○足立
政府委員 お答えになりますかどうか、私の
感じを率直に申し上げてみたいと思います。実は私も満鉄に十年ばかり勤務いたしまして、貨物
関係の運賃を担当したことがあるわけであります。私の体験から率直に申し上げますと、
国鉄当局あるいは
運輸省から、この
委員会でたびたび運賃改正の問題について御
答弁があったと思いますが、申すまでもなく
国鉄公社ができましてから今日までの
経過を振り返ってみますと、昭和二十四年から二十八年ごろまでは非常にインフレの危険が強かったときであります。国全体としてこのインフレを押えるために、いろいろな面にしわ寄せが行っているわけでありますが、私はそのしわ寄せの一番尤たるものは
国鉄運賃に来ておったのじゃないか。つまり運賃を動かせばインフレになる。インフレ要因はできるだけ避けたいということから、相当無理な経営を
国鉄にさしておった。私はむしろ
国鉄に同情すべきだと思っておるわけです。今日上げればまたインフレになるじゃないかという御
議論はございますが、さような
経過から
考えてみますと、二十九年からのデフレ政策、ことに三十一年度におきまする実績を見ましても、
経済はきわめて安定してきたという時期に運賃体系も改め、そして運賃をあるべき姿に持っていかなければ、ひとり
国鉄だけではなく、私鉄もあるいは
一般の運送業者も小運送
関係も、これは
一般経済の動向から見まして非常に無理がかかっておると私は思っておるわけでございます。従って
国鉄だけを責めまして、経営を合理化せよ、そして節約をしていけと言いましても、これにはできる限度というものがあると私は思うのであります。従いまして私個人の経験から極端に申し上げますと、今まで御
答弁申し上げておると思いますが、これは
一般物価の趨勢と大体見合った、
国鉄経営上からも無理のない運賃体系に持っていかなければ、私は
国鉄を責めても無理があるのじゃないかというふうに見ておるわけであります。特に指数の
経過を見ますと、
国鉄が絶対必要とするような資材
——石炭につきましては昭和十一年を基準として実に五〇〇以上の指数になっておる。あるいはレール、まくら木、セメント、鉄鋼というようなものもいずれも三百五十倍から四百倍くらいにはね上っておる。ひとり
国鉄運賃だけが、旅客について現在では一一六、貨物について一六六、これが一割三分の運賃改正をお認め願いましても、一三〇か一八〇くらにしかならないということでありまして、この点に私は根本的な問題があるのではないかというふうに
考えておるわけであります。従いましてお尋ねの第五条の第二項の問題でございますが、私どもとしては
国鉄が運賃体系のあるべき姿にない。なおかつ大きな国策的な見地から、ペイしない新線などもどんどん作らなければならない。あるいは先ほど御指摘のバス路線も設定しなければならない、そういう特別な
事情が生じまして、どうしても
国鉄の自己資金でまかない切れない場合には、真剣に検討して、この
法律の援用といいますか
実施といいますか、これも
考えなければならない時期も将来はあろうかと思いますが、現状におきましては、今まで不当にしわ寄せされておった
国鉄運賃あるいは
国鉄の経営
内容というようなものにつきまして、もう少し私どもは同情ある目で見て、そして運営が立つようにしていくことが先決問題じゃないか。だからそういった今まで
政治的な理由によって無理のかかったものを、今ここで
政府が全部しりぬぐいをせよと言われても、私はこれは過渡期にあるというふうに
考えておるのでありまして、大蔵事務当局
あたりおいては相当どぎつい冷たい
印象を与えたかもしれませんが、私は少くとも
政治的な
立場でさような見方をしていきたいと思っておるわけでございます。
〔今
松委員長代理退席、
委員長着席〕