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1956-11-25 第25回国会 衆議院 日ソ共同宣言等特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年十一月二十五日(日曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 小笠 公韶君 理事 吉川 久衛君    理事 須磨彌吉郎君 理事 田中伊三次君    理事 床次 徳二君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       石坂  繁君    大橋 武夫君       北澤 直吉君    笹本 一雄君       高岡 大輔君    中曽根康弘君       松田 鐵藏君    中崎  敏君       細迫 兼光君    岡田 春夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 牧野 良三君         外 務 大 臣 重光  葵君         通商産業大臣  石橋 湛山君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         検     事         (刑事局長)  井本 臺苦君         法務事務官         (入国管理局         長)      内田 藤雄君         外務政務次官  森下 國雄君         外務参事官   法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         全 権 委 員 松本 俊一君         外務事務官         (経済局次長) 佐藤 健輔君         通商産業事務官         (通商局次長) 中山 賀博君     ————————————— 十一月二十五日  委員森島守人君辞任につき、その補欠として福  田昌子君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 十一月二十四日  貿易発展に関する日ソ通商航海議定書承認促  進等に関する請願(北村徳太郎君外三名紹介)  (第二四八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共  同宣言批准について承認を求めるの件(条約  第一号)  貿易発展及び最恵国待遇の相互許与に関する  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の議定書批准について承認を求めるの件(条  約第二号)  北西太平洋の公海における漁業に関する日本国  とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約  の締結について承認を求めるの件(条約第三  号)  海上において遭難した人の救助のための協力に  関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦  との間の協定の締結について承認を求めるの件  (条約第四号)     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言批准について承認を求めるの件外三件を一括して議題といたします。  これより質疑を許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 昨日鳩山総理が御欠席になりましたので、ぜひ総理に簡潔にお尋ねいたしたいと思います。  問題はこういうことでございます。サンフランシスコ条約第二十六条の解釈についてはすでに明確になりました。ですから、今後日本ソビエトとの間でどのような交渉をいたしましても、二十六条をたてにしてアメリカ日本にいろいろな言いがかりをつけるということは考えられない。ところが、第二条の解釈につきまして問題になりますのは、実は日本放棄いたしておりまする北方の島の帰属は不明確である。その帰属決定するのは、日本ソビエトとの二カ国間の合意によって、法律上は少くとも必要かつ十分な条件を備えるものである、こういうのがあなたの内閣の御解釈のようでございまして、このことも明快になりましたので、われわれとしては、今後に残されました継続すべき日ソの交渉については安心をいたしておるわけです。ところが、あなたの内閣をささえておりまする自民党決定は、帰属の不明確なものについては国際会議においてこれを決定すべきであるということを、党議として決定されておるようでございまして、その党議に対する今までの重光外務大臣、すなわち全権として行かれた外務大臣態度については、いささか明確を欠くものがございました。そこで、その点を昨日来お伺いいたしますと、党の解釈とそれから閣内の政府解釈というものが矛盾をしているわけです。そういうことになりますと、あとになりまして、日ソ両国間だけで帰属決定しても差しつかえないという解釈が、外務大臣から内閣を代表して行われたといたしましても、後に違った内閣ができましたときに、党はそういう解釈をしていない、あれは重光の個人的な解釈であるというようなことを言われたのでは、今後の交渉に非常に困りますので、そこで、この内閣解釈と党の決定との矛盾を一体どういうふうにわれわれは理解すべきであるか、そのことを明確にしておきませんと、今御答弁になりました政府方針が後に継承されるこの継続性について、われわれは危険を感ずるわけですから、この際、総理であり同時に総裁であるあなたにお尋ねする以外にはございませんので、一つこの点を明快にしておいていただきたいというのが、私の第一問でございます。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣の申しました意味は、ソ連サンフランシスコ条約の当事者ではないから、そこで、ソ連日本との間に、サンフランシスコ条約のいかんにかかわらず、自由に取りきめができるといった意味だと私は思います。そうして、その取りきめの内容によって、サンフランシスコ条約関係諸国交渉をすることは必要だろうという場合が生じましょう。こういう考え方と思います。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 サンフランシスコ関係諸国交渉することが必要だというのは、政治的に好ましいという意味外務大臣並びに条約局長は御答弁になりました。それは、法律上、サンフランシスコ条約条約上の建前から締約国諸国との合意を必要とする、それがなければ決定ができない、そういうような条約上の必要条件だとは解釈しておられません。ですから、その点を聞いておるのですから、どうぞ条約上の解釈について法律上の建前からはっきりしておいていただきたい。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣のお説を支持いたします。同意であります。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、党の決定は、すなわち帰属不明確な——日本側放棄してその帰属がまだきまっていないものは国際会議によってきめるのだというようなことは、政治的にそうやった方が望ましいというだけの意味であって、それでなければ、国際会議合意に達しなければ、ソビエトにこれを譲渡することはできないのだという意味ではないわけですね。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もちろんそうであります。——ただいまの答弁につけ加えておきます。当時は、その他の領土についてはサンフランシスコ条約趣旨に反しないことと書いてありますので、私どもは反していないと思いますものですから、さっきの答弁をしたわけです。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 それで明確になりました。大事な点ですから、もう一ぺん確認いたしておきます。すなわち、日本側放棄した領土帰属を今後決定する場合には、北方の島については、日ソ両国間が合意に達することによって、条約上は少くとも必要かつ十分なる条件である、ただ、サンフランシスコ条約締約国合意了解を取りつけるということは、これは政治的に好ましいことであるというのにすぎないという解釈がここで明らかにされましたので、従って、今後の日ソ交渉につきましては、そういう解釈で与党も野党も大体これで一致いたしておることを確認いたしておきます。  それから、次に総理にお尋ねいたしたいのは、今度の国会勢頭において、外務大臣中東並び東欧情勢報告をなさいました。その中からわれわれが学び取るべきことの重要な一つは、いわゆる中間国諸国といいますか、弱小国に対する強国の不当なる圧迫、そういうものから独立しようということ、すなわち、民族意識が、希望ではなくて、十分それを実現すべき段階にきたというふうに解釈すべきだと思うわけです。そういう点で、吉田さんはサンフランシスコ条約を結ばれた。これも歴史的なことでしたが、これによって日本アメリカ従属下に縛りつけてしまった。今度は対蹄的にあなたは日ソ交渉を妥結されて、そうして日本をその束縛の中から解放する歴史的な仕事をなすったわけです。もうすでに独立解放段階にきておるのだ、将来の希望ではなくて、現実にそれを実現すべき時期だという判断に立ってあなたはやられたわけです。そこで、つまり中東なり東欧諸国情勢、その動きを見て、さらにもう一歩前進をして、日本にただ片側に窓をあけただけではなくて、そのことによって日本アメリカ従属関係から離れて真の独立にする、完全なる独立にする、これは鳩山内閣の当初からの、自主独立外交ということが眼目であったわけですね。そういうわけですから、そういうふうに東欧並び中東情勢というものを御判断になりませんかどうか、それをわれわれみずからの今日の地位に非常に多くの他山の石とするというふうに学び取るお考えはないかどうか、御感想を伺っておきたいと思います。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は自由主義というものは世界の各国民理想だと思います。自由主義、つまり人間性そのものを発揮するために自由を持つということは、これは世界国民理想だろう。平和というものはこの理想に到達するのに必要なる一つ方法である。平和がなければわれわれの自由はないわけでありますから、平和主義の実行のためにその自由を発揮するわけであります。平和の方法により理想自由主義を達成するというのが、われわれの主張でなければならないのですから、世界の平和をこいねがうということは、世界民族の自由を伸ばしてやろうというわけなのでありまして、あなたのおっしゃるように、世界国民自主独立の大成を平和主義のもとに支持してやるというのが、わが国の外交方針でなければならないという考え方をしております。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 そうしたならば、この前あなたは非常にちゅうちょされて、大事な歴史の一歩をあなたはみずから踏み出されて、日本解放独立の方へ一歩押し進めたにかかわらず、その次のステップとしては、日本アメリカとの間の安全保障条約というものを改廃をして、そうして日本の国土から他国の軍事基地を撤廃して、沖繩問題なりその他の北方の島にも関連しますが、こういう問題を解決する方向へもう一歩足を踏み出すべきじゃないか、そうでないと、今度の日ソ交渉画龍点睛を欠くというふうにわれわれは思うのですが、東欧地区におきますあの事件を見て、そうしてそういう時期がもうすでに歴史的に来たのだというふうにお考えになりませんか。いかがでしょうか。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はまだその時期には来ておらないと思います。もう少したってから点睛いたします。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、外務大臣にちょっと続けてお尋ねいたします。  あなたは、きのう、共産圏諸国日本に招く場合には、手続上いろいろ非常に煩瑣なことがあるから、だから注意してもらいたいというふうな、非常に好意的な通達だと言われましたが、ここにちゃんと書いてあります。「ついては、じ今かかる会議の開催に当り招請状送付先ソ連、中共、北鮮等をも含むことはなるべく避けられたく、」と書いてあります。「避けられたく、」と明確に書いてある。これは話が違いますよ。ああいう式な非常な好意を持って、うるさいことが起きないように注意をしたのだ、好意的注意であるとおっしゃいますけれども、この結論にちゃんと書いてある。なるべく避けられたい。抑圧ですよ。従ってこれは話が違いますから、あなた方の今度の日ソ交渉趣旨に反するじゃありませんか。ですから、これを取り消すなり、修正するなり、しからずんば、それが面子上できないというなら、この字句はそういう意味でなかったのだという追っての次の通達を出して了解を求めてもらいたい。誤解を招くようにされては困ります。誤解を解いてもらいたい。いずれかの措置を要求いたします。御答弁を願いたい。
  14. 重光葵

    重光国務大臣 この全体の趣旨については、昨日申し上げました通りに私は考えてきておるのであります、これを出す前に一々私は調べて出したわけではございませんが、しかしこういうこともございます。「会議連管の円滑を期するため発送前に当省にあらかじめ御通報相成る様願いたい。」これが最後結論になっております。いろいろ論議の点については、御批判のようなことがありますならば、昨日私が説明いたした趣旨によって、将来運営していくことにいたします。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 具体的に私は聞いているのですから、具体的にお答えいただきたい。これを削除されるか、あるいはこれを取り消されるか、あるいはこれに対する今の誤解を、そういうのは誤解である、そういう趣旨ではないということの追っての通達を出されるか、ぜひしてもらいたいが、どういうことをされるのですか、考慮とは。
  16. 重光葵

    重光国務大臣 そういうことを一つ具体的に考慮します。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 了解いたします。  最後に、総理にお尋ねいたしますが、今までの共同宣言審議を通じまして、しごく明確になりましたのは、実は継続審議の問題でございます。それは歯舞色丹が、今度の交渉の当初には出ない。一括して継続審議にすることが予定されておった。ところが、交渉の結果、ああいう条件付でございますが、返還することを明記したわけですね。そうなりますと、あと継続審議ということは、両方主張が違っているから、それを納得のいくまで話し合いをしようということだけは、もう明確になっている。ただし、向う側の主張を譲歩して、それで択捉国後帰属は不明確だということを向うが了解したわけではない。また、こちら側も、択捉国後については強く主張しておって、これを放棄したわけではない。内容は、両方主張が食い違っておりますが、その両方主張はそのまま認め合っているわけです。それは承知の上で継続審議をしましょうということですから、従って領土を含む継続審議という字句を入れる必要はないわけです。もしこの字句を入れたとすれば、歯舞色丹帰属は不明確だということを認め合った、こういう意味になる危険がありますから、領土を含むという字句を省くのは当然だ。こういう解釈をいたしまして、今度の共同宣言で調印された文章では、領土問題については今後話すということが明確だということは、私ども考えますし、内閣考えられている。同時に党の総裁としてのあなたもお考えのようです。そこで伺いたいのは、昨日のあなたの方の党内の代議士会で、その問題が再び提起されて、それがついには昨日はきまらずして、あしたの代議士会において継続されるようですが、あくまで附帯決議または留保事項を付してこの共同宣言を通すというようなことは、私は不必要だと思うのです。すなわち、留保条項をつけず、附帯決議もつけないという態度にお変りはございませんね。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 附帯決議留保条項もつける必要はないと私は思います。今あなたのおっしゃる通りに、択捉国後は向うは放さないと言うし、こちらは要求をしたんですから、その食い違いは、話し合いの間は十分明瞭になったのです。それですから、領土問題を継続審議にするといえば、択捉国後もそのときには審議すべき項目になるということは、双方とも了解をしております。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 あなたの態度は、きょうは、私は、内閣総理として、同時に自民党総裁としてお尋ねしたわけですが、明快な御答弁で感謝いたします。そこで、念のために申し上げておきますが、私どもとしては、信義を重んじて、本委員会の劈頭の理事会で、明後日、二十七日の本会議に上程することに協力を約して参りました。しかしながら、もし今のお話と話が違って、万一あしたの代議士会等において留保条項をつけ、または附帯決議をつけるというようなことが出て参りましたり、あるいはまた事前にこの会期を延長するというようなことが出てくると——明後日に上げるということは、会期を十二月六日を予定して、実は審議日程を参議院と衆議院と割って合理的にきめたわけですから、そこで、今中しましたように、附帯決議または留保条項をあさっての本会議に出す前につけてこられたり、あるいはまた事前会期延長方針等決定された場合においては、本委員会を通じて党と党の間で約束いたしました審議日程については、これは再考慮をさしていただきますから、そのことをあらかじめ申し上げて、決意を促しておきます。  これをもって終ります。
  20. 植原悦二郎

  21. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいま共同宣言の第九項を見ますと、歯舞色丹平和条約締結日本に引き渡す、平和条約締結に関する交渉は、国交回復継続するということになっております。そこで、歯舞色丹を取り戻しますためには、まず平和条約締結する必要があるわけでございますが、その平和条約締結につきましては、ソ連国後択捉ソ連領であるという主張を変える様子は全くないというのが、ただいままでの政府の御説明であります。つまり、これによりますと、現在の共同宣言から出てくる結果といたしましては、日本国後択捉放棄を明確にするのでなければ、歯舞色丹は返ってこないということになるわけでございます。重光全権モスクワで調印しょうとせられた条約案は、国後択捉放棄して、歯舞色丹を取り戻そうというのであったのでありますが、それに比べますると、今回の案は、結局は重光全権の場合と同じ形になるわけでありますが、現在はまだそこに至る一歩手前の姿であるということになるのであります。そこで、総理は、それとこれとはいずれが日本として有利になっているとお考えになりますか。
  22. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、その点に対してはすでに答弁をいたしました通り国際情勢は変化するものと思っております。国際情勢が変化をすれば、択捉国後日本に返ってくるものという希望はあるわけでありますから、そこで、領土問題を全体として継続審議にする方が、確定して国境線を引いてしまうよりは有利だと思っております。
  23. 大橋武夫

    大橋(武)委員 継続審議となっておりますのは、国後択捉である、こういう御主張だと思いますが、歯舞色丹はとにかく即時返還になっておらないのでございますから、この点は不利といわざるを得ないと思う。そこで、継続審議となっておる点において、国後択捉重光全権の場合よりも有利になる可能性がある、こういう御趣旨の御答弁と承わってよろしゅうございますか。
  24. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りに御解釈下さってけっこうです。
  25. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいまの総理の御答弁によりますると、この二つの案のいずれが有利になるかということは、継続審議の結果によって有利ともなり、また不利ともなるということになるわけなのであります。そこで、私どもが問題としなければならぬ点は、果して将来今度の共同宣言が有利な結果をもたらすというようなことになる可能性があるかどうか。ここが問題でございまして、もしその可能性がないといたしましたならば、今度総理のお選びになったやり方というものは、重光外務大臣の選ばれようとなすったやり方よりも、明らかに不利といわざるを得ない。そこで、私は、この継続審議の結果、国後択捉総理の言われる有利な解決になる可能性があるかどうかということを調べてみなければならぬと思うのであります。  鳩山全権の訪ソの際のいわゆる新党議と今度の共同宣言とでは、歯舞色丹については違っていることは明白でありますが、国後択捉については、新党議はわが領土権主張を堅持しつつ継続審議に付するということであったのでございます。これに対して、今度の共同宣言におきましては、国後択捉領土権主張いたしますると、いよいよ歯舞色丹さえも返ってこないということになっておるのであります。そして政府国後択捉継続審議となっておると言うのでありますが、これが果して新党議にいわれる継続審議と言えるであろうかどうか、この点は大いに問題であるとしなければなりません。なぜかと申しますと、骨葉は同じ継続審議ではございまするが、新党議にいっておる継続審議、また国民の期待いたしておりまする継続審議というものは、あくまでも国後択捉領土権主張するための継続審議でなければならないのでございます。しかるに、この共同宣言継続審議というものは、平和条約締結に関する継続審議であって、しかも、その平和条約では、歯舞色丹を取り戻すためには、国後択捉領土権主張するどころか、かえってその放棄を要求されるということになっておるのであります。これでは、継続審議と申しましても、国民の期待している継続審議とは全く似ても似つかないものといわなければなりません。この点についてはいかにお考えになるのでございましょうか。
  26. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 継続審議、すなわち平和条約締結の際に、択捉国後についてこちらから主張するということは、これは、たびたび繰り返して申しますがごとくに、日本としては当然の主張をいたします。その権利は保留いたしてあります。歯舞色丹の方は、日本がどうしても歯舞色丹だけは引き渡しを受けなければならないという特別の理由がありますれば、択捉国後放棄をして国境線というものを変えてしょわなければ、日本領土とはならないのであります。それは今日選ばない方がいいだろうと考えたので、私は継続審議中にすべての領土を含ましたわけであります。
  27. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そういたしますと、現土の状態としては、国後択捉放棄しない限りは歯舞色丹は返ってこない、これが現在の状態である、かように考えてよろしゅうございますか。
  28. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  29. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、その現在の状態に基いてこの共同宣言が作られておるのでございまするから、この共同宣言意味するところは、すなわち、国後択捉を将来放棄しなければ歯舞色丹すら返ってこない、こういうことにならざるを得ないと思いますが、この点もやはりお認めになると承わってよろしゅうございましょうか。
  30. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 重光国務大臣モスクワにおいて協議をした際も同じであります。他の領土を全部放棄しなければ歯舞色丹日本引き渡しをいたしません。
  31. 大橋武夫

    大橋(武)委員 今までは、私どもは、国後択捉につきましては、なお日本に望みあるかのごとくに政府説明を承わっておったのでありますが、ただいま総理大臣お話によりますと、この共同宣言意味するところは、将来国後択捉放棄するにあらざれば、歯舞色丹すら返ってこないということであるということを明らかにされたわけであります。この点を記録にとどめてありますから、一つ十分に……。
  32. 植原悦二郎

    植原委員長 大橋君、総理大臣発言を求められております。
  33. 大橋武夫

    大橋(武)委員 発言中であります。——十分委員諸君は御記憶願いたいと思います。  続いて、共同宣言案が……。
  34. 植原悦二郎

    植原委員長 それは総理がお答えしょうというのです。
  35. 大橋武夫

    大橋(武)委員 お答えといって、私の発言中ですから、私の質問が終ったらば、総理発言をなさっていただきたい。
  36. 植原悦二郎

    植原委員長 総理発言を許します。
  37. 大橋武夫

    大橋(武)委員 いえ、私の発言が終った後に、総理が御訂正になるなら御訂正願います。
  38. 植原悦二郎

    植原委員長 総理が言い終らないうちにあなたがお立ちになったので……。委員長に間違いはありません。総理発言継続を許します。
  39. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは総理に……。
  40. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたはそう勝手に断定をせられては答弁ができません。重光外務大臣モスクワにおいて交渉する際に、択捉国後についての領土権放棄しなければ、歯舞色丹日本に引き渡さないということは、重光外務大臣のときにもむろん明瞭であったのであります。私のただいま申しますのは、希望を後日につなぐ方がいい、国際情勢が変化すれば択捉国後まで、歯舞色丹とともに日本の領有を認めるであろうと推測しますので、それで、平和条約締結のときは、その時期まで持っていって、そうして平和条約締結すれば、ここに日本希望があるわけでありますから、それで択捉国後日本の領有とする希望のある道を選んだ方が日本のためになると思って、その道を選んだのであります。
  41. 植原悦二郎

    植原委員長 大橋君、あなたの御了解を得ておきます。総理発言最後まで言おうとしたのに、あなたがお立ちになったところに今の問題があるのです。それだから、よく御了承の上で、御質問をお願いいたしたいと思います。
  42. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすれば、ただいまの総理の御答弁は、現在の状態においては、国後択捉放棄しなければ歯舞色丹を取り返すことはむずかしい、しかし、これを継続審議とすることによって、将来あるいは国後択捉をも回復し得る希望を生じ得る、そういうことがあるかもしれない、そういうことでこの継続審議を選択された、かように承わったことにいたしておきます。  そこで、問題は、将来国後択捉日本に回復されるような国際情勢が作り上げられたる場合に、日本側として国後択捉を返してもらいたいという要求を出し得る十分なる根拠をこの共同宣言の中に用意をいたしておくということは、これはもちろんこの共同宣言の当事者たる日本の側としては、当然考えておかなければならない点であると存じます。そこで、果してその点についての用意が共同宣言において十分であるかどうかということを、続いて問題にしなければならないわけでございまするが、共同宣言案第九項に、歯舞色丹平和条約締結の際引き渡すと書いてあります。この引き渡しという言葉に相当する露語、ベレダーチという言葉は、譲渡、引き渡しなどと訳し、すこぶる意味の広い言葉なのであります。元来歯舞色丹国後択捉の返還という日本側主張に対し、ソ連は、樺太、千島はもとより国後択捉歯舞色丹は、いずれも現在すでにソ連領の一部となっておるものであって、平和に際し当然に日本に返還するという筋合いのものではない、もし日本に渡すという場合があるとすれば、それはすでにソ連領となっておる旧日本領の一部をあらためて日本に割譲することになるという主張を続けておるのであります。そこで、ソ連にとっては、このペレダーチという広い意味の言葉を使うことは、特別の意味を持つことになるのであります。すなわち、歯舞色丹日本に渡すのは、日本領土日本に返すのではなく、ソ連領の一部を新しく日本に譲渡するのだという意味を表わしておこうというのであります。さればこそ、第九項に「本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、」という特別の文句がわざわざつけてあるのであって、日本のものを日本に返すのならば、何もかようなもったいをつける必要はないはずであります。日本のものでないソ連のものを特別に日本に渡すというのであるから、かような文句をつけ加えているのであります。その結果は、将来ソ連は、共同宣言歯舞色丹さえソ連領であるという前提を認めているではないか、いわんや国後択捉は、樺太、千島とともにソ連領であることは当然であるという立論を必ず打ち出してくるのであります。かように考えますと、第九項は、歯舞色丹をも含めて現にソ連の占領している地方はすべてソ連領になっておるという、ソ連のかねてからの主張を巧妙に織り込んであるものといわなければなりません。従って、将来平和条約締結交渉の際、ソ連はこの条項を援用して、歯舞色丹以外の領土共同宣言の際ソ連領として決定済みであるという主張を展開して参るでございましょうし、また、さような主張をいたした場合には、当方としても文理上その主張を打ち破ることは相当に困難になるであろうということを覚悟しなければなりません。従って、将来国後択捉領土権を討議する機会があったといたしましても、それは、領土の返還を求めるということではなく、ソ連領の一部となっておるものをあらためて割譲せしむるという、全く新たな問題とみなされるおそれがあるのでございまして、択捉国後の返還はこの点において事実上すこぶる困難となると思われるのでございまするが、政府の御見解を承わりたいと存じます。
  43. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、その条約上の文理解釈として、日本が非常に不利益な場合に立ったというふうに考えておりません。ただ、文理解釈として譲渡という意味はどういうロシヤ語であるのか、それがどういう意味を持っておるかということは知りませんけれども、文理解釈によって日ソの領土問題はきまるとは思っていないのです。国際情勢の変化によって日本領土問題は決定できるものと根本的に考えております。その文理解釈については松本全権から答弁してもらいます。
  44. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいま問題となっておりますのは、条約共同宣言そのものでございまして、これは一個の文章でございます。従って、その文章の意味を正しく理解するということが、この審議の目的でなければならない。ただいま総理は、そのロシヤ語がどういう意味であるか自分は知らぬ、こう言われましたが、この露語の原文には、総理も署名をして帰っておられるのでありまして、それについて、署名者である総理がどういう文章か知らないというようなお答えは、私は総理のお答えとしてまことに遺憾千万であると存じます。そのことは別といたしまして、(鳩山国務大臣「それに対して答えます」と呼ぶ)——松本全権から……。
  45. 植原悦二郎

    植原委員長 ちょっとお待ちになって下さい。あなたはあなたの断定をなすっておる。ですから、それに対して総理が答えて、事を明瞭にしておく必要があるというときには、総理発言を許すことが当然だと思います。
  46. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私の発言中でもですか。
  47. 植原悦二郎

    植原委員長 あなたのお言葉は、あなたのかなりの断定が含まれておりますから、それについて総理がものをはっきりしておく必要があるという場合には、総理発言を求めれば、これにこたえる。事を明瞭にするために、さような必要を委員長は感じておりますから……。
  48. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私は発言中なのでございまして、私は総理お話を承わらないというのではございません。十分に総理のお考えを承わりたいと思います。そのために一つ時間をお許しいただきたいと思いますが、しかし、ただ……。
  49. 植原悦二郎

    植原委員長 それならば、総理に時間をお許しになってもいいでしょう。この委員会は議論ではないでしょう。事を明瞭にするためで、あなたにはあなたの御解釈をなさって、その場合に、総理考えは違っておるから、総理発言したいというときには、あなたがお許しなさることが、審議をきわめて明瞭にする手段方法と思いますので、どうかこの場合に、総理発言をお許し願います。
  50. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいま委員長の仰せられましたことは、私よくわかりました。委員長は、先ほど私の発言中にこれを中止して、総理発言させることが当然であるがごとく仰せられましたので、私いろいろ申し上げましたが、今あなたのお話では、そのことは別として、とにかく議事の進行上、この機会に総理発言委員長が許されることのできるように私に特に配慮しろ、こういう仰せでございますので、私は了承いたします。
  51. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私がロシヤ語をつまびらかにしなかったということについて、私が非常に責任を果さないようにあなたはおっしゃいますけれども条約文というものは、ソ連文と日本文と両方あるのです。日本文にはちゃんと「引き渡す」という文字が書いてある。その「引き渡す」という文字をソ連の何とかいう文字と同様だと思いまして、私は調印をしたのであります。やはり日本文の原文の条約正文があるのです。それには、ソ連のブルガーニンも署名をしております。私はそれだけで自分の行為について不十分だとは思いません。これだけは明瞭にしておきます。
  52. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいまの総理お話は私も承わりましたが、私も条約文については詳しい事情は承知いたしておりません。しかし、おぼろげに聞いておるところによりますと、二つの国語で作られた二つの原文があるときには、どちらもこれは同等の効力のあるものと、こう解釈すべきものじゃないかというふうに思われるのであります。従って、私どもは今、日本文のこの宣言案だけを批准すればいいというのではなくして、同時に露語で書かれたところのものをも含めて承認するという立場にあるのではないか、こう思います。従って私は、この露語についてどうなっておるか知らないということは、政府の当局者としてはまことに無責任きわまる態度ではないか、こういうふうに思っておるわけなのでございますが、この点について、重ねてお話がありましたら、承わりたいと存じます。なければ、続いて発言いたします。
  53. 重光葵

    重光国務大臣 その点は、今お説の通りだと思います。これは両方とも正文なのでございます。しかし、日本側としては、日本側の正文をそのまま読んで少しも差しつかえないと思います。それがソ語の正文とどういうことになっておるかということは、外務省のその道の専門家によって、十分検討の上にこれが用いられた文字でございますから、不一致は少しもないと思います。日本文によって御解釈なさって少しも差しつかえない、こう思います。
  54. 大橋武夫

    大橋(武)委員 十分に調べられた上で調印をされたものならば、先ほど鳩山総理大臣が露語はどうなっておるか知らないということを言われるはずは私はないと思う。私は、今日、鳩山総理大臣個人にこの問題をお伺いいたしておるのではございません。日本政府の最高の責任者としての鳩山総理大臣に、日本政府の見解並びにそのとられた措置について質問をいたしておったのであります。しかるに、鳩山総理は、日本政府を代表して、露語がどうなっておるか知らない、こう言われたのであると思いまして、私は先ほどのようなことを申したわけなのでございますが、もし先ほどの総理お話がそういう意味ではない、自分は個人に対する質問と誤解したために、政府を代表して露語がどうなっておるか知らないということを言ったわけではなかったんだというのでありましたならば、その点をはっきりしていただきたいと存じます。これは、日本政府の権威のために、私は特に希望いたします。
  55. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本文には明瞭に「引き渡す」と書いてありましたから、露語もそういう意味であろうと信じて署名をしております。
  56. 大橋武夫

    大橋(武)委員 いずれにいたしましても、露語の先ほどの解釈については、私は政府から明瞭な答弁をまだ承わっておりません。露語は多分こうであろう、こういう御説明だけでございますが、鳩山総理大臣を補佐される政府委員におかれまして、先ほどの私の質問に対してお答えがありましたならば、ぜひ承わりたい。
  57. 松本俊一

    松本全権委員 大橋さんの質問に対して、私が交渉の衝に当りましたので、はっきりお答え申し上げます。この日本語の引き渡しに当を露語につきましては、十分研究をいたしました。先方の日本語をよく知っておる専門家とこちら側の専門家が十分協議した上に、この案文は引き渡しという案文になっておるのであります。この引き渡し意味は、日本語の引き渡し意味するごとく、単なる物理的な占有の移転を表わす言葉であります。従いまして、日本側といたしましては、歯舞色丹日本の固有の領土であって、北海道の一部であるということは、私が当初から最後まで主張いたしておるところであります。従いまして、引き渡しという意味は、そういう日本側歯舞色丹に対する建前を通して、こういう字句で十分だと考えましたので、私もこれを受諾いたしまして、この点を鳩山全権に報告いたしました上で、署名になったのでございます。かように御了承願います。
  58. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そういたしますと、この引き渡しという言葉の意味するところは、日本の側においては、日本主張通り返還ということを意味するのであるし、ソ連の側としては、ソ連主張通りソ連領の一部を割譲するということを意味するものと了解してよろしゅございましょうか。
  59. 松本俊一

    松本全権委員 そうではございません。ソ連側がどういうように考えておるかということは、この文字の上には全然現われていないのであります。私が申し上げましたのは、日本側として絡始北海道の一部分であるということをはっきりさせた上で、この字句をアクセプトしておるのであります。さよう御了承願います。
  60. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この点はきわめて重要な点だと思うのでございますが、どうも御答弁で明らかにならないような気がいたしますので、重ねて松本全権に承わりたいと存じますが、そうしますと、この引き渡しという字句は、日本文も露語も、領土権には全然関係なく、単なる物理的な占有移転を意味する、こういうふうに承わってよろしいのでございますか。
  61. 下田武三

    ○下田政府委員 その通りでございます。ペレダーチといいますのは、英語でいいますとトランスファーでございまして、日本側といたしまして、法律的なインプリケーションのあるシードに当る字は絶対に避けるという建前を堅持いたしておりまして、ただ単に物理的に移すというだけの意味でございます。
  62. 大橋武夫

    大橋(武)委員 次に第九項に「両国間に正常は外交関係が回復された後、平和条約締結に関する交渉継続する」とありますが、本項はたびたびここで問題になったように、最初の案では、領土を含む平和条約締結に関する交渉とあったものを、歯舞色丹引き渡しに関する第二項を挿入する際、特にソ連主張して、領土を含むという字句を削ったものであります。ソ連が無意味に削除を主張したとも考えられないのでありますから、平和条約締結交渉の際、ソ連としては必ず歯舞色丹引き渡し以外には領土に関する問題はないはずだ、という主張を持ち出してくるものと思わなければなりません。そこで、この心配を除くために留保条件を付することは、領土問題に関するわが方将来の立場を守るため、有利かつ絶対必要であるということが言い得るのでございまして、北澤君、小坂君その他の各委員の質問がこの点に集中いたしましたが、総理及び外務大臣は、先方が十分に了解をしておるからその必要はないという今までのお答えでございますけれども、さような了解が文書によって取りつけてあるのでございましょうか。
  63. 重光葵

    重光国務大臣 その了解は、宣言の文はその通りでございます。しかし、松本・グロムイコの交換公文というものが文書になっております。それは、将来領土問題を継続して交渉しょうということに相なっておりまして、これは死んでおるものでもなんでもございませんから、その趣旨で将来は進めていって、少しも差しつかえないと存じます。
  64. 大橋武夫

    大橋(武)委員 文書としては松本・グロムイコ交換公文がただ一つあるだけである、これが外務大臣のお答えであると承わってよろしゅうございますか。——そういたしますると、この松本・グロムイコ交換公文というものは、予備会議の交換公文でございます。従いまして——私、専門外で詳しい事情は存じませんが、普通予備会談において作成せられた交換公文というものは、本交渉開始までの事柄をきめるものであって、開始した後には、その効力はなくなるというふうに取り扱われるものではありますまいか。
  65. 重光葵

    重光国務大臣 それはそうではないと思います。その趣旨で会談をいたしまして、その趣旨継続ときまったのでありますから、やはりその趣旨は生きておるもの、またその趣旨が全然なくなっておるものだということになれば、はっきりそうしなければならぬと思いますが、そういうこともないのでございます。そこで、いろいろ今お説を伺いました。お説を伺いまして、法理論以外に、これはやはり私は現実の外交問題として一言ちょっと申し上げたいのは、どういう交渉をするかということは、将来の日本政府及び国民の覚悟一つだと、こう考えます。そこでその文書が生きておるとか、もしくはまたそれを明確にしなければならぬとかいう必要より、将来の交渉方針をしっかりと置くべきものだと私は考えておるわけなので、この問題について、そういう詳細な条約論とでも申しますか、それは私はごくあっさり考えていいのじゃないか、こう考えます。
  66. 大橋武夫

    大橋(武)委員 どうも外務大臣のただいまのお言葉は、私了解に苦しむところでございまして、この共同宣言審議をいたす委員会において、共同宣言の文書はどうでもよろしい、今後の情勢によってどうにでもなるんだというようなただいまのお言葉は、これは私どものこの承認をするかどうかという審議の職責というものを、全く侮辱せられたような気がいたします。しかし、それは御意見でありますから、承わっておくだけにいたしますが、ただいまの御返事の初めのうちに、予備会談にあった、その後本交渉になった、特に変ったならば、その点ははっきりしてあるはずだ、こうおっしゃった。なるほど、これは特に変ったということがはっきりいたしておるではございませんか。すなわち、この共同宣言の最初の文案においては、明らかに領土を含むという字が入っておった。しかも、それが中途において明らかに変えられたのでありまして、領土を含むという字が削除せられておる。これはすなわち、前の交換公文が交渉の過程において明らかに変えられて、その変った結果が共同宣言となって現われておるんだ、こういうことを示しておるのでございまして、私は、ただいまの外務大臣のお言葉の、変ったときは変ったようにはっきり書いてあるから、よくわかると言われた、その変ったようにはっきり書いてある、この点をどう御説明になりますか。
  67. 重光葵

    重光国務大臣 私は今の御非難に対しては、お答えせざるを得ません。私は決して今御審議の点について、誠意を欠く御答弁を申した覚えはございません。私は、実際外交の運用としてはこうなければならぬのだということをお話ししておるのであります。しかし、それが法理諭ではないから、法理論を言えというなら、いつでも御回答いたします。(笑声)これははっきりしております。交換公文に書いてある。領土問題を含むという字が書いてないから、交換公文が変ったということがどこから出ますか。そういう法理論は国内法でも出ません。領土問題を含まないと書いてあるならば、これはまた変ったことになります。そういうことはない。だから条約論としては、常に積み上げてすべてものを解釈していくのですから、前からの解釈通りにいくのだ、これは当然の法理論であります。
  68. 大橋武夫

    大橋(武)委員 条約解釈としては、積み上げていろいろな事情を考え解釈しろ、こう言われるから、そこで私は交換公文にあったものが、共同宣言の最初の原案にはその通りあったではないか、しこうして、これが歯舞色丹引き渡しという条項を挿入する際に、特にソ連側の主張で削られておる。この点をただいま指摘したわけなのであります。これは、私が特にそういう問題を持ち出したのではございません。外務大臣が、交換公文というものがある、それが本交渉において変更されるならば、その変った点が明確になっておるはずだ、こう言われた。だから、私はその明確になっておる点を指摘したにすぎない。これに対してのただいまの御答弁は、私はお受け取りいたしかねます。
  69. 重光葵

    重光国務大臣 私の申した言葉は、一つよく速記録でも見て何しましょう、そういう言葉じりのことについての御議論ならば。しかし私の申したのは、今申した通りでございます。
  70. 大橋武夫

    大橋(武)委員 特別にこういう事情があってこの字句が削られたのだ、従って、字句を削ったことは何ら交換公文の趣旨を変えたものではないという御主張をなさいますならば、私は、その点を何らかの資料によってはっきり示していただきたいと存じます。
  71. 重光葵

    重光国務大臣 その点は、交渉に当った全権説明で、十分に御納得願いたいと存じます。これは一々発表する文書はございません。
  72. 大橋武夫

    大橋(武)委員 しからば、全権説明として、この字句の削除は、何ら変更を意味しないものであるということを示す当時の事情について、一つ説明を十分承わりたいと思います。
  73. 松本俊一

    松本全権委員 この私とグロムイコとの交換文書の発表のいきさつをお話しすれば、私は、この文書がまだそのまま存続しておるということはおわかりになるだろうと思いまして、先日申し上げたのでございますが、ただいま大橋さんの御質問がありましたので、それを繰り返すわけでございます。  この文書は、鳩山総理とブルガーニンとの交換文書とともに、この共同宣言の署名後、これを公表いたしますことを先方にかけ合いました結果、先方の同意を得て公表いたしました。そこで皆様のお手元にも配付してあるわけでございますが、この公表につきましては、私自身グロムイコに交渉いたしました。グロムイコは、私の目の前で外務大臣に話をいたしました。それでとくと相談の上、ブルガーニン首相の許可も得て後刻御返事をする。それで先方としては、鳩山・ブルガーニン書簡並びに私とグロムイコの書簡は、そういういきさつで十分審議をした上で、これが発表方に同意を与えてきたのであります。従って、この私とグロムイコとの書簡は、共同宣言平和条約継続審議という問題を理解いたします上において、そのままこれを援用して何ら差しつかえない文言であるということを、われわれも確信いたしておる次第であります。
  74. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ただいまのは一向説明になりません。それは、ただ発表の次第を言われたのである。もしこの共同宣言が発表せられたとき、共同宣言の日において、あらためて合意された文書として、その日付で発表されたものでございましたならば、これは確かに私は共同宣言意味を明らかにする資料として受け取れると思う。しかし、発表された時期がこの共同宣言と同時であるということは、何らこの作成された時期の前後をそれによって変更するものにはならぬ。従って、初めに作られた文書は、後に作られた文書によって修正されたものと見るというのが、普通の取扱いにおいて当然の常識でございまするし、しかもこの経過において、この交換文書と同じ字句共同宣言に一度書いてある。しかもそれがあらためて訂正されたという事実を考えますると、修正には、それだけの意味があるというふうにわれわれは認めざるを得ないと思うのであります。何か御答弁ございますか。
  75. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまの御意見は、見解の相違だと思いまするが、われわれの考えでは、これが共同宣言の署名後に発表方を向うが同意しました以上、この共同宣言解釈上、非常に有力かつ決定的な資料であるということを、私どもははっきり考えておるわけであります。さよう御了承願います。
  76. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それはしかし、相手の立場に立って考えますると、逆の意味の重要なる解釈資料であるということが、また甘えるわけなのであります。すなわち、こういういきさつによって変更されたのである、もとは領土を含むとあった、それが最後には領土を含むが削られておる、従って、この継続審議の対象には領土問題は入らない。こういう解釈が可能になる。またこれはそういう解釈の重要な資料である。そう先方は判断しているかもしれない。あなたは、先方はそういう判断をするはずがないし、またそういう判断は理論上成り立たないと主張する何か根拠をお持ちでございますか。
  77. 松本俊一

    松本全権委員 ただいまの点でざごいますが、これは、私は先日もたしか北澤君の御質問に対して御返事を申し上げたと思いまするけれども、私がグロムイコとの間に交換文書をやりましたときのいきさつを申し上げれば、はっきりするだろうと思います。すなわち、あの文書は二つの考えからできておるのであります。一つは、平和条約審議は、国交回復、すなわち、暫定方式によって国交回復が行われた後も継続されるということと、平和条約交渉継続される以上は、当然これに領土問題が含まれる、この二つの考え方を私がるる先方に述べました結果、できたものであります。従いまして、先方も平和条約継続審議する以上、領土問題は当然これに含まれることを考えておるのでありまして、この点は疑う余地がございません。また今回の共同宣言の後に、領土問題を除いて平和条約交渉の対象になるものは何かございましょうか。私も一年有半にわたって先方と平和条約交渉をいたしました。それで平和条約交渉のうち、先方との間の、戦争から生じたあらゆる懸案はすでにほとんど解決済みなのでありまして、領土間胆が解決されていないのでございますから、平和条約継続審議ということは、少くも私といたしましては、領土問題の継続審議と全く同義語だと考えております。そういうふうに御了承願います。
  78. 大橋武夫

    大橋(武)委員 平和条約においては必ず領土を規定しなければならぬから、当然領土問題の交渉がなければならぬということは、これは確かにその通りであります。そこで私の申し上げておるのは、その交渉において、ソ連がこの条文を援用することによりまして、国後択捉領土権問題はすでに決定済みである、という主張をしてくるおそれがあるということを申し上げておるわけなのでございますから、ただいまの御答弁だけでは私は満足でこない。しかしこの問題は幾ら伺っても、これ以上はあるいは意見の相違になるかもしれません。御答弁があれば、承わります。  それから、鳩山総理にこの点を重ねて承わりたいのでありますが、鳩山総理の各委員に対する御説明を承わっておりますると、この点については先方が十分に了承をいたしておるから、自分としては間違いはないと思うというお答えであったのでございます。先ほど伺いましたごとく、この問題については、文書としてはほとんど有力な文書は——こちらで領土問題を含めておると認める十分な証拠力のある文書はないように思いますが、それでもなお、先方が了承をしておるから差しつかえはないというお考えでございますか。
  79. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 領土問題についてブルガーニンと話し合いをしましたときに、こちらから明瞭に択捉国後引き渡しを要求してあるのにかかわらず、それがまとまりませんで、この平和条約に延ばしたのでありますから、当然に平和条約においては、択捉国後の問題、あるいはその他の島々まで問題とすることは可能だと確信しております。
  80. 大橋武夫

    大橋(武)委員 なお総理大臣に承わりたい点は、先方が十分に了解しておると言われましたが、日本側のだれがソ連側のだれの了解を取りつけてあるか、これを一つ説明いただきたい。
  81. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ブルガーニンもフルシチョフも、言下に、択捉国後は断じて日本引き渡しできない、と明瞭に言いましたものですから、向うが、この次の問題になることは、国際情勢の変化によってまた交渉したい、そして一般的の領土問題として継続審議ということは、最初の交渉において、承知をしておるのでありますから、ただいま松本全権が申した通りに、領土問題を平和条約のときに話し合いをする以外に問題がないことは明瞭であって、その話し合いをすることが、もうすでに開始されているのですから、私は択捉国後について平和条約において審議ができるということは、疑う余地はないと確信をしております。
  82. 植原悦二郎

    植原委員長 大橋君に念のため申しておきますが、ずいぶんあなた、時間を越えておりますから……。
  83. 大橋武夫

    大橋(武)委員 もう一、二点ほど……。ただいまの総理のお答えを承わりますと、先方は十分に了解しておる、こう言われました。お答えは、こちらのだれかが先方のだれかに会って明瞭に名士の了解のお返事を受け取ったというわけではなく、交渉のいきさつから考えて、総理としては、先方が十分に了解しておると思っておられるということでございましょうか。
  84. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ブルガーニンと私は直接にその話をいたしましたのです。河野君はフルシチョフと、これはずいぶんしつこく話をしております。松本君もグロムイコと話し合いをしております。三人とも同じような考えを当然持っておるものと推測をいたしております。
  85. 大橋武夫

    大橋(武)委員 この推測ということは、あとになって、そうじゃなかったと言われることが非常に多いと思いますので、この点はやはりはっきりしておくことがいいのじゃないかと私は考えます。現に、重光全権交渉に行かれました際に、フルシチョフは、河野全権が来たときに、択捉国後についてのソ連側の説に賛成して、ソ連主張はまことに合理的かつ実際的であって、日本としては受諾すべきものと評価するという趣旨のことを言った。つまり、河野全権国後択捉放棄するというような了解を与えた、というようなことを主張したそうでございますが、重光全権は、これに対して、そんなはずはない、こう言って、一蹴されたという事実を聞いているのでございます。後日こういうふうに口頭の了解が、両国間で一方的に一蹴されるというようなことは、重光全権自身がこうしてやっておられる実例があるのでございまして、ソ連は決してそういうことをしないということは、言い切れないと思いますので、私どもはどうしてもこの点をはっきりいたしておく必要があると思うのでございます。しかし、これは意見でございますから、特に御答弁があれば承わりますが、なければ、先に進みます。
  86. 重光葵

    重光国務大臣 私は意見は申し上げませんが、今言われた事実は、私は、私の申したことではないということをはっきりいたします。私は、ソ連側から聞いたことは聞いたまま帰朝後に報告もし、話もしておりますが、それは、そういうことではございませんでした。ソ連側は十分ソ連側の意向を主張しました。それはモスクワにおける交渉の第一回、第二回もそうでありました。その他においても、たびたび主張をしました。強い意見を主張いたしました。その場合に、河野農林大臣が漁業交渉に来て、ソ連の首脳部と会ったときに、ソ連の首脳部から十分に説明しておったのだ、こういうことを言いました。それはしかし、河野農相だけじゃない、日本側から日本の議員も来た、いろいろ訪問者に対して十分説明をしてあるのだ、こういうお話をしました。私は、それはしたでありましょう、それを否定するわけには参りません。私はそれに対してこう言ったのであります。他の訪問者のことは自分は知らない、しかし河野農相がそういう話を聞いたということは、それはあるかもしれぬけれども、河野農相はこれに対して何ら——私の言葉ではコミットメント、日本政府承認を与えたようなことは、一言も言ったことはない。そこで権限はないから、自分がこういう問題について話し合いはできぬ、それで、漁業問題で一つ話し合いをしなければならぬというので、イシコフ漁業相と話し合いに入った。こういうことに相なっておるのでありまして、それをそう申したのであります。それでありますから、ソ連側の主張に対しては、日本政府はむろんのこと、河野農相も何らこれに対してコミットメントを与えたものでないことをはっきり言うて——これはたびたび、問題の起ったつど、それを申しておるわけでございます。これが実情でございます。またその以外のことを私は説明をいたしたことはございません。
  87. 植原悦二郎

    植原委員長 大橋武夫君にちょっと委員長から……。あなたはずっとこの委員会に御出席になりませんので、この質疑応答の経過を御存じないこともありましょうから、念のために申し上げますが、今、河野農相とブルガーニンのお話を、河野農相がブルガーニンの話に何かお答えをして、その間に幾らか拘束されるようなことがあるようなふうのあなたの御発言です。まさかそうではないと思いますが、念のため申し上げておきます。河野農相は、漁業問題に行って話したのだ、それゆえに、日本政府として政治的にブルガーニンに対して何の拘束も受けるような、責任のあるような答弁は一度もしていないから、その点は全然安心してくれろ、ということを繰り返し繰り返しこの委員会において発言されておりますから、念のためにそのことを申し上げておきます。
  88. 大橋武夫

    大橋(武)委員 河野君のことについては了承いたしました。ただ、口頭の了解というものが、いろいろ後日に問題になるということは、それにもかかわらず、十分考え得ることであるということについては、私は依然としてさように考えます。しかし、河野君の問題は了承をいたしました。  最後に私は、特に総理大臣に承わりたいと存じますが、第九項におきまして、領土を含むという句をわざわざ削りました点、また返還と言わずに引き渡し、すなわち、譲渡という意味を含むペレダーチという言葉を用いた点、その他この交渉の経過等から見まして、継続審議において国後択捉領土権回復が取り上げられるかどうかということは、はなはだ不安であります。また第九項の表現自体に、将来の国後択捉の回復要求の貫徹を困難にするような要素が多分に含まれておるのでありますから、これに留保条件を付すべきではないかということを伺っておるのでございますが、政府はしばしばこれを強く拒む答弁を続けて参られました。私は、なぜこの点について政府がこれほど強く拒否しなければならないのであるか、全く不可解にたえない次第なのであります。あるいは政府は、ソ連が承知すまいと思っておるのではありますまいか。もしほんとうに先方が了解をいたしておるといたしましたならば、ソ連として当然了解しておる事柄を、その通りはっきりしょうというのに、これを承知しない理由はないはずでありますのに、それを承知しないのではないかと心配されておるといたしまするならば、この了解というものは、当方の一方的判断にすぎないのであって、あるいは先方は了解していないという場合もあり得るのではないかと心配をいたすのであります。今日日ソ交渉の経過から見まして、国後択捉領土権継続審議とはいうものの、それはほんとうの名ばかりであって、事実は、すでにこの共同宣言によって絶望状態になっているのではないかという点を、国民は心から心配いたしております。今日の政府の御説明は、この不安を少しも解消しないばかりでなく、不幸にして一そう……。
  89. 植原悦二郎

    植原委員長 ちょっと御注意申し上げます——大橋君に御注意申し上げます。あなたの御意見を陳述するならば、この場合は許しませぬ。質問をなすって下さい。あなたのその御意見は、最初の御質問のときにずいぶんるるお述べになったのであります。これは討論の場所ではありません。だから、それに対しては、政府は再三再四お答えしてあります。そういうことをつけることは無益である、要はないのだ、平和条約というものの審議は、領土継続審議意味するのであるということを、委員長は明瞭に聞き取っております。繰り返してその点を御質問なすっても、ただ時間をウエストするだけのことだと思いますから、念のため御注意申し上げます。
  90. 大橋武夫

    大橋(武)委員 委員長の御注意を承わりました。  共同宣言によりまして、重光全権条約案のときの同じく、国後択捉は事実上すでに決定的に失われているのではありませんでしょうか。そして政府は、その事実を国民の目から隠すために、名ばかりの継続審議という形をとって、これをごまかしておられるというような点があるのではありますまいか。それでなければ、なぜこの留保条件を拒まねばならないかという理由が、私にはとうてい了解しかねる次第なのでございます。今回の領土についての政府方針は、国後択捉歯舞色丹即時返還から、歯舞色丹即時返還国後択捉継続審議と変り、ついに今回の共同宣言においては、歯舞色丹すら、国後択捉放棄して、平和条約締結するまでは返ってこないという結果に終っているのであります。この間国民は、当てにならない政府に引きずり回わされて、とほうにくれてきたという事実もございます。
  91. 植原悦二郎

    植原委員長 大橋君の発言は質問とは認めません。あなたは議論しているのですから……。
  92. 大橋武夫

    大橋(武)委員 国民は欺かれたというような……。
  93. 植原悦二郎

    植原委員長 大橋君、大橋君、それは質問ではありません。討論はこの場合許しません。
  94. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ということを希望いたしまして……。
  95. 植原悦二郎

    植原委員長 討論はこの場合許しません。
  96. 大橋武夫

    大橋(武)委員 討論でなく、質問をいたしております。
  97. 植原悦二郎

    植原委員長 討論であります。委員長はそれを討論と認めます。繰り返してあなたは討論をなさっておるので、質問ではありません。この場合に討論は許しません。
  98. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ほんとうの継続審議ならば、留保を拒むはずはないのでありまして、留保を拒むということそのことこそ、何かそこにわれわれに了解できないものがあるのではないかという疑いを持たせるのであります。果して国後択捉は真に取り戻し得る状態に今なおあるのでございますか、それともそれはもはや望みなきに至ったのであるか、今日国民が最も知りたいと思っておるのはこの点でございます。私は総理に率直にこの点をお答えいただきたいと存じます。択捉国後の回復は望みがある、将来の内閣の努力によって必ず返ってくるものであるか……。
  99. 植原悦二郎

    植原委員長 大橋君、すでに総理大臣はその点はお答えになっております。
  100. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それとも、この共同宣言によって、またあなたの日ソ交渉によって、事実上望みなきに至っておるのではないか。もし幸いに総理の正直なお答えをいただきまするならば、あるいはその結果国民はこれによって大なる失望を感ずるかもしれません。しかし、その答えが何でありましょうとも、国民は真実を知って、その真実の上に、国家と民族の将来を築いていくという大きな責任を免れることはできないのであります。どうか総理は勇気を持って真実を告げていただきたいと思うのでございます。
  101. 植原悦二郎

    植原委員長 委員長はその問題に対して総理答弁しておると考えて、答弁の必要なきものと認めます。
  102. 大橋武夫

    大橋(武)委員 顧みれば、日ソ交渉につきましては、不幸にしてあまりにも多く真実が曲げて語られて参りました。そしてそのことが与党の結束を害し、国論の統一をはばみ、当方の立場を非常に不利にいたしておるのでございまして、今日交渉の妥結に当って、国民の間に何か割り切れない感じを抱かせておるのであります。どうぞ総理は、この機会に、ただいま私のお尋ね申し上げました、この共同宣言においては、ほんとうに国後択捉に返ってくる望みがあるというのか、それともその望みはもはや失われているというのか、この点を率直にお答えいただきたいと思うのであります。総理は本案の批准と同時に引退されると聞いておるのでありまするが、四十年の政治的生涯の最後の時期を、民主政治の指導者として終えられようとする総理は、勇気ある、そして良心的な政治家として、その政治生活の最後の真実を語るというお勤めをりっぱに果されてこそ、責任ある政治家として、その引退の花道を飾るに最もふさわしい、りっぱな姿であると考えますので、私は国民諸君を代表いたしまして、この機会に総理の真実の御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  103. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいままでたびたび答弁をいたしましたことによって、御了承願いたいと思います。
  104. 大橋武夫

    大橋(武)委員 終りました。
  105. 植原悦二郎

    植原委員長 この際午後一時三十分より再開することといたし、暫時休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ————◇—————    午後一時三十九分開議
  106. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。岡田春夫君。
  107. 岡田春夫

    ○岡田委員 関係大臣がまだお見えになりませんが、その点はいかがですか。鳩山総理大臣もだいぶもうお疲れのようですから、しかもだいぶ質問も続いておりますので、できるだけ重復することを避けまして、簡潔にお伺いいたして参りたいと思います。しかし、これはきわめて重大な条約であり、宣言でありますので、お伺いすべき点については、とっくりとお伺いをしていかねばなりません。  この間からの質疑応答を通じて、総理大臣ソビエトに対する感想についていろいろ御答弁になっております。たとえば、この間の参議院の本会議におきましては、野村吉三郎氏の質問に答えまして、中ソ友好条約日本に向けられたものではないと思う、あるいはまた、この間の穗積君への答弁には、ソ連の人はフランクな態度をとつておるように考える、こういうようないろいろな御答弁があったわけであります。こういう点から見て率直な印象を伺いたいのでありますが、ソビエトという国は戦争を求めておる国であるとお考えになるのか、平和を求めておる国であるというようにお感じになったのか、この点について率直な印象を伺いたいと思います。
  108. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連はただいま世界大戦の再発を非常にきらっておると思います。世界大戦の勃発をおそれておると思います。おそれておるというのは少し語弊があるかもしれませんが、さっき言ったようにきらっておると思います。
  109. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは戦争をきらっておるとお感じになったというように私は受け取りましたが、そういう点から見て、ソビエトは、日本に対して敵対感情を持って、事あれば日本に侵略しようというようなことを考えておる国だ、こういうようなお感じをお持ちになったのでしょうか。どうでございましょうか。
  110. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういう感じは持ちません。
  111. 岡田春夫

    ○岡田委員 今度の共同宣言を見ますと、共同宣言締結趣旨として最も重要な点は、前文の点であります。前文の中には、今度の日ソの国交回復が行われるということは、極東における平和及び安全の発展に役立つものである、こういう意味において両国の合意に到達したのであるという意味趣旨が書かれておるわけであります。この点は、私はきわめて重要な点であると考えるのであります。両国の友好関係こそが極東の平和並びに安全を招来するために大きな役に立つのである。敵対関係あるいは非友好関係というものは極東の平和と安全に寄与しない、それの反対の結果をもたらす、このような趣旨が実は前文に書かれておる。この精神に基いて書かれておると私は考えますが、この前文の精神について総理大臣の率直な御意見を伺いたいと思います。
  112. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 率直に前文の示す通り考えております。
  113. 岡田春夫

    ○岡田委員 率直に前文の趣旨ということは、いわゆる敵対関係を作るということはよろしくない、敵対関係を作るということは、極東の平和と安全を乱すことになる、このように考えるべきだと思いますが、これが前文の趣旨ではございませんか。
  114. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  115. 岡田春夫

    ○岡田委員 平和と友好の関係というのは、両国の政府並びに国民が常に努力をしなければならない。小さな行き違いとかいうようなことが紛争に発展する場合が非常にあると私は考える。そういう意味で、日本ソビエトとの友好関係というものは、この共同宣言が発効されるならば、それによってすべて終りなのではなくて、むしろ問題はこれからの問題である、この友好関係が深められるということが最も重要なんであって、共同宣言というものはむしろこの出発点であると私は考えなければならないと思うのです。そこで、今日日本の国内においては極端な反ソ感情を持っておるようないろいろな思想が出ておる。こういう反ソ感情なり反ソ宣伝というものが行われていくということが、日ソの友好関係を乱す結果になると私は考え、ます。やはり、正当な立場に立って、お互いにその国の自主的な立場に立っての友好関係が結はれるためには、少くとも、政府自身は、みずから反ソ的な宣伝やあるいは先入観念あるいは恐怖感というものを、政府自身が宣伝するというようなことがあってはなりません。正しい友好関係を作るためには、そういう立場に立って私はやっていかなければならないと思いますが、この点は重要な点だと思いますので、一つ総理大臣に御意見を伺いたいと思います。
  116. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日ソの友好関係は、私はやはりお互いに貿易するということが基礎になると思います。もとよりお互いに了解をし合うということが必要であります。あなたのおっしゃる通り了解し合うとともに、その友好の基礎となるものは貿易を緊密にすることにある、そういう理念で私はやっております。
  117. 岡田春夫

    ○岡田委員 貿易の点で友好関係を深めるという点も重要であります。しかしながら、貿易のみならず、人々の交流によって従来の反ソ的な敵対的な感情を改めていくというような、気持の上での交流といいますか、こういう点も私は重要であると思いますが、この点はいかがでございますか。
  118. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまも申しましたが、お互いに了解し合うということは、いかにして了解し合うかといえば、やはり文化の交流が必要だい思います。
  119. 岡田春夫

    ○岡田委員 その文化の交流が必要だとお話しになりましたので、そういう趣旨に立って、やはり日本政府の機関というものは行動をしていかなければならない。ことさらに敵対的な感情激発するような政策をとるということは、政府自身みずから快しまなければならないと考えますが、いかがでございますか。
  120. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お互いに感情を悪くするような原因を作らないことが必要なことは、もとよりいうまでもありません。
  121. 岡田春夫

    ○岡田委員 大体、国交回復の意義と申しますか、そういう点について要点を伺ったわけでありますが、大体こういう趣旨に立って今後の対ソ外交の基調が確立されていかなければならない。すなわち、言葉をかえていうならば、今度の共同宣言の前文の趣旨に基いて、国交回復というものは、極東の平和と安全に寄与する、このようなことに貢献するという意味で、このような対ソ外交の基調を確立していくことが、今一番外交方針として重要な問題であると私は考えるのでありますが、この点さらにもう一度伺っておきたいと思います。
  122. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私もさように考えます。
  123. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで、具体的な問題について伺いたいと思います。今のような対ソ外交を基調として、共同宣言が発効されたあとにおける国内の態勢はどのようにならなければならないか。それから、外においては、国際関係の態勢をどのように外交路線をきめていかなければならないか。この二つの問題が今後の大きな問題であると思うのでありますが、まず第一に、国内の問題から伺いたいと思います。国内の問題については、先ほどお舌の文化交流の問題であります。文化交流の重要性については申し上げるまでもないのでありますが、文化交流の前提としては、何としても両国民間の交流ということが重大な問題にならなければならない。ところが、現在の日本の国内情勢、国内上の法律なり制度というものは、これは先ほど穗積君からいろいろ質問のありましたように、事務次官の通牒によって出入国を制限するというような、このようなことが行われている。すなわち、渡航の自由ということは憲法で保障されている厳然たる事実であるにもかかわらず、行政措置によってこれが押えられるというようなことが行われているのであります。このようなことは、これは憲法で保障された国民の権利を侵害することになるのであると私は考えますが、この点について総理大臣はどのようにお考えになりますか。
  124. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 このたびの協定によりまして、また話し合いの際にも、お互いにそのイデオロギーを押しつけるということはしますまいということを言いました。私も国際共産正義というものがもとのような勢いをもって日本に向ってくるものとは思いません。それではありますけれども、国際共産主義が活動した時代もあるの戸ありまするから、今直ちにそういうような活動について全く無関心でいいということも言えないだろうと思います。どういうような態度でもってソ連日本と友好関係を結ばんとするかということについては、よほどやはり注意をしていく必要があると思っております。約束にはイデオロギーは押しつけないと言っているのでありますから、その約束が履行されるかどうかということは、やはり日本としては注意する必要があろうと思います。
  125. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう点の御注意として、条項の中に内政の不干渉という条百項が設けられたのであろうと思います。こういう内政不干渉の条項を設けた上で、しかもなおかつ日ソ間の友好関係を結んでいこうとお考えなのが、現在の総理大臣の本意であろうと私は考えます。そこで、出入国の関係について、ただいまの憲法上の関係と行政措置の問題について御答弁がなかったわけでありますが、この点についてはいかにお考えになるか、この点が第一点です。第二の点は、これは話は少々変りますけれども総理大臣が、モスクワにおいでになるころに、モスクワ大学を見学されて、留学生を交換しなければならぬ、こういう意味のことをお話しになったとわれわれは聞いております。留学生の交換ということも私は非常に重要なことだと思いますが、そのためには、やはりここですみやかに文化協定を結んでいくという方向にいかなければならないと思う。この点は重要な点だと思いますが、この宣言が発効された直後において、直ちに文化協定をお結びになるというお考えがあるのかどうか。先ほどの行政措置と憲法との関係と、ただいまの文化協定との関係、二点についてお伺いをいたしたいと思います。
  126. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 行政措置と憲法との関係は、関係閣僚から答弁をしてもらいます。  ただいまの、いかにして文化交流をやるかというようなことは、だんだんに順序を追うてやっていかなくちゃならない。ただいまどういう方法でやるかということについてはまだ考慮しておりません。
  127. 岡田春夫

    ○岡田委員 関係大臣の御答弁を願います。——外務大臣でしょう。
  128. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 たれという意味で言ったわけじゃないのですが、私よりは適当な大臣がいると思ったのです。
  129. 岡田春夫

    ○岡田委員 じゃもう一度申し上げます。先ほど穂積君の問題につきまして……。
  130. 重光葵

    重光国務大臣 それは済んでいるのです。
  131. 岡田春夫

    ○岡田委員 まだ済んでおらないのです。と申しますのは、あれは、事務次官の通達で、行政措置であります。行政措置によって国民に与えられた基本的権利である渡航の自由を制限するということは、これは憲法に抵触するものではないかという点であります。
  132. 重光葵

    重光国務大臣 憲法に抵触するような行政措置をとってはならないということは、まことにその通りであります。そうして午前中に問題になっておった問題もそこまでいっておるとは思いません。この点については十分注意をしましよう、こう申し上げてお答えしたわけであります。
  133. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点は重要でありますから、時間があればあとまた適当なときに伺いたいと思います。  問題を進めますが、先ほど総理大臣の言われた友好関係を確立する基礎は経済交流である、この点をお話しになりました。そこで、経済交流のために、貿易発展のための議定書が今度結ばれた。この議定書の中で非常に重要なことは、議定書の2でありますか、いわゆるココムに対する制限規定であります。これはぜひ総理大臣か、あるいはむしろ石橋通産大臣の方がいいではないかと思いますが、日本がなぜココムの制限に従わなければならないか、この点についてわれわれは知らないわけであります。経済の交流という問題は、これは国民の権利義務に関することであります。従って、このような国際的な取りきめを行うとするならば、当然このような取りきめまたは条約は国会の承認を得なければなりません。ところが、ココムに関する条約または取りきめというものは、いまだかつて国会に提出された事例がございません。われわれは、いつ、どのような取りきめを、どのような国と結んだかということすら、ココムの内容については全然知らないのであります。一体ココムというのはどういうものなのでありますか。秘密協定か、密約であるのか、こういう点についてはわれわれは全然知らないのでありますが、その真相を一つ明らかにしていただきたいと思います。大体いつココムに加盟したのであるか、何を取りきめられたのであるか、その内容としての取りきめは何であるか、どの国とこれは結んだのであるか、この点については何ら明らかにされておりませんが、これはいかなるものを意味するのであるか、この点を伺いたいと思います。
  134. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 いわゆるココムの取りきめというものは、別段取りきめとか条約になっておりません。いわゆる自由主義国家群の間で話し合いでやっているという程度のものでそりますから、明文になってこれを国会の承認を受けるというような条約の形をしておらない。ただ便宜上連合諸国がパリで話し合いをして、そのときどきに適切な処置をとっていくということで始まった、それに日本も参加している、こういうことであります。
  135. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで、そういう申し合せというものはいつから結ばれておるものでございますか。そしてまたこれは何というところと結んでおるのですか。何というところという正式のお名前を言っていただきたいと思います。
  136. 重光葵

    重光国務大臣 その点は通商局長から御説明を申し上げます。
  137. 中山賀博

    ○中山説明員 ココムの加盟国、それから内部の規則等につきましては、各国ともこれを公表しないことになっておりまして、事実上の運営で、事実上の措置をとるという建前になっております。  この期限につきましては、われわれも、いつからできておるかということにつきまして、はっきりしない点がございます。というのは、従来の経緯から申しまして、だんだんとココム自身の性質が発展的に変貌を遂げておる点もございますが、少くとも、日本が加盟いたしましたのは、ココムが成立してだいぶ経過いたしまして、昭和二十八年に事実上これに協調的態度をとつておるというふうに承知しております。
  138. 岡田春夫

    ○岡田委員 その相手はどういうものですか、どういう機関に入っておるか、そして参加国はどれくらいのものがありますか。
  139. 中山賀博

    ○中山説明員 参加国の数は、本数カ国に及んでおります。そして、その国はおおむね、いわゆる自由諸国といわれる国でできております。   〔岡田委員「何というものと日本がその取り結びをしているのですか、何に入っておりますか。」と呼ぶ〕   〔鳩山国務大臣委員長の許可を得てらなければ……。と呼ぶ〕
  140. 岡田春夫

    ○岡田委員 総理大臣から御注意がありましたから、委員長の許可を得てやりますが、それではどういうものと日本が申し合せをしたのでありますか、この点なのです、先ほどから私が伺っておるのは。それから、その申し合せというのは公表しないというのですが、どういうものですか。秘密にするということになっているのですか、どういうものですか。
  141. 中山賀博

    ○中山説明員 ココムは、事実上の措置として、その運営等がすべて紙に書いた条約という格好はとっておらないので、事実上の話し合い了解ということで行われております。それで、日本が入っておりますそのココムの国は、およそ十数カ国に及んでいると承知しておりますが、これらの国が別に条約上の約束をコミットメントするということではなくて、そのつど、そのつど、問題が起ったときに会合いたしまして、事実上の措置を、事実上了解してとっているというように承知しております。
  142. 岡田春夫

    ○岡田委員 それで伺いますが、国民には公表されないで、それは単なる申し合せであるとするならば、国民がその事実を知らないで自由に貿易をすることに対しても、日本政府としては、これを制限する何らの権限はないと思いますし、その申し合せ自身も何らの権利を持たないと私は考えるが、この点はいかがでございますか。
  143. 中山賀博

    ○中山説明員 その点につきましては、各国政府とも、自己の行政権の範囲内において、約束したことないしは了解したことを実行に移しております。
  144. 岡田春夫

    ○岡田委員 行政権の範囲内においてということは、国の基本法であるところの憲法に反しない限りにおいて行政の事項は執行されるのであると思うが、国民の基本的権利として、貿易の自由というものを与えられている。この貿易の自由に対して、行政の執行以内においてこれを制限するということは、憲法違反になると思いませんか、いかがですか。
  145. 中山賀博

    ○中山説明員 現在行われておりますココム関係の国内法の適用ないしは措置というものは、憲法には違反してないと了解しております。
  146. 岡田春夫

    ○岡田委員 どういうことでございますか、結局貿易することは自由なんです。たとえば、中国なりソビエトへどういうものを送っても自由なんです。ところが、そういうことをやってはいけないというように制限をすれば、これは憲法に違反するのじゃないですか、いかがですか。御答弁がもしあれなら、御相談の上でもけっこうです。
  147. 植原悦二郎

    植原委員長 その問題は、経済局次長の方がよかろうと思います。
  148. 佐藤健輔

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。現在やられておる基本法は、貿易為替管理法に基いてとられました輸出入管理令に基いて行われております。
  149. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ、この取りきめは、相手は何と取りきめを日本がしているのですか。
  150. 佐藤健輔

    ○佐藤説明員 それは先ほど中山次長から申し上げましたように、加盟している国は名前を申し上げない約束になっております。
  151. 岡田春夫

    ○岡田委員 名前くらい言ったっていいじゃありませんか。——名前は言えないでしょう。名前がないんですよ。NATOの中の一委員会というコミッティであって、名前がない。名前があるなら言ってごらんなさい。
  152. 佐藤健輔

    ○佐藤説明員 私は誤解しておりましたが、参加国の名前を御答弁しろという……。
  153. 岡田春夫

    ○岡田委員 参加国は言わなくても知っていますよ。だからそのコミッティは何ですか。
  154. 佐藤健輔

    ○佐藤説明員 別にその正式の名前はございませんが、通常ココム委員会と言っております。
  155. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは通常ココム委員会なんで、名前はないのです。名前がないので秘密の取りきめをしているのです。この密約に拘束されておるのです。総理大臣、これをよく覚えておいていただきたい。秘密の名前のないものと、いわゆる幽霊と日本が取りきめをやっておる。そして、これによって日ソ交渉の場合において貿易上の制限を加えようとしている、これが事実なんであります。こういうことで日本国民が果して満足できるかどうかということなんです。そこで、これに関連するものとして、いろいろな条約を調べてみますと、MSA協定の中の附属D項というのが実はこれに関連するものとしてあるのです。日本アメリカとの関係において、日本の国がいわゆる共産圏の国々と貿易を制限しなければならないという附属D項による義務関係ができておるわけであります。これはしかし、総理大臣、はっきり覚えていただきたいのですが、このMSA協定の結ばれた二年前にココムに日本が入っておるわけであります。ですから、現在のところは附属書D項に該当すると言ってもいいが、それ以前から日本が入っておる。ところが、問題を進めるために、もう少しいろいろ私は伺いたいのです。この点を一つ総理大臣に伺っておきたいのですが、MSA協定の附属D項にはこのように書いてある。「世界平和の維持を脅かす国との貿易を統制する」、MSA協定にはこのように書いているのです。そこで、先ほど総理大臣は、ソビエトに対する御感想として、ソビエトは戦争を求めているものとは考えられない、そのような国であるというように御答弁になったとするのであるならば、この世界の平和を脅かす国ということに対してソビエトは該当しないと思うが、この点はいかがでございますか。
  156. 重光葵

    重光国務大臣 さような点は、ココム委員会等において十分相談をした上で、具体的の結論は出し得ると思います。ただし、今、日ソの間に正常関係を回復しようという日本考え方はどうであるか、こう言われれば、これは互いに平和のために国交を回復するのであります。決してその以外の考え方を持っていない、こう総理大臣は申し上げておるわけであります。
  157. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはどういう意味でございますか。日本の国を代表する総理大臣が、ソビエトは戦争を求めている国ではないと判断した。従って、その精神に基いてこの共同宣言を結んだ。共同宣言の前文においては、二つの国の友好関係と平和と安全を確立する、こういうようなことが規定されておる。その前提は、ソビエトは戦争を求めている国ではないということに立っておるからこそ、この共同宣言が結ばれた。とするならば、世界を脅かす国ということには、少くともココムの委員会がどう判断しようと、日本政府としては、ソビエトはそのような国でないという判断を下さなければならないと思うのだ。そうでなければ、あなた方の考え方に一貫性がないということになるのだが、その点はどうだと私は伺っておるので、これは外務大臣よりも総理大臣から、この点はお伺いをいたした方が、私はよろしいと思います。
  158. 重光葵

    重光国務大臣 私のお答えでいけませんか。
  159. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、いけませんね。(笑声)
  160. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はただいま、ソ連は戦争を欲していない、戦争の挑発者なるというような憂いはないと申したのであります。それですから、ココムの制限などは、ソ連に対しても、中共に対しても、なるべくこれを解いていく方がいいと思っております。
  161. 岡田春夫

    ○岡田委員 大体御趣旨はわかりました。私、もう少し伺いたいのですが、中ソに対してココムの制限なんかできるだけしない方がいいというのが日本政府態度である、このように了承してよろしゅうございますね。
  162. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういうように思っております。
  163. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点についてもまだいろいろ問題がありますが、進みます。  次は、内政干渉の問題であります。先ほど総理大臣からいろいろお話になりましたし、昨日もこれは森島君から松本全権に対していろいろ質疑応答があったようでありますが、これは総理大臣お疲れだから、松本全権から伺ってもけっこうであります。この内政干渉の事項については、運用においてきわめて基準の不明確なといいますか、そういう点で、ここに文章が書かれておりますが、経済的、政治的または思想的、いかなる理由ということと、直接の干渉、間接の干渉、こういうことは一体どういうことを意味いたしますか、具体的に伺いたいと思います。
  164. 松本俊一

    松本全権委員 共同宣言のこの字句ができました経緯は、昨日森島君の御質問に対して申し上げた通りであります。日本側といたしましては、大正十四年の日ソ基本条約趣旨に基く提案をいたしました。いろいろ論議を重ねましたけれども、結局ソ連側はこれを全面的に拒否いたしました。従って、この問題は一時双方の交渉が停頓いたしておったのでありますが、ソ連は、最近しばしば他の国との間に、このただいまの共同宣言の文言のごとき共同コミュニケを発表いたしておるのでありまして、その趣旨ならばどうだという提案をいたしまして、結局これに落ちついたのであります。従って、当方といたしましても、これをいかに運用するかということにつきましては、大体われわれといたしましては、大正十四年の日ソ基本条約の条項と同趣旨に運用して差しつかえないのだ、かように了解して、この条項を入れることに同意したわけであります。さよう御了承願います。
  165. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは非常にいろいろな点を伺いたいのでありますが、大正十四年のときと同様の趣旨ということになると、非常に問題がある。たとえば、そういう趣旨に基いて、あの当時の国内体制が作られた。その後において、治安維持法も作られた。いわゆる防諜関係の法律、外事警察その他のものが作られていったわけです。そういうような体制を復活させる結果になるような趣旨であると理解してよろしいですか。
  166. 松本俊一

    松本全権委員 私が申しましたのは、条約上の日本の権利義務としての関係において、あの条項と同様の趣旨でこの条項を受諾したと申したのであります。これを国内的にいかに運用するかということは、当時と非常に情勢も変っております今日ですから、おのずから変って参りますことは、岡田君もよく御了解願えることと存じます。
  167. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ具体的に伺いましょう。いわゆる内政不干渉の原則というのは、御承知の通りに、ソビエトはかねがね言っている平和共存の問題である。ソビエトは資本主義の国々と平和共存を唱えると同時に、その国における資本主義の経済体制に対しては、これは同時に批判する自由を持っている。これは、だからといって、決して革命を輸出するということではない。その国内の体制というのは、その国自身の問題として解決されるべきであるというのが共産主義の考え方であります。しかしながら、それらの国々と平和的に共存するというのが原則なんです。そこで、具体的に松本全権に伺いますが、ソビエトにおけるこのような資本主義に対する批判と同じような学説、あるいは政治思想、行動というものが現実に日本にあるわけです。こういう学説、政治思想、行動というものが、ソビエトにおけるこのような想思と同一である、政治的にも同一であるからといって、この条項に書いている政治的、思想的内政干渉の条項に抵触するものであるかどうか。そういうことであるからといって、内政干渉になると松本全権は御判断になりますか、いかがでありますか。
  168. 松本俊一

    松本全権委員 この点は、私は実はお答えする資格がないと思っております。国内の問題でありますし、これからの運用の問題になりますので、ほかの方からお答え願うよりほかないだろうと思っております。さように御了承願います。
  169. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、この点は重要でありますし、特に戦争前に、鳩山総理大臣は、文部大臣の時代にこれに関連するようなこともあるわけでありますから、この際は総理大臣から、このような事実については内政干渉になるのかならないのか、この点をはっきりお伺いをいたしたいと思います。
  170. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申しました通りに、国際共産主義の活動が直ちにしげくなるというようには考えておりません。それですが、やはりそういうような場合の起らないように、これに対する相当の準備の必要なことは考えております。
  171. 岡田春夫

    ○岡田委員 その御答弁はややはぐらかした御答弁なんで、日本にある国内の学説、政治思想、行動というものが現実にある、内容においても同じだという場合に、これが内政干渉だと判断されるものかどうかという問題なんです。この点をもう一度御答弁を願いたい。
  172. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それが直ちに内政に干渉ということにはならぬと思います。
  173. 岡田春夫

    ○岡田委員 直ちにという点でも、これは重大なんです。実は憲法で規定されている思想、結社の自由に関する国民の権利の問題に関係しますから重大なので、しつこいかもしれませんが、もう一度伺いたい。たとえば、直ちにというお話ならひっくり返して伺いますが、ソビエトの憲法においては、ソビエトの政体は共産主義の国家であると言っている。そうすると、日本の国の国民ソビエトの共産主義という政体を批判する場合に、内政干渉になるじゃありませんか、どうなんですか。
  174. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はならないと思います。
  175. 岡田春夫

    ○岡田委員 相手の国の思想に対して、そういう問題について批判することは内政干渉にならない。日本の国内にある政治とか、あるいは思想とか、こういう問題について、日本の憲法では思想の自由、結社の自由という点についての明らかな国民の基本的権利を認めている。この自由に立って共産主義という考え方を持っていることは、国民の基本的権利であって、これがたまたま同一のものであっても、これは内政干渉には断じてならないと思うのであるが、この点はもう一度伺っておきたいと思います。
  176. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申しました通りに、それは内政干渉にはならないと思います。
  177. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこでもう一点、この点あまり長くなるといけけせんから伺っておきますけれども、ここへこのような国内事項という規定がありますが、この国内事項という点については日本の憲法に抵触するものではない、日本の憲法は厳然としてここに認められている、こういう点が、言葉をかえていうなら、憲法によって保障されている国民の権利を国民が自由に行使する場合において、これが、ソビエトのそれと同一内容を持っているという理由をもって、内政干渉という責めを受けることは断じてないのである、という点は明らかにしておいていただかなければならないと思いますが、この点はいかがですか。
  178. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 関係のないものを勝手にあるということは言えません。
  179. 岡田春夫

    ○岡田委員 ないですね。
  180. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ええ。
  181. 岡田春夫

    ○岡田委員 その点、ないということがはっきりしていればいいです。
  182. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの質問のうちにあるでしょう。関係がないものをあると言うのかという御質問でしょう。関係のないものをあると言うはずはありません。
  183. 岡田春夫

    ○岡田委員 たとえば、これは経済的な内政干渉の条項ですが、借款の供与があった場合に、これに特別なひもがついているという場合を除いて、借款をするということ自体は内政干渉にならないと思いますが、いかがですか。
  184. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私ですか。
  185. 岡田春夫

    ○岡田委員 ええ。
  186. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 内政干渉になると思いません。
  187. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで内政干渉であるかどうかの判断は何によってきめられますか。これは行政措置によるのでありますか。どのような基準がきめられましょうか。
  188. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 だれがきめるかということですか。
  189. 岡田春夫

    ○岡田委員 だれがというのは日本政府でしょうが、どういうような基準によってきめるかということです。
  190. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの質問の趣旨がわからなかったのですが、それは宣言に書いてある趣旨判断するよりしょうがないと思います。
  191. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、宣言趣旨といいましても、国内においての取扱いですから、国内における何らかの措置が必要だと私は思うのですが、これは単なる行政措置によってその当時のときどきの政府が勝手にきめるということになるならば、総理大臣考えられた趣旨と違うような、たとえば前の吉田総理大臣のような人が出てきたならば、あなたの意見とだいぶ違うことを行われるだろうと思う。そういう場合において、あなたがこの共同宣言を結ばれたこの趣旨を生かしていくためには、どうするのだということを伺っているのです。その基準はどうなんだということを伺っておる。
  192. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは憲法並びに法律の規定に従って判断していくよりしょうがないでしょう。
  193. 岡田春夫

    ○岡田委員 それじゃ憲法ですね。
  194. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法とは関係ないでしょうが、そのときの……。
  195. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、しかし基本的には憲法と関係があるでしょう。
  196. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうかもしれない。
  197. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうかもしれないではたよりがない。
  198. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは憲法並びに日本法律趣旨に従ってきめていくより仕方がない。
  199. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、憲法の趣旨並びに法律とおっしゃいますけれども法律の場合に憲法と抵触するような疑点のある法律もある場合があるわけであります。そういう場合において、これは一般論として、憲法が基礎にならなければならないと私は考えるのですが、この点はいかがですか。
  200. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういうような法律はないと思います。
  201. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはあるのだけれども、時間の関係があるので進めます。  そこで、再度伺って参りますけれども総理大臣は、日本の国内において反ソ的な態度を少くとも政府はとるべきではない、反ソ感情をあおるような政策を政府というものはとるべきではない、そういう点についてはそうだと思うという御答弁があったように私は記憶をいたしておりますが、よろしゅうございますか。
  202. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 世界の平和をこいねがう外交方針をとるということは、日本外交方針の基本方針でありまするから、いたずらに他国の真意を疑って、想像をして、そうして災いを招くというような行動は慎しむべきものだと思っております。
  203. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで、具体的に伺いますが、政府機関において反ソ的な行動をしていることについては、どういうような態度をもって臨まれるか。あるいは取締りを行われますか。
  204. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その程度により、日本人の常識によって判断をするよりしようがありません。
  205. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは公安調査庁——牧野法務大臣がおられますが、公安調査庁で月間国際情勢展望なるものを出しております。これは公表をいたしております。これを見ると、きわめて激越に反ソ的な感情をあおっている事実がたくさんあります。たとえば、一つだけ例をあげてみましょう。「ソ連の日・ソ交渉についての最大の狙いが、これによって日本の国論を分裂させ、漸時日本を反米離反の方向に誘導しようとする点にあるのではないかとさえ思われる十分な理由がある。」日ソ交渉は国論を分裂させて反米離反の方向をやろうとしておる理由があるのだ、こういうことまで九月号でいっておるのですが、こういう日ソ交渉で国内の分裂と反米離反をやったということが事実だとするならば、あなた自身が日ソ交渉を妥結さしてこういうことをやったということになるのですが、これはどうですか。こういうことは政府機関として出すことが妥当だとお考えになりますか、どうでしょうか。
  206. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそれは書き過ぎだと思いますけれども、いろんな理由があって、そうして中道の道を歩むことができるのですから、反対論があったからといって、それをおそれたり憎んだりすることは不必要だと思います。
  207. 岡田春夫

    ○岡田委員 それはそうです。それは国民の中でこういう意見を持っている人はあるでしょう。現に、今までだいぶ質問しておる人の中では、きょうの大橋君にしても、その他の諸君にしても、たくさんこういうような意見を持っている人がある。しかし、あなたの統括される中における政府機関が正式の公文書としてこれを出したところに、私は重大な問題があると思うのだが、これは行き過ぎだとお考えになりませんか、いかがですかというのです。政府機関の仕事としてどうだというのです。
  208. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いろいろな意見がありましても、そういうものに対して一々神経質にならなくてもいいじゃありませんか。
  209. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたは神経質でなさ過ぎるから、党内や政府部内における分裂があるわけであります。あなた自身が、部内におけるこのような混乱状態を、神経質にならなくていいじゃありませんかと言ったら——このような感情、いろんな思想が政府の機関からいろいろ発表されたらどうですか。それでも神経質でなくてもいいじゃないか、もうおれは退陣するのだからというようなおつもりでございますか。
  210. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 党内においてもいろんな意見を持っておる人があることは承知しておりますが、私は、いろんな意見があっても、びくともしていないのです。
  211. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、党内ではない。政府の内部の、政府機関の公表された文書だから問題なのです。そればかりじゃありません。進めるためには十一月号をごらんなさい。明らかにあなた自身がばかにされていることがたくさん書いてありますよ。日ソ交渉については「ソ連側が折角歯舞色丹の「引き渡し」に同意してくれてはいても、「平和条約締結された後現実に引き渡される」のであっては、その他の領土問題が妥結しなければ還って来ないのであるから、それが何時のことだかわからない。」それから国連加盟についてもきわめて不安である、それから共同宣言よりも日ソ交渉の基本条約の方がよかった、これは重光さんをほめているわけなんだけれども、さっきのあなた方の答弁では、鳩山さんの方がよかったのだ、こう言っておるのだが、こういうように一々政府の政策にいって批判をする、政治について、一つの立場に立って政府機関の一部の者が批判をするということは妥当であると考えるかどうか、こういう点について伺っておきたいというわけです。
  212. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いろいろ批判のある方が、間違わないで人間が行動ができるのです。あまりほめられると少し気違いになりやすいから、ほめられないことはけっこうだと思います。
  213. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは総理大臣は混同だと思いますよ。批判のあるということは、国民の中で批判のあることは、これは国民の自由であります。しかし、政府の中の機関としてこのような点が行われるということは、妥当かどうかということなんです。この点ははっきりしておかなければならぬ。批判が自由であるとおっしゃるのならば、国家公務員法において政治的活動の規定もありますが、それはのそような解釈でありますが、それはそのような解釈でわれわれはやらなければならないと思う。国家公務員法においては、公務員というものはそのようなことをやってはならないということが、はっきり書いてある。これはこの六法全書にあるのですよ。そういうことはやってもいいのだと総理大臣がここではっきり御言明になるのならば、それでもけっこうです。公務員は全部そのような態度をとることをあなた自身があえて認められるとおっしゃるのですから、それでもけっこうであります。
  214. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その一部分を読んで聞かして下さいましても、判断はつきかねます。けれども政府の施策に対して、公務員といえども、批判する権利はあると思います。
  215. 岡田春夫

    ○岡田委員 これはおかしいと思う。個人としての批判の権利はあっても、公務員として批判をするということについては、政府機関の中で批判をするということは、私は許されないと思う。この点はどうでございますか。
  216. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それはその通りです。
  217. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうでしょう。そうするならば、これは正式に発表された公式文言じゃありませんか。それは妥当ではないとおっしゃることになりましよ、う。
  218. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは全部続みませんと、妥当であるか、妥当でないか、判断はしかねると言ったのであります。
  219. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは牧野法務大臣、いかがお考えになりますか。あなたの関係機関として、こういうことが公然と発表されている。こういう点をお調べになったことは、所管大臣としておありになりますか。
  220. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えいたします。きわめて重大なる質問でありますから、その文書をよく読みましてからお答えいたします。
  221. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではもう一点、よくお読み願うために、もう一つ重大な問題があります。これは単なる政府機関の問題だけでなくて、事、外交関係に関することであります。これを総理大臣もよく覚えておいていただきたいのですが、これは八月号にこういうことが書いてある。「真偽は別として、」という言葉は使ってあるけれども、「駐日ソ連漁業代表部が、秘かに民間に撒布した政治および謀略資金は、既に九千万円に上るとの有力な情報も伝えられて居り、ソ連の操従する秘密スパイ組織の活動が活溌化する徴候も認められるに至っている。」これはどういうのですか。われわれ政治関係に携わる者としても、九千万円の政治資金が配布されているという事実があるというならば、これは重大であります。しかしながら、こういう事実がないというにもかかわらず、このようなことが書かれているとするならば、これは外交関係において重大な問題であります。共同宣言趣旨に基いて、友好関係を樹立しようとしているときに、チフヴィンスキー代表を初め代表部では、九千万円の資金をばらまいているというような話がある、こういうことであるならば、あなたの先ほどお考えになっている友好関係を——こういうことがもし事実であるとしても、これは内政干渉の問題になるし、そうでないとするならば、こういうことを書いたことはきわめて重大であると思うのだが、この点はいかがでございますか。こういう点については、どのような御感想をお持ちになりますか。
  222. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは非常に行き過ぎた、でたらめの記事だと思います。
  223. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは総理大臣の言われたように、行き過ぎた、でたらめの記事であるとわれわれももちろん思います。それだけに、行き過ぎた、でたらめな記事をこのように書かせたことについては、牧野さん、あなたは責任がありますよ。あなたは見なかったから、おれは知らないと言っているのじや困りますよ。あなた自身、こういうでたらめな記事と総理大臣が言ったことについて、この点について調査されて、この事実についてこういうことを書いた責任を、どのような措置をおとりになりますか、この点をはっきり御答弁願いたい。
  224. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えをいたします。それは文芸春秋に出ておるのです。(岡田委員「文芸春秋じゃない、公文書だよ」と呼ぶ)オリジナルです。それが文芸春秋に出ておるのと、経済新聞に出ておる。そういうものをそこへ持ってきたのです。それから投書が出ておるのです。だからそういうものを参考にしたのです。けれども、あなたのいうふうにしてとっていくと、やはり相当批判を免れないと思います。よく考えます。
  225. 岡田春夫

    ○岡田委員 よく考えます——公安調査庁の公文書ともあろうものが、文芸春秋その他の雑誌をニュース・ソースにしてこういうものを書いた、こういうことを政府の正式機関が公表したのですから、あなた自身責任を負わなければなりませんよ。考えて頭をかかえているだけでは、意味がありませんよ。どういうことをやるのだ、どういう措置をするのだということを、行き過ぎておると、はっきり総理大臣は言われているなら、はっきりその措置を具体的にお話になるのが当りまえではありませんか。考えて頭をかかえていたってしょうがありませんよ。
  226. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 よく読みまして、必ず責任を負います。
  227. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間も進んで参りましたので、進めます。——まだ許された時間が三十分あるのです。総理、もう少しお待ち下さい。  今度は、国交回復後の外交の方針について一つ伺って参りたいと思いますが、総理大臣細迫氏の答弁の場合に、日ソの国交回復の意義は、日本独立へ通ずる道である、このような答弁を実はされております。これは速記録でごらんになっても、おわかりの通りであります。この点はこれを再確認してもよろしいですか、どうですか。
  228. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういうように思います。とにかく日ソ国交正常化ができましたことによって、国際連合に入れば、国際連合を土台として、日本独立は強化されるものと思いますから、そう言ったのであります。
  229. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点は重要でありますので、外務大臣も、独立への道であるという総理大臣の御趣旨を私は再確認したいと思うのですが、御意見はないと思いますけれども、いかがですか。
  230. 重光葵

    重光国務大臣 総理大臣の御趣旨通りでございます。
  231. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、国の独立ということは、釈迦に説法かもしれませんが、総理大臣はお聞きを願いたいのですが、対外関係を意味する、他の国から何らか主権の制限を受けるというようなことでは、独立ということにはならないと思う。国連憲章にある主権の尊重ですね。主権平等の立場に立っていることが、これが独立という問題だと思う。そこで、あなたが独立へ通ずる道ということをお話になったとするならば、現在の日本というものは、まだ完全な独立を完成しておるものとは言えないということ、第二は、独立国とは言えないいろいろの理由が、今度の国交回復によって切り開かれていく、国交回復後における外交政策、国交回復それ自体によって、こういう半独立独立未完成の状態が解決をされていく、解消されていく、こういうことだと思うのです。現在の状態はその状態にあると私は考えるのですが、この点はいかがでしょう。
  232. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私もそういうように考えます。
  233. 岡田春夫

    ○岡田委員 その独立が完成されておらないということは、主として対米関係が理由になっておるのではありませんか。
  234. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それのみではありません。日本主張がまだ世界的に通ずるものとは思っていないのです。それは日本独立性がないということだと思っております。
  235. 岡田春夫

    ○岡田委員 それのみということなら、アメリカとの関係ということも、一つ独立未完成の原因になっているという意味解釈してもよろしゅうございますか。
  236. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本が自衛力を持たない、アメリカと安保条約によって日本の自衛が守られているのです。それですから、そういう点から考えても、日本独立した国である。自衛ができる国だということは言えないのではありませんか。
  237. 岡田春夫

    ○岡田委員 今のお話趣旨はわかりますが、その意味において自衛力を持たない、そこでその意味において日本の国は主権の制限を受けておる。このように解釈してもよろしいのですね。
  238. 重光葵

    重光国務大臣 私は今、日本が自衛権を満足に持っていないというのは、実際上独立の完成がまだない。これを十分に国交を開いて、独立の完成を進めていく、自衛権も十分に無制限に行われるようにしたい、こういうことだろうと思います。
  239. 岡田春夫

    ○岡田委員 主権の制限を受けているという意味ですね。日本の国の主権に何らかの制限を受けているということでしょう。というのは、もっと具体的に言いましょう。安保条約によっても、第一条においては、アメリカの駐留軍が駐留する主権の制限、第二条では、第三国に対してアメリカ合意を得なければならないという主権の制限、それから第四条において、この条約の有効期間に関する主権の制限、これがあるということは事実でしょう。
  240. 重光葵

    重光国務大臣 条約で約束をすれば、これは主権の制限になります。そういう約束によって——条約はすべてそういう性質を持っておるわけでございます。
  241. 岡田春夫

    ○岡田委員 はっきり御答弁になりました。主権の制限、すなわち独立の未完成の問題、この点をはっきり御答弁になったわけであります。そこで伺いますが、この共同宣言の三項の(b)に「その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土保全」云々というのがあります。「武力による威嚇又は武力の行使」、この点がうたわれていますが、日本における自衛隊の場合のいわゆる武力といいますか、自衛隊というものはこの場合の武力とわれわれは認めてよろしいのですか、どうなんですか。総理大臣いかがですか。
  242. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣答弁するそうです。
  243. 重光葵

    重光国務大臣 御質問はb項でしょう。b項は「その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むこと。」これは読んで字のごとしであります。どの点が問題になりますか。
  244. 岡田春夫

    ○岡田委員 大臣は私の言うことがわからないのですか。武力という意味は、自衛隊が行使する場合、自衛隊も対象になるかどうかということを伺っておるのです。
  245. 重光葵

    重光国務大臣 自衛隊であろうが、何であろうが、自衛の目的を逸して、これを威嚇したり何かするということは、よくないと思います。
  246. 岡田春夫

    ○岡田委員 ここに規定している武力ですかということです。
  247. 重光葵

    重光国務大臣 自衛隊は自衛力だと思います。(笑声)
  248. 岡田春夫

    ○岡田委員 自衛隊は自衛力というのは、これは総理大臣も笑っておられるように、これほどナンセンスな答弁はありません。ナンセンスな答弁というのは、武力であるかと聞いておるのに、自衛力でありますと答えるから、ナンセンスになるので、自衛隊というものは武力であるかどうかと聞いておるのです。これは何ですか。自衛力なら武力ではないのかと聞いておるのです。
  249. 重光葵

    重光国務大臣 私は自衛隊は自衛力であると申し上げたのであります。
  250. 岡田春夫

    ○岡田委員 自衛力は武力ですかと聞いておるのに、自衛力です……。
  251. 重光葵

    重光国務大臣 質問がどういう点かわからないから……。私の言うのは「武力による威嚇又は武力の行使」ということです。だから武力による行使で、威嚇はしない、自衛力を使う場合においては威嚇はない、こう申し上げておるわけであります。
  252. 岡田春夫

    ○岡田委員 武力じゃないのですね。
  253. 重光葵

    重光国務大臣 自衛のための武力……。
  254. 岡田春夫

    ○岡田委員 自衛のための武力とは何ですか。それは威嚇にならないという意味ですか。
  255. 重光葵

    重光国務大臣 ああ、そうそう。(笑声)もう少し質問をはっきり……。
  256. 植原悦二郎

    植原委員長 なるたけ明瞭にするように、私語を避けていただきたいと思います。
  257. 岡田春夫

    ○岡田委員 質問者に助けを求めて、ああ、そうそうと言われるのでは(笑声)——それでは伺いますが、これは安保条約の中を見ても、それから総理大臣答弁を見ても、日本の自衛隊は自衛力だ、外に対して行使する武力ではないのだ、だから自衛力しかないから、アメリカの駐留軍から防衛のための援助をしてもらうのだ、そういう意味の安保条約が結ばれているわけですね。そこで外に対する武力として、これは行使するにしても、しないにしても、武力というものは、現在の日本においては、アメリカ駐留軍というものが安保条約がある限りにおいては、この条約の対象になるのではありませんか。総理大臣、いかがですか。
  258. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 安保条約による武力の供与は、やはり自衛力強化のためのアメリカとの約束でありますがゆえに、自衛のための武力の範囲を逸脱しているものとは思いません。
  259. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、たとえば自衛力強化であるとしましても、これが外に向けられる場合——これは安保条約の中に明確な規定があるのです。読んで見ましても、「外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために」、これは外部に対するいわゆる防衛力です。アメリカのこういうものは、外部に対する武力と判断すべきものだと思いますが、どうですか。
  260. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その御質問は、私は前の議会でしたかに、飽きるほど聞いたのですけれども、外国から侵略した場合に、自衛隊が外部の侵略に対して防衛することは、やはり自衛のための武力の範囲内にあると思うのです。それで飛行機が飛んできたときには、途中で迎え撃っていいのかどうかという質問があったのでありますけれども、とにかく抽象的に言えば、外国の侵略があった場合に、これを防衛する必要最小限度においては、日本の防衛力を使ってよろしいと私は思います。
  261. 岡田春夫

    ○岡田委員 この三項というのは、お互いに武力を行使しないことを慎しみ合うという規定ですから、非常に重要なんです。これはよってソビエトからも武力の行使をしない、日本としては現在自衛力しか持っておらないから、しかも自衛力というものは武力でないというようなさっきのお話ですから、一応あなた方の答弁を仮定して、いわゆる自衛力であって、外に行使するものではない、こうするならば、外に対して行使するものとして、アメリカの駐留軍の軍隊が現在の日本としては安保条約に基いてあるわけですね。そうでしょう。外からの攻撃に対する自衛のために、そういう武力というものがあるわけですね。この武力は日本側の武力——アメリカの駐留軍を含めての武力もソビエトに対して行使しないというのが、これが共同宣言趣旨でございましょう。
  262. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 むろんそうです。
  263. 岡田春夫

    ○岡田委員 むろんそうだとおっしゃるならば、安保条約の中に、日本の国内において内乱があるという場合においては、アメリカの駐留軍は日本政府の要請に基いて内乱の鎮圧に向うことができる規定がある。それと同町に、外からの武力の攻撃に対しては、安保条約に基いてアメリカの駐留軍はこれを防衛するところの力を持っている。ところがこの場合には、日本政府の要請、合意を必要としない。これは安保条約にはっきり書いてある。とするならば、このような保障をあなた方が共同宣言においてされても、日本に安保条約に基いて駐留するアメリカの軍隊が、日本政府合意なしに武力を行使する場合があり得るわけです。そうすると、事実においては、この共同宣言趣旨というものが実現されない場合があり得る。(「ない、ない」と呼ぶ者あり)ない、ないというが、それじゃ何によって保障をするか。条約の条文上に何らの保障がないじゃないか、安保条約に何らの保障がないじゃありませんか。それはどうですか、外務大臣総理大臣もしあれなら、純正大臣お答え下さい。
  264. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はない方がありがたいです。
  265. 重光葵

    重光国務大臣 私は、そういう場合は絶対にないと思います。また絶対にあり得べからざることであります。それは完全に協議の上であります。
  266. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうこはないということを明言するという意味ですね。
  267. 重光葵

    重光国務大臣 そうです。
  268. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで伺いますが、最近エジプトのようなこういうごたごたの問題が起っておる。この間、重光外務大臣が演説をしたようなごたごたの問題が起っており、極東においても、台湾海域で非常態勢がとられておる。朝鮮戦線においてもある程度の警戒態勢がとられております。このときにおいて、日本の自衛隊の中の空軍がアメリカと韓国と三国の合同演習をやったことは、これは武力の威嚇、こういうことを意味するんじゃありませんか、どうです。
  269. 重光葵

    重光国務大臣 それは、そういうことではございません。
  270. 岡田春夫

    ○岡田委員 船田長官に伺います。三軍の合同演習というものは、一体どういうあれによって行われたのですか。だれが指揮権をふるったのですか、どうなんです。これは、どういうことによって三軍の合同演習が行われたか。
  271. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま御質問のありましたようなドラゴン・フライ・エクササイズというものが行われたことは事実でございます。これは毎年米空軍が主体になりまして演習をいたしておるのでありますが、従来、まだ日本の航空自衛隊が発達をいたしませんときにおいては、参加ができなかった。ところが、ことしは幸いに相当に整備されて参りましたので、これに参加をさしてもらったのであります。
  272. 岡田春夫

    ○岡田委員 参加をさせてもらったというのは、日本側から参加を申し込んだという意味ですか、その点はいかがでございますか。
  273. 船田中

    ○船田国務大臣 米軍の方から参加をしてはどうかという通知を受けましたので、私は訓練のために必要であり、きわめて有益であると考えまして、参加をさせました。
  274. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、この場合の指揮権はだれがとっておりますか。
  275. 船田中

    ○船田国務大臣 自衛隊に対する指揮権は防衛庁長官が持っておりますし、航空自衛隊の参加についての直接の指揮権は、源田空将か持っておったのであります。
  276. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういうだろうと思っておった。ところが、事実はそうじゃない。アメリカの空軍司令官が指揮権を持っておったんでしょう。これはレーダー基地に対する共同演習でしょう。レーダー基地にある指揮権のレーダーの通報によって、日本の自衛隊の空軍が動くということなんでしょう。あなたは大体これに対して閣議の了解を得てないじゃないか。防衛庁の中の庁議によって議決しておらないじゃないか。あなた個人だけが知っておったんですか。(「演習だ」と呼ぶ者あり)演習であろうと、なかろうと、他国との合同演習を行うという場合におては、これは国の方針決定しなければならぬ。この国の方針決定する場合において、あなたはなぜ閣議の承認を得ないのですか。われわれは反対したけれども、国防会議法というものができた。国防会議の議長は鳩山総理大臣だ。鳩山総理大臣の承諾を得ないであなたは軍隊を動かしていいのですか。かつては、あなたはだれかに足利尊氏と同じ郷里の栃木県だと言われたけれども、あなたは三軍の長として勝手に軍隊を動かす権限をお持ちであると思って、だれにも相談しないでおやりになったのですか、どうなのでございますか。
  277. 船田中

    ○船田国務大臣 日本防衛のために必要な自衛隊の訓練は、防衛庁長官の権限においてできることになっております。また、アメリカの駐留軍は、安保条約によりまして、日本の防衛のために必要な措置がとれることになっておりまして、従って、その訓練の範囲内において、両者が共同して訓練をするということは、これは防衛庁長官の権限の範囲内においてやれる問題でありますから、これに参加さしてやらしたのであります。
  278. 岡田春夫

    ○岡田委員 この点には非常に問題があるのです。問題があるけれども、これをやっていると長くなるから、あとは外務委員会でやります。ただ一点だけ伺いますが、あなたの今のお話をたとえば了承しても、これは米日との関係で、韓国軍隊がこれに協力したのはどういう理由ですか。法的な根拠を明らかになさい。
  279. 船田中

    ○船田国務大臣 日本の航空自衛隊は、日本の区域の防衛防空のために参加をいたしておるのでありまして、韓国の演習とは関係がございません。
  280. 岡田春夫

    ○岡田委員 韓国も参加してやった合同演習でしょう。しかも韓国は日本の上空まで来たでしょう。これはどうなんです。
  281. 船田中

    ○船田国務大臣 日本の自衛隊は、日本の区域内において演習に参加しております。韓国の軍隊は、韓国の範囲内において参加したか、それは私は詳細には承知しておりませんが、韓国の軍隊は日本の上空には参っておりません。
  282. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、上空に来ないといっても、あなたは何によってそれを保障しますか。三軍の合同演習という名目によって米軍がやった場合に、韓国の空軍が来なかったといういかなる保障があるのですか。
  283. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま日韓米の合同演習ということでありますが、この合同演習ということは、これは新聞やラジオではそういうふうにいわれたかもしれませんけれども、私の承知している限りにおきましては、先ほど来申し上げたように、日本の航空自衛隊は、日本の防空のために必要なる訓練をいたしたのでありまして、他国と共同作戦をしたのではございません。
  284. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたが知らないというところに日本の従属性があるのですよ。日本の自衛隊は知らなかったし、しかしアメリカの指揮官である。アメリカの空軍は、一方において韓国を率いて三軍の合同演習をやった。自衛隊の本質というものはここにあるということなんです。アメリカの指揮命令通りに動いている。結果においてあなたの方が希望したかもしれないが、三軍の合同演習が行われているのは事実で、はありませんか。うそだとあなたはおっしゃるのですか。現実は三軍が動いているのじゃありませんか。あなたが知らないということは、とりもなおさず、日本の自衛隊はアメリカの手先の軍隊であるということを意味している、それ以上は知らされておらいということを意味している、そうでしょう。現実に三軍の演習がこの間行われたのでないとあなたがおっしゃるならば、そういう意味に私は解釈しますが、いかがでございますか、この点は。
  285. 船田中

    ○船田国務大臣 日本の航空自衛隊は、日本の防衛のために演習をいたしたのであります。韓国の軍隊と協力をしてやったものではございません。
  286. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、総理大臣おわかりでしょう。常識から見てもおわかりだろうと思う。三軍の合同演習をやっているが、日本の空軍は日本だけのことをやったのだというが、その演習それ自体は、三軍でやっているのだ。このことは、武力の威嚇の危険性を持っていると私は思う。共同宣言のこの趣旨を私はだからさっきから言っている。そこで、安保条約の問題である。これは総理大臣は安保条約はただいま改正するつもりはないとか、こういう意見を再三言っておられますが、ここで一つぜひ伺っておきたいのは、安保条約の前書きです。前文においては、日本国は武装を解除されているので、平和条約の効力発生のときにおいて——このときにおいて、固有の自衛権を行使する有効な手段を持っていない。無責任な軍国主義がいまだ世界から駆逐されていないので、前記の状態にある日本国には危険がある。よって、日本国は安保条約希望する。こうなっている。そこで、ここで問題になるのは、固有の自衛権を行使する有効な手段が日本にはない。このときというのは、平和条約発効のときだ。もう一つは、無責任な軍国主義がその当時あったということ、この二つが前文の趣旨であります。そこで、この平和条約の効力発生のときの自衛権というのは、総理大臣御存じのように、警察予備隊です。兵力は七万五千だった。ところがそれから保安隊になり、自衛隊になり、現均は約二十万の自衛隊ができている。これが一つです。無責任な軍国主義が世界から駆逐されておらないという点については、その当時は、朝鮮戦争があった。朝鮮戦争であなたが再三答弁されているように、米ソの対立が激しい状態にあった。ところが、今や朝鮮戦争は一応休戦の状態になっている。あなた御自身も、ソビエトは戦争を求めていないという御判断に基いて共同宣言に調印をされた。無責任な軍国主義というような問題について、日本の危険がなくなってきた。このように、安保条約を結んだ当時と今日とにおいては、国際の情勢においても、国内の自衛力といわれる点においても、大きな変化があったのだということは、お認めになりますかどうですか。
  287. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国際情勢については、米国とソ連との関係、これはだんだんと平和的に向っていると私は思います。しかし、世界的に考えますと、世界的に平和が十分に保障されている状態じゃないですね。方々でいくさが始まっているようなわけでありますから、それですから、日本としては、相当の自衛力を持つ必要があるとただいまでも思っております。相当の自衛力というと、これは世界的に考えてみなくちゃならないのでありますけれども世界的に考えてみれば、世界の平和国としてかつて戦争をしない国でも、現在の日本の自衛力よりはもっと強い自衛力を持っているくらいでありますから、日本の自衛力を強化するということについては、日本国民はまだ十分だとは考えていないというように私は思っております。
  288. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたの御答弁はわかりますけれども、私の伺っているのは、こういう点です。日本を取り囲む国際情勢は、安保条約のころと変っている点は、大体お認めになりましたね。もう一つは、安保条約が結ばれた当時の自衛権と、現在の自衛隊という点においても変っているということは、お認めにならなければならないでしょう。これは七万五千と二十万の差ですから、何といっても変っている。従って、日本を取り巻く内外の情勢が変っているということは、お認めにならなければならないと思うのですが、この点はいかがですか。
  289. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ただいまの時代においても、内外の情勢は変っておるけれども、ただいまの現状において、日本の自衛力はもっと増すのが、世界的の常識だろうと思うと言ったのであります。
  290. 岡田春夫

    ○岡田委員 しかし、総理大臣、自衛力を強化するということは、これは安保条約の友好関係において、武力行使の脅威の問題、この点から対立を生じませんか。具体的に言いますと、ブルガーニンがあなたに対して、軍縮を通じて平和を実現したい、こういうことをお話しになって、あなたも大体同感の意を言われた。そうして、軍縮の問題については、具体的の提案があり、ソビエトアメリカ、中国は百万ないし百五十万、英仏軍は六十五万、その他の軍隊は日本を含めて十万ないし十五万、こういうようにするという提案がある。軍縮をだんだん行うことが、世界の平和のために寄与することなのでありましょう。そういうことが平和を実現する道なのでありましょう。日本の軍隊を二十万以上にふやすということは、世界の平和の道ではないのではありませんか。
  291. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは、ある程度の兵力を持ち、ある程度の自衛力を持つということが平和の道だと私は考えるということを申しました。現在まだその時期に達してはいないと思っております。アイゼンハワーなどは、この間の選挙の際に演説をして、私は国民に対して平和を約束する、しかしながら、平和を約束するのには、どうしてもその前提としてアメリカのストレングスを強化しなければならないということを言っているくらいでありまして、現在平和の見通しがまだできていない、これからだんだんにみなと協力して作るという時代ですから、その時代において、一歩先んじてしまって、兵力はなくてもいい、減じてもいいというところまで一足飛びに行くことは無理だろう、だんだんとその域に達し得るように、国民とともに努力する必要があると思っております。
  292. 岡田春夫

    ○岡田委員 そのストレングスの強化ということは、力によるところの、力による政策という意味でしょう。あなたに、この前の御答弁では、力による政策というのは反対で、平和の方法でいかなければならない。友好関係によって平和を結んでいかなければならない、その方向に行かなければならない、こういうように御答弁になっているが、今度は力による平和によらなければならないという御答弁である。だいぶ趣旨が違うように思われますが、いかがですか。
  293. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は力も相当に持たなくてはいけないということを言っておるのであります。力のみによって平和は維持されるものではないと思っております。
  294. 岡田春夫

    ○岡田委員 時間がありませんから、まだだいぶあるのですが、省略をいたします。  そこで最後に伺いますが、国連加盟の問題で、この前、穂積君からいろいろ御質問がありました。そこで、国連加盟については、重光外務大臣が渡米されるという話を聞いておりますが、この事実はいかがでございますか。  それから第二は、中国が国連に加盟するということは、これは総理大臣に伺いますが、世界平和のために私は願わしいことだと思うのだが、この点はいかがでございますか。まず総理大臣から伺います。
  295. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、国連に加盟する国が多くなるほど、国連の力はふえるものと思います。だから、平和を愛好する国は、できるだけ国連に加盟ができるようにいたしたいと思っております。
  296. 岡田春夫

    ○岡田委員 中華人民共和国が加盟することは、やはり世界の平和のために、国連の権威を高めるために、私は願わしいことだと思いますが、総理大臣はいかがでございまか。
  297. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から……。
  298. 重光葵

    重光国務大臣 私はそういう時期がいつか来ることが望ましい、こう考えておりますが、今日では国際情勢はそうなっておりません。
  299. 岡田春夫

    ○岡田委員 国連加盟のためにアメリカへ行かれますか。
  300. 重光葵

    重光国務大臣 総理大臣の御希望があれば私は出かけます。
  301. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、あなた自身はいかがですか。
  302. 重光葵

    重光国務大臣 各国の外務大がみな出席をしておりますし、大体する慣例でございますから、そういう場合がありましたならば、おそらくそういうことになりはしないかと思っております。
  303. 岡田春夫

    ○岡田委員 最後に、国連加盟の問題と沖繩問題であります。国連憲章では、あなたは御存じのように、七十八条に国連の加盟国になった場合においては——読んでみましょう。七十八条は、「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。」こういう原則がある。それから百三条では、「加盟国のこの憲章に基く義務と他のいずれかの国際協定に基く義務とが抵触するときは、この憲章に基く義務が優先する。」国連憲章優先の義務であります。この二つからいってサンフランシスコ平和条約第三条に、沖繩、小笠原諸島を将来アメリカが唯一の施政権者として信託統治地域とする場合において、日本はこれに同意をするという規定があって、それまでは暫定的に施政権をアメリカが持ち、日本が潜在主権を持つことはいうまでもない。そうすると、国連に日本が加盟すると同時に、国連加盟国である日本は、信託統治の地域の適用を除外される。平和条約の規定がいかにあろうとも、百三条の規定によって、国連憲章が優先する。当然これは日本が国連加盟をすると同時に、沖繩を信託統治にすることは認めるわけにいかない、国連憲章の精神により。そうなれば、日本に当然返還されなければならないと思うし、この沖繩の返還の問題については、この間の国会の議決においても、自民党も野党も全部が合せて、日本に対する復帰の問題を明らかにしておるし、あなたも再三復帰の点を答弁されておられるのでありますが、この国連の加盟をいい機会にして、沖繩、小笠原諸島に対して、日本に対する復帰をはっきりと御言明になる必要があると思うのであります。特にあなた自身は、今度は国連に加盟する場合に行かれるのですから、沖繩問題についてはっきりした態度を見せていただきたいと思うのですが、あいまいな答弁でなくて、この点はあなたのいう日本の民族主義の立場に立っても、ぜひはっきり言っていただきたいと思う。いいかげんな答弁をしないで、はっきり言っていただきたいと思います。
  304. 重光葵

    重光国務大臣 沖繩の日本復帰については、将来とも、あらゆる機会で努力をいたしたい、こう考えております。今の国際連合の条文の解釈等については、条約局長から説明いたします。
  305. 下田武三

    ○下田政府委員 国連憲章の第七十八条の解釈についてでございますが、これはある地域が加盟国になる、つまり加盟国になるためには、独立国になることが前提となるわけです。ですから、沖繩が独立国になって、そうして加盟国になった、そういう場合には考えられることであります。つまりスーダンという地域が独立して、それが国連加盟国になった、そういう場合に適用があるのであります。日本という国の領域の一部としての沖繩については、七十八条の問題は起らない、そういうふうに解釈しております。
  306. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは非常に問題です。あなたは、沖繩は日本が潜在主権を持っておるということをお認めにならないのですか。沖繩自身が独立するという主権を持っておるのじゃありませんよ。
  307. 下田武三

    ○下田政府委員 沖繩に対して、日本が潜在主権を持っておりますことは、当然でございます。
  308. 岡田春夫

    ○岡田委員 主権を持っているとするならば、沖繩自身は日本の主権の範囲内、管轄内の問題であります。分離をすべき何らかの法的根拠があるならお話を願いたい。国連憲章の中における戦略地域という規定をお使いになるのであるとするならば、それも一つの理由になるかもしれないが、それは反駁のための用意はわれわれもあります。
  309. 下田武三

    ○下田政府委員 この点につきましては、アメリカその他の国と解釈を打ち合せたことがございますが、それは先ほど申しましたように、ある地域が独立して加盟国になった場合、つまりスーダンやモロッコ、そういう地域の場合のことでございまして、ある国の一部としての地域についての問題ではないということは、これはもう明らかになっております。
  310. 岡田春夫

    ○岡田委員 ある地域の一部ではないということは、沖繩の問題を意味するということではないということになりませんか。具体的にいうと、主権が、日本に潜在主権としても認められているという点から言っても……。
  311. 下田武三

    ○下田政府委員 沖繩に対する潜在主権の問題とは、この際関係がないわけでございますが、沖繩という国が日本の領域である以上は、やはり日本の一部でございますから、日本国全体の問題として考えるのであって、沖繩だけを切り離して、七十八条の問題としては取り上げられることはない、そういう意味でお答え申したのであります。
  312. 岡田春夫

    ○岡田委員 それではっきりしました。法解釈の点では、それで非常にはっきりしました。沖繩だけを別にして取り上げられるものじゃない。従って、日本全体が、いわゆる国連加盟国になった場合においては、当然この点については沖繩は信託統治の適用を受けない。こういう解釈になると思うし、現実に、重光外務大臣だって、民族主義をあれほど謳歌されて、近ごろ珍しいほど強腰で言われておられるので、重光外務大臣としては、これほど民族主義をエジプトなどの問題に対してはっきり言っているのに、日本の族民の問題についてはどうでもいい、沖繩の問題はどうでもいいというのですか。国連加盟のとき、これほど国連憲章に規定があるのだから、この点をはっきりこの機会にお話しになるのが、私は妥当だと思う。何もアメリカに遠慮する必要はないのですから、はっきりおっしゃったらいかがですか。外務大臣から現実問題としてお答えを願います。政治論です。条約問題ではありません。
  313. 重光葵

    重光国務大臣 私がお答えする前に、条約局長からちょっとお答えすることがあるそうです。
  314. 下田武三

    ○下田政府委員 岡田先生は、私の申し上げましたリーズニングを使って、全く反対の結論をお出しになっておりますので、その点だけちょっと——私は、沖繩だけを切り離して、それが独立国として加盟国になった場合には、これは当然加盟国のステータスと信託統治地域のステータスというものは両立し得ないことでありますから、七十八条は両立し得ないということをはっきり言ったわけであります。しかし、あくまで日本国の一部であるところの地域の沖繩については、七十八条の問題が起らないということを、先ほどから申し上げているのでございます。その点御了承願います。
  315. 岡田春夫

    ○岡田委員 そういう法解釈は一応あるかもしれません。あるかもしれませんが、これは国連憲章の原則である民族自決の問題から考えて、その地域における住民の希望がどの方向にあるかによって決定される問題で、スーダン自身は、民族の独立、スーダンの独立という要求に基いて独立した。沖繩、小笠原の場合には、その住民というものは、復帰を要求している。その場合においては、当然これを別個に分離すべきものではない。これが国連憲章の精神ですよ。そうなれば当然これは国連憲章の規定の中では、日本全体として一括して解釈すべきだと私は思う。この法解釈の問題をやっておると時間が長くなりますから、きょうはやめて、あとで外務委員会でやります。しかし、政治論としては、同上加盟のいい機会に、重光外務大臣はなぜこれを要求されないのですか。この民族の悲痛な要求を国連に反映しようというのが、あなたの民族主義を謳歌するその態度でなければならぬと思うのだが、日本の民族はどうでもいい、エジプトやハンガリーにだけはいうのだ、こういうのがあなたの民族主義ですか。そうじゃないでしょう。日本の民族だって、復帰を要望したなら、国連加盟のときに、はっきりいうのが当りまえじゃないですか。これは政治論としてぜひ伺いたいと思います。  それから、もう一点で終りますけれども、いわゆる附帯決議あるいは留保条件の問題ですが、これについては、外交関係を規制するような留保条件がつけられるという場合においては、こういう条約が、いわゆるそれによって拘束される場合においては、当然相手国との交渉が必要になって参ります。そうすると、今度の共同宣言において、もし留保条項がつけられるという  ことになるならば、それに基いて、ソビエトとの再交渉というものが必要になってくると、私は現実に思うのであります。そうなってくれば、引き揚げの問題、国連加盟の問題が、事実問題として不可能になると思うのであります。この留保条項をつけようとする人人は、引き揚げの問題、国連加盟の問題を犠牲にしてもやる結果になると私は思うのであるが、こういう点について、見解はいかがでありますか。
  316. 重光葵

    重光国務大臣 民族主義を徹底させなければならぬという御趣旨は、私も、いつも申し上げる通り、御同感でございます。沖繩の復帰等については、あらゆる努力を尽さなければならぬ。従来とも尽しておるわけでありますし、将来も尽すつもりでございます。  それから最後の留保条件ということにつきましては、前にこの問題の起ったときに一応申し上げた通りでございまして、私は留保条件は必要なし……。
  317. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、必要はないということでなくて、私はそういうことを言っているのじゃない。政府間の交渉が必要になったら、そのために引き揚げの問題が年内に不可能になるし、国連加盟も困難になるのじゃないかという実際問題としての話を伺っているわけなんで……。
  318. 重光葵

    重光国務大臣 その留保のいかんにもよりますけれども、いずれにしても、これは私は不賛成であるということを申し上げております。
  319. 岡田春夫

    ○岡田委員 私は不賛成とか賛成とかいう問題を伺っているのじゃない。そういうような事が事実問題として行われるならば、不可能になってくるのではないかということを伺っているので、これは実際問題ですよ。だから、その点について、事実上、外交事務的に留保条項を結んでもそういうことが可能であるなどとは私は考えられないのであるが、不可能になるのじゃありませんかということを聞いているのです。反対とか賛成とか、そんなことは私らは反対ですよ、留保条項をつけるのは……。
  320. 重光葵

    重光国務大臣 それは、私はたびたびお答えした通り、留保のいかんによる、こう申し上げておる。
  321. 岡田春夫

    ○岡田委員 だから条約を拘束するような……。
  322. 重光葵

    重光国務大臣 そういう拘束するような留保はやってはなぬらのだ、こう申し上げておるわけです。
  323. 岡田春夫

    ○岡田委員 これで終ります。いろいろ伺いたい点もありますけれども総理大臣もだいぶお疲れのようなので、私はこれでやめますが、どうか共同宣言あとにおいては、共同宣言で全部完成したのではなくて、日ソの友好関係を、これをきっかけにして確立していくのだ、そういう意味では、日米関係に対しては不平等の関係を改めていく、そうして、ほんとうに世界の平和が実現できるように努力を願いたいし、そういう方向に、総理大臣が引退されても、行かれるように、この機会に、あらゆる努力をお願いしたいと思います。総理大臣もいよいよいわゆる花道を通って引退されるときでありますから、その花を咲かせるという意味においても、今度の日ソ交渉の御労苦に対して、われわれ国民としてその御労苦に感謝すると同時に、今後は、そういう点について、再び、敵対的な関係については、国内においてそういう状態を作らないように、あらゆる努力をされるように、総理大臣でおられる間にそういう国内的な態勢を固められるように一つお願いしたいと思いますが、そういう点について、御所感を承わって、私は最後にいたしたいと思います。
  324. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 むろん世界の平和政策については努力をするつもりでおります。
  325. 植原悦二郎

    植原委員長 笹本一雄君。
  326. 笹本一雄

    ○笹本委員 先日来熱心に審議が続けられておりまするこの委員会におきまして、これは全国民の視聴を集めて、また絶大な関心と議論の的になっておることは、今さら言うまでもありません。そこで委員諸君においてもあらゆる角度から熱心に質問されております。委員長が御心配になっておられたところの重複しないように質問しろというお話でありましたが、どうしても多少重複いたします。私は、五項目にわたって総理大臣及び外務大臣松本全権、また法務大臣に伺いたいと思っております。時間の関係上、質問を一問一答でいきますと非常に時間がかかりますので、私は五項目全部質問の形式で申し上げます。それに対して懇切な御答弁をお願いしたいと思います。  その第一は、松本全権でありますが、さきに松本・マリク両氏によるところのロンドン交渉から、今次の鳩山総理がみずから乗り込んだモスクワ交渉に至るその間において、内容的に見てどんな進展があったかであります。すなわち、日ソ両国間の正式交渉は、ロンドンにおいて松本・マリク両全権によって始められたのであります。その交渉は会を重ねるに従いまして、次第に行き悩みとなりまして、自然休会ともいうべき先細りになったのでありますが、今度は河野農相の訪ソによる漁業交渉によって、またさらに進んで国交回復に関する交渉が始められ、重光外相の出馬となり、そうして入れかわって、鳩山総理大臣みずから首席全権としてモスクワ入りと展開し、今次の日ソ共同の宣言を見るに至ったのであります。この数次にわたる交渉について国民ひとしく感ずるところは、当初の交渉に比べて、今次の妥結には、果して分がよくあったのであるかどうか、あるとしたならば、どういうところなんであるか、そうして、これはどういうわけでそうなったのであるか、これらについて明快な御説明をいただくことが、最も根本的な第一であるのであります。もとより交渉という以上、相手があるわけでありまして、相手には相手の立場あり、また考えもあり、主張もあるわけでありまして、こちらの主張がすべて百パーセント貫徹することは難事であります。しかし、相手との調和、協調もときには必要でありまするが、通観すれば、日ソ交渉は、ソビエト政府側は断固として一歩も譲らず、日本が譲って、こちらのみがのんだのではないか。さらに交渉に当って、情勢の観察や要因の分析判断に手落ちがあったのではないかという点に、国民感情として割り切れないものがあるのであります。もっとも、総理は満足した交渉ではないが、というお話をしておりましたが、従いまして、当初のロンドン交渉より交渉妥結に至るその間の経過の明快なる御説明を願い、あわせて妥協内容に進展があったかいなかについて、松本全権から簡単に国民を納得させるように御答弁を願いたい。  続いて第二であります。第二点は、さいぜんも議題になっておりましたが、内政不干渉の問題であります。共同宣言の第三項において、はっきりと国内事項に干渉しないと約束してあります。平和と信義とに立って、それぞれの独立国間で内政干渉などは当然あるべきことではないことは、申すまでもありませんが、しかるにこの共同宣言には、内政不干渉を明記してあるのであります。明記してないよりは、ある方がよいというような、いわば相対的な、気休め的なことでは何もならないのであります。確実に有効な対策がなければならないことは、申すまでもありません。この共同覚書にいうところの内政不干渉、言いかえれば排除する干渉とはどういうことを意味するのでありましょうか。たとえば、ソ連日本国内の特定団体に財政的援助を与えて、政府打倒の運動を助けるとか、日本の選挙に当って、ソ連が特定の政党を勝たせるために資金を供給するとか、あるいはまた、ソ連貿易に従事するところの業者に利益を与えて、禁輸撤廃の対政府工作をさせること等を意味するものであると解されるのであります。政府としては、内政干渉を具体的にどういう意味解釈されておるか、その所信や対策を明らかにしていただきたいのであります。先ほども委員から話がありましたが、遠く大正十四年のソ連との国交を結んだとき、ヤンソンなる者をソ連日本に送り込みまして、日本共産党を指導、工作したので、わが国はソ連に対しまして厳重抗議したが、無視黙殺された前例もあるのであります。遠い過去のことはここには申しませんが、かつてはゾルゲ事件があり、最近の事例としましては、ビルマ、スエーデン等でソ連外交官のスパイ事件、国外退去問題などが起っており、またインドネシアなどでも、多数のソ連工作員が活躍しているとも開いているのであります。さらには最近の中欧の事態を見ましても、ソ連は明らかに国内問題に干渉している事実があるのであります。この観点から、私は国内不干渉は当然のことではありますが、果して内政には干渉させないということを政府は保証できるのかどうか、具体的に所信を明らかにしていただきたいのであります。  第三には、第二の内政不干渉とも関越性があるところの治安問題についてであります。わが国は資本主義を骨格とするところの自由主義経済と、民主主義社会に立っている国家であることは、申すまでもありません。これに反しまして、ソ連は共産主義に立つ国家であることも、申すまでもないのでありますが、この国家形成の理念が、それぞれいずれも、これが自国の国民または民族の幸福になるという確信に立っているものであることは当然であります。それぞれの思想、信念によるものであって、いずれが可であると、一律に断ずるわけにはいかないのでありますが、現実の問題といたしましては、わが国においては保守党が国民大多数の支持を得ていることは明らかなことであります。そして穏健妥当な自由主義的民主主義が支配的なの、でありまして、国民の大多数が、この道こそわれらの幸福と発展のゆえんであると信じておるのであります。従って、先日も文部大臣は、小学校におけるところの偏向教育は断じて避けるべきである、あるいは社会主義的教育、共産主義的教育は、学校教育という限りにおいては、当然問題視されねばならないと言ったのでありますが、私もそれには同感であります。この意味において、自由主義国家としてのわが国には、穏健な保守主義が絶対的、支配的なのでありますが、一部には共産主義をもって理想とする向きもあり、失業苦、社会苦に悩む人々のうちに、ややもすればこれに使そうされて、動揺するおそれもないではないのであります。この思想動揺に誘発される社会不安に対するところの方策、換言すれば、自由主義国家としてのわが国の治安に対するところの万遺憾なき対策ができているかどうか。この問題について私は政府の治安対策を具体的に率直にお伺いいたしたいのであります。ただ、一言これにつけ加えておきたいのは、私の質問の精神は、共産主義に対する弾圧政策ではなく、その防禦策としての政府の見解と方策を伺いたいといりにあるのであります。  第四には、賠償問題、であります。日ソ両国は戦争に基因するところの一切の請求権を放棄するという、ここに問題があるのであります。問題のように、第二次大戦の戦況がきわめて不利になってきたとき、わが国は不可侵条約を結んでいたところのソビエトに講和の橋渡しを要清し、ソ連またこれを了としたやに見えたのでありまするが、情勢の機微をつかむや、ソ連は、がぜん豹変して、一方的に不可侵条約を破棄し、宣戦を布告して、宣戦を布告もせぬ日本を攻撃すること一週間、かくて戦勝国という地位に立ったのであります。ソ連はこのわずか一週間の戦いによる戦勝によって何を得たかと申しますると、満州その他から日本の財産と考えられるところの膨大な施設、機械を持ち去り、百数十万の抑留者を拉致し、また民間個人財産をもほとんど根こそぎ没収したのでありました。これらの額は数兆億円にも及ぶ巨額に達するであろうといわれておるのであります。しかも、その上に、ソ連は南樺太、千島列島を手に入れたのであります。わずか一週間の戦争で、ソ連にはほとんど何らの被害損失もないのに、宣戦布告もせぬ一本の失うところのものはあまりに大き過ぎるという感じを国民は抱いているのであります。言いかえれば、ソ連に対して日本国民は強い不満と非難、あるいは理不尽を恨み怒る気持を忘れ切れないのであります。今までは、理屈はともあれ、戦勝国、戦敗国という比重の差から胸をさすってきた国民といたしましては、戦勝、戦敗という地位の差がなくなり、いわば対等の立場に立った今日、賠償を一切打ち切ったということは、国民感情としても割り切れないものがあるのであります。ぜひ国民に納得できるようにはっきりと知らしていただきたいのであります。また私有財産の請求権も放棄した場合には、国はこれに対していかなる処置を考えておられるか。この問題は非常に重大な問題でありまして、交渉に当っても、そのソビエト交渉に対する度、あるいはまたその考え方等に対して、全権は非常に御苦労されたこととは思いますが、国民といたしますと、どうしてもこの点について納得できない。やはりこういう請求権の問題は一朝にして解決つかないにいたしましても、ここに政府はこれらに関していかにして国民を納得させるかということの説明をしていただきたいと考えます。  最後の第五の質問でありますが、これはもう、今も問題になっておりました、日ソ交渉における最大の問題であるところの領土の問題であります。歯舞色丹の両島は平和条約締結すれば日本に返還する、南千島は継続審議とするとありますが、ところで、サンフランシスコ条約放棄した以外の領土は依然として日本のものと思い信じているのが国民の心情であります。従いまして、領土問題については、ソ連態度解釈はあまりに一方的であり、あまりにも理不尽ではないかと思われます。南千島は継続審議になったという政府の御説明であるが、この点は必ずしも明らかでないのであります。南千島は日本固有の領土であるから、必ずやそれを認めるものと国民了解しておるのでありますが、この強い火のような国民感情と信念を十分銘記せられて、政府におかれては、この機会に国民をしてぜひ納得させていただきたい。  以上五項目に対しまして、総理天臣あるいは外務大臣松本全権、法務総裁から、私委員に対してでなく、国民に対して、力強く、そうしてはっきりとしたところの答弁をお願いいたしたい次第であります。
  327. 松本俊一

    松本全権委員 私から、ただいまの笹本さんの質問のうち、第一問につきましてまずお答えをいたしたいと存じます。  私が昨年の六月マリク大使と交渉を開始いたしまして以来本年の鳩山総理の訪ソまでの間、交渉は十数カ月続きましたが、その間最大の問題は最後に御指摘になりました領土問題であります。これはしばらく別といたしまして、というよりも、領土問題につきまして、私もしばしば御説明申し上げましたように、先方は、領土問題、すなわち今度の戦争の結果ソ連が占領した日本の旧領土、つまり日本の南樺太、千島列島、これについてはすでに問題は解決済みであるという態度を終始一貫してとり、これに対して、わが方は、決して解決していないという態度を初めから最後まで持ち続けまして、今後の共同宣言の第九項のような結果に相なったわけであります。  しからば、今度の共同宣言と最初のソ連態度とどういう左があるかと申しますると、これはいささかあるいは手前みそになるかもわかりませんが、しかしながら、実は最初のソ連態度は相当強硬でありました。領土の問題につきましては、歯臨、色丹すら、全然これは返還するとか引き渡すとかいうことを拒否いたしておりました。そのほか、サンフランシスコ条約締結の合成の際に、ソ連のグロムイコ代表が提案いたしました条項のうち、日本の近海における海峡の自由通行権でありますとか、あるいは日本海に通ずる諸海峡の第三国の軍艦に対する閉鎖の問題でありますとか、そういう条項も入れておりました。また日本が過般の太平洋戦争において戦争した一国に対する軍事同盟を禁ずるというような条項も入っておったのでございますが、これらは漸次、交渉の進展につれまして、わが方の主張をいれまして、これを撤回して参りました。また、その間、漁業条約も現実の問題として調印を終ったのであります。また、引揚者の問題、これは私が昨年六月に交渉以来、繰り返し繰り返し交渉をいたしましたのですが、これを一般の問題と切り離して実現するには至りませんでしたけれども、しかしながら、最後共同宣言の中に、アデナウアーが交渉いたしましたときと違いまして、条文の中に明記することに相なりました。アデナウアーのときは、フルシチョフが口頭でたくさんだと言って明記しなかったのでありまするが、それを明記することになりました。また、通商問題につきましても、議定書ができておりますことは御存じの通りであります。  かようにいたしまして、領土問題以外につきましては、ほぼこの戦争後の問題につきまして解決を見たのでありまするが、しかしながら、領土問題は、交渉の最初から終りまで常にこれがひつかかりまして、双方の見解が対立いたしまして、御承知のような結末に相なっておるのでございます。  これら各事項にわたりましての今度の交渉の初めのソ連主張と結果の対照を大体申し上げまして、お答えにいたしたいと存じます。
  328. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 第一の御質問は、ただいまの松本君の説明でもって御了解を願いたいと思います。  第二の内政不干渉のことは、ブルガーニンが私に申した言葉は、ソ連としてはイデオロギーを押しつけるというような態度は決してしない、というのは、つまり共産主義を日本に宣伝をして、日本の共産主義者を作るというような意味は決してしないということを言いましたのが、内政不干渉という題目に出てきたものと私は考えております。  それから、第三の治安の問題は、共産主義と資本主義というのは、これは全然違う主義なんです。これは御承知の通りで、自由主義理想とする個人主義的なものと全体主義と対立しておるのであります。これはまるで違うのでありますが、その治安の対策をどうするのかという御質問でございました。治安の対策は、とにかく国際共産主義をソ連が宣伝したこともあるのでありますから、そういうようなことがある以上は、日本としても情報機関だとか何かをやはり充実いたしまして、イデオロギーを押しつけるということのないように警告もしなくちゃならない関係もありまして、日本でもやはり治安の維持に対しては相当にその機関を充実する必要があるのだろうと考えております。  第四の、一週間内に戦争をしてソ連は取るものが多過ぎる、それに対して請求権の放棄だけでは満足ができないというようなお話でありますが、そういう論は成り立つでございましょう。けれども、現在の置かれておる日本の地位としては、これ以上のことを要求することは無理だと私は考えました。  第五の領土問題は、ただいま松本君の説明で大体御承知と思いますが、私は、領土問題というものを両方の係争事件の唯一のものとして交渉すれば、松本君がソ連との交渉不調和に終っても、それから重光君の前例にかんがみましても、領土問題だけを問題とすることはどうしても日ソの国交回復には害があると思いまして、それでこれはあと回し、すなわち継続審議にすることを有利だと考えまして、継続審議にしまして、今度の議定書を作っておるわけであります。
  329. 重光葵

    重光国務大臣 五項目にわたる御質問は、今松本全権並びに特に鳩山総理大臣から御説明したことで全部尽きております。私から特につけ加えることはございません。しかし、今後平和条約締結のために交渉をする時期は来るだろうと思います。さような時期におきましては、今継続審議ということがあいまいであるというお話でありましたけれども、決してあいまいでなく、その交渉の場合においては、われわれの方の希望の達成のために全力を尽してやりたい、こう考えておりますことを申し上げまして、御答弁といたします。
  330. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えをいたします。治安の問題は笹本君御憂慮の通りに大へん重大なことと存じます。基本につきましては、ただいま総理よりお答えいたした通りでありまするが、具体的な方面といたしましては、従来この方面の基本的な考え方が徹底していなかったと存じます。それで、ことさらな行き方を日ソ交渉とともに行うというようなことはかえってよろしくない、そこで、今までルーズであった点を引き締めて、現在の機構のもとにおいて組織の充実をはかっていきたいということを考えまして、すでにそれを実行に移しております。基本的な問題としては、戦前における内務省が公安と治安を主宰いたしておりました。戦後におきまして、これは法務省の中心的な行政だと考えます。それの組織法上の根拠は、犯罪の予防ということでありまして、これは、普通の刑法犯はかりでなく、先ほどあなたが仰せられましたように、民主主義を乱すというような行動がいやしくも極右の方面にも極左の方面にもあってはならぬというので、公安と治安とを維持する上におきまして、この方面の行政を確立いたして参っております。しこうして、最も大切なことは、左右両極端の方面は隠して行動している。これが危険なのであります。これが国民は不安なのであります。従って共産党の方面の人々にも、また右翼団体の人々にも、隠さない、隠せばどこまでもこれを追及して明らかにすることに努める、それではやはり政府やり方が行き過ぎになってくるおそれがあるから、隠さないでおいてくれということを根本にいたしまして、隠れたものを、隠そうとするものを明らかにするという方面に力を入れていきたいと存じます。ただいまその方面で相当な効果を上げておりますが、今後ともすべての方面に秘密がないということでいきたい。そのことにつきましては新しい立法が要るのではないか、新しい機構が要るのではないかという説もありますけれども、私は、そういうことをしますと、政治の自由を妨げ、思想の自由に干渉し、また裁判の公開その他に対しても非常なよくない傾向を来たすおそれがあると思いますから、そういうことは一切しないで、明朗にしていく、それが公安と治安を維持するゆえんだという方針を堅持して参りたいと思います。御了承を請います。
  331. 笹本一雄

    ○笹本委員 今の質問の中の二、三でありまするが、内政の不干渉問題については、総理は、ブルーガーニンは共産党自党の信奉する共産主義君の宣伝をしない。私は先般中共へ参りましたとさに、毛沢東もそう言っております。これについては、日本国民は、御承知のごとく大多数はわれわれ保守党に対してたよっておる。しかし、さいぜんも話したごとく、失業苦である、生活苦である、あるいはいろいろな観点からいきまして、ややもすればその方べ走りやすい傾向は御承知の通りであります。その意味におきまして、今牧野法務大臣から懇切に答弁がありましたが、第二、第三の問題については特に力を入れて施策を練ってもらいたい。  それから、賠償の問題でありますが、戦敗、戦勝の比重で、一番これが領土問題とともに交渉に当って非常に苦労されたことと思いまするが、これは、今総理がおっしゃったような工合に、今の問題としては、これはここまで持ってきたのは非常に骨を折ったと言われますが、国民全部からいいますと、なかなかこれに対して感情が残ってゆります。でありますから、あすからも委員会がありますが、これを通しまして、そうして国民の納得のいくように、今も重光外務大臣からお話がありましたが、重光大臣からも、今総理お話ししたようなことで、私はもうお話する余地はありませんというようなことでなしに、この賠償問題のようなことについては、進んで国民に少しでもわかってもらうようにやってもらいたいことを要望いたしまして、私の質問を終りといたします。
  332. 植原悦二郎

    植原委員長 次会は明二十六日十時三十分より開会いたしますが、十時に理事会を開きたいつもりであります。委員会は十時三十分シャープに開会することを御了承願って、理事の諸君は、それまでに理事会を終るよう、お取り計らいを願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十五分散会