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1957-03-12 第26回国会 衆議院 運輸委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十二日(火曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 淵上房太郎君    理事 木村 俊夫君 理事 畠山 鶴吉君    理事 松山 義雄君 理事 山本 友一君    理事 井岡 大治君 理事 松尾トシ子君       平田 喜一君    佐伯 宗義君       關谷 勝利君    中嶋 太郎君       永山 忠則君    濱野 清吾君       原 健三郎君    堀内 一雄君       眞鍋 儀十君    米田 吉盛君     早稻田柳右エ門君    下平 正一君       楯 兼次郎君    中居英太郎君       正木  清君    松原喜之次君       森本  靖君    山口丈太郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君  出席政府委員         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     石井 昭正君         日本国有鉄道参         与         (職員局長)  兼松  学君         日本国有鉄道参         与         (経理局長)  久保 亀夫君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 三月十二日  委員松岡駒吉君辞任につき、その補欠として楯  兼次郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣  提出第五三号)  春期闘争に伴う列車運行状況等に関する件     —————————————
  2. 淵上房太郎

    淵上委員長 ただいまより委員会開会いたします。  この際、政府及び国鉄当局より、春季闘争経過等につきまして、昨日に引き続き説明を求めます。宮澤運輸大臣
  3. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 春季闘争につきまして、昨日ああいう事態ができましたことはまことに遺憾でありまして、事前から国鉄当局者及び労組の側といろいろ交渉をしてきたのでありまするが、調停に入りまして、御承知通り調停は九日にあの案が出たわけであります。この調停につきましては、国鉄当局におきまして、調停理由その他、出た根拠についていろいろ検討を加えておりますので、まだ国鉄自体態度も決定しておりませんが、何としてもやはり当局者組合側とが、円満に一つ妥結の道を講じていきたい、こういう方針のもとにいろいろ折衝をしてきたのでありますけれども、ついに昨日、今日のよう事態に立ち至りまして、まことに遺憾にたえないところでありますが、国鉄当局はもとよりその正面の担当者としてこれに当っておりますが、政府もできるだけこの事態円満裏解決して、再びこういうことの起らないようにしたい、こういう希望を持ってやっておるわけであります  昨日の状況につきましては、政府委員から御説明申し上げます。
  4. 權田良彦

    ○權田政府委員 ただいままで手元に報告の参りました分を簡単に取りまとめて御報告申し上げます。  昨日の第三波の闘争の第一日の結果といたしましては、運行を取りやめました列車の数が、旅客列車全国で三十四本、貨物列車は九十七本、それからおくれました列車、運転はいたしましたが遅延をいたしました列車は、旅客列車で、五分ないし百六十九分の遅延でございますが、百四十五本、貨物列車で、三分ないし三百五十七分の遅延でございますが、四十八本、なお駅の出札等におきまして、札が売れませんで、無札で入っていただいて、無札証明取扱いをいたしましたのが、全国で約一万三千四百枚ばかり、こういうことになっております。なお昨日東京局管内では午後六時ごろにはダイヤが完全に平常に戻っております。  次に本日の状況でございますが、まず東京管内では、赤羽駅が今暁四時ごろ信号所勤務者組合説得員によって連れ出された関係上、到着の列車が三、四十分ずつおくれ、またこれが一部電車に当りましたけれども電車の方は大したことはございません。なお上野客貨車区で、検査掛の詰所で一部連れ出された者もございます。それから大宮の駅では、上りハンプ信号掛が連行されましたが、下りハンプかち助勤手配をいたしまして、支障はございません。なお新橋、有楽町その他の駅で若干赤旗を振ったり宣伝をしている程度はありますが、運行に異状はございません。大阪関係では、京都の駅で六時ごろから信号掛がやはり一部連行されたりいたしておりまするが、この程度でございます。それから新潟関係はまだ行動を起しておりません。広島関係は、八時半ごろから突入した模様でございます。鹿児島関係では、鹿児島駅あるいは西鹿児島駅で組合員が連行されましたが、助勤手配で、現在のところ作業には支障を生じておらないようでございます。  ただいままでの状況は大体その程度でございまして、今のところの見通しでは、昨日の影響よりは本日の影響の方が少いという見通しでございます。     —————————————
  5. 淵上房太郎

    淵上委員長 この際お諮りいたします。ただいま大蔵委員会において審議いたしております揮発油税法案は、本委員会といたしましても、前国会において決議を行なっている等のいきさつもありますので、当委員会といたしまして連合審査会開会を申し入れたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 淵上房太郎

    淵上委員長 それではさように決定いたしました。  開会日時等に関しましては、大蔵委員長と協議の上決定いたしまして、後刻報告いたします。     —————————————
  7. 淵上房太郎

    淵上委員長 この際質疑を許します。山口丈太郎君。
  8. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は国鉄の今回の春季闘争経過に関連して、運輸大臣並びに国鉄総裁職員局長にお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、運輸大臣はお急ぎのようでありますから、本日発生いたしました緊急事態についてその所見をお伺いいたしたい。それは本日の読売新聞を見ますと、国鉄職員局長である兼松学氏と国鉄労働組合企画統制部長である野々山一三氏との抱き合せ対談の記事が出ておりますが、その中で国鉄労働組合要求して戦っておることはあたかも法律違反であって、これは全く強盗的な所為である、こういう趣旨の談話を公けにせられておるのであります。かつて吉田総理は年頭の所感において、労働組合不逞のやからである、こういうことで非常に世間を騒がせましたことは御承知通りであろうと思うのであります。いずれにいたしましても、今日国民全体はこの国鉄の賃上げをめぐる紛争については、一日も早く正常の状態に戻してもらいたい。そのために国鉄当局との間には一日も早くというよりも、一刻も早く問題の解決を急いでもらいたいという要望がほうはいとして起りつつあることも、大臣承知通りであろうと思うのであります。このよう状態の中にあるときに、しかも国鉄職員局長という重要なる職務にあって、五十万になんなんとする国鉄職員を統率していく、いわば最高責任地位にある人とも申すべき人が、ある集団に向って強盗呼ばわりをするのは、果して事態の急速なる解決に役立つものであるか、私はかような不遜な言辞を弄する職員のあることを遺憾に思うのでありますが、責任ある監督者としての運輸大臣はこれらについてどういう御所見をお持ちであるか、このような不謹慎きわまる職員に対して、今後どういう御処置監督責任上おとりになろうとしておられるか、この二点をまずお伺いいたしたい。
  9. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 お話の件は私もただいまここで新聞を見たわけでおりますが、国鉄組合要求をするとか申し出をするとかいうことは許されておるのでありますが、争議行為は御承知通り許されておらない不法な行為であります。こういうことに出つつあることは私ども非常に残念に思っておる次第でありますが、この新聞記事については、果してこの新聞に載っている文字通りのことを職員局長が言われたかどうか私も存じませんけれども、たとえの引きようが適当であるかないかという問題でしょうが、しかしそれは不法行為があるということについてそういう表現の仕方をしたのではないかと思っております。しかしその表現の仕方はなるほど新聞記事を見ましても、もしこの通りに言われたとすれば、比喩の持っていき方はよい例ではなかった、かよう考えておる次第であります。
  10. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 ただ言葉上の引例として不適当であったというようなことでありますけれども、たといそれが言葉上の、いわば例として引かれた言葉であるといたしましても、その人の持ちまする本音と申しますか、抱いております気持というのは、常に言動ともに現われるものであります。こういうようなときにただ引例にすぎないのだということでごまかすわけには参らないと思うのであります。これは運輸大臣としてやはり明確な所信をここで披瀝されることが、私は政治的に最も必要なことであると考えるから、従ってその所信を伺ったわけであります  第二の点は、今言われましたが、違法行為違法行為である、事態解決解決であるというふうにはっきり区別して考えるべきものであります。ただこのよう紛争を生じておるその事態を、単なる違法行為へひっかけてから手形をもって解決ようといたしましても、それはできない相談であります。保守党の人々は、現実の問題、現実の問題といって、常に現実を主張せられるわけであります。しからばこの発生しておる事態現実であります。しかもそれは違法行為をあえてやろうという考えでやっているのではない。少くとも自己の生活を守るために、あるいはまた自分生活権を維持していくために必要なるものとしてここに要求をして、しかも労働組合は法に従ってちゃんと調停案も受諾するという態度を明らかにしておる。いえば法律に従って出された公正なる裁定については、きはめて明確に私はその法に従う態度を明らかにしておると思う。しかるに今日このよう事態が発生いたしておりまするのは、昨年、その前年、また本年にいたしましても、この調停等による法律に基いて裁定せられておるものについても、なおかつその態度を明確にしない、ここに紛争原因があるわけであります。従ってその現実解決するに、待遇改善であるとかいう具体的な方法を何ら示さないでおいて、単にその行動なるものの違法性だけを追及せられますのは片手落ちである、こういうようなことそれ自体が私は不法行為とも言えると思うのでありますが、この点について監督者である運輸大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  11. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 お話趣旨はよく承わってわかっておりますが、こういう事態になりますと、お互いに感情的になって、なかなか言葉の投げやりも、実際あなたが御承知のごとく、現場においてはもっと激しい言葉のやりとりが事実行われておるので、これは非常に遺憾であります。不法行為はもちろんどこまでも不法行為として、また現実妥結問題は妥結の問題として扱っていく、これはお話通りそのような道をわれわれもとっておるわけであります。今の職員局長の問題は、直接国鉄職員でありまして、私が今ここからかれこれ申し上げるよりも、国鉄当局者としてやはりこういう問題を考えてもらいたい、こう考えておる次第であります。
  12. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 どうも運輸大臣監督者としての政治責任というものについて明確でないと思う。国鉄職員でありましても、少くとも単なる通り一ぺんの職員ではありません。少くとも国鉄経営の枢機に参画しておる職員局長であります。その局長がこのよう事態に際して、さらに解決への努力のかわりに、いえば紛争に火をつけるような不謹慎きわまる言動を行なっておる。これについても何ら所信の表明をしないというのでは、監督省最高責任者である運輸大臣の私はとられるところではないと思う。もう少しその点について明確なる態度大臣がとられることを私は望んでおりますけれども、どこにそういう明確な態度をとれない理由があるのですか。
  13. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 この新聞に出た問題の取扱いについては、今日の段階においてはやはり国鉄責任を持っておる当事者扱いを見ていくことが適当ではないか、こう考えます。
  14. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 見ていくということが適切である。さすればどういうふうに見ていくかということが、この際ここで明らかになるのが当りまえなんです。しかるにそれも御答弁がない。ただ自動的に見ていくという態度をとっていく、それだけでは私は満足しません。これまでも国鉄総裁がここに来られて、同僚井岡委員の質問に対して大へんな大言壮語した演説をされました。しかし大言壮語をした演説をされましたけれども、それは内容を調べてみると何もありません。事態解決について何ら具体的な、具体性がない。いかにりっぱな演説をされても、空気を吸って人間は生きているのではない。下手くそでもよろしいが、たとえば千円要求しておるところに五百円でもよろしい、金はこれだけ出しますというなら話がわかる。ただいたずらに大言壮語してもだれも満足する者はない。その事態に対する何らの解決の役に立つものではありません。悪くいえば、今までの国鉄当局のとっておる態度なるものは、労働組合に対するどうかつ的態度であります。どうかつによって事態が円満に解決するなどということは考えも及ばないことである。しかるに今日までの態度というものは全くどうかつ的態度であって、何ら具体的にそれを解決ようとしておられない。そこに国民に対して大きな迷惑をかけておる原因がある。しかるに今日に至ってなおかつそれをわれわれの前に明らかにしない。運輸大臣もこれについて、まあ言えば不逞言辞を弄しておる。そして何ら監督的立場から態度を明らかにしないということは、もってのほかであると私は思う。このよう重要事態に際して、なおかつ運輸大臣がそういうよう態度でおられるということでは、これはまことに忍は遺憾に思う。国民もまたあなたの今までの言辞をもって満足はしないと思うがどうですか。
  15. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 いや、私は決してこの事柄に関しての扱い——国鉄はりっぱな経営体として責任者がそれぞれおってやっておられるのでありますから、ただ私どもはそれを監督していくという立場にあるのですから、この扱い国鉄において扱って、それをながめていって、またわれわれとしてはその過程において適当に考えればいい、こういうように私は考えております。
  16. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 これはのれんに腕押しみたいな問答になるのですが、過程において考えるならば、今日その過程はどんどん進行しておる。いつまでたっても過程といえばそれで済んでしまう。それではあなたの監督行政に対する何らの功績もないということになる。運輸大臣はあってもなくてもいいということになる。やはりあなたは運輸大臣としておられる限り、その事態に対して明らかに見解を表明して、そしてその誤まれるところは善導していくという立場をとられるのが、大臣としての責任であると思う。また国民から付託されておる付託にこたえる道でもあると私は考える。国鉄当局のやっておることだからというので、どんなことを言おうが知ったことではないという態度であってはいけない。この総裁演説にしても全く中身がありません。から手形ばかりです。いかに大言壮語しても、先ほど申し上げたよう大言壮語で飯は食えるものではない。一円もらえば一円の飯が食えるわけです。ところがそれを五十銭もくれない。から手形でりっぱな演説だけしてもらっても、それでは腹はふくれない。だから事態解決にはならない。ひいてはこれはどうかつ的態度といわれてもやむを得ないことになる。その誤まりというものを運輸大臣がお気づきになっておれば、そこを政治的に善導せられることが大臣としての責任だ、こういうふうに考えておる。だからこの際大臣は、こういうようなたび重なる誤まれる措置についてどういうふうに考えておられるか。またこの問題の解決について、運輸省は具体的に調停案等についてどういうふうな態度で臨んでおられるか。これは明確におっしゃられることが当然なことだと思う。ところがあなたの今の答えは相も変らずから手形です。何もございません。そんなことでこの重要な事態解決するとお考えになっていれば、まことに認識不足と言わざるを得ない。私は大臣を攻撃しようと思って言っているのじゃない。この重要な事態について何としても解決の大きな方向を見出していかなければならぬ、それを善導せられるあなたはどういう所信であるか。たとえば一局長にいたしましても、こういう言辞を弄するということは、これは事態を紛糾させることであっても、決して事態解決する道にはならない。従ってこれに対しての適切なる措置運輸大臣として講ぜられるのは当然だと考えているので、その所信を尋ねておるのです。
  17. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 ただいまの組合との問題につきましては、今の国鉄当局が非常な熱意をもって日夜努力をしておる実情は、私は親しく見て承知しております。それが組合との話し合いの上で、話の行き違いがあり、から手形になるかどうか知りませんが、少くとも建前の許す以上のことまでして、国鉄当局者給与の問題に力を入れておる現実を私ども見ておりますので、これは見方でありますが、あなたのお話しになるような意味で、国鉄当局者国鉄職員生活並びに給与の問題を非常にないがしろにしておるというようなことは、絶対にないと私は思っております。ただいまの新聞紙上の問題につきましては、まあ個々に派生したことで、もし職員局長がこの通りのことを——新聞に載る文字も、言い方と聞き方と、活字の上の現われ方でいろいろ違ってくることは、あなたの御承知通りでありまして、何も新聞がうそを書かなくても、それは活字に現われてくるなにでだいぶ違ってくる。もしその通りであったとすれば、比喩の仕方には少し行き過ぎがあったように思うという私の感じは、先ほどから申し上げておるわけです。けれども、これに対してどうするかということは、これはやはり国鉄のそれぞれの当局者においてまず第一義的に考えてもらうことで、私はその成り行きを見て、またそれに対して私の見るところをもって歩んでいけばいい、かよう考えておる次第であります。
  18. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今の答弁によりますと、国鉄当局は非常に涙ぐましい解決への努力をしておる、これを承知しておる、こういうことであります。そうすれば、もしこの調停国鉄当局労働組合ものみ、そしてこれを実現に移さなければ事態解決しない。そうすれば勢いこれを予算化しなければならないという問題が生じてくる。大臣は、国鉄がそれだけ涙ぐましい努力をして、そうしてこの調停案の実施を労使双方が迫った場合、あなたはこれを予算化する措置というのは当然心組みとしても今日お持ちになっていなければ、この問題をあなた自体解決することにはならないと思う。これについてどういうふうに考えますか。
  19. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 御承知通り国鉄予算というものは非常に厳格に査定をされておりまして、こういう問題が起きてきますと、三十二年度の予算というものにも相当な考えを加えなければいけないと思うのでありますけれども、それはもう少し具体的に事態の現われてきた結果を見て処理すべきものでありまして、これらの事柄が最終的に決定したときに、今の国鉄予算の範囲でこれがまかなえるものか、どうしてもまかなえなければ予算に対してどういう態度をとらなければならぬかということは、その現われてきた結果によってこれは判定していくよりない、また善処していくよりない、こう考えております。
  20. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 結果を見て対処していくよりほかにない、こうあなたはおっしゃいますけれども、すでに政府では、この調停案調停案のままで、調停段階解決ようという意図ではないようであります。本日報ぜられるところによりますと、すでに仲裁をのむという態度をきめられているように思う。そうすると、いたずらに事態を引き延ばすだけでありまして、この事態を急速に解決するための熱意というものは欠けているのではないかというふうに私は考える。どうしてもこれは調停から仲裁へという段階を踏まなければ解決せぬという考え方か。それとも、仲裁がなくても労使双方がこれを受諾して円満にこの事態解決するというのであれば、それに協力して予算措置その他必要なる措置を講ずる意思があるのかないのか、私はこれをお尋ねいたします。
  21. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今日の段階において政府としては、この調停をけって仲裁に持ち込むというよう事柄は何もきめておりません。これは国鉄当局者が今考え段階にある。国鉄当局者がこれを考えてどういう処置に出るかという段階で、まだきめておりません。ただ政府としてはやはり調停もあり、あるいはこれが仲裁段階に移るとしても、そういう趣旨でできるだけ尊重をして、事態解決をしたいという気持だけは持っております。これを荒立てていこうという気持は持っておりません。何とか円満な解決に導きたいという気持は持っておりますが、やはり国鉄当局者責任をもって善処することを期待して今おるわけであります。
  22. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 国鉄がこの調停案を受諾して、この調停段階において事態解決ようとしましても、やはり政府において、この調停段階において、国鉄に対してこれを解決するための強力なるバック・アップというものがなければ、これは解決しないのです。予算の修正なり、あるいは新たなる補正をするなり何なり、予算の裏づけがなければ実際問題として解決できない問題なんです。ですからこれを仲裁に持ち込ませて、そうしてこのよう紛争状態を長引かせるか、それともここで終止符を打たしめるかは、一にかかって政府考え方いかん政府出方いかんにあるわけです。しかるに運輸大臣の今のお言葉でありますると、お言葉を返すようでありますけれども、これに対処して早急にこの事態解決ようとする熱意がうかがわれないのは私は残念に思います。あなたはこれについて一体どういうふうに考えておられるのか、一つ所信をはっきりお示し願いたい。
  23. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 この事態は一刻も早く解決したいということは、私どもそのために日夜努力は続けております。しかし今日の段階は、やはり国鉄当局者の独自の立場というものを尊重すべきであって、政府が直ちにこれに向ってかれこれ指図をするというようなことでなしに、私は国鉄当局者立場において善処を要望しておるわけであります。なるほどわれわれとしてもいろいろなる点で考慮はしておりますが、みずから手を下すという段階ではない、こういうよう考えております。
  24. 下平正一

    下平委員 今国鉄争議強盗云々という問題は、これは当面の当事者の問題ですから別に質問するとして、この争議状態というものを解決するには、どうしてみてもこれは運輸大臣政府が腹をきめて解決をしなければ、解決ができないと思います。これはきょうの新聞を私もここに来て読んだのですが、その中で二つばかり重要なことがある。強盗云々ということも重要なんですが、国鉄の今の立場というものは準禁治産者だということを言っている。これは重要なことなんです。職員局長の言っていることの中で、準禁治産者よう状態なんだ、百円上げれば争議妥結する、国民に迷惑をかけなくても済むということがよくわかっていても、あるいは自分に上げるだけの余裕があっても、これは自分ではどうにも処置ができない、これが国鉄実情なんです。そういうことを大臣にはよく了解してこの争議に当ってもらわなければならぬのです。  そこで問題点双方の意見、国鉄調停に対する態度とか組合態度を尊重する、こういうことを今大臣は言われたのですが、今起っている争議の根本問題は、たとえば、大臣が就任前でありますが、昭和二十九年度には調停案が出まして労使双方できまったのです。これを政府がのまないのですね。これはついこの間の昭和三十年度も四十二億ということで、裁定案には金額の明示がなかったから、労使双方間で四十二億ということでまとまった。争議はそれでおさまったのです。ところがそれに対して政府は実施していない。今大臣は尊重すると盛んに言っておられますけれども紛争の根本原因というものは従来労使間で、双方が不満ではあったけれども妥結をして、そうして円満な状態に振り戻した。その結論を政府が尊重していないというところに問題点があるのです。だから今度の場合も尊重をするということを、もっと具体的に実はやっていただかなければならぬと思うのです。今の仲裁裁定を国鉄の問題だ、こうあなたはおっしゃっておられるが、これは国鉄仲裁裁定をするしないという問題にはならぬのです。御承知ように三公社五現業という形でありますね。五現業はなるほど主務大臣がおるから政府で申請するという形でありますが、当然三公社五現業というものは、この調停案の実施はすべて政府にかかっているのです。従来は決して尊重されていないのです。今後尊重するということになれば、まず第一にこの労使の調停案段階でもいい、あるいは仲裁裁定を十二日に、きょうするそうでありますが、仲裁裁定をしてもいいが、政府がこの仲裁裁定の結論というものを十分尊重して予算措置をする、ここまで大臣ないしは政府に腹をきめてもらわなければ、よしここ一日、二日の争議はおさまっても、また仲裁裁定の実施の段階でこれだけの争議は起ってきます。だからここのところは、争議解決するためには当事者間のいろいろな問題よりも、問題はやはり政府がどういう腹を持つかということが大切でありまして、仲裁裁定に対する明確なる態度というものを大臣はこの際出していただきたいと思う。
  25. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 さっきその新聞に載っている言葉の上で、準禁治産者という言葉はどういう意味かわかりませんが、やはり国鉄としては自分態度をきめて、これが予算その他に関係すれば運輸大臣及び大蔵大臣の承認を求めるという規定になっておりますから、そういう意味でおれ一人で勝手なことはできないのだぞということをおそらく言ったのだろうと思うのでありますので、その段階に来て国鉄がこの問題に対してはっきりして、自分のこういう方針で、ではこの程度調停あるいは仲裁裁定をのむか、調停段階におって団交をして、この程度の案ができた、これでもって政府は承諾をしてくれと言ってきた場合に、私どもがそれを考慮すべきであって、その精神は、私どもはこの事態を収拾したいという根本的な腹がまえが一番大切なことだ、それのみならず仲裁裁定というようなことになったらば、それは政府として尊重しなければならない、尊重すれば尊重した上において、これらにいかに善処するかということはおのずから出てくることであります。尊重するという精神は先ほどから申し上げておる。
  26. 下平正一

    下平委員 尊重すると大臣は言っていますけれども、過去の歴史は尊重していないのです。昭和二十九年の調停案国鉄自体では消化をして、その予算の中でやはり支給しているのです。これを政府が尊重するということはどういうことかといえば、予算に組んでその措置を法的にあるいは予算上認めてやるということなのです。その措置がなされなければ、尊重するという結論にはならないのです。宮澤運輸大臣、それでは具体的に今度の仲裁裁定について申し上げますが、従来の仲裁裁定を尊重するという形がどういうふうに出てきたかというと、国会へ出される場合は、あの仲裁裁定をのまないことにするから承知をしてくれという態度なのです。こういう基本的な精神というものが仲裁裁定の案に出ているのです。だから仲裁裁定をほんとうに尊重していただくということになるならば、補正予算なり何なりそれに基いての必要予算措置というものを講じて、そうしてこれを尊重するためにはかくかくの予算が要るからこれを承認してくれ、こういう出し方でなければおかしいと思うのです。そういうふうな形にまで具体的に尊重されるかどうか。
  27. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 過去の処理については私詳しく承知しておりませんが、あなたのお話については一つ政府委員からお答え申し上げまして、またその相違の点について私からお答えしたいと思います。
  28. 下平正一

    下平委員 一番最後の仲裁裁定が出た場合に予算措置をつけて出すかどうか、それだけやって下さい。
  29. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 仲裁裁定をのむということは尊重することなのですから、のんだ結果予算措置の必要があればこれはやらざるを得ない、当然のことだと思う。
  30. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私は職員局長と副総裁にお尋ねいたします。総裁が当面の労働問題に対し、職員諸君に告ぐということで声明をお出しになっております。また当委員会におきましても同僚委員の質問に対しまして、非常にりっぱな演説をされております。しかしこれは大衆相手の街頭演説ならいざ知らず、当面の労使間の問題の解決のための内容は何らありません。その言われておりまするところは、諸君は国鉄職員であると同時に組合員である、組合員でもあると同時に国民である、そうして国鉄職員として国民に対して忠実に交通従業員としての職務を遂行して奉仕すべきである、こういう趣旨のことを職員諸君に告ぐという、香椎浩平が、今からでもおそくないということで、戒厳司令官としてやられた声明と同じようなことを繰り返しております。が、今申し上げるように内容については何もない。これではこの事態解決のためにはあまりにも無責任ではないか、責任をはっきりするということは、今当面している労使間の紛争についてその内容を具体的に示して、そうして解決をするという方向をとらなければならぬ。何回も繰り返しますけれども、いかに国鉄職員諸君といえども、雲やかすみを食って生きているわけではありません。やはり他人さんが十円のものを食えば、国鉄職員諸君も十円のものを食わなければならない、それが八つしかパンがないからこれを十にふやしてほしいと言っている。それに奉仕しろ奉仕しろということだけをもってしては問題は解決しない、私はこう考えております。そういうふうに人に責任はじゃんじゃん押しつけておりますけれども、肝心のところにくればくるりとのがれて、一向に誠意を示しておられぬというのが、この内容であります。こういうふうに私は考えておる。かてて加えて、本日の新聞によりますと、さっきからの問答でもお聞きになったと思いまするが、職員局長の言として、あたかも国鉄労働組合は強盗同然だ、こういうようなことを言って、紛争に油を注いでおる。総裁がお見えになっていれば、私はこれについて一つ総裁としての所見をただしたかったのですか、お見えになっておりません。小倉さんかお見えになっておりますから、副総裁から、こういうよう不逞の部下を持っていて、この事態解決に役に立つ、経営当局の責任者の役に立つ、こういうふうにお考えになっているか、あるいはまた一体あなたの直接の部下をどういう工合に指導しておられるのか、国鉄職員の諸君は強盗だとお考えになっているのか、その点について一つ所信をお聞きしたいと思います。
  31. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 ただいま御質問になりました前段の総裁訓示につきまして申し上げますと、これにつきましてはいろいろな見方がございましょうが、私はこれは決して内容がないものであるとは思っておりません。空疎なものとは思っておりませんで、最も重要な内容のあるものではないかと考えております。と申しますのは、鉄道職員は国家から貴重な輸送機関を預かっておりまするので、これをりっぱに正常に運営していくということが、何よりも先の重大な使命だと思います。それにつきましては別に労使間でいろいろな交渉もございましょうが、そういうこととは別に、やはり国家からお預かりした輸送を一日も空白にしてはいけないのだ、そういう精神が国鉄職員にとって一番重大なことだから、そういうことを常に念頭に置いておいてほしい。こういうことが総裁の精神だ、こう考えておりまして、最も重大なことではないかと思います。しかしおっしゃいますように、労働問題につきましてはやはり実入りのものが必要でございまして、私ども職員にかすみを食わせておくつもりは決してございませんで、できるだけ給与をよくして参りたい、こう考えて参ったのでございますが、いろいろな物事の交渉の過程には、まだまとまっておらないで、発表にまで至らない場合もございますし、またはそのときにまだ発表する時期ではないというふうな場合もございますが、これは新聞などでごらんの通りに好転しておりまするので、もう少し時日をおかし願いたい、かよう考えます。  また本日の新聞につきましては、とにかくああいうヘッディングが出ましたことは、私としてはまことに遺憾に存ずる次第でございます。ただヘッディングはヘッディングでございまして、内容は、引例が多少当を欠いておったということは私も認めまして、この点については今後も注意を与えて参りたいと思いまするが、これは引例でございまして、たとえばあの場合に、自動車がハンドルを切りそこなって民家に突入して迷惑をかけたという程度引例でありますれば、あるいは穏やかであったかとも思いますが、実は職員局長も私もこの数日はほとんど詰め切りで、昨夜も一昨夜も徹夜に近い作業をしております。それでいろいろ交渉で気の立っておることもございますので、そういう点でいろいろ言葉のあやで行き過ぎた点がございますが、これは最近疲れもございますし、刺激もございますし、そういうことになったのだと思います。それと隣り合って出ておりまする野々山さんの談話につきましても、私の名前が出ておりまして、これについては私にも多少言い分と言うと過ぎるかもしれませんが、考えておるところもございますが、そういうふうに交渉の過程におきましてはいろいろなことがございますので、一つこれは御容赦願いたい、かように感ずる次第でございます。
  32. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 私はさらにお伺いをいたしますが、この総裁の談話あるいは事務当局の方々の談話によりますと、組合要求総裁の裁量限度を越えておる、だから実現できない、限度を越えた要求をしておるから違法なんだ、要求そのものも違法扱いをせられておる。そうすれば、常に組合総裁の裁量の範囲内において要求をするということになる。それは総裁の裁量が実際にはゼロであるということになれば、組合はいつまでたっても組合独自の要求ができない。こういう見解では私ははなはだもって一方的な見解であると考えるのですが、この点について小倉さんはどういうふうにお考えですか。
  33. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 国鉄は企業体でございまして、権限も非常に広範に持っております。しかしながらまたその制限も受けております。それでございますから、あるいは物事によりましたら企業体の内部でできる問題もございますし、できない問題もある。これはいずれの事業につきましても当然だと思います。そういう点で私ども職員給与その他について、企業体の内部でできるだけのことをいたしてきておりましたし、また今後いたして参りたいと思います。そういうふうにできることもございますし、できないこともあるということを総裁が発言したのではないか、かよう考えております。
  34. 淵上房太郎

    淵上委員長 午前の会議はこれにて一応休憩いたしまして、午後本会議の終了後に再開いたします。    午後零時十分休憩      ————◇—————    午後二時三十五分開議
  35. 淵上房太郎

    淵上委員長 午前中に引き続き会議を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題として、質疑を許します。楯兼次郎君。
  36. 楯兼次郎

    ○楯委員 午前中各委員が質問をいたしておりましたが、所用がありましてあとから参りましたから、私大臣にお伺いしたいと思います。午前中今度の春闘がいろいろ問題になりましたが、十一日並びにきょうの国鉄争議原因がどこから起きたか、こういう点を私は大臣お話をしながら答弁をいただきたいと思います。  まず第一番に私が大臣に申し上げたいことは、国鉄労働組合は、今政府が言っておるようにあえて事を好む組合ではないということです。たとえば、具体的な一つの事実を申し上げますると、われわれも承知をいたしておりますが、十日に調停が出ました他の公共企業体の組合に対しても、政府の方が何とか裏づけのある言明をするならば——この調停をのんであすからの争議に対して何とか考えようではないか、こういう説得を行なったということは、すでに朝日新聞あるいはその他の新聞が報じておるのです。ところがそういう事実があったにもかかわらず、あなたの方の閣僚懇談会においては、おそらく宮澤運輸大臣はこの問題について相当骨を折ったと私は受け取っておるのでありますが、閣僚懇談会においては、悪い言葉表現をいたしますれば、まあ大したことはないだろう、結論を出さないままにほうっておけ、こういうことで散会をいたしております。このことが国鉄労働組合を憤激せしめた大きな原因であろうと、私は新聞その他によって察知をいたしておるわけでありますが、大臣としてはこの点についてどうお考えになるか、まずこのことを第一にお伺いしたいと思います。
  37. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 閣僚懇談会が、まあ大したことはあるまいといってそのまま散会したというようなことは、私が出席した限りにおいてはありません。みんな心配をして、何とかしなければならぬということで、常に話し合っておるわけであります。決してそんなことはありません。
  38. 楯兼次郎

    ○楯委員 大体いろいろの理屈はつくと思いますが、私はこの紛争を終結せしめるのは政府態度にかかっておると思います。午前中も論議をされましたように、国鉄ではほんとうにこの問題を解決する能力がない、いろいろの法律の制約を受けて能力がないと私は見ております。従ってどうしても政府の代表であり、かつ国鉄責任者であるあなたが腹をきめてこの問題を終結していかなければ解決はしない、こういうよう考えます。そこで、これはわかっておることでおりますが、今度の争議に対して政府態度はどうなっておるか。たとえばほんとうに十一日からやるこの紛争を終結したいと思えば、調停案も相当以前に出さなければならないのです。ところが私そこまではわからないのでありますけれども、衆議院で予算が通過した後に調停案を出させる——出させると言っては語弊があるかもしれませんけれども、出してくる。ここに私は、政府調停委員会に対して何かの工作を行なっておるのではないかという疑義を持つわけです。そうは言いながら、予算がいよいよ衆議院を通過して参議院に参りましたが、裁定の問題でもそうです。今仲裁裁定が出ると予算審議に支障を来たす、こういうことが政府の方の一番の頭痛の種になっておると私は思います。そういう政府の御都合主義からいたずらにこの争議を起さして国民に迷惑をかけておる、こういうふうにしか私にはとれません。ほんとうに政府がこの争議解決する意思があったならば、調停案段階でも、十一日以前に私は何らかの組合との妥協が成り立つと思います。予算の編成等をめぐって、組合もばかではありません。政府立場もよくわかります。従って、誠意をもって話し合えばよくわかるわけでありますが、政府の自己の都合上、予算編成等の時期的な考えからこのよう紛争をいたずらに起した、こういうふうにしかわれわれには受け取れないわけでありますが、この点大臣はどうお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  39. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今のお話の、政府が、これがきまれば予算措置が困るから、それを引き延ばしていったというよう考えのもとに、国鉄もしくはその他に手を打っていくというようなことはありません。そういう結果が生じますれば、生じたときに政府としては適法な措置をとるよりないわけであります。その手続のために実態を左右していくというような無理なことは、今日ガラス張りの政治の上でなかなかできがたいことでありまして、そうは考えておりません。
  40. 楯兼次郎

    ○楯委員 こういうことを言っては失礼かもしれませんけれども大臣は過去において国鉄に出されました仲裁裁定がどういう取扱いを受けておるか、御存じないと思います。なるほど政府仲裁の裁定は尊重するといいます。ところが、私どもあるいは組合は、裁定というのはいわゆる裁判所の判決だ、こういうように受け取っておりますから、裁定というものは完全実施をしなければ意味がないと思います。ところが今日までおそらく七、八回あるいは十回くらい裁定が出たと思いますが、たとえば十億金が要るなら一億を実施をして、政府は尊重をして実施をした、こういう宣伝をいたしております。私も国会へ参りましてから予算委員会あるいは合同委員会において、裁定の出るごとにこういう点をいろいろ政府に質疑をいたしたわけでありますが、今記憶がございませんけれども、おそらくあなたの方の過去の資料をごらんになりましても、完全に実施したということはまあ一回か二回くらいだろうと思います。一部実施をして、これを尊重して実施した、こういうことをいっておるから、組合政府に対して不信感を持つのは私は当然だと思います。運輸大臣はそういう過去の経緯を御存じになって、裁定尊重、実施ということを言っておられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  41. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 そのこまかいことになると実は私知りませんけれども、裁定はどこまでもその通り尊重しなければならぬという建前において私は申し上げておるわけであります。
  42. 楯兼次郎

    ○楯委員 それはあとでお調べになれば、私言っておることをなるほどとお感じになります。その点一つ例をあげますと、裁定は当然予算措置を講じて国会に上程しなければならないのです。たとえば十億要る場合に、政府の方では予算上一億しか財源がない、そういう場合でも一億の財源をつけて国会の審議を仰ぐというのが、仲裁裁定のほんとうの意味だろうと思います。ところが、裁定が出た、国会は審議してもらいたい、金はございませんよ、金はございませんが、国会で審議してもらいたい、こういう出し方が、他の二公社を入れますと、過去おそらく十数回出ておると思いますが、そういうやり方です。金がない、これは全然否定することはできません、しかし、金はございませんが審議はして下さい。われわれがそれを追及いたしますと、あなた方がこれを可決してくれれば、それは金を何とかして都合して出しましょう、否決をしてもらいたいのだ、こういう意図によって今日まで仲裁裁定の取扱いが行われた。ここに私は、今日国鉄労働組合政府の方からはっきりした答弁、言明をとらなかったならば、また過去と同じようにうっちゃられる、こういう危惧があると思うのです。こういう点について午前中下平委員の質問に答えて、ややそれらしい答弁をなさいましたが、はっきりと、今後出される裁定については予算措置を講じて、そして実施をされるという点を一つ承わりたいと思います。
  43. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今日の政府態度といたしましては、今の問題がすぐ仲裁にかかるかどうか別といたしまして、仲裁にかかってその裁定が出ましたならば、誠意をもってこれを尊重する、これだけは政府態度としてはっきり今決定をしております。誠意をもって尊重する。従って誠意をもって尊重する上において、あなたの今おっしゃる予算措置をどうするかということはそのときにきめるべき問題だ、誠意をもって尊重するということで、そのあとも誠意をもってそれを行なっていくというふうに御了解を願いたいと思います。
  44. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは党と自民党の幹部が打ち合せをしておりますので、私は予算編成等の関係もありますから、ここで強くは言いませんが、少くとも過去に吉田内閣あるいは鳩山内閣が取り扱ってきた裁定の取扱いとは違う、一部実施でこれが尊重だ、実施したじゃないか、そういう取扱いとは違うという点ぐらいは、私はここで言明されてもいいと思いますが、どうですか。
  45. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 違うという点は、どういう意味でありますか。
  46. 楯兼次郎

    ○楯委員 過去においても今運輸大臣が言われたと同じ表現をしておるのです。ところがその尊重の意味は、たとえば十億の金を一億実施しても尊重をし実施したのだ、こういうことであった。だから、それでは今日の紛争解決をしない、従って私は深くは追及をしませんけれども、そういう取扱いではないという点を言明を願えるかどうかということです。
  47. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 その点に関しては、この機会に誠意をもってそれを尊重していくという点において、いよいよそれが具体的になってから、あらためて案を立てまして申し上げるということにいたしたいと思います。
  48. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは過去にわれわれが何十回となく各委員会で聞いた点と同じです。私は昼飯のときに聞いたのでありますが、参議院の労働委員会においては松浦労働大臣がはっきりと、仲裁裁定が出たならば完全に実施をいたします、こういう言明をしておるそうです。より当事者である運輸大臣が、政府がそういう方向であれば完全実施の言明をしても何ら差しつかえはない、しかもそのことが今日労使の紛争解決する唯一の言葉であると思っておるのです。だから、あなたのように過去何十回となく繰り返された尊重、考慮するということでは、これは組合も納得しないと思う。労働大臣はそう言っておるのですがどうですか、はっきり言いなさい。
  49. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 これは結果において今あなたのお話しになりましたように、これを完全実施する場合がありましても、今この段階において私にそれを言明しろということは、まあ御無理といっては何ですけれども、私の立場としてそれは言えない。誠意をもってやるということで御了承願います。
  50. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は大臣をよく知っておるので、こういう問題で何十回繰り返しても——繰り返したくないと思いますが、労働大臣が参議院の労働委員会でそういう言明をしたということを聞いたのです。それならあなたもより当事者でありまするから、そのくらいの言明をしてもいいと思うのです。だからどうですか、政府委員の方が労働大臣にお聞き願って、歩調を合した方がいいのじゃないですか。どうせきまっておることを、ここであなたが言明しないがために時間を空費するということは、私は惜しいと思いますので、ぜひ一つ労働大臣に、どういう言明をしたかという点を聞いていただいて、歩調をそろえて御回答願いたいと思います。
  51. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 まあ言葉でありまするから、言葉の使い方で意味もいろいろとれましょうけれども、今日においてわれわれが政府の方針として決定したことは、仲裁裁定の段階に至ったら、これは誠意を持って尊重しようじゃないかということでありまして、その上に、これを予算化し、実行化するという段階に至れば、その方法をあらためて、誠意を持って尊重する趣旨に基いてやる、こういうことでありまして、われわれの今の政府態度としては、これ以上のことを申し上げるわけにいかないのです。この点は誠意を持ってほんとうに尊重する。またこの段階におきましても、先ほど参議院の運輸委員会においてもいろいろお話がありましたけれども、私ども国鉄労組の要求というものも、今日の日本の経済の実情からいって、ある期間を何すれば、こういう段階のことをだんだんやっていかなければ、国鉄に働いておる人も立ち行かない、生活も上らない、こういうわけですから、ただその時日と手段の問題で食い違いができてこういうことになっておるのでありまして、全体の気持としては、こればやれないことだというようなことは考えておりません。順次やらなければならないと思っています。これは一体われわれも皆さんも、政治をやっておる者は、国民生活を向上させることのほかに、端的にいえば目的はないわけですから、収入の増加ということももちろん生活向上の一つで、それがほかと歩調をそろえて、経済全体と均衡のとれた国民生活の向上ということを考えていかなければならぬというその点だけですから、そこに私は大きな意見の相違はないように思っております。結局これは実行されるべきものであると考えておりますから、誠意を持って順次行なっていく。順次行うというのは、それでは今切って行うかというお話でありますが、そういう意味ではありません。
  52. 楯兼次郎

    ○楯委員 大体完全実施をする——まあするしないは別といたしまして、やる場合には完全実施をするというふうに受け取れるので、私もこの問題は、ほかの委員の質問もあると思いますので深追いはいたしません。  裁定ですが、裁定の件数と、完全に裁定通り実施された件数を一つお聞かせ願いたい。
  53. 權田良彦

    ○權田政府委員 過去四回仲裁の裁定が下っております。号数は番号一号、三号、八号、十四号でございます。これは給与に関する裁定でございますが、時期は若干ずれておりますけれども、その内容においてはいずれも完全実施されております。
  54. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういう言い方が私はおかしいと思うのです。時期はずれておるがとおっしゃいますが、それでは裁定を完全実施するまでの、つまり権利といいますか、債権を政府の方は持たれるのですか。完全実施するまで、債務が生ずるのですか。
  55. 權田良彦

    ○權田政府委員 いま少し詳しく内容を申し上げますると、一号は四十五億内においてベース改訂、これは昇給資金増額などで実施しております。三号は二十五年四月以降八千二百円、これは二十五年八月から実施されております。八号は二十七年八月以降一万三千四百円、これが二十七年十一月から実施されております。十四号が二十八年八月以降一万五千三百七十円、これが二十九年の一月からその内容通り実施されております。今の御質問の、時間的ずれの間における債権、債務のお話は、これは債務を負うというような筋合いのものではございません。在来の公労法では、御案内のように弾力条項がございませんので、これらが国会の議決において決定されているわけであります。
  56. 楯兼次郎

    ○楯委員 あなたの答えているのは、それは昇給資金を入れたり、あるいは裁定が国会において決定になった、それを実施したということです。そうじゃなく、私が先ほどから運輸大臣に質問をしているのは、仲裁委員会の結論が実施をされたことがあるかどうかということを質問しているわけです。まあ事務当局としては、国会の意思決定によってその事項を実施すれば、これは完全実施すれば、これは完全実施だ、こうおっしゃるかもしれませんけれども、私どもはそうじゃない。仲裁委員会が出した結論を、そのまま実施したかどうか、こういうことを言っているのであって、だいぶ食い違いがあるように私は考えます。それから、今時期がおくれて云々とおっしゃいましたけれども、昇給の金額あるいは時期の問題等を論議しますとまためんどうになるし、そのことが本意ではありませんのでこのくらいにしておきますが、国会の決定を実施した、こういうことでしょう。どうですか。
  57. 權田良彦

    ○權田政府委員 先ほど私が内容と申し上げたのは、裁定の内容でございます。
  58. 楯兼次郎

    ○楯委員 裁定の内容がそのまま実施されたということは、私も国会でいろいろ論議をいたしておりますが、ないと思います。それは字句の解釈によって、そういうふうに政府の方では解釈をしておられるかもしれませんけれども、それがなかったから数年われわれは論議をしてきた。まあこれは私の方でもよく調べなくてはわかりませんから、保留をいたしておきます。  次に大臣にお聞きしたいのは、二十九年度の調停で二百八十円か九十円か知りませんが、調停が出まして、労使双方がこれを受諾をいたしております。受諾はいたしておるのでありますが、何か聞くところによりますと、最近政府の方からまかりならぬ、あるはその支給内容についていろいろ文句が出て、これも組合を刺激する大きな原因になっている、こういうことを聞いておりますが、そういうことはいいことですかいけないことですか、お聞きしたいと思います。
  59. 權田良彦

    ○權田政府委員 内容が数字でございますので、私かわってお答え申し上げますが、ただいま御指摘の調停は、労使間において妥結をいたされまして、国鉄においては予算給与総額の範囲内で実施をいたしております。
  60. 楯兼次郎

    ○楯委員 それは本年度に入っても、一月から実施されているわけですか。
  61. 權田良彦

    ○權田政府委員 三十一年度内においても、給与総額の中で実施をいたしております。
  62. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういたしますと、他に労使が合意をして実施できないというのは何ですか。
  63. 權田良彦

    ○權田政府委員 それは私思いますのに、予算単価に入っていないということじゃないかと思います。給与総額の総ワク内において実施をしているのであります。
  64. 楯兼次郎

    ○楯委員 それは現実に今月分まで実施されていますか。
  65. 權田良彦

    ○權田政府委員 今お答え申し上げましたように、三十一年度の予算単価には、その分だけの単価値上げは認めておりませんが、給与総額の全体のワクの中で、在来過去の調停妥結した分は実施しておるはずであります。
  66. 楯兼次郎

    ○楯委員 われわれは実施をしておらないと聞いておったし、運輸当局の方は実施しておるということを言っております。これもあとで調べなければわかりませんけれども、たしか昨年の暮れであったと思いますが、両当事者が協定をして実施をしようというときに、何もわからぬ閣僚連中がけしからぬと文句を言ったことを私は記憶しておるのでありますが、そういうことはどうですか。
  67. 權田良彦

    ○權田政府委員 今お話しになっておりまする協定文句いうのは、運輸省としてはあずかり知らないところであります。
  68. 正木清

    ○正木委員 関連して監督局長にお尋ねしたいのですが、前回の委員会の速記を見れば問題は一切わかるわけです。同僚の楯委員が心配をされてこの問題を取り上げたときに、総裁はこういう答弁をされておるのです。この問題については、三十一年度の業績が上っておるので、その業績賞与の中で解決したい、こういう答弁をされている記憶が私にはっきりあるのです。ところが今度の国鉄の労使紛争の最大の原因は、あるいは局長大臣のところまでお耳に入ってないか知らぬが、副総裁が来るとこの問題ははっきりするのだが、副総裁国鉄労働組合との間には正式な番数が交換されて一切が解決していることが、いまだ完全に実施されておらない。一部は業績賞与で解決はされているでしょうが、一月から三月分のものが解決されておらない。だから調停が出て、かりに政府がこの調停はのめないで裁定へ持ち込もうというその裏には、またぞろ、一口にいうとわれわれはぺてんにかかるのだ。われわれが人員も増加されないのにもかかわらず、たとい世の中の経済事情が好転したからとはいいながら、法律で規定されたこれだけの成績を上げておるにかかわらず、労使双方がに完全協定を結んだこのことが実施されておらないというところに、今度の紛争の大きな原因のあることをまずこの委員会で明確にすることによって、私は処罰その他の問題についてもお互いに良識で判断が下せるのじゃないか、こう思いますので、重ねて聞くのですが、その点をあなたが御存じであるならば、明確にしてもらいたいし、なければ、法律にある理事会の理事の一人である石井さんも御出席でありますから、この点の関係を私は速記にとどめる意味においても、国鉄立場と運輸省の立場を明確にしておいてもらいたい。
  69. 權田良彦

    ○權田政府委員 お答え申し上げます。国有鉄道の総裁が答えましたことは、国有鉄道としての立場だろうと存じます。私どもの方の運輸省としては、今の問題については、今の調定がどうなるか、妥結するか、あるいは妥結しないで仲裁にいくか、また仲裁の裁定の内容がいかが出るか、これは今日ただいまではわかりませんけれども調停の文を拝見しますと、昭和三十二年度予算単価における基準内債金額をこれこれ増額しろ、こうなっておる。そうすると、予算的に運輸省から申しますと、昭和三十二年度予算単価というのは、昭和三十一年度の予算単価に昭和三十二年度の定期昇給額が加わって増額されたものが、三十二年度の予算単価になっておる。この三十二年度の予算単価に何がしかが加わる、こういうふうな調停の文のように解釈できます。基準内賃金と申しておりますから、これは基本給と地域給と扶養手当を含むものだと私は了解いたします。今楯先生のお尋ねの三十年度調停額かと思いますが、これは先ほど申し上げたように、運輸省としてはあずかり知っておりません。従いまして三十一年度予算単価にはもちろん入っておりません。それから先ほど来申しましたのは、二十八年から以降の調停でございますが、これは今申した予算単価には入っておりませんが、給与総額全体のワクの中で支給している、かよう承知しておるわけであります。
  70. 石井昭正

    ○石井説明員 国鉄給与のことについて正木先生からお尋ねがございましたが、実は私この方面の担当ではございませんで、経理局長が事情をよく知っておりますから、経理局長の方から……。
  71. 久保亀夫

    ○久保説明員 それでは私から申し上げたいと思います。ただいまの三十年度の賃金協定の問題、さらにそれと関連いたしまして本年度一−二月の問題については、昨年の秋から暮れといろいろ交渉の過程において、結論を簡単に申し上げますと、労使間に何ら協定はいたしておりません。ただ国鉄総裁あるいは副総裁としてこういった面については努力するということは、お約束という言葉を用いるのはどうかと思いますが、お約束は当然されております。その線に向っていろいろ予算その他についてお話はあったわけでございます。ただ繰り返して申しますように、いわゆる労使間の協定と申すものは全然ございません。その点は総裁がこの前この席上で、同様の意味で努力するということは申されておりまするし、また一−三月の問題については、業績手当の問題として、ただいま運輸大臣あるいは大蔵大臣方面へいろいろと御相談をいたしておるわけであります。
  72. 楯兼次郎

    ○楯委員 それから運輸大臣に聞いていただきたいと思いますが、大体公共企業体でありながら、いろいろ労使間の紛争が起っている原因給与総額の問題があります。この問題はおそらく同僚委員からいろいろ話があったと思いますが、一例を申し上げますると、本年度は百五十億か二百億か知りませんけれども、増収であるということは事実なんです。車両を作る、あるいは線路を増設するということは直ちにできません。できませんので、十カ年計画を立てて、本年度から実施をされる、こうあなたは言うておりますが、最初公共企業体になったときには、給与総額というようなものはなかったのです。ところがほうっておいては政府の方の威厳が国鉄の方に及ばないであろうということで、現在の池田大蔵大臣給与総額を設けて縛ってしまいました。そこでわれわれもこんな不合理なことはないと思っておりますが、車両を作ったり、線路を増設するということはすぐできない、しかし貨物、旅客はどんどんふえてくるから、少くとも要員くらいは、車両、線路とは違うから、増員をして、この輸送増強に対処してもいいじゃないか、こういうので、私ども国鉄当局にたびたび申し入れをしました。ところが当然であるべき要員の増加すら、この給与総額のワクがあるためにできない。私はこんな不合理なことはないと思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  73. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 これはこればかりでない各省の予算についてもそういうことを考えておりまして、その方がいいだろうと思うのですが、(「各省は定員法で縛っている」と呼ぶ者あり)各省は定員ばかりじゃない、いろいろな予算についても大蔵省が端から一々査定しておるというようなわけで、非常にこれは融通がないので、今あなたのおっしゃった趣旨も、そういうふうにやった方がいいように思うのですが、十分いろいろ考えてみなければ、それを端的に——もとはあなたのおっしゃったように財政法でやって余裕があった。特別の法律を作ったのです。ですからこれは一つ研究してみて——今のお話は、大体の観念は私もその方がいいように思っております。
  74. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは私は国鉄を今後企業体として運営するのに一番重大な問題だと思う。この重大な問題をほおかぶりすることにおいて、今日見られるような労使間の紛争が起ってきておる。これは現在の池田大蔵大臣が設けたのであるから、その設けた人に取れというのも非常に困難だと思いますが、この給与総額の項目を取らずして、今後の国鉄の運営ということは私はあり得ないと思います。そこで気骨ある運輸大臣は、ぜひ困難でありましても一つ在任中に、何とかしてこのワクを緩和するなり削除するなり御努力を願いたいと思います。
  75. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 御意見承わっておきまして、十分検討をしておきます。
  76. 楯兼次郎

    ○楯委員 いま一点私がお聞きしたいのは、この春闘が起る前から、政府は厳重なる処分をする。先ほど来申し上げたように、十日の閣僚懇談会においても、対策を講ぜずして処分することだけを天下に公表して終っておるようであります。私はこんなばかなことはないと思います。国鉄労働組合はいろいろなことをいわれておりますが、非常に私は純朴な人が多いと思う。具体的な例としては、繰返すようでありますが、十日の日にも、何とかして調停案をのんで政府が裏づけのある言明をしたならばわれわれも考えよう、そういうことを他の組合にも呼びかけておる。ところが政府の方では勝手にしやがれ、処分をする、こういうことで終っておるというところに最大の原因かある。私どもが一番心配をいたしますのは、そういう組合に対して、なお処分を強行するような気配があるという点です。しかも公共企業体になってから国鉄職員の処遇というものは決してよくありません。たとえば本年度は百五十億、二百億、約一割近い増収になるということがいわれておりますが、一体何によってこれらの増収がもたらされるか。車両はすぐにはできないでしょう。線路もできないでしょう。職員の労働過重によってのみこの増収がささえられておる。こういうことを私が言いましてもあえて過言ではないと思います。それからそういう職員から家族パスを取る、あるいは物資部の割引をやめる。そのことがいい悪いは別ですけれども、みんな悪いことは職員の方にしわ寄せをしてきておる。こうまで苦しめて、なお職員の当然の要求をはねのけて厳重なる処分をするという点については、われわれ社会党としては断じて承服ができないと思います。もしそういうよう取扱い国鉄なり運輸省がやるならば、徹底的にあと残る二月間の国会においてわれわれは対決をしてやっていきたい、こういう腹をきめておるわけでありますが、こういう点について政府も意のあるところを十分考えられまして対処する用意があるかどうかお伺いします。
  77. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 根本的な考え方として、政府が弾圧を加えるとか、強圧を加えるとかいうような形をとってこの事態を押しつけ、押えつけていこうという考えは持っておりません。ただ国鉄だけでなく、社会全体の治安また安寧秩序を維持していくという全体の立場から、法を無視してもらっては困る。法を無視する者には、これは厳とした態度をもって臨まなければならぬことは当然であります。従ってそういう意味において、政府は今度の春闘に対しても、厳重に取り締るという意味は、法を無視しないようにしてもらいたいという意味のことでありますから——これは労組においても法を無視したくてするのではないと思います。勢いのおもむくところそういうところに行くのだと思いますが、それをお互いにあらかじめ警戒をして、事がそういうことに立ち至らないようにしよう。これは政府としては当然の言い方を言ったにすぎないと思うのです。それから国鉄職員の家族パスがどうとかいう個々の問題についても、鉄道の中におる人は、自分の鉄道をある程度利用したくなることは、理屈を言いますと、それなら郵便局におる者は郵便切手を使えるのか。これは理屈を言えばでありますけれども、そうではなくして、あたたかい心持で、住みよいようにしていくということは私は必要なことであろうと思います。家族パスの問題についても一億円ですか、物資の問題についても四億円だという話を聞きまして、そのくらいの程度なら、そんなことをやらないでもよさそうなものだという心持も出てくるわけでありますけれども、これも全体の規律の上から行なっていかなければならないということで行なっていったわけでありますから、その点は一つ御了承願います。
  78. 堀内一雄

    ○堀内委員 関連して。国鉄職員と一般の事業会社の労働者というものは、その身分上においてもよほど違っておるように思うのですが、そこで国鉄職員が、今度のようにああいうストライキをすることが一体許されておるのかどうか。それを一つお伺いしたいと思います。
  79. 權田良彦

    ○權田政府委員 公共企業体等労働関係法の第十七条に「職員及びその組合は、同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。又職員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。」こう規定してございます。
  80. 堀内一雄

    ○堀内委員 今の局長の説明でその問題はわかりましたが、日本国有鉄道法の中に、その職員の守るべきこと、並びにそれを守らなかった場合にはどういう処分をするというようなことが何か規定してありますか。
  81. 權田良彦

    ○權田政府委員 それは今申し上げました十八条に「前条の規定に違反する行為をした職員は、解雇されるものとする。」なお日本国有鉄道法の第三十一条に「職員が左の各号の一に該当する場合においては、総裁は、これに対し懲戒処分として免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。一この法律又は日本国有鉄道の定める業務上の規程に違反した場合 二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合」こう規定してございます。
  82. 楯兼次郎

    ○楯委員 大体ばかに監督局長は得意になって罰則の条文を読まれましたが、あなた方のやることをやっておらぬじゃないか、自分たちの当然やるべきことをやっておらずして、一方に処分だけ押しつけるというのはけしからぬ。十日にも労働組合調停案をのもうじゃないか、のんでこの争議をできるだけおさめようとしておるにもかかわらず、あなた方はこの調停案すらのまぬじゃないか。ここに今日紛争が起きている原因があるということを言っている。私は何も労働組合の一方を正としておるのじゃありません。片方の組合がのんでおさめようとしておるにもかかわらず、先ほど来繰り返しておりますが、政府の閣僚懇談会においてはその結論すら出さずに散会をしておる。しかもあすからこの問題が起きようとしておる直前ですらそういう状態です。そうして事が起きてしまってから、あまり事態が大きいので裁定は尊重する、実施をしていく——そんなことならなぜ起きる前にそういう措置をしなかったか。それは予算編成上、あるいは参議院において予算が審議されておるという政府立場も私は認めます。認めますけれども、そういうことは組合も了解しておる。しかしほかの方法でそういう確約を与えたならば、今日このよう事態が起らない。自分たちがその立場を守らずにおいて、そして挑発しておいて、組合のみ処罰弾圧するということはけしからぬじゃないか、そういう勝手な解釈は私はやめていただきたいと思う。しかも先ほど来私が申しておりますように、車両はすぐできない、線路は増設されない、職員努力によってのみ今日百数十億円の増収を上げておるじゃありませんか。これはあなた方が上げておるのじゃない。職員が身を粉にして働く努力によってのみこういう増収を上げておるのです。しかも事の是非は別として、職員に不利になるような物資部の問題、あるいは家族パスの問題、これはなるほど世論は批判をするでしょう。攻撃するでしょう。このことの是非はこれは別でありますが、とにかくそうされることにおいて、職員の待遇というものは悪くなっていくという点は、これは認めなくてはいけないと思います。そういうばかに勝手な、自民党の諸君も公平な立場に立ってものをまじめに考えてもらわなくちゃ困ると思う。  そこで私はいま一点運輸大臣にあるいは国鉄当局にお伺いをしたいのでありますが、私はけさの新聞で同僚の中居委員が今度の運賃値上げのことについて質問をしておる記事を読んだのでありますが、どうもふに落ちないことがあります。といいますのは、われわれは国鉄の資産評価に対しても、そういう事務的な準備を持っておりませんから疑義があっても調査することができません。いろいろ疑義があるのでありますけれども、こまかく調査することはできませんから、運輸省から出されました、あるいは国鉄から出されました資料によって物事を組み立てていきます。ところが三十年度の資料を見ますると、減価償却を経営調査会の答申に基いてやるので百八十三億でありますかの赤字が出ておる、こういうふうに私ども資料によって見たわけであります。ところが三十年度のあの決算書を見ますると、三十二年度の予算の編成というものはやはり赤字がないという前提に立って予算を編成していかなくてはいけないと思います。ところがけさの朝日新聞の中居君の質問に答えて監督局長は、いや三十一年度も赤字が出るのだ、こういうように私は読んだわけであります。これは新聞記事でありますからその正確はわかりませんが、そういうふうに読んだので私ども社会党としては、とにかく赤字が出る出ないにかかわらず国鉄の五カ年計画というものは、この輸送の隘路を打開しなければならないから、これはやってはならない、しかし公共企業体としてはやはり資産維持のためにも運賃のバランスをとる、他の近代化その他の問題については借入金でやっていく、こういう基本原則に立って、出しませんでしたけれども予算の組みかえ案を一応作りました。ところがあなた方が出される資料に基いてわれわれ社会党はこれを検討して、将来の対策を立てるのでありますが、出される資料とあなた方が今日言明されることとはどうも一致しない、こういうふうにとれるわけでありますが、きのうの中居君に対する答弁は違いますか。
  83. 權田良彦

    ○權田政府委員 昭和三十一年度の今から立てた決算見込みの予想について申し上げたので、三十一年度の決算見込みとしてはやはり赤字になる見込みでございます。
  84. 楯兼次郎

    ○楯委員 その三十一年度が赤字になる見込みというのは、いわゆる経営調査会が答申をしておる減価償却費を増収ではまかない切れないというのでしょう。
  85. 權田良彦

    ○權田政府委員 減価償却につきましては前々申し上げておりますが、現在やっております減価償却費の算定は昭和三十年度からやったわけです。それまでは昨日も御説明いたしましたような簿価であるとか、あるいは昔の第一次の再評価ベースでございます。経営調査会当時に経営調査会の資料に出ております減価償却は、これはいろいろ当時議論がありまして、いわゆる第三次評価ベースということであります。しかしそのかわりに耐用命数、これは一般私企業あるいは法人税法等でやっております耐用命数を適用してやっておるのであります。その後御案内のようにお手元に資料も配ったかと存じますが、一昨年の四月以来昨年の三月まで資産再評価委員会国鉄に設置いたしまして、各方面の権威者に集まっていただいた結果再評価というものをいたしまして、運輸大臣が認可したわけです。これを一口に申しますると、いわゆる時価評価ベースということでありまして、物価ベースを原則として三十年の四月一日に置いておるわけであります。しかしそのかわりに先ほど申しました耐用年数を一般のものとは異なりまして、これは今申しました委員会でいろいろ御検討願いました結果に従いまして、一口に言えばこれを約一割程度延ばしておる。公共企業体でありまするみと、それから資産内容、たとえば従来四十年とされておりました土工及び鉄筋コンクリート隧道というものを九十年としたという以外に、実情に合わしておおむね概算しますと、一割程度耐用命数を延ばした。これとその後に取得いたします財産につきましては、もう監査もくそもございませんから、その価格に応じて耐用命数が出てくる。それで総資産の資産再評価額を計算いたしましたのが、今申し上げますように昭和三十年度が四百六十九億九千万ばかり、昭和三十二年度の予定額としては四百八十九億八千万ばかり、こういうことになっておるわけであります。
  86. 楯兼次郎

    ○楯委員 私はここにこまかい資料がないので数字をあげてやることはできませんけれども、経営調査会が答申を出したときと今国鉄当局が三十二年度の予算編成で作業をしておる感じが、時期的にずれがあると私は思う。といいますのは、経営調査会が答申を出しました当時は、今日のような増収というものが見込まれておらなかったのじゃないか。増収がなかったからああいう答申を出したのを、増収がある今日、なおかつ増収が見込まれない答申の時期の考え方を織り込んで予算編成をしておる。といいまするのは、これはあなた方は反対でございましょうけれども、減価償却という点に赤字を合せるといたしますると、大体三十二年度の予算は二百八十四億増収というふうにあなた方は計上されております。そういたしますると、二十九年度に償却いたしました二百七十億で大体数字が合っている、従って五カ年計画は借入金によって工事を施行していく、こういうのが将来公共企業体としての財政基礎の確立上いいのではないか、こういうふうに考えるわけです。この点どうですか。
  87. 權田良彦

    ○權田政府委員 すでに御承知ように昭和三十年度の決算額で申しますると、百八十三億四千万何がしの、百八十億ばかりの赤字が財務上出る。経営調査会時代と収入の状態その他が違うではないか、これは御指摘の通りでありまして、その後私どもは、三十二年度の予算については最近の情勢によりまする輸送量の見通し、それに伴う収入改訂をいたしまして、今回の予算になっているわけであります。収入については三十一年度予算に比べますると、かりに値上げ額を入れないといたしますると、運輸収入では御指摘の通り約二百八十四億であります。一割三分の値上げ額が約三百六十五、六億でございますから、この二百八十四億でただいまの三十年度の百八十何がしがまかなえるではないか、こういう御質問かと思いますが、これはちょうど中居先生にお答えいたしました通りに、三十一年度においては予算に対して約百四十億増があった。しかし百四十億増を上げまするためには、列車キロもふやし、それに伴う動力費なり、いろいろな経費がかかっております。こういう経費以外に、またいろいろ人件費に回るものもございまするし、従って見通しとしては赤なのです。それから三十二年度につきましては、二百八十四億を見合いましてもこれに対する経費をとりますると、この経費の中で、すでに御説明しましたが、大体四百八十九億ばかりの減価償却と、それ以外に二百七十億ばかりのいわゆる自己資金が生まれて参る。これは利潤ではない。これはいろいろペイしない改良費に充てて、それと今度は外部資金の三百十五億というもので、約千億ばかりの改良費が出て参る。従って三十二年度の決算見込みは、今の予定といたしましては赤は出ない、こういうことでございます。
  88. 楯兼次郎

    ○楯委員 国鉄の五ヵ年計画について、この工事費をどうこうということをわれわれ社会党は言っているわけではないわけです。ところが国鉄当局の出される資料と説明数字が常に行き違いになっている。どうも最初の国鉄の資料によって私どもが政調会でいろいろ検討をしておると、すぐまたあとからその理論の立て方が違ってくる、こういう点を私は言っておるのであります。だからいい悪いは別として、やはり行政管理庁の勧告もあり、国鉄は財政の立て方というものをはっきりしておいた方がいいであろう、こういう点から私は申し上げておるのです。それから経営調査会も時期的なずれはありましたが、あの当時としてはなるほど一応うなずかれると思いますが、それからどんどん輸送需要というものが多くなってきている。従って今日のような増収が見込まれない前提に立ってああいうことを調査会が言っているのであるから、少し違った説明がなされなくてはならないと私どもは思っておったのでありますが、また違った説明をされている。だから何もかも、その時と所によってチャンポンになっているような気がするのです。だからこういう点ははっきりと財政の基本方針というものを確立されて今後やっていかないと、また同じようなことが繰り返される、こういう点を私は心配しているのです。  それからこれは、今時期的にどうかと思いますが、とにかくこの間も説明を聞いたのでありますが、政策的な割引があまり多過ぎる。これはわれわれ議員、自民党の諸君といえども、あなたの方にいろいろ陳情に行くとは思います。季節割引とか、いろいろ陳情に行く。ところが予算の裏づけは、当委員会においては何ら論議にならない。われわれ社会党の案はなかなか通らないといって、一笑に付されるのでありますが、私どもは鉄道債券に対する利子補給というようなものを組みかえ案に出しまして——出さなかったのでありますが、編んでおる。私しろうとでありますが、おそらくこういう政策的な割引等を合計いたしますると、三百億円ぐらいあるのではないか。従ってそのうちの幾分かは政府の方からまかなっていくようにしなければ、今に各団体、各議員の陳情によって輸送原価全部を下回ってしまうのではないか。日にちがたつに従って、もう採算割れの品物ばかり国鉄は輸送をするということになっていくおそれがあると思うのでありますが、こういう概算の金額と、今後こうした季節割引その他政策割引については、どういうふうな考え方を持っておられるのであるかお伺いしたいと思います。
  89. 石井昭正

    ○石井説明員 政策割引についての御質問でございまするが、国鉄の割引制度につきましては、いわゆる営業的な割引と政策的な割引と二種類ございます。営業的な割引につきましては、これはむしろ営業を増進するためでございますが、御議論の対象になっていないので説明は省略いたします。公共的な割引につきましては、いわゆる社会政策あるいは産業政策に基く制度的なものと、いま一つは、ときどきいわゆる臨時的と申しますか、あるいは賃率表その他の制度で行なっている以外の割引をやっておる部分でございます。これは過去におきまして運賃改正をいたしました場合に、いわゆる運賃体系の不合理を是正する意味におきましていろいろ改正をやっておりますが、その一番大きなものは昭和二十八年の改正の際におきます等級の再査定でございます。そのときにおきましては平均一割の値上げということにもかかわらず、そういう毎度の改廃のために、はなはだしいものは三割、四割というような値上げになるという具体的な例が出て参ったのであります。これはいろいろ国会の御審議等で、そういうものは理屈では正しいかもしらぬが、しかしながら急激な変化を起すということは利用者にとって相当大きなショックがあり、いろいろな生産の立地その他の問題もそういう点ででき上っておるのだから、これは漸進的にやるべきだというような御意見に基きまして、いろいろな関係官庁と折衝いたしまして、そういう急激な変化を避ける措置を講じたものが公共の割引として残っているのでございます。
  90. 楯兼次郎

    ○楯委員 その問題はあとでやるそうでありますから打ち切ります。  私は二点お伺いしたいと思いますが、この数年来国鉄の要員が非常に逼迫しておるので、要員をふやせという要求が強いのでありますが、先ほど来申し上げております給与総額によって縛っておる。なお大蔵省は認めないままに今日予算が編成されております。従って今ここで私が予算総額をかれこれ言いましてもちょっと解決しないと思いますので、具体的に要員不足を緩和するところの公安官の問題でありますが、公安官を輸送要員として使う意思がないかどうかという点をお聞きしたいと思います。この問題は数年来当委員会において論議されたのでありますが、いまだに数千の人が公安の仕事をやっております。忍は公安官そのものをどうこうということを今言うのではありませんけれども、非常に輸送要員が逼迫しておりますから、これを大幅に削減をして、そうしていろいろな犯罪あるいはその他の紛争が起きましたときには、公安官の連絡員くらいを置いて、外部の警察と連絡をするという措置をとって輸送要員に回した方が、当面の要員不足を解決する最も格好な問題だと思うのです。今日公安官は何名おって、ただいま私が申し上げましたよう措置をやる意思があるかどうか、こういう点をお伺いしたい。
  91. 石井昭正

    ○石井説明員 現在公安官の数は、現場関係におきまして二千七百二十二人、それから管理部門が四百四十七人合計三千百六十九人、これは三十年の数字でございます。それからまた楯先生御承知通り、この公安官全体が警察業務に従事しているのではなくて、私どもの営業関係でやっておりました事故調査の仕事をやっておる者も、この中には相当含まれております。全部が全部警察的な仕事をやっておるわけではございません。それから現在やっております公安官の使命でございますが、これは非常に重要な仕事をいたしておりまして、私どもといたしましてもやはり旅客の秩序、ことに終戦直後から比べますと、大へんに世情は安定はしておりますが、列車内の犯罪もまだ相当行われておりまして、旅客をこれらから保護することもまことに必要やむを得ざる責務だろうと考えておる次第でございます。またその他におきまして警察業務以外に旅客の秩序を守るために公安官が——たとえば年末で非常に旅客が増加しているというようなときには、やはりこれは一応私ども職員が整理に当るという建前におきまして、公安官がいろいろとそういう方面の仕事をしますことが実情に適しております。また非常に効果的でございます。そういう点からいろいろ考えまして、現在公安官を輸送上の要員不足におきまして転用するということもまことにごもっともなお説でございますが、一挙にそういうふうにやるわけには参りかねると思うのであります。しかしながら社会状態の改善——いろいろの犯罪状態というようなものにつきまして改善ができて参りますに従いまして、私はこの人数もなるべく減らして、そうして輸送要員の充実に充てるようにやって参りたい。今年度におきましても公安官の減員を企図しておる次第でございます。なお一般警察官と連絡をしたらよろしいだろうというお話でございますか、警察方面も必ずしも十分な状態でなくて、地方によりましては、地方財政その他の関係もございましょうが、思うような御協力を願えない場合も事に臨んではときどき発生いたしております。それがために思わぬ御迷惑を旅客公衆におかけすることも多々ございますので、いましばらくこの制度は続けて参りたいと思っておる次第でございます。
  92. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは公安官の問題について私は二点簡単にお聞きしたいのでございますが、あなた方は経営調査会の答申であるということを常に口にされまして、忠実にこれを実行をし、かつ長期間にわたるものは実行されようとする意図がうかがわれるのです。経営調査会の答申にははっきりとこの公安官問題について、今秋の言っているようなことを答申をいたしております。なぜこの問題のみを実行をされようとしないのか。他の問題にはいずれも熱心であるにもかかわらず、本問題はなぜ答申案通り実行されようとしないのであるか。それからいま一つは、なるほど例をあげれば存置をする理由を述べられると思います。しかし昔のように警備係であるとかその他乗客係というような職務にかわったならば、ときには出札、ときには改札、その他いろいろ手不足のところを臨時に補って輸送業務を補助することができるのです。従って同じ仕事をやるにいたしましても、警備係等の職名にするかいないかによって、私は現場における仕事の手助けという面において大きく変ってくると思います、なぜこの問題に限ってそうされないのか、答申を尊重して実施をしないのか。今公安官に類似といいますか、仕事は必要があるとしましても、なぜ他の仕事の手助けをすることのできる昔のような職名に返さないのか、御意見をお伺いしたいと思います。
  93. 石井昭正

    ○石井説明員 経営調査会の答申につきましては、私どもも十分内容を検討さしていただきまして、できる限り御趣旨に沿うようにやっております。ただいま私どもの公安官に対してとっておる態度も、公安官制度に対する考え方も、この御趣旨に反しているようなやり方をしているとは考えていないのであります。  それから公安官制度を廃止して職名をもとへ戻さぬかという御質問でございますが、御承知ように鉄道公安官の職務に関する法律がございまして、それによってのみいろいろ犯罪の捜査その他の権限が付与されております。その権限があるとないとによりまして、警備あるいは秩序というような点に大きな差がございます。この点を勘案いたしまして一応公安官制度をとっている次第でございます。
  94. 楯兼次郎

    ○楯委員 それは理屈をつければどういうふうにもつくと思います。法律も必要があれば改正すればよろしいのです。他の件は口を開けば経営調査会の答申であるからとこうやるのに、本問題だけは、あなたの方にどういう必要があるか知りませんけれども、現場の輸送要員がふうふう言いながら、休みもとずら一割に近い増送をしていることは、身をもって体験していると思います。人がほしいと言っております。にもかかわらずなぜこういうことをやらないのか、ただいまあなたの御答弁を聞いておりますと、何もできることをやらない、やる意思がないのだ、こういうふうにしかとれないのです。どうかこういう点はもう少し現場の実態をよく検討されて、答申案に沿うようにやってもらいたいと思う。  それからいま一つお伺いしたいことは、東海道線の小口混載をば廃止をするという問題です。こういう大問題が起きておる国鉄が、経営合理化と言えば言えるのでありますが、何を好んでこういうことをやらなくてはならないのか。この問題は町の中小当該業者にも重大な影響を及ぼします。あなたの方でやられるのは、要員を生み出すためと、それから貨車の運用効率をば高めるために私はやられるのだろうと思うのでありますが、現状の上に立ってやるべきことをやって、しかる後にこういう国鉄の運営に変革をもたらすような大きな問題はやるべきだと思うのです。この前科もあなた方にこういうことはすぐやらない方がいいじゃないかということで、一カ月延びたとか言っていましたが、こういう問題を実施されようとする意思があるのかないのか、もう一回一つ伺っておきたいと思います。
  95. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいま御質問がございまして、小口混載制度の廃止とおっしゃいましたが、これは逆で、私ども考えておりますのは、小口混載制度を強化するということでございます。これは楯先生のお考え違いで、ちょっとお言葉が違ったのかと思います。この四月一日から実施しようとしております小口混載の強化につきましては、これはお言葉の中にもありましたように、全く私どもは輸送力増強の観点に立って考えておるわけでございます。御承知ように現在の小口積車というものは非常に積載能力が悪いと申しますか、非常に荷物を多く積んでおらないのであります。これはこの制度の建前上やむを得ないことではございまするが、しかしながら何分にも今日のように輸送力が行き詰まって参りますときは、できるだけ一車当りの積載量を多くすることを考えたい、かよう考えて参ったわけでございます。これによりまして、私どもは相当よけいの貨車を生み出すことができる、同時にいわゆるクィック・サービスと申しますか、非常に速いスピードで輸送ができまして、かえって荷主さんに喜ばれる。また運賃も混載制度の方にした方が、荷主さんの御希望の料金も安くなるというようなことで、これはひとえに荷主さんのサービスにもなるし、また現在行き詰まっております、特に行き詰まりのはなはだしい東海道線の救済になる、かよう考えておるわけでございます。ただこの結果といたしまして、もちろん私どもの方の要員がこの面で生み出されることも事実でございます。これも現在の要員不足の折柄、この分でもって現在不足がちで非常に困難しております方へ充当いたしまして、ますます輸送能率を向上して皆様の御期待にこたえたい、かよう考えておる次第でございます。
  96. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は先ほど廃止と言いましたが、これは違います。小口貨物輸送合理化です。そこであなたの方のねらいは、いわゆる要員の生み出しと、貨車の運用効率の生み出しにあると思います。ところが私が言っておりますのは、こうしたことをやって要員を生み出すより、三千名あるところの公安官を、答申も言っておるのであるから、輸送要員の方に回す方が先じゃないか、こういう点を強調したのです。それから貨車の運用効率は、私もずっと二十年ばかり貨物掛をやっておったのでありますから、そう大して現在の情勢は変らないと思いますが、積みおろし、留置料、貨車留置料を的確にお取りになってごらんなさい。数十億の増収になり、かつ運用効率は飛躍的に私は増大すると思うのです。こういう問題についてはいろいろ困難があるとは思いまするけれども、なぜそういう当然規定にきまったやるべきことをやらずして、新しい職員やあるいは小口業者に迷惑を及ぼすよう措置をとるのか、こういう点を私はお伺いをしておるのです。こういう問題は事前に解決すべきことを解決して、そしてあとで考えればいいことではないか。やるべきことをやらずして、先走ってこういうことを考えるということは、今日の国鉄においては不見識ではないか、こういう点を言っておるのです。貨車運用効率のために、今度は一つ一週間ぐらい貨車留置料あるいは積みおろし料を規定通りに取るぐらいの指令を全国に出してごらんなさい。貨車の運用効率というものは、何割も上昇すると私は思いますし、収入は相当増収になると思うのですが、なぜこういうことをやるのですか。
  97. 石井昭正

    ○石井説明員 御質問の御趣旨でございますが、私どもあらゆる点で輸送の合理化をやって参りたいと思っておりまして、ただいま楯先生の多年の御経験に基きました適切なる御趣旨も十分服膺いたしまして、あらゆる面からやって参りたいと思っております。この小口制度の改善もその一環でございますので、何とぞ御了承願いたいと存じます。
  98. 楯兼次郎

    ○楯委員 それは御了承願えませんね。これはやってもらっては困るのです。あなた方上の命令だといって勝手なことをやられるかもしれませんが、下の職員は、なぜやるべきことをやらずして、こんな先走ったことをやるのか、今こんなことをやらぬでもいいじゃないか、こういう声が関係職員からはあがっておるのです。しかも今申しましたように、留置料、積みおろし料の問題も解決しない。あなた方は的確に守るように指示を与えたことはないじゃありませんか。そういうことをやらずに、公安官をそのままにし、各種料金をそのままにしてルーズな運営をやっておりながら、こういうばかげたことを先走ってやる。これでは完全にやらぬことの累積で、しまいにはにっちもさっちもいかなくなってしまう。ここで、この問題についてはよく研究をしてそうしてやるべきことを先にやる、こういうふうに一つ答弁して下さい。了承できませんよ。
  99. 石井昭正

    ○石井説明員 この小口制度の合理化につきましては、ある関係と申しますか、事務的に手はずを進めておりまして、大体実施の見通しもつきましたので、四月一日から予定通り実施いたしたいと思っております。御指摘になりましたその他のいろいろな改善につきましては、十分御趣旨を体して、われわれも輸送増強に精一ぱいの努力をいたしたいと考えております。
  100. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは石井さん、ただここだけのやりとりでは済まないから言うのです。おそらく組合の方はこの問題の反対をめぐって、あなた方が予想する以上の紛糾を起しますよ。だから私は言っておるのです、ただ私は物好きであなた方のあげ足をとればいいというので言っておるのではないのです。これはただでさえ大問題を控えておる国鉄になお大きな紛争が起るから、こういうことは延ばされた方がいいではないか。しかもやることがなくてやるということなら、これは私も真剣に検討しなければならないと思うのでありますが、貨車の運用効率、要員の生み出しについては、先ほど指摘いたしましたように、あなた方やるべきことでやっておらない点があるのです。それをやればこの問題を解決する以上の成果が上がる、その成果が上がることを、どういう関係か知りませんけれども、ほうっておいて、なぜこういうことを新規にやらなくちゃならないのか。こんなことをやってもらっては私は困るのです。
  101. 石井昭正

    ○石井説明員 いろいろ御指摘がございましたが、貨車の運用効率向上ということについては、輸送力の不足の折柄私はきわめて適切なことで、この点は御了承願えるのではないかと思います。ただこれによりまして私どもの方の要員に若干余裕を生じまして、その職員の方々の配置転換その他等についていろいろ御希望のあることは承知いたしております。この点はできるだけお話し合いをして円滑に解決するように持っていくつもりでございます。
  102. 楯兼次郎

    ○楯委員 もう何回答弁を聞いても同じだと思いますか、これはここではっきり断言せずに、私は検討して延ばしていただきたいと思います。このことのいい悪いをめぐって紛争が起りますよ、組合あたりでも相当取り上げてやっておりますから。なお紛争の起るようなことをやる必要がないじゃありませんか。あえてあなた方がやるというなら、ここで貨車留置料と積みおろし料を的確に規定通り取れ、こういう指令を全国に流して下さい。それと並行してやって下さい。
  103. 石井昭正

    ○石井説明員 今お答え申し上げました通り、決して私どもこの問題についてことさら紛争を起すというようなつもりはございません。この要員問題についてはとくと従事員諸君に御納得、御了解を得るように努めてやるつもりでございます。ただ、今お話の留置料問題につきましては、私どもの規定ではっきりいたしておりまして、規定通り扱いをやっているものと信じている次第でございます。
  104. 楯兼次郎

    ○楯委員 だからそういう点が私は認識不足だと思うのですよ。だからどうしてもこういうことをやるというなら、その前に規定にきまっていることを実施するように、営業局長もお見えになりましたが、一つ全国に貨車留置料と貨物積みおろし料を的確に取れ、その指令を出して下さい。そして小口の合理化をやるならやって下さい。当然やるべきことをやらずして、そういう新しいことを幾つも積み重ねる、それは国鉄のためによくない。やるべきことをやって余裕があれば、そのあとに新しい合理化なり、手を考えていくというのが私は普通だと思う。やるならそうして下さい。なぜ私がこれを言うかといいますと、国鉄にとっては従業員の配置転換、あるいは小さい業者はつぶれてしまえ、こういうことかもわかりませんけれども、これによって飯を食っている業者は命がけですから承知しませんよ。だからやるなら貨車留置料、積みおろし料も規定通りに的確に取れ、その指令を流してから、それと並行してやって下さい。
  105. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいまお話がございましたが、私ども規定に載っている通り取扱いを現場でいたしていることと存じております。しかし楯先生のお話によれば、そうでもない点もあるというお話でございますので、これはかたく戒めるように、御趣旨ように通牒を出して励行させることにいたします。
  106. 淵上房太郎

    淵上委員長 正木清君。
  107. 正木清

    ○正木委員 大臣が出席する前に私国鉄当局に簡単にお聞きしておきたいことがあるのです。このたびの国鉄紛争が意外に大きくて国民に非常な御迷惑をかけていることは、私としてはほんとうに遺憾なことだ、実はこう考えております。まことに残念だ、こう考えております。そこで私ども常識でものを判断してながめておった限りにおいては、なぜかように大きな紛糾になったかということについて、何か国鉄のあなた方と労働組合との間に、信義上どちらかが裏切ったよう行為があったのではないか、こういう心配が実は昨晩あたりから心の中で出て参りました。これを具体的に言うと、何か労働組合国鉄の首脳部の間で話し合いをしたときに、たとえばあなたの方で待遇上の問題やその他のことで、こういうことをしてあげますというような言質を与えておったことが、実際は実行に移されなかったのだというようなことがありはしないかという心配か私には出てきたわけです。もし、これはかりにの話ですが、そういう事実があるとすれば、四十四、五万のあなた方の職員でございますから、労働組合といえども選ばれて組合の本部におる者は、大きな責任を感じなければなりませんね。ここは公開の席ではありますか、さようなことがなかったのかどうか、その点をまずあなたにお伺いしたい。
  108. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 ただいまの御質問は、非常に何かものをくるんでやわらかくお話し下さいましたが、私実はこういうことではないかと思いまして、率直に申し上げますが、三十一年度の調停案として、国鉄職員給与は経営内容が改善せられたならば、給与の改善をしたらよかろうというふうな調停案が出ましたことは、あるいは御存じかと存じます。その後いろいろ増収もございましたので、労組の方から私に調停案を何とか形に移すようにというような話が再々ございました。しかし当時はまだまだその時期ではございませんでしたが、和は最善の努力をして、三月までにできることならば最善の努力をいたそう、こう申したことはございます。ところがそれが私の力が足りず現在までできておりませんことは、まことに遺憾に存じております。ただ今回出ました調停案には、本年度のことについても多少触れておられるので——これは仲裁の裁定で出るか出ないかわかりません。またどういう格好で出るかも私は存じませんが、もしそういうラインでも出ましたならば、できるだけの努力を尽してみたい、こう思っております。
  109. 正木清

    ○正木委員 今副総裁から自分努力が足りなかったために、約束をしたことが実行に移せなかった、こういう答弁がございました。  そこで私はお尋ねしたいと思うのですが、裁定は私は存じませんよ。裁定はこれからのことでございますから……。調停案の第二に、なお本年度については、この給与改訂の趣旨を勘案して適宜の処置を講ずるものとすること、こう調停案に出ておりますが、この調停案の裏を返せば、あなたと労働組合との間の昨年度の話し合いにおいて、かようかくかくにいたしましょう、それでけっこうでございますというその約束が、実際は政府の反対にあって実行に移らなかったということが、この調停の本年度の勧告の精神になって現われておるのではないかというように私は想像するのですが、副総裁はどういうようにこの勧告をおくみ取りになっていらっしゃいますか、あなたのお気持をお聞かせ願いたいと思います。
  110. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 私は調停をいかなる意図でお出し下さいましたかは知りませんが、私想像いたしますれば、これは私が努力をするというふうなことをお取り上げになるべき筋合いのものじゃないと思います。ただ三十一年の調停案に、給与の改善は、できるならば経営内容が改善せられたらばしたらどうかという調停案が出ておりまするので、あるいはその御趣旨かと存じまするが、それ以上は私としては思い当ることはございません。
  111. 正木清

    ○正木委員 大臣ちょっとお聞きを願いたいのですが、私はあなたの不在中に国鉄の副総裁にお尋ねをしたのです。私ども常識から判断すると、国鉄の今回の紛争がこれほどまでに国民に迷惑をかけるということは、常識上実は考えなかった。何か国鉄の当局と労働組合との間に話し合が成立しておったものを、どちらかが信義上それを裏切ったために、意外なことに問題が発展したのじゃないか、実はこういうお尋ねをしているわけです。乱ども承知している範囲では、事ここに至りましたから一切を申し上げてよろしいと思いますが、調停案に基いて国鉄当局は必死の努力をやった。業績が非常に上ってきたので必死の努力をやった。そこで実は業績賞与という形でございますが、あなたの——あなたということは運輸省でございますが、承認もあったろうと思うのでございますが、賞与の形で金を出した。ところが昨年の暮れになって、突然政府から横やりが入りまして、一月−三月分というものは全然約束がほごになっているという事実を私ども承知しておるのです。二十九年度からさかのぼってだんだん計算をしてみますと、総額にして約四十二億でございます。これが実際は実行に移っておらない。ここに問題の紛糾の大きな原因があるわけです。ですからあとで私は国鉄職員局長にもお尋ねしたいと思うのですが、読売新聞の中で、「昨年末の副総裁覚書も五、六%の昇給は常識だから「何とか努力します」といったので、それ以上は約束できない立場ではないか。」こう言っております。このことは具体的に何ら実行に移っておりません。そうすると職員側の立場に立てばどうなるかということです。四十四、五万もおる職員でございますから、その下部の諸君から選ばれた今の組合の本部の諸君、その方々が国鉄総裁なり副総裁と、ここには覚書とございまするし、一方労働組合側の野々山君の方にも覚書と書いてありますが、覚書があろうとなかろうと、お互いに信義上約束したことが一たん実行に移された。ところが政府側からの反対にあってその実行が御破算になってしまった。こういうことでは公労法の規定の精神というものは一体どうなってしまうのだ。こういうことになりますると、つい問題が紛糾せざるを得なくなるのではないか、こういう考えを私は持つわけです。そこで国鉄当局、特に副総裁にお尋ねをしたいのは、あなたはただいまこの席上で自分努力が足りなかったという答弁をはっきりなさいましたが、小倉さん、あなたはこのことについて監督局長なり当時の運輸大臣なりとほんとうに真剣になってお話し合いになったのかどうか、ほんとうに交渉されたのかどうか、この点を明らかにしてもらいたい。
  112. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 この問題につきましては、私はどちらへ参りましても遺憾の意を表しております。
  113. 正木清

    ○正木委員 そうすると小倉さん、あなたは運輸省とこのことについては話し合いをなさらなかったわけですね。
  114. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 私は職員に対してできるだけのことをいたそうと思いましたが、国鉄の財政状態によりましてもあるいは諸般の事情によりましてもでき得なかったので、それにつきましては自責の念を非常に持っております。
  115. 正木清

    ○正木委員 小倉さんの御苦心のお気持、私も胸にこたえてよくわかります。あなたとしてはそういう表現を使うより仕方がないと思います。私どもはよく存じておる。政府からの横やりでこれが実施できなかったのですからこれ以上は申しませんが、こういう経過をたどって、事の意外なところからいろいろのことがもつれ合って、国民に御迷惑をかけるような結果になったというこの事実を、大臣はよほど腹をしっかり持って御調査になっていただきたいと思います。ところが私が非常に残念だと思いますことは、今回の国鉄の紛糾について、こうした事柄が議会の中でも全然真剣に話し合われないままに、公労法に基いて違法行為をした職員を厳罰にするのだということだけが強く打ち出されておるところから、昨晩徹夜でも円満に解決することができることが、解決し得ないところまで追い詰められてきたのではないか、こういうように私は私なりに実は非常に心配をいたしておりますが、小倉さん、あなたのお考えはいかがでございますか。
  116. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 繰り返して申しますが、給与の改善につきましては、私は私なりに努力して参ったつもりであります。また労組の諸君の気持も十分わかってきたつもりでございます。しかし先生にそういうふうに御指摘になられますと、私としては、まあ何とも遺憾の意を表明するよりいたし方ございません。
  117. 正木清

    ○正木委員 そこで本日は総裁が御出席でございませんから、これを副総裁にお尋ねすることは、あるいは無理かもしれませんから、あなたの与えられた権限の中で御答弁を願ってけっこうなのですが、大臣はこう申されておるわけです。裁定が出た場合には、政府はこれを尊重することは当然なのだ、こう答弁をされておるわけです。私ども社会党の立場からすると、その尊重ということはわかるけれども、従来の経過から見ると、完全なる実施ではない場合が往々にしてあるのだ、その点が非常に心配なのだ、大臣は完全実施のために尊重する御意思があるのかないのか、こう言って私どもはお尋ねをいたしておるのであります。私個人の受ける感じ方は、大臣は完全実施のために努力するから、君たちも心配しないでくれと、こういうように私は受け取れるのです。しかしそれにいたしましても問題は、政府政府立場がございましょうけれども、何といっても当の当事者はあなた方国鉄当局なのですから、国鉄当局のほんとうの腹は、裁定が出た場合に、完全実施をする考えを持って、円満に問題を解決する用意があるのかないのか。これは政府はもちちろんわかりまするけれども、当の当事者はあなた方国鉄当局なのですから、裁定が出たときに国鉄当局が決意をして、完全実施をして問題を円満に解決するだけの努力をする意思があるのかないのか、このことがまず前提条件になると思うのです。ですから、あなたは総裁でございませんので、あなたの与えられた権限のワク内で一つ御答弁を願いたいと思います。
  118. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 おそらく総裁も同じ気持だと思いまするが、裁定は、法律上原則として強制力を持っておりまするので、それを順守するに最善のことをいたさなければなりません。ただ将来のことでありますから、約束という言葉でなく、できるだけ——できるだけではな、尊重するという気持総裁が申し上げたことだと考えております。
  119. 正木清

    ○正木委員 大臣、今国鉄当局答弁をあなたお聞きの通り、裁定が出た限り、労使双方がこれを守らなければならない法律上の義務が当然あるわけですから守ると、こうおっしゃるわけです。そこで問題になるのは、この日本国有鉄道法という法律が問題になってくる。実は残念ながら大蔵省との関係もございますが、あなたは直接監督立場運輸大臣として、私はもう少しはっきりと、自分は裁定が出た限り完全実施のためにはやるのだという、具体的な意思表示があってしかるべきではないか、私はこう考える。そのことが問題を解決する非常な近道ではないか、こう考えるから、私どもは繰り返しお尋ねを申し上げているので、一つ大臣の御心境を聞かしてもらいたいと思います。
  120. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 実は私も就任以来日が浅いし、なかなかこの問題はめんどうでありますが、だんだん私にも形がわかってきたのであります。ことにただいま正木さんの条理を尽してのお話を伺って、大よその筋道もだんだん胸に落ちて参りました。この是非の問題は別といたしまして、このたびの国鉄の賃金のベース・アップの問題を解決するには、この行きがかりの問題はやはり解決しなければいけないのだ、こう私も思っているのであります。従って、かりに裁定に上ってそれが出たら、誠意を持って一つそれを尊重していくという私の言葉は、具体的な形の上であなたの御満足がいかないかもしれませんけれども、他の閣僚が他の席上においてどういう言葉を使ったか知りませんが、同じ心持をもってこれに進んでいきたいと今日考えている次第であります。
  121. 正木清

    ○正木委員 そこで、こまかいことになるようですが、どなたが御答弁下きってもけっこうですけれども日本国有鉄道法の四十四条の二項の規定でございます。この四十四条の二項の規定について、具体的に御説明を願いたいと思います。
  122. 權田良彦

    ○權田政府委員 この四十四条の二項でございますが、すなわち一項でもって、この給与準則は、その事業年度の支出が国会の議決を経た予算の中で給与の額として定められた額をこえられない。これがいわゆる給与総額、先ほどの問題です。二項は、今度これをこえていい場合でございます。例外の場合でございます。その場合は、能率の向上によって収入が予定より増加し、または経費を予定より節減した場合において、その収入の増加額または経費の節減額の一部に相当する金額を、予算の定めるところにより、運輸大臣の認可を受けて、特別の給与として支給するときは、給与総額をこえていい。この「予算の定めるところにより」というのが予算総則でございまして、予算総則は十七条になっておりますが、運輸大臣が大蔵大臣に協議して定めるところにより、これこれの特別の給与の支出に充てられる。これがいわゆる業績賞与と申しますか、業績手当という問題でございます。だからこの法律では、運輸大臣の認可を受けてとあり、これを認可をする場合に、大蔵大臣に協議をするということに予算総則でなっております。これにつきましては御案内の通りに、昭和三十年度においてもこの手当を支給いたしております。見通しで申しますと、再々御指摘になりまするように、本年度は非常に努力して収入も増加しております。それからまた経費の節減もある程度見るべきものがございます。従いまして、年度末になりますればその数字が確定して参りまするから、大蔵大臣と協議して、この規定の活用である程度のものを業績手当として出すことは大いに考慮したいと考えております。  それから「公共企業体等労働委員会」以下は新たに加わったのでありますが、御承知ように在来の公労法では、給与総額をこえますといきなり国会の議決で参ります。それが今回弾力条項が入りまして、もし経費のやりくりで流用のきくようなものができれば、運輸大臣が認可してこれを給与総額のワクを越えて出せるということになったのでございます。それを受けましたのが予算総則の十六条でございます。今までは、かりに仲裁裁定が出ても、給与総額がないといきなり国会の議決になりましたのが、一ぺんこの弾力条項へかかる。そうしてこれでもって協議して、どうしても流用財源がないときに、今度は国会へかかるという一段前の措置ができるわけでございます。この二つを合せて四十四条二項になっておるわけでございます。
  123. 正木清

    ○正木委員 重ねてお尋ねしますが、日鉄法の四十四条によると、「運輸大臣の認可を受けて、」となっていますね。ところが予算総則の十六条で見ますと、十七条と同じように、大蔵大臣との協議が必要になってくるのです。そこで監督局長にお尋ねしたいのですが、国鉄当局は腹がきまった——総裁言葉をかりると、四十何万人全部わしの子供だと言うのですね。あの人のくせです。しょっちゅうこの席上で言うのですね。だから女房役の小倉さんは非常に苦労なさっていると思うのです。国鉄当局の腹はきまった。それを直接監督するあなた方の腹もきまった。大臣も苦労人ですから腹がきまった。ところが、さて大蔵大臣の池田さんのところへ行くと、他の一般公務員との関係があるからまかりならぬということになる。その場合に旗を巻いて引き下ってくるのが、二十年来私が知っている運輸省の大蔵との折衝の結論ではありませんか。この四十四条も、法律ではきちんとこうなっておるけれども、多くの場合は、十の成績を上げても、いただくときには一か五分しかもらえないというのが今日までの姿ではないかと思う。協議の場合でも運輸大臣が横座へすわるのか、大蔵大臣が横座へすわるのか。これはよほど違うと思うのです。そこをあなたから説明を聞きたい思います。
  124. 權田良彦

    ○權田政府委員 ただいま手続のことをこの法律に従って御説明いたしました。ここに「予算の定めるところにより、」こう書いてあって、予算総則で「協議して定める、」そういう手続でございます。従って今申しておりますように、その前段のものは業績手当でございますから、一時金と申しますか、そのときの繁忙手当みたいなもので、その期末において払う手当、これは実際問題を率直に申し上げますと、私どもの方である程度の数字が固まって参ると、これにいろいろな査定基準を持っております。業績手当というと一体収入総額のどれくらいを——これは先ほど申しましたように物件費にも要るわけです。石炭だの何だのにも。それからどれくらい従業員の苦労に報いるか、いわゆる業績として認めるか。これを昨年度の例は増収額の大体三分の一くらい認めたかと思います。次に、さらに今度は特段の努力で、たとえば動力費の節約や石炭の節約運動等が効を奏して——これは非常に苦労しておりますから、この節約額のどのくらいを人間の働きで認めるか。昨年度は大体これを半額近く戻してやるというようなことではじめて参りました。これは大蔵省も同意いたしまして、昨年は年度末に御案内のように特別手当として出しております。本年度は今増収額が大体百四十億ばかりでございますが、まだもう少しありますので、これがどのくらいまでいくか。それから節約でございますね。これはもう少し国鉄からも聞いて締めて見ぬといけませんけれども、れをこどういった基準で返すか。実はこれは事務的に申し上げますと、これから大蔵省と相談すればよいことでも、例年そういう時期に押し詰まってやらなければ答えが出ませんから、やります。これは文字通りわが方で案を作りまして、協議して向うの同意を得る。向うが案を作ってこっちがそれに何だかんだと言うと、いわゆる予算の内示でございます。それとは逆でございます。  第二項後段の裁定の方でございますが、かりに裁定が出まして、先ほど大臣も申されたように誠意をもって尊重いたしましてその答えが出ますと、まず流用その他できくかとうか、財源的にあらためて検討いたしまして——これは裁定の内容にもよります。それによってできる場合とできない場合がありますので、できる部分があるかどうか吟味いたしまして、その結果腹がきまりますと、こちらからこの手続を発動して大蔵大臣と協議する、こういうことに相なっております。
  125. 正木清

    ○正木委員 問題がここまで来たのではっきり申し上げたいと思うのですが、御承知ように、調停委員会の諸君も仲裁裁定委員会の諸君も同一人なんです。別段人が違うわけではない、大体同じなんです。だから私は調停委員会から出た勧告が、大体裁定委員会に出てくるのだと見て常識上間違いないと思う。そうすると、今まで小倉さんが労働組合と約束して、残念ながら政府の横やりで実際に執行できなかった四十二億と今度の分を合してみたところで、国鉄の三十二年度の全体の中からいけば、私は企業努力によって操作できるという見通しです。ことさら大蔵省に頭を下げて金を借りなくても、ことさら一割三分の運賃値上げをさらに一部上げて四分にせぬでも、全体の操作によってやっていけると思う。この四十四条からいけば、その場合一番問題になるのはやはり大蔵当局です。そのとき当局からいけません、こう出られたら一体どうなるのかというのが私の心配です。業績賞与のところでなくして、逆に後段に、公共企業体等労働委員会の裁定が出た場合でも、必要な金額を予算の定めるところによって、運輸大臣の認可を受ければやれるとこの四十四条にはあるが、さて十六条を見ると、大蔵大臣と協議をしなければならないとなっている。このときに一体池田君が横座へすわるのか、宮澤運輸大臣が横座へすわるのか、それがどちらなんだということをあなたに聞きたい。
  126. 權田良彦

    ○權田政府委員 お答えいたします。これは私ども事務当局がまず出た内容について計算をいたしてみまして、それでどうなるかこうなるか、いろいろ詰めてみまして、それをまず私どもの方の案として向うの事務当局へ持っていって、向うといろいろ協議に入る。それがだんだん上へ上って、次には局長同士でやる、あるいは次官同士でやる、最後には大臣同士で話し合ってもらう、こういうことになりますけれども、さて仲裁がいかなるものが出るか、それによって内容のいろいろな検算がございますが、今正木先生のお見通しは十分承わりましたけれども、私どもとしてはどういうものが出るか、実は見通しがついておりませんので、こういう手続上のことでお答えしておるわけであります。
  127. 正木清

    ○正木委員 まああなたとしてはそういう答弁しかできないと思います。これは当然だと思います。そこで私はこの機会に局長に苦言を呈しておきたいと思うのだが、一般予算の大蔵省との事務折衝のよう段階を踏むべき性質のことではないのだと私は思う。なぜさようなことを私はっきり申し上げるかというと、実はもうこの委員会の外で話は進行しておるのですよ。政治的に話は進行して、話はきちんとできておるのです。できておっても、議会は議会の立場を守らなければならないから、私はここで直接責任者である担当大臣に質問しておるというのが真実の姿なんです。だから、この裁定が出た場合には、私はあなた方が大蔵省の事務官に折衝して、それから局長の手に移って、次官の手に移って、それから大臣交渉に入るのだというような、一般予算の事務折衝とは事が違うのですから、これはいきなり大きな政治問題として閣議決定に持っていくような心がまえを持っていていただきたい。これだけを強くあなたに苦言を呈しておきます。  そこで私はもう一つ、世間の誤解を受けると困りますから小倉さんにお尋ねをしたいのですが、日本国有鉄道法の二十八条を見ますと、こういう規定があるわけですね、「職員給与は、その職務の内容と責任に応ずるものでなければならない。」そこで二項へきて具体的になるわけですが、「職員給与は、生計費並びに国家公務員及び民間事業の従事員における給与その他の条件を考慮して定めなければならない。」こういう規定があるわけですね。ですから、この二十八条の主文の「職員給与はその職務の内容と責任に応ずるものでなければならない。」これが日鉄法の給与規定の生命だ、こういうふうに解釈しておるのです。と申し上げますことは、国鉄職員というものは、人の生命と財産をお預かりして、一般国民が安らかに夜休んでおるときでも、徹夜でお仕事をするのが特徴でございます。しかも生命と財産を預かったばかりでなくて、そこに正確な時間という厳格なものがさらに与えられる。これが総裁以下全部、国鉄職員のあなた方の他の産業と違った特殊な責任であろうかと存じます。その精神が、給与を規定する場合に、初めてこの二十八条の本文になって現われた、私はこう解釈いたします。私の解釈でよろしいかどうか、一つ副総裁から御答弁願いたい。
  128. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 私も同様に考えます。
  129. 正木清

    ○正木委員 今副総裁の御答弁ように、あなたもそう考えるとすれば、十河総裁以下四十数万の職員が、どんどん業績が上ってきた場合には、賞与の面においても、本俸の面においても、他の産業と比較して優遇されてしかるべきものではないか、私はこういう考えです。国鉄が赤字でもってどうにもならないというのであるならばいざ知らず、どんどん業績が上ってきた場合には、他の産業なり一般公務員と比較して待遇が改善されても、法律上そうきまっておる、何も遠慮することはないじゃないか、私はこういうよう考えております。今度の調停案に対して労働組合は、残念ではあるけれどもこれを受諾するのだ、こう言っておりますが、この気持からものを判断していくと、ことさらに国鉄の首脳部が、その国鉄職員を厳罰にするのだ——その厳罰という具体的なものは私はわかりませんが、そういう点などについても十分考えて事に当る必要があるのではないか。これは私の考え方です。  そこで私は職員局長兼松さんにお尋ねするのですが、三月十二日火曜日の読売新聞に、あなたがアンケートに答える中で、これは新聞ですから編集者が書いたのですが、「当局も被害者だ」「組合態度は強盗同然」こういう見出しで、「輸送確保に精一杯」の次に、「組合のやり方は法律違反なので、たとえば極端だが国民は強盗に入られたと警察に訴え出る被害者と似ている。しかし強盗は強盗が悪いので、この場合も常識をこえて、法律を破って業務の運営を阻害した組合が悪いという以外ない。」こう言って、労働組合の諸君をあなたは強盗にしてしまったわけです。私は当局は当局のお立場が当然あろうと存じます。それから組合組合側の言い分があろうと存じます。しかし総裁がしばしばこの席上で言っているように、四十数万の職員はわしの子供だ、こういう態度で臨んでいる当局の職員局長のあなたとしては、少しお言葉が過ぎはしなかったか、私はこういう感じ方をするわけでございます。これは私の感じ方でございますよ。そこで一つあなたのお気持をここでお聞かせ願いたいと思うのです。この組合法律を破ったことは強盗にひとしいことだ——これはあなたは中途で御出席になったと思うのですが、組合国民に迷惑をかけたことについては重々いろいろなことがあるのだといって、苦しい立場に立っておるのですが、私としては、これが真実であるとすればちょっとあなた言葉が過ぎたのではないかと思う。そこで一つあなたの御心境をここでお聞かせを願いたい。
  130. 兼松学

    兼松説明員 兼松でございます。私その新聞の見出しを見まして、多分昨日の夜八時ごろ読売新聞の方が会いたいと言われまして、忙しい出がけにお話をいたしたその答えを編集されたのだと思いますが、私国鉄職員が強盗同然などとは一回も申した記憶がございません。その点は私は一回も申した記憶がございません。ただ国鉄当局者としてこんなに国民が迷惑して歩いているのにどう思うか、こうおっしゃいましたに対しましては、まことにお気の毒である——私は国鉄労組が今調停その他の手続を進めておられることもよく知っております。その内容については私どももできるだけ誠意を持って応対して参ったつもりでありまして、そういうよう気持は全くございませんが、今度の闘争は違法なものであると私は考えております。これは組合要求が違法なのでは決してございませんので、きょうたとえば品川で乗務中の「はと」の乗務員を連れていかれる、そして汽車がおくれていくというようなことは公労法に違法である、私は心からそう思っております。その違法なことを申したのでありますが、忙しいときでしたのであるいは言葉に不足あるいは不適当な点があったかと思いまして、その点は重々おわびいたしますが、違法であるという点はかたく信じております。
  131. 正木清

    ○正木委員 違法であるかないかということは法律が明確に規定しておりますので、その点については私は触れませんが、今あなたがおっしゃったように、あなた自身は新聞記者の方にこういうよう言葉は使わなかった、こう私が理解してよろしゅうございますか。もう一ぺん伺いたい。
  132. 兼松学

    兼松説明員 私としては強盗同様だなどと申した記憶はございません。
  133. 正木清

    ○正木委員 それでは質問を終ります。
  134. 井岡大治

    井岡委員 関連して。私はそう言った覚えはないと言われるが、国民はこの新聞を見てやはり判断をするわけです。この事実だけはどのようにあなたがここで弁護し、脆弁を弄されてみたところで隠せない事実なのですから、あなたはこの点についてもっと正直に言わなければいけません。同時に、先ほどから正木先輩が言われたように、今度の紛争の起りは単なる組合違法行為から起ったものじゃない。好んでやったものじゃない。あらゆる条件の中からやむを得ずこういう行為をとらざるを得なかったということが明らかになったわけなのです。従ってその一半の責任は、四十五万の組合員生活を預かっておる職員局長が負うべきなのです。そのあなたが組合に挑発をかけ、同時に国民に対して、あなたの組合を、あなたの職員を、総裁言葉をかって言えば自分の子供をどろぼう呼ばわりをするということは、われわれとしてはどうしても承知することができない。国民は、やっているのはどろぼうがやっているのだ、こういうふうに思うでしょう。同時に今後正しい労働運動を進めていこうとしても、労働運動を理解しない国民は、労働運動それ自体を強盗と解するであろう。こういうことはわれわれは断じて許すわけにはいきません。従ってこの問題がもっと明白になるまで私たちは追及をして参りたい、このよう考えます。あなたの御所見を伺います。
  135. 兼松学

    兼松説明員 私自身といたしましては、その見出しにあるようなことは毛頭申したことはないつもりでございますが、用語の適切を書いて御迷惑をかけた点があるといたしますならば、急いだために不適当な言葉を弄した点でございまして、私その見出しに出たようなことは、重ねて申しますが、その通り申したことはございませんが、御迷惑をかけたことに対しては、おわびいたしたいと思います。
  136. 井岡大治

    井岡委員 かりに百歩譲ってあなたの言うように強盗と言わなかったとしても、新聞は強盗と書いておる。この委員会を通じて、これだけの人間はあなたが強盗と言わなかったということを理解しても、国民の九千万は強盗として解釈をするのです。(「九千万は読んでいないよ」と呼ぶ者あり)九千万読んでいないということですから、その半分としましょう。その人たちはこういうように解釈するのです。将来国鉄の制服を着て町を歩いておって、あれは強盗だと人が言ったらどうなるのですか。あなたがみんなそれをあやまって参りますか。私の言ったことはそういうことじゃないと保証してやりますか。もののたとえは別でありますが、洞爺丸の船長の奥さんは、あの事件が起ったためにいまだ一歩も外によう出ないというお話を聞いておるのです。私はこの話を聞いて涙が出ました。将来国鉄職員がそこらを歩いて、あれ強盗が歩いている、こういうことになったらどうするのですか。
  137. 兼松学

    兼松説明員 私の毛頭言わない事実を基礎にいたしまして、私強盗などとはゆめにも申したことがないのに、何回もおしかりを受けますのは、全く申しわけない次第でございます。私は今度の闘争自体がその態様はやはり違法である、そして公共企業体の労働法規にははっきり反しておりまして——原因が非常に御理由があるということ、あるいは御要求の内容が非常に正当であるということと、それから汽車をおとめになるということは、私別だという感覚を心から持っております。
  138. 井岡大治

    井岡委員 私は何も言わないというのであれば、あなたはきのうお会いになった新聞記者を呼んできて、この席上ではっきりしなさい。そうでない限りわれわれは了解することはできない。
  139. 淵上房太郎

  140. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今同僚委員の質問に対して職員局長は、全く言わぬことを新聞が書いた、こういうことで非常に脆弁を弄しておられる。私は午前中からこの問題については、いち早く委員長にお願いしてあなたの出席を求め、総裁の出席を求め、運輸大臣の出席を求めて、そしてここでその真意いかんということを明らかにしたい、それは明らかにすることが、またこの紛争解決する上に必要な手段であるから私は言っておる。その目的で私は出席を願ったのです、通じて今正木委員あるいは井岡委員の質問に対する御答弁は、全く不謹慎きわまるものです。あなたの今の答弁をそのまま引き伸ばしていけば、新聞はあなたの全く言わないことを勝手に捏造してここに書いたということになります。そうなれば井岡委員の言うように、あなたが話された記者があるはずです。その記者と対決せざるを得なくなります。同時に新聞自体も、そのような、あなたが全然言ったことがないというものを勝手に捏造して、これを記事にしたということになれば、これは大へんなことだと思う。ですから、それについては新聞の報道の権威からも明らかにしなければならない。そうしないとわれわれは新聞をどう信頼して、その新聞報道を読んで日常のともしびにするか。新聞の報道というものは文化人の日常の生活のともしびだというその新聞が、そいうことを捏造しておるとすれば、言語道断だ、容易ならざる話だ。だからあなたがそうそう居直られるなら、ここで明らかにしてもらわなければなりません。新聞の報道はどう書いておるかといえば、「輸送確保に精一ぱい」という一つの区切りをつけて、そうしてあなたの言っていることとして「組合のやり方は法律違反なので、たとえば極端だが、国民は強盗に入られたと警察に訴え出る被害者と似ている。しかし強盗は強盗が悪いので、この場合も常識を越えて、法律を破って業務の運営を阻害した組合が悪いという以外ない。」こうはっきりと断定しているじゃないか。あなたの今の答弁でいけば、全く新聞記者諸君が勝手に書いたということになる。そんなばかげた話はどこにもないと私は思う。そんなことを言っておいて反省しないということなら、これはあなたのこの一点のために、組合と当局との間の話がうまく運ばない。そうすればますます国民に迷惑をかけるというのはあなたじゃないか、そういうことになるじゃありませんか。一体これをどういうふうに解しておられるかということがわれわれは納得がいかないのです。少くともその局に当る人がこういう態度でいたのでは、そうしてまた先ほどからあなたの答弁を聞いておれば、全く組合員に対しては冷たい態度です。私は総裁にも副総裁にも先ほどからも面会をいたしました。そしてその真意をただしてきましたけれども、これはほんとうにあたたかい気持でこの問題を解決したい、こういう非常にあたたかい気持でおられます。けれどもその総裁、副総裁のもとで、ほんとうに総裁、副総裁の柱となってこの問題解決の中心になる人、しかも五十数万の国鉄職員のほんとうに中心となっていかなければならないあなたが、先ほどから答弁せられるよう答弁をしておられれば、現に団体交渉が持たれるにしても、労働組合ではあなたの出席を忌避するといっているじゃないか。それでもあなたはこの委員会において、なお自分態度を不明確のままに押し通そうとされるのですか。それではこういう非常にあたたかい気持を持って臨んでいる最高首脳部の女房役として、あなたはその責任を果し得るとお考えになるか、一体どうですか。その所信をここで明確にしてもらいたい。
  141. 兼松学

    兼松説明員 いろいろ経過的に用語等が不適当で、不謹慎な点がございましたことはまことに恐縮に存じまして、そういった点は取り消させていただきたいと存じます。私としては話の経過であるいは用語等が、あるいは用例等に適切を欠いた話があったかもしれませんが、取り消します。
  142. 山口丈太郎

    山口(丈)委員 今同僚委員からも質問があり、今兼松職員局長の用語の不適当あるいは自分態度についても反省せられて取り消しの答弁がありました。私は少くともその態度をもって臨んでもらいたい。なるほど組合の活動については、時には若干の違反行為が伴うようなこともあるでしょう。私は違法行為を是認せいというのではありません。しかしながらどのよう法律を作りましても、その法律の適用いかんによれば、これはよい法律といって民衆にたたえられる法律ともなりますが、どんなに法律の中に温容を込めたものが記載されてあっても、その人の法の運用があなたのような、この新聞記事にあるような冷たい態度で、また先ほど井岡委員の質問に答えられたようなただ通り一ぺんの態度をもって臨まれるならば、これは大へんな悪法ということになるわけです。私は常に言うのです。本委員会においても申しましたが、とにかく検察庁が法を適用するに当って、人を拘束して逮捕する。この逮捕の権利を乱用するということは法を執行する司法官としては行き過ぎ行為である。少くとも法を執行するに当っては不逮捕を原則として、やむを得ざる場合にのみ逮捕のことが記載されておるのであります。しかるに今日の司法官はそうではなく、いたずらに逮捕の権利を乱用して、人を拘束することを何とも思っていない。これでは世の中がすさぶばかりであります。今の労使関係もその通りであります。少くとも温容をもって衝に当らなければ、こういうような労使の問題などは解決するものではありません。しかるにあななたがすべてのものを違法なりと断定せられることは、これまた私が今申し上げるように、あなたの考え方は少くともこの問題解決のためにプラスになるものではなくして、そのこと自体が非常なマイナスになると私は考える。その意味において職員局長は今後これらについてどういうふうに考えられるか。この事態解決のためには、いたずらにそういうよう法律あるいは規則によるものをあまり多く出そうとは考えない、あまりにも違法性を多く尋ねようとはしないという総裁の非常に温容のある言葉もあります。しかしながらあなたの言葉をかりて言えば、全く情容赦のないよう態度です。これでは問題の解決はできないと思いますが、あなたの御見解はどうですか。
  143. 兼松学

    兼松説明員 総裁の御方針の通りやるつもりでございます。
  144. 小倉俊夫

    ○小倉説明員 この機会に私からもおわびを申し上げたいと存じます。兼松職員局長は、現職に来る前は東鉄局次長、今の管理局長に当たるのでありまするが、そのころから労働問題には御経験もございますし、また慕われておったのでございます。そういう関係から現在の職員局長に特に和が願ってなってもらった次第でございますが、実はこの数週間ずっと労働問題が非常に繁忙でございまして、ことにこの一週間はほとんど本社に夜も昼も詰め切りというようなことで、きのうもおとといも徹夜をしておる次第でございます。それで現在の段階におきましては、いろいろな関係で気も立っておりますし、疲労もいたしておりまして、どうしても気が短かくなると思いますが、そういうことでふだんに出ないような荒い言葉も出しまして、そういうことからいろいろ引例の場合に用語の妥当を欠き、それが新聞の編集の場合に、世間に大きくなったのではないかと考えております。こういう事情もございまして、また本人も今回のことにつきまして深く内省いたしておる模様でございまするので、この辺どうぞ御了解の上御容赦願いたい、かよう考えております。
  145. 井岡大治

    井岡委員 先ほどから非常に傲慢だったり、小さくなったりしておるわけなのですが、しかしこの問題は党は国会対策で大きく取り上げております。同時にこの問題について、単に私たち運輸委員だけの問題として考えておりません。そのために先ほども理事の打合会をやるからすぐ帰ってこい、こういうことなのです。従って私は今までの兼松局長お話しになったそのままを報告して、私はこの問題に対する処理を党に移さなければならぬと思います、指示を仰がなければならぬと思います。私たちは今日まで、あらゆる機会を通じていろいろ文句は言うてきたけれども国鉄の運営について、あるいは国鉄のすべてについて、うぬぼれかもわかりませんが、御協力を申し上げたつもりでおります。しかるに今回の問題をめぐって、少くとも労働問題の当面の責任者である兼松職員局長が、かかる失言をあえてなされたということについては、何か底意があって行われたものであろうとわれわれは考えるわけです。従って私は本日これ以上追及しようとは思いませんが、あらためてこの問題に対する党の御指示を仰いでこの問題を処理いたしたい、このよう考えます。
  146. 淵上房太郎

    淵上委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時十五分散会