○水谷長三郎君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
鳩山総理その他の閣僚の所信を問わんとするものであります。なかんずく、
鳩山総理の御答弁は、おそらくこの臨時
国会が最後になるでありましょう。議会政治家の有終の美を飾る上からも、誠意ある御答弁をお願いする次第であります。(
拍手)
まず、
質問の第一点は、臨時
国会の遅延についてでございます。わが社会党は、第二十四
国会終了後、憲法第五十三条の規定に基きまして、
日ソ交渉の中間報告、参議院選挙後の参議院の構成、北海道の冷害、九州の水害等に対する補正予算の編成等、再三再四にわたりまして臨時
国会の開催を要求してきたのでありますが、
政府は、てんやわんやの党、閣内事情のために、野党社会党の声を無視いたしまして、今日まで臨時
国会の開催をおくらせ、四カ月間にわたりましてこれを放置してきたのであります。これ憲法を無視するの暴挙といわなくてはなりません。(
拍手)特に残念なことは、
鳩山総理の訪ソに当りまして、われわれは、臨時
国会を開催し、全
国民の要望を
鳩山総理以下の全権にお伝えし、大いに激励して、老総理の
日ソ交渉への門出を祝さんとしたのでありますが、それが果せず、のがれるように
モスクワに行かれたことは、まことに残念しごくでございます。臨時
国会の開催を今日まで遅延させたのはどういう理由であるか、
鳩山総理の、率直なる、責任ある御答弁をわずらわしたいと思う次第でございます。(
拍手)
質問の第二点は
日ソ交渉についてでございますが、この問題は先の
質問者の
須磨君と若干重複するところもありましょうけれ
ども、しかし、
須磨君に対する総理並びに
外相の答弁はきわめて不満足でございますがゆえに、私の
質問に対しましては、
須磨君の
質問に対するお答えよりも、もっと誠意ある御答弁を願いたいと思う次第でございます。
鳩山総理は、昨日の本
会議における政局に関する所信の表明の冒頭におきまして、このたびの
モスクワ交渉がいかにも成功であり、最大公約を果したものであることを力説されたのでございますが、果して今回の
日ソ交渉は成功であったでありましょうか、よく考えてみたいと思う次第でございます。
鳩山内閣
成立後、最初に打ち出された公約は、言われる
通り、
日ソ国交回復でございました。
鳩山内閣は、その第一段階といたしまして、昨年六月から本年三月中旬まで、ロンドンにおきまして松本・マリク会談を行なったのであります。この会談の結論は、南樺太、千島、
国後、
択捉は
ソ連領である、
歯舞・
色丹は条件付で
日本に譲る、
日ソの国境線は根室、野付海峡を結ぶ線であるということでございまして、
日本が
領土問題を譲らない限り、
交渉が
成立せないということであったのでございます。さらに、本年七月の
重光・シェピーロア会談の結果は、
歯舞、
色丹を
日本の
領土とし、他の
領土は
ソ連への帰属を認めることという
平和条約方式であったことは言うまでもございません。
日ソ交渉慎重派の
重光さんが
モスクワに着くやいなや、早期妥結派に豹変されたということは、
ソ連が
領土について一歩も譲る気配がないことを示しておるのでございます。
さて、このたびの
日ソ共同宣言その他は、これら二つの
交渉よりも
日本の
立場がどれだけ有利になっているかを真剣に考えてみなければならないのであります。このたびの
日ソ共同宣言は、
言葉の言い回しこそ異なれ、ロンドン
交渉の結論を一歩も出ず、ある意味では
重光・シェピーロフ会談の結論よりも一歩後退しているといわなければなりません。この結果を成功と誇称する
鳩山総理の心境は一体いかなるところにあるのでございましょうか。
このたびの
日ソ共同宣言の第一の疑点は、言うまでもなく、
領土の問題でございます。
歯舞、
色丹の
領土は、
平和条約の
締結と同時に返ってくることは明らかでございますが、
共同宣言の中には
平和条約の継続審議はうたわれておりますが、
領土についての継続審議には一言も触れておらないのでございます。全権の一人河野農相は、本年五月九日、ブルガーニン・
ソ連首相と会見し、サケ、マスの暫定取りきめの発効と引きかえに、
国交回復の
交渉を七月末までに
再開すると約束したのでございますが、このとき
領土に関して何らかの密約がかわされていたのではないかとうわさされているのであります。さらに、今回の
モスクワ交渉におきましても、
鳩山・ブルガーニン往復書簡や、松本・フェデレンコ往復書簡におきまして、
領土全体について継続審議ということで
交渉を始めておきながら、
鳩山へ河野両全権が、国内に対する手前をつくろうために、特に
歯舞、
色丹の早期返還の格好を作ろうといたしました結果、かえって
国後、
択捉については永久に棚上げを暗黙に認めることになったのではないかという疑いがございます。かりに、そのような密約がないといたしましても、結果から見て、
歯舞、
色丹の返還を実現しようとすれば、やはり
国後、
択捉などの
ソ連への帰属を認めなければならないこととなるのではないでしょうか。総理の
所見いかん。ついでに、河野農林
大臣の
所見も
いかん。
第二の疑点は、
日ソ共同宣言に盛られておる五つの条件、すなわち、
戦争状態の終結、抑留者の帰還、大使の交換、漁業
条約の発効、
国連加盟の問題であります。まず
国連加盟の問題でございますが、
ソ連側は単独かつ無条件に
日本の
国連加盟を支持したのでありましょうか、この点をはっきりとさしていただきたいと思うのでございます。
ソ連が、外蒙古との抱き合せや、
中共の
国連代表権の問題などとからみ合せました場合、他の常任理事国が拒否権を発動したといたしましても、
ソ連は責任を免れるというような不幸な事態が起らないとは、少くともこの
共同宣言の表現からは保証ができないと思われるが、いかがでございましょうか。また、
日本の
国連加盟がいつ実現する可能性があるかということは、さきに、
総理大臣は、
須磨君の御
質問に対しまして、きわめて楽観的なお答えをされたのでございますが、
ソ連の
わが国国連加盟が単独かつ無条件ということがはっきりされておらない限りは、野放しの楽観は禁物であろうと思うが、総理並びに
外務大臣の御
意見はいかがでございましょうか。(
拍手)また、
鳩山総理は、抑留者に冬を越させたくないと言っているのでございますが、今日もはや、冬はわれわれの背後に迫っておるのでございます。果していつ抑留者が帰還するのであるか、
首相の
所見をはっきりと伺いたいと思う次第でございます。
第三の疑点は、
日ソ暫定協定後の
内外政策の反動化の危惧でございます。この点は、
須磨君の御
質問と全く正反対の
立場にわれわれは立たざるを得ないのでございます。暫定協定が、巷間アデナウアー方式と唱えられておりますが、その西独におきましては、暫定的な
国交回復後におきまして、友好善隣
関係は樹立されないばかりでなく、共産党の非合法化の判決が下されるなどの事態が起っておるようでございます。
わが国におきましても、すでに財界並びに
政府、与党の中からは、外事警察の強化、公安調査庁の拡充、新秘密保護法の制定、企業防衛の名のもとに政治的な首切りなどの準備が進められておるという動きが明瞭に現われておるのでございます。このような、およそ古い、
時代錯誤の軍国調の動きをば、総理はいかにお考えになっておるのでございましょうか。かかる動きは、およそ
日ソ国交回復を今後事実上否定するものでございまして、総理のただ一つの事業を無にして余りあるものといわざるを得ません。(
拍手)この点に関しまして、総理の任務はまだ終っていないのでございます。有終の美を全うするためにも、総理のこれについての
覚悟のほどをお聞かせ願いたいと思うのでございます。
第四の疑点は、
日ソ平和条約の
締結の時期と
鳩山総理の引退問題との
関係でございます。
共同宣言その他で、重要案件は
平和条約で本ぎまりにするといっておるのでありますが、
平和条約を、いつ、いかなる型で
締結される目算でおられるのか、まずお伺いせねばならないと思うのでございます。この
平和条約の
締結が終らない限り、
鳩山内閣の公約は完全に果されたものとはいえないのでございます。さらに、公約された中国との
国交正常化については、その片りんさえも果されておらないのでございます。しかるに、今月、
鳩山総理が近く引退されるであろうということは明々白々なる事実でございます。継続審議の案件について、
鳩山総理はその責任を負わずして総理の地位を去らんとするものでありまするか。公約の最大のものであった
日ソ交渉は、いまだ最終的段階ではございません。
平和条約を
締結しないまま、問題を将来に残して政界を引退する
鳩山総理は、まことに無責任きわまるものと申さねばならないのでございます。(
拍手)
日ソ平和条約締結についての
見通し、さらに、
わが国にとってより重要なる日中
国交回復についての
見通しを、できるだけはっきり総理並びに
外相よりお聞かせ願いたいのであります。
須磨君に対する答弁は、この点きわめてあいまいでございまして、
見通しがつくのか、つかないのか、また、つくとすればいかなる時期かということを、もう少しはっきりされることが、せめて去っていく総理の責任ではないかと私は言いたいのでございます。(
拍手)
ここで特に申し上げておきたいことは、今度の
日ソ共同宣言のごとき暫定方式による
日ソの
国交回復でさえもが社会党の協力なくしてはできなかったという一事でございます。(
拍手)
鳩山総理の訪ソすら、与党の議員
総会では決定できなかった
状態であります。
鳩山総理は公約を果したと言っておられますが、この公約を果し得た最大の理由は、わが社会党が、
国際情勢をば、大局的に、かつ的確に判断いたしまして、暫定協定方式によっても旧ソ
交渉を妥結せしめよと主張したからでございます。
鳩山総理がこのたびの
日ソ交渉が成功であったと言うならば、その大半の功績がわが社会党にある事実をばお忘れになってはならないと思うのでございます。現に、今日でも、与党内にはこの
共同宣言に反対の諸君が多数おられることは、このことを雄弁に物語っておるものといわなくてはならぬのであります。(
拍手)
第三の
質問は、憲法問題についてであります。
鳩山内閣最大の公約の一つは
日ソ国交回復であり、他の一つは憲法改正であったことは言うまでもございません。
日ソ交渉は、不完全ながらも、社会党の協力を得て、一応その責任を果したのでございますが、憲法改正の
意図は完全に失敗したことは言うまでもございません。
その第一は小選挙区法案でございます。
鳩山内閣並びに自民党は、小選挙区法案の実施によりまして衆議院で三分の二の議席を占め、保守永久政権を確立することによりまして憲法改悪の陰謀を遂げようとしたのでありますが、この小選挙区法案は、平和と民主主義を守ろうとする全
国民の世論と、社会党の結集した戦いによりまして、ついに葬り去られたのであります。(
拍手)続いて、第二十四
国会直後に行われた七月八日の参議院選挙では、わが社会党を中心とするところの革新勢力、言いかえれば憲法改悪反対の勢力が三分の一以上を占め、衆参両院において憲法改悪の
意図は完全に粉砕されたのであります。
かくして、憲法改正という嶋山内閣最高の目標がくずれ去った以上は、あなたがおっしゃる、口ぐせの明鏡止水や行雲流水がにせものでない限りは、
鳩山内閣は恥を知って当然総辞職すべきものであったと思うのであります。(
拍手)
鳩山内閣のねらった憲法改正の企図は、今、憲法調査会という有名無実な木札の看板を一枚残し、委員の任命さえもできず、むなしく消え去ろうとしておるのでございます。この厳粛なる事実を
鳩山総理は率直に認めるかどうか、総理の責任ある答弁を求める次第でございます。(
拍手)
質問の第四点は砂川問題についてであります。
鳩山内閣の最大の目標であった憲法改正の
意図は完全に葬り去られました。小選挙区法案のときの、あのごうごうたる非難を忘れてはなりません。また、参議院選挙におけるわが社会党の圧倒的勝利は、
国民がいかに憲法改悪に反対しているかということを如実に示したものであるといわなくてはなりません。しかし、
鳩山内閣は、憲法改悪の
意図を粉砕されてもなおこれにこりず、今日なお憲法じゅうりんの政治をやっておるのでございます。私はここで
鳩山内閣の違憲行為を逐一申し上げる時間を持っておりませんが、最近の例は、あの砂川の大激突事件であります。わが党は、砂川の惨事を避けるため、あくまで話し合いによる
解決を主張し、忍耐をもって
関係者の説得に当ったのであります。また、地元側の反対同盟、すなわち、地元民、各労働組合、農民組合の応援者、全学連の学生に対しても、あくまで無抵抗でいることを主張し、この主張は実によく守られたのであります。この社会党の話し合いによる問題の
解決、無抵抗の反対者、自分の土地を守る農民に対して、
鳩山内閣は二千数百人に余る警官を動員し、
国民の頭上に、こん棒と、鉄かぶとと、泥足を浴びせかけ、千人に余る負傷者を出したことは言うまでもありません。一千名に余る同胞の血を流してまで
アメリカの軍事基地を拡張しなければならない義理が、一体どこにあるのでありましょうか。(
拍手)
国民を弾圧する熱心さをもって、
国民の世論や反対闘争をバックに、なぜ
アメリカ側と
交渉しないのでありますか。
わが国の
政府は、昔から、警官さえ出動させれば事が
解決すると思っておるのでございますが、砂川の場合は、明らかに地元民、
国民世論の勝利であると私は言いたいのであります。(
拍手)
中近東の例に見るまでもなく、現在、
世界の潮流は著しく変っているのであります。われわれは砂川問題を
国会を通じて徹底的に究明するものでございますが、
鳩山総理は、この砂川の大惨事につきまして、いかなる責任を感じておられるか、はっきりとさしていただきたいのであります。(
拍手)
さらに、
日ソ交渉におきまして
領土問題が重大なる段階に達したときに、国内におきまして、
アメリカの軍事基地を拡大するため、同胞互いに血を流したということは、
わが国の
領土主張に対しまして百害あって一利なしといわなくてはならぬと思うのであります。(
拍手)この点に関する総理並びに防衛庁長官の明確なる答弁をわれわれは要求するものであります。
質問の第五点は、スト規制法の問題であります。
政府は、今度の臨時
国会に、憲法違反のスト規制法延長の案件を提出いたしました。しかも、
政府は、正常なる委員会の審議を省略いたしまして、これを一挙に本
会議に上程せんとしたということは、
国会軽視もはなはだしい暴挙であるといわなくてはなりません。(
拍手)われわれは、ここで、
昭和二十八年当時のスト規制法の審議を思い起さねばなりません。当時、
政府は、スト規制の名のもとに、電気事業、石炭産業の労働者の罷業権を一方的に弾圧しようとしたのでありますが、わが党並びに
国民世論は、これに対して、スト規制法が憲法の第二十八条によって保障されておる労働者の団結権、団体
交渉権を剥奪する違憲立法であるとの
立場から、強く反対したのであります。この戦いの結果、
政府といえ
ども、同法案を三カ年の時限立法とせざるを得なかったことは、諸君の御存じの
通りであります。(
拍手)ここにわれわれは三カ年の過去を振り返ってみますと、このスト規制法を延長しなければならない理由がどこにも見当らないのであります。
政府は、このスト規制法を今日何ゆえに延長しようとするのでありましょうか、総理の明確なお答えを願いたいのであります。ことに、私らが最も遺憾とするところは、
政府が今日近く崩壊することを知りながら、なおスト規制法延長を提出しようとしておることであります。これは、このスト規制法をば与党内の派閥争いの具に供そうとしているものであるとのうわさがあります。(
拍手)労働者にとってきわめて重要なる反動法案を後継総裁争いのえじきにしようとするがごときことがもしあるとすれば、
わが国政治にとってはきわめて不幸な
状態であるといわなくてはならぬのであります。(
拍手)そうでないとするならば、何ら延長の理由なきスト規制法をば、余命幾ばくもない
鳩山内閣がなぜこれを提出したのであるか、
鳩山総理にその理由を私は聞かなくてはならぬと思うのであります。
質問の第六点は、補正予算の要求の問題であります。砂川に見られるように、農民の土地取り上げに武装警官を使い、労働者の団結権をじゅうりんするためにはスト規制法を提出しようとする
鳩山内閣は、他面においては、労働者、農民、中小企業者の生活安定には目をおおっておるのでございます。(
拍手)人事院の勧告によって指摘された公務員の総与改定、年末手当の増額等に、
政府はいかなる手を打たれたのであるか。北海道に起った未曽有の冷害、九州の水害、北陸の大火に対して、
政府はいかなる援助を与えたのであるか。さらにまた、健康保険の赤字もそのままとなり、保険医への支払いはわざと遅延せしめて、最も大切な医療保障は今危機に瀕しておる次第であります。総裁争い、党内派閥争いもあるいは重大事件であるかはしれませんが、政治の要諦は、まず何よりも
国民生活を安定させるということにあるということを、
鳩山内閣はお忘れになっているのではないでしょうか。(
拍手)われわれは、たびたび
政府に対して補正予算の提出を求め、臨時
国会の開催を要求しましたが、
政府は今なお財政的措置を講ぜず、予備費の流用で事終れりとしているのであります。しかも、その予備費の流用も、
日ソ国交回復後の
治安対策費と称して、ひそかに外事警察費その他の増額にまず振り向けられているということを、われわれは知っております。これでは、
治安を主にして
国民生活の安定を犠牲にする、まこと本末を転倒した、昔ながらの古めかしい、戦前の反動政治そのままのやり方であると、われわれはいわなくてはならぬのであります。(
拍手)総理は、こうしたことが行われていることを、実際御承知であるかどうか。もし知っておられれば、これに対してどういう手を打たれるかということを聞きたいのであります。
今日、
世界経済の好転の余波を受けまして、
わが国経済も好況下にあるとはいわれておりますが、その好況による利得はほとんどが独占的な大資本の利潤増大と設備投資の放漫なる増強に振り向けられておって、中小企業や農民やその他一切の働く人々の苦しい
状態は一向改善されておりません。今なお、好況の陰に、一千万人に上る不完全就労者、生活困窮者があるのでございます。
国民一人々々の消費生活や
国民所得の間には大きな格差が生じている事実を、よもや総理はお忘れでないでしょう。われわれは、健康保険の国庫負担による赤字解消、原水爆傷害者援護国庫負担費、登録日雇い労働者の年末手当、北海道を中心とする自然災害復旧費及び救農土木事業費、公務員の給与改定、年末手当、中小企業に対する年末融資、これらの問題を中心にいたしまして、補正予算を強く要求するものであります。(
拍手)総理は、これに対して、何ゆえ補正予算を提出しなかったのであるか、今後直ちに補正を行う所存であるかどうか、これは総理並びに大蔵
大臣からお聞きしたいと思うのであります。
最後に、政局転換の問題について、総理の忌憚なき所信を問わんとするものであります。
鳩山総理は、巷間、悲劇の政治家と呼ばれておりました。しかしながら、ほんとうの悲劇は、病身の
鳩山総理に二年もの間政権の座にすわられた
日本の政界であり、また
日本の国それ自身であったと、私は言わなくてはなりません。(
拍手)第一次、第二次、第三次の三次にわたる政権の担当は、常に不安定なる短期の暫定政権の連続であったのであります。今まで
鳩山内閣の総辞職の時期は何回もあったのでございますが、いたずらに政権にのみ恋々として、昨秋の保守合同にもその機会をのがし、
日本の政局は何らの安定を見ないまま今日に至ったのであります。この臨時
国会終了後、
鳩山総理は政界を引退すると伝えられておりますが、また、その引退の理由は健康にあるようでございますが、老総理の健康は組閣当初から始まっておるので、いまさらのものではございません。(
拍手)
鳩山総理が引退せざるを得ない
根本原因は、
鳩山個人の事情では断じてなしに、
鳩山内閣並びに与党たる自民党の内紛混乱と、それによる
政策の行き詰まりにあることを、われわれは指摘しなければなりません。(
拍手)しかるに、与党自民党は、みずからの内紛混乱による
鳩山内閣の
政策の行き詰まりをたな上げにいたしまして、公然と政権のたらい回しを策し、日夜これに狂奔し、
日ソ共同宣言もスト規制法をもその具に供さんとしておるのであります。三人の自称総裁候補が入り乱れ、まことに醜い争いを演じておるありさまは、まさに
日本政治の悲劇であり、また、
日本政治の喜劇であると、私は言わなければなりません。(
拍手)富くじを当てたように偶然総理のいすを拾った官僚政治家に対しては私は何をか言わんであります。きっすいの議会政治家として一生を全うせんとする
鳩山総理は、この最終幕において、議会政治家としての矜恃をはっきりとお示しを願いたいと思うのであります。戦前戦後の経験から見ましても、満身創痍の
あとのたらい回し政権は、その生命も短
かく、また何の
施策も断行し得ないことは明瞭であります。私は、
鳩山総理が、議会政治家の一人といたしまして、
国会解散による政権の移動という民主的ルールを断行されんことを切望してやまないものでございます。(
拍手)
日ソ平和条約、それに続くであろう日中
平和条約、その他、今日の
世界の
情勢に伍し、
内外政の一大刷新をはかることは、もはや今日
時代おくれの保守政権ではとうてい不可能なことでございます。時あたかも二大政党の
時代であり、
国家のための野党であるわが社会党はきわめて健在であります。(
拍手)われわれは、
国会解散によって円満なる政権の授受を強く求めるものでございます。鳥のまさに死なんとするやその声や悲し、人のまさに死なんとするやその言やよし。数十年間の議会政治家として、また一国政権担当の
総理大臣として、今や消え去らんとするその瞬間において、悔いを千載に残さざるよう、議会政治の大道を誤まらない総理の所信をば伺いたいと思う次第でございます。(
拍手)
これで私の代表
質問を終ります。(
拍手)