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細迫委員 日本社会党は
日ソ共同宣言外三つの
政府提案に
賛成いたすものでございます。(
拍手)私は、以下、
日本社会党委員を代表いたしまして、その
賛成する
趣旨をいささか開陳したいと思います。
鳩山総理も
不満足ながらという表現を用いられておりまするように、だれが見ても、これを完璧な満足すべきものとは言われません。
社会党はもちろん大きな
不満をこれに対して持っております。
第一には、これが終局的な
平和条約の形でないことでございます。われわれの主張するところは、
南樺太、
千島、すべて北のこれらの旧わが
日本領土の
回復をはかって、
平和条約をもって
日ソの間の
国交回復をなすべしというところにございました。これが貫かれていないことは、まことに遺憾とするところでございます。いまだ、この
程度のものをもってしましては、
日ソの間の
国交は、将来すっきりした形においてより親善の歩を深めるということに、遺憾の点が残っておるといわなければならないのであります。
第二には、非常に長い時間を費したということでございます。多額の国費を費やしてえんえん一年有半、この関すでに得べかりし
利益の多くを損失しておると思います。これがわれわれの
不満に思っておる第二の点でございます。
第三には、
領土の問題でございます。
社会党は、御承知のように、北方において失われましたすべての
領土の
回復を要求し、主張し、
希望しておるのでございますが、しかしながら、われわれは
鳩山内閣の、いや
保守政権そのものの本質的に持っております
限界、宿命的に持っております
限界を考慮に入れて勘案いたしまして、最終的な
平和条約がむずかしいならば、
暫定方式でもよろしいという線を出しまして、そうして
鳩山内閣に可能な道を指摘いたし、これを激励いたしたのでございますが、私
どもがその際予想しておりました線にまでも達し得なかった現状を、
不満とせざるを得ないのであります。すなわち、私
どもの予想しましたところによれば、いかに
限界を持つ
鳩山内閣といえ
ども、
歯舞、
色丹、この範囲におきましは、
批准交換、この
共同宣言発効と同時にこの返還は可能である、おそらくはそこに行くであろう、
継続審議はいわゆる南
千島そのほかにとどまるであろう、こういう期待と
希望を私
どもは持っておったのであります。しかるに、
歯舞、
色丹も今度
平和条約の
発効と同時というふうに遠い向うに追いやられてしまったのであります。これはどういう
原因であるかと考えますれば、しばしば
審議の
過程においても指摘いたしましたように、
日本の現在の
政権が、これら
回復せられたる
領土において
アメリカの
軍事基地を置かせないと表明すらもよくし得ない。ここに
原因があるのであります。いかに
歯舞、
色丹その他南
千島が
日本の
固有の
領土であるとかいうような歴史的事実、あるいは
国際法上のいろいろな理屈を申しましても、
ソ連側から見ますれば、これは問題でない。
歯舞、
色丹あるいは南
千島が
日本固有の
領土であるかどうかということは、
ソ連側から見ますれば、
関心を持った、問題ではありません。
ソ連側の
関心とするところは、
日本にこれが
回復せられたる後において、一体それがどういう様相を持つであろうか、具体的にいえば、これが
アメリカの
軍事基地に利用せられるであろうかどうか、これこそが、もっぱら
ソ連が持っておる唯一の、また重大な
関心事でなければならぬと私
ども信ずるのであります。この点をほぐすべき
交渉をなされていない。これは
保守政党の宿命的に持っておる
限界でありますから、あえて
鳩山さん個人の無能だということはできないのでありますが、わが
民族にとりまして悲しむべきことであったといわなければなりません。かかる
限界を持った
政権をわれわれが現在持っておるということを、
民族のために悲しまざるを得ないのであります。こういうような幾多の
不満はありますが、しかし先に言いましたような
限界を持っております
保守党政権としては、まあまあここらが、背伸びをし、つま立って到達し得る最大限でございましょう。その意味において、私
どもは
全権諸君のここまで到達せられたことを多とするのでございます。しかも、この
領土問題の困難な根底には、
サンフランシスコ条約におきまして、すでに
日本は
千島を放棄しておるという事実が介在しておるのであります。すなわち、法理的に申しますれば、もはや何らの権利を有しないところの
日本が、この
領土についてこれら
ソ連と
交渉するというような格好であるといわなければならないのでありまして、きわめて困難だろうと、御苦労は想像いたすのでございます。それだけに、これが
解決には異常な決意を
日本として持たなければならなかったのでございまするが、これが
鳩山内閣には持ち得なかったのであります。
こういういろいろな
不満な点を持ちながらも、私
どもはなおこれに
賛成の意を表しようとしておるのでございます。これは、第一には、かねてわれわれが主張いたしました
全面講和の道に向って一歩を踏み出したという、その性格を持つからであります。
日本が
国際場裏に公然と
独立の姿で進み出すためには、もちろん、
世界各国と平等なまた自由な
国際関係、
交際関係になければならぬということは申すまでもありません。でありまするから、われわれは当初から
全面講和を主張いたしておりました。今や、この
日ソ国交回復によりまして、その一部の道が踏み出されたというべきでございましょう。ここに
国連加入の問題も大体
見通しがつきまするし、この点におきまして、私はこの日
ソ共同宣言の
意義を認めるものであります。もう
一つは、この日
ソ共同宣言が、わが
日本民族の
悲願たるところの
独立への道のやはり第一歩を意味しておるというところに、
意義を認めるからであります。この点におきまして、あるいは
鳩山さんがみずから評価せられておるかもしれない
程度以上に、われわれは高く評価しているところもあるのであります。
日本民族の
独立といえば、いうまでもなく、これは外国による
主権の制約のきずなを断ち切るということに、その主点、目標がなければならぬのでございまして、すなわち
安保条約、
行政協定などは直ちに俎上に上せられなければならぬ性質のものでございますが、これは
鳩山内閣には不可能な問題でございます。せめて、全
世界の国々と平等な
国際関係を持ち、自由な
国際関係を持つということは、
独立への大きな要因として重要な問題でございますから、この点につきまして、
ソ連との
国交回復はその道への第一歩を踏み出した、こういう
意義をわれわれも認めるのであります。ゆえに、私
どもは、いろいろな
不満を持ちながらも、この日
ソ共同宣言等に対しまして、その
批准に
承認を与えるべきものだと結論をいたすのでございます。
最後に、私は二つのことをつけ加えたい。それは中国との問題及びいわゆる
治安対策の問題の二つでございます。
鳩山さんは、
モスクワから東京に帰着なされました際に、声明を発せられました。
日ソ国交回復によって今や
東西への窓は開かれという一節がございました。さっき言いましたように、確かに西の窓を開きかけた
意義を持っております。でありますが、現状におきましては、まだ西の窓は半開きであります。すなわち、西を望めば、近くそこにはアジア大陸が横たわり、そこには、中華人民共和国が、否認すべからざる
独立国の姿におきまして現存しておるのであります。これとの間の
国交が現状のままであっては、これは西の窓は全部開かれたとは申されません。そこには朝鮮の問題もありますし、またヴェトナムの問題もございますが、中心は何といっても中華人民共和国でございましょう。われわれが常に問題といたしております
民族独立の問題にいたしましても、
主権に対する制約のきずなを断ち切るということ、これが、基本的なものでありますが、欠くべからざる要件として、
独立のためには
独立の経済、自主的な経済を持たなくてはならぬということ、これがだれしもが否認し得べからざる問題でございます。中国大陸との経済的な緊密な結びつきがなくして
日本経済の
独立を論ずるがごときは、全くナンセンスでございます。これは何人も異論のないところだと確信をいたします。今
わが国の経済は非常に好況だといわれておりますが、従来の経過を見ますれば、朝鮮戦争に便乗し、あるいはまた米国の特需に依存し、あるいは、近くは、スエズ運河の閉鎖に当って、いわば火事場どろぼう的に、偶発的な事件にたよって、辛うじて
日本の経済をどうにか保っておるという状態であります。こういう偶発的な事情によって保たれておる経済は、決して
独立的な自主的な経済とは言い得ません。
日本経済を自主的な
独立的な永続的な安定、繁栄をさせようと思い、その基礎を得ようとすれば、どうしても、中国の経済、ことに中国のあの計画的な建設と密接に計画的に組み合せて、そうしてそこに
日本の経済を永続的な形において位置させなければならないと私は思うのであります。このことが完成せられなければ、
日本のほんとうの
独立経済、自主経済の形はできないと思います。従って、
日本の
民族の
独立ということもその実が失われると思うのでございまして、今や
日ソ国交回復の問題が余すところ一部の手続にすぎない状態になっております今日この際、
日本民族が当面いたしまする第一の問題は、中国との
国交の
回復でなければならぬと思うのでございます。ここに向って
わが国策は大きく歩を踏み出さなければならぬ時期に、もう到達しておると思うのでございます。しかるに、この問題につきまして遅々として進まない、また基本的な態度も明らかでないということは、まことに
日本にとって遺憾しごくといわなければなりません。これに対しまして、
鳩山総理以下、
日ソ国交回復の龍を描いて晴を点ずる意味を持つところの中国との
国交回復に、将来どういう御境遇にあろうとも、その
政治力の全部を傾注して、この事業に当ってもらいたいと熱望するものでございます。
また、先ほ
ども発言がございましたが、
治安対策という言葉によって表明せられるいろいろな問題でございます。まさかそんなばからしいことは杞憂だとは思いまするが、しかしながら、普通選挙法を与えられるその見返り品として治安維持法が設けられたというような前例もあることでございます。あるいは西ドイツにおける、
ソ連との
国交回復に際しまして、共産党の非合法化というような問題も起っております際でございまして、一言これに費す意味はないとは申されないと思います。すなわち、もう現在におきましても、
治安対策の名によりまして、いわゆる外事警察その他者の特高のような、あるいは公安
調査庁の充実という問題が真剣にどうも考えられておるようでございまして、多大な国費を特にこれにつぎ込むというようなことも行われておるようでございます。しかしながら、
日ソ国交の
回復は、先に言いましたような重大な、また
日本国民にとって前進的な、また光栄ある道に通ずるところの
意義を持ったものであると確信いたしまするがゆえに、これは、
日ソの親善、経済の緊密な結びつきにつきまして、深くまた広くこれを促進しなければならないと思います。前回のロシヤ革命後の
日ソ国交の
回復の際に、何年ごろでありましたか、たしかレプセといいましたが、
ソ連の労働代表が
日本に来たことがございます。ところが、この
ソ連の労働代表レプセの歓迎のためにそこに集まった労働者や学生たちは、もうことごとく一人残らず、見つかり次第ひっつかまえられて、豚箱にぶち込まれてしまったのであります。そういうようなことに表現せられまするように、親善
関係を結んだ、いや
国交回復をしたといいましても、ほんとにそれが親善なものでなくてはなりませんし、友好なものでなくてはなりません。それでこそこの
国交回復を
意義あらしめるのでございますから、いやしくも
ソ連との間の友好と親善とを妨げるがごときばからしい
政策がここに行われるということは、矛盾もはなはだしいものといわなければならぬのでございまして、これは、みずからの仕事をスポイルし、つっつきくずすものであるといわなければならぬのでございまして、こういうばからしいことは断じてなさらないように、くれぐれもわれわれは警告を発しておきたいと思います。
とにもかくにも、
日ソ国交回復は、今や第一部の手続を残すのみの状態となりました。幾多の不手際はございましたが、ここまで持ってこられました皆さんの労苦を多といたしまして、なおその価値をより以上に高められるために、より一そうの努力を払われまするよう、ことに
鳩山首相には、どうぞ加餐自愛、これの
意義の完成、龍を描いて晴を点ずるまでの御努力を熱望してやまない次第でございます。
以上、
日本社会党を代表いたしまして、
日ソ国交回復に関する件は、外三件の議案とともに、
賛成するゆえんの
趣旨を開陳した次第であります。(
拍手)