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1956-12-04 第25回国会 参議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十二月四日(火曜日)    午前十時二十八分開会     ―――――――――――――   委員異動 十二月一日委員伊能芳雄君及び占部秀 男君辞任につき、その補欠として井上 知治君及び岡田宗司君を議長において 指名した。 十二月三日委員井上知治君及び小林武 治君辞任につきその補欠として伊能芳 雄君及び黒川武雄君を議長において指 名した。 本日委員岡田宗司辞任につき、その 補欠として占部秀男君を議長において 指名した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     本多 市郎君    理事            大沢 雄一君            加瀬  完君    委員            伊能 芳雄君            小柳 牧衞君            紅露 みつ君            横山 フク君            占部 秀男君            久保  等君            鈴木  壽君            中田 吉雄君            成瀬 幡治君            森 八三一君            白木義一郎君   政府委員    自治政務次官  早川  崇君    自治庁行政部長 藤井 貞夫君    自治庁財政部長 小林與三次君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君   説明員    自治庁税務部長 奧野 誠亮君    大蔵省主計局主    計官      相沢 英之君    大蔵省理財局地    方資金課長   堀口 定義君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○地方行政改革に関する調査の件  (昭和三十二年度地方財政計画に関  する件)  (地方財政再建促進特別措置法の実  施状況に関する件)     ―――――――――――――
  2. 本多市郎

    委員長本多市郎君) これより委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告します。  十二月一日付をもって伊能芳雄君、占部秀男君が辞任されまして、井上知治君、岡田宗司君が補欠選任されました。また昨三日には、井上知治君、小林武治君が辞任されまして、伊能芳雄君、黒川武雄君が補欠選任されました。  以上報告申し上げます。     ―――――――――――――
  3. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 次に、本日の議事でございますが、これは、昨日委員長及び理事打合会を開き、協議いたしました結果、前回の委員会に引き続き、昭和三十二年度地方財政計画地方財政再建促進特別措置法実施状況等地方財政上の諸問題並びに町村合併関係の諸問題に対しまして、政府に対して質疑を行うことと決定いたしましたので、さよう取り運びたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 御異議ないと認めます。それでは、地方行政改革に関する調査中、昭和三十二年度地方財政計画に関する件、地方財政再建促進特別措置法実施状況に関する件、町村合併促進法及び新市町村建設促進法実施状況に関する件、以上三件を便宜一括して議題に供します。  質疑のおありの方は順次御発言願います。なお、政府側からは藤井自治庁行政部長早川自治政務次官が出席いたしております。
  5. 鈴木壽

    鈴木壽君 ちょっとお尋ねしますが、財政部長あるいは財政関係の方は……。
  6. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 財政課長再建課長がおります。部長も見えました。
  7. 鈴木壽

    鈴木壽君 財政部長にお尋ねしますが、この前の委員会愛媛県の昇給昇格の問題、それに関連するいろいろの問題について質疑がございましたが、私今、愛媛の問題についてのよしあしを申し上げるんじゃなくて、再建計画を立てておる府県でございますね、その中で昇給昇格が行えるような計画を立てておるところはどのくらいありますか。
  8. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 再建計画では、初年度は大ていみんな見込んでおりますが、次年度以降は、再建計画の立て方の問題で、歳入歳出とも現状基礎にして据え置く建前を作っております。税の増も何も見ないのでありますが、計画上は昇給は見ていないのであります。それで税の自然増その他に伴うて計画変更をやる、こういう扱いでできておるわけです。  それから初年度最初計画を作るとき、どうにも昇給見込みがなかったという団体も実は、きわめて少いですが、絶無じゃございません。こういうものは今、年度内交付税……そういうものを基礎にして、他の団体程度再建計画変更で、増収分を見る扱いにいたしております。
  9. 鈴木壽

    鈴木壽君 再建計画を見ますと、今お話のように、昇給昇格が行えるような団体もあれば、また行われないように計画が組まれておるところもあるのですが、来年度以降において、あるいは税の自然増収その他の収入増によって行われるようになるだろう。これはしかし野放しの形で、それはまあ県の将来の財源の増、そういうものにだけまかせておくようなお考えなのか、あるいはそういうものは当然一つの義務的なものとして、計画変更を認めて、その中に組み込ませるべきものと、こういうふうにお考えになるのか、その点一つ
  10. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは、次年度以降の問題は、当然次年度交付税財政にしろ、計画上当然、国家公務員に準ずる給与昇格分については、これは当然見るわけでございますから、それぞれの団体にもそれに相応して、当初の計画よりもふえた収入が当然期待されるわけであります。それでありますから、そういう場合には、それに相応するような内容の昇給は、これは当然見ていいだろうと思うのであります。われわれも、そういうものはある程度差しつかえないと考えております。
  11. 鈴木壽

    鈴木壽君 ただその場合に、はっきり財政計画の中に昇給昇格財源を見て、そうしてきちっとしたものでやらせるのか、やらせるというか、あなた方の方の指導方針として、あるいは余裕財源があったらやったらいいんじゃないか、こういうような考え方で組まれるのか、そこら辺一つ
  12. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今のお話は、かりに現在よりも収入一文もふえなかった――極端な話で、これはあり得ぬと思いますが、そういう場合に一体どうするか、こういう御質問になってくると、全く今年は歳入一文もふえぬということになると、歳出だって今年を基礎にして問題を考えざるを得ない、その相互の間においてどれだけ調整できるか、こういう問題で考えざるを得ないと思います。ただ、これは理屈だけの問題でありまして、そういうことは普通考えられぬと思います。何らかの形で計画はぎりぎりのところで作っておりますから、計画以上の歳入がいずれかの部分で当然あると――一〇〇%ふえるということは極端でございますが、言ってよいだろうと思います。それでございますから、そういう増収部分計画上あらゆる経費につきまして調整のとれるように増すということは想像されます。われわれも、それに乗っかっていていい、こういうふうに考えております。
  13. 鈴木壽

    鈴木壽君 財政再建団体の県の財政計画を見ますと、昇給昇格というような問題については、お話のように、将来税収入伸びとかもあるいは交付税その他の伸び等があった場合に、しかも財政再建計画支障のない範囲内で行う、こういうふうになっておるわけです。用語は確かにそれでいいと思いますが、しかし、支障のない範囲において行うということは、今の府県の、特に赤字団体のそういう財政実情からするならば、実施不可能じゃないか、こういうふうにも考えられる。というのは、これは収支みんなきちっとバランスがとれるように立っておりますし、将来税の伸びとか、あるいはその他の財源の増とかいうようなことがあるいはあるかもしれませんが、いわばこれは不確定なものであって、特にまた、ある府県においては、いろいろ考えてみても、将来の予想を立ててみても、そういうことに頼ることがもうとうていできないというような実情にある県もあるようでございます。そういう場合に、私が先ほどお尋ねしたように、これはその府県財源がなければやむを得ないことだ、県のそういう状態からすれば、昇給昇格あるいはその他の諸給与、諸手当等の減、あるいは支給しないということもやむを得ないことだと、こういうふうに考えるのか。私もっとお尋ねしたいことは、そういう場合においても、私は、昇給昇格とか、あるいはその他の諸手当は、いわば義務的な経費じゃないか、その点財政計画に織り込まれてしかるべきじゃないか、むしろ現段階においては税収入伸びとか、あるいはその他の財源の増があった場合には、投資的な経費など、これらは相当切り詰められておりますから、そういうところにこそ回せるような財政計画がなければならぬのじゃないか、こういう考えを持っておるわけなんですが、そこら辺について、一つ考えを承わりたいと思います。
  14. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今申し上げましたように、当然国全体の財政計画といたしましては、本年度基礎にして、給与などもある程度昇給分を当然見て、われわれは計画を編成いたしますから、現実の問題としては、地方財政ワクというものは、今年よりも当然そういう義務的な経費がふえるということは予想される、そういう前提で、個々の地方団体の持ち分もある程度ふえることはきまっております。しかし、これは仮定の問題で、全然ある団体において現在よりもふえなかった、こういうことにかりにいたしますということ、給与を結局どうするか、こういう問題になるので、そうなれば、その団体全体のやっぱり既定のワクの中でいって、給与費とか事業費とか物件費というようなもののバランスをどう考えるか、こういう問題だろうと思います。それぞれの団体では、今までの人件費が切り詰めすぎておるから、仕事を抑えて毛人件費を伸ばすのだ、こういう考え、をとるか。しかし、人件費ばかり伸ばしていけば仕事を押えざるを得ない、これはおかしいじゃないか、そういう考え方をとるか、これはそれぞれの団体の自主的な判断の問題になると思います。ただ、全体といたしましては、人件費は、昇給昇格とともに人間の数の問題でございます。それから新陳代謝の問題もございますから、大ていの場合は、数がそのまま変らないといたしましても、ある程度新陳代謝は、これは当然あるのであります。そういう部分は、当然昇給昇格に当ててもいい経費になるだろうと思います。そういう意味で、やはり総合的に考えるより仕方がない。全体のワクがないのに、昇給昇格だけふやせ、こういう指導は、これはわれわれとしてはすべきでもないし、そうするならば行き過ぎだろう。そのワク内において、それぞれの自治体仕事とそれぞれの消費的な経費を総合的に考えていただくよりしようがない。これはきわめて率直な話、しかし、そんなことはあり得ようがない。これは総ワクがふえるから、その部分でしかるべく昇給というものは当然可能になるだろうというのがわれわれの考えでございます。
  15. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは、多少の歳入増というようなことば、お話のように、期待できると思います。しかしそれが、いわゆる昇給昇格は、現在すでに各県等において行われております諸手当の削減とか、そういう形を満たすような程度のそれというのはおそらく期待できないのじゃないかと思うわけなんです。それからいま一つ、かりに明年度においてそういうことが期待できたにしても、当然今度それがなされた場合には明年度以後のいわゆる財政計画というものはまた変っていくと思うのです。当然変らなければいけないのです。そうした場合に、財政計画変更ということが、これは考えられなければならぬと思うのですが、そういうことについてはどうですか。
  16. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) お話通りでございまして、まあ明年度の問題、明後年度の問題、だんだんどうせ経済が発展していくに違いないですから、それに応じて一般的に歳入伸びていくだろう。こういう前提にわれわれ考えを立てているわけですが、かりにそうでなしに、全く横這いになっちゃった、こういうことになりますというと、今の経費の構成上は、御承知通り、放っておけばふえるのは、いまの人件費一つ、それからもう一つは、公債費であります、大てい団体では……。これも理屈抜きに義務的な経費ですから、公債費は大てい尻上りにおそらくふえていくと思います。そうするというと、結局そういう情勢で歳入歳出バランスを、つじつまをどう合せるかという問題になりまして、人件費も底抜けにふやしていくという形をとれば、もう仕事をやめて、自治体は給料を支払う団体にならざるを得ないということで、そこはやはり自治体行政運営としてはおかしいだろうと思うのであります。人件費は総経費のうちでしかるべき部分は占めなくちゃいかんが、それはいかなる場合でもしかるべき部分を占めるべきであって、人件費ばかりがたくさん、何割も占めて、仕事をやめてしまうということは、とうてい県民の福祉から考えても納得できないことでございまして、そこらは、全体としてのバランス考えるよりほかに仕方がないじゃないか。それからもう一つは、そういう公債費だけが尻上りに上っていくから、どうしても公債費の問題ははずして解決しなければ、これはすべての自治体について、今後の財政運営をまともにやっていくことができないのじゃないか。それが特に公債費を取上げて、特別に解決せざるを得ぬという羽目に追い込められているゆえんだろうと思います。だから、そういう問題をどうしても総合的に解決をしていかなかったら、ほんとうに自治体財政は今後正常な姿にならぬだろうという考え方で、われわれといたしましては、ぜひそういう問題を解決したいということを念願いたしておるわけでございます。
  17. 鈴木壽

    鈴木壽君 その赤字の出た原因、あるいはまた、国と地方との責任というようなことにつきましては、今さら私ここで申し上げようとは思っておりませんし、過去のいろいろの国会内の論議の記録を見ましても、相当言い尽されていると思うのです。ただ、今少くとも実際に現われたところをみますと、そういう結果的に赤字が出た、それを防ぎとめるための措置に伴って生じたはっきり見えるところは、一つ人件費についての非常なしわ寄せだと思うのです。いま一つは、投資的な経費に対するしわ寄せと、その他まだありますけれども、これははっきり姿を現わしたのは、大きなのは大体この二つだと思うのです。そこで私は、少くとも財政計画を立てて再建をさせるというような場合に、こういうような形においてさせるべきじゃないというふうに私考える。従って将来、まあ三十二年度以降の地方財政計画については、あとでまたいろいろお尋ねしたいと思いますが、少くとも根本的な考え方として、そういう人件費や、あるいは投資的な経費に過度のしわ寄せをするようなことは避けるべきだというふうな気持でなければいけないと思うのですが、こういう点について、今のお話に関連いたしまして、じゃ具体的にどういうふうなことを今おやりになろうとするのか、その点を一つ数学的に、たとえば公債費の問題にしろ、その他の問題にしろ、数学的にどういうふうにするつもりであるのか。そこを一つお話を願いたいと思うのです。
  18. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは、来年度財政計画の問題に結局なるのでございまして、来年度は、われわれも自治庁プロパー経費として国費で要求しているものが一つございます。今の公債費などというものはある程度利子補給、ものによっては元金の補給考えてもらいたいというので、これは概数ですが、百五十億ほどの要求をしているわけです。もう一つは、地方の問題は国の予算に直接関係がない、地方財源全般の問題で、地方財政計画をどう考えるかという問題になりまして、これにつきましては、今お話通り、従来建設的な事業がずいぶん押えられている、これは事実だろうと思うのであります。これにつきましては、仕事をやりすぎているという意見も一方にはあるのですが、われわれの考えでは、まだまだ地方仕事をすべきだ、そうしなくちゃ、とうていまともな行政と思えんというような考え方でありまして、そういうような経費は、今までの計画でみておった数字じゃ物足らんのじゃないか。これをもう少しふやさなければいかんというのがわれわれの基本的な主張であります。それと、もう一つ人件費の問題で、これは国家公務員にやはり準ずる昇給は、当然財政計画上保障されなくちゃいかんという前提に立っておりまして、こういう義務的な、恩給とか給与をみなひっくるめると、二百五十億内外になるはずでございますが、そういう金は当然財政計画上確保いたしたいという考えでおるわけです。そこで問題は、来年に、この前申しました通り所得税の一千億減税ということが一方で議論になっておって、かりに所租税が一千億減税になれば、それに伴いまして、あるいは交付税はその二五%、二百五十億は当然に減ってくる。それからさらに、住民税その他はそれにのっかって実はきまっていきます。これは二百十億くらい減っていく。つまり四百何十億という数字が当然にこれは地方財源として減ってくるわけです。そこで、自治庁といたしましては、国の減税はさることながら、地方はまだ必要な財源を確保するために、そうなればそれにはね返る措置を当然に講ずべきではないかという主張を現在いたしておるわけでございまして、これはまだ政府全般としては、問題が来年度予算編成の問題でございますので、確定的な方向にはもちろん至っておりません。自治庁といたしましては、地方財政状況考えまして、どうしても今の態勢でもって地方団体に入るべき経費を確保しなかったら、動きがつかんじゃないかという考えで一貫して進んでおるわけでございます。
  19. 鈴木壽

    鈴木壽君 いわゆる行政水準維持といいますか、最低のところは維持したいと、こういうようなことがしばしば言われておりますが、現在の状況からすれば、再建団体においてはとうてい維持どころじゃない、崩壊の寸前にあるとさえ、極端に言えば言えると思うのですが、そういうことに対して、いろいろ先だってから、あるいはただいまのお話から、あなたがたの考えておられるところの考え方あるいは問題のあり方というものが一応わかりました。僕らは、一応そういうふうな方向によって救済救済という言葉は少し当らないかもしれませんが、措置する以外にはないと、こういうふうにわかるわけです。ただ問題は、これは時期的にいろいろはっきり言えない段階であるということもあるかもしれませんが、たとえば公債費の問題にしろ、あるいはいまの減税に伴ういろいろなはね返りがある。これをどうするかというような問題を、自治庁の、これはぎりぎりの、これだけはどうしても確保しなければならぬというような線があるだろうと私思うのです。こういうことについて、もう少し突っ込んだお話をお聞きしたいと思うのですが、将来の財政当局との間の話し合いはどういうふうになりますか。いわゆる予算として来た場合に、地方財政計画として乗ってきた場合にどういう形になるか。それはいずれ将来の問題といたしまして、もう少しあなた方の、何といいますか、この線だけはというようなところを一つお話しいただければありがたいと思います。
  20. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) この問題は、実は政府としては、もちろんまだその段階にないだけでなしに、御承知のように、国全体として、税は税制調査会で議論して、また地方財政につきましては、地方制度調査会明年度の問題をめぐって審議中でありまして、両調査会ともいろいろ空気は出ておりますが、最終の結論が出ていない。その両調査会は、実は地方財政につきましては、考え方が必ずしも一致していないというのが実情でございます。税制調査会の方は、国税減税に伴うて、地方もあまり税制規模をふやさずに、こちらもある程度減税すべきじゃないか。財政規模を縮小すべし、縮小とは旨いませんが、普通並みに伸ばすなという一つ考え方があるわけであります。地方制度調査会は、むろん自治体現状をお考えになって、それはそうじゃない。今までの筋通りに伸ばして、国税の始末の影響を地方に及ぼすのはおかしいじゃないかという基本的な考え方をとっておられるわけであります。いずれにいたしましても、まだ正式の結論が出ておりませんが、自治庁といたしましては、どこがぎりぎりかとおっしゃられましたが、ぎりぎりということになれば、最後の政府決定ということになりますが、われわれはやっぱり地方制度調査会と同じ考えを持っておりまして、地方税財政につきましては、現在の制度基礎にして、このまま伸ばしていく、それが国税の理由でもし変化があれば、それは国税の問題であって、地方には現在の制度基礎にした財源が確保されるように制度を変えるべし、率その他を変えるべしと、こういうのが一貫した主張でございます。
  21. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは、お話のように、また、私も申し上げたように、今の段階としては、いわゆる政府全体の方針としては打ち出せないだろうと思います。ただしかし、少くともあなた方、直接地方自治体のことに関し、一応の責任を持っておられる立場としては、地方財政赤字の建て直し並びに将来への再建のために、確保しなければならぬという線は私はあるだろうと思います。それは常に頭になければならないだろうと思います。あなた方はしょっちゅう、行政水準をいかにして保持するか、将来向上せしめるかということについて苦心をしておられるようでありますから、そういうものをやる場合に、少くともこれぐらいの金がなければならない、現在のこういう状況は、ぜひともこれぐらいの金を与えなければならないという基本線はあるだろうと思います。そういうことを私お尋ねしたいと思うのです。将来のことはもちろん、私何べんも申し上げますように、これからのいろいろな大蔵当局なり、あるいは政府全体の問題としての決定は一応別として、あなた方の態度なり方針というものを承わりたい、こういうふうに思うわけなんです。  それからいま一つ、関連いたしまして、たとえば国税減税というようなことに関連いたしまして、せんだっての御説明の中にもありましたが、住民税の引き上げとか、あるいは農業施設税、まあ名前はどういうふうになりますか、そういう種類の税とか、あるいは消防施設の拡充のための税とかいうようなことがいわれておったと私記憶しておりますが、すべてなにか今の財政計画なり、あるいは赤字解消のためのそれというものは、さっきもちょっと触れましたように、何か住民にすぐしわ寄せがいくような形、直接いくような形に考えられておるのじゃないかという心配を私持つわけなんですが、一方において、減税になったということで喜んでいるというと、住民税あるいはその他のいろいろな税、あるいは法定外目的税なり独立税、そういうような形においてかぶさっていってしまう。結局減税というようなことも結果においては何ら効果はないことになるというようなことになると思うわけなんですが、そういうふうなことも合せて一つ考え方をお聞きしたいと思うわけなんです。
  22. 早川崇

    政府委員早川崇君) 全般的な方針について、昭和三十年度改革の重点は、御承知のように、三公社課税あるいは軽油税その他思い切った税制改革を行いまして、御承知のように昭和二十九年度においては二百六十億近い前年度に対する赤字、こういうのが御承知のように、三十年度は二十数億、さらに対三十一年度の決算はより好転すると、こういうことになりつつあるわけでありまするが、しかし、その根本原因の大きい部分は、もう切りつめるべきものをほとんど切りつめた、一例をとりますると、自治体に対するいろいろな寄付金なんかも思い切り切りまして、経費を節約さしまして、これだけでも百数十億円昨年度に比べまして効果が上ったと思うのであります。その他人件費、いろいろなものを含めまして、ぎりぎり節約の限度まで来たというのが現在の段階でありまして、来年度は、そういった方面における財政改善財源は非常に弾力性は乏しくなっておる。これが現状ではなかろうか。そこで、来年度に対しまして、残された問題は、ただいまも財政部長の言われましたように、第一は、何と申しましても六百三十億から七百億に上りまする公債費という問題をどうするか、これに対してぎりぎりの線というお尋ねでありまするから、私は、ぎりぎりの線は、少くとも学校施設とか、あるいは災害事業というようなものまでも、六分五厘なり七分という高利の借金でやらすという手はないではないか。本来ならば、それは財源を国が与えてやるべきものであって、無利子でやるならわかるが、六分五厘は高過ぎるじゃないか、われわれといたしましては、ぎりぎりの線として、少くともそういった方面の利子の半分、大体三分五厘ぐらいのものは国で補給すべきものであると考える。理論的にはもっと進んでいいと思いますけれども、財政全般から考えまして、来年度は最小限半額、それだけでも三百億近い財源が要るのでありまするが、国としてはこれはぜひやりたい。もう一つは、いろいろな税の自然増収その他によりまして、われわれが期待しており、来年度からいろいろ投資的経費をやろうと思っておったのが、今度一千億減税というもののはね返りによりまして、ここにせっかくわれわれが企図いたしておったのが入ってこないということが起る可能性があるわけでございます。これに対しましては、国というものの財政と、府県、市町村というものが大きい赤字をかかえておる財政であるという根本的相違という点に対する認識が、税制調査会委員諸君においては欠けておるのです。自治庁委員の人は、そういう立場を強く主張いたしまして、その結論には賛成しておりません。従ってこの問題は、地方制度調査会という、われわれの地方自治体側に立って理解のある制度調査会結論を待ちまして、当然あれは修正いたしたいとわれわれは考えておるのでございまして、まるまるこれが収入減になるということは、断じてわれわれとしては、現在の府県市町村の実情から見て承服できない。そこでもう一つの問題は、それを住民税の引き上げとか、あるいはその他住民直接の増税によって、税率の増加によってやるということは、最も政治的にまずい方法でありまして、われわれはそういうことは極力避けたい。なかんづく市町村民税の引き上げとか、あるいは農業事業税――農業施設税であれば農民の負担にはなりませんが、巷間いわれておりまする農業事業税となりますると、これは収入の非常に低い農民に過重負担をかける、こういう結果になりますので、われわれは賛成しておらないのでありますが、われわれの方向としては、むしろ交付税率の面で操作するとか、あるいはたばこ消費税とか、そういった国の財源地方財源の調整という方向にこの問題の解決の方向を見出したい。  以上、大体の方針を申し述べましたが、具体的な事務的なことは、事務当局からお答えさしていただきたいと思います。
  23. 鈴木壽

    鈴木壽君 今、次官から、主として二つの問題、公債費の問題と、直接住民に増税というような形で行われるであろう、そういう問題についての考え方お話がございましたが、一つ公債費の問題、これは、今の地方財政赤字原因というものの大きな要素であることはお話通りでございまして、私どもも、この問題は何とか早急に解決をしなければならぬ問題であるというふうに考えておるわけなんです。特にいわゆる地方の起債の性質というものが、当然国が措置をすべきであったにもかかわらず、措置されないために、それが起債という形で表われてきておったんだというようなところに、非常に大きな問題があるわけなんです。だとすれば、私は、今のお話のような、単に利率を六分五厘から半分ぐらいにするというようなことで私は糊塗できない段階になっておるんじゃないか、もっと根本的な対策を講ずべき、そういう事態になっているんじゃないかというふうに考えるわけなんでございます。  それからいま一つは、住民税その他の税の引き上げでございますが、これは、再建団体財政計画を見ますと、おしなべて住民税や、あるいはその他の税の引き上げをもって将来の税収入の増大をはかっていく、これは一様と言っていいくらいだと思うわけなんです。一方において、あなた方はそういうことは不賛成だと言いながら、現実の問題としては、財政計画の上にそういうものの引き上げを見ておるのです。それによって財政計画を立てろ、こういうことなんです。おそらく今は、どこの府県であっても、直接住民から税金を多く取りたいと思っているところはないし、できるならば、そういうものは極力避けたいというふうな考え方財政計画を立てていると思う。にもかかわらず、あなた方のサゼスチョンか、アドバイスか、それ以上の力か知りませんが、とにかくできた財政計画というものを見ますと、そういうものは、均等割において一〇〇%とか、あるいはその他の率をいま一〇%上げるとか、あるいはその他の法定外の税々取るというような形において将来の税収入の増大をはかっておる。そういうことによってバランスをはかっておるというような状態なんです。そうしますと、お話のように、一方には取りたくない、一方にはしかし現実には取らせるようにしてあるんだ。取らせるようにという言葉は悪いかもしれませんが、そういう事態になっているのでございますが、そうすると、そういうことに対して、将来是正するというような方向にあると考えてよろしゅうございますか。
  24. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今お話の問題ですが、これはまあ政務次官から御答弁がありましたのは、全体の税、財政考え方としての問題でありまして、もう一つは、これは自治団体ですから、個々の団体に対する自主的な財政経理の問題と、二つあるわけでございます。国の考え方といたしましては、政務次官のおっしゃった通りでありまして、これは、ぜひそういう方向に政治的にも解決していきたいという気はいたしております。ただ、ちょっと政務次官の御答弁に補足しておきたいと思いますのは、基本的な、交付税とか、あるいはたばこ消費税……、つまり所得税減税に伴う影響は、交付税に現われるものが一つと、地方住民税に現われるものと、二つあるわけでございまして、私どもは、交付税に現われるものは、交付税の率あるいはたばことかその他それに似通ったもので解決してもらうと、それから独立税の上に現われるものは、やはり独立税の上で解決してもらった方がよいのではないか。これはほんとうの地方の自主的な財源でございますから、それは今お話のように、住民税の負担を増加させるということはちっとも考えていないのでありまして、現在よりも負担を増加させないで、率の調整だけは技術的にやりたい。個人の負担をこの結果ふやさせてはいけませんから、そういうことはやらないで、その範囲において、放っておけば金額が下りますので、その率の調整だけを考えていくという考え方でございます。  それからもう一つは、再建団体における個々の団体財政経理の問題でありまして、今おしなべて、大てい増税しておるというお話でありましたが、県でも増税を計画に見ているのは数県のはずでございます。そうたくさんございません。住民税を上げている所も、これは一、二あります。その他自動車取得税とか、その他の税を相当上げておるところはございますが、全体としては数県だろうと思います。それで、これはわれわれも好ましい方法だとは考えておりませんので、標準的な税収入は、これは当然確保しなくてはいけませんが、それ以上特別な増税とか、新税をどれだけやるかという問題になれば、これは結局個々の団体再建計画がまあ曲りなりにも立つか立たぬかというぎりぎりの問題でございまして、ぎりぎり、どうにもそうでもしなければ立たぬという所は、まあやむを得ずそういう立場をとっておるのでございます。これも、たとえば住民税も増税、一〇〇%増税といって、いかにもひどうございますが、現実の負担を考えれば、あれは、県民税は、均等割は年百円でございますから、年百円といえば、これはまあ多いか少いかという議論がありますが、これはまあある程度上げても、それほど住民の負担が急激にふえるということにもならぬのではないかという問題もありまして、それぞれの県では、まあおもしろくないけれども、しようがない場合には上げざるを得ないという方針をとっておるのだろうと思うのでございます。しかし、これはほんとうに万やむを得ない措置でございまして、私どもが欲するわけでもなければ、その団体が欲するわけでもない。窮余の策として、こうせざるを得なかったのだろうと思っております。
  25. 鈴木壽

    鈴木壽君 そうしますと、あなた方の立場、考え方としましては、これは、今の部長のお言葉の中にありました、地方の自主的な考え方によってきめるべき問題だと、こういうふうにおっしゃったと思うのですが、ほんとうにそうなんですか。これは、県の再建計画を建てる場合に、あなた方におそらく何べんも聞いて、いろいろ折衝なされたと思うのです。僕ら、地方に今までおって聞かされたところによりますと、これはどうしても増税をしなければならぬというふうになっておるのだ、言われておるのだというようなことさえ聞かされておるのですが、そういうようなことはないのですか。
  26. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは結局再建計画が立つか立たぬかと、こういう問題でございまして、かりに増税をしなくても、そのかわりにいろいろな経費を圧縮して立てるのだと、こういうことになれば、これは一つ考え方です。しかしながら、現実の問題は、先ほどいろいろお話がありましたように、人件費においてそう減らせるかといえば、減らすには限度があるだろうと思います。そして、建設的な仕事だって、そうむやみやたらに切れるものでもないのでありまして、そういうようなこととの総合的なバランスで、この経費はこれだけしか出せぬから、その穴埋めはある程度の増税でまかなわざるを得ない、こういうこともあり得ると思います。それでございますから、結局、ただ、お前のところを増税しろとかするんだとかいう問題でなしに、計画が総合的に立つか立たぬか、立つようにこっちはもちろん知恵はかす、こういう態度をとっておるのでございまして、これは、あくまで個々の団体赤字現状と収支の状況を見た、総合的な考慮の上に立った判断でございますので、そういう意味で、一つ具体的の問題も御検討願って、御了承願いたいと存じておるわけでございます。
  27. 鈴木壽

    鈴木壽君 今の税の問題やら、あるいは給与の問題、その他投資的な経費の問題、これは、私、結局は国の地方財政に対するところの考え方、それによって今いろいろ申し上げたような問題が出てきていると思うのです。そこで、現在の状況を見ますと、再建団体のいわゆるバランスをとるための、これはまあ少し極端な言い方かもしれませんが、すべて地方自治団体責任においてやらせる、こういう考え方だと思うのです。さっき次官や、また部長からも、将来としては、あるいは公債費の問題とか、まあその他いろいろ考えなければいかぬというお話がありましたが、私は、財政計画を立てる当初から、こういう問題を当然考えて、その中に織り込んで財政計画を立てさせるべきであったと思うのです。これは過去のことですから、今さら言ってもらちのあかないことかもしれませんが、しかし、少くとも三十二年度以降におきましては、そういう考え方に立ってやらない限り、今私が申し上げなようないろんな問題は解決できないと思うのです。自主的だと、こう言っても、当然国の責任において見てくれなければならないところの、そういう問題が放置せられておるというところに、こういうところを切りつめたり、しわ寄せが行ったり、あるいは増税というような形においてつじつまを合せざるを得ないような状態に追い込まれているわけです。私が申し上げたいと思うことはそこの問題です。なおまた、将来の、昭和三十二年度以降における地方財政計画を立てる場合、あなたがたのいわば不退転の決意と申しますか、そういうところを、はっきりしたことを私お聞きしたいと思うわけなんです。
  28. 早川崇

    政府委員早川崇君) だんだんと質問の要点がわかって参りましたが、現在の政府のやってい地方行政の基本方針は、いわば修正資本主義的な格好の地方行政でございまして、本来ならば、地方自治体が独力で完全な、自治という建前百パーセントで、給与の問題も自主的に考え、また、増税減税ということも自主的に考えるという方向が究極の理想でございます。しかしながら、御承知のように、各地方自治体間のアンバランスという問題が非常に激しくなるというので、やむなく国の方で増税も考えるし、また、国からのいろいろな援助ということになっておりまして、それが過ぎますと、御指摘のように、自治庁があまりに地方団体に干渉すると、統制のための統制という危険が生まれるわけでありまして、この点につきましては、厳にわれわれといたしましては反省をいたしまして、自治体が一人立ちになってい方向への国の援助、たとえば、公債の利子補給も半額することによって、より自由になっていくじゃないかという基本方針で今後も推進していきたい。昨年度、この国会で御承認願いました三公社その他の自主財源充実ということも、すべてその線にのっとって考えておるわけでございます。今、鈴木委員の御指摘の、できるだけ自主的にやれる方向に実力をつけさすという方向は、今後も続けていきたいと思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  29. 鈴木壽

    鈴木壽君 何かほかの、行政部長との関連もあるそうでございますから、あとで私また質問をお願いしたいと思いますから、一応ここで……。
  30. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 了承いたしました。     ―――――――――――――
  31. 本多市郎

    委員長本多市郎君) この際ちょっと御報告申し上げます。ただいま、委員岡田宗司君が辞任されまして、占部秀男君が再び委員となりました旨通知がありましたので、この際御報告いたしておきます。     ―――――――――――――
  32. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 ただいまの再建団体における投資的経費の問題と関連した問題でございますが、この投資的経費の抑制七五%という問題で、すでに内示を受けて、着手をしている公共事業を打ち切らなければならぬというような事態が起って、各都道府県、市町村とも、再建団体が非常に困っておることは御承知通りでございます。ところで、公共事業費については、御承知通り府県の、あるいは市町村の要望がもとになっておりますが、もともとやはり国家としてもその必要を認めて、そうして配付をして、さしておりまする仕事でありまするから、これを再建団体について抑制するという考え方自身に非常に問題のあることは、ただいま鈴木委員からも御意見のあった通りと思うのでありますが、それはさておきまして、とにかく、明年度財政計画においては、これを緩和していくというお考えのように今拝承したわけで、非常にけっこうに思うわけでございますが、ぜひそうお願いいたしたい。ただ、それをやるにつきまして、七五%の制限を全廃していただければ、そういう問題は起らぬと思うのでありまするが、これを緩和するというような場合に、やはり抑制されるものが出てくる。ところで、今年度のこの七五%の抑制でございまするが、今着手しておる事業から何を抑制して打ち切るかということについては、これは全然地方の自由にさせておるのでございますか。それともまた、補助について、起債等の割当等についても、自治庁として権限をお持ちになっておるのでありまするから、その起債の承認等に関連しまして、取捨選択といいまするか、指導といいまするか、そういうことが現実には行われておるのではないかと思うのでありまするけれども、それは、どういうふうに今までやってきておるのでありますか、その実情一つお願いいたします。
  33. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今、大沢委員のお尋ねの、再建団体の七五%の問題というのは、要するに、こういうことになっておるのでございます。再建法、つまり国の補助負担がつく特定の公共事業については、過去の七五%以下に押えたならば、国の補助負担率を普通の団体よりも二割よけいやろう、こういう仕組みがございまして、ただし、まあ七五%の上をこす場合には、自治庁長官が特別に指定した場合は、その金額まで仕事をやってもいい、二割よけいやろう、こういう仕組みになっておるわけなんでございます。そこで、自治庁長官の指定をどうするかということが非常に大問題になったわけでございまして、再建団体として見るというと、過去の七五%しか仕事がやれぬことになったら、これは大問題。しかも、それは今年一年だけの問題ではない。再建指定期間、五年も七年もずっとそういうことになっちゃ非常にこれは大問題だ。これは、われわれも全く同じ考えを持っておったのでございます。ただ、あの法律ができました趣旨は、再建団体はやっぱり金に限度があるから、仕事はできるだけやらしてやりたいが、普通の補助率じゃ仕事がなかなかやりにくいだろう。そこで、補助率はよけいやろう。しかしながら、再建団体に特別にほかの県よりも公共事業のためによけい金を使うわけにはいかないから、仕事だけはある程度押えていかなければならぬのじゃないか。ある程度切り下げたところで補助率は上げてやろうという仕組みであの法律ができたわけなのでございます。私たちのあの運用の基本方針は、再建団体と非再建団体との間に、公共事業費の流れ方について差等があってはいかぬ。いかに再建団体であろうとも、必要の仕事はやってやらなければいかぬ。それで、全体の公共事業は、再建団体が全部で十八ございますから、大体県の半分近くありますから、大体従来再建団体に流れていた補助量は、今後もずっと流れていく態勢を確保しよう。そうしますというと、その公共事業は、全体として伸び縮みがあると思います。伸びたら伸びたで、同じ分量だけは同じ再建団体の中に流れていくことを確保しようじゃないか、こういうのが自治庁の基本的な精神でございまして、それだから再建団体と非再建団体との間にいわば損得がない。再建団体に行っておった金が非再建団体に流れていくようなやぼなことがないようにまずしようじゃないか、こういう基本方針で大蔵省に臨んだわけでございます。そこで、あの当時七五%ときまりましたのは、去年の、今年の予算がきまらない前に制度がきまったのでございまして、そのときには、公共事業は大体過去よりも減るだろう。こういう前提で、大体九十何%に減るのじゃないかという大蔵省主計局の検討がありまして、その前提で七五%の率を一応きめたわけです。ところが、実際の公共事業は、ちょっと去年よりふえておったわけであります、一〇二%に。そうすると、われわれも、九十何%の前提で作ったものが一〇二%にふえたのだ、再建団体にその分をやらなきゃいかぬじゃないか、それが公平だ。こういうわけで、同じパーセンテージで仕事の金を流す分量をきめようじゃないかということで、総平均にいたしまして、大体八四、五%になるように。そうすれば再建と非再建団体との間に損得がない、こういう数字になりましたので、その筋で大蔵省と大ワクをきめたわけなのでございます。今後もその方針でわれわれとしては進みたい。まあ大蔵省がどう言うかしりませんが、あくまでもその方針で進みたいと思っております。  それともその場合にもう一つ問題になったのは、直轄事業と補助事業とがございまして、直轄事業は、国が自分の計画で独自に立てるのでございまして、一々地方の意見を聞いてこれはやるわけじゃありません。しかも、国の必要でやるのですから、特に重要な仕事に違いないから、こいつを補助事業と打ち込みでやるというと、どうも補助事業が抑えられるのじゃないか。それはいかぬ。直轄は直轄事業として国の必要でやるのだから、国の必要の立場から考えるべしというので、従来は一緒に考えるようになっておったのを、建前を分けまして、直轄は国の必要で特別に考える、補助は補助で考えようというふうに、制度も、大蔵省に特に話をして、特別に変えさしたわけであります。それで、大体補助事業につきましては、再建団体とすれば、金に余力のある限りは、非再建団体に累を及ぼさぬ範囲仕事を最大限にまでやらしてやろうということで、問題をまずきめたわけです。それでその次には、それならば、個々の再建団体にどういう割合でその金額を配分するか、こういう問題が一つございまして、これにつきましては、個々の再建団体再建計画基礎にいたしまして、この再建計画で、仕事を余力があってたくさん考えておるところもあれば、余力がなしに仕事を押えておるところも実はあったわけでございます。その計画基礎にして、実際の力が可能な限り十分にそこに按分しようじゃないか、なるべく公平に按分しようじゃないか、こういうことで、大体のワクというものをきめたわけでございます。それで、そのワク内における個々の仕事は、これは建設省の仕事もあれば、農林省の仕事もある、運輸省の仕事もございまして、しかも、建設省だっていろんな仕事が各種各様にあるわけです。その仕事の選択は、もう全部自治団体の自主的な決定にまかせるということにいたしまして、自治団体でそのワク内における仕事の取捨選択をきめて、それを各省に通知して、各省もそれに合うようにほんとうの補助事業をきめる、こういう仕組みをとったのでございます。それでございますから、個々の仕事決定につきましては、自治庁は全然関与をいたしておりません。ただ特殊な、実は一般にこうならしてやれる問題と、ダムとか何か特別な仕事で、どうも一般の基準で考えられぬという特殊な仕事が実はこれはあるわけなんであります、県営の仕事でも。そういう特殊な仕事だけは、むしろ別ワクで補助率を認めてやらなかったら仕事がつらいから、そういうような、ダムのような特別な仕事とか、それから緊急な失対事業とか、これは理屈なしにやらざるを得ぬものですから、そういう特殊なものをピックアップして、緊急砂防とか、災害に伴うやつはもう動きがつかぬ、そういうものは全部別ワクのものにして、要るだけの仕事を特定の県につけようじゃないか。それ以外のものは、総ワクの中でそれぞれの県で自主的に判断をしてもらう、こういう建前をとったのでございます。
  34. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 その再建団体の中における個々の事業については、団体の自主性にまかせるという一般方針は、それはけっこうと思います。ただ、その特殊の事業について考慮していただいたということも、これは非常に行き届いておると思うのでありますが、実際問題として、なおもう少しその特殊の事業の検討を深くお願いしたらいいのじゃないか。ダムあるいは緊急砂防等について、そういう考慮が払われたということはけっこうと思いまするが、たとえば両県にまたがってやっておる、再建団体たる県と、そうでない県にまたがっておるその橋梁、こういう仕事について、現実に再建団体の方では着手してしまったものを打ち切った、非再建団体の方ではこれをやっておる。しかも、すでに年度当初割り当てられた経費に基いて、再建団体の分まで来るものとして、すでに橋げたを注文しておる。それを打ち切ってしまっておるというふうな実例が、これは現にあるわけです。従ってその橋梁なんかについて、しからばそういう考慮をしておりますか、実際問題がありますので、お聞きします。
  35. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今のお話、実は初耳でございまして、そんなことはあり得ぬと思っておりましたが、橋梁は、現実には特別の考慮を今度やっておりません。要するに、非常に金額の大きいやつですね。動きのつかぬ、数億もかかるようなやつは、普通の中小河川とか、道路の維持、修繕、改良費と違うから、それは別に考えなければいかぬのじゃないか。そうでない、普通の道路や橋梁ならワク内で、県でも、自分だけでも自主的に操作できるのじゃないかという基本的な考え方で実はやったわけでございます。現実に、今のお話は初めて承わります。橋につきましては、そういう話があるということも、われわれあの事業を指定する場合に実は聞いたこともないのでございます。この点手落ちだったかもしれませんが、今度は考えておりません。
  36. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 橋梁でも、直轄河川にかかっておる橋梁というと、これは二年あるいは三年継続事業で、一億、二億という、相当の経費事業費になりまして、必ずしも直轄砂防あるいは小さいダムなどと比較して経費の少いものではないわけです。そういうものについて、ここで何百万、一千万、二千万という経費になるわけでございますが、これは一方では打ち切り、一方ではすでに継続されるものとして注文してしまっておる。非常に困っておる実例があるわけであります。今年度においても、そういうものは補正できればぜひ私は補正すべきものではないかと思いまするが、明年度以降のこの特殊事業の考慮については、なお特殊事業というものをもう少し検討されまして、拡充されて一つ考えいただくようにお願いいたしておきます。  私の質問はこれで打ち切っておきます。
  37. 占部秀男

    占部秀男君 簡単に、藤井さんにちょっとお伺いしたいのですが、この前の委員会で、実は昇給関係の問題について、具体的に愛媛県の一つの例をあげて、昇給関係についてお伺いしたいと思うのです。愛媛関係については調査をするということになりましたので、法律的ないろいろな問題は、あとで一つ根本的な問題としていろいろお伺いしたいと思うのですけれども、ただ具体的な扱い方の問題で、一ぺん愛媛関係の問題についてお聞きしたいと思う点があるのですが、御存じのように、今度の愛媛の問題は、から昇給の条例を作った上に、勤務評定を用いて三割なら三割落そう、こういうふうであるわけでありますけれども、こういうふうな例は他の都道府県に私はなかったと思うのですが、どっかございましたですか、何かそういう点でわかっておったら一つ
  38. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) お答えを申し上げます前に、ちょっとごあいさつをさしていただきます。  私、先般小林前行政部長の後任といたしまして、新しく行政部長に就任をいたしました。何分まだ不なれでございまして、いろいろ不行き届きの点が多々あると思います。よろしく御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。  今の占部委員の御質問でございますが、愛媛の問題につきましては、委員の各位にもいろいろ御迷惑を実はおかけをいたしておって、われわれとしても恐縮をいたしておるのであります。この間の委員会等におきまして、いろいろ細かい点にわたって質疑応答がかわされておりますので、私からその点繰り返して申し上げることは差し控えたいと思うのでありますが、今のお尋ねの点だけについてお答えを申し上げておきますと、私の承知をしている限りでは、最近ではそういう例は、ほかにはあまりないのではないか、かように思っております。
  39. 占部秀男

    占部秀男君 それで、これはまあいろいろな見方もあると思うのですけれども、どうも今度の、制限の上に制限を加えるようなやり方というものは、これはあまりおもしろくない。少し全国的に、他の都道府県に比べて過酷な、過酷という言葉がいいか悪いかは別にして、少しひどいようなやり方ではないかと思うのですが、そういう点について自治庁の方ではどうですか。判定しろという意味じゃないのですけれどもざっくばらんな話は、どういうようなお考えを持っておりますか。
  40. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 本件については、私どもとして、今ここでやり方に対して非常に酷であるというような言い方をいたしまするのはいかがかというふうに存ずるわけでございますけれども、全般的に見まして、私ども財政部あたりでも特に考慮をいたしておりますのは、財政再建という一つの至上命令を果しまするために、各種の経費節減は行なって参らなければならない。それはやむを得ないことでございますけれども、特にわれわれ行政部の立場といたしましては、やはり人件費に過度のしわ寄せがくるということは、これは何としても避けてもらいたいという考え方でおるわけであります。ただ人件費というものが、府県経費の中でも、占めておる地位というものは、これは非常に大きいわけでございまして、全然これが節減対象にならないというわけにも参りません。そういう点で応分の、公務員自体についても、ある程度の犠牲は忍んでもらわなければならぬというふうに考えておるわけでございます。ただ一応のめどといたしまして、いわゆる類似団体、同じような財政状況にあり、同じような客観情勢にあるというような類似団体というものから、あまりひどくかけ離れた措置をやっているかどうかという点がめどになるわけだろうと思うのでありまして、その点につきましては、私の方でも、目下いろいろな角度から検討を加えております。その結果を待ちまして、措置を講じ得る面が出て参りますれば講じて行くという点については、なお考慮をいたしたい、かように考えております。
  41. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、今日は定期昇給昇格、その財源のことについて、しかもその基本的なことだけお尋ねしたいと思うのですが、お聞きしておりますと、地方財政は非常に苦しい、だからそのしわ寄せ人件費やあるいは投資的な事業に行くのはやむを得ないじゃないかというような考え方に立って、大体事を進めておいでになるわけですが、その場合に、人件費しわ寄せがくるのは当りまえじゃないか、こういうことですか。そのしわ寄せは、たとえば中央政府では盛んに行政整理というもので大体やってきたわけです。ところが実際やってみると効果はなくて、員数を減らしたけれども、また入れておりますから、退職金だけよけい取るというのが中央政府でやってきた今までの例だと思う。そのしわ寄せだということになると、結局定期昇給昇格の実質的なストップだ。そういうことがいい、これがいいのだ、やむを得ないのだということは、自治庁としては言えない立場じゃないかと思うのですが、どうしてそういうことが言えることになるのか。
  42. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは今の、いいというか、やむを得ぬというか、そこの言い方の問題で、まあよしあしということになればいろいろ議論もあろうと思います。ただこういう問題が一つあろうと思います。地方財政については、今まで繰り返し申しました通り国家公務員給与に準ずる手当をいたしているのでございまして、それですから、個々の団体の職員の給与国家公務員に準ずる程度でなければ、財政上は必ずしも動きがつくとは言えぬという理屈一つあるわけです。ゆとりがあればもちろん上げても一向かまいません。そういう問題が一つあろうと思います。それからもう一つは、今お話通り、職員の数がどうかという問題がございまして、これはもう、それはゆとりがあればなるべくたくさんおって楽に勤務した方がいいと思いますが、まあがまんできるものならできるだけ少い人の数で、県民のために仕事をよけいやった方がいいという理屈もありまして、そういう員数の問題がどうかという問題が一つあるのです。もう一つは、職員の構成、年令構成その他が、若い者で張り切ってやるという場合と、年取った人と適当に入れかわったらどうか、こういうふうな問題がいろいろございまして、人件費の問題は、人件費内部だけでもそういう問題を総合的に考えるより仕方がないのじゃないか。それと、人件費とほかの経費とのバランスの問題と、両方考えて、これ以外にはやむを得ぬということになればやむを得ぬ。しかしもっと別の見方で、いやそれが合理化だという判断がつく場合もあり得ると思う。個々の団体にとっては、合理化だといったら言い過ぎじゃないかという御批判もあろうと思いますが、そういうことでやはり総合的に考えてみるより仕方がないのじゃないか。だれが考えても合理的なものを非常に不合理にするのは、これはもちろんいいとは言えませんが、そういう場合はほんとうにやむを得ざるものがあるかどうか、こういうことになるのじゃないかと思います。それぞれの団体によってやはり事情が違いますので、一がいに申せませんが、いろいろの場合に即して言うよりしようがないのじゃないか、きわめて率直な話ですが、そういうふうに考えます。
  43. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 国公の方は四%という一つの定期昇給昇格財源が見てあるのです。同じ公務員で、地方公務員は国公に準ずるということになれば、当然四%のものは見たっていいじゃないか。ところがそれを見ずに、今お言葉のように、いろいろなことがあるけれども、やむを得ないじゃないかとおっしゃるが、一体国公と地公とのバランスの問題を考えておられるのか、そういうことは全然脅えなくて、どうも金がないからやむを得ぬのだということだとすれば、少し私は納得できないと思うのです。そこでもう少し堀り下げて、あなたの方は一体国公、地公とのバランス考えておる。あるいは地方公務員でも大都市と小さな村、町の人とは非常にバランスが違うわけです。またとれていない、アンバランスになっている。そういうものまで一つ指示というか、何か指導的な立場に立って、そういうものでバランスをとって一つやって行こうというような基本方針があるのか、何にもなしでですよ。ただ、たまたま金のつじつまさえ合えばいいんだ、一番合わせやすいのは人件費だから、そこへしわ寄せをやって行くのだと、こういう考えなのか、そこの基本的なことが、方針と申しますか、そういうものを私は聞きたいのです。
  44. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これにつきましての基本的なことは、もうきわめて明確に確立をしておるのであります。これはまあここで何べんも申し上げたと思いますが、それは財政計画上は国家公務員に準ずる、同じ扱いをする。従いまして、国家公務員につきまして四%の昇給率を見ておる以上は、今年も財政計画上は四%の昇給率をちゃんと見てあるわけでございます。そのときに、そこにまあ一つの誤解があるのですが、その四%というのは、国家公務員と同じ基準で地方の職員の給与をならして計算した基準を基礎にして四%をかけておりますから、現在の現実の職員の現給を基礎にして四%をかけているのじゃございません。これまたはっきりしておる。それでございますから、現実の職員が高いとか安いとか、いろいろ議論がありますが、まあ総体とすれば高いはずでございます。総体だとすればですね。そこで、そこに現実の職員との開きが個々の団体では出てくるのでございます。それと、その上にさらに職員の数の問題がまた影響があるのでございます。財政計画上はちゃんと職員の総数につきましては、この前の給与調査のときの職員の数を基礎にして、減らすものは減らす、ふやすものはふやすという数で総ワクを見てあります。これも数字上合理的な数字でできておるわけでございます。で、そういう点は、これはもう自治庁としては従来から一貫した方針でございまして、今後ももちろんそれは曲げるつもりはございません。必ずそういう式でやっているわけでございます。それが個々の団体にどう当てはまるかという問題になってきますと、個々の団体の問題として、団体の事情によって多少の食い違いが出てくる。だから個々の団体では、大都市などではそれ以上に財源があるからといって月給を上げております。これはまあ常に国家公務員以上に上げておられます。多い団体は数千円高いんじゃないか。あるいは抑えるべきだという議論まで一方にあるわけです。これもしかし、われわれも自治団体なのだから、まかしたらいいじゃないかという考えであります。またほかの団体について言えば、特にいなかの町村あたりで言えば、町村の実情にもよりましょうが、国家公務員や、東京のことを考える必要がないのじゃないかということで、現実には安いところもあります。これは事実だと思います。そういうわけでございます。しかしながら、財源としてもう国家公務員並みにやり得るようにやってあるということだけは、これははっきり申し上げられると思います。
  45. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、自治庁の方としては四%の昇給財源等は全然見てある。ただ、もし定期昇給昇格が延伸になっているのは、それは地方団体の自主性においてやっておることであって、自治庁としてはそういうことは自由だからかまわぬと、こういう態度ですか。あなたも行政部長をやっておいでになったのですが、そういう場合には、これに対しては自治庁が見てやっているのじゃなくて、どうだということについては何ら指導もせずに、そういうことが現実に行われておるわけです。何にもこれは自主性の問題だから知らぬと、こういう態度なんですか、そこはどうなんですか。
  46. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) そこでまあ財政的にはそういうふうに見てある。そこで現実に、かりに団体においては、それよりもはるかに、はるかにというと語弊がありますが、多少でも高いところが従来多かったことは事実なんです、少くとも去年の調査では。そういうところは、その人件費の多い部分だけが財政計画よりも重圧を、人件費にむしろプラスにしわが寄って行く。きわめて露骨に言えばプラスにしわが寄って行くわけです。だからそれの部分だけはほかの仕事をちょん切らざるを得ない、こういうことがありまして、むしろ財政全体を合理化するためには、むしろそれは財政計画並みにならした方がいいんじゃないか、こういうところがこれはあり得るのであります。だからそういうところは、私はある程度そうやっているんじゃないか、まあやったって、これはいかぬとは言えぬのじゃないか、こういう問題が一つと、それからもう一つは、そこまで行かぬが、今度は赤字団体給与のベースとして見れば、必ずしも国家公務員とそう大差はないが、非常に過去の赤字がたくさんあって、この赤字をどう穴を埋めるかという問題がございます。再建債で一時たな上げしたけれども、結局これは再建債ですから、利子をつけて返さざるを得ない。その利子は一部補給をしておりますが、返さざるを得ない。そこでその穴埋めをするために、全体の財政計画をどう調節するかということが財政計画の問題であって、そのときにも、先ほど行政部長も言いました通り人件費にだけしわ寄せたということは、これは絶対にしてはいかぬ、これはわれわれもはっきり一貫してそう申しておるわけであります。それですから、人件費物件費も建設事業もなべて押えざるを得ない。建設事業を押えれば、県民のためにはならぬけれども、それもやむを得ぬじゃないか、全体としてある程度均衡をとるためにがまんせんならぬ場合が、これはあり得るのじゃないか、その場合はやはりがまんしてもらわざるを得ないだろう。しかしながら、そのがまんが全く非常識で、よく議論がありますが、今年度一文もだれにも上げぬ、そんなことはなかなか実際問題として人専管理上も続くものじゃないだろうと思います。そこにかりに現在、昇給一文も見ない、私のところは仕事をやるのだという県もないわけじゃありませんが、そこはそういうことをやると無理があるだろう、ある程度仕事を抑えて、その部分はある程度昇給を見たらいいじゃないか、逆にわれわれとしてはそういう意味のつもりで指導を実はやっておるのでございます。
  47. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、指導は、定期昇給昇格は一部のものをやってもやむを得ないのだ、むしろそういうことを慫慂するようなことに実質的にはなるのじゃないですか。
  48. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今の問題は、一部のものはやむを得ぬじゃないかという問題、結局昇給全体のワクをどうするかという問題だろうと思います。そこでワクをどうするかという問題が一つと、今度はワク内において昇給のやり方をどうするか、そんなら均分に昇給延伸なら昇給延伸をするという方針もありましょうし、そうでなしに、ある程度成績を考えて、成績の良好なものと、そうfないものとを、ある程度一時的には差等をつけるなり、こういうこともあり得るだろう、そこらの問題になるのじゃないかと思います。
  49. 占部秀男

    占部秀男君 今、小林さんのお話の中で、一年間なら一年間定期昇給がストップする、こういうことが一つの大きな問題で、こういう問題については行政指導というものをやっておる、こういうお話だったと思いますが、どうですか。
  50. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは個々の一々の団体予算を一々自治庁が握っておるわけじゃないのですが、再建団体だけは再建計画を持ってきますので、再建計画で当年度の分は、少くとも一文もだれにも月給を上げぬとか、こういうのは多少はゆとりがあり得るのに、全然それ以外に手はないと言えば別ですが、それはあまりひどいじゃないか、ある程度昇給をやった方がいいのじゃないかということは、極端な団体については言っておるわけであります。しかし、まあ最後には向うは蹴ってしまいますけれども、われわれとしてはそこはバランスがとれるように、人件費とほかの物件費事業費バランスがとれるように考えろということは指導いたしておるわけであります。
  51. 加瀬完

    ○加瀬完君 行政部長お見えになっておりますから伺いたいのでありますが、愛媛の問題は、この前にもいろいろ論議されましたけれども、ああいったような条件が一体妥当なのかどうかということと、なぜああいう条件が生まれたかという問題をあわせて考えなければならないと思うのです。私は今言った後者の方からお伺いをしたいと思うのですけれども、結局行政部長もさっき御答弁ありましたように、極端な一つ給与ケースが生まれたわけでありますが、そのよって来たるところは、再建計画が現われたということになろうと思います。そこで府県財政実態調査報告というものが府県知事会か何かの依頼で、学者たちによりましてなされておりますが、その中に再建団体といなとを問わず、府県昇給停止あるいは延伸等の方法は現在すでに限界に来ている、限度に来ていると、こういう報告がありますが、一応やはりこれはお認めになられますか。
  52. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 一般的にはそういう見方が正しいのではないかと思っております。
  53. 加瀬完

    ○加瀬完君 それで、こういう結果というものが将来続いては困ると、これはお伺いするまでもなく、そういうお立場だろうと思います。そうしますと、こういう結果が現われましたのは、再建団体給与計画というものに無理がある、そのためにこういう形になって現われた、もっと極端に言うならば、愛媛のような場合は、再建団体給与計画というものに無理があって、ああいう結果になったというふうにはお考えになりませんか。
  54. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) この点は先刻もお話を申し上げておりまするように、人件費に対するしわ寄せの度合いの問題、これが一般的には基準というものは立てにくいのでありまして、それぞれの具体的な地方団体の各種の事情を勘案いたしまして、総合的に判定を下さなければならぬ問題でございます。その場合にやはりある程度人件費に対する犠牲というものも、財政再建というこの大きな目的を達成いたしまするためには、やむを得ない措置であるというふうに考えまするけれども、その度合いがあまり非常識である、著しく不当であるというような場合、特に類似団体等との比較におきまして、あまりにも不当であるというような場合におきましては、われわれといたしましても何らかの行政指導措置を講じて参る考えであります。
  55. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうすると、愛媛の場合は、今、部長の言う極端な例というふうにはお考えになりますか。
  56. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) その点はさっき占部委員に対してもお答えを申し上げましたように、ただいまいろいろ類似団体との比較その他について詳細に検討を加えております。その検討の結果について答えが出ました際に一つ申し上げたいと思います。
  57. 加瀬完

    ○加瀬完君 検討の必要はないと思うのです。あなたは類似団体その他を見ても、こういう例はあまり聞かないとおっしゃった。類似団体にも例のないようなことをやっているから、これは異例な措置なんです。で、これは当然私は問題にすべきことではないかと思う。そこで行政部長としては、さっき小林部長がお答えになりましたけれども、再建計画と増税の問題でありますが、再建法の性格というものを見て参りますと、一方には経費の節減というものによりまして赤字の出るのを防いでいるとともに、一方には増税と言いますか、収入増と言いますか、増収というものを計画しまして、二つのバランスの上に再建計画を進めて行くという建前になっていると思うのです。しかし各団体から出ております再建計画を見ますと、増税というような形で出したり、あるいは特別な増収の方法をとりますと、住民からの反撃が多いので、増税しなければならない部分も増税をしないで、その分を節約分でまかなうという形で多くの再建計画が作られておりますので、そのためのしわが人件費に過度に寄ってきているというふうに私どもは判断をするのです。で、過度に寄ってきておるということが言い過ぎなら、そういう傾向が非常に顕著であるということはお認めになりますか。
  58. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) この点につきましても、個々具体的の団体について、いろいろの事情なり、特に財政的な構成なりというような点を分析をいたしませんと、一般的には言えない問題ではないかというふうに思うのであります。ただ増税というようなことも、これは住民の立場等から考えますというと、当局といたしましてそう軽々に考えるべき問題でない、適当な事柄ではないことは言うまでもないのでありまして、ただいろんな情勢から、そこまで行かなければやむを得ないというような場合におきましては、増税の措置等も考えられてくるのじゃないかと思うのであります。ただ当局があまりに安易な考え方から、ただ単に人件費に対してしわ寄せをするというような傾向がございましたならば、そういうような態度は、これは公務員の給与というような面から見ましても、考え直さたければならぬ問題じゃないかと思っております。
  59. 加瀬完

    ○加瀬完君 私も増税の幅があるところは増税すべきだというふうなことは考えられないと思うのです。そういうことは申し上げません。しかし再建法の建前というものは、一方には増税、増収入、一方には節約、節減という方式をとっておるわけです。ところが増税、増収入という方にはあまり力を注がないで、再建団体は大体節約、節減という方法をとっている、そのために給与費などに異常にしわが寄ってくるということは一応私は言えると思う。それは今、部長さんがおっしゃるように、過度な給与費の切り下げのような形は好ましくないというお答えでございますから、そういう方向で御指導をしていただかなければならないと思いますが、そこで愛媛のような極端な例だけではなくて、ああいう方向が一般の再建団体にこれから現われて参ると思うのです。それはどうしても再建団体給与計画そのものに無理があるからだと思うのです。そこで愛媛とかどことか言いません。あなた方の方で考えて、これはどうも給与計画が、再建計画とは言い条、あまりにひどいではないか、こういう事実が、対象がありましたときには、これに対して何か救済策と言いますか、是正策というものをお考えになっておられますか、これは政務次官でもけっこうです。
  60. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今の加瀬委員のお尋ねでございますが、再建計画につきましては、きめたときはもちろん、変更のときにも自治庁長官の承認が要りますので、私も必ず目を通すことにいたして、おるのでございます。その際に今お話のように、その計画の立て方が、特に人件費に非常識に不都合になるようなことになれば、そういうことにならぬように私どもといたしましてもそれは指導をいたします。  ただ、もう一つ申し上げておきますが、指導はもちろん、助言、勧告はやりますが、最後の決定権はこれは団体にありまして、決定してしまったならばこっちに修正権は全然ございません。それは今の自治を尊重する建前からそうなっておりまして、こっちは言うたけれどもやっちまったということは、普通はまずないと思いますが、そういう場合はやむを得ませんから、その点だけ御了承を願います。
  61. 加瀬完

    ○加瀬完君 そこで、愛媛のような場合が事実となって現われました場合には、給与計画について、何かああいうような方法をとらなくてもいいような財源措置と言いますか、行政措置と言いますか、そういうものをしてやろう、率直に言うならば、再建計画変更によりまして、ある程度財源の余裕を与えてやるというような考慮というものを自治庁はお考えになっておりますか。
  62. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 愛媛再建計画変更につきましては、まだ具体的に私は聞いておりませんが、これは今、加瀬委員がおっしゃいましたが、再建計画は金のワクの問題でございますから、ワクをどうきめるかという問題と、今度はそのワク内において個々の昇給をどうするか、こういう問題と二つございまして、ワク内における執行運用の問題は、これは全然われわれはタッチするつもりはございません。自治団体のそれぞれの意思決定にまかしてしかるべし、またそれが別の立場から法律に違反するとか何とかということになれば、公務員法なり、その他別の立場でそれぞれ許される方法を講じ得ると思いますが、再建計画の問題といたしましては、あくまでもこの人件費ワクの問題として、合理的になるように調整するのが精一ぱいでございますから、その点だけは一つ御了承願いたい。
  63. 加瀬完

    ○加瀬完君 財政部長にはあとで聞かれますので、行政部長に伺いますが、とにかく愛媛のような傾向が再建計画しわ寄せとして現れておる。そういうことについて行政部長としてはどうお考えになりますか。何とか再建計画というものの変更を伴わなければ、ああいうしわ寄せは生ずるわけでございますから、その点についてはどうお考えになりますか。
  64. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 財政計画自体の変更ということができる状態になってきました場合、客観的にいろいろ財源その他に余裕が、ある程度出まして、計画変更というような機会がございまする場合には、私たちといたしましては、一歩でも、給与費等について過酷なしわ寄せがきておるというようなものがございますならば、そういうものは人事管理の面からいたしましても、できるだけ是正のために努力したいと、こう考えております。
  65. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 昼からおいでにならぬというので、希望ですが、藤井部長のおられました前任地の大阪は、四十六府県ですか、その中でも最も財政力の豊かな地方財政危機の治外法権的な租界みたようなもので、非常に居心地のいいところで総務部長をやってこられたと思います。そういうところでは、地方公務員法も割合支障なく、いかに保守党さんの知事であっても適用されると思う。しかし、なかなか全国の各府県は大阪なんかとは非常に違いまして、きびしい。そういう点から、地方公務員を守るべき公務員法が、むしろ歪曲されて財政再建等に使われるようなおそれもありますし、一つ大阪とはなかなかよそは違うということを広い見地から見ていただきたい。  それからもう一つ自治庁や大蔵省で共同でやられました給与の実態調査をやられたときには、国家公務員よりか地方公務員は高いということが言われて、まあわれわれも不承々々了承せざるを得なかった面もあると思うのです。しかし最近におきましては、これは大蔵省すら大体もう高くないのではないかというふうに言われて、むしろ最近は昇給昇格等がなされず、非常に国家公務員に準じて支給さるべき地方公務員が不当にやはり冷遇されておると思うのですが、最近の実態調査後の各府県昇給昇格というような実施状況等はわかりませんか。それと、やはり自治庁でも、国家公務員より高いときには、地方公務員は国家公務員に準じてやるべきであるから、その線までレベルを下げるべきが当然だとは言いませんが、そういうことを是認されておった。ですから、それより下るということは、先にやりましたように、やはり行政措置等で不当にならぬような御指導と言いますか、そういう善処を……、高いときにはかなり、干渉とは言いませんが、指導されておるので、だから低くなる際にも……、高くなる際に公務員法を云々されて、そうでないときには、知事のやることだから、身内だからというようなことで拱手傍観されては困るので、その点一つ強く希望しておきますし、給与実態調査後の実際の昇給昇格等の実施状況がありましたら、もう会期も延長されませんので、あさってごろまでにお願いします。
  66. 本多市郎

    委員長本多市郎君) それではこの程度で休憩をいたします。午後は一時半より再開いたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後二時二分開会
  67. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 午前に引き続きまして会議を再開いたします。午前と同様の議題のもとに質疑を行います。質疑のおありの方は順次御発言願います。
  68. 鈴木壽

    鈴木壽君 いろいろ午前中もお尋ねしましたが、部長さんに一つ……。再建計画を立てる場合に、これは部長さんはあるワクの中で自主的にやらせるのだと、こういうようなお話があったわけなんですけれども、実際問題とすれば、忠告ですか、示唆ですか、いろいろ与えられておることは確かだと思うのですね。それはもっと具体的に申しますと、これはいろいろの機構上の問題に触れておられるようです。それから、それと当然からんでくる問題として、人員整理の問題、あるいはまたこの前の委員会から問題となっております給与の問題、その他物件費等の節約とか、いろいろなことがあるわけなんですが、こういうような一つの、こちらの方でいえば、自治体の自主性を認めるとはおっしゃるわけだけれども、実際上になれば大きな制約というものが加えられておる。しかも一方に増税ということも考えさせられる。そうして、その中に再建債を年々返していくような計画を組まされるわけなんです。そこで私お尋ねしたいことは、そういうふうにいろいろのワクの中での操作のために、給与の問題なり、その他いろいろな問題において窮屈になってきている、これはやむを得ないと、こういうふうなおっしゃり方なんですけれども、そういう限度においては、これはやむを得ないとも言えでしょう。問題は、私は一体今の窮迫した、あるいは赤字のためにどうにもならぬといういわゆる地方自治団体財政というものが、果してそういう形において、今のワクの中でやらなければいけないというような、果してそういう考え方でいいのかどうかという問題ですね、私はここに問題があると思うのです。もちろんこの点につきましては、この前の委員会の御説明の中に、問題点として、今後解決しなければいけない問題として、いろいろお話しがございました。どうしても私は、そういうような観点からワクをふやす、もっと言えば、地方財源を与えるという方向にいかなければならぬ、これ以外に解決の方法がないと思うのですよ。しかもこれは、前から申しましたが、私は現在の地方自治体赤字というのは、全部が全部私は地方自治団体責任に帰せられるべきものじゃない。むしろ私はこれは全部のところを調べたわけじゃないけれども、ある県をとっていろいろ調べた結果、少くともその県にとっての赤字の大体の三分の二程度は国の財政措置がまずかったために出てきたものだというふうに、私は一応の計算をしているわけなんです。たとえば公債費の問題なり、あるいは補助金なり、交付金の問題、あるいは災害に対する見方、あるいは交付税実情に沿わないところの交付のし方――平衡交付金当時からですが――こういうようないろいろな問題がある。さらにまた国と地方との事務配分、それに伴う機構の問題、それに伴う経費の問題、こういういろいろな問題があって出てきた。だから、今のあなた方の考え方、あるいは政府考え方というのは、赤字を出したのは地方なんだ、お前たちの責任でやれと、ただ赤字だけは、過去の赤字のたな上げだけは国の方で見てやろう、しかもそれも利子をつけて返さなければならぬ、こういうようなところに、いろいろな人件費の問題なり、あるいは投資的な経費の方にしわ寄せがきて、自治体の、あなた方が言うところの行政水準維持どころか、低下を来たして、本来の地方自治というものの機能を果していないというところまで追い込まれているのでよ。ですから、私何べんも申し上げまするが、そういう問題を今後どう具体的に打開していくかという道を、あなた方として考えなければならないのではないか。先ほど次官から公債費の問題が一つありましたが、問題は公債費だけでは――大きな問題は公債費ですけれども、公債費だけではこれは解決つかない。従来のいろいろな、先ほど申しましたような累積が、現在の結果になっておるのですから、もちろんこれは地方責任において、ルーズな財政計画なり運営なりをした分については、これはびしびしやるべきでありましょう。これはそういう意味においては地方責任をとらすべきだと思うけれども、私は大部分は国の責任において処置をしなければならぬ問題であると、こういうふうに考えるものですから、具体的に一体こういう方面に対してどうするのだと、これは公債費の問題、あるいは補助金、あるいは交付の形において支給されるそういう金、あるいは現在の交付税率でも、これはいろいろな不合理があると思うのです。そういうものをもっと具体的に、こういうところはこうしたいのだと、こうしなければいかぬと、こういうような考え方を私は承わりたいわけです。
  69. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今お話の点は、これはわれわれもいろいろ議論をしておる問題ですし、国会でもずいぶん議論になった問題でありまして、現在の地方財政現状をもたらした原因については、これはいろいろ御議論はあろうと思います。しかし、ともかくも現状基礎にしてどう始末をするかというので、本年あたりでもいろいろな措置が実は講ぜられたのであります。交付税の率を上げる問題とか、あるいはいろいろな補助金の率を引き上げるとか、あるいは補助単価の是正の問題とか、あるいは国有財産等についても、ある程度交付金、納付金の制度をとるというような措置で、相当な措置が本年度も実は講ぜられて参ったのであります。それで、だいぶん事情は変ってきておるということは、この前の決算の結果の報告の際にも申し上げたのでございまして、従来は全く泥沼のように赤字がふえる一方であったというのが、まあ大体傾向が変ってきまして、ようやく立ち直りの格好がついてきた。一方たくさん赤字を作った団体は、再建整備法の適用によりまして、苦しいことは苦しいだろうと思いますけれども、ともかくも再建のメドもついた、こういうことになっておるのですが、なおそれは問題がいろいろある。こういうことで、この前地方財政の問題点として残された問題を御披露申し上げたのであります。公債費の問題は、そのうちの重要な問題の一つであります。まあいろいろ御議論がありますが、結局は、地方財政の全体の総ワクと申しますか、そういうものに最後は――特殊な問題は別として、一般的には――そういう問題に立ち返ってくるのでありまして、それにつきましては、午前中に政務次官も申されましたが、ともかくも、今年度いろんな制度ができ上りまして、この交付税やその他の制度基礎にしてまず動かしていけば、われわれといたしましては、相当改善ができる、立ち直りつつある姿というものをそのまま伸ばしていくことができる、すぐに一年で局面がひっくり返るというようなことがあるかないか別問題といたしまして、現在の制度基礎にしていけば、これは相当望みがあるということが基本的な考え方でございまして、それで、現に片一方で国税減税問題が論議になっておるような場合に、その影響が直接こないような仕組みを考えてもらいたい、こういうのが一般的な問題として一番大きな問題だろうと思うのでございます。それ以外にも、特殊な問題で、今の交付税の問題とか、基地所在市町村に対する交付金の問題とか、その他まあ農業県に対する何か課税の問題がないかというので、農業施設税など、それに関連した問題とか、そういう個別的な問題もないわけじゃありません。それからなお、補助金とか補助単価の是正の問題とか、そういう問題につきましても、全然問題がないわけじゃないのでございまして、そういうものも、残っておる問題は、是正すべきものは是正してもらいたいという考え方は、これは持っております。それから災害復旧事業の進め方にしましても、もう少しこれはきちんと進めてもらいたい、過去の残った災害ぐらい一掃してもらいたいというような気持も、これはいろいろございます。そういうような問題がなおいろいろございますが、まあ大筋の問題といたしましては、現在の制度基礎にして、これを伸ばしていくことがまず基本的な問題だろうというのがわれわれの見解でございます。
  70. 鈴木壽

    鈴木壽君 まあ現在までにとられた措置によって大体軌道に乗っていく、これは確かにそういうふうに言えると思うのです。また、三十年度の決算を見てもらっても、大体赤字の現在まで増高を続けてきた傾向というものは一応とまったと思うのです。ですが、それは現在の非常に窮屈に仕組まれた財政ワクの中においての話だと私は思う。そこで問題は、あなた方のおっしゃるように、現在の行政の水準というものが、果して地方自治体のいろいろな運営において、これにとどまっていいかどうかという問題、私は、現在までとられたる方策によっては、だれもが望むところの行政水準の引き上げというようなこと、従って住民の福祉というようなことは、非常に望まれないことだと、こういうふうに私は考えておるのですが、この点についてどうですか。
  71. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) その点につきましても、今おっしゃいました通りの見解をわれわれ持っておるのでございまして、これは、行政のレベルというものがどれだけいったらまともかということになれば、きりがないということが、片一方にあるだろうと思います。しかし、少くとも現状がほんとうにうまく動いておるかといえば、とてもそういう段階じゃないのでございまして、私は、現在のところは、少くとも三十年、三十一年のところは、ようやくにして財政が立ち直りつつあるとはいいながら、形の上で赤字が出るか出ないかという、そのバランスのつじつまを合せるというのが精一ぱいだと思うのであります。実際上の仕事からいえば、人も多くなる、世の中も進歩していけば、当然に、たとえば道路の問題とか、都市の上下水道の問題とか、汚物処理の問題、清掃の問題、住宅の問題、どれ一つ考えたって、今のままで十分だということばとても言えぬだろうと思います。もう少しそういう仕事を伸ばさなければ、むしろ、自治団体として人並みの仕事をやっておるとは言えぬだろうということ。これは私も率直にいってそういう気がいたします。それでございますから、今日の問題は、先ほども申しました通り、片一方に減税の問題がある。それは、減税の問題があるのももっともな話でありますが、地方団体の行財政の実態からいえば、もう少し市民のためにある程度必要な仕事をやってやる方が……、むしろ市民として一番欲しておる問題じゃないか、もう少しやらなくちゃならぬ仕事で手抜かりになっておる仕事に埋め合せをしてやることが必要じゃないか、こういうのがわれわれとしての基本的な考え方なのでございます。これにつきましては、そんな仕事は従来通りでよろしい、それよりも減税が先だという式の議論がないわけじゃもちろんこれはないと思いますが、われわれといたしましては、やっぱりやるべき仕事をもう少し充実をして、自治体としてもう少し普通並み仕事をやらして、そうしてもうしばらくの推移を見て、あとの問題を考えるべきだ、こういう見解で一貫しておるわけでございます。
  72. 鈴木壽

    鈴木壽君 何べんもお聞きしますが、考え方は、大体、私自分の意見めいたこともちょっと申しておりますが、現状で満足しておらないということはわかりますし、何とかしたい、こういうことでしょうが、これはまあいろいろ現在の時期においては、あるいははっきりできない、大蔵省との関係もあり、その他の関係のところもいろいろあると思いますが、それはあれですか、たとえば、さっき次官から公債費の問題が出ましたが、もっと具体的に、ことしはこういうようなつもりでやっていくんだ、――計画においてはどういうふうな計画になるかわかりませんよ、しかし、そういう具体的な所はないものですか。お持ちにならないのですか。
  73. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 具体的な問題というのも、今まで申し上げたと思いますが、結局、具体的な問題の一つは、国の予算の上に表わすべき問題として、自治庁は一体大蔵省に何を要求しておるか、こういう問題が一つございます。それが今の公債費に対する利子補給の問題とか、新しくできた新市町村の育成に関する経費とか、それはいろいろございます。そういう問題が一つと、もう一つは、地方団体自体の財源をどう考えるか、こういう問題が今の財政規模の上からいえばもっと根本的な問題でございまして、その問題につきましては、先ほど話がございました通り、今の税制調査会地方制度調査会などでいろいろ問題にしておる問題の重点もそこにあるわけでございまして、これにつきましては、もし税制改正などが行われた場合には、地方についてはこうしてくれ、交付税はこうしろ、それから地方の税はどうしろ、こういう主張を持っておることは今まで申し上げた通りでございます。そういうことをぜひ実現したいというのが自治庁考えです。
  74. 鈴木壽

    鈴木壽君 さっきからのお話ですと、たとえば給与の問題、これは私例として申し上げますが、給与の問題とか、あるいは公共事業費等の投資的なそういう事柄についても、現在こういう地方財政の困ったときだし、赤字なんかかかえておる団体はこれはやむを得ないじゃないか、従って、場合によっては、昇給昇格がストップになっても、これはがまんしなければいけないだろう、こういうような事柄があなた方のお考えの中に深くあるような感じを私非常に強く受けておるわけなんですよ。むしろ、私は、そういう問題を解決するために、解決するためにというよりは、不当なそういうしわ寄せをさせないようなことをするために、もっと積極的な立場に立って対策を進め、大蔵当局とも、あるいはその他の関係するところとも強く私は折衝しなければいけないというふうに思う。しかもそれが、今の重大な段階になってきておると思うのです。  それから現状にここしばらくはがまんせいというのか、昭和三十二年度地方財政計画を立てる場合には、積極的にそういう打開策を十分織り込んだものにしていくというそういうお考えなのか、そこらへんを一つ
  75. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは本年度自治体の個々の団体運営をどうするかという問題では、この段階としてやむを得ぬ、しようがないという問題もありましょうが、それに満足しておる問題でないということは、繰り返し申し上げた通りであって、三十二年度においてはさらに局面を展開いたしたい。そういうことで、先ほど申し上げましたような、いろいろなことを自治庁としては要求いたしておるわけなのでございます。われわれの要求が百パーセント通れば、それはおそらくはこの団体財政状況も、非常に今年よりも面目は変ってくる。仕事全般の進み方も、相当面目は変ってくるものとわれわれは考えておるのでございます。
  76. 鈴木壽

    鈴木壽君 今申し上げたような観点から、一つ具体的にちょっとお聞きしてみたいと思うのですが、前の委員会で、あなたの方から、三十二年度地方財政計画を立てる場合に当っての基本的な考え方として、減税の問題に関連して、いろいろ地方財政がこれに影響される。ただ、国税自然増が千二百億程度見込まれる。これに対して、さらに三百億くらいの交付税増を見込んでおる。こういうようなお話がございました。私一つの例として申し上げますよ。そこで、こういうことについて、現在までどの程度折衝が続けられておるのか、減税の問題は全面的に解決しなければ話し合いのつかない問題で、問題はずっとこれからあとなんだ、答申が出たり、あるいは大蔵省のいろいろな関係の態度がきまらないうちは、こういう問題については触れられないというのか、そこらへん、もしお漏らし願えれば……。
  77. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今、お話の点、現に減税にからむ問題として税制調査会なり、地方制度調査会なりで論議しておられる問題でございまして、その調査会の答申が出たからといって、政府がどうするかわかりませんが、そういう点が問題の核心でございます。それでございますから、きょうの段階におきましては、われわれの主張はありますけれども、具体的にどうなのかということにつきましては、全然まだ見通しが立っておりません。
  78. 鈴木壽

    鈴木壽君 最近の問題でそういうふうなことも考えておられる。しかし一方歳出の部面で、先だっての話からすれば、大体七百五十億程度増になるのじゃないか、いろいろな要素からいうと……。これについてあれですか。こういう歳入増に見合うだけの、地方財源を与えるという根本的な態度については変りないというふうに考えてよろしゅうございますか。
  79. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 自治庁といたしましてはそういう基本的な態度で臨んでおるわけです。こういう経費がどうしても要るから、当然この所得税減税があっても、地方団体には影響のないようにすべきだ、こういうのがわれわれの考えです。
  80. 鈴木壽

    鈴木壽君 税の問題になってきましたが、税制調査会の方の進め方とか、およその考え方等についてお聞きしたいと思いますが……。
  81. 本多市郎

    委員長本多市郎君) そういう点については奥野税務部長が出ておりますから御質問を願います。
  82. 鈴木壽

    鈴木壽君 それでは現在考えられております――これは先ほども申しましたように最終的な結論は、まだ答申案が出ておらないようでございますね、答申案が出たからといって、そのままということでもないでしょうが、一つ予備知識を得るという意味で、実は現在までの考え方なりあるいは今後の見通し、こういうものについてあなた方のキャッチしておられるところをお聞かせ願えればありがたいと思います。
  83. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 臨時税制調査会では起草委員会段階を終り、総会に答申案を移して決定をしたいというようなことになっておるわけであります。昨日で地方税の関係部分につきましても起草委員会の問題はきまっておるわけであります。  地方税の関係部分について申し上げますと、第一には、来年度地方財源の総額についてどう考えていくかという問題であります。これにつきましては地方財政が非常な混乱を来たしておったのに対しまして、春の国会であるいは軽油引取税、あるいは都市計画税、あるいは三公社課税をみるとかというようなことで、特別財源を付与して、さらに地方交付税の繰り入れ割合も引き上げて、再建のめどを立てたばかりであり、これを基礎にして個々の地方団体が鋭意財政再建のために努力しておるわけだから、現行制度に基く地方交付税及び地方税の収入額は、増収分を含めてそのまま来年度これを維持させるべきである、こういう考え方と、地方財政の減額も必要だけれども、歳入歳出全般を検討した上で交付税の繰り入れ割合などを検討すればよろしいのだという考え方とがあったわけであります。しかし大勢は後者の考え方に落ちついておるわけであります。言いかえれば別途国税におきまして所得税を来年度で千億円ぐらい減税をしたい、そうしますと減税のなかった場合の地方交付税をそのまま維持ていこうとしますと、二百五十億円分だけは税率を引き上げて補てんをしなければならないというようなことになっておるわけであります。こういうような機械的な考え方でなしに、地方税でも増収もあるのだから、今年に引き続き来年のことではあるけれども、歳入歳出全般を見て、そういうことはさめればよろしいのだ、こういう考え方が支配的になったというふうに思います。  第二は住民税の問題であります。住民税の問題のその一つは、市町村民税の個人所得割の課税方式には、五つの方式について市町村に選択させることにしています。その結果、市町村間において租税負担がかなり区々になっておるわけであります。そこで課税方式を統一したらどうだろうかという意見がございまして、統一するとすれば第二課税方式のただし書きによるものということでありまして、第一課税方式に統一しろという意見の方は一人もございませんでした。しかし第二課税方式のただし書きによる方式にいたしました場合には、所得税の課されない人たちにつきましても、その人の所得を調査して、個人所得割を課税していくことになります。現在大きな都市におきましては第一課税方式によっているわけでありますので、第二課税方式のただし書きに統一した場合には、これらの大きな都市の住民につきまして、所得税を納めてない人たちの所得もさらに調査をして、新たに個人所得割をさしていくということになるわけであります。そうしますと何百万人という比較的零細な所得者に対しまして、新たに個人所得割を求めていくことになる。しかもまたそういう零細所得者についての所得調査に相当な徴税費を要することになってくる。そういうことを考えると、今直ちにこのような方式を全市町村について強制することはいかがなものだろうかというような疑問があったわけであります。所得税について減税が行われますと、さらに百何十万人かの人たちが所得税を納めなくなってくるわけでありまして、第一方式をとっていきますと、こういう人たちについては付随的に住民税の個人所得割も課されなくなるわけであります、さらに市町村民税ということになりますと、できる限り住民が広く能力に応じて所得割負担の責めに任じた方がいいんじゃないだろうかというような考え方、あわせまして第二方式ただし書き採用論があったわけであります。しかしながら今申しましたような事情を考えていくと、どうもそこにも無理がある。やはり市町村の実情に応じて現在のように課税方式を選択さした方がいいんじゃないか、しかしながら第二課税方式をとっている市町村の課税額をそのままにしておいたんじゃ、負担の不均衝がますますはなはだしくなる。そこで第二課税方式についても第一課税方式によった場合の負担額と均衡が得られるように、課税標準の段階に応じて標準とすべき率を法定していこう、法定すれば、自然市町村は大体その法定された率の辺で税率を定めることになる。だから結果的には第一課税方式によった場合の負担と大差のない負担になっていくだろう。しかしこういう方式をとりますと、現在三倍、四倍の課税をしている所もございますので、そういう所では五十億円程度減税ということになるんじゃなかろうかというふうに思われるわけであります。要するに全市町村についての減税ではなしに、第二課税方式をとっている市町村についてだけ標準的な率に即した課税を行う結果、五十億円程度減税が行われるということになるだろうと、こういうふうに見ているわけであります。これが住民税についての一つの問題であります。  もう一つの問題は、所得税について千億円減税が行われるといたしますと、道府県民税の個人所得割が所得税額の六%、市町村民税の個人所得割が所得税額の一五%、合せまして二一%を標準にしておりますから、千億円の二一%に当る二百十億円というものが自動的に減税になって参ります。しかし市町村の財政の実態から考えますと、所得税減税できても、住民税ではとても減税ができないのじゃないか。そこで減収補てんのために住民税の率を引き上げなければならない、こういうことになってくるわけであります。しかしながら所得税減税は、所得段階の低いところでは五割内外の減税率になっております。所得がだんだん多くなって参りますと、減税の割合が下ってくるわけでありまして、正確な数字は今記憶しておりませんが、たしか今論議されておる案によりますと、五百万円くらいのところでは三五、六%程度減税ではないかと思う、さらに千万円くらいのところでは二八%くらいの減税率になると記憶しております。そういうふうに所得層によって減税の幅が違うわけであります。全額を率の引き上げによって補てんしようとしますと、人によっては従前の制度によった住民税の負担額よりもかえって増税になるという人が出て参ります。そこで原則として率は引き上げるけれども、従前の制度によった住民税の負担額を、新しい高い率を使って住民税の所得割を計算してもこえないようにしよう、そういうところで率をきめようということになっております。さらにそれも比較的低いところできめようということから、二五%ないし三〇%に引き上げたらどうだろうか、こういうことになっておりまして、二五%ないし三〇%の間のどこできめるかということは、まだはっきりした話はできておりません。所得税減税程度が大体四割くらいだというふうに大蔵省では言っております。そうすると残りの六割分について従来の住民税の額を維持しようとしますと、二一%を六割で割った三五%に税率を上げなければならないということになって参ります。三五%と現在の二一%の差引をいたしますと、一四%税率を引き上げなければ補てんできないということになるわけであります。かりに一四%の半分程度を率の引き上げによって補てんをするとしますと、七%引き上げるということになります。言いかえれば、今の二一%という税率を、七%引き上げて二八%にしても、所得税減税に付随する住民税の減収を半分くらいしかこれを補てんできないということになるわけであります。二八%に上げても、住民税においてはなおかつ百億円以上減税を行わざるを得ないことに、結果的にはなると、こういうことでございます。五百万円くらいのところで、従来の住民税の所得割を負担してもらおうといたしますと、税率を三一、二%に引き上げなければならない。千万円くらいのところで従来の住民税の所得割の額を負担してもらおうとしますと、二九%余りに引き上げなければならない、こういう率の計算になるのであります。しかし総体的に見まして、今申し上げました、かりに二五と三〇の間の二八に定めたところで、住民税においては百億円をこえる減税の結果になる、こういうことでございます。  第三は事業税の問題であります。事業税の問題で従来から非常に大きな問題の一つになっておりますのは、農業に対して現在事業税を課していない、これをどう考えるかということでございます。昨年の中間答申におきましても、農業にも課税すべきだ、こういう答申がなされておったわけであります。今回もやはり農業にはその担税力なり、あるいは事業税の本質からいけば課税すべきである、また基礎控除の制度があるから、零細な農業者には当然事業税はかからないのだ、そういうことをもっとはっきり了解してもらうようにして、積極的に農業課税を打ち出すべきだ、こういう委員会のお考えでございました。  次に個人事業税の問題でございます。個人事業税につきましては、現在事業経営を個人経営から法人経営に切りかえますと、事業主の給与額が損金として扱われることになりますので、法人に切りかえたとたんに事業税額が減ってくるということがございまして、そういうようなことから、毎年三万ないし四万の新たなる法人ができておるわけでございます。法人がえの傾向というものは、最近ずっと続いておるわけでございます。この個人、法人間の負担の均衡をはかる必要があるじゃないかという問題が一つと、もう一つは、現に春の国会で、この地方行政委員会でも、地方税制の改正案について付帯決議が付けられたわけでございまして、洋服仕立業をやっているような事業税は、第一種事業税から第三種事業税に移せ、あるいはまた公衆浴場業についてもそうしろとか、要するに勤労を主体にするような事業は、第一種事業の八%の税率の適用を受ける区分から、第三種事業の六%の低い税率の適用を受ける区分に移せと、こういう議論が絶えないわけであります。そこで第一種事業、大体商工業の系統のものでございますが、年所得五十万円以下の部分については、二%だけ税率を引き下げる。そうしますと、六%になって、第三種事業の税率と同じになるわけであります。言いかえれば、個人事業税につきまして、事業相互間の負担の均衡をはかる必要があるじゃないか、こういうような二つの事情から、個人事業税の第一種事業につきましては、年所得五十万円以下の部分についてだけ二%税率を引き下げてやりたい、こういう考え方を私たちも持っておったわけでございます。ところがさらに法人事業税の税率も二%引き下げてもらいたい、こういう要請が委員会あるいは大蔵省側から強く主張されて参ったわけであります。私たちは、事業税については、積極的に減税する余地がどうもない。しかし個人事業税について負担の不均衡の是正をやりたい。それが第一種事業につきまして、五十万円以下の所得部分だけ税率を二%引き下げるということであったわけであります。それを個人事業税のみならず、法人事業税についても二%引き下げろ、こういうことであります。私たちとしては、反対的な意見を強く申し述べておりましたために、この問題は、数回にわたって起草委員会で論議されたわけであります。昨日は会長に一任をしよう、こういうことになり、調査会の会長は、自分は法人事業税も二%引き下げたいのだ、こういう結論をお出しになりましたので、そういうことで地方税の問題は全部済んだわけでございます。私たちが法人事業税二%軽減に反対しておりました理由は、一つは国庫財政の実態と、地方財政の実態とが非常に食い違っておる。地方財政の面においては積極的に減税する余地がないのだ、こういうことでございます。減税論のおっしゃっているのは、地方税にも自然増収が相当あるじゃないか、だから地方税も減税せよ、法人事業税も減税せよ、これが一つの理由であります。もう一つは、法人事業税は比較的富裕な団体、富裕な府県に多い税収入だから、これを削っても、結果的にはかえって財源偏在是正に資するじゃないか、こういう考え方でありました。引き下げた分だけは地方交付税で操作をするとか、あるいはたばこ消費税をふやしてもいいかという気持があるのかもしれませんが、とにかく今までの結論は、自然増収地方税にもあるのだから、法人事業税を引き下げろ、結果的には富裕団体に多い税収入だから、財源の偏在是正にも役立つのじゃないかという御意見でありました。さらにある委員は、事業税というものはどうも虫の好かん税金だ、だんだんと税率を引き下げながら廃止に持っていけばいいのだ、こういうようなことをおっしゃっておった方もおありでございました。  ここまで話がいってしまいますと、どうもわれわれ全く納得がいかなくなってしまうわけであります。事業税は決して筋の通らない税金じゃないと考えているわけであります。  反対しておりました理由は、今申しましたように、地方財政は積極的に減税する余地はないのだ。国庫財政は健全財政をやっているけれども、地方財政は不健全財政をやっているのだ。ようやく今年の春、再建のめどを立てていただいたようなものだけれども、地方財政計画も、紙の上で数字を合せているだけのことであって、莫大な借金をしなければその収支は合わないようなことになっているじゃありませんか。七百十五億の借金をしなければ地方財政はやっていけないことになっているじゃありませんか。自然増収があれば、借金でやってきた分を一般財源の方に振りかえる、なお可能ならば旧債を返していくというのが財政運営の常識じゃないだろうか。自然増収のある機会に、地方財政を健全化しなければ、いつまでたっても健全化できないじゃないか。今のようなやり方をすれば、数年に一ぺんずつ地方財政再建をやっていかなければならないことになるじゃありませんか、というようなことを申し上げて参ったわけであります。従いまして、自然増収が多ければ、歳入構成を是正したいのだ。地方債でやっているようなものを一般財源でしたいのだ、こういうようなことを申して参ったわけであります。  第二には、現在国民にとっては、個人負担と法人負担とを比較した場合に、個人負担の方が重いという感じじゃないだろうか。だから国税でも所得税の千億減税が行われるという案が出されているのじゃないだろうか。国税では、個人所得税は千億円減税し、法人税は減税しない。地方税では、住民税は形式的ではあろうけれども税率を引き上げているじゃないか。税率を引き上げておきながら、逆に法人税の分で税率を引き下げるということは、どうも国民に納得してもらいにくいのだ。しかも一方に農業課税のことをいわれながら、同じ事業税において法人分を引き下げるということについては、どうも納得いたしかねるから、もしあえて法人負担を軽減するというなら、個人所得課税分については、千億円減税する場合でも、国税で八百億、地方税で二百億、あるいは千二百億減税であれば、国税で千億、地方税で二百億というふうな形で減税し、法人負担分はむしろ法人税か何かで税率を引き下げてもらった方がいいのじゃありませんでしょうか、こういうことを申して参ったのであります。  第三には、法人事業税まで税率を引き下げたのでは、事業税自体のバランスがくずれるということを申して参ったのであります。現在でも今申しましたように、事業相互間において負担のアンバランスがある。これを是正することに非常な苦心をしているわけです。そこで第一種事業について、五十万円以下だけを二%だけ下げれば、事業相互間の振り合いの問題は一応解決するかと思っているのに、また法人を下げてしまうと個人まで一律に二%下げなければならんという問題が起り、依然としてアンバランスが残ってくるじゃないかということを申し上げて参ったわけであります。  第四には、私どもはどうしても法人税でやれぬという理屈がわからない。法人事業税で二%下げますと、百二十億くらいの減税になります。そうしますと、法人の所得から差し引かれる損金がそれだけ減るわけでありますから、その半分くらいは法人税その他でまた税収入として吸い上げられてしまうわけであります。形は法人事業税で百二十億の減税でありましても、法人税、法人税割等で六十億以上が税収入として入ってくるのでありまして、実質的な法人税軽減としては、六十億にならないのであります。これでは何か国民をペテンにかけているようなことであって、どうしても法人税でやれないという理屈は私どもにはわからない、こういうことを申し上げたのであります。いかにもセクショナリズムな感じに受け取れるかもしれないけれども、その理由がわからない。法人税なら分量の問題、事業税なら事業相互間の均衡の問題が起きてくるというふうに申し上げて参ったのであります。  第五に、偏在是正についても考え方が違うということを申し上げているのであります。現在偏在しているか、偏在していないかということは、地方交付税の計算におきます基準財政収入額が基準財政需要額を上回っているような団体、こういうような団体は富裕団体とされております。これを富裕団体とすることはいいか悪いかにも非常に問題があるわけであります。しかしかりに上回っているとしても東京で三、四%、二十三区分を入れましてもたしか一七、八%じゃなかったかと思います。神奈川県で四%、大阪府で一七%ぐらいじゃなかったかと思います。いずれにしてもごくわずかな問題でございます。しかも府県歳入の中で地方税の占めております分量というものは二五%でありまして、二五%の分量のものが若干の団体に片寄っておっても、そのことが結果的にその団体に余っているということにはならないじゃないか、こういうふうに思っておるわけでありまして、従いましてまたもし自然増収が相当あれば、私たちとしてはその団体地方債を抑制していきたい。大体ことしで東京と大阪とに、公営企業を除きまして、一般財源でまかなわなければならない道路とか学校という関係の起債を七十八億円ぐらい認める予定になっているようであります。自然増収があればまず地方債を抑制すベきではないだろうか、いかに東京や大阪に実力があるといっても、いつまでも借金でやらせていけばやはり元利償還のために困ってくるわけであります。というのは、国が健全財政でやっている、東京、大阪では不健全財政でやらせなければならないという理屈はわからないじゃないかということを私たち申し上げるわけであります。いかに実力があっても、今それだけの借金をやらなければ一応の仕事はやれない。それなら増収のあるときには地方債を押えまして、この財政規模の膨張は抑制しながらも、健全な財政運営に転換させていかなければならないじゃないか、こういうふうに思っているわけであります。かりに何か一般財源を取り上げなければならないとした場合でも、事業税というものは府県の施策と直接結びついている税金だ。府県施策と直接結びついているような税金を取り上げるということはなるたけやめるべきだ。むしろ国の関与する財源を、必要ならば取り上げたらいい。補助金でありますとか、入場譲与税でありますとか、地方道路譲与税でありますとかというようなものを、是正しなければならない場合には是正したらよろしいのじゃないか、かように思うわけであります。しかもたばこで置きかえるというふうなことになった場合でも――今ではそういう議論は出ておりませんが――そういう場合であっても、たばこの消費税がふえるかふえないかということも専売公社の施策に大きく影響するわけでありますけれども、府県の施策とはそれほど大きな関係は持っておりません。事業税のような地方の施策と結びついている税金を片寄っているとか片寄っていないとかというような考え方でそれを減そうという考え方は、これはいかがかと思われる、こういうように思うわけであります。地方制度調査会でもこの問題はやはり議論になりまして、事業税自体が戦前から非常に重くなっているということならまた格別だ。国民の租税負担が全体として重くなっているから多少重くなってもよろしいのじゃないか、やむを得ないじゃないだろうか、そういうような比較を考えたらどうかというような御意見もあったわけであります。そういう点からは積極的に減税するという問題は起ってこないように考えているわけであります。  それから第四の固定資産税の問題でございます。春の国会におきまして当委員会でもアメリカ合衆国軍隊等に貸し付けた固定資産について御意見をいただいておるわけであります。これにつきましては、アメリカ合衆国軍隊等に使用されている固定資産については、その使用の実態、その所在地域等を考慮して、防衛庁所属の固定資産の例に準じ、国有資産所在市町村交付金の客体とするか、または何らかの措置を講ずる必要がある、こういうことに話がまとまったわけであります。これにつきましては自治庁と大蔵省との間でいろいろ意見の調整などもやっておったわけでありまして、私たちはアメリカ合衆国の軍隊等に貸しつけている固定資産のうちで、住宅ないしこれに関連する資産、これはその使用の実態から見て一般的には固定資産税が課されているのですから、国有資産所在市町村交付金の客体とすべきであると考えております。住宅でありますとかPXでありますとか劇場でありますとか、こういうものでありますが、今申し上げましたような結論に落ちついたわけでありますから、この点につきましては大蔵省も異存はないものと思っております。第二に自動車工場でありますとか、造船施設でありますとかというような企業施設、これも一般的には固定資産税が課されているものでありますから、私どもは国有資産所在市町村交付金の客体として行きたい、こういう考え方を持っているわけであります。これ以下の問題につきましては別にまだ話が詰まっておりません。第三には飛行場、演習地につきましてもその土地につきましては若干政策的な配慮をして、交付金の客体とした方がよろしいのではないか、こういう考え方を持っているわけであります。答申案文はきまったわけでありますけれども、それをどう具体化するかにつきましては、なお政府部内であとは話し合いを進めて行くということになろうかと思います。その場合には、自治庁としましては、今申し上げましたような考え方を持っているわけであります。  第五は地方道路税の問題でございます。道路の整備が必要であり、さらに諸外国の例から見た場合に揮発油に対する負担は必ずしも重いとは言えない、そういうようなところから揮発油に対する課税額を引き上げるべきだ。その場合にはむしろ地方道路税の方の税率を中心に考えるべきではなかろうか、こういうふうな空気になっているわけであります、あと細かい点につきましてもございますが、大きな問題は大体そういう程度でございます。
  84. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 説明員の方では、相沢大蔵省主計官、堀口大蔵省地方資金課長等が出席しております。  御質疑の方がありましたならば順次御発言願います。
  85. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 奥野さん、答申は今おっしゃったようなふうに大体まとまると見て差しつかえないわけですね。自治庁の意向がどこにどうあろうということは別として、先ほど問題になりました点も会長一任だ、そうして会長の見解はこうだというようなふうでしたから、大体まとまるものと見て差しつかえないかということが一つと、それから何かお聞きしますと、今大蔵省の方の関係の方が、当委員会で要求いたしましたのに出られないのは、今起草にかかっているので、その細目等をきめてお進めになるということだとすると、いつごろ大体結論的なものがまとまって地方部会の答申案として出るか、この見通しについて一つお聞かせ願いたいと思います。
  86. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 起算委員会は七日にもう一回やることになっております。その際に、国税庁で全体を通じての答申案が検討されることになろうと思います。そうしますと、あとは総会に移るわけであります。起草委員会段階におきましては、今申し上げた点はまず変らないと思います。総会は大体二倍ぐらいの人数の人たち、言いかえれば委員の半数が起草委員になっているわけであります。そういう関係でありますから、総会で別に案がひっくり返るということはないと思います。ただ反対的な意見の方もおありと思いますから、少数意見をつけるかつけないかという程度のことじゃないかというふうに思います。
  87. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はきょう来ていただきまして、大体大ざっぱな御説明だけ承わればいいと思っていたのですが、なかなか突っ込んだ御説明があった、かえってその方がよかったと思うのですが、そこで、住民税の問題ですが、一度新聞等を見ますと、現行二一%を三〇%に引き上げようじゃないか、その根拠がよくわかりませんでしたが、お聞きしておりますと、所得税減税する、それが大体六〇%ぐらいになっている、だからそのはねかえりが大き過ぎるから、それを地方税においては住民税等が減らないために、それに合せると三五%ぐらいまで取らなければならないというところですが、それがいろいろなことになっているが、そのパーセントがまだ決定しておらないと、こういうふうに御報告になったのですが、しかし考え方所得税の方で、国税の方は減税をするが、住民税の方は、しかし何とか減税も片一方でしていかなければならないから、どこかの数字で折れ合わなければならないと思いますが、大体あなたがおっしゃった二七、八%に折れ合って、大体百億減ぐらいのところで折れ合うというふうに数字がまとまっておりますか。
  88. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 起草委員会では、先ほども申し上げましたように、二五%ないし三〇%のところできめたらよかろうと、こういうことになっているわけであります。従いまして今お話になりましたようなところで一応きまるのじゃないかというふうに存じております。
  89. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それはどこできまるのですか。
  90. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 起草委員会ですかに国税地方税を通じました増減収の数字も出さなければなりませんから、その際に一緒に御検討をいただけるだろうというふうに思っております。
  91. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それから今減税の方だけずっと聞いたのですが、増になるものは何ですか。増は住民税だけですか。
  92. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 国税につきましては所得税減税を行うかわりに、減税に要する財源の半分ぐらいは租税特別措置の整理と物品税の課税範囲の拡張によってまかなっていきたい、あと半分は自然増収財源にしたい、こういうことのようでございます。
  93. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 地方収入は、そうすると増になるものは住民税のみで、あと増といってはおかしいのですが、総体的にいえば減るわけですが、それに対してどういう格好で、それでは地方に対してそれを見ていこうという考え方なんでしょうか、どういう考え方なんでしょうか。
  94. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 委員の方々の中には、地方の独立税収入の減少については、他の独立税収入をもって補てんすべきだということを主張される方がございます。しかしながらこれに対しましては、全部地方交付税の方にしわ寄せをして計算すればよろしいのだという考え方がむしろ強く出ているだろうと思っています。前者の意見を主張される方は、地方交付税を減じても独立税収入に切りかえるべきである、いわんや独立税収入の減収は地方交付税で補てんすべきものでなくて、他の税収をもって補うべきであると、こういう説を唱えておるわけでありますが、これにつきましては大蔵省側も批判的でありまして、税制調査会ではむしろそうはっきりした答申は出てこないであろうというふうに思っております。ただ、地方交付税その他何らかの財源をもって補てんすべきであると、こういうような抽象的な表現になって答申が出てくるのじゃないかというふうに存じております。
  95. 加瀬完

    ○加瀬完君 奥野さんに税制調査会のいろいろな点を質問するのは当を得ないかと思いますが、今御説明があった範囲でもう少し御説明を願いたいのですが、今交付税の問題が出ましたが、交付税の税率というものが全然考えられないで地方独立税といいますか、現在ある地方税のワクを広げるということだけで、税制の改正に伴う地方収入の減というものを補おうという考え方そのものが、私はどうも当を得ていないと思うんです。交付税の税率の改正ということについて全然触れられておらなかったという点が一点。それから減税というのであれば、国税地方税両面を見渡して、結局納税者のほんとうの意味の減税というものがはかられなければ意味がないと思う。で国税だけは一応減税という形をとって、地方税は今度は増税をしていくということは、何か首尾一貫を欠くようなきらいを私は感ずるんです。こういう点について何か調査会の中では御意見が出なかったか、それらをお答えいただきたいと思います。
  96. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 交付税の繰り入れ割合の問題につきましては、所得税の千億減税が行われますと、二五%に当る二百五十億円が減ってくるわけですから、従来の制度による地方交付税の額を維持しようとすれば、交付税の繰り入れ割合を引き上げなければなりません。そういうようなことを主張なさる方もございました。しかし少数だといってよろしいと思います。で大蔵省側の見解を申し上げますと、現在の所得税減税の中には、国民所得が全体として伸びてくるものだから、従来の国民所得を基礎にして累進税率をきめておった、しかし伸びてくれば伸びた人について従来の国民所得を基礎にした高い税率を課そうとすることは酷だ、だから累進税率を緩和しなければならぬ、こういうことが純然たる減税といえるかどうか、そのものまで減税として地方交付税をはね返すのは行き過ぎではないか、しかし今度の千億円減税になりますと、そういう程度のものではなくて、それがどの程度であるかということでございます。同時に自然増収も相当多いわけだから、財政全般を見てきめたらいいじゃないか、そういった構成の是正、言いかえると、借金でつじつまを合わしているようなものは、一般財源で振りかえるというようなことを一挙にやらなくてもいいじゃないか、徐々にやっていけばいいじゃないか、こういうのが私が今まで大蔵省の事務当局と話し合って承知ていた向うの見解でございます。しかしこれは最終段階に、政府としての考え方をきめるためには、両方ともよく話し合いをしていかなければなりませんので、別に大蔵省の意見でも何でもないと思います。ただ事務的に話し合っている経過を参考に申し上げておるだけであります。なお国税減税をする、地方税でどうするかという問題につきましては、これもごく一、二の限られた人でありますが、むしろ所得税減税し、住民税の減収分はたばこ消費税で補てんしたらどうかというような意見を述べられた方もございます。しかしながら、それにしても住民税の減収の点が大き過ぎると思いますので、全部を埋めろということであるか、一部を埋めろということであるか、そこまで立ち入った深い議論はなさっておりません。ただ今おっしゃいましたように、所得税減税を両方でやっていく、そのかわり地方の方では減税ができないのだから、たばこ消費税で補てんするというような考え方を述べられた方はございます。
  97. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治庁の今までの御説明を承わっておると、――奥野さんではない、ほかの財政部長なり行政部長なりの御説明を承わっておりますと、大体今税制調査会で審議しているような線できまるとすれば、地方税にはね返ってくるマイナスの面が五百億ぐらい、それから当然三十二年度で支出増を考えられているのが六百五十億、こういう御説明があったわけです。そうすると一千百億なり一千二百億なりというものが財源不足という形に財政計画の上ではなると思う。そういう実態であって、しかもこれが相当詰めてあって、財源計画など、午前中問題になりましたが、相当各団体が詰めてきめても一千百億なり一千二百億なりというものはバランスが取れない問題として残る。こういう状態に置かれてい地方財政において、ただ国の減税といいますか、国の財政計画だけのバランスで、地方にそのしわを寄せてくるということでは、私はどうも理屈が通らない。これは地方制度調査会での大臣の説明にも、どうも今までは国の財政というものを優先して、地方財政というものの考え方が忘れられておった。地方団体は相当四苦八苦の状態にある。こういう点も三十二年度以降考えなければならないんだという御説明があったのです。それらを考え合せてみても、どうも税制調査会通りにいくとすれば、あまりにも地方財政というものが税制改革のために逼迫を招くのじゃないかということが憂えられるわけであります。そういう点、まあこれは地方制度調査会の意見もまた違っておるようでありますが、税制調査会でも国と地方というものを両面あわせて考えていただかなければならないと思うのですが、どうも国の税といいますか、あるいはもっと歯にきぬを着せずに言うならば、特殊な資本擁護といっては言い過ぎかもしれませんが、例えばいろいろ問題になります大きな資本に関係のあるところの税とか、あるいは小さくても事業税などといったことには減税というふうなことを非常に主張されますけれども、地方財政そのものからの健全なる地方財源を与えるという点では、非常に考慮が足りないように思われる。こういう点どのようなふうな御議論が進められたのでしょうか。
  98. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) お話のように所得税の千億減税だけを取り出して考えて参りますと、住民税の二百十億円と地方交付税の二百五十億円、合せて四百六十億円になるという御説明がなされたのだろうと思います。しかしこれは減収のなりっ放しにしてよろしいのだということは税制調査会もおっしゃっておられませんし、もちろん大蔵省はそういう考え方は持っておらないと思います。単に現行税制では、収入額は自然増収分を含めて、そのまま来年度維持されるかどうか。これにつきましては大蔵省も批判的でありますし、税制調査会も違った結論を持っておられるわけであります。どこまで補てんをするか、そういうことは地方の来年度歳入歳出全般を見てきめようじゃないか。こういうまあ考え方のようであります。しかしどちらにしましても、私どもはどうも地方財政に重点を置いて物事を考え過ぎるという非難を受けるだろうと思うのですけれども、また国家財政をやっておられる方は、どうも地方財政について理解が少いという非難も受けざるを得ないと思うのであります。
  99. 加瀬完

    ○加瀬完君 最後に住民の負担というのですか、今までまあ私ども承わっておった点では、農業所得者を大体一とすれば、営業所得者が三・五、給与所得者が七・五といったような比率になっておるというようなことが言われておったわけです。その非常に過重になっております給与所得者というものに対して、今度は減免の措置というものをやっていこうというのが税制調査会なんかの一つの大きな目的のようでございまして、しかし一面給与所得者を税制調査会のような措置で引いたところで、今度は住民税を増徴するということになると、大体住民税でかぶさってくるのは給与所得者に対する住民税というのは非常に上ってくると思います。そういたしますと、それでまた法人税、事業税も二%引くということになりますと、その農業所得者といいますか、原始産業にたずさわっている者の担税率といいますか、それを基本にいたしましても、またその営業所得者、給与所得者とにおける率はあまり変ってこない。やはり給与所得者が非常に負担率がまだまだ大きいということになりますと、税制調査会で初めからやろうとする目的が末端にきてまた乱れてくるというふうに感じられますけれども、こういう負担の問題については、地方税とあわせて考えた場合、何か御議論になったのでしょうか。
  100. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 給与所得者の負担が国税で減らしても地方税でかえってふえてくるのじゃないかという御議論は、ちょっと私わかりかねるのでございます。といいますのは、所得税の面におきましても給与所得者、事業所得者を通じていろいろの減税をやるわけであります。さらにプラス・アルファで勤労控除の程度を引き上げるわけでありますから、よけい減税になります。よけい減税になりまする部分地方税につきましてもやはりよけい減税になるわけであります。かりに率を引き上げまして一部の減収を補てんするといたしましても、同じように補てんをするわけでありますから、プラス・アルファをもって減税になってい給与所得者の分はやはりそのままプラス・アルファで減税になっていくわけです。  なお、負担の問題につきましては、税制調査会では農業関係が一番低いのじゃないか、その次は商工業関係、一番重いのは給与所得者関係じゃなかろうか、こういうお話がございました。それに対しまして今度の減税をやれば、ある程度勤労控除も引き上げる、同時に税率を一般的に緩和するわけでありますから、緩和するとすれば、商工業者の所得把握もある程度よくいくようになって、自然負担の均衡が維持されていいのじゃなかろうかということでございまして、そこでさらに所得税減税の行われる際だから、いっそ農業に対しても事業税を課すべきだということが税制調査会の人たちの考えであったように承知いたしております。
  101. 加瀬完

    ○加瀬完君 農業事業税については異論がありますので、それは別の機会にいたしますが、国税では、税制調査会のような方法にいたしますれば、確かに給与所得者の減免される向きは多いと思う。しかし減免の率がそのまま地方税にはいかないと思う。住民税が今までの通りであれば、そういうことも言い得るかもしれませんが、住民税の率が変るでありましょう、あるいはオプション・ワンのところにオプション・ツーをとるということになる場合もあるでしょう、これは税制調査会はそういうことをきめなくても、傾向としては住民税からでも取ることしか手がないとなると、これはむろん住民税にしても、好むと好まないにかかわらず引き上げざるを得ないという形になると思う、傾向としては。さらに二五%なり三〇%なりに引き上げるという形になれば、その一番対象になるのはやはり給与所得者ということになってくるのだと思います。ですから住民税においては国税と同じような減免された率というものは適用されてこない、こういうことになると思うのですが、どうなんですかその点は。
  102. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) かりに第二課税方式ただし書きの規定を採用した場合、一つについて申し上げてみますと、所得税法の改正によりまして所得を計算する場合に、現在は御承知のように給与所得者につきましては、年所得四十万円までの部分について二〇%、言いかえれば八万円を限度にして勤労控除が行われる、この部分は必要経費同様に収入金額から引かれるわけであります。今のあれでは五十万円までの部分について二〇%、五十万円以上百万円までの部分について一〇%、最高十五万円までは差し引こうということでありまして、収入金額からそれだけ引かれるわけであります。第二課税方式ただし書きで、総所得金額を算出いたします場合にも、今までは八万円までしか引かなかったのが十五万円まで引くということになるのでありますから、この部分は当然軽減されるわけであります。そのほかに一般的に事業所得者も給与所得者も減税されるわけでありますから、低い率を使うとすれば、同じように減税の恩典に浴する、第一方式の場合にはもっと簡単に言えると思います。しかも所得税額そのものが事業所得者、給与所得者を通じて減るほか、給与所得者はよけい減るわけでありますから、減った残りが所得税の課税標準になりますから、同じように国税のみならず地方税においても給与所得者は他の所得者よりもよけい減税されるということになって戻るわけであります。
  103. 加瀬完

    ○加瀬完君 しかし課税率が違ってくるでしょう、本年度とは……。そうなってくると、たとえば、住民税の税率を本年と同様にしておれば引かれる額よりは、税率が変ればよけいとられるという結局結果になるでしょう。もう一度申しましょうか。本年度住民税の税率の通りであればいろいろの減免された措置によりましてはるかに引かれるものも、来年度からは住民税の税率というものを各町村とも変えてくるということになるでしょう。税率が変るでしょう。そうすれば、本年度の税率と、それからいろいろ減免された措置とを合わせたものよりは、やはり給与所得者は負担が重くなるという形になりませんか。
  104. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 住民税は、前年の所得を課税標準にするものですから、ことしの所得ないし所得税額を課税標準として来年度住民税を課する場合の税率には、原則として調整は必要としないと思います。来年度所得税減税が行われました場合に、来年度所得税額を課税標準として課しまする三十三年度住民税の所得割の率に調整を要するということになって参るわけであります。先ほどちょっと申し上げましたように、所得段階の低いところでは、減税率が五〇%くらいだろうと思います。そうしますと、住民税において、従来の程度の額を負担してもらおうとしますと、低いところでは、今までの一二%を四二%に上げなければ従来の額が維持されないということになります。五百万円くらいのところですと、三一%くらいに上げなければならない。千万円くらいのところですと、二九%くらいに上げなければならない。それはやはり二七、八%くらいに引き上げの程度をとどめるとしますと、千万円以下のところでは、みんな住民税減税になるわけであります。それは、給与所得昔に限らず、事業所得者もみんな同じことであります。同じように所得段階によって住民税減税程度が違って参ります。低い方がよけい減税の恩典は住民税においても受けると思います。その場合には、税率でもっと上げるところを低くとどめるわけでありますから、所得の種類いかんを問いません。全体的に下って参ります。ところが、課税標準になる所得税額なり所得金額なりそのものは、給与所得者についてだけさらによけいな減税が行われているわけですから、その分はさらによけい住民税でも減税になるということであります。給与所得者にかえってプラスになる。増税になるということはあり得ないじゃないか、こう思っております。  なお、加瀬さんの御質問になっておる問題ではございませんが、第二方式のただし書きにつきましては、給与所得者に限って割増し控除を行う制度がございます。これを将来も残しておくかどうかという問題は、なお検討の余地があろうと思っております。
  105. 加瀬完

    ○加瀬完君 増税にはなりませんけれども、増税にならないというところはわかるのですけれどもね。何と言いましょうか、税制調査会国税の引き下げの率だけ減税になるということにはならないではないか。なぜならば、住民税で当然減る分を、たとえば二百十億か幾らか減る分を、それだけ減らさないように税率を上げてあるのだから、その上げた分というのは給与所得者に一番かぶってくる、そういう形にはなりませんか。
  106. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 先ほども申し上げましたように、制度としては勤労控除の程度を上げます。それからもう一つは、所得税の累進工合を緩和する、緩和すれば、逆に事業所得者の税の把握も十分いくようになるんじゃないか、あるいはそのために給与所得者の税の把握がよけいいくということにはならないと思いますけれども、事業所得者の税の把握が適正にされていく、そういう二つの要素がありますから、この面から、給与所得者に対してはいい点があると考えていいと思われます。このようにいい影響がありますから、私たちは、逆にむしろ給与所得者の負担緩和に役立つんじゃないかという考え方を持っておるわけであります。
  107. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 相沢主計官もお見えになっていますが、今聞きましたように、相当地方財政に私は影響ある大きな問題だと思います。それに対しまして、ここまで一ついこうじゃないかということになれば、同じ大蔵省ですから、私は相当御意見もあり、あなたの御意見も述べられる機会もあったんだろうと思う。その場合に、これを地方財政の立場に立てば、自然増加がある。たとえば人がふえるとか、いろいろな点があって、そういうことは、総額として、今加瀬君も言われましたように、あるいは今あなたからお聞きしましたように、千百億なり千二百億の自然増がある。ところが片っ方は収入の減がある、それをどうやって見ていこうという、大綱を一つお開かせ願いたい。
  108. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) これは、ただいま奥野税務部長から御説明がありましたような経過を臨時税制調査会としてはたどっておるわけでございますが、この税制調査会には、おもに主税局の方がタッチしておりますが、地方財政関係におきまして、私どももむろん会議に列席して話を聞き、また発言もしておるわけであります。  そこで問題は、こういう国、地方を通じて減税措置をした場合に、その地方の来年度財政計画はどういうような姿になるだろうかということに問題があるわけであります。来年度地方財政の姿がどうなるか、この点につきましては、まだ自治庁の方から私どもの方へは正式に持ってきてもらえないのでありまして、考え方も、臨時税制調査会なり、あるいはこれと並行して行われておりますところの地方制度調査会での自治庁の方々の発言を通じて察知しておる程度なのでありますが、そういう状態でございまして、どういう取扱いになるかという点につきましては、まだもちろん最終的にこれを検討する段階に至っていないわけであります。ただ、私どもの立場として申し上げたいことは、あるいは奥野税務部長から話がございましたかと思いますが、来年度地方財政につきましては、歳入の面におきましては国が相当の、千億といい、あるいは千二百億といいますか、相当の自然増収が期待し得ると同様に、地方税におきましても、相当の増収が期待し得る。それから、ただこれには減税の問題があるわけでありまして、三十二年度におきましては、あるいは税制調査会の答申の線で参りますと、個人事業税、法人事業税の減、それから三十三年に参りますと、国の所得税減税に伴う個人の所得割の減、そういった問題がございます。ただ、こまかい問題かもしれませんけれども、同時に歳入面につきましては、たとえば軽油引取税、これは本年度初年度でございまして、八カ月分の歳入しかございませんが、来年度は平年度化いたしまして、約十二億円くらい、それから固定資産税の納付金でございますが、これにつきましても、来年度は率が倍になりますので、これがまた四十億ぐらいふえるというような点で、歳入の面におきましても、増減の面があるわけであります。歳出の面につきましては、当然増加と考えられますものに、まず給与費昇給に伴う増加、それから公債費の増加というものがありますし、まだ、この給与費につきましては、人事院の勧告をどのように国が扱うかということに関連して、当然地方においても問題があるわけであります。なお、公共事業その他の国の補助、負担事業につきましての地方負担の問題があります。従いまして、増減の要因というものも同時に歳出においても考えられる。私どもの立場といたしましては、そういう異常な自然増収が片方にあり、また、これを一つ財源といたしまして、所得税一千億円減税するというような大きな税制上の改革がある。租税上の改革がある。こういう場合でございますので、地方の来年度歳入歳出のそういう要因を洗いまして、地方財政の健全化ということ、この両三年来取り上げてきた方針に照らして、十分その点は検討して、最後に交付税率の調整なり、その他の処置をとるべきではなかろうか、このように私どもとしては考えておるわけでございます。具体的の措置のそれぞれにつきましては、まだ自治庁とも、また、私ども部内におきましても、もちろん前に申し上げましたように、最終的な検討段階に至っておりませんので、今申し上げる段階になっておりません。
  109. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 全般の財政計画等につきましては、また、あなた方の方からも資料をいただきまして、やる機会があると思いますから、よくわかりますが、そのときにまた譲りたいと思いますが、一言お願いしておきたいと思いますのは、せっかく勤労者と他の所得のアンバランスがあるというので所得税減税が行われる。ところが、あなたの方がたとえば、交付税の問題とか、いろいろの問題で面倒をみておいていただかないと、たとえば住民税の課税の方式を変えて、結局所得税では減税になったかもしれないけれども、府県民税等まで合して出してみたら、そんなに減税になっておらぬというところに追い込まれては大へんだと思う、実際問題として。所得税減税額が、少くとも勤労所得者の立場に立てば、それだけは、少くとも減税されておる、実質的に減税されておるという姿が私は好ましい。そうなったのが、ちょうど勤労者と他とのバランスがとれたことだと思うのです。ですから、そういうふうになるように、一つよく自治庁等と十分打ち合せをされまして、一つ公平な処置がとれるようにお願いをいたしまして、質問を終ります。
  110. 鈴木壽

    鈴木壽君 奥野部長から大体お話を聞いてみますと、これは大ざっぱな言い方ですが、現在の税制調査会でやられておる、そういうものの結論からいたしまして、国税減税に伴って、地方税も、これは率はあるいは多少違ってくるにしても、いずれ減税になるというようなことだと思うのですが、ということは、まあそれ自体は勤労者とかいろいろな住民にとってはありがたい話ですが、ところが、地方自治団体にとってはいろいろの問題があることは、先ほどのお話にもあったのですけれども、僕らは、何も税率を上げろとか、たくさん税金を取れというのではないのですが、ところが、一面、現在の地方自治団体財政状況からしますと、非常に窮屈な歳入源しか持っておらないわけなんです。まあ何とかして歳入面をふやしたいといって、法定外のいろいろの独立税あるいは府県民税のようなものをウの目タカの目で探して、やれ犬まで税金をかけるとか、電話はどうであるとか、写真機はどうであるとかいうように探し回っておるのです。現在は、地方のあるいは税収の元になるようなものがない。しかし、こういうような格好になってきますと、これは何かの措置は講じられると思いますけれども、そういう減になるところを、これはまあ大蔵省の方の方にもお願いしたいわけなんですが、補てんしてやる道を的確に講じないと、ようやく、先般来問題になっておる地方自治団体赤字財政の問題が、やや軌道に乗ってきたとか、あるいは赤字増加の率が減ってきたとかいって喜んでおっても、しかも、それは単につじつまが合っているということだけであって、いろいろな行政の機能というものは、それによって発揮されないほど窮屈になっておりますから、こういうことは是非考えていかなければならないことだと思うわけです。何かお話しによりますと、歳入歳出地方状況を見てから交付税のことも一つ考えようじゃないかとか、あるいは地方税のことも一つ最終的に考えようじゃないかというような、大ざっぱに言ってそういう結論であるように、個々のいろいろなものにつきましては税率のお話もございましたけれども、大きな問題となりますと、そういうふうな感じを受けるような結論じゃなかったかと、こう思うのですがね。そこら辺、どうもこれから歳入歳出状況を見て交付税をどうするのだ、あるいは地方税をどうするのだ、こういうふうなことよりも、むしろ現在の地方財政のいわゆる地方の自主財源を確保する、税の収入を確保するという建前から、どうなければならぬかということが私当然考えられておらなければならぬじゃないかと、地方財政の規模というものは現在のままでいいのかどうか、将来はどうなければならないとか、そういう建前から考えてみないと、これは地方は浮ばれないと思うのですよ。先ほども申しましたように、減税それ自体が住民にとってはありがたいことなんですけれども、地方の自治団体にとっては重大な問題になってきておる、こういうふうに私考えるわけなんですが、そこら辺どうでしょうか、一つもう少し、部長さんからも主計官の方からも見通しというようなもの、あるいは表明の段階でない、こういうふうにおっしゃられるかもしれませんが、考え方としてお聞かせ願えればありがたいと思うのですがね。
  111. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) お話全く同感でありまして、そういう方向に努力いたして参りたいと思うのです。私も、原則としては、地方独立税が逆に減収になるような措置を国としてやります場合に、他の独立税収入をもって補てんすることが筋道じゃなかろうか、こういう考え方をいたしております。税制調査会におきまして、ある委員が、地方税も減らさなければ、地方財政の規模が膨張するばかりじゃないか、地方財政の規模を押えるためには、地方税の減税をやるべきだ、そういう意味で、法人事業税の減税なども盛んに述べられたわけであります。その際に私は、地方歳入の中で税の占める部分は四〇%足らずだ、むしろ国庫補助負担金などは二千七、八百億も参っておりまして、地方歳出の四割も五割も占めている。さらに地方収入も相当ございますので、それらの面において必要があれば考慮できるので、原則として現在の独立税収入は自治団体歳入構成として多過ぎるものじゃないわけだから、これは減らさないようにぜひいたして参りたいのだというようなことを申し上げておったわけであります。大蔵省も、別に独立税収入の減収を全部交付税に持っていくのだということも言い切っておられるわけじゃないと思いますし、たばこ消費税その他の問題もあるだろうと思っておりますので、よく話し合って参りたいと思っております。
  112. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) 私どもの方といたしましても、ただ、地方も相当な自然増収があるから、当然国が減税する場合には地方もやったらいいじゃないか、あとのことはあとで考える、こういった気持でおるわけではございませんのでして、とにかく相当な予期せざる所得の伸びがあり、それに伴いまして、現在の税制上の高度の累進税率のために、所得税が相当程度ふえる。蛇足かもしれませんが、たとえば給与所得三十万の人が、夫婦及び子三人の場合ですが、これは現在所得税及び住民税合せまして七千八百六十五円になっております。これが来年度国民所得七%増加と見ますと、所得が三十二万一千円、これに対応する税が一万一千九百三十円というふうになりまして、約三千円の増加、つまり三割五分ぐらいですか、ふえることになるわけです。こういうような、もちらんもう少し所得の大きいところでは、その増加率が激しくなるわけでありますが、そういう相当高度の累進税率のために、ふえるところの所得税というものはある程度大幅でございますが、軽減すべきじゃなかろうか、国において、そういうような異常な自然増収のある際におきましての相当類を還元するという場合には、地方においても、とにかく地方財政が苦しいという現状はもちろんありましょうけれども、その異常な自然増収の一部を減税に振り向けるということは考えるべきではなかろうかということが一つあるわけでございます。それで、増収と減税と、歳入面におきましていろいろ何があり、また、歳出面におきましても、先ほど申しましたような増減になるわけでありますが、それらを勘案して果してそれでやれるかどうかということを見て、交付税の税率の縮小なり、その他の調整を考えるべきじゃなかろうか、こういうふうに考えているわけであります。もちろん、私どもといたしましても、現在の地方財政の姿で、三十一年度には相当な措置をとってはおりますけれども、なお必ずしも十分であるとは考えておりません。もちろん、経費の引き締め等も引き続き必要でありましょうけれども、いろいろなお窮状にあるところがございますので、それらの点は十分勘果して、検討いたしたいというふうに考えております。
  113. 鈴木壽

    鈴木壽君 お話大体わかりましたが、先ほど奥野部長さんのお話の中に、地方財政規模が大きいんだ、むしろ小さくすべきじゃないかというような意見すらあったということなんですが、これは、私は実情を知らないんじゃないかと思うんです。ほんとうを言えば、むしろ現在は、いわゆる黒字団体であっても――赤字団体のみならず、黒字団体であっても、非常な努力でもって規模の圧縮に努めており、非常に苦しい段階になって来ていると思うんです。必要な仕事もやれない。何も放漫政策をやっている所は、今の地方自治団体にはほとんどないと思うのです。そういう観点から言っても、あまりそういうような考え方地方財政計画を立てられたり、収支の面を見られたりしたんでは、これはもう大変な問題になってくるんじゃないかということが一つと、税の自然増という問題ですが、これは確かに自然増はあると思うのです。しかし、これはいわば不確定なことであり、しかも、内容として自然増の見られる所と、ほとんど自然増の見られない地域があると思うんです。御承知のように、現在の地方税で一番大きなものは事業税でございますから、事業税の多く取れる所と取れない所に上って、いわゆる自然増の幅というものは非常に違ってくると思うんです。全国的な統計としては、あるいは国の自然増と同時に、地方税の自然増ということは考えられるにしても、今言ったように、そういう地域的な差異というものはあるので、それでもって一々地方財政計画を立てられたんじゃ、これは非常に困った地域が出てくるということは当然だと思うのです。そういうふうな問題、それから、これは、私、前にも申し上げまして、これは矛盾するようでございますが、個人の、あるいは住民の税の負担の軽減ということは、これは望ましいことだと思うんですが、地方自治団体のそれはもう自主的な、特に税の収入の足りないことが現在の地方自治団体の非常に苦しい大きな原因だと思うのです。それで、再建団体の表なんか見ましても、計画を見ましても、税収入がわずか歳出の一〇%程度しかないところがあるんです。これは、平均はもっと全国的には上でございますが、税収入だけを見ますと、一〇%程度だけしかない所がある。百億の金を使う所が十億しか税収がないということがある。これは、かりに自然増伸びがあってもしれたものだし、それほど窮屈になってきているんですから、こういうところを十分頭に入れて、今後の国と地方の税の体系なり、あるいは税率なり、いろいろなものを考えてもらわないと困ると思うのです。と同時に、もし国の税の方において減税があると、地方税の方にもそれが波及してくるといった場合に、その穴を何で埋めるかということを、これは十分一つ考えていただきたいと思うわけですが、そういう点について、概略程度でよろしゅうございますから、最後にお考えを聞いておきたいと思うのです。
  114. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) お考え、いずれも全く同感でございます。地方交付税制度ができておりますので、かりに自然増収に均霑できない団体がありましても、これを財源にして基準財政需要額を高めることができるわけですから、自然増収の多いような団体地方交付税の額が減って参りまして、その部分自然増収の少い団体の方に自動的に流れてくるこういうことで、全地方団体が増収にあずかれるんじゃないかというふうに存じておるわけであります。私も、地方財源を減らす道具とするための地方財政計画の策定をやったんじゃいけない、地方団体は国の出先機関じゃございません。国の自治団体なんでありますから、無理に地方財源は少くていいんだという数字を作るために地方財政計画を立てることは避けるべきだ、こういう考え方を基本的に持っておりまして、今後もそういう気持で進んでいきたいと思います。
  115. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) おっしゃる通り、税の自然増収がございます場合にも、現在におきましても、かなりの税源としましては偏在がある。その偏在度がなお高くなるということは、伸びる税目を考えましても、当然想像し得ることでございます。そこで、これはあるいは御照会があったかと思いますが、臨時税制調査会におきましても、そういう増収が片寄ることがはっきりしているならば、ますます財源偏在の是正措置を講ずべきではなかろうかといったような意見もございました。具体的にはどういう方法をもってやるか、目下のところ、まだはっきりした線は出ておりませんが、私どもといたしましては、これはまだ先の問題でございますが、でき得れば、財源偏在是正の措置もあわせて講ずべきではなかろうかというふうに考えております。  なお、交付税の率の問題につきましては、前から申し上げた通りでございますが、ただ、減税をしました場合に、かりに千億減税をした場合には、とにかく国が減税をしようとしまいと、当然地方に参るべきその二五%分、かりに八百億なら、二百億、千二百億なら三百億というものをそっくりそのまま還元するという、そのために機械的に交付税の率をはね返すべきだという自治庁の御意見に対しましては、私どもといたしましては、先ほども申します通りに、これはこういう制度の改変あり、また自然増収が相当以上にある場合におきましては、やはり歳入歳出計画の状態を検討した上で交付税の税率は決定すべきじゃあるまいか、その場合、もし収支のバランスが確保し得れば、あるいは二五%の率を動かさないで見ることも、これは減税の何にも関連いたしますので、目下のところ何とも申し上げられませんが、そういうことも考えられるし、どうしてもそれでやれぬ場合には、また上げることも考えられるのじゃないか、こういった気持でおるわけでございます。
  116. 大沢雄一

    ○大沢雄一君 再建指定団体再建計画を見れば、一見してわかることなんでありますが、実際上あの計画が実施されるかどうかということは、常識ある者には、とうていあれは実施されないような計画になっております。たまさかこれは再建団体については数カ年の財政再建計画を立てしめたから、ああいう具体的数字をもって姿が出ているわけでありますが、一般の団体についても、たとえ黒字団体といえども、現在年次計画を将来にわたって立てて収支を見積れば、公債費と、もう一つ、あまり問題にはなっておりませんが、人件費の累増によって、とうてい尋常普通の手段をもっては収支の合わない姿が出るにきまっているわけであります。再建団体のように、ほとんど思い切って投資的経費を切りとばして、無理につじつまを合せなければいけない。そこで、財政再建団体のあの内容を見ますると、税の自然増収というものは、今朝来問題になっておる給与自然増財源に見合って、増俸をみないかわりに、その自然増収をみないという形でできているわけでございます。そういう姿の中において、自然増収があるからといって、これを洗い出して、そうして地方団体歳入を克明に調べて、そうして国税減税に伴って、できるだけ地方税を減らしていく。そうして収支のつじつまの合わぬところは交付税で押しつけておくというような姿でいくということが、すなわち地方自治を圧殺するものであって、大蔵省の考え方はそういう考え方であるように、私としては聞えたわけでありまするが、これはもってのほかの考え方であると思う。先ほど来も、地方行政と非常に密接の関連がある、地方行政のよしあしによって、収入のふえるところの事業税、こういうものを減らして、場合によってはたばこ消費税に置きかえるというような問題もありますが、しかし、同じ独立財源であっても、地方行政との関連というものが、たばこ消費税と事業税とは非常に違う。たばこ消費税は、これは国の専売政策によってどうにでもなるものであります。しかし、事業税のような自主的財源というものは、これは地方行政と密接に結びついたものであって、地方自治の伸張ということの立場からは、これは同一に論ずることはできないものであると思います。現在の臨時税制、調査会の答申の起草の経過というものによって伺ってみまするというと、そういう考え方地方財政計画の中に押し込め押し込めして、余裕を少しも見ないというような考え方でいきまするならば、これはせっかく地方財政再建しようとする地方団体再建意欲を著しくそこなうものでないかということを私は非常に心配するわけであります。予期せざる税の自然増収があったというような言葉もあったわけですが、予期せざるどころじゃない。辛うじてそれに見合って、何とかこのケリをつけていこうというのが現在の地方団体実情であるわけであります。私は、少し大蔵省の考え方の是正を一つ求めたい。これは希望であります。  なお税務部長さんには、この地方税の問題は非常にむずかしい、私ども不勉強のせいかもしれませんが、今ここでちょっと聞いただけでは、なかなかほんとうにまじめな議論として展開して行くのに、われわれとしてもなお研究が足りません。地方財政の問題については、「地方財政の現況と問題点」というような資料をいただいているのですが、税制については何もいただいておらぬのです。これでは、非常にわれわれとしても審議の上からまことに不便でありますから、一つ現況と問題点というようなものを、まことにお忙しいところ、御迷惑かとも思いますが、至急一つ作って、われわれの方にいただきたいと思う。お願いいたしておきます。
  117. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) だいぶあれでございますが、私どもといたしましても、来年度地方財政の問題を検討いたします際に、とにかく地方の方はできるだけ金をやらんで、ギリギリ縛って、歳入歳出をとことんまで洗って、できるだけ国が金を出さん方がいいのだといったような冷たい考え方でいるわけではございませんので、その点は、また今後いろいろ問題がございますが、自治庁ともよく話し合ってやっていきたいと考えます。
  118. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 奥野部長、資料の点、どうですか。
  119. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 仰せの点につきましては、適当なものを作成したいと思います。ただ、現行地方税の概観と問題点、こういう資料は出ております。よく心得て、そういうことにいたします。
  120. 本多市郎

    委員長本多市郎君) それでは、資料は後ほど御提出願います。
  121. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 資金課長おいでになっていますが、再建整備に乗っかるやつの承認の際に、自治庁再建課でやったので、どうも再検討をしたらどうかというようなことで、差し戻して作りなおしをしたようなやつはあるのでしょうか。
  122. 堀口定義

    説明員(堀口定義君) それは、資料等につきまして、団体から出てきました資料の不備その他で、もちろんよく見ていただいているわけですが、それはやはり落ちる場合もありますし、それから附属資料等で、もう少し完全なものをほしいというようなものもときたまありまして、そういう場合にはよく相談しまして、認可はもちろん自治庁でおやりになるのですから、政府として一致した、なるべく完全なものにしたいという意味で、御相談をした場合はあります。その程度で、非常にそのケースが、あれだけのケースから見れば非常に多いというわけではないのです。
  123. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 先日もお願いしたのですが、一つ、できるだけ詳細な検討をいただくことはけっこうですが、スピードをかけていただきたいのですが、大体年末くらいまでには、申請されているものは処理されるでしょうか。処理していただきたいのですが、その点いかがですか。
  124. 堀口定義

    説明員(堀口定義君) ここに資料をちょっと持って来なかったのですが、十二月の一日現在で、ちょっと集計してみたのですが、約二百十一ばかり残っております。従いまして、この前、十一月十九日現在で申し上げたものよりか相当進んでおります。しかし、私たちとしては、十二月中に終るためには、まあ百五、六十程度まで行きたかったのですが、その辺少しずれているのじゃないかと思います。しかし、十二月中に特別の問題があるのは別として、大部分のものについては片付けたい、そういう覚悟で極力やっております。御了承願いたいと思います。
  125. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それでは一つ、その点よろしくお願いしておきますが、この臨時税制調査会の答申のまとまる時期なんですが、これは鳩山内閣がかわることは周知のことで、諮問した内閣がかわるわけでしょうが、今度の後継内閣がどういうものであるかという、その性格とにらみ合って答申をする必要があるので、ずっと延びるのじゃないかというようなことを言っている人もあるのですが、そういうことではなしに、それをどういうふうに今度の内閣がとり入れるかは別に、これまでいろいろ議論されたところをまとめていく、こういうことになるのですか。たとえば在外資産等の調査の会でも、内閣の意向と見合って答申をするというような、自主性がないといえばないのですが、この内閣が困るような、はなはだしく困るような答申をしても困るから、そういう意向もくみながらというようなことも言われているのですが、その関係どうですか。
  126. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 税制調査会で伺っておりますところでは、十二月上旬ごろまでには答申案をまとめたい。案はできるだけ早くまとめておいて、新内閣にその答申を提出したい、こういうお考えのようでございます。
  127. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関係なしに……。  先ほど、同僚議員のいろいろ質問がありまして、所得税減税に対する住民税のはね返りの処置の問題ですが、できるだけ自主財源を確保したいという点から、奥野税務部長のところで、二十一というのを二十五とか二十八とか三十とかいうところにして、最小限にとめて、自主財源を確保しようという意向は、地方財政関係する私としてもよくわかるのですが、しかし、御案内のように、この住民税というものは、これができたときには、たしか昭和十五年、市町村民税はたしか十五年、そしてこれは、やはり戦争が進んで、非常に国家財政に需要が多いというようなことで、所得税を国が独占して、それを戸数割とかいろいろなもの、これまであったものをこういう形にして、何といってもこの税金は、府県民税合せれば八百億からあって、非常に大衆課税的な色彩が強い。だから、やはり国税所得税減税すれば、それをむしろ素直に受けてこの方も減税する、そしてそれは他の税を、事業税その他を検討して、あるいは租税特別措置法に匹敵するような、たとえば電気ガス税のごときは、電気料金はたしか二千五、六百億もあるが、百分の十取るわけですから、二百六十億ぐらいも取れるのですが、いろいろな免税措置で半分ぐらいですか、もっと取れますか、そういうようなことがあるので、そういうものを整理したり、いろいろやり繰りしてみることが必要じゃないかと思うのですが、やはり百億ぐらいな減税にとむべきだという考えですか、その点……。
  128. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 住民税全体としては、法人税は均等割もございますので、かなりな額でございますけれども、所得割だけを拾い上げますと五百五十億円ぐらいでございます。五百五十億円ぐらいの中には、第二課税方式ただし書きによりまして、増収百億円以上を見込んでおるわけでありまして、それを引きますと、四百五十億円ぐらいになるだろうということでございます。おっしゃっているように、もし所得税減税をそのまま受けますと、所得税でかりに四割減税をいたしますれば、住民税も四割減税、今までもウエートが必ずしも高くないのが、さらに四割も減ってしまうということになると、非常な減収だろうと思います。どちらかといいますと、市町村の財源としては、市町村の仕事そのものは、住民みずからの問題として処理しているわけですから、なるたけ住民が直接負担を感じて金を出している税でまかなっていった方がいいのじゃないかと思います。電気ガス税も非常にいい税金でありますけれども、戦前の地方税の中に占めておりました間接税の割合というものは、大体三%か、せいぜい四%くらいであります。現在は、電気ガス税その他の問題がありまして、二〇%になっております。これは、国税は逆のようになってきているのです。そういうことをいろいろ考えますと、所得に対する課税分を地方において相当留保していかなければならないのじゃないか。そのことは、地方自治の健全な発達の上からも言えることですし、ことに所得というものは、将来非常に伸びるものでありまして、こういう伸張度の強い財源について、地方も相当分留保されていただかなければ困るのではないだろうかというような感じは持っております。
  129. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そういう趣旨はよくわかりますが、世界各国の税制を見ても、八百億地方税で住民税所得税の一形態だと思うんですが、これほどかけているような例が少いんじゃないかと思うんですが、どうなんですか。
  130. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) おっしゃっている所得課税が、国税地方税を通じて多いか少いかということですか。
  131. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 所得税一つの形態として……。
  132. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) それとしても、相当国によって違って参りますけれども、別に珍しいことだとは考えておりません。
  133. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうですか。そういうできるだけ自主財源を確保する、そして将来伸びがあれば、そのものを合理化して存置しよう、こういうわけだと思うんですが、この住民税の法人ですね。やはりもう少し法の原則を入れて、法人の住民税について考慮する必要はないのですか。まあ法人擬制説と言いますか、均等割なんかでも、非常に額が少くて、個人に比べれば、法人が地方公共団体における受益等から比べれば、住民の所得割を含めても、非常に軽すぎるのじゃないかと思うのですが、どうなんですか。
  134. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 個人と法人とでは、均等割にかなり大きい幅を認めているわけでありまして、法人といいましても、いろいろな法人があるものですから、ちょっと一口で言えないのじゃないかと思います。だから、極端に均等割を上げるということにも問題があるのじゃないかと思います。所得課税分を考えます場合には、住民税自体の個人、法人間の均衡も考えなくちゃなりませんけれども、同時に、国と地方との間で、法人所得に対する課税分をどう分けていくかということも合せ考えなければなりませんので、簡単には結論を下せないのじゃないかというふうに思います。ただ、形式的に言いますと、同じように、片一方は所得税額を課税標準にして、他方は法人税額を課税標準にする。その場合に、個人所得割は二一%、法人税割は一三・五%、だから法人税を上げたらいいじゃないか、こういう議論になろうと思います。しかしながら、根っこになります法人税の税率なり、所得税の税率についてまた問題があるわけでありますので、沿革的にこういうふうにきまってきているのだということではなかろうかというふうに存じております。
  135. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この課税方式による地域的な階層別のアンバランスを、今度標準税率をですか、作って調整するその試算はできておりますか、大体。
  136. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 第一方式の場合と同じような負担額になるように、課税標準の段階をおいた税率を刻むわけです。その所得税そのものについては、改正が議論されておるのですが、まだそれが固まっておりませんので、固まってから作りたいというふうに存じております。ただ、一応現行制度のものについては、いろいろ検討を加えております。
  137. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 たとえば年収五十万円くらいで、夫婦と子供三人というようなんですと、第一方式ですと一万七千六百四十円、第二課税方式では三万三千五百円、第二課税方式のただし書きでは四万一千五百円、第三方式では四万九千三百六十円というように、この第一方式に比べて第二、第二ただし書き、第三と、二倍から三倍になって、非常に、特に五十万円くらいの段階が私の調査では一番ひどいところで、たとえば五十万円ですと、第一方式を分母として第二方式を割ると一・九、約二倍、第二方式のただし書きですと、二・三五、第三方式は二・七九、まあ約三倍近くです。この段階が一番アンバランスがひどいようです。年収百万くらいですと、国会議員はこのクラスにまだなりませんが、第一方式ですと五万七千九百六十円、第二方式ですと八万三千五百円、第二方式のただし書きですと九万一千、第三方式ですと十二万というふうになって、そのために、こういう高い課税をエスケープするために、住所をかりの場所に変えたり、いろいろしたりしておるところがありますが、こういうアンバランスは完全に調整できるような、段階ごとにそれはできますか、あまりひどいと思うのですが……。
  138. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 御指摘になりました負担額は、ある特定の団体だと思います。私たちの今考えておりますのは、第二方式の本文によります限り、法定された税率で課税していきますと、第一の方式の場合の負担額と全く同じになるような税率を法定したいと、さように考えておるわけであります。ただそこに、第一方式の場合でありますと、配当所得があれば、配当所得の二〇%は税額控除されます。税額控除後の所得税額に税率が乗ぜられますから、その人の負担は第二方式の本文によった場合よりも軽くなるだろうと思います。こういう問題はあるかと思いますが、そういう特定の所得のものの部分につきましては、第一方式によろうと、第二方式の本文によろうと、負担額は同じだというふうに率を刻みたいと思います。第二方式のただし書きによると、基礎控除だけしかいたしませんから、扶養親族が多いとか、社会保険料控除を受けておるというような場合には、それだけ重くなるわけでありますが、そこで、第二方式ただし書きによります場合でも、扶養控除は税額控除の形においてやってもらったらどうか、そういう考え方を法律の中に入れたらどうかというような考え方でおるわけであります。  なお、税率の刻み方につきましては、所得税段階をそのまま持っていくことは、市町村の実態からいいますと、少しナンセンスな面が出てくるのじゃなかろうか。その辺はなお検討したいと思っております。大体の方向としては、今申し上げましたような第一方式の負担額と、第二方式の負担額と、全く同じになるというようなところで率をかけたいと、かように考えておるわけであります。
  139. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 これは、奥野部長のお考えからいえば、課税の将来の伸びもあるし、主要な、重要な財源として育てたい、こういう御意向だと思うのですが、そうすると、やはりこの税の持つ不合理性というものをできるだけ合理化してい措置が非常に重要だと思うわけであります。そういう点で私は、やはり一つとしては、法人と個人の負担が、国税との関係もありますから、その負担以下の地方公共団体から受ける受益、まあ負担分といいますか、そういうことからして、もっと合理化をやる必要があるのじゃないかという点と、やはり地域別な課税方式別のアンバランスを絶対に是正されることが、大体奥野部長ともあろうものが、数年間地方財政赤字というものをどの方式をとるかということによってこのクッションをやったということは、国税の毎年の控除の引き上げの社会政策的な考えを、全くこれがもう犠牲にしておる。そういう点では、その罪も軽くない。国税における社会政策的な考えを……この五大市、大都市だけは第一課税方式をとっておるが、ほとんどの市町村は第二課税方式以下の方式をとって、これをクッションとして財政難を救わしたというような、税に対する基本的な考えは、幸い国税所得税減税せられるときですから、一つこのアンバランスだけは絶対に是正して、国税における減税の意味を無視しないような措置をとっていただきたいと思うわけであります。わが党は、そういう考慮が十分なされない限りは、相当この点に対しては熱心な質疑をやっていきたい、こういう考えを持っております。あまりこの点について申し上げる機会がないと思いますが、いろいろ調べてみておるのです。はなはだしく大衆課税、勤労者に対して。先日も青森県の大三沢ですか、行ってみましたら、ほとんどあそこに勤めておる基地労働者が住民税でやられておるというようなこともあり、ぜひとも一つ、縦横な角度から検討していただいて、合理化していただきたいと思うわけであります。私も、できるだけ国税を減らすといいますか、そうして国税と調整して地方の税というものは、地方財政に必要なものは地方で調達する、たばこにしても、交付税にしても、調整財源はできるだけ少くして、むしろ苦労して取り立てて使う、それには国税との関係も必要でしょうが、そういうふうにしていただくためには、どうしても八百数十億の、おそらくいろいろなことをすると、九百億になっておるかもしれませんが、その合理化を絶対、来国会においては一つ強くお願いしておく次第であります。  それからもう一つは、昭和三十一年度自然増収ですね。これを専門員室を通じて、やはりわれわれとしては知りたいのです。それは、再建計画を見ましても、この昇給財源を含んでいない。しかし、自然増収があれば何とかしてやるんだというようなことが言われて、これが年末賞与等に非常に深い関係がある。できれば各府県別の大体の傾向を知りたいわけであります。だいぶ前からお願いしておるのですが、どういうふうになっておるでしょうか、その点は。
  140. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 自然増収の問題は、府県でありますと、九月末でございましたでしょうか、くらいの収入の現況、これはわかっております。これは、資料をお届けしてもよろしいと思います。ただ、各県別に自然増収が幾らになるかということになりますと、その自然増収というのは、各県の予算に上げた収入よりもふえる額をおっしゃっておるのか、基準財政収入額で測定した額よりも多くなる部分をおっしゃっているのかという問題であります。私ども、大体地方財政計画で見ております額よりは、府県市町村を通じて、この増収は二百億円を下回ることはない、もう少しあるだろうというふうな推定をいたしております。九月末現在の府県別の数字をお届けするようにいたしたいと思います。なお、前段の御意見でございますが、私たちも全く同感でありまして、御趣旨に沿って努力をしていきたいと思います。ただ問題は、従来地方財政平衡交付金の額が幾らあればよろしいかというようなことで地方財政計画を策定して参りまして、その際に、住民税についても第二方式ただし書きを採用することによって相当の増収をはかってもらう、結果的にはそういう計画になっておったわけであります。これが当時から、地方財政委員会あるいは自治庁と大蔵省との間で見解が対立しておった問題であります。われわれとしては、東京の金を横浜に持っていって使えるものじゃないじゃないか、こういう言い方をしておったわけであります。しかし、それはそれとしまして、別途条例準則を示しまして、先ほど来私が申し上げておりますような方向に努力しておったわけでありますけれども、地方財政全体が窮屈なものですから、多少無理と知りながらも、市町村としてもあえて増税をやっておったという状況です。幸い来年度は相当の自然増収も期待できますので、そういう機会に思い切って調整の措置を講じたい。それには、条例準則程度じゃなくて、法定していかなければならないだろう。法律にまで書けば、市町村議会でいろいろ検討いたします場合にも、それを基準にして十分論議されることになるだろう。その結果は、負担の合理化もはかれるようになるのじゃないか、かように考えております。お言葉に従って、よく検討していきたいと思います。
  141. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 大体の自然増収の見通しはわかりませんか。
  142. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 今お話し申し上げましたように、二百億円以上というふうには思っておるわけですけれども、具体的な数字は、ちょっとまだ正確にはじけないわけです。
  143. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 奥野部長の決意を聞いたのですが、まああしたは予算委員会で、大蔵省が地方財政にしわを寄せるようなことに対しては、大いに一つ努力してみたいと思いますから、一つぜひとも、こういう機会はまあなかなかないと思うわけです。この税を育てていくというのなら近代的な姿に、やはり不合理、大衆課税、地域的なアンバランスというようなものについて、一つぜひとも重ねて希望して、私もう時間がありませんから……。
  144. 加瀬完

    ○加瀬完君 中田委員の方からも、いろいろ御質問の形で出されましたので、自治庁の方で御発表になるかと思いますが、具体的な資料の二、三をお願い申し上げたいと思います。  一つは、現在進行中の税制調査会の案の通りの税率改正が行われますと、それによる所得税の減額分、これに伴う住民税の減額分、それから、今御説明のありましたような住民税率の改正による増の分、それから事業税の減額分、第二に、これは大蔵省と自治庁にお願いしたいのでありますが、交付税基礎になります諸税の自然増収があるので、交付税率をふやさなくてもよろしいという説明がたびたび繰り返されるわけでありますので、この自然増収の推定に伴う地方交付税の見通しについての試算表と言いますか、そういうものを一つ出していただきたい。自然増収自然増収とおっしゃるのですから、たとえば三十一年度、三十二年度、三十三年度と、どういうふうに自然増収というものを見込まれるのか、それによって交付税がどういうふうな額になるのか、これは、自治庁と大蔵省と、両方から出していただきたいと思う。それから第三は、税務部長さんに、たばこ消費税の税率の引き上げによる増収見込分、以上お願いします。
  145. 本多市郎

    委員長本多市郎君) 何か、今の要求について発言がありますか。
  146. 奧野誠亮

    説明員(奧野誠亮君) 自然増収の推定に伴う交付税の率という問題は、収入面からだけでなしに、大蔵省側は歳出面も言っておられるわけであります。また、交付税制度の本質から言うと、まあ機械的な率の改訂だけでよろしいのだということになろうかと思うのでありまして、これはまだ、おっしゃったような格好では数字が出てこないのではなかろうかというふうに思います。それから、自然増収の推定に伴う交付税の試算表というのはどういう意味か、ちょっとわからないのですが……。
  147. 加瀬完

    ○加瀬完君 自然増収が見込めると、おっしゃるのですね。交付税率は引き上げなくてもいいというならば、自然増収がどういうふうに見込めるかという推定はつくはずですね。それに伴う地方交付税がどういう額になるかという大体の試算というものはできると思う。そういう点を御回答いただきたい。
  148. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) まだ三十二年の、三十一年もそうですが、三十二年の交付税関係ございます三税の自然増収でございますが、三十二年につきましても、大体大ざっぱに千億、全体は千億で、そのうち主税は八百億くらいであるというふうな推定をしておる段階でございまして、なかなかちょっと自信のある数字はないのです。三十三年に至りましてはなおさらでございますが、そこで、私ども申し上げましたのは、交付税の率を抑え置きにしておいても十分やれるのだということを申し上げておるわけじゃないのでありまして、まあ三十二年の地方財政の収支をしさいに検討して、その上で、この交付税率等の調整等による調整措置を講じたらいいのではなかろうかということを申し上げたのであります。ですから、来年そういったことを織り込んで、交付税をどのくらいにするかという数字は、ちょっと今の段階では困難ではないかというふうに思っております。
  149. 加瀬完

    ○加瀬完君 しかしですね。その一応の試算というものができなければ、交付税率を据え置きにしていいとか、また下げてもいいとか、上げてもいいとかいう議論は成り立たないわけです。概算でけっこうですから、できるだけのものを御提出いただきたいと思います。
  150. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) 増収の見積りにつきましては、これは主税局の方で実はやっておりますので、帰ってよく相談いたしてみます。交付税率の問題は、いろいろな方へ関係ございますので、あるいは三十二年度の税収ないし三十三年度、少し先になりますが、どの程度見込めるのだろうかというような資料を、どの程度になりますか、よく相談してみます。
  151. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは、自然増収を見込まれるというのですね。
  152. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) よく相談してみますが、なかなか確かな数字は無理かと思います。
  153. 本多市郎

    委員長本多市郎君) それじゃ、できるだけの資料を一つ御提出願います。  本日は、これにて散会いたします。次回は、本日と同一の議題のもとに質疑を継続する予定でございます。その日取り、時間は、公報をもって御通知いたします。    午後四時二十九分散会