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1956-11-27 第25回国会 衆議院 日ソ共同宣言等特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十七日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 小笠 公韶君 理事 吉川 久衛君    理事 櫻内 義雄君 理事 須磨彌吉郎君    理事 田中伊三次君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       青木  正君    安藤  覺君       石坂  繁君    今松 治郎君       臼井 莊一君    高村 坂彦君       笹本 一雄君    重政 誠之君       白浜 仁吉君    助川 良平君       高岡 大輔君    中曽根康弘君       福田 篤泰君    松田竹千代君       松田 鐵藏君    山本 利壽君       亘  四郎君    大西 正道君       田中織之進君    戸叶 里子君       中崎  敏君    永井勝次郎君       日野 吉夫君    福田 昌子君       細迫 兼光君    和田 博雄君       森 三樹二君    岡田 春夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         外務参事官   法眼 晋作君         外務事務官         (条約長官)  下田 武三君         水産庁長官   岡井 正男君  委員外出席者         全 権 委 員 松本 俊一君     ————————————— 十一月二十七日  委員伊東隆治君、池田清志君、内田常雄君、大  橋忠一君、北澤直吉君、小坂善太郎君、助川良  平君、鈴木善幸君及び中村時雄君辞任につき、  その補欠として松田竹千代君、亘四郎君、重政  誠之君、青木正君、高村坂彦君安藤覺君、今  松治郎君、白浜仁吉君及び森三樹二君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共  同宣言批准について承認を求めるの件(条約  第一号)  貿易発展及び最恵国待遇の相互許与に関する  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の議定書批准について承認を求めるの件(条  約第二号)  北西太平洋の公海における漁業に関する日本国  とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  海上において遭難した人の救助のための協力に  関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦  との問の協定締結について承認を求めるの件  (条約第四号)     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。  右四件につきましては、すでに質疑を終了いたしております。  これより討論に入ります。順次これを許します。石坂繁君。
  3. 石坂繁

    石坂委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求めるの件外三件につき、いずれも承認することに賛成いたすものであります。  そもそも、わが国が、終戦以来十年間、隣国であるソ連との岡に正常なる国交がなかったことは、まことに遺憾でありまして、国際緊張緩和に資するものでなかったことは明らかであります。ゆえに、かような不自然な関係を是正すべきことは、わが鳩山内閣の一貫したる重要政策一つであったことは、天下周知の事実でございます。従いまして、昨年第一次、第二次のロンドン交渉、次いで重光外務大臣モスクワ交渉となり、最後に、鳩山総理みずからソ連を訪問されることとなりまして、今回の共同宣言等妥結と相なりましたことは、その内容が、たとい、鳩山首相が言われました通りに、必ずしも十分なる満足すべきものではないにいたしましても、また国民が十分なる納得をするものでないにいたしましても、この妥結によりまして、日ソ両国間の戦争状態が終了し、両国の平和及び友好善隣関係回復いたされ、さらに、わが国国連加入への協力、通商上の最恵国待遇相互供与漁業条約等発効、わけても抑留者早期帰還実現を見るようになりましたことは、まことに喜ばしいことでございまして、(拍手)私はこの点を深く喜び、かつ、総理初め全権各位の御労苦に対しまして、深甚の敬意を表するものでございます。  私は、本四件に関する本特別委員会の熱心なる審議を通じまして、次の理由によりまして四件に賛成するものでございます。  まず、領土問題でありますが、領土問題は、日ソ交渉過程におきまして最も困難なる問題でありましたし、また、本委員会におきましても、最も真剣に精義された問題であります。これは当然であります。けだし、領土は、その持つ意議はきわめて重大でありまして、たとい寸土といえども、現在われわれの領土であるばかりでなく、これを祖先より継承し、さらに後世子孫に伝うべきものであるからであります。領土問題について、今回の妥結の結果を、交渉の経過に顧み、及び現在の日本国力にかんがみまして、不満足ながらもやむを得ずとする議論、あるいはまた、領土を含みというその文言が、共同宣言から削除されたことをはなはだ遺憾とし、将来に危惧の念を持つ意見も、いずれもひとしく憂国の熱情のほとばしりでございます。領土問題につきましては、わが方の条理を尽し言葉を尽しました道理ある主張がじゅうりんせられ、力の前に屈服せられたとの印象は、遺憾ながら国民感情から払拭することはできないのであります。さりながら、継続審議に関する政府見解歯舞色丹が北海道の一部であり、また国後、択捉がサンフランシスコ条約にいうところのクーリール・アイランドのうちに含まれておらない、従いまして日本の本来の領土であるという政府の一貫した見解は、十分にこの委員会において表明されました。そうして、領土問題が継続審議に含まれておるということは、鳩山ブルガーニン書簡松本・グロムイコ間の往復書簡により明らかであるのみならず、将来の平和条約におきましては、領土問題を除いて平和条約はあり得ないという、この点から申しましても、将来の平和条約において領土問題が御成されることは当然でありますので、このことは再三この委員会において確認せられたのであります。私はこれを了とするものでございます。しこうして、領土問題を含みました継続審議は将来の問題でございます。従いまして、領土問題解決は、主としてこの後の問題になって参ります。かつまた国際情勢変化にかかること大であります。私どもも、この領土問題解決のためには、全幅の協力を惜しむものではございません。政府は、領土問題解決のために、国際情勢変化に対処しつつ、法律的、政治的の対策の用意に万遺憾なきを期せられたいのでございます。  第二は、引揚者の問題でございますが、抑留者早期送還の問題は、今回の交渉中、鳩山総理は特に胸を痛められた問題であると推察いたしておるのであります。戦後十余年、シベリアの極寒の野に拘禁されましたわが同胞の身につきましては、ひとり鳩山総理のみならず、同胞国民全体の胸を痛めて参った問題でございます、幸いに、今回の妥結により、今日これら抑留者人々がもう一冬をあの寒いところに越すことを待たず、年内帰還ができる見通しがつきましたことは、まことに喜びにたえません。しかも問題はなお残るのであります。これらの人々内地帰還後の処遇の問題でございます。最近、政府内におかれましても、これらの人々に対して、特殊な国家保障的援護措置をとろうという考え方が台頭いたしておる由を仄聞いたすのでありますが、まことにけっこうであります。この問題は、先般来問題となって参っておる在外資産処理の問題とともに、ぜひともこれら帰還者に対する特殊援護措置を講じていただきたいのでございます。そうして、これと同時に、これらの人々に対しまして、適当なる帰還後の住居並びに職業のあっせん等につきましても、政府のあたたかき手が差し伸べられまして、引き揚げ問題に対して最終の画龍点睛の実をあげていただきたいのでございます。なお、消息不明の人々に対しまする調査の促進に、十分なる措置を講じていただきたいこと、もちろんであります。  次は、国連加盟の問題でございますが、この共同宣言第四項に、ソ連わが国国連加盟協力することが明記されてあります。わが国国連に加盟いたしまして、国際的の発言をなす機会を得まするということは、絶対に必要であります。今日までわが国国連に加盟できなかったということは、一つには日ソ間に正常なる国交関係がなかったことが原因であるということは、私もこれを聞知する事実でございます。しかるに、今回の共同宣言発効いたしますと同時に、この障害物は取り除かれるのでありまして、国連加盟実現近きを私どもは楽しみにしております。しかし、一面には、ソ連は、わが国国連加盟に際しまして、昨年の事例のごとく、いわゆる抱き合せによる支持ではないかという疑問もないではないのでございまするけれども鳩山総理の本委員会における御答弁によりますと、その交渉の結果、無条件単独であるということを確言せられたのでありまして、これは、私ども、この点に信頼を置きまして、国連加盟実現に期待いたしておる次第でございます。また、一部の論者は、国連加盟と同時に、わが国国連軍もしくは国連警察軍に対する義務を果す関係からいたしまして、わが国の憲法を改正し、再軍備の必要があると論ずる方もあるのでございますけれども、この国連加盟と再軍備とは無関係である旨の政府当局の言明がありましたので、私はこれを了とするものでございます。しこうして、国連は現在総会を開いておるのでありますが、政府部内におきましても、遠からず、重光外務大臣国連派遣の議も起りつつあるというようなことでございまして、私は年内早期わが国国連加盟実現いたすことを期待し、この共同宣言は一日もすみやかに発効しなければならないと信ずるものでございます。  次に、対ソ貿易関係でございますが、この共同宣言の第七項と日ソ間の議定書によりまして、貿易発展最恵国待遇の相互許与の規定がなされております。昨今わが国対外貿易は予想以上に伸びて参りましたが、日ソ間においての貿易が再開されることによりまして、一そうわが国対外貿易発展を私どもは期待いたしておるのであります。もちろん、過当にこれを期待いたすということは警戒しなければならぬかもしれませんけれども、しかしながら、この委員会において明らかになりましたごとく、ソ連シベリア開発計画等に対するわが国協力が求められておるというようなことは、まことに明るい希望でございます。この後の日ソ間の貿易国交調整とともに発展いたしますることを、これまた期待してやまないのであります。  そこで、この際特に、ココム制限に関しましては、日ソ間の貿易契機といたしまして、いずれは他の共産圏との間の貿易も進んで参りましょうし、ココム制限緩和に対する政府のこの後の努力を切望いたすものでございます。  この際、私は、国内治安対策についても一言いたしたいのでございます。共同宣言第三項によりますと、日ソ間におきましては、経済的、政治的または思想的のいかなる理由によりましても、直接間接一方の国が他方の国の国内事項に干渉しないということが相互に約束されておる。すなわち内政不干渉に関しての取りきめが行われておるのであります。ようやく日ソ間の交渉妥結を見ました直後である今日この際、ソ連今後の出方につきましていろいろ揣摩憶測いたしますることは、決して好ましいことではないとは思いますけれども、しかしながら、あえてソ連とは申しませんが、共産主義日本国内工作について、私どもは警戒を要することを指摘せざるを得ないのであります。  それにつけても思い出しますことは、大正十四年一月二十日の例の芳沢・カラハン条約、すなわち日ソ基本条約でございます。同基本条約第五条によりますれば、これも内政不干渉赤化宣伝禁止が明記されておりまするけれども、その復交直後からソ連はこれに違反したのであります。ここにおいて、後藤新平伯は、昭和二年モスクワに乗り込みまして、スターリンと会見して、これを抗議したのでございますが、これに対して、ソ連は、コミンテルンとソ連政府とは別個であるという、この紋切り型で逃げを打ったのであります。もちろん、その当時と今日におきましては、ソ連国内事情も著しく違って参っております。しかしながら、ソ連は、平和五原則で、主権領土の尊重、内政不干渉等をうたい、革命は輸出せずという常套語を使いながら、ハンガリア動乱において完全にこの五原則をじゅうりんしたかに見えるのでございます。ラストヴォロフ事件などにもかんがみまするときに、今後の対日工作とこれに対する国内治安対策につきまして私どもが重大なる関心を持つのも、決してゆえなしといたしません。ことさらに神経質になるわけではございませんけれども、われわれが国内治安対策に真剣になるのは当然でございます。  そもそも、国内治安対策の根本は、何と申しましても国内政治の刷新でなければなりません。政治家がまじめになり、まじめな政治を行い、国民生活の安定と社会保障強化をはかり、政治に対する信頼感国民に与え、国民の不平をなくすることが基本的の条件でございます。(拍手)それと同時に、あえて反動に流れることを避けながら、治安対策をゆるがせにしてはなりません。牧野法相は、一昨日岡田委員の質問に答えまして、現有の諸機構を整備発動するという趣旨を述べられたのでありますが、もとよりそれも必要なことでございます。私は、さらに一歩を進めまして、治安機関共産主義調査機関統合強化をはかり、また、少くとも総合的客観的正確さの、共産圏共産主義調査機関の設立を要望いたすものでございます。  日ソ国交回復は確かにわが外交一転機であります。日本はこの際外交の新政策を樹立する必要があることを痛感いたします。モロトフ前外相は、外交技術というものは敵の数を少くすることであると申しました。ソ連の日ソ復交のねらいが日米離間による日本中立化にあるということは、多くの識者が憂えておるところでございます。本委員会におきましても、何人かの委員諸君がこの点に触れられたのであります。日本外交方針は、申し上げるまでもなく、従来の日米協力の線をくずさず、そして新外交方針を打ち立つべきであると思います。ゆえに、この際、対米関係修復調整をはかりつつ、日ソ日中関係の今後の関係につきまして、新たなる外交政策が展開さるべきであると思います。  なお、日ソ共同宣言締結のころと現在とは、欧州、中近東の情勢は激変し、ソ連国際的地位も変動いたしました。国際情勢はますます動揺しつつあるのであります。その環境が著しく変化いたしましたのに、従来の方針を墨守することは許されないのであります。この際、世界の新情勢を達観洞察し、これに対処する工夫がなければなりません。  日ソ国交回復が窓口となりまして、他の東欧共産圏諸国との間にも外交関係が再開いたしてくるでありましょう。現に、数カ国は、公式もしくは非公式をもって、日本国交回復を申し出でてきておるということであります。これらの東欧共産圏諸国日本との間の利害関係は大したものではないかもしれませんけれども国内治安問題等も考慮して対処せなければなりません。  さらにまた、東南アジア諸国との関係につきまして論じますならば、これらの諸国との経済協力は、現内閣外交の大きな旗じるしでございます。この機会に、賠償未済の国に対する賠償早期解決はもちろん、わが国より投資なり技術援助なり直接の経済協力の実を積極的に示しまして、もってこれらの諸国に対するわが国の信用を苛め、善隣友好関係を一そう深むべきであると信じます。  かくのごとく、今回の日ソ交渉妥結は、直接間接関係におきまして、わが国外交路線に新たなる方向と展開を所期すべき点が少くないのであります。鳩山総理は、今回の妥結をもって、東西の窓が開けたと言われました。日本が両陣営のかけ橋たらんことを期しておられるのであります。まことにその言やよしと申さなければなりません。そして、今や世界情勢は歴史的な転換に人らんとしておる時期であります。政府の積極、有効なる外交経綸が期待されるゆえんでございます。もとより、外交のことは決して容易でないということは、私も十分に承知いたしております。いわんや、小をもって大に対し、弱をもって強に対するその困難は、想像するにかたくないのであります。しかしながら、弱小の国にして強大国に折衝し、樽俎の間によくその国の利益を伸張し、国威を発揚いたしました事例は、古今東西外交史上決して少くないのでございます。わが外交陣営まことに多士済々、また在野の遺賢でその局に当るべき人材も決して少くないと信じます。いたずらに国力の弱きを歎ずることなかれ。よろしく世界情勢を達観洞察し、大いに外交陣営を刷新強化し、盛んに外交的経綸を行うべきであると信じます。政府の勇断を望んでやまない次第でございます。  以上、私は、今後に対する要望をあわせ述べて、本四件に対する私の賛成趣旨を表明いたしました。鳩山総理世界平和へのわが国民の悲願に直結すると言われました今回の日ソ復交が、わが国平和愛好諸国との提携を深めながら、新外交方針を樹立、実施いたしつつ、国際緊張緩和に努め、世界平和建設への寄与とわが国運の隆昌、国民の幸福を増進する契機となることを祈りながら、私の賛成討論を終ります。(拍手
  4. 植原悦二郎

  5. 細迫兼光

    細迫委員 日本社会党日ソ共同宣言外三つ政府提案賛成いたすものでございます。(拍手)私は、以下、日本社会党委員を代表いたしまして、その賛成する趣旨をいささか開陳したいと思います。  鳩山総理不満足ながらという表現を用いられておりまするように、だれが見ても、これを完璧な満足すべきものとは言われません。社会党はもちろん大きな不満をこれに対して持っております。  第一には、これが終局的な平和条約の形でないことでございます。われわれの主張するところは、南樺太千島、すべて北のこれらの旧わが日本領土回復をはかって、平和条約をもって日ソの間の国交回復をなすべしというところにございました。これが貫かれていないことは、まことに遺憾とするところでございます。いまだ、この程度のものをもってしましては、日ソの間の国交は、将来すっきりした形においてより親善の歩を深めるということに、遺憾の点が残っておるといわなければならないのであります。  第二には、非常に長い時間を費したということでございます。多額の国費を費やしてえんえん一年有半、この関すでに得べかりし利益の多くを損失しておると思います。これがわれわれの不満に思っておる第二の点でございます。  第三には、領土の問題でございます。社会党は、御承知のように、北方において失われましたすべての領土回復を要求し、主張し、希望しておるのでございますが、しかしながら、われわれは鳩山内閣の、いや保守政権そのものの本質的に持っております限界、宿命的に持っております限界を考慮に入れて勘案いたしまして、最終的な平和条約がむずかしいならば、暫定方式でもよろしいという線を出しまして、そうして鳩山内閣に可能な道を指摘いたし、これを激励いたしたのでございますが、私どもがその際予想しておりました線にまでも達し得なかった現状を、不満とせざるを得ないのであります。すなわち、私どもの予想しましたところによれば、いかに限界を持つ鳩山内閣といえども歯舞色丹、この範囲におきましは、批准交換、この共同宣言発効と同時にこの返還は可能である、おそらくはそこに行くであろう、継続審議はいわゆる南千島そのほかにとどまるであろう、こういう期待と希望を私どもは持っておったのであります。しかるに、歯舞色丹も今度平和条約発効と同時というふうに遠い向うに追いやられてしまったのであります。これはどういう原因であるかと考えますれば、しばしば審議過程においても指摘いたしましたように、日本の現在の政権が、これら回復せられたる領土においてアメリカ軍事基地を置かせないと表明すらもよくし得ない。ここに原因があるのであります。いかに歯舞色丹その他南千島日本固有領土であるとかいうような歴史的事実、あるいは国際法上のいろいろな理屈を申しましても、ソ連側から見ますれば、これは問題でない。歯舞色丹あるいは南千島日本固有領土であるかどうかということは、ソ連側から見ますれば、関心を持った、問題ではありません。ソ連側関心とするところは、日本にこれが回復せられたる後において、一体それがどういう様相を持つであろうか、具体的にいえば、これがアメリカ軍事基地に利用せられるであろうかどうか、これこそが、もっぱらソ連が持っておる唯一の、また重大な関心事でなければならぬと私ども信ずるのであります。この点をほぐすべき交渉をなされていない。これは保守政党の宿命的に持っておる限界でありますから、あえて鳩山さん個人の無能だということはできないのでありますが、わが民族にとりまして悲しむべきことであったといわなければなりません。かかる限界を持った政権をわれわれが現在持っておるということを、民族のために悲しまざるを得ないのであります。こういうような幾多の不満はありますが、しかし先に言いましたような限界を持っております保守党政権としては、まあまあここらが、背伸びをし、つま立って到達し得る最大限でございましょう。その意味において、私ども全権諸君のここまで到達せられたことを多とするのでございます。しかも、この領土問題の困難な根底には、サンフランシスコ条約におきまして、すでに日本千島を放棄しておるという事実が介在しておるのであります。すなわち、法理的に申しますれば、もはや何らの権利を有しないところの日本が、この領土についてこれらソ連交渉するというような格好であるといわなければならないのでありまして、きわめて困難だろうと、御苦労は想像いたすのでございます。それだけに、これが解決には異常な決意を日本として持たなければならなかったのでございまするが、これが鳩山内閣には持ち得なかったのであります。  こういういろいろな不満な点を持ちながらも、私どもはなおこれに賛成の意を表しようとしておるのでございます。これは、第一には、かねてわれわれが主張いたしました全面講和の道に向って一歩を踏み出したという、その性格を持つからであります。日本国際場裏に公然と独立の姿で進み出すためには、もちろん、世界各国と平等なまた自由な国際関係交際関係になければならぬということは申すまでもありません。でありまするから、われわれは当初から全面講和を主張いたしておりました。今や、この日ソ国交回復によりまして、その一部の道が踏み出されたというべきでございましょう。ここに国連加入の問題も大体見通しがつきまするし、この点におきまして、私はこの日ソ共同宣言意義を認めるものであります。もう一つは、この日ソ共同宣言が、わが日本民族悲願たるところの独立への道のやはり第一歩を意味しておるというところに、意義を認めるからであります。この点におきまして、あるいは鳩山さんがみずから評価せられておるかもしれない程度以上に、われわれは高く評価しているところもあるのであります。日本民族独立といえば、いうまでもなく、これは外国による主権の制約のきずなを断ち切るということに、その主点、目標がなければならぬのでございまして、すなわち安保条約行政協定などは直ちに俎上に上せられなければならぬ性質のものでございますが、これは鳩山内閣には不可能な問題でございます。せめて、全世界の国々と平等な国際関係を持ち、自由な国際関係を持つということは、独立への大きな要因として重要な問題でございますから、この点につきまして、ソ連との国交回復はその道への第一歩を踏み出した、こういう意義をわれわれも認めるのであります。ゆえに、私どもは、いろいろな不満を持ちながらも、この日ソ共同宣言等に対しまして、その批准承認を与えるべきものだと結論をいたすのでございます。  最後に、私は二つのことをつけ加えたい。それは中国との問題及びいわゆる治安対策の問題の二つでございます。  鳩山さんは、モスクワから東京に帰着なされました際に、声明を発せられました。日ソ国交回復によって今や東西への窓は開かれという一節がございました。さっき言いましたように、確かに西の窓を開きかけた意義を持っております。でありますが、現状におきましては、まだ西の窓は半開きであります。すなわち、西を望めば、近くそこにはアジア大陸が横たわり、そこには、中華人民共和国が、否認すべからざる独立国の姿におきまして現存しておるのであります。これとの間の国交が現状のままであっては、これは西の窓は全部開かれたとは申されません。そこには朝鮮の問題もありますし、またヴェトナムの問題もございますが、中心は何といっても中華人民共和国でございましょう。われわれが常に問題といたしております民族独立の問題にいたしましても、主権に対する制約のきずなを断ち切るということ、これが、基本的なものでありますが、欠くべからざる要件として、独立のためには独立の経済、自主的な経済を持たなくてはならぬということ、これがだれしもが否認し得べからざる問題でございます。中国大陸との経済的な緊密な結びつきがなくして日本経済の独立を論ずるがごときは、全くナンセンスでございます。これは何人も異論のないところだと確信をいたします。今わが国の経済は非常に好況だといわれておりますが、従来の経過を見ますれば、朝鮮戦争に便乗し、あるいはまた米国の特需に依存し、あるいは、近くは、スエズ運河の閉鎖に当って、いわば火事場どろぼう的に、偶発的な事件にたよって、辛うじて日本の経済をどうにか保っておるという状態であります。こういう偶発的な事情によって保たれておる経済は、決して独立的な自主的な経済とは言い得ません。日本経済を自主的な独立的な永続的な安定、繁栄をさせようと思い、その基礎を得ようとすれば、どうしても、中国の経済、ことに中国のあの計画的な建設と密接に計画的に組み合せて、そうしてそこに日本の経済を永続的な形において位置させなければならないと私は思うのであります。このことが完成せられなければ、日本のほんとうの独立経済、自主経済の形はできないと思います。従って、日本民族独立ということもその実が失われると思うのでございまして、今や日ソ国交回復の問題が余すところ一部の手続にすぎない状態になっております今日この際、日本民族が当面いたしまする第一の問題は、中国との国交回復でなければならぬと思うのでございます。ここに向ってわが国策は大きく歩を踏み出さなければならぬ時期に、もう到達しておると思うのでございます。しかるに、この問題につきまして遅々として進まない、また基本的な態度も明らかでないということは、まことに日本にとって遺憾しごくといわなければなりません。これに対しまして、鳩山総理以下、日ソ国交回復の龍を描いて晴を点ずる意味を持つところの中国との国交回復に、将来どういう御境遇にあろうとも、その政治力の全部を傾注して、この事業に当ってもらいたいと熱望するものでございます。  また、先ほども発言がございましたが、治安対策という言葉によって表明せられるいろいろな問題でございます。まさかそんなばからしいことは杞憂だとは思いまするが、しかしながら、普通選挙法を与えられるその見返り品として治安維持法が設けられたというような前例もあることでございます。あるいは西ドイツにおける、ソ連との国交回復に際しまして、共産党の非合法化というような問題も起っております際でございまして、一言これに費す意味はないとは申されないと思います。すなわち、もう現在におきましても、治安対策の名によりまして、いわゆる外事警察その他者の特高のような、あるいは公安調査庁の充実という問題が真剣にどうも考えられておるようでございまして、多大な国費を特にこれにつぎ込むというようなことも行われておるようでございます。しかしながら、日ソ国交回復は、先に言いましたような重大な、また日本国民にとって前進的な、また光栄ある道に通ずるところの意義を持ったものであると確信いたしまするがゆえに、これは、日ソの親善、経済の緊密な結びつきにつきまして、深くまた広くこれを促進しなければならないと思います。前回のロシヤ革命後の日ソ国交回復の際に、何年ごろでありましたか、たしかレプセといいましたが、ソ連の労働代表が日本に来たことがございます。ところが、このソ連の労働代表レプセの歓迎のためにそこに集まった労働者や学生たちは、もうことごとく一人残らず、見つかり次第ひっつかまえられて、豚箱にぶち込まれてしまったのであります。そういうようなことに表現せられまするように、親善関係を結んだ、いや国交回復をしたといいましても、ほんとにそれが親善なものでなくてはなりませんし、友好なものでなくてはなりません。それでこそこの国交回復意義あらしめるのでございますから、いやしくもソ連との間の友好と親善とを妨げるがごときばからしい政策がここに行われるということは、矛盾もはなはだしいものといわなければならぬのでございまして、これは、みずからの仕事をスポイルし、つっつきくずすものであるといわなければならぬのでございまして、こういうばからしいことは断じてなさらないように、くれぐれもわれわれは警告を発しておきたいと思います。  とにもかくにも、日ソ国交回復は、今や第一部の手続を残すのみの状態となりました。幾多の不手際はございましたが、ここまで持ってこられました皆さんの労苦を多といたしまして、なおその価値をより以上に高められるために、より一そうの努力を払われまするよう、ことに鳩山首相には、どうぞ加餐自愛、これの意義の完成、龍を描いて晴を点ずるまでの御努力を熱望してやまない次第でございます。  以上、日本社会党を代表いたしまして、日ソ国交回復に関する件は、外三件の議案とともに、賛成するゆえんの趣旨を開陳した次第であります。(拍手
  6. 植原悦二郎

    植原委員長 岡田春夫君。
  7. 岡田春夫

    岡田委員 私は日ソ共同宣言外三件に対しまして賛成をいたします。(拍手)  ただいま社会党細迫委員からのお話の趣旨と、大体われわれの意見も同趣旨でございます。今度の国交回復は、サンフランシスコの条約締結されて以来、かねてわれわれが強く主張いたして参りました全面講和への道を新たに開くものとして、今日のこの採択は、まことに歴史的な意義があるとわれわれは考えています。サンフランシスコ条約締結のときには、与党と野党との間に大きな意見の対立がありました。このことは、その当時の国論の二分されている事情を明らかにしていることであると思います、しかし、今度の日ソ共同宣言妥結、そして国会の承認機会においては、アメリカ関係があるかないかはともかくとして、国内の一握りの反対派を除いては、日本の与党と野党が、すべてこの日ソ共同宣言を支持するというこの歴史的な事実は、今や日本国民が、あげて日ソ交渉妥結を要望しておるという、その反映にほかならないとわれわれは考えています。  私たちの立場としては、先ほどもお話のあったように、日本とソビエトとの間に正式の平和条約が結ばれることによって、国交回復ができることを望んでおりました。しかしながら、今日ここで日ソ共同宣言妥結されることについても、われわれは賛意を呈するのを惜しむものではありません。われわれは、この共同宣言の前文にもある通りに、極東における平和と安全に寄与するという意味において、この共同宣言の重要な歴史的な意義があると考えています。引き揚げの問題も重安です。国連加盟の問題も重要であります。そしてまた、漁業の問題も重要な問題であります。しかしながら、その中で最も重要なものは、日本とソビエトとの平和と友好の関係を通じて、極東の平和並びに世界の平和がこれによって促進されるということが、最も重要な問題であるとわれわれは考えています。この点において、われわれは、今度の共同宣言に対して賛成を惜しむものでは断じてございません。領土の問題について、過去一年有半においていろんな意見がございました。しかし、この領土の問題が解決しない根本の原因を考えるならば。ほかならぬサンフランシスコ条約のときに根源があったことを、われわれは忘れてはならない、サンフランシスコ条約の第二条において千島並びに南樺太を放棄すると、その当時の総理大臣である吉田茂氏がこれに調印したことに、根本の原因があったのである。この問題を解決せずして、日ソ交渉の間においてこの問題を解決するということ、てのことに困難があったのであるとわれわれは考えています。サンフランシスコの平和条約の中で、ただいま申し上りたように、千島南樺太の放棄を書いてあることは、これはポツダム宣言り規定が援用されたものと考えております。世論の中には、ポツダム宣言の規定というものは、カイロ宣言をそのまま使ったものであるから、日本側としてはヤルタ協定を守るべき何らの必要はないということを言っている世論もございます。しかしながら、なるほど秘密協定であるから、日本の国は守つなければならない義務がないということは一応言えたにしても、ヤルタ協定というものは、第二次世界戦争の張本人である。世界を侵略することを意図した日独伊の帝国主義者の野望、この第二次世界戦争において、これらの帝国主義者の敗北後において、世界の平和のための戦後処理の方針として結ばれたものであり、その原則サンフランシスコ条約の中に生かされていることも、われわれは忘れてはなりません。なぜならば、カイロ宣言のみをわれわれが守るものであるとするならば、台湾、澎湖島その他の規定はあったにしても、カイロ宣言の中には千島南樺太の規定はないのであります。平和条約第二条の規定において千島南樺太の放棄ということは、直接ではないにしても、間接的にヤルタの規定をこの第二条の中に生かしているということを明らかにしている。われわれ日本国民が、戦後処理の方針として、間接的に、あるいは客観的に千島南樺太の放棄ということを第二条にうたったということは、われわれが戦後の世界における大勢として、このヤルタ協定日本が認めることによって、平和条約が結ばれたのである。従って、当時の吉田総理は、このような原則を認めた上において平和条約を結んだのであるといわなければなりません。この問題が、領土の根本問題であったといわなければなりません。この問題が、領土の根本問題であったとわれわれは考えています。何はともあれ、このような領土問題が、共同宣言妥結に当っては、いわゆる継続審議という形でこれが妥結された。今後において、日本とソビエトにおける平和と友好関係が樹立されることになります。  そして、もう一つこの共同宣言百で重要なことは、この間鳩山総理細迫委員の質問に答えて、言われた通りに、そしてこの間の私の質問に対する答弁にもお話のあったように、この日ソ共同宣言の調印によって、日本の国が独立へ進む道を新たに開いたものであるという点が、第二の点として最も重要な点であります。先ほどもお話があったように、日本の国はあらゆる面においていまだに主権制限されております。この点は安保条約を通じて見ても、MSA協定を通じて見ても、日本の国内の主権はあらゆる面において制限をされていることを、われわれは忘れてはならない。この主権回復、言葉をかえていうならば、対米従属関係から日本がはっきりと独立すべき今や曲り角に立っている、転機に立っていることを考えなければなりません。日ソ交渉は、共同宣言妥結によって、これが完成したのではありません。日ソ交渉は、これが出発点でなければなりません。世界の平和の新たなる前進と、日本独立への出発点でなければなりません。私たちは、その意味において、この共同宣言の前文に書かれている極東の平和と安全のために寄与するこの趣旨、精神に基いて、今後日本の国内の態勢、国際関係を律していかなければならないと思います。鳩山総理が再三言われる通りに、日本外交政策の基本は、あくまでも平和でなければならない。この平和の基本の精神に徹して、国内の態勢、国際の関係を確立していかなければならないと思います。  国内の態勢は、この間私がいろいろ質問をいたしまして、お答えをいただきました通りに、経済、文化の交流を徹底的に行うとともに、アメリカから制約をされております主権制限回復するとともに、そして国内において、種々の反動的な要素というものを復活することを押えるように、われわれは努力をしなければならない。公安調査庁が極端な反ソ感情をあおるような、あのような文書を発行するというようなことを通じて、これを口実にして、今後治安対策強化し、再び治安維持法を行なったり、あるいは防諜法を再現させるようなことをやるようであってはならないと思います。日本国内の民主化が、今最も重要であります。  また半面に、国際関係におきましては、日本の国は、先ほどもお話のあったように、まず隣の中国との国交回復を考えなければなりません。十年間の第二次世界戦争の中で、日本の帝国主義者が最も犠牲を負わせたのは、だれであるか、これは中国にほかならないのであります。この中国に対して、われわれはすみやかに国交回復をしなければならない義務がある。いたずらに他国に遠慮をして、日本の国がこの義務を果さないということは許されない。われわれは、今やすみやかに日中の国交回復をやらなければなりません。そしてまた、日本の今後進むべき道は、アジア、アラブの諸国とがっちりと手を握る以外にはないのである。アジア、アラブと手を握り、平和五原則に基いて、お互いに平和共存の立場を堅持しつつ、お互いに信頼のもとに立ってこそ、日本の将来があるのであります。このアジア、アラブとの連携のためには、平和五原則を確認し、平和共存の立場に立って、日本外交の基本をきめていかなければなりません。  安全の保障の問題につきましては、今や世界において台頭しつつある軍縮の要望を、日本国民に、強く国民の要求として、政府の要求として、実現するために邁進するとともに、アジアにおいてはアジア諸国を初め、ソビエト、アメリカを含む全般的安全保障体制の中において、日本の安全の保障は確立されるとわれわれは考えています。中ソを敵対関係に持つSEATOに加盟することによって、日本の安全の保障は守られるものではありません。全般的な安全保障を確立することによってのみ、日本の将来の安全、極東の平和、世界の平和は実現すると思うのであります。  われわれは、この日ソ共同宣言承認するこのときを一大転機として、このような形で日本の将来のあるべき姿を規定していかなければならないと思います。この意味において、今度の共同宣言の重要な意義をわれわれは認めつつ、賛成するものであります。はなはだ簡単でありますが、賛成の言葉にかえます。(拍手
  8. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採択いたします。日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求めるの件、貿易発展及び最恵国待遇の相互許与に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の議定書批准について承認を求めるの件、北西太平洋の公海における漁業に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約締結について承認を求めるの件、海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協定締結について承認を求めるの件、以上四件をそれぞれ承認すべきものと議決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  9. 植原悦二郎

    植原委員長 起立総員であります。よって、右の四件はいずれも承認するに決定いたしました。(拍手)  なお、ただいま議決いたしました四件に関する委員会報告書の作成は、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 植原悦二郎

    植原委員長 御異議なしと認めます。よって、その通り決定いたします。  この際一言ごあいさつを申し上げます。去る十九日、日ソ共同宣言外三件の審議を開始して以来、連日にわたり委員各位におかれましては、終始国家国民の将来を思い、これら重要案件に関する対外的及び対内的諸問題につき、あらゆる角度より論議を重ね、慎重審議を尽され、ここにその審査を終了いたしましたことは、まことに御同慶にたえないところであります。  委員長といたしましては、ここにあらためて委員各位の連日にわたる御精励に対し、深甚なる敬意を表するとともに、委員各位の御協力により、大過なく委員長としての重責を果し得ましたことに対して、衷心より感謝の意を表する次第であります。   これにて散会いたします。(拍手)    午前十一時五十二分散会      ————◇—————