○千葉信君 ただいま議題となりました
電気事業及び
石炭鉱業における
争議行為の
方法の
規制に関する
法律附則第二項の
規定により、同法を存続させるについて、
国会の
議決を戒めるの件の
中間報告を行うのでありますが、与党
諸君は、この瞬間に至るまで、果して委員長自身が
報告を行うかどうかということについて、終始見通しに迷われ、あわてふためいた醜状は、今回の
動議によっても暴露されております。そうして今この瞬間、ほっとしながら苦笑いを浮べているようだが、その与党席を前にして、私は激しい憤りと、あくまでも冷たい軽蔑の念を押し隠しながら、あえて、厳正公平な態度に終始しつつ、淡々とこの
報告を行う覚悟であります。(拍手)
私の憤らざるを得ない第一の理由は、会期延長の
議決状況そのものについては、他院のことでありますから、この際、これに触れることを避けるとしましても、その衆議院における会期延長の端緒となりました本院における常任委員長懇談会を悪用して行われた衆議院への申し入れなるものは、実に陋劣きわまるものと言わざるを得ないのであります。すなわち委員長懇談会においては、十名の委員長は、それぞれ
賛成の意見を述べ、四名の委員長は
反対の意見を申し述べましたが、
社会労働委員長と
戸叶運輸委員長とは、いまだ意見の開陳を行なっていないということは、その公開の席上における事実から見ても明らかでございます。しかるに、副
議長は議運委員長と通謀して、さながら十人の
賛成陳述、六人の
反対陳述があったと擬装して、衆議院
議長に申し入れをしているのであります。
第二の点は、委員長事故あるときは理事をして
報告を行わしめるという
動議が可決されましたが、これは
国会役員を侮辱するもはなはだしいのであります。過ぐる第十九回
国会におきまして、警察法案に関し地方行政委員会理事が
委員長報告を行なったときの
動議を先例と言っておりますが、そのときと今回とは全く事情を異にしているのであります。それにもかかわらず、あえてかかる
動議をもって臨み、
国会役員をも侮辱する措置をとったことは、きわめて遺憾であると言わなければなりません。
第三に、委員会の審議が厳正公平に行われたことは、与党の
諸君も十分認識するところでございます。しかるに与党の方では、委員会においては正々堂々と対処する自信を失い、小策を弄し、委員長及び理事打合会の申し合せにもない案件の審議を委員長に嘆願するというごとき態度を終始し、最後には、委員長及び理事打合会の申し合せを踏みにじって、突如質疑打ち切りの
議事進行に名をかりる
動議を提出して混乱を生ぜしめる等、終始平穏かつ冷静のうちに審議を続けた社会労働委員会に汚点を残す行動に出たことは、堂々として自信を持って立ち向った野党の立場から見て、まことに冷笑を禁じ得ないものがあります。こういう状態は、これこそ日を追うて転落して行く保守政党の苦悶の姿であり、またそのためのあせりが、ますますその凋落に拍車をかける過程的現象として、すなおにこれを見守るほかはないと思うのであります。(拍手)
以下、御
報告を申し上げます。
電気事業及び
石炭鉱業における
争議行為の
方法の
規制に関する
法律、すなわちスト
規制法は、過ぐる
昭和二十八年八月、第十六回
国会で成立を見た
法律でありますが、その主たる内容について申し上げますと、この
法律は、
電気事業及び
石炭鉱業の労働者が、労使対等の立場に立って労働条件等を決定するに際し、必要な
争議行為の
方法に、重要な
制限を加えたものであります。すなわち
電気事業について言えば、
争議行為として電気の正常な供給を停止する行為や、その他電気の正常な供給に、直接障害を生ぜしめるような行為を禁止し、また
石炭鉱業においては、鉱物資源を滅失し、擁護の荒廃等の結果を生ずるおそれがあるものとして、保安要員の提供拒否等に関する
争議行為は、正当性の範囲を逸脱するものであるとの理由により、いかなる事情があるとも、これをやってはならないこととしておるのであります。この
法律は、その附則第二項におきまして、
法律施行の日から起算して三年を経過したとき、その経過後二十日以内に、もしその経過した日から起算して、二十日を経過した日に
国会が閉会中の場合は、次期
国会の召集後十日以内に、政府は、
法律を存続させるかどうかについて、
国会の
議決を求めなければならないと
規定いたしておりますので、この
規定に基き、政府は去る十一月十二日、今
国会の劈頭、「同法を存続させるについて、
国会の
議決を求めるの件」として
国会に提案して参ったのであります。
次に、政府の提案理由について申し上げます。政府の説明によりますと、労使関係に関する事項は、法をもって抑制し規律することは、できる限り最小限にとどめ、労使の良識と健全な労働慣行に待つことが望ましく、この
法律において
規制されている
争議行為のごときは、労使間に健全な良識及び労働慣行が
確立されておれば、当然行われるはずがないのであって、三年という期限を付したのも、この期限内に健全な労働慣行が
確立されることを期待したからである。しかしながら、
法律施行後三年を経過して、
電気事業及び
石炭鉱業における労使の現状を見るに、まだ健全な労働慣行が十分
確立されたとは認めがたい状態にあるということと、この
法律が
電気事業、
石炭鉱業、この二つの産業の有する特殊性並びにその国民経済に対する重要性にかんがみ、公共の福祉を擁護せんとして、社会通念上、
争議行為の
方法として行うべきでない必要最小限のものを明確にしたものであって、不当に労働者を抑圧しようとしたものではないということを考えあわせ、
法律を引き続きなお存続させる必要があるのであって、存続させることについて
国会の
議決を求めたということであります。
以上、議案の内容及び政府の提案理由について申し上げたのでありますが、次に、委員会における審議の経過、おもなる質疑の要旨について申し上げます。
まず、委員会の経過でありますが、社会労働委員会には、御承知のごとくスト
規制法存続
議決案のほか、健康保険法の一部を
改正する
法律案を初め、多数の
法律案が付託され、また重要な調査案件を持っております。その中には、政府提出の法案で、前
国会から懸案になっておったものもあり、また議員提出の健康保険法の一部
改正案のごとき、差し迫った重要事案もあります。スト
規制法存続
議決案が本審査のため委員会に付託されましたのは、去る十一月二十六日夜遅くであり、本委員会の運営に関しましては、すべてあらかじめ理事に諮り、公平円滑に審議が行われるよう努めたのでありますが、当初の委員長及び理事打合会の申し合せでは、この存続
議決案の取扱いにつきましては、予備審査中は提案理由の説明を聞くにとどめて、その間、ただいま申し上げましたような他の重要な事案に関して審査または調査をすることといたしまして、木付託になりましてからは、スト
規制法存続
議決案を主として、これは他の事案をやらないということではないことは、申すまでもないことですが、存続
議決案を主としてやるということとし、大体次のような日程で十二月三日まで審議が進められて参ったのであります。すなわち十一月二十四日、存続
議決案に関する政府の提案理由の説明を聴取し、十一月二十六日、この
議決案が付託されまして後は、十一月二十七日、二十八日、二十九日、連続して同案に対する質疑を行いましたが、二十八日及び二十九日においては、特に鳩山内閣総理大臣の出席を求めて、主として総理大臣に対する質疑を行なったのであります。それから十一月三十日及び十二月一日午前にわたり公聴会を開いて、労使関係者及び学識経験者十六名の公述人から意見を聴取したのであります。さらに十二月一日社会労働・法務連合審査会を、十二月三日社会労働・商工連合審査会を開いて、それぞれ関係各大臣及び政府委員に対して質疑を行い、本案の審議を続けて参ったのであります。
審議経過は以上の通りでありますが、十二月三日の委員会終了後における委員長及び理事打合会におきましては、翌四日は、午前十時に開会し、スト
規制法存続
議決案を審査することとし、その申し合せに基いて、十二月四日午前十時過ぎに委員長において開会を宣したところ、自由民主党の
安井委員から、劈頭、
議事進行について
発言があり、「本件の審議につきましては、一つ午前中くらいで質疑を打ち切って、午後三時から討論
採決に入る。こういうような段取りをつけていただきたいと思います」)と
発言したため、委員会が紛糾いたしましたので、委員長は暫時休憩を宣したのであります。
次に、委員会及び連合審査会における質疑の内容についてその概要を申し上げます。
審議経過については、先ほど申し上げましたが、十一月二十七日の社会労働委員会においては、自由民主党及び緑風会所属委員の質疑がなされ、そのあとは、おもに社会党所属委員の質疑がなされましたので、まず、二十七日の自由民主党及び緑風会所属委員の質疑を一括してその要点を述べることとし、次いでその後の委員会の質疑の状況、連合審査会、公聴会について御
報告申し上げることといたします。
十一月二十七日における自由民主党、緑風会所属委員の質疑の第一点は、「政府は、スト
規制法の存続を
国会に求めるに当って、委員会の審査を省略するようあわせて要求したが、あとになって方針を変更し、審査省略要求書を撤回した。その理由、経過について説明されたい」ということでありましたが、これに対して労働大臣は、「この
議決案は、
法律上
国会において継続審査することを許さないものである。今回の臨時
国会は期間が非常に短かい。また、現在大きな労働組合においては秋季闘争をやり、各地で問題が起き、抗議スト等も行われると伝えられている。労政当局としては、一日も早くこのような情勢が安定することが望ましいし、また、議案の内容は、今ある
法律をただ存続させようというだけのものであるから、政府としては審査省略を要求した。しかしその後、与野党の折衝により、委員会にかけた方がよいということになり、政府の見解を求めてきたので、その旨を了とし、撤回することに決した」旨、答弁いたしました。
第二点は、「この
法律は、労働者の基本的人権を制約するものであるという意見を述べる者があるが、この点についての政府の見解はいかん」ということでありましたが、労働大臣は、これに対して、「憲法第二十八条に保証する労働者の団体行動権等の
規定は、憲法二十九条の財産権の保障に関する
規定が、公共の福祉のために
制限を受けるということをうたっているのと異なり、何も
制限規定がないから、何らの制約を受けるべきものでないと主張する者もいるが、憲法十二条及び十三条の公共の福祉ということは、すべて市民権の自由なる行動に対して一応優先するものである。憲法二十八条の勤労者の団体行動権等は、あとう限り守られなければならないが、この
法律で
規制している行動は、やはり公共の福祉という立場から、
争議行為としてもなすべからざるものであると考える」旨の答弁がありました。
第三点は、「争議権と公共の福祉の調和の必要性は、電気、石炭の両産業の場合のみに限った問題でなく、他産業にも関連があると思うが、これについて政府はどう考えるか」と質問したのに対して、労働大臣は、「政府としては、いろいろ意見があるが、他産業に拡大する意思はなく、この
法律自体も、よき労働慣行が
確立したら廃止したい」旨、答弁がありました。
第四点は、「石炭の場合、労働者は、保安要員を引き揚げることを禁止されているが、経営者に対しては何の義務も課せられておらず、野放し状態であるという意見があり、使用者がロック・アウトを行なった場合に、労働者は労務提供を拒否できるのではないかという意見がある。これについてどう思うか」という質疑があったのでありますが、これに対し、労働大臣は、「わが国では、
法律上労働者が
争議行為として労務を提供しない場合でも雇用関係は持続しており、かかる関係にある者は、
争議行為としてでも溢水やガス爆発等の発生のおそれある行為はできない。職場に戻ることを希望しない労働者が、職を辞して立ち去ることは契約自由の原則により別の話である。経営者は、鉱山保安に関し必要な措置を講ずるよう義務づけられているのであるから、労働者だけが義務をしいられ、片方は野放図であるということはできない。またロック・アウトの場合は、保安要員に対してはロック・アウトをしてないのであるから、労働組合はこれについて労務の提供を拒否し得ない」旨、答弁がありました。
第五点は、「スト
規制法は、その附則で、存続に関し年限を付しているが、今回、政府の出したのは恒久立法とするような形になっている。その理由はいかん」という問いに対し、労働大臣は、「第十五
国会に提出した政府原案には期限はつけていなかったが、衆議院の決定もあり、第十六
国会には、それを取り入れて、三年の間に労使間によい労働慣行の作られることを期待したのである。今回かかる形で提案したのは、手続に関するこの
法律の
規定上、期限つきにするには別の
立法措置を必要とするからであります。しかし、
法律というものは、
国会で廃止しようと思えばいつでも廃止できるので、必ずしもこれを恒久化しようとする意図でない」旨、答弁したのであります。
次は、第六点ですが、「このスト
規制法で
規制されたような
争議行為をあえて行なった場合、労働法上の保護を受けられないとか、その他いろいろ
法律上の措置があるが、それ以外、この
法律によって組合員の利益というようなものが何かあるのではないか」という質疑に対し、労働大臣は、「この
法律に
規制されたような行為を
争議行為として行なったならば、迷惑をこうむるのは国民大衆であり、それを行なった労働組合は大衆の憎しみを受けることになる。そうしてそれは、せっかく戦後順調に発展してきた労働運動の芽をつみ取るような結果を招くことになり、この
法律は、さような悲しむべき事態が発生しないよう、
争議行為の正当性の限界を明確にした」と答弁いたしました。
第七点は、「労働大臣は、しばしばよき労働慣行の
確立を期待すると言われるが、よき労働慣行の
確立とは、この
法律で
規制されているような
争議行為をやらないという約束が労使間にできることを言うのであるか、それとも違反事実が発生しないような状態をさすのであるか」という質問でありましたが、これに対し、労働大臣は、「労働省としては、本年度、少い予算であるが、労使協議会を作ることを勧奨するため必要な費用を計上し、繊維、電力等の産業では現にそういう催しを作っておる。日本経済の発展いかんは、労働者にとっても、使用者にとっても、共通の利害を有するものであるから、その労使がお互いに話し合い、理解し合う共通の広場を持ち、また、いわゆる経営の倫理化を進めて行こうという意見も出ておるので、そういう事情を総合し、労使間によき慣行が生まれるよう努力している」旨、答弁がありました。
以上は、二十七日の委員会における質疑応答のおもなものでありますが、次に、二十八日以降行われた社会労働委員会及び法務委員会並びに商工委員会との連合審査会における社会党委員等によるおもな質疑応答について、その要旨を御
報告申し上げます。
質疑の第一点は、「政府は今回の議案を提出するに当って、衆議院のみならず、参議院に対しても委員会の審査省略を求めて来たが、これは手続上違法な措置であり、重要議案の取扱い方としては全く軽率なやり方だった。これについて参議院議院運営委員会で、十一月十五日、委員会の決定をもって、法規的に疑義があるから本要求を撤回するよう申し入れることとし、翌十六日、内閣はこの一要求を撤回したのである。政府はなぜかかる措置をとったのか、また、政府はかかる違法な措置を立法府に対しあえて要求したことについて、いかなる責任を感じているか」という質疑であります。これに対し、総理大臣から、「最初はあれでよいと思ったが、疑義が起きたので撤回した」旨の答弁があり、また、内閣法制局長官からは、「参議院規則の解釈については、従来の取扱いから疑義があったが、あれは予備審査の省略を求めたものではなく、議案が衆議院から参議院に移された際に、委員会の審査省略ということをお願いする趣旨で提出した。しかし、議院運営委員会の勧告があったので取り下げた」旨の答弁がありました。
第二点は、「総理大臣は日ソの外交関係におけると同様に、内政問題に関し野党と共同の広場を持って話し合うことを歓迎されたが、スト
規制法のごとく、勤労者が全面的に
反対している
法律を存続させるかどうかについて、やはり十分話し合うべきであると考えるがどうか」という質疑でありましたが、これに対して総理大臣は、「関係大臣において、いろいろ配慮があったものと考えるが、事実としては委員会審査省略等の問題で間隙が大きくなったのは残念に思う」旨、答弁せられたのであります。
第三点は、「新聞の論調は世論の反映であるということについては総理も認められたが、三年前と今日では世論に非常に変化がある。今日の新聞の論調を詳細に検討してみると、三年前と異なり、この存続
議決案を無条件で是認しているものはほとんどない。総理大臣はこの事実を認識されているのかどうか」という質疑でありましたが、総理大臣は、「各方面の意見を聞いたが、みんなこれに
反対しているとは思わない、新聞は
反対しているものもあるし、
賛成しているものもある」と答弁いたしましたが、質疑者はこれに納得せず、さらに徹底的に究明したい旨の意見が述べられ、委員長において善処することになっているのであります。
第四点は、「スト
規制法は非常に欠陥の多い
法律であるということは、三年前この
法律が成立する際、当時これを支持した保守政党においても認められた有力な意見であった。倉石労働大臣は、衆議院労働委員として、この
法律の
国会における討論に当って、政府はこのような間に合せの立法で満足することなく、」——
議長、居眠りしておられますから、注意して下さい。——「政府はこのような間に合せの立法で満足することなく、すみやかに労働政策を
確立し、経営者もまた、かくのごとき政治の恩恵に安眠をむさぼることなく、放漫なやり方をしないよう警告を発しておったし、鳩山総理大臣が当時総裁であった日本自由党の委員は、痛烈に
吉田内閣の労働政策を攻撃し、こんな
法律の存続期間は一年とすべしと言っておる。しかるに、今日に至るも当の鳩山内閣は、何ら労働政策を持たず、しかも、この
法律をそのまま恒久化しようとしている現状に対して、総理大臣は一体どう考えるか」という質疑であったのでありますが、総理大臣はこれに対して、「スト
規制法は労働者を抑制するものではない、また三年間によき労働慣行ができなかったら、存続の必要がある」旨述べたのでありますが、質疑者はこれに満足せず、さらに問いただしましたが、明確な答弁はなかったのであります。
第五点は、「企業の数は年々増加し、
昭和二十四年に比べると、今日では倍くらいに増加しているが、労働基準法の実施を監督する監督官の数は相変らず二千四百何人かであって増加していない。現在では一監督官が五百の
事業所を受け持つという現状であり、監督官の能力の限界から見て、とうてい十分に労働者の保護ができるわけではない。政府は
争議行為は抑制するが、労働者の保護政策、賃金問題等についてはどうか」という質疑でありましたが、総理大臣は、「労働基準法の適用については適正な運用をはかるよう努力したい、また賃金の問題については、賃金は労働の対価であり、それによって生活を維持するものであるから、公正な賃金が支払われることが必要である、最低賃金制については労働省で研究中である」旨の答弁がありました。
第六点は、「スト
規制法の立法の目的は公共の福祉を守るためにあるのであるから、電気の例で言うならば、電気の供給がとまらなければ、労務の提供を拒否してもこの
法律の趣旨に反しないではないか」と問いただしたのに対し、政府側から、「公共の福祉に反するかいなかは行為の性格によって定まるのである、停電スト等は、当事者が受ける損害より第三者たる国民に迷惑をかけることが多いのであるから、さような行為は性質上許されない。だから、たとえば電気の供給に支障が生じなくても許されず、スキャップ等によって給電が継続されるようなことがあっても、それは偶然の結果であるから、行為の反社会性を変えることはない」旨の説明がありました。
なお、別の機会でありましたが、これに関連した問題といたしまして、鳩山総理大臣に対し、ある委員から次のような質疑をいたしたのであります。すなわち、「日本中の
石炭鉱業の労働者が全部保安要員を出さないというのであれば、公共の福祉に相当関係が出るかもしれないが、ある小さなやまで、局地的に紛争議が起き、そこで保安要員が出なかったからといって、一体公共の福祉にどういう影響があるのか」という質疑がありましたが、これに対し総理大臣は、「公共の福祉に影響があるというような認定がなければ、この
法律の適用はないと思う」と答え、重ねての追及に対しては、「ある局地の炭鉱におきましても、保安要員を引き揚げれば、国家資源の維持、職場復帰の可能性の破壊、法益不均衡というような観点から、石炭産業の保安要員の引き揚げは、性質上公共の福祉に影響がある」と補足答弁をしたのであります。総理大臣のこの答弁については、その意味するところが従来の法規解釈に重要な影響を与えるものとして、各委員が追及したのでありますが、間もなくでき上ったこの点に関する速記の内容に関し、各委員から
発言があり、結局、委員長は、少くとも重大な疑義がある問題であるから、あらためて総理大臣の出席を願い、この問題について十分審議を尽すということにいたしたのであります。
第七点は、「
争議行為が行われ、そのために国民の経済生活が著しく危険に陥ったというような場合については、労働関係調整法には緊急調整
制度があり、内閣総理大臣は、その権限で
争議行為を禁止することができるようになっておる。公共の福祉はこれによって擁護できるのであるから、争議権と公共の福祉の調和をはかると称して、特に電気及び石炭の両産業についてだけ、二重に
法律をもって
規制する必要はないではないか」という質疑があったのでありますが、これに対して内閣総理大臣は、「この
法律は
争議行為の限界を定めたものであるから必要である」旨を答え、また労働大臣からは、「緊急調整は正当な
争議行為により業務が停滞し、それが正常な国民経済に重大な支障を生ぜしめるおそれがあるという場合に関するものであるが、スト
規制法は、
争議行為としてでもなし得ないような違法な行為を
規制しているので、立法の趣旨を異にする」旨、答弁がありました。しかしながら、なお質疑者は、「労働関係調整法による緊急調整で、国民の経済生活に影響のあるような争議は禁止できることになっているから、それで十分であり、何ゆえ国民経済に影響を及ぼさないような小規模のストライキをも禁止するようなスト
規制法のごときものを存続させる必要があるのか」と、激しく追及したのに対し、総理大臣は、「労使関係の現状から見て必要である」と答弁したのでありまして、この問題に関する質疑を、次の機会に譲ることといたしたのであります。
第八点は、「政府は、スト
規制法は公共の福祉を擁護するため、
電気事業及び
石炭鉱業における
争議行為について、必要最小限度の範囲で、若干の行為を
争議行為としてでもなし得ないよう
規制しているだけであって、決して争議権を全面的に剥奪しようなどと考えているものではないと言っているが、これは納得できない説明である。すなわち労働者の行う
争議行為とは、労働関係調整法第七条に
規定しているごとく、同盟罷業、怠業その他労働者がその主張を貫徹することを目的として行う行為であって、業務の正常な運行を阻害する行為、すなわち発電所に働く労働者なら、電気の正常な供給に障害を生ぜしめるような行為にほかならないはずなのである。もし国鉄における機関車労組のごとく、
電気事業関係労務者の中に、発電部門、変電部門だけの労働組合ができたならば、ここに働く労働者には一体いかなる
方法の争議手段が残されているというのか。政府は、かかる争議手段の一部について、従来から違法と認められたものを
規制するにすぎないというが、これではストライキは一切できないということではないか、全然まる腰で強力な経営者に対抗しろというのと同じではないか」との質疑でありました。これに対し労働大臣は、「日本の労働組合はいわゆる企業別組合で、いろいろな職種の労働者が集まって組織されているから、発電部門以外の他の職種の者が
争議行為を行える」旨、答弁したのでありますが、「日本の労働組合法のもとでは、職種別、産業別、企業別等、いかなる形態の労働組合でも自由に組織できる建前になっているのであるから、発電や変電部門だけの組合を組織することも可能である。現実に機関車労組のごときものがあるような状態で、かようなところに働く労働者に対しては、争議権を全面的に剥奪することになる」旨、強調したのであります。
なお、これに関連して、「争議権を奪えば、これにかわるべき保護的措置を講ずることは当然のことである。たとえば公共企業体等労働関係法、これについては根本的に、特に争議権を剥奪したことに対しては全く
賛成できないのであるが、関係労働春から全然争議権を奪いっ放しにできないところから、時の政府は形式的に、これによって労働者の立場を考慮するような形をとって切り抜けてきた。しかるに、発電所労働者に対しては奪いっ放しで、何らの考慮も払われないのは一体どういうわけか」と追及したのであります。
第九点は、「
電気事業の経営者が、石炭が高いため買い入れを怠り、その結果、予定の電力量を確保できないことと、労働力の値段が折り合わないで、そのため労働者が労務の提供を拒否し、その結果、予定の電力量に達しなかったことと、一体どこが違うか。一方が野放しにされ、一方が
規制されるという理由いかん」という質疑でありましたが、これに対し政府側は、「スト
規制法は
争議行為を対象とし、
争議行為の目的からいって、やはりやってはいけない行為の範囲を
規制しているので、石炭の購入困難の場合とは同じ尺度で比較できない」旨、答弁がありました。
第十点は、具体的な事例をあげて、次のような点を追及いたしたのであります。すなわち、「福岡県のある石炭会社の経営者が、そこの労働組合との協約で、
事業の譲渡合併等、組合の利益に重要な関係のある処分を会社が行うようなときは、組合と協議する旨約束しておきながら、無断で、石炭
合理化法に基く買い上げの申請をした。これを知った組合では、会社
再建案を作って、経営者に
事業の継続を求めたが、経営者はこれを受けつけなかった。しかるに使用者は、
石炭鉱業整備事業団の方で組合の了承がなければ買い上げの決定ができないという事情であることがわかると、今度は、この労働者九百人の全員を解雇し、新たに保安要員を雇い入れるという暴挙に出たので、これに対抗する必要上、労働組合は保安要員を引き揚げるほかはないと決定した事例がある。経営者は
事業継続の意思なく、買い上げてもらうときの値段を有利にすることの目的にだけ保安要員の提供を組合に求めてきているのに、これでも組合が最後の手段に訴え、経営者の翻意を求めることが、なぜ公共の福祉に反することになるのか、経営者の利益追求にのみ奉仕しなくてはならないのか」と質疑したのに対し、労働大臣は、「かような場合でも、保安要員の引き揚げは許されない」旨、答弁があったのであります。
第十一点は、「
石炭鉱業の場合であるが、経営者は自分の手で他から保安要員を確保し、すでにそこで働いている当該労働組合側の保安要員の就労を拒否することができるにもかかわらず、争議中の労働組合が保安要員の差し出しを拒否することは違法であるとして、これを
規制しようというのは、経営者本位の片手落ちの立法と言わなくてはならないと思うがどうか」という質疑でありまするが、これに対して政府委員は、「鉱山保安法の
規定では、経営者に、当該労働組合に属する者の保安提供を拒否しても、保安の確保のため必要な措置をとれば同法の違反にならない。それが組合員であることによって不利益な取扱いをしたというのであれば、労働組合法第七条の不当労働行為を構成し、また経営者といえども、保安要員に対するロック・アウトはできないのであるから、さようなことをすることは正当な
争議行為とは言えない。また当該労働組合に属する保安要員が、職員組合の者またはその他の者に頼んで保安業務をやってもらい、引き揚げることは、スト
規制法第三条にいう正常な保安業務と言えないから、さような行為は違法である」旨の答弁がありました。
第十二点は、「争議中のため坑内事情が悪化した場合、保安要員が坑内に下ることは非常に危険だから、保安業務につくことができないと拒否することは、スト
規制法の違反になるか」との質疑でありますが、通産省の政府委員は、「保安管理者は坑内をそのような状態におくとは考えられない」とし、また労働省政府委員は、「スト
規制法に関する限り、この
法律は、
争議行為の
方法を
規制しておるのであるから、そのような個々の具体的な事情がほんとうにあるのなら、就労拒否は本法の対象にならない」旨、答弁いたしました。そこで質疑者は、さらに、「それでは坑内がそのような状態にあるかどうかは、だれが認定するのであるか」と質疑したところ、「第一は、直接の保安管理者、次は鉱山保安監督部で、最終的には裁判所の認定による」旨、答弁がありました。しかしこれについては、「今危険が間近に迫っている労働者が切実に訴えているのに、他の者が、それが正しいかどうかなどと責任をもって判断できるか、事故があって、死亡でもした場合、そういう人たちは一体どういう責任を持つというのか」という見解を述べられたのであります。
第十三点は、「スト
規制法施行後の三年間を振り返ってみるとき、労働者の行為による
災害の発生はないが、その他の原因によって大きな労働
災害がたくさん起きている。政府はこれに対して一体どういう手を打ってきたか」という質疑でありましたが、労働大臣はこれに対して、「労働省としては、さような事態に対しては、通産省に対し警告し、また労働省の所管に関する事項については、基準局を督励して、事故の発生をなくするよう努力したい」旨、答弁いたしました。
第十四点は、「政府は、スト
規制法は、従来から
争議行為としてなし得ない行為を宣言的にそのまま
規定しただけであって、これによって今まで許されてきた行為を禁止するものではないと説明しているが、これは停電スト等に関する裁判において判示された見解と相違するものであって、誤まりであると思うがいかん」という質疑であります。これは、
昭和二十七年秋行われた電産の電源スト、たとえば東北電力
大谷発電所事件に関し、去る七月、東京高等裁判所が、第一審が水利妨害罪及び威力業務妨害罪の成立を認め、有罪と判決したのをくつがえし、電源ストが
争議行為として正当であること、そのためにストに突入するに当り、会社の発電施設をとめ、一時管理する状態に立ち至っても、正当な争議手段であること等を理由として、無罪の判決を下した例を初め、福岡においても、高知においても、同様の事件に関し、ほとんどすべての判例が、停電スト等を違法ではないと言っているのに、ひとり政府のみが、こういう争議手段は、従来の法秩序のもとで当然許されないのだと言っているのは、独断もはなはだしいではないかと追及したものでありまして、これに対して法務大臣は、「
電気事業法違反及び公益
事業令違反に問われた事件が、最高裁判所において、実体判断をすることなく、裁判時においてすでに刑が廃止されたものとして免訴の判決を下したことを理由に、判例というのは最高裁判所のものをいうので、実は最高裁のものがないので困っているのだ」と答弁しました。これに対して委員はさらに追及し、「すでに高等裁判所が違法でないと判示しているのに、それもたよりにしてはいけないというのでは、国民は一体何を基準にしたら安定した
法律生活を営めるのか」と問いただしたのであります。これに対して法務大臣は、「そのような混乱が生ずることは、国民に迷惑をかけるものであるから、最も正しい方針を明らかにするため、この
法律が必要である」旨答えたのであります。
次に、本
議決案の重要性にかんがみ、十一月三十日及び十二月一日の両日にわたり開会した公聴会の状態について申し上げます。
公聴会には、労働組合、
事業主の各代表者、学識経験者等十六名の公述人を招き、本案に対する意見の陳述を求めました。各公述人はみな本案に重大な関心を持ち、それぞれの立場からきわめて貴重な意見の陳述がありました。本法の存続に
賛成された
諸君は、その理由として、「本法により
規制せんとしておる
争議行為は、公共の福祉に重大な影響を与えるものであって、元来違法なものであり、
争議行為としてでもこれをなすことは不当なことである。今ここで本法を廃止すれば、これらの違法な
争議行為が正当適法なるものと誤解されるおそれがあること、また本法施行以来三年間は本法に触れる
争議行為が行われなかったから存続の必要はないというが、それは本法があるからであり、さらに実際には、本法において
規制している行為とすれすれの
争議行為も行われたことがあり、炭労では、保安放棄の指令を出したり、保安放棄は違法でないことを再確認しているような状態であるから、将来に対して安心できない。まだ、本法で期待しているような健全なる労働慣行が、十分
確立されているとは認めがたい状態にある」等の理由をあげております。
これに反して本法の存続に
反対された
諸君は、その理由として、「本法は、元来憲法第二十八条に認められた労働者の権利を公共の福祉に名をかりて不当に侵害するものであり、特に電気関係の労務の提供拒否等の単独な争議は、それのみでは、現在まで大部分の裁判所の判決によれば無罪となっているから、本法による
争議行為の
規制は不当なものであり、また本法は、労働者のみに一方的に
争議行為を
規制している片手落のものであり、特に電源関係の職場の労働者には、
争議行為は全く禁止され、これに対しての何らの救済措置も講じられていない。実際電気関係の労働者は、本法施行以来三ヵ年間に、諸般の労働条件は著しく低下した。さらに本法施行以来今日までの三年間に、一回の違反事件も起っていないことは、労働基準法等の違反事件に比較すれば注目に値することである。本法制定当時の目的は十分達せられていると考えるべきである。労使関係も次第に健全な方向に進んでいる事実は何人も否定できないことである。本法を廃止しても、直ちに公共の福祉を阻害するような
争議行為が行われるとはどうしても考えられない。本法の存在は、かえって健全なる労使慣行の
確立に有害である」等の理由をあげているのであります。
右の公述人のうち、特に学識経験者として意見を陳述された早稲田大学教授の野村平爾君及び弁護士の沢田喜道君の御意見を御紹介いたします。
まず、早稲田大学教授の野村平爾君は、「三年前と同様、本法に
反対であり、従って本法の存続に
反対する。本法は限時法としての性格を持っており、今ここでこれの延長をはかり、その上恒久法とするならば、政府はさらに積極的な理由を示すべきであるのにかかわらず、何ら説明をしていない。しかもこの三年間、本法に触れるべき事件は一件もなかったのであり、炭鉱の場合、保安放棄等の指令は出されたことはあっても、実際にはその危険性は全くなかったのみか、このような指令の出た場合は、すべて経営者側に相当な責があったからである。一方この三年間に、二十七年当時の電気関係における争議に対する判例が出されて、単純な停電ストは違法性がない旨の判示がなされている。公共の福祉に反するため基本的人権を
制限できる場合は、本法
規定の場合より、もっと程度の高い場合でなくてはならない。さらに政府の言うごとき健全なる労使慣行は、今のごとく労働者の
争議行為を
制限し、禁止している場合においては育ちようがない。各国の例を見ても、その
確立のためには、長い年月を要しているのであり、争議の
方法もいろいろこの中から民衆の批判を受け、戦術の転換を行うものであり、国民も労働権を認め、相互にこの権利を尊重するような寛容の精神を養うようになるのである。それにはやはり行動の自由というものを、ある程度認めるという状態において初めて可能になるものであり、よき労使の慣行育成の点から見て
賛成できかねる」旨、陳述されたのであります。
次に、弁護士の沢田喜道君は、「本法を存続することに
賛成、本法所定の禁止事項は本質的に違法な行為を
規定したものであり、労務提供拒否の範囲を逸脱したもので、法益権衡の原則を破るものである、正常な
争議行為は、労使ともに、自己の処分し得る範囲において自由に処分するという限界においてのみ認められるものである。また、電気の場合においては、電源等における労務の拒否は、生産即消費という電気の特殊性よりして法益の権衡をはかるという観点から見ると、本法
規制の対象とすることが妥当である。また、
石炭鉱業においても、保安を放棄する
争議行為は、
争議行為によって獲得する利益に比べ、国民経済または国民の日常生活に与える実害の程度が大き過ぎる、前者の利益のために後者の実害を忍ぶことは是認しがたく、さらに、本法を現状に照らしてなお存続すべきと考える理由は、まず、本法を廃止することにより、元来違法であるものを適法と誤解されるおそれがある、現に炭労大会等の確認事項等を考えると、このおそれは十分にある。また、電気関係についてみても、電労が、電産から分離して今日優勢な組合となっているので、
電気事業に関する限り違法な
争議行為をやる心配はないというが、電労と電産は、目下のところ互いにその勢力の伸張に終始し、労使の交渉の部面においてもたびたび牽制し合っている事態であるから、過去三年間の電労の事態だけをもって将来を安心することはできない。次には、わが国は、国民一般の民主化の底が浅いから、世論をもって不当な
争議行為を抑制するほど国民は成長していない。次に、停電スト等の
争議行為に対する下級審の判例は現在まだ帰一するところがない、最高裁判所の判例ができるまでは、停電スト等の
争議行為は違法性がないということはできない。今ここで本法を廃止すれば、この本法所定の
争議行為は、今後適法であるというような観念を関係者に与えるおそれのあることを懸念する」と陳述されたのであります。
次に、今回の公聴会におきまして特に申し述べたいことは、公聴会の公示に応募された方で、本法の存続に
賛成される意味の意見を持ったものとして選出しました京都の土木技術者の河井
芳雄君は、次のように、京都を出るまでは
賛成であったが、当公聴会に出席して、急に自分の見解の間違っていたことに気がつき、本法の存続に
反対するという注目すべき陳述が行われました。その要旨を御紹介しますと、「現在京都に住んでいる一土木技術者でありますが、近く炭鉱に仕事を持つ関係から本法には重大な関心を持っていた、炭鉱労働者が
争議行為によりて炭鉱の保安を放棄し、よってこれを放棄破壊するがごとき行為にはとうてい
賛成できないと考え、本法の存続に
賛成であった。しかし、本公聴会における公述を前に、炭鉱労働者においてそのおそれのないことを知り、一般社会が被害を受けるようなことがないとわかったので、本法の存続の必要はない」旨、陳述がありました。
以上、委員会及び公聴会等における審議経過に関し御
報告申し上げたのでありますが、さらに二、三の点について御説明いたします。
まず第一点は、委員会の運営についてでありますが、委員長としては、委員会の審議の予定は、すべて委員長及び理事打合会においてあらかじめ十分協議し、円滑に進行するよう努力し、実際においても十二月三日までかかる方針のもとに、きわめて和気あいあいの雰囲気のうちに審議が進められて参ったのであります。しかるに、十二月四日に至り、この日は、スト
規制法存続
議決案について、午前十時から質疑を続行することが、あらかじめ委員長及び理事打合会において決定されておったのでありますが、開会直後、まだ質疑を始めない前に、突然、自由民主党の
安井委員から、
議事進行について、午前で質疑を打ち切って、午後三時ごろから討論
採決に入る段取りをつけてもらいたい旨の
発言があったのであります。私は今までの委員会の運営方針から言えば、かようなことは、当然、委員長及び理事打合会において、事前に協議されるのが物事の順序であると考えておるのでありますが、果せるかな、委員会の審議は紛糾するに至り、休憩するのやむなき結果になったのであります。しかしながら、スト
規制法存続
議決案のみならず、健康保険法の
改正案など重要議案をかかえておる当委員会の委員長としては、その当時まだ残された会期もあったわけでありますから、委員会の審議を軌道に乗せ、十分に審議を尽すことが任務であると考え、四日及び五日の両日、前後四回にわたって委員長及び理事打合会を開き、審議を軌道に乗せるよう努力いたしたのであります。しかし、それにもかかわらず、意見の一致を見るに至らなかったので、やむなく職責を果すため、委員長の職権に基いて、五日午後五時五十分、委員会を開会することとし、所要の手続をとったのでありますが、自由民主党及び緑風会の所属の委員が全員出席しなかったため、所定の定足数に達せず、委員会を開会するに至らず、午後六時二十五分に至り、むなしく流会せざるを得なかったことは、まことに残念なことと言わなくてはなりません。
第二点として、私はさらに審議を続行することについて努力した理由について、御説明申し上げたいと思います。
委員会の審議経過について、さきに
報告した通りに、重要な点について、まだまだ疑義が解明されず残されておるのであります。たとえば、公共の福祉に影響がない場合、スト
規制法の適用がないという総理大臣の
発言については、その
発言の重大性にかんがみ、さらに総理大臣の出席を願って審議することになっておったのであります。また、世論がこの
法律について、三年前と今日では違ってきているではないかという質疑に対する総理大臣の答弁は、事実に反するからというので、さらに究明することになっていたのであります。これらはいずれも今日までそのまま放置されております。しかも総理大臣は、当初、十一月二十八日の社会労働委員会に出席されたとき、社会党の
藤田進委員から、「あと会期も余すところ多くないのでありまして、少くとも最終段階においては、ぜひ総理に締めくくりの意味で質疑をいたしたいと考えておりまするから、ぜひ御出席をいただきたい。この点について、どのようにお考えか、お伺いいたします。」という質疑をしたのに対し、鳩山総理大臣は、「私もできるだけ出席いたしたいと思っております。」と答弁し、さらに
藤田進委員が、「それでは、最終段階でもぜひ来てくれますね。」と念を押したところ、鳩山総理大臣は、「ええ、そのつもりでおります。」と明確に答えております。従って委員長としては、最終段階において、当然、総理大臣に委員会に御出席を願って、審議をしなくてはならないと考えておったのであります。私が委員会を軌道に乗せて審議を進めたいと思って努力し、十二月五日、職権をもって開会手続をとったのも、実はかような理由があったからであります。
スト
規制法存続
議決案が、十一月十二日内閣から
国会に提出されたとき、政府が、委員会審査の省略をもあわせて要求したことから、本
国会は冒頭から順調な歩みを見せず、短期
国会であるにかかわらず、当初の五日間を空費し、結局政府が委員会審査の省略要求書を撤回することによって、十一月十七日に至り正常な審議に返ったことは周知の通りであります。また、参議院の議院運営委員会が、この問題について全会一致で法規的に疑義があるとして撤回を申し入れたことも、すでに御承知のところであります。
私は社会労働委員会の審議を、慎重かつ条理を尽して順調に進めて参ったにもかかわらず、突如として質疑打ち切りの
発言が提出されて紛糾し、しかも与党がその後の委員会に欠席する挙に出たため、審議は中断されたのであります。
顧みれば、三年前スト
規制法が審議されたとき、時の労働委員長が、
中間報告を求めらるるような事故がないと主張したにもかかわらず、
中間報告を求めて委員会の審議を強引に打ち切ったことがございましたが、今日、再び
中間報告を求めるの挙に出られたことは、以上の経過から見て納得できないところであり、本院のため、まことに遺憾にたえない次第であります。(拍手)
以上、御
報告申し上げます。(拍手)
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