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1957-03-19 第26回国会 衆議院 運輸委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十九日(火曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 淵上房太郎君    理事 今松 治郎君 理事 木村 俊夫君    理事 畠山 鶴吉君 理事 松山 義雄君    理事 山本 友一君 理事 井岡 大治君    理事 松尾トシ子君       有田 喜一君    生田 宏一君       佐伯 宗義君    關谷 勝利君       中嶋 太郎君    永山 忠則君       濱野 清吾君    原 健三郎君       堀内 一雄君    眞鍋 儀十君       米田 吉盛君  早稻田柳右エ門君       河野  正君    下平 正一君       楯 兼次郎君    中居英太郎君       正木  清君    松原喜之次君       森本  靖君    吉田 賢一君       山口丈太郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君  出席政府委員         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君         運輸事務官         (自動車局長) 山内 公猷君         郵政政務次官  伊東 岩男君         郵政事務官         (郵務局長)  松井 一郎君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 樋詰 誠明君         運輸事務官         (自動車局整備         部長)     岩崎  清君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     小林 重国君         日本国有鉄道常         務理事     吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     石井 昭正君         日本国有鉄道参         与         (経理局長)  久保 亀夫君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 三月十九日  委員岡崎英城君、池田禎治君、小山亮君及び中  居英太郎君辞任につき、その補欠として永山忠  則君、吉田賢一君、河野正君及び楯兼次郎君が  議長の指名で委員に選任された。 二月十八日  中学校生徒通学定期小人扱いに関する請願(  岡本隆一君紹介)(第二一九〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣  提出)(第五三号)  陸運に関する件     —————————————
  2. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 これより委員会を開きます。  陸運に関して質疑の通告がありますのでこの際これを許します。中居英太朗君。
  3. 中居英太郎

    中居委員 国鉄運賃の審議が重要な段階に来ておりますきょう、私のために緊急質問の時間をお与え下さいましたことに対しまして委員長に感謝申し上げます。  私は運輸省並び通産省等に、わが国におけるところの外車輸入の問題について少しくお伺いいたしたいと思うわけでございます。御承知のように戦後のわが国歴代政府は、あげて外車輸入制限いたしまして、国産車振興ということに非常に大きな力を尽して参りました。ことにも鳩山内閣成立以来の保守党政権の、これがまた大きな公約の一つでもあったのでございます。そこで私が運輸省当局にお伺いいたしたいことは、この大きな国産自動車振興という政策の前提に立ちまして、現在のわが国における外車輸入状態につきまして、お伺い申し上げたいと思うわけでございます。
  4. 山内公猷

    山内政府委員 お答えいたします。外車輸入昭和二十四年度ごろから行われておるわけでございます。二十四年当時は九百七十八台といのが、戦後最初に入りました台数でございますか、多い年には、昭和二十七年にはこれが六千五百四十五台、二十八年には九千八百五十台となりましたが、ただいま御指摘通り国産車奨励意味を持ちまして、外車輸入をある程度制限をしていくということで、昭和二十九年には三百六十八台というふうに減って参ったわけでございます。しかし二十九年に非常に減らしたのでございますが、国産車奨励にももちろん力を入れておりますが、従来ありました外車の需要もやはりある程度認めなければならない。と申しますことは、観光事業用のためでありますとか、あるいは報道用のためには、やはり日本の車ではどうしても不十分な点がありますので、外車輸入いたしたいという希望も強いし、またある程度入れますことは、日本の車の技術の向上ということにも役立つという見地から、三十年には五百四十五台になっております。昨年度は七百二十八台入れましたが、昨年度の輸入方針といたしましては観光用にこれを振り向けるというととでございまして、割り当てましたこころはハイヤー、タクシー業者に限っておりますのと、そのほか新聞報道用に一部割り当てたというのが、二十四年以降の輸入の情勢でございます。
  5. 中居英太郎

    中居委員 局長からただいま御答弁がありまして、国産車ではとうてい達することのできない目的のために、観光用あるいは報道用あるいは国産自動車工業を刺激する意味において何がしかの外車輸入をやっておる、こういう説明でございました。それによりますと、年間におけるところの輸入台数はきわめて少量に制限せられておるようであります。昭和三十年のごときは七百台、三十一年も大体これと同じ程度の台数正式ルート輸入せられておるようでありますが、しかし日本各地を見ましても、ことに東京都内における外車のはんらんと申しますか、車両数量というものを見ますと、このような府政の輸入方針によって外車が入っておるとすれば、非常に不可解な念というものを私は感ぜざるを得ないのであります。近い例で申し上げますと、一九五七年型の外車東京都内だけでも千台も入いっておるのだ、こういうことを私は聞いております。本年の外車割当は全部で七百五、六十台このうち東京都にその所在を有しておるものはわずか二百四、五十台と私は聞いております。にもかかわらず公々然として千台以上の五七年型の外車東京都内を疾駆しておる。一体こういり現象に対しまして、運輸当局はどういう考えを持っておりますか。こういう現象を見まして、政府外車輸入制限というこの大前提が守られておるとお考えになっておりますか、その点について見解をお尋ねしたいと思います。  さらにもう一つお伺いしたいことは、最近の統計でけっこうでございますが、東京の四谷の陸運事務所を通じまして、番号登録せられたところの外車台数は何台になっておるか、これをお尋ね申し上げたいと思います。
  6. 山内公猷

    山内政府委員 私がただいま御説明申し上げましたのは、有為替成規輸入されたものでございまして、御指摘通り、そのほかに外車日本人の手によって運用される、新規登録されるということもあり得るわけでございます。これは主として駐留軍人払い下げによるものがおもなものであろうと思っております。しかしこの駐留軍人払い下げにつきましても、米国側の十分な御協力を得ておるわけであります。ただいまちょっと簡単にその払い下げ事務手続方法、微細にわたりますが、ちょっと御説明申し上げますと、米軍憲兵隊が、軍人軍属が譲渡したいという場合には、それにスタンプを押しまして許可をする条件があるわけでございます。その条件によりますと、まず第一に日本政府登録をして一年以上経過しておるということ、次に二年以上型式が古いこと、これは特に米国車が多いものでございますから一年置きに型式が変るので、大体二年以上経過しなければならないという条件がつけられております。それから次に過去三年以内に免税特権のない者に譲り渡していないこと、すでに日本人に譲り渡しているというような経験を持っている者にはスタンプを押して許可をしないという条件をつけておりますのと、もう一つは、これはあらゆる外車のあれに必要なものでございますが、通関証明書を持っておるということだけを私の方は確認をいたしまして登録をしておるわけでございます。この事務運輸省だけでないわけでございましてあるいは大蔵省通産省にも関係することでございます。特に輸入の面につきましては、通産省外貨の問題がありますとか、あるいはそれを持ってくるのに通産省関係しておりますし、通関関係では大蔵省関係しておりまして、運輸省といたしましては、それらのものが成規手続によりまして所有権の移転がなされたかどうかということを確認して、陸運事務所でこの登録事務を取り扱うのがおもでございます。それでこういった状態では、新しい車が、ただいま御指摘のように東京都内を走っておるという状態は起らないわけでございますが、もう一つございますのは、現地除隊になりますと、これはシビリアンになります。その場合に軍人軍属でございますと、御承知のように3Aという特別のナンバーを持っておりますが、現地除隊をいたしましてシビリアンになりますと、一般日本人と同じ車両番号になるわけでございまして、そうなりましてから今度日本人に売るという場合には、一般手続でできますので、通関の関税を払えば売れるという一つ方法があるわけでございまして、そういう方法が新しい車が町に出回る一つの原因だろうかと思っておりますが、これは私の方の登録関係ではちょっといかんともなしがたいケースになっております。
  7. 中居英太郎

    中居委員 運輸関係では、アメリカのいわゆる3A標式のものが、日本登録番号に変更になった統計がにわかにわかりにくい、こういう答弁でございますが、しかし3Aの番号日本登録番号に切りかえるその前提といたしましては、税関に対すところの納税が必須条件になるわけであります。従いましてこういった点からも、何台のいわゆる3A自動車が、日本人名義に所属がえされておるからということは、税関等を担当しておる大蔵当局でおわかりと思いますが、出席していませんか——通産省ではわかりませんか。
  8. 山内公猷

    山内政府委員 正確な数字は今手元に持っておりませんのでございますが、大体概数でございますれば御答弁できますので、それでお許し願いたいと思います。私の方の手元に持っております昭和三十一年度の数量でございますが、その中で海外から輸入されるもののうちに、外貨割当のないものというものが四百八台統計に載っております。それからその他一般外人かち譲り受けたもの、たとえば引っ越し荷物でありますとか、携帯品でございますとか、あるいはただいま御説明申し上げました軍人軍属の身分を喪失した者が、シビリアンとなって売ったというものが四百八十九台という数字が載っております。
  9. 中居英太郎

    中居委員 大体の概数だという報告でございますが、この数字をもってみましても、無為替外国から入る車が四百八台、それからいわゆる3Aのナンバー日本人の名前に、いわゆるやみルートを通じて登録がえされておるのが四百八十九台で、合計して約九百台のいわゆるやみルート自動車日本に流れて参っておるのでありますが、これが東京だけです。しからば東京日本各地との比率はどうかと申しますと、大体東京は三分の一です。ですから、この数字をもってみましても、一年間に三千台近いところの外車というものが、あらゆる非合法の方法を通じましてわが国に流れ込んでおる。こういうことに対しまして、私は政府の厳重な注意を喚起したいのです。御承知のように、わが国外車が入って参る方法といたしましては、成規外貨割当によるもの、これは先ほど局長説明通り年間七百台前後、こういう制限をせられておるようであります。さらに為替によらざる流入ルートといたしまして、外国人が来日する場合に、そして二年間以上日本に居住するという場合に、ノー・タックスで購入が認められる。さらにまた外地に居住しておりました日本人帰国する場合に、その所有車の持ち込みが認められる、こういう方法と、さらに先ほど局長がちょっと触れたようでありますが、米国軍人が、米国軍人に限らず、わが国に居住しておるところの外国軍人が、使用しておるところの車を、除隊するというこの理由によって日本人に売却できるのです。この三つ方法によって、わが国にいわゆる無為替外車というもの、が入ってくるのでありますが、その数字がさっき申し上げましたように、大体年間三千台近いところの数字じゃないか、こういうところに年間七百台という制限をやっておるにもかかわらず、東京都内、全国の至るところに新しい外車というものがわがもの顔に疾駆して、そうして国民が非常にけげんな顔をしておるのです。私はこの三つルートのうち、外国人日本に居住するために購入するところの外車、あるいはまた外地に居住しておった日本人帰国の際持ち込んでくる車、こういうものの数はきわめて少いと思っております。そして私が今ここで政府に申し上げたいことは、米国軍人自己の所有しておった車、あるいは自己が所有しておったと称して除隊の際に、日本ブローカーを通じてこの日本の市場にはんらんしておるこの車のルートというものに対して、徹底的な究明と対策を講じなければならぬ、こういうことを私は政府に申し上げたいのであります。御承知通りアメリカの軍の法令と申しますか、これでは、一人の兵隊が一台の車の登録がえが許されております。さらに新しい車の購入が一台許されております。従いましてアメリカ兵隊除隊して一人帰国するという場合に、一台の、いわゆる為替によらざるところの外車というものがわが国に流れてくるのであります。こういう点につきまして政府というものはもりと根本的に、わが国の法規なり法令なりというものを整備いたしまして、少くともこういう法の目をくぐってばっこしておるところのブローカーというものに対する万全の処置というものを講じなければならぬと思いますが、これに対する運輸大臣のお考えはいかがでございますか。
  10. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 実は今の数字についてはおよそそういうことぐらいだろうと思って——数字は私もただいまここで初めて伺ったのでありますが、これはただいま中居さんの御質問の御趣旨のように、七百台の正式ルートに対して三千台からのやみが入るというようなことは、これはだれが考えても穏やかでない、運輸省はこの管理だけをやっておりますが、これは一つ通産大蔵省とも協議しまして、——おそらくこれはよく私も知りませんが、いろいろのことを今までも考えたのだろうと思いますが、それが実行されておらないということだろうと思いますから、(「しないのです」と呼ぶ者あり)しないかできないかも、その点はなにしまして、一応これは取扱い方をまじめに考えてみたい思といます。
  11. 中居英太郎

    中居委員 私は驚いたのです。昨年の十二月二十三日のアサヒ・イブニング・ニュースに、こういう記事が出ております。アメリカサービスマン——兵隊のことです。「アメリカサービスマン、三ヵ月以内に退役を約束」されておるサービスマン、あなたが物を売ることもなく、一ドルの投資をすることもなく、しかも確実に二週間以内に千ドルのお金をもうけたいと思う方は左記に連絡して下さい」こういう広告が出ております。これは昨年の十二月二十三日の紙面でございますが、わが国において発行されておる外国紙には毎日のようにこういうふうな記事が出ております。この記事を見てアメリカ除隊が約束されている兵隊はそこに電話するでしょう。そうして日本ブローカーと連絡して、その車を持っていない、除隊を約束せられた兵隊に対しまして新車購入許可を上官からとらして、それを一たんその兵隊名義にしまして、除隊証明書とあわせて翌日にはそれが日本人名義になっておるのです。その際その兵隊に対しまして千ドルのいわゆる名義貸料が支払われます。そうしてその兵隊日本人ブローカーの仲介に立つところの米人、あるいは日本人ブローカーブローカーと申しますか、それに対しましてもさらに千ドルの報酬というものが支払われまして、ここで七十二万円のいわゆるやみがそのブローカーブローカーあるいはアメリカ兵隊に渡され、それが車の価格にプラスされて、わが国において四百万、五百万というとてつもない相場を現出し、流されておる、こういう状態なんです。こういうことはただ単に経済上、商売上の徳義の問題ではないのです。こういう三十万、四十万という金を若いアメリカ兵隊が手にしたらどういうことができますか。求めるものは酒と女です。東京都内のキャバレーのすみずみで日本紳士風の男と、そうして若いアメリカ兵隊が話し合っておることは、全部この相談なんです。ほとんど一〇〇%と申しても過言でないほど、こういう不法行為相談をやっておるのです。こういう金を持ったアメリカの若い兵隊は酒を求め、女を求めて、そうして勤労の意欲をなくする、こういうことがアメリカ国内世論となっておるのです。アメリカ国内世論となって、そうして在日のアメリカのMPがわが国検察庁警視庁に対しまして、どうしてこのような不法な日本ブローカーを取り締らないのか、こういうことを再三再四申し入れしておると私は聞いております。ところがわが国政府は、あるいは検察庁警視庁は、今日の法令、今日の法律ではこれを取り締る方法がないのだ、こう言って手をこまねいて見ております。ブローカーたちは何と言っておりますか。われわれは法に照らして堂々と商売をやっておるのだ、一片の恥ずべき何ものもないのだ、こう言って公公然とブローカーというものが店を張って、そうして車の販売を行なっておるのですが、こういう事態は決して米国日本との関係というものを密接にすることにならぬと思うのでありまして、こういう点につきまして重ねて宮沢運輸大臣の所信を私は伺いたいと思うわけであります。
  12. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 ただいま伺いましたところによって、——これはむろん運輸省だけでは始末がつきませんけれども、政府としてこれを何とかしなければいかぬと思います。ただいまの御質問の御趣旨によりまして私から一つ政府関係方面へ話をいたしまして、もし新しい立法措置が必要であるならば、その手続をとって、——質問の御趣旨はいずれも同感であろうと思いますし、私ども同感しておりますから、善処することにいたします。
  13. 中居英太郎

    中居委員 私はこういう質問を意識してやっておるのじゃないのです。運輸省に対していやみを言おうとか、通産省に対していやみを言おうとか、そういうことを意識して私は行なっておるのではないのです。このことが、日本政府の手ぬるさ、日本法律の欠陥ということが米国世論にもなっておるのだ、こういうことを第一番に指摘したいのです。さらにもう一つは、この車のやみ売買というものが、必然的にドルやみ売買というものを伴っております。あるいはまた円で渡されたアメリカ人帰国に際してそれをドルにかえまして、そして帰国しております。これはわが国外貨の蓄積というものに対して、大きな影響を与えることにもなろうと思うのありまして、こういう点に思いをいたしまして、断固たる処置を早急に樹立していただきたい、こういうことを申し上げまして、私の質問を終ります。     —————————————
  14. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 次に国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を許します。山口丈太郎君。
  15. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ただいま議題となりました国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について質問をいたしたいと思います。  まず第一に、私は運輸大臣にお伺いをいたします。この運賃改訂に当りまして、私は従来から、ここ数年来運輸行政は他の行政面に比べて常に後退の一途をたどっておることを指摘しておりまして、この運賃法の一部を改正する法律案説明に当っても、その説明の内容は国鉄の経営の健全化、あるいはまた老朽施設の急速なる復旧、及び国鉄の新建設のための資金獲得等理由としては私はその理由のあるところを認めるわけでありますけれども、しかしながらその財源の取り方が、全く国有鉄道にふさわしいものであるとは考えれません。言いかえますと、この国鉄の再建五カ年計画を見ましても、それに要しまする費用は六千億というような膨大な費用に上ると説明されております。この膨大な費用独立採算制をもりて運営しておる日本国有鉄道公社であるからと、こういう理由によってその全部を国鉄に負わしているということは酷ではないか。言いかえますと、国有鉄道の財産は国家のものであります。従ってこれを増加していくためには、少くとも政府みずからの責任においてこの新建設費用を捻出すべきではないか。しかるにそれを全部国有鉄道に負わすというのは一体どういうわけなのか。財源がないといたしましても、少くともこのように政府計画を立てて、国鉄にその計画を実行せしめるのでありますから、従ってその計画責任者たる政府は、その責任を遂行するために当然政府の支出すべき金額を添えて、この計画を実行せしめるにあらずんば、ほんとうの国鉄の正しい計画は進められないのではないか、私はこういうふうに考えるわけでありますけれども、運輸大臣の所見を一つ伺いたいと思います。
  16. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 ただいま山口さんからのお話は、当委員会における特に野党の皆さんから今日まで御指摘になった点を要約しての御質問をいただいたと思うのであります。今までの経過において、今後の国鉄の五カ年計画運賃の値上げだけによるというようなことでなく、他の方面において政府がもう少しとるべき手段があるではないか、こういう趣旨でありまして、その一つとしては、今日までたびたび御指摘を受けた金額は小さいとしても、その影響するところが大きい問題で、ガード下その他の国鉄固定資産を貸し下げておる賃貸し問題と、それからただいまお話しになりました結論的の、政府国鉄に対してもう少し出資をしたらいいじゃないか、それは公債利子負担の問題もあります、今までの貸付金の返済の問題もあります、それらに関する御意見であると思います。もう一つ今のお話の上に、この大きな金をかけても果して所期の工事が適正に進められるか。金高が多過ぎてそこに無理な注文をして、むだが起りはしないかというような点が総合して現われた御意見だと思います。これにつきまして弁解のようでありますが、ガード下その他の問題には日ならずして、ごく近い機会に今までのようなやり方でない、もっと徹底した方法においてその処理をしていくことに今準備を進めております。それから政府がもっと負担をしたらいいじゃないかということは 私が今日まで申し上げました通り、財政その他諸般の状況において、今日はこれでいきましても、これから先借入金利子の問題、もしくは借入金の一部を政府負担していくという問題については、漸を追って御質問の御趣旨のような点に十分考慮を加えなくてはならぬ問題であると考えております。工事量の問題につきましては、これは最善を尽してどうしてもやらなければならぬので、金だけがあって工事が進まないというようなことのないように、材料その他の手配も国鉄当局においてそれぞれあらかじめ今日を予想している点もありますし、請負を受ける業者においても私は心がまえとしてそういう手段はとっていると思うので、国鉄関係は民間も国鉄もあわせて力を尽していきたいと考えております。従ってそのためにこのたび計画いたしました一割三分ということは一つ御承認を願ってその基礎のもとに今日までここに現われたような点については善処していきたい、かように考えている次第であります。
  17. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はただいま説明になりました資金の使途あるいは工事施行計画等について申しているのではないのであります。その根本問題は、資金捻出の方法にあるわけであります。私が質問をしておりますのは、もちろん国鉄の近代化、あるいは老朽施設の急速なる取りかえ、またはわが国産業開発の基礎であります新線の建設、及び建設しました新線が企業的に見てある程度採算を維持し得るまでに至る間の運営資金等々、きわめて重要な資金源をここに確保しなければならないのが今日の国鉄であります。その資金源を確保するために、今回運賃の値上げを計画されて、その法律案を出されたわけであります。そこまではわかるのでありますけれども、それを見てみますと、国鉄は従来独立採算制で公社制度をとってやっていく。そのために国の支出の責に帰すべき資金面までも全部国鉄自己資金にゆだねていくということは、あまりにも国有鉄道本来の趣旨に反するのではないか、少くとも投資分につきましては、本来ならば国が全額負担をして、その運営面を国鉄公社になさしめる、こういうふうにはっきりと投資資本と運営資本とを分けるべきである。私はそれがほんとうに公益性を保持する国鉄としてのあり方であると考えるのでありますけれども、今日政府の出されております法律案を見ますと、そのことごとくを国鉄自己資金に負わせようというわけであります。しかも従来からの再建につきましても、全部がこれを国鉄自己資金でまかなわせるという趣旨のもとに仕組まれておるというのであります。これではどうしても国鉄を正常に運営することは困難だ。国鉄に産業開発あるいは経済協力の見地から公益性の責任だけは負わしておりますけれども、その責任に対する裏づけは政府は何らしておらない、こういう非難を受けてもやむを得ないと私は思います。こういう点についてどういうふうにお考えになってこのたびの運賃値上げを計画されたか。どうも私どもはこの理由がはっきりしないので納得できない。
  18. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 この点については全体を大観していただけば、私どものとった立場も今日において非常に不適正なものであるとは考えないのであります。またただいま山口さんから締めくくりに御質問になったこと、また今日まで野党の諸君からお話のありました線も、私どもそれを取り入れないという意味ではありません。これは日本経済の動きによってだんだん取り入れていく時期がある。国鉄の経営も二兆になんなんとする大資産を運用しておるわけであります。これから生ずるところの三千数百億の収入金も、二兆何千億の資産の運用からすれば必ずしも度を越えたものではないと思うのでありまして、二兆一千億の資産を預けてその経営に当らせ、ことに運賃は原価を償うものであるという点から見ましても、大体そういう線にいっております。従って国鉄にさらに相当な事態が生じたらば、私は国家の資金をここに投入するということも決してこれを避けるものではありません。けれども、今日の日本経済全体の段階から見ますと、これだけ力を持っている国鉄には、この程度のところでしばらくやってもらう。また他の方面の足の弱いところにも政府の力を添えて、日本経済全体の拡大進展をはかっていくということに考えをいたしますと、時間的に幾らかずれはあるかもしれませんが、結局今日まで野党の諸君のお話しになった線と私どもの考えておる線と、そんなに大きな違いはないと考えます。ただ本案審議の過程において、与野党とも真剣な態度をもってお扱い下さって、その点は私は実に感激をしておるわけであります。その精神からいえば、今日の一割三分程度の運賃値上げというものは、国鉄の経営が将来の日本の経済拡大に順応するという立場においては、相当に妥当な道を歩んでおるのではないか、私はかように考えて、これを皆さんに御賛成願う次第であります。
  19. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はこの一割三分の運賃値上げが妥当であるないということよりも、今申しましたようにその前の問題として、国のとるべき責任国鉄経営当局が遂行すべき責任、この責任分野の観点から資金の調達のあり方というものを御質問申し上げたわけです。なるほど国鉄は輸送力も現在の日本経済の発展にマッチした輸送力を持っていないために、各所に膨大なる貨物の滞貨を生じ、従って非常な損失を与えつつありますことは、先週の公聴会におきましても公述人の申している通りであります。  そこで日本経済の発展に伴う時勢に順応して国鉄の施設の改善を行うためには、少くとも国家経済というものを左右する重要な問題でありますから、政府としても、その国家的、経済的責任を果す意味においても、いま少し国有鉄道に対してその資金責任を負うということでなければならぬのではないか。終戦後海上輸送というものが日本の経済を左右する重要問題であり、しかも外貨獲得等、経済発展の必須の要件として、日本は終戦後商船隊の復活を計画しなければならぬというのが計画造船の根本理念であったと思います。そして今日、この計画造船を遂行するために国家は非常な努力を払って、この計画を遂行して参ったと思います。その結果日本の商船隊もようやく戦前水準に復活せんといたしているのであります。政治というものは生きものだ、そのときの事態に対処して適切なる措置を講ずることが政治の要諦であると、保守党の人は常に私どもに答弁をして参ったのです。しからば今日このように急速に日本経済が発展していくということになり、国鉄の輸送力がこれに伴わないといたしますならば、計画造船を行なったと同じように、やはり国鉄の経済発展に対応し得る施設に必要な需要資金というものは、政府においてまかなうようにいたすことが当然ではないか。しかるにそれを回避して、計画だけは押しつけるけれども、資金面は勝手に自己で調達しなさい、その調達面は利用者が当然負担すべきであるというので、運賃にばかりしわ寄せしていくということは、あまりにも過酷ではないか、もし運賃なるものが今運輸大臣の言われますように、最も妥当適切なるもので、原価を償うものだ、あるいは原価に近いものだというふうにお考えであるとすれば、私はとんでもないことだと考えます。少くとも今日の国鉄運賃に一割三分のものを加えて、それで現在の物価に見合う運賃だというふうにお考えになることは、全く時勢を知らない人の言うことだと思う。今日の物価にマッチしたものにして、原価を償おうとすれば、少くとも三割か四割運賃を上げなければ、とうてい償うものではありません。それでは日本経済の発展途上、あるいはまた再建途上において、国民の生活に及ぼす直接の影響、あるいはまた物価に及ぼす影響というものは、きわめて重大なるものがある。従ってまず国民生活の基礎である運賃というものを抑制していかなければ、日本の経済再建というものができないのが現状なんです。しかるにこの一割三分の値上げを認める、これが合理的なものだとすれば、次に合理的にならないということになれば、また上げるということになる。そうすると先日の公述人が申されましたように、次から次へ運賃の値上げを実行するということになると思う。必ずそうなります。そういうことでは安定した運賃の作定もできなければ、あるいはまた国民も安心をして国鉄を運営してもらうことができなくなるのではないか。一体こういう点についてどういうふうに考えられているのかというのが私の質問趣旨なんです。
  20. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 御質問趣旨はよくわかっております。ただこれに対処する私どものとったことが、それに当っておる点と当らない点とはありますが、これは根本的の考えの違いではなくて、時期の問題と事態の動きとの問題にあると思いますので、ただいまのところでは少し問答をすれば意見の相違にもなるわけでもありますけれども、今日の事態において、私はただいまお話しのように、三割も四割も上げなければなるほどほかの物価とのつり合いがとれないのを、一割三分にとめておくということは、国鉄の公共性から、また国家的使命からしてここに押えておるからなのであります。その程度のことにおいて捻出した自己資金と、それから借入金によってこれを処理して、一応五カ年計画というものを立ててこれを遂行する、それが日本経済の発展にも大体マッチしていく、こういう事態でありますから、今日の場合は一つこの程度で御承認を願って、さらに国鉄の将来に向ってはいろいろ検討を加えて、御期待に沿うようにしていきたいと思います。
  21. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はどうも運輸大臣資金の運用面だけを申されて、ほんとうに国鉄として果すべきその責任については、きわめて都合よく回避せられておると思います。このたびの運賃の値上げによります増収分は三百六十六億を見込まれておる。ところが私はこの三百六十六億などというような金は、今までの海運行政から比較をして陸運行政を論じますならば、少くとも政府において当然帯びるべき責任を持って支出できるものと考えます。またこの三百六十六億の増収を見なくても、国鉄においてもこれを合理化して、いま少し健然な経営をやる。その根本は国鉄の上層部における綱紀の粛正にあります。あるいは資材の合理的な運用にあります。また諸施設の合理的な運営に当然そのほこが向けられますならば、少くとも私どもの計算によれば、三百六十六億のうち半額以上の経費を捻出し得ることは、確信を持って言い得ると思います。そうすればあと残り百億や百五十億のものは、政府資金を年々つぎ込んで、この施設の拡充強化に資していくということが当然とらるべき責任である、かように考えておるわけであります。従ってそのような双方の努力というものなしに、運賃値上げという、運賃コストをきわめて安易に操作することによって引き上げていこう、こういうことに私は結果としてはなるのではないかというふうに考えて、非常に遺憾に思うわけであります。  それから第二にお尋ねしたいのは、今まで聞いておりましたところによれば、運賃を値上げしても、少くとも直接物価に影響は及ぼさない、こういう説であります。しかしながら国鉄運賃値上げをすれば、少くともその値上りの分のはね返りは、必ず物価に影響を及ぼす、特に国鉄運賃を値上げいたしますならば、それに付随をいたしまして、私鉄の運賃値上げもまた必至の状態に置かれるのではないか、こうなりますとこの運賃値上げというものは、その影響するところは政府の思っていらっしゃるようななまやさしいものでは済まぬのではないか。しかもこの、ようにして鉄道運賃は国有あるいは私営を問わず、値上げの傾向に政治的に置かれていきます。しかも一方本年の運輸行政面から見た税の改正率を見ますと、ガソリン税におきましてもあるいは軽油引取税におきましても、大幅の増徴を計画され、すでにその法律案が提出されておる。こうなればまた自動輸送面におきましても、運賃の値上げをいたさなければ、これはとうていその企業を運営することが困難であるということに私はなると思うのでありまして、このガソリンあるいは軽油税の値上げも、ひいては運賃の値上げを同時に政府が行なったも同じことであります。ただそれを業者運賃の値上げを申請したからということで、その業者にのみ責任を負わすということはできないと思う。しかもその運賃値上げは、きわめて不合理な運賃値上げである。またそれに付随をして私鉄におきましても、少くとも今日採算がとれ得る私鉄でありましても、国鉄が値上げをすれば、それに付随して運賃の値上げを余儀なくされ、一方においてはガソリン税あるいは軽油税の値上げによって、運賃の値上げというものが余儀なくされる。こういうふうになりますと全く陸運行政は、本年度は総退却、総後退を演じておるといわなければならぬと思うのでありますが、これをどういうふうにお考えになっておりますか。
  22. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 このたびの運賃値上げが物価及び国民生活の上に及ぼす影響につきましては、もちろんこれが何の影響もないということはないはずであります。幾らかの影響はあると思います。またこれに伴う私鉄、バス等の運賃値上げ等につきましては、国鉄運賃の値上げによって一律にはやらないという方針をとっておりますが、個々のものを検討して、その地方の実情と経営の状態とを見て、全然上げてやらないというわけにもいかないだろうと思う。しかし一律に国鉄運賃の値上げによってやるということは、この際慎しまなければならないというので、その方針をとっております。従って今日の日本の経済が、全体が物価上昇の方面に速度を早めておるということでありますと、この運賃値上げというものも相当に響くかもしれないと思うのであります。しかし今日これが原材料に及ぼす値上げの程度というものは、三%ないし三%半とみておる。そのくらいのものは、今日日本の持つ全体の産業の実態から見れば、たとえば輸入原材料も非常にたくさん持っておる。従ってその面から価格の上昇による景気というものが、今の日本経済の景気ではない。やはり生産の量が増していくということが日本経済の今動いているところですから、その面から見ますと、三分ないし四分の原材料に対する運賃負担というものは、それから後の加工と経営の面において相当に消化するのではないか。また生活に及ぼす点は、御承知通り運賃、交通、通信費を合せまして、日本の都会においては二%をこしておりますけれども、日本国全体としては一・八%くらい、このこまかい統計はまだ出ておりませんが、かりに鉄道運賃がこの一・八%のうちの一というものを負担する、こう考えますとそれだけの影響はありますけれども、しかしここ五年間というような事態を見ますと、少くとも世界の今の情勢から見て、生計費というものは五年間に一割くらいは上っていくのではないか。一割生計費が上って、今日の一%の上昇から見れば、二年、三年、四年後には運賃の家計に及ぼす程度は今日よりも安くなってくる、こういう見方も見られるわけであります。従って今日の日本経済全体から見てのこの鉄道運賃の値上げは、インフレの要因になるというまでには私は考えないでいいのではないか、そういうふうに考えておりますので、これが家計及び物価に及ぼす影響を最小限度にとどめるという方法において、この国鉄運賃にしても遠距離逓減を初め、物資の種類によってそれぞれ考慮を加えておることは御承知通りでありますから、できるだけそういう面のないようにしていける、こういう見込みでやっておるわけであります。
  23. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は今運輸大臣が、運賃を値上げをすればインフレの要因があるではないかということについては、なしという考えを持つというお答えであります。私はこの運賃値上げなるものが必ずしもインフレにばかり進むとは考えません。逆にこれがデフレの重要要因にならぬとも限らないと思うのでありす。ただ運賃を値上げしたからインフレが必ずしも起るとは考えられないのであります。それは過去の運賃改訂の歴史をよく考えればわかることであります。従って私は必ずしもインフレによる経済の混乱というようなことは考えておりません。むしろ私はこの運賃の値上げなるものは、デフレの一大要因にもなりかねないというわけでありまして、そうなりますと、これはインフレよりもさらに大衆の生活がこれによって一そう窮迫を告げる原因になる。ただいま申されたように経済は拡大して需要が増大する、国民の生活水準が一割上れば一%の運賃値上げというものは、きわめて軽微ではないかというお答えであります。しかし逆にこの運賃値上げによりまして、一方においては物価を上げることはできないといたしますならば、運賃の値上げ上昇というものは、全く需要者の一方的な負担になるわけであります。そうすれば一方においてこれを向上にとりましても、国民生活はなるほど多少上昇していくといたしましても、大臣の観察せられるような生活水準の向上は望めないと私は思うのであります。望めなければ一般国民の消費生活におきましてもその消費は伴っていかない。生産に伴う消費がないといたしますと、一方においては運賃は上る、ところが一方は生産を増加してもその需要がない、こういうことになれば、勢いそれは運賃の値上げだけを製造企業というものが、一般の大衆というものが負担をして、そうして製品を送り出さなければならない。市価を変えるわけには参らない。こういう結果になれば、これまた逆に日本経済に対しては大へんな悪影響を及ぼすものだ、こういうふうに考えるわけであまます。現に大企業には神武以来の景気とかなんとかいっておりますように、今日この経済の発展が見られるといたしましても、それは日本の今日の現状では、これは日本の輸出産業の全体から見て、バランスのとれた進行をしておるものではありません。私どもの観察するところでは、少くとも日本経済の今日の好況の中心になるものは、少くとも造船を中心といたしまするその関連産業である。同時にまたそれに伴いまして鉄鋼及び電力等の需要の増大、これに伴いまする経済の発展等が見受けられるわけでありまして、日本経済全体から見て、それがバランスのとれた進行を示しておるとは考えられない。しかも今日造船などに付随をいたしております下請中小産業などは、いまだにその回転資金に苦しんでおるのが現状ではないかと思われるわけであります。それなるがゆえに政府もそれをお認めになって、下請業に対しまする支払い促進に関する法律案まで作成せられておるのであります。これは政府みずからもお認めになっておる通りであります。従って私は今日の日本の経済事情なるものは、そう大臣の言われるように、手放しに向上するものとは考えていないのであります。特に中小企業以下の大衆産業というものは、決して今日大臣の楽観しておられるようなわけには参らないのではないか、かえってその負担を増大るだけが苦しみの原因になるのではないかとさえ考えておるわけであります。こういう点についてどういうふうに観察しておられますか。
  24. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 日本経済の現状が、運賃値上げがデフレの要因になるかどうかということになると、なるほどそういう面もあるかもしれませんが、今日全体として日本経済のうちにデフレの要因が幾らか動いていくということは、非常に悪いことではなかろうと思うのであります。ただいまのお話の筋は、大体においていわゆる大衆産業の中小企業にしわが寄っていくのではないかというようなお話でありますが、これは今日の実態からいいますと、国鉄の輸送力の欠乏ということは、やはり中小企業に一番の打撃になっております。早く荷物を送って金を取らなければならない、その間に金が来ないからして、金融のために非常な窮屈を感ずる、高い利息のものも借りなければならない。ところが国鉄の輸送の増進によって荷物が簡単に動くということになれば、わずかの運賃どころではない、私は大衆産業の経営の仕方にはいい影響を与える、ことにまた大衆の扱っているもののうち、いわゆる生活用品、われわれの家庭生活に使う物資などというものは、その物資の生産地と消費地との間の連絡が円満にいかないために、生産地で安くて消費地で高いという場合がたくさんあるわけですから、これらに対しては輸送力の増強——あなたのお話からいえば、それは何も運賃でやらぬでもいいじゃないか、国家の金でやっても同じことだということになりますが、輸送力の増強は非常なプラスになっていくというふうに考えます。また運賃の値上りなどが引き合わないならば、荷作りその他において——承知通り今日の荷作りというものは非常に金がかかる、こういう面において輸送が楽になれば、やはりそういうところで工夫もできる。従って経営自体において、この運賃を吸収していくという面は、今日の中小企業の間においては特に相当にできるのじゃないか、こうも考えられる面もありますわけで、それに依存するわけであります。そういう点から、また国鉄当局者としましても、国家の金に依存するという場合と、自分たちが国民の負担において運賃によってこれをやっていくという場合とでは、やはり国鉄の今後の営業の上に対する心がまえも違ってくるわけでありまして、プラスの面もマイナスの面もあると思うのでありますが、今日の場合、一つこの線でいくのが最も妥当な行き方であるというので、この案を作って出したわけであります。
  25. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今の答弁の中で、私鉄運賃との関連性についてお答えになりましたが、私はこれについてさらにお伺いをいたしたいと思います。今日の鉄道においては、競争線がありましても、少くとも運賃等は個々ばらばらではなくて、やはり独占性を持った運賃の作定が行われておるわけであります。そして業者の競争というのは、その運賃政策の範囲内においては制限されて自由を許されていないわけであります。これはもう御承知通りであります。そこで私はお尋ねをしたいのですが、今大臣のお答えでは、私鉄の運賃は、国鉄運賃が上ったからといって一律には考えていない、企業実態に即して運賃の値上げを行いたいということでありましたが、これは言いかえますと、値上げを行いたいというよりも、企業の実態によって合理的な運賃の作定を行いたいというふうに解してもいいと思うのでありまして、その限りにおきましては、私はその意見に賛成であります。しかしそこに一つの認識不足があり、理論だけでは参らないことになっていることを大臣は御存じないのではないかと思います。たとえば国鉄が走っていて、そのわきに競争線として私鉄も走っている、二つの線が同じように走っているという場合に、一方の会社では、経理内容も悪く、運賃値上げを必要とすると認められる、ところが同じ並行線を走っていても、他の会社では黒字である、従って経営上、これは運賃の改訂を行わなくとも何ら不安はない、安定した企業である、こういう状態に現在あると思うのです。その前に、大臣の言葉をかりていえば、片一方は経営実態に即して合理的に運賃を作定しようとなさるのですから、当然値上げということに相なるでしょう。ところが一方においては同じ並行線を、同じ地点から同じ地点を走っておっても黒字である、何ら運賃値上げの理由はない、こういうことになりますと、事はそう簡単に理論通りには参らないのが現状ではないかと私は思うわけであります。これを大臣の言われるような感覚で処理するということになれば、これは一大混乱を生ずる結果になると私は思いますが、大臣の先ほどの御答弁は誤まりじゃないか。もし誤まりでなく、本気にそれをお考えになっておるとすれば、その混乱をどう解決しようとなさっておるか、一つお聞かせを願いたい。
  26. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今のお話はだいぶこまかな点になりますが、なるほどそれは会社としては黒字であるが、並行線が非常に賃率が違うということになれば、その部分だけは取って考慮しなければならぬ場合もあるだろうと思います。それらは実施の面において適当に考慮していけばよいのであると思います。
  27. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 どうもうまく答弁をされますけれども、実際問題として片方は赤字である、片方は黒字であるとしても、国鉄運賃の値上げによって、少くとも運賃政策面のバランスが破れるのですから、破れるということになれば、沿線の利用者が何も負担増をせぬでもいいのに、要らざる負担をしなければならないというような不合理性がそこに生まれてくる。従ってここに、いうように公益性があり、しかも国鉄資金の獲得なるものが、運賃の値上げ、利用者の責任ということだけに持っていくことのできない性質があるということを考えなければならぬのではないか。従ってそれを将来どういうふうにお考えになるかということが、運輸行政上最も重要な点であるから、私は質問申し上げておるのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  28. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今の考え方はその通りであると思います。ですから、これを実施の面においていろいろ考慮していきたい、かように考えております。
  29. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 実施の面でお考えになるとしても、そう器用な操作はできないと私は思います。従ってこういう点からいきましても、いかに今日の国有鉄道運賃のあり方というものに矛盾のある政策をとっておるかということが明らかだと私は思います。  さらに私はお尋ねをいたしますが、昨年国鉄固定資産税を取ろうとして非常な反対にあったために、国有財産の所在市町村に対して納付金という形で、実質上の固定資産税を取ったのであります。これは当委員会におきましても、一昨々年でしたか、運賃の問題がいろいろと爼上に上ったときに、交通機関に対してあらゆる税金をかけるということは、少くとも公益上からいっても矛盾する、従ってまず税の軽減による合理的な企業の策定を行わしめ、しこうして運賃を極力低物価政策に合せて運用していく、こういう趣旨のために、民間鉄道におきましても当然営利事業でありますから、国民の義務を回避せしめるものではない、けれども合理的な課税をいたしますために、少くとも運賃の合理的な作定をいたし、しかも運賃コストを下げるために固定資産税等においても、直接その運輸に使用する施設については、これは免除する方向にいくべきであるという決議までされておるわけであります。しかるに政府のとっておりまする政策は、それとは全く反対でありまして、私鉄はおろか、国有鉄道固定資産税までも取り上げて、そしてその局面を糊塗しようとしておる、これが私は現在の姿であると思うのですが、これについて運輸大臣は将来どういうふうにお考えになりますか、一つその所信を伺いたいと思います。
  30. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 この点過去のいきさつもありますし、一応内容を鉄監局長から……。
  31. 權田良彦

    ○權田政府委員 お答え申し上げます。今御指摘の点は私鉄をも含めて、いわゆる交通事業というものに対する税の考え方の問題でありまして、この点については、御指摘のようにこれが営利事業でありましても、その本来の使命に公共性がある。従いまして全く普通の商事会社と申しますか、そういうもの並みには考えられない。いろいろ税法上の配慮はしてございまして、たとえば事業税につきましては、今回は地方税の改正で御審議願っておりますが、地方鉄道軌道につきましても、今までの水揚げにかけますところの、いわゆる収入課税というものからこれを所得課税に切りかえるというような措置を今とっております。それからさらに地方税では、御指摘固定資産税について、いろいろこの評価の問題なり、あるいは特段の配慮が加えてございますが、将来の問題としては、今残っておりますのは往年の地租でございます。今は固定資産税として一括されておりますが、戦前はこの土地、特に軌道敷でございます。普通の土地は違いますけれども、軌道敷につきましては、これは一般の、要するに処分、譲渡その他の対象となる土地所有の形態と形態が変っておりまして、これは鉄道が存する限り軌道敷として必要な施設で、これに対するものは特別に戦前は考えておったのでありまして、その点について、現行地方税法でもこの土地に見合う分の固定資産税をどう考えるかということはなお検討を要する問題がございまするが、しかし全般的にいいまして、国税、地方税においては、他の私企業とは変った措置をとっております。特にまた国鉄につきましては、これが国の出資によりまするところの公共企業体でございまするので、これは税法上も全く異なった扱いをいたしております。いわゆる地方税、法人税等は相かかっておりませんし、それから固定資産税につきましても、その関係がございまするので、税を負担すべきではない。そのかわりに納付金という形で、昨年から法律によって支払わさしておりますが、これも評価その他について全然違った扱いをいたしております。従いまして国税、地方税を通じて現在の段階では、御指摘の交通事業の本質にかんがみました異なった政策で政府は臨んでおるわけでありますが、将来とも問題の残っております点については、なお一そう深く検討を加えたい、かように事務当局は考えておる次第でございます。
  32. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は事務当局としては今答弁せられたように、十分の考慮を払われておるものと思いますが、この問題は政治的な問題であります。少くとも今までたびたび決議もいたし、そしてまた交通機関の持つ政治的面、あるいはまたただ単なる一時的な政治的な考え方、配慮というよりも、むしろ日本の経済上欠くことのできない基本をなす交通機関についてのあり方が、私はかくあるべきだというふうに規定せられて、その認識のもとにたびたび決議になっておるのだと考えておるのであります。しかるに年々とられておるその政策なるものが、全く決議とは逆の方向に行きつつある、これでは日本の一貫した交通政策を実行していくわけには参らない。少くとも近い将来こういう矛盾を是正するために政治的な解決を必要といたしますが、これについて運輸大臣はどういうふうにしようとしておられますか、その所信を一つ承わりたいと思います。
  33. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今の税制は、国の取る税と地方税とがあります。この納付金もようやくことしで二年目というわけでありますから、この方針を今直ちに変えていくというようなことは困難だと思いますが、交通機関に対する税の建前という点から、御質問の御趣旨についてはまた将来研究をしてみたいと思います。
  34. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 自動車局長は帰りましたので、鉄監局長でお答えになれると思いますが、国鉄にいたしましてもガソリン車あるいは軽油車を使ってそれぞれ輸送を行なっておりますが、今回の軽油税あるいはガソリン税の増徴は、輸送面に相当大きく影響すると私は思います。しかもスエズ運河の問題以来、石油は非常に大きな値上りをいたしておる。その上にさらに政府の企図するガソリン税の増徴がありますと、これは企業面におきましても非常に大きな影響をもたらすと思いますが、これがどういう影響をもたらすかについて計算をされたことがあるか。実際に当っておられる国鉄においても運賃面にどういう影響があるかについては計算をされておると思いますし、省においてもその影響力については詳細計算をされたことだと思いますが、これについて事務当局から一つお答えを願いたいと思います。
  35. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 ちょっと前に私から……。ガソリン税の増徴につきましては、私どもの考え方もあなたから今御指摘になった通りで、なるべくこの率を上げないように、影響のないように努力いたしております。ただ運賃に及ぼす影響につきましてはただいま業者からは、とてもこれは消費者に転嫁できない、結局業者が背負うのだから非常に困るという切々たる陳情がありまして、私どもその点もっともと思いまして努力をいたしたのでありますが、政府の決定は、道路の十カ年計画に相応して、結局長い目では運賃も安くなる、道路がよくなるから経営費からガソリン代で安くなる、こういう見通しにおいて今日の処置をとったわけであります。私どもは運輸行政の立場から、やはりなるべくこれは上げないでいきたいということにはいろいろ努力をいたしましたけれども、ついに今日の事態になりました。今のところでは結局これは消費者にもしくはその他の上に及ぼさないわけにはいかないと思うのですけれども、業者としては今及ぼす余地がないから非常に困るのだという建前で切々とやっておられますから、これは今後の問題と思うのであります。実は政府は案を出しましたが、なにの方でまだなかなかむずかしい折衝が今行われておるのは御承知通りであります。この成り行きも大いに影響すると思うのでありますが、私たちの立場としては非常に残念ではありましたけれども、すでに政府方針として決定してこれに出た以上、この線で今一応行かざるを得ないと思っております。
  36. 權田良彦

    ○權田政府委員 国有鉄道の経理の方に響きます今の揮発油税なり軽油引取税の問題でありますが、一般自動車運送事業では、多分燃料費が一七%くらいじゃないかと思います。御承知通りこの両税は鉄道の動力車の方にはかかりませんで、これは私鉄でもそうでありますが、私鉄の動力車は営業費の大体六、七%でございます。これは電力がおもで、一部ガソリン・カーが走ったりディーゼル・カーが走っておりますが、これはかかりませんから響きませんが、国鉄の場合も大体ディーゼル・カーでございまして、レールの上を走るガソリン・カーは今ございません。ほとんどディーゼル・カーでございます。従いまして国鉄の経理としては、例の国鉄自動車、これにはガソリン車もあり、ディーゼル車もありますが、大部分がディーゼル車に切り変っておると承知しておりますので、全体の経費としてはさしたることはない。実はこまかい数字で申しますと、資料はありませんが、私の記憶では、国鉄自動車が使っておりますのは大体六千万円から一億円程度じゃないかと思いますが、これは今申し上げましたようにほとんどそのすべてがディーゼルに切り変っております。従いまして今回の三十二年度の全体の予算なり将来の見込みにつきますと、その程度のものでございますから、国鉄経理としては大体まかない得るように思うのでございますが、全般的に申し上げて、その問題については今大臣がお話しになった通り事務当局も考えております。
  37. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ここで事務当局が努力をしておられても、政治的にやはり運輸省全体の政策の後退ということが見受けられると思うのです。御承知のように昨年軽油引取税が新設せられましたときに、六千円を一気に取るということは非常な無理である、少くとも四千円程度に引き下げるべきだという附帯決議がついているわけです。ところが本年ふたをあけてみると、附帯決議とは逆にこれを三千円増徴して九千円にする、あるいはガソリン税の値上げがもくろまれましたときにも、当委員会は合同審査をいち早く要求いたしまして、そうして各委員会の合同審査を行なった結果、これは一万三千円の据え置きということになっている。しかもそのときの附帯決議にも、これは交通運輸事業上重要な影響力を持つものであるから、従ってもし道路整備に必要なものがあるとすれば一般会計からその費用を補てんすべきものであって、みだりにこのガソリン税の増徴を行わないこと、こういうふうに決議を付して、そうして通過させてあると私は思うのです。ところが政府のとられているのは、議会がそういうふうに決議をすると、逆の方逆の方に持っていかれる。何でこういうふうに逆の方逆の方へ陸運行政だけを持っていかなければならぬのか、私はどうもその真意がわかりません。しかも国鉄自動車におきましては、少くとも軽油によるディーゼル・カーがその主たるものであるということは承知しております。そこで国鉄においてもこれについてどういう影響を及ぼすかということは、これはもうすでに計算済みでなければならぬと思いますが、一体国鉄の方ではこれをちっとも計算していないのですか。どなたがこの衝に当っておられるのですか、一応お答えを願いたい。
  38. 石井昭正

    ○石井説明員 揮発油税の増加あるいは軽油引取税の増加ということにつきましては、これはまだ正式に御決定になっておらないことでございます。私どもといたしましてはこういうような気配と申しますか、そういうものも若干かみ合せまして経費の一部には見ておるわけであります。先ほど監督局長から御説明申し上げましたように、今回の値上りの影響は、国鉄自動車の運営計画としましてはそう大きくないというふうに考えております。なお国鉄自動車全般につきまして、私どもは鉄道事業と同じように経営改善の努力を年々進めておりまして、来年度も相当強行にこれを実施するつもりでやっております。その分へ税額の上りは吸収して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  39. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 まだ決定はないといたしましても、少くとも政府法律案として出される以上は、そして常に国民経済に対する影響を考えておると言われるのでありますから、従ってそれならば、少くともこのガソリン税の増徴あるいは軽油税の増徴及び国鉄運賃の値上げ等々の問題は、直接間接国民の生活上至大の影響を及ぼすものでありますから、従ってそれについて精細に影響力を持つ点を調べられて、それをわれわれの前で納得のいくようにすらすらと御答弁を願って、そして国民に納得のいく御説明があってしかるべきだと思います。ところが遺憾ながら今日まで御答弁になったところを見ましても、それらの点についてはっきりとした御答弁を私はいただいていない。しかも国鉄資金の問題につきましても、ただいたずらに運賃収入のみに依存をして、政府としてこの国鉄財産維持のために、あるいは国鉄施設の拡大発展に伴う、それに即応する拡充のための投下資金については、何ら具体的な対策をお持ち合せがないのではないか、あるいはまたこの国鉄の五カ年計画に合せて、そうして政府責任において支出せらるべき資金獲得等については、何らの具体的な対策もお持ちでない。従って国鉄にのみこれを転嫁していこうというような政策に見えるわけでありまして、はなはだ遺憾に思うわけであります。こういうような政策では、陸上交通というものは年年後退の一途をたどるのみでありますと、その後退は直ちに大衆生活に対して大きな犠牲をしいるものだと私は思う。少くとも今日まで計画造船を実行せられたように、海に対してもそれだけの大きな国家的な援助を与えられておるのでありますから、陸におきましても並行して、どちらにも偏重することなく公平な政策がとられて、初めて私は運輸政策の一貫性があり、計画性があるものとして受け取ることができると思うのでありまして、あまりにもそういう点についての後退性があることを遺憾に思いますので、一つこの点については十分に御考慮を払っていただくようにお願いをしたいと思います。  それからもう一点、重要な点で国鉄から事務的に伺いますが、この国鉄運賃の値上げを通じまして、施設の賃貸借関係について、その合理化のための要望も強く出されまして、これについてはたとえば高架下の賃貸料金の問題、あるいは国鉄用地の賃貸料金の問題、あるいはこの管理の問題については、十分に御考慮を払われるということで、すでに国鉄におきましても管財部などを設けて、そうして適切にこの財産管理を行なって参りたいという所存のようでありまして、これは私は大へんけっこうだと思いますが、これは管財部というようなものではなく、地方におきましてもあるいは中央におきましても、この国鉄財産管理のためにはもっと強力な組織を置いて、十分なる監督のもとに、私はこの運営に当られるように希望いたしたいのであります。また国鉄用地の賃貸借の適正化ということも、あるいはまた又貸し等の不法行為の防止ということも当然でありまして、これは国の財産でありますから、国鉄当局がそれを適正に管理される責任があります。適正な料金を支払うことはけっこうであります、当然であります。  私はそこでお伺いをしたいのは、一般商社と公共性を有しないと思われるものに貸している場合、あるいはまた交通機関に付随するものとして、必要なるものとしての機関に貸している場合、それからまたもう一つは純然たる交通機関、たとえばはっきり申して私鉄の併用使用の場合、あるいはまた私鉄の鉄道敷地に貸与しているような場合、こういう場合には、これまたきわめて高い公共性を持つものであり、これに対して一般の事業と同じような角度、感覚において賃貸料を強要せられるということになれば、これまた弱小私鉄あるいは十三大私鉄におきましても、その経営面に対して非常な影響を及ぼすものである。これはひいては運賃算定の場合に非常に重要な要素を含むものでありますから、これについては格段の考慮を払われてしかるべきではないか、これについて国鉄当局はどういう方針でいこうとなさいますか、一つその方針を承わっておきたいと思います。
  40. 石井昭正

    ○石井説明員 用地の貸付、賃貸借につきましていろいろ御指摘を受けておりまして、私どもも今後機構を整備し、またこの点について十分適正な運営をいたすように留意いたしたい、ただいまお話のあります通りでございます。なおその際に純然たる私営業と申しますか、公共性を持つ、ことに交通機関としての共同性を持ったものについては、同じような考え方はおかしいじゃないかというお話でございますが、私どももその点十分心得ております。この点につきましては、それ相当の使命に応じまして、他のものと異なる取扱いをして円滑にいくように推進して参りたい、かように考えておるわけであります。
  41. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はこの点につきましては、今御答弁がありましたからこれ以上追及をしようとは思いませんけれども、ややもすれば公共性があろうがなかろうがとにかく画一的に、こう言われるのだからいたし方ありませんからこういうふうにいたしますというような考え方でやられたのでは、これは影響するところが甚大であります。従って今申されたように国有鉄道が欠くべからざる施設として貸与しておるもの、あるいはまた私鉄等、国鉄に、これも付随併用してどうしても公共の用に欠くべからざるものについては、これはそれぞれ等級なり何なりを作定して、そしてしかるべき合理的な処置をとられるように特に強く希望して、私の質問を終りたいと思います。
  42. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 この際休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      ————◇—————    午後一時四十一分開議
  43. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を許します。吉田賢一君。
  44. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 運輸大臣にお尋ねします。今回の国鉄の一割三分の値上げをめぐりまして、これが国民生活に与える影響がどんなになるであろう、非常に深刻、甚大であるという危惧をもって、国民一般は注視いたしております。従ってこの国鉄運賃値上げによって起るであろうところの影響は、国会としてはあらゆる角度から十分に検討をしておかねばならぬ、こう思うのであります。  つきまして、あなたに明らかにしておいていただきたい点は、一般の民営その他公共企業体などが行なっておりますあらゆる輸送機関、運輸機関の運送料は、いろいろな理由も考慮して、必然に値上げの結果を招来するであろうと考えられるのであります。もしそうであるとするならば、これは広範な範囲に、国民の生活並びに国民経済に重大な影響を与えるであろうということは、これは必然であろうと考えられます。それにつきまして、いずれ当委員会は種々論議を尽されたことと思いますけれども、私はなお明らかにしておいていただきたい点は、私鉄、バス等の、あるいはトラックその他ハイヤー、タクシーなどを含めまして、その種の運賃につきましては、基本的に運輸大臣はどういう態度をもって臨まれるのでありますか、この点を明らかにしておいていただきたい。
  45. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 お答えいたします。問題は私鉄とバスになるわけでありまして、ハイヤー、タクシー及びトラックなどは、今の認可制よりも事実安い運賃でやっておるというのが多くて問題はありませんけれども、私鉄とバスが問題になると思います。私鉄とバスが、この際軒並み国鉄運賃の値上げにならって上げるということは、これはなかなか重大な問題でありますし、従来の経過から申しますと、バスはその個々の事情に応じて必要やむを得ないものは一つ一つ場合を見て値上げを許し、いろいろやっております。私鉄につきましては、大体の方針としては国鉄運賃の値上げにつれて一斉の値上げは行わない、これはただいまお話通り諸物価並びに生活の上に及ぼす影響も重大であります。なおこの際心理的な影響も非常に大きいと思いますので、そういう方針をとって、全くやむを得ないものについては個々の場合を検討していくつもりでありますが、一斉にこれは上げない、こういう考え方であります。
  46. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならば、具体的にまずバスの方から入ってみますが、最近まで、ここ一年間を一応限定いたしまして、値上げを希望し、値上げを内容といたしまして運賃の改訂の申し出、あるいは原価計算の再検討の申し出をしておるはずであります。一応これは私の方では資料もいただいておりますけれども、資料を直ちに速記録に添付することもどうかと思いますので、一つ事務当局から、バス会社名及びその申請の年月日及びこれを改訂いたしましたものはいつ、何会社で、幾らの率になっておるか、この点を明らかにしておいてもらいたい。同時にこれは時間を節約する意味におきまして、同種の事実関係一つ監督局長の方で同じく御朗読をしていただきたいと思うのです。
  47. 山内公猷

    山内政府委員 お答えいたします。バスにつきましては、ただいま大臣から御説明がありましたように、非常に前からケース・バイ・ケースでやっております。現在認可がありましたものが、秋田県の秋田中央交通、秋田市、羽後交通、秋北バス、愛媛県では新居浜市、宇和島自動車、伊予鉄道、広島県では瀬戸内運輸、向島町、この九社が運賃の改訂がされております。現在申請いたしまして賃率の内示をいたしておりますのが、若松市、祐徳自動車、熊本電気鉄道、西日本鉄道、堀川自動車、この五社でございます。  そのほか、賃率を内示しておりますがまだ未申請のもの、賃率を決定するような認可の申請をまだしておりませんものが八十九社ございます。一つ一つ読みますと、佐賀県で昭和自動車、佐賀市、熊本県で九州産業交通、熊本電気鉄道、熊延鉄道、熊本市、荒尾市、山口県で岩国市、山口市、宇部山陽急行バス、防長自動車、防石鉄道、舟木鉄道、山陽電気軌道、長門鉄道、秋枝鉄道、秋枝正樹と申しまして個人でやっております。それから長崎県では西肥自動車、長崎自動車、島原鉄道、長崎電気軌道、長崎県、佐世保市、壱岐交通、北対馬自動車、五島自動車、広島県では広島電鉄、広島バス、広島郊外バス、芸陽自動車、ニコニコ自動車、備北交通、それから藤原国太郎という個人であります。福神自動車、鞆鉄道、尾道鉄道、呉市、尾道市、三原市、それから広島でもう一つ因の島運輸であります。それから宮崎県では宮崎交通、滋賀県で湖南交通、近江バス、滋賀交通、島根県で一畑電気鉄道、石見交通、松江市、出雲市、個人で鏡谷末次郎、大分県で大分交通、大分バス、亀ノ井バス、日田バス、岡山県で中国鉄道、両備バス、下津井電鉄、宇野自動車、井笠鉄道、備北乗合、藤田興業、倉敷市、山形県で山形交通、庄内交通、青森県では十和田観光電鉄、弘南バス、下北バス、南部鉄道、三八五交通、青森市、八戸市、岩手県で東部バス、岩手県北自動車、岩手中央バス、花巻電鉄、花巻バス、岩手県南自動車、宮城県で仙北鉄道、栗原電鉄、陸前乗合自動車、古川交通、塩釜交通、仙台鉄道、仙台市、秋保電気鉄道、仙南交通自動車、福島県で福島電気鉄道、福島県南交通、常磐交通自動車、会津乗合自動車、以上八十九社でございます。このほかまだ原価計算を出しまして審議中のものもございます。これが大体百十七業者今あるわけでございます。
  48. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 概して申せば、それはもし改訂が希望するように実現するとすれば、常識的に申して率にしてどれくらい増収を見通しておるのでしょうか。
  49. 山内公猷

    山内政府委員 大体基準運賃からいいますと、現行運賃が三円でございます。この三円のものが大体三円四十五銭になるというのが通常のケースであろうと思います。そうしますと、名目的には一割五分ということになりますが、当委員会でも先般説明しましたように、今回の申請につきましては、物価庁時代にやっておりました運賃の基準と違いまして、ケース・バイ・ケースに非常に緻密に調べてやります関係と、もう一つには運賃制度を合理化しようということをやっておりまして、たとえば小児運賃を半額にいたしますとか、あるいは切り上げ、切り捨てを合理化いたしますために、大体今までの実績を見ますと、一割ちょっと出た一割一、二分というのが今までの実績というようになっております。
  50. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その次、監督局長に私鉄をお願します。
  51. 權田良彦

    ○權田政府委員 全国で私鉄が百七十五社ございまして、これらの運賃は事業経営者から運賃改訂の申請があった場合、そのつどそれぞれの会社の経理内容について詳細な原価計算を行い、これを運輸審議会に諮問いたしまして、その答申を尊重して、それぞれの会社に対する運賃の認可をしておりますが、最近一カ年間に認可いたしましたもの及び現在申請いたしておりますものは次の通りでございます。  まず最近一カ年間に認可いたしました会社、大和鉄道、これは運賃が対キロ制でございまして、増収率が一割四分、三十一年一月八日に認可しております。次に富士山麓電気鉄道、これは対キロ制の運賃で、増収率が二割七分、認可年月日三十一年一月八日。東京都電、これは均一制でございまして、増収率二割七分、認可年月日が三十一年一月二十一日。東京都の無軌条電車、これは均一制でございまして、二割六分の増収率、一月二十一日。帝都高速度交通営団、これは均一でありまして、増収率三割三分、一月二十一日認可。奈良電気鉄道、これは区間制でございまして、増収率が一割一分、三月十五日認可。静岡鉄道、これは駿遠線と秋葉線とございますが、キロ制運賃でございまして、増収率二割四分、認可年月日三十一年五月十一日。次に北陸鉄道、これはキロ制でございまして、増収率二割一分、五月二十四日認可。富山地方鉄道、これはキロ制と区間制と均一制と、それぞれ線で違いますが、全体の増収率一割七分、認可年月日五月二十四日。それから信貴生駒電鉄、これはキロ制と均一制でございますが、増収率一割一分、五月二十四日認可。それから松本電気鉄道、これは鉄道線と軌道線で、鉄道線はキロ制、軌道線は区間制で、合計増収率一割九分、六月十四日認可。江若鉄道、これはキロ制でございまして、一割四分、八月四日の認可。近江鉄道、これはキロ制でございまして、増収率二割一分、認可九月七日。豊橋鉄道、これはキロ制でございまして、増収率二割六分、十月十八日認可。南海電気鉄道、これは区間制とキロ制と均一制、各線によって違いますが、全体の増収率二割二分、認可年月日、三十一年十月二十五日。花若電鉄、キロ制でございまして、増収率一割三分、十二月十二日認可。院弘南鉄道、キロ制でございまして、増収率八分、十二月十二日認可。上信電気鉄道、キロ制でございまして、増収率二割二分、十二月十二日認可。栃尾鉄道、キロ制でございまして、一割六分、十二月二十日認可。北恵那鉄道、キロ制でございまして、増収率一割五分、三十二年一月二十三日認可。尾小屋鉄道、キロ制でございまして、増収率一割七分、同じく一月二十三日認可。伊予鉄道、これはキロ制と均一制でございますが、増収率一割七分、認可年月日三十二年二月二十日、以上が認可したものでございます。  現在申請をしておりまするのは、山梨交通、これが全線、申請の値上げ率は二割二分、これは区間制でございます。野上電気鉄道、全線、これはキロ制、申請値上げ率は二割三分。島原鉄道、全線、これはキロ制でございまして、申請の値上げ率は二割八分。南薩鉄道、これはキロ制でございまして、申請二割六分。新潟交通、これはキロ制でございまして、一割八分の申請。神戸電気鉄道、区間制でございまして、一割六分の申請。和歌山鉄道、キロ制を区間制に改めるという申請でございまして、増収率の申請は一割九分。山陽電気鉄道、区間制でございまして、一割二分。長岡鉄道、対キロ制、二割一分。羽後交通、対キロ制一割九分。南部鉄道、対キロ制、一割八分。広島電鉄の宮島線だけが申請がございまして、これは対キロ制で、一割三分。秋田市電、これは区間制でございますが、申請値上げ率一割九分。豊橋鉄道の田口線だけ申請がございまして、対キロ制、一割七分。流山電気鉄道全線対キロ制でございまして、申請の値上げ率一割七分、今日現在の申請を受理しておりますのは以上でございます。
  52. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 山内局長に伺いますが、このバス運賃の改訂につきまして、原価計算表はかなり詳細な事項をフォームとして規定したしておるようであります。このうち人件費あるいは燃料費あるいはチューブ、タイヤ、その他経費など、直接、間接の経費が相当出るようでありますが、何が重点的に、最もウエートの大きい原価計算の要素に数えられるのでありましょうか。
  53. 山内公猷

    山内政府委員 バスの運賃昭和二十六年に改訂されまして以来現在まで、据え置かれております関係上、この間物価の変動が相当ございまして、とりわけ業界が現行運賃では経営ができないという大きなものは、その間毎年人件費が相当膨脹いたしております。昭和二十六年当時におきましては、車キロ当りの人件費が十三円四十六銭五厘という数字でございます。三十一年度におきましては人件費が十七円三十七銭六厘、これが相当大きく響いております。それから車両償却費でございますが、当時はまだ代用燃料を相当使っておりまして、車両償却が割合少かったようでありまして、そのころは四円九十八銭が現在では十六円三一十五銭八厘となっておりまして、この辺が非常に大きく経営に響いておるわけでございます。
  54. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大臣に伺いますが、今御承知通りに揮発油税あるいは道路税などの政府の値上げに関する法律案の審議をやっておりますが、この税法の改正が実現いたしますると、いきおい燃料への負担が大きくなることは、大小にかかわらず、その数字のいかんにかかわらず、必至の状況であるのであります。こういうことにもかんがみまして、私どもは幾多の値上げが値上げを生んでいく要因が増加するとも考えられるのです。そこで目下のところ、これは国会でかりに予算が通るといたしましても、税制改正の法律案がまだ審議中でありまするので、これらにかんがみると、新しい要因がふえていくということも考慮しておらねばならぬと思いますが、その辺については根本的にどういうふうに扱っていくというふうにお考えになっているのでありましょうか。一つ明らかにしておいてもらいたいと思います。
  55. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 このガソリン、軽油の値上げにつきましては、主として今お話の線ではバスの問題になっておりますが、タクシーその他におきましても、今日の値上げ——私どもは値上げはなるべく少くしていきたい、こう考えておりましたけれども、道路十カ年計画の線に沿ってやむを得ずああいうことになりまして、道路の建設方面からいえば、結局道路の舗装ができればガソリンの使用量は少くなるし、車のいたみも少くなるから、安くなる、こういうのですけれども、当面はなかなかそういうわけにはいかない。ですから業者が今反対しておる大きな理由は、これをどうしても賃率の値上げに持っていくことはできない。今の現状ではどうしても業者負担になるから、いけないのだというわけですが、それも程度の問題で、なかなかやり得ないと思います。幾らかそのしわ寄せがくることはやむを得ないだろうと思いますけれども、この値上げだから一般的にくるということについては相当研究をして、今までの値上げの認可は個々の場合の理由によっていたしまして、今度の鉄道運賃値上げという線においては扱っておりませんけれども、これからそういう問題も出てくると思いますので、これに対してはあくまでも物価と生活に影響を及ぼさない、少くともそれを軽微にしていくという線において、ケース・バイ・ケースで考慮していきたい、かように考えます。
  56. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 このバス事業原価計算の総括表のフォームによりますと、人件費の次に上っているのは燃料、油脂費であります。この中にはガソリンが書いてある。軽油も書いてある。ところが揮発油税及び地方道路税法によれば、現行法の揮発油税一万一千円が一万五千八百円になり、あるいは道路税につきましては現行二千円が改訂の三千七百円になるということが考えられるのであります。そういう要素が新たに加わって参ります。すでに認可したものがあり、現に認可の申請中のものがあって、原価を綿密に検討中である。まだ法律が実現しておりませんから、原価計算の内容の検討につきましても、まだ数字は増加されておらぬと思います。しかしながら何十日か後には、この数字が増加していくべき運命になると思います。そういたしましたら、もう一ぺんまたあなたの方では原価計算の再検討をしなくちゃならぬ、こういうことになるのじゃないかと思いますが、その点はどうなりますか。
  57. 山内公猷

    山内政府委員 ただいま御指摘通り現在の原価計算におきましては、ガソリン税の値上げ分は入れておりません。将来その点が問題になることは御指摘通りでございますが、その場合にガソリン税の値上げ部分を、たとえば現在すでに申請をいたしまして認可を受けた会社が、経営の合理化によって吸収できるかどうかという問題が起るわけでございます。そういたしますと、その場合にガソリン税の値上げの率が問題になると思うわけでありますが、私の方といたしましては、もちろん原価計算はあらゆる要素を入れなければならぬので、きまった場合には原価計算の中に繰り入れて計算すべきものであると考えておりますが、現在ではこれはまだ未定でございますので、入れるということもほんとうではない。その結果、もうすでに認可をいたしました会社といたしましては、一応それでやってもらう以外に方法はなかろうかというふうに考えております。
  58. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 やがて来たるであろうところの税率の引上げの結果、原価計算の要素は数字の異同を生ずる。これは当然のことでありますので、これも再検討なさるという大体の方針らしいのでありますが、そこで問題を転じまして、たとえば石炭に与える影響のことを考察してみたいと思うのであります。石炭協会において計算したところによりますと、一割三分の国鉄の値上げということになると、平均運賃原価の四百二十八円が四百九十七円になる。結局これは一応現行の百十五キロを基準にした計算でありますが、一六・一二%というような値上りになるわけでありますので、これは詳細な石炭協会の検討、発表いたしました区間とか石炭の種類などをあげるといいのですけれども、少し煩瑣でありますから省略いたします。ともかく石炭協会自身が一六・一二%の値上りは必然であるという計算を立てておるのであります。どういうふうな調整が行われるにいたしましても、相当な値上りは必至であります。重要燃料がこのような値上りになって参りますると、これがまた燃料によって生産せられる第一次、第二次、第三次の各産業面への原価の計算に影響を与えてくる。それがまた私鉄、私バスその他の運輸機関の運賃に影響を与えてくる。直接来ないまでも、たとえば機械あるいは部品、あるいは労賃、その他いろいろなものへの影響は、間接に次第々々に波及していくことは、これは一応経済的に考えましても見やすい道理であります。このような石炭に関する運賃の値上げの影響が、最も重大な打撃をあらゆる物価の上に与えまして、物価の原価が値上りになってくるというふうに考えられるのでありまするが、運輸大臣はその点はどういうふうにつかんでおいでになるのでありましょうか。
  59. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 お説の通り石炭、それから鉄材、セメント、木材等の基礎的な原材料というものは、運賃の値上りが今日の情勢から原価には大体そのままかかってくるだろうと思うのであります。それが末端製品までそのまま影響を及ぼしていくということは、これは一般の今日の経済の実情によってきまるものであろう。今日日本経済の全体が価格の上騰という方面に歩調をそろえて歩いていくときならば、それがその線に乗ってみんな影響すると思うのであります。今の実態はそういう基礎材料については影響しますけれども、これが製造加工の過程において吸収せられる、また物資によりましては輸送の面が円滑にいくから、資金その他の面で調整されるというような事柄で、一般情勢が価格全体のインフレとまではいかないでも、上昇傾向にあるときには影響すると思いますが、今日日本の実情は卸業において上昇の傾向もありますけれども、末端製品においては相当に品物が豊かで必ずしもそうではない。そうすると、この経営の面で吸収されていく面も多いのではないか。ことに生活必需物資におきましては直接その影響がなくて、むしろ運賃値上げによって——運賃値上げによってではありませんが、輸送の増強によって荷物がうまく運ばれていけば、これはかえって値上げの要因にもなるという場合もあり得るわけでありますから、従って今日この程度の運賃値上げは、将来に輸送の増強ということを含んで、日本経済全体に寄与する点から見て、これは今日においてははなはだしい影響はない、こういう見通しを持ってやっておるわけであります。
  60. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それはあなたの方が五カ年計画を実施されて、そしてあなたの方が希望しておられるような輸送力の増強が実現しました暁にはという仮定の議論になるわけであります。私どもとしましては、さしあたって四月から実施しようという一割三分の値上げというものの各般の経済面への影響を一応検討いたしまして、それが直接間接に経済並びに国民生活の上にどういう反応をするのであるか、どういう影響を与えるのであるかということをまず検討していくべきだと思うのです。輸送力の増強がある程度実現いたしました後に、それがどういうふうに吸収されていくかという議論は少し先のことでありまして、これは別の要素が加わってきませんとその議論は成り立たない、こう思うのであります。でありまするので、その点はやはりありのままに一つとらえて御検討にならねばなるまいと思うのであります。たとえば今石炭のほかに木材のお話も出ましたが、あるいは公聴会の公述人の述べておるところなんかによりましても、例の石灰石鉱業協会の代表者の芳賀という方の述べておるところによりますと、これは主要貨物のうちの最高の運賃負担率で四五%というふうに言っておりますが、こういうことになりますると、原料といたしましてセメントとか鉄鋼とかあるいはカーバイドとかソーダ、そういうような生産過程に同時に、これは原価計算の上に大きな比重あるいは数字の増大が必然に計算されていかねばならぬことになってくるわけであります。そういたしますと、それが次々の製造過程におきましてだんだんと原価がかさんでいくということになるのみならず、これに要しまする資金関係の面におきましても、同時に現在以上の資金を準備しなければならぬ、これは当然のことであります。ことに巷間の経済の過程におきましては、今の商売人が資金準備を多額にしなければならぬということ、これは簡単に考え得られるのであります。そういう面からいって新しい圧力も加わっていくということになって、これがやはり生活必需品へだんだんとしわ寄せがくるのではないだろうか、あるいは中小企業等の業務上に必要な物資の価格へだんだんとこのしわ寄せがくるのではないだろうか、こういうこともたやすくわれわれは考え得られるのであります。その辺につきましてあなたはあまり前提根拠をお示しにならずに、かなり楽観的なお話が今出ておりますが、池田大蔵大臣などの説もだんだん最近は弱くなってきておりますので、あまり楽観論ばかりしておられたら、半年後にはとんだ失態のしりぬぐいを国民はしなくちゃならぬことになることも、この際御銘記願っておかなければいかぬと思うのであります。最近やはりこの国鉄運賃の値上げが、他の運賃の値上げに連鎖反応して、それが物価高へ影響して生活を圧迫するということの危惧が、だんだん現実の事実になるのではないかということを次第々々に業界人も言っておりますし、また国民もそういう感じをひしひし受けておる際でありますので、その辺は私どもは最も慎重に臨んでもらわなければならぬ、こう思うのであります。  そこでバスの方についてなお伺いますが、たとえば一般的に今の原料、資材などの運賃がかなり増額するということから、輸送量がかりに増大いたすとしましても、やはり手近な生活必需品に値上りがあるということになりましたならば——これは値上りがあるとかないとかについて、もし否定的な御議論があるなら、その点について論争してきめていかねばならぬのでありますけれども、勢い生活費を補うために幾らか、たとえば給与の値上げもしなくちゃなるまいという問題も起ってこようし、従って人件費がかさんでくるということは、また原価計算へ影響してくるわけでありますので、そういうふうになって参りますと、もう一ぺんこれを計算し直さなくちゃならないということも考えられます。個々について一々検討なさるという基本方針はわかったとしましても、たとえば米の運賃とかりにいたしてみます。米の運賃だけでも、国鉄に払っておりまする米の運賃は、日本通運を通じまして払っておりまするのが三十二億円くらいに昨年度はなっておると思います。それから運輸省の例の運賃の基準の表があるのによって、マル通は取っておる運賃がございますが、こういうものも必然的に幾らか値上げをしなくちゃならぬと思います。当然値上げになってくると思います。そういたしますと米だけじゃありません。その他肥料にいたしましても、麦にしましても、その他の農産物にいたしましても当然であります。そうなって参りますと、それが八百屋さんの店頭に値段としてかさんで参ります。米屋さんの方にも——これは米価関係になりますから、また例の要因で議論しなければなりませんが、一般に食糧の値上りということを考えますと台所に響いて参ります。運賃値上げから直接くる生活費への影響は小さいといたしましても、そういう物の値上りからくる影響は、あれこれ計算いたしますとかなり大きくなります。順序をあげたらいいのですけれども、一応食糧に限定しておきますが、食糧だけから受ける台所の響き、これは心理的にも大きいですよ。たとえば青森から来るリンゴの一箱が一割三分値上りになるかどうか、これは別といたしまして、リンゴ一個が十円が十五円になるということになって参りましたならば、台所、食卓へ直接響くのでありますから、心理的影響も加わって参ります。そうなって参りますと、食糧の面だけから考えましても、幾らか給与を上げなければ、おかみさんはやっていけないことになってくる。そうするとまた人件費が当然上ってくるわけですよ。たとい三%にしても五%にしても上って参ります。そういたしますとここにあげてあります原価計算の総括表の各項目にはいろいろなものが、たとえば人件費、燃料、その他車両の修繕、あるいはチューブ、タイヤ、諸税、あるいは金利、その他事故の賠償、福利厚生の経費、その他等々、配当にまで影響するかもわかりません。そうなって参りますと私ども心配することは、次々と連鎖反応で、経済条件が一変するのですから、もう一度再検討しなければならぬ。だから今あなたの方でおきめになる、そして一定の率で認可するといたしましたならば、もう一度再検討する時期が近く来るのではないかと思うのであります。来るか来ないかということについては若干議論になりますけれども、内容の数字が増大することは今、食糧だけで御指摘申し上げましたように、これは常識上当然考えられるのであります。さっきガソリンの問題を取り上げましたごとくに、当然食糧から来る人件費ということも今日考慮しなければならぬのじゃないかと思いますので、その点についてはっきり御明答願っておきたいのであります。
  61. 山内公猷

    山内政府委員 物価変動につきましていろいろ問題があると思いますが、ただいまお話のように、米価の計算要素が変ったならばもう一ぺんやらなければならぬことは、概括的にはお説の通りでございます。ただわれわれといたしましては、先ほど昭和二十六年当時の人件費について御質問がございましたので、その点に関して申し上げますと、当時は一万三百六十九円で計算いたしております。それが今回もくろみましたのは一万六千二百六十五円、その間五割五分の値上げがあったということでございまして、二十六年から現在まで五割五分の値上げがありましたので、それならば当然その間に値上げをなさねばならなかったということにもなるわけでございますが、運賃についてはまた別に収入の面がございまして、自動車費用というものは大体において乗車効率の問題が非常に大きく響きまして、お客さんが多ければある程度物価の値上りも吸収できますので、従来その点におきまして運賃をそうたびたび上げないでも済んでおったということは、収入面の増が人口の増に比例いたしますことと、また国民生活が向上するにつれまして一人当りの乗車回数がふえるので、収入がふえて参りますので、私といたしましては、ここですぐ決断を下してはおしかりを受けるかもしれませんが、今度運賃の値上げをいたしますと、三カ月とか半年とか、そう近い将来に運賃を値上げしなくても済むのではなかろうか、またそう大きな物価の変動も予想されないのではなかろうかと考えまして、できるだけ今やっております運賃を長く持たせるように、業界にも事業の合理化その他行政指導の面についても努めて参りたいと考えております。
  62. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私鉄の場合にはすでに認可したものが、南海の二割二分が筆頭であります。さらに最近におきまして申請中のものにつきましては、最低一割二分から三割三分になっているようであります。国民は一割二分ないし三割三分というような高率の運賃値上げをせられて、生活は赤字になっていく。そういう場合にあなたの方においても私鉄におきましても、私鉄事業の経営の原価計算等もなさっただろうと思うのでありますが、その際に一体何を基準に値上げをせられるのであろうか。という意味は、たとえばある程度の利益を確保してやらなければならぬということをお考えになっているのか、営利会社であるからもうけることを確保してやらねばならぬとお考えになっているのであろうか、そうではなくして生活も守らねばならぬので、そこは適当な調整をしていかなければならぬというようなこともお考えになっておるのであろうか。要するに値上げを内容とする運賃改訂を認可するその最も重要な基準は何に置いておられるのであろうか、この点を明らかにしておいてもらいたいと思うのですが、監督局長、どうですか。
  63. 權田良彦

    ○權田政府委員 先ほど御説明いたしましたごとく、全国の百七十五社の私鉄に対して、最近一カ年で認可したものは二十二社、ただいま申請中で審理中のものが十五社でございます。これらの運賃改訂に対する認可の基準と申しますか、考え方の御質問かと思いますのでさようにお答えいたしますが、第一に考えますことは、個々の収入、支出でございまして、この支出は原価でございます。すなわち人件費、動力費、物品費、経費、利子、償却、こういうものを十分査定いたしまして、しかるべき適正な点で原価を償うということは、これは運賃関係上当然でございますので、これらの各項目を十分いうものを見るかというところが、非常にいろいろの点があるわけでございますが、今の御質問のうちに配当金、こういうものをどの程度見るのかというような御趣旨もあると思いますので、その点に触れますと、大体個々の原価を査定いたしまして、一割以内の配当金はやむを得ない。当然資本に対する公正な報酬と認めるものについては、これを織り込みますが、その個個の社の実情によりましては、なおこの分は企業努力に待つことにして、これを相当認めない場合もございます。さらにこういった原価に対しまして、この原価は鉄道事業の部門に限って行いますので、兼業等でかりに赤字があります場合には、こういう運賃によってカバーすることは従来も認めておりませんし、今後も認めない方針でございます。なおこれとからみまして、運輸政策上、他の企業、あるいはバスでありますとか、他の交通機関等との調整という点も、最後にはいろいろな線区にわたって考えますが、まず根本的には、その査定いたされました原価というものについて査定をいたしていく、こういう考え方でございます。
  64. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 たとえば交通事業会社の成績等に見ましても、これは必ずしも企業努力が一様にあるというわけではなし、また必ずしも利用者に対するサービスが一様であるというわけではありません。ことに最近におきましては、利用者並びに一般の国民に対するこの独占企業のサービス問題は、至るところでいろいろな問題を起しております。たとえば交通事故等につきましても、被害者に対する慰謝なんかの場合にも、経済能力のないものをずいぶん残酷に扱いまして、国会におきましても問題になったような事例すら実はあるのであります。こういうようなことも考えますときに、私ども一般的に申しまして、やはりサービスは単に乗客だけでなしに、利害関係が直接間接あるところの国民に対しまして、この独占的企業の持つ——単に公共性というだけではありません。この種の企業の持っております立場から、これは一そう改善をし、充実してもらわなければならぬという声の強いことも実は申し上げたいのであります。そういう点は、これは原価計算の検討をする上におきましては、直接あなたの方であるいは審議の対象にしないかもわかりませんけれども、しかしこういう事業経営の改善の方途とかいう観点からいたしましたら、相当重視すべき点であると考えられるのであります。つまりサービスの改善ということは、国鉄だけではないと思うのです。私鉄、私バス一斉に、これは強く要求することが今日利用者の強い声だと思うのでありますが、こういう点について運輸大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  65. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 大体もうお話の筋の通りと私は考えておりますけれども、ただそれが今回のこの鉄道運賃の値上げ、それに伴う幾らかのガソリンその他の影響がありましても、全体としては、今日の経済状態のもとにおいて、あなたのおっしゃるような家庭生活費までそう急激に及ぶことはないというように考えまして、これは今の経済と生活が相当にのんでくれる、こういうような考え方であります。
  66. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、経済と生活への影響の問題でなしに、サービスの改善の問題でありますので、その点は別の機会にまた論議することにいたしましょう。ただ希望として申し上げておかなければならぬことは、やはり独占企業に対する収入増、運賃値上げ、利用者の負担増という問題は、利用者は、一たんきりましたら税金と同じことなんです。その点を十分お考えになっておかなければいけませんので、従って、サービスという問題は、公共性を持っておるものの本質的な義務なのでありますから、公共性のあるものはサービスのことはいいかげんに考えるというようなこと、もしくはそのウエートを小さくお考えになるという運輸当局であるとすれば、これは根本的に考え方が間違っておるのであります。そういうことを私は申し上げておるのであります。経済と生活に直接響くか響かないかという論点は、これは別なんです。でありますけれども、時間もないからそれは触れません。触れませんが、あなたにどうしてもはっきりしておいてもらわなければならぬことは、運賃が値上げになることによって、——これは十分に分析せられたものかと思いますけれども、私は過去の当委員会における審議の経過を全部が知っておりませんので、もし重複しましたらまことに失礼と思いますが、今の一割三分の値上げにつきまして、結局は一割三分だけ増収をせなければならぬ。そうすると、貨物運賃についてでこぼこを適当に調整するというような、いろいろな手が打たれることも今後あると思いますが、終局において一割三分を増収するという目途を持っておられるのでありますから、これは弱い方にどこかでしわ寄せがいくことになると思うのであります。そこで一、二例をあげて伺ってみたいと思いますが、たとえば書物などです。教科書なんかは、これは小学児童から全国民の共同の負担になりますので、教科書なんかの運賃の値上げというものは——これはやはり無料で配付しなければならぬような面すらある問題でありますので、こういう点についても、その影響の大小にかかわらず、また心理的にも重大であると考えられるのであります。教科書に触れるならば、やはり書籍全体となり、そういう文化財全体となり、あるいは新聞等にもなっていくのでありますが、こういう点は特に考慮せらるべきものだと思うのだが、考え方といたしまして、あなたの方ではどういうふうにお考えになっておるのか、伺っておきたい。
  67. 權田良彦

    ○權田政府委員 特に教科書あるいは新聞、雑誌等、そういう公共的な出版物その他の関係につきましては、輸送上の手配はもちろん、今度の運賃改定にありましても、十分その趣旨を織り込んでございます。
  68. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 暫時休憩いたします。    午後二時三十九分休憩      ————◇—————    午後三時十六分開議
  69. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案議題となし質疑を許します。吉田賢一君。
  70. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 国鉄に伺いますが、あなたの方は米の輸送についてマル通へ払っておりまするのは、三十年度決算で三十億円ばかりあるようでありますが、これは値上げする予定でありますか、どのくらいの割合でする見込みでありますか。
  71. 石井昭正

    ○石井説明員 大体現在米の運賃として承知しておりますものは、現行運賃で二十億二千万円ばかりあります。なおこれにつきましてはやはり今回全体として一割三分の値上げをいたしたいと思っております。
  72. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 食糧庁から取っておる運賃の総計はどのくらいになりますか。
  73. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいまのは食糧庁からいただいている数字でございます。
  74. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それは米以外のものを全部含んでおりますか。
  75. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいまのは米だけでございます。
  76. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 米以外のものは食糧庁は運送していないのですか。
  77. 石井昭正

    ○石井説明員 米以外に麦をやっております。
  78. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは私の方で申し上げますが、これは三十年度の決算書によりますと、日通の運賃のうち三割七分は国鉄に払っておる、三十億三千二百万円、こういうことになっております。これは米以外もあるのですか。今の計算は非常に開きがあるのですが、間違っておりませんか。
  79. 石井昭正

    ○石井説明員 麦は大体十三億ばかりございますが、これは全部食糧庁からいただいておるのかどうかはっきり記憶いたしませんが、大体米と麦と合せればいいのじゃないかと思います。
  80. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますと国鉄運賃の米麦の運賃が、一割三分になるかどうかは別といたしまして相当値上りになることは、これは大体事務当局の言明で明らかであります。これがやはり将来の米価計算の上に相当重要な重圧を加えてくる数字であろう、こう思うのでありますが、こういうことは大臣としてお考えになっておりませんか。特に米価問題については今国会を通じましても非常な重大な問題と思いますし、また今調査会ができまして、食管会計について特別な調査が運ばれようとしておる際であります。米価問題の今後は国民生活への圧迫を加えるかどうかきわめて重視すべきことであって、国鉄運賃の値上げがそれへ影響する度合いということもかなり重視しておかなければならぬ、こう思うのであります。その辺はお考えになっておりますか。
  81. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 米につきましても、大体九分から一割六分の間において、平均一割三分でやるようにしております。
  82. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ですからそれはわかりまするけれども、かりに三十億円といたしましても、その運賃だけで四億円以上は値上りになるわけであります。こういうことになりまするので、これが将来の米価決定に相当重要な影響を与えるとわれわれは考えておる。これはお考えになっておるかどうか、こういう点です。
  83. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 米価の関係は、従来も特別に運賃が考慮されておりまして、大体一%に当っております。それを平均しまして一・一%くらいになりまして、大した影響はないと思います。
  84. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうしますとその次に、通運事業法によりまして基本運賃の料金表というものができております。これは日通の重要な運賃計算の基礎になっておるのでありまするが、これは改訂のつもりがあるのですか、改訂しないのですか。その点どうですか。
  85. 山内公猷

    山内政府委員 通運運賃に対しましては、やはり道路運送法の第九条でバス運賃と同じような基準によりまして、通運事業に対しまして運賃の計算をいたしておるわけであります。現在まだ業界から運賃の値上げをする申請書は参っておりません。私どもまだその作業は進めてもおりません。
  86. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 申請書のことを聞くのじゃなしに、この法律によりまして、基本運賃の料金表をあなたの方では改正するつもりがあるかどうか、それを聞いておるのであります。
  87. 山内公猷

    山内政府委員 この点につきましては、少し説明が足りなかったわけでございますが、この通運運賃につきましては申請に基きまして認可をするという建前になっておりまして、役所の方から一方的に運賃を上げるということは考えておりません。
  88. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうですか。今国鉄運賃値上げをめぐりまして、たとえば倉庫料、保管料の値上げということも論議されておるし、その大体の空気になっておることも御承知だと思うのであります。今の基本運賃の料金表に伴いまして、同時に普通倉庫の荷役料率表、日通もこれによって料金を取っておるわけでありまするが、そうしますとやはりこういうもの、倉庫料の値上げというものが、余波を受けることは経済常識上当然であります。そういたしますると、日通におきましても年間約四十億円は、食管会計だけで運賃を取っておるのであります。これは三十年の決算でありますが、そういう数字になりまするので、きわめてやはり食管会計に与える影響は微妙でもあるし、大きい、こう思っておるのであります。もし申請者側で申請があるならば、あなたの方は増額改訂するというような御意思と聞いていいのですか。
  89. 山内公猷

    山内政府委員 その点に関しましては、ただいま御説明申し上げましたように、まだ値上げすべきかどうかという原価計算の資料を取っておりませんので、この場合直ちに値上げするか、あるいはしなくてもいいかということは、ちょっと決しかねると思うのであります。
  90. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は時間の関係がありまするので、少し別の問題に触れて、なお時間があればバス、私鉄をめぐりまして運賃問題を直接取り扱っていきたいと思います。今後の増収を見込んでおられる国鉄財政の観点からいたしまして非常に重大な一つの問題は、これは先般も若干触れたのでありまするけれども、運輸大臣答弁は満足を得ておりません。そこできょうは最終的な運輸大臣の御見解を明らかにしておきたいと思うのであります。それは国鉄法四十二条に基く業務上の料金の取扱いの件であります。国鉄法四十二条によれば、「日本国有鉄道は、業務に係る現金を国庫に預託しなければならない」。という原則が規定されております。ただし書きにおきまして、業務上必要があるときは郵便局、銀行その他大蔵大臣が指定する金融機関に預け入れることができる、こういうことになっている。ところがこの間の監督局長の御答弁では、銀行に預けるか郵便局に預けるかというような、つまり国庫へ預託しない方法によって保管するということは、これは大臣の承認は要らぬというような御答弁が実はあったのであります。大臣からはこれにつきまして明確な答弁がなかった。大蔵大臣はよくわからぬということであったのであります。そこでこれはきわめて重大であります。といいまするのは、東鉄の管内における東京駅、有楽町以下四十一の駅の扱いの金が、三十年度決算によりますると、年間で六百八十六億円に上っておるのであります。このような六百八十億円以上に上りまする業務上の収入現金というものは、国庫に預託するという原則が明確になっておるにかかわらず、これが今日、一般市中銀行にもっぱら預けられているのであります。現実がそうなんです。預けられておる銀行は全部で十一行であります。富士銀行以下十一行であります。そこでこの十一の市中銀行のみに六百八十億円の現金収入が預けられている、預金されているということは、これはこの法律の規定に違反するのではないか。そこでしからば同施行令の十一条によりまして大蔵大臣並びに運輸大臣の承認を得るということになっておりまするが、この承認が国鉄法四十二条のただし書きの規定に該当する条項の、もっと具体的に申すならば「但し、業務上必要があるとき」——業務上の必要があるということが明らかにせられて、かくかくの必要があるゆえに市中銀行に預け入れることを承認するという何らの文書がないのであります。ここに問題があるのであります。でありまするので、この点は私は結論的に言うならば、もし市中銀行に預けることがいいというのであるならば、そんならそれでもいいと思う。国庫代理店もしくは国庫預託でなくても、市中銀行がいいというのならばそれでもいい。そういうのならばやはり法律を改正するか、さもなければ手続を完備して、筋を通してもらいたいと思う。六百八十億円の金を、この法律に規定してある趣旨に沿わずして市中銀行に預けておるということは、きわめて重大な国鉄の現金管理の方法が誤まっているものといわねばならぬ、こういう見解に立っておりまするので、これに対する大臣の明確なる御所信を伺っておきたい。ことにあなたは運輸大臣といたしまして、これが承認を与える権限を有する方なんであります。こういう意味におきまして、この点は一つはっきりしておきたいと思います。
  91. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 この法律のなには私も政府委員の方から聞いておるのですが、郵便局及び普通の銀行は承認の範囲内にある。その他の銀行以外の金融機関が大蔵大臣の指定だそうであります。それからこれは今のお話ですが、普通銀行に預けて金庫に行くまでは七日間以内となっておりますが、実際は四日か五日だそうであります。これを金庫に持っていくのを、普通銀行が出張してきたりいろいろして危険を防止するという点から主としてやっておるので、これは市中銀行に預けっぱなしにしておくという問題ではなくて、ただ集金をする四日か五日間だけの問題ですから、大して問題になることはないように私は考えております。
  92. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこがあなたのお考えが、私から申しますならば的確じゃないのであります。それは四日であると七日であると、毎日の現金収入というものは大体一定水準なのであります。川の流れと同じことなんです。従って受ける方からすれば非常に重大な預金なんです。それは一流の銀行であろうとも、一年に六百八十億円の金が流れてくるのです。水道の水が流れ、川の水が流れるのと同じであります。それが三日であろうと五日であろうと七日であろうと、ずっと次々と流れてきておりますので、それを自己資金として運用するという観点に立ちますならば、きわめて確実なそして重要なる資金となるのであります。こういう面もお考えになっておかなければいかぬのであります。四日や五日だからどこへ預けてもよくはないか、国庫へ持っていくのはめんどうだし、手数もかかる。市中銀行なら取りにくるし、計算もしてくれるから便利じゃないかと言うが、そういうのが法の趣旨じゃないのであります。そこで、ただし書きの業務上の必要があって、あなたの方は大蔵大臣並びに運輸大臣として承認されておるのであります。業務上どういう必要があって、いつ承認なされたか、そういう点を明らかにしておきたいのであります。
  93. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 その点政府委員にお答えさせます。
  94. 權田良彦

    ○權田政府委員 御説明申し上げます。これは過日予算委員会で御説明しとた思いますが……。
  95. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 同じことならいいのです。
  96. 權田良彦

    ○權田政府委員 それと同じことでありまして、適法であると考えております。
  97. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それなら伺いますが、いつ承認を得たのですか。
  98. 權田良彦

    ○權田政府委員 昭和二十八年十二月八日でございます。
  99. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その業務上の必要という事項はどこに表われておるのでございますか、御指摘を願いたい。
  100. 權田良彦

    ○權田政府委員 政令で定めるところによりということで、政令でこれは承認しろということになっておりまして、その承認が大蔵、運輸両大臣から二十八年十二月八日に出ておりまして、その中の1項、2項、3項等にたとえば1項は「次の各号の1に該当する事由がある場合に限り、」とか、それから2項でそういうことを「条件とする」とかございまして、この各号の1に該当する事由がある場合が許された場合でございます。
  101. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 昭和二十八年十二月八日付蔵理第二四四〇九号、これが承認書でありますか、念を押しておきますが。
  102. 權田良彦

    ○權田政府委員 蔵理第二四四〇九号でございます。
  103. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 1、2、3とおっしゃったが、その文章を読んでいただきたい。
  104. 權田良彦

    ○權田政府委員 「1日本国有鉄道は、次の各号の1に該当する事由がある場合に限り、日本国有鉄道法第四十二条第一項但書の規定により、その業務に係る現金を郵便局又は銀行その他大蔵大臣が指定する金融機関(以下「金融機関等」という。)に預け入れることができる。(1)出納役がその所管に係る受入金又は受払残金及び総裁の定める範囲内の当座の支払資金を保管するため必要がある場合。(2)出納役が所属の分任出納役の取扱に係る受入金又は受払残金を自己の利用する金融機関等の預貯金口座に振り込ませる場合。(3)分任出納役がその所管に係る受入金又は受払残金を主管の出納役の利用する金融機関等の預貯金口座に振り込む場合において、自己の在勤地に主管の出納役の利用する金融機関等と同一系統の店舗がないため、又は主管の出納役の利用する金融機関等と同一系統の店舗があっても、当該店舗を利用することが地理的、距離的に不便なため、主管の出納役の預貯金口座に当日中に振り込むことができず、一時その資金を保管するため必要があるとき。但し、この場合においては、主管の出納役及び分任出納役の各預入期間を通じて七日をこえないものとする。(4)分任出納役が主管の出納役から交付を受けた支払資金並びに入札保証金、契約保証金及び荷物引換代金を保管するため必要がある場合。2前項に掲げる預入の実施については、次の事項を条件とする。(1)前項各号の預入金は、日本国有鉄道法施行令第十一条第二項に規定する期間内に、総裁の定めるところにより国庫に預託するものとする。(2)前項第1号及び第4号に掲げる支払資金は、必要やむを得ない金額にとどめるものとする。」こういうことでございます。
  105. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 主として第1項でありますが、第1項の(1)の場合あるいは第1項の(2)の場合、この場合におきまして業務上どういう必要があるであろうか、言いかえますと国庫に預託するということはともかく重要な原則でなければならぬ。国庫に預託することが何か特殊な事情によって業務上必要がある場合、この場合にのみ大蔵、運輸両大臣の承認を得ることができるので、施行令の十一条によりましても、施行令は法第四十二条を受けた規定にすぎませんから、施行令十一条の業務上の必要ということを逸脱するようなことはもちろん許さるべきではないのであります。たとえば(1)に書いてあるのにつきましても、総裁の定める範囲内の当座の支払金を保管する必要がある場合、あるいは(2)におきましても、残金を自分の利用する金融機関などに振り込むような場合等々、ともかく原則としては国庫にこれを預託するけれども、何か特殊な必要がある場合のみに一般市中銀行に預け入れることが許される、こういうことになっております。しからば業務上の必要ということは、具体的にその理由が明示されておらねばならぬと思うのであります。あなたらの御説明を聞いたら、何の理由もなしに、ただ大蔵大臣の承認があるならばいいのだというようなお考え方が前提になっておる。何の具体的の必要があるかということを明らかにすることが、四十二条の法律趣旨に沿うゆえんだろうと思うのです。事務的に誤まっておれば改めねばいかぬのであります。何の必要が業務上あって年間六百八十億円全額が市中銀行に預けられるのか、どんな必要が実質的にあるのです。
  106. 權田良彦

    ○權田政府委員 お答え申し上げます。法律的に申し上げますと、四十二条で「業務上必要があるときは、政令で定めるところにより、」と書いてありまして、その政令の日本国有鉄道法施行令第十一条で「運輸大臣及び大蔵大臣の承認を受けた事由がある場合には、」となっておりますので、法律的にはこれは業務上必要があるときでございます。実体的にはこれはどういう場合であるかと申しますと、これはいろいろ危険防止をするとかいうような、先ほど来お答え申し上げている事由があるわけであります。
  107. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 危険防止と言うたらそれは何です。具体的に言って下さい。
  108. 權田良彦

    ○權田政府委員 これはいろいろな金が集まりまして、それをこの本則によりまして持っていきます場合には、いろいろな輸送上の中における手配、あるいは金櫃、金を入れます箱の問題、その他いろいろなことが予測せられますので、そういう場合をさしたのと思います。
  109. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 持っていく危険がある、一体日本銀行とそういう交渉をしたことがあるのですか。それなら具体的に日本銀行及び日銀代理店とそういう交渉をしたことがあるのですか。
  110. 權田良彦

    ○權田政府委員 この問題については、国有鉄道において日本銀行等とも打ち合せをしておると承知しております。
  111. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 国有鉄道の総裁に聞きます。いっだれと打ち合せをしたのですか。
  112. 久保亀夫

    ○久保説明員 それはそれぞれ個々の現場において個々の代理店といたしておりますから、どの分を何月何日ということはただいまちょっと申し上げかねます。
  113. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それぞれ個々の現場において日銀に交渉したというのはうそじゃないですか。ほんとうにそんなことをおっしゃっているのですか。それは一つ責任のある当局に答弁してもらわなければいかぬのです。
  114. 十河信二

    ○十河説明員 それはうそでない、真実だと信じております。
  115. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 真実の根拠を示しなさい。
  116. 十河信二

    ○十河説明員 ただいま申し上げましたように、ここではその事実は書類も何もありませんからわかりません。
  117. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それなら久保さんに伺いますが、個々というのは、たとえば東京駅にしましょう。東京駅は、だれがいつ、どういう方法で日銀もしくは日銀代理店と交渉したのか。なければないにしておきなさい。
  118. 久保亀夫

    ○久保説明員 私自身も関係のあるところでございますが、具体的に交渉いたしたこともございます。しかし派出するには人件費がかかるとか、手数料を十分にもらっていないというような事由もございます。それからもう一つ、数年前でございますが、大蔵省あるいは日銀の責任者も参加して、国鉄の現金の取扱い方について相当長期かつ権威者が集まってやったこともございます。その際にも、ただいまお話の出たような点についてもお話がしばしば出まして、日銀が代理店にそういうことを強要するわけには参らぬといったようなお話も出ておるわけでございます。
  119. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 問題はそういう抽象的な過去の会議のことを聞いているのではない。あなたは各個々の現場がそれぞれと交渉したとおっしゃるから、例を東京駅にとって、東京駅には駅長もいるし、また収入役もいるのだから、個々の現場として、いつどんな交渉をしたとか、そんなことは聞いておりません。事実に基いて答弁してもらわなければいけない。あなたにしたって、あなたは個々の現場ではございません。あなたは別に東京駅の収入役でもなかろうし、また新橋もある、東京四十一、例をあげればそれぞれのところもあるのです。現金を扱っているのですから。それはなければないにしておきなさい。
  120. 久保亀夫

    ○久保説明員 私は東京の例を知りませんが、申し上げましたのは、私かって地方のその方面の担当課長をいたしておりまして、相当そういう問題については苦労した経験を持っておるということを申し上げたわけでございます。
  121. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの苦労はわかりますけれども、あなたの苦労ではなしに、部下の個々の国鉄の現場が交渉したという事実を言うから言っておるのです。うその上で最終の答弁をしようとしたら間違いなんです。これは事実として明らかにしておいてもらいたい。なければないにしておきなさい。いいかげんに答弁してもだめなんです。
  122. 久保亀夫

    ○久保説明員 全部が全部必ずとは申しませんが、実際交渉の事実は、私は事実に即して申しておるのです。
  123. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういうのなら具体的にしなさい。どこの駅の収入役がいつどんな交渉をしたのか、それで日銀が拒否したのか、協力しないで意思表示をしたのかどうかということを明らかにしなければいけない。答弁できませんか。できないならできないにしておきなさい。
  124. 十河信二

    ○十河説明員 ただいまここではわかりません。
  125. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたは部下の言うことを真実となさっておる。しかしここではわからないと言っておる。部下は個々の現場がそれぞれ交渉をしておると言っておる。運輸省の監督局長はそれぞれ日銀及び代理店に交渉したとおっしゃっておるのですよ。だけれども、そういうことはないのです。交渉はしませんよ。見通しもなくして漫然としておられるということが事実なんです。そこで問題があるのですよ。だから監督局長、あなたも知らずに言っているのではないですか。事実に基いて言っているのですか、その点どうです。
  126. 權田良彦

    ○權田政府委員 私は申し上げましたのは、国鉄においてそういうところをしたということを私が承知していると、こういうことでございます。
  127. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならば国鉄のどこからいつどんな報告ないしは答弁があったのです。
  128. 權田良彦

    ○權田政府委員 そういう個々の事実については報告も受けておりませんし、一々詳細な一件々々についての報告も受けておりません。
  129. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし具体的におっしゃってごらんなさい。具体的に国鉄からどういうような交渉の経過をあなたは報告を受けたのか。
  130. 權田良彦

    ○權田政府委員 具体的な交渉の経過の報告を受けておることを承知していると申したのではないので、そういうことを協議したということを承知していると、こう言っているのです。
  131. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この問題はそういう無責任なことはおっしゃるものではないのです。あなたは危険防止の問題をここに持ち出し、日銀と国鉄当局が交渉したということを監督局長として答弁しておられる。少しまじめに答弁しなさい。やはり事実に基いて答弁をしてもらわなければ困る。実は知らぬのじゃないですか。報告を受けたことはないというのがほんとうじゃないですか。また今経理局長が言っておるような個々の交渉を日銀当局とやっておったことはないというのが真実じゃないですか。そういう事実はないというのがほんとうじゃないですか。
  132. 權田良彦

    ○權田政府委員 東京駅の出納役なりが、何月何日にどこの銀行に行ってどういうことをやったかということは承知しておりません。
  133. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それをあなたに聞いているのではない。あなたは国鉄が交渉したとおっしゃるが、国鉄に聞いても最終の事実は現われてこない。国鉄が交渉したということは、あなた自身は正確な報告は受けておらない。受けたという事実は答弁として出てこない。結局危険防止というけれども、危険防止のことについて、日銀当局と交渉したという事実はないのがほんとうじゃないですか。なければないにしておきなさい。一体東京のまん中で何の危険がある。あなたも国鉄を監督しているなら、国鉄には警察官代用のものがあるのですよ。事実上警察官の行為をなすものがある。どこにその危険があるのです。危険防止というけれども、日銀から取りにくるのはめんどうだとおっしゃるかもわからない。日銀に持っていくのは危険だと言うかもわからぬ。けれども日銀と交渉もしないで、あらかじめ危険であるから、市中銀行へ六百八十億円預けますということでは、国民は納得しまませんよ。その点です。正しいことを言って下さい。
  134. 權田良彦

    ○權田政府委員 私は先ほど来法律なり政令なり承認書類の事由を御説明しておるのでありまして、その事由が業務上必要がある場合で、政令で規定されている場合ですから適法でございまして、今御指摘のような問題につきましても、それらの収入金が実際の取扱い上簡易かつ安全な引き継ぎという面から、いろいろ金融機関の派出を依頼して、それによってやることが安全度が高い、こう思うのであります。
  135. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたは例をあげて危険防止とおっしゃった。いいですか。具体的に危険防止とおっしゃった。危険防止とは何ぞやと聞いたのです。日銀の代理店と交渉でもしたかどうか——国庫に預託することが原則ですよ。勝手に危険防止というようなことを独断的にきめるということは許さるべきじゃないのですよ。よござんすか。だから危険防止のためにそれぞれ日銀等へも手配したということは、何ら根拠はないのでしょう。そういうことはなかったのでしょう。なければないとはっきりしておいて下さい。
  136. 權田良彦

    ○權田政府委員 そういう具体的な何月何日の何時にだれとだれとがという事実は報告を受けておりませんが、先ほど久保経理局長が申し上げましたようなことを一般的に承知しているのでありまして、危険防止の点は今お答えいたしたのでありますが、金融機関に派出をさせて駅で授受を行うという方が、安全度が高い場合も多いと申し上げておるのであります。
  137. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 駅で授受することが安全度が高い。駅で授与することは、何も市中銀行でなくても、日銀代理店も日銀もあるじゃありませんか。駅の中に市中銀行はありはしますまい。市中銀行が来るのでしょう。日銀代理店が来ないということはいつきまったかと聞かねばならぬ。そんな交渉をしたこともあるのかどうかと聞かなくちゃならぬ。大体この金が日銀へ行くなら、国庫余裕金でなければ使えないのであります。よござんすか。六百八十億円が一年中積んであるとは言いませんけれども、金は水が流れるがごとくにして毎日々々市中銀行に入っているのです。市中銀行に入りましたならば、その金はやみ屋に貸そうと、外郭団体に貸そうと、個人に選別融資しょうと、市中銀行は勝手に使えるのですよ。いいですか。あなた方の幹部が政府機関をやめて何か事業をやったら貸せますよ。けれども、国庫へ預託しましたならば、これは大蔵大臣が預け主になっておるのですから、余裕金でなければ使えますまい。そういうように、金を利用する面におきまして、資金利用の面におきましても、重大な開きが生じてくるのであります。ゆえに私はこの点は運輸大臣として明確にしておいてもらわなければ困るというのですよ。運輸大臣は監督局長答弁を転嫁してしまって、監督局長はわけのわからぬことを言って答弁ができない。そんなむちゃなことがありますか。これから一割三分の値上げをして三百億円、五百億円というものをよけいに水揚げをしていく事柄なんです。市中銀行は手をあけて待っていますよ。そんならば言いますよ。監督局長の気に入らぬ市中銀行であるならこれをやめにしょう。運輸大臣の気の入らぬ市中銀行ならやめにしょう。国鉄の総裁の気に入るものに預けがえしょうということも自由になりましょう。そんなことをしましたら大へんですよ。この十一の銀行が莫大な金を預かっていますよ。ことに非常に偏在しておる。非常な偏在ですよ。いいですか。大きな偏在ぶりです。三和や富士は特にぎよさん預かっておる。三和や富士と何の関係があるかと言いたい。われわれは三和や富士と何の利害関係もありません。問題はそこにある。市中銀行に預けるのと国庫に預けるのとの違い、そういうことをわれわれ国会としては相当厳重に明らかに筋を通してもらわなければいかぬというのが質問趣旨なんです。だから業務上必要があるというならば、業務上の必要ということを一体いつどういう事実を指摘して、運輸大臣、大蔵大臣の承認を得たのか。具体性が何もない。勝手に必要だと言うが、何が必要だ。危険防止だと言う。冗談おっしゃいますな。東京のまん中で何が危険防止なんです。日銀でも代理店はぎよさんあります。国庫代理店に取りに来てくれと言えば、必ずしも取りに来ないとも限らない。経費だけの問題、人件費だけの問題でしよう。昔のようにつづらに入れて持っていく、そんな時代と違いますよ。だからこんな時代錯誤の資金管理は廃止せねばいかぬ。何か手続をして筋を通して下さい。国会はこんなことを漫然と見のがしていくわけには絶対にいきません。運輸大臣、部下に答弁をまかしておらぬと、あなた答弁なさい。
  138. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今お話のことは法規的にはちゃんと許された範囲でやっておるのです。それから危険防止という意味は、実際問題として、なるほど日本銀行も国庫代理銀行もありましょが、駅の近くの銀行も、今日一流大銀行は何もやみ貸しをしたりするような危ないことはないのです。ですから出張してきて——金の勘定というものは専門家でなければなかなかやれませんから、それを間違いなく管理してもらうということは、きわめて常識的な、便利ないいことであると思うのです。たとえば東京のまん中でも、銀行から金を取って出てくるところを略奪されることはたくさんあるのですから、そういう危険を防止して、一番手近な銀行の支店に駅に出張してもらってやるということは、きわめて常識的な——これが法令に欠陥があれば別ですけれども、事実問題としては、六百何千億がたとい流れるがごとく市中銀行に入りましても、それは七日以内ですから、わずか五日間か六日間です。今事実を聞きますと四日と五日だそうです。四日と五日にみな国庫へ入っておる。だからそういう取扱いをするということはきわめて常識的なことで、散在しておる銀行の支店を適当に利用しておるのですから、私はこれはどうも非難さるべき問題じゃないように考えております。法令に欠陥があれば別ですが、今聞きますと法的には欠陥がないということですから、それならばそう議論の種になる問題じゃない。これが事実この問題のためにこういう非常な危険があったとか、どこで金がごまかされたとか、喪失したとかいうことがあれば別ですけれども、このためにそういうことが起らない。ことに駅員がこれを持って運んでいくということになれば、三百六十五日毎日々々やっておることですから間違いも起きる。それが今日現実に起きないということは、銀行から出張してきて、大きなところはみなやってくれておるということによるのじゃないかと思っております。
  139. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それはあなたがやはり答弁のために答弁なさっておるからであって、銀行が出張してきて便利である、集金してくれて、金を勘定してくれる専門家で便利であるというが、少くとも日銀の行員は全部専門家ですよ。日銀代理店はみな銀行ですよ。だから代理店の資格において、もしくは日銀自体において預かってくれといって、預託するということの交渉をなさったならば、また別の方法がありますよ。帳面で記入がえをするということもできるのであります。そういう方法もあるのです。だから何も一々現金をどうするということについて、そうあなた気に病む必要はないのです。だから、こういうことが漫然と行われておりましたならば、やはりいろいろの問題を生むもとになることを私はおそれるのであります。だからここは筋を通してやってもらわなければいかぬのです。ただし書きはいいかげんに書いてあるのじゃないのです。法律のただし書きというものは原則の例外ですから、相当厳格に解釈すべきものであります。だから業務上の必要ということが明らかに指摘されておる以上は、業務上の必要を列挙してこれによって承認を得る、そうして初めてその道で保管の実を上げる、これが当然でなければならぬ。だけれども、今聞いたってちっともそういうことは出てこないのです。今市中銀行べ預けておるおるのに何の危険もありませんと言うが、危険事項が起っておらぬというのは問題じゃない。東京のまん中で危険があるとはたれも考えておりません。でありますから、やはりこれは承認のし直しをするか、さもなければ法律を改正するか、そうして今の方法がいいとするならば、そういう筋の通った手段をとっていかなければならぬ。もし法律んをほんとうに生かすということであるならば、これはやはり明らかに法律違反であります。今監督局長は何だかんだとおっしゃっておるが、理由は明らかでない。明らかでない理由をいろいろと述べた。ところがそれは決して国鉄のためでもなければ、国民も納得がいきません。国会はそんなことで納得しませんよ。だから業務上の必要ということが今明確にあなたの方から答弁ができておらぬのであります。法律法律、金扱いは扱い、だれも文句言わぬから黙って六百八十億円預けております、文句言わぬから、危険も盗難もなかったからというのではおさまりません。国鉄というものはそんなずさんなものか、国鉄は金の扱いはそんないいかげんなことをやるのかということになるわけであります。大へんなことですよ。国民を納得させなさい。積極的な業務上の必要の事実を示して、そして国民を納得さす、こういう態度に出てもらわねばならぬと私は思う。運輸大臣はどうお考えですか。
  140. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 あなたは法律違反だとおっしゃるけれども、こちらの当局者は、法律の規定通りでやつておる——これが違反であるか違反でないかは見解の問題になりますけれども、そうじゃない、法律の規定に基いておると言っております。それから常識的にお考えになっても、日本銀行はなるほど行員がおって、札の勘定は上手でしょうが、東京なら東京の駅へみんな集めに出すということも、実際問題として——先ほど久保局長が、これには日本銀行を中心として相当な人が集まって審議をした、そういう事実はある、その結果やはりこのように扱っておるということでありますから、その点は私はこの程度のことは金融機関にまかしていいのじゃないか。ことにいなかなどに行けば、国庫代理店でない銀行の支店に預けなければ、三里も四里も行くところはたくさんあるのでありますから、そういう扱いをみなしておる、それが一番常識的な問題じゃないか、こう考えております。
  141. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は富士山の裏の交通不便なところ、そんなところを今問題にしているのじゃないのであります。年間七百億円にも達するもの、今度は大いに増収を見込んでおられるから千億円に達するかもわからぬものが、十一の市中銀行にばらまかれていく。五日か七日かは別といたしまして、そういう場合に、あながち日銀の支店にお預けなさいとは言いません。けれども国庫代理店は幾らもあるわけです。これで国庫に預金するのと同じ結果になるわけですから、それで申し上げておるのであります。あなた御自身も経済人でありながら、この関係について実にお考えが不十分だと思います。認識が不十分だ。危険防止なんて、そんなことをうたってある文句は一句もない。またそんなばかげたことで大蔵大臣や過去の運輸大臣が承認をするようなことはなかろうと私は思うのです。結局これは言いかえまするならば、もっと端的に言うならば、国鉄が発足した前からのくされ縁が今日まで続いておる、この一言に尽きるのですよ。もう一つは公募債なんかの便利もあるのです。もっと裏を言うならばそういう便利もあるのです。もっと端的に言うならば、特定の銀行を指定するのですよ。ここまで話がいかなければわからぬのであれば、また別の機会も選びますけれども、そこまでいろいろと話さなくとも、大体におきましてこの問題についてはもっと真剣に、もっと誠実に、大切な国民のお金ですからもっと大切に扱いますという態度方針をもって、御答弁になってしかるべきなんですよ。それをしないという態度は、実にずうずうしいと申さねばならぬ。現金をそんないいかげんに扱おうというようなことをなさると、国鉄運賃問題についても国民に飛ばっちりがかかって、あと半期後には国民全部が恨みますよ。これは多数派で無理押しに通してしまうかもわからぬけれども、全国民は恨みますよ。全国民の恨みは積り積ってそうなるのですよ。この莫大な国鉄の現金をこんなずさんな方法でごまかして、脱法的に扱うということをなさっておることも、やはりあなたの方の積み重なる罪悪の一つです。そういうことを思わなければいかぬ。そこまで言いたくなかったのですけれども、あえて申し上げるのですよ。しっかりして下さい、運輸大臣。この問題はほんとうに筋を通さなければいけません。総裁はこの問題についてはよく御承知だと思うのであります。きょう運輸大臣が来ておられますけれども、実はあなたの方のことなんです。あなたの方は知らぬ顔して聞き役になっているけれども、あなたの方のことなんです。これは大へんなことなんです。ほんとうにそうですよ。これに対して徹底的にあなたの方で改める意思がない、合法々々で突っぱっていくのならば、われわれはどこまでも戦います。総裁はどうお思いになりますか。
  142. 十河信二

    ○十河説明員 先刻来運輸大臣、監督局長趣旨の弁明をされた通りに私も考えております。
  143. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大へん心細い。この問題はそういう程度で私は納得ができませんことを一言申し上げておきます。
  144. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 これをもって質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。下平正一君。
  145. 下平正一

    ○下平委員 私は日本社会党を代表いたしまして、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案、すなわち国鉄運賃値上げに対しまして反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)  国内の経済の飛躍的な発展、これに伴う国鉄に対する輸送需要の急激なる増加、これに対する輸送力はその限界に達しておりますし、一方また累積をする老朽施設の取りかえを行なって輸送の安全性を確保するということも、また遷延を許さないまでになっていることは、わが党といたしましても十分承知いたしているところであります。日本経済の隘路になっておりますところの国鉄の輸送の現状を打開をするということについては、私ども社会党といたしましても何らの異論もないし、積極的に進んで隘路打開のためには努力いたしたいと考えているわけであります。しかしこの隘路を打開するためには、現状の認識ということではなくて、その隘路を打開するために必要な資金の調達をどうするかということが、実は大きな問題になってきているわけであります。今回政府が提案をいたしましたところの資金の調達の案を見ますと、国鉄の再建五カ年計画で五年間に相当巨額な資金を投入するわけでありますが、その所要資金の大部分というものを、きわめて安易な方法運賃値上げによって求めているということは、私どもといたしましても何とも承服をしかねる点であります。今回の五カ年計画資金投入の内容を見てみますと、先日の提案理由にもありました通り固定資産の維持に約四三%、経済の拡大に伴う輸送力の増強、電化その他の近代化とサービスの向上、こういうものに対して五七%を投下をする、こういう御提案でございますが、この固定資産の維持に必要な四三%、これを分析してみれば、老朽施設の復旧に要する資金というものもこの中に含まれているわけであります。国鉄の資産が今日なぜ老朽をしてきているか、幾多の原因があると思いますけれども、その最も大きな原因というものは戦争中の施設の酷使だと思います。もう一つは戦後における物資不足によってこれが生じてきた、ここに大きな原因があると思います。これらの原因から生じたこの老朽施設の復旧ということを、今日運賃によってこれを補足をする、こういうことは間違いだと思うわけであります。戦災復旧という立場から言うならば、これは当然政府責任においてこの復興をはかるというふうに、この老朽施設については考えることの方が、私どもは妥当だと考えているわけであります。  さらに減価償却費が不足している、こういうことも固定資産維持の四三%の中には入っているわけでありますが、なるほどついこの二、三年の減価償却を見れば、所要の減価償却が行われていないこともまた事実であります。しかしながら昨年において運賃収入の中で減価償却にある程度の額をプラスした、あるいはことしも減価償却に対して約二百億近くのプラスがされておりますが、これらは経済の発展に伴って当然生じてくる自然増収で当然まかなえるような数字になっております。たとえば約三百億近い固定資産、減価償却の不足があるとしても、ことし予算に盛られてある自然増収だけでも二百八十五億が見積られておりますので、これらの点からするならば、当然運賃値上げをしなくても、自然増収、こういう面で減価償却の不足という面はまかなわれていくのではないかというふうに私どもは考えているわけであります。  さらに経済の発展に伴って輸送力の増強とか、あるいは電化、あるいはディーゼル化等々、国鉄の近代化に必要な資金と、こうありますけれども、これらは私は当然外部資金によって調達されるべきものでありまして、運賃収入によってこれを償うことは企業の原則に反するのではないか、こういうふうに考えるわけであります。電化とかあるいはディーゼル化、こういう国鉄の近代化、長期の投資、将来に発生する利益を当面する国鉄の利用者、乗客に負担をさせるということは考えなければならないことではないか、別の面から外部資金によってこれらを調達するということが、当然私は原則でなければならないと思うわけであります。国有鉄道における資金調達の原則は、私どもといたしましては、公共的な投資については国家資金で、企業的な投資については外部資金で、資産の維持を自己資金で、こういうような原則で行なって行く方が適当ではなかろうかと考えているわけであります。  また一面、国有鉄道が企業体である限りにおいては、その運賃が原価を償うものである、こういうことは私ども一応了解をいたします。しかしながら一面国鉄というものは、強く公共性を追求されているわけであります。従って企業体としての原価を維持していこう、こういう面が必然的に公共性の追求によって、いろいろな制約を受てくるのが今日の実態だろうと思います。たとえば国有鉄道運賃の原則は、法律にきめられてあります通り四項目であります。公正妥当なるものであること、原価を償うものであること、産業の発達に資すること、賃金及び物価の安定に寄与すること、これが四つの運賃の基本原則でありますけれども、たとえてみれば、原価をまかなう、これを押し通していこうとしても、公共性の追求、産業の発達に資するためには、ややコストを割った運賃でもこれを送らなければならぬということが、当然要請されてくるわけであります。あるいは一国の経済を考えて、賃金あるいは物価の安定に寄与するという面を考えていくならば、この面においてもコストを割った部面が強く要請されてくると思うわけであります。運賃の決定の原則でありますところの運賃法の四項目を見れば、大体運賃の面においては、あるいは原価の面においては、コストを割って減収になるという部面が多く出ているように考えるわけであります。私は、このことは国鉄が単なる企業でなくて、国民の足をにない、国民の経済、日本経済をささえているという観点からいって当然だと考えているわけでありますが、飜って国鉄の経理という場面からするならば、これらの減収面をどこかで一つ消化していくという形がとられなければならないと考えるわけであります。たとえてみれば産業の発達に資すること、こういう運賃項目の中から貨物のいろいろな割引があります。あるいは賃金、物価の安定に寄与するという点からは旅客運賃の割引とか、あるいは貨物の割引、こういうものが当然にたくさん出てくるわけであります。私はこの割引のコスト割れを是正すれば直ちに国鉄の再建ができる、そこまでは極言はいたしませんけれども、少くともこれらのコスト割れの減収に及ぼす影響は何らか別の方向で措置しなければ、これを企業内の努力で吸収をする、ないしは利用者その他の運賃割当をしていくという形は、どうしても理解に苦しむわけであります。特に新線建設の赤字等においては当然であります。今建設を予定されている、あるいは今度の建設審議会においても、また新線が幾つか追加されるという機運にあるようでありますが、どの新線を見てもおそらく採算のとれる新線というものはわかりません。私どもの関係しております新線においても営業係数が三九〇から四〇〇、こういう路線であります。この新線建設というものは、採算を度外視して国家目的とか、あるいは産業の発達、いろいろな面から要請されるのでありますが、これらの赤字を今環状線に乗っている旅客が負担するということは、どうしても納得できない理論だと私どもは思います。(拍手)これらについては政府責任において出せるだけの金、なせるだけの措置を当然しなければならないと思うわけであります。先日わが党の代表中居委員が本会議において指摘をいたしておりますが、今回の運賃値上げに際して、これらの公共性の追求とか——公共性の追求による減少はもちろんでありますが、施設の増強等に要する資金をもこの運賃原価に加えられていることは、私ども社会党といたしましてはどうしても反対せざるを得ないわけであります。すなわち国有鉄道も企業体であるから、投下資本に対する一定の利益を見ることは当然であり、この利益を施設の増強に充当せしめるべきである、利益率をも原価構成の要素に加うべしという主張については、私ども社会党としては絶対に賛成ができないところであります。  さらに今回の運賃値上げの大きな問題は、この運賃値上げが国の経済あるいは物価に、国民大衆の生活に、どの程度の影響を与えるかということが、最も大きな要素でなければならないと思います。単なる理論上の問題を別にして、政治の面、経済の面で、これらがどういう影響を与えるかということを真剣に討論をしなければ、運賃値上げは早計にすべきでないと思うわけであります。私どもはこの点に十分意を用いまして、質問戦等を通じていろいろの御質問をいたしましたけれども、結局は政府の、あるいは国鉄当局答弁というものは、単なる単純計算によって、この運賃値上というものが何%物価にはね返るのだという、ただ数字を計算をしただけで、その金額が非常に少いから物価には影響しない、こういうことを言っておりますけれども、これはそうはいかないと思います。物価の移動が単なる係数で動かないことはいろいろの事実が物語っております。たとえてみれば昨年の九月、十月、十一月、十二月にかけましてガソリンが非常に上りました。このガソリンの値上げの原因は、スエズ運河が閉鎖をされて、スエズ運河閉鎖によって船賃が高くなったということが一つ理由でありましたけれども、実際ガソリンの値上げの状態を見るならば、その船賃のはね返りとはおよそかけ離れたガソリンの値上げがされたことは事実であります。今回の運賃値上げはたとえば鉄鋼では二%、セメントは二・二%とか、そういう数字は出て参りましょうけれども、これらの基礎資材が上って、だんだんそれが生活必需品まで関連を及ぼしてきますと、この運賃値上げの影響が、連鎖反応によって物価高を生じてくることは事実であります。たとえばセメントはトン当り二百円だという計算をされておる方がありましたが、私はセメント会社一社を調べてみますと、とてもそんなことでは及びがつかない。単純なる計算でそんなことをされてもとてもたまらぬ。トン当り四百円の値上りは必至だ、こういうことを言っておりました。こういうふうにいたしまして、結局は今日インフレの危険のある日本経済の中で、一つのこれを助長する要素になりはせぬかということを、私はきわめて真剣に考えているわけであります。国家経済にインフレを助長する面、もう一つはそれが即生活必需品の値上りとなりまして、かなり大きく大衆の生活を圧迫するということは、これも事実であります。家計費の増大ということも、単なる単純計算以上に上っていくことは間違いない事実だと思います。  今日、今この運賃の影響を受ける一般大衆の生活実態というものは、一体どうなっているでありましょうか。たとえてみれば非常にこのごろは景気がいい。税の自然増収がたくさんある。だからこれは一つ減税に向けようということが今度予算案で通りましたけれども、果して景気がよくなって、一千億の減税を、具体的にそれではわれわれ勤労者大衆、一般の国民大衆の生活の面に当てはめるとするならば、ほとんど大多数の国民大衆というものは減税の恩典に浴しません。今大蔵省の発表した数字によりましても、人口九千二百万の中で、減税の恩典は二千四百万人であります。六千数百万人の大衆は減税の恩典に浴さないわけであります。このことを質問をすると、税金を納めていない者にどうやって負けるのだというようなうそぶきをしておりますが、これはきわめておかしいと思う。今日税金を負担できないような生活程度を保っている人間が、日本にはたくさんおる。この事実を忘れて、税金を負けてやりたいが、君は納めていないということで、簡単に葬り去ることには、私は大きな問題があると思うのです。翻って一般大衆の生活費の中から支出の面をながめて見るならば、運賃の増収によって三百六十数億、今ガソリンの税金も上ろうとしております。バス会社の運賃は上らないという御説明がありましたし、またそれをなるべく押えたいという大臣の答弁もありましたけれども、現実にバス会社はどうやってみても五割のガソリン税の値上げというものを、今日の運賃体系の中で消化することは困難です。従って一斉に各私鉄、バス等々が運賃の値上げを要請してくることは明らかであります。特に私たちが考えなければならぬ点は、十万円の収入の人が二%のはね返りということは、ほとんど自分の家計には響きません。一万五千円の収入で家族四、五人も養っておるというような最低限、言いかえれば生活水準を割った赤字の家計を維持しておる一般大衆の中では、一万五千円の二%のはね返りというものはたった三百円でありますが、これらの負担は非常にこれらの家計の痛手になりますが、こういうことは今回の運賃決定についてどうしても見のがしてはならない現実だと思います。従って私どもといたしましては今まで運賃法その他二、三の例をあげましたが、そういう観点からも、あるいは現実に政治を行い、現実に日本の経済、勤労大衆の生活を考える、こういう点から考えましても、今日の鉄道運賃値上げというものは行うべきではない、こういう結論を出さざるを得ないわけであります。  さらにそれでは今日国鉄の輸送力が詰まっておる現状をどうするかということでありますが、私どもといたしましては冒頭に申し上げました通り、これらの詰まった輸送の隘路を打開することは大賛成であります。どうしてもやらなければならないと思います。従って私どもはもっと真剣にこれらの問題を考えてみて、運賃を値上げしなくても再建の方策がないかどうかということを一つ考える必要があると思うわけであります。たとえてみますれば国鉄の資本増加の点でありまするが、前国会吉野運輸大臣当時から申し上げておったことでありますが、今日の国鉄の財産は二兆数千億円、これに対する政府の資本というものは八、九十億であります。このことは企業の原則、企業経営の体型からいってきわめて不合理だ。従って少くとも公社移行前の五百数十億円の社債、これらの社債の大部分は建設公債であろうと思いますので、これらの負債というものはこの際政府の負債に切りかえるということは当然考えられていいことだと思う。筋も通っておりますし、今日の政府の予算のワク内においても、このくらいのことができないはずはないわけであります。あるいはまた今後においては公共企業体の資金を増加するために、年々わずかずつであっても政府の資本出資をふやしていく、こういう形も当然考えられなければならない点であります。さらに資金運用部その他の借入金でございますけれども、今日予算書を見ますると、資金運用部並びに公募債、こういうものの額は、昨年よりもたった十億円を増しておるだけであります。これはやはり国鉄の企業に対しては、相当大きな国家資金をつぎ込んでいくという態度を当然とられなければならないと思うわけであります。さらに純然たる公共性の追求のために生じてくるいろいろの問題点、たとえてみれば新線建設に対する費用等については、当然国家の責任利子補給という問題も真剣に考えられなければならないと思うわけであります。さらに小さな問題でありまするが、帝都高速度営団の出資等につきましても、これは政府出資に切りかえて、公共企業体の国鉄負担するということは改めるべきではないかと考えるわけであります。特に今年度予算に盛られておりますところの旧債返還の金額を見ますると、七十五億円の旧債返還が予算化されておりますが、これは公社移行前の社債二十四億円の返済をする、こういうことが計算の基礎になっておりますけれども、ただでさえ国鉄は困っておる。ただでさえ国鉄は赤字でどうにもならないというときに、今までほうっておいた旧債をなぜ政府は取り上げるのでありましょうか。この旧債返還が二回にわたって一億三千万円くらいしか返済がなされてないようであります。国鉄が苦しくてどうしても再建ができない、運賃を上げれば国民の経済が困るときに、今までほうっておいた旧債を何を好んでなぜこの際二十四億も取り上げるか。この点などは十分一考ができる問題ではないかと思うわけであります。  さらに国鉄の経営を担当されている重役の皆さん方あるいは国鉄労働組合の諸君の努力は十分認めますけれども、今日国鉄の経理の中に、あるいは国鉄の経営の中に、幾多改善をする余地があると思うのです。ガード下の事件あるいはその他の雑収入の点が、直ちに運賃値上げをしなくていいような巨額な金額が出るとは考えておりません。しかし経営に対する考え、経営を民主化し合理化していく観点からするならば、これらの点も当然見のがしてはならない点であります。こういう国鉄の経営合理化あるいはまた工事の入札その他いろいろな工事の施行についても、幾多の改善の余地があると思います。特に一千六十数億円の国鉄再建の予算消化に当っては、相当な腹をきめてほんとうに冗費をなくしていくという態度が、国鉄経営者にとられなければならないと思うわけであります。このような一、二の点をあげましたが、こういう観点から考えて参りますと、私どもといたしましては再建方策、特に資金調達についてはもっと深い検討をして、特に国民生活の実態を十分考慮していかなければならないということを痛感をいたします。国鉄は赤字だから運賃を上げる、線路や貨車を増さなければならないから運賃を上げるというように簡単に考えて、すべての問題を深く検討することを避け、あるいはまた当然政府責任で果すべきそういう点の責任を回避して、この国鉄再建を単なる運賃値上げ、大衆の課税という形ではかろうということは、私は明らかに政府の怠慢だと思います。あるいはまたこれは政府に交通政策の一貫性がない、確たる交通政策というものがないというところが一番大きな問題点だと思います。経済五カ年計画の中においてそれでは一体経済がどのくらい伸びるか、その点までは明確になっておりますが、その経済の中で輸送をどう消化していこうという、陸海空の三つに分けてどのような割当、どのような最終目標に従ってこの交通輸送を解決していくかということは、今日の五カ年計画の中でも明確に政府の所信なり方針を明らかにしていただかないことは、非常に私どもは残念であります。これらの交通政策が基本的に樹立をされて、それぞれの輸送分野が確保され、そうしてその基本政策の上に強力なる政府の財政的な裏づけがあって、初めて国鉄の再建ができるものであり、それをやってどうにもならぬという場合に運賃の問題は考えなければならぬのではないかと思いますが、この基本政策がないために、今日の輸送がかなりの混雑をいたしております。たとえばトラック輸送の一例を見ましても、私のおります路線には八つの会社が走っておる。一日に十六行路のトラックが走っておりますが、それでいてそのトラック会社はみな赤字であります。そうしてぼつぼつ倒れていく。片一方、駅にはかなりの量数の滞貨がある。こういうトラック輸送の面を見ましても、何ら一貫した交通政策が出ておりません。あるいはバスの旅客輸送にしてもしかり、その他海運にしてもしかりで、総合した一貫された基本政策に対する財政的裏づけが、なされていないというところが、今回の一番の問題点ではないかと思います。私どもの社会党といたしましては、こういう観点から、今日運質値上げは、岸内閣がほんとうに何らの積極的な政策を持たず、あるいは交通政策に対して積極的な財政的措置をせず、果すべき責任を果さず、ただ漫然として国鉄の再建を国鉄の従事員の犠牲、一般大衆の犠牲の上に強行しようとしているこの運賃値上げに対しましては、どうしても国民とともに強く反対をせざるを得ないわけであります。  以上簡単でありましたが、社会党を代表しての反対討論を終ります。
  146. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 木村俊夫君。
  147. 木村俊夫

    ○木村(俊)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対し賛成をいたしたいと思います。  国鉄経営の問題につきましては、従来も当委員会におきましてしばしば論議を重ねて参ったのでありますが、国鉄の現状が累積した老朽施設車両の取りかえを急速に行なって、輸送の安全を期さなければならないこと、また一方、最近の国内経済の活況を反映いたしまして、急速に増加した輸送需要に対応するために、輸送力の増強をも行わなければならないこと、さらに電化その他鉄道の近代化をはかりまして、サービスの向上、経営の合理化を促進すべき段階に来ていること等につきましては、先ほどの反対討論において承知せられる通り、全く異論のないところでございます。しかしてこれがためには、今日行き詰まりの状態にある国鉄財政を急速に再建しなければならないということも、また当委員会における決定的意見と相なっておるのであります。  しかしながらこの国鉄財政をいかにして再建するか、特に国鉄五カ年計画を遂行するに必要な約六千億円の資金をいかにして調達すべきかという点に関しましては、いささか議論の分れるところであります。政府におきましては、さきに国鉄経営調査会を設置いたしまして、広く民間有識者の意見を聴取し、さらにまた運輸審議会の答申を得て慎重審議の結果、今回の運賃改訂を決定いたしたのでありますが、もとより運賃値上げ率の決定に当りましては、国民生活並びに物価への影響を十分に考慮いたしまして、最小限度の一割三分にとどめることにいたしておるのであります。私は政府のこの決意をまことにやむを得ざるものとして了承するものでありまするが、本案の審議を終るに当りまして、ここに二、三の点を明らかにしておきたいと思うのであります。  まず第一に主張せられる意見といたしましては、これらの資金を調達するためには、運賃値上げという方法によらずして、政府資金の投入等により、政府自身がこれを調達すべしとの意見であります。しかしながら国鉄が現在公共企業体として独立採算制を建前としていること、外部資金の調達にもおのずから限度があること、並びに一般財政の現状から見るとき、私は結論といたしましては、やはりこの程度の運賃値上げの方法によりまして、国鉄財政の再建を行わしめることがより妥当であると考えるものであります。しかもなお国鉄が公共企業体として宿命的に背負わされている両面の性格、すなわち公共性と企業性とをいかにして調整するか、どこにその調和点を見出すかということにつきましては、単に今回の運賃改訂の問題にとどまらず、国鉄経営の根本的な問題として、今後もなお当委員会における最大の論点として残ることは申すまでもありません。(拍手)私はこの際、本案の審議中におきまして、社会党の同僚委員がしばしばこの根本問題に触れて、政府、特に大蔵当局にただされました質疑の内容、並びにさきの運輸審議会の答申中に示された一項目、すなわち輸送施設の拡充整備の緊要性にかんがみ、政府政府資金の投入、外部資金の調達について特別の配慮をなすべきであり、また国鉄みずからの努力も望ましい、こういう一項目につきまして、政府はあらためて今後十分なる関心を持って、これを検討していただきたいと考えるのであります。  第二の問題といたしましては、今回の国鉄運賃値上げによって、一般物価や生計費に大きな影響を与えるのではないかという意見であります。政府当局はこの点につきまして、物価中において運賃の占める割合が大よそ三一・八%、生計費中交通費の占める割合が一・八%ないし二%と推定されますので、この程度の運賃値上げは、一般物価及び生計費にさしたる影響はないとの判断に立っておるのであります。私は今回の運賃改訂が、国民生活並びに物価べの影響を十分に考慮いたしまして、最小限度にとどめおことを勘案いたしまして、まことにやむを得ないものと認めるものであります。しかし一方最近におけるわが国の物価情勢は、必ずしも楽観を許さないところであります。運輸の部面におきましても、今回の国鉄運賃値上げをきっかけといたしまして、私鉄、バス、海上運賃等の値上げは必至と見られる状況であります。この際私は政府に対しまして、当面の物価対策についていま一そうの確固たる見通しと慎重なる態度を要望いたしておきたいと思うのであります。  第三には、国鉄の経営についての問題であります。いわゆる鉄道会館問題、さらに相次ぐ重大事故等によりまして、最近国鉄に対する世論はまことにきびしいものがあるのであります。自来国鉄当局も、国民に不信の念を与えた事実の前に率直に反省いたしまして、国民の批判の声に従って一歩々々改善べの努力を傾けて参りましたことは、私どもも十分これを認めるにやぶさかではありません。しかしながら国鉄が国民の国鉄として、国民の利益のために運営されなければならないものである以上、経営の合理化がこれで十分ということは絶対に考えられないのであります。今回の運賃値上げを機といたしまして、国鉄はさらに一そうの経営合理化に向って、真に血のにじむような努力を続けていただきたいことを強く要望するものであります。さらに今回の運賃改訂の細目実施に当りましては、よく国民生活並びに産業活動の実情を考え、でき得る限り支障や摩擦等の生ぜざるよう配意をいたすことはもとより、国鉄五カ年計画の遂行につきましては、極力経費の節減に努め、工事計画の繰り上げによって、国民の期待以上の効果を上げていただきたいと念願するものであります。  以上申し述べました結論といたしまして、私は今回の国鉄運賃改訂によって、今日国民各位に幾分でも負担の増加を願うことははなはだ心苦しいところでありますが、この運賃改訂によって得られまする増収額は、これをあげて輸送力の増強に振り向け、国鉄輸送力を飛躍的に増大し、いわゆる輸送の隘路を打開することが、国家の産業経済活動並びに国民生活により大きな貢献をもたらすものであることを確保いたしまして、今回の運賃改訂も必要やむを得ない措置として、ここに賛成の意を表するものであります。(拍手)
  148. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 これにて討論は終結いたしました。  これより国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣提出第五十三号)を採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  149. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決することに決しました。  なお、ただいま可決されました法律案の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 それではさように決定いたします。  この際発言を求められております。宮沢運輸大臣
  151. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 この際、お許しを得まして一言ごあいさつを申し上げたいと思います。国有鉄道運賃法の一部を改正する本案が議題となりましてから、皆様の非常に御熱心な御審議によりまして、ここに可決を見るに至りましたことは、まことに感謝にたえないところであります。  本法案は、当期国会における最も重要なる法案の一つとして、世間の注目を浴びておったところでありますが、当委員会における審議に当りましては、皆様が熱心な御検討をいただきまして、国鉄のあり方に対して真剣に御意見を御発表下されたことは、まことに感謝にたえません。また野党の方々におかれても、実に真剣に御協力を願い、また与党の各位におかれましては、本案提出の当初より今日に至るまで、日夜の御協力をいただきましたことは、まことに感謝にたえないところであります。この運賃の改訂が国民の生活並びに国家の産業、経済に及ぼします影響はきわめて重大でありますので、私ども初め国鉄当局は、当委員会における御審議の経過にかんがみ、慎重にこれに対処いたしまして、輸送力の増強、国鉄の近代化並びにサービスにつきまして、万全を期して御期待に沿いたいと考えている次第でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  152. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 十河国鉄総裁。
  153. 十河信二

    ○十河説明員 私からも一言お礼を申し上げます。本案を提出いたしましたことは、皆さんの御討論の中にもあるいは御質問の中にもありましたように、まことにやむを得ざるにいでたるものでありまして、私どもは国民の皆さんにいろいろ御迷惑をかけることにつきましては、心から恐縮している次第でございます。しかしながら本案は幸いに非常に皆さんの御同情ある、御理解ある御決定をいただきました。この案を決定されました以上、国鉄の財政も漸次立ち直って参りまして、その結果は国民の皆様に喜ばれるような状態にしなければならぬ、必ずそうするという責任を私どもは背負わされたわけであります。皆さん反対をせられた方も、後日さだめしあれはよかったなというふうに思っていただくように——そういうふうに今後この予算を実施し、この収入を使います上につきましては、皆さんの熱心な御意見なり、あるいは御注意なりを十分に体しまして、この上とも経営の合理化、節約等に最善の努力をいたすつもりであります。簡単でありますが、このことをお誓い申し上げまして一言ごあいさつ、御礼を申し上げる次第であります。(拍手)
  154. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 次会は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十三分散会      ————◇—————