運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1957-07-03 第26回国会 衆議院 運輸委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年七月三日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 淵上房太郎君    理事 今松 治郎君 理事 畠山 鶴吉君    理事 松山 義雄君 理事 山本 友一君       有田 喜一君    生田 宏一君       關谷 勝利君    永山 忠則君       濱野 清吾君    原 健三郎君       堀内 一雄君    眞鍋 儀十君       池田 禎治君    中居英太郎君       松原喜之次君    森本  靖君       山口丈太郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君  委員外出席者         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君         運輸事務官         (自動車局長) 山内 公猷君         運輸事務官         (自動車局業務         部旅客課長)  黒住 忠行君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     吾孫子 豐君         日本国有鉄道参         事         (総裁室調査         役)      武内 愼一君         参  考  人         (広島タクシー         株式会社取締役         社長)     小野 正夫君         参  考  人         (広島タクシー         株式会社労働組         合執行委員長) 仲山 俊行君         参  考  人         (広島タクシー         株式会社従業員         組合委員長)  新田 重夫君         参  考  人         (広島県ハイヤ         ー・タクシー事         業刷新連盟委員         長)      日原 明美君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 五月二十七日  委員久保田豊辞任につき、その補欠として松  岡駒吉君が議長指名委員に選任された。 六月十一日  委員森本靖辞任につき、その補欠として上林  與市郎君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員上林與市郎辞任につき、その補欠として  森木靖君が議長指名委員に選任された。 七月三日  委員岡崎英城辞任につき、その補欠として永  山忠則君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国鉄の経営等に関する件  広島タクシー名義貸問題に関する件     —————————————
  2. 淵上房太郎

    淵上委員長 ただいまより運輸委員会を開会いたします。  陸運に関して調査を進めますが、最初に広島タクシー名義貸し問題について審査を行います。道路運送事業あり方につきましては、当委員会といたしまして種々の角度より論議を進めている次第でありますが、本日御出席をいただいている参考人方々会社における名義貸し問題は、ハイヤータクシー事業の運営、そのあり方に大きな問題を提起しているものと考えられますので、本日は各参考人よりその実情及び意見を聴取して、委員会審査参考にいたしたいと存ずる次第であります。  なおこの際委員各位に御了承を求めますが、閉会中緊急の場合における参考人の選定につきましては委員長に御一任いただきましたので、配付してある名簿のごとく選定いたしました次第であります。御了承願います。  この際委員会を代表して参考人各位にごあいさつ申し上げます。本日は御多忙のところ遠路本委員会調査のために御出席をいただきまして、本委員会の審議に御協力いただきますことはまことにありがたく存じます。どうぞ忌憚のない御意見を御開陳願いたい次第であります。  なお御意見の御開陳は十分程度にお願いいたしたいと思うのであります。そのあとで委員各位の御質疑があれば御質疑を願いまして、御説明の補足をお願いいたしたいと存じます。参考人の発言の順序等につきましては委員長に御一任を願いたいと存じます。まず小野正夫君。
  3. 小野正夫

    小野参考人 私は現在二百五十三両をもってタクシー業を営んでおりますが、名義貸しということは決してないと思っております。その理由といたしましては、各出先の官庁当地にありまして、その監査を受け、絶えず監督していただいておりますので、自分個人といたしましては名義貸し権利貸しという問題は決してないと信じておる次第であります。この参考までの書類をよろしかったら委員長のもとへ差し出します。  詳しい実情を話すと長くなりますが、広島が原爆で交通機関が全然ない時分から私は輸送関係しております。ほかの土地と非常に違いまして、道路も非常に悪い。この悪い道路へ持っていって新しく市を作り直すといっておりますので、都市計画によりまして道路を全部新しくし直しておりますので、ガス、水道、下水装置、こういうので方々道路が悪くなっております。それで木炭車から更生車更生車から三輪車に移りまして、今日四輪車に変っておるのであります。それで当地では最近は輸送機関が非常に一般よりも多いと思うのでありますが、あの当時といたしましてはお客様の足になる輸送というものはほとんどなかったと思います。そこで運転手さんも引揚者が非常に多い、それから新しく学校で養成した従事員が非常に多かったと思います。運転手さん自体も、他の土地より訓練されていないために、いろいろな疑念を持たれたようなこともあるのでありますが、それにつきまして運転手さんと一緒におりまして、そうして一生懸命に働いてもらったならば、手形決済会社をどうしても退社しなければならない、こういうような実情があった場合は、その自動車を時価に評価してそして退職金としてやる、そういうような会社内部におきましての雇用契約を結んでおったのでありますので、これを取り上げられて名義貸しというような問題の非難を受けておりました。陸運当局からたびたび監査を受けまして、そうして現在はそういうことは一切ないけれども、以前に多少のそういう懸念があるように思うから、一応一週間の使用停止処分をやるから、その中で改善をしろ、こういうような当局からの指令をいただいておりますので、その方向に向って従業員一同全力を尽して改善をいたしておる次第であります。以上の点は大体詳しいことは今社長の話というのを八十四号まで出しておるので、その社長の話八十四号までは何かの参考になると思いまして持って参ったのですけれども、広島市における市内全部の役所にも一応その社長の話を出しております。そして自分が改めることがあればその方へ全部改めたいと思いますので御一読下さいという手紙をつけまして、その社長の話を全部の役所に出しております。これにつきましてはどこからも今までどうせいという御意見を承わっておりません。私は字の読み書きが一切できませんので、いろいろその以前から役所の定年になった方が事務上に従事しておられます。その社長の話を作るにいたしましても、現在朝の四時半から五時まで労働関係のニュースその他のことをいろいろ学識者大学あたり先生方が御講演なさる、また家庭訪問がある、こういうようなことを資料にいたしまして、そしてメモをとっておりまして、そして二十五日に、みな持ってきてその社長の話をまとめて、役所の方へ出したような次第であります。  以上いろいろ申し上げましたが、あくまでも運送法に定められたように、当局指示がありさえすれば、いかようにも悪いところがあればどんどん直していく方針であります。また労務関係につきましても、労働基準監督署その他関係役所から絶えず、運転者を雇い入れましても届を出しておりますし、悪いところは注意され、また監査されて一応整っております。簡単でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  4. 淵上房太郎

  5. 仲山俊行

    仲山参考人 私たちはまず会社入社する条件といたしまして、車両価格頭金料金メーター器、あるいは各種の保険金一年分の現金と社長に対する謝礼金身元保証金、こういう金額総額十八万五千円を納入して入社資格を得、車主となります。これだけの金額を納入しない者は補助運転者であります。その後の車主会社との金銭的な関係は、車主会社に支払う責任金額としまして車両手形自動車保険自動車税修理費事故に伴う諸経費車主補助運転者給料会社から計上して支給されますが、その計上された金額その他会社指示による諸経費関連費、こういうものが車主会社に支払う責任金額となります。こういうような条件形態のもとで、去る五月十四日に陸運局から五十車両に対して一週間の営業停止が参りました。このことは、停止期間中の稼働収入の損害が車主にありますので、私たちはこれを名義貸しのいわゆる三十六条の違反の処罰をされたというように確認をいたしまして、会社に対しては直ちに名義貸し形態から直営形態に移行する保証として、権利金かあるいは慰労金という名目で保証金車両価格買い上げを要求したわけです。ところが会社から、自分の車を買い上げることはできないというふうな答弁がなされましたので、陸運局へこの問題を追及したわけです。どういうわけで五十車両営業停止がなされたか。とれに対する陸運局答弁は、名義貸し疑いがあった、あるいは過去にそのような疑いがあった、現在はそうでない。従って、われわれは過去と現在はどこで境をしたかというように陸運局を追及いたしたのでありますが、これが今日まで非常に問題が紛糾をした原因でありまして、特にこの一週間の業務停止に付加されまして、九項目の改善命令なるものが出されたわけであります。この改善命令内容の実態を改善するのでなくて、労務管理として当然なされなければならないような改善命令であるがために、われわれはこの改善命令を、なぜ名義貸しから直営内容の変更を伴うような改善命令を出さないかということを、陸運局に追及したわけであります。これらが原因となって今日までいろいろ問題が紛糾をいたしましたが、陸運局のあっせんによりまして会社組合が、この買い上げとまたその慰労金につきましては、話し合いの上で解決をするように今日まで努力を続けてきたわけであります。大体以上が私の証すべき意見であります。
  6. 淵上房太郎

  7. 新田重夫

    新田参考人 私は広島タクシー株式会社従業員組合委員長でありますが、私の会社従業員が約六百名、そのうち私の方の従業員組合は約四百名でございます。  このたびの喚問は名義貸しだという問題を取り上げられているのだろうと思いますが、名義貸しといいましてもこれは見方の相違でありまして、その当時会社が、百台なり二百台の車を入れて会社はやっていけない。それで運転手となる人から約十万円ばかりの金を借りて、そしてこれを車の購入代金頭金として入れた、ただこういう状態だけをもって権利金だということは言えないと思うのであります。中には純然たる名義料を取って、そしてそれ以外にまた頭金を取って自動車購入代金としてやっている業者もあるのです。だが私の会社はそういうような名義料という純然たる、台帳に載っていない金は一文も取っていない。そういうところに見解相違がありまして、私らは名義貸しではないという気分の者が集まりまして、そして今日に至った次第であります。  また社長個人をこう言うのはなんでありますが、字の読めない非常に不幸な人でありますけれども、事業経営していく上においての信念というものは非常にりっぱな人でありまして、組合委員長としてこういうことを言うのは非常に私は言いにくいのでありますが、この際だから申し上げますけれども、非常に涙もろい人で、どんな人でも助けていく。そしてこのたびの問題が起きてからでも、第二組合の者はやめろというような条件は持たずに、とにかくいい工合に解決しようじゃないか、そしてお前らが食えなくなるようなことはしないのだからと、こういうふうな信念のもとにやってこられたのでありますから、私としては今も説明しましたように、名義貸しということは全然考えられないと思います。金銭的なことを詳しく言えばこれはきりがないのですが、私の考えはそういうふうに思っております。
  8. 淵上房太郎

  9. 日原明美

    日原参考人 私は広島ハイヤータクシー事業刷新連盟日原でございます。広島市の名義貸し問題の一般論として申し上げたいと思います。  今日の広島市のハイヤータクシー業界の混乱は全国的に見て、かつて類例のない大きなケースとして、アトム・ヒロシマの名とともに、名義貸しの悪名を天下にとどろかしたのであります。その責任監督官庁たる陸運当局の優柔不断と、長年にわたる悪政の累積と申し上げても差しつかえないのであります。すなわち当局が需給を無視して、常軌を逸した増車、新免を許可したために、実に七百一台という保有量と相なっております。これを人口比に割り当てますと、東京の六百六十四人、大阪の六百三十人をはるかにしのぐ最高比率で、五百五十人に一台という悪条件に相なっております。そのため業界は極度に疲弊し、倒産者相続き、借入金は増大し、交通事故は頻発し、全く輸送秩序は紊乱の極に達しておるのであります。また運賃面においても、名義貸し経営の特質である運賃ダンピングは依然として改まらず、今日いかに明朗化運動を声を大に叫ぶとも、笛吹けども踊らずの感が強く、このため不当競争を惹起し、正常業者経営を極度に圧迫しておるのであります。  次に広島市において営業車価数は当時すでに絶対過剰であるにもかかわらず、昨年十一月、増車理由として、免許基準にかなった優良なる会社として、広島タクシーのみに対し、業界の大多数の反対を押し切り、あえて大量二十六台の増車をしたのであります。これは不当増車と言わざるを得ないのであります。本問題の善悪は別として、監督官庁として、指導をもって任ずる陸運当局の常識を疑うものであります。特に名義貸し違反営業行為の事実歴然たる今日、この増車の根拠はなくなったのであります。しかるに今もってこれを取り消しにせざるははなはだ遺憾千万というべきであると思うのであります。  次に行政罰の件については、名義貸しという同一ケースにおいて罪の甲乙はないにもかかわらず、これが行政罰に軽重があるのは了解がいかぬのであります。私のところは十四台名義貸しにありまして、それに対しては借りた方も貸した方も同数、すなわち二十八台の営業停止を受け、さらに十日の期限が来ても改善できない場合には十日間のまた追い打ちをかけ、それでもできない場合には免許取り消しというきつい達しがあったのであります。今回当局が公表した広島タクシー行政罰は、百五十台という名義貸しに対し、わずかに借りた方のみに対して五十台七日間の営業停止のみで、会社側には何ら罰がないのであります。しか本現在に至るも名義貸し違反をそのまま改善するところなく野放しの状態にあることは、あまりにも不公平な当局行政措置に驚くものであります。公平であるべきはずの当局の処置としてはなはだ片手落ちであり、われわれと広島タクシーとの処分に、あまりにも隔たりのあるのに驚くのであります。当刷新連盟名義貸し問題に対し国会の運輸委員会問題化を頂点として、本問題がすみやかに正常化して、真に道路運送法に基く経営改善をはかり、業界明朗化健全化を期待するものであります。御清聴ありがとうございました。
  10. 淵上房太郎

    淵上委員長 参考人に対して御質問ありますか。——山口丈太郎君。
  11. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 刷新連盟日原さんにお尋ねいたします。今公述を聞いておりますと、名義貸し営業をやっている会社を正常な経営形態に戻すために行政罰を加えられた場合がある。その会社取扱いと問題の広島タクシーの歴然たる名義貸しに対する行政罰取扱いとが、著しく異なっている。こういうことを公述されたのでありますが、広島タクシーが何か不公平な、特別に恩恵のある待遇を受けている、言いかえますとこういう公述になるわけでありますが、もう少し具体的に・広島タクシー内部名義貸しであるという確証のある具体的な見解がここで発表できれば、一つその調査に基いて発表していただきたい。
  12. 日原明美

    日原参考人 今お話がございましたのは、広島タクシー名義貸しの具体的な事実と解釈してよろしゅうございますか。——これは先般平出自動車部長会社側労組の、これは新聞記事によるものでありますが、その内容を見ますと、車主の所有する自動車会社側に買ってくれ、こういうことがそもそもその名義貸し一つ理由ではないか、そうすると会社の中に車主がある、補助運転手があるというような言葉自体においても、非常にそうした問題があるのではないか。それと地労委に提出した労組闘争宣言、これは交通新報に載っておりますが、実力闘争に入った広タクの闘争宣言を見ましても、明らかにこうした事実が認められるのであります。
  13. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 刷新連盟がみずからの業界刷新するという名義で、その団体を作られていると承知いたしております。そうして業界刷新に乗り出される限りには、やはり刷新連盟自体が、その広島タクシーに限らず、広島市内における自動車業界刷新のためには、みずから進んで各社の具体的な事例内容等調査せられて、そうしてお互いに自己反省すべきものは自己反省をやる、あるいはまた当局に対してその不公正な取扱い方を直すための陳情または要請等をやる、そのようにしてほんとうの業界刷新を行われるとしたならば、みずからその内容は自主的に調査せられて、いま少し具体的な事例と証拠に基いて私はこの行動をとらるべきではないかと思うのでありまして、そういう意味においていま少し自主的な調査をなさった結果があるのではないかと思いますが、そういう点はいかがですか。
  14. 日原明美

    日原参考人 今の御質問に答えますと、実際面における具体的な例証といたしましては、当局及び会社労組会談記録、こういうものに入っておりますわけで、会社内部に立ち至りましてこれというような確証はないのでございます。
  15. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 広島タクシー会社側に尋ねますが、私先般広島に参りましてお目にかかりましたが、その内容については私も及ぶ限り調査をいたしまして、その具体的な面については、ただいま刷新連盟の申されるよりもなお詳細に調査をいたしております。従ってその調査の中には、少くとも名義貸しと断定し得るもの、名義貸しと誤解せられるような内容を持っておるものはたくさんその要素があると思います。たとえば運転手の諸君の処遇の問題にいたしましても、入社のときに車両購入代金を支払わせる、あるいは水揚料の中から、その運転手給料はもちろん水揚料の中から支払われるのでありますが、副運転手給料あるいはまた車両償却代修繕費部分品費車両税、あるいはまた労働者に課せられますところのいろいろの諸掛り費等は、一切運転手のその水揚げの中から差し引かれる、そしてその支出総額水揚料と比較して赤字になる場合、これはやはり運転手がその責任を負わなければならぬ、そのために非常に困難な事態に追い込まれるというようなことである。ところが今会社や第二組合の方が言われるには、車両を購入し運転手を雇い入れるためには多額の資金を会社は必要とする、従って車両を購入して運転手を雇い入れる場合には、その運転手にできる限りの負担をしてもらってこれを償却せしめる、こういうようなことであるから名義貸しではない、こう否定せられております。けれども私の調査したところと、今言われます従業員組合及び会社側の主張せられる点を総合いたしますると、そういうようないわゆる疑いがきわめて濃厚になるわけであります。従ってこれにつきましては、会社においてはそれぞれそれを認めて、私は内容改善せられる必要があるのじゃないか、かように考えるわけであります。会社はこれに対してどのような改善の方法を考えておりますか、一つその具体的な内容についてお伺いしたい。
  16. 小野正夫

    小野参考人 今山口先生がおっしゃいました通りであります。去年の十月、十一月ごろにはそういうこともあったように思っております。また役所当局から絶えず監査を受け、おしかりを受けておりまして、これを改善していけということを始終承わっておりますが、その後当局にも書面を差し上げてできるだけ改善して参っております。また最近、特別の処分を受けながらも、その後の改善について第一組合側会社側といろいろと言葉の上において妥結線に向いながら、その改善には十分に努めてやっているような次第でありまして、現在はそういうような当局から疑いを持たれるような事実は全然ございません。また第二組合委員長が言ったように、私一人だけが従業員よりもいいことをして、そうして前進していくというような気持も決してございませんので、両者とも改善をはかっていくということを、当局からもどんどん指導を受けて今後もやっていくつもりであります。
  17. 松原喜之次

    松原委員 関連質問でありますが、実は昭和五年から十年くらいの間に、東京大阪その他各都市において、いわゆる相互組織なるものが起って、これが第一線の運転手をしてその営業の全責任を負わしめる結果、非常に猛烈な街頭における競争が惹起されて、その弊害に耐えないで、それでいわゆる直営というものにしなければならないということから、いわゆる相互組織が廃止されて直営組織になったわけであります。このことはおそらく小野さんも業界におられたから御承知だと思います。そこでまさに広島タクシーのやっておられるこの給与制度というか、あるいは営業のやり方と申しますか、これはその当時やった相互組織の典型的なものなんです。従ってこれを名義貸しではないなどというように強弁をされるならば、この沿革に徴してもこれは全くお話にならない認識不足なんです。従って先ほど従業員組合新田君が言うておられましたが、車両を買う頭金を出してみたり、あるいは車両手形を償却するための、あるいは車両代を支払うための責任運転手が持ってみたり、あるいは副運転手給料を持ってみたり、その他一切の経費を持つというようなことは、これは実質上主運転手といいますか、責任を持っておられる運転手営業をしておることであって、会社の形式はともあれ、名義貸しをして営業をさせておるという実質であって、この沿革に徴して、これは最も悪質な脱法的な名義貸し行為であると断定して一向差しつかえない。だからこういうことはいけないから直営になったのです。だから法文の表に照らして、もって名義貸しではないの、いや漸次改善するのというような、そういう問題ではなくて、一挙に根本的にこれはやめてしまって、通常雇用関係にしなければならぬ。この通常雇用関係ということはもうわかり切ったことです。営業の直接の責任雇用者が持つべきものであって、雇われる方が持つべきものではないという通常雇用関係にしなければ、これは漸次部分的に改善するというようなそういう問題ではないのです。この点について従業員組合代表者は、この名義貸し沿革も全く御承知ではないし、そして現在のものが名義貸しではないように思っておられるということは、はなはだ認識不足であると私は考えるのですが、この点について何か弁解があれば一つ新田さんからも聞きたいし、それから小野さんからは漸次改善するとは一体どういうことか、たとえば百五十台あるものを五台ずつ改善していく意味か、あるいは内容を部分的に改善していく意味か、どういう意味なのか、その点を明らかにせられたいのと、さらに私の言うところの名義貸しという定義に対して何らかの他の意見があれば、その見解一つ聞いておきたいと思います。
  18. 小野正夫

    小野参考人 今先生からの御質問は、ちょっとピントが違ったように私は承わったのであります。去年の十月ごろにはそういうことがあったということで、改善するといってそれまでやってきたのでありますけれども、なおこのたびそういうようなことをやってはいかぬという当局から指示があったのです。この際全部、一台もないように、その通り改めておるのであります。ただその点について要するに改めるからというので慰労金を出すかということで、こういうものについて五万円ぐらい出そうということで組合側に言ったが、五万円では少いからもう少し出せということで、私は団体交渉で直接全部やらずにこっちへ立ったのですが、六時ごろに十万円かそこいらで一応折れ合ったというふうに承わって汽車に乗ったのでありますが、以前にそういう疑いがあるということで当局から処分を受けたのであります。今後はそういうことをやれといってもやりません。また運転手から十万円取るとか五万円保証金を預かるということも全然ありません。はっきりいたします。今後は絶対やりませず、また頼まれてもやりませんということで、全然やめますからありはしませんです。
  19. 松原喜之次

    松原委員 それではついでにお伺いしておきますが、そうするとそういう雇用制度の変態的なものは一切やめてしまって、やはり普通の雇用関係に直して営業責任運転手には持たせない、もちろん雇われておる人として仕事の責任は持つけれども、営業上の経済的な責任一つも持たせないということに全部した、こういうことですか。
  20. 小野正夫

    小野参考人 はい。
  21. 松原喜之次

    松原委員 それでは漸次改善するというのでなくて、一挙に改善した。それはよいと思う。そうしなければならないと思うのであります。  それから従業員組合の方の認識ですが、もし先ほどおっしゃったような認識であれば、将来また従業員として非常に困ったことになるこれはきっかけになると思うのですが、一体タクシーの従業員というものはそんな営業責任を負うべきものではなくして、もちろん営業をしっかりやるという責任は持つとしても、その結果の経済的責任については何ら関係のない、断ち切った雇用関係にしなければならない。そうしなければ名義貸しになるおそれがある、こういう点について新田さんはどういうふうにお考えになるか、もう一ぺん御見解を承わりたいと思います。
  22. 新田重夫

    新田参考人 ただいまなにしたのですが、私はこういうところへ出てこういう質問を受けたこともないので、なれないので言葉の不備な点があったかもしれませんけれども、過去においては確かにそういう今の社長のおっしゃったようなことがあるのです。それは私も知っております、私も会社へ入ってからもう十年余りになるのですから。それでなくて、私の言うのは現在においてのことを言っておるのです。現在はそういうことはないということをはっきり言っておるわけなんです。ただその点が現在という言葉がなかったためにそういうようにとられたのだと思いますが、その点は了承していただきたいと思います。はっきりいたしておきます。
  23. 松原喜之次

    松原委員 わかりました。  次に日原さんにお伺いしますが、一体一つ都市でそういう名義貸し営業、いわゆる昔の相互形式による営業が行われますと、大体その一社にとどまらないのです。その市をあげて——よほど特殊な人柄の人ががんばる場合もあるけれども、大体それは持ち切れないのですね。たとえば私は大阪の実際の歴史を知っておりますが、ある二、三の会社ががんばったために、全然その会社がもう立ち行かなくなって、ほとんど解散一歩手前まで来てしまった、やむを得ず追随したというふうに、全市がそういうふうになる傾向が、これは必至なんです。そこで先ほど日原さんがおっしゃったように、広島タクシーのことをおっしゃっておられますけれども、他のタクシーにも同じようなことが必ずあるであろう。私は実際知りません。知りませんけれども、ものの道理として必ずそうなっておると思うのですが、そこで第一線の競争が不当に苛烈になるのです。従って広島タクシー業界では、広島タクシーがもう徹底的に全部改善された、こういうことになれば他の業者も進んでそれにならって改善をしなければならない。そのためにこの刷新連盟は一広島タクシーを相手としての行動でなくて、業界全体の刷新のためにそれらの他の業者に対してもその自覚を促し、この際一挙に改善せしめるという使命を持たれるべきである、こういうふうに思うのですが、広島の状況はどうであり、そうしてその状況に応じてはそういう決意を持っておられるかどうか。その点をついでにお伺いしておきたいと思うのであります。
  24. 日原明美

    日原参考人 今御説のように、広島名義貸し問題は単に広島タクシーのみではないのでありまして、広島に現在五十二業者ございまして、その中でまず二十業者ぐらいがいわゆる直営業者と称せられるものであります。あとがオール名義貸し、またはセミ名義貸しというような状態に置かれておりまして、全体の七百両のうちまず三百台が純粋な正常経営によるものの車両だといわれておるわけなんであります。なお刷新連盟はただ広島タクシーのみを対象といたしておりません。そのほかの面におきましても——現在広島タクシー名義貸し問題が釈然としないものだから、ほかの名義貸しがありましてもそれに手が届かないというのが当局の現状のように聞いております。いずれにしましてもこの問題がすっきりした線で解決することを、われわれは常に念願いたしておるわけであります。
  25. 松原喜之次

    松原委員 ついでですが、広島タクシーに関しては社長も言明しておられ、従業員組合からも発言がありましたように、一台もそういう形式の営業はやっていない、こういう言明があったのですから、これはそれを信用するより仕方がないとして、その問題は片づいたら、次に広島タクシー以外の問題に手をつけられて、せっかく広島のタクシーを正常な合法的なものに全部を直されるというようにしなければならないと思うのです。さらにそういうふうに全部直営営業にすれば、需給の関係上果してそれでうまくやっていけるものかどうかという問題があとに残るのであります。さらにまた広島タクシーに対してそういう実情がほぼわかっておるにもかかわらず、去年の十一月さらに二十六台の増車を許したというのは、何という見当違いのことをやったかという行政措置に対する批判は、これはまだ別に残るべきでありますけれども、これは必ずしも国会と皆さんとの間で御相談をする案件ではないと思うのでありますから、それはさておきまして、広島業界としては、一体その際にたとえば相談をやるとか、当局者とよく熟議の上適当な相談をやるとかなんとかというような方法に出られないと、直営にはみななって改善されたけれども、営業がなっていかないということになれば、またその中で名義貸しをやれば営業自体としては必ずうまくいく、ほかがみな直営をやっていて、自分のところだけが名義貸しをやれば、その会社は必ずうまくいくという抜けがけが起ってくるおそれがあると思う。それらの点についてどういうふうにお考えか、この際、一つ見解を明らかにしておいてもらえば、将来のために非常に安心だと思うのであります。
  26. 日原明美

    日原参考人 刷新連盟といたしましては、今申し上げました名義貸しを速急に一つ何とかして処理していただままして、同じ土俵に上りまして真に需給調整をはかろう、こういうことを決議しております。従ってその需給調整のために自動車が減る、そのために失業者を出す、こういうことにならないように——忙しくなれば忙しくなるように雇用量も増してくるわけでありまして、結局今七百でかせいだものを五百でかせごう、こういうような大体の具体的な案までできておるわけであります。これは業界の皆さんの御協力がなければ、なかなか達成できないことでありますが、一台でも多い名義貨しの経営の行き方と、需給バランスのとれたいわゆる正常経営による行き方とは、そこに大きな問題がありまして、なかなか困難なことと思いますが、広島ハイヤー、タクシー経営をふくらます以上は、絶対この需給調整ということは必要なことだと私どもは考えておるわけであります。以上であります。
  27. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 再度申しますけれども、私は行きまして、その業務内容刷新ということについては、社長も非常な熱意を持ってこれに当っておられるということは認めるのであります。しかし今内容改善して一台もそういうような疑いのあるものはないというふうに言っておられましたけれども、それは私はちょっとうなづけぬ点があるのです。というのは、現に労使間において紛争はそのために処理せられておらない、この紛争が処理せられておらないということは、とりもなおさず今なおそういう疑いのある行為が行われておるということを裏書きしておるのです。これは社長みずからが認められて、早急にこの問題を解決せられるように努力せられるべきではないか、こういうふうに思うのです。私はそのために及ばずながら労使間に入りまして、団体交渉も持ち得るようにし、そして陸運局にもお願いをして、この問題の早急なる解決のために努力してほしいということを言い残して帰ったわけであります。私はこのことを憂うるために、そのように及ばずながら努力をして帰ったわけです。その後の経過は一体どうなっておりますか、この際参考のために一つ聞かしておいていただきたい。
  28. 小野正夫

    小野参考人 私は役所からの報告なり、うちの幹部がみな寄って、これだけもらったら何とか組合を納得さして話し合いをつけるというて——委員長から報告が私のところに直接なかったのでありますが、そういうことを言っておる。しかしとにかく組合が言う通りにしてやれということで、一応私を除いての団体交渉をやった。こういうものですから、東京に立つときに双方ともよくわかったということで、私はこちらへ参っておるのであります。帰ってもしそういうことが済んでいなかったならば、直ちに交渉をやりまして調印をするつもりであります。  もう一口、今刷新連盟委員長さんの申し上げたような事態は、私は疑わしいと思います。刷新連盟委員長がこっちに立つときに、君のところはほんとうに名義貸しはないか、確認できるか、こういうことを本人に電話で確認して参りました。それに対してはははあと笑って、一言も答えなかった。それからもう一つ、単なるある販売会社がそのタクシーの免許を買い占めてブローカーに先立ってあっせんしたのが、刷新連盟でございますということをつけ加えておきます。
  29. 仲山俊行

    仲山参考人 現在先ほども御報告いたしました通りに、会社は今まで慰労金の五万円を主張していましたが、十万円を一日に申し出られまして、この五万円、十万円では組合は納得できないというのが今までの話でありましたので、この十万円以上についてはもう一度社長を説得するから、明日まで待ってくれというので、二日の晩に十二万円というものが提案されたわけです。それでこのことはこの交渉の過程であるということを確認して今日まで参ったわけです。
  30. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 交渉の問題については相当進展しておることと思いますが、これは私参りましたときの希望として、及ばずながらこういうことをして参りました。この問題が解決されなければ、私はこの名義貸しの問題が全面的に社長の言われる通りに解決されたものとは考えられません。その点は私は十分にこの問題を帰られて視察して、一刻も早く改善の実を上げられるように希望いたしておきます。  それから第二の問題として、これは従業員組合にお尋ねいたしますが、今従業員組合の方が言われるのには、運転手入社するときには、会社が車を買う、その車を買う代金が非常に多額に上るから、従って会社としてはその資金に困るから、運転手がその車両購入費を負担して入社するということが一向差しつかえない、こういうようなことであります。それは大きな誤まりでありまして、そういうようなことをするから、従って私が先ほど申し上げたような労使間における雇用契約内容ということになって、車主が生まれるわけです。でありますから、今日も私が今申し上げたようなことが雇用条件として現存するということになれば、これは明らかに名義貸しを存続するという疑いを持たれることになります。従ってこの雇用契約は根本的に改める必要があります。私の調査したところによれば、八時間の労働による運転手の日給は百六十五円であります。今どき八時間の基準法に基く労働をせしめて、百六十五円の日給を支払うというような、そんなものはどこにもありません。しかも先ほど申し上げたような副運転手、あるいは車両償却費、あるいは部分品費、あるいは諸掛り費を運転手が負担するというようなことは、これは正常な雇用関係状態ではないわけです。これは広島タクシーだけを責めるわけではありません。一般タクシー業界がそのような給与体系を持って雇用契約を結んでおるということが現存することは、これはとりもなおさず交通秩序を乱すというだけではとどまらない。ひいてはそのような体系をもって十六時間あるいは二十四時間というような勤務をしいるということになりますと、勢い輻湊いたします道路交通に対しまして、ますます人事事故を起し、あるいは車両事故を起す原因となる。このようにして危険を伴うものでありますから、これの改善については当委員会においても再三問題になっておるところであります。この改善の実が上らなければ、今申したようなことが名実ともに認められなくなる。これについて従業員組合見解はどうであるか、会社においても社長はそのようなことに対して根本的に改善する意思があるか、また今の第一組合の方もこういう今の現実を認めて、その内容改善のために協力する態勢をとるかどうか、三者から一つお答えを願いたいと思います。
  31. 小野正夫

    小野参考人 今山口先生が申されたそういう問題については当然改めます。もう一つ広島タクシー労組の間がなぜ解決できなかったか、これは刷新連盟と一致協力して百台の権利をのっとって、会社の内幕のことを盛んにやり上げて資金に困らせて何とか窮地に追い込み、また汚職事件を引っぱり出して、役所に持っていって提案をし、国会に持っていって提案をし、そうして空中分解させるよう宣伝し、岡山県まで呼びかけてやったのが刷新連盟であります。労組は私たちと親子の立場でありますので、どんな事情でもまじめな生活を安定させていくために努力したのでありますが、なかなか自分のところの一方的な言い方ばかり押しつける。なお県労その他国鉄、こういう団体が押しかけて一方的に赤旗を振って参ったのであります。ところが役所当局も命がけで何とか双方手を握らそうと思って、夜中の二時、三時まで努力して下さったのでありますが、今に至ってとうとう国会の席まで持ち出されることになったのであります。しかしながらこういう地方におる小さな一タクシー業者が国会に来て喚問を受けるということは、私自身としては光栄と考えております。また私終戦後十年間この仕事をやって参りまして、役所から事故が多かったとか、けがした人から非難を受けた覚えは一度もございません。また昭和三年八月二十日からこのタクシー事業、貨物事業、いろいろな点について仕事をやって参りましたが、その間も一度も係官庁から、始末書を出して処分を受けたような事案はございません。今山口先生がおっしゃったように事故を未然に防ぐ。給料が安ければ、たとえば百二十円とか百五十円の生活費でやっていけるはずもございませんので、十二分にその点も皆様の御批判を仰ぎたいと考えております。
  32. 仲山俊行

    仲山参考人 私たちは本問題が発生する過程におきましては、名義貸し沿革から考えましても、これは常識的な名義貸しであるということはわれわれ考えておったわけです。ところが会社は反面においては会社の車であるという介入によって赤字車両を引き上げ、また部分品を強制的に変えさす、こういうことが新体制によってなされるという不安があったので、また五十車両営業停止をたまたま当局名義貸しと断定されたので、これによってすっきりとした経営をやって下さいということを会社側に申し上げた。ところが会社側は、労務管理、メーターの検査、ガソリンの管理、このような九項目の改善命令会社が主張しているところの直営に切りかえるということを助長することになるので、名義貸し業務停止の行政処分に対しては、内容刷新するところの改善命令をなぜ出してくれないかということを当局に要求したわけです。このことが基本的な問題になって車両買い上げ、また権利金とか慰労金とか、そのような名目的な名前にこだわらずに事態を円満に解決するために金額で納得してくれ、こういう当局のあっせんによって現在まで会社と交渉している、こういうことであります。この点を特に留意していただきたい。また会社があくまでも名義貸しでないということを主張される限りは、われわれはこの金額を要求する根拠がなくなるわけであります。従ってわれわれは現在は名目にこだわらずに、この金額をかちとる交渉をやっていますが、会社があくまでも名義貸しではないという根拠で話し合いをされる限りは、この要求は名目にこだわらずにはっきりとした名目を立てて要求をしなければならないわけであります。この点は、現在の段階では名目にこだわらずに会社と交渉をしている、こういうことであります。
  33. 新田重夫

    新田参考人 ただいまの給与問題で百五十円とかいうことですが、確かに会社側にも悪いところがあるかもしれないが、自動車運転手は非常に給料が普通より悪いので、能率給とかなんとかいう線を持ってこないと、どうしても経営はやっていけないという状態なんで、能率給とか特別能率給とかいうものができているわけであります。それだけ申し上げておきます。
  34. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はこれで質問を終りますが、希望として申し上げておきたいと思います。今申しましたようにこの問題は、まず労使間にある問題をすみやかに解決されることが、この名義貸しを他から云々せられないようになる第一の要件だと思っております。第二は、今松原委員も申しましたように、労使間の正常な雇用契約を確立し、給与体系を明確にすることであります。これがなければまた同様の名義貸しの疑念を受けることになり、これはひとり広島タクシーの不幸だけでは終りません。これはタクシー業界全般の問題としてきわめて重要でありますから、一つ今後は広島タクシーが今までとられていたことを誤まりであると認められて、せっかく改善の努力をせられておるのでありますから、これを契機に広島タクシーが名実ともに健全な企業形態を備えた近代的なタクシー業者として発展するように努力せられたい。このことを特に私は申し添えておきたいと思います。  それからなお刷新連盟の方にも申し上げておくのでありますが、今広島タクシー社長が申されましたように、刷新連盟広島タクシーもお互いに疑念を持たれているようであります。たとえば自動車の問題にいたしましても、また駅前の使用の問題にいたしましても——私はつぶさに調査いたしております。これらにつきましては、私は当局に対して質問いたすはずでありますから、あなた方にはお尋ねいたしません。しかしそのようなお互い業者間における疑念を晴らして、この際ほんとうに業界刷新のために一つ努力せられたいと思います。承わるところによると、広島タクシーだけの問題ではありません。各所にその類似行為を行なっておるものがあるのであります。これを漸次改善して参りますことが、私は交通の使命を果す最も重要な問題であると思っております。われわれもそれに努力いたしたいと思いますから、一つ刷新連盟の方も今申しましたような疑念をお互いに晴らして、業界の円満な運営とその刷新のために協力せられるよう希望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  35. 淵上房太郎

    淵上委員長 濱野君。
  36. 濱野清吾

    ○濱野委員 刷新連盟の方から私どもに配付していただいた三十二年五月三十一日付の「全国二十五万以上都市ハイヤータクシー事業実態調査表」この表の数字についてあなたは責任を持てますか。
  37. 日原明美

    日原参考人 それは責任が持てます。
  38. 濱野清吾

    ○濱野委員 それからこの名義貸しの問題について、タクシー業界の、ことに名義貸しの問題が、どういう形で行われているか、こういうようなことが業界の実態を知る上において非常に参考になりました。陸運行政に関連して非常に参考になったわけであります。しかし労働組合経営者の争いも出てきているようでありますし、事実こうした事件はいろいろな方面に利害関係を持ってくるし、また参考資料が間違っているといけませんから、二、三聞いておきたいと思います。  広島タクシー社長さんにちょっとお伺いしたいのでありますが、先ほど同僚の質問に対して、昔は名義貸しがあったが今日ただいまは名義貸しはない、こういうお答えのように承わったのであります。昔名義貸しがあったというならば、何年まであったのでありましょうか。端的に正確に一つお答え願いたいと思います。
  39. 小野正夫

    小野参考人 昔も現在も私自身は全然名義貸しということを考えたことはないのであります。ただ当局改善をせよという書面の中に、以前はそういう疑わしいことがあったようだから、あらためてすべての形態を整えてそうして改善せよ、こういう九項目があったのであります。
  40. 濱野清吾

    ○濱野委員 参考人は、自分自身は名義貸しという違法行為はやっていない。しかしながら役所名義貸しと断定して改善命令を出している、こういうことに間違いございませんか。
  41. 小野正夫

    小野参考人 役所の方の改善命令の書面に——そういう疑惑があるというので、今言ったような文書が来たような気がいたします。
  42. 濱野清吾

    ○濱野委員 正直に言って下さらないと困る。私はあなたと討論しようというのではない。あなたの業務上ことごとく知っている事実を伺わしてもらいたい。ここは法廷でも何でもありません。われわれも十分あなたの御意見には耳を傾けるし、疑問の点があれば伺って、われわれ参考にするので、はっきりしたことを聞きたいのです。われわれはやっていない、けれども役所が何かしらぬそういう改善命令を出してきた、こういうのでありますか。
  43. 小野正夫

    小野参考人 私が当局から受けた書面はそのように考えております。
  44. 濱野清吾

    ○濱野委員 あなた方の通念で、役所はあなた方の権益に関するものを勝手に処分してよいというように考えておりますか、また改善命令が出ても、あなたは株主を代表してその会社の利害関係を一身に引き受けているのでありますが、こういう改善命令は不都合であるとお考えになっているか、もっともな話とお考えになっているか、その方面から承わりたい。
  45. 小野正夫

    小野参考人 それにつきまして、異議の申し立ての申請をすることもよくわかっております。自分の車の整備その他についても十分やらなければならぬ。改善命令を承わってみると——従業員の素質も終戦後十年もたったから改めなければならぬ。こういう点について、一週間くらいの処分——皆さんが協力一致してやれば必ず先でわれわれ業界がよくなるのだから、一致してやってくれと第一組合委員長に頭を下げて頼んで、当局と一丸となって協力するように努めたい……。
  46. 濱野清吾

    ○濱野委員 私はそういうことを聞いているのではないのです。自分名義貸しはやっていないのだ、しかるに役所名義貸しに関連して改善命令といりものを出してきた、従って役所の行政処分は不都合である、あるいは不法である、こういうふうにお考えにならないのか、こういうことなんです。あばたが経営に対して従業員にどうのこりのということを聞いてはおらないのです。役所の出した改善命令をありがたくちょうだいしたのか、法治国家としてこういう命令を出されるととはけしからぬ、こういうようにお考えにならないのか、それとも光栄と思っているのかということなんです。
  47. 小野正夫

    小野参考人 処分を受けることはけしからぬと思います。
  48. 濱野清吾

    ○濱野委員 どっちがけしからぬといり意味ですか。あなたがけしからぬというのですか、役所がけしからぬというのですか。
  49. 小野正夫

    小野参考人 自分がそういうふうに事をやっておりましても、当局監査して処分しておいて改善さした方がよいといっておやりになられたのだから、それについてよいも悪いも——自分が不都合であるか不都合でないかということは、私にはよくわかりません。
  50. 濱野清吾

    ○濱野委員 はなはだどうも奇怪なることを承わるのでありますが、法律的にはあなたが責任者です。とにかくこういう命令が来たのをどうお考えになっているかわからぬでは、参考人として聞くわけにはいきませんけれども、一体あなたの方には全然過失がないのかどうか、それを知りたいのです。あなたの方に名義貸しという事実が全然ないとおっしゃるなら、大体こうした改善命令は来るはずがない、こうありますけれども、それに関連して役所改善命令を出している。そして一方の労働組合でははっきりその事実を宣言して闘争に入っている。しかも一方の従業員を代表する諸君のうちでは、役所はあと押ししてけしからぬ、こういうことを言っている。どうもいいか悪いかわからぬでは困るでしょう。どうですか、何かわかっているのでしょう。大きな問題ですよ。いやしくも役所改善命令を出すということについては、法治国家としては大へんな問題なんだ。それをいいとも悪いともわからぬ、考えておらぬでは、これは話にならぬですね。そういうことはないでしょう。どうですか。
  51. 小野正夫

    小野参考人 どうもしばらくその問題について答弁はちょっと困ります。
  52. 濱野清吾

    ○濱野委員 まあそれではけっこうです。それではこういうことを一つお尋ねします。かつて名義貸しをしたという事実、これは同僚の質問中に、昔はあった、こういうような話であり、同僚山口君の話の中にもそういう証言が出ている。それはどういうような形でやったか、山口君の話だと車両購入の際に、しかも入社する際に車両購入の手形なりあるいは金なりを受け取っておった、こういうようなお話ですが、この事実は全然ないのですか、あったのですか。これは運輸行政の上に大きに響いてくるのです。免許とか増車認可ということについて、資力、信用ということが非常に大きく響いている。しかも刷新連盟の諸君は運輸省を罵倒して、運輸行政を極度に非難しているのですから、こういう実態があるならある、こうおっしゃってくれれば、国政の運営に当っておるわれわれ関係者もさらに戒心しなければならぬところがあるのですから、重要な参考です。こういうことはあったのですか、なかったのですか。
  53. 小野正夫

    小野参考人 どうも先生が今おっしゃったことは全部はっきり聞き取れなかったのですが、広島に車が多いかどうかという問題とは違うかもしれませんけれども、必ずしも車が多いからいろいろの問題がからんでくるわけではない。また名義貸しの問題について先生たち質問をしたいと思うのですが、先生たちの今の言葉と同じようになるかもしれませんけれども、果してタクシーの名義貸しというものが今の道路運送法でできるものかどうか。ですから車購入代を運転手から借りてはいかぬのかどうか、資金をだれかから借りたらいかぬのか、自由意思で事業をやるのにそういうことが明確にされてない、私は車を一括して購入し、運転手を増員し、税金を納めて仕事をして、他人に迷惑をかけなければいいのではないか。また先生のおっし争ったように、資力、信用があれば免許しなければならないという法律である。私はかつて他人に迷惑をかけておりません。また広島に車が非常に多いので、東京あたりで雨が降るとなかなか車に乗れぬことを見れば、広島の県民、市民はほんとうに天国ではなかろうか、こう思っております。車が多いことは市民に喜ばれるのではないか、かように考えております。
  54. 濱野清吾

    ○濱野委員 それでは簡単に聞いておきます。自由意思の事業だということについてはけっこうだと思う。それから他人に迷惑をかけないということもけっこうだと思う。しかしあなたがかつて三十一年の十二月ですか十一月ですか、増車している。その増車の際にあなたの会社に資金がなくて、信用がなくて、運転手から借り入れという名目で雇用条件一つとしているということになれば、これはどうも免許事業としての資力、信用の点で法律上問題になってくるのです。あなたは迷惑かけないかもしれぬが、しかし一般から見れば、法律の上から見れば、あなたは雇用条件一つとして権利金十八万何がしを取り入れる、あなたの会社の財政が非常に不如意である、こういうことになって、役所はその場合に三十二両の増車はできないはずだ。ですからそういうところにあなたの発言というものは参考としては非常に価値のあるものだ。ですからこれを聞かしていただければ非常にいいのであります。
  55. 小野正夫

    小野参考人 三十二両という数字はちょっと違います。二十六両の増車の件だろうと思いますが、その場合には資金が十分ととのっております。運転手とはそういう契約は結んでおりません。
  56. 濱野清吾

    ○濱野委員 それ以前のことはどうですか。
  57. 小野正夫

    小野参考人 それ以前のことは答える必要はない、今までみんな答えております。
  58. 濱野清吾

    ○濱野委員 仲山さんにお尋ねしたいのであります。闘争宣言はあなたの方でお書きになったのでございますか。この闘争宣言の中に運輸行政、ことに法律関係で影響のあるのは、この文句ですが、「会社に対しては車両買い上げ権利金の支払いによって直営に移行さすことを要求したのである。」これはあなたの方の闘争方針ですが、運輸行政には相当の関連がある。これは一体どういうことなんですか。もっと詳細に説明をしておいてもらいたい。
  59. 仲山俊行

    仲山参考人 先ほど御報告の際に申し上げたのですが、陸運局の五十両の車両営業停止にかかわりましたところの九項目の改善命令は、普通直営労務管理にひとしい九項目の改善命令であるから、一週間の営業停止の犠牲は車主運転手のみにあって、そのまま直営形態であるときの労務管理にひとしい改善命令では、名義貸しから直営に移行する当局の命令ではないということを主張したわけであります。われわれは今まで名義貸し的な運営でやってきたのを、今度行政処分によって当然直営にしなければならない、また会社もすっきりした直営にしてもらわなければいかぬ。このために今まで名義貸し運転としてなされている車主運転手の犠牲の補償と車両買い上げを要求したわけであります。
  60. 濱野清吾

    ○濱野委員 大体わかりましたけれども、この宣言中に「車主運転手は」とこうありますが、一体この内容はどういうことなのですか。どうして運転手車主なんですか。そういうことをはっきりいえば、この問題は役所責任があるのか、あるいは何も言えないといっているあなたの方の参考人社長さんの方に責任があるのか、はっきりするのです。どうしてこういう運転手車主ができたのですか。
  61. 仲山俊行

    仲山参考人 先ほど申し上げました通り、入社時の条件金額を納入して、その車をもらって車主となる、条件金額を納入しないで、ただ給料だけでその車の車主から負担されている運転手補助運転手、こういうことになります。
  62. 濱野清吾

    ○濱野委員 あなたの方でおっしゃっているのは実質上の車主、こうおっしゃっておるのだろうと推測するわけです。この入社するときの十八万円か一十万円で車代を買うか、支払いをされておるのだろうと思いますが、そうではないのですか。
  63. 仲山俊行

    仲山参考人 もう一ぺんおっしゃって下さい。
  64. 濱野清吾

    ○濱野委員 あなたの方の闘争宣言の中に書いてあるのは重要な問題だかり、内容を伺いたいのですが、一体こり車主運転手というのはどういうことなんだ、あまり聞いたことのない名前たが、運転手が車を持っているという右前は、その実際はどういうことでそういうことになっておるのだ、こういうのです。法律上のことではない、実際上の問題を私は聞かしてくれればいい。法律上は名義貸しをやれば、社長が握っているのだから……。
  65. 仲山俊行

    仲山参考人 そういうことで、先ほども言いました通りの条件金額を納めて入った者が車主というふうに、会社経営の職務規律の中でそういうふうに呼ばれておるわけです。そしてその車に乗るそれだけの金額を納入しない運転手補助運転手、こういうふうになっているわけです。
  66. 濱野清吾

    ○濱野委員 あなたの方の会社の車を持っている——運転手は何名で、いわゆる車主運転手というのはそのうち何名ありますか。
  67. 仲山俊行

    仲山参考人 現在の私の方の組合は九十人くらいです。車主が九十人くらい、運転手が九十人です。
  68. 濱野清吾

    ○濱野委員 車主運転手でない、いわゆる普通の運転手は何名ありますか。
  69. 仲山俊行

    仲山参考人 九十人です。
  70. 濱野清吾

    ○濱野委員 車主運転手が九十人……。
  71. 仲山俊行

    仲山参考人 一台の車に二人おるわけです。二十四時間実働させますから、二人おるわけです。
  72. 濱野清吾

    ○濱野委員 そうするとこういうふうに承知してよろしゅうございますか、少くともハンドルを握る責任運転手車主運転手で、雇用の際に必ず若干の金を取られている。そしてその金を納めないのは補助運転手、そしてこれが九十名おる、こういうことなのですか。
  73. 仲山俊行

    仲山参考人 月々の車両の運行に必要な経費車主運転手が負担をするということなのです。補助運転手はその負担がない。(「わかった」と呼ぶ者あり)
  74. 濱野清吾

    ○濱野委員 くろうとがわからないのだから、しろうとがわかるはずがない。それで最初入るときに、何がしかの金を納めてそして雇用条件になって、それ以来は実際の部品でも修理費でもその運転手が持つ、こういう運転手は一体何名いるのですか。
  75. 仲山俊行

    仲山参考人 九十人おるわけです。車両に必要な……。
  76. 濱野清吾

    ○濱野委員 そこでお尋ねしたいのですが、ほんとうに世間でいう運転手といって、雇用条件に金も払わず、さらにまた修理費、部品というようなものも支払わない普通の運転手は一人もいないのですか。(「九十人」と呼ぶ者あり)そうすると合計百八十人ですか。
  77. 仲山俊行

    仲山参考人 はい。
  78. 濱野清吾

    ○濱野委員 もう一つ聞きたいのでありますが、社長さんの参考人、今のお話はほんとうですか。
  79. 小野正夫

    小野参考人 今仲山君が言われたことが私よくわからないのです。以前は、去年よりもっと前なのですが、十万円を会社運転手から借り入れて、そうして車をトヨタ、日産から購入して、そしてその頭金として一応借りる。その金を借り入れれば当然金利はつけて支払う。しかしながら資金上で銀行その他にしても、旅客運送事業には担保が相当高額に要りますので、借り入れがむずかしい。それで運転手さんから、一応責任を持たすために借り入れる、そうして仕事をやってもらう。その後監査をどんどん役所からやられまして、運転手から資金を借り入れることは、たといどういう過程であってもよろしくないと言うておしかりを受けております。それでずっと今日改善はしておる。(「返したか」と呼ぶ者あり)はあ、返しました。
  80. 濱野清吾

    ○濱野委員 そうしますと資金が足らないから、雇ってやろうという運転手に金を出させて、そうして金繰りをする、これも自由でしょう。経営者側で部品を車主運転手に負担させ、修理費車主運転手に負担させる、こういうことになりますと役所から受けた免許は社長参考人で、実際の管理は車主運転手が運営の大半を持っているということになるのでありますが、これは少くとも実質的には名義貸しと同じことだ。もうこれ以上あなたからお尋ねしませんけれども、どうですか、そう思いませんか。
  81. 小野正夫

    小野参考人 いずれにしましても修理をやったり車をなにしたりしますと、車一台当り、働いたものが要するに部品なり修理なりを経費でまかなっていくのでありますので、そういう今先生のおっしゃるようなことは、ちょっと私は納得できませんのです。
  82. 濱野清吾

    ○濱野委員 そうすると社長責任運転手車主に大半をおまかせする、しかし役所からいただいている免許はあなたがいただいておる、そうしてそこで労働を搾取しよう、こういうことですね。
  83. 小野正夫

    小野参考人 その点ちょっとお断わりしますが、事故があったり、対外的の責任は全部会社が持っておるのであります。
  84. 濱野清吾

    ○濱野委員 私どもはよくわかりました。やはりあなたのような御経営をなさる方も日本にはあるのですね。また日本の役所もそういうことに資力、信用ありとして増車を許し、いろいろなことをやっておるのですね。実に私は驚嘆しているのですが、もう一つお尋ねしたいのです。広島ハイヤータクシー事業刷新連盟、あなたもその事業者から非難されている現況をだいぶ承わったでしょう。その問題を私は聞かんとするのではないのでありますが、日原参考人一つ聞いておきたいのであります。あなたの考えと私の輸送に関する考え方は違っているようだ。あなたは先ほどの発言中に、運輸省が優柔不断であるという御発言がありました。免許を乱発しているために輸送秩序は混乱している、こういうようなことでありますが、どうしてそういうことを言うのですか。
  85. 日原明美

    日原参考人 さっき私が申し上げましたように、ものの経営にはおよそどのくらいの規模が必要であるか、これが根本になるのではないかと考えます。従って広島市内に、ただいま人口が三十九万ございます。それに対して、その調査表でごらんいただきますとわかるのですが、地方都市で大体人口千人に一台と仮定いたしますならばまず三百九十台あればいい、四百台見当あればいいというようなことになるのじゃないか、かように考えまして、それ以上車のあることは過剰である、その過剰ということがわかっているにかかわらず、運輸当局がそうした面に全然考慮を払わず、そうした新免なりあるいは増車を許しているところに、私の申し上げる論拠があるわけであります。
  86. 濱野清吾

    ○濱野委員 三十一年十一月というと、前の大臣以来輸送量の需給調整の見地から、ハイヤー、タクシーはその部分々々、たとえば東京大阪、名古屋というようなその実態を調査して、増車事業計画の変更については十分役所は考えておる。ですから先ほどお尋ねいたしましたあなたの会社から提出しました計数によると、どの数字を見ても非常に大きな車両を認可している。そのために認可業者、認可車両数、一台に対する最近の運収、人口比率一日一キロ当り運収というこの数字が、日本における大都市あるいは中都市の一等ひどい計数というものが出てきて、不当競争がそこに生ずることは当然だと私は見ている。どうして役所が一体二十六台という増車をしたか、この内容はわかりませんか。たとえば申し上げますが、権力の作用かあるいはまた涜職の疑いがあるのか。もうあるだけばらまいてもかまわないと思う。
  87. 日原明美

    日原参考人 その点につきましては、私はこれという確証のないことを申し上げるわけにいかないものでございますから——ただ数字的に見まして非常に広島市が恵まれなくあるという実情だけの点でごかんべん願いたいと思います。
  88. 濱野清吾

    ○濱野委員 私はかんべんするもかんべんしないもないのだが、そういうことがあれば、あなた方の国会なんですから、それはざっくばらんに申し上げた方がいいでしょう。そうして陸運行政や海運行政に参考になる点があればわれわれに非常に利益するし、国も非常に利益する。あなた方も損をしないでいい。ですから一つ国家社会のためにかんべんしてくれというようなことを言わずに、ざっくばらんにした方がいい。金が一体作用しているのか、あるいは不当なる権力が作用しているのか。
  89. 日原明美

    日原参考人 この問題は現在の津上局長、前の岡本、権田局長を喚問していただきまして、一番先に御調査願いますとよくわかると思います。
  90. 濱野清吾

    ○濱野委員 まことに正直でよろしい。私どもそれをよく承わっておきます。今後なかなか行政措置とか方針とかというものを変えることは、運輸行政はすなわち事業行政なんですから、それは司法省やその他でも大へんでありますけれども、事業省だけに経済に大きな影響がある。ともかく金で作用してみたり不当なる権力に作用されて、認可すべからざるものを認可するようなことがありますから、そういうことがあったらば山口さんにどんどん申し入れて、どんどんここへ来て言って下さい。ありがとうございました。私はこれで発言をやめます。
  91. 松山義雄

    ○松山委員 関連。自動車局長に伺いますが、先ほどから人口比例その他で七百一台というのは、非常に不当に広島としては多いということを刷新連盟参考人もおっしゃっておりますが、運輸省の考えておるところではどうですか。自動車局長としては実際需給一般から見て多いのですか。大体適当と認めているのですか。
  92. 山内公猷

    ○山内説明員 広島における車両はいろいろな複雑な形態をとっております。非常に昔から名義貸しの多いところでございます。それらの再編成の処置、その他行政的な措置も考慮されて行われて参りました結果、ほかの都市に比べますと若干多いように私どもとしては考えております。
  93. 淵上房太郎

    淵上委員長 参考人の陳述聴取はこれをもって終了いたします。  参考人各位に対しましてはありがたくお礼申し上げます。
  94. 淵上房太郎

    淵上委員長 この際、小倉副総裁から発言を求められております。これを許可いたします。
  95. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 国鉄におきますいわゆる夏季闘争について概略の御報告をさせていただきます。  五月二十一日に国鉄労働組合中央執行委員長から申し入れがございまして、要求事項として、今次春闘までの一切の処分を撤回せられたい。仲裁裁定を完全に実施されたい。昇給百パーセントを実施されたい。夏季手当一カ月を六月二十三日に支払われたい。ただし支払いに当っては本俸プラス扶養手当プラス勤務地手当かける〇・八プラス三千六百円という申し入れがございました。これに対しまして国鉄の職員局長より、夏季手当等について次のような通知をいたしました。処分を撤回するわけにはいかない。仲裁裁定を国会で承認された予算により完全に実施したい。国鉄の経営上、予算上百パーセント昇給には同意できない。夏季手当については公務員の支給率と同程度にしたい。かような回答をいたしました。機労の側からも大体同様で、ただいろいろ懸案事項がございましたので、懸案事項についても解決してほしい、こういう要求が加わっておりました。それで労組の方におきましては、第一波として六月四、五の両日、管理局本局、工場、保線区、建築区及び電力、通信関係等の職場を指定し、半日職場大会を実施するような指令が出たのでございます。この指令に基きまして二日間にわたり、延べ四百六十一カ所の業務機関において職場大会を実施いたしましたので、それぞれ業務運営上の支障が生じたのでございます。それからこれより先に、実は国鉄といたしましては組合の幹部を春闘の責任上公労法によって処分をいたしましたので、適当な代表者を欠くことになりまして、団体交渉もできませんし、いろいろな点で不都合が生じておりましたが、ただ話し合いをしないわけにも参りませんので、適当な話し合いをしたのではございますが、さらに十三、十四の二日を第二波として実力行使を指定したのでございます。しかしながらその影響も甚大でございますので、ただいま申し上げましたように正規の団交はできませんですが、いろいろ協議もいたしまして十四日の未明に話し合いがつきましたので、時間的のずれのために十三日に多少のトラブルはございましたが、これをもちまして一応夏季闘争は済んだと私は承知しております。  この場合の妥結、協定と申しますか、一応了解点に達した条件を申し上げますと、先ほど申し上げました四つの項目につきまして、処分の撤回はできない。期末手当につきましては過般新聞でも発表がございましたように、旧ベースの〇・七八にプラス六百円ということでございまして、また一斉昇給とベース改訂につきましては今後さらに協議をするということでございます。ただ機労の方におきましてはべース・アップを了承しましたので、この線について今実際の作業をやりつつございますが、国労の関係につきましてはまだこれが未解決になっておるのでございます。先ほど申しました通り実は三役が処分を受けておりますので、そういう点につきましては公労法上あるいは組合法上、どういう解釈をしたらよいかということを労働省にも聞きましたら、その回答といたしましては、適当な代表機関を欠く組合である、当該機関の決議等の効力に瑕疵の生ずることもあると思われる、というような回答がございましたが、今後この問題につきましていろいろな話し合いを進めるにつきまして、いろいろな問題が出て参るであろうと存じますので、目下慎重に研究いたしている次第でございます。大体以上をもちまして夏季闘争の概要を御説明いたしました。
  96. 淵上房太郎

    淵上委員長 午後は一時半から再開することにいたしまして、この際休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      ————◇—————    午後二時八分開議
  97. 淵上房太郎

    淵上委員長 午前に引き続き委員会を再開いたします。  この際お諮りいたします。石油の価格問題について明日の委員会において参考人より意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 淵上房太郎

    淵上委員長 それではさよう決定いたします。なお人選につきましては石油業界及び自動車業界各二名ずつということにいたし、その人選につきましては委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 淵上房太郎

    淵上委員長 それではさよう決定いたします。
  100. 淵上房太郎

    淵上委員長 午前中に引き続き陸運に関して調査を進めます。山口丈太郎君。
  101. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 午前に参考人から聴取いたしましたハイヤータクシー業界実情について、二、三御質問いたしたいと思います。  これは午前中にも参考人の発言によって明らかでありますが、私はこの際ただ単にたまたま地方において問題となりました広島タクシーという単なる一会社の問題ではなくて、今日この問題の業界に波及いたしまするいろいろな弊害をこの際是正すると同時に、中央におきましては陸運行政に関して運輸省当局においては非常な努力を払われておるにもかかわらず、地方陸運局におきましては、私どもの見る目では、非常に地方の運輸行政は混乱をし、符に自動車行政につきましては、今日その業界の発展とともにその行政につきましては、必ずしも中央において指導せられておりますような成果を見ておりません。特に業界における名義貸しその他の問題につきましては、いまだその実が上っているとも考えられない節が非常に多いのであります。特に許認可の問題等につきましては、遺憾ながらそれが契機となりまして、交通の企業に対しまする許認可をめぐる過当なる競争、あるいはまた適正なる免許行政というものが行われていない向きが非常に多いのでありまして、これは何としても遺憾に思うのであります。そこで私はそのような全体的な見地に立って、たまたま広島に参りまして調査をいたしましたその実情に基いて、二、三質問をいたしたいと存じます。たまたまこの問題となりました広島タクシー名義貸しの問題は、私の調査いたしましたところによりますと、これは今日発生した問題ではございません。二代、三代前の陸運局長から代々引き継がれましたいわゆる地方における陸運行政の放漫行政の結果であります。その弊害の結果が今日の紛争を生じておる原因をなしております。その原因と申しますのは何かと申しますると、一つはこの広島タクシー広島地方におきましては最も健全な企業運営をなしておる会社である。こういうゆえをもちまして、昭和三十一年十一月に、多くの会社から増車申請がなされ、あるいはその意図をもって要請せられていたにもかかわらず、広島タクシーのみに二十六台という大幅の増車を認めたことであります。このことは、広島業界に対しまして非常な渦紋を投げかけたわけであります。このような増車は、一面におきまして業者に対しまする非常な不満になり、広島タクシー組合内におきましても大きな不満となったわけであります。このようなことが契機となりまして、広島タクシー内部の問題をめぐりまして、種々企業外からの論議もなされたのであります。かくて本年に至りますると、外部からのそのような批判と、内部からのいわゆる刷新のほうはいたる声にたまりかねて、ついに広島陸運局はその内容監査せざるを得なくなったものと思うのであります。そうしてその監査の結果、二百五十台もの台数を有しておりまするこの会社が、名義貸しとして疑わしい行為のあるものが、少くとも百台以上に上る。しかもこのような疑いを持つ車両の中で、五月十四日ついに五十台の車両に対しまして営業停止をしたことは、これは中央においても御承知の通りだと思うのであります。またこの営業停止が、実は名義貸しが行われておりまするために、従って会社営業会社の経理に対しましては何らこれが影響するところはありません。車主たる運転手がその大きな被害をこうむりまして、従ってこの五十車両営業停止の問題については、むしろ会社側よりもその従業員である車主たる運転手に大きな不満があったのであります。この不満が契機となりまして、今日広島タクシー内におきましては、これを純然たる労使問題たるにとどまらず、いわゆる従来からの悪弊を一掃して、そして労働組合は完全な雇用契約を結んで、その職に安定したい、こういう考え方から、ほうはいとしてその不当をなじりまして、ついに自己の持っておりまする車両買い上げ及びこの刷新のための切りかえ時に当りまして、今まで会社に対して協力をしたその協力の意味も含めまして、組合慰労金的な性格も含めて、相当額の金額を要求して紛争をかもしたのであります。私はこの際自動車局長にお尋ねいたしますが、このようないわゆる業界の紊乱は、ひいては先ほど申した広島タクシーだけにとどまる問題ではなくて、全国の業界に及ぼす影響はきわめて重大であります。今にしてこれを矯正しなければ、私は正直な善良な業者が安心して業務を営むことはできないと思いますが、今後のこれらの指導方針についてどうお考えになっておるか、一つ伺っておきたいと思います。
  102. 山内公猷

    ○山内説明員 広島タクシー名義貸しの問題は、私どもといたしましても非常に遺憾なことでございまして、特に本件につきましては、山口先生御自身広島においでになりまして、いろいろ御調査なされ、また適切な御助言もいただいておりまして、広島陸運局長におきましては、本件についてかつてない決意をもちまして、運輸行政の面のみでなく、労働関係の面にまである程度タッチいたしまして、本件の解決に努力をいたしておるということはお認め願えるのではないかと思います。本件につきましては、広島陸運局長とも数次にわたりまして私も電話で話し合いましたが、近いうちに完全な解決をする決心であるということを強く決意のほどを申して参っておりますので、御報告を申し上げておきます。  それで本件のここに至りました経過につきましても、いろいろ現地の情勢についてできるだけの調査はしてみたわけであります。今回の名義貸し処分というものは一度ではございません。広島という都市は御承知の通り原爆の特殊の都市でございまして、タクシーにおきましてはほかの都市に比べまして非常に混乱が多く、従来も不健全な経営が多かったわけであります。それでかつては昭和二十八年の五月に名義貸しを整理するということを当時の局長が声明いたしまして、大々的にこれに手をつけたことがあるわけであります。こういう席上でその苦心をお話し申し上げることはなかなかむずかしいわけでございますが、業界実情を御存じの方はよくおわかりと思います。こういうことはある程度危険を伴う仕事であるということで、陸運局がこういう仕事に手をつけるのは、末端は非常にむずかしい仕事に手をつけるわけでありまして、当時の状況としましては十三業者四百八両ございました。これをいわゆる分離経営をしておるものを引き離しまして、健全な姿に一度引き戻したわけであります。それで五十三業者、四百八両という姿になりましたが、二十八年の末におきましては業界陸運局指示を了といたしまして協力をいたしましてこういう姿になったわけでございますが、その後またこういう事案が起って参ったわけでありまして、今回は広島タクシーの問題だけとしてでなく、広島地域全部について本省においてもそういうことのないように、もちろん他都市においてはあるかもしれませんが、的確にあれば処分すべきものでありまして、そうひどくない。広島において相当ひどい状態を前から耳にもいたしておりますので、本省といたしましてはこの際十分な対策を講ずるように局にも伝達をいたしましたし、局長もこの問題だけでなくて、広く広島タクシー業界の粛正に本腰を入れて乗り出すという決意をなさっておりますので、私といたしましては広島陸運局長の今後の努力に待つとともにその成果を期待したい、かように考えておる次第でございます。
  103. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ただいまの御答弁にありますように、私も広島に参りまして陸運局長に会いまして、今までの経過を聴取すると同時に、陸運局長の決意を一応伺ったわけであります。その結果局長としては、異常な決心をもって、ただ単に広島タクシーだけの問題ではなく、広島地方におけるこの種の問題については適切な指導を行なって、その業界刷新をはかりたい、そのためには職を賭しても私はやり遂げます、こういう強い決意を述べられたのであります。その結果ただいま進行中のこの広島タクシーの労使間における問題は解決の方向へ進みつつあるのでございますけれども、しかしこういうようなことは広島タクシーだけではございませんで、まだ各地においてもあることを私存じております。従ってこれらについては適切な行政指導を行わない限り、私はタクシー業界の安定を期することはできないと思いますから、一応申し上げたいと思うのであります。私の調べたところによれば、この広島タクシーを例にとれば、こういう名義貸し類似行為もまたこのような内容を持ったものであります。すなわちどういうことをやるかと申しますと、入社時に車両代金をまず支払わせ、入社いたしますと、支社長に対して二万円の入社謝礼金を納めさせているわけであります。入社後二年間にこの車両の償却をせしめるということを基準にいたしまして、その水揚料から諸経費を差し引くわけであります。すなわちその水揚料から運転手の負担いたしますのは、本人の給与もこれに含まれるわけでありまして、その一日の本人の給与がどのくらいになるかと申しますと、八時間を基準にいたしまして百六十五円であります。そうして主として十六時間勤務をさせまして三百二十円というふうな安い基本給であります。そうして入社のときに車両代金を支払わない運転手は副運転手となりまして、この車両代を支払った運転手、すなわち車主ですが、この車主がその副運転手の給与をも負担するわけであります。その責任を負うわけであります。てしてその副運転手の給与、車両の償却費、それから車両修繕費及びその部分品の費用及び諸掛り費、すなわち健康保険でありますとかあるいは労災保険であるとかあるいは養老年金とか、車両に対する諸税金に至りますまで、すべて月割にいたしましてその水揚げ総額の中から差し引く。そういたしますと、もしその月の水揚額がこれらの諸経費額に満たない場合には赤字となります。その赤字は運転手責任において補填しなければならないという過酷な内容を持ったものであります。でありますから、今日新しく内容刷新して、正常な運営に引き戻すといたしますと、このように負担をして参りました車主運転手が、それぞれ会社に対しまして納めた車両代金の返還及び負担をして参りました諸経費の償還等を要求いたしますことは、当然のことであると思います。午前中の参考人の陳述によりますと、今日ではそのような事実はないと陳述をいたしておりますけれども、そうではなくて今日もなおこれは現存しております。私は広島に参りまして組合との団交の間におきましても、車両運転手のものであります、従って会社はこれを買い取ります、そうして今までの慰労金を支払いますという三原則を確認いたしておるわけであります。これは陸運局長の前において完全に認めたわけでありますから、名義貸しは明々白々たる事実であり、今日もそれが続けられておるということが言い得るのであります。でありますから、陸運局としてはそのような事実に基いてこれが刷新のために努力をせられておるのであります。陸運局長は業界刷新のために非常な決意を持って、自己の職務をなげうっても努力するとわれわれに誓われたのでありますが、私は単に陸運局だけにこの問題を頂けておくわけには参らないと思うのであります。従って自動車局長といたしましても、これらの事実に基いてしかるべく処断せらるべきが当然ではないかと思いますが、これについてどのようにお考えでありますか、一つ所見を伺いたいと思います。
  104. 山内公猷

    ○山内説明員 先生のいろいろあげられたような点は、陸運局でも確認しておる条項が多いわけであります。先般私が本委員会で御説明いたしました当時の状況と今日の状況とは若干違うところがございます。陸運局はことしの四月二十三日から五月四日までにわたって調査をいたしました。その席上でて、本日参考人である社長が話されましたように、名義貸しの事実を会社側は認めておりません。また組合側におきましても本日のような話はなかったようでございます。やはりある程度名義貸しを隠蔽するようなお話で、名義貸しを認めるような供述書は出ておりません。また口頭でいろいろ聞いてもはっきりしなかったようであります。それで陸運局がその当時払った努力は非常に大きなものがあるわけでございまして、各帳簿について一車々々当って調べました結果、先生のあげられたような点についていろいろな確認をいたしました。両当事者は名義貸しということをはっきり言っていないけれども、いろいろな条件から勘案して名義貸しと断ぜざるを得ないということで、この通知書にも「昭和三十二年四月二十三日以降、五月四日まで貴社に対し業務監査を実施した結果、法第三十六条違反行為が明らかとなり、」こう書いてあります。法三十六条は御承知の通り名義貸しの条項でございまして、陸運局におきましてもこの三十六条違反ありということのために処分を行なったわけでございます。本日午前中の参考人お話のようにあやふやでやったわけではございません。それでこの点につきましては本省も了といたしておるわけでございます。ただ行政の処罰におきましては、処罰することだけが目的でないわけであります。先ほどから山口先生がいろいろ御指摘になりましたように、単なる現在の広島タクシーの問題だけではなく、将来そういう違反事実をなくならせるという問題、及び他の業界にももしも——そういう確認はいたしておりませんが、うわさは耳に入っておりますので、そういうことのないようにさらに一段の努力をするよう、われわれの方も要請をいたしております。陸運局も逐次われわれの方に連絡をとってやっております。それから広島タクシーの問題につきましても、労使間の問題が残された問題になっておるわけでございます。広島タクシーに対しまして陸運局からは九項目にわたる改善命令を出しておりますが、これは組合方々が言われたような意味ではなくて、こういうものが的確に行われていけば正当なる運営形態になるわけなのでございまして、そのほかこれが的確に行われ、労使関係の条項がはっきりすれば、この問題は片づく。それでこの九項目につきましては今後も行政処罰のしっぱなしでなく、陸運局として注意を払うつもりでおりまして、本日の参考人である社長も、この九項目については十分順守するということを言っております。あと残された問題については、陸運局長の本日の電話では近日中に片づく見込みである、あるいは本日の参考人尋問以前に片づけるべく努力したがどうしても間に会わなかった、みんなが帰ったあとで、近日中には片づく自信があるというふうに申しておりますので、せっかくの陸運局長の努力にもう少し待ちたいと考えておりま  す。
  105. 淵上房太郎

    淵上委員長 松原君。
  106. 松原喜之次

    松原委員 私簡単に二点だけお伺いしておきます。今自動車局長の御答弁によれば、広島タクシー自体名義貸しであるということは、陸運局も本省もそうだと認めておられるようでありますが、しかし何となくあとにもやもやした点があるわけであります。現に小野社長は、こんなものは名義貸しと思っていないと今なお言っている。当局の方で名義貸しだと断定するのに、本人は名義貸しでないと言う。そういう業者をそのまま置いておくのはおかしい。第二段の策をもって名義貸しということをはっきり知らせるか、あるいはそれをどうしても認めなければ何らかの措置をとらなければならない、私はさように思う。そうでなければ名義貸しであると断定したことが事実となって現われて来ない。従って、あくまでもそれは名義貸しであると局あるいは本省で認めるならば、それを本人にも認めさせなければ、濱野委員がおっしゃったように、かえって行政措置の方が間違っているのだ、こう逆襲をするような本人の認識では、行政措置の効果が上っていない、かように思いますから、こういう点についてのお考えを承わりたい。  第二に、そもそもこういう問題が起るというのは、必ず需給状態において、需要に対して供給が多い場合です。それが蔓延するのは必ず需給のバランスがとれておらない場合がある。このことは、まだ全国にそんなに波及しておらないからよいものの、過去においては波及した事実がある。でありますから、需要の問題が非常に大事になってきます。そこで三十一年十一月にこういう会社にだけ大幅に増車を許した措置は誤まっていなかったかどうか、そういう点について一つお考えを承わっておきたいと思うのであります。
  107. 山内公猷

    ○山内説明員 私午前中社長とは初めて会いましたので、社長の気持がどうかということを御説明するのは適任でないと思いますが、ただ社長の考えはちょっと混乱しておったではないかと思うわけであります。と申しますのは、陸運局におきましては、本年一月以前の状態につきはっきり認めておりまして、以後車両の状況については逐次改善の跡を認めておるわけであります。それで社長は、過去においては名義貸しの事実があるが現在はないのだというふうな気持がごっちゃになっておったではないか。それは「附帯警告書」にも書いてあるわけでありますが、「別紙命令書の通りの処分を行なったが、最近における貴社の業務運営については漸次改善されたあとが認められる。しかしながら、更に会社責任体制を強化し、明朗、健全なる業務運営を実施するために」云々と書いてあります。労働者との関係が非常に複雑のようであります。局の方では新体制の車あるいは旧体制の車というような言い方もいたしておりまして、最近入社頭金と申しますか身元保証金の取り方も非常に少くなってきたりなんかしておりまして、一定した事実がずっと続いていないようであります。それで現在の段階においては名義貸しの事態はない。処分を受けたあとでやっていただいては困りますが、そういう混乱をしたのではないかと思います。もちろんわからせるといたしましても、私の方も、こういう処分書ではっきり三十六条違反ということを言っておりますし、現在また調停もいたしておりますし、十分わかるように努力はいたしておるわけであります。  それから増車の件でございますが、先ほど言いましたように、また午前中私お答えいたしましたように、ほかの都市に比べまして多いようでございます。その多い理由といたしましては、二十八年五月名義貸しの整理をしたということは御説明いたしましたが、そのときに十三業者で四百八両のものを五十三業者に細分をいたしたわけでございます。その結果零細業者が多くなりまして、それが適正な規模を持つ経営形態にしたいということで、増車意欲が多くなったということが、ほかの都市に対して多くなった理由一つではないかと思います。また聞きますと、あまり名義貸しを整理し過ぎまして——整理し過ぎたということはないわけでありますが、的確に整理し過ぎたために会社が非常に経営規模が小さくなって、その会社の規模からいって経営ができなくなるということになりますと、単なる運転者のみならず、管理者、管理関係の人件費、その他の問題もありまして、陸運局としてもある程度それは営業できるような関係に見てやらなければならぬというような関係で、逐次よくなったと思われる業者にふやしたというような点もありまして、現在において六百八十一両という数字になっております。広島タクシーに対する二十数両の増車に対しましては、これは一会社だけではないのでありまして、このときにもほかの一業者一緒に免許の増加をいたしたわけであります。それで連年そういうふうに多くして参ったわけでございまして、この広島タクシーが当初分離する前の車両数が二百五十三両で、これが再編によりまして百四十五両になり、逐年ふえまして現在二百五十三両になったというような復元の経過をたどっているわけでございます。その間の具体的な事情につきましては、これは陸運局長の認定の問題になるわけでございますが、とにかく私としては岡山その他の都市に比べて車両数が多い。車両数が多いということは、やはりいろいろ問題を起すわけでありまして、さらにこの点陸運局長に善処方を要望いたしたい、かように考えております。
  108. 松原喜之次

    松原委員 そこで自動車局長、二つ問題があるのです。一つは適正規模でない、経営もできないような小さな業者に細分することによって名義貸しを改めさせたという、その措置が一つ間違っているのです。その際にもやはり適正規模ということを考えつつ整理をさせればいいわけなんです。それが一つ間違っている。それから第二の点は、名義貸しをやっておったために、細分して、そのために台数が減った会社に対してまた復元させるというようなことであるならば——細分ということには多少処罰というような意味も含まれていたに違いない。また含まれていなければこれは間違いです。にもかかわらず、その処罰のあとをまた官庁でしりぬぐいしてやって、復元させるというようなことに重きを置かなければならなかったという、その理由は私どもはどうも了解に苦しむし、その間に広島タクシーに対する非常な疑惑があるということを聞いております。陸運局に対しても疑惑が持たれているということを私は聞いている。持たれるのは当りまえなんで、そういう復元させるということが間違いなんです。この二点はどうしても行政措置として適正を欠いた、こういうふうに私は考えるのです。  そこでそれに対して自動車局長に、それは適正を欠いたと返事をしてもらえばそれで済むかもしれぬが、そうでなしに、今後たとえばその他の都市においても早晩増車問題が起るところもあるだろうと思う。そういうふうな際にも適正規模ということをよほど考えておかないと、また悪循環が起ってくるという問題が起りますので、いかなる場合でも適正規模というものをよく考えながら増車の問題を処理していく、こういうことを心してもらわなければならない。これらの点について一つ何とか今後の方針を定め、あわせてこれを下部の方に徹底させて、全国的にこういう問題の起らざるように戒心をしてもらいたい。こういうことを考えておるのですが、一つ見解を承わりたいと思います。
  109. 山内公猷

    ○山内説明員 御指摘の通りでございまして、二十八年ころいわゆる名義貸しという問題が各地にございました。当時の自動車局といたしましては、ある程度処罰的な意味ももちまして分離して、これに企業組合を作らして経営させるという方向と、そのまま分離をするのだという、二通りの方向が各局において行われていたようでございます。大体企業組合を作らせるという方向が多かったわけでございますが、企業組合の結果につきましては、御承知の通り十分な成功をおさめなかった。分離経営の結果については、ただいま御説明いたしましたように、当時としてはやむを得ないとは思うかもしれませんが、今にして思えば適切であったと言い切れることはできないわけでございます。それで今回におきましても分離しないでそのまま直そう、そのままの姿で正常な姿に引き戻そうということは、過去の実績に徴してこの広島タクシーというものを正しい姿に持っていく、営業的にも正しい姿に持っていき、労使の関係においても正しい関係に持っていく方が、この会社のためでもあり、広島地区の業界のためでもあるという見解のもとに、陸運局がなされたものと考えておるわけでございます。先生の御意見につきましては、われわれも今後の行政におきまして十分念頭に置いて考えて参りたいと思います。
  110. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今の第一次の整理の細分化の問題については、現に陸運局長は誤まりであったとはっきり述べております。これは行き過ぎであった、こういう細分化をしたことによって非常な誤まりがあった。そのために今日のような過大ないわゆる車両免許をせざるを得ないというような一つの契機になったというようなことも認められておるわけです。私ははっきり言って広島の現在のタクシー車両数は、三割ないし三割五分多い。これを数字で言うと二百両ないし二百四、五十両多い、私はそう思います。こういうようなあやまちを犯す原因を究明していけば際限はないと思いますけれども、それは省略いたしまして、とにかくも新しい免許等を申請をいたしますると、第一番に問題になるのは資力、信用の問題であります。この資力、信用の問題にからんで驚くことには、この広島タクシーはどこにこれだけ大きな資力、信用があったのかということを疑わさるを得ません。会社設備に至りましては車庫すら満足に持っていないのです。そして広島駅前の構内広場を車庫に充てて、駅前広場を独占しておるわけです。こういうような行為は私は非常に遺憾な行為であると思います。国鉄当局もこういうような一業者に公衆の、たといそれが鉄道の構内であるといたしましても、これは公衆の便益に供すべき場所でありまして、一、二の業者にそういうものを独占的に使用を許可させるものであってはならない。仏島地方におきましてはこういうような行為については、これは極端に言えば駅長との間にスキャンダルがあるのじゃないか、こういうような疑念を持っております。また陸運行政におきましても、現局長を非難するより前に、今までの二代、三代前にさかのぼりまして、その陸運局長に対しまするあらゆる疑念を持って見るだけではなく、非常な非難をいたしておるのであります。私は陸運行政上から見ましても、こういうような地方民の非難、疑念というものが存在することを非常に遺憾に思います。そこで、国鉄の方も見えておられるようですが、こういうような広島の駅前の広場の取扱いについてどういうふうにお考えになっているか。少くともこのように一業者に独占的に使用させたり、あるいは車庫がわりに広場を使わせたりというような、正常ならざる行為を今後もなお続けていかれるつもりでおるのか、それとも公平に各社に対して、その乗降客の取扱い、あるいは駅前における乗客待機のための駐車の公平な取扱い等を、名実ともに公共の広場として開放する意思はないか、こういう点について一つ伺いたい。  それから今申しまするように申請します場合に、資力、信用というものが一番大きな問題になるわけでございますが、この資力、信用ということはどういうことをさしておいでになるのか。またその資力、信用を調査いたしまするための基準は、どういう基準をお示しになって陸運局を行政指導せられておるのか。この二つについては地方において非常な疑問を持って見ておりますが、これをどういうふうにお考えになっておるか。また代々の局長に対しまして非常な非難を浴びせておりますが、その原因調査せられたことがあるか。今後そういうふうなことがありといたしまするならば、これらについてどういう措置をとって行政の権威を保とうとせられるか、お答えを願いたいと思います。
  111. 武内愼一

    ○武内説明員 今山口先生のおっしゃったことはごもっともであります。現地の問題でございますので、本社ではこまかいことを承知しておりませんが、広島駅の駐車能力は大体五十両程度と聞いております。ただいま三社にそれを振り分けまして構内営業の許可をいたしております。広島タクシーがその中で多いと思っております。どういうふうな基準で車両の割当をいたしましたか、至急に今取調べをいたしておりますので、調査でき次第御報告申し上げたいと思います。それから車庫がわりに使っているようなことはないように聞いておりますが、これも同時に調べたいと思います。
  112. 山内公猷

    ○山内説明員 免許いたします場合に、ただいま資力、信用という言葉をお使いになられたようでございますが、道路運送法第六条第四号で、「当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。」これに当るわけでございます。この事業遂行能力という言葉は、私どもの解釈では、資力、信用を含めましてもっと大きな広い概念ではないか、人的、財的な事業を構成する要素というふうに解釈いたしておるわけでございます。その中でも世間一般にいわれます資力、信用というようなことももちろん入っておるわけでございまして、それにはどういう観念的な要素があるかと申しますと、まず事業経営する財力の問題があるわけでございます。これにつきましてはハイ・タク事業でありますと、貯金通帳でありますとか、あるいは株券でありますとか、あるいは銀行の預金高証明書でありますとか、そういった一般的なものを提出させる、あるいは発起人の財産というようなものも提出させまして、その興業の場合におきましての参考資料として調べるわけであります。次に信用ということにつきましては、事業の経験——先般もこの点当委員会でいろいろ問題になったのでございますが、広く交通関係の経験があるかどうか、あるいはそういうハイヤー、タクシーであるならば、ハイヤー、タクシーそのもの、あるいは自動車事業というものを過去にやった人があるかどうか、これは社長でなくてもよろしいわけでございます。それに関連をいたしまして、その作ろうとする会社の人的組織というようなものも検討いたしまして、免許の可否をきめるのが現在のやり方になっております。  それから車庫の問題であります。車庫がないということでございますが、私心そのとまかい点につきましては、現地も知りませんし、会社の内情も詳しく説明を聞いておりませんので、確たることを申し上げるわけにいきませんが、免許いたします際にも、ずっと前はある程度そういうようになっておった時代もございますが、最近では増車をするにいたしましても、車庫の能力というものを確認いたしまして増車することになっているのでありまして、車庫のないということは大体ないのではないかと思います。私たちは現地を確認いたしておりません。先生は確認してのお話でございますので、こうだと言い切るわけにはいきませんが、建前といたしましては、認可の際には、たとえば五両増車をすると決定する際に、五両分に相当する車庫のスペースがあるということを確認の上やるのが、行政の通例になっております。
  113. 山口丈太郎

    山口 (丈)委員 車庫が全然ないというのではないのです。けれども二百五十車両全部収容し得るようなところがない。従って駅前で露天駐車をやるという、そういうような不備な会社設備しかない。こういうことになると、やはり私は資力、信用の点においては、これは少くとも欠ける点がある。適格性から申してもこれは欠陥がある。少くとも今申しますように、資力の点におきましても、社長の午前中の証言にありましたように、また従業員組合の代表が申しますように、会社増車をする場合に多額の資金を要するが、その資金はなかなか会社としては調達できないし、なかなか銀行も融資をしてくれないから、思うように資金が得られない。従って運転手に応分のいわゆる負担をしてもらって、そして車両とともに運転手を雇うという形態をとっているのだ、こう言っております。そのことがそもそも名義貸しの始まりであります。このことは資力欠如したる経営者に過当な車両増車を許したということが原因になるわけでございまして、こういう点からいいましても、これははっきりとしたいわゆる名義貸し一つの契機をここに与えている。行政上もそういう欠陥を認めざるを得ないというふうに考える。ですから、私はそういう点から憂慮しているわけです。  最後に、このような要素を持ったものでありますから、この際局長も、これがいわゆる名義貸し形態をとったものだ、言いかえますと、名義貸しは全然否定することはできないというふうにお考えであろうと思います。問題は今申しますように、この労使間の問題が解決しなければ、このような名義貸しの問題は全然解消して、新しく発足するものとは言えないと思います。でありますからこの労使問題の解決の成否いかんということが、とりもなおさずこの企業を刷新する成果を上げ得るか得ないかというバロメーターになる。もしそれが不成功に終るとすれば、私はこのようないわゆる名義貸しに対しては、いま一度行政監査を厳密にして、そしてそのような不当な営業を行う者に対しては、中央としても断固たる措置をとる決意を持たれない限り、地方の陸運局長もどうにもならぬところへ追い込まれる危険があるというふうに考えるわけですが、これについてその決意を一つ承わっておきたいと思います。
  114. 山内公猷

    ○山内説明員 広島陸運局といたしまして、改善命令を出しました以上、その実効が上らなければ、次の行政処分に出ることは当然のことであります。これらにつきましては十分現地の方でも考えておりますので、本省におきましても十分その処置を見守りたい、かように考えております。
  115. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はこの際大臣が見えましたから一つ伺っておきたいのですけれども、このような名義貸しの問題その他で、ハイヤータクシー業界は非常に不安な状態に置かれておりますし、法律で規定せられております以上は、その法律に従って企業の正常化のために、ただ行政指導によってそれを行うのではなくて、業界みずからがそれに従うような処置をとらなければならぬと思います。しかし遺憾ながら今日の事態におきましては、広島タクシーの問題だけでなく、まだ各所に名義貸しぎりぎりの営業を行なって不当に車両を増加し、あるいは他の会社を買収する等によって、ある地方においても、ほとんど独占的に他の企業を圧迫するような行為に出ておるものがあります。こういうようなことが、その経営者の良心に従って改善されればよろしいけれども、そういうわけには参らない。従って私は、これらについて一つ非常な決意をもって、正常な運営のために、大臣は行政指導を督励せられる義務と責任があると思いますが、大臣はこれについてどういう所信を持っておられるのか。  それから第二に私がもう一つお尋ねしたいのは観光バスの事業等についてでありますが、ある会社に対しまして、最近に十五台の観光バスを許可せられたというのであります。そしてそれはなお引き続いて三十五車両の申請を行なって、この増車を強く大臣に要求しておるようでありますが、大臣はこのような不当な要求に対してどういうふうに処置をせられるか。私はこの前の十五車両の許可についても、どうも了解に苦しむ点があります。大臣はこれらのことに関して、今後どういうふうに処置せられますか、一つそれもあわせて御答弁を願っておきたいと思います。
  116. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 自動車の行政は非常に複雑多岐でありまして、なかなか簡単に割り切ってやるというわけにいかないようでありますけれども、地方の陸運局、もしくは本省の当局者において、できるだけ筋の立った処置をしていきたいという努力をしております。いろいろな問題は広い範囲で起ってくると思いますけれども、それらにつきましても、ただいま局長からもお話がありましたような、できるだけ筋を立てて、弊害を少くしていきたい、こういうように考えております。また観光バスにつきましても、このごろ各地に、国内においても非常に観光が盛んになってきまして、それらの必要に応じまして、できるだけむだのないように、また地方の要求に応ずるように、やはりこれも筋を正していきたい、かように考えております。
  117. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 この観光バスの免許については、地名は申しません。大臣御存じだと思いますが、公聴会やその他所要の手続も踏まないで、ばっと許可された。どうも了解ができないということで、地方では非常な不満の声が上っております。こういうことは各地方の業者も納得し得るように、公聴会その他の手続が踏まれますように、どうかそういうような点を勘案せられて今後処理していただきたい。特に今申請されようとしておるものについても、聞くところによると申請者が非常に強硬な態度で運輸大臣に迫ったというようなことも聞きます。これでは正常ならざるような態度をもって許可する、いえば力ずくの許可ということになると思うのでございまして、こういうふうなことは私は断じて排撃して、強い信念一つ運営指導に当っていただきたい。  それから希望として申し上げておきますけれども、私は各地にこの広島タクシーに類似するような業者も多々あることを知っております。いま一度これらについては十分なる監査をせられて、適切なる行政指導をとられるように希望すると同時に、地方陸運局の情実もありましょう、いろいろ人情もからむことでありましょうけれども、今日の地方陸運局陸運行政は、きわめて紊乱したと言えば言い過ぎかもしれませんが、それに近い乱脈をきわめておるといっても差しつかえないと思います。これは中央の強力な指導によって、このように乱脈にわたるような行政を一日も早く清算するように努力してもらいたい。第二はこのような広島タクシーの問題は、一つのテスト・ケースともいうべきものであります。もし今後この労使問題が円満に解決しないままに営業が続けられるとすれば、どう強弁いたしましょうとも名義貸しの存在することは明らかであります。この場合不当なるこのような営業者に対しては、断固たる処置をもって臨んでいただきたい。同時に昨年十一月に二十六台の免許がされております。このような免許の誤まりということも認めてこれを取り消すとか取り消さないとかいうことは別問題でありますけれども、今後においてはこういうような処置については十分に勘案せられるように、行政指導をお願いしたいと思います。国鉄に対しては、今申しますように三社に対して駐車営業権を与えておると言われますけれども、広島には五十数社の業者があります。そうしてその業者が非常な疑念を持ってこれを見るというような事態にあることを遺憾に思うのでありまして、少くとも国鉄は国鉄の威信にかけても、そういうようなことのないように適切なる措置を講じてもらいたい。そうしてでき得るならば、やはり公衆の広場として、公共の施設にふさわしい措置をとられるように希望いたしたいと思います。  以上申し述べまして、私の質問を終ります。
  118. 淵上房太郎

    淵上委員長 濱野清吾君。
  119. 濱野清吾

    ○濱野委員 簡単にお伺いしたいのですが、問題の広島タクシー、これは公称資本は幾らになっておりますか。
  120. 山内公猷

    ○山内説明員 ちょっと資料を調べますから——資本金は五百万円です。
  121. 濱野清吾

    ○濱野委員 だれの名義になっておりますか。車両数はどのくらいですか。
  122. 山内公猷

    ○山内説明員 タクシーが百五十両、ハイヤーが百三両、計二百五十三両であります。もちろん名義は、会社社長が登録の名義人になっております。
  123. 濱野清吾

    ○濱野委員 そこでお尋ねしますが、先ほど同僚の松原、山口両君から、あらゆる角度から御質問をされて、局長はそれに答弁をされておるようでありますが、公称資本が五百万で、そしてそれだけの車両を持って、しかも昨年の十一月にさらに二十六両という事業計画変更もなさっておる。端的に言って、これはよかったか悪かったか。資力、信用の面からそれを一つ伺いたい。  もう一つは、法律が現存するのでありますから、道路運送法の第六条の的確なるそういう条件がなければ、資力、信用の面からいって法律はこれを禁止している。もう一つは、広島地区における乗客の需要供給が、果して二十六両を増車するだけの状態にあるかどうか。もしそれに反すれば、その処分というものは明らかに違法である。行政指導ということを同僚の山口君がおっしゃったわけでありますけれども、最近の行政処分については、まことに不都合な行政処分が行われ、また行われんとしておる。これは法治国家としては断じて許せない。たとい大臣がやろうが局長がやろうが、断じて許せない。そういう二つの点を、この場合はもう長々しいことを必要としませんから、的確に聞いておきたい。
  124. 山内公猷

    ○山内説明員 この場合に資力、信用か十分であるかどうかということは、増車をいたします場合に借入金の場合もありますし、あるいは自己資本の易行もございます。それらの資料がございませんが、広島陸運局といたしましてはこの場合認可いたしておりますので、適当であると認定してやったものであると思うのであります。こちらでやったわけではございませんので、はばはだ申しわけないのでありますが、当時の資料を持っておりませんので、そうお答えをする以外にないと思います。それから比重関係でありますが、ほかの都市に比べて少し多いということは先ほど申し上げたわけでございますが、それには先ほど来申し上げましたようないろいろの事情がございまして、結局こういう格好になったわけでございます。ただ現在の水揚げが三千円ちょっと出た程度であろう。今資料を見ますが、そういう状態で、たとえば二両くらいで経営しておるよりも五脚で経営になったためによくなった会社もあるかもしれませんし、一がいには言えない場合もあるわけでございます。直ちに違法であるかということにつきましては、私としては違法にならいのではないか。これは陸運局の措置を弁護するような言い分のように聞えるかもわかりませんが、当時の事情を十分明らかにいたしておりませんので、十分に調べた上でまたお答えいたしたいと思います。濱野委員 本省はこれを直接取り扱っておりませんから、資力、信用のこともよくわからない、しかし事業変更の行政処分をしたのだから、おそらく資力、信用というものは十分であったのだろう、こういうことでは答弁にならないですよ。実際わからないというならいいですが、そのときには事業変更の行政処分があったのだからそれは違法ではないだろう、こういうことでは局長、答弁にならないのじゃないですか。最高の行政上の局長なんですから、たとえば——今あなたお聞き取りにならなかったかもしれませんが、実際は地方の局長が処分したのだからわからない、しかし事業計画変更の処分をしたのだから資力、信用は十分であったのだろう、こういうようなことでは国会における答弁にはならないのじゃないですか。何となれば、その後次々に部品の購入も車両運転手に負担させたり、修繕費車両運転手に負担させたり、しかも車両購入代がなくて、運転手になる人の雇用条件一つとして頭金を納入させるというような状態であるにかかわらず、なおあなたが、不当でもなければ不法でもないというようなことでは、それはおかしいじゃないですか。いわんやそれが、地方の局長がやったのだから、しかも行政処分をしたのだから、事業計画変更の処分は適法であろうと思う、これでは答弁にならないのじゃないですか。それでは一体運輸行政というものはだれがやるのだ、そういうばかなことではしようがないじゃないですか。これは法律ですよ。大臣も動かすことはできない。わが党の総理だって動かすことはできない。それをあなたのような答弁で国会が通り抜けられるとすれば、一体日本の法律をどうするのか。日本の法律は君たちの法律ではないのです。国民の法律です。そういうけしからぬ答弁をされるのでは、運輸委員会ははなはだ迷惑です。私はこの場合決して討論しようとは思いませんが、この問題はあらゆる面において変な空気がただよっておる。輸送行政の面から批判される点は非常に多いのです。私は日本の陸運行政というようなものももう少し正常のものに戻したい。そうしてそういうわがままなことをさせないようにして、法に従って適正な処分を自信を持ってやったらよいと思います。そんな考え方で今になってから、処分したのだから適法であったろうと言うが、あとから出るものはこういう材料ではありませんか。それが名義貸しになり、車両主の争いになり、賃金不払いになり、不当競争になっておる。そんなことで日本の陸運行政というものは一体どうしてくれるのですか。日本の法律をどうしてくれるのですか。大臣はただいま同僚の質問に対して筋を通すと言っておる。この筋とは法治国家においては法律ですよ。てんやわんやの行政処分というものは行政官庁の長官のやることではないのです。法律に準拠して適正に処分することです。筋を通すということはそうでなければなりません。しかるに最近の運輸行政の免許とか、事業変更の申請というようなことについては、いろいろな話を聞いておる。また知っておる。それを法律を犯してもてんとしてそれを適正であったと思うと言われるようなことでは、私ども非常に困るし、地元の住民側も非常に困るのです。私どもは法律を尊重し、従っておるのです。この点について局長の心境を伺いたい。多くは問わない。
  125. 山内公猷

    ○山内説明員 御承知の通りハイヤータクシー事業につきましては、全面的に陸運局長に委任されております。本省にはその処置について逐一稟申してくるという建前になっておりません。それで初めに、地方局長の処分でありますし、当時の実情等明らかにしておりませんので、わからないということを申し上げたわけでございます。ただ先ほど来申し上げましたように、地方局長は処分をいたします場合にはいろいろの条件を見てやるべきであって、地方局長としては処分をしたのであるから、適法にやったつもりであろうという当りまえのことを申し上げたことがおしかりを受けたわけでございますが、私自身といたしましては、自分でやらないので責任がないとは申しませんが、その点を確認してないということを申し上げたわけでございます。
  126. 濱野清吾

    ○濱野委員 大臣に一言申し上げて、お答えを得たいと思います。先ほどの同僚に対する大臣の御答弁のうち、自動車行政はまことに複雑である、しかしながら筋を通していきたい、そういうようなお話ですが、その筋を通すということは、日本の国民が何人といえども従わなければならぬという法律に準拠して適切なる処分をする、こういうふうに私は解するのでありますが、大臣も多分そうだろうと思いますが、一言お答えを願いたいと思います。
  127. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 もちろん法律に違反するようなことはできょうはありませんけれども、行政処分の問題は法律の範囲内において、やはり実情を見てやるわけであります。主としては、従来のやり方でこうやってきてみんなが納得しているという線を重んじていく。それから新しい事態が生ずれば、その新しい事態を勘案していくというような生きたやり方をやるようになってくる。法律を犯すということはできようはありません。それは御了承願いたい。
  128. 濱野清吾

    ○濱野委員 それで私は安心したのでありますが、行政という言葉の面にかられて、てにをはを用いて法を少くとも犯すようなことがあっては断じていけない。いやしくも国務大臣にそういうようなことがあってはいけないと私は思っております。尊敬する宮澤大臣でありますから、そういうことは万々あるまいと思いますけれども、免許の事業は国民の利害に大きな影響がございます。あなたの好みや、少くともあなたの好き好きで変な行政をして、そうして形式を整うというようなことがあっては断じていけない。これは大臣笑いごとではありませんよ。あなたは大臣かもしれませんが、法治国家の国民でありますから、われわれは法律は同じように尊重しなければならぬ義務がある。大臣だって人民側のわれわれと同じですよ。この問題については十分私どもも注意をいたしますし、大臣もその点は御留意あらんことをこの場合に切にお願いしておきます。
  129. 淵上房太郎

    淵上委員長 中居君。
  130. 中居英太郎

    ○中居委員 時間もだいぶ経過いたしましたから、私は簡単に運輸大臣並びに国鉄当局に、先般の政府の方針である財政投融資の繰り延べに伴ういろいろな問題について、お尋ねを申し上げたいと思うわけでございます。  御承知のように先月の二十六日、政府は国際収支改善緊急対策の一つの方向といたしまして、本年度の財政投融資計画の大幅な繰り延べを決定いたしまして、これはすでに閣僚会議の議を経まして、各省に通達が発せられておると私は聞いておるのであります。御承知と思いますが、当初国会を通過いたしました本年度の財政投融資額は四千九十一億円であります。このうちの二〇%に相当する約八百億円を繰り延べまして、中小企業対策にさらに百五十億を増加いたしましたが、差し引き六百四十九億の当初計画の一六%に相当するような大幅の繰り延べを政府は実行しようとしておるのであります。私はこの財政投融資の繰り延べの全般のことにつきまして、当委員会において論議することは当を得ないと思いますから、運輸関係に限定せられたものについてお尋ねを申し上げたいと思いますが、ただここで私どもが考えてみなければならないことは、本年度の予算審議に当りまして、政府は、世界の経済は今後も好況を続けるのだ、そしてこれと並行してわが国の経済も好況をたどる、こういう前提に立ちまして、経済の拡大のための投融資を大幅に見込み、そうして国家予算の一兆一千三百七十四億円のいわゆる拡大均衡予算というものを提案なされまして、国会を通過いたしたのであります。さらに貿易会計におきましても、片道貿易三十二億ドル、これで十分外貨収支はとんとんになる、こういうことを強弁なされておったのであります。しかし私どもは政府あるいは与党のそういった見方と全然立場を異にいたしまして、世界の好況はその好況の条件がすでに出尽しておるのだ、そうして世界経済は下降線をたどる。この影響を日本経済も当然受けるから、そういう前提に立って予算を組みあるいは外貨予算を勘案し、財政投融資も考慮すべきである、こういうことを私どもは主張して参りました。こういう与野党の論争によりまして本年度の国家予算は成立いたしましたが、幸か不幸か私どもの予想が的中いたしまして、そうして国際収支は極端に悪化いたしました。こういう情勢に政府はあわてまして、日銀の公定歩合を二度も引き上げ、そうしてさらに今度は財政投融資の一六%の繰り延べ、こういう処置に出て参っておるのであります。この財政投融資のいわゆる政府案というものを見ますと、国鉄は百億円繰り延べするのだということが報ぜられております。そのほかに預金部運用資金から運輸関係で融資を受けるものは、日本航空に対する十億円もございますし、また帝都高速度交通営団の地下鉄の建設の資金も二十五億これから出ることになっておるのでありますが、今回のこの六百四十九億繰り延べによるところの運輸関係に及ぼす影響について、大臣から現在の状況というものを私は承わっておきたいと思うわけであります。
  131. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 ただいまのお話のうち、政府並びに私どもの与党と野党の諸君との全体に対する見解の問題は、私は今中居さんのお述べになったことに直ちに御同意申しかねますけれども、それは別個として、運輸関係だけについて申し上げます。政府は、輸入が非常に大きくなってきた、輸出もしかし減ってはおりません、やはり伸びておりますが、輸入の伸び方が大きくなってきた、これが国内経済及び輸出入バランスに及ぼす影響を考慮いたしまして、早手に適当な処置をしようというのが今回の措置でありまして、世間では閣議において一五%の繰り延べを決定したように伝えられておりますが、これは大蔵大臣もしばしば言明しておるように、まだ決定はいたしません。政府の案でもなく、大蔵当局として金融の面から見ればこういう処置をしたいのだという申し入れがありました。そうして大体の線はやはりそういうふうに行ってよかろう、しかしながら各省関係のことについては、各省それぞれ折衝してきめる。ことにその場におきまして私は、輸出入のバランスからきた問題だから、輸出入の、ことに輸出に寄与できる問題は、これからはずさなければいかぬ、それもいずれも了承いたしまして、個々の折衝に譲る、こういうことであります。その次に大蔵省からまた持ち出してきた数字が、新聞に出ておりますのが、今の百億円という問題が加わっております。開発銀行の六十億とかいうものが加わっております。開発銀行の六十億のうち、運輸省の関係に幾らくるかというと、ただいまのところではほとんど参りません。事実上数字の上で幾らか、五億や三億の操作はありますけれども、仕事の上に差しつかえあるようなことは一つもありません。たとえば計画造船の四十一万トンは、一つも繰り延べません。そういうような線であります。御心配の地下鉄の分もやはり同様であります。国鉄に関する限りは、百億なんというものはとんでもないことで、これは十億か二十億というものを事実上繰り延べられるかということが実際の問題になってくると思うのであります。けれどもただいまのところは、大蔵省の申し出についてはただ承わっただけで、私どもは交渉もしておりません。私は交渉すべきでないと思う。何となれば、大体政府の目的は達しておるのです、私の見るところでは。これはかけ声だけで達したという意味ではございませんが、やらなければならぬ部分もありますが、大体達しておる。金融の引き締め、その影響すこぶる強く響き過ぎました。それから信用状の発行も、御承知の通り六月になって大体八千五百万か一億円近く減少しております。そういう面を見ますと、すでに政府の目的は、大体ここで引き締めておるので、場合によってはこれを緩和する方法をとらなければいかぬのじゃないかとさえ、私一個は考えております。従って国鉄に関する限り、もし国鉄の輸送計画、今日五カ年計画を六千億円で皆さんの御同意を得てやりましたけれども、私は今日の現状を見ますと、なぜもう三年ほどこれを早くやらなかったか。すでにおそきに失しておって、間に合わないのです。至るところ滞貨があって、これが貿易に及ぼす影響は甚大であります。従ってこれを繰り延べるということは、日本の産業に対する根本的な考え方の誤まりで、従って私は国鉄に関する限りは、そういうことをいまだ考慮する段階に至っていない、こういうことを事務当局に言って、大蔵省の折衝に対しては、まあ承わっておきましょうという程度になっております。
  132. 中居英太郎

    ○中居委員 今の大臣の答弁は非常に頼もしい答弁なんですが、私どもの承わっておる範囲内では、自治庁の地方債の問題について何がしかの論争があったが、それ以外は大体大蔵省の原案というものを政府は推進をする、そうして閣議も暗黙のうちにこれを了承しておる、こういうことが巷間真実となって伝えられておるのですが、あなたの言われる通り、まだ海のものか山のものかわからぬということなんですか。それは国鉄に関してだけですか。全体的なこの八百億円の繰り延べに対しての見通しですか。その点を承わっておきます。
  133. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 各省と大蔵省が折衝をしてきめることになっておりますから、他の省に関する限りは私は存じません。けれども運輸省に関する限りは、私はその席においても念を押しております。また大蔵大臣とも私は直接話しております。国鉄の百億なんということは夢のようなことで、十億、十五億繰り延べるという問題でさえも、なかなかそんなことを簡単に承服できる問題じゃない、こういうふうに考えておりますが、また事実、これはほかの閣僚の話ですが、結局三月三十一日に公債を発行するか、四月一日にするかという問題も出てくるのじゃないかというような冗談も言っておりましたが、国鉄に関する限り、私はそんなきわどいこともない。すでに五十億か六十億出しております。従ってこれを、幾らかやはり大きな政府の線が出たのですから、それは延ばせるものなら今月発行するものを来月に延ばそうくらいのことは、その手かげんはあります。けれどもこれを打ち切るなんて、それは大蔵大臣も打ち切るという言葉を閣議において一切使っておりません。スロー・ダウンする。打ち切るのじゃないが、スロー・ダウンする、こういう言葉によって了承を得ております。しかしながらこれは実際になると、大蔵省との折衝になると、事実上打ち切ることになりますから、幾らスロー・ダウンでもワクをきめれば打ち切ることになりますから、それは困るので、国鉄に関する限りは、この五カ年計画を繰り上げてやらなければならぬと思っておるときに、とうていそんなことはできません。なお今日滞貨が山積して、非常に荷主に迷惑をかけておる現状でありますから、これは日本の産業の——私はこんな詳しいことを閣議では申しませんけれども、具体的な話になったら、そんなわけにいかないということははっきり持っていますから、私に関する限り一向心配なしに、私はぼやっとしておるわけであります。
  134. 中居英太郎

    ○中居委員 国有鉄道の五カ年計画は、しりに火がついたような緊要の立場に追い込まれて、そうして早急にこれが実施をはかって、輸送の解決をはかっていかなければならぬことは御承知の通りです。従いまして今本年度の事業計画一千六十九億の中から百億円削減されるということは、この計画自体に根本的なそごを来たす、従ってこれはあくまでも運輸省、国鉄としては承服できない。こういう大臣の答弁でございます。しかし本年の予算審議の際大臣から申されましたが、わが国経済のネックになっておるものが電力と輸送と鉄鋼である。これはだれも否定できないのです。そういう考え方に立ちまして本年度の四千何がしという財政投融資がきまっているのです。従いましてどの一つを取り上げてみましても、繰り延べて差しつかえないのだ、経済全体から見て支障がないのだ、こういう項目は一つもないわけです。電源開発関係の四十億の削減にいたしましても、これは電力関係に言わしむるならば、鉄道以上に重要な問題だと思うのです。従いまして各省々々が、全部そのような立場々々を主張いたしまして、経済の再建のためにどうしても削減できない、こういう宮澤運輸大臣と同じような態度をとったら、この六百四十九億の繰り延べ投融資というものは一体どうなるのですか。あなたの言われる通りむしろ緩和しなければならぬような情勢になっておるのだ、こういうようなことで済ます見通しが、あなたは一体お立ちなんですか。私はただ単にそういった感情の問題や削減されては困るというようなことで、国鉄の計画自体に支障がなくこれが推進できるとは思っていないのです。もっとこの問題を検討いたしまして、実際の見通しはこうなるのだ、従って五カ年計画もこれだけ延期しなければならぬとか、こういう面はあるいは縮小していかなければならぬじゃないかというような、もっと真剣な検討を今する必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  135. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 これは全体の問題になりますが、全体の問題に関しましての私の考えだけを申し上げます。御承知の通り日本全体の一カ年の投融資その他は、民間のものが一兆七、八千億になっております。従って政府のやる六百億を延ばすという問題は、六百億だけを延ばしたのではほとんど意味がないわけであります。六百億延ばすことによって一兆七、八千億の問題のうちのどこへ響くかというと、それは大きく響いてきておる。たとえば建築にしても、政府は外務省初め十三、四億延ばすときめました。この裏には民間の事業が、私どもは正確な数字を知りませんけれども、大蔵大臣の話によるとこれに伴って数百億延びる。そんなに延ばさないのもありましょうが……。そういうような点で全体の経済の動きが政府のこの処置によって進んでおるのですから、それがあまり進み過ぎることはどういう影響を与えるかということで、私はこれは薬が少しきき過ぎたのではないかと思っております。しかし先ほどからお話のあった日本経済が下り坂になっておるという点も、経済は波を打ちますから、小さな波には当るかもしれませんけれども、この波は打ちながら上っていくと私は思っておりますから、日本経済は決して下りではない。波を打ちながら上っていくという考えのもとにわれわれはやっておるわけであります。従ってそこは根本的の意見相違があるかもしれませんけれども、これはことしだけじゃない、三、四年先を見なければ、あなたとの話の上に結論は出てこないと思います。そこで、今日の影響というものは相当に民間に響いておりますので、従って政府の一五%に当る削減のうち、これは全部ができないことはわかり切っていますが、幾らかやっていくとしても、たとえばそのうちから百億の国鉄の分を全部やめたとしてみたところが、経済の動きとしては御承知の通りもうすでに一億ドルからの輸入の減少をまのあたり見ておりますから、そういう大勢からいけば、この行き方をそんなに無理に押さなくてもいいじゃないかと私自身は考えておりますが、政府としてはあの方針は一応認めております。けれども実際問題としては個々の折衝、こうなっております。
  136. 中居英太郎

    ○中居委員 大臣は、波動を打ちながらわが国の経済は上昇線をたどっておる、こういう見解のようでして、私は大臣と経済論争を行うつもりは毛頭ございません。ただこういうことだけは言えるのではないかと思っております。資本主義経済のもとにおいて経済好況のあとには必ず不況がくる。これは資本主義経済の原則なんです。ただ今日の国家権力と申しますか、こういうものの力によって、過去において急激に来たような不況というものは来ません。しかしこの不況というものは押え切ることができない下降線をたどってくるのではないか、こういう見通しを私ども持っておるわけですが、しかしそのことはともかくといたしまして、具体的な問題について大臣でも鉄監局長でもけっこうですが御答弁を願いたいと思います。  大臣のお話では百億の繰り延べは仮定の問題だ、こう申しております。しかし私はこの問題をもう少し掘り下げて検討してみたいと思いますが、本年度の国有鉄道に対する投融資は、資金運用部資金から八十億円、それから鉄道債券が二百十五億円、合計二百九十五億円です。今大蔵省の原案の通り百億繰り延べされるとすれば、運用部資金に対しては何億円、債券に対しては何億円、こういう具体的な大蔵省の原案というものをお示し願いたいと思います。
  137. 權田良彦

    ○權田説明員 その点は先月の末でございますが、いわゆる大蔵省原案として事務的な数字を私どもの方に出して参りましたのは百億ということで、御指摘のいわゆる一般の公債による二百十五億と、預金部資金八十億の内訳の数字を示してきておりません。大体私どもの考え方で、この二百十五億の方の百億という意味だと打ち合せの上では了解しております。従いましてこの資金運用部資金の八十億には手がつかない、これはただいまのところはっきりしております。一方今御指摘の二百十五億を百億減らすかどうかという問題は、大臣が申された通りでありまして、事務的にも大蔵省はこれの細目案を示しておりませんし、私どもの方も現実の公債発行はすでに御承知の通りに第一・四半期で五十億済んでおります。これは金は集まっております。また今月遠からず十億ばかり出すことに話を進行させておりまして、従いまして具体的な資金計画については、この全体のワクの中で目下折衝しておりまして、減らす前提においては折衝いたしておらない、これが今日の事務的な姿でございます。
  138. 中居英太郎

    ○中居委員 国鉄に対しても伺いますが、国有鉄道は大体今の運輸大臣のお話で、財政投融資の繰り延べに対する方向というものはおわかりだと思いますが、国鉄ではこの大蔵省の原案が発表になりましてから五カ年計画についての第一年度、本年度の事業計画については何ら検討を加えておりませんか。さっき大臣のお話ではスロー・ダウンでやっていくのだ、こういうことですが、本年度の工事推進に当りましてはそういうことが影響を及ぼしておりませんか、その点を御答弁願いたいと思います。
  139. 武内愼一

    ○武内説明員 財政投融資の問題につきましては、大蔵大臣、運輸大臣の御答弁の通りでございまして、国鉄といたしましては運輸省の大臣の方の御方針がきまりませんので、事務的にはいろいろこまかく検討はいたしておりますが、もとの方がきまりませんので、とりあえずは五カ年計画について変更はない、第一年度のままスタートいたしております。
  140. 中居英太郎

    ○中居委員 先ほど権田局長から答弁がありましたが、大蔵省原案の百億は、運用部資金にはあらずして、債券二百十五億マイナス百億だ、こういうことですが、私はこれが実施されたら非常に大きい問題が起るのじゃないかと思っております。たとえば万が一国有鉄道に対するところの財政投融資の繰り延べが五十億ないし百億あったといたしましても、主としてその対象になるのが経済効果がおそいといわれる新線建設の費用ではないか、新線建設のセーフではないか、そうすると大体今日の五カ年計画に基く輸送力の増強と申しますか、近代化と申しますか、こういうものにはまあまあ影響は少いのではないか、こういうふうに私どもは今日まで考えておったのです。ところが大蔵省の原案の百億の繰り延べは鉄道債券と  鉄道債券というのは百、パーセント輸送の増強と近代化のために使われる金なんです。そうして全然干のつかない資金運用部資金の八十億のうちの七十億、ほとんど大半が新線建設のための費用なんです。これはひもつきの費用なんです。そうすると、ただ単に百億減ったから工事に対して狂いができた、こういうことで済まされないと思う。近代化のための正味の白億が削られるということは、私は五カ年計画に非常に大きな蹉秩を来たすと思うのですが、それらの点について鉄監局長の意見を承わりたいと思います。
  141. 權田良彦

    ○權田説明員 お答え申し上げます。国有鉄道の五カ年計画というものは、御指摘のように、また大臣も申し上げましたように、これは基礎産業として初年度のスタートを切っておるのでありまして、もしかりに今百億というものを切る——こういうことは私どもは考えておりませんけれども、もしかりに百億を切れば、これは御指摘のようにもうすべり出しがついておりますから、継続工事は切れない、あるいは緊急取りかえ工事、あるいは保安工事その他のものは切れない。また輸送力増強に即効薬と申しますか、ちよっと有効長を延ばしたりすれば、その線路全体が生きるというようなものは延ばせない。もしかりに延ばせるものがあれば、これから新たに計画して新たに契約してやる、いわゆる新規工事というものにしわ害せが来る。もう現在五カ年計画は新線建設をも含め、電化工事計画を含め、また一般諸改良を含めて、そういった部面はきわめて先生御承知の通り少いのであります。従いましてかぶるところが千億の百億ということにはならない、非常にえらいことになるのであります。それが私がすでに申し上げましたように、これを全体をいわゆる切るということは考えていないのでありまして、また実際の資金計画についても、前に申し上げましたようなことで進行しておるのであります。ただここでちょっと申し上げておきますのは、預金部資金の八十億と一般公募債の二百十五億との関係でございますが、これは工事勘定では資金のリソースとして区別があるだけで、使い方には色はついておりません。従いまして、預金部資金八十億がそのまま建設費の七十億になるものでもございませんし、二百十五億の公募債がそのまま改良に回るものでもございません。これはいわゆる資金リソースのワクとして、これがもしかりに減れば、今言ったように非常に大きな影響がありますので、もちろん私どもとしては今これをしさいに検討はしておりますが、今日のところこれを直ちに何億切るということは考えておりません。
  142. 中居英太郎

    ○中居委員 局長の言われるように、預金部資金の融資という風のには私はひもはないと思っております。ただ実際の問題といたしまして、預金部から国鉄が借入している金額というものは、常に新線建設のその年の工事費に該当する金額が来ているのです。内容的には私はひもつきだと思っているのです。ですがもしも万が一、鉄道債が百億切られるというふうな事態が生じた場合には、この八十億のうち七十億を百。パーセント新線建設のために使う方針であるのか、あるいは今あなたが言われましたように、政府の了解を得て、これを鉄道債券と同じ性質の近代化五カ年計画のうちの輸送力増強の面に振り向けることができるかどうか、そういう点の大蔵省との折衝の経過と申しますか、そういうものをもう一。へん承わっておきます。
  143. 權田良彦

    ○權田説明員 もしかりに、切るということは大へんでございますので、これはワクとして切るわけにはいかぬというのがわれわれの基本的な線でございまして、ただ実際問題、月々の公募債の発行計画というものは逐次打ち合せてやって参るわけで、先ほど申し上げましたように、近く十億というものを発行いたさせたいと思っております。従いまして、大蔵省と私ども事務の折衝のきょうまでの段階は、今中居先生のおっしゃった段階にまで工事別に行っていないのです。従いまして、私どもはこれはそういう発行計画の若干のいろいろな政策的な考慮はいたしますけれども、工事計画及びワクとしては、現在の計画をくずしておらないのであります。従ってもしかりに万が一何らかの資金リソースが発行遅延によって獲得ができなくなりました場合があるといたしまして、これは直ちに預金部資金は七十億建設費にまる取りということは考えるつもりはございません。これは全体の工事計画をにらんで、どういう程度のスロー・ダウンが可能であるかを全体的な見地から考えたい、資金源としてはその使途については両者同一に取り扱いたい、かように考えております。
  144. 中居英太郎

    ○中居委員 もう一つ武内さんにお伺いします。あなたでは知っておられるかどうかわかりませんが、さっきのあなたの御答弁で、国鉄では大蔵省のそういう内示があったにもかかわらず、五カ年計画の初年度の計画というものは計画通り推進しておる、こういうことであります。そこで伺いたいことは、この預金部資金の八十億のうち七十億に相当する新線建設に対するところの工事費の配分はどうなっているのですか。もしもそれがすでに予定通り決定しておるとしますと、百億円繰り延べされた場合に、その八十億円を近代化のために、あるいは輸送力の増強のために振り向けるということは、実際問題として不可能になるのですが、新線建設に対する本年度七十億の工事費の配分は現存どうなっているのですか。どの程度決定しているのですか。
  145. 武内愼一

    ○武内説明員 担当常務理事が参っておりませんので、私でははなはだ資金の計画についてはわからないのでございます。いずれまた調査いたしましてお答えいたします。
  146. 中居英太郎

    ○中居委員 権田局長にお願いしておきますが、その辺を国鉄とよく打ち合せて、万全の態勢をとってもらいたい、私はこう思っておちます。  それから最後に申し上げたいことは、私は心配しておりましただけに、先ほど来の大臣の答弁を聞いて、私は非常に明るい気持を持っておるのですが、ただ最後に一言申し上げておきたいことは、御承知のように本年度二二%の運賃をアップいたしました。その場合に先ほど大臣も言われましたように、経済のネックの大きな一つ原因がこの国鉄の輸送力の狭隘にある。従ってこれの大幅な増加をはからなければならない。そのためには政府も金を負担する。しかし採算ベースに乗らない改良事業というものもあるから、利用者にも相当の負担額を負担してもらわなければならない、こういうことで二二%の運賃アップを御提案なさったのです。ところがもしもこの大蔵省の原案なりあるいは政府の考えておられる百億円の繰り延べというととができますと、私はこれは国民に対する非常に大きな公約違反、裏切りではないかと思っているのです。現に本年度一千六十九億ですかの第一年度の工事勘定のうち、六百五十億円は運賃値上げによるところの増収分なんです。そうしてわずかに三百億足らずが政府の投融資なんです。そうしてしかもこの三百億というのは、二百九十五億というのは、昨年と同額の金額なんです。昨年の投融資は国全体で三千四百四十五億です。そのとき国鉄はその中から二百九十五億円の投融資を受けておるのです。ところが政府は経済が拡大するからということで、本年約六百五十億の財政投融資の大幅増加を予算化したのです。その結果が予想と相反して、経済が逆転いたしまして、その増加した分を差し引いております。従いまして国鉄はその増加した分の恩典には一銭も浴さないで、増加したことによって経済に悪影響を与えたという全体のしわ寄せの百億だけが、国鉄に現在寄せられているのです。従いまして私はどういう観点から見ましても、この百億というものの繰り延べは絶対大臣は阻止してもらいたいと思うのです。そうして計画通りこの政府の三百億なら三百億の投融資も加えて、そうして国民が苦しい中から負担している運賃値上げの分と合せて、五カ年計画六千億の事業を必ず推進実行してもらいたい、こういうことを申し上げまして、私はこの問題についての私の質問は終りたいと思います。
  147. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 関連して。時間がだいぶおそいですから、簡単に私は大臣にお尋ねしたいのです。この前、いわゆる労働組合の春季闘争というもので、大量の処分者が出て、解雇者とか行政処分の者がたくさん出ておる。私どもはこの処分のやり方につきましてはもとより反対をし、その不当を鳴らしておるわけです。それは組合のそれぞれ自主的な立場で、法廷闘争なりまたは実力行使においてやることと思います。だがしかし私は一方において、処分者を出すことに反対をする一人でありますが、組合処分だけはとらしたが、国鉄当局者側には何らの責任者を出さなかった。ああいう紛争、大問題を起しておいて、当局には何らの落度はなかったか、こういうことを思わざるを得ません。こういう点については、国鉄の当事者としてこの責任の所在を明らかにする意思表示なり、あるいはまたあなたは主管の大臣としてこれをどういうふうに扱われんとするか、こういう点、一つあなたの御心境なりその成り行き、経過というものについてお漏らし願えれば、この際願いたいと思うのです。
  148. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 との事態ができましたことについて、国鉄総裁は、御承知かもしれませんが、国鉄の職員に告ぐ自分の心境をも広く披瀝しておりました。その中に、こういうことの起きたことは実に残念なことであり、私文句をすっかり覚えておりませんが、総裁は何か自分の不徳のいたすところという言葉まで使っておられたように思いましたが、やはりそういう事態を起したことに対して、徳義上残念で困ったことだから、そういうことについて、一種の国民に対するおわびの気持というものは大いにある。これは私自身もそうです。運輸大臣としてもその気持はあります。しかしこの処分の問題は、これは法規に違反しておる者を処分する。国鉄総裁以下もこのたびのことについて何ら法規に違反したことがあるわけではありません。ただいまお話のような、この事態に対して、紛争が起きたから一方を処分して一方をそのままにする法はないじゃないかというお話もありますけれども、一方の処分ということも、この紛争の起きたこと全体に対する片手落ちの処分ではなくして、やむを得ざる法規に違反した者だけを処分しておるのです。処分をされない人々もたくさんあるわけですから……。なお国鉄当局の処置に関して、この処置に法的に違反しないでも、その公共企業体の経営者としてのあり方に不当な点、適当でない点があるというならば、これは考えなければならぬことでありますけれども、私は今日までの国鉄総裁以下国鉄幹部のこれに対する処置は信頼をしておりまして、従ってこれをただ紛争が起きたから、片一方をやれば片一方もやるというような簡単なことでやるべきものではないのではないか、こういう心境でございます。
  149. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 私は冒頭に申しましたように、処分者を両方出せと言うものじゃない。私は処分者はない方がいい。けれども、それでは今までの経過というものをながめまするときに、一方においては仲裁裁定を完全に実施せよということを主張して、片方はそれは見なければわからないというところから起きた紛争なんです。いわゆる給与問題から起きている。そうすると、今どっちも言いつのっておる。組合側が悪いと政府は言い、組合側当局が悪いと言う。国民はだれに言えばいいのです。国民は大きな輸送の混乱を来たされて、足を奪われて、その不平をどこに訴えるか。あるいは政府はそれは組合が悪いから、法律に違反したから処分したのだ、あいつはけしからぬやつだ、これで溜飲を下げて下さい、こういうことに受け取れたとしても仕方がない。私はそんなことじゃない。こういう迷惑をこうむった国民はだれに訴えるか。政治的に申しますなら、こういう事態を起した政府に重大な責任がある。事を起した当事者両方の責任はもとよりであるが、一番いいととは、剣の至高の道は抜かざることです。抜かずして解決することが至妙の剣なんです。こういう事態が起きたから処分するということは下の下なんです。その点で岸内閣の労働政策は一定した労働政策というものがない。行き当りばったり、その日その日の思いつきなんです。これは重大な現内閣の労働政策の欠如を物語るものであると私は思う。同時にこういう事態を受けた国民は、だれに訴えればいいのですか、このことを私は運輸大臣にお尋ねするのであって、国鉄総裁自分の不徳のいたすところである、あなたも監督の大臣として責めなしとしないという気持は、私も了とするけれども、国民はそこまで納得しておるでしょうか、納得しておらぬと思います。今度の問題について、確かに組合に行き過ぎがあったから、組合に対してあなた方が責任を求めるが、同時に一体当局者に責任一つもなかったか、私はたくさんあると思う。三月二十三日のできごとだって、当然払うべきものを払わない。三時間か四時間後に払っておる。なぜその前に払わなかったか。それさえやっておればああいうことはない。だから法律に違反したから処断するというだけで解決するというのは、一つの労働行政もなければ、政策もない。ですからそういう事態については、組合にも大きな反省を求めるとするならば、当然国鉄の当局も、監督官庁たる運輸省も、政府も、率直に国民の前にその非を謝するだけの用意と熱意がなければ、これはいつまでたっても言い合いっこ、つのりっこです。こんなことでは迷惑をこうむった社会国民というものはどうにもならない。やはり泣く子と地頭には勝てない、黙ってしまわなければならぬというところに、日本の政治の暗黒さがある。私は当局者にもその責任を求むべきではないかということをあなたに問うておるわけです。こういうことなんですが、いかがでしょうか。
  150. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 今岸内閣に労働政策がないと言われましたが、これはなるほど見方によっては、非常な広範な高いレベルから労働問題というものを考えれば、岸内閣にないというよりも、今日独立後ようやく立ち上ってきた日本には、まだそれは乏しいということは私は言い得るかと思います。たとえば国鉄の労組の問題につきましても、なるほどもっと手が届いておれば、国鉄職員の教育というものをもっとうんとやって、そうして高いレベルに国鉄の職員が上っていっておれば、ああいうことはやらなかったと思うのであります。ですからそういう点において労働政策に欠くるところありということは——私もあなたのお考えに対して、いやそうじゃない、これでいいのだということは申しません。これは私一個の考えですが、できるならば国鉄に一つ職員の教育部というものを設けて、広く教養を高めて、日本経済の実相をよく把握させて——これはちょっとほかの一般のことになりますが、あなた方もよく私どもの立場も理解していただけると思うから申し上げますが、私は今の労働運動というものは、総評にしてもその他にしても、戦争前の世の中を見た労働運動で、今日の大きな前進しておる日本経済というものに目をふさいだ運動だと思っておる。それですから非常におくれた考え方、このおくれた労働組合一つ教育して、これは国鉄労働組合ばかりではない、全体の日本の官吏、公吏、あるいは国鉄職員、他の企業の人もそうですが、まず政府関係のものを教育して高いレベルに持っていくということが、大きな労働政策であるということも考えておりますけれども、まあそれはこれからやることで、これからそういうところへわれわれは手を染めていきたい、こういうふうに考えておる次第でありまして、今のお話の過去に起ったこの事態だけでなく、これから一つ皆さんの御協力も得、また御指導も得て、われわれは労働問題を高いレベルにおける日本の産業と生活の向上の上に、一つ足並みをそろえていきたいというような考えを持っておりますから、これだけ申し上げておきます。
  151. 池田禎治

    ○池田(禎)委員 国鉄の総裁、副総裁もおられぬようですが、現にきょう配付されたもので、これはさっき副総裁から説明があったわけですが、国鉄労働組合が大会を開いて、解雇された者がまた首脳部になった。これについての扱いを労働省に国鉄が問い合せた。労働省はこれに対して見解を与えておる。もしこの通り法規上でやるなり、もう今からやっておかなければならない。それをやったら事実問題としてはえらいことになる。そういう事実がある。こういう便宜的なことが行われておるこの事態というものは、やはり労働運動の日本の限界がこんなに低いとしても、現実において当面しておる問題は当面しておる問題として処理していかなければならない。今大臣は労働運動の日本の姿というものを言われたが、戦前には日本には労働組合はないのです。あったところで十何万、それも法律的に何ら認められておりません。当時における労働組合というものは組合とは言えません。警察が一たび警察権を発動すれば簡単に解散させられて、留置場、監獄へ投げ込まれる。そういう時代の組合というものは、正常な姿の組合とは認められない。よくても悪くても日本の労働組合が正常な形において存在し得るのは戦後の姿である。その戦後の姿がもしかりにあなたの言っておるがごとく間違っておるとするなら、間違っておるものをそのままにしておいていいとは言えない。直していかなければならない。それはあにひとり政府ではない、国民も社会も政党も政治家も、すべての国民が相寄って正しい方向に育てていかなければならない。これが国家社会に及ぼす影響が大きいからというので、あなたのおっしゃるような教育も一つの方法かもしれない。教育していく。けれども国鉄の当事者がこういう事態を起して済まなかった、私の不徳のいたすところであると言うだけでてん然としておる姿は認められない。私の見解をもってすれば、少くとも主管大臣たるあなたが、厳重な国鉄に対するところ、の反省を求めなければならない。それはどういう形で反省を求めるか、国鉄の首脳部を首切ること、更迭することだけがその反省を求めることとは思っておりません。しかしなるほどと国民が納得するだけのものを示さないということは片手落らだ。片方は法に違反した、片方はしてないのだからということは理由にならない。あなたの答弁はふに落ちない。明らかに大国鉄がこういう事態を起しているということについては、十分な反省を求めるだけの根拠がある。そのことは今ここであなたにこう言いなさい、こうやりなさいとは求めませんけれども、これは当然考えてしかるべきものだ。組合が悪かったかよかったかは国民の大きな批判の的になっておる。ところが一方における当事者は、おれたちは法によって処断するだけだ、おれたちは法には違反してないのだからというてん然たる態度をもってやったのでは、この秋あるいは来年の春に闘争が起きて、おれは法に違反しておらぬからというので毎年々々同じことを繰り返すことになり、それによって迷惑をこうむる国民はどういう形で訴えたらいいのか。私は処分の方法には反対だ。何十人首切り何千人の停職や減給をいたすという過去のことを言うよりも、これからこういうことが起らないようにする道を講じなければならぬ。このことに対して国鉄なり政府なりのとった態度はきわめて無責任な態度である。私ども微力ではありますが、今回は社会党があえて火中のクリを拾って出たのです。本来ならば労使間の問題は、第三者はいかなる問題でも容喙するのは不当で間違いであるが、国家、社会に与える影響の甚大なるにかんがみ、私ども微力なりとも、力足らず及ばずといえども、努力をしようと思ってやったのです。ところがそれが結果においてこういう姿になったことはまことに残念でありますが、このままの姿で放置すれば、この秋か来年同じことが繰り返される。そのときあなたは大臣をやっておられるかどうか、政府は現内閣であるかどうか知りませんが、政府はかわろうとも、これによって迷惑をし、大きな混乱を来たすのは国民であり、国家である。こういう点で私は非常な不満を持っておる。今伝えられるところによれば、公共企業体そのものについても検討をしようとか、公労法についても再検討しようとか、あるいは学者の中には、罷業権を剥奪することは間違いだからこれを与えるようにしたらどうかとか、いろいろな意見はありましょうけれども、率先して政府なり国鉄なりがこういう問題に取り組まない。そのときそのときの方針とか行き当りばったりで一貫した政策がない。こういうことを述べたいのであります。そこで私は重ねて申し上げておきます。やはり国鉄の経営者、首脳部について重大な反省を求めることが必要ではないか。運輸大臣は監督官庁の主管大臣として、あなたの責任において反省を求めるだけのものを示すことが、今日国民に対し当然の道ではなかろうか。こういうことをあなたに質問をし、要望をいたしたい。
  152. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 池田さんの今の広い観点からのお話については、私どもも国鉄当局者も大いに反省しなければならぬことがあると感じております。広い視野においてこの問題をお扱い下さればそういうふうに考えますけれども、その反省はこれから現実にそれをあなた方にお示しするような行動に出なければならぬというように私は考えております。
  153. 淵上房太郎

    淵上委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会