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国務大臣(
倉石忠雄君) 私は、もしわが国に
日本の
産業を早く破壊さして、そうして社会革命の動機を作ろうといったような
考えを持っている者があるといたしましたならば、そういう者とは一緒に同じ広場で
お話しをすることはわれわれには不可能でありますけれ
ども、
日本の労働大衆というものはそういうものじゃないと私は
考えているのであります。つまり究極において
民間産業でも
経営側と労働側というものは利害は一致いたしているのだ、そういう
立場でございますから、御
承知のように、終戦後の
日本の
労働運動というものも非常に安定してきております。たまさか失敗はありますけれ
ども、この失敗というのは私は
労働運動ばかりじゃありませんで、
民主主義そのものに対して私
ども国民自体がなお
成熟しておらないのでありますから、
労働運動においてたまさか失敗があったって、そんなことは長い月で見て、歴史の流れから見たら大したことはないと思うのですが、そこでこの
組合と
経営者が、先ほど申しましたような基本的なものの
考え方でございますからして、
政府は
昭和三十一年度予算にも若干の経費を作りまして八つの重大
産業、たとえば
石炭、造船、
電気、繊維、こういったようなところには労使の協議会を作るように勧奨いたしまして、そういうようなところで大いに
経営と労働側との話し合う場所を作って相互理解を深めていくというふうなことを進めておりますが、御
承知のように、すでに繊維
産業ではりっぱなものができまして、先般盛大な発会式が行われて、
組合も非常にこの点に協力しております。また、
電気関係でも関西電力にもございますが、最近東北電力などでは同じような
趣旨で、そういう催しを持つようになってきておるわけであります。そういうふうにだんだんなって参りますることによって、
経営自体、その企業自体に対する労働側の
一般の理解が深められ、同時にまた、
労働組合側の実情、あり方などについて
経営側が十分なる理解を持つというふうにだんだん傾向が向ってきております。私は
経営側でも特にこれは企業別ではございませんけれ
ども、最近経済界の動きをみますと、御
承知のように、
経営の目的が株主と、それから
労働者だけではないのであって、つまり第三者である
国民の消費者の
利益を一番
考えなきゃならぬといったような、まあ
経営の倫理観とでも申しましょうか、そういう動きも強く出てきております。私
どもはそういうような幾多の事情を総合いたしまして、
経営と労働との間によき
慣行が生まれて参るようになれば、
本法で憂えておりますような
手段というものはだんだんこれはなくなる、こういうふうに
考えて、そういう風潮を助成するように
政府としても努めておるわけであります。