○田中織之進君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました千九百五十六年の
国際小麦協定の
受諾について
承認を求めるの件に対しまして、
反対の意思を表明せんとするものでございます。(
拍手)
国際小麦協定は、一九四九年、
小麦の重圧的な過剰及び破局的な
不足が
生産者及び
消費者に対して与える深刻な困難を克服するために締結されたものでありまして、
わが国は、ただいま
委員長報告のありました
通り、一九五三年の更新に当りまして当時の内外の
食糧事情等を勘案いたしまして
当事国としてこれに参加いたしました。
わが国の
年間輸入量二百万トンの半分の百万トンについて
買付保証を行なってきたのでありますが、本
協定が本年七月末をもって
効力を失いますので、これに先だって、本年四月の二十五日ロンドンで招集された
国際小麦会議において、従来の
協定を
修正、更新することになり、
わが国は本年五月十五日にこれに現
政府が署名したものであります。
政府が本
協定に参加いたします
理由としてあげている点は、
提案理由にも述べてあります
通りに、
わが国の
小麦の
通常輸入数量の約半分に当る百万トンの
小麦を、
世界の
需給事情の
変化にかかわらず、安定した
価格で買い入れることができることによる
経済的利益と、
小麦事情に関する
情報交換の二つでございまするが、まず
経済的利益について検討して参りますると、外務省並びに
農林事務当局の言うところによりますると、
価格は
一定水準、すなわち
最低一ドル五十セントから
最高二ドルの間で自由に取りきめられるのでありまして、
価格は一
ブッシェル二ドル以上にはならないという
見通しの上に立っているのでございまするが、現実には、現在の
小麦の
需給関係のもとにおいては、この
協定価格よりも下回る
見通しが十分つくのでございます。
一例を申し上げれば、本
協定に参加していない
英国が、一九五四年に五万九千トンを四百十万ドルで輸入いたしましたのが、一九五五年には、
数量を約二万トン
増加いたしまして、七万九千五百トンを前
年度の約半額に近い二百六十万ドルで輸入しておるのであります。この中には非常に安いソ連産の
小麦が含まれているのでございまするが、この間の
事情につきまして、
英国の
ザ・タイムス紙が、本年の二月の二十二日に次のような一文を掲げているのでございます。
協定——これは
国際小麦協定の
意味でありますが
——に入らなかった期間中安い
小麦を買ったことは、すなわち
小麦粉の
価格が安くなったことを
意味し、パンの
補助金の形において支払われる
税負担を何十万ポンドも軽減する結果になったことを
意味する、こういうことを
ザ・タイムス紙は掲げておるのでございます。換言すれば、この一例によりましても、最近の
需給関係では、
国際小麦協定以下の
価格で輸入できるということを私は実証していると思うのでございます。(
拍手)ことに、近く
効力を発生いたしまする日ソ
貿易協定によりまして、安いソ連産の
小麦を買い付けることも可能に相なるのでございまして、遠く海洋を渡って高い運賃を払って参りまするよりも、この
関係の運賃の差だけでも安いものが今後日本に入り得る
見通しが十分立つのでございます。つまり、
政府が言うておるがごとき
経済的な利益は、この
協定に参加することによっては生まれてこないというのが、われわれが本
協定に参加することに
反対をいたす第一の
理由でございます。(
拍手)
第二の
反対の
理由は、これらの外麦の輸入に伴いまして、内地の
小麦生産、従って、日本の農業に対する重圧をわれわれは避けなければならないという点でございます。重光外務大臣は、本日の農林水産委員と外務委員の連合
審査会におきまして、近く改訂を
予想されますところの日豪通商条約におきまして豪州側は、日本を最恵国待遇といたす交換条件という
意味におきましてわが方によるところの豪州
小麦の輸入
数量の
増額を現在申し入れてきておるということを明らかにされたのであります。その
数量は従来の十三万五千トンの約二倍に当りまする二十三万トンということでございます。さらに、先日アメリカの農務省の次官補が参りまして、第三次のいわゆる余剰農産物の日本への受け入れの交渉が行われたわけでありますが、これにおきまして、アメリカ側といたしましては、本
年度の二十三万トンの倍以上の六十万トンの
小麦の日本への余剰農産物としての輸入の希望を申し出てきております。
わが国は、幸いに、昨年、本年と引き続いて米作が非常な豊作でございまして、
わが国の食糧
事情が著しく
緩和されて参っておるのでございます。それにもかかわらず、
政府が、毎年のように、
小麦を中心といたしまして、輸入食糧を年々
増額しておるということについては、実は根本的に検討しなければならぬ時期に遭遇いたしておると思うのでございます。(
拍手)なるほど、食管特別会計におきましては、これらの安い
小麦を輸入することによりまして、食管特別会計において百億円以上の差益金をあげております。さらに、余剰農産物の受け入れによりまする代金につきましては、八郎潟の開拓その他日本の開発のためにこの
資金が使われるという利便はありましょうけれども、豪州やアメリカの
小麦は御承知のように軟質の
小麦でございまして、この点は
わが国の農村において生産するものと同一品種であります。その
意味において、著しく内地の
小麦に対する圧迫という形を加えて参るのでございます。最近裏作としての
小麦の作付反別が著しく減少しておるという傾向は農林当局も認めざるを得ないのでありまして、その
意味における、いわゆる裏作の作付転換が大きな農林
政策の重要課題になっておることも事実でございます。それにもかかわらず、この
協定の
審議過程を通じまして、農林当局におきましては、外麦によるところの内地の産麦に対する大きな圧迫を認めながらも、これをどう切りかえていくかということについては何らの具体的な
対策を持っていないのでございます。従いまして、われわれは、
協定による買付
責任を持つことを考え直さなければならないというのが、われわれの
反対の第二の
理由でございます。(
拍手)
第三の
反対理由は、
政府がこの
協定に参加する利益の第二にあげておりまするところの、
小麦を中心といたします食糧
事情に関する
情報交換の便宜があるという点でございますが、
わが国は別途FAOへも加盟いたしており、近く国際連合に加入することも実現の
見通しを持っておるのでございます。さらに、
世界の産麦地には日本の輸入
業者のそれぞれのブランチがございまして、こうした
小麦事情についての情報を収集する点については、別段この
国際小麦協定に入らなければならないという必要をわれわれは認めがたいのでございます。
以上、要するに、一九五三年の
協定に参加した当時と内外の食糧
事情が大きな
変化を来たしており、今回の
協定に当りましては、従来の四十五カ国の加盟国が四十カ国に減少いたしておるという事実も現われておる現在におきまして、この
小麦協定に参加することによって高い外麦を輸入する
責任をとらされ、それによって日本の農業を圧迫することは絶対に避けなければならないというのが、わが党の
本案に対して
反対する
理由でございます。
以上をもって私の
討論を終ります。(
拍手)