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1957-03-11 第26回国会 衆議院 運輸委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十二年三月十一日(月曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 淵上房太郎君    理事 今松 治郎君 理事 山本 友一君    理事 松尾トシ子君       有田 喜一君    伊藤 郷一君       關谷 勝利君    中嶋 太郎君       永山 忠則君    濱野 清吾君       堀内 一雄君    眞鍋 儀十君       米田 吉盛君    池田 禎治君       中居英太郎君    正木  清君       森本  靖君    山口丈太郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君  出席政府委員         運輸事務官         (船員局長)  森  嚴夫君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      權田 良彦君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  細田 吉藏君  委員外出席者         日本国有鉄道常         務理事     小林 重国君         日本国有鉄道常         務理事     石井 昭正君         日本国有鉄道参         与         (経理局長)  久保 亀夫君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣  提出第五三号)  船舶職員法の一部を改正する法律案内閣提出  第九六号)(予)  春期闘争に伴う列車運行状況等に関する件     —————————————
  2. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 ただいまより委員会を開会いたします。  最初に、国鉄春季闘争状況について国鉄当局より説明を求めます。小林常務理事
  3. 小林重国

    小林説明員 私から国鉄労働組合春季闘争に関します今までの交渉経過闘争状況等について御報告申し上げます。  今回の春季闘争原因となっております大きな問題は、三十一年度賃金確定、それから三十二年度以降の賃金改革、それから年度末の業績賞与、その三つが重要な点になっております。その他四、五項目の要求が出ております。これに対しまして、賃金確定自体につきましては、両当事者の間で話がまとまりませんで、調停の申請になっておったわけでございます。また一方組合におきましては、春季闘争といたしましては、第一波、第二波の闘争といたしまして、調停の進行中におきましてもこの闘争を開始いたしておったわけでございます。第一波闘争は、職場盛り上りを作るという程度で、大した闘争ではございませんでした。第二波も同様、全国的に各職場順法闘争または職場大会開催したのでございますが、主として輸送関係のない機関におきまして行われましたために、輸送に障害を与えるような実情にはなかったわけでございます。  調停につきましては、一昨日調停案が提示されたわけでございますが、この調停案は、国鉄職員給与につきまして、昭和三十二年度予算単価における基準内貸金額を一人平均千二百円増額すること、なお本年度につきましてはこの給与改正の趣旨を勘案し適宜の措置を講ずること、初任給につきましては労使双方協議の上若干の是正を行うこと、この是正原資は、第一項に基く給与改正に要する原資以外に付加すること、こういう調停案の御提示が土曜日の四時にあったのでございます。これに対しまして、当局関係の向きといろいろ御相談しなければならぬ事項もございますし、また調停案につきまして多少御質疑調停委員会に申し上げなければならぬ点もございましたので、いろいろ検討いたしました結果、昨日一応疑問の点を解明するために、調停委員会に御質問申し上げておるわけでございます。一方これに対しまして労働組合におきましては、昨日の夜でございますか、情報によりますと、この調停案不満ながら受諾するというような決定になったということを聞いておる次第でございます。  労働組合におきましては、本日から十一日、十二日の二日間、第三波の闘争を展開することになっております。全国数百カ所の職場におきまして、午前九時から三時間職場大会開催する。指定されました個所は主として駅関係でございまして、それに客貨車区が指定されておるという事情でございます。労組の指令によりますと、午前九時から開始されるという内容になっておりましたが、本日は早朝からすでに職場大会が行われ、あるいは職場放棄が行われておるという実情でございます。  現在私の方に入っておる情報によりますと、東鉄におきましては品川駅におきまして、七時八分に構内職員全員職場放棄をいたしております。これに対しまして当局といたしましては、助勤者等をもって配置につかせておりますが、何しろ少数の助勤者でございますので、十分な輸送確保ができないという実情でございまして、湘南、横須賀線は現在横浜で折返し運転を行なっておるという実情でございます。それから本日八時になりますと、本日の出番になります者が出勤いたすわけでございますが、これがピケ隊によって阻止連行されつつある模様でございます。東京駅におきましては、六時十四分に当時勤務中の操車掛四名中三名が連行され、残り一名は公安職員六名により保護されまして、辛うじて列車運行を確保しておる実情でございまして、到着列車四本が七分ないし二十四分遅延しておるという状況でございます。上野駅におきましては、信号掛が連行されましたが、現在は助勤者によって業務を行なっておるという状況でございます。  なお全国各地にわたってございますが、四国局におきましては、高松駅で運転関係従事員三十五名が六時四十分ごろからピケ隊に連行されております。そのために貨物が二本運休になりますし、船は百五十三便以降運航中止予定であります。現在構内に残っておるのは、今日の勤務運転掛三名と明け番の運転掛四名、信号掛八名、踏切警手三名、計十八名だけという状態であります。  新潟局におきましては、ピケ隊約百名が新津駅におきます当日勤務者出勤を阻止いたしました。  仙台局におきましては、ピケ隊百六十名がそれぞれ指定駅におもむき、当日の勤務者出勤を阻止するために説得を行なっております。  静岡局におきましては、ピケ隊約八十名が八時十分ごろから浜松駅で本日の勤務者を連行し始めたという状況であります。なお浜松客貨車区におきましては、当日勤務職員七十五名を点呼終了後、全員講習室に軟禁しておるという実情であります。  それから広島局におきましては、徳山駅におきまして、八時三十五分ピケ隊護衛のもとに全員駅西側文化劇場に連行されつつございます。幡生駅におきましては、八時二十五分ピケ隊出勤者運転点呼場荷扱手詰所の二カ所に誘導いたしまして、八時四十分から職場大会開催中であります。  大分局におきましては、全指定個所で八時三十分から行動隊約五十名が当日勤務者のかり出しを開始いたしております。職場大会開催は九時から行う予定になっております。  大体現在までに入りました情報はこの程度であります。当局といたしましては、組合闘争指令に対応いたしまして、列車輸送を確保するために、ほかのところから助勤を繰り出し、あるいは非組合員職場に派遣いたすというような手配をとっておりますが、何分広範にわたる闘争でございまして、当局側の手だけでは十分な輸送が確保できないというような遺憾な状態になっております。以上概略を御報告申し上げました。     —————————————
  4. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 次に、去る七日予備審査のために本委員会に付託になりました船舶職員法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題として、政府より提案理由説明を聴取いたします。宮澤運輸大臣
  5. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました船舶職員法の一部を改正する法律案につきまして理由を御説明申し上げます。  現行船舶職員法は、昭和二十六年第十国会において明治二十九年の法律にかわる新法として制定されたもので、船舶職員制度史上画期的なものでありますが、当時わが国は、戦争による被害を免れたわずかの船舶を保有したにすぎなかったのでありますが、反面船員は、戦争中の速成教育によってはなはだしく過剰の状態にあったのであります。加うるに当時わが国商船は、全く占領軍商船管理委員会支配下にあり、またわが国漁船の操業はいわゆるマッカーサー・ラインによる制限を受け、わが国海事産業の前途は、何人も予測できない状態にあったのであります。しかるに平和条約が締結され、わが国経済は次第に復興発展いたしまして、現に未曾有の繁栄に向いつつあるのでありますが、商船界漁業界もこれと軌を一にいたしまして、現行法立法当時に比べますと、予想外情勢変化を来たしておるのであります。そのため船舶職員に関する制度も、幾多の点におきまして実情に適しなくなったのであります。従って政府といたしましては、海上航行の安全をより一そう確保すると同時に、本法実情に適応させるため、種々検討するとともに、本法改正につきまして、海上航行安全審議会に諮問して参ったのでありますが、今回おおむね次の諸点について改正する必要があると認めるに至ったのであります。  すなわち第一には、船舶職員資格定員表実情に即応させることであります。現行法は、船舶職員資格及び員数を旧法よりも相当に引き上げましたため、急激な新法への移行は業界その他にはなはだしい影響を与えるおそれがあることにかんがみまして、経過的に戦時中の特例と同じ基準によらせることにするとともに、遠洋カツオマグロ漁業の用に供する船舶につきましてはさらに臨時特例法を設けまして、できる限り円滑な新法への移行を意図して参ったのでありますが、客観情勢変化は、もはや現行法に定めました資格定員表適用が不可能であると認められる程度に達しましたので、今回航行区域船舶トン数区分船舶職員資格及びその員数等につきまして全面的に改正を加えることといたしたのであります。  第二には、免許制度改正することであります。現行法免許について五年ごとの更新制をとっておりますが、実際上海技従事者につきましては、その技能が年月の経過とともに低下することはほとんど見られないことでありますので、この際更新制を廃止するようにいたしたのであります。  第三には、法の適用弾力性を持たせることであります。現行法におきましては、法律適用、あるいは資格定員表適用につきましては、わずかの例外規定しか設けていないのでありますが、現に大小さまざま、各種各様わが国商船は、わが国の全海域はもちろんのこと、世界至るところの海洋を航行しております。また漁業界におきましては、その業種の多様性航行区域の広さは、全く世界に類を見ない程度に発展して参ったのでありますが、現行法は、各種船舶について、その航行区域と総トン数のみを基準として、その乗り組ますベき船舶職員資格員数とを定めているのでありますが、船舶の構造の多様性航行の態様の複雑は、ある場合には船舶所有者に不当の負担を課し、またある場合には逆に航行の安全を害する等の事態を生ずるおそれがありますので、かかる事態の発生を防止するため、各種事態に対処し得るよう法律弾力を持たせるように改めたのであります。  なおこの法律は、船舶航行の安全に直接関係する事柄でありますので、海上における人命または財産の損失を防ぐ必要から法の励行をはかるため新たに運輸大臣監督規定を設けることといたしました。  以上がこの法律案提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。     —————————————
  6. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 質疑次会に行うことにいたしまして、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案議題とします。前会に引続き質疑を許します。通告によりまして中居英太郎君。
  7. 中居英太郎

    中居委員 私は御指名によりまして、先般御提案になりました国有鉄道運賃法の一部改正法律案についての質疑を行いたいと思いますが、その前に、先ほど国鉄小林常務理事から御報告になりました春季闘争国鉄の現況について、私はごく簡単にお尋ねを申し上げたいと思うわけでございまして、この答弁は、国鉄総裁はお見えでないようですから、宮澤運輸大臣からお願いを申し上げたいと思うわけであります。  御承知のように公労協政府並びに当局者との間におきましては、主として新年度からの二千円の賃金改訂最低賃金制、すなわち十八歳八千円の最低賃金制、この二つの問題をめぐりまして団体交渉が持たれて参っておったのでありまして、その結果ということに対しまして、国民はひとしく大きな注目を払っておったのでありまするが、この双方に対しまして、御承知のように一昨日九日調停案が示されました。この調停案によりますると、新年度からの賃金改訂はそれぞれ千二百円を至当とする、こういうことが主文になっておるようであります。この調停案に対しまして公労協におきましては、政府がこの調停案に従ってこれを予算化し、実施するということを条件にして受諾するという態度を決定いたしておるのであります。にもかかわらず、政府はこの調停案はにわかに承諾することができない、こう言うて暗にこれを拒否しておると私は承わっておるのであります。この政府の理不尽な態度が、今日のこのような重大な事態を招いておるということを、私は遺憾に思うのでありまするが、一体政府はいかなる考えのもとにこの調停案に対しまして拒否の態度をとっておるか、あるいはこれを受諾できないのであるか、この点について宮澤運輸大臣の御答弁を願いたいと思うわけであります。
  8. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 お答えいたします。一昨日調停案の出たことは承知しております。ただ先ほど国鉄常務理事から経過報告のうちに述ベました通り調停案について国鉄がまだ態度を決しておりません。従って国鉄態度を決したら私ども報告があると思うので、その上で考えるべきものである、今日はその段階にあります。国鉄においてまだはっきりこの問題に対する態度がきまっておりません。政府調停案を拒否するとか受諾するとかいう態度は、むろんその報告を受けてから後に考えるべきことで、そこまでまだ達しておりません。
  9. 中居英太郎

    中居委員 そうすると、政府はこの調停案をにわかに受諾できない、あるいはこれが仲裁に申請されるのではないか、こういうふうに伝えられておるのでありますが、その原因というのは、一にかかって国鉄がまだ態度を決しかねておる、この一事にかかっておるわけですか。
  10. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 政府としては、受諾するとかしないとかいう考えに達しておりません。そこまできめておりません。今国鉄が慎重に検討中でありますから、不日国鉄から何らか申し入れがあることと、それを待っておる次第であります。
  11. 中居英太郎

    中居委員 私の聞いておるのは、国鉄に限らず、今回調停案が出されたのは国鉄、全専売、全逓、全電通、こういう四つに対して調停案が出されておるわけでありますが、政府はひとしくこの四つに対しましても、にわかに受諾できない、こういう態度を表明しておるわけですが、この四つ調停案に対して政府態度を決しかねておるというのは、国鉄態度が未定であるということにかかっておるのですか。
  12. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 国鉄だけでありません。本日労働省においてそれらの点も検討しまして、昨日から各公社におきましても調停案というものの——このたびの調停案は御承知通り理由もついておりませんし、いかなる理由に基き、またどういう根拠によって調停をやったかということがわかっておらないので、労働省が主として各公社と連絡をとって今それを検討中でありますので、政府といたしましてもその検討の結果を待たなければ態度がきまらない、こういうことであります。
  13. 中居英太郎

    中居委員 私どもは新聞とかラジオで承知する以外にないわけでございますが、今回の調停案に対して、政府が納得できないから、政府機関である労働省を通じていろいろな質問なりいろいろな調査をする、こういうふうに伝えられておるわけでありますが、その点いかがですか。あなたの今のお話では、それぞれの国鉄であるとか専売であるとか、そういうところをして調査せしめて、その結果の検討を待っておるのだ、こういうことでございますが、どっちです。
  14. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 直接的には各公社それらの団体が、この調停案の実質的な内容について検討を進めております。労働省も間接にむろんそれらの情報をとっていろいろ進めておることと思うのであります。
  15. 中居英太郎

    中居委員 そこで私は運輸大臣にお伺いしたいのでございますが、今回政府調停案というものに対して態度をあいまいにしておることが原因になって、そして今日のような重大なる事態を惹起しておるわけです。ところがこういう重大な事態に対して、現われておる現象だけをつかまえまして、政府は厳重に違法行為は処分するとか、あるいは退職せしめるとか、あるいは警官を導入するとか、こういうことだけをいたずらに発表しまして、こういう事態を引き起した自分たち責任というものについては何ら反省を示していない、私は非常に遺憾だと思うわけであります。御承知のように、こういった公共企業体に対するところの対社会に与える影響を重要視いたしまして、罷業権というものを法律で禁止いたしまして、そうしてその代償といたしましてこういう制度政府みずからが設けたわけであります。そうして労使間の紛争はこの委員会を通じて、調停なり仲裁なりというものを通じまして、円満に円滑に対社会に迷惑を及ぼさないように解決するということが、政府提案理由説明でもあったと思うのです。そういう制度政府が作っておきながら、そういう制度で権威ある機関調停案を出したそのものに対しまして、政府態度をあいまいにいたしまして、そうしてこういう事態を惹起しておるということは、私は非常に遺憾だと思うわけです。もちろん労働組合側にとりましても、二千円の要求に対しまして千二百円の調停案というものは、とうていのむベからざる不満足な金額であろうと私は思うのであります。しかし労働組合側はこの調停機関の権威というものを考えまして、また国民世論の趨勢というものを考えまして、この調停案を受諾するという意思を表明しておるのです。にもかかわらず政府は何だかんだと理由をつけまして、暗に今日の重大なるストライキという事態労働組合側を追いやっておる、これは政府責任です。この点についていかにお考えですか。
  16. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 今のお話通り調停もしくは仲裁による手続を政府は尊重して考えていくということは、当然やらなければならぬことで、現在の段階においてもその道を進んでおるわけであります。しかしそれが調停が出てこれに対して検討を加え、そうして政府並びに公社その他がその態度をきめるという経過において、決してこれをなおざりにしておるわけではないので、やはり組合側においても法の命ずるところによって、慎重にこれを処置していってもらわなければならぬ。その点はそれぞれの当局者から組合にも懇談を遂げておるわけであります。しかるにその話し合いをほかにして、今日のような事態を惹起しておることははなはだ遺憾でありまして、当局といたしましてもなるべくこれが荒立たないようにいろいろ善処している次第でございます。
  17. 中居英太郎

    中居委員 荒立てておるのは政府一方なんです。労働組合は決して荒立てておりません。もちろん調停案に対して疑問があり、不満であるという場合には、仲裁裁定に申請するというのは、これは当然許された道でございます。しかし客観情勢というものを政府考えてもらいたい。二日に調停案が出されて、そうして十一日に双方の妥結ができなければ、全面的に実力行使に入るということが明らかになっておるというこの客観情勢というものをわかっておりながら、なおかつ研究であるとか調査であるとか、疑問に対する質問であるとか、こういうことをやってじんぜん日をかせごうとするのは、いたずらに労働組合側をして実力行使に追いやっておる、こういうことしか私には感ぜられないのでありまするが、一体今日の情勢というものを運輸大臣はいかにお考えでございますか。平常の場合ならば、私は調停不満であるから、仲裁に持ち込む、そういう手を経ることも必要であろう、当然のことであろうと私は納得するのですが、事態が急迫しておるのです。大臣の御答弁を願います。
  18. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 調停案は一昨日出たわけであります。労働組合側のこのたびの実力行使というのは、全体的に前から計画されている、その計画のもとに行われている。もうそのことは私が申し上げるまでもなく、不当な行為であることは申すまでもありませんので、こういう民主政治の態勢においては、いずれもそれぞれの立場において法を厳正に守って行動するということが大切であって、政府が一昨日出たものをそれぞれの担当である公社において検討して、漸次その方向を進めていくということに対して、何も組合側実力行使を刺激もしておらなければ何もしておらない、と私ども考えております。
  19. 中居英太郎

    中居委員 労働組合闘争スケジュールを作ることは当然ですよ。一年も二年も前からスケジュールを作るということは、これは労働組合として当然の行動です。そういった労働組合スケジュールというものが、法を犯す違法な行為であるという宮澤運輸大臣のお考えは、私はおかしいと思います。法を守る、法を守るというなら、政府がみずから設置したこの機関調停案というものを守ることが順法の精神なんです。まずそのことをやって、そうしてなおかつ、政府が受諾しながらも労働組合がこの調停案を受諾できないといって実力行使に入った場合には、今のあなたの考えなり答弁というものが通るかもしれぬですが、今日は逆なんです。労働組合側はすでに受諾しておって、そうして政府自体がこれを受諾しようとする態度に出ないのです。そうして十一日から第三波の行動に入るということを、政府みずからが十日も二十日も前から知っておりながらサボタージュをやって、そういう行動労働組合を追いやっている、これは非常に私は遺憾だと思うのです。一体しからば、政府はいつごろこの調停案に対する態度を決定しようとしておるのでありますか、それを伺いたいと思います。
  20. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 もちろん今日の事態ですから、これを漫然として捨てておくということはあり得ないことであります。それぞれの公社及び関係者においてこの実態を十分に検討して、そうして態度をきめてくる、それによってまた私どももそれぞれの立場においてこれを決定していくわけでございますから、やはりここに三日とか五日とかいう日にちは当然必要であろう、こう考えております。ただこれを漫然と調停案が出たのにそれを捨てておくということであれば、今のあなたのお話のようなことになりましょうが、調停を受諾する受諾しない、これに対して検討をするということは、当局の側においても組合の側においても、従来いずれもこれを扱ってきたことでありまして、一昨日出たものが今日きまらないからということには至らないのじゃないか、こう考えております。
  21. 中居英太郎

    中居委員 受諾する、拒否するという態度をきめないと言っておりまするが、政府声明というものは明らかに拒否するという声明です。この内容は納得できない、こう言っております。納得できないということはのむことができないということなんです。受諾することができないという声明を出しております。しかしこの点についてはあなたと私の意見はおそらく水かけ論になると思いますから、私はこれ以上申し上げることを差し控えますが、ただこういう事態になって、わが国国鉄輸送というものが重大な事態にたとい陥ったといたしましても、その責任は私はあげて政府にある、こういうことを申し上げまして、この点についての私の質問は終了したいと思います。  私は先日の本会議におきまして、宮澤運輸大臣の運賃値上げ法案に対する提案理由説明に対しまして、二、三の質問を行なったのであります。しかしどの一つにつきましても遺憾ながら私の了承を得るものはなかったわけでございまして、ここにあらためて、努めて重複を避けながらも重ねて質問を申し上げたいと思うわけでございます。  御承知のように鉄道運賃を値上げするという場合には、いつの場合でも大きな摩擦の生ずることは私は避け得ない事態であろうと思っております。しかしそれが今回ほど大きいものはないと思っております。今回ほど国民の大きな反撃を食った例も私は聞いていないのであります。私自身も過去数年間国鉄の運営あるいは経理というものに対しまして非常に関心を持ちまして、いろいろなことを国鉄当局にも運輸省にも申し上げ、私も考えて参ったのでありまするが、私自身今回の一三%値上げというこの内容に対しましては、納得することができないのであります。それは何のためであるかと申しますと、政府と国有鉄道との関連というものが依然として不明確なままに、今回の値上げが行われようとしておるという、この一点でございます。御承知のように国有鉄道は公共企業体であります。公共性と企業性を兼ね備えた二枚看板の機構である、こういわれております。公共性と企業性というものに対する政府の見解というものが今日まで非常にあいまいでありました。政府はともすれば国有鉄道に対しまして、独立採算制をもって行うものが国鉄の姿であるのだ、こういう考え方をとっております。そして一方においては公共性といういろいろな命令を国鉄に強要しております。たとえて申し上げますならば、貨物に対するところの等級制、あるいはまた定期割引、あるいは遠距離逓減、こういうものを公共制という名において国鉄当局に要請しております。これはもちろん国有鉄道としては当然のことであろうと思います。しかしながら今日のわが国の経済情勢が左右しておると思うのでありまするが、これらの政府国鉄要求しておるところの割引制度というものは、外国に例を見ないほどの高度なものであります。こういう制度を国有鉄道に押しつけて、そして政府は独立採算制であるから、そういうものをも一緒にやりながら、国鉄は自分の経理で運営をはかっていかなければならない、こういうことを言っておるのでありまして、こういう政府の国有鉄道に対する不明確な態度が、国鉄の財政というものを窮乏に追いやって、今回の運賃値上げという事態を招いておるのでありますが、国有鉄道に対する政府責任分野というものについて、この際宮澤運輸大臣からその所懐を承わっておきたいと思います。
  22. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 ただいまお話通り国鉄に対していろいろ割引その他——つまり独立採算の上に政府の方針というものを入れて、いろいろな制約を加えておることは御承知通りであります。しかし、やはり二兆何千億というような国家資産をそのまま提供して、ここに運営をさせていくというところに、国鉄の公共的な立場から陸上運輸に対する国家的な役割を果させる、こういう意味からそういう点を要請しておるのでありまして、そこに国鉄の公共性と企業性とを調和させていくということが今日までのやりきたりで、今回の運賃値上げにつきましてもその点を十分考慮いたしまして、今回の値上げの措置に出た次第であります。
  23. 中居英太郎

    中居委員 答弁が非常に抽象的で私は理解しかねるわけでございますが、いかにも国有事業でございますから、国の方針、政策に従っていろいろ割引制度というものを国鉄になさしめるということは、これは当然のことでございましょう。しかし、さっきも言いましたように、わが国の特異な経済情勢に左右せられまして、これが度を過ぎておる、しかもこれが独立採算制を建前とする国有鉄道の経理に非常な大きな影響を及ぼしておる、こういうことを運輸大臣も御承知と思うのでありますが、もしもそういった割引制度というものが政府の政策的な要請に基いてなされるとするならば、これに対する国鉄経理の損失については当然一般会計から繰り入れて、国鉄の経理に対し助成をすることが、政府の国有鉄道に対する基本的な考え方ではないか、こう私は思うのです。これをやらないから、そういったものに圧迫せられまして、さなきだに困難な国鉄の経理というものが今日のような悲運を招いて、そして運賃値上げというような原因ともなっておると私は思うのですが、一体いかにお考えでございますか。
  24. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 その点につきましては先般も本会議で、あなたから四原則を提示せられての御質問にもお答えした通りでありまして、この国鉄の今日のあり方というものは、今お話のような線を調整していく。ただ国鉄はそれ自体から見て、赤字が出てくれば全部政府の資金によってこれを埋め合せていくということが今日の国鉄のあり方でもない。また政府の要請だけでありません。やはり国鉄に対しては社会的なまた経済的な、いろいろな方面からの要請もありますので、それらを調和してこの国鉄の独立採算をできるだけ維持して、国家からの資金もそういうところへやっていける間は、これは国鉄に対する重大な事態でも起りますれば別ですけれども、そうでない限りは、国鉄自体の経営でできるだけその使命を全うさしていきたい。この国鉄という公共企業的な公社を作らせたのも、その趣旨にほかならないと思うのでありまして、その範囲を逸脱しないように調整していく、こういう点から考えてやっておることは、私が申し上げるまでもなく中居さんの十分御承知通りであります。われわれは今日の値上げについても、見方によっていろいろな議論は生じましょうけれども、太い線はこの点を守っていく、こう考えております。
  25. 中居英太郎

    中居委員 私は政府の政策の一環として、定期割引であるとか遠距離逓減であるとか、あるいは新線の建設であるとか、そういうことを国有鉄道になさしめるということは、これは当然だと思っております。しかしそれが度を過ぎることによって、国鉄財政に対する影響考える場合に、政府政府の政策的なものを国鉄に実行せしめると同時に、これと並行して一般会計から、そのあまりにもひどい損失の一部に対するところの繰入金をすることは当然ではないか、こういうことを私は聞いておるわけでございます。どこの国の国有鉄道に対する政府の例を見ましても、こういった繰入金は行なっております。学生に対する割引あるいは勤労大衆に対する通勤割引、こういうものに対しましては、ドイツ政府においてもイギリス政府においても、国有鉄道に対する相当額の繰入金を行なっておるわけでございます。そうして政府は、政策的なものを国鉄に実施せしめると同時に、国鉄の財政というものに対する勘案をいたしまして、なるべく運賃の値上げを避けていこう、こういう考え方がどこの国においてもとられるわけでありますが、政府は一方的に自分たちの政策を国鉄に強要して、これに対する何らの処置を講ずることなく、でき上った赤字は他の一般大衆の運賃に転嫁していこうとする、こういうところに今回の国鉄運賃の値上げについて、国民がにわかに賛同しがたいところの大きな原因があるのではないか、こう私は考えておるわけでございます。この点をあいまいもこにしておきますと、おそらくまた数年を出ずして、今日のようなこういう事態を招くであろうということを私はおそれるから、あえて申し上げておるわけでございますが、重ねて大臣の御答弁を願いたいと思います。
  26. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 お話のような趣旨に基いて、今日まで長年国鉄の運賃が一般の物価とかけ離れて安いということは、中居さん御承知通りであります。その安い運賃、たとえば今遠距離逓減のお話がありましたが、北海道から東京まで物を運ぶ場合、船で運ぶ半値で国鉄は運んでおる。またその他すべてにつきまして、物価とつり合いのとれないような制約を国鉄に加え来たったのも、今中居さんのお話のような趣旨に基いて今日までやってきたのであります。また国鉄の経営からいって、国家の方からの助成を仰ぐか、運賃の値上げによらなければ、国鉄の経営というものは赤字が出てなかなか困難だというのもこの数年来の実情でありますが、それらも、国鉄自体の経営を合理化して、自分のむだを省いて、そして一つ経営を何とかやっていけ、それがどうしてもいけないというときにいろいろ考えるべきものであろうと思って、今日まできたのであります。しかるにこの一両年、ことに昨年からの日本の経済情勢は非常な拡大をいたしまして、国鉄の現在のような経営でいくならば、ただいま現在においてすでに滞貨をしておるのみならず、その滞貨の影響というものは——もちろんこのたびの国鉄の値上げが、物価の方面もしくは生活の方面に全然影響ないのだということまで極端なことは私どもも申しません。それ自体としては、それは幾らかの影響があるに違いありません。しかし輸送が停頓しておるということは、さらに一そう物価の上にも、もしくは生活の上にも非常な不便を来たしておるわけでありまして、従って輸送力の飛躍的な増強をはからなければ、日本経済はこの大きな拡大の段階において、一両年を出ずして重大な支障を来たす。そこで御承知通り五カ年計画を立てまして、国鉄としては莫大な資金をこれに投ずることになりました。それについては国鉄自体の経営の合理化からも金を出す。それから御承知通り経済の繁栄から収入も多くなってくる。借入金もする。そうして同時に、今日の国鉄を利用する人にも負担してもらう、これを税金だけでまかなっていくということでなく、利用者にも一つ一部の負担をしてもらうというようなことで、一応これからの五カ年計画というものを作って、この経済の拡大に調子を合せていこうということに出ましたので、このたびの運賃の値上げその他の値上げにつきましても、最小限度にこれをとどめるようにして苦心をしている点は御了承を願いたい、こう私どもは思っております。
  27. 中居英太郎

    中居委員 大臣の話が非常に飛躍いたしましたから、私もそれにテンポを合せて質問を申し上げますが、先ほどの大臣答弁の中に、現在の国鉄の運賃は他物価に比して非常に安いということを言われたわけでございます。私はこれは安くていいと思うのです。安いことは当然だと思うのです。しかし他物価に比して安い高いということだけをもって、運賃値上げの理由にはならぬと私は思います。大臣もそうお考えでしょう。安い高いをどこでどうして判断するかということは、これは非常に重要な問題だと私は思うのですが、この安い高いの判断を何によってするかということは、結局は国有鉄道の現在の運賃が原価を償っておるかどうか、原価を償いながらもなおかつ産業の発達に資し、賃金、物価の安定に寄与しているかどうか、こういうものを総体的に考えて、国有鉄道の運賃というものは決定せらるべきものだと私は考えておるわけでございます。  そこで運輸大臣にお伺いしたいことは、今日、あるいは新年度から、国有鉄道の現行の運賃で国鉄の原価をまかない得ることができないかどうかということです。私は現在の運賃ベースで十分に原価を償うことができるという基礎に立って、この運賃問題を審議しているわけでございますが、大臣はいかがお考えでございますか。
  28. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 明年度は別として、今年度までのものは原価をまかない得なかったことはあなたの御承知通りです。そうして減価償却もできないというようなことで、赤字を続けてきたことは御承知通りであります。そこで明年からの運賃を訂正いたしまして、大体明年からの原価をまかない得るようにしていきたい、こういう点を考えて今度は値上げをしたわけでありますが、これで大体原価をまかなえるかまかなえないかということは、これからの努力によってきまるだろうと思っております。
  29. 中居英太郎

    中居委員 もちろん国有鉄道の運賃が、原価をまかなえないものであってはいかぬ、こういうことについては私は賛成ですよ。幾ら国有鉄道であっても、その運賃というものが、原価を割る運賃内容であってはいかぬということは私も賛成です。しかし、しからば大臣にお伺いしますが、国有鉄道の原価とはどういうものをもって一体原価としているのですか、原価の構成要素ですね、それを伺いたいと思います。
  30. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 原価は、私が申し上げるまでもなく、国鉄の現在の経営に要する直接の費用、それから設備に対する減価の償却というようなもの、それからそれ自体のある程度の安全設備とか、信号その他、そういうもので国鉄全体が現在を維持してその使命を全うしていくような諸経費を合せて、これを原価と見るほかは常識的にはなかろうと思います。なおこの点についてのこまかいことは、一つ政府委員からお答えさせます。
  31. 權田良彦

    ○權田政府委員 運賃の原価をどのようなものに考えておるかという御質問でございますが、具体的にはまず経営費、利子及び債務取扱い諸費、租税公課、それから減価償却費、予備費、さらに採算を度外視しても公共性のため実施しなければならぬ若干の設備資金繰入額、これには学界においてもいろいろ問題がありますが、公正報酬というような意味をも含めましたそういう若干の設備資金繰入額並びに必要最小限度の債務償還額、これが原価に計算すベきものと考えております。
  32. 中居英太郎

    中居委員 ただいまの鉄監局長の御説でよく了承いたしました。そこで、しからば現在の国鉄運賃のベースが、これらのものをまかなうことができるかどうかということでございます。今回の政府側の運賃改正に対するところの提案理由を読んでみますと、第一番が、累積した老朽施設を取りかえることによって、安全を確保しなければならぬということであります。第二番目には、この経済情勢を反映して増加するところの貨物輸送というものに対する責任を果さなければならぬ、そのための施設の増強に要する費用、あわせてサービスの改善、経営の合理化に要するところの費用、これらを含めて今回の一三%の値上げをするのだ、こういうふうに提案理由説明に書いてあるわけでありますが、一体この提案理由の中に、あなたが今言われました原価構成のどれが入っておりますか、この点を伺いたいと思います。
  33. 權田良彦

    ○權田政府委員 お答え申し上げます。ただいま御指摘のような点においての法律案提案理由がありますが、それでございますから、それによって外部資金と自己資金とを合せてそれだけの工事資金を出すということを申し上げておるのでございまして、これは同じことを両方の面から申し上げるのでありますが、原価的に申し上げれば、今御指摘の点の老朽施設の取りかえというとこは、経費としてはほぼ減価償却に見合うわけでございます。それから輸送力の拡充ということについても、これで収入も増加でき、経営も合理化でき、ある程度ペイし得るというものは、これは外部資金によるわけであります。自己資金として出します設備資金は、減価償却のほかには、先ほど私が申し上げました採算を度外視しても、公共性のために実施しなければならぬ若干の設備資金、これが自己資金の原価として出て参るわけでありまして、これをひっくるめて、提案理由では全体の御説明をいたすためにかような表現にいたしておるのであります。
  34. 中居英太郎

    中居委員 この国鉄運賃の問題がそもそも表面に出て参った動機というのは、一昨年運輸省に設けられました経営調査会の結論が第一であったと私は思っております。これが一つの動機となり、理由となって、政府当局が運賃値上げというものを決断せらるることになったのではないか、こう考えております。この経営調査会の結論というものは、大体において、国鉄の現状、あの当時におけるところの国鉄内容をよく把握せられた結論であったと思っております。それで、あの結論にはこう書いてあります。今日の国有鉄道は、三百七、八十億ないし四百億円程度の減価償却をもってしては、資産の食いつぶしであるのだ。少くとも一兆六千億ないし一兆七千億程度の償却資産を持っておる国有鉄道は、四百五十億程度の償却費を計上しなければならぬ。この償却費の不足額は、国家投入とか、繰入金とか、こういうものをもってやることは不当であって、運賃の収入に待つべきものである。こういう結論を出しております。従ってこの償却不足額の金額を調達するための一つの方法として、運賃値上げもやむを得ないであろう、こういう調査会の結論であったのでございます。ところが今日はどうですか。昭和三十一年度におきましては、国鉄の運賃の自然増収は二百億円をこえております。この二百億円を、現在計上されておる三百二億円の償却費にプラスいたしましたならば、四百五十億はおろか、五百億円近いところの減価償却費というものを見ることができると私は思います。さらに新年度はどうですか。新年度においては三百億程度の運賃増収が、現ベースにおいて期待できると政府みずからが言っております。予算説明に書いております。現在の運賃ベースで増収になるところの二百億ないし、三百億円というものを償却費の不足額に充当するならば、償却不足額というものは十分に補充できる。そうして現在の予算を見ますと、償却費というものが十分に計上せられますならば、他に一体運賃値上げの構成要素としての不足額がありますか。他のものは全部埋め尽されております。不足なものは減価償却費ただ一つであったのです。しかしながら昨年来続いておるところの国鉄輸送増に伴うところの自然増収、こういう経済情勢のもとにおきましては、少くとも原価を償わなければならないという運賃法の原則に照らしての値上げの原因は何らない。値上げの原因というものは解消しておるとこう私は考えております。国有鉄道に対するところの赤字、黒字というものが、昨年、一昨年やかましかったのです。この赤字、黒字というものは減価償却をどの程度見るか。現在国鉄が計上しておる三百億円程度の償却費をもって予算上見るならば、国鉄は黒字であるという見解も出るのです。しかし償却費を正当に四百五十億程度計上するならば、国鉄が赤字である、こういう理論にもなってくるのでありまして、国鉄の赤字、黒字という問題は、この償却費をいかに見るかということに原因があると私は思うのです。この償却費を、経営調査会のいうように、そして政府の償却基準によって見ても、四百五十億、四百七十億計上すれば、全部まかない得る。そういうところの運賃は現在の運賃ベースですでにできておるのです。原価を償うものでなければならないという国鉄運賃の原則にかんがみまして、少くとも今回の政府の運賃値上げというものは、その限りにおいては根拠がないと私は思っておりますが、この点についていかがお考えでございますか、御答弁を願いたいと思います。
  35. 權田良彦

    ○權田政府委員 お答え申し上げます。昭和三十一年度の運賃収入の実績が、ただいまの見通しでは、三十一年度の予算収入に対して約百四十億を上回るものが出るかと存じます。二百億はちょっと出ないかと存じますが、百四十二、三億の増収はそのまま全部減価償却に充当するという御意見でございますが、これは経理的に見ますと、百四十億の増収は何で出てきたか、輸送力の増加で出て参ります。輸送力の増加にはこれに見合います必要経費がございます。列車キロもそれだけふえます。乗務もふえます。燃料動力費もふえます。これらの経費が見合って参りますので、これらはすでに三十一年度の予算総則にも弾力条項がございますように、この必要経費は経費として落さなければならない。このネットの利益は、なるほど減価償却に振り当てることができまするが、三十一年度の決算見込みではこれらを入れましても、なお減価償却は十分取り得ないと考えております。三十一年度のただいまの決算見込みでは赤になります。従いまして現在の運賃ベースですでに原価を補っておるということは、数字的に経理的に私どもはそうでないと考えております。  それからなお先ほど経営調査会の御答申を御引用になりましたが、経営調査会は御案内のように、国有鉄道の経営形態とその財政再建策について慎重に御検討を願いまして、実に有益な御答申をいただきまして、私ども各般にわたってこれを尊重していろいろ処理をいたしておりますが、この経営調査会においても、過去の償却不足を補う意味を含めて、自己資金によるべき改良に充てる経費を運賃原価として、一応現行運賃のおおむね五%に当る額を見ておる。従って、先ほど私が申し上げましたが、今回の運賃改正で原価にこういうものを織り込むと申し上げましたが、減価償却費のほかに、この過去の償却不足を補う意味あるいは公正報酬というようなものも含めまして、若干の自己資金もこれに組みました。これによって設備資金の一部を出す、さらに外部資金を合せて約一千億の改良費を捻出する、こういう数字に相なっておるわけでございます。
  36. 中居英太郎

    中居委員 今のお話でありますと、過去における償却不足、これに大体五%程度の運賃値上げが必要である、これも償却費の一つとして計上しなければならぬ、こういうことでございますが、私は厳密な意味において申し上げまするならば、過去における償却不足というものを今日、現在の国鉄経理の面において償却費としてみなすということは不当であると思うのです。過去における償却不足というものは、政府責任です。古い例でございますが、戦争中は戦争遂行のために国鉄が酷使せられました。そしてこれに見合うところの償却というものが行われなかった。戦後は、輸送の困難にさらに物資不足というものが重なり合いまして、そしてその当年度においてなすべきところの償却費というものが見られなかった。そういうことが累積して、それがいわゆる過去における償却不足であり、今日の国鉄の老朽化の原因になっておるのです。この過去における責任を、当年度以降の減価償却の基準にするということに対しましては、私は大いに疑問があろうと思うのでありますが、いかがでございますか。
  37. 權田良彦

    ○權田政府委員 過去の減価償却不足分を特別償却するために、これを減価償却費に計上すると申し上げたのではございません。減価償却費は、先ほど来御説明していることによって経費にあげまするが、私が先ほど申し上げたのは、経営調査会がこういう意見を言っているということを申し上げた。今度私ども考えとしては、そういう意味をも含めて、また公正報酬という意味をも含めて、若干の減価償却費以外の自己資金において設備改良をする、たとえば保安の充実であるとか、あるいは通勤輸送の一部緩和であるとか、こういうものの改良資金を自己資金で出すことは、これは運賃原価として認むべきである、こういう建前に立って申し上げたのであります。
  38. 中居英太郎

    中居委員 そこで私はさっき運輸大臣に申し上げたのでありますが、政府の国有鉄道に対するあいまいな態度が、今回の運賃値上げの原因になっておるとさつき私は申し上げました。その政府の今日までの国鉄に対するあいまいな態度というのが何をもたらしたかと申しますと、過去における償却不足をもたらしておるわけでございます。過去における償却不足の原因というものは、政府の国有鉄道に対する態度というものがあいまいであったからできたのです。国有鉄道に対していろいろな犠牲を強要しながら政府は、国有鉄道に対して何ら財政の処置を講じなかった。それで国有鉄道は収支を合せる予算の建前上、減価償却費をどうしても不足に計上しなければならない。それが積り積って今日の老朽化の累積というものを招いておると思うのです。これに対しては当然政府責任において処置をすべきでありまして、これを断じて今後の利用者の負担に帰せしむるべきものではない、運賃構成の要素に加えるべきではない、こういうことを私は聞いておるのでございますがいかがでございますか。もちろん戦争中あるいは戦後等は、物資の不足あるいは財政の不足等もあったでございましょう。しかし今日においては政府財源には相当の余裕を生じております。昭和二十一年度におきましては一般会計で一百億円も余裕ができて、これを昭和二十三年度までの一般民間産業の財政投融資資金に充てる、こういう処置まで講じておるのです。財政的に余裕がないとは言われないと私は思うのです。こういうときにこそ政府は、過去において自分のなさなかった責任を果すべきである、こういうふうに私は考えるのでございますが、一体宮澤運輸大臣はいかがお考えでございますか。
  39. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 過去における今特別償却と言われておる部分も、やはりそれは過去において運賃をもう少し増収して償却を行わなければならぬ部分もありました。それを怠っておったという点もあります。それからその他の原因もありますので、今財政資金に幾らかの余裕が出たが、これを新たに今政府が計画しておるような方面へ投ずるか、あるいは国鉄の一部にこれを充当した方がいいかということは、これは見解の問題でありますが、やはり今日日本の経済全体を進める上から、この程度の運賃値上げによって国鉄自体の独立採算の点を推し進めていく。これがまあ極端な事故が起る、非常に大きな風水害その他によってとても国鉄がまかない切れないというようなことが起ったときに、国鉄に対して政府がどういうことをするかということは別個の問題でありますが、今日の段階においては一般の経済情勢から見て、自己資金によってこの国鉄の経営をやらせていくということは適当ではないか。また過去における問題、この特別償却の点も、過去において運賃が非常に安くて、国鉄自体がまかない得なかったということもありましょうけれども、それも今日においてその一部分ぐらいは負担していってもいいではないか。政府の資金はまた使うべき軽重がおのずからあるわけですから、それらを勘案してやるわけでありまして、この点になりますと議論の分れになるかもしれませんけれども、心持においては私は御了解願えることと思うのであります。
  40. 中居英太郎

    中居委員 国鉄の運賃の問題を論議する場合に、抽象論では私はいかぬと思うのですよ。運賃法にも書いてございますように、厳格な計算によるところの原価計算でなければならぬ、こういうことが書いてあるのですよ。そういう場合に抽象論で、この程度の値上げはいいだろうとか、あるいは国家的に見てこの程度の値上げは当然であろう、他物価に比して安いから一三%ぐらいはいいだろう、そういうような論拠、そういうような理論でこの運賃値上げというものを提議せられたとしたら、私は大へんだと思うのです。あくまでもこれは数字的に、あくまでも理論的に、原価を償うという建前に立って、しからば原価とはどういう構成が原価に入るべきものであるか、こういうことを数字的、理論的に計算して、その上に立って、現在の経費、原価を償うためにはこれこれの値上げが必要だ、こういう理論的な裏づけがなければならぬと思うのです。そういう立場から、この特別償却費というものは私は原価の構成要素には入らぬ、こういうことをお尋ねしておるわけでございますが、いかがでございますか。
  41. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 申すまでもなく、今お話の点のようなわけで、三十一年度においては百四十億の増収見込みはありまするけれども、経費の点は半分ぐらい消えてしまう。三十二年度からこの運賃の値上げによって、今お話のような広い意味の原価をまかなっていく経営が成り立つという意味から、この一割三分というものをきめたわけでありまして、ただ抽象的におよその腰だめでこれをやったというわけではないわけであります。
  42. 中居英太郎

    中居委員 そうすると過去における償却不足、これは原価の構成に入るということですか。
  43. 權田良彦

    ○權田政府委員 先ほど来再々御説明いたしておりますように、そういう意味、さらに公正報酬という意味をも含めて、採算を度外視しても公共性のため実施しなければならない若干の設備資金繰入額、こういうものは自己資金で生み出すべきものである。すなわち運賃の原価である、こういう見解でございます。
  44. 中居英太郎

    中居委員 今回の提案理由の一つが老朽施設の取りかえでございます。もう一つは激増する貨物を輸送するための施設の増強、こういうことになっております。今鉄監局長の説明によりますと、過去における償却不足というものも公正利潤、こういう考え方からすれば原価の構成に入ると、こう申しております。しかし私は国有鉄道が何であろうと、どういう理由であろうと、利潤というものを原価の中に含めるという、この考え方に対しましては賛成できないのです。少くとも国有鉄道においては利潤というものは原価の構成に入らない、こういう立場を私はとっておるのですが、あなたは利益の一部がこの原価構成に入るとお考えでございますか。
  45. 權田良彦

    ○權田政府委員 いわゆる私企業で申しまする利潤という観念ではございません。フェア・リターンと申しまする公共企業体における公正なる国民資本に対する、国民にお返しすべき報酬という意味で、この点においてはそういった意味の自己資金をも含めて、自己資金で若干の設備改良資金を出すことは認めていいのじゃないかと考えております。いわゆる商業的な意味における利潤ではございません。戦前の例を若干申し上げますと、戦前のいわゆる国有鉄道経済が正常であったといわれる時代においては、大体総収入額のおおむね四分の一程度のものを自己資金として積みまして、これによって諸改良を行なっておった、こういう経過をたどっております。ただし戦後においては当然かようなことはできませんので、在来は再三大臣がお答えしましたように、運賃を低位に据え置いておりまする関係上、自己資金として生み出すべきものをも生み出し得なかった。これらについて、これを財政投融資によりますることは、経済的な観念からは不健全でありまして、これは自己資金でまかなうべきものであります。先ほど申しましたフェア・リターンという意味は、通俗的に申しますなら、これはいろいろな諸改良の形で現われて国民にお返しして、輸送の質が改良されて参る、こういうことに使われるわけであります。
  46. 中居英太郎

    中居委員 私は原価構成の中に利益を含めるかどうかということについてのあなたの御意見には、絶対納得することはできないのです。私自身もこれについての考え方を持っておるわけではございませんが、ただ経営調査会の結論がございます。何をもって原価とすべきかということを経営調査会は報告しております。それは「経営費、利子および債務取扱諸費、減価償却費、平均的な災害引当金、平均的な退職手当等についてこれを算入することには異論はない。」こういうことを述べております。そうしてさらに序文においてはこういうことを書いております。国有鉄道は利益を見るべきではない、しかしさっき申し上げましたようないろいろなものをもって構成するところの原価を償うものでなければならない、こういう定義を下しておるわけでございますが、この経営調査会の答申の定義とあなたが今言われました一定の利益をも原価の構成にすべきである、こういう意見について私はどうも了承することはできないのでございます。しかしこれはお互いの見解の相違であると私は思うのでございますが、ただこの際はっきりしておきたいことば、今後もこういう問題が再三再四起ると思うのでございますが、そういった場合に国有鉄道は原価構成の一つの要素として、一定の利潤というものもこれにみなしておる、こういうことが決定的になると思うのでございますが、こういう定義を下して、そういう政府の見解であるということをはっきりしておいていいのですか。
  47. 權田良彦

    ○權田政府委員 今お読み願いました「異論はない」の次にこう書いてございます。「改良費については前に述べた通り、取替補充および採算を度外視しても実施しなければならない施設改良は原価に見込むべきである。」この経営調査会の答申は、私どもは尊重して今回の裁定をしたわけであります。経営調査会の答申は尊重いたしておりますのと、それから後段の利潤というお言葉をお使いになりましたが、再三申し上げておる通り、利潤は認めておらない。今申し上げた採算を度外視しても実施しなければならない施設改良は、原価に見込む、その意味の原価において自己資金を見ておるわけであります。
  48. 中居英太郎

    中居委員 それは経営調査会といえども政府の国有鉄道に対する考え方があいまいである。そうして幾ら言っても政府は国有鉄道に対する責任を果さない、理論的にはさっき言いましたように、政府は相当額の繰入金を、国鉄の経理に及ぼしておる損失に対して繰り入れるべきである、こういう理論を持ちながらも、幾ら言ってもそういうことを政府がしない。政府がしないから、そういうものを待っておっては国鉄の財政の再建は期することができないから、そういうものを運賃構成の要素にすべきである、こういう勧告をしておるのです。これはどうですか。
  49. 權田良彦

    ○權田政府委員 御指摘のような考え方、立場もございまするが、私どもの理解する限りでは、経営調査会はそういう立場をとっておられなかったと了解しております。
  50. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  51. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 それではこれにて休憩いたします。    午後零時九分休憩      ————◇—————    午後二時十五分会議
  52. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。中居英太郎君。
  53. 中居英太郎

    中居委員 大臣がまだお見えでないようですから、鉄監局長と国鉄当局に御答弁をお願いしたいと思います。  休憩前に私は特別償却費の問題で鉄監局長からお答えを願ったわけでございますが、この特別償却費に充当する累積された老朽施設、五年間において特別償却しなければならぬ累積せられた老朽施設は、一体どれだけの金額になっておるか。それからもう一つ、この金額は今度の運賃値上げ一三%のうち何%を占めておるか、こういうことをお尋ねいたします。
  54. 權田良彦

    ○權田政府委員 お答え申し上げます。御案内の通り国鉄昭和二十三年度から減価償却を実施いたしたのでございますが、この年度は簿価、帳簿価格でやっております。二十五、六の両年度はある程度の評価がえをした場合の価格によっております。一般企業より二カ年くらい遅れまして、昭和二十七年度でようやく第一次再評価ベースによる減価償却をいたしております。これらのものが償却不足として先ほど御説明いたしましたようなことの累積でありますが、われわれの方の試算では、償却不足額は二十九年の物価換算にいたしまして約千八百億円に上るのではないか、こういう数字を見ております。ただいま御質問の特別償却分として今回の運賃値上げの原価で幾ら見ておるかという点につきましては、先ほど申し上げました通り普通の減価償却は四百八十九億フルに見ておりまして、それ以外のものをそういう意味合いをも含めて、先ほど申しましたような採算のとれないようないろいろな改良工事等の資金として見ているわけでありまして、これが約二百七、八十億でございます。これは今申しましたように特別償却としてだけ考えているわけではございません。そういう意味合いをも含めて、先ほど来たびたび御説明いたしました趣旨においての自己資金に見合わしているわけであります。
  55. 中居英太郎

    中居委員 私ははっきりした記憶はございませんが、今回の国鉄五カ年計画の立案に当りまして、過去におけるところの償却不足、すなわち特別償却費に充当する金額は九百八十億第一次五カ年計画では見ていると記憶しておりますが、私の記憶に誤まりがあるのでしょうか。
  56. 權田良彦

    ○權田政府委員 それは大体五カ年計画を説明いたします場合に、そういうようなものをも含めまして、一般の減価償却費も不足して参りました累積の中で、近々のうちに取りかえなければならないものがその程度あるという御説明はいたしております。なおちょっとつけ加えますと、結局私の申し上げたのは、累積償却不足額を総数で換算してみた試算でありまして、これの実体は、今回の運賃値上げによりまして、再評価に基く減価償却費をフルに計上いたしますし、それから今申し上げました二百七、八十億の自己資金を計上いたしまするので、これが両々相待って、この償却不足額も、実質的には今後五カ年ないし七カ年で大体解消できる、こういう見通しになるわけであります。
  57. 中居英太郎

    中居委員 政府提案理由説明の中に、今回の値上げ率のうちの約四三%に相当するものは、従来の固定資産の維持に充当すると書いてございますが、との金額が大体過去におけるところの償却不足に充当せられる金額じゃございませんか。パーセントじゃございませんか。
  58. 權田良彦

    ○權田政府委員 これは提案理由で御説明いたしました通り、大体今後五カ年間で、資金総額としておおむね六千億の計画を持っておりますが、その六千億の内容といたしまして、大約四三%に当るものが従来の固定資産の維持である。この中には現在の再評価をいたしました減価償却費並びに今御説明いたしましたものの資金で見合う償却不足額による、これの解消、こういうものを含んでおるわけであります。
  59. 中居英太郎

    中居委員 よくわかりました。先ほどのあなたの御答弁によりますと、大体特別償却費として本年度見込んでおる予算は二百七十億程度、こういう御説明でございますが、もしもそうだとすると、今回の運賃値上げによる金額の二百七十億は八%程度に相当すると思いますが、その程度のものを特別償却費として見ておるわけですか。
  60. 權田良彦

    ○權田政府委員 先ほども説明いたしましたが、いわゆる一般の企業で、経理上特別償却としてはっきり立てまして、それで過去の償却不足を単年度で減らしていく経理が行われておる例は多うございますけれども、今回の国鉄の財務といたしましては、この二百七、八十億の金額をあげて、特別償却としてこれを充当するということではないのでありまして、そういう意味合いをも兼ねて、この自己資金に基く諸改良に充てますもので、こういう資金と、普通償却費の計上とによって 五カ年間の資金総額からいうと、大体こういうものをも含めて解消できる、こういうことで多少数字はダブっておる点がございまするので、この二百七、八十億が特別償却の不足分であるというふうには、財務的にはならないのであります。
  61. 中居英太郎

    中居委員 私が先ほど申し上げましたように、私の承知しておるところは、大体五カ年間で償却すべき過去における老朽施設、これは九百八十億、千億程度、従って今回の値上げ率から見ますると、一三%のうち大体五%が、この特別償却に充当せられておる、こういうふうに私ども承知しておるわけであります。そうだとしますると、一三%のうちのさらに三%が、地方市町村に対するところの納付金に相当する金額でありますから、残された五%が今回の輸送力増強のための五カ年計画に投入せられるべき資金である、こう解釈できるわけでありますが、この五カ年計画の実施に必要な資金といたしまして、政府は可能な限り政府資金の投入を行なった。そしてなおかつ不足な部分を今回の運賃値上げによってまかなうのだ、その金額が五%である、こういうふうに私は了解するわけでありますが、一体政府は、今回の国鉄の五カ年計画樹立、推進に当りまして、従来とどれだけの相違あるところの財政措置を国鉄になさっておりますか、それを運輸大臣に伺いたいと思います。
  62. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 これは政府の方からは財政資金として借り入れをやっておる分だけで、あとはその運賃の値上げとか、それから自己資金から捻出したものと、三者を合せて五カ年計画を立てておるわけであります。
  63. 中居英太郎

    中居委員 今回の政府の一三%の値上げのうたい文句は、輸送力の増強をはからなければならない、従って政府もそれだけの財政負担をする、しかしそれだけでは間に合わないから利用者にも転嫁させるのだ、こういうことを政府国民に宣伝しております。ところが今の大臣答弁でも明らかなように、今回の五カ年計画を樹立したということ自体に対しまして、昭和三十一年度と何ら変らないところの財政措置しかしていない。この予算説明を見ましても、はっきり現われております。五カ年計画を推進するために約六千億の資金を必要とする、そして政府が国有鉄道に対するところの支出は、昭和三十一年度と同程度の二百十五億円、そうすると不足額が三百六十億ないし四百三十億円程度生ずるから、これを運賃値上げの収入によってまかなう、こう書いてあります。五カ年計画を政府が樹立して、わが国の経済のネックの一つになっておる輸送の問題を解決するために、運賃を値上げするのだ、そのために政府は相当思い切った政府なりの財政措置を講じたが、それでも足りないから運賃値上げをするのだというが、昭和三十一年度と何ら変らない財政措置じゃありませんか。これで一体政府が宣伝しておるところの、政府なりの責任を果しておるということが言い得るのですか。私は先ほども大臣に申し上げたのでありますが、今日まで政府の国有鉄道にとって参りました態度は、この責任というものははっきりしていないです。国有鉄道に対して何ら政府の果すべき責任というものを果していない。しかし今度の五カ年計画は過去におけるところのそういったことにこだわらないで、五カ年計画を推進するための一つの助けとして、政府は思い切った投資をするのだ、今までよりも変った思い切った投資をするのだ、こういうふうに国民にも言い、われわれにも言っておったのですが、今回の財政計画を見ると、一銭だに昨年より増加していない、昭和三十一年度より増加していないですが、これは一体どういうことなんですか。
  64. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 政府国鉄の増強計画に対するのは、ただ政府の資金を投入するというだけではなく、政府国鉄をしてこの五カ年計画に輸送力の増強をさせるべき計画を立てて、これを熱意をもって行なっておるわけでありまして、御承知通り最初の計画は、国鉄当局からは一割八分の値上げをして五千億円という計画を出してきたのですが、これを一割三分に下げて六千億円の資金計画を立てさせていくというような点に、なるほど金額の上ではお話通り、今年度十億円ばかりしか政府の投資はふえておりませんけれども、この計画に対する政府の熱意というものは現われてきておる。これをあなたのお話のように、金額だけがそのメートルだということになれば、そこに議論がありますけれども、こういう熱意を持って一割三分に下げて、それから自己資金も出させる、そうして六千億の計画を立てたということは、一つ御理解を願いたい。
  65. 中居英太郎

    中居委員 私ならもっともっと熱心な熱意を示しますよ。私なら運賃の値上げをしないで、しかもこの計画をしなさいという熱意を示しますよ。ただいま大臣は財政的には何らプラスにはなっていない、しかし計画自体において熱意を示した、こう言っております。それで当初一八%値上げによって、五千二十億の五カ年計画を推進しようという国鉄のこの計画に対しまして、それを一三%の値上げに押えて、さらに九百五十億円をプラスして、約六千億の五カ年計画を推進させようとした政府の計画は、確かに一つの大きな進歩だと思います。しかし私は国有鉄道に伺いますが、当初一八%で五千二十億の計画であった。それが今宮澤運輸大臣の言うように、一三%にそれを下げて、しかも九百五十億円をプラスして六千億の工事量にせられた、こういうことがすなわち今日の岸内閣の国有鉄道に対する熱意だそうでありますが、この国有鉄道に対する政府の熱意に対しまして、一体国鉄はこれを推進できる自信がおありですか。値上げは五%減りました。しかも計画は九百五十億増加いたしました。おそらく経営の合理化を強要せられるでしょう。そうして運賃の自然増収が三%から逐年四・五%増という算術も出ておるようであります。しかしこういった経営の合理化は、結局は国鉄の従業員の労働強化になる。あるいはまた賃金の実質的な頭打ちになる。こういうふうに、国鉄労働組合の下部に犠牲が強要せられる結果になるのではないか。しかもこの二%増収と見ておった自然増が、四・五%にされ、五%にせられるということは、結果的にこういった収入が上げ得なかった場合において、何に影響してくるか。何にしわ寄せられてくるか、こういうことを私は非常に憂えておるのでありますが、これに対して石井常務から一つ御答弁を願いたいと思います。
  66. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいま御質問のございました前段の、国鉄政府でお立てになった計画で五カ年計画を遂行し得る自信があるかという御質問でございますが、私どもは全力を尽しましてこの計画の実施に当って、皆様の御期待に沿いたいと存じております。それからもしも予定通りの収入が上げ得なかった場合に、どういうところにしわ寄せがいくかということでございます。私どもといたしましては、この五カ年計画はあらゆる面でぜひ実施いたしたい、かように考えておりますが、収入がもし足らなかった場合におきましては、設備資金において、その調達に困難する結果になるかと思うのであります。そういう点につきましては、なおそういう事態は万が一起らないと思いますが、起りました場合におきましては、この資金の調達に重ねて努力いたしたい、かように考えておる次第であります。
  67. 中居英太郎

    中居委員 私が午前中再三再四原価を償うものでなければならないという国鉄運賃の建前からいたしまして、運賃の原価構成の一つ一つをしつこく聞いたのでありますが、その原因というのは、今回の一三%の案を検討してみますと、先ほど言いましたように、三%は国鉄政府に納める納付金であります。五%は戦争中、戦後の混乱によって生じた老朽施設の取替費です。それからさらに残された五%というのは、五カ年計画に必要な資金です。一体原価に算入すべきところの何の根拠がこの三つにありますか。私がさっき原価構成の要素をお聞きしたゆえんはここにあるのです。特別償却費にしてもしかりです。納付金にしてもしかりです。そうしてこの新しい施設に投入するための五%だってしかりなんです。今回の五カ年計画というのは、今日のわが国経済の現況にかんがみまして、政府が立案した計画なんです。政府の経済全般に立ったところの五カ年計画であると私は思っておるのです。従ってこの五%はもちろんのこと、政府資金を新たに投入することによってこれが実現をはかるべきものでありまして、国民はでき上ったそういう施設を公正妥当な運賃を払うことによって利用するのが当然なんです。自分たちが金を出して鉄道を作って、そうしてさらに運賃を払ってこれを利用するというようなことは、経営と利用という正常な関係ではないと私は思うのですが、大臣は一体いかがお考えですか。
  68. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 これはちょっと議論にわたるような点がありますが、今のお話の点からいって、結局納付金といえども、この程度の適正な納付金を市町村に納めるということは、やはりこれは原価の一部と見ていいことだと私は思います。それから老朽施設に対するものも、新しい増強計画も、ともに国鉄輸送力を増強し、安全にし、つまり一貫した国鉄の工事をして改善をしていくのですから、これらもいろいろな一部の内容に議論はありましょうが、全体として原価のうちに入るべきものと考えます。ただこれが非常に利益が上ってくるというようなことになりますと、果してそれは民間企業の利益のようなものに見るべきか、またそうでない、これは剰余金としてどう処理するかということは、先に問題はありましょうけれども、来年度もしくはこの五カ年間における計画におきましては、およそ国鉄の運賃決定の四原則に総合的に見合ってできておる、かように考えております。
  69. 中居英太郎

    中居委員 政府の見解と私の見解は全然異なるようですから、私はこの点についての質問はこれ以上いたしませんが、ただ一つ念のために大臣にお伺いしておきたいことは、大臣は固定資産税に相当する七十三億という金額は、もう決定的なものであり、妥当なものであるという前提に立っておられるようであります。もちろん国有鉄道の経営というものが健全である場合に限っては、こういう制度考えてしかるべき制度であろうと私は思います。しかし今日のような、国鉄が原価を償うとか償わないとか、赤字であるとか黒字であるとか、運賃を値上げするというこのさなかに、運賃値上げを前提としたこういう国鉄に対する課税というものが、果して了承してしかるべきものでしょうか、私はこれに対してかねがね大きな疑問を持っておるのです。また国鉄当局においても、こういった制度ができた当初、唯々諾々としてこれを了承したということは、こういうことを一つ一つ積み重ねることによって、運賃値上げを対社会的に合法化しようという考えがあったから、唯々諾々としてこういう理不尽な制度をのんだのではないかというふうに私は考えております。さらに政府がこういう制度法律化した根拠というのは、一昨年の税制調査会の中の答申にあったのです。国有鉄道も企業である、従って他の民間鉄道と税法上の特別な差別を原則としてつけるべきではない、従って固定資産税も取れ、こういう答申を税制調査会がしております。そして政府は税制調査会の答申もあったからということに名をかりて、このような納付金制度をとっておるのです。もしも税制調査会のそういう答申を是なりとしてこういう制度を立てるならば、今日の公共企業体としての国有鉄道の性格あるいはあり方、運営方法に、根本的な改革を加えることが前提でなければならぬのです。公共企業体というワクを一方にはめておいて、なおかつ私鉄と税法上の差別待遇をしてはいかぬというこっちの案をとるならば、このはめておるワクに対して根本的な検討を加えることが、こういう制度を確立する前提になるのではないかと私は思うのですが、大臣はいかがお考えですか。
  70. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 御質問の趣旨を了解しかねたのですが、一方こういうような納付税を納めるならば、他面において経営の合理化という意味でございますか。
  71. 中居英太郎

    中居委員 そうじゃないのです。運賃決定の原則もそうでございますが、国有鉄道は国民の鉄道である、公共のために存在するのだという前提に立って、いろいろなワクをはめられております。しかも原価には利益を見るべきでないということまで言われておるのです。一方において公共企業体というワクをはめておきながら、他面税法上においては相当の利益金を認められており、他の私有鉄道等と何ら税法上の区別をする必要はない、こういう税制調査会の答申であったのですが、これを採用するならば、このワクをはずすことと並行して考えていかなければならぬ、こういうことなんです。
  72. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 その点は、納付金は固定資産税と大体同じ性質ですけれども、固定資産の見積りにおいて事実それを半減しておるというようなことから、ほかのものより公共的なものですから、半分くらいな納付金になる。  それから運賃値上げの問題が、国民の生活並びに各方面の物価その他に影響するということもむろんでありまして、それが国民の負担になることは明らかであります。けれども、今日の国鉄の持っておる陸上輸送としての使命から見れば、それが不当であるということはないかもしれませんけれども、ほかの輸送機関と比較して特別に安い。それにこの程度のものをかけて国鉄を——何も金を入れるばかりが政府の義務でもないわけでありまして、経営さえ立っていくならば、そういう方向に指導して、なるべく税金を使わないようにしていくことが当然であります。なるほど極端なことを言えば、政府機関だから運賃は全部無税でやることがいいという議論も立たないことはありません。しかしやはり税金は、乗ったり荷物を送ったりする人には特別にそれだけのものを出してもらうということが合理的である以上は、運賃があまりに安いということであれば、今日の輸送力増強の上から、経営の合理化以外に、利用者にこれに協力してもらうことが、公共企業体として独立経営をやらしていく上から、当然の成り行きじゃないか、常識的なことじゃないか、こういうふうに考えて、このたびの処置をしたわけであります。従って運賃の値上げの率も切り下げて、できるだけ影響の少いようにということで計画して参ったのであります。
  73. 中居英太郎

    中居委員 そうすると、国鉄からも運賃値上げを前提として、税金を取ることもやむを得ないという意見ですね。
  74. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 御承知通り、これは昨年からやってきております。こういうものを今日の財政経済一般の情勢から負担していくこともやむを得ない、こう考えております。
  75. 中居英太郎

    中居委員 私は運輸大臣からそういう意見を承わったのは、宮澤運輸大臣が初めてです。今までの運輸大臣は、少くともこういう制度は不当なものである、こういう制度は好ましくないということを申しておったのですが、やむを得ないという意見を承わった運輸大臣はあなたが初めてでございます。このように今回の一三%の値上げ率というものを一つ一つ検討してみますと、今申し上げました税金が三%、それから五カ年計画に基くところの設備資金が五%、全部国民の負担です。政府は昨年よりも一銭も負担増をしていない。さらに残された五%は、戦争中鉄道省時代におけるところの戦争によるところの酷使、あるいは戦後の経済によるところの償却不足ということで、全部で一三%ですが、どれ一つ取り上げても私は原価に算入すべき根拠になるものはないと思うわけであります。しからばこの一三%の値上げによりまして、五カ年計画が実施された暁には、この二二%というものは当然運賃の要素からはずすべき性質のものであろうと思いますが、それはどうお考えでございますか。五カ年計画が実施せられましても、この制度というものを施行いたしますか。
  76. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 この計画を発表いたしますときにも、五カ年後になってこれが完成すれば、運賃の値下げをいたしたいということは一応言っておりますけれども、実際問題としてそういうことができるかということは、われわれもそのときになってできるかどうか——しかしこういうことは少くとも私は言い得ると思います。五カ年たつと日本の経済というものは相当大きくなっていきます。それから世界の物価水準というものも、五カ年たてば国民生活が目立って向上しますから、一般に全部高くなってくる、そのときにおける運賃の物価及び生活の上に及ぼす影響は、五カ年たてばうんと値下げになると思う。今の運賃を形式的には下げないでも、実際問題として国民経済が大きくなり、物価が値上りする。そうすれば物価の上に占めるところの運賃のパーセンテージというものも、今三・五であるものが二・五になるかもしれない。生活費の上に及ぼす運賃、通信費の一・八%も一・〇になるかもしれない。それは事実上の値下げになる。少くとも形式的には値下げはできないにしても、そういう点は事実上値下げになり得るというふうに考えております。
  77. 中居英太郎

    中居委員 あなたは運賃というものを国民所得とか他物価に比較して、高いとか安いとか、負担が多いとか少いとかいうことを論じているのですが、国鉄運賃の決定というものはそういうことで算定すべきものではないと思うのです。国鉄運賃を決定するに当っての基準というものはあるのです。原価というものがあるのです。しかも原価とはこれこれのものを言うのだ、これこれのものを計算して原価は幾らになるというのが、国有鉄道の運賃なんです。五カ年計画を推進するために一三%必要であるとするならば、この計画が完成した場合には、この一三%はどうなるかということを聞いているのです。その当時における物価との比較が高いとか安いという問題ではないのです。
  78. 權田良彦

    ○權田政府委員 ちょっと原価の内容にわたりますので、私からも補足してお答えいたしますが、先ほど申し上げたようなものを原価として見たのです。今中居先生の御指摘は、固定資産税なり、あるいは特別償却なり、そういうものを政府の方で見るところでは要らなくなるし、特別償却は特別償却してしまえばあとは要らないから、その部分はそういうふうにすれば将来に運賃は下るべきではないかという御議論だろうと思います。この点については私が申し上げましたように、固定資産税を政府で持つか持たぬかという将来の立法論についてはいざ知らず、これは経営調査会でも固定資産税にかわる納付金は経費として原価に織り込むべきであるといっておりますので、支払う限りにおいてはこれは経費でございます。それから特別償却について見れば、特別償却引当金というものをかりに作りますれば、特別償却が終ればこれに見合う分は値下げをいたすべきでありますが、これはそういう引当金ではなくて、ペイしないような工事の改良の自己資金源として持っておりますので、この工事が要らないといえば原価から落せますけれども、この工事は当然要るわけであります。ただ問題は、今回の五カ年計画が達成されれば、もう設備拡張がその場限りにおいて五カ年先以降は要らないのだ、かりにこういう前提があれば、それに見合う分は値下げをいたすべきであります。しかし五カ年計画終了後の経済規模が、さらに輸送力拡充の自己資金に見合う分についていかが相なるか、この見合いでありまして、これが依然継続するものであれば、これは下げられないし、これが見合って少くなれば、その分については自己資金源としての分は若干は下る余地が出るかもわかりませんが、これは五カ年後の経済規模により、また経済情勢により、国鉄の財政状況によることであります。さらにこのほかに、実は先ほど触れておりませんが、本来原価に見るべきもので若干計上不足の問題、たとえば減債基金の問題、債務償還の問題、そのころにおける普通償却の償却対象資産の問題、普通償却がどれくらいになっていくか、これは年々財産増に見合って償却額はふえていきますから、これらと見合ってそのときに十分検討いたしたい、こういうことに相なると思うのであります。
  79. 中居英太郎

    中居委員 その説明でよくわかりました。  次に、私は国有鉄道の運賃値上げが物価に及ぼす影響について、国鉄当局にお尋ねしたいと思っております。先般の本会議で私はこの点に触れたのでありますが、これに対して宇田長官はほとんど物価には影響がないという答弁でありました。また政府は今回国鉄運賃が値上げされても、輸送力が増大することによって物資の交流が相当激しくなるから、むしろ物価は下るであろうということを言っておるのでありますが、私は決してさような楽観した説をとらないのであります。現に今回の一三%値上げすると、直ちに鉄鋼におきましては一トン当り四百円、石炭においては百円前後、セメントにおいては二百円前後、その他の物資には二%程度影響がある、私はこういう調査をいたしておるわけであります。国鉄当局もこの値上げが物価に及ぼす影響というものを否定はしておりませんが、きわめて過小評価しているようであります。先般の運輸審議会の公聴会ですか聴聞会の席上で石井常務理事は、むしろ物価の影響というものは運賃の値上げよりも需要と供給、他の客観的な経済の情勢によって左右せられる部面が大きいのだ、こう言って過去二度にわたるところの運賃値上げの際における物価の趨勢というものを、例にあげられておったようであります。しかしこれは物価の変動する場合の比較論であって、いかにも客観的な経済情勢のもとにおいてはより多くの変動があるでしょう、より多くの原因をもたらすでありましょう。しかし、かといって国鉄運賃一三%の値上げが、物価に対するところの影響を過小評価する理由には私はならないと思うのであります。この点についての石井常務理事の見解を承わっておきたいと思います。
  80. 石井昭正

    ○石井説明員 運賃と物価との関係について、まことに適切な御意見を拝聴したのであります。私どもも運賃の値上げが端的にコストに影響するということにつきましては、これは確かにコスト高になることが多いと思います。しかしそのコスト高がその商品の全体の中に溶け込んで、その商品なり製品の価格を上げたり下げたりするほどの強い影響があるかということにつきましては、御承知のように戦後の統制経済時代がすでに去っておりまして、すべて物価は需要供給で自由に上ったり下ったりいたしております。運賃は同じでありましても、たとえば生鮮物などは市況により、できふできによってだいぶ価格が違って参る。またその他の生産品などにつきましては、今申し上げたように製品価格が非常に高いものがございまして、そういうものがかりに若干私どもの方の運賃の関係で、なるほど一応数字の上ではコスト高になりましても、これは微々たるものであります。結局私どもが一番影響をしはしないかと思っておりますのは、やはり原材料品でございます。これはその製品の価格に対しまして運賃の占める割合が比較的高うございます。ところがその原材料品そのものは、なるほど原材料品としては価格が運賃の関係で高くならざるを得ませんが、結局これはその他の製造工程に入って製品の中に溶け込んで参りますから、その過程において私は十分吸収できるのではないかと思う。過日、私拝聴いたしませんでしたが、当院の予算委員会の公聴会の席上においても、参考人の方からはコスト・インフレの心配はないというような御見解があったように聞いているのでございますが、私どももコストの点から来る物価高ということをそれほど御心配になるような、ひどい値上げではないと思っております。財政インフレという立場から見ますと、鉄道の運賃値上げはむしろデフレ要素として働くべきものではなかろうかと考えております。両方の点から見まして、私どもなるほど一人一人の御負担、あるいはある企業に対して御負担はかからないとは決して申し上げませんが、これによって物価が上るというような点につきましては、そういうおそれはないものと確信いたしておる次第でございます。
  81. 中居英太郎

    中居委員 今の石井さんの御答弁は、池田大蔵大臣答弁と同じでございます。池田さんは一千億減税すると、一千億だけ通貨がふえるからインフレの要因が濃くなってくる。従ってこれを抑えるために、一方では国鉄の運賃を値上げして、他方では米の消費者価格を値上げして、インフレ気がまえにブレーキをかけるのだ、こういうことを池田さんは申しておったのですが、まさにあなたの言われるかえってデフレの原因になるのではないかという意見は、池田さんの理論と同じであろうと思うのです。私は決してそんな甘いものではないと思う。私はこの国鉄運賃の値上げは、本年度下半期において必ずやインフレの動機になるのではないかと心配している者の一人です。いかにも国鉄運賃の一つ一つを見ますと、今回の値上げによって物価に影響する率は二%ないし三%程度で、あるいは経営努力によって吸収できるものがあるかもしれぬのです。しかし原材料から商品となって国民の手に返ってくるまでには、平均して五回輸送の関門をくぐるという統計が出ております。二%ずつ一つのものに五回運賃がかかったら一〇%になります。このような統計を見ましても、いかに今回の国鉄運賃の値上げが、物価に及ぼす影響が甚大であるかということがわかると思うのです。しかも国有鉄道はわが国輸送力の根幹であります。国鉄運賃の値上げが必然的に私鉄の運賃の値上げになって現われてくると思っております。現に私鉄の運賃値上げの問題が、運輸当局においては論議せられておると聞いております。さらにまたガソリン税の値上げ、軽油税の値上げ、バスの運賃の値上げ、トラックあるいはその他の乗用自動車の値上げを伴うであろうことはこれまた当然であります。こういうような一切のあらゆる輸送運賃の値上げは、今日の政府のとっておる財政計画のもとにおいては、インフレに火を点ずる以外の何ものでもないと私は考えておるわけでありますか、宮澤運輸大臣のこれに対する所見をこの際承わっておきたいと思います。
  82. 宮澤胤勇

    宮澤国務大臣 国鉄運賃の一値上げが、今お話のように本年下半期においてインフレの要因をなすというようなことに、今日本の経済は動いていないのじゃないか。今日の日本の経済全体から見ますと、今日の一億五千万トンからの品物が動いておる上における運賃の値上げというものは、旅客が半分にしましても百七、八十億円というものであります。それがある意味においては、ただいま国鉄理事から申したように、形の上ではなるほど原材料には一応かかる形はとっておりますけれども、その他生活全体の上からいえば、必ずしもこれが今日のインフレの要因にならず、日本経済はもう少し大きくなっているのじゃないか。このくらいの程度のものを消化していくことには、大局的に見て私どもはこれがインフレの要因になるというようなことはなかろうというように考えております。
  83. 中居英太郎

    中居委員 これも見解の相違でどうにもなりませんが、秋まで待ちましょう。物価が上るか下るか、あるいは安定するか、秋まで待たなければわからないと思うのでありますが、しかしいずれにいたしましても私どもは今回の国鉄運賃が、わが国の経済に悪い影響を与えるであろうということを非常に憂えておるのです。しかもわが国の経済というものは、国際収支が赤字を覚悟しております。あるいは莫大な三千七百億円をこえる財政投融資、あるいは一昨日追加せられました三百億円の財政投融資、こういうような財政計画とあわせて考えまして、インフレの原因にはならぬでも動機の一つになるのではないか、こういうことを考えております。そうしてこういうものが本年度におけるところのわが国国民生活に与える影響を私どもは心配しておるのです。今回の政府のせっかくの一千億減税というものにも手が届かないところの多くの国民は、ただ国鉄運賃が上る、あるいは物価が値上りになる、こういうことによって収入はちっとも増加しない。こういうことによってさらに生活の困窮の度合いを深めていくのではないか、こういうことを私ども考えて、今回政府提案しております運賃値上げの根拠というものを、そういう立場からも検討して参らなければならないというふうに考えておるわけでありまして、実は私はきょうは原価の問題、あるいは今回の一三%の内容の問題等いろいろお聞きいたしましたが、私の納得し得るものは幾らもなかったのでございまして、五カ年計画の個々の具体的の問題については、日を改めて伺うことにいたしまして、本日の私の質問はこれをもって終了いたしたいと思います。
  84. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 森本靖君。
  85. 森本靖

    ○森本委員 国鉄当局にお伺いいたしますが、大きな問題は日を改めて伺うことにして、逆に小さな問題についてまず当局質問いたしたいと思います。  一番納得の行きかねる問題は、この鉄道運賃改訂の資料の十四ページにあります通常小荷物運賃の現行並びに改訂案の比較でありますが、この中に通常小荷物の重量として五キログラムから五十キログラムまで刻みになっておりまして、あとは十キログラムを増すごとにということになっておりますが、この取扱い数量の総量の中における各キログラムごとのパーセンテージをお聞きいたします。
  86. 石井昭正

    ○石井説明員 キロ別の輸送数量が全体でどういう分布になっておるかという御質問でありますが、ただいまちょっと手元の資料では見当りませんので、すぐ電話をかけて連絡いたしますから……。
  87. 森本靖

    ○森本委員 このくらいな問題はすぐ答えられるようになっておらなければ困るわけでありますが、それではその資料が来てから私の質問に入っていかないとおかしな格好になるわけでありますが、特にここでお聞きしたいのは、この五キロまでと十キロまでというものが現行よりも下っておるわけであります。しかも相当下っておるわけでありますが、この下げた理由というものがどこにあるか伺いたい。
  88. 石井昭正

    ○石井説明員 御承知のように小荷物運送はきわめて少量な輸送でありますので、今までは一番最少な重量刻みが十キログラムになっております。ところが実は二キログラムとか三キログラムとかいうような、ごく軽い小荷物が出て参りますときに、十キログラムの運賃をいただくわけであります。従いましてこれにつきましては、相当極端にいえば利用荷主の方からから運賃をいただいておるというような格好になるわけであります。従いまして今度はそういう点につきまして実情に沿うように、その五キログラムという新しい重量刻みを設けまして、そういう方々の便宜をはかりたい、かように考えましたので、従って現行の十キロと比較いたしますると下っておりまするが、現行法にも五キロ運賃というものがありといたしますれば、それよりはやはりある程度上っておるという賃率になるかと思っております。
  89. 森本靖

    ○森本委員 十キロまでであったから五キログラムまでのものをこしらえたということになりますと、これは非常に通りがいいわけでありますけれども、おそらくこの総軍におけるパーセンテージを見た場合には、ごくわずかであろうと私は考えておるわけでありますが、その正確な数字がないとわからぬわけであります。大体この通常小荷物という小さなものあるいは近距離というものは、国鉄が受け持つべきではない。こういうものは大体トラック運送とか、場合によっては郵便小包というものが、従来大きなパーセンテージを占めておることは確かであります。そこでこの十キログラムまでのところを延べて五キログラムまでにして安くしたというのは、はなはだこれはインチキきわまるやり方であるし、しかもまたこれが一般のそういうところの小さい業者を圧迫する一つの原因にもなりはしないかという気がするわけであります。もっともあなたの方のパーセンテージが正確に出されないので、その論旨が出てこないのでありますけれども、この運賃の改訂は非常にでたらめな改訂のやり方ではないか。これは単に国鉄だけを考えたやり方ではないか。その他の一般のトラック業者における小荷物の運送のやり方、あるいはまた同じ官公庁における郵便小包のやり方、そういうものを総合的に判断してやるならば、こういう数字は出てこない。しかも国鉄にはほとんど関係のないものを下げて、あたかもその他は上げたけれどもこれは下げたというような格好に見せておる。これは非常に欺瞞性があるのではないかという気がするわけでありますが、しかし肝心のパーセンテージが出ておらないから、これはさっぱり論争にならぬわけであります。
  90. 石井昭正

    ○石井説明員 ただいま御指摘の数字は問い合せておりますので、すぐに御返事できると思います。しかしお話の御趣旨でございますが、私どももこの運賃、賃率をきめます際には、他の運輸機関、特に郵便小包の関係あるいは他の運送機関との関係等も十分考慮いたしまして賃率をきめ、運輸省に御申請申し上げたのでございまして、決してただこういうものを下げたからということを言いわけにするつもりではございません。ただ、今までの実情に沿うように、五キログラムまでという新しい重量刻みをこしらえたということで、決して他意のあるわけではないのでございます。
  91. 森本靖

    ○森本委員 今国鉄当局から妙なことを聞いたわけでありますが、それではこの問題について五キログラムから十キログラムの小荷物について、一番関係の深い郵政当局なら郵政当局と相談して、あるいはまたそれを参考にしてやったことがありますか。こういう国鉄の運賃を改訂したことによって、郵便小包の方は痛い打撃を受けて、実際問題としては料金の改訂はしたくないけれども改訂をしなければ、どうにもにっちもさっちもいかぬというような事態が現われておる。もしあなたの方からそういうことを同じ政府部内において、郵政当局に相談したとするならば、郵政当局はこういうような案についてはおそらく反対したであろうというふうに私は考えます。あなたの方で相談して了承を得ておるというならこれは問題ないのですが、今私が聞くところによりますと、郵政当局部内においては、こういうふうないわゆる小荷物の賃率体系の構成をでたらめにやられると、郵便小包の方が大きな影響を来たすので、当然改訂を考えておるように聞いておるのですが、何か郵政当局と十分に打ち合せをした経験がありますか。
  92. 石井昭正

    ○石井説明員 私どもの方の運賃の賃率を策定する際に、現行の郵便小包の料金を参酌したというふうに申し上げたかと思うのでありますが、郵政当局といろいろ打ち合せをして、御了承を得たというふうに申し上げたのではございません。ただしかし私どもとしては十分に参酌いたしましたので、そういう御心配もなし、またいずれにいたしましても郵便小荷物といえども、私どもの方の列車に乗車して参りますので、その輸送の方法につきましては両者同じことではないかと考えておる次第でございます。
  93. 森本靖

    ○森本委員 きょうは私初めて小手調べに聞いたわけであります。私は正確な資料をこの問題については持っておりますので、あなたがそういうふうな回答をいたしましても、今回のこの通常小荷物の改訂率というものは、小包体系というものを非常にくずすものであると思います。あなたの方の資料がなかなか届かないので、この問題については後日日を改めて御質問いたします。  そこでもう一つ簡単なことを聞いておきたいと思いますが、この荷物の中で新聞と雑誌の取扱いでありますが、この新聞と雑誌の取扱いについては、国鉄当局の内部においては、新聞と雑誌の特別取扱いを行う際に、どういう決定によってそのものを特殊取扱いにするという手続がとられたわけでありますか。
  94. 石井昭正

    ○石井説明員 たしか以前は、第三種郵便物の認可を受けたものについて行うというようなこともやっておったようでございます。いつからでございましたか、この認可を国鉄の方の単独の承認に改めまして、ちょっと日時は記憶いたしておりませんが、当時の経緯といたしましては、結局第三種郵便物で送られる雑誌が非常に少くなった。結局地方の販売機構を通してお買いになる方が多くなったので、第三種郵便物の認可ということを標準にいたしますことは、実情に沿わなくなったからというふうに聞いておる次第でございます。現在では、私どもの方で特別取扱いの申請をいただきまして、所定の要件、これははっきりしたことは忘れましたが、たとえば雑誌であれば毎月必ず発行するものであるとか、そういうような所定の要件を備えたものにつきまして、御承認を申し上げて特別取扱いを実施いたしておった次第でございます。
  95. 森本靖

    ○森本委員 肝心の大事なところがぼけておるわけでありますが、肝心の大事なところは、どういう所定の要件によってこれを許可しておるかということが大事な問題であります。雑誌はどういうような要件を加味するか、それから新聞はどういう点を加味するか、ただいま郵便の第三種という問題が出ましたが、第三種ということになれば、広告業務をもっぱら扱う新聞というものは全然第三種に入っておらぬ。そういうような具体的な内容というものについて、どういうことを加味してこれを許可するのか、その内容であります。
  96. 石井昭正

    ○石井説明員 大へん御質問の要点についてのお答えができなくて申しわけございませんが、具体的な要件につきましては運送手続できまっておりますので、さっそく取り調べまして御返事申し上げたいと存じます。
  97. 森本靖

    ○森本委員 私の質問については、非常に資料が要るようでありますので、私の質問は本日はこれでやめておきます。後日日を改めてやります。
  98. 淵上房太郎

    ○淵上委員長 本日はこれをもって散会いたします。    午後三時二十一分散会