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1956-11-30 第25回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月三十日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 北澤 直吉君 理事 重政 誠之君    理事 西村 直己君 理事 小平  忠君    理事 柳田 秀一君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    今井  耕君       植木庚子郎君    小川 半次君       河野 金昇君    小坂善太郎君       周東 英雄君    須磨彌吉郎君       竹山祐太郎君    楢橋  渡君       野田 卯一君    橋本 龍伍君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    松浦周太郎君      山口喜久一郎君    山本 勝市君       山本 猛夫君    足鹿  覺君       石田 宥全君    井手 以誠君       今澄  勇君    川俣 清音君       久保田鶴松君    小松  幹君       田原 春次君    辻原 弘市君       成田 知巳君    西村 榮一君       古屋 貞雄君    八百板 正君       山花 秀雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 吉野 信次君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 馬場 元治君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         人事院総裁   淺井  清君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      岩武 照彦君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁税務部         長)      奥野 誠亮君         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 六月一日  委員和田博雄辞任につき、その補欠として山  花秀雄君が議長指名委員に選任された。 同月二日  委員山本猛夫君及び小松幹辞任につき、その  補欠として塚田十一郎君及び原彪君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員塚田十一郎辞任につき、その補欠として  山本猛夫君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員宮澤胤男君、辻原弘市君、中村英男君及び  原彪辞任につき、その補欠として福田赳夫君、  鈴木義男君、足鹿覺君及び小松幹君が議長の指  名で委員に選任された。 七月十二日  委員古屋貞雄辞任につき、その補欠として風  見章君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員相川勝六君及び風見章辞任につき、その  補欠として芦田均君及び和田博雄君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員芦田均辞任につき、その補欠として相川  勝六君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員和田博雄辞任につき、その補欠として風  見章君が議長指名委員に選任された。 八月一日  委員川俣清音辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員足鹿覺君及び芳賀貢辞任につき、その補  欠として田中利勝君及び川俣清音君が議長の指  名で委員に選任された。 同月十三日  委員川俣清音君及び成田知巳辞任につき、中  村時雄君及び日野吉夫君が議長指名委員に  選任された。 同月二十四日  委員小平忠君、井手以誠君及び柳田秀一辞任  につき、その補欠として芳賀貢君、川俣清音君  及び成田知巳君が議長指名委員に選任され  た。 同月二十七日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として小平  忠君議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員中村時雄君及び日野吉夫辞任につき、そ  の補欠として芳賀貢君及び柳田秀一君が議長の  指名委員に選任された。 九月三日  委員田中利勝辞任につき、その補欠として井  手以誠君議長指名委員に選任された。 同月七日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として日  野吉夫君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員井出一太郎辞任につき、その補欠として  加藤常太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員加藤常太郎辞任につき、その補欠として  井出一太郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として多賀  谷真稔君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  小川豊明君が議長指名委員に選任された。 十月一日  委員小川豊明君及び日野吉夫辞任につき、そ  の補欠として足鹿覺君及び有馬輝武君が議長の  指名委員に選任された。 同月三日  委員足鹿覺辞任につき、その補欠として神田  大作君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員有馬輝武君及び芳賀貢辞任につき、その  補欠として芳賀貢君及び日野吉夫君が議長の指  名で委員に選任された。 同月十一日  委員神田大作辞任につき、その補欠として井  手以誠君議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員山花秀雄辞任につき、その補欠として石  橋政嗣君議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員小松幹辞任につき、その補欠として木下  哲君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として志  村茂治君が議長指名委員に選任された。 十一月十日  委員石橋政嗣君風見章君、木下哲君、志村茂  治君、鈴木義男君及び日野吉夫辞任につき、  その補欠として山花秀雄君、足鹿覺君、井手以  誠君、古屋貞雄君、小松幹君及び辻原弘市君が  議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員足鹿覺君及び川俣清音辞任につき、その  補欠として石田宥全君及び稲富稜人君議長の  指名委員に選任された。 同日  委員石田宥全君及び稲富稜人君辞任につき、そ  の補欠として足鹿覺君及び川俣清音君が議長の  指名委員に選任された。 同月十九日  委員藤本捨助君辞任につき、その補欠として池  田勇人君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員足鹿覺君及び井手以誠君辞任につき、その  補欠として赤路友藏君及び有馬輝武君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員有馬輝武辞任につき、その補欠として井  手以誠君議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員井手以誠君及び辻原弘市君辞任につき、そ  の補欠として稲富稜人君及び鈴木義男君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十二日  委員川俣清音君及び川上貫一辞任につき、そ  の補欠として日野吉夫君及び志賀義雄君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十六日  委員志賀義雄辞任につき、その補欠として川  上貫一君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員稲富稜人君辞任につき、その補欠として有  馬輝武君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員日野吉夫君及び古屋貞雄辞任につき、そ  の補欠として川俣清音君及び風見章君が議長の  指名委員に選任された。 同月二十九日  委員赤路友藏君、有馬輝武君、川俣清音君、風  見章君、鈴木義男君及び矢尾喜三郎辞任につ  き、その補欠として足鹿覺君、井手以誠君、稲  富稜人君古屋貞雄君、辻原弘市君及び石田宥  全君が議長指名委員に選任された。 同日  委員稲富稜人君辞任につき、その補欠として川  俣清音君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員池田勇人辞任につき、その補欠として藤  本捨助君議長指名委員に選任された。 同日  理事小平忠君及び柳田秀一委員辞任につき、  その補欠として小平忠君及び柳田秀一君が理事  に当選した。     ――――――――――――― 十一月十二日   次の委員会開会要求書が提出された。    予算委員会開会要求書  公務員給与改訂健康保険赤字対策災害補償  等に伴う予算補正措置について、説明を聴取し、  質疑をする必要あるにつき、直ちに委員会を開  会致されたく衆議院規則第六十七条第二項の規  定により左記連名にて要求します。        昭和三十一年十一月十二日         予算委員長 三浦 一雄殿            予算委員 柳田 秀一                 小平  忠                 足鹿  覺                 井手 以誠                 今澄  勇                 川俣 清音                 久保田鶴松                 小松  幹                 河野  密                 田原 春次                 辻原 弘市                 成田 知己                 西村 榮一                 古屋 貞雄                 八百板 正                 矢尾喜三郎                 山花 秀雄     ――――――――――――― 十一月二十九日  予算公聴会に関する陳情書  (第四四四号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  国政調査承認要求に関する件  予算実施状況に関する件     ―――――――――――――
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。委員の異動に伴いまして理事二名欠員となっておりますので、その補欠を選任いたしたいと存じますが、先例によりまして委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 三浦一雄

    三浦委員長 御異議なしと認めます。よって理事小平忠君、柳田秀一君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 三浦一雄

    三浦委員長 次にお諮りいたします。予算実施状況に関する件につきまして、議長に対し国政調査承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 三浦一雄

    三浦委員長 御異議なければ委員長において直ちに所要の手続をとることといたします。  暫時休憩いたします。    午前十時三分休憩      ――――◇―――――    午前十時四十三分開議
  6. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算実施状況につきまして調査を進めます。発言の通告がありますので、順次これを許します。小平忠君。
  7. 小平忠

    小平(忠)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、北海道の冷害、東北あるいは北信越の冷害、さらに九州、中国地方を襲いました台風災害、さらに公務員給与改訂あるいは年末手当、健保の赤字解消中小企業の年末融資等の問題で補正予算要求をいたしております立場から、総理大臣を初め、関係閣僚の所信をただしたいと思うのであります。  予算補正の問題に対しまする質疑に入ります前に、私は当面する外交、貿易、国内問題につきまして、総理大臣に若干質問をいたしたいと思うのでありますが、鳩山総理大臣が先般七十三才の老体と御不自由なからだにみちうちまして、はるばるモスクワまでおもむかれて、全国民多年の悲願でありまする日ソ交渉の、妥結を見、調印をなされてきたということに関しましては、その御労苦とまた現下のわが国情勢を考えてみまして、不満足ながらも過日衆議本会議におきまして、わが党もこの共同宣言以下三件に対しまして賛成をいたしたわけであります。  そこで最近の中近東なり東ヨーロッパにおきまする情勢は、これはわれわれの見方、また政府見解、率直に申し上げて、私は政府はきわめて手放し楽観論でないかと思うのであります。総理大臣は激動するあのさ中にモスクワまでおいでになられておりまして、よく東欧中近東情勢はあなたの目で見てこられ、よくその情勢を判断されておるのでありますが、この中近東並び東ヨーロッパ情勢についてどのような見解を持っておらるるか。さらに日ソ交渉批准後におきまするわが国国際的地位を高めていくという観点に立って、あなたはこの問題についてどのようにお考えになっておりますか、まず第一にお伺いいたしたいと思うのであります。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中近東並び東欧問題につきまして、詳細な事柄については外務大臣から答弁してもらいます。ただわれわれは国連憲章の精神でもって、どうか平和的に解決してもらいたいという希望をもって監視しておる次第であります。東欧問題につきましてもハンガリーポーランド国民にはとにかく同情の意を表する次第でありますが、これらの国民の声が十分聴取されまして、事態の円満なる解決のできることを希望しておる次第であります。詳しいことは外務大臣から答弁してもらいます。
  9. 重光葵

    重光国務大臣 それでは中近東方面一般情勢について私の見るところを御説明いたしたいと存じます。一般情勢につきましては、本会議におきまして申し述べたところよって大体御了解を得たことと思います。あの情勢が今日までまだ続いておる情勢でございます。それで、本会議で申し上げました通りに、中近東方面すなわちスエズ運河の問題から発した中近東情勢と、それからハンガリー国内情勢からくる東欧情勢、こういうふうに大体二方面から観察したのでございます。今日のその後の状況をざっと申し上げます。中近東の問題につきましては、国際連合の取り上げるところとなって、国際連合において主として処理されておるということは御存じの通りであります。他方東欧の問題は、国際連合において取り上げられました。しかしながらハンガリーもまたソ連も、これは国内問題であるからといって、国際連合の問題にすることを拒否しておる状況でございます。しかしそれだからといって、国際関係全体がそれで解決されておるというわけではむろんないのであります。非常に今日は困難な事態に進んでおることは御承知通りであります。  さて中近東方面におきましては、国際連合において国際警察軍を組織して、そうして英、仏、イスラエルの軍隊をエジプトから撤退するということになって、その方向に進んでおるわけでございますが、いまだに完全なる撤退はないわけでございます。それと同時に、スエズ運河自由通過を実現する、つまり今通航の阻止されておる状況を除き、自由通航のできるようにするという問題がここにあるのでありますけれども、エジプトは、スエズ運河の問題はエジプトの国内問題として、エジプトの主権のもとにあるのであるからエジプトでやる、こういう態度をとっております。また英仏の方はこれを国際的に処理しようというところで、まだ一致していないようであります。  さようなことで、国際連合がしきりにスエズ運河の問題については努力しておるのでありますけれども、まだ解決は見ておらないという状況でございます。スエズ運河の問題はさような事態でございますが、なぜスエズ運河の問題が起ったかというと、ここに大きな背景があるので、それを見のがすことのできないことは、前に私が説明した通りでありますが、その背景を見るに至って大きく問題になっているのは、ソ連アラブ諸国に対する勢力の伸張と申しますか、積極的な政策が大きく関係をいたします。それが結局スエズ問題にも発展したわけでありますが、そこでソ連が今日アラブ諸国のうちに勢力を伸ばしておるということについて、特にシリアの状態が注目をされておるのであります。シリアソ連軍事根拠地を作るとか、またシリア軍の訓練をやっておるとか、いろいろな報道がございますが、ソ連側はこれを否定しております。しかしいずれにしてもシリアについて問題がある、ソ連勢力シリアに非常に植えつけられておるという懸念が国際的に持たれておるということは、これは事実でございます。さようなわけで、スエズ運河の問題はスエズ運河の問題にとどまらずして、大きくいえば、共産陣営西欧側との大きな世界勢力争いに転換をしつつあるというのが今日の状況でございます。これは日本としても非常に注目しなければならぬので、この国際情勢は決して私は楽観は許されないと思います。しかし今すぐそれならば大きな衝突があるというふうには見るべきものでもなかろうかと思いますが、しかしその発展はきわめて用心深く観察しなければならない、こう考えておるのであります。  大体以上のようなことを申し上げておきたいと思います。
  10. 小平忠

    小平委員 ただいまの総理大臣なり外務大臣の御答弁を承わっておりますと、特にただいまの外相の御答弁でありますが、きわめて楽観を許されないという。先般の本会議の席上におきましてあなたの答弁されました内容、あるいはあなたの外交問題に関する演説、これは非常に経過説明というか、従来の新聞論調なりあるいは外電なりニュース等に現われる問題を、収録して御報告されたような感じを実際に抱いたのであります。同時にまたあなたの御答弁はきわめて楽観的な御答弁であっと思うのですが、ただいまの御答弁によりますと、きわめて楽観を許さないという。しかし私がなぜこの問題をお伺いいたしたかと申し上げますと、従来の政府中近東東ヨーロッパに対しまする考え方は非常に楽観論に終始いたしておりますから承わったのでありますが、あなたの今の御答弁はきわめて抽象的な面もありますけれども、最後の御説明によっても、楽観を許さないという。御承知のように東欧におきまするところのソ連なり西ドイツ、あるいはフランス、イギリスの情勢、さらに地中海におきまする動きの問題、これらがさらに発展をしまして、中共の周恩来がすでに各国を訪問しているというような事実の問題、あるいはアメリカが沖繩に基地を持つ第七艦隊に対するところのいろいろな動きの問題、これらを総合してみますると、このスエズ運河に端を発しました中近東問題なりあるいは東ヨーロッパの問題というものは、これは決して軽視できない。政府はこの激動する国際情勢に対処して、日ソ交渉妥結を契機に、日本国際的地位をいかに高めていくかということについて、誤まりない国際情勢の判断の上に立っていただきたいと私は思うのであります。  そこで私はそういうようなことから鳩山総理大臣にさらにお伺いいたしたいのでありますが、あなたは過日モスクワにおもむかれて、日ソ交渉のいわゆる矢面に立っておられる。その交渉の最中に例のポーランドハンガリー、特にハンガリーの問題について、その情勢の急変によって、ソ連側から調印を二日ほど待ってくれないかと言われたということを、われわれ外電を通じて耳にしたのです。確かにポーランドにおけるあのような動揺というものが、直ちにハンガリーの問題に発展して、これは相当の問題になる、東欧に異変があるということは、当時少くとも世界の有識者はもう知っておることであるし、現にソ連内部におきましても相当動揺があった。あの調印をする前日には、ソ連戦車隊東部戦線に出動している。こういう激動する最中で、私はこの日ソ交渉というものはきわめて有利に展開されたはずだと思うのでありますが、この見通しと感賞の純さというか、そういう点において私はソ連を非常に有利にしたのではないかというように考えるわけであります。従ってこういうような客観情勢を達観するときに、少なくとも一国の総理外務大臣は、鋭い烱眼と観察をもって対処していただきたい、こう思うのであります。そういう観点から、さらに一昨日の参議院外務委員会におきまして、わが党の曽祢益氏の質問に答えて、外務大臣は、南樺太と北千島は、これは日本国有領土でないんだ、サンフランシスコ条約においても放棄しておるんだから、ソ連に譲ってもよいというような発言をされた。それで昨日の委員会ではどうも取り消しをされたようなんです。きわめて不見識きわまることだと私は思う。この機会外務大臣のほんとうの真意――そういうことをおっしゃるのには何か根拠があるのではないかと思う。承わっておきたいと思います。
  11. 重光葵

    重光国務大臣 まず第一に国際情勢のことについて一言申し上げます。国際情勢について政府が常に楽観して、国際情勢をよく検討していないというようなお話がありましたが、政府はいまだかってわけもなく楽観したことはございません。毎回の国会で外交のことについて御説明しておる通りで、形勢を常に慎重に考慮して、そうして国際情勢動きを検討して、それに応じて方針を立てて参っておることをよく説明いたしております。最近の国際情勢についても私が本会議で御説明したことは、ただ手放し楽観論では決してございませんでした。その通りに大体動いております。これに対して、むろん御説の通りです。この深刻な国際情勢に対処して十分に施策を進めなければならぬ、こういうことは全然御同感でございます。  今、参議院曽祢委員に対して、私が日ソ交渉について、領土問題について発言した南樺太や北千島の問題について、当を得ていない発言があった、こういうことでございます。私のこの発言は、他の機会において、衆議院特別委員会等において御説明をし、私の意見を申し上げた点と、少くとも変っておるのじゃないのであります。それは、新聞にはいろいろ表題などをつけておるようでありますけれども、内容はどうであるかというと、南樺太、北千島の問題について条約論がございました。法理論曽祢君が持ち出しました。法理論として南樺太、北千島は日本固有領土として主張したのであるかないかという問題が起りました。私は、日本固有領土として主張して、あくまでこれはどの国に対しても日本固有領土として譲歩しないと主張したのは、日ソ交渉においては国後、択捉の問題であった、こう説明しております。それでは条約論として南樺太、北千島の処理はサンフランシスコ条約に抵触するのかという条約論がありました。これは、領土の問題を日ソの間において処理することはサンフランシスコ条約には抵触すると私は考えておらぬと、こう説明しました。これが私の説明でございます。しかしながら、それだからソ連に対してこの領土を将来どう処分するかということについては一言も触れておらないのでございます。その政策は、従来ソ連に対して交渉した経緯をたどって日本の主張を維持しておる、こういうことを申しておるのであります。そういうようなわけでありますから、今のような誤解はないはずだ、こう私は考えておりますが、もし誤解がありますならば、はっきりとさような意思であるということを申し上げます。その点は昨日も参議院外務委員会でまだ話が出ましたので、よく説明をしておいたわけでございます。
  12. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいまの外務大臣の御答弁によりますと、非常に食い違っております。私は単に新聞報道だけであなたに承わっておるのではないのであります。速記録なり、特に質問をいたしましたわが党の曽祢氏とも昨日会ってよく聞いてみたのです。確かにあなたは、南樺太、北千島についてはサンフランシスコ条約において放棄しておるのだ、固有領土でもないのだということを発言されておるのです。その通りですね。――同時にそのことは、あなたはソ連に譲ってもよろしいということをほのめかしておるという結論にはるのです。だからこそ、きのうあなたはそれを取り消されたのでございましょう。そうして南樺太、北千島といえども、日ソの国交が回復し、平和条約が締結された後においては、ソ連に対してその返還の要求をしてもいいのだ、するのだということをおっしゃっておるじゃありませんか。総理大臣もそれに答えられて、その通りと書っておるのです。ですからあなたは、少くとも一国の外務大臣として、法律論は法律論としても、現実の問題として南樺太、北千島は日本固有領土でない、あれはソ連に譲ってもいいほどと言うことは、非常識もはなはだしい。同時にそういう発言は、国民感情の上からもまことに遺憾です。だから私はこの問題についてこの際明確に願っておきたいと思いますことは、南樺太、北千島についてあくまでも日本固有領土として、将来もこの返還を要求していくという考え方を変えないかということについて、あらためて総理大臣にその見解を承わっておきたいと思うわけであります。
  13. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 よくお問いの趣旨がわからないのですが、南樺太、北千島を日本固有領土として日本は主張する気分があるかという質問ですか。
  14. 小平忠

    小平(忠)委員 そうです。
  15. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 南樺太、北千島は御承知通り日本は放棄をしております。放棄をしておりまして、これをソビエトに要求してもソビエトが承知するはずはないと思いまして、このたびの交渉においてはそういうことを主張しませんでした。
  16. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、今回共同宣言に現われた場合のことを承わっておるのではなくて、たまたま一昨日の重光外務大臣発言からいろいろ疑惑の問題となって関心を買われておることだけに、承わっておるのですが、将来日ソの国交が回復して平和条約が締結される、そういうことになった場合において、北千島なり南樺太について、その返還を要求するというお考えをお持ちでございますかということを承わっておる。
  17. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国際情勢が変化すれば、従って日本要求も変化するでしょう。しかし変化しない前に主張するという気分は持っておりません。変化しなくては主張してもむだだと思うのであります。
  18. 小平忠

    小平(忠)委員 それは国際情勢の変化というものは予測できません。どうもあなたの昨日の参議院外務委員会におきまする答弁も、そのようなことであったかと思うのであります。大体あなたの意思はわかりましたが、外務大臣におかれましては、十分にそういうことについては疑惑なり混乱をさせないように、私は特に注意を申し上げたいと思うわけであります。同時にこの領土関係いたしまして、河野農林大臣がおられますが、私はこの日ソ交渉の過程において――すでに衆議院は批准になり、参議院の審議の段階に入っておりますが、一昨日の重光発言に関連をいたしまして、私は非常に疑問に思っておりますことは、あなたがモスクワにおいてやった河野、フルシチョフ会談について、私は解せない一つの疑惑を持っておるのです。というのは、共同宣言に明記されておりまする歯舞群島、色丹島の問題は平和条約締結の暁において日本に引き渡すというきめ方、一方この向島については沖縄問題解決と同時にこれを日本に引き渡すというようなことをあなたは承諾をしたというように、当時の外電には報ぜられているのですが、この問題について真相は一体どうなんですか。これは非常に大事な問題ですから、この際そのいきさつを明らかに願っておきたいと思います。
  19. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。私とフルシチョフ氏との間に話し合いましたことの内容は、遺憾ながら申し上げるわけに参らぬのでございますけれども、歯舞、色丹の返還は、沖繩日本に返ってくるときを条件にして云云という御発言は、そういう事実はございませんということを明確にいたしておきます。
  20. 小平忠

    小平(忠)委員 あなたは、その内容をお話しすることはできないと言うが、これはきわめて大事な問題です。そういうように非常に疑惑となっておる問題があります。同時に、さきに重光、松本両全権がモスクワ交渉された際の領土の継続審議という問題が、今回の共同宣言においては削除されておる。これにもいろいろないきさつがあると思う。私はあえてこの問題を追及するわけではありません。現在参議院においてこの問題は審議をされておりますから、これはそちらに譲ってよろしいと思うのですが、結局こういうようなきわめてあいまいな問題をやはり明確にされないと、あなた方がいつまでもこの政局を担当してやっていくというのであるならばいいでしょうけれども、将来にこういうものの禍根を残してはいけないと思うから、その点は明確に願っておきたいと思うのであります。  そこで私はさらに外交上に関係する問題としまして、非常に大事な問題は、日中の国交回復の問題であります。鳩山総理大臣は、当面日中の国交回復については考えないということが報道された。これは外電をもってわれわれは聞いておるのでありますが、日ソ交渉の批准妥結、国交回復、こういう日ソの国交回復に伴って日中の国交回復というものを具体的なスケジュールによって進めるということは、当然の義務だと思うのであります。そういう観点について総理大臣はいかなる見解をお持ちであるか承わっておきたいと思うわけであります。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日中との友好関係を保持するということは、もとより必要です。そのために努力をしておるわけですけれども、日中との国交の正常化ということは直ちにでき上らないという事情のあることは、あなたも御承知通りであります。それですからとにかく貿易を増進して日中との友好関係を積み上げていくことに目下は努力中であります。
  22. 小平忠

    小平(忠)委員 これは率直に申し上げまして、本会議の際にもわが党代表から総理外務大臣にこの問題は強く指摘をし、見解をただしておるのでありますが、きわめてあいまいなんです。アジアにおける日本の地位というものは、日ソ国交回復だけでこれでいいのであるということは、あなた方もそう感じていないでしょう。日ソの国交回復ということは、同時に日中の国交を回復して、そのことがさらにアジア全体の、あるいは東南アジアの日本の地位というものが国際的にも高まっていくという大きな出発点となることは当然なんです。ところが何ら日中との国交回復については、具体的なスケジュールを持っていないということは遺憾です。そこで同時に、かりにいろいろな複雑な問題から、直ちに日中国交回復に対するところの推進ができないにいたしましても、貿易の問題については、これはすでに東南アジアとの関係において進められておるというこのいきさつから、国交回復に対しまする具体的な手はただちに打てないにいたしましても、しからば日中並びに東南アジア――もちろんココムの制限もあるますが、これらの問題と関連して、日中並びに東南アジアとの貿易問題をどのように今後推進し考えていくか、この点について私は総理見解をただしておきたいと思うわけであります。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日中との貿易をなるべく増進したいということはたびたび言っております。その方法はといえば、ココムの制限をできるだけ少くしていって、あるいは貿易のために必要なる措置を、その必要が生じたに応じて作っていきたいという希望を持っております。
  24. 小平忠

    小平(忠)委員 総理のただいまの答弁によって、いかに誠意がないかということが明確にわかります。そんなことで日本国際的地位が高まるとか、そういうことはとうてい考えられないし、同時にこの重大は貿易問題につきましても、国民の悲願である日中あるいは東南アジアとの貿易の推進などということは、なかなかおぼつかない。さらに私はこれに関連をして、日ソ国交回復に伴って当然起きてくる問題は、日ソの貿易協定ということにおいて、シベリア開発に関連して含みを持った日ソの貿易ということが具体的なスケジュールに乗って参ると思うのであります。このことについては、御承知のように、往復二億五千万ドルの貿易をやろう、こういうことばすでに政府においても、その見解、所信を明らかにしておるのでありますが、しからば二億五千万ドル、これをルーブルにいたしまして、十億ルーブル、こういうものをやろうとするのであるが、しかし果して一体どういう物をソ連に売り、またソ連からどういう物を買ってくるのか、またその決済の方法も現金取引なのかあるいはバーター制によるのか、一体この点はどうなんですか。
  25. 石橋湛山

    石橋国務大臣 ただいまお尋ねの問題は、しばしば申し上げたようにまだ具体的に通産協定の段階に入っておりません。いずれ通商協定を結ばなければなりませんが、そのときに具体内に双方の都合を話し合って、最も都合のいいように、つまり貿易の増進ができるようにいたすわけであります。今までのところは大体バーター制でありまして、そうしてロンドンにおいてポンドで決済しておる。これは貿易の上からいえば不便なことですから、これらのことはむろん改めなければならない。でき得るならば清算勘定というような話もありますが、いわゆる片道、双方ともキャッシュで支払いをお互いにするというような方法に落ちつくのではないかと思っております。
  26. 小平忠

    小平(忠)委員 そうしますと、このシベリア開発を含めた日ソの貿易という問題について、巷間伝わっておりまする二億五千万ドル、これはまだ具体的に決済方法その他内容は何も話し合っていないということなんですね。――そこで私は、この日ソの貿易については、非常に慎重に取り扱っていただきたいと思う。と申し上げますことは、現にビルマにおいて非常に失敗をしているのです。それはバーター制によって、ビルマの米をソ連に送る、ソ連の建設資材をビルマが買う、これが国と国との関係において、当初予定したよりも建設資材が非常に高いために思うように入ってこないということから、ビルマの建設というものは非常におくれている。こういうことについて、やはり相当慎重に考えなければならぬことが一点と、同時に、日本の建設資材をシベリア開発に振り向けるという場合においても、御承知のように、日本の建設資材というものは、各国から注文が殺到している。三年先のものまで注文を受けている。こういう現状において、果してそのことがスムーズにいくかどうかという問題です。ですから、あくまでも現金取引が理想であるし、かりにバーター制の場合でも、よく業者間というものを利用して、自主的な観点に立ってやるということを、この問題が具体化されてくるという段階において、直ちに私は十分な注意と関心を払いたいと思うのであります。  同時に、最近アメリカが綿布その他の輸入制限をしようとしている。これは非常に重大問題で、一体これに対しては、日本政府としてアメリカにどういう処置と抗議をされたのですか。具体的にこの貿易じりというものは、日本にとって非常な支障になってくるのであります。その決済をどうするか、伺いたいのであります。
  27. 石橋湛山

    石橋国務大臣 アメリカとの綿布の貿易のことは、ただいま交渉中であります。わが方としても、できるだけお互いに、どこの国でもあることですから、相手の国の同業者をあまり刺激しないような方法によって逐次貿易を伸ばしていくという方針で、抑制すべきところは抑制するという方針をとってやっておりすが、これも限度がありますから、ただいま大体において総額については話し合いがついておりますが、一つ一つの物資についてのワクをきめるというようなことは交渉中でありまして、まだ向うから返事が参りません。いずれ近いうちに返事がきますから、それによって善処したい、かように考えております。
  28. 小平忠

    小平(忠)委員 私は今の石橋通産大臣の御答弁では了解できない点があるのです。アメリカが特定の業者の利益のために大衆の利益を犠牲にして、特にこの自由と互恵の経済原理を世界各国に宣伝しておる、そのアメリカという大国が、そういう特定の業者の利益のために綿布その他の輸入制限外資をするなんていうことは、全く理解できないのです。同時に日米の貿易協定の趣旨からいたしましても、私は厳重なる抗議を申し込む必要があると思う。あなたの御答弁で、現在のようなことで参りますと、相当貿易じりの赤字というものは出てくると思う。これをどう処理されますか。同時に外務大臣としましても、このような問題について外交的立場から外交折衝をされるというお考えはございませんか。
  29. 石橋湛山

    石橋国務大臣 貿易について各国ともそれぞれ都合がありますから、理屈を言えばアメリカの自由貿易とか、あるいはお話のように、一部の業者のために云々、これは向うの国内のことでありますから、そうこちらから干渉することはできません。日本としては言うべき理屈はむろん言っております。いずれ外務大臣からお答えになるかもしれませんが、現在交渉は外務省を通じてやっております。大使館が正面に出てただいま交渉しておる段階であります。
  30. 重光葵

    重光国務大臣 この問題を重要視して、目下厳重に交渉をいたしております。
  31. 小平忠

    小平(忠)委員 どうも外務大臣は厳重と言うが、その実は向米一辺倒外交によって、全くアメリカさんに向っては何にも発言できないということをよく言われるのですが、あなたは予算委員会のこの席上で厳重抗議をしております。――具体的にどういうことをやっておるのですか。具体的に……。
  32. 重光葵

    重光国務大臣 厳重にやっておるのでありまして、一々その具体内の交渉内容は申し上げられません。それは厳重にやっております。
  33. 小平忠

    小平(忠)委員 これはやってない証拠なんです。そういう詭弁を弄してもそれは国民は納得しません。同時にこのことがさらに発展をして参りますと、非常に大きな問題になります。あなたは近くやめるのだから、それでどうでもいい、これなら何をかいわんやですが、しかしそういうことで少くともこの当面する重要問題を処理していく一国の外務大臣として、私は責任上それでは国民に相済まぬと思う。この点を私は強く指摘いたしておきます。  そこで私はこの機会予算補正の全般問題についてお伺いをいたします前に、鳩山総理に最近の政局についてあなたの忌憚のない所信を承わっておきたいと思うのであります。今回の国会は、御承知のように、日ソ交渉の批准、重要な案件と同時にわれわれ社会党は当面するもろもろの問題で予算補正要求いたしておりますが、これをあえて自民党は出そうともしない、政府は出そうともしない。同時に政府は全勤労階級と強い国民の反撃を受けておりますスト規制法を存続しようとしておる。同時に自民党の内部におきましては、御承知のように、後継総裁をめぐって連日連夜のごとくてんやわんやの騒ぎをしておるのです。そうして後継総裁をだれにするのだ、いつごろ党大会を開いて総裁をきめて、そうして鳩山内閣が総辞職をして次の内閣の組閣、いろいろそういう問題を議論されておる。私は日本国の憲法なり憲政の常道をいろいろ有識者なり権威の方々の意見を聞いてみても、何のためにそんなことをして騒いでおるのか、私には理解できない。そこで私はあらためてお伺いいたしたいのでありますが、過日の本会議において、鳩山さんは、近く引退をしたい、やめるということを表明されましたが、その心境は今でもお変りございませんか。
  34. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 変更ありません。
  35. 小平忠

    小平(忠)委員 今でも変らない、こういうお話であります。そこであなたにお伺いいたしたいのでありますが、政権交代のルールについて、どのようにお考えになっておられるか、この際承わっておきたいと思います。
  36. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は政権の授受の民主的ルールというものは非常に貴重なことだと思うのです。政権授受ということは、私の引退の形式いかんによるのでして、後継内閣が永続――まあ形を変えただけのような意味であるならば、他党に譲るとか、解散を必要としないと思います。しかしまだ引退の形式がきまっておりませんから、後継内閣をどうするとか、あるいは解散をした方がいいとか、反対党に渡した方がいいとかいうようなお返事はできないのです。どっちが民主的かということは言えないのです。
  37. 小平忠

    小平(忠)委員 引退の形式がまだきまっていないというけれども、それではずいぶんあなたの気持は変られたのですね。
  38. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 変りません。
  39. 小平忠

    小平(忠)委員 それは変りましたよ。それじゃあなたは、かつて民主党の総裁であって、百二十名の議員しかなかった当時、吉田自由党は百八十名で第一党であった。第二党のあなたが第一次鳩山内閣を組閣したのは、一体だれのおかげで組閣したか、社会党が協力したからじゃありませんか。そのときあなたは何と言ったのですか。やはり民主政治のあり方は、あくまでもそういう政権のたらい回しはいけないのだ、選挙によって国民に信を問うてやるべきだ、そのためにいわゆる鳩山選挙管理内閣を作って、選挙をやるという社会党との話し合いで、社会党もあなたも了解をし、それで第一次鳩山内閣ができたのじゃないか。それですぐ選挙をやったじゃありませんか。そういう当時の考え方と現在は違うのですか。
  40. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あの当時におきましては、第一党の内閣が総辞職をしたのです。その結果第二党のわが党が、社会党の協力を得て政権を得ることになりました。けれども第一党内閣が総辞職した場合におきましては、第二党が政権をとるということは、何も不思議はないのであります。
  41. 小平忠

    小平(忠)委員 そうしますと、今あなたの言によりますと、第一党の内閣が総辞職すれば、第二党である党が政権を授受するということは当然だとおっしゃるならば、今第一党は自由民主党、いわゆる鳩山内閣なんだ。この第一党の自民党が行き詰まって総辞職をする、そうすれば当然第二党の社会党が政権を引き継いで、同時に選挙を行なって国民に信を問う、これはあなたが第一次鳩山内閣を組閣されたときと同じじゃありませんか。それなのに次の総裁はだれにする次の首班はだれにする、いつごろ首班指名をやるとか、これはおこがましい話ですよ。
  42. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの質問の前提が違うのです。前提において第一党内閣の失政の結果やめた場合と、失政なくしてやめて後継者に譲る場合とは違うと思うのです。
  43. 小平忠

    小平(忠)委員 あなたは失政があってやめた場合、失政なくしてやめた場合と言われるが、そんなことはだれが望めるのです。それは国民がきめるのです。おそらく今でも吉田さんは、当時吉田内閣は失政でやめたと思っていないでしょう。これは当然問題になる。こういう問題について、あなたはきわめて違憲きわまるそのような問題を平然とおっしゃいますか。   〔発言する者多し〕
  44. 三浦一雄

    三浦委員長 お静かに願います。
  45. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、あなたが失政による総辞職か、あなたの健康上の問題か……。   〔発言する者多し〕
  46. 三浦一雄

    三浦委員長 静粛に願います。
  47. 小平忠

    小平(忠)委員 きわめて重要な問題でありますから、私はこの際、鳩山総理に次の見解をただします。  あなたはほんとうに近くやめるということを、ただいまも表現されました。これはあなたが失政によってやめるのではないならば、しからば健康上の問題でやめるということになる。どちらがあなたの真意なのです。健康上の問題でやめるのか、失政の続出によって私は責任をとりたいからやめるというのか、どちらなんです。
  48. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 失政の結果やめるとは考えておりません。ただ二年間、やりますと、疲れてきますから……。
  49. 小平忠

    小平(忠)委員 そうしますと、あなたは健康上の問題でやめるということになる。健康上の問題においてやめるということについては、現在あなたの健康状態は、第一次鳩山内閣に就任されたときと変らぬじゃありませんか。あなたはモスクワに行って、かえって健康になったと言っている。まことに国民を愚弄するもはなはだしい言であって、一体その問題についてどのようにお考えになるか。二年間やってお疲れになったというならば、当時の健康よりも若干悪くなければならぬ。あなたはモスクワに行かれるときの医師の診断によって決して悪くなっていない。帰ってこられてますます健康である、こう言っておられる。それではなぜ健康上の理由でやめるのか理解できません。
  50. 三浦一雄

    三浦委員長 お答えがありませんから、次の方に進んで下さい。
  51. 小平忠

    小平(忠)委員 まことにただいまの鳩山総理の、言というものは、国民も悲観するでありましょう。同時に、健康上の理由にしろ、あるいは失政の続出によって責任をとられるにしろ、いずれにしろ、鳩山内閣が総辞職するということは、第一党たる自由民主党が現在の政権をこれ以上持っていくことはなかなか困難である、鳩山内閣このままの姿では困難であるということにおいて総辞職するならば、第二党である社会党に政権を渡して、社会党が国民に信を問うて、正式に政権の交代を行う、これがいわゆる憲政の常道ではありませんか。そうすることが、社会党の協力によって第一次鳩山内閣を組閣されて、満二年間政権の座についてこられたあなたが、社会党の恩義に報いることではないですか。それを忘れて、あなたは政治家と言えますか。(笑声)笑いごとではありませんよ。鳩山さん。  「総理答弁答弁」と、呼ぶ者あり〕
  52. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は答弁の限りじゃないと思います。
  53. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは鳩山総理にあらためて、私は笑いごとではない、真剣に伺いますが、答弁の限りではないとは何ごとですか。何が必要ないですか。あなたに最初から民主主義政治のあり方を私は承わっておる。答弁の限りではないとは何ですか。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は民主政治のルールはよく知っております。もしもあなた方が私どもの失政を追及されて不信任案をお出しになって、それが多数で通ればそのときにはやめるか、解散をするかいたします。
  55. 小平忠

    小平(忠)委員 そんなことはきまり切った話で、今さらあなたの答弁を願わなくても当然なことであります。現在のような政局の状態において、われわれとしてはおかしいのです。あくまでも日本憲法の民主政治のあり方というものをあなた方が理解するならば、今相当に重要な日ソ交渉の批准なり、あるいは勤労階級や一般国民を苦しめ、ことに大反撃を受けておるところのスト規制法を強引に通さなければならぬというときに、国会の重要な審議をそっちのけにして、連日連夜後継総裁、あとがま問題でてんやわんやの騒ぎをしておるとはわれわれにはわからない。そこで私はまことに総理大臣の御答弁は不満でありますが、しかし最後にこの問題について、私はあなたに強く御指摘申し上げたいことは、あなたはきっすいの政治家として、野人として、日本の憲政史上に多くの功績を残されてきておるわけであります。そのあなたが、今総理大臣をしりぞくに当たって、後世に恥じない憲政のルール、これはぜひあなたの手によって、後世に恥じないものを作り上げて、あなたはきれいに、りっぱにおやめになることが私は望ましいと思うのであります。私はこのことを強くあなたに御指摘申し上げまして、この問題を終りたいと思います。  そこでわが党が当初から要求いたしております予算補正の問題について、政府の所信をただしたいと思うのであります。御承知のように、北海道、東北、北信越などを襲いました冷害は、近年にない深刻なものがあります。同時に北海道の冷害は、開道以来未曽有のものでありまして、その被害の額は三百九十六億、北海道全道民の総所得は一千億でありますから、その三分の一以上を突破するという膨大な被害を受けたのであります。同時に九州、中国地方を襲いました九号、十二号、十五号の台風の惨禍は、台風の常襲地帯だけあってその被害も深刻であります。さらに人事院勧告に基きます公務員給与改訂あるいは年末手当の問題、建保の赤字解消あるいは中小企業の年末融資等々の問題、これらについて社会党はすでに政府に対しまして、三十一年度の補正予算を組むべきであるということを要求、主張して参ったのでありますが、いまだに政府はこの問題に関しましては、その必要なしの一点張りで耳をかさない。いかなる理由によって政府はこの補正予算を組もうとしないのかその理由を承わりたいというのであります。これはきわめて重要な問題でありますから、総理大臣補正予算をなぜ組まないのか。これらの問題の処理のために、窮乏にあえぐ国民を救うために、補正予算をなぜ組まないのかという問題について、総理大臣見解をただしたいと思います。
  56. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 このたびの北海道の冷害は、その被害が四十年来の甚大なものといわれております。被災農家に対しましては同情を禁じ得ません。政府としては北海道庁とも連絡の上、すみやかに救農土木事業等を中心とした応急対策を講じておりまして、また寒冷地帯農業安定のための恒久策についても検討を進めたいと考えております。  なお九州地方台風被害に対しましても、すでに応急措置を講じておりまして、災害施設の復旧についてもできるだけすみやかに実施する所存であります。これらに要する費用はただいま大蔵省において適当にできるというのでありますから、補正予算は出さないのであります。
  57. 小平忠

    小平(忠)委員 総理のその答弁はまだ早いです。これから北海道問題は最後の方でやろうと思ったのを、あなたは書いたのを読んでしまった。早いのです。(笑声)私はこれこれの理由によって予算の補正をすべきである、補正予算を組むべきである。なぜ補正予算をお組みにならないのですかということを総理大臣に承わりましたら北海道冷害の問題を先に御答弁された。そのことは北海道の冷害が開道以来未曽有のものであるということがあなた自身にぴんとこられて、それほど関心を持たれるということについては、これはまあ解釈のしようによっては私は了解できるのです。実は私ただいま承わりましたのは、冷災害、給与改訂、あるいはベース・アップ、年末賞与、健保の赤字解消、これらの問題についてどうしても補正予算を組むべきである、こう思うのですが、なぜお組みにならないか、その点をあらためてお伺いいたします。
  58. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私から答弁をいたします。北海道の冷害ですが、各地の冷害もありましたが、北海道の冷害は非常に広範囲にわたっておるので、政府としてはすぐに正力国務相が現地に参りましてよく調査いたしました。それに基きましてこういうふうに予算措置をとっております。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕  北海道の冷害につきましては、一般会計からの予備費が十三億、それから国有林野事業特別会計予備費から約五億の支出を決定いたしております。なおこの起債を四億五千万円認めております。その他既定予算の活用、営農資金の貸付等もあわせて考えますれば、必要最小限度の対策はとれておると考えておる次第であります。なおこの九州等の災害につきましても、一般会計予備費から二十二億支出を決定しております。なお私の記憶ですが、約十七億くらいのものが予備費からさらに出ることになっておりまして、大体こういう措置で冷害に対しては対策が立っていく、かように考えておる次第であります。従いまして補正予算は組む必要は広いと考えております。  それから給与のことですが、御承知のように人事院の勧告、むろん政府として人事院の勧告は尊重すべきものである、こういう態度をとっております。ただこの勧告にもいろいろと検討を要します問題点があるのであります。今こういう問題点について検討を加えて、この勧告を受け入るべし、またどういう程度で受け入るべし、こういう点がはっきりきまりますれば、むろんそのときに善処していく、かように、考えておるのであります。  それから年末手当のことでありますが、年末手当につきましては、昨年末に〇・二五、これは法律改正もして増額いたした。それに引き続いてのことでもありますし、またこの種の年末手当としては、今の一・五月分ですか、この辺が妥当であろう、私はこのように考えております。特にこれを増額する考えを持っておりません。  ベース・アップにつきましては、これは人事院勧告にもベース・アップは今すべきでない、こういう意味合いに書いてありますので、従って私は今、ベース・アップについて――今ベース・アップ二千円というふうにいわれておりますが、かりにこれをやるとすると、私の推算ですが、国、地方を通じておそらく千億くらいのものが要るであろう、とうてい財政の耐えるところではありません。  以上申し上げたような内容でありますので、今回のこの国会に予算の補正を出す必要はない、かように考えております。
  59. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは現在三十一年度予算に計上されております予備費八十億ですか、これは現在までいかほど流用して使っておられるのですか。さらに残っております予備費については、今後どのような流用計画があるのか。
  60. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この予備費の使用はある意味におきまして刻々に動いておりますから、今どういうふうになっているか、数字的に申し上げることはできません。多分三十四億程度今余っておると思いますが、政府委員から詳しく御答弁させます。
  61. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ただいまのお尋ねの点につきましては、資料の御要求がございましてお手元にお配りしてございますが、今日現在におきまして使用済み額は四十三億九千三百万円でございます。その各省別の使用状況はお配りしてありまする資料によりましてごらんいただきたいと思います。残りは三十六億でございますが、このうちから二十数億は、本年度において発生いたしました災害の復旧費のために使用いたすごとに決定いたしておりまして、今後査定の進行に伴いまして逐次使用をいたして参る予定でございます。その他裁判費の不足、租税還付加算金の不足、等々の事由がございまして、残額につきましても、大体使用予定をいたしおるものがほとんどでございますことを、つけ加えて申し上げておきたいと思います。
  62. 小平忠

    小平(忠)委員 そうしますと、大蔵大臣、主計局長答弁によっても三十六億残っておりますが、二十億は災害に大体もう予定されておるし、あとの十六億もいろいろな面で結局余らないのだ。そうすれば、これは当然私が冒頭に申し上げたような理由によりまして、予算の補正をしないで、今日窮乏にあえいでおる国民を救うことはできないのであります。この問題については、特に給与関係については、同僚辻原君が後刻専門的に質問することになっておりますし、私は省略いたします。さらに中小企業年末融資についても、あるいは健保の赤字解消についても、質問することになっておりますから、私はここでは省きますが、特に大蔵大臣に十分検討を願いたいことは、予算補正をするということは、単に事務的にも、あるいはこの短かい国会でできないのだというような問題ではない。一体何が大事か。一番大事なことは国民生活の安定が大事であって、このような窮乏にあえいでおる国民を救うためには、そんなやり繰りや、流用では事済まされない問題なんです。従って私は真剣にこの問題を考えていただきたいと思う。その結果今後もしあなた方がきわめて冷酷な態度をもって臨んだことによって起る事態というものは、これは大蔵大臣、あなたの重大な責任であります。そこで私は質問いたすことになっております冷災害の問題について、具体的にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  先ほど総理大臣から北海道の冷害についての御答弁がありましたが、あなたは現地の事情をよくお知りになっていないのであります。率直に申し上げまして、今北海道はすでに雪が降っております。そうして率直に申し上げますならば、小学校の児童がバレイショや、あるいはトウモロコシを弁当に持ってくる。中には弁当を持ってこない学童がたくさんおります。最近はほんとうに食べ物もない、連年の災害でほんとうに生活苦に追い込められて、娘の身売り、あるいは一家心中の悲劇が、最近随所に起きているという現状であります。この姿を黙っておられないというので、現に全国――この東京におきましても学童救援物資の醸金運動、これが街頭において始まっている。こういう状態の中で、先般本会議においてわが党の永井勝次郎議員の質問に答えて、あなたは十分な処置をした、農林大臣もこれで十分だという御答弁をされておるのでありますが、きわめて被害の深刻なる現状にかんがみましてこのような手当では、とうてい冬越しができないというのが現実の姿であります。北海道は田中知事を先頭にして、超党派的に官民一体となって北海道の地元でできるものは地元でやるというわけで、がんばっているのでありますが、なにせ総所得の三分の一以上も災害で収入減だというのですから、道庁も市町村もこの歳入欠陥をどうして補うか、そういう地方自治体の財政窮乏によって、自主的にやるといってもやはり限度がある。そういうことにおいて連日関係者がほんとうに血の涙の出るような努力をいたしておるのであります。そこでそういう現状にかんがみて、具体的な問題二、三をかいつまんで私はお伺いしたいと思うのです。  第一に救農土木事業であります。救農土木事業につきましては、一応三十二億五千万円というものを、罹災農家の手取り賃金になるように措置されました。しかしその三十二億五千万円というものの中には、民間事業の三億五千万円というものが含まれております。民間事業というものはこれは国の事業ではないのです。同時に道庁、開発庁からの三十五億の要求に対しまして、三十二億五千万円に削られましたけれども、その中身には三十二億五千万円の手取り賃金を与えるように仕組んでありまして、既定予算の操作によって四億一千万円をさらにふやしております。国有林野事業を三億七千万円、またふやしております。失業対策事業を四千八百万円ふやしております。この合計八億三千方円を増加することによって、予備費要求額八億七千万円を削減しております。そういう操作を行いました結果、賃金収入に不確定な事業が増大いたしまして、現実に救農事業による農民救済が困難になっておるというのが今の姿であります。同時に従来からよく指摘されております小団地主義、あるいは実際に均霑主義という見地から、市町村道あるいは市町村河川というものをなるべくやるようにというこのことも、きわめて一部分にすぎないために、均霑主義にならないために、せっかくのこの施しが、政府のあたたかい手も現地においては非常に困っておる。同時にこの救農土木事業の中で、既定事業の操作をやりましたけれども、もうすでに済んでいるものがたくさんあります。雪が降ってできなくなった工事もあります。そういうことでもって、当初政府が考えられた一戸平均、いわゆる来年の雪解けの三月まで少くとも二万七千円程度の賃金を得せしめたいというこの計画は、おそらく半分にもいかない。こういう現状から考えまして、すみやかに処置しなければならない。特に河野農林大臣がモスクワに行っている間に、高碕農林大臣代理が行って、これはひどいなとおっしゃって、帰ってきて、予備費の操作とかいろいろな関係を閣議で決定されたその日にも、農相代理は、これは賃金収入では足りないから、あとさらに一億増額してやろうということは、記者会見でもあるいは道の責任者にも公約しているのです。それをいまだにその一億も出していないという始末です。こういう現状にかんがみまして、総理大臣は一体どのようにお考えになりますか。同時に主管大臣である農林大臣はどのようにお考えになり、処置されますか。この際明確に承わっておきたいと思うわけであります。
  63. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。北海道の災害対策につきましては、ただいまお話のありました通り政府といたしましても、各関係官庁とよく協議いたしまして、さしあたり必要な処置をとっておるわけでございます。しかし御指摘の点等につきましては、なお今後よく地元の方々等とも相談いたしまして、十分善処しなければならない点がありますれば、必要に応じてやらなければならぬだろうと思いますが、一応は地元とも協議したことでございまして、あとはなお進行の経過によりまして、ただいま御指摘の通りに、もう済んでおる、すでに地元にこういう不都合が起っておるということでありますれば、それに対して必要な措置をとらなければならぬのは当然であります。これらについてはなお今後よく善処いたしたいと思いますので、御了解願いたいと思います。
  64. 小平忠

    小平(忠)委員 これは農林大臣だけでなく、特に建設大臣もおいででございますが、建設省所管の救農土木事業は非常に重要な役割を持っております、どうか農林大臣も建設大臣も、この窮乏にあえぐ罹災農民を救うという見地において、特にこの救農土木事業については、現在の実施状況などをよく御調査されまして、万遺憾なきよう願いたいと私は思うのであります。  次に、政府が実施いたしております、特に河野農林大臣の新たな構想として予約米制度をとられましたが、その結果、北海道は生産農民もこの予約米制度に協力いたしまして、二百十万石の予約をいたしました。ところが現在の供出状況はどうかというと、まだ二十五万石程度でありまして、おそらくことし一ぱい最終の供出量も三十万石そこそこではなかろうかと私は思うわけであります。このような状態によって、二百十万石を予約して、その予約米の前渡金が四十二億六千万円あるのでありますが、これは米がとれて出荷できるものは、一石当り二千円という前渡金でありますから、当然返せるのです。ところが天災によって収穫皆無だ、全然ものがとれないというものに対して、とろうといっても、米がとれないのですから出せないのです。その結果農林省も食糧庁長官が中心になって、これは何とかしなければならぬ、だからこの予約米概算金のいわゆる延納と、これに対する利子はどうしても減免をしなければならない、こういう見地に立って農林省も大蔵省も真剣に相談されたことは、私はよく知っております。私もこれは早くおやりなさいということをずいぶん申し上げた。ところが九月から何カ月になるのですか。今回の北海道冷害に対しまして、政府はきわめて積極的に処置されたその誠意は、私も認めておるのです。ところがこの予約米概算金の問題で、米はもう全部出荷してしまった、雪が降っている、こういう状態で、いまだにきめないということは、怠慢だと私は思う。まことに遺憾にたえません。これは一体いつきめるのですか。この予約米の延納処置といわゆる利子の減免という問題について、すみやかに決定をして指示してやらなければ困ります。
  65. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、ただいま御指摘になりました点につきましては、すでに詳しく御説明申し上げる必要はないことでございまして、その決定はどうなっておるか、こういうことでございますか、これはこの国会で立法措置が必要でありますので、御審議を願うことにいたしておるわけであります。
  66. 小平忠

    小平(忠)委員 それは私は知っておるのです。国会で今審議しておる。問題になっておりまして、法律論争もやっております。私の言うのは、結局そういういろいろ立法措置の問題もありますけれども、すでにこの問題は、昨日の農林、大蔵両委員会の合同審査の席上におきましても、食糧庁長官は一応の答弁をされております。ところがまだこうするという見解について明確な答弁がないのです。これはあなたがモスクワに行って留守の間にできたことであるし、むしろこのことについては農林省は大賛成なんですが、どうも大蔵大臣がうんと言わぬのかどうか知らぬが、大蔵省の方でなかなかこの問題についてははっきりしない、煮え切らない、こういうことが大きな原因になって今日まで延びておる。ですからこの際むしろ大蔵大臣の方からこの問題について明確に御答弁願った方が私は適当でないかと思う。
  67. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。大蔵省も決してその実施をおくらせておるようなことはいたしておりません。できるだけすみやかにやりたい。ことに概算金の返還の際における利子の減免、これなんかも私はやはりお話の通り、当然考えなければならぬ、こういうふうに考えております。ただそういうふうなことの実施の上においての一定の基準ですか、そういう点についていろいろと話し合いがあったと思うのですが、今のところ私は、大体農業収入の減少が五割以上で、米の減収が九割広いと減免をしないのですが、特に北海道の場合は、七割以上米の減収があれば利子を減免する、こういうふうな考え方をいたしております。なお農業収入の減少が五割以上で、かつ米の減収が三割以上の農家、これは三分五厘まで減免をしておる。農業収入の減少が一割以上で、かつ米の減収が三割以上の農家については六分五厘です。三分五厘、六分五厘は概算金を借りかえてもらうときの利子です。これは減額する。減額基準は今言ったようなことです。こういうことで早く実施するつもりであります。
  68. 小平忠

    小平(忠)委員 大蔵大臣は今きわめて具体的に御答弁された。最後の、一月以降の概算金相当額を融資に切りかえて利子の補給をしていくというわけですが、それが三分五厘と六分五厘。これは天災法適用の差額をそうなるように利子補給をする率なのです。その場合に問題になるのは、天災法適用といいますと、御承知のように、都道府県の負担分があります。それはどうなのですか。
  69. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 天災融資、これはそれをそのまま適用するのではなくて、それに準じてやろうと考えております。私は、道の方で負担することはしなくていいように思っております。
  70. 小平忠

    小平(忠)委員 その率は天災法の基準によるけれども、冷害という異常災害であるから、都道府県の自治体がその利子の負担をすべきでない、こうしたことですか。
  71. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体そうです。
  72. 小平忠

    小平(忠)委員 今の率について若干まだ問題があるのですけれども、こういう問題を三カ月もごたごたやっておって、それで責めない。非常に系統機関も困っておるのです。ですから、立法処置を伴います問題はわれわれ国会で十分に審議をすることでありますが、まずあなた方が事務的にこれを推進しないと進みませんから、すみやかにこの点は万遺憾なきを期していただきたいと私は思うわけであります。
  73. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ただいまの点でございますが、との概算金の返還債務が発生いたしますのは年末でございます。かたがたその利子を免除するにつきましては、法律が要るわけでございまして、そこで今国会にその法律を出しておるわけでございます。三カ月をいたずらに空費した、いたずらに遷延したというわけではございませんので、その点御了承いただきたいと思います。法律のすみやかなる通過を待ちまして至急に行政措置が行われるということになっておりますので、御了承いただきたいと思います。
  74. 小平忠

    小平(忠)委員 その点は了解でなますが、この際非常に誤解があるといけませんから明確に願っておきたいことは、北海道の問題を中心にして質問いたしておりますが、ただいま予約米前渡金の問題について大蔵大臣がおっしゃり主計局長説明されました問題は――当然東北にも北信越にも部分的には非常なる被害をこうむっておる地帯があるわけです。同時にまた九州災害も同じなのです。今大臣がおっしゃいましたような問題は、ひとり北海道の地域だけでなくて、これは国としての取扱いですから、北海道だけの特例という形でなくて、ただいまの基準に相当するものは、全体の内地都府県にも適用するというふうに理解してよろしゅうございますか。
  75. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 かような措置は冷害等の被害に基くのでありますが、被害の状況にもよることであります。ただいまのところ北海道についてはさよういたすことにしておりますが、他については検討を加えたい、かように御了承願いたいと思います。
  76. 小平忠

    小平(忠)委員 それは不公平なことがあってはいけないのであって、あくまでも基準を示して公平に処理していただきたいと思うわけです。  同時に農林大臣に、きわめて重要な問題でこの際明確にしておきたいと思う点があるのです。実は、農業共済金の問題でありますが、あなたの直接の部下である渡部農林経済局長も、現地を視察調査いたしました際に、非常にこの問題は重要であるから年内に必ず支払いをいたしたい、その際も、共済組合連合会支部の正規血調査によって損害評価をされた場合には、その支部の損害評価に基いて直ちに支払いをするということを公約されてきております。この年内支払いの公約を確実に実施できる見通し、確信がございますか、承わっておきたいと思います。
  77. 河野一郎

    河野国務大臣 明瞭にお答えをしておきます。北海道の災害に伴う共済金の支払いにつきましては、本日北海道農業共済組合連合会より損害評価高の提出がございますした。農林省といたしましては、統計調査部において推定中であります。一両日中に正式決定を見る手はずになっております。従いまして、近日中に損害高について農林省と連合会と打ち合せをする見込みでございます。そういう順序で手はずを進めますので、年内には遅滞なく決定をして御期待に沿うようにいたすつもりでございます。
  78. 重政誠之

    ○重政委員長代理 小平君に申し上げます。申し合せの時間も過ぎましたから、どうぞ一つ結論を急いで下さい。
  79. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは簡単に結論を……。  農林大臣に、ただいまの問題についてぜひ次の点を私は御指摘申し上げたいのです。農林省の統計調査部、いわゆる統調の数字と、それから共済組合が下部から吸い上げた連合会の数字、損害評価が一致しております場合は問題ない。これが極端な開きがありますと、これはその取扱い要綱――法律によってもう一ぺん再審査をする、そういうことになってきますと、年内支払いが困難になる。ですから、過去においていろいろ問題がありましたが、これは全く机上のプランではなくて、現実の実情に即した損害評価によってすみやかに決定を願い、同時に年内支払いを確実にしてもらいたい。  それから、これは農林大臣に承わっておきたいのでありますが、最近、冷害などの起らないように、民間の有識者も入れた、北方寒地農業確立のための恒久対策という見地から、審議機関を設置したいというようなことを漏れ承わったのでありますが、そのような計画があるかないか。  それから、大蔵大臣に、今回の救農土木事業等三十二億という膨大な事業を実施することに一応なっておりますが、従来の大災法によりまして、特例起債によりますと、当該年度の分しか一応規定されないことになるわけです。ところが実際に今の問題は、今回北海道の冷害などのことについて具体的に五カ年間、さらに三十二年度、三十三年度というふうにわたる問題でありまして、どうしても立法処置をしないと道自体は特例債を受けることができない、こういう問題があるのでありまして、当然すみやかに政府が気がついて、今度の臨時国会あたりに処置をされると私は思っていた。それが今日何も具体的に出てきておりませんし、もちろんそれは通常国会で間に合うのだということならば、それでも決して不可能というわけではありませんけれども、こういう問題についてどう処理されているか、とりあえず私はこの二点について承わっておきたいと思います。
  80. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。ただいまの寒冷地帯等におきまする災害の恒久対策を審議をいたしますために、特別に調査機関を作ったらどうかという有力な御意見を私は承わっておりますので、適切なことであろうと考えまして、目下これについて政府の内部におきましていろいろ打ち合せをして、なるべくすみやかにこの処置をいたしたいということで運んでおる次第であります。
  81. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。ただいまのお話の点は、これは地方財政にも関係が深いと思いますので、自治庁長官のお考えもありましょう。歳入が足らぬからすぐ起債というふうにいっていいかどうかいろいろ問題があります。いろいろ検討を加えてみたいと思います。
  82. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは私の約束の時間が参りましたので、次の一点で私の質疑を終りたいと思います。実は北海道の冷害が非常に深刻であったために、東北、北信越等の冷害というものには、政府当局もあまり関心を持っていないことは事実です。しかし青森を初めといたしまして、東北、北信越地方の高原冷涼地帯におきましては、相当深刻な冷害の被害をこうむっておるわけであります。私は北海道の冷害に対しまする救農土木、あるいは概算金あるいは融資処置、これらの問題は、この東北、北信越地方の冷害に対しましても、すみやかに同様の措置をとるべきだ、こう最初から主張し、また農林省の関係者にもすみやかにやりなさいということを、党の冷害対策委員会の立場からも強く指摘申し上げておったわけであります。ところが承われば、いまだにこれに対しまして具体的な処置をしていないということを聞いて、私は遺憾にたえない。これに対しまして政府はどう処理なさるのか。同時に私は、九州災害等の問題につきましても実は質問をいたしたいのでありますが、この問題は同僚議員から関連質問することになっておりますから譲りますが、とりあえず東北や北信越の冷害問題について、どう処理されるかを承わりまして、私の質問を終りたいと思います。
  83. 河野一郎

    河野国務大臣 これらの諸地方につきましても、救農土木事業の施行を必要と考えまして、今せっかく大蔵省と折衝中でございます。
  84. 重政誠之

    ○重政委員長代理 松浦周太郎君。
  85. 松浦周太郎

    ○松浦委員 私は自民党を代表いたしまして、この機会わが国の農政の転換について意見を述べて、総理大臣並びに農林大臣の御答弁を得んとするものであります。  現在日本の農業は、大体水田偏重といってもいいと思うのです。それは食糧政策上やむを得なかったことがあると思います。大体五百七十万町歩くらいの耕地のうち三百七十万町歩が水田であって、二万町歩が畑地なのです。この畑地は水利の関係もありますが、大体寒冷地帯に多い。本州におきましても、畑地はずいぶんありますけれども、水利の関係のために畑地になっておるところもあるが、大体丘陵地帯であって寒冷地帯だと思うのです。それでこの水田偏重に政府の施策が長年行われて参りまして、ひとり鳩山内閣の責任ではありません、やむを得ず今日まできたのでありますが、水田に対する政府の施策と畑地農業に対する政府の施策とを比べてみるならば、これは全く度合いが低いのであります。むしろ全く顧みられないといったような現状である。従って生産の内容を見ましても、反当収入を見るならば実に低い。二百万町歩平均の反当収入というものは非常に低いのです。従ってここに生活する農村の人々の生活も安定し広いし、また生産の向上をすることができない。ここに私は、従来歴代の内閣がやり来たった農政を、この際水田偏重から畑地も並行して政策を行うようにしなければならぬのじゃないかと思う。それが日本の食糧問題の重要な点であり、また農村の安定の一番大事なことであると思うのですが、こういうことを考えるときに、ただ簡単にこの仕事はどうだ、この政策はどうだということはでき広いのでありますから、先ほど農林大臣が御答弁になりましたように、今年の北海道の冷害は、いずれも小平君がいろいろ申しましたように、水田はもとより暖地農業の延長でありますから、これはとれないことは当然でありますが、しかし六十万町歩に及ぶ畑地が今年の冷害に耐えられなかったというようなことは、これは農民自体の投機的な気持も直していかなければなりませんけれども、これらに対する政府政策が畑地農業に対しては貧困であったといわなければならぬと思うのです。ここに思いをいたすときに、先ほど御答弁になりましたような意味において、内閣総理大臣を会長とし農林大臣を副会長とするくらいの、今までのいろいろな審議機関というものを統合して、一つ日本の農政の一大転換の審議場所にして、そこで出てくる政策を財政経済の許す範囲においてこれを漸次遂行していくということがなければ、私はほんとうに日本の畑地農業というものは救われないと思うのです。しかし水田農業を軽んずるものではありません。水田農業にいたしましても、もちろん従来の政策を延長していかなければならぬことは当然であるが、あまりに畑地農業と水田農業の政府政策というものが隔たりがあり過ぎるのです。ここに私は今回のような冷害が起ってくると思うのです。たとえて考えるならば、北海道の現在の農民の総負債額は六百億になる。それで一年の生産量は幾らであるかといえば、豊作のときに大体八百億しかない。六百億の借金をして八百億の収入では、これは農村は助からないのです。かりにここに六百億の負債整理をやって、何らか長期に引き延ばして農村の負担が軽いようにいたしましても、その生産の基礎を改めない限りは、これはやはり同じ六百億の負債がまた来ると思うのです。これは鳩山内閣だけの責任ではありません。しかしながら、今日のこのような大きな冷害に見舞われたという機会において、私は鳩山内閣において、これを救済することに対する恒久策を樹立するという方向をおきめになったらどうか、これが今の一番重要なことではないか、こういうふうに考えます。四百億の災害で国から出しましたものは、先ほど大蔵大臣からいろいろ御説明がありましたが、大体二百二、三十億が融資並びに予備金支出によって行われております。こういうような大きな災害のときに、これを契機といたしまして日本の将来の農政を転換するときではないか、こういうふうに考えますが農村大臣並びに総理大臣から御意見を伺っておきたいと思います。
  86. 河野一郎

    河野国務大臣 私から便宜お答えいたします。私は議論をいたそうとは思いませんけれども、ただいま松浦さんのお述べになりました御意見には全面的に了承できないのであります。長くなることは恐縮でございますから、ごく簡単に申し上げます。  水田農業と畑地農業のことでございますが、今日米の価格と、畑地でとれます麦の価格、サツマイモの価格、これらの価格との価格差というものが果して妥当であるかどうか、決して私は麦が高いと申しておるのではありませんが、この価格差が今日どうなっておるか、これが畑地、水田に及ぼす影響はどうなっておるかということを考えますと、必ずしも北海道その他寒高冷地の農業をどうするかという問題と、この畑地農業と水田農業との問題を同一に論ずるわけにはいかなかろう。寒冷地であるとか高冷地であるとかいうような地方に対して特別の施策が必要である、この方面に稲作の奨励はあまり妥当でない、これにかわるのに家畜をもってするとか、また寒高冷地対策を立てなければいかぬという議論は、私は全面的に了承いたしますし、賛成いたしますが、今御指摘になりましたような、畑地農業と水田農業の問題をここで解決するとか、かの施策が今御指摘になりましたような方向に間違っておったというようなわけには参らなかろう、そういうような感覚で進めていくことについては多少の疑問を私は持っております。従いまして先ほどお答えいたしましたように、これらの高冷地、寒冷地に対する対策として、この際官民合同の調査会を作って、将来再びこの災等を繰り返さないようにいたす施策を、基本的に大いに考究するということにつきましては、私は全く同感でございますけれども、今理由として御指摘になりましたようなことにつきましては、私は多少疑問を持っておるということを明確にいたしまして、私の考えを申し述べる次第であります。
  87. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 農林大臣の御答弁によって御了承願いたいと思います。
  88. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 私はこの短かい時間に議論をする考えを持っておりません。価格制度の問題に対しましては、御指摘のような点は私も同感であります。しかし農政上から見た畑地と水田については相当差があることはお認めになるでありましょう。そうであるならば、少くとも稲作の方に重きをなして畑作を軽くするということでなく、稲作程度の政策は並行していかなければならぬではないかということについては、どういうお考えですか。
  89. 河野一郎

    河野国務大臣 この点につきましては、御承知通り、食糧需給の関係から申しまして、食糧生産をいたします場合には、どうしても水田の方が多収であります。ただし現在の農業の推移を考えますると、わが国の農業の収益主義から考えまして、従来の食料生産に重点を置いて参りましたものが、多少変更いたしまして、園芸、蔬菜、果樹等農家の収益が多いものに順次転換しつつある点等を考慮いたします際に、畑地と水田との関係等々の経営につきましても、考究する必要があるという意味において、私は考えていきたいと思っております。
  90. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 農林大臣は昼までということですから、農政の問題はあとにいたしまして、国民健康保険の問題について厚生大臣に伺っておきたいと思います。  北海道の冷害によって受けました国民健康保険の財政状態は、非常に悪いことは御承知のことだと思います。厚生大臣と大蔵大臣の両方にお聞きしたい。数字をこまかく一々申し上げることは繁雑でありますが、大体一億数千万円というものが減免並びに徴収猶予という状態になっております。そこで地方の町村長及びこの関係者の、二割の補助金と八割の融資をしてくれという要求に対しまして、四千百万円おきめになったようでありますが、これだけの少額のものでは国民健康保険はやっていけないという。それでこのまま放置されるのか、どういうお考えを持っておられるか、まず厚生大臣に先にお聞きしたい。
  91. 小林英三

    ○小林国務大臣 お聞きの通りに、北海道の冷害によりまして相当の被害を受けた町村といたしましては、当然保険料の減免等の措置が行われるわけでありまして、これらの保険者に対しましては、今お聞きの通り、とりあえず四千二百万円の長期融資をするわけでありますが、そのほかに三十一年の第四・四半期のいわゆる医療費に対する負担金、これはとりあえず先渡しいたします、約三千万円であります。そのほかに三十二年度における負担金をできるだけ早く、四、五月ごろには前渡しをする、これが約一億円。これらによりまして資金繰りができまするし、さらにこの被害隣村の保険者に対しましては、長期の融資をしていくようなことにいたしたい。これは六分五厘の金利で、三年据え置きの十年元利償却、こういうふうに考えております。(松浦(周)委員「金額は幾らくらいお考えですか、今四千百万円きまっているが」と呼ぶ)第四・四半期において前渡し約三千万円、それから来年度における負担金を四、五月ごろにお渡しいたしますものが約一億円。そのほかに困った保険者に対しましては、十年の元利償却の六分五厘の低利の融資をしよう、こういうことであります。
  92. 重政誠之

    ○重政委員長代理 ちょっと松浦君に申し上げますが、総理大臣は……。
  93. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 お帰りになってけっこうです。  四千百万円の国民健康保険の方の流用について、これは減免だけにしか使えない、徴収猶予の方には使えないということになっておるようでありますが、これは両方使えるように考えられないか。  もう一つ、今おっしゃたような数字ではやりくりがつかない。そこで先ほど仰せになりましたような考えがあれば、もう四千万円くらいつなぎ融資をしてやったらどうか、そうして今おっしゃったような方法によって、後に繰りかえたらどうか、この点についてどうお考えになりますか。
  94. 小林英三

    ○小林国務大臣 今お尋ねの四千二百万円の長期融資は減免で参りいます。徴収猶予その他の事情があるような場合におきましても、最後に申し上げました、いわゆる六分五厘の長期融資をいたしまして、そうして困る保険者に対しましては、三年間据え置きの十年間の償却、こういうことで参りたい。
  95. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 先ほど小平君が質問いたしましたものに続いて、救農土木のことについて少し聞いておきたいと思う。これはわが党の政調会と政府側としばしば折衝いたしまして、あの金額はきめたのですが、このほんとうの内容を申し上げますと、あの数字は北海道の冷害対策委員会というものができまして、そこで積算して持ってきたものです。われわれはそれを基本としてやっていた。ところが今日、おきめ願った三十二億五千万円の内容において、それぞれの工事の割り振りをしたが、一町村当り幾らもいかないですね。そこで町村ではこれではやり切れないと言うのです。しかしわれわれは、その折衝した材料は委員会でできたものをもってやったんだが、当時九月にそれをやりまして、もっと作柄がよくなるだろうというような関係においてあれをやったと言う。だからどうしても十億くらい足りない、こう言う。これは北海道全部の町村長がそういう発言をこの間うちしております。私はその数字をもう一ぺん再検討してみろ、こう言っておるのでありますが、そういうような場合に、災害の状況を考慮されて、先ほど小平君がいろいろと深刻なことを申し上げましたが、増額再考慮の余地があるかどうか。北海道の現状は実に深刻な状況にあります。  もう一点は建設省にお尋ねしたいのですが、大体八億七千万円の既設の決定しましたものを国の事業として考えられた、そのうち建設省が大体七億二千万円くらいなんです。ところが割当を受けた町村は、八月に入札した工事も入っている。そのために請負人の手に渡ってしまっておって、もうすでに八月に工事を受けたものでありますから、それぞれ労務者の手配をしてしまって、不作罹災者が就労することができないというのです。そういう個所が相当あるようでありますが、こういう場合にたださえ足りないと言っている現状でありますから、何か来年度の公共事業費で行うべきものの繰り上げ工事を施行するなりいたしまして、それを予備金から一時支出しておくというようなことで、せめてそういうような八月に入札したものくらいはどうにかならないかということなんです。これは大蔵省と両方にお聞きしたいのであります。
  96. 馬場元治

    ○馬場国務大臣 この計画につきましては、ただいま御指摘でありますが北海道開発庁並びに北海道庁、地元とよく連絡をとりまして、実地を調査いたしました結果立てた計画でありまして、御指摘のようなところがあろうとは実は考えられないのでございます。でありますが、現地の実情がそうであるという御意見でありますならば、そうしてもしそういう実情でありますならば、十分実情を調査いたしまして善処いたしたいと思います。ただどういう方法でどうするということは今ここで申し上げられません。ただ実情調査の上に善処いたしたい、かように考えます。私の知る限りにおきましては、実情を十分に打ち合せた上で立てた計画でありますので、ちょっと想像いたしかねるこういう実情でございます。
  97. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一つは三十二億五千万円、これは足らぬから再検討する余地はないかというようなお話でありますが、この三十二億五千万円をきめましたときは、御承知のように、関係各省も、それから現地に行った者も、それから知事も出まして、あらゆる角度から見て検討を加えまして、きめました。私どもはいろいろ理由があれは聞くことはよろしいのですが、これをまた変えていくことは実に困難だということは御了承願いたい。  なお今の既定公共事業の振りかえですが、実はそういうことのないように、債務負担行為のまだ済まない、未済のものを特に選んでやったはずなんであります。しかしよく実情を調べて考えたいと思います。
  98. 松浦周太郎

    ○松浦(周)委員 ではまたあとからにします。
  99. 重政誠之

    ○重政委員長代理 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ――――◇―――――    午後三時三十一分開議
  100. 重政誠之

    ○重政委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  井手以誠君
  101. 井手以誠

    井手委員 災害対策について農林大臣と大蔵大臣に簡単にお尋ねをいたしたい。  きょう農林省から出されました災害の資料によりますると、施設を除いた農作物の被害は七百三十八億、冷害を差し引きますると、九号ないし十五号台風の農作物被害は四百三十五億に上っておるのであります。そこで、農林大臣は、去る本会議におきまして、これらの対策に万遺憾なきを期するべく最善の努力をいたしておると答弁をされております。一方、今日出されました資料によりますると、予備費は、九号ないし十五号台風の分の農作物に対する被害対策費は見えないのであります。農林大臣の最善の努力とはどういうものでございますか、お尋ねをいたします。
  102. 河野一郎

    河野国務大臣 その後、肥料や農薬等につきましても、いろいろ現地視察をする必要があるというようなことを考えまして、せっかくこれらにつきまして今予算措置を講ずをように関係官庁と話し合い中でございます。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
  103. 井手以誠

    井手委員 同じく去る大蔵委員会に提出されました農林省の災害対策費によりますると、六千二百万円の対策費が要求されておるようであります。しかし、農林水産委員会におきまして現地を調査し、いろいろ検討した結果、これだけはどうしても対策を講じなくてはならぬという委員会の決定は、少くとも農作物の関係だけでも六億数千万円に上るのであります。これに対してわずかに六千二百万円、これで最善の努力をいたしましたということは、私はとうてい脅えないと思う。さらにこのほかに多くの対策を用意なすっておるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  104. 河野一郎

    河野国務大臣 われわれといたしましても、いろいろ現地の事情等を調査いたしまして、また現地の御希望等も承わりまして、今後も必要を認めますれば善処する考えは持っております。
  105. 井手以誠

    井手委員 必要を認めるということではなくして、すでに国会の決議は与野党一致してきまっておるのであります。国の財政のことも考え、慎重に検討した結果、農林水産委員会では決議が行われておる。大臣はあまり忙しいのでお読みになっておらぬかもしれませんけれども、最善の努力とおっしゃっておる以上は、この農林水産委員会の決議を尊重して、あらためて必要なる経費を要求なさる御用意があるかどうか、この点を伺っておきます。
  106. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、だんだん検討はいたしておるわけであります。いろいろ御意見のありますことも了承しておりますが、私たちといたしましても、できるだけの調査研究はいたしまして、必要な処置は講ずるつもりでおります。
  107. 井手以誠

    井手委員 そこで、大蔵大臣に一点お伺いいたしたいのであります。  それは、午前中小平委員から質問のありました概算払いの利息の問題、この点については当該委員会において法律論やその他展開されておりますので、ここではそういうことについては触れませんが、この際、友愛を看板とする鳩山内閣の大蔵大臣、政治家としての一萬田尚登氏に対して所信を承わりたいと思います。  概算払いに対する利息、これは売買の中の前渡し金であることは間違いないのであります。ところが、災害によって予定の米が渡されない。その場合には返納しなくてはならぬわけであります。ところが、災害地の多くの農家は、半作でありましても飯米に食い込む農家が多いのであります。中には、家を流され、あるいは全壊、半壊した農家も多いのであります。そういう農家に対して、果して利息を取ることがいいことか悪いことか、何回も農林水産委員会あるいは大蔵委員会において法律論が展開されました。私の見解としても、これは民法の大原則からいきますならば違法であると考えております。しかし、この点についてはいろいろ意見もあることでございますので、この点はとれ以上触れませんけれども、災害を受けて米がとれないということは、今後一カ年間ほとんど現金の収入がないということであります。失業状態に陥るわけであります。その農家から利息まで取ろうということが、果していいことか悪いことか。私は、多くの商取引においても、前渡し金に利息を取るという慣例は聞かないのであります。たとい高利貸しでも、相手が天災地変にあった場合は、利子くらい負けてやるのが、世にいう高利貸しの情けであり涙であると思っております。民法の解釈によりましても、不可抗力の場合は当然免責されるはずであります。今までの大蔵省の答弁によりますと、やれ規定がそうなっている、法律がこうだとおっしゃいますけれども、私は大蔵大臣から承わりたい。この立法の精神というものは、金に困った農家ができ秋まで食いつなぐことができませんので、要望に従って前渡し金というものが設けられました。その前渡し金の利子を、天災にあった者から取ろうということは、私はやめていただきたいと思いますが、大蔵大臣の所見をこの際伺いたいのであります。この利息を取るということは、悪意にやみ流しを押えるという意味のものであることもあわせて申し上げまして、政治家一萬田大蔵大臣の所信をお伺いしたい。
  108. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。問題の点は、やはり災害があったというところに基因しているのであります。従いまして、すべての施策が災害の程度に応じて行われるということは、これは当然なことであろうと思います。従いまして、非常にひどい災害を受けた農家から利子を取ろうということも考えておりません。そこで、今度も、たとえば農業収入が五割以上減収、それから米の収入が七割以上減収、こういうような者には利子を免除しよう、こういうふうにしているのであります。従来は九割くらいの減収がないと利子の免除はしていないが、今回はそういうようにしたのでありまして、要するに、考え方としては少しも違っていない。その被害の度合いに応じて、たとえば利子を免除していくとか軽減する、こういうふうにやろうと考えております。
  109. 井手以誠

    井手委員 大体、不可抗力の場合は利息をとるべきものではございません。七割以上の減収に対しては利子を免除しようと今おっしゃった。しかし、半作でありましても、保有米、飯米に食い込む農家も耕作反別によっては多いのであります。このような冷酷な解釈、態度は、一つ改めてもらいたいと思う。この点は、別途大蔵委員会で審議されますから、これ以上申し上げませんけれども、私は、友愛精神の鳩山内閣の大蔵大臣、あなたから、そういう言葉を聞こうとは思いませんでした。  それでは、この予約制度を設けなさった農林大臣にお尋ねをいたします。  私は、農民のために作られた前渡金概算払い、そうでありますならば、法の解釈はすなおに、立法の目的に沿うようにされねばならぬと思うのです。よもや大蔵大臣が利息をとるようなことば、予約制度を創設されたときにお考えになっていなかったと私は思う。農林大臣の所見を承わりたい。農民の代表として……。
  110. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。御説ごもっともでございますけれども、御承知通り、食糧管理庁の予算運営等をいたします上におきまして、今日これらの諸君に前渡金を渡しますときに、いろいろこの施策を考究いたしました際にとりきめましたことは、あまりこれをくずすということにいたしますと、他の方面にも支障があることでございますし、さらばといって、今お話しになりましたごともごもっともでございますから、それらの間を取捨調定いたしまして、適当なところに持っていくことが一番いいのじゃないかというふうに考えて、せっかく農民諸君の立場も十分考慮しつつ運用して参りたいと考えております。
  111. 井手以誠

    井手委員 重ねて農林大臣に申し上げますが、食管法によって、農民は生産する一粒の米といえども横流しができないのであります。値段も安くきめられておる。期限もきめられておる。そういうところに対等の契約の自由などはあり得ないことでございます。一つ公正に、河野農林大臣の名を汚さないように、あなたの政治力を発揮して至急に大蔵省と折衝されるように私は希望をいたしておきます。  次に大蔵大臣にお尋ねをいたします。  農林大臣も同様でありますが、九号ないし十五号の災害では開拓地の被害がひどかったことが特徴であります。そこで、対策をお尋ねいたしますが、第一点は、一開拓団には十戸のうち九戸が全壊し一戸が半壊しておるというところもあるのであります。もちろん、そういうところは農作物は全滅。そういう開拓者に対しては、たとい五年をこえましても、住宅に対する補助を行うべきではないか。政府においても話を進められておるようでありまするが、この際承わっておきたいと思います。  それと、毎年々々災害によって困っておる開拓者に対して――おそらく開拓者の災害による負債は四十億をこえるでありましょう。一戸当り五万円をこえるでありましょう。そういたしますると、毎年一万円以上の償還をしなくてはならぬのであります。この災害の負債に困っておる開拓者に対して、長期、低利の資金に切りかえるという根本的な融資政策について農林大臣に御配慮があるかどうか、御用意があるかどうか、その点を承わりたいと存じます。
  112. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまの点につきましては、明確にお答えいたします。開拓地の災等住宅復旧につきましては、緊急処置として、災害補助法による応急バラックを建設し、あるいは農林中央金庫等から住宅建設に融資を行われる等の処置を講じましたが、さらに、国の災害住宅復旧に対する補助につきましても、従来は原則として入植後六年以内のもの及び新築のみでありましたが、本年度から入植後六年以上を経た災害者の住宅及び老朽住宅の復旧を補助対象とすることにいたしました。なお、これが補助額は約六千万円程度支出する見込みであります。今後も、開拓地の住宅対策については、災害常襲地帯に対しましてはブロック建とするような予算措置を講ずる考えでございます。
  113. 井手以誠

    井手委員 六千万円くらいの補助金では足りません。私どもの計算では一億九千八百万円要るのであります。一つ再検討を願いたいと思う。  そこで、最後にお尋ねいたします。今度の災害で非常な打撃を受けました有明海沿岸の問題について、その実情に対して大蔵省は本年度五割復旧の予備費を支出されたようであります。ところが、海岸堤防という特殊性から考えますと、どうしてもすみやかに単年度で復旧しなくてはならぬ実情にあることは、建設大臣も大蔵省も御存じであろうと思うのであります。せっかく五割の復旧をいたしましても、あと何尺かかさ上げをしなくては、今後の波浪に耐え得ない。そういたしますと、今までせっかく積み重ねて参りました数百億の国費と数十年の努力が再び水泡に帰するというおそれがあるのであります。どうしても本年度に七割か八割の復旧をしなくてはならぬと考えておりますが、良心的な立場にある建設大臣の考え方をまず承わりておきたい。
  114. 馬場元治

    ○馬場国務大臣 先般の台風による有明海の沿岸の惨状につきましては、御指摘のように、これが復旧を急がなくてはなりません。そこで、現在昭和がらみにつきましては締め切りをすでに大体完了いたしました。その他の破堤個所に対しましても、十二月一ぱいには大体汐どめの工事を完了いたす予定に相なっております。有明海の総合的な風水害に対する予防の措置につきましては、有明海が干満の差のはげしいところであり、特に泥棒のひどい地質であること、御承知通りでありますが、これに対しては恒久的な対策を技術的にも経済的にも十分検討する必要がありますので、ただいまこれが研究を鋭意続けておるところであります。数県にまたがっております関係で、工事は直轄をもってやりたいと考えておりますが、ただいま端的に御指摘に相なりました応急の措置につきましては、さしあたり、再度災害の防止が可能なる程度において、できるだけとれが完成を急ぎたい、かように考えて、せっかく努力をいたしておるところであります。
  115. 井手以誠

    井手委員 この一点だけです。再度の災害を防止する限度は何割でございますか。七割でございますか八割でございますか。それだけでけっこうです。
  116. 馬場元治

    ○馬場国務大臣 割合がどれだけであるか、こういうお尋ねでありますが、場所によりまして、御指摘のような七割を必要としない場所もございますし、あるいは高い程度の割合を必要とする場所もあるかと思っております。この点については、さらにできるだけの措置を講ずべく努力をいたすつもりであります。
  117. 井手以誠

    井手委員 そう大蔵省に心配して答弁を考えておやりにならぬでもけっこうです。いづれにしても、七割から八割の復旧は、海岸堤防はどうしても必要である。それは大臣もよく御承知だろうと思いますから、今後十分大蔵省に遺憾のないように交渉されることを私は要望して、質問を終ります。
  118. 三浦一雄

  119. 川俣清音

    川俣委員 私は、この際、大蔵大臣並びに農林大臣に、年末を控えまして国民の中に不安の状況が起ってきておりまする問題を取り上げましてお尋ねいたしたいと存じます。  政府は、たびたび、米の統制管理に関して、いろいろな意見を述べられたり、あるいは委員会を持たれたりいたしておりますが、何と言いましても、今日の日本の農村事情と消費者生活の現状から見まして、米麦の食糧管理制度は、おおむね現行制度を持続しなければならないというような方針に傾いておるように思いまするけれども、この点に対して政府見解をこの際明らかにしておいてほしいと思うのでございます。
  120. 河野一郎

    河野国務大臣 川俣さんのお話の通り、現在の農業経営の現状等から考えまして、主要農産物の価格を安定せしめるということが農業経営安定の基本であるという見地に立ちまして、主要農産物の価格安、定をいたしますには、現在の国情、世界情勢等から考えまして、現行制度を改善しつつ、ただいま申し上げましたこの目的を達成する方向にいくことが妥当であろうと考えておるわけです。
  121. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。食糧の管理制度についての問題ですが、率直に言って、これはいろいろと根本的に検討を加える問題はあると思います。しかし、今何もそのことについて結論が出ておるわけでもありませんが、しかし、予算編成の時期にきた場合には、今の制度をすぐどうするということでなくても、こういうふうにあるべきだという一つのしっかりした方向だけはきめておく必要があるだろうと私は考えております。
  122. 川俣清音

    川俣委員 農林大臣も大蔵大臣も、今日の状態におきましては、急激に今日の管理制度を変更する御意思はないという御答弁であったわけでありますが、しかし、大蔵省の中には、今度の予算編成期を前にいたしまして、大分意見が出ておるようなんです。それがいろいろな不安を起しておるわけです。大蔵省の意見によりますと、どうもすべてが自由経済になったのであるからということで、自由主義の長所だけを並べ立てて、統制をはずすと非常にうまくいくのだというような、大蔵省の窓口から小さくながめたような意見がちらほら出てきております。しかしながら、世界の大体の食糧経済から見まして、どの国でも、今では国内の食糧の自給をもって経済の自立をはかろうということが世界の趨勢であることはいなめない事実であります。従って、強制統制から間接統制へ移るにいたしましても、間接統制のために現在直接統制する以上に経費のかかりますことは、日本が多くの経験を経ておるところなんです。ずいぶん昔から米の統制と申しますか管理については幾多の経験をなめております。間接統制をやった時代もありますし、直接統制をやった時代もあります。その中間をとったこともありますけれども、直接統制から間接統制へ移したからということで一般会計が負担をする部分が少くなったということはないのです。むしろ一般会計の負担が増大している。また、そればかりではなくて、最も国民生活の基礎でありますものに不安を与えて参りますと、そのほかの一般会計で見なければならない失業者の救済問題であるとか、あるいは農村にみなぎっております不完全労働者に対する対策であるとか、その他のいろいろな経費を増大させまして、むしろ今日のような管理制度の方が、まとまった力で国民生活を安定に持っていっているというのが現状だという認識がなければならないと思いますが、この点についてもう一度大蔵大臣の意見を伺いたい。
  123. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。現状のままにということにいたしますれば、どうしても食管の赤字といいますか、不足が増大していき、財政に大きな負担をかけていく。それで、従来は、食管の内部操作とか、内部においては、外米の輸入とかいろいろな関連からある程度赤字の解消をはかってきておったのでありますが、しかし、そういうようなことではなかなかいかない。それで、赤字が出るなら出てもいいと思うが、こういうふうな考え方をもってやるんだから、こう赤字が出るのをどう補てんするかというような考え方をはっきり確立する必要がある。何か赤が出ると一般会計から補てんすればいいじゃないかというような行き方、二重価格制度をとればいいじゃないか、生産者価格を上げろ、そうすれば消費者価格も上り、すぐ国民生活の安定に響き、財政負担が多くなる、いや、それは防衛費なんてやるからだ、(笑声)防衛費をやめればいいじゃないか、こういうように言う。そういうことができるものならそれでもいいが、そういうことのできぬものはそうもいきません。それで、そういうものをすべて勘案して、一体どうすればいいかというはっきりした態度を打ち出しておいて、現に赤字が出た、その現存の赤はこういうふうにしたらよろしいというはっきりした見通しが立たないといかぬ。そこの段階にきているという意味において、食管制度を再検討する必要があると考えております。
  124. 川俣清音

    川俣委員 そこで、もう一度お尋ねいたしますが、これは国民生活の上から言えば最低限守らなければはらない防衛費だと思う。国の防衛よりもまず国民生活の安定をはかる。最大の防衛力は食糧の確保と安価な提供でなければならぬことは明瞭であります。もしも食糧不安が起きますと、治安費が膨大になります。今の警察力ではとうてい防ぎきれないでありましようし、刑務所ももっと設置しなければならぬでありましょうし、いろいろな付属した経費の増大になることはあまりにも明瞭です。一時、米騒動が起きたために、あれだけの治安費をかけておるじゃありませんか。そうした冒険をやることよりも、まず国民生活安定のためにつぎ込まなければならない行政費として、当然国が負担すべきものという考え方に立たなければならないと思いますが、時間がありませんから、それだけにしまして、次にお尋ねいたします。  一体、赤字など出さなくてもいい部分で出ている部分があります。なぜこういうものを出すのですか。それについて一つの例をあげますならば、昨年の豊作です。これは天然の条件にもよりましょうけれども、農民がしし営々として多くの資材と労力と農機具を投入いたしました結果と相待って農作になり、今年は天候状態はあまり恵まれませんけれども、去年の農作の影響を受けまして、農民の持っておりました余力を全部これに注ぎ込みました結果、平年作を上回るような作柄をともかくとり得たわけです。この農作の恩典を国民が均一に受けることができない。できないでただ倉庫に積んで、保管料が非常に増してきております。予算で組まれた以上に――石当り百五十四円だと思いますが、その保管料がもう三十何円上回っているはずであります。石当りですよ。金利もまたこれは百八十何円だと思いますが、一体金利だけで食管特別会計が五十四億以上払っておるのです。国民の何人もが最も食わなければならない食糧を買い付けるために、五十四億の金利を払わなければなら広い。これは造船のような利子補給と違いますよ。営業じゃない。国民の生活で最も要望しておるその最低の要望を満たすために金利を払う。その金利が五十四億に上っておるわけです。予算で五十四億ですよ。これがさらに上回りまして百八十円から百九十円になんなんといたしております。こんな膨大な金利を一体払わせるようなことをなぜやらなければならぬのです。入った米を――せっかく農作で取り入れられ、買い入れたものを、なぜ早く消費者に渡さないんです。渡しさえすれば金利なんか、かからないのです。倉敷料もかからないであろうし、保管料もかからないであろうし、ロスも出ないでありましょう。ロスも七十円か見ておるが、このロスが七十円から七十七、八円に増大してきておるのです。なぜせっかくとれた米を腐らせなければほらない、目減りさせなければならないのです。早くこれを消費者に分け与えることが、豊作の恩典を生産者にも受けさせるし、消費者にも受けさせる、政府もまた赤字が出ないで済むはずなんです。それなのに勤労者に対する労務加配米などもやめるという。なるべく食わせないようにして金利を払わなければならぬ、保管料を払わなければならない、しかも減耗を見越さなければならないというようなことを、なぜやらなければならないのです。名案があれば、と言うけれども、これくらい明らかなことがあるのになぜおやりにならないんです。大蔵大臣から、大蔵当局から見た意見を一つ……。
  125. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お説でありますが、私は食管のそういう配給機構の運営において、そんな間違いをしていないと思うのですが……。
  126. 川俣清音

    川俣委員 もしもあったならば、それは一般財政で負担をすると、こう言うのですか。消費者並びに生産者に負担させない、そういうことは間違いであるからして、それならば間違いを起した政府の責任ですから、大蔵当局はその責任を負って一般会計から生み出すか、またはあなたの特別な金庫から生み出すか、とにかく責任を明らかにしてほしい。起り得るわけがない、と言うが、現に起っておるのです。起った分はどうしますか。
  127. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは一つ食管の運営の衝に当っておる当局にお聞きを願いたい。そこにどうあるから大蔵省が一般会計でどうする、こうするという問題じゃないと思う。食管自体の赤が出た場合に、これは何といっても国家財政の一部ですから、それをどうしますということを大蔵大臣として考えなければならぬでしょう。それですから食管についても大蔵大臣がやかましいのはここなんですよ。ですから責任とかどうとかいう問題じゃないのです。
  128. 川俣清音

    川俣委員 これは大蔵大臣、あなたはもう一度今の速記録をごらんなさい。そんなことは起り得るわけはないという答弁をされたんです。起ったらどうするかという私の質問なんです。現に起っておるのだが、これは間違いであれば別です。私はいつでも撤回しますが、間違いでないつもりです。そんなわけはないとあなたは答弁されたが、現にあればどうなさいますかと聞いておるのです。
  129. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ですからこれは食管の実際の運営に当っておる当局の方にお聞き下さい。そういうことがあれば、あるについてはやむを得ない理由があるのかもしれない。私は実際自分自身が、たとえば米の配給をやれという指図をしておるわけではありませんから、買い入れた米の配給がうまくいかぬことによって、そこに倉敷料も要る、経費も要るということになれば――それについて客観的に、そうわざとしている人は世の中に一人もいません。やむを得ない理由があるのでしょうから、そのやむを得ない理由をお聞き下さいと言っておるのです。
  130. 川俣清音

    川俣委員 大蔵大臣は、そういうことをやかましく言われるならこれは問題なんです。そういう欠陥があるから、その欠陥を頂そうと言うなら別です。そんなものは起り得るのだから制度を変えろということは、十分自分が行わなければならない責務にある者の怠慢であって、責任をのがれるような制度の改廃を言われることは行き過ぎじゃないか、こういうことであなたにお尋ねしたのですから、それ以上のことは一つ農林大臣にお尋ねいたします。  今私が申し上げたように、とにかく去年の豊作のあとを受けて、保管料が非常にかさんできておる、またロスもふえてきておる、また金利もふえてきておる、こういうことだけは少くとも行政的に防ぎ得るものだと思う。防ぎ得ないで起ったものは、これはやはり政府が負わねばならぬものであって、消費者が負うべもものではないと思うのですが、こういう点に対する農林大臣の御所見を伺いたい。
  131. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろ含みのあるようなお尋ねでございますが、私はこう考えます。従来取り来りましたる食管のやり方は、御承知通り非常に乏しいものを分け合う形で、しかも御承知通り早場米奨励金というようなものまで出して、あえて未熟とは申しませんけれども、相当の無理をして早場米を食べていく処置を取らざるを得なかった。しかも食糧はそういう見地から不安なしに来ておったとは申せぬと思うのであります。しかし食糧の責任を取っておる者といたしましては、不必要に保管いたしまして今御指摘のように金利、倉敷、目減り等を無理に出すということは避けなければなりませんけれども、およそ一般国民の安心感、安定感を得るに足るだけの持越米を持って、平常な食糧政策の運営ができるだけの処置は――そこに御指摘になりますような保管料がかかり金利がかかったといたしましても、やることによって国民が食生活の上における安心感を得るということにおいて、私はとらなければならぬ処置だと考えておるわけであります。
  132. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますればこの赤字というものは、国民生活の食糧をまかなう上からくる行政的にとらなければならない政府の責任として、自然に生まれてきた赤字である。従ってこれについては政府は十分心得べきであるということでありますから、私はこの点については了承いたします。しかしながら誤まった見方で、運用が悪いことからくる欠陥をもって、制度の欠陥なりとする誤まった策に乗ぜられないだけの用意があってしかるべきだと思うのでございます。  次にお尋ねいたしたいのは消費者米価でございますが、何か農林大臣は、消費者米価は、今御説明になりました通り、今日国民生活の安定の上から、特に勤労者の生活の安定の上からいって、消費者米価をにわかに上げるべきじゃないという説をお立てになっておりますことについて、われわれもそれを傾聴いたしておるのでありますが、どうもこれを否定するような宣伝が政府側からなされるようでございますから、この際、来年一月一日から消費者米価を上げる意思はないと思いますけれども、念のために、歳末を控えて特に人心不安の折から、この点を明らかにしてほしいと思うのでございます。
  133. 河野一郎

    河野国務大臣 たびたび申し上げますように、私は生産者米価は、農業経営の安定の上から農民の納得のいく価格を支持するようにいたしていくことが農政の根幹であり、また消費者米価につきましては、ただいま御指摘の通り、これはにわかに改変をするというようなことは避けなければならないということは、当然政府としてとらなければならぬ処置であると思うのであります。従いまして、私といたしましては、今御指摘の一月一日とか、近き将来において消費者価格を変更する意思は毛頭ございません。してはならぬものと考えております。ただはなはだ相済まぬことでございますが、一言つけ加えさしていただきたいと思いますことは、お互いに、川俣さんも私も政党内閣、政党責任制の立場に立っておる者といたしまして、事務当局の言うことを取り上げてとやかく言われて、これによって人心不安が起るようなことをおっしゃいますと、まだそんなことがあるのかと、一般農民にいたしましても、消費者にいたしましても、考えるのでございますから、そういう事務当局やそういうものの言は抹殺いたしまして、歯牙にかけぬという態度をお互いにとって参ることが、政党政治確立の上において必要なことだと思いまするから……(「事務当局に勝手なことを言わせるからいかぬ」呼ぶ者あり)そういうことは断じていたしません。いたしませんから、一つお互いにそういう枝葉末節の事務当局の意見のようなものは、議会政治の上においてあまり取り上げないことにして、そうして責任政治をとっていくということにしたいと思います。
  134. 川俣清音

    川俣委員 今河野国務大臣から明快な御答弁がありまして、私はこれで大体了承いたします。今日内閣がとかく弱まって参りまするというと、事務当局が勝手な放言をいたしまして、どっもに一体内閣があるのか、事務当局に内閣があるのか、責任政治をとっております政党の方に一体内閣があるのか、わからなくなるような状態が起きて参りまするので、念のために申し上げましたところ、つけ加えて答弁がありましたから、これで了承いたします。  次にお伺いいたしたいのでございますが、米価の決定に当りまして、米価審議会を開きまして、当時農民の要望に満たなかったけれども、いろいろ政府におきまして苦心をせられて、手取り米価なるものが決定されたわけでございます。累年、時によりましては標準米価がきめられましたり、あるいは手取り米価をきめられる例もございますが、最近は政治性をもちまして、手取り米価ということが、米価決定に当って重要な要素となって世間に知れわたっておるわけでございます。三十一年度の米価決定は、手取額が、非常に苦心をいたしまして、一万七十円となっておるわけでございます。ところがこの一万七十円を決定するといたしましても、一万六十円を十円上げるだけでも、大蔵当局あたりから非常な反撃を受けまして、十円というものは非常に重要視されておったわけです。これは大蔵大臣も御存じであります。一万六十円を七十円にするというので、大蔵大臣は目の色を変えて十円の捻出をいかにするかなどと、ずいぶんやかましく大蔵省などから言われたものでありますが、それで手取り米価一万七十円が、現在では手取り米価は九千九百五十六円くらいになるのではないかと想定されるのであります。これは計算の基礎にも一つ問題がございまするけれども、現に、もしも手取り米価が一万七十円にならないで、九千九百五十六円程度でおさまりまするというと、政府はここに予定していない大きな金を生み出すわけであります。百円にいたしまするというと、三十億くらい農民に渡らない。このくらい手取りになるぞといって宣伝をした価格からいうと、約三十億が減少いたします。これを何かの形で  米価で埋め合せるなら、一番正直な埋め合せの仕方でありまするけれども、何らかの形で埋め合せる義務があるのではないかと思いますが、農林大臣どうでしょうか。
  135. 河野一郎

    河野国務大臣 お話でございますが、これは非常にむずかしいことでございまして、釈迦に説法のようでございますけれども、たとえばいい米を作って格づけの上の方で売った農民は、予想外に多くなっている、米の質が悪くて格の低いものを売らなければならぬような農家にとっては、今御指摘の通り、一万円米価と申しましても、それが九千九百円程度の米になるというようなことでございまして、最後の結論まではまだ出にくいのでございますけれども、何分秋の天候も十分でございませんでしたし、全体を見まして、おそらく格づけ、格差等の点から行きましても、相当に農家の収入は減るのではなかろうかと考えております。しかしこれはまた一面逆な場合もあるわけでございまして、これらは実際一万円米価と言ったんだから一万円だけのものが農民に渡らなければいかぬじゃないかとおっしゃいましても、これは豊作であったとか凶作であったとかいうようなものでございまして、米がよけいに取れたときでも、決して豊作を目当てに米価をきめたわけじゃない。農家全体の手取りとすれば相当にふえているんだというような――また北海道方面の方のように、一万円米価はおろか、ゼロの米価になってしまうところもできるわけでございますので、今川俣さんから御指摘の点につきましては、三十億になりますか幾らになりますか、その金を渡さなければ、一万円米価といったけれどもインチキじゃないかということにはならなかろう、なるべく長い目で農民全体が平均して経営が立っていくようにしていけば、それでよろしいんじゃなかろうかと考えております。
  136. 川俣清音

    川俣委員 これは抽象論の場合は、今農林大臣の言われたようなことも言えないことはないと思うのです。ところが今年は、御承知のように新しい米価決定に当りまして、時期別格差として出たものから二百十円平均引いておるのです。またあらためて二百十円掛りとしてつけ加えていますから、二百十円そのものを標準米価から引いたことに問題が存するわけであります。しかも時期別格差は、二百十円見込んでおりましたものが、現在では百六十三円くらいになってきております。そういたしますと、標準価格から三百十円引いたこと自体が誤りであって、百七十円とか百六十円引いて標準米価を作るべきであった、こういうことになると思う。次に大臣の言われた等級間の格差でございますが、これも私が米審において、こういう結果が生れるではないか、等級間の格差八十九円というのはどうも問題だ、こういうことを指摘したのでありますけれども、私が予想いたしておりました通り、二千八百五十万石供出されるものとして等級間の格差は二十三円、三千万石もしも集まるならばあるいは二十二、三円というところになるのでは血いかと思われます。そういたしますと、ここに六十円か七十円の開きが出てくる、こういうことにもなって参りますから、合せて百円内外の誤差が出てくるわけであります。この誤差というものは、算定の上から当然加味していかなければならなかったのを加味しない結果生れてきたところのものでありますから、今年は少くとも手取り米価に近いものをお約束に基いてお渡し願いたい。もしも米価として渡しにくければ、何らかの農村の振興費としてこれを確保することが必要ではないか。特に今日の日本の工業が農業の購買力によって維持されている面が非常に大きい。何といいましても、肥料工業にいたしましても農薬工業にいたしましても、異常な発展を遂げましたその底力を与えたのは、その購買力の源泉になったのは、日本の貧弱な農村ではありまするけれども、これらの広範な購買力が、これらの工業の伸展の上に役立ったことはいなめない事実であります。従いまして、もしも農村が疲弊して参りますると、日本の工業力のような非常に底の浅い工業力は一ぺんにふっ飛ばされてしまうようなおそれなしとしないのであります。通産大臣はいろいろな施策をやられましても、日本の貧弱な農村とはいいながら、農村の持っております購買力に依存せずには、工業政策は立っていかないことは十分御承知だと思うのです。従いまして日本の購買力の減少を来たすようなことをむちゃにやりますことは、日本の生産工業全体に非常な悪影響を及ぼすものだと思いまするので、私、この三十億は何らかの形において、農村の有効な購買力となるような政策をここで打ち出すべきではないかと思うのですが、農林大臣並びに通産大臣にお尋ねします。
  137. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の点、いろいろお話でございまするけれども、実は早場米の点につきましても、初めに予定いたしました数量もしくはそれらの点等から、実際豊作の結果数字が多くなってきたというようなことからきたものであって、決してごまかしてどうこうというようなことはいたしていないつもりでございます。その他の点につきましても、多少川俣さんのおっしゃる点もうなづけないではないのでございますけれども、実は決してそういうふうな、ごまかして少く払おうというような意図を持ってやっておるのではないのでございまして、大体は全体の農家を対象として考えてやっておるのでございまして、今さればといって別途三十億の金を支出して別にこれを充てなくても、できるだけのことば財政の許す限りしていきたい。今日の農村の実情から考えまして私が強く考えますことは、去年とことしと二年続く豊作の結果、一般消費者にはやみ米の値下りだけでも相当のよい影響を与えておる。実際農民の所得は決してこれによってふえていないという実情を見ますると、豊作であった農民が非常にこれによって恵まれないで、この好影響は消費大衆にのみ非常にあずかって力のあるという事実を考えますときに、ことに農村の収支の昨年からことしにかけての状態を計算してみますのに、収入は漸減の方向に行っておりますので、明年度あたりの予算の上におきましては、相当に諸般の点において考慮しなければならぬ段階に来ておると考えておるのでございますから、御注意の点よく承わりまして、今後最善の努力を尽していきたいと考えておる次第でございます。
  138. 石橋湛山

    石橋国務大臣 農村の購買力によって一般の商工業が維持されておることにお説の通り、その他のことは今農林大臣がお答えしました通りであります。
  139. 川俣清音

    川俣委員 それでは次にお尋ねいたしますが、大蔵省が出されました今度の三十一年度の食糧管理特別会計の借入限度等の特例に関する法律案を出されましたが、これはどうも従来出された法律の方式を非常に逸脱しておるのですね、これは二つの内容を持ったもので、一つは三十一年度の食糧管理特別会計の借入の限度を上げなければならないというところから出された法律であると認めます。これは現に約三千万石に及ぶような買付をしなければならないピーク時における借入限度の引き上げは、これはまあ認めます。これと全然性質の異なる予約買付に対する前渡金の利子の免除に関する法律と、二つを一緒にするというようなことはどういうわけで出されたのか、性質の異なるものは、おのおの提案されるのが通例であります。また議会政治の上から行きましても、法律の審議の上から行きましても、性質の異なるものは性質の異なったような法案の提出の仕方をすることが、今日までの常道であります。一体なぜこれを一本にしなければならなかったのか、事務的にめんどうなために二本にしてやられたのか、どういう意図なんですか、関連があるのですかないのですか、関連があるとすればどこに関連があるのか、なければなぜ一本にして提出しなければならなかったか、この理由を大蔵大臣にお尋ねいたします。
  140. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは法案ですから、別にしたらそれは悪いというわけのものではないと思うのですけれども、法制局とも相談して、これは一緒にしてよかろう、やはり米に関連をして概算金の返還の際の利子に関することでありますからと、こういうふうなことで、一応出したのであります。
  141. 川俣清音

    川俣委員 どこに関連があるのですか、今までこういう関連を無理につけて法律案を出したことはないのです。別々に出されても、必要なものでありますならば、われわれはわれわれの方針に基いて当然法案を審議する。事務当局の都合で一本にしなければならないという、こういう国会の審議を、事務当局が勝手に不便を来たすような審議を求めることが、一体議会政治をほんとうに尊重したゆえんなんですか、どういうわけでこれを一本にしなければならなかったか、法制局はなぜこういうものを一本にしなければならなかったか、大蔵省に教えられたのか、今まで前例があるのか、おそらく前例はないと思う。たとえばいろいろな法律の整理をするという場合には、一本にして整理をするということはあります。これなど、食糧管理法の改正でもいい、何らかの方法で幾らでもできるべきなんだ、少しこれは綱紀が弛緩しておる、それがここに現われてきたのではないかとも思われる。そればかりではない、国際小麦協定などは七月に協定を結ぶ用意をいたしたのですから、当然臨時国会を開かれて、一番先にこの承諾を求めるの法案を出さなければならないはずです。きのうあたりになってから外務委員会において、あしたが期限になったからと、きょうじゅうに上げなければならないことがきまっておったのに、あしたまでに手続しなければならぬとわかり切ったことを、なぜきのうとかきょうになって持ってこなければならぬか。これは綱紀の弛緩の結果起ってくることなんです。ことに予算だというとなかなかやかましいことを言いながら、ほんとうの法律の審議については、こういうずさんなことをやっておりまするから、いろいろな問題が起ってくると思う。これは弛緩の一つの現われですよ。なぜ一つにしなければならぬのか、二つのものを二つに出されないでなぜ一つにするのですか。そんな便宜主義でやるというようなことは、はなはだ不都合きわまることだと思うけれども、もう一度大蔵大臣にお尋ねいたします。
  142. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 法律の形式につきましてはいろいろな考え方もあるわけでありまして、お考えの点ごもっともであると、私も同感する点もあるわけでございますが、もともと食糧管理特別会計に関連いたしました問題でもございまするし、一本の法律で、二つの事項を提案いたしましても、格別に差しつかえはないであろうという政府部内の結論に到達いたしまして、一本の法律として提案いたしまして、審議の促進にも資した次第でございます。なお、前例はどうかというお話でございますが、これはいろいろございます。たとえば税法等の実質的な改正を意味する点が他の法律の附則で改正せられておるという例は間々あることでございまして、事柄のよしあしは別といたしまして、前例もあることでございますし、こういう短期間の国会でもございましたので、相関連した事項でもございますから、便宜一本の法律でお願いをいたしたい、さような趣旨でございますので、何ら他意はございませんから、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  143. 川俣清音

    川俣委員 これはまだ議論があります。たとえば、税のごときはほかの法案でやられることは困ると大蔵省は今まで言われたことを、自分でもってみずからやられる、それを悪例だと言って主張された大蔵当局が、これはいい例だと言われるとしますれば、われわれも将来これはいい例として大蔵省にこういうことをやらないとも限らないということだけを十分御了承願っておきたいと思います。  時間がないから他に移ります。そこで、余剰農産物並びに世銀からの融資というものを三十一年度予算に組んでおりますが、これはいずれも予算通りばかばかしく借り入れができないような状態になっておりますが、どうしてこれはできないのですか。初めからどうもあいまいなものをさもできるがごとく予想して予算を組まれたのではないかという懸念を持ちますが、現在の状態はどうなっておりますか。
  144. 河野一郎

    河野国務大臣 だんだん余剰農産物関係の事業がおくれておりますことは、はなはだ遺憾に考えますが、御承知通り、補償、賠償の問題が、実は非常に手間取っておるわけでございます。これは十分地元の国民の納得を得ていたさなければなりませんので、愛知用水の方が非常におくれておるというわけでございますが、大体の準備はできましたので、明年の一月ごろにはできる見通しでいるわけでございます。一方、北海道関係の機械公団の方は、六月の六日、七日ごろに世銀と契約し、事業は御承知通り大体所期の目的通りに近いものが進行中であるということでございます。
  145. 川俣清音

    川俣委員 これについてもいろいろ尋ねたいことがありますけれども、時間がありませんから申し上げません。しかし、外資導入であるとかということで旗を立てて大いに宣伝しただけのものが出ていないということだけは明らかにしておきます。従って、外資等にいたずらに依存いたしておりますると、日本の産業開発の上に、とれないもの、借りられないもの、いろいろな条件のむずかしいものを、さも簡易に得られるがごとく予算を立てることになりますと、日本の財政規模の上におきましてもいろいろな支障を来たすであろうことを申し上げて、この点はこの程度で打ち切ります。  次にお尋ねいたしたいのでありますが、佐久間ダムが最近でき上ったわけでありますが、もうすでに土砂堆積が一メートル以上に及んでおります。これがもしもさらに堆積が増しまして、従来通りのようなダム効率を上げるということになりますと、また土砂ばけをあけたりいたしまして、さらにこれは洪水を増大いたし、被害を甚大ならしめるようなことになると思うのです。こういうことも大いに公共の利益に反する行為なのです。労働者のやつはスト規制法なんかで取り締ればいいというのですが、こういう資本家が、ダムを築いて、当然行うべき義務であるところの上流の砂防工事やあるいは土砂どめをやらないで堆積したものを、ダム効率が上らないからということで土砂ばけをあけられますと、これは大洪水になって、大はんらんを起すおそれがある。これに対して何らか処置をするという考え方がありませんかどうか、通産大臣にお伺いしたいと思います。
  146. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お尋ねのことは、技術上のことでありますから、今ここで詳細のことを申し上げることはでかませんが、ダムの中にも、土砂が堆積していい部分というのでございますか、調節のために初めから堆積することを予定した部分がございますから、そのことではないかと思います。お話しのような懸念はないものと考えております。
  147. 川俣清音

    川俣委員 これは予定の土砂堆積とは認めがたい。ないと称しているのですから――現にあるのをないと言って隠しているところを見ると、予定のものでないことは明らかです。従いまして、あの膨大な経費をかけた佐久間ダムにもこうした土砂堆積がだんだん起ることは、上流の土砂の流出量から見て当然推定されることでございます。従いまして、水源地を培養するとか、あるいは土砂どめを作るとかいう当然行うべき義務を怠りまして、たまった土砂を土砂ばけから吐き出すというようなことをやりますと、水害のもとであります。このもとを当然とむべき責任があるとお考えになりませんか。これは下流の公共の福祉に非常に影響のある問題であります。これは厳重な法律を作ってしかるべきなんです。電源をとめるなんというストは、やむにやまれずにやった行為です。それですらとめようという。これは十分金をかければできるものを怠っている。監督も悪ければ、また会社も怠慢なんです。黒部の上流なんか行ってごらんなさい。これは明らかなんだ。私は幾多の例を持っておるが、時間がないから今例をもって言わないが、どこのダムはどのくらいかということは明らかです。これは各会社がみな隠しているのです。毎年堆積状態が違っているのはどういうわけです。土砂というものは毎年毎年堆積されつつあるのに、大降雨のあった翌年にはダム効率がうんと上ってきて、みな土砂を吐き出しております。こういうことをやっているじゃありませんか。それを監督しなければならぬのがあなたのところでしょう。これは何とか法律を作って監督する御意思はありませんか。下流の耕地や人家はこれは非常に迷惑です。
  148. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 技術的な問題でございますから、私からかわって御答弁申し上げます。  ダムの中の土砂堆積の問題、これは前々からのいろいろむずかしい問題でございます。ただいま御指摘ありました佐久間ダムにすでに一メートルたまっているじゃないかというお話でございますけれども、これは実は私初耳でございます。そういうことが事実かどうか知りませんが、ただ、大臣が御答弁いたしましたのは、どのダムでもそうでございますが、利用水深というものがございまして、それ以下の部分はデッド・ウォーターとして、要するに利用価値のない水であるのです。その部分に土砂がたまることは――これはまず最初そこへたまりますから、従って、大臣がおっしゃいましたのは、そういう意味で、別段予定したものということじゃございません。  それから、電気事業者がそういうふうな土砂が流れないように工事すべきじゃないかというふうなお話でございますが、これは、上流の河川の両岸もございましょうし、支流もございましょうし、そういう広範な他の地域にわたりまして電気事業者が工事をするということは、これは実はいかがかと思うのでありまして、むしろ公共事業費その他の方の運用を待つべきものと思っております。
  149. 三浦一雄

    三浦委員長 川俣君に申し上げますが、お約束の時間がありますから、石田宥全君との調整をとりつつお願いします。
  150. 川俣清音

    川俣委員 今御質問いたしましたのは、結局、水源地なり砂防工事なりをしないと下流に及ぼす影響が大きいから、善処しなければならないということを要望したのです。これはいずれかの機会にまた深く申し上げましょう。  そこで、ちょっと農林大臣にお尋ねしておきたいのは、私、この間フランスへ行きましたところが、大使館の連中がみな絹のハンカチを持っている。それから、店を見ましても、あのフランスの新しい流行のデザインというのは、人絹またはスフあるいはナイロン系統のものではできないデザインのものが流行になっている。どうしてもあれは絹でなければ出てこないデザインが流行のようです。そういたしますれば、フランスが絹の輸入国であり輸出国なのに対して、日本ももう少し打つべき手があるのにかかわらず打っていない感じがするけれども、この生糸については農林省所管と通産省所管に分れておるために対策が立っていないのか、あるいは外務省等の出先官憲が経済知識がないためにそこを来たしているのか。日本の養蚕問題は農業問題にとりましても重要な問題でありまするので、これに対する関心がどの程度深いかお示しを願いたいと思うのです。これで私の質問は終るのです。
  151. 河野一郎

    河野国務大臣 私も同様に見て参って、考えておりまして、現在くつ下を対象にした生糸の時代は過ぎまして、今日用途が全然変っておるのでございますから、これについては一歩加工を前進して、国内でやるべきである。それらのデザイン等については、私は特別な措置をしなければならぬと思いますので、せっかく通産省と緊密な連絡をとりまして善処いたしたいと思います。
  152. 三浦一雄

    三浦委員長 石田宥全君。三時五十分に農林大臣は退席されますから、その間どうぞ。
  153. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は農業課税について大蔵大臣、農林大臣または自治庁長官に若干お尋ね申し上げたいと思うのでありますが、最初に昭和三十一年度産米の予約減税についてお尋ねをいたしたいと思います。この問題は元来、低米価に対するプラス・アルファとして数年前から行われて参ったものでございますが、本年度は前国会の終りに当たって米価の決定が行われないので立法化することについては賛成できないという政府側の意向のために、社会党からは石当り二千円の減税措置の法案を提出してあるのでありまするけれども、継続審議に相なっておるわけであります。もはや大部分供米も終っておりまする今日、果して政府当局は予約減税をやる方針なのかどうか。また農林大臣は、しばしばこの点については前年通り行当り千四百円の減税を行うということを言明しておられるのでありますが、大蔵大臣に対してこの点をお尋ねをしたい。また今国会に提出される用意があるのかないのか、なぜおくれておるのか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  154. 河野一郎

    河野国務大臣 この点につきましては、米価決定の際に政府の方といたしましては方針を決定いたしております。この必要な措置としては、通常国会の早い時期に提案をいたしたいと考えております。それによって農家との間の徴税の上において最も適当に処置されるものと考えておるわけであります。
  155. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま答弁がありましたように、大蔵省としても一応免税の措置をとりたいと考えております。
  156. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に私は農業事業税の問題を中心にして若干お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、まず第一番に、最近の臨時税制調査会、それから大蔵省の一部において、農民の税金は低過ぎる、こういう意見がしばしば行われるのであります。農民の税金が安過ぎるから農業事業税を復活してもよろしい、こういう意見をしばしば耳にするのでありますが、果してその農民の税金が安過ぎるのかどうか。私はむしろ高過ぎるのではないか、こういうことを考えておるのです。  なるほど所得税の対象農家の数は、今日一割か二割という非常に低い該当数になっておりまするけれども、これは元来農業所得自体が非常に低いのだ。所得のないところに税金があるはずがないのであります。私は時間の関係上数字は申し上げませんけれども、ごく大まかにこれを見ましても、総人口のうちの農村の人口が四二・六%ある。四割二分もの人口を擁する農村が所得の面においてはわずかに一七・五%にすぎない。この事実から見てもいかに所得が低いかということがわかります。ところがその一七・五%という低い農業所得の中に、動労所得であるとかあるいはその他の兼業所得が四〇%程度含まれておる、こういうふうに見てみますると、農業自体の所得はきわめて低いものであるということがおわかりになると思う。さらにそのように所得の低い上に地方税の方が逆に非常に大きい。たとえば固定資産税でございますが、かつての小作料にも匹敵するほどの、あるいは地租に数倍するほどの固定資産税が賦課されておる。地方税においては、そのほかに法定外の地方独自の税金がこれまたたくさんある。あるいはまた下部に参りまするならば、部落等におきましては部落協議費割りであるとか、あるいは県道や国道に対する強制夫役のようなものまで合算いたしまするならば、これは非常に大きな負担になっておる。こういうふうに見て参りますと、農民の課税が低いというような議論はとんでもない間違いだ。私はむしろ農民の負担は重きにすぎるのでは広いか、こう考えておるのでありますが、この考え方の基本的な問題でございますので、これは一つ大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
  157. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お説のように一般の事業所得者には事業税がある、農業にはない、固定資産税を考えても農業の方の税負担が軽いのじゃないかというような意見があることは承知いたしております。しかしこれはただそういうことばかりで農業の税負担が軽いともいえない。税負担を考える場合に、これは私の一つの考え方なのですけれども、その生活の程度というようなものも、やはり考慮に入れてみなくてはならぬのではないか。所得と生活程度は非常な関連を持っておるのですが、いろいろな問題がありますので、学者やあるいは今回の税制調査会等の答申もよく見まして、慎重に検討してみたい、かように考えております。
  158. 石田宥全

    石田(宥)委員 消費関係とも申されるのでありますが、消費関係を見ますと、昭和二十六年を一〇〇として見ますと、昭和三十年には都市では一五四に上っておるのでありますが、農村はわずかに一二一・一にとどまっておる現状でございますので、消費水準から見ても決して上ってはおらないのでありまするから、一つこの点も御留意を願いたい。  時間がありませんので、端折って参ります。そこで今の臨時税制調査会が答申されようとなさっておるところの農業事業税の復活の問題でありますが、これはただいま申し上げましたような理由によって、私は農家にとうてい農業事業税等の負担の余地はないというふうに考えておるわけでありますが、大蔵大臣はいかようにお考えであるか承わっておきたいと思います。
  159. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この農業事業税につきましても、税制全般の改正が問題になっておりまして、それについての答申が出ますので、それらの一環として検討を加えてみたいと思います。今すぐ農業事業税を取り上げるということも考えておりません。
  160. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこでもう一つ。臨時税制調査会の構成を見ますると、農業団体や農民を代表される委員がほとんど見当ら広い。しいて言えば、たった一人入っておられます。ああいう重要な、大蔵大臣の諮問機関として設けられた中に、全人口の四二%以上も占めておる農民の利益を代表する委員がきわめて少いということは、これは私は妥当な結論を見出すことはできないじゃないかと思うので、この点については一つ十分御留意をお願いしておきたい。  次に所得税の問題について若干申し上げたいのでありますが、今日の青色申告の問題です。青色申告をやることによって家族の専従者控除が行われる。これは一つの恩典があるわけですが、事実上農業経営をやるような場合に、一般の農家に青色申告を望むことはほとんど不可能に近い問題です。こういう特別な事情の者につきましては――これは実はこの点いろいろ議論をしたいと思うのですが、時間的に余裕がございませんが、今の農家の中で自家労力に対して、これは必要経費に算入されておらない。たくさんの家族をかかえておって、それが必要経費に算入されない。しかも青色申告でなければ専従者控除も行われない。こういう実情にあるので、どうしてもこれは、青色申告でなくとも、農家の場合は専従者控除を認むべきであると考えるのですが、大臣はどうお考えになっておりますか。
  161. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 青色申告制度自体を含めて、そういういろいろな点を今検討を加えております。
  162. 石田宥全

    石田(宥)委員 青色申告と申しましても、御承知のように一般の産業においては、いろいろ二重帳簿や三重帳簿で、ずいぶんいいかげんなものが行われやすい。現に関東信越国税局では、約半分が不正不当があることを指摘されておるのです。農家の場合においてはほとんどそういう余地はないのでありますから、これは一つ十分御考慮を願っておかなければならない問題だと思います。  次に自治庁長官にお尋ねいたします。先刻もちょっと触れましたように固定資産の評価の問題でありますが、最近不当に引き上げられておる。この算定の方式でありますが、なるほど全国的には収益還元方式に基いておやりになっておるということであるけれども、市町村におきましてはほとんど収益還元方式が放擲されておって、実はきわめてみずかしい算定の方式によっておる。のみならず国の方で大きなワクをきめてしまって、それを府県におろし、府県は町村に割り立てて、町村が実情に即した評価をいたしましても、それが国なり県なりに指示された額に達しない場合がありますと、やはり指示した程度まで上せないと平衡交付税のさじかげんをするぞとおどかして、指示した価格にまで引き上げを強要しておるのです。私はやはり末端においても厳正に収益還元方式によることが固定資産税のとるべき算出の仕方だと思いますが、自治庁長官の所信を伺っておきたい。
  163. 太田正孝

    ○太田国務大臣 お答え申し上げます。現在どうやったならば固定資産税が正確にかけられ得るかという問題につきましては、あるいは収益還元方式もございまするし、売買価格に比例させることもありますが、ただいまとっておりますのは、御指摘の通り収益還元による方式でございます。これは非常に複雑になっておりますが、標準といたしましては、全国で反当りについて田が三万五千円、畑が一万二千円という基準を置きまして、――お言葉のような複雑になるわけは、各市町村におきまして、生産力に及ぼす気象の関係とか、土性とか、灌漑とか、地形などのいわゆる自然的要素を考え、交通の便否、耕作の難易等の経済的な要素も考え、水害による被害の状況等をも考えまして、そこでやっていきまするので、非常に複雑になっております。けれども正確を保つとなると、どうしてもここへ参りますのと、今までの基準に少し改める点があると思いますので、ただいま申しました、今まで行われておる田について三万五千、畑について一万二千は本年度に改めたいと思っております。御趣意の点はよくわかりますが、ぴったりと合わせるのには今言った方式をとることがやむを得ざる状況にあるのでございます。さようどうぞ御承知願います。
  164. 石田宥全

    石田(宥)委員 その方針は改めたいとおっしゃるのでありますが、ぜひそれをやっていただきたい。今の市町村の評価の方程式によりますと、宮崎県のような広い県でも、県の係の者に聞いてみますと、一つか二つの市町村くらいしかこれを理解し、実施しておらない。こういう実情でありますから、そうじゃなくて、やはり大部分の市町村の吏員が理解もでき、厳正に評価のできるように改められるようにお願いしておきます。
  165. 太田正孝

    ○太田国務大臣 ただいまのお言葉の中に方式を改めるとありますが、方式そのものの原則は収益の原則でいきたいと思います。ただ今までの基準に改むべき点があるので改めたい。御趣意の点はどうしても市町村にうまくはまり込まなければいけませんから、こういう点については十分考えてやっていきたいと思います。
  166. 石田宥全

    石田(宥)委員 基準もそうですけれども、やはり算定の方式自体が、大きなパンフレット一冊もあるようなことで、今私が申し上げたように、全く市町村の係の者が理解できないくらいなんです。それでは一般の農民に理解できるはずがないのです。ですからやはり基準ももちろんであるけれども、基準を改められるならそういう点も関連して一つやっていただきたい。これは答弁要りません。  それから次に、最近は地方財政が非常に窮迫して参りましたので、住民税の課税の方式でありますが、地方税法の三百十三条ですが、あれの第二方式のただし書きの方に統一をしようというような考えが強いように見受けられる。だんだんそういう方向に指導、誘導されておるようでありますが、そうなりますと、なるほど市町村の財政には好都合かもしれませんけれども、非常に課税が不均衡になってきて、同時に重くなって参りますので、この点はやはり第二方式の本文の方に統一されるようにできないものか、この一点。  それからもう一点は、青色申告の専従者控除をやった場合、米の予約減税のような点を地方税に通用させるかさせまいか。これは全国的に見ておりますと、だんだんこれを排除していこうという傾向があるのです。これはやはり青色申告による専従者控除なり、あるいはまた米の予約減税なりをやった、そのままのものを課税の対象にすべきである、こう考えるのですが、この点もう一つお伺いしたい。
  167. 太田正孝

    ○太田国務大臣 住民税の課税方式が五種類あるうちで、ただいま実際行われておりますのはオプション第二項ただし書きという方が七割七分六厘に当っております。そんなに多く行われております。しからばこれに統一したらどうかと申しますと、やはり第一方式のいいところもございまして、東京都のごとき二十三区にわたるところが、この第二方式によると大へんなことになるのでございます。お言葉の通り税はどこまでも公平の原則と収入を得ることの二つをあんばいよく織り合せていかなければなりませんので、こういう大きな問題は、今税制調査会にもかけておりますが、御趣意の点もよく参照していきたいと思います。それから青色申告と米の予約の関係は、私、少しまだこなれない点がございますので、税務部長から詳細お答え申し上げます。
  168. 奥野誠亮

    ○奥野説明員 家業専従者の控除の関係で、住民税の不均衡を来たしているということで、市町村からずいぶん問題が多く持ちかけられて参っております。しかしこの問題につきましては、国税自体におきましても、青色申告の取扱い方につきまして、運営上改善を加えるべき面もずいぶんあるようでございまして、国税側からはそちらの方の運営改善をはかりたいから、家業専従者の控除を住民税において適用しないというふうな制度化は、なお猶予をしてもらいたい、こういう問題がございます。同時にまた家業専従者控除制度の問題を白色にも認めよ、こういう問題もございますので、こういう制度上の問題もあわせて検討して参りたい、こういうふうに存じております。
  169. 石田宥全

    石田(宥)委員 大蔵大臣に一点だけ伺っておきます。相続税の問題ですが、農村の方では今均分相続になりますので、耕地が均分されるというと、みんな零細農になっちゃって、専従農家が成り立たなくなってしまう。そこで私どもは、従来の五十万円という基礎控除では不十分であって、もっと基礎控除を引き上げなければならないと考えておるのでありますが、最近これも税制調査会等の意見としては、均分をしてからの課税では税額が少くなるということから、相続をする前の全体の資産について課税をすべきであるという意見が強く行われておるようであります。これはとんでもないことであって、相続は、相続を受けた者が均分した後に、その資産に当然かかるべきものであって、それを相続をする前の全体の額に課税するというようなことになったら、これは今の農家は非常な打撃を受けることになるのでありますが、大蔵大臣の所見を承わっておきたいと思います。
  170. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えでは、相続税の課税の方式はやはり税制の根本に触れてきますので、特に慎重を期しておるわけであります。(石田(宥)委員「慎重々々ではわからないのであります。」と呼ぶ)税制調査会の答申もあると思いますから、その際十分検討いたしたいと思います。
  171. 三浦一雄

  172. 辻原弘市

    辻原委員 総理から給与の政策についての根本の意見を伺いたいと思ったのでありますが、御出席ありませんので、担当の倉石労働大臣、それから大蔵大臣、また地方公務員を所管する自治庁の長官、文部大臣等から公務員の給与の問題を中心にして承わりたいと思います。  しばしばわが党が各委員会を通じましてこの問題を政府にただしましたところが、今日まで政府答弁は、先刻のわが党の小平議員の質問に対しましても、きわめてあいまいであります。はなはだわれわれとして遺憾といたしますことは、公務員の給与の改善措置は過ぐる昭和二十九年であります。自来三カ年にわたるのでありますが、この間本格的な給与改善措置は何ら行われていないのであります。社会保障の政策をその金看板に掲げろ鳩山内閣にあって、少くとも社会保障と同じ位置にある公務員の給与の問題について、全然その内閣が手を触れなかったということは――まさに今鳩山内閣も終末を告げんとするその時期にありまして、何らかこの問題についての所見があってしかるべきだと思うのでありますが、担当の倉石大臣からその点に対して簡潔に一つ承わっておきたい。
  173. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 公務員の給与につきましては、私どもしばしば申し上げて、おりますように、一般産業と見合って、これの給与ベースのことについては常に注意をいたしていることは当然でありますが、人事院の勧告が今あなたのお話の時期にありまして以来は、給与についてのものはこの七月でございました。従ってそれについて今政府は鋭意検討いたしておるというわけであります。
  174. 辻原弘市

    辻原委員 今の御答弁からも何ら具体的な方針が聞かれないのであります。この間の二十日の本会議におきましても、総理は人事院勧告の趣旨を尊重して目下検討中、同じく労働大臣からもそのような答弁がありました。そこで私は少しく具体的に承わりたいのでありますが、人事院勧告の趣旨を尊重して検討というこの意味は、給与を改善しろという人事院の趣旨は尊重する、しかしながら内容は別だ、こういう意味でございましょうか。さらに続いて内容が別だという意味は、これは政府においては別個にこの給与の改善というものを考え、検討を加え、成案を得る、こういうような構想の上に立ってこの問題をおやりなさっていられるのかどうか、この点を承わりたい。
  175. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように人事院の勧告を受けまして、それについての詳細なデータは七月よりおくれて出て参りました。そこでこれに指摘いたしてあります趣旨には、御存じのように三公社五現業及び地方公務員は一般国家公務員より高い、いい待遇を与えられているという趣旨がうたってございます。そういうことについては、私としては人事院の勧告の内容について批判がましいことを申すのではありませんが、やはりそれぞれの関係いたしておる方面では、この人事院の勧告についてなお多少の疑義を持っております。従って国家公務員について政府がかりに人事院のおっしゃるようにするとなれば、その影響はどういうことになるかといったようなことを十分検討いたさなければなりません。そこで私が政府部内で中心になりまして、そういう点について今鋭意検討をいたしておる、こういうわけであります。
  176. 辻原弘市

    辻原委員 非常に微妙な御発言であったように私は聞いたのであります。確かにお話のように、人事院勧告は国家公公務員のみを対象にしている。ところが政府においては、今倉石労働大臣の御答弁をそんたくいたしますると、人事院がいうごとく、給与の改善に当ってはただ単に国家公務員だけを取り上げていくわけにはいくまい、当然地方公務員、三公社五現業等の現業職員をも含んでその改善措置を考慮する必要がある、こういうふうに私は今承わったのですが、政府検討の方向というものは、私が今申し上げたようなことでございましょうかどうか、この点を一つもう一ぺんお聞かせを願いたい。
  177. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 給与改訂というお話でございましたが、今度の人事院のなされました勧告は、いわゆるベース・アップ方式を勧告いたしておるのではないわけでございますが、ああいうような俸給表の調整ということによっても、国家公務員だけで人事院のお話によれば六十九億円を要するので、これを問題にいたして参る場合には、政府といたしましてはやはり各方面の意向を調べなければなりません。そこで今あなたのお話は、国家公務員の給与が調整された結果、若干実質がふえるということだから、そのほかもふやすつもりで調整をしておるか、こういうことでございますが、それでは人事院勧告の趣旨と違うわけでございます。人事院勧告は、国家公務員がそれらに比して低いのだから善処しろということを、御承知のようにうたっております。ところがあなたの御存じのように、それについては各方面に御議論があるわけでございます。たとえば地方公務員においては、ある地方自治団体においては国家公務員より高いかもしれないが、ある地方においては低い、こういうことを平均して考えられることはどうかと思うということでございまして、これらのことについて、ごもっともなことでありますから、われわれとしては詳細なるデータを持ち寄って今鋭意検討中である、こういうことであります。
  178. 辻原弘市

    辻原委員 そういたしますと、私がお尋ねいたしました最初の問題も、しばしば御答弁なさっておられるのは、勧告の趣旨を尊重するということであります。これは後刻大蔵大臣にもお伺いをいたしますが、大蔵大臣も本会議の御答弁では、これは明らかに内容についてはいろいろ問題がある、こう言っておられる。従って私は、趣旨は尊重するが内容は別だという限りにおいては、別のものを出すのかどうか、こうお尋ねした。   〔三浦委員長退席、重政委員長代理着席〕 そこで今倉石労働大臣から、国家公務員をやる場合には、三公社五現業、地方公務員との間に、人事院の指摘するような状況とは違った反論がある、従ってそれらについても勢い考慮する必要が生まれておる、こういうふうに私は受け取っておるわけです。その考慮する点についての資料収集を現在やっておる、こうあなたはおっしゃっておる。そこで立ち入って伺いますが、ほんとうにその資料収集をおやりになって、一番焦点の問題は、やはり国家公務員だけを対象にやるか、それ以外を含めるかという場合に、やはりその間に較差が広いという一応の結論をあなた方は得なければならない。その結論をどういうふうにして得るかという問題でありますが、私は別の委員会でこの点を政府委員にただしましたところ、たとえば地方公務員との問題については、三十一年の一月でありましたか、大蔵省と自治庁との合同調査に基いてその資料を人事院が採用したようであります。これは勧告の中に載っておりまするから明らかでありますが、その後今倉石労働大臣の言われるように、その間の較差についていろいろな議論がある。私も、地方公務員と国家公務員との比較論においては、議論じゃなしに明確に答えを持っております。そういたしますと、政府において結論を出すには、当然これについてどうかということの検討をすみやかにおやりにならなければならぬが、政府委員と私との質疑においては、これは現在においてはやっておらぬという。その過程におけるいろいろなデータはあるけれども、その三十一年一月に匹敵するような大々的な調査というものは今日まだないという。そういうような怠慢なことで、これは検討しておるということは申せないと思うのですが、おやりになっていらっしゃいますか。それともおやりになるとすれば、いつこれをおやりになるか。私はこの調査には相当な日子と相当な計画性を必要とすると思う。その点簡単に労働大臣は言われているが、ほんとうにおやりになりますか、これは一つ承わっておきたい。
  179. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それでありますから、私は冒頭に申し上げましたように、人事院勧告を私の立場で批評いたすことは御遠慮いたすと申しましたのは、今あなたの御指摘のようなことも入っております。つまり地方公務員に対しての調査の資料をいたしましたその時期というものが、今日とは相当ずれておるということも言われておるわけであります。あなたは今政府部内で何にもやっていないようなことをおっしゃいますが、私は責任をもってやっておるのであります。これは外部にどというふうに伝わっておるか存じませんけれども、鋭意調査研究をいたしておる、なるべく早く成案を得たいということに努力しておる、こういうことであります。
  180. 辻原弘市

    辻原委員 これに多くの時間をとるわけにいきませんけれども、大臣がそう開き直られるなら、私もいささか開き直ってみたいと思うのですが、これは抽象的に言っても、大臣、勧告のあったのは七月なんです。もうすでにきょうを越えればあしたは師走なんです。少くともやろうと思えば、あなた自身がおやりになっているというならば、あしたの昼でも結論が出るはずです。しかしやはり給与の問題については正確なデータに基いてやらなければならぬということから、それぞれ事務当局の資料というものが必要になる。ところが私どもが、いろいろ事務当局に対して質問したり、あるいは情報をとったり、その見たところによると、正直申し上げれば、あなたの管轄内にある内閣調査室でありますか、そこらあたりでは、それは各界の意見の資料を集めておるが、しかしながら、これを人事院勧告に匹敵するような一つの給与体系なり、あるいは給与改善の方式として独自にやっているような気配はないのであります。やっておるならやっておるとお答えになったらよろしいと思いますが、私は少くともそう判断しておる。そういうことから推察いたしますと、これはあなたは答弁では、尊重いたします、鋭意検討中でありますとおっしゃいますけれども、事実はほんとうに積極的にやるという意思で促進しているとは見受けられない。やがて内閣が、あと幾日であるかわかりませんけれども、終えんを告げるという常識的な予測もありますし、気合いの入らないことはあると思いますけれども、それとこれとは別個であって、少くともやはり責任内閣であります以上、政党内の、あるいは内閣内の内部事情は別として、政策政策として、これは責任をもって完遂していただかなければ困る。けさからのいろいろな答弁をわれわれ拝聴いたしましても、どうもそういう印象を受けがちであります。いま少し責任を持った積極的な政策を、私はやはり終りに臨んで、――立つ鳥あとを濁さずという言葉もある通り、それこそ有終の美を飾るものです。三年間ほったらかしにして何にもならなかったのですから、せめてここらで、あなた方が管轄されている政府職員に対し、あるいは地方公務員に対して、ほんとうに信頼できる内閣であったというあたたかい親心を示しても、私は当然だろうと思う。まあ、そういうことを余分に申し上げておりますと時間がございませんので、ともかく私の見た範囲においては、その点は十分検討しているとは見受けられません。  そこで次に伺いたいのでありますが、やはり今労働大臣はその点は述べられました。すなわち、批評はしたくないけれども勧告にはいろいろ問題がある。これは私も同意見であります。われわれも人事院勧告の給与改善という趣旨、あるいは客観的な諸情勢が動いて、国家公務員法の規定に基いて改善をしなければならぬというその意欲は全く同感であり、切にそれを長い間期待しておったのでありますが、その出された内容には、これは総裁おられまするが、遺憾ながら賛意を表するわけには参らない。端的に申してこれはベース・アップでないことは事実であります。しかも旧体系をいじくって下手をすれば悪くなるのが相当おります。こういうものがどうしてほんとうの給与改善だとして快く迎えられるか、そういうようなことは考えられません。のみならず今あなたの方で検討されておるということでありまするから、労働大臣に申し上げたいのでありますが、何といっても給与改善措置の条件というのは、これは根本的には物価とそれから民間産業の賃金でありましょう。民間産業の賃金の比較は人事院は一一%とこう言うのでありまするが、ところがその後の八月の労働省発表の統計によりましても、その後また相当動いております。現行ベース当時の基礎から見まして、これは先般も本会議で受田議員が指摘をいたしましたが、約一七%の上昇率を示しておる。金額にして二千円以上であります。そうしますると、すでに一一%較差があるということで給与改善の勧告をしたその人事院の勧告が、もはや過去のものになっているということも言い得るのであります。同時にまたここで給与改善を行うとするならば、民間産業との比較論からいけば、当然公務員に対しては二千円以上のアップをやらなければその均衡がとれないということ、この点について労働大臣はどのようにお考えになるか、少くともそういう要素を考慮してあなたの言われる鋭意検討ということが行われておるかどうか、これを承わっておきたい。
  181. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 人間の性格として、私が公務員担当大臣を仰せつかりましてから、どうも国家公務員というものをだんだん自分の身内のように感ずるようになりました。(笑声)ですからあたの御説明、いろいろ御心配願うのはけっこうでありますが、私どももこの国家公務員の待遇がよくなるということについては希望いたすのであります。今の一一%云々というこのことでありますが、これはしばしばこういう席で論議されておりますように、人事院のとり方のいかんによってもだいぶ違います。私どもにおいてはこの人事院の比較表の資料については若干意見もありますが、それは別として、とにかく現在人事院勧告というものが行われたのでありますから、政府はこの人事院勧告を尊重して、そしてこれについてもし実施する場合にはどういうことになるかということについて、関係の官庁とも相談をいたしておりますし、ことに財政当局ともそういう点についての相談をいたしておる、こういうわけでございまして、いわゆるべース・アップということは考えておりません。
  182. 辻原弘市

    辻原委員 ちょっと私が申し上げたことと焦点が違うようであります。そうではないので、私の申し上げたのは、あなたも先ほど言われましたように、勧告の時期から相当期間がたっておるので、その勧告に盛られた要素に動いてきている点がある。これはあなたもお認めになった。必ずしも勧告の内容について前提条件となっていることを認めるわけにいかぬから、あなたは鋭意検討しておるということをおっしゃった。そこで私は、その動いてきている諸条件の中にも、民間の較差のうちにさらにその開きが大きくなっておりますよということを申し上げた。これはあなたの方の統計資料でここにありまするが、この労働省発表の統計資料にあるのであります。それを見て私は今申し上げた。それを見ますと民間産業の上昇率は約一七%というふうに八月にはなっておる。それを金額的に換算すれば二千円以上になるのであります。そうすると公務員との比較論においては、現在官公庁職員が要求しておる二千円ベース・アップということは金額的にいって妥当な線ではないかということを申し上げておる。だからそれが妥当であるかどうかはあなた方が検討なさるのですが、それらの要素を組み入れておるかどうか、当然検討するということになれば、そういう条件を組み入れなければ検討できないはずだと思うのですが、これがどうかということを言っておるのです。旧体系がどうのこうの、ベース・アップがどうのこうのということを言っておるのではないのです。
  183. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 労働省統計のことをお話でございましたが、それは八月のお話のようでありますが、八月は御承知のように民間産業ではボーナスを出しておる時期でありますから、八月だけを一つおとりになったのでは、そのときには較差があるかもしれませんが、私どもは、そこの労働省の発表にもあると思いますが、二十九年一月から六月までと三十一年一月から六月まででは民間が一一・九、それから国家公務員が一一・七、こういうふうな上昇率であることを労働省の統計では出しておるはずでありまして、何はともあれ、私どもは国家公務員の給与が民間産業に比して決して上回っておるなどと言っておることはないのであります。今の人事院勧告を尊重して給与体系を考える場合には、現在行われております人事院勧告を基礎にして検討をいたしておる、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  184. 辻原弘市

    辻原委員 時間がなくてその較差の点について掘り下げて議論するわけには参りませんけれども、少くとも私が申し上げた資料は、これはあなたは今八月の月はボーナスの出た月だとおっしゃっておりますが、私の申し上げておる数字はそういう不定期的な給与を全部除いた数字であります。従ってそれには関係ございません。これを見れば明らかであります。御参考のために申し上げておきますと、一万六千八百三円というのがこの統計に出ておるのであります。これは経常的に支払われる給与としての八月分であります。そこから割り出して私は申し上げたのであって、そういうような不定期要素を入れておりません。しかしともかくあなたの方では人事院勧告の一一%という較差を基準としておやりになるという御答弁がありました。これは全く古きに失するということだけを申し上げて、今後の検討でもしそれを採用すると慮れば、さらに給与の改善が決定されたときには、それはもはや古くなっておるであろうということをつけ加えておきたいと思います。  同時に物価の点につきましても同じであると思います。従来人事院勧告もそうでありますが、政府答弁もすべて物価は横ばいであるという前提に立っておる。確かに人事院勧告が採用された当時の物価というものは、指数によって横ばいかもしれませんが、しかしながらその後ことしの六月以降の卸売、小売ともの指数を見ましたならば、卸売においては特に顕著であります。物価は上昇いたしております。十一月の値上りは最近二カ年間に見られないような上昇率を示しておるのであります。従って物価は横ばいであるとは申せません。この点大蔵大臣はどういうふうに把握されておるか、参考に承わっておきます。
  185. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 物価の点ですが、最近物価が上っておるということも事実でありますが、これは主として生産財について上っておりまして、消費財につきましては二十九年の一月ですか、その辺を一〇〇といたしますと、最近のところで、九月ごろで一〇〇・五、〇・五%上ったという指数になっておると思っております。幸い消費財については横ばいに推移しておる、今後もそういうような推移をとるであろう、こういうふうに考えております。
  186. 辻原弘市

    辻原委員 それらの二つの、特に給与改訂についてのこの重要な要素を若干具体的に申し上げたのでありますが、少くとも現在の給与について検討を行うとなれば、これは組み入れて検討するのが筋だと思うのです。この点は賢明な労働大臣に一つ勧告を申し上げておきたい。人事院勧告だけだというようなことは、これは議論になりません。少くともその後の推移を組み入れて検討ということでなければ、私は正当なる一つの給与を決定するということにはならぬということだけを申し上げておきます。  それから次に淺井総裁に一つ伺ってみますが、七月に出された勧告は、あなたは参議院においてもそういうふうに言われたと思うし、私ども当然だと思うでありますが、勧告をした以上、その実施をあなたは政府にあるいは国会に迫る、これは当然なる態度である。しかもそれはいつでもいいからやってくれというのではなしに、勧告では可及的すみやかにといっておりますが、しかしそれば時期的にいえば当然年度内に実施してくれ、こういう意味でなければ勧告の趣旨というものは成り立たないと私は思うのでありますが、その点どういうふうに考えられておりますか。
  187. 淺井清

    ○淺井政府委員 お答えを申し上げます。人事院といたしましては、従来の慣例といたしまして勧告の時期につきましては、なるべくすみやかにという表現を用いる例になっております。ただ一回だけ例外がございますが、これは人事院の立場上さようにいたしてある次第でございます。
  188. 辻原弘市

    辻原委員 そんな通り一ぺんな答弁を私はお聞きしたのではございません。それは勧告を見れば明らかであります。これは参議院のわが党議員の質問に対しても、その点は大よそ述べられておる。年度内に実施してもらうのが筋だということをあなたは言われた。いやそれならば年度内に実施するということが私は勧告の筋だと思うのでありますが、総裁はそれを否定されますか。いつでもいいとおっしゃるのですか。
  189. 淺井清

    ○淺井政府委員 私は御趣旨は決して否定いたしません。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 辻原弘市

    辻原委員 それくらいは一つ虚心たんかいに総裁としてもおっしゃっていただかなければ、争議権にかわる保障機関である人事院とは申されまい。しかし年度内にという趣旨を否定しない。これは消極的でありますが、裏を返せば年度内に実施してほしいという、やむにやまれぬ気持が総裁の心の中にはあるだろうと私は推察いたします。  そこで労働大臣にお伺いいたしますが、今ありましたごとく、人事院のほんとうの気持としても勧告の趣旨は年度内実施ということを前提にしていらっしやるようであります。勧告を尊重されるということをしばしば言われるならば、少くとも実施の時期についても尊重しなければならぬと思うが、この点は尊重の意思ありますやいなや、一つ伺っておきたいと思います。
  191. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御趣意に沿うように、なるべく早く結論を出したいと思っております。
  192. 辻原弘市

    辻原委員 なるべく早くと申しましても、通例の場合ならばそういうことも一つのお答えになるかもわかりませんけれども、どうも私どもとしても不安に思いますのは、先刻も申し上げて非常にこれははばかるのでありますけれども、今巷間常識的に、ともかく内閣は一応臨時国会終了後これはおしまいになる。そういたしますと、あなたは私がやっておる間に、しかもなるべくすみやかにやりたいと申しますと、期間が限定されてくるのであります。少くとも臨時国会中ないしはその直後における総辞職の時期までに何らか結論を出される。こういうふうに、これはだんだんの話から推論いたしますとそういうことに点るのでありますが、さように受け取ってよろしいかどうか。
  193. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 鳩山内閣がやめるかどうかということは、私は一ぺんも総理から聞いたこともありませんし、そういうことば念頭に置いておりません。またかりに内閣がやめることがありましても、自由民主党の内閣ができることは当然でありますからして、私どもはそういうことについてそういう場合にも、やはり今私が申し上げている趣旨で私どもの方では人事院の勧告は尊重をいたしまして、そうしてなるべく早く実現するように努力いたすつもりであります。
  194. 辻原弘市

    辻原委員 それではもう少し具体的に伺ってみますが、これを実施するについては当然所要の法案と同時に予算の措置が伴うわけであります。なるべくすみやかにと、こういう場合にそれは明年度にまたがる場合もあるし、本年度中にも可能性がある。そういたしますると、本年度中に結論を出すということになって実施するということになりますれば、当然補正予算という問題がここに出てくる。そういうことを考慮してなるべくすみやかに結論を出そうと言われておるのか、それともそういうことはもう一向おかまいなしで、一つあなたまかせの明年度予算で何とかやってもらおうというふうに、大まかに考えられているのか、そこの点を少しく具体的に承わっておきたい。本年度中に可及的すみやかにやって、そうして補正予算を国会に提出するという態度で考えるのかどうか、この点を繰り返すようでありますが、承わっておきたい。
  195. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 臨時国会中には補正予算を出さないことは政府はしばしば申しておる通りであります。そこで人事院勧告について先ほど来申し上げておりますように、政府部内の意見の調整ができました場合にどうするかということにつきましては、財政当局からお聞きを願いたいと思います。
  196. 辻原弘市

    辻原委員 大蔵大臣に伺います。
  197. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまなるべく早く結論を得たい。これは同じでありますが、なるべくというのですが、これはやはり予算編成に非常なと申しますか、密接な関連を持っておるものであります。従いまして予算編成のころまでには一つ何とか結論を得るように努力したい、こういうふうに考えております。そうしてその際にどういう範囲、どういう程度でやるか、いろいろきまりましょうが、やらないというふうにきまるかもわかりませんが、尊重いたすのでありますから、私はできるだけこういう範囲できまるということになるだろうと思うのであります。そういう場合には必要な予算措置もそのときにつけたい、こういうふうに考えております。この国会で補正予算を出す考えは私は持っておりません。
  198. 辻原弘市

    辻原委員 今の大蔵大臣の答弁による予算編成の時期ということは、これは明年度予算編成の時期を意味されるのかどうか。その時期までに結論を出したい。そういたしますと、すでに例年であれば予算編成の時期でありますけれども、そうすると、きわめて短かい間に結論を出してということになります。そういう意味か。それとももう一つは、これは昨年の例によっても事情は多少違いますけれども、通常国会に当該年度の補正予算を出したという例もあります。補正予算を検討するその時期までにとおっしゃるのか、通常予算の編成の時期までにとおっしゃるのか、その点がいささか不分明でありますので、重ねて一つお答弁を承わりたいと思います。
  199. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私が予算編成のときと申しますのは、三十二年度の予算の提出、そのときを考えて、そのころまでに結論を得たい、努力したい、かように考えております。
  200. 辻原弘市

    辻原委員 もう少しお尋ねをいたしてみたいと思います。かりに明年度の予算編成の時期であっても、今私が申し上げましたように、その時期であっても本年度の補正予算を出し得るのであります。従ってそのときに結論が出たならば、可及的すみやかに人事院勧告も実施しろ、また当然結論が出たならばすみやかに実施するのが私は建前であると思う。従ってその時期までに結論が出たならば当然補正はお出しになるというふうに受け取れるのでありますが、そういうふうに受け取ってよろしいか。
  201. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 やるということが政府としてきまれば、当然私は予算措置はできると思っております。
  202. 辻原弘市

    辻原委員 もう一ぺん倉石労働大臣に――今ともかくきまれば補正は出すと大蔵大臣はおっしゃる。労働大臣はその時期までにきめようという熱意をお持ちなさっていられるか、この点は長い間放棄した国家公務員その他公務員の立場を考えてみればまことに切なるものがあると思いますので、労働大臣からほんとうに率直なあなたの御意見を承わりたいと思います。
  203. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 しばしば申し上げておりますように、熱意を持って早く結論の出るように今部内を調整している、こういうわけであります。
  204. 辻原弘市

    辻原委員 時期の問題は大よそわかりました。  時間がありませんので次の問題に移ります。先刻も労働大臣も指摘されたのでありますが、実際実施をする場合に国家公務員だけという人事院勧告には各方面から議論がある。私は当然だと思う。地方公務員との較差があるという問題についても、今日の段階でも、私が自治庁の事務当局あたりに聞いたところによりますと、人事院勧告が指摘した本年一月のあれとはだいぶ事情が異なってきております。少くともこれは太田自治庁長官はよく御存じだと思いますが、町村合併を促進した、そして地方では新しい一つの自治団体を形成するために、また再建法も適用された。どんどんどんどんそれが進行いたしまして、地方に現われている状況は、人件費の節減ということが非常にクローズ・アップしてきている。そのために昇給がストップせられて、漸次地方公務員の給与というものは足踏み状態にある。その指数は時間がないので私が申し上げますが、最近のデータによると、比較は国家公務員の一・五に対して地方公務員の一・八ということになっている。そういたしますと、かりに人事院勧告当時のそれが正当であるとしても、今日の段階ではすでに較差がないということになる。そうすれば当然給与改善は国家公務員、地方公務員を含めてやらなければならぬという結論になるのであります。この点自治庁長官としては給与改善に当って地方公務員をどうしようとお考えになっているのか承わりたい。同時に今の国家公務員、地方公務員の較差の点についていかようにお考えになっておられるか、あわせて承わりたいと思います。
  205. 太田正孝

    ○太田国務大臣 お答え申し上げます。先ほど来辻原さんの言われたことしの一月というのは、昨年の一月十日現在であります。そのときに非常に大規模に全国的に調べました結果は、人事院勧告のあの通りでございまして、昨年の一月十日現在は地方公務員の方が高かったのであります。しかるにその後において今御指摘のありました通り、合併問題、あるいは再建問題を進めていくに当りまして、しかも人件費に相当な圧力がかかったということも御指摘の通りでございまして、一年前の一月一日現在は人事院勧告の通りでございますが、現状におきましては変ってきております。変るべきであると思います。変った事実があると思います。数字の点は別といたしまして、全国における再建団体の動き、あるいは合併の問題等御指摘の通りの事実がありますので、私といたしましては、大体を言いますと、国家公務員と水準が同じになっているのじゃないか。ただし百五十万の地方公務員でございまして、国家公務員の三倍になっております。これは非常に複雑なもので、ある地域においては高いところがございます。けれども平均してみますと、国家公務員がもし上る場合がありましたならば、地方公務員法の定めるところによりこれに準じてやらなければならぬという理屈になって参りますので、給与体系をどうしていくかということについては、労働大臣が申し、かつ補正予算関係について大蔵大臣が申しました通り、われわれとしては一生懸命この点を勉強いたしまして結論を得たいと思っている次第でございます。人事院勧告もむちろん尊重いたしますが、さらにその他の点をもという先ほどのお言葉に従うのはまた当然でございまして、労働大臣がこれらを尊重しつつ検討していこうというのもその意味でありまして、私どもの考えは同一でございます。さよう御承知を願いたいと思います。
  206. 辻原弘市

    辻原委員 時間がございませんのでその次に移ります。地方公務員と同様、私は現業職員とて三公社五現業の関係においても同じことが言えると思います。この分は労働大臣も御承知のように、本年の三月調停案がそれぞれ受諾されて以来、いまだにこれとても本格的な給与改善の決定を見ていない。それだけに私はこれと国家公務員との給与の比較においてもそう人事院勧告が指摘するような差はないと思う。同時にせっかく双方これを受諾いたしたのでありますから、調停案の実施についてば政府も責任を持って推進すべきであると思うが、いまだに結論を見ないという事情は、これは一体どういうことなんです。それぞれ当局者が怠慢なのか、政府はその怠慢をそのまま見過しておるのか、これらの点についても労働大臣の御所見を承わりたい。  いま一つ、この調停案をめぐっての問題として、一部の現業においては最終的な決定を見るまでの暫定的な方法がとられている。ところがその他のは全然そういう方法がとられていない。すなわち較差ということが給与の取扱いに重要なる問題でありますが、すでに調停案受諾後の今日において、こういう各現業間においてそれぞれ取扱いが異なっていくということは、将来へさらに大きな較差を残すということに触る。これは私は見過すことができない。当然平等に取り扱うための政府の監督があってしかるべきだと思うのでありますが、所管大臣としてどういうふうにお考えになりますか。時間があれば各大臣から承わりたいのでありますが、時間の関係で労働大臣から代表して一つ政府の意見をお聞かせ願いたい。
  207. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、三公社につきましては公労法による機関がありますから、私どもはとやこう申さない方がよいと思います。五現業につきましてはお話の通りでございますから、政府部内においても関係閣僚同一の歩調で、やはり今申し上げましたように鋭意調整に努力をいたしておる、こういうわけであります。
  208. 辻原弘市

    辻原委員 次に年末手当について大蔵大臣にちょっと承わります。大蔵大臣は先刻もそういう答弁をされましたが、昨年〇・二五を増額したので本年はやらない、しかも大体〇・二五でもって民間とのつり合いがとれていると思います。こうおっしゃっているのでありますが、私はそれではいささか大蔵大臣のお言葉とも思えません。最近の産業界の状態から見ますれば、ことしは特に民間産業における期末手当は相当額に上ると私は思います。その事情を勘案いたしましたならば、それで均衡がとれておるなどということは、これはいささか誤まっておると思うのでありますが、どうでありますか。大蔵大臣からその点を一つ承わりたいと思うのであります。
  209. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 年末手当につきましてはただいまお話がありました通りであります。そのように私は考えております。昨年末に〇・二五、法律を改正しまして増額いたしました。それが引き続いております。支給額としては大体これでいく。民間と言われましたが、民間といってもいろいろありまして、種々雑多で、年末手当もなお出せないところもあると思います。これはまあ比較の上の議論になりますから申しませんが、私は年末手当については今申しましたように本年は従来通り、かように考えております。  なお、ちょっとここで申しますが、先ほど私は人事院の勧告の給与に関する件について、きまったら予算措置もとると申しましたが、きまったらという意味は実施期もきまったらという、一切を含めた政府としての態度がきまったら予算措置をとるという意味であります。誤解のないように願います。
  210. 辻原弘市

    辻原委員 民間産業との比較は、大臣同様私も議論になりますが、これはしかし今日常識であります。悪いものを標準にする必要はありません。いやしくも公務員に対しては、少くとも政府あるいはそれぞれの当局者が責任を持っておるのであります。だから悪いものを例にとって、悪いものに右へならえというような、そんなふしだらな親心というものはありません。いいところが大半であれば、それにならって支給するというのが私は当然だと思う。その意味において〇・五を増額して二ケ月くらいは、これはどこへ出したって、民間より多いなどということはないと思う。そういう意味でわれわれは妥当と心得て〇・五を増額すべき法律案を提出いたしました。これについての見解を承わっても同じようなことを言うと思いますので承わりません。しかし一つここで慎重に大蔵大臣も考えていただきたいし、主管大臣も考えてもらいたいのは、それは先刻給与ベースの基本給の問題についていろいろ申し上げました。ところがそれも鋭意検討中というのが結論であります。結局年度内には実施しないというような腹に見受けられる。期末手当についても過去四年間にわたって何らか親心をこの師走のからっ風の中には注いだものであります。ところがことしはそれも知らぬとこう言う。全く無責任、あれもやらぬ、これもやらぬ。ところが人事院は民間よりも低いぞと勧告している。政府家でございまするならば、せめてここらでそろそろ何かの方法が浮び出て、何らか便法の措置が講じられてもしかるべきであろうと思います。基本給与も引き上げない、年末手当も増額しない。しかし現実に人事院が指摘する低いということは政府もお認めになっていらっしゃる。せめて本格的な給与ベースの改善が行われるまでの暫定措置として、一一%低いといわれる本年度の分についてのみくらいは、私は暫定措置をとってしかるべきものであろうと思います。その一方法としてこれまた勧告を申し上げるのでありますが、もし何もやらぬというのならば、あなたの方でそれではせめてこの一一%に見合うぐらいを考慮して年末手当を増額してもいいじゃないか、してやろうじゃないか、しようじょないか、こういうような考えが私は起って当然だと思いますが、そういう親心をも今日お持ち合せではないかどうか、労働大臣に一つ承わりたいと思います。
  211. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 年末手当のことだと存じますが、それについてもいろいろ検討いたしまして御承知のように昨年度末は〇・二五を増額いたしまして一・五というものを決定いたしておるのでありまして、本年の年末においてそのほかのものを支給する意思はございません。
  212. 辻原弘市

    辻原委員 全く政府としては冷淡きわまる態度であると私は論断して差しつかえないと思います。そういうことではあなたが絶えず口にされる労働行政などというものはうまくいくものではありません。どうかそれらはいま一度再考慮なさって何らかの方法が私はあると思う。そういう点を考究されてこそ鳩山内閣終えんの有終の美をおさめられると思う。これは切に労働大臣の再考を促しておきます。  それからいま一点、この機会に大蔵大臣に承わっておきたいのでありますが、問題はやはり常に補正を組めといってもなかなか金がない。小平君が先ほど質問いたしましたら、予備費も三十六億残っておるけれども、これもだめだ、こう言われる。そこで一体金がないかどうかということを知る参考に、防衛費についての使い方を一つここでお示し願いたい。それはどういう意味かと申しますと、防衛関係の費用の中で、たしか九月の数字であったと思うのでありますが、使った分が三百三十四億でありました。そういたしますと当初予算額に比して相当額がここに残っておる。それから繰り越し費があるはずであります。合算いたしましてただいまどれほどの経費が防衛費において残っておるか、三月末にいわゆる未使用となる予定の分は何ぼあるか、この点を一点数字的に承わりたいのと、もう一つは、本来余った金を例年繰り越すなどということは、たびたびわれわれが指摘しておりますように、やるべき事柄ではないのであります。承わるところによると、政府部内でも最近そういうことを考えられておるようであります。来年度の予算編成に当って、どういう防衛関係の未使用分を繰り越すということをやめられる意思があるかどうか。この二つの点について一つ簡単にあやを入れないで明確に承わりたいと思います。
  213. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 第一点の防衛庁予算の執行状況、これは計数にわたる問題でありますから私からお答え申し上げます。防衛庁予算昭和三十一年度予算現額、これは前年度からの繰り越しを含めました金額でありますが、これは千二百三十億でありまして、これに対しまして第二・四半期末、九月末日までに支出負担行為を了しました金額は四百四十億円でありまして、三六%を支出契約を了しております。支出済額は三百三十四億でございまして、予算現額に対する割合は二七・二%ということになっております。これを前年同期の九月末日現在の状況と比べますと、前年度は支出負担行為済額は四百一億でございまして、予算現額に対して三六・四%、支出済額は二百七十五億円でございまして、予算現額に対しまして二五%ということでございます。両年度を比較して申しますと、それぞれ前年度より三、四十億上回っておるわけであります。割合の方は大体同じでございます。年度半ばを経過して未消化状況にとどまっておることにつきましては、いろいろ御議論もあることだと思いますが、用地の取得が非常にむずかしくて契約が行き悩んでおる実情、あるいは艦船、装備、施設等の設計仕様書の作成の遅延、そういったいろいろな事情がございまして、残っておるわけでございまして、防衛庁では、予算の適正かつ迅速な実行に全力をあげて努力をいたしております。年度末までには大体大部分のものを消化し得ることとなる見込みでございまして、翌年度への繰越額は、本年度に繰り越しました金額よりも相当減少するであろうということが予想されております。
  214. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。防衛庁の繰り越しの問題、これは数年前からの問題でありますことは、御承知通りであります。私どもとしては、むろん予算の上において、ことしは繰り越しが累年あるとか、あるいは未消化等があるとか、これは好ましくないことであると思います。従いましてこれはいろいろありますその繰り越しが起る原因をよく探究するのがいいのじゃないかと思っております。仕事がはかどらぬ結果繰り越しが多いなら、これは仕事をはかどらせるがいいと思っている。そうしてそれにはいろいろ原因があるが、繰り越しを行わないようにするには仕事の進め方を一そう順調にやるというのが当面、またそういう繰り越しが生ずるのを生ぜないように、予算の査定の上でさらに考える、そういうこともやっていくというので、できるだけ繰り越しというものはあまりしない方がいい、かように考えております。
  215. 三浦一雄

    三浦委員長 辻原君、お約束の時間が迫って参りましたからどうぞ……。
  216. 辻原弘市

    辻原委員 どうも大蔵大臣の最後の答弁がはっきりしないのでございますが、私は端的に来年一度どういう意向であるかということをお伺いした、繰り越しがあることは悪いということはきまりきっております。予算が年度半ばに半分も使えないというのは正当な支出行為ではありません。それはわかっておるのでありますが、そういうことが累年重なってきておる。それで少くともここらあたりでピリオドを打つべきじゃないか、そういう意思があるかと私は具体的にお尋ねしておるのでございますから、簡単でよろしゅうございますが、来年度の意向について承わっておきたい。
  217. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 関係方面とも十分協議いたしましてやる意思はあります。
  218. 辻原弘市

    辻原委員 やる意思があるということを承わりました。  時間がありませんので最後に一問承わっておきます。それば親心がないとすれば私の杞憂も要らないのでありますけれども、もし再考されて年末手当について何らかの親心を政府の方でお示しになる場合、例年の例を見ますと、過去四年間においてあるいは行政措置でやった場合、あるいは法律措置によった場合もあります。しかし本年かりにそういう何がしの方法をおとりになるという場合に、私が非常に心配いたしますのは、これは自治庁長官もお認めになると思いますし、文部大臣もお認めになると思いますが、地方公務員等については単なる行政措置においてはほとんど――かりに国家公務員に超過勤務の繰り上げ、あるいは日、宿直料の繰り上げ等の便法措置をとったといたしましても、これは地方公務員に及ぶまいと考えるのです。従ってそういう点については今後十分配慮をされて、必ず何がしの方法をとる場合には、国家公務員、地方公務員ともに公平に行き渡るような方法をお考え下さるように、これは切に要望いたしておきます。そういう心組みがおありになるかどうか、労働大臣、自治庁長官、それから文部大臣もともども努力してもらわなければなりませんので、これは簡単でよろししゅうございますから承わっておきたいと思います。  それからいま一つ、既定の年末手当は期日には支払われるの一でありますが、これとても地方の状況を考えますと、政府はそう安閑としているわけにも参りますまい。今までの例でありますと、年度末にはそれぞれ都道府県知事、市町村長が集まって年末の金繰り、あるいは年末の財政措置等について強く要望があるのでありますが、本年は再建団体等の関係でその点の声があまり大きくはありません。しかしながら過日二十八日には全国の町村会長の大会が開かれて、政府に対して大きく地方財政の確立を要望された、そういったことも私は政府としてもやはり地方に対して年度末に対する何がしの考慮が払われてしかるべきであろうと思います。この点どういうふうにお考えになっているか太田自治庁長官に承わりたい。  それからこれを機会に地方財政はよくなったということを発表しておりますが、一体地方財政の現況はどうか、この点を簡単に承わりたい。同時に地方財政の中でこれからの現在の問題である公債等についての処理は一体どういうふうになさるつもりなのか、これら地方財政の問題についてあわせて一つ参考に承わっておきたいと思います。
  219. 太田正孝

    ○太田国務大臣 地方公務員に対する年末手当につきましては自治体の決定するところでございます。しこうして自治庁として私どもの立場から申しますれば、地方公務員法に定むるがごとく国家公務員に準じてやることを期待します。期待はいかなる形にするかというと、財源を作るという問題になります。国家公務員についてやられるところの行政措置はやはり地方としてもやるべきものと思います。しかし最後において足らなかった場合においてどうなるかというときには、特別交付税等において考うべきものと思うのでございます。  第二点の地方財政がよくなったということは非常な誤まりでございます。よくなったというのは比較的のことだと申し上げていいと思います。すなわち三十年度の決算を先般発表いたしましたが、赤字は依然として多いのでございます。増しております。ただ増し方が鈍ったというのが現状でございまして、二十八年、九年、三十年度と増し方が減った、鈍化という言葉を使っておりますが、決してこれがよくなったのではございません。巷間何か地方財政がよくなったのだからこの辺でということを聞きますが、これはとんでもない誤まりでございまして、今のときにこれをしっかりしなければいけないと思います。ただ御承知通り、切り詰め切り詰めばかりしておりますが、地方の現状におきましては、土木の関係にしても教育の関係にしてもほんとうにうっちゃっておけない状況であります。これをどう調節するかというところに地方財政の一番苦心があるわけでございますが、非常によくなったというようなことは断じてございませんで、三十年度決算が現実に示す通りでございます。  第三の問題として公債についての問題、いろいろの点をやって参ったつもりでございますが、一番残された大きい問題は、過去の公債に関する問題、今後の公債に対する問題と二つございます。これも借りるにいたしましても利子が商いということは非常な負担でございます。端的に言いまして、学校を建てるのは普通の事業に対する利子補給のあるようなものより高いということは、私ほんとうにこれは矛盾であるとさえ考えております。従ってこういう利子がだんだん低まっていくということ、それから過去のものを返すということ。過去のものを返すにつきましてどういうようにやったらいいかということは、国家村政と非常に深い関係を持っておりますので、予算折衝上大蔵大臣と十分相談してやっていきたい考えでございます。
  220. 三浦一雄

  221. 小松幹

    小松委員 私は年末金融問題と健康保険の赤字処理の問題、さらに日雇い労務者の年末給与の問題について関係大臣に質問をいたします。  まず最初に金融問題といたしまして、特に貸し出しの問題を大蔵大臣に質問いたしたいと思います。大臣は九月の終り国際通貨基金から帰られて以後、たびたび新聞あるいは閣議の席等で貸し出しを抑制する、銀行貸し出しを押えるという傾向を持たれたようにありますが、現在もそうした金融的な方向を考えて実際的におやりになっているかどうか、そのことをまず承わりたい。
  222. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 仰せのように、先般私貸し出しにつきまして銀行に注意を与えましたが、これはこういうことから考えております。何も私は貸し出しがそのときに多過ぎるからという意味では必ずしもないのでありまして、御承知のように経済の拡大の基礎条件であります輸送、それから原料資材的には鉄鋼、さらに動力で、は電力、こういうものが限界に来ている。ですからその辺まで来たときに、なお銀行が、特に競争というようなことからして、設備の拡大というものをほっておくと、結局稼動率が非常に悪くなるおそれがある従って生産コストが上っていく。これはまた国際貿易に影響を与えて、国際収支にも悪影響を与える。こういうふうな考えから、今後の貸し出しはそういう点を考えて、特に注意を払う必要がある、こういうふうに申、したのでありまして、その後の情勢は大体そういうふうになっております。従ってまた私は、日本の経済も割合安定を続けて、一時非常に心配もされた状況もあったのでありますが、さらにまた安定を取り戻してきた、かように考えております。私の考えはさようであります。
  223. 小松幹

    小松委員 大臣のそうした考えは、やはり経済の規模という問題について考えなければならぬと私は思うのです。大臣が九月ごろにそういうことをおっしゃったということは、あるいは八月の銀行貸し出しと預金とのアンバランスが来たために、特にまた鉄鋼関係が値上りをしたということから、あわててそういうことにもなったのだろうと思いますが、やはり私は、金融の根本問題として貸し出しを押える政策をとるのか、今の段階では少々放していく政策をとるのかという分れ目が来ておるのではないかと思うのです。特にこの九月、最近でも同じなのですけれども、いわゆる政府資金の民間に対する払い下げ、これは貿易関係の輸入の増大で、昨年のいわゆる支払い超過よりもことしの方が締まっている。特に九月あたりは、引き揚げの方が多かった状態である。そういうところから考えて、民間に出しておるところの政府資金あるいは外為の支払いがむしろ引き揚げられておるようなときに、金融を締めるというような意見を出すことは、私は少し行き過ぎではなかったかと思うのです。この点についてどういうお考えを持っておるか。さらにそれを技術的に日銀あたりでは商率適用制度を考えて、あてがおうとしたこともあるわけなのです。こういう高率適用制度というものをあてがった実績があるのかないのか、その辺を伺います。
  224. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 経済の規模を考えずして、貸し出しについて是非を言うことは絶対ありません。経済の規模が拡大しておるから、貸し出しを押える。これはだれも異論ない。ですから私が先ほど申しましたように、あの当時までの貸し出しを特に非難したのではない。今言ったように、貸し出しをしてもこれを動かす原料も少い。電力も乏しくなっている。第一輸送面で物が動かない、そういう状況が来たから今後は注意をしなさい。そうしますと、これは技術的に考えましても、今金融は統制をやっておりませんで、全部自主にまかしておりますから、まあ注意をなさいといって、ほんとうに銀行の窓口を通じて貸し出しなら貸し出しが慎重になるのは、やはりそのためであると思います。貸し出して三カ月くらいになって初めて市場に響いてくる、こういう状況にもあるのです。それもやはり相当先走ったわけではないので、大体の見通しを立てた場合は、その辺から婉曲に――私は何も貸し出しを締めろは言わない。婉曲に貸し出しを注意しなさい、こういうふうな客観的な諸条件のもとにあるから注意しなさい、かように申したわけであります。経済の規模を考えぬことはありません。御了承願いたいと思います。  それから高率適用ですが、これは私が干渉してかれこれすべきではないのです。それは金融政策を自主的にといいますか、特に日本銀行でやっておりますから、私は大体日本銀行にまかしていいと思うのでありますが、日本銀行が高率といいますか、この制度について辛くしておる。これはこういうことで私は当然だと思うのです。私が日本銀行におりましたころは、四千億くらいの貸し出しが日本銀行にあった。この程度は貸さないと日本の経済が動きにくい、こういうときですから、そういうときは日本銀行に来ても寛大に扱ってやらなければいけない。四千億くらいは当然産業界が要る。日本銀行はそれだけは貸し出しをしなければならぬというときですから、日本銀行は寛大におやりなさいという政策である。ところが民間に資金がぐっと豊富になって、一時は日本銀行からほとんど借りなくてよろしい、市中銀行は日本銀行への依存性から脱却した、こういう状態にあるときに、そんなにたくさん借りに来ることは当然ではない。同じ制度をそのままにしておるということは、これは合理的でない。今度は日本銀行に借りに来るとすれば、民間資金の蓄積が大体こうだから、日本銀行へ来るのはこの程度なら、日本の経済規模から見てよかろう、こうなったときに、日本銀行にこれ以上来る場合は高率になる、こういうふうに直すことは、日本の経済の客観的な状態に適応するように制度を改めたにすぎないのですから、かように御了承願います。
  225. 小松幹

    小松委員 高率適用制度を考えたことについて、大臣はそれなりの意見を述べたが、私に言わせるならば、底が抜けておると思うのです。ということは、いわゆる米の食管会計から払い下げる財政資金というものが農林中金に集まったときに、銀行はどこをねらっておるか。いわゆる高率適用制度で日歩二銭四厘を考えておったときに、農林中金から二銭で再割引ができるような格好になれば、銀行筋としては、何も日銀に頭を下げて高率適用制度の二銭四厘を借りる必要がない。農林中金に行けば二銭で再割引ができるということを考えたら、これは口で言うだけで実際はできていないのみならず、大臣が心配しながらも、現実は貸し出しは強気でどんどん出ておる、大臣が心配しようがしまいが、とにかく銀行貸し出しが預金の率よりも上っておるという現実は、日本の経済の規模が大臣の去年考えた考え方よりも、ぐっと進んできておるということを、私は如実に考えておる。いわゆる経済の基礎が昨年とずっと違ってきておるということを、私は指摘しなければならぬと思うのです。のみならず、大臣が心配しておるところの設備資金が増大しておる、こういうことを言われておりますけれども、私は設備資金が増大するということは、日本の経済において最も大事なことである、特に今年の貸し出しの設備資金の最も大きいのは、中小企業のいわゆる店舗改造によるところの貸し出しが多かった。これは輸送とかあるいは電力に関係しなくして、実際は中小企業発展を意味しておるのだ、かように考えておるのです。そういう点について、これは中小企業のほんとうの発展をしておる過程だ、大臣はこういうような意味から貸し出しというものをお考えにならなかったかどうか、その点をお伺いしたい。
  226. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 少し誤解があるようです。私が何か貸し出しを非常に押えてやったようにおっしゃるのですが、そうではないのです。前の貸し出しがふえたところを何も非難してはいない。今後は日本の経済を拡大しようとしても、第一輸送がきかぬじゃないか、運輸も限界に来ておる、だからこの辺に来ると、やはり今後設備拡張にしても慎重に考えていかなくちゃならぬといって、前のことをかれこれ言っているのでは決してありません。また今度の貸し出しがお説のように非常にふえました。何倍とふえております。前年度に比べると四倍くらい貸し出しがふえておるでしょう。しかしそのふえておるのをしさいに見ると、今おっしゃるように中小企業のふえ方も多い。これは景気がよくなって、中小企業にしても金融のベースに乗って資金を受け入れられるようになった、私はこういうふうに考えて、まことにけっこうなことであると思って、それを別に押えておるわけでも何でもありません。そういうことは十分考慮しております。  それから先ほど高率適用と農中の関係を言いましたが、農中にそういうように金があるのですから、日本銀行に来なくてもいいわけです。日本銀行から出る金はいわゆる蓄積資産でなく、新しい信用の追加になるから、これに来ることは通貨政策としては、やはり厳重なかまえを持たなくちゃならない。農中のは蓄積資金なんです。根ができて、その代金として所得になって、それが集まって農中へ預金になっていくのですから、これが使われることは私は異存がないのです。そういう点も誤解のないように願いたいと思います。
  227. 小松幹

    小松委員 大臣はそういうふうに言っていますから、私はそれをそれなり信じますが、とにかく抑制しようという意欲が動いたことは事実でありますが、これから先、経済の規模を考えて貸し出し等の問題も御考慮になっていただきたい。このことを申し上げておきたいのです。特に設備資金が増加するということは、私は中小企業関係から考えても、あるいは国際的な水準から考えても、設備資金の増大ということは当然あり得ることで、これが一つのファクターになって貸し出しが多くなる、こういうこともあると思うのです。さらにもっと大きく言えば、経済の規模はきょうの現状から考えるよりも、あすの日本ということから考えた場合には、インドあるいはアジア諸国との貿易をするのには、必ず単なる片貿易でなくて、バーター貿易をしなければならぬ、あるいは日ソの貿易ができれば、そこに大きな発展の経路もあると考えるときに、やはり経済というものは膨張していくのだ。その過程には私は、日本の底の浅い経済において、貸し出しというものが円滑に行われなかったならば、設備もあるいは貿易の増大もできぬのじゃないか、かようなことを考えております。特に失業者が多いというこの現実をとらえた場合に、失業者はどこで救済されておるかというと、今の実態から見て、鉱工業の成長ぶりに対して失業者はバランスがこわれておる。鉱工業が上るに従って失業者が吸収されていけばいいのですけれども、鉱工業はどんどん発展していくけれども、その割に失業者が救済されていない。ということは、それじゃどこに行っておるかと言えば、中小企業に流れておるということを意味しておる。同時に最近の国勢調査の結果でも、第三次産業いわゆるサービス産業等に流れておるということから考えたなら、私は製造工業だけが貸し出しの対象ではなくして、第三次産業にも貸し出しを十分考えるだけの雅量がなければ失業者は救えないのだ、中小企業は救えないのだという観点を持っておるのですが、大臣はこの点についてどういうようなお考えを持っておられるか。
  228. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 日本の産業構造からいっても、中小企業の重大なことは申すまでもありません。また今御指摘の雇用の点から見ても、中小企業が大切であることも申すまでもありません。従いまして中小企業金融ということは、何も当面ばかりじゃありません、経済を扱っておるものとしては、常に重大な関心を寄せて、これが育成強化に努めなければならぬことは申すまでもないのであります。また金融についても先ほどから申しましように、今回非常に一般銀行の貸し出しがふえております。ところが現実貸し出されるのも中小企業への貸し出しが非常にふえておる。これは統計でちょっと気がつきませんが、実際は中小企業に対する銀行の貸し出しがふえております。しさいに検討すれば、中小企業向けの金融の金額はおそらく何十億とふえておる。これなんかやはりいかに中小企業に金が行っておるかということを示しておるのでありまして、決してそっちの方面に金を押えるといいますか、そういうことは考えておりません。年末というふうなことに限りません。中小企業については特別にやっていかなければならぬ。特に今の内閣といいますか、もしくは自民党としても、中小企業には最大の関心と適切な施策をやっていくということだけは申し上げておきます。
  229. 小松幹

    小松委員 大臣は日銀におられたから金融の大御所、番頭としての老婆心が先にくるから、やはり貸し出しには預金の帳づらとバランス・シートを見て、すぐに警戒心が働くのではないかと思いますが、そういう警戒心ももちろん必要でございましょうけれども、今の産業形態と失業者の動いている状態を考えたときに、どうしても中小企業に失業者が吸収されなければならないような運命を持っておる。そこで貸し出しも銀行には特別に一千四百億の貸し出しを今度はやって、特別なワクが設けてありますが、そういうところに貸し出しを制限するというあなたのちょっとした片りんでもうかがわれると、被害を受けるのは中小企業が一番被害を受ける。担保が小さい、あるいは返済能力の観点から考えてもどうしても中小企業が貸し出しの抑制を受ける、こういうことから考えて、今後は一つ中小企業の育成強化のために貸し出しをゆるやかにやっていただきたいことと、特に先ほど言いましたように第三次産業――製造工業のみならず第三次産業への貸し出しのワクを広げていくような格好にしてもらえないだろうか、こういうことを考えるのです。製造工業でない第三次産業にまで貸し出しを十分考慮に入れる余地があるかないか、その辺のあなたの一応の見通しをお伺いしたいのです。
  230. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 製造工業以外のものについても、むろん考えていかなければなりません。特にサービス業を指摘になったようですが、日本の観光事業というものは、日本に資源がないないというが、気候がいいとかあるいはまた風光の明媚であるとか、こういうことはやはり天然資源ですよ。これを十分生かして観光事業というものを育てていくことについては保護をし、育成をいたします。
  231. 小松幹

    小松委員 それでは金融全一般の貸し出しから、さらに年末金融についての質問をいたしますが、きょうもたしか本会議でこの年末金融の促進決議案が上るような予定になっておりますが、これは何も国会の与野党が考えるだけでなくして、政府も実際的に考えておると思いますが、決議の上る上らないのは別にいたしまして、実際年末の金融をどのようにしようと具体的にお考えになっておるか承わりたい。
  232. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えしますが、今日の金融情勢は別にそう心配することもありません。私は年末もきわめて平穏に行くだろうと思う。ただその中にありましても、中小企業については、先ほどから申しますように、格段の配慮を加えていきたい。従いまして政府関係の、たとえば国民金融公庫とかあるいは中小企業金融公庫とか、こういうものについては特に資金量もふやし、貸し出しワクも拡大していく、こういう措置をとるのであります。その他商工組合中央金庫等も、農中あたりにあります金をそれぞれ回して、中小企業向けの商業資金をふやす、こういう措置もとって参りたい。それからさらに一般市中銀行についても、中小企業金融については特に配慮を加えまして、ただいまそれぞれ指導をいたしておるわけであります。年末金融――特に年末であるからどうという情勢では今日はありません。これは御心配にならなくてもけっこうであります。
  233. 小松幹

    小松委員 政府が最近年末金融対策として出しておるのに、やはり国民金融公庫の貸し出しワクの増大、中小企業金融公庫のワクの拡大等、大体政府が考えておることば年末の貸し出しワクの拡大ということのみに重点が置かれておるように考えます。さらに商工中金たりでも残高百億の増加という程度だと思いますが、三・四半期の貸し出しのワクを拡大するという、そのワクの拡大という便法だけでは事足りないのではないかと思うのです。先般の商工委員会でも、現に与野党一致の決議として上っておるように、政府資金である資金運用部資金からの貸付を、さらに国民金融公庫、中小企業金融公庫よりしてはどうか、原資の拡大をはかってはどうか、こういうような意見もあるわけですが、その点についてただ規定された年末金融のワクの拡大だけで広くして、さらに原資を渡して、資金運用部資金の貸付の拡大を考えていないのかどうか、そのことをお尋ねします。
  234. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまのところ各金融機関にしても、経済の今日の状況を反映いたしまして、各金融機関とも資金の回転が非常にいい結果だと思うのですが、回収が非常によろしいのでございます。従いまして、貸出しのワクを広げれば回収金で十分間に合う、かように考えております。
  235. 小松幹

    小松委員 もちろん国民金融公庫、中小企業金融公庫は、いわゆる貸した金の引き揚げが順調に行っていますから、それがゆえにワクの拡大ができたのだろうと思うのです。しかし具体的に申しまして、現在十二月末までの中小企業金融公庫の第三・四半期の借り入れ申し込みが二百八十億ある。しかしそれに対して政府の考えておる貸し出しワクというものは今度改めて百十七億にしかなっていない。そうすると申し込み額の半分にも満たない金融ワクだとするならば、これは大臣のように楽観して適当にやったら大かたいいのだ、こういうことは言われないと思う。申し込みが二百八十億中小企業であるのだ。それのワクが百十七億しかないという現実なんです。そういう現実に立って楽観論を唱えておっても、これでは承知はならぬ。その辺についての大臣の責任ある答弁を承わりたい。
  236. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまのは決して楽観論じゃないのでありまして、現実に即しての判断でありますが、申し込みが非常に多い、申し込みが非常に多いものですから、その申し込みの全部というわけには事実行きかねる面があります。むろん必要があれば原資をふやすことに私は異論はありません。どうしても必要であれば、それをしぶって日本の経済がうまく行かぬから、そういうばかなことは言いはしません。実際において事が足っておればそれでいいのじゃないかというのが私の考えなのであります。
  237. 小松幹

    小松委員 事足っておればいいのだろうというが、足りないから申し込みがあるのだ。申し込みが多いからだという簡単なことでは済まされない。現実にが申込みが二百八十億あるということは、だてや酔狂で金を借りる申し込みをする者がありますか。だれだって年末には金がほしいから、中小企業金融公庫に申し込んでくるのです。今の大臣の言い方はまるで物見遊山で競輪、競馬の札を入れるみたいなことを言っている。はっきりした証人までつけて、中小企業金融公庫に申し込むのに、そういうのん気な申し込みはしていないはすなんです。その申し込みが二百八十億あるにかかわらず、百十七億しかない。あなたの今の言をそのまま信ずれば、そういう情勢ならばいつでも原資をふやしてもいいというお考えでありますが、その通り私承わってよろしゅうございますか。
  238. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは別に私は決してむちゃなことを申すわけでも何でもありません。そういうふうな中小企業金融機関に対する資金需要と資金量をどうするか、これは根本的に考えればいいのでありますが、今問題になっておるのは年末のことということであります。ですから年末のところは、今申しましたことで十分間に合う、これは時間的ないろいろな問題があります。中小企業金融のあり方としては、今まで原資の点もいろいろありましたから問題もありましたが、今日以後においては相当、たとえば預金部の金も昨年は悪かったけれども、ことしは相当伸びもいいからこの次は原資は考える、こういうところは何も年末に限りたわけではありません。今申した年末の点は相当回収することも出てくるから、年末の分には十分応じられる、かように申したのであります。
  239. 小松幹

    小松委員 大臣は聞き違えておるのじゃないかと思うのです。私は年末の金融のことを言って、しかも先ほどまた中小企業金融公庫の申し込み額が二百八十億というのは、この第三・四半期の申し込みなのです。十月以降十二月の年末の申し込みがそれだけある。それが現実において半分にも満たない制限を受けるというか、あるいは原資がないというか、そういう格好になっておる。今私が二百八十億という数字を一例として出したのは、年末の第三・四半期の申し込み額です。だから全体一年間を通して言っておるのじゃない。その点について大臣の再答弁をお願いします。
  240. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は今数字的にどういうふうになっておるか、これはまだ当局を呼んで聞いてみなければなりせんが、しかし私の聞いておるところでは、これは銀行局の判断でありますが、回収金でもって年末が十分まかなっていける、こういうふうに承知いたしております。一応さよう御了承願います。
  241. 小松幹

    小松委員 まことに責任のあるようなないような答弁でありますが、今言った銀行方面からも聞いておるというのは、銀行方面中小企業に対する貸付のワクと思うのですが、中小企業の中でも零細企業は普通の市中銀行の中小企業のワクにはなかなか入り得ないのです。これは担保力というか、あるいは信用度の低さからそのワクに入らなくてやむを得ないから、一番利子が安くて貸し出しが割とスムーズに行く国民金融公庫にぶら下る。あるいは中小企業金融公庫に入るわけです。だから銀行筋から言うところの中小企業を考えておるのじゃないので、むしろ程度の低い零細企業を持っておるところの国民金融公庫ないしは中小企業金融公庫の窓口を通しての問題を言っておるわけです。その点について大臣の御所感を伺います。
  242. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今申し上げた点は、特に最近の金融情勢から一そうそうなっておるようであります。言いかえれば、中小企業でもだんだんと普通の銀行の融資の対象になりまして、先ほど申しましたように普通銀行の中小企業向きの貸し出しが非常にふえておるということは、これを如実に示しております。従いまして、政府中小企業金融機関にいろいろと申し込まれてくる中小企業は、だんだんと零細といってはあるいは言い過ぎかもしれませんが、借り入れたいという金額等も小さくなっておる。それから借りようとしておる企業もだんだん小さくなっておる。こういうことは私はあるだろうと思う。これは、ある意味においては日本経済においていい傾向をとりつつあるということも言える。従いまして、そういうふうな客観的な状況の変化に応じて、政府中小企業金融機関は対応していく。言いかえれば、そういうふうな零細というのは当らぬと思いますが、だんだんと規模が小さくなって、あるいは借り入れ申し込みの金額の小さいものを対象として勉強する、こういうように今申したわけであります。
  243. 小松幹

    小松委員 最後に大臣が先ほどいいような悪いような返事をしたので確認をいたしますが、事実としてそういう庶民金融の場に貸し出しというものが殺到しておる実態から考えて、ただいまのいわゆる規定のワクを広げるという、ささやかな処置以上の原姿の拡大をお考えなさるかなさらぬか、そのことをお尋ねします。
  244. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 将来におきましては原資の条件にもよりますが、原次の許す範囲において拡大してもいいと思いますが、問題は中小企業、特に今お話の零細の企業に対する融資となりますと、もそれだけでは解決しにくいと私は思います。やはり一番可能な事柄としては、これは私の考え並んですけれども、いわゆる信用保証、これを非常に強化していく、これには国としても考えていく、こういう方向をとらないと、なかなか零細な中小企業金融というものはうまくいかないんじゃないかというふうに考えております。そういうことを総合的に、中小企業金融についてはほんとうに一つ、新機軸と言えば少し言い過ぎかもしれませんが、われわれとしても熱意を傾けて一つやろうという、一種の希望といいますか、理想を描いておるわけであります。御了承願います。
  245. 小松幹

    小松委員 それでは、中小企業金融が、年末が差し迫って非常に要望されておりますから、この辺で政府の善処を要望いたしまして、一応そのことについての私の質問を終りたいと思いますが、大臣に一つ二つだけ特別にお尋ねしておきますが、支払い準備金制度はおやりになる腹かどうか、そのことだけ。もう一つは、全然違う問題でありますが、先般の臨時税制調査会における考え方として、租税臨時措置法を全廃する、そうしてそこから課税三百五十億増収の一つのファクターにしたい、こういうことが出ておるわけなんですが、そのことについて。以上二点だけでございます。
  246. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。  この支払い準備金制度、これは中央銀行等の機能を円滑にするためには必要なものであると思いますが、大体これについては金融制度調査会でせっかく専門家が集まって研究を続けておりますので、その答申を待って結論を下してみたいと、かように考えております。  それから、もう一つは、租税の臨時措置をとったときには、客観的な経済的または社会的な条件から、そういう特に臨時の措置をとる必要があってやったのでありますが、それが、そういうものを取り上げたときから時間もたってくると、もうそういうことは必要でない情勢に変化しておるということになれば、むろんこれはすみやかに廃止すべきだ、こういうように考えております。すべて何もかもやめるというわけじゃありませんが、こういうものは、ともすると、一度なれると、初めはやむを得なかったにしても、やはりその必要がなくなってもそれにすがりたいというのが、これは人情みたいなものでありますが、それを一つこの際は思い切って是正していく。必要があるものは、国家的な意味におきまして、あるいは日本の社会的意味において必要であれば、これを残すつもりでありますが、必要でないものはやめる、かように考えております。
  247. 小松幹

    小松委員 臨時税制調査会では全廃というような意見が出ておりますが、大臣の今の意見を承われば、そのうちをより抜きして、廃するものは廃する、残すものは残すというようなふうに意っておりますから、いわゆる租税臨時措置法は結局において残るということとを大臣はおっしゃるわけでございますか。
  248. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は決してそういうわけじゃありませんので、今言うように、私の言うような趣旨から言っても、半分くらいはおそらく整理ができると私は思っておるのでありますが、気がまえとしては全廃するくらいな気がまえを持たなければ、これはなかなかやれないから、一ぺん全廃するくらいな気がまえを持ちまして、ほんとに必要であればそれをピック・アップして生かしていけばいいのじゃないかというような私の考え方であります。
  249. 小松幹

    小松委員 気がまえだけは全廃というのですが、全廃されて悪いものもあるわけなんです。その点について大臣に一つ注意を喚起しておかねばならぬと思いますが、まあ景気のいいところでは、一千億減税をして、その一千億の見合いに租税臨時措置法を撤廃して二百五十億の穴埋めをするという景気のいい話も出ております。そのうちに幾つもありますけれども、私はここに特に一つだけ大臣の耳に入れておきたい。大臣もおそらく承知していると思いますが、その中の七条の十項、十一項の医療給付に関する所得税の特例であります。これは医師、歯科医師等の健康保険給付の計算において二八%のみを課税するという特例でございますが、その特例を廃止するかどうかという問題なんです。これを大蔵大臣にお伺いしたい。同時に厚生大臣に伺いたいが、この特例を廃止するような意見があるのかどうか。大蔵省の方ではだいぶこの方を突っ込んで廃止するような研究をしているらしいのですが、大蔵大臣の考えと厚生大臣の考えを承わりたい。
  250. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御意見の趣旨を十分頭に入れて検討を加えたいと思います。
  251. 小林英三

    ○小林国務大臣 お尋ねの件につきましては、いろいろの経過もございますことでありますし、厚生省といたしましては、ぜひこの特例は存置してもらいたい、こう考えております。
  252. 小松幹

    小松委員 大蔵大臣は当らずさわらずのような御答弁でありましたが、問題は大蔵省にあると思うのです。厚生省の方では、省議をもって、これを廃止しては困るというようにまで言われて、大蔵省には申し出ているはずなんですが、肝心な大蔵省が積極的に廃止するような方向をとっているんじゃないかという疑いもあるわけです。その点は、そういう疑問を抱かれている大臣ですから、ここではっきりやらぬならやらぬと言っていただきたい。
  253. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、税金を払う方と税金を取る方の違いですから、どうしても話が合いません。しかし、私は、別に必要であるものまで廃止する、そんなことは考えていない。厚生大臣の御意見を聞きまして、また皆さん方の御意見も聞きまして、大いに検討を加えまして善処したいと思います。
  254. 小松幹

    小松委員 厚生大臣はそういうふうにはっきり申しましたから、あえて重ねて申し上げることはないと思いますが、これは、ばかやろう解散があったあの当時から、あの前の昭和二十六年ごろから、一点単価の問題で問題になっておる。そうして、暫定的に単価をきめ、点数をきめということに落ちついて見返りとして、租税臨時措置法の中に、免税として七二%の経費の免税を考えて、残り二八%だけを課税するということで一応手を打っておる歴史的な沿革があるわけです。この点は厚生大臣も十分御了承だと思いますから、やかましいことは申しません。そういうところで、一つ、今問題になっておるところの租税臨時措置法の改悪に対しては、大蔵大臣も厚生大臣もよほど注意をお願いしたいと思います。厚生大臣のさらに力強い御意見を承わりたい。
  255. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまはっきりと御答弁申し上げた通りでございます。
  256. 小松幹

    小松委員 そこで次の問題に入りますが、健康保険の改正を政府はこの前の二十四国会に出しまして、お流れになりましたが、あのときからいろいろと取りざたされていましたように、最近の健康保険の診療報酬の支払いが、二カ月を過ぎて、七月の払いが九月になり十月になるというような情勢になっておるのですが、その支払い状況を明確にここで、ごく最近のを、大臣の知っておる点においてお知らせ願いたい。
  257. 小林英三

    ○小林国務大臣 診療報酬の基金からの支払いにつきましては、御承知のように、二カ月日の末までに払うのが今日までの定則でございます。最近におきましては、大体一週間ないし二十日ぐらい、大体県の数にいたしますと三十六、七県が遅払いになっているのが今日の状況でございます。
  258. 小松幹

    小松委員 さようないわゆる支払い遅延の状態を、どういうような解決策で政府はやるのか。赤字が出ておる赤字が出ておるというが、一体その赤字は幾らあるのか、きょう現在におけるところの大かたの数字を示すのと、その解決策をここでお述べになっていただきたい。
  259. 小林英三

    ○小林国務大臣 できるだけこの保険料の収入、いわゆる収納率の増進に努力いたしますとともに、私ども、二十四国会において審議未了になりましたいわゆる健康保険の改正案、これをできるだけすみやかに本臨時国会に御審議を願いまして、そしてこれらの通過をはかりまして、これらの財政的の処置を講じたいと存じております。
  260. 小松幹

    小松委員 赤字の予定は……。
  261. 小林英三

    ○小林国務大臣 大体私どもがこの年度当初におきまして予定いたしておりましたのは、三十一年度の赤字といたしましては六十六億七千万円を予定いたしておったのであります。この行政措置の強化とか、あるいはわれわれが予定いたしておりました被保険者の増加が、最近この経済界の好転等も影響いたしまして、予定よりもずっとふえております。従いまして、そういうふうな面から申しますると、収入増になっておるのであります。しかし、なお年度末までの間におきまして、今日の立場からこれを勘案いたしますと、大体十八、九億円赤字が少くなるのじゃないか、こういうふうな見通しを持っております。
  262. 小松幹

    小松委員 厚生大臣は今はっきり言われたと思いますが、赤字の解消のために健康保険改正案を出すと、この前の案を出すように今言ったが、出すのか出さぬのか。この前の案を出すのか、新しい案を出すか、それをはっきり言っていただきたい。
  263. 小林英三

    ○小林国務大臣 大体私どもが予定いたしておりますものは、先回の政府提案につきまして衆議院におきまして修正されました方向に向いまして、この臨時国会にできるだけ早く提案をいたしたいと思っておるのであります。ただ、この一部負担の問題につきましては、できるだけ被保険者の持ち分を軽減いたしたいという方向に向って参りたい。こういう問題につきましては、与党のそれぞれの機関もあることでありまするから、十分に連絡いたして調整をとりまして、そうしていたしたいと、こう考えております。
  264. 小松幹

    小松委員 はっきりいたしません。改正案を出すというつもりなのか、はっきり出すのかどうかということと、まだその案がきまっているのかいないのか、そのことをお伺いします。簡単でいいです。
  265. 小林英三

    ○小林国務大臣 案はただいま私が申し上げましたように、予定をいたしております、すみやかに与党のそれぞれの機関に諮りまして、これを決定いたし、この臨時国会に提出いたしたいと、こう考えております。
  266. 小松幹

    小松委員 臨時国会の予定もあと一週間あるなしでありますが、いまだに案がきまらないで、これから政党に話して提案するというような遅鈍なことを、どうして今ごろになっておやりになるのか。臨時国会が開かれるまでにずいぶん長い月日があったはずなんだ。臨時国会が開かれて後も、まだ相当時間があった。いまだに、出すけれども、まだ今から相談して出すのだ、――あと何日あると思いますか。なぜ今ごろになって、そういうことを考えておるのか。その政治責任を私は追及したい。どういう意味でそれを出そうとするのか。今まで出さないで、あるいは出すような準備もしていなかったものが、急に今ごろになって、なぜ健康保険の改正案を出すような心組みになったのか、その辺を承わりたい。
  267. 小林英三

    ○小林国務大臣 健康保険の改正案につきましては、これは御承知のように、財政的の危機に直面いたしておりまして、これが建て直しをいたし、また将来に向いまして健全なる発展をいたすために、二十四国会に提案をしたのでありますが、厚生省といたしましては、あの際流れましたけれども、今日その気持においては少しも変っていないのであります。従いまして、今回臨時国会に出そうといたしまするこれの修正案につきましても、あらゆる角度から慎重を期したい、われわれといたしましては、こういうふうにいたしたいという予定は持っておるのであります。しかし、与党の正規の機関にも諮りまして、十分な慎重を期して臨時国会に出したい、こう思っておるのであります。
  268. 三浦一雄

    三浦委員長 小松君、本会議関係もございますから、どうぞ一つ御勘案の上に質疑をしていただくようにお願いします。
  269. 小松幹

    小松委員 それでは、ただいまの点をさらに追及いたしだいのですけれども、時間がないというのですが、あなたたちがそれほど慎重審議して出そうとなさる案を、あと五日か六日しかない会期に出して、国会に慎重審議してくれとは言われないと思うのです。しかも、聞くところによると、今度の改正案は、以前の改正案と趣きがちょっと変っておる、かように私は聞いておりますが、そういう変っているような案を、四五日もないような国会に、あわてて出す必要はないと思う。これは国会軽視もはなはだしいと思う。二十五日間あるのを、最後のたった五日間のうち、まだ党議できめておらぬ、あと五日か六日で通そう、衆参議院を五日か六日で通そうなんて、むちゃですよ。そういうことを厚生大臣が今ごろになってここで発表するということは、はなはだ遺憾なことで、そういうことは、われわれ国会を軽視するもので、出す必要はないと思う。撤回してもらいたい、そういう意図は。その辺どうですか。撤回する意思があるのですか。やはり今国会に出すのですか。出すならいつ出すか。それをはっきりしていだたきたい。
  270. 小林英三

    ○小林国務大臣 ぜひともこの臨時国会に提案をいたしたいと思っております。その時期につきましては、きわめて近いうちに出したいと思っております。
  271. 小松幹

    小松委員 きわめて近いということは、一週間後でございますか、何日後ですか。それをはっきりしていただきたい。きわめて近いというのは一週間後ですか。
  272. 小林英三

    ○小林国務大臣 私の考えといたしましては、一両日中に出したいと考えております。
  273. 小松幹

    小松委員 そこで、一つ問題があるのは、あなたの今一両日中に出すと言うその改正案は、社会保障制度審議会に諮問をなさったかどうか。そのことをお伺いいたします。
  274. 小林英三

    ○小林国務大臣 社会保障制度審議会には正式の諮問はいたしません。ただ、私どもといたしましては、事情をいろいろ申し述べまして、御意見をお聞きしたわけでございます。
  275. 小松幹

    小松委員 そこで、今まで正式には諮問しない。正式に諮問しないような案を国会に提出することは、まかりならぬと私は思う。ということは、健康保険法第二十四条第二項に、社会保険審議会に諮問をしなければならぬように出ておる。だから、厚生大臣はあわてて二、三日うちに出さないで、社会保険審議会に諮問をして、その諮問の上において出してもらいたい。諮問をしないでかようなことをするのかしないのか、このことをもう一回聞きます。
  276. 小林英三

    ○小林国務大臣 いたすつもりはございません。
  277. 小松幹

    小松委員 これは大へんな犯罪行為だ。厚生大臣みずからが健康保険法の第二十四条をじゅうりんする行為なんだ。はっきりその法律の第二項に、社会保険審議会に諮問して――もっと詳しく言えば「健康保険事業ノ運営ニ関スル事項ニシテ、企画、立法又ハ実施ノ大綱ニ関スルモノハ予メ社会保険審議会ニ諮問スルモノトス」とある。それを諮問しないで提案するということは、はなはだ遺憾であるが、その点、厚生大臣はなおそういう健康保険法をじゅうりんしてでも提案するという意図があるのかどうか、大臣の所見を問う。
  278. 小林英三

    ○小林国務大臣 私どもが二十四国会に健康保険の改正案を出します際には、社会保険審議会には、私どものいろいろの案を構えまして、これをことごとく社会保険審議会に諮問をしたのでございます。従いまして、これを今日法律上あらためて諮問をする必要はないと考えております。
  279. 小松幹

    小松委員 時間がないそうでございますから、大臣にこれだけ言っておきます。大臣は、二十四国会終了後多くの月日を、このことのあることを承知しながら、改正案をふところにして何ら用意せずして過ごし、会期末にあわてふためいて出すということは、これは国会軽視、われわれを侮辱するもはなはだしいと思う。それは単に赤字解消という名のもとにやる卑劣なる行為にしかすぎない。いわゆる公明なる政治においてさようなことが許さるべき問題じゃないということと同時に、その案が健康保険法に示されてあるところの社会保険審議会の諮問を経ずしてやみからやみのうちに国会会期末に二、三日のうちになそうという、その卑劣さに至っては、これは厚生大臣の最も卑劣なる行為であると思う。私はまだこれは追及しなければならぬと思っておるけれども、時間がないというから、これだけにとどめておくが、こういう案をもし出すならば、社会党は絶対通さない。この健康保険法は過去二回流れておる。あなたも二回これが流れたということは知っておると思う。こういう卑劣なる行為をして出すならば、これはいわゆる世論に問うてでも私は通されないと思う。社会保険審議会に戻しはさい。私はこのことを申し上げて質問を終ります。
  280. 三浦一雄

    三浦委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後六時四分散会