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1956-11-28 第25回国会 参議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十八日(水曜日)    午前十時三十八分開会     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     千葉  信君    理事            榊原  亨君            安井  謙君            山本 經勝君            早川 愼一君    委員            小幡 治和君            大谷藤之助君            木島 虎藏君            草葉 隆圓君            佐野  廣君            寺本 広作君            野本 品吉君            吉江 勝保君            大矢  正君            栗山 良夫君            田畑 金光君            藤田  進君            藤田藤太郎君            田村 文吉君            竹中 恒夫君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    法制局長官   林  修三君    労働政務次官  武藤 常介君    労働省労政局長 中西  實君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    労働省労政局労    働法規課長   石黒 拓爾君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件電気事業及び石炭鉱業における争議  行為方法規制に関する法律附則  第二項の規定により、同法を存続さ  せるについて、国会議決を求める  の件(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 千葉信

    委員長千葉信君) これより社会労働委員会を開会いたします。  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律附則第二項の規定により、同法を存続させるについて、国会議決を求めるの件を議題といたします。  これより質疑を行います。  本日は鳩山総理大臣出席になっておられますので、主として総理大臣に対する質疑を先にお願いしたいと思います。順次御発言を願います。
  3. 藤田進

    藤田進君 私は、鳩山総理に対しまして、若干の質疑をいたさんとするものであります。  まだ、第一にお伺いをいたしたい点は、今度のこの臨時国会で、鳩山内閣政策に触れ、国民に公約せられた関連からして、重要だと考えられる案件は何と何をお考えであるのか。もちろんいずれも重要ではありましょうが、なかんずく、この臨時国会には鳩山内閣として特に重要とせられる案件重要案件はどういうものをお考えなのか、お伺いいたします。
  4. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) どっちの方が重要だということはちょっと申しかねます。たとえば、日ソ交渉に関する案件スト規制法案件とのどっちが重要だ、その重要はどっちかということは言いかねますけれども、重要だと思うことだけは確かなことであります。
  5. 藤田進

    藤田進君 私がお伺いいたしているのは、甲、乙、丙、丁をお伺いしているのではなくて、この臨時国会に多数の案件が、政府あるいは継続審議という形で現在各種委員会審議をせられております。その中に日ソ交渉案件、すなわち共同宣言の批准、並びに条約案件、これは重要であることはもう世上認めるところです。その次にやはり臨時国会としては、いわゆるスト規制法について重要であろうと見られておる。しかし、鳩山さんは、その二つをこの臨時国会の重要な案件考えているのか、あるいは、日ソ交渉関係だけを考えているのか、その辺の所信伺いたいのであります。
  6. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この両者の間の重要性はいずれが重いかということは申し上げられません。両方ともに重要だと思います。
  7. 藤田進

    藤田進君 これは日ソ交渉関係スト規制法二つ関係が重要だというふうにとられるわけでありますが、本日本委員会には初めて出席願ったわけですが、鳩山総理は、あと会期も余すところ多くないのでありまして、本委員会要求にはぜひ応じて、少くとも最終段階においては、ぜひ総理に締めくくりの意味質疑をいたしたいと考えておりまするから、ぜひ御出席をいただきたい。この点について、どのようにお考えか、お伺いいたします。
  8. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私もできるだけ出席いたしたいと思っております。
  9. 藤田進

    藤田進君 それでは最終段階でもぜひ来てくれますね。
  10. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ええ、そのつもりでおります。
  11. 藤田進

    藤田進君 それでは、本案に直接関連する問題に入りたいと思いますが、いわゆるスト規制法が今度の延長をする意思を付して提案せられているわけでありまするけれども、この政府議決を求めての提出に際して、十一月の十二日でありましたが、鳩山内閣総理大臣名をもって当参議院議長あて委員会審議疎略を求めてきている。ところが、これはその後撤回をせられておりますが、当時の鳩山総理所信としては、あの審査疎略要求を付し、直ちに本会議においてこれを決するという、こういう趣旨であったろうと思うわけであります。しかし、これは撤回されているわけでありまして、この間の経緯をお伺いいたしたい。
  12. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、スト規制法を延長するための案件でありますが、緊急でもありますからして、委員会に付さなくても本会議の討議で十分だと思ったのであります。けれども、委員会省略ということについては非常に反対が多く、かえってそのために議事の進行も、議事運営もいかないような情勢にありましたから、省略の当初の意思の変更を生じまして、委員会省略をやめたのであります。
  13. 藤田進

    藤田進君 それは衆議院の場合ですか、参議院の場合ですか。
  14. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 衆議院の場合でございます。
  15. 藤田進

    藤田進君 私がお尋ねいたしておるのは、鳩山内閣総理大臣から参議院議長松野鶴平あてにきている当時の委員会審議疎略の件について、その経緯を求めているのであります。衆議院の事情をお尋ねしているのではありません。
  16. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そのことについては、法制局長官から答弁させます。
  17. 林修三

    政府委員林修三君) 今の問題は、非常に法律の技術的な問題になりますので、私からお答えいたしす。
  18. 藤田進

    藤田進君 法律技術を聞いているのではないのだ、委員会審議疎略出して撤回したということを、総理はどういう考えでおやりになったかという、総理考えを聞かないとわからないです。
  19. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これは、規則解釈の問題でありまして、そして参議院勧告がありましたから、議長勧告ですか、議運勧告がありましたから撤回いたしました。
  20. 藤田進

    藤田進君 議運勧告は、あの審査疎略予備審査段階法規に照らして不当である、従って審査疎略要求は、この法規に照らして、作用をなさない違法なやはり要求をせられてきたわけです。そのことは御承知ですか。
  21. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 法規解釈に多少疑義があると思います。
  22. 藤田進

    藤田進君 劈頭総理は、日ソ交渉関係といい、このスト規制法関係といい、政府重要案件だと解されているのに、これを違法という、いわば法規に照らして作用をなさない、その手続をあえて押して委員会審議疎略をしようとした、この点については、その責任を感じませんか。
  23. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先ほど申しました通りに、法の解釈について疑義がありましたので、最初はそれでいいと思っておりましたけれども、勧告もありましたので、中止をいたしました。
  24. 藤田進

    藤田進君 いやしくも、立法府に対して、委員会審議疎略をしようという意見を付して求めてくる場合、内閣法制局長もいる、また所管労働大臣もいるはずです、そういう行政府として非常にうかつな、しかも立法府に対してこういう違法な措置まであえてするということについては、全然検討しないで、事後指摘されて初めてそのことがわかったのか、あらかじめわかってはいたけれども、あえてその措置をとったのか、その間の経緯を明らかにしていただきたい。
  25. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 法制局長から答弁させます。
  26. 千葉信

    委員長千葉信君) いいですか、その点なら……。
  27. 林修三

    政府委員林修三君) その点は、先ほどちょっとお答えしたわけでありますが、参議院規則解釈につきまして、多少従来の取扱いから申しましても疑義が私どももございましたので、当然予備審査省略をするつもりはなかったわけでございまして、もちろん議案衆議院から参議院に移った際、委員会審査省略ということをお願いする趣旨出したわけでございます。もしそうであれば、この趣旨は、本議案衆議院から参議院に移す際に出すのが規則の正当な解釈であるという議院運営の御勧告もございましたので、その趣旨に従いまして撤回したわけでございまして、当初におきましては、多少われわれの方も疑義は持っておりましたので、その点につきまして多少、念のためと申しては語弊があるかもしれませんが、そういう趣旨でお出ししたわけであります。
  28. 藤田進

    藤田進君 それは、この問題は法制局長とやるには時間がもったいないから、あまり触れたくないのだが、今の答弁あとからこじつけた答弁だ。その当時衝に当ったわれわれとしては、よくその経緯はあなたの方の法制局長の意向というものはわかっていたはずだが、これは委員会が違ったからまた違ったことを言うのならばまた別ですよ。しかし、参議院に対しての答弁としてはまことに遺憾な点がある。衆議院議決して参議院送付する際に、その際に、委員会審議省略してくれ、そのために予備的に十二日の日に出したのだと、こう聞えるのだ。そうじゃなかったはずなんだ。もしそうだとしても、国会法に照らして、送付と同時にやはりやられなきゃならぬはずだ。十一月の十二日に上程と同時にこれをつけてくるということ自体が不当なのです。参議院総理が答えたように、勧告したのはこれは適法でないという点が重要な点で、ああいうものは撤回しなくても何のこだわりもないけれども、世上を惑わしたのだから、この際一掃する意味で撤回したのだという、この点については誤解のないように、答弁についてももっとまじめに、真相真相のままに答弁していただきたかったことをつけ加えておきます。  次に、総理にお伺いをいたしますが、鳩山内閣近代的労働政策というものの実態がよくわかりましたが、少くとも時限法であるこのスト規制法をさらに恒久的な立法としようということについては、ここに明確な労働政策に立脚したところの基本的考え方がなきやならぬと思うのであります。そこで第一に具体的にお伺いいたしますが、第一の点は、鳩山総理労使関係について、労働資本関係についてどういうものなのか。労働大臣の昨日の答弁を聞けば、これはまた労働大臣に後刻聞きますが、まことにわれわれ理解しがたい労使関係に対する態度をお持ちのようでありますが、労使関係の本質というものについてどのように考えられるか。たとえば労使は、現在の労働法の一貫している精神は、対等立場でものを解決するようにという点、労働力に対するその対価は交渉によって、取引によって決せられるという関係、いわゆる旧来の身分的な関係ではない、労使関係は、ある契約関係にあるのだというのが今日の定説になっていると思うのです。この点は、鳩山総理はどのようにお考えになるのか、お伺いをいたしたい。
  29. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 契約関係でありましょうが、労働者に対して団体交渉権を与えたいという趣旨でございます。
  30. 藤田進

    藤田進君 労使関係はいわゆる身分関係ではなくて、契約関係にあるということはお認めですか。
  31. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そう思います。
  32. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、国家機関としては、内閣あるいはそれぞれの各級機関国家機関は、労使関係にあっては、どういう態度をとるべきだとお考えですか。
  33. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 意味はどういうことですか。
  34. 藤田進

    藤田進君 国家機関ですね、鳩山内閣総理大臣以下各省庁、これらは労使の問題についてどういう態度をとるのか、こういう問いなんです。
  35. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 労使関係についてどういう態度をとるか、労資の関係が円満にいくように、公共福祉が害されないように考えていくのが政府態度だと思います。
  36. 藤田進

    藤田進君 私が聞いているのは、労使関係に、たとえば紛争議が起きた、あるいは起きんとする状態、こういう場合に、政府機関としてはどちらに味方をするのか、しないのか。あるいは全然手放しでこれを見ているのが正しいのか。国家機関というものは、労使関係のそういう状態の中で、公平無私に、あるいは公共福祉とおっしゃろうが、国家機関としてはおのずから任務があるはずなんです。鳩山総理はどういう所信のもとに労使関係に処していかれようとするのか。
  37. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 政府としては、政治の最大の目的というのは、国民生活の向上と安定ですから、労使関係におきましても、両者生活の向上安定のために助力をするというのが当然だと私は思っております。
  38. 藤田進

    藤田進君 労使関係紛争の際には、あなたがた行政府国家機関としては、やはり中立的な態度で、円満な解決の促進助長をはかるというのがその態度ではないんでしょうか。
  39. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) もとよりそうです。中立の態度で公平にやっていかなければならぬと思います。
  40. 藤田進

    藤田進君 このスト規制法作用するところは非常に広範であり、深刻であろうと思います。それは現在の日本労使関係状態から見て、ただいまの政府機関が中立公平な立場をとるべきだという態度はあっても、かような立法によって、一方的に労働者権利抑制抑圧するような結果になって、労使対等立場契約関係を結ぶという場合に、非常に労働側に対して抑制を与える結果になる。憲法の二十八条にいう団結権並びに団体行動する権利に対しての抑圧であります。この点、総理としていかようにお考えになるのか。このスト規制法は条文はわずかでありますが、一方的に労働側権利抑圧する、こういう結果になってしまっている。この点はどのように説明をなさるのか。
  41. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 公共福祉に害がある場合においては、政府としてはその基本権を――基本権というものは無条件なものだとは政府としては思っておりません。公共福祉を害するような行き過ぎたストに対しては、政府としては基本権を害せずに、労働者に対して勧告をするというのは当然だと思っております。
  42. 藤田進

    藤田進君 そうしますと、公共福祉の前には、憲法二十八条の諸権利にもある種の制限を加えざるを得ない。その場においては労使対等バランスは若干崩れてもこれまたやむなし、こういう御見解ですか。
  43. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 公共福祉を害するような行き過ぎた労働争議に対しては、政府としては干渉するのがその任務だと思っております。
  44. 藤田進

    藤田進君 そういう場合には、労使バランスが崩れてもこれまたやむなしという御見解なのかどうかをただしている。
  45. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 労使バランスを崩すというような意思はありません。このスト規制法というものは、資本家権利を拘束する作用は全然ないのであります。労働の側だけにその抑圧がなされるということなんであります。そうである限り、労使対等バランスというものは崩れていく。しかし、これは公共福祉だという御説明でもあるようだし、その点はバランスが崩れているとは思いませんか、どうなんですか。
  46. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうような場合に、つまり公共福祉を害するような場合には、労働者争議権がない。そういうような行き過ぎた争議をしてはいけないということは当然だと思う。
  47. 藤田進

    藤田進君 他の立法――現行法でそういう国家公共福祉国民生活が危殆に瀕するとか、そういう場合には、他にそれを防止する方法規定されていると思いませんか。
  48. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) もう一度お願いします。
  49. 藤田進

    藤田進君 スト規制法をさらに延長して恒久化することにおいて、公共福祉を阻害するような争議をとめていきたい、こういうお考えだと思うんです、今の答えからすれば。そうだとすれば、スト規制法がなくてはその公共福祉を阻害するような争議行為をとめる方法がないというふうな答弁に聞える。しかし、現行労働法の中には、そういう国民生活に重大な影響を与えるような争議行為に対しては、これをとめることができるものがあると思わないのか、そんなものはないとお考えなのか、どの程度現行労働法を把握しておられるか、それを聞いているわけなんです。
  50. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) よく私にわかりませんから、法制局長官かあるいは政府委員の方から答弁をいたします。
  51. 藤田進

    藤田進君 私は総理のお答えに関連して……、当然総理は実体を、こまかいことは別として、ある程度把握になっていなければならぬと思う。スト規制法がなかったら国民生活なり公共福祉が阻害される、だからこれが必要なんだとおっしゃるが、しかし現行法にはちゃんとそういうものがとめ得るようになっている。このことは御承知ないですか。たとえば、労調法の三十五条の二項には、緊急調整という制度が設けてあって、今総理が言われるようなものはあなたの、内閣総理大臣である限りあなたの要請によって争議は一時とめることができる。ちゃんと制度、法が明定されているわけなんです。これは鳩山内閣総理大臣みずからがそれを発動するようになっている。労働大臣でもなければ、通産大臣でもない。あなたの権限に属することがちゃんと労調法の三十五条の二にきめてある。それを御存じないからこのスト規制法は必要なんだとお考えになっているような気がする。この点はどのようにお考えでしょうか。
  52. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまあなたのおっしゃいました労調法もあります。けれども、電気及び石炭関係については、なおこの法律のようなものが必要と思ったのであります。
  53. 藤田進

    藤田進君 二重な規定になりませんか。
  54. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はなお必要があると思います。
  55. 藤田進

    藤田進君 ある法律争議行為をとめる、禁止する、一定期間。これは、よしあしは別として現行法にある。それがあるのに、なおスト規制法というものが電気石炭に限って必要だとする総理所信は那辺にあるのですか。
  56. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この法律は、争議をしてはならないその限界をきめたものですから、やはり必要があると思います。
  57. 藤田進

    藤田進君 労調法の三十五条の二は、法政局長官が、念を押しているから、メモを書いて出したのだと思うが、それはちゃんとあなたのおっしゃる公共福祉を阻害するような争議行為については、あなたの、内閣総理大臣の名においてこれをとめるべき手段が残されている。もちろん中央労働委員会意見をするわけだが、これがある以上、かようなスト規制法等によって新しく争議行為をとめようとなさらなくてもいいのではありませんか。重要法案について、何らその検討もなさらずにお出しになっているように見える。
  58. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかくこのたび提出し法律案によりまして、争議限界をきめた方が明瞭になると思ったのであります。
  59. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、従来もこのスト規制法にきめているような争議行為は、これは現行法解釈の範囲でもやってはならぬのだ、しかし、中にはやっていいのだという議論もあるから、解釈をここに明確化したのだ、新しく権利抑圧抑制するようなそういう法律の創設ではないのだ、こうおっしゃるわけですか。
  60. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通りであります。
  61. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、先ほど来聞いている緊急調整というものがあって、あなたのおっしゃる公共福祉という関係については、ちゃんと防止する方法が残されている。そうすれば、あとはこれは解釈的なものだ、解釈規定化したものだということであり、かつ時限法として三カ年というものでありまするならば、今後これをさらに恒久化するという根拠はなくなってしまうのではありませんか。この点は、なぜここに三カ年の一定期間が満了して、そうしてもう解釈の、あなたのおっしゃる立場からすれば、解釈も世上確定したでしょう。さらにこれを恒久化しなければならぬというのはどういう理由なんですか。
  62. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 三カ年の間には、十分に良識ある慣行ができると認識しまして、現行法律案ができたと思います。しかし、三カ年たってもやはりこの法律をおいた方がいいと思い、必要があると思って今度提出したわけであります。
  63. 藤田進

    藤田進君 政府重要法案として出してきて、総理もみずから不自由なからだでこの委員会出席して御答弁なされるこの法案世論も相当これには反対している、この法案には。そういうものが単にどっちかというと、置いておいた方がよいような響きをもつような答弁なんですが、どうなんですか。そんなことで、こういう基本的人権抑圧されるような立法がまさに通るか通らないかという関頭に立って、内閣総理大臣がもっと自信があるならあるような答弁をいただかないと……。
  64. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これは労働大臣が申しております通りに、必要があると思って提出したのであります。
  65. 藤田進

    藤田進君 その必要の理由を聞いているのです。先ほど来私は聞いているのです。
  66. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 必要なる詳細な理由については、労働大臣から答弁をしてもらいます。
  67. 藤田進

    藤田進君 それは所管大臣にはこれからずっとお尋ねするので、あなたが毎日出てくれるならば、大臣から聞いたり、法制局長から聞いたりするのだが、時間がないというようなことであなたは帰ってしまうから、それであなたからぜひ聞きたいという、項目で私は整理して、実は多数ある中で聞いて、いるわけです。内閣総理大臣の名において重要法案をここに、本国会出してきておるのですよ、あなたは。労働大臣が何を言ったか知らぬが、とにかく大臣が言った通りだというのでは、内閣総理大臣としての所信にはならぬと思う。わからないならわからないで、やむを得ないのです。
  68. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先ほど以来の私の御答弁によって御了解を願いたいと思います。
  69. 藤田進

    藤田進君 時限法をさらに恒久化するということについては、これはあなたの法の解釈は、従来の解釈は決して変えていないのだ、拡張するものでもないし、するものだということであれば、過去三カ年間の慣行なりこの法に対する解釈という、このスト規制解釈というのであれば、何もここで恒久化していかなくても、公共福祉労調法三十五条できめてあるのだし、内閣総理大臣の名において、しばしば言うように、争議はとめ得るということであれば、何もこれを世論反対を押し切って、あなたはいよいよ政界を引退なさらうとするこのときに、無理をして出さなくてもよさそうなものだ、これはだれだってそう思っている。この委員会を通じて、あなたがしようとする、やはりその所信をはっきり述べてもらいたい。
  70. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) このたび出し法律案は、この機会に出さなければ間に合わないのですから。(笑声)
  71. 藤田進

    藤田進君 間に合わないからあわててお出しになったという点は、それはそれとして、そんなことじゃなくて、あなたは、この法律は永久にこれを存続すべしという意見を付して内閣はお出しになっておるわけです。出した時期について、来国会とか、そんな議論をしているのじゃなくて、なぜこういうものを恒久化するのか。時限立法として今まで三カ年を過ぎてきたのだからもういいじゃありませんか。いや、ところが出すんだ、必要なんだと言う。なぜ必要なんだということです。
  72. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) なぜ必要かという御質問ですか。
  73. 藤田進

    藤田進君 三カ年間の時限法としてできた、これは御承知だと思う――御承知ですか。
  74. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 時限立法というのがいいのか、そういう説明が正しくないのかは、これは議論があると思います。
  75. 藤田進

    藤田進君 その議論を聞いているのです、あなたの議論を。
  76. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ああそうですか。
  77. 千葉信

    委員長千葉信君) 委員長の許可を受けて御発言を願います。
  78. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これは厳格な意味時限立法だとは思いません。三カ年たったならば、その存続かいなかをレビューしようという性質のものだと思っております。そこで現状においては、存続を必要と認めたというのが政府態度であります。
  79. 藤田進

    藤田進君 それは認めたから出したということなんだが、あなたの議論は、今申し上げたように、諸般の立法上ちゃんと公共福祉を守る制度はあるのに、そうして三カ年間の経過を経て、解釈はもうこれで労使慣行なり、何なり、現状実態からみても、われわれからみれば必要がないと思われるのに、そのわれわれの必要でないとするには、質疑の中でも若干意見をつけてあなたに聞いているわけです。ところがあなたは必要だというのです、恒久化することが。その必要だとする根本の理由は何と何なのか、それを聞いている。
  80. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 労働関係の現状から、こういう法律が必要だと思ったのであります。
  81. 藤田進

    藤田進君 鳩山総理に来てもらったのは、ただ必要だというのでぶっきらぼうに言ってしまうのではなくて、なるほど総理が言う必要性というものはこういうところにあるのだということをやはりわれわれも知りたいし、国民も知りたいと思う。ただ必要なんだ、ただ必要なんだというのでは、それじゃやはり審議になりませんよ、それでは……。
  82. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その点については、所管大臣から答弁をしてもらいます。
  83. 藤田進

    藤田進君 所管大臣はまたあとでゆっくりあれします。総理としては答えられないと解してよろしゅうございますか。
  84. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は必要があると思うという以上に答弁はできません。
  85. 藤田進

    藤田進君 だから、その理由はここで述べる内容がないのですか、あるのですか、ないのですか、理由が、あなたは……。
  86. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 詳細なことは所管大臣答弁いたします。
  87. 藤田進

    藤田進君 当然ですよ、そうしていただくが、これをお出しになって、必要とする理由は、内閣総理大臣として閣議におかけになっているはずなんです。あなたが主宰して……。
  88. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この法律は、公共福祉を害するというような行き過ぎたストライキに対して、労働争議に対して制限をしようというものでありますから、そういうような事態がまだあるという以上は、必要と思うのは当然でしょう。
  89. 藤田進

    藤田進君 その点は先ほど言った緊急調整で十分まかなえるのじゃないのかと言っているのです。その点は……。
  90. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 緊急調整とは趣旨が違うと私は思います。
  91. 藤田進

    藤田進君 これは総理も不用意におみえになっているように伺えるので、また私が、他の委員の質問があるようでありますから、今度おいでになるまでに、もう少し総理としても研究してきてもらいたい、これじゃ全然答弁になっていないですよ。わかりやすくこまかく聞いているのだけれども、一国の総理がこまかいことを答える必要はないけれども、少くとも労使関係について基本的権利抑圧するという、しかも公共福祉を口にして抑えようとする限り、もっと答弁ができるように検討してもらわなければ困ると思う。従って、なお引き続き出席をいただくそうでありますから、その際にさらにお尋ねをいたしたいと思います。
  92. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいま藤田君の質問に対する総理大臣答弁を拝聴しておりますというと、隔靴掻痒の感がありまして、全然問題の真相に触れておりません。それで私は記憶を呼び起していただく意味においても、また、鳩山総理の人間性からくる率直な所信を聞く意味におきましても、若干三年前の国会における議論その他を中心にして、この重要法案に対する御所信を承わりたい、こう思います。  そこで、まずその前に、途中で話が回転するというと工合が悪うございますから、あらかじめ確認をいたしておきたいのであります。それは、国会における正規の機関において質疑がかわされ、あるいは答弁のせられたことにつきましては、これはやはり党の代表としての意見である、少くとも党代表として討論が行われるというのが国会の慣習であると思いますが、そういう工合に鳩山総理大臣は確認願えるかどうか。それからまた、各新聞社の論説というものは、これは各紙のやはり社説としまして、社が責任をもっておるところの主張である、こういう工合に私は考えるのでありますが、それもお認めになるかどうか。この点をまず二つ前もってお伺いしたいと思います。
  93. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大体において党員の発言は党の意思を代表するものと考えます。新聞の論調なども大体において国民意思を証左する一つの機関だと思います。
  94. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 衆議院参議院の各委員会、本会議におきまして討論が行われますが、その討論は党所属の各議員がいろいろな立場で行うわけでありますが、そういう討論というものは、やはりそれぞれの党において責任を持つことのできる内容のものであると私は考えるのでありますが、かようにお考えになりますか。
  95. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大体においてはそうでなくてはならないものだと思います。
  96. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 きのうの中曽根君の演説みたいに、党の方でお引っ込めになることもありますから、よく御理解願ったことと思います。  そこで、それを前提にして、私は二、三申し上げたいと思いますが、今度のこのスト規制法の延長決議ぐらい鳩山内閣として国会を軽視し、そして世論を無視しまして、政策的には鳩山内閣の怠慢これに過ぐるものはないと私は考えるのであります。以下若干の実例をあげて御質問いたしますから、これにお答えを願いたいと思います。  それはまず第一に、国会の中の議論というのは二つあります。こういう労働問題で申し上げますと、大きく分けて保守と革新の二つに分れて議論は平行線をたどることが多いのでありますか、一番最初に十五国会においてこの法案政府から提出をせられまして、それで国会議論がありましたときに、野党の方、革新政党の方はもちろんこれに反対であったことは申すまでもありません。しかし、保守政党の側においても幾多の疑問というものがこの法律案に投げかけられたことは私が申し上げるまでもないのであります。  まず一番、これはいずれ労働大臣に機会を見てお尋ねいたしたいと思いますが、労働委員であるところの倉石労働大臣は、当時昭和二十八年三月十三日の本会議におきまして、この法案に対する討論にお立ちになっております。そしてその討論に立たれました言葉の中でどういうことが言われておるかと申しますと、一番おしまいのところでありますが、「私は、本案に賛成を表明するとともに、政府はすみやかに、本案のごとき間に合せの立法をもって満足することなく、自由党の労働政策の基本線に沿うところの一貫したる労働政策を宣明すべきであると希望いたすと同時に、事業経営者もまた、このたびのごとき政治の恩恵の上に安眠をむさぼって、いやしくも放慢なる経営をなさざるよう、」云々こういうことであります。すみやかに労働政策を立てろ、こういうことを倉石労働大臣は、当時代議士として本会議の席上において討論せられております。しかるに、三年間たっておりますのに、すみやかという言葉はどこへ飛んだのか、一向に出ておりません。これは保守党の討論の線に沿わないところの労働行政というものか、社会党がのめるかのめないかは別といたしまして、行われていないということを示しております。いずれこのことは労働大臣にもよくお尋ねをしたいと思いますが、こういうことが一つございます。そのほかたとえば、当時の日本自由党、要するに鳩山総理大臣が新しく党結成せられましたときの日本自由党でありますが、その自由党の山村新治郎君はどういう工合にきめつけておられるかと申しますと、野党が批評するよりももっとものすごい口調で委員会における討論に参加せられております。それはどういうことかと申しますと、この、「昨年のストライキの実情を詳しく検討いたしまするときに、その一半の責任は、何としても、政府並びに資本家側においてこれを負わなければならないと思われる点が多々あるのであります。」そのほかしまいの方に参りますというと、「今回の法律案につきましては、労働者権利規制されておりまするが、資本家側に対する規制規定は、全然設けられておらないのであります。また労働者権利の侵害に対する何の補償もなされておらないのであります。かくのごとき処置は、労働者諸君に対する吉田内閣の、血も涙もなき労働行政の現われといわなければならないのであります。(拍手)」こうなっております。そしてそのあとに「吉田自由党の持永委員それ自身が、この法案につきまして、間に合せのずさんな法案であるということを指摘される点を考えましても、この法案がいかに不備であるかのよき証拠であるといわざるを得ないのであります。」そして最後のところで「労働者の利益を守り、労働者の勤労意欲を簡易せしめるがごとき、抜本的労働政策を樹立すべきことを、強く政府に要望するものであります。すなわち暫定立法が三年の長きにわたるということは、いろいろの弊害をかもしやすく、特に政府労働行政に対する抜本的政策樹立の熱意を遅延せしむるおそれが多分にあるのであります。わが党が三年を一年に修正せんとする根本の理由は、ここにあります」こういう工合に述べている。当時、あなたが総裁をしておられます日本自由党の党代表として、衆議院の本会議に述べられた演説に、三年では長すぎるから一年にしたい、その間に、りっぱな労働政策というものを立てるべきである、こういう工合に堂々と述べ、血も涙もない吉田内閣労働政策というものを、これは痛烈に攻撃しております。そういうことを党議として御決定になっておる鳩山総理大臣がただいま藤田君に答えられたような、そういうあいまいもこな答弁でもって逃げられるということは、まことに心外であります。従って、この点のお考えというものを率直に一つお述べ願いたい。これは国会における保守党各派の意見に対してきわめて背信的な行為、きわめて不信的な行為であると断じて私は差しつかえないと思うのであります。果して鳩山総理大臣自身のお考えが、今日のような法案の延長決議案提出せしめるに至ったのか、あるいは鳩山総理大臣の心境でなくて、こういうことになったのか、この点を一つはっきりさしていただきたいと思います。
  97. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 労働運動の健全な発達をはかり、労働者生活の安定を進めたいということは、私はどの政治家も同じような考えを持っていると思います。革新派のみでなく、革新派のみでなく、保守党においても同じく労働者生活の安定ということを考えない保守党の議員はないと思っております。政府としては、労働政策はこの法律だけではない、十分いろいろのことを考えているのであります。しこうして、その一環として、現在なおこの法律存続を必要と認めたという次第であります。
  98. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 法律存続だとか、そういうことでなくて、少くとも当時の衆議院における本会議場において、こういう間に合せの法案というものはよろしくない、内容のずさんきわまる、法体系の上からいってもまことに奇怪な法律というものはよろしくない。従って、保守党としてもし自信があるならば、りっぱな労働政策を早く打ち出して、そして調整をとるべきである、こういうのが保守党の意見じゃありませんか。出時の日本自由党も、改進党もそうであります。そういう意見であるのに対して、鳩山内閣としては、政権をおとりになってからどういうことをおやりになったか、何らおやりになっていないように私どもは見る。そうして急にただ必要があるからこれをもう少し延長したい、こういう御議論であるようでありますが、それでは国民は納得することができないということを私は申し上げる。
  99. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 労働政策の詳細なことにわたっては、所管大臣から答弁をしてもらいます。
  100. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 詳細な点はもちろんそうでありましょうが、鳩山総理大臣として、こういう体裁の法律というものをそのまま恒久化することが好ましいと、こういう工合にお考えになりますか。あるいは当時の衆議院議論になりましたように、保守党としては諸般の情勢を考慮して、もっと労使の間の関係を明朗化し得るような、そういう新しい道を開くべきである。こういうものをいつまでも固執すべきでない、こういう工合にお考えになりませんか。そのあなたのお考えを伺っております。
  101. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この法律は、しいて労働者の、労働運動の範囲を制限しようというものではないのであります。ただ、例外的に公共福祉に害のあるごく小部分について、労働運動を制限したいと考えただけであります。
  102. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、あなたの昔の党の山村君が述べられておるように、このスト規制法という略称をもって呼ばれております法律が、日本の法体系の上からいって、あるいは労働問題の対策法として好ましい法律であるとお考えになりますか。暫定法であるから、やむを得ず、当時政府は恒久法で出したのを改進党が三年を要求し、あなたの元の党は一年を要求されておる。三年では長過ぎる、一年でよろしい、こういう工合に要求されておる、その理由としては、不体裁きわまるものだから一年で考え直そう、こういうことであった。そういう工合になっておるのでありまするが、あなたはそういう工合にお考えにならないのか。その点をお伺いいたします。
  103. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この法律を作られるときには三年間で良識ある習慣ができる、慣行ができると思ったのでありますが、三年たって今日において、なおその存続を必要と認めたというのが政府態度であります。
  104. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私の質問に全然答えていただけないのですが、どういうわけですかね。あなたの信念として、あなたのお考えとして、こういう内容を持っておる法律を好ましい法律である。体裁的にもいろいろな意味において好ましい法律ではないということが国会でさんざんに言われておるにもかかわらず、あなた自身はそれをどうお考えになるかという私の質問に対して、全然お答えになっていない。ただやりたい、やりたいと言うだけであって、もう少し筋道を整えて御答弁を願いたい。
  105. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は良識ある慣行ができることを欲していますけれども、それがまだできていないからこの法律出したのだと、こう答弁しているのでありまして、あなたの問いに対して答弁をしておるものと私は考えます。
  106. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういうことは、まだこれからあとのことでありましてね、あなたの率直なお考えを伺わなければ、これはなかなか進まない。  それからもう一つ、それではよくお聞かせ願えませんから、国会の中の議論、特に野党の議論はもうわかっておりますから申し上げませんが、今度の問題が発生をいたしましたときと三年前と比較いたしまして、国内のいろいろな動きの中で非常に大きな変化がありますが、その変化の一つは、三年前には当時のこのスト規制法に対しまして軽重の差はありました、軽重の差はありましたが、一般新聞の論説というものは、一応政府案を支持するような動きが多かったように私は見ます。ところが、このたび延長決議案が出されるに至りまして、そういう動きが出ましてから新聞論調を見ておりまするというと、労働省の方のいろいろな新聞、機関紙、あるいはその他提案理由説明、あるいは倉石労働大臣の青空討論会に述べられる意見は、新聞論調が賛成しているようなことをうたっておられますが、私は少くとも克明に調べたところ――これはいずれ労働大臣ともお話し合いをしたいと思うのですか――ところでは、新聞論調は、反対か、あるいは政府に対する深甚なる考慮を要求している。少くともこの決議案をそのまま出せというような、そういう論説というのは、業界紙とある日刊工業新聞を除いては私はなかったと思っております。たとえば、朝日にしましても、読売、毎日、日本経済、産業経済、あるいは東京新聞、西日本新聞、中部日本新聞、北海道新聞、ずっと私は論説を調べておりまするが、ある紙のごときは数回にわたって論説を書いております。審査省略要求が出ました場合には、さらにこれにつけ加えて書いております。こういう工合に、きわめて世論的にも評判の悪い、こういう決議案というものを、どうしてお出しになる必要があるか、鳩山総理大臣がそういうことを御承知になっておりますか。三年前と今度とは世論が非常に変っておるということを御承知になっておりますか。これを伺いたい。
  107. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はよく存じませんけれども、新聞論調が全部反対とは考えておりません。詳細は労働大臣から御答弁いたします。
  108. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 少くともそういうことも、世論が支持しておるとか、あるいは公共福祉に云々だとかおっしゃるならば、それくらいのところは総理大臣として、やはりこの問題を判断し、決裁をされる場合には、頭においておやりにならなければ、軽卒過ぎるじゃありませんか。私は今ここで各紙の内容を申し上げようと思いませんが、いずれその細部にわたっては倉石労働大臣意見の交換をしたいと思っております。これは、これくらいはっきりした証拠はないわけでありまするから、全部御紹介をして考え伺い、また考えの足りな、ところは改めていただきたい、こう思っておりまするが、とにかく三年前と今日とは、非常なその情勢、そういう世論を代表する新聞の論説などというものが非常な変化をしているということについてお認めになりませんか。
  109. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 詳細なことは知りませんが、大体において各方面の意見は聞いたつもりでおります。
  110. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その聞いた結果ですよ、聞いた……。
  111. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 聞いた結果は、先刻申しましたように、新聞論調は、全部反対であるとは思わない。大した相違が三年前とないと考えております。
  112. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 相違がないとお考えになりますか、相違はないと。
  113. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 根本的には……。
  114. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでは、これは委員長にお願いしておきます。これは事実と非常に相違があります。私は具体的な資料を持ってきて話しているのですから、もしそういうことを言って、この厳粛なる参議院社会労働委員会の席上において、鳩山総理大臣という資格において論弁に類するような答弁をもって逃げられようとされるならば、私はこれは徹底的に追究しなければいかん。私は従ってこの問題については、今の答弁では満足いたしません。そういう衆をまどわすような答弁をして、この重要な延長決議案運営しようなどという態度は、根本的な誤まりであります。私はこの点は委員長に特にお願いしておきます。重ねて若干の時間をかしまするから、鳩山労働大臣は、(笑声)よく一つ調べて……。
  115. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいまの問題につきましては、その答弁が事実と食い違っている場合には、委員長において適当に善処の方法を講ずることにいたします。
  116. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 委員長において善処していただく――食い違っておる場合でなくて、食い違っておることを私は確証を持っておるのでありますが、これをこの委員会で明らかにしなければならぬ。そういう明らかにする機会を委員長は責任をもって作っていただきたい、そういう意味なんです。
  117. 千葉信

    委員長千葉信君) その意味も含めております。
  118. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから、時間が参りましたようですから、もう一問だけ伺っておきます。これは直接スト規制法とは関係ございませんが、これも鳩山総理大臣の御信念を伺っておきたいと思います。  戦争前に、日本のあらゆる社会制度というものはきわめて、封建的なものでありましたが、それが終戦後漸次民主化されて参っております。この民主化されて参っておる一番の中心は何かと申しますというと、やはり私は官側でもないし、また政界、保守政党の中でもないと思います。やはり革新政党が日本で伸び、そして労働組合を中心とするところの民主的な諸団体というものがどんどん伸びてきた、ここに日本の民主化の原動力がある、こういう工合に私は考えております。これは私の意見でありますが、そういうときに、最近、ずっと終戦後最近まででありますが、この一番日本の民主化をささえておる大衆団体、大衆運動につきまして、吉田内閣当時から鳩山内閣に至るまで、あの手この手を使っていろいろとワクをはめようとする努力をしてこられました。これももしそういうことはないとと言ってお逃げになるならば、これは実例をもって対決する以外にないと思いまするが、いろいろそういうことがある。そこでわれわれが今一番おそれておりますことは、こういう大衆民主団体に対していろいろと法律的な規制を加え、動きのとれないようにするということは、日本の民主化を後退させるものである、大へん好ましくないことである、こういう工合に考えるのでありますが、このときに至りまして、けさの新聞を見て私は非常に驚きました。それはどういうことかと申しますというと、きのう警察庁は、警察大学におきまして、全国の警備部課長を集めて、日ソ交渉の批准後におけるところの治安対策というものを相談をした、そしてこれをほぼ方針を決定しておるようであります。鳩山総理大臣は、日ソ交渉につきましては非常に御熱心で、これに対しましてわが党も及ばずながら協力をして参りましたが、その重要な仕事が終ったとたんに、こういう治安対策などというものを取り上げ、そしてその向けておるほこ先は、今申し上げました日本の民主化をささえておる大衆団体に対して向けられようとしておりますが、そういうことを御承知でありますか、これを伺いたい。
  119. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は日ソ国交が回復したからといいまして、直ちに現在の国際関係に急激な変化があるとは考えていません。それですから、従って、国際共産主義からする宣伝、諜報あるいは謀略等の諸活動が活発になっていくとも考えていません。
  120. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしますと、考えていないということは、特別な治安対策というようなものを今ここで必要としないと、こういうお考えでございますか。
  121. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 特別な治安対策をする考えは今政府においてありません。
  122. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そういたしまするというと、あなたの監督下にあり、あなたの部下であるところの警察庁におきましては、これは私は原文を持っておるわけでありません。けさの毎日新聞に出ておったところを御披露するわけでありますが、これはもし私の申し上げることが間違っておれば、これは毎日新聞の記事をそのまま拝借するのでありまするから、御了承願いたいと思います。三つの項目が掲げてあります。たとえばイに「外事警察の強化」それからロは、これが重要でありまして、左翼というのはどういう意味か知りませんが、「左翼の各種団体への働きかけと官公庁、重要基幹産業内での諜報の組織活動を握る態勢をつくる」、これは警察が作るという意味でしょう。ハは「ソ連の工作や右翼の実力行使について警戒する。」この三つの方針がきめられた、決定したと書いてある。そういたしますと、今たんたんとして日ソ交渉批准後における国内の見通しというものを、あなたはきわめて楽観的に述べられました。私どもも全くその点については共感を禁じ得ませんが、しかし、今あなたがおっしゃっておるその政府の機構の一部にこういうことが現実に行われたということになりました場合、その責任はどういう工合におとりになるか。
  123. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただ、私は国際共産主義というものの活動は直ちに変化しないと考えております。国際共産主義が日本に活発な活動を起すものとは考えていないのです。ただしかしながら、それらの諜報とか謀略等の活動の実態を究明する必要はあると考えております。そういうようなことを言ったのではないでしょうか、治安の。
  124. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこに問題があるわけです。たとえば、過日の砂川におけるところの警察官の行動というものがどういうものであったかということはあなたもおそらく抗議をお受けになっておりますから、よく御承知だと思います。当時警察署長も行き過ぎであったことを認めておりますから、わかりますが、左翼の各種団体、こういう表現を使われておりますが、おそらくこの中には、社会党その他労働組合いろいろな団体が全部これは入るでしょう。また、官公庁、重要基幹産業内で諜報の組織活動を行うということになれば、これはだれが行うかということになれば、いずれ従業員でありましょう。公務員でありましょう。が、それらはいずれも一つの組織を、組合を持っております。労働組合を結成しておる。そういうところへどんどんと警察の千が入ってくるというようなことは、これほど困ったことはないのでありまして、そういう態勢を作る、こういう工合にはっきり方針を決定された以上は実行されるでありましょう。従って、そういうことを鳩山総理大臣は好ましいと考えておいでになるか、その点はやめさせなければならぬと考えておいでになるか。その点を明確にお答え願いたい。
  125. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 大体の議論しかできませんが、社会人としての自由だとかをむやみに官庁が妨害するということは当然できないと思っております。人間の自由は尊重しなければならないと考えております。ただ左翼で右翼でも、これはいずれを問わず、治安を害するような行動に対しては対策を立てるということは政府の責任ですから、そのようなことについて諜報をつまびらかにするということは必要があろうとは思っております。
  126. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この間も、四国かどっかで問題がありました。現地でこういう諜報活動をやって諜報活動の探りを入れるようなことを行い、中央で問題になりましたときに、中央では知らないと言って逃げられたことが一つございますが、そういうことが今度は全国的に私は起ってくると思います。全国の警備部課長を集めてこういう方針を決定したということになれば、おそらくこれはもうすぐにでもそういう態勢で活動に入るでしょう。このことにつきましては、鳩山総理大臣の再検討を特に要請いたしますとともに、不要なる摩擦が国家機関あるいはその他末端の諸団体の間で起らないように、これは善処を特に要望いたします。そういうことを、鳩山総理大臣として私の意見について適当な措置を講じていただけるかどうか、これも伺っておきます。
  127. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) とにかく人間の自由というものは尊いものでありますから、それを妨害するということのないようにしなければならないと思っております。先刻お話申し上げましたごとく、左翼のいろいろな企てがあるかもしれないし、右翼は現に日ソ交渉についてはずいぶんわれわれに対して圧迫を加えておりますけれども、それがために諜報機関を厳密にして人間の自由を束縛して、かえって反対の結果を起すような場合がありますから、なるべくその何と申しますか、治安警察のあまりに激しい活動はやめるということは必要だと思います。
  128. 田畑金光

    ○田畑金光君 鳩山総理に二、三お尋ねいたしますが、ただいままでの答弁をお聞きいたしまして、まことにたよりないという感じを強くするわけです。従いまして、私の質問申し上げる点は、総理の率直な気持をお伺いすることで十分でありまするから、法制局長官その他の助言を必要としないことを申し上げておきます。  まず第一にお尋ねいたしたいことは、去る二十四国会におきまして、鳩山内閣憲法調査会法案出してこられたわけであります。すなわち、現行憲法が昭和二十一年の占領初期において、連合国最高司令官の要請に基き短期間に立案、制定せられて、国民の自由に表明された意思に基いたものでないということ、あるいはまた、過去九年間の実施の経験に照らしてわが国情に相応する立場において種々の検討をはかりたいということ、そうして新しい国民的な立場に立って現行憲法の全面的な検討を加えることが、国家の完全独立と、日本の将来の発展、国民福祉に資するゆえんである、こうして多くの世論の反撃にもかかわらず、憲法調査会が設置されるに至ったわけであります。で、私たちは、この問題に関しましていろいろな角度から心配いたしましたが、その一つは基本的人権の問題と関連して、政府の方針を伺ったわけであります。  第一にお尋ねいたしますことは、おれほど論議をかわして、そしてまた、国民世論を二分して強引に法制化されましたところの憲法調査会というものが、その後どういう活動をしておるのか、全くたな上げにされたような情勢でありまするが、特に私たちはあの法律案審議の際に、国民の思想あるいは今日の国民の至情ということを考えたときに、もはや今の内閣あるいは保守党全体の考えておるような反動的な政治のあり方ではとても国民の共鳴を得ることはできない。おそらく近く参議院選挙があるが、この選挙を通じ、政府の意図する憲法調査会等の考え方は未然に阻止されるだろう、こう私たちは警告いたしましたが、にもかかわらず、そういうことはないということで強引にあの法律が制定せられたわけであります。で私はまず、憲法調査会について、その後どういう活動を行なっておるのか、これを総理から率直にお伺いしておきたいと思います。
  129. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 率直に言えば、憲法調益金を発足させまして慎重に審議をしてもらいたいという考えは今日も持ってはいるのでありますけれども、憲法調査会が審議をして成案を得ましても、それを実体に移すという組織がまだできていない、参議院においても衆議院においても三分の二の力を保守党は持っているわけではないのでありますから、そこで憲法調査会の発足がおくれているわけであります。なお、憲法調査会が発足しない最大の原因は、社会党に交渉しておりまするが、社会党の同意を得ないということがあり、私自身鈴木委員長に頼みましたけれども、鈴木委員長は、まだしていないのかというような話でありまして、私の懇請に応じてくれません。
  130. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は憲法調査会の問題で瞬間を取るつもりはありませんか、要するに、せっかく鳩山内閣の、特に鳩山総理の二大悲願の一つである爆法改正の問題は、もはや挫折を余儀なくされておるわけであります。法律は制定したが、結局法律を実施しても実施できる客観的情勢にないということであります。で私たちはこのことが時代の流れであるということ、歴史の流れであるということを冒頭に鳩山総理考えていただきたいと思うわけであります。また、先ほども触れましたが、保守政党は、憲法改正に際しましても民主主義と平和主義、基本的人権のこの三つだけは守りたいとたびたび申されておるわけであります。しかしながら、基本的な人権の問題を見ましても、すでに出されておりまする自民党の憲法改正、試案の要点等を見ましても、法律によってするならば基本的な人権は、どういうふうにでも制限できる、こういう規定を加えようと考えておることは明らかであります。旧憲法時代はまさにそうであったわけであります法律をもってすれば権利や自由はいつでも制限し得た。ただ現行憲法において旧憲法と異なるゆえんは、基本的な人権は法律をもっても制限することはできない。思想の自由にいたしましても、言論の自由にいたしましても、基本的な人権にいたしましてもそうであるわけであります。で私は、スト規制法案が三年間制定せられて歳月を経て今日に至ってきておる。しかも、この法律が一回も運用されたためしはない。そういう客観的な条件がこの法律の裏づけとしてないという証拠であります。そういうことを考えて参りましたとき、今また三年の時限立法を永久の恒久的な立法に切りかえようとするこのときに当りまして、私は憲法調査会法と関連して申し上げたように、もう少し時代の動きというものを考えていただきますならば、鳩山総理も間もなく退陣されることでありますから、総理の政治化命におきまして、長い政治生活におきまして有終の美を飾る道である、こう考えておるわけでありますが、総理として、率直な気持を伺いたいと思います。
  131. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私も政界を隠退するに近づいてきましたときに、憲法に違反するようなことをしたくないということはもちろん当然であります。私は、今回の法律は、公共福祉を擁護するために、ごくわずかの行き過ぎの、そういう手段について現実の経験に徴して必要な最小限度の規制措置を行うためのものでありますから、本法の制定及び存続が決して憲法違反になるとは考えておりません。基本的人権というものも、公共福祉を害するというような場合には制限せざるを得ない。一体、民主主義とか自由主義とかいうものは、自分たちの自由だとかを主張するだけではなく、他人の自由も尊重しなくちゃならない、他人のことも考えなくてはならぬものでおりますから、労働者は自分だけのことを考え公共福祉考えないというのでは、やはり労働者自身のためにもならないのであります。お互いに思いやりというものが民主主義政治の根本でありますから、そこでまあこういう法律ができましても、労働者を害するという法律にはならない、また憲法に違反するというものでもなく、これが民主主義の政治の行き方だと思っております。お互いに制限を受けるというのが民主主義なんです。
  132. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、労働関係というものは、文字通り労使関係でありまして、それは相関関係たろうと考えております。労働者がある、使用者がある、両者関係であろうと考えるわけであります。ことに、資本主義の発展から労働運動というものが成長し、発展してきたというこの経過を考えて参りましたときに、何がゆえに労働者に基本的な権利というものが保障されたのであるか、このことを私はよく考えていただかなくちゃならぬと思うわけであります。労働者団結権あるいは団体行動権、こういうことは近代市民社会における社会権であって、その地位を確保し、権利を擁護するということが文明国家の姿であると考えておるわけです。ところが、なるほど抽象的に、形式的には今総理のようなお考え、御答弁も成り立つかもしれませんが、ただ、このスト規制法案という法律を具体的に掘り下げてみました場合に、この法律というものは、労働者権利抑圧しておる。一方の経営者に関しましては何らの措置も施していない、たとえば、この法律が止まれてきた原因があの長い電気産業労働者ストライキあるいは炭鉱労働者ストライキから出発いたしておりますが、なぜ、あの争議があのように長引いたか、それは申すまでもなく、労働者の当然の要求である自分たちの賃金を上げてくれ、労働時間をもう少し短縮して合理化してくれろ、こういう問題に関しましてすべてこれを拒否してきた。むしろ賃金を切り下げあるいは労働時間を延長するという態度に出てきた。結局あの争議が長引いた大きな原因は、経営者が自分の利潤だけはどこまでも確保しよう、こういう態度から争議が長引いてきたわけです。問題は労使関係というものはあくまでも相関関係であり、相手があるということでありますならば、しかも労働政策とか労働行政というものは、労使関係に対して、常に第三者的な立場になければならぬ。ことに労働省のごときは、その発足の性格からいっても、労働者のためのサービス機関でなければならぬ――奉仕するための機関でなければならぬ。にもかかわらず、このスト規制法に現われた思想はどうかというと、労働省の生まれた性格も完全に無視されておる。争議の紛糾した原因も一方的な政府の判断によってこれの断定を下しておる。労働者権利のみを抑圧したというところに問題があるわけです。私は、総理が先ほどのような答弁があるといたしますならば、もう少しこれは使用者側に対しても当然政府としてはしかるべき措置を施して――法律措置考えるならば話は一応わかると思うわけでありますが、この点について総理の御見解を承わりたいと思います。
  133. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) むろん経営者側も制約を受けるのは当然であります。監督官庁としては、公益の見地から十分の監督をすべきものである。とにかく先刻申しましたように、労働者というものは、一人々々ではとても経営者に対抗はできないのです。この弱者に対して団体権を認めたわけでありまして、社会としては弱者保護のために考えるということは当然である。それですから、団体交渉権を認めた以上、その団体交渉権を尊重すべきことも当然であります。むろん政府としては尊重しておるのであります。ただ、公共福祉のために制約を受けるということもまたやむを得ざることであるから申したのであります。
  134. 田畑金光

    ○田畑金光君 次に私はお尋ねいたしますが、鳩山内閣の使命は二つあったと私は考えます。その一つは、総理の悲願である日ソ国交の回復の問題であり、その二は憲法改正の問題だと思います。  憲法改正の問題は、先ほど触れましたので申し上げませんが、幸い、日ソ国交調整の、第一の悲願は、言うならば、鳩山内閣が存立してそして歴史的な業績として残るのがおそらくこの日ソ国交回復の問題であろうと思うのでありますが、これはわれわれといたしましても喜びにたえません。ただ、私は今回の日ソ共同宣言が成立したという今日までの経緯考えましたときに、それは単に鳩山内閣の力だけによってなったものと考えられません。と申しますのは、与党の中のこの問題をめぐる意見の分裂であります。あるいは最後の段階まで青票を投ずるとか、ついには本会議を欠席してこの重大な問題にともに責任を分つ態度を避けたわけでありまするが、このような党内の情勢を考えたとき、ソ連もおそらく日ソ共同宣言に応ずることはなかったろうと考えます。ただ、ソ連が鳩山総理を積極的に歓迎し、話がまとまったのも、やはり日本の国内政治情勢においては、野党である社会党がこの問題に関しては一貫して政府を激励し、総理を激励し、そして日ソ国交成立のために協力したからにほかならぬと私は考えております。そういうことを考えましたとき、少くとも衆議院における昨日の本会議等を通じ、また本会議が終りまして鳩山総理が鈴木社会党委員長にあいさつに来られた模様等見ましたとき、私は少くともこういう重大な外交問題が与党野党が協力して参れましたということは非常に喜ばしい現象の一つであると考えております。共同の広場という言葉が使われておりますが、こういう重大な外交問題等について共同の広場というものが、この日ソ共同宣言を通じて見出されたということは喜ばしいことであると考えておるわけでありますが、総理見解を承わりたいと思います。(「これはスト法と関係ない。」「それは外務委員会だ。」と呼ぶ者あり)
  135. 千葉信

    委員長千葉信君) 私語を慎しんで下さい。
  136. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日ソの間の共同宣言が成立いたしましたのは、やはり社会党の協力によっての力が大であったと確信をしております。社会党との間に、与党と野党との間に共同の広場ができてくるということは非常に必要なことであるわけでありまするから、私は鈴木委員長にも頼みまして、もう一つ大きな問題に憲法改正問題がある、この憲法改正についても共同の広場を二人で持とうじゃありませんかということを言ったのでありますが、また君はそれを考えておるのかと言われまして、まだ捨てないのかというようなあいさつを受けたわけであります。それで憲法調査会もおくれてしまったのであります。私としては、憲法改正についても共同の広場を持ちたいと、こう考えておるのであります。
  137. 田畑金光

    ○田畑金光君 そこで、私は総理にお尋ねしたいわけでありますが、外交問題については共同の広場を作った。ところが、私が内政の問題において、ことに当面問題となっておるスト規制法案を見ますと、社会党を中心とする勤労大衆があげてこれを反対をしておる。また、先ほども同僚栗山委員からも強く指摘されましたように、三年前の情勢と今日の情勢とは違っておる。三年前の国民の所論と今日の所論とは違っておる。今日の所論はこういう法律はこういう法律は無用じゃないか。むしろ有害無益であると考えておるわけであります。こういうことを見ましたとき、私はこの国会において一番大事な問題が日ソ共同宣言であり、もう一つはスト規制法案である。こういうことが先ほど来総理自身も現内閣も全体として認められているわけであります。もしそうだといたしますならば、こういう重大な問題について、なぜ社会党と話し合いをする、社会党の意見を聞く、これだけの雅量が示されなかったのか。ことに私は繰り返して質問いたしませんが、今日の議会政治が委員会中心の政治である。委員会において十分論議を尽して、その法案のあらゆる点を検討する。ところが最もこの国会において重大であり、社会党がまた最も関心を持ち、勤労大衆が関心を持ち、国民世論がこれを心配をしておるこのスト規制法案に関する限りは、日ソ共同宣言という重大な案件すらに先んじて国会に提案され、委員会省略をもって臨んでこられた。これは片手落ちだと私は考えております。こういう態度ではいわゆる共通の広場を作ろうとしてもできる相談じゃない。鳩山総理はこの点率直にみずから考えるところがないかどうか承わっておきたいと思います。
  138. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、もちろんこのスト規制法についても、関係大臣からはいろいろの配慮があったものと考えております。共同の広場というか、野党との交渉についてはもとより頭の中にあったものと思っております。ところが、事実としては委員会省略というようなことになってしまって、この間に間隙がますますふえたということはまことに残念に思っております。(「あなたの責任じゃないか」と呼ぶ者あり)
  139. 田畑金光

    ○田畑金光君 何事もよきに計らえ、これではうまくいかぬと思います。(笑声)。肝心のあなたの有力閣僚である倉石労働大臣等は、今あなたのお答えとは全く正一反対に、委員会審議省略を強引に主張されて、特に新聞の伝うるところによると、代議士会においては、労働大臣が先頭になってアジられて自民党の議員、火の玉になってそれについていくということもきめられたようでありまするが、まことにどうも情ない話だと言わなければなりません。鳩山総理の政治力の不足を物語るものと私は考えておるわけであります。これを追求してもまた始まりませんから、私はもう一つ関連してお尋ねしたいことは、日ソ国交の調整後にくる問題は、あるいは日中の国交回復の問題であり、あるいは領土問題を中心とする平和条約を結ぶ問題だと考えております。私は鳩山総理が、首席全権としてモスクワに渡られたその大事なお留守のときに、砂川においては同胞が同胞の血を流す、あるいは深刻な事件を繰り広げておる、あのような基地に表象される日本の現在の国内態勢をもって、今後ソ連に領土問題を中心とする平和条約の締結交渉等ができるかどうか。同時に、私はスト規制法案に表象されるように、日本の社会態勢というものは、相も変らず、資本家階級を中心とする、あるいは財閥を中心とするそういう諸君によって政治が支配され、社会が支配される、こういうようなことは、決して日本の全体の運営のために願わしいことではない、かように考えておるわけであります。私は、鳩山総理は退陣されて、あるいはもう重要な政治上の責任の地位にはおつきにならぬかもしれぬが、しかしあなたの残された今後の仕事の中には、ソ連との平和条約の締結の問題、あるいは日中との国交回復の問題その他であります。こういうことを考えたとき、私はまず国内態勢を整備するという意味から申しましても、基地の問題やあるいはスト規制法に見られるような、こういう勤労者の権利抑圧するようなやり方というものはなくすることが大事なことだと考えておるわけでありますが、この点について鳩山総理見解を承わりたいと思います。
  140. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻も申しましたように、労働者、勤労者の、この権利抑圧するというような気は持っていないのです。どうしても他人の自由というものは尊重して、のびのびと伸ばさなければならないのでありますから、抑圧するという、弾圧するとか、抑圧するとかというような気は毛頭持っておりません。
  141. 田畑金光

    ○田畑金光君 この法律案が提案されるまでには、これは総理側近の有力閣僚からも、あるいはまた、自民党の執行部を扱っておられる最高幹部の方からも、非公式には国会の始まる前においては、この延長法案出し国会を混乱させるようなことはしない等々の言葉がわが党の幹部にも述べられておることを私は聞いておるわけであります。ところが、国会が開かれますと、強引にこの決議案を提案することにし、しかも先ほど申し上げたように、委員会審議省略という、謀略、暴挙をもってやってきたわけであります。結局これは突き詰めてみますと、自民党の中の総裁争いという問題のために、それぞれの派閥の思惑からきておるということは世間周知の事実であります。倉石労相がどの派閥のどういう役割を果しておるかは私は存じておりませんが、自民党は先ほど申し上げましたが、日ソ共同宣言についての態度を見ましても、代議士会においては五十八名が反対の投票をしている。昨日の本会議においては、八十名以上の人が欠席をしておられる。これはとても政権を担当する政党としてまことに恥ずべき、恥かしいきわみだと考えておりますが、私はそういう他党の問題はとにかくといたしまして、とにかくスト規制法案というものが党内派閥の争いから国会に急遽上程せられ、また冒頭における委員会省略の暴挙をもって臨んでこられた、こういう点について総理としてあるいは与党の総裁としての鳩山さんには少しく考えられる点はないかどうか。何かこれについて、この際心境を述べて見ようという気持はありませんかどうか。  また御承知のごとく、衆議院においては、会期の問題については、両三度にわたって確認をされておるわけであります。私たちはこの法律案をきめられた会期の中において慎重に審議をし、もって国民世論にこたえたいと考えておるわけでありまするが、総理はこの点に関しましていかような見解をお持ちであるか、承わりたいと考えるわけであります。
  142. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) まあ党内にいろいろの新聞記事を取り巻く事情があったということは、私は私の恥辱だと考えております。そういうことのないように望んでおりますが、やむを得ませんでした。しかしながら、この法案は党内事情あるいは総裁争いから免じたものではないのであります。  会期の延長ですか、その質問ありましたか。
  143. 田畑金光

    ○田畑金光君 はい。
  144. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 会期の延長は国会がきめることでありまして、現在のところ私としては延長の意思はありません。
  145. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間が参りましたので、私は終ることにいたしますが、とにかく総理に希望することは、まだ参議院においてこの法案審議の過程にあるわけであります。今申し上げたように、われわれは十分論議を尽し、もって世論にこたえなきゃならぬ、こう考えているわけで、私も察するところ、鳩山総理の長い政治生活において最後のこの国会において、われわれ社会党も協力して日ソ共同宣言は無事成立するものと信じております。どうか総裁として、スト規制法案についてもわれわれの考えておること、社会党の主張あるいは広く国民世論というものをよくお聞きになって、謙虚に考えられて、善処されんことを強く要望して、私の質問を終ることにいたします。
  146. 山本經勝

    ○山本經勝君 議事進行についてお諮り願いたいのですが、だいぶ時間も長くなったようですから、一応この質疑を打ち切ることにいたします。しかしながら、この質疑がまだ残っておりますし、それからまた全然発言していない同僚もおりまして、一応また機会を改めて御質疑総理に対していたしたい、かように考えます。  それからあわせてお願いをしたいのですか、これは御承知のように、総理の方からの御答弁にもありました、このスト規制法が施行されてから今日まで、いわゆるよき労使慣行の確立を見ておらない、期待した結果が生まれておらないということであります。この委員会で論議をいたしますあるいは審査をする過程で、やはりこのことは非常に重要な課題になっていることなんです。ですから昭和二十八年の八月でありますか、施行以来今日まで三年間にわたって、特にこれに直接の関係のあります石炭関係争議、これは年々歳々行われておりますか、これの原因、経過、結果、それからさらに電気産業におきまして、同様年々歳々また行われております争議状態、原因、経過、結果、それからさらにいま一点は、電気産業の場合には、電源スト等問題になっております争議方法について、議論があり、しかも起訴になって、裁判所でこの問題を審査している。それかすでに二十五件に及んでいると聞いておりますが、これらの原因、経過、結果、この三点の資料の提出方を労働省の方にお願いをしたい。このことをつけ加えまして、一応総理に対する本日の質疑は打ち切る、こういう提案をしたいと思います。
  147. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 資料要求は私どももありますから、後刻再開のときに申し上げます。
  148. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいまの山本委員議事進行ということでございますが、その議事進行と同時に、資料の要求が出ておりますので、この点については至急労働大臣の方で、取り運びをお願いしたいと思います。  それから質疑打ち切りというお話は、これは午前中の質疑を打ち切るということに了解して、今後残っております総理大臣に対する質疑につきましては、理事会であらためて御相談申し上げることにいたしまして、午前中の質疑は大体これをもって終了することにしたいと思いますが、何かほかにございましたら一つ。
  149. 藤田進

    藤田進君 その議事進行には異議ありませんが、ただいま来お聞きの通りですね。まあ総理もからだが悪い、政府も忙しいでしょうが、しかし、今までの応答では、実際問題として審議にならないのですね。もっと立法論としてこのスト規制法を中心に、あなたの労働政策なり、それから関連する石炭なり電気の、いま私企業なんだが、こういう産業政策なりの関連、もっと筋の通ったものを一つつかんで、次回は来ていただきたいと思うのです。こまかい法律論は要求いたしませんか、総理大臣にふさわしいやはり答弁をいただかなければ、これは審議は前に進まないと思う。要望いたします。
  150. 千葉信

    委員長千葉信君) ただいま藤田委員の御発言趣旨もっともで、委員長も同感でございますので、十分次回までに、総理より考慮されることを要望いたしまして、一応委員会を休憩にいたします。    午後、零時二十八分休憩      ―――――・―――――    午後二時五分開会
  151. 千葉信

    委員長千葉信君) 休憩前に引き続きまして、社会労働委員会を開会いたします。  午前に引き続いて議題となっております案件について質疑を行います。出席されております政府委員は、倉石労働大臣、武藤政務次官、中西労政局長でございます。順次御質疑を願います。
  152. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今度政府の出された電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案、この法律案は私が言うまでもなく、三年前の八月の政府説明を見ますと、電産、炭労の争議規制する、要するに、不当に権利を剥奪する、われわれから言わしむれば、そういう法律であると理解をいたしております。そういうものである限りにおいて、われわれといたしましては、一方的に労働者スト権を剥奪する、要するに、スト規制に対しては、われわれも反対いたしましたし、また、国民の多くの世論も、この憲法違反の疑いがあるという建前、もっと具体的には、労使バランスを、こういうものによってアンバランスにするという建前から、多くの反対があったにもかかわらず、この法律案が上程され、当時の速記録を見てみますと、いろいろの意見が出て、三カ年という時限立法として、ようやく国会を通ったのであります。ところが、その三カ年の、政府の主として言われておった違法行為云々という中には、一年の時限という問題もその中から出ております。しかし、その三年間の間に違法行為というものがなかった。こういう状態で、労使関係、特に労働者立場からいうと、経営者は非常に多額な、莫大な利益を得ているけれども、労働者生活や経済的な地位が守られてないという状態、こういうことを考えて参りますときに、なぜ、この改めて恒久化するような法律案をこの国会に出されたかということを、まず第一に承わりたいと思うのであります。
  153. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お話の、この法律労働組合側の一方的抑圧であって、権利の剥奪であるというお話でありますが、私どもはそういうふうには考えておりません。争議行為としてでも、ここに規定いたしてあるような行為はやるべきではない。ただいまのお話で、労使対等バランスが失われるではないかということでありますが、私どもは、なすべからざる行為をなさないということによってバランスは失われることはないと思います。お話のございました、この関係電気のお話がございましたが、電気関係労働者の一般の給与が、他の一般の産業に比較して決して下回っておらないことは御承知通りであります。そこで、この法律を三年を経過いたした今日、私どもがなお存続を必要とすると認定いたしました事情につきましては、先日ここで申し上げたことで御了解を得たいと思います。
  154. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今労働大臣が、電気の給料が安くない、こういう工合に言われました。しかし、電気産業というものは今日九つの会社に分れた私企業であります。電気を生産するということは、むろん設備も必要でありましょうが、そこには高度な技術や労働者労働力というものが必要である。今日の状態を見てみますと、非常に電気会社は過大な利益を得ておる。この過大な利益を得ておりながら、労働者は正業な、要するに団結権、行動権というものが、このような格好で争議権というものがほとんど抹消されたような形でとられて、相手の経営者の思うままに自分の利益だけを蓄積しているという格好に今日なっていると思うのです。そういう点はどういう工合にお考えになりますか。
  155. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私は、藤田さんのお話のようには考えておりません。ことに、電気産業におきましては、御承知のように、公益事業令その他によりまして、経営面においても、あらゆる角度からいろいろな規制を受けております。ことに今お話のござい欲したように、今日の電気関係労働組合の一般の給与については、これはなるほどいろいろ技術的に専門的な技術を要することもございましょう。しかし、そういう点を考慮いたしましても、他のそういう民間産業に比較して、私は大体よろしい方であろうと、こういうふうに申し上げようと思ったわけであります。
  156. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これはそこまでいくと主観の問題になると思うのです。で、私はそういうことを今労働大臣が言われましたけれども、このスト規制法立法する当時の議論の中にはどういうものがあったか。保守党の中のたとえば、改進党であるとか、日本自由党であるとか、山村新治郎氏のごときは、午前中の質疑の中にもありましたが、いろいろの問題を取り上げていって、そうしてすべて労働大臣もそういう工合に言われたと、午前中の質疑の中にあったと思いますけれども、何といいましても、このようなスト規制法を行うということであれば、対等労使バランスというものが壊れる、でありますから、どうしても経営者に対するこの労働者の地位や、労働者労働再年産に対する問題を守るために、経営者に対する何らかの処置を早急に講じなければならぬという意見がその当時のこの法案審議の中で非常に言われておる。それに、そういうことがこの法案立法当時にも言われて、今日ではそうでないという主観の相違のようなことを労働大臣は言われておるわけであります。私はその点なかなか納得しにくいのであります。だからその点の解明をまず私はしていただきたいと思うのです。
  157. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 立法当時の、鳩山自由党でありますか、何という名前か忘れましたが、分党派自由党の山村新治郎君の御意見、それから当時の改進党の方々の御意見、これは先ほどもお話のありましたように、前者は一年間くらいでいいじゃないか、後者の方は三年間くらい、そこで立法者でありました、提案者でありました政府考えは、そういう考え方ではなかったようでありますが、十五国会解散されまして、十六国会になりましたときに、三年という期限を修正案として出されました。改進党の御意見をその当時の政府は尊重いたしまして、そうして一応三年たったならば存続するかどうかの議決を求めなければならない、こういうことをいたしましたのは御承知通りであります。そこで、その結果、今回まあもう一ぺん御審議を願って継続してもらいたい、こういうことを政府は申し上げておるわけでありますが、総理大臣のお話にもあったかもしれませんが、政府はなるべく早くやはりよき労働慣行の成熟することを期待いたしまして、そうして本法のような特別なる規制がなくなることを待望する、こういう考え方は今の私どもの持っておる考え方であります。
  158. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今労働大臣は、正常な労使関係ということに触れられたわけであります。ところが、われわれは三年の時限の間に、この法律に対する違反行為が、違反な行為がない、こういう工合に考えて、そういう行為がないということはどういう工合に結果として現われておるかというと、権利を奪われた労働者が、労使対等交渉もできないという状態に追い込まれておる、これがまず第一言えると私は思うのです。そこで、私は先ほど申し上げましたように、バランスを崩す、アンバランスになる状態について、経営者に対する何らかの処置を早急に講じなきゃならぬということかこの立法化のときの重要な意見でありました。そういうものが全体の中で把握されて、この法案というものは、われわれは反対いたしましたけれども、通った。その処置が今日まで講じられてきたかどうか、経営者に対してですね。先ほど私が言いましたように、過大な利益を得ておる、それにおいて私企業ですよ、電産……。たとえば電気企業の中で、そういう今の非常な速度で生産が行われておる中で、労働者に対する生活の問題や経済的地位というものが守られておるかどうかということに私は非常に疑問を持つわけです。この点どうでございますか。処置の問題です。
  159. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) この法律が三年前に制定されました当時においてもそうでございますが、私どもはこの考え方というものはやはりしばしば繰り返されて申しておりますように、よき労働慣行が成熟することを待望しておるのだ、従って第一にはその面から申しますならば、私どもはこの三年間においても、たとえば、政府は本年度予算に若干のものをとりまして、八大産業にはお互いの労使の協議会を作らせるように指導をいたしておりました。業種によってはそういうものもすでに結成されておるものもございます。それからまた、電力関係でも関西電力にもありますし、同時にまた、東北電力でも最近そのようなことが計画が立てられておる、そういうふうなことでほんとうに対等立場で常に常時争議などないときでも労使双方の間の話し合いを進めるという方向というものは、これはぜひやらなくちゃならない、そういう方向に指導いたして参って、だんだん実を結んでおることも御承知通りであります。  もう一つは今二十七年に大きな争議がありました後に、経営者側に対して特段にどういうことをしたかというよりなお話でございますが、これはもう藤田さんよく御存じのように、一般民間産業について大きな意味における企業の方向については、あるいは貿易政策とかその他の方向で政府が一様の方向を示すことはあり得るかもしれませんが、一般の民間産業についての企業内部の労使関係というふうなものには、政府としてはなるべくこれはタッチしない方がいいのでありまして、これは御承知のように、本法が制定されましたときに、これを契機にして、強制調停とか強制仲裁、まあ調停はできますが、強制仲裁制度というふうなものを考えたらどうかという御意見がございました。その後も私ども続けて研究をいたしておるわけでありますが、このことは労働関係調整法のものの考え方のように、一般の争議、これが継続することによって社会公共に大きな影響をもたらすというふうなことについて緊急調整のような立場をとるというのと違いまして、これは争議行為としてでも当然なすべき限界をこえておるのだ、従ってそういうことは社会公共立場からやってはいけないということを申しておるわけでありますから、そのゆえをもってだけ考えて強制仲裁というふうなものを考えるのはどうか、こういう一応考えを持っておりました。しかしなお、こういう問題については、私は労働関係というものはだんだんと生きものでございますから、将来慎重に検討する価値はあると思いますが、この労使双方の利潤の分配及び労使関係の分配の問題については政府としては、そういうことには容喙すべきではない。しかし、経営者のあり方というものはかくあるべきではないかということはわれわれは考えます。同時にまた、電気のごときは、もちろん御承知のように、公益事業でございますから、公益事業令によって、あらゆる角度から経営を規制されておることは御承知通りであります。
  160. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで私は申し上げたいのですが、公益事業の、特に電気産業は労調法規定によって、十八条ですか、ちょっと条文を忘れましたが、労調法の制約によって一定の制限か講じられておる。今までは三十日の調停申請による冷却期間ということであった。今度は予告措置というものが講じられておるわけです。で、公益事業の労使関係を見てみますと、歴史的にずっとそうであると私は言えると思うのですけれども、幾ら要求をして、真実の、ほんとうの血の叫びのような要求をいたしましても、何らか組合が実力行使ということを行わない限りは一銭も出さないというのが、この公益事業の経営者の常であります。特に、電気会社の関係については、私も長い間電気労働者と経営者との関係において調停の担当をずっとやっておりましたので、その点は私は身をもって体験をしているのであります。そういうことでこのスト規制法ができるまでの歴史というものはそういうものでございました。だから一月に要求をいたしましても、実際の電気労働者の怒りによって何らかの実力行使が起るまでは一銭も出しませんというのがこの電気業者の過去の慣例であった。こまかく調べてみて、それは一つや二つ特例はあるかもわかりませんけれども、私の認識するところでは、ほとんどそういう状態であったと思うのです。そこで、そういうものが電気産業の今の違法行為である云々の問題を労働大臣が言われましたが、この問題はあとで少しお尋ねしたいと思うのですが、要するに、労使関係の問題についてはそういう状態であって、この電気労働者スト行為、いわゆる争議権、罷業権というものはこういう工合にしてとられたという状態は私は多くを語らないでもわかっていると思う。具体的には何年間かの長い歴史を繰り返してきた経営者の態度というものはもうわかっている。ここで三年前政府の処置ということについて非常にいろいろ論議されたということは、まじめに労働者と経営者が団体交渉をして、真摯な立場で、特に公益事業であるからいろいろ突き詰めるという問題、これに対する当局の処置という問題がここで論議されたものだと、私は思うわけであります。そういう、要するに労働者と、経営者との正常な、いろいろと労働者要求に対して、まじめに団体交渉が行われているかどうか。そういうものに対する措置というもの、それから労働者としては、今の経営の実態からみて、客観的に非常な、私らが見ると過大な利益を上げていると認識するのです。これはあとでデータが参ったらわかることですから、これはあとに譲りますけれども、そういう処置を、そういうお考えの指導や、処置を講じられているか、どうかということをお聞きしているんです。
  161. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 電気産業についてですか。
  162. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうです。
  163. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お尋ねの趣旨がはっきりいたしませんでしたが、多分藤田さんのお説は、電気産業は戦後だんだん利潤率が増してきている。それに引きかえて従業員の方はそうではない。そういう場合に経済交渉をしていって、話の折り合わないときには争議権というものを発動しなくちゃならないんだ、しかるに、その争議権の内容をなす手段を禁じているのに、経営側については何のこともないではないかと、こういうお尋ねのように拝聴いたしたのでありますが、私は本法は、その争議権の内容をなすということについて疑問をもっているわけであります。しばしば、政府が繰り返して申し上げておりますように、争議権というものは、これもまあ釈迦に説法でありますが、例の憲法二十八条で、勤労者は団結し、団体交渉を行い、団体行動を行う権利はこれを保障すると、こうなっているわけでありまするから、この範囲における争議権というものは、もちろん尊重されるべきものでなくてはならないし、政府はこれをあくまでも守る立場でございます。この自由権を守らなくちゃならない。しかしながら、この勤労者に与えられましたる自由権といえども、やはり一般市民権と対等立場に立って、そうして憲法十二条及び十三条の優先ということは認めなくちゃならない。これがすなわち国民が団体生活を行なっていくには当然なる基準である。そこでここに指定いたしてありますような争議行為というものの手段というものは、これは法益均衡を破るものであるから、争議行為としてでもやってはいけないんだ、われわれは二十八条の団体行動権ということも先ほど総理もちょっと触れたようでありますが、野放しの自由ということはないのでありまして、それはやはり一般市民権と同様なる規制を受けるべきである。その一般自由権と対等立場に立つという意味においては、この公共福祉を阻害するような行為というものは断然制限せられるべきものであって、これは憲法二十八条にいう団体行動権の制約ではないんだと、こういうふうに解釈いたしているわけでありますから、電気産業においても、労使関係対等立場でお話し合いを願っているのであり、従ってその一致点を見出されないときは、争議権を発動されることは御自由であると、こういうふうに解釈いたします。
  164. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 政府考え公共福祉の、憲法十二条、十三条に基いて制限を受ける。で、争議権を否定しないと、こういう工合に言われる。それじゃ電産では、要するに、どういう罷業権が残っているか。この話は、この前の速記録を調べて見ますと、たとえば、集金ストが云々ということでも、少し長引けばこれは違反になるんだということになってくると、何にもできないということになるんじゃないですか。そこはどうでしょうか。
  165. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私は表現の仕方が下手ですから、政府委員の力から一つ答弁いたします。
  166. 中西實

    政府委員(中西實君) 第二条に該当しない行為、すなわち間接のものでございますればできるわけでございます。あとでおっしゃいました集金ストその他で、長期になる、影響があるのもいけないんだというふうなことをおっしゃいましたが、それは私の方では言っておりません。それは二条には該当しないというように解釈しております。
  167. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の中西さんの答弁ですけれども、集金スト、事務スト、検針ストも長期になれば直接損害を与えるので違法であるというような表現を、この前の、三年前の中西さんは使われた。それはこれと違うわけですね。
  168. 中西實

    政府委員(中西實君) それは実は栗山先生の本が出まして、そういうふうに速記録がなっておるということを知りましたのですが、それは今さら速記の誤まりだというのもおかしいのでしょうが、間違ったのじゃなかろうかというふうに考えております。といいますのは、その速記の前後をお読みいただけばそれはいいというふうに解釈ぜざるを得ないようなふうに表現いたしておりますので、そういう間接のものが長期になりまして、直接影響が及んできても、その間接の行為はそれは二条に該当しないのだというふうに解釈しております。
  169. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうなると、電気産業の直接に障害を与える行為とはどんな行為のことですか。御説明願いたい。
  170. 中西實

    政府委員(中西實君) 直接というのが衆議院で問題になりしなしたので、ここで一応系統立って申し上げます。直接と申しますのは、現に電気を発生ぜしめる段階から電気を消費のために配電するところまでの過程の中のいずれかにおきまして作為、不作為の行為によって支障を生ぜしめる場合を申します。この過程のほかにあっての行為によって、あるいはまた、現在の発送、配電とは別個の行為によって影響せしめて支障を起させるのは間接というふうに考えております。電気の発生は水を落して水車を回し、また、石炭をたいて、タービンを回すということによってなされるのでありまして、従ってこれに影響のある、つまりたとえば、水力発電で言いますれば、水を落すことをやめる行為は直接であり、しかしたくべき石炭を調達してくる行為はこの過程の前段階でございますので、間接でございます。また、定期点検を怠ることは現に発生し、送配電している過程に介入する行為でありませんから、その影響がいずれ出てくれば電気供給に障害が生ずるといたしまして一も、これは間接である。こういうふうに解釈いたしております。
  171. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今のその問題で一つお尋ねしたいのですが、たとえば、電気業者というのは、石炭を購入してきて電気を作る、たとえば、値段が折り合わないで、目的の量が達しないので電気の削減をする、こういう行為は直接の行為でないと今言われたと思うのです。ところがたとえば、それじゃ労働者が自分の労働力を売買するわけであります。その話が折り合わないで、不作為の行為として職場から離れるということと経営者が石炭を購入できずに電気が削減するという行為とどういうふうに違うのですか。
  172. 中西實

    政府委員(中西實君) 石炭の購買の場合に話が折り合わないというのと、それから労働条件のために争議が起って、そのために労務を提供しないというのとは、これは結局はこの本法において禁止いたしておりますのは、直接に作為または不作為によって電気の正常な供給を阻害する行為ということになっております。後者の場合にはこれが出てはまる点がございますが、石炭の購入という前段階のものにつきましては、これはもう性格上第二条の中には入らない、こういうふうに考えております。
  173. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうもそこのところあたりが僕は理解がしにくいのですが、ざっくばらんに言えば、経営者の意思によって電気の一〇〇%が七〇になろうが、六〇になろうがそういうことは許される。労働者のことだけは許さない、こういうことなんですか。
  174. 中西實

    政府委員(中西實君) この本法制定の趣旨であります面接に電気の供給に影響を及ぼす行為、これは争議の本質から言いまして、当事者以外の第三者に非常な迷惑をかける、従って公共福祉擁護の見地からやってはいけないということでございまして、そこで石炭の売買で話し合いがつかない、その場合とは私はだいぶんこれは比較する尺度が違うのではなかろうかと考えております。
  175. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 石炭の問題に入ってきたわけですけれども、私はちょっと思い起すのですが、電気の原価計算をするときには、ロスが幾らである、火力電力の石炭消費量は幾らであるという格好で原価計算をするわけですね。要するに、降雨量の関係において、結果的にどうなった、たとえば一千万トンを一〇〇%とすると、六〇か、五〇に終った場合が多々ある。ロスの問題もなかなかわれわれが考えて判断できないように、二八、三〇というロスの勘定が原価計算に入れられる。そこで、給水の問題が出てくるわけですけれども、こういう場合に、どういう工合に操作されたか知らないけれども、なるたけたかないで始末したのかどうか知りませんが、上自由に経営者はやっておった。こういう問題が、私は今記憶を呼び起すとあるわけですが、そうなってくると、どうもそこのところあたりが、電産のスト行為の中においても、非常にどこまでの範囲がストで、どこまでの範囲が会社が勝手に送電をしなかったかということで、問題が起ってきますが、その点どうお考えですか。
  176. 中西實

    政府委員(中西實君) この法律で申しておりますのは、争議行為の場合でございますので、従って不可抗力ということで、経営の過程において、送電の操作のために会社が節電、制限をするということはあり得るかもしれませんが、それは不可抗力ということで、本法に予定しておりますのは、争議行為の場合、従って争議行為はやはりこういった第三者に大きな迷惑を及ぼすものはやってはいけないということでございます。
  177. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働者の持つ権利といいましょうか。これは二十八条で、さっき労働大臣も言われたように権利がある。これによって労使バランスがとれておるというのが今日の状態だと思います。労働者の不作為の行為ですね。労働者労働力の売買によって話し合いがつかないとき、その点については、不行為行為でもいかぬ。このように事実上、電気の問題というものをかねて、片方ではいい、こういうことになると、私は理解しにくいのでお尋ねしたわけであります。これはあと議論のあることだと思います。  そこで炭鉱なんかにも、私はこういう問題は言えるのじゃないかと思います。たとえば、鉱山における保安要員の引き揚げ、これは滅失または重大な損害を来たすから違法である。こういう工合に政府は言っておるわけであります。鉱山主は自由に山の休廃というものをやっております。これに対するこの前の国会のいろいろの質疑を調べてみますと、時の通産大臣は、こういうことを言っておる。鉱山の事業主の休廃山は、その所有主の経済的価値判断により、これを休廃山することは大体許される。争議、罷業によってはいかぬ。また自由競争の建前上、自己の採算上、勝手であって、通産行政上これをとめる筋合いがないのだ、こういう工合に言っておる。政府はこれについてどうお考えですか。
  178. 中西實

    政府委員(中西實君) たびたび申し上げるのでございますが、本法は争議行為というものを対象にして規定をしておるのでございまして、結局争議行為として公共福祉擁護の見地から、あるいは争議行為自体の目的、その手段としてこれを是認されるかどうかという判断の点から考えまして、これはやってはいけないというものを規定したのでございまして、今申されましたようなことと、どうも比較するのはどうであろうかというふうに考えております。
  179. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は争議行為について関連がある、根本的関連があるからこそ質問しているのです。そういう問題を、だから見解を聞いているわけです。労働者労働組合法で労使対等という問題が規定されている。その対等というのは、労働者争議権、行動権というものが認められてこそ初めて対等であるという形が作られておる。ところが労働者の方では、作為の行為も不行為行為もいかぬ、こういう格好になりますと、何をもってそれではその対等という、労使の正常な対等における労使関係というものがそこに生まれてくるのかという関連があるからこそ私はお尋ねしている。では、それはどうなるんです。
  180. 中西實

    政府委員(中西實君) 私どもは、公共福祉擁護の見地からこういった行為はしてはいけないということをきめておりまして、そのために電気産業、また石炭産業におきまして労使対等の形が破れておるというふうには考えられないと存じております。
  181. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうもそこらあたりまでいくと、私はなかなか納得ができないのです。労働者が団結して自分を守るということが労働法の建前として厳然としてあるのに、労働者権利というものを取ってしまってバランスが破れてないなんということをよくも私は言えたと思うのです。労働大臣はどうですか。
  182. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) どうも私はかえってあなたのおっしゃることがわれわれに理解できないのですが、しばしば申し上げますように、この勤労者の団体行動権というものは私どもはこの法律あることによって抑圧しているのではないのだ、争議行為としてでもなすべからざる行為規定しているのだ、こういうことを申しているのでありまして、これがためにバランスを失われるようなことがあってはならないのであります。先ほどまあ聞き違いかもしれませんが、貧鉱の山主が閉山する場合のことのお話があったようですが、こういう場合はもちろん私の所管ではございませんが、政府としては、通産省としては常にそういう業界にタッチいたしておるわけでありますから、それが閉山のやむなきに至らないためには、それぞれ地方の鉱山監督局にも話もありますし、資金その他の面で閉山をしないように今までもいろいろやってきておりますけれども、どうしてもやむを得ないというようなときには、これはやむを得ず閉山をいたしたようなこともありましょう。しかし、その場合は十分にそれに手当をして保安上に遺憾のないように、鉱山保安の関係の役所としてはそれを指導いたしてやって参ったことは御承知通りであります。そこで、ここで申しておりますことは、その貧鉱が閉山するようなことは、今申し上げましたように、極力防止するためにいろいろ援助はいたしますが、なおかつやむを得ないときには、それぞれの御処置をして休山は仕方がないということと、なお生きておる山で、活動しておる山でかりに争議があったという場合に、その争議行為の一つの手段としてこれだけのことはしてはならないものと、こういうことを言っているのでありますから、私は法益の均衡という建前からは少しもバランスは失われていないと、こういうふうに解釈するわけであります。
  183. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、たとえば、労調法の三十五条の第二項に緊急調整という問題があるわけです。そういう関係は午前中の質疑にも出たと思うのですけれども、ここで違法行為だ、違法行為だと言われるのだが、具体的には労働者権利バランスをたたくという行為がなされておる。相手方に対する正常な労使関係バランスをとるための処置をとっていないということで、そういう格好で取り上げておって、明確に労調法では、三十五条の二項によって緊急調整ということが行われるという措置をとっておる、とっておきながら、屋上屋を重ねるように、こういうものを出されるということがどうも理解できないのです。
  184. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 三年前の立法のときも、私どももそういう点のみをいろいろな角度から検討いたしてみましたけれども、御承知のように、緊急調整制度労調法というものは違法性のある争議行為云々ということでなくて、一般の普通の状態で、たとえば、炭鉱で争議が起きた、これが長期的になりまして、一般公共にも影響のあるというふうな行為には、御指摘のような緊急調整を発動いたしましたが、その緊急調整を発動いたします過程における争議行為というものは、決して本法にいうような違法なことではなくして、普通の争議が行われておって、これが大きな影響を社会的に持ってくるということで緊急調整を発動いたしました。これは普通の争議行為の調整であります。ところがここでいっているのは、その緊急調整に入る入らないは別として、争議行為の手段として、電気は先ほど来お話のありますような行為、それからまた、石炭の方では保安要員の引き揚げということだけ禁止いたしておるのでございますから、争議行為全体に対して抑圧をするということには少しもならないのじゃないかと、平易な気持でお考え下されば、私の申し上げておることに御賛成願えると思うのです。つまり、しばしば私から申し上げますように争議行為というものは、経営者と労働者とが対等立場に立って話し合いをして、話し合いがつかないときに相手方に経済的損失を与えるぞという一種の威嚇行為をなされる。それは憲法も認めておるし、正当なる労働行為労働組合法の保護しておるところであります。ところが、それはその相手方に対して経済的損失を与えるぞという畏怖を抱かせることによって組合側の利益になるような結果をもたらすためにやるのでございますが、これは相手方の経営者よりも、何にもその経営に関係のない第三者に多くの影響をもたらしてくると、これは炭鉱の方ではどうかと申しましたならば、炭鉱ではかりにそれがずっと進行して参りましたならば、溢れということもあるでありましょうし、あるいはガス爆発ということもあり得ることでありましょうし、あるいは、人命に危険を及ぼすような結果にもなる。そこで争議が解決したときに炭労の人が山に戻ろうとしても、そういう結果になっては職場を失われるようなことになると、また、国家的に非常な大事な財産も滅失してしまうことになるのだから、これは社会公共という立場から国民の民生の安定ということをあずかっておる政府としては、こういうことはやってもいい行為であるとは言えないのだ。同時にまた、私どもはかりにそういうことがあったとすればどうなるかといえば、とんでもないことをやったというので、国民世論としてはそういう争議行為をやった労働組合を一番攻撃集中してくるのです。そういうことは、せっかく今日まで健全に発達してきた日本労働運動に対して国民の同情を失うようなことになるのであるから、それはやらない方がいいのではないか、こういう一番親切な物の考え方の発動なんであります。(笑声)
  185. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうもその親切なやり方とこうおっしゃるのですが、(笑声)労調法三十五条、三十六条という公益福祉の接点と申しましょうか、公正な立場から、労調法によってこの問題がちゃんと法律として書かれておるわけです。あなたの公益福祉ということをどんどん進めていくと、どうも何もかも公益福祉だというような格好で、憲法の問題にまで進んでくると、奴隷労働というような格好まで追い込まれていくような気がするのですが、この点どうですかね。
  186. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、よその国では、実は今年の八月ILOの総会に行きましたときに、こういうことが頭にあったものですから、いろいろな国で話を聞いて参りましたが、よその国では御承知のように、争議行為をやるときには、雇用契約というものは当然破棄されたということでものを進めていく国もございます。日本ではそうではないのでありまして、労務の雇用契約は継続しておるけれども、労務の提供だけやめてしまう、こういうことであります。そこで今あなたの御心配になりましたような争議行為をしているときに、みんながやめておるのに、保安要員だけはやめられないということになると、強制労働ということになりやせぬかという御心配でございますが、そういうことがあってはいけないのでありまして、従って、争議行為の間でも雇用契約存続いたしておるこの人たちに向って、保安要員だけは引き揚げてはならない、こう言っておるのでありますから、こんなところに働いておるのはおもしろくないということで、辞表を出しておやめになるという雇用契約の解除は、その労働者の御自由でございますから、やはり本人の意思にそむいて、どうしても法律が就労を命ずるという結果にはなりませんからして、私はその点でも人権はりっぱに確保されておる。こういうふうに思っております。
  187. 藤田進

    藤田進君 ただいまの質疑応答を聞いておると、現行労働法体系の中でどうもつじつまが合わないのですね。これは労働大臣、非常に内心矛盾を感じながら答弁をしておる点がわかるのです。それはなぜかといえば、労働法にいう争議行為というのは、一体どういうものなのか、これをまず聞いてみたい。
  188. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 争議行為は私より藤田先生の方がよく御承知でございますが、私どもは、法律的にはやはり憲法二十八条にいう団体行動権の発動、それから労働組合法の各条にあります争議行為、これを争議行為と思っております。
  189. 藤田進

    藤田進君 労働組合法の各条というと、どこにありますか。あなたわからないから、僕の方で読んでみよう。こう書いてあるのだな、労調法――労働関係調整法の第七条にはっきり書いてある。「この法律において争議行為とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいふ。」のだ、これを許しておるのだ、争議行為は……。そこでさっきから聞いておると、バランスがくずれていないというようなことを言っておるわけで、かりに電気の例がしばしば出されたが、電気の場合、生産はこれは続けろということなんですね、生産は全然低下はしてならぬ、生産が続けられる争議行為などというものは、これは業務の正常な阻害でもない、それから同盟罷業、あるいは怠業、いわゆるサボタージュ、そういうこと。こういう争議行為一切をとめた形になるのですよ、いや、それは石炭を運ぶとか、集金とか、集金は現状では委託集金というやつですね、町の人に頼んでおるのですから、およそ争議行為のできる団結体というものではない。そういうことになると、結局電気の場合には、憲法二十八条にいう権利は守られていないのだ、それでほんのちょっぴり社会福祉とかいうような格好で、ちょっとだけ解釈をはっきりとしたのだというような説明になっておるが、実体はこれは争議行為をとめてある。ことに労働組合というものは固定的なものじゃないのです。だから発電所だけの労働組合、国鉄でいっている機関車労働組合というものがありますが、それが発電所の労働組合というこの組合員は、争議行為は何もないのです、そうでしょう。これは争議行為を禁止してあるのです。この点はどう考えますか。
  190. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ここでしばしば問題になりました電気関係争議行為のお話が今ございましたが、私どもはなるほど労働関係法で争議行為というものはこういうものである。それは守らるべきものであるということに法律はなっておりますが、その守らるべき争議行為というものは、つまりしばしばお話のある基本権であります。この基本権というものも、その自由な発動によって、社会公共福祉に反するようなところまでいってはいけないのだ、こういう考え方でありますから、従ってわれわれの自由権、つまり先ほども総理とのお話の間にちょっと出たようでありますが、私どもが労働運動というものは、最も日本の民主化に役立つものである。この民主主義というものは、お互いの人格を尊重し合うということで、初めて保たれるものである。従って憲法二十八条にあります勤労者の団体行動権の自由も、やはりそのことの発動によって、他の一般の市民の自由権を阻害するようなことがあってはならないのだ、こういう立場でありますからして、従ってこの本法でいっております争議手段の規制というものは、そういう意味から社会公共福祉を守るという点で、これだけのものはやめてもらいたい、こういうことなんであります。
  191. 藤田進

    藤田進君 争議行為というものは多かれ少なかれ、一般に迷惑がかかるものとされておるのです。それが大前提となって争議権というものは許されているのですね、そうなんでしょう、ただそれが非常に範囲が大きかったり、長期深刻なということで、労調法の方で緊急調整という形が出てきたり、また安全保持という形で、これまた、労組法は争議行為の一部を禁じてあるのです。そこであなたは、争議行為を決して禁ずるのじゃないというが、何々発電所労働組合の組合員は、何にもないじゃありませんか、何にもない、もう丸腰で強い会社と当らなければならぬ、立法としては、どれだけの労働者に対する保護が与えられるのか、何々発電所労働組合の人たちは、何もないのじゃありませんか、どうしますか。
  192. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員の方からどういう争議のやり方があるかというふうなことについては、研究もしているでありましょうし、話し合いもあるでありましょうから、政府委員からお答えいたします。
  193. 藤田進

    藤田進君 個々のあれじゃないのだ、何々発電所労働組合という組合員は発電所ごとに勤務しているのだから、争議行為という方法は何もない、それはまた制限だ何だというのは、全然第三者におやりになっていることなんで、何々発電所の労働者には関係のないことになる。そうでしょう、そういう基本権を奪っていいのか、もしかりに奪うとすれば、奪った代りに……立法で奪うのだから、そうすると、国家権力としては、別に仲裁に経営者が服するようにするとか、何かバランスがなかったら、均衡が保てないことは明らかなんです。これは事務当局からの答弁を待つべき問題じゃない、その骨をなしている問題ですから、憲法二十八条の問題に抵触しているのですから……、どういう御答弁がありますか。
  194. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) どうも私どもの申し上げることが御理解願えないようでありますが、私どもはその労働組合なり一般のわれわれ国民が持っておる自由権を発動することによって、それが公共福祉に影響を及ぼすようなことは憲法が禁じているのだ、こういう建前でありますから、つまり私どもがたとえば銀座通りを歩きます、どこを突っ切って行こうとわれわれは自由であります。しかし、やはり赤が出ればとまって違う側の方から歩いて来る人を歩かしてやらなければなりません。これはやはり団体行動というものをわれわれがやっている以上は、団体化活を平静に保っていくためには、それをしなければならぬ、これが憲法の精神だ。従って私どもの持っておる市民権の自由なる発動の結果、それが社会公共福祉に影響のあるものは当然抑制さるべきものである。そこで、しかしながら、私ども一般国民というものは、国民の持っておる権利は他の条項にもありますように、われわれはこれを守るべく努力をしなくちゃならない。従って必要最小限度の今度ここにいっておりますような行為というものは、その自由権の発動といえども社会、公共に大きな影響を持ってくるのでありますから、これは反社会的なものであるから、これはやってもらいたくない、こういうことであります。
  195. 藤田進

    藤田進君 そういうことだとすれば、何々発電所労働組合の人たちは何にもないのです。国鉄とか、あるいは郵政関係とか、罷業権を与えないというときにはどういう議論が出たか、これは仲裁裁定だとか、そういう形を設けたでしょう。それはやはり罷業権を奪ったことにもちろん問題がある。問題があるが、しかし、それは全部奪い切れなかったのだ。やはりそれは仲裁というような格好で両者を拘束するというようなこととか、あるいは国会に対して御承知のように、政府は予算上資金上の措置が必要なら出すとか、こういう形で何とか切り抜けていったのだ。あなたのときになって……。これは前から、三年前出たが、これは何もないのです。何々発電所労働組合の人たちはどうしたらいいのです。その点を聞きたいのだ。公共福祉の陰に隠れて過去戦争になるまで御承知のように、もう権利が奪われてきたのです。国民の名において権利は奪われたのですが、それはならぬというので、新しい憲法ができた。だからあなたの言われる憲法十二条、これはどういうことを書いてあるか。「この憲法国民に」二十八条の罷業権も入っている。「この憲法国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」守らなければならないと書いてある。「又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」こうなっておる。その「濫用」ということについては、ここに書いてあるのだ。ちゃんと現行法で、現行法労働関係調整法三十五条の二にはこういうことが書いてある。これ自体をいい悪いは今議論はよします。けれども、しかし現行法の範囲で申し上げると、「内閣総理大臣は、事件が公益事業に関するものであるため、又はその規模が大きいため若しくは特別の性質の事業に関するものであるために、争議行為により当該業務が停止されるときは国民経済の運行を著しく阻害し、又は国民の日常生活を著しく危くする虞があると認める事件について、その虞が現実に存するときに限り、緊急調整の決定をすることができる。  内閣総理大臣は、前項の決定をしようとするときは、あらかじめ中央労働委員会意見を聞かなければならない。  内閣総理大臣は、緊急調整の決定をしたときは、直ちに、理由を附してその旨を公表するとともに、中央労働委員会及び関係当事者に通知しなければならない。」こうしてあって、以下これに関連する条文があるが、これによって処置できるようになっておる。これがすなわち憲法の十二条、あなたがしばしば出してくる十二条の権利をみんなで守ろうじゃないかということがあって、乱用についてはある意味では現行法で、これでかって炭労の場合でも発動された例もある、できるわけです。だからあなたにお尋ねしているのは、公共福祉の範囲がどうだとかいうことよりも、その発電所の労働者労働組合の人たちは何もない、丸腰で交渉をしなければならない。労働力はこんな安い値段では売れない、売れない以上はある一定期間怠業をするなり、同盟罷業をするなりということは当然あり得るわけなんだが、あなたはこれをとめようとするわけなんだが、しからば中立であるべき国家機関は、その何々発電所労働者のためにどういうかわるべきものを考えるのか、何もないじゃありませんか、どうしますか、これは……。
  196. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) その何かかわるべきものがないかというお話につきましては、私はさっき申し上げましたように、これは一般の運動を全部禁止してしまうというような、国鉄あるいはその他のああいう関係のことと違いまして、特殊の手段を禁じておる。社会公共福祉に影響のあると思われる特殊な手段を禁じておるのでありますから、従って強制仲裁というようなことは今まで考えませんでした。しかし、御意見については、十分研究に値する御議論であると思うので、将来もなお研究をしてみたいとは思っておりますが、御承知のように、日本は、大体企業別の組合、外国のように職種別組合になっておれば、その職種に向ってこういうことをしてはいかぬという禁止令が出されるかもしれませんが、日本は全体の、一つの企業で企業別組合ができておるものでありますから、一部のことをとめると、それが全体にこう影響のあるようになるかもしれませんが、私どもとしては電気関係の従業員というものは、他にやはり経営者に対して強い立場のとれる争議手段は残されておる。ただ一部のここに示してあるような手段だけはとってはいけない、こういうことであります。
  197. 藤田進

    藤田進君 だけども、あなたが幾らそう言われても、労働者が自主的に労働組合というものを作れるのだから、あるときには機関車の労働者だけで組合を作るかもしれない。あるときは発電所の労働者だけで組合を作るかもしれない。そうですね、これは認めるでしょう。そういうときに、何々発電所労働組合の人たちは何もないじゃありませんか。それはなるほど聞いてみれば、片手落ちだから何とかあと考えようとおっしゃるのですか。
  198. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) あなたの言われるのはその強制仲裁の意味ですか。
  199. 藤田進

    藤田進君 いや、私は何も提案はいたしていないので、そういうふうに丸腰になって何もできないじゃないか、発電所の労働者は。その場合に、権力としては、その丸腰に対しては対等バランスがくずれていないと称するのだから、何もない丸腰で片方はどんどん出産をあげているのだから、何もストライキをやって、ビラを張ってくれても一向かまわないのです。これは計算はするが、集金は委託集金人がやるのだから。そうすると、要求は貫徹できない、そのときにどうしたらいいんですか、この手段を聞きたい。
  200. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私が申し上げておりますのは、日本は企業別組合でありますから、その企業の中の一つの部分の、争議行為の一つの手段を禁じられておるということだけでありますから、対等バランスというものは破れてはおらない、また同時に、他の争議行為は残されておる、こういうことを言っております。
  201. 藤田進

    藤田進君 それなら、一産業、企業においては一組合という立法をしなければだめですよ、それならば。これは自主的に労働組合を作れるのだから。現に、国鉄でも機関車は機関車だけで作っているでしょう。電気は発電所だけ、あるいは火力は火力だけで労働組合を作るという動きが全然将来もないと言い切れますか。だから、一部のだれかやってくれるだろうと、そういうことを頼んではおれない。あなた方は自分たちの組合の争議ならいいが、ほかの組合の同情ストなどは違法だという見解を発表しているでしょうが、そんならどうにもなりはしない、どうするのです。
  202. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ですから、私は今の日本の現実に即してお話をしているので、現実は企業別でありますから、よその国のように産業別の組合ではないからして、その企業の一つの部分の発電所のこういう行為はいけないと、こういうことを指定しておるわけでありますから、他の残されたる行為争議をおやりになることは、何らこれはわれわれの考えておるところではない、こういうことであります。
  203. 藤田進

    藤田進君 そうしますと、将来発電所の労働組合ができたりすることになると、立法のときと事情が変るわけだから、この法律は廃止するか何かしなければならぬですね。その点どうです。
  204. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 日本がやはりアメリカあたりのように、職種別組合というふうになったときには、やはりそれに即応して考える必要があるかもしれませんが、今は考えておりません。
  205. 藤田進

    藤田進君 そうすると、発電所労働者だけの組合ができた場合には、どのように考える必要が生じてくるわけですか。
  206. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) そのときはそのときで、そういうことは今現実に起きておりませんですから考えたことはありません。
  207. 藤田進

    藤田進君 これはまた重大なことで、労働組合は自主的に、これはあれでしょう、五人だって労働組合法の保護を受けるし、労働組合という看板を掲げても何ら違法ではない。一人で組合ということはいけないけれども、複数である限り、実は何人以上という規定はないのですから、大体発電所なら発電所の利害関係が共通だということでいつできるかもしれない。そういうものが今度この延長の、あなたの意見はもう未来永劫延長ということになっておる。これは時限法じゃないのだ。今度のあなた方の提案というのは。現実は常に流れる。説明にならぬじゃないですか、それでは。
  208. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私の申し上げておりますのは、現在の段階でこういうこの法律考えておる。しかし、職種別組合というものがかりにできたというときはどうするか、その場合といえども、やはりここにきめてあるこの手段を講ずる、とることによって、一般社会公共福祉に重大な関係あるような行為はやってもらってはならない、そういう考えには、今日と変りはありません。今あとでおっしゃいました未来永劫この法律は続く、未来永劫というお言葉がどうかと思いますけれども、(藤田進君「社会党内閣くらいまでだろうな」と述ぶ)社会党内閣になっても、やはりこの一般公共福祉は、憲法の建前で尊重していただかなければならぬと思うのでありますが、私はこの法律というものは総理も言っておりましたように、よき労働慣行が成熟することを待望するし、そういう方向でわれわれは努力をして参るのでありますから、こういうときにはわれわれもその気になりましょうし、皆さん国会法律はどうでもいじっていただけるのでありますから、そういう時代を早く現出して、そして特にいろいろな規制をしていることはやらないで済むようになりたい。そういうときにはやはり廃止されることはあるでしょう。そういう時代がくることを私は待望しておるわけであります。
  209. 藤田進

    藤田進君 今お聞きの皆さんや、将来速記録を読む方はおわかりだと思いますから、この点はこのくらいにして、しからば今の労働法の法体系の中で、あなたの説の通りになると、電気については少くとも争議行為による停電とかというようなことはないとみてよろしい、そうですね。
  210. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 停電によってですか。
  211. 藤田進

    藤田進君 聞いていなきゃあねえ……。電気に関する限りは、この法律であなたのような趣旨で守られていくならば、争議行為によって電気がとまる。あるいは電気の量が少いために暗い電気になる、そういうことはこれは毛頭ない、ないでしょう。
  212. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) その点はさっき政府委員から書いたものを読みました。ああいう解釈でありますから、間接的にはあり得るかもしれません。
  213. 藤田進

    藤田進君 それならば、間接なら公共福祉はいいんだ。直接のやつは公共福祉にかかる、これはどういう説明になる。
  214. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私どもが期待いたしておるのは、第一にはこの法律の最終的目的は一般公共福祉を守ることと、第二番目には、あとう限り国民の持っておる自由権というものは尊重する建前でありますからして、そうぴんからきりまで取り締るというふうなことを考えないでも、やはり労働組合の良識でそういうことはだんだんおやりにならないであろう、必要最小限度の不当なものだけ今ここで言っておるのでありますから、この以外のことは何をやっても上手にやって、まっ暗にしてしまってもいいかということにはならないと思います。
  215. 藤田進

    藤田進君 争議行為としておよそ電気がとまるということは考えられないでしょう。これが守られていけば、あなたの趣旨通り、どうなんですか。また、間接ならばあるとおっしゃるのであれば、直接であったって結果は需用家なり、電気をつけている皆さんは同じことですよ。あれは間接だそうだから迷惑にならぬのだ。これは直接だから迷惑になるなんて、そんなばかげたことがありますか。これはどういう説明になりますか。公共福祉が笑いますよ、これじゃ。
  216. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) さっきここでお話のありました、しばしば繰り返されておりますように、その争議行為というものを、禁止しようというのではないのでありますから、たとえば、事務的争議が長く継続することによって会社の運営がうまくいかなくなってしまった。それで電気が通常に送られなかったというふうなことは、なるほど、それは最終的には公共福祉に反するけれども、そこまで規制するというふうなことになると、いろいろ問題も起きます。ですから、そういう場合には公益事業でございますから、緊急調整もございますし、その方でやってもらう。最終的にそういうことを特に規制しようというのは、こういうものだけだと……。
  217. 藤田進

    藤田進君 これはまた、緊急調整がその上に出てくるというのは、全くこれは会社企業保護法のよういがちょろちょろ出てきちゃった。それは会社の事務をやらない、事務をやらないということになると、公共福祉に何の関係がありますか。事務をやらない――公共福祉があるだろうから今度緊急調整といっても、要するに、あなたの考え方というものは、電気はとまらないんだということになるわけです。事務ストを何日やっても電気がとまることはないのですよ。そうでしょう。社員の給料袋の計算をしなかったから社員が給料をもらえない、自分たちが困るだけの話です。そうでしょう。それか電気を売ってその集金はどんどん委託集金人がやるのだから、金が入ってくるのだからね、そうすると、大して困りませんよ、需用家という形においては。会社自身は多少業務が停滞する。株主総会ができなかったというようなことはあるでしょう。利益配当を早くしょうと思っても株主総会ができないという、資本家は多少困るかもしれないが、公共福祉には何の関係もありませんよ。そうでしょう。緊急調整がそこにまた出てくるのですか。
  218. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私が簡単に引例をいたしまして、事務のことを申したので、若干誤解を生じたかもしれませんが、あなたの言われるように、あなたが御心配なさっておいでになるように、われわれとしては電気の、たとえば、電気争議行為について、ここに今御審議を願っております法律によって、争議行為としてでもこれは妥当性を欠くものだから、これだけのことはやってもらっては困る。その他の行為については、われわれは奨励するわけじゃありませんが、要するにやむを得ざるときにはそういう争議行為が行われても本法の関与するところではないと、こういうことを言おうといたしておるわけであります。
  219. 藤田進

    藤田進君 だから、電気がとまるということだが、公共福祉に抵触するとおっしゃるわけで、これは通常電力の足りないために制限をするとか、あるいは故障のためにとまるとか、その他不可抗力、落雷その他ありましょう。ありましょうが、そういうものについては、これは防ぎようがない。争議行為の場合についても、非常に長期にわたったり、深刻になってかなり広範囲にとまったり、たとえば、病院の入院患者が今手術をやっているのにどうも電気がとまってだめだとか、そういうものはあり得るとしても、しかし一般的にはストライキがだめなんだということになると、これは電気がとまるなんというと、これはこの前にも問題になったのだが、緊急調整労調法第三十五条の二、これの中には一公益事業に関するこれができたときは、今のスト規制法などというものはないときであります、これは経過的に見て。だから、公益事業という形で石炭電気が中心で、実は緊急調整というものを時の内閣出してきた。ところが、スト規制法出してきて、こちらの方は何もいじらないものだから、ここに公益事業として、石炭は今のところ公益事業になっておりませんよ、この法律によると。そうすると、残っているのは電気とガス、あるいは交通関係あと公共企業体ですから。こうなっているわけです。そうすれば、電気に関する限りで一応考えると、この緊急調整の三十五条の二などというものは、これは該当要項は将来ないのです。ありますか。
  220. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員から御答弁いたさせます。
  221. 中西實

    政府委員(中西實君) 八条は確かに本法以前のものでございまするので、本法で予定したものじゃございません。しかしながら、現在におきましても、やはり事務ストその他の争議行為が残っておりますので、このことが必要だと思います。八条に、郵便、電信、電話、これあたりもございますか、これも公労法のできますことを予定しないときのことでございまして、やはり一応予告義務ということにおいては必要性があると思います。
  222. 藤田進

    藤田進君 緊急調整は、予告とはまた違うのだから、条章が違う。そうすると、電気スト規制法下における争議行為を展望したときに、一応この電気のとまるということはないと見てよろしい。しかしまた間接でとまるものはよろしいということになると、公共福祉というものはどこやらへ行ってしまうんだが、まあこれはそれとして、そういうスト規制法下における争議行為考えた場合に、緊急調整なお必要あり、電気について必要ありということをいったわけです。そうすると、どういう事態の場合に、この緊急の調整が作用することになるのか、電気の場合。これは具体的に聞きます。緊急調整を発動するという、そういう、いいですか、緊急調整はだ、「当該業務が停止されるときは国民経済の運行を著しく阻害し、又は国民の日常生活を著しく危くする虞がある」と、こういうことになっているのですよ。よほどのときなんです。では、事務ストとか、集金をしないとかということで、これを発動しなければならぬというのはどうしても僕にはわからない。どういう事態が起ることを予想していますか、この緊急調整必要ありと言明がある以上は。
  223. 中西實

    政府委員(中西實君) 具体的にどういう事態かは、私らとしましても直ちに予測できませんが、この緊急調整に書いてあります諸条件、今お読みになりましたこういう事態が現実に存するときに問題になると思います。どういうようなのが具体的に起るのかということは、私どもとしましても予測はできません。
  224. 藤田進

    藤田進君 政府提出はあれですか、あり得べからざる、また、あり得ない、不可能である、しかし、そういう事態までを規定するという立法態度ですか。およそ法律立法する場合には、将来あり得べきものを想定して、これらのそれぞれについて立法というものは考えられなければならない。これはもし将来火星、月に渡る人間が出るかもしれないから、今から一つよく交通整理等について法律を必要とする。そんなものを出すわけはないでしょう、今の内閣でも。緊急調整などという事態も何も、これはあり得ないことなのに、さらに緊急調整を必要とするとして存続するのはどういうわけですか。
  225. 中西實

    政府委員(中西實君) やはり間接の争議行為が残されておりますので、従ってそれがあるいは長期になりいたしますれば、電気の供給に非常な支障が生ずるという事態も予想は難くないのでありまして、そういう事態が、私は現実にそういうのが起るかどうかということについては予測しかたいと申したのでございまして、電気の供給に非常な阻害が生じてきて、一般国民生活に非常に迷惑がかかるような事態の起ることは十分予想されると思います。
  226. 藤田進

    藤田進君 具体的に一つ、どういうことがどういうふうに続くとどうなるという、あなたの立法想定ですか。
  227. 中西實

    政府委員(中西實君) これを具体的に申していきますると、何か争議戦術をだんだんと教えるようなことになりますので、(「失言々々」と呼ぶ者あり)申し上げるのもどうかと思いますが、やはり会社自体の運営が非常に阻害されて、会社の機能がとまるような状態になると、これはもう公共福祉といいますか、直接国民生活に非常な影響を及ぼしてくるということが考えられると思います。
  228. 藤田進

    藤田進君 電気会社は今私的資本であり、私企業なんたが、これがまあいわゆる公益事業令だとかその他の法令で規制しているというのは、内部の機構等じゃなくて、供給責任ということなんですね。ここで見るとつまり電気を供給しないというのは正当な理由はないということをいっているわけです。そうすると、会社の事務ストというか、株主総会を一年もやらなかったといってみたって、要するに、生産が続けられて供給がなされている以上、そうなされている以上、公共福祉に何ら抵触しないと考えるんだけれども、あなたの予定では、今スト規制法電気を直接とめることはそれはいかぬ。それはまあ全然そういう行為はないと見るわけです。スト規制法下における状態を今審議しているわけだから……。そうすると、株主総会というものが二年ない、どうも利益配当ができない、これは何の公共福祉にはならない。それはなるほど株主に金が渡らないかもしれない。それからあと何がありますか。集金をしない。これはまあ実際には何か別の人がやるからだが、電気を送ってもらったが、金は取りに来ないといえば、これはみんな喜ぶことで、そうなると緊急調整は何もないことになる。実際抽象論でなくて、あなたの想定を話してごらんなさい。これは大臣の方がいい。
  229. 中西實

    政府委員(中西實君) 私先ほど申しましたように、十分に予想はできないのじゃなかろうかと存じます。それから八条でございますが、電気事業が公益事業であるということにつきましては、いわゆるこのスト規制法がありましてもありませんでも、これは変りがないのでございます。そうしてこの公益事業に指定しております効果は、これはもうよく御承知だと思いますが、予告義務のほかに、公益事業の方も強制調停ができるということもございます。従って、こういった公益性の強い事業におきましては、できるだけすみやかに争議を落着させるという意味におきましても、ここに第八条においてやはり規定しておく必要があるというふうに考えます。なお、緊急調整につきましては、先ほど申しましたように、十分な予想ができるということであります。
  230. 藤田進

    藤田進君 その予想する事態を説明せよというんです。それは参ったとは言いにくいから、てんでそれは答えない。それはないですよ。今の、争議を早く解決しなければならぬからストライキを停止するというのがはっきり出てきたので、それはその通りだと思う。とにかく労働組合の方が負けてしまえば早く解決する、それを予想している。今そういうことになってしまったんだが。
  231. 中西實

    政府委員(中西實君) どうもめったにあり得ないようなことの御質問でございますので、これも例としまして、あり得るかどうかわかりませんけれども、たとえば本社機能が全くとまってしまったという場合、これがひいてはやはり電気企業そのもの全体に非常に大きな影響を及ぼしまして、ついには国民経済に影響を及ぼす、国民の日常生活に影響を及ぼすということがあり得るのであります。そういうことが実際に起り得るかどうか、これは疑問でございますけれども、もし本社がなくて企業が続くというものならば、大ていの会社は本社は要らないのでございます。やはり全部がストができるわけであります。そういう場合には十分にやはり予想はできる。これは一つの妙な例になりましたが、例をあげろとおっしゃるから、しいて申し上げたわけであります。
  232. 藤田進

    藤田進君 中西労政局長ほどの人が、労働組合なり労働法の実態を超越した今説明があるんだが、やはりこの議論は、労働組合なり憲法なり、その他関係法に立脚して答弁をなされなければならぬと思う。労組法には、監督的地位にあるもの、あるいは管理者との関係において矛盾を感ずるような立場、だから石炭といわず、電気といわず、組合員であってはならぬという規定がやはりあるのですよ。これはある。本店の社長が労働組合におそらく入っちゃいないでしょう、おそらく電気で。副社長も入っていない。居並ぶ重役、取締役が労働組合なんかに入っていないでしょう。それからずっと局長あり、部長あり、課長あり、係長あり、今言われるような、少くとも一定区間を限って――十年もみなストライキをやって仕事をしないというのならこれは別ですよ。けれども、ストライキというのは一定の――今労働大臣からも説明があったように、一時的な労務提供を拒否するなり、あるいはサボタージュをするなり、それは必ず原状に回復するという前提のもとに行われるのが争議の特質なんだ。そうだとすれば、労組法にいう非組合員というものがあって、相当なものが中心をなしておる。一向にかまわないようになっておる。それは自動車の運転手がストライキに入ると困る。アメリカ人に言わせれば、自分で運転をして通えばいいじゃないかというけれども、それは社長がすぐ免許証を取るわけにもいかぬだろうから、これはまたすぐ補充できるのだから、それは補充ということも対抗行為として法は認めておる、できるのだから。ロックアウトさえ認められておるけれども、これは電気の場合で聞きますがね、発電所はロックアウトできなくても、本社はロックアウトできるかと言えば、できると言うだろう、おそらくあなた方は。いいですか。会社の方は、本店はロックアウトできる。労働者の方はストライキをやるとすぐ緊急調整が出てくるというようなことになってしまう。何ら、業務が麻痺するというような争議考えた場合に、すぐその業務が麻痺して、資本家は困るとしても、これは資本家擁護のスト規制でない限り、あるいは緊急調整でない限り、公共福祉をたてに言うならば、事務ストなり、何なり、本店なり、支店でやって、一般の皆さんか困る――あなた方にまたこまかいことは聞いてないが、事故が起きて、何か柱のヒューズが切れた、トランスが焼けて電気がとまった、これを修理に行かないときはどうか、これはスト規制法に引っかかるから修理に行かなければならない、こうあなた方は言われるかもしれない。そうだとすれば、公共福祉に、どこまで探してみても――僕は電気に全然関係ない男じゃない、多少関係はあるが、そういう見地からみても、どうしても探しようがないのだが、それをあえてある、しかも緊急調整を発動する機会ありということについては、納得いきません。納得いかない。
  233. 中西實

    政府委員(中西實君) 私どもはあると存じておるのでございます。その点は見解の相違かと思います。
  234. 藤田進

    藤田進君 これも聞いた人、速記録を読む人がわかってくれると思うが、そうすると次には、公共福祉ということであるならば、不特定な多人数に迷惑を及ぼす云々ということなんですが、その理論で労働法考えれば、これはガスだって、水道だって、あるいは交通ですか、そういうものの争議ということについても、おのずからあなた方の観念もこれと筋が通っていなければならないことに帰着するわね。その点はどう考えますか。
  235. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 三年前の立法のときにもそういうことについていろいろ御意見が出まして、なるほど公共性という点においては共通のものがあるかと思いますが、私どもは労働関係はなるべく法律でこまかな規制などしないで、しばしば申し上げるように、よい労働慣行でやっていく方がいい、こういうことでありますから、そういうことはだんだんなくなるだろうということで、特にほかのものの規制などしようということは今は考えておらないのであります。
  236. 藤田進

    藤田進君 そうすると、ガスや水道、あるいは交通関係ストライキがあって、多人数が迷惑するというような事態になれば、やはりこれにもスト規制法というやつを拡大して作らなきゃならぬという観念になるわけですか。
  237. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 非常にそういう大きな弊害が現われるようなことがあれば、やはり国民の、何と申しますか、社会常識はそういうことを要求するかもしれませんが、私はなるべくそういう特別な制限を加えない方がよろしい、こういうふうに考えております。
  238. 藤田進

    藤田進君 それならば、あっさり、中途半端な電気石炭だけでなくて、このスト規制法もおやめになって、これは三年というものが過ぎたのだから、恒久立法出したものを今ここで廃止するという、そういう議論ではなくて、一応ここに議決を求めてこられるという筋はわかっておる。付則の線に従っておやりになったとしても、あえて内閣はこれを存続すべきだという意思をつけることに問題がありはしないか。そういうあなたのお考えであれば、石炭電気についても、この際は、やはりあなたの今言われたガスや、水道や、交通に対してできるだけそういうことをしたくないということであれば、この際、やはり政府としては存続すべきでないという意思で、特にお出しになるのは至当でなかった、この点はどうなんですか。
  239. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 実は先ほど申しましたように、この法律のことが頭にありますので、ヨーロッパに行きました機会に、よその国の話も聞いてみましたけれども、まあ国によっては今お話の出ましたガス、水道なぞも、その仕事に従事いたしておる従業員の一つの行為を制限をするということではなしに、全面的に争議行為はよくないのだというふうに、他の法律でいっておる国もあります。しかし、私どもといたしましては、第一には、先ほど来申し上げておりますように、なるべくよき労働慣行でやってもらうようにして、そして規制をするのはこれにとどめたい。殊にまたたとえば、私設鉄道なぞがしばしば例に引かれますけれども、こういうものはやはり電車をとめるということが、ほとんど何と申しますか、争議行為の全体のことなんであります。ところが、ここでいっておりますのは、電気事業の一つの行為、それから石炭においても保安要員という限られた行為、こういうものの、しかもいわゆる団体行動権という中に含まれておる争議権としてでも、こういうものはやってもらいたくないという、ごく限られたものだけでありますからして、しかもこれの関係は、労働組合の実情を三年間にわたってまあ調べました結果、私どもとしては本法の存続を必要とするという認識に立ったものですから、この継続をお願いしておる、こういうことであります。
  240. 藤田進

    藤田進君 そうすると、現状認識についてお伺いをいたしたいが、ことさらに延長を必要とするということであれば、およそそういう事態が容易に起り得る事態下にある、現状がそういう認識でなきやならんと思う。今労働大臣は欧州の例を引かれたが、およそ近代的な労働政策を持つところは、そういうこんなやぼなものはないはずなんであります。これはスペインなぞに行かれると、フランコ将軍がイエスと言わなければ、いくら国会法律をきめたって、それはできないわけですよ。現状はそうなっております。あすこに見に行かれたら、これは非常にいいと言って、日本でおやりになるかもしれない。これは非常にこわいけれども、しかし、およそ近代国家、民主主義国家という国々においては、これはない。そうでなければ電気だとか、あるいは石炭というようなものが、この私企業にまかされないで、それほど公共企業としての価値を高揚するならば、その事業自体に、時の政府、その国は、イギリスのごとく、国で経営しているかもしれない、国家でね。私企業は営利会社に事をゆだねておいて、労働者だけは公益性でもってくくろうというところに無理があるから、答弁ができなくなってしまうのですよ、とことんまでいくと。  そこで今の現状認識だが、外国の例はこれは一応おくとして、国内の事情下において、今の電気の組合というのはどんなようなふうに、このスト規制法を必要とするという範囲に限ってお答え願ってけっこうだが、どんな組合だという認識なんですか。
  241. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) このこともあなたの力が専門家でおいでになるのでありますが、三年前の電気関係労働組合と今日では大そう様相が違ってきております。そこで、この間電労連の方々が私のところへ二、三お見えになりまして、そのときのお話し合いのことについて、私は衆議院社会労働委員会でついでに発言いたしましたら、違うのだというので、書いたものを申入書というのでお持ちになりまして、私の言葉が足りなくて誤解されたかもしれませんが、電労連の方々が本法に賛成だと大臣委員会で言っているが、われわれはそんなことを言った覚えはないというおしかりを受けたのでありますが、私は電労連は本法の存続に賛成だと言っておると申したのではないのでありまして、電労連の方々とお話し合いをいたしておるというと、この法律規制しておるようなことはわれわれはもうやらないのだ、だからして、何も法律を持っている必要はないではないか、こういうお話であったわけであります。そのことを申して、私が実にりっぱな組合の態度だと、こう申したらしかられたわけでありますが、この末尾にきのうも読んだと思いますけれども、(「あなたの好きなところだけ読んでいるのだ」と呼ぶ者あり)いやいや、法律がなくてもわれわれは自主的にこういうことをやらないということをきめるのだ、これはわれわれの良識の上に立って判断すべきものであって云々と、こうなっております。でありますから、私はうんとこさと電労連をほめたわけでありますけれども、そういうことであります。そういうようなことで、電気の大きな組合というものはだいぶ三年前と様相が変って参りましたが、しかしこれは、御承知のように、電気関係の従業員はなお労働組合同士でお互いにこの自分の地盤を獲得し、強化することに努力し合っていることも御承知通りであります。私どもはだんだんこういうよき労働慣行が成熟することを待望いたしておりますが、電気関係では労政局としては、今これで安定をいたしたというふうには理解することは早計ではないか、もうしばらくやはり様子を見る必要がある。炭労のことにつきましてはもうしばしばお話をいたしましたし、(藤田進君「炭労のことはいいですよ。聞いていないことは。」と述ぶ)そういうわけであります。
  242. 藤田進

    藤田進君 そうしますと、あなたのここに必要ありとする判断の基準、基礎は、労働情勢の現在を認識された場合に、これが容易に何というか、停電とかそういったことが起り得るような状況下にある、こういうふうに見た場合、初めて延長の必要ありということになるわけでありますね。ところが矛盾するじゃありませんか。その文章をもって非常に楽しげにきのうから読まれたわけだが、われわれはこんなストライキはやらないのだと言っておるのだ、そうすると、その言っておることはうそなんだと、あれは電労連あんなことを言っているがあれはうそだ、これはやはり必要だ、こういうふうにあなたが判断しなければこれは必要だといえないのだ、電気に関する限り。どうなんです。
  243. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私はそういうことを言ってもおりませんし、考えておりません。つまり電労連というふうな諸君のものの考え方がだんだんこういうふうに成熟していくことは非常にけっこうなことだと、しかしながら、私どもとしては諸般の情勢を見まして、今申しましたように、電気関係労働界が安定いたしておるものとは、なお安心することはいけないのではないか。  もう一つはしばしば私が申しておりますように、一般国民の福利をあずかっておる政府立場としては、やはり二十七年当時のような電気が消えるというふうなことはもう再び起らないのたという国民に安心感を持たせるということは、政府としては非常に必要なことである、そういう見地からもこの法律かなお存続することが必要だと、こういうふうに思うわけであります。
  244. 藤田進

    藤田進君 これはむしろ公共福祉だ、国家目的たという形で一つ一つ戦争中に行われたように権利が奪われていく。きょうは人の身、あすは自分ということになるのです、あなたのやり口は。これをおそれているのですよ、むしろおそれているのは。今の場合、それはそれとして現状認識の問題ですが、その害いてあることについては何らみじんも疑いないものだ、こういう穏健な組合である、こう認識されているならば、先ほどいったガス、電気、交通、水道と同じ態度で結論が結ばれなければならないはずなのだ。どうしたのですか、これは。これだけ違う、電気だけは……。
  245. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私はこの組合がとっておいでになるように、こういう行為というものはもうやらないのだという考えに立たれるように、この関係組合がそういうふうになることを待望いたしておるのでありますが、今日はまだそれが安定したとはなかなか認めかたい。同時にまた、今申しましたように、国民に、民生安定のための安心感を持たせるということは非常に必要なことだ、こういう見解を持っております。
  246. 藤田進

    藤田進君 それでは現状においてはまだ安定していないというその語義は、逐次安定しつつあるが、まだその段階に達していないと解するのか。そうでなくて、安定したと思ったが、だんだん不安定になりつつあると認識しているのか、電気労働組合が。どちらなんですか。
  247. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 私は、この電気関係労働組合というものがだんだん安定の方向に向いつつある、同時にまた、経営側と従業員側とがいろいろな協議会などを持つようになって、そうしてだんだん緊密な話し合いが進む傾向にある、こういうふうに見ております。
  248. 藤田進

    藤田進君 しからば、このスト規制法を恒久化して存続するという論拠は全然なくなってしまうではありませんか。あなたの提案の理由の根本をなすものは、そういう事態が現状においてあるし、また将来も憂いがあるという。そうでなかったならば、いやしくも立法府を動かして法律を作ってくれという以上は、今後使うこともない、ほとんど使うことはない、しかしまあ皆が安心する精神的シンボルのようなものだから作っておいてくれ、そんなもので軽々にこういう法律を作るべきじゃない。あなたの与党はどういう態度をとるか。今までは賛成だったろうが、お聞きになっていると、だんだんこれは大へんなものたということに変りつつあるようにうかがえるけれども、しかし、やはりこういうあなたの認識である以上は、安定しつつあるし、また安定したということであれば根拠は全然なくなるのですよ、時限立法をさらに恒久化するということの……。
  249. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) まあ、たとえばかぜを引いたときに、三十八度も熱があった、だんだんよくなってきたが、まだ三十七度五分くらいだ、六度五分くらいにならなければ平熱ではないのですから。そういう過程に、だんだん非常にいい方向に前進しつつある、電気関係は……。こういうふうに解釈いたしておりますが、今日の状況は、やはり私どもはこの法律があるべきである、必要性を認める。しかし、恒久々々とおっしゃいますけれども、これはさっきから申し上げておりますように、こういうものがなくても済むようにほんとうに固まった、いい良識の慣行が成熟することを待望しておりますから、そうなればこれはなくても済むようになるでしょう。
  250. 藤田進

    藤田進君 熱病人にたとえたからそのまま例をお借りしますが、電気の場合は、だんだん熱がさめつつある。病人でいえば、熱の高いときでさえおそらく過去三年間これに抵触したようなものがほとんどなかったと思う。衆議院で何か例があるというようなことを言ったそうだが、あれば私はやった人たちをここで証人なり、参考人として呼んでぜひ聞いてみたいと思うのですが、私の知る限りはそんなものはなかったと思う。そういう熱病人では、変なたとえだけれども、熱の出ているときでさえ三旬間なかったのに、熱がたくなり、正常になって、安定しつつあるというのに、なおスト規制法が要るということをあなたは答弁している。鳩山さんはきょう午前中に、とにかく必要だ、必要だ、理由がなくて……。考えていらっしゃいということであしたお会いすることになるのですが、あなたに聞けば、ある程度の立法論として一貫したものを持っているかと思ったのだが、果して持っていない。だんだん必要は、これはないのですよという答弁になっているのだが、どうなんです。
  251. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) それは今の客観的労働情勢というものの認識の点においては私はあなたとまた同じだと思います。同時にまた、あなたのようなりっぱな方々が組合に関係をお持でありますからして……。
  252. 藤田進

    藤田進君 いや、別に関係はない。
  253. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) だんだん私どもが期待いたしておりますように、よい労働慣行を作っていただくようになると思いますが、せんだって、私どもの衆議院の同僚が、ヨーロッパへ行って参りまして、おもしろい話をしていました。ストックホルムの郊外に行きましたところが、りっぱな建物があって博物館だということで、その博物館の人口に立ってみるというと、しんちゅうのプレイトに、この博物館は、昔は監獄であったと、しかるに、わがスエーデンにおいては、この中に入れる囚人はもうなくなってしまったのだ、りっぱな国になったのだ、よってこれを博物館にするのだと、私はまことにうらやましいことだと思うのでして、日本のあらゆる方向もやはりそうあるべきだと思うのです。特にこういう規制などしないでも、この電労連でおっしゃっておるように、自主的に決してわれわれはもうやらないんだ、こういう考え方になってくることはあり得ることだと思います。また近くあるでしょう。従って私は、そういうふうになって、早く本法が必要を認めないような時代を出現するように御協力をお願いいたしておるのでありまして、それまではやっぱり安定したとは見えないからして、私どもはまだ今日は存続の必要を認めると、恒久というのは、恒久は恒久かもしれませんが、いつでもなくされる話でありますから、そういうふうなことを期待していると、こういうことであります。
  254. 藤田進

    藤田進君 あなたの期待と要望と、自己矛盾で、それは、そういう期待をしながら、こいつを出してくるのは、一まったく矛盾撞着もはなはだしい、しかもそこに書いてある、きのうからお読みになった末尾の方に、やらないんだと書いてある、しかも文書できている、それは疑っているかというと、いや疑っていない、というのならば、安定しているのじゃないですか。しかもそれは争議ですから多少のことはあっても、そんな少々のことまでとめるといったって、別に政府に解決案のない限り、労働委員会の調停か何かにまかすより現状は方法はないのだし、そうなると、また重ねてお伺いするが、それは牢獄が博物館になってけっこうでしょう。私どもは全面的に賛成ですよ。その例からしても、あなたのその例をそのままあなたが解釈されて、こういう牢獄を作ることはおよしなさい。
  255. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) どうも私どもの申し上げようとする気持が、こっちが口下手だもんですから、うまく理解していただけないと思うのですが、私が言っているのは、争議行為、なる争議行為に特に抑圧をしようなんということは、毛頭考えていないので、争議行為としてでも、かくのごとき妥当ならざることはなすべきではないと、こういうことを言っておるのであります。しかし、労働慣行が、よいものが出てくれば、わざわざそんなことをうたわないでも、この末尾に言っているようになるのですからして、そういうことを待望するが、今日ではなお安定しているとは見えないから、国民の民生安定をつかさどっている政府としては、こういう法律の存在を必要とする、こういうわけであります。
  256. 藤田進

    藤田進君 まあこれもどうも筋の通らない実はまるっきりあれだ、人の足を踏んでおいて、おれが踏んだんじゃない、お前がおれの足の下に入れたんだというようなことで、まるきっり客観性も何もないですよ。まあ、それはそれとしてだ、これはまあわれわれ判断するわけなんだが、非常に私は遺憾だと思うのです。安定しているという現状認識をし、そして将来はどうかと、将来はやっぱり安定しつつあるんだと、これを立証し、そしてかつこれが必要だというのは全然つじつまが合わないのですよ。これはしかも緊急調整の今の関係等から見ても、現行法手放しではない、不当にむしろかつ拘束されているけれども、その上に屋上屋という状態がここに一つある。  それから、それはそれで、これ以上は非常にお苦しいようでありますから、次の問題に移りますが、先ほど藤田藤太郎君との質疑応答の中で、直接、間接ということについて問題が提起されていた。これは衆議院の速記録を見てもまことにあいまいであります。この点について若干明らかにしてもらいたいと思うのですが、以上いろいろ申し上げたことは石炭業にも全く共通、電気だけは必要ない、石炭は必要だとすれば、私は非常に不本意ですから、もちろん石炭も同じ論法、同じ実態においてこれは必要としないんですよ。  それで次の問題というのは、そういう間接直接の問題ですが、これは多くは労政局長に答弁させるだろうと思うけれども、そうでなくて、大きい部分はやはり大臣の方が適当だと思うんです。直接間接ということについて、これはまあ文書でお読みになったわけです。あの文書は聞いていてますますわからないんですね、あれは。これはまあまあことにわかりにくい文章でありまして理解しがたいんですが、直接間接というのには、いろいろ実態が予想されると思う。たとえば、発電機をとめる、あるいは変電所のスイッチを切る、これはやっぱり直接に入るだろう。そうすると、発電機はとめない、運転している。最近の発電所は、いわゆる、何ですか、機械化されたというのか、ワンマン・コントロールだ、何だというようなことを言って、非常に進歩してきたので、大ぜいを必要としないのが通例だが、しかし、まだ古い発電所もあるだろう。一般的に言って発電機は回ってどんどん電気は生産されている。生産されているが、しかし、労働力をそんなに安くては売らない、あるいは勤務時間が不当だという形で会社側と交渉を持ち、それがたちまち紛争を生じ、争議行為という段階になる。そうすると、労働力はここ二、三日売りませんよと、これはもちろん労調法に定める予告とか、そういうものはすべて適法になされたと見てよろしいが、そういう場合に、発電機は回って何も直接とめない、作為、不作為というが、ここにしかし直接間接という問題が一つ残っておるわけです。電気さえとまらなければ、発電機がとまらなければ――何も仕事をしないということを論じているんじゃない、ね、発電機が回転していて発電所の所長が見ていると、それでどんどん電気は生産されている。だから労務提供をしないからといって、仕事をしない、あるいはサボタージュ、怠業をしたからといって何ら公共福祉関係はない。そういう場合は、これは労務提供をしないったって、このスト規制法趣旨から見て、公共福祉だというんだから、見て何ら差しつかえない、いわゆる間接だと、こう解釈せざるを得なくなってくるんだな、これをどう解釈するのであるか。これは一つの例を示して尋ねるんだが、このスト規制法がいかなる実態を持っているか、その正体がわかってくるわけです。お答えいただきたい。大臣じゃどうです。――それじゃ大臣が特に速記録へ残して下さい、大臣の言として労政局長に言わせるのか。
  257. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府委員に答えさせます。
  258. 中西實

    政府委員(中西實君) この法律は、一条で趣旨をうたい、二条、三条で実体を規定していることは御承知通りごでざいますが、われわれのこの法律に対する解釈は、二条、三条所定の違反行為が、すなわち一条の趣旨に当るんだということでございまして、二条、三条を解釈する場合に、一条に戻って判断するというふうに解釈をしていないのでございます。従って結果から見ますると、おっしゃるように、あるいはまあ公共福祉という大げさなところまで該当しないという場合があるかもしれませんが、それはあとの処理の問題でございまして、とにかく二条、三条所定の違反行為は正当な労働組合の行為でない。従って、労組法にいろいろときめております保護に値しない行為であるということでございます。
  259. 藤田進

    藤田進君 そんなわかりにくいことを聞いているんじゃなくて、今言ったように、発電機は回っているんですよ。所長か見ている――組合員じゃないんだから見ている。どんどん生産されている、供給されている。しかし、労働者は仕事をしていないんだ、依然として……。それはあるんだから、現実にほとんどそうなんだからね、発電所の場合。それならば公共福祉に何の影響もない、電気もとまらないんだから。とにかくしゃにむに仕事をさせるという法律なら別ですよ。そうでなしに、公共福祉電気をとめちゃならぬというのならば一向に仕事をしないということは要するに不作意だな。不作意は何ら問題はないはずなんだな。それは一体間接として許されるのか許されないのか、もうずばりそのもので答えてもらえばいい。
  260. 中西實

    政府委員(中西實君) 結果を現実に生ずべき性格の行為であればいけないということでございます。
  261. 藤田進

    藤田進君 だから結果を免じない場合は問題はないということですか。
  262. 中西實

    政府委員(中西實君) そこが違うのでありますが、性格を持っておる行為、つまり結果を生ずる性格の行為はいけない……。
  263. 藤田進

    藤田進君 もっとわかりやすく、ここは委員会だから本会議みたいな答弁じゃなくて、何べんでもやり直すから、だめなんだもっとわかりやすく言わないと。性格を持つとか持たないとか、とにかく争議行為の名がつけば何をやってもだめだというんですか。
  264. 中西實

    政府委員(中西實君) 物理的にも、客観的にも、そういう結果を生ずる性格の行為と、こういうことでございます。
  265. 藤田進

    藤田進君 そうすると、電気がとまるおそれのある場合もこれにひっかかるの。
  266. 中西實

    政府委員(中西實君) その行為自体がそういう結果を生ずる性格のものであれば、これに該当するわけでございます。
  267. 藤田進

    藤田進君 今のはどういう性格のものに入りますか。発電機は回っている、生産はされている、供給されているか、労働者がサボタージュ――仕事をしていない、そういう事態なんだから、発電所というのは……。それはその性格を持つものなのか、持たないものなのか。……結局一体だれがやるんです。あなたがこれをやっているの。こんな大事なことが全然もうしまいにはだれを用意しているのか知らないが、僕は不満だな全く。大臣ができなければ、政府委員というんで……。まあ一ぺんだけ聞いてみよう。
  268. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 局長から申し上げましたように、客観的に見てそういう結果を生ずべき性格の行為が禁止されているわけでございますから、抽象的に申しますれば、そういう結果を生じない性格のものであればもちろん本法を適用するものではないわけでございます。従ってその人がウォーク・アウトいたしましても、それによって本来電気の発生、供給に支障を来たさない限度でありますならば、それは本法に該当いたしません。
  269. 藤田進

    藤田進君 そうすれば、その間に従来の事例を見れば発電所をウオーク・アウトした、発電機は回っているわけたな。そこで電気の経験者――一説には自衛隊を入れるという説も一時あったが、だから自衛隊に電気関係を教えておいてちょうど接収というような、アメリカがやっているような議論さえ出たが、しかし、まあ現状は失業者も非常に多いときだし、大学の電気科を出たりいろいろやっている人もあるので、そういう人を雇ってきて、組合側にこれを聞けばあれはスト破りだと、スキャップだと、こう言うし、経営者に聞けば管理責任として必要なんだと、こう言うと、そういうふうにまかなわれてくれば、当該発電所の勤務員でなくてもその点は拘束していないんでしょう、この法律は。どうなんですか。
  270. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) ウオーク・アウトしたというその争議行為自体をこの法律によって、法律が対象としておるのでございまして、ウオーク・アウトの結果たまたま使用者側がスキャップを入れたかどうかということは直接この法律に当るかどうかという問題には関係がないわけでございます。従ってその人がいなくなったらば電気がとまっちゃうというウォーク・アウトでありますれば、かりにたまたま他から代替要員が入りましても、その争議の性格といたしましては争議行為になります。
  271. 藤田進

    藤田進君 いや、あなたは違反を論ずる場合性格でもって違反をきめるのですか。その行為に対して、現実の行為に対して罰則があれば罰則が適用になる。その性格があればどうもというのじゃ、これはかっては特高警察などでは性格を論じて豚箱にぶち込んだものたが、そうじゃないでしょう、この労働法というものは。あれはどうもこういう傾向を帯びている、けしからぬ、そんなものじゃなくて、現実に行われた行為電気がとまった、調べてみたらこれはスト規制法に違反している、罰則はないが、刑法の違法性の阻却がないのだ、こんなことを言っているのだろうと思うのだ、あなた方の言っているのは。そうなれば、私の言っていることは、スキャップを入れることが法に抵触するのかどうかを聞いているのじゃなくて、当然管理責任のある、供給責任のある企業主は何らかの方法で、やはりこのスト規制法よりももう一つ別な法律があるのだから、電気には。いいですか。この供給責任というものがある。従来しかもやっているし、可能なんだな。そのやっていることか――よしあしは別ですよ。われわれはよくはないと思うし、ストライキを破るなどということはないと思うが、しかし現実にストライキで、スキャップというか、別の臨時雇というか、退職者を利用してこれに補充するとかいろいろなことをやっているが、それで現実に発電機を回していれば何もウォーク・アウトし、サボタージュしたって一向差しつかえないのじゃないか。そうしてスキャップがやっている間に何か事故が起きたというなら、それはその臨時雇の失策であって、何もストライキをやっている連中の失策じゃないのですよ。これはもう理の当然ですよ。それをどう割り切るのですかというのですよ。
  272. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 先ほど言葉が足りませんで、大へん恐縮でございましたが、性格と申しましたのは、人の性質とかいうようなものではございませんで、行為の客観的性格のことを申し上げたつもりでございます。そのように御了解を願いたいと思います。  それから使用者のスキャップ云々のことでございますが、申すまでもなく、スキャップを入れるのは使用者であり、ウォーク・アウトをするのは労働者側でございます。労働者側の行為としてみますならば、これはスキャップの問題とは理論的には一応切り離して考えなければならない。そこでその行為の性格といたしましては、これは本法に違反せざるを得ないわけであります。もちろんさらにそれが罰則の問題等になりました場合には、範囲の問題その他それが使用者側の対抗手段なり、あるいは後の扱い方の予想といったようなものも考えられる問題でございますけれども、本法上の問題に限って申しますれば、これは労働者行為それ自体に着目して制断ずるものだと思います。
  273. 藤田進

    藤田進君 そうすると、直接間接の問題は、発電機が回っていても、供給がされていても、とにかく仕事をしないということになれば、これは直接なんだから、これに抵触すると、スト規制法に抵触する、そういう解釈ですね。仕事をしないということをやはりとめているのだ、仕事をすればいい……。
  274. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) その仕事の性格がその電気に障害を与える性格の仕事でありますれば、その仕事をしないということを争議行為としてなすことを禁止しているわけであります。
  275. 藤田進

    藤田進君 だけれども、あなた方のずっと初めごろの説明を聞くと、公共福祉で、電気がとまると皆が迷惑する、そういうのだったのだな。これ一つなんだ。第二の必要性は、労働組合が何か熱病で、たとえれば三十何度とやらで、どうもまださめておらぬと、こういうのだ。そうであれば、何も電気がとまらないというようなこと――それはやがてはとまるかもしれませんよ。争議行為に入るその時点においては違法じゃなくて、やがてたとえば一週間なりないし一カ月なり、このふなれな者が運転したために事故が起きたことによって停電に至ったとか、こういうときに初めて振り返ってスト規制法に違反しておると、こういうふうになるのじゃないかとも思われるのだな。もう入るせつなからそれが違反だということは公共福祉論からは出てこない。そうでしょう、大臣。うなづいているが、大臣どうなんですか、その点、これは法律論じゃないですよ、これはあなたの公共福祉論の中だ。
  276. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) そのような行為につきまして、ウオーク・アウトにつきましてもちろん使用者側がスキャップを入れる義務は労働法上負っておるわけではございませんし、労働組合側として使用者がスキャップを入れるように労働組合に対して義務を負っているわけでももちろんないのでございまして、そういう行為というのは、これは当然停電を来たすべき性格の行為であるから、従って反社会的、公共福祉に反する、たまたまその結果が何かの他の事情によって防止されたといたしましても、その行為としての性格はやはりそういった公共福祉に反する性格を持っているというふうに本法は考えているわけでございます。
  277. 藤田進

    藤田進君 これは人命に影響する、たとえば温溢罪のごとき場合ですね、この内容は申し上げぬでもおわかりだと思います。溢水罪と同じような性格なんですか、このスト規制法というものは。そういうおそれあるというのは。
  278. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 御承知のごとく、温水罪はもちろん直接刑罰規定でございます。この法律は単に行為の正当不当、合法非合法を振り分けるだけの法律でございますので、性格としては同じものとは申せないと考えております。
  279. 藤田進

    藤田進君 それならば、要するに現実にその結果を見て論じられるということになって、ストライキの行為に入るときにもうすでに違法だというレッテルを張って、行政なり監督なりするという性質のものでなくて、公共福祉大臣の言われる論拠から見てもどうしてもこれは納得がいかない。これは説明がそれ以上これまたむずかしいのだろうから、これは仕方ないといたして、他の事例に移りたいと思います。  実は非常に膨大な質問要項を一冊用意しておるので……。
  280. 千葉信

    委員長千葉信君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  281. 千葉信

    委員長千葉信君) 速記を始めて。本日の本案に対する質疑はこの程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  282. 千葉信

    委員長千葉信君) 御異議ないと認めます。以上をもって散会いたします。    午後四時十四分散会