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1957-03-16 第26回国会 衆議院 運輸委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十六日(土曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 淵上房太郎君    理事 今松 治郎君 理事 井岡 大治君    理事 松尾トシ子君       有田 喜一君    伊藤 郷一君       生田 宏一君    佐伯 宗義君       關谷 勝利君    中島 太郎君       永山 忠則君    濱野 清吾君       眞鍋 儀十君    池田 禎治君       中居英太郎君    松原喜之次君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君  出席政府委員         大蔵政務次官  足立 篤郎君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   鹿野 義夫君         日本国有鉄道常         務理事     石井 昭正君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         専  門  員 志鎌 一之君     ――――――――――――― 三月十六日  国鉄運賃値上げ反対に関する陳情書外一件  (第四七一号)  観光事業振興に関する陳情書外一件  (第四七二号)  国鉄貨物運賃値上げ反対に関する陳情書  (第五二七号)  航路標識の整備に関する陳情書  (第五二八号) を本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣  提出第五三号)     ―――――――――――――
  2. 淵上房太郎

    淵上委員長 ただいまより委員会を開会いたします。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。濱野清吾君。
  3. 濱野清吾

    濱野委員 けさの新聞紙を見ますと、第四波とかいう波が打たれずにとどまったそうでありますが、昨晩以来今朝に至るまでの経過運輸大臣からお聞きしたいと思うのであります。
  4. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 去る九日に調停案が出まして、この調停案につきましては、御承知通り今までに例のない理由書もついておらないし、政府といたしましては各公社、各現業のなにとの間にこの調停案がのみ込めないような点がありましたので、それを研究しておりまして、昨日午前国鉄当局者がこれを仲裁に持ち込んだのであります。   〔委員長退席、今松委員長代理着席政府といたしましては、仲裁に入った以上、これは法律の要請しているところもそこでありますが、これを尊重していく態度は終始変らないで政府が言明してきたわけであります。その線に沿って党並びに社会党その他関係の方が非常な御尽力を下すって、今朝ようやく話し合いが大体つくことになりました。
  5. 濱野清吾

    濱野委員 国鉄の第四波は非常に重大な問題でありましたが、社会党その他の御尽力によりましてというのが交渉経過内容意味するものと存じますけれども、その内容をもう少し鮮明にしてもらいたい。
  6. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 内容と申しますと、大体において裁定が下ったときにこれをぜひ実施に移したい、こういう態度をはっきりいたさせまして、その他こまかい問題は、従来の行きがかりで当事者同士で交渉している線で、たとえば業績手当等は大体の話が妥結をいたしまして、そういう点で両者互譲態度をもって幸いに妥結をすることになった次第であります。
  7. 濱野清吾

    濱野委員 今朝の東京新聞を見ますと、宮澤運輸相文書をもって国鉄本社に、調停案を越えざる範囲仲裁裁定があれば実施すると通告したそうでありますが、調停案を越えざる範囲仲裁裁定ならば実施するとおっしゃるならば、仲裁裁定を受けない前に調停案が出たときにもうすでに実施なさってもいいのじゃないか、この辺の事情はどういうことでございましょうか。
  8. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 その文書は、実は私の心持参考のために総裁に伝えたのでありまして、調停案をのむか、仲裁に持ち込むかということは、国鉄当局者として総裁その他国鉄の経営の人たちがきめるべきことで、それに対するただ私の気持参考に申し上げたのであります。しかも調停案を越えざる範囲という意味は、今日の情勢からそういう場合に立ち至ったらばやむを得ないじゃないかという気持意味だけを申し上げて、必ずしも正確に仲裁ならば実施するが、調停段階ではのめないというほどの問題じゃないのでありまして、大体その推移を見て調停の間は、やはり両者調停後も団交もしなければならぬのですし、いろいろ探り合った結果ですが、今日の諸般の情勢から仲裁が無理なものでない限りは、尊重していく心持でこれを扱っていかなければいけないじゃないかという気持だけを、心境だけを私はただ参考に伝えただけであります。
  9. 濱野清吾

    濱野委員 あなたが大臣名をもって総裁に対してこういう文書をおやりになった、気持通告だ、こういうことが、いやしくも憲法上の機関がそういうことで了解できるでしょうか。またそういうふうに軽く取り扱っていいものでしょうか。私はそうした気持は別に悪いとは考えておりません。しかし裁定がおりる前に調停が出た。その調停範囲内で運輸省がこれはのむべきものだ、受諾すべきものだ、こういうような考え方があったらば、何も裁定申請などして世の中を騒がすことはなかろう、第四波というような考え方について、運輸省苦労をする必要はなかろう、国鉄もまた苦労をする必要はなかっただろう、こう考えるのです。一体この点はどうなのですか。
  10. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今日までの段階におきましては、いろいろな関係から、調停案をそのままのむということは政府としてなしあたわない、むろん国鉄当局者としてなしあたわず、政府としてもそれらの事情は聞いておったのでありますが、国鉄がこれをのめない。しかしこの間一般情勢は順次変化していきますし、また必ずしも調停案を今の段階でそれだからのんでいいというふうに政府部内も、一般がそういう気持にまだなっておりません。ただ私だけは、この情勢から見てそういうふうになってきたならば、そうやった方がいいのじゃないかという気持だけを総裁参考のために、私は総裁が休んでおられるから文書をもって私の気持をただ参考に申し上げただけで、これは政府がみずからの権能においてどうこうしたというような事柄ではないのであります。
  11. 濱野清吾

    濱野委員 しかし閣僚の一人として予算措置ができるとお思いになったればこそ、あなたはそうしたお気持を、かりにお気持としてもいいです。そういうお気持をお漏らしになったと思うのです。予算措置の問題は運輸大臣一人ではできないはずです。それですから、あなたが通告しなさったときに、この問題は仲裁案のうちならばのむ、そういう腹が閣議のうちで大体きまっておったのかどうなのか、そういうことがきまっておりませんと、運輸大臣一人が独走するわけにいかないはずです。もしそうだったとすれば、第四波や何かということでそう世間を騒がす必要はなかったじゃないか、こう考えるのですが、運輸大臣はどういうふうなお考えなんです。
  12. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 私独走をしたというわけではありません。政府態度としては、仲裁に持ち込んでその裁定が出れば、これを誠意をもって尊重する、これが政府態度であります。その意味において、私の言葉もその範囲は出ないのでありますけれども、ただその上に私の気持を盛り込んだ心持参考に申し上げた、こういう程度でありまして、政府の統一した考え方違反、変った態度をとったわけでもありませんし、またこの裁定が下ってきて予算措置をとらなければならないというようになれば、これはそのときに考えればいいものである、こう考えております。
  13. 濱野清吾

    濱野委員 どうも私の質問についてピントがはずれているようでありますが、調停案を越えざる範囲仲裁裁定があれば実施するということを、あなたが国鉄の方に通告なさったそうでありますが、かりに全部の公社がこういう考えでおったとするならば、運輸大臣のような考え予算措置が可能だ、そうして仲裁範囲であるならば、これをのむというような考え方が前にきまっておったとするならば、何もこんな苦労はしなかったと思うのであります。そこで新聞等に現われた記事を見ますと、どうもあなた一人が独走して、そうしてこの問題の解決の緒を作った、こういうふうに見られるのです。どうもそれでは世の中を騒がせ過ぎているのじゃないか。他の閣僚諸君も、閣議においてそういう打ち合せがあって、予算措置はできるだけやるのだ、その範囲ならけっこうなんだ、ただあなた一人が独走しているのじゃないか、こういうふうに見られる人があったとするならばどういたしますか。
  14. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 いや、政府態度としては、つまりまだ調停案国鉄当事者がのめないという態度を了承して見ておったという程度であります。それからいよいよ仲裁に持ち込んだ、仲裁に持ち込んだということは、国鉄においてしたのでございますから、仲裁に持ち込んだということを私は聞いて——その新聞に出ている文字は違っております。むろん私がそういうことを実施するとか、そんな具体的なことは私は言っておりませんけれども、違っていますけれども、心持は、この仲裁裁定誠意を持って尊重するという政府態度についてのやや具体的な意味を私は総裁参考に述べただけであって、その態度にはちっとも変りはないのです。それから全体として政府がこれを初めから全部のんで予算的措置をきめる、はっきりきまっておるということであれば、今あなたのお話もありますが、裁定も果してどの程度で出てくるかということは、今もわかっておらないわけであります。ただ私の考えとしては、調停案の間においては、当局者がやはりこれを考慮し、勘案する余地が、幅が広い裁定になればその幅が非常に狭められる、尊重しなければならぬ方へうんと行っておるわけですから、その行き方で、やはり政府としては、調停案の出たときと、裁定の下ったときとは、おのずから態度が違っていいのだ、こう思うのであります。
  15. 濱野清吾

    濱野委員 どうもお話を聞いておってしっくりしないのでありますが、政府全般として今回の問題について当然仲裁の案に服すべきものだ、そしてその予算措置も、無理はあるかもしれぬができるのだ、こういうような気持が動いておったとすれば、私は裁定申請などをしなくてよかったのじゃないか、またそうせざることによって早く春季闘争の終幕というものが来るのじゃなかったか、そのことがまた日本経済にも非常にいい影響があったのじゃないか、どうも仲裁裁定というような、何かそういう手続をしていたずらに時を遷延する、そうして世の中を混乱させた、こういうような印象を強く受けているのでありますが、大臣は今平静な立場に返って、そういう印象を受けませんか。今朝あたりの各新聞紙を見て、そういう印象を強く受けるか受けないか。これは感じでありますから随意でありましょうが、どうも私はそういうような強い感じを受けているのであります。
  16. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今お話のように、政府の部内が結局予算措置までするという腹をきめておるというところまで行っていないのであります。そこへ今行っておれば、今のあなたのようなお話もありますけれども、それは裁定が下った上のことです。しかし建前としては、裁定はどこまでも尊重しなければならぬ。これは調停案のときとは、法の精神もその命ずるところも違うわけであります。裁定となったならば、これはどこまでも尊重するということが建前で、裁定を尊重しないということが今までも間々ありましたが、これは異例というか知らぬけれども、建前をはずれた態度で、裁定があったら裁定を尊重するということに、これから扱い方をしていく方がいいのだろうと私自身では思っております。それですから裁定を尊重するというときには、今調停の間ではできないことでも、そこへ行ったら政府もやらなければならぬ、そういうところへ追い込まれていく、その考えに基いてただ私の心境だけを総裁参考に申し送っただけであります。
  17. 濱野清吾

    濱野委員 あなたのただいまおっしゃるような気持ならば、それは議論はないでしょう。尊重するのは当りまえのことですからね。これは世間も言っているし、われわれもそう考えている。しかしあなたのおっしゃっていることは、調停案を越えざる範囲仲裁裁定があれば実施するということをあなたは通告していらっしゃるのです。これはあなたの今言っていることとは大へんに違うじゃありませんか。それは尊重して実施するということは、今までの言葉の上においても実施というようなこともないし、さらに調停案を越えざる範囲という具体的な説明もありませんでした。こういうことが具体的にあなたの口から一つ文書として国鉄の方へ出せるものならば、この予算措置も可能だという前提に立っての通告なのです。そうだとするならば、これは何もこんな紛争を巻き起さずにとっくに解決したのじゃないか、私が言うのはそれなんですよ。これはどうなんです。
  18. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 文字の末のことは別ですけれども、実施するという文字は使っておりません。それは新聞の書いたもので、私はそういう文字は使っておりません。ですからただ文字の末で、争いはいたしません。心持はそういうところにあっても、実施するというような形式的の文字は私は使っておりません。人に参考に自分の心境を言うのですから、運輸大臣実施するというようなことを通告すれば拘束することになります。私は気持はそこにありますけれども、そういう形式的な文字は使っておりません。
  19. 濱野清吾

    濱野委員 多くの新聞がそう書いているのです。しかし大臣は使っていないとおっしゃるのですが、これは私が主観を申せば多分お使いになっただろう。天下の大新聞が筆をそろえてそう書くはずはない。ですから実施するというようなことについて、しかも調停案を越えざる範囲というような具体的な文字を使っておいでになれば、これは気持だけではないと思う。いやしくも運輸大臣がそういうことを具体的に通告をすれば、もう予算措置はできるもの、こういうふうな前提に立っての問題だと私は思うのです。もしそうだったとすれば、第四波などということを中心としてこれほど世間を騒がせなくてもよかったのじゃないか、私はこう考えているのです。これは私はそれ以上追及いたしませんけれども、きょうあたり新聞紙でも騒げば賃上げが可能だ、ストをやれば可能だ、そういうような印象を国民は強く受けている、これについては大体三公社などの労働政策というものの貧困意味するものだ、こういうような新聞記事がそっちこっちに盛んに出ている。私は国鉄予算につきましても過般——大臣はいませんでしたが、国鉄当局に申し上げました通り労働政策というような問題についてはあまり深い注意を払われていないのだ、そういうものが累積してこういうような問題が毎年毎年展開されるのじゃないか。労働政策が完璧のものであったとするならば、これは労使対決するまでは一歩も引かぬがいい。ところがこういうふうにやられると、ただいまあなたのおっしゃったようにいろいろな言葉を使って、ぐずぐずと崩壊してしまう。それは何を意味するかといえば、政府のこうした事業に対する労働政策貧困意味するものだ。これは具体的に示せというなら、私は与党でありますけれどももはっきり申し上げる準備はできております。おりますけれども、私はこういうことであっては国鉄のみならず、日本経済社会というものは、おもしろくない現象ができると思うのです。たとえば騒げば賃上げができる、ストをやれば賃上げができる、これはひとりストライキをやる労働階級のみが悪いのではなくして、これは当事者責任だと私は思うのです。当事者が完璧な労働政策を行うておれば、ひんぴんとして起きるこういうような労働争議はできないであろう、もっとも政治ストライキなら別なんです。これは別な議論をしなくてはならぬけれども、私はそういうふうに考えてまことに遺憾だと思う。ことに今回の鉄道争議のごときは、法律違反を完全にやっている。何か新聞紙の伝うるところによると、鈴木委員長がこの諸君だけは一つ考えてもらいたいという申し入れをしているそうだ。ここに新聞に出ておりますが、法律を犯して実力を行使して、取るものは取って、法律を犯した者だけは一つかんべんしてくれというような、そういうような法を犯して天下を通るか。かつて五・一五事件があった、二・二六事件があった。あのときは軍隊という一つ組織、団体の一部分が動いて、そうして天下をひっくり返すようなことがあったのです。これは明らかに法律を無視した暴力行為なのです。それをあの当時の政府世間もまあこれらのあばれん坊に賛成をするような、要するに、法律の存在を冒涜して、そうして遂にあそこまで引きずられてしまったのであります。これは宮澤運輸大臣はあの当時国会にいなさった先輩でありますから御承知でありましょう。力があるもの、組織があるものが、法を破ってもいいというわけはないでしょう。社会党鈴木委員長の顔は立てなくちゃならぬかもしれぬけれども、そういうものについて運輸大臣はどういうお考えを持っていますか。われわれは日本歴史の上において大きな失敗をしているのです。軍隊ではないが、大きな組織労働者実力を行使した、その行為において違法行為がひんぴんとして起きた。それらを代表しておる鈴木委員長が辞を低うして、この問題は考えてくれよというようなことを言っている。これが善処をするというようなことを政府当局が述べているということを新聞に伝えられている。これは一体どうする、気持ではなしにちょっとお聞かせ願いたい。
  20. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今の労働政策貧困ということは新聞にも載っておりますが、どういう点をおさしになっているか、それはあるいは行き届かない点もありましょうが、この問題は全体として今あなたのおっしゃるような法律を守らないということが現実に、たとえば実力行使というようなことはできない建前なんです。教員においても授業をストップするということはできない、それが今日ほとんど約七、八年間ずっと行われておるということが、これは労働政策労働対策貧困というか、政治貧困というか、そういうようなならわしになってきている。しかしこれはだんだん改まっておる点は、たとえば御承知通り昨年あたりから公務員なども各省にすわり込みをして懸垂幕を立てて、それから公労でも機関紙初めその他に幕を張って騒いでおったことが平気でやっておられたが、そういう点は昨年からだんだんなくなってきておる。けれどもまだ実力行使というようなことが組織的に大きくやられている。これは非常に法を無視しておることで、あなたのおっしゃる民主政治のもとにあってはならないことが行われておりますけれども、現実にあるのであります。これはやはり現実の問題として順次処理していかなければ、一ぺんにそれだからどうするということには今の政治ではいかないのじゃないか、建前としてはあなたのお話通りで、われわれもこれからそれを是正していくことは、大きな政治だと考えております。ことに政府が、今お話がありましたか、善処するという言葉意味によりますけれども、承わっておくという話のはずであります。申し出は承わっております、方針は大体そういうことになっておるわけで、善処するという意味は、法の命ずるところをじゅうりんしてもかまわない、そのまま捨てておきますということではないと私は思います。
  21. 濱野清吾

    濱野委員 あなたにここでばく然たる政治論を聞こうというのではありませんが、私は法律論をお尋ねしておるわけなのです。ちょうど五・一五事件二・二六事件ができたときの政府当局が、あなたの御説明になるような説明を盛んにやっておった。そうして日本のあの悲劇を見たわけなのです。あの当時学者の方においても、評論家においても、相当強い者——法治国家はすでに崩壊したと嘆いている人もあった。たとい軍人であってもこれは処分すべきだという議論も相当あった。しかし時の政権の座についておりました閣僚は、まあまあそう急いではっきりやるとかえって反動が来て、そして社会の混乱を来たすのだというようなことで、御承知通りあの悲劇を見たわけなのです。まだ運輸大臣はそういうお考えをお持ちになっていますか。運輸大臣はすでに経験済みなのです。大臣としてではなく、国会議員先輩として、あの当時すでに御経験なさっていらっしやる。私は軍人ではないけれども、この膨大な組織法律を犯して実力行使をやるというようなことになっては、これは将来日本社会というものはおそるべきことになる、こう考えているのです。ことにわれわれはそういうことを経験してきておりますから、大臣経験者の一人でありますから、特に私はこれを申し上げるのでありますが、まあまあ主義で順次時をかして、こういうようなことが法治国家虫ばんでいくと思うのでありますが、この考えはいかがでございますか。
  22. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 私もあなたの今のお考えと全く同感でありまして、ことに戦争中からの長い現実にわれわれは接してきておったわけであります。それは全く同感であります。しかしこれは当面の問題だけでなく、全体の問題として相当に考えて、これこそほんとうに善処していかなければならぬ問題だと考えております。
  23. 濱野清吾

    濱野委員 私は考えるのですよ。今保守党の天下です。言うまでもなく岸さんを首班とした天下でありますが、想像をたくましゅうしてははなはだ恐縮でありますが、社会党がかりに天下を取ったと仮定する、右翼がもしこんなことをやったらどうするだろうか。私は、日本という国はそんなふうに向いていくのではないか。右、左、右、左、そういうふうに向いていく傾向がどうもある。五十年に一ぺんくらいずつはそういう歴史を繰り返すのじゃないか。だれかがわが国こそは法治国家であるというきぜんたる態度政治をし、行政をしなければ、そういう歴史を繰り返すことになって、はなはだおもしろくない結果が出ると思うのです。大臣としてはそれ以上答弁はなさらないでありましょうけれども、この点は感情を離れて、真剣にこの機会に考えなければならぬことだと思う。私は、この新聞紙であなたにお尋ねした問題について、調停案を越えざる範囲の小さい裁定であれば実施するということについての本質の問題については、このねらいの問題については賛成なのです。これはやはり政府労働政策貧困について責任を負わなければならぬ立場なんですから、僕は一応これを早く解決すべきだった、こういうふうに混乱きせる必要はなかったのではないかという点が一点。さればといってあの法を犯しての実力行為を許すべきか、この点は日本歴史にかんがみて、また現状にかんがみて、閣僚はよほど考えてくれなければ、国に大へん悪い結果をもたらすのじゃないか。ですから善処とかなんとかいうことではなしに、きぜんたる態度で私はいってもらいたい。鈴木君だって総評に対する一つ考え方から、第三項の公労協の実力行使に対して、政府は処罰を行わないことなんということをやったのだろうと思う。いやしくも一党の委員長が、法律を犯した者を処罰されては困るというような、そんなべらぼうなものは天下にない、そんな政治家天下にない。ですから私はこれが事実だとすれば、これは選挙なんかの関係で、あるいは党の財政上の関係でいろいろお世話になっておりますから、ゼスチェアとして言ったのだろうと思う。いやしくも天下をやがてとる鈴木委員長が、法を犯した者をかんべんしてもらいたいということを申し入れるはずはないと思うのですが、これは一体あったのですかないのですか。事実あったのですかないのですか。
  24. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 知りません。
  25. 濱野清吾

    濱野委員 それが一番都合がいい答弁なんだが、まことにけしからぬことだと私は思うのです。では私の質問はこれでよします。
  26. 今松治郎

  27. 井岡大治

    井岡委員 実は先般来私は運輸当局並びに大蔵当局に御質問を申し上げているわけですが、いまだに十分に了解しがたい点があるわけであります。従って先般から大蔵大臣あるいは大蔵次官の御出席をお願いいたしておりましたところ、非常にお忙しいのに御出席いただいたことについて敬意を表します。  今度の国鉄予算を検討いたしておりますと、私たちは納得のできない点があります。すなわち今度の運賃値上げに当って政府説明を聞いておりますと、国鉄の経営調査会の答申を参酌したということをしばしば申されておるわけであります。ところが都合のいいところだけを参酌されたのであって、都合の悪いところは少しも参酌をされておらない。たとえば日鉄法の第五条の二項にこういうことがございます。政務次官、十分お聞き取りをいただきたいと思うのです。「政府は、必要があると認めるときは、予算に定める金額の範囲内において、日本国有鉄道に追加して出資することができる。この場合において、日本国有鉄道は、その出資額により資本金を増加するものとする。」こういうようにうたわれているわけです。ところが私は寡聞にして、この出資額というものがいまだ行われた事実を知らないのです。わずかに昭和二十五年に見返り物資等の関係で四十億の出資をされておる、これだけです。ところが一方経営調査会の答申案はどういうふうに言っているかと申しますと、修繕費と工事経費との区分を明確にしなさい、こう言っておる。同時に工事経費の必要規模及びその資金調達方法という項で、取りかえば自己資金によること、電化、ディーゼル・カー、客貨車等の増備などのように将来収益の増加が認められるもの、少くとも収入の増加の裏づけのあるものについては、外部資金によることと明確に勧告をいたしておる。いわゆる採算のとれるものは外部資金によりなさい、こう言っておる。ところが本年の国鉄予算を見てみますと、工事勘定千六十九億のうち、政府が貸付をいたしておりますものはわずかに八十億です。そうしてほとんどが国鉄の収益の中でまかなおうとされておる。さらに三百六十六億の一割三分値上げはすべて建設に回すと、こう言われる。きのうの今野参考人の話によりましても、新設とかあるいは建設という工事は当然政府の出資、あるいは政府の低利な貸し出しによって行うべきものであるということを言われております。私たちは全く同感の意を表しておるわけです。そこでお尋ねいたすわけですが、この五条の第二項はどういうときにお使いになるのか、大蔵次官の御説明を伺いたい。
  28. 足立篤郎

    ○足立政府委員 当委員会から大蔵大臣の御出席の御要求がございまして、本来大臣が出席をして御答弁申し上げるべきでございますが、御承知のような状況でございますので、私かわってまかり出たわけでございます。井岡委員のお尋ねでございますが、国鉄公社として発足いたしまして以来、その基本的な方針といたしましては、今までに主計官からもたびたび御答弁申し上げました通り、独立採算制を基本といたしまして、みずからの力でみずからの設備も整備をしていくという建前で、公共企業体としてこれが発足していることは、申すまでもございません。ただお尋ねの第五条の第二項に「政府は、必要があると認めるときは」云々と、投資をすることがあるのだという意味の規定があるわけでございますが、従来までの経緯にかんがみまして、政府は相当な貸付をいたしておるわけでございますし、国鉄ができるだけ自力でその整備をやってもらうという方針でやって参ったわけでございます。ただいま調査会の答申につきましてのお話がございますが、施設の取りかえ等につきましては、いわば俗に申し上げますと、消耗品的なものでございますので、当然国鉄内部の経費でまかなうべきである、将来収益の見込まれるものにつきましては、外部資金によってこれをまかなっていけという趣旨のことがあるのは、お説の通りでございますが、これは私は察しまするに、将来収益のあるものは、その収益をもって、これを返済し得るのであるから、借入金等によりましてこれをまかない、収益によってそれを埋めていくという意味のものではないかと思うのでありまして、これはもちろん外部資金ということは非常に広い表現でありますから、これに政府の投資が必要となります場合には、これも含むという意味もあるではございましょうが、私は外部資金ということを調査会がうたっておりますのは、一応そういう意味に解釈しているのでありまして、こういう答申があったから外部資金の全部なり、あるいは一部なりを、直ちに投資しなければならないという性質のものではないのじゃないかというふうに解釈をいたしておる次第でございます。
  29. 井岡大治

    井岡委員 大蔵省の方は、国鉄は独立採算制でやっておるということをきのうも鹿野主計官が申されたのですが、私は国鉄は独立採算制であると同時に、一方公共という立場が非常に強い、むしろ国鉄というものは国の、国民経済、あるいは産業経済に及ぼす影響が強いので、独立採算というよりは公共性の方に重点が置かれておるのではないかと思うのです。大蔵省は都会のいいときには独立採算制と言いますが、自分たちの都合の悪いところは公共性ということを主張される。たとえばこれは国鉄運輸当局の仕事だから私は知らないと、こういうふうにお答えになるかわかりませんが、私は国の政策から来るものであるから、そういう御答弁はいただかないつもりです。いただいても承知はできません。と申しますのは、国鉄のバスの企業というものを見てごらんなさい。ここは採算がとれるからということで、しかも沿線の市町村がこぞって引いてくれと、こういって要求をしましても、これはなかなか引いてくれません。免許をくれません。それをやることによって民営を圧迫するという理由で許可をしないのです。そうして採算のとれない路線のみを走らしている。その理由は、国鉄は公共企業体であり、国の最大の公共機関である。ですから産業開発等の立場から考えるならば、採算を度外視して国鉄が国に貢献をすべきである。こういう立場でやらしているわけです。こういう点から考えるならば、大蔵当局の言われる独立採算制であるという論は、私は誤まりであると思う。ただいまも濱野委員が言われておりましたように、国鉄が真に独立採算を持った人格であるとするならば、ことさらに内閣の制肘を受けなくとも、労使の問題は国鉄自体で解決できるようにすることが最も能率的なんだ。それを許可しない、やってもらっては困る……。こういう点等を考えるならば、国鉄というものは単なる独立採算の民間企業と同等でないということが言えるわけです。大蔵当局は品を開けば、独立採算であるからわれわれはそうめんどうを見る必要はない、こういうお説のようでありますが、私は納得することはできません。もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  30. 足立篤郎

    ○足立政府委員 独立採算制であるから、大蔵省は一切国鉄にまかせてめんどうを見ないのだという意味で私は申し上げたのではございません。お説の通り、今日の国鉄は非常に大きな公共的な使命を持っているということは、申すまでもないことでございます。今お説の中にもございました通り、たとえばバス路線の問題等につきましても、かえってペイしない、しかもそれが産業開発に役立つバス路線をあえて国鉄がやっているというお説があったわけです。これを逆に、もうかるところを民営を圧迫してでも国鉄がとっていくというならば、これは独立採算制で大蔵省があまり縛り上げるから、国鉄は苦しまぎれに民営を圧迫するという非難が出るでございましょう。お説の中にもございました通り、公共性を考えて運営にも十分注意しているということでございます。であるから国鉄が新線を建設する、あるいは調査会の答申にもありましたような新しい施設につきましては、これはすべて投資でまかなうのだという理由には私はならないと思うのでありまして、それは彼此勘案して国鉄のまかない得る範囲考えながら、今度お願いしております運賃改正等も、国民全般のために国鉄の輸送力の増強という点に重点を置いて、もっぱらこれに金を使うということで行っているわけでございます。もし大蔵省が今お説の通り国鉄は独立採算制であるから、一切国鉄まかせだという冷たい考え方でいるとするならば、今まで国鉄が運営上必要である二千億余りの借入金、こういうものもこれは考えるべきではないので、これを考えているということも、これは御了察いただきたいと思っているわけであります。
  31. 井岡大治

    井岡委員 ただいまのお話は融資だけをお話しになっておられる。これは一つには政府責任なんです。国鉄はここ両二、三年来非常に赤字で悩んでおったのです。そのために国鉄をしてこのままでほっておくならば、乗っておるお客様の生命も私どもはよう保証をいたしません。従って値上げをして下さいということを再三にわたって国鉄政府に向ってお願いをされた。私は事実を知っておるわけなんです。それを国鉄運賃を値上げすることによって国民生活に大きな影響を持つということ、同時にまた政府国鉄運賃によって物価が値上りをするという泥をかぶることをおそれて今日までやらなかったのです。その当時に、たとえば国鉄が切りかえ当時に借りておる五百八十億というものを資本勘定に入れてあったならば、元利償還五十五億というものが浮いてくるわけなんです。これは政府が勝手に五百八十億を持ってきて、それをやるのではなくて額面だけの書きかえをやればいいのです。そういうことは一つもやっておらない。特に本年のように二千億からの増収——きょうの新聞では二千七百億というようなことをいわれておるようですが、こんなに大きな自然増収のあるときにはこれを振りかえてやったならば、どれだけ国鉄財政にゆとりを持つかということは論を待たない。また政府はどうしてもインフレは起らないと言っておりますけれども、きょうの日経では徐々にインフレが起ってきている。物価の高騰になってきているといっている。こういう際にわずか五十五億ではありますけれども、これを振りかえてやって、一割三分の値上りを一割にとどめるとか、あるいは九分にとどめるということになったならば、これこそ国民経済に及ぼす影響というものは非常に大きい。喜ばしいことだ。いわゆる政府の健全財政を維持するものだ。私はこういうふうに考えておる。政府は今まで二千億からの投資をやっておると言っておりますけれども、これは投資をしているのじゃない。金を借りておる。借りておるものは利子を払わなければならない。国鉄は毎年何ぼの利子を払っておるか。約二百億近い利子を政府に払っておるのです。こういう点を考えますならば、わずか五百八十億でありますけれども、これを振りかえてやるという、政府がほんとうに国鉄がかわいい、国民生活がかわいいというのであれば、なるほど私は必要だと言うのです。従ってこの二項は何のために設けたのか、これをお聞きしているのです。
  32. 足立篤郎

    ○足立政府委員 お答えになりますかどうか、私の感じを率直に申し上げてみたいと思います。実は私も満鉄に十年ばかり勤務いたしまして、貨物関係の運賃を担当したことがあるわけであります。私の体験から率直に申し上げますと、国鉄当局あるいは運輸省から、この委員会でたびたび運賃改正の問題について御答弁があったと思いますが、申すまでもなく国鉄公社ができましてから今日までの経過を振り返ってみますと、昭和二十四年から二十八年ごろまでは非常にインフレの危険が強かったときであります。国全体としてこのインフレを押えるために、いろいろな面にしわ寄せが行っているわけでありますが、私はそのしわ寄せの一番尤たるものは国鉄運賃に来ておったのじゃないか。つまり運賃を動かせばインフレになる。インフレ要因はできるだけ避けたいということから、相当無理な経営を国鉄にさしておった。私はむしろ国鉄に同情すべきだと思っておるわけです。今日上げればまたインフレになるじゃないかという御議論はございますが、さような経過から考えてみますと、二十九年からのデフレ政策、ことに三十一年度におきまする実績を見ましても、経済はきわめて安定してきたという時期に運賃体系も改め、そして運賃をあるべき姿に持っていかなければ、ひとり国鉄だけではなく、私鉄もあるいは一般の運送業者も小運送関係も、これは一般経済の動向から見まして非常に無理がかかっておると私は思っておるわけでございます。従って国鉄だけを責めまして、経営を合理化せよ、そして節約をしていけと言いましても、これにはできる限度というものがあると私は思うのであります。従いまして私個人の経験から極端に申し上げますと、今まで御答弁申し上げておると思いますが、これは一般物価の趨勢と大体見合った、国鉄経営上からも無理のない運賃体系に持っていかなければ、私は国鉄を責めても無理があるのじゃないかというふうに見ておるわけであります。特に指数の経過を見ますと、国鉄が絶対必要とするような資材——石炭につきましては昭和十一年を基準として実に五〇〇以上の指数になっておる。あるいはレール、まくら木、セメント、鉄鋼というようなものもいずれも三百五十倍から四百倍くらいにはね上っておる。ひとり国鉄運賃だけが、旅客について現在では一一六、貨物について一六六、これが一割三分の運賃改正をお認め願いましても、一三〇か一八〇くらにしかならないということでありまして、この点に私は根本的な問題があるのではないかというふうに考えておるわけであります。従いましてお尋ねの第五条の第二項の問題でございますが、私どもとしては国鉄が運賃体系のあるべき姿にない。なおかつ大きな国策的な見地から、ペイしない新線などもどんどん作らなければならない。あるいは先ほど御指摘のバス路線も設定しなければならない、そういう特別な事情が生じまして、どうしても国鉄の自己資金でまかない切れない場合には、真剣に検討して、この法律の援用といいますか実施といいますか、これも考えなければならない時期も将来はあろうかと思いますが、現状におきましては、今まで不当にしわ寄せされておった国鉄運賃あるいは国鉄の経営内容というようなものにつきまして、もう少し私どもは同情ある目で見て、そして運営が立つようにしていくことが先決問題じゃないか。だからそういった今まで政治的な理由によって無理のかかったものを、今ここで政府が全部しりぬぐいをせよと言われても、私はこれは過渡期にあるというふうに考えておるのでありまして、大蔵事務当局あたりおいては相当どぎつい冷たい印象を与えたかもしれませんが、私は少くとも政治的な立場でさような見方をしていきたいと思っておるわけでございます。   〔今松委員長代理退席、委員長着席〕
  33. 井岡大治

    井岡委員 次官は、表面的に聞いておると非常にあたたかいお言葉なんです。しかしながら今日の一割三分の値上げそれ自体についても、これは国鉄経済を十分まかなうものでないということは次官もお認めですね。
  34. 足立篤郎

    ○足立政府委員 私は実は就任日なお浅うございまして、現在の運賃改正による内部的な事情について、数字的につまびらかに検討しておりませんので、大蔵政務次官として大臣にかわってここで今の御質問に対して、大丈夫でございますと言ってお答えするだけの知識を持っておりません。まことに申しわけのないことでございますが、今度の運賃改正につきましては、もちろん御意見のありました通り、最近は特にインフレ気がまえということが国全体として憂慮されておる際でございますので、なるべくこれは押えていきたいという政治的な理由もかかっておりますから、これで十分だということは言えないと思います。
  35. 井岡大治

    井岡委員 結局これは十分でない、こういうことです。そうしますと将来新線計画でどんどん新線を作ってペイしないような場合があるならば、この二項を考えたい、こういうことのようなんですが、国鉄の五カ年計画を十分見せていただきますと、採算のとれない路線ばかりなんです。この間も、私はここで表を主計官に見せたのですが、国鉄の七割五分まではペイしない路線なんです。松尾先生は、これについて切ってしまう意思はないかという御質問をきれましたが、聞くところによりますと、今日ドイツにおいてそういう措置をとってようやく国鉄が黒字になりかけてきた、こういう話を聞いております。しかし日本の現状からペイしない路線であるからといって、その路線を切って捨ててしまうということはどうしてもできないと私は思う。むしろペイしないところの路線を新設していって、その地方の開発をはかってやるということが、乏しい資源の日本としては必要ではないか、私はこういうように思うのです。従って今回のこの値上げについて、私たちの党はこれについての意見を持っております。意見は持っておりまするけれども、産業開発を行う、こういう立場に立つならば、われわれは十分理解のできない筋もないわけなんです。従ってこの二項というもので、わずかではありまするけれども資本勘定に入れてやるならば、どれだけか国鉄気持をふるい立たせることになると思うのです。国鉄の要員が昭和二十八年以来一人も欠員一の補充をされないで、きのうの話では、国鉄当局が御答弁ができないような労働強化をやりつつ、今日まで作業をしてきおるわけなんです。ここで政府が少しでもあたたかい手を出してやるならば、より一そう国鉄の職員がふるい立つであろうということは言を待たない。ひとり労働問題だけに一生懸命血道をあげるのではなくて、ふだんから肥やしをやるということがやはり木を大きくすることなんだ、こういう立場で、現に二千七百億に近い自然増収があるときですから、政府は五百八十億をそっくり入れるのではなくて、ただ勘定項目を入れるだけなんです。それを国鉄に払い戻せといったところで、今の国鉄の財政状態ではよう払い戻せない。わずかに五十五億をあなた方が損をするというだけなんです。こういう点から、私は今こそこの二項を適用してやる、こういう大蔵当局の配慮というものがあっていいじゃないか、こう思うのです。抽象的でなくて、具体的に一つお答えをいただきたいと思います。
  36. 足立篤郎

    ○足立政府委員 ただいま御指摘のありました通り、五カ年計画というものがベースになりまして今度の運賃改正も考えられておるわけでございますが、この五カ年計画に関する限りにおきましては、先ほど私も申し上げました通り国鉄の内部資金、独立採算制を基本とするところの行き方でまかない得るという見通しをつけて計画を立てておるわけであります。もちろんその中には、三十二年におきましても三百億余りの借入金をやっておる。これは調査会の答申にもありますような考え方でやっておるわけでありますから、今直ちに政府の投資をどうしても必要とするという理由にはならないと思うのでありまして、私ども大蔵省としても、少くとも私どもに関する限りは、今申し上げたような考え方で、理解のある態度でいきたいと思っておりますが、そうだからといって、今直ちに投資をするという考え方はないわけでございます。
  37. 井岡大治

    井岡委員 ことしの投資は三百億と云々されておりますが、これはみんな民間から借りるのです。利子はみんな高いのです。政府はこういった自分の政治的な配慮から国鉄に対して民間から金を貸す、こういう措置をやっておる。あるいはみずからの公債によってまかないなさい、こういっておる。ところが一方民間産業については、政府は低利の金を貸しているではないですか。あなた方は、電源開発とか船会社にはどうしているのですか。こういう大資本に対しては政府はどんどん金を貸してやって、自分の経営しておる、しかも自分が最も大事にしなければならない国鉄というものを粗末にする、こういうことはどこにありますか。ですから、私はこういう機会にこそ政府は思い切った施策を講ずることが必要ではないか、こう言っているのです。お答えをいただきます。
  38. 足立篤郎

    ○足立政府委員 先ほど私は率直に申し上げたのでございますが、今までの国策の犠牲になって苦しんできた国鉄の運賃体系というものを、あるべき姿に持っていって、そうして逐次改良をしながら全般的な整備を考えていく、そこでほんとうに将来それではどうにもならないのだ、運賃はこれ以上上げれば一般の物価指数を上回ってしまうのだ、こういうようなことになりまして、これはかえって国鉄の運賃が国の経済の混乱を招くというようなことになっては大へんなんでございますから、さような事態がくれば、私どもとしても卒然として考えなければならぬ問題だと思っておるわけであります。一応計画は先ほど来申し上げておる通り考え方で参っておるわけでございますので、今のところ直ちにおっしゃるような投資をするという必要はないと考えておるわけでございます。
  39. 井岡大治

    井岡委員 これ以上幾ら御質問を申し上げましても次官はお答えにならないようです。しかし今の言葉は聞き捨てならない点が一つあります。次官は国鉄には非常にかわいそうな目にあわしている、従ってあたたかい気持で接してやらなければいかぬ、こういうように前段では言われておる、しかしながら最後になって言われたことは、国鉄の運賃が現在の物価ベースより上ってしまって、そうして国鉄の運賃値上げをすることによって国民経済が混乱するようなときになったら、そうしたら卒然として考えてやろう、こういうのです。そうだったら当分考えないということと同じですよ。国鉄は今までいかに苦しめられてきても、一生懸命みずからの力によって今日まで持ちこたえてきている。ですから政府が許してくれなければ、やはり将来も持ちこたえていくでしょう。その結果はどうなってくるかというと、労働強化になる、いわゆる国鉄の施設というものは荒廃してきます。こういう点を政府はどういうようにお考えですか、私は追及するのをやめようかと思ったけれども、今の言葉で私はやめるわけにはいきません。
  40. 足立篤郎

    ○足立政府委員 私に言い過ぎがあったらお許しをいただきたいと思います。私の気持は先ほど数字を申し上げました通り、非常に不当な犠牲を受けておったといいますか、しわ寄せを食ってきた国鉄の運賃体系そのものをもう少し是正いたしまして、国鉄の経営内容を楽にてきるようにし、なおかつ国家的な使命によってペイしない路線の建設等によって、これが国鉄の経営を脅かす、それをやれば、それをまかなうために運賃改正をさらに考えるということになれば、これは著しく国家経済を混乱に陥れるというような事態がくれば、これは当然考えなければならぬという意味のことを申し上げたわけです。国鉄の運賃がどんどん上ってしまって、一般物価より、一番高くなってしまう、そういう時期に考えるという意味じゃありません。
  41. 井岡大治

    井岡委員 国鉄の路線の中でペイするという路線はないのですよ、どんなに考えたって。この間もこれを配ってくれたのですが、これは赤いところはみなペイをしないところです。国鉄路線の七割五分までは赤字なんです。将来ペイをするようになるなんて考えてみたって、ペイをするようなことはないですよ。たとえば重要物資だってその通りなんです。あなた方は政治的に運賃を抑制しているじゃございませんか。この答申案には、逓減その他については特別の考慮を払うべきである。現行の逓減法その他については払うべきであるといっているけれども、これをやることによって国民経済に影響を及ぼすというので、やはりあなた方は逓減法をとっておられるのです。ペイをするとかしないとかいうことよりは、元来からペイをしないようにできているのです。それを知らずにやっておるということは、国鉄がいかに努力をしておるかということなんです。去年とことしと同じ人間、工事勘定であると言うけれども、昭和二十九年と三十二年とでは工事勘定の従業員は五百人も少くなっているじゃないですか。事業量は千六十九億というような大きな工事をするにもかかわらず、五百人も少くなっておる。それでも一生懸命やっていこうとしている。こういうところに国鉄一つの労働問題もあるし、政府ももっとあたたかい手でもっていかなければ、私は決して根本的か解決はできないと思う。ですから、血来ペイしないであろうということでかくて、国鉄の経営というものは元来州らペイしないものだ、公共性という限りにおいてはペイしないものだと思いますが、こういうように考えなければこんなむちゃな路線を引かせますか。こういう点を十分考えていただきたいと思います。  さらに私はこの機会に一つ聞いておきますが、先般の国会で上りました政府からの借入金三十億五千二百万円の金があるわけです。法律改正でこれを六年間に払う、ことしは六億払う。こういう金でも、聞くところによると、大蔵省はあとの二十四億を取ろうとしておる。こういうむちゃなことをせぬと、やはり国鉄をかわいいと思うなら認めてやってほしい。この点どうですか。
  42. 足立篤郎

    ○足立政府委員 私の言葉が足りませんので非常に誤解をされたと思いますが、ペイをするかしないかという問題は、一口にペイということになりますれば、やはり国鉄全体だと思います。そこで図面をお示し下さいましたけれども、やはり国鉄が新線建設をし、開発をしていくということは、公共的な目的を持ってやっているわけでございますから、その使命を達成する過程におきましては、ペイしない路線が部分的には多いと思います。その部分的に多いものは数が幾らありましても、一方黒字の出る路線というものが、数は少くても金額においては相当な黒字を出しておるわけでございますから、全般としての問題になると思うわけでございます。私がさっき申し上げたのは、こういう使命を達成するにも限度がある、やはり運賃体系そのものをノーマルな姿にしておいて、その上でこういう問題が起った場合には、国としても考えなければならぬ時期もあるであろうという意味のことを申し上げたわけでございます。  なお三十億の年賦還付の問題でございますが、これは大蔵委員会におきましても社会党の委員の方からいろいろ御質問もございました。その節お答えをいたしたのでございますが、やはり経理でございますから、けじめはつけていかなければならぬ。しかしこれは運賃改正とは関係がございませんので、四月になりますと全額還付しなければならない時期が来るわけでございます。これも国鉄の経営内容ともにらみ合せまして、年賦にしようというので五年間の年賦ということにいたしたわけでありまして、むしろ政府としては——そう言うとまたしかられるかもしれませんが、国鉄の経営内容考え善処したというふうに申し上げてもいいのじゃないかと思っております。
  43. 中居英太郎

    ○中居委員 関連して、政務次官に一つお伺いしますが、先ほど来の政務次官の答弁を聞いておりますと、国鉄の運賃はあるべき姿に是正することが当然である、こういう建前で今回の一三%のアップを考えたのだ、こういうことでございますが、私も国鉄運賃があるべき姿に是正されなければならぬという原則については、否定するものではございません。ただ政務次官はそのあるべき姿についての理由といたしまして、過去数年間の国鉄運賃はいろいろな経済の客観情勢によって、政治的な配慮が行われてきた、この政治的な配慮が運賃にしわ寄せされて国鉄の運賃が安くなっておるから、それを今回是正するのだ、こういう答弁でございましたが、しかし私は過去数年におけるところの政治的配慮によって、国鉄の運賃が不自然な姿に置かれておったという、この責任を今後の利用者に負担せしめるべき性質のものではない、こう思うわけであります。昭和三十一年なり昭和三十二年なりの経済情勢のもとにおいて、しからば現在の国鉄の運賃ベースがあるべき姿にないかということでございます。現在の経済情勢のもとにおいて、私は現在の運賃べースが国鉄の経営を維持するに十分なベースであると思っております。その証拠には今回の一三%の運賃値上げの理由を検討してみますと、すべて過去における不自然な運賃ベースによって国鉄にしわ寄せされた老朽施設の取りかえであります。過去における老朽施設を取りかえるために五%相当の値上げをやっておる、それからまたあとの五%は日本経済の増大に伴うところの輸送増のための施設の増加です。あとの三%は固定資産税です。こういうものをもって運賃値上げの理由としようとするところに、私は根本的な間違いがあるではないかと思う。もちろん国鉄運賃のあるべき姿というものは、原価主義を貫くべきだと私は思っております。こういう要素のものが過去における政治的配慮によって生じた老朽施設、あるいは国家の要請によって将来必要になってくるところの輸送力の増強、こういうものが果して原価構成の要素になるとあなたは思いますか。この点について御答弁願いたいと思います。
  44. 足立篤郎

    ○足立政府委員 ただいまのお説をお聞きしますと、的確に理解できないのでございますが。国の必要で将来整備をやらせる、増強をやらせる、これは民間の輸送に対する需要が起ってくるであろうという想定から増備をするわけでありまして、利益を受けるのは将来の国民であるわけでございますから、その国民がいわば整備を要請しておるという形になるのじゃないかと思います。従って将来汽車に乗られる方及び貨物を輸送される方、こういう方々がその運賃を負担をなさるということは、むしろ当然じゃないかというふうに私は考えておるわけでございまして、御質問の趣旨をあるいは私が的確に把握していないかもしれません。
  45. 中居英太郎

    ○中居委員 把握していない。重ねて伺いますが、国鉄運賃のあるべき姿ですね。正常の姿というものは、言葉をかえて申しますと、原価主義を貫くということですね。御異議ございませんか。——原価主義を貫くべきであるということです。これは運賃法にもちゃんと定めております。しからば原価を構成するものは何であるかということなんです。これはいろいろな学説もあるでしょうが、今日の段階では経営的な経営費、減価償却費、あるいは平均的の災害費、公債費、平均的な退職引当金、こういうものをもって原価構成の要素にすべきである、こういうことは常識的な学説であるといわれておるのです。こういうものを算定の基礎にして国鉄の運賃を算定することが、公正妥当な方法なんです。ところが過去における政治的な配慮によりまして国鉄にしわ寄せされて、過去において累積された老朽施設というようなものを原価計算の要素に入れることが、果して公正な算定であるかどうか、こういうことを私は聞いておるのです。政府政治的な配慮によって過去において累積された老朽施設というものは、政府責任なんです。これを利用者の運賃の構成にすべきじゃない、こういうことを私は聞いているのです。この点はどうです。
  46. 足立篤郎

    ○足立政府委員 老朽施設についての御説を非常に強調されておるわけでございますが、これはもう企業体であれば老朽施設を整備して内容を充実していくということは当然であるわけでございますから、これを直ちにたなからぼたもちが落ちるように、こういったものは別扱いだという御主張は、私はうなずけません。(中居委員「原価計算の建前から答弁して下さいよ」と呼ぶ)その点は先ほどお断わりした通り、私もまだ事務的に全部調べておりませんので、十分なお答えができませんが、むしろ運輸大臣も御出席ですし、運輸省あるいは国鉄当局からその辺の技術的な御答弁を願った方がいいと思います。
  47. 松原喜之次

    ○松原委員 関連。これは運輸大臣にも国鉄当局にも大蔵当局にも聞いておいてもらいたいことなんですが、一体同じ交通機関でありましても、たとえば私が最もよく知っておりまするタクシー、ハイヤーの料金のごときは、国鉄の倍数よりももっと低いのです。円タクの時代というのは、タクシーとしては一番安かった。ところが現在平均運賃は百三、四十円、もっと安いところもあるわけです。これでもやっていけるのです。大蔵政務次官、よく聞いて下さい。これでやっていっても、別に運賃の値上げ問題は起っていない。そこでいやしくも公共企業体という限りは、ことに国民経済に重要な影響を及ぼすこの運賃というようなものを、軽々しく上げるべきではないのです。国鉄当局としても、運賃の値上げなんか最後なんです。それより前に、もっと経営上打つべき手があるのではないか、こういうことに心を向けるのが当然なんです。  そこで井岡君の問題が出てくるのです。政治的配慮によっていろいろ国鉄に経営上の損害を与えておる。そのものが、もし国の一般会計で負担すべき筋合いのものであるならば、一般会計で負担して、しかる後運賃のあるべき姿ということをもう一ぺん考えてみなさい、こういうことなんです。百十倍だから、百五十倍だからこれはあるべき姿でないのだ、そういう一般物価指数との比較においてのみものを考えて、そうして運賃があるべき姿でないのだという結論を下すことはきわめて軽率なんです。非合理的なんです。いやしくも経営である限りは、ことに公共企業体である限りは、運賃の値上げ等はもっとあとに回すべきだ。それより先に考えるべきことを井岡君から言うておるわけなんです。政府が負担してまさに法律上も一向差しつえないような点、ことに実態から考えて、政府の政策によって受けたいろいろの損害を一般会計から補てんして後、運賃問題に持ってきなさい。その一つの方法として、この政府の貸金を出資に振りかえてもいけるじゃないか、あるいは進んで、三十二年度のごときは膨大な自然増収が見込まれておるときなんだから、コストの安い政府出資をもっとつぎ込んだらどうですか、しかる後運賃を考えたらどうですか、こういうことなんです。この議論は何人といえども否定できない議論だと私は思いまするが、大蔵政務次官もそういう点について、それこそあるべき姿に国鉄の経理を直すために、今後大いに努力してもらわなければならない。これがわれわれの結論であって、この結論に対してはだれも否定の勇気はあるまいと私は思うのですが、政務次官はどうお考えですか。
  48. 足立篤郎

    ○足立政府委員 国鉄運賃改訂の法案が決定いたしますまでの経過につきましては申し上げるまでもない。今お説のような点につきましては、相当深刻に政府内部におきましても議論が戦わされて結論としてこの法案を御審議願っている結果になっているわけでございます。ただその前提としての御意見につきましては、実は私がさっき申し上げたこととは根本的な食い違いもございますが、皆様方の御意見は十分拝聴いたしたいと思います。
  49. 中居英太郎

    ○中居委員 さっきの私の質問を大蔵次官はよくおわかりでないようでしたから、重ねて釈明しておきます。たとえば国有鉄道と同じような形態の機関がもう一つここにあったと仮定します。そして現在の国有鉄道をAとします。このAの国有鉄道は過去において運賃が政治的な配慮によって非常に圧迫されて、そのためにいろいろな老朽施設ができてきた、そしてその老朽施設をもとに戻さなければならぬというので、今回の一三%のうちの五%という金額がそこに充当されているわけですよ。値上げの五%がそれです。ところが一方もう一つあったと仮定する国有鉄道のような企業が、過去においてそういう償却を全部やっておった、こうしますと、こっちは運賃の値上げは八%で済むのです。これが原価を貫かなければならないという運賃のほんとうの姿なんです。ところが一方のこっちは過去において損したから、それも運賃の構成に織り込む、こっちは損していないから八%の値上げで済む、こういうことは運賃の建前としてあるべきことではないのです。ですから当然過去におけるところの政治的な配慮、国家的な使命によって運賃にしわ寄せせられて老朽化しているところのこの施設に対しては、財政のゆとりができた今日政府資金をもって充てるべきものであって、将来の利用者にこれを転嫁すべきものではないのです。将来の利用者の運賃の構成にすべきものではないのです。こういうことを私は言っているのですから、こういう点を大蔵当局でも運輸当局でも、今からでもおそくないですから御考慮願いたい、こういうことでございます。
  50. 淵上房太郎

    淵上委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十八分散会