○加藤高藏君 私は、ここに、自由民主党並びに
日本社会党共同
提案にかかわりまする
日中貿易促進に関する
決議案の
趣旨を御
説明申し上げ、議員
各位の御賛同をお願いいたしますとともに、
政府においてこれが
趣旨を了とせられ、万遺漏なく適切なる
措置を講ぜられんことを要望するものであります。(
拍手)
まず、
決議案を朗読いたします。
日中貿易促進に関する
決議案
本院は、日本並びに中国の双方で
開催した商品見本市の成果にかんがみ、
政府は、ココム及びチンコムの緩和と民間通商代表部設置並びに直接決済による支払方式を確立するために必要なる
措置を早急に採り、やがて
政府間
貿易協定を締結する等日中
貿易の一層の促進を図るべきことを要望する。
右決議する。
現下の国際情勢の推移と、日本並びに中華人民共和国において相互に
開催された商品見本市の成果によって、両国間の
貿易関係は著しい拡大の転機を迎えんとしている現状にかんがみ、
政府は、この際ココム並びにチンコムの制限を一そう緩和し、日中両国間に、民間通商代表部の相互設置と直接決済による支払い方式を確立するとともに、科学技術の交流を促進し、やがては
政府間
貿易協定を結ぶなど、日中
貿易の一そうの促進と発展のために最善の方途を講ずべきである。
以上が
決議案並びに
提案理由であります。
今さら申すまでもなく、わが国の
経済は、その
貿易に対する依存度が高いため、世界の
経済的動向にきわめて敏感であることは当然であります。このため、わが日本の
経済がその自立と繁栄、安定と発展とを求めるためには、当然長期かつ永続性のある新市場を確保することが必要であります。その意味におきまして、地理的にも、また歴史的にも、わが国にとって密接な関係のある中華人民共和国との
貿易が急速にその比重を高めて参りましたのは、当然のことといわねばなりません。御
承知のごとく、私どもは、すでに
昭和二十八年七月と本年三月の二回にわたり、衆議院本
会議におきまして、
日中貿易促進に関する
決議案をそれぞれ満場一致可決いたしました。本日ここに上程いたしております
日中貿易促進に関する
決議案は実に三度目の上程でありますが、これはまさしく日本国民がひとしく熱望し発展せしめて参りました日中
貿易の歴史の三つの段階にそれぞれ照応するものであります。
第一回目の決議は、国民的要望にこたえて、それまで終息しておりました日中
貿易を再び復活させた、歴史的な決議でありました。また、本年三月に行われました第二回目の決議は、北京、上海日本見本市の
開催を前にいたしまして、特にココムの輸出制限を緩和することを要請するものでありまして、自由主義諸国に先がけて挙行される中国での見本市の成否をかけた、まことに重大なる決議でありました。幸い、
政府は、これら国民の声を代表する決議を尊重されまして、北京、上海日本商品見本市への適宜の処置を講ぜられたのであります。
この見本市は、すでに御
承知のごとく、本年十月北京において
開催され、今また上海において
開催中でありますが、その成果は私どもの予期いたしましたより以上に輝かしいものでありました。それは、かつて同じく毎年北京で開かれたソ連や東欧諸国の見本市をはるかにしのぐほどでありまして、入場者が一日平均七万人をこえたという従来その比を見なかった一事によっても、うかがい知ることができるでありましょう。のみならず、この見本市において、中国国民は、わが国産業
経済の水準に瞠目し、その工業力の高きを再認識するとともに、日常消費物資に対しましても特になつかしさと親しみの情を新たにいたしたのであります。これらの所産はすでに日中
貿易の面に顕著な影響を現わしておるのでありまして、西欧諸国に先んじてわが日本製品が中国六億の国民生活の上に大きな地歩を固める足がかりとなったことは、まことに御同慶にたえません。このような大きな成果は、実に、民間諸団体の
努力とともに、国民的願望の結集のたまものであると信ずるものであります。
さらに、
政府は、去る九月にも、また、閣議におきまして、ココムの禁輸について特認を一そうゆるめるという決定をいたしました。これはまことに時宜に適した
措置でありまして、私どもの心から賞賛を惜しまないところであります。これによりわが国の対中国
貿易は一段の進捗を見たのであります。しかしながら、その後の世界の趨勢、特に東西
貿易の発展を見て参りますと、すでに特認の活用だけでは
時代の進展についていけないという情勢であります。今ここにあらためて
決議案を
提出いたしましたゆえんは、日中
貿易が新たな発展の転機に差しかかっているからであります。
すでに中国は第一次五カ年計画を達成しようとしており、目下明後年から開始される第二次五カ年計画の準備を進めておるのでありまして、これに要する膨大な建設資材、鉄鋼製品等の需要が起ってくることは言を待たないところであります。さらに、この建設について中国六億の国民の生活水準がいささかでも高まることを考えますならば、対中国
貿易の将来はさらに飛躍的に伸張する可能性があると言えましょう。西欧諸国は、この際中国の市場を確保するために虎視たんたんとしておるのであります。地理的に絶対的に有利なわが国が手をこまぬいている
理由は絶対にないのであります。わが国の対中国輸出が中国のこの建設にどの程度の比重を占めるか、これが今後の中国市場におけるわが国の地位を決定するでありましょう。
さらに、最近の日中
貿易の発展は、その取引品目その他に著しい変化を見せて参りました。今後、わが国からは機械類、プラント等の輸出が期待され、また中国からは、長期永続的な鉄鉱石、石炭、工業塩、農産品等の輸入が要望されてくるでありましょう。先ほども申しました通り、西欧諸国は中国市場への進出に懸命の
努力を示しております。このような対中国
貿易の段階において、私どもは、ぜひともココムの制限を一そう緩和し、また両国間に通商代表部を設置することによって、この趨勢に対処しなければならないと考えるのであります。
去る十月、
日中貿易促進議員連盟の代表団が中国を訪問いたしまして、中国側と日中
貿易問題について協議し、日中
貿易の一そうの促進に関する共同コミュニケに調印いたしたわけであります。このとき、中国側は私どもの主張をいれ、民間の代表部を交換することを認めました。また、支払い決済問題については、今直ちに
政府が中国
政府との間に支払い協定を締結することの困難さは万々
承知しておるところでありますが、しかし、民間為替銀行をして直接決済の方式を確立せしめることは、緊急の要務であり、また可能なことであると考えるものであります。(
拍手)
日中両国間の科学技術の交流もまた重要な問題でありまして日中両国
経済の将来に不抜の関係を打ち立て得るでありましょうことは、今さら言を待たないところであります。
先にプラント輸出が新しい特徴であると申しましたが、これを拡大発展させるためには、
政府保証の裏づけがなければ、プラント輸出は一種の冒険となるわけであります。ここに強く
政府のバック・アップを必要とする段階にきたといわなければなりません。近き将来日中両国の
政府間において
貿易協定の締結が強く要望されるであろうことは疑いのないところであります。
今こそ、両国
貿易の新たなる大転換期に直面いたしまして、他国に率先して
わが国経済自立と発展を確立するためのあらゆる施策を打ち立てるべきであるといえましょう。幸いにして、今
国会におきまして日ソの共同宣言が可決され、その国交が回復されたのでありますが、このことは日中間の関係に対しましても大きな影響を与えずにはおかないのであります。
政府は、このような新たなる情勢において国家
経済百年の計を打ち立てるため、今こそ対中国関係の調整に一そうの意を注ぐべきときかと存じます。従いましてその
経済的大道の基礎を開くために、
政府は、本決議の
趣旨を了とせちれ、ココムの禁輸を一そう緩和するとともに、民間通商代表部の相互設置と、直接決済による支払い方式を確立し、また、最近の課題たる科学技術の交流を促進せしめ、やがては
政府間
貿易協定を締結するなど、日中
貿易の促進のために万全の
措置を講じられんことを切望いたしまして簡単ながら、本
決議案の
趣旨説明にかえる次第でございます。(
拍手)