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1957-05-18 第26回国会 衆議院 運輸委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年五月十八日(土曜日)    午後三時四十五分開議  出席委員    委員長 淵上房太郎君    理事 山本 友一君 理事 井岡 大治君    理事 松尾トシ子君       有田 喜一君    伊藤 郷一君       關谷 勝利君    中嶋 太郎君       永山 忠則君    眞鍋 儀十君       久保田 豊君    下平 正一君       中居英太郎君    正木  清君       松原喜之次君    山口丈太郎君  出席政府委員         通商産業事務官         (鉱山局長)  森  誓夫君         運輸事務官         (海運局長)  粟澤 一男君         運輸事務官         (自動車局長) 山内 公猷君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局定期船         課長)     中野  大君         運輸事務官         (海運局海運調         整部長)    辻  章男君         運輸事務官         (自動車局業務         部長)     国友 弘康君         海上保安監         (警備救難部         長)      砂本 周一君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 五月十八日  委員松岡駒吉君辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  常磐線列車脱線事故に関する件  道路運送事業等に関する件  第五北川丸遭難事件に関する件     —————————————
  2. 淵上房太郎

    淵上委員長 ただいまより運輸委員会を開会いたします。  昨夜の常磐線列車事故に関し国鉄当局より発言を求められております。これを許します。小倉総裁
  3. 小倉俊夫

    小倉説明員 常磐線列車脱線事故につきまして御報告を申し上げます。  この事故につきましては、原因のいかんを問わず、多数の死傷者を不幸にして出しましたことをまことに申しわけなくおわび申し上げる次第でございます。お手元に速報を差し上げておきましたが、発生の日時は昨日十七日の二十時三十分でございまして、天候は晴れでございました。発生場所は、水戸管理局内常磐線大野駅−長塚駅間でございまして、上野を起点といたしますと、約二百六十二キロの地点でございます。列車は二〇三列車で、北上号急行旅客列車でございまして、現車は十両でございます。この列車大野駅を三分おくれて通過しておりまして、ただいま申し上げました地点付近を時速約六、七十キロの速力で走っておったと推定いたされます。この線路はほとんど平坦でございまして、カーブもない線路でございますが、ここを運転中に脱線いたしまして、機関車は一回転して五メートル下のたんぼに転落いたし、続く三等車四両が築堤の下に横転いたし、五両日が全軸脱線いたしました。この原因につきましては、司法当局現地におかれて詳細に取調べ中でございまするが、ただいままでに入りました情報によりますると、大体の推定は次のようなものでございます。  脱線の始まった点の少し手前架道橋がございまして、下を道路が通っており、上が線路でございまするが、この橋げた、長さが五・四九〇メートルぐらいでございまするが、そこをトラックが直前に通過しておりまして、その際にこの橋げたに積み荷がぶつかって橋げた移動した形跡がございます。そのトラックは、あるいはケーブルドラムを積んでおったかといい、あるいはコンクリート・ミキサーであったかといい、その辺はまだはっきりつかめておりません。ただいま司法当局がそのトラックを捜索中でございまするが、警察当局におきましても、また国鉄におきましても、大体の原因は、そのトラック衝撃により橋げた移動し、そのために脱線転覆をいたしたのであろうという大体の推定が下されております。その橋げたは、片方が八センチメートル、片方は二十五センチメートルほど普通の地位から移動しておりまして、そのために線路が曲っており、またボールトで八カ所とめておりましたのが、そのボールトが折れ、または曲っておるというふうな状態でございます。  このために大体二十四名の死傷者を出したのでございますが、そのうちで死者は、機関士一名、助士一名、それから重傷後死亡されたお客様が一名、その他重傷五名、軽傷十五名ほどでございます。それで、さっそく水戸管理局から幹部その他が現地へ参りましたし、また本社からも大塚運転局長現地に派遣いたしまして、まず第一に、死傷せられました方々に対する措置の万全を期し、続いて、重要幹線でございますから、一刻も早く復旧作業をいたしたのでございます。しかしその原因が不明でありまして、司法当局現地を検証するために、そのまま作業がすぐに取りかかれませんでしたために、多少復旧がおくれましたが、ただいまの報告によりますと、十五時三十分、今から二十分くらい前に開通いたしております。なくなられたお客様は、十三時ごろに上野へ着く列車に御遺骸をお乗せして、上野でお迎えする手はずになっております。それから入院せられました方は十四名でございまして、うち六名は長塚半谷病院へ御収容申し上げ、また八名は双葉中学に御収容いたしまして、当方あるいは民間の病院の手で御介抱申し上げている次第でございます。そのうちで特に重傷の方六名のうち、一名は大体の推定で全治まで一カ月、そのほかは二、三週間あるいは三、四週間の期間を要するように報告がきております。  それで、ここの陸橋は高さが三・六二メートルでございまして、交通取締りから申しますと、三・五〇メートルまでが積荷許容制限になっております。しかし通常の場合、四・五〇メートルというのが高さの標準になっておりますが、特別の場合におきましては、それを下っても、高さの標識を出しておけばよろしいような規則になっておりまして、ここは三・六二メートルで、四・五〇メートルよりも低いために、三十年の五月に国有鉄道から建設省及び警察関係に御通知申し上げまして、ここの高さの標識道路管理者の方から出していただいております。ここは福島県でございますが、そういう点は非常に御協力していただきまして、福島県下の橋梁につきましては、高さが四・五メートル以内のところにはほとんど全部漏れなく高さの標識が出してございまして、ここの場所におきましても三メートルという標識を出していただいております。これも検察当局のお取調べの結果でないと断言は申し上げられませんが、トラック積荷が高かったために上の橋梁にぶつけまして、そのまま通ってしまった。そのときに衝撃を受けました傷も橋げたに残っておるそうでございますが、そのために、先ほど申しましたように、けたが移動いたしまして、そこへ列車が驀進して、そのまま脱線転覆いたしましたというのがほぼ確実な原因だと考えます。この列車通ります前に、二十六分前に別の列車が無事に通っておりまして、その二十六分の間にトラック道路を通ってぶつけた。それの推定時間は、この列車の転覆する前約十分くらいであったように想像いたされるのでございます。いずれにいたしましても、引き続きかような運転事故が出ましたことは、私どもまことに残念また遺憾に存ずる次第でございまして、死亡された方々についてはできるだけお手厚い措置を講じたいと思いますし、また今後のこの種の事故防止対策も至急にきめて参りたい、かように考えております。以上簡単でございますが、御報告申し上げます。
  4. 淵上房太郎

  5. 井岡大治

    井岡委員 ただいま副総裁から詳細な御報告をお聞きいたしたわけでございますが、なくなられた方はもちろんのこと、御遺族の方については心から哀悼の誠をささげたいと存じます。ただ原因がいまだ十分判明いたしておらないようでございますが、推定として橋げた移動による事故であると考えられる、こういうことであります。しかもその移動については、とめておったボールトですかが抜けておる、こういうことでございますが、従来保線の巡視ということについてどういうような制度をとっておられるか、この点をお聞きいたしたい。
  6. 小倉俊夫

    小倉説明員 保線関係は始終保線区長以下が、その受け持ちの線区を夜となく昼となく、巡視いたしております。それで従来ともあるいは線路故障を発見いたした例は枚挙にいとまあらずで、保線区といたしましては常に線路を防護するということに全力を上げております。ただこの種の事故は実にきわめてまれでございまして、私も不審に思って施設関係専門家に聞いてみましたのですが、線路というものは橋げたも含めて、割合に横の衝撃に弱いということのようでございます。縦は丈夫でございますが、横の衝撃には比較的弱いということでございますので、今後におきましては、こういうふうな交通機関交差するところでは、横からの衝撃防止も何とか考えて参りたいとかように思っておりますが、なお御注意によりまして保線巡回等もますます強化して参りたい、かように考えます。
  7. 井岡大治

    井岡委員 事故発生からまだ間もないことでございますから、その保線巡回をいつごろおやりになったかというような点等については、十分おわかりにならないと存じますし、またそれを尋ねることは私は無理だと思います。現実になくなったお方あるいは重傷お方がたくさんおありのことでございますから、その人方のお手当というものを先におやりになることは当然でございますが、私は、線路が横に弱いということが十分わかっておるとするならば、しかも自動車等による橋げた移動、こういうことも当然お考えになっておられたことではなかろうかと思うわけです。もちろん自動車等不測状態、前に通ったトラック重量、そういうものの関係が十分わかりませんから、日ごろ通って少々の移動をやっておってもこれで行けたものが、その場合に重量等、あるいは自動車故障、いろいろな衝撃、こういうものから来たのであろうとは思いますが、私は少くとも橋げた移動というようなことによって事故が起るとするならば、今後十分この点に注意をしてもらわなければならない、こう思うわけです。こういう点について従来の巡回制度というものは、それは私も夜見てはおります。現実にカンテラをさげて回っておいでになっておることは十分承知はいたしておりますが、一そうの完備をしていただかなければ、私はせっかく国鉄が五カ年計画輸送の円滑を期して、国民の期待にこたえようとしても、一つ事故のために再び不信が起ってくる、こういうことになりはしないかと思うわけです。こういう点について一つ伺いをいたしたいわけです。
  8. 小倉俊夫

    小倉説明員 山陰線事故に引き続きまして、私ども国有鉄道の使命は第一が安全輸送だと考えております。従来資金の不足のために安全関係保安設備工事も多少思うにまかせなかった点がございまするが、幸いに運賃の引き上げも御承認願いましたので、保安対策には十分力を入れて参りたいとかように考えております。保安対策につきましては、三十二年度におきましても約百五十億近くの予算を充てておるのでございます。それからそのほかに支社の計画といたしまして、小工事費として百三十二億円ほど配分いたしております。そういう資金を持ちまして安全保安の点は十分にして参りたいと思います。ただ今回の事故につきましては、もしトラック衝撃でありますとすれば、運転手は車体の衝撃その他につきまして非常に敏感なものでございますから、これだけの衝撃があったとすれは、必ずその運転手がわかってなければならぬ。そういう場合にもし国鉄側に、こういうことでぶつけたということをいち早く報告してくれましたらば、かようなことはなかった、こういう点を非常に残念に感ずる次第でございます。
  9. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ただいまの質問に関連をしまして一応お伺いをいたしたいと思います。なるほど自動車が荷物をぶつけて固定した橋げた移動させていった。それが原因推定せられる、こういうことでございます。私も多分そういう傷あと等が残っておるとすれば、これはそういうことによって生じたものではないかと思います。しかし私はここで保安設備についてお尋ねをいたしたいと思いますが、もし橋げた移動によってこのレール継ぎ目が自然にはずれていたとすると、私はその手前信号は当然危険信号をささなければならぬ、こういうふうに思うわけですけれども、これは自動閉塞信号とか、どういうことになっているのですか、お聞かせ願いたいと思います。
  10. 小倉俊夫

    小倉説明員 ただいまのところ線路故障いたしましたために、自動信号機が赤になるような装置にはなっておりません。ただ閉塞区間列車等が入っておりますと赤を現示いたしまするが、線路が曲ったというようなことで赤を現示するようなことには、ただいまの機械装置はなっておりません。まだ現地からこちらへ戻って参りませんものですからはっきりしたことはわかりませんが、情報によりまするとレールがはずれたというよりも、非常に曲っておったということのようでございまして、その曲っておったところへ七、八十キロの速度で参りましたために線路から踏みはずして脱線転覆いたした、こういうことが実情ではないかと考えております。
  11. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これは専門家でないとちょっとわからぬかもわかりませんが、現在鉄道の使用していらっしゃる自動閉塞信号機は、レール折損もしくはその継ぎ目離脱等、そういうレール上の欠陥、事故があれば、当然赤を示すことが原則になっているのです。これは運転保安としてちゃんとそういうふうにできているわけです。今国鉄常磐線で使っておられるのもそうではないかと思いますが、これは手動閉塞信号機ですか、それとも自動閉塞信号機ですか、どちらです。現場の第一信号機はどういう装置になっておりますか。
  12. 小倉俊夫

    小倉説明員 実は信号事故でございませんでしたので、詳しいことは私承知しておりませんでしたが、多分あそこは自動信号区間だと考えております。それで軌条の折損等事故がときどきございます。先ほどのお話もございましたように、保線工手線路巡回しておりましてレール折損事故を発見することは始終ございまするが、そういう場合にレールが全部はずれるのではなくて、折れたままそこにそのままの形で残っておりまするので、レールが今回のようにきわめて曲ったとか、あるいは一部欠除したというふうな事故はあまりないのでございます。
  13. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はどうも不可解に思いまするのは、橋げた移動した、そうするとやはりその移動した最初のジョイントのところは、必ず私は継ぎ目その他ジョイント等折損が行われておると思います。それでなければ私はこのような脱線はちょっと考えられないと思います。もしこのジョイント間の折損等によりましてこのレールジョイントがはずれていた、そうすればこれはもう自動信号機である場合は必ずその信号機は赤であります。そうでないと自動信号機というものにならないのでありますから。だからこれは当然場内における転轍機におきましても異常方向を示した場合には、その異常方向に向って危険信号が出るのは当然の話です。ですから私は、これは当然信号機は赤を示していなければならぬ、こういうふうに考えるわけです。ところがもしその信号機列車が通過した後にこういうような事故発生しておれば、これはわかりませんから不可抗力になります。そうしてみるとこの際その信号機増設等保安設備一大改善を加えるということが必要ではないか。だからそういうようなことをなさらないとこういう事故は防ぐことができないと考えるわけですが、この閉塞区間における信号——いわゆる信号信号距離はどのような距離になっておりますか、一つお話を願いたい。
  14. 小倉俊夫

    小倉説明員 自動信号区間はその列車密度によりまして距離が違っております。それからただいま御指摘線路の件でありますが、これも現地からまだはっきり報告が参っておりませんが、先ほど申し上げましたように、レールが切れておるというのでなく、きわめて曲っておるということのようでございまして、もしこの信号が、線路が切れておりまして、そして手前自動信号が赤であってそれを無視暴進したとすれば、これは機関士の間違いでありますが、そういうことはこの事故につきましては絶対になかったように思います。つまりレールが曲っておりますれば、やはりこれだけの速度で行きますれば飛び出すのは当然でございます。それでレールが曲っておるということによって自動信号が赤を現示するということにはならないのでございまして、これはやはり線路が曲った不測事故のために脱線転覆をいたしたものと私ども考えております。
  15. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は今御答弁になりましたように、橋げた移動してそれがジョイント切断状態に至らないままの状態のところへ列車が突進した、こういうことであれば、私は列車としてはやむを得ない不可抗力事故ということになると思います。ですから、私はこの犠牲になられた方々にはお気の毒でありますが、実際に鉄道に従事する者といたしまして、現場で働く者としては、こういった不測の災禍に対して防ぎようのない事故であるということも言えると思いますが、なお精細に調べてこれらについては遺憾のないようにしていただきたいと思います。きょうのニュース等で聞きますと、このようないわゆる標準標高に達しない踏切が、全国におきましては二千カ所をこえるということを聞いております。私は、交通近代化と同時に、このトラック積載貨物等大型化が要請される今日、特にこの鉄道交差しておりまするガードが、こういうふうに標準標高に達しないものをそのままにしておくというのは、非常にゆゆしい問題だと思います。ただこれは交通に不便というばかりではございません。一瞬にして数十名、数百名の生命を失うような危険すら伴うのでありまして、これは非常に危険なことである。今国鉄運賃の値上げなどを行なって、施設改善、特に輸送改善に力を用いると言われております。けっこうなことでありますけれども、私は輸送改善して輸送力を増すということも重要でありますが、それと並行してやはり人命、財産を安全に輸送するという保安設備改善ということが、何よりも第一に着手されなければならない重要なことだと思います。今日全国に二千三百カ所にも及ぶこのような不良ガードが存在するということは、きわめてゆゆしい問題であるが、これについてこの事故に省みましても、早急に改善すべき要があると思うのですけれども国鉄はこれらの改善計画についてどういう計画を進められておるか、一つお聞きしておきたい。
  16. 小倉俊夫

    小倉説明員 先ほども申し上げました通り、またただいま御指摘通り国鉄といたしましては安全輸送ということを最優先に考えております。それで数年前から安全委員会というものを設けまして、部外の方にも入っていただいて、安全輸送ということについて資料も整え、また答申をしていただいております。それでその安全輸送につきましては、いろいろな点から考えられるのでありますが、たとえば信号の強化ということも一つでございます。それから車内警報設備ということも、これも一つでございます。それから落石防護——切り取りのところで落石が多い個所がございますので、そういう点は、落石防護も強化していきたい、でございましていろいろな点から安全を期していきたい。そうしてそのうちで実はただいま頭を悩ませておりますのは、踏み切りの問題でございます。踏み切り全国で約四、五万の個所がございますが、そのうちの大部分が無人、第四種の踏み切りで、毎日のように踏み切り障害が起っておりまして、そのために非常に死傷者も多いし、また輸送力を阻害する点も相当ございますので、この踏み切りを何とかいたしたいということで、今回の予算にも特にその踏み切り改善についての予算をたしか二十数億だつたかと思いますが、組み入れた次第でございます。ただその踏み切りとただいまのこれとはやはり交通機関交差で一脈相通ずるものがございますが、この踏み切りあるいは陸橋というものの改築が実は非常に金がかかるものでございまして、一つ平面交差踏み切りを立体にいたしますにはおそらく一、二億、ないし場所によりますれば六、七億かかるのでございます。そのほかに沿道の民家に対する補償というような、いろいろなむずかしい問題もございます。今回のこういうふうな陸橋といたしますれば、これは線路を上げるか路盤を下げるか、どちらかでございまするが、線路をたとえば一メートルここで上げるということは、両方からずっと傾斜をとっていかなければならないので、非常に莫大な金を要する。それから路盤を下げますのは、これは比較的やすいことかもしれませんが、これとても排水が非常に不便になりまして、交通障害を来たすということにもなります。それで先ほど御指摘のように、全国に千の単位をもって数えるほど、背の低いところがございまして、一方自動車はどんどん大型になって参りますもので、積荷がどんどん高くなります。その高くなるに合せて空間をたくさん大きくとっていくということは、なかなか金の点で困ると思います。それで私どもがとりあえず考えますることは、積荷が上にさわるような場合には、何か予告的な注意が出るような、たとえばその手前にその高さのひさしを出すとかいうようなことで、何か事前にトラック注意を与える方法がないかというようなことを考えております。一方また三・五メートルという交通取締りの高さがありますので、これにつきましてはやはりトラックの方でも荷主の方でも、積み方については十分考えていただかないと、高さを十分にとるという方の施設の面がどうしても追いついていけない、かように考えております。なお先ほど申しましたように、この高さの標識をできるだけ明瞭にわかるように至るところに掲出する、そういう点も今後十分やっていきたいと考えております。
  17. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ただいまの御答弁で、標準標高に達しないガードについて、危険予告施設をするような御答弁がありましたが、その危険予告施設をいたしますると、この事故は未然に防ぐことができると思いますので、これはぜひ一つやっていただきたい。それから列車運行量によって信号施設距離等はきまるのでありますけれども、しかし列車回数のみに拘泥してあまり間隔を大きくとるということは、これまた一面から申しますと保安上非常な危険もあるわけであります。だからといって、あまりこの密度を増すということも、かえって危険を招来しますので、これは列車運行上の研究課題として、今日各鉄道業者はその研究をいたしておるわけであります。列車に対して、車内への予報装置等もだんだん進んだものが考えられるようでありますが、要は私はこれらの事故を防ぐためには、どうしても今申しましたようにだんだん大型化いたしますトラックもしくはこういう陸上運送機関が、少くとも鉄道ガードによって障害を受けるようなことは、これまた近代施設にそぐわないものでありまして、たといそれぞれ予報装置ができるといたしましても、実質的には非常な交通の妨害になる、各所で鉄道が、愛される鉄道でなければならぬものがその沿線の非難の的になる、こういうことでは私は鉄道の発展は望み得ないと思いますから、ぜひともこのガード改善につきましては今日重点的に取り上げて、ぜひともこれを実行していただきたい。  第二の点は、今質問にお答えになったところによりますと不可抗力的な事故、私もそう考えますが、しかしだからといってこの負傷者並びに死者に対して、不可抗力であるとのゆえをもって慰謝料その他がなおざりにされるということでありましては、鉄道の持つ信頼を失墜することになるのでありますから、どうかそういう点で万遺漏のない慰謝その他の方法を講じていただきたいということを私は希望いたしまして、私の質問を終ります。
  18. 淵上房太郎

  19. 中居英太郎

    ○中居委員 井岡君の質問に関連してちょっとお尋ねします。大体私の伺いたい点はただいまの山口君の質問で尽きておると思いますが、念のために、ここに運輸省の自動車局からも国友部長が見えておられますから、国鉄とあわせてお尋ね申し上げたいと思います。  先ほど副総裁お話では、標準標高に達しない橋というものがたくさんある、こういうことでございまして、この橋げたを高くするためには一カ所、億の単位をもってするところの予算が必要である、これも言うべくしてなかなか予算の面で工事改良をすることは困難な情勢だと思います。しかも今日までトラック積荷によりまして、こういった例の事故を惹起するということはなかった、しかし今後の大型化とともにこういう問題がどんどん並発してくるということを私は憂えるのでありますが、国鉄のこういった改良工事が思うように予算上まかせないということが事実であるとするならば、運輸省におきましては積荷地上から三・五メートルという制限に対して一考も二考も検討する必要があるのではないか、こういうことを私は考えるわけであります。今回の事故にいたしましても、許されておる積荷の高さが地上から三・五メートル、橋げたの高さが三・六メートル、当然これは今日のわが国の悪路におきましては、五十センチないし三十センチの上下はあるのです、こういうことが法規の上で公然と許されておるということは、こういう事故が今後とも続発するということが私は言い得ると思うのでありますが、国鉄の改良工事とにらみ合せまして、この地上三・五メートルという積荷の制限に検討を加える必要がないかどうかという点について、自動車局長の御意見を承わっておきたいと思います。
  20. 山内公猷

    ○山内政府委員 積荷三・五メートルの制限と申しますのは、道路交通取締法の施行令できまっておる事項でございまして、もちろんこういう点につきましては、運輸省におきましても交通保安の見地から十分検討いたさなければならないわけでございますが、こういう高さというものをきめます際には、日本におきます今のガードの高さ、道路の状況というものを全国的に勘案いたしまして、各省の協議の上にきめた数字でございますが、こういう事故を惹起いたしましたことにかんがみて、さらに再検討を加え、警察庁とも協議いたしていきたい、かように考えております。
  21. 中居英太郎

    ○中居委員 この三・五メートルという高さの標準をきめたのはいつなんですか。
  22. 山内公猷

    ○山内政府委員 これは道路交通取締法の施行令をきめるときにきまったわけでありまして、この施行令の政令は、政令第二百六十一号といたしまして昭和二十八年八月三十一日に施行になっております。
  23. 中居英太郎

    ○中居委員 その前のは幾らですか。
  24. 山内公猷

    ○山内政府委員 その前は、今はっきりデータを持っておりませんので、正確にお答えできませんが、そう変らなかったのじゃないかというような気がいたします。よく覚えておりません。
  25. 中居英太郎

    ○中居委員 大体現在の国有鉄道施設というものは、比較的新しいもので二十年前、大体は数十年前に架設された鉄道でありまして、その当時はおそらくトラックというものも今日のような大きな形ではなかった。バスというものも非常に背が低かった。そういうことで、この鉄道橋げたの高さとトラック積荷という問題は、あまり論議されなかったと私は考えております。しかし国有鉄道施設というものは、数十年前からそのまま居すわっておるにもかかわらず、トラックあるいはバスというものは日進月歩をいたしまして、大型化をたどっておる、こういう現状でありますから、さればといって橋げたの高さを一挙に全国至るところ修理する、改造するということも、これまた先ほど申しましたような予算の制約を受けて不可能な段階にあるわけでありますから、運輸省におきましても、取締りの警察庁等と十分連絡をとりまして、少くともこういう隘路のある個所については、厳重に積荷の高さの制限、幅の制限、長さの制限、こういうことに対して検討を加えてもらいたいと思います。画一的な制限でなく、場所によって非常に厳重な制限を加える、こういうことについて運輸省の御検討を私は願っておきたいと思うわけであります。
  26. 井岡大治

    井岡委員 いずれにいたしましても、まだ十分原因等も明白でありません。従って同僚議員からいろいろの点で御注意等がございましたので、私は本日はこの程度で質問を打ち切りますが、先ほど山口君も申されたように、原因はどうあろうとも、なくなられた方の御遺族に対する弔慰、あるいは、重傷、軽傷なさっておられる方々に対して手厚い看護をしていただきたい。そうして国鉄のややもすれば非難されやすい状態から脱却して、国民の国鉄にしていただくようにお願いをいたしておきます。同時にまた詳細わかりましたら、閉会中といえどもわれわれは続いて国政の調査をやるわけでございますから、お知らせをいただいて、今後の事故防止のためにお互いに努力をして参りいたい、こういうように考えます。
  27. 小倉俊夫

    小倉説明員 今回の事故につきまして、私どももいろいろな点から再検討もし、勉強もしなければならぬと思っております。それで至急そういう点につきましては、現地情報をはっきり握って、局長が帰って参りましたら、まだいろいろ不明な点もはっきりして参るでしょうから、そういう点について十分チェックいたしまして、万全の措置をとって参りたいと思います。それからまた今回の事故のためになくなられた方——職員が二名ございます。これはもちろん公務上の死傷と考えておりますし、また不慮の死を遂げられたお客様、それからいろいろな傷害を受けられた犠牲者の方々、こういう方方につきましては、私どもできるだけ十分な措置をとって参りたい、こう考えております。
  28. 淵上房太郎

    淵上委員長 この際、陸運に関して質疑を許します。松原喜之次君。
  29. 松原喜之次

    ○松原委員 鉱山局長は来ておられますか。
  30. 淵上房太郎

    淵上委員長 見えております。
  31. 松原喜之次

    ○松原委員 それでは鉱山局長に対しては私以外の質問者も相当おありであろうかと思いますので、鉱山局長に対する質疑は一番あとに回しまして、私は自動車行政について二、三の点をこの際自動車局長にお尋ねをしておきたいと思うのであります。  御承知のようにトラックにいたしましても、それからハイヤー、タクシーにいたしましても、最近一部では新しい免許を許すべし、その際にはなはだしきは一両、二両のいわゆる個人的営業も許すべしというような意見さえ、相当と申しますか、一部に唱えられておるということを聞くのでありまするが、申すまでもなく日本の貨物自動車営業につきましては、異常な困難な営業状態でございまして、むしろ自家用のいわゆるもぐり営業というものに悩まされておる。このトラック営業者はこれが取締りに万全を期してもらいたい、今日のような放置状態では、トラック営業という公益的な性質を持っておるこの営業が、その営業の維持すらむずかしい、こういうふうな声を聞いておるのでありまするが、この自家用のいわゆるもぐり営業というものについて、これが取締りについて、何らかの法的措置を特にこの際講ずるというような意見もかたわら出ておると聞いておりまするが、そういう点について、自動車局長の知っておられる状況、これに対するお考えをこの際承わっておきたいと思うのであります。
  32. 山内公猷

    ○山内政府委員 トラック事業がいわゆるもぐり運送のために、企業としてなかなか営業をしにくいという情勢でありますことは、ただいま御指摘通りでございます。それで現行法のもとにおきましても、いわゆるもぐり営業というものは、この法律の条章に従って、できないことになっておるわけでございます。しかしこれが無償運送であるか有償運送であるか、あるいは自家用でありながら人の荷物を有償で送っておるかという現実の問題になりますと、非常に処罰の、行政権の発動といたしましては、相当個人の人権に関することでございますので、地方局といたしましては慎重にならざるを得ないわけでございます。それでこういうものにつきまして特別の条章があれば、そういうものが取り締りやすいということは一面いわれ、また業界がこれを非常に希望しておられるわけでございます。しかしまた一面現在多くの自家用車がありまして、そういうものに対するそういう取締りが、善意の第三者の運行についてはなはだしい不便をかけるおそれがあるのではないかということが、反対される方々のいわれることでございます。そういう点につきましては将来十分業界の困っておるところを除く方法が、一体どういうことをすればいいか。しかしその反面として、善意の第三者に御迷惑をかけない方法があるかということにつきましては、さらに検討いたしまして、何といたしましても現在トラック業界というものが公定価格の維持ができないということが、企業の維持に非常にむずかしい情勢でありますので、今まで考えられました以外の方法をも含めまして、さらに検討いたしてみたい、かように考えております。
  33. 松原喜之次

    ○松原委員 その点に関しまして、承わるところによりますと、自民党のこれらの問題に関係をしておられる方面において、今自動車局長のおっしゃった特別な法文を設けるために、道路運送法を一部改正するという意見があり、これに対しては貨物自動車運送業者はこぞって賛成しておるけれどもトラックを作っておられる自動車メーカーの方では反対しておって意見が非常に分れておる、こういうふうなことも聞いておるのでありますが、その間の状態はどういうふうな段階に進んでおるものか、また私どももこのトラック企業については在来からいろいろ問題のあることを知っておりまするので、ここで従来のまま置いておくということは、とうていその円滑な運用を行う上において、監督官庁である運輸省としては放置することができない段階ではないか、かように考えておるのでありますが、その情勢及び、やはり何らかの手段を講じたいと思うておられるのかどうかという点について、一つ局長から率直なお考えを承わりたいのであります。
  34. 山内公猷

    ○山内政府委員 ただいまのいわめる業界の各方面の折衝その他につきましては詳しく存じておりませんが、今国会におきまして、そういった一連の立法措置トラック協会を中心として推進せられたというお話は聞いております。しかし本日国会も終了いたしますので、それがまだ提案の状態にならないということは、完全な了解のもとの法律というものはできなかったというふうに考えられるわけでございまして、その間におきますいろいろの御意見につきましては、私詳細御説明申し上げるだけの知識を持たないわけでございますが、運輸省といたしましては今言いましたようなトラック営業を健全化するということにつきましては、さらにこの法律を改正する必要があるかどうか、あるいは行政的にどういう手段を講ずる必要があるか。たとえば今度、もしも、まだ本日はっきりしてはおらないようでございますが、中小企業団体法というような一連の法律ができたということになりますと、そういったような法律がやはり中小企業の段階であり、特に各業者間のそういった価格統制が守れないというところに非常に大きな赤字を出す原因があるという状態を考え、そのほかの要素も考えまして、さらに検討をさせていただきたい、かように考えておる次第であります。
  35. 松原喜之次

    ○松原委員 今までも取り締れば取り締れる法文はあったわけです。またその法文を実行するためには、警察と運輸当局との間の協力もなし得たわけです。そういう状態でありながら今まで実効が上らなかったということはどこにその欠点があるのか、どこにそういうふうな状態になった原因があるのかということは、おそらく運輸当局においても相当にお考えになり、かつ悩んでおられるかと思うのであります。従って何らかその点における措置を講じなければならない、こういう立場でお考えになっておるのかどうか、その点もお聞かせ願いたいのであります。
  36. 山内公猷

    ○山内政府委員 業界におきます要望は私どももちろん伺っておるわけでございまして、またその点につきましてもいろいろ伺い、われわれ自身といたしましても研究しておるわけでございまして、この法律の実施につきまして十分でないのではないかという御批判もいただいておるわけでございますが、街頭監査とかいろいろそういう点になりますと、役人の逃げ言葉というおしかりを受けるかと思いますが、やはり人の問題、金の問題もからんでくるわけでありまして、その問題につきましては先般来道路運送法の際に個個の職員がやるということも、局が全体として計画的にやるという方向で御改正を願ったわけでございまして、さらにシステマティックに、そういう人員も不十分ではございますけれども、国家の資金もちょうだいいたしておりますので、これを十分生かして交通秩序維持を増進するという方向に下部の機関を指導して参りたい、かように考えております。
  37. 松原喜之次

    ○松原委員 その点につきましては在来人数の多い、取り締り得る権限を持った人といえばこれは警察当局であって、運輸省側はきわめて手薄であります。従いまして何も厳重に取り締ることだけを目標にするのではなくて、運輸行政の円滑なる実施ということが目標でありますから、そういう点では必ずしも取締りというような、いわゆる地震雷、火事、おやじ、そういうふうなことを大いにやってくれというわけではないのでありますから、そこで一番人手の多い警察当局との緊密なる連絡というものが非常に必要であるかと思うのでありますが、ややもすればその点についてどうも連絡に不円滑があるというような点も指摘されておりまするし、さらに法規の上においても必ずしも万全ではない、こういう点も指摘されておるのでありますから、こういう観点から今後の運輸当局の御研究を待ちたい、かように考えるわけでございます。  そこで次に私はハイヤー、タクシーの問題をお聞きしたいのでありますが、先般名古屋において増車を許された。そうしてただいまにおきましては大阪あるいは東京あるいはその他の都市において、従来増車を差しとめておられた運輸当局の取扱いに対していろいろ反対の声がありまして、その増車を要求する人々が相当多くなっておるということは私ども知っておるのでありまするが、そういたしますと冒頭に申し上げたように、トラックも同様でありますが、増車するがよろしい、ことに運輸当局が増車をはばんでおることは不都合だ、むしろこんなものは自由業にして、そうして一台持ち営業も二台持ち営業も、そんなことは言わないでどんどん許すべしという意見さえも出てきますし、またはなはだしきは——これはあなたのお耳に入っておるかどうか知りませんけれども、もうすでに増車になるのだ、そこでわしの手でやるならば免許が許されるのだ、従って免許が許されたならばこれをお前の方へ幾らで買い取らぬかというような予約さえもして歩いておる人があるというのでありますから、相当にひどい混乱状態にあるいはなるのではないかということを私はおそれるのであります。そこで、その際に運輸当局としては、これはたとえば乗客の要求に応じて、どうしてもこの土地では増車を許さなければならない、この土地では、そういう要求はあるにしても、増車を許してはかえって交通の混乱を招き、営業の健全性を害するから増車はいけない、こういうふうにおそらくお考えにならなければならないと思うのであります。もちろんその際には陸運協議会ですか、その方へ諮問してきめるのだとお逃げになるかもしれませんが、しかしそういう原案はやはり運輸当局の腹がまえ一つで出てくるものでありますから、運輸当局はもとよりこれに対して一定の考え方を持っていらっしゃると思うのでありますが、そういう際において何を標準にそういうふうな決定をなさるつもりなのか、その点を承わっておきたいのであります。
  38. 山内公猷

    ○山内政府委員 名古屋におきまして先般増車した話は聞いておるわけでありますが、私といたしましては、そのほかの土地におきまして増車をするという話は、具体的にはまだ聞いておらないわけでございます。これは役所としては当りまえのことでございまして、ただいま御指摘のありましたような道路運送協議会に諮問いたしまして、その諮問の結果、各陸運局が増車をするとかしないとかいうことをきめるわけでございます。ただいま御指摘の点は、それではその際に増車をするとかしないとかきめるきめ手は一体何であるかということであろうと思いますが、これはもちろん、増車をするしないという基本的な問題は、需要と供給の関係でございます。需要と供給の関係につきましては土地によっても違いますが、大体実車率と申しますか、お客さんを乗せて走っている率と、空車で流しておる率というもののパーセンテージを見てやっておるわけでございます。ただこれが全国一様かと申しますと、たとえば大阪のようにほとんどハイヤーというものがない、 タクシーだけのところと、東京のようにハイヤーとタクシーというものが分れておるところ、あるいは中都市以下のところというようなものを見ますと、一日の走行キロというものが違って参りますので、これは全国一率に三〇%がいいとか、六〇%がいいというものを出すべきではないわけでございまして、やはりその土地々々の歴史的な事実がございまして、それによって、この限度以上になればもうお客さんはなかなか拾えないということは、もう十年くらいの経験でどこでもわかっておるわけでございますので、そういうものを勘案しながら、増車の率をきめて参るという格好になると思うわけでございます。
  39. 松原喜之次

    ○松原委員 概論としてはそれでよいと思うのであります。その通りにされたらいいと思うのでありますけれども、具体的にいうとそれだけではちっとも基準になっていない。基準を定める一つの基本的な考え方というものだけであろうかと思うのであります。もちろん私は一つ一つの地域について具体的な基準を、あなたに今ここで示して下さいと申し上げるわけではないわけでございますけれども、しかし実車率といたしましては一体五〇%がいいのか、地域によって七〇%がいいのか、あるいは六五%がいいのかというようなことを、もちろんきめていかなければならぬと思うのであります。その際にはもちろん原価計算を一つの大きな基準として考えていかなければならない。私どもの考えでは、大都市においては五五、六%から六〇%の間が適切な基準であろうかと考えているわけでございますが、これはその土地その土地における原価計算を勘案してそのパーセンテージをきめるべきである、かように私ども考えているわけであります。そうすると具体的に、たとえば大阪と東京におきましては、その実車率が現在非常に大きな差を表わしているわけであります。そこにおのずから増車の要求の声が強弱になって現われてきている、こういうふうな点もありますので、私はこの際においてなるべくすみやかに、それらの点に対する研究を具体的に少くとも大都市に関しては進むべき時期ではなかろうか、かように考えておりますので、ぜひその点についてすみやかに御研究願いたい、それに対するお答えをお願いいたします。
  40. 山内公猷

    ○山内政府委員 ただいま御指摘のように、現在の運賃の基底になっております原価計算の場合の実車率は、大体六〇%をもってその実車率として計算をいたしておるわけであります。この六〇%はそれでは科学的にどういうことであるかということは、私にもちょっと証明しにくいわけでありますが、当時の運賃をはじくときの実際がそうであったということでございます。こういうことにつきましては、さらに実際上の問題として検討しなければならないと思いますが、私もまだ数字を十分つかんでおりませんが、先生のおっしゃいますように、五五、六%ないし六〇%というところに安定帯があるというふうにできているわけでありまして、それではその間のどれかということは、さらに現在業界からも数字を各陸運局でとって——これは何も運賃改訂をするということでなくて、常にとって、陸運局にはそういうものの情勢を調べるように言ってありますので、とっております。現在その辺微妙な数字的な実車率になっておりまして、その点では各陸運局ともそういうことを非常に慎重に考慮いたしております。ただいまのお話、十分各下部にも伝えまして、需要供給の算定に誤まりのないように、本省といたしましても基本的な問題の研究を進めたい、かように考えております。
  41. 松原喜之次

    ○松原委員 今六〇%でたとえば東京や大阪のハイヤー、タクシーの料金がきめられたとおっしゃいましたけれども、おそらくそうだと思いますが、その間には多少の時勢の相違と申しますか、あるいは多少の正鵠でない数字があるかと思います。私どもの考えでは、六〇%より相当以下でいいというふうに、私は公平に考えているわけですから、一つ注意なさって、十分その原価計算等は厳格にやっていただいたらいいと思います。  次に私は、自動車営業がトラックにしろハイヤーにしろ、これはやはり公益的な性質を帯びた事業として健全な発達をさせなければならない、そのためには一定の規模というものが必要である。詳しく申しませんが、間接費等の関係から、一定の規模というもの、すなわち最低適正規模というものがあるはずだ。上には最高適正規模があるかないか、議論が存しますけれども、下の最低適正規模というか、適正規模の限界というものはおのずからあると思うのであります。従ってトラックにしろ、ハイヤー、タクシーにしろ、地域々々によってもちろんこれも違いますけれども、それぞれの地域における適正規模というものを考えて、免許等に当ってそれを重視されなければならないと思うのですが、どうでしょうか。
  42. 山内公猷

    ○山内政府委員 その点は道路運送法第六条の第三項の問題でございまして、われわれが許可いたしますときに最も頭を悩ます問題でございます。それでただいまの御指摘の点が、ある程度経済的に、数字的に出す方法はないであろうかということも常々研究いたしておるわけでございますが、この点につきましては現在たとえば通運事業というような、鉄道の荷物を一定に扱い、一定の人間を使い、また一定の収入のあるという事業につきましては、先生の御指摘の最低規模がある程度経済的に出し得る見込みがついておるわけでございます。ところがその他のトラックでございますとか、ハイヤー、タクシーというものにつきましては、ばく然とした数字、たとえば東京において一車の企業は成り立つかという極端な場合には、それはむずかしいということができるわけでございますが、これは二十両がいいのか、三十両がいいのか、あるいは三十五両がいいのかというような、的確な数字を出すという経済的な研究はなかなか進まないわけでございます。御指摘のような方法で適正規模というものが行われるということは、非常に望ましいことでございます。これが最も経済的な近代経営としてなされるということになりますと、これは松原先生には釈迦に説法のきらいがありますが、大体五十両ということになりますと、整備機構の関係あるいは総係費の関係で、近代的経営でいいということにもなるわけでございますが、しかし全体的にそういった状態でもないときに、そういう理想的な規模だけが果していいかどうかということは、社会的な情勢もまた勘案しなければならないのでございまして、各都市におきまして、どの辺に規模を設けるのが適当かということは非常にむずかしい問題でございますけれども、むずかしいといって努力をしないわけではないのでございまして、各業種について何かそういう規模ができることが、免許企業の根本的なコンストラクションを作っていく上におきまして、自動車行政の科学性と申しますか、経済性と申しますか、そういう基本をなすものだということで研究を進めておりますが、この席でたとえばこういうものがいいというものをまだ御披露できないのは、まことに不勉強で申しわけないわけでございます。今後とも研究を進めて参りたいと思います。
  43. 松原喜之次

    ○松原委員 そういう科学的な、また実際に適用できるような理想点というようなものを発見することは、非常にむずかしいです。従って三十両がいいのか、三十二両がいいのか、三十五両がいいのか、そういうことはもちろん非常にむずかしゅうございますけれども、かりに十両でもいける、七両でもいけるということになってくると、一両でもいけるという、それと同じ議論が出てくるのでありまして、事そこまで引き下げて参りますと、これは最低限度を切っておるものだということがわかると思うのであります。そこで実際的には理想点を発見するよりも、わかり切った限度以下の規模は許さない、あるいは限度以下の規模に対しては相当考えて、それをやめさすわけにいきませんから、たとえば増車等のときにはそういうものを優先的に、どうやら一人歩きができるというものにまではしてやるという実際的な措置のために、そういう明らかな程度の現実があったとするならば、これを救済するということが私は必要ではないかと思うのであります。いわんや新しい免許を許すときに、その限度をはるかに切ったような事業に免許を許すというようなやり方は、あまりとるべきではない。私はかように考えて、実は適正規模の問題を出しておるわけでありますから、それは一つ自動車局においても大体その常識に訴えて——科学性は多少欠いておっても、腰だめ的にこれでは無理だろうというものがあろうかと思うので、今後それについては、大いに研究はけっこうですけれども、実際問題が起った際には、他から見てもこれはあまりおかしいと思われるような程度の免許をおろすとかいうようなことはやめ、かつそういう程度の営業がありとすれば、それらを優先的に増車等の場合には補完をする、こういう立場に立たなければならないのではないか、かように考えておるのですが、どうでしょう。
  44. 山内公猷

    ○山内政府委員 今仰せられるように、常識的にはもちろん考えてやっておるわけでございますが、ただその際にそれを優先するかどうかということは、いろいろ現実の問題といたしましてはプラス・アルファ、それもやはりいい増車の条件になるデータとして取り扱っておる実情でございまして、増車をいたします場合には、過去における業者の実績、特にいろいろの違法行為をしたとか、あるいは非常によく労務管理をやっておるというようないろいろなデータをプラス・マイナスいたしまして、増車の決定をいたしておるわけでございまして、今非常に悪い会社であるけれども、数が少いから優先的にふやしてやる、もちろんそういう意味ではないと思うわけでございますが、そういう数が常識的に少くて、適正規模を欠いて経営が思わしくないというものも、陸運局におきましてはある程度考えつつやっておる現状でございます。
  45. 松原喜之次

    ○松原委員 その点なんです。あまり無理な営業を許すところから悪いことも起り得るのです。むしろこれは無理でない程度にやるならば、そういう悪い営業をいい営業に改過遷善することができると思うのです。ことに成績を勘案するなどというようなことをいうと、どうしても相手に納得がいかない場合が非常に多い。そこで問題が起る。それはあなたも御存じの通りです。非常に問題が起る。だからそういうところに力点を置かないで——もちろんだれが見てもあれは無理ないというような著しいものは別として、そうでないものを陸運局で採点をやってみてそれできめてみたところで、ややもすればそれは公務員の正しからざる感情と申しますか、あるいはあまり正しくない分子がそこに混入しておるのではないか。そういうことを疑わせるようなことにもなるのでありますから、その点はほんとうに顕著で明らかなものという、その標準以外にそう事こまかな標準を持ってこないことにしてもらう方が、問題が少いかと私は思うのであります。ことにこの適正規模ということに重きを置いて増車等の場合には考える。ただ既存台数の按分でやるというような下手なことをやられては、公共的に見てもせっかく増車しても、その結果はよくないということになるのでありますから、そういう点にはよく考慮を払うということを、一つあなたの方から各地方局に指示しておいていただきたいと思うのであります。  次に早晩どこの都市でも需要がだんだんふえますから、増車の問題が起ると思います。そこでそういう際には、既設免許の営業者と新免許者両方に許されるというような方針であると聞いておるのですが、その点についてどういうふうな御方針なのか、あるいはその比率等についてはどうなのか、何らか決定されたことがあったら、この際お答え願いたいのであります。
  46. 山内公猷

    ○山内政府委員 これは決定されたというような方針を、まだはっきり申し上げることができないわけでございますけれども、相当大幅な増車をいたします際には、それまで需給の関係で新規免許というものはストップになっているわけであります。それでそういうときには新規免許も、相当ストップになっておりましても申請が出ておりますので、それを審査するわけでございまして、そのうち何割を増車、何割を新免というようにこれは頭からはきめるべきものでもないということでございまして、結局適正なものは免許になるわけでございます。具体的な場合になりますと、この点におきましてその比率につきましては申請者の資格、申請者の状況ということによって相当違いが出ておりますし、この点陸運局もなかなか簡単に言葉で言えないような苦労を非常にするわけでございます。この際二割であるとか三割であるとかいうことを私申し述べることはいたずらに混乱を来たすことでありまして、その点は実際上の行政で無理のないという点を常に見出し、また時期によっても違うこともあり得るわけでありまして、具体的な問題をどうするかということになりますと、やはり責任を持ってその地方を管轄している陸運局長にまかさざるを得ないわけでありまして、われわれといたしましてはその際十分既存業者の関係、新免の関係というものについての振り合いを考えてやれという程度の指示はいたしておりますが、何割々々という指示は現在しておりません。
  47. 松原喜之次

    ○松原委員 大体トラック、ハイヤー、タクシーについて需給調整の問題が増車という形において相当起っておりますので、それらに関する質疑をいたしたわけでありまするが、増車とか新免とかいうようなことが行われる際には、冒頭に申し上げたように、増車の声があると相当有力な人物がもうこれは許されるものだということを予定して、それを売り歩くというような不都合な行動さえもとるぐらいでございまするから、ややもすれば地方陸運局と直接当局者の間にスキャンダルのうわさ等がどんどん起るのです。これは過去の実例もそうであります。また現にそういうスキャンダルの起ったことも事実であります。そういうことでありまするから、こういう点については運輸当局の十分なる御用意をお願いしておきたいと思います。  それからちょっと問題は違うのですが、タクシー、ハイヤーの料金をきめるときに、何人乗りであるかということが一番基準だと思うのです。ところがほかに長さですね。ホイール、ベース、それから高さ、それからもう一つおかしいと思うのは気筒の大きさを基準にして料金をきめられておる、こういうことになっておるのですが、時間を節約するために一緒にお伺いしますが、どうも料金をきめるときに、たとえば東京では百円と八十円と七十円になっておることは御承知の通りであります。それを大型、中型、小型と分けておるのですが、問題になっておるのは中型と小型の間でありますが、その際に東京では気筒の容積九百十CC以上は八十円、以下は七十円という——ほかの基準もありまするが、気筒をもって標準とする場合にはそういうところへ線を引いておるようでありまするけれども、これは乗客側からは何としても納得できない。同じ四人なら四人しか乗れない自動車が一方は八十円、一方は七十円、これでは乗客側からいけばどうも納得がいかない、かように私は思うのでありまするが、簡単でよろしいからこの点に関するいきさつなりあるいはそれに対するお考えなりをこの際承わっておきたいと思うのであります。
  48. 山内公猷

    ○山内政府委員 日本におきまして小型車が中型とそれからまた小型に分かれておるわけでございますが、これは日本特有の制度でございまして、諸外国におきましては大型と小型に分れておるわけでございます。それで現在、ただいま御指摘のように四輪の小型自動車で長さが四メートルもしくは幅一・五メートルまたは総排気量が九百十立方センチをこえるものは八十円で、それ以下のものは七十円であるということになっておるわけでございます。このいきさつといたしましては、御承知の通り運賃関係でいろいろ業界がもめまして、大騒動があったことがあるわけでございます。そのときに運賃をどうするかということをいろいろ諮問をいたしまして、当時の状態におきましてこの線で線を引くことが一番運賃制度ではいい。当時大型の車が九百十五立方センチでございまして、これは現在あまりないのでございますが、現状に合せて線を引いたわけでございまして、九百十立方センチメートルというものは、われわれもいろいろ聞いてみましたが、大した理由はないようでございます。それで当時のいきさつから考えますと、結局各車の料金というものは御指摘のように、ただいまお話ししましたような定義が基本的なものでございます。そのほかまだサービス、車の状態が乗り心地がいいとかいうようなものもいろいろあるわけでございますが、結局こういうものをどう分けるかということは需要と供給の関係でございまして、ただ御指摘のように四人乗りでも五人乗りでも非常に都合のいいものは、同じ六人乗りよりもお客さんがつくということになりますと、また業界にそういった混乱が起るということにもなるわけでございます。こういうものは運賃が、何と申しますか各段階におけるバランスをとるテクニックの一つである。九百十立方センチメートルできたということは、これだけには意味がないわけでありまして、その当時の車の状態におきましては、これで分ければ大体車のつきがそう大きく変らないというところで、当時の関係者が業界の納得の上できめたことのようでございまして、われわれといたしましては一応そういうふうにこの九百十立方センチを考えておるわけでございます。
  49. 松原喜之次

    ○松原委員 そこで実は私どもがこの基準をきめられるときに、気筒の容積が入っておったら、それは抜くべきだと明らかに主張したと思うのでありまするけれども、不幸にしてそのきまった際の事情がわからなかったためにそのまま通ったようでありますが、すでにトヨタ自動車がコロナという小型車、これは四人乗りでありますが、これの九百九十CCのものを作っておる。近く日産が九百五十CC余りのものをこの八月か九月には出すという予定になっておる。日本の自動車は小さいものであっても、やはり出足が速いとか、あるいは運転がスムーズにいくとか、あるいは他の重量とのバランスがうまくとれるとかいうような意味で、これは気筒がある程度大きくなるということの方が自動車それ自体としては好ましいのであって、決してこれをチェックすべき性質のものではないのです。ところがこういう標準があるために、勢いチェックされるということになると思うのでありまして、従って本来料金の区別をつける標準としてもっともふさわしいものは乗客数であるという点に重きを置いて、その範囲内において自動車のメーカーの技術が進んでくる工夫が重ねられ、そうして進歩したものを出すということは、できるだけこれは奨励すべきであると私は思うのであります。いずれ外国へ輸出しなければならぬとわれわれは思うておるのでありますが、その際においてもできるだけ出力の大きなものでそうして安いもの、あるいはそれであってガソリン消費量の少いものというものが最も望ましく、また輸出の力もあるわけでありますから、こういう点ではからずもチェックになっておるようなものはよろしく考え直さなければならないのではないかと思うのであります。ところがその際に業界の意向というものがこれまた無視することができないということも、局長は申されたいのでありましょうけれども、これはもちろんごもっともであって、その通りでありますけれども、しかしおのずから指導的な役割をしておる運輸当局としては、標準にすべからざる、あるいは日本の輸出産業としての自動車工業の伸展をチェックするような、そういう性質の標準等は考え直す方がよいというだけの指導力を持っていただく方がよいと思うのでありますので、この際、一つこういう点については自動車工業のためにはっきり踏み切っていただきたい。私は日本の自動車工業のために二十年来相当協力して参ったつもりでありますので、そういう立場から純真にこのことを申し上げておきたいと思います。どうかこういう点については一つ深甚に考慮されて、そうして踏み切っていただくようにお願いいしたいと思います。
  50. 淵上房太郎

    淵上委員長 關谷君。
  51. 關谷勝利

    ○關谷委員 私もいろいろなことを御質問申し上げたいと思っておったのでありますが、いずれまた陸運なり海運なりの小委員会を開いていろいろ御質問もするそうでありますので、私は自動車局長に書類によって御意見等を提出していただきたい項目を少し並べて、できるだけ早い機会に資料として御提出願いたいと思います。国会が終ると少しひまになりますから宿題ということになるかもしれませんが、あまり一度にひまになってもからだががっかりするといけませんので、その点において御質問申し上げますから、宿題は宿題として資料の御提出を願いたいと思います。  第一に御提出願いたいと思いますのは、現在定期船業者が道路の開発が進むにつれて非常な苦境に立っております。そういう人々でバス事業をやりたいというようなものにつきまして、これは私鉄その他については、そういう業者の従来の事業に上せるという意味においてその方面に免許を与えておりますが、そういう場合にこの定期船業者に対してどういうふうなお考えを持っておるかという局長の御見解を書類にして御提出願いたいと思います。  次に現在非常に盛んになっておるところのドライブ・クラブ、これをどういうふうにせられようとするのか、これに対する方策というか、対策を一つ御提出願いたいと思います。  それから私、定期観光バスの問題についていろいろ局長の御意見を伺いに行ったことがあるのですが、その当時には今にも何やらの審議会ができるから、そのうち何とかなりますという話でありましたが、一向それ以来進みませんので、定期観光バスについてはどういうお考えを持っておるのか、もっともこれはあなた方は陸上交通事業調整法によるあれがありますからということでお逃げになるかもしれませんが、いずれそれは廃止しようというようなことになっておるはずでありますので、そういうようなことを前提にして、実際どういうふうにしようと考えておられるか、その点の御見解を一つ御提出願いたいと思います。  それから今自動車運送協議会というものがどの程度活用せられておりますのか、私たちには一向わかりません。ほとんど何もしていないという地域もあると聞いておりますのが、自動車運送協議会の運営の状況、これの各局ごとの状況を一つ御提出を願いたいと思います。  それからいろいろ今問題になっている燃料油の価格の安定についての方策といいますか、対策を自動車局としてどう考えておられるのか、それを一つ御提出を願いたいと思います。  もう一つは、六大都市あるいは福岡、仙台等において路線を免許しようとする際には、その首長の同意を要するということで、あれは道路運送法の百二十三条であったかと思いますが、そういうことがあって、そのために陸運行政が陸運局あたりで非常にやりにくいということを、私ときどき聞いたことがありますが、あの百二十三条というものは、公営企業をやっている首長でありましたならば同意しないという場合が多くて、どうにもならぬのだということも聞いておりますが、これに対してはどういうお考えを持っておられるか、これを御提出願います。  なおトラック輸送については、長距離輸送はやるべきものであると考えておりますが、これに対する御見解を一つ御提出願いたいと思います。  もう一つは、運転手の違反の取締りの完璧を期するための方策を、どういうふうに考えておられるか。  以上の八つだったと思いますが、これをなるべく早い機会に御提出願いたいと思います。いずれ陸運関係についての小委員会を開いていろいろ検討もし、御質問も申し上げるそうでありますが、これだけの資料が出ますと、その小委員会を進める上に非常にスムーズにいけると思いますので、ぜひ早急にこの資料を御提出願いたいと思います。
  52. 淵上房太郎

    淵上委員長 永山君。
  53. 永山忠則

    ○永山委員 私も時間がございませんので、關谷委員にならいまして一応自動車局の方へ小委員会で御質問をいたします点を一、二追加しておきたいと思います。  今日トラック営業が燃料費の税率引き上げ並びに金融関係も漸次中小企業を圧迫して参りますし、労務関係の賃金等も上昇気味を持っているという諸条件、それでなくても経営が全く困難な情勢にありますが、その経営困難な原因はいろいろありますけれども、その一番大きな点は自家用自動車のやみ行為でございます。当局のこの取締り、あるいは正常なる運営の指導というものが最も要望されておりますが、それらの取締りまたは指導を顧みずして、ただ揮発油税の引き上げを政府が大幅にやるといった行政的な行き方というものは、自動車営業の主管庁である運輸省としては、全くわれわれは存在価値がないというくらいにまで実に憤慨をいたしておるのでございます。それに対して当局が手をこまねいて対策を講じてくれませんので、われわれの方でそれに対しまして、せめて自家用自動車の認証制というところまで持っていきたいという気持で、絶えず当局へ要望しておったのでありますが、さらにそれを自家用荷物自動車の届出制の形態というようなところまで後退しまして、多少でもやみ行為を防止したいということで進んできたのでございます。これらの点に対しましても、一面自動車工業会の方の強い免廃運動との交差線上において全く混乱を来たして、この国会に日の目を見ることのできない情勢になっておりますことは、非常に残念しごくでございます。政府はこれに対して免廃というものを今後どのように取り扱おうとし、その運動に対してどういう対策を持っておりますか。正常なる運営をやられるために、さらに積極的にどう指導しようという考えであるか、これを小委員会で十分検討するために、文章として一応の考え方を提出願いたいと存ずるのであります。  同時にこれに呼応いたしまして、参議院で難航いたしております中小企業団体法により、自動車貨物営業並びにハイヤー・タクシー業者の自主的な組合調整をやっていくことによって、この燃料高、金融難、事業経営の混乱を防止しようという考え方を強く持っております。これは業界の非常に要望いたしておる点でございますが、当局はこれに対する対策をどういうふうにしようとするものであるか。これと相呼応して道路運送法の業者団体の法制化に対して、中小企業団体法と同じような性格に引き上げて、これに対処していくという考えでありますか、この中小企業団体法と自動車運送法の業界団体との関係をどう調整する考えであるか、これらの点もあわせて、一つ当局の考えを承わりたいのでございます。  さらに需給の調整をいたして既存業者を育成強化し、適正なる経営指導をするということは、事故防止し、労務の管理を適正化し、営業の正常化を果す上において最も必要なことだと考えるのでございます。この需給の調整と経営規模の適正化というような方面の指導方針を承わりたいと存ずるのでございます。これらは小委員会で十分検討いたしたい問題でございますから、適当な資料を御提出願いたいのであります。この際鉱山局長がお見えでございますから、一点だけお伺いいたします。ガソリン税が上りまして、まだ値段がきめられませんので、そのままの姿でただ取引だけいたしておるのでありますが、適正価格にどういうようにして指導しようとする考えでありますか。燃料の需給安定の方途をどういうように持っていきたいと考えられているか。さらに飛躍してAA制に持っていくべきではないか、さらには業者にドルの一部割当をするようにして、価格の適正化、需給の合理化をはかるべきではないか、燃料の需給安定の対策をお示し願いたい、かように考えるのでございます。
  54. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 燃料の需給の安定と価格の需給の円滑化、価格の安定をはかるためには、現在の経済体制下におきましては、供給量を豊富にしていくということを心がけるのが第一のことであろうと思います。すなわち需要量に見合った供給量を確保するための必要な外貨を獲得いたしまして、それで十分な円滑な供給ができるような量的な確保をすることが一番大切なことであると考えまして、われわれとしましては三十二年度の外貨予算の要求の際にも、十分その要求を達成するように努力をいたしたわけでございますが、最近の実情からいたしますと、ちょうど中東紛争によって原油の入り方が減少することをおそれまして、百五十万キロ程度の原油の緊急輸入をいたしました。それが相当効果を奏したものと思います。最近ではだんだん市中の在庫もふえて参っております。価格も漸次軟化の兆を示しているのでありますが、われわれとしては今後とも供給を豊富にするというやり方で、あとはできるだけ需要者と販売業者との取引で物事をきめていくように持っていきたいと考えております。
  55. 永山忠則

    ○永山委員 時間がありませんので、私はまた小委員会で十分質疑をさせていただきます。
  56. 松原喜之次

    ○松原委員 ちょっと鉱山局長にお伺いしておきますが、鉱山局としては、あるいは通産省としては、ガソリン等の価格については需給の関係を調節する以外には何らの手の打ち方もなし、また手を打っておられないのかどうかお尋ねします。
  57. 森誓夫

    ○森(誓)政府委員 現在法的な根拠はわれわれ何も持っていないので、行政指導でやるしかないのでありますが、特に事態が非常に急迫しております場合、たとえば先般の中東紛争によって油の需給が非常に混乱された時期、昨年の十二月から今年の三月ごろにかけての間、こういう期間につきましては、通産省としては相当強力な行政指導をいたしたわけであります。業界の者に対して今後一切値上げをさせないという申し合せをさせましたし、あるいは今後精製業者が特約店に石油を販売する、仕切り価格をもし値上げしようとする場合には通産省の承認を受けなさいというふうな、ある程度立ち入った行政指導をいたして参ったのでありまして、事態が正常になって参りましたならば、通産省としてはあまり差し出がましいことはなるべくいたしたくないのでありますが、必要があればそういうことはいたすということでございます。
  58. 松原喜之次

    ○松原委員 詳しいことは私もまた陸運小委員会でお伺いしたいと思いますけれども、通常ということはなかなか問題でして、たとえばスエズ運河の紛争でフレートの上ったのは一キロ当り五百円そこそこ、ことしの一月にすでにそれに籍口したガソリン小売値段の引き上げは六、七千円になっているという事態があっても、これは通常状態ではない。そのときにはその価格を通常状態でないと考えられたのかどうか知りませんが、その通常状態というのはどこへ標準を置くかということが、非常に問題だとわれわれ疑いを持っているわけです。ということは、石油資本が非常に強い。ユーザーはばらばらで非常に弱い。そこでいわゆる独占価格が行われる。だからむしろ独占価格が行われている状態が通常の状態である、こういうことも考えられますので、それらの点について一つ今後十分われわれ検討してみたいと思うのでありますが、時間もないようでありますから、陸運小委員会に譲ることにいたしましょう。     —————————————
  59. 淵上房太郎

    淵上委員長 これより昨日に引き続き、第五北川丸の遭難事件について質疑を行います。正木清君。
  60. 正木清

    ○正木委員 第五北川丸で不幸なことが起きたわけですが、私がお伺いしたいと思いますことは、この第五北川丸の不幸な事柄と関連して、船客損害賠償保険と関連して、定期船船客損害賠償等について、北川丸の経験から、事務当局では今後こうした保険制度について、何か具体的な建設的なものをこの経験からいってお考えになっておられるかどうか、まずこの点をお伺いいたします。
  61. 粟澤一男

    粟澤政府委員 ただいまお話の船客の損害保険につきましては、数年前からやっておりますが、現在の実情を見ますと加入率も割合低いのでありまして、運輸省としても定期船協会としても加入を現在まで一生懸命勧奨しておった、こういう状況でございます。私ども第一段階といたしましては、まず第一に保険の加入をもっと勧めるということが第一段階、こういうふうに考えております。それから第二段階といたしましては、御指摘の今度の経験によりまして、船会社の方に責任ある場合にはその保険が取れないというふうな問題がございます。これは乗客にいたしましては非常に迷惑な話でありまして、船会社の何らかの瑕疵によって保険金がもらえない、従って船会社からも補償金がもらえないという結果になります。できれば船会社に相当な瑕疵がありましても、その保険金が船客に参るというふうに改正いたしたいと思って、ただいま検討いたしております。目標といたしましては、船会社に瑕疵があっても保険金はもらえる、こういうふうに改正いたしたい、このように考えております。
  62. 正木清

    ○正木委員 そういたしますと今事務当局は、具体案はできてはいないけれども、ものの考え方としては、船会社に落度があっても船客に迷惑のかからないような保険金の取れる契約ですか、そういう改革が骨子である、こう承知してよろしゅうございますか。
  63. 粟澤一男

    粟澤政府委員 その通りでございます。
  64. 正木清

    ○正木委員 保険制度の一般論から考えてみたときに、まだ当局の方から具体案の発表がございませんから一般論でお伺いするより仕方がないのですが、船会社に大きな落度があって、なおかつ損害保険金が取れるという制度は、一体他の保険制度の中でありましょうか。一般論的なものとしてありましょうか。そういうものの考え方には非常に危険性があると思いますが、何かあなたが答弁をされた限り、具体的な構想があると思いますが、その点をお伺いしておきたいと思います。
  65. 粟澤一男

    粟澤政府委員 瑕疵の内容にもよると思います。また程度にもよりますが、船会社にいかなる重大な過失があっても保険金が取れるというふうな点は非常に困難かと思いますが、その程度によりましては、私どもの気持としては不可能ではないというように考えるのでありますが、ただいまほかにそういう例があるかと申されましても、先般施行になりました自動車の保険その他を検討しておりますが、具体的に、しからば今度改正するつもりの案にぴったり手本になるものがあるかどうかというお話でありますと、的確にそういうものがあるという点までは申し上げかねる現状であります。
  66. 正木清

    ○正木委員 私は第五北川丸のこの遭難事故以来、いろいろと参考資料を集めてみて考えさせられた点は、国内の旅客定期船の現状というものは、一般社会人が想像していないほど非常に貧弱なものである、また危険なものである。しかもその果しておる任務というものは国家社会にとっては非常に大きなものである。こういう点が一つ私は私なりに明確になりました。もう一点は、国内の旅客定期船というものは、その営業規模というものが、これまた一般社会人が想像することのできないほど小さなものである。むしろ個人の営業者が圧倒的に多いということです。それから保険というものの制度の上から考えてみたときに、自動車損害保険の場合であるならば、どんな大きな事故であってもその事故の人数にはある一定の限界がありますが、定期船ということになれば、やせても枯れても相当の人数を頭の中に入れておかなければならないということになると、あなたが今御答弁なさったようなことを言っても、保険会社と保険の契約をする場合に、その契約会社に保険料を納入するには、経済的な力という裏づけが必然的についていかない限り、あなたの議論は抽象的で危険性がある。こういうことを分析して、その上に立って今後のあり方というものを事務当局は研究する必要があるのではないか。たとえば一つの具体的な例をあげますと、あなたの方では大体すでに研究済みであろうと存ずるのでありますが、あなたの方の認可を受けて国内定期に従事しておる会社は五百八十四でありますが、この五百八十四の中で個人が常業し運航しておるものが二百八十九あるわけです。事務当局の方ではこういう会社が幾つで、個人に幾ら許可し、地方公共団体に幾ら許可し、協同組合や企業組合に幾ら許可をしておるかということの御調査があると思いますが、あなた以外の方でもけっこうですからこの点を明らかにしてもらいたい。
  67. 中野大

    ○中野説明員 今お話の経営者の数でありますが、先生のお話通り昨年三月末現在でございますが、五百八十四ございます。そのうち会社組織のものは三四%ございます。地方公共団体が九%、協同組合その他のものが七%ございまして、個人は先生おっしゃいます通り五〇%、こういうふうな数字になっております。
  68. 正木清

    ○正木委員 ただいまの認可の種類に基いて、たとえば資本金百万円未満であるとか、百万円以上五百万円未満であるとかいう御調査ができておれば、ここで御発表願いたい。
  69. 中野大

    ○中野説明員 こまかい内訳は今手元にございませんが、大きく分けまして、六千万円以上のものは九社、百万円未満の会社が九十四社でございます。
  70. 正木清

    ○正木委員 この五百八十四の認可を受けておるものの中で、個人が二百八十九という圧倒的な数字を占めておるところに、この国内定期航路の非常に特異なものがあるということを、まず第一にわれわれは頭に入れておかなければならないと思います。その次にさらに頭に入れておかなければならないことは、会社組織であっても、今あなたが答弁されたように百万円未満のものが九十四社、百万円以上五百万円の会社が六十社という非常に小規模な会社組織で、この経営を実際にやっておるということ、今あなたが指摘した六千万円以上の九社というものは、他の卒業がほとんどおもであって、この国内航路というものは片手間にやっておるのだ、こういう特異性があるのだ。こういう特異性を事務当局は十分御存じでいながら、思い切った行政的な指導処置をなさらなかったところに、事の意外な北川丸というような、不幸な事件が起きたのだということを前提にして、ものを考えることが私は妥当ではないかと思う。だから今後こうした特殊な状態にあるこの国内航路について、行政的に一体どう指導し、どう助成していくのか、この点をお伺いしたい。
  71. 粟澤一男

    粟澤政府委員 ただいまの現状は先生の御指摘のございました通りでございまして、特にそれが表面に出ております実情といたしましては、現在使われております定期船の船質が非常に劣弱であるという点が第一点に出て参ります。船齢から見ましてもあるいは構造その他から見ましても、十分な船とは言いがたいものが相当数現在運航されておる、こういう実情になっておるわけであります。従いましてまず第一に私どもの考えておりますことは、この船質を何とかして改善したいという点でございます。この点につきましては昭和二十八年以来、開発銀行その他の政府資金あるいは中小企業金融公庫政府資金、例年約三億ないし四億程度の資金をもちまして、船舶の代替建造を行わしております。それからさらに事故の起きましたときのために、先ほど申しましたように保険の制度を始めておるのでありますが、これが現在なお加入状況があまり進んでおらないという点もございまして、一つには保険料をさらに下げなければいかぬという問題もございます。従いまして、本年度におきましてもある程度の保険料の引き下げをはかったのでありますが、なおそのほかに任意に加入をいたしておりましたら、なかなか十分な成績を上げ得ないという点もございまして、できれば近く強制的に船客保険に加入させるような措置を講じたらどうかという点もただいま検討いたしております。それにつきましては先ほど御指摘がありましたように、保険料の支払いという点も考慮いたさなければならないのでございまして、私どもは船客の運賃等を算定認可いたします場合にも、できるだけ保険料というものも考慮して認可していきたい、そういうふうに考えております。なお御承知の通り国内旅客船の経理状況は、最近でもあまりよくはありません。相当数のものがやはり補助金を政府から受けまして、やっと経営をいたしておるというふうな状況でございまして、本年度は補助金につきましても皆さんの御理解ある御処置をいただきまして、ある程度の増加を見たのでありますが、今後なおこの補助金を増額することによりまして、会社内容の向上あるいは代替船の建造等にも資し得るように努力したい、こういうふうに考えております。
  72. 山本友一

    ○山本(友)委員 ちょっと関連。今正木委員から御指摘されました点は、私は交通の業者でございますので、非常に御指摘の点は深刻に考えられるわけでございます。今も許可の員数なんかをお調べになりましたが、このうち私の見たままでは——私もその部類になるかもしれませんが、非常に貧弱でございます。何ゆえにかように貧弱かということを考えますと、今日の北川丸の事件がこれを教えておるわけでありまして、私どもは監督者の立場といたしましても、また為政の府に携わるわれわれといたしましても、大いに考えさせられるものでありまして、この事業は小でありましてもその性格は全く公共事業であり、国家の監督のもとに運賃等もやっておるというような性格を持っておるのでございますが、さて国家監督にありながら、国家が保護育成という点については、一口に申しますと何ら今までに施策がなかったということに尽きるのであります。何一つない。北川丸の今日起りました問題でも、これらの貧弱な船主はかような事件が起りました場合には、善良なお客様に大へん迷惑をかけてはいけないという立場から、経営の苦しい中をこういうことに備えるべく付保していった。いわゆる船客傷害保険という名のもとに、こういう場合がありました場合には、お客様には迷惑はかけられぬというようなもとに付保されておったはずです。ところでこれなんかも事故が起った現実の問題といたしましては、船主はどういう立場にあるか、この間北川丸の事件に私はつぶさに出会って、深刻にこの問題を考えたわけでございますが、ごらんなさい、船主は自分の財産には保険はようかけておりません。なぜかけていないかということになると、言いかえますれば木船でありましたら、保険料をかけたら燃料費も何もかも注ぎ込んでしまっても経営が合わないのでありますから、自己の財産に付保することはまずできない、不可能でありますが、お客様には迷惑をかけられぬというとうとい気持で保険をかけておるにもかかわらず、さて今度こういう事件が起ってみると、保険会社は船主の重大なる過失によってというような約款上の一項をつかみまして、これを払わないという現実の問題を私は非常に憤慨をいたしておるのであります。これは一体何だ、これでは道義的にはまさに白昼詐欺するようなことじゃないか。その名で保険料を取って、船長あるいは船主にかりに技術上の過失があったといたしましても、お客さんに何の罪があるか、死のうと思って乗った人もありませんし、船主はひっくり返せというものでもない。こういう事件は今後いかに立法処置をとりましても、監督を強化いたしましても、これはお互いに注意注意を払いましても、根絶させることはできません。これは今日の汽車の転覆のようなもので、根絶させることはできません。次に起る問題に対しましては、われわれ為政者としては、これに備えておかなくちゃならない問題であるということが思われるわけでございまして、かような点から考えましても、保険会社に払うとか払わぬとかいうようなことを言わすということにおいて、あなた方は監督者としての責任を一体考えておるのか。保険会社が払わないといえば、仕方がないといって、保険を窓通いたしておるということは、無責任きわまることだと思う。こういう点から、運輸当局としては、監督官庁といたしましては、はっきりしてもらいたい。これは大きな犠牲者も、保険をもらおうと思って乗った人はないでしょうけれども、今日の船主といたしましては、これはどこの船主をつかまえましても、こういうような根本を危うくするような大きな遭難にあいまして、用意の立っておる船会社は一軒もございません。いかに大会社といえども、大事故が起りました場合には、よろしいおれの力でぱっと払いますというようなことができる用意のものは絶対にありません。ことにこの種の中小企業者においておやでございまして、全く気の毒なことだと、私の体験を通じて思っております。かつても申し上げましたように、昭和二十一年に私の船が同様の事件で沈みまして、百六十名近くの人をなくしました。私は身をもってこれを処置いたしました。会社は真空状態になりました。こういうような事件に私は出会っておりまするので、ほんとうに言葉でなくして、この問題は深刻さを私は思うわけでございますが、これらに対しまして、今まで定期船というものの社会的地位については、業者みずから大いに奮起しなくてはならないはずなのでありますが、まずこの監督者というものが、いわゆる行政府というものが、何らなすべきものがなかった。ただ運賃の決定をするのに事務的の事務を扱っておるというような、いわゆる行政のあり方であった。何ら育成保護ということについて意を用いていなかった。こういうことがこれら船主の貧困をいたしておる最大の原因であります。御承知のように、昔は定期船等につきましては、国家機関の一部であるというような理念のもとに、どんどんと行政の面もきびきびと行われた面もございました。当時は、たとえば経済上助ける意味におきまして、あるいは市の補助、小さいところでは郡の補助とか、あるいは県の補助とか、あるいは国の補助とかいうようなものもございましたし、また一面から申しまして、今日船に固定資産税というものがかかっております。ところで、昔は船というものは、御案内のように一朝事があったらじゃぶんとなくなってしまうわけでございまして、ほんとうの固定資産ではございません。今度の北川丸のようなものでも、固定した資産ではありませんが、これにはやはり大きな税金をかけておる。これらに対しても運輸当局は何ら打つべき手を打っていない。それからこういうような交通船は、御案内のように、運賃はあなたの方で取り締ってちゃんと尺度をきめるのでありますが、今日のごとき燃料費が最大の費用でございますが、燃料費なんかは何ら打つ手を持っていない。これは今日統制時代と違いますから、あながちあなた方に責任を云々するわけではございませんけれども、昔はこれらに対しましては、交通船の特殊使命にかんがみまして、免税を行なったものであります。いわゆる免税の油を使わしたものであります。かようにいたしまして、陰に陽にこれらの育成、国家の延長機関として援助をいたしたいという歴史を体得のうちに私は持っております。ところで現在はこういう点にさらにあなた方がいわゆる行政上の御指導をなさっていないというところに、貧困の原因がある。これは海運局長が船腹の改善の機運を言われましたが、まさにその通りでございます。この北川丸も三十年の年になっておりまして、非常に古い船でございますが、これなんかも改善したいのは船主も腹一ぱいでありましょうけれども、今日のあの木船一ぱいにいたしましても、わらじのような船が、作りますれば一千万円かかります。ところでその一千万円を投下いたしましてやるということになりましたら、なかなか今日採算がとれるものではない。船主はそれで無理をし無理をして改造をし、大修繕をして使っておるということが現実の姿であります。かようなことになっておるのでございまして、今補助とかあるいは建造資金の貸し出しとかいうようなことを言われたのですけれども、これは全く二階から目薬で、ことに資金の融通ということになりますると、運輸省が御心配願いましても、結局実際は銀行の窓口にかわるのであります。見返り資産があるかないかということによって、金を貸してくれるか金を貸してくれないかという勝負になってくるわけであります。従いましてこういうようなことで、今は政府に援助してもらうとか、金を貸してもらうというような特徴はほとんどないのであります。私はこういう点を、国家機関の一部であるというような広い意味において、迷惑を及ぼすときには、これは国民のどなたに迷惑を及ぼすやらわからぬことでありますから、私はこの機会において、あなた方指導監督にあられる人は、もう少し奮起を願いたい。そのような受動的な、ただ役場が戸籍をつけるような行政でなくして、もう少し能動的にやっていただくことを、私は正木委員のあの切実なる御質問に胸を打たれましたので、ちょっと付言をいたしますると同時に、ぜひとももう少し能動的に働いていただきたい、かようにお願いをいたしたい次第であります。
  73. 正木清

    ○正木委員 そこで私は第五北川丸の事故以来考えるのですが、定期船というものの一つの定義ですね。わかりやすく言うと、国道、県道、村道の延長ではないか、こう考えることが一番妥当だ、こういうように私は規定をしておるのでありますが、この考え方について、局長、あなたはどうお考えになりますか。
  74. 粟澤一男

    粟澤政府委員 私どもその考え方には全く同感でございまして、たとえば昨年でございましたが、政府は国道、県道その他について実際に金を出し、あるいは補助金を出して建設をやっておるじゃないか。これと同等の使命を果しております定期船に対して、補助金を出さないのはおかしいじゃないかというようなことで、大蔵省にも建造補助金、改造補助金を要求いたしましたが、遺憾ながら、先生も御指摘通り、微力にして私どもの主張が、こういうような財政事情もございますが、いれられなかったという経緯もありますが、この船がなければ、離島の人は交通もできなければ、生活必需物資も手に入らない、郵便も来ないという状況になる。しかも危険な海上の交通に当っておるわけでありますから、むしろ国道その他以上の重要性を持っておる、あるいは考え方をそれよりももつと重く考えなければいかぬというくらいに考えております。
  75. 正木清

    ○正木委員 私は今道路の延長であるという規定をした。その基礎は、私の調査によると、昭和三十年度で、この小さなボロ船が運んだ旅客輸送人員は、驚くなかれ七千五百万人、貨物が二千二百万トン、手荷物が三千五百万個、小荷物が七千万個、郵便物が二千万個、私の調査の数字に間違いがなければ、こういう数字になっておる。これは大きな国家的な一つの事業であるとともに、国家は責件を負うべきものである。こういう極端な議論に到達してもあえて間違いはないではないか、こういうようにすら考えるのですが、事務当局でも当然調査は済んでおると思うのですが、昭和三十年度を基準とする旅客輸送その他について、私が今指摘いたしました人員、個数、トン数に誤まりがあるかないか、この点を責件ある事務当局の方であらためてここで明らかにしておいてもらいたい。
  76. 中野大

    ○中野説明員 三十年一月から十二月末までの暦年一年間の実績でございますが、旅客数はただいま先生のおっしゃられましたように七千五百二十二万九千人でございます。それから手荷物は三百四十八万五千個でございます。それから小荷物は七百万六千個でございます。それから郵便物は二百一万個、貨物が二百四十三万一千トンでございます。以上でございます。
  77. 正木清

    ○正木委員 私の調査した点で人員以外は私の方の調査の相違があるようでございますが、いずれにしても大きな国家的な大事業であるということには間違いないと思うのです。そこでこれらの大事業に就航していを定期船千百九十五隻のうち、鋼船と名のつくものがわずかに百八十七隻、あとの千八隻が木造船であると私は調査しておるのですが、これに間違いがあるかどうか、やはり責任ある当局から明らかにしておいてもらいたい。
  78. 粟澤一男

    粟澤政府委員 その通りでございます。
  79. 正木清

    ○正木委員 そこで先ほど局長も触れたようですが、この千百九十五隻の船齢でございますが、これがまた驚くべきことなのでございまして、鋼船の船齢が二十年以上の老朽船が約三八%、木造船に至っては船齢十年以上の老朽船が約六〇%、こういう私のところで調査ができておるのですが、この数字についてもここで明らかにしておいてもらいたい。
  80. 粟澤一男

    粟澤政府委員 大体おっしゃる通りの数字でございます。
  81. 正木清

    ○正木委員 こういう具体的な事実は、事務当局の方では当然御調査済みになって、本日までそれぞれ大蔵当局とも折衝をされてきたと御答弁になっておるのですが、国内の旅客定期船のこうした現状を改善して、国民すべての者に安心感を与え、便利をはかるために、運輸省全体としてこれらの問題を真剣に取り上げたことがあるかどうか、こうした具体的な事実を基礎にして、一局ではなくして運輸省全体として、たとえば政府の閣議に持ち込むとか、政府としての全体の国策として取り上げるような努力をしたとか、与党である自民党の政調会にこうした具体的な問題を献策したとか、そういう事実があるかどうかをここで御答弁を願いたい。
  82. 粟澤一男

    粟澤政府委員 私どもも御指摘通り非常に重要な問題と存じまして、できるだけ努力はいたしておるわけでございまして、ただいまの御質問にあります点等につきましても、たとえば今年度の建改造資金の開銀のワクにつきましては、特に閣議において大臣に御発言を願った、あるいは本年度の補助金等につきましては、政調会にもお願いいたしまして、御協力いただいたというふうなこともいたしておるわけでございますが、遺憾ながら、先ほど山本先生からも御指摘がございましたが、なおわれわれの努力が足りなかったという点は、今日反省いたしております。今後省をあげて大きな問題として推進して参りたい、こういうふうに考えております。
  83. 正木清

    ○正木委員 事務当局のその御努力は私は多とするのですが、こうした実情の上に立って、しからばどうしたらよろしいかという問題になると、先ほど私が指摘をしたように、五百八十四のうち個人が二百八十九人も圧倒的に営業の許可を受けている。百万円未満の会社が九十四社だ。百万円以上五百万円が六十社だ。老朽船であることを承知していても、これの代替船を作るための資金がどうにもならない。そこで事務当局としては、開銀にその融資のあっせんを実は今日までしてきたのだ、こうおっしゃいましょうが、昭和二十七年から八年度にかけて二十六隻の建造と八隻の改造を行うために、財政資金は三億六千三百七十万円でありましたが、これが二十九年度においては一時開銀融資の道が閉ざられたのではありませんか、そうして中小企業金融公庫というように変っていったのじゃありませんか、この点をここで明らかにしておいてもらいたい。
  84. 粟澤一男

    粟澤政府委員 御指摘通りでございまして、二十八年度には開発銀行から約三億近くの建改造資金が出たのでありますが、二十九年度にいろいろな事情がございまして開銀のワクからたまたま除外されました。中小公庫だけの金融で二十九年は終ってしまったのでございます。従いまして私どもは三十年度におきましてぜひ復活してもらいたいということで、大蔵省あるいは経済企画庁に強力に折衝いたしまして、三十年度に、三億、三十一年度にも同じく三億、そのほかに中小企業金融公庫の分も入るというふうに、三十年度からまた復活いたしております。
  85. 正木清

    ○正木委員 そこで、私の選挙区は北海道の関係もありますが、北海道でもこの問題は実は第五北川丸以来非常に大きく取り上げられているわけですが、あなたの手元にこういうのは来ておりませんか。「北海道離島航路整備会社設立要綱、北海道海運局試案、昭和三十一年十月二十六日」、こういうものが事務当局のお手元に届いておりませんか。届いておったとすれば、それの構想をここで簡単に明らかにしてもらいたい。
  86. 粟澤一男

    粟澤政府委員 ただいま手元に持っておりませんが、その話は承わっております。私の方も開発公庫ができまして、ぜひ北海道関係についてはその方でやはりめんどうを開銀、中小公庫以外にも見てもらいたいということを申し入れをしているわけであります。北海道は定期航路がたしか十幾つかござまいすが、内地とはまた違った状況がございまして、たとえば離島に参りますにも気候その他の関係から、需要にマッチした程度の船ではむしろむずかしいというところがありまして、船舶の安全上から見ますと、やはり需要以上の船舶も整備しなければならぬというような状況もございます。そういう点をよく説明いたしまして、開発公庫の方でも相当わかっていただけたと思っているのであります。ただいまお話の整備会社につきましては、道庁その他が出資するのであれば、開発公庫も半額程度の出資に応じ得る。道庁にもお話をいたしまして、道庁も何とか考えようというような話し合いがある程度進んでおりまして、約一億をもちましてそういう整備会社を作り得るのではないかとただいま考えております。
  87. 正木清

    ○正木委員 私のところに届いている資料によりますと、今運航している全体の船の隻数は二十一隻でございますが、このうちの適格船はわずかに十三隻しかないです。あとのものは、トン数が寡小であり老朽であって、完全な不適格船である、こうあります。そこで北海道開発公庫が持ち株を五〇%、それから関係の地方公共団体が四五%、北海道定期船協会がわずかに五%——今日あなた方が許可しているこの個人または船会社の経済的力がいかに弱いかということは、これでも明らかなんです。大体本州におけるのも、私が先ほど指摘した通り個人ですから、これは非常に力が弱いと思うのです。そこで、これは私の一つの思いつき程度のものですが、今の状態で放任しておけば、わずかな開銀の融資や中小企業金融公庫の融資では、必ず再びこういう事故がないとは何人も言い切れないし、しかも国家として、この道路の延長であるべき国内の定期船を放任しておいていいということでは、国の政治として成り立たないと思うのです。そこで事務当局としては何らかの構想を明らかにして、具体案を作って与党の政調会を動かし、政府を動かすものを作るべきではないか、私はこういうように考えて実はきょう質問をする、こういうことだったのでございます。しかも私が非常に意外に感じたことは、きょう宮澤君がここへ出席するというから、正直に言うと非常に忙しかったのですが来たのです。ところが運輸大臣は出席しない。この第五北川丸の問題が起きる前に、日本定期船協会の原協会長から、強い要望が運輸大臣に具体的になされておるのです。これはあなた方、認めるでしょう。その具体的な要望は、今日あるこの実情の基礎の上に基いて、こうしなければ、この国家的事業を完全にやっていくことはできません、何とかしてこの要望を聞いて、これを具体的に実行に移してもらいたい、こういう要望書が出ているやさきに、第五北川丸のあの不幸な事件が起きたのだ、こういうことだと思うのです。ですから、私は抽象的ではいけないと思うのです。問題が明確になった限り、担当の事務当局は真剣にこれらの問題に取り組んで、そして具体案を作る必要があるのではないか。聞くとこの委員会にも小委員会ができたようでございますから、いずれその小委員会が開かれるまでには、局長の手元で具体案を作って出すくらいの熱意を示して、国民にも、あの大きな犠牲を払っているこれらの諸君に対しても、私は報いる必要があるのではないかと考えます。局長、あなたはどうお考えになりますか。
  88. 粟澤一男

    粟澤政府委員 先ほども正木先生より御指摘のありました通り、私どもただいままでの施策その他につきまして努力も足りず、ことに結果的に見まして、この点につきましては非常に申しわけないと思っております。ただいま御指摘のように、できるだけすみやかに具体案を考えまして、できれば小委員会にも提出いたしまして、御批判、御協力を仰ぎたい、このように考えます。
  89. 正木清

    ○正木委員 私の質問は終ります。
  90. 山本友一

    ○山本(友)委員 関連しまして最後にお願いしたい。今正木先生からまことにけっこうなお話をいただいたわけでございますが、最近何ゆえに定期船業者がこういうように、特に経済的に苦しくなったかというその原因は、よって来たるものがあるわけでございます。従来はそれはそれなりの経営が立っていたのが、最近特にこういうような貧困な姿が起ったということにつきましては、日本定期船協会から陳情書が参っておりますように、これはどこの地方にもあるわけでございますが、間接的には、バス事業の発展によりましてお客さんが漸減をしておるのでございます。たとえば、船は島から島へ通うのが原則でありますけれども、島でないが、離島にひとしいような地域にもやはりあるわけです。ところが、こういうように世の中が落ちついて参りますと、そこの周辺に道路がついて参ります。そういたしますと、どんどんとバスが走るということになりますが、船は、まだ端々まで道路がついておりませんから、やめるわけにいかない。栄養素はきれいにバスに取られてしまうというようなことで、全く肺病の第三期のような状態で、やめればその地方が交通上くらやみになるし、やるにはやれないしというような姿を展開をいたしております状態が、各地方に起っております。これは時勢の進運に伴いましての現象でございます。この現象のためにこの病気にとりつかれて、今のこの小さな海運業者があえいでおるということを、私はさらに知っていただきたいと思うのでございます。これがゆえに、この海運業者におきましては、時代に即応するような生きる道を考え、地方の交通上から申しますと、はなばなに道路がついていないところをやめるわけにいきませんから、海陸立体的の姿においての地方交通のあり方から勘案をいたしまして、これらを総合的に立案をいたしまして、あるいは従来定期船でやっていたものがバス事業に転換をいたしまして、そしてはなばなに小さな船で連絡をして、はなばなまでも交通の恩恵に浴せしめようという構想をもって出願をいたしておるところがあると思います。現に私もその一人でございますが、これらに対しましても、現実の姿はどうかと申しますと、いわゆる海運局、陸運局あるいは自動車局というふうに分れております。いわゆるなわ張りがありまして、お前は海のものだというようなことで、これらの総合的な運輸行政というものを、運輸当局はよう考えぬのでございます。運輸当局において、運輸行政を地方的に立体的にいかにすべきかということをお考え下さいますれば、これらの業者も生きる道があるわけであります。またそれに固執するわけではございませんが、自動車がはやりましたのは最近五十年の歴史、船は神代の時代からはやっておりまして、これは交通の元祖とでもいうべきものでございますが、これらの人間が職を失い、また野たれ死にをするような現実に立ち至っておるのに、何一つ救いの手を差し伸べられてないのが現実の姿であります。でありますから、ここに運輸行政を総合的に、海陸立体的に考えてもらって運輸行政上はかくあらねばいけない——船も運輸行政の機関、自動車も運輸行政の機関には違いありません。それが、お前の方は船だから、こっちは陸だからと言うてなわ張りをして、従来船の区域であったところに道路がついて船舶業者がバスの申請を出しましても、既存業者が海陸の概念にとらわれまして、交通の立体性を少しも顧みない。またこれを運輸当局といたしましては、立体的にかくあらねばならないという総合政策を少しも立てないというようなところに、大きな原因が蔵せられておると思うのでございます。これは海運局長のみ責めてもいけませんが、海運局長としては船がかわいいでしょう、あるいは自動車局長自動車がかわいいでしょう。そのかわいいものばかりをお互いにかわいがっておって、全体を失うということになっておるのが今日の姿でございますから、局長はおのずから別といたしまして、そこに次官とかあるいは大臣とかいうものが、この立体性を運輸行政の基本として今後の施策を行なっていただきたいということを、正木委員質問に対しまして付言をいたしましてお願いをいたします。
  91. 淵上房太郎

    淵上委員長 第二十六国会は本日をもって終了いたす予定でありますが、今期国会における運輸委員会も本日をもって終了いたすことになりました。今国会は国鉄運賃法を初め陸運、海運空運にわたりまして幾多重要なる法案につき審議をいたしたのでありますが、その間委員各位には委員長に対しまして御協力を賜わり、円滑に委員会の運営をいたすことができましたことは、私としまして特にありがたく、深く皆さんに感謝いたします。なお閉会中も幾多審議すべき案件がありますので、この際皆様方の御自愛をお祈りいたしまして、ここに散会することにいたします。(拍手)    午後六時三十一分散会