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1957-04-19 第26回国会 衆議院 運輸委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年四月十九日(金曜日)    午後二時二十分開議  出席委員    委員長代理理事 山本 友一君    理事 今松 治郎君 理事 畠山 鶴吉君    理事 松山 義雄君 理事 松尾トシ子君       有田 喜一君    關谷 勝利君       中嶋 太郎君    永山 忠則君       濱野 清吾君    眞鍋 儀十君       米田 吉盛君    小山  亮君       下平 正一君    楯 兼次郎君       中居英太郎君    正木  清君       松岡 駒吉君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君  出席政府委員         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     小林 重国君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 四月十七日  委員井谷正吉辞任につき、その補欠として石  山權作君議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員石山權作君辞任につき、その補欠として石  田宥全君議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員石田宥全君辞任につき、その補欠として楯  兼次郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十八日  日勝鉄道海岸線敷設に関する請願本名武君紹  介)(第二八〇八号)  飲田、中津川、下呂間鉄道敷設に関する請願(  楯兼次郎紹介)(第二八三五号)  国鉄運賃値上げ反対に関する請願中居英太郎  君紹介)(第二八七八号)  鹿児島、鹿屋間民間航空路開設に関する請願(  二階堂進紹介)(第二八九二号)  宮崎、鹿屋間民間航空路開設に関する請願(二  階堂進紹介)(第二八九三号)  大隅地区測候機関設置に関する請願二階堂  進君紹介)(第二八九四号)  国分、古江間国鉄バス鹿屋駅乗入れ等に関す  る請願二階堂進紹介)(第二八九五号)  の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国鉄経営及び国鉄に関する仲裁裁  定の問題等に関する件     —————————————
  2. 山本友一

    山本(友)委員長代理 ただいまより運輸委員会を開会いたします。  委員長が御都合がございますので、御指名によって私が委員長の職務を行います。  陸運に関して調査を進めます。本日は仲裁裁定国鉄に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。下平正一君。
  3. 下平正一

    下平委員 今度の春闘の結論として仲裁裁定が出て参ったわけでありまするが、この仲裁裁定が出てすでに十日近く経過していますが、これが解決の見通しはついているにしても、なかなか明確になっておりません。特に仲裁裁定は十項目にわたっているようですが、私ども委員会関係である国鉄関係について若干の質問をして、その処理あるいは見通し等についてのお答えをいただきたいと思うわけであります。  どうせ大臣が来られないと思いますので、もし来ればまたそのときにお伺いしますが、一応一番先にお伺いをしたいのは、今度の仲裁裁定政府提案を見ると、公労法第十六条第二項の規定に基いて国会議決を求めるの件、こういうことで仲裁委員会内容が列記してあるだけでありますが、私ども公労法第十六条の精神というものは、予算上質金上これができない、こういう場合に限って国会議決を求めるのでありまするから、もし政府にこれを実施をするという考え方があるならば、公労法仲裁を尊重するという建前実施をするということになれば、当然今回の議決を求める件には予算措置はかくかくの予算、かくかくの形の実施をするということを出してくるのが、公労法十六条から当然だというふうに考えておりまするが、今日の提案の形を見ますると、単に議決を求めるの件、これだけになっておりまするが、この間の経緯、十六条の解釈等について、若干運輸省当局にお伺いをいたしたいと思うわけです。
  4. 細田吉藏

    細田政府委員 お答えを申し上げます。公労法第十六条によりますと、予算資金上不可能な支出内容とする裁定があった場合、国会開会中でございますと、十日の期限がございまして国会に提出することになっておるわけでございます。今回提案いたしましたのは、この十日の期限内に提案いたしたわけでございます。法律論といたしましては、予算をつけて出さなければならないということにはなっておらないと承知いたしておりますし、従来の慣例等もございます。ただ政府としては、この仲裁裁定実施するという基本的な方針を立てておりますので、予算についてはできるだけすみやかにこれを提出する運びにいたしたいということでございますが、何しろ三公社現業全般にわたっておりますので、いろいろ検討を要するという点がございますので、追っかけて予算案を提出する運びになる、大体こういうふうに考えております。
  5. 下平正一

    下平委員 政府が誠意をもってやる、実際の姿としては了解できないわけではないのですけれども、われわれが審議する立場に立つならば、重大な審議のポイントというものは、予算資金上できないから、その資金というものをどう出してくるか、この資金捻出をどうするということが重大な私ども審議対象になります。もちろんこの仲裁裁定内容そのものについても審議するわけでありますが、その金を一体どこから出してくるか、どれだけの金額が要るかということは、私ども審議をする立場から見るならば、当然必要な条件になってきます。従ってその当然に必要な条件が充足されないままで、単に仲裁裁定実施するのだ、こういう形では私どもはほんとうに慎重な審議はできないと思うのです。たとえてみれば、この議決案を私どもは千二百円なら千二百円の公労法そのままの解釈でこれが予算化されるという気持で賛成をする。ところが出てきたものは、極端な場合八百円とか六百円だということになれば、そこに非常に妙な形が出てくると思うのです。それは先ほども社労委員会でも問題になっておりました。これは自民党の諸君からの問題の提起でありましたが、たとえばこの議決案が可決される補正予算が出る前に国会が解散してしまったというような場合には、一体この仲裁裁定の結末というものはどうなってしまうのか、こういうようなこともしきりに保守党の諸君から質問されておりましたけれども、私はこれは実体論として非常にむずかしい問題であるし、またその間にいろいろな経緯のあることも承知しておりますが、予算をつけなくて仲裁結論というものを私たちが審議することが当然だという考え方、それが法律上当りまえだという考え方については、どうしても了解ができないわけであります。当然の姿としては公労法第十六条によって国会承認を求める場合には、この裁定についてはかくかくに理解して、こういうような金額が必要であるから、かような予算措置をしてこれを実行したいという形で出されるのが、本来正しい態度ではないかと思うのですが、この点についてはどうなんですか。
  6. 細田吉藏

    細田政府委員 お答え申し上げます。予算措置があわせて出されることが望ましいという点につきましては、この裁定そのものを御審議になるときに、その問題とあわせて審議しなければならない中身がないじゃないか、こういう御趣旨かと思います。その点につきましては、一緒に出せれば出した方がいいと考えておりますが、法律上どうしても出さなければならぬということにはなっておりません。政府としましては、できるだけ早く出したいということで、今せっかくいろいろと作業をしておるわけでございます。御了承願います。
  7. 下平正一

    下平委員 大臣が来ませんので、その点はこの程度にしますが、裁定が出て、なかなかその予算が組めないということについては、いろいろの理由があると思ます。それは仲裁裁定に対する理解の相違や、また捻出する財源が見つからないとか、いろいろな問題があると思うのですが、仲裁について予算案をつけて出したいけれども予算案が二、三日おくれるという、その問題点は一体どこにあるのですか、この点の経緯を若干御答弁願いたいと思います。
  8. 細田吉藏

    細田政府委員 今回の裁定は、今までの裁定と若干趣きを異にしておると思うのでございます。これは裁定書をごらんになればすぐわかることであります。裁定の第一項では非常に明確に割り切っております。第二項については、理由の二、三ということになっておりまして、この裁定主文の第一項並びに説明理由の一というのと第二項並びに理由の二、三との間をどういうふうに読むべきかということについて、いろいろ論議がございました。この点がこれまでの裁定によりますと、幾ら幾らの金にするとはっきり出まして、それで予算を組めばそれは所要経費であります。非常に明確に出ておったわけでありますが、今度はその点につきまして若干の不明確な要素がございます。その関係がいろいろおくれました一つの原因でございます。これは公労委に対しまして政府解釈等について質問しております。それから国有鉄道質問をして回答をいただいたりいろいろしておりますので、おくれておりましたが、その点につきましてはすでにもう意見の一致を見ておりますので、最後の仕上げをいたすということでございます。もちろん予算のことでございますから、財源の問題その他についてもいろいろな議論がかわされて今日に至っておることは申し上げるまでもございません。そういった事情でございます。
  9. 楯兼次郎

    楯委員 関連。これは仲裁裁定が出てから毎回論議をしておるのでありますが、どうも政府提案態度がそのつど直らないので、私下平委員質問に関連してお伺いしたいと思いますが、大体この提案理由にも国会の御意思表明を願いますと、こういうことを提案理由にうたっておるわけです。それで私は抽象論を避けまして、今下平委員の言わんとしておるところを具体的に一つ伺いしますが、国会はこの仲裁委員会が出した仲裁裁定内容を変更することができるのか、また変更することは至当であるかどうかということを具体的に一つ伺いをしたいと思います。
  10. 細田吉藏

    細田政府委員 仲裁裁定国会に提出いたしますのは、予算上質金上できないからということで提出いたしておるわけでございます。仲裁裁定そのもの内容が変更できるかできないか、これは仲裁裁定がすでに出ておりますので、これが国会で変るとか変らないとかいうことは問題にならないのでありまして、これはきまった仲裁裁定なのでございます。ただしかし国会の御意見を求めるということは、予算資金上不可能なんだが、これをここまで全部可能にしろとか、あるいはこれを部分的にどうしろとか、あるいはこれは予算上質金上不可能なままにしろ、こういったような三通りの御判断は国会でなさるわけでございまして、仲裁裁定そのもの国会で変る変らないということにはならぬかと思っております。
  11. 楯兼次郎

    楯委員 細田部長にこれ以上質問をやりましても答弁ができないと思いますが、そういうことです。だからきのうわれわれも社会労働委員会に行って——国会の御意思表明を願います、こういうこと自体がすでに公労法三十五条の趣旨に沿わないと思うのです。それになおかつ、この十六条第二項の議決を求める件を国会へ先に出して、そうしてわれわれが審議をする予算が出てこない。なるほど今度の内容は少し変っておりまするから、その措置について相当日数のかかるめんどうな仕事があるということもわかります。わかりますが、十日たったら国会に上程をしなければならないという法律がある以上、困難でしょうけれども、やはりその期日内に作業を行なって、そうして予算を、補正なら補正を出してこなければ、われわれこの法律案をもらっても何を審議するのか——しいて理屈を言えば、仲裁裁定内容論議して、そうしてわれわれのやる仕事としては仲裁委員会裁定審議論議をし、決定する、こういうことにしかならないのです。これは仲裁裁定の出て参ります毎国会において、おかしいじゃないかと言ってわれわれが何回も論議をしたのでありますが、直らない。こういう点を、まあ細田部長にわれわれが言ってもどうかと思いますが、こういう点は改めることができるのですから、まずこういう点から改めていかなければ、ただでさえ紛糾をしておるこの問題についてより以上の疑惑が強まってくる、こう思います。この点について、まあ答えは同じであろうと思いますが、もう一回一つ答弁をいただきたいと思います。
  12. 細田吉藏

    細田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、議決を求める件と予算とを一緒に出さなければならぬということはございません。これでは議論にならぬじゃないかというお話でございますが、私は必ずしもさようではない、この仲裁裁定国会が完全に実施すべしという御議決をいただくならば、そういう国会意思に従ってそれから予算措置を講ずるということも考え得るわけであります。法律はそういうふうに考えております。ただどちらがより適当であるかどうかという点につきましては、お説はよくわかるのでございますが、そういう点につきましては、政府としましては先ほど来申し上げておりますように極力早く出したい、こう考えておるわけであります。
  13. 楯兼次郎

    楯委員 われわれの意見とは一致しないと思いますが、十六条、三十五条の精神は、最終的決定として服従し、さらにこの前の国会でもっとよくわかるように予算措置をして国会に提出をせよ、字句が、できるだけといいますか、実施をするために努力するというような法文に修正になったのでありますが、三十五条の仲裁裁定精神からいけば、今部長の言ったようなあいまいな態度は許されないと思います。当然予算措置をして、そうしてわれわれ国会議員は、この当然両者が服従しなければならない仲裁裁定実施するのには、国の予算をどうするかというところがわれわれの審議対象であって、裁定内容その他を審議するのが本意ではない、こういうふうに考えます。
  14. 細田吉藏

    細田政府委員 昨年でございますか、公労法改正になりまして、政府努力義務が三十五条に入っておりますが、この趣旨通り政府としてはできるだけの努力をいたしておるわけでございます。それから実は公労法改正のときに、すでに御承知と思いますが、付則日本国有鉄道法、あるいは電信電話公社法も同様でございますが、四十四条二項が修正になっております。今までは直ちに予算資金上不可能となっておりましたのが、今回初めての事案でございますが、移流用措置をするという方法もあるということが、この前の公労法改正の際に公労法付則で、国有鉄道給与規定が直ったことは御承知通りでございます。そういったことも今度初めての事態でありまして、そういったいろいろな点からなるべく早くということで、鋭意検討いたしておるわけでございます。
  15. 下平正一

    下平委員 私はまだその点は言い分がありますが、大臣がおりませんからやめておきますが、今仲裁裁定予算化に当って問題点が幾つかあるという中で取り上げられた問題が、裁定主文理由の二、三に問題がある、こういうお話でございましたが、巷間伝わっておる新聞等を見ますと、非常に印象の悪い、事実と異なった字句が使われておる。やみ給与、こういう字句が使われておる。おそらく理由書の第二、第三、これがいわゆるその新聞等に出ておるやみ給与だという問題点をさしておると思います。今予算単価実行単価相当に幅が開いておる、こういうことが具体的には出てきておるわけですが、今予算単価は一体どのくらいで組んであるか、おそらく推定になろうかと思いますが、実行単価基準内だけでけっこうですが、基準内の今日の実行単価はどのくらいになっておるか、その点を一つ御説明願いたい。
  16. 細田吉藏

    細田政府委員 先般御審議、御決定いただきました三十二年度の予算におきましては、国有鉄道基準内予算単価は一万八千九十六円と相なっております。それからこれは仲裁裁定に示されておりますように、実行単価は五百二十円上回っております。
  17. 下平正一

    下平委員 今政府の方の意向等を漏れ聞いてみると、いわゆる五百二十円の問題はやみであるから、これは今回の千二百円の仲裁裁定から差し引くというような議論が行われているやに聞いておりますが、五百二十円の予算単価実行単価の開きは一体どういう形から生まれてきておりますか。この五百二十円の差額の出た経緯を御説明願いたいと思います。
  18. 細田吉藏

    細田政府委員 予算単価実行単価に若干の差があることは、現実の問題としてどこにでもあることでございます。ただ五百二十円という額はかなり大きい額で、このうちこれのおもなるものは、昭和二十九年度の調停案実施の二百八十円と言っておりますが、それから昭和三十年度の調停のうちの欠格者を除いて有資格者昇給をする、この昇給分を合せましたものが五百二十円の大部分である、こう申し上げることができると思います。
  19. 下平正一

    下平委員 今言われた昭和二十九年度の調停あっせん処理、これが約二百八十円、それから三十年度の定期昇給その他の分が二百数十円、こういうことでありますが、すなわち昭和二十九年度のあっせん案に基く二百八十円何がしの基本給のアップ、これは一体どういう形式でなされたのですか。そしてまたその原資は一体どこから求めてきて昇給資金を充当したか。処理方法原資の求め先、これは一体どういうふうになっておりますか。
  20. 小林重国

    小林説明員 二十九年のあっせん調停によりまして、二百八十円の給与是正を行なったわけでございますが、あっせん調停におきまして国鉄職員の量と質を考えて、職種間の調整をやる必要があるというような御意見調停委員会において提出されまして、その御意見に従いまして職種間の調整等を行なったわけでございます。その結果平均といたしまして、基本給におきまして二百八十円程度の増額を必要としたわけでございます。この分につきましては、大体どこから出ているかと申し上げますと、もちろん給与総額全体の中から出ておるのでございますが、超過勤務あるいは休職者給与、そういった面の節約から出したというような姿になっております。
  21. 下平正一

    下平委員 三十年度も同様ですか。
  22. 小林重国

    小林説明員 三十年度も同様でございます。
  23. 下平正一

    下平委員 そうしますと二百八十円、地域給はね返り等がありますので、三百十円といわれておりますが、三百十円の二十九年度の調停案に基く労働協約、この分と昭和三十年度の同じく調停案に基く労働協約、これに基く所要資金としての五百二十円というものは、いずれも予算給与総額やりくりからこれを支出をしている、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  24. 小林重国

    小林説明員 さようでございます。
  25. 下平正一

    下平委員 裁定理由書の第三にあります特別手当の問題でありますが、特別手当は「昭和三十一年度においては、予算に計上されたニヵ月分特別手当のほかに約一・ニヵ月分手当支給された。しかし、この手当相当部分は、その支給経緯にかんがみ、」云々とありますが、この特別手当支給財源は一体どこから求めてきて支給されたのでありますか、この点を一つ御説明願いたいと思います。
  26. 小林重国

    小林説明員 昨年度出ました三・二の手当でありますが、これはもちろん予算に組まれております期末手当財源が充当されております。なお給与総額の中で節約いたしましたものも充当されております。なお輸送量の増加に伴いまして、弾力条項を発動いたしまして超過勤務の増加いたしたものもあります。これは法律上は給与総額の増ということになるわけであります。それから日本国有鉄道法の四十四条に基きます業績の賞与といたしまして、運輸大臣の御承認を受けまして、予算を新たにふやしまして実行したもの、こういう内訳になっております。
  27. 下平正一

    下平委員 今、日鉄法の三十九条ないし四十四条等によって出したと言われるのですが、そういう措置をする場合には、国鉄当局だけではできなくて、監督機関運輸大臣承認ないしは大蔵大臣との協議、こういう所定手続が当然必要になって参りますが、それらの所定手続というものは完全にお済ましになられて支給をされたかどうか、その点を運輸省の方から伺います。
  28. 細田吉藏

    細田政府委員 昭和三十一年度の予算総則によりますと、弾力条項運輸大臣が単独で承認することになっております。それから四十四条第二項の業績手当は、法律では「予算の定めるところにより、」ということになっておりまして、予算総則運輸大臣大蔵大臣と協議して承認をするということになっておりまして、いずれも所定手続を終っております。
  29. 下平正一

    下平委員 国有鉄道国鉄労働組合の間にはいろいろな労働協約があると思います。これは公労法に基いて団体交渉権を持たせたところの国鉄労働組合経営者との間には、一般の労働法の原則というものが適用されることは明らかであります。従って労働協約というものがいわゆる労使双方を完全に拘束をするものだと思います。そこで政府がいわゆるそれらの問題に介入をする余地というものは、それらの協定というものが予算資金やりくりができないという場合に限って、政府がこれについて予算があるないという判定を下すだけだと思います。これはもっと切り詰めて考えてみるならば、国鉄労働組合国鉄経営者との間には、たとい予算上質金上のやりくりができなくても、これが国鉄労使間を円滑にするという建前経営の能率を向上させるという建前であるならば、国鉄労働組合経営者との間で、予算資金上どうしてもできないような協定でも結んでも差しつかえない、ただしそれを実施するためには、その予算資金について政府承認を求めるのだ、こういうふうに解釈しておりますが、国鉄労働組合経営者この二つと、政府との関係はそう理解してよろしいですか。
  30. 細田吉藏

    細田政府委員 法律的に申しましておっしゃる通りでございます。ただ十六条にはっきり書いてありますように、両当事者はもちろん可能でございますが、公共企業体等予算上または資金上、不可能な資金支出内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではありません。従って団体交渉ができたらそれで——予算資金上不可能な場合でありますけれども政府が直ちにどうこうしなければならぬという責任を負うわけではない、こういうことでございます。
  31. 下平正一

    下平委員 そういたしますと、予算資金上特別の措置を必要としない労働協約その他については、労使間の取りきめというものは全くその通り生きていくのだ、こう解釈して差しつかえないですか。
  32. 細田吉藏

    細田政府委員 現在の公労法におきましては、そういうものを何ら制限するような規定はございませんので、そう解釈することになると思います。
  33. 下平正一

    下平委員 そういたしますと、昭和二十九年度のあっせん案に基くところの三百十円の処置、この労働協約というものは、もう当然そのまま認められていく、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  34. 細田吉藏

    細田政府委員 仲裁裁定実行単価との差があるということを言っておるわけでございますので、協約ができて、それを実施しておるからこそこの差があるのでございます。
  35. 下平正一

    下平委員 実行単価予算単価に差ができてきている問題は一体どこにあるかといえば、これは政府が実質上それを認めていないというところに問題点があるような気がするのです。もし予算総額の範囲内で操作ができていった問題なれば、労使間の協定としてもそっくりそのまま尊重していくという一建前をとらなければならぬと思います。そうしますと具体的に言うならば、その間にきまった地域給を含めて三百十円というものは、実際には翌年度の基準単価基本給予算単価の上に積み重ねられていくという措置がとられて、初めてこれが生きてくるわけであります。その措置をとることが私は当然の措置というふうに考えているのですが、その点はどうなりますか。
  36. 細田吉藏

    細田政府委員 何ら政府を拘束するものではないと考えております。
  37. 楯兼次郎

    楯委員 これはわれわれも疑義を持っておるのです。疑義を持っておるからここでお伺いしますが、今細田部長の言っておられるのは、組合と国鉄協定を結んだときには、あるいはそのような理屈も通るかもわかりません。しかしわれわれの知っておる限りでは、調停委員会調停に基いて団交をし、それから労働協約を結んで調印をした、こういう前提に立ってみると、調停委員会から出された調停に基いて労使の話し合いが成立をして協定を結んだということは、公労法精神からいけば、当然これは仲裁裁定と同一資格といいますか、同一のものである、こういうふうに考えるものです。といいますのは、調停が出されて、一方が拒否した場合に、そこで仲裁へ出目して、初めてこれで拘束をしていく。両当事者が調停を受諾した場合には、その結論というものは、仲裁裁定と、法の精神からいけばこれは同一効果である。従ってこれは当然実施をしていかなくてはならない。十六条の予算上質金上拘束を受けないということはないと思うのです。といいますのは、今日までやっておりますように、弾力条項なりあるいは予算総則なり、あるいは、できるのですから、四十四条の適用にもなるかと思います。しかも現実に可能であったがために今日いろいろな問題が起きてくるのでございますから、そういう公労法精神からいったら、今予算政府を拘束するものでないと言って突っぱねることは、これは調停委員会の否認だと思います。団交の否認、ひいては憲法違反ということになると思うのですが、どうですか。
  38. 細田吉藏

    細田政府委員 協定仲裁とは同じような性格を持つものであるというお話ですが、これは労調法三十四条ですか、それから今問題になっております公労法の十六条に、これは本文は協定になっておるわけですね、ですからこれはおっしゃる通りと思います。ただ問題はそこにあるのではなくて、予算資金上不可能な支出内容を持った協定ならば、これは国会閉会中なら開会後五日間、開会中なら十日間に国会に出しまして、国会で御審議願うということなんです。それではなぜ実施しているかといえば、予算資金上可能であったからしておるわけですから、それを予算単価に組む必要があるかどうかという問題は、また別個の問題だと思います。
  39. 楯兼次郎

    楯委員 また繰り返す必要はないと思いますが、そういうことで当然これは合法なんです。ただ政府の方でこれは運輸大臣が来たら聞こうと思うのですが、やみ給与やみ給与と言っておりますが、だれがやみということを言い出したか知りませんけれど、これは当然予算単価の中に認めていかなければならぬ、政府が認めないのはおかしい、こういうふうに私は考えます。
  40. 細田吉藏

    細田政府委員 その点は遺憾ながら、楯先生の御見解と政府の見解が食い違っておるかと思います。それから先ほど来やみ給与やみ給与という話が出ておりますが、私どもの方ではやみ給与という言葉を使ったことは一回もございません。それでほかの省にも聞いてみたのですが、ない、こう言っております。これはやみと言いますと非常に誤解を招きやすいので、私どもはあくまでも実行単価予算単価との差という、仲裁にある言葉を使っております。やみと言うと非常に悪く響きますが、私どもやみというようなことを申したことはございません。
  41. 楯兼次郎

    楯委員 今大臣が見えましたので、やみの話が出ておったから、ついででありますから大臣にお聞きしたいと思います。新聞あたりを見ると、政府自体がやみ給与やみ給与ということを言っておりますが、それはどういう点をやみと言い、だれがそういうことを言い出したか、お尋ねいたします。
  42. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 新聞にもよく書いてありますし、それから人ごとによく言いますけれども、今お話通り予算単価実行単価との差をやみやみと言っておりますけれども、正式にはそういう言葉を一つも使っておりません。世間で言いならわしているだけのことでございます。
  43. 楯兼次郎

    楯委員 そういたしますと、やみ給与はないということですね。
  44. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 予算単価実行単価の差というものはありますけれども、それをやみ給与と言っていいか悪いか——世間では言っておりますが、私どもやみ給与と言っておりません。
  45. 下平正一

    下平委員 大臣が見えたので質問をいたします。大臣も御存じだと思いますけれども国鉄労使関係あるいは労働協約関係というものは、一般労働法とは違って非常にややこしいものがあると思うのです。一般労組法でいきますれば、これは経営者と労働者の代表者が協定をすればどんぴしゃり。ところが公労法上の協定というものはいろいろの制約があります。資金上の問題もあれば、政府あるいは国会というような非常に問題があると思うのです。実際この本質というものがどっちかといえば私は公労法の不備だと思うのです。また公労法に何かそういう紛争を起さないような改正の余地があるのじゃないかと思います。しかしこれは別の角度といたしまして、今日起きてきている問題は予算単価実行単価に五百二十円の開きがある。この五百二十円の開きというものは、やみというか何というか知らないが、私生子くらいの程度だと政府は考えておる。だからこの際正規には差し引くのだ、ここに今度の仲裁実施については問題点があると思うのです。千二百円まるまる実施するか、五百二十円差し引いてしまうかというところに、この大きな問題点が残っていると思うのです。そこでこれは将来どういうふうに改善するかしないかは別問題といたしまして、今大臣が来る前に、このよってきた原因は昭和二十九年のあっせん案、三十年度の調停案、この経緯を聞いてみると、この調停案あっせん案労使双方間でそれぞれ所要の手続、いわゆる運輸大臣承認を得るとかあるいは大蔵大臣の協議を経て、それぞれ監督機関大臣なりの承認を経て実施をしてきた、こういう経過だそうであります。そういたしますと、いわば二百八十円なりあるいは三百十円というこの基本給というものは、当然政府なりあるいは監督官庁というものが了承をして実施をしてきている金額である、こういうふうに理解をしたいのですが、間違いですか。
  46. 細田吉藏

    細田政府委員 私の先ほどのお答えしたのに対しましてちょっと誤解があるように存じますので、大臣の御答弁の前に申し上げておきたいと思います。先ほど所定手続をしたということがございまして、弾力条項については運輸大臣限り、それから業績賞与については運輸大臣大蔵大臣と協議をして承認をいたしましたということを申し上げました。これはお話がございました一時金として出ておる、二カ月予算にあるほかに出ておるものについて、小林務理事お答えがあったのに引き続いて御質問でございましたから、それについてはそういうふうに手続が経てあるということを申し上げたわけでございまして、二百八十円とか三百十円とかいうものを直ちに承認したとか、大蔵大臣と協議してどうこうということはございません。承認しましたのは三十一年度の弾力条項による給与総額の増加、それから業績賞与を所定手続をした、こういうことでございます。おわかり願っていると思いますけれども……。
  47. 下平正一

    下平委員 大臣にお伺いしたいのですが、これらの五百二十円というものは、給与総額のワク内で操作をしているそうであります。これは御承知のように、予算総則等にいろいろきめられておりますし、国鉄給与総額というものは動かすことのできない問題でありますが、この給与総額のワク内で労働組合と経営者というものが、適当と思われる賃金のアップをしているわけであります。これは私は労使間の基本的な問題として、一般労組法にきめられた協約と同じ効力をもって、第三者がこれを勝手にどうこうすべきものではないと思うのです。これは予算のワクを越えて、運輸大臣から大蔵大臣に行って金をもらってこなければ、基本給のアップができないという問題なら別であります。与えられた給与総額のワク内で、それぞれ経営の実態に即し、能率向上に即するためにいろいろの操作をして、基本給のペースアップを認めていく、こういう態度というものはやはりそのまますなおに尊重していくということが、公労法上からも正しい態度だと思うのです。そういう点について大臣はどうお考えになりますか。
  48. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 今のいわゆる五百二十円といわれている分は、御承知通り二回にわたり調停国鉄当局はのんだわけであります。実施したわけであります。ところが予算上はこれはないものでありますから、そこで予算との食い違いができたというのが五百二十円であります。従ってこのたびこれをベース・アップとともにどうするかということは、千二百円の仲裁裁定にも示してある通り、この五百二十円については、これは仲裁裁定は今後これを予算単価に合せて解消しろ、しかし今一ペんに解消することは無理だ、こういう言い方なのであります。そこでその範囲があまり広過ぎるので、再三仲裁委員会質問をいたしましたけれども、幾らか幅は狭まりましたけれども、結局この問題は労使の間の話し合いにしろ、こういうことであります。そこで政府といたしましては、この五百二十円を全部この際消してしまうということは、これはやはり仲裁趣旨にももとるし、これを何年か、三年くらいの期限において消していく、これが仲裁の本旨に従ったものだ、こういうような、いろいろ質問をした結果、大体話し合いのうちでは仲裁の方もその通りですというような話で、それを尊重いたしまして今予算上の措置をし、一方私どもの方は国鉄、その他はそれぞれの当局者と労組との間の話し合いをしているわけであります。
  49. 下平正一

    下平委員 大臣答弁と私の質問とちょっと食い違っていると思うのです。それは公労法上にうたわれた労使の間の協約というものは、これは当然尊重していかなければならぬ、こういう建前はどうですかということを質問しているわけです。そこでこの公労法上結ばれた賃金改定の労働協約というものが、予算資金上ワク内操作ができるという形で実施に移されていったものは、当然政府としてはその翌年はこれを予算単価に組むということが−そういうものを組んでもいい、組まないでもいい、どっちでも勝手だという法律の理論は別問題でありますが、基本給に繰り込まれていったというものは予算単価を上げればいい。そうして予算単価が上ったら給与総額がふえるかというとふえません。結局給与総額のワク内で操作しているのでしょう。来年度給与総額をそのままとしたら、それでも協約実施できていくわけです。その場合にはたとえば超過勤務手当は幾らか減るでしょう、休職者手当は減るでしょう、そういうことはあり得ますけれども、その結論を尊重して予算単価をふやしてみても、資金上何らの措置をしなくていいのです。もし予算がふえることはいかぬ、給与総額をふやさぬ、こういう建前を貫いていくとしても、予算単価をふやすだけはできるじゃありませんか。労使の間で適当と認めた給与総額のワク内で、これだけの賃金にするということを尊重するという態度は当然できる、理屈を抜きにしてあるべき正当な態度だと思うのです。しかもそのことは予算の総額をふやさなくてもいい。前年度の予算総額をふやさなくてもできた問題です。今の予算でもできるわけです。そうして予算単価実行単価を合わしていくというこの合わせ方の方が、あとで削っていくという合わせ方よりもっと正しい方法だと思う。この点はどうなんですか。
  50. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 とにかく労使の間に一つ協定を結んで支払いをした、これは尊重しなければならぬと思います。同時に政府予算上の与えられた措置というものはこれを尊重しなければならぬ。そこでその食い違いができてきたというわけであります。従ってこれに対して仲裁裁定に持ち込むというような問題が起きてきたわけです。また一方のこの公労法規定に基いて、その仲裁裁定というものに従おうというわけです。これはどっちも尊重しなければなりませんけれども、それに食い違いができたから、第三者の介入によって物事をきめていくというのでいいように考えます。
  51. 下平正一

    下平委員 大臣はちょっと誤解をされていると思うのですが、給与総額の中に基準内賃金として三つありますね。そのほかに超過勤務とかいろいろあります。そういうことは、これは労使の間で変更されてもいいことなんですよ。一々政府なり国会がそれに介入する余地はないのです。政府が介入する、国会が介入するということは、国鉄給与総額は幾らにするかという国鉄給与総額についての問題だと思うのです。たとえば仲裁委員会結論もそうであります。国会論議する場合には、仲裁内容がいいとか悪いとかいう問題ではないと思う。その仲裁実施するために金が幾ら要るか、その金が出るか出ないか、こういうことが国会論議対象になると思うのです。こまかい問題については、基本給を幾らやるとか、地域給をどうする、扶養家族手当をどうするというような問題は、われわれの対象外の問題なんです。これは労使間の団交の対象事項なんです。団交の対象事項と国会議決権というものは、はっきり分離しておかなければいかぬと思う。そこのところを大臣はちょっと誤解していると思うのです。私は給与総額の中で操作するということは団交権の範囲だと思うのです。もし団交権の範囲外だということになったら、法律改正して給与総額の中で基準内賃金と基準外賃金とを流用してはならぬ、こういうことが法律に明確になればいい。今日はそういう法律になっていない。従って給与総額内の分配については、団交権の対象と考えることが正しいのです。ただし総額の決定については国会議決が要る、こういう解釈が正しいのです。そこでこの分配の問題として、昭和二十九年度あっせん案をのむについて、予算の総額をふやさないで単に基準内賃金と基準外のやりくりをした、これが労働協約なんです。この労働協約は、今日の法律ではだれも犯すことができません。そこで政府としては、その労働協約にきまった基準内賃金の予算単価というものは、その翌年度には単価で盛るべきだ、その単価で盛ることによって予算をふやさなければならぬということになれば、政府は拘束されなくてもよろしい。予算をふやさなくて処理できるものであれば、当然基準予算単価というものは増額されて予算書に計上されるのが当りまえです。それを怠っていたところに、今予算単価実行単価の相違というものが出ている。言いかえるならば、公労法上の協定協約調停、あっせんというものを、実質上政府は否定をしているという立場をとってきたのが、現実には五百二十円という金額に出ている。この点は宮澤さんはよく理解していただきたい。団交権の範囲の問題と国会議決権の範囲は明らかに区別されている。今日の法律ではそういう建前です。そこで宮澤さんが五百二十円を将来削っていくのだ、こういう態度は間違いである。従来のきまった予算単価協約に基いて積み上げていく、そうして実行単価予算単価を合せていくべきだ、こう考えておるのです。これは間違いないと思うが、どうですか。
  52. 宮澤胤勇

    ○宮澤国務大臣 どうもその点私と考えが違うようです。また仲裁裁定あたりの裁定もやはりあなたの考えと違っているのではない一かと思いますが、その法的なことは一つ政府委員から……。
  53. 細田吉藏

    細田政府委員 五百二十円が国鉄労使相互間の協定できまっておるということはお説の通りでございます。これは給与総額の中のやりくりでできたものである、これもその通りでございます。つまり実施しました年度においてはそうであったということは事実であります。しかしあなたのおっしゃるように、予算単価をそれに拘束されて必ず変えなければいかぬかどうか、変えることがいいかどうかということは別ですが、変えなければいかぬということはないのでございまして、実はその年に基準外から持ってきて使っておるわけであります。ですから基準外から持ってくるかどうかという問題はございますが、予算の積算の基礎になっております予算単価に必ず積まなければいかぬのだということには直ちにならないのではないか。ほかの点は大体おっしゃる通りだと思いますが、そこのところが私どもとちょっと見解が違っております。
  54. 下平正一

    下平委員 そういうことになれば、予算単価実行単価の相違はあっても、やむを得ないというあなたの結論ですね。
  55. 細田吉藏

    細田政府委員 現在あるわけでございます。これを将来なくせ、こういうふうに仲裁理由で言っておるわけでございます。
  56. 下平正一

    下平委員 今言いましたように、これは並行論になるかもしれませんけれども予算単価実行単価の差をなくするということは、これは理想であります。これは確かに理想であります。しかしそのなくし方の考え方が違うと思うのです。私どもとしては実行単価がワク内操作によって上った場合には、当然翌年度の予算単価をその実行単価に合せて組んでいく、これはすなおな姿だと思うのであります。それによって莫大な給与予算がふえてしまうということは別問題です。予算資金上、翌年度の予算編成に際して、そのときに莫大な予算額が必要だということになれば別問題です。しかし前年度給与総額のワク内操作ができたものでありますから、翌年度にそのままいってもワク内操作というものは大体はできる。はね返りその他のことを考えれば別問題でありますが、大体できます。だから予算単価を合せるというならば、私が申し上げたように、労使間で給与のワク内において操作ができたというような、そういう程度実行単価のはね上りであるならば、翌年度で予算単価の上に積み上げていくという形で、予算単価実行単価というものをバランスをとっていく、こういう行き方の方が将来に紛争も残さないし、問題点を残さないで済む方法だというように私どは考えております。
  57. 細田吉藏

    細田政府委員 おっしゃいましたような合せ方も、考え方としてはあるかと思います。しかしそうしなければならぬというようなふうには考えておりません。ことに現在の段階におきましては、仲裁裁定の第一項におきまして、「昭和三十二年四月以降の基準内賃金は、昭和三十二年度基準内予算単価について千二百円を増額した金額の範囲内で、労使協議の上決定実施する」こうなっておりますので、上へ積むことになっておらない、千二百円だけ積むことになっているわけでございます。
  58. 下平正一

    下平委員 裁定のこの主文にあるところの第一項の問題は私よく存じているのです。しかしその積み上げのところへ持っていって、予算単価実行単価が同一金額の問題が少しも起らない、相違があった。実際はその相違をなくするということが仲裁委員会精神であることもよくわかるのですが、問題はそのなくし方ということになると思うのです。これは労使間の協定というものをすなおに率直に認めていくという態度をとることの方が、労働問題の処理の上からは当然ではないか、そういう理論からいってくれば、実行単価がはね上った翌年の予算単価は、その実行単価に合せていくという処理方式をとることの方が、事労使間の問題の処理には私は正しいと思う。もしそれがいけないとするならば、翌年度予算給与総額を削って、それは認められないという政府態度を明確に出せば別ですよ。そういう措置をした方が問題は紛糾しません。もし翌年度において予算単価に、前年度に上った実行単価をプラスすれば給与総額はふえるし、そういう給与がいけないというならば、そのときに政府がこれはいけないと言う筋合いの方が、筋道としては通ると思う。この単価との差の解消というのは、そういうふうにすることの方が正しい方法だと私は思いますが、これは並行理論だからやめておきます。  それから一つここで明確にしていただきたいことは、俗にやみ給与ということはだれも言わなかった、こういうことを言っておるのでありますが、巷間伝わっておるところではやみ給与ということであります。議会の中においても、きょうも社労の委員会質問などを聞いておりますと、何か国鉄当局あるいは国鉄労働者というようなものが、むやみやたらに国民の血税を使っている、やみくもに国民の血税を使っている、不明朗が一ぱいあるというような論議がなされておりますが、この点私は全く誤まりだと思う。少くともそのことは、金の出場所あるいは使い方、その手続、それらの方法について今日まで全く誤まりはなかったと私は思うのです。従ってやみ給与などというような言葉は絶対に当らないと思うのですが、この点についてもう一ぺん、鉄監部長国鉄副総裁に、やみをほんとうにやっていたのかどうか、明確にしていただきたいと思います。
  59. 細田吉藏

    細田政府委員 先ほど来申し上げましたように、今まで出ておるものにつきましては合法的に出されておるわけでございます。そういった意味でのやみというような言葉は不適当だろうと思います。ただこれは言わぬでもいいことかも知れませんが、けさほどの社労等でおっしゃっておりましたのは、手当ニヵ月分予算に対して数回にわたって出ておるという点についていろいろおっしゃっておったようでございましたが、前に申し上げましたように、これはもちろん全部法律の定めるところ、予算の定めるところによって出しております。
  60. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 ただいまいわゆるやみ給与ということについてのお尋ねがございましたが、私もやみ給与と言われるのは非常に心外でございます。それで二百八十円の件、それから一般昇給による増額の件、いわゆる五百二十円は、これはあっせん、調停に基いたものでありまして、私はやみとは思っておりません。それからさらに第一項確定分というのも、これは昨年の春の調停に起因しておりますものですから、私としてはやみと考えておりませんが、そのやみの上にもう一つ名前までつけて言われることは私非常に心外でございまして、調停解釈その他につきましてはいろいろな見方もございましょうが、これは少くとも調停に起因して生じたものであることは間違いございません。
  61. 下平正一

    下平委員 五百二十円の問題がそれぞれ法律的な手続、正当な手続によって決定され、支給された給料であるということであれば、当然これらの給与というものはそのまま実態が認められている、こういう理解をするわけです。そこで巷間伝わっている千二百円から五百二十円を引いたのでは気の毒だから、三分の一だけことし引いておこうというような考え方というものは、私は間違いだと思うのです。もしそういうような形で予算案が出てくるとするならば、政府が言っているところの完全実施という形でなくて、仲裁は一部実施だ、完全実施ではない、こういう理解をするわけなんですが、鉄監部長どうですか。
  62. 細田吉藏

    細田政府委員 仲裁裁定をよく読んでみますと、理由書の中に千二百円を直ちに積み上げるものではない、こういうふうに書いてあります。従ってここだけを見ますと若干下回るように読める。それから実行単価との差額はそれではゼロにするのかといったら、ゼロでもないことも調停でははっきりしているようであります。しかしその間のどこであるかということについては、先ほど大臣が申し上げましたように、この仲裁のどこを見ましても明確な線が出ておらない。ただ下平先生のおっしゃるような、そのまま実行単価との差額に積み上げるということには、仲裁裁定でははっきり明文上なっておりませんそれから将来合せるということもはっきり理由書に書いてあります。大体そういうところであります。
  63. 下平正一

    下平委員 仲裁裁定は私も読んでおりますけれども、この仲裁裁定理由の中で、実行単価あるいは予算単価云云ということは、この千二百円の金の分配の方法だと思うのです。分配の方法労使双方へ示してあると思うのです。そこでこの国会でわれわれがやるのは、予算単価に千二百円をプラスしろ、こういうことであります。予算単価に千二百円つけてやる、これが主文でありましょう。この千二百円の分配については多少仲裁委員会意見もあると思うのです。しかし主文としては予算単価にプラス千二百円、かける四十四万何千人、こういうことが仲裁委員会精神なんです。千二百円を出してやればこれは政府としては完全実施、これが百七十円欠けるというようなことを言っておりますが、たとい百七十円でも五円でも欠ければ不完全実施だ、こう理解をすることの方がほんとうの正しい理解であると思うのでありますが、その点はどうなんですか。
  64. 細田吉藏

    細田政府委員 予算がまだ出ておりませんが、ただいまわれわれが折衝いたしておりますのは、先ほど申し上げました三十二年度基準単価一万八千九十六円に千二百円を足した基準単価ではじいたもので予算が出ることになっておりますが、財源がどうなるかということの方が今問題でございます。予算単価は千二百円アップで出すことになっております。
  65. 下平正一

    下平委員 そういうことは当然給与総額とは関係なしということなんですか。
  66. 細田吉藏

    細田政府委員 ちょっと御趣旨がわかりませんが、給与総額に重大なる関係を持っておると思います。給与総額の一番もとになる基準内賃金の予算単価を上げるのでありますから、給与総額には重大な関係を持っておりますが、どういう御質問かよくわかりません。
  67. 下平正一

    下平委員 これでやめますが、そうすると出される予算というものは、主文通り基準内賃金というものは今日の単価プラス千二百円、すなわち一万九千二百九十六円、こういう数字で出されてくるということですね。
  68. 細田吉藏

    細田政府委員 予算単価はその通りでございます。財源の問題ではありません。予算単価……。
  69. 山本友一

    山本委員長代理 本日はこれにて散会いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。    午後三時二十七分散会