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受田新吉君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程せられました
公務員給与に関する
緊急質問を行わんとするものであります。
本
国会の劈頭におきまして、わが党の
水谷長三郎並びに参議院の千葉信の両
議員が
公務員給与に関する
質問をいたされましたに対しまして、
大蔵大臣並びに給与担当
国務大臣より、はなはだあいまいな
答弁を行われたことは、御記憶に新しいところでございます。(
拍手)私は、ここにおきまして、具体的事例につきましてさらに率直な
質問を行いますので、
関係各大臣の明確にしてかつ具体的な御
答弁を要求いたします。
さて、淺井人事院総裁は、
昭和二十六年八月、一万一千円ベース勧告の際に談話を発表いたしまして、争議権も団体協約締結権もない
国家公務員については、国は率先してその
生活を保障するようにしなければならない、この意味において、人事院の給与に関する勧告権は重大な意義があり、これあるがゆえに
国家公務員の給与問題が民主的な手続で公正にかつ公然と
国民の前で討議されるのである、人事院としては、公務員の平均
生活水準を
国民全体のそれと合致させるように
努力した、ゆえに、この勧告は公務員を満足させると同時に、納税者である
国民全体も納得させ得るものであると確信し、すみやかにこれが実施されるよう
国会及び内閣において考慮されることを切望する、と述べておられるのでありますが、今日もその心がまえに変りはないと確信するものであります。その人事院が本年七月
政府並びに
国会に勧告した給与改善案には幾つかの重要な問題点がひそんでおるのであります。
まず根本的問題点は、ベース・アップをなぜ行わなかったかということであります。人事院は、その報告書におきましても、学歴別、勤続年数別の比較で、民間給与との
関係を、一一%民間給与は高まっておると認めております。さらに、最近の統計資料によりますれば、毎勤、本年八月の全産業における臨時手当を除いた毎月きまって支払われる金額は一万六千八百三円であります。現行ベースの算定基準をなしたのは
昭和二十八年であります。その年八月の一万四千三百七十三円に比較いたしますと、本年八月は二千四百三十円、すなわち約一七%の上昇を示しておるのであります。しかも、この毎勤における全産業は、平均賃金の低い生産労務者が約七割を占めておるというのでありまして、管理、技術、事務職員が九割を占める一般公務員の平均給与と比較いたしましたならば、同一の談でないことはおわかりいただけると思います。従って、官公労の二千円ベース・アップの要求が十分な根拠を有するものといわなければならぬのであります。最近、定期昇給制度のワク内におきまして給与水準の操作が行われる傾向があるのでございます。今回の人事院の態度もその一つであります。しかし、ベース・アップと定期昇給制度とは全然別のものであることは、今日学界の常識となっております。従って、ベース・アップにかわる定期昇給制度という観念は、まことにおかしいものといわなければなりません。
第二は、等級ごとに昇給カーブが違っておりまして、下級の等級ほど昇給率が低いという現象が出ております。第三は、新俸給表の切りかえによりまして、おおむね一号俸の引き上げを行う場合には、上下の開きがますます拡大していくという現象が起っております。第四は、毎年三月に支給される特別手当が俸給等合計月額の〇・一五カ月分となっておりますが、その算定基礎ははなはだあいまいであります。その他、実施時期が明確にされていないこと、医療
機関の職員俸給表に医師や看護婦の給与が著しく低位であること、薬剤師が行政職に入ったりしておる点、職務の特殊性の検討が不十分である等、指摘すべき個所が幾つもございますが、これらの問題点の中には明らかに
政治的配慮を想察せしむる個所が見受けられるのでありまして、人事院の独立性いずこにありやを疑わしむるものが多々あることを忘れてはならぬのであります。
さて、以上を前提といたしまして、私は、
公務員給与の早急実施に関しまして、
鳩山総理大臣、倉石給与担当
国務大臣、一
萬田大蔵大臣並びに淺井人事院総裁に対しまして、本質的な
質問を試みんといたすものでございます。
第一に、
政府は人事院勧告を尊重して給与改善の検討をなしつつある旨の
答弁を聞いておるのでありますが、この際具体的にその作業の構想を伺いたいのであります。まず、公務員制度調査会の答申をいかに結びつけて検討されておるかということ、次に、人事院勧告にある給与改善方式をベース・アップ方式に改める用意はないかということ、民間給与と同様に初任給の引き上げをしてはどうかということ、さらに、公務員の職員組織は、民間会社のピラミッド方式ではなくして、戦後大量に採用された
人々が多数おるという、円筒形をなしておるということに対する特殊事情を考慮しておるかということ、これらがいかに運営されておるかを伺いたいのでございます。さらに、これが
予算措置におきまして、全産業民間給与と比較いたしましても、当然二千円の
増額を必要といたしますし、人事院勧告にも六十九億を要求しておるのでありまするが、
政府はこれらの状況をいかに判断され、採用されんとしておられるか、御
答弁を
願いたいのであります。なお、これが実施時期が年内であるか、一月であるか、あるいは新年度ともなるならば、これは勧告の精神にもとりまして、戦う武器を持たない公務員をして、いたずらに権力に屈従せしめる苦痛を与えるのみと思うのでありますが、すみやかなる
措置をいかにとられるかをお答え
願いたいのでございます。(
拍手)
いま一つ、十二月支給の期末手当は、過去四年間、例外なしに、法律または
行政措置によって
増額支給されて参りました。いわんや、本年は、新聞紙の報ずるところでは、
民間企業の年末手当は前年よりも著しく改善されており、かつ、日銀の十六日の発表によりますると、十一月上旬の卸売物価指数は大幅に上昇いたしまして、二カ年来いまだかつてない最高位を示しております。官公労期末手当二カ月分の要求というものを慎重に検討いたしましても、これが裏づけされるものであることを認めなければなりません。
政府は、法律的に、あるいは行政的に、年内に期末手当支給の見解を明らかにしていただきたい。もちろん、給与全般にわたっての税の減免
措置ということがあわせ考慮せらるべきことは当然でございまするので、この点も明らかにしていただきたいのでございます。こうして、これらの給与改善に充当するためには、当然
補正予算の
提出を必要とするものと思いまするが、
大蔵大臣の所信はいかがでございまするか、明確な御
答弁を
願いたいと思います。
次に、定期昇給のための原資の確保でございます。官庁の中には、限られた昇給原資を大半使い果して、十月または来年一月の昇給財源が枯渇しているところもあると聞いております。倉石労働大臣は、本年三月、官公労の闘争に際しまして、昇給原資は必ず確保するから安心せよと言っておられます。この差し迫った状況をいかに
救済するか、御
答弁をこいねがいたいと思います。
なお、淺井人事院総裁は、現に以上掲げました諸問題に関する勧告の
責任者といたしまして、はたまた、近ごろその独立性に対するきびしい批判をされているあなたの立場から、御見解を表明していただきたいのでございます。
次に、地方公務員
対策に関しまして、若干
自治庁長官の見解をただしたいと思います。
人事院勧告には、地方公務員の給与は
国家公務員よりもはるかに高いところにあると掲げられてありまするけれども、
自治庁最近の見解によれば、地方公務員は、昇給停止あるいは首切り等で、現に
国家公務員よりも低いところに置かれておる、という見解も聞いておるのでありまするが、
自治庁長官のこの勧告に対する御見解はいかがでございますか。
さらに、今回確定いたされました、ついこの間、十五日に確定いたしました地財法
適用による再建
地方公共団体、この公共団体は、その財政上の緊縮部門を、人件費、すなわち公務員の給与に重点的にしわ寄せをいたしておりまする結果、すでに昇給延伸を繰り返しつつあるところの府県では、重ねて昇給原資に厳重なワクをはめられるため、愛媛県のごとく、全職員の三分の一を、勤務評定表を作って、欠格者としてこれを除外して、その昇給を押えるという
措置をとっておるなど、再建の陰に公務員を萎縮せしめる暗い影が忍び寄っておることも忘れてはならぬのでございます。私は、
政府はこれらの給与水準の低い
地方公共団体に対し、ことに再建途上にあるこれらの府県に対しまして早急な具体的
救済策を講じ、また、
国家公務員の給与改善の場合には、当然これに準じまして同等の
措置を地方公務員に講ずべきであると
考えますが、
自治庁長官の御
所見を伺いたいのでございます。
さらに、現業公務員の施策につき、一点お伺いいたします。例を郵政公務員にとりまするならば、郵政公務員は、去る三月すでに中央調停
委員会の調停案を
政府並びに組合側双方が完全に正式に受諾しておるのにもかかわりませず、今日依然としてこれが解決を見ておりません。この点につきまして、調停委の権威を保ち、さらに
政府の
責任を果すために、いかなる
措置をしようと用意しておるのか、明確なる御
答弁を
願いたいのであります。
次に、地域給の
措置について伺いたいと思います。
昭和二十九年五月人事院勧告に基く地域区分改訂が今日そのままに放置されておるのでありまするが、さらに、去年十一月、公務員制度調査会は、その答申におきまして、諸手当の制度はできるだけ整理または簡素化し、実質的な減俸には絶対にならぬような手を打たなければならぬ、と答申をしておるのであります。いずれにせよ、
政府がいたずらにこの問題を逃避いたしまして、その解決を遷延せしめるようなことがあれば、これは重大な段階に到達するといわなければなりません。現に、全国約四千に上る合併
市町村におきましては、地域給の差等による人事交流の障害が起ったり、あるいは、地方自治法の二百四条に基きまして地域差を埋めるための調整手当を出していたところが全部支出禁止になりましたので、既得権侵害という事態が発生しておるということでございます。すなわち、地域給問題は、勧告案及びその他従来のいろいろな経緯を参照されまして、すでに七月より実施され大幅に
増額されておりまする隔遠地手当と比較検討して、すみやかなる
措置を講ずべきであると思いまするが、倉石、太田両大臣の御
所見はいかがでありますか。
最後に、いま一つ、私は、年内にぜひ
実現をはかられたい人道問題を
お尋ねしたいのでございます。すなわち、公務員を含む夫帰還同胞の留守家族に対する年末
措置であります。ソ連、
中国地区に残留する生死不明者を含めました全員に、
国家として、ささやかではありましても、年越しの一時金または記念品を支給して、戦後十一年間も筆舌に尽せない苦難の道を歩み続けられた、しかも強く生き抜いてこられました、これら同胞の方々を心からお慰め申したいものであります。私は、
厚生大臣並びに
大蔵大臣より、人道的見地からの
答弁をこいねがいたいと存じます。
以上それぞれの部門におきまして、
総理大臣以下
関係閣僚の誠意ある具体的なる御
答弁を要望いたしまして、私の
質問を終りたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君
登壇〕