根性といいますか、常識です。それで行ってみたところが電車が一ぱい満員で乗れないで、一台乗りおくれて十分遅刻した。一口気持の悪いものなのです。それを考えればそう総花的にこの交通機関予算を押えることが、いかに不合理かということはおわかりになると思うのですけれども、一体行政処置として大蔵省がとっておられまする今の削減の方法はどういうことなのですか。聞いておると総花式で当りまえのようにおっしゃっておられますけれども、どうもその点不可解に思うのですが、一体重点というものはどこに置いてやっておられるのですか。
  58. 賀屋正雄

    賀屋説明員 今回決定いたしました財政投融資の繰り延べにつきまして、各機関別の金額をどういうふうにしてきめたかというお話でございますが、先ほど来申し上げましたように、総花式がいかぬというお考えも一つのお考えでございますが、各機関についてお話し合いであらかじめ金額をきめます前に、個々の具体的な内容につきましてこれとこれを繰り延べるということから数字を積み上げて参りまして出すということになりますと、これはもう短時日にはできない相談でございまして、ちょうど予算を組みます場合に、二カ月、三カ月かかって大蔵省の主計局と折衝されまして予算ができ上りますように、そういうような方式をとりますれば、非常に緊急でございました外貨が目に見えてどんどん減っていきまして、必要な輸入すらできなくなるおそれがあるというような事態に処しましては、とうていそういった方向では不可能であると考えまして、大体投資を繰り延べていただくという大きな方針について御了解をいただく。そして御了解がいただければ、この趣旨に基いて各機関が相互の間に不公平のないようにというところから、大体の基準を考えまして、その基準に当てはめた金額を各機関にお示しいたしまして、この金額だけはぜひこの際繰り延べていただきたいということで、大蔵省としては各機関にお願いをいたしたようなわけでございまして、総花式がまずいというお話でございますが、各機関のそれぞれの御言い分を承わっておりますと、どのお話を聞いてもいずれもごもっともでございまして、これを一々その通りだということでおりますと、とうてい繰り延べというのは結局は一億もできないというような計算にならうかと思います。そういった関係から大体数字をはじきまして、こちらから各機関にお願いをしたというような次第でございます。
  59. 山口丈太郎

    ○山口(丈)委員 どうも聞いていると実情に即さない議論のように思うのです。もちろん先ほど大臣にも言うたのですけれども、とにかく自分から出す方はこれはだれでもよけい出すのは反対なんですよ。十円出すところは五円と言ったらみんな賛成しますけれども、十五円出せと言うたらみんな反対するのです。そういう工合に、出す方については反対する。ところがもらう方については、これはまたわれ勝ちにもらう。それが逆で十円しか能力がないだろうと思っているのに、十五円もらえると言ったら、異議なしになってしまう。例はごく小さくて悪いですけれども、これは何ぼ大きく言うても一緒です。そういうわけで私は人が責任を持っておりますから、だからこんなことを言うてもいいじゃないかというような無責任なことが今日平然と行われているということは、これはもうまことにいかんと思います。あなたがおっしゃるように、各省の意見を聞いたり、各部の意見を聞いておったら、どれもこれももっともなことばかりで困る。だから一つこっちで原案をきめて不公平のないように割り当てたのだ、そして行政をしておるのだ、こうおっしゃる気持もわからぬことはないが、しかし公平、不公平というところに私は問題があると思うのです。ただ単に鉄鋼の施設拡充するための投融資、あるいは電気施設拡充のための投融資といいますけれども、それらが何ぼいばっても、汽車や電車が一日とまったらそれはもうお手上げなんですよ。だからやはり公平というものは、国民に対して公平な行政を行うというのは、私はあくまでもどれが今日どういうふうに重要であるか。その重要度の尺度をもって事を決するというところに公平さがあると思うのです。ただいたずらに一割なら一割、一割五分なら一割五分を画一的にどれにもこれにも頭割りに削減する、そして事なかれ主義でいく、こういうやり方はこれは全く不公平中の不公平なやり方だろうと思う。何も私どもが運輸委員会に属しているから、運輸省のお先棒をかついで言うわけでもないし、国鉄のお先棒をかついであなたをいじめるわけでもありませんが、もし交通機関というものがそれだけ重要であるなら重要であるだけ、認識を深めてそれを実行に移してもらわなければ、公共性があるの、大臣が言われるように文化発展は健全なる交通機関発展にあるのとおっしゃっても、それでは単なる言伝文句にすぎないのですよ。それでは国民は納得しません。本年度から輸送力増強の五カ年計画を立てて、これを国民に公約している。だから一割三分値上げされている。所によると二割も三割も値上げになっております。国鉄の通勤客の値上げというものは、あなた自身払っておられるかどうかわからぬけれども、御承知のようにともかく今日近距離客ほどこの値上り率がきびしいのです、大きいのですよ。それだけ通勤者、大衆に余分の負担をさしているのですよ。遠距離ほど運賃値上り率は少いのです。それをもなおかつがまんをしているのは、その公約なるものを実行してもらうという楽しみがあるからです。ところがそれをあなたがほごにせられたのでは、これは一割三分というものを搾取せられたことになってしまう、そうなるでしょう。それから鉄鋼の労働者がどれほどいばっても、電車が一日とまってしまってごらんなさい。鉄鋼の増産、石炭の増産をやるといってみても、できますか。値上げの裏づけをしなければ、一割三分というものは大衆からぶったくったということになるじゃありませんか。それを考えれば、私はこんな総花式な削減ではなくて、わずか三十億ほどでとめると言われますけれども、こんなものは一銭でもいやですよ。私が大蔵大臣をしておったならば、交通機関に断じてそんなことは許さぬよ。それだけの認識を持っていただきたいと思うのですが、大蔵省の交通機関に対する認識というものはどうなんです。今年も私鉄整備法で運輸大臣は私の質問に対して、私鉄整備法によって中小企業を救いますと言っている。その予算がない、二千五十万円。一体そんなものでは昔の二銭五厘と一緒だ。そんなものを出しておいて、国務大臣たる運輸大臣が救済なんてそんな大きなことが言えるか、そうでしょう。一体交通機関に対して大蔵省はどんな認識をしておられるのか。私はどうも合点がいかないのです。えらい人は電車でも汽車でもただ乗れ、それでおもしろがっていたらいいかもしれぬが、ただ乗れる人はそんなことではならぬのですよ。沿岸や離島間の航路についても、あしたまた私は質問するつもりですけれども、第一交通機関というものは人の命を預かっているのですよ。犬くぎが一本抜けていて脱線したら、何百人、何千人の命が失われるのですよ。十車連結で二百人ずつ乗っているとすれば、二千人だ。その生命財産を預かる交通機関ですよ。その交通機関をいじめ倒しておいて、脱線したら、運転士がどうの、信号がどうしたの、施設がどうの、そんなことを言ったって、死んだ人はちっとも戻ってきませんよ。離島の航路問題でもそうでしょう。あんな腐りかけた老朽船で人の命を頂かっていて、沈むのが当りまえですよ。極端に言えば、あなた方がそれだけの交通機関に対する認識を持っていないからなんですよ。こういう点から見て一体本気で百億削減してしまうのですか、どうです。
  60. 賀屋正雄

    賀屋説明員 交通機関に対する認識が薄いというお話でございますが、この重要性については十分認識いたしておるつもりでございます。結局百億の投融資を繰り延べることによって、どの程度の影響が現われるかということになろうと思うのでございますが、これは一つ国鉄御当局で、できるだけ国鉄の置かれておる重大な使命の遂行に支障のないような方法において繰り延べをしていただくということで、お考えをいただきたいというふうに申し上げておるのでございます。それからこの百億を切ってしまうかどうかということでございますが、先ほど来申し上げております通り、これはあくまでも繰り延べの措置でございまして、これを切りっぱなしという考えではないのでありますから、その点御了承を願いたいと思います。
  61. 淵上房太郎

    淵上委員長 井岡君。
  62. 井岡大治

    ○井岡委員 私は大臣にお尋ねをいたしたいのです。大臣は午前中の同僚の質問に答えて、国の産業にひびが入るような繰り延べ処置については私としては考えたくない、ただいまは国鉄当局が折衝をしておるので、やがてはその折衝が終った後私が折衝したい、こういうようにお話しになっておったように思うのです。ただいま大臣もお聞きの通り、大蔵当局は百億繰り延べについて非常に強い御希望を持っておいでのようであります。そうしますと、午前中の大臣の御答弁とは若干間隔が開いておるのではないかと思うのです。  そこで私は今度の運賃の値上げの問題を振り返ってみたいと思うのです。最初国鉄が運賃値上げを持ち出しましたここ二、三年来は、国鉄の施設が非常に老朽化しておる、従ってこれを一日も早く改善をしなければ、人命を預かるわれわれとしては責任を持てないという立場で、運賃の値上げの申請を行なっておられたわけであります。ところがそのつど政府当局は、国鉄の努力によってそれらの問題を近代化しろということで受け入れなかったのでありますが、昨年末から本年の初めにかけて非常に滞貨がふえてきた。昨年の今ごろであったと思いますが、確かに二百六十万トンの滞貨があるということが発表されて、これでは何とか運賃の値上げをして、そうして輸送力増強をはからなければならない、こういうことが各方面から強く要望されて参り、国の産業の基幹をなしておる国鉄が、輸送力の少いために迷惑をかけておる、こういうことではいけないから、国鉄の運賃を値上げをして、そうしてこれらを解決したいというのが、本年国会に示された国鉄運賃値上げのおもな理由であります。そうして第一年度は、現在滞貨のある部分をほとんどなくしてしまって、第二年度から国鉄の整備計画近代化計画に入る、こういうように言ってわれわれに説明をされたのであります。主計当局もこういう立場でこの運賃の値上げについて御了解を得、同時に今問題になっている鉄道公募債の二百十五億というものをお認めになったと思うのです。従って午前中にもお話しになったように、依然として百二十万トンの滞貨があるということ、同時にこれから年末にかけてさらにこの滞貨がふえるということを国鉄当局は言われているわけです。にもかかわらず何かバランスをとるために、百億の投融資を削るというお話だそうであります。バランスをとるために削るのであれば、国鉄運賃を値上げした理由というものは、私たちが委員会を通じて申し上げた通りになってきている。従って今国民に約束したことを違約しようとしておられる。正木代議士が大蔵当局の見解を国民に明らかにするのであればわれわれとしてはあずかり知らないことだ、こういうふうに申されているゆえんもそこにあると思う。従って運輸大臣はこの値上げをし、そうして国民の負担にかかっているこの理由の背反行為を起そうと今している。これについて大臣の所見を伺いたいのです。
  63. 中村三之丞

    中村国務大臣 国鉄の値上げは自己資金の中に入るのでございますから、これによって輸送力増強をせなければならぬということは、前大臣もおっしゃったのだと思います。私もそういうふうに感じております。今回の投融資の削減によって、国鉄修正五カ年間の大動脈と申しますか、あるいはまた大黒柱と申しますか、それにひびの入らないようにするということは、私午前も申し上げました通り。従って大蔵省の諸君が今事務的見地から皆様に御答弁したと思いますが、今日の段階におきましては、大蔵当局と国鉄当局が話し合っているので、その話し合いを見た上で私は政治的解決をして参りたい、これが私の考えでございます。
  64. 井岡大治

    ○井岡委員 大臣の非常に力強い御答弁をいただきましたので、私は一応了承します。従って今のは事務当局の折衝だ、だからこういう折衝でもしきまったとしても、私は今の大黒柱にひびがあるものとするならば、大臣の今後の運輸行政というものは信を置けない、こういうことをこの機会に申し上げておきます。従って大臣の今後の善処を御要望して私の質問を終ります。
  65. 淵上房太郎

  66. 眞鍋儀十

    眞鍋委員 せっかく重要施策要綱についての御説明を聞いたのでありますが、緊急を要しますので、一つ中にはさんで御審議を願いたいと思います。  先般運輸委員が全国各地に調査に参りましたので、それの結果につきまして順次報告もあろうと思います。またこれを具体化するためにいろいろと御審議が続けられると存じますが、その中で緊急を要しますことは、先般三日から一週間にわたって委員長池田君、松原君、松尾君、私と、九州地方の鉄道状況視察に参ったのであります。御承知のように、この中で私鉄として最も大きな損害を受けましたものが山鹿鉄道と島原鉄道になっているようであります。この問題につきましては、むろん政府としても応急措置は講ぜられていると思いますが、さらにその点を明確にいたしておきまして、示唆するところがあれば示唆して、両者の心がまえもきっちりさせておきたいと思いますので、次のようなことを御質問を申し上げようと思っております。山鹿鉄道の方は御承知のように四十年ばかりの歴史を持つものでございまして、植木付近の土砂の埋没による水害は惨状目をおおうと申しましょうか、実に悲惨なものでございまして、約九割近くこの点に損害を受けておるわけでございます。ところがここの鉄道は地方産業開発のために非常な重要な役割を持っておりますので、地方の町村会が議決をして町村長が株主になっておるというような特殊の形態を備えておりますので、これの復旧いかんということは、この地方の町村には非常に大きな関心が持たれておるものでございます。これに対して今後どういう処置を恒久並びに緊急においてとろうとされておりますかということが一つ。もう一つは島原鉄道でございますが、これは諫早から島原にかけて百三十カ所の風水害による損害を受けておりまして、実に二億数千万円にわたる損害だと一応算定されておるわけでございます。これも御承知のようにやはり町村会の決議は経ておりませんけれども、地方産業の重要な役割を果しておりましたために、町村長が大部分この株主になっておるようでございます。ことにここは長崎県の穀倉でございまして、全国のアルコールの切りぼしの三〇%はここで生産をいたしておるようでございます。なお酪農地帯でございますために特殊な関係もありますし、災害を受けますと、地方の人たちがほとんど奉仕的に復旧に努力をいたしまして、来月の一日に全線開通の運びになるとされておりましたものが、すでに先日十八日をもって全線開通を見たような状態でございます。けれども一体この損害をどうして補てんしていっているかと見てみますと、島原鉄道は十八銀行と親和銀行から約五千万円の融資を受けまして、来年の三月三十一日をもって期限がくるようになっております。地方のために死力を尽して復興に努力いたしましたが、いずれは三月がくれば返済をしなければならないという鉄壁にぶつかって参るわけでございます。こういう二つの問題につきまして、損害その他の面では恒久的に救済の道が開かれておりますが、風水害などに対しましては二十八年にできました時限立法があるばかりでございまして、こういう場合には早急の間に合わない。これから法律を通して救済に向うというようなことになるわけでごさいますが、しかもこういうことは近年毎年々々繰り返されておることでございまして、九州ではもうすでに世間から台風銀座とあだ名をつけられているほど、ふだんのことになってしまっております。以上のような点につきまして、臨時、恒久両策について政府が何らかのまとまった考え方をお持ちでございましたら、この際伺っておきたいと考えます。
  67. 中村三之丞

    中村国務大臣 地方鉄道が災害を受けました場合、これを復旧、復興するにつきましては、たとえば島原鉄道のごときは、十八銀行その他を通じて五千万円の融資をまずあっせんをいたしました。しかしながらこれはどうせ返さなければならぬのであります。また今後の復旧も必要でございますから、これらは吉田内閣の当時に先例もございますから、これらに対して国家が補助を与えるという法律を提出いたしたいと考えております。
  68. 眞鍋儀十

    眞鍋委員 もし吉田内閣当時にできた法律を時限立法として提出しようというお気持であるならば、それは当該事業の全部または一部を休止し、または廃止すべき事態に立ち至った場合、これが発動するのでございますが、すでにもう島原鉄道なり山鹿鉄道は、自己資金その他借り入れによって一応全線は開通してしまったのでございます。そういたしますと、どういう解釈をもってこの同じような条文を解釈してもらえますか。あるいは二十八年に出しました時限立法とは内容も変ったもので今度は立法されるわけでございますか。あるいは前のような法律で、すでに全線開通したものに対し、休止または廃止すべき事態に立ち至ったものとしての拡張解釈をお持ちになるのでございますか、その点を一つ伺っておきます。
  69. 權田良彦

    ○權田説明員 私からお答え申し上げます。今御指摘の通りに、災害を受けました地方鉄道、軌道を復旧いたしますのに、これに対して何らかの格好で国が大きな援助を与えるという法律の道が現在御指摘のようにございません。昭和二十八年の六月及び七月のあの大水害、それから八月、九月の風水害、このときは臨時立法をもちまして、今御指摘のように当該事業の全部または一部を休止し、または廃止すべき事態に立ち至った場合に、復旧に要する資金の五分の一に相当する金額を補助することができるという臨時立法を行いまして、これは当時この大水害、風水害のために、社会、産業各面にわたる特別措置を講じました一連の措置としてこれをいたしたわけであります。これは時限立法でございますので、この水害、風水害の始末だけでこの法律は終ったわけであります。ただいまのところでは過般のような大きな災害が起りましたときに、実は何らの立法手段をも行政府は持っておらぬのでございまして、やむを得ず今大臣からお話し申し上げましたように事実行為として資金あっせんに入りまして、島原鉄道については五千万円ばかりの資金あっせんをして、今お話のような状態で開通に至ったのでございます。しかしこれもあとで返さなければなりませんし、このままいけば、この受けた被害が非常に両者とも大きいものでございますから、将来とも立ち行かないおそれのあることは明白だと思うのであります。実はただいま事務当局としてほとんど立案を完了いたしておりますのは、これは公共的な、公益的な事業でございまして、やはりこういう異常な災害にあいましたときには、その性格から何らか国の援助を与えるべきものではないか、他の公共事業にはいずれもこういうものに対する国の援助の法規が整備されておるのでございまして、ひとり交通事業にこういう道がないことは遺憾でございますので、この際こういう時限的な、臨時的なものでなしに、恒久的なものといたしまして、大災害にあいました地方鉄道軌道に何らかの補助を与えるということをぜひこの際やりたい。この法案は近くまた整備をいたしますれば、私どもとしてはでき得べくんば来たるべき通常国会に御提出申し上げまして、ぜひ国会の御賛同を得たいと思いますが、今考えておりますのは従いまして前回の時限法とは違って恒久立法である、また災害を受けた場合には、災害の規模によりましてこれに相当の国の援助を与え得ること、その援助も前回のは時限法でございましたので、立ち直りの誘い水と申しますか、一部救援の手を伸ばせば、多分に民間資金によって立ち直りがきくという趣旨でやっておりますので、それでは足りない面もございますから、今回は他の公共事業並みの立ち直りの援助をさせる。大体二分の一ないし三分の二程度の原形復旧に要する費用の補助ということを目途に、実は詳細な条文に今入っておるわけであります。なおさらに災害を受けた結果、いろいろ将来の交通事業としての行き方にまた困難な点も起きますので、あわせて全体の企業を診断し、今後の更生措置について適当な勧告をし得るように、こういう条項をも加えまして、いわば完備された姿の災害に対する援助の法律というものにしてぜひ御提出いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  70. 眞鍋儀十

    眞鍋委員 ただいまの御答弁はよくわかりましたが、時限立法でなしに恒久立法としての御提出を予定されておると解釈してよろしゅうございますか。
  71. 權田良彦

    ○權田説明員 そうです。
  72. 池田禎治

    池田(禎)委員 今の眞鍋委員の質問に関連したことで、山鹿温泉鉄道というのがあります。これについてのお答えはあったでしょうか。なければ、これは今全線開通できておらないのです。どうにもならない。しかもその構成というものは一私鉄ではなくて、地方町村長がその株を持って、ほんとうに公共のためにやっておるのです。せめて復旧ができない場合には、臨時バスを許可してもらいたいということの申請も出ているやに聞いておりますので、そういう点については何か御配慮をいただいておるでしょうか、まだ答える段階に至っていないのでしょうか。
  73. 權田良彦

    ○權田説明員 お答え申し上げます。今私が申し上げました法律の対象としては、すべてこれに含まれ得るように考慮いたしておるのでございます。御指摘の山鹿鉄道につきましては今お話の通りに、上熊本寄りの方の部分が非常に災害がはなはだしゅうございまして、これの本復旧が非常に困難をきわめております。しかし一応山鹿温泉から植木町に至ります間、これは幸いと申しますか、比較的被害もその他の部分に比べて少くございましたので、この間の復旧は今着々として運んでおるようでございます。従いましてこの全線の開通ということは、その根元の方の上熊本寄りが非常にこわれておりますので、これにまだいろいろ問題がございまして、従ってその交通機能が途絶しておりますので、今御指摘のようにバスでもってこれに一時臨時に鉄道の身がわりと申しますか、似たような機能を果させるということで、臨時のバスの免許の出願がございます。これは現地の福岡陸運局ですでにしかるべき回数を免許して、バスは代用として動いております。今私どもが考えております恒久立法では、このいずれもがまた今後災害を受けました地方鉄道軌道が、この対象になり得るように配慮を加えておる次第でございます。
  74. 眞鍋儀十

    眞鍋委員 今池田君から御質問があったのですが、そのバスの問題、これは現地では昭和三十年の六月二十六日にバスの事業免許を申請いたしておるということですが、もうすでに相当の年月を経過いたしております。どこでとまっておりますか、不許可とも許可とも御返事がないというわけです。山鹿鉄道鉄道自体はこのままではどうやっていきましても、採算がとれないというのが常識のようでございます。そこでこの鉄道の援助をして復旧をさせるということのほかに、バスを免許することによって、鉄道の赤字をカバーしていくという案を立ててやらなければ、鉄道だけではローカルのいつも安いものだけを量を多く運んでおりますので、ちょっと見通しがつかないようでございます。そこで何がガンになっておるかと申しますと、ここには九州産業交通という、日本全国でも有数な一千台以上のバスを持っておる路線が一つ許可になっておるわけでございます。それがためにおそらく昭和三十年に申請いたしましたものが、いまだに却下にもならなければ許可にもならぬというような状態になっておるのだろうと思います。けれども山鹿鉄道がもしバスを五台でも十台でも、要するに赤字のカバーができるくらいの台数において許可されるということになれば、一千台以上の台数を持っております産交に対しても大した影響もなかろうし、また山鹿自体もこれが将来に対する一つの安定の方法になるとすれば、何か両方の話し合いによって打開の道がつくのではないかと思います。あまり地方のことでおわかりになるまいかと思いますが、もしそういう面についての監督官庁としての御意見を聞かしていただければけっこうでございます。
  75. 權田良彦

    ○權田説明員 その問題は自動車局の方でございますので、今後どういうふうに持って参りますかについては私お答えできませんが、事情は存じております。今お話のようにこの山鹿温泉鉄道からかねてバスの免許の出願がきております。現に山鹿温泉鉄道は軌道のほかに遊覧自動車でございます貸し切りをやっております。バスはやっておりません。この本免許の申請の問題は、すでに免許申請が御指摘のように出ております。これは今度の災害には関係がないわけでございます。その以前から出ておる。当該地方には御承知のように競争事業もございまして、その関係のいろいろな問題で目下運輸審当局で審議中でございます。従いましてまだ懸案事項となっております。私が先ほど申し上げましたのはそれとは関係なく、この軌道本来がとまってしまいましたので、その代用と申しますか、その代行輸送の軌道の客を運びますバス道路が幸い線路沿いにございまして、これは本免許を申請しております。道路とは一部異なるはずでございます。そこにちょうど鉄道輸送を緊急代用するバスというものを持っておりますので、その自動車を回しまして鉄道の回数に見合うものを山鹿から直通で入れておる。この臨時免許がもう済んで運営しておるはずである、こうお答え申し上げます。本免許の方は災害以前からの問題で、今懸案事項として審議中のはずでございます。
  76. 池田禎治

    池田(禎)委員 鉄道監督局長の御答弁としてはやむを得ないと思いますから、明日の委員会には自動車局長もおいで願って、これは関連しての事項ですから、明日の委員会に当然並行して審議できるようにお取り計らいを願います。
  77. 淵上房太郎

    淵上委員長 濱野君。
  78. 濱野清吾

    ○濱野委員 自動車局の関係の人はおらないようですが、文書課長からお伝、え願うことにして伺います。  最近政府は綱紀の粛正を断行しようとしております。政府は心ある国民のひんしゅくを買っていた綱紀の弛緩が。法治国家として本然の姿に戻ることは、何人といえども反対はなかろうかと思います。いよいよ政府自体がみずからこれを行わんとすることは、そういう意味においてまことにけっこうなことであろうと考えます。もろちん国民はこれを歓迎するところであります。  そこで私はこの際、運輸省の持つ大きな権限のうちで、最も大事な事業免許に関して調査し研究する必要がございますので、資料の提出方について運輸当局の御協力を願いたいと思うのであります。すなわち、とかく世の中で議論になりやすい道路運送法、通運事業法の運用についての問題であります。ここで問題点となりますのは、免許基準の判断でございます。言うまでもなく、この判断は事業免許の申請者にとってみれば、免許されるかあるいは免許されないかの分れるところでありまして、非常に大事なことであります。国民の側から見ますれば、交通輸送の文化の恩典に浴するかいなかの問題でありますから、これもまた重大といわなければなりません。同時にまた役所としては、その責任を一切国民に対して背負って、そして行政しなければならないでありましょうから、なかなか容易なことではなかろうかと思います。いやしくも免許基準の判定を誤まれば、役所は法の威信を傷つけるということになります。同時にまた公益はそのことによって阻害され、申請者の利益は役所によって踏みにじられる結果が生ずることに相なります。そのためにこそ、この国及び国民に重大な利害関係のある処分に対しては、運輸審議会を設けて公正、厳重な審査のもとに、正しい行政の運用をしてきたわけであります。世間ではこの用意周到なもとに今まで処分された免許あるいは却下等に対してはかなり信頼感を持っておったことは、皆さん御承知の通りであります。しかるに近時世論は、かつてわれわれが信頼して参ったこととは全く相反対の方向に向っていきつつあるようでございます。こうした傾向は決して好ましきものではありません。まことに困ったことであると私どもは考えております。従いまして私たち議員は、こうした世論に対してその原因を究明しておく必要があろうかと存じます。なお役所としてもその権威のために、議会を通じ国民に解明して世論にこたえておくことが、ぜひとも必要であろうかと考える次第であります。  以上の理由によりまして、私はこの際、特に運輸当局が自分の権限でやっている道路運送法、通運事業法等の免許基準の判断並びに運営の実態を知り得たいのでございます。すなわち、当局はこの法の運用については、いろいろな参考資料も利用していることであろうと存じます。それは思いつきや入りみだりな請託によって行政処分がされることは許されないからでございます。そのための資料、たとえば法第六米第一項第二号適用の判断に基礎となるべき全国乗車効率の指数のごときもの、その算定方式などを含めてその基礎参考資料を当委員会に提出していただきたいと存じます。また法第六条第一項第四号適用の際、「当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するもの」の判定などについては、ずいぶんむずかしいものであろうと思われますが、資力のありやいなや、信用のありやいなや、知識経験あるいは生産意欲等のありやいなや、これはただばく然と広い意味考えるなどというような従来の考え方であったとするならば、御都合主義はそれこそ横行濶歩するようになろうかと存じます。これらの実際上の基準に目安をつけるところの基礎参考資料が役所にはあるはずでございます。ことにこの事業は人の生命財産を預かって、的確安全な業務を運営しなければならない仕事でありますから、常に業務の第一線で責任を負う運転者やその他の職員に対する給与の遅配などがあるようなことがあってはならないはずであります。従いましてそれらの保障の配慮も兼ねていることでありましょうから、この判定の限界はまことに大切なことであろうと存じます。ゆえにその限界判定の基礎参考資料を御提出願いたいと存じます。  さらにこの際、従来運輸大臣が処分した免許事業の実態を知り、世論に報いるために、次の資料の提出を求めます。奈良県の奈良観光株式会社のバス十五両の申請に関する申請書及び審議会の答申書の写し、これが一点、それから愛媛県の盛雲汽船株式会社の申請した一般乗合旅客自動車運送事業経営免許申請の申請書の写し、さらにまたこの事案について審査した審議会の大臣への答申書等を、御迷惑ながら一つ御提出を願いたいと存じます。以上であります。
  79. 淵上房太郎

    淵上委員長 それでは明日の午前十時より開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会