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1956-11-29 第25回国会 参議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十九日(木曜 日)    午前十一時一分開会     —————————————   委員異動 十一月二十九日委員高田なほ子君辞任 につき、その補欠として山下義信君を 議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡  三郎君    理事            有馬 英二君            近藤 鶴代君            矢嶋 三義君            常岡 一郎君    委員            林田 正治君            三浦 義男君            吉田 萬次君            安部 清美君            松澤 靖介君            松永 忠二君            湯山  勇君            加賀山之雄君   国務大臣    文 部 大 臣 清瀬 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    文部大臣官房会    計参事官    天城  勲君     —————————————   本日の会議に付した案件教育文化及び学術に関する調査の件  (地方教育職員給与に関する件)  (昭和三十二年度文教予算に関する   件)     —————————————
  2. 岡三郎

    委員長岡三郎君) これより文教委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日高田なほ子君が辞任され、その補欠として山下義信君が選任されました。     —————————————
  3. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 前回委員会散会後開きました理事会経過について御報告いたします。  本日の案件については、すでに委員会において決定した通り昭和三十二年度文教予算とすること、ただし本日中に質疑を終了しない場合は来週火曜日に持ち越すこと、来週火曜日の案件は、教育文化及び学術に関する調査について継続調査要求書を提出する件及び請願とすることと一応決定いたしました。また午後二時から映画製作者懇談会を行うことに予定しております。  なお閉会中、地方教育職員昇給昇格実情などに関し実地調査を行ってはどうかということと、地方教育職員昇給昇格の円滑な実施をはかるため委員会決議を行う必要があるのではないかという意見が出されましたので、これら二件については各会派で検討してみることとなりました。  以上御報告いたします。  ただいま御報告通り取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 御異議ないものと認めます。     —————————————
  5. 岡三郎

    委員長岡三郎君) それでは昭和三十二年度文教予算を議題といたします。  まず文部省会計参事官天城君より説明をいたさせます。
  6. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その説明に入る前に、委員長の御了承をいただいて、この当面緊急な給与の件に関してごく短時間大臣に二、三ただしたいと思いますがお許しいただきたいと思います。  教職員給与の問題については、当面具体的に愛媛県に勤務評定の問題が起っておりますが、この件については過去二回の本委員会において質疑がされたわけでございますが、それとは切り離して、十分大臣も御承知と思いますが、当面教職員昇給昇格の問題と、それから年末を控えての年末手当の問題が非常な大きな関心事となっておりますのでお伺いしたいのであります。  大臣は詳しいことは御存じないと思いますが、先般の本委員会における質疑において、地方公務員である教職員の場合における昇給昇格は非常に不完全実施で、行われていない県が多数あることが政府委員から本委員会報告がございました。この昇給、異格の問題について大臣はその実施についてどういうお考えを持ち、また過去においてどういう努力をされ、これからいかに努力されようとしているか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  7. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 今矢嶋さんから御指摘のごとく、地方財政窮之の結果、昇給昇格延伸さるる事実もあることは、これはほんとうでございます。文部省といたしましては、これらは、不当の昇給昇格の遅延、延伸がないように希望いたしております。それゆえに、内部的には自治庁交渉し、かようなるへんぱを少くするために努力いたしておるのでございます。将来も努力を続けます。
  8. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部省政府委員報告によりますと、四月実施のできていないのが十二県であり、七月末実施が十八県という数字報告されておるわけですが、ぜひ大臣の胸にとどめておいてもらいたい点は、特に再建団体においてその再建計画を作成するに当って、あの再建を審議する場合にわれわれが懸念いたしましたことが露骨に出てきておるわけです。非常にイージー・ゴーイングで教育予算にしわ寄せがされつつあるわけです。それをおもんぱかって政府としてはいわゆる新しい教育委員会法の成立を期したわけですが、たとえば大分県のごとき、知事が任命した教育委員会知事とが最後まで再建計画について一致点を見出ださずに大きな県政の問題となって、今や中央官庁にこれを持ち込んできております。こういう事例があちこちにあるわけですが、その場合に自治庁からの示唆と申しますが、圧力と申しますか、それが非常に強いわけですね。この点自治庁文部省の間でいま一段の連絡協議をして、教育予算にしわ寄せされるのをぜひとも防いでいただきたい、これが一つ。  それからもう一点、時間がないのですから、具体的に承わりますが、自治体の中には当初予算を組む場合に昇給財源というものを組まなかった自治体があるのです。そうしてそういう自治体においては税の自然増収と、それから年度当初においては交付金伸びが予想されておったわけですが、その伸びを待ってそれを昇給財源に充てる、こういう当初予算計画地方自治体は持っておるわけです。それに対しては衆参の地方行政委員会等では、かような方針はもうきわめて石橋をたたいて渡る行き方で非常にけっこうだと讃えて、また自治庁も税の伸びに対してそれをまかなうという行き方は堅実でそれはけっこうだというふうに賞め讃えておったわけです。自治庁の主張としては、それをやりたいと思っておりましたところが、最近いよいよ伸びがはっきりして参りましたところが、太田さんの方で、その伸びの三割は赤字解消に回すべきだというひもつき内容通達を出す指導をしたわけです。これは先般小林財政部長に本委員会においてただしてみますと、別にそう拘束するつもりはない、ただ赤字が非常にひどい自治体ではそうすることが望ましいという希望を表明した程度だと、こういうわけですけれども、委員会ではそういうわけですけれども、自治庁担当公務員を通じての地方自治体に対する圧力は相当のもののようなんです。従って当初予算を組む場合に自治体において昇給財源と予定しておったものが十分使えないというところに当初予想した以上に地方公務員特に教職員の場合に昇給昇格ができない困難な事態に来ておるわけですが、従って私は先ほどの昇給昇格に対する大臣の御熱意から考えまして、この際三割云々通達について小林財政部長がここで表明されたように、きわめてゆるやかなものである、強く拘束するものでないという点を、さらに文部大臣太田自治庁長官と話し合われて、年末も迫って今非常に大きな問題になっている不完全実施県の昇給昇格ができるように御高配、御善処いただきたいと思うのでございますが、この二点についてお答え願いたいと思います。
  9. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 自治庁でやっておりますることを私全部承知しておるわけではございませんが、矢嶋さんのおっしゃる通り話の上善処はいたします。
  10. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 簡潔に願います。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 閣議その他でお会いする機会が多いと思いますので、ぜひとも一つ早急に当っていただきたいと思います。
  12. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) よく話しておきます。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一点、年末手当の問題でございますが、これも大きな政治問題になろうとしつつあるわけでございます。私しぼって伺いますが、ここで数字をあげてあなたと質疑応答する時間の余裕を持ちませんが、結論として、公企労それから国家公務員、それと地方公務員、特に地方公務員の中でも教職員等の間の年末手当支給額の差というものは、例年実在するわけなのです。今年はその傾向が特に強くなったわけですね。ちょっと具体的に申しますと、例年超勤の繰り上げ支給なんていう形で出て参りますが、国家公務員の場合には超勤というものがあり、そういう操作ができるわけですが、昨年度大臣が経験されたように、地方公務員の場合、特にその中の教職員の場合は超勤による操作なんていうことはできないわけなのです。ところが現在民間労働者公企労との賃金差というむのは、人事院ので千三百円、大体実質的には三千円を突破するほどの差が出てきているわけです。そこで今ベース・アップの問題が起っているわけですが、この問題は今触れませんが、年末手当の問題について先般国鉄は十二億を繁忙手当という名前で出し、昨日村上郵政大臣国会に対する答弁によりますと、郵政省関係に対しても年度末に何らかの形で手当を出そう、こういう動きがあり、答弁されているわけです。さらに例年のように補正予算なくして行政措置によって、超勤等操作によって年度末、年末手当を若干上げざる限り、人事院からでも今御承知のように会計年度末に〇・一五の手当を出すのが至当だということは、内閣並びに国会人事院から勧告されているわけです。ところがいろいろ事情があって政府はこれを取り上げずに、国会に出していないわけですが、そういう状況年度末に若干の年度手当増額せざるを得ない情勢になっているわけです。これはすべての数字の上ではっきり出てきているわけですね。ところがそれぞれの公企労あるいは国家公務員のそれぞれ善処をされつつあるわけですが、地方公務員の場合には非常に支給が懸念されます。私伝え聞くところによりますと、ごく至近閣議においてこの問題が協議されるやに承わっているわけですが、少くとも国家公務員並びに公企労職員差別待遇のない、同等程度の年末給与増額があなたの所管下にある教職員支給されるように閣議においてぜひとも強力なる発言をされ、御善処をいただきたい、かように思うわけですが、今まで若干のお話が閣僚間にあっておりますならば、その情勢と、今後閣議における文部大臣のとらるべき態度について私はここで承わりたいと思うわけであります。
  14. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 昇給昇格の方は、前申した通り善処努力はいたしますが、年末手当の方は、同様のお答えができないのを大へん遺憾と思います。このことを閣議で決定したことはございませんが、閣議前または後の閣僚間の話には出ました。教育公務員特例法の二十五条の五で、教育公務員国家公務員給与その他については同様にする。それで国家公務員の全般のことは、公務員給与を担当するものもございます。それらの話を総合すると、今の、超勤を先に払ったり、そういうふうなことはもうやめよう、こういうことになっておるのでございます。それゆえに、年末二カ月分増額ということに私が努力申し上げるという約束は本日できませんから、はなはだ遺憾ですけれども、御了承願いたい。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長、もう一回。私はここで年末手当二カ月分云々ということは、大臣発言していないわけです。ただ人事院が今の給与からいって会計年度末には〇・一五程度増額をすべきであるというような勧告さえ出しておる給与状況下でありますから、鳩山内閣としてはこの年度末に年度手当の問題について何らか措置されるものと私は予想いたしております。それをされなければ、これは鳩山内閣の人気は一ぺんに落ちてしまうですよ。これは当然やらなければならぬと思っております。その際に文部大臣にぜひとも私は心しておいていただきたい点は、地方公務員、特に予算がぎりぎり一ぱいになっておる教職員の年末手当が置いてきぼりにならないように御善処願いたい、こういうことを申し上げておるわけなんです。至近閣議においてこの問題が取り上げられるやに承わっておるわけでございます。従って文部大臣として閣議で積極的に地方公務員を含む国家公務員、これらの方々に私はここで二ヵ月というようなことは申し上げません。適正なる年度末の増額をはかるべく強力なる御発言、御善処をしていただきたい、こういうことを御要望を申し上げて、それに対する御所見を承わっておるわけなのであります。重ねてお答え願います。
  16. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 国家公務員に与えられて教員だけには与えられぬといったようなへんぱなことはないようにはいたします。けれども、国家公務員に年末ボーナスは今日法律規定以上に与えられるということについては保障いたしかねるのでございます。
  17. 松永忠二

    松永忠二君 一つその点ですが、昇給昇格が非常に延伸したりストップしておるというお話があるわけですが、それ以外に、私はたとえば旅費単価が四千円であるけれども、事実上計上されておるのは三千円である、あるいは僻地手当についても定額支給をされておる現状である。あるいは産休補充教員についても事実上は産休がほとんど実施されていないところが非常に多い。あるいは地域給について考えてみても、地公法が改正されたために、何らかの形で地域給というものに見合うものをもらっていたものが、現実にはそれが行われておらないというようなことも、非常に幾つもの事例があるわけで、そういう点からいって、私はやはりただ単に昇給がストップされているだけでなしに、たとえば定員についても、各学級の編成基準が非常に高くなって、教員のいわゆる定数増というものが文部省考えているように実施されていない中で教職員勤務をしているという実情が幾多あるわけです。私はそういうことについて、ただ善処するとか、自治庁とあれするとかいうことだけではなくて、もういよいよ地方予算編成の前に臨んでいるので、この際、地方予算を確保するというために、何らかの措置をとるべきであろうというように私は考えるわけです。そういう点について、まあ特にこの際、自治庁交渉するなり、あるいは何らかの通達を出されるなりというような考えをお持ちだかどうかということ、またそしてもう一つ今の点で、そういう状況の中に勤務している、なおかつ勧告は、事実上三十年度調査に基いて、この七月に勧告をなるべくすみやかに実施をするようにということが要望されている。事実上そういうことから考えるならば、四月から実施をするべきであろうと思うけれども、譲って、まず七月に勧告されたのだから少くも八月ころからは実施をするのがしかるべきであるのに、それすらも見通しが非常に困難である。まあそういう年度内に実施ということすら非常に困難になってきておる状況であるので、この際、年末に何らかの措置をしていただくということは、これは非常に必要なことではないか。特にお話があったように、国鉄でも繁忙手当が〇・一六だけ支給をされるし、あるいは郵政職員についても同様の措置が考慮されるということが言われているし、あるいは話によると、明日の閣議あたりで、農林省の関係職員交渉のときも、大臣が積極的に閣議において発言をするということを交渉の席上で約束されておるというようなことも聞いておるので、そういうことからからみ合せて、この際、一つ積極的に文部大臣の御努力をいただくということが、私は教育水準を維持する上からも重要なことであるというふうに考えるわけなんです。国家公務員地方公務員に不利益にならないようにということはわかりましたが、そういう点についてつまり今後の御努力をいただくということ、なおいろいろな面から文部省考えている予算基準を維持するために、地方予算編成の時期に際して、何らかの措置をすべきであると思うわけでありまするが、そういう点について文部大臣はどういうふうな善処をされるかという点について、一つ御回答をいただきたい思うわけです。
  18. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 今、松永さんのおっしゃることはよく承わりましたが、先刻矢嶋さんに答えた通りのところで御了承願いたいと思います。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 閣議で積極的な発言一つやって下さい。
  20. 松永忠二

    松永忠二君 簡単なお答えでありますけれども、まず一つの点について、本日の予算のこととほとんど関連することであり、決して、らち外ではないというふうに私は考えるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、教育水準を維持するというために、文部省が格段な努力を払い、しかも、その他の面の教育水準維持のためには、地方教育委員会通達を出されておる現状であるわけであります。そういうことから考えてみて、各教育長会議であるとか、教育委員長会議でも要望される点が、とにかく予算確保という点にしぼられておるということを考えてみたときに、現状こういうような昇給ストップあるいは延伸事態が生まれてきておる。しかも地域給あるいは僻地手当旅費支給においても非常な困難が、再建団体だけでなしに各府県に出ておる現状から考えてみたときに、私はやはりこの際、文部省が積極的な措置をされるということが必要だと思うわけであります。これは決して一党一派考えではないしに、超党派的に私は必要だと思うわけなんです。そういう点について、地方予算を組まれることが目の前に見えておる現在の時期に、文部大臣が積極的に何らかの措置をするというようなことについて、そのお考えを承わりたいというふうに考えるわけなんであります。同時に、さっき申し上げましたようなことからして、たとえば閣議でそういうふうなことが行われたときには、十分な善処をするというなり、あるいは御努力をいただくという点については、やはりお約束をいただきたいというふうに考えるわけなんですが、そういう点についてもう少しはっきりした御返答をいただきたいと思うわけであります。
  21. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 教育水準を維持すること、従って教育のための地方支出も圧縮されないようにいたしたいことは、私の念願でございます。昨日も地方、ことに町村長会議がありまして、四千に余る町村長がおいでになりました。教育のことについては十分に御尽力願いたい、というのは、教育内容については教育委員会でありまするけれども、予算等について御尽力願いたいと要請いたしておきました。また閣内閣外にかかわらず、教育についてたくさん予算をとりたいのは、私の念願でございます。しかしながら一々の事柄についてはやはり今のところ、矢嶋さんにお答え申した通り善処いたすという以上のことは、ちょっとお約束いたしかねるのでございます。
  22. 岡三郎

    委員長岡三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  23. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記を始めて。
  24. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 参事官がこれからできるだけの誠意を持って御説明申し上げると思います。しかし一言お断わりいたさなければならぬのは、実は内閣では例年やりまする通り予算方針についての、まだ閣議はないのでございます。これはいつも党の方の了解を得て、今度の予算ではどれとどれに重点を置くということをきめまして、その重点予算をやるのが習いでございます。まだそれがきまっておりません。多く参事官の言うのは事務的なことになって、皆様の御感情を害するかと思いまするけれども、参事官の身分としてやむを得ないことでございますから、御了承を願っておきます。追ってそれがきまりましたら、いち早くこの委員会には御報告申し上げます。
  25. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  26. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記をつけて。  文部省会計参事官天城君より補足説明を聴取いたします。
  27. 天城勲

    説明員天城勲君) 前回委員会で御要望もございまして、三十二年度概算要求事項中おもなものをまとめましてお手元に配付いたしましたので、これについて御説明申し上げます。ただ、その前に、前の委員会できわめて概括的に一回御説明いたしておりますので、重複いたします点は省略しながらいたさせていただきたいと思っております。  最初の義務教育費国庫負担金でございますが、これは基礎的な数字が問題でございまして、この備考欄にこまかく書くことができませんので別刷りでお手元資料を提出してございますので、大体資料をごらんになればおわかりになることと思うのでございますが、考え方といたしまして、別刷り資料にございますように、基本方針としては、教職員給与費地方交付税の不交付団体、これは現在のところ東京、大阪、神奈川の三都府県でございますが、政令適用団体といたしまして、その他の四十三府県は実支出額負担として算定いたしております。教材費政令に定める単価で計算しております。それから恩給費が本年の七月以降退職または死亡した者につきまして国で半分負担するということになっております。その平年度分を計上いたしておるわけであります。  基礎的な構造はそうでございますが、計数といたしまして、児童、生徒の増減がございます。小学校で三十七万ふえますが、中学校で二十二万三千減りますので、十四万七千という増を見込んでおります。その次は現在の現況でございまして、本年度現況でございまして、小、中学校教員数、それから給与単価等をここに規定したわけであります。明年度予算の立て方は、との現状基礎の上に明年度増加分を推定するというやり方をいたしておりまして、たとえば給与費につきましては、年間の昇給率を四%と考え、原資を二%とするというやり方をいたしますし、児童増減につきましてはこれを基礎にいたしまして教員数を算定すると、こういうやり方をいたしております。  それから二番目の文教施設整備の問題でございますが、国立学校は従来と同じでございますが、特に原子科学関係の原子力、あるいは原子核等研究施設費が相当かかりますので、これを別ワクにいたしております。公立文教幾つかの項目がございますが、特にわれわれが重点的に考え、かつ現実の御要望も多い点をここに備考に書きましたが、義務年限延長に伴います中学校校舎の建設、あるいは屋内運動場整備、それから小、中学校の統合、危険校舎の改築、小学校の不正常授業解消というような点が一番大きな問題ではないかと考えております。それから前年度と比べますと相当な大幅の要求で、総額で大体倍ぐらい、百十八億という金額公立学校では要求いたしているわけでございます。育英、援護事業につきましては、前回説明申し上げましたのと特に変っていることはございませんが、備考の方で特に問題の重点となっておりますところを付記したわけでございまして、明年度高等学校の奨学生の拡充をはかりたい、大学につきましては単価を是正したい、まあこういう点に重点的のあることを付記したわけでございます。それからここでちょっと申し上げておきますが、四番目の学生健康保険制度実施、これは新しく考えておりますけれども、関係者の御意見一致を見た上で制度的なものにしたいと考えておりますが、なお最終的な一致の段階に現在至っておりませんので、予算的にどうするという前に政治論としてなお問題が残っていることを御説明いたしておきます。  二枚目に入りまして、科学技術振興関係緒経費でございますが、理科教育、あるいは産業教育等につきましては皆様方には内容はすでに十分御存じだと思いまして、参考のために過去のこの制度の始まりましてからの予算の実績を掲げておきました。これで大体の経過傾向をおくみ取りいただけるのじゃないかと思います。中間で減っている年などはいわゆる補助金の減額というような形で一割削減、あるいは五分削減というような形で数字のでこぼこがあるわけでございますが、こういう状況のもとに明年度は五億六千、あるいは産業教育では十一億という金額要求している状況を示したわけでございます。それからその他この科学技術関係事項につきましては、前回説明申し上げたところで、特に付言申し上げることはございません。  定時制教育の振興もお話し申し上げましたが、若干数字的なコメントを備考につけております。たとえば給与費の三十二億、これは四割国庫負担でございますが、大体現在の定時制の教員及び通信教育担当教員がここにございますように二万二千弱でございます。二番目の通信教育の設備費、これも振興法によりまして二十七年度から三十年度までの実績を掲げてございます。三番目の夜間高等学校の給食施設の補助でございますが、約一億弱要求しておりますのは、二百五十校ぐらいを整備対象に考えているということでございます。  青少年対策の問題は非常に事項が多いし、ごちゃごちゃいたすのでございますが、おもなものを備考に掲げましたが、青年学級の運営費、これは対象が非常に多くなってきておるので非常に……現状は一万七千ほどになっております。  それから新しい問題としての四番目、青少年教育施設等の整備、これは本年度二百九十万実施しておりますが、予算内にはその前の青少年キャンプ経費の流用として実施したわけでございまして、予算的には明年度が新しいことになりますので備考に掲げておきました。全国八カ所に青少年教育施設を設け、ほかにモデル的な体育館やプールを作りたい、こういう考え方でございます。  それから五番目の青少年の映画及び録音の教材、これは教育映画、あるいは幻灯、録音教材等を国で製作指導いたし、あるいは若干のものは購入いたしまして府県に配付する、こういう一連の実施でございます。映画関係も主としてそういうような構想ですが、特に金額的に多いと思われる六番目の青少年向き映画の普及、これは教育映画で非常に優秀なものはできれば国で買い上げして府県に回したいというような考え方として、大体各府県に年間五十本ぐらい回したい、こういう考えでおりますので、金額的には相当かさんでおります。  それから九番目の青少年巡回音楽演劇鑑賞指導、これも新しい事項でございますので、これは中央の劇団、楽団を積極的に地方に巡回して指導に使っていただく、同時に地方の劇団、楽団の育成をはかりたい、こういう構想で新規に要求いたしております。  教育の機会均等の項目に入っております諸経費は、前回説明の点を数字的にコメントいたしましたが、教科書の無償給与、これは小、中学校児童の四%を目途にいたしております。  僻地教育の充実費の中で、新しい問題として発電装置とか、バス、ボートの設置の補助、こういう点を要求いたしております。  特殊教育では備考にございますいわゆる就学奨励費、これは法律によります補助でございますが、従来通り進めておりますが、同時に下の特殊学級の増設をはかっていきたい、そのための設備費を要求しよう、こう考えております。  四番目の公立養護学校関係の立法に基きます予算措置でございますが、給与費教材費等の積算をここに掲げてございます。それから僻地の教員住宅の建設費、これは従来大体百五十戸くらいの範囲でございましたが、ぜひもう少し伸ばしたいということで五百戸の要求をいたしております。  給食の準要保護児童に対する補助でございますが、これも教科書と同じように四%を目途にいたしております。  その次のページに入りまして、特に御説明申し上げる点は、この辺はあまりないのでございますが、私学振興の三番目の私立大学理科助成、これは本年度五千万円という大幅の経費がついたわけでございますが、科学技術の振興という点から、私立の大学の理科系統の教育を振興したいという考え方で、かなり大幅の増額要求いたしております。  それから芸術及びスポーツの振興関係では、国立競技場の建設、これは本年度から一部実施の準備に入っておりますが、最近明治神宮の競技場を国で買収してこれを改築し直すということが決定いたしまして、早ければ十二月の半ばごろからその第一段階の開始に取りかかるという段階になっております。その点の経費を明年度要求しておるわけでございます。  国際文化の交流の振興のための諸経費をそれぞれ計上いたしておりますが、特に三番目に国費外国人留学生招致、これが相当額増額を予定しておりますのは、備考にございますように、新規に東南アジアから六十人その他欧米から二十人を招致して逐年的にこれを伸ばしていきまして、完成した場合には五百人程度の外国人が日本におるという姿に持っていくという考え要求いたしております。  その他は特に前回より補足いたす点はございません。  最後に国立学校関係の経費でございますが、新規の問題で特に大きな問題は、前回申し上げましたが、原子力研究の開始とか、あるいは物性物理学研究所の創設でございますが、その他の経費は大ざっぱにしてございましたので備考で中身をすくってみましたが、その他の経費といたしまして、三十二年度要求額九十七億ございます。前任度に比べて二十五億ほど増額しておりますが、これは講座でございますとか、あるいは技術系学科の増設、それからまた研究施設を新たに作ったりその整備をいたしたりという経費でございまして、毎年この点は繰り返して進めておる事業でございます。  それから国立学校関係の経費は、基準的な経費が非常に大きな要素を占めております。今申し上げました講座の新設とか、研究所の新設ということ以外は、ほとんど基準経費という形で進んでおりますので、基準経費の大体占める率をここに書いたわけでございます。国立学校で二百八十四億、病院で七十二億、研究所で二十六億、こういうような金額でございます。  それから最後に文化財保存事業、これは大きなものとして国立劇場の設立の問題と文化財保存事業費でございますが、そのほかに観光関係の施設整備という新しい事項を最後に加えておりますことは前回申し上げた通りでございます。  それからこの前その他という項目に一括いろいろなことを規定しておりましたが、その中身でおもな問題を備考にしたためた次第でございます。ユネスコ関係の経費、それから児童生徒、教職員の健康管理費、これは教職員の健康管理——健康診断につきましては、従来から予算を計上いたしまして実施しておるわけでございますが、児童生徒の健康管理、特に身体検査につきましては国で積極的に予算措置をいたしておりませんでした。しかしやはりいろいろな面から考えまして定期的な検査を励行して、早く問題を発見して次の指導を徹底するようにという考え方で全児童生徒に定期的な診断を充実して行いたいという考えから、新しくその経費を要求しておるわけでございます。学校図書館の整備、これも図書館法に基く補助金でございます。それから学校給食の設備の補助金、これも学校給食の拡充に伴いまして、金額的には相当額なっておるわけでございます。  その他、最終的には本省や、文化財保護委員会、それから所轄機関の人件費、物件費をまとめて三十一億計上したわけでございます。  前回と重複をきらいましてこの資料を新しく作りましたものと、おもな点だけを補足的に申し上げておきます。
  28. 岡三郎

    委員張(岡三郎君) これで説明を終ります。  ただいまより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  29. 林田正治

    ○林田正治君 ただいま大体の御説明を承わりましたが、先般清瀬大臣がこの席において道徳教育の問題を非常に強調されました。また先般新聞によりますると、秋田市に出張されました際にも、その問題を非常に強調されておりました。私は非常にこの問題について感銘を覚えておる一員であります。この問題につきまして大臣はどういう目標のもとに道徳教育を振興されまするか、大体の目標をお持ちでありますれば、御見解を承わりたいと思います。  私はその前に大臣にただしたいことは、先般全国のあるいは小、中学校でありましたか、校長の研修会の際に、最高裁判所の長官の田中耕太郎氏がその席に出られまして、教育勅語の問題について真剣なる御意見の発表があったように承わりました。その内容はもちろん私どもの知るところではございませんが、この問題は私の調べたところによりますると、いつの国会であったか存じませんけれども、教育勅語というものは、一応はその形の上においては、国会において将来にはその効力を持たないという決議がされたように思っておりまするけれども、それはただ形の上だけであって、内容の点においては、教育勅語の精神というものは今日も依然として、それは国民精神道徳の上において顕著なる効力のあるものであると思いました。そういう点をお認めになって私は文部省のあの研修会においても、田中長官の講演が認められたものである、こういうふうに実は自分は考えております。あの内容は決して誤まっておらないのである。また一部分はもちろん時代の変遷によって、これは解釈を変えなければならぬ問題もありましょうけれども、根本はあの教育勅語の最後に書いてありまするところの、決してあの勅語はいわゆる封建的な国の権力者より庶民に向っての命令的なものではないのである。なぜかと申しますと、「斯ノ道ハ」いわゆる「古今ニ通シテ謬ラス……朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺」云々とありまするところによりまして、私は決して天下り的の道徳律ではない、こういうふうに考えております。そういう点からお考えになって、私は先般の校長研修会においても、文部省が田中長官の講演をお認めになったと思います。そういうふうに考えまするときにおいて、私はやはり大臣の構想は、その教育勅語の精神というものを何らかの形において生かしたい。それが今日その道徳教育大臣が主眼点を置かれて、全県下に、一県にたしかこの間の説明によりますると、三校くらいの一つのモデル・スクールを作るというような御意見のようでありましたが、そういうふうなお考えでありまするかどうかというようなこと、また大臣のこの点についての基本的のお考えを、もし私が誤まっておるとするならばこれは別でございまするが、道徳教育に対する大臣の基本的なお考えをこの機会に承わりたいと思います。
  30. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 私はいやしくも国、地方公共団体が学校を設けて国民教育をする際には、やはり道徳ということがこれが一番重要なことと思います。それゆえに道徳の維持発展に努めたいと思っておるのであります。ただいまお話しの通り、道徳はこれはまあ人間社会の守るべき大部分の通念でございます。ある意味において世界的のもの、また古今に通じて誤まらざる一点は必ずあるのであります。しかし道徳教育やり方については国々、時代々々によって異なっておるんです。戦前の道徳教育には私は少くとも三つくらいの失敗を犯しておると思うのです。その一つは、あまりにも国家主義を強調するの余り行き過ぎて個人の価値をややともするというと軽視した傾きがあることはおおいがたい事実と思います。やはり道徳の出発点は個人の尊厳にあるのだ。その個人を集団的に守るがために国ができておるのでございます。それゆえにこの立場についてのあやまちを犯しておるのじゃないかと思います。教育勅語が決して個人を否認した勅語でないことは今あなたのおっしゃる通りでございます。教え方において一つのあやまちを犯した。もう一つは道徳を強制するの傾きがあったのです。初めから一つの道徳の名前を作って、徳目と当時いいましたが、そうしてそいつを子供に押しつけていこうといったような傾向が強かったのであります。子供は経験のないものでありまするから、経験のある先輩が示唆を与えることはむろんであります。放任してはいけませんけれども、あまりにも服従を求めて、服従これ道徳というがごとき態度をとったことはこれは一つのあやまちと思います。第三のあやまちは、道徳をあるいは数学とか理科とかいうのと並立する一つの科目であって、修身科の時間だけが道徳の時間だとこういうふうなことに終わったという形跡があるのであります。むろん学校においては校風を樹立して子弟を導かれた学校も多々ありまするけれども、昔の国民教育小学校においてやはり修身教科書が主で、教科書の敷衍に終ってしまったむろんこの時代においても合科教育ということを唱えた人もあるのでありますけれども、しかし常住座臥、子供のなすべき行いそれ自身が、これが道徳にかなうべきもので、教室が理科であろうが算術であろうが、すべて、道徳の維持、講釈に終るんじゃない、学校の空気が道徳を教えるように、先生の行い、顔つきがやはり道徳にかなうように、こうあるべきのを、一つの科目としてそこでレクチュアする。子供があくびをかみ殺してこれを傾聴しておったと、これは、私あやまちだと思うのです。いろいろ御意見もありましょうし、私の説明の至らぬところもありましょうけれども、そのあやまちを犯そうとは決して思っておらない。やはり徹底した、また実用な、そうそう高い理想といったようなこっちゃなくて、やはり将来の日本人があるべき姿、教育学者の方は人間像という文字をお用いになりまするが、理想の人間であるべき姿を描いて、それから本能、人間は、ちょうどあのときに講演者が言われましたが、神と動物のあいのこだと、こうおっしゃっておる。人間には本能がある。この本能をあるがままに是認しては道徳にかないませんから、本能のほとばしるところをその人間像に近づかしめる、こういうことにしなければならないと思っております。教育勅語の出たときは、わが国は君主政体でありましたから、今の主権が国民いえば君に忠にきまっておる。主権者にあるという場合とそこは少し註釈を要しまして、君主政体のときには忠といえば君に忠にきまっておる。主権者に忠です。しかしながら、主権者が国民に渡った以上は、忠は国民全体に対する忠であります。これだけの解釈はしなければなりませんけれども、その他のところのうしろに書いてあることは、私は今でもこれを拳々服膺して誤まりないと思います。しかしながらこれを実行する際に、過去において三つまたはそれ以上のあやまちを犯しておりまするから、教育勅語がいいんだというと、あのあやまちを是認したようにみえまするので、そこは非常に説明を要します。実際において、田中長官もその説明はなすっております。なすっておりますが、新聞で教育勅語を是認したと、こういわれるというと、私の言った三つのあやまちを踏襲するようにみえまして、語弊が非常にございますが、私の考えはそういうことでありまして、それゆえに道徳を復興しようといっても、すぐ教科書を編さんしようということには私は着手しませんでした。世界の道徳の本を見て、子供の読む教科書に着手しようとはしないで、そうではなく、各学校において一つ研究してもらい、実際どう指導したらよくなるかということの方に私は意を注ぎまして、ほんとうは指定校じゃなくても全部研究して下すっておるです。ある学校においては、はや研究の成績を報告して下すったところもあります。けれども、まず政府としては、ごくわずかで、言うに足らぬ予算でありますから、ここに書きませんでしたけれども、やはり指定校には少しでも金を送りまして、あるいは鉛筆の費用になるか、インク代になるかわかりませんけれども、まず指定校ということについて、一県に一つぐらい、小学校中学校高等学校で、こういうふうにやってみたら効果を奏した、これはだめであったというようなことをやることが手始め、こういうふうに考えておるのでございます。なお私の言ったことに御不審がありましたら、引き続いて御質問を願います。
  31. 林田正治

    ○林田正治君 私の質問いたしましたことも、大体清瀬大臣意見と同じでございまして、私も先ほど申しました通り教育勅語のその精神は、大体において了とすべきものであるということを思いましたので、それをまた大臣も承認されましたので、この点はもう私の意見一致いたしましたし、また大臣が過去の道徳教育に三つの弊害があったということも、私もそれを認めるにやぶさかでございません。ただここに一つ特に指摘してみたいことは、大臣が言われたところのいわゆる過去の道徳教育が、個人をあまりに卑下した、今日の個人の尊重ということについてあまりにもかけ離れておったというお話でございました。私もその点はもちろん認めるにやぶさかでございませんが、しかし今日はその個人の尊重ということに、あまりに程度が激しくなり、ちょうど二、三日前の朝日新聞でありましたかの記事にも、こういうことが書いてありました。今日は個人の権利の主張ということには十二割を主張して、個人の責任、義務という点になると三割ぐらいしか尊重しない、こういうようなたしか記事を認めたのでありますが、まさにその通りであります。われわれは、これは社会も個人も両々相待って行くのがこれは当然であります。私はこの点について、特に学校の問題で、自分の郷里のことを言うのは恥かしいのでありますが、大臣も御承知の荒尾高等学校のあのストライキの問題のごときは、高等学校の生徒として、ああいうように軽率なる行動に出るということに、一応は私も高等学校の生活あるいは中学校の生活からしまして、認めますけれども、しかしながら度がはずれている、秩序がないということ、しかもあの場合に、教職員の一人として、あの問題を自分が一身を犠牲にしてでもこれを静めてやろうというような、そういう純情な教職員がほとんど一人もなかったというところに、私はあの問題の重点がありはせんかと思いました。こういうことになるのも、生徒諸君もいわゆる自己の権利の尊重、人格の尊厳ということを、間違ったところの意味において、権利の尊重、私の利益の尊重というところに重点を置く、また教職員の人々も、場合によってはいわゆる給与の問題あるいは経済の問題、そういうような問題に重点を置いて、ただ知識を授けるということのみに重点を置いて、人を導き、人の人格をつくるということは、ほとんど重点がない。お互いに権利、利益の尊重ということのみに急であるがために、ああいうように問題が私はこんがらがってきたのである、こういうふうに考えているのであります。こういうような点からして、今後の学校の教育のあり方というものは、私はどう考えましても、やはり個人の尊重というものを重点に置くとともに、学内の秩序あるいは社会との調和というようなこと、そういうようなところに、いわゆる先ほど大臣が言われた校風というものが、そういうところから生まれはせんかと私は思うのであります。ああいうような事柄からいたしましても、私も特に大臣が今言われました道徳教育の過去の弊害の第二点であるところの、個人の人格をあまりに無視した今日は反対にあまりにも、個人の人格の尊重よりもこれは邪道に入っている、この点から考えて、私は大臣意見に同意いたすとともに、そういう方面に今後はどういうような考えをもってこの学校の管理、学校の教育ということをおやりになりますか、大臣のもう少しくできますならば具体的な一つ考えを承わりたいと思います。
  32. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 具体的のことを申し上げる前に、あるいは少しお聞き苦しいかわかりませんが、私の道徳について考えていることをもう一言申し上げたい。  何がゆえに秩序を維持しなければならんか、何ゆえに国に対して忠誠を誓わなければならんか、そのことをまず申し上げてみたいのです。やはりこれは、私は個人の尊重という一元的に考えております。尊重すべきものが二つあって、一つは国なり秩序なりで、一つは個人であるというふうに二元的に私はものを見ておらないのです。人間が自然の世の中に本能のみを発揮して雑居している時分には個人間の利害の衝突、抗争、戦争、状態、小さい争いが人間の数ほど起っておるのです。それを昔の人はベルム・オムネス、コントラ・オムネスといいました。オムネスはすべて、ベルムは戦争、すべての人がすべてに対して戦争をやっておる状態であります。動物社会が今でもそうであります。けれどもこれでは人間が発達しないというので、そこでおのおの約束、というても証書を書いたわけではありませんが、おのおの自然の約束で社会を作った。そこで約束した社会を作ってこれを保とうということは個人を保護するためにできたのでありまするので、言葉は違いまするがルソーの民約論もその意味で書いておるのであります。あのラ・コントラ・ソシアールをそのままに私は信じちゃおりませんけれども、国を作り、また国が秩序を設けるということは結局は個人の尊厳から、回り回っておりまするけれども、同じ起源から発生しておる、こう思っておるのであります。個人の尊厳を私はもとと唱えましたけれども、個人の尊厳だからして秩序は乱していいとか、約束は守らんでいいとか、そういうことにはならないのです。自分が尊いものであるならば、これは人として尊いのであります。ほかの人も尊いのです。このゆえ尊きほかの人の人格をもこれを尊重するということは、やはりヒューマニズム、人間主義、それから出発する道徳は一元のものだと思っております。決して個人が尊い、国家も尊いといって、二つ両立するものではない、かように私は思っておるのであります。いろいろ自分でも内省し、本を読み、いろいろ考えて、大体そのことで今日の社会はいっていいのだ、こう思っております。それゆえに一方道徳の起源は個人の尊厳にあることをよく先生方にも子供にも、子供は頭が幼稚ですけれども、よくわからして、それと同時に郷里を愛し国を愛し法律を愛し規則を愛するといったようなことにやっていかなければならない。これを口では言わんで事実にぶつかったときに、目の前にそれを教えてやろう、こういうふうなことにいくのが今の言葉で言えば生活指導ということになるのではなかろうかと思います。そこで具体的にどうするかということは、それを一つ全国百三十の学校で実験してもらいたい、こういうことが今回の私の構想、アイデアでございます。それだけでお答えといたします。
  33. 松永忠二

    松永忠二君 今の文部大臣の道徳教育お話はまた一つ速記を見せていただいて後刻考え方をまたお聞きをしたいと思うのでありますが、予算の問題が出てきておりますので予算のことを……。
  34. 湯山勇

    ○湯山勇君 今の問題で文部大臣に尋ねしたいことがあるのです。いいですか。道徳教育のうちで指定校の予算との関連で出た問題で、大臣のただいま御説明がありましたので私はただいまの御説明を傾聴し、全面的に同感ですし、また大臣の御見解に敬服しています。ただ私がここで気になるのは道徳教育の指定校というような制度は、他の科学教育の指定校とか、それから図画教育、美術教育の指定校とか、そういうものとは非常に性格が違うと思います。ひょっとすると文部省の方で、指定を受けるということになると、あるいは大臣が御心配になっておるような徳目の教養とか、あるいは不自然なしつけとか、あるいはお説教の非常に多い学校というようなものが出てくるのじゃないか。大臣のおっしゃったようにそういうものは自然の機会をとらえて、そして不自然な形でなくてやっていくというところに意味があるのであるし、さらにまた普通従来の指定校の例を見ますと、今年度指定をして、来年度はまたほかの学校を指定するというような格好になると思うのですけれども、道徳教育の成果というようなものは他のものと違って、そんなに一年、二年でこれでこれだけよくなったという性質のものでもないと思います。それは大臣がおっしゃったように戦前の教育がいかにも短期間に実績を上げたかにみえて、実はその中身は何にもなかった。こういうことからもおわかりいただけると思いますので、大臣のお考えは非常に同感の点もあるし、また敬服しておりますけれども、そういうお考えを直ちに指定校に結びつけるということになりますと、これはおそらく大臣教育の現場というものについてはあるいはあまり御存じないかもしれないので、そういうやり方自身についてはもう少し詳細をお聞きしないとわかりませんけれども、私はよほど注意をしなければならないのじゃないかということを考えておりますので、この点については今お答えいただかなければいただかなくてもけっこうですけれども、十分お考えを願いたいと思います。
  35. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) 大へん湯山さんの御注意ありがとう存じます。これで指定校だけが研究していいことじゃありませんので、指定校でなくても、もう皆さん御研究のことですからそれゆえに指定校として別段大きな待遇を与えることはよくないと思いまして、あの通りごく希薄な、二百万円程度なものでありますが、指定されない学校もよく子供の訓育方法について答えを出さるるように希望しておるのであります。そのことは何らかの方法によって世間に注意したいと思います。ただ抽象的に道徳などを言いましても、今現在せっぱ詰まった問題がございますね。戦後の少年のあり方について、この間本を見ましたらドイツでも同じ問題が起っているようです。向うじゃハルプ・スタルク、ハルプはハーフ、スタルクはストロングで、日本では太陽族という言葉に当るのですが、それに向うの国のやり方一つ研究をいたしたい。順転に、すなわち来年はまたその次の学校を指定するなんということまではまだよう考えておりません。一つやってみてもらってその成績を検討しよう、こう思っております。いいことがありましたら一つお教え願いたいと思います。
  36. 近藤鶴代

    ○近藤鶴代君 ちょっと関連して。ただいまの大臣お話、それから林田委員お話、湯山委員お話を伺っておりまして、この問題は非常に今の教育の基本的な大事な問題であると思いますので、私は後日もっと皆さん方と研究をしてみたいと思うのでございますけれども、ただここで大臣に一言お尋ねいたしたいと思いますのは、その構想を来年度から実施をなさる御予定でございますか。そしてまた対象になる学校を選定なさいますときに、どういう学校を対象として御選定になりますでしょうか。そういうことについてもしここで伺えましたら伺いたいと思います。
  37. 清瀬一郎

    国務大臣清瀬一郎君) ここで申し上げたような構想を教育、わけても県教育委員等によく御了解を願いまして、御了解の上、県委員会からの御推薦によろうと思ったんです。
  38. 松永忠二

    松永忠二君 それでは義務教育の国庫負担の問題について天城さんの方からお答えをいただきたいと思うのですが、後刻文部大臣にも御意向を聞きたいと思っておりますが、教員給与単価の計算の算出の基準というものはどこに置いてあるのか。要するに何月の現給を基礎にして、どういうふうな方法で決定しているのか。それから僻地手当がやはり含まれていると思うわけでありますが、僻地手当の算出の方法はどういう方法で算出されているか。それから産休教員の補充職員給与の算出の方法はどういう方法か。それからもう一つ旅費単価はやはり四千円であるのかどうかと、その点についてお答え願いたい。
  39. 天城勲

    説明員天城勲君) 最初に給与費単価のことを申し上げます。資料でお手元にお配りした一番下に現在の給与単価現状が出ておりますが……。
  40. 松永忠二

    松永忠二君 一般府県についてだけ……。
  41. 天城勲

    説明員天城勲君) ここに規定されております四十三府県分の一万六千三百二十七円、中学校の一万七千百十一円、これが本年の四月の実績でございますが、これを大体基礎にいたしまして、私たち年間に昇給いたします高さ、年度当初と年度末の高さというものをいろいろな過去の実績やその他から現在のところ四%と押えております。高さが四%でございますので、財源的にはその半分、昇給財源としては半分の二%、こういう踏み方をいたしまして、実績の上にその比率をかけるという形で単価を算出いたしております。  それから順序が逆になるかもしれませんが、旅費は四千円で計算いたしております。それから僻地手当でございますが、僻地手当は本年の七月でございましたか、から、従来の単価が一律から比率に変りまして、二〇%から四%までの間、五段階になっております。級地別によって五段階になっておりますので、その比率を使いまして僻地手当を計算いたしております。それから産休でございますが、産休職員の積算でございますが、これは現在のところ、現在と申しますか、本年度におきまして産休の大体教員を採用した状態というのは、本年度の従って実員の中に含まれておるわけでございますので、現在の産休の状態は実績の中に入っている。その実績計算の上に推計いたすという考え方でございますので、その基礎の上に一定の比率という出し方をいたしますので、特に産休分は幾らという計算のいたし方はいたしておりません。以上御答弁申し上げます。
  42. 松永忠二

    松永忠二君 今のお答えのうちで一、二……たとえば一万六千三百二十七円は従前は給与単価が十月一日の現給を基準にしておられるようですね。その点はやはり十月一日の現給をもってそれに昇給率をかけてなされているのか。それから僻地については、範囲は現在支給されておる僻地の範囲の上でそれを実計算にして出されておるのか。産休については従前は大体定員の〇・七%を、まあ昨年の五千五百万円についてはそういうその計算の算出基準を持っているような話を聞いておったんですが、そういう点についてはどうか。
  43. 天城勲

    説明員天城勲君) お答えいたします。単価の問題は今基本的な考え方を申し上げたわけでございまして、年間の昇給比率と昇給財源というものを通算した考え方で押えまして、当初の額にかける、こういう考え方を申し上げたのでございますが、現在のところ要求の時期その他から四月の実績の上に今申し上げた比率をかけて要求いたしておりますが、まあ最終的予算を決定するまでにこの基準をどこに取り直すか。いうことは、そのときの時期によって若干違うことがございますが、考え方はそういう構想の上に立っているのでございます。現在の要求基礎を申し上げたわけでございます。
  44. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと今ベース・アップについて……、単価については給与改訂というものを考え単価を組まれているのかどうか。それから今言った僻地と産休について少しお伺いしたい。
  45. 天城勲

    説明員天城勲君) 給与改訂、今ベース・アップの問題は、現在のところちょっと前へ戻りますけれども、地方公務員給与は国の付属学校の給与を基準として定めるという特例法の規定がございますので、国の制度を大体基準に予算を組んでおりますから、現在のところベース・アップの問題が国家公務員について何もきまっておりませんから、その点は織り込んでおりません。ただ従来の例で申し上げますれば、ベース・アップ等があります場合には、これは年間で補正予算を組んで直す、こういうやり方をいたしておりますから、現在のところはその問題を織り込んでおりません。それから産休の比率の問題でございますが、本年の実績の数の中に現に産休を取っておられる先生、休んでおられる先生も実員に入っておりますし、そのかわりに、代替に採用される先生も実員に入っているものですから、要するに産休教員現状は実績の中に入っている、こう考えてその基礎の上に明年度の増を含むという考え方をいたしておりますから、特別に産休分が何パーセントという比率は現在とっておりません。そういう考え方を積算にとっておりません。それから僻地手当は先ほど申しましたように比率に制度が変りましたので、現在の支給地域の上に今の比率をかけた要求をいたしております。なお僻地の基準につきましては現在はその形で要求いたしておりますが、なおどうするかという問題は今後の問題として国との関連で出るのではないかとも思いますけれども、現在はその姿で要求しております。
  46. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  47. 岡三郎

    委員長岡三郎君) 速記をつけて。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十三分散会