○
朝田説明員 それではこれから私から
昭和三十三年度
運輸省重要施策要綱の概要につきまして御
説明を申し上げます。お手元に差し上げてございまする
重要施策要綱の刷りものの順を追って、御
説明申し上げたいと思います。ただ最初にお断わり申し上げておきたいことは、この
重要施策要綱を
運輸省といたしまして、さしあたりこうした形でただいま
政務次官が申し上げましたような
八つの柱を立てて立案いたしたのでございますが、この
要綱それ自体につきましても、あるいはこの
施策の
実施につきましても、諸
先生方の御高説を拝聴いたしまして、その御指示に従ってわれわれも
実施の万全を期して参りたい、こう考えておるような次第でございます。
まず第一に
国際収支の
改善でございまするが、
外航海運の
整備拡充ということと、その次に
国際航空の
整備強化、第三に
観光事業の
振興、こういう問題を取り上げておるのでございまして、これがわが
運輸省が
所管いたしておりまする
貿易外収支に大きく貢献をいたしておりまするイン
ヴィジブルの部分でございます。四の
船舶及び
鉄道車両の
輸出振興につきましては、これはむしろ
商品貿易に属することでありますけれども、わが
運輸省の
所管に属する問題といたしまして、
ヴィジブルにかかわる
輸出振興の問題であります。第五番目に、
貿易外とあわせて、それに続いて
ヴィジブルの
車両輸出あるいは
船舶輸出に関連を持ちまするところの、最近起って参りました新しい
技術輸出の
促進、こういう問題も取り上げておるのでございます。
まず第一の
外航海運の
整備拡充でございますが、御
承知のように最近の
国際収支の
状況が非常に悪くなって参りまして、その中で
海運関係だけを考えてみますと、いわゆる
為替収支の
バランスでなしに、
実質国際収支、われわれが
IMF方式と称しておりまするところの実質の
国際収支の
バランスを
海運関係についてながめてみますと、三十一年度において二億五千万ドルの
支払い超過になっておる。こういう現状からいたしまして、依然として
日本が
海運サービスにおきまする
外国からの
輸入国になっておる。こういう
状態でありますので、最近の
国際収支の
状況とも考え合せまして、引き続き
外航船舶を
計画的に
拡充して参らなければならぬ、こういうふうに考えるのでございます。そこで積み
取り比率につきましても、三十一年度におきましては、
輸出が
日本船で積み取りましたものが四九・七%、輸入が四七%、こういうことで依然として五〇%以下にあるというような
状況でありますので、
貿易規模と均衡のとれた
船腹拡充を継続しなければならぬというふうに考えるのでございます。そこでこういった
海運収支の
実質バランスをできるだけ早く
改善いたしますために、われわれは大体年間五十万トンずつ作っていかなければならぬというふうに考えておるのでありまして、そのうち
計画造船を幾らにするか、こういったことにつきましては、現在
海運合理化推進審議会に諮問をいたしまして、その答申を求めておるような次第であります。そこで
船腹拡充計画に引き続きまして、この場合に
財政資金を中心といたしまする
計画造船は根本でありまするが、自主的に
企業の
充実を基礎といたしまして、
自己資金によりまする
建造も
促進をして参らなければならぬということを後段に書いておるのでございます。とのために
低利長期の融資を可能にいたしまするような
資金源を得る
態勢をどうしても恒久的に築き上げなければならぬということで、私どもは西独におきまして
経済再建の住宅と
商船隊の
建造にとられましたような
所得税法のいわゆる七D条、こういう一つの
制度がございますので、そういったものにつきましても今検討を進めておるような次第でございます。
その次の「
海運企業の
国際競争力の
強化」でございますが、そこにありますように「
海運企業の基盤の確立による
国際競争力の
強化を図るため、
企業の
内部蓄積を増大し、あわせて
長期低利の
造船融資を
確保する目的をもって税制上の
措置その他
所要の
措置を講ずる。」こういうことで、先ほど申し上げましたような西独の
経済再建の一方策につきましても、
わが国においてこれが適用できるかどうかということを、ただいま検討いたしておるようなわけでございます。
企業の
内部蓄積の増大につきましては、種々
方法もございましょうけれども、
建造留保金制度、こういったものにつきましても検討を進めておるわけであります。その次に「
造船用鋼材の
価格を
国際水準に近ずけるため、材質、
寸法等に対する
特殊規格料の引下げに必要な特別の
措置を講ずる等新
造船船価の
合理的低減を図る。」こういうことを書いておりまするが、この問題はきわめて重要でございまして、最近におきまする
造船界の
輸出船に対する
努力は実を結びまして、非常に大きな実績を上げておるのでございます。三十一年度におきまして、三億一千一百万ドルという大きな
外貨を獲得しておるという
状況でありまするが、なぜ
日本の
造船界が、終戦後壊滅の
状態から脱却いたしまして、世界一の
造船国の実績を築き上げたか、こういうことを考えてみますると、内部におきまする
企業努力、あるいは技術の革新、こういったものが
パラレルに調子よく今日まで参ったということも事実であります。ただその際に、そういった
船価の非常に大きな部分を占めておりまする鋼材というものが、今後の
造船受注の必ずしも楽観を許さない
状況と考え合せてみますと、なおざりにできない大きな問題を含んでおるのでございます。その点につきましては、今まで
建造コストの低減をいろいろな
方法でやって参りましたけれども、
国際的に見て割高であり、しかもわれわれから考えますと非常に不
合理だと考えられまする
造船用の
特殊規格割増料といった
制度をなくす。
国際水準から見て非常に高い
割増料というものを取り払って、従来からの殷盛をきわめました
造船界の
状態をさらに向上させたい、こういうふうに考えるのでありまして、英国と比べてみますと、べ
ース価格において一万九千二百円ばかりすでに高いのであります。なおその上に
造船用として特殊の
割増料を取られる。あるいは材質の
割増料あるいは寸法の
割増料、こういったものを平均いたしてみますと、
トン当り八千四百円ばかり高くなる。べ
ース価格一万九千二百円プラス八千四百円高くなっておる、こういう
状態でありまするので、こういったべ
ース価格の問題につきましては
鋼材価格一般の問題でありまするけれども、今申し上げましたような
造船だけが特に
割増料を取られておるといったような不
合理な
制度を排除したい。その
方法といたしまして、ここにあげておりまするような特別な
措置、ということは具体的に申し上げますと、今申し上げた
割増価格と
国際価格の差を
補助するという形でいきたいということで、予算にも要求をいたしておるようなわけであります。
その次の「
日本船舶の
効率的利用を
確保するため、
貿易と
海運との緊密な
連絡調整を図るとともに、三
国間輸送の
促進のために税制上の
措置その他
所要の
措置を講ずる。」こういうことを書いておりまするが、最近マーケットもだいぶ悪くなって参りました。その際に
日本船舶の全幅的な活用をはかることは申すまでもないのでありますが、ここに特に取り上げておりますることは、米国の
輸出入銀行からの借款あるいはその他の問題で
米国船による積み
取り条項、こういったものもございまするので、
日本船をできるだけ活用ができるような折衝をその際にもすべきである。また三
国間輸送も積極的な
外貨の獲得になりまするので、そういった
意味におきまする現在の水揚げの三%の
輸出特別補助率の引き上げを、三
国間輸送について特に強調いたしたいというふうに考えておるのであります。
その次の「公正な
競争の
確保」でありますが、「運賃の安定を図り、
日本海運の健全な
発展を期するため、航路の調整その他公正な
競争の
確保に必要な
措置を講ずる。」ということをあげておりまするが、これは最近ただいま申し上げましたような
海運事情でもありまするので、
不定期船から
定期航路の中に割り込んできて、
定期航路の秩序の安定が乱されるというような事態も起って参りまするので、その際に
国際的な協調ということと、
日本船同士の過当な
競争というものをどうしても排除して参らなければならぬということで、ここで万全の
行政指導を行なっていきたいという
意味であります。
その次に「
移民船及び
外航客船の
建造促進」であります。
移民船につきましては、御
承知のように現在四隻あるのでありまして、十三次
計画造船におきましてさらに一隻
建造をすることにいたしておりまするが、来年度あたりの
移民輸送力につきましては、大体今申し上げました五隻の船で七千四百五十人ばかり年間輸送できるということになっておるのであります。そのほかに
オランダのロイヤル・インター・オーションというものが、やはり五隻ばかりの船で二千七百人の
輸送力を持っております。従いまして
日本側の
輸送力と
オランダの
移民船の
輸送力と合せまして一万百五十人の
輸送力があるわけであります。ところが来年度の
移民の見通しは、まだ最終的に確定はいたしておりませんが、大体一万三千三百人ぐらい輸送しなければならぬというようなことに聞いておるのでありまするが、これはまだ確定はいたしておりません数字であります。しかしこうなって参りますと、
移住国策というものが、相当
推進されて参りますると、それに即応しての
輸送力というものにつきまして、やはり。
パラレルに
増強して参らなければならぬ。ところが現在のような
状態で参りますと、貨物が、南米その他からそれに対応するだけの荷動きがない。またどんどん作って参りますと、私
企業においてすでに限界に来ておるというようなことで、
建造補助と
運航補助をこの際取り上げて、
移民におきまする隘路を打開しなければならぬとここで考えておるのであります。その次の「
外航客船の
建造及び運航に対して特別の
助成措置を講ずる」ということにつきましては、
移民といささかその
事情が違うのでありますけれども、
国際収支の
改善に寄与いたしますると同時に、
太平洋におきまする
客船輸送の
航権の維持あるいは
確保といった点から、こういった
客船の
建造を始めなければならぬというような考え方をここでとっておるわけであります。
その次の「
国際航空の
整備強化」でありますが、最初の「
航空路線の
拡充強化」は、現在の既存の
路線を
強化いたしますとともに、新しい有望な
国際路線を開拓していく、またたとえば現在の
バンコック線をシンガポールに延ばすとか、あるいは
北太平洋の今就航いたしております
日本航空の
路線も線数をふやして参りますとか、そういったようなことをやりまして、すでに
日本航空が発注いたしておりますDC7Cが四機、あるいはDC8Cが四機、こういった
新型機の
購入計画に即応して、幹線、新
路線の
拡充のためには膨大な
資金があわせて要るわけでございます。こういうことのためにすでに
政府は過去数年間において、毎年十億円ずつ
日本航空会社に出資して参っておるのでありますが、今後も今申し上げましたような
事情から、膨大な
資金を必要といたしますために、
政府出資を継続していく、こういうことの考えをここで明らかにしておるのであります。
そとでその次の「
航空従事者の
養成強化」でありますが、これにつきまして、今いろいろ申し上げたような
新型機の購入に
パラレルにどうしても要員を
確保していかなければならない。ところが御
承知のように
外人パイロットの給与は、
日本人の給与に比較いたしますと五倍以上もかかる。すみやかにこういったことを脱却いたしまして、自主的な
態勢に持っていかなければならぬ。そういうことのために航空大学校の
養成規模を拡大いたしまして、現在
木科生十人ばかりでやっておりますが、これを五十人ばかりに拡大していく、こういうような
計画をもって当面の需要に対処していきますとともに、
民間航空会社においても一人前の
パイロットに仕上げるためにいろいろな
養成計画を
実施しておりますが、そういった
方面においても養成を
強化いたしまして、これをあわせて
航空従事者の
確保をはかっていきたいということであります。
三番目の「
国際空港の
整備」でありますが、こういった
新型機の出現、特にジェットの出現と、
外国の航空機が非常に多くなって参りますので、羽田の
国際空港を昨年に引き続きまして
整備拡充すると同時に、伊丹の
飛行場がことしの十一月一日から返還になりますので、この
施設を
日本側で自主的に運営して参らなければならぬという事態に即応いたしまして、
関西経済界と緊密な連絡を持っております
東南アジア、あるいは
中共方面等に関連いたします
国際空港としての
整備を急速に
実施しなければならぬ。そこで現在の
滑走路に並行いたしまして、新設の一万フィートの
滑走路をここで
整備して参りたい、こういうことであります。
その次の「
観光事業の
振興」でございますが、「
海外観光宣伝の
滲透強化」ということであります。この問題につきましては、まず第一に
宣伝資料を
充実するということ、あるいは
海外宣伝事務所の増設、あるいは
海外博覧会への参加、あるいはまた
国際観光諸機関との提携をはかっていくということがこの内容になっておるのでございますが、米人がおもな
観光客の大宗を占めておりますので、従来はここに主眼を置いてやって参ったのでありますが、来年度は一応
欧州と
東南アジア——欧州はパリ、
東南アジアはバン
コックに
海外宣伝事務所を新設いたしたいということを考えておるのでございます。
国際観光協会に対する毎年度の
補助も続けて参りますけれども、今年度
補助金が御
承知のように一億四千五百万円であります。これに民間の醵出の六千万円を合せて約二億円の予算で
実施してきておるのでありますが、そういった
意味におきまして、さらにこの
方面の
助成措置も
推進いたしますとともに、近隣諸邦との
協力態勢を
促進する。先ほど申し上げましたように、
宣伝資料の
相互交換をやりますとか、あるいは
国際諸機関との連携を
強化いたしまして、
宣伝の
浸透強化をはかっていきたいということであります。
その次の「
観光諸
施設の
整備拡充」ということでありますが、「
主要観光地域における
外客向
宿泊施設、ユース・ホステルその他の
観光施設の
整備拡充を図るため、
資金の
確保に努めるとともに、
法的措置その他
所要の
助成措置を講ずる。」ということを書いてございますが、これは具体的に何を言っているのかといいますと、現在の
国際観光ホテル整備法を改正いたしまして、
宿泊施設の新築あるいは増築といったものに対しまする税の
減免措置をもって助成をしていきたいということを言っておるのであります。
その次の「新
観光資源の
開発、紹介」であります。「
外客の
滞在期間の延長を目途とし、未
開発の
観光地、
観光資源の
開発、紹介を
推進するとともに、
わが国の
固有産業、
代表的近代産業の諸
施設を広く
観光外客に開放し、その
製作工程等を視察せしめる等の
便宜供与体制を
整備し、
産業観光(
テクニカル・ツーリズム)の
促進を図る。」というのであります。この
テクニカル・ツーリズムは御
承知のように
欧州諸国で非常に成功をおさめているのであります。
産業と
観光とが直結したような形で行われているのでありまして、
わが国におきましても、非常な魅力のある
観光地、たとえば真珠のごときものにつきましても、そういった
製作工程もあわせて視察させて、
産業といいますか、あるいは
貿易と
観光との直結をはかっていきたい、あるいは
観光の
宣伝方法というものをここで
実施していきたいということで、今具体的な
実施計画も寄り寄り進めているような次第であります。
最後に「
外客接遇の
充実改善」でありますが、毎回われわれが主張しておることに
外国人の
出入国手続の
簡素化、それから
通貨管理の
合理化というようなことがありますが、すでに現在では十三カ国との間におきまして
相互主義によっていわゆる査証、ビザを廃止しておるのでありますが、先ほど申し上げましたように、
観光客の大宗でありまする
米国人あるいは
カナダ人といったものにつきましては、なかなかそう簡単に参らないのでありますけれども、
欧州ですでにやっておりまするように、もう一方的にこの査証を免除するという
措置に出るべきだということであります。
通貨管理の
合理化につきましては、
外客が一度
日本の
国内に入って参りますと、再び出国の際に
外貨の再交換につきまして制限があるのであります。その際現在の百ドルという
制限額を撤廃あるいは緩和するというようなことであります。
旅行あっせん案内の
充実あるいは
観光教育の
普及徹底といったようなものにつきましても、業者の育成
指導あるいは旅行あっせん事業の監督を
強化することによってもぐり営業を根絶する、こういうことをはかって参りまして、旅行経費の引き下げをするというような諸般の助成
指導を
推進しようというのであります。